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1956-11-28 第25回国会 衆議院 内閣委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十一月二十八日(水曜日)     午前十一時十三分開議  出席委員    委員長 山本 粂吉君    理事 江崎 真澄君 理事 大平 正芳君    理事 高橋  等君 理事 保科善四郎君    理事 宮澤 胤勇君 理事 石橋 政嗣君    理事 受田 新吉君       赤澤 正道君    大坪 保雄君       辻  政信君    福井 順一君       眞崎 勝次君    粟山  博君       横井 太郎君   茜ケ久保重光君       稻村 隆一君    片島  港君       下川儀太郎君    西村 力弥君       森 三樹二君  出席国務大臣         国 務 大 臣 船田  中君  出席政府委員         総理府事務官         (恩給局長)  八巻淳之輔君         総理府事務官         (調達庁長官) 今井  久君         防衛庁事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君  委員外出席者         総理府事務官         (調達庁不動産         部長)     松木 豊馬君         防衛庁参事官         (防衛局長)  林  一夫君         防衛庁課長         (経理局施設課         長)      大森 頼雄君         厚生事務官         (引揚援護局援         護課長)    小池 欣一君         専  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 十一月十日  委員山花秀雄君、島上善五郎君及び細迫兼光君  辞任につき、その補欠として片島港君、稻村隆  一君及び石橋政嗣君議長指名委員選任  された。 同月二十八日  委員山本正一辞任につき、その補欠として赤  澤正道君が議長指名委員選任された。 同日  委員赤澤正道辞任につき、その補欠として山  本正一君が議長指名委員選任された。 同日  理事石橋政嗣君委員辞任につき、その補欠とし  て同君が理事に当選した。     ――――――――――――― 十一月十二日  一般職職員給与に関する法律の一部を改正  する法律の一部を改正する法律案赤城宗徳君  外三名提出、第二十四回国会衆法第三六号)  旧軍人等遺族に対する恩給等特例に関する  法律案大平正芳君外十一名提出、第二十四回  国会衆法第五五号)  国務大臣私企業等への関与の制限に関する法  律案参議院提出、第二十四回国会参法第一  号)  国家行政組織法の一部を改正する法律案内閣  提出、第二十四回国会閣法第一五六号)  大蔵省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、第二十四回国会閣法第一五七号)  栄典法案内閣提出、第二十四回国会閣法第一  六〇号)  内閣法等の一部を改正する法律案内閣提出、  第二十四回国会閣法第一六一号)  国家公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出、第二十四回国会閣法第一六二号)  事務次官補を設置するための外務省設置法等の  一部を改正する法律案内閣提出、第二十四回  国会閣法第一六四号)  内政省設置法案内閣提出、第二十四回国会閣  法第一六六号)  経済企画庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出、第二十四回国会閣法第一六七号)  内政省設置法の施行に伴う関係法令の整理に関  する法律案内閣提出、第二十四回国会閣法第  一七〇号) 同月二十日  元外地鉄道職員に関する恩給法等特例制定に  関する請願高瀬傳紹介)(第一号)  明治大正年代における殊勲者特権復活に関す  る請願横井太郎紹介)(第五七号) 同月二十四日  駐留軍使用道路損害補償に関する請願(田中  彰治君紹介)(第一二四号)  湘南観光道路演習地貫通等に関する請願(片  山哲紹介)(第一七五号) 同月二十八日  金鵄勲章年金復活に関する請願林讓治君紹  介)(第二〇一号)  同(植木庚子郎君紹介)(第二〇二号)  元外地鉄道職員に関する恩給法等特例制定に  関する請願高瀬傳紹介)(第二〇三号)  長野市の地域給引上げ請願小坂善太郎君紹  介)(第二〇四号)  一般職職員給与に関する法律の一部改正に  関する請願片島港君紹介)(第二八四号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 同月十七日  旧軍人恩給加算制復元に関する陳情書  (第一二二号)  旧軍人恩給年額の不均衡是正に関する陳情書  (第一二三号)  人事院勧告による新俸給表反対に関する陳情書  (  第一二四号)  旧軍人公務扶助料率改正等に関する陳情書  (第一三八号)  元沖繩県内特定郵便局長恩給等に関する陳情  書  (第一四七号)  秋吉台大田演習場使用条件改訂反対に関する  陳情書外二十六件  (第一六一号)  綱紀粛正に関する陳情書  (第一九六号) 同月二十二日  公共施設行政の一元化に関する陳情書  (第二号)  佐渡ケ島空戦訓練区域移動反対に関する陳情  書(第四号)  秋吉台大田演習場接収解除に関する陳情書外  十一件  (第五号)  地域給改訂に関する陳情書  (第六号)  元満州国日本人官吏恩給法適用に関する陳情  書  (第九六号)  地域給制度撤廃に関する陳情書  (第九七号)  内政省設置法制定促進に関する陳情書  (第九八号) 同月二十七日  渉外労務管理業務委託費増額に関する陳情書  (第二二八号)  陸上自衛隊の配置に関する陳情書  (第二三二号)  鳥島爆撃演習区域撤廃に関する陳情書  (第二三二号)  研究公務員特例法制定等に関する陳情書  (第二八三号)  地域給制度撤廃に関する陳情書外一件  (第三一八号)  金鵄勲章年金復活に関する陳情書外一件  (第三一九号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の互選  国政調査承認要求に関する件  旧軍人等遺族に対する恩給等特例に関する  法律案大平正芳君外十一名提出、第二十四回  国会衆法第五五号)  基地問題に関する件     ―――――――――――――
  2. 山本粂吉

    山本委員長 これより会議を開きます。  まず国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。御承知通り衆議院規則第九十四条の規定により、常任委員会は会期中議長承認を得た事項に限って国政に関する調査をすることができることになっておりますので、当委員会といたしましては、本会期中に調査する事項を一、行政機構並びにその運営に関する事項、一、恩給及び法制一般に関する事項、一、自衛隊に関する事項、一、公務員制度及び給与に関する事項とし、議長承認を得たいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山本粂吉

    山本委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。なお、その手続につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山本粂吉

    山本委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。     —————————————
  5. 山本粂吉

    山本委員長 次に理事補欠選任についてお諮りいたします。去る八月二十七日、理事でありました石橋政嗣君委員辞任に伴い、理事が一名欠員になっております。この際理事補欠選任を行いたいと存じますが、その方法は先例によりまして委員長より御指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 山本粂吉

    山本委員長 御異議なしと認めます。それでは委員長におきまして、石橋政嗣君を再び理事指名いたします。     —————————————
  7. 山本粂吉

    山本委員長 旧軍人等遺族に対する恩給等特例に関する法律案を議題といたします。  本法律案は、御承知通り、前国会から継続しておる議案であり、提案理由説明は前国会においてすでに聴取いたしてありますので、この際提案理由説明はこれを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 山本粂吉

    山本委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。
  9. 山本粂吉

    山本委員長 質疑の通告がありますのでこれを許します。受田新吉君。
  10. 受田新吉

    受田委員 前国会においてすでに提案理由説明がしてあることだし、しかもこの法案については、われわれから出したまだこの法案によっては救われない同類系該当者に対しての救済方法もあわせ考慮するように要望をして、継続審議に持ち込んであるのでありまするが、国家総動員法に基く、たとえば学徒動員令という勅令で、国家至上命令で死亡せしめたような方々に対する救済方法を、その後約半年間たっておるのでありまするが、いかように提案者はお考えになられたか、御答弁を願いたいと思います。
  11. 大平正芳

    大平委員 御承知のように、戦争犠牲者に対してどういう手当をいたすかということにつきましては、非常に広範多岐にわたる問題があるわけでございます。恩給関係におきましても、文武官を通じまして、なお未解決の問題がたくさん残されておるわけでございます。そういう未解決のたくさんの案件の中で、今回私どもが非常に重要であり緊切であると存じましたものを、とりあえず今提案になっておりまする法律案に盛り込みまして、御審議を願っておるわけでございます。私どもがこの法律案提案する際に、今受田委員が言われましたような、総動員法上の要請によりまして、強制的に公務についておられて犠牲になられた方々、そういう方々のことも十分頭に置いて考えたわけでございますが、たくさんの未解決案件の中で緊切と思われるものをとりあえず取り出して、この法案にいたしたわけでございます。従いまして自余案件につきましては、今後における政府並びに国会検討状況財政状況推移等と見合いまして、真剣に検討していくべき問題と存じます。重ねて申し上げますが、そういった未解決の問題に全部目をおおうて、この案件だけを成立させたいというわけでは決してございませんで、たくさんの案件の中で、まず一番重要と思われるものをとりあえず取り上げたのだ、そのように御了承願いたいと思います。
  12. 受田新吉

    受田委員 重要であると思われる案件から法案に盛り込んだのであるという御答弁である。しかし国家総動員法によって、国家命令に従って強制的に動かざるを得なかった立場人々甲乙をつけるような段階ではなくして、ひとしく身命を国にささげた方々は、同等の取扱いをすべきものではないかと思いまするが、その重要である順位は何を基準に御決定に相なったのであるか、詳細なる御説明を願いたいのであります。
  13. 大平正芳

    大平委員 御承知のように、昭和二十八年に軍人等遺族に対する恩給復活ということを第一歩といたしまして、戦争犠牲者に対する措置の手が染められたわけでございます。軍人であろうと非軍人であろうと、取扱いを別にしてはならぬという御趣旨は十分了得できるところでございますが、軍人並びに準軍人に対する手当をまず最初に取り上げましたので、この関係において不備な点を是正補欠して参るということが当面の要請であろうというように考えたわけでございます。ほかの問題を、先ほど申し上げましたように、目をおおうて参る意思は毛頭ないのであります。とりあえず軍人、準軍人に対する手当において欠陥があるところを逐次補充していくということは、順序としてとらるべきものではないか、そのように考えたわけでございます。
  14. 受田新吉

    受田委員 軍人、準軍人及びそれ以外の国家総動員法に基く人々というような段階で区別した、こういう言葉でございます。私は今度この新提案されておる特例法案の中に盛られている方方の中には、在職中の職に関連して負傷しまたは疾病にかかって、それが原因でなくなられた方々が出ておるわけでございますけれども、もちろんこの方々を取り残してならないことははっきりわれわれとして申し上げられることでありますが、その方々の中には、おうちに帰られて、一家がその看病に当って最善を尽して治療に当り、病床を見守ってあげてなくなった方々もたくさんあるわけなのであります。ところが学徒動員とか、あるいは報道班員、あるいは女子挺身隊国民義勇隊、こういうような方々は、直接戦火渦巻く砲煙の中で、悲壮な戦死をされておる。その家族も悲惨な死に方をされたその遺骸に取りすがって、尽すべき道も尽さずして、この世を去っていったこの肉親の姿を思うて、あきらめ切れない気持でおられると思う。そういう方々終戦後十分の——十分ではなかったでありましょうけれども、とにかく肉親が見守って、治療の道を尽してなくなられた方と差等をつけるということはこれはいかがでございましょうか。人道的にも忍びがたきものがあると提案者はお考えではございますまいか。
  15. 大平正芳

    大平委員 御趣旨は全然同感でございます。
  16. 受田新吉

    受田委員 御同感をいただいたのでありますが、しからばそれに対する取扱いにおいて御考慮をされる意思はなかったか、お答え願います。
  17. 大平正芳

    大平委員 冒頭に申し上げましたように、そういった戦争犠牲者に対する対策は、どういう順序でどういう段階を踏んで、どういう程度やって参りますかということは、そういう問題に対する国会並びに政府検討状況、並びに財政状況推移、そういった条件を十分考慮して順序立ててやっていくべきものと思います。私どもはそういう問題を無視して、これだけを取り上げたというものでないことは、受田委員におきましても十分御了得願ったことと思うのでございまして、そういった未解決案件が多々あるが、先ほど申しましたように、軍人、準軍人関係欠陥をまず補充しておこう、そういう微意がこの法律案に盛られたわけでございまして、自余案件につきましては、今後鋭意私どもにおきましても、また政府におきましても、真剣に検討して参るはずだと承知いたしております。
  18. 受田新吉

    受田委員 大平さんのまじめな人物であることは、よく承知しておりまするが、今御説明をされたお言葉の中に、自後順次ワクを広げていきたいというお言葉があったのでありますけれども、こういう大事な人命に関する事後処理法案におきましては、とにかく尊い生命という点において、しかもそれが国家至上命令で死なしめたという点については、甲乙をつけることは非常にむずかしいと思うのです。重要な者からという先ほどのお言葉ですが、軍人、準軍人、それから軍属というような順序処理をされるということでなくて、できればこれを一律に取り扱うべきであり、特に軍人だけということになりますると、何だか軍国主義的なにおいが残っているように思われます。軍人以外の人命あと回しでいいんだ、軍人人命の方が大事なんだという観念につながる危険が多分にあると思うのです。軍人人命を第一順位取扱い軍人に準じた軍属あと回しにしていいという観念は、少くとも軍国主義を払拭した今日の日本としては、これは妥当ではない。本人がいかに希望しないといってもその中へ無理やりに出されるような国家総動員法ができた以上は、少くともそれに従って行動した人は同等に取り扱うべきだと考えるのであります。しかもこの法律の性質が、別に恩給法という法律建前にしているというわけでない。恩給特例にしているのであって、援護法適用を受ける人々救済方法考えられていることなんですから、遺族年金の支給の特例のごときもこれは入るのです。そうしますと、基準重要度軍人及び非軍人という立場に置くべきでなくて、ひとしく国家至上命令で行動された人々すべてを同じ規格のもとにおいて取り扱う。こういう形の方が軍国主義払拭の現段階における民主主義政治のもとに行われる民主主義政党としての立場においては、妥当ではないかと思うのでありまするが、御意見を伺いたいのであります。
  19. 大平正芳

