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1956-11-28 第25回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十一月二十八日(水曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 原 健三郎君    理事 臼井 莊一君 理事 堀内 一雄君    理事 櫻井 奎夫君 理事 戸叶 里子君       逢澤  寛君    田中 龍夫君       高岡 大輔君    辻  政信君       保科善四郎君    眞崎 勝次君       眞鍋 儀十君    井岡 大治君       受田 新吉君  出席政府委員         外務参事官   法眼 晋作君         厚生政務次官  山下 春江君  委員外出席者         厚生事務官         (引揚援護局総         務課長)    中村 光三君         厚生事務官         (引揚援護局引         揚課長)    石塚 冨雄君         厚生事務官         (未帰還調査部         長)      吉田 元久君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君     ――――――――――――― 十一月二十二日  戦犯の釈放並びに抑留者引揚げ促進に関する  陳情書(第一九九  号) 同月二十七日  海外抑留胞引揚促進に関する陳情書  (第二三一号)  中共及びソ連抑留胞引揚促進等に関する陳  情書外二件  (第二四三号)  海外抑留胞引揚促進等に関する陳情書  (第三一七号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  海外胞引揚に関する件  引揚者定着援護に関する件  遺家族援護に関する件     ―――――――――――――
  2. 原健三郎

    原委員長 これより会議を開きます。  本日は、海外胞引揚に関する件及び引揚者定着援護に関する件について、調査を進めます。  直ちに両件を一括して質疑を許します。櫻井奎夫君
  3. 櫻井奎夫

    櫻井委員 それでは私は引揚者就職状況について、ちょっとお伺いいたしたいと思います。引き揚げてこられた方々就職が非常に遅々として停滞しておることは、私ども非常に心痛をいたしておるわけでありますが、特に、戦犯として向うに捕えられて、今回引き揚げてこられた方々就職が非常にうまくいっていない。これは、向う戦犯になっておったという一種のハンディキャップもあるかと思うのでありますが、この方々に対しては、政府としてもできる限りの就職あっせんをする、こういうことになっておったはずでありますが、現状は必ずしもそうではない。各府県状況を調べてみますと、ほとんどこれの受け入れがなされていない。そういう戦犯方々は、十数年にわたるとらわれの身から、このたび内地に帰ってこられたわけでありますが、非常に今生活に困窮を来たし、その上、就職が意のごとくならぬというので、非常に困っておるわけであります。私のいろいろ調査した十一月十五日現在の調査では、第十三次から十四次、第十五次、計千十八名の戦犯引き揚げの中で、どうにか就職している方は、これは一時の臨時雇いあるいは自家経営の家業に従事しておる人々も含めまして、わずか千十八名のうちの三百二十九名で、しかも、れっきとした、官公庁であるとか中小企業の一本立ちの職業就職されたという人は、まことにりょうりょうたる実情であります。それで私が聞きたいことは、一体、こういう引揚者に対して、政府はどのような措置をとっておられるか。これは普通の人々よりもやはり優先して、こういう方々就職について格段のお骨折りをやっておられるのかどうか、そういう点について一応承わりたいと思います。
  4. 江下孝

    江下説明員 お答え申し上げます。引揚者につきましては、現在までに、戦犯引き揚げも入れまして、中共ソ連北鮮も入れまして、約三万二千七百名でございます。当初、引揚者就職問題が非常に重大化いたしまして、職業安定行政といたしましても、この引揚者についてはいろんな問題が付随してございますので、就職面では、特別にこれに対して優先的にあっせんをするようという方針を決定いたしております。先生も御承知と思いますが、舞鶴には引き揚げの都度、労働省から相当官を派遣しまして、現地において職業相談をすでに実施し、車中等でもそれを行なって、いよいよ定着地に参りますと、安定所から特に出かけていきまして、それらの人々職業相談を行なって、本人の希望を聞きまして、できるだけ希望に沿うように個別的に骨折りをする、こういうやり方をとっておるわけでございます。御承知通り、過去二、三年、非常に雇用事情が悪うございました関係もありまして、私どもが所期いたしましたように、完全就職というわけに参らなかったことは、これは認めざるを得ないのでございます。ただ、そういたしましても、現実に、一般職業紹介によって就職しましたものと比較いたしますと、全体としましては、一般方々就職率は、安定所で見ますと、求職者の大体四割程度でございますが、引揚者の場合は、若干ではございますが、これを上回りまして、五三、四%程度にまでいっておるわけであります。もちろんこの程度では十分でありませんので、私どもとしましても、さらに今後千人程度戦犯引き揚げがございますが、この方々は特にソ連で長く苦労された人々でありますだけに、従来より以上に、特に就職あっせん対策を強化して参りたいと考えております。そのためには、もちろん従来通り措置を行いますほかに、さらに個別的に、親身になって就職あっせんを継続的に行う。就職あるいは自立するという事態が達成できるまでは、今後はずっと続けてあっせんをさせるように、私どもとしては努力をいたしたい。就職希望いたします人は、一人でもできるだけ希望に近い就職をしますように骨折って参りたいと考えております。なお、十二月十五日から、一週間にわたりまして、全国的に、引揚援護愛の運動というのがございます。これに労働省といたしましても協力いたしまして、全面的に、社会一般、特に雇用主の理解と協力を十分に求めるということを中心といたしまして、先ほど申しましたような方法就職あっせんにできるだけの措置考えたいと思っております。幸いに雇用情勢も好転いたしておりますので、今後はぜひ御期待に沿うように私ども努めて参りたい、かように考えております。
  5. 櫻井奎夫

    櫻井委員 従来とられた方針は、舞鶴にまず引き揚げてこられた場合、そういう引揚者方々といろいろ就職相談をなされた。それから、安定所より係官を派遣して、各県において引揚者たち懇談会を開かれ、あるいはあっせんの労をとってこられたわけですか。従来そういうことをやられたわけでありますか。
  6. 江下孝

    江下説明員 お話通り、各県におきまして、安定所で、引き揚げてきました者について、安定所の職員が出向くなり、あるいは来ていただくなりしまして、御相談するということにいたしております。
  7. 櫻井奎夫

    櫻井委員 そういう措置はまことに適宜な措置だと思うのでありますが、実際はお話通りいっていないわけです。引き揚げてこられた方々安定所あたりに出向かれても、非常に雇用の面が縮小されておる点もあるでありましょうが、安定所あたり引揚者に対する態度が実に冷淡であるという訴えが、いっぱい参っております。突然そんなことをいっても、臨時雇いとかあるいはニコヨンくらいならあるけれどもというような実に冷たい返事である、こういうことで、われわれのところにひんぱんに訴えがきているわけです。せっかく労働省の方でそのような考えを持っておられるならは、各府県に派遣される係官にその趣旨徹底されて、もう少し、引揚者に対する職業指導について、あたたかいお心持でやっていただきたい。現実は、私が先ほど申し上げましたように非常に冷たい。これが偽わらざる引揚者一般の声でありますから、この点は今後一つ徹底をしていただきたい。それから、今後も従来通りのことを続けるとともに、個別的にあっせんをして、就職を見るまで各個人についてのあっせんの労をとる、こういうけっこうなお考えのようでありますが、具体的には、どういうことをなさるおつもりでしょうか。
  8. 江下孝

    江下説明員 お話通り雇用も非常に窮屈でございました関係もございまして、私どもが所期したように成果が過去においては十分には上らなかったと私も思っております。要は、引揚者方々就職なりあるいは自立される、しかも安定した形で自立されるということだと思います。これについて一番大事な点は、御承知通り雇用主方々ですね、事業主方々、この方々が、何か引揚者といいますと非常にこわいような感じを持っておられるということが、相当安定所あっせんします際にも険路になっておるわけであります。そこで、今度は、できますれば予備費を要求いたしまして、そういう雇用主に対しまする啓蒙宣伝といいますか、長い間現地で苦労された人たちでございますので、その点を十分に私は訴えまして、そうしてこれらの人から協力を求めるということが、やはり第一の点じゃないかと思います。それから、なお、民間の方でありまして前職を持っておられたというような方もおられると思います。ぜひ今度は、そういう方々には、もし前の会社関係のものがありますれば、前職復帰を強力に呼びかけてみたい、これが第一番目でございます。なお、自営関係でございますが、これは直接労働省でなかなか困難な点がございますが、これにつきましても、厚生省なり通産省の関係の出先と十分相談しまして、自覚方面にも一つ力を入れるようにいたしたい。今度は一ついろいろ対策を講じまして、就職希望される方には、一人残らず就職ができますように、一つ骨を折ってみたいと思います。
  9. 櫻井奎夫

