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鈴木参考人 酪農
関係につきまして、御
参考までに
お話申し上げたいと思います。
乳牛は、御
承知のように草食動物でありますから、草が、乳牛を飼う上においては、最も必要な問題になって参ります。そういう面から見まして、
東北地方が比較的草資源に恵まれておるということは、皆さん御
承知の
通りだと思うのであります。つまり馬産地として発達して参ったところは、やはり草資源が多い。従って、
東北地方の酪農というものは、最近非常に
伸びて参っております。三十年度の乳牛の頭数を、地域別に見ますと、一番多いのが関東
地方で十一万三千頭、二番目が北海道で十万二千六百頭、その次が
東北の六万五千七百二十頭、こういうような工合になっておりまして、
東北地方が最近非常に
伸びております。
酪農というのは、五十年この方、ようやく
日本人が牛乳のようなものを一般に飲用するような風習が出て参ったものでありまして、発達の歴史を見ましても、やはり静岡とか千葉とかいうところが、最も先に発達して参ったわけであります。その点、
東北の方面はおそかったわけであります。北海道は、北海道開発の
計画で前から進んでおりましたが、
東北地帯というものは非常におくれておったわけであります。ところが今申し上げたような工合に、ここで急速に
伸びて参っております。牛乳の
生産量の方から見ましても、御
承知のように昨年は五百三十三万三千石出ておりますが、地域別に見ますと、やはり関東地区が多くて百三十四万石、次が北海道で百十二万石、
東北地方は頭数では三番目ですが、乳量では四番目になりまして、五十四万石というような
状態で、牛乳の
生産もきわめてふえておるわけであります。
いずれにしましても、今申し上げましたように酪農というものは、草資源がある、ないということが、将来非常に大きな問題になって参るわけであります。たとえば十分なる草を与えますと、牛の寿命も長くなり、健康
状態もいい。それが、従来から
伸びております関東地区等におきましては、草資源が少いから、どうしても濃厚飼料の
原料が高いために、牛の能力は一時的には増しますけれども、やはり寿命が短かいというようなことになっていくわけでありまして、やはりどうしても草資源が多いところで酪農は伸ばしていかなければならぬ。世界各国の例を見ましても、酪農が盛んなところは、みんな草資源の十分あるところであります。そういうようなことから将来
日本の酪農の
伸びて参りますところは、やはり
東北と北海道が最も有望だということは、これはどなたもすべて御了承になっておることと存じます。ことに、また牛乳というものは、御
承知のように栄養価の非常に高いものでありまするが、また細菌その他によって汚染される機会がきわめて多いわけです。従って、そういう面から見ましても、水が豊富であり、しかも寒冷地帯であるというようなところは、牛乳の
生産の面からいきましても、きわめて有望なものと、こう考えられるわけであります。
そんなようなわけで、酪農が順次
伸びておりますし、また伸ばさなければならないわけでありますが、ことに最近
東北地帯で非常に
伸びておりますのを、県別に見ますと、岩手県であります。最近の三十年の全国の頭数が四十九万七千頭になっておりますが、岩手県は二万一千頭になっております。これも県別に見ますと、一番多いのは長野県の二万九千頭、その次は神奈川県の二万五千頭、千葉県の二万五千頭、その次が岩手になっております。こんな工合で、岩手県は非常に
伸びておりますし、また乳量の方から見ましても、ただいま申し上げました五百三十三万三千石のうち、岩手県は六番目で、十六石七千石の牛乳の
生産を見ておるわけであります。これは皆様方のお骨折りによりまして、酪振法に伴う高度集約酪農という構想から、農林省がつとに岩手山ろくの開発という面で、あそこを指定されまして、ジャージーを入れるということになりましたし、またあの地帯は、県等におきましても、おるいは町村等におきましても、この酪農に対しまして非常に力を注がれております。私のところでも盛岡で工場をやらしていただいておりますが、
東北地方はいろいろな面から、農家が経済上あまり豊かでない、従って、あの付近の町村では、
幾ら酪農がよくても、乳牛の購入
資金に非常に困難があるものですから、各町村から三十万円ずつ出資いたしまして、第一回は十ヵ村で三十万円ずつで三百万円、私の方の会社で三百万円出しまして、それで開発会社を作ったわけです。そうして乳牛の導入をするというようなことをやっておるわけであります。全国で各町村が出資いたしまして、そういうような乳牛の導入の開発会社を作ったというようなことは、今までなかったわけでございますが、最近兵庫県におきまして、一部でそういうようなものを作りつつあるのであります。そんなわけで、町村、県等におきましても、酪農に対する熱意が非常に旺盛でありまするがために、今日のような酪農県として、頭数から言えば全国の四位、乳量からいっても六位というところまでこぎつけたものと考えるわけであります。
