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1956-03-16 第24回国会 参議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月十六日(金曜日)    午前十時五十四分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     西郷吉之助君     理事           池田宇右衞門君            堀  末治君            三浦 義男君            安井  謙君            秋山 長造君            吉田 法晴君            中山 福藏君    委員            青木 一男君            石坂 豊一君            井上 清一君            川村 松助君            木内 四郎君            西岡 ハル君            平林 太一君            藤野 繁雄君            吉田 萬次君            亀田 得治君            戸叶  武君            羽生 三七君            湯山  勇君            加藤 正人君            小林 政夫君            田村 文吉君            館  哲二君            千田  正君   国務大臣    外 務 大 臣 重光  葵君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 清瀬 一郎君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  石橋 湛山君    運 輸 大 臣 吉野 信次君    郵 政 大 臣 村上  勇君    国 務 大 臣 正力松太郎君    国 務 大 臣 高碕達之助君    国 務 大 臣 船田  中君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    総理府原子力局    長       佐々木義武君    防衛政務次官  永山 忠則君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 林  一夫君    防衛庁経理局長 北島 武雄君    防衛庁装備局長 久保 龜夫君    経済企画庁調整    部長      小山 雄二君    経済企画庁計画    部長      大来佐武郎君    外務事務官    (公使)    木村四郎七君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主計局次    長       原  純夫君    文部省大学学術    局長      稲田 清助君    農林政務次官  大石 武一君    農林大臣官房長 谷垣 專一君    農林省農地局長 小倉 武一君    通商産業政務次    官       川野 芳滿君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君    通商産業省繊維    局長      小室 垣夫君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    日本国有鉄道総    裁       十河 信二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十一年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十一年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十一年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を開会いたします。  前日に引続きまして一般質疑を継続いたします。  御報告申し上げます。委員片柳眞吉君が辞任されまして、加藤正人君が委員に入られました。  昨日小林政夫君の質疑が、農林大臣に対する分が残っておりますので継続いたします。
  3. 小林政夫

    小林政夫君 その前に、主計局長がここで説明いたしました数字に、誤りといってはおかしいのだけれども、こちらの質問の趣旨と答弁の方とが食い違って、数字的に違うと思いますから、もう一ぺん説明し直してもらいたい。
  4. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 目下軍人恩給につきまして各関係方面からいろいろな要請がございますが、それらの要請を、要請通りに満たすとすれば、どの程度財政負担になるか、そういう御質問でございます。いろいろな事項がございますが、まず第一には、第二十二国会で通過いたしました公務死の範囲の拡大措置、これは戦地におきまして、疾病によってなくなりました場合には、これを戦死とみなす、公務死とみなすということであったのでございますが、これを戦地だけでなく、内地、満州、樺太、朝鮮、台湾等にも拡大せよという要請がございます。この要請を満たしますと、どの程度金額になりますか。これは対象となる人員がはっきりいたしませんのでございますが、かりに五万人とすれば二十億円、十万人といたしますれば四十億円、五十万人ということにいたしますと二百億円というようなことに相なります。対象人員がはっきりいたしませんので、はっきりしたことを申し上げかねる次第でございます。  それから第二は、増加恩給、それから傷病年金年額引き上げよという要請がございます。軍人恩給基礎になる仮定俸給ベース引き上げが昨年国会で行われたわけでございますが、その際増加恩給傷病年金年額は据え置かれております。  それをも引き上げよという要請でございますが、これは引き上げ程度がどの程度ということは、まだ具体的に言われておりませんが、かりに平均一割上げるということになりますと約五億円、二割ということになりますと約十億円という金額に相なります。  それから三番目は、これは昨日申し上げましたが、文官恩給につきまして二十三年以前の不均衡是正をいたしました。で、政府方針といたしましては、これは軍人恩給には波及させないという方針をとっておるんでございますが、もしこれが波及をいたすというようなことになりますと、その金額は昨日も申し上げました通り、五十億円という計算に相なります。  それから第四は、旧軍人公務扶助料倍率を現在は普通恩給に対しまして二六・五割が兵でございます。それから将官は十七割というところにきめられておる次第でございますが、これを軍人恩給復活の前の倍率、すなわち兵につきましては四十割、これを基礎にいたしまして、まあ上を薄く下を厚くという考え方で各階級別倍率引き上げよという要請がございますが、これは非常に大きな金額になるわけでございまして、単純にこの二六・五割を四十割ということで計算いたしますと、三百十億円も平年度増加を来たすというような大きな金額に相なります。  それからもう一つの点、これは現在軍人恩給は一万二千円ベースでございます。で、昨今退職いたしまする文官につきましては、一万五千円ベースということになっておるわけでございますが、これを今退職する文官なみに改訂せよという要求があるわけでございまして、これを実行するということになりますと百八十一億円という非常にこれまた膨大な金額になるわけでございます。  以上対象が不確定でございますので、合計をきちっと出すわけにもいきませんが、今申し上げました、少い金額多い金額をそのまま合計いたしますと少くても五百七十億円、多ければ七百五十億円というような金額になるわけでございます。  このほか、たとえば加算制度軍人恩給につきまして戦地勤務加算を復活せよという要請、あるいは公職追放等の期間も恩給年限加算せよというような要請、あるいは元満州国官吏につきましても、満州国在勤について恩給制度を創設せよというような要請、いろいろな要請がございますが、これらにつきましては金額計算するというようなこともちょっとむずかしいような状態でございます。  以上が目下いろいろ要請があるその要請をそのまま入れました場合にどのくらい要るかという数字でございます。  第二のお尋ねは毎年の軍人恩給失権率死亡等によって軍人恩給が減額していく金頭はどのくらいあるかというお尋ねでございましたが、失権率は大体平均三%でございます。そういたしますと、大体毎年二十億円ぐらいのものが自然に減っていく、そういう計算に相なるわけでございまして、昨日二十億円未満と申し上げましたが、大体二十億円と御了承いただきたいと存じます。以上でございます。
  5. 小林政夫

    小林政夫君 それでは農林大臣に伺いますが、先般のこの予算委員会において、農林大臣は私にかたく約束をされた。漁業共済制度確立について善処をすると約束された。私は水産庁方面の力が弱いので、ほんとうにそういうことが実現できるか、水産庁長官からも一つ答弁を求める、こういうことに対して河野農林大臣は、もう長官答弁をわずらわすまでもなく、自分が引き受けたら必ずやるのだ、従来は、就任早々であり、むしろ農林方面に力を入れておって、率直に申して水産にはあまり力を入れておらなかった、今後やりますと、こういうことであったのでありますが、その後の模様を見ると、漁業共済というものについてどの程度の努力をされておるか、ここで私に約束された意気込みと、その後の実行とは非常にかけ離れておるのではないか、こういうふうに考えられるので、その後漁業共済について農林当局としてはどのような調査研究をやられたか伺いたいと思います。
  6. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えいたします。お話通りのことでございましたが、実は農業共済制度の方が御承知通りに非常に実行がよろしくございませんで、これもできればすみやかに相当の改正改革をしなければならぬ羽目に追い込まれておりまするわけでございます。そういうことで漁業共済農業共済と比べてさらにまた一面においてはむずかしい面もあることは御承知通りでございます。それこれいたしまして、まず農業共済の方が成績が引き続きうまくいっておれば、続いて漁業共済ということにもなるわけでございますが、だんだん農業共済の方が問題になり、会計検査院等の検査の結果等も勘案いたしまして、できればこの国会農業共済のまず改正案を出したいという心組みで、相当研究を進めておるわけでございます。ところがいろいろな面で困難な問題がございまして、今この国会に出せるか出せぬかということの最終決定をまだ考慮いたしておるようなわけでございまして、農業共済のあり方を十分検討を加えてこれを確立いたしまして、そのあとで実は漁業共済というふうに私は考え方を変えなければならぬようなことになっておりますので、ただいまお話通り国会でお答え申し上げましたことが、そういう方向に変りましてはなはだ相済まぬことでございますが、決してこれを等閑に付しておるわけではないのでございまして、御承知かもしれませんが、調査としては引き続き十分調査しておるわけでございます。
  7. 小林政夫

    小林政夫君 農業共済成績が悪いからこれを確立して、農業共済制度を再検討し、それを新しく編成がえをする、こういうその運用の結果を待って漁業共済もそのように見習ってやっていくというような御答弁でありますが、農業共済漁業共済と、同じ原始産業ではあるけれどもかなり違うと思う。ですからこの農業共済を再検討、再確立をして、しかる後に漁業共済へ手をつけるということでは、これはいつまでたってもできないじゃないか。この前も申し上げましたように、すでに民間団体として全国水産業協同組合共済会等においては政府補助金がなくても自分らにやらせればやる、こういうことまで言っておるわけであります。また漁具等合成繊維等の普及によってかなり往年の漁業と今の漁業経営とはやり方によっては違う面も出て来ておるわけでありまして、そういう点を合せて考えれば、やる気になって研究すれば制度は生める。そういう意味において、今年の予算においてはわずかに三百二十六万四千円の調査費が計上されておるのでありますが、このように三百二十六万円、事務費五十二万円、事業費二百七十四万四千円、このようなことでどういう調査をやられようとしておるのですか。
  8. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 今申し上げたようなことでございまして、今お尋ねの点につきましては、いずれまた長官から詳しく御説明申し上げたいと思います。
  9. 小林政夫

    小林政夫君 それは内容については長官から聞いてもいいのですが、どうも少し情勢が違ったからといって、先ほど来の説明では熱意は失ってないのだけれどもやり方として順序を変えたのだというようなことでありますが、これはこの前の言明とは違うと思う。だから今のお考えをお変えになって、農業共済の方が一応確立してから、しかる後に漁業共済に手をつけるというのではなしに、並行的にやるという御言明はいただけませんか。
  10. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) その点は調査もいたしましてある程度進んでおりますけれども、なお、今お話通りに引き続き調査も十分ではありませんが、やっておるわけでございます。私の申し上げましたのは農業共済改革をし、これを確立して後という意味ではないのでありまして、その方がうまくいっておらないというときに、何といたしましても各方面の御了解を得るのに実は得にくいわけでございます。そういうことで一応農業共済めどをつけませんと、農業共済がこういうふうにふしだらで、こういうふうにだめじゃないか、そこへもっとめんどうな漁業共済なんてとてもということになりますから、一応私としては農業共済の方をできれば今国会と思ったのですが、これはちょっとまだ未熟な点がありまして、私としても決しかねておりますが、この国会でやらなければ次の国会には必ず農業共済はある程度改革改正をすることになる運びになったわけでございます。これが一応案が立ちますれば、その後に引き続いて、むろん漁業共済も放っておるわけではございませんが、まず農業共済の方をやって御了解を得た上で漁業共済をやりたい、こういうことで、決してそれが確立し、めどがついた上でということでなしに、さればと申して今お話のように、漁業共済の方の調査が済んだらその方から先と申し上げたいわけでございますが、その前に始めたものが不手際になっておりますので、まずその方の一応めどをつけませんと、いろいろ大蔵省方面その他漁業以外の方の御了解もなかなか得にくいものでございますから、そういうふうに御答弁申し上げたわけでありまして、決してこれを済まして、この成績を見た上でというようなゆうちょうなことは考えておりません。
  11. 小林政夫

    小林政夫君 今の関係方面、まあ特に大蔵当局からの了解を得るということにおいて、今のような農業共済のふしだらな状態ではむずかしいということでございますが、大体その漁業共済というものをどういう仕組みでやるかということすら確立しておらないのに、おそらく財政負担を伴うであろうから、大蔵当局がなかなか同じ農林省所管として農業共済の現状からいけば、漁業共済を相手にしないだろうというようなことは、今ばく然とお考えになってそうなんであって、やりようによっては必ずしも財政負担を伴わぬでもやれるかもしれない、やれるかやれぬかといういろいろ案立案して、その結果として財政負担が要るのだ、こうなるかならぬかということすらまだ検討段階だと思う。もう現に財政負担をかけぬでもやりますという者もおるのです。そこをあなたの方で御調査なさって、その制度としての立案、これならいけるという案をお立てになることが急務だと思う。その結果として大蔵当局、あるいは関係当局了解を得なければならぬ問題があれば、今のようなお話しはその後の段階だと思う。案自体ができないのでありますか。
  12. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 漁業共済制度を作りますには、どうしても経済的にあまり恵まれないものの加入を求めて、そうしてある程度国家負担をこれに加えましてやっていくのでなければ、所期の目的は達成できぬだろう、またそうしていくことの方がいいんじゃないかというふうに考えておるのでございまして、政府負担をしないで漁業共済をやりましたところが、これはちょっとその率が非常に高くなるか、金持ちだけが得をするような格好になるということで、われわれのねろうところのものはなかなかできぬのじゃなかろうかという気持がしますので、実はやる以上は国家負担をある程度いたしまして、そうして漁業者の安全を、財政的な裏づけをしてやるという方向に持っていかなければならぬだろうというふうに、実は考えておるわけでございますが、そういたしますには、率等についても十分な検討を加え、そして関係方面等でも了解をし、またその他国会関係了解を得られるようなものにいたさなければいかぬじゃなかろうか、こう考えておるのでございますが、なお、よく御指摘の点を十分追究していくことにいたします。
  13. 小林政夫

    小林政夫君 その財政負担が完全に要らないということを言っているのじゃないのですよ。要らなくてもやっていけるという人もあるくらいだから、あなたの方で案を立ててみられなければ、財政負担といっても負担額にもよります。案の立案なくして今から取り越し苦労をしておってもしょうがない。どうせ財政負担が多く伴うのだから、現在、今農業共済で不始末をやっているから控え目にしようということ、その気持が困ると、こういうことを申し上げておるのです。案を立ててみなければどれだけ財政負担が伴う問題かということもわからぬじゃないですか。だから調査々々でお茶を濁さずに、ともかく案はこれならばゆけるという案を早急に立ててもらう、これを約束してもらいたいのです。
  14. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 先ほどお話しのありました通りに、調査予算も、実はわずかではありますが、とってございまして、決してただ調査々々でお茶を濁すという考えはもちろんありません。今お話しのことでございますから、いろいろな案を早急に出せるように努力いたします。
  15. 小林政夫

    小林政夫君 時間がありませんから、また次の機会に譲ります。
  16. 吉田法晴

    吉田法晴君 郵政大臣お急ぎのようですから、郵政大臣にまずお尋ねいたしますが、放送法改正案が出されておるようであります。放送関係者はもちろん、言論関係者全部が反対をいたしております。監督権強化、これは人事権から経営監督、それから同じことですが、予算事業資金計画まで郵政大臣監督する。そうしてNHKを通じて民間放送にも、あるいは番組、素材の提供その他でもって影響を及ぼそう、あるいは政府と申しますか、あるいは政党内閣方針を浸透させよう、こういう構想のようであります。これは明らかに民主主義の一番基本的な問題であります言論への——言論統制の一歩だということは、これは間違いなく言い得ると思う。村上郵政大臣は、あまりこの放送法改正あるいは統制強化ということに御熱心ではなかったようでございますけれども政府あるいは党に押されてといいますか、方針決定——法改正を企図されておるようでありますが、世論をあげての反対にかんがみて、再検討をされる御意思はないかどうか、その点をお尋ねいたします。
  17. 村上勇

    国務大臣村上勇君) お答えいたします。現行放送法は、昭和二十五年の二月、当時日本占領下にあったときに制定されたものでありまして、その当時は御承知のように、今日の商業放送とか、あるいはテレビ放送等も全くなかった時でありますし、また当時の国会並びに政府は、こういう放送法ではいけない、NHK経営内容についてもちっとも立ち入ることもできない、またこれを審議することもできないような放送法ではいけない、いろいろな点についてあげて司令部へ交渉したのでありましたが、とうていこれは聞きいれられなかったのであります。従いましてこの放送法改正の声はもう数年来あったのでありましたが、非常にこの点は重大なことでありますので、慎重に審議を重ねて今日に至ったのであります。  今回放送法改正の単なる試案、いわゆる試みの案を郵政当局として発表いたしたのでありますが、これは単なる素案でありまして、これを今日から発足いたします放送審議会委員に頼んで、初めて原案を作っていただくことになっておるのであります。この審議会委員の構成は、全く超党派的に学識経験者または政党としては、自民党あるいは社会党から一人ずつの権威者をこの委員に委嘱いたしまして、これらが全く公正に審議して、そうして初めて原案ができるのでありますから、ただいま会長の任命が、言論統制とか、あるいは抑圧とかというようなことの心配があるようでありますが、この点は断じて心配ないと思いますし、また審議過程におきまして、これらの問題がその公正な御判断によって削られますならば、これまた私はこれを必ずしも反駁して原案を作成しよう、いわゆる統制化しようという気持もないのであります。ただいまいろいろな御質疑でありましたが、単なる素案でありまして、審議会審議によって初めて原案ができ上って、その上で国会の公正な御批判を受けたいと思っております。御心配言論の自由を圧迫するとか、あるいは非常に政府が圧力を加えるとかいうようなことは断じてございません。たとえいかなる政党が政権を担当いたしましても、断じて心配のないような方法によって私ども国民のものである日本放送協会にりっぱに使命を果さしたい、かように思っておりますから御安心願います。
  18. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは重ねてお尋ねをいたしますけれども審議会なり、世論の動向は十分これを察して、言論抑圧になるような放送法改正案を作らぬ、こういう御言明なんですね。あるいは総理にいたしましても、村上郵政大臣にいたしましても、民主主義は、放送法放送関係についてもこれを守る、あるいは言論の自由は民主主義の有力な基盤であるから、言論の自由はこれを守っていきたい、そのためには今まで考えてきた案のうちに訂正すべきものがあるのなら訂正をして参りたい、こういう御所信でございますか、もう一度重ねて御答弁願いたい。
  19. 村上勇

