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富田参考人 私、
農林中央金庫の
富田でございます。私どもは、御
承知のように組合の系統の
金融を扱っておりまして、これは農業協同組合の系統、森林組合の系統、水
産業協同組合の系統ということになっておるわけです。そのほかに、
金融として大きくウエートを占めておりますのは、御
承知のような農林
漁業金融公庫の受託業務というのがございます。こういうものを勘案いたしまして今、
東北に対する組合
金融のウエートといいますか、その位置を簡単に御
説明申し上げます。先ほど
新潟県の
知事さんがお見えになっておりましたけれども、私、手元にいわゆる
東北六県だけの簡単な資料しか持っておりませんので、
新潟県は省略して、
あとの六県について簡単に申し上げます。
まず
預金の面から申し上げますと、
農林中央金庫の今年の十一月二十日現在の預かり金の総額は、約千三百五十億あるわけです。この中で、
青森から福島までの
東北六県のお預かりの合計は約百五十億です。これは御
承知のように、町村の農業協同組合が農家その他から受け入れた
預金が、県の
信用農業協同組合連合会というところにきまして、そのうちのまた半分とか七割とかいうものが、
農林中央金庫に上ってくる仕組みでございまして、この場合、
農林中央金庫の
東北六県の十月末の
預金は百五十億ですが、
東北六県の県の信連の
預金は百七十六億くらいございます。これを去年の十月と比較いたしますと、去年は
中央金庫が百八十三億で、県の信連は二百七億の
預金があったわけで、今年の方が二、三十億減少いたしております。これは今年の米の供出が少しおくれておるという
関係だと思っております。
それから、
貸し出しの
関係を申し上げますと、
中央金庫の
貸し出しの総額が、十一月二十日現在で千五百九十五億、約千六百億あるわけです。この中で、
東北六県に対する
貸し出しは八十二億ぐらいになっております。これは系統三段階の
金融でございまして、私どもの方は、直接単協の方へすぐ貸すということよりも、むしろ、まず県内の
金融は、県の
信用農業協同組合連合会の方で扱って、その足らぬ金繰りのしりを見ていくのが本則でございますので、この場合、
中央金庫が八十二億の
貸し出し残高になっておりますが、県の信連の場合は百十七億ございます。こういう
関係でありまして、総体的には、千六百億のうちの八十二億なんというのは、非常にウエートとして少いのですが、所属団体、いわゆる系統機関に対する
貸し出しの総額は、五百数十億くらいしかございません。
あとは、今は米の代金の受納期で、
預金はどんどんふえて参る、
政府の前渡金とか、そういう
関係で、一時的に私どもの手元に金がだぶついている、と言うと語弊がございますが、だぶついておる。従って、これは
政府の御認可を得て、約千六百億のうちの千百億くらいを、
農林中央金庫法第十五条の余裕金運用という規定によって、短期に運用してございます。これはいつでも系統の所要に応じ得る金でございます。従って、こういう外部に放出することは、特別な貯金の払い戻しのための一時的な準備だとか、そのほかを除くならば、こうたくさん
中央金庫に余裕金の格好で上ってくることは、必ずしも適切なことではないと私どもは思っておるのでしてどうしても町村の組合は、できるだけ町村の農家のお
方々に、一方で
預金を預かる半面、適切な
貸し出しをやっていただかなければならぬし、また県の連合会は、自分の県内の
資金需要に積極的に応じてもらわなければならないのですが、遺憾ながら戦後のインフレを経た
関係で、とにかく、どんどん金は上の方へ吸い上げてしまうということが、インフレを防ぐ方法の
一つとして
考えられた、その惰性だろうと思いますけれども、
一般に町村の農家に対する
貸し出し、あるいは町村組合に対する
貸し出しが少し停頓していると思うのです。従って、昨年来、非常な豊作でございまして、ことしは
東北の一部に冷害のところがございますし、また北海道も大災害をこうむりまして非常にお気の毒なわけでございますが、そのほかの
一般的なところは、非常な豊作のようでございまして、
資金が余ってきている。従って、農業協同組合系統、森林組合系統の
金融を扱っておりますわれわれの
関係からいたしますと、
資金面は非常に膨大なものを持っておるわけです。従って、昨年来積極的にこれが
貸し出し機能の促進によりまして、農家なり
漁業者あるいは山の
開発その他について、積極的にやってもらいたいということで、これはどんどんその運動を進めておるわけなんです。しかしながら、今のところ、まだそう著しい実績は上っておりません。
このほかに、農林
漁業金融公庫の
関係は、
全国的に言えば、約六百五十億の取扱い残高がございまして、
東北六県だけにこれを限るならば、おそらく七、八十億くらいな
長期資金が出ておると思う。この農林
漁業金融公庫の
貸し出しの方は、御
承知の
通り、普通の
金融機関ではとうてい扱えないという、農業、林業、水
産業の基幹的なところへ金を放出していく。従って、これは非常に
長期的なものであり、また
金利も非常に安い。また国の方では、相当
財政資金をこれに注入なさっておる。
こういう
関係で、農林
漁業金融公庫の
資金と、組合系統のいわゆる農業協同組合系統が集めた
資金と、両々相待って、
東北そのほか
全国の農林、水
産業の協同組合
関係に
資金が出ておるわけなんです。こういうことであるならば、今のところ
東北に対して金の出方が少いかどうかということになってきますと、これは必ずしも少いとは私どもは思われないのです。このほかに、御
承知のように農業手形というようなものもございましてこういうもので営農