    櫻井委員 今後の就職についての御決意を聞きまして、大へん安現するわけでありますが、私どもが特に今回こういう問題を取り上げましたのは、差し迫ってソ連から多量に帰ってこられるという事実、それから、今までの戦犯方々就職状況が、私が先ほど申しましたように、非常に率が悪い、こういう問題点をかかえながら、このソ連地区からの多量帰患者を見る場合に、果してこういう局面が打開できるのかという点を非常に憂慮する。こういう方々に対しては、国家として当然そういう面について最善の努力を払うのが、私ども義務だと思う。ただいまいろいろ御計画をお聞きしましたが、今後どういう方針でおるかということを皆さん方にもよくわかっていただくために、今後の引揚者受け入れ態勢についてあなたの計画しておられることを、一つ何らかの表にして提出をしていただきたい。こういう計画でおるということを一応この引揚委員会提出をしていただいて、またそれについて私ども十分検討を加えていきたい、こういうふうに考えます。あなたの今述べられたこと、あるいはもっと御研究になって適当な方策があるかもしれませんが、そういう面がありましたら、つけ加えられまして当委員会一つ提出なさいますようにお願いいたしまして終ります。
  10. 堀内一雄

    堀内委員 関連して。私はこの際全般的に、未亡人並びに片親のない子供というような人たち就職の問題につきまして伺いたい。このことは社会福祉の見地からも非常に重要と思うのでありますが、まず婦人就職状態の中で、未亡人一般婦人との関係はどんなふうになっているか、また、就職の場合において、一般子供たち片親のない子供というような者の就職状態が、全般的にどんなふうな状態になっているか、これを第一にお伺いをいたしたい。
  11. 江下孝

    江下説明員 お答え申し上げます。実は、特に未亡人だけを取り上げまして表を作ったものがございませんが、片親関係のものはございます。特にその関係につきましては、ことしの三月に学校を出ました新しい中学高等学校卒業者就職率であります。率直に申しまして、若干片親の方が率が悪くなっております。数字はちょっとここで調べておりますので、後ほど申し上げます。
  12. 堀内一雄

    堀内委員 次に、今の条件の比率の中で、旧軍人未亡人並びに旧軍人遺族またはいわゆる戦災者の場合についても、何か調査がしてありますか。
  13. 江下孝

    江下説明員 この孤児につきましては、別に戦災その他の区別をしませんで調査しております。
  14. 堀内一雄

    堀内委員 旧軍人遺族孤児の場合は、どんなになっておりますか。
  15. 江下孝

    江下説明員 それも実は全部含めまして、一般孤児として統計数字が出ております。
  16. 堀内一雄

    堀内委員 これは全般的な問題としてやることも必要でありましょうが、特殊の状態における旧軍人遺族の場合は、また国家としても特別に考えなければならぬと私は思うのでございます。そういう意味から、同じ片親のない子供の場合におきましても、旧軍人の場合とそうでない場合との比率というようなものが示していただけますでしょうか。調査してあるかどうか。
  17. 江下孝

    江下説明員 旧軍人関係につきましては、身体障害者の場合は区別しまして、傷痍軍人とそうでない一般傷痍者と区別してとっておりますが、御家族の場合におきましては、その点を区別いたしておりません。孤児孤児として一応調査をいたしております。
  18. 堀内一雄

    堀内委員 私は、身体障害者の場合におけると同様の理由で、国家として、この遺児片親のない子供就職という問題については、特別に考えてやらなければならないと思うのであります。従来、ややもいたしますと、片親がないということでこれを採用しなかったり、また採用後においてもいろいろの問題が起るのでございます。各府県等においても、それぞれこの未亡人並びに遺児就職というような点についてあっせんをいたし、またそれがために仮親の制度等も作ってやっているようでありますが、そういう点について、労働省としてどんな方針でやっておられるか、また職業安定所そのほかにどんなふうな指導をしておられますか、この点をお伺いいたします。
  19. 江下孝

    江下説明員 未亡人の問題、孤児の問題は、仰せの通り、私どもの方としては非常に重要に考えております。実は片親のない者あるいは孤児につきましては、これは再三国会の委員会等からも御要望がございまして、私どもとしましては、特にこれらの者については、孤児なるがゆえに差別待遇をしてもらっては因る、むしろ孤児の方を優先的に就職させるように努力すべきであるという方針のもとに、毎年の新しい年度がわりにおきましては、全国安定所にその方針就職あっせんをはかるように指示をいたしております。現実の問題といたしましては、先ほど私申し上げましたが、今数字がわかりましたが、中学卒業の場合は、一般より孤児の場合が一%程度実はいいわけでございます。ところが、高校卒になりますと、四%ばかり孤児の方の就職率が低い、こうなっております。これはまことに私どもとしましても、まだまだ努力が足りない点もあると思います。この率を、私どもとしてはできるだけ孤児片親については上げるように、来年度卒業の者についても現在強力に推進するように指示をいたしております。来年度は、孤児につきましては、中学高校ともに必ず一般よりはるかに高い率になるように実は期待をいたしております。中学卒業につきましては、これはほとんど百パーセントの就職でございますので、これはまず私は問題はないと思います。高校卒業が若干売れ残りが毎年出ておりますので、そういう際に、若干孤児等片手扱いを受けるということがあるようでございますので、この点を特にことしは主眼にして、強く一段と推進して参りたいと考えております。  それから、未亡人の問題でございますが、実はこれは非常にむずかしい問題でございまして、私の方の局だけでは実は大へんむずかしいのでございます。婦人少年局あるいは厚生省とも連絡いたしまして、子供をかかえた未亡人というものに対しましては、できるだけその人に適切な措置考えてやる。何が何でも外へ出て働くというようなことでは困りますので、適切な措置を二つ考えていただく。その一つといたしまして、先般労働省におきまして、若干予算を計上いたしまして、家事サービス職業補導所を実は数カ所設置いたしております。これによって家事関係の技能を身につけて、そうして働くということにすれば、ある程度未亡人としても立っていくのじゃないか。いま一つは、内職の問題でございます。これも未亡人としては非常に苦しんでおられる点でございますので、内職につきましても、まだわずかでございますが、全国に五カ所ばかりの内職相談所というものを作りまして、ここで未亡人等内職をする場合の相談相手をしてやる。たとえば、内職あっせんをするとか、内職の賃金がどの程度が適正かというようなことについても十分相談をして、そうしてそこであっせんをして、相談相手になってやる。こういう機関全国に五カ所ばかり作り、逐次、今、整備いたしております。来年度におきましても、これらの点について特にまた力を入れて、さらに増設をいたしたいと考えております。  なお一般就職につきましても、孤児等と同様に、定安所の窓口では、未亡人に対してできるだけあたたかい気持で就職あっせんをするようにということにいたしておりますけれども、いろいろな点で、まだお話通り十分成果が上っておりません。今後この問題はさらに私努力を続けて参りたいと思います。
  20. 堀内一雄

    堀内委員 ただいまの方針に基いて、官庁などに対しては、何か特別な指本とか次官通牒というようなものでも出ておりますか。
  21. 江下孝

    江下説明員 官庁で特に採用するということについては、実はまだ何も出ておりません。
  22. 堀内一雄

    堀内委員 私は、一般民間会社というような問題についてはあとでお伺いしますが、ことに戦災者並びに旧軍人などの戦争犠牲者遺児というような人たちについては、国として非常な責任を感じなければならぬと思うのでございまして、そういう意味からも、この遺児就職というような問題につきましては、当然国家としても考えてやらなければならぬと思っておるのでございます。そういうことについて、現在労働省等において、何か検討しておられることがあったら場お伺いしたい。
  23. 江下孝

