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1956-11-24 第25回国会 衆議院 日ソ共同宣言等特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十一月二十四日(土曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 小笠 公韶君 理事 吉川 久衛君    理事 須磨彌吉郎君 理事 田中伊三次君    理事 床次 徳二君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       石坂  繁君    臼井 莊一君       内田 常雄君    大橋 武夫君       北澤 直吉君    小坂善太郎君       笹本 一雄君    高岡 大輔君       中曽根康弘君    福田 篤泰君       松田 鐵藏君    山本 利壽君       日野 吉夫君    細迫 兼光君       森島 守人君    和田 博雄君       岡田 春夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 牧野 良三君         外 務 大 臣 重光  葵君         文 部 大 臣 清瀬 一郎君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         内閣官房長官 松本 瀧藏君         法制局長官   林  修三君         外務政務次官  森下 國雄君         外務参事官   法眼 晋作君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      田邊 茂雄君         農林事務官         (大臣官房長) 永野 正二君         水産庁長官   岡井 正男君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君  委員外出席者         全 権 委 員 松本 俊一君     ――――――――――――― 十一月二十二日  委員阿佐美廣治君、小坂善太郎乃び保科善四  郎君辞任につき、その補欠として松田鐵藏君、  渡邊良夫乃び大橋忠一君が議長指名委員  に選任された。 同月二十四日  委員大橋忠一君、渡邊良夫君、赤路友藏君及び  福田昌子辞任につき、その補欠として福田篤  泰君、小坂善太郎君、日野吉夫君及び森島守人  君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十一月二十二日  北洋漁業制限解除に関する陳情書(第二一五号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言批准について承認を求めるの件(条約第一号)  貿易の発展及び最恵国待遇の相互許与に関する日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の議定書批准について承認を求めるの件(条約第二号)  北西太平洋の公海における漁業に関する日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の条約締結について承認を求めるの件(条約第三号)  海上において遭難した人の救助のための協力に関する日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第四号)     ―――――――――――――
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言批准について承認を求めるの件外三件を一括議題といたします。  これより質疑を許します。穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 最初に、委員長にちょっとお尋ねいたしますが、この前私の質問は、内閣総理として、かつ自民党総裁としての地位におられ、しかも今度の交渉の全責任を持った鳩山総理と、重光外務大臣との間で考え方を統一していただきたいと思って、それで、あなたのごあっせんによって、私の継続すべき質問が打ち切られて、総理外務大臣とそろったところで、これは重要な点であるから明らかにしてもらいたいということによって、きょうの会議になったのです。ところが、承わりますと、総理はきょう御出席にならないようですけれども、それでは一番大事な質問について明らかにしていただくわけに参りませんから、その点については委員長の方でどういうふうにお取り計らいになるおつもりであるか、最初議事進行についてお尋ねいたしておきます。
  4. 植原悦二郎

    植原委員長 お答えいたします。次会総理出席いたします際に、外務大臣も御出席考えますから、その際にはあなたの留保質問を第一陣に委員長は許すことに取り計らいます。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 了解いたしました。  それでは、外務大臣に、この前御欠席になりましたから、私の質問趣旨了解しておいて、簡単にお答えいただきたいと思うのです。と申しますのは、私の質問要旨は、今度の共同宣言が完全なる平和条約方式になっていないで、懸案の問題を残してあとに継続されることになっております。そういうことでもありますので、あと社会党内閣ができるか、あるいは自民党内閣ができるかは別といたしまして、次の内閣なり国民が、これは、今の内閣全権がおやりになった、あるいは外務大臣が約束なさったことが、明らかにされないものがあと条件として付せられて、わが方の交渉に不利益を招くようなことがあってはいけないから、その点を明らかにしておきたいことが一点。  もう一点は、鳩山内閣は近くおかわりになる可能性もおありになるようですから、もしそういうことであれば、現内閣によって説明されましたいろいろな方針または条件等が今後の内閣にいかに継承されるか。社会党内閣になればそのことは大して問題ではございませんが、自民党の同じ党派の内閣ができました場合には、鳩山内閣とその次の内閣との政策方針の継承はどういうふうにされるかという点を明らかにしなければなりませんので、私は、今も言いましたように、外交責任者下あるあなたと、それから党の責任者として総理はかつ総裁でございますから、そういう意味でお尋ねしておるわけですから、大体私のねらいを理解された上で、御答弁をいただきたいと思うのです。  第一点にお尋ねいたしたいのは、この前北澤君から問題になって、ブルガーニン・河野会談、フルシチョフ・河野会談等々において、領土問題について、河野全権が、ソビエト側に対して、歯舞色丹以外は放棄してもよいというよろなことを確約を与えたかのごとき事実が、シェピーロフ外務大臣を通じてあなたに報告があった。それを総務会報告をした。それをあなたは否定されました。ところが、北澤君は何か確たる証拠を持っておるかのようなことを言って、そのままこれを明らかにされないで、質問を打ち切られた。これは私ははなはだ、心外なことであろし、野党われわれ国民としても迷惑しごくなことでございますから、そこで、この前シェピーロフ・重光会談でお立ち会いになりました松本全権から証言をしていただきましたら、そのようなことはないと確証なさいました。同時に、シェピーロフ・重光会談以外にも、あるいはそういう情報があなたのところに入っているかもしれませんが、そういう事実があるかないか、シェピーロフがあなたに話したときに、そういう話があったかどうかということだけを聞くのでなくて、そのほかの情報またはルートを通じて、あなたにそういうようなことを心配させるような情報が入ったかどうかも、この際伺っておきたい。  それから、第二点は、河野さん本人は、絶対にそういうことはない、次の内閣社会党であろうが、自民党内閣ができようが、あとのものに迷惑をかけるようなことは絶対にしていないということを確言されましたし、私もそれを信じたいと思う。しかしながら、日本政治家は、ややともすると、具体的な問題が出ましたときにイエス、ノーをはっきり言わないで、それをノー・コメントのつもりで言ったことが、相手に暗黙の了解を与えたかのごとき誤解を与えておるかもわからない。あるいはまた言葉の端で言質に値するような発言があったかもしれない。もしそれがあったといたしましても、われわれは、条約上はもとよりのことですが、政治的にも、そういうような発言なり誤解というものは、今後、日本のいかなる政府でも、あるいは日本国民ソビエト政府に対して何らのオブリゲーションを負わないものであると私は解釈いたしますが、どうですかと言ってお尋ねいたしましたら、下田条約局長は、そのようなものは同様に考えて、何らのオブリゲーションは負う筋合いではないと思うということを確言なさいました。それらのことを外交責任者でありますあなたにこの際はっきりしておいていただきたいわけです。と申しますことは、たとえば、サンフランシスコ条約第二条でクーリール列島放棄したという、そのクーリール列島の中に、西村条約局長は明らかに歯舞色丹以北の島は全部入るという答弁政府を代表して言っておきながら、それは一条約局長答弁であって、われわれの考えは違うのだというようなでたらめなことを今日になって言っておるから、全部の人に聞いておかなければ、あとになってさっぱり要領を得ません。それで、外交責任地位にあるあなたに関係いたしますから、重ねて明確にしておいていただきたい。あとにささいな疑点も残らぬようにしておきたいというのが私の質問要旨ですから、その点は十分御理解の上で明確にしておいていただきたいと思います。
  6. 重光葵

    重光国務大臣 御質問の点はるる述べられてよくわかりました。御心配のような将来を拘束するような言質はいずれの部分においても与えておりませんことを、はっきり申し上げます。それから、これは私の交渉しておったときのことに関係するのでありますが、ソ連側ではいろいろソ連側主張を数回にわたっていたしました。日本側も数回にわたっていたしました。そしてソ連側主張日本側において受け入れられないことをはっきりしておいたのでありますが、向う側もこれは決して誤解はございません。また、その後、のモスクワ交渉においても、それは少しも誤解を与えることはないことを申し上げておきます。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 第二問についてお答えいただきたいのです。つまり、あなたはそうであっても、あなた以外の方、たとえば河野さんその他の政府代表誤解を招くような印象を向うへ与え、またはないと思うけれども、万一言質を与えるような発言があったにしても、それ、の法律上または政治上の効力といいますか、オブリゲーションはわれわれは負うべきではないと私は解釈いたしますが、それについて外務大臣態度を明らかにしていただきたいと思います。
  8. 重光葵

    重光国務大臣 それはもう御追及になるまでもないことで、繰り返し申し上げておる通りで、御懸念はございません。そうして、御懸念の点が一昨日でしたかの北澤君の御質問の点にありとするならば、私とシエピーロフとの間におきましてきわめて明確になっております。シエピーロフは、ソ連側はあくまでこういうことを主張するんだ、こう言っておる。私の言うことは、そういう主張日本は受け入れられないんだということで話が別れておるのでありますから、向うにおいてはこれは少しも誤解はございません。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 次にお尋ねいたしたいのは、サンフランシスコ条約領土条項に対する日本政府解釈でございます。第二条において南樺太並び千島列島領土権放棄いたしました。その領土権放棄した領土範囲については、実は、ソビエトを初めとする外国側と、それから日本国内におきましても政府とはいささか解釈を異にいたしております。その範囲のことについては、今まで外務委員会その他でるる話をいたしましたから、今日は省略いたしますが、放棄いたしました領土、それは、わが国の国際法学者の間におきましても、大体私の理解によれば、大別いたしまして二つ考え方があり得ると思うのです。一つは、この第二条において権利放棄した北方の島については、その帰属は必ずしも明確になっていない。こちらは領土権放棄はいたしましたが、それは放棄したその島がどこの国に帰属するかということは必ずしも明確になっていない。今後残された帰属決定するものは、あの条約のいきさつからいきますと、ソビエトもまた戦勝国の一員といたしましてあの平和条約に参加することを予期し、もしソビエトが参加したならば、日本放棄した北方の島の領土権ソビエトに渡すということが予定された。しかしながら、事実ソビエトサンフランシスコ条約会議には出席をいたしませんでしたから、そのままになっておる。従って、今後の最後帰属の問題については、アメリカを初めとする調印国の一々了解を求める必要はなくて、日本ソビエトとの二国間においての話し合いによってその帰属決定してよろしい、こういう理解を持って、この解釈をするのが正しいのだという考え方一つ。もう一つ考えては、帰属をきめていない、こちらは放棄しただけである、今後の帰属国際会議に付してこれを決定すべきものであるという、大体二つ考え方があると思うのです。その場合に、日本政府は一体どちらの解釈をおとりになっておられるのか、この際明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  10. 重光葵

    重光国務大臣 御説明をいたします。サンフンシスコ条約日本北方領土放棄しておるのであります。そこで、サンフランシスコ条約調印国は、その意味においてこの領土に対して利害関係を持っておると見なければならない。しかしながら、ソ連サンフランシスコ条約を調印していない。けれども、ソ連が最も重要な利害関係国であるということは、これは言うまでもありません。でありますから、日本サンフランシスコ条約に調印しておらないソ連話し合いをしなければならぬと思います。そしてソ連との間にこれを妥結しなければならぬ。しかしながら、利害関係国サンフランシスコ条約調印国としてあるのでありますから、これは、ソ連を含む全部の国際会議と申しますか、全員が了解するような会議を開いて、そうしてここで決定するということになれば、これが一番いいことだと思います。もしそれができなければ、これは最も利害関係を持っておるソ連との間にまず話し合いをして、そうして他の国の了解を求めるということが次の手段になります。そこで、将来平和条約締結するのに領土問題をどうするか、こういう考え方でございます。私は、これは、ソ連が同意するならば、全部の国際会議でやるということが一番いいと思います。しかし、ソ連がそれに同意しないという現在の状態においては、まずソ連と十分に交渉をしてみるということが必要だろう、こう考えております。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 今の外務大臣お答えは非常に不明確でございまして、言えば、どちらでもいいということなんです。それは政治的な判断だろうと私は思う。サンフランシスコ条約締約国もまた同時に相談をして、ソビエトを入れて、そしてソビエトに渡すなり、日本がもらうなり、話をすれば一番いい、しかしながら、それができない場合には、ソビエトだけでやってもよろしい、そしてまた了解をつければ、了解をつけた方がよろしいということであって、それは政治的なことでございます。私の伺っておるのは、条約法律上のことでございまして、法律上は一体どういう条件があれに付されておるか、すなわち国際会議でなければきめてはいけないという了解になっておるのか、そうではなくて、たとえば澎湖島の取り扱いのごとく、中国日本との間で両国間できめてよろしい、あと了解をつけるのは政治的な外交上のことであってもし了解がつかない、他の調印国の間で了解しないものがあっても、日本中国との間において澎湖島を譲渡することをきめたことが無効にはならない、すなわち法律上の条件ではない、政治的にはやった方が好ましいが、法律上の条件はどうであるかということを私は聞いておるのであって、あなたのお答えはどっちでもいいというようなことなのです。そういう不明確なことでは困ります。
  12. 重光葵

    重光国務大臣 私の申し上げたことは、何も不明確なことは少しもないと思う。今のあなたの御質問は、政治的の意味を含めて将来どうするかということです。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 いや、条約上のことを聞いているのです。
  14. 重光葵

    重光国務大臣 条約上のことなら、はっきりお答えをします。これは矛盾はないと私は申し上げる。矛盾はないというのだから、その意味はどうかというと、日ソの間にこの領土の問題について交渉をし、妥結をするということは差しつかえないと私は思います。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 そういたしますと、私が大別して説明いたしました前節、すなわちあと帰属国際会議にかけてきめなければならぬという条約上の条件が付されていない、すなわち、あと帰属決定する場合には、日本ソビエトとの二カ国の合意にさえ達すれば、それが必要にしてかつ十分なる条件である、こう解釈していいわけですね。念を押しておきます。
  16. 重光葵

    重光国務大臣 条約上そう私は解釈して差しつかえないと思います。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 法制局長官並びに条約局長はそれで差しつかえございませんね。特に法制局長官にこの際伺っておきたいと思います。
  18. 下田武三

    下田政府委員 条約問題でございますから、私から先に御説明させていただきます。北方領土問題につきましては桑港条約がすべてではないわけで、これはもちろんであります。そこで桑港条約でカバーされておりません日本ソ連の間の処理という別の面があるわけでございます。そこで、この問題を考えます場合に最大の前提として考えるべきことは、桑港条約におきまして連合国側の示した立場、これはつまり日本との利害対立者立場ではないのであります。ただいま穗積先生がおっしやいましたように、北方領土日本帰属のままに残しておいたのではソ連が桑港会議に出てこないから、そこで取りあえず日本の手から離すという意味で、日本放棄をきめまして、そこで連合国ソ連との間で日本北方領土帰属をできれば一年以内にきめたいという腹が実はあったわけです。ところが、仰せの通りソ連が入りませんので、その目的が達成せられなかったわけです。そこで、連合国立場といたしましては、日本北方領土を取り返しても決して異議は申さないというのが初めからの大前提であり、むしろ連合国日本に対する同情者立場である。日本領土を取り戻したからけしからぬと言って、それに対立する立場には絶対ないというその事実、その大前提考えませんと、これは非常な誤解を起すと思います。そこで、先ほど外務大臣が申されましたように、桑港条約で明確になっておらない帰属を直接の当事者である日ソ間にきめた場合に、桑港条約との関係はどうなるかということ、日ソ間に日本主張通り北方領土をすべて日本に取り返しました場合には、桑港条約締約国はおそらく黙っているでございましょう。それは、日本奄美大島日本に取り返した場合に、これを桑港条約の第三条に反するといって文句を言った連合国はないのです。黙っている間に、奄美大島日米間の取りきめだけで日本に返ってきたのであります。だから、日ソ間におきましても、北方領土日ソ間だけで取り返しましても、桑港条約締約国は黙っているということは、ほぼ推察にかたくないわけであります。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 澎湖島は……。
  20. 下田武三

    下田政府委員 澎湖島の場合は、穂積先生誤解があると思いますが、あれも、桑港条約で、ちょうど北方領土と同じように、台湾及び澎湖島に対する日本権利権原放棄するということを規定しておりますので、その点はやはり北方領土と同じ関係にあるわけであります。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 それでいいのです。法制局長、それで差しつかえございませんね。
  22. 林修三

    林政府委員 ただいまの条約局長答弁で尽きていると思います。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 将来の問題にかかわりますから、もう一点念を押しておきます。外務大臣がちょうどモスクワへ行かれてお留守中でございましたが、日本択捉国後ソビエト側放棄するならば、桑港条約二十六条で沖縄に、対しても発言権があるかのごとき声明がアメリカからなされた。このことばはなはだしく不当である。しかも、条約上の根拠を二十六条に求めるならば、二十六条の解釈はそのような権利アメリカに与えていないということが国会で問題になりまして、あなたのお留守中でございましたが、代理大臣であった高碕達之助大臣は、二十六条は領土問題を規定しているのではない、しかも三カ年という期限が切ってある、いずれから見てもこれば根拠のないことであるということを明言されましたが、外務大臣はそれでよろしゅうございますね。明らかに念を押しておきます。
  24. 重光葵

    重光国務大臣 それで差しつかえございません。
  25. 穗積七郎

    穗積委員 そこで、お尋ねいたしますが、自民党の党の決定択捉国後までは返せ、これは即時、無条件を要求しているわけです。残余のものは放棄されたのか、あるいはまた放棄——放棄というと不明確でありますから、もっと明確に申しますと、ソビエト側に譲渡するということを決定されているのか。もしそうでないとするならば、こちらは放棄しているのだから、領土権主張するつもりはないようですが、ただし、われわれはそういう考えは持っておりません。われわれは、北千島まで含めて、これはポツダム宣言から見て日本領土として主張すべきものと思っておりますが、われわれは今は政府の論理を聞いているわけです。すなわち、第二条の場合、ソビエト側北千島は譲渡するということを決定していないとするならば、その放棄した領土帰属国際会議において決定すべきであるということを言っておられるのかどうか、両国間でか、国際会議でか、そのいずれであるかを、この際明らかに党の決定をお聞きしておきたい。外務省の態度ではない。またあなた方がモスクワにおいて放棄してもいいような御意向をお示しになりましたが、そのあなたの全権としてのお考えでなくて、自民党の党の決定として一体どういうふうになっているのか、それをお聞きしておきたい。
  26. 重光葵

    重光国務大臣 自民党の党議としては、北千島等国際会議によって決定したい、こういう方針のようでございます。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 それは、どういうことを根拠にして、両国間で話し合いをしてはいけない、すなわち国際会議にかけなければならぬという根拠はどこにございましょうか。先ほどの桑港条約第二条の解釈とはいささか食い違いがあるようでございますが、その点を明確にしていただきたいのでございます。
  28. 重光葵

    重光国務大臣 自民党最後の何では、サンフランシスコ条約趣旨に反しないことと、こうなっているようです。そういうつもりで交渉しております。
  29. 穗積七郎

    穗積委員 だから、さっき、あなたは、サンフランシスコ条約政府側解釈としては日ソ両国間でやってよろしい、国際会議にかけることは相手が承諾すれば望ましいけれども、承諾しない場合には二国間で話をつけてしまっても、アメリカ初めその他の国が文句をつけようはずがないんだという解釈をしておられるわけですね。それとちょっと矛盾しますよ。
  30. 重光葵

