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1956-12-05 第25回国会 衆議院 商工委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十二月五日(水曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 神田  博君    理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君    理事 小平 久雄君 理事 笹本 一雄君    理事 長谷川四郎君 理事 永井勝次郎君       秋田 大助君    阿左美廣治君       宇田 耕一君    菅  太郎君       島村 一郎君    首藤 新八君       田中 龍夫君    淵上房太郎君       松岡 松平君    南  好雄君       伊藤卯四郎君    加藤 清二君       佐々木良作君    佐竹 新市君       多賀谷真稔君    田中 利勝君       松尾トシ子君    松平 忠久君       水谷長三郎君  出席政府委員         科学技術政務次         官       齋藤 憲三君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   原田  久君         通商産業政務次         官       川野 芳滿君         通商産業事務官         (大臣官房長) 松尾 金藏君         通商産業事務官         (石炭局長)  讚岐 喜八君  委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房調査官) 中村 清英君         大蔵事務官         (主計官)   鳩山威一郎君         通商産業事務官         (企業局企業第         二課長)    三宅 幸夫君         通商産業事務官         (重工業局長) 鈴木 義雄君         通商産業事務官         (鉱山局長)  森  誓夫君         通商産業事務官         (公益事業局次         長)      東  澄夫君         特許庁長官   井上 尚一君         労働事務官         (労政局労政課         長)      宮本 一朗君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 十二月四日  阿武隈山系総合開発に関する請願平田ヒデ君  紹介)(第五一五号)  只見特定地域総合開発に関する請願平田ヒデ  君紹介)(第五一六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  特許行政に関する件  石炭、電力及びガスの需給及び価格に関する件  生産性向上に関する件     —————————————
  2. 神田博

    神田委員長 これより会議を開きます。  この際長谷川四郎君より特に特許行政に関し発言を求められております。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認めます。よって長谷川四郎君に特許行政に関し発言を許します。長谷川四郎君。
  4. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 きょうは特許庁長官に二、三承わりたいことがありまして、さらに日本特許行政がいかなる方向に向って進んでいるかという点を伺いたいのであります。  特許庁というものがいかに必要に迫られているかということは私がここで申し上げるまでもないのでありまして、今日特許庁必要性考えているのではなくて、人類が成長するに至って、特許庁というものが指導権を握って、そしてわれわれ人類生活を安定に導くというのが今日の理念でなければならないと私は考えております。こういう点から考え日本には特許庁があるけれども、果して特許庁使命を全からしめているかいなやということについては、大いなる疑問を抱かなければならないと思うのであります。  かつて昭和二十八年、特許行政についての質問をしたことがございます。こういうあり方であっては国民生活の安定をゆだねるわけにはいかないのではないか、どうしてもう一段特許庁政治性を持って、自分の窮状を訴え出て、自分たち使命を遂行するためにやらないのだということを質問したことがあります。そのときに、ごもっともであるから今後はそういうふうに精進したいというお言葉を承わっております。今日おいでになっている政務次官の齋藤さんも、私とともに今の日本特許庁をより以上高度に持っていかなければならないと、一緒にこの運動を開始したものでございます。ところが今日に至って日本特許というものが国民に認められているかどうか。国民にこれが認められているとするならば、いかに戦争中のずれがあったとしても、現在のようなあり方はないと私は思う。たとえばロイアリティの問題にしてもパテントの問題にしましても、こういうものは全部外国のものを持ってきている。日本人がいくら働いても、働いた金の利益というものは全部外国へ持って行かれるということ、従ってパテント契約をしてもこれらに対する技術提携という点で千何百億という莫大な金が日本から流れ出ている。こういうように日本技術というものを国民が信頼しなくなった。たとえば同じ技術で同じ製品ができていても、外国のものであればより以上よきものであるという観念を与えたところの責任は断じて私は特許庁にあるといわなければならないのであります。今日は技術庁というものも誕生しておりますので、これらと緊密な連携のものとに特許庁がいま一段と活発な活動をしなければならない時期だ、こういうふうに考えている。従って特許庁特許を与えればそれでいいというのではない。その特許をいかに実用化するかということが究極目的でなければならないと私は考える。その実用化という点について、日本では特許を与えたけれども、与えたものが実用化されないものがどのくらいの大きな数字を持っているかということをまず一点伺っておきます。こういうふうに実用化されないものであるならば、何もあなた方特許庁というものの必要性を私は認める必要はない。こういうふうに特許庁というものはこれを実用化すということ、それによって国民生活向上させるということが、申し上げたような究極目的である。その目的の上に立って特許庁活動を開始しなければならない、こういうふうに私は考える。ところがたまたまサンデー毎日という本を見ましたところが、十二月九日号というものに「ドロ沼特許亡国」というものが現われておる。私は、これは全部が全部そうであろうということは申し上げません。しかしある部分のものはかくのごとき存在でもるということを指摘しなければならない。たとえばこのサンデー毎日の文から参りますと、とにかく審査官というのはあるけれども、おやめになった審査官が五十人もいて、その五十人の前に審査官はもみ手をして云々ということが書いてある。しかし特許申請年間に十何万あるのであって、その申請を前任官であるからといって受付順序を違えて、そうしてあとからの者が先になるというようなことは、おそらくでき得べき問題ではないと思うが、そういうことが果して許されているかどうか、顔なじみであればそういうことをやってもいいようになっているのか、そういう事実があったかどうかという点をあなたから伺いたい、その二点についてお答えを願います。
  5. 井上尚一

