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1956-03-15 第24回国会 参議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月十五日(木曜日)    午前十時三十一分開会     —————————————    委員の移動 本日委員永岡光治君及び片柳眞吉君辞 任につき、その補欠として佐多忠隆君 及び加藤正人君を議長において指名し た。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     西郷吉之助君    理事            堀  末治君            三浦 義男君            安井  謙君            秋山 長造君            吉田 法清君            中山 福藏君    委員            青木 一男君            石坂 豊一君            井上 清一君            伊能 芳雄君            川村 松助君            木内 四郎君            西岡 ハル君            野村吉三郎君            平林 太一君            藤野 繁雄君            宮澤 喜一君            吉田 萬次君            亀田 得治君            菊川 孝夫君            佐多 忠隆君            相馬 助治君            竹中 勝男君            戸叶  武君            羽生 三七君            湯山  勇君            小林 政夫君            田村 文吉君            館  哲二君            廣瀬 久忠君            八木 幸吉君   国務大臣    法 務 大 臣 牧野 良三君    外 務 大 臣 重光  葵君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 清瀬 一郎君    厚 生 大 臣 小林 英三君    通商産業大臣  石橋 湛山君    運 輸 大 臣 吉野 信次君    労 働 大 臣 倉石 忠雄君    国 務 大 臣 大麻 唯男君    国 務 大 臣 太田 正孝君    国 務 大 臣 高碕達之助君    国 務 大 臣 船田  中君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    人事院総裁   淺井  清君    警察庁長官   石井 榮三君    調達庁次長   丸山  倍君    自治庁行政部長 小林與三次君    自治庁税務部長 奧野 誠亮君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁経理局長 北島 武雄君    経済企画庁調整    部長      小山 雄二君    経済企画庁計画    部長      大来佐武郎君    経済企画庁開発    部長      植田 俊雄君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主税局長 渡邊喜久造君    大蔵省銀行局長 東條 猛猪君    厚生省保険局長 高田 正巳君    水産庁長官   塩見友之助君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君    通商産業省通商    局長      板垣  修君    通商産業省公益    事業局長    川上 為治君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十一年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十一年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十一年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより委員会を開会いたします。  前日に引続きまして一般質疑に入ります。  御報告申し上げます。永岡光治君が辞任されまして、佐多忠隆君が委員に入られました。
  3. 田村文吉

    田村文吉君 厚生大臣にお伺いいたしたいのでありますが、日支事変、大東亜戦争に基きまして、第一に軍人軍属その他これに準ずべき者の戦病死者の数であります。それから第二に行方不明になっている者の数、第三に国外残留者の数、それから第四に非戦闘員でありまして、たとえば内地で爆撃を受けたとか、あるいはまた外地で捕虜になってそのまま死亡してしまったというような統計数字を一度国会の記録に残しておきたいと考えますので、もう今日は大体明瞭していることと考えますから、御答弁をいただきたいと思います。
  4. 小林英三

    国務大臣小林英三君) ただいまお聞きになりました第一点の軍人軍属及びこれに準ずる者の戦死戦病死者の数につきまして申し上げますと、これは厚生省の所管いたしておりまする戦傷病者戦没者遺族等援護法対象となっている者といたしまして約二百三十三万名を把握いたしております。  次に、第二点及び第三点の行方不明者及び国外残留者につきましては、いわゆる未帰還者でございまするが、その数はソ連、中共及び南方諸地域を含めまして約六万三千名でございました。そのうちで昭和二十年以降生存していたという資料のある者がこれが約四万五千名でございまして、生存いたしているという資料のない者が約一万八千名と把握いたしておるのであります。  それから最後に、第四点の非戦闘員であって爆撃あるいは捕虜となって死亡した者の数でございますが、これは非戦闘員であって軍属に準ずる者として軍の要請による戦闘参加者これが約十四万名でございまして、これは先ほど申し上げました第一点の御質問にお答えした二百三十三万名の中に含まれているのであります。そうしてこれらのものは戦傷病者戦没者遺族等援護法対象といたしまして把握いたしているのでございます。これ以外の非戦闘員死没者の数につきましては私どもの手元に資料がなく、今これをここで明らかにすることができないことはまことに残念であります。
  5. 田村文吉

    田村文吉君 その他の数字についてはとおっしゃいますと、どこでそのお調べができ上ることになっているのでしょうか。
  6. 小林英三

    国務大臣小林英三君) これは厚生省には御承知のように元陸軍海軍等から引続きました援護局がやっておりまして、今朝も私田村さんのお答えに対してできるだけ的確にお答え申し上げたいと思いまして、いろいろ事務当局とも打ち合せをいたしたのでございますが、まあ内閣調査局と言いますか、その方でというお話しもあったのです、たぶんこれらのあと不明瞭な方は把握できないのじゃないかというようなことで、こういうので今のように御答弁申し上げたわけであります。
  7. 田村文吉

    田村文吉君 今の問題は内閣に対しまして資料提出方を要請いたします。  なお、今お話しのこういう数字の中に証明はできないけれども約一万人の生存者がある、こういう数字はどこからお出しになった数字ですか。
  8. 小林英三

    国務大臣小林英三君) これは厚生省引揚援護局におきまして、ずっと持っておりますものを申し上げたわけであります。
  9. 田村文吉

    田村文吉君 第二に、厚生大臣にお尋ねいたしたいのでございますが、組合健康保険政府管掌健康保険でありますとか、国民健康保険それから公務員の共済関係健康保険というようなものが今たくさんございまして、しかもさらに三千万の人は健康保険には入っておらぬ、こういうことになっておるのでありまするが、私はほかの何よりも医療というものに対しては、人間の生命をあずかる問題でございますから、きわめて公平に均等に行われることを国家としては考えていかなければならぬ、こういう意味におきまして、こういうような保険というものが同じレベルですべて国家の助成を受けていくということが正しいものでないかと、こう考えておりますので、こういうものを均等に行われることが正しいとお思いになりますかどうか、その点について厚生大臣にお伺いしたい。
  10. 小林英三

    国務大臣小林英三君) まさに御意見通りであると存じます。
  11. 田村文吉

    田村文吉君 といたしましたならば、いつごろになりましたならば、大体そういうものがまとめられて、国民が全部機会均等によって全部が保険を受けるというような情勢にするお見込みで厚生大臣行政をおやりになっていらっしゃるのか。
  12. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 御承知のように、医療保障というものは社会保障の中核であることは申し上げるまでもないことでありまして、ただいま御承知のように健康保険、それから日傭労働者健康保険、それから船員保険、それから各種の共済組合、これらには勤労者対象といたしましての医療保険がございまするし、なお、このほかに御承知のように主として自由業を中心といたしまする地域的の健康保険組合、こういうものがございまして、これらを合計いたしますると、大体五千九百万人の国民がこの恩典に浴しているわけでございます。今田村さんの御指摘になりましたように、このほかになお三千万人の、これらのすべての保険に加入していない方もいるわけでございまして、近代福祉国家として進んでいかなくちゃならぬわが国といたしまして、国民全体がこれらの恩典に浴するようにいたすべきことは当然だと思いまするので、政府といたしましては、昭和三十五年を目途といたしまして、すべての国民が全部これらの保険に参加するように努力をいたしたい。それにつきましては、三十一年度から医療保障委員というものを設けましてこれらの委員によりまして計画を立て、また研究をいたし調査をいたして、年次計画を立てまして、先ほど申し上げました三十五年を目途とする国民保険の線に進んで参りたい、こういうふうに考えております。
  13. 田村文吉

    田村文吉君 私はただいたずらに社会保障を拡大すればいいというだけの考えで申し上げておるのではないのでありまして、社会保障関係のものは、特に民力に比例してこれが行われていくことが願わしいことでございまするので、日本の国が早く富裕な国となりまして、社会保障がもっと完全に行われることを希望するわけであります。でありまするが、ただ私が今大臣に伺いたいのは、組合健康保険であるとかあるいは普通の政府管掌健康保険であるとか、あるいは国民健康保険であるとか、また役所でやっておりまする共済組合等の待遇が非常に違うわけでありますね。全然また受けていない者があるのであるから、こういうものは一日も早く平等の原則で均等にできるようなことを、医療のつまり公平を期したい、こう考えるので、早くこの組合保険政府管掌健康保険も、国民健康保険も、全部これを一つにまとめてしまう、別にあるいは結核なら結核のために特別に保険を作るということは、これは別に考えていい、そういうようなことがもう必要になるのじゃないか、著しい不公平があるじゃないか、政府のそれに対する補給金なり補助金なりというものの出し方も皆違っておる。そういう点で私は一日も早くこれは是正さるべき点である、こう思うので大臣にあえてお伺いいたしたい、こういうように思います。
  14. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 今お尋ねの御意見のように、将来あらゆる保険の問題を検討いたし、また結核の問題を検討いたしまして、それらの問題をすべて総合的に合して研究調査をいたしまして、先ほど申し上げましたような工合にいたしたいと思つております。
  15. 田村文吉

    田村文吉君 次に、私は完全雇用の問題につきまして経済企画庁長官通産大臣労働大臣に伺いたいのですが、特に労働大臣お急ぎのようでありまするから、その問題に関する労働大臣の御所見一つお伺いいたしたいと思います。  今の日本の緊迫の問題としては、雇用の増大、失業者のないようにするということが一番大きな問題に相なっておりまするので、政府も五カ年計画というものをお立てになりまして、経済の自立と同時に、完全雇用の道を達成するのだ、こういうふうにお進めになっておるのでありまするが、私は現在のこの労働状態あるいは労働組合行き方と申しましょうか、特に総評の歩んでおりまするような行き方というものが、ただ賃金を上げる闘争をやっているような考え方が強いために、事業をやっている人にいたしまするというと、非常に企業心を阻喪させられ、また現在やっておる人でもなるべくそういう問題について前進することを好まないということで、もっと産業というものが発展すべき状態にあるにかかわらず発展しない、こういうことがいわゆる労働問題のために起ってくる原因が非常に多いと思う。こういう行き方でありまするというと、わずか官公労二百万、民間の百万の今の総評のような行き方のために、四千万の就業者人たちが満足に職も得られなければ失業の人も多くなる、こういうような結果にも相なっておるように見受けられるのであります。私は終戦の直後において、日本労働組合運動というものが非常に低調であったから、これをある程度まで育成していくということの考えも、むろん占領軍にはあったと思うのでありまするが、一面において日本産業というものをむしろ弱くするような傾きにしたままに今日まで相なっておるのであります。私は今労働三法のどこをどうということを言うわけじゃありませんけれども労働大臣としてはよき慣行を作って、できるだけ組合をよく指導していこうと、こういう考え方はむろんけっこうなんでありまするが、最後に、私はやはり法律ではっきりと、こういうことはやっちゃいかぬというような点をもっとはっきりすべき事態にもうなっているのじゃないか、こういうふうに考えるのでございまして、これがやがて失業者を少なくすることにもなり、完全雇用にも向う道になっておる。ところが今の組合運動の歩き方は、全部だとは申しませんけれども、大部分がだんだん雇用の面を狭めるようにと進んでおるように私どもには見えてならぬのであります。こういう点につきましては、ただ教えるというのでなしに、やはり法律でもっとはっきりしていかなければ、たとえば労働組合法にいたしましても、一体経済問題以外のものに関係して争議を起すようなことがかりそめにもあってはならぬと私ども考える。それからもちろん雇い入れることは自由でありますし、雇われる方でもきわめて自由でありまするが、ただこれを解雇するということになると事実上ほとんど解雇はできない、解雇の不自由の状態になっております。こういうのはもっと自由に解雇ができ、自由にいい者と悪い者と切りかえてもっと勤勉な者を、それを尊重するという方向に進むことができるならば、私は産業というものは興るであろうし、失業者というものはなくすことはできるであろうと、こう考えるのでありますが、それに対して労働大臣の御所見を伺いたい、
  16. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 労働政策の基本的な問題でございまして、今のように年中行事のように争議ばかりやっておるのでは、日本生産計画通り増進することの阻害になるのではないかと、こういうお言葉もございましたが、私どももそのように存じます。年中行事に行われる争議の結果、生産力が減退すれば、政府がせっかく策定いたしました五カ年計画もやはりその面においては一応の阻害を来たすのでありまして、こういうようなことは何とかこれは考え直さなくっちゃならない、こういうことでありまして、いわゆる総評春期闘争というものが円満妥結をいたすことになりましても、私どもとしては将来どうすべきかということについては、これをいわゆる資料にして慎重な検討を加えて参りたいと思います。ただ基本的には、健全な労働運動というものは、やはりこれは育成いたしていく方がいいのでありまして、健全な労働運動をおやりになる多数の労働者人々の健康が保持され、そしてそれらの人々が愉快に生産に従事していただくということは、その人人の購買力も従ってふえてくるわけでありますから、経済を活発にする原動力にもなることでございますからして、労働者購買力を助成してやるという結果になることはけっこうなことでございます。そこで結局田村さんのおっしゃるように、日本経済全体が活発になって参るということが、ひいては日本労働者生活を向上させることになるのでありますから、その意味において私は生産性本部等協力をしておられるような健全なる労働運動の発達は、労働省としては育成し助成いたして行きたいと思うのでありますが、御承知のようにただいまこの争議行為を見ておりますというと、何と申しましても率直に申しまして、終戦後活発になりました現在のような労働運動というものは、百年余りの経験を持っておるイギリスやアメリカ労働運動に比べまして、非常に幼稚であることは、これは事実であります。しかも今法律の問題に言及なさいましたのですが、私は基本的にはこの労働関係というものは、そう法律で、できるならば縛らない方がよいという考えを持っておりますけれども、やっぱり今日のような、みな民主主義的労働運動に未熟であるときには、一応のレールを敷くことも必要ではないかというような気持にもなっておるのでありますが、田村さん御承知のように、たとえばアメリカタフト・ハートレー法などにおいては、日本労働法よりもうんと厳重であります。一方英国などにおきましては、官吏などのいわゆる団体行動についてはほとんど取締規定がありませんが、一ぺんもそういう行動をやったことはありません。そういう工合によい労働慣行が作られ、民主的労働運動というものに理解を持っていただくようにしなければならないのが私どもの役目でありまして、一生懸命でそういうことを努めておる最中でありますが、政府労働問題懇談会を設けまして、これには労使双方代表者と目される人々及び学界などにおけるその道の権威者を集めまして、幸いお集り下さいます三十数人の委員は非常に熱心に数時間にわたってしばしば討議をなされて、労働問題に対する基本的な考え方意見の交換をやっておりますが、なおこれを継続いたして参りたいと思います。それから政府は三十一年度予算において若干の予算をとりまして、造船であるとかあるいは鉄鋼であるとか石炭であるとかというふうな八つの大きな産業に向って企業別協議会を設けまして、ここでお互いにこの企業あり方、将来の方向などについて労使が自由に話し合って、そして日本経済復興のために一致点を見出して協力をしていただくような方向を発見しようということを指導し始めておるわけであります。そういうふうにいたしまして、どこまでも、この激烈な対立抗争をできるだけなくして行きたい、こういうような方向に進んでおるわけであります。今次労働争議の大きな眼目である賃上げなどにつきましても、私どもはお説のように、国民経済全体の立場から労使双方考えていただくことが必要でありまして、日本では御承知の、いわゆる中小企業、三十人以下の小企業のごときは、もうほんとうの食っていく、いかないというすれすれのところにある、この企業従業員が一番多いのでありまして、そういうような人々と、大企業ストライキをやることによって賃上げをされることで、賃金格差がだんだんふえるばかりであります。そういうことを考えてみましたときに、私どもとしては国民経済全体という立場に立って、この労使双方賃金の決定をやっていただきたい。御承知のように戦後インフレの時代には幾ら賃金ベースアップをいたしましても、賃金が、労賃が上ることによって物価がそれを越して行くのでありますから、結局いくらベースアップをやっても生活が苦しいという点においては変りはありませんでした。従って私はドイツあたりで言っているように、むしろ賃上げということよりも物価引き下げ運動労働組合が非常な努力をいたしておる。こういうことなどは私どもとしては非常に参考になることでありまして、私どもはそういったようなことで、いたちごっごを繰り返すベースアップよりも、むしろ労働者生活をより豊かにする方法はどういうところにあるかということを根本的に一つ検討をいたして行きたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  17. 田村文吉

