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国務大臣(
倉石忠雄君) 御
承知のように
日本の
賃金体系というものは、戦後、戦前とは非常に変った形をとって参りまして、能率給というよりもむしろ
生活給の方に重点を置かれておるようであります。官公労に対しましては、私
どもとしては、公労協は別といたしまして、公務員につきましては御
承知のような公務員制度
調査会の答申もございます。従ってその答申を尊重して個々に
検討を加えられておるようなことをしんしゃくいたしまして、公務員の
賃金体系を決定いたしたいと思いますが、民間
産業においては非常にこれはむずかしいのでありまして、御
承知のように、今度の
争議形態を見ましても、早く妥結をしようとするところは、同業
関係の状況を顧慮することなく、自分のところは自分にこれだけの利益率があるのだということで、どんどん
ベース・
アップを団体協約で結んで、
ストを中止しておるようなところもあります。私
どもはさっきちょっと炭鉱のことについて例を申し上げましたけれ
ども、
企業者と
労働者だけが
生産性の向上による利益を独占すべきものではなくして、これは
国民経済全体の
立場に立っていただいて、そうして商品の値下げをするとか、あるいはまた資本の蓄積をするとかというふうなことを
考えていただかなければならない。特に御指摘になりました公共
企業体の仲裁などにつきましてもそうでありまして、たとえば同じ公共
企業体でも、専売や電々公社と国鉄のごときものとは非常に違います。国鉄は運賃の値上げをしなければ復旧もできないような話をしておるかと思えば、また給与総額の中に二十七億入っておるとか何とかという説明を一方においていたしておるような次第でありますが、いずれにしても、大変もうかっておる仕事でないことは御
承知の
通りであります。ところが電々公社などになりますというと、同じ公共
企業体でも違いますが、そういう場合に従来の仲裁裁定をみますというと、仲裁をして下さる方は、一般
国民経済に対してどういう影響を持ってくるかということよりも、やはり当該
企業の経理内容において支払い能力がありと認めれば、そのときの仲裁裁定をその
企業プロパーの
考え方で出しておられるようでありますが、そういうことの結果、一般の民間
産業の
ベース・
アップなどにも非常な影響を持ってきておることは事実であります。で、私
ども今度の
闘争を機会にいたしまして、たとえば
アメリカ、イギリス、フランス、イタリアなどの一般の製造品のコ
ストの中に占めておる労賃と、
日本の労賃とを比較いたしてみましたが、
日本の労賃はここ二、三年来ぐんぐんコ
ストの中に占める労働
賃金が上昇いたしております。私は先ほど申しましたように、
労働者の収入がふえて
購買力がふえることは必ずしも悪くはない、けっこうなことでありますけれ
ども、これが
経済上の国際競争力にどれだけの影響力を持ってくるかというようなことは、やはり
産業人は十分に
考えていただかなければならないことであると存じます。しかし
政府として
賃金統制とかそういうことができないものでありますから、やはり
企業家の独自の見解に立たれて、一般
国民経済という
立場から、そういうものを設定していただくようにお願いをしたいと
考えておる次第であります。