    大平委員 私は考え方受田さんとちっとも変っていません。あなたと全く同感です。ただ現実にわれわれが政策を作案ずる場合に、白地に絵をかくというわけに参りませんので、終戦後いろいろな措置が過去においてとられた、その歴史と経緯というものがわれわれの前提にあるわけでございまして、現在やって参っている施策の欠陥をまず補充していくということを最初考えたわけであります。どういう順序でやって参るかということは、白地に絵をかく場合にはいろいろな描き方がありますけれども、われわれは過去を背負っておりますので、その過去においてまず昭和二十八年にときの国会軍人、準軍人に対する恩給という形で、この問題に手を染めたということが事実としてあるわけでございまして、その観点から参りますと、準軍人の間において不均衡が出てきたので、それをとりあえず詰めて置こうというのが今度の提案でございます。政策を作案し、実行する場合に、そういう技術的な段階はあり得るものと思います。考え方根本において全く同感でございますが、それをどうして具現していくかという場合に、そういう段階的な考慮があったのだ、そのように御了解願いたいと思います。
  20. 受田新吉

    受田委員 段階的な考慮をされるとするならば、ここにかかる特例法でなくして、恩給法及び援護法のそれぞれの改正案でお出しになるのが順序ではございませんか。
  21. 大平正芳

    大平委員 それは法律的技術の問題でございまして、これでなければならぬというわけのものでもございません。別の方法があり得るかと思いますけれども根本の私どもの態度は、今申し上げました精神であります。これは受田さんの方にも、別に異存はないんじゃないか、こう存じております。
  22. 受田新吉

    受田委員 恩給局長にお伺いしますが、法律を作る建前から、基本法を尊重する形をとるか。あるいは特例法をどんどん設けて、法律体系を乱すのがいいか。よってこの場合において、旧軍人等遺族に対する恩給等特例に関する法律案という長たらしい文句を使わないで、恩給法改正案あるいは援護法改正案として、さっぱり出すのがいいと思われないのか、御所見を承わりたいと思います。
  23. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 今度の御提案法律は、今まで恩給法というものの建前が、公務で死亡した場合と公務でなく死亡した場合というので、取扱い恩給法建前といたしまして、オール・オア・ナッシングであります。そこで大東亜戦特殊性というようなことを考えて、その遺族の処遇の方法といたしまして、その間に一つの中二階を作ろうというのが今度の法律のねらいであろうと思うのでありますが、大東亜戦争特殊性に基いた措置というものは、恒久的な、明治年間からずっと続いておる恩給制度というものにおける本則の上に乗っかるべきものではなくて、あくまで一つ特例である、こういうように考えたいと思います。
  24. 受田新吉

    受田委員 この恩給法に乗っかるものではなくして、特例法でやっておくべき暫定措置的なものだということになりますと、この法案に盛られておるものは、恩給法の規定する対象にはならない人々であるという御判断があるわけでございますか。
  25. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 今までオール・オア・ナッシングというもので、ナッシングの口に入っておったわけです。でありますから、新しい大東亜戦争処理対策といいますか、別な遺族対策の面からこれを取り上げよう、こういう形なのでございますから、やはり一種の特例だと思っております。
  26. 受田新吉

    受田委員 恩給法をいつまでも固執するからそういうことになるので、恩給法公務死亡対象ワクを、新しい解釈に基いて広げていくという努力をされていくことによって、かかる複雑なる法案がしばしば提出されるという繁雑が省略できるのじゃないでしょうか。
  27. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 建前といたしまして、公務であるか公務でないかということは、制度的に割り切られておるわけなんで、これを公務と見るかどうかということは、運用の問題であろうと思います。運用の問題というよりは、公務と見るか見ないかというケース・バイ・ケースの問題でありまして、今度の法律案というものは、制度としてそういうものを公務と非公務中間段階に置く、こういうふうな考え方で、公務扶助料に準じたものをやろうという措置だろうと思います。
  28. 受田新吉

    受田委員 局長の御判断は、公務、非公務中間に存する人々を救うものだという御解釈のようでありますが、大平さん、あなたの御指摘された公務死は、恩給法上には救われない人々である、公務と非公務の間である、その恩給法上の恵まれざる人々であるという局長の御判断に対して、いかようにお考えになりますか。
  29. 大平正芳

    大平委員 今局長が言われたことは、明治大正昭和を通じまして一貫した恩給法の原理というものがあるので、このわれわれが今取り上げている対象は、ナッシング範囲になります。従いまして、これをどういう体系に乗せるかということの問題で、恩給法改正してそこで取り上げるか、これを別個の法体系に乗せるかということは、法律技術の問題だと思います。それは、どちらでもやって悪いということはないと思いますが、ただ、これは御承知のように、援護法によりまして弔慰金を受けている方で、これこれの要件に該当した方を取り上げるということでございまして、公務死亡に準ずるという認定は、原則として厚生省がやられるわけでございます。厚生省の方でこれが該当するのだといわれた場合には、恩給局長審査という手続を省略いたしまして、そのまま仮定俸給に倍率をかけて扶助料を出すとかいうようなことを考えているのであります。従いまして、恩給法プロパー対象とは、事務的取扱いを若干異にいたしております。従って、こういう行き方をとった方が運用において便利だろう、そういう考え方も、こういう単独立法の形にした場合において、われわれの考慮に上ったわけでありまして、要は法律技術の問題でございますから、どちらでなければならないという決定的な判断はないわけでありますが、こういった法によった方が、運用上便利だろうという考え方で、単独立法の形にしたわけでございます。
  30. 受田新吉

    受田委員 局長さん、これははなはだ失礼な尋ね方になるかと思いますが、恩給法の基本的な考え方恩給法制定のゆえんからするところの基本的な考え方は、今日の民主主義国家における、国の特定の人に対する特権的な措置、特別な措置としての考え方で依然として判断されるのか、あるいはもう少し変った立場で、国家への特例の奉仕をした人に対する国の反対給付観念から、その人に給与金を与えるという形式になっているのか、どういう考えを今持っておられるか御所見を伺いたい。
  31. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 恩給法考え方というものは、国が雇用主として、その使用人に対して、退職後に、その退職後の老後を保障する、あるいはその方がなくなられた場合に、その遺族に対して保障するという、国が使用者として、その使用人に対する退職後のことを考えてやるという精神に出ているのでありまして、別に特権的ということは考えておりません。
  32. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、恩給の恩の字と給という字の関係は、どういうところから出た言葉でしょう。用語上の問題として……。
  33. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 恩給という言葉はずいぶん古い言葉でございまして、明治八年の太政官布告以来恩給という言葉が使われておりますので、それをずっと使ってきた、こういうことだけで、沿革的な理由だけでございます。
  34. 受田新吉

    受田委員 沿革的な理由で、それが今日の段階においては何か国が恩着せがましい制度のように思われる場合には、その恩給言葉を新しくやり直す必要もあろうし、また公務死範囲を拡大する措置も必要であって、昔から残っている法律をそのまま改正しないでいつまでも厳守するという形をおとりになるのは、国の進運とともにあるべき政府としては不届きじゃないかと思うのです。時勢の進運に従うて常に法律運用するという、それが政治の衝にある者の責任であると思うのですが、いかがでございましょう。
  35. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 恩給という言葉の問題であるとか制度上のいろいろな古い伝統を墨守しているということばかりではないのでございまして、すでに人事院勧告等も出ておりますし、また現在公務員制度調査室においても公務員制度全般についていろいろ検討していますが、そのうちの一環として恩給制度についても検討しております。その検討の暁においては、また新しい言葉が生まれるかもしれませんし、また制度的にいろいろ新しい手法が取り入れられるということもあろうかと思っております。
  36. 受田新吉

    受田委員 私はこの法律体系が幾つもの支流に分れることは、法治社会をしていよいよ複雑怪奇ならしめるものだと思う。すっきりした形で一つの源泉から流れる川としての筋を通さなければならない。従って恩給法公務死範囲解釈についても、時勢の進運に従うて適当に調整していいんじゃないですか。いつまでも何か白亜の塔に立てこもったような印象を国民に与えている向きもあるし、恩典的な印象を与える節もあるのであるから、せめてこういう法律改正の際ぐらいには、大東亜戦争の原因でなくなられた死亡者はもう公務死に間違いないんだから、この公務死恩給法に規定する公務死として、公務戦病死としてお取扱いをされていいんじゃないですか。何か一つの牙城を固守するような、たとえば維新の際における佐幕と開国論との二つの戦いにおいて、佐幕がいつまでも従来のしきたりを尊重しようとして非常にこじつけをやったような印象を与えておるのですが、どうですか、恩給法解釈を少しゆるやかにして、公務死というものの範囲を思い切って広げる、戸籍上の問題などもあまり厳重に言うから、戸籍面で救済されない人ができてくるのでありますから、こういうところも一つ幅を広げるというようになさったならば、法律技術の問題にちょっと手心を加えられるならば、全国民が納得するような形になる。こういう法律をもって、遺族に、あなた方は旧軍人等遺族に対する恩給等特例に関する法律適用者ですよと言ったら、ほんとうに悲しみますよ。むしろ、われわれは恩給法適用者と区別されておるんだ、特例で救われたんだというような印象を与える。こういうところを一つ考えになられたら、ひとしく恩給なら現在ある恩給法がある限りにおいては、それによって平等の待遇をされるという原則を立てておく方がいいんじゃないでしょうか。この際根本的に恩給局の態度を変えること、及び政府与党の権威者である大平提案議員におかれても、この際政治力をもって恩給局との話をまとめるぐらいの努力をしていただく、どうですか、もう一度お考えになられる必要はないでしょうか。
  37. 大平正芳

    大平委員 受田委員のおっしゃる気持よくわかるのですが、ただその恩給法も、御承知のようにこの間は三公社が恩給法上の対象にならなくなり、共済組合制度に組み入れてしまったのであります。時代の進運に伴いまして、恩給自体も非常な変貌を来たしつつあるのです。従いまして、何も今あります恩給法をいろいろ拡大して、恩給法上の対象にしなければならぬという理屈もないんじゃないかと私は思うのです。こういった材料がたくさん集まりまして、そうして終局的に社会保障の体系がどのようにでき上るかということは今後の問題であろうと思うわけでございまして、すでに解体過程にある恩給恩給法というようなものに何もそう執心を抱く必要もないんじゃないか、そのような感じがするのです。
  38. 受田新吉

    受田委員 しからばこの法案恩給等特例と書かずに、年金等の特例としておかれた方が時代の進運に即して聞えますがね。
  39. 大平正芳

    大平委員 いろいろ学の深い御意見で傾聴するわけでございますけれども、しかし恩給といい、年金といい、これは用語の問題でございまして、現に恩給法がありまして、その体系で律し切れないような問題を取り扱う特例を作るということは、私はそんなに悪いことじゃないのじゃないか、運用上もその方が便利だとすれば、おおらかにこれをのんでいただいても一向差しつかえないのではないか、そう考えます。
  40. 受田新吉

    受田委員 この議論はこれでおきます。大平さんも非常に御苦労で、御苦痛の色が面に現われておりますから、これでやめますが、もう一つ、今度はこの内容についてでありますが、第二条の遺族度金の支給の対象となる人々の中に、昭和十六年十二月八日から昭和二十年九月一日までの間と、終戦直後の九月一日をお定めになられた理由、それからその後における人々取扱いをどう考えておるか、あわせ御答弁願いたいと思います。
  41. 大平正芳

    大平委員 われわれがこの法律を作案ずる場合に、どういう範囲をまず取り上げるべきかということでいろいろ議論があつたわけでございます。根本考え方は、弔慰金だけを現在援護法において受けておられた方、そういう方の中で準公務としてこの措置対象にする者をどういう基準で拾い上げるかということを考えたわけでございます。一応の基底は援護法に基きまして弔慰金を受けておる方、そういう基底をまず設定いたしまして、その中で営内居住でありますとか、期間の制限とか、職務上の負傷、疾病とかいうように、その対象を限定して参ったわけでございます。従いまして昭和二十年九月一日以後の者を救って悪いということはないのです。そういうことも考えられるわけでございますが、一応またシナ事変中のものをどうするかという問題も考慮に上ったわけでございますが、特別立法でありますので、範囲をできるだけ限定していく必要がございましたので、一応大東亜戦争中ということを頭に置いて法律全体の構成を考えたわけでございます。昭和二十年九月一日以後のものを救い上げればなおよろしいわけでございますけれども特例立法につきまして政府側と私どもが累次折衝を重ねましたが、終始政府側は消極的な見解でございました。まずこの法案に出て参りまする限界までは、何とか政府において責任を負いましょうというところまで、ようやく引っぱってきたわけでございまして、この中には遺族会方面からも、若干の個所について拡張していただきたいという切なる陳情もありますことは、受田委員も御承知通りであります。私どももそれを救ってあげたい気持は山々でございますが、ようやくにしてしぼりにしぼって、この程度まではともがく財源的にも政府において責任を負いましょうというところまでこぎつけて参りましたので、この際これを若干拡張していってはどうかという気持はわかりますけれども、それをもう一度政調の方におろしまして、政府側と再折衝の段階に入りますと、どうしても特例法案そのものの成り行きが懸念されますので、涙をのみまして、この程度のことで当面はごかんべんをいただきたい、こういう趣旨でこういうようにしぼったわけでございます。
  42. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、きわめて極端な例ですが、昭和二十年九月一日午後十一時五十九分五十九秒までになくなられた方には、この法律適用され、翌日九月二日にかけてなくなられた方は、この適用からはずされるということは、これは非常な不公平が起ると私は思うのです。その間における日にちを九月一日に限ったために病気に対して非常な努力をしてなおそうという道を尽して長生きしたり、刀折れ、矢尽きてなくなられた方が不遇で、早く倒れた方が優遇されるということは、——こういうふうに日にちを切ったことに非常な無理が起ってくると思うのですが、いかがですか。
  43. 大平正芳

    大平委員 今の設例は、私は少し違うのじゃないかと思うのです、九月一日は在職期間の限定ですから、その間に死んだ人じゃないのです。その点は御了解願いたいと思います。
  44. 受田新吉

    受田委員 在職期間ということに今の質問を変更します。
  45. 大平正芳

    大平委員 ただしかしどういう制度を作る場合にも、そういう限界点の問題が必ずあるのです。どこに線を引くかということで、その接点においてその問題は不可避なことじゃないかと思うのです。従ってこの限界で非常に気の毒なケースが若干伴うことは、もうやむを得ない悪だということで、一つ御了解願うよりほかに道がないじゃないか、そう思います。
  46. 受田新吉

