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1956-03-23 第24回国会 参議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二十三日(金曜日)    午前十時四十三分開会     ―――――――――――――   委員の異動 三月二十二日委員相馬助治辞任につ き、その補欠として永岡光治君を議長 において指名した。 本日委員亀田得治君及び永岡光治君辞 任につき、その補欠として岡田宗司書 及び相馬助治君を議長において指名し た。     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     西郷吉之助君    理事           池田宇右衛門君            堀  末治君            三浦 義男君            安井  謙君            秋山 長造君            曾祢  益君            吉田 法晴君            豊田 雅孝君            中山 福藏君    委員            青木 一男君            石坂 豊一君            井上 清一君            伊能 芳雄君            川村 松助君            木内 四郎君            佐野  廣君            田中 啓一君            西岡 ハル君            野村吉三郎君            平林 太一君            藤野 繁雄君            吉田 萬次君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            戸叶  武君            羽生 三七君            矢嶋 三義君            湯山  男君            北勝 太郎君            田村 女吉君            廣瀬 久忠君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    外 務 大 臣 重光  葵君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 清瀬 一郎君    農 林 大 臣 河野 一郎君    国 務 大 臣 太田 正孝君    国 務 大 臣 高碕達之助君    国 務 大 臣 船田  中君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    内閣官房長官 松本 瀧藏君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    自治政務次官  早川  崇君    自治庁行政部長 小林與三次君    自治庁税務部長 奥野 誠亮君    経済企画庁調整    部長      小山 雄二君    経済企画庁計画    部長      大来佐武郎君    外務事務官    (公使)    木村四郎七君    外務省アジア局    長       中川  融君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主税局長 渡邊喜久造君    大蔵省理財局長 河野 通一君    通商産業政務次    官       川野 芳満君    農林大臣官房長 谷垣 專一君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件主査報告昭和三十一年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十一年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十一年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を開会いたします。  本日は最後総括質問を行う予定でございまするが、その前に各分科会主査報告をお願いいたします。  まず、御報告申し上げます。委員相馬助治君が辞任ぜられまして、永岡光治君が委員に入られました。翌二十三日、さらに永岡光治君が辞任され、相馬助治君が委員に入られました。     ―――――――――――――
  3. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 主査報告をお願いいたします。第一分科会主査三浦義男君。
  4. 三浦義男

    三浦義男君 第一分科会経過を御報骨申し上げます。  本分科会に付託されまして案件は、皇室費国会裁判所会計検査院内閣総理府防衛庁自治庁を除く)、大蔵省及び郵政省所管並びに他分科会所管外事項であります。  本分科会は十九、二十及び二十二日の三日間にわたり、これら各所管予算につきまして精細な審査を行いました。以下その質疑応答のうち、若干のものについて簡単に御報告いたしたいと存じます。  まず皇室費についてでございますが、皇居内の御文庫は、もと防空施設だったもので、陛下の御住居としてはまことに適当でないと思うが、特に保健衛生上の懸念はないかとの質疑に対しまして、宇佐美宮内庁長官より、一昨年予算を計上して、ベンチレーターを取りつけるなど、施設整備を行なったので、保健衛生上の懸念はないと思うが、宮殿の復旧とあわせて、適当な時期に新営を考慮する必要があると思うとの答弁がありました。  次に、国会所管につきましては、参議院庁舎増築費七千四百七十万円に関連いたしまして、今回の地方自治法改正案では地方議会議員当該地方団体に対し、請負をなすことを禁止されているが、国会議員国会に対し請負をすることができるということははなはだ片手落ちであり、違法ではないとしても、不穏当ではないかとの質疑がありました。これに対し芥川参議院事務総長より、議員が社長である会社と請負契約を結ぶことは、法規に従って公正に行われる限り、法律的、事務的には差しつかえないと思うが、御趣旨の点については慎重に検討の上善処したいとの答弁がありました。同様の質疑に対し、根本内閣官房長官からも、政府としては、国会議員なるがゆえに入札の機会を与えず、営業の自由を制限することはできないが、しかしなるべく自制して、誤解の起らないようにする配慮は望ましいとの答弁がありましたが、重ねてその自制措置について政府善処方を強く要望したのに対しまして、関係閣僚とも協議して十分検討の上善処したいとの答弁がなされました。  次に裁判所所管につきましては、裁判所庁舎の新常費として毎年多額経費が計上されているが、全体の計画としてどのくらいの事業費を見込んでいるかとの質疑に対し、戦災、老朽等によるほか、簡易裁判所家庭裁判所等を急速に新改築しなければならないので、庁舎整備には全体で三十二億円を要するが、三十一年度の五億三千万円を除き、さらにあと二十五億円が必要であるとの答弁がありました。  次に会計検査院につきましては、予算定員一千百七十八名で一応人手は足りているのか、最近会計検査院の綱紀が云々されているのははなはだ遺憾であるが、検査旅費等については無理のないよう留意する必要がある。その実情並びに対策はどうかとの質疑に対しまして、検査事項は非常に増大しているが、昨年八月、六十名の増員が認められ、かつ年を追うて職員検査能力も向上してきているので、検査院としては与えられた人数で任務の完遂に努力している。旅費の点については来たる四月から旅費に関する法律改正が行われることになっているので、だいぶ改善されると思うが、なお、検査院としては全国各地に五十近くの指定旅館を持っており、なるべくこれを利用させることとしているとの答弁がありました。検査を必要とする対象のうち、実地検査をなし得るものは何割くらいかとの質疑に対し、要検査個所三万三千カ所、そのうち毎年あるいは一年おきくらいにはぜひ検査したいと思うもの七千五百カ所であるが、実際に検査し縛るものは千九百カ所で、大体三割弱である。このほか都道府県工事現場は十万カ所以上に上るが、このうち実地検査をするものは大体一割見当であるとの答弁がありました。  次に、内閣及び総理府所管でありますが、まず内閣官房交際費が一千万円、報償費が二千万円、それぞれ増額されているが、このように急激かつ飛躍的に増額された理由いかんとの質疑に対し、近来国際関係の出入りや渉外事務が激増したのと、従来この種の経費外務省と共管であったのを、三十一年度から分離したためであるとの答弁がありました。  また経済企画庁の行なっている基準点測量並びにそれに基く地積調査はどの程度進行しているか、全国調査完成するのはいつごろの予定か、従来の土地台帳面積との差はどのくらいあるかとの質疑に対し、三十年度までに一万四千五百三十点、地積調査二千三百平方キロを実施した、三十九年度までに十万平方キロを実施したい計画であるが、その予算を確保するためには非常な努力が必要と思われる。今までの調査の結果によると、従来の土地台帳面積よりも一割五分ないし二割五分多いとの答弁がありました。  次に郵政省につきましては、町村合併に伴って郵便局電話同等を合理的に統合することは当然であるとは思うが、既存のものを廃止することは、当該地域の住民に不便を与えることにならぬか、また最近郵便貯金の成績があまりよくないようであるが、その実情原因並びに対策いかんなどの質疑があり、これに対し、町村合併に伴い郵便局等を統合して、なるべく案配区域等行政区域と一致させることは非常なサービスの向上となるばかりでなく、統合といっても、既存のものは窓口として残すので、決して不便にはならない。この点については誤解に基く陳情も多い実情にあるので、よく説明をして納得してもらっている次第である。また郵便貯金総額は、三月十九日現在で五千二百八十七億円で、三十年度における増加額は八百三十億円である。今年度の増加目標一千百億円を三百億円近く下回ったわけである。不振の原因としては銀行預金利子課税免除農村貯金系統金融機関に流れたことなどが考えられるが、郵政省としても宣伝周知方法等について改善、反省すべき余地があると思う。三十一年度においては九百九十億円の増加目標として、その達成に努力するとの答弁がありました。  最後大蔵省所管でありますが、衆参両院及び国会図書館等には、庁舎新営のため相当多額施設費が計上されているが、単年度予算であるため、こま切れ工事となり、みすみす不経済を余儀なくされる。このような国費のむだを排除するため、この種の建築に対しては継続費を認めることとしてはどうか、少くともこの種の施設費については予算審議に際し計画全貌並びに経費総額を明瞭に示すべきではないかとの質疑に対しまして、継続費は数年間にわたって財政負担を約束するものであるから、その設定には慎重を要するが、その完成に数年間を要するものについては可能な限り計画全貌を示し、全体が幾らで、残事業が幾らあるかなどを明らかにすべきものと考えるので、今後できるだけそのように努力したいとの答弁がありました。  また、予算執行の適正を期する上に大蔵大臣は最も重い責任と権限とを持っており、予算の正しい執行のためには、財政法令並びに会計法令を尊重し、かつ厳格にこれを順守させることが最も肝要と思うが、大蔵大臣所見いかんとの質疑が具体的な事例に基いて行われました。これに対し一万田大蔵大臣及び森永主計局長より、財政法会計法等も尊重し順守すべきはもとよりであって、これらの法令に違反することのないよう指導を怠らぬよう努力して参りたいとの答弁がありました。  その他、本分科会所管各省予算の全体を通じまして、きわめて広範多岐にわたる質疑が行われたのでありますが、その詳細につきましては、速記録によって御承知を願いたいと存じます。  かくて昨二十二日をもちまして質疑を終り、第一分科会審議を終了いたしました次第でありす。  以上、御報告申し上げます。
  5. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 第二分科会主査の都合によりまして、あと回しにいたします。  第三分科会主査堀末治君。
  6. 堀末治

    堀末治君 第三分科会における審査経過を御報舌申し上げます。  第三分科会に付託されました案件は、昭和三十一年度予算三案中、総理府自治庁)、農林省運輸省及び建設省所管に関するものでございます。分科会におきましては、去る十九日より審査を開始いたしまして、二十日、二十二日の三日間にわたりまして順次所管予算について政府当局より説明を聴取し、質疑を行い、慎重に審査を行いました。これらの詳細につきましては、会議録によってごらんを願うことにいたしまして、ここでは質疑応答のうち、おもなるもの若干につきまして御報告申し上げるにとどめたいと存じます。  まず、建設省所管予算につきましては、昨年度の補正予算の際の公共事業費繰り延べにより実際に支障は起らなかったが、今年度は治山治水関係予算が大幅に減額されておるが、これで建設省考えておる目標達成支障を来たさないのか、また、今年度程度予算治山治水基本対策要綱できめた事業量を行うとすれば今後何年くらいかかるか等の質疑がございましたが、これに対しまして建設省当局より、補正予算の際の繰り延べ額は、河川関係で二十三億円であったが、土木事業の性質上、毎年ある程度繰り延べはあるものであり、昨年度の場合も多少の問題はあったが、大体繰り越しときまっていたものが大部分であったので、全体としては支障はなかった。建設省としての目標は、治山治水基本対策要綱できめた額であるので、それから見ると全体計画は少し延びると思う。治山治水基本対策要綱所要額は一兆八千億円であるので、今年度の治山治水予算では、直轄河川で三十年、中小河川で五十年、ダムの関係では二十年、全体で見て三十数年はかかるという答弁がございました。  また、住宅関係としては、三十年度に民間自力建設による分として予定されていた住宅進捗状況はどうか、また三十一年度は公営住宅については国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律により、また公庫住宅公団住宅については民間資金活用等により資金構成が変るので、家賃等が高くなることはないか等の質疑がございましたが、これに対し建設省当局より、三十年度の民間自力建設による住宅の二十四万五千戸は、建築動態統計によれば、昨年の十月末で約五六%までいっているので、大体目標通り進捗率を示している。三十一年度は公営住宅については国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律により少し高くなるが、評価額が従来の評価額の五分の一くらいになることになっているので、この程度はやむを得ないと思う。公庫については従来の出資分により、公団については全体の資金コストの平均を出す等の方法によって、金利、年限等三十年度並みの条件を保持できる等の答弁がございました。  運輸省所管予算につきましては、外航船舶建造融資利子補給に要する経費三十一億円には、第十二次造船以外の分が含まれているのか、また第六次造船から第十一次造船までの利子補給額に見合う融資総額償却未済額はどのくらいか、また造船利子補給をしなくともよくなる時期はいつごろになる見通しか等の質疑がございましたが、これに対しましては運輸省当局より、利子補給予算の中には、第六次より第十一次までの分と、第十二次の分との両方が含まれている。造船の借入金の残高ば総額一千九百二十一億円で、うち一千六十一億円は財政資金であり、八百六十億円は民間融資分である。利子補給をしなくともよくなる時期はいつということは言えないが、償却については、普通償却で現在約五百億円残っているので、海運界の好況がこのまま持続するとすれば、二、三年で償却を完了できる見通しであるとの答弁がございました。その他離島航路定点観測予算拡充必要性については特に熱心な質疑が行われました。  次に農林省所管予算について申し上げます。農林省所管予算については、都通府県農業試験場補助費は従来人件費事業費を分けていたのを、今回全部専業費に入れることにしたため、試験研究機関職員に不安を与えているが、これによって試験研究機関職員を減らすことはないか、人を減らさないとすれば事業費に入れる必要ばないのではないか、また今回はやむを得ないとしても、来年度以降は分ける考えはないか等の質疑がございましたが、これに対しましては農林当局より、試験研究機関については、事業内容についてこちらからひもをつけるので、人件費を落すことは考えられないが、不安を与えている点ありといたしますれば、人件費を落すことのないよう厳重に通達を出す。三十二年度以降についてはとくと考慮するとの答弁があり、また大蔵省当局よりは、補助金については種々研究を要する問題はあるが、試験研究機関についてば人員を減らしてよいという意味で事業費に入れたのではなく、補助事業のより効率化を期するために行われたものであるから、さような心配ありとすれば三十二年度以降は十分考慮したい旨それぞれ答弁がございました。  最後自治庁所管につきましては、従来の合併促進法に基く経費と、今国会提案中の新市町村建設促進法案に基く経費と二本立に予算が組まれているが、実際には同じ市町村に渡り、同じ使途に使われるのではないか、農林省の新農村建設計画とどういう関係があるのか等の質疑がございましたが、これに対しましては自治庁当局より、合併促進法に基く経費は、合併促進のために合併市町村全部を対象として交付されるものであり、提案中の新市町村建設促進法案は、今後五カ年間ぐらいの間に集中的に新市町村の育成をはかっていくことをねらいとしており、一府県に大体十カ市町村くらいのモデル市町村を作り、それを対象にして補助金を交付することになっている。このような計画は、農林省の新農村建設計画、文部省の社会教育関係郵政省郵便局関係にもあるが、関係各省は密接なる連絡をとって、できるだけこの市町村建設計画に合わせていくことになっているという答弁がございました。  以上をもちまして第三分科会に付託されました案件全部の審査を終了いたしました次第でございます。  右御報告申し上げます。
  7. 西郷吉之助

  8. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは第二分科会審査経過を簡単に御報告いたします。  本分科会に付託されました案件は、通産省所管一般会計並びに特別会計予算外務省及び総理府所管中の防衛庁予算でありまして、まず三月十九日、川野通産政務次官より通産省予算概略説明を聞き、審議に入りましたところ、通産省一般会計歳出は八十三億円であるが、これで貿易の振興産業基盤拡充中小企業振興などの重要施策がやれるのかどうか、当初大蔵省提出した要求額査定経過を示せとの質疑がございました。これに対し通産当局より、当初大蔵省に提示した要求額は二百三十億円であったが、査定の結果八十三億円になった。査定で落ちたおもなるものには、原子力関係の五十一億円、武器生産施設等買い上げ費三十五億円、輸出信用保険並びに中小企業信用保険に対する一般会計よりの繰り入れなどがある。通産行政一般会計予算のほかに、財政投融資の面で、純なわれているのであるとの答弁がありました。防衛生産に対する通産省根本方策はどうかとの質疑に対しては、兵器生産は二十七年より開始されたが、当初より米駐留軍用兵器のオーバーホールとか特需に依存してきた。これがいずれも一段落を告げ、注文が激減するに至ったので、銃砲弾施設については国による買い上げ保有することを考えたが、防衛計画や、これに伴う防衛生産につき国の政策が確立するまで見送ることとしたとの答弁がございました。中小企業対策につきましては、協同組合共同施設補助が減っているのはなぜか、信用保険について親会社より受け取る不渡手形による危険をカバーする意図はないかなどの質疑がありましたが、これについては、共同施設補助は一応行きわたったので、今後設備近代化補助に重点を指向した。信用保険不渡手形の危険をカバーすることは、一方売掛金との関係を考慮して研究いたしたいとの答弁がございました。  三月二十日は、重光外務大臣船田防衛庁長官出席を求めまして、外務省並び防衛庁予算審査を行い、三月二十二日も防衛庁予算審査を続行いたしました。外務省関係における質疑の二、三を御報告いたししなすと、三十一年予想せられる賠償並びに特殊債務は幾らかとの質疑に対しましては、賠償費等支払い予定額は、確定しているのはビルマ賠償七十二億円、タイ国特別円十億円、近く確定すると考えられるフィリピン賠償は年間九十億円であるが、その全部が三十一年度の支払いとなるかどうかは疑問がある。そのほかにはオランダに対する補償が五カ年払いで三十六億円、インドネシア、ヴェトナム賠償も交渉が進むことが予想されている。これらの総額については、対外関係上詳細は言えないとの答弁がありました。また三十一年度の七千五百名の移民送出計画はどのような内容かという質疑に対しましては、三十一年度は予算上は七千五百名であるが、三十年度からの繰り越される千七百名があるので、合計九千二百名となる。そのうち、カンボジア移民を二千名と予定しており、残り七千二百名ばかりが中南米諸国及び北米合衆国向けである。渡航費予算や船の制限がなければ移民はもっと出せると思うとの答弁がありました。  防衛庁予算につきましては特に長時間質疑がなされたのでありますが、そのうち二、三重要なる諸点につき御報告申し上げます。まず、海上自衛隊航空自衛隊とで別々に航空機整備がなされているが、前大戦の苦い経験もあり、航空部隊は一元的に運営すべきではないかとの質疑に対しましては、海上自衛隊に配属されている機種はもっぱら対潜哨戒任務とし、航空自衛隊航空機戦闘機輸送機であり、実用機ばこのような任務の相違に基いて各自衛隊に配備しているが、乗員の訓練や整備補給は統一して行なっておる旨の答弁があり、防衛生産に対する防衛庁基本方針いかん兵器生産設備買い上げ、あるいは将来国有国営国有民営というごときを望ましいと考えるかどうかの質疑に対しましては、防衛庁としては防衛六カ年計画が確立し、兵器に対する需要が確立しなければ、どういうように防衛生産を持っていくかの政策が立たない。弾薬については、特需民間工場相当施設整備したので、特需がなくなったからといってこれを散逸せしめるのは惜しいと考える。防衛生産はいろいろ特殊な事情があるので、将来はその一部について国有国営国有民営なども必要に応じ考えられるようになるかもしらぬとの答弁がありました。また、防衛庁試案防衛六カ年計画につきましては、すでに三十五年度の目標を設定している以上は、現状からその目標に到達するまでの年次計画増勢の要因、すなわち陸上自衛隊なら十個師団編成をどうするとか、海上自衛隊なら今後増加すべきおよそ三万トンの艦種別構成であるとか、航空自衛隊では千三百機の内容はどういうものかについて国会に示すべきではないかとの質疑がございました。これに対し船田防衛庁長官より、十八万人を何個師団編成にするとか、どこに配備するとかについては目下検討中で言えない。北海道方面隊九州方面隊はほぼ完成に近づきつつあり、今後増強するのは主として本州の諸部隊となるであろう。三十一年度増勢計画における陸上自衛官十六万人と目標十八万人との開き二万人をどういう速度で埋めるかという年次計画も立っていない。海上自衛隊艦艇は、三十一年度増勢計画完成すると九万九千三百トンとなり、目標十二万四千トンとの開きは三万トンであるが、今後あまり大型艦艇の供与は期待されない。いかなる艦種を建造するかは各方面から検討中であり、防衛庁内に試案というものもない。しかし他国に脅威を与えるような航空母艦等を建造する脅えはないとの答弁があり、原子兵器についてはどう考えるか、アメリカ側日本ナイキやマタドールを持たせることも考慮しているとの報道もあるがどうかとの質疑に対しましては、原子兵器を使用する考えは全く持っていないし、また米軍が原爆を国内に持ち込む場合には日本政府の合意がなければならない。ナイキについては正式には何ら話がないが、非公式の話では、ナイキが原爆を積んだ敵航空機に対してきわめて有効なる防御兵器であるとの説明を受けたことがある。このような防御兵器がわが方にあれば力強いと思うと述べたが、ナイキが早晩日本側に供与されるとは考えられないと船田長官答弁がありました。  さらに三十五年度目標達成されれば、防衛庁としては米地上軍の完全撤退を米側に要求すべきではないかとの質疑がございましたが、これに対して船田防衛庁長官は、三十一年度陸上自衛隊一万人を増員したのは、昨年より本年にかけて米地上軍が一万一千名減って、残留兵力約三万人という事態に即応したものである。しかし来年度以降どういうテンポで米地上軍が撤退するかについては何ら通報を受けていない。また三十五年度に十八万名を整備したら米地上軍が完全に撤退するかどうかは、そのときの国際情勢や、日米両国の合意によるとなっているのであるから、今日は確言できない。米側に地上戦闘部隊をなるべく早期に撤退したいという希望のあることは承知しているが、基地関係部隊までも撤退するとは見られない旨の答弁がありました。  その他詳細は速記録によることとして、以上、簡単でございますが、第二分科会審査報告といたします。
  9. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 次に第四分科会主査中山福藏君。
  10. 中山福藏

