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1956-12-06 第25回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十二月六日(木曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 有田 喜一君    理事 小笠 公韶君 理事 椎名悦三郎君    理事 前田 正男君 理事 岡  良一君    理事 志村 茂治君       須磨彌吉郎君    橋本 龍伍君       山口 好一君    岡本 隆一君       田中 武夫君    福田 昌子君       石野 久男君  出席政府委員         科学技術政務次         官       齋藤 憲三君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   原田  久君  委員外出席者         科学技術庁次長 篠原  登君         総理府技官         (科学技術庁調         査普及局長)  三輪 大作君         大蔵事務官         (主計官)   相沢 英之君         文部事務官         (事務次官)  稻田 清助君         文部事務官         (大学学術局         長)      緒方 信一君         参  考  人         (日本経営者団         体連盟理事)  中山 三郎君         参  考  人         (名古屋工業大         学学長)    清水 勤二君     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会審査申出に関する件  科学技術振興対策に関する件(科学技術教育に  関する問題)     —————————————
  2. 有田喜一

    有田委員長 これより会議を開きます。  本日の議事に先だちまして、閉会審査に関する件についてお諮りいたします。すなわち本日をもちまして今国会も一応終了のこととなりますので、本特別委員会といたしましては、科学技術振興対策に関し、引き続き閉会中も審査を行いたいと思いますが、この旨を議長に申し出たいと思います。これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 有田喜一

    有田委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 有田喜一

    有田委員長 科学技術振興対策に関し、本日は科学技術教育に関する問題につきまして、参考人より意見を聴取いたしたいと思います。  本日出席参考人は、日本経営者団体連盟教育部長中山三郎君及び名古屋工業大学学長清水勤二君の二名であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。本日は、御多用中にもかかわらず、当委員会調査のため、わざわざ御出席下さいまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  申し上げるまでもなく、科学技術振興は、現下のわが国の急務であると考えますが、国民一般科学技術知識の向上は言うまでもなく、技術者養成教育等は、これが根幹をなすものと考えます。当委員会といたしましても、科学技術教育について重大なる関心を払って参りました次第でありますが、本年は科学技術教育に携わる参考人各位より忌憚のない御意見を賜わり、当委員会調査に資したいと考えまして、各位の御出席をわずらわした次第であります。どうか科学技術教育について、それぞれの立場から、腹蔵のない御意見の開陳を願えれば幸いに存じます。なお、陳述は約三十分程度にお願いいたしまして、あと委員諸君の質疑についてお答えを願いたいと思いますから、さよう御了承を願います。  それでは、清水勤二君より御陳述をお願いいたします。
  5. 清水勤二

    清水参考人 参考人清水でございます。最初科学技術教育全般に関しまする概論的なものを申し上げまして、そのあと中山さんから、特に産業経営という立場から問題点を御指摘願いたいと存じます。  科学技術教育振興に関しましては、大体分けまして、高校以下の教育大学教育あるいは大学院の教育、これらの学校卒業後の教育、これらの教育国際関係というような問題があるかと存ずるのであります。  高校以下の教育に対しましては、終戦後、昭和二十六年に産業教育振興法が制定せられ、その後、理科教育振興法が制定せられまして、高等学校以下における産業教育という立場からの振興及び普通課程における理科教育振興方策がとられまして、十分とは申せませんけれども、ある程度振興されてきたということは、非常にありがたくまた心強く思っておるところでございます。しかしながら、これら両法に基く於策も、年々予算計上によりまして、ある程度充実は見つつありとはいいますけれども、まだまだ十分ではなく、ことに理科教育振興法の方は、その額も小さく、またそれの及ぶ範囲も広いのでございまして、なお相当力を入れなければ、その振興はおぼつかないという感じがいたすのでございます。これら高校以下の教育根幹であります。また日本の現状としての欠陥である教育者教育、つまり高校以下の産業理科、それらに関係せられる教師教育、こういうものがわが国としては非常に欠けておるということに御注目ありたいのであります。一つは、わが国の従来の師範学校というものが、この理科教育において非常に欠陥を露呈しておったのでございます。これが専門学校になり、大学になり、三段飛びのようなことをいたしまして、今、大学学芸学部あるいは教育学部となっておるのでございますけれども、その内容は、理科教育的観点からすれば非常に貧弱である。これを充実し、義務教育に携わる教師の大部分が理科的な素養、教養を十分持つということが非常に大切なのであり、またすでに携わっておる教師の再教育ということが重要であるのであります。そこで、一方においては、これら大学学芸学部教育学部等教育の刷新が必要であり、一方においてはすでに就職しておる先生たち科学教育に対する再教育が必要でございまして、このためには、文部省科学教育研究室というものを全国に三十ヵ所近く設けておられまして、大学へ内地留学的に半年ないし一年行くというやり方が、非常に効果を上げておるように考えるのでございます。これはまだ十分にその効果が伸びておりません。これを今後大いに伸ばして、教師の再教育ということについて力をいたされんことを希望してやみません。  それから、終戦後、学制改革に伴いまして、いわゆる中級の農工商等技術者養成としての工業高等学校農業高等学校等でございますが、これらに対する産業界からの批判といたしまして、三年間の授業で、しかもあのように一般教育をある程度やるというような課程においては、その教育が非常に不徹底である、中堅技術者養成する学校として、その課程が適当でないということが指摘されておるのでございます。この工業高等学校、特に私の関係しております工業高寺学校を、何らかの変更あるいは変形によりまして、十分効果ある教育をするということは、きわめて重要なことではないかと考えるのであります。それは、上に二年の課程をつけて五年の短期大学にするとか、あるいは下に三年の義務教育をつけて六年の課程にするとか、いろいろ方法はあると思うのでございますが、何らかの方法によって十分効果の上る教育、そしてしっかりした中堅幹部養成するということが、産業界に対して必要かと思われるのでございます。その量としましては、昭和十八年が戦前ピークでございましたが、そのピークを上回るくらいに量はあるのでございますから、量は考えないで、その質を考えればいいかと思うのでございます。  次に大学科学技術教育でございますが、これは理工農医にわたる広い範囲教育でございますけれども、私は工学関係の方をやっておりますので、その方を主として申し上げたいと思います。工学関係につきましては、終戦後、専門学校大学になるということから、戦時中非常に膨大になっておったものが縮小されまして、国立大学戦時中の大学専門学校を合せた数の約三八%に縮小されました。私立大学の方はむしろ伸びたのでございますが、国公私立を合せまして、戦時中の約五〇%余りという程度に縮小されたのであります。そして、大学の民主的な立場から、その形を整えればこれを許可せざるを得ないというようなことから、終戦後は、容易にできます法文系の方が非常に多く新設せられまして、ことに私立大学におきましては、その収容人員が非常に多くなり、従って、戦前わが国大学における法文系統理工系の比率が七対三でありましたものをほとんど逆に変更されておったのが、終戦後またもとの形に戻りつつある、あるいはそれ以上になりつつあるということは、まことに遺憾な点であると考えるのであります。しかも工学関係だけで考えますと、大学が多いとかなんとか言われますけれども、昨年あたりから工業技術者需要が非常に増加いたしまして、本年などは、いかにしてその需要をお断わりするかということに各大学とも苦労しておるというような状況でございまして、各大学地方にあって、その地方産業のために人材を供給する一つの役目を持っておりながら、その大部分を中央あるいは工業都市の大会社にはき出すというようなことで、地方産業へ非常に不義理をするというような状況にあるのでございます。この状況は、今年は多少異常と考えられるほど需要が多くなっておりまして、今後どのようになるかということは問題ではありましょうけれども、特に工学関係教育について、これを強化するということが必要であると考えられます。しかも、これらの必要である大学教育が、ほとんど終戦大学が多いという名前のもとに、その設備にいたしましても、その他の問題にいたしましても、顧みられないままで放置してあるということは、まことに遺憾でございまして、私は農業その他を誘いまして、数年前からこの運動を展開しており、一昨年は何とか金を工面いたしまして、衆参両院文教委員の方を御招待申し上げて、こちらの実情を訴えたのでございましたが、時期がまだ熟しませんか、文部省の御了解も得られず、ついにその意思を通すことができなかったことは、非常に遺憾でございます。その後、日本工業教育協会として決議をいたしまして、ぜひ政府として、あるいは議会において、この科学技術教育充実調査機関至急に設ける。その決議に基いて、国策として科学技術教育充実強化方策をとってもらいたい。国際情勢から考えましても、米、英、ソ連等のこれらに対する異常なる努力状況を見ましても、日本としてまさに工業立国貿易伸張以外に生きるあるいは発展する方途のない日本において、特にこの方面調査至急にやっていただきたい、そして、それの効果の上る政策をとってもらいたいということを陳情いたしたのでございますが、まことに残念ながら、いまだそのときになっておりません。しかし、科学技術庁ができ、また本日のように逆に参考人としてお呼びをいただきまして、この方面関心を寄せられておりますことはまことにありがたいことと考えるのでございます。ただいま、大学工学部といたしましては、国立で六千、私立で約四千、公立で約千、一万人余り人間を出しておるのでございます。しかし、工業大学が各地方に分布いたしておりまして、あんなにいなかの教育は不必要であるといわれる方もあり、私も一時そのように考えておったのでございますが、実情を方方調査してみますと、各大学とも非常な努力をされまして、その教育力研究力とも終戦後異常なる発展をせられまして、また都会に来ることのできない地方人材が、その地方工学部において相当優秀なる素材として教育されつつあるということを見まして、非常に心強く考えておるのでございます。それぞれ各大学特徴を持てということもいわれておりますが、終戦後の状況を見ますと、今にそれぞれ特徴を持って各大学が伸びるときが来るというふうに感ぜられるのでございます。大学が非常に多いということをそれほど問題にする必要はない。特に工業においては、今あるくらいの大学はあってよろしいのではないかと考えております。それから、それぞれの大学が特色を出すことに努力し、教育研究とに努力いたしておりますが、それらに対する設備なりあるいは研究費なり、人間の数なりが非常に貧弱でございますので、この際何とか科学技術強化充実方策として、大学の特に重要な理工農系部門において強化方策をとられんことを希望してやみません。  第三番目といたしまして、学校教育はもとより大切でございまして、その内容につきましては、私どもはこういう協会を作りまして、絶えず検討を加え、努力をいたしておりますが、卒業後さらに技術者研究を継続する、あるいは勉学を継続することが、国家の将来にとってきわめて大切であると考えるのであります。それは、日本産業ばかりでなく、どこでもですが、現在産業の興隆に対する一つ欠陥でありますことは、高度の科学産業に移行しないということであります。高度の科学産業に移行しますためには、技術者が勉強して、科学を取り入れるということであります。ところが、日本でも多く声が聞かれるように、卒業してしまうと勉強しなくなるというような技術者では、ほんとうに高度の科学を取り入れて、創意を発揮し、りっぱな日本工業の将来を開くような優秀な技術者となることが困難であります。こういう意味から、卒業後の勉学の機会を与え、あるいは国家として組織を作って、その組織のもとに勉学させる。イギリスは法律をもってこれをやっておる。アメリカは州の試験によってこれをやっております。この卒業後の教育訓練ということを国家的にやることが、非常に必要ではないかと考えております。工業教育協会としても、まず試みてやろうということで、今スタートしかけておるところでございます。  次に対外関係でございますが、わが国東南アジア指導者として、特に科学技術指導的立場に立たなければならないのでございますが、終戦後、東南アジアからある程度学生がやって参りました。しかし、その程度はまだ十分と言えません。後進国科学技術的指導ということに対して、特にアジアに対しては、わが国は十分にこれを行わなければならないのでありますが、これに対して、場合によっては、アジア技術会議あるいは技術教育会議とか科学技術教育会議、あるいはアジア技術会議の一部門として教育をやる、そういう国際会議等の必要であろうと考えます。特に、教育としては十分調査し、またアジアの他の国がいかなる状態であるかというような科学技術教育に対する調査が必要でありますが、これはほとんど行われていない状態でございます。十分な調査の上に立ってアジア人アジアの資源によって、アジアの繁栄を導くための科学技術教育というものに対する協議が必要かと考えるのでございます。同時に、日本教育を引き上げるための、欧米に対する国際的な教育の連携を保ちたいと考えるのであります。   これで大体のお話を申し上げたのでありますが、なお、工学関係で、中小企業に対する技術者養成ということが、常に論議されるのでございます。しかし、わが国産業の大きな部門を持っております中小企業が、ほんとうにりっぱになるということは、わが国産業外国に遜色なく進んでいく根底であると考えるのでありますが、この中小企業に対して特別の教育が必要であるかどうかということは、論じなければならない大きな問題であると考えますけれども、二年の短期大学というものは、とうてい学校としては不徹底で、十分でないと存じます。そうしますと、先ほど申しましたような同等学校に二年加えたような短期大学、あるいは新制大学相当の者が中小企業に回ていって、そして、日本中小企業というものは単独では困難な場合が多いから、十分科学的根拠に基いたりっぱな組合的な研究もし、そして合理化された産業経営をやりていくという状態にならなければ、日本産業は十分進歩しない。外国の、アメリカ、欧州の中小企業のような相当すぐれた科学根拠を持っておるというふうになるために、大学卒業生が喜んでその方に進んでいき、また最初はその待遇が低くても、かえって将来はよい地位が得られるということなって、その方へも喜んでいくというようになることを、私は望んでやまないのであります。  以上、ごく概略でございますが、私の考えておるところを率直に申し述べた次第であります。   〔委員長退席前田(正)委員長代理着席
  6. 前田正男