東北地方の耕地面積は、二十九年度で見ますと、百三十二万五千町歩というふうに拝聴しております。農家戸数が九十七万二千戸というようになっておりまして、酪農の密度というものは、まだまだきわめて少い。農家十五戸に対して一頭くらいの乳牛しかまだ入っておらない、こういうような
状態であります。御
承知のように、冷害に対しまして非常に抵抗力の弱い地帯であります。従って穀寂農業のような実取り農業でなく、草をとるような酪農業というものに急速に変っていくことが、この
地方の農業を安定させる上において、きわめて重要だと考えておるわけであります。しかし
幾ら有望な地帯と申しましても、今申し上げましたように、あの地帯はまた農家が比較的経済的に恵まれておりません。従って、あの
地方に酪農を扶植して参りますには、どうしても乳牛の導入
資金として
相当な金額を、しかも安い利息で十分に投入する必要があると思うわけであります。それから酪農は私も長くやっておりますが、むずかしいと申しましても、指導の面が徹底いたしますると、絶対安心になって参ります。従って、酪農を奨励いたしますに対しましては、酪農の指導方面の技術者の養成、こういう問題を絶対に必要とするわけであります。そういうような指導の問題を、十分あの
地方において考慮して参るということになりますと、酪農というものは直ちにあの辺に扶植することができると思います。その次には、
幾ら草資源が多いと申しましても、今日のような草でありましては、十分なる乳牛の飼料としての効果がございません。従って、草を改良するということによりまして、もっと養分の多い草をあの
地方に十分繁殖させるようにいたしますことが、あの
地方の酪農を開発することになる、こう考えるわけであります。
御
参考までに、
日本の酪農が現在どんな
状態かと申しますと、
先ほど申し上げましたように、乳牛一頭につきましてどのくらいの人口を持っておるかということを二、三の国と比較してみますれば、最も乳牛の濃厚に入っておりますのがニュージーランドでありまして、国民一人当り一頭というような、きわめて濃厚な
状態に乳牛が入っておるようであります。その次はデンマークでありまして、二・九人に対しまして乳牛一頭というふうになっております。ドイツのごときも、一頭に対して人口は四・五というような
数字になっております。それからオランダが六・八人に一頭、アメリカは七・二人に一頭、いろんな条件が最も似ておるとわれわれの考えておりますイタリーにおきましても、十二・三人に一頭の割合で乳牛が入っておるようであります。ところが、
日本はどうかと申しますと、二百四十七・七人に一頭ということでありまして、他の比較的先進国といわれるところと比較いたしますと、まだまだ
日本の酪農というものは、きわめて幼稚なものである、こういうふうに考えるわけであります。
また、いろいろ食生活の相違がありますから、欧米の人たちと
日本の人間との乳製品等の使用量を比較することは無理ではありますが、御
参考のために申し上げてみますと、
日本の国ではこれは三十年でありますが、三十年の一人当り人口に割り振って参りますと、牛乳の使用量は四升七合になっております。それからバターの
消費量は、三十年度が〇・一九ポンド、チーズが〇・〇五ポンドというふうになっております。世界で牛乳を最もたくさん飲んでおりますのはデンマークでありまして、一年一人一石四斗三升を飲んでおります。それからバターの
消費は、アイルランドが最も多くて、一人当り四十・三ポンド、チーズはスイスが二十・四ポンドというふうになっております。アメリカはどうかと申しますと、一人当り九斗五升八合の牛乳、バターが十・七ポンド、チーズが七・七ポンドというような
消費をされておるわけであります。もちろん食生活の面から見まして、
日本がこういうような
状態になるということは考えられないわけでありまするが、こういう
消費の面から考えましても、
日本の酪農というものは、今後伸ばしていかなければならない、こう考えるわけであります。そういうわけで、少くも世界の先進国のような農業の経営形態に持っていく――
日本の食糧問題を解決する面からも、また保健衛生の面からも、酪農というものをもっと伸ばしていく。そのもっと伸ばしていくところは、どこかと申しますと、
先ほど申し上げましたように、
東北地方と北海道以外にはない、こう考えるわけであります。
きわめてつじつまの合わないことを申し上げましたが、以上申し上げまして、御
質問等がありましたならば、お答え申したいと思います。