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1956-11-19 第25回国会 衆議院 日ソ共同宣言等特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十一月十七日  植原悦二郎君が委員長に、小笠公韶君吉川久  衛君、櫻内義雄君、須磨吉郎君、田中伊三次  君、穗積七郎君及び松本七郎君が理事に当選し  た。     ――――――――――――― 昭和三十一年十一月十九日(月曜日)    午前十一時六分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 小笠 公韶君 理事 吉川 久衛君    理事 櫻内 義雄君 理事 須磨吉郎君    理事 田中伊三次君 理事 穂積 七郎君    理事 松本 七郎君       伊東 降治君    石坂  繁君       臼井 莊一君    内田 常雄君       北澤 直吉君    笹本 一雄君       助川 良平君    鈴木 善幸君       高岡 大輔君    床次 徳二君       福田 篤泰君    松田 鐵藏君       山本 利壽君    大西 正道君       田中 武夫君    中崎  敏君       細迫 兼光君    岡田 春夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         外 務 大 臣 重光  葵君         厚 生 大 臣 小林 英三君         農 林 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         内閣官房長官  松本 瀧藏君         外務政務次官  森下 國雄君         外務参事官   法眼 晋作君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      田邊 繁雄君     ――――――――――――― 十一月十九日  委員白浜仁吉君及び永井勝次郎君辞任につき、  その補欠として鈴木善幸君及び田中武夫君が議  長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 十一月十二日  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との共  同宣言批准について承認を求めるの件(条約  第一号)  貿易発展及び最恵国待遇の相互許与に関する  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間  の議定書批准について承認を求めるの件(条  約第二号)  北西太平洋公海における漁業に関する日本国  とソヴィエト社会主義共和国連邦との問の条約  の締結について承認を求めるの件(条約第三  号)  海上において遭難した人の救助のための協力に  関する日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第四号) の審査を本委員会に付託された。 同月十七日  日ソ交渉に伴う領土問題解決に関する陳情書  (第一四号)  ソ連等との漁業促進に関する陳情書  (第三二号)  北洋漁業制限解除に関する陳情書  (第三四号)  日ソ交渉に伴う領土問題解決に関する陳情書  (第一二一号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との共  同宣言批准について承認を求めるの件(条約  第一号)  貿易発展及び最恵国待遇の相互許与に関する  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間  の議定書批准について承認を求めるの件(条  約第二号)  北西太平洋公海における漁業に関する日本国  とソヴィエト社会主義兵和国連邦との間の条約  の締結について承認を求めるの件(条約第三  号)  海上において遭難した人の救助のための協力に  関する日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦  との間の協定締結について承認を求めるの件 (条約第四号)     ―――――――――――――
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣旨批准について承認を求めるの件、貿易発展及び最軒間待遇の相互許与に関する日本国ソヴィエト社会主義和国連邦との間の議定書批准について承認を求めるの件、北西太平洋公海における漁業に関する日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の条約締結について承認を求めるの件、海上において遭難した人の救助のための協力に関する日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との問の協定締結について承を求めるの件、以上四件を一括議題といたします。この際外務大臣より提案現出説明を求めます。重光外務大、臣。
  3. 重光葵