    ○中山福藏君 第四分科会におきまする審査経過を御報告いたします。  第四分科会に付議されました案件は、昭和三十一年度予算三案中、厚生省、労働省、法務省及び文部省に関するものでありまして、去る十九、二十、二十二日の三日間にわたり、それぞれ当局より説明を聴取し、質疑応答を行なったのでございますが、ここには質疑応答のおもなものについて御紹介するにとどめたいと思います。  まず厚生省予算につきましては、新たに放射線衛生研究費として一千七百余万円を計上しているが、放射能障害に対する予防と治療の研究を組織的に行うというのなら、さらに多額予算を出すべきではないか。また血液製剤対策として新規に四十万円ばかり計上しているが、このわずかの予算で何をやろうとするのか、またこれには血液を売ることの障害に対するものが含まれているのかどうか。さらに結核対策を強化すると言いながら、アフター・ケアーの施設がわずかに二カ所しか新設されぬことになっており、居宅隔離室の予算もかえって減額されているのはどういうわけか。また保健所について一億二千万円の予算は少な過ぎる。これでは第一線機関としての機能発揮を望むことは無理だし、第一医者の充足もできまい。また新たに僻地診療所を三十二カ所設置するというが、一カ所六十万円程度予算で果してできるのかどうか、さらにまた覚醒剤の対策費が減額されているが、取り締りをゆるめてよろしい状態なのかどうかという質問がありました。  これに対しまして当局からは、放射線衛生研究昭和二十九年度から厚生科学研究所でやっていたものを、国立衛生試験所などで本格的に研究してもらうつもりで新たに予算をつけたわけだが、もちろんこれで十分だとは考えていない。また血液製剤の四十万円は、薬事審議会に部会を設けることと、血液製造技術者の講習会の費用に充てるもので、血液売買に対する取締りは別に法案を作って御審議を願うこととしている。また、結核回復者の後保護施設や居宅隔離室の新設がはかどらない理由ばいろいろあると思うが、要するに地方庁で負担がむずかしいことが第一の原因考えられるので、次年度からはもっと考慮したいと思う。また保健所についても同様、補助率を引き上げて、地方が予算を組みやすくせねばならぬと考えているが、医者の充足対策としては、単に給与を上げるというだけでなく、研究費の増額、宿舎その他内地留学等の問題をあわせて考えるべきであって、これらの点は三十一年度に実現できなかったが、今後必ず推進したい。また、僻地診療所は、将来の国民皆保険に備えてぜひ必要と考えて設けた。さらにまた覚醒剤予算が減っているのは、病床の整備がやや整ったからであり、取締りをゆるめる気はないとの答弁がありました。  なおこのほかに地方財政の窮迫等のために末端の厚生行政がむしろ後退している面があるが、これは厚生省予算の組み方自体に問題があるのではないか。たとえば身体障害児、精神薄弱児等の施設については国が百パーセント補助すべきだと思うがどうか。また上、下水道工事に未熟練の失業者を使うのはどうかと思う。さらにまた婦人保護の予算で売春問題の対策をどのように行う考えかなどといった質疑があったのでありますが、これに対しまする当局側の答弁は、厚生行政については、最近地方議会においても大いに重視され、予算消化につき努力されつつある。現在肢体不自由児等、国でめんどうを見るべきものについては八割を国で補助することとし、地方的利益の多いものについては補助率を低くすることにしている。また水道工事の整備については、現に三十年度に未熟練労務者を八〇%吸収してやってみて、十分優秀な成績を上げた実績があるので、引き続き労働省所管の特別失業対策事業費に計上して、実施の際、厚生省に予算を移しかえて実行することにしたい。さらにまた売春問題対策としては、四千万円の予算をもって八カ所に婦人相談所を設け、全国に四百八十六人の婦人相談員を置いて福祉事務所に配置する方針である等、こういう所見でありました。  次に労働省関係につきまして、失業対策事業はある期間全額国庫補助でやったらと考えるがどうか。また特別失業対策事業は事業と人とが一致せず、効果が少いといわれているがどうか。また、政府は経済五カ年計画の最終年度において、完全失業者を四十五万人に押えるというが、その信憑性はいかん。さらにまた新たに中小企業労使関係費として三百万円の予算を組んでいるが、どんなことをやろうとするのかという質問がございました。  これに対して労働省当局からは、失業対策事業は、経済自立と完全雇用の建前からいっても最も重要な仕事であるが、国家財政の現状から見て、全額国庫負担で行うことは一時的にもせよ困難である。三十一年度においては資材費の単価及び補助率の引き上げ等を行なって強化をはかる方針である。また、特別失業対策事業については三十年度において予算がおくれたために、当初うまくいかない面があったが、来年度は円滑にゆくと思う。また、三十五年度に完全失業者を四十五万人にするというのは一つの目標であるが、政府としては財政投融資などによって極力失業者の吸収に努めるとともに、一方経済規模の拡大と相待ってどこまでも目標達成する考えである。さらに中小企業の労働問題については、企業自体をどうして育てるかという根本問題もあるわけだが、労働省としてはそこに勤める労働者の方々が安心して働けるように相談所を設けるつもりで、この予算を計上したという答弁がありました。  なおこのほかに、最近の労働情勢に対する労働大臣の所見並びに労働賃金、婦人保護対策、労働金庫及びけい肺法施行後の状況等につき予算の面から質疑がなされたのでありますが、省略いたしたいと存じます。  次に法務省関係におきましては、少年院の収容状況とその教化方針はどう省所管の教護院とは一貫したものにする考えはないか、また在留外人、ことに朝鮮人の犯罪が多いようだが、外国人の登録ないし密入国者の取締りをどうやっているのか。歳入予算の増額五億八千万円の中で罰金及び没収金が二億九千万円となっているが、多額の罰金を収入に見込むのはどうかと思うという質問がありまして、これに対しましては、法務省並びに厚生省の担当から次のような答弁がございました。  現在少年院には、昨年十一月末の統計で一万二百四十名ほど収容されており、そのうち精神状態の平常な君二八・七%、準平常な者が三八・五%で、精神に障害ある者が三二・八%となっているが、いずれも犯罪を犯し、またはその疑いある者として家庭裁判所から送られてきた者で、幼少からの環境によって不良化し、精神的にもひどく片寄っているから強力な矯正が必要である。厚生省児童局所管の教護院は八割の国庫補助で都道府県がやっているが、この方の収容対象は十五才から二十才までの少年で、ここで直らぬ者が少年院に送られることになっている。現在教護院に収容されている者は四千八百名だが、収容を要する者はその数倍にも達する見込みで、なるたけ少年院の厄介になる者を少くするよう教育補導には苦心している。少年院とても、少年刑務所と違い、教育機関であるから、この点教護院と十分連絡の必要があり、両者の一体化という点は今後検討したいと思う。また在留外人については、六十四万人のうち朝鮮、韓国人が五十七万人、中国人が四万三千人となっており、犯罪については現在刑務所にいる者六万人のうち、一割近くが朝鮮人である。つまり犯罪の比率からすれば朝鮮人は日本人の十倍以上になっているわけで、窃盗とヒロポンなどの密造が犯罪のおもなるものである。出入国管理令により犯罪者の国内退去を命ずることは、国際慣習からもそうなっているが、韓国側が引き取りを拒否しているので、やむなく悪質者を大村収容所に送っているが、この中には密入国が多いのに強制送還もできないので、この処置には困っている。外国人の登録については一時登録証のやみ相場が十倍にもなったことがあるが、外人登録法の改正によって指紋をとるということになって以来、よほど厳重になった。  また、罰金収入が多いのは、最近交通機関で自動車の違反事件が急激に伸びたためで、三十一年度には百九十二万件と推定して、その額を見込んだ次第である。  法務省関係についてはこのほか、公安調査庁の活動状況及び売春禁止法、検察審査会等の問題をめぐって質疑応答がありましたが、省略いたします。  最後に文部省関係につきましては、三十一年度の文部省所管予算額を見ると、必要なものが確保されておらず、教育予算の後退という感じがする。  また最近都道府県条例で、教員の停年制をしき、五十才以上の教員の退職、四十五才以上の女子教員には退職を勧告して、青年者と入れかえようとする傾向があるがどう思うか、また地方によっては、文部省の方針に反して教員数をむしろ減らそうという動きがあるが、どう思うかというような質問がありました。これに対しまして清瀬文部大臣は、教育の重要性はよく承知しているが、国の政治は一体のものである。結核慰者を入れる病床も足らず、住宅難のため、今なおガード下に住んでおる人たちもいる敗戦後の現実からすれば、一千三百億円の教育予算は満足していいも一のと思う。  地方自治権も尊重せねばならぬが、教員の五十才停年、女子教員の四十五才勧告退職ということは文部省として考えていない。また、教員定数を減らすということも、地方財政の都合によるものであろうが、もし実際にさようなことが起るようであるならば、文部省としても適当な措置をしたいとの答弁がございました。  さらに義務教育費国庫負担に関連して、三十一年度における教員増の算定方式等の問題をめぐって文部省、自治庁当局との間に活発な質疑応答が繰り返されましたほか、準要保護児童に対する教科書の無償給与及び給食費補助の問題、国立、公立文教施設整備問題、学生健康保険法の問題、その他文部行政の各般にわたって熱心な審議がなされたのでありますが、詳細は会議録によってこらん願いたいと思います。  以上をもって第四分科会に付託されました予算審査を全部終了いたしました次第であります。  右御報告申し上げます。(拍手)
  11. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして分科会における主査報告を終ります。  午前中はこの程度にいたしまして、午後一時まで休憩いたし、再開後総括質問に入ります。  暫時休憩いたします。    午前十一時三十四分休憩      ―――――・―――――    午後一時二十一分開会
  12. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を再開いたします。  総括質問に入ります前に、委員の変更について御報告いたします。  委員亀田得治君が辞任せられまして、岡田宗司君が委員に入られました。  佐多忠隆君。
  13. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 まず総理大臣にお尋ねいたしますが、ダレス長官が参りまして、総理との間に数回にわたって会談をされた。その会談の内応ですが、特に新聞の伝えるところによると、世界情勢、特に極東の情勢、日本をめぐる極東の情勢というようなことについて相当詳しいお話し合いをされたということが報ぜられておりますので、それらの模様について、どういうことが論議をされ、どういう話をかわされたか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  14. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 極東の情勢について特に話があったということを記憶しませんが、中共について、その貿易の話がありました。中共の何というか、中共に輸出をする品目の解除について依頼をいたしました。できるだけこれの拡張に努力するというような話がありました。
  15. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 中共に関する問題は、後ほどもう少し立ち入ってお聞きしたいと思うのですが、新聞の伝えるところによると、そういう一つ一つの断片的なことでなくて、もっと概括的に、一般的に現在の世界情勢をどういうふうに見るかということについて、ダレスからもいろいろ意見が述べられたし、日本側からも特に総理がいろいろお話になったというふうに伝えられておるのですが、それらの点をどうお聞きになり、どう述べられたか、もう少し概括的な、一般的なことからまず御説別を願いたいのです。
  16. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 詳細の話はありませんが、米ソの関係で、この冷戦がまだ続くのかというようなお話をした記憶があります。冷戦――とにかく両方で原爆、水爆の実験などをやっているところを見ると、まだ冷戦が続くように思うが、どうでしょうかという質問をしましたら、そう見るのが適当だろうというような話をされました。
  17. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 非常に断片的な御答弁で、なかなか捕捉しにくいのですが、それではそれらの問題の討議の場合には外務大臣も御列席になったと思いますが、外務大臣から一応それらの問題についての概括的な御報告を願いたいと思います。
  18. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) それでは私から御報告します。  ダレス米国国務長官の滞在はわずか一晩でございましたから、まあ準一日という格好でございます。そこで意見の交換する時間が非常に限られておりました。米国側としては、公館長会議を開いておるような関係もございますし、そこで二回ほどダレス長官日本側との会見の機会があったのでございます。一回は総理大臣自身が会見をされたわけでございます。そのときに私も列席をいたしておりました。そこでダレス長官の意見として、一々の問題について御紹介申し上げるのばいかがかと考えます。そういう御質問でもございません。一般的にはどうダレス長官が米国の考え方としてわれわれに話をしたかということを私の言葉でもって申し上げます。  一々ダレス長官の言葉を記録にとってある部分もありますし、ない部分もあるようなわけでございますから、申し上げるわけには参りませんけれども、それはダレス長官としては米国におる、出発前に表示した意見をやはり強く持っておることを私は感じました。それは要するに東西両陣営と申しますか、共産陣営と民主自由陣営の争いのことが根本になります。ダレス長官は非常にこれを深刻にまだ考えておることがよく看取されました。ソ連は決してこの革命以外の目的に変更したわけではない。そこで戦術はいろいろ変更しておる。自分がアジアに来て、アジア方面のソ連の新しい経済的な施策なんぞを見てもそうである。これに対してはあくまで自由民主国としては協力をして進まなければならぬ。またそうすることによってソ連が政策を漸次緩和することが可能であるというふうに見たのであります。  そこで米国としてはどういうふうに東亜方面に対する考え方を持っているか、こういう根本問題については、米国としては、米国の対岸に、太平洋の対岸に米国を敵と考えておるような勢力が勢力を持つことはこれは許されないという考えを持っておるんだと、こういうことをはっきり伝えたことは、私にとってもきわめてはっきりした米国の政策だと思います。そこで米国の政策としては、この西太平洋の島々、半島等において米国を敵視するような勢力が浸潤することは、これは米国としてはこれを反対せざるを得ないんだと、これが基礎になっておるようでございます。従いまして、南朝鮮もきわめて重要にアメリカは考える、日本はむろんのこと、それから台湾、フィリピン、インドシナ、インドネシア等の関係を重要視しておりました。そうしてそういう基礎に立っての今日までのアメリカの政策――時としてはこれは力の政策であると言い、またそれはソ連の力の政策に対する対抗策であるとも言ってきたが、それは成功してきたんだと、こういうことの考えに立って話をしております。それは単に武力だけじゃないんだと、経済力、政治、その他文化方面も含めなけりゃならぬ。特にソ連の第二十共産党大会後の政策から考えてみて、武力以外のことも十分考えなけりゃならぬと言って、経済問題等に話が進んで参りました。その経済問題のごときも、その土地の各国の意向を十分に尊重して、そしていろいろ施策を考えなけりゃならぬ。そして米国の力も無制限ではないのであるから、そこにいろいろ相談もしなければならぬわけである。こういうような大体の見地に立って話を進めて参りました。  これが一般的のダレス長官の米国の考え方の説明でございました。
  19. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 大体のところはわかりますが、その考え方は、今、外務大臣も御紹介になりましたように、ダレスが出発前から持っておる意見をそのまま再主張した、再確認させることをやったということにすぎないと思うのですが、その場合に、今外務大臣もおっしゃったように、西欧陣営の力がソ連の力にまさっているというふうに――まさっているから今平和が保たれているんだし、そういう意味でさらに防衛の手段その他を強めなければならない、それを確立しなければならないという主張であったように受け取れるんですが、そういうふうに考えておいていいですか。
  20. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) これは私の受けた感じは、米国の今日までの力を主にする自由民主国の団結による国際情勢、これがよほどソ連の戦術転換の原因になったという考え方のもとに話をしておることは明らかでございました。しかしながら、今日の話の要点は、そういう力とか武力とかいうことでなくして、そのほかの経済方面の施策等について特に意を注いでおるようにはっきり見えたことが注目されました。
  21. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その点は後ほど触れますが、もしダレスの考え方が出発前の意見をそのまま主張をするということであるならば、それから以後のいろいろなコミュニケなり、あるいは現在アメリカに着いてからのいろいろな意見を、少くとも外に発表されておる意見を考えると、どうしても力がまさっていたためにこういうふうな平和が保持されておるのだという主張であるとしか思えないのですが、その点は重光外務大臣としてはそういう考え方についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  22. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) その点は、どういう御趣旨の御質問か知りませんけれども、ダレス長官は、米国の武力に対する自信というものをはっきり言っておりました。これは万が一のことがあっても米国は十分の自信を持っておるのだということははっきり言っておりました。
  23. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 これまでのお答えからはっきりするように、従って西欧陣営の、特にアメリカの力による政策が現在の平和を保持しておるという考え方に立っておるし、それをさらに日本その他に確認をさせようというふうな態度をとっておるのではないかと思うのですが、そういう見解について鳩山総理は、それをどういうふうにお聞きになり、総理自身はどういう御意見であるかを承わりたい。
  24. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私はかって申したこともありますが、チャーチルがブラッドフォードでやった演説は一理あると思っております。現在の平和は力による平和であるというのが正しい見方だと思ったおります。
  25. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 力によって問題を解決をしようと、力によってあるいは平和を維持しょうという考え方は、かってなるほどチャーチルが説いた。あるいはそれに鳩山総理ば御同感になり、これを繰り返し主張をしておられるようでありますが、しかし、過去一、二年の醜態の推移から考えると、力による問題の解決が不可能であり、あり得ないのだと、もしそれにもかかわらず、なお力によって問題を解決しようとすれば、第三次世界大戦なり原水爆戦争なりになって、そうしてむしろ人類も文明もすべて破滅をしてしまうのだと、そういう深い反省が出てきて、むしろ力の政策は不可能になったのだと、行き詰まったのだと、そういう意味で話し合いによる問題の解決に重点が移ってきたというのが最近の実情ではないかと、これはヨーロッパの諸国にもあるし、東南アジア諸国、特にアジア諸国においては相当そういう考え方が強いと思うのですが、そういう世界的な趨勢を見て、アメリカ自身においても力の政策は失敗であり、さらには危険である、そういう点では大きな方向転換がなされなければならない。少くとも検討をしなければならないというのが、最近の実情であると思うのですが、こういう点を鳩山総理はどういうふうにお考えになるか。それからダレスに対して、少くともそういう日本の世界の良識の上に立った見解をお述べにならなかったのかどうか、その辺の事情を承わりたい。
  26. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 世界の各国は話し合いをいたしまして了解をするということが、世界を平和にする一つの方法であり、有力な方法であると思います。けれども自分の国を守る力を持っていない国は侵略を受けているということは現実の事実であるから、これを否定するわけにはいかなない。やはり自分の国を守るくらいの力はみんなが持っていて、そうして話し合いをするということが世界の平和を持ちきたすゆえんだと私は考えております。
  27. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや力によって、力を持って国を守るというやり方では国は守れないので、むしろそういう政策を強行をするならば、先ほど言ったように第三次世界大戦なり、あるいは原水爆戦争になるから、そういう力の政策と変ったものに移っていかなければならないというのが最近の実情ではないかと思うのですが、その点を総理はお認めになろうとしないのかどうか。そうしてまた、そういう方向に少くとも日本の方向をはっきり確立をし、さらにはその日本の国の方向をもっと広く拡げていくということが、平手矢法を持っている日本の最もふさわしい態度ではないかと思うのですが、そういう点について総理はどういうふうにお考えになりますか。
  28. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は、やはり自分の国を守る力を持つことが、世界の平和を維持するゆえんになると思います。
  29. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 しかしそういう考え方に立って、力の均衡の上に平和を維持するということになれば、力とはこれは静止の状態にあるのではなくて、常に変化をし、常に大きくなるのが当然であります。そうすると必ず軍拡競争になり、それが激化して戦争になる。そういうことが今真剣に批判され、検討されておる時代であり、時期であると思うのですが、総理はそういうふうにはお考えにならんのか。
  30. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) いや佐多君の言うようなこともやはり念頭においていかなくてはなりますまいが、ただ武力の競争をするというので、力の勝った者が力の弱い者を侵略をする、というような態勢を導くことは避けなければなりませんから、そういうようなあなたの考えておるような、話し合いをして了解をし合っていくという手段も、平和を得るのには必要な手段だと思っております。
  31. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そういう手段も必要であるというふうなお話でありますが、問題はそういう力の政策によるのか、話し合いの政策によるのか、方向はどちらの方向に今いきつつあるのか、ということをわれわれがどう認識するかという問題であると思うのですが、先ほど外務大臣のお話でも、力の政策も、なるほど競争しながら、一方においては最近のSEATOその他の寒気からさらに察して、そういう軍事同盟方式一点ばりでなくて、経済援助その他による生活水準の引上げその他が非常に必要であり、そっちに重点を移していかなければならぬということも、ダレス自身も相当感じたと考えるふしがあると思うのですが、それらのあたりを、総理はダレスとの会談においてどういうふうにお受けとりになったか。
  32. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私も東南アジアに対しては特にそうだろうと思います。自分たちの生活でも、向上をお互いに助け合ってしていくということが、東南アジアの平和を維持するのに必要だと思います。
  33. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 東南アジアに対してはもちろんのことですが、その他近隣諸国に対しても、われわれは平和を願うと同時に、平和を求める態度で相互に信頼し合うということが必要であり、そういう立場からするならば、力によってこれを圧服をしておこうとか、力によってこの問題の最後のとりでにしようという考え方は出てこないのだというふうに考えるのですが、特に日本憲法は、御承知の通りその前文で、日本国民は、恒久の平和を念願し、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われわれの安全と生存を保持することを決意したという、非常に大きな決意を世界に宣明をいたしております。この決意も過去十年の間にいろいろな変遷はありましたけれども、この一、二年来の情勢、世界の方向を考えるときに、この平和のために相互信頼し合うという決意は、今改めて日本がさらに強調をし、この方向に日本の国策をもっていくことが最も至当である時期であり、段階であるように思うのですが、鳩山総理はその点をどういうふうにお考えになっておりますか。
  34. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 兵力をもって他国を圧服するというような考えは毛頭持っておりません。そういうようなことは、平和を導くゆえんにもならないと思っております。とにかく話し合いによってお互いに自分たちの生活を向上していこう、それには平和以外にはないというようなことを信じ合うような国際関係になることを非常に熱望しております。
  35. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 われわれはそういう信頼、信義の上に立って、武力、戦力を持たない、だからこそそういうふうにお互いに信頼をされるというふうな感じ、気持を持ってこれまで対処して参ったのですが、そうしてそれが今後いよいよ必要であるというふうに思うのですが、その時期に総理は、力によって防衛を強化しなければならないということを、ことさらに大きく取り上げられることは、この憲法の前文をほごにした態度としか思えないのでありますが、その点は総理どういうふうにお考えになりますか。
  36. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) そういうことは全然考えておりません。力によって圧服しようというようなことはむろん考えておりません。
  37. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 力を持っておる者はいつもそういうふうに申しております。しかしたとえばダレスが、西欧陣営の力が優位したから平和を保ったのだという考え方、あるいはそういうために日本もまたその一翼として戦力を持たなければならぬというふうに鳩山首相は主張をしておられると思うのですが、そういう考え方でいいのかどうか。特にどこでも、この戦力なり軍隊が侵略の軍隊であるといったことを、言う者はない。たとえばよく西欧陣営、自由陣営は、共産主義の武力侵略の危機なしとしないから、それに備えるのだということを言って警戒をいたしておりますが、そう思われておるソ連自体が、絶対にこれは侵略のための、進出のための軍隊、武力ではなくて、防衛のための軍隊であり、力であるのだということを強調をしておる。同じようなことは、アメリカが、自分たちの軍隊こそは防衛のための軍隊であって、侵略のための軍隊ではないのだということを、お互いにそういうことを言いながら軍備拡張競争をやる、そうして戦争の危機を深める。そうして国際緊張を緩和するどころか、むしろ激化するという態度がある。それがわれわれとしては危険であり、そういう態度の中に、そういう空気の中にわれわれとしてはまき込まれてはならないと思うから、憲法の前文に言ったような相互信頼の態度を明示をいたしておると思うのでありますが、その点は鳩山総理どういうふうにお考えになりますか。
  38. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 全くすべての国が武力をなくして世界の平和が維持できるような世の中になれば、非常な幸いだとは思いますけれども、現在においては武力のない所に力が及んで、その武力のない国が力を持っている国にじゅうりんされているのは、歴史的に事実があるから、そうあなたのように安心はできないと私は思うのです。
  39. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 だからそういうふうに安心ができないというお考えであれば、平和を愛する請国民の公正と信義に信頼をするということが、もはやできなくなったのだということを意味するのだと思うのですが、総理はそういうお考えなんですか。
  40. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) いやそういうことは必ず侵略せられるというような確実な考えを持って言っているのではない。日本に武力がなければ必ず攻めてくる国があるというようなことを思っているわけではないのですけれども、日本としては不順の侵害に備えるためにある程度の、最小限度の自衛力を持つということはやはり日本としては怠ってはならない。現在どこの国でもそうだろうと思うのです。
  41. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今のような力の政策を持ち、それをさらに推進をするというようなことになれば、国際緊張が激化して戦争の危機があり、場合によってはお互いに侵略というような戦争の危機が生じてくるということが考えられる。従ってそれの対処策としては大幅な軍縮をする以外にないというのが現在の世界の情勢であり、そういう方向にむしろ持っていこうとしていると思うのですが、その点は総理はどういうふうにお考えになりますか。
  42. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 世界の各国が軍縮の方向に向うということは、いい方向に向うことだと思います。
  43. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それならばそういう方向に同調をするのみならず、特に平和憲法を持っておる日本がそれの先導となるということを主張されるのが当然であると思うのだが、総理はそういう立場には立てないということをしばしば言っておられますが、その点はどうなんですか。
  44. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 全く日本防衛力を持っていないのですから、防衛力を持っていない国と、防衛力を相当に持っていて、これを軍縮、縮小するという国とは立場ば違うと思います。
  45. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや、大きな武力、軍隊を持っている国も今やそれを縮小をし、廃止をしていこうと、方向としてはそういう方向をとっておるのであるから、そういう方向に合わすならば、そういうことを最も率先して主張したわが日本こそは、それをさらに推進をするという、そっちの方向に推進をするということの方が大事であると思うのですが、総理はどういうふうにお考えになるか。特に軍縮に対する世界の態度でありますが、申し上げるまでもなく、イギリスを初め西欧諸国では軍縮を望む世論が圧倒的であります。アメリカの与国は、カナダを含めて、政治家は軍縮賛成を政策に掲げなければ政治的な自殺を意味するというような程度になってきていると思います。この点は総理もお認めになると思うのです。ところが翻ってアメリカの方を考えますと全く逆であると言っていいんじゃないかと思うのですが、ちょうど総理がおっしゃるように、ソ連の脅威に対抗するための力の政策は依然として推進をしなければならない。そうしてこの政策なりこの方向に人気がある。それどころか幾ら金がかかってもいいから最高水準の軍備を質的量的に維持することが必要であると、こういう考え方が、全部ではないと思いますが、今の政府なり当局を支配しているというふうに湾えていいと思うのです。そういう方向なりそういう傾向に総理のお労えは同調されたものであり、その一翼をかついでおられるにす夢ないというふうな感じがしてならないのでありますが、総理の所見はどうですか。
  46. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) アメリカの軍拡の一翼を日本がかつぐというような考え方は毛頭持っておりません。(「持ってなくてもそうなっておる」と呼ぶ者あり)いやアメリカとそういう相談をしていることもありません。何もそういう話はダレスとの間に出やしません。
  47. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや先像どの御説明によりますと、日本を初め自由諸国は共産陣営に対する防衛の手段をゆるめてはならないし、それを強くしなければならない。そういう意味で日本の軍事基地の拡張も行われているのだろし、さらには日本自衛隊の増強も行われつつある。そういうことは軍拡の一翼をになっている以外の何ものでもないのである。
  48. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) これは幾度も申しました通りに、日本のは自衛のための最小限度以外には一歩も出ておりません。何べんも申しましたが、日本は賑法上それ以上できないのです。決して侵略戦争あるいは軍拡というようなことを考え日本自衛隊を組織しておるわけではございません。
  49. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 自衛のためならばというのが隠れみのになっておりますが、この点はもう少し後ほど触れるといたしまして、あくまでもやはり日本はそういう力の増強による軍備の拡張、力の増強による世界平和の保持といいますか、そういうことを強調するアメリカの政策に同調しておられる。この点は少くともアメリカの行き方と同じだというふうにお考えになるのかどうか。そうしてアメリカの行き方と同じではあるけれども、その考え方、解釈が違うのだというふうに言われるのか。その辺の事情はどうなんですか。
  50. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) アメリカと協力してそういうような軍拡というか、軍備をやっているという事実は絶対にないのです。(「それはおかしい」「一人で自衛ができるか」「MSA協定」と呼ぶ者あり)
  51. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それならば、谷大使を、総理なり外務大臣は非常に重要視して新たに大使としてお向けになったと思うのですが、谷大使は出発に際して、あるいはあちらでのいろいろな演説の場合に、今後の日米関係防衛問題を中軸として回転しなければならないと、日本が十分な防衛努力をすることによって米国との友好関係が増進するというふうな考え方を積極的に主張をしておられます。日本とアメリカとの関係というのはこういうものと総理はお考えになり、こういう方向を推進するために谷大使を新たに任命をされたのかどうか。
  52. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 私からお答えいたしたいのですが。
  53. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 まず総理から一応。
  54. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 外務大臣から答弁します。
  55. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) もしお許しがあれば、私が、大使のことですから。
  56. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それでは一応。
  57. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) それは今引用されましたことは、私は十分記憶はいたしておりませんが、しかし米国に参りました大使として、防衛問題が日米の間に非常に重要な問題であるとこう言ったことは私は当然だとこう考えております。それはなぜ当然かと申しますれば、日米の関係は今共同防衛関係によりまして、これは日本の共同防衛関係であります。日本はでき得るだけ米国のその責任を少くするために、自分で自分の国を守るという方向に進んでいかなければなりません。これが日本の自衛力の増強でございます。これに対して米国が非常に関心を持っておるということは、これは当然なことでございます。日本防衛について米国の負担が少くなれば、これは米国としては非常にいいことでございます。さようなことで重要視しておることは当然のことでございます。さような意味で新しい大使は日米関係のことを心配をしていろいろ意見を述べたことだと、こう思っておる次第であります。
  58. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや、私が特にこの問題をお尋ねをいたしますのは、谷大使が防衛問題を中軸として回転をするんだ、これが一番重要な問題なんだ、それから日本が十分な防衛努力をするということが、米国との友好関係を増進する逆なんだというふうな考え方、感じが、先ほど申しました、アメリカは力の増強によって、軍備拡張によって世界の平和を確保していくというその考え方に同調する、あるいは追随する以外の何ものでもないし、それは世界の方向からはすでに孤立をした考え方であるのみならず、アメリカ自体においても、識者の間で非常に大きく批判を受けた考え方じゃないのか。平和憲法を持っておる日本がそういうものに追随をし、そういう中に機き込まれるという態度は、ほんとうに自主独立の態度とは蓄えないのじゃないか。その点を総理はどういうふうにお考えになるか。(「総理々々」「外務大臣が先に答弁」と呼ぶ者あり)
  59. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 外務大臣から答弁を先にしてもらいます。(「おかしいじゃないか」と呼ぶ者あり、笑声)
  60. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) もしお許しを得れば私から。今の日本の自衛力は、決して力のために力の政策を助長する意味であったということでないことは、先ほどから総現の御説明でもその通り説明をいたしておるわけであります。これはもう日本の独立完成で、これは十分に自衛力だけは持たなければ、国際間に自主独立の国として進んでいくわけには参らないのであります。今日の国際情勢は丸裸になっておればそれですべてうまくいくというようなことでないことは、これは何人もわかりきったことだと思います。今日軍備拡張をやってそうしていくということがいい方向でないということも、これまた明らかでございます。しかしながら、自分の国を守るだけの軍備を十分備えておく力を持っていなければ、また平和を保たれないというのが、今日の国際間のこれはもう今常識と相なっておるわけでございます。それでありますから、アメリカにおいてもそれはいろいろ説はございます。説はございますけれども、はっきりとこれは自衛力だけは十分持たなきゃいかん。またアメリカとしては、自分の国の自衛力だけでなくして世界の平和を守るだけの力を持つ必要があると、こう考えておるものとみえるのであります。しかし、日本はまだ自分の国以外のことを考えるような時期でも何でもございません。これは自分の独立を完成してそうして自衛力を持つということなんで、それは米国の世界政策がもし力の政策であるとすれば、そのお先棒をかついでおるのだと、こういうことには私は相ならぬと思っております。また相ならぬとしていくことが十分にできると、こういうふうに思っておるわけであります。
  61. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 アメリカの政策がどうであるかという問題についていろいろ御説明がありましたが、それならばさらにお尋ねをしますが、これは外務大臣にむしろ御説明を願いますが、現在軍縮の問題に国連における軍縮の問題というものはどういうふうに進んでおるのか、どういう段階に来ているのか、一応御説明を願いたい。
  62. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) さきほどから御展開になっておる世界の大勢から来る大きな大政策でございますが、そのうちの今実際問題として最も大国の間に議論の戦わされておるのは、軍縮問題でございます。これは、御承知の通りでございます。この軍縮問題が国際間の交渉の大問題でありますが、その舞台は、従来国際連合に相なっております。そうして国際連合において、大体米国の考え方とソ連の考え方とが真正面からぶつかっておるということも、御承知の通りであろうと思います。そこで最近はロンドンにおいて小委員会の形式において、その国際連合の小委員会で議論を進められております。米国は大統領の代表としてスタッセン氏が行って議論をしておるようでございます。そこで、さきほどからのお話もございましたが、軍縮問題を成功させるということが、大国間の戦争を防ぐ実際問題としては非常な有力な点になるので、これをぜひ成立させようというのが大きな大目的に違いはございません、戦争防止のために。しかし、これがどうしても今日までまとまらん状況でございます。そのまとまらないのは原子爆弾の関係もございます。思想的に申せば、原子爆弾の競争をやっていくということが武力競争になりますから、これは危ないということは思想的には言い得ると思います。しかしながら、実際問題としては、原子爆弾をよけい持っておるから、それで相手方の侵略をおさえておるんだ、平和の維持ができておるんだという実際的の考え方もあるので、なかなか原子爆弾をすべて禁止するということが今軍縮会議でできない状態であるわけであります。それでありますから、いろいろなことで階段的にいろいろな考案をして、そうして軍縮の目的を達しようというのが、ロンドンでやっておる軍縮小委員会の英仏の案であると報道されております。そういう案が出てくるかもしれません。まだどのような具体案であるかということは私は存じませんけれども、しきりに今討議が進められておる状態で、これが現状でございます。
  63. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今の軍縮の情勢の報告、判断を聞いておりますと、まさにアメリカの情勢分折あるいはアメリカの意向をそのままお伝えになったものとしか考えられないのでありまするが、軍縮に対する世界の態度、方向は、もう少し進んだものであるのみならず、もっと感覚が違っているのじゃないか。というのは、御承知の通り、三月十二日の英仏首相会談では、両首相はむしろ英仏両国ともに全面的な軍縮と軍縮管理を望んでおるし、ソ連とアメリカの禁中査察あるいは陸上査察の両案を一緒にしたようなもので、問題は解決の方向に行き得るし、行かさなければならないという意味で意見が一致をした。それに基いてきのうですかおととい長期軍縮案が英仏で共同提案をされたと報ぜられていると思うのですが、その考え方は、やはりあらゆる核兵器の禁止を最終目標とする。これは必要であるのみならず、可能であるというふうにすでに判断をしておる。そのためにはまず最初に軍拡競争をストップしてしまう。それから普通兵器と兵力の縮小を図る。そしてついで核兵器の禁止を漸進的にやるということを規定をして、相当具体的にその段階その他を規定したものを提案をいたしておると思うのです。これに対して各国がどういう態度をとるかの問題でありますが、英仏共同提案であり、カナダも大体これに賛成をするであろうことは、これはもうはっきりいたしておると思うので、問題はソ連とアメリカだと思うのですが、ソ連はこれに対しては今伝えられるところによると、説明を聞いただけではっきりした態度を示していない。ただしかしこれは十分に考慮に値いするから考慮しようという態度であると思います。同時に第二十回共産党大会のフルシチョフの報告をみますと、ソ連は水爆兵器実験の禁止に同意をする用意があるということを言っておるのでありますから、大体いろいろな紆余曲折はあるにしても、方向としてはこれに賛成をするのじゃないか。その場合に、アメリカは申し上げるまでもなく、この英仏の共同提案に対してこれまでは反対をいたしてきたし、従って共同提案者の一人になることをがえんじなくて、やむなく英仏の共同提案ということになっておると思うのです。そういう意味で、アメリカは反対的な態度であり、しかもそれに反対を真向うからは主張をいたしておりませんが、大体において数々の留保をつけていまだこれに積極的に動く気配を見せていない。むしろ消極的だとこういうふうに考える。この軍縮に対する態度は、先ほど私が申しましたような、一般的な各国の機運をそのまま表わしていると思うのですが、そこで私は、総理にお尋ねをしたいんですが、世界各国においては、こういう非常に具体的な案がすでに提示をされており、それに対する態度がおのおのおぼろげながら方向としてはわかってきていると思うのですが、総理はこういう提案、こういうものに対してどういうふうにお考えになるか。私は前の本会議のときに、そういう方向を考えたからこそ、そういう方向に進展をすると思うから、日本はそれに先がけて大国その他に積極的に働きかけるべきだということを強く総理に要求をしたところが、総理はそのときに、例の、陸軍も海軍も飛行機も持てない日本の憲法には反対、だから、あなたのおっしゃるような意味で、軍縮を積極的に推進することには賛同しかねるという有名な御答弁をなさった。世界の情勢がこういうふうに進んでいきつつあるときにもなおその見解、その気持はお変えにならないのかどうか。
  64. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) とにかくソ連においても〕、アメリカにおいても、原爆あるいは水爆の実験をして、その威力をますます大きくしょうとしているのが実情でございますから、冷戦は今日なお依然として存続しておると思うのです。私は、戦争が遠のいたというようなことに対しては、二、三年前よりはむしろ危くなってきたんじゃないか(「おかしいな」と呼ぶ者あり)というくらいに、最初は平和は近ずいたというような状態になったのに、今日はアメリカとソ連とはお互いに原爆、水爆の競争をやりまして、そうして武力のない国は武力のある国から侵略を受けているのは事実なんですから、そういうような場合に日本に戦争がない、日本が武力を持たなければ戦争がないことに助けになると、そういうようなことにはならないと思いますから、独立国家として自衛力を持たない国は世界にはないのですから、やはり独立国家となった以上ば、日本は自力をもって日本を暫時でも守れるような備えをしておくことは必要だと、私はほんとうにそう思います。
  65. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや、アメリカが太平洋海域で水爆の実験をする、それと競争するかのごとくソ連がまた数回にわたって実験をする。特に数日前もやった。こういう事態になるからわれわれは危険であり、この事態が続く。こういう事態がさらに展開をすれば、総理が御心配になるような戦争の危機もあるということを心配をするから、われわれは、水爆実験の中止なり禁止なり、さらにはまた英仏が考えている核兵器の全面的な禁止なりを、真剣に問題に取り上げられなければならないという時期、段階であると思う。ソ連がやるからやむなくアメリカもやるんだろうし、それをわれわれは認める以外にないじゃないかという考え方でなしに、アメリカがやり、さらにソ連がこれに競争するかのごとくやるのは危険だし、困るということを強く主張をし、それをやめさせるような方向に少くとも日本も一翼をかつぐ。それは単に日本だけがゴマメの歯ぎしりをするようなわけではなくて、世界の大勢はさっき申したようにそういうふうになっているんだから、日本もやむを得ないんじゃないかというような方向でなしに、両陣営に強くアピールしながらそういう方向に進むべきだ。方向としてはそうでなければならないのに、やむを得ないんじゃないかとか、あるいは日本としてはさらに増強しなければ守れないじゃないか、という考え方がおかしいのじゃないか、こういうふうに思うのですが、しかしこの問題は意見になりますから、もうこれ以上お尋ねをいたしません。  ただ先ほどからいろいろその自衛のためであるならば戦力を持ってもいいんだと、軍隊を持ってもいいんだというようなお答えがまたしばしば繰り返されつつあるので、この点についてちょっとお尋ねをいたしておきたいと思います。それならばあなた方は、自衛のためならば軍隊を持ってもいいということを、今や公然とはっきりと言ってこられっつあるのだが、それならば世界のどこに自衛のためでない軍隊があるのか、まずそれの御説明を願いたい。
  66. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 日本は、とにかくわれわれは不正の侵略に対して一時でも自分の国を支えるような、侵略から防ぎ縛るような最小限度の自衛力を持っているということが、憲法九条で禁止されていないと、こういうふうに解釈しておるのであります。
  67. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 自衛の範囲ならばということがよく言われておりますが、満州事変から太平洋戦争にかけて日本は常に自衛権を口実にして、その名において武力を行使してきたし、戦争をやって参りました。しかし実際には自衛権ではなくって、その正反対の侵略行為にほかならなかったのでありますが、自衛のためならばという考え方が、こういう危険なものであり、そしてそれを否定し得ないような状態で相互に競争をし始めることになりますから、少くとも日本はそういう武力を持った自衛権なるものは認めないのだ、武力なき自衛権でなければならないのだというのが日本の憲法の趣旨であると思うのですが、その点をどういうふうにお考えになるか。
  68. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 今各国の自衛権、自衛権でないという国があるかということを申されました。全くその通り、これが非常に国際間において、今日ではありません従来大きな中心問題になっておると私は思います。それで自衛権ならばどこまでいっていいのかということは、もう国際間及び国際学者間で非常に大問題になっております。そこで自衛権を自分で拡大解釈をすれば切りがございません。それは日本にその例があったことば御承知の通りでありますが、しかし日本以外の国でも、たとえば不戦条約、いわゆる有名なケロッグ・パクトと称する条約、あのときでも一体イギリスにとって自衛権、エジプト方面のことは一体自衛権のうちに入るか入らないかということが非常に問題になりました。日本にしては満州問題があったはずでございますが、この自衛権ということを各国が勝手に解釈しますれば、今言われる通りに侵略の意味になりますから、非常に注意しなければなりません。そこで問題は、自衛権をどう解釈するかという問題になりますが、これはもう最小限度に解釈しなければならぬと思います。これは各国の方針でなければならぬと思います。特に日本におきましては、憲法上においても自衛権の問題は、これはもう最小限度に解釈すべきだと、こうはっきりすべきだと思います。この最小限度というのは、先ほど総理の言われた通りに急迫不正な侵略に対してこたえるというふうに解釈ができると思うのであります。そこで自衛権の問題は、私はこれを努めて縮小して考えなければならぬ問題だと常に申し上げておる次第であります。
  69. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それは一般の自衛権の問題の論議としてはそれでいいと思うのですが、少くとも平和憲法を持っておる日本、武力を放棄しておる日本としては、自衛権は武力なき自衛権でなければならないと思うのです。従って日本政府がみずから戦闘部隊を編成するということは、軍隊を持つことだし戦力を持つことだ。これは鳩山総理はかまわぬと、あるいは戦闘行為に参加することもかまわぬと、急迫不正の侵害があったらかまわぬ、こういうふうに言われる。それならばそれは交戦権を行使することになります。しかし日本の憲法ははっきりと軍隊を持ち、戦力を持つことは禁止しておる。いわんや交戦権を行使することのごときは明瞭に禁止をしておるのでありますが、それにもかかわらず鳩山総理のこれまでの御答弁は、すべてこういうことが許されるという御答弁であって、憲法無視もはなはだしいと思うのですが、その点は総理はどうですか。
  70. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は自衛力を持っていいということは申しましたけれども、日本は交戦権を同時に持つということはかって言ったことはございません。交戦権というのは少し範囲が広くなって、つまり国際法上交戦国の権利というものがあるものですから、あるいはその占領中に行政をしくとか、あるいは船の拿捕だとかいうようなそういうような権限を急迫不正の侵略に対してだけ防御し得るという権利の解釈をしておりまするから、交戦権、交戦国としての権利を持つということは今まで申し上げたことはないのです。それは誤解のないようにお願いをいたします。
  71. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 交戦権の問題は、交戦国としての権利を持つという問題と、戦いをする、武力出動をするという権利、その両方あると思うのですが、その前者が許されるということがさらに後者の交戦権発生の基礎になるわけです。そういう意味でむしろ交戦をすること自体が交戦権であり、その敵の基地をたたくということは、そういう意味での武力発動であり、交戦権の発動であるとしか思えないのですが、その点はどういうふうにお考えですか。
  72. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいまの点、お答えいたしますが、この憲法九条の二項で言っております交戦権の問題につきまして、従来いろいろ国会でも論議されておりますし、いろいろの学者もそれぞれの考え方を述べております。これは政府といたしましては、従来、交戦権というのは戦時において交戦国が国際法上持つ権能、これの総合的なものだ、かように考えております。その例としては、ただいま総理からおあげになりましたような船舶の拿捕、こういうことが一つの代表的な権能であります。かように言っておるわけであります。いわゆる戦闘行為そのものということだけを意味している、かようには考えておらない、また学者も一般にそういうふうには考えておらないと思います。また自衛権の内容として、急迫不正の侵害があった場合に、それを排除するに必要な限度において自衛措置を講ずる、その内容としてはあるいは武力措置もあるかもわかりませんが、これは交戦権とは別な観念で、自衛の内容として認められる範囲においてこういうことが考えられます。かように考えるわけであります。
  73. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 交戦権の問題が、交戦をすること自体から、防衛武力出勅をすること自体から、特に敵の基地をたたくというようなことであれば、そのことから発生をしていると思いますが、その議論をすることは、今ここでやめておきたいと思いますが、とにかくそういうような意味ででも交戦権をあとの意味に限定をして、そういう意味では交戦権はないけれども、武力の出動をやることそれ自体は、戦闘行為に参加すること自体は許されるのだというふうな解釈になるとすれば、それは明らかに憲法違反であるということだけを、ここに私の主張だけをしておきたいと思います。  次に日ソ交渉の問題でありますが、先ほど本会議において、日ソ交渉の問題の一応御説明があったのでありますが、その日ソ交渉は無期休会になったのだというふうなことを言っておられましたが、その休会なるものは政府においては、あるいは外務省においては、重光外務大臣においては、すでに予期をしておられたのかどうか、まずその点から。
  74. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 私は予期はできませんでした。できませんでしたが、双方の主張が交渉の進行につれて領土問題について容易に妥協ができぬ状況に進んでいっておることを認めました。
  75. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 予期していなかったと言われると、これは非常に見通しが間違ったことになる。どうもこれまでのいろいろな言動その他からいえば、むしろ予期をしておられて、その予期した通りになったにすぎなかったというのではないか。その点はあの休会が発表されたときに、外務省の見解として述べられているものもそうだし、今日、本会議での同僚議員曽祢君の質問でもすでにそれを予期して帰朝その他の訓令を先に出されているというような事実もあったのではないか。そういう意味ではすでに予期しておられた。そしてまたあの条件を固執されるのなら、こういう結果になることは予期をすることの方がむしろ当然なんで、だからこそわれわれもそういう危険があるかどうかということを繰り返し念を押したのでありますが、その点はどうですか。
  76. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 交渉に当って、交渉が困難であるということと、交渉がまとまらないとこう断定するのと、非常な差異がございます。私は日ソ交渉に当ってこの交渉が非常に容易であるとは決して思いませんでした。困難である、しかしながらこれは双方の熱意によって妥結することが不可能であるとは決して思いませんでした。そこで領土問題について今日まではまた妥結することができないというところにきて、そして一時打ち合せのために全権が帰ってきたいと、こういうことを申し出ておるわけでございます。
  77. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 非常に困難であることは見通していたにかかわらず、こういう結果になることは少しも予測をしなかったとおっしゃるのであれば、それは非常に予測を誤またれたことであり、それ自体について非常な責任があると思いますが、その点は後ほどさらにお伺いをするとして、休会になった、しかもその休会は無期限だということは、今日も本会議で曽祢議員から繰り返し質問がありましたが、事実上の決裂を意味するのではないか。これまで行われた交渉の中断と違って、領土問題で完全に行き詰まった、その行き詰まった原因もけさほど御説明通りに非常にはっきりしている、そういう結果の無期限休会であるのでありますから、そうだとすると、内外情勢の変化が見込まれて領土問題で局面打開ができるということにならなければ、再開の見通しはっかないと思うのですが、その辺をどういうふうにお考えになっているのか、すぐ国際情勢がさらに有利にこういうふうに展開をし、あるいはソ連がこういうふうに出てきて、あるいは日本がこういう形で対処をするから、これは適当な機会には再開をされるのだという見込みをつけて、従って決裂でないといわれるのか、その辺を御説明願いたい。
  78. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 私は日ソ交渉を成立せしめて、日ソの国交を正常化することにこぎつけるのにはなかなか容易ではない、困難である。不可能ではむろんないのです。であるが、非常に困難な問題であると、これはそういうふうに考えております。しかし困難であるからそう容易にはできません。私は今日の状態ではそれをどう考えるかと申しますと、これはあくまで大局上日ソ国交の調整をやるという考え方をもって将来も進めていって差しつかえないと思う。そうしてそれはいつかは必ず私はでき得ると、こう考えます。しかしそれだからといって、それでは日本の主張をすぐ譲歩して、ソ連の言うことに妥協を今すべきであるか、こういうことに至っては、これは私はそうは考えないとたびたび申し上げておる通りであります。そうして、日本日本の正当に主張するところを主張して、そうして時をもって進んでいけば私はこの問題は今言う情勢の変化によりまして必ずしも解決不可能な問題ではないと思いますが、あまりこういう問題についてそうせっかちに、そうしてすぐまとめなければどうであるとか、そうでなければ決裂であるとか、そういうことを私は考える必要はないと考えております。(「その通り」と呼ぶ者あり)
  79. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 何もせっかちにやる必要は毛頭ありません。その点じゃ外務大臣の言われる通りです。しかしながら今お答えのように国際情勢が今後どういうふうに変化するとお考えになっているのか。あるいは問題をしぼって、具体的にはどういうふうに問題を打開をしていくのかというような、いろいろな場合を想定し、考究することなしに、ただじんぜん日を待っておられるのならば、これは全く事実上の決裂であり、少くとも停頓状態である。(「その通り」と呼ぶ者あり)それをそういうふうにお考えになったからこそ、全権も随員も全部引き揚げさせ、そして今の言葉からいえば、いつ再開されるともめどはっかないような投げやりな形以外の何ものでもないという感じしかないのでありますが、この点について鳩山総理はどういうふうにお考えになり、どういうふうに収拾しようとお考えですか。
  80. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は先刻本会議で申しました通りに、まだ日ソ交渉は決裂したとほんとうに思いません。(「その通り」と呼ぶ者あり)ソ連も出方を、もう少し何というか、やわらかく出てくれたなら話はもう少し進行したと思うのです。たとえば未帰還の抑留者などについて、とにかくポッダム宣言によってきまっている問題なのですから、日本に帰すということが。それをどうしても取引の材料に使って領土問題を解決しようというような態度に出たものですから領土問題がひっかかってしまったので、もしも未帰還の抑留者を日本の要求する通りに、また自分がポツダム宣言によって宣言した通りに帰してくれるならば、これは条約通り別にして、帰してくれるならば、話は非常に進行しゃすかったと思うのですが、残念なことですけれどもそうならなかった。私はいろいろな疑点を持っておりますので、松本君が来たならばどういうような考え方をソ連がほんとうにしているのかをよく聞いてみたいと思います。西ドイツに対してもソ連はとにかく抑留者を帰すといいながら二度も帰さなかった事実があるものですから、ソ連がただ口で言っただけでは信用できないから……、どうしても領土問題などがひっかかったものだと思うのです。この点は今外務大臣が申した通りに、あまりに急がずに、とにかく主張すべきことは正当な主張なんですから、向うが納得するように根気よく主張した方がいいと私は思っております。
  81. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 抑留邦人の問題をソ連がああいう形で未解決の状態においておくということ、しかもそれを取引の具に供するにおいの非常に強いこと、その点については私たちも同様に非常に遺憾であります。しかしこの態度が遺憾であるということを繰り返し主張をしても、もはや問題は解決をしない時期、段階にきておる。このことは昨年の夏から非常にはっきりしていたのじゃないか。それを繰り返し、繰り返しあれだけの主張をし、あれだけの要求をされたにかかわらずこれができなかった、そのできなかったことを冷厳な事実として、それから今度どういうふうに展開をするかということが考えられなければならないし、しかも抑留邦人の引き揚げの問題は、もう少し気長に待てばいいという性質のものでは絶対にないと思うのです。抑留邦人自身の身の上を考え、遺家族の人たちの心境を考えるならば、これは非常に急がなければならない問題であるし、それらについて何らのめどなり何らの対策も立っていないというのであれば、これはもう事実上めどがつかないという以外に何とも言えない問題であり、その点は、こういう失敗に終らせ、そうしてさらに対策が何もないということは、外務大臣なり総理大臣、政府の責任も追及しなければならないと思うのですが、どうですか。
  82. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) お答えします。抑留邦人を一日も早く帰したい、こういうことはこれはもう日本国民全部の一致した意見であると、こう固く考えております。それでそれを主張しておるわけでございますが、これは私は正当な主張として、あらゆる角度から強力に主張することによって、実現は必ずしも不可能じゃないと考えております。これは世界の世論の関係もございますし、それから現にソ連も日本の強い主張に対しては、抑留邦人の取扱いその他についても考慮を払っておると感ぜられる節があるのでございます。私はこういう問題については、十分に一つ主張して、あくまでこれを実現するという熱意がまずなければならぬと思います。それはむろん永久には待つわけには参りませんけれども、それをあまりその主張が急に変えられるということになっては、主張が主張になりませんから、あくまでも正当な主張は進めて行くことがいいと思います。それによって効果は私は相当あると、こう確信しておる次第でございます。
  83. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 希望としてはそれでけっこうだと思うが、あくまでもそれをやられた、それにかかわらず問題は解決をしなかった、その解決をしたかったことを冷厳に考えて、今後の打開の方策を具体的にお立てにならなければならないにもかかわらず、それが何ら考えられていない。で、こちらの主張を主張しさえすればいいというふうなことを繰り返しおっしゃっていますけれども、それでは未解決の問題はなかなか解決をしないわけです。両方の話し合いの問題でありますから、領土問題に関してすら双方の考え方を再検討をし、再考をし、そうして新しい手を打たなければならない時期、段階だし、その決意をしなければならないと思うのでありますが、これは大きな政治的な決意の問題でありますから、鳩山総理に御答弁を願います。
  84. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私はさっき本会議場で申しましたが、やはりどうしても達成しなくてはならない問題について国論が分裂しておるとか、国民の間に違った意見があるということは非常に残念なことでございます。(「政府の中にもあるじゃないか」と呼ぶ者あり)これはどうしても国論が統一して、これだけはどうしても達成したいということに日本の国論が統一すれば、ソ連においても十分聞くことがあるだろうと思います。松本全権が帰りましたらば、よく事情がわかりますから、方針をきめて、国論を統一して、そうしてソ連と交渉をしたいと思うのであります。
  85. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。総理は国論が統一しておらないと言われますが、この問題に関する限り国論にそんなに分裂はないと思います。社会党といえども抑留者の早期帰還は心から望んでおるところであります。また必要である。ただ問題は日ソ交渉の前提条件として、抑留者の即時釈放がなければ交渉がまとまらないということを言うのか、抑留者の釈放ということがあるならば、他の問題についても十分考えて妥結をするというのか、そこはどうなんですか。これは外務大臣でもよろしい。要するに前提条件の抑留者の釈放ということがなければもう何もかもやらないというのか、これの釈放ということが話になるならば、領土問題についてまた考えていいというのか、その辺が非常に不明確だから明確にしていただきます。(「総理答弁」と呼ぶ者あり)
  86. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は何も条件付のようにさっき話したのではありませんけれども、抑留者を帰すというようなことはさまったことであったのです。ポツダム宣言においてきまったことなのですから、それらについてソ連がそれを拒否しないで行くような態度を示してくれれば、話は非常にスムースに進行しただろうということを申したのでありまして、条件付に、これを承知すれば領土問題は譲歩するとかいうことを意味したのでは絶対にないのです。外務大臣はまた別な考えを持っております。(「それでは国論統一じゃない、閣内統一じゃないか」、「二元外交を総理大臣みずから告白しているじゃないか」と呼ぶ者あり)
  87. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 今総理の御答弁で私は尽きておると思います。私は実は同じようにお答えするつもりでございました。そこでもう一つお答えします。この引揚問題はどうしても私は従来のラインで一つ熱烈に、今もこの辺で思い切るべきじゃないかという意味のお話であったならば、一つどうしてもまだこれからこの今までのラインで押して行くということを御了承を得たいと思うのであります。これはどうしても、ポツダム宣言のお話がありましたが、ポツダム宣言でもそういうことはあるのでございます。ダレスの話を聞いてみると、モロトフはそういうことも言ったというようなことも言っておりましたくらいでございます。そうでありますから、これは人道問題です。というのは、何もこれが日本のための利益、日本だけの利益のために私は言うということでなくして、ソ連のためにも非常にいいように考えますから、これはソ連のために私は言うわけに参りませんけれども、あくまでもこれはやってみたい、しかしこれは必ず日ソの間にいい、なめらかな空気を醸成することは疑いを入れません。これは交渉上にいい影響をもたらすことは当然のことであります。しかしそれかといって、今総理の言われる通り、それがやられればこっちは条件ですべて解決するのだ、そういうことでないことだけはこれは理屈の問題として当然であろうかと考えます。さようなことで、引揚問題がもしわれわれの希望するようにこれが実現するならば、必ずそれは全体的にいい影響を及ぼすということは、これは申し上げて差しつかえないと思います。
  88. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そういう抑留者の問題をポツダム宣言その他にからまして参るとかいうようなことになれば、あるいは戦犯という問題等たが出てき、それらで議論は非常にこんがらがって参るし、そういうことで法理論その他を繰り返していたのでは、現実がもはや解決しないという冷厳な事実が出て参ったのでありますから、ここで問題は大きく展開しなければならないと思うのですが、その時期でないとおっしゃるのならば、今の決裂状態を続ける以外にないということだし、そういう重光外務大臣も初めから、たとえば領土条項その他の問題についても非常に無理な、それではもはやできないということが昨年の夏に明瞭になっていたそういう無理な条件を条件として出されたから、こういう結果になったのだし、それをもし見通されないとすれば、重光外務大臣の不明であり、もしそれを見通してなおかっそういうことをやられたとすれば、あまりにも無責任だし、いずれにしても外務大臣の責任は免れないと思うのでありますが、外務大臣はこの点をどういうふうにお考えになりますか。
  89. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 私は日ソ交渉に当りましても、まず国家的もしくは国民的の利益を擁護することが私の義務であると考えておりまして、そして全局から見ましても、また個々の問題から見ましても、合理的な要求、主張はあくまですべきものだと、これが私の責任である、こう考えております。
  90. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 すべきものだというふうな考え方で、そういう考え方に立ってやられたのだが、先ほど申しましたように、妥結不可能な無理な条件をつけて当初からこの決裂なり、停頓のような方向に持っていかれたその責任をどうされるかということを私は問うておるのでありまして、この責任は十分に一つ感じてもらわなければならない。  さらに鳩山総理にお尋ねをいたしますが、鳩山総理は昨年の七月の二十六日でしたか、外務委員会で羽生君の質問に答えて、保守合同と日ソ交渉の問題を関連さすようなことはしない、日ソ交渉はあくまでも当初の方針通りに早く解決をする、この点は保守合同ができても決して変るものではないという信念をほんとうに声涙ともに下る答弁をされた。そこでわれわれはそれ以上に追及をしなくて、それに期待をいたしていたのでありますが、その後保守合同ができるに及んで、その早期妥結の方針をすでに放棄してしまって、そして決裂あるいは停頓をしてもやむないというような条件を固執する態度に変られた。これは非常に大きな食言であり、政治的な重大な責任を関わるべき問題だと思いますが、この点ばどういうふうにお考えになりますか。
  91. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は当初の考え方を少しも変えておりません。保守合同によって私は自分の信念を変えやしません。
  92. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 変えないのならば、それをあくまでも追及をされて、今ごろはすでに問題は妥結をしておるはずだし、かりに今妥結していないにしても、妥結する目途をすでに政治的に判断をしておられるはずだと思うのだが、何らそういう御答弁がない。ことにこれはごくさらに最近でありますが、去年でなくてことしだったと思うのですが、二月の末でありますか、予算委員会の羽生君の質問において、日ソ交渉は早い機会に成功する、妥結をする確信を持っている、もしこれがそういう結果にならなければ、自分は政治的な責任をとるということをこれまた非常に明瞭にお述べになった。今その言葉を誠実に考慮されなければならない時期、段階であると思うのですが、総理はどういうふうにお考えになりますか。
  93. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は松本全権が帰って来ましたらば、何か妥結の方法を発見したいと思っております。どうしても日ソ交渉が思うように進展しないその責めが私のやりそこないにあるならば、やめることは不満でもない。ですから責任をとることはいつでも責任をとります。
  94. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 非常に明瞭に、時期も非常に明瞭に言われましたので、その点は銘記しておきたい。  あと時間がありませんので非常に……。
  95. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連して。
  96. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 簡単に……。
  97. 羽生三七

