○桑江
参考人 五月十八日の
外務委員会におきまして
軍用地問題に対しまして諸先生方に御披露したわけでございますが、今回、最近の
沖縄における
軍用地問題の大略を申し上げます、それから
講和発効前の問題に触れていきたいと思います。
四
原則貫徹運動でもって六月十四日以来騒然となりました
沖縄も、
日本全国民並びに
政府、議会のお力を得ましてこれが次第々々に
米軍当局の反省を促し、話し合いによって解決していこうとする段階に現在来ております。四
原則のうち損害補償の件につきましては、
講和発効後において
沖縄に米軍が損害を与えた分に対しましては逐次解決されていきつつあります。五百万坪余りにわたる軍用道路の補償の件に対しましても、
講和発効後の分におきまして琉球
政府に移管をしておきながら、七月二十三日に全
地主大会の決議をもって返還要求をいたしましたら、さっそく
アメリカの方はこれの損害の支払い準備を整えて、現在各町村に調査中でございます。その他の墓とか建造物、そういうような面に対しましても、
講和発効後における損害に対しましては支払い準備を整えております。
賃貸料の適正額の問題におきましては、額においてはまだ双方の
意見一致に到達を見ておりません。しかしながら計算の方法におきましては、その
土地から出る収益を補償するという点で
沖縄側並びに
アメリカ個との
意見の一致を見ております。問題は、その算定基礎の数字の上における今後の努力が双方に必要であると思っております。
一括払いということは、
住民の
所有権を取って買い上げを意図するものであるということは、
住民もはっきりわかっておりまして、これに対しましては絶対に応じないという態勢を静かに整えております。静かに整えた形はどういうように現われているかと申し上げますと、ほとんど多数の
地主、
土地所有者が連合会長である私に、全委任状を出してその一括払い阻止に対しての委任をしているごとでもおわかりだと思います。一括払いを阻止する上におきまして、
土地連合会の私の方にあらゆる手段を講じてもいいという委任状が各
地主から出されております。最近のこの問題に対しましては、
アメリカ側が一括払い、つまり絶対
所有権を獲得するという
言葉から、私たちの聞いたことがない単純
封土権を獲得するという意図に出てきておりますが、何ら変りがないものだと思っております。これに対しましても絶対に応じ得ない、
住民はそのことが
法律上どうであろうとも、実質的に領土権の侵害になるということを一番大きい問題にしております。
その次は、補償の行き方からいたしまして少くとも従来得ていた収入を補償するという妥協線に到達しながら、買い上げたあとこの
住民に従来得ていた収入をどういうように補償するかという政策的な裏づけが毛頭なされておりません。私たちの調査ではなく、
アメリカ側が調査いたしました
現地におきましての地価が、二十八年に二百五十円していた田が五四年には五百円になっております。毎年々々地方におきましては三割五分から五割の地価の暴騰を見ております。都市におきましては五倍の値上りを見ております。こういうときに自分たちの財産を放した
住民の一括払いで受けた金が、一、二年のうちに自分たちの住んでいるその
土地に消費されるだけである。結局
アメリカが意図している一括払いをさせて、それによって生業につかせたい、移民をさせたいということはとうてい望みのないものであります。そういうようにいたしまして、
住民といたしましては一括払いに生活上の脅威並びに領土権を守る上から猛然と反対をしております。
それから新規接収の件でありますが、これは現在の生産機構、
沖縄の農業経済をこれ以上破壊していくととうてい
沖縄の生計が成り立っていきませんので、そういう点、また従来
アメリカの接収に対する補償のかれこれあまりにも悲惨なやり方から非常な恐怖を持っております。そういう心理
状態とあわせまして、公権力すらも否定していかなければならぬほど強い反対の意思を表明しております。しかしながらまた反面におきまして、
アメリカが強制した場合に対する恐怖が
住民の間にはひそんでおります。もしも
アメリカが戦車を持ってきたりあるいは強制収用をした場合には、とんでもない目にあうという恐怖が残っております。私たちといたしましてはそういうような
状態からいかに
住民を保護していくか、その
地主を保護していくか、正当な補償を与えていくかというような点にまでこれの話し合いを次第々々に持っていき得るのじゃないかと見ております。つまりこの点に対しましては
日本政府の協力なり
折衝と相待ちまして、家屋立ちのきあるいは田畑、生産
地域だとかそういうような点を絶対に排除していただき、
アメリカ自体が使われるならば
沖縄には非常に遠浅がありますので、そこを埋めて使ってもらうとかいうような点で話し合いが将来ともつき得る可能性があるのじゃないかと見ております。しかしながら根強い新規接収に対する恐怖はいまだに去っておりません。静かなる闘争の形で——闘争といったら語弊がありますが、静かなる
折衝を強力に推し進めていくという点で、現在
沖縄は表面穏やかに見えております。しかしながら彼らが単純
封土権並びに絶対
所有権を、いやでもおうでもこれをもって押し切ろうとするときには、
住民も相当な覚悟を持っております、以上四
原則に対して現状を
説明申し上げました。
講和発効前の補償の問題についてでございますが、この点に対しましては最近
日本政府の部内におきまして、
法律的な見解でまだ何らか疑問があるようでございます。そう承わっております。しかし前の
委員会におきましても写真をもって申し上げました通りに、
アメリカが
条約十九条をたてにして、昭和二十七年の四月二十七日以前に対する損害に対しては補償してないという、これは事実でございます。その財産を奪われ、痛められ、その補償もない
住民の悲嘆、苦しみ、惨たんたるありさまは、当内地においても明らかだと思います。補償がないままに立ちのきさせられた
住民の悲惨さは言語に絶するものがあります。特に最近
アメリカから不用の
土地として
住民に返された
土地は、恩恵をもって返されたように見受けられますが、その
土地は、
地主に返っても全然使用ができない
土地を返されて、もてあましております。結局その
地主は従来得ていた賃貸料も受け取ることができなければ、返されたその田畑を耕すこともできない。収入が一銭もなしに暮していかなければならない悲惨な
状態に追い込まれております。結局この事態は生きている人間でございますので、早急な措置が必要であります。いろいろ
法律上の見解で時間をかせぐうちには、この人たちは一体どのような形で今後生きていくか、全く将来が危ぶまれるのであります。
それでお願いいたしますことは、事実そういうように悲惨な
状態に追い込まれている
住民を、何とか
政府のお力で、国会のお力で、事実において救っていただきたい。何とか方法をとっていただきまして、この人たちが再生する、更生する資金を与えていただきたい。私は、
地主の方から、一括払い反対、領土権を譲らないという建前での委任状を渡されておりますが、生活に追われた
住民は、
向うが強制して金を見せれば、日々の暮しの苦しさから、それが領土を侵害するということはわかりながらも、背に腹はかえられない立場に追い込まれてくるという事態が起り得ると思うのであります。
住民は領土権を守るために——そうするには、どうしても
政府が何とかこれにこたえていただきまして、その間に、それにかわるべき、
住民が生きていけるような処置を講じて、われわれに領土権を守らしていただきたい、こうお願いしてやまないものであります。講和前の問題に対しましては、その事実に立脚して損害を与えその損害が
平和条約十九条をたてにとって
アメリカは事実補償を拒否しておる。そこで
法律上の問題から出る
政府折衝は
アメリカと
日本政府とでやっていただきまして、その間生きておる人間を食わしていかなければなりませんので、その点で御考慮を願いたいと思うのであります。
以上
説明いたしまして、何とかこういうように苦しんでおる
住民を、一日も早く救っていただくようにお願いいたしまして終ります。