    江下説明員 今度のソ連特別引き揚げ方々に対しては、でき得ればそういう方法考えたいと思っております。孤児あるいは未亡人等につきましては、これは方針としまして官庁にできるだけ就職させるように努力するということはまだきめておりませんけれども、これはやはり官庁としましても当然考えなければならぬことと思いますので、今後一つ十分検討してみたいと考えております。
  24. 堀内一雄

    堀内委員 御承知のように、人を採用する場合におきましては、いわゆる学力そのほかで合格した人の中でも、思想上を初めとして、いろいろな調査というようなことが行われるわけなんでございますが、そういう意味から、特に遺児等につきましては、特別の考慮を払うというようなことが望ましいと思うのでございましてぜひ考慮をしてもらいたいと思っておるのであります。
  25. 臼井莊一

    臼井委員 関連して。ただいまの堀内委員の御質問に関してですが、社会労働委員会で、何か遺児に対しては各官庁で優先して考慮せよというような決議をしたということも私聞いたように思いますが、労働省においては、そういうことを承知しておりませんか。
  26. 江下孝

    江下説明員 どうも私、失念するはずはないと思いますが、ちょっと今記憶にございません。
  27. 臼井莊一

    臼井委員 この点は、ただいま堀内委員のおっしゃったように、同じ孤児でありましても、特に応召されて行かれた旧軍人遺族となっている遺児の方は、これは同じ孤児であっても、国家の命令によってなくなられた方の遺児でありますから、やはりその点についてはよけいに考慮していただかぬとならぬ、こう思うのであります。私ども、そういう点については、労働省としては全般の雇用の問題についていろいろお考えでありましょうけれども一つ労働省におかれては、これはやはり傷痍軍人と同じように、別に統計をお作り願って、調査して、万遺憾なきをお願いしたいと思います。
  28. 堀内一雄

    堀内委員 ただいまの官庁方面事情についてはわかりましたが、一般社会的な方面につきましては、どんなふうなことをしておられるか。安定所に対する指導ということは先ほどお話にありましたが、一般会社そのほかに対して、そういうような者をぜひ採用するようにというような啓蒙的な何か施設をしておられますか。
  29. 江下孝

    江下説明員 学校を新しく卒業します人たちのうち、そういう特別に考慮を要します人たちに対しましては、これは大体安定所を利用して各事業会社が採用する建前になっております。法律ではございませんが、事実上そういうようになっております。そこで、安定所としましては、学校と連絡しまして、そういう片親のない者等につきましては、事業主等が採用します場合に、これに特別にマークをしまして、こういう孤児であるから考えてもらいたいという形になっております。もちろん、全般的に、私どもとしましては、遺児孤児等については特別に事業主にその趣旨徹底するようにということをいたしておりますので、特に別に機関を作って啓蒙宣伝をやっておるということはありませんけれども、その趣旨は十分徹底しておるのではないかと考えます。
  30. 堀内一雄

    堀内委員 ただいまのお話にもありましたが、こういう身柄の人であるかりということが、ややもすればかえって就職のじゃまになるおそれもあるので、私は一般の人に、片親のない子がはかの者よりも劣ることがないという認識をさせるために、今までの実績なりいろいろなことから一般を啓蒙していただくことが必要じゃないかと思うのです。なお、私の聞き及んでおるところでは、半官的な会社、たとえば日本銀行そのほかにおきまして、片親のない者は採用しないというような内規を作っておって、頭から採用しないのだということになっておるようですが、そういうような点については、どんな状態になっておりますか。
  31. 江下孝

    江下説明員 お話通り金融関係機関におきましては、従来ほとんどがこういう片親子供を採用しないということをきめておったようであります。ここ数年来、実はその点について安定所長関係者を集めまして、その趣旨を十分徹底するようにいたしておりますので、逐次改善されているように私は聞いております。しかし、まだ中にはそういうものがあるようでございますので、これは今後において絶対にそういうことのないように、さらに努力を続けて参りたいと思います。
  32. 原健三郎

    原委員長 私の知っておる範囲内においても、現在、全国的に各銀行において、高等学校、大学を卒業した片親子供を採用しておるところはほとんどない。数カ年間安定所長が尽力されたかもしれないが、現在において現に採用していない。そのしていないという事実をよく認識されて、何とかすみやかに対策を講じていただきたい。それから、デパートみたいなところでさえも、片親だけであると採用しないというところがかなりある。私は全部調べたわけでないからわからないが、現に採用しないところがあるのです。あなたの方はいかがですか。
  33. 江下孝

    江下説明員 私は主として銀行金融関係中心のように聞いておりました。デパートについては、そうはっきりしたものを承知いたしておりません。
  34. 堀内一雄

    堀内委員 たとえば、昔から、じいさん、ばあさんで育った人は三文安いというようなことをいって、片親がないために、ややもすれば欠陥があるように考えておる。この迷信というか錯覚というか、そういうことを是正していただくことが、社会的な指導においては非常に重要じゃないかと思うのでございます。そういうことについて、今日までの統計というか資料というか、何か現われておるものがありますか。
  35. 江下孝

    江下説明員 私の方は、今の点を最も重要視しまして、実は片親孤児を雇っておる事業主を若干選びまして、実際にどれだけ能事が上っておるかということを調べております。調べました結果、大部分のところでは、むしろそういう人たちの方が能率が上っておるということもわかりましたので、これらを印刷しまして、地方に配って、片親なるがゆえに決して能率は劣るものじゃないということを新聞、ラジオその他で実例をあげまして、広報活動をやっておるのであります。まだ徹底しないという点はございますかもしれませんが、そういう趣旨で十分努力をいたしております。
  36. 堀内一雄

    堀内委員 まことに適切な処置と思うのでございますが、一般の両親のある子供だと、いろいろの手づるを通じて運動して就職できるのだが、未亡人子供など、そういう点においてできないからというので、私どもの仲間へも各方面から陳情して参っておるのでありまし、これも一応もっともだと思うのでございます。同時に私どもは、ことに旧軍人遺児等につきましては、靖国の子じゃないか、靖国の子は一般人たちに負けてはいけないと遺児の修養会とかその他の機会において激励しながらやっておるのでございます。遺児がほかの者よりもっとよくなるように指導することも必要でございますが、それと同時に、先ほど臼井委員からも質問がありましたように、傷痍軍人人たちはその会等もあり、また御自分ら、もそういう方面に非常に努力されておるのでございますが、未亡人たちは、とかくそういうことについて力が足りませんので、非常に気の毒な状態になっているのが多いようでございます。この点につきましては、今後とも一つ特別に考慮して、この人たちを救ってやるようにお考えを願いたいと思います。これで私の質問を終ります。
  37. 原健三郎

    原委員長 臼井莊一君。
  38. 臼井莊一

    臼井委員 労働省一つだけお伺いします。先ほど桜井委員の御質問の中にありました十二月十五日からの愛の運動の強調週間について、先般当委員会において安定課長さんからでございましたか、政府予備費をもってするというお話でございましたが、これはそういう意味でございますかどうか、この点をお伺いいたします。
  39. 江下孝