    受田委員 今の私のお尋ねは、在職期間や、また在職期間経過後がこれに関連するので申し上げたわけでありますが、終戦の後は期限を切るのは、ちょっと無理が起ると思う。その以前の大東亜戦争を起すとか、シナ事変を起したときに日にちを切ることは筋が通るわけでありますけれども終戦後の在職期間や死亡期間を限定するというところに、一つは無理が起きはしないかと思うのです。私は、すべての法律が、ある一定の期日を定めることになっているというお言葉ですが、終戦後の期日をきめると、在職期間とか、あるいは死亡とかをきめることは非常な無理があると思う。ソ連その他からおそく帰られた人の場合なども比較対照した場合に、終戦後の日にちを区切ることについての無理を解消する必要があると思うのでありますが、いかがでしょうか。
  47. 大平正芳

    大平委員 これは私が最初に申し上げましたように、援護法上の対象の中で特に考慮すべきものを対象として抽出したという建前になっておるのです。その根本にあります援護法におきましても、こういうしぼり方をしておるわけなんです。従いましてこれをまずもう一ぺんはずしちゃって考え直そうということになりますと、これは援護法をまた変えなければならぬということにもなりますし、そもそもの出発点がそういうところにあったので、受田委員もよく御承知通りだと思いますので、御了承願います。
  48. 受田新吉

    受田委員 この法律がいろいろ寄せ集めてやったというところに問題があるので、何だかこれには体系のない、その場しのぎの法案のような感じがして、しようがないのです。だからあなたにお願いしたがったことは、恩給局の方に法律技術上の研究をしてもらって、民主主義国家にふさわしい法律解釈をしてもらって、筋の通った法案を出していただきたかったのであります。最後に時間が迫りましたので、それぞれの該当者における数と、それに伴う予算をお示し願いたいと思います。
  49. 大平正芳

    大平委員 遺族年金及び扶助料のそれぞれの内訳は、遺族年金は六百人で二千万円、恩給で参りますのが三万六千人で十一億ということになっております。この予算は昭和三十二年の予算に計上をする予定でございます。予算計上に当りましては、この法律案が通過しておった方がすなおに計上できるので、私どもも今国会中にぜひ御賛成をいただきまして、予算計上のベースを作っておきたい、こう念願している次第でございます。
  50. 受田新吉

    受田委員 施行期日は一月一日で、予算措置は四月以降ということで、補正予算の必要はないというところで了解を得ておられるそうでありますが、この十一億という所要額は、これは次の問題と関連をするので確かめておきたいのでありまするが、国家総動員法に基く動員学徒、国民義勇隊、あるいは報道班員、女子挺進隊というような、同じ規格で救われなければならない人々の数とこれに伴う予算措置というものもあわせ考えた末において、十一億の分だけをまずというふうにきめられたと思うのであります。一応同時にやるべき対象検討された上でこれをやられたと思うのでありますが、提案者として研究されたこの法律で、当然救わるべきであった国家総動員法の発動に基く死亡者に対しての該当人員及びこれの予算措置等についての構想をお伺いしておきたいと思います。次にこれを手直しする場合に、参考のためにお開きしておきたいと思います。
  51. 大平正芳

    大平委員 今御質問のような検討は一応いたしました。私人数をはっきり覚えておりませんが、御指摘のような人を同じベースで収め上げるとすれば、約五十億くらいの予算が必要だというような一応の目安はついておるわけです。ただこれを第一列車として出しておいて、第二列車、第三列車をいつ仕立てて出すか、またどの程度——今恩給法からいうと六割ということになっておりますけれども、どういうベースで出すかということについては、まだ政府、与党部内の意見の一致を見ておりません。またいつ出すか、これは先ほど私が申しましたように、今からわれわれが検討対象に取り上げなければならぬことだろうと思いますが、五十億という一応の目安は立っておりますが、それは順序立てて次々とこのベースでやっていくのだというように、きまった順序が立っていないわけなんです。すべて検討対象になっておるのだというところまで御了承願いたいと思います。
  52. 受田新吉

    受田委員 私は最後に一言お尋ねをして質問を終りますが、大平さん、この法案に関する問題は全国民が注目している問題でありますだけに、その先後するところをはっきりしておかなければならぬと思うのです。今あなたの御説明で、軍人を先にしほかの者をあとにする、それから期日も一応区切ったということでありますが、現在の戦傷病者戦没者遺族援護法適用を受けている人の中には、すでに三十四条その他で、動員学徒などで遺族公債をはっきりと受けている人があるのです。この法律遺族公債はもらっているが、遺族年金はもらっていない、こういう人があるのですが、この法律の中には、遺族公債をもらっていないで新たに適用される人はありませんか。いかがですか、援護法による遺族公債はもらってないで、この適用を受けるに至る人はないかどうか。
  53. 大平正芳

    大平委員 そういうことはございません。
  54. 受田新吉

    受田委員 一名もない。そうすると全部遺族公債をもらって、新たに年金や扶助料をもらう人ということになるわけですか。そうすればこの援護法でひとしく遺族公債をもらって、遺族年金を受けていない人で残される人が出てくるわけです。従って特に早急に措置をしなければならぬという問題は、遺族公債をもらっておって、そうして年金を受けるに至らない、この法案で救われない人々を、同時にこれは何とかしなければならぬと私は思うのでありますが、このことは動員学徒の問題やその他の問題とは別に考えても、すでに法律遺族公債をもらっている人を対象にして、その限られた人員だけはまずこちらの方に移すという考え方は、私は妥当じゃないかと思うのです。その人員はどのくらいあるか、援護課長さんお知りじゃないかと思うのです。数はわずかであると思います。予算もそうたくさんは要らないと思います。少くとも援護法遺族公債を支給しておきながら、今度この法案に漏らす人があったということは、これは重大な欠陥だと思うのです。御答弁願いたい。
  55. 大平正芳

    大平委員 私が受田委員の御質疑で冒頭に申しましたように、現在の文武官恩給につきましてもまだ数十の懸案があるのです。この法律を作ることによりましても、今申しましたように、これの限界からはずれた方々に不満が残り問題が残るということも、こ  れはやむを得ないことだと思うのです。そういう未解決案件をどういう時期にどういう順序で取り上げていくかということは、これからの政治の、そういう政策の限界についての評価によってきまるのじゃないかと思うわけでございまして、これからはずれた方方を同時にこういう仕組みで早くやらねばいかぬじゃないかということには、まだ私どもはそこまで踏み切れない気持でございます。今申しましたように、まだこればかりではなく、いろいろ未解決の懸案がたくさん堆積しておるわけでございまして、それをもちろん真剣に検討はいたしますが、どういう順序でどの程度取り上げるかということは、今後の政策の問題になってくると申し上げるより以外に、私は申し上げようはないのじゃないかと思います。
  56. 受田新吉

    受田委員 私は質問を終る予定であったのですが、もう一つ追加します。あなたは非常に政治的な御発言が多いのであります。つまり党内の事情ということを常に念頭に置いておられるようでありますが、法律は党内の事情で左右されることでなくして、筋は一応通さなくちゃならぬ。筋の通らない法律というものは国民は納得しないのでありますから、これは今当然援護法と同じ基準で、遺族公債をもらっていた人々だけは同時にこちらの方に移すという建前、これは国民すべてが納得する。しかも今私は予算的に数字をここにはっきり持っていないので、あなたにお尋ねしたのですが、遺族公債の対象になっておる人はごくわずかです。その人々をちょっと追加したって、予算的にはそう大したものにならぬ。それを私は今お尋ねしておる。  それから、援護課長がおられるからお尋ねしますが、学徒動員で無理やりに軍需工場で働いておるうちに、空襲その他でなくなられた人、それは遺族公債の対象になっておる人が一部ある。それからそのときに手や足をもがれ、目を失った傷癖者は、今日何ら措置がされないで、ちまたにほうり出されておる。就職もできない。かといって勉強もできない。あの学徒たちは、からだを不自由にして苦しみ通して、今日障害年金の対象にもならぬし、増加恩給はもちろんもらえぬという、はなはだ気の毒な立場になっておるのでありまするが、この法律関係して、学徒で動員された人で、手や足をもがれ、目を失って、何ら国家から援護法による障害年金も、恩給法による増加恩給ももらっていないこの不幸な人々を放任しておるという理由はどこにあるのか。お答え願って質問を終ります。
  57. 小池欣一

    ○小池説明員 準軍属の障害年金関係の支給につきまして、御質問があったようでございます。準軍属につきましては、御承知のように弔慰金が出ておるのみでございまして、障害年金なり、あるいは一時金というものは出ておりません。これはこの法律ができましたときに、障害者につきましては軍人及び軍属のみに限定をするという、過去におけるところの、一時ストップになっておりましたところの、恩給法の暫定的な措置であるという考え方で規定をされました関係でかようになっておるわけでございまして、おっしゃいます点はまことにごもっともではないか、かように考える次第でございます。今後十分に検討いたして参りたいと考えております。
  58. 受田新吉

    受田委員 これで質問を終ります。
  59. 山本粂吉

    山本委員長 この法案に対する質疑はなお後日に譲ります。
  60. 山本粂吉

    山本委員長 この際江崎真澄君より発言を求められておりますので、これを許します。
  61. 江崎真澄

    ○江崎委員 昨日エチオピアの皇帝が、東京会館におかれまして、お別れに当ってのレセプションを催され、この国会からは議長、副議長、そうして各委員長がお出になったというふうに聞いております。そこでたまたま昨日、私は代議士控室でこの話題を仄聞したわけでありまするが、エチオピア皇帝の御招待でありまするから、本来の形式としては、むろんその人選はエチオピアの皇帝がなされたという形はとるわけでありまするが、当然皇帝に日本の実情がわかるわけではありませんから、内閣なりあるいは直接御接待の責任の衝にある宮内庁が、この人選に当ったものと、こう考えて差しつかえないと思うのであります。しかるところ、その宴席に臨んだ委員長諸君の話を総合いたしますと、その日の招待者は千名以上にも上る招待者であったというふうに聞きます。しかもその顔ぶれを見ると、国会はわずかに議長、副議長委員長。連なるところのものは各省の大臣、次官、これはまあもちろんでありますが、局長また局次長までがそれに夫婦連れで顔を並べておった、こういうことを承わるのであります。委員長たまたまお出になったそうでありますが、これは大体そういうふうでございましたか、いかがでございますか。
  62. 山本粂吉

    山本委員長 委員長はきのう国会の都合で参列できませんでして、長井懲罰委員長からの説明を聞くと、ただいま江崎君の御質疑の通り人々が列席されておったそうでございます。
  63. 江崎真澄

    ○江崎委員 やはり委員長お出にならなかったようでありますが、出た人の話を聞くと、何も私どもは招かれなかったとか、あるいはこれに呼ばれたいということを言うわけではありませんが、各省の局長、局次長までが出ておるならば、国会には政務次官と事務次官との間に位する、ここにもおられるけれども、いわゆる衆議院の各委員会の専門員なるものがあるわけでございます。一体これはどうして呼ばれないのであるのか。この人員配置から考えますと、あたかもこの国会というものを何か各省の行政府の一省のような考え方で人数を制限したのではないかというような感じがいたすのであります。これは私ども何も招かれたいとか、あるいは自尊の気持でこういうことを今言うわけでは決してありませんが、新しい憲法下において、あたかも明治憲法時代の陛下のお役人であるといったような形で人選されておるのじゃないかといううらみがこれにあるのであります。  そこで私は委員長にお願いいたしたいのは、この機会におきまして、内閣と宮内庁に内閣委員長からこのレセプションの招待の基準というものは一体何によってきめられたものであるか。これを本委員会に向けて責任者から明確に答弁を得たいのであります。選考基準は一体どういうものであったかということです。また国会だけが極端に少いのは一体どういうものであるか、これは将来の前例になる一つワクだと思いますので、この際念のために十分責任者から承わりたい。その都合で、私はこれは委員諸君にもぜひ御賛成を得て、これは新しい憲法、特に社会党では新憲法擁護ということをおっしゃっておるお建前からも、こういう基準というものは、これは今後いろいろな人がどんどん日本へやってこられるのですから、そういうときに局長、次長など、俗吏が出ていって、こういう大切な衆議院の構成役員である専門員たちがなおざりにせられる、あるいは国会はただ単に委員長だけであるというこのものの考え方、これはどこにそういう考え方の根源があるかということは、私は厳重に突きとめなければならぬと思います。この点一つ委員長からよろしくお取り計らいをお願いいたしたいと思います。どうぞお願いいたします。
  64. 山本粂吉

    山本委員長 皆さんにお諮りいたします。ただいまの江崎君の御提議の件は、まことにごもっともの御意見と拝聴いたしますので、これを書面をもって委員長の名において宮内庁に問い合せをいたします。そのお答えを得て発表いたしたいと思いますが、さよう取り計らうことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 山本粂吉

    山本委員長 それでは御異議がないものと認めまして、ただいま江崎君の質疑事項については宮内庁に書面をもって問い合せ、適当の時期にお答えをいたすことにいたしますから、さよう御了承を願いたいと存じます。  暫時休憩いたしまして、午後は二時から再開いたします。    午後零時十五分休憩      ————◇—————    午後二時四十五分開議
  66. 山本粂吉

    山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  基地問題について質疑の通告がありますので、順次これを許します。なお防衛庁長官には時間の関係がありますので、長官に対する質疑を先にお願いいたします。赤澤君。
  67. 赤澤正道

    赤澤委員 最近アメリカの要請による基地問題をめぐって、随所に混乱、衝突が起っておることは、まことに遺憾でございますが、さかのぼれば一九五一年の講和条約あるいは安全保障条約、それに伴う行政協定、つまりいわゆるサンフランシスコ体制に原因をしておると思うのであります。ところが憲法九十八条で、条約は尊重しなければならぬのは憲法上当然国民の義務であるわけなんです。きめられたことについて行政執行ということになればおのずから話は変るのですが、そこにいくまでの間に手続の上で明確を欠く点もあって、それが混乱の原因になっておる点もあるのではないかと思うわけです。最近非常に疑問に思っておりますことを二、三お尋ねいたしたいのですが、まず調達庁長官一つお尋ねいたします。  施設特別委員会というものが設けられております。これは行政協定の二十六条に定められておる日米合同委員会の補助機関であると思うのですが、これは日本側ではどんな手続でできて、どういう構成になっておるものであるかということを御説明願いたいと思います。
  68. 今井久

