○中山福藏君 第四
分科会におきまする
審査の
経過を御
報告いたします。
第四
分科会に付議されました
案件は、
昭和三十一
年度予算三案中、厚生省、労働省、法務省及び文部省に関するものでありまして、去る十九、二十、二十二日の三日間にわたり、それぞれ当局より
説明を聴取し、
質疑応答を行なったのでございますが、ここには
質疑応答のおもなものについて御紹介するにとどめたいと思います。
まず厚生省
予算につきましては、新たに放射線衛生
研究費として一千七百余万円を計上しているが、放射能障害に対する予防と治療の
研究を組織的に行うというのなら、さらに
多額の
予算を出すべきではないか。また血液製剤
対策として新規に四十万円ばかり計上しているが、このわずかの
予算で何をやろうとするのか、またこれには血液を売ることの障害に対するものが含まれているのかどうか。さらに結核
対策を強化すると言いながら、アフター・ケアーの
施設がわずかに二カ所しか新設されぬことになっており、居宅隔離室の
予算もかえって減額されているのはどういうわけか。また保健所について一億二千万円の
予算は少な過ぎる。これでは第一線機関としての機能発揮を望むことは無理だし、第一医者の充足もできまい。また新たに僻地診療所を三十二カ所設置するというが、一カ所六十万円
程度の
予算で果してできるのかどうか、さらにまた覚醒剤の
対策費が減額されているが、取り締りをゆるめてよろしい状態なのかどうかという質問がありました。
これに対しまして当局からは、放射線衛生
研究は
昭和二十九年度から厚生科学
研究所でやっていたものを、国立衛生試験所などで本格的に
研究してもらうつもりで新たに
予算をつけたわけだが、もちろんこれで十分だとは
考えていない。また血液製剤の四十万円は、薬事
審議会に部会を設けることと、血液製造技術者の講習会の費用に充てるもので、血液売買に対する取締りは別に法案を作って御
審議を願うこととしている。また、結核回復者の後保護
施設や居宅隔離室の新設がはかどらない理由ばいろいろあると思うが、要するに地方庁で負担がむずかしいことが第一の
原因と
考えられるので、次年度からはもっと考慮したいと思う。また保健所についても同様、補助率を引き上げて、地方が
予算を組みやすくせねばならぬと
考えているが、医者の充足
対策としては、単に給与を上げるというだけでなく、
研究費の増額、宿舎その他内地留学等の問題をあわせて
考えるべきであって、これらの点は三十一年度に実現できなかったが、今後必ず推進したい。また、僻地診療所は、将来の国民皆保険に備えてぜひ必要と
考えて設けた。さらにまた覚醒剤
予算が減っているのは、病床の
整備がやや整ったからであり、取締りをゆるめる気はないとの
答弁がありました。
なおこのほかに地方財政の窮迫等のために末端の厚生行政がむしろ後退している面があるが、これは厚生省
予算の組み方自体に問題があるのではないか。たとえば身体障害児、精神薄弱児等の
施設については国が百パーセント補助すべきだと思うがどうか。また上、下水道工事に未熟練の失業者を使うのはどうかと思う。さらにまた婦人保護の
予算で売春問題の
対策をどのように行う
考えかなどといった
質疑があったのでありますが、これに対しまする当局側の
答弁は、厚生行政については、最近
地方議会においても大いに重視され、
予算消化につき努力されつつある。現在肢体不自由児等、国でめんどうを見るべきものについては八割を国で補助することとし、地方的利益の多いものについては補助率を低くすることにしている。また水道工事の
整備については、現に三十年度に未熟練労務者を八〇%吸収してやってみて、十分優秀な成績を上げた実績があるので、引き続き労働省
所管の特別失業
対策事業費に計上して、実施の際、厚生省に
予算を移しかえて実行することにしたい。さらにまた売春問題
対策としては、四千万円の
予算をもって八カ所に婦人相談所を設け、
全国に四百八十六人の婦人相談員を置いて福祉事務所に配置する方針である等、こういう所見でありました。
次に労働省
関係につきまして、失業
対策事業はある期間全額国庫補助でやったらと
考えるがどうか。また特別失業
対策事業は事業と人とが一致せず、効果が少いといわれているがどうか。また、
政府は経済五カ年
計画の最終年度において、完全失業者を四十五万人に押えるというが、その信憑性はいかん。さらにまた新たに
中小企業労使
関係費として三百万円の
予算を組んでいるが、どんなことをやろうとするのかという質問がございました。
これに対して労働省当局からは、失業
対策事業は、経済自立と完全雇用の建前からいっても最も重要な仕事であるが、国家財政の現状から見て、全額国庫負担で行うことは一時的にもせよ困難である。三十一年度においては資材費の単価及び補助率の引き上げ等を行なって強化をはかる方針である。また、特別失業
対策事業については三十年度において
予算がおくれたために、当初うまくいかない面があったが、来年度は円滑にゆくと思う。また、三十五年度に完全失業者を四十五万人にするというのは一つの