    江下説明員 厚生省とも協議いたしまして結局愛の運動に労働省協力して、その間に雇用促進をやろう、こういうふうに実はきめたのでございます。
  40. 臼井莊一

    臼井委員 今度大量にお帰りになる方は、おそらくこの週間にぶっからぬではないか、ぶつかっても、すぐ就職までにはなかなかいかぬと思うのです。いく人はけっこうですが。そこで、相当の費用をかけても、今度お帰りになる方々に対しては、特別の御配慮をぜひとも願いたい。これは、私、日ソ共同宣言の特別委員会においても申し上げたのですが、雇用する方も、赤い国から帰ってくるので、何かその方面の心配というような向きも従来ないではなかったと思うが、ハバロフスクの方については、ハバロフスク事件等の経過を通じて見ても、非常に思想がかたいし、忍耐力も強い、こういう方々のように聞いておりますし、またそうも推察いたしておりますので、就職問題の際には、各方面にそういう点のある程度の保証といいますか、よく了解できるようにごあっせん願いたい。そういうしっかりした考えでやっていくと就職できるということになると、帰還されてまだ就職されない方にもよい影響を与え、まじめにやりさえすれば、就職できるのだということにもなろうと思うのです。二の点について、ソ連から帰ってきた人は、これも申し上げたのですが、舞鶴に参りましてから以後も、あまり待遇をこうしろ、ああしろというような、やかましいことはそう申しておらない、別段不平がましいことも言っておりませんので、それらの点も一つ労働省におかれてはよく調査、御了解をお願いしたいと思います。
  41. 原健三郎

    原委員長 ただいま外務省法眼参事官がおいでになりまして、十二時までより時間がないということで、十分間ほどしかないのですが、この際日ソ共同宣言批准後の問題を質問願います。
  42. 臼井莊一

    臼井委員 法眼参事官お急ぎのようでありますから――あちらへ全権と御一緒に行かれたうちでも、法眼参事官は引き揚げの問題についてはよく御理解もいただいておるし、また事実熱心にいろいろ御心配いただいたことであると考えて、この機会にお礼申し上げるのであります。ただ、しかし、宣言文を通してみると、これは特別委員会においても申し上げたように、どうも問題がだいぶあとに引き延ばされはせぬかという点が非常に心配だ、しかし、これを実際にどこまでも強く追及していくということは、今度の全般の交渉の経過等から見て、これはなかなかむずかしい問題です。きのう中曽根さんの賛成演説でも問題になったのですが、われわれも日本国民としては、やはり力に負けたのだ、要するに敗戦国としての立場の上においての妥結であった、国民としてはそう感ぜざるを得ないと思うのです。でありまするけれども、この問題はもう戦勝とか敗戦とかいうことを別にしても、人道問題であるということを当初から掲げて、この交渉に先だってやってもらいたいということを主張してきたのですが、これも結果においていれられなかった。あとのマリク名簿以外の一万一千百幾らの消息不明の調査も、これまた外務省におかれてもなかなか容易でないと思うのです。そこで、鳩山総理に御質問申し上げると、これによって引き揚げ問題は解決したというふうにお考えのようですが、総理としてはそういうあれでしょうけれども一つ委員会における言明を生かすようにしていただきたい、こういうふうに考えるのであります。いろいろ内容等については、また今後外務省、大使館を通じて折衝されるにおいて、当委員会からもいろいろの質問なり意見なりが出ると思いますが、それらの意を一つ十分くんでお願いいたしたいと思うのであります。きょうは時間がなくてお急ぎのようですから、またいずれ機会を見て、私から申し上げたいと思います。
  43. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 ただいま臼井先生からお話がございましたが、引き揚げ問題は、実はわれわれ自身もむろん人様の問題ではないので、われわれ自身の問題という意味合いで扱って参りましたし、今後といえども扱い方が変るわけじゃございません。御指摘のごとく、共同宣言の中に記載されたことだけでは、まだ将来に問題が残るということは事実でございます。これは特別委員会におきましても、臼井先生その他の方々から御質問があり、総理、外務大臣その他から御答弁があったわけでございますけれども、われわれはできるだけ早くこの調査未了の同胞の調査を完了すべく先方に協力を要請しまして、できるだけ早い機会に、われわれ自身の希望を達成したいと思って、これは終始一貫そう考えておる問題であります。ただ、人道問題でございますけれども、ロンドン交渉の当初からこれは人道問題であるということで主張して参りました。しかし、人道問題ということは、これはまたいろいろ人によって受け取り方が違うかもしれません。しかし、われわれはこれは重大なる人道問題であるし、この点はソ連側にも納得せしめることができたと思います。申すまでもないことでございますけれども、われわれ衝に当ります者は、そういった気持で、一群早く問題を解決するために、あらゆる角度から検討いたしまして努力を尽すということは、はっきりと申し上げることができるわけでございます。さように御了承願いたいと思います。
  44. 臼井莊一

    臼井委員 それから、その調査を進めていく上において、ソ連側に頼んで、これは早くやってくれ、やってくれというだけでは、なかなか進まぬので、当委員会においては、合同委員会、においても、日ソ共同して、一つ調査機関を作ってもらいたいということを申し上げたのです。なお、厚生省におきましても、未帰還調査部等もあるのですけれども、われわれはこの点を政府に注意しているのですが、だいぶエキスパートが減ってしまっている、人員のあれをやっているのです。しかし、そういう方面とも御連結いただいて、そちらの方面の専門家等もそういうのに入っていただいて、ソ連が悪意を持って調査をおろそかにしているというのではなくて、わからぬのもあると思うし、この点は、辻さんとモスクワへ行きましても、ソ連の女の人が働いていた、君の亭主はどうしたんだと言ったら、戦争で死んだんだ、いつどこで死んだのだ、それはわからぬ、十年も戦争に行って帰ってこないのだから、多分戦死なんだろうというような、ソ連の国民もまことにのんびりだという、そういう間隙もあるのですから、これはいい意味においてわれわれもソ連協力する、信頼しないのじゃないのだけれども、資料はむしろこちらの方が事情をたぐるのにわかる場合があろうというようなことで、そういう点が必要だと思うのです。向うの意向は、どんな御意向でございましたか。
  45. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 これは、この前、重光全権の交渉の際も、シェビーロフ自身も申しておりますごとく、非常に困難であります。特に戦争直後の事情においては困難でございますけれども、今、関係官庁を督促して、調査を進めますというお話をしているわけであります。従いまして、こちらの持っておる資料はすでに出しておるので、今後といえども、こちらがわかった資料は出す、それから向う協力ということで進んでいきたい、こういうふうに考えております。
  46. 原健三郎

    原委員長 ちょっとお尋ねします。ソ連抑留者は、いわゆる日ソ共同宣言の批准が済めば全員帰すというのですが、十二月の何日ごろか、一度に全部帰すのか、二、三回に分けるのか、それはいかがでしょうか。
  47. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 これは、先方の手続としましては、批准書の交換がありますと、それに基いて大赦をするわけです。これはすぐできると申しております。大赦が済めば、具体的にすぐ引き取れるわけです。それで、われわれとしましては、厚生省その他の関係方面と協議をいたしまして、船は幾らでも出せる、それからソ連希望する港であれば、ナホトカといわずその他の地域にも船を出せる、こう申しておるわけです。先方はこれを了といたしております。そこで、批准書の交換が済めば、ソ連ソ連として必要な手続をすぐ完了いたしまして、最も早い時期に受け取る、それで二回になるか三回になるかということはまだわかりませんでございますけれども、これは技術的な関係から、二回にも三回にもなり得るかと思います。しかし、これはできるだけ早く、その間隔を縮め、技術的にやり得る最大限にやりたいということで、日本側としては準備を進めております。ソ連側も日本側の気持もよくわかっておるということで、けさもチフヴィンスキーを呼んで話したのですけれども、これを機会あるごとに話しております。こちらの意思は、十分向うに通じております。
  48. 櫻井奎夫

    櫻井委員 今の問題に関連しまして、先般、共同宣言は衆議院を通過して、事実上の批准が、参議院は残っておりますけれども、第一院である衆議院を通過したわけでありますので、その後鳩山さんが帰られて後の引き揚げに関する具体的な情報等について、たとえば、どこかに集結をするとか、そういう点は情報をつかんでおられませんか。
  49. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 向うの方は、具体的にどこへ集結しているということは申さないわけであります。こちらはその希望を表明しております。これは、先方としましては、おそらく私の希望ですけれども、大赦の手続が済まなければなりませんから、その前はおそらくはソ連関係は言いにくいという事情にあるかと想像しております。こちらの意思は、十分通じてあるわけであります。
  50. 櫻井奎夫