    重光国務大臣 ただいま議題となりました日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言批准について承認を求めるの件、貿易発展及び最恵国待遇の相互許与に関する日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の議定書批准について承認を求めるの件、北西太平洋公海における漁業に関する日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の条約締結について承認を求めるの件及び海上において遭難した人の救助のための協力に関する日本国ソヴィェート社会主義共和国連邦との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を一活御説明いたします。  これらの文書、に関する従来の交渉の経緯につきましては、すでに本会議におきまして御報告申し上げた通りでございますからこれを省略して、ここにはこの四つ文書内容を主として御説明いたすことにいたします。  まず共同覚書は、領土問題の全面的処理について両国間の意見が一致を見ない現状におきましては、平和条約締結はこれを後日に譲るのほかはございませんので、とりあえず暫定的に、国交を正常化することを目的としした両国間の正式約束締結いたしました次第でございます。すなわち戦争状態を終了せしめ、外交関係再開をはかり、あわせて両国間の戦争状態の存在から生じた諸懸案解決をなして今後の国交を規律する諸原則規定するとともに、領土問題については、歯舞群島及び色丹島平和条約締結わが国に引き渡される旨の確約を取りつけて右両島を除くその他の領土問題は、外交関係再開後継続さるべき平和条約締結交渉において取り上げられることになった次第でございます。すなわち共同宣言は、前文、合意事項項目及び末文からなっております。その項目を申し上げれば、両国間の戦争状態の終了及び平和関係回復を第一に定めております。第二の合意項目として外交及び領事関係回復、大使の交換及び領事館の開設について定めております。第三項目として、国際連合憲竜の諸原則の順守、個別的または集団的自衛権の確認及び内政不干渉について定めて場おります。第四項目として、わが国国連加盟に対するソビエト連邦の支持について定めております。第五に、日本人抑留者の送還及び消息不明者の調査について定めております。第六に、ソビエト連邦による賠償請求権放棄及び戦争請求権相互放棄について規定をいたしております。第七に、通商に関する条約または協定締結のための交渉開始について定めております。第八に、本年五月十四日に書名せられた両国間の漁業に関する条約及び海難人命救助に関する協定発効について定めるとともに、漁業に関する両国方針をあわせて定めております。第九に、外交関係回復後における平和条約締結に関する交渉継続並び歯舞群島及び色丹島わが国への引き渡しについて定めております。第十として、共同宣言批准及び効力発生に関する規定を定めております。  さらに、右共同宣言の第七項目と相なっておりまする通商に関する条約または協定締結のための交渉開始規定に関連をいたしまして、これらの条約または協定締結されるまでの経過措置として、相手国産品の輸入及び自国の産品の輸出についての待遇、並びに港湾における相手国船舶に対して与えられる待遇を定めたものが共同宣言と同時に署名されて、これが貿易発展及び最恵国待遇の相互許与に関する議定書となっておる次第であります。  次に、北西太平洋公海における漁業に関する条約、五月十四日に締結されたこの条約は、これらの水域における漁業資源の保存及び発展のため、両締約国がとるべき協同措置規定しておるのでございます。条約によって設立せられる北西太平洋日ソ漁業委員会が、必要に応じて科学的基礎に基いてこれを修正し、または場合により年間総漁獲量決定することになっております。そのほか、漁業に関する学識経験者相互交換をはかるべきこと等をも定めておるのでございます。条約は、これらの方法によって北西太平洋における公海漁業の一方的規制を排除して、平等の基礎において科学的根拠に基く規制を行なって、もって合理的基礎におけ、る漁業発展及び漁業資源の有効な利用をはからんとするものでございます。今後のわが北洋漁業の安全も、これによって確保されることとなる次第でございます。  最後に、海上において遭難した人の救助のための協力に関する協定というのは、日本海、オホーツク海、ベーリング海及び日ソ両国の沿岸に接する太平洋西北部水域における海難人命救助のための両国海難救助機関の間の協力措置無線連絡方法等を定めたものでございまして、もってこの水域における救助活動迅速化有効化をはからんとするものでございます。  以上四つ文書につき、幸いにして御承認を得、発効の運びとなります場合には、終戦以来十余年の長きにわたりまして日ソ両国が置かれました戦争状態は除去せられ、その間抑留わが同胞の帰還は実現することになります。また、北洋における漁業の操業の安全が確保せられるわけでございます。さらにまた、国際連合加盟によるわが国国際的地位の向上をはかることができる次第でございます。よって、ここに日ソ関係案件について御承認を求める次第であります。  何とぞ、慎重御審議の上に、御承認を賜わらんことを希望いたします。以上をもって説明といたします。
  4. 植原悦二郎