目標であるが、
政府としては
財政投融資などによって極力失業者の吸収に努めるとともに、一方経済規模の拡大と相待ってどこまでも
目標を
達成する
考えである。さらに
中小企業の労働問題については、企業自体をどうして育てるかという根本問題もあるわけだが、労働省としてはそこに勤める労働者の方々が安心して働けるように相談所を設けるつもりで、この
予算を計上したという
答弁がありました。
なおこのほかに、最近の労働情勢に対する労働大臣の所見並びに労働賃金、婦人保護
対策、労働金庫及びけい肺法施行後の状況等につき
予算の面から
質疑がなされたのでありますが、省略いたしたいと存じます。
次に法務省
関係におきましては、少年院の収容状況とその教化方針はどう省
所管の教護院とは一貫したものにする
考えはないか、また在留外人、ことに朝鮮人の犯罪が多いようだが、外国人の登録ないし密入国者の取締りをどうやっているのか。歳入
予算の増額五億八千万円の中で罰金及び没収金が二億九千万円となっているが、
多額の罰金を収入に見込むのはどうかと思うという質問がありまして、これに対しましては、法務省並びに厚生省の担当から次のような
答弁がございました。
現在少年院には、昨年十一月末の統計で一万二百四十名ほど収容されており、そのうち精神状態の平常な君二八・七%、準平常な者が三八・五%で、精神に障害ある者が三二・八%となっているが、いずれも犯罪を犯し、またはその疑いある者として家庭
裁判所から送られてきた者で、幼少からの環境によって不良化し、精神的にもひどく片寄っているから強力な矯正が必要である。厚生省児童局
所管の教護院は八割の国庫補助で都道
府県がやっているが、この方の収容
対象は十五才から二十才までの少年で、ここで直らぬ者が少年院に送られることになっている。現在教護院に収容されている者は四千八百名だが、収容を要する者はその数倍にも達する見込みで、なるたけ少年院の厄介になる者を少くするよう教育補導には苦心している。少年院とても、少年刑務所と違い、教育機関であるから、この点教護院と十分連絡の必要があり、両者の一体化という点は今後
検討したいと思う。また在留外人については、六十四万人のうち朝鮮、韓国人が五十七万人、中国人が四万三千人となっており、犯罪については現在刑務所にいる者六万人のうち、一割近くが朝鮮人である。つまり犯罪の比率からすれば朝鮮人は
日本人の十倍以上になっているわけで、窃盗とヒロポンなどの密造が犯罪のおもなるものである。出入国管理令により犯罪者の国内退去を命ずることは、国際慣習からもそうなっているが、韓国側が引き取りを拒否しているので、やむなく悪質者を大村収容所に送っているが、この中には密入国が多いのに強制送還もできないので、この処置には困っている。外国人の登録については一時登録証のやみ相場が十倍にもなったことがあるが、外人登録法の
改正によって指紋をとるということになって以来、よほど厳重になった。
また、罰金収入が多いのは、最近交通機関で自動車の違反事件が急激に伸びたためで、三十一年度には百九十二万件と推定して、その額を見込んだ次第である。
法務省
関係についてはこのほか、公安
調査庁の活動状況及び売春禁止法、検察
審査会等の問題をめぐって
質疑応答がありましたが、省略いたします。
最後に文部省
関係につきましては、三十一年度の文部省
所管予算額を見ると、必要なものが確保されておらず、教育
予算の後退という感じがする。
また最近都道
府県条例で、教員の停年制をしき、五十才以上の教員の退職、四十五才以上の女子教員には退職を勧告して、青年者と入れかえようとする傾向があるがどう思うか、また地方によっては、文部省の方針に反して教員数をむしろ減らそうという動きがあるが、どう思うかというような質問がありました。これに対しまして清瀬文部大臣は、教育の重要性はよく承知しているが、国の政治は一体のものである。結核慰者を入れる病床も足らず、
住宅難のため、今なおガード下に住んでおる人たちもいる敗戦後の現実からすれば、一千三百億円の教育
予算は満足していいも一のと思う。
地方自治権も尊重せねばならぬが、教員の五十才停年、女子教員の四十五才勧告退職ということは文部省として
考えていない。また、教員定数を減らすということも、地方財政の都合によるものであろうが、もし実際にさようなことが起るようであるならば、文部省としても適当な措置をしたいとの
答弁がございました。
さらに義務教育費国庫負担に関連して、三十一年度における教員増の算定方式等の問題をめぐって文部省、
自治庁当局との間に活発な
質疑応答が繰り返されましたほか、準要保護児童に対する教科書の無償給与及び給食費補助の問題、国立、公立文教
施設の
整備問題、学生健康保険法の問題、その他文部行政の各般にわたって熱心な
審議がなされたのでありますが、詳細は
会議録によってこらん願いたいと思います。
以上をもって第四
分科会に付託されました
予算の
審査を全部終了いたしました次第であります。
右御
報告申し上げます。(拍手)