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国務大臣(倉石忠雄君) 今回提案されました、
昭和三十一年度
一般会計及び
特別会計の
予算中、
労働省所管分につきましてその
概要を御
説明申し上げます。
まず第一に、
一般会計におきましては、
歳入において総額四億一千七百六万三千円でありまして、前年度の三億十五万九千円に比較いたしますと、一億一千六百九十が四千円の
増加となっております。
この
歳入の主たるものは、「国家公務員等退職手当暫定
措置法」に基き、退職した政府職員、日本国有鉄道、日本電信電話公社及び日本専売公社等の職員に対し、失業中の退職手当を
支給するために必要な
財源を、
特別会計等から
一般会計へ繰り入れまたは納付するための
負担金であります。
一方
歳出におきましては、総額三百三十八億五千九百八十七万一千円でありまして、前年度の三百三十九億九千七十三万八千円に比較いたしますと、一億三千八十六万七千円の
減少となっております。
なお、このほか、建設省
所管の官庁営繕費に、五千四百五十七万八千円を、
労働省関係分として計上いたしておるのであります。
次に、この
歳出の
内容について概略の御
説明を申し上げたいと存じます。
その一は、失業対策の拡大
強化に関する
経費であります。
経済諸
施策の進展に伴いまして、失業情勢は必ずしも楽観を許さない
実情にありますので、三十一年度においても引き続き失業対策事業の拡大
強化をはかる方針のもとに、吸収人員の
増加、資材費の
単価及び
国庫補助率の引き上げ等を行うとともに、全国主要
都市及び重要鉱工業地帯において、労働能力の比較的高い失業者を吸収するため生産的建設的事業を特別失業対策事業として
実施するのほか、失業保険制度につきましては、
さきに行われた失業保険法の改正の趣旨に即応して、一層その円滑なる運用をはかり失業者の
生活の安定を期することとし、これに必要な
経費として、失業対策事業費補助百五十六億八千万円、
特別失業対策事業費補助三十五億円、失業保険費
負担金八十七億一千七百万円、政府職員等失業者退職手当三億七千万円、合計二百八十三億六千七百万円を計上いたしております。その二は、労使関係の安定促進に関する
経費であります。
国民経済の
自立達成の成果がようやくその曙光の見えました今日、
国民全体の基盤に立って、多数の納得と協力が得られる労働政策を樹立
推進するため、
さきに
設置いたしました労働問題懇談会の一層円滑なる
運営をはかるとともに、労使相互の信頼と納得とにより労使関係が円滑に処理されるよう労使の話し合いの場として、新たに正要産業ごとに協議会を設けるほか、
中小企業の特殊性にかんがみ、労使当事者に対する指導援助を
強化してその労働関係の合理化を進め、さらに労働教育を刷新
強化して民主的な労働組合を育成し、もって労使関係の安定促進をはかることとし、これに必要な
経費として、七千六百三十三万七千円を計上し、また労使関係の合理的、かつ、円滑なる調整をはかるため、中央労働
委員会並びに公共企業体等労働関係調整
委員会に必要な
経費として一億一千九百一万九千円を計上いたしております。
その三は、労働保護行政に関する
経費であります。
労働者の保護と
福祉を積極的に
推進し労働生産性の向上をはかるため、労働基準行政を刷新
整備するとともに、最近特に産業災害の頻発している屋外労働に重点を指向して災害防止対策を一段と
強化し、また
さきに制定せられた「けい肺及び外傷性せき髄
障害に関する特別保護法」の施行に当りましては、引き続き
対象労働者に対する
健康診断の
実施、配置転換を要する労働者に対する就労
施設の
設置等、これが
予防及び特別の保護方途を講ずるの外、
中小企業における労働者の技能水準の向上をはかるため、前年度に引き続き技能者養成
施設に対し助成を行い、また新たに労働衛生
研究所を
設置して、労働衛生及び災害医学に関する
調査研究を
実施することとし、これに必要な
経費として、十三億九千八百十九万七千円を計上いたしております。
その四は、婦人及び年少労働者保護に関する
経費であります。
戦後における未亡人問題の重要性にかんがみ、婦人の職業対策をより一そう
推進するため内職職業補導所、家事サービス職業補導所の
整備充実をはかるとともに、婦人労働者及び年少労働者の保護と
福祉の
増進をはかり、さらに一般婦人の社会的地位と
生活の向上を期するため各種調査の
実施、啓蒙