    重光国務大臣 そうは申しません。サンフランシスコ条約にはソ連は入っておらぬのであります。しかし、これは、ソ連とも日本は話をしなければならぬ問題であります。ですから、ソ連と話をするということは当然のことであります。それで決定をした場合に、今度は、他の利害関係があるから、おれの方も利害関係があるということになったら、外交交渉がすぐ始まります。そして了解を得なけりゃならない。しかしながら、日本ソ連との関係領土問題について決定するという関係は、何もこれで拘束されることはございません。ソ連交渉した結果を他の利害関係国が全部認めなければならないという、また拘束力相手に与えるというものじゃございません。そういうことは国内法と違います。よく考えてごらんなさい。
  31. 穗積七郎

    穗積委員 あなたは、それは国際会議にかけることは法律必要条件であると解釈されておるのか、できればそういうふうにやった方が政治的に好ましいと言われておるのか、どもらですかと聞いておるのですよ。余分なことば言わないで、こっちから聞いたことについて答えて下さい。
  32. 重光葵

    重光国務大臣 よけいなことは質問者の方が言っておるのです。こういう問題は、国際関係でありますから、国際会議でやった方がいいか悪いかの問題であって、やらなければならぬとかいう問題じゃこれはないのであります。国際会議でやった方が私はいいと思う。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 そういうことじゃない。国際会議にかけなければ北千島ソビエトヘの帰属決定できない、すなわちそれが法律上の必要条件であると言われるわけですか。どうなんですか、そこのところ、はっきりしなさいよ。
  34. 重光葵

    重光国務大臣 ずいぶんわからないことを聞く。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 あなたがわからないことを言う。
  36. 重光葵

    重光国務大臣 そういうことをお互いに言い合ってもしようがない話ですが、日ソ関係日ソ関係できめなければならぬ。きめたことについて、ほかの国がおれも文句を言いたいということなら、言うがよろしい。言う場合にこっちに了解を求めなければならぬ。私の言うのは、日ソ関係は、サンフランシスコ条約領土関係はございましょう。しかし、それにもかかわらず、日ソ関係は、日本は今日の地位、独立国として十分これは日本ソ連交渉してきめる権利があると私は思っておる。しかしながら、それについて、サンフランシスコ条約関係で、こういうふうなわれわれもなにがあるというならば、そのときに向うの意向を聞いて、またアメリカの方はその前に十分了解をさしておく交渉をしておる、こう私は申し上げておるのです。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 今まで、あなたは、歯舞色丹以北全部放棄しても、それはサンフランシスコ条約に抵触しないということを言われたし、また、念のために、アメリカ政治的に了解して曲るから差しつかないと言われたのか、あるいはサンフランシスコ条約法律解釈上、そういうことは正当にできるんだ——それが不明確であったから私はさっき確かめたら、法律上もそれはできるんだということを明言された。そこで、私は、今党の決定が、北千島帰属ソビエトに譲ることを決定する場合には日ソ間だけでやればいい、それが法律上、条約上は必要にしてかつ十分なる条件である、あと国際会議にかけるということは外交上できれば望ましいというだけであって、法律上の必要条件ではないと解釈すべきである、その通りでございましょうと言ったら、大体それに似たような御返答だが、その点は、この間も、実は、先ほども申しましたように、あなたの外務大臣がいつまでも続いて、日ソ領土条項の最終決定をするわけではないでしょう。そうでない違った方がやる場合があるそうですから、はっきりしておきたいのだが、松本全権にちょっとお尋ねいたします。あなたは、おそらくは、党の外交調査会のメンバーでもあるし、同時に次の外務大臣の候補者にもなっておるようだから、この際あなたに伺っておいた方があとあとよかろうと思うが、党の決定としてそういうふうになっているのか。須磨さんが大いに答えたいようだが、須磨さんには答える資格がありません。あなたは、党の外交調査会の決定の意思は、今の外務大臣内閣解釈と同様であるかどうか。その点をちょっと明確にしておいていただきたい。河野さんでもけっこうです。どちらでもいいですから……。
  38. 松本俊一

    松本全権委員 私は外交調査会に出、たこともございませんし、それからまた、新党議は私が出発いたしましたあと決定いたしたのでございます。(「冗談でない」と呼ぶ者あり)新党議は出発前にできてはおりますけれども、私はその解釈を申し上げる地位ではありません。
  39. 穗積七郎

    穗積委員 しかし、それであなたの解釈で——党議は別に聞くが、あなたの解釈で、つまり、北方領土帰属決定するのは、日本ソビエトだけで合意に達することが必要にしてかつ十分なる法律上の条件である、こう解釈されておるかどうか。国際会議にかけなければきめられないという法律上の条件をわれわれはになっておるのかどうか。そのことを、あなたの解釈がいずれであるか伺っておきましょう。外交調査会の責任は持たぬでもいいから、あなたの意見を聞いておきましょう。
  40. 松本俊一

    松本全権委員 私はそういう解釈政府解釈に従ってやっておりますので、私自身がそんなことを申し上げる必要は全然ないと思います。
  41. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、どこへ聞いたらいいのだ。党の決定趣旨はどういう趣旨ですか。党の決定を聞いておるのだ。内閣なり政府解釈はわかりましたから、今度は、あと内閣がかわった場合責任を持つのは党ですから、党議の決定で、あれは重光個人の解釈でわれわれ党の解釈は違うのだということで、これから日ソ交渉を初めからやられたのでは迷惑しごくだから、党の決定を聞いておきたいのです。
  42. 重光葵

    重光国務大臣 そういうことであって、それで私のなにを信じていただくならばけっこうだと思いますが、私の今解釈しておるのは、個人の考えとして申し上げているのではありません。それは外務省の解釈でもありますし、それからまたこれは国際間の条約関係の常識で、そういうことに相なることを、私は確信を持って申し上げておるのであります。そこで党議の問題でございます。党のことも、将来もその範囲を出ない。私も自民党の党員でございます。責任を持ってそれを申し上げておるつもりでございます。それからまた、法律関係条約関係の細目にわたっていろいろ御議論があるならば、それは私よりも条約局長に……。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 条約局長の話はわかったのだ。党のことを聞いているのだ。そとで、私は、こういうことを提案いたしまして、党としてやはりはっきりしてもらわぬと困る。というのは、あなたの方の党人、しかも外交調査会のメンバーである人々が、公開の席上において、北方帰属日ソ間ではこれを決定できないのだ、あの条約解釈とい、うものは、日米平和条約の線に沿って、日ソ交渉をやるならば、アメリカを含む国際会議にかけてきめなければ盗められないのだということを主張しておられる。現にもうそういうことを主張しておられる方がある。それは個人的意見であるかもわからない。それで、今までの例を見ますると、外務大臣発言をすればそれで最終的である。しかもあなたは副総理であり党の有力なるメンバーでありますから、内閣並びに党の解釈についてはあなたの意見を聞けば十分であるが、あなたの内閣やあなたの党はだらしがなくて、あんな解釈重光個人の解釈である、あるいは外務省の下僚の諸君ですら、重光大臣答弁はこうでありましたか、あれは間違っておりましたというようなことを平気で言う内閣であり党でございますから、安心ができない。しかも、今度の日ソ交渉については、これで確定ではなく将来に残ることでありますから、従ってこれは私は重要だと認めて聞いておるのです。ですから、きよう御答弁できないし、それから松本さんも党の決定については関与しないと言って逃げられたので、私はそれを聞くことができない。芦田さんや須磨さんが来て説明すればいいのだが、これは議員の資格ですから説明できない。そこで、内閣総理大臣であり党の総裁である鳩山さんに聞く以外にない。だから私は鳩山さんにぜひ出席してくれと言っておるのです。ですからこれは留保しておきます。どうか一つ河野さんにお願いしておきますが、あなたはそのことを党へ伝達していただいて、党の考えをまとめた上で、この次の鳩山総理出席のときに、鳩山総理の口を通じて、鳩山個人ではなくて、自民党決定並びにその解釈答弁をしていただくことを要求いたまして、私はこれを留保いたしておきますが、委員長よろしゅうございますね。
  44. 植原悦二郎

    植原委員長 留保してよろしゅうございます。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 次に、外務大臣にお尋ねいたしますが、あなたのお考えでは、あなたがおやりになる、ならぬは別として、内閣考えをこの際伺っておきたいのだが、継続審議になりました領土の問題を日ソ間で解決して、平和条約を結ぶということをやろうと言っておられる。そのときに、どれだけの条件が満たされたならば、あなたは平和条約をお結びになるおつもりでございますか。すなわち、択捉国後が返ったならばそこで平和条約を結ぼうといわれるのか、あるいはまた、他の政治条件によって国後択捉を将来返すことを予約されたならば、そこで一まず結んでもいいと思われるのか、あるいはまた、第三の場合としては、北千島帰属決定しないで、党の決定のごとく、国際会議できめようというふうにペンディングにしておかなければ、平和条約をお結びにならないつもりであるか、この三つの場合が予想されますが、その場合にどういうことで平和条約までに妥結しようとお考えになっておられるか、政府方針をこの際伺っておきたいと思います。
  46. 重光葵

    重光国務大臣 その点は将来の交渉に待たなければなりません。今日からそれをきめるわけには参りませんから、きめておりません。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 たとえば、この前私が申しましたように、日本が将来安保条約体制から解放されて、本土並びに将来日本帰属するいかなる領土にも米軍基地を置かないということを政治的に条件として出し、そのことが確立されたならば、将来その実現したときには、千島列島について日本側に譲渡することを約束してもよろしいというような意思表示があった場合に、平和条約をお結びになるつもりはございませんかどうか。
  48. 重光葵

    重光国務大臣 さような申し出がありましたならば、十分考究しようと考えております。
  49. 植原悦二郎

    植原委員長 穗積七郎君、委員長からちょっと申し上げますが、あなたの御質問はかなり将来にわたって仮定があるので、政府としてお答えになれば別ですけれども、政府としてすこぶる将来を仮定してはお答えが困難だと思いますから、その点はどうかよろしく御考慮下さって、御質問あらんことを希望いたします。
  50. 穗積七郎

    穗積委員 わかりました。  次に、それでは河野さんにお尋ねいたしますが、この前本会議でもお尋ねいたしましたが、千島列島に対する漁業基地の問題あるいは近海漁業の問題、入会の問題、もう一つは、日ソ間で、こちらは民間会社でもけっこうですが、合弁による共同漁業をもってやりたいという意向すらあるのでありますが、そういう問題についてどういう話をされたということについては、私は今追及いたしません。しかしながら、今後大使交換になりますと、来年度の漁獲量の決定または漁獲の方法等の交渉が始まると思うのだが、今まであなたがお結びになった漁業協定並びに今までの予備交渉等で、そういうことについてあなたは積極的におやりになる構想を持っておられるかどうか。持っておられるならば、この際一つ明確に日本漁業者に安心を与えてもらいたいと思いますが、答弁を煩わしたいと思います。
  51. 河野一郎

    河野国務大臣 穗積さん御承知の通り、ドムニッキー氏がおられました当時には、わが民間の漁業者にいろいろな支障を与えるようなことがあったようでございます。しかし、これをソ連と直接話をいたしてみますると、ソ連の方はむしろ魚族の保護、漁獲制限というようなことに非常に熱心でございまして、しかもこれに対する調査資料等もわれわれにも相当に提示をいたしております。それらの関係からいたしますと、現在の海上におきまする漁業は主としてこれを日本側にまかせまして、そして先方は陸上漁業に大体終始するという方向でいくことが大体了解できると思うのであります。そこで、海上における漁業でございますが、これらは現在のとり来たりましたる漁獲方式が非常に合理的でございまして、むしろ海上でやりますることによってわが方の目的は大体十分に達成できるというふうに、今日わが官民ともにそう考えておると私は考えます。さらに、漁獲を十分に、もっとふやして参ることが可能でありますれば、陸上における、もしくは北千島等漁業も、かつて日本でやりましたように考えられぬことはございませんけれども、漁獲を制限していこうという建前をとりまするならば、現在の状態で十分でありますし、ないしはまた、ソ連側といたしましては、陸地に接近する漁業を非常に忌避する態度をとっております。そういうようなことでありますから、今これ以上に現在までとり来たりましたる両国漁業関係に変更を加えるというようなことは、なかなか困難だというふうに考えております。ただ、一部の人が申されますように、南千島の漁業基地という問題になりますと、これは、現在のように北海道を漁業基地にしてやって参ることで、大体所期の目的を達成しておるのではなかろうか。ただし、現在南千島の沿岸にたくさん出漁しておりまするこれらの流し網業者が、整理統合するとか、もしくはその能率を上げるためにというような企画ができますれば、そのときぱ別でございますけれども、何分にも御承知の通り南千島の流し網漁業は非常に数も多うございまして、非常にたくさんの人が従事しておられますから、これをにわかに整理統合するというようなことは、とうてい考えられないことだと思っておりますので、さしあたりは、今お話のような、御指摘のような点につきまして日ソ間において話し合いをするというような必要性は、今日のところではそうないのじゃなかろうか、こう私は考えております。
  52. 穗積七郎

    穗積委員 この問題についてはまだ十分納得するわけには参りませんが、後に漁業条約そのものにつきましては農林水産の委員から質問いたしたいと思いますから、それに譲って先に進みます。  外務大臣にお尋ねをいたしますが、日にちはちょっと正確に記憶ありませんが、先月下旬であったと思いますが、外務省通達で、日本学術会議を通じて、日本の学者に対して共産圏との学者交流、招聘等を抑圧するような通達がなされておるやに聞いております。一昨日の委員会で、私はその資料を提出することを委員長を通じて要求しておりましたにかかわらず、きょう御提出がございませんが、そういう事実があったのかないのか、あったとすれば内容は何であるか、さらにどういう意図でそういうことをなさるのか、これを不当とお思いにならないかどうか、その点について経過、実情、内容並びに結論まで一緒にお尋ねしますから、一緒にお答えをいただきたいと思うのです。
  53. 重光葵

    重光国務大臣 一昨日でしたか、その問題をお尋ねがありました。私は承知をいたしておりませんでしたから、調べた上でお答えをする、こう申しておきました。それを調べてみました。こういうことでございます。日ソの国交も回復するし、双方の往復もしげくなるであろう、そういう場合において、必要な往復について故障のないように、十分にこれをめんどうを見なければいかぬ。御承知の通りに、従来は、ややともすると、そういうことについていろいろな——これは政府といわず、いろいろな故障がありがちなんですから、そういうことについて、必要と認めるものについては故障のないように、あらかじめ打ち合せをして、順調に進めていきたい、こういうような趣旨をもって、関係の方面にあらかじめ相談をしていただきたい、こういうことを通達したということでございます。これは、たびたび申し上げる通りに、すべては制限をするという意味ではございません。また将来においてもそういう考えを持ちません。いわんや、日ソ国交正常化の後においては、そういう考えは持ちませんけれども、すべて、御承知の通りに、こういう共産圏との関係は、ややともすると行き違いがあったりするのでありますから、そういうことを十分除きたい、こういう考えであります。
  54. 穗積七郎

    穗積委員 今のお話ですと、非常にいろいろなことを親切に心配して、それで相手に満足を与えるために通達を出したというようなことを言っておられるのですが、それじゃちょっと気持が反対じゃないかと思うのだ。だから、あなたはそういう口でうまいことを言わぬで、ここで要求した通り資料を出してもらいたい。文章になっておる客観的な資料をなぜお出しにならぬのですか。ですから、私はその問答をしてもつまりませんから、委員長に申し上げますが、委員長はそれを了承されて、委員長の口から、委員会の名において、資料の提出を要求された。にもかかわらず、きょう出ていない。ですから、少くとも今日中に出してもらうように要求していただきたい。そうして、私はその資料を見た上で、今の解釈は少し逃げ口上のように思われますから、むしろわれわれは撤回してもらいたいと思っているのですから、そういうふうなお取扱いをしていただきたい。委員長、よろしゅうございますな。
  55. 植原悦二郎

    植原委員長 ただいま穗積君の要求されます資料を今日中に御提出を願います。委員長から政府に要求しておきます。
  56. 重光葵

    重光国務大臣 できるだけ御希望に応じます。全部のことについてお約束はできませんけれども……。今説明した通りであります。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 次に、国連加盟のことについてちょっとお尋ねいたしますが、政府は提案国をどこにされることを希望しておられますか。そうしてまた、事前の交渉またはあっせんを求めておられますか。そのことをちょっと一点お尋ねいたしたい。
  58. 重光葵

    重光国務大臣 これは申すわけにも参りません。今いろいろやっております。やっておりますのは事実でありますが、どういうことでやっておるかということは、これは今申し上げるわけには参りません。提案国はどこであるかということを申すわけには参りません。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 そんなことは何も秘密にする必要はなかろうとわれわれは思うのだが、まあしっかりおやり下さい。なお、われわれの希望では、特にAA会議の諸国から提案してもらうのが非常に将来のためにいいように思うので、われわれの希望としては、AA会議に参加する有力なメンバーはぜひともこの提案国に参加してもらうように、御努力を要請いたしておきます。次に、国連の問題についてもう一点だけお尋ねいたしたいのは、たとえば、台湾の国民政府等から、日本が国連加盟のときに、これを支持する条件として、中華人民共和国の国連加盟を支持しないようにしてもらいたいという条件が内意として示されているということが流布されております。それが事実であるかどうか。それから、時間がありませんから、一括してお尋ねいたしますが、第二に、台湾政府のみならず、その他の国からそういったような事前の政治的な条件の提案があったかどうか、これが第二間。第三間は、そういう提案があった場合には、日本としては当然そういうものを拒否すべきであって、無条件、単独加盟をいずれの国にも要求すべきであると思うが、政府はどういう態度をおとりになるつもりであるか。その三点について一括してお尋ねいたします。
  60. 重光葵

    重光国務大臣 加入支持に対する条件はどこからも受けておりません。また、わが方としては、お話の通りに単独に無条件で入る。
  61. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、総理重光外務大臣と同席でお尋ねする質問だけ留保いたしまして、私の質問は終ります。
  62. 北澤直吉

    北澤委員 議事進行について。
  63. 植原悦二郎

    植原委員長 資料の要求ですか。——資料の要求ならどうぞ。急いでして下さい。
  64. 北澤直吉

    北澤委員 この委員会におきまして日ソ共同宣言を審議するにつきまして、ぜひ必要と思うのでありますがへ今度のモスクワ交渉におきまする議事録をぜひ政府から御提出を願いたい。大体こういう交渉の場合こは必ず議事録がありまして、桑港平和会議のときにおいても、ちゃんと発表された議事録があるのであります。特に、今度の共同宣言につきまして、いろいろソ連側日本側の間に解釈が違う場合があり得るという心配があるので、そういうことを審議するためにもぜひ必要であると思いますので、今度のモスクワ交渉における議事録と申しますか、会議録と申しますか、それを全部この委員会に御提出を願いたいと思います。
  65. 重光葵

    重光国務大臣 外交交渉の経緯をなるべく詳細に発表する方針でございます。方針でございますが、議事録等の発表は、むろん相手国の承認を得なければそのまま発表するわけにはいきませんことは、御存じの通りであります。できるだけ詳しく発表するように努力をいたしたいと思います。
  66. 北澤直吉

    北澤委員 発表の問題ではありませんで、この委員会の審議に間に合うように、一つこの委員会の資料として御提出を願いたい。もし議事録やその他ではっきりしておりますれば、いろいろ政府に対する質問もそれで済むわけでありますけれども、そういう議事録がないので、日本ではこう思っているが、ソ連でもこういうように了承している、そういういろいろ政府答弁があるのでありますが、単なる政府答弁だけでなくて、交渉の際の議事録なり会議録がありますれば、そこで解釈がはっきりするわけでありますので、もちろんソ連側との連絡の必要もあろうかと思いますけれども、この委員会の審議に間に合うように、この議事録をぜひ委員会に御提出を願いたいと思います。
  67. 植原悦二郎