    ○今井政府委員 お答たいたします。施設特別委員会は、今お話の通りに行政協定第二十六条に基く委員会でございまして、施設の提供、解除等に関する日米双方の話し合いをするという建前になっておることは御承知通りであります。それでただいまのところでは、日本側といたしましては私が首席代表になり、関係各庁の人たちがこれに加わっております。アメリカの方は、米極東軍司令部のハウバード少将が首席代表になっております。大体定時といたしましては、一週間おきの火曜日にこれを開催しておるということに相なっておる次第でございます。
  69. 赤澤正道

    赤澤委員 施設や土地の区域をアメリカが必要とするということになりました場合に、今のあなたのおっしゃる施設委員会にまず要求をして、ここで妥当と一応認められた場合に、日米合同委員会にあなたの方から勧告をなさる。そこで合意の上決定され、その決定の通知があれば、この条約に基くところの義務が一応できるわけですから、政府としてはこれを執行せざるを得ない羽目に立ったということになると思うのですが、その通りでございますか。
  70. 今井久

    ○今井政府委員 今のお話の通りでございます。
  71. 赤澤正道

    赤澤委員 ところが施設あるいは区域の要求をいたしますのに、やはりあらかじめそれが軍事目的かなにか特に必要であるという調査をアメリカ側としては当然やると思うのです。これは通例予備調査ということをもって言われておるわけなのですが、予備調査というものは施設委員会としてはどういう取扱いをなさるわけですか。
  72. 今井久

    ○今井政府委員 予備調査のために、たとえばその対象になりますのが大体土地とかその他建物でございます。その予備調査といたしまして、土地の立ち入り調査をするというようなことが当然起ってくるわけでございます。従いまして立ち入り調査をするというようなことが、やはり施設委員会を通じて私の方に話があるということが、通例のように考えております。
  73. 赤澤正道

    赤澤委員 施設委員会を通じてというのは、あなたが日本側の施設委員会の代表でしょう。
  74. 今井久

    ○今井政府委員 代表でございます。
  75. 赤澤正道

    赤澤委員 だからあなたの方へまず要請が来るわけですね。予備調査の場合でもやはりそれをやらなければならぬということでまるのみにして、そして日米合同委員会の方へ持ち出されて決定されるわけですか。
  76. 今井久

    ○今井政府委員 この予備調査と申しますのは、先ほど申し上げたような意味で調査をいたすわけでございますが、施設の提供につきまして、予備調査を必ずやるということではないのでございます。あるいは航空写真等によりましてそこの地域が明確であって、調査する必要がないという場合におきましては、予備調査をいたさないという場合もあるわけでございます。なおまた今のように、予備調査の要求がありました場合におきましても、場合によりますればその予備調査のために、いろいろ土地の提供をされる地方に臆測が出まして、そのためにいろいろな不安が生ずるという場合もあるのでございまするが、これらの要求がありました場合にも、十分私の方で折衝をいたしまして、できるだけそれらの予備調査が円滑にいくように努力いたす次第でございます。
  77. 赤澤正道

    赤澤委員 それは大事なことなのですが、つまり予備調査段階は必ずしも踏まなくてもよろしい、しかし要請いたしますには、やはり明確な測量あるいは施設等につきましても、しさいな資料が必要になると思うのです。そこでこの予備調査、たとえば土地、区域の提供を要請せられるような場合に、空中写真でいきなり写して、写真の上にぐっと線を引っぱるとか、あるいは土地台帳みたいなもので図面の上で区域をぐっときめて、それで合同委員会に、それは合意で出し得るといえば出し得るのかもしれませんけれども、今までの事実はどういうふうになっておりますか。
  78. 松木豊馬

    ○松木説明員 予備調査を必要といたしまするものは、主として地質がどうであるとか、あるいはたとえば通信関係でありますると、電波の感度がどうであるとか、それから地形がどうであるとか、ぜひ現場でそういうことを確かめなければならぬといったような必要がある場合に、予備調査が行われる、つまり適地であるかどうかといったようなことから予備調査が行われるわけでございますが、先ほど長官が申されましたように、事前にもう現状がわかっておりまして、実地に調べる必要がないような場合には、予備調査をやらないこともあるわけでございます。
  79. 山本粂吉

    山本委員長 赤澤君に御注意申し上げますが、船田防衛庁長官の方を先におやり願いたいのですが……。
  80. 赤澤正道

    赤澤委員 関連しておるのですが、では調達庁の方はあとに回します。  実は鳥取県の美保に御承知通り飛行場があります。この飛行場は、たしか昭和十三年ごろであったと思うのですが、山陰地方に海軍が飛行場を一つ作らなければならぬというのであの地帯一帯を調査いたしました。そのときに二つの候補地があり、一つは出雲の宍道湖の地帯、もう一つはこの美保の地帯にあったわけです。ところがそれより前にすでに陸軍の方で計画をいたしまして、米子という町には陸軍の集中飛行場というものができた。これは当時東京、米子、京城、新京という一つの国際航空の発着地にも利用をされて、国際飛行場ともいわれておったのです。非常に狭い土地にそういう飛行場が一つできて、それは今どうなっておるかと申しますと、これが自衛隊になって練兵場になっておるわけなのです。さらにその上また近接いたしまして海軍が飛行場を要求してくる、当時の実情を振り返ってみますと、まことに涙ぐましい事実がたくさんある。非常に土地に恵まれない場所でございまするけれども、しかもなおかつ戦争に勝つためにはやむを得ないというので、地元の人たちも協力して部落移転までいたしまして敷地を提供したのでございます。それで戦後これがアメリカに接収をされまして、米軍の飛行基地になって、しかも朝鮮動乱はなやかなりしころには、相当これが利用されたわけでございます。地元の人たちの多くの考え方というものは、国防の必要性を認める、だから飛行場がここにあるということに対して、飛行機が飛ぶということに対して、あえて必ずしも反対をしておるわけではないのです。ただアメリカがさらにこれ以上基地を拡張しようとか——これが滑走路であれあるいは通信施設であれ同じことであると思うのだが、これ以上のことは断じて許さないという気持を持っている。これはくみ取っていただかなければならぬ。ということは、ほかにもこういう基地があって、たとえば百里原とか何とかいう名前で呼ばれているところが、今飛行場の対象になりつつあるということを聞いておりまするけれども、百里原という名前が示すような広いところであるならばけっこうですが、この土地は、御承知のように、半島でして幅は一里ないのです。長さが四里ばかり、山は一つもなくてしかもここは人家の密集地帯です。付近に農地もありますが耕作反別は平均して四反幾ら、つまり根っこの方は六反歩くらいですけれども、端の方へいけば三反平均です。つまり今飛行場がありますところの近傍は、三反平均の農民が、この土地資本をよその倍も三倍も回転させることによって、その生計を維持しておるという土地なのです。ところが——これはあとで質問いたしまするけれども、アメリカだけの問題でなくして、今度は防衛庁自体としてここをジェットの基地になさるというふうな計画がすでに発表をされておる。そうしてこれに対しては地元で非常な反対があるということも耳にしておられるだろうと思います。これが国防上、日本全国でここでなければいかぬというのなら、また私たちも考えようもありますけれども、ここにおきめになったについては、ただ、もと飛行場があったから安上りだということでおきめになったのではないと思う。やはり日本国全体の国防計画から見て、飛行場はどこどこに作るんだという自主的な計画があるべきだと思うのです。これにつきまして今まで防衛庁の方で御計画になっておられますることを一応承わっておきたい。
  81. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいま御質問になりました美保の飛行場、現在米軍が使っておりますものを、自衛隊が受け継いでさらに拡張するかどうかということに関連しての御質問でございますが、防衛庁といたしましては、国防の見地から相当多数の飛行場を持たなければならない、というふうには考えております。しかし具体的にどこに決定するかということになりますると、まだ最終決定までにはいっておりません。また予算もそれに伴って、どこに置くという前提を置いて予算を組んでおるというわけでもございません。ただいま御指摘になりました点は、十分考慮いたしまして、地元の方々に迷惑がなるべく及ばないようにいたしたいとは考えております。
  82. 赤澤正道

    赤澤委員 予算関係その他があってまだはっきりきめておらぬという長官のお話ですが、すでに美保を予定して、滑走路を延長するんだということは、防衛庁の加納室将補という方が談話として言われたことが、すでに毎日新聞あたりでも発表されておるわけなのです。そのおもなところをちょっと読んでみますと、三十二度年の業務計画で航空戦闘団を設け美保に適用する計画である。工費は約六億円で滑走路の延長は、海岸に突出して作るか、海岸に並行させるかは未定である。ジェットの上昇角度が幾ら少くとも、中海航行の船舶に衝突するような危険はまずなかろう。つまりジェット機の基地としてここを予定しておるということを、相当詳細に発表なさっておるようです。これはどういうふうにお考えになりますか。
  83. 船田中

    ○船田国務大臣 今お話しのような点は、まだ確定しておるわけではありません。ただしかし従来表軍が使っておる飛行場あるいは飛行場適地というものを、各方面にわたって調査はいたしておりまするし、自衛隊といたしましても、あの辺に一つのジェット基地を持ちたいという考えは持っております。従いまして、もし美保を使うならば、どういうふうな使い方をしたならば一番地元の方に迷惑を及ぼさずしてこれか有効に使えるかというようなことは、十分調査をする必要がありますので、従って調査をしたということはありますけれども、まだあすこをどういうふうに拡張するか、あるいはどういうふうな使い方をするかということをきめておるわけではありません。
  84. 赤澤正道

    赤澤委員 とにかくジェットの基地にするということは一応計画をしておる、ただジェットを飛ばすについて地元の者が迷惑をするだろうから、それに対しては何か適切な方法考える、ということなんですか。
  85. 船田中

    ○船田国務大臣 あの辺に持ちたいという考え方は持っております。しかしこれは三十二年度の予算に計上することになりますので、それを計上するについては、もし使うならば、どういうふうな使い方をしたならば一番迷惑を及ぼさずに使えるかというふうなことは、係の者がいろいろ検討をし研究をしておるということはあると思います。しかし先ほど申し上げましたように、最終決定をしたわけではございません。
  86. 赤澤正道

    赤澤委員 あの辺に持ちたいということが私は大事な点であろうと思うのです。先ほどあの土地の実情をるる申し上げたのは、私どもは国防の重要性を一応認めておりますから、あそこに飛行場があるということに対してあえて反対するものではないのです。輸送機は現在も飛んでおるわけです。それはいいのですが、ジェットということになりますとあの土地では、われわれが考えるところによっても、これは周囲の条件で飛場として不適だという考え方に立っておる。あの付近には大山の広漠たる平野もあるし、また海岸の砂っ原もあるわけですが、私がお伺いするのは、予算に縛られてどうでもあそこを使わなければいかぬのか、それとも適当なところをさらに物色をして、騒音その他の被害の最も少いところを選んでやられるつもりがあるのか、その辺を明確に教えていただきたいと思います。
  87. 船田中

    ○船田国務大臣 諸般の事情から十分検討を加えまして、またただいま赤澤委員のお話しになりましたような点も考えまして、適当な措置を講ずるようにいたしたいと思います。
  88. 赤澤正道

    赤澤委員 十分調査をお願いいたしたいと思うのです。もしここでなければどうしてもできないという場合には、やはり地元の人の納得のいくような説明資料を整えていただきたい。飛行機が飛べば妊産婦に害を及ぼすとか、あるいは鶏が卵を産まないとか、あるいは牛が乳を出さないとかいろいろな声を聞くわけです。こういう調査等についてもどうも不親切であって、徹底しておらぬと思います。事実それだけの被害が起り得るものなら、これは単に防衛庁だけの問題ではなくして、国民全般の責任において解決をしていかなければならぬ問題じゃないかと思う。一番大事なことは、ここは密集した土地であって、貧乏な人たちがそれぞれ生活を営んでおるわけです。そういうことになれば、どうせいろいろな面で被害をこうむると思うのです。ですからそういった面の調査を十分にやっていただきたい。これは希望でございます。さらに騒音ですが、飛行機が飛ぶということは、今の程度のことでは地元の人たちは一応認めておるのです。しかしジェットということで非常な恐怖心にかられております。私もジェットの騒音というものは体験をしておりますが、騒音の調査について防衛庁当局ではどれだけのことを今までなさっておるか、伺っておきたい。
  89. 林一夫

    ○林説明員 防音の調査については事前によく調査いたしまして、もしそれが相当の程度のものであった場合においては防音装置をつけるということ、防音装置をつけた場合においてはそれに対して補助をするというような仕組みになっております。従いまして十分事前に防音の調査はいたしております。
  90. 赤澤正道

    赤澤委員 あなたは現地を御承知ですか。
  91. 林一夫

    ○林説明員 聞いております。
  92. 赤澤正道

    赤澤委員 そういうことを言われるから、どうもピントが合わないんです。
  93. 林一夫

    ○林説明員 ただいま防音についてどういう調査をしておるかということで従来やっておることを申し上げたので、美保についてどういう調査をやっておるかということは、現在まだやっておらないと思います。
  94. 赤澤正道