    国務大臣村上勇君) 放送中立性はあくまでもこれを堅持する必要があろうと思います。いかなる内閣、またいかなる政党による内閣ができましても、この国民全体のものである放送がゆがめられるということは断じて避くべきでありますし、ただいま御指摘のような審議会がきょうから発足いたしますが、審議会の公正な結論が得られますならば、それを原案としてわれわれ法制化していきたい、かように思っております。
  20. 吉田法晴

    吉田法晴君 重ねて恐縮ですが、郵政省案については、これを固執するものでなくて、審議会意見なり、世論にかんがみて、何と申しますか、喜んで訂正をしていく、こういう御方針でございますか。
  21. 村上勇

    国務大臣村上勇君) 郵政省試案につきましては、われわれとしては自信をもって作成いたしたのでありますが、審議会の多数の意見が個々の問題についていろいろと御指摘されたその御指摘されたものが、私どもの納得のいくことであるならば、私どもはこれをあえて修正するにやぶさかでないのであります。
  22. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではその点は世論なり、これは声なき声と申しますか、民主主義の原則、それから世論はおわかりでございますから、審議会だけに限りませず、世論に従って言論の自由を抑圧しないように郵政省私案においても勇敢に一つ直していただきたいということを要望いたしまして次に移ります。  行政機構改革について審議会答申案も出たようでございますが、その中でその大綱、それから予算編成について意見がございますので、これについて行政管理庁長官としての河野大臣の御所見を承わりたいと思います。
  23. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) おそれ入りますが、もう一ぺん一つ要点だけをお願いいたします。
  24. 吉田法晴

    吉田法晴君 行政機構改革について行政審議会答申案が出ておりますが、新聞の報ずるところによると、政府はこの答申案基礎にして機構改革案を出すということが言われております。そこで行政機構改革についての行政管理庁長官と申しますか、政府方針、特にその中に予算編成に関する事項がございますので、その点について政府方針を承わりたい。
  25. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 政府といたしましては、行政審議会答申基礎にして目下法律案の作成中でございます。その過程におきまして党の方針調整中でございまして、最終案決定には至っておりませんが、できるだけ答申の精神をそのまま尊重いたしまして、この範囲を逸脱しないように法案を作って出したいということでございます。  そこで今お尋ねの点でございますが、大体答申方針は、まずさしあたり緊急を要するもの乃至はまた基本に関するものというものについて第一に答申をしたということでございます。基本の問題といたしましては、政党政治を確立する意味において、政党がその施策をそのまま政治に具現できるような処置をとることが必要である、そういう意味合いから首脳部を増加して、そうして指導性を確立するようにしたらよかろう、これが第一点であります。  第二点は、党と内閣との連絡を十分緊密にしていくようにすることに心がけなければならない。  次に、緊急性の問題でございますが、緊急を要するものとして、今の地方自治体の制度確立に伴いまして、これが行政指導の立場にありまする自治庁と、さらに地方財政と密接な大きなつながりを持ちまする建設省とを合わせて内政省というようなものにしていったらどうかというようなことがございましたので、それらについてもやって参りたい。それから党の方針が政治の上に具現いたしますように予算編成の問題があるわけでございます。予算編成の問題といたしましては、最初大蔵省の主計局を内閣に移していくということも議題には出ましたが、これはいろいろな点で、たとえば主税局にあって、歳入の関係等とも見合う必要がありますから、主計局はそのまま存置いたしまして、内閣に別途予算閣僚の委員会を持ちまして、この予算閣僚の委員会において予算編成方針を定める、そうして予算編成の大綱をきめられたものを大蔵省に下げ渡して、それに基いて主計局が案を作るようにしたらよかろう。もっともこの委員会だけではその原案ができませんから、その原案を作ります必要上ここに事務局とは言いませんが、特別職の副官房長官に当る者を数名増員いたしまして、これを中心にしてその委員会の幹事役に当らせるようにしたらどうかという答申があるわけでございまして、その答申をとって政府はいきたい、こういうふうに考えております。
  26. 吉田法晴

    吉田法晴君 こまかいことは遠慮をいたしますが、今の御答弁は、答申を基本的には政府方針として参りたい、こういうことであったように思うのです。その中で内政省の問題については二案あったようですが、自治庁それから建設省を一緒にした内政省案にしたい、こういうふうに了解をいたします。  それから予算の関係については予算閣僚委員会を持つ。その幹事役と申しますか、原案を作るために副官房長官数名を置く、こういう御答弁でした。そうですね。
  27. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) そうです。
  28. 吉田法晴

    吉田法晴君 なおそれに関連して疑問を持ちますのは、今の御答弁でも、方針、大綱はその予算閣僚委員会で作られる。ところがその予算に関しまする特別職の副官房長官数名を置くということになりますと、方針だけでない、方針と申しましても、これは予算ですから数字が入ってくるわけです。大蔵省とその関係というものがどういうことになるのか、予算大綱なら大綱というものは、これは数字はございませんけれども、今の原案というのがどの辺までの原案かということになりますが、その原案そのものはどういう原案であるのか、それから原案を作り、あるいは平常の業務からいたしまして、大蔵省の仕事との関係がどうなるのか、その辺が多少疑問が持たれますので、もう少し詳しく御説明を願いたいと思います。
  29. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 今の会計法を改正をしてやる意思はございませんので、予算の大綱をここにおいてきめていくというつもりでございます。
  30. 吉田法晴

    吉田法晴君 農業団体の再編成について、農業団体の再編成はあくまでやるのだ、河野農林大臣名古屋で語られたりしておりましたが、きのうの夕刊その他で見ますと、農林省の最後の農業会議所案もまあ断念をした、こういう工合に報ぜられております。いわゆる言われておりました農業団体の再編成というのはおやめになったのだろうと思うのでありますが、農業委員会と関連をいたしますそれらの点についてどういうように方針をきめられましたのか、お伺いをいたします。
  31. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 農業団体の再編成の問題につきましては、いろいろ検討をいたしましたが、初めからこういう制度については十分各方面の御意見を伺って、それらを調整して、私自身の案は案として、伺って調整をしてやるべきであって、この国会で通過するかしないか、場合によれば継続審議にしても慎重に扱う必要があるという建前で参ったのでございます。ところが意外に誤解に基く各方面の御意見が活発でございまして、今それを一々大ぜいの人に了解を求めるということも、なかなか困難でございます。従いまして、さればと申して農業委員会を現状のままに置きますことも非常に事務的に困ることもございますので、今回は農業委員会の改組にとどめて、そうして各方面の十分なる御理解の上に立って結論は将来にこれを譲りたいというような気持自分では持っておるのでございますが、何分全国農民多数の諸君の御要望をいれてものはいたさなければなりませんので、一存でかってにやるということも正しいことではございませんのでございますが、結論といたしましては、今お話のように最小限農業委員会法を改正して、改組していくということにしていきたい、こう思うのでございます。  その要領といたしましては、大体今の農業委員会は公選による委員とか学識経験者とかいうような者をもって主として構成しておりますが、その中に相当数の部落代表を入れまして、そうしてこの相当数の中から、あまり大ぜいでは困りますから、常任の少数の者を選びまして、これに従来の農業委員会の専務を取り扱わせるとともに、その多数の委員の諸君に御協力を願って、政府の施策の下部浸透等をはかっていくというような方向でいくのがよかろう、そうして農業委員会の代表者を選挙によって選びますから、選ばれた代表者は、現在は県の農業会議所が下部とのつながりが全然ございませんが、今回は各町村の農業委員会の代表者をもって県の農業会議所を構成していく、もちろん従来会議所に入っておられました人、学識経験者等は入り、また関係団体等の代表者も入られますけれども、そういうことにしてここに中央と町村との間に関連性を持っていくようにしていけば、中央の行政が下部に浸透することもできるし、下部の方の御意見が中央に上昇して参ることもできる。その間に緊密な連携をもって農政が運用できるようになる。そうしてしかも摩擦なしにそういうことができるようになっていくことがいいじゃないか。なおまだ結論には達しておりませんが、大体素案として今日ただいませっかく——昨晩も検討いたしまして、まだ結論になっておりませんのですが、今検討中のものは、そういう方向でこの国会の御審議を願いたい、こういうふうに考えております。
  32. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の御説明を聞いても、一番下の町村の農業委員会の選出方法、それを部落代表、その部落代表というのは農業会議所案の中にもありました構想でもあり、あるいは行政の指導と申しますか、上から下への一貫性等の中にも最初から考えられた河野農相の農業団体再編成の意図、私どもは時の政府なりあるいは与党なりの威令が何らかの程度において浸透する団体設立、そういうものが若干まだ残っておると思う。それが全国農民の反対をしたゆえんでありますが、構想の中にも、これはまあ妥協ではございましょうが、やめたといいながらなお農業会議所案の中にありました構想が残っておるんではないか。それから新団体は設立するんだという意図をやめたわけではない。これはしばしば農相言ってこられましたが、あるいは調査会を設ける云々という点にもなお、何と申しますか、たくましいというか、不敵というかしらんけれども河野農相の意図がなお残っておるように考えられるんですが、その点はどうでしょう。
  33. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 今申し上げますように、今私が御説明いたしましたのは最終案ではないのでございまして、今の段階検討しておるのがそういうことで検討しておるのでございますということを申し上げたのでございます。いずれ今明日のうちに最終案を作りまして、近日のうちに国会へ提案するつもりでございますから、その際に十分御審議をいただきたいと思います。
  34. 吉田法晴

    吉田法晴君 農林大臣は農林水産委員会で、肥料をより廉価に提供したい、こういうことを言ってこられました。あるいは新聞記事等にもそういう意味の御発言があったかと思うのでございます。肥料を下げたい、あるいは下げるというばく然とした声明だけでは、むしろ配給の円滑を害するおそれもございますので、下げるというならば、今の春肥から、あるいはそうでなければ、いつからどの程度下げるかということを具体的に明らかにせらるべきだと思うのでありますが、農相の所信を伺いたいと思います。
  35. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) それはたびたび私が申しておりますように、春肥の取引は先物の取引ですでに大部分は終っておりますので、こたを中間で二段にいたしますことは混淆いたしますので、この際といたしましては、来たる肥料の更改年度のときに正式に委員会を開いて、その委員会に諮問をして値下げをいたしたい。それじゃ委員会にかけるのだからわからぬじゃないか、それをどうしてお前下げると言うかということの御疑念が出るかもしれませんが、これは二つの理由をお聞き願いたいと思います。  第一は、なるべく期近に調査をして、その委員会で最近の限月までの実情を調査して、そうして資料として明年度の肥料価格の算定の基礎にすることになっておりますから、またそうすることの方が妥当であると考えますから、そういうふうに考えております。もう一点は、それなら下がるか上るかわからぬじゃないかということになりますが、これは毎月の生産量、もしくはその後の肥料の事情等を考えますれば、現在でも私は肥料産業が相当に好転いたしておりますので、来たるべき年度にはある程度の値下げはする数字が出てくることを私は期待いたしておるわけでございます。
  36. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると生産量あるいは事情とおっしゃいましたが、コストあるいは経営事情と申しますか、利潤等も勘案せられるのでありましょうが、下げ得ることは下げ得る事情にあると考える。その数字は期近な、更改時期直近の資料によりたい、こういうお話でありますが、生産の事情あるいはコストその他については、今お話のような、あるいは今までの事情によってその点ははっきりし得るのでありますから、肥料の値下げを実現したい、それから次の肥料年度の初めから下げたい、この点は先ほどお話しになりましたが、はっきり言明ができるわけですね。
  37. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 経済界に特別な変動でもあれば別でございますが、そうでない限りは私はそういうような構想でいき得ると確信しております。今お話でございますが、何分十数工場にわたる各工場別の生産費調べを全部詳細にやるのでございますから、いつでも常に生産費調べを持っておるわけではございません。が、しかし御承知通り、今の硫安関係工場の利益率を見ましても、それから配当、株価、労働雇用条件、すべての点が他の大体の会社に比べて非常に優位にあります点から見まして、私はこの際引き続き、昨年も値下げをいたしましたが、明年度においてもとにかく値下げをするという方向にいくことは可能であると考えておるわけでございます。
  38. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうしますと、昨年は肥料をああいう工合に下げたけれども、その後の事情を見てみると、なお下げ得る余地があるということを認める。そうしますと、たとえば去年下げたけれども、その後の事情の変化でありますか、あるいはそのとき下げる程度がまあ少なかったというか、とにかくその後の事情を見ると下げ得る、こういうことですが、その生産費その他事情をここに数字を寄せなければなりませんけれども、大体政治的なあれからいたします発言でもございますし、昨年程度あるいは昨年以上の値下げが可能だと、こう言われるのでしょうか、その辺の御所見を承わりたい。
  39. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 非常にデリケートな問題でございますから、そういう数字にわたってはちょっと申し上げかねるのでありますが、昨年は相当大幅にいたしましたが、それだけは私の今の見当では無理じゃないかと思っておりますが、なるべく私は各種の状況を十分調査いたしまして、農村のために最大限に値下げをいたしたいと思っております。
  40. 吉田法晴

    吉田法晴君 肥料のまあ値下げについて昨年もたしか、これは正式な発言にはございませんけれども、新聞その他では十円程度、こういう数字が出ておったと思うのです。そうして結局硫安工業会の会長ですか、なくなられたりあるいは交代をいたしたりいたしましたが、三月から五月、五円、六月から七月、七円といういうに、これは政治的な妥協でありますが、筋の通らぬとにかく妥協で値段がきまった。そういたしますと、何と言っても不明朗なことがあったのではないかというやはりこれは想像とうわさが飛びます。そこでこの肥料を値下げ得るものならば、はっきり合理的な数字を出して、そうして去年のような政治的なかけ引き、あるいは疑問の入るような方法でなしに一つ下げてもらいたい。これは農民のためには肥料が下ることは、何人もこれは党派をこえて喜ばなければならぬことでありますから、そうしてもらいたいと、こう考えるのでありますが、それらの点についての配慮をなされますかどうか、ちょっと承わりたい。
  41. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 昨年は二回値下げをしたのでございまして、最初は今お話し通り内閣成立早々、私がかねて肥料はもう少し下ぐべきものだということを考え、またそういうことを言うておりましたので、農林大臣就任と同時に肥料の値下げを業界の自発的意図によって要望したのでございます。その後今申し上げましたように、昨年の六月の終りから七月にかけて、肥料年度の更改に当りまして、委員会の議を経て大幅の値下げをいたしまして、二十何円かこれを下げたのでございます。で、それから引き続いて今年のまた六月——七月にさらに生産費調査をいたしまして、委員会の議を経て行う、こういうことになるわけでございまして、それはすべて計数の上に立っていたすわけでございます。ただ今お話しの十円が七円になった、五円になった、不明朗だということは、それはその当時業界の自主的意図によって要求してやりましたから、そういうふうな思惑のようなことにいたしましたので、常時そういう方向でいたさぬのでございまして、これは必ず年度の更改に当りましては、今言う通り計数の調査を十分いたしまして、その調査を通産省、農林省別々にいたしまして、これを両方持ち寄って討議いたしまして、それを委員会に提案いたしまして、委員会が調査してそうして結論を出すということをいたすわけでございますから、御趣旨の通りにいたすつもりでございます。
  42. 吉田法晴