    植原委員長 北澤君も外務省出身で御承知でありましょうが、ある交渉の書類は相手国から承認を得なければ発表できないこともありますので、政府としてはでき得る範囲においてのことを発表するということで御承知を願いとうございます。  内田常雄君。
  68. 内田常雄

    ○内田委員 私は、方面を変えまして、今まであまり審議をされておらなかったと思われます今回のソ連との間の貿易の発展及び最恵国待遇の相互許与に関する議定書につきまして、おただしをいたしたいのであります。この議定書自身の中には、私どもの非常に不安とする要素がたくさんあるのであります。共同宣言のみならず、今回この議定書が単独に批准の対象となり、また従って国会の承認を求められておりますから、十分御説明を願いたいと思うのでありますが、この議定書自体は共同宣言と離れたものではないのでありまして、共同宣言の第七項に基くものであることは御承知の通りであります。  そこで、私が第一に不審に思いますのは、今度の共同宣言全体を通じまして、双方の合意事項十項目の中で、問題を将来に残し、将来交渉を継続する事項が二つあります。その一つは、先般来しきりに討議をされておりますところの今後の平和条約の問題、もう一つは、この共同宣言の第七項の貿易、通商、航海等に関する問題でありまして、両方とも、今後日ソ両国が平和関係の回復後この締結交渉を継続する、あるいはすみやかに交渉を始めるということが規定されておるのでありますが、第七項の通商貿易関係に関しましては、単にそういう規定にとどまらず、本式の通商航海の条約等ができる間のつなぎとして特に議定書が署名せられて、用意周到を期しておるのでありますけれども、第九項の平和条約問題につきましては、単に将来平和条約締結交渉するということがあるだけでありまして、平和条約ができるまでの間のつなぎと申しますか、状況につきまして、同じような議定書もなければ、覚書もなければ、交換公文もないのであります。私は日ソ間の問題は、将来の通商航海の問題ももちろん大切でありますけれども、領土問題を今後の平和条約との関連においてどう考えていくかということが、一番大きな関心事でありますので、第七項について議定書があります以上、第九項につきましてはやはり交換公文か何かあってしかるべきだと思いますが、それが全然ない。ただ、将来平和条約交渉をする、しかも、この平和条約交渉においては、領土問題についてという文句までも削ってしまって、平和条約交渉をするんだ、平和条約交渉をすれば、当然将来領土問題も話されるのだというような、まことに不用意な態度をとっておるのでありまして、第七項と第九項との間に、私は非常に取扱いの正確さを欠いておる、かように思いますが、外務大臣のこの点に関する所見をまず伺いたいと思います。
  69. 重光葵

    重光国務大臣 その点は、実は当然のことのように考えます。平和条約について事実残されておる問題は、領土問題だけでございます。領土問題だけについては、第九項のように今回暫定的に話し合いができたのでございます。そうでありますから、それでもって尽きております。ところが貿易関係は、平和条約ができるまででも、ほとんど毎日起ることでございますから、そのことについて、大体の考え方議定書でこしらえるということは、これは私は一番適当な方法だったろうと思います。もっとも、やり方はそれに限ったことじゃございません。そういう議定書と同じようなものを、共同宣言の中に盛り込んでもよかったでございましょう。しかし議定書にしても、一そう貿易関係のことがわかるのでございますから、それでよくはないかと考えております。
  70. 内田常雄

    ○内田委員 私はその点には実は安心がいかないのでありまして、今日まで数日間の当委員会における討議の一番の重点というものは、第九項におきまして将来平和条約を作るということを言いっぱなしでは、当然この国後択捉島の事態が一つも約束されていないということが、一番心配をされているわけでありまして、外務大臣お答え通りでは、先般来の御答弁を繰り返すだけであります。私ども国民としては、実は安心がいかないのであります。この点について想起されますことは、ちょうど日ソ交渉の期間と時を同じくして、昨年の九月十三日に、西独とソ連との間の外交関係が再開されたあの際に、アデナゥアーとブルガーニンとの間に書簡の交換があったことでありますが、西独にもやはり非常に大きな事項として、領土問題の未解決のものが残っておるのであります。これに対しましては、西独のアデナゥアー首相は、ちゃんと留保条項の声明書をわざわざ作りまして、これをソ連側に渡しておるのであります。今回の交渉におきましては、択捉国後島の本格的処理をどうするかということが解決の一番難関であったことは想像されるのでありますけれども、それが難関であったからといって、第九項だけで満足されるということでは、私ども国民としては納得がいかないのであります。なぜ、せめてアデナゥアーが出されたような、ああいう一方的の留保条項でもいいから、ああいうものをおつけにならなかったか。アデナゥアーは何と言っておるかというと、これはちゃんと当委員会に資料として配られておるのでありまして、九月十三日に、今回の独ソ両国間の外交関係の回復というものは、現在の独ソ両国間の領土の所有状況を決して認めるものではない、以上自分はこれを明らかにするということを、ちゃんとつけまして、そうして日本で言えば、今度の共同宣言の第九項に当るものに、西独の総理大臣は留保条項の文書をつけてソ連に渡しておるのであります。できるならば、平和条約ができるまでの間に、そのような西独式の留保条項どころではなしに、私が最初に触れました通商航海の条項と同じように、やはりその間の、たとえば択捉国後はどういう法律上、国際上の地位を持つか、あるいはまた歯舞色丹も今度はまだ返ってきておらぬのでありますから、将来平和条約が結ばれて、これが現実に日本に引き渡されるまでの間は、どういう法律上の地位を持つかというようなことを取りきめた何らかの文書がなければ、択捉国後はむろんのこと、歯舞色丹についてさえも法律的の地位さえもわからぬのでありまして、何にもない第九項だけで、あれで万事御安心下さいと言われても、私どもは安心できないのであります。  そこで、私のきょうの質問は、通商航海、貿易の問題でありますから、簡単にこの点に触れてお尋ねいたしたいのでありますが、一体しからば、第九項だけによって、将来平和条約のできるまでの間の歯舞色丹なり、択捉国後なりというものの法律上の地位はどういうことになるのでありましょうか。今度の共同宣言によって、平和関係両国間に回復される、外交関係も回復するということになりますと、平和関係に入るのでありますから、少くとも戦時占領というものはなくなるわけでありまして、平和関係に入ってしまって、しかもソ連が従来の戦時占領を続けるということはあり得ないのでありますから、うっかりすると、これは戦時占領じゃなしに、ソ連の主権を認めたような格好に国際法的に解釈されるおそれなしとせざるやという点も心配になるのでありますが、今のような留保条項なき場合において、いかに解釈されるのでありましょうか、お答えが願いたい。これは外務大臣からでも、あるいは法制局長官からでも、正確にお答え願いたい。
  71. 重光葵

    重光国務大臣 西独のいわゆるアデナゥアー方式が行われたときのことをお話がありましたが、これは事情が違います。御承知の通りに、アデナゥアーがモスクワに行ったときは、非常な短時間の間にいろいろなことを決定し欺ければならぬことに迫られたわけでございますが、領土問題などについては、日本はもう一年以上にわたってソ連との間に論議をして、日本の意向は十分に向うに伝えておる。また向うの意見も聞いたわけでございます。そこで意見が合致しないわけである。アデナゥアー氏がドイツの意見はこうであると言って、言いっぱなしにして帰ったような状態になっておる。これはそういう必要がなくして、十分に向うにわかっておる。そうして意見が合わなかったので、将来の交渉によってこれをきめるということで第九項ができておることは、繰り返し繰り返し申し述べておる通りであります。  さて、それじゃ国交の正常化ができた後に、占領されておる土地がどうなるか。これはお話の通りに、国交の回復があった後も相手方が占領しておるという事実は存在するのでございます。これはこっちに早く返してくれればいいが、平和条約ができなければ、歯舞色丹もこっちに引き渡してもらえないのであります。しかし、平和条約ができれば引き渡すと、向うは約束しておるのであります。それで、引き渡すまではこれは法律上どういう地位を持っておるかということになりますと、この点について国際法学者の意見がはっきりしておるならば、条約局長から補足してもらいますが、これを国際法上どういうふうに解釈するかということは、私はきまっておらぬと思います。しかし、これだけは言える。国交正常化の後もその占領の事実が続いておる以上は、日本の将来の外交交渉がそれだけ困難になるということは事実であります。今日の状態はそれなんであります。しかし、それならば、先ほど御指摘の国際法上それはおれのものになったのだと向う主張し得るかというと、それはできぬと思う。なぜできないかといろと、日本主張はそうじやないのだということで、はっきりと留保するという議論で今日まで進んできておる。そこで先方との意見が合わないために、将来にこの問題を決定することを延期したのでありますから、日本態度ははっきりしておるのであります。そこで将来の交渉の題目になるということは、当然の理屈だろう、こう考えます。
  72. 内田常雄

    ○内田委員 外務大臣の御説明でございましたが、聞いておりましても、非常に苦しい御答弁のようにしか聞えないのでありまして、それなればこそ、私どもは心配いたすのであります。歯舞色丹につきましては、留保条件付でもあれ、将来日本に引き渡すということになっておりますからまだしも、択捉国後につきましては、条約にも、共同宣言にも、議定書にも、今度の交換公文関係において一書も触れていないのであります。わが方がサンフランシスコ条約におきましても放棄した範囲に入っておらない。これは九月七日でございますか、サンフランシスロ条約の起草国である米国もこのことを明らかにしておるのでありまして、わが方は、これは日本固有の領土であっ、て、決して放棄したものでもなければ、いわんや、ソ連の占領を正当に認めるものではないというかたい考えを持っておるのでありましょうけれども、今度の関係文書には一言も触れてはいないから、そこで私は心配が起る。なぜ何らか文書に残さなかったか。わずかに共同宣言の第九項にあった、領土問題を含む平和条約という文句の、領土問題を含むという文字さえも削ってしまって、しかも、これで安心なんだとおっしやられても安心できない。  それはそれといたしまして、総理大臣は十月の初めに日本にお帰りになった際に、羽田で声明をなされた。また先般の臨時国会の冒頭においても所信を表明されたのでありますが、その中におきましても、今度の交渉の結果は必ずしも満足すべきものではなかったけれども、ということを重ねて述べられておるのであります。満足すべきものではなかったということを、御自身でお認めになっておる。ここに総理大臣がおられませんから、お聞きするわけにいきませんが、外務大臣はどの点が満足すべきものでないとお考えになっておられますか。ただいままで数次の御説明のように、いや諸君心配することはない、これで大丈夫将来の点もいけるのだということであれば、何も進んで、満足すべき結果ではなかったということを、お言いになる必要はなかったと思うのでありますが、どの点を満足すべきでなかったとお考えでございましょうか。
  73. 重光葵

    重光国務大臣 日ソ交渉の結果がわが方の希望する通りではなかった、こういう点だと思います。また、それはそうであるのであります。領土問題についても、わが方の主張が完全に実現しておるならば、これはさらによかった、こう思うのは、だれもそうであります。しかし、暫定協定としてこの程度でおさめることが、全局、大局上日本の利益であると考えたのでありまして、国際交渉は大体そういうものだと私は思います。
  74. 内田常雄

    ○内田委員 外務大臣もすなおに、総理とお考えを同じくして、交渉の結果が満足すべきものでなかったということをお認めになられた、私どもと憂いをともにするものでありますが、私どもから考えますと、前の松本全権による交渉、その次の重光外務大臣による交渉、それから総理を首班とする今度の第三回目の交渉におきまして、結果はかえって悪くなったように私は思うのであります。この点も、私は簡単に述べますが、歯舞色丹さえもが、今度の交渉の結果においては返ってこない。将来結べるか、結べないかわからない平和条約締結しなければ、これは返ってこない。おそらくソ連としては、今度の共同宣言でその目的を達するのでありますから、領土その他の問題とか、自由主義国との関係でありますとか、いろいろな面において日本がよほどの譲歩をしない限り、平和条約締結はなかなかしないのじゃなかろうかという心配があることを考えますと、歯舞色丹も戻ってくるかどうかわからない。その上、択捉国後が、先ほどから私が申しますように、こちらはいろいろ考えておりましても、文書の上に何も残っていないということになりますと、重光さんが最後に決意をされた妥結案よりも、歯舞色丹がとれなくなっただけ悪い。もし歯舞色丹が再び質権の目的にされますと、従来われわれがさんざん苦しんだ抑留者質、あるいは魚質、あるいは国連に加盟させるとかさせないとかいう国連質、こういう三つの質を、今度われわれの譲歩によってやっと片づけたと思ったら、今度はまた歯舞色丹という質を作って、この質を取り戻すため一に、将来われわれはどれだけの譲歩をしなければならぬかということを考えますと、私は今度の交渉が、過去二回の交渉の結果よりも悪かったように思うのであります。総理大臣外務大臣が、今度の交渉の結果は必ずしも満足すべきものでなかったと言われていることは、御自分のことがありますから、必ずしもというお言葉をお使いでしょうが、まことに満足すべきものでなかった、それと同じでありまして、この点は、ぜひ一つ国民にはっきりさような考えを持たせたいと思いますし、私どもが今度この国会において、この共同宣言案外三件をかりに承認する者多数ありといたしましても、不満足であるけれども承認することにならざるを得ない点を、私は強調せざるを得ないのであります。  そこで、もう一つお聞きしたいのであります。あなたは、御自分が第二次の対ソ交渉をなさって、最後の御決心を固められて、九月三日でございましたか、日本にお帰りになったときに、羽田で簡単な声明を発せられておるのでありますが、私は大へんいい声明だと思って感じ入ったのであります。ここにありますが、こういうことが書いてあるのであります。自分は今度ソ連の意向は徹底的に突きとめてきた、ということをまず言われておりまして、それから、今やこれは国民的決断をなすべき時期であるが、ソ連との間に十分検討の余裕は残してきたから、あらゆる角度から慎重に検討してくれ、国民的検討を求める、こういう意味のことを言われておるのでありますが、あなたがお帰りになった九月三日には、国民的検討をするとか、あるいはあらゆる角度から慎重に検討するとかいうひまもなく、実は国内においては、鳩山総理大臣全権としてソ連に出すのだという議が起っておったのでありまして、何らの検討もされないで、鳩山総理大臣は御出発になったように思うのであります。これはもう国会内におきましても、社会党の諸君はしきりに臨時国会を早く開いて、そうして国会的検討をしたいということを述べておりますし、われわれ党内におる者も、党内でよく検討して、その上で、脈があるならば、成算の見込みがあるならば、第三回の交渉総理によって始めるということも考えたのでありますが、何らの検討もしないで出ていかれてしまったことが、私は今度の不満足の結果を招いたことの起りだと思うのであります。  それはそれとして、今私が聞きましたように、あなたはソ連の意向は徹底的にこれを確かめてきたということを申されておるのでありますが、それはどういうことでありましょうか。私の推察するところによりますと、ソ連平和条約を結ばない限り、歯舞色丹も返さない、また平和条約を結んでも、択捉国後というものは絶対に返さない。いわゆる暫定協定の場合においては、択捉国後はもちろんのこと、歯舞色丹さえも返さないというソ連の意向を徹底的に突きとめて帰られたことと思うのでありますが、そうではなかったのでございましょうか。
  75. 重光葵

    重光国務大臣 その点は、私が本会議以来ずっと御説明しておる通りでございまして、徹底的に突きとめたということは——平和条約をやるという交渉を私はやりました。また平和条約を妥結することが、良識であり、またいいことである。そこで領土問題については、ソ連はこれだけは譲歩する、これ以上は譲歩できないということを、徹底的に突きとめて参りました。そこで帰りましたときには、これはもう新聞紙上ではいろいろ国内的にやかましい状況でございました。しかし、私は慎重に関係者とも検討をいたしました。そこで、結局これも御説明しておる通りに、国交の正常化をはかるということにさらに進めていかんとするならば、従来の平和方式ではいかぬのだから、一つ暫定方式——暫定方式なら、どこまでいけるかということを、これまたいろいろ瀬踏みをしたという段階もあったことは、御存じの通りであります。さようなことによって、これは進めていったのであります。私が帰りましたとたんに出した声明でございますから、一々その通りとは申しかね、また申す必要もございますまいが、大体そういうことで私は交渉して参って、そうして今日の成果になったわけであります。これが前のよりもいいとか悪いとかいうことは、あまり私は軽々に言い得ないと思います。それはいろいろ御批判はあってしかるべきでございます。しかるべきでございますが、私は、かような順序を経て今日の結果を得たのは、不満足の点を最も最小限度にとどめて、そして今日の、初めからわれわれの希望しておった国交の正常化のところにこぎつけた、こう見てしかるべきじゃないか、こう思うのであります。それがゆえに、私はこの問題について国会の御賛同を得て御批准を仰ぎたい、こう申しておるわけであります。
  76. 内田常雄

    ○内田委員 重光外務大臣の御苦心や御苦衷は私はよくお察し申し上げるのであります。今のお言葉の中でも大体察せられるのでありますが、平和条約の形によらない限り、領土問題というものは処置がないのだ、暫定方式でやった場合には、歯舞色丹というものは即時返還させることばほとんど不可能だというソ連最後の腹をつかんでおられたということは、私は外務省のしかるべき方面をも通じて承知いたしているのでありますけれども、それにもかかわらず、総理が成算ありとして出て行った。成算ありということは、どういう成算か知りませんが、領土問題については、すでに外務大臣の突きとめられたところであるとするならば、成算も何もあったものではないのでありますが、何かそこにやはりごまかしを含んで、総理は出発せられた。世間で言うように、引退の花道というようなことを作るために出発し、また出発さしたとするならば、これは非常に大きな国家的、国民的犠牲において何か事をやったようなことと、私は今日から悔まれてならないのであります。そのことにつきまして松本全権がおいでになるから、やはり一つ承わっておきたいのでありますが、松本全権がおいでになられるときには、すでにわれわれ国会の関係においては、今度の交渉において択捉国後のことはとても直ちに処置をつけることはできないということは、松本全権やらあるいは重光全権やらのお話で、われわれ十分了解いたしておったけれども、少くとも歯舞色丹だけは即時返してもらうという、いわゆる新党議を御承知でお出かけになったわけであったと思います。ところが、先方でグロムイコ外務次官との打ち合せにおきましては、松本全権歯舞色丹の問題には一つもお触れにならずに、ここに配られておりまする松本全権とグロムイコ外務次官との交換文書によりますと、ただ領土問題は、これは将来の継続討議にするというような交換公文になってしまっておるのでありますけれども、松本全権は、一体歯舞色丹だけは少くとも直ちに返せという、こういう御主張を国会の輿望をになっておやりになったのでございますか、簡単に御説明願いたいと思います?
  77. 松本俊一

    松本全権委員 私があのとき政府から委任されましたのは、領土問題の継続審議に関する鳩山、ブルガーニン書簡の明確でない点を明確にするという使命を持たされたのであります。従って、私は先方とはその点だけ交渉いたしました。
  78. 内田常雄