    前田(正)委員長代理 ありがとうございました。  それでは、次に、中山参考人から御意見を伺います。中山参考人
  7. 中山三郎

    中山参考人 参考人中山でございます。お手元にお配りいたしました「新時代の要請に対応する技術教育に関する意見」と申しますのは、私の属しております日経連の技術教育委員会というのを今年の八月から設けまして、十月まで三ヵ月間研究いたしまして、その結果を意見書としてまとめたものでございます。それで、大体この意見書に基きまして、産業界はその技術教育に対してどういうことを、要望しておるかということを申し上げたいと思います。   ただいま清水先生から大勢についてのお話がありましたので私は実際家としての立場から申し上げたいと思います。お手元にお配りいたしておきましたリーフレットの中に表がございますが、その第一表をごらんいただきたいと思います。この第一表と第二表は、大学卒業者の数の問題でございます。大学の問題は、数の問題ばかりでなくて、質の問題が非常に関係するのでございますが、とりあえず日本大学が、ことにこの技術教育の面でどうであるかということを、先進国と比較いたしたわけでございます。第一表の中で、日本は四年制大学におきましては、理工系が、第二行目のところにございますように、一六・二%あるわけでございます。これに対しまして、イギリスにおきましては理工系を合せますと三四・八%という割合でございます。日本の倍の割合でございます。アメリカ理工系を合せまして一六%強でございまして、大体日本と同じでございます。ただし、これは今ちょうどこの技術系統の数は、非常に大学生の数そのものが減っておるときでございまして、二、三年前には、兵隊で帰還いたしました者が大学に入学いたしまして、工学部学生だけで五四年には二万二、三千でございますが、五〇年のころには五万二、三千ございました。そういうことで、今の少いのは特殊な事情でございますが、こういうことでアメリカでは実際の需要の半分にも足らない、こういうわけでございます。それから、ソ連は二五%弱、こういうことでございまして、日本より相当高いということでございます。ソ連ではもう少し高い数字も出ますけれども、それは教育系統の中の理工系統の数を入れておるのではないかと思うのでございます。  それから第二表の方をごらんいただきますと、第一表の方は理工科合せてでございましたが、第二表の方は工学系統だけでございます。日本では工学部夜間学生まで入れますと、新制大学で約一万二千卒業いたしております。そして、それを人口百万人当りに比べますと百三十七人ということで、アメリカの率とちょうど同じということになります。これに対しまして、イギリスの方は三千人ばかりでございまして、百万人当り六十人ということになっております。ところが、イギリス大学だけを数えたのでございまして、イギリスにはこのほか高等工業学校制度がございまして、その卒業生を合せますと、卒業生が八千百人ほどございます。そういたしますと、それだけで人口百万人当り百六十四人、こういうことになりまして、二百二十人余りという数になるのでございます。それに対応します日本短大工学部を加えましても、短大工学部はこれは千五百人ほどでございますので、せいぜい日本では百万人当り百四十人足らず、こういうことでございますから、イギリスの二百二、三十人というのに比べますれば、非常に低い。ソ連はここに出ておりますように、百万人当り二百五十人足らず、こういうことで、ソ連が一番高い、こういう数字になっておるわけでございます。  表の方はこれでおきまして、次に、私ども意見について要点を申し上げます。私ども意見の一のところでございますが、これは先ほど清水先生からもおっしゃいましたように、今後の国内の需要東南アジア経済開発及び科学技術高度化、こういうことを考えますと、技術者技能者という人たち需要というものは、産業界としまして今後相当ふえる傾向にありますので、その需要に対応することを教育制度の方で考えていただきたい、それには計画的に進めていただきたい、こういうことを要請いたしておるわけでございます。すでに文部省におきましては、調査局におきまして、社会の需要に対応する教育計画という調査をなさっておりますので、その調査を今後続けていただきまして、至急にその調査をできるだけりっぱなものにしていただいて、この技術教育計画化ということにお骨折りいただきたい、こう思うわけでございます。   〔前田(正)委員長代理退席委員長着席〕 この調査につきましては、民間としましても全幅の御協力を申し上げたい、こういうことでございます。  次に、第二でございますが、これは先ほど清水先生もおっしゃいました、技術教育根底は一般産様界として要求いたしております労務者のレベルが上ることでございますので、義務教育理科教育職業教育という点により一そう重点を注でいく、それがためには教員の養成の面におきまする理科教育を進めていただくということと、それから国民全般理科教育に対する認識を高めていく、それで職業指導の面におきましては、今後は技術系統の進学について、国民学校も指導していただきたい、こういうことでございます。  第三でございますが、第三は、一般労務者の中で熟練工となる人たち訓練でございます。これにつきましては、労働基準法に基きまして、技能者養成という制度があるわけでございますが、この制度は、元来封建的な徒弟制度の弊害を直すということに重点が置かれておりましたために、近代工業におきまする熟練工養成制度としては、あまり活用されておらないわけでございます。そこで、全体の養成の数六万ばかりの中で、近代産業に属しておりますものは一万六千ばかり、こういう状態でございます。それで、この制度以外に近代産業では熟練工養成制度を行なっているのでございますが、しかしその数は必ずしも多くございません。全体の推定はわかっておりませんけれども、せいぜい合せまして三、四万程度ではなかろうか、こういう次第でございます。そういう状態でございますので、技能者養成制度につきましては、今の労働基準法から独立させまして、監督行政でなく、助長行政に立った単行法を作っていただきたい、こういう要請でございます。それとともに、今の基準法に基く養成制度は非常に画一的でございまして、養成年限も大体三年ということで切ってあるわけでございますが、産業界としましては、多能工でない単能工の方は一年くらいの養成でも間に合いますので、そういうような制度を認めるような弾力性のあるものにしていただきたい、こういうことでございます。それから、その養成方法につきましても、中小企業では単独養成ができませんので、国または地方団体が有力な技能者養成所を作って中小企業のために必要な人たち養成をしてやる、こういうことをお願いしたい。これには現在ございます職業補導所ども活用していただきたい、こういうことでございます。それから、現在工場内で、若い従業員たちは、昼間仕事をやりながら、夜、定時制高等学校に通っている者が多いのでございますが、これは大体定時制高等学校の中で、普通課程の方に行っている者が多いのでございます。これは、定時制高等学校の生徒の数が五十三万ばかりございまして、そのうち約七万ばかりが工業学校定時制高等学校でございますが、それに通っている者が非常に少くございまして、大ていは普通の課程高等学校でございます。そこで、職場の仕事の方と結びつきがないわけでございます。定時制高等学校に通ったことによって職場の能率が上る、こういうわけでもございます。それから、昼間働いて夜通学いたしますから、本人の健康の上から申しましてもよくないことは、科学的にも実証されているわけでございますし、事実でもそうでございます。そこで、そういう人たちには、普通課程でなくて職業課程に行くように定時制高等学校の職業課程の方を拡充していただきたいということでございます。しかし、毎日定時制高等学校へ通うのは、これはやはり健康の上からいきましておもしろくありませんので、ある程度はそれを通信教育の方で補う、こういうふうな道を考えたらどうであろうか。ところが、現在高等学校の通信教育は、大体普通課程が中心でございまして、工業課程の通信教育はできることにはなっておりますけれども、まだ教科書が一つも作られておらないし、実際行われておらない、こういう実情でございます。そこでこれは一つ至急に教科書の編さんなども進めていただままして、通信教育の職業課程充実していただきたい、こういうことでございます。この定時制と通信教育、それから前に申しました技能者養成、この三つが結びついたような形で運用していって、技能者養成教育訓練高等学校の単位となるように計算していただきたいということでございます。  次に、第四のところにございます工業高等学校は、先ほど清水先生からもございましたように、卒業生が大体年五万でございまして、戦時中の十八年ごろの数が約それくらいでございますので、大体数では見合っておるのでございますが、しかし、今後の需要ということを考えますと、必ずしも十分というわけではございませんので、やはりこの工業高等学校の拡充をはかる必要がある。大体普通課程高等学校の生徒が百二十万に対しまして、工業高校の生徒は十六万ぐらいでございます。それから、数の点もさることながら、工業高等学校教育内容というものが、昔の甲種高等学校に比べますと、レベルが落ちているという感が深いのでございます。そこで、それは年限が三年ということが相当大きく影響しておるということが考えられますので、この年限の延長ということを、しかし、上に延長することは、国の経済力といたしましても、子弟の通っております家庭の事情からいたしましても望ましいことではございませんので、下に、中学と結びつけて五年制の工業高等学校ということにして、中学と工業高等学校との教科の内容が実際的に一貫性を持ったようにということでございます。なお、この年限の延長と同時に、内容充実、先生の訓練の問題、ことに実習の先生の質が非常に落ちておるということでございますので、その面の充実をしていただきたい。それから、施設につきましても、現在産業振興法に基きまして戦前のレベルまでは引き上げるということになっておるのでございますが、戦前のレベルというものが、実際界の現状からいたしますと非常に古いものでございますので、これは一つ産業振興法というものをもう一度見直していただいて、質と量の両面の充実をはかっていただきたいということでございます。  次に、第五の技術者教育機関としましての理工科系の大学教育でございます。これにつきましては、まず学校制度の面におきましては、短大が問題になるわけでございまして、現在二年の短大というものは、実際界の要請からいたしましては、何としても短か過ぎる。大体業界といたしましては、技術系統人間について三段階の層を想定しておるわけでございます。一番上が大体エンジニアと申しますかテクノロジストと申しますか、技術者でございます。その次がテクニシァンと申しますか、技手と申しますか、第三の段階はクラフトマンと申しますか、熟練工でございます。大体戦前専門学校はテクニシァンを供給しておったわけでございますが、現在の学校制度ではちょうどテクニシァンに当る者を養成する制度がないのでございます。二年の短大では、産業界の要求にマッチするような教育内容としては、不十分であるという関係でございます。さりとてまた短大を上に延ばして四年制と同じようにするということは意味がございませんので、この二年の短期大学を下の高等学校と結びつけて、五年制の専門大学というものを作ってはという考え方でございます。こうしますれば、高等学校大学との間の教育の重複、非能率というような点も是正できると考えるわけでございます。その構想を図示いたしましたのが、お手元にはさみ込みました図表でございます。工業高等学校を中心とします実業高校の、五年制のものを作る。これは実業高校を令部六年制にいたしておりますが、その全部をこういうふうにしろという考え方ではありませんで、簡素化のためにこういう新しい形だけを出しておるわけでございます。こういうものを認める。中には二年で十分な短大、たとえば写真短大というようなものもございます。そういうのはこれでもあるいは十分ではないかと思いますけれども産業界の要求にマッチしないような短期大学は、高等学校と合せて専門大学にしたらという考え方です。短大の実際を伺いますと、たとえば都立の工業短期大学というようなところでは、二年で実際の訓練をいたしておるわけでありますが、それはほかの学校ではちょっと望めないような方法でございまして、朝八時から晩四時まで、タイムカードを押しまして、夏休みもなく冬休みもないというような状態で、学校教育と実習をやっております。そういうところでありますれば、一応昔の専門学校に見合うくらいの教育もできるかと思うのでございますけれども、そういうことを全部の短期大学に望むことは無理だと思いますので、こういう五年制の専門大学というようなのを考えてはどうかという考え方でございます。それから、理工科系の大学が、大学全体の中で非常に割合が少くなっておるということは、先ほど清水先生もおっしゃいましたが、ここにもございますように、戦前は大体平均しまして六十五対三十五でありましたのが、最近では七十五対二十五でございます。そういうふうに割合が減っておりますばかりでなく、国の経費の面からいいましても、非常に少いわけでありまして、たとえば、聞くところによりますと、国立大学の総経費が二百四十億だそうでございますが、国立工学部の総経費は二十一億ということでございまして、全体の七、八%でございます。ところが、学生の数からいいますと、国立大学では工学部学生は一四%ぐらいの割合になりますので、人員に相当するだけの経費も工学部はもらっておらないというような状況であります。そこで、国立大学あるいは私立大学に対する補助というような面でも、国家が今後技術教育を重視するという見地にお立ちになるのなら、ぜひ者えていただきたいというわけでございます。  それから工学部教育内容につきましても、現在の新制の四年の中で、専門科目は主としてあとの二年でやっておりますが、その授業時間数を旧制の三年間のに比べますと、大体三、四割少いという状況でございます。御承知のように、現在の大学教育で単位を計算しますときには、授業一時間に対して予習一時間、復習一時間ということで、三時間を計算の単位にして単位数を数えておるのでありますが、実際はその中で講義の時間数、実習の時間数というのは、一時間でございます。三分の一でございます。そういう関係から、新制大学で専門科目に力を入れましてさえ、戦前に比べて三、四割低いという実情であります。そこで、この専門科目の充実ということをどうしても考えていただかなければ、実際界の要求するような内容大学生ができ上らないということであります。それから、学外実習にしましても、現在工学部学生の中で、夏、工場実習をやっておりますのは、大体六割でございまして、しかもそれが任意であるというような状況が多いのであります。こういう点も、原則として正科にして、もう少し実際の経験を経た学生を送り出していただきたいというようなこと、それから、そういう意味からいいまして、専門科目というものも必要でありまして、ことに中小企様では、専門科目もすぐ間に合うものを要求いたしておりますが、しかし、さりとて、基礎科目はそれではいいかげんでいいかと申しますと、これも大企業におきましては、やはり基礎のしっかりしたものを送り出してほしいというような要求もまた強いわけでございます。しかし、両方を同じ大学で一人の人間に十分にやれということはむずかしいと思いますから、大学がそれぞれ特徴を出して、ある大学は専門科目に力を入れる、ある学校は基礎科目の方に重点を置く、こういうことになりますれば、業界の方は、その大学特徴に応じてその学生を求める、こういうことになろうかと思うのであります。  あとは高級技術者大学と業界との関係というようなことでございますので、省略させていただきます。  以上、主として私の方から出しました意見書について御説明申し上げました。
  8. 有田喜一