    植原委員長 これにて提案理由説明は終りました。  これより質疑に入ります。高岡大輔君   〔「総理が出なければだめだ」と呼ぶ者あり〕
  5. 植原悦二郎

    植原委員長 総理はもうじき参ります。——総理大臣が出席いたされました。  高岡大輔君に質疑を許します。高岡大輔君。
  6. 高岡大輔

    高岡委員 政府当局に御質問申し上げます前に、過去数回にわたる日ソ交渉に当って、全権並びに全権一行としておいでになりました方々の御労苦に対して深甚の敬意を表します。  このたびの日ソ国交回復なるにつれまして、いろいろな心配とでもいいましょうか、そういうものが国民のうちにはございます。そのうちで最も国民が関心を持っておりますのは領土問題でありますが、この領土問題につきましては、申し上げるまでもなく、長い期間いろいろなことで交渉が進められて参りました。しかし仄聞いたしますのに、この領土問題につきましては、過般総理がモスクワまでおいでになりました際に、向うブルガーニン首相との間に、この問題は特に切り離して、ソ連の共産党第一書記であるフルシナョフと河野全権との間に一つ十分に話し合いを進めてみたらどうかというような話し合いで、ただいま申し上げました河野全権フルシチョフ第一書記との間に、この問題が数次にわたって折衝されたということを私どもは聞いておるのであります。  そこで私はお伺いしたいのでありますが、この領土問題がきまらなかった、いわゆる継続審議になったということについて、ある方々は非常に不満の念を持っておられるように私には感ぜられるのであります。しかし結論から申しまして、私はこの領土問題をこの際解決なされなかったことが、日本のためにむしろ仕合せではなかったかとさえ考えるのであります。それはどういう意味かといいますと、この領土問題につきましては、申し上ぐるまでもなく平和条約によってこの問題が論議されております。すなわち平和条約の第二条C項に「日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権放棄する。」と書いてございます。従って、この問題は、日本としましては放棄はしておりますけれど、これの帰属というものが、この平和条約にはきまっておりません。仄聞するところによりますと、この平和条約会議の際には、今申し上げました地域がどこに帰属するかということについてのいろいろの討議が行われ、そうして、もしもこれがソ連に全部帰属するものであればこれには反対だ、といった相当数の国があったと聞いておるのであります。このようにして、その当時の議長格でありましたダレス長官は、その帰属はきまってないのだ、すなわち、このたびの平和条約には、日本にただ放棄させるだけなんであって、その帰属をここではきめないのだという答弁があり、それに満足された諸国は、それならばそれは承認しようといったようなことで、この平和条約第一条C項がきまったと聞いておるのであります。そのような経過をたどったとしますと、この際日本が、ソ連との間に領土問題を、日本国民が満足するような、今言われておりますように、具体的に申し上げますれば、国後、択提の両島までも日本領土にかりにきまったとしましても、私は、世界各国はこれに対していろいろと注文といいましようか、難くせを言ってくるに違いないと思うのであります。従いまして、領土問題に関する限りは、日本ソ連だけではとうていこの問題は解決がつかない。両者の間にかりに解決がついたにいたしましても、諸外国はこれを容認しないだろう。もしも、かりに日ソの周に話がきまりましても、諸外国から、あっちこっちからこの問題についていろいろと論議された場合には、今日の日本の力では、とうていそうした多数諸外国相手にしてこの問題の最終段階に入ることは困難であろうというように私は考えるのでありまして、日本がいずれ国連加盟をいたしまして、国際舞台でいろいろ外交論を論じ得る地位になりましたときに、初めてこの問題を取り上げるというようなことが一応考えられるのであります。河野全権フルシチョフ第一書記とお話し合いのときには、河野全権のお心の中では、そうしたこの問題を解決するについての諸外国との関係を十分に考慮されたもあだと私は考えるのでございますけれど、その辺のことにつきまして、河野全権のお気持からお伺いしたいと思います。
  7. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。総理から本会議場お答えをいたされましたことの精神において、われわれどもはそのお指図のもとに取扱いをいたしたのでございますけれども、御承知通りに、われわれどもといたしましては、今回の日ソ交渉を通じて、ただいま御指摘になりましたように、一方においては早急に解決せなければならぬ懸案を持ちつつ、一方におきましては、ただいま御指摘領土問題のように、いろいろ各国との関係のある問題もありました。従いまして、全体を通じてわが国が現在置かれております各国との関係支障を来たさないという前提に立って、言葉をかえて申しますれば、日米日英その他各国わが国との友好関係支障を来たさない、変化を加えないという立場に立って、日ソ関係はこれを正常化するということに基本的な考えが置かれるのだ、という建前をとっていたしたのでございます。つけ加えさせていただきますならば、フルシチョフ氏と数次にわたって会談をいたしました。その会談内容といたしましては、いろいろな角度からソ連側は主張して参りましたが、少くともただいま申しました精神に立ちまして名医との関係は一切これを排除しつつ、おのおの取りきめをいたしたいという立場をとったのでございます。ただ特に蛇足かもしれませんが、平和条約形式においては領土問題の決定はできますけれども、暫定取りきめと申しますか、今回の共同宣言形式におきましては、領土問題の決定をするということはなかなか困難であるということも御了承おきをいただきたい。ロンドンできまった通りではないかとか、その他従来の日ソ関係で話をした通りではないか、前進していないじゃないかとかいうような御意見もずいぶんおありでございますけれども、これらは、むろんその両国精神においては、そういう取りきめをした精神精神で生かしつつ、これを具現しつつ、最終決定をせずに、一昨日でしたか、私が本会議場で申しました通りに、将来の交渉に少くとも支障を来たさない、たとえば約束であるとか、そういうふうなことを一切避けて、全くわれわれが歯舞、色丹はわが方に帰属するということを相手了承せしめつつ、われわれはこの領土の問題について最終取りきめの段階に入れるということに意を用いて交渉したということを、御承知おきいただきたいと思います。
  8. 高岡大輔