    ○内田委員 どうもそこに食い違いがあったように思いますが、そのことは今さら追及してもどうにもなるものではありませんから、私はこの程度にいたします。外務大臣最後に私心配いたします点、それから世間の誤解があると思います点を、これは当然のことのようでありますが、念のためにお伺いしたいのは、国民の一部の間あるいは政党のある方面におきましては、ソ連日ソ交渉において歯舞色丹択捉国後等を返さないのは、それは当りまえなんだ、日米関係において安全保障条約なり行政協定がある限りにおいては、もしソ連日本択捉国後等を返還すれば、それが米軍の基地になる可能性があるんだから、従って日米安全保障条約をやめにするとか、あるいは米軍が小笠原、沖縄から引き揚げない限り、北方のわれわれの希望する島は、たとい日本の固有の領土であると主張しても、ソ連は離すはずはない、アメリカとの問題を解決しなければ、ソ連との問題はどうにもならないのだという説をなす人もありますけれども、私は、必ずしもそうではない、そんなことは全くない、今後の日ソ交渉の対象になっている島と、小笠原、沖縄の島とは、これは性質が、サンフランシスコ条約以来、また戦争の経過を通じても、全く違うものであって、両者関連のないものと考えるのでありますけれども、その点は、ややもすると国民誤解をいたします。また誤解をするような宣伝があるかもしれませんので、この点だけ一つ外務大臣からわかりやすく簡単にお語いただきたいと思います。
  79. 重光葵

    重光国務大臣 領土問題について、アメリカ関係ソ連関係とは全然別個の問題として処理して参りました。そして交渉をいたして参りました。アメリカに対する領土問題は、はっきりとサンフンシスコ条約で規定せられてあることは御存じの通りであります。しかし、それにもかかわらず、さらに日本の国としては要望がありますから、その要望についてはアメリカに対しては十分に交渉を進めてきておるわけであります。ソ連関係は、ソ連に対して日本主張を十分に述べてきておるわけでございます。そのような状況でございます。
  80. 内田常雄

    ○内田委員 まだいろいろお尋ねをいたしたいこともあるのでございますが、大体他の諸君の質疑と重複をいたしますし、また同僚の議員があとから質疑をされることでありますから、私、はこれから貿易関係のことにつきまして、石橋通産大臣並びに外務大臣に、本論に入ってお尋ねいたしたいと思うのであります。  まず第一にお尋ねをいたしたいことは、先ほども触れたのでありますが、共同宣言の第九項には何も約束がないけれども、第七項の方は議定書まで作って、大へんお手柄であったようでありますが、果してこれがお手柄であったかどうかということにつきまして疑義があるのは、この議定書は内容は簡単でありまして、最恵国待遇を約束しておるのであります。しかし、この日ソ間の最恵国待遇というものを約束したということは、一体どういう意味であるか。これは輸出入貨物並びに船舶につきまして、日本側におきましては、自由主義諸国家の一員として、あるいはガット加盟国として、いろいろの国に便宜を与えております。従って今度の議定書におきまして、ソ連日本に対して、たとえば関税率につきましてはガットの税率なり、あるいはそれに相当する譲許税率を求めるとか、あ、るいは船舶等につきまして最恵国待遇を求めることはできるのでありますけれども、日本側からソ連に求める最恵国の待遇というものは、果してあるかということであります。ソ連は全体主義国であり、また東欧の諸国家を抱いておりますから、いわゆる鉄のカーテンの中におきましては、ソ連の国家意思をもって、国家意思に基く待遇を与えておるのでありましょうけれども、自由主義諸国との貿易関係が非常に少い。いわんやガットにも加入しておらないのでありますから、わが方がソ連に約束する最恵国待遇とは、一体どんなものであるか。何を予想せられてこの議定書を結ばれたかということにつきまして、これは両大臣から御説明いただきたいと思います。
  81. 重光葵

    重光国務大臣 最恵国待遇の今のお話は、こまかい適用の問題にも触れるようでありますから、関係官をして説明をいたさせます。どうかお許しを願いたいと思います。
  82. 下田武三

    下田政府委員 仰せのように、関税につきまして、日本側からソ連に対して求めるところがあるか、これは御承知のようにソ連は全体主義国で、物の値段なんというものは、非常にアービトラリーにきめられておりまして、税率が高いから入らない、税率が低いから入りやすいというようなことはないということは、御承知の通りでございます。そこで日本側としましては、むしろ、あとの通関手続でございますとか、その他の手続規則の適用におきまして、めんどうくさいことを言われないというところが日本側の主たるねらい、そういうことに相なると思います。
  83. 内田常雄

    ○内田委員 どうもあまり説明にならぬのでありまして、そんなことであるならば、ソ連最恵国待遇を結んでは、失うところ多くして、得るところは何もないので、損じゃないか。私は今度の議定書自体、また共同宣言の中の第七項も——これは石橋通産大臣からきっと話があると思いますが、ソ連との貿易拡大は、今日の客観情勢のもとにおいてはできっこないと思います。にもかかわらず、麗々しく議定書交渉をしたりしたのは、ソ連が貿易を外交の武器として使っただけでありまして、とれにまんまと日本が乗ったのではないか。乗った結果は、こっちが与えるもの多くして、得るものがない最恵国待遇というものを結んだのであって、私にははなはだ軽卒であったようにも思われるのであります。  この点に関してもう一つ伺いたいのは、ソ連と貿易をいたします場合には、ソ連は国営貿易でありますから、通商代表部の設置ということを必ず伴うと思います。この共同宣言の第二項におきましては、大使館、領事館のことはありますが、通商代表部の文字はないのであります。今度の交渉におきまして、通商代表部のことにつきまして、何か話が出たのでありましょうか。またこの通商代表部は、今後向うから要求があれば置かせることになるのでありましょうか、御意見を伺いたい。
  84. 重光葵

    重光国務大臣 まだそこまでの話はございませんでした。しかし大使館が置かれると思います。大使館の内部において、そういう通商関係の事務をとられることと考えます。特に通商代表部を置くというお話は、今日までございません。
  85. 内田常雄

    ○内田委員 外務大臣のお話では、通商代表部を置くか置かぬか、はっきりしたところまで進んでいないようでありますが、これは今度議定書までわざわざ作られ、これに批准条項までつけられて、独立のものとされている以上は、私は当然通商代表部の問題は、予想しなければならなかったと思うのでありまして、この問題は必ず今後出てくると思います。そこで考えられますことは、先方は大使館の一部として通商代表部を置く。ソ連は国営貿易でありまして、ほかに方法がありませんから、置かれると思う。通商代表部の職員というものは、従来の他の国に置かれている例を見ましても、一部の外交特権や免除を受けるのでありまして、非常に都合がいいのであります。貿易でありますから、日本の方にも物を売りつけに来る、買付に来る場合に、日本の商社はいかにして保護されるかという問題が残るのであります。今度の議定書を見ましても、また共同宣言の第七項を見ましても、輸出入貨物と船舶につきましては、最恵国待遇というようなことがあるのでありますけれども、日本国の商社等の入出国とか、滞在とか、営業とかいうことにつきましては、何らの規定がないのであります。そうしてみますと、貿易をやろうと思いましても、まるで片手落ちになってしまう。これからやるとしましても、通商航海条約を作るまでの間、つなぎとしてこの議定書を置くということになっているのでありますが、この議定書には、今言うように、日本の商社あるいは相互の国民の入出国、滞在、営業等のことについては何もない。これは大正十四年にソ連国ができましたあと日ソ基本条約、あれができました際に、日ソ基本条約の第四条か何かに、やはり今度の共同宣言第七項と同じように、将来通商航海条約を結ぶということがありまして、それが結ばれるまでの間は最恵国待遇でやる。それから日本国民の入出国、営業、旅行等につきまして一定の保護を与えるという規定があったのでありますが、今度の共同宣言及び議定書には、その規定が全くない。しかも通商航海条約が結ばれるということは、これは平和条約よりなお先のことでありましょうから、これはなかなかそう簡単には進まない。その間はこの議定書でいくということになりますと、ソ連と相互主義で貿易しようと思っても、先方は通商代表部を利用してやれるからいいが、貿易の主体になるこちらの商社等は手出しができない。向うへ行こうとすると——向うの招待で近ごろ盛んに行っているようでありますが、そんなことでは、とても商売にならぬのであります。これまた、はなはだしく均衡を欠いているではないか、従って、この議定書というものに非常に大きな穴があいている。一体こういうものをそのまま承認していいのだろうかという疑問を私は率直にいって持ったのでありますが、この点通商産業大臣なり外務大臣からお伺いいたしたいと思います。
  86. 重光葵

    重光国務大臣 そういうようなことは、詳しく、綿密に考えて検討していきますならば、、御懸念通りのことがあると思います。これはすべて、通商代表部の問題にしても、出入国に対するこまかな点のことも、将来の通商協定で正式にきめなければなりません。しかしながら、それを今きめることができなければ、最小限度の必要な点だけを議定書にまとめておいて、そのほかの問題はそのつど、故障があるならば、一々外交交渉によって解決しなければなりません。これは普通のことであります。これは不便でありますから、なるべくすみやかに、さようなことのないように将来交渉を進めていくことが望ましいのでありますが、それまでは、この議定書によって貿易関係を処理していきたい、こういうことでございます。
  87. 内田常雄

    ○内田委員 どうもその御説明は、御説明にならぬような気がするのであります。通商航海条約ができてしまえば、いろいろこまかいこともきめられましょうけれども、それまでの間はこの議定書でやる。しかも、その議定書には、今私が指摘しましたような最恵国待遇にしても、先方から何をとるかということが一つも予想されていない。また貿易を行う日本商社の待遇や活動についても、何らその保護の規定がない。先方に対しましては大使館、領事館を置かせる。また大使館の一部として、特権や免除を持った通商代表部が置かれるということは、きまり切ったことになると思いますから、そういった片手落ちがないように、それだけをきめておけば済むというものではない。今後きめられるものは、おそらく具体的な通商協定とか、あるいは支払い協定というもので、これは具体的に、通産省には通商局長もおられましょうし、外務省には経済局長もおられましょうから、決裁方法は、今までのようなバーターでいく、バック・ツー、バックの厳格なバーターでいくというばかなこともできませんでしょうから、おそらくはこれはポンドの決裁でいくとか、あるいは円建の決裁でいくとかということをきめるし、どういう品物を出し、どういう品物を入れるのかということをきめるのでありましょうけれども、具体的な貿易協定や支払い協定では、商社の活動等のことをきめることはないのであります。これはどうしても議定書なり、通商航海条約できめるのでありますから、私はそこに不安があるのであります。  委員長から、時間がきたから早くやめろということでありますから、やめるのでありますが、そこで通商産業大臣にも私はお伺いしたいのであります。けれども、先般私は心配になることを一つ聞いたのであります。それは、この委員会の席上で高岡君の御質問だったと思いますが、日ソ貿易は大いにやるのだ。ことにソ連は、第六次五ヵ年計画においてシベリア開発を対象としておるので、鳩山総理大臣とブルガーニン総理大臣との話があって、日本ソ連の第六次五ヵ年計画によるシベリア開発計画に協力して貿易の拡大をはかるということで、協力を求められたので、協力を約したというような総理大臣の話があったのでありますが、一体そういう貿易ができるかどうかもわからない。それは別といたしましても、ものの考え方、計画として——経済企画庁の長官はおりません、石橋通産大臣が代理をされておるようでありますが、一体日本の経済計画の中において、ことに最近日本の経済五ヵ年計画というものは非常に成績がよくて、四年分を一年でやってしまったということで、ごく最近五ヵ年計画の改訂計画をやっておるのでありますが、総理が言われたように、果して石橋通産大臣あるいは企画庁長官は、今度のソ連開発計画並びにこの議定書に基く貿易の拡大を取り入れて、日本の五ヵ年計画を改訂される意思炉あるのかどうか。ことに日本は東南アジアの開発というようなことも盛んに言って、これに協力をしなければならぬ。現に高碕国務大臣は、東南アジア開発計画の一端でありますところのコロンボ会議に参画しますために、ニュージーランドに行っておられるのでありますけれども、これは日本が将来、日本ばかりでなしに、日本の手の届くところの開発計画等に協力をする経済計画を作る、貿易計画を作るということは必要でありましょう。けれども、果して総理の言われるような、ソ連なり中共なりというものと——中共は国交も回復しないし、貿易議定書もありませんが、少くともソ連にこの議定書ができたから、直ちにシベリア開発計画に協力する貿易計画を組むとか、経済計画をやるということを考えてよいものかどうか、通産大臣からぜひ解明を願いたい。
  88. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 簡単にお答えいたします。が、今のところではシベリア開発計画というようなものは全然わかって、おりません。ですから、向うがその開発を大いにやろうというなら、むろんそれをできるだけ日本側としては利用する、向うとしては援助を受けることもありましょう。ですから、それをやらないとは言いませんが、しかし現在において、わからぬものを相手にして計画を立てるわけにいきませんから、特に今度の五ヵ年計画にそれを織り込むという考えは持っておりません。
  89. 内田常雄

    ○内田委員 そうしますと、先般の内閣総理大臣のお話と石橋通産大臣考え方とかなり違う。これは違うのは当然であると思いますが、総理が大へん軽くこれに接触しておられるのは、非常に国内に間違いを起させると私は思います。現に日本国内においては、日ソ貿易会とか日本国際貿易促進協会のごときは、先般重光外務大臣ソ連に行かれて、シエピーロフ外務大臣から話があったという五ヵ年後十億ルーブル、すなわち二億五千万ドルの貿易計画の達成は可能なりとして、さらにそれよりも上回るような貿易計画を具体的に立てて通産省に迫っておるのであります。来年度においても七千六百万ドルとか、五ヵ年後におきましては往復で一億五千万ドルというような貿易計画を立てておるのでありますけれども、しかし雑誌や新聞、あるいは石橋通産大臣の平素の言説、また通産省の官僚の諸君の話を聞きましても、日ソ貿易には期待をできないといって、これに水をかけるような説をなしておるのでありますが、私はそれが今の状況においてはほんとうだろうと思います。そうしますと、ここで業者を誤まらせるような、中共貿易は片づかないけれども、今度のソ連は大丈夫だということで、二億五千万ドルであるとか、あるいは七千六百万ドル、直ちに来年から始めるような計画を立ててみましても、昨年までの日ソ貿易というものは、数字を申し上げるまでもなく非常に少いので、さようなことはできるはずはないのでありまして、非常に誤まりを起すのでありますが、石橋通産大臣は、この日ソ貿易というものは、シェピーロフ外務大臣外交交渉の道具として述べたような、ああいう大きな話が実現できると思うか、また日ソ貿易会が立てているような貿易計画ができると思われるか、お見込みを伺いたい。
  90. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 先般もどなたかに申し上げたのですが、将来のことはだれもなかなか、そう正確には予想できません。しかし日ソ貿易もけっこうですから、伸展するものは大いに伸展させたい希望を持っておりますが、現状においては、お説のようにそう大きなものを期待することは無理が起る、こう思っております。
  91. 内田常雄

    ○内田委員 もうやめます。無理があるということでありますが、私はそういうことと関連するのではないかと思いますのは、先般鳩山総理大臣がわれわれの批判を押し切って訪ソせられる際に、石橋通産大臣にも経済大臣として同行しろ、ことに相手方のシェピーロフ外務大臣は十億ルーブルの貿易計画を持ち出してきているから、これにす対るに、石橋通産大臣にぜひ行けというようなお勧めがあったのを、石橋大臣が断わられたということは、そんなわけにいかないということ、また現にでき上ったこの貿易に関する議定書を見ましても、私が今述ぺましたように非常に不満足なものになることを見越しておられた、従って、あなたは先見の明があったということであられたのでありましょうか、あるいはまた、さような内閣考え方方針といいますか、そういうものに批判をされて行かなかったのでありますか。非常に大事な時期にきておるようでありますから、この点について石橋通産大臣の御心境を伺うことができれば幸いです。
  92. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 どうもお答えをする必要もない御質問のようですが、それはそうシリアスな問題として、ああいう問題が出たのではないのであります。ただ経済関係の者も行ってみたらどうかというような、ごく軽い話がちょっと出たというだけでありますから、別段それを表立って断わったとかなんとかいう、そんなものではございません。
  93. 内田常雄

    ○内田委員 これで私の質問を終りますが、先ほどから質疑をいたしますように、今度の議定書というものは、非常に私はいろいろな不安の要素を含んでおる、また規定すべきことを規定していない、多くの欠陥があるということを指摘しなければなりませんし、また日ソ共同宣言そのものにつきましても、鳩山総理大臣が述べているように、東西両陣営のかけ橋になるというどころでなしに、うっかりすると、東西両陳営勢力の角逐場に日本がなる。そうして、見えざる三十八度線が日本国内あちこちにできはしないかというようなことを非常に心配をいたすものでありまして、これを承認するにつきましては、いろいろな見地から十分検討いたすと同時に、ことに領土問題等につきましては、政府の御答弁のように、あれで大丈夫だということよりも、むしろ進んで択捉国後日本固有の領土であって、これは次の平和条約の際に、ぜひとも日本の目的を達するだけの努力をするのだという積極的な意思を——これはどの内閣平和条約交渉に当られるのか知りませんが、将来の日本百年のために、一つこれからの御答弁におきましては、逃げ込み主義の答弁ではなしに、積極的にわが方の主張を将来において貫徹するという見地から、ぜひ強い決意のほどを述ていただくことが、われわれにとって非常に幸いであると思います。  これで終ります。
  94. 植原悦二郎

    植原委員長 岡田春夫君。
  95. 岡田春夫

    ○岡田委員 私は、鳩山総理が見えてから、全般にわたって質問したいと考えておりましたけれども、委員長からも、委員会の審議を促進するという意味で協力の要請がありましたので、漁業関係の問題だけに限りまして、きょうは農林大臣に伺って参りたいと思います。従って、ごく短時間でありますから、その点を御了解願って、率直に御答弁を騒いだいと思います。  漁業問題に入ります前に、農林大臣にちょっと伺っておきたいのですが、私はこれを拝見いたしました。今月の中央公論に、河野一郎氏の名前によって、今度の日ソ交渉の経過についての簡単な御意見が書いてあります。この中で、河野農林大臣は、ソビエトに対して、こういうような印象を持たれたように書いておられます。私ここで読んでみますけれども、「すなわち理論と闘争と、そして冷たい、暗い何ものかを持って大衆を指導しているのではなかろうか、と思っていた想像とは大きな距離があります。私が想像していた共産主義の政治は、今日のソ連の社会のどこにも見出すことが困難であります。」このように書いておられるのであります。そこで伺いたいのは、あなたが御想像になっておった共産主義国家、すなわちソビエトに対する想像と、現実に見られたソビエトの印象は非常に違っておる。そういう点は、どういう点が違っておって、どういう点が、現在の印象として、ソビエトに対する認識が正しいとお考えになっておるか、この点をまず第一点に伺いたいと思います。  それから、時間がありませんので一緒に伺いますが、第二の点は、その文章のあとの方に、「最後に特に申し上げてみたいことは、ポーランドの、ハンガリーのソ連勢力圏内に起った事件をあまりにも偏見してはなりません。」——あまりにも偏見してはなりません、この意味については、私はある意味ではわかるような気もいたすのであります。と申しますのは、従来の河野さんが認識されておったソビエト考えから見るならば、最近日本の世評においていろいろ言われているような、われわれから見ると偏見とまで考えられるような、対ハンガリー問題に対する考え方、対ポーランド問題に対する考え方、ういうような偏見といわれるべきものが世上往々にしてあるわけでありますが、こういう偏見に陥ってはならないんだ、正しくソビエトというものを負るならば、あるいは共産主義国家というものを見るならば、そういうような誤った偏見に陥ってはならないんだ、こういう意味で注意を喚起されているのではないかと、私はきわめて河野農林大臣を善意に解釈をいたしておるわけでありますが、こういう点については、どういう御見解でこのようにお書きになっているか、この二つの点について、まず伺っておきたいと思います。
  96. 河野一郎

