○
政府委員(中尾博之君) ただいまの御質問の御趣旨はまさにその
通りでございます。単
年度予算になっておりますために、架設その他のもし重複を来たしますならば、それは向うが負担せざる限りにおきましては、結局回り回りまして、国費をよけい使うということになる結果が十分考えられるところであります。これに対しまして、例の継続費の問題でございますが、継続費の取扱いが実は現在そこまでまだ踏み切っておりません。従って本問題のような場合にはまだこれを継続費の取扱いにいたすということにいたしておらないわけであります。継続費につきまして現在例がないわけではございませんが、なお
一般に広くこれを適用いたしませんゆえんのものを若干御
説明いたしたいと思うのでありますが、もともと継続費は旧憲法時代には憲法の例外として既定費
予算というものの基礎の
一つの措置としてございますのでありますが、新憲法になりまして規定が大権
経費その他とともになくなってしまったのであります。当時から継続費は全然廃止するということは適当でなかろうというのでいろいろ議論がございました。同時に継続費を一体新憲法のもとにおいて行い得るものであろうかどうかという点もいろいろ論議の存するところであったわけであります。しかしながら当時の態勢といたしましては、まあ新憲法の趣旨と申しまするのは、何事によらず
国会を中心といたしまして、それの自由な御判断を随時尊重していくような態勢を考えるべきであるということが基本でございましたので、かたがた憲法にも、
予算は毎会計
年度の
予算について
内閣がこれを作成して
国会に出すというような規定もございましたので、むしろ多分に否定的にこれを解しておりました。継続費というものはこれは新憲法のもとにおきましてはとらない方がよろしい制度である、こういう考え方でおったのでございますが、基本的にはこの考え方は現存に至りまするまで変っておりません。しかしながら継続費の制度は、
昭和二十七年以来実は会計法、財政法の改正によりましてこれを復活いたしたのでございます。しかしながら、これは単に数カ年にわたる工事についてこれを認めることができるということにいたしませんで、特別の事由がある場合に限ることにいたしまして、なおその辺の規定の趣旨といたしましては、きわめて例外の場合であるというふうに限定いたしておる次第であります。
なお私自身当時この仕事を担当しておったわけではございませんが、伝えられるところによりますと、当時
国会における御論議におきましてもいろいろ御
意見もございましたようで、むしろこれは広く行われることになるとまずいことであるというような御議論があったように私どもは承わっております。しかしながら特定の場合、特に当時要望されましたのは、主として土木の非常に大きい、何十億といったような総合的な計画に基きまする工事につきまして、この継続費の制度がございませんというといろいろな意味において適当でないということが主たる理由になりまして、そういう改正になったのでありまして、現在はその事態を予想してできました規定といたしまして運用いたしておるわけであります。非常に総合的な計画でございまして、その一部分といたしましては、工事は次々に完結し、分割して完了し得るものでございますが、それらのものが部分的なものとしてこれを考えました場合には、他のいろいろな工事等と比較いたしまして、必ずしも緊急性のあるものではない。しかしながらこれを総合的に一定の時期までに完成いたしますことによって、特定の河川の改修なり、ダムあるいは下流水路、流末の処理の水路なりという、総合された計画の中において初めてその妥当性を得るといったようなものにつきまして、これを一括して御議決を願うというような点が
一つの点でございまするし、それからまたこれらのダム等につきましては、おそらく民間あるいは地方公共団体といったようなものもいろいろな御都合がつきまとうものでございまして、たとえば発電会社の工事といったようなものがこれにからみますると、財政資金の方は比較的
予算ということが重く見られて使われて参るのでございまするが、民間資金等がこれに付随的について参りますると、非常にこれまた金利資産といったような面から考慮を
要求してくるわけでありまして、それによってまたその全体の計画の妥当性をも左右することになりまするので、そういうような見地からと存じまするが、特に総合開発的な事業計画を持ちます大規模な土木工事といったようなものにこれを適用するという線で現在運用いたしております。
本件のような場合について申し上げまするならば、ただいま御質問にもございましたように、この例はきわめて多いのでございまして、小さな五百万円、六百万円といったような工事は別でございまするが、億をこえまするような工事になりまするというと、全体との計画から見まして、なかなか単
年度では
予算をつけることが困難だろうというのが財政の実情でございまするので、かかる例は数多く見られるわけであります。この際すべてこれを継続費の取扱いをいたすということは現在考えておりません。それは言うまでもなく、最初申し上げましたような、いわゆる毎
年度予算というものの議決に対しまして、なるべく既定費的拘束を加えることを避けたいということがもちろん根本でございます。そのほかに毎
年度の事業計画、
予算による事業計画というものが、なるべくそのときの
事情に即しまして運用できまするようにという実質的な
事情も強く現在まだ意識されておる結果と考えております。