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1956-12-18 第25回国会 衆議院 社会労働委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十二月十八日(火曜日)     午後一時四十九分開議  出席委員    委員長 佐々木秀世君    理事 大坪 保雄君 理事 中川 俊思君    理事 藤本 捨助君       植村 武一君    越智  茂君       大橋 武夫君    亀山 孝一君       小島 徹三君    田子 一民君       田中 正巳君    仲川房次郎君       中山 マサ君    八田 貞義君       古川 丈吉君    亘  四郎君       井堀 繁雄君    栗原 俊夫君       堂森 芳夫君    長谷川 保君       中原 健次君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 英三君  委員外出席者         厚生政務次官  山下 春江君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    小沢 辰男君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 十二月十八日  委員受田新吉君辞任につき、その補欠として堂  森芳夫君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 十二月十三日  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (八木一男君外十二名提出、第二十四回国会衆  法第四号)  美容師法案長谷川保君外一名提出、第二十四  回国会衆法第五三号)  労働者福祉施設資金の運用に関する法律案(岡  良一君外十三名提出、第二十四回国会衆法第五  八号)  環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律  案(藤本捨助君外二十五名提出、第二十四回国  会衆法第六〇号)  衛生検査技師法案福田昌子君外一名提出、第  二十四回国会衆法第六六号)  母子年金法案長谷川保君外十六名提出、第二  十四回国会衆法第七〇号)  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第四号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第五号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣  提出第六号)  健康保険法等の一部を改正する法律案滝井義  高君外十一名提出衆法第一号)  社会保障制度医療公衆衛生、婦人。児童福  祉及び人口問題に関する件  労使関係労働基準及び失業対策に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第四号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第五号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣  提出第六号)  健康保険法等の一部を改正する法律案滝井義  高君外十一名提出衆法第一号)     —————————————
  2. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び滝井義高君外十一名提出健康保険法等の一部を改正する法律案の四案を一括議題とし、審査を進めます。  質疑に入ります。発言の通告がありますので、順次これを許します。八田貞義君。
  3. 八田貞義

    八田委員 健康保険法等の一部を改正する法律案提案責任者としての大臣に対しまして、二、三点質問いたしたいと思います。  まず大臣にお伺いいたしたいのですが、よく普通言われる貧乏という言葉がございますが、一体貧乏というのはどういうことを言うのであるか、貧乏の概念規定につきましての大臣のお考えを率直にはっきりおっしゃっていただきたい。
  4. 小林英三

    小林国務大臣 一口に申し上げますと、その日の生活に困るということであろうと思います。いわゆる衣食住に比較的他の人よりも困った状態に置かれている人、こういう生活に困る人というふうに私ども考えております。
  5. 八田貞義

    八田委員 私は厚生行政の面から見た貧乏の概念規定についてお伺いいたしておるわけなんですが、いかがでしょう。どんな人々でも自分が金を持っているというふうなことを言う人はいない。みな金がない、貧乏だということを言う。非常に概念的なあいまいな言葉だと思いますが、それでは貧乏人を相手として貧乏を予防する、あるいは貧乏というものをなくしていくというような厚生行政一体どうして立てるか、これが根本問題になると思う。一体貧乏に対してどのような概念規定をもって行政をやっておられるかということを大臣にお伺いいたしておるのであります。
  6. 小林英三

    小林国務大臣 貧乏をなくするということは、今のお尋ねのお言葉を率直に受け取りますと、そういう困った人が少くなるようにするという施策は国全体としてやるべき問題でありますが、厚生行政といたしまして困った方に対して生活扶助その他の問題についてごめんどう申し上げるということは、これは社会保障全体の問題から考えられる問題だと私は考えております。
  7. 八田貞義

    八田委員 厚生行政の中には貧乏線というものを引いておるわけです。大臣は今までに事務当局から貧乏線について説明をお受けになったことはないかどうか。
  8. 小林英三

    小林国務大臣 今のお尋ねの点の貧乏線というのは、生活保護法によりますいわゆる基準というものがございますが、そのことをおっしゃっておるのでございますか。——それにはおのずから基準というものを設けてあるのでありましてその基準に従いまして生活保護をすべきであるかどうかということを規定いたしております。
  9. 八田貞義

    八田委員 今厚生行政の上から貧乏線を引いておるのですが、一体どれくらいの収入をもって貧乏線としておるか、それをおっしゃっていただきたいと思うのです。
  10. 高田正巳

    高田説明員 ただいま大臣が仰せになりましたように、生活保護法保護基準というものが最低限度生活であるというふうに取り扱っておる建前になっておりますが、その金額につきましては、私所管でございませんので、ただいま正確な数字記憶をいたしておりませんが、それぞれ六大都市あるいは何人世帯というふうなことで生活扶助基準を定め、さらに住宅扶助とかいろいろな付加的なものが入りまして五人世帯で東京都におきましては何もかも入れますと九千六百円くらいになるものというふうに私記憶をいたしております。不正確でございます。
  11. 八田貞義

    八田委員 それでは私正確に申し上げますが、生活保護法では六段階に分れております。これを単純平均いたしますと、五人の標準家族でもって七千二百円しか収入が上げられない家庭、これを貧乏線として厚生行政の上から引いているわけです。ところが厚生白書にはどうしてそのような貧乏線が引かれたのかということについては何ら説明されてはいない。さらにまたそういった貧乏線を簡単に単純平均すると七千二百円ですが、ボーダーラインというものはそれからどれくらい見込んでおられるか、それを一つ説明していただきたい。
  12. 高田正巳