    吉田法晴君 この昨年の初めの肥料の値下げについては業界の自主的な申し出による云々というお話でございましたけれども、私ども理解するところでは必ずしもそうではなかった。まあ通俗的な言葉で言いますならば、値下げをするぞということで、何と申しますか、どうかつではございませんが、はっきりそういう発言があって妥協になったように考えるのであります。これはまあ事態の認識でございますが、なお先般農林大臣はこの肥料問題につきまして、春の新年度になってからの賃金問題に関連をして硫安その他について賃金を上げる余裕があるならば値下げ云々、こういうお話がございましたが、この値下げにいたしましても今お話ししましたように、今後のことはとにかくでありますが、過去においては相当政治的、それからこの間のお話にいたしましてもきわめて政治的な御発言だと思うのであります。そういう点は一つつつしんでもらいたい、こういうことを申し上げておるのであります。答弁がございますれば……。
  43. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 非常に誤解があるようでございますが、実は私はゆえなく労働条件について発言しようとは思わぬのであります。現に今までそういうことをいたさぬのでございます。ところが昨年の暮に硫安関係工場の年末の手当が非常に多かったということが都下の大新聞が全部これを報道いたしましたので、農民の側からあんなにボーナスを出すならば、もう少し肥料の値を下げたらどうかという声が非常に強く起ったのでございます。起ったが、そのときにはそれなりに私はいたしておりましたが、しかし今回は再びまた硫安工業関係の労働組合のいろいろの御要求がありまして、私といたしましては昨年末に農民の強い声もございましたので、これにこたえて私といたしましては決して労働条件を更改するならば肥料の値を下げろという言い方をいたさぬのであります。労働条件の更改についてとやかく私は申すのじゃない、公正なる労働条件の設定についてとやかく申すのじゃないけれども、ただ労働条件を変えたから肥料の値下げができないというような簡単なことでは了承するわけには参らぬ、こういうことを申したのでございまして、労働条件が公正に設定されることはむろん私も望ましいことと考えます。それが公正にきめられることであるならばけっこうでございますが、しからば公正とは何だということにおしかりを受けるかもしれませんが、これはおのずから私は世論決定すると思うのであります。賞与を出しちゃいかぬと決してだれも申しませんが、それはあまりほかに例のないようなボーナスを出して、会社がもうかったからボーナスたくさん出すんだ、出せばそれが一方直接農村の購買する肥料の生産費に影響があるのでございますから、そこで農村の側がこれに文句を言うことになりますので、私の立場上そういう先例がありましたので、念のために申し添えたということでございまして、軽々にたびたびまた重ねてそういうことをいたそうという気持は毛頭持っておりません。この点は御了解いただきたいと思うのであります。
  44. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連して。肥料の値下げについてあくまでも計数的にやりたい、そういうふうに農林大臣おっしゃった、まことにその通りだと思うんですが、ただその際の生産費計算なりそういう点が肥料会社から出てくる資料、それが基準になって審議されているのじゃないかと思うのですが、そうじゃなしに政府自身で会社の経理についてどの程度まで突っ込んで調べてそうして検討しておるのか、そうであればもう少し具体的に説明してもらいたい。
  45. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御要望がございますれば事務的に詳細な御説明を申し上げさせますが、肥料に関する法律によりまして会社の内容を厳重に調査いたしまして——細部にわたって調査をいたしておりまして、その調査の盛り上げたもので計算いたします。
  46. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の点は論争になりますから、経営の中での労使関係あるいは利潤の分配という点は、これは当事者にまかすべきだ、基本的にはまかされておりますようでありますけれども、それが政治的に発言をされるということは妥当を欠くのではないか、こういうことをまあ申し上げておるわけであります。  その次は砂糖の問題でありますが、昭和三十年度においては原糖輸入の差益を吸収をしたということでありますが、その実質的な理由あるいは法律的な根拠、こういうものをどういう工合に説明をされるのか、もう一度重ねてでありますが承わりたい。
  47. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 私といたしましては、国内の糖価、国内の需給を農林省所管で扱っております。今お話の点は輸入事務における差益の吸収でございますので、決して所管を云々申しませんけれども、通産大臣がこれを取り扱っておられますので、通産大臣の方にお尋ねをいただけたらけっこうだと思います。
  48. 吉田法晴

    吉田法晴君 通産大臣来ておられませんので、一応政府考えられておった点を述べていただけばそれでいいのでありますが、なぜそういうことを重ねて聞くかと申しますというと、八月二日に閣議決定をして、その以前の四月−七月にさかのぼっておられる。もしこれが差益があるから、こういうことであるならば三十一年度については関税によるだけで関税で差益が吸収し得る、こういう建前ですが、実際にその差益がどうして出てきたか考えますというと、リンク制云々ということが言われておりますけれども、実際にその差益を生んだものはこれは消費者でありましょう。あるいは外貨の割当、あるいは輸入数量価格、価格の変動そういうものもございましょうが、もし実態がその消費者の負担であるとするならば、その消費者の負担を軽くすることが解決の方法であって、輸入差益を吸収するのは関税によればよろしい、こういう理屈は通らない、矛盾しているじゃないか、こういうことを申し上げたいためでありまして、その点についてどういう工合に考えておられますか。
  49. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) その点私からお答えいたします。  実は砂糖の価格をある程度に安定さす必要のありまするゆえんは、農林行政の上におきましてサツマイモ、バレイショから澱粉を精製いたしまして、その澱粉から身近な話まで申しますればあめを作ります。そこで砂糖の価格が下りますとあめが下り、澱粉が下り、サツマイモの値段が下ってしまうのであります。そこでサツマイモの価格、バレイショの価格は農産物の価格安定法によりまして、政府は一定の価格でこれを維持するということを義務づけられておるわけでございます。従ってサツマイモの価格を一定の価格に安定さすためには砂糖の価格がある程度の価格を保ってもらいませぬとサツマイモの価格の維持ができません。そういう関係で農林大臣としては砂糖の価格は一定の価格で維持するように要望するわけでございます。それで消費者の負担になるのじゃないかとおっしゃいますけれども、消費者の負担になりますけれども、一方においてサツマイモ、バレイショの価格を維持する上において、適正な価格にこれらの農産物の価格を維持する上において砂糖の価格はある程度の価格でなければならない、一般家庭もお使い願わなくちゃならぬ、こういうことになるわけであります。そういうことになりますために、砂糖の製造業者の差益がここに生まれて参ります。その差益は砂糖業者の努力ではございませんで、今申すように政府としてカンショ、バレイショの価格を維持する必要上維持するものでございますから、その差益は政府がこれを吸収することが適当であろうということで、今回は関税を改正いたしまして、関税の引き上げによってその差益を吸収するという措置をとることになったのでございます。
  50. 吉田法晴

    吉田法晴君 一月二十一日の砂糖の価格安定措置についてこれは閣議了解ですか、農林大臣からお出しになって決定をみておる要綱がございますが、その製糖業者が一定の予備在庫を持っておって、政府は必要に応じてこれを生産、または出荷することを勧告できる、あるいはさらに必要な場合には、政府が原糖の一部を食管で管理することができる、こういう項目がございますが、そうすると、そのためには法的な措置が必要であって、法律の食管特別会計法の一部改正案あるいは砂糖の需給安定法まで考えられたというのですが、なぜそれが提出されないのか、承わりたい。
  51. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) その法案は提出いたしたいと思って、目下準備中でございます。ただしそこに述べてあります通りに為替を……、百十何万トン、適正な、必要だけ輸入いたしますれば、まずこの見当で安定するであろう、同時にまた関係業者が七、八万トンですか、十万トンですか、というものをみずから自己貯蔵いたしまして、そうしてそれがいつでも政府の言う通りに、価格の変動に処してこれを処理するということにいたしておりますから、それで価格の安定がもし可能であれば、それだけでもいいという議論が二つ今ございます。現にその措置をとりましてから、現在政府が意図いたしておりまする七十四、五円というところに、ずっとくぎづけに糖価は安定しております。しかし私といたしましては、万一これらの措置をとっておりますけれども、それでも砂糖が値上りをして、そうして業者が不当の利益を持つということは正しくないという考えから、せっかく今法案を準備しておるのでございます。これを党の方と調整中であるということを申し上げておきます。
  52. 吉田法晴

    吉田法晴君 巷間伝えるところによると、その法的な措置をやめたのは、製糖業界からの強い要請があったのだということを言われておりますが、そうではなくてお出しになるのですか。それからもう一つ、今の御答弁で、政府は価格七十五円について責任を持つ、こういうお話ですが、その点はお持ちになりますか、二つお尋ねいたします。
  53. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 相場のことでございますから、七十五円について責任を持つという言葉は一つ了解願いたいと思います。われわれの希望——期待する値段は、妥当だと考える値段が今七十五円前後と期待しておるのでございます。そこらを見当にして関税の数字を出しておる、こういうことでございまして、その辺ならばまずまず妥当であろう、その辺のところで安定していきたい、こう考えておるのであります。その七十五円の責任というとちょっと困りますが、取引所があって、毎日売ったり、買ったりしておるのでございますから、多少の変動はむろんあるわけでございますから、しかしそういうことのないように、政府としては行政措置をとっていきたいという目標を定めておる、こういうことでございます。なお法律につきましては、今申し上げた通り、すでに準備をいたしておりまして、党の方と調整中でございますから、なるべく早く出したいというふうに考えておりますから、御了解願いたいと思います。
  54. 吉田法晴

    吉田法晴君 なおまだはっきりいたしませんが、責任を持つということは多少言葉が過ぎたかもしれませんが、あるいは調整をする、政府が業者に対して勧告その他調整をする、あるいは一部食管会計で管理する云々というと、これは言葉は違いますけれども、ある程度価格について、数量について政府が責任を持ち、操作する、こういうことですね。それから、そうでなくて、法律を作らないで、あるいは法律を作ったとしても、自主調整にまかせるかということは、これは大きな二つの方向であって、それをどうするかがきまっておらぬと、こういうお話ですから、数量、あるいは価格について、調整、その他でもってある程度これは——まあ行政指導と言われましたけれども、そういう点に責任を負うのか、それとも自主調整ということで業者のあれにまかせるのか、こういうことを問うておるわけであります。
  55. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 業者にはまかしません。まかしません。たとえば業者が貯蔵いたしておりまするものについて、政府はこれを許可して、製造過程に入れということを命令をするということにしておったわけでございますから、それでそれが暫定的に十万トン前後のものを放出して、業者の持っておりますものも出せば押えられる。同時にまた為替の操作によりまして、輸入を増しさえすれば、いつでも下げることはできるのでございます。ただ期間的に、手近にありませぬと、間に合わない場合がありますから、そこでその上になお政府も持っておった方がいいじゃないかということで、農林省もある程度のものを持って、そして念には念を入れてやっていきたい、こういうふうに考えておるのでございます。
  56. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちょっと関連して。今の点でちょっとお尋ねしたいのですが、この砂糖のような、まあいわば塩と砂糖ということで、まあこれはもう絶対欠くことのできない必需品で、しかも国内生産が、これはもうほとんど皆無と言ってもいい。これを安定させていこうという政策と、それから砂糖を投機の対象にして取引をやるということを手放しで許していくということは、どうも矛盾しているように私は思うのですが、この砂糖を投機の対象にしておるということについては、農林大臣はどのようにお考えになりますか。
  57. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) これはすでに開設せられて、そういう機構があるわけでございます。今お話の点はごもっともなことでございまして、私といたしましては、砂糖と言わず、その他主要食糧のうちでも大豆、小豆というような、国内需要の非常に少いもの、これらについてはあまり好ましいことじゃない、こういうふうに考えておりますが、これが合理的に運用されれば、どうもこれを直ちに閉鎖を命ずるというわけにもいかぬじゃないかというように思っておるのでございますが、その点は実はわれわれといたしましても、御趣旨の点についてはたびたび検討をいたしておるのでございます。
  58. 秋山長造

    ○秋山長造君 実は昨年農林大臣に御就任早々に、砂糖の専売ということを言われたことがある。あのお気持は、私がこの農林大臣のお気持をそんたくいたしますのに、やはり今私が申し上げたような点が相当大きな動機になっておったのじゃないかと思います。で、この専売ということがいいか悪いかは別問題として、少くとも砂糖を今のような形で、一方では政府がいろいろな回りくどい手だてをもって糖価を安定さそうということをやりながら、しかも一方では、今までの惰性に押されて、これを投機の対象にして放任しておくということは、どうも私は矛盾しておる。そしてまた政府のいろいろ手をお打ちになるそのことが、あまり実効をおさめにくいのではないか。で、農林大臣が最初おっしゃったこの専売制という——専売制ということでないにしても、何かそういう方向へ少くともその一歩を踏み出すことは、とりもなおさずこれが一番効果的に、しかも糖価を安定さす道でもあるのじゃないか。だから砂糖のこの投機的な扱いというものは、どこかでこれはチェックしなきゃ、これはなかなか実際の効果を上げにくいのじゃないかと思うので、この点については一つ——まあいろいろ複雑な機構の中でおやりになるのですから、簡単にというわけにもいきますまいけれども、何か少しそういうきめ手をお考えになる必要があるのじゃないかと思うのです。その点についての御所見を重ねてお伺いしたいのです。
  59. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お話通り国民の必需品につきましては、これは安定をし、いやしくも不安のないようにすることが絶対に必要でございまして、私といたしましても、公正妥当な価格に安定さすという施策をいたさなければならぬと思っておるのでございます。しかし何分すでに開設せられておりますものを直ちに閉鎖を命ずるということもなかなか困難なことでございまして、それはその問題として別途今後の推移によってどういうことになるかしりませんけれども、まあ私といたしましては、自分の所管の事務といたしまして、農産物価格と糖価の安定ということで最善を尽してゆきたい。しかし決して責任を回避するものではございませんけれども、そういうふうにやって参りました結果、おのずからそこに問題としてそういうものが考えられるようになってくるのじゃなかろうか、こう思っております。
  60. 秋山長造

    ○秋山長造君 大蔵大臣、この点どうお考えになりますか。
  61. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私も同じくこの砂糖が投機の対象になるということにつきましては、これは好ましくないと思っております。お話のような点は今後十分検討を加えてゆくべきことだと思っております。
  62. 吉田法晴

    吉田法晴君 砂糖価格は一斤まあ横浜着で二十三円八十七銭のものが、七十五円がまあ妥当であろうといわれる、適正利潤を含んでも五十円三十八銭くらいならば売れる。とにかく横浜着の値段からしますならば、最後に消費するときには非常に高いものになっておる。砂糖というものは非常にもうかるものだ。しかも外貨割当と関連してゼロのものが今日までの資産にとにかく大きくなっておる。従って七不思議といわれるし、あるいは政党なり政治なりの腐敗がこれにまつわっておるというような、これは肥料についても同じことでありますが、そこでそういう点について今秋山君から投機の対象になるのはけしからぬじゃないかと言われると、あるものを閉鎖するのも仕方がない、かつてまあ統制云々と言われた河野農林大臣にして、何らそこに所見がない。そうすると、初めおどかしを言って、そうして結局適当に、しまいは処女のごとくなられるのはやっぱりくさいじゃないか、こういうことになる。(笑声)それを防いで、価格についてももっと考えられるべきでしょうし、あるいは粗糖なり何なりで消費するということも、これは栄養の点からいっても白糖よりも栄養があるといわれておる。根本的に二つについて考え直すつもりはないか、最後にお尋ねをいたします。
  63. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 今の粗糖を入れましてからその後の消費税、間接税等を加えていたしますると、七十四、五円というところはそろばんを相当にはじいたつもりでございます。まずここらならば業者としてもそうもうかるとか……いいところだろうというところにそろばんをおいてやったつもりでございまして、ただ何分御承知のように原糖の産地の価格がいろいろまちまちでございまして、時に損のゆくこともあるし得のゆくこともあるということで、産地別によって多少の違いは出てくるかもしれませんが、われわれとしては、そこらのそろばんは、皆さんの御納得のゆけるそろばんではないか。今までのようなもうかるそろばんではないだろうというふうにはじいておるのでございます。ただ問題になりますのは、原糖の輸入の為替をお互いにほしがるわけでございます、今までほしがったわけでございます。私は、これをほしがるということは、それをもらえば非常にもうかるからほしがるのだ、そういう事態は正しい事態ではないのだというふうに考えておるのでございまして、こういうふうに政府がきめて、これが正しいそろばんであってここらがいいところだというならば、むしろ為替についてはほしいというだけ出せばいいじゃないか。たくさん持ってゆけば値が下ってしまってそんなものを持っていたって仕方がなくなって、輸入しなくなるのだから、それを押えておるからおかしいのだというふうに、私は事務当局にそういう角度で為替の割当もしくは輸入についての操作を考えてみろというふうに今言うておるところでございまして、今お話のようなことのないように私は事態がゆくように今後指導して参りたい、こう思っております。
  64. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは防衛庁長官に防衛関係について少しお尋ねをいたしたいと思います。  防衛庁費の不当支出については、もうここで私があげて繰り返し申し上げません。その原因がどこにあるか、これは問題だと思うのでありますが、長官としてこれは参議院の決算委員会の決議の際の答弁もございますが、もう一度その後ここでも質問等もございましたし、処罰をしたという話もございましたが、重ねて所見を承わりたい。
  65. 船田中

    国務大臣(船田中君) 防衛庁費の不当支出につきまして会計検査院から批難を受けたということは、この前もこの席上で申し上げましたが、まことに私は残念に存じます。就任以来十分その実情を調査いたさせまして、そうして先般これに対する措置もとったわけでございますが、何といっても防衛庁が新しい役所でありますし、それからまた扱っておりまする装備品の注文であるとか、あるいは器材、艦船、飛行機、いずれも相当高度の技術を要するものであり、また設計、注文等にも専門の知識を持っておらなければならぬというようなことでございまして、注文者の側においてそれだけの十分な用意、あるいは制度上においての十分な組織というようなものにおきまして、従来多少なれておらなかった、不備であったということもあるかと存じます。そういうような点について十分検討を加えまして、改善すべきものは改善をいたしまして、今後再びかようなことのないように、厳重に注意をいたしておる次第であります。ただ調達実施本部、あるいは建設本部、こういうようなものにつきましては、一昨年機構改革のときにできたものでございまして、これらにつきましてはせっかくなれて参りまして、ようやくその運営もよくなって参っておりまするから、それらの点につきましては十分今後におきまして注意はいたしますけれども、大きな機構の改革というようなことはせずにゆく方がよかろう、その運営の間違いのないようにして参りたい、かように考えておる次第であります。
  66. 吉田法晴

    吉田法晴君 処罰のことをこの間お話になりましたが、解雇は一人、けたを一けた間違えた、一けたというが十倍に書いた者がどうなったかわかりませんが、処罰のことは私がここで申し上げることではございますまい。が、予算の面で総額で二割、三割に達する繰り越しが毎年ある。こういうものは実際に理由はいろいろありましょう。理由はいろいろありましょうけれども、一年のうちに使えない金額が総額の二割、その総額の二割というのが三百億あるいは三百億近かったり二百億を越しておる。三十年度でも二百億は繰り越すだろうということをいわれておる。実際にそんなに使えない金なら予算に計上しなければいいじゃないか。これは真剣に考えなければなりませんが、大蔵大臣おられませんけれども長官としてはどう考えられますか。
  67. 船田中