    井上説明員 長谷川委員より特許制度について非常に御理解のある、かつ好意のある御質問を今拝聴しまして、私非常に力強い感じを持った次第でございます。  順序は逆になるかと存じますが、サンデー毎日の文の方からお答えを申したいと思います。今回の十二月九日号サンデー毎日の「ドロ沼特許亡国」と題する記事につきましては、その内容におきまして事実に反する記載が非常に多く、また誤解を招くもとになるような記載が非常に多いということにつきましては、私ども特許行政に関係する者としまして、非常に遺憾の気持を持っておる次第でございます。その一々について訂正、反駁する必要を感ずるわけではございますけれども、ただいま御指摘のございました現役の審査官特定弁理士、特にかつて特許庁に勤務したことのある先輩弁理士を前にしまして、特別にいんぎんな態度をもって、場合によっては審査順序を変えて特別の計らいをなすことがあるかのごとき事実の記載がある、この点についてそういう事実があるかという御質問であります。結論から申しますればそういう事実は断じてございません。と申しますのは、御承知通り先願主義といいますのは、特許制度特許行政上の最も大きな鉄則でございます。到着順に、着実に、きわめて厳格に案件審査をするというのは不動の原則であります。普通の陳情とは違いまして、権利設定を認めるかどうかの分岐点でありますので、一日の違いでもって、一日でも早い方が権利になり、一日でもおそい方は権利設定対象にならないということは、これは申すまでもないことであるわけであります。従いましてある特定弁理士、あるいは何らかの力によって外部からのかりにそういう働きかけがあったとしましても、これによりましてわれわれ特許庁担当官が、特に審査官がその先願主義を破って審査順序を変えるというようなことは、全くその事実がない、これはわれわれが断じて行い得ない特許行政上の鉄則でございますので、そういうことにつきましてはくれぐれもないということを申し上げまして私の言うことを御信頼を願いたいと考える次第でございます。  次に特許権実用化特許発明実用化を見るに至らなければ産業上何ら効果はないではないか、特許庁としては特許権設定という段階だけでなくして、それの実用化についていかなる手を尽しておるかという問題と、これに関連しまして外国特許技術が最近たくさん日本に入ってきておる、そして日本産業は非常に重要な技術ついて外国人特許制約をこうむっておる、同時に海外に向って多額ロイアリティ支払いを続けなければならない、これは日本産業経済にとってきわめて不利ではないかという点についての御質問であったかと存じます。この問題につきまして私あとの方からお答えを申したいと思いますが、御承知通り敗戦の結果としまして、日本産業技術水準というものは海外技術水準と比べて非常な立ちおくれを見ましたことは、遺憾ながら事実でございます。この産業技術のギャップをできるだけすみやかに回復するためには、わが国の実情としまして海外の優秀なる新しい技術導入する必要があることも、十分御理解願える点であろうかと考えます。外国人特許を認めるということは、申すまでもなくこの技術日本産業上直ちに活用できる、実施ができるということによりまして、日本産業の急速な回復、産業発展に非常に貢献し寄与するわけであります。と同時に、特許になりました技術特許公報を通じまして一般国民に公表になりますので、何人といえどもその新しい特許技術研究し、そしてその新しい技術研究当該特許発明にヒントを得てあるいはこれを通して日本人のよりよき発明を生み出す契機となるわけでございます。そういうふうに特許制度というものは、申すまでもなく発明を通して発明の上に出ることを可能にする人類の知恵でございますので、わが国としましても、内国人発明であると外国人発明であるとにかかわりなく、新しい優秀なる特許発明というものが科学技術産業経済、文化の発展に寄与するわけでございます。もちろん他方海外に対するロイアリティ実施料支払いはかなり多額に上っておるわけでございますが、そういうふうに一見非常に海外に対する外貨の支払いが多いという事実、あるいは外国特許技術を使わなければならないという点について日本産業制約をこうむっておるという点だけを考えますと、一見不利あるいは屈辱的に見えるかとも存じますけれども、長い目で総合的に国際的に考える場合には、この導入された外国特許技術特許発明を通じてわが国研究がますます活発化し、また日本技術水準がこれをいわば踏み台としましてますます向上することが可能になり、また日本産業外国産業と拮抗せしめまして発展することが可能であるわけでございます。そういう意味合いから、ここ当分の間外国技術導入は、外国人に対する特許権設定あるいは外国人特許に対する実施料の当方からのかなりの支払いという事実は伴いますけれども、長い目で見ます場合には、日本産業技術発展に必ずや大きな効果あり、そしてひいては将来日本の新しい発明の生まれる母体となりまして、日本人の優秀なる発明がむしろ海外に進出していくであろうことをわれわれとしては期待したいわけでございます。  次に特許権実用化の問題でございますが、これはもちろん平素われわれとしましても相当苦慮いたしておる点でありますが、私の考えとしまして、日本におきましては、ややともしますれば特許権というものの独占的、排他的性質のみが強調され過ぎまして、特許権を第三者に使わせる、あるいは他人特許権を使う、そういう特許権実施契約というものが今のところあまり活発でないという事実があります。ですから特許権というものを、もっと他人実施料をとって、日本人相互間の問題としましても他人特許権を使わせる。あるいは他人特許権を使う、そういう感覚、これが今後もう少し多くなって参りますことをわれわれとしては期待している次第でございます。一例を申しますと、官立試験研究機関にもいろいろ国有特許があります。あるいは大学教授等のいい特許もあります。あるいは個人研究所個人発明家特許もありますが、そういう場合に、産業界の方ではそういう研究所あるいは学者あるいは個人研究所ないしは発明家特許というものに着目しまして、それを自分企業経営上活用するという配慮がまだまだ足りない。また反面から申しますと、個人発明家というものは、自分事業家ごして事業的にもみずから成功したいという気持を持ちますことは、これはむしろ人情の自然ではございますが、多くの場合発明才能というものと事業経営の能力、才能というものは必ずしも両立しない場合がございます。そういう個人発明家がみずから企業を起し、事業的にも成功するという方向にも、なるべく国としましては援助の手を伸ばすことが必要かつ適当なことでございますので、従来発明実施化試験費補助金制度というものを特許庁としましても、金額はそう多くはございませんが、やって参りました。科学技術庁の設置に伴いまして発明奨励に関する事務科学技術庁の方に移管になりましたので、今後もこの発明実施化試験費補助金というようなものは、新しい技術助成方法の一環としまして続けられていくことであろうと考えます。同時に今申しましたように、産業界がもっと発明家特許権というか、新しく生まれる特許権に注目することによってそれを実施化するという方向に、産業界全体としましてそういう配慮感覚が今後もう少し普及を見るようにわれわれとしましては希望いたしておる次第でございます。なお特許庁としましては人員の点、予算の点、私昨年命を受けてこの地位に着きましてから、微力ではありますが、人員増加予算増加につきましては今後でき得る限りの力を尽して参る考えでございます。
  6. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 どうも特許庁長官お話を聞いていると、海外から産業技術導入することを奨励しているようなお考えを持っております。あなたのお話で聞きますと、どんな品物も全般的にこれを導入した方が日本技術向上になるというようなお考え方をしておるように私はとります。しかし海外技術導入そのものが私はいけないのだというのではない。しかし現実の日本が行なっているような海外技術導入そのものによると、日本亡国になるのだということを申し上げている。ということはあらゆる大きいものから始まって、現在日本に入っておるもののほとんど全部というくらいのものが導入される傾向に変ってきている。こういうことはまかりならぬ。これはあなたの方ではないから、しいてあなたに御答弁を願おうとは思わない。しかしあなたの考え違いをしているところだけは指摘しておかなければなりません。あなたの今言っていることを聞くと、日本海外技術導入することが日本産業のより母上のもとになって、そして日本技術水準というものを上げていくのだ。上げていくところはどこにある。全部の技術導入されてどうしてそこに日本技術を上げていくことができるか。いくら日本人が働いても全部外国人利益を持っていかれて、どうして日本人生活向上ができるか。そういうことではないのであって、部分的な、どうしても日本にこの技術を持ってきて、それが日本産業のためになり、日本国民生活向上になるという一つの基本的なものによってのみ私は考えなければならないと思うのでございます。こういうような点についての問題であって、あなたがおっしゃるようなことを言っていると、この本に書いてあるようなことが事実そうだと言わなければならない。この本に書いてある「ドロ沼特許亡国」とか、これは特許庁あり方がいけないから亡国になると書いてあるのではない。見出しはそう書いてある。内容日本外国産業技術というものに全部ゆだね過ぎている。このままでいくと亡国になるのだ。私はその通りだと思う。そこであなたのような考え方を持っている人があるとすると、大きな間違いを生じてくるだろうというふうに考える。現にあなたのところの特許庁審査官という方々は通産省ごみ捨て場だとこの本には書いてある。私はそんなことはないと思う。けれども、この本にはそう書いてある。ごみ捨て場であって、通産省でもって首になる者を一等免じて特許庁へ入れるのだと書いてある。これは私の考えとは大きな違いを生じてきている。特許庁だとか技術庁だとか、これらの水準が高まらなくて、どうして日本の九千万の人間がより以上の向上ができ得るか。技術庁なりあなた方なりが高度の水準を持たなければならない。皆さんが今日大蔵省へ頭を下げて予算云々などといっても、こんなものが続くうちは日本はよりよき日本になるはずがないじゃないか。あなたの方がそういう感覚であってはならないという、そこを申し上げるのであって、事実こういうような感覚でもってあなたの方の職員はお勤めになっておるのか、あなた自身もこういう感覚でおるのかどうか、これを一つ伺います。
  7. 井上尚一

    井上説明員 お答え申します。私の申し方があるいは十分でなかったかと存じますが、もちろんわれわれとしましては日本固有産業技術発展向上をこいねがっているわけでありまして、何でもかでも外国技術導入することが日本産業にとってプラスになるのだという考えではもちろんありません。この点は私の言い方が不十分であったと考えまして、私はここに繰り返して御説明を申したいと思いますが、海外の新しい技術につきまして外国人から特許出願がある。この場合に、それと同じような技術日本にある場合は、もちろんこれは特許になりません。すでに長谷川先生十分御存じのように、公知ないしは公用あるいは刊行物にすでに記載になっておる。そういうような技術特許対象にはならないわけであります。ですからこれを言いかえますと、外国では大した技術でない。これが日本特許出願をすれば堂々と特許として通るということは、断じてあってはならないと思います。そういう点からわれわれとしましては、海外技術文献の購入ということは、なるべくすみやかに、なるべく広い範囲に行いまして、そして内外の文献を通じまして、審査官にできるだけ審査文献を用いることによって、外国出願に対してこれを最小限度に食いとめる努力をする。すなわち拒絶すべき事由をあらゆる文献を通して発見することに努めるということは、われわれ特許庁としましても、はっきりそういう気持を持っておるわけであります。ただ重要産業について、日本にない技術をやむを得ず導入するということについてのその意義を、私としまして先ほど強調いたしたわけであります。
  8. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 昨年の処理件数が六千七百で、残りが十二万三千ある。こういう例は戦前において、たとえばドイツの例をとりましても、ドイツあたりでは毎年その処理ができていった。しかしその当時であっても、日本はおそらく数量の点においてはずいぶん残っておった。しかし今日ドイツあたりでも非常に大きな数量件数が残ってる。こういう件数が残ったというのがいけないと言うのではない。しかしすみやかに処理件数というものをもう少しピッチを上げていくという方法が、何らかあるはずだと思う。ここに審査官年期の入った人がおらないということが指摘されている。年期の入った人がおらないから、件数が残ると指摘しているのだが、果してそれが事実かどうか。
  9. 井上尚一