    有田委員長 ありがとうございました。以上をもちまして、参考人の御意見の開陳は終りました。  これより質疑に入るのでありますが、実は稲田文部次官が見えているのですが、正午より事務次官会議がありまして、文部省主宰の議を説明しなければならないということでありますので、十二時には退きたいということでありますので、稲田文部次官に質問のある方は、関連質問なりその他の形において、正午までに質問していただきたいと思います。  それでは、通告に従いまして質疑を許します。前田正男君。
  9. 前田正男

    前田(正)委員 それでは、文部次官に対する質問だけを先にしまして、あとはまた一つほかの方が終りましてからでもさせていただきたいと思います。  文部次官にまずお聞きしたいと思いますことは、文部省調査局で技術者の計画養成調査中であるというような、先ほど参考人お話がありましたけれども調査をする、しないにかかわらず、現在、今年も去年もでありますが、ことに今年はひどいのでありますが、技術者が非常に足りないということは事実でありますし、今後の日本の発展していく経過からみましても、工業関係方面産業でありますとか輸出であるとか、こういうものが相当発展していく、その発展の度合いは政策によって相当違うと思いますが、とにかくその方が伸びていくということは間違いないと思います。こういうような現状でございますから、当然認否を待たないでも、技術者の、要するに理工関係の教育計画というものをこの際変更しなければならない。実は正面切って言えば、文部省教育計画に誤りがあって、今まで担当された方の責任問題にもなってくるのではないかとわれわれ思うのでありますが、しかし、そういうことを今さら申し上げても仕方がないと思うのでありまして、今年のようなこういう結果を来たして各方面で非常に困っている、こういうようなことでは、今後の日本の発展にも非常に支障を来たすと思うのです。早急に調査調査で完璧を期される必要はあると思うのでありますが、早急にこの際改めなければならない。特に来年度の予算においてこれが充実についての御抱負をお打ちであると思うのでありますが、それについて文部省の方針を一つお聞かせ願いたいと思います。
  10. 稻田清助

    ○稻田説明員 ただいまの前田委員の御質疑の点につきましては、文部省といたしましても、科学技術教育振興の重要な点として、従来も考えて参ったわけでございます。経済界の要請に即応いたしますような定員の充足という問題でございますが、事、国立大学とその他の大学と分けて考えざるを得ないのであります。国立大学につきましては、御承知のように、年々の入学定員約五万でありますけれども、いわゆる法経文系統は一万、すなわち五分の一にとどめておりまして、従来とも拡張いたします面は、理工農医系統のいわゆる技術系であったのであります。ただ、大学が今、形成途上であり、内容充実ということを先といたしませんと、いたずらに量をふやしましても、教育内容を伴わないうらみがございますので、充実を先として、やむにやまれぬ技術方面の拡張ということで参った次第でございます。一方、私立大学その他につきましては、文部省として、直ちに定員を左右するような指示命令はできないのでありますけれども、一面御承知のように、理科教育設備の助長であるとか、あるいは私立大学のみに限って、科学基礎設備充実の助成とか、そういう点につきまして着手して参ったわけでございます。ただいま御質疑のさしあたりの措置でございますが、これはもちろん政府部内で今、予算編成の内部的検討中でございますが、文部省立場といたしましては、十幾つの技術系統の学科の新設、また既存の学科につきましては、設備その他の状況をもって許容し得る限度においての学生増募ということを予算要求中でございます。産業経済五ヵ年計画等ともにらみ合いまして、今後ともそういう点を充足することを文部省の主要方針に考えております。
  11. 前田正男

    前田(正)委員 次官のお話の点は、科学技術庁においても取り上げられ、過日この委員会において、科学技術庁の長官からも、科学技術教育はぜひやらなければいけないというふうに主張せられておった点でありますので、文部省も協力していただき、閣議に大きく発言していただいて、さっそく来年度の予算に幾らかでも実現するように、急場の対策について努力していただかなければならぬことだと思いますが、将来の計画も一つこの際十分にお立てを願って、やっていただきたいと思います。こまかいことは局長の方に質問いたすことにいたしまして、この際もう一つ次官にお聞きしたいと思いますが、先ほど参考人からも話が出たことでありますけれども、留学生の問題であります。これは日本から出ていきます留学生も非常に不十分でありまして、この点については科学技術庁の方でも各官庁の留学生をふやすように申しておるようでありますけれども、何といいましても、その中軸になるのは、文部省の派遣する留学生であると思います。この方面について、一つ来年度の御構想をお聞かせ願いたいと思いますことと、もう一つ、われわれも今度原子力関係で回ったのでありますけれどもアジア方面に行きましても、各地で日本の方へ留学したいという希望者が非常に多いのであります。この日本の方でアジア方面の諸君の留学生を引き受けようということに対する文部省の来年度の御方針と、二つをお聞かせ願いたい。
  12. 稻田清助

    ○稻田説明員 ただいまの点でございますが、お話のごとく、一方わが国科学技術者が海外に参りまして研究いたしますことは、目下の情勢では非常に大事だと考えまして、年々在外研究員の費用を計上していただいておりますが、現在のところ、長期、短期に滞在いたします者約三十人、往復の旅費を与える者と合せますると全体で百四、五十名に上るのでございますけれどもお話のごとく、不十分でございますので、目下政府部内でいろいろ研究いたしております明年予算の編成におきましては、文部省といたしましては、この数をさらに増大いたしたいと念願いたしておるわけでございます。  次に、受け入れる留学生の問題でございますが、一つは、留学生に対して日本教育を修得せしめ、日本のいろいろな国情、風習になれさせる意味合いにおきまして、東西の両外国大学に留学生別科というものを設けて、その点の充実をはかっておりまするし、また国費をもって留学生受け入れの費用を計上いたしておりますことは御承知の通りでありますが、明年度におきましては、さらにこれを拡充いたしまするとともに、お聞き及びと存じまするが、国際学生会館というような性質のものを建設いたしまして、留学生の日常生活を適切ならしめたいという考えでおります。
  13. 岡良一

    ○岡委員 関連してお尋ねをいたします。先ほど稲田さんの御答弁では、国立大学に関しては、入学の定員は四万程度理工農医であるというふうなことであった。この資料を見ると非常に少いことになっております。私の聞き間違いだと思いますが、いかがでしょう。
  14. 稻田清助

    ○稻田説明員 私は、五分の一の一万が法、経、文であると申し上げまして、残りが全部とは申し上げなかった。その内には教員養成がございます。これが二万一千。従って、純粋の理工農医といわれますものは一万七千前後であろうかと思います。
  15. 岡良一

    ○岡委員 この日経連の中山さんからいただいた資料では、一九五五年には大学卒業者が八万五千ある。ところが、法文経が六万一千で理工農医等主として技術関係が二万四千余であるということでありますが、問題はなぜ日本国立大学なり私立大学を通じてこのように法経文の方に多くの卒業者が出ておるのか、いわば日本の若者には、こうした私の方からいえば広い意味におけるサービス業ともいえるサービス的な分野における卒業生が多くて、技術的な分野における卒業生が少いという、この根本の原困は一体どこにあるのだということが私は問題だと思うのです。稻田さん、あなたは長く大学の問題に携わっていらっしゃいますが、どういうふうにお考えですか。
  16. 稻田清助

    ○稻田説明員 非常にむずかしい問題だと考えております。文部省で調べておりまする国、公、私立全部を通じて、純粋に法経文というものは四〇数%、五〇%以下だと思いますが、あえて数は争わないのでありますが、要するになぜいわゆる法経文系が今、国、公、私立をおしなべての上において多いかと申しますと、一つ国立においてはそうでないのでありますけれども私立学校の経営の問題であろうと思います。理科方面設備をすることは非常に経費がかかります。そういう意味において、これを何とかいたしますのには、特に理科方面の助成が必要であるということで、先般来その道を一歩進めてきたわけでございますが、そこに非常に大きな問題がありまするのと、一つは、御承知のように戦前、戦中、戦後を通じまして、工業界は一上一下、非常に波乱が多いのであります。技術者というのは非常に部面が限られております。融通がつきません。従って、長い見通しの上において技術者養成を計画いたしますということは、非常に困難であります。これに反して、事務の方は、法律であろうと経済であろうと経営経済であろうと、割合に融通がつきます。その意味合いにおいて、おそらく今までの学校経営者なり当局としては、法経文の方は長い計画が立てやすいけれども、特に科学技術方面については、いわゆる経済五ヵ年計画というようなものがじっくり足をおろして、その上に成り立つのでなければ、非常にむずかしい問題であったと思うのです。文部省の経験においても、戦後の繊維産業が非常に勃興したときに、ずいぶん御鞭撻も受けましたけれども、その通りもし入れておったとしたならば、その後においては、あるいは今日においては、供給過剰になる。このむずかしさを、文部省ばかりでなく、国会においても、政府全体においても、計画的に考えていただくということが、問題打開の根本であろうと思います。
  17. 岡良一

    ○岡委員 ただいまの次官の御説明によると、要は、特に私立大学においては、予算の関係上、教授、施設等についての難点があったということが一つ、いま一つは、日本の経済が波動的であり、いわば不安定であったために、技術系統の方向に学ぶ人たちが少なかったり、また学校としてもそういうものを経営をしておる以上は、増設をするということに難点があった、こういうふうな御説明のようであります。そこで、予算のことはもちろんその通りだと思いますが、しかし、第二点の問題は、これは意見に相なりますけれども、長い戦争の間における日本の立ちおくれが、特に科学技術において大きかったであろうということは、原水爆の洗礼を受けたわれわれとすれば、常識的に知っておるはずだと思う。でありますから、国の施策としても、やはりこの科学技術の立ちおくれを克服するということが、教育の上における大きな方針でなければならなかったと思うので、第二点の次官の御説明は私は納得できない。  もう一つ、これは中山さんに私お尋ねいたしたいのですが、ともすれば、民間経営においては、技術部門というものは軽視される傾向にあるということです。これは、私は医者の方の関係でありますが、まさしく軽視されておる。そういう関係で、技術部門の軽視ということが、従って、科学技術が今、非常に必要であるというので、太鼓をたたいておるけれども日本の経営の側に、科学技術者の処遇あるいはその他万般について、非常に軽視する傾向があったという点を私は感じておるのですが、中山さんいかがですか。
  18. 中山三郎

    中山参考人 ただいまのお尋ねに対しましては、私官庁の関係は存じておりませんから何とも申し上げられませんけれども、民間企業につきましては、私の方でトップ・マネージメントの調査をいたしたことがあります。その調査の結果によりますと、技術関係の大学を出ました人で、現在重役になっております者が三割をこえております。むしろ民間企業の方が、官庁よりは技術系統を重視しておるのではないか。特に最近では技術系統の方で社長になっていらっしゃる方も何人かあげることができると思います。また業種にもよりますが、技術系でなければなかなか重役になれないというような会社もございます。
  19. 有田喜一