    国務大臣(船田中君) 繰越額が年々多いということも、これも予算経理の上においてまことにに遺憾な点でございますが、これまた先ほど申し上げましたように、器材あるいは施設、それらにつきまして、防衛庁としては、特殊の事情がございます。その詳しいことはいずれまた政府委員からも詳しく御説明申し上げさせますが、そういう点につきまして他の役所と違った特殊性もございます。そういうことのために繰り越しが従来多かったのでございます。しかし、これは三十年度の予算につきましては、最初三カ月ほど暫定予算で行っておりまするので、なかなかその消化につきまては十分とは言えませんけれども、しかし、さればといって、これを拙速にいたしますことは決して策の得たものでございませんので、十分慎重に、そしてしかも間違いのないようにして早く処置のできるようにいたしておる次第でありまして、ことにこの器材の方につきましては米軍の供与に待つものもかなり多うございます。たとえば艦艇につきましてボデーはできるけれども、しかしそれに載せる搭載兵器は米軍から受けなければならぬ、ところが予定通りの期日になかなか入手ができない、こういうものもございます。それからまたあるものは外国に注文をしなければならぬというようなものもございます。そういうことのために非常に時日を要する。それから先ほど答弁の中に申し上げましたように、特殊な高度の科学的、技術的な要請がございますので、そういうようなことがありますために従来予算の繰越額がふえた、予定の期日に予算が消化できなかった、こういう面もございます。しかし決してむだな予算を組んでおるということはございません。なお詳細なことにつきましては政府委員から御説明申し上げることにいたします。
  68. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) お答え申し上げます。すでに詳細に長官がお述べになりましたので、私、特に付け加えることはないのでございますが、防衛庁におきまして繰越額が相当多いということはまことに遺憾でございます。その金額を申し上げますと、昭和二十七年度におきましては二百九十億円、昭和二十八年度におきましては二百五十七億円、昭和二十九年度におきましては二百三十五億円と毎年減少いたしております。昭和三十年度におきましてはどうなるであろうかと申すわけでございますが、当初年度開始いたしました三カ月間が御承知通りに暫定予算でありましたために、本予算が施行されましてから本格的に三十年度の業務の執行が行われましたので、実は当初は相当おくれております。ただ昨年の秋、暮にかけまして相当防衛庁におきまして全力をあげまして、もちろん正確をモットーとすべきでありますが、正確とともに慎重な調達ということを心がけまして、その結果今年の一月末現在におきましては大体昨年に追いつき、あるいは少し追い越すというような状況でございました。まだ二月末の状況はわかりませんが、今後二月、三月、それから出納整理期間の四月を含めて考えますと、昨年の二百三十五億よりもやはり相当下廻りまして、二百億程度の繰り越しになるのじゃないかと思っております。まあそれにしても非常に大きな繰り越しになるわけでございますが、この繰り越しを生じますのは、まあ一番大きいのは器材費、それから施設費でございます。それから器材費につきましては、ただいま長官からも御答弁ございましたように、御承知のように自衛隊で調達いたしますものは、大体において一般市販品と相当規格等が違うものでございますが、まず要求性能の決定、それから規格の決定等に相当慎重に時間を費さなければならないわけであります。一応それがきまりましても若干の規格を整えまして、その上で実際に調達するというような段取りをいたしておりますので、予期以上の日子を費しまして、繰り越すことも多くなるのであります。それから器材費で購入いたしますうちには、相当外国品もございますが、輸入品となりますと、相手方の生産事情あるいは輸入手続等のために予想外の日子を費すことがありまして、繰り越しを生ずるわけであります。また技術研究所の試作品につきましては、御承知通り戦後相当な空白期間を置かれまして自衛隊、警察予備隊が創設されましたので、新しい研究分野が非常に多いのでありまして、そのために要求性能の決定等に相当時間を費すというようなことが今までの繰り越しの原因でございました。それから施設費につきましては、施設費のうち施設整備費は営舎、飛行場等の建設費でございますが、御承知通り、現下の情勢におきまして、なかなか、まず土地を選びましても、地元の方々の御納得を得ることがむずかしいのでありまして、かりに御納得を得ましても、それから価格の折衝に相当な時間を費しますので、そのために思わざる繰り越しを生ずるのでございます。また艦船の建造費につきましても、戦後の長い空白期間を置かれまして初めて発注されたものでございますので、当初の要求性能の決定、設計等に相当な時間を費しますし、それからまた業者の選定等にも慎重を期さなければならぬというあれで、またこれが繰り越しの原因になっております。それからもう一つは艦艇につきましての塔載兵器は原則といたしましてMDAPによりまして米国の援助を受けておるわけでありますが、この塔載兵器の供与の遅延がまた同時に艦艇の竣工遅延をもたらしておる。これにともなって繰り越しが生じてくる、こういうような状況であります。
  69. 吉田法晴

    吉田法晴君 その繰り越しなり、あるいは継続費、予算外契約が多いということが一つのやはり不当、不法の支出ができる原因だと思うのでありますが、その点は大蔵大臣に質問をいたしたいと思いますが、割合に詳細に述べていただいたのですが、決算委員会の警告決議の中にもございますが、「周到な調達計画と原価計算を策定し、形式的な装備表に依存し過ぎることなく」云々と書いてございますが、計画もいいかげんだし、それから予算の積算の基礎、単価等もいいかげんではないかと考えられるのですが、その点はどうですか。
  70. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 調達に当りましては、詳細な資料の下に原価計算をいたしておりまして、決して調達の単価がいいかげんだというように私は考えておりません。それからまた予算の積算につきましても、厳密な大蔵省の査定を経まして、非常に積み重ねた計算になっております。私ども決してそれが過大な単価になっておるというふうには感じておりません。むしろ非常に窮屈なように実際には感じておる次第でございます。
  71. 吉田法晴

    吉田法晴君 長くなりまして大へん恐縮ですが、それではたとえば要らぬものを買ったり、それから一けた違っても問題にならぬ、そういうのはどうしてですか。
  72. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 今度の昭和二十九年度の決算に対しまして、会計検査院から御指摘を受けましたうちに、不用のものを買ったというのが二、三ございます。これにつきましては、具体的な事例によりまして、また御説明申し上げる機会を得たいと存じますが、この二点につきましては、やはり担当者に慎重な検討が足りなかった点が確かにあったと思います。会計検査院から指摘されました不要不急の購入物資という中には、確かに会計検査院の御指摘のような点もあり得る。まあこういう点につきましては、さらに今後内部におきましてお互いの連絡を密接にいたしまして、そうして実行いたしたい、こう考えております。ただ先ほどお話のございました土地の買収につきまして、一けた間違って金を渡した、支払ったといふうに検査院が御指摘になっておりますが、これは事実は間違いでございまして、実際はあとで帳簿の場合……、これはまた実に悪いことなんでございますが、指摘されました事件につきましては、実際に土地の所有者に交付いたしました代金と、あとで正式に決算書を作りましたときの間に食い違いがございました。実はその担当者が作為しておったのであります。正確にちゃんと申し上げます。その作為した方の計算が一けた間違っておった。実際には一けた間違って金額は支払っておりません。まあそういうふうに指摘されました実際に支払ったものと、それから公けの記録との間に食い違いがあるというようなことは、まことにけしからぬことでございます。こういう点につきましては今後十分に注意いたしたいと思います。
  73. 吉田法晴

    吉田法晴君 大蔵大臣が来られましたから、防衛庁の庁費で一年に四億も不当不正の使用があるということは、まあほかにも原因がありましょうが、予算を査定された大蔵省に責任があるのじゃないか、一年間にこの二、三年ですが、毎年二割、三割の繰り越しがある。それから二十何億ということしでも継続費がある。それから予算外契約にいたしましても百億に近い、あるいは百億を越す予算外契約がある。こういう大きい、いわばあまり厳重な国会、少くともその国会の目には監督の行き届かぬ金が出されることが、こういう結果を来たすのではないかと思うのでありますが、それについて大蔵省として過去の実績にかんがみて、どういう査定、あるいはどういう方針で臨まれたか、伺いたい。
  74. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 防衛庁費の、一つはこれは繰り越しのことですが、これは私どももできるだけ繰り越しが少くなるように努力を払っておるのでありますが、しかし何分予算の性質が軍の装備、施設等の関係、特にまた今日は駐留軍のいろいろの関係もあって、いろいろの関係から予期のように事が運ばぬことがありまして、やむを得ず繰り越しになっておる。しかしできるだけこれを減すことに努力いたして、幸い最近では累年繰り越しは減少しつつあるのであります。  なおこの防衛庁費の予算査定につきましては、事務当局としまして十分下から積み上げまして、精細に査定をいたしておるわけであります。なお使途等についていろいろと会計問題もあったようでありますが、今後そういうことのないように一つ予算の執行について厳格にやってもらうことを要請をいたしておるわけであります。
  75. 吉田法晴

    吉田法晴君 時間がございませんから次に移りたいと思います。  長官お尋ねをいたしますが、防衛庁の六カ年計画の最終の数字はいただきました。これはまあ新聞にも出ておるし、巷間言われておるところでありますが、そのことしと、それからそれに至ります途中の数字、それからその六カ年計画で十八万、あるいは十二万四千トン、千三百機といわれるのが、それがいよいよの最終でございますか、その点をお尋ねします。
  76. 船田中

    国務大臣(船田中君) この数字はたびたびここから、この席で申し上げましたように、防衛庁の試案として持っておる最終目標でありまして、最終目標と申しますのは、防衛六カ年計画の最終目標でございまして、昭和三十五年度におきまして達成する目標が、陸上において十八万名の自衛官を作り、それから艦艇において十二万四千トン、哨戒の飛行機が百八十機、それから航究自衛隊におきまして練習機を含めて約千三百機、そのほかに予備自衛官二万ほどをそろえたい、これが三十五年度に達成する目標でございます。従ってこれは防衛庁で持っておりまする試案の最終目標ということになっております。それで、それを年次にどういうふうにやるかということは、これから検討をするのでございまして、年次計画というものはまだ持っておりません。なおこれは防衛庁の試案でございまして、政府案としてこれを確立する前には国防会議にかけまして、そして国防会議の諮問を経て政府において決定してもらうようにいたしたい、かような考えを持っておる次第でございます。
  77. 吉田法晴

    吉田法晴君 それは防衛庁の試案であって政府の案ではない。政府の案にするには国防会議にかけなければならない。いつもそう言われるのですが、実際には年々ふえておる。ですからその防衛庁の六カ年計画試案でもいいから、六カ年計画のそれに至りますまでの年々の数字をおあげ願いたい。最終の数字だけでなしに途中の数字をお示し願いたい。  それから十八万云々という点は、これも巷間言われておりますので間違いなかろうと思うのですが、池田、ロバートソン会談のときに十個師団を持て、あるいは持つということが大体話ができた。そうしてその一個師団の人数が一万八千なのかあるいは三万二千なのか、あるいは三万五千の要求があって云々ということが言われておって……、そこがなおまだはっきりしてないんじゃないか。この間、昨年でしたか、一万八千で話がついたということがいわれておりますけれども、従って六カ年計画なら六カ年計画が完成したら、それでもう終りなのか、なおそこまでいっても米軍が撤退するか撤退しないかわからぬ、こういう話が出て参りますから、そこでその十八万あるいは十二万四千というのはいよいよ最終か、こういうことをお尋ねをしておるわけです。
  78. 船田中

    国務大臣(船田中君) 防衛庁の試案として持っておりますこの最終目標を達成するのに、いかなる年次計画を持つかということになりますと、これはたびたびここからも申し上げておることでございますが、アメリカ側の供与兵器に待たなければならぬ部分もありますので、今その年次計画はまだできておらないのでございます。  それから三十五年度に達成する最終目標ができましたときに、必ずこれが米軍の撤退するものと見合うということはこれまたたびたび申し上げておりますように、そうは申し上げられない。米軍撤退の基礎はできることと存じますけれども、しかし米軍の撤退ということはこれは日米間の合意によって行われるものである。国際情勢をよく勘案いたしまして、そのときの情勢によって行われることでございます。ただいま申し上げた数字が達成されたから必ず米軍が撤退するということは申し上げかねるのであります。
  79. 吉田法晴

    吉田法晴君 撤退の方を聞いておるのでなくて、数字はそれが最終的な最後かとこういうことをお尋ねしておる。
  80. 船田中

    国務大臣(船田中君) 防衛庁の持っておりまする六カ年計画の最終目標は、ただいま申し上げたようなことでございます。それから先のことは、ちょっと今どういうふうにするかということは、防衛庁としてもまだ計画が何もできておりません。
  81. 吉田法晴

    吉田法晴君 三十五年度の今の数字で防衛費が幾らになるのですか。あるいはこの兵器の需要について三十五年度で千百七十八億という試算をした向きもございますが、人件費その他を入れて防衛庁費が幾らになると踏んでおりますか。
  82. 船田中

    国務大臣(船田中君) この数字もここでたびたびお断わり申し上げておることでございますが、最終年度においてどれだけの金額になるかということはまだ計算ができておりません。それの案もまだ持っておりません。
  83. 吉田法晴

    吉田法晴君 前にお話がございましたが、防衛計画とそれから五カ年計画との関連が論じられて参りましたが、高碕長官に、防衛六カ年計画とそれから経済五カ年計画との間にはどういう数字が見込まれておりましょうか。
  84. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 経済五カ年計画を立てます上におきましては、防衛費といたしまして二十八年から三十年に至る大体の基準を立てまして、その基準を基礎といたしましてそれで五カ年計画を立てたわけでございます。
  85. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほど、防衛計画達成後の兵器の需要を千百七十八億と試算をする人もある、これは十八万——海上自衛隊あるいは航究自衛隊の人件費を入れると数字が出て参ると思うのでありますが、数字を私の方から一応あげたのですから、それについてまあ両長官で、そういう数字は別に根拠がないとおっしゃるのか、あるいは一応それも目安で、人件費を入れれば幾らになるとこういう工合に言われるのか、一応その御所見を承わりたいと思います。
  86. 船田中

    国務大臣(船田中君) 三十五年度における防衛関係費が総額においてどれだけになるかということは、たびたび申し上げておるように、これは数字を申し上げるまでに至っておりません。大体企画庁の方で見込んでおられるのは、国民所得に対して二%強ということで数字をお出しておられるようでございます。
  87. 吉田法晴

    吉田法晴君 エリコンのGMを買っておる、あるいはオネスト・ジョン等が入っておりますが、この使い道と申しますか、どういうように使われるつもりなのか伺いたい。
  88. 船田中

    国務大臣(船田中君) それらの新兵器につきましては目下研究中でございまして、ただいま御指摘になりましたエリコンについては三十一年度の予算通りました後に交渉をいたしまして適当なものを得たいと考えておるのでございます。誘導弾というようなものにつきましては、従来も文書の上では研究いたしておりますが、実物の研究をいたしたいというのが、大体この三十一年度において予算を見込みました理由はそういうことからきておるわけでございます。
  89. 吉田法晴

    吉田法晴君 十三日のこれは共同通信による記事だと思いますが、地方の新聞記事に、これは労働争議に備えてというのですかどうか知りませんが、防衛庁で「自衛隊の出動を用意」こういう大きい記事が出ております。その記事によると、長官は否定した云々ということでありますが、増原防衛庁次長は一般的な指示をしたと書いてございます。これはニュースだけでなしに、私も多少それを信ずべき事柄があったと思うのでありますが、自衛隊は労働争議鎮圧に臨むべき使命を持っておると考えておられるかどうか、この報道について一つ伺いたい。
  90. 船田中

    国務大臣(船田中君) 労働争議に自衛隊が介入するなどということは考えておりません。増原次長がさような準備をさしたとかというようなことのもし新聞記事があったといたしますれば、それは全く事実無根でございます。
  91. 吉田法晴

    吉田法晴君 この予算外契約その他で自衛隊の使います武器を日本で注文をする、生産をするということが始まって参りましたが、防衛生産というものについてどういう御方針であるのか、企画庁長官に伺いたい。
  92. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げますが、防衛産業というものは別に特殊の産業として現在のところ認めておりませんので、経済自立五カ年計画では全体の鉱工業の中に入れているわけなのであります。
  93. 吉田法晴

    吉田法晴君 かつてはこういう点についてはこれは危険性があるとして消極的な態度を財界もあるいは政府もおとりになっておったようでありますが、通産大臣がおられませんようでありますが、通産省での構想も多少方針が変って参ったように思うのですが、いかがでしょうか。
  94. 川野芳滿

    政府委員(川野芳滿君) 大臣にかわりましてお答え申し上げますが、特別に変ったことはございません。
  95. 吉田法晴

    吉田法晴君 今のように、たとえば飛行機につきましてその設計、あるいは特殊な機械部品等をアメリカから持ってくる、こういうことになりますと、まあある意味においての外資導入かもしりませんが、その上にこういった防衛関係の生産をするということになりますと、言われておりますようなアジアにおけるアメリカの兵器廠ということに実態はだんだんなってくるのじゃないか。そういうことになりますと、あるいは今言われております余剰農産物の三角貿易と同じでありますが——同じではございませんが、大体対外的に与える影響は同じだと思うのですが、日本の経済自立を破壊をし、そうしてアジア貿易をむしろ阻害して参るのじゃないかと考えるのですが、この点について特別の使命と関心を持っておられる企画庁長官に承わりたい。
  96. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく、東南アジアの各国においてはまだ日本に対してやはり侵略的の意図があるだろうというふうな見方のあるときに、そういったような問題のあることについては慎重に考慮しなければならないと思います。従いまして、防衛産業というものを特殊に作ってそれによってアメリカの兵器工場であるとかいったふうな感じは持たせないようにするのが当然の措置だと思います。
  97. 吉田法晴

