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樋口参考人 私ただいま御紹介いただきました
日本鉱業協会の
専務理事をいたしております
樋口でございます。
ただいま
松本さんから
お願い申し上げました
通り、
中小鉱業対策に関しましては、ただいま
金属鉱業界の最も大きな問題の
一つとして取り上げておりまして、ぜひこの
対策を樹立して参りたい、またそのためには
政府予算並びに
国会の
皆様方の御協力をいただきたいというふうに考えております。現在
中小企業全般の問題につきましては、各
方面でいろいろ
関心を払われておるようでございますが、その
中小企業の中の
中小鉱業というものに対しましては、従来の
保護助成という面が比較的少なかったんじゃないか、
中小企業金融公庫等の
融資の統計から見ましても、
鉱業に対する
融資ということは、同じ
地下資源の
石炭に比較しましてもはるかに少いのでございまして、他の
中小企業と比較いたしますとなおさら、この
中小鉱業というものは、まことにこういう面では日の目を見ない
産業ではないかというふうに考えられます。しかも
産業政策上非常にこれは大事なことではないか、
鉱業の推進はぜひ
一つこの際取り上げていただいて、
中小鉱業問題について十分なる
施策を
お願いいたしたいというふうに考えております。よろしく御
高配を
お願いいたしたいと存じます。
中小鉱業の問題につきましてはこの
程度にいたしまして、現在
鉱業界で取り上げております諸問題につきまして、この
機会に簡単に
皆様方のお耳に入れておきたいと考えますので、しばらくお時間を拝借いたしたいと存じます。
その第一番目は、
鉱床補填積立金制度の制定でございます。これは数年前から
鉱業界で取り上げておりまして、たびたび
皆様にもお話申し上げておることでございますが、この問題は
鉱業界全般に非常に
影響の大きい問題でございますし、また
産業政策上ぜひ取り上げていただきたいというふうに考えておりますので、次の
国会あたりでは、ぜひ実現のために御
高配をいただきたいというふうに考えております。この
趣旨はもうすでに御
承知と思いますが、
鉱山の生命は結局
埋蔵鉱量の
確保でございます。この
埋蔵鉱量を
確保するためには常に
探鉱をやらなければいかぬ。しかもこの
探鉱をやるためには、相当莫大な
費用がかかる。しかもその
探鉱が果して成功するか失敗するかということはわかりません。あるいは探してみても全然物が見つからないという場合もございます。多額な
費用を
鉱業者としてはむだに捨てるという場合もあるわけでございますので、この
探鉱をするための
積立金をいたしたいということでございます。しかもこの
探鉱というものは景気の好不況にかかわらず、
会社の
利益があるかないかにかかわらず、常に
一定の速度、
一定の規模においてこれを進めていかなければならぬという宿命的なものでございますので、
利益金のうちの
一定の
割合を課税なしで積み立てていって、常にこういった
探鉱を継続して参りたいということがこの根本的な
お願いの
趣旨でございます。ただいま
鉱産物は年々七千万ドルも輸入いたしておりますが、この
探鉱を促進することによりまして、この
鉱産物の輸入もある
程度これをチェックすることができるんじゃないかというふうにも考えられます。また諸
外国においては、すでにこの
減耗控除制度もしくは
鉱床補填積立金制度を
実施いたしましてこの
鉱業を
保護いたしておるわけでございます。この諸
外国の例は従来あまり
ごらんに入れておりませんでしたので、本日
参考資料といたしまして
皆様のお
手元に差し上げてございます。この
資料の中の一番
最後に「
世界鉱産額と本
制度実施国の
鉱産割合並に
国数」という長い表がございますが、その表を
ごらん下さいましてもわかりますように、左の端に当
制度実施国といたしまして
国数は六としてあります。鍋墨の数字も載っております。それからその次に国営で
鉱業を営んでおるためにこういう
制度を必要としない国、その次には未
実施国中
特例国、とればローデシアとかコンゴというのは非常にコストが安いので、こういう
制度を必ずしも
