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1956-11-20 第25回国会 衆議院 日ソ共同宣言等特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十一月二十日(火曜日)    午前十時十六分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 小笠 公韶君 理事 吉川 久衛君    理事 須磨彌吉郎君 理事 田中伊三次君    理事 床次 徳二君 理事 穂積 七郎君    理事 松本 七郎君       伊東 隆治君    臼井 莊一君       内田 常雄君    北澤 直吉君       笹本 一雄君    重政 誠之君       助川 良平君    鈴木 善幸君       高岡 大輔君    中曽根康弘君       福田 篤泰君    松田 鐵藏君       山本 利壽君    大西 正道君       田中織之進君    田中 武夫君       中崎  敏君    中村 時雄君       細迫 兼光君    和田 博雄君       岡田 春夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         法 務 大 臣 牧野 良三君         外 務 大 臣 重光  葵君         厚 生 大 臣 小林 英三君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         国 務 大 臣 大麻 唯男君         国 務 大 臣 正力松太郎君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 瀧藏君         法制局長官   林  修三君         法務事務官         (入国管理局         長)      内田 藤雄君         外務政務次官  森下 國雄君         外務参事官   法眼 晋作君         外務事務官         (経済局長)  湯川 盛夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         水産庁長官   岡井 正男君  委員外出席者         全 権 委 員 松本 俊一君     ————————————— 十一月二十日  委員池田正之輔君及び櫻内義雄辞任につき、  その補欠として中曽根康弘君及び重政誠之君が  議長の指名で委員に選任された。 同月二十日  理事櫻内義雄理事辞任ににつき、その補欠と  して床次徳二君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  日本国ソビエト社会主義共和国連邦との共同  宣言批准について承認を求めるの件(条約第  一号)  貿易の発展及び最恵国待遇の相互許与に関する  日本国ソビエト社会主義共和国連邦との間の  議定書批准について承認を求めるの件(条約  第二号)  北西太平洋の公海における漁業に関する日本国  とソビエト社会主義共和国連邦との間の条約の  締結について承認を求めるの件(条約第三号)  海上において遭難した人の救助のための協力に  関する日本国ソビエト社会主義共和国連邦と  の間の協定締結について承認を求めるの件(  条約第四号)     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  日本国ソビエト社会主義共和国連邦との共同宣言批准について承認を求むるの件外三件を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 植原悦二郎

    植原委員長 この際、お諮りいたします。理事櫻内義雄君より理事辞任の申し出がありますので、これを許可することといたし、その補欠選任は、先例により、委員長において指名することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 植原悦二郎

    植原委員長 御異議なしと認めます。よって、床次徳二君を理事に指名いたします。     —————————————
  5. 植原悦二郎

    植原委員長 これより質疑に入ります。松本七郎君。
  6. 松本七郎

    松本(七)委員 この歴史的に大へん意義の深い日ソ国交回復鳩山内閣が打ち出されましてから、大へん長い間かかりましたけれども病躯をひっさげてわざわざモスクワまで行かれて、このたびこれが調印の運びになりましたことは、大局的にこれが日本の国のために利益であるという判断から、野党である社会党もこれを支援するという態度を終始とって参りましたわれわれといたしまして、全権団一行、特に病躯をひっさげて御苦労されました鳩山総理に対し、この機会に、衷心から敬意を表するものでございます。(拍手)ただ、今まではびっこの講和であったものが、いよいよ全面講和に入ろうとするわけでございますから、この際私どもは、この共同宣言にもありまするように、ほんとうに相互理解のもとに、友好的な雰囲気を両国の間に作るということが、最も大切であろうと思います。全権団の間だけでこの相互理解がなされるのでなしに、国民お互いの間にこの理解を深めていくということが、大切な点ではなかろうかと思うのでございます。そういう観点からいたしまして、今までの交渉経過をぶり返って見ますると、日本政府のとった立場態度主張、そういうものは、日本国民にも、何度もいろいろな報道機関を通じて知らされておりますから、理解を深めておるのでございますけれどもソ連側基本的な立場なり態度というものについては、まだまだ十分な理解がないのではないかと考えられる節もあるのでございます。こういう点から、ソ連基本的態度を中心にした、またいろいろな交渉過程における疑点をなお突っ込んでお伺いしたいと思うのでございまするが、その際、ぜひ私は内閣諸公にお願いしておきたいのは、率直に、ありのままの真相お話し願いたい。と申しますのは、もちろんこれだけ大きな問題と取り組むのですから、反対意見のあるのは当然だと思います。特に与党である自民党の中にその反対意見があるということは、これは、総理大臣としては非常に気になることではあろうと思いますけれども、その反対意見に遠慮して、言うべきことも言わない、真相をごまかす、いいかげんにするというようなことになりますと、結局できないことが明らかであるようなことも、その説明が不十分なために、国民は何らか淡い期待を持つ。結果においてはそれができなかったというようなことになりまする場合には、相手国日本をごまかしたというような感情も、また国民の中にあやまって出てくるというような結果になるわけであります。そうすると、将来の友好親善に非常にじゃまになるというようなことになりますから、こういう観点から、一つ十分率直にありのままを御答弁願いたいのであります。  そういった経過に対する疑点から質問に入るわけですが、その前に、前提として二つばかりお伺いしておきたいことがございます。それは、これからの国会審議の運営にも関係することでございますが、私どもは、最後まで協力して、なるべく早く国会承認批准にこぎつけて、そして、何とかしてことしこそは年を越さないで、ことしのうちに抑留者に帰ってもらうようにしたいという念願を持っておるわけでございますから、この審議についても、きわめて短かい期間で衆議院は終ろうという協力態勢を、私どもの党もきめたわけでございます。従いまして、政府でも、ソビエト側はこの引揚げについては、事前ナホトカに集めようというような好意的な態度もとっておるということでございますから、日本側としても、やはり批准ができましたらすぐ、この引き揚げの仕事にかかることができるように、できる限りすべてをスピード・アップする努力が必要ではないか。そのことについてまず総理大臣にお伺いしたいのは、大体国会審議とにらみ合せて、ソ連側にもこの批准準備事前にしてもらうように、何らか総理からソビエトの当局に打ち合せをされる御意向はないかどうか、この点をまずお伺いしておきたい。
  7. 植原悦二郎

    植原委員長 松本君に申し上げますが、総理はすわったままお答えすることを御承知を願いたい。
  8. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政府におきましても、年内にぜひ抑留者を帰したい希望を持っておりますので、衆議院参議院とでいつごろ批准になるかという目当てがつきましたならば、さっそくあらかじめその時期についてブルガーニン手紙を出しまして、そして、向う準備をしてもらおうということを相談しております。
  9. 松本七郎

    松本(七)委員 それは非常にけっこうなことだと思います。それから、せっかく先方ナホトカにあらかじめ集結しようというのですから、こちらも引き揚げ準備配船などについて、やはりいつでも批准と同時に出られるように、事前準備するか、あるいはすでに向うに行って待つというような方法は講じられないものか、そういう点はどうですか。
  10. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 いつごろ批准ができるかという時期が、あらかじめ相談できて——衆議院の方は、二十七日ごろというすでに了解ができたようであります。今、参議院だけがまだできておらないのであります。今日も引き続いて参議院交渉いたしまして、大体時期はきまるものと思います。そうしますれば、さっそくブルガーニン手紙を出しまして、こもらの批准がいつごろになるから、だからして、抑留者ナホトカあたりまで出してもらえないかというような、要求を出してみたいと思っております。それについて、日本としても配船準備は当然それに伴ってしたいという希望を持っております。
  11. 松本七郎

    松本(七)委員 河野農林大臣出席はまだでしょうか——河野さんが来られないとちょっと困りますが、それでは、河野さんにはあとで伺うことにいたしまして、外務大臣から一応伺っておきたいことは、先ほど申しましたソ連の今度とった基本的な立場というものは、私どもの観察では、非常にヤルタ協定を重視する、それからポツダム宣言をほとんどこれが基本的なものとして重視しておるように思えるのですね。そういう点のソビエト側考え方というものを、少しここで明らかにしていただきたい。
  12. 重光葵

    重光国務大臣 御質問の点は、よくはかりかねますが、ソ連意向をどう解釈しておるかということだろうと思います。ソ連意向は、私ども承知しておるところでは、お話通りに、ヤルタ協定ポツダム宣言等を非常に重視して、特に戦争中、連合国——すなわち彼らのきめたことは、もうすでに決定済みであるという態度をとって、領土問題等に臨んだことは、御承知通りであります。さようでありますから、領土問題について、最終的に平和条約できめるということが、実はできなかったわけであります。これは、将来に延ばされたわけであります。そういうソ連主張に対して、わが方の主張はまた別にあることは、御承知通りであります。これは、将来に残った問題になっておるというふうに考えます。
  13. 松本七郎

    松本(七)委員 何回も向うと折衝された松本俊一氏にお伺いしたいのですが、ソ連ヤルタ協定を非常に重視したという、そのことについての考え方、これは私ども理解では、ただ日本ソ連関係ではなしに、ヤルタ協定というものは、言うまでもなく、第二次大戦戦争遂行の必要からやられたわけですけれども、それが、大戦が終りまして、アメリカでは、ヤルタ協定無効論というものが出ておるのです。そういう国際的な動きを前にした場合に、ただ小さい領土だとか、ソ連にとっては小さいが、日本にとっては大事だというような日ソの関係だけでなしに、やはり世界全体から、ヤルタの体制というものは、これは少しでもひびを入れさせたくないというのが、ソ連の動かすことのできない基本的な態度になっておるのではないかと思うのです。そういうことから、この領土問題に対しても、ソ連態度というものの非常に強硬な根本原因があるのではないかと思うのです。そういう点を少し突っ込んで御説明願いたいと思うのです。
  14. 松本俊一

    松本全権委員 ただいま松本君からのお尋ねの件でございますが、ヤルタ協定は、御承知通りポツダム宣言とともに、ソ連側としては、戦後の世界を処理する基本方針になっておるのであります。従って、その線からはずれることを極力避けたいということは、ただいま松本君が言われた通りであります。日本側は、ヤルタ協定は、これは関知しないところであります。その主張を強くしたのであります。しかしながら、ソ連側としましては、ヤルタ協定並びポツダム宣言が、その戦後処理の基本になっておりますので、この点を強く主張して、ついにこの点がどうしても正面衝突いたすほかないという結果になっておるのであります。その点は、ただいま松本君が言われた通りでありまして、本交渉を通じて、ソ連側のその意向にきわめて明確になったとわれわれは思っております。さよう御了承願います。
  15. 松本七郎

    松本(七)委員 それだからこそ——私は、松本全権最初ロンドンに行かれる当時の情勢もそうだったと思うのです。歯舞色丹すらなかなか容易に譲歩はしないのじゃないかという見通しがあったわけなんです。  それで、総理にこのことを一つお伺いしたいのは、昨年、最初松本全権ロンドンに派遣される際には、当時の情勢判断からは、大体今松本全権から説明されたようなソ連基本的態度理解すれば、領土問題については相当先方は強硬であろう、従って、歯舞色丹譲歩が得られるならば、ここで平和条約締結妥結しようというような大体の腹がまえが、総理大臣には当時すでにあったということを聞いておるのでございますが、果してそうであったかどうか、この点を総理大臣、から御説明を願いたいと思います。
  16. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 いつごろでしたか、私は時期をちょっと忘れましたが、去年の夏ごろじやなかったかしら、鈴木委員長とお目にかかりましたときに、私は、そういうようなことを言った覚えがあります。
  17. 松本七郎

    松本(七)委員 総理大臣が当時そういろ腹がまえを持っておられたということになりますと、私はソビエト側にもそういうことはわかると思うのです。そこで、去年の八月にソビエト側歯舞色丹譲歩を出してきましたときには、この点を譲歩すれば、必ず平和条約締結して妥結できるという見通し先方は持っておっただろうと思うのです。ところが、その歯舞色丹の線を出してみましたところが、今度は国後択捉要求が出てきた。こうなりますると、ソ連側からすれば、大体総理大臣考え方というものを、歯舞色丹妥結しようというふうに理解しておる先方とすれば、自分からいえば大譲歩です。ソ連側からいえば大きな譲歩をしたつもりでいるのですから、その譲歩をして、妥結に向おうとするとたんに新たな要求を出された、こうして日本不信行為をしたようにあの当時は考えたんじゃないかというふうに、当時私どもは非常にその後の成り行きを、心配したわけです。松本全権は、当時ソ連と折衝されておって、この点はどのように感じられたでしょうか。
  18. 松本俊一

    松本全権委員 ただいまの松本君の御質問にお答えいたします。私は、昨年のたしか八月九日と思いますが、ソ連側が、平和条約の他の条項が満足を得られるならば、歯舞色丹について考慮してもよろしいということを申しましたときに、その状況を東京へ報告いたしました。しかし、それまで、この点は、松本君においてもいささか誤解があるやに私は感ずるのでございます。それまで、私は、決して歯舞色丹要求しておったのでないのであります。ソ連の戦後領有しておりました日本領土全体、旧領土全体、すなわも、南樺太千島全島について日本要求をしておったのであります。従いまして、歯舞色丹は、これはむしろ当然日本領土である、北海道の一部分であるということを強く主張しておりましたので、歯舞色丹ソ連日本に返すということを申しましたとき、それをもって満足すべきものであるということは、絶対に私は考えませんでした。そこで、その後に日本側——ソ連側歯舞色丹を返還するということを申しましたので、日本側としては、今までは全面的に旧領土、すなわち南樺太千島全島要求しておりましたのを、南千島、すなわち国後択捉両島即時返還をこの際要求する、他の旧領土については、サンフランシスコ条約その他の関係もありますので、これを国際会議にゆだねたい、すなわち、日本も入った国際的の協議にゆだねたいという提案を昨年の八月の三十日にいたしましたのであります。従いまして、ソ連側から見ましても、また日本側からいたしましても、国後択捉要求は、交渉の全体としましては、日本側譲歩であるのであります。決して、歯舞色丹向うが返したのに対して、こちらが国後択捉を加えて要求したのではないのでありまして、この点は、私は従来もしばしば説明いたしておりますけれども、多少誤解があるやに思いますので、ただいまの松本君の質問にお答えいたしまして、その点を明確にいたしておきたいと存ずる次第でございます。
  19. 松本七郎

    松本(七)委員 松本全権は、政府方針を体して交渉されたのですから、そういう交渉をされたでありましょうけれども総理大臣は、さっき御答弁がありましたように、大体歯舞色丹妥結してもよいということは、鈴木委員長にもすでに言われておった。しかも、このソビエト側のものの考え方なり基本的態度は、先ほど松本全権説明された通りだという。そうなりますると、松本全権は、政府方針によってああいう交渉は一応されておりますけれども総理大臣の腹がまえとしては、また見通しとしては、当時すでにそのような千島全島要求するとか、あるいはだんだん日本側からいえば譲歩して、国後択捉要求をやったのでは、妥結はむずかしいという見通しを持っておられたのであろうと思いますが、この点はいかがでございますか。
  20. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私が鈴木君と話をする当時においては、いかなる条件ソ連領土問題を解決するかという相談をしたわけではございません。私は、議会においても、緒方君からの質問を受けたのは、歯舞色丹はどういうことにするのかというような質問を受けたのでありまして、当時においては、まだどこでも、その大体においての見通しがついていないのです。ただどの点で妥協ができるだろうかということの探り合いみたいのような時代でありました。鈴木君に対して、あなたの方では、歯舞色丹日本領土として認めることによって、社会党の方はまとまるでしょうかというようなことを伺ったと思っております。私もその当時、歯舞色丹だけで、できるとも、それで満足すべきものとも自分決定していったのではないのであります。少しも交渉が始まっていないのです。今日におきましては、だんだんとそれが具体化されまして、択捉国後が加わらなければ、党としては満足ではないというようなことがきまったのでありますけれども最初においては、そういうようなことはきまっていませんでした。その当時においては、どの程度でソ連との領土問題が解決できるかということについてはへすべての人が心配していたと思うのです。そのうちにだんだん事情を明らかにしますと、択捉国後ソ連は断じて離さないということがほぼ明瞭になりましたから、私は新聞記者との会見におきまして、アデナウアー方式でいくか、あるいは平和方式アデナウアー方式との混合方式でいくかというようなことを言ったような次第でありまして、ただ、そのときにおいては、どういう条件ソ連交渉するかということは、自分自分きまっていない。ソ連に対しても、そういろ交渉をにおわすということは、断じていたしません。
  21. 松本七郎