    吉田法晴君 最後に企画庁長官に。  物価は横ばい云々ということを言われておりますが、あるいは電車賃が上りましたり、水道が上りましたり、あるいは鉄製品、非鉄金属の製品を含めて鉄製品が上っている、こういう点についてどういう工合にお考えになるか。あるいは従来の方針からどういう措置をとられるか。それから、物価は多少そういう点で上りぎみであります。予算の中にインフレ的な要素はこれは私どもはあると思う、余裕がない点から。あなたたちはインフレ的な予算でないと言われますが、しかし反面賃金についてはこれを押えようとなさる。しかし貿易が伸び、生産の総額が上った、生産性は向上した、もうかったというならば、経済企画庁長官としては、経営の中で賃金がある程度上るのはこれは当然だとお考えになりませんかどうか。物価と賃金について最後に長官お尋ねしたい。  それからせっかく来ていただきましたから文部大臣に一つだけお伺いをいたしますが、南極探検について経費が足りなくて、あるいは危険さえあると言われておりますが、増額をしてやるべきだというお気持はおありになると思うのでありますが、足りない予算、あるいは危険を伴います予算に対してどういうふうに対処せられようとするか、その一点をお伺いいたしたいと思います。
  98. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 三十一年度の物価は三十年度の物価で横ばいするという方針で進んでおりますが、電車賃とか水道とかいうものは、値上げされた結果を織り込んでおるわけであります。現在におきましては、鉄鋼製品は世界的に高くなる、こういうふうなことのために幾らか物価に影響すると思いすが、幸いに世界的の物価も、スクラップを初めゴム等も頭打ちの景気であります。また国内にいたしましても、政府が管掌し得る運賃、あるいは米価等は上げない方針で進むと思いますから、私は三十一年は大体横ばいで進んでいくだろうと、こう存じておるわけであります。  また、生産性向上につきまして、これは利益が上れば当然経営者も、同様に勤労者も、この配当は受けるものだと存じますが、しかしひとり経営者が、あるいは勤労者だけがとるのでなく、また消費者もこの結果を受けるべきものだと私は存じております。
  99. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) お尋ねの南極地域観測は、世界の大国十三カ国に伍してやることでございまして、大へん大きな仕事でございます。本年は十一月上旬に出発して、昭和三十二年の三月下旬に帰ってきて、予備施設と予備観測をするのでございます。本観測は昭和三十二年以後になります。ほかの大国は非常に大きな施設をしておるものがありますが、わが国では来たる十一月に宗谷という船を一そう出しまして、大体五十人ぐらいな人が行くのであります。そこで昭和三十二年の一月上旬に、世間ですでに人口に膾炙しておるプリンス・ハロルドへ上陸いたしまして施設をいたし、一部機械を持ち上げて、少しの観測をして、三月に帰ってくるのであります。それがために、国の予算としては七億五千万円要求いたしまして、今この委員会に御審議をいただいております。多いほどいいのでございますが、大体予備観測はこれで足るものだ、予備費などの流用をしないでもこれでいけるだろうと、こういう覚悟でおります。世間では非常に同情されて、任意的の醵金等も集まってくるようでありますから、これらは追って相談をして有効に使いたいと思っています。
  100. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 委員長質問に入る前に、一般質問において、すでに一時になんなんとするときにおいて、質疑を行わなければならないということは、あまりにも、委員長から政府に進達されたことであろうと思うが、政府委員も有終の美を飾って最後が大事だというので、都合してなるべく委員会に出席して、質疑応答を順調に終了するように、この際特に私から望んでおきます。  運輸大臣並びに国鉄総裁にお伺いしたいと思います。国鉄は四十五万人という大世帯の職員を抱え、年間収支二千八百億円という事業をしておるわが国最大の企業でありますが、その財政は最近年々赤字を続けておりまして、公社の予算書にも添付されました損益計算書によって見ましても、二十九年度から三十一年度まで百三十数億円というものがすでに損失として計上されております。これは第一次再評価ベースで減価償却を行うものとした場合の赤字であります。ところが一方におきまして、行政管理庁の見解によると、国鉄の施設は戦後の荒廃から完全に復旧しており、現在の国鉄の償却は過重償却であり、二十九年度は百二十億円の黒字であるとの批判もあるのでありまして、国鉄が赤字であるか黒字であるかということは、形式的に言いますならば、減価償却をいかに決定するかによってきまる問題であります。また実際問題として幾ら資産を食いつぶし、あるいはどの程度まで安全が確保できない状態になっておるかということはむずかしい問題であろうと思います。運輸大臣または国鉄総裁は赤字というものについてどういう御所見を持っておられますか、お伺いいたします。
  101. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) お答え申します。今御指摘になりました行政管理庁ですかの意見と食い違っている点、これはまあ会計学上の見方の相違もございまして、まあそういう学問的なことはここで申し上げる必要もないのでございますけれども、いずれにいたしましても、国鉄の経営も容易でないことは事実でありますし、また償却の点などもお話になりましたように、第一次の評価の基準でございますから、今の値段から見れば、非常に低いものであるというような点も御指摘通りであります。ただこれをどういうふうに見るかということは、これは国鉄当事者がここに参っておりますから、当事者の方からお答えした方がよろしいかと思います。
  102. 十河信二

    説明員(十河信二君) お答え申し上げます。国鉄におきましては、年々大体全体の償却すべき財産の評価をいたしまして、そのおのおのにつきまして、税法上きめられました耐用年限から割り出してそれで償却をしておりますが、中にはその年限よりか早く償却、取りかえをしなければならぬものもできます。また若干はおくれて取りかえていいものもできております。そういう状態を現地に、実地につきましてそれぞれの橋は橋、トンネルはトンネル、建物は建物、それぞれの実地につきまして調査をいたしまして、そして年々これだけは取りかえる、これはまあ金がないから少し延ばそうというふうなことをやっております。そういうやり方で金が足りないものですから、だんだん見送り見送りをしてだいぶ償却不足といいますか、取りかえ不足がたまっております。そこで私どもはこれを資産を食いつぶしておるのじゃないか、赤字じゃないかというふうに見ておるような次第であります。それらの償却をすべき、取りかえなければならない施設におきましても、なるべく事故を起さないように注意をいたしまして、あるいは一時的の補強をするとか、余分の人を配置するとかいうふうなことをして、どうにか運営はいたしておりますけれども、それらの状態は長く続けることはできない、こう考えまして、できるだけ早く正常な状態に復旧したい。それにはどうしても、国鉄経営調査会の結論にも出ておりまするように、相当な正常な償却費を計上することが必要だ、それが計上できないということはそれだけ赤字になっておると、こういうふうに考えておる次第でございます。
  103. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 赤字について、昭和二十九年以前において二千数百億円に上っておると私は聞いておりますが、戦後国鉄の赤字は累計どのくらいに上るとお考えになりますか、この点も明らかにされたいと思います。
  104. 十河信二

    説明員(十河信二君) お答えいたします。二十九年三月の現状で、大体二千二百億程度になっているように存じております。
  105. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 国鉄財政の現状からいたしますならば、また答弁内容から見ましても、国鉄運賃値上げということが問題となっております。経営会の答申調査におきましても、第一案において一割一分、第二案において一割五分の値上げを提唱していることは、御承知通りであります。また、国鉄においても前々から運賃値上げの必要を説いておられるのでありますが、旅客、貨物おのおの何%ぐらいの値上げをいたしますれば、十分な償却もでき、安全が確保せられるとお考えになっておりますか。また、国鉄運賃の値上げというものは、私が申し上げるまでもなく、国民経済に非常に大きな影響を及ぼしますことも、御承知通りであります。旅客の運賃を値上げいたしますれば、たちまちこれが公務員のベース・アップの口実になり、消費の増大を招きまする結果、せっかく今日インフレなき拡大が続いておりまするのに、またインフレに逆転する危険を生ずる点もあるのであります。また、貨物運賃の値上げにいたしましても、同様で、たちまち物価騰貴の原因になりまして、ようやく明るくなりかけた輸出の好調というものを逆調に転じさせ、経済自立をますます困難にしてしまうことになりますおそれもあると思うのであります。この点について、御所見を伺いたいと思います。
  106. 十河信二

    説明員(十河信二君) お答えいたします。今お話通りに、国鉄の運賃は社会経済上に相当影響を及ぼし、また心理的にも相当影響を及ぼすものと存じます。従って、われわれといたしましては、できるだけ合理化を行い、節約をいたしまして、運賃値上げを避けるように、また値上げをするにしても、できるだけ切り詰めて、少い値上げで済むように心がけておりますが、先ほども申し上げましたように、非常に戦争中無理な輸送をし、修理を怠り、取りかえを延ばしてきておりますので、それらの償却不足資産が数千億に上っておりますような状態でありまして、このままいつまでも続けることができません。先般も経営調査会で御検討いただきまして、その結論は出ておりますから、大体その線に沿うて値上げをしていただきたいと、こういうふうに考えておるのでありますが、そのほかに、あの答申案にもありましたように、新しく税金がかけられますと、またそれだけはどうしても収支がバランスがとれなくなる、それだけはまた何とか値上げの中へ加えていただかなければならぬかと存じております。
  107. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 御答弁にもありましたが、しかし日比賠償の妥結といい、防衛費の増大等、財政面からいたします消費的支出も大きいのでありまして、下半期におきまして国際景気も頭打ちとなるという見方もあるのでございます。かかる情勢下におきまして、国鉄運賃の値上げというものは非常に重大な問題を投げかけるものであると思います。むろん私は国鉄運賃の値上げは何でもかんでも絶対にいけないというものではございません。国鉄の経営が赤字でありますならば、回り回って国民の租税負担となってはね返って参りますし、また国鉄の施設が荒廃したまま放置いたしますならば、安全輸送ができないという面から考えますならば、産業の不振を来たし、国民に大きな損害を及ぼすというようなことも考えなければならないと思います。一がいに反対をするものではありません。ただ、その程度、その時期、方法というものに問題があるのでありまして、これについては非常に慎重を期さなければならないと思います。特に三十一年度は、今申し上げた情勢からかんがみまして、値上げはすべきではないというふうにも考えられますが、また国民生活の現状からいたしまして、値上げをすべきでないという議論もありますが、この点について、国鉄総裁はどういう御所見をお持ちになるか、いま少しく明らかにされたいと思います。
  108. 十河信二

    説明員(十河信二君) お答え申し上げます。今お話の中にもありましたように、国鉄は国民に対して安全、確実、迅速な輸送をする責務を持っておるのであります。ところが、先刻来申し上げまするように、施設が不十分であり、かつまた老朽荒廃いたしておりまして、国民の需要に応ずることができないような現状になっております。鉄道は、申すまでもなく、経済の動脈であり、文化の推進力であるべき使命を持っておるのであります。しかるに、それが輸送力の不足のために、かえって経済の発展を阻害するというふうな状態に現になっておると私どもは認識いたしております。そこで私どもといたしましては、できるだけ早くこれを正常な輸送のできますように、早く回復をいたしたいと考えますが、御質問の中にもありましたように、これはその時期、方法等、総合的に政治、経済、社会各方面にわたりまして検討をいたしました上で、決定しなければならぬかと思います。それゆえに私ども政府の御決定に従って不足のところで何とかしてまかないをつけていくように今努力してやっております。いつどういうふうにやるかとこうことは、一に政府の御決定に従うのほかないものと考えます。
  109. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 答弁から聞いても、国鉄財政の現状に対処しては経営の合理化、管理組織の合理化ということをこの際徹底的に行うことが何としても先決問題というように考えられるのであります。さらに大きな観点に立って総合的な交通政策というものを打ち立てまして、その面における国鉄の受け持つべき役割を明確にしておく必要があると思うのであります。経営調査会もこの点を指摘しております。これが今日の国鉄の合理的な収入増加をはかるゆえんでもあると思いますが、この点について重ねて総裁にお伺いいたします。
  110. 十河信二

    説明員(十河信二君) お説の通り昔は鉄道がほとんど独占的の交通機関でありました。今日はそうでなくなりました。交通機関全体を総合的に見てそれぞれの適当な分野を決定していただいて、そうしてこれはこういうふうに進めていくというふうな計画を立てていただいて、その計画に従って国鉄は国鉄の分野を守っていくということが至当だと考えます。現に政府におきましてそういう審議会調査会のようなものを設けられまして、検討せられておるのでありますが、しかしながら国鉄といたしましては、現在もうすでに過当の荷物をしょわされておるのであります。今、日々国民からしりをたたかれておる、滞貨がある、あるいはお客が乗り切れないというようなことで責めたてられておるのであります。われわれとしてはいまもう少し輸送力を増さなければ、たとえ総合的の計画が立ちましても、これで過ぎるところまでは絶対に行かないと思います。できるだけ輸送力の増強、輸送の安全を確保するようにいたしたい、こう考えて、政府の総合的な政策とにらみ合せて計画を進めておるような次第であります。
  111. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 もし総裁が答弁できなければ他の方でもいいが、国鉄の国内の戦前におけるマイル数と戦後現在の増設したマイル数との差はどのくらいになっておりますか。また従業員の戦後における増員された数はいかほどであるか、給与ベースにおいて戦前に比較して幾百倍の値上げとなっておりますか。また今日の物価から見まして均斉がとれておりますかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  112. 十河信二

    説明員(十河信二君) 今の御質問はちょっと調べましてあとでお答え申し上げたいと思います。
  113. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 調停案に対する態度についてお伺いしたいが、今日公共企業体等中央調停委員会から提示をされました調停案に対しましては、国鉄担当はこれを受諾する意向であるやに伺うのでありますが、この調停案のうち暫定措置としての年度内における五千円支給を認めるといたしますならば、これだけでも二十三億の財源が新たに必要になることであります。先ほど来のような国鉄の赤字の現状からいたしまして、果してこれを認めることができる財源があるかどうか、あるとお考えでありますかどうか。すでに見込まれておる昭和三十年度の赤字額五十六億円はさらにこの分だけ増加することになると思いますが、それでもいたし方がないとお考えになっておりますかどうか。赤字を現状以上に増加させないで支給する方法が何か考案されておりますかどうか。これをお伺いすると同時に、この点の二十三億の支出に対しましては大蔵当局はどう考えておるか、これは主計局長からお伺いしたいと思います。この二つを国鉄と両方から……。
  114. 十河信二

    説明員(十河信二君) お答え申し上げます。調停委員会の調停案に対しましては、私どもでき得る限りこれは尊重しなければならぬものと心得ております。しかしながら国鉄財政の現状は先刻来申し上げますように非常に窮迫いたしております。私どもはとうていベース・アップをするだけの余力はないと思っております。ただ、今御説の中にありました五千円という一時金でありますが、これは国鉄は他の公共企業体の労働者と違いまして、〇・二五だけ給与の水準が低くなっております。これは予算以上に収入があったとか、あるいは節約をしたとかいうときには、その収入の増加なり節約なりに応じまして、これを幾分従業員に分配するという法律の規定になっております。それは毎年やっております。本年もまだ今計数を締め上げておりますので、はっきりわかりませんが、三十億ないし三十五、六億くらいの予算以上に増収があったのじゃないか、それから経費の節約も若干あったかと思います。そういうことを計算いたしまして、どの程度にこれを従業員に給与として配分できるかということを目下検討いたしております。その検討ができましたならば、政府お話をして回答をすることにいたしております。それからちょっと今の、〇・二五給与が低いというのでなく、期末手当として〇・二五だけ予定しておられる、その点を訂正いたします。
  115. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) ただいま国鉄の調停案について御質問がございましたが、国鉄のみならず、他の公社ないしは五現業等についても同じような問題があるわけでございますが、これらの問題につきましては、まず第一次的には各当事者の処理にゆだねるべきものでございまして、政府といたしましては、目下のところ静観をいたしておるという段階でございます。その間可能性、これを委託する場合委託することができるかどうかという財源の面から見た可能性の問題、影響の問題、その他各段の問題にわたりまして、目下せっかく検討をいたしておる段階でございますので御了承を願います。
  116. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 増収を見込めば三十億ないし三十五億円の増収がある、この増収は特定公社であるからいわゆる努力して増収をしたのだから、それを分配する可能性もある、こういう答弁承知しておりますが、全く働いてそれだけ増収を得たものは当然従業員に分けるということは常識上から言っても当を得たものだが、しかしそれだけあるのにもかかわらず、他とのにらみ合いからこれをのめないという状態である。また大蔵当局から言えば、諸般の情勢から十分に検討しているというのでございますが、国鉄総裁の答弁をそのまま増収の可能性あり、またそこに余裕を生じておる、また従業員が努力して必ず増収をそこに打ち出すという固い見通しがついておりますか。
  117. 十河信二

    説明員(十河信二君) お答え申し上げますが、増収をいたしますには必ずこれに伴う経費も要るのであります。その収入の増加と経費の増加とを差引いたしまして、どれだけの財源が得られるかということをただいま検討いたしておるところであります。
  118. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 数字はわかりませんな。
  119. 十河信二