    高田説明員 生活保護基準につきましては、その人間の食費あるいはその他の雑費、衣服費というようなことで積み上げ計算をいたしておるように承知をしております。  それからボーダーラインといたしましては、その保護基準の何割ということを考えておるか、その点を私十分に承知をいたしておりませんが、八、九百万のボーダーライン層があるというふうに厚生省では事態を把握いたしておるわけでございます。
  13. 八田貞義

    八田委員 私は国民保険をやっていく場合に、貧乏線というものに対して十分な検討をする必要があると思うのです。保険行政だけでもってやられていったのでは人命尊重というものがみんな忘れられていくのです。ただ経済財政の面だけを考えて将来保険をやっていくということでは人命尊重ワク外に出てしまいます。やはり貧乏というものについて十分に検討して内容把握をして、その上に国民保険というものが立てられていかなければならぬと私は思うのです。ですから今申し上げました五人の家族で一カ月七千二百円、それから一割増しの七千九百円がボーダーライン階層といたしますと、これを一緒にしますと一千万人の、人もきらう自分もきらう貧乏世帯というものがあるわけです。この一千万のボーダーライン階層というものは一体どうしてこのような人もきらう貧乏になったかということについて、大臣内容分析を少しお知らせ願いたいのであります。
  14. 小林英三

    小林国務大臣 今の御質問でありました一千万近くのボーダーライン層が現在おる、これらの方々がそういうような悲境に追い込まれた原因につきましてはいろいろあるだろうと思いますが、こういう原因とこういう原因とについてそれぞれ。パーセンテージ的にこれを分類するということはただいま私どもとしては存じておりません。いずれそういう問題につきましても十分調査いたしまして適当な機会にお答えいたしたいと思います。
  15. 八田貞義

    八田委員 私こまかい数字大臣に要求しているわけじゃないのです。いわゆる貧乏というのは七割近くは病気によって貧乏になる、二割は失業によって貧乏になるのだ、こういうことは厚生白書にもはっきり書いてあるのです。そこで問題は病気にならぬようにして、いくために一体どうしたらいいか、貧乏になる原因の七割は病気である。そこで社会保険というものが考えられて参ったものと思いますが、一体今日社会保険に入れない人々がどれくらいおるか、社会保険適用を受けていないのはわが国民の中でどれくらいの数字をあげられるか。
  16. 小林英三

    小林国務大臣 大体三千万人近くの人々社会保険の恩恵に浴していないということになっております。
  17. 八田貞義

    八田委員 その三千万人の内訳をおっしゃっていただきたい。
  18. 小林英三

    小林国務大臣 局長より明細のことを答弁いたします。
  19. 高田正巳

    高田説明員 三千万人の内訳という八田先生の御質問の御趣旨を少しとりかねておるわけでございますが、あるいはこういうふうな御趣旨かとも思うのでございます。そのうちで零細企業あるいは今日の被用者保険適用外になっている業種に従事する被用者がどのくらいおるか、あるいは国民健康保険対象たるべき人たちがどのくらいおるかというふうな御趣旨であろうかと思います。さような意味合いにおきまする御質問であるといたしますれば、お配りをいたしました健康保険資料の一番最後のところ、一〇一ページに今日の医療保険を受けておる者の数字が出ておるわけでございます。なおそれと関連をいたしまして、雇用者の総数なり総人口なり、さようなものが出ておりまするので、それらの大体の差引で三千万人が一応推定できるわけでございますが、その中身、私が先ほど申しましたような零細企業に従事しておる者がどのくらいおるかとか、あるいは健康保険適用外業種農林水産関係とか、さような方がどの程度被用者がおるか、あるいは自営業者その家族というような者がどのくらいあるかというような詳細な内訳につきましては詳細な調査資料を持ち合せておりません。ただ零細企業の、いわゆる四人以下の従業員を雇用いたしておりまする零細企業につきましては、昨年第一次の調査をいたしましたので、さらに本年第二回目の調査をいたす予定にいたしておりまするけれども、若干詳細な数字を持っております。資料としてお配りを申し上げてもよろしゅうございます。なお御質問があれば口頭でお答えを申し上げたい、かように考えております。
  20. 八田貞義

    八田委員 今言われた資料の中には未適用人口が二千八百五十六万人ですか、こういうようなこまかい数字が出てきておるのですね。こういった内容のこまかい数字はやはり示していただきたいのです。これは口頭でなくてもよろしゅうございますからあと資料をもって御提出願いたい。というのは、四人以下の事業所というふうに簡単に言われておりまするけれども、農業は国民健康保険に入れるかあるいは被用者保険に入れるかという問題がありますが、ただこういった四人以下のような零細企業従業員に対してこれを全部被用者保険に入れるかどうかということについては問題があると思うのです。その場合に労働基準法にいうところの労働者として取り扱われる者を全部被用者保険に入れるか、いわゆる職域保険に入れるか、あるいは労働基準法から離れた従業員国民健康保険に入れるかという問題が二千八百万の人々をはさんで考えていかなければならぬ問題でございます。それについて今度提案されましたところの健康保険法改正につきましては、そういった問題についても十分に考慮の中に入れられてそうして改正案として出されたものと考えるのでありますが、ただしかし、この問題となる点を拾って質問いたしてみますると、国庫補助の問題ですが、国庫予算範囲内において、政府管掌健康保険事業の執行に要する費用の一部を補助するという規定、これは恒久制度と解釈できますか。この点について……。
  21. 高田正巳