    松本(七)委員 その点で私は外務大臣にお伺いしたいのですが、鳩山総理は、あの当時から、必ずしも平和条約方式を固執しないでも、今説明されたように、アデナウアー方式とか、あるいは混合方式というようなものを談話その他で発表されたわけですね。私どもも、当時から、これは平和条約方式に固執しておったのではなかなかむずかしいのではないか、少くとも非公式でもいいですから、この方式自体についての何らか他の方式ソ連と話し合う可能性はないかというようなことを打診すべきではないかということを、再三委員会でも意見として申し上げた。当時重光外務大臣は、あくまで平和条約方式でいくんだ。両国ともこれは一致しているのだ、こういう御説明でしたけれども、結果においては、結局平和条約方式でない、鳩山さんの言われる混合方式に落ちついたわけなんです。混合方式鳩山さんが言われた場合には、外務大臣はちょうど出発前でしたが、これは混合方式なんというものは、たわごとだということで、ずいぶん非難されたことがある。それから、農林大臣漁業交渉で出かける前には、国交回復にわたる話は一切してはならぬ、漁業の問題だけだというような、これは党議できまったのであったと思いますが、そういう決定をされて、農林大臣を派遣されておる。結局これも、農林大臣は、ブルガーニンと会って、国交回復の話をしなければ、漁業の問題には入れなかったわけです。私は、この点は委員会でずいぶん見通しとして警告もしたわけなんですけれども、こういうふうな経過から考えてみますと、やはり第一点は平和条約方式に固執しないで、他の方式についても、あの当時からソ連意向を打診される必要があったのではないかと思うのです。今からでは多少結果論になるかと思いますが、どうその点、反省されておるか。またその混合方式たわごとだと言われて、農林大臣を派遣されたときにも、あのようなきゅうくつなワクをはめられたということは、結果としては、見通しの誤りを物語っている。そういう不明について、私は釈明していただきたいと思います。
  22. 重光葵

    重光国務大臣 交渉過程においていろいろのことがあり、また考え方もあるということは、当然のことであろうと思います。それからまた、日ソ交渉の初めに、ロンドン交渉の初めにおいて、委員会等で、社会党委員のいろいろな御意見を伺ったということも、その通りであります。私もいろいろ御意見を伺いました。しかるところ、平和方式国交を回復するということは、これは私は当然のことだろうと思うのです。これは、どの国でも、国交を回復するのに、平和条約方式によるということが、これはもうほとんど常則である、常識である、こういって差しつかえないと思う。ところが、もし平和条約締結するということではいかぬ。ほかの方式でやるならばいいということを相手方が申し出てくれるならば、ここに話し合いということができます。ところが、相手方平和方式でやるのだ、当然のことだ、それでいこうではないかといって話し合いが進めば、それによってやることが私は当然だと思います。そうして、平和条約方式でやるということを日本政府としてはきめ、また与党としても党議できめております。そうでありますから、平和条約方式によって、この問題を妥結に導くという方向に努力を集中しなければならぬと私はそう思います。そうやって集中してきたのであります。さて、それができないということに見定めがついた後に、それならば、これを打開するのには、他の方式によろうではないかということは、これはまた当然のことであります。見定めをつけない前に、いろいろな考え方を出す。これは内輪では差しつかえがありますまいけれども、ただ考え方を出すだけで、交渉を有利に導くことはできないと思います。そこで、見定めをつけた後に考え方を変える、その変えた考え方において、先方が異存がないということによって、これができたわけであります。それは、平和条約の正式の方式でいかぬ場合には、暫定方式を考えたらよかろう、こういうことは、理論的にはそれは初めからわかります。だれも珍らしい説ではございません。それはよくわかっておるのであります。しかしながら、それでいこうといって、どんどんやったら、交渉はまとまりません。まとまるところに、突き詰めるところに突き詰めて、初めて展開するのであります。そういう状況において、今日初めの予定通りの正式の平和条約が作れない、将来に延ばして暫定方式でやる、こういうことに彼我ともに合意をしてできたわけであります。そこで、前からのお話がまことに先見の明があると言われるのは、私はそれは少しも否定はいたしません。さような順序でこれができてきたわけであります。
  23. 松本七郎

    松本(七)委員 河野農林大臣は、漁業交渉モスクワに行かれるときに、国交回復にわたる話はするべからず、漁業問題だけだ、こういうワクをはめられて行かれたわけですが、あの当時、そういうワクの中に入って漁業交渉がうまくできるという考えで行かれたのか、あるいは、そのときすでにこれは国交回復の問題もやはり話を含めてやらなければ、漁業問題の解決はむずかしいという見通しでお出かけになりましたか、どっちでありますか。
  24. 河野一郎

    河野国務大臣 私は外交のことはよくわかりませんから、そういう見通しも何も見当をつけずに、漁業の話をしてこい、また自分の所管のことでありますから、漁業の話をするというつもりで出かけたのであります。
  25. 松本七郎

    松本(七)委員 外交のことはわからないと言われますけれども、わかるわかぬは別として、あなたは現にモスクワまで行って、そうして、第一書記のフルシチョフと三回にもわたって会談され、そうして、この共同宣言その他を調印した責任者の一人なんです。従って、これから私がお伺いすることは、先ほど農林大臣出席がまだなかったから、もう一度念のために申しますけれども全権団の中では、共同宣言にもうたっておりますように、相互理解のうちに、友好的な雰囲気でこれがなされた、非常にけっこうなことです。これを推し広めて、国民の中にやはり相互理解を今後深めていくことが大切だと思う。これについては、御承知のように、与党の中にも意見の相違があることは、これは大きな問題ですから、当然なことです。そこで、向うと接直折衝された、三度もフルシチョフ第一書記と会われた河野全権あたりから、向う考え方なり、ソビエトの状態なりを、ありのまま日本国民に報告されて、そして、日本国民理解を深める努力をしていただかなければならぬと思う。そういうところから、わかるわからぬというようなことにこだわらないで、一つ率直な御意見を承わりたいと思うわけであります。  その次には、まず外務大臣からお伺いしたいのですが、外務大臣交渉に行かれて、条約締結を決意された大きな原因——行かれるまでの委員会審議における外務大臣の答弁なり、御意見を伺っていると、そう簡単に条約締結を決意されることはなかろうというような予想を私どもも持っておったし、国民の多数もそういう感じできっと重光外務大臣を送り出しただろうと思うのですが、あなたが向うに行って交渉された結果、条約締結の必要ありという決意をされたその理由は、一体どういうところにあったのでしょうか。
  26. 重光葵

    重光国務大臣 私が交渉の途中にどういう決意をしたかということは、これは私の実は個人の関係になります。これは、交渉経過を経て、政府としてどうしたかという問題じゃございません。私は、政府自分考え方を進言いたしました。今あなたの言われるような進言をいたしました。その進言をいたしましたことは、その通りにはならなかったのであります。しかし、なぜその進言をしたか、こう言われるわけだろうと思います。それは、どういうことかというと、私は初めから、この交渉に当っては、日本側としては、主張すべきはあくまでも主張して、日本側の言うべきことは言わなければいかぬ、しかしながら、この交渉は、それだからといって、決裂さすべき交渉じゃないのだ、国交の調整ということは、終局的にはどうしても考えなければならぬのだ、そういう考え方を持って、この日ソの関係国交の調整をする、収拾する、こういう考えで交渉に臨むということは、初めから終始一貫申し上げておいた通りであります。そこで、日本側主張すべきことを十分主張してみる。そうすると、ソ連側の承諾し得る限界というものがはっきりします。また、はっきりしたのであります。あるいは、ソ連側の主、張というものが、想像される通りに、非常に強いものがあるというように御了解になっている点も、そういうところから来るのかと思います。そこで、さて、ある程度までは合意がすべて成一立したけれども領土中の一点について合意が成立しない、これはむろん日本としては非常に重要な問題であります。そうでありますから、今後も主張しなければなりません。まだ平和条約締結されておらぬのであります。しかしながら、私はもうこれ以上の譲歩を求めることはできない、これで国交の調整をするという大目的、これが日本の前進であろうと考えて、そのためにはここで妥結をするのがいい、平和条約を作って、さっぱりと双方の国交の調整をしていく方が、日本のためにいい、こう考えました。これがすなわち私がそういう意見を持つようになったわけであります。それも、初めからそういうわけではありません。主張すべきことは主張してみて、そうして、これ以上はどうしても行けないのだというところを見定めた上で、そういう結論に達したわけであります。
  27. 松本七郎

    松本(七)委員 その問題は、あとで、領土の継続審議のときにもう一度少しお伺いすることにいたしまして、次は、河野農林大臣にお伺いしたいのですが、外交はしろうとだと御自分ではおっしやいますけれども、何しろ政治的な感覚においては、いろいろ鋭いものがある。ソ連に行かれて、短期間ではあるけれども、いろいろ様子を見られ、また向うの首脳と話をかわされて、一体ソビエト連邦というものをどういうふうに考えられたか、これは非常に大事な点だと思う。今後の日本の政治の上で、ソ連邦をどういうふうに理解するか、たとえば、外務大臣も、二十年前のソ連とはずいぶん変った、こういう印象を語られておったのを私は聞いたり読んだりしたことがございます。このソ連邦に対する河野全権としての印象、特にソ連邦における政治、社会態勢というものは、今後一体どういうふうになっていくか。端的に言えば、いよいよ強固になってくると考えられるか、あるいはそう順調には発達しないというような疑念も持たれるのか、その点の感想を一つ伺っておきたいと思います。
  28. 河野一郎

    河野国務大臣 お尋ねでございますけれども、この機会に、ここでお答えするにはあまり問題が広範でございますし、また、しかも私が参りましたのは非常に短期間でございますから、先ほどの御注意もございます通りに、日本国民ソ連国民との間に、さらに一そうの理解協力の態勢のできるようにしていかなければならぬことは申すまでもございませんけれども、またその意味において、日本国民が十分にソ連の国情なり社会事情なりを勉強し、理解をするということが一番必要だと考えますので、その意味において多少でも見聞いたしました私たちとしましても、その考を国民諸君にお伝えすることは最も必要なことと考えます。けれども、短時間でここで私が申しまして、かえって誤解を招くような素因を作ることもどうかと思いますので、別の機会にお答えすることといたします。
  29. 松本七郎

    松本(七)委員 もうすでにあなたは方々で書いておられるのですから、一向差しつかえないと思いますけれども、時間があまりありませんから、それはまたゆっくりお伺いすることにいたしましょう。ところで、農林大臣は、漁業交渉をやっておられた当時から、すでに総理大臣みずからのソビエト訪問の必要を感じておられたのではないかと私どもは察せられるのですが、どうでございますか。
  30. 河野一郎

    河野国務大臣 その通りでございます。
  31. 松本七郎

    松本(七)委員 この首相のソビエト訪問は、非常に歓迎された。これはもう先方からいえば、鳩山首相が前から日ソの国交回復の早期実現ということを信念として持っておられるということは知っておったわけですから、当然その御本人が来られれば、大歓迎するだろうと思います。その成果については、結果から見て、重光さんが行かれたと遂に平和条約妥結した場合とどうかということも、これは議論になりましょうけれども、そういうことは別として、やはり総理大臣があそこまで病癖をひっさげて行かれた、その結果、両国の間に友好的な雰囲気が作ら、れたということは、大きな意義があると私は思うのです。いわゆるしろうと外交とか、くろうと外交とか、いろいろ世間ではやかましいことが言われましたけれども、そういった友好的な雰囲気を作ったということの意義と、もうつは、幾らしろうとだと世間から言われても、とにかくこういう成果をあげてこられた。ですから、私どもとしては、農林大臣なり総理大臣が、今度の重要な外交問題を処理されたその経験から、一体日本の今までの外交について、何らか改革の必要を必ず感じられてきただろうということを予想するわけなんです。また、そういうことも期待しておるわけです。そこで、農林大臣は、くろうとじゃないからとすぐおっしゃいますけれども、やはり責任ある閣僚の一人として、日本の外交の今後のあり方というものについては、直接担当者でなくても、いやしくも全権として行かれたんですから、その責任上からも、日本の今後の外交のあり方の大体の方針等については、それ相当の御意見があってしかるべきだろうと思います。そういう意味で、いわゆる旧来の霞ケ関外交、霞ケ関の官僚外交というようなものに、相当大きな変革をこれから加えなければならぬ時期に際会しておるのじゃないか、特に、社会主義の国であるソ連国交回復をやるというこの時期に、私は日本の今までの外交に大きな変革を要するのではないかと思うのでございまするが、この点についての農林大臣の御意見を伺っておきたいと思います。河野全権として……。
  32. 河野一郎

    河野国務大臣 お尋ねでございますけれども、(松本(七)委員「考えておる通り一つ率直に」と呼ぶ)率直に、考えておる通りを申しますれば、必要なときに必要な処置をとることは必要なことと思いますけれども、そういう事態は常にあるものじゃないのでございまして、やはり外交の経験者なり、外交のそれぞれのたんのうの方が、外交の問題は処理されていくことが適当であろう。これは今回参りました経験から考えましても、やはり松本全権がおられましたので、諸般の処理が手落ちなくいったのではなかろうかと考えております。
  33. 松本七郎

    松本(七)委員 いろいろ申し上げたいことは、こういうことでたくさんありまするが、この程度にしておきましよう。  ただ、私が最近特に憂慮いたしますのは、官僚政治の台頭ということなんです。これは総理大臣にぜひお願い申し上げたいのですが、いつでしたか、委員会で、中国あるいはソ連に渡航するについての制限が、内規と称して、これは閣議できめたというのですが、非常に厳格な制限を加えておる。総理大臣に相談しないで、総理大臣の知らない間に、このような憲法違反の疑いのあるような内規を作って渡航を制限することは、私はこれは重大問題だと思うんです。ことしの八月に、御承知のように、原水爆禁止大会が長崎で開かれました。このとき、東ドイツ、ヴエトナム、北鮮、モンゴール等の代表が入国するについて、相当いろいろ難関があったわけです。牧野法務大臣は、結局入国はよかろうというふうな御意見があったんですが、次官会議なるものによって、これはおもしろくないというふうな結論で、また牧野法務大臣の方針がくつがえされておる。こういうふうに、閣僚の意向というものが官僚によってどんどんどんつがえされ、阻止されるというような傾向は、非常に憂うべき問題だと思うんですが、総理大臣から、今まで外務省でやってきたところの内規による渡航制限というものは、この際すみやかに撤廃していただく必要があると思うのですが、その御意見を述べていただきたい。
  34. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 とにかく、渡航の制限というものは、なるべく寛大にする方が大体においていいと思います。あまり神経質になって渡航の制限をするということは、国交を親密にする上においてよろしくないと思います。それですから、すべての国との友好関係ということは必要なものですから、できるだけは広くしたいという気分で政府はおります。どういうような内規があるかはまだよく存じませんが、大体の意見としては、なるたけ自由にした方がいいというような考え方を、閣僚は持っておるものと思っております。
  35. 松本七郎

    松本(七)委員 外務大臣は、この内規を外務委員会説明すべきだというわれわれの要求に対して、結局閣議で相談して返事するということでこれを拒否されたわけですが、総理大臣もいまだに御存じないんですね。こういうことでは、重大な問題です。あれだけの制限をやりながら、総理大臣がいまだに御存じない。すみやかに総理大臣にこの事態を報告されて、善処していただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  36. 重光葵

    重光国務大臣 その問題は、外務委員会でずいぶん御議論がございました。私も、総理の言われる通りに、こういう問題はできるだけゆるやかにした方がいいという考え方でございます。しかしながら、ある種の、取扱いの標準をきめなければならぬということで、これは閣議で一度も二度も議論をいたしました結果、内規ができたわけでございます。その内規によって、次官会議でその内規を運用いたしております。それでありますから、具体的の問題については、この内規の運用によって、決定を措置することが適当であると考えます。そこで、内規をどう改めるかということになりますと、これはまた閣議の問題になりますし、今まだその議論は起っておりません。検討はいたしましょう。けれども、まだ議論は起っておりませんと思います。
  37. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、この共同宣言の内容に入りますが、将来締結されることを予想される平和条約に含まれる事項ですね。それは領土問題だけなのか、あるいはその他に何かございますか。
  38. 重光葵

    重光国務大臣 将来の平和条約にどういう項目を盛り込むか、また暫定協定と同じものを再び繰り返して盛り込むかというようなことは、これは交渉過程においてきまってくる問題だと思います、しかし、今日まできまっておらぬ問題、つまり領土の問題は、これに当然組み込まなければならぬ、こう思っております。この交渉が、将来の難関であろうかと考えます。
  39. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、共同宣言という方式条約方式との、国際法上の相違点というものは、どういうところにありますか。それから、その効果の違いですね。
  40. 重光葵

    重光国務大臣 それでは、私からお答えします。効果においては変りはございません。やはり一種の取りきめでございます。なお、条約上の法理関係の詳しいことは、もし御入り用ならば、条約局長から申し上げます。
  41. 松本七郎

    松本(七)委員 それはいいです。  そこで、河野全権がフルシチョフ第一書記と会談されたときに、いわゆる領土を含む継続審議という日本の提案ですね、これに対して、領土を含むということを入れることを向うが拒否したと報道されておるのですが、この点のいきさつをちょっと報告していただきたいと思います。
  42. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り、フルシチョフ氏と数次にわたり話し合いをいたしまして、いろいろな角度から十分話し合ってみた結果、結論に出ましたように、ああいうことで結論づけることが、双方の理解を深め、協力して参るのに妥当であるということでいたしたのでございまして、私と二人で話し合いました内容にはいろいろな問題がありまして、これは両国のために私はここで申し上げない方が適当と考えますので、差し控えさせていただきたいと思います。
  43. 松本七郎