    田村文吉君 私は御所見に大体御賛成申し上げたいのでありますが、残念ながら、歴代の各労働大臣が、なるべく円満に労働慣習のよき慣行を作り上げるということでお進みになって来ている、来ているのだが、情勢はどうかというと、今度の炭労ストが、ロックアウトがきのうから始まっておるようであります。まことに不幸なことが国民の前にさらされて来ているのでありますので、私はそういうなまやさしいことではいかん、もっとはっきりと、知識の足りないものに対しては法律でわからしてやるということが私は必要なんだ、こういうふうに考えまするので、あえて御質問を申し上げたのでありまするが、大体のお考えはそういうことも御承知になっていらっしゃるというように考えますので、ただ今度の部分ストをやるというようなことのためにロックアウトを行う、こういうことでは何か法律欠陥がある。部分ストをやって、きわめて少い賃金の損失において大打撃を全鉱山に与えるということをやれるのだということに対して、それがためにどうも企業者の方では言うことをきかなければならぬというようなことになって来るのでは、正当なる理解ではないと思う。そういうような点を、私はそういう部分的なストをやるためにロックアウトせざるを得ぬようになって来る、そういうようなことが私ははなはだ法律的にまだ欠陥があるのじゃないか。それから私はさっき申し上げたように、一体自由に雇い入れ自由に解雇のできるようなことが、私は自由主義における本当のあり方じゃないか、こういうふうなことを根本的に考えておりますのですが、この点もう一度……。
  18. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 御承知のように、炭鉱争議などで部分ストというのは日本炭労が初めて発見した争議行為でありまして、これについても学説はいろいろございます。こういうようなことは違法であるとまで言われておるものもありますが、私どもとしては、部分ストというような、こういう形体争議はまことに好ましくない争議でございますが、とにかく日本労働組合法というものは、御承知のように憲法二十八条には労働者基本権と申しますか、これは積極的にそういう行為を許しておるとかおらないとかいう説もございますが、とにかく消極的にでも団体行動の自由を認めております。御承知のように、最近できます外国憲法、たとえばインドの憲法、イタリアの憲法などを見まするというと、法律範囲内において労働者自由権を認める。こういう法律範囲内ということが限界であります。日本にはそういうことがありませんので、これは非常に変った形体憲法でございまして、私どもはそういうところをただいま田村さんも指摘されておられるのではないかと思うのでありますが、とにかくこと雇用関係については、日本人はやはり外国人と違った気持をだいぶん持っておるようでありまして、最近行われるいろいろな国の状態を見ますると、たとえば西ドイツなどでは、ストライキをやるというときには、その瞬間に雇用関係が解消しているのだという取扱いをいたしております。従って争議が済めばまた済んだ場合に、全員あるいは一部の者が新しく雇用関係を締結をする、こういうふうなことをやっております。これらの点についてはなかなか参考になることが多いのでありますが、私どもといたしましては、先ほど申しましたように、あまり法律で縛ることをしないで済めば、それにこしたことはないと思っておりますが、たとえば今度の炭労ストライキにおきましても、これは事実はそういうことはないようでありますが、新聞に炭労代表者という方の発表されましたものでは、数日前には保安要員引き揚げもあえて辞せないというふうなことを語っておられましたが、いよいよ出されました指令によれば、保安要員引き揚げはやらないということでございますが、保安要員引き揚げるということは、すでにいわゆるスト規制法によって制限を受けていることでございますから、そういうことをあえてなさることは、これはもちろん違法な行為でありますから、そういう場合にはロックアウトもあるいはやむを得ないでありましょう。それからまた代替要員を差し出すということも会社としてはやむを得ないでありましょう。とにかく現在の鉱業法には書いてあるかどうか私記憶いたしておりませんが、昔の鉱業法においては、御承知のように、いまだ発掘せられざる鉱物は国家の所有なりということを明確にうたっているのでありまして、石炭鉱山のごときは、これは経営者及び労働者が自分たちだけのものであるという考えはどうかと思うのでありまして、こういうものは国家的な重要な資源でありますから、こういうものに従事している労使ともに慎重にやってもらいたい、こういうことを考えているのでありますが、現在の炭労争議の経過にみまして、私どもは八月七日に期限の切れるいわゆるストライキ規制法についても、あらためて考え直さなければならないであろうと思いますし、労働組合法などについても、今回のいわゆる春季闘争における争議形態をみまして、欠点があれば、これは改めなければならないということを考えて、慎重にただいまそれらの状況について検討いたしている最中であります。
  19. 田村文吉

    田村文吉君 次に、私は伺いたいのですが、賃金を決定するに当りまして、賃金はどういうふうにきめられるのが正しいか、こういうことについて私は終戦後非常に疑問を持っているのであります。と申しまするのは、昔のいわゆる職人といった時代の人夫賃は米三升であるとか、あるいは大工は米四升であるとかということの標準で、大体の標準はきまってきておる。ところが、ことに終戦後における状況からみますと、つまり同じ技能を持っている者でも、非常に高い賃金をとる人もあり、また半分にも及ばないような賃金をとっている者もある、そういうようなことになっておりますので、しかも争議が起ったような場合に、調停される場合における意見は、まあもうかるんだからよけい払ってやってもいいじゃないか、こういうような仲裁がややもすると行われる、これがいわゆる三プラス一を二で割って二にするという今までの仲裁裁定のような方式である、また国の法律にも、予算上、資金上に余裕があれば払ってもいいんだ、こういうふうな裁定をよくする、また法律もそういうことを書いている、こういう考え方というものには私は非常に疑問を持っておりますので、やはりある職種に対してはある職種の賃金というものが公平にきめられていいのじゃないか。これは労働の移動というものを非常に困難にしているから、こういうことが起るのであります。こういう点について根本的に、賃金というものはもうかったから、場合よっては期末に若干の剰余金を分配する程度のことはけっこうなんでありますが、大体賃金というものは、殷賑産業であるからよけい取ってもいいのだし、振わない産業であるから安くてもいいのだということは私はいかぬと思う。この点に対して労働大臣はどういう見解を持っておいでになりますか、伺いたい。
  20. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 御承知のように日本賃金体系というものは、戦後、戦前とは非常に変った形をとって参りまして、能率給というよりもむしろ生活給の方に重点を置かれておるようであります。官公労に対しましては、私どもとしては、公労協は別といたしまして、公務員につきましては御承知のような公務員制度調査会の答申もございます。従ってその答申を尊重して個々に検討を加えられておるようなことをしんしゃくいたしまして、公務員の賃金体系を決定いたしたいと思いますが、民間産業においては非常にこれはむずかしいのでありまして、御承知のように、今度の争議形態を見ましても、早く妥結をしようとするところは、同業関係の状況を顧慮することなく、自分のところは自分にこれだけの利益率があるのだということで、どんどんベースアップを団体協約で結んで、ストを中止しておるようなところもあります。私どもはさっきちょっと炭鉱のことについて例を申し上げましたけれども企業者労働者だけが生産性の向上による利益を独占すべきものではなくして、これは国民経済全体の立場に立っていただいて、そうして商品の値下げをするとか、あるいはまた資本の蓄積をするとかというふうなことを考えていただかなければならない。特に御指摘になりました公共企業体の仲裁などにつきましてもそうでありまして、たとえば同じ公共企業体でも、専売や電々公社と国鉄のごときものとは非常に違います。国鉄は運賃の値上げをしなければ復旧もできないような話をしておるかと思えば、また給与総額の中に二十七億入っておるとか何とかという説明を一方においていたしておるような次第でありますが、いずれにしても、大変もうかっておる仕事でないことは御承知通りであります。ところが電々公社などになりますというと、同じ公共企業体でも違いますが、そういう場合に従来の仲裁裁定をみますというと、仲裁をして下さる方は、一般国民経済に対してどういう影響を持ってくるかということよりも、やはり当該企業の経理内容において支払い能力がありと認めれば、そのときの仲裁裁定をその企業プロパーの考え方で出しておられるようでありますが、そういうことの結果、一般の民間産業ベースアップなどにも非常な影響を持ってきておることは事実であります。で、私ども今度の闘争を機会にいたしまして、たとえばアメリカ、イギリス、フランス、イタリアなどの一般の製造品のコストの中に占めておる労賃と、日本の労賃とを比較いたしてみましたが、日本の労賃はここ二、三年来ぐんぐんコストの中に占める労働賃金が上昇いたしております。私は先ほど申しましたように、労働者の収入がふえて購買力がふえることは必ずしも悪くはない、けっこうなことでありますけれども、これが経済上の国際競争力にどれだけの影響力を持ってくるかというようなことは、やはり産業人は十分に考えていただかなければならないことであると存じます。しかし政府として賃金統制とかそういうことができないものでありますから、やはり企業家の独自の見解に立たれて、一般国民経済という立場から、そういうものを設定していただくようにお願いをしたいと考えておる次第であります。
  21. 田村文吉

    田村文吉君 通産大臣もおいでのようでございますから、順序を変更いたしまして通産大臣に伺いたいと思います。やはりこの雇用の増大という問題に関連いたしまして通産大臣の御意見を承わりたいのでありまするが、今政府は重化学工業に対して大いに努力をしておいでになる、これは非常にけっこうなんでありまするが、しかしとにかく今日はいかにして雇用をふやすかという問題が、非常に大きな問題でありまするから、できるだけ人間の手先というものを利用することも考えなければならない、また頭をせいぜいよけいに使わせることを考えていくところの産業に力を入れる必要がある。ということは言いかえれば精密工業、そういうようなものに一つ十分に力を入れて、あるいはこれを助成するというようなことが必要なんじゃないか、私はそういうものはあまり大して効果がないということも一方では言われるのでございまするけれども、昔から米沢に織物が発達しておる。これは上杉鷹山公の一流がその振興を行なったので、各地に名物がたくさんあるのでございますが、そういうものを考えたときに、少しそういう手工業的なものに対して、今日は政府以外に助けてやるところはないのですから、政府が手助けしてやられたならば、相当にそういう産業が興る可能性があるのじゃないか。また現に写真機であるとかミシンであるとか、時計であるとかいうようなものはだんだん伸びております。また材料にいたしましても、世界でできないような鉄の合金を作っているというようなことも、これは日本人の頭脳でできないことではないと思う。はなはだ卑近な例ですが、ここに大蔵大臣もおいでですが、専売局をこの間私は拝見したのですが、一体専売局の人は、一つたばこを安くいいものを作って、そして海外へ出すというようなことを考えたことがあるかどうか。こう考えてくるというと、少しもこういうようなものは、専売というものにあぐらをかいて、そういうことの努力考えもお持ちになっていない。こういうものは別にたばこを作る民間の会社を作ったらいい。民間の会社とそれから専売局と、どのくらい生産性が変ってくるかといとことを試験しながら、その品物を海外に出すようなことをするなり、こういうようなことも考えられると思う。酒にいたしましても、日本のウイスキーというものはなかなか近ごろはいいということを聞いておるのでありまするが、こういうものもどんどんいいウイスキーを作らして海外へ出すということも考えてみたらどうか。こういうように精密に頭と手を働かし、日本人の器用さを利用していったらどうか。こういう方面に力を入れたらいいじゃないか。通産省という役所は、そういっては失礼ですが、あまり大きな工業ばかりに力を入れたりなさらぬで、そういうこまかいところに一つ力を入れておやりなさることが完全雇用にもなる近道でもある、こういうように考えるのですが、お考えはどうですか。
  22. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 私もお説の通り考えております。精密機械工業というようなものは、むろん日本で大いに発達すべきものであるし、その方面に相当通産省としても力を入れております。また近ごろは民間でも日本の昔からの特殊産業、繊維製品にいたしましても、その他の工芸品にいたしましても、特に日本の特殊の工芸的色彩を持ったものを海外にどんどん宣伝して発展させようという動きが民間にもあります。通産省としてもこれを一つ大いに援助してやっていきたい、かように考えておりまして、御意見通りにやっておる次第であります。
  23. 田村文吉

    田村文吉君 どうかその今のお考えを実際に移していただくように、一歩でも一つ前進を願いたい、かように希望を申し上げます。  次に、私は通産大臣に伺いたいのでありまするが、輸出の振興ということは、雇用を増大するために非常に必要なことなんでありまするが、どうもどこに行っても、海外におけるメーカーの競争、商社の競争、こういうような問題が起って、海外では日本の商品に対しては信用を置けぬというようなことでずいぶん非難を受けておる。こういう点を考えてみますると、私は何かしら不当の競争をしないようにカルテルを作らせることを、言いかえれば独禁法というものをやめてしまう、早く全面的に解除してしまう、こういうことをやるか、しからざれば、また輸出入品の価格安定法が一部の商品については行われておりますが、こういうものを全面的に一つこれをやっていく、こういうような方法をとるか、あるいはまた輸出組合というものができておるのだから、これをもっと強化して、ほんとうに輸出組合で統制のとれるような方法を作るか、あるいはまた共販会社のようなものを作らせるか、そういうことをしないことには、せっかく輸出は——、今のところじゃヨーロッパの方が幾らか忙しいので東洋の方へ参りませんけれども、少し東洋へ出だしてくると、一ぺんに日本の商品というものはたたかれてしまう、こういうふうに考えるのでございまするが、これについて大臣は何か手をお打ちになるお考えを持ってをいでになりますかどうか、伺いたいと思います。
  24. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) その点も田村さんの御意見と全く同感であります。どうも商社及びメーカーが過当競争をやるということが、今、日本の一番悩みなんであります。このままでいくと、国営貿易にでもしなければならないようなことになるような感じもいたします。しかしわれわれは、そういうような統制をまた強化して、統制経済を再現するようなことはいたしたくないのであります。ぜひとも一つ同業者の反省によってそういう弊害をとどめたい。しかしそれだけでは済みませんから、輸出入取引法の改正をこの前していただきました。貿易に関してはほとんど独禁法というものははずされているといってもいいのであります。ですから同業者さえ共同精神があれば、輸出入取引法によって十分この統制ができるわけでありますが、さてその輸出入組合を作ることが、まだスタートしたばかりでありますから無理もありませんが、これがなかなかまとまらぬようなことで、ごたごたしておるところがまだだいぶありますが、逐次そういうことで、海外に対する過当競争だけは防げるだろう、かように考えております。
  25. 田村文吉