    ○羽生三七君 今の総理大臣の、その場合には責任をとるというお話は、交渉にまだほんとうに期待をかけておるあなたのほんとうの信念に塞ぐ御答弁なのか、いつもの調子でまたこの次には何とかうまく言いのがれをするという簡単なお答えなのか、ほんとうの総理の心境を一つ聞かして下さい。これは重大なことです。
  98. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) むろん私の信念を申し述べたのでありまして、その場その場をいいかげんなことを言って逃げていくわけではございません。
  99. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 新聞の伝えるところによると、三十日には松本全権が帰って来るそうですから、その直後には今の問題を正確に一つ実行をしていただくことを特に要望して次の問題に移ります。  国内問題、特に小選挙区の法案、選挙法改正法案についてでありますが、これについてはあらゆる新聞あらゆる識者、あげてこれは党利党略案であるということで一斉に反対をいたしておりますが、この事情を鳩山総理はどういうふうに認識し、これに対してどう対処しようとお考えですか。
  100. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は小選挙区制を党が採用したのは、党利党略のためとは考えておりません。
  101. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それでは、あなたはお考えになっていないかしれませんが、世論はあげてそういうふうに考えておるということを申し上げたい。  一つ紹介をいたしますが、朝日新聞、自民党は最大多数党の身だしなみも失ってしまったらしい。恥も外聞もないありさまである。二大政党対立を通じての、健全な民生政治の育成などといった衣装も、いつの間にかぬぎ捨ててしまったらしい。自民党議員議員業を失職しないために、最大限の努力が払われている。議員を国民のためのというよりも、営業と心得ていることを、はっきりさせたようなものだ。自民党の政党としての値打や性格をむき出したようなものである。こういうふうに言っておりますが、これをどういうふうに……。
  102. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) われわれはそういう考えでもって行動したわけではございません。
  103. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 朝日新聞にそう伝えておりますが、さらに同じ日の読売新聞、小選挙区制の政府案に現実に盛られたものを、一々点検すると、まことに残念だが、私党的やり口と申さざるを得ない。これは、党利党略などという問題以前のものであり、私利私欲の積み重ねという感じである。読売新聞はこういつておりますが、総理はどういうふうに……。
  104. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は選挙法の区制はどういうふうなものか知りませんから自治庁長官から……。
  105. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 内容を私は言っているんじゃない。内容は後ほどまた時間があれば一つ一つ追及しますが、その前に、世論はこういうふうに言っておるがそれをどういうふうにお考えになっておりますか。
  106. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私どもはそういうような考え方で選挙法案を作ったわけではございません。
  107. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 あなたは主観的には、あるいはあなたの党は、そういうふうにお考えになっておるのかもしれませんが、今申し上げたように、朝日新聞も読売新聞もそう申しております。さらにもう一つ、毎日新聞、かって米国のある州で、時の知事が与党に利益となる選挙区案を押しつけて、後世までゲリマンダーと言われて非難のまととなった。この調子で行くと、小選挙区案を採用しようとしている鳩山内閣のことを後世の史家はハトマンダーと皮肉るであろう。こういう批評をしております。これでもなおかっ党利党略でないというふうにお考えですか。
  108. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私はそう思っております。
  109. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それならもう一つ、あなた方が任命をされた選挙制度調査会の起草小委員長矢部貞治君、これは区割案を自民党の党利党略に置きかえ、選挙公営の拡大を無視し、連座制その他取締りの強化を湾えず、立会演説会を廃止する、これが選挙制度調査会の答申と全く正反対な方向であるとわれわれは思うのです、そういう答申に正反対な態度をとったことは、選挙制度調査会起草小委員長の矢部貞治君も、この政府与党案がいかにも露骨に調査会案をゆがめたものだと、こういうふうに言っておりますが、この点をどういうふうにお考えですか。
  110. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) その点は自治庁長官から答弁をいたさせます。
  111. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや、自治庁長官には内容の問題はさらにあとで言います。こういうことになっていて、この事情から判断して矢部君がこういうふうに言っておりますが、総理はどういうふうにお考えですか。
  112. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は内容については自治庁長官答弁する方が適当だと思います。
  113. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 自治庁長官の御答弁あとで伺います。じゃもう一つ、あなたは小選挙区制度は間違ってないと、賛成だといわれる。評論家の御手洗辰雄氏も原則としてそれに賛成だと言う。原則として賛成しておるにかかわらず、区画割にしても、罰則にしても自民党の考え方には選挙制慶を改める目的を忘れ、特に小選挙区を採用するに当って最も警戒せねばならぬことについて全く逆の方向に向おうとする危険が感ぜられる、もし現在示されているような自民党の考えが捨て切れぬとするならば小選挙区制ば危険であり、断じて採用すべきものでないと、小選挙区制の賛成者御手洗君ですらそう言っておりますが、総理はどういうふうにお考えですか。
  114. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は小選挙区制はいいと思っておりますが、党においてそういうような党利党略によって区制をきめるということはないはずだと確信しております。
  115. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ないはずだとお考えになっているらしいんですが、今わざわざ、私はわざわざいろんな新聞やら、いろんな評論家やら、しかもそれらの人たちは社会党でも何でもない、いわゆる良識と称せられる人たち、あるいはあなたたちが信頼して選挙制度調査会の委員にお選びになった人なんです。それらがそう言っておる。それをしもあなたはお認めになろうとしないのですか。従ってこの小選挙区法案を強行しようとするならば、それは決して二大政党の対立運営による政局の安定に資するものではありません。むしろそれを破壊するものであります。二大政党への道をその出発点において寸断するものといわなければなりませぬ。これはわが国の政治を破局へ追い込む危険性すら持っております。この三、三日の国会審議の状況はその前兆であるといっても避雷ではありませぬ。こういう事態に立ったならばこういう案はいさぎよく引っ込めるべきだと思うのでありますが、総理はどういうふうにお考えですか。
  116. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) ただいまそういう考えは持っておりません。
  117. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 これだけ世論の反対があり、これだけ不合理であるにかかわらず、そういうふうにお考えにならない。こういう大問題であります。従ってこれはもっと慎重に考えなければならないし、少くとも原則としてこれを確立しようと、出されようとするならばむしろ選挙に問うべきだと思います。政府は小選挙区制を中心とする選挙法改正案を先の総選挙で何らの公約も行わずに本国会へ一方的に提出をしておられます。わが国民主政治の将来に重大な影響を及ぼし、国会構成の基盤に一大変革を加えようとするこの重要法案は、まず主権者たる国民の総意に問うべきであると思いますが、総理はどういうふうにお考えですか。
  118. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 選挙法を改正するために解散をする必要はないと考えます。
  119. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 非常に重要な問題で、こういう問題こそまず国民に問うて、その上で態度を決すべき問題にかかわらず、それをやられないとすれば、総理はほんとうに民主主義を今や完全にじゅうりんをしつつある総理としか思えないのであります。さらに教育委員会制度の問題にしましても、あるいは教科書の制度の問題にしましても同じように総理は今や良識者、教育者あげての反対の中になおこの改悪を強行しようとしておられる、これは教育の地方分権を圧搾するものだし、文教の中央集権化をもたらして、そうしてかっての官僚統制を露骨に強行しようとされるものである。総理はこういう方向に日本の政治を持っていこうとしておられる。さらには放送法についても同じようなことが言えます。放送法案は放送協会の会長の任命権を政府でとり、あるいはその他人事機構、予算、事業計画等についてかっての官僚統制を実施しょうとしておられる。それはさらにプログラム、番組その他にも及ぼうといたしております。これが官僚統制であり、しかもその官僚諸君があなた方特定な政党の政治的意図のもとにあやつられるに至ることは火を見るよりも明らかであります。今や鳩山総理は、そういうあらゆる問題に対して民主主義逆行の方向を露骨に取り始めておられます。しかもその究極は憲法改正へ持っていき、再軍備を大っぴらに、そうして海外出動を堂々とやろうという意図としか思えません。鳩山総理はそういう政治的な意図を露骨に今や出しっっあると思うのでありますが、これでも鳩山総理は、あなたの民主主義者としての責任がとれるとお考えになっているのであるかどうか。
  120. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) あなたのおっしゃるようなことは考えておりません。
  121. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 あなた一人が考えておらない、あなたの党だけが考えておらないとうそぶいて、独善もはなはだしい態度をとっておられますが、世の中はあげてそういう批判と反対に満ち満ちております。その点を十分にお考えになって、もう一ぺん政治的な方向を再検討し、深甚なる汚職を払われて、政治の方向を変えられるか、それがもはやできないとして、こういう末期症状的な民主主義破壊の態度をとられるならば、いさぎよくあなたの名前を汚さないために今責めをとってお引きになることこそ至当であると思います。どういうふうに考えますか。
  122. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 御忠告ありがとうございます。
  123. 曾禰益