    河野国務大臣 従来、私は、交際の範囲なり、ものの話題の範囲なりが非常に片寄っておったかもしれません炉、私が考えておりましたソ連は、ゲー、ペ一、ウーとか、その他従来の粛正に次ぐ粛正をもってするとか、もしくは極端なる独裁主義国家であるとかいうような、それから農業経営等におきましても、コルホーズのやり方等が、われわれが考えており、了承しておったものと、少くとも私が行って見聞したところのものとは相違があるという感を深くいたしたものであります。従って、私は、ソ連政治家につきましても、少くとも、話をすれば相当の話し合いのできる政治家である、ただしかし、さればと申して、一方から手離しに、私の言うこと、私の考えをそのまま続けることのできない経験も、私は多少はあるわけであります。それは、こういう席で申すことはどうかと思いますけれども、スエーデンにおけるスパイ事件というようなものも、決して私は、この事件の裏面がどうであり、現在どういうことになっており、何の原因でそういうことがあったかということについては、深く探究する時間もありませんでしたが、決して手離しに私が私の説を変更するということではございませんけれども、少くとも、無条件でただ疑い、懐疑心を持つということは間違いだという感を、深く私はいたしておるということでございます。
  97. 岡田春夫

    ○岡田委員 第二の点、対ハンガリー問題、対ポーランド問題についての偏見の点についての御答弁がありませんけれども、これはあとで御一緒に御答弁願うことにして、少くとも、ここで、書いておられるように、それが暗い、冷たいものではなくて、明るいものだ、こういう印象を書いておられるようでありますが、そういう点は、私も実は率直にそういう感じを前に参りましたとき受けたのであります。そういう明るい感じのものである。しかも、明るいだけではなくて、今お話しのように、譲らないところは譲らない、こういう点については、何かこういうことを考えているのではないか。すべてのことを合理的に割り切って、計算というか、割り切った形で判断をしていく。一つの論理的な筋をもって割り切っていく。こういう意味で、きわめてはっきりしており、かつ明るいという意味で印象を得られたのではないか。そうしてまた、何かソビエト国家というと、暗い国である、冷たい国であるというのではなくて、この文章にあるように、むしろ明るい感じを持っている国立ちになっているのではないか、そういう意味にこの点をお書きになっているのじやないかと思うのですが、こういう点についてはあまり詳しく申し上げませんけれども、ハンガリー問題とともに、重ねて御答弁を願いたいと思います。
  98. 河野一郎

    河野国務大臣 ハンガリー、ポーランドの問題につきましても、自分の希望的観測をまじえてこの問題を批判することは間違いである。また、これは私の独断になりますけれども、ポーランドの問題がああいうふうに起るならば、この日ソ交渉も少しおくらせた方がよかったじゃないかというような御意見も、われわれが帰りました当時にありましたけれども、これらの問題を処理するのに、現ソ連の指導部は手一ぱいである、この問題に全力をあげて処理しておるという気持は少しも持っておらないのであって、これはソ連の衛星国内もしくはその勢力圏内に起った一つのできごととして処理しておるという程度に、実は私は思ったのであります。従って、この問題が将来どういうふうに発展し、どうなっていくかということは、それは別の世界の動きかもしれませんけれども、それらのために、早急に変更を加えることが、日ソ間の関係にすぐに別のケースが出てくるとかいうようなものではなかろうと、実は私は判断しておりますという、判断に立って申しておるのであります。  もう一つ、今、岡田さんの申されましたあとの問題につきましては、今申しましたように、明るい、暗いということは、どういう表現になるか知りませんが、少くとも、われわれが従来考えておった不明朗な点が非常にある、割り切れないものが非常にあるというような点は、行ってみると、比較的にものが割り切れるというように考えられるということでございます。ただし、政治のやり方等につきましては、われわれと相当に考えに隔たりのあることは事実でございますが、それはそれ、これはこれで別でございまして、今申すように、旅行するにいたしましても、それからモスクワの市内でいろいろ用件を足すにいたしましても、少くとも日本の一部で話題に上っているようなものでないということだけは明瞭であって、これは一度行くより二度行って、二回目の経験は、最初の経験とはまた違ったものを私は得ております。そういう意味からいって、十分にこの国を知り、十分にこの国を研究して、そうして批判をする必要があるのであって、あまり従来の古い話をいつまでたっても変らなく持ってこの国を考えるのは、間違いがありゃしないかという私の感じを実は書いたのであります。
  99. 岡田春夫

    ○岡田委員 御感想の点についてはいろいろ伺いたいのでありますが、これはこの程度にいたしておきます。  漁業問題について、先日、社会党の中崎君から二、三の質問が行われましたが、今度の交渉あるいは漁業交渉を通じて、河野農林大臣は、向う交渉において、共同宣言が大体発効するようになるならば、拿捕問題は解決するであろうというような意味の中崎君に対する御答弁であったようであります。この点は、どういう根拠に立ってこういうことをお話しになったのか、もう少し詳細に、拿捕問題の解決の見通しについて御答弁を願いたいと思う。
  100. 河野一郎

    河野国務大臣 従来、拿捕、抑留されておりまする漁船、漁師につきましては、フルシチョフ氏と話し合いました際に、これを解決するという約束をフルシチョフ氏から私はもらっております。今後のものにつきましては、条約発効後は、条約に規定いたしておりますように、それが現行犯で拿捕されました際に、直ちにその所属国に引き渡し、所属国の裁判によることになっておりますから、すべて解決する、こういう見解に立っております。
  101. 岡田春夫

    ○岡田委員 今のお話では、拿捕問題は条約に基いてというお話でありますが、これは漁業条約に基いてそういうようになっているということならば、この拿捕問題が起ります場合は、主として制限区域の問題であろうと思うのであります。ところが、現実に北海道の北辺において起っている拿捕問題というのは、制限区域の問題もありますけれども、それよりももっと大きな問題は、いわゆる根室と国後との間にある領海線の問題で、領海侵犯になるかどうかという問題が、実は一番拿捕問題の大きな問題になっていると私は考えております。今後行われる日ソ漁業委員会で主として決定されますものは、制限区域内の問題であります。ところが、領海線の中の問題、たとえば根室の先から国後に近寄ったところで拿捕の問題が行われるというようなことについては、今度の漁業条約あるいは今後行われる日ソ漁業委員会においては、きめられない問題であると私は考えるのですが、この点はいかがですか。
  102. 河野一郎

    河野国務大臣 漁業条約を審議いたしました際に、御承知の通り、領海については両国解釈が違っておりました。そこで、この点については、両国了承の上で、触れずにいこうということにいたしておりまして、領海関係不問題の起らぬようにしていこうということにしております。従って、今御指摘のような問題につきましては、今後漁業委員会においてこれらの取扱いについてさらに相談をして、領海侵犯の問題についてどう扱うかというようなことは、双方合意の上で話し合って、問題を処理していく道もまだ残されておる。私が申し上げておきたいと思いますことは、双方が非常に好意に立ってものを進められ得る場合と、双方が利益を主張して、対立してものを進める場合と違うだろう、少くとも、漁業関係におきましては、漁獲高については相当双方に論議がありましょうが、この条約運営に当りましては、もうすでに論ずべきは論じ、これ以上のことにつきましては、双方の利害の対立はなかろうと考えております。網の目の問題にいたしましても、大体双方合意いたしております。その他距離の問題については、なお話し合う余地もあります。ただ、今御指摘の問題につきましては、他に問題があれば別でありますが、それらにつきましては、なお両国の間に外交上の折衝もしくは漁業委員会としての話し合い等によって、相当に解決の道が残されているのじゃなかろうかと私は考えております。
  103. 岡田春夫

    ○岡田委員 実は、そこで問題があると思うのです。南千島、択捉国後帰属の問題については、一応継続審議になっているという解釈になっている。この点についても、私はいろいろ質問すべき点があると思っているの下すが、ともかく南千島の帰属というものが未定で継続審議になりますならば、そこで、その地域の主権が明確になっておらないならば、国後と北海道との間の領海の線についても、これは未確定であるといわざるを得ない。そうなってくると、そこでは、領海の問題が今後紛争する可能性は当然あるわけである。これは継続審議であるから、まだきまらないということになるわけでありますが、確かに、それはお互いに好意を持って話し合えば、解決のできる問題です。しかし、こういう漁船の拿捕問題というのは、われわれが好意を持っているとは別に、拿捕をされるというのは、何らかの原因を日本の漁民が持っているから、ここに拿捕の問題が起るのでありまして、やはりそういう問題に万全を期するためには、漁業委員会できめるということよりも、これはむしろ別個の暫定取りきめなり、何らかの形が必要ではないか。ということは、漁業委員会できめるということは、これは主として魚族の資源を中心にする問題なんでありますし、こういう領海の問題、領土の問題、主権の問題に関するようなことは、やはり今後において別個の暫定取りきめが必要ではないか。その別個の暫定取りきめをすることによって、初めて中小漁民が安心して、拿捕の点についても心配なく、ここまで行ったならば拿捕されるのだ、ここまで来なければ拿捕されないのだという点がはっきりしてくるのだと思うのです。拿捕の問題が起ってから誠意を持って話し合うということならば、それではやはり問題はあとになってしまうことになりますので、こういう点は、やはり漁底としては重大な問題でありますだけに、率直な御意見を伺いたいと思います。
  104. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知の通り、現在、時に起ります拿捕関係のことは、その取りきめが必要だということよりも、濃霧その他の関係で、やむを得ず漁夫が、過度にこれらの島嶼に接近するという場合に起っている例が多いのでありまして、従って、両国の間では、ただいま私が御説明申し上げたようなことになっておりますから、これが引き渡し等の関係によって、今後いけるだろうというふうに申し上げたのでございます。しかし、今お話のようなことで、なお条約発効後は、すぐ第一回漁業委員会を大体東京で開く予定だと先方も言うておりますので、そういう機会がございましたならば、そういう機会にこういう問題を取り上げて、なお善処する必要があればした方がよいと考えております。
  105. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、漁業委員会を通じて、暫定取りきめをやる必要がある場合には、その暫定取りきめをやろうというお考えをお持ちになっておるかどうか、この点について伺っておきたい。
  106. 河野一郎

    河野国務大臣 よく実情を調査いたしまして、そういう必要があればやるべきだと思います。
  107. 岡田春夫

    ○岡田委員 むろんこれは実情を調査なさらくても、あの千島と北海道の場所は動くわけじやありませんし、御調査なさらなくてもおわかりになるはずです。漁業問題については専門家といわれている河野さんが、今さら調査されると言うのは、私はおかしいと思うのです。というのは、拿捕問題については、濃霧によってそういう問題が起る点もありますけれども、しかし実際に——あとでいろいろ私申し上げて参りますが、いろいろな点で拿捕問題が起っている。日本の中小漁民の生活院やむを得ないような形で、いわゆる、ろぼう的に領海を侵犯するという場合も、実は相当あるわけであります。こういう点なんかについても、やはりこの際は、領海線の暫定的な取りきめが私は必要であろうと考えるわけです。
  108. 河野一郎

    河野国務大臣 実はその点でございまして、先方と漁業上対立することのないことは、御承知の通りでございホす。従って、わが方の一部の漁民がおまり接近し過ぎる。それはあの方面に漁船が多過ぎるからだというようなこともお考えでございましょうが、それらにつきましては、今回の漁業取りをめに当りまして、十分にわが方の漁業のあり方、もしくは漁獲の方法等につきましては先方に説明をいたしまして、四十八度線以南の漁船につきましては、これらの大衆の漁業については、特別に考慮するということの約束は、取りつけてあるわけでございます。従って、これらにつきましては、一般の独航船のソ連側の取締りと、四十八度線以南の分につきましては、取締りの方法もしくはこれらについての先方への了解は、十分に説明いたしておりまして、先方も了承しているわけでございます。網の流し方、もしく片これらの漁船が十分なる機械を取りつけていないわけでございますから、そういう点についても先方に説明はいたしておりまして、相当の了解は得ておるつもりでございますから、あまりはっきりすることがいいか悪いかというようなこともあります。のでこれらにつきましては、よく話し合ってやったならば、相当の目的が達成できるのではないかという考えを持っておりますから、ただいまのような答弁をいたした次第であります。
  109. 岡田春夫

    ○岡田委員 今の大体の要旨としては、そういうことについては特別な話し合いもしているということで、一応了承をいたしておきましょう。問題は、拿捕問題がそういう形で話し合いができておって、解決の道があるということになれば、北海道の沿岸漁民は安心して魚をすくえるわけですから、そういう意味で、一つ特段の御努力を願いたいと思うのであります。  そこで、次は、漁業条約の基礎になっている——これはモスクワ河野さんが最初に行かれたときに、公海上の漁獲の制限をするというのはいかぬじゃないか、こういう意味のことを発表されたことを私は覚えております。ところが、公海上の漁獲の制限というようなものは、何も、先ほど内田君が魚質というようなことを言われましたが、私は魚質だとは思っていない。魚質をソビエトがやっておるとするならば、日米漁業協定によって、アメリカやカナダが、百七十五度の線から全然向うに入れないなんということは、とんでもない話なんです。こういう点で、ことさらにソビエトだけが公海上の漁獲の制限をやっておるとは考えられない。日米加の漁業協定によってもありますし、またサンフランシスコの平和条約の第九条においても、漁獲の制限というものははっきりうたってある。大体最近は、公海上の魚族の資源確保のために、公海上の魚族の漁獲というものは、できるだけ制限していこうというのが、実は世界の通念になっている。こういう点から考えて、ことさらにソビエトだけが何か漁獲の制限をやっているのはけしからぬというようなことを言うような意見が、実は先ほどもあったわけでありますが、こういうことは、何か反ソ感情をそういうところで火をつけて、そうして、共同宣言を事実上そういうところから効果なからしめるような方向に持っていこうとすることにもなるのだと私は思うのですが、公海上の漁獲制限についてのあなたの御見解を伺いたいと思います。
  110. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、このサケ、マスの漁業につきましては、なお漁撈制限の必要を認めていなかったのでございますけれども、先方といろいろ資料に基いて談合いたしました結果、先方の主張する鮭鱒の魚族保護、漁獲制限というあり方が妥当であるということを認めまして、今回の漁業条約に調印いたした次第でございます。これはただいまお話になりました通り、たとえば、南氷洋における鯨にいたしましても、世界的な制限をお互いにいたしておるわけでございますし、その他にも非常に例が多いのでございまして、ことに鮭鱒の漁業につきましては、先方の資料とわが国の資料とを十分に突き合せました結果、ここに両国談合の上で、この条約によって永久に魚族の保護をして参ることが、両国のために、非常にこれは妥当な条約である、少しもわが国の方に一方的に制約をするものでなしに、しかも先般も御説明申し上げました通りに、漁業委員会におきましては、ソ連の陸上における漁獲高と海上における漁獲高と見合いつつ、海上における漁獲高の制限を両国で話し合っていくということにいたしておりますので、これはソ連が一方的にわが国を圧迫するとかなんとかいうことであるかないかは、今後の委員会の運営等によって初めてそれが証明されることであって、この条約の精神として、この条約自体にきめておりますことは、当然両国共同の幸福のために、利益のために取りきめたものと信じておる次第であります。
  111. 岡田春夫

    ○岡田委員 今、大体、漁業条約を誉めることの必要をお認めになった、こういうお話であります。こういう点から私らが考えますと、日本北洋漁業というのは、どもらかというと、やはり乱獲または乱獲の傾向にあったのではないか、こういうことをお認めになったことになるのだと私は思うのです。ということは、今度の漁獲の制限というのは、ソビエトの閣僚会議決定によって、乱獲の傾向があるから、あるいは乱獲をしているから、そのために制限をすることが必要である。というのは、魚族の資源の今後の保護をするために必要なんだ、こういうふうに言っているわけなんで、やはり日本北洋漁業においては乱獲の傾向があったという事実を、はっきりわれわれは認めなければならぬと思うのですが、こういう点はいかがですか。
  112. 河野一郎

    河野国務大臣 これは陸上、海上双方にらみ合せまして、乱獲であるかないかは決定さるべきものであって、海上だけで乱獲であるとか、陸上だけで乱獲であるとかいうことにはならない。たとえば、海上から陸地に接近いたしまして、川の入口においてソ連が極端にとっておるとすれば、これはソ連の乱獲であるし、これは双方突き合せてみて、初めてこの程度がよかろうということがきまるものである、こう思っております。
  113. 岡田春夫

    ○岡田委員 あまりこまかい問題にはなるべく触れないようにしたいと思いますが、ただ一点だけ、これは、この間、農林大臣が本会議答弁された点で、ぜひとも伺っておかなければならない点がありますので、この点については、ぜひ伺いたいと思います。北洋漁業において、資本の系列化をはかった、こういう問題については、中小漁民をいじめるためではないのだ、こういうようなことを言われた。ところが、私は依然としてあなたの御答弁だけでは納得できない。やはり大資本を守るためにこのような措置がとられたと結果的にはそう見ざるを得ないように私は考える。それはどうしてかというと、数字をあげて申しましょう。私は、あなたがそういう御答弁をされたから調べてみたのですが、独航船は大体五百隻ですか、その五百隻の独航船の中に母船があって、母船に対して、独航船がとった魚を海上で売るわけです。その売る値段が一体どうなっておるか、それから最近のサケ、マスの値段はどうなっておるか、こういう点を見ると、ことしのように、制限されて、昨年よりも漁獲量が少い場合においても——去年からは大体似たり寄ったりですけれども、幾らか北洋漁業の面においては減っているのではないかと思うのですが、北洋の制限区域内において減っておる場合においては、独航船の一隻当りのいわゆる魚の収獲量というのは減って参ります。ところが、独航船が母船に対して売る値段というのは、協定としてきまっておるわけです。この協定によると、大体独航船が母船に売る値段は、去年と同じです。ところが販売の価格の方はどうなっておるかというと、たとえば、北洋のサケの新巻の数字をここに持っておりますが、これは詳細申し上げてもいいのですが、ことしの六月と去年の六月、あるいは八月、九月を比べてみましても、たとえば去年の六月の十五日には五百七十円であったものが、ことしは七百円になっておる。七月においては、六百円が八百四十円になっておる。八月は六百四十円が八百五十円、九月は八百三十円が九百三十円、このようにサケの値段はどんどん上っておる。しかし、独航船が母船に売る値段というものは、去年と同じになっておる。そうすると、結局大資本の方はもうかって、魚をとる少い割当の独航船の方は値段が同じであって、それによって、独航船の方は決してふとるという状態にはなっておらない。しかも、独航船の数がふえているというようなことになって参りますと、ますますこれは大へんなことになってくる。そうなると、系列化という問題は、大資本を肥やすということになるのではないか、こういう点は、われわれ客観的な数字をもって明らかにされると思うのでありますが、この点はいかがでありますか。
  114. 河野一郎