    松本(七)委員 実はそこが非常に重要な問題なんですけれども、責任のある全権が、両国のために発表できないと言われれば、ここではしいて申しません。  そこで、一つ伺いたいのは、ソ連側態度は、先ほども説明されるように、領土については確定済みなんだ、しかし、歯舞色丹は特別に大譲歩しよう、、こういう立場ソ連がとっておるわけです。そこで、歯舞色丹は、将来平和条約ができたとき返そうというのですから、これは問題がない。けれども国後択捉という特定の島については、全然触れておらないわけです。ここで問題になるのは、国際法上の学説と関連してくるわけですが、国際法上、領土に関する学説が二通りあるうちの、戦争終了後引き続いて特にその権利を継続主張しておかなければ、その領土は事実上占領している国の領有に帰する、これがいわば定説みたいになって、非常に有力な説となっておるわけです。もしソ連側主張が、こういう国際法上の学説にその根拠を置くとするならば、これは将来継続審議の対象から除かれる結果に私は論理的になると思うのです。また、たといその審議の対象には一時なりましても、これは、従来と変った決定を望むことはむずかしいんではないか、こういうことに当然なってくるわけでございまするが、そこのところを、継続審議の中には当然国後択捉も入るという本会議における答弁でしたが、まだ私どもは十分納得できない点がございますので、河野全権から御説明をお願いしたいと思います。
  44. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほども申しました通りに、私は外交のこと並びにそういう学説等のことについては、つまびらかにいたしませんけれども、少くともソ連と話をいたします場合に、学説もしくはそういうふうな過去の慣習というものは、あまり重要視していない、そういうことに論拠を置いてソ連側主張をし、もしくは話をしないということだけは、私は明瞭に言い切ることができると思うのであります。今お話の件等につきましても、ソ連側ソ連側の国内事情をいろいろ述べられましてのお話でございました。私は私でまた、日本の国内情勢等をいろいろ申しまして、話し合いをいたしました。これは、前回私が参りましたときに、ブルガーニン氏から、日本の国内事情を先方も十分了解しておりまして、にわかにこの両島について結論を出すことは、両国の間に困難であろうということを申されましたように、現在の情勢におきましても、なかなかこの問題の結論を出すことは困難があるというような諸般の事情をいろいろ懇談論議い場たしました結果、結論として、共同宣言案に到達したわけでございまして、今お話のように、また日本の各方面で論ぜられますように、学説が云々とか、そういうふうな慣習、慣行が云々ということがありますけれども、私はその点については、今後ソ連話し合いをされます方が、そう考慮に置かなくてもよろしいんじゃなかろうか。たとえば問題になります領海の問題につきましても、すでに日本ソ連との間におきましては、とっております立場が違う。、違っておっても、結論は話し合いの上で出るというようなことでございますから、これらの点につきましては、両国の他の問題を解決して参る上において、なるべく協調的に出ていこうという相手方態度をわれわれとしても十分理解いたしまして、国交の調整をしていくことが妥当であるという意味合いで結論を出しておるのであります。
  45. 松本七郎

    松本(七)委員 そういうことになりますと、法理論に重きを置く立場からするといろいろな問題が出てくるのですが、ここで一つ法制局長官にお伺いしておきたいのは、条約その他の批准事項に附帯決議をつけるとか、そういう事態が生じた場合に、一体その法的効果というものはあるものかどうか、その点を念のために伺っておきたい。
  46. 林修三

    ○林政府委員 お答え申し上げます。御趣旨がちょっとはかりかねたところがあるわけでございますが、国会に御承認を願っております問題につきましては、御承認を願うかいなかということを実はお諮りしているわけでございます。その承認について附帯決議をおつけになるということかと思います。附帯決議は、御承知通り、あくまでも法的のものではございませんで、国会なり、議院の希望の表明だと私どもは考えております。その御希望によりまして、あるいは条約の内容を変えなければならないというような問題があれば、相手方とまた交渉しなければなりませんですが、単なる施行上の御注意であれば、それを承わって施行する、こういうことになるんだと思うわけでございます。
  47. 松本七郎

    松本(七)委員 私の長官にはっきり御答弁をお願いしたいのは、今、再度交渉するとかいうことを言われましたが、それはおかしい。今出てきているのは、批准承認するかどうかということなんでしょう。ですから、その内容にわたってもし相反するような附帯決議をつけるというようなことなら、無意味であって、むしろ批准をすべからずという反対をすべきだと思うのです。それから、この内容についての解釈上について、何か附帯決議をするということなら、これまた全然意味がない。政府の方がもう解釈については、こういう解釈で一致しております、こういう建前をとっているのですから、その解釈について効力のない附帯決議なんというものは、また無意味だ。どっちにしても批准承認するかしないかというこの議案については、附帯決議は私は無意味だと思うのです。その点をはっきりさしていただきたい。
  48. 林修三

    ○林政府委員 先ほどお答えいたしましたことも、大体今おっしゃったことを頭に置いてお答えしたつもりでございますが、御承知のように、国会条約について御承認を求めておりますのは、その条約を、たとえばこの問題で申しますれば、政府批准をすべきかいなかについて御承認を求めているわけでございます。従いまして、この条約についての国会の御態度は、イエスかノーかということだと私たちは思っております。しかし、その決議といいますものは、常にいろいろな法律案についてもございますように、一院の意思の希望の表明だと思うのです。御希望の内容がいかなるものかによって、政府としても考えなくてはならぬ。もちろんそれが条約の施行上の御注意であれば、その院の御趣旨は、政府としても十分に体していかなくてはならぬ、こういうものだと思います。
  49. 松本七郎

    松本(七)委員 これはまた問題にもしなかったときに、さらにあれすることにいたしましょう。  先ほどの領土の継続審議について、総理大臣は、本会議の答弁でも、国際情勢の好転、こういうことを言われたわけです。河野全権の先ほどの御答弁でも、ソ連側は、法理論にはあまり固執しないのだと言われた。そうすると、やはり首相の言われるように、何か客観情勢の変化ということが、大きな条件になってくるだろうと思う。ところが、国際情勢の好転とばく然と言われても、これは一体どういうことを指しているのか、われわれはもう少し説明をしていただかないことには、それではいつごろそういう国際情勢の好転が来るだろうかという判断の材料にもならないわけです。ですから、国際情勢の変化についてはいろいろあると思うのです。われわれもそれ相当に考えてはおりますけれども総理の言われる国際情勢の好転とは、どういうことを予想されて言われておるのですか。
  50. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私の国際情勢の変化 というのは、ソ連択捉島をどうしても持っていたいという原由は、米国との関係において持っていたいのだと思うのです。それですから、米ソの関係が融和されてくれば、択捉についての執着心というものは、ソ連でもなくなるだろうと思う。それですから、米ソの関係というものは、両方ともに、原爆や水爆の競争をしているということのばかばかしさをだんだんに感じてきて、平和になって、何と言いますか、何かの恐怖時代というか、緊張時代というか、その緊張の緩和という時代が来るだろうと思うのです。そういう時代には、択捉国後をしいて固執はしないだろう、そういう時代はやはり領土の問題を決定するにはいい時期だろうと、私の頭ではそんなふうに考えております。
  51. 松本七郎

    松本(七)委員 それならば私どもも大体一致すると思うのです。そういう世界の平和的環境が拡大されてくるということに、大きな期待を持つというならわかるわけです。ところが、一部には、たとえば最近ポーランドやハンガリーでいろいろな動きが出てきた、そういうことから、何かああいう党でごたごたが起きたんだから、もう少し交渉妥結を延ばしておれば、もっと有利な条件妥結できたのではないかというような意見さえ、ちらほら出ているのです。こういう考えは、おそらく総理大臣はとられないだろう一と思うのですが、はなはだ危険な考え方ではないか。やはり今総理の言われるように、平和的環境になるのをただじっと待つのではなしに、日本も積極的にこの平和的環境を拡大強化していくという努力をすることによって、国際情勢の好転と見なすという立場を堅持すべきだと思うのです。この点について、重光外務大臣が、ポーランド問題が起きたときに、一度閣議で報告されたのを新聞でちょっと見まして、多少不安に思ったこともございますので、今総理の言われたことについて、重光外務大臣はどのようなお考えか、承わっておきたい。
  52. 重光葵

    重光国務大臣 私は、その点について誤解を与えるような説明をした覚えは、いずれのところにおいてもございません。私は、国際環境がよくなって、緊張の緩和されるということを念願しておるものでありまして、それによって、日ソの関係も将来ますますよくなるものだ、こう考えておることを、はっきり申し上げておきます。
  53. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、これは河野さんとフルシチョフとの会談のときのことだと思うのですが、歯舞色丹の返還の条件として、沖縄返還、沖縄の施政権が日本に返ってくるということを条件ソビエト主張したということが報道されておるのですが、この点の経過はいかがでしょうか。
  54. 河野一郎

    河野国務大臣 その点につきましては、先ほど申し上げました通り、フルシチョフ氏との会談内容にわたることでございまして、私からはお答えしにくいのでございます。
  55. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、これも会談内容にはなりますが、重光さんがシェピーロフ外相と会談されたと遂に、そして、平和条約締結を決意されたときに、外務大臣としては、樺太、千島のソ連領有を認めても、サンフランシスコ条約には抵触しない、こうい考えを持っておられたよに伝えられている。その点の確認ですね。ところが、ロンドンに行かれてダレスに会われたときに、ダレスがこの点に異議を申し出た。実は、ダレスは異議を差しはさんだのじゃないのだという報道がされておりましたけれども、一面伝えられるところでは、ダレスはそういう意思表示をはっきりしたのだ、そこで重光さんは非常に心配されて、翌日か翌々日か、再度ダレスに会われて、その影響の大きいことをむしろダレスに説得されて、その結果、一たん出したものをダレスは撤回したのだというふうに、私どもは外電その他で読んだことがあるのですが、この点の真相をもう一度はっきりしていただきたい。今の二つです。
  56. 重光葵

    重光国務大臣 今のようないきさつは、実は私は初めて伺うのでございます。伺うのでございますが、私はこう考えているのです。サンフランシスコ条約において、日本南樺太及び千島に対する領土権を放棄したのであります。放棄して、受け取ったのは、これを調印した国々であります。アメリカが主であります。主であるから、アメリカはこれに対して利害関係を持っているということは、当然のことであります。これは疑いをいれません。しかし、それならば、日本ソ連との間に国交を調整する場合において、日本ソ連との間に何も領土の問題について交渉ができないか、こういうと、私はそういう関係は少しもないと思う。ソ連としてはサンフランシスコ条約に入っておらぬし、領土交渉をせんとする領土に最も関係を持っているのはソ連でありますから、これは日本ソ連国交を調整するという場合においては、当然領土の問題についても交渉をして、少しも差しつかえはないものだと考えております。そうして、そういう問題については、日ソ交渉に対する連絡と申しますか、アメリカには十分その交渉経過説明はしておって、理解を持って交渉を進めているわけであります。そういうことについて、アメリカは、何ら日本がそういう交渉をすべきものじゃないというようなことは、一度も言ったことはないのでございます。そこで、これは日ソの間にまず妥結を試むべき順序でありましょう。しかしながら、アメリカ側が、サンフランシスコ条約によってこれに利害関係を持っているということは、これは疑いをいれません。条約に調印して、日本領土をこれらの調印国に放棄しているのでありますから。そうしますと、これを最終的に決定するのに一番いい方法は何かというと、サンフランシスコ条約のときと同じように、ソ連も含めて各国が集まって、そうしてこれをどうする、こうするということをきめるということが、一番いいことに違いはありません。そういう考え方にもしソ連が異存がなく、またアメリカも異存がなければ、日本は当然異存はないのでありますから、そういう意思表示は、日本ははっきりといたしてきたのであります。しかしながら、それは国際情勢でできない関係になっているので、なかなか米国もそういう会議を開くということは時期でない、こう考えております。そこで日ソの間において、交渉上、どういうところに意思が合致するかということを、はっきり交渉によって突きとめなければなりません。そういうふうにして日ソ関係交渉を進めてきたわけでございます。しかるに、領土問題について終局的に意思の合致がない、これからまた話さなければならぬ、平和条約をこしらえるためには、さらに話を続けなければならぬということに相なって、日ソ関係は、将来その問題について交渉を続けることになっております。米国等との関係は、その経過によって連絡をとって、よく利害関係国との間に誤解のないように進めていきたい、こう考えておる次第であります。そこで、幸いにしてアメリカ側が利害関係を持っておる。それならば、アメリカがどういう利害関係を持って、一体どういう考え方領土の問題に対して持っておるか、参考のために知らしてもらいたい、こういうのが私のダレスに対する要求でありまして、そういう話はずっと前からあったのでありますが、それを突きとめてみる。そこで、アメリカ側は、アメリカの考え方はこうであるといって、はっきりとこれを日本側に通告してきたのであります。これは私が帰朝した後でございます。その通告してきたアメリカ側の考え方は、発表した通りでございます。こういうふうにアメリカ側が考えておる、こういうことに相なっております。
  57. 松本七郎

    松本(七)委員 領土の問題についての経過を伺ってみ、それから首相あるいは外相の言われる国際情勢の好転というような御説明を聞いてみますると、条約締結の時期についての見通しというようなことが、きわめてばく然としたものになってくるような気がする。そうすると、条約締結までは歯舞色丹の返還の見込みはないわけだし、それから条約締結ができなければ、国境線の確定ができませんから、この国境線の画定ができなければ、あの歯舞色丹等、いわゆる南部水城における漁業で、いつも問題になる入会の問題も解決できないということになる。そういういろいろな支障がここに出てくるわけです。解決するまでそれが続くわけですが、そういうことから考えますると、これはむしろ重光さんが当時結論を下されましたように、平和条約締結して、そしてソビエト側主張は先ほど松本全権からも説明がありましたように、ポツダム宣言あるいはヤルタ協定基本に、ここに戦争処理としてはっきり画定したい、その上で、別な観点から領土問題については、ソ連としても国際情勢が好転すれば十分考える。今度は戦争の処理ということでなしに、別な観点から再検討する可能性は私は十分あると思うのです。そうなると、もしその可能性があるとすれば、重光さんの言われるような結論で一応平和条約を確定して、そして歯舞色丹の返還もなされる、入会問題その他も問題が解決されるというようなことで、将来の国際情勢の好転に日本も積極的に努力して、そしてその好転のあった暁に、あらためて別な観点から、この領土全体について日本の利益のため、相互の利益という観点から話し合いをするということの方が、より私は現実的ではないかという気がするのでありますけれども、この点について外務大臣のお考えを伺いたい。
  58. 重光葵

    重光国務大臣 さようなお考えが浮ぶこともあろうかと思います。それは一利一害でございます。しかしながら、政府平和条約はあのような交渉、あのような方式ではやらない方がいいということに決定いたしたのであります。そうして暫定方式国交調整をやろう、こういうことに決定をいたしたわけでございます。これは御議論の点はあるかもしれませんが、私は政府がそういう決定をして、その決定がよかったと私は思っております。それはどういうことかというと、国際情勢の変化ということでも、国際情勢の変化というのが、そう急激にくるものじゃありませんし、また日本としても、いろいろ努力をしなければならぬ点がたくさんございます。そうでありますから、これは相当時期を見計らうということも考えなければなりません。それは平和条約交渉を将来に残しておく場合において、より多く見定めができるような気がいたしますから、私はそれでよかった、こう思っておるわけでございます。
  59. 松本七郎

    松本(七)委員 これはもう過ぎたことですし、これ以上は、時間の関係もありますから、追及しないことにします。  次は、鳩山総理がいつも言われるように、今度の日ソ国交回復の意義と申しますか、これによって法的な戦争状態がなくなり、平和に役に立つ、抑留者が帰ってくる、国連の加入ができる、漁業協定が発効できるというような点に非常な意義があるわけですが、特に抑留者が帰ってくるということは、あるいは消息不明の者が、共同調査によって、長年懸案になっていたものがだんだん解決できるということは、きわめて意義深いことだと思いまするけれども、法的な戦争状態が終結して平和を迎えたと申しましても、今後の政策いかんによっては、再び戦争に巻き込まれるということもなきにしもあらずなのです。ですから、総理の言われる国交回復の意義を充実していくためには、どうしても今後の政策が問題になってくるだろうと思います。その点について本会議あたりでの総理の御答弁では、なお不満足な点が多いわけでございまするけれども、私どもの考えでは、今までびっこの講和であったのが全面講和になる、これを契機に、ポツダム宣言にいうところの日本の民主化を一層徹底することによって、これから大事な、東南アジア諸国からまだまだ疑いの目を持って見られている日本が、各国に信頼をすみやかに回復するという、完全独立の達成というような運動に今後積極的に努力する必要があるのではないか。たとえば、あるいは国際連合に加入したのを契機にして、世界の平和のために積極的にどのような具体的な努力をしていくかというような問題になりますと、相当これから考慮すべき政策上の問題があると思います。そこで、その中で、私どもがどうしてもそういう国交回復を意義あらしめるために、今後取り組まなければならぬ問題として、本会議でもわが党からもちろん質問をいたしたわけですが、中国との国交正常化、あるいは東欧諸国との国交正常化、こういう問題についてもう少し突っ込んだ御意見を伺いたいのでございます。  まず東欧諸国の問題は、重光外務大臣が、まずソ連との国交回復だ、ソ連との国交回復をやったら、これを土台に、東欧諸国との国交回復をやる、のだ、こういうことを以前からいわれておったのですが、これは直ちに具体的な日程に上るでございましょうか、どうでしょうか。
  60. 重光葵