    田村文吉君 今の雇用増大の問題とは関係ないのですが、通産大臣がお急ぎのようですから、関係しておりますので伺いますが、前々国会のときでございますか、私は大臣にお伺いいたしまして、まだ地方には一月のうち一日とかあるいは二日とかいう休電日がある。たまたま工場が休みになって、きょうは休みだからと思って家で寝てラジオを聞こうと思っても、ラジオが入ってこない。こういうような不都合なことがあるのです。それで、そういうことは是正なさるというふうに伺っておったのでありますが、必ずしもまだそうでないらしいのであります。これは一つ、もしそうでないようならば、通産大臣からそういうことのないように——東京の都内にはないのです。東京都内には、どなたかのお話で、ごく郊外に行くとそういうところがあるということを聞いたのでありますが、大体東京では生活というものが非常にエンジョイできるのだが、いなかへ行くというとそういうようなはなはだ不都合な生活をしている。こういう点につきまして、その後どうなっておりますか、これが一つ。  もう一点、近ごろ電源開発でダムをお作りになる、その他の目的でダムができる。そうすると下流に水がふえるから、いわゆる下流増というもので、下流で電気をやっている人は期せずして電力が豊富にもらえるというので、そのダムの建設の負担を、一部分下流で利益を受ける会社に負担させるというようなことが考えられているように思うのですが、一例をもって申しますると、東北電力のようなものは阿賀川に非常にたくさんの発電所を持っている。今度只見へダムができる。そのためにお前たちは均霑するのだから、一つ東北電力で負担しろと、こういうことをいわれるのですが、実際問題からいって、それはそうかもしれない。だが東北のような非常に気象的に恵まれていないところが、ようやく起している電気を、しかも大部分のものは東京へ持ってきているのです。にもかかわらず、この上また只見の発電所ができるからといって下流の電気の費用の負担までさせられて、電気料を上げられたんじゃ、もういなかなんか浮ぶ瀬がないということになりまするが、下流増の問題ですね、その問題は私はもうなさるべきじゃない、こう考えるのでありますが、通産大臣にその二点について伺います。
  26. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 第一の休電日の問題は、今の法規によりますと、月に二日でありますか、修繕のために休むことができるというようなことになっておる。しかしこれは必ずしも休まなければいかぬ、こういうことではないのですから、実際上修繕に必要な場合には休み得るということであります。そこで今までありましたように、ある一定の曜日をきめて必ずちゃんちゃん休むというようなことでは、まことに不都合であるからというようなことで、昨年も御指摘がありました。この電力会社の社長の集ったところで私から直接口頭でも注意をいたしました。それからなお事務的に、各地方、各会社に対して書面をもっても注意を促しまして、まあ実際この修繕のためにやむを得ないときには、これはあらかじめ予告をして、休むこともやむを得ないが、しかしながら、そうでないのに休むというようなことをしないようにという通牒も発してあり、各会社でも承知しておるのでありますが、どうもまだ十分徹底しない部分があるらしくて、お話のようにまだある地方においてはそれがやまないそうであります。なおまたさらにあらためて通牒を発し、また口頭でも機会あるごとにそのことを申すつもりであります。  それから第二の下流増の問題ですね。この東北の特殊事情については十分了承できるのでありますが、しかしこれは全国的の問題で、それによってある利益を受ける下流にそれの費用の一部を負担してもらうということは、全国的の問題として私はまあ合理的だと思うのです。東北について、ことに東北振興のためにどうするかということは別途考えるべきものじゃないかと今存じておりますが、しかし、今この問題はどういうふうに取り扱いますか、当局においても目下協議中でございますから、いずれ数日中に結論を出して、御審議をわずらわすことになると思います。
  27. 田村文吉

    田村文吉君 今、東北の例を引いたので、東北の問題についてはまた特に考えるということのお考えもあるようでありますが、それだけではないのですね。こういうことは大体無理なことじゃないか。万一今度は上流の方にダムができて、災害が起ったために下流に非常な影響を与えた場合には、全部損害賠償ができるか、こういうような問題も起るのでありまして、私はそういうたまたま上流にダムができたから下流でよくなったから、お前は上流の分まで費用を負担しろというようなことで、あらかじめ協議の上で、これこれの発電所を作るについて協力してくれといって、合意の上でやるなら、これはわかっておる。合意にあらざるものを、そういうことをしいるということは、これはちょっと無理な考え方ではないかと、これはまあ私の所感でありますから、申し上げて通産大臣の十分の御勘考を一つお願いいたしたい、こう考える。  これで通産大臣に対する質問は私に関する限り終りました。
  28. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) ただいまの下流増の問題は、やはり当事者の協議によってきめるということでありまして、頭からどうしろこうしろという命令でやるというつもりはございません。ただ協議がととのわないときには、やむを得ないから通産大臣がこれを裁定するというようなことにするかしないかということが、これが今論議のあれになっております。無理はいたすつもりはございません。
  29. 田村文吉

    田村文吉君 企画庁の長官がお見えになっておりますので、私は五年後に日本の人口が五百万——過去の五年間で五百万、一年百万という人間がふえてくる。で完全雇用にして、みんなが気持よく働いていく国を作り上げるということについては、これは非常な問題だと思いまして、お聞きになっていたかもしれませんが、労働大臣に対しても、通産大臣に対しても、私はこの雇用増大という言葉が、今日の日本の政治の内政における一番大きな問題だ。でありますから、特に声を大きくして、まあ私の思いつきも申し上げたのでありますが、政府は五年後におきまするというと、失業者は四十五万人まで減らすのだというようなことで、一応紙の上からいいますとこういう希望図ができてきておるのでありますが、しかし希望図はできておるが、実際にそれでは完全雇用にするという方途は一体どういう点からお出しになるのだろうか。ただ産業はこうなるだろう、生産はこんなふうにふえるだろう、第一次産業はこうなるだろう、第二次産業はこうなるだろう、こういうようなお考えでありますが、羅列してありますが、何かしら、どうしたら一つ日本を、遊んでおる人間のないような世の中を作り上げる方法があるのかということを、これはせんじ詰めて伺いたいのでありますが、長官に何かお考えがありましたら一つ……。
  30. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 非常にむずかしい問題であると同時にまた最も必要な問題だと存じているわけなんであります。特に人口が年々ふえると申しますが、ここ十年間ぐらいにふえる人口は、一番大事なことは、労働力人口が普通人口よりも急速にふえるわけなんでありまして、政府といたしましては、一年に大体二%労働人口がふえる。八十四万人の就労者を収容するようにやろうじゃないか、こういうような考えで、つまり労働力人口が二%ふえるのに対して生産を……国民生産を五%ふやしていこう、これならば大体五カ年で四十五万人の失業者で済むことができるだろう、こういう大体の数字が出ておるのでありますが、私はこの数字だけに頼るということは非常に無理があるだろうと思いますことは、昨年のごときは八十四万人の労働力人口がふえるとこう思っておったのですが、これに対してかれこれ百万人以上の就労率がふえておる。ふえておってもやはり完全失業者が多いということは、これはやはり考えさせられる問題と、こう思っておるのでありまして、産業各般にわたりまして、先ほど労働大臣なり通産大臣がお答えもし、また御質問にあった通りに、できるだけ労働者の吸収を各方面の産業に持っていきたい、こういうような考え産業計画もやっていきたい、こう存ずるわけでありますが、今それではどういうようなことについて有効適切にできるか、こういうようなことになりますと、なかなかこれはむずかしい問題でありますが、どうしても労働者のふえる数を一カ所だけで吸収するのでなくて、できるだけ広範囲に、これをあるいは労働力でなくても、労働者の数の分配、そういう国土全体から見まして、そういう点も非常に考慮する必要があるだろう、こういうようなことを最近考えておるわけであります。
  31. 田村文吉

    田村文吉君 企画庁は計画さえなさればいいわけでありますが、実は私ども国民のこいねがっておるところは、もっと強力に一つ失業者をなくするような方策を立ててもらいたい。そんないろいろな数字を見せていただくことよりは、どうしたら一つできるのだ、ことし学校を出る者が就職の方法はないのだ、何としたらいいかということで悩んでおる父兄が全国津々浦々にある。またその辺には中年の人で引揚者で職がなくて困っておるということについて、これは各大臣諸公みなお頼まれになってお困りになっておると思う。これは大臣大臣の力でもってそこらじゅうに人間を押しつけて片づいておられるかもしれないが、(笑声)私などはそうはいかない。実に困っておるのです。そういう問題は、これは一年、二年、三年と積み上げていくときに、日本の国はどうなるかということを私は考えてもらいたい。これでこの問題についてはきょうは総理大臣のかわりに官房長官に見えていただいたが、私はこういう問題は真剣に一つ取っ組んでいかなければならぬのに、どうも数字の上から見ると、第一次産業人口、第二次産業人口はこうなりますと言って、いろいろな数字をお並べになっておっても、実際に現実の問題は、人間というものはいつまでたっていても余っていてきまりがつかんでいるんだこれをどうするんだという、こういう問題を、私はこれは今その問題についてどういう具体的実行をやるんだということはおっしゃれないかもしれませんが、まあ総理大臣、官房長官からいって、これについてはどうする、大蔵大臣が一番大事な財布を扱っているんだからどうするんだというようなことを私はほんとうに知りたい。何かそれについての御発言をいただけませんか。
  32. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。雇用の問題につきましてはお説のように非常に重大なばかりでなく、これはやはり具体的に私吸収を考えていかなくてはならない。まあ従来これは財政とも関係があるのでありますが、特にまあ日本経済、消費インフレというような問題とからんでくるのでありますが、まあ私の考えでは具体的な問題としてはやはり第三次産業ですが、これはやはり中小企業というものの育成、育てていく、ここに私はやはり雇用問題の一つのポイントがある。同時に日本の国情から見て、何と言いますか、特に私は観光事業というものは日本の場合においては一つ産業としてやはりこれは考えていくべきではなかろうかというのが一つ考え方であります。まあ資源に乏しいというが、こういうふうな資源には相当私恵まれておって、何もダイヤモンドが出なくちゃ資源がないというのじゃなくて、温泉があり風景がいい、国際的に地理的に非常にいいということはこれはやはり大きな資源だと思う。これを日本全体として非常に利用したい。しかしこれには一番道から始めていかなければならない、こういうような問題がありまして、経済の力ともかね合せなくちゃなりませんが、今後はしかしそういう方向を打も出していって、雇用問題でもなるべく具体的に解決していきたい。今度道路公団なんかも作りまして、道も一層スピード・アップしようというのもその辺の考えでございます。しょせんは、私自身の考えでありまするが、日本はどうしても貿易に依存しなくちゃならぬということだけはこれはもう今日の日本の国情から必然と思います。従いましてここにまた雇用問題のむずかしさがあると思うのですが、ですから国内資源の開発とともに貿易も非常に盛んにするのです。この利潤関係を税制等によりまして雇用をふやす方向に持っていく、こういうふうな考え方をいたしております。
  33. 田村文吉

    田村文吉君 それではその問題はそれくらいにいたしまして、やはり関連した問題なんでありまするが、都会に人口が集中し過ぎるということは御承知通りであります。非常な勢いで東京、大阪、名古屋、福岡等の大都市に人口が集中いたしております。これは私はだれも好んでそうするわけではないかもしれませんけれども、今の政治の情勢からいくというとそうならざるを得ない情勢があるんじゃないかと、こういう点について深き憂いを持っておるのでありまするが、先般私は北海道の開発につきまして特殊の措置が講じられましたことは非常に私はよかったと思うのでありまするが、現に北海道はこの五年間で人口が約五十万人近くふえております。やはりむろん引揚者の生活の都合という問題もあったでしょうけれども、やはりああいう手をお打ちになったことが効果があった。こう考えておるのでありまするが、そういうような工合にいろいろの手を打つならば人口を都会に集中させないで地方に分散させる、また人口問題の解決にも役に立つと、こういうような道があるんじゃないか、ところがそれがさっぱりネグレクトされているように考えるのでございます。裏日本及び東北というようなところは、面積は大きいんでありますが、人口は少い。こういうようなところはやっぱり北海道で行われたと同様の方法を考えていくならば一つそういう点が解決されるんじゃないか。またひとり東北、北陸だけではありませんが、いわゆる寒村僻地におきましても、もっと地方の生きられるような道を考えていただく、こういうことの必要があるんじゃなかろうか。で、私は一番先に考えることは、まず住みやすいいなかを作ってやる。住みやすい積寒地帯を作ってやるということが先なんで、住みやすいということは、一番先今日皆さんの生活で困っておることは税金である、市民税、地方税というようなものを大幅にこれは切り下げる必要があるのではないか、そのかわりその分は交付税交付金でまかなってやるというような方法を考えてやる必要があるのではないか。まあこれは自治庁長官に伺いたいのでありますが、これは一つの例でありますが、二十九年の調べで、ちょっと調べが古いのでございますけれども、市民税の北海道のこれは札幌でしたかであったと思いますが年額二十四万円、月二万円の収入のある人が家族三人で市民税を年に四千二百八十円払っておる、青森に参りますというと、八千三百五十円払っておる。それから新潟の高田へ参りますというと同じ収入で九千円払っておる。東京の付近に参りますと市川であるとか、鎌倉であるというと四千二百八十円、大体市民税が半分なんですね。こういうようにいなかでは非常に暮しづらいような方法になっておる。それで私は県税、市町村民税というようなものは大幅に下げてやる必要がある、いなかの方では。そういうことについて自治庁の御見解を……。
  34. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) 雪に降られ霜に苦しめられ、しかも単作地帯であり、お仕事も十分にできないという、いわゆる寒冷地帯等につきましては御指摘の通り課税の面においては同情ある考えをもっていたさなければならないと思います。ただいま地方税関係におきましては税の種類として三つばかりのものが指摘されると思います。ただいま御指摘の住民税の問題、それから自動車税の問題、固定資産税の問題などが自治庁の管轄としては考えられる問題でございます。その自動車税につきましては一定の期関に非常に雪が降るというような地域で運行が非常に困難になるというような所に対しましては、その主たる駐車場の属する地域に対しまして三割限度減税することになっております。固定資産税につきましては、これまた仕事の関係でもってほかの場合と違いますので十分考えていかなければならない、ことに単作地帯であり、また雪に閉ざされ仕事もできないという、こういうような関係もあり、土地だけでなく、家も雪が降ったりいろいろしまして長く持たないというような関係にございまするから、土地にも家屋にも十分な考慮を払っておるつもりでございます。その点につきまして平均評価というものは三十二年度まで据え置くことになっております。大体今後は上げることはもちろんなく見ていきたい。今後の状況につきましてはお言葉のような状況も考えまして善処していきたいと思っております。お引きになりました住民税につきましては、税の本質といたしまして国税の所得税方式に右へならえということになっておりまして、その結果が今お示しになったような各地におきまして北海道、青森あるいは東京近辺というものは差がついておるのでありますが、これは国税の右へならえ方式で住民税が組まれておりますので国税と関連いたしまして考えなければならない問題と思います。地方税だけを切り離して考えられない今の税の方式でございまするので、政府で今考えている国税、地方税の問題が調査されようとしておるのでございまするから、その際にお言葉の点をよく申し上げまして、しかるべき案を考えたい、こう思っております。
  35. 田村文吉