    有田委員長 志村君。
  20. 志村茂治

    ○志村委員 文部次官にお尋ねしたいのですが、私ことしの秋にソ連に参りました。モスクワ大学あるいはレニングラード大学などへ行っていろいろ留学生の事情を聞いて参った。そのときに、モスクワ大学でも、少くとも六十の民族から留学生が来ておる。現在モスクワ大学外国学生が行っていないのは、アメリカ日本だけである。しかし、そのアメリカも、留学生の協定は結んでおる。協定さえ結んでおらないのは、世界で日本一ヵ国である。従って、国交が回復しておるとか回復しておらないということは問題でない。もちろんこれは学問の性質で、そうあるべきであろうと思うのですが、何ゆえ日本だけが留学生の協定を結んでおらないのか、その点をお尋ねしたい。
  21. 稻田清助

    ○稻田説明員 私もちろんその間の消息を知り尽しているわけでございませんけれども、結局今までソ連日本との国交関係の問題、従って、その裏づけをいたします外貨の問題等が障害をなしてこういう状態であったのだと思っております。日本の学界におきましても、わずかに先年学術会議から先方に参りましたのを第一着手といたしまして、だんだん学術交流というものが開けかけている機運でもあり、また最近共同宣言ということになりましたので、今後は大いに学術交流もできると私どもも期待いたしておるわけであります。
  22. 志村茂治

    ○志村委員 それでは、ただいまのお言葉で、少し飛躍するかもしれませんが、文部省は、国交回復するといなとにかかわらず、できるだけ早くソ連との留学生の協定を結びたい、こう解釈してよろしいのですか。
  23. 稻田清助

    ○稻田説明員 学術は天下の人類共通のものであり、学術の交換はその点において念願すべき問題だと考えておりますので、学術という見地に立ちましては、こういう思想を中心といたしまして、その他周辺の障害というものが排除せられるに従って、その理想が達成せらるべきものだと私どもは考えております。
  24. 志村茂治

    ○志村委員 もう一問お尋ねしたい。ただいま参考人二人の御意見の中で、実業の高校をを六年制にして、いわゆる普通の中学校の段階からその過程に入れるという話でありますが、大体中学までを国民義務教育にするということになれば、いわゆる文化国家として、その程度のレベルの普通教育は必要であろう、こういう建前になっておる。ところが、今度は実業教育を下に三年延ばすことは、同時時に普通教育が幾分足りなくなるのではないか。言いかえれば、この実業高等学校へ入った人は、普通教育国民一般のレベル以下であるという結果になりはしないかと思うのですが、この点のお考えを一つ伺いたい。
  25. 稻田清助

    ○稻田説明員 非常に技術的な問題でございますが、一つは、今、義務教育のうちに与えられておりまする職業という教科がございますから、職業という教科の教え方にもよるのであります。今、職業の教科におきましては、各個人の適性が何であるかということを実際いろいろやらせてみて伸ばすという面もございますし、あるいは一般に今の日本の職業界がどういう状況であるかという情報を経験として与える面もございますし、また一面実際にそれぞれ専門的の技能を修得する部門もございますが、これをどうあんばいするかによりまして、相当目的が速成できるのじゃないかと思っております。
  26. 前田正男

    前田(正)委員 もう少し時間があるようですから、次官にお聞きしたいと思うのですが、技能者養成の問題について、先ほど単行法を作ってやっていかなければいけないということが出ているのでありますけれども、こういうふうな労働行政の立場からの一つの考え方に対して、文部行政的な立場から、職業教育に対する考え方、いわゆる技能者養成という考え方について、どういうお考えを持っておられるか。これは労働基準法に基いた技能者養成制度を単行法で強化していくような線に文部省の方のお考えは合致しておるのかどうか、その辺を一つお聞かせ願いたい。
  27. 稻田清助

    ○稻田説明員 文部省の関連いたしまするいわゆる学校における教育と申しますのは、今さら申し上げるまでもなく、個人が伸びて参ります素地を与えること、また職場に出ますに必要な経験、技能を与えること、ここに目的があると考えております。職場に出ました上において、職場に適した教育を与えるということは、もちろんわれわれの範囲内であり、われわれといたしましても、そういう教育がその領域において発達することはけっこうだと考えておりますが、ために学校における教育が短縮いたしましたり、あるいは逆にその影響を及ぼされることについては、十分慎重に考えさせていただきたいと思っております。
  28. 前田正男

    前田(正)委員 先ほどの問題の点はここなんですが、定時制高校と通信教育とを結びつけて、高等学校の終了の資格を付与するというような考え方に対して、文部省は、どういう考えを持っておられるかということです。
  29. 稻田清助

    ○稻田説明員 職場にある方々が、いわゆる勤労者教育定時制なり通信教育で受けるという目的については、二つあると思うのです。一つは、教育の機会均等という意味合いにおいて、上級の学校に入ります基礎的の実力と資格を得たいという目的。いま一つは、その職場、生活に必要な技能を技能として修得したいという目的。従いまして、すべてその第二の目的にしてしまえば、いわゆる教育の機会均等という意味において、上級学校に入りたいという青年の希望は遂げられないと考えております。従って、文部省の所管いたしまする定時制高校あるいは通信教育は、一応あくまでも高等学校教育の完全を期する建前に立たざるを得ない。そして、勤労者青年という特殊性をそれに加味するのがその所だと考えております。その本旨を曲げて、一方的に技能修得という教育ばかりに走るような点につきましては、ちゅうちょせざるを得ないだろうと思っております。
  30. 前田正男

    前田(正)委員 この際、科学技術庁にまずお聞きしたいと思いますが、科学技術庁は、過般来、科学技術教育振興するということをきめられ、強く政府に要望されて、政府部内で努力をしようとされておるのでございます。それについての具体的な科学技術庁意見と、もう一つは、科学技術庁の中にありますところの科学技術審議会が、この科学技術教育について、部会をもって推進しようとしておられるわけでありますが、その現状、この二点を簡単に一つ御説明願いたいと思います。
  31. 篠原登

    ○篠原説明員 お答え申し上げます。科学技術振興のために、科学技術教育が非常に大事であるということは、前々からここでも論議されたところでありまして、科学技術庁が発足いたしましてから、教育の面で何とかこれを普及強化いたしたいと存じまして、特に科学技術審議会におきましては、科学技術振興科学技術教育強化普及という題目につきまして、審議会の決決議を行いまして、これを総理大臣及び関係各省大臣に要望をいたしました。それと同時に、科学技術審議会の中に特に科学技術教育都会というものを設けまして、これが対策につきまして、しばしば部会を開催して審議をいたしました。まだ最後の結論は出ておりませんけれども、あるいは大学教育問題、あるいは先ほどお話のような高等学校以下の教育の問題、その他全般にわたりましてただいま審議中でございますが、急ぎますので、とりあえず昭和三十二年度の文部省の予算編成に当りまして、次のようなことを特に文部省あるいは大蔵省に御要望した次第でございます。  その第一は、最も緊急を要しまする電子工学あるいは原子力関係等の新しい技術に対する技術者養成に必要な講座の増設及びその内容充実をはかっていただきたい。ただ講座を増設するだけではいけませんので、あるいは設備の面、教授陣の問題におきましても、その内容充実をはかっていただきたいという点であります。  第二点は、講座研究費、教科研究費の増額並びに在外研究員費の増額、それと同時に、承わりますと、大学関係あるいは文部省研究関係におきましては、補助員が非常に少いということを伺っておりますので、補助員の充実ということを要望いたしました。  第三点といたしまして、国立、公、私立大学並びに研究所の諸設備の更新整備、だいぶ設備等も古くなっておるやに承わっておりますので、それを更新し、さらに整備をしていただきたいということでございます。  第四点は、教授用の諸器材の充実、これは当然でございますけれども大学におきまして、どうしても設備が足らないのでありまして、それらの充実をはかっていただきたい。  かような四点につきまして、文部省、大蔵省に科学技術審議会の会長の名前をもちまして、御要望した次第でございます。
  32. 前田正男

    前田(正)委員 大蔵省の主計官が御出席だと思うのでありますけれども、ちょっと主計官にお聞きしたいと思いますことは、この科学技術庁の設立に当りまして、科学技術庁で取り上げましたものは、各省の意見を総合調整してやるわけでありますから、その意見は極力尊重するということを、閣議でも大臣、また国会の審議においては政務次官が、大蔵省を代表して御答弁になっておる。先ほどお話を承わると、科学技術庁の方で、各省の意見を反映したところの審議会におきまして——もちろんこれは大蔵省も出席されておると思うのでありますが、大体適切な意見をまとめて、来年度の科学技術教育振興として大蔵省に要望しておられるようであります。こういうことに対しまして主計官が査定されるに当りまして、こういう要望を尊重されて査定していこうというふうなお考えがあるかどうかということを、一つお聞かせ願いたいと思います。
  33. 相沢英之

    ○相沢説明員 大蔵省といたしましても、従前から科学技術系統の経費につきましては相当配意して参ったつもりでございまして、その科学技術系統の経費の一般予算に対する割合も、たとえば昭和二十五年度には〇・七%、四十三億でありましたものが、三十一年には一・三%、百三十四億というような状態になっているわけであります。三十一年度におきましては、御案内の通り、原子力関係の経費あるいは国際地球観測年に伴う事業費というものが特に大幅に増額しているわけであります。科学技術庁からただいまいろいろ御説明がありましたが、電子工学その他主として大学における研究スタッフの充実あるいは研究経費の増額について御要望が出ておりますが、私は科学技術関係のうち、文部省の方を担当しているわけでございますが、こういう御要望の線につきましては、十分要求の内容を検討して、善処いたしたいというふうに考えております。
  34. 前田正男

    前田(正)委員 今のお話の通り、科学技術関係の予算は、非常に毎年政府部内または大蔵省等の御考慮によって、パーセンテージと絶対額がふえていることは事実です。しかし、その点については、よくお含みおき願いたいと思うのでありますが、わが国は非常に科学技術がおくれておりまして、しかも海外に、御承知の通り、ライセンスその他で七十億という多額の金を払っている。しかも諸外国のパーセンテージは、大体予算の三%であります。わが国は三%に満たない状態であります。絶対的な金額も非常に多いし、諸外国は非常に進んでいながら、しかも日本よりも高率の予算を出しているということ、これは一挙にはいかないことでありますから、その点は一つお含みを願って、逐次科学技術方面に力をいたしていただきたいということをお願いしておきます。  それから、先ほど来、文部次官に対しわれわれもいろいろ質疑を尽し、また参考人からもいろいろの貴重な御意見が出ているのでありますが、その中で特に問題の点を集約いたしますと、技術者——とにかく科学技術方面の人が足りないということが明瞭になってきました。しかも、これは今後の日本の発展上からいっても足りない。そこで、今、講座をふやすとかなんとかいろいろと御意見も出ましたけれども、先ほど文部次官も、科学技術教育というものについては、来年度は十分に努力したい、こういうことであります。そこで大学の講座をふやすとかその他に限らず、科学技術教育の来年度の画期的な増大について、大蔵省としては、今の文部次官のお話その他参考人お話等を聞かれて、これを十分に配慮しておやりになるお考えであるかどうかということを、一つお開かせ願いたいと思います。
  35. 相沢英之

    ○相沢説明員 先ほどもお答え申し上げました通り、私は現在文部関係だけをやっておるのでございますが、そのほかに、科学技術庁関係の経費あるいは通産の科学技術系統のいろいろな経費、こういうものもございます。文部省の関係の経費につきましては、現在文部省からいわゆる科学研究費の増額、在外研究費の増額、また国立大学の関係におきましては、主として科学技術関係の学科の増設、整備、講座の新設、その他相当大きな御要求がございます。私どもまだ事務的にこれを検討している段階でございまして、また大蔵省といたしましても、その最終的な態度を決定している段階でございませんので、まだ詳しく申し上げる時期に至っておりませんのは遺憾でございますが、ただ一つ問題がございますのは、やはり相当増員の要求がこれに伴っているわけでございます。すでに内閣におきまして、できるだけ一般の国家公務員については増員を見合せようというような話もございますので、それとの関係をどのようにさばいていくか。一方大学の中におきまして、相当多数の教授、助教授の欠員もございます。これとの関係をどのようにさばいていくか、そういった点につきましても問題がありますし、また来年度相当大幅な減税をやることになるといたしますと、必ずしも一般会計の財源としては十分なものは期待できない。そのワク内でどの程度こういう経費を考えるかという点につきましては、いろいろ他の経費とのバランスもあると思いますが、この科学技術系統につきまして、その経費を増額するという御要望は、相当程度強く、また客観的に見てもその必要があるかと思われますので、その点につきましては、私どもといたしましても、十分検討していきたいと思っております。
  36. 前田正男