    重光国務大臣 まだ具体的の日程には上しておりません。おりませんけれども、その考え方は変りはございません。国交の回復を次々とやりたい、まずソ連との国交の正常化をやりたい、こういうことはたびたび申し上げた通りでございます。しかし、そのほかのソ連の衛星諸国との関係を正常化するという時期は、まずソ連関係批准を御承認を得た上で十分に考えた、いというふうな考え方で進んでおります。これはどうしても着手しななければならぬと思います。ただ中共の問題については、これは少しく事情が異なっておるということは御存じの通りであります。そこで、これはたびたび申し上げます通り、今すぐ政治的の手段を尽すということよりも、許される範囲内において貿易の促進をやるとか、そういうことに余地があるのでございますから、それから進んでいきたい、こういうことを政府は考えて、この点はたびたび申し上げておる通りであります。その点で今日も進んでおるわけでございます。どうぞ御了承を願います。
  61. 松本七郎

    松本(七)委員 中国の問題は、もちろん外務大臣の言われるように、他の国と比較していろいろな支障があると思うのです。けれども、それがあるにもかかわらず、これは日本にとってはきわめて大きな大事な問題でもあるわけです。そこで、これは石橋通産大臣に通商の関係から御意見を伺っておきたいのですが、私ども考え方からすれば、独立といっても、全面講和といっても、一応これは形式的にできるのであって、もっと経済的な自立態勢、健全化を充実していかなければ、ほんとうの完全独立の達成はできないだろう。これから経済的な自立態勢の確立に向う段階に今あると思うのです。現在の国際貿易の状態は、なるほど相当に伸展いたしております。けれども、これからの見通し——西ドイツにしろ、イギリスにしろ、非常な国際貿易の競争が激しくなってきた今日、これからの行く先としては、当然中国、ソ連市場なのです。もうすでに御承知のように、西独にしろ、英仏にしろ、中ソとの結びつきを積極的にやっておるわけです。そこで日本の今までの中国との貿易の実績を考えてみますると、日本の経済の必要から、第一次の貿易協定では、協定額のわずか五%しか実績は上っておらない。第二次はずっと飛躍して三八・八%まで上っておる。第三次貿易協定に至っては七五%まで実績が上っておる。民間の協定で、今のような非常に条件の悪い貿易でも、そうやってどんどん実績は上りつつあるのです。けれども、これはもう限界にきておるのではないか。どうしても今後は、国家が、政府がみずから積極的に中国と日本との貿易の打開に乗り出さなければ、これ以上の発展はむずかしいのではないかと思うわけでございます。そういろ意味から、どうしても日本の経済の実情を考えて——また東南アジアということがしきりに言われておりますけれども、東南アジア諸国は日本が再び帝国主義的に乗り出してくるのではないかという警戒心をまだまだ持っておると思うのです。そうして東南アジア自体が、すでに御承知のように、アメリカのひもつき援助ということに非常に反感を持って参りまして、最近はこれをむしろ断わっておるところが続出しておる。そして中国、ソ連とむしろ接近するような傾向が強くなっておる。そういう世界情勢、東南アジアの情勢を考えまするならば、当然、日本はこれからあらゆる困難を排除してでも、中国との国交正常化に乗り出すということが、緊急の問題じゃないかと思うのです。そういう観点から、石橋通産大臣の率直な御意見を御披瀝願いたのでございます。
  62. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 中国及びソ連との貿易が日本にとって相当重要であることは、お説の通りであります。しかしソ連の方は、今までの歴史を見ましても、そう急激な発展があるように思いません。ただ中国の方は、幸いに中国から日本が買う物がありますし、中国も日本から買う物がありますから、これは先行き非常に望みがある。ただし、現状においては、政治的にソ連よりも一そうの困難がある。国交の正常化ができることは最も好ましいことでありますが、ソ連との正常化は今度はとにかくできるようになりました。しかし、中共と直ちに国交の正常化がどれだけできるかというと、先行き相当困難があることでありますから、すぐにこれを望むわけにはいくまい。ただそれに努力をする必要があるということは、お説の通りであります。  それから貿易の方は、必ずしも中共、ソ連に限らず、東南アジアあるいは中南米、中近東等にも相当伸びる余地がある。これは、日本のこれからのやり方であります。ただ輸出をしようというような小さな考えじゃなく、もっと経済的に日本の伸びる方策はあると思います。必ずしも中共、ソ連に限りません、全体に大いに伸びる余地がある。こう考えております。
  63. 松本七郎

    松本(七)委員 今はソ連等はあまり見込みがない——見込みがないというよりも、ソ連に売る物はあるけれども、買う物が少いという御意見のようでしたけれども、中国との関係をもっと正常化して、積極化した場合には、おそらく中国は、あの急速な建設に、日本からもたくさん物を買わなければならぬと同時に、ソビエトからもうんと買わなければならんと思う。そうすると、日本に必要でない物でも、中国にとってはソ連から買う物は多いと思うのです。そういうふうに、三国の関係を総合的に調整すれば、中国を加えることによって、ソ連日本との関係もずっと開けてくるのじゃないかと思うのですが、そういう点と、もう一つは、国交正常化が困難なら、せめて貿易協定を、政府みずからが政府協定でやるように切りかえる御意思はないか、その二つを伺いたい。
  64. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 中国を加えた貿易、むろんけっこうでありますから、大いにやりたいと思います。それから、中国との貿易協定は、必ずしも日本政府自身がやらぬでも、これはやりようがあります。なお今の貿易協定については、決済の関係とか、あるいは通商代表というような問題についても、まだ解決の道があると存じますから、それは大いにやるつもりであります。
  65. 松本七郎

    松本(七)委員 やる方法があるとおっしゃいますが、今具体的に障害になっておるのは、去年までは、中国側は民間代表部ではいけない、代表部を設置した場合に、外交官待遇を与えてほしい、こういうことを非常に強く言っておった。ところが、最近はそれに固執しない、民間代表でもいいが、あの指紋をとるのだけは困る、こういうことを言っておられる。これは、ほんとうに向うの身になって見れば、ずいぶん失礼な話です。日本の法規から見れば、やむを得ないといっても、この両国の貿易の重要性から言えば、このくらいのことは、何か特別措置を講じて、向うさんが気持よく貿易のできるような方法を講ずべきだと思うのですが、この点はいかがでありましょう。
  66. 重光葵

    重光国務大臣 私どもは、貿易をできるだけ順調に進めていきたいという趣旨には、少しも異存はないのであります。今、指紋の問題でお話がございました。指紋を入国の際要求しておるのは、日本だけではございません。これは日本の法規によってはっきりきまった問題でありますから、理屈から申せば、日本に入国したいという外国人は、当然日本の法規に従って、その手続をすべきだと思います。そういう手続をすることを欲しない人は、入国の希望がないというふうに結論をする以外に、しょうがないように思います。しかし貿易拡張の促進の見地からして、そういうことについて先方希望があるならば、希望を検討して、何か方法があるならば、方法を講じても差しつかえないように考えます。しかし理屈は、私はそういうものだと思います。日本の法律は法律として曲ぐべからざるものである、こう考えます。
  67. 松本七郎

    松本(七)委員 そういう理屈じゃなしに、ほんとうに日本の利益になることなんだから、何とかここで特別措置を講ずべきだということを御質問しておるわけです。  その次は、共同宣言第七項及び議定書でも書いておるように、通商の発展を約束しておるわけでございますが、この約束を果すためには、どうしてもココムの制限撤廃について、国交回復を契機に格段の方策が必要だろうと思うのです。外務大臣はこの前の答弁で、シベリア開発に経済協力が望ましいと述べられておるのですが、ソ連の必要とするのは主として重機械、そういった資本財をシベリア開発には必要としているわけです。そうすると、これは当然ココムの制限に抵触してくるわけです。ですから、どうしてもほんとうにシベリア開発に協力しようというならば、さしあたりこの協力を不可能にしておるところの障害、つまりココムの撤廃についての格段の対策を立てるべきだと思うのですが、この点どのようにお考えですか。
  68. 重光葵

    重光国務大臣 シベリア開発云々のことは、私御答弁した記憶もございませんが、しかし、大体そういうことを原因として貿易が拡大していくということは、望ましいことなのであります。これはけっこうだと思います。従いまして、その貿易品のワクも拡大するように仕向けていくということは、当然望ましいことだと思います。それはココムの問題、またシナ関係の制限の問題も、これは当然でございます。ただこの問題は、貿易制限の一般的な問題です。御承知通り、ただ日ソの関係だけの問題ではない。一般の国際問題であります。そうでありますから、今、一般国際問題として取り上げられつつある状況でございます。漸次に取り上げられる傾向が見えております。わが国といたしましては、ますますそれを取り上げてもらいたいという方向に進めておるわけであります。そういうことになりまして、これが国際的に少しでも緩和されるように、解決を見ることに努めておる次第でございます。これが今日の段階でございます。
  69. 松本七郎

    松本(七)委員 次は領事館の問題です。が、これは両国のこれからの関係を考えると、なるべく多い方がいいと思うのです。日本では、長崎だとか敦賀、神戸、横浜、函館、小樽等がずいぶん要望しておるようですが、その開設場所、数などはどういうところが予定されておりますか。それからソ連側の事情、たとえばウラジオ、オデッサ、ナホトカ、レニングラード、ノヴォシビルスクといった、昔あったところに大体置く予定になっておるのですか。
  70. 重光葵

    重光国務大臣 むろんそれはきまっておりません。まだそこまで参っておりません。これば条約批准があった後に、双方の公館をどういうふうにするかということを、すぐ話し合いをしなければならぬと思っております。わが方としては、なるべく多い方がいいという考え方もございますが、これまた実際をよく検討をして、向うの言い分——大体双務的になっておりますから、向うの言い分をよく聞いてやらなければならぬと思います。その上で、双方協議をいたすことに相なります。
  71. 松本七郎

    松本(七)委員 時間がないようでありますから、こまかいところについては、またあとに譲ることにいたしまして、次に国連加盟についてでございますが、今までの台湾政府の、日本の国連加盟に対する態度から察すれば、日本が単独の場合には、おそらくこれを承認するのではないかと予想されるのであります。今まではモンゴールとの抱き合せとかなんとかいうことで反対しておったと思う。これが単独になれば、今までも承認するという意思表示をしておりますから、大丈夫だろうとは思うのですけれども、しかし当時と、また新たに日ソの国交回復ができたという条件が変ってきておりますから、どういう態度に出るか、必ずしも安心できないのではないか、大体大丈夫だろうと思うのですが、お見通しはいかがですか。
  72. 重光葵

    重光国務大臣 全くお説の通りに思います。この点は、私も大丈夫だろう、こう思っております。そういうことで進めております。
  73. 松本七郎

    松本(七)委員 それから国連に加盟するということには、再軍備ということが絶対に条件にはならないということは、確認して間違いございませんか。
  74. 重光葵

    重光国務大臣 その通りだと思います。
  75. 松本七郎

    松本(七)委員 最近国連に加盟するについては、どうせ警察軍あたりに協力しなければならなくなるだろう、そういう場合にはどうするんだ、というような意見がぽつぽつ出ている。十一月十七日の新聞に、中近東から帰られた藤山愛一郎さんが談話を発表された。その中にも同じようなことを言われた。国連に加盟したら、さしあたりこの国際警察軍あたりに協力しなければならぬが、そういうときはどうするんだという意見がだんだん出てくると思います。国連加盟には決して再軍備は条件ではないということは、今確認されましたけれども、しかし鳩山総理大臣は再軍備促進論者ですから、まさか、そんなことはないと思いますけれども、この促進の一つの口実に、国連にも入ったのだから、警察軍にも協力しなければならぬときもあるだろうからというような、そういう口実に絶対に使わないというお約束をここでしていただきたい。
  76. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国連加盟について、軍備を絶対に持たなくてはならぬという次第でもないのでありまして、軍備を持たないという約束のもとに、国連に加入しておる国々もあるのでありますから、国連加入を理由として、警察軍を作る必要があるということを理由として、日本の軍備を拡張するという気分は毛頭持っておりません。
  77. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、少し飛ばしていきます。ハンガリーの紛争について、この日ソ国交回復ができた今後のことについて、いろいろ心配される点があるのでございまするが、もちろんハガリーの今度の問題は、私どもはこれが国際的なファシストの反革命運動だけがその原因であるとは思わないのです。これは民主的な社会主義の立場からいたしますならば、ハンガリーの勤労者党の政策なり行動の誤まりが、やっぱり一部の原因であるし、その背後にあるところのソビエトの、今までのスターリン体制下における政策の誤まり、無理というようなものが、大きな原因であるということを私どもは考えるわけなんです。けれども、やはりその国際的ないろいろなハンガリーに対する工作、これも見のがすことができないと思うのです。私どもは、こういう今までの動きをいろいろ検討してみますると、日本にも日ソ国交回復後に、日本を基地にしたところの——日本向けの放送なら、これは自由ですよ。アメリカなりソ連なりが、日本国民に、自分の国を理解してもらうために宣伝をやるというなら、これはいいでしょう。けれども日本を基地にして、たとえばアメリカが日本を基地にして外国向けの放送をやる。以前あったような自由アジアーまあ今これと同じ系統だといわれておりますが、VOA放送というようなものがあるように伝えられているのです。これは日本を基地にして外国に向けて放送するわけです。こういう謀略の基地に日本がなるということは、今後極力警戒しなければならぬと思うのでございまするが、今現にV〇A放送というようなものがあるということを私どもは聞かされているので、この点事実を一つお知らせ願いたいのであります。
  78. 重光葵

    重光国務大臣 外国の宣伝機関が日本に存在しているということは、聞いておりません。それはないということであります。
  79. 植原悦二郎

    植原委員長 松本君もうどうでしょう、午後継続することにしたら……。
  80. 松本七郎

    松本(七)委員 もう少し……。
  81. 植原悦二郎

    植原委員長 もう十二時五分過ぎですから……。
  82. 松本七郎

    松本(七)委員 では休憩しますか。
  83. 岡田春夫

    ○岡田委員 ちょっと資料を要求したいと思いますが、公安調査庁で月例に発表いたしております月刊「国際情勢展望」というのがあります。これを八月以降今日まで出ている分、八、九、十と、この三ヵ月分を資料として一つ至急出していただきたいと思います。委員長の方で一つお取り計らいを願います。
  84. 植原悦二郎

    植原委員長 政府の方でお聞き下さったでしょう。今の岡田君の要求される資料を、至急整えてお出し願いたいと思います。  これにて休憩いたします。午後は二時から審議を継続いたします。    午後零時五分休憩      ————◇—————    午後二時二十三分開議
  85. 植原悦二郎

    植原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。松本七郎君。
  86. 松本七郎

    松本(七)委員 この前の本会議のときに、わが党の穗積さんから質問された原水爆禁止条項を共同宣言からなぜ落したかという問題、これについて総理大臣は、この共同宣言の中に入れるのは不適当だから、別個にやりたい、こういうふうな御答弁があったわけなのですけれども、御承知のように、日本国会では原水爆の実験禁止の決議もしております。総理は国連でやるというような御意向のようですけれども、、国連で今すぐやろうといっても、なかなか急にできるものではない。やはり同連でこれを実現させるためには、各国同士でできるところからそういう協定をどんどん結んでいく、そうして積み上げていくということの方が、より効果的ではないか。そうしますと、日本国会ではすでに原水爆の実験禁止決議をしているくらいですから、これはもう共同宣言に入れるか、あるいはそれがどうしても工合が悪ければ、両国の間で別個に共同声明ぐらい出して、そうして日本国民の意思にこたえるくらいの措置をこの際とるべきではなかったかと私は思う。何かどうしてもそういう措置がとれない事情でもあるのか、その間の事情を御説明願いたいと思います。
  87. 重光葵

    重光国務大臣 御意見ごもっともだと思います。原子爆弾実験禁止、また使用禁止はむろんのことでありますが、これはもう日本側としてはこの主張をやるということは、国策の一つになっているわけであります。ただ、総理大臣説明のことく、これをほかの問題と一緒にして、日ソ共同宣言の中に盛り込むというのは——これは実はほかのことなどと関連してこれを入れるということは、ちょっとところを得ないのでありますから、これをはずして——そのことについては、先方にも何ら異議がなかったのでございます。これはそのことそれ自身に不賛成という意味では、こちらでもなし、向うでもむろんないわけであります。ところが、今のお話通りに、国際連合で一括的にできるのを待たず、各国別に機会あるごとにやったらよかろう、こういう御意見も私は非常に理由があることだと思います。そういう機会があるときに、なお努めることにいたしまして差しつかえないので、いたしたいと言ってお答えをしても差しつかえはございませんが、今それでは、どういうふうに再びまた共同宣言の形にそれだけをするかというようなことは、今日の場合においてその機会がないので、これは他日の機会にこれを待たざるを得ないのであります。しかし主義としては、御意見は十分尊重していきたい、こう考えております。
  88. 松本七郎