    高岡委員 ただいま河野農相からいろいろとお話があったのでありますが、この共同宣言その他の批准が終りましたときに、日本ソ連との間の外交官交換その他による外交機関ができて参りますが、あくまでもこの領土問題に関しては、日本ソ連との間だけによって、今後平和条約形式とでもいいましょうか、そうしたことによって取りきめをなさろうとうとする政府の御方針であるのか、それとも、国際連合の中にあって、国連に入りましてからの、その中においてのいろいろないわゆる政治的な活動とでもいいましょうか——さらに私が考えますことは、御承知のように、この問題が一応きまりましたときに、インドの首相であるネールは、日本は国土が非常に狭いのだから、将来樺太、千路というものは日本に返還するようにわれわれは大いに協力をするんだという意味の声明をしておるのであります。従って、私は非常に希望的なことを考えるのでありますけれど、東南アジアからアフリカ諸国は、日本がこの領土の面において窮状に立たされているということには、心から同情をしていると思うのであります。こういう諸国日本が今後入りまして、一つ言葉の表現でありますけれども日本外交路線を、東南アジアからアフリカ諸国に相当大きなウエイトを持たした外交方針をきめて参りまして、これらの諸国日本立場を十分に理解してもらっていくことが、日本領土問題に関する解決を促進していく有力たる道である、かように考えるものでありますけれど、総理並びに外務大臣は、そうした形において今後お進みになろうとなさるのであるか。それとも、ただ単に日本ソ連との大使館を通じて、いわゆる外交機関の線を通じまして、この領土問題を解決なさろうとするのであるか、その点をお伺いしたいと思います。
  9. 植原悦二郎