    前田(正)委員 これで質問を終りたいと思いますが、今のお話は、まことにけっこうなことで、われわれもぜひ御努力願いたいと思います。ただ、一つ、この科学技術教育の中には、大学とかいうもののほかに、産業教育振興法とか、先ほど出ました技能者養成関係の方とか、こういうものについても、できるだけ御配慮をお願いしておきたいと思います。  それから、この際、大学学術局長に一点だけ御質問しておきたいと思いますことは、科学技術教育の拡大というために、技術者をふやさなければならないという一つの点として、私最近見ておりますと、技術者の諸君が新しい分野でありますいわゆる経営——工場でいえば企画とかそういう経営関係、あるいは原価計算の方面だとか、いわゆる事務的な方面、商業の方面、マーチャント・ユニオン、こういった方面にいわゆる技術者の分野が非常にふえてきておる。特に行政方面におきましても、技術出身の方がだんだんふえてくる、こういうことなって参りますと、こういう方面の諸君を教育する学科というものは、実は日本では非常に少い。ところが、これは、特にアメリカは非常に早くから、テーラー・システム以来非常に発達しまして、アメリカの工科大学はどこに参りましても、経営工学と申しますか、生産工学と申しますか、こういう立場の学科は、どこにでもあるわけであります。日本の工科大学にはごくわずかしかない。逆に商科大学にあるということになっております。私、この方面教育をやっているのを見ておりますと、初めの四年間のうち二年は、一諸に教育をやっている。あとの二年間は、技術的な方面は、見学とか多少実習をやっておりますけれども、経営方面教育をやっている。そういう点を見ておりますと、あまり設備とか金はなくても、急速にこの方面の学科をふやしていくのはふやしやすいのではないか。一般の理科とか、工科とかいう大学制度をふやすよりも、こういう方面の人をふやす方がふやしやすいのではないか。しかも、日本の国内における卒業者の行き先がはっきりしないときには、文部省としてもいろいろお考えだったと思うのですけれども、今申しました通り、行政官の方とか、会社の経営とか、あるいは企画とか、こういう方面の現場を担当する人とか、あるいは事務を担当する技術者という方面の諸君には、当然その程度教育で十分であると思うのです。ただし、これを商科大学の中においてやっているのが日本でありますけれども、これはなかなかうまくいかない。私自身の経験からいたしましても、それはうまくいかない。やはり一緒に工科の教育を受けて、工科の卒業生としてこの問題に当っていかないと、初めの基礎教育というものを工学的に受けていないとできませんし、それから、そういう方が、特に対外的に、たとえば工場に入りまして、自分の部下の職工というような人とつき合うときにも、工科出身でない人とは違いますし、それから海外に出て行きまして、商売をやるときにも、技術出身でないと違うし、あるいは行政官に入られても、工科出身の技官として入っておられると、担当される仕事もまたその方面として多いというようなことで、やはりこの方面の学科というものは、一つ大学専門教育的なところを急速にふやされるようにお考え願うということが、今の技術者不足の急場の解決として、非常にいいのではないか。せっかく設計も尾できる、機械の十分な研究もできるというような人を、どっちかというと、事務的な方面、経営方面にさいて回しているという現状でありますが、アメリカの方では、大体そういう方面のいわゆる経営学科的な方面を出た人が経営の仕事、企画の仕事というものを大体担当しておられるようであります。そういうふうな点を一つお考え願いたいと思うのですが、局長のお考えはどうかということをお伺いいたしたい。
  37. 緒方信一

    ○緒方説明員 私、お断わり申し上げておきますが、先般、大学学術局長に就任したばかりでございますので、本日は御意見を承わりまして、今後の検討研究に資するように、御指導を願いたいと思います。  来年度の計画といたしましては、まだそういう方面に手を伸ばすということは考えておらぬのであります。今後十分研究いたしたいと思います。
  38. 有田喜一

    有田委員長 岡良一君。
  39. 岡良一

    ○岡委員 お二人の参考人の方からは、一々まことに肯綮に当る御意見を聞かしてていただいて、非常に勉強になりました。結局、御意見を総合すると、まず国の立場からは、制度的にも予算的にも、もっと科学技術教育振興するようにしなければならないという点が、特に多くあったようであります。そこで、私は先ほども稻田次官にお導ねいたした点でありますが、現在、日本大学卒業している人は、いわばサービス的な分野の人が多くて、技術的な分野の人が非常に少いという状況なのであります。このごろは、受験地獄に重ねて就職地獄ということで、こういう傾向は、子を持つ日本の親にとっても、非常に遺憾な点なのでありますが、その点何とか具体的に、この技術分野の卒業生を多くふやして、日本の若者に、技術者としての教育を与えていくという方針については、大学学術局長として、あるいは文部省として、来年度以降具体的な何か御方針があるのでございましょうか。
  40. 緒方信一

    ○緒方説明員 先ほど次官からもお答え申し上げた中にございましたが、国立大学の面におきましては、学科、講座の増設等を、特に理工科の系統の面を中心といたしましてはかりたい。それから、学生の点につきまして、増員の点につきましても、理工の面について十分な力を入れていきたい、こういう考え方で、予算の要求を出しておる次第でございます。なおまた、私立大学の関係につきましては、これも先ほど次官が申し上げましたように、やはり理工系方面充実しますことにつきましては、設備施設等の関係につきましても経費を要しますので、その点に対しまする助成の方法強化していきたい、かようなことで計画をいたしているような次第であります。
  41. 岡良一

    ○岡委員 量の問題は今後の問題でありますが、質の問題であります。たとえば、御所管の国立大学などを見ましても、古い医科大学であるとか、その町には高等師範学校もある、高等工業学校もある、薬学部が医科大学に付設されておる。そうすると、高等学校がそのままほとんど似たような教授陣で法文学部になっておる。あるいは似たような教授陣でこれが教育学部になっておるというような形で、一応国立大学ができた。新しい相当知名な士を迎えて学長にする。そうして、国の方でもいろいろ予算的にも内容充実に努めておられることは、私どももわかっておりますが、まだまだ現在の国立大学は、私はやはり全国的に見て、ユニヴァーシティとしての内容を、教授陣においても研究施設等においても、十分備えてないんじゃないかという、率直なところ、うらみを私は感じておるのでございますが、あなた方の目から見られていかがなんでしょう。
  42. 緒方信一

    ○緒方説明員 先ほどお答え申し上げましたように、私自身といたしましては、就任したばかりでございますので、各大学実情を十分把握しておりませんので、これから、各個につきましては十分検討いたしたいと存じております。全体から申しまして、今、御意見のように、十分でないうらみも多分にあると存じますので、順次特色を生かしつつ充実していくというようなことに努力していくべきであろうと存じております。
  43. 岡良一

    ○岡委員 中山さんの御意見にもあったように、いわゆる中級技術者養成としては、私ども率直に見て中学五年を出た者が高等工業三年を経るというような形の制度が、中級技術者養成には非常にもってこいではないかと思う。そういう点で、やはり中山さんの御意見のような制度の方向へ、御要求のような方向へ制度を変えていくことが、技術者の量的な充実をはかるという面では、非常に適当な方法ではないかと私は思うわけです。なお、何と申しましても、技術の立ちおくれをわれわれは克服しなければなりません。そういたしますると、やはり海外に出て、広く進歩した先進的な科学技術の関係を研究をし、身につけて帰っていただく、そういう若い学徒の人たちを非常に私たちは必要とするわけです。戦前と戦後で文部省直轄の海外留学生の数はどのくらいのことになっておりますか。
  44. 緒方信一

    ○緒方説明員 戦前戦後の比較でございますけれども戦前は、一番多いときには、年間百五十人くらい出たという時期もあったかと思います。戦後におきましては、先ほど次官も申しましたように、国費のみならず、ほかの海外資金等によって出る者もございますので、それら全体を加えますと、相当の多い数字になるかと思いますけれども、国費の関係の在外研究費といたしましては、昨年度は三十名でございます。
  45. 岡良一

    ○岡委員 とにかく私ども学生時代は、高等学校の先生でも、かなり長期先生を勤めておられれば出かけられるし、大学の先生なんかは海外出張の機会が非常に多かったわけです。ところが、今は旅費は自分持ちで行こうとするのでも、外貨の獲得その他で目の色を変えて、非常な激甚な努力の果てに、やっと辛うじて運のいい人がそのくじをつかむというような状況なのです。これは、よく皆さん御存じのところだと思うのですが、もう少し海外出張という点で、予算的に努力をしていただく。もちろん、海外出張も、先ほどアメリカの話もされましたが、東南アジアの国でも、相当ヨーロッパの国なんかに学生寮なんか作っているところがあるのですよ。そういうところへ行けば、経常費も安くなりましょうし、飛行機賃が高ければ、引揚者がいなくなったら、日本の船で持っていったっていいわけです。何かかなり思い切った施策で、向学心に燃える日本の若い教授や研究生の諸君を海外に持っていくという、思い切った手段が私は必要だと思うのですが、いかがでしょうか。
  46. 緒方信一

    ○緒方説明員 先ほど御説明申しました在外研究員の予算につきましては、ただいま大蔵省にお願いをいたしまして、折衝中でございます。増額を要求しておる段階でございます。また、ただいまお話のございましたようなほかの面につきましても、いろいろ検討いたしたいと思っております。
  47. 岡良一

    ○岡委員 とにかく戦前は百五十名、私が先般調べたところでは、二百五十名程度と記憶しておりますが、今、全国で約三十名、全くこれは問題にならない。十年の立ちおくれを回復するには、むしろ戦前以上なものを持っていくくらいな力こぶの入れ方が、私は必要だと思うのです。どうです、大蔵省の方では、相沢さん……。
  48. 相沢英之

    ○相沢説明員 ただいま大学学術局長から答弁がございましたが、私も戦前の様子はあまりよく存じておりませんが、相当数の人が留学しておったことは事実でございます。戦後は、多少記憶がはっきりいたしておりませんが、在外研究員の旅費といたしましては、二十七、八年までは大体二千万円であったのでありますが、二十九年に六千万円にふやし、現在三十一年度予算では七千万円程度になっております。そこで、やり方としましては、一年ぐらいの長期の留学生と、それから三月程度の短期の留学生、これは全額国費をもってやる。それから、そのほか、外国からの招聘あるいは交換等によりまして、行く人たちの片道の旅費、つまり向うが滞在費及び片道の旅費を持つという、そういうものに対する片道の旅費を支給する。そういうものをひっくるめてみますと、実績では、たしか二十九年、三十年では、百名をこえて、百二、三十名程度のものになっておるかというふうに承知しております。多少数字はあれかもしれもしれません。そのほか、これは戦前にももちろんあったかと思いますが、戦後におきましては、御案内の通り、あるいはガリオア資金とか、あるいは現存ではアメリカのフルブライトとか、ドイツのフンボルトとか、そういった資金によるところの留学生がございます。その他、向うの財団組織からの招聘というようなものもありまして、実際の数としましては、この百二、三十名というものが相当多くの数になっておるというふうに承知しております。これは、聞くところによりますと、あまりたくさん先生が行かれたので、大学の授業が半ばストップしておるというようなところもあるというふうに聞いておるのであります。これはやはり国費で見る分が少いために、外国からとにかく金がもらえれば行こうという傾向があるために、一部に片寄った現象として現われているせいかもしれないと承知しておりますが、そういった点もあわせて考えなければならぬと存じております。なお一つは、戦時中及び戦後におきまして、ほとんど海外には行っていない。そのために、当然行くべき人が願番がおくれまして、結局十年以上ずれておる。そういう、いわば、たまっているところがあるものですから、なかなか新しい教授、助教授の方が行かれないといったような実情もあるかというふうに聞いております。こういった面は、もうしばらくいたしますと、ある程度解決されていくのじゃなかろうかというふうに考えております。なお、科学研究費自体や、在外研究長の旅費の増額につきましては、十分検討を加えたいというふうに考えております。
  49. 岡良一

    ○岡委員 とにかく先ほど稻田さんも言われたように、科学や文化に国境はないのですから、やはり国際的な協力の姿で、できるだけ日本の若い、まじめな研究意欲を持った方に、進んだ国の科学技術に触れる機会を与えることは、日本科学技術振興の大事な一つのてこだと思うのです。そういう点で、御努力を願いたいのです。  それから、先ほど来、昭和二十五年には科学技術教育の予算が四十三億で、それが昨年は百三十四億であった、こういうお話でございますが、これは斎藤さんもおられますが、他の国国における科学技術教育に要する予算が一体どの程度のものであり、その国の予算の何パーセントくらいを占めるものでしょうか。資料がたしかあったはずです。
  50. 齋藤憲三