    説明員(十河信二君) 数字ははっきりわかりません。
  120. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 承知しておきます。  次に国鉄の電化計画についてお伺いしたいと思います。国鉄の電化十カ年計画によりますと、三十一年度から五カ年間を第一期として約千七百キロ、昭和三十六年度から五カ年間を第二期として千六百キロ、合計いたしまして三千三百キロの電化を行い、その所要資金を二百億円と見込まれ、石炭の節約は年間二百六十万トン、経費の節約は年間九十五億円ということになっております。私が申し上げるまでもなく、国鉄の経費のうちの大きな割合を占める石炭費を節約いたしますには、電化なりディーゼルなりを促進する以外に道がないことは総裁その他の各位も御承知通りであります。また収入の増加をはかる意味からいたしまして、電化をいたすことによって利用者の増加をはかり、あるいは輸送力の増強をはかることができるのであります。いわんやこの電化ということは新線の建設と違いまして十分採算が合うのでありますから、児間資金の活用をさらにもっとこの点に向けまして、十カ年計画などと気の長いことを言っていないで、五カ年くらいに短縮し、早急に電化の実現をはかるお考えはないかどうか。また経済五カ年計画によりますならば、一般輸送力の増加率を見ましても、昭和三十五年度においては貨物一割七分、旅客一割二分の増加をはかるということになっております。この五カ年計画に合わせる意味におきましても、電化計画を五カ年計画に短縮し、早期実現をはかるというお考えがあるかどうか、またそういうことを調査研究になっておりますかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  121. 十河信二

    説明員(十河信二君) お話通り、私どもできるだけ急速に電化を進めていきたい、また電化はある区間続けてやらないとその効果は十分に上らないのでありまするから、できるだけ早く十カ年を五カ年間に短縮してやりたいのでありますけれども、いかんせん、それに必要な資金の獲得が困難でありますために、やむを得ず十カ年というような気の長い計画になっているのでありますが、何かそういう資金の獲得ができるような目当てがつきましたならば、私は今お話通り、これを半減して十カ年を五カ年間でやり上げたい、私自身はそういうふうに熱望しているものであります。
  122. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 次に少しく小さい問題でございますが、たとえて申すなら、中央線のごときは信越、東海の連絡の意味からいたしましても、また国土総合開発を促進するという意味から申しましても、観光施設の早期実現という意味から申しましても、これが電化の必要は申し上げるまでもないのであります。しかるに十カ年計画によりますならば六年か七年ののちになっております。短期間に電化ができないかどうか、電化が間に合わないというならば、ディーゼル・カーが早急にできるかどうか、またこの問題に対しては、昨年も三木運輸相に私が質問したら、まことにごもっともな問題だ、年々四百万以上の乗降客がある、そうして夏に相なりますならば、総裁や、鉄道関係の方がよく知っている通り、あのトンネルの煙の中を通るときには焦熱地獄の中を通るような汗だくであって、今でも一回通ればワイシャツのごときはすでにまっ黒になってしまう。しかるに四季観光の乗客ばかりじゃない、あるいは新潟方面、富山方面から非常な年々旅客と同時に貨物も増すような状態であるにもかかわらず、これを六年も七年も放置しておくということはまことに当を得ない問題だ、またこの点についてどういう御計画になっているか、長野県のごときには一年のうちほとんど冬のような状態にある地方もたくさんある、ここに働く方々は、寒暖の度の強くない土地からみますならば、全く夏といわず、冬といわず苦労なものであります。これらの地方に対しては特別の従業員に対して勤務手当を支給しているかどうか、もし勤務手当が支給されておらなかったならば、楽する方は楽する、苦労する方は苦労をし通しにしている。政治の常道から申しますならば、不便な土地、困難な土地を開発して、そこに産業の進展をはかるのが常道である。鉄道はどうでもいいというようなふうにほうっておくということは非常な勘違いではなかろうかと思いまして、この点を一つお伺いしたいと思います。
  123. 十河信二

    説明員(十河信二君) 先刻申し上げましたように、私としてはできるだけ早く電化いたしたいのでありますけれども、資金の面と、また先ほど申し上げました電化はある区間ずっと続けてやらないと電化の効果が上りませんので、不経済になるのでありますから、それゆえにやむを得ず十カ年に分けて、ある地方は非常におくれるようなことに相なってまことに相すまんと思っておりますが、そういうところへお話のようにディーゼル機関車を回したいと思っておりますが、何分日本ではまだディーゼル・カー、ディーゼル機関車の製作にあまりなれておりません。非常に高くつきます。また修繕も非常に金がかかるのであります。それで目下試験的に作ったディーゼル機関車でいろいろな検討をいたしております。ぽつぽつディーゼル機関車を増していきたい、そうして今お話のようにトンネルの多いような区間はできるだけ煙をなくするディーゼル機関車もしくはディーゼル動車を配置いたしまして、なるべく国民の皆さんに御満足のいくようにということを心がけまして、電化と並んでディーゼル化というものを進めております。  また従業員に対しましては、寒冷地には特別の手当を出すというふうなことをいたしておりまして、幾分困難な生活を慰めるようにいたしておる次第であります。
  124. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 夏のああいう地獄のような暑さのところを通るには、何にもないね。
  125. 十河信二

    説明員(十河信二君) トンネル手当を出しております。
  126. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 鉄道関係の各位お知りの通り、私どもの長野県は発電県であって、しかも全国発電量の一割以上を占めておる九十万キロワット以上を発電しておるのでありますが、しかるにこの電源県に一マイルの電化設備もありません。しかも料金は京浜より地方の方が高い料金を一般県民が納入しておるというような状態であります。かかる観点から申しまして、日本の人口が増加するにもかかわらず、長野県は人口が減退したのであります。長野県の産業は電気料金の値下げと、それから輸送の円滑を来たす以外に長野県の産業は伸展いたしません。またこの地に居住する各位といたしましても、その一つの難を取り除かなければ安住ができない状態であるのでございます。かような意味から申しまして、輸送増から申して電化の必要は他に先んじてやる、そうして発電県あるいは電源県であるという意味も十分にそこにお含みをいただきまして、国の施設を行なっていただかなければならないと思うのでございます。これについて重ねて御所見をお伺いしたいと思います。
  127. 十河信二

    説明員(十河信二君) まことにごもっともでございまして、私どもも同様に心得ております。努めて御希望に沿うように努力いたしたいと存じます。
  128. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 次に、国鉄の経営の合理化の一端として、工場についてお尋ねしておきたいと思います。全面的に再検討をするということ、また研究するということを承わっておりましたが、御承知のごとく現在吉田と長野市に国鉄の工場があるのでございます。ことに戦時中狭隘というようなことで用地を特別低廉に提供させまして、それぞれの工場をここに設置いたしたことはこれまたお知りの通りであります。しかるにその後拡大もしなければ、そのままの建物で、働くものはきわめてまじめで、労働賃金も低い。ただ電気料が値上げされておりますから、その率からいって採算上どうかと思いますが、他には非常によい成績を出しているということを見ているのでございます。しかるにこの工場がだんだん大宮その他の方へ分割されていくというようなことも聞いております。そこに働く従業員としても、また工場設置の最初の目標からいっても、はなはだそれと相違を来たすような現状に追い込まれつつあるのでございますが、これを内容の拡充強化をいたし、時代に適合する工場として増設あるいは拡大、工場の近代化をはかる設備を行う御意思があるかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  129. 十河信二

    説明員(十河信二君) お答え申し上げますが、鉄道の近代化をはかりますために、先刻来申し上げますように、大体私の大ざっぱの考えでは、二万キロの鉄道を一万キロは電化する、一万キロはディーゼル化する、こういうつもりでいろいろ検討をいたしております。鉄道を近代化いたしますその一番おもな近代化は動力の近代化であります。機関車の近代化が一番大きな近代化になるのであります、機関車車両の近代化が。従いまして、工場をまた近代化する必要がある。今までは蒸気機関車でやっておった、それを今度は電気機関車にし、今までは普通の客車であったものをヂィーゼル動車にする、そういうふうな結果工場を一応再検討して、どういうふうに近代化すればいいかということを研究しなければならぬ、こう考えまして、工場調査委員会のようなものを設けまして今始めたばかりであります。
  130. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 長野工場はどうします。
  131. 十河信二

    説明員(十河信二君) 長野の点は、これを大宮に持ってくるとか何とかいう考えはもちろんありません。ありませんが、最近都市が非常に膨張いたしまして、都会の端にあった工場が都会のまん中にあるとか、あるいは駅の改良をするとか、都市計画をするという際に工場を動かさなければならぬというような関係もありまして、長野は吉田の方へだんだん移転する計画になっていると思うのでありますが、大宮の方へ動かすという考えは今のところ持っておりません。
  132. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 大体におきまして、総裁の御答弁をお聞きいたしますときに、電化問題は俗に言う高いところへ持ち込む、採算がとれる方へ先に施設するというようなふうに想像されるのであります。少くとも長野県のこの問題はもう甲府まで行って、十数年来叫ばれている問題であって、電力の発電県であって、そうしてこれを利用してここに地方産業の開発はもちろん、あらゆる式の施設ができるにもかかわらず、どうも経費がないから六、七年の後になるということははなはだ納得ができない。私はこれらの点に十分なる力と申しますか、政府の施設を行なって、それぞれ産業開発における国民の均等的潤いを与えて、国の全体から見て、国民のあらゆる生活の安定とそれから産業の開発をはかるのが当を得た問題であろうと思います。重ねて総裁並びに関係局長各位に対しまして、中央線電化の促進に対して一日も早く実現するよう強く要望をいたしまして、私の質疑を終ることにいたします。
  133. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは二時半まで休憩いたします。    午後一時四十分休憩      —————・—————    午後二時三十八分開会
  134. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を再開いたします。  一般質疑を続行いたします。
  135. 加藤正人

    加藤正人君 外務大臣お急ぎのようでありますから、なるべく時間のかからぬように質問いたします。  昨年来アメリカにおきまして、わが国の綿製品の輸入を制限せんとする動きが表面化いたしまして、これが大きな問題となっていることは御承知通りでありますが、この動きが本年に入って一段と活発になってきたという情報が、現地からもたらされておるのであります。ただに一綿業の問題としてのみならず、わが国の輸出貿易全般に大きな影響をもたらすものとして、また、かつは日米間の友好関係を維持していく上からみても、はなはだ憂慮にたえないのであります。今日アメリカは業者間の問題ばかりでなく、国会に問題が移りつつある。アメリカでは何でも議員が個人的に法案を提出することができるそうでありまして、これに関連した法案が非常に多数出ておるということであります。現在までに示された米政府当局者の理解ある態度には敬意を表するものでありまするが、大統領選挙を控えまして、今後の成り行きは必ずしも楽観を許さないものがありますので、外務、通産両大臣の見解を伺っておきたいのであります。われわれがかかるアメリカ民間業者の動きを不当とするゆえんのものは、次の理由からなるのであります。  その第一は、わが国の綿製品の対米輸出は、米国綿業者に大きな打撃を与えるというにはあまりに僅少であります。すなわち米国の需要は年間実に百億ヤールであると言われておりますが、これに対しまして、わが国よりの輸出は僅々一億数千ヤール、一%余りに過ぎないのでありますが、反面わが国は米国綿花の最大の買手であり、しかも他国の綿に比較して著しく割高である米綿を極力輸入するように努力しつつあるわけであります。  第二は、しかもわが国は米国におけるこのような動きを重大視いたしまして、先にとりあえず一時対米輸出を停止いたしましたが、今回さらに本年一月一日から輸出調整措置をとりまして、米国向け綿布の輸出総量を一億五千万平方ヤールに押えることにしておるのであります。このことは特に米国向け製品の生産に当っておるわが国中小工業者にとりましては多大の犠牲でありまするが、しかしながら当面の利益のために日米間の長い将来にわたる友交関係を傷つけることのないよう、ひとえにアメリカとの健全な貿易関係の維持を念願するためにほかならないのであります。  第三といたしましては、そもそも日米の貿易関係は日本側の輸入超過を大きな特徴といたしておりまするが、戦前はこの輸入超過はアジアその他に対する輸出によってバランスされておったのであります。戦後はアメリカからの輸入が激増するのに反しまして、アジア方面への輸出は賠償問題の未解決、ココムの制約その他種々の障害のために遅々として回復いたしません。わが国の貿易均衡のかぎと申すものは、対米輸出の増進にかかっていると言っても過言ではないような現状であります。売るためには買わねばならない、買うためには売らねばならない。これはきわめて簡単な貿易の原理であります。これを人為的に妨げない場合にのみ貿易は発展し、世界は繁栄するのであります。  また第四といたしましては、米国において対日輸入制限が実現いたしますれば、米国綿業に比してはるかに困難な事情にあるところの多くの国々の綿業者が、これにならって一斉に対日輸入制限を主張し、ひとり日本綿業のみならず、日本経済全般に対して重大なる悪影響をもたらすことはこれは明白であります。  以上申し述べましたわれわれの主張は必ずや米国関係方面の十分の理解を得るであろうということを私は期待してやまないのでありまするが、現地からの情報はまことに楽観を許さないのであります。日本政府といたしましても、従来から多大の関心をもって事態の解決に努力されてきたところでございまするが、この機会に参考までに政府としてはどのように努力し、その結果としての見通しはどのようなものであるか。また日ならずして来日されるダレス長官に対して、この問題の解決について何らかの話し合いをされる用意があるかどうか。まず、この点について外務大臣または通産大臣に質疑をいたします。
  136. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) お答え申し上げます。日本の対米輸出品のうちで特殊の綿製品等に対して、米国内での利害関係者において、日本からの輸入を制限する必要があるといって主張する者がありまして、さような方面から米国の議会方面に働きかけて、制限法案を成立せしめようとしきりに動いておる運動があるのはお話通りでございます。そして日米両国の貿易関係の全局について、るるお話がございました。その御趣旨はわれわれも大要において全然御同感でございます。そういうわけでございまして、日本側もでき得るだけ自制をして、米国の方に異論の起る原因を防ぐように今やっておることは、これまたお話通りでございます。従いましてさような誠意を示しつつ、かような制限法案が議会を通過するというようなことのないように、外交機関といたしましても、ワシントンにおいて、ニューヨークにおいて、また米国内のその他の領事館においても間接に、それと同時に東京におきましても十分に米国側に目的を達するように働きかけておるのでございます。その結果とは申しませんけれども、米国政府はよく日本との関係、政治的関係も経済的関係も、その重要性を十分認識をいたしまして、そしてその法案の運動者に対してダレス長官自身の名をもって詳細に態度を明らかにされておることは、あるいはお耳に達しておるかもしれませんが、そのダレス長官意見はずいぶん各方面を論じておるのでありますが、全体的にかような処置は日本とのために必要はない。日本が十分そういう点については誠意も披瀝しているし、また日本との関係においてさような通商の制限をするということはよくないという結論で、これを実際において阻止しておるような態度でございます。さような見解は大統領自身においても表示したことがあるようでございます。さようにしてこの米国における綿業関係の、日本綿業に制限をしたいという方面の運動は、今日まで阻止することができておるような状況でございます。今後どうなりますということを今はっきり申し上げることはむしろ差し控えなければなりませんが、さようなことが今後実現しないように各方面において努力をやらなければなりません。また外交機関といたしましては、それに手ぬかりのないように努力をいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  137. 加藤正人

    加藤正人君 外務大臣のおっしゃった通りでありますが、今まで米国は、自由置場主義の国であって、輸入の制限というようなことはかつてやったことはないのでありますが、何かこの動きによってはあるいは今度が初めて日本の綿製品に対してそれが行われるようなことになりますと、まことに国際貿易の上においてはなはだ遺憾であります。わが国が非常にこれがために打撃を受けるばかりではないと思う。それで私はここでお聞きしたいことは、最近せっかく来られるダレス長官に対して、非常に時間が少いために、いろいろ会談の内容も制限されるようでありますが、この問題は相当大問題でありますから、これは記者会見でも岸幹事長が発表を避けておるようでありますけれども、この点についてせっかく来られるのでありますから、一つ政府として直接ダレス長官にこの点を強調していただきたいということをここで希望を申し上げます。
  138. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 今、この問題に対してダレス長官が来られる場合に日本側がいろいろな主張したらよかろうというような趣旨のお話を伺いました。私どもも全くそう考えておるのでございます。ただ問題は、ダレス長官が来て、米国側においては東亜方面における公館長会議をするのでございまして、相当時間を米国自身も必要としておるようでございます。従いまして日本側との話し合いに十分の時間をさくことができるかどうか、今打ち合せ中でございます。いずれにしても滞在期間が非常に短うございますから、十分のことは、思い通りのことはできかねるように思うので、この点は遺憾でございますが、時間を十分利用して、日本側のいろいろ希望事項を十分に述べるつもりで今私は用意をいたしておる次第でございます。
  139. 加藤正人

    加藤正人君 時間もあまりないようでありますけれども、しかし重大な問題を一言も言えないほど時間がないというわけでもないと思いますから、努めてこの点に直接触れられることを重ねて希望いたします。  もう一つ外務大臣に伺いたいのですが、ビルマ、フィリピンを除きまして、自余のインドネシア等との賠償問題はいかように話し合いが現在進められつつありますか、簡単でもよろしゅうございますが、その点について御答弁を願います。
  140. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) ビルマの賠償はすでに協定済みでございますし、フィリピンもまさに協定ができんとしておる状況でございます。その他の賠償問題といいますならば、インドネシアに対する賠償でございますが、これはまだ交渉に着手をいたしておりません。フィリピン賠償が妥結を見ましたあとは、さっそくその方面に取りかかろうと考えております。その他の国のこういう問題の関係は、いろいろその他の国が、賠償でなくても日本に対する要求問題がございます。額の大小がございます。非常に大きな額ではございませんけれども、そういうものがございまして、それらのことについては次々解決をいたしたいと、こういうふうに考えて処置をいたしております。タイとの特別円等の問題はこれまた発表いたした通りでございます。その他オランダとの問題は大体解決して、これまた発表をいたしました。その他の国の問題と申しますれば、インドの関係もございます。スペインの関係もございます。これらは逐次手をつけたいと、こういうふうに考えております。
  141. 加藤正人