資金の主要な部分をまかなっておるわけですから、
一般の普通の
貸し出しの方は、
金利の
関係もございましょう、あるいは年限の
関係もございましょうが、比較的振わないという格好にかなっておるのであります。
こういう
状況の場合に、
東北の農家の
方々あるいは
漁業者、山の
関係者の
方々の要望にこたえるためには、これは県段階なり、町村段階の各農協系統の経営の強化といいますか、
受け入れ態勢をはっきりするとかいう、その農協系統の整備ということが、非常に重大な問題になってくると
考えるのです。その方の整備がどんどんいきまして
——今、
全国的に言えば、いわゆる不振組合というものが、農業協同組合系統だけでも、二、三千もあるというような格好でありまして、そういう不振組合が中間におりますと、農家がせっかく金を借りよう、あるいは預けようと思っていても、安心して利用できないというようなことでございまして、これは農協の
全国中央会の
方面におきましても、また私どもにおいても、単位農協の整備ということに目下力を入れておるわけです。そういう整備がどんどんできていきまして、おそらくいま少し活発に組合の事業が動くようになれば、必然的に、それに伴う
資金がどんどん出ていき得るのだと私は
考えております。
金利の点におきましても、これは農林政策としての要請もございますが、基本的に、われわれは原始
産業を扱っておる
関係上、できるだけ安い金を放出してあげなければならぬ。これは固有の任務があると
考えます。従って、私どもの
関係で
金利で一番安くいっているのは、今の農業手形です。それは私どもの手元から出るのは、日歩二銭一厘で出るわけであります。二銭一厘で県の連合会へいき、県の連合会からは二銭二厘で単協にいき、単協は日歩二銭五厘以内で貸せるということになっておりまして、それがさしあたりの標準になっておりますが、それにできるだけ近づけるように、目下努力しているわけであります。
そのほかに、未墾地の
開発関係でお聞き取り願いたいのは、戦後たくさんの引揚者その他を収容するために、
政府におかれましては、未墾地の開拓ということで、開拓農業協同組合というのがたくさんできているわけです。これの
関係で、
全国的に見て一番お困りになっているのは、北海道と、それから
東北六県だと思うのです。開拓農家というのは、
全国で約十五万戸ぐらいございまして、これに対してどのくらい金が出ているかといいますと、
政府資金で約百二十億出ている。それから
農林中央金庫から約五十億出ているわけです。五十億という金は、さっきも申し上げましたが、約千六百億の
貸し出しの中で、予備金運用になっているのが約千百億、
あと五百億そこそこのものが系統機関に出ている。その場合に五十億開拓組合に出ているということは、これは非常に大量に開拓に出ていることになるわけです。ところが、御
承知のように開拓者は非常に立地
条件の悪いところに入っております。
東北も、私はあの岩手県、宮城県などの山間部を歩いてみましたが、非常に立地
条件の悪いところとか、あるいは多年放置してあった
土地ですから、火山灰であるとか何かで、農作物には非常に不適当な
土地であるけれども、これはやむを得ず入っている。しかし約十年近くの努力の結果、今のところはそう脱落する者もなく、何とか石にかじりついてでもやっていこうという諸君が、今奮然としてがんばっているわけです。こういう人々の借入金は、
政府資金と
中央金庫から出ている金だけで約百七十億ある。これを
全国的に一戸当りに見ますと、約二十万円近いものになるのです。全部が全部借りているわけじゃございませんから、借りていると予想せられる者で割りますと、一戸当り約二十万円くらい借りている。しかも
東北の開拓地なんかを見ますと、農業の総収入がせいぜい二十万とか三十万とか、その辺の見当なんです。そういうものから生活費を引き、借金を払い、農機具を手に入れるということになってきますと、これは容易じゃないわけです。しかも今、制度
金融として開拓者に対して出ているのは、これは年限がきわめて短かいのでして、あるいは別のところで御審議願う機会がおありになるかもわかりませんけれども、とにかく三年とか五年くらいなことです。しかも奥羽山ろくとか、そのほか
東北を縦貫する山のふ
もとの付近では、どこもここも、しょっちゅう冷害とか、そのほかをこうむっているわけでして、こういう人々に対して、かりに利子補給だとか、あるいは損失補償とかいう制度はございますけれども、しかし、もう少しこれは
長期の金をお
考え願わないと、貸すといっても、三年とか五年とかいう期間に縛られれば、計算上これはとうてい払えないという実情になっていると思います。
そういうことがございまして、
一般の
東北の農家の
関係では、さきにちょっと申し上げたように、これは農林
漁業金融公庫の方から、基本的な
土地改良だとか、あるいは林道
開発だとか、あるいは漁船の建造だとか、そのほかたくさんの施設
資金が出ておりますし、その上に、制度としては農業手形だとか、あるいは災害があれば、またそのほかの災害に対する特別の
措置が講ぜられておりますし、営農
資金は営農
資金で、県の連合会なり、連合会が足らなければ、私どもの方で放出することになっておりますから、さしあたりそう著しい御不便をかけておるとは思わないのです。しかし一そう
貸し出しを強化いたしまして、
東北の不利益な立地
条件ではございますが、早く建て直っていただくように、私ど
もとしては、
貸し出しの面では
東北が非常にウエートを占めておりますがゆえに、心配になったりしておりますけれども、いろいろ農林省あたりと御相談申し上げておるようなわけでございます。
大体大ざっぱなところ、こういうことでございまして、さっぱり御
参考にはならぬと思いますが、ひとまずこれで終りといたします。