    河野国務大臣 その点は少し間違いがございます。それは最初に、出漁前にそういう取りきめをいたしましたが、漁が済んでからそれの手直しを双方の間において話し合いまして、それぞれ独航船に対して、母船の方から利益の分配か、補償か知りませんが、資金を出しておるということにされております。これが第一点であります。第二点は、私が先般説明いたしましたように、独航船と申しましても、漁獲は平均でございません。これは、優秀な母船に所属して参りました独航船は、相当に漁獲を上げておる。ところが、経験の少い母船についていったものは、漁獲高が非常に少いというので、独航船自体に非常に漁獲に優劣がございます。それから第三といたしましては、私がこの系列化を主張いたしましたのは、御承知の通り、母船の経営において不なれなものが非常に内容が悪くなりまして、岡田さん御承知の通り、北海道公社のようなものは、経営自体が成り立たないということになって参ったのでございます。その結果は、勢い独航船にも悪い影響を及ぼすことになりますので、これはどうしても、母船自体の、経営の合理化されたものによって、独航船に対しての支払いが完全に安定されるということが必要である。かたがた、その指導において、経験のある母船が必要であるというような考えから私は申しておるのでございまして、この系列化によって母船側が利益を壟断するというようなことは、これは指導の上においてもさすべきことでない、こう考えております。
  115. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたの水産行政を行われる主観的な判断としては、行われることではないとお考えでしょうが、事実において、漁価の、値段の協定の問題につきましても、あとで変ったのは、いわゆる利子を補給する問題について幾らか変った程度であったように思います。ですから、事実上、大きな問題の変化はなかったのではないかと私は思いますが、こういう点は、農林水産委員会でもっと詳細にやった方がいいと思います。  もう一点、これは中小漁民の問題ということになると、独航船と母船の問題だけではないはずなんです。四十八度線以南の流し網漁民に対する問題がどうであるかということが、一番大きな問題だ。ところが、御承知の通り、ことしは流し網の関係は大体八百隻くらいだったと思いますが、それ以外に、今度は延べなわ関係の漁船を、去年は七十隻ぐらいであったものを、今度は四百隻にふやしている。そういうことで、四十八度線以南の海においては、そういう中小漁民が、サケを追って非常にひどい争いをやっているというような状態です。しかも、こういう方面に対して、六万五千トンの制限の中でどれだけ割り当てたかというと、実際はたった一万トンしか割り当ててない。残りは、北洋漁業の大資本に五万五千トン割り当てている。少い割当の中で、数をうんとふやして、延べなわと流し網とでやらしているんですから、ここに問題が起るのは当然なんであります。こういう形で中小漁民が大資本に従属されるという結果が招かれているのではないか、私はこういう点を言うわけです。なぜならば、実績を見ると、今年においては、サケ、マスをあの沿海において全体で大体十五万トンくらいとった。その十五万トンの中で、四十八度線以南は、大体五万トンくらいのものをとっている。こういうわけです。そうすると、二対一ですか、三分の二が大資本の方で、四十八度線以南が三分の一という割合にならなければならない。ところが、割当でいくと、六万五千トンに対して一万トン、こういう結果になって、割当の点においては非常に不当に小さく割り当てられているから、中小漁民が非常に苦しい状態になっている、こういう点が指摘されなければならない。そのために拿捕の問題が起っているんだと私は思う。ということは、延べなわと流し網の関係で非常に問題が起った。たとえば、千葉県の県の監視船が流し網の漁師の網をかっぱらったというような事実もありまして、そういう被害が一億数千万円になっている。そういう被害ばかりじやなくて、いろいろな被害がですね、こういうことは、結局魚の割当の少いあの地域にたくさんの中小漁民を出すから、結局は領海の中に入っていって、いろいろどろぼう的な魚のとり方をやる。それが拿捕問題になるんだ、こういうことが一番大きな問題であり、深刻な問題であると私は考えるのですが、この点はいかがでございますか。
  116. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま御指摘の四十八度線以南の漁業につきましては、これを圧迫するという考えは毛頭私は持っておりませんので、今年度のこれが割当につきましても、いろいろ事務当局において検討いたしました結果、大体妥当な線を引いたということに了承いたしております。
  117. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういうことが、やはり拿捕の問題の原因になっていると私は思うのです。そういうこまかい点は、あとで農林水産委員会の方で伺いますけれども、根本の問題は、適正な割当をやったというけれども、漁族資源や社会生活の問題を考えるならば、中小漁民の生活の実態も考えた上で割当をしていかなければならない。従来の実績だけを基礎にして、ただ割り当てていくというようなやり方ではなくて、そこに生活をしている人々の生活というもの、そういう根拠に立って割り当てていくことが必要であろうと私は特に考えますので、この点の詳細については、あと関係委員会でやります。  最後に一点だけ伺いますが、一昨日、漁業協定の問題で、中華人民共和国から漁業の民間代表が参りました。日中漁業協定の改訂を来年度はやらなければならないわけでありますが、そこでぜひともお考えにならなければならない問題は、漁業協定は、現在の国際関係からいって、政府間の協定を取り組むことはたとい不可能であっても、海難救助に関する問題だけは、事、人道上の問題でありますから、私は政府間の協定をきめるべきであると思う。こういう点については、先例がないという話にはならないはずだ。たとえば、中国の引き揚げ問題なんかについては、日本政府から去年の八月に、ジュネーヴの田付総領事を通じて、中国交渉しましょうということになっている。政府間の交渉が、引き揚げ問題については進められつつある。あるいは進められようとしている。そういう状態になっているわけです。これはなぜこういうことになっているかというと、人道上の見地に立ってこういう問題を解決するためには、政府間の取りきめが必嘆だ。こういうことになるわけです。そこで、やはり海難救助の問題については、むしろ先ほどから、自民党大臣としてきわめて進歩的な御意見をお持ちになっており、しかも今の内閣を思うように動かせる大臣らしいですから、この際は、日中間の海難救助に関する協定だけは、政府間の取りきめを私はやるべきだと思う。これは人道上の問題としてぜひともやるべきだと思うのですが、この点について、この機会に率直な御意見を承わっておきたいと思います。
  118. 河野一郎

    河野国務大臣 御意見よく承わりましたから、外務大臣によく伝えまして、外務大臣からお答え申し上げることにいたします。
  119. 岡田春夫

    ○岡田委員 それは外務大臣外務大臣として意見があるでしょうがへ漁業問題に関する限り、所管の問題ですから、少くともあなたの方と共管の問題になるはずだと私は考える。海難救助の問題に関しては、少くとも農林省の主管として、あなたの率直な御見解を御発表になる方が、私は時宜に適していると考えるんだが、どうなんですか。特に実質的な外務大臣とはあえて私は申し上げませんけれども。
  120. 河野一郎

    河野国務大臣 よく外務大臣と相談いたしまして、お答えを申し上げます。
  121. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ、大体私は終ります。
  122. 植原悦二郎

    植原委員長 この際、午後二時より再開することといたし、暫時休憩いたします。    午後一時十分休憩      ————◇—————    午後二時三十一分開議
  123. 植原悦二郎

    植原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。臼井莊一君。
  124. 臼井莊一

    ○臼井委員 私は、きわめて限られた時間でございますので、ソ連抑留同胞の引き揚げ問題にのみ集約してお伺いいたしたいと存じます。本問題に関しましてもすでに各委員から御質問がありましたので、できるだけ重複を避けてお伺いいたしますが、ただ多少細部にわたることをお許しいただきたいと存じます。  なお、最初総理の所信についてちょっとお伺いしたがったのですが、御出席がございませんから、次の機会に簡単にこの点についてはお伺いすることに問題を留保いたしておきます。  そこで、引き揚げ問題は内容が非常に広範かつ複雑でございます。従って、よほど相手にだめ押しをしてかからないと、容易に解決しないではないかという一つの不安がございますので、われわれは、本院の引揚特別委員会におきまして種々検討いたしました結果、決議を数回行いまして、特に十月十日にソ連抑留同胞帰還促進に関する決議を全権に打電をいたすべく外務省に依頼いたしたのでございますが、この点につきまして全権の手元へこの決議が届いておりますか、どうですか。きょうは松本全権しか御出席がないですが、松本全権にお伺いたいします。
  125. 松本俊一

    松本全権委員 確かにいただいております。
  126. 臼井莊一

    ○臼井委員 そこで、この決議の趣旨でございますが、その要点は、これはすでに数回決議されているので御承知かと思うのでございますが、要するに生存者のマリク名簿にある者の帰還については、もうすでに総理からも書簡によって申し込むというようなお話もございます。これは帰るのでございましょう。しかし、問題は、マリク名簿以外の一万一千百七十七名という、政府が消息不明と考えておるこれらの方方の問題なのでありますが、この調査につきまして、その趣旨にのっとってどういうような御交渉をされたのでありまするか、その点を一つお伺いした  いのであります。
  127. 松本俊一

    松本全権委員 いわゆるマリク名簿に載っております者以外の方の調査の問題だと思いますが、この問題につきましては、私は、昨年の八月、マリク大使が名簿をくれまして以来も、たびたびこの点について要求をいたしました。私もその要求の詳細は記憶いたしておりませんけれども、おそらく、臼井さんが御存じの内容の要求は、全部これを先方に提出いたして、調査を依頼いたしました。また、本年一月に私が再度ロンドンへ参りましたときは、一月の末に引揚援護局の田邊君が全権団の随員としてわざわざ参りまして、厚生省の従来の調査に基いて、これを各個人について詳細なる資料を先方に提出いたしました。そうして、先方の随員の確かな者に、田邊局長みずから詳細これに説明を加えております。先方は十分その内容等については承知いたしておるはずでございます。なお、その後の交渉におきましても、私なりあるいは重光外務大臣なりまた河野全権からもたびたび要求いたしましたし、先方もそのたびごとにこれを調査すると約束いたしておりましたが、最後鳩山総理大臣がブルガーニン首相に最終的に交渉をされましたときにも、この点に特に触れられまして、その結果、先方も今度の共同宣言の中にこの調査をやるという条項を挿入することに同意をいたしたような次第でございます。さよう御了承願います。
  128. 臼井莊一

    ○臼井委員 ただいまの状況不明者の調査究明についての問題ですが、なるほど、共同宣言には「ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要請に基いて、消息不明の日本人について引き続き調査を行うものとする。」こう書いておりまするが、これが具体的にどういう方法で調査をするかということが、私は非常に問題だと思うのです。少くともどのくらいの期間にこれを調査されるのであるか。未帰還者留守家族等援護法の第二十九条には「国は、未帰還者の状況について調査究明をするとともに、その帰還の促進に努めなければならない。」こう規定されておりますことからいっても、国交回復後は積極的に調査究明の方法を講じなければならないはずでありまするが、これは相手方のソ連側の誠意ある協力を待たなければならぬということはもちろんであります。そこで、私たちは、決議において、日ソの合同委員会を設置してこの問題解決のために当るように、申し入れを政府に出したのであります。この点につきましては、先般戸叶委員からも御質問がありましたが、この問題についてはまだ協議しないというようなお話でございますが、果してこの問題については触れられなかったのであるかということと、それから調査の期間が一体どのくらいという見込みがあるのであるか、その点一つお伺いしたいと思います。
  129. 松本俊一

    松本全権委員 私は、ロンドンでマリク大使と交渉いたしました際に、国内で共同委員会設置の御希望もありましたので、この点を要求いたしましたところが、一度はそれを拒否いたしております。しかしながら、私は、ただいまも仰せの通り、この点はあくまで調査を要求し、今後、国交回復後も、あるいはモスクワにおります日本の大使を通じ、また当地におけるソ連の大使館を通じて、十分なる資料を提供いたしますとともに、なるべく短期間に調査を完了してもらうように要求する必要があろうかと思われますので、その意味でば、名前はいかようにつけますか、とにかく一種の共同委員会のようなものをやはり作るという提案も、当然私はいたして差しつかえないと存じております。さよう御了承願います。
  130. 臼井莊一

    ○臼井委員 これから折衝して、大使館を通じてその合同委員会でも作ろうというようなお考えでしょうが、これは、すでに、ロンドンの交渉におきまして、ソ連側に詳細な名簿をこちらから出しまして、消息不明者の調査を依頼して、向うでもこれはよろしいということになっておる。それがすでに一年以上も経過しておるのであります。そうしてこの今回の交渉ということになったのでありまして、今の御答弁によると、できるだけすみやかにということでありますが、これは私は非常にばくとしているのじゃないかというふうに思います。もう少し明確に、たとえばこの妥結後半年なら半年、六ヵ月なら六ヵ月に、これを究明して調査して回答をするとかなんとか、もう少し具体的なめどが私は非常に必要じゃないかと考えるのであります。また、合同委員会の設置についても、私は、なるほど今回は日にちが短かかったのでありますが、昨年からすでにもう交渉としては一年余も続いておるのでありまするから、もう少し具体的にしてほしいと考えるのですが、この共同宣言に基づいて、調査について日本しては今後どのような要求ができるのでありますか。ただ早くしてくれという督促だけで、他に方法がないのでありますかどうですか、その点を一つお伺いいたします。
  131. 松本俊一

    松本全権委員 ただいまの消息不明者の名簿を、こちらから厚生省が作成しておりました資料に基いて提出いたしましたのは、たしか本年の二月のころだと思います。これはカード式になっておりまして、先方からこれを迅速にするためにロシア語に直してもらいたいというような要求もありました。こちらも、協力いたします意味で、ロシア語のできます者を総動員いたしまして、これを翻訳いたしたこともございます。そういうわけでありまして、おそらく先方もできる限りの協力はしてくれていると思われますけれども、なお今後国交回復後は大使館もできることでございますから、一そうこれらの点に当方としても協力をいたしまして、この調査の迅速なる完了を期したいと存じておりますから、さよう御了承願います。
  132. 臼井莊一

    ○臼井委員 ただいたずらにこのままで遅延されますと、人命には限りがあるばかりではなく、非常に環境の悪いところに抑留されている邦人でございますので、その点におきまして私どもはまことに憂慮にたえないのでありまして、もう少し明確になすべきではなかったかと思うのでございます。そこで、この点について条約的に見るというと、どうもそれ以上要求ができないのではないかというふうに、また生きている者は返した、いる者はないのだというふうに言われると、どうも突っ込むところがないように思われますが、その点号外務大臣はどうお考えになりますか、お伺いいたしたい。
  133. 重光葵

    重光国務大臣 日本側のでき得るだけの資料を集めまして、向うに話をしていくよりほかに、筋としては方法はないと思っておりますが、しかし相当資料が集まり得ると思っております。
  134. 臼井莊一

    ○臼井委員 次に伺いたいことは、共同宣言に「ソヴィエト社会主義共和国連邦において有罪の判決を受けたすべての日本人は、この共同宣言の効力発生とともに釈放され、日本国へ送還されるものとする。」とありますが、この中のすべての日本人ということは一体何をさしているのであるか。現に、刑の終った後に、何の理由もなくソ連の国籍にせられた者もあります。それから無国籍にされた者もあります。文字がわからないで、これらに署名してしまったという考がたくさんあるのでありますが、これらの同胞はどういうふうになりますか。その点も一つ確かめておきたいと思いますので、外務大臣にお伺いしたいと思います。
  135. 重光葵

    重光国務大臣 それらのことは、十分資料を集めて、向う交渉しなければならない事項と思います。刑の満了したものと認める、こういうことは、現に、昨今先方とこの問題を促進しているうちに、先方もその手続をどんどん進める、こう言っておる次第でございます。
  136. 臼井莊一

    ○臼井委員 これから御交渉になるというようなお言葉が非常に多いので、この共同宣言を拝見して、一貫して不安に思うことはその点なんです。これは、今度帰ってこられた方以外に、一万からの方が消息不明として日本政府の調査によってもあるのでございますが、その留守家族の不安というものは非常なものだと思う。そこで、私たちは、こういう問題についても、少くとももう少し具体的に交換公文でもこういうものを作って、具体的な面において取りかわしていただきたいということを希望いたしたのであります。この点が今回どうも実行されていない。こういう面につきまして、留守家族としても、そこに不安を私は感ずるのではないかと思う。今回のこの交渉におきまして、海上において遭難した人の救助に関する協定とか、それから貿易の発展及び最恵国待遇の相互許与に関する議定書とか、それからいわゆる漁業条約、こういうものはございまするが、抑留同胞の引揚げに関する交換公文のようなもので、少しく具体的に取りきめ得ることが私どもしていただいておりませんので、そこで、これがまたあいまいもことされるようなことが万一あると、私どもとしては留守家族に対しても申訳ない、かように考えるので、いろいろそういう点を突っ込んでお伺いするのでありますが、日本人の解釈にいたしましても、向うの方はソ連国民である、日本では日本国民である、国籍である、こういうふうに解釈がお互いにまちまちになるということで、非常に後日に問題を残すことは、現に千島列島解釈について、日本は非常に不利な状況に追い込まれておるのでありまして、こういう点から見ましても、日本人同士の間ではわかっておることでも、相手方に対してはあくまで一つ一つ念を押しておかないと、どうも後日に問題を残すということになると、非常に残念だというふうに考えるのでございます。  なお、一つ私の不安に思う一例をここに申し上げてみますと、日ソ交渉中にハバロフスクにおりまして、そうしてマリク名簿に載っていた者が最沢北京に移されているということが、本人からの家族への通報によりましてわかったのでありますが、いやしくも名簿にハバロフスクにいるというので載せている者を、しかも、交渉中に、相手了解なくして、他国に移すということについて、私どもはそこに非常に疑念を抱かざるを得ない、こう思うのでありますが、これについて、やはりそういう者も当然帰してもらえるかどうか、この点について外務省の御意見を伺いたいと思います。
  137. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 お答えします。ただいまの御指摘の件は中西という方だと思いますが、これがハバロフスクから中共に移された理由につきましては、私の方から説明を求めております。従って、こういう考はほかにないだろうかということを念を押しております。いずれ、そのことについては、先方から説明があると思います。
  138. 臼井莊一

    ○臼井委員 これは、一人の問題であるからといっても、人命に関する問題でありますから、非常にわれわれは重要視しなければならないと思うとともに、他にもこういう者が存在するのではないか、こういう点を私どもは非常に憂慮をいたしておるのであります。それから、共同宣言には死亡者の問題について一言も触れておりませんが、死亡者の問題は調査に関連して明らかにしようというのでありますか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  139. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 それはその通りでございまして、今後大使館が相互に設置された後に、さらにそのことについては話が進むはずであります。
  140. 臼井莊一

    ○臼井委員 なお、シベリアの各地には多数の同胞が眠っておられることは、先般ナホトカに船でお迎えに参りました際に、現に五百数十柱のお墓がナホトカにあると伝えられております。こうした同胞を埋められた墓所も、時がだんだんたちますと、次第に荒廃しまして、判別さえもなかなかつきにくくなるのでありますが、政府は、いつになりましたら、こういう御遺骨を国にお迎えしょうとお考えになるのでありますか。少くとも、批准交換に際しては、さっそく遺骨の収集の申し入れをするとともに、お墓の保全につきまして先方へ十分申し入れる必要があると思うのでありますが、この点につきまして政府の御意思があるかどうかをお伺いいたしたい。
  141. 重光葵