    赤澤委員 さっき申しましたように、問題は、かりにここをジェットの基地としてどうしても選ばなければならぬとするならば、今言った住民の経済的な問題と、それから健康の問題を考えていかなければならぬと思う。騒音が今非常に問題になっておるのです。ところが鶏が卵を生まぬ、牛がどうのと申しますけれども、この騒音がどういう被害を家畜に与えるかということについては、農林省の家畜衛生試験場だとかいろいろなところを調べてみましても、一向調査も何もいたさないでほったらかしになっておる。防衛庁、特別調達庁あたりも、こういうことについて厳密な調査をなさっておらないどころか、しようという意欲すらないというふうにわれわれは察知することをはなはだ遺憾とするのです。英国なんか、私資料で調べてみたんですが、三人以上の要請があったときには、騒音調査車を出動させて、そして適当な警告を発し、また処置をする。公衆衛生局で脳の圧力だとかあるいは消化機能あるいは新陳代謝などの調査もやる。こういうふうなことすらやっておるわけなんです。これは単に都市の騒音をおもにやっておると思うのですが、東京都だって御承知通りに騒音防止条例まで出しておるわけです。ですから、どの程度の音響が人畜にどういう被害を及ぼすかということは、ジェット機でも飛ばそうという気持であるからには、それに先だってこういうことの調査も行われなければならぬと思う。普通会話の音声が五十五フォン、国電あたりは八十フォン、国鉄が九十フォン、これ以上になると学童なんか勉強ができないということは、これは常識になっておるのです。百三十フォン以上になると耳が痛い、人間が生活できないのです。百三十フォン以上の騒音をあの下の密集部落に果して与えるとすれば、それでもなおジェット機をお飛ばしになるつもりかどうか。これは長官、局長どちらでも御返事をお願いいたします。
  95. 林一夫

    ○林説明員 美保の問題について申しますと、ただいま長官からお話がありましたように、まだそこに最終決定しておるわけじゃないのです。あの方面についていろいろの事情を調査しておる。もちろんその場合においては、方向とかあるいは風向とか、ごう音の及ぼす影響、ことに学童に対するごう音の影響とか、そういうものを十分調査して決定することになっております。もちろん事前に十分に各種の影響、事情を調査して決定することになっております。
  96. 赤澤正道

    赤澤委員 調査ができているんですか。どうも現地を御承知ないようですから、百聞一見にしかずで、長官にお目にかけておきます。ちょっとそれをごらんになって説明を聞いていただきたい。さっき言いましたように、非常に狭い土地なんですよ。つまり幅が一里弱で長さが四里ばかりのところですから、今飛んでいる飛行機すら人家とすれすれに屋根を飛んでいるのです。この起りました事故は、そこに鉄道が敷かれているでしょう。それがたった一つの弓浜半島を縦断している鉄道ですよ。その機関車が飛行機の足にひっかけられて煙突を飛ばされている。そこにある道路が、これは最も重要な交通路である県道なんです。一本しかない県道なんです。飛行機が飛ぶたびに首を縮めて、飛行機がくるときは待っていなければならぬくらいです。そういう狭い土地に飛行場を作っていること自体がすでにおかしいんだが、それでも今日まで住民はみながまんをしてきているわけなんです。ところがそこでジェットを飛ばす場合は、海の方へ向って飛ばすというが、海の方へ向って飛ばして海の方からまた帰ってこられるならいざしらず、おそらくそういうことにはならないだろうと思う。そういう土地でジェットを飛ばした場合には、どういう現象が起るか。実に恐ろしいことが起ると思う。地元の者がなぜ反対するかということを一つそれによってごらんおきを願いたいと思う。十分調査をすると言われますが、調査なんかわれわれの方で先にやっていますよ。これはあなたがおっしゃる特損法によって騒音防止の設備を学校にいたしました。それだってわずかの予算も調達庁が出し渋って、やっとあの程度のものができたのですが、そういうもので防げる騒音ではないわけなんです。これは二十九年の二月四日からずっと統計をとってあるわけなんです。たとえて申しますと、その年の二月四日には、一日延べ三百十三機飛んでいるわけなんです。その騒音なるものは、単に地元の人がはかったというのではない。すでに特別調達庁の出先も参加をして、その騒音を調査しております。そのときに特調側から参加された方は、美保の事務所の勝部輝男という方です。使用しました騒音計は形式Aの四という、型の名はSの四という機械を用いて、調達庁自体に立ち会つてもらって調査いたしました結果が、驚くなかれ、今の輸送機ですら百二十五フォンくらいを示している。いいですか。百三十フォンになったら人間が生きていられぬのですよ。平均がどうかというと、百フォンから百十フォンというものを上下している。これは当時の中浜小学校ではかりました騒音の調査です。これもお目にかけておかなければならぬ。これは決してうそじゃないのです。ごらんなさい。これから調査なさるというお気持もけっこうですけれども、私どもはまずジェットの基地だといったようなことを言っておどかす前に、そういった点についても資料があるわけですから——これは調達庁にもありますよ。ですからそういうものからも判断をして、経済的な面でも、またそういう住民の健康を守るという点でも、十分こういった資料をお調べになって、しかる後に計画を打ち出していただきたいと思う。先般も防衛庁の——名前はさしちゃいけませんから申しませんが、さる方にこの問題をお話いたしましたところ、いやこういう基地でもできればまた何か地元にいいこともあるといったようなことをちらっと言われました。いいことというのは一体何でしょうか。そのことを一つ伺いたい。何か基地ができれば地元にいいことがあるよといったようなお考えもあるようですが、何かいいことでもあるのですか。
  97. 船田中

    ○船田国務大臣 防衛庁の係の者がどういうことを申したか存じませんが、国防のために、防衛のために基地は必要である。かように私は考えまして、従って、そういう目的と、それを果すために地元のこうむる損害、あるいは悪い方面の影響、そういうものを十分勘案して、なるべく地元の方に迷惑のかからぬように、あるいは少くなるように計画を進め、またそれを実施していきたい、かように考えております。
  98. 赤澤正道

    赤澤委員 今長官の言った通りでなければならないと思う。かりにも自衛隊なんかの誘致運動すらあるんだから、それは何かいいこともありますよくらいな甘い考え方を持っておられるということは、われわれとしては非常に迷惑です。ジェットの基地になるために、いい点などというものは毛頭ありませんよ。悪いことだけが出てくるのであって、しかも私たちは国防の必要性というものを認識する立場に立っておりますから、もし他に適地がなくて、ここがどうしても不可欠だということなら、問題は住民の健康を守る、あるいは経済的な立場考えてやるといったようなことに集約されなければならぬ。それにもかかわらず、私はここはジェット機の基地としては絶対に適地でないという考え方に立っておるものですから、あえて写真まで提示いたしまして、再考を促す次第です。お急ぎのようですけれども、私はこの委員会での審議の内容というものと私の質問が、タブっちゃ悪いから、一応目を通しまして長官がどなたの質問に対してどういう返答をしておられたかということを調べた。しかしまあ結局、きょうは実はいわゆるサンフランシスコ体制そのものについていろいろな質問をしたかったのですが、これには外務当局も御出席しておられぬと、ただこれは日本の国防にも関係があるということで防衛庁長官だけについて質問するのはどうかと思われますのでやめます。今までずいぶんこういった質問に対しても長官はお答えになっておるようでございますが、念のために私は私見を申しますと、講和条約は、申すまでもなく、これは廃棄条項、終末条項もありませんけれども、安全保障条約並びにそれに伴う行政協定は終末条項をつけてもありますし、世界情勢の変化につれて、これは変っていくべき性質のものであります。しかも五一年にできましたときからすれば、前文にもうたわれております日本の危惧というものもかなり変って参ってもおりまするし、それからまたこれに予定されておりまする通りに、国連を中心にして一つの安全保障体制ができるなら、アメリカとしてもしそれが合意できればこれをやめるとか、あるいは日米間にこれにかわるようなものができればやめるというふうな廃棄条項がついておる。それで長官は、とにかくこれは絶対必要なんだということを当委員会で数回繰り返して言っておられます。やはり政府の責任ある立場におられてはそう言われるより、今日の状態においてはいたし方ないことはよくわかりますけれども、日ソ交渉がこういうふうに成立いたしまして、昨日は衆議院を通ったわけでございます。今日米安全保障条約及び行政協定改訂の時期だとは申し上げませんけれども、次の順序はそこに至るというふうに考えるわけです。これはアメリカの極東政策自体に対しても相当な反省を促す必要があるし、ぼつぼつその時期が来ておるのじゃないかと思います。アメリカは世論の国ですから、日本政府といたしましても、今日のこの事態のもとにあって、アメリカ側があえてここにおるということが、アメリカの極東政策に果してプラスになるかどうかということについては、アメリカ自身も考え直してみなければならぬのじゃないかと私は思う。しかし日米の安全保障に対する共同的な考え方というものは、これは絶対に捨てられない。ですからこういうふうにアメリカ軍がいることによっていろいろないざこざが起っているわけなんですが、ただアメリカ軍の若干のものが駐屯しなければ、日米間の安全保障体制というものが保てないものでもなかろうと思う。別にNATOのような、締約国が他から攻撃を受けたような場合にはどうこうというような性質のものに置きかえることも必ずしも不可能ではあるまいし、そうすれば何か事があった場合には、そのときにアメリカが日本の飛行場を使おうというなら使わしてもいい。やはりアメリカ軍そのものがここにおるということはまずいと思う。アメリカと合意の上でなければこれは変えることができないという制約がついておるのですが、この条約並びに協定自体がアメリカの永久駐兵権を認めたものでは、もちろんないはずなんであります。いつの機会かにこれは何らかの形で変えられるべきものではあるが、しかし私は基本的にはアメリカとの共同関係をくずすべきではないが、今のようなことをアメリカがとっていること自体は、アメリカ自身にとってもこれはマイナスになると思う。フィリピンなんかもやはり基地問題ではごたごたやっているという情報が入っておりますが、世界どこの国でも、目の前に他国の軍隊が駐留しておるということは気にさわりますよ。ですから長官は、この会議録でも拝見しましたけれども、わが国の自衛力というものを漸増することによって、逐次アメリカに去ってもらうのだということを言っておられます。しかしその段階にぼつぼつ入りつつあると私は思う。こういった点につきましてここで長官に御返答を求めるのも異なものと思いますが、やはり美保なんかの問題もそういうことに関連していると思う。五飛行場についてアメリカとして滑走路の延長を要請して、しかも立川——砂川なんかのごときはそれが合同委員会で決定を見ました。そうして行政面で執行せざるを得ないような羽目に立ち至ってまことに残念な事態を引き起しておるのですが、こういうことも、アメリカは世論の国ですからこういうことを起すこと自体がアメリカの極東政策をマイナスにするのだぞということを向うのジャーナリズムあたりにも呼びかけて、理解をさせる必要があると思う。こういうことについて、やはり政府の方で何か考えておられる点がないでしょうか、長官に伺います。
  99. 船田中

    ○船田国務大臣 日本の防衛力を漸増して参りまして、いわゆる国力、国情に相応する最小限度の自衛体制が整備されましたときには、米軍撤退の基礎はできるであろうと思います。しかしての時期がいつかということになりますと、私は率直に申し上げまして今はまだその時期でない、日米安保条約及び行政協定の改訂を持ち出すだけの体側がまだ日本にはできておらないと考えます。これは見方によりまして御異調もあるかと思いますけれども、私ども防衛の責任を持っておる者から見ますれば、何としてももう少し防衛力を整備いたしまして、そしてできれば将来NATOとかSEATOとかいうような、今御指摘になられましたようなことにいきたいと思いますけれども、しかしそれは今の平和憲法のもとにおいては、果して解釈上これが妥当であるかどうかという問題もございます。そこで一部の人から言われるように、現在の日米安保条約及び行政協定というものは片務的なものであるというようなことの御批評もあるわけでありまして、これがほんとうに双務的に日米協力してお互いに安全保障体制を整備するというところまで行き得ればまことにけっこうだと思いますけれども、そういうことを今持ち出す時期ではない、従いまして総理大臣及び外務大臣が別の機会において答弁されておりまするように、現在においてはまず日本の防衛体制をできるだけすみやかに整備するというところに努力をしていきまして、そして今直ちに日米安保条約の改訂を持ち出すことは、時期尚早であるというように私は考えております。
  100. 赤澤正道

    赤澤委員 これ以上の問題について、私も自民党におりますから防衛長官と議論をしようとは思いませんけれども、やはり国防体制というものを円滑に進めていく上においていろいろな障害になっておることが、先ほど申しましたような点にかかっておるというふうに考えるものですから、私はあえて申し上げるわけなんです。やはりアメリカと緊密な共同動作をとるということは、これは当時安保条約ができました前文の最初にも書いてありますが、「日本国は、武装を解除されているので、平和条約の効力発生の時において国有の自衛権を行使する有効な手段をもたない。」、だから日本には危険がある、だからどうだということが書いてある。これはやはり事態は多少違ってきておると思う。ただおっしゃるように、こういうサンフラシスコ体制といわれるものを、今これをくずす時期だとは考えませんが、私が希望として申し上げたいのは、これは見解の相違かもわかりませんけれども、単にアメリカの若干の兵隊をとどめておくことだけが日米のこの問題に対する協力にはならない。やはり安全保障条約が期待しておりますように、これにかわるものを作るという段取りは、次の順序として私はやっていくべきじゃないかということを私見として持っておることでございまするから、それを述べたにすぎないのであります。  きょうは大へんお急ぎのようでございますので、長官に対する質問は一応これで打ち切りたいと思います。ありがとうございました。
  101. 山本粂吉

    山本委員長 福井君。
  102. 福井順一

    ○福井(順)委員 基地問題がまことに重大な段階に立ち至ったことは、本委員会におきましても昨年来しばしば私が注意を喚起してきたところでございますが、砂川基地のような惨劇が勃発いたしまして、まことに私は残念しごくだと思っております。従いまして、今後の航空基地拡張問題につきましても、政府といたしましては一そう細心にかつ万般の準備を整えてやられなければならぬだろうと思うのであります。  千葉県の木更津の航空基地は、五カ所の拡張基地の一つとして取り上げられておるのでありますが、一番最初から現地の地元民は航空基地拡張反対を叫びまして、反対運動を続けてきたのでございまするけれども調査をする段階になりまして、政府が合法的に調査を吊るのを実力で阻止することは、国民としてとるべき策でないということから政府と話し合いをいたしまして、スムーズに円満裏に話し合って調査をさせたような結果でございます。砂川基地なども木更津基地のごとき精神でやっていったならば、ああいう一大惨劇は起らなかったろうと思うのでありますが、たまたま千葉県当局で、第一案では非常に漁民の損害が大きい、第二案でやったらどうかという第二案が出されております。これは現地住民といたしましては、もちろん航空基地拡張絶対反対でありまするけれども、県当局といたしましては、第二案ではどうだろうという第二案を出しておるわけでございます。その後、米軍としてはどうしても第一案でなくちゃならぬか、あるいは第二案でいいかというようなことにつきましては、何らの回答に接しておらないのでございまするけれども、この点につきましてその後どういうふうになっておりますか、防衛庁長官に御答弁を承わりたいと思います。
  103. 船田中