    櫻井委員 具体的に向うは準備を進めつつあるということですか。
  51. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 そう見てさしつかえないと思います。これはソ連の官憲というものは非常にその点は手固いので、あらかじめおれはこうと思うとか、こういうことだということは、なかなか少いので、もう間違いないということでなければ言わないという性格を持っておりますので、その点は御了承願いたいと思います。
  52. 原健三郎

    原委員長 新聞に発表したところによると、鳩山さんが、十二月十日ごろ批准書の交換ができると言い、それから向うが大赦をやるとして、十二月の十五日くらいでしたら、引揚船が行けるという見通しはいかがでしょうか。
  53. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 これは確たることは申し上げかねますけれども、われわれの方では、十日といわず、その前でも、批准書は交換したいのだということを先方へ通じておるので、先方はよくわかりましたと言っておる。それでは批准書の交換と大赦の措置がどのくらいかかるかという問いに対しましては、これは大赦の措置はすぐ発動できるという返事なんでありまして、これはそれ以上どうこう言うことは差し控えておるわけですけれども、こちらの気持は十分通じておるわけであります。
  54. 戸叶里子

    戸叶委員 この間の特別委員会におきまして、鳩山総理が、一日も早く引き揚げられるように手紙を出すということで、二十七日ごろ外務省の方で出すようにきめられたようですけれども、もうお出しになりましたでしょうか。その内容はどういうふうなものですか。
  55. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 きのう衆議院を通りますと、すぐモスクワにおります重光随員に電報を打ちまして、おそらくその訓令を執行しておると思います。まだ執行したという通知は受けておりませんが、それは鳩山総理大臣からブルガーニンあての手紙でありまして、衆議院は通った、参議院はこれくらいで通る見通しだ、ついては早手回しに引き揚げの準備をしてくれ、日本側としては準備はもうどんどん進んでおるのだ、こういう趣旨の手紙でございます。これを私の方からけさチフヴィンスキーに渡しまして、参考までにモスクワに申し入れてあるのだ、君の方からもこちらの意思を伝えてくれ、こういうわけで、先方はそれは承知いたしましたといっておるわけであります。
  56. 戸叶里子

    戸叶委員 日本側としては、どんどん進んでおるというふうな程度のもので、もう少し具体的にいろいろな問題に触れておらないのですか。
  57. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 この点はちょっと委員長の御質問に対して申し上げたのですけれども、われわれのところでは批准書の交換が十日、その前早ければ早いほどいい、こういうことの意思は、先方に通じてあるわけです。これはしかし先方のやることですから、それ以上は先方がこちらの希望を入れてくれるだろうということをわれわれは希望いたしておるわけであります。そこで、批准書の交換が済めば、向うは大赦の措置をとるというわけで、これもおそらくは比較的早く行われるのではなかろうかと思います。こちらの方としてはそのときにすぐ発動できる配船の準備は関係当局と話をしておるわけであります。こちらの希望としては、船を送るときはナホトカといわず、そのほか便利なところには送る用意があるのだということは申しておるのであります。そういう段階であります。
  58. 戸叶里子

    戸叶委員 問題は、大体わかっている方々の集結はやさしいと思うのですが、ただこの間も参考人の中に入っておりましたように、国籍を一応日本人から離脱させられたとか、あるいはソ連語がわからないで地方におるというような人たちも一緒に引き揚げさしてあげるべきではないかと思うのですけれども、そういう方に対してのお心づかいが払われておるかどうか。
  59. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 この希望はすでにモスクワでもいたしておりましたので、先方も知っております。フルシチョフ自身も、マリク・リスト以外の日本人も実は発見されておるということを言っております。数はわかりません。ごくわずかなものだということですけれども、事実上、マリク・リストに載っていない人たちも四名帰ってきております。そこで、判明する限り、本人が希望を表明される限り、先方は帰してくれると思います。しかし、この問題の解決は、今回ではおそらくまだあとへ引く問題であろうということは、御承知願わなければなりませんが、しかし、これは日ソ双方とも今後協力しまして、できるだけどこかに日本人がおることがわかれば情報をもらう。こちらのわかっておる情報は知らせる、そして引き取るということになるわけでございます。しかしながら、国籍の問題は、日本の場合はドイツなどと比べてそう複雑ではありません。ドイツの場合のごときは、いっかも申し上げました通り、ドイツ系のドイツ国籍を持っていない人間がおるわけでありまして、しかも地域的にはドイツが侵入し、またソ連がこれを取り返すという経過をたどっておりますから、ドイツが占領しておりました当時はドイツの国籍を持ったかもしれませんが、ソ連が侵入してきたあとはまたソ連国籍と見られたりして国籍、は非常に複雑ですが、日本については、それほど複雑ではないと思います。それで、本人の希望が表明されれば、それに従って措置される、こう解して差しつかえないのではないかと思います。現に、この前もどこかの委員会で申し上げましたけれども、自分の国籍証明書を送ってくれということを、直接御本人から関係市町村の役場に手紙が来ておるという例もございます。そういうことに対しては、迅速に政府としては措置するというわけでございます。
  60. 戸叶里子

    戸叶委員 私どもといたしましたならば、今度御一緒に帰していただきたいということを希望するわけですが、何しろ広いところですから、そこまで徹底しないかもしれませんが、でき得れば、たとえば内務省なら内務省の手を経て、それぞれ末端に支部があるはずですから、そういうところを通して調べれば、日本の人がいるということがわかるので、そこまで今のうちに徹底してほしいということまで、その手紙の中に入れておいていただきたいということを願ったわけですが……。
  61. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 鳩山総理の手紙ですから、詳しくは言いにくいのですけれども、手紙の中にはモスクワでお話しした通り帰してくれと言っておる。モスクワには通じてあるのですから、それによって御承知願いたいと思います。
  62. 櫻井奎夫

    櫻井委員 私、先ほど資料とそれから引揚者就職指導計画と申しますか、指導方針と申しますか、こういうものを早急に立てられて、提出してくれというということを要求いたしました。これは、できれば、抽象的でなく、たとえば、国の段階、県の段階、市町村の段階において、安定所を通じてどういうふうにやるという、いろいろな具体的な方法があろうかと思うのでありますが、そういうものをはっきりと書いていただきたいということを要望すると同時に、今までの引揚者就職状況は、おそらくあなたの方でつかんでおられると思いますから、どういう就職状況であるか。過去における引揚者就職状況の資料を同時に御提出を願いたい。これだけ要望いたします。
  63. 江下孝

    江下説明員 承知いたしました。できるだけ早く提出いたします。     ―――――――――――――
  64. 原健三郎

    原委員長 この際、遺族援護についての質疑を許します。堀内君。
  65. 堀内一雄

    堀内委員 昨晩の新聞に、政府においては、かつて吉田内閣時代に決定した無名戦士の墓を作ることになったというような記事が見えておるのでございますが、その内容について、まずお伺いいたしたいと思います。
  66. 山下春江

    ○山下政府委員 昨日の閣議で決定いたしましたことは、今次戦争で犠牲になられたいわゆる無名戦没者全体の霊を慰める記念塔を建てようというにとでございます。
  67. 堀内一雄

    堀内委員 この問題については、実は戦争犠牲者援護会という会がございまして、それが去る二十五日の臨時総会においてこれを決議して、そうして政府の方に要請したことがその動機ではないかと思うのでございますが、この問題については、かつての吉田内閣のときの閣議の決定は、旧軍人の遺骨で引き取る方のないものを奉安するというような趣旨であったように聞いておるのでございます。それとの関係はどんなふうになっておりますか。
  68. 山下春江

    ○山下政府委員 堀内委員も仰せられた通り戦争犠牲者援護会その他その会を取り巻く多くの方々からの要請によって、以前無名軍人の戦没者ということに一応きめられておった構想を撤回いたしまして、援護会等で御推進なされました通りの精神をもって決定されたものでございます。
  69. 堀内一雄