    田村文吉君 今の点でなお二つ伺いたいのですが、国税に準じてくる税金であるからといえば、そんなに各地で違うはずはないのですね。要するにオプション・ツゥのただし書条項をとっておるところが非常に高いのです。それから本項でやっておる方のものが安いのです。それがちょうど半分なんです。そういう点がございますから、そんなことを一体各地方民は、そんなばかなことはないじゃないかといって、東京は四千三百円で済むものなら、われわれいなかも四千三百円でいいものを、なぜ八千円、九千円取らなければならぬか、地方に財源がないから仕方がない、こういうことになる。だから交付税の配付というものが、そういうものについて考慮されていない、若干の御考慮はされますよ、若干の御考慮はあるけれども、十分にそういう点をカバーしていない。だからそういう点をどう是正なさるか。それをなされない限りは、今日は地方にいる人はどんどん東京に出てくる。みんなこれじゃ食えなくなって東京に出てくる。現に東京の人口は男の人口がどんどんふえている。女もふえているけれども男の方の人口がはるかにふえている。これは食えないからどんどんこっちへ出てくる。こういうようなことを、一つ交付税の配付について根本的なお考えを直す必要がある、こう思うのですが、どうですか。
  36. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) お言葉のように、地方交付税の配付につきましては、基準財政需要の方では田村議員のおっしゃるほどではございませんが、多少そういう点はしんしゃくしておりますが、今後におきまして十分そういう点を注意して合うようにしていきたい、こう考えております。
  37. 田村文吉

    田村文吉君 しつこいようでありますけれども一つこれは根本的の問題です。都会へ人間が集まって社会悪を造成する、この根本問題だから、これは今のうち早くですね、地方自治庁の方で考えを変えて、もっといなかの方に、地方の方に、積寒地帯の方に十分に金のいくような方法を考えてやらなければならぬ。こういうことが人口問題の解決にもなり、社会悪を減少することにもなりすることなんだと、こういうので、ただ十分に研究しますと言うて、私はその答弁で、ただ簡単にいかないというような御答弁では私は満足しないのです。必ずやるという御自信がおありになるものですかどうか。意見ですから、やらないとおっしゃればやらないでけっこうです。
  38. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) 私も議論は好きな方ですが、そういう根性は持っておりません。やりたいと考えております。御趣旨に沿いたいと考えております。
  39. 田村文吉

    田村文吉君 次に私は同じ問題について大蔵大臣一つ伺いたいのでありまするが、御承知のように公務員に対しては積寒地帯というようなことで手当というものがあるのですね。それから薪炭手当というものもこれはある。これは当然だと思うのです。当然であるから私ども主張して参った。一体一般の住民、市民というものに対してはどうして下さるのが正しいのですか。何かそれには不公平なものがあるということをお考えにならぬのですか。私は突っ込んでいえば、当然にそういうものに対しては、国税において、特に源泉において二割引くとか三割引くとかいうようなことを考えてやる必要があるのであります。こう考えるのですが、大蔵大臣はその他に何か便法がありますならば一つお聞かせ願いたいし、またないならば今の私の考え方についてはぜひ御考慮願わなければならぬと思うのですが、いかがですか。
  40. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ごもっともなお考えのように思うんでありますが、生活条件の、環境を含めまして、生活条件の相違に従って税制を考えるということは、これは実際問題としては非常にむずかしく、これは一波万波を生むので、税体系が非常にこわれるという心配もあるんじゃなかろうかと私は御質問を聞いて感じたのであります。この寒冷地帯等にどうするか、これはやはり私は、むろん税の上についても、格段の場合において考慮するということもあり得ましょうが、これはやはりもう少し今後は積極的に、こういうふうな寒冷地帯に住む方々の、むしろ税を軽くするということよりも、生活をよりよくするのには、一体どう整備をすべきか、もう少し積極性をもって、なに世界でも雪の降る寒いところは幾らでもあるのですから、そういうところが必ずしも貧乏しているとは限らないで、やはりそういうふうな事例をよく見まして、それに相応したところの、やはり税制を考えていくということも考えなくちゃならぬ、どうもそういう点がおくれているのじゃないかという気が、むしろ私はいたしております。なおしかし、ごもっともなような感じもいたしますので、検討は加えます。
  41. 田村文吉

    田村文吉君 公務員の人たちだけはそれでいいのだが、一般の人はそれでいいのだということは、どうしても私は納得がいかない。そういうお話が出たから官房長官に申し上げたいのだが、一体大分県あたりに生まれた方は寒いことはわからぬですわ、(「その通り」と呼ぶ者あり)そこで私は北陸、東北、こういうところで一つ総合開発できるような総合研究所を一つ、もう少しわかりいいような、頭を改良するようなことを考えないといかぬ。しかしそれを、金を出すのは大蔵大臣ですから、大蔵大臣の悪口は言われませんが、大分県に生まれた方には、寒いところに住む者が苦しんでいる、グルーミイな陰惨な生活をしている状況はわからない。しかもなお、さっきの市民税でいえば、それだけのえらい差を払っている。なおまだ私は文部大臣にも人事院にもお尋ねする問題はありますがね、そういう問題もあるので、これは官房長官にも一つ、どうしても総合の研究所を一つ作って、大蔵大臣の言われるような、もっと生活を明るくする方を考えてもいいじゃないか、それも一つの説なんであります。われわれはできるだけそういうことを考えて、今までやってきておるのです。おるのでありますけれども、もう生活上どうしても税金が高くて、しかも収入が少いということになれば、これは東京へ出てくるのは当りまえなんです。この点をもう一つ大蔵大臣から考えてもらうと同時に、官房長官に、総合研究所を作ることを一つ考えになる必要があるのじゃないか、これは私は国家的の機関で思い切っておやりになったらいい。そうして、東北、北陸の人口の希薄なところへまいてやるということが、人口問題の解決にもなり、また社会悪を防止する方法にもなる。こう思うのですが、官房長官どうですか。
  42. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) ただいま田村先生が言われたことは、非常に深刻な問題だと思っております。すでに経済企画庁長官からも御答弁になったと思いますが、その意味において実に六年前から北海道については特別なる措置を講じたわけでございます。東北についても同様のことが要請されておりまして、一時ほとんど衰退しておりました東北興業につきましても、政府の出資もするし、さらに保証もするということで一応の手助けをしましたが、これはまだほとんど大した効果はないかと思います。問題はやはり生活条件、生産の基礎条件を確立してやる、こういうことで経済企画庁におきましても東北の振興には重点を入れて、そのために御承知のように、昨年から本年にかけても、調査費をおのおの一千万円を組んでいる状況でございます。これに基きまして基礎調査が続けられて参るのでありまするが、お示しの積寒地帯に対する総合的な研究所を建つべしというこれは非常に傾聴に値する御議論だと思っております。ただし本年度中にこれをやるということは予算上これはできないのでございまするが、本年度中さらに現在の調査費を中心として研究の上、十分今のお説を尊重してその方向に持って行くように努力いたしたいと考えておる次第でございます。
  43. 田村文吉

    田村文吉君 これは今の雪の多いのは東北、北陸なんてありますが、私は現在東京でこんな朗らかな天気の模様を見ている一方、あの雪のまだ三尺も五尺もあって、あの陰惨な生活をしているのを考えるときに、実際たまらないような感じがするのです。ですから、官房長官は、まあ東北のことはあまりよく御承知ないかもしれませんが、大体御承知なんですから、ぜひ一つ東北、北陸、これの積寒地帯に対する総合研究をやる、思い切って一つやるということをお考えになる必要があると思う、それから役所ですね。殆んど税務関係にしましてもどこにしましても、内務省の仕事でも何でもそうですが、役所というとまず東北なら仙台ですね。あとはもう全部表日本へきているのです、大体の大きな集合的な役所は。こういうようなことで、そうはおおっしゃっているけれども、一体役所なんというのはもっと生活の悪い所でもどんどん置いて、それでほんとうに農業というものもわかり、産業の進め方もわかるということになるのです。こういう意味で官房長官も今後そういう問題について十分一つ考えおきをいただきたい、こう思うのであります。それでけっこうでございます。  それから私は人事院に伺いたいのですが、地域給の問題、しょっちゅうやかましい問題になって、おうるさいことだろうと思いますが、最近の都会人口集中という問題からいって、最近のように東京の方が実は税金が市民税なんぞは半分であがっている。そういう所は地域給がうんとついている。これは非常に矛盾だと思うのです。だから地域給はいっそこの際全部やめてしまう。やめてしまってそして積寒地帯なんぞという特別のそういう考慮すべきものがある所は、これはつけべきでありましょうが、今のようなかえって市民税が少いところの都会が地域給をもらうというようなことはおかしいのです。そうお思いになりませんか、お調べになったことございませんか。
  44. 淺井清

    政府委員(淺井清君) お答えを申し上げます。人事院といたしましても地域給は将来廃止すべきものという方針でおりますが、問題は今内閣の手に移っておりまして、内閣の方でこの問題を解決するように研究中であると思っております。ただ残っておりまする問題は、即時に全廃いたしますか、あるいは漸進的に全廃いたしますか、その辺にあろうかと思っております。
  45. 田村文吉

    田村文吉君 官房長官が帰られましたが、大蔵大臣どうですか、この問題につきましては地域給を全廃するという問題についてはどう考えておられるか。
  46. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 地域給を設けてありましたのは、特に経済の状況が終戦後地方によって非常に差異がはなはだしいということにあったと思うのでありますが、その後だんだんと正常化が進んでおりますし、まあ生活状況もだんだんよくなっておりますというようなことから、まあ私どもとしてはなるべく地域給というものは廃止していきたいという考え方を持っております。
  47. 田村文吉

    田村文吉君 すでに内閣に問題が移っているというお話でございますが、人事院としては地域給を廃止すべしと、こういうお考えにまとまっているのですね。
  48. 淺井清

    政府委員(淺井清君) お説の通りでございます。
  49. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) ただいまの問題につきましては、昨年でございましたか、公務員制度調査会というのが内閣に設けられまして、そこで給与の問題全般につきまして審議が行われました。結論といたしまして、地域給につきましてはこれをできるだけ廃止する方向に進まなければならぬが、ただこれを一挙にすぐ全廃するのもいかがであろう。過渡的に段階を整備していって、だんだんにこれを廃止する方向に進んでいったらどうかというような答申が出ております。目下内閣にございます公務員制度調査室で、その答申の線をいかに具現するかという問題を検討いたしておるところでございまして、その結論を待ちまして近く善処する、さような運びに相なっておる次第であります。
  50. 田村文吉

    田村文吉君 地域給をやめるとそれだけ金が浮いてくるわけなんでありますから、それを全般にまいてやれば大へんみんなが喜ぶことだろうと思うのです。私は一面において不利益を受ける人もあるけれども、平等になるわけで利益を受ける人も出てくるわけです。そういう意味で一日も早くおやりになった方がいいのじゃないかと、こう考えられるのですが、答申々々ということをお待ちになっておってもなかなか容易でないと思うのですが、一体大蔵当局はやる腹を持っておるのですか、どうですか。
  51. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 地域給を廃止いたします場合に、問題がございますのは、今現に地域給がついている者につきまして収入が減るという問題が起るわけでございます。その既得権をできるだけ尊重しながら、しかもできるだけ早く地域給をなくする、そこにいろいろと工夫、苦心が要るわけでございまして、その点の解決につきまして、なかなか名案がございませんのでおくれておるわけでございます。さらに検討を重ねまして、できるだけ早く将来の方向を打ち出して参りたい、さような考え方をいたしておるわけでございます。
  52. 田村文吉

    田村文吉君 文部大臣にお伺いいたしたいと思います。これはこの間も地方の高等学校で問題になったのでありますが、実は地方の高等学校の学力が低下しておるために、東京のいい学校に入ろうというときになるとみななかなか入学ができない。一年、二年を停頓せざるを得ない、こういうようなことだから、もっと一つ学力をつける方法を考えたらいいじゃないかということで、それじゃいい先生をもっと東京から引っぱって来ることを考えてほしいということを県にも話をしてやろうじゃないか、こういうことになりましたところが、これは何年学校を出て、何年の経験を持った人に対する給与というものは大体国できまっておるのですね、でございますから、少し手当をよくしてやって、いい先生を連れて来ようと考えても、ようできぬのであります。でありますから、その結果どういうことになるかというと、近ごろは地方の高等学校の生徒まで東京の高等学校のいい学校に入ろう、こういうような風潮が出てきておるのです。いわんや地方の大学になりますと、どうも学校を出ましても、地方の大学を出たのではなかなか就職が容易でない、こういうようなことになっておりますので、どうもみんな私立でもかまわないから東京の学校へ来たいと。それからまことに困ったことは公務員の方々が転勤になりますと、相当の地位になられた方は、子供がすでにいい学校へ入っておるから、それを放して行きたくない、だから子供はみんな東京に置いて、自分だけ単身赴任をする、こういうようなことになってきておる、これは私はさっきから申し上げておる都会にすべての人口が集中するという問題のこれは現われなんでありますので、これは実に困ったことです。だから地方の高等学校で十分に同じ学力の勉強ができて、地方の大学でりっぱな学術の勉強のできるような方法にしないと、ますます人口が都会に集中する、こういうことになるんだが、これは文部省として、今のような地方で給料をよけいやろうと思ったら自由にできるような方法も考えなければならないし、一面に高等学校、大学に対する考え方をもっと考えてもらわないといかぬ、こう思うのでありまするが、いかがですか。
  53. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今、田村さんのお問いのことは、私自身も、私の属しておる党派も非常に重大なことと考えまして、学校制度、ことに大学の都市集中等のことを根本的に原因から直すように御研究を願いたいと思って、今回臨時教育制度審議会なるものをお作り願っておるのであります。それができますれば、そこで十分お考え願いたい。ただ私が今思っている観察を述べますると、今の大学は学術のうんのうをきわめるということのほかに、やはり就職という問題がついて回るのです。東京の著名な大学は、卒業生もたくさん出しておりまするし、従って実業界等にも力があるといったようなことで、学生が東京へ集中することは事実でございます。これが対策としまして、やはり地方の大学にも施設、設備をよくするほかに、その学校の特色をつけるようにいたしたらどうか。最近山梨県の大学では醸造学を主にされるといったようなことも聞いております。桐生では繊維のことについてたんのうな教授もおられるということを聞いております。こういう学校の特色を十分に発揮するということでいくべきではあるまいか。詳細な実施策については、今度できまする審議会に一つさっそくそれを諮問したいと思っておるのでございます。高等学校その他地方のそれ以下の、大学以下の学生の学力が低下するということも、現に私、子供を持つて知っておりますが、学問の水準を統一するために何かの施策をいたしたいと思いまして、今回教科書法の改正、教育委員会法の改正等も諮っておる次第でございます。御趣意のことが徹底するようにできるだけ力を尽したいと思っております。
  54. 田村文吉