    高田説明員 御質問の御趣旨は、本年限りであるか、あるいは今後続いていくものであるかという御趣旨であろうと思いますが、その意味におきましては、この規定は恒久的な制度であるというふうに申し上げてよろしいと思います。ただ将来国民保険というふうなものが実現をいたしました、あるいはいたしまする際に、いろいろな保険について国がどういう形で、どういう程度でその責任を持って参るかというふうなことについてもあわせて将来の問題として検討される時期が参ることと存じております。その際には全体の中の一つとして、たとえば健康保険というものの制度に国がどういうふうな形で責任を持ち、どの程度にあれをするかというふうなこともある程度検討をされるべき時期が参るのではないか、さように私は予想をいたしておるのであります。しかし本年限りの意味でなく、今後根本的な検討を加えられるまではこの制度で参るという意味におきましては、恒久的な制度である、かようにお答え申し上げて差しつかえないと存じます。
  22. 中山マサ

    中山(マ)委員 関連してちょっとお伺いいたしたいのでございます。きょうの昼ごろ、李ラインの問題で向うに抑留されている漁夫と申しますか船員と申しますか、そういう方の奥さん方の話を聞いておりましたところが、いわゆる保険に加入していない人たちで、しかも向うで捕われており、そして国と国との問題のためにもう二年も帰してもらえない。向うで非常に環境が悪いので病気になっておるらしいが、保険に対して国がどこまで予算責任をとるかという問題を今お話しになりましたので私はこれをお尋ねする気になったのでございますが、自分たちの過失ではなく——日本としては李ラインを認めていないのですから……。それにこうして二年も置かれて非常にからだの調子が悪いという場合には、国としては責任上どういう処置をおとりになりますか。それは保険局では処理できない問題でございますのか。保険局では加入してないんだからそういうことは知らないと突っ放しなさいますか。それとも何か特別の考慮をなさいますか。参考のために伺っておきたいと思います。
  23. 高田正巳

    高田説明員 保険に加入しておらない、すなわち社会保険対象者でない方々の問題でありますれば、保険といたしましてはこれは何ともしようのないことだと思います。ただ厚生省あるいはその他の分野におきましても、保険以外にもさようからだの悪い方に対して国が援助の手を差し伸べるという方途はあるわけでございます。ただ御指摘の場合におきましては、身柄が向うにあって、向うからだの工合が悪いということでございますから、これはちょっと医療という面ではわが国の力の及ぶ範囲外でございまするので、おそらく条約なりいろいろな問題等で処理される以外には、政府の直接の処理の対象にはいたしかねるのではないかと思います。(中山(マ)委員「帰ってきたときの場合です。」と呼ぶ)帰って参った場合におきましては、これはその人が非常に貧しければ、生活保護法医療扶助というようなことでも幾らでもやれるはずでございます。
  24. 八田貞義

    八田委員 政府予算提出当時は、国庫補助の問題は暫定処置として出してきたように当然経過から考えておりますが、ただいま局長説明によりますと、今度恒久的な補助金として制度化した、かようなことですが、暫定措置として初め出してきたものが今度は恒久的な制度としてこの提案理由の中には出てきておる。どうしてそういうふうに変ってきたか。この点について説明をお願いいたしたいと思います。
  25. 小林英三

    小林国務大臣 これは最初から変っておりません。先ほど局長からも御答弁申し上げましたように、今でも社会保障制度の確立の見地に立って、健康保険制度そのものの建て直しをいたし、将来に向って健全な発展をさすという意味から、政府補助をいたすわけでございます。
  26. 八田貞義

    八田委員 大臣はお急ぎのようですから、この問題はあと事務当局の方から詳しく聞くことといたしまして、先に質問を進めて参ります。恒久的な制度として国庫補助三十六億円を出していくのだ、こういう説明でございますが、国庫補助金が単なる財政再建のための赤字補助金でなく、恒久的に制度化された一般会計からの補助金であれば、そこに医療費の患者一部負担の増額問題とからんで、さらにわが国における医療保障計画の今後における進め方の問題とからんでいろいろと検討しなければならぬ本質的な問題が出てくるわけであります。そこで一般会計から健康保険医療費に対して給付される三十六億円は、医療保障全般にわたり国が支出する他の予算との関係において均衡を失わないものであるかどうか、この検討問題点となってくるわけであります。  一体九千万人の同胞を医療保険見地から大別しますると、四つの階層に分れると思います。一つ階層は大企業に従事し、みずから健康保険組合を組織しておるもので、本人家族を合せて九百七十万人がおるわけであります。第二階層は、五人以上の従事者を置いておる中規模の事業に従事しておりまして政府管掌健保に入っている人々で、本人家族合せて大体千二百万人という数字があげられております。第三階層に属するのは、いわゆる健康保険に属しておるわけでありますが、第四階層といたしましては、国民健康保険恩典にも浴しない、また第二階層の五人以上の健康保険恩典にも浴していない人々で、二千八百万人という人々が数えられるわけであります。こういった人々は疾病にかかる場合には全額自己負担医者にかかるかあるいは全然医者にかからない、あるいは生活保護法による公的な医療保護にたよるほかない人々でございます。  これらの四階層に属する人々のために、医療保障費として国が支出する予算について局長お尋ねいたしたいのでありますが、今申し上げました四階層に対して国として一体どのくらいの支出をやっているかについてお知らせ願いたいのです。
  27. 高田正巳