    ○曾祢益君 議事進行。ただいま佐多君の御質問に対する総理の御答弁の中で二点ばかり私はこの委員会としてこのまま聞きのがしておいてはならないという問題がありましたのでこの点を申し上げて委員長において、総理からもしさらに発言があるならば訂正その他の発言をしていただく、求めていただきたい。  第一は、これは自衛のための軍隊であるという点を強調したい余りだったと思いますが、現在、現内閣がやっておりまする日本防衛というものは、これは外務大臣みずからが言いましたように、日本地域に関するアメリカとの共同防衛になっておると考えるのが常識でございます。それに対して総理大臣は、これはアメリカとの協力は考えておらない、やっておらない、こういうことを言われたのであります。この点はいずれがほんとうであるか、両大臣から、特に総理の方が私は安保条約等の建前からいって間違っておりはせぬかと思うのでありますが、この点についてはっきりした解釈を、政府統一の解釈を示していただきたい。  それから第三点につきましては、これまた日本の自衛のための軍術であるからという点を主にして言われたのでありましょうが、国際情勢の問題に対して現在冷戦状態である、これは私たちもそう思います。しかし、二、三年前に比べて戦争の危機が非常に深まったような言辞を述べられたのであります。これは果してわれわれはそういうふうに増えていいか、いかに自衛のための軍備といわれても、そういうような世界の常識に反するような、少くとも二、三年則に比べるならば公然たる、世界大戦の危険は遠のいたというのがこれは常識であろうと考えます。総理自身も国会の施政方針等において言われておったところでありますが、今非常に重大な、二、三年前に比べると戦争の危険が増加したというようなことを言われたのです。果してそうお考えであるか。自衛軍のためといいながらそういうような感覚で国民をおどかすようなつもりで言われたかどうか、もう一ぺんこの点に対してはっきりした御答弁があった方が私はいいのではないか、少くとも委員会としては聞き捨てならないと思いますのでお伺いいたします。
  124. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は戦争の危険が増加したとは言わないつもりであります。(「戦争が近づいたといった」と呼ぶ者あり)しかし、冷戦というものが、(「冷戦は常にある、近づいたも遠のいたもない」と呼ぶ者あり)冷戦は現在なお存続しておる、だから平和が確立したということは言えないから自衛のための軍隊を持つことは必要である、そういう意味で申しました。  第一の質問は、アメリカと日本とは、日本を守ることについて共同防衛をしておりますから、日本が不正な急迫の侵略を受けた場合においてはアメリカは日本国を助けてくれましょう。そのときには自衛の、(「協力関係か、完全な自衛であるか」と呼ぶ者あり)協力関係といいましても、アメリカが他国と戦争するような場合においては日本はこれに協力する義務ばないと私は考えます。(曽祢益君「日本を守るためには、協力を求めないのか」と述ぶ)日本が侵略を受けた場合には協力してくれると思います。(曽祢釜君「日本の立場からいって協力になるのでしょう」と述ぶ)
  125. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) まあその程度で……。伊能君。
  126. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 けさの本会議におきましても、またただいまの当委員会におきましても総理並びに外務大臣は今回の日ソ交渉の最近の自然休会につきまして楽観もしないが悲観もしていないと、まあこういうふうな要約すればお答えがあったように思うのであります。私どももその感じには同感でございますが、ただ総理がこの交渉に入るときの、何となしに印象というものは非常に早く解決できるかの印象を国民に与えたのじゃなかったろうかという点を私どもは今顧みるのであります。実際私どもはそんなに簡単にこの交渉が妥結するものとは考えなかった。おそらく国民の大多数はそう考えなかったと思うのです。しかしながら今最近における総理の御言動はやっぱり外務大臣とともにこの交渉に当っては非常に御慎重であったということにつきまして私どもは非常な安心を持ってきたのであります。ここでこの交渉の早期妥結ということにつきましては、一つは抑留者の帰還という問題について人道的な問題から、また一つは国民経済という大きな立場から、漁業問題の解決というファクターを持っておるのでありますが、この問題は先ほど来の御答弁にもありましたように正式な再開はなかなか容易でないという段階にあることは承知いたしましたが、何とか国民外交というような面から、場合は違いますけれども、中共の抑留者の帰環の場合におきましては、日本赤十字社の活動、そうして中共の紅十字社の好意ということによってこの問題がある程度まで解決した例もあるのであります。こういうことについて今後再開を、正式には機会をうかがいながら、再開の機会を十分つかまえなければならないとともに、早く解決する面の問題のこの一つとしてはこういう問題はどういうふうにお考えであるか、の御所見を伺いたいと思います。
  127. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 外務大臣が答えると言いますから外務大臣から……。
  128. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 今の問題は、漁業問題、抑留者の問題等、実際的に解決する方法考えたらよかろうと思いますが、私もこれはたとえ休会中、交渉の中止の間であっても連絡はできますから連絡をつけて、そうしてでき得るならば政府機関において交渉を続けていった方がいいと考えておる次第でございます。
  129. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 この日ソ交渉の問題は一内閣の運命やあるいは手柄というようなことにとらわれずに、幾つも内閣がかわっても、先ほども外務大臣からお答えがありましたように、あせらずに日本の国の永遠の生命、また日本民族の永遠の福祉という立場から十分主張すべきものは主張し、また譲るべきものは譲って、そうして最後にりっぱな解決をされることを特に私どもは、おそらく国民の大多数が希望しておるものと思うのでありますが、この点についての総理大臣の御見解を伺いたい。
  130. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) ただいまの御説の通り、御発言の通りにできるだけ当初の目的を瀧成するように最善の道を尽したいと思います。
  131. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 次に私は物価問題につきまして大蔵大臣並びに経済企画庁長官の御意見を伺いたいと思います。最近物価がだいぶ騰勢を続けて参っております。三十九年度の予算、一兆円の予算の施行以来物価は多少下り、その後逐次の財政並びに金融物価政策等のよろしきを得、かつまた昨年は未曽有の輸出の好調並びに農産物の増産というところから、いわゆる数量景気を出しておる。物価は大体において秋ごろまで横ばいしておったと思うのですが、昨年暮ごろから、ことに最近におきましては最少騰勢に転じておると、こう思われるのでありますが、先ほども新本日銀総裁は、インフレを警戒しなければならないというような新聞談も見えております。これにつきまして、大蔵大臣並びに経済企画庁長官はどういうふうにお考えになり、今後インフレを起さないためにどういうような手を打たれるか伺いたいと思います。
  132. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。仰せのように最近の物価情勢は、金属類が強調でありまする関係から、やや上向きにあります。が、しかしこれは主として国際的な情勢によっておると私見ておるのでありますが、国内的には一般の消費並びに投資の面から見まして、きわめて健全な推移をたどっております。むろん今後におきまして、通貨の流通量を適正な量に保つことに努めることは言うまでもありませんが、今の資金的関係から、特にこの面から物価を下げるというようなことはありません。また財政面から見ましても、三十一年度におきましては、財政からの散超は一千億弱でありまして、三十年度の二千七百億円に比べてずっと少いような状況にありますので、まあ私は従来市場の政策を慎重に、むろん国際情勢を見つつ慎重に進めていって経済の正常化を進めていく、これでよいと考えております。
  133. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) ただいま大蔵大臣がお答えいたしましたのと同様でございますが、物価は最近に幾らか上りぎみでありますが、これにつきましては、できるだけ外貨予算を輸入の方に割当を増加いたしまして、大体三十億ドルぐらいというふうな見当をもって、外貨も相当あることでありますから、海外の物を持ってくるという考えでいけば、これは相当物価を押えられるだろうと思っております。また政府自体が口をききます米価とかあるいは運賃というものについても、これは上げない方針で進んでいきたいと思っておりますから、大体これで横ばいでいけると存じております。
  134. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 今回の予算の性格は多少消費的面の増が相当多いと思うのであります。この予算をこのまま執行していってインフレにならないだろうか、また経済企画庁長官は、ただいま外貨がだいぶたまっておるからというようなお話、十五億ドルぐらいになっておるように伺っておりますが、これによって輸入をするからこの輸入によって物価を押えられるというお考えもあるようであります。もちろんそのお考えもけっこうでありますが、ようやく国民が苦心して十五億ドルの線までいった。そこでもうそれを吐き出して物価の操作をしなければならないというようなことは、これはあまりに安心が早く来過ぎるという感じがするのであります。西ドイツのごときはおそらく二十億ドルも積んでおって、まだそういう声も起っておらないように聞いております。この点企画庁長官に御意見を伺いたいと思います。予算執行の問題は大蔵大臣に伺います。
  135. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 三十一年度の予算がある程度消費的な支出があるということはこれは私も異論は申し上げませんが、しかしこの財源はすべて一応国民の購買力を引き上げた租税の税収入その他によっております。従いましてまあこういうような若干の消費支出の多い点につきましては、今後一そう貯蓄の奨励をいたしまして吸収をしたいと、かように考えておるわけでありますが、それにつけましても、今お話の物価が安定して今後上らないということが非常に大切な点でありまして、その点につきましては極力やっていくつもりでおります。  なお外貨予算と輸入の点につきましては長官からお話がありますが、私といたしましても、これは別に今日物価が非常に上るからそのために特に輸入をふやすというよりも、これは私はやはり輸出をふやすためには輸入をふやさなければいかぬ。特に今後賠償というものがありまして資本財の提供もあります。どうしてもそれに対する原材料をふやしていかなければならない、こういうような市場の変化にもよるのであります。
  136. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。物価抑制のために物入を増加する、こういうことは、輸入をふやすということは、必ずしも消費財をふやすのではありませんで、今日の物価の上っておるその根本は、海外における金属類――鉄及び銅の騰貴が動機となっておりまして、わが国におきましてもその方面の物価が急騰いたしましたことが今日の物価の上った理由なんでございます。ところがわが国におきましては、昨年来輸出が非常に伸びた結果、在庫の手持品がなくなったわけであります。それが減っておるわけであります。そういうものにつきましては、ここに原材料の輸入をできるだけ緩和して、その方面における外貨の割当をやりたい、こういうわけでありまして、外貨割当によって消費財をたくさん持ってくる、こういう考えは毛頭いたしておりませんですから、さよう御承知願いたい。
  137. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 ただいま長官は金属類は外国が大へん体いからというお答えでありましたが、私の最近見た統計によりますと、鉄鋼並びに硫安はむしろ日本の価格が国際価格よりもはるかに上回ってきておるというふうに見られるのであります。そうすると、ただいまの答弁と多少違うように患いますが、いかがですか。
  138. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。鉄鋼が昨年来上りましたということは、外国で非鉄金属が上った、日本の国内の市況というものはそれよりも市場が小さいために、上回ってくるわけなんです。で、お説のごとく、現在硫安にいたしましても鉄鋼にいたしましても、海外の価格よりは幾らか上回っております。そういうものを阻止するためには、ある場合においては銑鉄を輸入するとか、そういう方面にまで考えて原材料の輸入ということをすればここに価格が押えられる、こういう考えであります。
  139. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 大蔵大臣は先ほどこの予算執行でそう心配はないというようなお答えでありましたが、今回の物価騰貴の状況は、今まで二十九年度の予算執行以来の一時上ったというような傾向と違って、多少消費面に、まあ今のところ消費物価が割合に下っておるようでありますが、実際は消費面において相当需要が多くなってきたように伝えられますが、このことは今まで国民が非常に一兆円予算についての協力という気持から、これに協力するの気持から消費を控え、また投資の面におきましても控えてきたようにも思うのでありまするが、今回の騰勢には多少そういう面においてただおいては済まないんじゃないかというような不安も感ぜられるのであります。この予算執行状況によっては、その途中で昨年イギリスのイーデン内閣がやりましたような緊縮の意味における補正をやるようなお考えがあるかどうか伺いたいと思います。
  140. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) ただいまのところ、なお今日以後における私の見通しといたしましては、投費面におきましても、消資面におきましても、大体健全な推移をたどっていくように考えております。むろんただ考えておるだけでは、十分でないのでありまして、さような状況になるようにいろいろと努力はいたします。今後におきまして特に予算について緊縮的な補正予算をさらに組むという考えは今のところ持っておりません。
  141. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 最近の総評の春季闘争、これに対しましては、労資双方の妥協によりまして、逐次個別的に妥結される傾向にありますことはまことに喜ばしいことでありますが、妥結をする以上は、要求全部を退けるというわけにももちろん参らない。あるいはベース・アップのような形で、あるいはその他の形で少くとも賃金の上る傾向をとって解決せざるを得ないのでありまするが、これが物価の騰貴に影響してきはしないかということも一つの心配でありますが、この点についての大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
  142. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) お答えしますが、むろん賃金のベース・アップというようなことを必要とするということになりますれば、これは私物価騰貴に影響を与えると思っております。ただ今日物価の情勢から見ましても、さようなことはやる必要もないと考えております。
  143. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 本年の予算におきましては、財政投融資二千五百九十二億、民間の資金の利用が一千三百九十七億、これは民間資金に切りかえられたことは、今日の国民の蓄積状況からいって適切だったと思うのでありますが、ただ資金委員会の考え方をおやめになる。そしてまた二面三十年度の開銀融資の百三十億を民間に肩がわりした分の消化がどうなっておるのか。聞くところによれば、この消化が必ずしもうまくいっていないようなことも聞いておるのでありますが、そういう場合において、来年度千三百九十七億というような相当多額民間資金に仰ぎ、一方では資金委員会というような、まあ多少金融統制的なことは行わない。全く金融機関の協力によってこの千三百九十七億をひねり出さなければならない。これが果して可能であるかどうかということについて不安なしとしないのであります。先ほど申し上げた三十年度の開銀融資の百三十億というものが、どういふうに今まで消化されておるか、それをお答え願うとともに、本年の千三百九十七億の民間賞金の融資についてどの程度確信をお持ちであるか、伺いたいのであります。
  144. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 三十一年慶におきまして十三百億余の民間資金を活用する、こういうことになっておるのでありますが、大体三十一年度の資本蓄積は民間全体として約九千億程度考えております。大体一割強であります。そういう程度の資金を見込んでおりまして、これが問題については従来の実際の実績から見まして心配はないという確信でありますが、特にその点については民間をあげて協力態勢をとっておる。なお三十年度におきまして、日本開発銀行関係において百三十億の民間肩がわり、これがどうなっておるか。大体私はこれは順調に……一時まあ手続その他いろいろ肩がわりの関係から、当時者間にいろいろ話し合いのために時間を取ったと思いますが、大体私は順調な結果を見ておると思います。今ここにどういうようにという数学的に申し上げる数字は持っておりません。後ほど適当なときに理財局長から詳しく答弁いたします。
  145. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 民間資金の利用について心配されるのは、そうした銀行、金融機関の協力の問題と、同時にこれを使う方面からいえば、金利差の問題だと思います。金利差を同じようにするわけにはもちろんいかない。従って民間資金を利用する、民間資金を割り当てられた方の事業主は少し高い金利で使わなければならないということになるのでございますが、この金利差についてはどうふうな措置をされるのか。民間資金を割り当てられた方は、まあ高い金利でも仕方がないというので泣き擬入りになるのか、あるいは特別な、最も重点的なものを財政投融資にして、次に来るものを民間資金にするのか。そういう何かの方針があろうと思うのですが、それをどういうふうにお扱いになるか、伺いたいと思います。
  146. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 金利の点につきましては、仰せのように政府から、財政から従来出ておった資金に比べまして民間資金による場合は金利が高くなっております。しかし、それはそれだけの関係においてさようになるのでありまして、資金全体から見ますると、金利負担というものは今日各事業とも軽減になっておる。それは財政資金から出まするのは大体設備資金なのでありますが、事業会社等が所要いたします資金は、おそらく設備資金に対しておおむね三倍くらいな運転資金を必要とする。これらの資金が非常な低落をいたしまして、たとえて申しますれば、電力会社関係をとりましても、今私ちょっと記憶にありますから申し上げますが、これにしても三十年度におきましておそらく民間に、先ほどお話がありましたように、相当な肩がわりもいたしたのでありますが、十数億円くらいなやはり金利負担になつております。総じてどの事業においてもさように申すことが私はできると思う。事業といたしましては、全体としての金利負担が従来に比して軽減をしていけば、それで十分なる経営がとれると思います。従いまして財政資金としては財源の関係、あるいは原資の関係等もありまして、財政からは、お話しのようにごく重点的なものまたは中小企業、こういうものに大体限りまして出していく、かような方針を今とつております。
  147. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 今まで財政資金でばかりやっておったところへ民間資金の割当があるときには、大体金利差によって、それではペイできなくなるという問題が民間事業家側には出てくるのじやないかと思いますが、そういう心配はないということをはっきり言えますか。
  148. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) さような心配は私はないと申し上げることができると思います。また、そういうことが事実あるとすれば、そういうところは自然財政資金はやはり低落していく、あるいはまたある部分は財政資金ある部分は外資と、いろいろ実情に応じて無理がないように進めていくことができると思います。
  149. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 先ほど経済企画庁長官から外貨の問題がありましたが、この外貨が今十五億ドルもある。それなのにやはり一方では世銀その他の外貨の融資を受ける、これはちょうど銀行に預金をしておきながら一方では借金しているようなもので、これは考えようによっては銀行預金の利子が高くて、よそから借りてくる利子が低ければ成り立つわけですが、今の場合なおそうした外資を今後も安いものがあれば借りてくるというお考えなのであるか、あるいはそういう考えはもう捨てておるというのか、この点長官の御見解を伺いたいと思います。
  150. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。ただいま外貨が十億あるいは十五億あるといいますが、これはまあ非常に必要なときもあるだろうということも考えなければならんし、また幸いに昨年度は輸出が予想外に伸びたわけでありますが、その逆も考えなければならんというような点も考慮いたしまして、そういうふうな預金を持っていながら利息を払う高い金を借りるのはどうか、こういう御意見でございますが、これはまことにごもっともだと思いまするが、しかしながら現在世銀あたりから借款いたしておりますことは、これは外国の技術を持ってくる、外国の品物を買わなければならない、こういった場合にある一つの前例を作っておくということ、まあ必要なときには借りられるようにしておくような一つの道も開いておくということ、こういうことも考えられるわけであります。それはそのときの情勢に応じて進んでいくべきことで、将来世銀の、これはもちろん借金はしない方針だとか、あるいはどうするかというような方針は、そのときによってきめなければならんものであると、こういうふうに考えております。
  151. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 次に、長官に経済五カ年計画の問題で少し伺いたいと思うのであります。経済五カ年計画は当初少しペンディングな問題があった関係でありましょう、三十年度を起点として六カ年計画をお立てになった。それを三十一年度から五カ年計画に変更されたということでありますが、この計画の大体の構想を拝見いたしますと、経済自立という大きな命題と、同時に完全雇用という二つの、つまり二律的な考え方に立っておるようであります。なるほど初めの、六カ年計画の第一年度であった三十年度は、先ほど来お話も出ましたように非常な世界的な好況に恵まれまして、輸出が増進した、また農産物が異常な増産をしたというような二つの柱に支えられて、おそらく経済六カ年計画の初年度であったとするならば、初年度思った以上の成績をおさめたと思うのですが、そこで五カ年計画の出発が非常に好運であった三十年度を、これだからこれでいくんだというふうな甘い考えに立っておるのじゃないんだろうかというふうに考えられるのは、経済自立をやれば自然そこには産業の合理化が行われなければならないし、また同時に生産性の向上をねらわなければならない。事実ある程度までは三十年度においてはこの目的を達しておるのでありますが、これを強くやればやるほど、経過的にはどうしても失業者を多く出すことはこれは当然なんです。でありますからわずか五カ年くらいの計画のうちに、経済自立ということを強く打ち出しながら、同時に完全雇用というものを当初の予定するごとくに進めるということが無理なのではないか、こういうふうに思う。現在すでに、おそらく完全失業者が六十万以上あるので、今の段階においてはまだ決してこの計画を立てた時分からは減っておらない、昨年の好況をもってしてさえも、なかなかこの消化は困難である、こういうときにいつまでも初めから、わずか五カ年くらいのうちに、日本のいわゆる底の浅いという日本の経済を自立させるということを念願しながら、なおかつ完全雇用までも手を出そうということ自体に相当に無理があるのではないか、根本的にこの計画は無理があるのではないか。少くとも第一次五カ年計画くらいには、完全雇用の部面は、雇用の面は一応横ばい、そして先に明るい希望を持ちながら経済自立をした上に雇用の増加をはかるべきではないか、こういうふうに私は思うのでありますが、この二つの道を、二兎を追う者は一兎をも得ずになりはしないかということを私は心から心配するものであります。この点についての長官の御見解を伺いたい。
  152. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。完全雇用という言葉は、これはフルという言葉を使っておりますけれども、完全に雇用するという意味が、大体は労働を希望する人口のうち一%、四十五万人くらいはこれは当然失業者があるものということの考えで五カ年計画を進めてきたわけでありますが、実際の問題といたしまして三十年度を顧みますと、鉱工生産におきましても、農産物の生産にいたしましても、また輸出にいたしましても、予想よりも上回っていながら、失業者は六十三万人と踏んでおったものが、六十七万人と、こういう状態になっております。しからば就業者の数はどうなっておるかと申しますと、これは最初の予定よりも一%以上ふえております。こういうことで私どもは一年に八十四万人の人間を就業しておる、就業者の数をふやしていく、こういう計画でやっておりますが、昨年のごとき、これは百万人以上就業者がふえております。それでもなおかつ失業者の数がふえておる。これはどうだろう、こういうようなことが新しい問題として今日わいてきたのであります。これは仕事が多くなればなるほど仕事の機会をめっけておる人たちがふえてくる、それで仕事のでき得る年令の人たちは、六七%八というものが大体これが就業率というものにきめておったのでありますが、労働力率というかそれにきめておったのでありますが、これは昨年のごときは六八・五となっております。これは全く世界的の例のない異常な現象であります。その率が一%ふえるということは、かれこれ四十万人の人が仕事をほしがっておる、こういうようなことになっておりまして、外国の例とはまるで違っておる、こういうわけでありまして、この点から考えますと、日本の失業問題、あるいは完全雇用、フル・エンプロイメントと申しますか、この問題はよほど慎重に、そして深く掘り下げていかなければならん、こういうことを考えておるわけでございますが、ただいまの私どもの考えでは、八十四万人と年々に吸収するものを、これが昨年のごときは百万以上になっておる、こういうことから考えますと、大体私は生産がふえて輸出が増進していけば、予定通りいけば、予定くらいば進んでいくだろう、こういうふうな考えでやっておりますが、なおこの点につきましては、ただいま各方面からよく検討を加えまして、十分この点の検討をいたしたいと思っておるわけであります。
  153. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 なるほど雇用量はふえながら、なおかつ完全失業者はふえるという珍らしい結果が出ておるということでありますが、事実毎年労働力の増加というものは、なかなか少くない労働力でありますから、この労働力、おそらく百万近い労働力がふえる、それを消化しながらなおかつ今までの完全失業者を少くともこれを減らしていきたい、六十万から四十万ぐらいにしたいというのでありますから、かなりそこには無理な希望があるのじゃないか、こう私どもは思うので、そのためには、もう少し経済自立を急いで、そうして将来への希望を明るくしながら、経過的には多少失業者がふえても、これは当面の問題として失業対策事業によって解決しながら、将来の雇用の拡大ということを念願すべきではないかというのが私の考えなんでありまして、すでに欧州方面は景気が頭打ちだといわれ、またアメリカにおきましても、せいぜいこの景気は今秋の大統領選挙までだろうというふうな見方がされるときに、どうしても経済自立を急がなければならないというために申し上げるわけでありまして、どうかこの点については今後十分なる検討を続けられ、二兎を追う者は一兎をも得ずの結果に終らないことを心から念願いたすものでございます。  次に、地方財政の問題について大蔵大臣並びに自治庁長官に……。
  154. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 政務次官が来ておりますから。
  155. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 政務次官に伺いたいと思います。地方財政の問題は、鳩山総理以下非常な御熱意のもとに、三十年度におきましては百六十億という多額の資金を出され、今回は、地方財政としては一応赤字を出さないで済むはずであるという線まで出てきておるのでありますが、まだまだ、もちろん今後地方行財政の上において大きな問題が残っておりますが、当面に一番すぐ残っておる問題は地方債の問題です。大蔵大臣は口をきわめて公債を出さない、公債不発行という大きな方針を打ち出しながら、地方債についてはやむを得ないのだというお考え、これは一体どういう根拠にあるのか、一応大蔵大臣の御見解を伺いたいのであります。
  156. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 地方におきましても、赤字補てんというような意味合いにおいて地方債が出ることは、これはむろんとるべき道ではないのであります。ただ、必ずしもさような意図でなくても、結果的に見まして、地方財政が非常な苦しい立場に置かれまして、地方債がふくれてきておるという事実は否定ができないのでありまして、それを三十年度、三十一年度にかけまして、一応赤字は出ないような財政状態に持っていきたい、今後漸次地方債が減っていくようにやっていきたい、まあかように考えておる次第であります。
  157. 早川崇