    井上説明員 昭和三十年について申しますれば、特許実用新案、意匠、商標を通じまして、年間処理件数が十一万三千件でございます。そして年末の未済件数と申しますか、停滞件数が十七万三千件であります。今申されました数字は、このうちから特許実用新案数字を抽出した分であります。この年間処理件数をはるかに上回る件数が、年末の未済件数として翌年に繰り越されておるという事実、この点にわれわれとしましては非常な重大な責任感じております。このままで参りますれば、むしろわれわれ率直に申しまして、特許行政の危機という感じを持っておるわけでございます。これを克服しますために、われわれとしましては五カ年間に、すなわち五年目の最後に、年末の停滞件数年間処理件数に見合うぐらいに、未済件数の累増する山をくずして参りたい。そういう五カ年計画を最近樹立しまして、これに基きまして、そこへ持っていくためには来年度、再来年度、どれだけの人員要求を必要とするかということを逆算しまして、予算要求を出しておるわけであります。今申されましたそういう審査停滞といいますか、審査官のいわゆる質の問題についての御指摘でありますが、われわれ特許制度七十年の長年の経験を通じまして、一人の審査官年間審査し得る件数というものは、経験的に従来といいますか、むしろ戦前は、特許実用新案を通算しまして、約百八十件でございましたが、これが最近二百四十件くらいに上っております。ですから平均しますと、審査能率は三割ほど上っていると申していいわけてごさます。しかしながらこれは平均でありまして、最近数年間、今年度は八十名増員しましたけれども、去年までは毎年大体三十名ずつの増員を続けて参りました。この結果としまして審査官に新しい人が非常に多いわけであります。ですから中堅ないしは古参の審査官としましては、自分審査をできるだけ進めると同時に、新人教育、養成を並行してやらなければならないというところに、審査官としましての非常な負担がかかっておるわけであります。われわれとしましては、審査官の研修という問題について、特に最近力を入れておるのでございます。新人教育は言うまで毛なく、技術の進歩に応じまして中堅職員のいわゆる再教育、そういったことを通しまして、できるだけ審査官の素質の向上考えております。なおこれと並行いたしまして、出願件数の方も、数は世界第三位というくらいに多いのであります。けれども、質的に見ますならば、質のいいものばかりでもございませんので、出願の質の向上ということも並行して——これはもちろんわれわれ特許庁だけの手ではできませんので、関係方面、ことに弁理士会その他出願者の向きに要望いたしましてそういう出願者質的向上による数的減少、そういうようなことを期待してやっておる次第でございます。
  10. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 日本人特許外国人特許申請というものとの比率が出ておるようであります。日本人特許出願に対する認可になったというか許可になった、こういうものが四割で、外国人特許申請をすると九割五分、こういうふうに書いてあるわけです。しかし外国人だから日本人だからといってあなたのところで取り扱う技術においての相違はあるはずがないと思う。たとい日本人が十万出そうと十一万出そうと、それが真に特許に値するものだとするならば、これは免許をするものだと私は考えるが、こういうふうに書かれておるが、これはどういう理由であるか御説明を願いたい。
  11. 井上尚一

    井上説明員 お答え申します。外国人出願のいわゆるパスする率、これが日本人と比べて高いことは事実であります。これの理由としましてはいろいろ考えられると思うのでありますが、まず第一に、有機、合成あるいは電気、機械関係とか、あらゆる面におきまして外国の新しい技術が進んでおる、そういう分野におきましては、その出願にかかる発明内容、そういう技術というものが、日本ではまだ公知公用されていないし、あるいは日本に入ってくる文献にも記載されていない。あるいは研究自身が外国の方が進んでおる結果としまして、ある特定の分野における発明が、外国人では合格率が多くて日本人の場合にはこれが少いということは、第一にそういう理由が申せるかと考えます。  もう一つ、第二の理由としまして、外国人出願というものは、おそらくその国においても特許になって、あるいは特許になる可能性があり、かつ非常に重要な、いい発明であるというものに限って日本出願が出てくるわけでありますから、非常に質的にふるいに前もってかかっておるという点があろうかと思います。これを逆に申しますれば、日本人外国出願します場合におきましても、日本特許庁出願しますその発明中から選択しまして厳選して英国に特許出願を出す、アメリカに特許出願を出す、ドイツに出す、そういうふうに当然厳選するわけでございますから、日本人出願外国におきまして合格する率も非常に高いわけであります。  いろいろあるかと存じますが、私、その二点だけ申しましてお答えにかえたいと思います。
  12. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 冒頭に申し上げた通り特許庁使命というものは非常に大きなものである。従って長官たるべきものはもっと一段と政治力も必要であろう。あなたのところでこういう処理件数の漸増ということになった点についても、大いにあなたの政治力をもって解決していく道を開拓していかなければならない。それにはあなた一人がいかに大きな政治力を持っておっても、これの開拓はでき得ないと私は思う。従ってこういうような委員会というものがあるのであって、その実情等においても、年々あなたの方から国会の開かれるたびにこういうようなところへその資料を提出してそうして多くの委員各位または各政党の強力なるバックをもってあなたが活躍をしなければこの解決を望むことはでき得ないと思う。こういう点について、長官は床の間の置物とは違うのだから、現実にそういう行動をしてもらいたいということをあなたに申し上げておきます。  齋藤政務次官にお伺いをいたします。実用化特許を与えたものの実用化について、今度はあなたの方でこれらをいかにして実用化していこうかということをやって下さることになるようでありますが、誕生早々で非常に困難性もあると思います。これらについての予算というものがかつては非常に少かったのであるが、本年度の予算等についてはどのくらいのものを見積られて提出しているか、その点について伺ってみたいと思うのであります。
  13. 齋藤憲三

    齋藤政府委員 お答え申し上げます。  科学技術庁は、御承知通り、本年の五月十九日に発足をいたしたのでございますが、その科学技術庁の権限の中に、四条の十八号に「発明及び実用新案の奨励を行い、並びにこれらの実施化を推進すること。」ということがございますので、科学技術庁といたしましては、その与えられました任務の科学技術の総合的な水準を高めて、国民経済に寄与するということに即応するため、特に特許発明実用新案あり方につきましては重大な関心を持って参ったのであります。  念のために私どものやりましたありさまを御報告申し上げますと、特許行政につきましては、試験研究等促進方策調査会というものを科学技術庁に設けましてこの中に特許委員会を作りまして、この実態の調査を今日まで続けて参っておるのであります。これは科学技術庁設置法の第十一条に、科学技術庁長官の権限といたしまして「科学技術庁長官は、科学技術の振興及び資源の総合的利用を図るため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し必要な資料の提出及び説明を求めることができる。」という条項がありますが、それに従いまして特許庁に対してもその実態を説明せられんことを要求いたしまして、十分それを承わって目下結論を整理中でありまして、遠からずこの結論が出てくると考えておるのであります。従いまして、その結論が出て参りまするならば、その結論によって、さらに科学技術庁長官の持っておりまする勧告権その他によって、特許行政あり方に対して科学技術庁の結論を出して参りたいと考えておるのであります。  ただいま御質疑にございました昭和三十二年度の予算に対しましては、今日まで特許庁から分割しました発明奨励に関する予算が三十一年では三千万円ございますが、それを発明実施化試験費補助金といたしまして三十二年度には八千三百七十五万円、それから研究機関の助成といたしましては一千七百八十三万四千円、発明協会補助金して、一千百五万九千円、合計一億千二百六十四万三千円というものを要求いたしております。  さらに、最も問題となっておりますこの発明奨励実施化に関しましては、新技術開発公団の設置を目下要望いたしておりまして、これに対しましては五カ年間に五十億、三十二年度には、初年度といたしまして十億円の予算要求いたしております。  以上お答え申し上げます。
  14. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 技術庁特許庁とが並行して日本技術奨励に当ってもらわなければならないということは申し上げた通りでございまして、こまかいものといえば、たとえば電気の関係で固定抵抗器のようなものがあるが、こんな小さなもので、中小企業として日本で現在四十数社で行なっている年間の売り上げが大体五千万円くらいあるが、防衛庁でそれを使うのが年間に大体四万円から五万円の間である。わずか五万円くらいしか防衛庁で使わないものを技術導入するという。日本でも今研究を始めて、もうすぐ研究ができて、より以上のものができるというのに、現在通産省ではこれを技術提携して奨励しようとしているが、まことにけしからぬ話である。政務次官もおいでのことであるから申し上げるが、まさに日本という国はこういうような実態である。われわれがいかに苦労してみても、いかに働いても、その行政のいかんによっては、技術提携云々によって利益は全部外国べ持ち出されてしまう。それほど日本技術は無能であるか、私は、世界の人類には断じて負けない技術を持っているという誇りを持っている一人でございましてそういう誤まりのないような行政を今後続けてもらわなければならないと思うのでございます。固定抵抗器等の問題に対しては今後もいずれあと重工業局長等にお尋ねをしなければならぬ問題ですから、これはあとに譲ります。  そこで原田官房長にお伺いいたしますが、あなたも今お聞きの通りで、長官は、この今示されたものについて、そういうことは大きな間違いでございますと言っておられる。あなたも特許庁におった方でございますが、こういう間違った資料をあなたが提出したかどうか。こまかいことは聞く必要はないのだけれども、あなたがもしそういう間違った資料を提出したとするならば、先ほど長官の言ったことは全部偽わりであったと証明をしなければならない。ですから、このいきさつについてあなたも一つ私に聞かせていただきたい。
  15. 原田久

    ○原田政府委員 お答えいたします。ただいまお示しのありましたサンデー毎日の記事につきましては、私は全然関係がございません。ただし、最後の五行ほどのところにあるわが国研究費というものが非常に貧弱であるということ、そういう点につきましては、科学技術庁として各国の数字及びわが国研究費の状態、そういったものを調査いたしまして、科学技術振興費に関する五カ年計画試案というものを当庁で出しております。それは各方面にもお配りしてありますので、そういうものがあるいは利用されて記事になったかと思いますが、それ以外につきましては、私は全然関知しておりません。お答えいたします。
  16. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 これで終りですが、今後技術提携の問題について、今技術庁考えている、たとえば原子力平和利用、こういうような大きな点についての提携はこれはやむを得ない点が多々あると私は思う。しかし今後、申し上げたようなあらゆる部面、あらゆる技術の面に商品化されるものに対しての技術提携というものは、十分考慮に入れなければならないと思う。特に技術庁においてはこの点について一そうの御研究と、その見識によって当っていただきたいと私は思うのでありまして、齋藤政務次官はこういう点については最も豊かな抱負を持っている方でございますから、お間違いはないと思うが、こういう点について間違いのないように進めていただくことを特にお願い申し上げとまして、私の質問を終らせていただきます。
  17. 齋藤憲三