    松本(七)委員 他日に待つとおっしゃいますが、この日ソ国交回復ができ上った場合は、すぐ共同声明なり、日本国民の要望に沿う形で何らか具体的な措置を講じていただきたいと思いますが、その御意見がございますか。
  89. 重光葵

    重光国務大臣 それを今御約束申し上げることはできない、こう申しているわけであります。しかし、いろいろな機会において日本側のその意向を実現すべく努力をしよう、これだけは申し上げられます。
  90. 松本七郎

    松本(七)委員 今約束できないと言われますが、いやしくも国会でもそういう決議をやっているのですから、もしそれができないなら、なぜできないのか、その事情を御説明下さらなければ、これは了解できません。
  91. 重光葵

    重光国務大臣 その事情は今るる御説明申し上げた通りであります。まだその交渉の時期でない、こういうことでございます。
  92. 松本七郎

    松本(七)委員 そういうばく然とした、ただ時期でないと言われるんでは、これは納得できない。どういう具体的な障害があって、今その時期でないと判断されるのか、そこのところをはっきり御説明願わなければ、これは説明にはなりません。
  93. 重光葵

    重光国務大臣 説明にならぬと言われるのは、非常に遺憾で言いますが、私は説明しているつもりでございます。これは批准を先にして、そうして国家と国家の間でいろいろ接触をしてみた上での話であります。
  94. 松本七郎

    松本(七)委員 これには、アメリカあたりから、そういうことをあまり突き進んでやることを好まないというような影響がやはり日本政府にきておって、それに遠慮されているんじゃないかという気がするのですが、どうでございますか。
  95. 重光葵

    重光国務大臣 そういう疑いがあるなら疑いがあると、初めから言って下されば、それははっきり私も言うのですが、そういうことは少しもございません。
  96. 松本七郎

    松本(七)委員 次は今度原子力の平和利用の方なんですが、これはこの前わが党の志村議員が向うに行って原子力の研究をずいぶんやってきたその報告を見ましても、今後は日本としても、原子力の国際協力態勢にどうしても一枚ソ連を加えなければならなくなるだろうと思うのですが、担当大臣の正力さんから今後どういう方針で進められるのか、ソ連との国際協力態勢ですね。
  97. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 お答えいたします。原子力に関しては、ソ連からはまだ何らの申し込みもきておりません。そして私は何も知りません。が、これは国交でも回復しますれば、そのときに十分検討いたします。
  98. 松本七郎

    松本(七)委員 先方から言ってきてないというよりも、国交回復をした後陣に、こちらから積植的に申し出される御意思があるかどうか。
  99. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 国交回復後、こっちから申し込むかどうか、そのときの情’勢によって判断いたしたいと思っております。
  100. 松本七郎

    松本(七)委員 法務大臣に一つお伺いしたいのです。この前の本会議の御答弁で、治安対策については遺憾なきを期す——遺憾を期すと言われたのですが、これは当然遺憾なきを期すということですが、これはどういう意味なんですか。今後治安対策を拡充するという意味かどうか。伝えられるところによりますと、公安調査庁の拡充を現にはかっておられて、そして予算措置についてはすでに大蔵省と話がついておるというように巷間伝えられておるのですが、その間の事情を御説明願いたい。
  101. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 お答えをいたします。治安の関係につきましては、この数年来ようやく治安対策が軌道に乗って参っております。公安の方はどうも心配なものが非常に多いのであります。例の火炎ビン事件が起きて、皆さんの手で破防法が制定されて以来、ようやく軌道に乗って参りました。この傾向をよくしたいというために、私は治安対策については充実をするということが大切だと思いまして、その点に新しい方針を立てました。それは、政治の自由、思想の自由、学問の自由ということから、従来治安対策がおろそかになっておったと思うのです。そして基本がどこにあるかということについても、深い考えが及ぼされていなかった。そこで今度は新たな組織をこしらえまして、内部の関係を充実して、それに必要なる予算は大蔵当局に認めさせるという方針をとって参っております。でありまするから、大体これで軌道に乗るものと信じております。
  102. 松本七郎

    松本(七)委員 まだ、だいぶんあり一ますけれども、少し急ぎましょう。  先ほど領事館の問題で、ちょっと外務大臣にもう少し伺いたかったのですけれども、大使の交換、これは遅滞なくやるとうたつてありますが、いつごろの御予定か。それからついでに一緒にお伺いしますが、大使館員の制限の問題、これは自民党あたりでも少し制限した方がいいのじゃないかということが、新聞にも伝えられておるわけですが、これをやるのに、やはりヴィザの拒否というようなことになれば、これは露骨な非友好的な措置になる。制限するにしても、相互主義に基くでしょうが、かりに話し合いでやるにしても、やはり館員を制限するということ自体が、友好促進の上からいえば、あまり好ましくない。そういう御意思がおありなのか。それとも、向う希望するものは、これは向うの費用でするので、何も損はないのですから、できるだけ受け入れられるおつもりがあるのか、そのことをお伺いしておきたい。
  103. 重光葵

    重光国務大臣 先ほど大体のことはお答えいたしておきましたが、大使の交換の方はでき得るだけすみやかにいたす、でき得るだけすみやかということは、批准交換の日が、この国会状況によっておおよそきめ得るだろうと今希望しております。そこで、それがきめ得るならば、それによって大体の見当もつくわけでありますから、日本側としては人選に着手し、そして大使の交換の日取りもおおよそわかるようになるだろう、こう考えております。  大使館員の数の問題でございますが、これは私は大体常識できまり得るのだと思います。今お話通りに、こういうものはすべて考え方としては、双務的にならなければならぬと思います。こちらがたとえば十人であるならば、向うも十人と、非常に窮屈にする必要もないかと思いますけれども考え方としては、これは双務的でなければならぬと思います。そこで、おおよそ大使館として必要な人数は、常識できまることでございますから、大使交換の上、もしくはその前からでもよろしゅうございます炉、双方の話し合いによってこれはきまり得る、こう考えております。領事館の方も大体そろいう考えでもって、こちらはどこそこに領事館を置きたい、向うはどこそこに置きたいということで双務的にやり得る、話し合いがつく、こう考えております。
  104. 松本七郎

    松本(七)委員 大体その程度にしておきたいと思うのですが、午前中御答弁のあった中で、もう一度はっきり確認しておきたいことが二、三ございます。その第一は、外務大臣がシエピーロフと会談されて平和条約締結を決意されたときのことを先ほどお伺いしたのですが、あの当時国後択捉を含む千島、それから南樺太ソ連領有を認めたとしても、これは桑港条約に抵触するものではないと、こういう意見であったと思われる。このことをさっきお伺いしまして、これは大体そうであるという御返事をいただいたように思うのですが、これは非常に大事な点でございますので、もう一度ここで、それに間違いがないかどうか、確認をし一たいと思います。
  105. 重光葵

    重光国務大臣 私は先ほどはこう申しました。そういう領土の問題について日ソの間に話し合いをするというととは、少しも差しつかえのないことである、しかしながらサンフランシスコ条約に規定のあるものについては、サンフランシスコ条約の調印国において利害関係を持っておると申し上げました。従いまして、アメリカあたりには十分に意思疎通をしつつ交渉をしてきたのである、こう説明を申し上げました。さようなことで外交交渉としては十分に進み得るもの、こう考えております。
  106. 松本七郎

    松本(七)委員 アメリカに利害関係があるかないかということではないのです。先ほどの御答弁でも、参考までにアメリカの意見を聞いた、こう言われた。ダレスからこれが桑港条約に抵触するのだというような意見が積極的に吐かれたように、私どもは外電その他で理解しておったわけなのです。そこを御質問しましたところが、いやそうじやないのだ、これは参考のために、ただダレスの意見を聞いただけであって、国後択捉を含んだ千島、南樺太ソ連領有を、平和条約を結ぶことによってきめようとされたのですから、そういう決意をされた当時は、これは桑港条約に抵触しないと判断されだからこそ、あのような決意をされたのだ。だから、そのときの考え方は、今申しましたような考えに基いてやられたのであるということを確認しておきたいわけです。アメリカとの関係は、利害関係のある国はたくさんあるから、そこにも十分自分の意のあるところを通じて、そして理解させようということはわかります。けれども、それが条件ではない。抵触しないという判断に立たれて、そしてソビエト話し合いをされたということは、ここで確認していただいていいと思う。
  107. 重光葵

    重光国務大臣 私は、私の言葉でもって言いたいのであります。あなたの言葉をそのままそうであると申すのは、少し危険であるように思います。そうでありますから、私は申し上げます。これは日ソの間で交渉し、妥結して決して差しつかえはない、何も差しつかえない問題である、こう申し上げたのであります。それがサンフランシスコ条約に抵触することのないものであると御了解になるならば、それはあなたの言葉で御了解になっても、少しも差しつかえございません。しかし、これがサンフランシスコ条約の調印国に関係がある、こういうことも当然のことでありますから、その意味において、外交交渉によって関係国の了解を得るための手段をとっておるのだ、こういうことを申し上げておるわけであります。
  108. 松本七郎

    松本(七)委員 そのことが桑港条約に抵触するかどうかという判断を私にまかせるという、そんな無責任な答弁はない。政府はこのことをどう解釈するか、桑港条約に抵触すると考えられるのか、しないと考えられるのか、そのことを聞いておるのです。だから、そちらの見解をここではっきり説明して下さい。
  109. 重光葵

    重光国務大臣 日ソの間でこの交渉をし、妥結をすることは、サンフランシスコ条約に抵触するとか何とかいうことはないと思います。
  110. 松本七郎

    松本(七)委員 それでいいです。これは外務省当局も、今の重光さんの、国務大臣としてよりも、外務省長官としての見解と当然同じだと思うんですが、条約局長から一度確認しておきたいと思います。
  111. 下田武三

    ○下田政府委員 ソ連は桑港条約に参加していないわけでありますから、日本ソ連の間に別個の約束を作ることは法律上可能なわけであります。そこで問題は、日本と連合国との間にある約束を作り、日本ソ連との間に別の条約関係を結ぶ。それがぴったり合わない場合には、日本と連合国の間にはこういうことが事実として発生し、日本ソ連との間にはまた別の事実が発生する。そしてその二つの事実を調整するという国際的の企図によって解決される、そういう事態になると思います。
  112. 松本七郎

    松本(七)委員 この国後択捉を含んだ千島、南樺太ソ連領有と認めること自体を聞いているのです。それが桑港条約には抵触しないと考えると今外務大臣は言われた。外務当局としてもその見解に同意されるかということなんです。そこのところを明快にお願いしたい。
  113. 下田武三

    ○下田政府委員 それは日本が抵触するときめてかかる必要はごうもないと思います。
  114. 松本七郎

    松本(七)委員 抵触するかどうかきめてかかる必要はごうもない。そういうあいまいな返事をされるから困る。抵触しないと考えると、今外務大臣は言われたでしょう。それに外務当局も同意されるか、そこのところを、そういうあいまいな答弁をしないで、はっきり言って下さい。
  115. 下田武三

    ○下田政府委員 外務大臣のおっしゃいました通りで差しつかえないと思います。
  116. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、やはり午前中出ました指紋問題なんですが、これは決して単に——さっき法律々々と言われたが、これは出入国管理令になるのですよ。この出入国管理令に規定する指紋の問題だけのことじやないのです。中国の貿易代表というものは、向うからいえば、役人扱いされている役人なんです。ですから、これはオフィシャルな。パスポートで来るわけですから、政府がほんとうに貿易促進の意味から、友好関係促進の意味からも、これを優遇しようという気持さえあるならば、これは外国の政府の役人として扱うことはできると思うのです。ですから、そういうふうな政府の役人として、あるいはこれに準ずる扱いを今後はすべきではないかということを言っておるのです。それは簡単にできると思います。いかがでございます。
  117. 重光葵

    重光国務大臣 私は、この問題は主として法律の解釈の問題だと思います。その解釈をどういう工合に解釈するかということでありますから、その解釈を、私ども考え方によると、できるだけ寛大にしたい、こう考えておるわけであります。しかし、この問題をどうするかということは、やはり法律を解釈する当局にまず第一にたださなければならぬと思います。
  118. 松本七郎

    松本(七)委員 それから日ソの国交が回復されますと、さっき外務大臣が答弁されたように、当然東欧諸国との関係もだんだん正常化されることも近いだろうと思いますが、そうなってきた場合に、外務事務当局として、この今までの機構で果していいかどうか、そういう事態に対処して、何らか新しく機構を変える計画があるかどうか、その点を伺っておきたい。
  119. 重光葵

    重光国務大臣 国交のない国々との間に、国交を漸次に開きつつあるわけでございます。最近では日ソの問題を論ずる段階になったのでございます。そういうわけでありますから、国交を開く国が多くなればなるほど、これに関する外交上の折衝、外交事務というものが多くなるのは当然でございます。そこで外務省の機構といたしましては、戦前の機構にまでまだ遠く及ばぬような状況でございます。従いまして、国交を回復しておる国が戦前並みに、もしくはそれ以上になりつつある今日においては、これに応じて機構は充実しなければならぬと思って、せっかく努力をしておるわけではあります。これについては、予算の関係もございますし、十分協議をして進めていかなければならぬと思っております。
  120. 松本七郎

    松本(七)委員 新聞の報道では、今の欧米局から欧亜局というのですか、何か別な局を独立させるというような計画があるように伺っておりますが、何といっても、アメリカの方の一方のあれと、ソビエト、東欧諸国というものは、あらゆる点からいって、世界における一つの大きな勢力なんですから、どうしてもあらゆる面で仕事の性質も違うだろうし、新聞の報道が正しいとすれば、やはり欧亜局というものは独立させるくらいの意気込みでやることが、私はいいのではないかと思うのです。今でも法眼参事官が一応局長のような立場で担当されておるのですから、これはやはり拡充していくことが、今後の日ソ国交回復を契機にして、事務を円滑にする道じゃないかと思うのです。そういうことまでまだ計画されておらないのですか。
  121. 重光葵

    重光国務大臣 そういうような御趣旨の通りの意味でもって、計画はあるのでございます。計画は十分あります。これは政府部内で協議をして、できるだけすみやかにそういうことを実現していきたい、こういうふうに努力をいたしております。
  122. 松本七郎

    松本(七)委員 漁業資源の保護の問題で、ちょっと河野さんにお伺いしてみたいところがあるのです。それはこの附属書に出ておる現行の規制ですね。これは条約が発効した後は、当然全面的に日ソの漁業委員会で再検討されることは可能だと思うんですが、どうでございましょう。現行の制限規定ですね、附属書に載っておりますでしょう。それを再検討することは可能だと思いますが、どうでしょう。
  123. 河野一郎

    河野国務大臣 お説の通りに、漁業条約が発効いたしますれば、漁業委員会におきまして実情に徴して合議の上、適当な方法でやっていこうということになっております。従って、今年やりましたことは、暫定処置でございますから、なるべく早い機会に委員会を開きまして、そこで十分話し合ったらよかろうというつもりでおります。
  124. 松本七郎

    松本(七)委員 せんだっての漁業交渉を通じて、ソ連側の出した制限のやり方、あるいはその他ソ連側主張を、河野さんは非常に科学的なものだ、こういうことを言われておったようなんですが、今の制限の問題にしても、なるほど科学的ではありましょうけれども、必ずしもソ連側でも全部の学者が一致した見解でこれができたものじゃないんですね。あの漁業界でよく言われておりまするように、バラーノフの説とモイセーエフの説かずいぶん論争になったあげく、イシコフ漁業相は大体モイセーエフの説をとって、ああいう非常に厳密な制限を加えることにしたと言われておる。そういうふうに非常に厳密な制限を加えるということになりますと、結局しわ寄せば中小企業者が一番強く受けるんじやないか。従ってこのバラーノフのように——日本立場もこれと大体同じです。相互漁獲量を制限することによって、あと網の制限その他はあまりやかましいことを言わない方がいいんじやないかという説は、ソ連の中にもあるんですね。ですから、科学的であるとは言え、そんないろいろな説があるのですから、こういう点はやはり日本の中小漁業を中心にした日本立場をもっと考慮して、再検討する必要があるんじゃないか。あるいは例の領海の問題ですね。三海里、十二海里、これもイギリスとソ連協定によれば、三海里、十二海里の間でもこれはできるように取りきめをやっております。そういうような措置は、今後これは十分やれると私どもは思うのですけれども、こういう点は十分やれる見込みがあるかどうか。
  125. 河野一郎