    政府委員(早川崇君) 大臣に代りましてお答えいたします。地方債の問題につきましては、一般会計起債と、それから公益事業債と二つに分れるわけでありまするが、公益事業債の面におきましては、これは収益によって回転いたしますので、この面は本年度はふえております。問題は、今大蔵大臣が申されましたように、一般会計債は本年度かなり思い切って削減をいたしました。それから長期債に短期債をかなりこれまた借りかえまして、地方債の元利による地方財政の赤字負担を軽減する措置をとったのでございます。
  158. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 まあ、あまりはっきりしませんが、一応地方債はある程度までやむを得ないということで、しからば地方債というものは、今までのものは返す方法についても問題がありますが、つまり公債費の問題についても問題がありますが、今後出すべき起債のワクというものば一体何を基準としてきめるのか、全般の金融統制の上からこのくらいでなければならないというのできめるのか、あるいは地方団体側から見てこのくらいはいいのだというのできめるのか、この地方債のワクのきめ方、ただいまの御答弁によりますと、一般会計についての地方債は昨年より少し減った、これは確かに少し減っております。しかしながら、地方制度調査会から出した答申などでは、もっともっと減らすことになっておったと思うのでありますが、何を基準に本年度の地方債のワクをきめたか、この点を大蔵大臣並びに地方自治政務次官から伺いたい。
  159. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 大体今後の地方債のワクの問題になるのでありますが、実際には三十二年度で中央地方を通じての税制の根本的な改革を今意図いたしております。従いまして、今後地方の税財源においてどういうふうに自治体を強化し得るかという点にもかかると思うのでありますが、私の今考えておる考え方は、やはりこれは地方公共団体におきまして、起債をして、それが実際元利償還ができるような、そういうものについて考えていくというのが基本でありますが、従来の地方債の分量がすでにどの地方公共団体も多いのでありますから、今後においては、私はこれをなるべく必要限度に圧縮をして、そうして公債費というものについて十分将来の見通しが立つように考えたい、かように考えております。
  160. 早川崇