    齋藤政府委員 科学技術庁といたしましては、特に原子力の開発につきましては重点的に責任を痛感いたしておる次第であります。この点につきましては、まずいろいろな角度から幾多の問題を検討する必要がございますが、ただいま長谷川委員の御指摘下さいましたように、特許行政というものが将来の原子力開発に対しまして非常に大きな役割を占めることは、申すまでもないことと思うのであります。ただわれわれ今一生懸命に特許庁あり方につきまして検討を重ねておりますのは、将来際限なく伸展して参ります原子力の開発というものに対しまして外国からどういう特許申請されておるか、または日本からどういう特許申請されておるかというようなことは、最もすみやかに調査をいたしまして、日本の将来を支配する大きな問題に対して外国特許から羽がい締めされるようなことのないように、万全を期さなければいけないのじゃないかというふうに考えておるのであります。私の聞きます範囲内におきましては、アメリカ等においてはまず特許申請されますと、大体そういうような重大な問題に対しては早急に類別をして、そうして国家的な見地からこれを処理するという方法がとられているということも聞いておるのであります。従いまして今日の特許行政あり方でもって、将来日本に大きな支配力を持つ問題を処理し得る能力があるかどうか、そういう点につきましても、科学技術庁といたしましては目下真剣に検討を加えておるのであります。いずれその成案を得ましたならば、これを国会へも御報告を申し上げて、日本特許行政あり方というものが立ちおくれないように、将来いろいろな問題によって日本の繁栄が拘束されないように、どうしてもやって参らなければならぬのじゃないか、そういうふうにも考えておるのでありまして、今後十分この問題に力を注ぎまして、御期待に沿うように努力をいたしたいと考えておる次第であります。     —————————————
  18. 神田博

    神田委員長 次に、石炭、電力及びガス等の基礎物資の需給並びに価格に関する問題について調査を進めます。  質疑の通告がありますので順次これを許します。永井勝次郎君。
  19. 永井勝次郎

    ○永井委員 電気、ガスの料金の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。その他たくさんの質疑があるようでありますから、これらの問題の掘り下げは後日に譲るといたしまして、簡単に諸点についてお尋ねをいたしたいと思います。  それに先立ちまして、最初に川野政務次官にお伺いいたしたいと思います。今国際的に非常に好況であるということ、またスエズ問題あるいは東欧の問題、こういうようないろいろな情勢を反映いたしまして物価に大きな影響がきており、日本経済に大きな影響がもたらされようとしております。国内の当面動いておる関係を見ましても、鉄が値上りしようとしておる。石炭、電力、ガス、油あるいは運賃、こういうような基礎的な関係のものが一めぐり高く値上りしょうとしておる。さらにこれに加えて、一面に直接税の減税を行おう、そのかわり財源として物品税であるとかあるいは事業税であるとか、こういった間接税を減税分以上に増徴をはかろうとしておる。こういうふうに物価が大きく値上りするような大きな情勢が、国内的にも国際的にも、あるいは国の政策としても行われようとしておるのであります、が、こういうような物価対策で一体どのように今後、これらの国際情勢、国内の経済に対処しようとしておるのであるか。物価に対する政府の基本的な態度を一応お伺いしたいと思うのであります。この内閣は命旦夕に迫っていて、もう何でありますが、それにいたしましても、こういういろいろなものを相続させられる新内閣としては迷惑千万であろうと思いますし、食い逃げのようにされる国民としてはさらに迷惑千万でありますから、この最後の段階における現内閣の物価対策の基本的な態度を一つ明確に示していただきたい。
  20. 川野芳滿

    ○川野政府委員 お答え申し上げます。世界経済の好況に伴いましてあらゆる面において活発な動きのありますことは御承知通りであります。かてて加えまして、スエズ問題等のために物価の上昇を来たさんとする気配のありますことも、御承知通りであります。そこで政府といたしましてはできるだけ物価の暴騰を避けたい、かように考えまして、あらゆる面の施策を行なっておる次第であります。基礎産業の部分をできるだけ値上げしないという考えのもとに、例を鉄鋼にとりますならば、鉄鋼の価格がだんだん上って参ったのでございますが、鉄鋼の価格を下げるために政府はあらゆる手を打った。すなわち、くず鉄をできるだけ多く外国から輸入する、さらに鉄鋼材を輸入する、さらに国内の鉄鋼業の生産の向上をはかる、あるいは外国向けの鉄鋼生産をできるだけ押える、かような施策をとりまして、鉄鋼の値上げを極力防いで参りました結果、二、三カ月前から鉄鋼の価格がだんだん下って参りましたことは、御承知通りでありまするさらに石炭におきましても標準価格を下げまして、そうして石炭の価格を下げる施策をとっておるような次第であります。なお、電気、ガス等におきましても、いろいろと値上げの動きもあるのでございますが、できるだけ値上げを防止しようと考えておるような次第であります。なお運賃等におきましては、これは運輸省の問題でございますが、しかし最小限度において、ある程度の値上げを許さなければならない部分もあろうかとも考えるのでございますが、しかしこういう面に対しましても最小限度に押える、かようにいたしまして極力物価の上昇を防ごうというように考えてあらゆる施策をとっておるような次第であります。
  21. 永井勝次郎

    ○永井委員 政務次官は物価の値上り抑制についてあらゆる手段を尽しておるというのですが、これを外から見ていますと、いかにもあほうの人間がやっているようなやり方に見えるのです。日常の生活を規制して病気にならないことを、平素からずっと積み上げていってそして病気になって熱が出ないようにするという措置をしているなら話がわかるのですが、ほったらかして、でたらめなことをやっていて、熱を出した、今度は大あわてで氷で冷やす、さあ湿布だというような大騒ぎをやっている。現象だけ追っかけている、そしてあらゆる手段だ、こういうようなばかげたことをやっているのであって、われわれから見るといかにもあほうの人間のやっているしわざだと見えるのであります。いずれにいたしましても、氷で部分的に冷やしたって根本的な治療になりません。まあいろいろな問題はありますが、この問題はもっと大きな分野で時間をかけて論議をいたさなければなりませんからその程度にして、とにかく物価の値上りを助けているのか、ただ表面的に氷で冷やして値下りを押えるような格好だけ示しているのか、私は怪しいというふうに考えるわけです。  そこでガスの料金の問題でありますが、今値上げ申請がなされております。十一月中、公聴会等も行われたようでありますが、ガスの料金については当面申請分に対してどのような措置を考えておるのか、あるいは今後ガス業界にずっと値上げが蔓延してくるでありましょうし、またそういう素地が作られつつあると思うのでありますが、今回申請分について値上げをしますことを一つの突破口として、次々に起ってくるであろうこの値上げ要請に対してどういうような対処をされる考えであるか、ガス料金一般の当面の方針について伺いたい。
  22. 東澄夫

    ○東説明員 お答えいたします。ガスの供給設備が戦後非常に荒廃しておりましたものが、だんだんと増加いたしまして事業の増加にこたえてきました結果、その建設に要しまする経費がだんだんふえて参ったわけでございます。従いましてそういうような面から申しますと、値上りの要素というものがあるわけでございます。けれども、一面におきましてコークスの値上りあるいは石炭の料金をきめまして以来の値下り——最近は若干あがりつつありますが、そういうような消極的な要素もございまして大都市におきます東京とか大阪とか名古屋といった大ガス会社のあるような地域におきましては、目下のところ値上げをしなければならないというような動きがございません。     〔委員長退席、笹本委員長代理着席〕 最近出て参っておりますのは、静岡、広島、久留米、佐賀、それから九州の日本ガス、宮崎ガスといったような地方都市からのものでございまして、このような比較的小さいガス会社におきましてはそういうようなコークスの値上りその他の消極的な値上りを抑止するような要素はございますものの、昭和二十八年から三十年ごろに至ります拡充期におきまして、その資本の調達を割高である自己資本によらなければならぬというような関係もございますし、非常に建設が急テンポであったというような事情から、最近このような申請に及びましたわけでございまして、あとう限り値上げを抑止はしなければなりませんけれども、その反面この値上げを全く抑えてしまうということになりますと、新しい建設もできませんしあるいは導管その他のサービス設備にも事を欠きまして、かえって需要家に迷惑を及ぼすというようなことになりますので、やむを得ざる最小限度において認めていくというようなことにいたしておる次第でございます。
  23. 永井勝次郎

    ○永井委員 そういたしますと、今の答弁では私の質問に十分答えていないわけですが、広島の呉、三原、尾道、静岡の沼津、清水、三島、これは民営でありますが、それに市営としての佐賀、久留米、これらが値上げ申請を行なって、十一月下旬には公聴会を終っておる、これは値上げをする予定なのかどうか、これの処理をどうするのかということを伺っておる。そうしてこの値上げを認めるということになれば、どのくらいを値上げしょうとしておるのか、これを伺います。
  24. 東澄夫