    高田説明員 国として医療保障といいますか、そういうふうなものに支出をいたしておる費用は、私どもの省におきましても各局にだいぶまたがっておりまするので、私が今さような資料を手元に持ち合せませんから、金額をこの席で申し上げることができませんことをお許しを願いたいと思います。大きく私がここで気のつきますることといたしましては、生活保護法医療扶助がございます。これは約二百億見当であったと記憶をいたしております。それから結核予防法公費負担がたしか十四、五億の国費であったかと思います。それから私どもの方の社会保険医療関連をいたしましては、国民健康保険に対しまして三十一年度は七、八十億の給付費補助があったかと思います。それから政府管掌健康保険に御存じの三十億、これはまだ受け入れをいたしておりませんけれども予算に計上をいたしております。船員保険につきましては一億、大体そういうふうな点が私ども記憶にあるわけでございます。なおその他今の八田先生の御質問に対しましては、設備に国が金を投じておりまする部面もこれは勘定に入れなきゃならぬ、さような部面費用になりますると、これも各局にまたがっておりまするが、相当な金額に上るかと思うのでございます。
  28. 八田貞義

    八田委員 私お尋ねしているのは、今度健康保険に三十億円を国庫補助にするに際して、他の医療保障全般との間に均衝を失わないかどうかということをお尋ねしているわけでございます。それで正確な数字を今お持ち合せないようでございまするから、あと社会保険に対して国として出しておる予算について御明示願いたいのと、そしてその社会保険の間に果してどのような給付アンバランスがあるかということも知りたいと思いますので、その資料も御提出願いたいのでございます。  そこで大臣に一般的なお話でよろしいのでありまするが、今日未適用者人口というものが二千八百万人、しかもあと人々はみな医療保険に入っておる、その中に非常に給付アンバランスがあるわけであります。この給付アンバランスに対して、大臣一体どういうふうにして地ならしをして、国民保険を実施されるお考えであるか、健康保険法提出されるにつきまして、そういった点について大臣も相当御検討されたものと思いますが、この給付アンバランスというものを今日問題として考えていかなければならぬと思うのであります。というのは、そういう検討なくしてただ国庫補助政府管掌健康保険に三十億円出すということになって参りますと、少くとも給付アンバランスに悩んでいる六千万くらいの人々は、なかなか納得がいかないわけです。一体この給付アンバランスというものをどういうふうにして直していかれるか、あるいは直していくためにお考えになった点が健康保険法の中に盛られておると思うのでありますが、その点につきまして大臣の御見解をお知らせ願いたいと思います。
  29. 小林英三

    小林国務大臣 現在のいろいろの種類の社会保険といたしまして、今御指摘のように給付アンバランスがありますことはその通りでございますが、まずとりあえず私どもといたしましては、昭和三十五年を目途といたしまして、三千万人近くの未適用者を加入さすという方向へ持って参りまして、その上で各社会保険間の給付アンバランスをやって行こう、その際におきまする国庫責任負担すべき問題等も十分あらゆる点を勘案いたしまして検討していかなくてはならぬ問題であると考えております。
  30. 八田貞義

    八田委員 今まで健康保険に対する国庫補助の問題につきましては、国民健康保険に比べまして非常に給付内容健康保険の方がいいのです。国民健康保険の方は給付が非常に悪いのです。ですから社会保障制度審議会とかあるいは審議委員会など、学識経験者がいずれも一致して国民健康保険法の全面的な設置をもって政府管掌健康保険に対する国庫補助制度前提であるとしている。さらに国庫補助制度というものは、国民健康保険の全面的な設置があって初めて考えられる問題だ、こういうふうに学識経験者は述べているわけです。ところがこの前提であるべき医療保障中心課題の解決をあと回しにし、政府健康保険に対してのみ均衡を失した恒久的な国庫補助制度の道を開いたのはどういう理由によるのであろうか、こういう疑問が起ってくるわけであります。ただいまの大臣給付アンバランスに対するところの御回答は私をして納得せしめません。各社会保険の間における給付アンバランスということは一体どうしてやってくれるんだ、三十億円を健康保険に出すことは非常なアンバランスをさらに強化するものと考えるわけであります。このようなことをそのままにしておいて、一体国民医療保険というものがスムースに進んでいくか、こういう問題点検討していかなきゃならぬと思うのでございます。将来における医療保障計画進め方について、政府の明確なる構想が明らかにされない限り、今回の改正に当って経費を分担するだけでその恩典に浴しない六千万人余の国民が釈然たる気持でこの法案を受け入れることは困難であろうと思うのであります。大臣、この点いかがでしょう。
  31. 小林英三

    小林国務大臣 健康保険制度がこういうふうに毎年赤字が累増している。ただいまのところでは本年の当初から今までの間におきましては、これは経済界関係等もございまして、われわれが最初検討いたしました三十一年度の赤字よりも多少少くなる見通しでございますけれども、いずれにいたしましてもこの政府管掌健康保険制度赤字というものは、一口に申し上げまするならば、保険収入医療給付費におっついていかないのが大きな原因でございます。これは御承知のように、政府管掌健康保険というものが、二十人平均の、二十一人ぐらいの零細な企業のものによってできておる関係からいたしましてそれらの保険料というものも、収入関係からして医療費の急激な増加から考えてみますと、価額が非常に低いのであります。従いましてこの政府管掌健康保険制度に対しまして、常に高度の医療を維持しながら、健康保険そのものを健全に発達さすためには、私どもは今回提案いたしておりますように、一方におきましては政府補助を法文化する。一方におきましては一部の負担を多少ふやしていただく。そうして将来に向いましてこの制度が健全な発達をするようにしたい、こういうわけで、政府のいわゆる補助を出しておるわけであります。
  32. 八田貞義