    重光国務大臣 さような問題も国交回復後にはすぐ取り上げなければならぬ問題だ、そう考えておるのであります。
  142. 臼井莊一

    ○臼井委員 ただいま私の簡単な質問を通じて見ましても、どうも今回の日ソ交渉最後の段階になりましても、消息不明の問題、また死亡者の問題、あるいは墓所等の問題についても、何かあとに取り残された問題があるように非常に感ずるのであります。こういう問題がないように、私どもは、委員会におきましても、あちらに交渉に参る際には、従来この問題に関して詳しく知っておるエキスパートを送ってやってもらいたい、こういうことを申し入れたのでありますが、法眼参事官は、前後の事情もよくわかっておるので、これで十分だというお話であったのであります。しかし、これははなはだ事務的に扱い過ぎていると思う。そこに、単に外交の手続でこういう問題が完了するということばかりでなく、やはり留守家族の身になって、何とかこれをこの際解決しなければならぬという、その熱意が現われなければならぬと思う。私は、宣言の機会に対してことに鳩山総理が非常に病躯を押して御不自由なからだで行かれたのでありますから、これに対して強く責める気にはなれないのでありますけれども、過去四年間の留守家族問題を取り扱って参りました私どもといたしますると、まだあとに何か残された問題があるのではないか、こういう問題で非常に不安を持たざるを得ないのであります。しかし、これも、日ソ交渉が今度妥結いたしまして、大使館ができて、お互いに話し合って、そこでどんどん仕事が運んでいきますのであれば、何も今これを取り立てて言うこともないと思いまするが、どうぞ一つ政府におかれては、今後とも、これらの問題について、あと十分引き続いて折衝いたしまして、できるだけすみやかに残された問題を一つ解決するようにお願い申し上げておきます。  本問題に関しましてお伺いいたしたいのですが、きょうは厚生大臣がいらっしゃいませんので、文部大臣に先にちょっとお伺いいたしますが、靖国神社の問題であります。この問題につきましては、先般高岡大輔委員が御質問もいたしましたが、遺族及び国民の間には靖国神社を国の管理に移せという要望が非常に強いのであります。国家のためになくなったみたまをお祭りしてある靖国神社は、国家の責任においてこれを管理しよう、これはまあ当然なことだと思うのでありますが、伺うところによると、数日前新聞に、宗教法人法を近く改めようというお考えがあるやに伺ったのですが、そういう際におきましては、やはりこういう点を考慮して、何らかの方途をお考えでありますかどうか、その点を一つお伺いしておきたい。
  143. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 靖国神社は、御承知の通り、戦没者の霊を神様としてあがめる施設でございます。すでに神様である以上は、たとい靖国神社の法律を別に作りましても、やはり宗教施設となるのでありまして、憲法の八十九条の規定との調節が非常に困難でございます。前国会にもこの問題が提供せられ、私も精魂をこめて研究をしたのでありますが、神社自身の管理を国の費用でするということはむずかしいのであります。しかし、この神社へお参りする団体——ほかの神社仏閣でもよく講というものがあります。靖国神社を崇敬するような団体を作れば、その団体は宗教法人じゃございませんから、そういう方面に活路が開けるんじゃないかと、私一個では、まだ心の中の案ではございますが、持っておるのです。今研究をしております宗教法人法は、むしろ新興疑似宗教といったようなものの行き方をどうかできないかということから出発いたしておりまするので、靖国神社の法律をそこで作ろうというふうには向いておりませんです。
  144. 臼井莊一

    ○臼井委員 政府のお考えは大体わかりましたが、この神社が一体宗教であるかどうかということは、これはいろいろ学者も意見がまちまちであるようであります。引揚委員会で調べました際に、京都大学の大石義雄教授は、憲法のどこにも神社は宗教であるという規定はないんだ。宗教法人法にその規定がある。そこで憲法との関連を持ってくる。神社といいましても、国のためになくなられた英霊をお祭りしているようなものは、むしろ一般に考える宗教と異なった、いわゆる超宗教的な、普遍的な国民の渇仰の表徴として考えられるのである。従って、この点については、宗教法人法を変えれば、憲法と抵触もしない。要するに、神社は宗教であるという宗教法人法を変えて、特例を設けてこれから靖国神社を除く、こういうふうにすれば差しつかえないというふうな御解釈をしていたのでありますが、一つ政府におかれましても十分御研究をいただきたいと思います。  それから、厚生大臣にお伺いしたいことがあるのですが、ほかにだれかいらっしやってますか。
  145. 植原悦二郎

    植原委員長 引揚援護局長がおります。
  146. 臼井莊一

    ○臼井委員 お骨がどんどん海外から戻って参ります。これら無名戦士の墓を、閣議において、作るようにという決定を見たということを聞いておりますが、その後これらの問題については何か進行いたしておりませんでしょうか。
  147. 田邊茂雄

    ○田邊政府委員 無名戦没者の墓につきましては、まず敷地を選定することが先決問題でございますので、いろいろ敷地について検討いたしておりますが、関係各方面にいろいろ御要望がございまして、まだ最後的な決定に至らないで、今日に至っておるような状態でございます。お話の通りこれが閣議で了解決定がありましたのは二十八年の暮れでございました。だいぶ日にちもたちましたので、今後できるだけ急いで敷地の決定その他の準備を進めて参りたいと思っております。
  148. 臼井莊一

    ○臼井委員 最後に、これは労働大臣にお伺いしたいのですが、本日はおいでになりません。これが批准が済みますと、十一年間以上にわたって抑留されていた同胞がお帰りになります。しかも、 ハバロフスクの抑留同胞は、かつて国会におきましても問題になりましたように、自分たちは帰りたいけれども、自分たちを無理に帰すために国策まで変えてくれるな、十年も炉まんしたのである、この際自分たちが十年もがまんしたことがむだにならないように、というような悲痛な手紙までよこした方々であります。世の中には、これは戦前の考えなんだと言うような方もないとは限りませんが、しかし、それはほんとうに国を愛し国の将来を考えておられる方々であります。しかも、ソ連地区から引き揚げられる方は、最近の情勢では、自分たちの待遇に関しましてとやかくに申しておりません。何らの要求がましいことは申しておりません。こういうりっぱな方々でありますから、ぜひあたたかく迎え、しかも就職も完全にでき得るということにしなければならないと考えておるのでありますが、労働大臣が本日お見えになりませんから、一つこのことをお伝えいただきまして、次の機会に労働大臣に御出席いただいて、これらの方をどういう方法でお迎えするか、就職問題につきましても、一般よりは職業安定所等において約一〇%ほどいいというようなこととも伺っておりますが、どういうふうにしてこれをできるだけ完全にするかをお伺いいたしたいということをお願いいたしまして、私の質問を終えておきます。
  149. 植原悦二郎

  150. 森島守人

    森島委員 日ソ共同宣言等について御質問をしたいのですが、大体同僚の委員諸君が、大綱のことについては御質問が済んでおります。私は、重複を避けまして、二、三の重要問題だけについてきわめて簡単に御質問しようと思いますから、もし重複の部分がありましたら、その旨御指摘をいただければ、けっこうと存じておる次第であります。  第一に、私がお聞きしたいのは、共同宣言の内容を見ますと、日ソ間を規律すべき重要事項は、大体漏れなく網羅しておるように思うのでありまして、平和条約を引き続いて継続審議するということになっておりますが、将来締結さるべき平和条約の内容と共同宣言の内容について、何らか相違があるかどうか。私は領土条項を除きますと、あと大して相談すべき事項はないように思いますが、何らか平和条約の中に、領土条項のほかに協定すべき事項があるというお考えかどうか、第一に伺いたいと存ずる次第であります。
  151. 重光葵

    重光国務大臣 この点はほとんど新たな問題はないと思います。御説明したかと思いますが、戦前の条約をどうするかという問題はございます。
  152. 森島守人

    森島委員 私も同様に考えておるのでありまして、たとえば文化協定を新たにやるといたしますれば、これは別個にやる。通商条約の条項も同様だと思います。平和条約締結するということになりますれば、その主要なる問題は領土条項である。この考えてきますと、自民党の中にも、留保条件をつけるとか、あるいは附帯決議をするとかいう議があるように聞いておりますが、私は前述のような見地に立ちまするならば、その必要はないものと存じておりますけれども、この点も、念のために外務大臣の御答弁を承わっておきたいと存じます。
  153. 重光葵

    重光国務大臣 私は理由のいかんは別といたしまして、昨日も申し上げました通りに、これはもうこのまま御承案を願いたい、こう思っておるのであります。
  154. 森島守人

    森島委員 明確なる御答弁を承わって、非常にけっこうであります。  その次に承わりたいのは、国後択捉の両島に関します日ソ両国立場は根本的に違っております。総理外務大臣から御答弁のありました通り、この問題の解決のためには、相当長い時日を要するものと思われるのであります。ところが、総理大臣は、国際情勢の好転を待つのだという御答弁でありまして、私はきわめて消極的な感じがするのであります。日本側としましては、この共同宣言の前文にもありますが、日ソ間における諸案件の解決はもとよりといたしまして、「極東における平和及び安全の利益に合致する」云々とありますけれども、極東の平和に大きく貢献することが日本政府の目途でなければならぬ、こう確信しておるのでありまして、この点から考慮すべき点があるのじゃないか、私はこう思っておるのであります。第一点は、やはり安全保障条約のごときは、進んで改廃するという方向に政府が積極的に動くということが必要であろう、こう信じておるのでございます。この点に関連しまして私から一つお聞きしたいのですが、第三項の(b)の第二番目に「日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、それぞれ他方の国が国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有することを確認する。」こういう条項がございますが、これば日本側の発意で入ったものでありますか、またはソ連側の提案によって挿入されたものでありますか、その点を明確に御答弁を願いたいのでございます。
  155. 松本俊一

    松本全権委員 これは私が交渉をやっておりますた時代に、日本側から礎案いたした意思表示であります。先方はそれをそのままのんだわけであります。
  156. 森島守人

    森島委員 そういたしますと、御承知の通り日本側には日米安全保障条約が存在しておりますし、またソ連側には中ソ同盟条約が存在しております。これらはいずれも国連憲章内のことかしれませんが、仮想敵国を予想した軍事同盟と私は目すべきものだと思うのであります。日ソ両国間に外交関係が結ばれる以上、こういうふうな条約は漸次これを改廃するという方向に進めることが、極東の平和を確保し、これを好転させるゆえんであると私は信じておる。政府はこの点において現在日米安全保障条約を改廃する意向がないのだということを、鳩山総理も明言しておられます。しかし、もしソ連のほかに中華人民共和国との関係も回復しまして、極東の安全に対して何ら不安がないというふうな事態がきた場合に、政府は依然として安全保障条約を廃棄するという意向があるかないか、これは廃棄すべきものと私は思いますが、この点はいかにお考えになっておられるか、一つ伺っておきたいと思います。
  157. 重光葵

    重光国務大臣 今の御議論の大よその方向は、私も決してそれに対して不賛成を唱えるものではございません。私も賛成でございます。ただ総理も言われておる通りに、今お答えする問題として、改廃する意向はない、こう申し上げたのは、その通りでございます。また将来国際情勢がずっと変ってくる、よく変ってくることをわれわれは期待し、またそのように努めなければなりません。そういうような機会は逸せず、考慮はしたいと思いますが、さしあたっては総理答弁によって御了承願いたいと思います。
  158. 森島守人

    森島委員 私は必ずしも総理答弁に満足しないのであります。消極的に他力本願で、国際情勢の好転を待つというのでは、あまりに力が足りない。私は政府が進んで国際情勢を好転させるために、積極的に努力されることを期待してやまないのであります。中共の問題につきましては、私、外務委員会なり別個の委員会において質問を続行したい、こう存じておりますので、この際省略いたします。  ただ、ここに外務大臣並びに通産大臣の御注意を求めておきたいのは、昨日もビルマの賠償使節団が着きました。私も最近の機会にボンベーの会議出席しました間に、ビルマのウ・チョーニェン副首相とも再三にわたって懇談する機会があったのであります。東南アジアの開発については、政府が機会あるごとに口をきわめておっしゃっておることは、これは当然であります。しかし一向に実を結ばない。ビルマの使節団が来ましたのもこのためでございますが、ウ・チョーニェン氏は、もし日本側の施策が速急に間に合わない場合には、ソ連側からも融資を受けることがある、中共からも融資の申し出がある、また西独からの融資を得て、ビルマの独自の立場でやってもよろしいのであるということを明言しておったのであります。それにつけ加えまして、さらに、日本が経済協力を賠償の中にきめたのは、おそらく賠償額を少くするための作為ではなかろうか、もしほんとうに日本政府が経済協力に努める意向があるならば、全額政府で融資するぐらいの腹を持てばいいのだ、しかるに現在は、輸出入銀行の融資額にいたしましても、あるいは償還期限の問題にいたしましても、あるいは利率の問題についても、幾多問題とすべき点があるということを言っておったのでございます。私はウ・チョーニェン氏の言うことを、全部そのまま受け取りたくはない。ビルマの政府にいたしましても、幾多改善すべき余地があると思います。行政機構のごときものも円滑に動いていないことは事実でございまして、全部が日本側の責めであるということは、これは受け取れないのであります。しかし、日本政府としても、東南アジア開発の大きな使命にかんがみて、十分ここに反省 すべき余地があると私は信じておるのであります。この際何らか日本の実意を示すために、三つなり四つなりの事業についてこれの実績を示さなければ、私は東南アジアの市場を永久に失うがごとき、憂うべき事態がくるということを心配している。この点につきまして、この際国会を通じて、外務大臣並びに通産大臣の明確なる御答弁を求めてやまない次第でございます。
  159. 重光葵

    重光国務大臣 ビルマ関係において、賠償問題が幸いにして片がついたということは、御承知の通りであります。ただその実行の問題でございます。その実行の問題は、約束したことについては、ほんとうに誠意を持って、そして両方の国の利益のために、また将来の経済関係を進める上においても、十分に一つ促進していきたい、こういうことでございます。それだけは抽象的なことでございまして、これははっきりしておるわけでございますが、その具体的なことにつきましては、向うのミッションも来ておるわけでありますから、十分に向うの言い分も聞いて、具体的に進めていきたい、こう考えております。
  160. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 ただいま外務大臣からお答えしたことで大体尽きておりますが、ビルマの、ことに経済協力の問題については、向う側にも非常にいろいろな難点があることは、御承知の通りであります。それを何とか打開すること——しかし日本側においても、たとえば保険の問題とかあるいは融資の問題とかいうような、なお改良しなければならぬ点があると思っております。それで、ただいま研究して、できるだけ早い機会に処置をいたしたいと考えております。
  161. 森島守人

    森島委員 ただいまの御答弁を聞きまして一応満足するのですが、実際問題になりますと、日本の官僚組織の通弊と申しますか、大蔵省とか通産省とか外務省とかの間で、とかく意見が食い違いまして、その結果、進むべき仕事も進まぬという弊風が相当にあると私は思っております。私自身も役人生活を長くやって、そのことは経験しております。そういうふうな弊害を除いて、一日もすみやかに具体的の成果を上げられるように御配慮をいただくことを、お願いする次第であります。  それから、次に一つ伺いたいのは、内政不干渉の点でございますが、これは私は相当重要問題だと思う。重要問題だからといって、日本内地で反動的な立法を推し進めなさいというふうなことは言いません。これは厳に慎しむべきものだと思うのです。この規定を見ますと、きわめて簡略である。この前の大正十四年の日ソ基本条約の場合に比べますと、雲泥の差があるように私は看取する。これは時間があるために、条文は全部読みませんが、この前の大正十四年の日ソ基本条約の第五条によりますと、「両締約国ハ五二平和及友好ノ関係ヲ維持スルコト、自国ノ法権内二於テ自由二自国ノ生活ヲ律スル当然ナル国ノ権利ヲ充分二尊重スルコト、公然又ハ陰密ノ何等カノ行為ニシテ荷モ日本国又ハ「ソヴィエト」社会主義共和国 邦ノ領域ノ何レカノ部分二於ケル秩序及安寧ヲ危殆ナラシムルコトナルヘキモノハ之ヲ為サス且締約国ノ為何等カノ政府ノ任務二在ル一切ノ人及締約国ヨリ何等カノ財的援助ヲ受クルー切ノ団体ヲシテ右ノ行為ヲ為サシメサルコトノ希望及意向ヲ厳粛二確認ス」とございます。今度の政府の取りきめられたのは、ただ政府が直接間接にやらないというだけでございますが、この大正十四年の基本条約条項によりますと、政府のみならず、そのもとに働く公職にある人間、及び財的援助を受ける諸団体ということにきわめて明確に規定しております。これらについて、ただ漫然と共同宣言の条項をもって満足であるとお考えになったものであるかいなか。この点についての御見解を伺いたいと思います。
  162. 松本俊一

    松本全権委員 私からお答え申し上げます。ただいま森島委員が申されたごとく、最初日本側はその大正十四年の基本条約通り、もしくはそれよりも詳しく規定したいということを提案したのであります。そうして種々論議いたしましたが、ソ連側としましては、結局かかる条項は、現代においてはソ連としては必要を認めないということを非常にがんばっておりました。結局この三月に私がマリク全権最後交渉いたしましたときに、ただいまこの共同宣言文句になっておりますような文句を入れることを、ようやく聞いたような経緯がございます。この中に、直接または間接ということが入っておる。これは、この中に、ただいま読み上げられましたような一切の事項を含んでおるものと私は了解するといって、これを説得しておるのであります。さよう御了承願います。
  163. 森島守人

    森島委員 これは古い話で、特に引用する必要もないのですが、大正十四年のこの条項に対して、当時の鳩山総理は、若い青年代議士でありましたが、鳩山総理自身これだけでも不十分だとして、非常に痛烈な非難を当時の幣原外務大臣に浴びせた。私は鳩山総理の心境をもお聞きしたいのですが、御出席がないので、きょうはやめます。  その次にお伺いしたいのですが、国後択捉の返還を御要求になったことは承知しております。その理由はどういうところに求められたのであるか、国後択捉日本の固有の領土であった、その上に千島列島範囲外にあったという趣旨で御交渉になったのか。あるいは千島列島の中に含まれておるが、一度日本は、これを放棄した。しかし、それでも返してくれという御交渉をなさったのであるか。この点を明確に御答弁願いたい。
  164. 重光葵

    重光国務大臣 国後択捉の二島が日本の固有の領土であるという理由でその返還を要求したということは、今お話しの通りであります。それが千島列島の中に入っているかいないかという問題——日本の固有の領土は、当時の敵側から譲渡を求められていなかったのでございます。それはポツダム宣言を受諾したときから、そういうことになっております。そこで、千島列島に入っているかいないかという地理的のことならば、いざ知らデ、国際関係交渉において、千島列島国後択捉の固有の領土が要求されたことのないということだけは言えるのでございます。
  165. 森島守人

    森島委員 きわめて不明快な御答弁で、私は、サンフランシスコの平和条約締結の際に、国後択捉をも含んで千島列島放棄されたのが、もとの吉田首相である、こう信じておるのでありますが、一度列国のために放棄した領土であるが、日本の固有の領土であったという理由に基いて御要求になったのであるか、この点を明らかにしていただきたいのでございます。
  166. 重光葵

    重光国務大臣 サンフランシスコ条約によって、日本の固有の領土放棄していないという解釈でございます。
  167. 森島守人

    森島委員 そうなりますと、私は問題を蒸し返さなければならぬ。私は、今年の二月、この問題を委員会で取り上げまして、いろいろ論議をしましたが、当時外務大臣は御出席になっていないのですから、やむを得ず私は問題を蒸し返さなければならぬと思うのであります。一つ私は承わりますが、そのときの下田条約局長、政務次官の答弁によりますと、千島列島というものとクーリール島と申しますものは二つの異なった概念である、こういう御説明でございましたが、重光外務大臣はこれを肯定されますか、否定されますか。
  168. 重光葵