    ○東説明員 お答えいたします。静岡瓦斯につきましては、公聴会も終りまして、去る十一月三十日に許可をいたしました。その他広島、久留米、佐賀等につきましては、公聴会を終りまして目下慎重に検討を加えておるところでございます。
  25. 永井勝次郎

    ○永井委員 慎重ということは非常に抽象的で、値上げということは具体的な数字的な計算などからはじき出さなければならぬ、そういう具体的な対象に対して慎重に考慮する、一体何を考慮しておるのか、具体的に伺いたいと思うのであります。大体ガスの料金については法的な独占はないけれども、経済的には地域独占でありまして、国民生活には、これは欠くべからざる必需品である、国民生活に与える影響も大きい、しかも地域独占になっておる、料金は政府が干渉して認可するというような公共性を持っておる。これらの料金の扱いについては適正原価、適正利潤ということが、これを取捨選択する場合の基準であろうと考えます。そういたしますと会社から出す申請と、政府がこれを審査をするところの何が適正原価である、何が適正利潤である、そうして経営の内容における合理化がなされておるかどうか、こういうことを総合的に審査して決定しなければならぬ、それを基準だけは理論的に表面に出しておいて、実際は突っ込んでいくと、いつでも適正原価というものはなかなかつかめないのだということで、会社から出してきた申請を信用する以外にはないというようなことをしょっちゅう言うわけですが、今回の場合はそういういろいろな条件の上に立ってどの程度の適正原価というものをつかんでいるのか。それから経営の中に合理化の余地がないのかどうか。そういうことを各会社別にどういう審査を行なったか、これを明確にしていただきたい。
  26. 東澄夫

    ○東説明員 実は慎重にと申し上げましたのは、御指摘のようにガス会社から出て参りましたものをそのまま信用するというわけには参りませんので、たとえば需要家戸数あるいは販売数量がどのような増加傾向を示しておるか、あるいはまた固定資産の増加状況がどのようになっておるか、たとえますれば、今回値上げを認めました静岡瓦斯について申し上げますならば、資本金が昭和二十七年には二千万円でありましたものが二億円に増加をしておる、次は戸数から申しまして、二十七年を一〇〇といたしますと、一六三になっておる、販売数量も二倍以上にたり、これに対応いたします固定資産の増加状況が四倍以上になっておる、こういうような事項につきまして値上げ申請がございました。申請書のほかにいろいろとデータをとりまして、さらにはまた今後どのような建設を企図しておるか、需要家戸数はどのようにふえる見込みであるか、そういうような点をさらに申請以上に捕捉をいたします。そのほかにまた監査を逐次手の及ぶますガス会社についていたしまして適正原価の捕捉に努めておる次第でございます。
  27. 永井勝次郎

    ○永井委員 適正原価の把握についてどのような陣容とどのような措置をやってきているのか、そして確信を持った適正原価というものを把握しているのかどうか、具体的にどういうことをやっているのか、抽象的でなしに、一つ具体的に示して下さい。
  28. 東澄夫

    ○東説明員 人数のことでございますが、これは定数等で限られておりまして、比較的少数でございますが、東京の本省におきましては、原価だけの査定に当っております者が大体十名前後、それから地方局におきましては二、三名ないし五、五名の者がその監査とかあるいは適正原価の捕捉に当っております。なお権限的には、在来はそのような地方の陣容もございますものの、中央で処理することになっております。
  29. 永井勝次郎

    ○永井委員 有権的に帳簿調査、経営内容調査というようなことができるのかどうか、できるとすればどういうことをやってきているのか。具体的に、人の頭数の問題でなしに、事務的に原価把握についてどういうことをやったかということをお聞きしているのです。
  30. 東澄夫

    ○東説明員 具体的に監査をいたします場合には、そのガス会社におもむきまして、現実の帳簿等について逐一当るわけでございますが、この権限はガス事業法に認めておられます立ち入り検査権限に基いて法的にこれを行なっておる次第でございます。
  31. 永井勝次郎

    ○永井委員 あまり大したことをやっていないから具体的な説明ができないのだと思う。自信があるなら毎月こうやったとか、半期々々にどういうことをやっておるかということが言えるはずだと思うのですが、まあ言えないのだろうと思います。  そこで適正利潤を一体どのくらいに見ておるか。
  32. 東澄夫

    ○東説明員 従来は配当を幾ら行うかというような方式で算出をいたしておりましたが、最近この方式を改めまして、もう少し合理的にしようということで寄り寄り研究をいたしておりましたが、有効稼働資産を算出いたしまして、それの約八%といいますものを、金利状況あるいは各社、その他事業界の配当状況等を勘案いたしまして、その程度に見ることにいたしました。
  33. 永井勝次郎

    ○永井委員 まあこまかい計算はあとで詳しくいろいろ検討したいと思いますが、合理的ということを言われたのですけれども、合理的ということは、会社の営利的な立場の合理性が、国民経済としての立場の合理性か、どういう立場で合理性をこういうふうに出されたのか。その立場を一応念のために伺っておきたい。
  34. 東澄夫

    ○東説明員 国民経済的な立場ももちろんございますし、また先ほど申しましたように、私企業の経理状況がどのようになりますかということが、ひいては公共に及ぼす影響ということになって参りますので、両方の立場を彼此勘案してやっておるわけでございます。
  35. 永井勝次郎

    ○永井委員 一般常識から申しますと、一割以上の配当ということは、大体有利な条件だと思うのですが、今値上げを申請している静岡は、現行配当は……。一%、それから日本瓦斯は二%、宮崎も一二%、広島は七%でありますが、大体こういう現行配当をしておる。その現行配当の上からいえば、適正配当をやっておると見て差しつかえない。まあ一割が基準であるとするならば、二形以上高い配当をやっておるということになるわけですが、こういう配当の中で値上げの条件をどういうふうに算出されたのか、示していただきたい。政府のいう合理主義という立場でわれわれが合理的に納得のできるような答弁を願いたい。
  36. 東澄夫

    ○東説明員 詳しく申し上げますと時間がかかりますが、大体一割二分の配当をやっておるのに値上げをするのはおかしいじゃないかというような御指摘があったわけでございますが、実は最近の産業界の配当状況等を見ますと、日銀の指数で平均が一割三分五、六厘になっておるのではないか。従いまして一割二分と申しますのは高過ぎない。ただしこの場合に配当をやっておるのになぜ値上げをしなければならないかということが、御疑念がございますわけでございましょうと思いますが、このような申請に及びました会社の配当をいたしております状況を見ますと、たとえば減価償却を非常に少くしておりますとか、その他経理の状況を非常に無理しておるわけでございまして、これは一つには新しい建設をやりますのには、小さい会社であればあるだけに自己資本の充実によって建設を進めなければならない、こういうようなことがありますので、そのような増資を可能ならしめようというような立場から、無理をして配当を続けてきたというような実態でございます。     〔笹本委員長代理退席、長谷川(四)   委員長代理着席〕
  37. 永井勝次郎

    ○永井委員 私が今ここでガス料金の値上げの問題を相当重視しなければならないということは、これは地方の小さなガス会社は今ずっと料金値上げをやってきた。この次に来たるべきものは三大ガス会社の値上げだ。その先走りとして小さいところから、反対の少いいろいろな条件のそろったところからぽつぽつやってきて、そうして最後には本物の三大ガス会社の値上げということが議題に上ってくる。そういうことをあなた方とタイミングを合せてそうして作戦よろしくやっているのではないかという疑念をわれわれは非常に持つわけです。ですからこの次に来たるべきものは三大会社の値上げだろう。東京なんかは豊州に相当の規模のものをやっている。だから資本費が増高してなんだから、これは必ず日程に上ってくる。そこでぽつぽつ地方の方からやってきているのだと思う。こういう巧みな作戦だと思う。こういうことに対してただ、今言ったようにこれらの会社が高配当をしているのは増資のための無理なんだというような、そういう無理な経営を、有権的に書類その他経営の内容にわたって調査できる権限を持っている政府が知らぬ顔をして、やるのだからといってほったらかして見ているだけで、何らそれに対する指導とか何とかしない。これはいけないじゃないかということをやらないで、そうして今度こういう配当をしているのはこうだというような弁解というものは、これは消費者の側から言えば成り立たないことである、こう思うのです。私当初に、今度の申請分と来たるべきガス料金の値上げというものの展望はどういうふうに持っているのかということを聞いたのは、その点こあるわけですが、どういうふうにこの点は考えているか、来たるべき値上げは三大ガス会社、これは今から予定されたプログラムだ、こう思うのです。いかがですか。
  38. 東澄夫