    政府委員(早川崇君) お答えします。われわれは公共事業費の事業分量が約三千億ほどございまするので、この事業量のめどから申しますと、公債の額は六百億ないし六百五十億というのが大体われわれとしては健全な線ではないか、本年は七百十五億円出しておりまするが、そのうち借りかえ債が五十億でありましたかございますので、若干公債費として多きに失しまするけれども、かなり昨年に比べましたら改善されておると考えております。
  161. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 ただいまのお答え、大蔵大臣のお答えはあまりはっきりしませんですが、自治政務次官のお答えの方は、公共事業の方のワクから考えていくという考えでありますが、そうだとすると、返すことの分については考えないでいい、とにかく公共事業費がこれだけあって、それに対して地方負担がこれだけあるから、これに対しては起債をどうするということでワクをきめるのである、そういうことになると思いますが、そうなんですか。返すということの方は考えないで、公共事業費の方からワクをきめていく、こういうお考えですか。
  162. 早川崇

    政府委員(早川崇君) お答えいたします。今のは仕事の方から論じたのでありますが、返す方から申しますと、一般財源の大体一五%という見当にわれわれでは考えておりまして、そういう両面から考えまして、現在地方財政計画で、予算規模におき益しては六百億ないし六百五十億、こういうふうに考えております。
  163. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 少しこまかくなりますが、そうすると、ことしは六百億くらいが適当であると思うのに、七百億以上の起債のワクを出したことは出し過ぎである、かように考えていいのですか。
  164. 早川崇

    政府委員(早川崇君) 先ほど申し上げましたように、昨年度にはかなり改善されましたが、若干われわれといたしましては一般会計用のいわゆる一般起債というものは出し過ぎておった、若干の出し過ぎておると、かように存じております。
  165. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 今までの地方債は累増して、この償還が実に容易ではないのでありますが、こうしてまだ地方債のワクの出し方さえも、なかなかこれなら地方団体が償還し得るというワクではない。つまりいわば赤字公債が出ておるということなんでありまして、地方債の問題、そうしてひいては償還、つまり公債費の問題というものは、地方財政上今後も残る大きな問題であるということを大蔵大臣もよく御認識になられまして、今後の公債費対策ということについて最善を尽されるよう要望いたします。同時にこの公債費が、大体利子が六分五厘のものが多いと思う。このうち公募債はもちろん八分くらいになっておるでありましょうか、なるべく公募債は一般の起債のワクに、長期債に乗りかえていく、同時に再建債は三分五厘に達するまで利子補給をするということになっておるのでありますから、まじめに起債のワクを、苦しんでもらって、そうして事業を赤字を出さずにやってきた団体は六分五厘、あるいは公募公債の場合になれば八分、八分五厘という利子をお払いになりながら営々として苦しみを続けておられる。再建債の方をもらった人は楽々と三分五厘の利子でやっていける。この形は決してまじめな者に報いる道ではないのであります。正直者がややもすればばかをみるような形でありますから、この形についても十分お考えを願いたい。これは大蔵大臣並びに自治庁長官に特に申し上げておく次第でございます。  次に、三十年度の公募債は一般から二百三十億、それに再建債の百五十億と、三百八十億ある。毎年公募債が消化されないで困っておるという点から考えても、私は本年これが年度末までには当然消化できないものと思うのですが、いつごろまでには完全に消化できるお見込みであるか伺いたい。
  166. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 地方債の消化ですが、地方債の消化は、大体借入金なんどで泳いでおりまして、年度末にいってずっと消化をする、こういうふうな大体傾向をとっておりますのであります。昨年も大体年度末で一応の消化をみております。本年は私、数字的に十分御説明ができないのを残念に思いますが、どういうように残っておるか、なお調べてみますが、年度ぎりぎりで相当消化できるだろう、かように考えます。そう多くは残らないと思います。
  167. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 この問題も大蔵省の御協力なくては、なかなか消化の困難な問題であります。一般起債の長期債であればなおいい。しかしながら市中銀行から一時借り入れたというようなものは、公募債でもまだこれよりもましなのでありまして、公募債のワクでもそれを早く消化したいという希望を持っておるのでありますから、ぜひ御協力願って、いやしくも政府がこういうワクを出した以上は、この消化について十分御協力を願いたいと思うのであります。  次に、これは問題が少し違うのでありますが、前の自治庁で地方自治法の改正考えたときに、租税滞納者の議員の滞納中においては議員の職務執行を停止するというような項目があったのであります。今回これは御採用になっていない。せっかくああいうお考えがあるのに、なぜこれを採用されなかったのか、私はまことに残念に思う。大体納税の義務というものは、憲法においてほんのわずかしかない国民の義務として、しかもこれは人が社会生活を営む際においては、その社会の共同の費用を分任し合うというのがこれは人間の義務なのです。憲法になくてもこれは当然分任しなければならない。その義務を果さない人に権利の方だけは一人前以上に主張させるということは非常に私は片手落ちだと思う。なぜせっかくこの前ああいう案があったのに、今度はこの自治法の改正案から落されたのか。これは私は実際は自治庁長官にも伺いたいし、大蔵大臣にも伺いたいし、同時に総理大臣にも私は伺いたいと思う。国民が自分の義務を果さないのに権利だけは強く主張するという私は形になると思う。どうかこの点について明確なお答えを願いたい。
  168. 早川崇

    政府委員(早川崇君) 伊能委員にお答えいたします。この前の自治法の提案のときも実は議論になりましたが、削除いたしたのであります。このたびもこの問題は議論になりましたが、被選挙権を剥奪するという問題は、あまりにも問題が重大でございましたので、議論のあるそういう問題は削除いたしたような次第でございます。
  169. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 これは少しお考え違いじゃないかと思う。私は議員の位置を奪うという意味じゃない。私の申し上げたのは、滞納中は議員の職務を停止せよというのです。議員の位置を去らせるのは、これはおそらく公選で出た議員の職を奪うというのは非常に大きな問題だろうと思う。しかしながら、その間、滞納しておる間は議員としての職務を、権限を停止する、これならまことにりっぱな意見だと思う。なぜこれをおやりにならないか。今の御答弁では私は納得できない。
  170. 早川崇

    政府委員(早川崇君) 議員の職務停止という問題、これはきわめて重要でありまして、税金は税金という経済的な問題でございます。また、選挙違反は公民権の停止という問題がありますが、一般の刑事犯の執行猶予は傷害を起しましても公民権は停止されない。そのようにそのいろいろなケースによって変っておりますので、われわれといたしましては、議員の職務停止という重大なこの問題については、今度の自治法という問題において削除いたしまして、なお慎重に検討いたす、こういうことにきまったわけであります。
  171. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 今の問題は多少私には納得しがたいものがありますが、時間の関係もありますので、最後に一つだけ私は外務大臣のいるうちに申し上げようと思ってうっかりして落しましたが、大蔵大臣から伺いたいと思うのは、外務省というのは、いやしくもこれは一国の外国に対する窓口だと思う。この窓口の外務省というものは借家住いで、国民が耐乏生活をし、よその官庁が皆借家住いしておるときなら、これは皆忍ぶとしましても、相当すでにいろいろな役所が建物をどんどん建ててりっぱな庁舎に入っておる。なぜ外務省という一国の窓口であるべき省がいつまでもああいう借家住いしなければならないか。私ははなはだこれは一国の体面からいってもふに落ちない。よその役所は外務省よりも先にもう相当いい役所にみんな入っておりますから、もっともっと早くりっぱな外務省を建てて、りっぱと言わなくても日本の経済力、財政力に応ずるような建物を建てて、そうして外国の大使やその他の使臣を中で相当なことができるようにすべきである。この点については、私は今回外務省予算もだいぶ御理解ができたとみえてふえておる点はけっこうだと思いますが、この問題がまだ解決の緒につかないということは、まことに残念に思う。ほかの役所よりも先んじてやるべきであると思うのですが、大蔵大臣の御見解を伺いたい。
  172. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。私も外務省はやはりできるだけ早い機会に庁舎を差し上げたい、異存は毛頭ありません。今若干おくれておりますが、来年度の予算にも一億数千万円一応いろいろと建築に対する諸費を計上いたしておる次第であります。近いうちに設計もできて着工することになるだろうと思います。それまではとりあえず大蔵省庁舎を差し出しまして入っていただくことになっております。
  173. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 最初に総理にお尋ねいたしますが、憲法改正につきましては相当根強い反対があることは、総理自身最もよく御承知のところでありますが、それだけにこの憲法改正の世論を強力に喚起推進していこうということにつきましては、よほどの覚悟が要るんじゃないか。講演会などをちょいちょいお開きになるくらいではとうてい足らないのでありまして、場合によってはかえって逆効果になるおそれすらあると考えるのであります。従ってよほどの世論喚起につきましては、また啓蒙につきましては、用意周到に組織的な計画が必要ではないかと思うのであります。また、相当資金も要るのではないかと思うのでありますが、総理自身この問題につきましてどういう具体的な構想を持っておられるか、それをまず伺いたいと思います。
  174. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 憲法改正調査会におきまして大体の案ができましたらば、これを国民に理解をしてもらわなくてはなりませんから、案がおそらくできますと相前後いたしまして、国民に納得してもらうような方法をとらなければならないと考えております。
  175. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 そうしますと、憲法調査会の結論を得てから本格的なことはおやりになるという意味でありますか。それにつきましてすでにこうもやりたいというような具体的構想にお持ちになっておるんじゃないのでしょうか。
  176. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 憲法改正調査会というものが、やはり国民に納得をしてもらうことにまで発展してもらいたいというようなことも考えておるのでありますけれども、ただいまのところは、まだどういう人が憲法改正調査委員になるかまだ確定しておりません。そういうような憲法改正調査会ができまして大体の案ができたら、そういうような話を進めたいということであります。
  177. 秋山長造

    ○秋山長造君 関連して……、総理大臣は憲法改正調査会ということを口癖に言われるのですけれども、これは一体どちらがほんとうなのですか。ときによると憲法改正調査会で案ができたら国民に諮る、まるでもう憲法改正の草案を今度の憲法改正調査会で作るようなことをいつも繰り返されるのですが、まあときによると、いや、あれは憲法改正をやるかやらぬかをあれで研究してもらうのだというようなことにしごく軽く逃げられたり、これは重大な問題ですからね。もっと総理大臣はっきり責任のある言葉を使って答弁をしていただかぬと……、憲法改正調査会だったら大へんですよ。
  178. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 憲法調査会です。言い間違いです。
  179. 秋山長造

    ○秋山長造君 だからそれをはっきり言って下さいよ。まあしばしば言っておられる。それが本音だろうとわれわれはみておるけれども、これははっきりしてもらはなければ困る。
  180. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 法案の内容には憲法調査会となっております。
  181. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そこで案を作るのですか。
  182. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) いや、その案は、憲法を改正する必要があるかどうかもきめてもらうというように、憲法調査会の案になっております。
  183. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) やたらに発言はしないよう願いにます。
  184. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 次に、交戦権の問題についてお尋ねをいたしますが、先ほど佐多君の質問に対しまして、自衛権に基く戦力の行使は認めるけれども、交戦権は認めないというふうに答弁せられたのであります。しかし急迫不正の侵害があった場合に、これを排除するために基地はたたくということはすでに認められておるのであります。そういたしますと、その基地をたたいたときには、建物も破壊するでありましょうし、あるいはまた戦闘員ももちろん殺生するでありましょう。またわが方の自衛隊の隊員が落下傘で落下して捕虜になるというようなこともあり得ることであります。さような場合を想定いたしますると、そういう場合に処するために交戦権というものを最少限度にやはり認めておくということでないというと、国際法上困る問題が現実に出てくる、そういう点について総理の御見解を伺いたいのであります。
  185. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) この点については法制局長官から答えてもらってよろしゅうございますか。
  186. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 よろしうございます。
  187. 林修三

    政府委員(林修三君) お答えいたします。先ほど佐多委員の御質問に対してもお答えしたわけでございますが、交戦権というものの考え方、これにつきましては、ただいま私どもあるいは政府といたしましては、いわゆる個々の何と申しますか、戦時において国家が交戦国としての国際法上持つ権能、こういうものの集積と、まあかように考えておるわけでございます。で、一方におきまして自御権でございますが、これは自衛権というものは御承知のように急迫不正な侵害がありました場合に、それを排除するために必要な限度において行使される実力、実力行動、こういうことを含むと考えられます。従いまして自衛権の範囲においては、わが国あるいは自衛隊はまあ自衛上の措置がとれる。しかし、これは憲法で否認しておる限りにおいて交戦権というものはない、かように考えるわけであります。交戦権が認められなくても、自衛上の措置は、これは別個の見地から自衛上の措置はできる、自衛権の範囲においてこれはできる、かように考えておるわけであります。そういうことに考えてそれでいいのではないか、またそう考えるべきことが限度じゃないか、かように考えておるのであります。
  188. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 自衛上の措置を認めて、その範囲内においても最少限度の交戦権というものは認めないというと、実際上困る問題が出てくるのじゃないか。そうしてまた解釈上も私は第九条を見ますというと、交戦権を否定しておるのは第二順に後段として書いてある。第三項は御承知のように国際紛争を解釈する手段としての戦力は認めないし、また、それに伴っての交戦権は認めないと、こう率直に読めると思うのであります。しかしながら自衛権に基くもの、これは認める、それは二項には直接触れてないからという解釈を従来とっておられると思うのでありますが、その解釈をとるならば、やはり交戦権もこれは認めていいんじゃないか。要するに第二項自体の問題だけについて交戦権を否定しておると解釈できるのじゃないか、要するに三項として別に交戦権を全面的に否定をしておるというふうに第九条の成文はなっておらんのです。そういう点から自衛権に基く、戦力の行使を認められつつ、その範囲内において最小限度の交戦権を認めないというような、頭隠して尻隠さずというか、そこに首尾一貫しない点があるのですが、その点についての御見解を承わりたいと思います。
  189. 林修三