    田村文吉君 まあとっぴな議論でありますけれども、むしろ地方から来た学生を優先して、一ついい学校へ入れてやるというくらいまでならないと、都会に人間の集まってくることは、これは防げませんよ。それから先にも申し上げたように公務員の手当だが、地域給などといって、東京にいれば給料が高いし、いなかにいれば給料が少いというようなことをやっていて、これであなた、日本の国が満足にいけるわけはないのです。こういう点を照合して、もっと地方に人口を分散することを考える大きな政策を一つ打っていかなきゃならない、私は文教政策にもその点があるのだ、こういう意味で申し上げたのでありますが、趣旨はむろん御賛成と思いますけれども、もう少し思い切っておやりにならぬとできない。なお、たとえば大学をこういう都会の黄塵万丈の中に置かないで、できるだけ一つ百キロや二百キロ離れた所へ学問の中心を二つも三つも分けるというようなことも考えておいでにならないといかない、こういうふうに考えますが、その点についてはどうですか。
  55. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 大学その他の教育施設を都会の中心よりはずすということも、私の前任者以来考えておることでございます。ただいますぐ移転というわけにも参りませんが、お考えのことは十分尊重いたしたいと思います。
  56. 田村文吉

    田村文吉君 大麻国務大臣にお伺いいたしたいと思いますが、去る一月の一日に新潟県の弥彦神社において二年参りという行事があって、その行事に一ぺんに一万人そこいらの多数の人が集まったために、それが帰るときに非常な混雑を来たした。そして百二十四人の尊い生命をなくしたのであります。私は被災の方々に対して、遺族に対しても非常にお気の毒に存じておるのでありまするが、ただこいねがうところは、再びかようなあやまちのないようにすることが必要なんだ、一体警察はこれに対してどう考えておるか、その当夜における警察官というものは全く境内に入っておらぬのですね。一人か二人おられたかどうかしりませんが、お参りに行った警官が入っておる、こういうようなことで、非常にああいう深夜多数の人をある境内に集めていくというようなこと自体がいいのかどうか、私はできるだけ自治の方針でもってすべてのものを——近ごろはややともすれば民主主義で行き過ぎもありますが、なるべく自治的にやっていきたいけれども、人間の人命に関することや何かになりますと、もっと一つ取締りをやっていくべきじゃないか、そういう集会、人間がそう広くもないところに一万人も集まるようなこと、またそれが長い時間そこに滞留して一時に退散すること等のことが混雑を引き起すであろうことは考えることができるのです。そういうことについて、一体大麻国務大臣は、今後の処置についてはどういうふうにお考えになっておるか、これを一つ伺いたい。
  57. 大麻唯男

    国務大臣(大麻唯男君) 申し上げます。新潟県の本年元旦早々の弥彦神社の事件は、実に遺憾千万でございまして、しかも正月早々からああいう不祥事が起きたことに対しまして、まことに残念に考えておる次第でございます。その原因をただしますと、どこに責任があるかというようなことも世間でいろいろ批評されておりましたが、まあ最大の原因は、神社がああいう深夜にもちまきをしたということが最大の原因のようでありますけれども、それかといって警察がちっとも責任がない、そんなことじゃ決してございません。最善の注意を払って、そうして注意を与えておいたがああいうことになったかと思って、非常に遺憾の点があると思って恐縮しておる次第であります。田村さんのお話もそれをおとがめになるのではなく、今後起らぬようにしなければならぬが、それに対する大麻の考え方はどうかというようなお話でございましたが、警察庁におきましては、文書におきましても、また会合を催したりして、あれを手本として今後そういうことの絶対にないように、最善の注意をいたさなければならぬと思って、万全を尽しております。注意をいたしております。また今後も引き続いて研究をいたしておりまして、全国にもこのことをよく言うてやりまして、そうしてあんなことがないように注意をするようによく最善の注意を喚起いたしておる次第でございます。どうぞ御了承願います。
  58. 田村文吉

    田村文吉君 最善の注意、最善の注意ということだけでは私はいかぬので、公衆道徳というもの、公衆道徳をだんだん上げるということも一方に大事でございますが、ある程度法律ができて、その法律に従って皆が公衆道徳を守っていくということによって世の中を平和に送ることができるのです。私はそこで伺いたいことは、今度ああいうような集まりということに対しては、一体自由にお許しになるのかどうか、お許しになるとしたならば、これは当然起るのですよ、こういう問題は。昔と違いまして、もう今日はバスというものは非常に発達をした。昔はかりに千人集まるだろうと思ったのが、容易に一万人の人間が集まる。一万人と考えた場合には十万人の人間が容易に集まることができる。こういうようになっている時代、もう少しそういう公衆の集まりであるとか、公衆の行進であるとか、そういうものに対しては十分なお考えが払われないと、また再びこういうことが起る。現にそれが起って間もなく、大阪で何とかという女優さんが来たというので、あのとき劇場でちょっと死傷が起っておるのですね。そういうようなことが、今後交通網が発達すればするほど大きくなる。こういうことをお考えになって、ただ注意させますじゃいけないので、もう少し具体的に、こういうものについてはこういう条例によってやらせるとかいうようなことをお考えになるべきではないか。こう私は思うのです。それ以上のことは申しません。  なお私ついでに交通道徳の問題について、関連するのでありまするが、いろいろ取締り規定もあるようでありまするが、第一に、現在は歩行者の右側通行ということが、進駐軍が来られましてからきめられたのでありますが一体この法規は今後とも守らしてやらせるおつもりなのか、右側通行というようなことについては、どうお考えになっておるか、これを一つお伺いしたいと思います。
  59. 大麻唯男

    国務大臣(大麻唯男君) 田村さんの御注意つつしんで承わります。  また交通のことにつきましては、今あの制度が励行されておらぬじゃないか、それを変える意思がないかというような御趣旨の御質問のように思いましたが、十分には行われてはおりませんけれども、だんだんとあのやり方になれて参りまして、子供なんぞはもうだいぶ守っておるようでございます。それで今すぐ変えますと混乱を来たすだけで、どうも適当でないと思いますが、慎重に考慮はいたしておりますけれども、そんなようなことを考えております。
  60. 田村文吉

    田村文吉君 今の問題は、もうすでに子供は学校で一生懸命に教え込まれているのだから、私はそういう子供にうそを言うようなことをして、また直すのだというようなことはしたくないと思うのです。思いますが、ただ不自然な、日本人に適していないようなことであるとすると、これは一日も早く直した方がいいのですね。そういう点で私は少し疑問を持っている。疑問を持っているのだが、やるならやるではっきりとしてやってもらわないと、子供たちが守ることはおとなも守ってもらわなければいけない。子供だけ守らして、おとなは守らぬでいいということはない、こういう点がありますので、右側通行というものはずっと徹底しておやりになるつもりですか。——首だけじゃわかりません。(笑声)
  61. 大麻唯男

    国務大臣(大麻唯男君) はっきり申し上げておきます。今変更する意思はございません。
  62. 田村文吉

    田村文吉君 外務大臣はいらっしゃいますか。
  63. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) まだおいでになりません。
  64. 田村文吉