    ○齋藤政府委員 資料を持ち合せまんが、必要ならばあとでお届けいたしたいと思います。
  51. 岡良一

    ○岡委員 官房長、持っておりませんか。科学技術全般の国の予算です。
  52. 原田久

    ○原田政府委員 予算の面は調査をまだいたしておりませんが、人員につきましては調べております。大学卒業者につきましては、これはアメリカのナショナル・サイエンス・ファウンデーションというところで最近出しました資料をもとにして作りました数字でございます。今から申し上げますが、この中には、比較対照の便宜上、医学関係を含んでおりませんが、それの数字を申し上げます。大学卒業者の年間数字でございますが、日本は、概数でございますけれども、二万人でございます。アメリカは五万九千人でございます。ソ連は十二万六千人でございます。それから、国民十万人当りの比率をとりますと、日本は三十三人、アメリカは三十六人、ソ連は六十三人ということになっております。なお、御参考といたしまして、学位を所有しております数を申し上げますと、日本は約五千人でございます。それからアメリカは十一万四千人であります。ソ連は八万五千人であります。国民十万人当りにいたしますと、日本が五人、米国は七十人、ソ連は四十三人、それから参考といたしまして、科学技術者の総数を申し上げますと、まあ科学技術者という定義が不明確でございますので、はっきりいたしませんが、わが国は別といたしまして、米国は百五十三万人、ソ連ば百十五万人、こういうことになっております。
  53. 岡良一

    ○岡委員 科学技術振興の全体の予算はありませんか。
  54. 原田久

    ○原田政府委員 各国の科学技術の予算でありますが、昭和二十九年におきまして、アメリカは官民合せまして一兆四千四十億円、それからソ連ははっきりは申し上げられませんが、八千五百億円見当でごいます。英国は三千三十億円であります。それから同じ昭和二十九年度におけるわが国は、四百七億円という数字でございます。
  55. 岡良一

    ○岡委員 今お示しの科学技術振興のために各国が支出をしているものは、国だけではなく、民間と合せた額ではありますけれども、しかし、この数字からでも、日本科学技術に対する努力というものは、予算的に非常に低調だということがわかると思うのです。しかもやはり日本の場合、国がその中心となり、またその推進力となって、科学技術教育の興振に大きな努力をする必要があろうということも、今のお話から一応結論づけられると思うのです。こういうことは、次の国会の予算に関する問題でありますので、これ以上触れませんが、制度的に見ても、予算的に見ても、国の科学技術教育振興に対する努力は、私は非常に足りないと存じます。  なお、この際、中山さんにお聞きしたいのでありますが、先ほど中山さんは、経営者の方においてもトップ・マネージメントの方にかなりテクニシアンが入っているというお話でございました。そういう事実は、私も承知しております。非常にいい傾向だと思って歓迎としておるわけです。ところが、そういう事例はあるとしても、一般的には、経営者側における科学技術の尊重というものに対する観念が低調でございます。というのは、これはいわば利益本位の形において尊重する面はたくさんあるのですが、そうではなく、広く科学技術一般に対する尊重の観念が日本全体に低調であるといえば低調でありましょうが、経営者の側には足りないのじゃないかという感じを私は実は持っておるわけです。この点にやはり日本科学技術振興の大きなきめ手が一つあるのではないかということを私は申し上げたいのですが、それはさておきまして、この科学技術というものが、日本の場合、ビック・ビジネスの中には、独自の民間の研究室が設けられて、どんどん先進的な技術が取り入れられ、研究が進められ、外国のパテントを買うという形で進められている。そうすると、そこにいわゆる中小企業が八〇%にも九〇%にも達しようとしている産業構造の中に、大きなひずみが技術段階に起ってくるということです。これを一体どういうようにして克服したらいいか。先ほど来御意見には触れておられましたけれども、具体的な触れ方がなかったと思う。これは非常に大きな問題だと私は思うのですが、そういう点について、日経連あたりで何か具体的なお考えがおありでしょうか。
  56. 中山三郎

    中山参考人 中小企業の技術水準の向上の問題でございますが、お話の通り、大企業の技術水準は、海外の新しい技術を入れるとか、それから国内でも相当人的にそろっておりますが、中小企業の方はその点が非常に不十分でございます。現実にそういうふうに私どもの方でも考えております。これは私の方の意見にもございますように、人的にはやはり中小企業に向くような大学生をできるだけ出してもらう。それから、企業の内部では、共同養成のような形で、単独ではできないところを、お互いの力でやる。しかし、それだけでは不十分でございますので、やはり政府なりその他で、一つできるだけ技術面についても援助をしていただきたい。たとえば、生産性本部でございますが、あそこあたりは、むしろ中小企業に対する技術援助という面に重点を置いていただきたい。大企業の方は、大体あそこのお世話にならなくとも、せいぜい外国を見てくる程度で済むわけでございますが、国内面の技術水準の向上という点について、生産性本部あたりができるだけの手を貸していただきたい。そういうような線に、ヨーロッパの生産性本部の運動は進んでおります。私どもも、そういうふうな線に、ぜひ動いていただきたいということを、生産性本部にも申しております。それから中小企業庁とか、そういう方面で技術的な点の援助を、ぜひやっていただきたい、こう思うわけであります。
  57. 岡良一

    ○岡委員 実は、この間生産性向上運動については、本部の中山さん、郷司さんあたりにも来ていただいて、いろいろ意見を聞いてみたのですが、やはり具体的な対策がなかった。きのう来た労働組合の代表の諸君は、この問題を一番強く指摘している。ただいまも例に引かれましたが、ヨーロッパの産業構造というものと、日本産業構造というものとは、問題にならない。ですから、こういう過多なる中小企業をかかえておる日本産業の構造の中で、ただ科学技術振興といって、国費を投じ、制度を改善することも、それはけっこうなんですが、しかし、その結果が非常に片寄った結果になって、そうして、日本産業構造の中に不測なひずみを起してくる、断層の状態を技術面に起してくるというのは、これは日本全体として好ましくない。こういう点について、清水先生、何かお考えはありませんか。
  58. 清水勤二

    清水参考人 この問題は非常にむずかしい問題でございます。ただいま中山さんの言われましたように、これは中小企業単独では非常に困難な問題であろうと思いますけれども、そこに同じ企業の組合活動というようなものを盛んにいたしまして、——組合というのは労働組合ではなくて、そういう技術振興を目標にした組合的な活動でありまして、そして全体としてその技術水準の向上をはかる。それに対して政府も十分援助する。こういうような方策がとられますならば、組織的に、各企業別に行われ得る問題ではないかというふうに考えております。
  59. 岡良一

    ○岡委員 これは齋藤さんにお尋ねをします。科学技術庁文部省が非常に御努力になって、日本科学技術というものの水準が高まっていく、このセンター的な、いわば科学技術のプールを設ける。このプールがやはり中小企業に開放されるというような道を講ずる。もちろんその受け入れ態勢として、今のような中小企業の信用組合的な協同組合をもっと脱却した、科学技術振興に目ざめた組合への指導をやっていく。こういう形で国と受け入れ側とのタイアップをやる。そういう接触点としての科学技術のプールというものは、どういう形になるのかわからないが、そういう構想を、齋藤さんはなかなか理想主義者だからお持ちだと思う。どうですか。
  60. 齋藤憲三

    ○齋藤政府委員 科学技術庁といたしましては、中小企業振興ということにつきましても非常な関心を持ちまして科学技術庁立場から、どうしたならば日本中小企業というものが、われわれの考えているような日本の繁栄の強固な基礎になるかということで、いろいろ論議を重ねているのであります。過日も中小企業庁の幹部に科学技術庁へ来てもらいまして、いろいろこの中小企業の実態ということについての話し合いをいたしたのでございますが、まだ日本では、日本産業構造図の中に、中小企業がどういう形でもって組み立てられているかという、はっきりした実態が現われてきておらぬのであります。それで、中小企業庁といたしましても、聞くところによりますと、三十二年度において相当の、予算を要求して、この日本中小企業の実態を業種別に、系列別に、区分いたしまして、そのありかをはっきりしたいということを考えているような段階なのであります。ただし、この中小企業庁が予算をとってそういうことをやるのがいいか、または府県別にその実態を調査せしめて、府県別に調べをする方が早手回しであるかというようなことは、国会においても論議になっているような実態であります。そういたしますと、この問題は、中小企業の繁栄ということを一口に言いますけれども、果して日本産業構造図にどういう形をもって占めているか、その中小企業がどういう業種別に区別されて、どれが一体将来伸びていくのであるか、将来進んでいくのであるかということは、なかなか問題であると思うのでありしす。それで、私たちといたしましては、中小企業庁になるべく早く、その中小企業の実態をわれわれが把握できるようにしてもらいたい。そうでないと、産業構造図というものがはっきりしてこないということで、この間も要求したのであります。もちろん中小企業というものは、われわれの考えからいきますと、日本産業高度化されるにつれまして、その中小企業の失態というものも非常に高度化され、複雑化されて、それが大企業との関連性または独自性、国内産業及び外国貿易に及ぼす影響というものは、千差万別であろうと考えているのでありまして、この点急速に中小企業の実態を把握いたしまして、これに対応する科学技術振興策というものを打ち立てていきたいと、今日寄り寄り協議をいたして、その早急な結論を得たいと努力いたしておるのであります。さようなのが現在の実情ではないかと私は考えております。
  61. 有田喜一

    有田委員長 岡君にちょっと申し上げますが、まだ質問の通告が、田中武夫君と石野久男君と二人残っております。時間もおそくなりますから、簡潔に願います。
  62. 岡良一

    ○岡委員 いま一点。中小企業に対する新しき科学技術の導入の問題は、やはり日本科学技術振興と不可分な、重大な問題だと思いますが、これが単にまだ実態の調査という段階であるということは、私どもも非常に遺憾に思うわけであります。しかし、それはそれといたしまして、産業五ヵ年計画という言葉が先ほど稲田さんからも出ておりましたが、経済建設計画と技術者需要というものは、これは不可分の問題です。ところが、政府の経済建設計画なんかを見ると、その六ヵ年なら六ヵ年に必要とする総予算というものが割り出され、その総予算の中で、厚生予算、文教予算というものを一括して、どれだけというふうに出されて、実際経済建設計画を進める過程に必要な技術者、それを供給するという形の教育体系というものは、全然見られないのです。私どもの見た文献では、文部省あたりでは、経済建設五ヵ年計画なら五ヵ年計画の場合に、年次別に必要なその技術者というものが計算されてくると思う。その技術者というものについて、やはり文部省文部省科学技術教育の計画の中に、その年次計画を入れて技術者の供給をはかっていくというような、緊密なコネクションが計画の立案にはあるのでしょうか。
  63. 稻田清助

    ○稻田説明員 まだ現在、文部省が年年予算を要求いたすその基礎といたしましては、産業五ヵ年計画というような年次計画と組み合せてやるというような段階ではありません。今後、科学技術庁あるいは科学技術審議会等ともいろいろ話し合いをして、そういう方向に教育が進められていかなければならぬと考えますが、現在におきましては、まだそういう段階ではありません。
  64. 岡良一

    ○岡委員 最後に一点。これは、両参考人の卒直な御意見を承りたいのですが、こうしていろいろ政府の方の側の御意見を承わっておっても、科学技術振興については、やはり科学技術庁科学技術庁の窓から文部省の窓に呼びかける、あるいはまた大蔵省の方でも、科学技術庁の予算査定、文部省の予算査定についてはこれは人も違えたりして経済建設計画をやるけれども、それに必要なる科学技術者の養成についての計画というものは、全然まだ十分でない。こういういわばセクショナリズムのような形で科学技術振興がきわめて非科学的な体系で進められようとしておるところに、日本の大きな悲劇があると思う。これは清水さん、あなたは特にその点いろいろ内情についても十分御存じだと思うが、清水さんのお考えを率直に、こういう形で科学技術が進められると思うが、もっと大きく政府諸官省の機構の何か発展的な統一の姿が必要なんじゃないかという点を感ずるのですが、いかがですか。
  65. 清水勤二

    清水参考人 ただいまの御質問は、非常に大切なところをついておられると思います。一つこれを振興するために、議会なりあるいは科学技術庁なりに、産業計画に伴う技術者養成計画というものに対して、調査機関なり審議機関なりをすみやかにお作りいただいてあるいは文部省でもよろしゅうございますが、そういうものをすみやかに作って、その結論を早く出して、その結論に基いて早く技術者養成計画というものを出して、それに基いていろいろな予算その他の措置をするというふうにされることが最も必要ではないかと思うのでございます。ただいま科学技術が大事だからといって、ただ目先にある問題だけでいろいろ処理されておるような感じがするのでございますが、将来の大きなものを見通した、しっかりした計画も、一方において非常に必要な感じがいたすのであります。
  66. 中山三郎