    植原委員長 総理はすわったままお答えになることを、委員諸君の御了承を願います。
  10. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 委員長お話によりまして、失礼ですが、すわったまま答弁をいたします。  大体においてあなたのおっしゃる通りに、日本としては国際信義を破るわけにはいきませんから、平和条約において結んだ通りに、その条約精神は貫いていかなければなりますまい。このたびのソ連との交渉は、とにかくその精神をくみ、また国際情勢変化に伴いまして交渉する方が、日本のために利益だと考えまして——国際情勢変化というものは、ただいまあなたのおっしゃるようなことも一つ国際情勢変化の原因になると思います。日本外交方針としては、もとより東南アジア諸国に対しても親交を結びまして、その同情を得て日本目的を達成することに努力することが必要と思います。  私よりは外務大臣の方が答弁するのに適当な資格者でありますから、外務大臣から答弁いたします。
  11. 重光葵

    重光国務大臣 今、総理お答えになった通りに私も考えております。日本の重要なる主張は、立場は、他の国々に十分に理解をさせるという努力を尽さなければならぬことは、私は当然のことであると思いますし、またそれは正しい御意見であると思います。ただ問題は、この問題がすぐ国際連合の問題になるかどうかと申しますと、これはサンフランシスコ条約関係国が、理論的に利害圏係を持っている問題でございます。条約関係国以外は、すなわち日ソの間の問題でございますから、日ソの間に話し合いをすべきことは当然のことであります。それに続いて、またサンフランシスコ条約関係国理解を求める、こういうことは次の手段としてまた当然のことでございます。そのほか、わが方の立場をそのほかの国々にも十分に理解してもらうという手段は、将来国際連合に加入ができますならば、その機会においても、一そう機会はあることと思いますから、それで大いに努めていきたい、こう考えております。
  12. 高岡大輔

    高岡委員 ただいまお話を承わっておりますと、私の言い方に言葉がが足りなかったような気がするのですが、私は何も日ソの間の話は一応やめて、そうしてサンフランシスコ条約国々でありますとか、あるいはアジアアフリカ諸国に訴えて云々という意味ではないのでありまして、日ソの間で交渉すると同時に、私が今申し上げましたような線も、また重要なる施策として、日本の今後の外交が進められなくちゃいけないじゃないかということを私は強く希望するのであります。この問題は今のお話で大体わかりましたが、この領土問題問題につきましては、以上申し上げましたように、日本としては非常な重要課題でございますので、その方向で一つぜひお進みを願いたいと思うのであります。  次にお伺いいたしたいことは、閣内という意味ではございませんけれど、日本ソ連との貿易問題につきまして、そう大したことがないのじゃないかという、ある意味では熱のないとでもいいましょうか、希望のないような御意見があるやに私どもは聞くのであります。もちろん財界方面では、日ソ貿易については非常に冷淡だといいましょうか、希望を持たないような話を、われわれ新聞、ラジオ等による報道によって、たびたび、耳にするのでありますが、私はこれは少し角度が違っているのではないかという気がするのであります。すなわち、その言葉をかりて言いますと、ソ連物価というものは世界水準からいって非常に高過ぎる。だから、そんな高いものは日本としても買えないじゃないかというようなことを言う人があるのであります。この点一つお伺いするのでありますけれどもソ連物価というものは、日本のわれわれが今考えておるような物価という意味に解釈ができるものではない。すなわちソ連における物価というものは、例の独裁国でございますから、独裁的にきめたのであって、何もこれは国際的という線から出てきた物価でない。言葉をかえて言いますと、かりにソ連から木材を買う場合にも、これだけの値段でなければ日本としては買えないという、外交交渉とでもいいましょうか、折衝をして参りますれば、向うはその値段は下げ得るのではないか、下げるだろうというように私は考えるのであります。この問題につきまして、どなたからでもけっこうでございますけれども、御答弁を願いたいと思います。
  13. 重光葵