    ○船田国務大臣 詳細な経過につきましては、事務当局からさらに補足してもらうことにいたしますが、私の承知いたしておりまする限りでは、今福井委員のおっしゃった通り、木更津の基地の拡張の問題につきましては、地元の方々もなるべく第三者を入れないで円満に話を進めていこうという好意ある態度をとっていただいておりますので、われわれといたしましても、十分その点を考慮いたしまして、ことに今おあげになりましたように、第一案、第二案、できれば第二案でやってもらいたいという地元の御要望も強くあることを、福井委員からも直接伺っておりますので、それらの点につきまして、果してそれで米軍の使用に十分間に合うかどうかというようなことについて、その後も折衝をいたしておりますが、まだこれは結論に達しておりません。しかしお話の通り、なるべく第三者を入れるということなしに、地元と十分お話し合いを円満につけるように努めていきたいと思っております。
  104. 福井順一

    ○福井(順)委員 地元といたしましては、第一案、第二案ともこれは反対の意向でございます。私は地元からもそれでちょっと言葉が足りなくて攻撃された点もございますが、重ねてここで言っておきますことは、地元といたしましては、第一案、第二案ともに、とにかく航空基地拡張には反対だということでございます。県当局としては第二案ではどうだろうという案を出したわけでございますが、ここでいろいろ詳細説明を伺いましても、なかなかわかりにくいことと思いますから、これは長官みずから現地におもむかれまして、一つ実地調査をしていただきたい。私は、ぜひみずから長官が行かれまして、現地を見られるように要望する次第でございます。  それからもう一つは、千葉県の九十九里の射撃場問題でありますが、これは二十三年に射撃場が設置されまして以来、ずっと米軍がここで高射砲の実弾射撃を実施いたしておりますけれども、最近はだんだん自衛隊が米軍と共同して演習をいたしておりますが、最近に至りますと、どうも米軍の演習地か自衛隊の演習地かわからないというような事態さえ発生しておるやに伺っておるのでございます。私どもも現地に行っていろいろ見たのでございまするが、どうもその間の区別が判然としない部分もある。こうなりますると、米軍の演習場を自衛隊が使うということは、果してこれは条約に合っておるのかどうか、条約上の疑義もいろいろ出てきますし、また法律上の問題も出てくるわけでございます。従いましてこれも一ぺん——これは非常にデリケートな問題でございまするから、ここで論議してもなかなかわかりにくいと思います。で、この点につきましても、どうか一つ長官がみずから現地におもむかれまして、つぶさに視察をしていただきたい、これをお願いする次第でございます。  それからあと一つ長官に伺いますが、二十三年に豊海の射撃場で米軍が射撃を始めましてから、現地の漁民が非常に不漁に悩むようになっておる。魚がまるきりとれなくなってしまっておるのであります。御承知のように、あすこはイワシがとれる日本有数の漁場でございまして、今ごろは大漁の歌を聞いたのでございまするけれども、特にここ数年はほとんど一匹もとれないと言っていいくらい不漁である。そういうことから、いかなる原因によるものかということを長年にわたっていろいろ調査をして参りましたけれども、あるいは潮流の関係といい、あるいはまた何か非常に冷たい水のプールがあって、それをよけて魚群が回遊するのでとれないのだということがいわれておりましたが、どうもそういうことではないらしい、これは実弾射撃の関係に違いない、高射砲の炸裂音やまた高射砲の砲弾の弾片が水中にもぐる音によって、イワシの魚群が回遊してこないのではないかというようなことから、ことしの五月十八日から二十二日まで四日間にわたって、水中マイクを据えつけたりして録音をいたしました。このときにはちょうど天候の関係でそれ以上の調査ができなかったのでありますけれども、つい最近三浦三崎におきまして、そのときの録音を水中で音をさせたりあるいはまた高射砲の炸裂音と同じ音を出して、そうしてこの音響に魚群が影響を受けるかどうかという調査をいたしました。これは東京大学の末広恭雄教授が専門家でございますから、お願いしていたしましたところが、非常な影響を受けるという結果が出たのでございます。そうなって参りますと、今まで十年近くの九十九里の不漁の原因というものは、高射砲の射撃によるものであるといわざるを得ないような結果になってしまった。現地の漁民の生活というものは、まことに悲惨なものでございまして、文字通り赤貧洗うがごとき状態である。それでもまあ黙ってがまんをしてきたわけであります。それは果して高射砲の炸裂音によるものであるかどうかということがわからなかったので、がまんをしてきたのでありますけれども、最近では調査の結果、どうもこれは高射砲の演習の結果らしいということになりましたので、相当にこれは反響を起しておるというようなことでございまするが、そうなるとまことにこれは私は重大な問題である、十年近く数万の漁民があの赤貧洗うがごとき状態になる原因を作ったということは、非常にこれは重大な問題だと思うのでありまするけれども、これに対する調査を調達庁でなされておるかどうか。今赤澤委員からも仰せられましたが、従来あまりその種の調査というものが直剣に行われていないのでありまするけれども、最近そういう問題も起きておるのでございまするから、どういう御処置をおとりになっておるか、どういう調査をとっておられるか、また調査される計画がおありになるかどうか、それを一つお伺いしたい。
  105. 船田中

    ○船田国務大臣 先ほど木更津と九十九里の射撃場のことについて、現地を視察しろという御要望でございましたが、これはできる限り近い機会にそういたしたいと思います。私自身も参りまして、よく地元の方々の御要望なり御意見も伺い、また実情をよく調査いたしまして、先ほど来申し上げておりますように、地元の反対あるいは摩擦の起らないように、できるだけの措置を講じていきたいと思います。それからなお米軍と自衛隊とが共同使用する場合がある、そういうことのために責任の所在がはっきりしないというような御意見もございました。それらの点もできるだけ合理的に処置をし、またそれによっていろいろな損害を関係方々に与えておるということでありますならば、科学的な調査をいたしまして、できるだけそういうことについても、自衛隊といたしましても、防衛庁といたしましても、適当な措置をとるように努めていきたいと思っております。
  106. 今井久

    ○今井政府委員 ただいまの御質問に対してお答え申し上げます。九十九里浜の米軍の射撃によりまして、従来非常に九十九里浜の関係方々に御迷惑をかけておりますことは、私もよく承知しております。先般も九十九里浜の関係の方がたくさんお見えになりまして、それらのことについていろいろ直接お伺いする機会もあったのであります。従来いろいろな問題がありましたつど調査をいたしまして、これに対する補償等もいたしておったのでございますが、ただいま御指摘になりました高射砲の発射音とか、あるいは炸裂音、また弾片が落下することによりましての水中攪乱のための漁群に及ぼす影響という問題につきましては、これは非常に実は困難な問題でございまして、ただいまお話にございましたごとく、最近の機会におきまして末広東大教授がこの点についていろいろ御調査になったということも、私は承知しております。私どもといたしましても、その御調査になりました結果等も十分拝承しましてそうして慎重に検討して十分に考えていくつもりでございます。
  107. 福井順一

    ○福井(順)委員 どうも長官が従来補償をしておると言っておられますけれども、これは今までと今度とは違ってくるわけです。今までは高射砲の発射音、炸裂音それから弾片が落下する水中音によるものではないというようなことで、直接危険があるものに扇型に補償をしておった。これも二億近くの要求額に対して四千六百万円というような、一割六分くらいのものが補償されていたにすぎない。陸上補償におきましては、今までは一回も補償がなかった、それを私はいろいろここで説明をいたしまして、やっと千八百万円、それも初めて補償がされたというような実に微々たる状態でございますが、今度は射撃によって魚群が回遊してこない、そして数万の漁民がほとんど赤貧洗うがごとき状態にあるということになれば、これはまことに事態は重大で、今までとは全く変っておるわけでございますから、ただ末広教授の調査にまかしておくことなく、調達庁といたしましても、これは十分なる調査をここでぜひ一つしていただきたいということでございます。でなければ、民間で調査したからといってそれを基礎として補償するということも私はできないと思うのであります。それで一つ早急に調査をしていただいて、これは今まで八年間こういう苦しみを漁民がしてきたわけでありますから、十分なる補償をしていただきたいのでありますが、補償の件はあとで要求するといたしまして、一刻も早く科学的な調査を調達庁といたしましてもされなくてはならぬということを私はここで要求する次第であります。
  108. 今井久

    ○今井政府委員 ただいまのお話はまことにごもっともなことでございます。こういう新しい問題が調査の結果、末広教授によって示されたということが一方にあります。私どもといたしましても、これらの点につきまして従来考えておらなかった面についても十分調査いたすというふうに考えております。
  109. 福井順一

    ○福井(順)委員 先般は同僚の田村元君が陳情に参りまして、伊勢湾の伊良湖岬におきましても、対潜水中機器が設置される、そこであの音によって魚群が伊勢湾に回遊してこないというような陳情もいたしておりまして、おそらくこれは全国的にこういう問題が出てくるのではないかと思います。そういたしますと、この調査の結果というものが非常に重大なことになるので、特に私は調査を早くしなければいかぬということを申し上げるわけであって、おそらくこの調査の結果によりますと、全国的に問題が私は出てくると思うのであります。ひいてはまた対潜機器その他の——これは防衛上の関係も非常にあるわけでございますから、ぜひ一つお願いする次第です。
  110. 山本粂吉

    山本委員長 茜ケ久保君。
  111. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 防衛長官にいろいろ質問する事項があるのですが、時間がないようでありますから、一、二点だけお伺いしておきたいと思います。それは先般防衛長官が大阪方面に御出張の折に、新聞記者会見で長官の意見として出されました機密保護法的な法律を二十六国会に出したいといったような談話がございましたが、私どもは戦争中軍機保護法とかその他いろいろな軍独特な保護法を出されまして、国民生活が非常に窮屈といいますか、圧迫される状態に、非常な内心のふんまんを持っておったわけであります。戦争が終りまして、そういった一切の基本的な人権を束縛するような法律がなくなりまして、終戦後の経済的その他の苦しい生活であったけれども、思想上あるいは観念上はやや朗らかな生活をしてきたのであります。その際にまたしてもそれに類する、いわゆる人権を束縛し、あるいはこれを圧迫し、個人生活に非常な不安を与えるような法律が出されるということは、まことに遺憾千万と思うのでありますが、いわゆる新聞に談話として発表された船田防衛庁長官の御意見は、ただ単に防衛庁長官としての一個の御意見であるのか、ないしは防衛庁当局でそういった研究をして、その結果防衛庁としてそういうことをお考えになっておるのか、その点を第一にお伺いいたしたいと思います。
  112. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいま御質問にありました、軍機保護法といったようなものを作るかどうか、またそういうものを必要と考えておるかどうかということになりますと、私はある程度のものは必要であろうと考えております。しかしただいま、戦前にこれが乱用されて、そのために一般国民の不安、ことに基本的人権を侵害されるというようなことがあった。それが生活にも非常に暗い影を投じたというようなことがおっしゃられたのでありますが、私は戦前にそういうような弊害を及ぼしたようなものを、再現しょうというようなことは考えておりません。現在米軍から供与を受けました艦船、飛行機、装備品等についての機密は、御承知通りMSA秘密保護法によりまして保護されております。ただ今後日本の自衛隊が持つ艦船、兵器、装備品、飛行機等日本で国産をいたして参りまして、そして新鋭なものを持つ、ことに日本人の工夫によってこれを改善していくというようなことになりましたときに、それについてのある程度の機密の保持ということは、ぜひ必要ではないかというふうに考えております。これは決してよその国と飛び離れて日本だけがやるのではなくして、むしろ現在におきましては、日本だけがそういう秘密保持が全然行われておらないという関係からいたしまして、新鋭兵器を持つということに非常な不便を感じておるようなことであります。しかしそういう法規を作るということによりまして、今御指摘になりましたような不安を、一般に与えるということはよくありませんから、そういう点は十分考慮いたしつつ、現在は防衛庁の中で研究をしておるという段階でありまして、これをどう処置するか、二十六国会に出すか出さぬかというようなことは、今後十分検討した上で意見を定めたいと考えております。
  113. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 長官の御答弁によりますと、かつて戦前にあったような状態にはしたくないというお答えでございますが、それは当然であります。ただ私どもが心配するのは、吉田元総理の答弁ではありませんけれども、軍隊は持たない、戦力は持たないで、いわゆる警察予備隊が保安隊になり、保安隊が自衛隊に発展して、現在名実ともに国軍としての威容を整えてきたというこの実態がございます。政府の御答弁というものは、私どもこれを信頼しないわけではありませんけれども、よくそういった御答弁によって、いつの間にか国民の知らぬ間に、一つの重大な具体的事実が現存してしまうということがあるのであります。そのことが、今度防衛庁で研究している機密保護法にどのような姿で出るか、もちろん具体性がないのでありますから断定はできません。ただ、私が長官にさらにお伺いしたいのは、今アメリカから貸与されている兵器に対しては、MSA秘密保護法によって保護を受けているが、新しく日本で創意工夫した兵器の秘密保持ということでありますが、防衛庁長官として、現在の自衛隊の実態の中から、いわゆる秘密保護法を作ってまでも保護しなければならぬような、そのような重大にしてしかも優秀な兵器が、国内において生産される可能性が、今どのような方面にどのような状態であるか、いわゆるその具体的な事例を示して御答弁を願いたいと思います。
  114. 船田中