    田村文吉君 政府委員がおいでになれば、政府委員でけっこうです。——外務大臣に対する質問は、私の同僚議員よりほんの三分か五分いただいて質問さしていただきますことにいたしまして、私の質疑はこれで打ち切りにいたしたいと思います。
  65. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは午前はこれにて休憩いたします。    午後零時十六分休憩      —————・—————    午後一時四十九分開会
  66. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を開会いたします。  午前に引き続いて一般質疑を継続いたします。
  67. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 まず、離島振興法に関連する予算について質問をしたいと思いますが、離島振興法第八条には御承知通り「国は、第五条第一項の離島振興計画の実施に要する経費については、毎年度、国の財政の許す範囲内において、これを予算に計上しなければならない。」という規定になっておりますが、この条項に基いた離島振興予算なるものはどういうふうになっているのか。今私たちがいただいた予算書その他を拝見して、どうもよくわからないのですが、どういうふうに見ればいいのか、どういうふうにまとめられているのか、それらの点について、まず企画庁長官から御説明を願いたい。
  68. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 従前、二十八年度以来各省別にばらばらになっておったのでありますから、この三十一年度におきましては、初めてこの事項別に離島振興予算というものを組んだわけなんであります。しかしながらそれだけではいけないので、やはり従前のごとく、各省別の分をこれにある程度移管していきたい、こういうふうに存じておるわけであります。
  69. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、一括してまとめたものがあるし、それ以外のものは各省に分属しているというお話ですが、その一括まとめたものは一体どういう項あるいは款としておまとめになっているのか、それから分属しているのはどういうことになつているのか、それらがさらに数字的にはどうなっているのか。
  70. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 事項別になっておりまするのは、道路、港湾、漁港、電気導入、林道、開拓、それから土地改良、これだけでございまして、これが三十一年におきましては八億一千万余になっておりますから、その他開拓、土地改良、造林、治山、砂防、河川、海岸堤防、都市計画、水道、住宅、航路標識、気象観測、郵便、電気通信、牧野改良、厚生、文教等であります。これは各省別に各省に分割されているわけなのでございます。
  71. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 一括してまとめられたものとして八億一千九百万ですか、その数字をお示しになったのですが、一体予算の扱い方として、それは一括されてちゃんと予算の組み方ができているのかどうか、どうもこの予算書を見ればそういうふうには受け取れませんので、みんな各省にばらばらになって計上されているにすぎないし、それらはただ便宜的にちょうどたまたま離島に該当する道路の関係費あるいは港湾の関係費等がただ機械的に積算されて集められているというだけであって、特別な予算の措置として特別な款あるいは項、そういうものとして扱われていたとは思われないのでありますが、それらの点はどういう扱いになっておりますか。
  72. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいま申し上げましたこの事項の分は、各省に分割されておりますが、これは離島振興として項を明記して、各省に分属されているわけであります。
  73. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 明記して一応この離島振興法により指定されて云々ということで、各省に分属はしておりますけれども、これらはさっき言ったように、ただたまたまそこにあるものをおまとめになったというだけであって、何ら振興法にいうような精神によって、一つの独立した款なり項なりというようなものとして、予算の措置がなされていないとしか思えないのですが、この扱い方はどういうふうになっておるか。むしろそういうふうにもっと特別に特記して予算を計上し、予算の措置をすることがこの離島振興法の精神でもあり、それがなされていないから、これまでもそうでありましたが、今後もどうもそれらの費目の支出その他が非常に混淆して、何ら離島振興の精神が実現されないという実情にあるように思いますが、その点はどうですか。
  74. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまの御指摘の趣旨は、私ども初めから本年度におきまして非常にこれを強調したわけなんでありまして、その点につきましては、主計局長から、一応大蔵省の方から御説明願いたいと思います。
  75. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 離島振興関係予算をたとえば経済企画庁に一括計上して、使用の際には移しかえて使用したらどうだろうかというような御意見も、確かに一つの御意見であるわけでございますが、他面離島振興の各事業のつながりもございまして、各省にこれを分けて組んでおくことの利益もまた存在するわけでございます。そこで今回の予算編成に当りましては各省に分けて計上はいたしましたが、各省のたとえば道路なら道路の予算の中におきまして、離島振興関係分はこれを事項として特掲いたしましてその金額を明確にする、他へ流用されることのないようにいたす、さような考え方から今回初めての試みといたしまして、各省の当該予算の中に離島振興関係を事項として特掲いたしたわけでございまして、これによりまして、離島振興法がねらっておりますところの趣旨も達成されるのではないか、さように考えておる次第でございます。
  76. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうもそういうふうな扱いであれば、これはあるいは大蔵省との話し合いによって移用をするとかあるいは移しかえるとかいうようなことで画然とその地域、土地に使うということが確保されない結果になるのじゃないか。これまでの実績から見るとどうもそういうことしか言えないようだし、特に各所管官庁がこれをやる場合には、どうしても中央なり特別な地域が重点的になって、離島振興という特殊な重点は非常にぼけてくる。これが過去の実績であると思うのですが、それらが果して、今度のこういう扱いで確保されておるとお考えになっておるのかどうか。
  77. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。この事項として確保いたしましたものは、その実行上各省に分割されておりますから、これは経済企画庁の責任といたしまして、必ずそれに使用するということについては十分努力いたしますから、これは必ず最初の予定のごとく使用されることと私は信じております。
  78. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それじゃその点については、経済企画庁の方で特段な配意をして、必ず離島振興の精神が実現をされるように、特別の配慮と措置をぜひ一つやっていただきたいと思います。  さらにそれに関連する問題でありますが、離島振興の問題の場合には、いつも問題になるのは、離島との航路の問題だと思うのですが、その航路を確実に整備をしてやることと、さらに運賃が非常に高い、特に離島との運賃は非常に高い。そのために離島が全国において取り残されて非常に後進のうき目を見ておるという状態であると思うのですが、それらについて、特にこの離島振興の立場から、航路振興の問題をどういうふうにお考えになっておるか。これはまず、離島振興の担当の大臣から一応御説明願いたい。
  79. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この離島振興をいたしますにつきましては、航路を確保するということは、これは絶対の必要な問題だと存じます。同時に運賃の問題も考慮しなけなればならん。で、経済企画庁として尽し得ます力は、開銀の融資等も、この離島の方に向うところの航路については、できるだけ融資をする、こういうふうな方針をとってこの助成に努めておるわけであります。
  80. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 運輸大臣に……。
  81. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) 今のお話しの離島の航路関係については、離島航路整備法ですか、法律がございまして、そこで補助金を航路補助に充てておる。それからそこに従事する船舶の建造、改造に御承知通り開銀その他の財政上の融資をやっておる。市中銀行から融資する場合には、その利子補給をやっておるというようなことが、大体運輸省所管の問題でございます。
  82. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それらの措置をやられることはもちろん必要でありますが、それらの措置をやる究極の目的は、その航路を確保してやることと同時に、その運賃を引き下げなければ、後進性が取り除かれないという問題だと思うのですが、今お話しのように政府はあるいは船舶建造の利子補給をやる、あるいは航路の補助金をやるというようなことを相当やられたと思いますが、これまでに離島振興、あるいは奄美大島等の特別法に基いてそういうものをどの程度やられたのか。それからそれをやられた結果、必ずそれは運賃の引下げの問題と関連する問題として問題を提示しておられると思うのだが、相当な利子補給をやり、あるいは補助金をつけておられたその効果として、運賃をどれくらいに下げる実績をお作りになったのか、その辺を少し御説明を願いたいと思うのです。と申しますのは、利子補給、補助金でいつも問題になることは、特定の航路業者その他に非常に手厚い補助、助成がなされておるにかかわらず、それはその地域の大衆の利益には何にもならないで、そういう航路の利潤その他を確保してやることにしか国家は奉仕をしていないというような場面が非常にたくさん現われている。それらの点をほんとうに政府国民立場から、人民の立場からおやりになっているとは思えないのでありますが、そうでなくて実際にそれらの金をこれくらい使って、こういうふうに運賃引き下げ等に努力をしておるということを、もう少し具体的に御説明を願いたい。
  83. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) これはこまかいことは必要があれば説明員から説明させますが、大体航路補助金というものは二十五年以来多いときは四千万近く、それから少いときは大体三千万、そういうふうに大体出しております。これはそれだけ出してどれだけ現実に航路の運賃が下ったかというよりは、むしろ補助金を出さざりせば、もっと上るやつをそれを上げちゃ困るのだから、それでもってこれを上げないようにするという方の消極的の効果だろうと思うのです。高い安いというのは運賃のことだから、これは比較上のことでございまして、これは離島関係のやつを全体見ましてだいぶん高いところもありますが、平均して離島関係の航路の運賃というものが特に高いというふうにはなっておらんようであります。やはり世間並みの水準ということになっておるということは、今申しましたような三、四千万円というものの航路補助金というものを出しておりますためにそういう水準になっておる、こういうことに御承知願いたいと思います。
  84. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私の知る範囲においては、どうも離島関係の航路の運賃はほかの航路に比べれば非常に割高になっている。特に具体的な例をあげれば、たとえば奄美大島の船運賃のごときは、これは日本一非常に高い運賃になっている。しかも奄美大島から鹿児島に至るまでの運賃の方が、場合によっては沖繩から阪神に行く貨物輸送運賃よりも高いというような現状に置かれていると思うのですが、それらを一体運輸当局としては実際に検討をし、実際に措置をお考えになったことがあるのかどうか、その辺をもう少し具体的に御説明を願いたい。
  85. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) お話し通りです。お話し通り、御指摘になった奄美大島関係については、鹿児島と奄美大島の方が阪神地方より高くなっております。これは特別な事情によりまして、阪神地方の方は沖繩航路同盟ですか、そういうものの方でその地方の振興のために特別な措置をとっている、また、もっと裏の理由を言えば、鉄道の運賃というものは御承知通り長距離において安く、逓減法になっておりますものですから、それとの競争といいますか、そういうものの立場から長距離の方は安くなっているということが、これは実情でございます。今奄美大島から鹿児島の方はそれとつり合いまして、いかにも常識的に考えますと遠い方が安くて近い方が高いのですから、これは私どもも何とかしていわゆる阪神の沖繩航路同盟なみに鹿児島——奄美大島間の方も下げさせたいと、こう思っておりますが、ただ、何分にも船会社の方が小そうございまして、それからそれよりも先に船そのものの建造が十分でございませんので、まずこの際としては船を新しく建造する、そういう方に財政投資なり何なりの方でお世話を申し上げましたので、それだけ鹿児島から奄美大島の航路の会社は負担が多いわけでございますが、そこでこの際当分は沖繩航路同盟並みに運賃を下げさせるということは、ちょっとやりにくいと、こういう実情でございます。
  86. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 しかし、そういう状況があるから離島は特別な措置をもって振興計画を立てさせ、あるいは奄美大島の特別の振興をするという特別法をもって措置する意義がそこに出てきているのだと思う。しかも今まず船舶を建造することが大事だとおっしゃったのですが、それはもちろん船舶を建造することも大事であります。しかし船舶を建造してそれに相当な助成をし、相当な利子補給をする、あるいはさらには補助金を出す、その補助金を出すときでも前は運賃を下げることを条件に補助金を出しておられたと思う。それにもかかわらず補助金を出す方だけが出されて、運賃引き下げに何ら措置ができていない。それならばそれで会社の経理その他を十分にお洗いになったのかといえば、必ずしもそういう配慮はできていないのです。この方は非常に怠慢だと思うのですが、これらについて一つ特別な措置をやって、振興のために積極的な努力をされることが必要だと思いますが、どういうふうにお考えになりますか。
  87. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) お話しの点はごもっともだと思います。やはりそういう場合にもう少し、これは奄美大島の例ですけれども、何とかするのが適当じゃないかと、こう考えております。ただ世間並みに言えば日本一高いと佐多さんおっしゃったけれども、必ずしも日本一高いのじゃない。離島の運賃から言えばまだまだ高いところがございまして、そう鹿児島と奄美大島のやつだけがことさらに高いということはない。ただ高い安いということは、そういう船会社の比較のみならず住民の経済の、民度の点があろうと思います。その意味においては私は奄美大島の点などは特別にもう少し考慮してしかるべきじゃないかと、こう考えております。
  88. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 奄美大島よりもっと高い離島の航路運賃があるなどということを聞くと、なおさら聞き捨てにならないのですが、私は奄美大島のことだけを言っておるのではなくして、奄美大島もその一例だが、さらに離島航路の運賃は非常に高い。それらをどういうふうに措置をされるかというお尋ねをしているので、なおそのほかの離島にはもっと高いところがあると言えば、これはもう全く非常識に高い問題なんで、これらは責任をもって措置をされなければならない問題だと思うのです。そこでそれに関連してもう一つお尋ねをいたしますが、そういう問題があるので、これはやはり特定の船会社に厚い補助なり助成をしながら、その利潤なり、特に独占的な利潤等を確保してやる結果になっている問題が非常に多いと思うのです。そういう問題もあわせ考えるならば、そうして離島振興をほんとうにお考えになるならば、離島関係の航路その他は、国内の鉄道輸送その他と同じような見地から、不採算なものでも、あるいは不採算であるからこそ、場合によっては国営なり公営という問題を考えなければならない地点、航路が非常にたくさんあるんじゃないか、それらのことを大臣としてはどういうふうにお考えになるか。
  89. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) お話しのような点も、これは一つ立法問題としては考慮しなければならんと思うのです。鉄道と違いまして、たくさんのきわめて離島関係の会社はみな違うものですから、いいものもあれば悪いものもある。それで補助金制度はそれがいいか悪いかは別として、従来は赤字補てんということが主になっているものですから、それで今申し上げた通り、奄美大島より高いやつでやっているところが出ている。それが自体いかんのじゃないか、そうすれば国全体としてもう少し離島のために考えなければならんのじゃないかということは、これは一つの御議論として将来考究したいと考えております。
  90. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その点は将来でなくて直ちに一つ検討を願って措置をお考え願いたいと思います。  それからもう一つ砂糖の消費税、黒糖の問題でありますが、北の方には北海道にテンサイ糖があります。内地生産の砂糖としていろいろな保護助成が行われて育成されてきたと思うのですが、それと同じような意味において、南方の黒糖という問題は非常に同じような問題として取り扱わなければならないんじゃないか。従って一体その北の方のテンサイ糖に対するそういう助成なり、特に税の措置なりというようなものは、どういうふうにおやりになったか、それとの比較において黒糖も同じような均衡した問題として措置をされることがしかるべきじゃないかと思いますが、それらの点について大蔵大臣あるいはこの奄美大島等の特殊な振興対策に関連して所管の大臣はその問題をどういうふうにお考えになりますか。
  91. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 黒糖につきましては、今一斤消費税が四円かかっております。それから白糖が二十八円、台湾糖が、あかい砂糖、これが十七円五十銭の消費税がかかっております。それからテンサイ糖、これには二十八円の消費税がかかっておりますので、消費税の観点からすれば、黒糖は税の扱いは安くなっておるのでありますが、黒糖は御承知のように外国から非常に入ってくる関係から、市場価格がテンサイ糖に比べて、テンサイ糖は今私の記憶では四十九円何がしで買い上げておると思いますが、黒糖は市場価格がなおそれよりも下っておるように思う。今度砂糖関税を引き上げた一つの理由も、こういうふうに黒糖が非常に安い、これも是正したい、こういう観点からであります。
  92. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 税の措置として特別な措置はやっておられないようですが、それならばそれとして、たとえばビート糖を育成をする場合に、それからあがる税収に該当する程度の保護助成というようなものは、長年の間やってこられたのではないかと思うのですが、同じようなことを特殊な地域の振興対策その他に関連して配慮をされる必要があるのじゃないかと思うのですが、これについてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  93. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私の考えでは、この黒糖が安いという点についての是正は、外国から安い砂糖がたくさん入っておる。どうしても将来管理政策で調整をしてゆくのがよかろうと考えております。なおお話しの点につきましては十分検討してみたいと思います。
  94. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) テンサイ糖と黒糖との問題でございますが、消費税は黒糖の方が若干安くなっておるわけでございます。テンサイ糖につきましては、これは北海道に特殊な産業を普及させるというような地域的な産業政策の意味もあったかと思いますが、テンサイの値段につきましては、政府がこれを四月一日から、きめました値段で、その砂糖につきましてはこれを食管会計で買い上げる。そして若干損をしても、損をかぶっておるというような保護策がとられておるという現状でございます。それを黒糖についてもやったらどうか、またやれないか、そういう御質問だと思うのでございますが、それにはいろいろ問題がございます。黒糖の規格、これが実は今の小規模生産であるせいもありましょうが、いろいろまちまちでございまして、まず規格の統一をはかる必要があるのではないか。それにはこれは農林省の専門の問題でございまして、私どもがお答えするのはいささか門違いでございますが、政府が買い上げるとか何とかいう問題の前に、まず技術指導をもう少し親切丁寧にやるというような問題もございましょう。その点の方がやはり先決問題として重要ではないかというような感じがするわけでございます。さらに黒糖につきましてはいろいろ流通上の問題、大資本に買いたたかれておるというような問題も実はあるようでございまして、それらの点につきましてはさらに農業協同組合等を活用いたしまして、さようなことがないように流通機構を整備する、そういった品質、技術の改良、あるいは流通機構の改善等についてまず努力をしていく。その上でさらに特別な保護助成の措置が必要であるかということを考えるのが順序ではないかというふうに考えるわけでございまして、それらの点につきましては、いずれ関係の各省からもお答え申し上げた方がいいと存じますが、私ども予算等の窓口を通じて感じております感想は、ただいま申し上げた通りでございます。
  95. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それらの措置の問題は、今もお話し通りに地域的に特殊な振興計画という問題との関連においてやらなければならないと思いますが、たとえば黒糖の主産地である奄美大島あたりは、そういう意味で特殊振興法が、特別法ができておるのです。そういうしかも産業対策としての一番中心的な問題になると思うのですが、そうしてそれには今お話し通りに技術指導なり、あるいは集荷、販売等の共同の施設等のいろいろな問題があることも御指摘の通りだと思うのですが、それらについて従ってさっきお聞きしたように消費税との関連においてもう少し財政支出をやってやって、そうして近代化なり合理化というような問題を、地方産業振興として特殊に対策を講ずる必要があるのではないか、そういう点をこの法案を担当しておられる担当の大臣はどういうふうにお考えになり、どう処置しようとしておられるのか、お答えを願いたいと思います。
  96. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) その問題は自治庁からお答えするのが当然だと思いますが、私どもはやっぱり離島振興ということを受け持っております経済企画庁といたしますれば、できるだけ離島における商業を振興するということについては各方面から特殊の検討を加えて、そういう方面に対する投資、融資等についても別に考慮する必要があると私は存じますが、先般奄美大島でなくて、八丈島等に参りますというと、やはりあの付近には特殊の産業として相当助成すべき産業が見つかったのでありますから、そういうことにつきましては農林当局とも話を進めておる、こういう状況でございます。また奄美大島の黒糖の問題だとか、あるいは今日台湾がなくなったものでありますから、パイナップルを栽培するとかいうことにつきましては、できるだけこれを助成していきたいということを関係官庁と連絡をとっていきたいと存じておる次第であります。
  97. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 次に防衛庁長官と文部大臣にお尋ねをしたいのですが、現在アメリカ軍並びに自衛隊が使用するために整備をしている飛行場、これは個所にしてどれくらいというふうになっておるのか。そしてその飛行場で特にその飛行場を整備し、新しい大型の飛行機を使うために、その騒音に悩まされて教育上非常に支障を来たしているというような学校がどれくらいあるというふうにお調べになっているのか、その辺の模様を御報告願いたい。
  98. 船田中