    重光国務大臣 お話通りに、私はソ連との貿易は、向う提案等を十分検討してみなければわからぬと思います。その前に、どこまで貿易ができるかということは、あまりにできるとか、できぬとかいうことを、かたく断定してかかるわけには参らぬと思います。というのは、今お話通りのような考え方物価のことでもしなければなりませんから、十分に話し合いをしてみた上で、どこまでできるものか、またできるものならば、これはやるべしだと私どもは考えておるのであります。そういう考え方によって進めていきたい、こう思っております。
  14. 高岡大輔

    高岡委員 これは御本人から直接聞いたわけではございませんけれども、これもわきから聞きますと、高崎長官日本におられますチフヴィンスキー漁業代表にお会いになったときに、シベリア開発の話をなすったということを耳にするのでありますが、話によりますと、ソ連欧州におけるソ連アジアにおけるソ連というものに、大体経済的並びに政治的に大きく二つに割っておるのではないかということをよく聞かされます。しかも欧州におけるソ連に対しては、それぞれの五カ年計画その他の計画によってやっていってるということも聞くのであります。このシベリア開発に対して、全権の皆様がおいでになりました間に、そのシベリア開発の問題につきまして話し合いがあったものかどうか、この点をお伺いしたい。
  15. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 高岡君のおっしゃる通りに、私がブルガーニンと話をしております際に、ちょうどおっしゃる通りのことを言っておりました。ヨーロッパに対する態度とアジアに対する態度と違うので、シベリア開発については日本の力によって開発をしていきたい、シベリアを開発するために日本からこれに必要なる機械類を購入いたしたいというようなことを言っておりました。全くあなたのおっしゃる通りに、両方同一の方針でやっていく気持はないようであります。   〔「総理はそのブルガーニンの意見に対してどうお考えですか」と呼ぶ者あり〕
  16. 植原悦二郎

    植原委員長 私語は禁じます。もし何なら関連質問で願います。
  17. 高岡大輔

    高岡委員 今わきから話がございましたが、今の総理お話で、ソ連においてそういうような考え方をしておったというのでありますけれども、これにつきまして、日本政府を代表されるといいましょうか、総理はこの考え方に御同意かどうか、御同感かどうか。もしもそうだといたしますと、私は日本としては、ここに相当考えなければならない点があるのではないかという気がするのであります。すなわち今後の日ソの経済的な提携という面は、これがもしも事実であり、またそのような話があり、そしてブルガーニン首相がそれを本気で言い、鳩山総理もこのことを本気にお聞きになって、お話し合いがあったものとしますれば、私は日本のこれに対する関心というものは、非常に深いものが出てくると思いますので、一つ総理からもう一度気軽にお話を願いたいと思います。
  18. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ソ連とは友好関係を結んで、経済関係を密にしたいという考え方をしておりますのですから、シベリア開発に対するいろいろの必要なる道具を日本に注文するということは、日本としては歓迎すべきものと思います。
  19. 高岡大輔

    高岡委員 次にお伺いいたしたいことは漁業問題であります。漁業条約等につきましては、ほかの委員の方から詳細にわたる御質問があろうかと思いますが、私は一つ素朴な点でお伺いをしたいと思います。  それはよく言うのでありまして、これはいいことか悪いことかわかりませんが、日本の漁師の方は非常に勇敢であって、そうして、もやでありますか、そのもやをついて、めくらめっぽうに船を動かして漁業をやっておる。そしてもやが晴れ上らないうちに、さっと引き揚げてくるというくらいに、非常に勇敢といいましょうか、命知らずの漁師が非常に多いということがよく言われます。そこでソ連の方は、千島の北の方についてはとうていソ連の漁師は出ていけない。しかしそこには非常に魚族が多いのであって、できれば日本の漁師によってそこの漁獲を、何といいましょうか、いわゆる委託漁業とでもいいましょうか、そういうことをさしたら、さぞ人類のいわゆる幸福になるだろうというようなことを言う人があるのでありますけれど、この委託漁業に関する話が会議の際にございましたかどうか、そういう点について、もしございましたらお話しを願いたい。
  20. 重光葵

