○渡部説明員 お答え申し上げます。福岡の刑務所でいたしております洗たく作業の問題に関連いたしまして、福岡地区クリーニング協同組合の方から私らの方にも陳情に参ったことは、われわれも
承知いたしておるのでございます。実はかような
中小企業圧迫というような問題の起りましたことは、まことに遺憾しごくに存じておる次第でございますが、これにつきまして一体刑務作業というものにつきまして、
業者の方々にも相当誤解があった点をわれわれ見受けるのでございまして、この点現地におきましても再三組合の方々と協議を重ねまして、ようやくこの十一月の二十四日に
業者の方々も御了解を願ったはずなんでございます。
大体の経過を申し上げますと、刑務所における作業、これはただいまお申しのごとく、収容いたしております者
たちの職業補導という趣旨からもいたしておりますが、御
承知のごとく懲役刑に処せられた者は刑法によりまして定役に服するということに相なっておるのでございます。従いまして懲役に処せられました者
たちには、
国家から必ず作業を課さなければならないことに相なっておるのでございます。われわれといたしましては刑罰の執行として彼らに定役を課するに当りまして、この定役を最も有効に実施していきたいというところから、本人
たちの更生ということを目標といたしまして、この作業を、ただ本人
たちをいじめつけるいわゆる賦役というようなものでなくして、ほんとうに将来立っていくべき道をここでつけてやるという趣旨から、この作業の実施をいたしておるのでございます。従いましてこの作業の選定に当りましては、われわれといたしましては非常な苦心を払って実はいたしておるのでございます。かような面からいたしまして、作業は本人の将来に役立つ業種を選んでやらなければならないわけでございまして、さような
意味から、どうしても民間の
企業とのせり合いというものが勢い起って参るのでございます。
現在刑務所におきまする作業を大別いたしますると、四つに分れるのでございます。
一つは官司業、これは官で刑務所の
設備と材料すべてを持って作っていく、たとえば机を作るとかなんとかいうふうな作業がこれに当るわけでございますが、かような作業。それと二番目は委託作業と申しておりまするが、これは官の
設備を使い、材料等は民間から提供いたしまして、それに加工を加えていたす。洗たくなんかはこれに当るものでございます。官のものと民間のものとを合せまして作業を実施していくという形でございます。三番目は、これは労力をこちらが提供いたしまして、そうして労賃だけを受け取るという形でございます。四番目は刑務所内のいろいろな
需要を満たすための作業でございまして、あるいは刑務所内の経理作業に従事いたしますとか、あるいは建物を刑務所内に建てる、修理をするというような作業がこれに当っておるのでございます。最もこれに民間
企業とのせり合いを持ちまするのは、一番最初に申し上げました官司業との
関係でございますが、この二番目の委託作業におきましても、ただいま御指摘のごとくクリーニングにつきましても、実はその問題が起っておるのでございます。この福岡でやっておりまするクリーニングの形は、これは昭和二十七年以来この作業をいたしておるのであります。現在福岡の刑務所では十七、八種類の作業をやっておりまするが、その中の
一つでございます。刑務所内に洗たくその他の
設備をいたしまして、それに
業者との間に
契約を結んで作業をいたしております。問題になっておりますKS協会と申しまするのは、これは遠藤某が経営しておるものでございますが、昭和二十七年以来この遠藤某と
契約を結んで洗たく業をいたしておるのでございます。従いましてただいま御指摘のごとく、福岡市内数カ所に店を張って作業をいたしておるということでございまするが、実はこれは直接刑務所が門戸を張って洗たくものを集めておるのではないのでございまして、ただいま申し上げますごとく遠藤某がKS協会というものを作っておりますが、これがみずから店舗を設けまして、集めて参りました洗たくものを一括して刑務所に持って参ります。刑務所との間に
契約を結んで、その
契約に基いて刑務所が洗たくいたしましたものをKS協会のところでお得意さんの方に配っておるという形でございます。直接刑務所が市中へ参りまして洗たくものを集めておるのではないのでございます。従いましてこのKS協会が、ただいま御指摘のごとくあるいは税金を免れておるとかなんとかいうことでございますが、そういうことは実は私の方は直接
関係がないのでございまするが、もしもKS協会がさような面で営業税その他の点につきまして免れておるようなところがありましたら、とんでもないことではなかろうかと私は考えておるのでございます。この点も十分にKS協会の方とは連絡をとっておるようでございますし、また
業者の方々もその点について税務署等とも御連絡を願っておるようでございます。ともかく刑務所といたしましては、直接の取引はKS協会との間の委託加工の
契約に基いてやっておるのでございます。この
契約を結ぶにつきましては、刑務所といたしまして、やはり市価を勘案いたしました結果、KS協会と
契約を結んでおるのでございますが、その単価が市価よりも相当低いということが、結局この問題の焦点であろうと思うのでございます。ところで市価と比べまして、まさにKS協会との
契約は非常に安いのでございます。安いのでございますが、これは刑務作業の特殊性からいたしまして、どうしても安くならざるを得ないのでございます。と申しますのは、刑務所におります囚人は、御
承知のごとくほとんど今まで手に職のない者にこれをつけていくわけでございまして、非常に能率が上りませんし、またでき上った品物が非常に品劣りがいたすのでございます。あるいはのりつけにいたしましても、あるいはアイロンをかけるにいたしましても、なかなか手ぎわよく参りませんので、どうしても市価よりも安くならざるを得ないのでございます。もう
一つは、刑務所はただいま申しますごとく市中から品物を集めて、そうしてそれを届けるというようなことはいたしませんで、この荷物を集めてくるそれぞれの費用、それから店舗を設けます費用、あるいはこれをお得意さんに届けます手間、こういうものは全部
業者の方、つまりKS協会の方の負担と相なりますので、さような面は控除しなければならないわけであります。もう
一つは、お得意さんに対しまする損害賠償と申しましょうか、やりそこないまして、あるいは洗たくものに傷をつけるというような場合、この損害の賠償は、あげてKS協会が負担しておるのが
現状でございます。かような品物の不手ぎわ、あるいはこれに要します諸費用等を勘案いたしますると、われわれの方で
契約いたしております単価が非常に安くなっておるのもまたやむを得ないことと存ずるのでございます。しかしながらこれらの点につきましても、現在KS協会の方とも協定の折衝を続けておるのでございまして、市内のさような
業者の方
たちに御迷惑のかからないように、十分今後折衝を続け、監督もいたしていきたい、かように考えておる次第でございます。