    政府委員(林修三君) この九条二項の読み方に対しまして、今豊田委員が仰せられたように読むということもこれは一つのお考えだと存ずるわけであります。しかし、これはやはりまあ私ども従来二項の書き方から、もう交戦権はこれは認めないという文章と前の文章とは一応切れておるけであります。そこをやはり切って読むべきであろうと考えて、交戦権は、先ほど申しましたように、ここにたとえば自衛のために武力の措置をとる、こういうことが交戦権とは考えておらないのでございまして、そういう意味におきまして自衛のための必要な措置、自衛権の範囲において行われる限りにおいてはこれはできるのである、かように考えておりますから、そう解釈して、実は今豊田委員の仰せられましたような心配もないんじゃないか、かようにに考えておるわけであります。
  190. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 私の九条に対する解釈の仕方は、これも一つの考え方だと法制局長官自身もすでに認められておるのでありますが、おれならばもうここまで切り離してはっきりと自衛権の範囲における最小限度の交戦権を認めるというふうに首尾一貫せられたらどうか。これは不幸にして自衛権に基く戦力の行使が現実に起ったときには、それに伴う最小限度の交戦権を認めるということでないと実際困ると思うのです。これはちょうど第二項の解釈をとられるに際して、現実に自衛権というものができてくれば、そういう解釈をとっておる以上、日本国は交戦権の問題は現実に自衛権の発動が行われたときには、どうしてもあると認めざるを得ない段階になってくる、これはまた国家的にそう認めなかったならば、非常に問題があり、紛争がかえって出てくるというふうに考えるのでありますが、すでに私の見解も一つの見解だということを認められておるのでありますから、今日はそれ以上は申しませんけれども、十分一つ私の見解についても今後御研究を願いまして、首尾一貫するような考え方というものを最小限度にとっておいていただきたい、さようなふうに考えるのでございます。これらにつきまして総理の御見解はどうでありましょうか。
  191. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) とにかく憲法第九条二項による交戦権というのは、戦時において国際法上交戦国に認められる権能というように解釈しておりますが、たとえば中立国船舶の拿捕を行うとか、あるいは占領地行政を行うという権能と解釈されておるものですから、急迫不正の侵略のあった場合に、その基地をたたくという場合に、そこまでに必要があるかどうかは一つの疑問になると思ったものですから、それで交戦権は直ちに認めないでもいいというような解釈をとっておるわけであります、それはしかしながら先刻法制局長官が言いました通りに、豊田君のおっしゃるような解釈も成立ち得るのでありまするから、よく研究をいたします。
  192. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 次の問題は、参議院制度について総理に御見解を伺いたいと思います。二院制度を存続させようという考え方から申しますると、その両院の性格というものは異る行き方をすることが必要だと労えるのであります、もしそうでないときには、同じ行き方でありまするならば、場合によれば参議院の無用論が出てくる、あるいはともに政党政治に徹しばするのだが、その分野が全逆然になってきたということになりますると、実質的に紛争の場と参議院がなってくると考えるのであります。さような考え方からいたしますると衆議院が政党政治に徹するという行き方に、二大政党対立でいよいよもろてなって参るということになって参りますると、逆に参議院は政党政治を超越する行き方をはっきりする必要があるのじゃないか。しこうして今日政党政治を超越しようということを目途といたしますと、参議院の構成を見ました場合に、地方区選出の建前で参りますれば、とうてい政党政治を超越するわけにいかぬ。これは目前の事実がすでに立証しておると考えるのであります。さりとてまた一部には推選制が云々せられておるのでありまするけれども、推選制というものは少数者によって行われるのでありまするから、少数者による不公平というものほどおそるべき結果をきたすものはないかと考えられるのであります。かように考えて参りますと、参議院に特色をつけていこう、衆議院と異る行き方をはっきりさしていこうというのには、むしろ全部の議員全国区制にした方がいいのじゃないかというふうに労えるのでありますが、この点につきましてはどういう御見解を総理は持っておられるのでありましょうか。
  193. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 参議院の制度につきましては、いろいろな意見がございます。どうにかして中立性を保たせたいとか、とにかく衆議院と違った性格を持たしたいという議論がずいぶんございますので、いろいろな意見を私も聞きました、とにかくこの問題については憲法調査会におきまして審議をしてもらいたい、そして決定してもらいたいと考えております。
  194. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 憲法調査会にかけられるべき問題ではあろうと思いまするけれども、これは政治常識といたしまして、総理自身どういうお考えを持っておられるか、その片貌でもこの際伺っておきたいと思うのであります。
  195. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私はただいろいろの人の意見を聞いたのでありまして、まだ自分の意見をきめているわけではございませんから、発表を許していただきたいと思います。
  196. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 次は、税制改革の問題につきまして伺いたいと思います。御承知の通り貯金や公社債の利子に対しまして総合課税の方式というものがやめられるようになりました。またがってこのシヤウプ・ミッションの勧告でありました富裕税でありますとか、あるいは附加価値税というようなものも実現をしなかった、あるいはやめたということになって参ったのでありまして、かような重要な部分がなくなって参りますると、シヤウプ・ミッションの勧告によった税制体系はくずれてきておるというふうに見ざるを得ないのであります。かように重要な部分がくずれて参りますると、かえって全体のバランスがとれなくて、それがために非常に悪い副作用を出してくるということは言うまでもないのであります。しかも終戦直後と今日では、経済情勢も全く一変して参ってきておるのでありますので、この際税制の根本的な改革はどうしても必要だということは、何人も疑わないところだと考えるのであります。大蔵当局でも三十二年度においては根本的なる改革を考えておられるやに伺うのでありまするが、これは税制調査会におかけになっておるのでありまするけれども、税制調査会は何といっても諮問機関でありまするので、大蔵大臣としてどういう構想をお持ちになっておるでありましょうか。その点を伺いたいのでありますが、特に物品税、事業税、租税特別措置法、こういうものが特に批判の対象になっておりまするので、そういう点について御見解を伺いたいと思うのであります。
  197. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 税制の根本改革につきましては、昨年八月から臨時租税調査会にかけまして実は税制の根本改革はいかにすべきかというような意味合いで諮問をいたしております。まだ、最終答申を受けておりませんが、しかし私自身といたしましては、まあ何といっても私はこの租税負担の公平ということを考えておるわけであります。これはまあ一番大きくは直接税と間接税との関係がどういうふうにあるのが、今日あるいは今後の日本の国情に適するか、またはさらに、そのうちではあるいは大企業と中小企業との間の関係、あるいはまた所得関係の間のいろいろと給与所得とその他の所得との間の関係、まあいろいろとあると思います。それらが問題になりましょうが、まあそういうようにしまして、同時にもう少し税制自体が簡素化されて、納税者から見ても自分の納める税がよくわかる、よく納得がいって、なるほどだというような意味合いで一つ税を納めていただけるように、そういう簡素化も考えてまあ納得がいき、公平に、従って納得がいき、かつそういうような状態のもとで税収もふえる、こういうふうな制度はどうするか、まあこういうふうなことを考えております。
  198. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 物品税、下乗税、租税特別措置法、この辺につきまして、具体的な大体のお考えが伺えればけっこうでございますが……。
  199. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) それらにつきましては、十分具体的に検討する必要がありますので、税制調査会の専門家の意見に待ちたいと考えております。
  200. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 自治庁の方に伺いたいのでありますが、農業に対する事業税につきまして、地方制度調査会でも答申になっておりまするし、それからまた税制調査会でもすでに答申になっておるのでありますが、この両調査会においての答申があったにかかわらず、これを実行しない理由はどこにあるとお思いでありましょうか。
  201. 早川崇

    政府委員(早川崇君) 農業事業税を採用しなかった理由といたしましては、第一に農家の家族の一家労働力というものが、十分果して労働時間、その他からいってはっきりした把握が実は困難である、非常に市労働になっておる。勤労所得税その他のからいたしまして……。さらに、農地の固定資産税に関しましては御承知のように昭和二十五年以来かなり引き上げましたので、そういった面、さらに食料の価格というものが自由価格ではなくって、従来この公定価格、統制価格によって国際米価よりも低く押えておりました時期も非常に長かった。現在は国際米価とバランスがとれておりまするが、そういった数点の理由によりまして、農業事業税を本年度からやるということは時期尚早と考えたわけであります。
  202. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 固定資産税のお話があったのでありますけれども、これは商工業関係でも相当重課せられておるのであります。さらにまたがって農業関係については供出に伴うて負担が重いというような終戦直後の特殊事情もあったと考えるのでありますが、これも今日では非常に事情が変ってきておりまして、こういう点から見ますと、同じく事業といいならが、農業関係にだけは専業税がかからぬ。これが他の事業をやっておる、要するに商工業関係などに対して差別的な持越をしておるというような心理的な悪影響を与えておると思うのでありますが、この点について自治庁ではどういうふうに考えておられるのでありますか。
  203. 早川崇

    政府委員(早川崇君) 農業の中で特にわれわれは果樹とか、こういうものはなるほど一般の商工業と似た性格を持っております。ただ一般の食糧農家というものは、若干先ほど申し上げましたように、国策的見地からいろいろ統制もいたしましたし、自家労力というものの問題もございますので、今年の税制調査会に事業税も検討されますから、あわせて検討いたしまするが、先ほど申し上げましたように、本年度の税制にはこれを削除いたしました次第でございます。
  204. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 今後この事業税については、特にバランスのとれるような見地から特別の考慮を至急に払われるようにこの際強く要望いたしておきます。  次には経済五カ年計画関係いたしまして、完全雇用が大きなねらいになっておる。そういう見地からいたしまして中小企業に重点を置いた行き方をしなければならぬ。従ってこれを予算の上においていろいろと画期的な裏づけ政策が必要だということは、前々から経済企画庁長官もみずから言っておられたのでありますが、今回のこの予算を見ますると、そういう点がちつとも出ておらぬといっても過言ではないようでありまして、この点について経済企画庁長官はどういうふうに考えておられ、また将来はどういうふうにしなければならぬというふうにお考えになっておるのでありましょうか、その点を伺いたい。
  205. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。経済五カ年計画につきましては、この雇用関係から申し上げても、また輸出振興という点から申し上げましても、中小企業が非常に重大であるということは、私ども考えておるわけでございまして、本年度の予算におきましても中小工業として一番の関係している問題は設備の近代化ということが非常に大事だと、こう存じまして、一応中小企業をよく診断するという企業の診断、それから設備の近代化ということのために八億一千万円を取りまして、約昨年よりも二億三千万円ばかりふやしておるわけでございます。それが一つと、それから中小工業として一番のやはり今日困っておる問題は、金融の問題だとこう存じまして、中小企業金融公庫なり、あるいは国民金融公庫等を考えまして、国庫負担といたしましても、これは百四十億円を企業の方に出す、財政負担としてもまた約百億円をふやす、こういうことをやっておるわけなんでございまして、決して等閑に付しておるわけではございません。なお、将来におきましても中小企業は非常に大事だということを考えまして、今後中小工業というものの実態を把握するということが非常に私は大事だと、こう存じまして、今度の経済五カ年計画におきましても、これは企業別というものの実態と、それから形態別、どういう形態だということと、それからもう一つは何と申しましょうか、大きさ、つまり規模別、この三点からよく掘り下げて検討しょうということを今命じてやっておるようなわけでございます。
  206. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 先ほど来まあいろいろ予算についてお話がありましたけれども、金融関係等は従来からもすでにやっておることでありまするし、設備の近代化その他の予算というものも、これも大したものではないし、要するに画期的な裏づけ政策というものがもう何らないと言ってもいい状態だと考えるのであります。かような行き方でゆきますと、ほんとうに経済五カ年計画の完全雇用というものができるかどうかということも非常に疑問でありまして、かようなことではほとんど経済五カ年計画をせっかく立案せられましたけれども、完全雇用の面からだけでも行き詰ってくるのではないかというふうに考えるのであります。従ってこの際伺いたいと思いますのは、完全雇用の見地から見まして、この中小企業対策というものの画期的な行き方をこの際するということのためには、一つの大きな調査会を設置いたしまして、そうしてその調査会において中小企業を完全雇用、失業問題、人口問題の見地からどういうふうにやってゆくかということを徹底的に研究し、その結果一つのはっきりした国策を樹立する必要があるのじゃないかというふうに考えるのでありますが、その点経済企画庁長官の御意見はいかがでありましょうか、並びにあと通産政務次官の御見解を伺いたいと思うのであります。
  207. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。果して大規模の調査会が必要であるかどうかということは、私はまだ決定いたしておりませんが、さしずめの問題といたしまして、その実態を把握するということが非常に大事なことだと存じまして、その方にまあ実際仕事に着手いたしておりますが、だんだん検討いたしました結果、やはり重要性というものを考えたときには、ただいまの豊田さんの御提案調査会を作るようなことも一つの案だと私は存じております。よく検討いたしたいと存じます。
  208. 川野芳滿

    政府委員川野芳満君) 豊田委員の質問にお答え申し上げます。ただいまも高碕長官から御答弁があったようでございまするが、中小企業対策にはその実態を把握する、こういうことが最も必要であろうかと考えます。ゆえに通産省といたしましては、ただいま豊田さんが申されましたように、会を作りたい、こういうような考えのもとに、実は今度の予算編成時におきましても予算折衝をいたしたのであります。われわれの希望するだけの予算がなく、四百二十三万円の予算が実はもらえましたので、その予算を中心として基礎的部門に調査を進めたい、こういうことで今計画を進めておるような次第であります。
  209. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 次に伺いたいと思いますのは、財政資金対民間収支の関係でありますが、これを見ますると、昭和三十年度の政府資金の散超見込みは大体二千八百億になっておるのでありますが、三十一年度の散超見込みは九百八十億、それで大体三分の一近くに減少しておるという、また減少するという見込みであります。三十九年度の千九百億に比べましても、大体半分ぐらいになるという見込みでありますが、これは特別に少く見積られておるのであるならば格別でありまするけれども、もしもこの通りにいくということになりますると、金融は逼迫して参りまして、かえって緩和しつつあった金融が様子が変る、そうして金利低下の傾向を阻害するのじゃないかというふうに考えられる面があろうかと思うのでありますが、この点について大蔵大臣の御見解を伺いたいと思うのであります。
  210. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 仰せのように、三十一年度の財政資金の散超は千億弱でありまして、今の見込みではさようになって知ります。三十年度は仰せのように約二千八百億、相当開きがあるのでありますが、御承知のように三十年度はそういう関係で金が余りまして、日本銀行に対しまして約二千億以上返金をいたしておる状況でありますが、今日日本銀行に返金するものはまあないと申してよろしい状況であります。従いましてその関係から、単にみましても資金の需給は三十年度に比べてそんなに窮屈になるわけではないのでありまして、私の考えではむしろやはり三十一年度も金融は依然として緩慢が続きまして、まあときどきやはり日本銀行はマーケット・オペレーションというようなことを念頭に入れていくという必要があろうかと、かように今考えておるわけであります。  なお金利の点については、私はそういうふうな資金需給関係、三十年度におけるような急激な金利の低下は、むしろ三十一年度には望みがたいのでありまして、また、さようにいくわけでもありませんし、やはり三十一年度も金利は下る傾向、なお相当下るであろう、かように考えております。
  211. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 金利が続いて下っていくということを前提にいたしますると、金融債の金利引き下げ、これもさらに考えなければならぬ問題かと思うのでありますが、大体金融債の金利は何分ぐらいにあるべきものかというふうにお考えになり、また、それを実現するためには、今後どういう手をお打ちになろうというふうにお考えになっておるのでありましょうか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  212. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) ただいまのところ、金融債の金利は御承知のように昨年暮に約六厘弱、五厘八毛でございましたか、その程度下げまして、そうしてこの応募者利回りが七分九厘程度になっておると思っております。今後どういうふうにいきますか、なお今この引き下げについて関係者とも、同時にまた金融市場ともにらみ合せてやっておりますが、まあ私は今の、先ほど申しました七分、年にして七分九厘一毛八糸ですが、あるいはは数字が違っておるかもしれませんが、今のところ応募者利回りが七分九厘一毛八糸、それが年七分三、三厘とかいうふうなところに、さらに近いうちにまた下りはしまいか、あるいは下げ得るのではなかろうかというような見当をつけております。私の考えではやはり金融債としては将来において七分台を割りまして、六分台に持っていきたい、かように考えております。
  213. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 私も六分台に持っていかなければいかぬのじゃないかというふうに考えておったのでありますが、ただいま大蔵大臣六分台に持っていこうという御言明でありまして、まことにけっこうだと思うのであります。ぜひ、できるだけ早くその線に持っていかれますように御努力をお願いいたしたいと思うのであります。  次の同順といたしまして、例の一万円札、五千円札の問題でありますが、これはまあインフレ気分を誘発するからやらぬ方がいい、見送る方がいいという説もありまするし、またこういう安定期に入ったときにやっといた方がいいという説もあるようでありまして、見方には両説あろうかと思うのでありますが、大蔵大臣としては一万円札、五千円札に対してどういうお考えを現にお持ちになっておりましょうか。また、もしおやりになるのでしたら、いつごろおやりになるのでありましょうかという点について、お伺いしておきたいと思います。
  214. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 今千円というものを戦前の貨幣価値に大よそ換算してみると、三円そこそこというものにしかなりませんようでございます。そういうようなことを考えてみた場合に、私はやはり今後五千円ないし一万円のお札は出すべきだという考えを持っております。ただ、その出す時期だけは慎重にしなければならない。これは主として心理的な関係であるのであります。実情では一万円札が当然出ていいと考えております。まあ心理的というのは、やはり物価というようなものについてももう少し国民が安定感を持ち、これならというような時期を待ちたいと思います。しかしそういうときも、私の考えではあまり遠くない時期を期待いたしたい。
  215. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 今の問題に関係があることだと考えるのでありますが、株式額面を五千円に引き上げるということにつきまして、かねがね大蔵当局でも御研究になっておったようでありますが、その後一向はっきりいたさぬようなふうに私ども見受けるのでありますが、これをおやりになるおつもりでありましょうか、あるいは中止なさったのでありましょうか、そこをお伺いいたしたい。
  216. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 株の額面についても、今ほど申し上げました通貨の額面とまあ似たような考え方であります。私はやはり今日一株五十円というのはやはり額面として小さ過ぎると考えております。ただしかし、今日株式等の新規株式の発行と、これがまあ従来の株式なんかと抱き合せ等で相当盛んに発行を見ておるのであります。またこういうふうな状況というようなことも考慮して適当な時期に考えていきたい。その額面も五千円がいいのか五百円がいいのか、こういう点についてはもう少し検討を加えてみたい、かように考えております。
  217. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 最後に総理にお尋ねをすることになるのかと思いますが、文化勲章の問題であります。御承知のように言うまでもなく勲章は屋号とか家の紋みたいなものでありまして、あまりたびたび変えないところに値打ちが出てくると思うのであります。ことに、この文化勲章は終戦後制定せられたものでありまして、ようやくなじんできたところでありますが、政府案ではこれを廃止するようになっており、ごく最近は自民党の方では存続するという意見になったとかということでありますが、そういう情勢を織り込んで、この際政府としてはいかにお考えになっておるでありましょうか、この点を伺いたいと思うのであります。
  218. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 栄典制度審議会からの答申によりますと、文化勲章を廃止した方がいいという答申がきておりますけれども、政府としてはまだ決定しておりません。
  219. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 それに関連いたしまして、紺綬褒章とか藍綬褒章、これにつきましても廃止するとかしないとかいろいろ説もあるようでありますが、これも戦前戦後を通じて民間の純然たる功労者に交付せられておったものでありまして、戦前たると戦後たると事情は変らないと思うのでります。そういう点から見ますると、これも存続することが至当ではないかというふうに考えるのでありますが、この点はどういうふうになっておるのでありましょうか。
  220. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) その方については、豊田さんのおっしゃる通り政府としては存続するつもりでおるのであります。
  221. 千田正

    ○千田正君 きわめて短い時間でありますので、簡単に、特に総理大臣にお願い申し上げたいのは、今朝本会議におきましても質問してありますので、お答えなかった点につけ加えましてお尋ねをいたします。それは、日ソ交渉について一応ただいまのところは無期延期になっておる。これに対しましてロンドンにおいて御承知の松本全権並びにきのうの新聞発表におきまして総理大臣がおっしゃっておることは、いわゆる情勢待ち。とにかく当分の間この調子では情勢を待たなきゃいかぬという意味のことを申されております。情勢待ちと申しましても分解するとすればいろいろな点があるのじゃないか。たとえば日本の国内の情勢の変化ということも考えられるし、ソ連内部の何かの政策転換ということも考られるし、あるいはアメリカ、イギリス、西欧諸国のいわゆる国際情勢の転換ということも考えられるのだが、総理大臣のお考えになっておる情勢待ちということは、一体どの点を考えておられるのであるか。この点をお伺いしたいと思うのであります。
  222. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は松本全権に聞いてみなければまだわからない点がずいぶんたくさんありますので、ときどき手紙や通信は来ておりますけれども、その通信を読んでみましても疑問の点がありまして、それらの点を明らかにしなければ、私はまだ態度を言うわけに参りません。
  223. 千田正

    ○千田正君 これはわれわれとしましてももちろん総理大臣を初めとして政府の方々も考えておるところでしょうが、じんぜんとして待っておるということはいろいろな面に支障をきたすことでありますから、松本全権が帰られたならば、直ちに自後の処置をやっていただきたいということは強く要望しておきます。  次に、私はこれは総理大臣及び外務大臣にお伺いいたすのでありますが、御承知の通りけさも申し上げましたが、残念ながら敗戦以来日本の国土が狭まって、日本の活動するところはどうしても海以外にないという現況において、被占領時代は別としましても、日本が旧主独立した今日においては、堂々と自主独立権を発揮すべきである。にもかかわらず、李承晩ラインというような問題があって、あそこにも不法なるところのラインが引かれておる。さらに日、米、カナダ三国条約において、漁業の操業に対しまして、資源確保という意味において、百七十度以東においても操業ができない。最近においてはマーシャル群島周辺におけるところのいわゆるアメリカ側の原水爆実験という名目のもとに、これまた一定の期間の公海の自由の操業が制限されておる。さらにこのたびソ連との問題において、これまた一方の側からの言う勝手な声明によって、ここにもまた制限される。こうなるというと、日本の漁業生産というものは、きわめて限られた小範囲にしか漁業ができない。ただ一つ残されておるのは、昨年日本の民間代表が参りまして中共の間に取りきめてきましたところの、いわゆる民間協定による、中国との間に横たわる昔の支那海、この支那海においてようやく操業をやっておる。最近の報告によりまするというと、大体過去一年において三十万トンの漁獲があり、価格にして百三十億、これまた膨大なるところの漁獲であります。ところが、これも民間協定でありますので、六月の十二日をもって一応のけりがつく。そうするというと、ここもあるいはまた一方的な中共側の宣言によって閉ざされるのではないかという危惧の念をわれわれば持たざるを得ない。そこで、こうした問題の解決に、現在中共との間の民間協定が存続している今日において、今後この問題をどう考えておられるのか、来年も続いてやる、やるにしても政府がある程度これを軌道に乗してやらなかったならば、ここにもまた制限をされるおそれが出てくるのではないかと私は考えまするが、この点については、今狭められた日本の領土、さらに海以外にしか日本民族の発展の道がない今日において、その海さえも各国から制限される今日、ここに一つの突破口を見つけて日本の漁業の発展に寄与する方法考えなければならないと私は思いますが、その観点に立っていかなる御所信を持っておられるか、お伺いをしたいと思うのであります。
  224. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 私からお答えいたします。公海の自由の原則から、公海における漁業の問題が日本にとって重要な問題であることは、全くその通りでございます。そこで、その故障を排するために、関係国と交渉をいたさなければならぬ、また、国際的にこれを解決すべく努力しなければならぬということに相なっておって、その方向に進んでおるわけでございますが、今の御指摘の中共との関係におきまして、民間協定が期限が切れる。これは民間協定としては、非常に有意義な協定であったと思うのでございます。そこで、御承知の通りに、中共との関係は政治的にいろいろ重大な故障がございますから、私はこの民間協定によって、やっぱりことしも解決をして進んでいくことがいいと考えます。その方向に向って関係民間業者のお骨折りを願いたいと、こう考えておる次第でございます。その点は水産庁からも関係業者の方に十分連絡いたしておるように承知をいたしております。
  225. 千田正