    重光国務大臣 漁業交渉のときに、もしくはモスクワ交渉のときに、そういう問題が起ったことはないと承知し、ております。私の関係しておる方面ではございません。なお今聞きますところでは、他の方面にもそういうことはなかったということでございます。
  21. 高岡大輔

    高岡委員 それなら、もう一つお伺いしたいのでありますが、漁獲物の保存の問題といいましょうか、この問題については、ソ連の方では技術がないとは申しませんけれど、端的に言いまして、カン詰業とでもいいましょうか、これが非常におくれておるといいましょうか、それまで手が伸びないとでもいいましょうか、そういう面から、日ソの間におけるこうしたいわゆる合弁会社とでもいいましょうか、合弁企業のような話は、その間にあったかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  22. 重光葵

    重光国務大臣 具体的提案はございませんでした。
  23. 高岡大輔

    高岡委員 私は今の経済提携といい、あるいは両国の経済的ないろいろな今後の話し合いをします場合に、これは私は日本の漁師の方々が生きる道としては非常に格好のものだと考えるのでありまして、もしもそういう話し合いが今日までなかったとしましたら、今後の折衝において十分に一つ願いたいと思うのであります。  それにもう一つお伺いしたいことは、これもほかの委員の方が十分にお聞きになるでありましょうし、御用があって農林大臣が退席されましたので、その点は深くお伺いしませんけれど、この両方で取りきめは一体いつごろのおつもりでいらっしゃるのか。話を聞きますと、向うとしてはいろいろな資料を集めるとでもいいましょうか、そいう点から、来年にならなければきまらないというようなことも一応聞くのでありますけれど、日本政府としては、この点は漁船の配置等につきましているいろの準備等もございましょうから、できるだけ早くこの問題は解決しなくちゃいけないのじゃないかと言う人もございます。そういう問題につきまして、日本側のいわゆる態度とでもいいましょうか、これに対する今後の推測の日取りとでもいいましょうか、そうしたことについてお伺いをいたします。
  24. 重光葵

    重光国務大臣 日混合漁業委員会は、条約規定によって作らなければなりません、そしてこれが非常に重要なものであることは、言うまでもござ  いません、そこで、これは条約の御批准がなければ作るわけに参りませんから、条約の御批准とともに遅滞なく進めていきたいと考えておりますが、今日まではまだそこまで参っておりません。
  25. 高岡大輔

    高岡委員 最後に一つお伺いしたいことは、例の日本の引揚者の問題であります。これは鳩山総理が非常に友愛精神とでもいいましょうか、人道上から強くこの点は主張され、この面につ  いては非常な御努力をなすったごとを、私どもは感謝しております。そこで、この折衝の経過を拝聴しておりますと、いわゆるマリク名簿というものが基礎にされて論議されたかと思うのでありますが、御承知のようにマリク名簿外の者が相当におるはずでございます。しかも日本名を名乗っておる者でありますれば、今後の合同調査委員会にかけて調査も進められるでありましょうが、無籍、いわゆる国籍のないような形になっておる人もあるそうでありますし、またソ連人の名前に変名とでもいいましょうか、そういうことをやっておる人もあると聞いておるのでありますが、そういうことの調査は今後どうやってなさるのか、その点を  一つお伺いをしたいと思います。
  26. 小林英三