    堀内委員 私は、この決定は、まことに時宜を得たと思うのでございます。われわれ日本の再建の前提として、かっての戦役の犠牲になられたたとえば空襲、原爆または船員とか報道人の方々でなくなった方の霊魂を祭って、ここに精神的な面の、過去の戦役のいろいろな問題を解決して、そうして再建日本のために再出発するという意味において、まことに時宜を得たものだと存ずるのでございます。この問題につきましては、新聞で見ますと、場所は千鳥ケ淵というふうにも見えておりまするが、この選定につきましては、私は慎重にお考え願いたいと思うのでございます。千鳥ケ淵付近の予定地というものも今日までいろいろ研究されておるのでございまするが、あそこは、ある意味においては、場所としては靖国神社との関係等で非常によいのでございまするが、地域が非常に狭い。たしか二千四、五百坪くらいのものにすぎないのじゃないかと思うのでございます。もし、ただいまの政務次官のお話のようなことでありましても、おそらく旧軍人の引き取りのない遺骨というようなものも一緒に合祀するという関係にもなるのじゃないかと思うのでございますが、そうした場合に、いろいろな意味から、この選定については、十分の検討を要すると思うのでございます。そういうような点について、今どんなふうな御構想を持っておられますか。
  70. 山下春江

    ○山下政府委員 堀内委員の仰せの通り、千鳥ケ淵は二千五百坪でございます。今日まで、四カ所くらいな候補地をあげていろいろ検討されたのでございますが、それぞれ故障やその他のものがございまして、新聞に発表されておりました通り千鳥ケ淵にきめたということではまだございませんけれども、最有力候補地であることは間違いないのでございます。遺族方々から、靖国神社境内の拡張等によるお話もございましたが、土地の実態に触れてみますと、なかなか困難な問題があります。いろいろ戦没戦士というだけでなくて、お話通り、今次戦争の犠牲になられたすべての方を祈念したいという気持から申しまして、千鳥ケ淵がやはり一番有力な候補地ではないかと考えております。それから新聞の文字につきましては、たとえば無名戦士の墓というような言葉は、用語の統一がまだついておりませんために使われた文字でございまして、内容はそれと違っておりますことを御了解願いたい。
  71. 堀内一雄

    堀内委員 おそらく今度の閣議でおきめになったことも、終戦直後において、天皇陛下が新宿御苑においでになって、あそこで全国戦没者の慰霊をなさったあの趣旨によって御決定になったことと存ずるのでございます。なお、その規模及び構想等につきましても、どうぞ関係諸団体の人たちの意見も十分御聴取いただきまして、そうして悔いのないようなものを一つお建てになるように、蛇足でございまするが、御希望申し上げておく次第であります。
  72. 原健三郎

    原委員長 私からちょっとお尋ねいたします。場所は千鳥ヶ淵が有力だということを今お聞きしたのですが、どういう人たちをお祭りするのか、それで一体いつごろ建設されるおつもりであるか。第二点は、一体どのくらいの経費で、その経費は予算に組むのか予備費から出すのか、どこから持ってくるつもりであるか。第三には、それは納骨堂にするのか碑にするのか。
  73. 山下春江

    ○山下政府委員 ただいま委員長のお尋ねの点につきまして総合してお答えを申し上げますが、予算の額につきましては、まず候補地が決定いたしませんと、ちょっと最終の額を申し上げることが困難でありますので、急いで候補地を関係諸団体の方々とも緊密に御連絡申し上げて決定いたしたいと思います。決定いたしますれば、そこに当然建設いたします大体の構想ができ上りまして、金額が決定いたしますので、きわめて早い期間にと思っておりますので、年度内に着手をいたしますような運びになりますれば、予備費をもって行いたいと思っております。もし年度を越すようなことがあれば、当然三十二年度の予算に組みたい、こう考えております。
  74. 逢澤寛

    ○逢澤委員 山下政務次官は、大体全国の戦没者遺族会がさきに要望しておる事柄については、それぞれ局長を通じて御承知だと思うのでありますが、両三年前に一応この議が上ったことがあります。その際に、全国遺族は、そのための会を開きまして、当時、無名戦士の墓としての問題をやったのであります。その当時、最終には千鳥ケ淵というようなことも田邊援護局長の口から出たこともありますが、そのときの日本遺族会の考え方としては、結論からいいまして、作ってもらうなら靖国神社の境内ということでした。しからずんば、一応千鳥ケ淵でもいいだろうというふうな話も一時的にはあった。ところが、それを押し縮めたところが、それではいけないということになった。それでも政府が強行して今日のような――きのう実は私は新附を見てびっくりしたのです。境内か、しからずんば、これはみな分骨してくれというのです。名はわからないけれども、各県の出身者が何人ということはその地域でわかる。そこで、その数に応じて、各都道府県にそれを分骨してもらいたい、それで各都道府県の護国神社なり、それぞれのところに奉祀する、こういう取りきめをしてある。このことについては厚生省の係にはよく通告しておるのです。その理由はかねて御承知だと思いまするが、靖国神社自体は、国家が管理することができない。今回の提案は、また若干趣旨が違っておるらしい。軍人及び一般の戦没者の遺骨を合祀するというただいまの次官のお話であったのでありますが、それは、若干合祀者の人々の種類が違うから、日本遺族会としては考えが違うかもしれませんが、この問題が出た根本は、戦死者は今度会うときには九段の森で会おうと言っていた、しかるに靖国神社自体が今日のような事態になっておるので、これはすみやかに国家が処理するような方策を考えねばいかぬ。ところが、残念ながらまだ現在ではその域に達していない。その前に無名戦士の墓のような、これに類似するものを国家が金を出して作って、国家の管理のもとにやる、本家の靖国神社は国家が管理できない、そしてその分身の墓は国家が管理するとしますと、今のうちは戦士者の親もあり家内もあり子供もあるから、それができても、靖国神社に参拝します。けれども、行く行くは靖国神社を国家が管理せぬということになると、その中心は無名戦士の墓に移行してしまって、片方は国が管理して相当の集中的なお祭りができる。片一方は参拝者も次第に少くなってくる。今でこそ肉身がいるからなんだが、先になると草がはえる。こういう例はすでに全国で十ほどあります。私の岡山県にもちょうどその例がある。岡山県に例をとりますと、市内に操山という一番の景勝地がある。その操山に三勲神社というものがある。楠正成、和気清麿というような当時の思想の指導者が対象になる神社があった。私ども幼年のころ、学校の先生に連れられていったが、りっぱなものだった。ところがその三勲神社は氏子がない。氏子がないので、今度のように神社に対する国家の保障がなくなったものだから、屋根を銅板でふいておったのですが、戦後銅板を取ってしまった。とうとう雨漏りになって、今日はなくなってしまった。靖国神社も、今日ではまだそうならぬが、これから五十年、百年先には、だれも管理者がなくなると、おそらくそうなるだろう。これは全国の人が言うておる。そういうことを考えたときに、無名戦士の墓を先に解決するということは、前後を誤った処置であると思う。従って、先に申しあげたように、まず靖国神社を国家が管理するということを先にきめる、今、海外から引き揚げてきておる御遺骨が粗末になっておることは重々私ども承知しており、まことに相済まぬことだと思っておるけれども、それよります二百万に上る御英霊の神社に対するあこがれ、それからその遺族の神社に対するあこがれというものを考えたときに、国家が管理する無名戦士の墓とか、あるいはそれに類似のところに遺骨を納めるということは、大体戦死者自体の意思に反するではないか、だから、遺族としては断じて承知することができないということなのであります。この点については、すでに厚生省には、草葉さんが大臣の折にも、その諮問があってその回答をしております。しかるに、今回この挙に出られたということは、大へんなことになると思うのであります。それはおやりになることはけっこうだけれども、私はその責任者としてよく承知しておるから申し上げるのだが、これが出ましたら、おそらく会合がありますが、会合をすれば、政府の方でこれを強力に断行するというなら、遺骨だけは各県に返せということになることははっきりしておるのです。この点をお考え賜わって、処置していただきたい。  それから、もう一つ申し上げておきたいのは、これは私の考え方だから確定的なものではありませんが、政府考え方としては、戦死者の遺骨だけでなく、一般戦災者の遺骨も同時に合祀するというお考え方だから、当時の構想とは違うのじゃないか。遺族としましても、その点考えたけれども一般の方と合祀してもらうということは再びません。それは、戦死者自体が、国家のために積極的に進んでいって、今度会うときには九段の森で会おう、こういう気持で行っておるのだから、それを他の戦災者の御遺骨と一緒に合祀するということについては、これは私ども今までの遺族の気持を想像してみましたときに、これは賛成しない、しかられる、こういうことになっておる。そうなると、どういうことになるかというと、今の政府が御計画しておる一般戦災者の御遺骨をそこに集骨なさるということについては、これは何をか言わんやであります。しかし、戦死者の遺骨はそこに堆積しておるから、それと合せてする、こういうことにはおそらく賛成をいたしかねる、こういうことを申し上げておきたいと思います。これは答弁は要りません。幸いに今日はそういう責任あるお立場でおいでになっておるから申し上げるが、日本遺族会がかつて単葉厚生大臣からこの問題に対する諮問があったときに、はっきり今申し上げた通りのことを申し上げてそうして今日に至っておる。そこで今日さらに当時のことを変更して、靖国神社の措置が確定しない間に、その前に無名戦士の墓、ないし無名戦士の墓類似のものを強行するために閣議決定をしたということは、これはあまりにも事情を無視したおやり方であるということだけは、強く申し上げておきたいと思います。
  75. 山下春江