    八田委員 大臣、日本の社会保険は、組合とか共済という名前が示しますように、仲間同士で固まって、仲間以外のものは全然入れないというような傾向があるのです。これは日本の社会保険の伸びない大きな原因だと私は思うのです。日本人自身が非常に島国根性にこだわって、そうして共済組合という名前が示しますように仲間同士で固まって、仲間以外は入れないのだ、こういうような気持が社会保険の進展をはばんでおる。同じ健康保険でありましても、組合管掌と政府管掌の間には給付の大きなアンバランスがあります。同じ労働者ならば、どうして組合管掌の健康保険政府管掌健康保険に対して救いの手を差し伸べないか。しかも一方において政府管掌に対するところの三十億円の国庫補助というのは、国民健康保険あるいは日雇い者健康保険あるいは生活保護法におけるところの医療扶助の問題と関連せしめていきますと、非常に給付アンバランスが出てきておるのです。組合管掌は政府菅掌とどうして一体にならないのですか。今までいろいろと努力されたと思いまするが、労働者保険としてどうして一体化されないのか、その理由をお教え願いたいのです。
  33. 高田正巳

    高田説明員 私からお答えいたします。健康保険制度ができました当時から組合というものはすでに存在をしておりまして、むしろ政府管掌より前から組合制度で発達してきたのが健康保険制度なのでございます。制度創設の当初から組合というものは存在をいたしたということが一つ理由であります。さらにまた組合管掌には組合管掌の、これは八田先生もよく御存じのように、政府管掌にない、保険経営上の非常なうまみというものが、これはうまみといいますと、加入者の利益という意味でなくして、保険のしかけといたしまして政府管掌よりはむしろ管理がよく行き届くとか、非常にいい点があるのでございます。さような意味合いからいたしまして、八田先生も御存じのように、今回の社会保障制度審議会国民保険についての勧告におきましても、むしろ組合主義をとれというふうな方向の御勧告をいただいておるわけであります。組合制度というものは非常にいいのだから、むしろそれをそういう方向に持っていくようにしたらどうだというふうな趣旨の御勧告もいただいておるようなわけでございまして、なるほど先生が御指摘の、組合関係は仲間同士が集まって、しかも標準報酬は高い、そういう者だけが集まって、給付も高い給付をしている。その点から考えますれば先生のような御議論も出ますけれども、しかし別な面から、勤労者の健康を守る一つ制度として全体的な観点からながめました場合には、組合には組合のまたいいところもあるというようなことで、これを今直ちにぶっつぶして政府管掌の一本にするということは、これははなはだ妥当な措置ではないというふうに私ども考えておるわけでございます。ただしかし、政府管掌は御存じのように標準報酬も低うございますし、零細企業が主でございますから、従ってそこに、組合には国庫補助金を出しませんけれども政府管掌の方にはその意味国庫が援助をするというふうな建前を今回とろうといたしておるような次第でございます。
  34. 八田貞義

    八田委員 私は健康保険を全部政府管掌にしろと言ったのではないのです。組合管掌が非常にうまみがあるなら、組合管掌になぜできないか、こういうことをお尋ねしておるのです。互いに労働者同士であるのに、大企業の会社に勤めておる者だけが組合を作って、そうして中小企業労働者政府管掌保険の中に入っておる。ところが組合管掌の方は非常にうまみがあって、うまくいっているのだというなら、政府管掌の中に入っておる事業所の中で、組合方式へ持っていけばもっとお互いにその間に融通を働かしてうまみが発揮されるということが考えられるわけだと思います。それで一体政府として将来お考えになっている構想ですね、たとえば事業所何人以上は組合方式に持っていくというふうなことについて御検討があったかどうか、この点についてお知らせ願いたいと思います。
  35. 高田正巳

    高田説明員 今日組合になっておりますのは、今先生御指摘のような大事業場が事業場単位あるいは事業主単位に組合を結成いたしておるのもございますけれども、別にいわゆる総合組合と称しまして、小さい同種の事業が相集まりまして組合を組織しておるものも相当たくさんあるわけです。従いまして小さいものは組合を作ることを認めておらないというわけではないのでございます。さようなものも認め、すでに今日相当多数存在をいたしておることは事実でございます。さようなわけ合いで、今先生の御指摘のような方向にすでに現存の制度でも行き得るようになっておるわけでございます。ただ組合を作りまする際には、その組合が立って参るようなことでございませんと、御存じのように組合が解散をした場合には債権債務を全部政府が引き継ぐことになっておりますから、さような将来の危険性もあるわけでございますので、組合を作ってみたがぶっつぶれたということじゃ困るわけでありますから、組合を作りまする際にはやはりその組合が果して立っていくかどうか、運営がうまくいくかどうかということを、関係者が集まりまして自分たちでも検討し、さらに監督官庁といたしましてもその点を検討した上で、組合を作らせるというふうなやり方をいたしておるわけでございます。将来厚生省として組合と政府管掌との関係において、現在のやり方を変えるようなつもりがあるかどうか、将来の構想はどうかというお尋ねでございますが、私どもといたしましては組合は今のようにいいところもありまするので、やりたいというものにつきましては組合を作らして参りたい、これを押えるような方針はあまりとりたくない。しかしそこには今申し上げましたように存立十分な運営ができるという見通しがなければこれを許すわけにはいきませんけれども、そういう見通しの立つものにつきましては、方向としましては組合を作らして参りたい、かような考え方をいたしておるわけでございます。
  36. 八田貞義

    八田委員 そうすると国庫補助三十億円というのは今の制度のままでずっといくのだ、こういうふうに了解してよろしいわけですね。今までやってみたけれども、どうも組合方式に持っていくにはいろいろ非難があるので、政府管掌健康保険というものはこのままでしばらくいくのだ、そしてそのための国庫三十億円の補助だ、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  37. 高田正巳

