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高岡委員 政府当局に御質問申し上げます前に、過去数回にわたる
日ソの
交渉に当って、
全権並びに
全権一行として
おいでになりました
方々の御労苦に対して深甚の敬意を表します。
このたびの
日ソの
国交が
回復なるにつれまして、いろいろな心配とでもいいましょうか、そういうものが
国民のうちにはございます。そのうちで最も
国民が関心を持っておりますのは
領土問題でありますが、この
領土問題につきましては、申し上げるまでもなく、長い期間いろいろなことで
交渉が進められて参りました。しかし仄聞いたしますのに、この
領土問題につきましては、過般
総理がモスクワまで
おいでになりました際に、
向うの
ブルガーニン首相との間に、この問題は特に切り離して、
ソ連の共産党第一
書記であるフルシナョフと
河野全権との間に
一つ十分に
話し合いを進めてみたらどうかというような
話し合いで、ただいま申し上げました
河野全権と
フルシチョフ第一
書記との間に、この問題が
数次にわたって折衝されたということを私
どもは聞いておるのであります。
そこで私はお伺いしたいのでありますが、この
領土問題がきまらなかった、いわゆる
継続審議になったということについて、ある
方々は非常に不満の念を持っておられるように私には感ぜられるのであります。しかし結論から申しまして、私はこの
領土問題をこの際
解決なされなかったことが、
日本のためにむしろ仕合せではなかったかとさえ考えるのであります。それはどういう
意味かといいますと、この
領土問題につきましては、申し
上ぐるまでもなく
平和条約によってこの問題が論議されております。すなわち
平和条約の第二条
C項に「
日本国は、
千島列島並びに
日本国が千九百五年九月五日の
ポーツマス条約の結果として主権を獲得した
樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び
請求権を
放棄する。」と書いてございます。従って、この問題は、
日本としましては
放棄はしておりますけれど、これの
帰属というものが、この
平和条約にはきまっておりません。仄聞するところによりますと、この
平和条約の
会議の際には、今申し上げました地域がどこに
帰属するかということについてのいろいろの討議が行われ、そうして、もしもこれが
ソ連に全部
帰属するものであればこれには反対だ、といった
相当数の国があったと聞いておるのであります。このようにして、その当時の
議長格でありました
ダレス長官は、その
帰属はきまってないのだ、すなわち、このたびの
平和条約には、
日本にただ
放棄させるだけなんであって、その
帰属をここではきめないのだという
答弁があり、それに満足された
諸国は、それならばそれは
承認しようといったようなことで、この
平和条約第一条
C項がきまったと聞いておるのであります。そのような
経過をたどったとしますと、この際
日本が、
ソ連との間に
領土問題を、
日本国民が満足するような、今言われておりますように、具体的に申し上げますれば、国後、択提の
両島までも
日本の
領土にかりにきまったとしましても、私は、
世界の
各国はこれに対していろいろと注文といいましようか、難くせを言ってくるに違いないと思うのであります。従いまして、
領土問題に関する限りは、
日本と
ソ連だけではとうていこの問題は
解決がつかない。両者の間にかりに
解決がついたにいたしましても、諸
外国はこれを容認しないだろう。もしも、かりに
日ソの周に話がきまりましても、諸
外国から、あっちこっちからこの問題についていろいろと論議された場合には、今日の
日本の力では、とうていそうした多数諸
外国を
相手にしてこの問題の
最終段階に入ることは困難であろうというように私は考えるのでありまして、
日本がいずれ
国連加盟をいたしまして、
国際舞台でいろいろ
外交論を論じ得る
地位になりましたときに、初めてこの問題を取り上げるというようなことが一応考えられるのであります。
河野全権は
フルシチョフ第一
書記とお
話し合いのときには、
河野全権のお心の中では、そうしたこの問題を
解決するについての諸
外国との
関係を十分に考慮されたもあだと私は考えるのでございますけれど、その辺のことにつきまして、
河野全権のお気持からお伺いしたいと思います。