    河野国務大臣 これは打ち合せをいたしました立場から申しますと、先方が閣議決定で出して参りました網の目、もしくは網の間隔等につきましては、こちらから十分説明いたしますと、こちらの意見を取り入れることに先方もそうやぶさかでないわけであります。従いまして、今年暫定取りきめをいたします際にも、こちらで説明いたしました点について、向うも了承している点もあります。また、こちら側でも、先方のいろいろの説明を聞きまして納得している面もあるのでございまして、これは一方的にソ連側から断定して出してくるというようなことにはなっておりません。なお、ことし実施いたしました経緯につきまして、さらに今後の委員会において検討して結論が出るというような場合もあると考えます。ただ、そのしわ寄せが中小企業の漁業者にいくだろうということにつきましては、必ずしも私はそういうふうには考えておりません。これはそういう制限をしたら、それが中小企業の、いわゆる独航船にそのしわ寄せがいくのだというようなことではなくて、あれだけ漁獲の制限をいたしますと、出漁いたします独航船としては、所期の目的達成に、従来ほど困難せずに漁獲はできるようになるだろうが、一方において、出漁を希望している独航船をどういうふうにして整理するかという問題が起ってくる。これは船団全体の問題として今後考えられる問題になるだろうと思うのでありまして、網の目が小さくなるとか——これは、初めソ連側が言いました網の目の大きさにつきましては、網の目のはかり方が、日本のはかり方とソ連のはかり方が違っておりましたために、そこに多少こちらとしても誤解があって、話し合った結果は、ソ連側の言うことはこちら側も納得のできることであったというようなことでございますから、一部言われているようなことではないと私は考えております。
  126. 松本七郎

    松本(七)委員 なお、まだいろいろ御質問がございますけれども、同僚議員から今のような点、詳しく質問する予定になっておりますから、この程度にとどめておきたいと思います。  最後に、総理大臣に御要望申し上げたいと思うのです。非常に大きな歴史的な仕事をやられて、いよいよ批准も近くなったわけでございますが、総理も引退をすでに表明されているようなことでございますけれども、せっかくこういう仕事をなし遂げられた鳩山さんでございますから、どうぞ今後この日ソの友好親善のために大いに一つがんばって働いていただきたいということを特にお願いいたしまして、私の質問を一応これで終りたいと思います。
  127. 植原悦二郎

    植原委員長 北澤直吉君。
  128. 北澤直吉

    ○北澤委員 総理の御都合もあるようですから、総理に対する質問はなるだけまとめてやります。そのあとで他の閣僚に対する質問をいたしたいと思います。第二次世界大戦が終りましてから十年余になるわけでありますが、歴史を見ましても、大体大きな戦争のあと十年くらいたてば世界情勢が大きく動くというのが普通であります。今回は、御承知のように、中近東の問題、東ヨーロッパの問題を中心としまして、この世界情勢が非常に大きく動いておりまして、特に今回は、世界の出大国の中のイギリス、フランス、ソ連この三大国が直接関係をしておるというところに、私は大きな意義があると思うのであります。そういうわけで現在の国際情勢は大きく動いておるわけであります。この大きな情勢の動きに比しまして、日本がどういう内外政策をとるかということは、まことに重大な問題であるわけでありますがこのときに当りまして、日本が終戦以来初めて世界の共産圏諸国の指導的立場にあるソ連との間に国交の回復をするということは、日本の外交に一つの大きな新局面を開くわけでありまして、日本の内外に及ぼす影響もすこぶる重大なのであります。そういうわけで、国民のこれに対する関心も非常に深いものがあると思いますので、私はこの国会を通じまして、この問題に対する真相をなるべく詳しく国民に周知することが、この際最も必要だという考えで、お尋ねをするわけであります。どうぞ率直明快にお答えを願いたいと思います。  そこで、申し上げたいのでありますが、日ソ交渉に関する私どもの根本的な考え方は、なるべくすみやかにソ連との間に国交を回復するということにつきましては、全然賛成でございます。日本としまして世界のすべての国と正常な外交関係を持つということは当然のことでありますので、私どもは、そういう意味におきましてなるべくすみやかにソ連との間に国交を回復するということにつきまして賛成であります。問題は、その国交を回復する場合、どういう時期にするか、あるいはどういう方法でするか、あるいはどういう条件、どういう内容において国交の回復をするかということが、私は問題だと思うのであります。なるべく有利な条件、なるべく有利な時期において国交を回復するということが、当然日本として考えなければならない問題でありまして、こういう点について、私どもは、できるだけ日本立場を考えて、慎重にこれに当らなければならないということを、実は主張して参ったわけであります。  そこで、まず日ソ交渉、日ソの国交回復の時期の問題についてお尋ねしたいのでありますが、日ソの交渉を進めるに当りましては、内外の情勢をできるだけ正確に把握して、日本立場をできるだけ有利にするように考えるべきことは当然であります。しからば、政府は、今回の日ソ交渉を進めるに当りまして、先ほど申しましたような中近東あるいは東ヨーロッパにおきます情勢を中心とした大きな国際情勢の変化、あるいはソ連の国内情勢の動向、ころいうものを十分研究をされて、その基礎の上に立って日ソ交渉を進められたかどうかという点を伺いたいのであります。偶然の一致かどうかわかりませんが、十月十九日に日ソ共同宣言に調印をされた。その次の日の十月二十日には、ポーランドの自由化に関連しまして、ソ連とポーランドの間に紛争が起った。フルシチョフその他ソ連の指導者がポーランドのワルソーに急行した。さらにそれが進んでハンガリーの問題となり、さらに進んでほかの衛星諸国の国内情勢にも大きな影響を与え、さらに進んでは、スエズ運河問題に関連しまして、イギリス、フランスが兵を出すという状態になったわけなのであります。そこで、まずソ連は、そういう情勢の変化を頭に置いて、日ソの交渉妥結を急いだのではないかという疑いも私どもは持つのであります。御承知のように、日本が、戦争前にノモンハソの事件がありまして、日本の方ではなるべく早くノモンハンの停戦をやろうと思ったのですが、なかなかソ連日本要求をいれない。ところが、突然ソ連の方で日本要求をいれて、ノモンハンの停戦協定が成立するやいなや、直ちにソ連はポーランドに兵を入れて、ドイツとポーランドを分割した、こういう前例もあるわけであります。そういうわけで、私どもは、日ソの交渉につきましては、そういう世界の大きな動きを常にながめながら交渉を進める必要があると思うのでありますが、今回の交渉に当りましては、政府はそういう情勢を十分に考えて交渉を進めたかどうか、まずこの点についてお伺いしたいと思います。
  129. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私が日ソ交渉国交の正常化を唱え出しましたのは、昭和二十七年の九月の十二日が初めてであります。そのときは、ソ連と米国とが戦争をしはしないだろうかというのが、アメリカのいろいろな雑誌にも出たくらいに、ソ連の軍備拡張も、アメリカの軍備拡張も、一九五二年を目ざしてやったのであります。一九五二年ごろに戦争が起きるかもしれないということが伝えられていたわけであります。そういうような世界情勢のときに、日本ソ連とは戦争状態終結未確定の事態にあるということは非常に危険だと思いまして、戦争状態終結確定の事態を作り上げることに努力しなくてはならないと演説をいたしました。それから五年たったのでありますが、やはり世界の緊張緩和という声は、世界の心ある人が言っていることと思うのであります。その緊張緩和をするためには、ソ連日本とが国交を正常化するということが最も必要なことであります。両国の橋渡しにでもなるということができれば非常に世界のための幸福だと思いまして、日ソの交渉に熱心になってやっているのも、その意味にほかならないのであります。
  130. 北澤直吉

    ○北澤委員 大体のお話はわかったのでありますが、今回の中近東の情勢あるいは東欧の情勢については十分な情報を知らないで——世界の緊張緩和というような大きな傾向については大体御承知であったけれども、中近東や東欧諸国を中心とした大きな新しい動きにつきましては、十分な情報を持たないで、交渉を進めたというふうに私は理解するのでありますが、そうではありませんか。
  131. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ポーランド並びにハンガリーについてああいう事件が起きるということは、調印の一日前に知ったのでありまして、日ソの国交を調整しようとする最初のときにおきましては、もとより知りませんでした。調印の前には、フルシチョフが、河野君に、二日延ばしてもらいたい、レセプションも同時に延ばしてもらいたい、自分はそれに出席したいから、二日延ばしてもらいたい、そうして、ポーランドの事件を片づけて、その後に調印をしたいということは言ったのです。調印する当時におきましては、ポーランド事件が起きるということは知っておった。しかしハンガリーのことは知りませんでした。
  132. 北澤直吉

    ○北澤委員 ソ連側の方で、二、三日調印を延ばしてもらいたい、こういうふうな申し出があったが、それに対して、日本の方でそれを延ばすことをせずに調印をされた。そのときのお気持を伺いたいと思うのであります。
  133. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、ソ連日本のため、また世界平和のために、世界の緊張緩和のために、一日でもすみやかに日ソの国交を正常化するということを必要なりと思いましたから、せっかく話し合いができたのであるから、二日延ばすのをきらったわけであります。
  134. 北澤直吉

    ○北澤委員 総理は、従来、あらゆる機会におきまして、ソ連はだんだんと平和の方向に向いてきておる、従って国際間もだんだん緩和してくる、従って日ソ交渉も順調にいくだろう、こういうふうに述べられておるのであります。私は、昨年の暮れ、予算委員会でこの点について総理質問を申し上げまして、大体そういう傾向にあるかもしれませんけれども、当時ソ連はエジプトに武器を売るなりあるいは中近東方面に相当経済上の進出を企てておる、こういうようなイギリス、フランスの生命線ともいう中近東、スエズ運河、あるいは世界の石油資源の中心である中近東に対して、ソ連がそういうふうに出るということは、結局国際情勢に大きな変化が起きはせぬかということを申し上げた。ところが、総理は、そういうことについてあまり神経質にならぬ方がいいというふうな御答弁があったのでありますが、最近の情勢——それはその当時の情勢なりとして、とうとうこの中近東の状態がほとんど爆発の状態、現に武力行使が行われておるという状態に相なったのでありますが、総理は、今後の国際情勢の大きな見通しとして、やはりこの国際情勢はだんだん緩和する方向にいくとお思いでございますか。それとも、外務大臣がこの間本会議でお述べになりましたように、この二大陣営の冷たい戦争はますます激化する方向にいくとお考えでございますか。その点をお伺いしたいと思います。
  135. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 緊張緩和の方向にわれわれは努力をしなくてはならないと思っています。ちょうど、イーデンが、イギリスでオーストラリアやその他の国々の首相を集めまして相談をしたときに、その演説で言っております通り、われわれは世界の緊張緩和に努力しなくちゃならない、そうして米国とソ連との橋渡しになりたい、それには経済的の力もたくわえなくちゃならないという演説をしておりましたが、イギリスですらやはりソ連と米国との間の橋渡しをしたいというような希望を持っておるくらいであります。私は、日本として、自由主義国家群と提携をしながら、なおソ連国交を正常化して、緊張緩和のために努力することが日本の外交の大方針であると考えなくちゃならぬと思います。
  136. 北澤直吉

    ○北澤委員 次に、日ソの交渉のやり方について伺いたいのでありますが、今回の日ソ交渉妥結の結果については、鳩山総理も必ずしも満足ではない、こういうふうに述べられておるのでありますが、結局、、そういうふうな事態になったことにつきましては、私どもの考えでは、日ソの交渉のやり方にある欠点炉あったのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。と申しますのは、日本ソ連との国力の違いもありまして、日本ソ連だけ相対して交渉しましても、なかなかこれは日本主張を通すことは困難であろうと私は思うのであります。昔から、国力と申しますか、力の背景のない外交はなかなか成功しないわけであります。特に最近の世界情勢を見ておりますと、はなはだ残念ではございますが、国際関係の現状は弱肉強食の状態でございます。総理がしばしば仰せになる友愛精神というものは、国際関係には適用がないのじやないかと私は思うのでありまして、現在のハンガリーの問題あるいはスエズの問題等を考えますと、現実の国際情勢というものは、残念ながら弱肉強食、力の政策だけで進んでおる、こういうふうに私どもは考えておるわけであります。こういうふうな状態におりまして、特にソ連のように唯物史観の立場に立って考えている世界観を持つものは、力以外のものは何も尊重しない、力が唯一の彼らの尊重するものであるというふうに考えられておるわけであります。そういうソ連を相手にして日本交渉をする場合におきましては、どうしてもこれは、日本だけの力でなくして、外は世界中の日本に好意を持っている国々の支持をできるだけ求めて、また国内では世論の統一をはかって、強力な世論のバックのもとに交渉を進めなければ、十分な成功はできないのではないか、こういうふうに考えておったわけであります。きのうも、この委員会で、アジア、アフリカ方面の国々の支持を得て今後ソ連に対する日本主張を入現するようにしたらどうか、それに対して、総理から、その通りであるという御答弁があったのでありますが、私どもの考えによりましても、ひとりアジア、アフリカ諸国のみならず、世界中で日本に好意を持っておる国々の支持を十分に求めまして、そうしてその上に立って交渉しなければ、日ソの交渉はなかなか日本側の期待するようには進まない、こういうふうに従来とも実は考えて参ったわけでございます。ところが、その点につきまして政府はできるだけやったのでございましょうが、私どもの見るところでは、十分にやっておらない。特に、日本と最も密接な関係にあり、共同防衛の関係にありまするアメリカとの関係におきましても、この点は必ずしも十分でないというふうに私どもは考えるわけであります。と申しますのは、日ソの交渉を始めてから、領土問題についてアメリカの意見を聞いてみたり、あるいは、交渉の最終の段階におきまして、平和条約二十六条の解釈についてアメリカの方から文句が出たり、あるいは、せっかく、南千島は日本主張するように、日本が桑港条約で放棄をした千島の中に入っておらない、こういうように、非常に日本に有利な方針をアメリカが天下に宣明をして、日本を支持してくれたということがあったにもかかわらず、これも十分に日本は利用できない。そういうことで、ほとんどソ連の言う通り条件で日ソの交渉妥結したことに相なったのではないかと思うのでありまして、私どもの考えでは、どうも、政府のやっておりますことは、諸外国の支持を求める、あるいは、国内の世論のできるだけの統一をはかって、そうして世論の強力なバックのもとに交渉を進める、こういう点において遺憾の点があったのではないかと思うのでありますが、そういう点について総理はどういうふうにお考えでございますか、伺いたいと思うのであります。
  137. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、ソ連との国交の正常化について、アメリカは少しも悪意は持っていないと確信をしております。それから、力が非常に世界の平和に影響があるということはいなめないでしょうけれども、昔のように戦争によって物事を解決しようという考え方は、ほとんどなくなったと思います。それは、原爆、水爆が発明されましてから、この次の戦争は、どちらが勝つか、どちらが滅びるかではなく、全部が滅びるということが大ていの認識になっておりまするから、力によってものを解決するというような考え方はだんだんとなくなると思う。これからは平和外交というものがほんとうに成立するというような事態が近づいてくるような気がするのであります。そうしてそれに努力をするということが、世界人類のために共同の目的でなくてはならないと思っておりますので、それがためにも、日ソの交渉は時を得たものと私は考えております。
  138. 北澤直吉

    ○北澤委員 日ソ交渉妥結についてアメリカ方面で別段異存はない、こういうお話でございますが、この点については、先般、アメリカの国務省のスポークスマンが、アメリカ政府正式の態度として発表したものによりますと、日ソの交渉妥結そのものについては別に異存はない、しかしながら、南千島の返還の問題について日本主張が実現しなかったことは遺憾千万である、こういうことをアメリカの国務省のスポークスマンが正式に言っておるのであります。先般、河野農林大臣は、アメリカの大使に会われて、その話によると、アメリカの方でも異存はないというふうなことが新聞にも述べられておるのであります。私どもの接触しました——私も、アメリカの大使に会いまして、いろいろ相談したのでありますが、その話を見ましても、この問題について、アメリカの方が、必ずしも全然賛成であるというふうには言っておらないのであります。これはあとで申し上げますけれども、そういうわけで、結局、問題は、この交渉を進めるについてのアメリカとの連絡と申しますか、そういう点について必ずしも十分でなかったという点は、私どもは見て参らなければならないと思うのであります。それから、先ほど、総理は、日本はどこまでも平和外交に努力しなければいかぬと言われました。これは私も全然同感でございますが、現実の世界は、先ほど申しましたように、現に、ソ連にしましても、あるいは英仏にしましても、武力を使って自己の目的を達成せんとしておるのであります。でありますので、現実の国際情勢をそのままにながめてみますと、この国際関係は、先ほど総理のおっ、しやるように、力を使わないで平和でやっていこうというふうには進んでおらないように、実は私は考えておるわけであります。その点については、総理との意見の違いでありますので、これ以上は申しません。〔「同じ党内で意見の違いがあるんだな」「代議士会やれよ」と呼び、その他発言者あり〕
  139. 植原悦二郎