    中山参考人 私どももその教育が計画的に進められなければならぬということは、意見の冒頭に強く言っておるのであります。そのための機構でありますが、日本では機構いじりをして果してうまくいくかという点については、私ちょっと自信がございません。結局、政府なり国会、そういうところの力のある方々が、技術教育という面にほんとうに力を入れていただくということが第一だと思います。ことしの一月にイギリスのイーデン首相が、列国との経済競争に勝つのは、人口の多いことではなくて、教育制度がうまくいっておるということであるということをおっしゃっているのですが、日本の首相もそれくらいのことを一つおっしゃっていただいて、それを実現していただくような線に持っていかれれば、もう科学技術のきょうありましたような問題は、ほとんど解決するのじゃないかと私は思っております。
  67. 有田喜一

    有田委員長 田中武夫君。
  68. 田中武夫

    ○田中(武)委員 中山参考人にお伺いいたしたいのですが、中山さんは、先ほどちょっと技能者養成のことについて触れられました。実は、この問題に関しましては、商工委員会中小企業委員会におきましても、先日この問題を取り上げてやったのですが、先ほどおっしゃいましたように、技能者養成制度というものは現在あまり活用せられていない、これは事実だと思います。なるほど、言われましたように、労働基準法六十九条ですか、あの徒弟制度廃止の規定に基いてできた技能者養成令によって行われておるということやら、あるいは監督機関といいますか、これが労働者、文部省あるいは通産省等にも関連があるというところから、各官庁間の権限の問題、なわ張りの問題というようなことで、三すくみのような格好にもあると思うのですが、一般の学校における技術教育は、やはり一般的な基礎教育だと思うのです。それなら、やはりその企業、その工場において、自分のところに必要なものは技術養成によってやらしていくのが一番いいのではないか、こう思うわけです。もちろん中小企業におきましては、現在そのような余力はないと思います。そこで共同養成というようなことも考えられると思うのです。日経連あたりでは、この技能者養生の制度について、今後どのように考えておられるか。なるほどあなたは先ほど今の技能者養成令を単独立法にしてもらいたいということもおっしゃっておられました。鉄鋼労連から来られた参考人も、この間同じようなことを言っておられたのですが、それよりも、もっと企業内で自分のところに必要な技能者養成するということの方が望ましいのではないかと思うのですが、いかがですか。
  69. 中山三郎

    中山参考人 お説の通りでありまして、私ども、企業内の訓練ということが非常に重要だということで、極力働きかけをやっておりますし、そのための団体も今まであったのでございます。が、それをさらに拡充強化して、そういう気勢をなお進めたいと思っております。立法面の点につきましては、先ほど申し上げた通りであります。
  70. 田中武夫

    ○田中(武)委員 今、全国で技能者養成制度といいますか、そういう機関を持っておる工場は、幾らほどあるのですか。
  71. 中山三郎

    中山参考人 それは、労働者の数にいたしますと、製造工業の中で、基幹的な業種では二万六千ほどおります。それは養成工の数であります。工場の数は、今ちょっと調べて、あとで申し上げます。
  72. 田中武夫

    ○田中(武)委員 その養成工の機関を持っておる工場あるいはその企業、これは新制中学卒業者を採用しておると思うのですが、こういう工場あるいは企業において、こういう今年新制中学を卒業した者のうちから、甲は技能者養成の方へ、乙はそのまま現場へということが行われておるのでしょうか、それとも新中を出た者は一応全部技能者養成に入れておるのでしょうか、またもし直ちに現場へ、あるいは技能者養成へと分けて入れた場合に、これらの生徒といいますか、子供といいますか、これに対する待遇並びにこれらの生徒が技能者養成を出たときにどのような待遇を与え、将来どのようなところまでこれらの人が——むろんこれは本人の努力にもよると思いますが、進むべき道が開かれておるか、こういう点についてお伺いいたしたいと思います。
  73. 中山三郎

    中山参考人 新制中学を出まして、工場、事業場に入りました者が、全部養成工にはなりません。これは施設の収容人員の関係もございますし、それから、実際にその工場で、要求しております熟練工の将来の数ということも見合せておりますので、全部が養成工になるというわけではございません。工場によりましては、そういう特殊な場合もございます。それから待遇の点は、養成工の方は、三年間は工場の実務にはついておりませんから、給与は同時に入りました一般の労務者より低うございます。しかし、三年間の養成期間が過ぎますれば、今度は給与を上げますから、将来はそういう養成工は、数年なり立てば、大体フォアマン——伍長、組長、職長とだんだんに昇進させる、こういうふうでございます。一般工員の方は能力によっていきますが、必ずしもそういう道は約束されていない。それは本人の能力次第、こういうわけであります。
  74. 田中武夫

    ○田中(武)委員 鉄鋼連盟の参考人から伺ったのですが、鉄鋼連盟は、鉄鋼連盟傘下の会社の方で行う技能養成一つの基準を設けて、教育しておられるようですが、他の方面においても、やはりそのような基準を設けてやっているというような行き方をやっておりましょうか、どうでしょうか。
  75. 中山三郎

    中山参考人 お話のように、鉄鋼業ではそういう技能基準というものを作っております。それから、そのほかには、業種として特に技能者養成の問題を全体的に進めておるというのは割合に少うございますが、造船業では相当にやっております。
  76. 田中武夫

    ○田中(武)委員 今日の技能養成所ではそういうようなことはないかと思いますが、大体戦前の技能養成制度からいくと、その技能養成の生徒をいわゆる川崎なら川崎型、三菱なら三菱型に育てていく。従って、今日、労働組合等ができまして、いろいろと会社との間に交渉なんかした場合に、会社は技能養成出身者を家の子郎党と申しますか、一番会社の型にはまっておるものだ、こういう見方で、その線を通じて組合と会社の交渉の切りくずしをやるというような傾向が、今まで組合内部においても多々あったわけです。現在、技能養成において教育される場合に、どのような教育方針をとっておられるかお伺いいたします。
  77. 中山三郎

    中山参考人 組合の問題は、大体身分からいいましても、養成期間中は、必ずしも組合員に入れておりません。それから、組合教育というか労使関係の教育は、やはり養成期間中に一般教養として教えます。それで、若いときからそういう会社の事情を十分にたたき込みますから、自然にプロ・マネージメントになるということはあると思いますが、必ずしもあらゆる場合がそうではないようであります。たとえば、従業員の意見調査なんかやりますと、むしろ養成工なり養成工の出身の人が、会社に対して批判的であるというような場合もございます。それはやはりそれだけの批判的な頭脳ができておるということもあるのじゃないかと思いますが、そういう結果も現われております。
  78. 田中武夫

    ○田中(武)委員 過去の例から見て、そういったような会社の型に作ってしまうというやり方が行われておる。なるほど、自分たちの現場に適する技能を教え込むことはいいのですが、人格までもそのようにしてしまうことはどうかと思うのです。教育というものは、言うまでもなく、人を作っていくことだと思うのです。そこで、先ほどからいろいろ技術教育のことが論ぜられておりますが、やはり労働者は労働者、あるいは農民は農民としての立場から、一つの見識を持つ人間を作っていく必要があると思う。従って、ただ技術が必要だからということで、頭から技術々々ということで詰め込むのはどうかと思うし、やはりそのためには一応の基礎教育あるいは物事を批判する教育も必要だと思うのです。それで、この日経連でお出しになっております新時代の要請に対応する技術教育に関する意見というのは、これはまだ全部読ましていただいておりませんが、これはあくまで経営者連盟でお作りになり、経営者連盟の御意見でございますので、人を使う方の側に立っての御意見だと思うのです。人を使う方の側から申すならば、黙ってともかく機械のように仕事をする、そうしてある程度自分のところの企業の技術に適する技術さえ修得するならばいい、そのほかのことは、全然世の中のことを知らなくてもいいというようなお立場からお作りになっておるのじゃないかと思うのです。それはやはり使う立場にお立ちになることは、これは当然だと思いますけれども、たとえば、われわれといたしましても、旧制の高等専門学校高等工業学校というようなものが必要であることもわかるのですが、あくまでも教育というものは人を作るという上に立ってやっていただきたい、このように思うのです。これは清水先生あたりは、技術教育と人格の陶冶といいますか、見識を持たすという点から、どういうふうにお考えになっておりますか。
  79. 清水勤二

    清水参考人 労使の関係については、私はっきりした見識を持っていないのでありますが、技術という立場から考えますれば、技術の本質が、人間の創造能力、新しいものを作り出す力というものにあり、その技術というものは必ずしも高い教育を受けた者からのみ展開するものでない、どこからでも展開し得る。もちろん近代の技術というものは、近代の科学に立脚したものが大部分を占めますけれども、しかし、技術という非常に広範なる職域における新しい創造というものは、どの立場からでも出てくるものだと私は考えております。従って、技術というものが、科学を駆使して新しい創造をするということは、学歴のいかんを問わず、これを強調すべき問題である。そうして、そこにはお話のような、どの階層に対してもその人格を尊重し、その見識をとうとび、その批判を十分にする必要があるのじゃないかというふうに考えております。従って、技術技術といっても、根本は人間の問題であり、人間教育というものが非常に大切であるということは、どの教育の段階においても必要であろうと私は考えております。
  80. 田中武夫

    ○田中(武)委員 同じことについて中山さんに。
  81. 中山三郎

    中山参考人 私どもも、新しい教育が、一般教養という面を重視して、その面において特徴があることを認めます。それを生かしながら、私どもの言うような、たとえば専門大学とかあるいは六年制の工業高等学校というようなことも、運用のいかんによっては、できるのではないかというふうに考えております。それで、産業人としての心がまえといいますか、人格教養という面については、大学教育においても工業高等学校教育においても、特に重点を置いていただきたいということは、使う方の側という意味ではございませんし、産業に従事する人間教育として特に重視していただきたいということを、この意見書の中にも盛り込んであるわけでございます。
  82. 田中武夫

    ○田中(武)委員 使う側からいうならば、学校を出て直ちに職場へ連れていって、その日から間に合う人がいい、それは当然だと思います。しかし学校における科学教育技術教育は、やはり一般的な基礎のものを教えていく、そうして、造船なら造船、鉄鋼なら鉄鋼において、特別に必要な技術といいますか、技能というものをそこで教育する、こういう方がいいのではないか。経営者の使う立場から、国の費用あるいは個人の費用で直ちに自分のところへ連れてきて、その日から役に立つ人間を作らせようとするのが、教育に対して持っておられるところの御意見じゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  83. 中山三郎

    中山参考人 実は、産業側の意見では、お話のような意見は、主として中小企業の方では、入ってすぐその日から間に合う人間をという要求であります。ところが、大企業ではそうではございませんで、すぐ間に合う者はまたすぐ役に立たなくなる、そこで、やはり基本的な基礎教育といいますか、それをみっちり身につけておいてほしい、こういうのが主として大企業側の意見でございます。
  84. 有田喜一

    有田委員長 実は、内閣委員会が一時からということで、われわれは一時までという約束できておるのですが、特に延ばしておるのですから、田中委員、間単に……。
  85. 田中武夫

    ○田中(武)委員 技能賛成の問題につきまして現在では中学を出た子供だけをやっておる。私はこういう企業内における教育大学の方にもやるということで、やはり自分のところに最も適する教育は、学校で覚えたものにプラス自分のところで養成していく、こういうことが望ましいと思います。しかしながら、名前を申し上げてはどうかと思いますが、短期大学とか高等学校とかいうような名前で、やみの残業をさせたとか、賃金を払わぬ労働をさすというような企業もあったかと聞きますが、そういうことでは困ると思うのです。そういうことではなく、あくまでも自分のところで役に立つ技能、技術を自分のところで養成するのだ、こういうような方法が望ましいんじゃないかと思います。そこで、この技術教育と技能養成というものはどんなに違うのか、技術教育と技能養成は同じことかどうか、この点を一つ技術庁と清水先生あたりから聞かせていただきたいと思います。  なお、工場で昼働きながら夜学校に行っている定時制高等学校に通っている子供のことですが、最初は、相当向学心に燃えて入るわけです。ところが、十八才を過ぎますと、残業あるいはその他の問題が出ます。ところが、自分は学校に行くからということで、上長からの残業命令等もあまり聞かれない状態にある。そういうことから、企業内において一つの圧力が加わりまして、途中でやめてしまう。もちろん昼動きながら夜学校に行くということは、これは精神的に相当しっかりした気持もなければいかぬと思うのですが、状態を見ていると、やはり二年か三年するとやめてしまって行けないような状態になっておる。これは定時制高等学校の一年入学と四年卒業の人数を見ていただいたらよくわかる。ことに、工場の付近にある定時制高等学校、これは経営者においてもよく考えていただかなければならないのじゃないか。労働協約等で、学校へ行く者については四時なら四時で帰してやれ、こういうことで、もちろんその賃金をどうするかということは別に定めるとしても、半時間早く帰っても事故扱いにならないというような労働協約を結んだ例もございます。しかしながら、今日そういうことでなくて、仕事が忙がしいということで、経営者の方から学校へ行くな、こう言わんばかりの扱いを受けて、やめていっているという例が多いわけです。そこで、中山さんにお願いしたいのですが、日経連の立場から、そういうような者については、会社においても十分便宜を与えてやれ、こういったような方針をとっていただきたいと思うんです。まだまだ申し上げたいことがあるのですが、委員長からの御要望もございますので、この辺でおきたいと思いますが、今二つ三つばかり申し上げました点について、お答え願いたいと思います。
  86. 清水勤二