    国務大臣(船田中君) 自衛隊の飛行場の付近に学校がございまして、そのために飛行訓練をするたびに非常な騒音を与えている、授業上にも非常な迷惑をしておるという例はございます。現実に今問題になっておりまするのは、鹿屋の飛行場のすぐ近所に小学校があり、また少し離れた所に高等学校があるということでございます。これは現に昨日も二階堂代議士を初め多数の関係者が陳情に見えたのでございますが、これにつきましては、現実に騒音の程度を調べておりまして、鹿屋の飛行場につきましては、昨年の八月実地調査をいたし、また九月にこれに基く予算の要求をいたし、本年になりましてから、一月に大蔵省の方の大体これに対する補償についての予算の方針の決定がございまして、補償額は二月の初めに坪当り一万七百五十円ということになりまして、総坪数が二百二十坪でございますので、そのことを内示しました。しかし地元側におきましては、それではとうてい足らぬというので、現に昨日もだいぶん陳情をせられておるのであります。防衛庁といたしましては、予算の許す範囲内においてできるだけの補償をするようにいたしたいと考え、あるいはまたどうしても補償だけでは間に合わない、移転をしなければならぬというような場合におきましては、この移転に対する補償額というものも考えておる次第でございますが、この鹿屋の問題につきましては、また関係当局の間において十分に協議が整っておりませんので、最終的にどれだけ出すかということはまだ決定いたしておりません。  なおその他の学校におきまして、自衛隊に関する限りにおきましては、今具体的に問題になっておるのはないと存じますが、飛行場の数あるいは今御指摘のような御心配のある——どういうところにあるかということは、後に政府委員から答弁してもらうことにします。
  99. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 本件の現状は、今防衛庁長官の御説明の通りでございます。日本の自衛隊の方の損害についてはまだ法規がございませんけれども、進駐軍のために作りました他の法律を準用していきたい、かように考えております。
  100. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 米軍に提供せられました飛行場を自衛隊におきまして共用いたしておりますのは、千歳飛行場、美保飛行場が常時そういう形態になっておるかと存じます。他の飛行場につきましては、場合によりまして随時不時着等の便宜を与えてもらっております。
  101. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今防衛庁長官からの御説明がありましたが、鹿屋の飛行場、これは海上自衛隊の飛行基地として最近大きく整備されつつあるようでありますが、現在まで二、三回にわたっていろいろな爆音の測定その他をおやりになったということですが、その結果はどういうふうに報告されているのか、その報告をまずお聞きしたい。
  102. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 昨年の夏、現地調査を行いまして、音響測定器によりまして音響の強度を測定いたしました。その際野里小学校におきましては、最高百ホーン程度で、高等学校の方は最高たしか八十六ホーン程度かと存じております。
  103. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは現在の爆音でありますか。鹿屋の飛行基地は今後さらにどういう機種を配置し、もっとどういうふうにそれらの問題が発展をしていくとお考えになっておりますか。
  104. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 現在鹿屋飛行場におきまして使用しておりますのは、最近アメリカから供与を受けましたP2V二機、PV2十六機、SNJ十機、PBY十機、メンター一機合計三十九機でございます。このうちSNJとPBYは将来三十一年度におきまして他の基地に移される予定でございます。全部ではないかと思いますが、その大部分がそうでございますが、他面P2Vの方は現在二機ございますが、さらに近々五機アメリカから供与を受ける予定になっております。昨年調査いたしましたときは、P2Vのないときの状況でございます。その当時の状況におきましては、野里小学校の方は一応調達庁で定めておりますところの補償基準に該当するものと認定されました。鹿屋高等学校の方は、その程度の状況ではまだ補償基準に該当しないものと判定されたのであります。ただし、ただいま私が申し上げましたように、三十一年度におきましてP2Vがさらに五機増置ということになりますと、あるいはさらにその後現地調査いたしますれば、補償基準に該当するように高等学校の方も相なるかと存ずるわけであります。その際はあらためて十分現地調査をいたしまして、財政当局とも打ち合せて措置いたしたいと考えております。
  105. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 現在の爆音なり騒音なりの測定について非常に軽微なようなお感じでありますが、しかし現在私もつい昨年の暮でしたか、しばらく行っておりまして、いろいろ拝見をしてきたのですが、これは現在の状態でも非常な騒音で、教育上全く支障を来たしておるという状態です。たとえばあそこの高等学校、これは小学校の方はもっとひどいのですが、高等学校の生徒が書いた作文でありますが、それにはこういうふうに訴えております。「最近飛行機の爆音による被害が大変大きくなった。家庭では鶏が卵を生まなくなり、赤ちゃんの睡眠は全く妨げられ、家庭学習ができない。記憶障害になる。電球、時計、ラジオの破損など、枚挙にいとまがない。また学校では一番前の座席でさえはっきり聞えないときがある。校庭での団体行動や、体育時間の説明などはほとんど聞きとれない。校舎が古いためか、窓ガラスががたがた振動して土壁がこわれるなど、あげればきりがない。肉体的にも精神的にも悪影響を与えることは事実である。」こういう悲痛な訴えをいたしております。これはまだ新しく新鋭機が増強される以前の現在の状態です。今お話のように、さらに五機、ジェットの補助エンジンあたりを持った大型機がここに増強をされるということになれば、全く教育はできなくなるというのが現実の状態であり、将来の見通しだと思うのです。そうだとすれば、そういう事態をもう少し非常に重大にお考えになって、この措置をお考えになる必要があると思うのですが、それらのことをどういうふうにお考えになるのか。特にアメリカの駐留軍のものに対しては、日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の行為による特別損失の補償に関する法律施行令があって、これによっていろいろの補償が行われておると思いますが、今文部大臣はこれを準用してやればいいのだという、まことにのんきなことを言っておられるけれども、そういうのんきな問題でなくて、もしほんとうに補償をする、そうして教育上重大であるとお考えになるのならば、今後こういう問題はさらにたくさん出て参ると思いますので、どうしてもやはり国内の自衛隊の飛行場その他の問題として、それらの行為による特別損失の補償に関する特別な立法をされることが絶対に必要であると思うのですが、その点を文部大臣はどういうふうにお考えになるか。
  106. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) さっきお答えいたしましたのは、一体どういうことをやるかという意味のお問いを含んでおると思いまして、先年できました日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の行為による特別損失補償に関する法律と、これに付属する手続なり、慣例なりでさしあたり法規がないからいたそう、ということを答えたのでありまして、一番大切なことは学校でございまするから、教育に妨げなきように最善のことをいたしたいと、かように考えておるのであります。
  107. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 だから、教育に妨げなく最善のことをするには、今言ったような特別損失の補償に関する国内の自衛隊対策を文部当局としてはお考えにならなければならないと思う。そういうことをどういうふうに今後進めていこうとされるか、特にこの点を申し上げますのは、今申し上げたように、たとえば鹿屋の場合なんかは、現在の状態においてもすでに、——今防衛庁の方ではあまり大した支障になっていないようなお話でありますけれども、今程度のものでもすでにさっき読み上げたような状態だし、そうして単なる防音装置だけでは問題が処理されない現実の状況になっておるのです。しかも鹿屋あたりは御承知通り南方でありますから、非常に暑い所であり、従ってああいう防音装置をすれば、暑さの関係その他から、とても教育の場として耐えられないような状態におかれてしまうことは当然でありますし、従ってそういうことを考え、さらにさっき防衛庁の方からお話のように、今後それが非常にひどくなるのだということを考えれば、あすこに学校を置いておいて、そういう弥縫策を講じることでは、問題はもはや処理されない段階に来ている。そうすれば学校の移転の問題なり何なりというような問題として、問題を解決をしなけりゃならないし、ほんとうに教育を守るというお考えがあるのならば、その点まで一つ決意をして対策をお考えにならなければならないし、さらにはもっと根本的には、ああいう地帯にこういうものを置いておくことが、国を守るという名のもとに、国民生活が、特に生活が破壊をされていっているという基本的な問題としてもお考えにならなければならない状態に来ていると思うのですが、文部大臣はどういうふうにお考えですか。
  108. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) この防音のことは、非常に苦慮いたしておるのであります。どうしてもその場で防音ができなければ、今あなたのおっしゃる移転のほかは仕方がないのですが、移転と言いましても、その村、または町より外へ小学校を出すこともできませんので、何か今日の技術で夏でもそれほど暑くなく、適当な防音ができやせぬかと苦慮研究いたしておるところでございます。最善の方法をとります。
  109. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういう何か科学的な新しい方法でやる手はないかと思って、今とつおいつお考えになっているような時間はないのですよ。もしそういうものがあるならば、今まで、その他の米軍の飛行基地附近その他で解決されている問題だと思うのですが、それが今まで解決されていない。しかもそういうものをこれから研究したり何かということでは、問題は早急に解決はできない。しかしこの教育の支障の問題は、早急に解決をしなければならないところに迫られている。そういう問題として措置をお考えにならなければならないのですが、そういうふうに重大にお考えにならないのですか。
  110. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今申す通り、非常に重大には考えております。
  111. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば移転の問題その他について、もっと具体的に配慮をされるべきだと思いますが、どうなんですか。
  112. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 移転のことも考えておりまするが、さりとて、この町村外に移転することもできませんしいたしまするから、なるべく完全なる防音装置を施すのが第一だろう、こう思っております。もう少し小さいものなれば、山の向うに持っていけばいいということになりましょうが、これはよほど高いところからの大きな音ですから、村内でちょっとほかへ変えましても、大した効はないので、今の飛行場をそのままに置いて、そして学校は町村内に置くという、こういう二つの二律がある以上は、完全な防音をまず考えてみたいと、かように考えておるのであります。
  113. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、そういう一般的な問題ではなくて、もっと具体的に申しますと、校地がその盆地の中にあって、滑走路を中心に一キロ以内に校地があるのがいわゆるA級に属する学校と言っていますが、それが六校あるのです。それからB級は二キロ以内の平原にあるやつが十三校、それから二キロ以上の平原にあるやつが十四校、そのそれぞれが爆音に悩まされておるのですが、従ってその全体の問題としてならば、今大臣のおっしゃるように、個々の市自体からどこかほかの方に移さなければならないという問題にもなりましょうし、さらには逆に、こういう所に自衛隊のこういう厄介なものを置いておくということ自体が問題になってくる問題にもなるし、そういう問題としても教育上からはお考えにならなければならないでしょうが、その問題を私は今論じているのじゃない。もっと具体的に、そのうちのさらに一つの小学校と一つの高等学校は、その飛行基地のすぐ隣に校庭がある。そういう形で今みたようなことに悩まされておるので、これの移転の問題として具体的に直接にお考えにならなければならない時期、段階なんです。それをどういうふうにお考えになるか、どう処置をとられるおつもりなのか。
  114. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今一つの小学校、一つの高等学校とおっしゃるのは、野里小学校及び鹿屋高等学校のことだろうと思います。これには特に完全なる防音をいたそうと思って、せっかく研究をしておるところであります。文部省においても決してなおざりにいたす考えじゃございません。
  115. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば、今の防音装置の関係で、どれだけ防音ができるというふうにお考えになっているのですか。今少くとも全国でやられている防音装置の効果から見れば、決して教育に支障を来たさないような防音装置はできない。のみならず、あそこの温湿のあの地帯においては、それが全然不可能だということも大体はっきり一致した意見、見通しとしてなっておるのですが、従って、問題は単なるそういう弥縫策でなくて、他に移転をするという問題なんです。さらには単に防音だけではなくて、いろいろな飛行機の障害その他が起きて、それが学校の生徒その他にいろいろな障害を起したこともあるし、今後それが起る危険性も非常にあるので、そういう問題として配慮しなければならないのですが、それらをどうお考えになりますか。
  116. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 防音だけのことから考えれば、不可能のことじゃないと思っておるのです。ただ、あの所は暑い土地ですから、大へん夏季等においては迷惑だろうと思います。私の知っておるのでは、野里小学校はフォーンでいえば八十六ないし百と出ております。八十までに落せば、授業はできるのですね。それから鹿屋の方は八十八フォーンといっております、日によって違いましょうけれども。ですから、十分にやれば八十以下に落す防音装置はできるのですけれども、いかにも夏などは暑苦しくて子供も困りましょうから、どうしたらいいか、せっかく研究いたしておるところでございます。
  117. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは去年の測定で、今の百フォーンとか八十八フォーンとかいう問題は。ところが、今後はもっとはるかに比較にならないほど大きく増強され、大型の飛行機が配増置をされる。その点もお考えになって、もっと具体的な対策の問題を一つ早急にお考え願いたい。  同時に、さっきから申しておりますように、そういうわが国を守るためと称しながら作られておるところの自衛隊のそういう基地その他が、逆に日常はかえって教育を破壊しているという現状が、米軍の基地のみならず、日本の自衛隊の基地に関連してすでに出ているのだということも十分にお考えになって、さらにそれらの問題をどうするかということをあわせて一つ考えになることを、切に希望をいたしておきたいと思います。
  118. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 先刻ことでも承われば、自衛隊にはP2V等もふえるおもむきでありますから、今佐多さんのおっしゃることはよく参考として研究いたしたいというように考えております。
  119. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 自治庁長官がお見えになりましたから、さっきちょっとお尋ねをいたしたのですが、奄美大島の振興対策で、黒糖の助成の、黒糖の振興政策をどういうふうにお考えになっておるのか、その対策の御報告を願いたい。その点は大蔵大臣の方では、租税措置の問題というよりか、もっと黒糖の生産の近代化の問題なり、あるいは集荷、販売等の共同経営の問題なり、そういう問題に特別な力を入れる必要があるのじゃないか、むしろそっちの問題じゃないかというような御答弁もありましたので、それらをこの特別法を持っておられる自治庁としてはどういうふうにお考えになりますか。
  120. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) 大へんおくれて申しわけございません。  奄美大島の黒糖事業の復興に関しましては、自治庁といたしまして力を入れております仕事は、製糖の施設、それから製樽工場、苗圃の改良等につきまして助成金を出してやらしております。約七千万円でございます。なお、事業をするにつきまして信用保証協会もできておりますので、事業の資金等についてはできるだけ融資をして助けていきたい。大まかにそういう線で動いておるのでございます。
  121. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 一応計画としてはそういうふうになっておるのですが、その実がほとんどあがっていないのみならず、先ほどお話によりますと、北海道のテンサイに対してはそういう見地から、消費税の上り高をそのまま振興政策の方に回すような形において、非常に積極的に地域産業対策をお立てになったというような御報告もあったようですが、それと劣らないような施策をやられる必要があるのじゃないか。そういうことをもっと積極的にお考えにならなければならないと思うが、その点はどういうふうにお考えですか。
  122. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) ただいまの御趣意によりまして、もう少し積極的にやるのがしかるべきだと思います。やりたいと思っております。
  123. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 やりたいと思われるのを、ただやりたいという希望だけでなしに、一つ具体的な施策の問題として、さらには予算措置の問題として、その実を一つ示していただきたいと思います。これは切に強く希望をいたしておきます。  それから厚生大臣一つお伺いしたいのですが、遺族援護法の問題ですが、遺族援護に関するいろいろな経費の問題、ことにその対象人員を適正なものにふやしていくことについては、これまでいろいろ措置をされたと思うのですが、今なお満州だとか、台湾だとか、朝鮮、樺太、内地の戦没者で法の適用から漏れている者が相当あるやに聞いているのですが、これらの状況はどうなっているのですか。
  124. 小林英三

    国務大臣小林英三君) ただいまお尋ねの問題でございまするが、遺族援護法におきましては、軍人、戦地勤務の雇用人、軍属及び船舶運営会所属の船員の遺族に対しまして、公務上の死亡に関しまして遺族年金及び弔慰金を支給いたすことになっておりまするが、軍人につきましては、軍人恩給の成立に伴いまして、原則として恩給法によって処遇されておりますることは、御承知通りであります。なお、このほか軍人軍属の非公務の死亡に関しましても、弔慰金五万円を支給しておりまするし、また、被徴用者、動員学徒、戦闘参加者、特別未帰還者等に対しましては、弔慰金三万円を支給しておるのでございます。戦争犠牲者の援護につきましては、どういう範囲にどういう援護を行うかという非常に困難な問題がなおありまして、今後なお研究を要するものと考えられるのでございまするが、現在の財政事情等を考え合せますると、現行法に定められました範囲を拡大するということはきわめて困難ではなかろうかと、こういうふうに考えておるのでございます。
  125. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、今の御報告によると、どうなんですか、法の適用から漏れているものはもうほとんどないというふうにお考えになっているのか、いや法の適用から相当漏れているんだけれども、それは財政事情として許されないのだというふうにお考えになっているのか。その実情がどうなっているのか。
  126. 小林英三