実施しなくてもよろしい。こういう国を合せますと、大体
最初は
銅鉱の表でございますが、
銅鉱では
国数が九、
銅量比では九〇%に上っておるわけであります。未
実施国としては、
日本、メキシコその他がございます。同じように鉛におきましては七三%が
実施いたしておりますし、亜鉛におきましては六七%が
実施しておるわけでございます。
世界の主たる
鉱産国においてはこの
制度によって
鉱業を特別に
保護いたしておるわけでございまして、御
承知のように
鉱産物は
国際商品でございます。しょっちゅう
海外の相場その他に
日本の
産業もさらされておるわけでございますので、こういう
国際競争力に打ち勝つためにはこういった諸
外国で
実施しております
保護政策はぜひ
わが国においても
実施を
お願いしたいというふうに考えております。
なお最近この
鉱床補填積立金に対しまして根本的な
反対意見が出ておりますが、その
反対意見の主たる観点と申しますか、その
要点は、
探鉱して成功した場合には鉱区が
一定の
埋蔵鉱量を
取得するわけでございますが、これは
一つの
資産である。その
資産を
取得に先だち事前に
損金引き当てをするということは
税制の
根本的建前を著しく変更させるということが
一つの
非難の論拠でございますが、この点に関しまして、これはただいま差し上げました
書類の一番
最初の
書類に
税制上検討すべき
問題点というのがございます。これが大体
反対意見でございます。その次に添付してございます
鉱床補填積立金制度についての
問題点に関する
意見というのが私
どもが考えておりますこの
反対意見に対する反駁の要旨になっております。この
鉱産資源というものは、
建物とか
機械とか、そういった
一般の
資産とは非常に違うのでございまして、
海外でもこれは
埋蔵鉱量を
減耗性資産と称しまして、
一般の
建物、
機械類とは別個の取扱いをしておるわけでございます。従いまして
一般的のこういう
償却資産と申しますか、
建物、
機械などの
取得のために引き当てる
積立金というものとは区別ができるはずだと考えております。なおその他ここに列挙してございますようないろいろな
反対意見がございますが、
最後に、これは
アメリカ、カナダ、
フランス等において
実施しておりますが、その
弊害が
指摘されているのはどうかという
指摘が第六番目にございますが、この点につきまして
アメリカその他で
実施しておりますのは私
どもが
お願いをしております
鉱床補填積立金制度とはだいぶ
内容が違いまして、いわゆる
減耗控除制度でございまして、無税で積み立てました
積立金の
使途に対しまして何ら
制限がないというところにその
弊害が起る重大な要素があるのじゃないか。私
どもが
お願いしておりますのは、その
使途については
探鉱のみに使うという
一つの大きな
制限をつけていただいてけっこうであるというふうに考えております。こういった諸
外国の本
制度に対する
非難というものも、必ずしも私
どもお願いしておる
鉱床補填積立金制度にそのまま当てはまるというふうには考えられないのじゃないかというふうに思っております。
なおその次には
通産省の
鉱山局の見解として出ましたものを私
どもいただきましたので、その写しを作りまして
皆様方に御
参考にお目にかけるつもりでここに添付しておりますので、後刻
ごらんを願いたいと思います。
鉱床補填積立金の問題はその
程度にいたしたいと存じますが、もう
一つ問題は最近
海外から
——これは各
方面において同じようなことだと思いますが、私
ども金属鉱業界に関しましても、いろいろ諸
外国からの呼びかけがございます。それはたとえば
技術者を派遣してくれぬかとか、あるいは資本を投下してくれぬか、あるいは物を輸出してくれというふうにいろいろ働きかけがございます。御
承知のように、南方、南米その他
後進国に対しましては、諸
外国の大国がみな
関心を持って、それぞれ
政府がある
程度のめんどうを見て、早くいえば国力をそういう
方面に進展させるというために
技術者もあるいは
政府が全部給料を持って、無料で派遣するといったような例もあるやに聞いております。
わが国におきましてはそういった
施策というものが非常に不十分ではないかというふうに考えられますが、