    重光国務大臣 私はそのときの条約局長の説明はその通りであろうと思います。この問題は、サンフランシスコ条約によって、千島列島の中にこれが含んでいるのではないかということが、今の御質問の基礎になる疑念だと思います。そこで、これは条約解釈問題としてどうであったかということは、十分探究をしなければならぬのです。そこで、サンフランシスコ条約に最も関係のある米国側にも、またその他の国にも意見を十分徴してみたのであります。ところが、サンフランシスコ条約において、千島がどういうものである、どこからどこまでであるというようなことが、はっきり区画を示されたことはないのであるという了解でございます。そうであるとするならば、サンフランシスコ条約において日本の固有の島であるこれらの二つの島に対するわが全権発言もございましたし、のみならず、サンフランシスコ条約によってできてきた根拠はどこにあるかというと、これは日本が受諾をしたポツダム宣言によるのであります。ポツダム宣言の基礎はどこにあるかというと、カイロ宣言にある。そのカイロ宣言には、日本の固有の領土を要求することはないというふうに読めるように書いてあります。そういうようなわけでありますから、これらの国際関係から申しますれば、連合国側日本の固有の領土を要求していないという建前に立っておる。それでありますから、サンフランシスコ条約においても、日本の固有の領土日本放棄したわけではないと私は解釈いたしております。もっとも、こういうことはございます。日本の戦争前の行政区画によるというと、千島ということで入っておるのです。そこで、日本の当時の条約局長は、そういうことから千島のうちに入っておると答弁しておる過去の例があります。しかし、それはそのときの答弁でございまして、何もそれが悪いということではございません。悪いということではございませんけれども、行政区画とか地理的とかいうようなことならば、いろいろまた問題もございましょう。千島というのは、南千島まで入れてこれを通常千島と称しておるのであります。しかし、それと国際関係における条約もしくは宣言等の理論から出る国際関係主張とは、また必ず上も同じものではないのでございますから、私は、国際間の主張としては、はっきりとそういう工合に主張してきたわけでございます。
  169. 森島守人

    森島委員 その点については私も意見があるのでございますが、今これを長々と蒸し返してやってもどうかと思いますので、一、二点今の外務大臣御説明に対して批評を加えてみますれば、第一に国後択捉を含んでおったということは間違いない。これは吉田さん自身がはっきり言ったのです。何らこれに容喙する権限はない。ただ西村条約局長だけではありません。当時の政務次官も同様な答弁をしております。しかし、そのような解釈が成り立つにしましても、日本の固有の領土であるからこれの返還を求めろというのが、私たちの党の立場であった。その点についてはこれ以上私は深入りすることを避けますが、ただ一つ納得のいかぬのは、それじゃ平和条約の中に、原文と言いますか、英文ではクーリール島とはっきり書いてあります。しかるに、全然別個の範疇に属すべきクーリール島を千岳列島と翻訳になった。この点に私は誤解の大きな原因もあると思う。私は、これは外務省の事務当局、少くとも条約局の非常な大きな手落ちである、こう断定せざるを得ないのでございますが、この点に関する外務大臣の御答弁を願いたい。
  170. 重光葵

    重光国務大臣 旧来それを普通千島と訳しておることは御存じの通りでございます。そのどこからどこまでという解釈はまたおのずから別の問題であるとして、今旧来の千島とこういうふうにしたと私は推測します。そのときの事情は私は今日は存じません。
  171. 森島守人

    森島委員 これは一国の領土を規定すべき重要事項であって、この重要事項に対しては、最善の注意を払って翻訳等にも当るというのが外務省の責任でなければならぬ。今おっしゃったような、通俗的に言っておったとか言わぬとかいう言葉で片づけ得る問題じゃないと私は思う。私がそれに続いて条約局長や政務次官に質問をいたしましたのは、じゃそのクーリール島を千島列島と訳したのはどういうわけかと申しましたら、先例によったということも言いました。慣習によったんだということも言われたのでありますが、私は先例はないと思います。慣習によってばく然とこの重要問題を翻訳するなんということは、私は外務事務当局としては厳に慎しむべきものだと思うのですが、この点を一つはっきりしていただきたいと思う。
  172. 重光葵

    重光国務大臣 そう非常に窮屈に考えなければならぬものか、と私は思います。なるほど、それは、そういう実質の問題が伴えば、そういうことはごもっともなことでございます。この千島、樺太の交換条約以来、これは旧来の千島と訳しておると、こういうのであります。これが先例によったということであろうと思います。その千島というのは、御承知の通りの千島であって、あのときは南樺太と今の国後択捉を含んでいなかったのであります。そういう考え方できておったわけであります。そこで、それはあんまり事務的にそう窮屈に言わないでも差しつかえないように思いますが、どういうものでございましょうか。
  173. 森島守人

    森島委員 いかにも責任のがれの答弁で、私はあきれ返えるほかはない。悪い点があったら悪い、間違っておったら間違ったということで、平和条約の翻訳をお直しになるだけの雅量をお椿ちになるのがいいと思う。今千島、樺太条約を御引用になりましたが、さすがに昔の人は今の外務省の人よりはえらい。千島、樺太条約には、クーリール群島すなわち、として、一から十八までをあげている。クーリール群島と千島列島というものは全然別個だということを、明確に条文の上に示している。私は、それだからこそ、この平和条約の中の千島列島が誤まりであるということを申し上げている。この点に対してあらためて御見解を明らかにしていただきたい。
  174. 重光葵

    重光国務大臣 条約局長から御答弁をいたします。
  175. 下田武三

    下田政府委員 仰せのように、条文の中ではクーリールとかなで訳しておると思いますが、しかし、外務省のみならず、日本の公文書におきましても、慣例的にクーリールという言葉に対応する日本語は千島となっております。これは仰せのように不正確でございます。クーリールと千島は語源的に言いましても全く別のものでございまして、クーリールというのは、ロシヤ語のクーリーリ、つまりトゥ・スモーク、煙が出るという言葉から出たものであります。なるほど千島の北の方には煙が出る噴火山があるのでございまして、南の方にはそれがございません。しかし、日本の方は、島がたくさん並んでいるから、千の島と書いて千島と言っておった。語源的に違う言葉を、これはぴったり合せるということはできないのでございますから、当時の事務当局としては、どうしても慣例として使っておる言葉を当てはめるということにならざるを得なかったと思うのであります。しかし、先ほど外務大臣が仰せになりましたように、その範囲というものは、千島と書いたらどうなる、クーリールと書いたらどうなるという問題を直接起さな、で、アメリカ政府自身が、何ら定義が下っていない、その定義はやがて国際的になり何なりしてきめると言っておるのでございますから、桑港条約の規定から直接千島という言葉を使ったことはけしからぬ、法律的にえらい損害をこうむったと結論することはできないのではないか、そういうように私どもは従来考えておったわけでございます。
  176. 森島守人

    森島委員 今の御説明を聞きますと、アメリカの見解に万事を託しておられるように思うのですが、アメリカの見解なるものは、前後三回変っております。第一回は、平和条約締結のときで、ダレス長官は、歯舞色丹だけについて疑問があるなら、国際司法裁判所にお話えなさい、こういうふうに言ったと思います。第二回は、昨年十月、このときは、国後択捉について疑問があるならば、国際司法裁判所へお話えになったらよかろうというふうな趣旨だったと記憶しておりますが、重光外務大臣がロンドンでお話し合いになったあとで明確にされたアメリカの見解によりますと、択捉国後は入っていないのだ、こういうふうなことです。アメリカは、むろん条約締結の際の主要国である、この見解に重きを置かれることは当然でありますが、アメリカの見解だけでは、この範囲なるものはきまるものではないと私は信じております。その点も十分御考慮にならなければならぬと私は思っております。ほかに、ソ連の見解も、ヤルタ協定の関係上たださねばならぬし、あるいはイギコス等の関係も考慮に入れなければならぬ。一がいに、今のような御説明で私は満足するものではございません。しかし、これは法律上の問題ではなくて、要は今後の政治的の問題であると思いますので、私はこれ以上追究することはやめますが、そういう問題がある。そうして、私は外務省の非常な手落ちであったということだけをここに指摘しておきたい、こう存ずるのであります。  それから、その次に伺いたいのは、重光外務大臣は九月の三日にお帰りになったのでございましょうか、三日に、羽田の空港で、先ほどどなたか引用されましたが、声明を出しておられます。その声明の中で、「今回の日ソ交渉について日本側としては主張すべきことは余すことなく主張し、またソ連側の意向は徹底的につきとめてまいりました。今日においてはこれを資料として国民的決断をなすべき次第と思います。」こう明確に発表しておられるのであります。私は、先ほど来の御説明を聞いておりますと、平和条約方式交渉をしたのだ、この点については日ソ両国間に完全に意見が一致しておった、平和条約に関する限り、ソ連の意向を徹底的に突きとめてきたのだという御説明であったと思うのでございますが、私は、いやしくも一国の外務大臣が海外に使いして、そうして、平和条約方式ではとても妥結ができないという見通しをお立てになったときには、次善の策についても、出先においてヅ連側と内交渉をする、ソ連の意向を打診するというくらいのことは、外務大臣一個の権限においてもやり得ることだと思います。なぜこれをおやりにならなかったか、鳩山総理がわざわざ出かける、あるいは五案件とか、あるいは領土の継続審議とかいうことについてすら、自民党の要求に応じて、政府ソ連との間で意向を打診している。こういうふうな必要はない。私は重光さんが当時モスクワでございますか、明確に打診されることが必要だったと思う。これがネゴシエーターとしての大きな職務でなければならぬと信じているのでございますが、何ゆえにこの点について御努力をなさらなかったか、この点を伺いたいのでございます。
  177. 重光葵

    重光国務大臣 私の交渉が、平和条約締結にあったということは、繰り返し申し上げた通りであります。これは、先方とこちらとの合意の結果そういう工合になったのであります。しかし、それが行き詰まった、行き詰まれば、次はどうしてもこれは政府と十分打ち合せをするよりほかにしょうがございません。のみならず、それなら向うの意向を打診をしたらよかろう、それはその通りであります。打診くらいはしても差しつかえはございません。しかし、ソ連の希望する通りの暫定協定でいけば、大体ソ連はそれは異存はないということはわかっておったのでございます。だから、十分国内の議論をまとめて、政府考え方をきめて出直さなければなりません。それで、私は相談のために帰ってきたのであります。
  178. 森島守人

    森島委員 はなはだ心もとない御答弁なんですが、河野農林大臣モスクワに行かれました際にも、次善ではどうかということを打診された形跡はあると私は思う。それと申しますのは、漁業協定の発効が、平和条約の効力発生、もしくは何という字を使ってありましたか、国交回復の時期ということになっておりましたので、河野さんすらこの点について次善について打診とている外務大臣ともあろうものが、平和条約が行き詰まったら、ソ連の意向ははっきりしているとおっしゃっても、念のために、さらに打診をされることが必要だったと私は思う。もしその手続を経ておられますならば、六千数百万円ですか、鳩山さんが行くために莫大な経費まで使って、あの病身の総理がわざわざモスクワに行って、調印をする必要もなかった。もっと早く日ソ交渉を妥結しまして、日本の抑留者も帰る、国連加盟の手続も急ぐことができる、いろいろ日本のために、もたらすべき有利なことがあったと私は信じております。この点は、外務大臣がいかに御答弁になっても、外務大臣平和条約方式一点張りで突き詰めて考えていられて、それほどの心的な余裕を持っていなかったのじゃないか、こういうふうに私は信ぜざるを得ないのでございます。この点に対して、あらためて御答弁をいいだきたいと思います。
  179. 重光葵

    重光国務大臣 どう御答弁してよいやらわかりませんが、いろいろそのときの事情について御批判を受けることは、私は少しもいといはいたしません。しかしながら、暫定協定をすぐやるという決定を、政府は見ていなかったのでございます。はっきり見ていなかった。そうでございますから、ロンドン交渉から私のやりましたモスクワ交渉には、平和条約の方式でいってきておるのであります。そこを改めるためには、これは協議を要します。そこで協議をしたわけであります。従いまして、その間において、私はそれだけの経緯を経て出てきたわけなんであります。初めからそうすればよかったじゃないか、こう言われるのは、私は一つの御議論だと思います。それは初めがらそうする経緯になってこなかった。ようやくこの経緯を経て、ここにきたことを申し上げたいと思います。
  180. 森島守人

    森島委員 私は外務大臣が帰国された後の情勢等を考えまして、私、直接外務大臣に聞いたわけじゃございまけんが、新聞等を総合して考えますると、重光さんはやはり平和条約方式でやらなければいかぬというふうにお考えになっていた、これを強く国民の判断に訴えるというのが、帰朝されたときの声明の趣旨だろうと思う。しかし、外務省のやっていることを見ますと、外務省は文字通りつんぼさじき、外務省の事務当局はもとより、外務大臣も何もやっていない。そこに動いたのは、河野さんなり高碕さんなり、——外務省自体の責任でやるべき仕事を、つんぼさじきにおって言いたいことも言わないでやったのが暫定協定による方式である、このために、鳩山さんが行かれた、こう私は感じておるのであり季すが、私はもっと外交の衝に任ずべ索外務省として、尽すべき手を尽して、十分なる能力を発揮するのは外務省の責めであったと思いますが、全くつんぼさじきにおったのだ、こういうふうに批評せざるを得ない。これに対しては、あえて御答弁を求める筋合いでももとよりございませんが、私は外務大臣以下外務省事務当局の深甚なる注意を喚起せざるを得ない。おそらくここにおる人たちばかりじゃありません。内外の国民は、全部私の所見に同感をしているということば、私が信じて疑いないところであります。今後の外務省のやり方について、私は深甚なる御注意を喚起しまして、私の質問を終えます。
  181. 重光葵

    重光国務大臣 御答弁を要求されなかったわけで、私は答弁するわけではございません。ございませんが、今言われたことを、私、全部これを了承するわけには参りません。これは、閣内においても閣外においても、外交事務をいろいろと受け持ってもらうことがたくさんあります。しかし、全体として、これは外務省で総くくりをするよりほかに道はございません。それをやっておるわけでございます。しかし、それについてはいろいろあれもございましょう。ございましょうが、その御批評は、これはつつしんで参考のために伺いますが、責任ある御批評は、どうか一つ片手落ちなくお願いしておきたいと思います。これだけ申し上げておきます。
  182. 森島守人

    森島委員 今のような御発言がありましたら、私も一言申し上げる。元来、日ソ交渉が始まって以来、二元外交、三元外交、これは御説明を待つまでもなくして、あるいは世間で周知の事実で、日ソ交渉に関する限り、外務省が十分なる責任を果したということは言い得ないと私は信じております。高碕さんや河野さんが動くのも、閣内の人が動くのであって、これはどこの人を使え、外務省の人だけを使えということは、私は申し上げません。そのところに応じて、適当にやればいいのでございますけれども、私は外務省が十分なる機能を果してなかったということについては、あらためて御注意申し上げねばならぬ、こう信ずるわけでございます。別に御発言は求めません。
  183. 植原悦二郎

  184. 小笠公韶

    ○小笠委員 私は、通商問題につきまして、一言お伺いいたしたいと思うのであります。通商問題につきましても、すでに各委員からの発言で、大体問題点を尽しておると考えられるのでありますが、念のためにお伺いいたしたいのであります。  まず第一に、日本ソ連との間の貿易の将来性を考えますとき、ともすれば片貿易になるおそれがあるということが一つであります。さらに、貿易の決済手段いかんによりましては、貿易上のトラブルを起すおそれが多分にあると思うのであります。この貿易上のトラブルが政治問題とからんで、好ましくない事態を招来するおそれなしとしないのであります。そういう意味から、貿易と政治との混合を避ける意味において、すっきりとした貿易を進めていくという上におきまして、まず第一に大事なことは、支払い方法、決済方法をどうするかという問題であります。これまでの委員の御質問に対しまして、政府当局はバーターを唱え、あるいはまた必要があればオープン、アカウント方式をとってもいいかのごとき御説明があったようでありますが、これらの決済方式について政府はどうお考えになっておるか、あらためてはっきり伺いたいのであります。
  185. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 実は、ソ連との貿易は、御承知のように、今までのところは微々たるもので問題になりません。将来果してどれほど伸びるかということはわかりませんが、いずれ、そういう貿易については、先方と具体的に協定をしなければならぬと思っておりますが、そのときの問題にいたしたいと思っております。現状においては、御承知のように、バーター貿易決済はロンドンを通してポンドでやっておるのでありますが清算勘定をいまさら復活するのもいかがかと思いますので、むしろ片道決済の方式をとった方がいいのではないかというふうに考えておりますが、これはまだ決定してはおりません。
  186. 小笠公韶

    ○小笠委員 これらの問題は、将来の研究に属すること当然でありますから、ただいまの御答弁で十分なわけでありますが、私は要望を申し上げたいのであります。  まず第一に、この決済方法は、原則としてポンド現金決済によっていただきたいと私は思うのであります。バーター方式によりましても、あるいはまたオープン、アカウント方式によりましても、ソ連は一人の国営貿易であり、日本は多数の商社の関係であります。この事態から考えますれば、ともすれば、日本の輸出業界の現状から考えますと、売り込み競争になるのであります。この例は、対インドネシア貿易におきましても、対アルゼンチンにおきましても、その例を見ておること、御承知の通りです。そして、その結果がどういう結果になっておるかにつきましても、私が申し上げるまでもないのであります。そこで、今後の交渉を進められるに当りまして、ぜひとも信用状によるポンド現金決済払いを原則として進められるということが、冒頭に申し上げましたように、日本ソ連との間の貿易上のトラブルをなくし、貿易上のトラブルが政治にからまってくるというめんどうな問題を除去する最大の道だと私は思うので、これをお願い申し上げたいのであります。  第二点は、これも将来の問題であろうと思いますが、ソ連は国営貿易であり、物価についてもはっきりいたしておらないこと、御承知の通りです。これに対して、わが方は多数の商社があり、しかも日本の輸出戦線は、中小輸出業者の売り込み競争であることは、御承知の通りです。こういう事態を考えますとき、対ソ輸出大貿易機構をどう整備していかれるか。この貿易の機構の整備の問題というものは、貿易をすっきりした形にしていく上におきましても、最も大事な問題であろうと思うのであります。ただいま腹案でもございますればお漏らしを願いたいのでありまするが、私はぜひとも、自由なる態勢に輸出入機構を置くことなく、規律ある輸出入機構の整備を希望しておるものであります。
  187. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 この点も、お話の通りまだ研究中でありますが、現在におきましては、特にどういうことにしようかということはきめておりません。しかし、中共貿易に対しましては、御承知のように、輸出入組合を作って、それで一つの統轄をしていこうという態勢を整えつつあります。もし日ソ貿易が相当量に上るという見込みでありますれば、やはり輸出入組合を作っていくということが適当じゃないかと、ただいまのところ考えております。
  188. 小笠公韶

    ○小笠委員 この対ソ貿易の輸出入機構の問題につきましては、おそらくそういう方向にいくのではないかと思うのでありますが、これは当初からはっきりした線を引いていただきたいのであります。通産大臣の説明によりますれば、多くなればやろうということですが、そうでなしに、スタートにおいてどういう機構をもって、どういう決済方法をもってやるかをはっきりして、貿易をすっ送りした形のもとに拡大していかれんことを希望いたして、私の質問を終ります。
  189. 植原悦二郎

    植原委員長 次会は明二十五日日曜日午前十一時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四分散会