    ○東説明員 冒頭申し上げましたように、東京、大阪、名古屋といったような地区におきまする三大ガス会社におきましては、経営については別に無理をしておるように感じません。最初に申し上げましたように、非常な拡充をやりまして、需要家戸数も非常にふえては参りましたけれども、経営を上手にやった面もございますし、またコークスの値上りは、われわれが先般の料金の中に織り込みましたよりも非常に増加をしておる、値上りをしておるということ、また最近におきましては資本の利子率がだんだん下ってきておる。もっとも最近は若干強含みになってはおりますが、現行料金を見ましたころよりも非常に下った状況にございます。そういうようなことから、決してこの三大ガスについては無理をしておるような形跡はございません。  それからわれわれ監査をやりました場合に、別に何ら指導をしないのではないのでして、経理について特におしいところは示達事項として逐一注意を喚起しているような次第でございます。
  39. 永井勝次郎

    ○永井委員 三大ガスについて値上げの展望は、本年あたり日程に上ってぐるのではないですか。
  40. 東澄夫

    ○東説明員 値上げについてはわれわれは予想をしておりません。
  41. 永井勝次郎

    ○永井委員 予想する条件もないのですか。
  42. 東澄夫

    ○東説明員 ないと思います。
  43. 永井勝次郎

    ○永井委員 それではガスについて最後に一点だけ。今ガス事業関係の消費者に対するサービスが非常に悪いわけです。そこでこれに対して電気や水道のように下請業者を認めて、そして技術的には少々困難な点がいろいろあるかと思いますが、サービスの極度に悪い点を是正していく、そして事業の進捗を促進するというようなお考えがあるかどうか、この一点をガスの分については伺っておきます。
  44. 東澄夫

    ○東説明員 そのような考えはございません。
  45. 永井勝次郎

    ○永井委員 ガスの問題についてはいろいろ問題がありますが、三大ガス会社については来年あたりあるいは近き将来に値上げするような条件はないという、こういう答弁でありますから、それを確認いたしましてほかのいろいろな問題は次に譲りたいと思います。  次に電気料金の問題でありますが、今電気料金、東北、北陸の値上げが相当問題になってきております。それから料金については暫定価格が現在実施されておると思うのです。この電気料金の東北、北陸に起っておる値上げの問題と、現行料金の暫定措置というものを今後どういうふうに取り扱っていく方針であるか、これを明確にしていただきたい。
  46. 東澄夫

    ○東説明員 まず最初に東北電力等、その他の地区と申しますか、東北とか北陸とかいうような、戦後非常に設備の拡充を行なってきたと申しますか、電源開発を、在来の持っておりました設備に対応する比率が四、五〇%に及ぶほどにやって参りました会社におきましては、勢い資本費が増高する、特にこのような東北とか北陸とかいったような地区については、水力電源の開発が非常に多うございますので、料金に及ぼす資本費の影響というものが非常に多いのでありますが、こういった地区について特にわれわれは経理の状況がどのように推移をしているかということを、逐一検討を加えてはおりますが、いろいろ新聞等に伝えられますようには、まだ正式にそのような申請もございませんので、目下のところこの料金値上げに対しては白紙の状況であると申し上げたいと思います。  それから暫定措置と申しますのは、おそらくはあの三割の頭打ち措置であろうかと思いますが、これについては、理論的に申しますと、いわば過渡的な措置としてとられたものでございますので、今これを廃止しなければならないと考えております次第でございます。
  47. 永井勝次郎

    ○永井委員 公共用電力料金三割値上げ頭打ちというのを改訂するということになれば、これは実質的には三割値上げということになるわけです。そういう措置をおとりになる、こういうことですか。
  48. 東澄夫

    ○東説明員 三割値上げになるわけではございませんでして、今三割で頭打ちをいたしておりますものを、その頭からはみ出しております分だけが、その会社々々にとりましては実質的に値上りになるということであります。
  49. 永井勝次郎

    ○永井委員 同じことです。あれは家庭電灯料金、それから公共電力、こういうものを三割頭打ちにしておるわけです。頭打ちしたということは、大きな変化がないんだ、こういうことなんです。もし部分的にアンペア制に切りかえる、あるいは現在の料金に切りかえてもそう大きな変化はないのだ、あったとすれば三割で頭打ちするのだ、こういう公約の上に立っているわけです。それがこれはどこまでも暫定料金なんだから、これを改訂してそれをワクをはずしてしまう、そうすれば、最初の改訂当時にさかのぼれば、実質的には三割までは、料金内ですから、値上げしてもよろしい、電灯料金も値上げする、公共電力料金も値上げする、こういう結果になる。需用者側から見れば実質的な値上げになる、そういうふうに理解してよろしいですか。
  50. 東澄夫

    ○東説明員 御指摘通り、料金を先般算定いたしましたところに従います。と、どうしても値上りが個々の需用家にとっては多くなるというところがございました。それについて公共用等特に必要とする向きについて三割で頭打ちをしたわけでございますが、実質的には個々の需用者にとりまして、これを撤廃いたしますならば、やはりその分だけ値上げになるわけでございます。
  51. 永井勝次郎

    ○永井委員 東北、北陸については、料金改訂前は水火調整で相当ここから持ち出していた、それだけ会社が資本蓄積なり、あるいは経営の合理化ということが、持ち出していただけへこんでいた。そういう条件の中で新しい料金がばんとやられた、こういうことでありますから、この改訂前のこういう水火調整について多額な負担を持ち出さしておいて、新しい料金ではそれは打ち切りだ、こういうような九電力会社共通のこの調整というのを打ち切ったということについては、相当問題があろうと思うのです。そういう事柄についてさかのぼって部分的に地域差の出てきておるでこぼこを、今後においてこの頭打ちを取りはずすという前に措置するというような考えはないかとうか。わからなければ、前に相当持ち出さしておいて、新しい料金では、それは調整金はなくしたのだ、こういうことになると、今まで吐き出した方は非常な不利になるわけです。受けた方は受け得になるわけですから、九電力会社調整のための新しい措置を、現行の料金の中で考えていく措置の中で考える余地はないかどうか。
  52. 東澄夫

    ○東説明員 水火力調整金の撤廃につきましては、再編成がございましたときからの方針でございまして、徐々にこれをはずして参りましたわけでございます。それをさらに復活して調整をするということについては、ただいまのところ考えておりません。
  53. 永井勝次郎

    ○永井委員 そういたしますと、先ほど来東北、北陸等が料金の値上げを要求してきている。電力料金の場合は原価主義でありますから、これが計算の基礎にならなければいかぬ。原価計算で赤字が出るという条件ができても、お前の方の値上げはできないというような、そういう不当な強権が一体こういう会社に対して発動できるのかどうか、原価でこれはこれだけかかるのだということが明確になったら、それだけの料金を値上げしなければならないという責任が政府にあるんじゃないか、料金を認可する側にあるんじゃないか。そうすると、東北あるいは北陸の値上げという問題は、値上げさせるとか、させないとかいう、こういう措置にあるのではなくて、問題は原価が幾らになっているかというところにあるのだと思う。その点はいかがですか。
  54. 東澄夫

    ○東説明員 お説の通り、現在の料金については原価主義をとっておりますので、原価がどのようにあるかということによって料金を決定していかなければならないと思います。
  55. 永井勝次郎

    ○永井委員 ちょっと今聞き漏らしたのですが、そういたしますと、今の通産省考え方は、三割頭打ちというものをはずせば、その限度内で十分収支が償っていける、こういう基礎に立って、当初にお話のあったように料金の、値上げは考えていない、こういうことになるのかどうか。
  56. 東澄夫

    ○東説明員 お答えいたします。最初に申し上げましたのは、値上げをしないというのではございませんでして、まだ正式な申請がございませんので、値上げをするかどうかというようなことについて検討を加えておらない、むしろ経理の状況がどのようになるかということについて、どの会社についても同様でございますが、特に東北、北陸等につきましては注意をいたしまして検討を加えておるわけでございます。なお頭打ちの措置を撤廃をいたしますと、数億の金額がプラスとなって現われるわけでございまして、経理の改善に相当貢献をするわけでございますけれども、なお来年の三十二年度の電力需給の問題といたしまして、東北も北陸もいずれも相当需給が苦しいような状況になっております。従いまして何といっても量を均衡させなければなりませんので、現在作業中でございますが、できるだけその他の、比較的需給がそれほど逼迫しておらない地区から融通をするというような措置を考えているわけでございます。従いまして、その融通の量が、何億キロワット・アワーに達するか、そうしてまたそれがきまりました後に単価をどの程度にするかというような点が非常に大きな要素になります。たとえますれば、東北へ東京から火力発電をたきまして電力を供給いたします場合に、火力発電のだんだん老朽したものも動員しなければならぬ。もちろんこれは豊水期にたくか、渇水期にたくかによって、どの発電所を稼働しなければならぬかというようなことが変って参りますが、どうしても限界生産費的な発電所を動員しなければならないようなことになる。そういたしますと、安くいたしましても四円五十銭程度かかる。それに比べまして東北電力においては、常時でありましても、東京地区よりも現在の体系では相当料金が安うございますので、かりに二円五十銭で売るといたしましても、その差額は二円である。そういたしますと、五億キロワット・アワーの融通が行われるとすれば十億円、十億キロワット融通いたすといたしますれば、二十億円というものが負担増になって参るわけでございまして、そういう点がただいま未確定でございます。その点が非常に大きなファクターにもなっておりますし、未確定でございますので、現在はまだ検討中であり、値上げをすべきかどうかというようなことを論ずるのは、時期としても早いかと存じます。
  57. 永井勝次郎