資料の発行等を行う外、新たに売春問題の対策につきまして、
保護更生を望む婦人に対する相談、職業補導等の
機能を
強化することとし、これに必要な
経費として、八千九百三十が三千円を計上いたしております。
その五は、就職対策に関する
経費であります。
現下の雇用情勢にかんがみまして、就職の促進をより一そう強力に
実施する必要がありますので、公共職業安定所の職業斡旋
機能を
強化して、これが効率的
運営を期するとともに、産業界の要求する技能労働力の円滑なる需給調整をはかるため、職業補導事業の
充実整備を行うこととし、これに必要な
経費として、三十三億三千二百八十八万五千円を計上いたしております。
その六は、労働統計調査の
整備に関する
経費であります。
労働経済に関する統計を迅速、かつ、的確に収集
整備して、これを分析し労働行政
施策の基礎
資料とするとともに、労使その他関係方面に提供し、紛争議の合理的解決と生産の増強等に寄与するため、前年度に引き続き毎月勤労統計、職種別等賃金実態調査、労働生産性統計及びその他労働事情に関する統計調査を
実施するのほか、新たに
中小企業における雇用、賃金、その他労働条件等の実態並びに失業者の帰趨についての調査を
実施することとし、これに必要な
経費として、一億九千八百二十四万六千円を計上いたしております。
その七は、国際協力に関する
経費であります。
国際労働憲章に規定されている義務を履行し、積極的にこれに協力するために必要な分担金、及びILO関係の諸会議への出席旅費等の
経費、並びにわが国の労働事情に関し、海外広報活動を
実施するための
経費として、八千六百二十万四千円を計上いたしております。
その八は、労働保険の
審査に関する
経費であります。
労働者災害補償保険、失業保険等労働保険に関する
審査の公正、かつ、統一ある運用を確保するため、中央に労働保険
審査会を、
地方に労働保険
審査官を設けて、
審査機構の
整備をはかるとともに、
審査手続の適正化を期することとし、これに必要な
経費として、三百九十六万円を計上いたしております。
その九は、その他一般行政に関する
経費であります。
以上の
経費の外、大臣官房等における行政事務費として、二億八千八百七十二万円を計上いたしておるのでございます。
第二に、労働者災害補償保険
特別会計につきまして申し上げます。
この会計の
歳入、
歳出はいづれも二百五十三億五千九百四十三万九千円でありまして、前年度の二百三十二億五千六百七十三万円に比較いたしますと、二十一億二百六十九万九千円の
増加となっております。
歳入のおもなるものは、保険料収入の、二百二十五億五百九十五万八千円と、支払備金受け入れの十八億七千八百七十八万二千円であります。又
歳出のおもなるものは、労働者災害補償保険給付費の百七十九億五千三百万円でありますが、この外、労働者の業務災害被災者に対する療養給付の適正
充実をはかるため、前年度に引き続き労災
病院の
整備拡充を行うこととし、十二億三千六百万円を、又「けい肺及び外傷性せき髄
障害に関する特別保護法」に基き、けい肺
患者及び外傷性せき髄損傷
患者に対する療養、休業等の給付、けい肺
健康診断の
実施、並びに配置転換労働者のための就労
施設を
設置する等のため、一億九千三百六十三万五千円を計上いたしております。
なお、労災補償の事務につきましては、その
内容が複雑多岐にわたり、かつ、最近事務量が急激に
増加しておりますので、三十一年度におきましては労働基準局に労災補償部を設け、事務の適正迅速な処理と責任体制の確立をはかることといたしております。
第三に、失業保険
特別会計につきまして申し上げます。
この会計の
歳入、
歳出はいづれも三百五十二億九千五百六十三万二千円でありまして、前年度の四百五億九千三百五十八万四千円に比較いたしますと、五十二億九千七百九十五万二千円の
減少となっております。
歳入の主たるものは、保険料収入の二百四十二億二千八百万円と、
一般会計より受け入れの八十七億一千七百万円であります。又
歳出の主たるものは、失業保険給付費の三百四十八億三千一百万円でありますが、この外、特に本年度におきましては、本会計の積立金より生ずる利子収入のおおむね二分の一を充当することにより、労働者の
福祉増進をはかるため、職業補導
施設及び宿泊
施設等の保険
施設を
拡充整備することとし、これに必要な
経費として、六億円を計上いたしておるのでございます。
以上をもちまして、
労働省所管関係
予算の大要の
説明を終ります。何とぞよろしくお願い申し上げます。