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中田参考人 お答えを申し上げます。ただいま
お話のございました
事件の
着手は、三十年の八月の初旬でございますが、
横浜市の西区の町内に、付近の住民から、どうもしょうちゅうを
密造する場合の
悪臭のようなものが盛んに出て非常に困るというふうな話があり、それを税務署、
警察の方で探知をしまして、それから
内定捜査を始めた
事件でございます。杉山己
喜松というのが、その発端の
被疑者でございますが、これが自分の家の縁の下に
密造をやっておりまして、その
悪臭を、縁の下から床下をずっと通じて、外のテレビのアンテナに細い鉄管を結びつけて、そこまで
悪臭を流しておったのでございます。その
密造の
やり方は、やはり
横流しの
工業用アルコールから出ましたのを、初めに
ドラムカンからあけまして、それを
反応がまに入れて、そして
加熱蒸留をいたしましてしょうちゅうを
密造しておったのであります。県下には
相当数の
密造酒がございまして、特にその
密造酒の中には、一CC当り十ないし二十ミリくらいの
メチルの混入しておるようなものが
相当市販されておる。特に桜木町駅の
桜木デパートには、約百軒の飲み屋がございまして、ほとんど
労務者相手にその安い単価のしょうちゅうを売買しておったという
事案からも、非常に不審に思っておったのでございますが、その
捜査からだんだんと
東京につながり、それから
東京から
横浜へ伸びていき、
横浜からさらに
広島へ伸びて、そして
アルコールの根源を突きとめることができたわけでございます。その間に
捜査の難点といたしましては、ほとんど偽名を使う、あるいは
事件は普通そうでございますが、黙秘のために、十分に上の方へ
事件を進展さすのに非常に苦しんだ点、それから非常に広範な
捜査でございまして、すべて
工業用アルコールの九十度以上の
アルコールの
確認をしていかなければならない。しかも、そのためにはものをとらえなければならない、そのために、非常に広範な取引が行われておりますので、ずいぶん困難いたしたのと、それからすべて
被疑者が、九十度以上の
アルコールであるということを常に
確認をしておるかどうかということも非常に困難でございました。それから九十度以下の
アルコールにつきましては、
酒税法その他の
関係で、酒ということになっておりますが、
横流しの九十度未満の
アルコールにつきましては、
横流しをしておる君たちは、酒という観念がない、
アルコールを販売しておったのであるというふうなことから、
酒税法による
範囲の
確認ということが非常にむずかしいために、この
方面では非常に困難を来たしたわけでございます。それから特に法第二十、
アルコールの売りさばき規則でございます。二十八条では、
アルコールは
政府の特定した売りさばき人でなければこれを販売することができないという
規定でございます。多くは
密造をされておりますので、
工業用アルコールの
変性戻しをして、その結果全部
密造ということになるわけでございます。この
横流しアルコールが、二十八条をもって問疑する以外にはなかなか問疑がむずかしいという点もございまして、順次第一次、第二次、第三次
ブローカーを捕捉していくのが非常にむずかしいというようなことからして、
横流しが、どうしても徹底的の
取締りが困難である。その結果は、やはり
国税体係を乱しますし、従って
メチルの混入の酒も市販されて、身体に危害を及ぼすような
事案が今後も
相当続くのではなかろうかということでございます。
それからまた
変性の
基準が非常に簡単でございますので、もう少し
変性戻しが困難なような
基準にしてもらいますと、この
方面の
事案もだんだん少くなるのではなかろうかというふうなことも考えるわけでございます。現在の
酢酸エチルからの
変性は、
同和工業の
方法によりますと、
変性アルコールを
ドラムカンに移しまして、その
ドラムカンから
ゴムホースで、
真空ポンプで
反応がまに送るわけであります。その
反応がまを
加熱をいたしまして
蒸留をいたしまして、水の
冷却機を通ずれば
アルコールができる、その
アルコールに、
中和剤として
ソーダ灰を混入する、そしてこの
変性戻しをしておったようでございますが、私
どもが
捜査の
過程でさらに調べてみますと、
変性アルコールに直ちに
変性材料の
ソーダ灰を混入して、
加熱蒸留をすれば、
同和工業で
変性戻しをしておったよりはさらに簡単な
方法で
変性戻しが可能なようでございます。
このような
状況でございますので、
変性基準をさらに困難なものに改正をお願いできれば、仕合せだと思います。