    高田説明員 組合を作らせる、助長するというふうな方向にいきましても、今の政府管掌が全部なくなるというふうな事態には実はとうていなり得ないと思います。またその被保険者の数が非常に問題なく比較にならぬほど激減するという事態もこれは考えられません。従いまして今先生が仰せのように政府管掌というものは今後続いていく、こういう観点からそれに対して国庫補助を仰ぎたい、こういう趣旨でございます。
  38. 八田貞義

    八田委員 国民健康保険に対する国庫補助の点と、それから政府管掌健康保険に対する三十億円の補助ですね、これは一人当りにしますとどれくらいになるか、御計算をなさったことがありますか。
  39. 高田正巳

    高田説明員 被保険者の数が政府管掌は今年非常に激増いたしましたので、若干情勢が変ったかもしれませんが、今年当初見通しを立てましたときの私の記憶では、国民健康保険の一人当りと政府管掌の一人当りと大体同じような金額であったと思います。二百円がらみであったかと——これは正確でございません、間違っておりましたらまた訂正をさしていただきたいと思いますが、二百円がらみだったと思います。だた政府管掌健康保険の方は、私どもの非常な見込み違いが実はありまして、被保険者が本年に入りまして激増いたしておりますので、その意味におきましては一人当りをとりますと政府管掌の方が低くなっているかもしれません。大体そういうふうなことであります。
  40. 八田貞義

    八田委員 一人当りの頭割りといたしますと、大体そう均衡を失していない、同じだというような答弁でございますけれども、ところが医療給付内容国民健康保険健康保険では非常な差があると思う。国民健康保険では入院料とか補綴に対しては給付を除外しております。政府管掌健康保険というのは入院料も補綴に対しても給付の中に入っているわけです。ですから一人当りの頭割りにしますと、国の補助については国民健康保険政府管掌健康保険との間に差はないようですけれども給付内容においては非常なアンバランスがある。ここで私はなかなか納得がいかないのです。三十億円を出されたという意味合いで非常に差ができてしまっている。こういうことについては、これから国民健康保険というものが国民医療保険ということになりますと、一つの土台骨になっていくわけですが、この給付の非常に悪い状態にしておいてそして国民に全部保険を実施するのだということになりますと、先ほど申しますように給付の非常に低いものを受ける人々はこの国庫補助三十億円に対してなかなか割り切れない気持を抱くものであります。この点につきましても将来の医療保障という観点に立ちまして十分に御検討願いたいのであります。  それから医療費の一部負担増額問題についてお尋ねいたしたいのでございますが、社会保険審議会では被保険者の負担が過重にならないことを条件として要望しております。そこでこの過重にならないという点でございますが、一体過重な負担とはどの程度負担をいうのか、この点でございます。今度出された患者一部負担の増額問題につきまして過重にならないかどうか、そういう点につきまして御検討になった点、理由をお示し願いたい。
  41. 高田正巳

    高田説明員 第一点の国保との関係でございますが、国保におきまして給付の率が健保と比べまして悪いという点は御指摘の通りでございます。ただ国保の方は、それぞれ条例でその給付範囲なり率なりをきめ得るようになっておりますので、保険者によりましてばらばらでございますが、入院料の中で食費に当る部分の給付をいたしておらないもの、それから歯科の補綴を除外しておるもの、こういうものは相当多数あったと思いますが、入院料自体につきましては給付をいたしておる方がむしろ多いように私記憶いたしております。しかしいずれにいたしましても国保の給付率が原則として半分程度である、これを現在の健保と比較してみると非常に悪いから、この点を将来調整して参らなければならぬという問題につきましては御指摘の通りでありまして、今回の制度審議会の勧告にも、国保の分を七割程度に引き上げることを目途に将来努力するという御趣旨になっておったようでありますが、私どもといたしましても、将来国保の給付率の引き上げということについては格段の努力をいたしたい、かように考えておるわけでございます。ただ先生仰せの政府管掌に三十億出すのに、それが国保の方はそのままにして三十億出すのは不均衡じゃないかという点につきましては、これは国保は、ただいますでに法律で、国保をやれば療養給付費の二割を補助するという国の義務が法律で課せられておりますので、国保の方にはそういう道がすでに今日開かれておる。しかし健保の方には、御存じのように今まではそういう道がなかったわけでございます。国保の方は、すでにやろうと思えばやれるし、それからやれば必ず二割に相当する分については国庫補助金があるという法律の建前になっておりまするので、先生の仰せの給付の率が違うから不公平じゃないかという点につきましては、お気持はわからないこともありませんけれども、健保に三十億出したからといって、必ずしも国保に不均衡であるというようなことには相ならないのじゃないかと思います。  それから第二の一部負担の過重というのは一体どの程度かという御質問でございますが、これは社会通念で考えるよりほかにしょうがない。その金額を幾らというふうに算術的に出しますることは、これは問題があろうかと思います。いずれにいたしましても、私ども御提案申し上げましたものといたしましては、今御審議を願っておりまする程度の一部負担であるならば、いわゆる過重で何ともならないという金額ではないという考えのもとに御提案を申し上げ、御審議をお願いしたようなわけでございます。
  42. 八田貞義

    八田委員 政府管掌健康保険の場合、家族給付費は全医療費のどれくらいになっておりましょうか。
  43. 高田正巳

    高田説明員 私の記憶でございますが、家族療養費、すなわち家族医療費の半額でございますけれども、大体二割から二割五分くらいの見当であったように記憶をいたしております。
  44. 八田貞義