    植原委員長 静粛に願います。
  140. 北澤直吉

    ○北澤委員 それで、いよいよ今度は条約の内容に入るわけでございますが、先ほど来外務大臣からお話がありましたように、日本としましては、日ソ交渉を始めました当初から、なるべく懸案を解決して、そうして平和条約方式によって日ソの国交を回復する、こういう方針で進んで参ったわけであります。ところが、昨年来そういう方針交渉しましたけれども、なかなかその方針では話がまとまらないということで、平和条約方式によらないで、いわゆる暫定方式と申しますか、これによって日ソの国交を回復しようということに方針が定まりまして、今回の日ソ共同宣言の調印となったわけでございます。今回の方式によりますと、要しまするに、いわゆる五項目と申しますか、まずそれを骨子として、暫定方式によって国交を回復するということに相なったわけでありますが、いわゆるこの五項目というものの内容を見ておりますと、どうも、私どもの考えによりますと、ソ連の方ではほとんど譲歩したところがない。ほとんど日本の一方的の譲歩によって妥結に達しておるというふうに、私どもは考えざるを得ないのであります と申しますのは、五項目のうち、戦争状態の終結、それから大使の交換、これはソ連希望するところであります。従って、これについてはソ連譲歩でも何でもありません。問題は、抑留者の返還と、国際連合加入に対するソ連の支持、北洋におきまする漁業について日本の活動を認める、この点でございますが、この三点とも、これは当然ソ連がそうすべき義務があると私は思うのであります。と申しますのは、御承知のように、ポツダム宣言におきましては、連合国は日本人の抑留者を全部帰すという約束にちゃんとなっております。ところが、ソ連だけが抑留邦人を帰さずに今日やっておるわけであります。従いまして、ソ連は、日ソの国交を回復するといなとにかかわらず、抑留邦人を帰すことは、当然ポツダム宣言の規定するところであります。それから、国際連合加入の問題でございますが、今日、世界で、日本が国際連合に加入する資格があるということにつきましては、いずれの国も認めております。現にソ連自身も日本の国が国際連合に加入する資格があるということを十分認めておりますけれども、昨年は、御承知のように、外蒙古と日本との抱き合せによって、とうとうソ連の拒否権行使によって日本は入れなかった。こういうわけでありまして、日本は当然国際連合に加入する十分の資格があるにかかわらず、ソ連の拒否権行使によって今日まで日本は国際連合に加入ができなかったのであります。従って、ソ連日本の国際連合加入を認めるということは当然のことでありまして、これは、世界中どこの国も、日本の国際連合加入に反対する国は、これまでソ連以外にはなかったわけであります。従って、ソ連は当然この国際連合加入を支持すべきものと私どもは考えております。それから、北洋の漁業の問題につきましても、これは、ソ連が、北太平洋のまん中に線を引いて、いわゆるブルガーニン・ラインというものを引いて、そして日本漁業を制限したわけでありますが、これも、御承知のように、国際公法によって、公海自由の原則によって、日本世界の公海のどこへ行っても魚がとれるわけでありますが、それをソ連が不当に制限をしたわけでありまして、その制限を解除するということは当然のことであります。そういうことでありまして、この五項目の内容を見ますと、これはどれもこれもソ進の譲歩と認め得るものは一つもないのであります。譲歩と申しますれば、ソ連が提案したいわゆる海峡航行権、この要求を撤回したこと、そういうことが譲歩と見られるわけでありますけれども、私どもは、今回の五条件によって五項目を骨子とする暫定方式による日ソの国交回復というものは、大体ソ連の言う通り条件妥結をした、こういうふうに考えておるわけであります。特に最も大事な領土の問題につきましては、ほとんど日本希望は現実にはいれられておりません。歯舞色丹の諸島も平和条約締結までは返らぬというわけでありますし、それから南千島の問題も全然たな上げ、こういう状態でありまして、私どもは、ソ連が今回の日ソの交渉においてある程度譲歩したという跡は、残念ながら見ることはできないのであります。そういうふうに私どもは考えるのでありますけれども総理におかれましては、直接にこの交渉に当られたわけでありますが、そういうふうに私どもが考えることは間違っておりますかどうか伺いたいと思います。
  141. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 とにかく戦争状態を終結いたしたい、そうして世界の平和を持ち来たすことには、日本もその一員となって努力したいという希望は、私は達成できたと思います。今まで通りソ連との国交が正常化せられていないならば、私は国際間の緊張は解けないという考え方をしておりましたから、国際間の緊張を解くという大所高所から考えますならば、今回の条約世界人類のためには非常に貴重なことだと確信をしております。ただ、領土の問題について、わが方が新党議として決定いたしましたごとくに、歯舞色丹をまず日本領土と認めて、そうして択捉国後島は後日の問題に残すことができなかったことは、満足ではないのです。けれども、これは先方承知をしないのですから、いたし方ありません。それによって、先ほど外務大臣説明いたした通り、決裂した方がいいかというと、決裂をするということはとてもできないと私は考えます。それで、やむを得ず、不満足であるけれども、この程度において妥結することが最善の道だと考えたわけであります。
  142. 北澤直吉

    ○北澤委員 やむを得ないからしてこういう程度で妥結をした、こういうわけでございますが、先ほど申しましたように、中近東なり東ヨーロッパの状況を見ておりますと、いわゆる民族主義というものが非常にほうはいとして起っておるわけであります。最近のポーランドの状況を見ましても、ポーランドの新しい指導者の、コムルカが、ポーランド国民の輿望を負ってモスクワへ行って、そうしてソ連の首脳部と話をした結果、ついに、ソ連の方では、ポーランドの要求をいれて妥協したというふうにいわれておるわけであります。こういうふうに、今日の世界は、民族主義がほうはいとして起っておるわけであります。現に、ハンガリーなどにおきましても、数万の国民が犠牲者となって、このハンガリーの自由のために戦っておるわけであります。こういうわけでありますので、私どもは、このソ連に対しまして、もう少し日本の民族主義というものを強く打ち出して、そうして領土問題その他に対しましても、もっと日本主張を強くすべきである、こう考えておったのでありますが、総理の先ほどのお話では、どうしてもソ連が言うことをきかないから、まあこの程度で妥協したんだ、こういうわけでありまして、その点では、私どもは、もう少し日本側として日本主張を貫徹するように御努力願いたかった、こういう感じを持っておるわけであります。  時間もないようでありますから、最後にもう一点だけ領土問題について総理に伺っておきます。先ほど、総理の御答弁によりますと、歯舞色丹は、日ソ平和条約締結日本に返ってくる。しからば、その平和条約はいつできるかという質問に対しまして、米ソ関係がよくなって、そういう状態になれば、この平和条約もできるであろうし、そのときにはこれも返ってくる、こういうようなお話でありますが、どうも、私どもの考えでは、米ソの関係がよくなるということについては、そう簡単にはそういう時代はこないんじやないか。先ほど申しましたように、世界の二大陣営の冷たい戦争がますます激化するという状態におきまして、米ソの関係がよくなって、そうしてその結果歯舞色丹その他の島が日本に返ってくるというふうなことは、ちょっと近い将来には考えられないんじやないか、こういうふうに考えておるわけであります。特に、ソ連が、南千島、国後択捉につきまして非常に強硬な主張を持っておりまして、どうしてもこれを日本に返さない、こういう態度をとっておりますその裏には、やはり相当戦略的な考えがあるのではないかと私は思うのであります。スターリンがかつて言ったように、ソ連は一寸の土地といえども絶対に外国には渡さぬ、こういうことを言っておるわけでありまして、南千島の場合におきましては、やはりあそこをソ連は根拠地として日本に力を伸ばそう、こう考えておるのじゃないかと私は思うのであります。現に、終戦直前、ソ連が連合軍に参加をして、北海道の北の半分をソ連軍が占領しよう、こういう申し出をしたあのいきさつを考えますと、やはりソ連は、北海道あるいは日本全体について、相当かたいある考えを持っているように思うのであります。そういう状態を考えますと、将来米ソの関係がよくなれば、こういう島島が返ってくるだろうという考えは、どうも私どもは少し楽観に過ぎはせぬかと思うのでありますが、その点について総理の答弁を願って、総理に対する質問はこれで終ります。
  143. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私の考えは楽観に過ぎるかもしれません。本来性質が非常に楽観的なものですから、そういう間違いに陥りやすい性格かもしれません。けれども、原爆、水爆というものが世の中に出て参りまして、戦争というものはそうやたらにできるものじやない。戦争というものは、そうやたらにできないという観念から考えますと、結局平和にするより仕方がないということを、世界の国々の人がみな考えるようになる、そういうような時期がくるだろう。いつまでもばかなことを考えていて、すべてのものを力によって解決しようというような考え方でなく、正義により、国際連合の力によって、共同の幸福、共同の安全を求めようというように世の中が進んでくるというように、世の中の進歩性を考えるということは、必ずしも間違いじゃないだろうと思うのであります。ですから、私は、よく人が楽観者だといいますから、楽観者かもしれませんけれども、一応世の中のことをあまり悲観するよりは、楽観する方がいいと思います。(笑声)
  144. 北澤直吉

    ○北澤委員 外務大臣にお尋ねしたいのであります。けさほど来、松本委員質問に対して、大臣から御答弁があったのでありますが、大臣は、従来とも平和条約方式によって、そしてこの懸案を解決して、日ソの国交を回復すべし、こういう主張をずっと持っておられたのであります。外務大臣が全権としてモスクワへ行かれましたときにも、あのモスクワ交渉の最後の段階におきましては、ソ連の最後の腹を突きとめたからして、平和条約方式によって日ソの国交を回復するが一番いいのだというふうなことで、重光全権として、本国政府に、連絡と申しますか、請訓があったようであります。これに対して日本政府は、これに承認を与えなかったわけでありますが、その結果、今回は平和条約方式によらないで、いわゆる五項目を骨子とした暫定方式、これによって日ソの国交回復をいたしたわけであります。そこで私は伺いたいのでありますが、外務大臣は、外務大臣個人として考えられて、一体どっちがいいと考えたのか。やはり従来通りの、自分モスクワ交渉の最後の段階において考えたことが正しいと思うのだが、政府部内の多数が、今回の暫定方式の方がよろしい、こういうことで、これに同意されたかどうか。大臣個人として、一体今日の心境はどっちがよいというふうにお考えでありますか、この機会に伺っておきたいと思います。
  145. 重光葵

    重光国務大臣 今日におきましては、暫定方式、今の方式がいいと考えております。
  146. 北澤直吉

    ○北澤委員 外務大臣もときどき主張を変えられるので、どうもあれなんでありますが、今回のソ連態度その他から考えて、今回のような方式妥結する以外に道がない、こういうことで御同意になったと思うのでありますが、その点は、そういうふうに了承をいたしておきます。  そこで、いよいよ共同宣言の内容に入るのでありますが、先ほども総理大臣にお聞きをいたしました領土問題でございます。御承知のように、この領土問題につきましては、自由民主党結成当時の党議があるわけであります。それから、鳩山全権がモスクワにお立ちになる前に、新しい党議をきめて、これが日本側ソ連に対する最低の線であるということで、鳩山全権の出発の際一の談話によりましても、どこまでも党議の線によってこれをやる、領土については絶対に譲歩上ない、こういうふうな談話を発表されて、日本をお立ちになったわけであります。ところが、いよいよ妥結をしました日ソ共同宣言によりますと、この新しい党議からも相当かけ離れた結果に相なっておるわけであります。宣言の表面では、歯舞色丹平和条約締結と同時に返ってくる、こういうふうになっておるわけでありますけれども、先ほど申しましたように、この平和条約というものは、いつできるかわからない。米ソの関係がよくなれば、平和条約もできるだろう、こういうふうに言われるのでありますけれどもソ連がこの領土問題に対する従来の主張日本に譲ってまで、平和条約を簡単に結ぶであろうということは、今日なかなか想像できないのであります。そうしますと、この平和条約締結というものは、相当あとになる。従って、歯舞色丹日本に返ってくるのも、相当後の問題である、こういうふうに私は考えておるわけでありますが、こういう点について、外務大臣にお考えをお聞きしたいと思います。
  147. 重光葵

    重光国務大臣 歯舞色丹の返還は、平和条約締結の後と相なっております。平和条約締結が先でございますので、いろいろな情勢を待たなければなりませんから、相当時間がかかるのではないかと考えます。
  148. 植原悦二郎

    植原委員長 ちょっと御注意申し上げますが、この審議の案件はきわめて重大なるものでありますから、あらゆる御質問の点は、すべて明瞭にするように委員長は熱望しておるのであります。それから、あらゆる角度からの御質問を十分にしていただきたいのでありますが、国際連合加入のことや、人道問題で抑留者が年内に帰ることを考えますれば、皆さん方のお骨折りを願って、できるだけ早く予定の火曜日までにこの審議を終了しなければならないと思うのでありますがゆえに、政府においても同じようなことを二度お答えになる場合には、だれだれの答弁ですでに尽きておりますと簡単にお答えを願いたい。また委員の方でも、どうかなるべく繰り返さないように。今の北澤君のことは、松本君のでかなり尽きたように私は思っておるのでありますから、決して干渉するわけではありませんけれども、賢明なる諸君に対して、念のために御注意申し上げておきます。
  149. 北澤直吉

    ○北澤委員 歯舞色丹に関する問題は大体わかりますが、問題は南千島の問題でございます。この点につきましているいろ伺いたいと思います。政府説明によりますと、南千島、すなわち国後択捉の問題も、日ソ間の国交回復後、平和条約交渉の際に継続審議するというふうに御答弁になっておるのであります。ところが、この点につきまして実は私どもは非常な疑問を持っておるわけであります。と申しますのは、今回のモスクワ交渉の経緯から見ましても、最初松本全権が先行されて、向うのグロムイコ外務次官との間に交換公文をかわして、領土問題を含む平和条約締結交渉国交回復後する、こういう交換公文になっております。それからまた、今回の鳩山全権が行ったと遂に、ソ連側から出しました最初の案によりますと、松本・グロムイコ交換公文と同じように、領土問題を含む平和条約締結について交渉を継続する、こうなっておるわけであります。ところが、河野全権がフルシチョフ第一書記と何べんも会談されて、領土の問題をお話しになったわけでありますが、その結果、単に領土問題の継続審議ということでなくして、日本側希望によって、歯舞色丹日本に返す、こういう条項を抜き出して書きましたがために、今度ソ連の方からの領土問題を含むという字句を除いてもらいたいという希望によって、領土問題を含むという字句を削って、単に平和条約締結交渉を継続する、こういうふうになったように私どもは聞いておるわけであります。ソ連がどういうふうな底意を持ってこの領土問題を含むという字句を削ったのか、私どもの疑うところは、ソ連側の底意は、これによって、歯舞色丹は返すけれども、それ以外の南千島その他はすでに解決済みの問題であって、これを継総審議の対象にはしない、こういう考えで、ソ連側希望によってこの領土問題を含むという字句を削ったのではないかと思うのでありますが、一つこの点について、その衝に当られた河野全権からお聞かせを願いたいと思います。
  150. 河野一郎

    河野国務大臣 その点につきましては、本会議において総理から明確にお答えがあったことでございますし、私もすでにお答えいたしたことでございます。またフルシチョフとの会談の内容については、遺憾ながら申し上げることを差し控えさせていただきたいと思います。
  151. 北澤直吉

    ○北澤委員 政府の答弁によりますと、日本側の解釈はそれでわかるのでありますが、しからば、そういう日本側の解釈に対してソ連が同意したかどうか、この点を私は伺いたいと思うのであります。実は、この共同宣言に調印をするかどうかということで鳩山全権から東京政府に連絡があって、その際、自民党の総務会が開かれて、いろいろこの問題を審議したのでありますが、この領土問題を含むという字句は何かおかしいじやないか、やはり領土問題を含むという字句を入れるようにということで、総務会全体の意見として、モスクワ鳩山全権に電報を打ったわけであります。にもかかわらず、この領土問題を含むという字句がどうしても入らない、こういうふうないきさつもあるのであります。日本側では、そういうふうに一方的に、領土問題を含むという字句を削っても、これは当然領土問題を含むんだ、こういう解釈をしておるようでありますけれども、一体ソ連はそれと同じように解釈をしておるかどうか疑わしい、こういうふうに思うのであります。そこで、私どもの考えでは、日本の方では、当然これは領土問題を含むという前提に立ってこの共同宣言に調印をしたというのでありますならば、国会が日ソ共同宣言承認する場合におきまして、日本は、この平和条約締結交渉というのは、当然領土問題を含むんだという留保条件を付して承認を与え、批准をしたらいいじゃないかと思うのであります。もしその留保についてソ連が同意できないということになりますならば、この批准は無効になるわけであります。私はそういうふうな解釈に立って、国会がこの日ソ共同宣言承認を与えるとするならば、念には念を入れて、この平和条約交渉には領土問題を含むんだという了解を留保条件として、承認を与えたらどうかと思うのでありますが、この点について、河野全権と重光外務大臣に伺いたいと思うのであります。
  152. 重光葵

    重光国務大臣 領土問題につきましては、本会議並びに本委員会において総理大臣から直接にお答えしたことをもって尽きておるわけであります。なお、交渉経過については、どういうことを一々やりとりをしたかということを申し上げることは、はばかるということを先ほど河野全権からも言われた通りであります。しかし、この共同宣言の全体を、正面から読まなければなりません。つまり、将来平和条約交渉する、こういうことに相なっておるのであります。その平和条約には、領土はどうする、境界はどうするかということを入れなければならぬのは、これは当然のことであります。従いまして、その平和条約交渉すると遂に当って、日本側としては、日本側の考えるところを十分言う機会があるわけでございます。さようなふうに考えますると、それで私は十分でないかと思います。ソ連側としては、ソ連側主張があります。領土問題は、非常に強いソ連側主張があるということを、私も繰り返し繰り返し申し上げております。これはソ連側ソ連側意向があるでしょう。それをどうするわけにもいきません。しかし、それはまた国際情勢のこともにらみ合せていろいろ将来においてまた緩和することもないこともなかろうということを総理も申しております。さようなわけで、機会を待つべきものであって、この際にその点を拘束するような留保条件は、私は必要はなかろう、こう思います。将来また日ソの関係は、これを機会にして、いろいろ伸ばしていかなければならぬ点もずいぶんございます。批准の初めにおいては、これを正面から解釈をいたして、そうして、ごくあつさりと、そのまま批准をして、将来の国交に資するようにした方が私はいいように考えます。  以上、御答弁申し上げます。
  153. 北澤直吉