    加藤正人君 逐次解決に努力されておることを承わりましたが、あまりこれが遷延いたしましても、実害の大きくないところもありますが、インドネシアのごときは日本の綿製品の輸出の約三割方の輸出先でありまして、非常にこれは重要な市場であります。こういう方面に対して輸出の焦げつきのために輸出を制限しておるというようなことが長く続きますと、せっかく開拓したこれらの市場をみすみすほかの国々に取られてしまうという非常に損害がありますので、賠償が停頓しておりますためにその他の通商面において非常に損害がありますことは御承知通りであります。ぜひとも特にこのインドネシアとの賠償交渉をお急ぎを願いたいとわれわれは希望しておるわけであります。私の外務大臣に対する質疑は、お急ぎのようでありますから、この辺で端折りまして、先ほど日本の綿製品輸入制限の問題について通産大臣の御所見を承わりたいと思います。
  142. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 先ほど外務大臣からお答えした通り加藤委員お話はもうわれわれも全然同感であります。これはしかし大体において向うの業界の動きから起っておることなんでありますから、日本の綿業その他日本の産業についての実情を十分宣伝をし、了解を求め、そう日本の綿業に対して恐怖心を抱かなてくもいいというような方向へ持っていくことが必要だと存じまして、そういう努力はいたして、在外公館は言うまでもありませんが、商工会議所、あるいはまた最近も、この間もたしか見本市のためにアメリカの実業団が参りましたが、そういう機会にもわれわれはあらゆる機会をとらえてそういう話をし、彼らの了解を求めるようにしておるわけです。幸いに向うでもわかっておる連中は、そういうつまらない動きはすべきでないという考えを持っておりますから、今後あるいは非常に悪化して大事に至るようなことはもうおそらくあるまい、かように考えております。なお一つ努力をいたしたいと思います。
  143. 加藤正人

    加藤正人君 わかっておる人間は大したあれもないでしょうが、わからない人間がある。なかなかアメリカは世論の国でありますから、それをわれわれは心配しておるわけであります。わかっておる人間の一人であるダレス長官が辛いに来るのでありますから、先ほど外務大臣に申し上げましたように、ぜひ一つ通産大臣もお会いになって、この点を力説していただきたいと思います。重ねて御答弁を願う必要もないようですから、衆議院の商工委員会の方においでを願います。  次に大蔵大臣に御質疑をしたい。わが国の最大市場であります東南アジア諸国の経済開発の重要性につきましては、ここにあらためて指摘するまでもなく、政府におかれましてもここ数年来声を大にしてこれを力説してきたところでありましたが、賠償その他いろいろな事情があったにせよ、遺憾ながら単なるかけ声に終ったことは否定し得ないところであります。ところが御承知のごときソ連の最近の新しい動きから、これらの地域が今や米ソの経済援助競争の舞台となりつつあるのでありまして、最近理事会が行われましたあのSEATO機構そのものも、単なる防衛問題だけでなく、遂に経済問題にも触れざるを得なくなったような次第でありまして、この東西の競争の結果いかんは、わが国にとりましてもまことに重大であると同時に考えようによりましてはわが国に与えられたところのこれはまことに絶好のチャンスだということも言い得ると思うのであります。従いまして、われわれは従来のごとく、ただ座してたなぼた式に幸運を待ち望むような態度は改めまして、積極的にみずから進んでアジア開発の構想を打ち出して、米英その他自由国家群と協力いたしまして、これを推進していく心がまえが何よりも必要であると思うのであります。この意味におきまして、私は従来の政府の態度、これは従来、単に鳩山内閣だけではない、鳩山内閣を含めた従来の政府の態度というものがはなはだあきたらないと思う次第でありますが、偶然にも一昨日の新聞を見ますと、一萬田蔵相に新しい構想がある、これをまずダレス氏に提案されんとする意向があることを承知いたしまして、まことに同感を禁じ得なかったのであります。そこで蔵相に伺いたいのでありますが、従来から未開発国の開発促進のためにありますところのポイント・フォアあるいはコロンボ・プラン、また近くは余剰農産物をもってする経済援助、あるいはICAの兵器にかわる民生物資による援助等々、いわばいろいろのあの手この手が考えられてきたわけでありますが、今またさきに来日いたしましたエリック・ジョンストン国際開発顧問団議長のアジア開発公社の構想が明らかにせられまして、わが一萬田蔵相からこの構想を小型にしたようなと思われる構想が打ち出されたようであります。そこで伺いたいのでありますが、従来のコロンボ・プランなりポイント・フォア計画なりがはかばかしい効果を上げ得なかった原因はどのような点にあったのか、しかしてこれらの原因と連関しつつ、今回のジョンストン構想なり一萬田構想なりの具体的な内容はどのようなものであり、コロンボ計画等との関係は今後どのようなことになるのかということを伺いたいのであります。そこでジョンストン氏はこの間参りましたときに記者団に対しまして、コロンボ・プランは規模が小さい、これよりはるかに大規模な開発計画を進めようというのが提案のねらいであるということを説明しておったのであります。しかしここで注意したいことは、従来のコロンボ・ブランなりポイント・フォア・プランなりがはかばかしい実績を上げ得なかったというゆえんのものは、これらの計画には植民地主義がつきまとっておるというように受け入れ側には受け取られていたからにほかならないと思うのであります。そこで新しい構想を打ち出す以上は、これらの点に慎重なる配慮を加える必要があるわけであります。ジョンストン氏にこれらの点について質問するわけには参らぬのでありますが、大蔵大臣が打ち出されたところの構想では、これらの点を、つまり民族意識を害さないための配慮が具体的にどのような形で考えられておるか、これにあわせてその構想の全貌を具体的に伺いたいのであります。  もう一つはジョンストン構想は、わが国の賠償の解決にも側面的に寄与することなり、大へんその点はけっこうでありまするが、資本金は十億ドル単位の大掛りなものが考えられておるようである。その全体の五〇%はアメリカが出資し、残りの五〇%は三カ国、つまりアジア自由主義国家から出すということになるようでありますが、かりに資本金が十億とした場合において、わが国がどの程度これの出資、負担するかということが妥当であるかということをどう考えられておるか、どの点が妥当であるかという点をどう考えられておるか、またアジア自由主義諸国のほかに西欧諸国もやはり出資に参加することがあるのかどうかということを承わりたいのであります。これらの点について……。
  144. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。  コロンボ・ブラン、ポイント・フォア、それぞれそれ相応に実績を上げておると私は思っておるのでありますが、しかしまだ思うようにいかない点もあったろうと思うのですが、私の考えでは、この東南アジアには豊富な資源を持っておる。さらにまた人口も非常に多くある。しかるに一番困っておるのは、いわゆるこれらの国々が概して、——はなはだ外交辞令としては当を得ないかもしれませんが、概して言えば貧乏しておると、こういうふうに私は思うのでありまます。従いまして、何としてもこの豊富な資源を開発して、これらの国民に購買力を与えるということが、ひとり経済上ばかりでなく、お説のような政的な見地から見ても非常に重大である。ところがその資源の開発に一番困っておるのが、やはり資金が乏しい、資本の蓄積がない、ここに問題がやはり集約されると私は思います。ところがお話のようにコロンボ・プランやその他の計画が必ずしもはかばかしくかりにいかないとすれば、その原因はやはり私は東南アジアの民族的な意識という点に関係があるだろう。それは具体的には昨年の五月にシムラでコロンボ・プランのメンバーがお集りになりまして、そしてアメリカの一億ドルの援助を受けるかどうかということを協議した場合にこれを断ったのでありますが、やはりその際に民族的な意識が強く反映して、これを受けるといろいろと何といいますか、指図を受けるような結果を生ずるのではないか、またその国々の間のいろいろな希望の調整が困難である、そういう点もあったのであります。まあそういうところに、従いまして私は東南アジア諸国の開発に資金を供給する場合には、この民族意識を非常に注意をしなければならない。そこで一番私はこういう場合にいいのは、やはり国連という機構を通じての東南アジアの開発ということが可能であれば、それが一番いいのではないかと、こういうふうにまあ従来から考えておったのでありますが、そういうふうにも必ずしも……、エカフェというのもありますが、直接にこの開発に出るわけでもありません。それで今回まあ考えておりますのは、これは私のまあ考えであります。アメリカの出資、特にアメリカでは大統領が一穂ドル、東南アジアの援助に手持ち資金を持っております。ですから、この金とコロンボ・プランから同額に近いものを出す。さらに日本もこれに参加する。そして東南アジア諸国は資金がないから、そういう資金を利用しようとするのでありまするが、しかし参加する余地は十分残しておく。たとえば未払いをとっておいて希望に応じていつでも参画はできる。こういうふうな形にしておきまして、この資金をもって東南アジアの開発に当ることが適当じゃなかろうかと、こういうふうな構想でありまして、その際に私は、やはり地下資源の開発ということが中心でありまするが、しかし同時に東南アジア諸国の中小企業、東南アジア諸国はとにかく中小企業というものから成り立つと思いますので、この中小企業というものの健全な発達をしていくような方向にこの資金を使うというのも一つの新しい私は考え方ではなかろうか。まあ東南アジアといえば、常に大企業資源の開発に向うのでありますが、しかしまた中小企業という点も考えてみるのが必要ではないか、こういうのが私の考え方でありまして、まだしかしきちっとした構想にはなっておりません。  それから先般参りましたジョンストン氏の構想についてのお話しがありましたが、私が同氏に会って話しした限りにおきましては、まだまとまっておりません。大体私どもが今申しました、考えましたようなことを話しした場合に、自分もそれは非常に賛成である。新聞を見ると十億ドルというような、私もちょっと拝見したのでありますが、私が直接接触した限りにおきましてはそういう金額の表示もありませんでした。まあ十分考えて、なおかつこれを実現するのには、やはり時を要するというような意向もあるようであります。この構想はしかし何も新しいことではないのでありまして、もう数年来しばしばこれを唱えておるのでありまするが、しかしまあアメリカの方におきましていろいろな理由もありまして、東南アジアに対する援助といいますか、あるいは資源の開発等の資金の供給は、個別で具体的なケースをとる。ケース・バイ・ケースでやるのが過当であると、こういうふうな方針であったのであります。若干、最近の国際情勢も関係したとみえまして、若干そこに考え方が変化しつつあるやに看取されますので、私はこの機会に広く従来の主張についての理解を得たいと、まあかように考えて今努力をいたしておるわけであります。
  145. 加藤正人

    加藤正人君 いろいろな開発、あるいは経済援助の企てがあるようでありますが、それが多くはみな受け入れ国側では、何か植局地主義の政策のように受け取られて、従来も援助資金の相当な額を出したのであるが、その額だけに効果が少なかったということで、今回はこういう機関を通して行うという、大へんこれはけっこうなことでありまして、アジア開発の一翼をになっておるわが国として、こういう機会に協力して、そしてまたこの機関の出資のうちの五〇%、アジア自由主義国家群の負担する金額、資本金に対して日本の賠償金が利用されるというような便宜もありますし、かたがた大へんけっこうだと思うのであります。実現をわれわれはぜひこい願っておるのでありますが、最近の情報によりますと、何かアメリカの国務省のスポークスマンが何かの言としてあのジョンストン・プラン、機構ということは、構想というものは、アメリカ政府はあずかり知らぬのだ、個人的の考えを言っているのだというふうなことで、われわれは何か水をかけられたような気分がするのであります。せっかく一生懸命われわれ、また大蔵大臣が今のようなお話しがあっても、根本がそんなことでははなはだたよりないと思うのでありますが、その点について何かはっきりした情報を持っておられるかどうか、さらにその点について御回答願いたいと思います。
  146. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ジョンストン氏の考え方につきまして、アメリカ当局はどういうふうな考え方あるいはまたバックを持っておるか、私これは存じません。私も日本タイムスで今お話しのような記事が載っておるのを拝見いたしたのでありますが、これは従来の、先ほど申しましたようないきさつからすれば、アメリカ政府当局としてジョンストンの言葉に、まあジョンストンの構想も先ほど申しましたようにきわめて漠然としたもので私にあったのでありますから、ただ雰囲気が少し変化しつつあるというふうに私は看取した程度でありますから、従ってアメリカ政府としてもそう、あれはあれでいいのだというふうには参らないであろうと、私も新聞を読みつつ考えたのであります。が、しかし、これはこのような考え方はアメリカ政府においてもこれはもうずっと前から検討されておるということは私も承知いたしておるのであります。ただアメリカの議会方面においてはなかなかむずかしい点もあるというふうに聞いておるのでありますが、まあそういう点は私も責任をもって申し上げるだけの資料を持っておりません。
  147. 羽生三七

    ○羽生三七君 防衛長官がお急ぎのようでありますので、先に防衛庁関係の御質問をいたします。  このMSAの援助は大体今後どの、いつごろまで受けるつもりであるか、まずそれからお伺いいたします。
  148. 船田中

    国務大臣(船田中君) ただいまいつまでとおっしゃられても、ちょっと私の方も今のところでは、まだいつになったらやめるかというようなことについてまだ考えておりませんので、当分続くものとして計画を立てていきたいと思っております。
  149. 羽生三七

    ○羽生三七君 そこで、今後受けるMSA援助のこの陸海空全般に関する兵器、資材、装備、こういうものを日本円に換算する場合、三十年度、三十一年度、それから防衛六カ年計画の最終年度まで大体日本円にしてどのくらいになるのか、それを承わりたいのでありますが、三十年度まではここに出ております。三十一年度からです。大体三十年度においては八百四十七億一千百万円ですか、出ておりますが、これは三十一年度から六カ年計画の最終年度まで、内訳はよろしゅうございますから、つまり防衛庁の、日本の防衛庁予算以外のつまり軍関係費目、費用、率直に言えば、アメリカから援助を受けるものの日本円に換算したその見込額をお知らせ願いたいと思います。
  150. 船田中

    国務大臣(船田中君) 昭和三十一年度におきましてMSAによる援助の期待額は約五百三十五億円でございますが、その以後の計画についてはまだ具体的なものをもっておりません。
  151. 羽生三七

    ○羽生三七君 私がなぜこれをお伺いするかといいますと、これは政府でもすぐおわかりになると思いますが、防衛六カ年計画で、先ほど同僚古田君からも議論されておったような自衛隊ですね。陸上自衛隊、それから艦艇その他航空機等、そういうものの人員とかそれからあるいはトン数とか、機数とか、そういうことを私は今ここでお尋ねしようとしておるわけでないので、これが防衛六カ年計画の最終年度において、当然永久に受けるわけじゃないのでしょうから、日本負担になるわけです。日本の自前でこれをまかなうことになるのだと思いますが、しかし今明年度の五百三十何億だけお示しになりましたが、私は今後何年後にはこれだけの数、たとえば自衛隊についてはこれだけそのうち地上軍については幾ら、海軍については幾ら、それから空軍については幾ら、そういう目的をもってそれを達成したいけれども、いかんせん、日本の国内における財政上の制約があって、年々こういう制約と受けている。だから今後アメリカからどれだけ援助を受けなければならぬ、しかし日本予算上の処置が許されるならば、何年後にはMSA援助を打ち切って、自分でこれをまかなうようにせにゃならぬという、そういう一応の目的がなかったら非常におかしいと思うのでありますが、私何もあなたから金額を正確に言わして、それを種にどうこうということは全然考えておらない。日本の経済の将来を考えて若干検討してみたいと思いますので、一つ率直にお答えを願いたいと思うのであります。
  152. 船田中

    国務大臣(船田中君) 今お尋ねの点は、まことにごもっともでございますが、これもこの席からたびたび申し上げましたように、昭和三十五年度の最終目標というものは、一応防衛庁試案として持っておりますが、それを達成するのにつきまして大体器材あるいは艦船、兵器等諸度調弁に属しまするものは、大部分を米側の供与に仰ぎたいということで考えておりますが、しからば、具体的に年次計画にどれだけ予定しておるかということになると、三十一年度におきましては、ただいま申し上げたようなことでありますが、三十二年度以降の年次計画というものもまだできておりませんし、従いまして米側にどれだけのものを要求するかということにつきましては、まだ具体的なこちらの希望額を持っておりません。この点はどうぞあしからず御了承願います。
  153. 羽生三七