    ○永井委員 早いおそいの問題でなくて、常時そういう調査をしておれば、東北の電力の状態がどうである、北陸の状態がどうである、これはこうしなければならぬということが子供の計算でも出るわけです。たとえば東北では大口電力の料金は単価が二円になっておる。そうして電力が足りないから融通電力は三円とか四円の差額だけ損をして、動力電力がふえればふえるだけ東北が赤字になっていく計算というものは、ばかでもできるわけです。そういうものが積み重なってきているわけだから、これはどうにか処置しなければならぬということは、原価主義の上に立つ電力料金からいえば当然です。すぐ手を打たなければいけない。それを何ら手を打たないで、まだ時期が早いとか何とか、そんな無責任なことはいけない。また現行料金というものは、電灯は十一円で動力は四円、こうなっている。そうして東北や何かは、こういう大口電力が安いから、どんどんそういう動力需用がそちらの方に移っていく。東京や大阪、そういう地帯は非常に利益のある電灯というものがどんどんふえてくる、だから東京とか関西はぐんぐん経営状態はよくなってくる。そうして、東北、北陸等は、今言ったような関係で電灯はふえなくて、動力電力の需用がどんどんふえてくる。ふえればふえるだけ赤字になってくる。こういう矛盾した状態になる。これは基本的には、地域々々の会社の採算をとり、原価主義をとっていくという電気事業行政の根本的な誤謬を犯しておいて、何とかしよう、何とかしょうといって、できるだけ表面上大衆からの反発を押えていこう、こういうばかにもできないことやっているから何にも手が打てない。     〔長谷川(四)委員長代理退席、小平(久)委員長代理着席〕 そうして目の先だけでごまかしていかなければならぬという結果になるだろうと思います。私は、こういう条件の上に立って、もっと徹底的にしなければならぬと思いますが、ほかに質問があるそうですから、きょうはこれで終りますが、最後に一つだけ聞いておきたい。東北や北陸は現在の原価主義からいえば上げざるを得ないという計算が出ているにもかかわらず、押えるというのはどういうわけか。私は値上げに賛成というのじゃない。そういう矛盾が問題なんです。それから東京や関西の方はもうかる電灯がどんどんふえていく。東北や何かはもうからない動力電力がどんどんふえていく。こういう地域差は今後はますますひどくなっていく。そういう矛盾を残しておいて、この問題の正当な妥当な解決というものはあり得ないと思う。そういうことについてどういうふうに考えておりますか。
  58. 川野芳滿

    ○川野政府委員 電力料金が原価主義によってきめられておりますことは先ほど来政府委員から述べた通りでございます。従いまして、新設備の関係から、あるいは大口需用の問題等から、東北電力等の電力料金値上げ、こういう点が問題になろうかと考えておるのであります。問題は非常に大きな問題でございましてまだ東北電力等から値上げの申請もございませんので、もし申請等がございましたならば、その申請に従って十二分に研究させていただきたい、かように考えておる次第であります。
  59. 笹本一雄

    ○笹本委員 今の永井委員質問に関連してお尋ねいたします。それはガス事業についてでありますが、二十四国会の商工委員会において、木材利用合理化に関する決議が採択されたのであります。これは御承知と思いますので、決議の内容は申し上げませんが、その中に都市ガスの拡充について税とか資金、金利等の点で電気事業者に準ずる優遇措置を講ぜよという一項が明記されておるのであります。政府は、本決議をどういうように尊重して実現方に努力しておられるか、その点について政府の説明を伺いたいと思います。
  60. 東澄夫

    ○東説明員 お答えをいたします。これは、在来からガスについても電気と同じように財政投融資の増額についてわれわれ努力をして参りましたが、来年度につきましては、御趣旨を体しまして近郊都市におけるガス需要の増に対応するための設備拡充の問題の緊要性をとらえまして、これに対してあとう限り財政融資を考えたいということで、現在では通産省でまとめ上げたものとしては二十億円を計上いたしまして来年度強く要求して参りたいと考えております。
  61. 笹本一雄

    ○笹本委員 生活燃料ではガスが一番安いということは、これはもうみなわかっておることであります。ガス事業は、そのようにして電気事業とともに公益事業であることは言うまでもありませんし、今申し上げましたような工合に、生活燃料においてはガスが最も安い。従ってそのガスの普及は国民生活向上に資する一方、木材資源利用の合理化の面からも非常に望ましいことでありますので、今答弁がありましたが、政府においては、このガス事業の重要性を認識して今後一そうこれに対して努力されんことを要望して私の質問を終ります。     —————————————
  62. 小平久雄

    ○小平(久)委員長代理 次に生産性向上に関する問題について調査を進めます、質疑に入ります。通告がありますので、順次これを許します。松岡松平君。
  63. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 労働省、通産省、大蔵省にお伺いしたいのですが、まず労働省、その次に通産省、その次に大蔵省の御意見を承わりたい。私どもは、生産性向上について九月アメリカに参りまして視察をして参りましたが、その結果われわれは大いに考えなければならないということを痛感しております。同時に日本における生産性向上運動に対しては、政府自体この運動に対する動き方と申しますか、あるいは施策と申しますか、明確を欠く点があるように思われるので、本日はその根本的な点について一応承わりたい。  まず労働省の方にお答え願いたいのは、生産性向上ということをどのように考えておられるのか、そしてこれに対してどのような具体的施策をおとりになっておるのか、また将来とろうとしておられるのか、この点をお答え願いたいと思います。
  64. 宮本一朗

    ○宮本説明員 お答え申し上げます。労働省といたしましては、生産性向上ということが現在のわが国経済にとって不可欠な要請であり、かつこれがためにあらゆる施策を講じて参らなければならぬ問題だと考えております。それほど大きな問題でございますが、まず生産性の向上によりましてわが国国民経済のワクを広げ、一つには消費者に対するサービス、一つには労働者自体の労働条件の向上、一つには企業自体の繁栄の基礎を固める、こういう点に目的があるのでございまして、そのために現在これらに関します諸外国におきます実例の調査、あるいは現在のわが国生産性向上運動を進めますについてのわが国経済の諸条件、その他についての調査をやっております。現在の生産性向上運動としてあります民間の運動に対しましては、御承知のように一部の労働組合が反対しております現状でございますが、何分にも生産性向上の効果を上げますためには、労使間の協力ということが不可欠でございまして、現在のわが国の労使間の慣行から見ましてまだまだ改善いたすべき余地がある、こう考えております。従いまして、それらにつきましても、調査いたしました資料をもって啓蒙その他の手段に出ますとともに、政府自体といたしましても、直接に雇用の問題に関連いたすことでございますので、わが国経済施策なり経済計画なりというものを進めて参ります上におきまして、これらの点を十分に勘案いたし、生産性向上運動にそれらを十分に反映せしめるよう関係各省その他と連絡をとりましてそういった施策の総合的な将来のあり方について、目下研究中でございます。
  65. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 そこでお伺いしたいのは、今のように労働省が断片的にやり、通産省がやり、あるいは外務省が関係する、大蔵省が関係しているといようなことで、果して日本のこの大きな生産性向上の推進が可能であるかどうか、私は役所自体がその動きにおいて非常に不統一なものが出てくるんじゃないかと思われるのです。アメリカなどCIAが中心になりまして、各経済関係省がこれに協力してやっている、従って統一された行動が行われておる。ドイツ、イギリスを見ましても、そういう点はかなり総合的統一的に行われておる。日本においては生産性向上本部に対するわずかな補助が行われておるのみで、これという具体的なものがまだ現われていない。これを進めていったとしても各省がばらばらにやったのではとうてい困難ではなかろうか、こう思われるが、この点に対して労働大臣は、閣内においてもかなり強く統一的な機構のことを切望しておられるようだが、労働省当局として何かこれについて具体的なお考えを現在お持ちであるかどうか、御意見を承わりたい。
  66. 宮本一朗