    八田委員 それから、二割から二割五分といいますと、大体国民健康保険の方との比較は十分できるわけですね。半分負担をしておるのが国民健康保険ですね。そうすると、健康保険の場合は家族の場合には半分です。ですから給付内容について彼我を対照してみる場合に、二割くらいですと、その給付内容国民健康保険の場合に低いかどうか、対照してみて十分に論ずることができるわけですね。というのは片方は被保険者の場合には、本人直接の場合にはこれはまるまるもらうのです。家族給付の場合には全医療費の中の二割ということになれば、これはやはり国民健康保険との間に彼我対照をしてみて比較をすることができるものと私は考える。そういうことを考えますと、何と申しましても、国民健康保険の方は今日給付内容というものが非常に悪い。二割という国庫補助の道が開かれておるのだけれども、現実の医療給付はずっと下なんです。これを上げていって二割補助ならば意味があるけれども、このままで二割補助の道が開かれているのだから、国民健康保険給付はこのままでよろしいということにはならぬわけでございます。そこで健康保険の場合、今過重な負担にはならぬというふうにおっしゃったのでございますけれども一体患者一人当り今度の増額方法によって平均どれくらいの負担になるか。たとえば外来の場合どれくらい、歯科の場合どれくらい、入院の場合はどれくらい、こういうような負担額をちょっとお知らせ願いたい。
  45. 高田正巳

    高田説明員 今回の場合におきましては、一部負担の方法を前国会と変ったのでお願いを申し上げておりますので、外来は初診の際の百円というものだけでございますから、そういたしますと、患者一人のあれは、甲地におきますれば、五十円だけが新しく増額される負担になるわけでございます。  それから入院の方におきましては、平均をいたしまして大体千円から千五百円がらみではなかったかというふうに私記憶をいたしております。
  46. 八田貞義

    八田委員 一日ですね。
  47. 高田正巳

    高田説明員 一日ではございません。年間一人当りでございます。そういうふうに記憶をいたしております。
  48. 八田貞義

    八田委員 普通一般外来の治療日数の計算がございますね。大体一般外来でいけば治療日数は平均して何日というのが出て参りますね。その場合に、そういう計算からしまして、毎日々々お医者にかかるとして一般外来で一日に普通どれくらい金を払っておるものか、その治療費の御計算はむずかしいのでございましょうか。
  49. 高田正巳

    高田説明員 外来の一件当りの点数が平均六十点がらみであったように思います。それの平均の日数がたしか五日ぐらいだったかと思います。これは毎月変っております。それで割ってみますと、大体一日当りの点数が出ますから、およその推算はつくと思います。
  50. 八田貞義

    八田委員 時間がないようですから、あとの点はまた質問させていただくことにしまして、ただ患者負担の場合の歯科の補綴の問題でございますが、ニッケル・クローム合金を現在銀代用に歯科方面では使っておるのです。ところが現在これは健康保険の中に入っていない。これが入っていないのはどういう理由ですか。
  51. 高田正巳

    高田説明員 私は専門家でございませんので、あるいは間違っておるかもしれませんが、たしかそれは金代用の合金の一つではないかと想像しますが、健康保険の方で採用をいたします際には、これは歯科の材料におきましてもそうでございますし、一般診療の医薬品等につきましてもそうでございますが、それが学会で一般的に承認をされたものでないと、健康保険の方では採用をいたしておりません。従いまして、新しい薬を採用いたしますような際、あるいは今のような場合には学会に諮問いたしまして、学会の答申をいただいてから実は採用をいたしておる、こういうような関係になっております。たしか先般歯科学会の方に、金代用の合金について、今日使っております金属以外にしかるべきものがあるならば御答申を願いたいという諮問を出したのでございます。中身を私よく存じませんけれども、あるいは先生今御指摘のその合金が、大体向うの方で定説になりつつあるような場合に、いろいろ下打ち合せをいたしまして、そういうような諮問を文書でお願いをいたしますから、あるいはその合金であるかもしれません。その点は、私専門家でございませんので、確かなことを申し上げかねますけれども、さような手続でそういうような材料等を採用いたしておるわけでございます。
  52. 八田貞義

    八田委員 ニッケル・クロームについては歯科学会の方に諮問されておるということでありますけれども、事実現在使われておるのですね。現在使っておるものを許可しない理由については、今歯科学会の方に諮問しておるのだ、こういうようなことでございますが、合金にもインチキなものは非常に多いのです。ですから、歯科医は正規なものとインチキなものとの判別がつかない、事実現在そういうものが使われておるということに対して、私はやはり歯科学会に相当突っ込んだ諮問をされませんと、問題があろうと思うのです。そこで健康保険の補綴材料はだれが検査しているか、これについてちょっとお知らせ願いたい。
  53. 高田正巳

    高田説明員 諮問をいたします際には、さような材料等の点でございましたならば、その成分、規格というようなものについての御答申をいただくわけでございますから、採用いたします際には、今先生御指摘の規格がきまって参るわけでございます。それからその材料を現在すでに採用しておって、そして採用しておる材料について、規格に合っているかどうかということについてだれが検査しているかという仰せでございますが、これは薬品の場合と同じように、そういう医薬品でありますとか、衛生材料の規格を維持する別途の行政の系統がございます。いわゆる薬事法の系統でございますね、この系統でその規格というものの維持をいたしておるわけでございます。従いまして、保険の方で直接その規格維持ということについての特別の何らかの措置はいたしておらない、こういう関係になっておるのでございます。
  54. 八田貞義

    八田委員 そうすると、標準に合っておるかどうかについては、国としては検査していないわけですね。たとえば今まで許可しておった補綴材料が果して規格に合っているかどうかということについての検査はやっていないわけですね。
  55. 高田正巳