    ○船田国務大臣 わが国は戦争後、すべての防衛生産、軍需生産というものが一時やめられてしまったために、そういう方面において非常におくれをとっていることは、これは事実でございます。しかしその後造船それから電気機器というようなものが復活をいたしまして、現在においては、御承知通り造船は世界第二位というところまで進んでおります。   〔委員長退席、保科委員長代理着席〕 しかし飛行機の生産あるいは原子兵器の製造というような方面となりますと、まだまだ世界の水準には遠く及ばないという状況でございます。しかしながら、防衛庁といたしましても技術研究所を持っておりまして、すでに何百という項目にわたり調査研究をいたし、そのあるものについては相当優秀なものがあるように、私自身しろうとでありますけれども考えております。そういうものを試作し、またこれを本製作に移すような場合におきまして、やはりアメリカから貸与を受けるるいは供与を受けております艦船、兵器等の秘密を保持するという程度には、やはり機密を保持することが、そういう新鋭兵器を発達せしめ、ますます新鋭なものに進めていく上において大切であろうと思います。これは御承知通り、去る二十四国会におきまして、防衛生産のための技術協定というものもできまして、アメリカ側から技術を日本側に導入する便宜も得られるようになっております。従いまして、そういうものにさらに日本で改良を加え、日本人に適する兵器を作るということは、これは相当可能性があるのでありまして、現在までに相当な域に達してきつつあるのであります。従いまして、そういうものの機密はぜひ保持したい、かように考えまして、いかにしてこれを保持するか、また新鋭兵器をさらに新鋭なものにするためにどうしたらいいかというようなことについて、十分研究を進めているという段階でございます。
  115. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 長官のおっしゃること、並びに長官の将来心配されること、こういったことは、今お聞きしておりますと、私ども立場からも了解できぬこともありません。ただ問題は、同じ秘密保護法というようなものを作りましても、いわゆるかつての軍部が作ったように、第三者の一般国民に対して非常な制約を与えるものと、内部、いわゆる現在なら自衛隊内部、あるいは自衛隊の付属機関である研究所その他、その兵器なり武器を製造することに従事する、あるいはそれを取り扱うものだけに及ぼす方法もあると思う。  そこで私は一歩譲って、長官のそういった心配を未然に防ぐために、そういうものができると仮定いたしましても、これが今申しますように、一般第三者に何ら関係なく、内部的な制約だけのものであるならば、まだわれわれとしては了承できない点もありませんけれども、いわゆるかつての軍部がやったような一般の国民を非常に制約するものであっては私は重大だと思う。それで現在研究の過程であるとおっしゃっておりますが、そういった点についてはどのような見解で研究されておるか。いわゆる一般のものを対象として考えておられるか、あるいは内部だけの秘密を保持するといったような方向で進むような見解のもとに研究を進めていらっしゃるか。研究の過程における段階でありましょうけれども、その研究する一つの基本的な態度として、今申しました点のいずれを重点的にお考えか、お伺いしたいと思います。
  116. 船田中

    ○船田国務大臣 まだそういう具体的の内容について巨細な点にわたってまで意見がまとまっておるわけではございません。従って詳細なことを申し上げる段階にまだ達しておりませんが、ただいま茜ケ久保委員が心配されておるように、一般の国民に不安、心配を与えるような、いわゆる国家機密保護法とかあるいは戦前の軍機保護法といったような、そういう大きなものを作ろうという方向には考えておりません。しかし新鋭兵器を持って、いわゆる最小の浪費によって最大の効率を上げるような防御体制を整備するということのためには、日本人の持っております創意工夫を生かしまして、そしてアメリカ側から供与を受けたりあるいは貸与を受けたりする艦船、兵器、装備品等にさらに工夫を加える、あるいは技術の援助を受けたものをさらに改善をしていくというような点に工夫をこらすものがまだ多々あります。ところがそういうものは現在の特許法においても秘密特許という制度もございませんし、一切が野放しになっておるというような状況でございますので、そこでそういう装備品等についての最小限度の機密を保持するということができますれば、アメリカ側からの技術あるいは先進国からの技術を十分活用して、さらに日本人に適するところの新鋭兵器を作ることができるのではないか、かように考えております。そういう方向で研究を進めておるという次第でございます。
  117. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 この問題が具体化しますならば、またいろいろお尋ねしたり、私どもの見解もお述べしたいと思うのでありますが、本日はかって長官が不注意に新聞発表をなさったことについての質問でありますので、終ります。今お聞きすると、防衛庁内における研究の過程である、私はあるいは長官としての個人的な見解ないしは意見かとも存じましたが、一応具体性を持った、しかも防衛庁として研究なさっておるということでありますので、その点はわかりました。  さらにこの件は、先ほどの御答弁でお触れになった気もいたしましたが、はっきりしておりませんので、最後に私は一言念を押しておきたいのであります。これはこの次の通常国会にお出しになる用意があるかどうか、あるいはまた今の御答弁の節々をお伺いすると、それほど具体性のある研究でもないようにも受け、取れるのでありますが、結論として、そういったものを次の第二十六国会にお出しになる用意があるかどうか、あるいは全然二十六国会にはそういったものが出せる段階にないということであるか、この点を最後に一言伺っておきます。
  118. 船田中

    ○船田国務大臣 私としてはなるべく早い機会に法制化することを希望いたしております。しかしこれは政府の相当大きな政策にもなることでありますから、それらの点は十分今後政府部内におきまして関係省庁とも研究を加えまして、そして処置して参りたいと思っております。
  119. 赤澤正道

    赤澤委員 これは希望ですが、三年ばかり前に例の特損法というものを作りました。あれはアメリカの飛行機が非常に被害を住民に与えますので、国の方でその損失を補償しようということなんです。ところがわが国の飛行機についてはこれは当てはまらないと思う。つまり国内的にはこういった面の措置一つ考えられておらぬというふうに私は記憶しておるのです。ありましたら一つ教えていただかなければならぬと思うのですが、国内の場合にはないのですよ。  それで、民間航空は営利行為としてやるわけですからけっこうだが、やはり軍事目的のために飛行機を飛ばします場合は、それはわが国の国防上絶対必要であるということからやむを得ないことですが、しかしその場合には、かりに何がしかの被害をその付近の住民がこうむりましたならば、国民全体の肩に負わされていることなんですから、やはり大幅に、飛行場付近の人たちが受ける精神面、物質面、あらゆる面の被害を全国民の責任において補償をするんだという姿が出てこなければうそじゃないかと思う。私どもは国防の重要性を認めているということは再々申したわけでありますが、その見地に立って私は政府の方でもお考えになる必要があるのではないか。これについて何か将来の御意見があったら伺っておきたい。
  120. 大森頼雄

    ○大森説明員 ただいまの御質問でございますが、特損法は自衛隊にはそのまま適用にならないのでございますが、自衛隊も駐留軍のあれと非常に似た点がございます。従って特損法を適用できるようにということで、大蔵省初めその他といろいろ話し合って研究しておりますが、まだそのまま適用するところまで参っておりません。従って現在の処置としましては、個々の場合の問題について特損法の精神をよく取り入れて処置していくということで大蔵省と話し合いをしまして、ただいままで飛行機の騒音に対して処置しましたのは、鹿屋の小学校の防音装置一つしかまだございません。一つ一つ個々の問題で処置していくということでやっております。
  121. 赤澤正道

    赤澤委員 私はそういうけちなことを考えているのではないのです。アメリカの場合はアメリカの場合、私が言いますのは、やはり国防ということは全国民の責任ですから、そういう特損法を自衛隊の方にも適用するように大蔵省に頼んだとかなんとかということでなしに、もっとこういった問題について国民の責任を喚起すると申しますか、そういった意味でもっと根本的なことを一つ考え願いたいという気持があるわけです。そういうことについての心構えを一つ長官に持っていただきたいという意味で私は質問をいたしましたので、ただアメリカのやっていることに右へならえでどうとかこうとかというわけでは決してございません。これは根本的な問題だと思いますので、一つ考えを願いたい。
  122. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいまご指摘のありました点は十分考慮して、できるだけの措置を講ずるように考えてみます。
  123. 赤澤正道

    赤澤委員 さっき予備調査のところでぽつっと話が切れたわけですけれども、施設あるいは区域をアメリカが要請いたします場合には、どうしても予備調査というものが必要であろうと思うのです。それを、空中写真をとってそれに線を入れて要請するなどということは、これは暴挙だと思うのです。そういうものにまじめに日本の政府が相手にすることすら私はおかしいと思う。そういう例でもあるのだったら提示していただきたい。
  124. 今井久

    ○今井政府委員 実例はあると思いますけれども、この点は私記憶にございませんので、調べて申し上げます。
  125. 赤澤正道

    赤澤委員 私は、そういう乱暴なことは、お探しになっても実例はないと思います。調べなくてもわかりきっている場合は別ですけれども、空中から写真をとって、それに線を引いて区域の要求をするなどということは、私はあり得ないと思う。美保の現実の問題に返るわけなんですが、結局予備調査のための立ち入りの要請をしておられます。これはあなたの方からなさったわけなんですが、どういう手続をおとりになりましたか。
  126. 今井久

    ○今井政府委員 御指摘になりました美保の通信施設の拡張に関しまする立ち入り調査につきましては、たしか本年の五月と思いましたが、米軍から施設委員会に対しまして要求があった次第でございます。
  127. 赤澤正道

    赤澤委員 要求があったものをあなたの方ではどういう処理をなさったのですか。
  128. 今井久

    ○今井政府委員 この立ち入り調査につきましては、飛行場付近の一帯約七十二万坪という地域につきまして立ち入り調査をしたい、こういう要求であったのでございます。これに関しまして、地元におきましては、これが将来飛行場の拡張のための予備工作じゃないかというような御懸念があるようにも承わりました。またこの点につきましては、赤澤さんから直接私にもお話がございました。私は、赤澤さんからお話のございました直後に、府中の米空軍のポテンジャー准将をたずねまして、この点につきまして確かめましたところ、米軍といたしましては、滑走路を延長するという気持は全然ない、こういう返事がありました。なお、その点について文書の返事をもらいたい、こういうことを要求いたしまして、たしか文書による確答を得ましてお知らせ申し上げたかと存じます。なお、この立ち入り調査範囲につきましては、この点について現地側に不必要な動揺をできるだけ与えたくない、こういうふうに考えまして、できるだけこれを縮小してほしいということで再三米軍と話し合いをいたしたのでございます。その結果、本月の初めのころの施設委員会だと思いましたが、米軍側といたしまして、学校とか住宅とか道路というものを除外して、なるべく立ち入り論査の範囲を狭くしていきたい、こういうような話があった次第でございます。従って、私どもといたしまして、今後この問題を進めるにつきましては、できるだけ地元の方々に御了承を願って、地元の方々の御了承のもとに実行していきたい、こういうように実は考えておる次第でございます。
  129. 赤澤正道

    赤澤委員 そういう要請がありました際に、やはり地元の方では、滑走路の拡張の前提としての論査ではないか、そうなればまた土地を取られるといった非常な不安を持ちましたので長官にお願いしてアメリカの意向を確かめてもらった。そうしたら、滑走路拡張の意思は全然ないという回答を得て、その点地元も一応安心したわけですが、しかし、かりに通信施設としても、やはり先ほど申し上げたように、非常に狭隘な土地なわけです。地元の者としてはこれ以上一寸の土地も提供する意思はないわけなんです。そこで、もうすでにあなたの方で合同委員会の方へ勧告なさって、ここで決定を見たということになれば、これは条約に基く一つの義務を負わされるわけで話は別なんだが、そういうことでなく今は予備調査段階なんです。私があなたに申上げるのは、予備調査段階ですから、この予備調査をすることについてあなたの方から地元へもって行って協力要請をなさっただろうと思う。それに先だって、単にアメリカから要請があったから、あなたは調達庁の長官としての責任かあるいは施設委員会の代表としての責任かどっちにおいてか知りませんけれども、とにかくそれをお受けになっているはずなんです。それでそこらの経緯をちょっと御説明願いたい。
  130. 今井久

    ○今井政府委員 本年におきまして、先ほど申し上げました通りに施設委員会を通じまして調達庁に対して予備立ち入り調査をしたい、こういうことでございましたものですから、調達庁としましては、その立ち入り調査の内容等につきましても十分検討いたし、また何がゆえにこの立ち入り調査をするかということにつきまして、米軍側と折衝をいたしました結果、先ほど申し上げたような経緯になった。一つは、これが飛行場拡張の前提になるではないか、こういうことになりまして、この点につきましては、全然そういうことはない、そこで、予備調査の内容、範囲ということになった次第でございます。むろん予備調査をいたしますことは実際の土地について調査をするということでございます。先ほど御指摘になりましたあの地方がきわめて狭隘な土地であるということにつきましては、赤澤さんからも先般来るるお話がございました。私どももまた調査に上ってわかっている次第であります。従いまして、この調査をしてさらにまたそれらの内容について十分折衝していく余地はあるというふうに実は考えている次第でございます。
  131. 赤澤正道

    赤澤委員 そうすると単にあなたと米軍との間のことであって、まだ合同委員会に勧告なさったとか決定を見たとかいう段階ではもちろんないわけですね。
  132. 今井久

    ○今井政府委員 御指摘になりました通りでございます。
  133. 赤澤正道

    赤澤委員 ところが現地の境港市の市長並びに鳥取県知事等が協力方を拒絶しておりますね。そういたしますと、結局この予備調査のための立ち入りということはできないのじゃないか。
  134. 今井久

    ○今井政府委員 これらの点につきましては非常にむずかしい問題だと思いますが、私どもといたしましては、ここの通信施設の拡充ということが、米軍の現在の防衛力から申しまして、大切な問題であるというふうに実は考えておりますから、一つ十分お話し合いをいたしまして、何とか立ち入りにつきまして御了承を得たいというふうに存じまして、実は努力いたしたい考えでおる次第でございます。
  135. 赤澤正道

    赤澤委員 私はこういう大事な問題を取り扱う施設特別委員会がたった二名で構成されている、さらに最終的な決定機関である日米合同委員会も日米それぞれ一人ずつで、二名で構成されておる、こういうことに私どもは非常に割り切れないものを感じておるわけなのです。そこで通信施設のことですから、附近にもたくさんあき地はあるのです。たとえばここから十キロばかり離れれば広漠たる大山の平原もあることですし、あるいは砂丘地帯等もあるわけです。アメリカにしてみれば飛行場に隣接しておるということは便利には違いないけれども、ただアメリカが便利だということのために、いたし方なく施設特別委員会がそれに承服し、さらには日米合同委員会がそれに承服するということは、いかにも不合理だと思うのです。これについてどういうふうにお考えですか。
  136. 今井久