    ○山下政府委員 逢澤先生は、答弁は要らないという仰せでございましたが、一応私ども考え方も申し上げておきたいと存じます。逢澤先生のお説の通り、靖国神社の管理につきまして、まだ最終決定がいたされていないということは事実でありますけれども、しかしながら、私どもは、あれだけの多くの戦士の御英霊をあすこに祭ってある、その姿を無視できるものではございません。従いましてその日にちがあとであったか、先であったかということは、いろいろ経費その他の問題のためにおくれておるといたしましても、必ずやその尊いみたまは、今後平和日本を建設する上に、われわれ日本国民の守り神として、あすこにしずまっておられることを私どもは認識いたしております。従って、国がこれを粗末にしたり、あるいは立ち腐れにしたりということがあろうはずはありませんし、そういうことをいたしてはならないとかたく確信いたしております。しかしながら、軍人であろうと、あるいは積極的に戦争に銃を持ってお出にならなかった方にいたしましても、戦争の犠牲になられて、命を落された方につきましては、これはやはり国といたしましては捨てておくわけには参りません。その魂はやはり丁重にお祭りをして、日本の平和を守っていただくことに私どもは尽すべきだと存じております。従いまして、今日までしっかりした遺族もなく放置されているということは、戦後十一年をけみしました今日、やはり私どもはこのまま放置することは許されないことだという気持から、御遺族のはっきりしていない戦死者とか、あるいは一般方々でも、戦争によって命を落されたみたまに対して、国民の礼として、ここにしっかりした魂を祈念する、あわせて、その魂はわれわれ九千万の平和的建設の守り神として、多くの方々に参ってもらうというような措置を講ずることが当然と思ますので、靖国神社ということは私も承知いたさないわけではございません。詳しいことは私存じませんけれども、非常に土地が手に入りにくいという、いろいろな事情があるそうでありまして、決してそれを避けたわけではないのであります。千鳥ケ淵につきましても、安易に手に入るのではなくて、宮内庁等に相当な問題もございますけれども、日本の平和を保つ上に、真に多くの方々にお参りしていただくのには、靖国神社にも近いし、便利だというようなこと、諸般の情勢で千鳥ケ淵が第一候補としてきまったと思います。逢澤先生の御意見でございますけれども、どうかこの戦争の犠牲によってなくなられた方々の魂を迷わさないように、一つ仲よく、私どもは御遺族会の意見も十分承わりまして、円満にいっていただくように処置をいたしたいと思いますので、なくなられました魂同士の争いになるような形は何とも耐えられないのでございますので、その辺は私どもの立場も一つ御了解を賜わりたい、これは私の方からお願い申し上げておきます。
  76. 逢澤寛

    ○逢澤委員 ただいま山下政務次官のお話の中に、神社に対する国民的な尊敬の念は、これは維持しておる、こういうお話がありましたが、それは念は持っておられるけれども政府として、事実ができていない、実行ができていない。それは現在の国民として靖国神社に対して尊敬をせぬという人は、小数の人で、ごく少いと思います。けれども、その気持があっても、それが形の上に現われていない。この点は非常に残念です。今あなたが仰せになった言葉の中にも、そういうような神社に対しては、政府としても非常に尊敬の念を考えておるという。考えておられるけれども、その尊敬の念がはっきり表示できておらぬ。具体的にどんなことをしたかといえば、何にもできていない。これが戦没者の遺族の非常に残念に思うところなんです。そこで、それにもかかわらず、その脇に国の管理によってりっぱなものを、かりに一億なら一億のものでも建設する、こういうことになった折に、遺族の心情やいかんということですよ。無名戦士の人は国家がこれを管理する、そうして真に命をかけてやった者には国家が何も手を出すことができないという、この実情なんです。この点を一つよくお考えをいただきたいと思う。  それからもう一つは、今あなたのお言葉の中にもありました。私これは申しおくれておったのですが、靖国神社の境内にということはしばしば申し上げておるが、実は現在の憲法下において、靖国神社の中に合祀して戦士の墓を建てるということについては、いろいろ憲法上の疑義もあるということもよく考えております。そこで、必要なことは、一つ神社側に話をして、それを政府に寄付して、そうして政府がここはいい、いろいろこれらを選定なさる委員の方々がこれを見て、このところがいいじゃないか、こういうところを政府に割愛して差し上げて、そうしてそこに建てていただきたい、こういうところまで今進んでいるのです。具体的に申し上げますれば、あの御承知の大村益次郎の銅像を少し西側の方へ移転して、あそこらだったら、無名戦士の墓を建てられてもちょうど格好のところじゃないか、こういうことまで研究しておる。それで、この点についても靖国神社の総代側とも交渉して、いろいろ総代会で意見があったのであります。それは大村益次郎の銅像に対してもいろいろとあこがれを持っておる、あこがれを持っておるけれども、無名戦士の墓が建つというならば、これを移転することに同意しよう、こういうことなんです。しかも、その移転した地域は、これを政府の方へ寄贈しよう、こういうところまでいっております。それまでになるということについては、よほど数次にわたって研究に研究を重ね、そうして全国遺族のいろいろな心情を結合した結果がそこになっておるのですから、私もここに籍を置いておりますから、良心上、知らぬ顔をすることもできません。そこで私は申し上げておるのであります。せっかく今お話しになりましたように、今回の軍人以外の戦災者方々に対しましても、私は今、山下次官からお話があったことはこれは同感であります。これら産業戦士の方々の霊を祭るということも私は大賛成であります。大賛成でありますけれども、それらの人と同時に合祀するということについては、これは大きな異論があることを、私は従来の私験から考えまして承知しておりますから、この点だけは申し上げておきます。
  77. 堀内一雄