    高田説明員 たとえば歯科の材料にしますれば、いかなる規格のものを製造するかという、製造の面におきまして規制をいたしておるのは薬事法でございます。従ってそれをこういう規格のものであるといいながら、そうでないものを製造し、販売をいたしておる場合には、その方で国は取り締れるというわけでございます。それから保険の方ではどういう規格のものを使うということがきまっておるわけであります。それでかりに保険の方で、たとえばAならAという規格のものを使うということに療養担当規程等でなっておるとしますれば、それをBという規格のものを使ってAという請求をしたとか、あるいはAというものを使わないでBを使ったというふうなことでありますれば、いわゆる保険の方の監査にかかり得る問題である、かように考えております。
  56. 八田貞義

    八田委員 私は許可された補綴材料について、検査機関において一々検査されておるかというのです。補綴材料につきましても相当問題が起っておるのです。これは正しい標準品であるかどうか、歯科医はわからない、区別がつかないのです。今日いろんな合金が出ておりますけれども、非常にインチキなものが多いのです。歯科医は全然それは判別できない。判別できないで、患者にそれを補綴する。迷惑するのは患者なんです。だからそういったものについて、正規のものかどうかについて、今田の機関において補綴材料を検査されておるかどうかという問題です。検査されないものがそのままどんどん使われ、それを標準に合ったものだろうということでどんどん市販に流しておるのか、一々ピック・アップして検査しておるかどうかということなんです。
  57. 高田正巳

    高田説明員 これはあるいは八田先生の方が私よりよく御存じかもしれないと思うのですが、薬事法の関係では事前に全部検定をして証紙を張るものと、国家検査の対象の品目と、そうでなく、いわゆる規格をきめて、製造のときにこれでやりますということでやる分と、三種類あると思います。それで今の歯科の補綴の材料がそのどれに当っておるか、これは私具体的に今記憶をいたしておりませんけれども、今のような三つの種類の規制の仕方があるわけでございまして、それに国立衛生試験所は御存じのように歯科材料を扱う部門もございまして、現実にそういうことをやっておりますので、今の検定という形であるか、国家検定という形であるか、あるいは基準を示して、それに適合したものを製造させ、あとの抜き取り検査なんかで見るというふうな方法でやっておるのか、私具体的に今どれか記憶をいたしておりませんけれども、その三つの方法のいずれかで規格の維持をやっておると存じております。
  58. 八田貞義

    八田委員 ところが、今局長の言われる企画の管理というものはやっていないのです。全然調べていないのです。そこで、私、これは国民保険の問題で非常に大切なことだと思うのです。衛生試験所の封緘したものを健康保険に使うようにというような規約はあるわけですが、実際はそれが守られていないわけです。ですから、この点につきまして、国立衛生試験所の歯科材料の担当者に連絡されて、現状が一体どうなっているかということを一つ十分御調査願いたいのです。今の局長さんの答弁では、私は、局長さんは知らなかったと考えるのですが、ほんとうに私は補綴行政というものは大切なものであると思う。いわゆる国立の研究機関と歯科医とが密接につながって補綴行政というものを間違いなくやっていくということが必要だと考えますので、少くとも現状はどうなっているかということについて御調査をお願いいたしたいのであります。きょうはもう時間がきたようでありますから、一応私の質問は保留させていただきます。
  59. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 堂森君。
  60. 堂森芳夫

    堂森委員 臨時国会が始まったのが十一月十二日でございます。しかるにこの改正三案を提出したのが十二月四日だと思います。まるで盗人ネコのようにのそっと出してきましたが、この態度は通常国会になりましたら大いに追究しますから、これはさておきます。  ただ私がきょう一、二点お尋ねしておきたいことは、六十六億の政府管掌健康保険財政赤字になる、こういう政府の見通しであります。今日まで何月分まで十一月に払っておるのか。これは各府県によって非常にアンバランスがありますから違いますけれども、大体何月まで払っておるかちょっと御答弁を願います。
  61. 高田正巳

    高田説明員 八月分につきましては十月の末までに払うのが通例なのでございますが、十一月に入りまして一週間ないし二十日間くらい、全国のうち三十七府県ばかりがその程度おくれて支払われております。それから九月分の支払いにつきましては、先般三分の一程度を払っておりましたのですが、まだ三分の二程度が残っております。資金がございませんので払えないでおりましたが、これをたしか去る十五日に国庫余裕金の方の金を借りまして、基金の方に私ども繰り込みました。大体各診療担当者の口座に渡るのが三、四日——ところによって違いますけれども、若干の日があれば渡ると思います。これは一応終了をいたした、こういうわけでございます。それが今日の状況でございます。
  62. 堂森芳夫

    堂森委員 もうきょうは十二月十八日でございますから、年末まで二週間ないわけでありますが、年末までに十月分を支払い得るかどうか、一つ御答弁を願いたいと思います。
  63. 山下春江

    ○山下説明員 健康保険の支払いの遅延いたしております点につきましては、皆様同様政府も非常に心配をいたしておりましたが、借り入れの話もつきましたので、必ず支払い得るように措置をいたす確信で進めております。
  64. 堂森芳夫

    堂森委員 もう時間もございませんから終りますが、たとえば年末の支払いというのは、三十日や三十一日になって入ったのでは金は値打ちはないのです。従ってもうおそくとも数日中に十月分を支払い得る見込みが十分あるかどうか、これは全国の病院、開業医すべてのものの要望ですから、従ってはっきりした御答弁を願いたいと思います。
  65. 山下春江

    ○山下説明員 その点全く同感でありまして、年末の支払い等も前から心配いたしております。おそくとも二十四日あるいは二十五日までに必ず支払い得るように努力をいたして今手配をいたしております。
  66. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後三時十五分散会