    ○宮本説明員 具体的な細目につきましては、目下研究中でございましてただいま直ちに申し上げるほどのものは現在持っておりません。
  67. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 それでは通産省の方にお伺いいたしたいのでありますが、どうもこの運動の中心はむしろ労働省より通産省になければならないと考えられるほど通産行政と関連が深い。ところが従来通産行政の内容にある産業の合理化運動と生産性向上の運動と、とかく混淆して考えられる傾向がある。そのために一部労働者の中には、生産性向上という運動は企業者の利潤追求の一つの方便である、こういうふうにはき違えておる向きもあるように私どもには感ぜられる。これは一つには当局自体の指導性と申しますか、民間産業に対する協力性と申しますか、言葉はいずれが適切であるか私も判然といたしませんが、ともかくこの生産性向上運動は政府と民間が一体になっていかなければ推進できないということはだれしも争う者がないと思います。そういう場合にだれがこのヘゲモニーをとるかということになれば、アメリカの現状を見ましても、イギリス、ドイツ、イタリアの現状を見ましても、やはり政府が中心になっておるように思われる。そうなると直接企業体を指導していかなければならない通産省当局というものにかなり重い荷がかけられてくると思うのです。そこで単に従来行われておる企業の合理化であり、あるいは機械化であり、あるいはオートメーション化であって、企業者自体の利益になるような考え方で進めるとするならば、おそらくこの運動は成り立ちません。そうでなくて、企業者と労働者と消費大衆が一体になって行なっていく運動だとするならば、やはり通産省当局としては、かなりそこに指導的な立場をもってこの運動を推し進めていただかなければならないのではないか。これは従来の通産行政とか労働行政とかいうような考え方ではこの運動はなかなか進まない。要するに国民を支配するのだというような考え方ではこの運動は進展してこないのであります。これは新しい見地において新しい民主的な一つの政治の形式として成長していくものではなかろうかと考えるのでありますが、通産省当局においてはこの運動をどのように考えておられるか。それからまたこの運動の方法としては幾多の方法が行われなければならぬ。まず製品に対する規格化、標準化というようなことからも運動が始められる可能性もあります。また企業あり方についてことに配分の内容についての指導性というものについてどのように考えておられるか。おそらく通産省当局としてもまだ序の口だと私どもは考えておりますが、現在考えておられるその内容及び現在とっておられるわずかのものについても一つお答えを願いたいと思います。
  68. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 ただいま松岡委員から御発言のあった点は、通産省としても全く同感でございます。御承知のように生産性向上運動のあり方は、ただいま御指摘があしましたように、単に一企業の内部の合理化、機械化によって企業が利潤を得るということを生産性向上運動の目的としておるわけではなくてもっと広い見地から、御承知のように日本産業をあずかる産業単位としての企業がこのような合理化をやることによってまた生産性の向上をはかることによって、その成果は単にその企業だけに返ってくるものではない。必ずその企業はよりよい、またより安い商品を生産をいたしまして、その結果は必ず消費者にその利益が均霑しなければならないし、またその生産性向上による企業内の利益は、当然に正当な、適正な条件で労働者の方にも配分がいかなければならないし、また企業としても、その生産性向上の結果による成果は、それがやがて資本の蓄積になり、さらに生産性向上に努力をしていく、こういう大きな視野から生産性向上運動が展開されておることは、ただいま御指摘通りであります。通産省といたしましても、単に一企業利益のために生産性向上運動が展開されるということは、毛頭考えておりませんし、今後も指導理念の基本をそういう点に置いて進めて参りたいと思います。またそのような意味から申しますと、現在通産省産業行政でいろいろな点で実施をいたしております点は、当然この生産性向上運動と密接な関連があるわけでありまして、これらの点につきましては、政府がこの生産性向上運動についてもっと積極的に協力と申しますか、筋金を入れなければならないという点も全く同感でございます。ただその実施のやり方につきましては、現在生産性本部がこの運動の中心になっておりますし、これに対する関係各省の協力と申しますか、その考え方の反映の仕方は、御承知のように、現在生産性本部の連絡会議に関係各省が定期、臨時に出席をいたしておりまして、これらを通じまして関係各省、特に通産省といたしましては、生産性向上運動に対する基本的な考え方を、この本部の実際の仕事の面に注入をして参りたい、こういうふうに考えております。
  69. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 大蔵省の方にお伺いしたいのですが、今労働省並びに通産省からお答えがございました。そこで、現在生産性本部というのは、日本側から七千五百万円の助力を受けておる。しかし実質的には、この全額は使えないようにも聞いておる。ところがアメリカ側では、これに対して相当多額な協力をしておる。なお、私ども行ってCIAの当局並びに向うの商務省、労働省の長官各位とも懇談をして参りましたが、日本がもっと積極的にやってもらいたい、私どもの方ではどんなにでも協力を高めるというように申しておりますし、ことにアメリカでは、現在一九五八年度の予算の審議にかかっているわけであります。そのために、日本側の協力がどれだけに向上発展するのかということを、かなり見守っておる状態であります。今の状態では、おそらく生産性本部を調査してみますと、毎年出す視察チームをお世話しておる程度が関の山だ、ようやく新聞は出した、印刷物を出しているという程度のことで、これ以上の運動を進めるについては、政府としても明年度予算に相当増額をしていただかなければやれないということを、具体的に訴えておる。アメリカの方では、自分の方はいかようにでも増額はするし、さらに大きな協力もしたいが、日本政府としてはおざなり的な協力にしかすぎないじゃないかというような気配が見えますので、大蔵省当局としてはこの運動に対して推進されるお考えがある以上は、明年度においてはどのような対策をとっていただくか。さらに考えてみますと、この運動にたとえば十億を出しても二十億を出しても惜しくないということは、この運動が労働者、国民大衆の協力を得られるならば、ほんとうに理想的なる経済環境が生まれてきて、労使の対立も緩和されてくる、ストライキも減少してくる。おそらく今参議院でもめておりますスト規制法などというものは必要がなくなるのです。現在なぜああいうものが出なければならぬかといえば、ひっきょうするところ、企業者と労働者、国民大衆の経済的な環境が融和的でなくて、対立的であり、闘争的である。この問題を解決するには、一にかかって生産性向上の施策をとることが最も必要だ、こうなって参りますと、この運動にうんと奮発していいのじゃないか。しかるに三十一年度の予算ではわずかに七千五百万円を計上されておるだけで、アメリカやイギリスやカナダやドイツ、イタリアの現在この運動に対する政府の積極的な協力から見ますと、まことに微々たるものであります。理論として、考え方としていいとするならば、これは勇敢に進めていただかなければならぬし、また進むべきものであると私ども考えられるのであります。漸次労働者の中にもこの運動の正しい目的を理解されて、この運動を支持する空気は最近著しく増大しております。おそらく明年度においては、この運動がほんとうに大きな動きに展開していくのではなかろうかという見通しを私は持っておるのであります。日本にとって今非常に大事なときであります。ここ三年来日本経済というものは上向きになり、発展の一路をたどっておるときに、今述べたように、企業者と労働者と国民ががっちりと手を握って参りますならば、日本経済の前途というものは決して憂えるには足らない、まことに私どもは大事なときだと考えるのであります。ことにソ連においても、ことしの二月の第二十回の党大会におけるフルシチョフの中央委員会の報告を見てもわかるように、方針も変っており、そして彼らは率直に資本主義の発展と存続を肯定しております。これに打ち勝つには社会主義経済が競争して勝利を得ることだといっておるのです。それには何が大切かということを具体的説明の中で述べておりますが、最も強調していることは、人間関係と生産性の向上ということをいっております。これは自由主義諸国におけるアメリカ、イギリス、ドイツにおいてもいわれておる。全く異なった経済態勢の両国において今考えられておることは、要するに人間関係を融和して生産性を増大する、向上させる。これが国民の所得を増大し、国民生活を安定せしめる、今から考えられる状態では、唯一の道だといわれておると言っても私は過言でないと思うのであります。そういう見地において、従来の慣例や行きがかりを一つ飛躍して、政府はこの運動に対する中心的な機構を確立すると同時に、民間的な運動に対してもいま一段と予算の裏づけをせられることが必要じゃなかろうかと私具体的に考えておるのであります。大蔵当局のお考えを承わりたいと思います。
  70. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 ただいま御質問のありました明年度の生産性本部の予算に対しまして飛躍的に増大すべきだというお話でございますが、私ども通産省の担当の方から詳細伺っておりますが、ただいま予算の編成途上でございまして、主計局部内でいろいろ検討いたしております。何分にもまだ明年度の予算の総ワクをどう考えるかというようなこともきまっておりませんので、明確なことをお答えいたしかねるのははなはだ残念でございますが、生産性向上運動も三年を経過いたしまして、逐次成果を上げて参っております。明年度以降につきまして、機構問題とか根本的な考え方にいろいろ問題があると思いますが、私どもといたしまして通産省の御当局とよく連絡をいたしまして、できるだけ善処いたしたいと考えております。
  71. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 最後に三省の担当の方々にぜひお聞きおき願いたいことは、先ほども申しましたように、この運動は新しい運動であります。これを行政面に取り入れていく場合に、今までの行政的な考え方とは違っていると思う。ですから政治をするということよりはむしろ協力して、協力の中に一つの高い指導性を持っていっていただくという考え方が非常に大切だと思う。たとえば私どもアメリカに参りましていろいろと役所の方にお目にかかって謦咳に接し、事務のお取り扱いを見ておりますと、政府の役人であるか民間団体の方であるか全く識別が困難なような動きをしておられる中に、どっかやはり一つの政府の役人としての指導性というものをちゃんと持っておる。これが私非常に大切じゃないかと思う。ことに労働者の絶対協力を必要とするこの運動におきまして、特に役所の皆さんにおかれましては、この局に当らるる人々に、人間関係であるということ、その人間関係は融和にあるということ、それを通じて初めて生産性向上というものが展開されていくというお考え方を一段と御検討賜わりまして、新しい一つの行政面の展開だというふうに一つこの問題をお考え願いたいと私希望する次第であります。
  72. 小平久雄

    ○小平(久)委員長代理 本日はこの程度にとどめます。次会は明六日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後零時五十三分散会