    清水参考人 技術教育と技能教育の問題でございますが、技術という言葉あるいは工学とか工業とかいう言葉が、日本でははっきりした定義を持っていませんための問題でございますが、日本技術教育と申しますのは、全体をひっくるめて申す場合が多いのじゃないかと思うのでございます。しかし、いわゆる専門家、プロフェッショナルと申しておりますそういうものを賛成する教育技術教育あるいは工業教育、工学教育ではないかというふうに考えております。それから技能教育というのは、プロフェッショナルに対しまして、インダストリアル、技能的な工業、実際的な教育ということで、いわゆる新制中学、高等学校等を出て携わる技術者、あるいは工業高等学校等も入るかもしれません。技術教育というのは広い意味ではございますが、分ければ専門教育、技能教育というのは職業教育あるいは職能教育というものに相当するのではないかと思うのでございます。この点はっきりいたしておりませんが、私の見解はそのようでございます。
  87. 中山三郎

    中山参考人 昼間勤めて、夜、夜学に行く子供たちに対しましては、職場の仕事とつながった教育を受けておる者に対しては、工場の方でも奨励して、残業なんかもできるだけ便宜をはかってやるということをやっておるようでございますが、一般の教育普通課程高等学校へ行きます者まで、あらゆる場合にその学校の方を第一に考えるということは、必ずしもやっておらないと思います。そこまでを私の方でそういうふうに指導することは、これはちょっと無理だろうと思います。そこは各経営者の良識に待っていただくよりはかないと、こう思っております。
  88. 田中武夫

    ○田中(武)委員 職業的な高等学校といいますか、工業高等学校等では、ある程度の便宜を与えているであろうが、普通の高等学校ではそうではなかろう、こういうことですが、その通りなんです。そこにやはり私先ほど申しましたような使う側からの教育ということが現われていると思う。高等学校へ行く人は、次にはやはり大学へ行くことを目的として行っておると思う。現に私の関係している工場あたりからも、定時制高等学校を終えて、今度は大学の、しかもそれは理科系の学校へ行っている者もおります。そういうようなことに進んでいくということを了解していただいて、ある程度の便宜を与えるような方針をとっていただきたいと思います。なお申し上げたいことがありますが、委員長の命によりまして、これでおきます。
  89. 有田喜一

    有田委員長 石野久男君。
  90. 石野久男

    ○石野委員 非常に時間が短かいようでございますので、きわめて簡単に一つ二つお尋ねいたします。途中で参考人意見を聞いておりませんので、私の質問がすでに参考人のお述べになられたことに重複する分があるかもしれませんが、その点は一つ御了解いただきまして、お答いただきたいと思います。  中山さんの方から私どもの方へ回っております資料を見ましても、日本大学教育の中で、理工学系の占めている比率が非常に低いということ、そしてまた、そういうことから今後の日本技術教育あるいは技能者教育の問題に関連して、もっと積極的に国が法文系教育方法を向け変えてもらいたいという要望が強く出ているかと思います。私どもも、新しい原子力の時代に入った今日の産業あるいは経済の面から見ても、その必要を痛感しておるわけでございます。そこでお尋ねいたしますが、皆さんのお考えとして、今の日本教育の実態を皆さんの要望のように切りかえるためには、どうしたらいいかということについて、きわめて簡単でよろしいですから、思い切った考え方——それはもちろん政治の問題であると思いますけれども一つ端的な御意見を聞かしていただきたいと思います。
  91. 清水勤二

    清水参考人 先ほども申し述べたのでございますが、英国があの思い切った改革をいたしましたのは、戦後の平和産業においては、工業立国貿易伸張が英国の国是である、英国としてはそれ以外に立つ道がない、従って、あのような思い切った改革をいたしたのでございますが、パーシー卿が議会において大調査委員会を作って結論を出したように、わが国でも審議会あるいは調査会というようなものをすみやかに結成されまして、そして、真に産業開発あるいは産業五ヵ年計画に伴う科学技術者の養成計画というものを立案され、それに沿うて、これを国家の重要政策として実施に移されたい、これが私の希望でございます。
  92. 中山三郎

    中山参考人 私も先ほどちょっと申し上げましたように、政府なり国会なりのような権威のある方々にそういうお気持になっていただけば、具体案はいろいろ考えられておるのでございますから、実現はほとんど問題ないと思うのでございます。
  93. 石野久男

    ○石野委員 わかりました。この問題は、国会の問題でもあるだろうし、それから行政府の問題でもあると思いますので、あと文部省の方に御意見を伺わりたいと思っております。  そこで、技術あるいは技能の面においてより一そう世界的な水準に、あるいはまた各国に比してより以上に抜きん出ていこうとする場合に、日本技術教育根幹をなす教育行政の基本的な方針という問題がそこにからんでくると思うのです。そういう技術者あるいは技能者教育に対する今後の基本的な方向について、今どういうところにめどを置いているか、そうしてどういう対策をお持ちになっているかということを、ちょっと簡単に……。
  94. 緒方信一

    ○緒方説明員 先ほどの御質問にお答えして申し上げた点でもございますけれども、今後、国立大学におきましては、理工学部系統について充実していきたい。学科の増設とか、あるいは研究部門の増設というような面に重点を置いて進めていきたい、かような考え方でいきたいと思います。
  95. 石野久男

    ○石野委員 今、法文科系が非常に多いということは、一つには、新しい学校制度における私立大学の問題が非常にあると思うのであります。私立大学のほとんどが法文科系であるということが実情だと思う。そしてまた、最近では、そう言っては悪いが、私立大学は経営の資本的な関係なんかありまして、そうならざるを得ない実情があると思います。そういう面は、何か思い切った施策が出てこなければ、その意図は達せられないのではないかと思いますので、そういう私学を理工科系に切りかえるやり方のめどは、どこに置いておるのでございますか。
  96. 緒方信一

    ○緒方説明員 御指摘のような点が私立大学の面にはあることと存じます。理工科系を充実するためには、経費を要しますので、勢い法文系の方に重点が置かれることに相なるかと思います。これに対して、文部省としましても、私立大学研究設備等について助成の予算もあるわけでありまして、その助成費等の増額を大蔵省に要求いたしまして、その額は、目下予算要求中でございますから、申し上げかねますけれども、そういう方向に進むことが一つの道であろうかと思います。
  97. 石野久男

    ○石野委員 私立大学に対して、教育の面でめんどうを見てやるということは、こまかい点がありますし、時間もありませから、後日またお尋ねすることといたしまして、いま一つ、今度違った面で、技術とか技能を日本経済の立場から水準を高めて行こうとするに当って、日本産業を構成しているところの各産業の中の各企業別の技術の交流——技能はその中についてくるのでありますから、技術の交流になると思いますが、教育の片寄った形の中でできている日本産業を補っていこうとするには、どうしても各企業間における技術交流の問題が非常に重要であると思うのであります。これは学問的な立場からもそうだろうが、実務の上から、ことに経済団体の立場で、そういう問題について何か配慮をなさっているだろうか。私もある会社に働いているものなんですが、ある会社が持っている一つの特殊な技術というものはなかなか公開されない。これは資本主義経営のもとにおいては当然起ることでありますが、そのことが、日本のような底の浅い国民経済の中では、全体として非常に発展をはばんでおるのでございます。この問題に特に注意しないと、なかなか各国についていけないのではないか。のみならず、日本の技術が十年も二十年もおくれておるということでは、なおさらそういうことが思われるので、こういうことについての参考人の忌憚のない御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  98. 中山三郎

    中山参考人 戦時中は、各業種内の企業間の技術交流をやりました。これは相当統制的な見地もありましてできたのでありますが、戦後は、同じ業種の中での技術交流はなかなかむずかしいと思うのでございます。特殊の業種ではそういうことをやっているところがないではございませんが、一般的にはそう容易でないと思います。しかし、業種を異にいたしますと、割合障害が少うございますので、そういう面では、私どもの団体は、直接その技術の問題の内容に入っておりませんから、そういう問題はタッチしておりませんが、一般の経済業種団体では、そういうことも若干考えております。それから、そういう面において、生産性本部とかいうようなところで大いに働いてもらいたいというふうに私どもは希望しておるのであります。
  99. 清水勤二

    清水参考人 実は、技術交流の件は、私元内閣の技術院におりました時代にある程度努力いたしたのでございますが、戦時中の統制下におきましても、非常に困難でございました。従って、現在においては、さらに困難を加えておるであろうと想像いたします。しかし、お話のように、日本の技術はほんとうに独立していないのでございまして、また、その底が非常に浅いのでございますから、もっと大乗的見地と申しますか、国家的見地と申しますか、広い見地に立って、日本人同士が互いに協力する、あるいは技術の公開をする、こういうことに対して新しくできた科学技術庁あたりが大いにお力添えをいただければありがたいと考えておる次第であります。
  100. 石野久男

    ○石野委員 ただいまの問題は、御意見を承わりましたが、なお、もう一回中山さんにお聞きしておきたいのですけれども、皆さんもやはり科学技術振興については、非常に熱心なお考えを持っておられるわけです。私どもの考えでは、学校における政育や、あるいはそれに対する施策等を拡充することも非常に大事でございますが、それを今度生きた生産の場でこれの交流が行われなければ、なかなかやはり魂が入らないことになるんじゃなかろうかというふうに思うのです。従って、今日の日本のような経済のもとでは、この技術交流ということを、各生産部門において、もっと真剣に考えなかったら、とてもとても、世界に比較して資本力も弱いし、しかも十年間も二十年間ものブランクがあったというような実情のもとでは、追い越す、追いつくことはできないのではなかろうかと思うのです。そういう問題については、自由主義経済のもとでは非常に困難でありますけれども、そういう方向に経団連あたりが真剣に考えなかったら、皆さんの御意見を聞きましても、実はなかなか魂が入ってこないのではなかろうか、こういうふうに思いますので、その点についてのお感じだけでも一つ聞かしていただきたい。  もう、一つだけこの際にお聞きしたいのですが、技術や技能を非常に深め、かつ広げていこうとしますと、当然やはり多くの人々をその中に巻き込まなくちゃいけないわけであります。そうしますと、日本の全労働力の問題との関連が出てくるわけです。そこで、やはり当然失業の問題が関係すると思います。今、失業者はほとんど理工科系関係から出た者ではなく、文科系統から出た者に多いと思いますけれども、実際、文科系統を出た者でも、技能者になり技術者になる要素を持っておると私は思います。ことに、先ほど田中委員からお話がありましたように、一般教育と特殊教育との関係からいいましても、文科系統を出た者は一般教育を受けた者であって、その中に、特殊教育で技能教育が入っていくことが、すなおに言って、健全な発展になるだろうと思います。そういうふうに見て参りますと、多くの失業者を出す法文科系の諸君に対する技能あるいは技術をどういうふうに切り込んで行くか、そしてまたそれを吸い取っていくためには、失業の問題をもっと真剣に考えないと、この問題の本質的な解決ができないのではないかと私は考えるわけです。そういう問題について、時に経団連あたりではどういうふうにお考えになっておられますか、この二つの点をお聞かせ願いたいと思います。
  101. 中山三郎

    中山参考人 経済団体としましては、業種内の技術交流の問題は、お話の通り、そういう面に努力するように推進したいと思っております。それから、現に、たとえば業種別の生産性チームがアメリカなりヨーロッパから視察して帰りました報告に、その業種内どでういうふうに吸収するかというような問題は、その業種でお互いに研究し合っております。そういう面では、その技術交流といいますか、そこまで行くかどうか知りませんが、そういうことは努力いたしております。  それから、文科系統の学卒者の問題でございますが、私どもも、理工科系統の技術教育の問題の意見書を作りましたけれども、来年は一つ文科系統の人たちに対するテクニカル・エデュケーションというものの中にも、経営技術の面の技術教育も入ります。その面についての意見も検討したい。それには、先ほど前田先生からもお話のありました広い意味のインダストリアル・エンジニアリングを含めた面について、学校教育でも充実してもらうと同時に、応急策としては、そういう面について、職のない人の再教育、たとえば品質管理であるとか、あるいは経営統計の技術であるとかいうような短期の義成というようなことも考えられるのではないかと考えております。
  102. 有田喜一

    有田委員長 参考人よりの意見の聴取は、これにて終了いたします。  参考人各位には、長時間にわたり、本委員会のために貴重なる御意見を賜わりましたことを、委員会を代表いたしまして、私より厚くお礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十七分散会