    ○小林国務大臣 御質問の、マリク名簿にございますものは御承知のように千五十三名、ありますが、そのほかわが国といたしまして、今日までにソ連に、マリク名簿以外にあるものと信じておりす者が、本年の九月現在の調査によりますと、約一万五十二名いるのであります。これは日ソ共同宣言の第五項によりまして、今後これらの日本人の状況につきまして報告も得るし、また死亡等がありました場合には、こちらに死亡の通報をしてもらうというようなことは、すべて今後の外交交渉に待つのでありますが、中には、今御質問にありましたように、ソ連におりましてソ連人と結婚したりして、内地に帰ることを欲しないというような人もあると思います。また欲する方もあるのでありまして、それらの一万五十二名の中で、昭和二十五年以来確実に生存しておるとみなされる、いわゆる生存資料のありますものが三百数十名、その他の方はわからないのでありまして、これは今後の外交交渉によりまして、十分にソ連に調査を願い、また内地におきましても十分な調査を並行してやりまして、今後の引き揚げの完了を期したい。こういうふうに考えております。
  27. 高岡大輔

    高岡委員 この際厚生大臣に、話は飛躍いたしますけれども、ちょっとお伺いしておきたいことがあります。それはマリク名簿にしろ、またそれ以外の方も、生きていらっしゃる方は一日も早く日本に引き揚げていただく、引き揚げの希望がかなうように、日本政府としては存分の措置を講ぜられるでありましょうが、これが完了するとでもいいましょうか、その際は、今までの留守家族の方が今度は遺族ということになります。と同時に、私がこの際厚生大臣からはっきりしていただきたいと思いますことは、御承知でもございましょうが、大東亜戦争でなくなられたいわゆる英霊が、靖国神社の社頭に、数にして私が想像しますのに、百二十数万の英霊がまだ祭られておりません。これは私ども戦後に生き残った日本人としては、実に申しわけないことだと思うのであります。これも要するに憲法第八十九条によって、靖国神社がいわゆる宗教法人の中に入っておりますために、公金をもってこれをできないという面はございます。従いまして、これは憲法を今改正するとかどうとかということまで、私は論旨を飛躍するわけではございませんけれども、この靖国神社、それにわれわれ日本の中心であります伊勢大廟、こういったようなものをいわゆる宗教法人から抜いてしまうというような措置を講じまして、一日も早く百二十数万の英霊を、国民としてわれわれがこれを靖国神社に祭らなければならないと思うのであります。これに対して政府はどのようにお考えになっていらっしゃいますか、この委員会としてはちょっと飛躍したことでございますけれども、この機会にお伺いしたいと思うのでごいます。
  28. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまお尋ねのごとく、国家のために犠牲になられました英霊に対しましてのお心づかいというものに対しましては、全く同感でございます。政府といたしましては、本年を含めました三年計画を実施して、まず本年は、ただいまお話のありましたような英霊の数の三分の二を各都道府県の世話課と連絡をとりまして、これをお祭りをすることにして、今後二年の間のうちには、全部それを靖国神社にお祭りをしようということに考えておるのであります。
  29. 高岡大輔

    高岡委員 ちょっと厚生大臣にお伺いしますけれども、それは調査だけでございまして、お祭りのところまではいかないのではありませんか。
  30. 小林英三

    ○小林国務大臣 お祭りと申し上げましたのは、靖国神社にそれをお納めするのでございます。本年はその三分の一を実施するのでございます。
  31. 高岡大輔

    高岡委員 終りました。
  32. 植原悦二郎

    植原委員長 これにて質疑を終了いたしました。次会は明二十日午前十時より開会いたします。  この際、委員長から特に政府並びに委員の諸君に対してお願いがあります。ただいまこの委員会に付託されております案件は、いろいろの方面から考えましてきわめて重大であり、慎重に審議を要するとともに、かつ迅速なる審議を要することは、人道上の問題を考慮して非常に緊急に考えられるのであります。それゆえに、どうか政府並びに委員の方は御勉強なさって、時間には必ず御出席あらんことを委員長からお願いいたしておきます。
  33. 穗積七郎

    ○穗積委員 もう一つ政府関係の資料があったら、事前に早く出すように要求してください。
  34. 植原悦二郎

    植原委員長 なお、今委員の御注意がありましたが、政府から、関係の書類があれば、努めて迅速に出すようにお願いいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十五分散会