技術者派遣に関しましても、
海外の諸
外国に対する投資にしましても、みな一
企業体が
自分の力で
自分の
危険負担においてやらなければならぬ。一度その
政府に政変が起った場合に、果して投資した金がどうなるか。しかもその金額は非常に膨大な場合が多いのでございまして、もしそれが全然無なものになれば、その
会社の生死にもかかわるといったような場合もあるわけでございます。こういった
日本の
海外進出の機運が今非常に起って参りまして、
日本としてはこの際
海外のそういう要請にこたえて大いに国外に発展する。これはたとえば
貿易関係とかあるいは人口問題とか、いろいろな面において
日本に
プラスになる結果が生まれるのじゃないか。遠い将来において必ず
プラスになるということは考えられますが、現在においてそういったことを一
企業体の責任においてやるということは、実際上なかなか困難でございます。従いましてこういった問題につきましても、
保険制度その他があるやにも伺っておりますが、十分なる
施策を考えていただきたいというふうに存じます。
それから最近の
輸送力の
不足の問題でございますが、
鉱産物は年に四百十六万トンばかり
輸送しておりまして、なお
石炭その他
地下資源全般では、現在の
国鉄全体の
輸送の六割以上、七割近くのものを
輸送しておるわけでございます。この
輸送力の現在の
不足につきましては、
地下資源関係全般といたしまして非常に困っておるわけであります。
なおちょっと話はこまかくなりますが、
メタル関係の
鉱山といたしまして、現在
東北線に
花輪線というのがございますが、これは好摩から
大館を通っております。その間には
松尾鉱山とか
花輪鉱山、尾去沢、相内、立又、西館、なお
大館には小坂、花岡といったような諸
鉱山がございまして、非常な
輸送をいたしておるのでございますが、この
花輪線が非常なネックになっております。これを何とか解決することが、私
どもの
鉱業関係の
輸送力については最も大きな問題でございますので、これについてはなお近く
皆様方のところに
お願いに上ろうというふうに考えております。
これに関連しまして
運賃問題、これは私
どもだけの問題ではないのでございますが、
国鉄は一割八分
程度の
値上げだということを言っておりますが、実際問題として各貨物についてこれを見ますと、大体二割から三割
程度の
値上げになるわけです。間接的に
影響してくる
影響まで考えますと、三割から四割、あるいは五割というような
値上げになりまして、ものによっては
製品の価格の五〇%、六〇%が
運賃であるといったものも出てくるわけでございます。従いましてこれは、
輸送力増強のためには、
国鉄運賃はある
程度値上げはやむを得ぬと思いますが、一時に二割の
値上げということは、その
影響するところは三割にも四割にも
影響してくるわけでございますので、ものには順がございます、漸進的にやっていただきたい。まずまず現在の私
どもの業界といたしまして負担し得る限度は、せいぜい一割
程度の
値上げじゃないかというふうに考えますので、これは近くまた
国鉄の
公聴会で
お願いするごとにしております。こういった問題も非常に深刻な問題でございます。
もう
一つ最後に
鉱業資源の
保護の問題でございますが、最近
電源開発、
国立公園その他によりまして、
鉱業権が侵害と申しますか、掘れなくなるといったような場合も非常に多いのでございます。ことに
電源開発なんかでその用地の候補に上った場合には、
試掘権はもう
採掘転願を認めない
方針だというようなこともいわれております。そのために
鉱業権者としては非常な脅威を感じておりまして、この
試掘権、
採掘権制度を何とかもう少し改正して、
鉱業法の改正を
お願いしなくてはいかぬじゃないかというふうな議論もあるわけでございます。もちろん
国立公園も
電源開発も必要な
仕事ではございますが、
鉱産資源の
確保ということもぜひお忘れなく、どちらが国のためになるかということを御考慮いただきまして、慎重に推進していただきたいというふうに考えております。
いろいろ問題もございますが、はなはだ雑駁なことを並べましてお耳をけがしまして大へん恐縮でございますが、私の公述はこれで終ります。