    ○北澤委員 ですから、この平和条約締結交渉というのは、当然領土問題を含むのだ、こういう了解でソ連もそれで異存ないというならば、そういう留保をつけても、ソ連に反対する理由はないのですね。もしこれに対してソ連が反対するならば、これはおかしいので、それならば、領土問題を含むという解釈は間違っている。ソ連が、平和交渉には当然領土問題も入っているのだ、こういう了解に立って共同宣言ができるならば、そういう留保をつけて批准をしても、何ら差しつかえないと私は思うのです。こういう二国間の条約に留保をつけて批准をする例は少い、それはその通りであります。現に日米通商条約にもそういう例はあるのでありますが、ソ連側にも当然異存がないという解釈の上に立って共同宣言ができたというならば、日本としましては、当然この、平和条約交渉というものは領土問題を含むんだ、こういう解釈で、留保条件付の批准をしても、私は決して差しつかえないと思うのであります。それを特に反対される外務大臣のあれがわからぬのでありますが、一つその点、御説明願いたいと思います。
  154. 重光葵

    重光国務大臣 私は、今の御議論に正面から反対するわけではございません。ございませんが、取りきめもしくは条約をこしらえて、国会がそれに対する留保条件をつけるということそれ自身がいろいろなことを生むのであって、もしそれがしいて必要のないことであるならば、すべきものではないと一般的に考えます。この場合におきましても、先ほど申し述べました通りの解釈で、また意見でございますから、これについては、私は特別に異例を設けてやるということは、かえってそれがために結果のよくないことがあり得ると思いますから、さようなことは私は賛成することはできぬと、こう申しておる趣旨でございます。
  155. 北澤直吉

    ○北澤委員 どうも外務大臣お話を聞いておりますと、そういう留保をすることはソ連側は反対である、ソ連側との関係においておもしろくない、こういうようなお話のように思うのであります。そうだとすれば、今申しましたような平和条約交渉の中に領土問題を含むという日本側の解釈に対して、ソ連側は必ずしも同意をしておらぬ、こういうふうに推論しなければならぬわけであります。当然そういう解釈にソ連も異存がないというならば、そういう留保をつけても、ソ連との関係において、何ら悪い影響はないわけなのであります。ソ連側がそういう留保をつけることについて何かちゅうちょをするものがある、こういうことでありますならば、もう一ぺんその点をお聞かせ願いたいと思います。
  156. 重光葵

    重光国務大臣 先ほど御答弁申し上げた通りでございます。つけ加えることはございません。ただ、ありますとするならば、この共同宣言の前に——これは発表されて御承知通りに、松本・グロムイコの書簡交換ということもございます。これにははっきりと、御懸念の点も心配のないように、文書が交換されておるわけでありますから、さらに追いかけて、条約批准について条件を付するというようなことは、私はちょっと必要がないように感ずることを、つけ加えて申し上げます。
  157. 北澤直吉

    ○北澤委員 しつこいようですが、この点は非常に重大な将来に残る問題でありますから……。
  158. 植原悦二郎

    植原委員長 北澤君にちょっと。今の御質問に対する政府の答弁で、まだあなたの御了解ができなんで繰り返されるようならば、実は外務大臣も今晩の会合のためにもう時間が切迫して、おいでにならなければならないのを、無理に私おとめ申したわけですから、その点はもう少しあなたが納得行くまで、外務大臣もその問題を明瞭にしたらよかろうと思います。それだから、その点はそこで留保しておいて、そうして、外務大臣はどうかお帰りになるようにしていただきたいと思います。そう御了解願います。
  159. 北澤直吉

    ○北澤委員 それでは、外務大臣に対する質問は留保いたします。  松本全権がおられますから、今の点について松本全権から——問題をはつきりさせていきますが、それは松本さんとグロムイコとの間の公文にはっきり出ておるのです。どうしてそれをそのままこの協定に書かないか。しかも、ソ連の原案に入っておったのを、ソ連希望によってこれを削った。もしそれに異存ないならば、当然、松本・グロムイコ交換公文と同じようなものを共同宣言に書くならば、非常にはっきりするわけですね。それを、あなたの場合には、書いておったのに、最終の段階で、共同宣言では特にその点だけ除いた。しかも、それはソ連希望によってそれを消したということに私どもは不安を持っておるわけですが、一つ松本全権から、その点について御説明があれば伺いたい。
  160. 松本俊一

    松本全権委員 私とグロムイコとの間に交換しました文書につきまして、これは私は当の責任者でありますから、そのできました経緯を申し上げれば、おのずから今の点ははっきりしてくると思うのであります。御承知通り、先々月の二十日、鳩山総理ブルガーニンに送りました書簡の中の——これはすでに公表されておりますので、御承知通りでありますが、その書簡の中に、いわゆる五条件によって交渉再開の用意がある、その五条件に、さらに条件として、領土問題の審議を継続するという条件がありました。ところが、それに対するブルガーニン首相の回答が、その点で必ずしも明確でなかったので、私を先にモスクワに派遣して、その点を明確にしろということで、私はモスクワへ参ったのであります。  ところで、私がソ連側交渉をしましたときに、日本ソ連との間に、いわゆる暫定方式によって国交正常化ができた後も、必ず平和条約というものを正式に作らなければ、通常の国家間の戦争状態が終結したことを最後的に確認することにはならない。従って、暫定方式によって日ソの戦争状態が終結して、大使を交換した後も、平和条約締結交渉というものは、当然継続審議されなければいけない問題であるという大前提に立ちまして、この点につきましては、私はソ連側ももとより異存はないと考えておりました。ところが、当時問題になっておりましたのは、領土問題の継続審議ということが、鳩山ブルガーニンの書簡の中で問題になっておりましたので、私といたしましては、その平和条約の継続審議に当然領土問題が含まれるものであるということを先方に確かめる必要があったのであります。ところが、国際関係の通則におきまして、平和条約交渉において、領土問題が含まれることは当然であります。私はその点を一時間余にわたりまして、フェデレンコ外務次官に説いたのであります。その結果、先方の意図もはっきりいたしました。つまり平和条約には当然領土問題が含まれるものである、領土問題の処理が含まれるものであるという意図を先方も持っておりますし、それからまた、平和条約については、必ず国交が正常化した後もこれを継続するという意図があることが明らかになりましたので、その二つのことをまとめまして、私が作りましたのが、あの文書の原案であります。それについて先方の、これは当時療養地へ行っておりましたソ連の首脳部に連絡いたしまして、結局グロムイコと私との間にあの交換文書ができたものであります。従って、今度できました共同宣言を解釈いたしますときに、私とグロムイコとのこの交換文書というものは、その解釈の非常に重要なる資料だと私は思っておるのであります。それのみならず、ブルガーニン鳩山書簡並びに私とグロムイコとの間の文書、この公表方につきまして、私はグロムイコと直接話し合いをいたしました。先方も異存がなく、これをシェピーロフ外務大臣並びにブルガーニン総理大臣に諮りました上で、この公表方を向うも伺意いたしましたので、公表いたしました。皆さんのお手元にも配付してあるわけであります。そういう経緯等からかんがみまして、私は今度の共同宣言平和条約の継続審議ということが表面に出ておりますだけで、これに領土問題を含むという字が書いてないからということについているいろ御懸念の向きがあると思われるのでございますが、しかしながら、私は、最初から先方平和条約の継続審議異議のないこと、この平和条約の中には、当然領土問題の処理を目的とした条項が入るということは、先方も十分考えておりますので、私はその点について何らの疑問を今持っていないのであります。私は、河野全権がフルシチョフと交渉されました結果、ただいまの共同宣言の字句ができましたときに、鳩山総理と三人で相談いたしまして、私の確信に基いて、あの案に私も賛成したのであります。その点を一つ十分御了承願いたいと思うのであります。
  161. 北澤直吉

    ○北澤委員 松本・グロムイコ交換公文のできましたその経緯につきましては、今の説明でよくわかったのでありますが、それと同じ文句がこの共同宣言ソ連の原案に入っておった。ところが、途中でそれはなくなった。そうすると、私どもの考えでは、ソ連は、歯舞色丹を含む領土問題の継続審議には賛成であるが、歯舞色丹を除いたほかの領土問題の継続審議には賛成でない、そういうことから、ソ連主張によって、この領土問題を含むという字を削った、これはあるいは邪推と言われるかもしれませんが、私はどうしてもそういうふうに解釈したい。そういう点について、今の松本さんのお話のように、一点の疑いもないと言うならば、そういう了解、そういう留保をつけて批准をしても、何ら差しつかえない、こう思うのであります。これにつきましては、これ以上論議しませんけれども、どうも私どもの考えでは、そういうことならば、ソ連側にも異存があるはずはない、留保をつけても異存があるはずはない、こういうふうに考えておるわけであります。  この問題について、私はこの機会に尋ねたいのであります。こういうふうに、今回の日ソ交渉において、領土問題が日本側希望する通りに解決をしなかったわけでありますが、重光全権がモスクワ交渉から帰られまして、自民党の外交調査会で報告されたそのと遂に、ある委員質問に対しまして、重光大臣はこう答えておるわけであります。それは、結局、河野農林大臣漁業交渉モスクワに行かれたときに、ブルガーニン連首相と会談をされた。そのときの会談の内容についてでございますが、その会談において、河野農林大臣は、ソ連側領土に関する主張に対して了承を与えた、こういうふうな話があるが、これはほんとうであるか。重光外務大臣は、ロンドンで、シェピーロフ・ソ連外務大臣に対してこの点について確めたということなんだが、外務大臣が確めた結果によると、そういうことがあったのかどうか、こういう問に対して、外務大臣は、河野農林大臣は、ブルガーニンに対しましてソ連領土主張に対して了承を与えたように自分は聞いている、こういうふうな答弁があったのであります。この点につきましては、河野農林大臣はそういうことはないということをたびたび述べられておるのでありますが、この機会に河野全権から、直接に、この点について、当時の事情を伺いたいと思います。
  162. 河野一郎

    河野国務大臣 これは非常に重大な問題でありますから、詳細にお答えいたします。北澤さんがときどきそういう発言をなさるそうでありますけれども、これは私がブルガーニン氏と会談いたしました際に、ブルガーニン氏から、これも私はたびたび言うのでありますが、歯舞色丹については、すでにロンドンソ連側譲歩をしておる。なお、これは日本の議員団の諸君がお見えになったときも申しておるのだ、それで、ソ連側は重大な譲歩をしたのだ、しかし、国後択捉については、ソ連側としては、どうしても譲歩ができない。しかし、また日本国民諸君が、この国後択捉について、ぜひ日本側が領有するすることを強く要望しておることも、自分は知っておる。従って、この国後択捉の問題について決定することは、なかなかむずかしい、その事情は自分もよくわかっておるのだから、これをあと回しにしてこの話をきめるようにすれば、暫定協定をしなくてもいいじゃないかとブルガーニン氏が私に言うたのであります。そこで私は、それらの問題は、私の論議すべき問題ではありませんし、また私がそれについてとやかく言うべき筋合いの問題ではありませんから、自分はそういう権限を持っていない、漁業の問題について交渉に来たんであるから、そういうことを今ここでとやかく言われても仕方がない、つまり暫定協定を認めてもらわなければならぬという立場を私は主張いたしました。そこで、この話がその後いろいろ伝わりまするから、今回ソ連に参りました際に、その席に立ち合いましたイシコフ漁業大臣を私はまずたずねまして、その当時の事情はこれこれしかじかであった、これは通訳が立ち合っておりましたが、そこでそういうことをイシコフ氏に私は申し出をいたしました。イシコフ氏はこれを了承しております。そして、その点をブルガーニン氏に君からもよく言うてくれ。日本側としては、この立場に立って話をするということでなければ、日ソ交渉妥結はなかなかむずかしいのである。この立場を堅持しつつ、自分領土の問題については話し合いをしたいということを、イシコフ氏を通じて、私はブルガーニン氏に申し出をしておるのでありまして、これは、その当時立ち合いましたソ連漁業大臣もこれを了承しておりますし、また当時通訳をいたしました人は、今ソ連の外務省の日本課長をしておられる人でありますが、この人にも今回行ったときに言うております。ソ連側において、この私の発言に対して疑問を持っておる人は、これに対して反対的な意思表示をしておる人は、その後一人もないということを、ここではっきり申し上げておきます。
  163. 北澤直吉

    ○北澤委員 今回河野全権が行かれたときに、そういうふうな是正の措置をとったということは今伺ったのでありますけれども、この前の漁業交渉に行かれたときに、これは当時は通訳を入れずに河野さん一人でお会いになったのでありまして、その内容は河野さん以外には日本側ではだれも知らないのであります。その内容について重光外務大臣ロンドンでシェピーロフに確かめたときに——シェピーロフの話の内容につきましては、私は確実な情報を持っておるわけであります。名前を出すことはいろいろ差しつかえますから出しませんけれども、当時の漁業交渉の際の河野さんとブルガーニン会談の内容につきましては、これは現に重光大臣も総務会でそういう答弁をしておるのであります。今回河野さんが行かれて、当時の事情を誤解のないようにそれを直す措置をとられたことは私ども多とします。でありますから、今後そういう点につきましてはソ連側にも誤解がないかと思うのでありますけれども、当時の漁業交渉の際の河野さんとブルガーニン首相との会談の内容につきましては、これははっきりしたあれがあるのであります。これにつきましては、また明日外務大臣と御一緒の席ではっきりいたしたいと考えております。  次に、農林大臣がおられますから、漁業問題に入るわけでありますが、例の漁業条約によりますと、一番大きな問題は、年々の漁獲量であろうと思うのであります。漁業協定によりますと、来年度からのサケ、マスの漁獲量は日ソ共同漁業委員会において決定することになっておるわけであります。河野さんがお帰りになってからの新聞記者との話によりますと、この漁獲量は大体年間八万トンないし十万トンの線できまるだろう、こういうふうな何か了解でもあるようなお話があったのでありますが、年々のサケ、マスの漁獲量を決定することが、日ソ共同漁業委員会の任務になっておる。ところが、この日ソ漁業委員会というものは、日本ソビエトだけの委員会であるのであります。先ほど申し上げましたように、日本ソ連との間に大きな力の違いがあるのであります。そこで、この漁業共同委員会において来年度以降の漁獲量をきめる場合におきましては、先ほど申しましたような大体の標準でもあるのか、この点について伺いたいと思います。
  164. 河野一郎

    河野国務大臣 この点につきましてはただいま御指摘の通り両国委員会の合意によってきめることになつております。なお、その際、特にソ連側の了承を得ておりますることは、ソ連側の陸上の漁獲高もしくは漁獲計画、これと海上における漁獲高計画は見合ってきめることになっている次第であります。
  165. 北澤直吉

    ○北澤委員 協定ではそういうふうにおっておるのでありますが、先ほど申し上げましたような、日本ソ連だけの関係におきますと、なかなか日本主張が十分に通らないというのが、今回の日ソ交渉を見てもそうでありますので、私どもが考えますのには、でき得るならば、日ソの漁業協定というものを、北洋漁業関係のあるアメリカ、あるいはカナダも入れて、そうして四国共同委員会というふうなものでも作って、そこで漁獲量をきめるというふうになりますならば、ソ連だけの意思でこれが動かされることはないと考えているわけであります。政府は、この北洋の漁業の問題については、現在は日米加三国の協定と今回の日ソ漁業協定と二本立になっているわけでありますが、これを、両方一緒にして、日本ソ連、カナダ、アメリカ、この四国が入ったそういう協定を作って、そして漁獲量などについてもそこできめる、こういうふうな線に将来これを持っていくお考えがありますかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  166. 河野一郎

    河野国務大臣 これははなはだ申しかねることでございますが、ただいまの北澤さんの御発言は、わが国水産界のために非常にとらざるところであります。御承知通り、米、加にいたしましても、日本の漁獲量をいかに制限しようかという立場に立っております。日ソの間できめることは、日ソの間できめればよろしいのであって、これに米、加が加わるというような考え方は、絶対私は反対であります。
  167. 北澤直吉

    ○北澤委員 今、農林大臣からそういうお話がありましたのですが、これは将来の歴史でわかるでしょうから……。
  168. 植原悦二郎

    植原委員長 北澤君、農林大臣質問が終ったら、社会党の方の御希望もあるし、委員みなの御希望もあるから、この次にさらに勉強していただくということで、きょうは四時半で終ろう、こういうことだから、了解してほしいと思います。
  169. 北澤直吉

    ○北澤委員 それではいろいろ御都合もあるようですから、きょうはこれでやめまして、明日またいたしたいと思います。
  170. 植原悦二郎

    植原委員長 そういう了解できょうはやめます。明日の時刻は公報をもつてお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。   午後四時十九分散会