    ○羽生三七君 それの数字を持っておいでにならぬということと、お出しにならぬということは、まあ御都合があるでしょうが、私は逆にこっちから言えると思います。こっちから考えてみて、大体普通の何か官庁で買う物資ならストックがききます。ところが兵器関係におきましては、年々兵器の進歩というものがあると思います。だから向うがオネスト・ションなり誘導弾を——私はそんな攻撃がないという立場に立っておるのですが、かりに政府の立場に立って、オネスト・ジョンなり、誘導弾を相手が使うということになると、日本もそれに対応する兵器を使うということになると思います。今の政府は。そうしますと、アメリカから払い下げを受けた、いわゆる供与を受けたものだけは、たとえばMSA援助を受けている間だけはそれでいい、あとはそのストックをかかえておいていいということではないと思うのであります。MSA援助がなくなれば、日本の自前の予算でまかなわにゃならぬし、MSA援助がある場合でも、たとえば今度スイスから買う何ですか、誘導弾の関係兵器とか、そういうように自分でまかなわにゃならぬものがあると思うのです。でありますから、そういう場合に、あなたの方で数字をお出しにならなければそれでかまいませんが、しかしここに出ておる昭和三十年の供与受領実績ですね、三十年度の受領実績が八百四十七億一千一百万円、三十一年度が五百三十五億と一応言われましたけれども、まあこれが年々ふえてくる。最終年度にどれだけになるかわかりませんが、実際問題として防衛庁の経費、この場合には自衛隊、それからもう一つは防衛分担金それから施設の供与そういうものを全部合した日本の防衛関係総予算額にプラスMSA援助がなくなった場合の日本の自己負担額というものを考えた場合に、果して実際日本の現在の経済で、民生を圧迫することなしにやっていけるかどうかということに私は必ずぶつかると思うのです。これは大蔵大臣もお聞き願いたいと思う。民生費を削減することなくして、防衛力の増強なんというものはできるわけはないのです。そうでなければ、永久にアメリカのMSA援助を受けなければならぬMSAの援助を永久に受けなければならぬことになると思うのです。独立国家がそんなばかなことはないというのはむしろ政府の議論ですから、それならば独立国家になった場合にはむしろ援助を打ち切って自前でまかなう。しかし自前でまかなうならば、明年度すでにMSA援助の打ち切りを打ち出すならば、すでに五百三十五億の予算を増額しなければ、本年度においては八百四十七億一千一百万円を今のこの防衛庁経費プラスこれだけをせんならぬ。それだけは増税しなければ、当然民生費に食い込むわけです。でありますから、この問題ははっきりしないで、出たとこ勝負の防衛予算というものは、将来の日本の経済のほんとうの姿というものを想定した場合に、非常な、何というか、不健全なものだと思うのです。私は防衛庁予算を何も正常予算として普通予算に繰り込んで、それを健全財政の中の一環に防衛予算を入れこむということを言っておるのじゃないのですが、いずれにしても、民生費に食い込むことなしにMSA援助を打ち切って、自前で日本の防衛をやるということはなかなか不可能だと思うのですが、これはいかがでしょうか。先に防衛庁長官の御意見を伺いたいと思います。
  154. 船田中

    国務大臣(船田中君) 防衛体制を整備するということにつきまして、今御指摘のように、防衛生産を十分考えていかなければならぬことは、これはもうその通りでございまして、(羽生三七君「それは違う。私は防衛生産じゃない」と述ぶ)それにつきましては、私はまたその点を非常に心配をいたしております。しかしただいまお話のございましたように、アメリカの方の、どれだけの供与を受けるか、またそれが打ち切られた場合において、国費の方にどれだけ食い込んでいくか、こういうようなことにつきまして、先ほど申し上げましたように、三十二年度以降につきまして、年次計画もできておりません。従ってアメリカ側にどれだけのものを要求するかということも、実はまだ案をもっておりませんので、ここに正確に申し上げる段階にまだ至っておらないのであります。しかし、防衛関係の経費が極端に民生を圧迫するような程度にいくとは考えておりません。現在大体平均国民所得に対して二%強でございまして、これを同じ敗戦国であるヨーロッパのドイツあたり、あるいはイタリア等に比較いたしましても、所得ではおそらく八%余、総予算に対する割合におきましても、一昨年度におきましては多分三五%ぐらいになっておると思います。イタリアにおきましても、国民所得に対して四・五%ないし七・八%ということになっております。それらの事情を勘案してみたときにおいて、わが国の防衛体制の整備のために二%強を支出しておるということは、それほど民生を圧迫するとは私考えませんし、また今後におきましても大体この防衛費がにわかに膨張するということ、そして民生を圧迫するというようなことにはなるまいと存じます、またならぬようにいたして参りたいと思っております。
  155. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。ただいまのお答えは、私はまったく同じ心配をいたしておるのであります。やはり防衛関係につきましても、あの協定にも明らかでありますように、日本の国力に応じてやる、また今日の防衛というものは、一国の社会の秩序を保つというようなことが非常に基本的になる、単に向うの国と鉄砲を撃ち合いして、そして国の安定を守れるというものでも必ずしもないような状況下にあります。従いまして、財政当局といたしましては、常に国力に応じてその力を財政全般の上に均衡を保って配分をするというような考え方であります。ただいまの一番問題のある点は、ある一定のたとえばMSA援助を受けて日本の防衛体制が一度ある段階に来た場合、これを独力で維持することが果してできるか、非常に日進月歩じゃないか、取りかえもしなければならない、その場合にどうなる、こういうような点が心配されるのだと私は思うのであります。私も同じ考えを持っております。またそういう場合においては、自力で取りかえ、維持ができる、すべきである、維持費は自力でできるというところにいかなければならぬ。それが国の財政当局としては、なかなか防衛計画、長期計画というものに容易に同調しない、よほど慎重に長期計画は考えていかなければならないということになるわけであります。
  156. 羽生三七

    ○羽生三七君 私はどちらかと言えば、今の大蔵大臣の御答弁を支持するのです。必ずしも一致しておるわけじゃないが、その方が正しいと思うのです。防衛庁長官は職務の関係上そう言われるのはやむを得ないと思いますが、あなたは二%幾らは必ずしも過大ではないというお話がありましたが、これは私もドイツへ行って見て参りました。イタリアも見て来ました。みんな見てきましたが、それがああいう蓄積のあった外国と、破壊はかなりひどいものですが、実質的には国家的蓄積のあった国と日本のような国とでは全然違う。日本のように樺太も、台湾も、満州も、朝鮮も、いわゆる旧植民地を失った国とは事情が全然違う。大体戦争になるまでの蓄積のなかった日本でありますから、今の二・二というものは過大であるとかないとか言われてもこれは外国と比べて標準になりません。私の言うのはそれだけじゃないのです。その場合にたとえば本年で言うならば八百四十七億が、MSA援助がなければこれはプラスになるでしょう。当然プラスになる。それだけ内政費を食うわけです。こういう形でいけば、いつまでたってもMSA援助を断わるときがないわけです。断わるときがあるとするなら、その部分だけは当然内政費に食い込んでくる。でありますから、もしそれを内政費に食い込ませないように、政府当局がお考えになるとするならば、それは防衛というものは一定の線を引いて適当のところで押えねばならない。そうでなければ兵器の発達に応じて新しい兵器を作ろう、それに対抗して新らしい何か資材を要求しよう、装備もその通りにしよう、施設もその通りということにするならば、これは私が今申し上げましたように当然民生費を食う以外にないし、民生費を食わないとするならば、今後しばらくアメリカの援助を受けなければならないという自己矛盾に政府は陥いると思うのですが、その辺どうでありますか、もう一度防衛庁長官の見解を伺いたい。
  157. 船田中

    国務大臣(船田中君) 防衛の責任者といたしましても、決して国力を無視して理想的な防衛体制を整備しようというようなことは考えておりません。常に財政の状況、それから経済の事情、ことに民生の安定とのバランスをよく考えて国力に相応した最小限度の防衛体制を整備していきたい、こういうことでございます。それでアメリカからの援助につきましては、これは現在のところ相当な援助を受けておりますし、また先ほども申し上げましたように、防衛庁の試案を達成するためにも、今後相当程度のアメリカの供与を受けなければならない。ことに初度調弁に属しますものは供与を受けなければならないと考えております。またアメリカの方としても、今にわかにこれを打ち切るというようなことはなかろうと存じておりますので、まずしばらくは続くものと考えまして、またそのアメリカの供与によりまして最小限度の防衛体制を整備するようにしていきたい。一方防衛生産の問題につきましても、できるだけ国産化をはかっていくようにいたしまして、そうしてこれは午前中のこの委員会におきましても企画庁長官から申されたように、今特に防衛生産について特殊な扱いはいたしておるわけではございませんが、しかし一般の産業の中におきまして、できるだけこの方面においても国産化でまかなっていけるものはまかなっていくようにいたしたい、かように考えておるわけであります。
  158. 羽生三七

    ○羽生三七君 ただ誤解のないように申し上げておきますが、私は日本で防衛生産を発展さしてですね、アメリカのMSA供与にかわって日本で自己生産するならば事足りる、そういう議論ではないのでありますから、これは誤解のないように願っておきます。  それからこれはまあ一つ議論になるのですが、MSA援助を打ち切る時期は想定できないとしても、それから先ほど来、まあ先ほどに限らず今日までこの予算委員会あるいはその他本会議等で、政府としては今後の防衛六カ年計画というものは一応の試案というものはあるが、確たるものではないということでしょっちゅう避けておられるわけです。しかしもしそういうことであるならば、先ほど私が申し上げましたように、こういう目的を持っておるが、予算の制約があってこれ以上進めない、残念ではあるが、これは政府の立場ですよ、残念ではあるが、これ以上増強することはできないが、目的はここにある。従って何年の後にはアメリカの援助を打ち切ることができるかできぬかわからないけれども、想定すれば、何年後にはこういう形になる、それが望ましいものである、こういうものをもって年次予算を組んでいくのでなければ非常な私は無責任なことだと思う。無責任のみならず、一体日本の防衛力というものは出たとこ勝負の、私がよく冗談に言っておる言葉でありますが、これは床の間に生花をいけるようなそういう意味日本の自衛力ですよ。床の間に生花がいる。そういう式のものです。ほんとうにもし政府が近代的な原水爆時代に、アイゼンハワー大統領がつい数週間前に誘導弾を実戦に使えば世間の人類は破滅するだろうというそういう時代に、日本が本格的な何か軍備をもしおやりになるとするならば、それなら何年後にはこういう姿でこうということが、いい悪いは別ですよ、私らは全然反対の立場ですが、なければならないはずだと思う。それが何もありゃしない。防衛力はどこに限界を置くのか、何にもありやしない。この程度ならば自衛力としてある程度満足だというものが何も出ていない。しかし私はここで自衛力の論争をやる意思は全然ない。ほかに時間を必要とすることがありますからやりませんが、これは政府としてもお考えにならなければならないことだと思います。こんなでたらめな立場でその防衛力の増強を考えておるか、先ほど同僚吉田議員がおっしゃったように、この毎年の驚くべく繰越額はどうでありましょうか。私は昭和二十五年度のいわゆる警察予備隊以来の翌年度繰越額というものを全部調べてみました。不用額も。これは驚くべきものであります。だから、こういうことからこの防衛庁の汚職や疑獄というものが起るわけです。このことはもうあなたにはこれ以上申し上げませんが、ただ大蔵大臣に関連して承わりたいことは、このように翌年度繰越額が多いということは、大臣はどこか行かれましたか……それじゃ主計局長でもよろしいと思うのですが、こんなに翌年度繰越額が多い場合には、もちろんこの利害得失はそれぞれあるでしょうが、適当なところで線を引いて繰り越しできる範囲を何か制約するようなことをお考えになったらどうかと思うのですが、これは防衛庁関係ばかりではありません。その他の建設省関係経費でも相当あるでありましょうし、とにかくある一定のところで線を引いて当該予算の何分の一程度、そこで線を引いて繰り越しについて制約を加えることが望ましいことかどうか、この一点をお伺いいたします。
  159. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 毎年度予算で繰り越しの明許の御承認をいただいておりますのは、これは経費の各項目について御承認をいただいておるわけでありますが、それにつきまして、ただいま御質問、御指摘がございましたように、その項目全部を繰り越し得るということでなくて、その何割とか何分の一とかいうようなことで繰り越しをできるだけ制限する、予算の単年度使用をできるだけ徹底する、そういうようなことを考えられないだろうかということで、実は私どもも来年度の予算編成の際にいろいろと工夫をいたしてみましたが、ところがこの明許繰り越しの御承認をいただいております費用でございましても、その使用状況は実に千差万別でございまして、それらの経費につきまして、全部に通ずるような一つの原則というものはなかなか発見しにくいわけでございます。時間的な余裕もございませんでしたので、来年度はやむを得ず従来通り単に費目を指定するだけにとどめたわけでございまして、みだりに繰り越しをしないという趣旨は、結局運用上においてできるだけ厳重に縛って運用して参ろう、そういうような結論になったわけでございます。何かいい方法があるかどうか、今後も引き続き検討してみたいと思いますが、機械的に何分の一とか何割とかいうことだけではなかなか律し切れないようでございまして、技術的にもなかなかむずかしい問題があるのでございます。なお今後の研究に待ちたいと存じます。
  160. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっとこれは、この発言は時間外にしておいて下さい。これでは質問できないですよ。だからもう防衛長官もお帰り願って正力国務大臣に関することだけ一点お伺いして、あとに回していただきたいと存じます。関係大臣が一人もいなければしようがありませんから。
  161. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 羽生君に申し上げますが、正力国務大臣の分だけ御発言下さい。あとは明日に回します。
  162. 羽生三七

    ○羽生三七君 それではそういうことにお願いします。  正力国務大臣お尋ねしたいことは、先日大臣は緑風会の中山委員の御質問に答えられてこういうことを言われているのですよ。電力の供給が需要に追いつけなくなる時期は正確にはわからぬが、五年かもっと短かいかもしれない、こう言われて、それからさらにまた原子力発電の操業の可能な時期という問題について、五年または三年くらいで火力より安いこの産業的発電所が出現する、こういうふうに言われているのです。ところが、もしこれが事実だとすれば、これは非常に重大なことだと思うので、政府の発表した経済五カ年計画はこれは根本的にやり直しをせねばならぬと思う。ということは、この政府の計画では三十五年度に水力、石炭、石油で八百二十九億キロワット時で需給のバランスができるという想定でやっておるわけです。しかもその場合には原子力発電というものは想定されておらない、予想されておりません。だから電力の不足という点については大体この昭和四十年度でこれが問題になるのではないかというのが一般の専門家の見解です。だから大臣の言われたことは政府の五カ年計画とは非常なる間違いがあるということであります。  それからもう一つ、第二点は、原子力発電が五年または三年で火力より安い産業的発電所ができるというのは、これも私は非常に誤まった観測ではないかと思うです。原子炉をもってきていろいろな研究はできるでありましょうが、実質上の営業的発電所が三年や五年先でできるとは思えない。米英ですら二、三十万キロワット時の原子力発電所がここ三年——五年で操業開始になると言われている程度でありまして、ですから日本では、先日大臣が言った方に問題が進んでいるということはこれはいささか言い過ぎじゃないか、お間違いじゃないか。またさような考えでこの原子力問題を扱われるということは専門家もきのう、きょうの新聞にも書いておりますが、これは非常に危険だと思います。これは大臣のお考え違いだと思いますが、念のために伺っておきます。
  163. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) お答えいたします、私は五年後に発電ということを言うたと思っておりますが、火力より安くなると言うたことは覚えておりませんよ。発電するということは言いました、五年後に。しかしながら、発電して火力より安くなるということは言いません。ただ言いましたのは、イギリスでは今年の十月から発電する、アメリカでは来年の十月から発電する、こういうことは言いました。なおまた、アメリカのG・Eでは来年十八万キロワットの発電を実施後三年間に、アメリカのベースには合わぬが日本ならばベースに合うようなことができるということをアメリカで発表したということを申し上げました。おそらくは何かG・Eの話と日本の将来の話とをお聞き違いになったのじゃないかと思います。
  164. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは私聞き違いでないと思うし、読売新聞にも大体今申し上げたとほぼ似たようなことが出ております。それから私は念のために速記録を調べて見ますが、いずれにしても、今私が大臣にお尋ねしたようなことであるならば、あなたの先日おっしゃったことがそうであるならば、これはお間違いをお認めになりますか。今大臣の言われたようなことが事実ならばこれは私が質問するまでもございませんが、この点いかがですか。
  165. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) お答えいたします。もちろん、ただいま申し上げたようなことであって、五年内においてベースに合うとか三年とかとそういとことは考えておりません。現に原子力委員会の声明書でも五年以内に発電するように努力しようということを言っております。私はそれを発電したいということを言っております。なおまた、イギリスの例と、それはお間違いじゃないかと思いますが、この間元燃料動力相のロイド氏が来て、今年の十月に発電する、しかもイギリスで経済ベースに合うと思うということを元燃料動力相が言ったのであります。これについて私は念を押しました。あなた方ほんとうにそれはベースに合うのかと言うと、自分はそれを信ずるということを言いました。それから念のために、その際専門家がおりましたが、専門家にもそのことを聞きました。私はそのときに実は非常に驚いたのです。日本じゃとても合わぬように見えますが合うと言うので、それではイギリスと日本は電力事情が似ているよりもむしろ日本の方がイギリスよりも悪いくらいだと思うが、と言ったら、それは経済ベースに合うと、それではデータを送るからと言いましたら、それでは送ってくれよと、日本政府から英国の政府に送ってくれ、十分調査してやろうということを言いましたが、それじゃお願いしますと言い、さらにイギリスの事情を研究するために英国から専門家を日本に呼びたいと思っておりますから……、イギリスの例で驚いているのですから大体日本でできるということを言うはずはないと思うのです。もし、そう言うたとすれば私の誤まりですが、そういうことを言うたはずはないのであります。
  166. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は時間がありませんから、ほかの大臣がそろったときにあとはやりたいからこれでやめます。  ただ、私は速記録で調べて単にどうこうと言うのじゃないのです。それほど慎重にやってもらわぬと……、大体私の言った通りに言われたのです。これは大臣失念されているのです。こういう重要な問題はそう簡単におもちゃをいじるように言われることが非常に危険だと思うので、念のために申し上げるわけでありますが、きょうはこの程度にしておきます。
  167. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 羽生君の分は農林、経済企画庁関係は、明日に別ワクでやっていただきます。
  168. 羽生三七

    ○羽生三七君 そのときに大蔵大臣も一つやっていただきたい。
  169. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十一分散会