    ○今井政府委員 この点につきましては現在の通信施設を拡充したいという計画でございますので、現在の通信施設は、米軍の運営につきまして、あの土地が動かすことのできないということに立ちまして、その隣接地域にこれを拡充したいということでございますから、私どもといたしましては、この話が施設委員会に出まして十分検討いたした結果、これは地元にはまことに迷惑なことでありまするが、何とか了承を得てやっていきたい、そのためにはアンテナを立てていくのでありますから、できるだけ提供していただく農民の方に、農耕範囲が狭くならないようにということで努力いたしたい、こういう見地でいろいろ折衝をいたした次第でございます。
  137. 赤澤正道

    赤澤委員 まだそこまで話を進めていただいては困るわけなのだが、つまり付近に空地はあるけれども、どうしてもあの施設はあそこでなければいけないという要求をアメリカがしたということは、今あなたのお言葉でわかりました。しかし合同委員会の決定ではないという段階ですから、これをあなたの方で現地に要請をなさって拒絶されれば、これに対して何か強制執行できるような条約上の、あるいは何らかの法的な裏づけというものはありますか。
  138. 今井久

    ○今井政府委員 合同委員会のもとに施設委員会というものがございまして、先ほど申しました通りに、施設委員会で施設の提供等を協議しまして、議がまとまりましたものが最後的に合同委員会できまるということでございます。この問題につきましても一般的にいいまして、どうしてもいけない、応じないというものについては、強制的にこれをやる方法があるかという御質問がございましたが、これを強制していく法律がございます。やはり土地収用法の一部をこれに使いまして、土地の収用並びに使用をやっていくという方法は一般的に申しますとあるわけでございます。ただ私どもといたしましてはできる限りそういう方法は避けて、十分地元の御了承を納得を得てやっていきたいという方針で進めておる次第でございます。
  139. 赤澤正道

    赤澤委員 合同委員会の決定を見て通達された場合には、これは条約上の義務を負っているわけですから、今日の段階ではいたし方がないと考えられるのだが、しかし単に予備調査ということで、日米合同委員会の議を経ていないものを、あなたの権限で、土地収用法で強制収用できますか。
  140. 今井久

    ○今井政府委員 ちょっとその点私の申し上げたことが誤解を招いたかと思いますが、米軍の基地に提供いたしまするところの土地につきまして、その計画が適正かつ合理的であるというものにつきましては土地の収用並びに使用をすることができるという法律があるのでございます。その点を先ほど申し上げたのでございます。
  141. 赤澤正道

    赤澤委員 それはどの法ですか。行政協定ですか。
  142. 今井久

    ○今井政府委員 これは非常に長い文章でございますが、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法、こういう法律があるのでございます。
  143. 赤澤正道

    赤澤委員 どうも私は何かアメリカの方から言われればやらなければならぬと思い込んでおられるからそういう結論が出るのじゃないかと思うのですが、日米行政協定自体にだって二十六条の三に、「合同委員会は、問題を解決することができないときは、適当な経路を通じて、その問題をそれぞれの政府に更に考慮されるように移すものとする。」ということまであるわけですからね。しかも合同委員会自体が何らそこまでいっていない案件に対して、あなたの方でアメリカから言われたからというのでそういう法律を使って強制力を使うことはできますか。
  144. 今井久

    ○今井政府委員 その点は御説明が足りませんでございましたが、合同委員会の議を経ましてそして提供するということが閣議で決定されるとなりましたときには、これが日本政府のなすべき義務だということになります。これを実施いたします場合には、先ほど申し上げましたように特別措置法という法律がございまして、土地収用法の大部分をこれに使っておる、こういう前提を申し上げるのが足りませんで御了承を得なかったと思います。
  145. 赤澤正道

    赤澤委員 それでわかりました。それでなくちゃならないと思うのですよ。ところが私疑問に思いますのは、その予備調査ということを案外あなたの方で簡単に考えていらっしゃるのじゃないか、アメリカから要請があったからはい承知しました、では地元に協力を要請しましょう、そこで拒絶されたということはあなたとしては実際困ったお立場になっておられる。それをあまりぴりっと感じていらっしゃらないようですけれども、予備調査というものはどういうふうに考えたらいいのですか。結局は私はこう判断するのですよ。日米合同委員会の議も経ないでしょう。施設特別委員会の日本代表はあなたであり、調達庁の長官もあなただ。それは施設特別委員会として受けて、地元に協力を要請して断わられた場合には、あなたとしてはどうなさることもできぬじゃないですか。
  146. 今井久

    ○今井政府委員 この予備調査というものの性格でございますが、結局施設の区域の提供というものは、行政協定の第二条というものがございます。それに基きまして第二十六条で日米合同委員会で施設区域の決定を協議する、こういうことになっておる次第でございます。従いまして合同委員会の下についております小委員会であるところの施設委員会で、その前提としてまず要求がなされて、われわれの方でそれについての可否等についてこれを協議する、こういうことになっておりまして、予備調査はその協議に入ります一つ段階として調査する、こういうことになっておる次第でございます。従いまして地元において御了承を得ないときには一体どうするかというお話しでございますが、私どもといたしましては、むろん予備調査というものが地元の御了承を得なければ、立ち入り調査を無理にするということはできないわけであります。先ほど申しました通り調査をいたしました上で、さらにその範囲、内容等は十分米軍と協議しなければならない、打ち合せをしなければならない、そして妥当なる結論に達し、それが地元の御了承を得るということにしていきたい、その段階において、一応予備調査をしたい、実はこういう建前で予備調査をお願いしたというわけでございます。
  147. 赤澤正道

    赤澤委員 そこではっきりいたしましたが、結局予備調査ということの段階では、立ち入りを拒絶された場合には、予備調査自体ができないでしょう。それをあなたは確認なさったわけですね。
  148. 今井久

    ○今井政府委員 予備調査は、立ち入りが地元の御承諾を得なければ強制してこれはできないというふうに考えております。
  149. 赤澤正道

    赤澤委員 それは一応了解いたしました。そういたしますと、アメリカがたってこれを要請する場合には、今の室中写真の問題も起ってくるのではないか、つまり現地を測量することなくして通信施設を作ることは不可能ですよ。あるいはこっそりもう住民の知らぬ間に立ち入ってくいを打つとか、あちこちで起っておる問題を引き起さない限りはできないと私は思うのです。どうも今までこういう点につっ込んで御質問になった方があるかどうか知りませんが、私は日米合同委員会の決定を経て後の、しかも政府は条約上の義務によって行政執行をやらなければならぬという立場になってから、あの砂川のような問題を起してしまっておるわけなんです。なぜこういった予備調査段階にあって、こういう問題を取り上げて議論しなかったかということを、私は非常に不思議に思うのですよ。この点はあなたもまたあとで後悔なさるかもしれませんが、そうすれば結果においてはこのアメリカ軍の通信施設というものは、ここに作れませんよ。ということは、室中写真をとるとか、あるいは土地台帳で線を引かない限りは、合同委員会に持ち出すことができないでしょう。施設委員会だって合同委員会に対して勧告することはできないと私は思うのですよ。あやふやなんです。ですから砂川の問題のようなああいうばかなことを起さないように、こういった問題については私は周到に研究してやられたい。ことに美保の問題については、現地でも絶対に拒絶しておりますから、今のところはおそらく立ち入り調査はできないと思う。この問題は一応別にいたしまして、全然角度を変えて補償の問題を一つ伺っておきたいと思う。  今まで調達庁自体が他の役所と違いまして予算を握っていないですね。そして何かつまらぬケースでもあれば、おそるおそる大蔵省にいって、しかられながら何とかわずかな金を出して、地元の言い分に当るというような立場に置かれておる。私はつねがね気の毒だと思っておった。そういうことがありますから、補償問題について非常に考え方がけちなんですよ。できるだけ値切ってやろうというのがあなた方のお考えなんです。そういう立場に必然追いやられるような仕組みになっておるとも考えられるわけなんです。ところがあすこの土地は、わが国の国防上でも重要な地帯であるということは、私もおぼろげながら承知はしておるのです。ですから今ジェットの基地の問題も大きく浮び上ってきておるわけなんですが、砂川問題なんかでも農地はこれは先祖伝来のものだから命をかけても離さないのだ、これはもうおかしいと思う。そう言えば電源開発もできなければ、国家的な、国全体にかかるような大きな事業は遂行できないわけです。やはり農地であれ、いかに大切な土地であれ、国自体のために必要であるということならば、十分な補償をして、生活の保障を十分見て、住民を納得させてやれば、こういう問題が起る余地はないと私は思う。砂川問題も根を掘ってみれば、そういうところから端を発しておるということは想像できる。それなくしてああいう騒ぎを起すとすれば、これは根底は思想の問題であって、要するに反米思想をあおっていこうという意図のある人たちによって指導されていけば、補償問題は別にして、ああいう問題も起るということは考え得る。けれども私は地元の人たちはそうではないと思う。ただそこに至る過程として調達庁なんかの考え方が非常にこそくであると思う。現に美保の基地の問題にいたしましても、あなたも御承知通りに、A地区の賠償の問題も大体の線はきまっておっても、つまらぬところにこだわっておって、まだ最終のけりはついておらぬでしょう。これは調達庁の責任だと思う。もう三年も四年も前から起っておる問題です。それからアメリカ軍が灰を流したために農作物が被害を受けて枯死した。この補償の問題にしても、いや何年前の二年平均の全収穫がこうで、何パーセントの減収だからどうのこうの、それに肥料を一部やったから肥料代を差し引く、そんなことをやっておるから地元の者はいよいよ憤激する。海に油が流れ出す。そのために漁獲物が全部油くさくなって市場で腐ってしまった。こういうことに対しても長い間ほっておいて、しかも涙金みたいなものを出してやって解決しようとする。こういうことですから、幾ら国防上大事だ、大事だといったって、住民が協力しないのは当りまえですよ。しかも今日通信施設の要求がきておるでしょう。それはあなた方に言わせれば、さっきもお言葉にありましたが、電柱を立てるだけじゃないか、アンテナを張るだけじゃないか、農家には大きな支障はこないのだ、それをそこまでやかましく言うのはおかしいというお考えをお持ちかもしれませんけれども、大体そういうふうなやり方を今までやっておられるからこういうことになってしまったわけなんです。これは当局が特に出したわけではないが、その言葉のはしばしで、あなたの出先の人たちは本庁の配慮というものをずいぶん顧慮をいたしまして、そして内輪に内輪に、憶病に憶病に、まだ条件を出す段階じゃないが、条件らしいものをにおわすのです。いいですか。かりに電力会社の電柱だってたくさん立っておるじゃありませんか。あれだってちゃんと補償はついておるのだから、その程度のものでといったようなことを、かりに口走ったとしますれば、電柱一本立てれば、これは一本について年間三十円か四十円の補償があるわけなんですね。それをかりに一つの面積に八百本くいを立てたとします。そして一本について電柱並みの補償なんてことを考えておられもしますまいけれども、そういうにおいでも出したら、それは憤激しますよ。だれだって憤激しますよ。こういうことは、あなた方のお考えというものは現地に伝わって非常にまずい結果を来たしておると思う。あすこは非常に集約された狭い土地です。平均耕作反別は三反歩ですよ。そして米子という消費地を控えて、換金作物を急速度に作って、そしてどんどんここの市場に出して露命をつないでおる人が多いわけです。そういうアンテナなんか張ったって、百姓する分には差しつかえないじゃないか。それは一応の理屈ですよ。しかしこの中の人たちは建物を建てたいという人もいる。水田じゃなく畑地ですからね。あるいはバッテリー式の鶏舎を建てたいと考えておる人もあるかもしれない。あるいはそういう工場を建てたいと考えておる人があるかもしれない。現にあるのですよ。そうしますと、自分の土地内に電柱がたくさん立って、上にアンテナを張られたら、単に電柱が立っておるその下の一坪ばかりの問題では片づかないということなんです。ですから必ず地域全体についての使用を、そういうふうに大幅に制限されるわけなんだから、そういうことの全体の補償も考えなければならぬ。さらにその中の電柱の下などというものは区々たる問題なのです。これは全部計算したって、国費の幾らの負担にもならないわけなんですよ。こういうことについて、どうもあなたの意思ではないかもしれぬけれども、出先の人たちから受け取る住民の感じというものは非常にまずいわけなんです。私が冒頭申しました通りに、すでに立ち入り自体に地元で反対もしておる。私も反対の第一線に立っておるわけなんですが、しかしそれは今までの調達庁自体のやり方に大いなるまずさがあった。条件を秘めて値切ってやろうといったようなことでなくして、もしこういう要請をして地元の各位に御迷惑をかけるなら、国の責任においてこれだけのことはいたしますというぎりぎりの条件の、もうこれ以上はできぬ、たとえば極端にいえば、一戸に五百万でも一千万でも何とかしてやろうと言えば、あるいは思想関係のない人は、それなら自分たちは部落移転をしてでもそれに応じようという気に、あるいはなるかもしれない。あまりこれをけちにやりますとうまくいきませんよ。どこかそういった面が、一つでなくしてたくさん現われてきておるわけなんです。こういう実態について長官もよく把握なさって、こういった問題を善処されませんと、ああいう砂川のような不幸を二度も三度も繰り返す。われわれの美保地区も、いわゆる思想的な影響を受けておる民間団体の諸君は、第二の砂川にまでやるんだといって楽しみにして、毎日々丸しり押しをして、住民でない人たちが入り込んで盛んにやっておるわけです。だからこの間に処してあなた方が職責を果されようとするについては、よほどの決意をお持ちにならなければいかぬ。あそこだって今のような行き万では第二の砂川になると断定せざるを得ない。こういった点についてはよほど考えておやりを願いたいと思うわけです。
  150. 今井久

    ○今井政府委員 ただいま赤澤さんから実情についていろいろお話しがございました点は、今後私どもの仕事を進めていきます場合に十分考えて参りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  151. 山本粂吉

    山本委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明後三十日午前十時から開会することとし、これにて散会いたします。    午後四時四十二分散会