    堀内委員 私も、靖国神社の英霊と別に、お引き取りのない御遺骨との問題についていろいろお伺いしておるのでありますが、ただいまのお話のように、結局靖国神社が現在国家管理に移せないというところにこの問題があるのであります。かるがゆえに、われわれは、靖国神社を国家管理に早く移すことが必要であるということを、前国会等におきましても極力努力しておるのであります。また鳩山総理大臣も、現在の憲法の改正が必要であるという主張の中には、むろんこういう点も含まれておると思うのでありますので、今後憲法を改正するまでに至らなくても、いずれかの方法において、できるだけすみやかに靖国神社を国家管理に移すというような方法にいたしたいと存じておるのでございまして、この点につきましては、政府におきましても、今後とも御尽力を願いたいと思っておるものでございます。  次に、遺骨とみたまでございますが、私は、ただいまの政務次官の御説明によりましても、産業戦士を初めとした一般戦争犠牲者の中で引き取り手のない遺骨は、あるいはそこへ持ってくることがあるかもしれませんが、趣旨としては全英霊をお慰めするという意味において、ここに慰霊塔といいますか、そういうようなものをお建てするということではないかと思うのでございますが、その点が一点。  それから、靖国神社のみたまはあそこにお祭りしてあり、その御遺骨の問題とは二つに考えなければならない問題と存じておるのでありますが、そういうような点に関連いたしまして、あそこにはあるいは御遺骨も一緒にお祭りするかもわかりませんが、みたまをお祭りするということが主ではないかと存ずるのでございます。その点について、政務次官のお考えをお伺いいたします。
  78. 山下春江

    ○山下政府委員 これは、以前は、あくまで軍人、軍属でお引き取り手のない方々の御遺骨をというような構想でございましたのが、少し範囲を広げられまして、戦争によって犠牲を受けられました方々の御遺骨をお祭りするということ、それから納骨堂にするかしないか、みたまを祭るだけかどうかということは、いわゆる記念碑でございますけれども、今回の場合は、やはりお骨をお納めする場所にいたしたい、こういうふうに考えております。
  79. 堀内一雄

    堀内委員 事務当局の人のあれでは、そういうように前の関係から考えるかもしれませんが、私は、この際、新しく閣議で決定される場合におきましては、そのいわゆる前の話にこだわって、そうしてただ一般戦争犠牲者方々の御遺骨で、引き取り手のないものを集めるというような、そんな考えでなくて、一般軍人人たちは靖国神社にお祭りしておる、しかし、そのほかの戦争の犠牲になられた方のみたまを祭るという趣旨において、私はぜひともお考え直しを願いたいと思うのです。この点につきましては、従来の事務当局などの言うことを考慮する必要はないと私は思う。これは新内閣でもってやることでありますから、そんなことでは、私ども意味がないと思います。だから、ここは一つ政務次官、しっかりがんばっていただきたいと思う。
  80. 山下春江

    ○山下政府委員 今のところは、事務当局にちょっと私はものを相談いたしておりましたので、少し私の構想がにぶったようでございますから、あらためて申し直します。  堀内委員の仰せの通りでございます。私は昨日閣議決定になったものは、そういう意味において決定されたものと信じます。そこで、先ほど海洋委員にとくと私の方からお願いしたいことは、それらの戦士の英霊もあるいは一般方々のみたまも、ひとしく戦争の犠牲になられた方々であり、従って、そのみたまは今後の日本の平和再建を念願しておられるみたまであるから、国民全体がそれにお参りして、祈願をするといういわゆる碑である。ただそこに今度できますその碑の形は、何と申しましても、現実にお引き取り手のない御遺骨があるのでございますから、それはお納めする。一般方々は大ていお引き取り手がございます。しかし軍人軍属の中にお引き取り手がないという御遺骨がございます。それをお納めいたすことができるような構想で建設をいたしたい、こういうことでございます。
  81. 眞鍋儀十

    眞鍋委員 私は初めから申し上げておきますが、深き研究をしていないのです、思いつきです。今お話をだんだん承わっておりますと、自分で考えておりますこととだいぶ輪郭が違っておるようです。それは、大体このお墓というものは、神格なのか仏格なのか、その性格が私にははっきりしないのです。おそらく仏格でもない、神格でもない、こうおっしゃるだろう。神格ならば神社の境内に置いてもよろしい、仏格ならばお寺の有名なところに置いてもよろしい。だけれども、神格でもない、仏格でもない、それを超越した国民崇高の一つのお墓としようとするならば、神社の境内に置くということは、少し私は考えなくちゃならぬ問題じゃないかと思うのです。それならば、むしろ神社の境内を離れて、どこか適当な場所であるならば適当な場所であるということによって、神社の近所なり、仏格ならばお寺の近所に置くのが適当な場所だと思うが、その神格、仏格との関係は、一応切り離していかなければならぬものだ、こう思います。そこで、今度できるお墓は、招待状がなければ、正式の祭礼に参加ができないようなかた苦しいものであってはいかぬと思う。もっと庶民的な、もっと大衆的な、お互いがだれでもお参りのできるような性格であってほしいと思う。そうして、戦争によって死んだ戦死という形よりも、戦没無名勇士の墓といったような性格でなければならぬ。あの人はこういう資格において欠除しておるではないかとか、あるいはここを精査してみなければ、一体そのお祭に合祀される値打があるかどうかといったような四角ばってもいけない、こう思います。そこで、今お話を承わっておりますと、靖国神社だけが問題になっておるようでございますが、その点、まことに思いつきで失礼でございますが、もっと大局に着眼せられまして、大乗的な見地において、場所の御選定をお願いしたい、これが私の希望でございます。
  82. 山下春江

    ○山下政府委員 眞鍋先生の御指摘の通り考えを私どもも持っております。そういったようなことをあれこれ勘案いたしまして、第一候補に千鳥ヶ淵を、多くの方々がこの無名の戦没者の霊を慰めつつ、将来の日本の平和建設をお誓いする場所といたしまして、かた苦しい考え方のない、しかしながら国民全体が崇高するものを建設いたしたいというのが、私どもの念願でございます。
  83. 戸叶里子

    戸叶委員 私ちょっと座をはずして下おりまして政府が御説明になったことを伺いませんでしたので、あとからよく聞いた上で、また疑問がありましたら、質問させていただきたいと思います。持論として、私は二言、三言伺ったところによりますと、戦争の犠牲になられた方々をお祭りして、そこへだれでもが行って、過去の御苦労を謝し、過去の苦しかった人たちのことを考えてあげる、そうして、平和の一つのいしずえにしたい、こういうような希望でお作りになるようでございます。靖国神社に国費をというような問題がいろいろ出ましたときに、実は私どもとしても、あのままでは靖国神社へ国費を出すことは当然憲法違反でできないので、何らかの形で遺族方々を慰めてあげなければならない、こういうような気持で、過ぐる国会でも、社会党でも折々寄りまして、外国にあるような無名戦士の墓のようなものにしていけば、これは問題がなくなるのではないかということを考えておりました。それと同じようなものが今度できるのだ、こう一応了承しているわけでございます。そこで別に名前にこだわるわけではございませんけれども、無名戦士の墓というよりも、むしろ無名戦没者の墓というふうにした方が、もっと戦争の犠牲者というような意味を含むのではないか、こういうふうに思いますけれども、この点に対してのお考えはいかがでしょうか。
  84. 山下春江

    ○山下政府委員 その点は先ほどお答えいたしたのでございますが、新聞に無名戦士の墓と出ておりましたことは、用語の統一がつきませんで、こういう問題を議すると、すぐ前に使いなれた無名戦士の墓という名前がぴんと頭にきたとみえまして、新聞にそう書いてございますが、私どもは、無名戦没者の墓と明確に心ではきめておりまして、そのような構想で進めたいと存じております。
  85. 戸叶里子

    戸叶委員 私おりませんで、大へん失礼いたしました。  そこで委員長にお願いしたいのですが、私、この間日ソ共同宣言の特別委員会をちょっと欠席したときですが、あとで速記録を読んでみますと、小林厚生大臣の御答弁の中に、どうもふに落ちない点がございましたので、この問題とも非常に関連のあることでございますから、一度小林厚生大臣の出席を求めて、その点の疑義をただしたいと思いますから、そのようにお取り計らいを願いたいと思います。
  86. 原健三郎

    原委員長 承知いたしました。
  87. 原健三郎

    原委員長 この際お諮りいたします。山西地区残留旧軍人現地復員取扱いに関する問題について調査するため、山西地区に残留されて引き揚げてこられた関係者を本委員会の参考人として出席を求め、事情を聴取したいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 原健三郎

    原委員長 御異議なきものと認め、さよう決定いたします。  なお、参考人の人選、招致の日時等は、委員長に御一任願います。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時散会