    ○千田正君 外務大臣に重ねてお伺いいたしますが、先般ホワイト・ハウスの当局が十七日、マグロの塩づけや、あるいはカン詰の輸入関税を引き上げるということを公示しております。マグロの塩づけ、カン詰の輸入量が前年度の米国内各種マグロカン詰の生産総量の二〇%をこした場合には、米国は現在の関税率の一三・五%を、倍額の二五%まで引き上げる、これが四月の十四日から発効する今年度はとりあえず四月十五日以後十二月の末までに輸入量が五五年中の米国内生産の一五%をこえた場合に、右規定が適用されることになっておる。こういうふうにホワイト・ハウス当局においてはマグロの塩づけあるいはカン詰類に対する関税の引き上げを公告をしてまするが、この問題は非常に日本の輸出カン詰というものに対して影響をしてくるものと私は考えます。同時に、現在ジエネバに行われておりますところのガットの問題とこの問題との関連はどういうふうになっておるか、また、どうしたならばこうした問題を日本の輸出カン詰に対して有効な方向に話し合いがつけられるか、この点につきまして外務大臣として何か御所信がございますならは、お答えを願いたいと思います。
  226. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) この点は大部分何と申しますか、専門的と申しますか、そういう条約関係は複雑になります。私の承知しておる限りにおいて御答弁を申し上げます。米国が今申された処置をとったということは、事実のようでございます。それはしかし。今までの約束もしくは条約に反した処置ではございません。それはガット交渉のときに米国の保留したところによってやったものでありまして、今言われました通りに、塩水づけのマグロカン詰に対する関税を引き下げる譲許率が、米国のマグロカン詰生産量の三〇%をこえるまでは一二・五%となっておる、今申されましたその通りでございます。それをこえた場合の税率については、これはアメリカとしてもそれをこえた場合においては引き上げをするという留保がある、これに基いてこの規定を公布したわけでございます。これでそれならば二〇%をこえた場合はということでございますので、現在の状況はそれをこえないそうでございます。米国もその点を見越して、日本において実害はないと思う、しかしアイスランドの関係で、アイスランドに対する譲許をやったので、その関係で当業者の関係からそういうことをしなければならなかったんだという説明がございました。その説明はつまり日本が無制限に均霑するということを防ごうというためにその留保を適用する、こういうことで除かれておるのだと申します。しかし実際は二〇%以上の輸入量はないのであるから、日本も実害をこうむらぬから、そういう場合に国内の問題として取り計らうべきである、こういう説明でございます。またそういうことも確かでございますからそれで御承知を願いたいと思います。それから米国側の方はこのマグロがしょっちゅう問題になりますが、こういうマグロの輸入の問題について、そのほかに特にこの日本に対して不利益な、日本品に対して不利益な規定をこしらえるというような考え方は、また政策は少しもないということをわが方に繰り返して申しておりますから、大体私はそういう状況ではないかと考えております。事態はいつも注意をしておるわけでございます。
  227. 千田正

    ○千田正君 実はこのマグロのカン請願はアメリカの関税は四五%かけておるのでありまして、かって私どもがアメリカの水産業を視察に行った当時は、日本のマグロの冷凍あるいはカン詰類に対して国内産業を保護するための排斥運動が起きていた。当時私自身がその渦中に弁明すべく行ったことがあります。それで非常に高い関税をかけられておる。私はこの点を前のいわゆる吉田内閣のときの岡崎外務大臣に、当時ビキニの問題が起きたときに、賠償もさることながら、それと付随しまして日本の漁民の圧迫されておる今日、こうした高関税に対しては何らかの日本の意思を伝えて緩和する方法をすべきである、当時の岡崎外務大臣ばまさにその通りだから、極力交渉するということでそのままになってしまいましたけれども、私はやはり四五%のほかに、さらにこういう関税を課せられるというと、日本の輸出マグロというものはおそらく閉ざされるのじゃないか、そういう相愛を持っておりますので、この点は十分御注意を願って将来の日本の輸出の発展のためにお考えを願いたい、かように思う次第であります。  最後に、私は農林大臣と外務大臣にお考えをはっきりしていただきたいと思いますのは、けさほど私のお尋ね申し上げたのに対しまして、河野農林大臣としましては、まことに力強いお答えをされております。ということはソ連側は勝手にそういう制限区域を作って漁獲の制限をするということはけしからぬ、私もそう思っておるのは、けさも言いました通り、戦前における五カ年の平均の漁獲高は一億五千百五十万尾をこしておりますが、昨年は大体一億万、そうしますというと乱獲にはなっていないと思う。大体六〇%ぐらいしか取っていないのじゃないかと、われわれはそういう見当なのにもかかわらず、ソ連側といたしましては日本側は乱獲しておるのだ、こういう名目のもとに今度の二千五百万尾に一極の漁獲の制限をする、どうもこの問題は私どもは納得いきませんで、先ほども外務大臣にお尋ねしておりますのは、総理大臣にもお伺いをしましたけれども、どうもだんだんだんだん日本の漁業が操業する地域が狭められているのではないか。しかも盛漁期においてこうしたふうに狭められていくということは、日本の漁業にとってはまことに希望を失われる。これに対してどういうふうに考えられるかという点については、農林大臣は従来の考え通り、本年の予定通り船団及び独航船等を出漁させるというお考えでございますかどうか、この点をお伺いしたいと思うのであります。もし、出漁するという場合におきましては、ソ連側がこの間言った通りであるとするならば、当然あの制限区域内まで行かなければならないので、制限区域内において紛争をきたすおそれがある。その紛争がきたされるような場合において、一体外務大臣はその前にどういう手を打たれるかということを、この際伺っておかないというと、閣内において農林大臣は強くその立場の上からいって漁業をやろう、操業をやろうという片っ方においては、日ソ交渉は停頓状態において一方的宣言によって、あるいは拿捕あるいは抑留という、われわれが望まない事態が生ずるという場合における外務大臣の今日からの所信を聞いておかぬというと、幾ら農林大臣ががんばって船を出して漁獲をやるのだと言っても、そこで紛争を起して無幸の漁民が抑留され、あるいは没収され、そうして再び北洋について漁業というものが停頓するというようなことがあったならば、私は日本のために悲しまざるを得ないのでありまして、この点を農林大臣が果して所定の通り本年も出漁するのか、出漁した場合に起されるだろう紛争に対しては、いかなる方針をもって臨まれるか、こちらは外務大臣にお伺いをしておきたいと思うのであります。
  228. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) この問題は御承知の通りにソ連がモスクワにおいて北洋方面における日本漁業の漁獲の乱獲であるというようなことを言っておることは御承知の通り、問題にされた通りでありますが、そこでそれがどういう意図に出たとしても、これは日本に重要な利害関係を及ぼすわけでございますから、今日日ソ交渉でロンドンで交渉を続けておりますから、さっそくそれをロンドンに正確にまた詳細に知らせまして、そうして先方の意向を、ソ連側の意向を十分突きとめたのでございます。これは日ソ交渉の中に漁業問題の一項がございますから、それに関連しておるわけでございます。そこでソ連の方は、マリク全権の説明によれば、ソ連は公海において紛争を起すような手段をとるという意向であれをやったんじゃないと繰り返して説明がございました。そうしてその説明に基いて、それを確認して漁業条約の交渉を進めたようなわけでございます。しかるに二十日の交渉以後に、またソ連の方でこの点について発表がございました。それについて直ちに松本全権はマリク全権に対して、公海における漁業の安全を確保するために折衝をし、日本の主張を十分申し述べております。マリク全権は、自分はこの問題について特に話しする権限はないけれども、十分モスクワに取り次ごうということだけば言っております。そういうわけでございますから、この問題については、将来公海の漁獲について問題が起らぬとは決して言えません。言えませんけれども、さようにしてソ連との間に話のつく限りこれは交渉によってわが方の立場も申していきたい、こういう考え方を持って進んでおるわけでございます。公海の漁獲の自由ということの立場は、あくまでもこれはこちらの立場をとって進みたい、こういう方針であることは農林大臣の本会議の御説明通りでございます。  以上でございます。
  229. 河野一郎

    ○国務大臣(河野一郎君) 今外務大臣からお答えがありましたから、大体私もそれと同じでございますが、ただこの機会に明らかにいたしておきたいと思いますことは、すでにサケ、マスにつきましては、御承知の通り、日米加三国の間に話し合いをいたしまして、この魚族の保存その他いろいろの問題について打合せをやっておるわけであります。三国間でそういうふうに十分話し合いをしてやっておることに対して、ソ連が突如としてああいうことを言い出したということは、これを他の御承知のオットセイの関係について見ますれば、日米加ソ連四カ国でワシントンですでにオットセイの問題については話し合いをしておる。オットセイの問題について四カ国で話し合いをするならば、当然サケマスについてもこの三国の話し合いの中に自分も入って、ひとしくこの北洋の魚族保存のために発言をしてしかるべきだと私は思うのであります。普通ならばそういう態度をとってくることが、今のオットセイの関係から見て当然だと思う。それを突如としてああいうことを言い出したゆえんのものは、どうも普通の関係では想像できない。これが日ソ交渉と関係があるかないか、どういうふうな情勢かというようなことは、松本全権が幸いひとまず帰って参りますから、それから十分に事情等について伺いまして、その上で今後われわれがどういうふうにしていくか、どういうふうな態度をとるかということは検討すべき問題であると、こう私は考えておるのであります。今直ちにああいうふうになったから、ことしの出漁はどうする、こうするということを今きめることは少し早計であって、われわれとしては既定の方針でいく、ソ連の言うことが少し間違ってはおらぬか、あまり一方的な宣言ではないかということについては、あくまでもソ連の一つ十分な考慮を促すことが妥当じゃないかというふうに私は外務当局にもお願いいたしたい、こう考えておるわけでございます。ただ、先ほども申し上げました通りに、最近の世界的な傾向として、例のアメリカと南米との間に起っておりまする問題にいたしましても、まあ非常に困った問題でございまして、これらは世界全体の国の間に公海の漁業についての一つの方向が話し合われなければならぬときがきているのではないか、そういうことの機運を世界の世論に訴えてわれわれとしては解決すべきじゃなかろうかというふうにも考えておるのでございまして、まあ相当にめんどうな問題とは考えますけれども、たまたま今申すような、ここだけの問題ではありませんで李承晩ラインの問題、先ほど千田さんのお話しの通りに日支聞の問題、これは幸いうの各地にありまする公海の漁業の問題がこういう際に全部解決するようにいけば一番けっこうだと、こう労えておるわけであります。
  230. 千田正

    ○千田正君 最後に一点だけ。農林大臣のお答えも、それから外務大臣のお答えも私はよくわかります。ところが最近こういうことを言っておるのですね。日米、カナダの条約、これはマッカーサー・ラインを撤去した後に、北洋のサケマスの魚族の保護のためにやろうじゃないか、まあ国際会議をやる、日米、カナダ、アメリカでさえもそういうラインを引いたのならば、ソ連がそういうラインにおいて日本側との魚族保護を求めるのは当りまえじゃないか、しかも交戦国としての戦争終局の宣言はまだやっておらないのだ、おれたちがそういうことをやるのは、何も条約国でも何でもないのだから、やることにおいて何らはばかることはないんじゃないか、こういうふうにソ連側が考えているということを放送する人もあります。非常にその点が、われわれがこれから何かそこに戦争が起るのじゃないという心配をする種でありまして、アメリカやあるいはカナダとの間には、今までの条約その他の協定もありますけれども、片一方には何もない、しかも戦争終結の宣言さえもしておらない。相変らず戦争継続の状態において一方的な放言をやられるということは、これは相当危険なことであるということをわれわれは考えるんですね。それだけに私は今度の漁業出漁に対しましては、慎重な態度をもって臨んでいただきたい。この点なんですがこの点についても何か御感想があるならばこの際承わっておきたいと思います。
  231. 河野一郎

    ○国務大臣(河野一郎君) 今のようなお話しもありますが、また、全然逆な場合の話もあるわけであります。両国間に共同で漁業をやろうじゃないかという申し入れがあったとかなかったとかいう話もあるわけでございまして、従来ソ連側の態度は必ずしも私は漁業に関する限りそういうことじゃなかった、しかしひとたび領土問題が膠着いたしますると、今度は今のような話が出てくるということで、この公海における漁業の問題と日ソの交渉の問題と混淆して、あたかも抑留者を帰す、帰さぬの問題と両国の国交の問題と一緒に扱おうというふうなことになろうとするきらいがありますることは、はなはだ私は遺憾に思うものでございまして、そういうことなしに、あくまでも漁業の問題は漁業の問題、しかも公海における漁業でございますから、ソ連領に入っての漁業じゃございませんから、これは公海の漁業として一つわれわれの方としても、ソ連が十二海里あるいは十七海里と言えば、それに入って紛争を起すというような問題じゃないのでございますから、どうか一つこういうことについてはあくまでも公海漁業の立場においてやりたい、こういうふうに思うのでございまして、一か日ソ間の関係については外務大臣からお話があると思いますが、私は今のようなことをわが漁民に対してソ連が圧迫的な態度に出るということは、はなはだ遺憾のきわみでございまして、ぜひ一つ公海の漁業なら公海の漁業としてあくまでも世界共通の漁場としてやるようにソ連側において考えてもらいたいということを強く熱望するものでございます。
  232. 千田正

    ○千田正君 外務大臣ありませんか。今のに対して御感想は……。
  233. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) ありません。
  234. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 最初に、行管長官にその後の行政改革の成り行きをお伺いしたいと思います。
  235. 河野一郎

    ○国務大臣(河野一郎君) 行政改革の問題につきましては、その後政府の内部におきましては、法律案の整備に今移っているわけであります。いろいろ各方面に関連がございますので、関係も非常に煩瑣でございますので、それをせっかく法制局で整備中でございます。かたがた与党との関係を調整をして、そうして最後の結論を出したい、来週早々に結論を得たいと、こういうっもりで努力いたしているわけであります。
  236. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 総理は先般数名の主治医の健康診断を受けられたとのことでありますが、その結果と、これに対する見解をまず伺いたい。
  237. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 医者に、集めたわけではありませんけれども、随時に二、三の医者に見てもらいまして、まだやっていってもいいかどうか聞いてみました。現在自分の健康が少しでも一悪くなっているのならば、なく教えてもらいたいと言ったんですが、少しも悪くはなっていないということを言われましたので、まだやっているわけでございます。
  238. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 四月に総裁に公選されると存じますが、そのとき副総裁をお置きになりますか。
  239. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 総裁を受けるか……。
  240. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 いやお受けになると思うのですが、そのとき副総裁をお置きになりますか。
  241. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私はどういうことになるか存じませんが、総裁になるのか、副総裁を置くのか少しもまだ交渉がございませんから存じません。
  242. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 むろん総裁になられるのだと私は思うのですが、おなりになった場合に、副総裁をお置きになるかどうか承わりたいと思います。
  243. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は副総裁があった方が都合がいいように思うのですけれども、どうなるかわかりません。
  244. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 これは仮定の問題になるかもしれませんが、願わぬことだが、何かの原因で総理がその職をのかれるようなときがありまして、後任でもめるというようなことは、公人の用意として非常に責任を尽したものではないと、こう私は思うので、民間の会社でもよくあることと思うのですが……。そこで人格がりっぱで経済や外交に明るい人ならばけっこう務まるわけですから、やはり副総裁をお置きになる方がいいのだとこう思うのですが、重ねて伺いたい。
  245. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 党内の大勢にまかすよりほかに道がございません。
  246. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に小選挙区のことでございますが、比例代表を理想と言われたのですが、死票の多くなる小選挙区制に賛成される理由はどこにございますか。
  247. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 二大政党の場合においては小選挙区になっていくのがほとんど原則だものですから、それで私は昔から小選挙区の方が金もかからないし、選挙も公明になるというような考え方を持っておりました。それですから二大政党になった今日は、小選挙区の方がいいと思っております。(「総理は比例代表がいいとおっしゃったのです」と呼ぶ者あり)比例代表は……(「私語をやっていけません」と呼ぶ者あり)私語をやっていけなければよします。
  248. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 やって下さい。
  249. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) いや、よします。
  250. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 比例代表の話が出ましたから、その続きを一つ承わりたいと思います。
  251. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 比例代表というのは、まあ死票がなくなるという点から考えれば非常にいいと思う。けれども、比例代表というのは小党分立をまあいざなうような制度だろうと思いますし、また、計算もなかなかめんどうだし、党の専制ということもひどくなると思います、順位をきめる関係から……。そこで比例代表がいいとのみは言えないのです。比例代表にもそれ相応の欠点があるものですから、そこがむずかしいところです。
  252. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今回の選挙法の改正では、大政党が非常に有利になっております。私はやはり少数意見の尊重論者である総理としては、こういう少数を抹殺するような選挙法の改正はよくないと、かように考えるのですが、いかがでしょうか。
  253. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は少数党を抹殺する案ではないと思います。これがかえって二大政党になったときにも少数党のあった方が二つの党派の近似性ができるし、二つの党派が対抗してくるものであると思います。決して一方のみが常に多数を取るということは、小選挙区になれば実現いたしませんと私は思います。その結果はよほど違うのです。そういうことは絶対ないですよ。
  254. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 政府提案の小選挙区制の区制をよく御検討になりましたか。
  255. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 区制ですか。
  256. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 区割り。
  257. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) それは党において検討したので、委員会と党において研究したのであります。
  258. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 案にはむろん責任をお持ちになるのですか。
  259. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) むろん持ちます、責任は。
  260. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私がちょっと調べますと、市をかりに別にいたしまして郡を四つに割ったところがあります。三つに割ったものが十二もございます。二つに割ったものが九十二もあるのです。一体この区制割りをいかように総理は御説明になるのですか。
  261. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) どうも私は理由がなくしてそういうことはしまいと思いますけれども、これは太田自治庁長官から聞いていただきたいと思います。
  262. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 また、二人区が二十もあるのです。これは総理は不穏当とお考えにならんでしょうか。郡を四つにも、三つにも、二つにも割ったのが合計して百からあるというようなことは、どうも納得ができないのですが、正しいとお考えになるのでしょうか。
  263. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) どういう理由で分けたか、幾つあるかも私は知りませんが、とにかく原さんが小選挙区制をとったときには、もっとよけいに二人区があったようです。
  264. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 郡をそうめちゃくちゃに割ったことは、私はまだ聞いたことはないのです。どうもこれはめちゃな話だと思いますが、それ以上は総理は御存じないようですから、次に移りますが、選挙制度調査会の矢部さんは非常に憤慨しておられるのですが、一体調査会の意見を尊重しないなら、なぜ設けたかということになるのですが、その点はいかがですか。
  265. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 調査会の意見は相当に尊重してあるはずです。
  266. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 矢部委員長は完全に自分たちは党略のために利用されたということを新聞で言っておられますから、これは一つよく御検討になるがよいと思います。私は最初から小選挙区には反対なんですけれども、世論は初めはこれを支持しておったようでありますが、区割り発表後はがぜん世論は反対に変ったのですが、この事実をお認めになりますか。
  267. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 新聞紙上においては反対は多かったように思います。よく内容説明していけば、理解する人もあるだろうと思います。
  268. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 小選挙区が通ったら解散をされますか。また、いつ総選挙をやるようになりますか。
  269. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) そういう点については今日まだ考えは持っておりません。
  270. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は憲法改正論者でありますが、こんな乱暴な党略的な小選挙区法が提出されましたために、憲法改正そのものまでが非常に理不尽な事柄のように国民に印象づけたように思うのでありますが、その点いかがお考えになりますか。
  271. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 憲法改正関係して小選挙区制を採用したわけではないのです。
  272. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 ないのでありますけれども、それがために憲法改正は迷惑をこうむっているのを、どう救済されるのかということを伺っているのです。
  273. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) だんだんとわれわれの真意が浸透してくれば、誤解もだんだんなくなるものと思います。
  274. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は総理は憲法改正という歴史的な大きな任務をお持ちになっていると思います。ところがこの党略的な小選挙区制の巻き添えを食っては実につまらんことになると思うのです。改正の時期にもまだ間があるのに、なぜ無理してこれを出す必要があるのか、その理由を一つ承わってみたいと思います。
  275. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) この小選挙区制を採用したのは憲法改正とは全く別に、党において二大政党の際には小選挙区がいいとして採用したのであります。憲法改正の方は別に迷惑を受けるも、受けないも、そういう関係がないということです。
  276. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 最後に私は無理をして小選挙区制を強行しようとする与党執行部の真意は、一体幹部の統制力を強化して後継総裁地固めの陰謀で、総理の健康を考えるときには実にこれは残酷なやり方であるとひそかに考えております。これは一日もすみやかに総理が副総裁をお設けになりまして、憲法反対とか、自衛隊は憲法に合致しないとか、憲法改正調査会はどうとかいったような、自分の思うままの本心をお話しになると、すぐ問題が起るような総理の地位をおのきになって、自由な身になって、総選挙の前のようなあの国民の人気を沸かしたあの朗らかさをもって、憲法改正の要を国民に訴えるのが、晩節を全うし、国家に尽すゆえんだと思うのです。そこで党略的な小選挙区制と心中するがごとき、愚の骨頂でありますから、総理は野に下って憲法改正のために挺身するお考えがないかどうか、これを伺いまして、私の質問を終ります。
  277. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私はそう長い間やってゆくつもりはございません。
  278. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十一分散会