    国務大臣小林英三君) ただいまのお尋ねの、そういう非公務の死亡されました方が約三万一千人おるのでございまして、ただいま申し上げましたように、財政等からにらみ合せまして相当困難なことと考えまするが、今後なお相当検討してみるつもりでございます。
  127. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私たちが地方を歩いておると、非常にまだ法の適用から漏れている者が多いという訴えを常に聞くのでありますが、その点は相当あることを大臣もお認めでありますから、もう少し精査をして、しかも財政の問題は財政の問題として別途解決をする方法があると思いますから、今の言明を実行されるように要求をいたしておきます。  もう一点だけ最後にお聞きしますが、戦争犠牲者に関連をして、よく遺児の就職の問題、あるいは未亡人の就職の問題が問題になるのですが、ことに遺児あるいは未亡人が普通の人以上に就職その他に困難を感じている現状であると思いますが、これに対しては何らかの制度的なそういう弱さを補う配慮をしてやる必要があるように思うのですが、それらの点について厚生大臣はどういうふうにお考えになり、どういう措置をやろうとしておられるか。
  128. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 今お尋ねのような方たちの、遺児、家族の就職という問題でございまするが、これはきわめてお気の毒な方々であります。ただ、こういう就職の問題につきましては、むしろ労働省所管の問題じゃなかろうかと思いまするが、われわれといたしましては、母子福祉資金等を活用いたしまして、その就職等の一助にいたしております。なお、今後そういう問題につきましては、特に労働省等とも連絡協調いたしまして、できるだけそういう問題のお世話をいたしたい、こういうふうに考えております。
  129. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 一般の雇用の問題としては、今お話し通りに、労働省の所管であるかもしれませんが、そういう特殊な戦争犠牲者の遺児その他の問題でありますから、ちょうど遺族の援護法の考え方、精神をくんで、そういう就職の問題その他については特別の配慮、特別の措置をむしろ厚生当局としてなさることが必要だと思います。これも強く要望をいたしておきます。
  130. 青木一男

    ○青木一男君 まず、私は大蔵大臣に日米の経済関係に関する二、三の問題についてお尋ねいたします。主として大蔵大臣に対する質問でございますが、経済企画庁長官も聞いておっていただきたいと思う。あとでお尋ねいたします。  まず第一点は、この点は大蔵大臣も大体同じような趣旨の御意見を持っておられると私は伺っておるのでございますが、なお確かめるためにお伺いします。この前の国会に重光外務大臣には一応私からお尋ねして、御返事を伺っておるのでございますが、要するに、独立した以上、日本の国は自分の力で経済自立を達成したい、今までのようにただ救済というような形でなく、経済の正常の姿において、たとえば貿易の振興であるとか、あるいは海運の振興であるというような、当然の経済進展によって自立できるようにしていきたい、アメリカからただ金を借りたりもらったり、あるいは物資をもらったり、そういうようなことでなくやっていきたい、こういうふうに考えるのでございます。すなわち救済よりも経済自立がわれわれの今後の日米関係の目標であると思うのでございます。従って、貿易についてはややもすれば、アメリカでは日本からの輸入品に対して抑制策をとり、あるいは関税を上げるとか、そういうことをやられますけれども、わが国から見れば死活の問題であり、向うから見れば小さい問題が多いのでございますから、そういう点についてはわが国情を十分説明して、そういうことのないようにしたいと思います。また日米間の物資の輸送につきましても、何割米国船というような決め方は、私は非常に国際経済の原則にもとるやり方ではないかと思いますので、そういう点についても極力アメリカ側の好意ある考慮を促したいと思います。こういう考え方について、まず大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
  131. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 全く私も同じ考えであります。特に経済自立は、単に国際的な意味アメリカとの関係において日本が実施するというだけでなく、また国内的においても、特に国家の援助から自立をいたし、経済自体で日本は立っていくという方向に向うべきだと考えております。
  132. 青木一男

    ○青木一男君 次に、外資導入の問題についてお伺いします。まあ外資と申しましても、主としてアメリカ資本のことになるのでございますが、外資導入につきましても、たとえばアメリカの優秀なるパテントあるいは技術を導入するというようなことに伴うところの外資、あるいは今まで製品として日本に輸入したものを、日本へ工場を協力して作って、日本事業会社と一緒に作って、今度は国内で生産品として供給するというような計画に伴うもの、こういうものはそれ自体特殊の意義はありますから、これは今まで大蔵省も許可された通り、合理的な範囲において許可されることは私は当然だと思うのです。私が問題にするのは、そういう特殊な問題でなく、一例を申しますれば、今後大規模に道路を建設するというような問題、あるいは干拓事業をやるとか、あるいは電源開発をするとかいうような、非常に巨額な資金を要する場合に、資金調達方法としての外資の問題でございます。もちろんその中でも、たとえば余剰農産物の購入というような一つのきまった方針の結果、円資金が内地にたまってそれを利用するという場合には、少し問題が違ったことになりますから、それは後ほど別にお尋ねしますが、そうでなしに、資金を調達する方法として新たに外国資本を借り入れるという問題が問題になるのでございます。私は端的に言って、為替関係が今日の状況であり、ことに外貨資金が相当たまっておる現状において、また同時に、その資金の用途というものが国内における円資金で足る場合でございます。つまりその資金というのは主として国内の物資あるいは労銀に支払われるような場合には、外資の必要なしという私の考え方でございます。またむしろこれは有害であるという考え方でございます。日本の外資の沿革をここに申し上げる必要もございませんが、日露戦争のときの外債、あるいは関東震災のときの外債等を考えてみましても、為替関係、つまり外貨資金でなければ軍需物資なり復興資材が買えないというような、為替関係の必要によってこの外債という問題が成立したのでございます。単に国内で使う金を外債によるということは、何ら意義なきのみならず、むしろ負担を子孫に残すというような非常な悪い結果を伴うのでございます。現在借りたときは、非常にその金を使って楽をするということもありましょうけれども、しかし国際関係が将来どうなるかわからない、将来日本の国際収支が非常に不利で困ったような際に、その元利払いの債務が到達することがあり得るのでございまして、そういう点から考えてみましても、できるだけ借金、ことに外貨資金の借金というものはしておかないことが私は必要であると思うのでございます。そういう意味において、この資金調達方法としての外資については、はっきりした制限措置を私は政府として考えておかなくてはいけない、こういうふうに考えますが、大蔵大臣の御所見を伺います。
  133. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 全く同じ意見でありまして、要するに、私の見解では、外貨というものは、その国が必要とするものでその国にない、ぜひとも輸入しなくてはならない、こういう場合にその支払い手段として外貨というものは考えられるものであります。そういう場合に自分の外貨の保有がないとすれば、ときによってこれを借らざるを得ない、あるいはまた一時の決済の便宜上借りた方がいい、しかしそれは遠くないうちに決済をつける、こういうふうな動きが私はいわゆる外資に対する基本的な考え方であると思うのであります。いわんや何か外国の金を借りて、国内でたとえば円資金に直してその円資金を使うというような考え方は、国が荒廃に帰した場合、ある段階においては理屈は別として実際上やむを得ない、あるいはまたそれが便利であったときもありましょう。しかし今日の日本経済におきましてはそういう必要は私はごうもないと思うのでありまして、特にそのときの安易さから将来外国に大きな負担を残していくというような考え方については、厳に注意をいたさねばならぬと考えております。
  134. 青木一男

    ○青木一男君 今大蔵大臣は一例として、外国から資材その他のものを輸入するときの外資をお話しになりましたが、こういうものも、今日のような外貨事情からして当然普通の為替で支払いできるものは、たとえそういう資材の輸入ということを伴うものでも、普通の為替関係で決済すべきだと私は思います。  それから国内の通貨、物価政策と外資との関係について、もう一点伺いたいのです。国内の開発に巨額な資金が要る場合にも、今日までのように政府の財政資金としてこれを調達する、あるいは民間の金融機関にその肩がわりをする場合におきましても、主として貯蓄によってこの事業がなされることが、政府及びわれわれの方針でございます。そういたしますれば、これは貯蓄によってなされる限り、直接インフレの原因とはならないのでございますが、もしこれが外債によって国内の円資金を調達した場合には、文字通りこれは完全なるインフレでございます。もしそのインフレを防止しようとするならば、その調達した外貨を利用して物資を輸入して、そして国内にその物資を売りさばいて通貨を巻き上げる以外には、このインフレ防止の方法はございません。先日も吉田委員質問に対して大蔵大臣も言っておられましたが、今の十何億という外貨資金につきましても、これを最も有効に利用する場合、私は物を輸入するといいましても、これは国民の消費物資をむやみに輸入することは、大蔵大臣考えておらないと思います。やはり原料その他によって日本の拡大均衡に役立ち、輸出貿易にも役立つものをねらうほかございません。そうすると、どうしても消費物資が、これは形が変らない限り、そのインフレの防止の道はないのであります。そういう点から考えてみましても、内地の通貨政策、物価政策の点からいっても、今のような手段はとるべきもので私はないと思いますが、私の考え方について大蔵大臣の御所見を伺いたい。
  135. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 先ほどから申しましたように、国内資源の開発に要する資金というものは、これは円資金であるのであります。従いまして、一国の経済の安定性を保っていく上から、原則的には国内の資本蓄積の限度内においてこれを行なっていくということは当然なことでありまして、特に外債によって開発するということ自体は、どうしても時間的に見て、インフレの傾向を持つことは私はいなみがたいと思います。ただ、こういうふうなものにつきましては、やはり程度とタイミングもあると思います。私の考えでは、今日の資本蓄積の状況で進んでいけば、円資金についてはそう困ることもないだろうと考えておるのでありますが、しかし他面、私ちょっと違う点は、今日食糧輸入がおそらく三億ドルから四億ドル、多いときには五億ドルにも上り、二千万石から二千五百万石ぐらいのものが輸入されるように考えておるのでありまするが、これは明らかに現金決済になってきます。むろん米を輸入することによって日本の輸出の増大するという面のあることは、これはいなみがたいのでありますが、しかし私は食糧というものは、国内資源の開発ということとも関連いたしまして、なるべく自給度を高めていきたいという考えを持っております。ところが、農業については、もし一国の財政が許せば、長期の金利の安い財政資金というものを多く使わなければならぬというような一つの性格を持っておると考えるのであります。こういうふうな現実の問題に当面した場合に、むろん程度の問題ですが、私は将来のわが国の国際収支の見通し、あるいは負担の割合等も考えなければなりませんが、ある程度こういう面についても私は考えてもいいのではないか。これは理屈よりも、実際に対応いたしまして考えていくべきであろうと思います。しかし原則的には、お説には全く同感であります。
  136. 青木一男

    ○青木一男君 借款の条件について、外債の問題というものは日本で先例がございました。私も大蔵省時代に直接扱った例として、電力外債の問題がございます。これは主として金利と期間の問題で、国内の長期資金ができない場合にやったのでございます。その場合でも、やはり為替関係がこの外債の募集を必要としたから、政府は発行を許したのでございます。今国内における農業開発その他のための長期、低利の資金の融通ということは、その通りでございます。しかし、これももしそれが国策としてきめるならば、国内の金融条件というものは、これは政府なり国会がきめればそれできまるわけなんです。もう財政投融資については非常に低利の融資の例もすでにあるのでございますから、この点を今日の情勢において外債でなければできないということは私はないと思います。しかしこれは大した意見の相違ではございませんが、余剰農産物の問題でございます。これもややもすれば、このただもらう分ですね、これはおそらく当然輸入をしなくちゃいけない、外貨を払って輸入しなくちゃいけない分についてただもらうならば弊害もございますまい。ただ長期にそれを分割払いにしてもらうことが、非常に有利なことを考えるのは私は間違いだと思います。今日の日本の為替状況においては、そのくらいのものは為替決済ができるのに、非常に長期だからといって延ばすことが非常に日本の利益だというふうに考えるのは私は間違いだと思う。それはさっさと払ってしまった方がよろしいと思います。ことに日本のいろいろな情勢から、たとえばたばこのごときものは、われわれどうしてもこれはああいう余剰農産物の中に入れることはそれは理解できません。こういう問題は要するに長期に、あるいは無利息で借りられるというようなことにつられて、安易なああいう協定を私は結んでもらっては困ると思うのでございまして、延べ払いであっても将来負担を残すものは、われわれ現在において為替関係のいいときにはさっさと払った方がよいと私はこのように思っていますが、この点についてのお考えを伺いたい。
  137. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。  余剰農産物の場合、これは大体特色が自国通貨で、円で買えるというところに特色がある。またそれを買う場合に、一体その買う余剰農産物自体は、通常の輸入量の中に入るのか入らないのか、こういうこともあります。またその買った円の今後の使途が一体どうなっているか、どういうふうにそれがいくのか、いろいろなことがあります。あるいはまた余剰農産物を日本に運んでくる場合に一体どうなるのか、日本の船で優に持ってこられるのか、あるいはそれもひもがついて半分しか日本の船で運べない、運ぶことになるのか、いろいろ条件がありまして、まあ利害もいろいろあると思います。これは私やはりそういうふうな諸条件を十分吟味した上で考えなくてはならぬと思っておりまして、ただ余剰農産物、それが円で買えるからすぐにそれがよろしいというように簡単には考えておりません。
  138. 青木一男

    ○青木一男君 高碕長官にお尋ねします。  この国内で要する円資金調達の方法としての外資の問題は、私先刻来申し述べた通りに私は考えておるのでありますが、高碕長官はこの点について、どういうお考えを持っているか、まずお伺いしたい。
  139. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。  先ほど御質問のありました日本の為替状態、現在の為替状態ということにおきましてこれは考えるべき問題だと思いまして、国内で使用する円資金は、どうしても原則としては国民の貯蓄によってこれをまかなっていくということが原則でなければらなぬかと思いますが、どうしても買うべき品物は必要だ、絶体必要なものがあってしかも為替がない、外貨がない、手持ちがないといったふうな場合には、また別に考慮をしなければならぬと思いますが、今日の外貨の、手持外貨というふうなものから考えまして、実は国内の円資金を要するものを、外貨をもって借金をしてそして国内にインフレーションを起すというふうなことは、厳に避けなければならぬことだと存じております。
  140. 青木一男

    ○青木一男君 高碕長官は、在米当時から非常に外資についていろいろ熱心な研究をされているそうでございますが、この高速道路の建設について、向うの専門家に見てもらうというまあ話しがあるそうでございますが、私どもしろうとから考えると、今日道路の建設あるいは橋梁、トンネル等について日本の技術陣営というものはそう外国のお世話にならなくてもやっていける力があると思うのでございますが、長官はどういうふうにお考えなのでございましょうか。やはり日本の技術陣ではその点が不完全であるとお考えになるのであるかどうか。またこの調査が先ほど申した外資導入と関係があるのかないのか、この二点について伺っておきたい。
  141. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。今日の日本の技術から申しまして、トンネルを作るとか、道路を作るということにつきましては、必ずしも海外の技術を借りる必要はないと存じます。ただ私どもが今日知りたいことは、アメリカ及びヨーロッパとも高速道路が非常に発達しておるわけでありまして、日本においても当然高速道路を作らなければならぬと思っておりますが、日本の現在の鉄道はどの国よりも私は進歩しておると存ずるわけであります。そういうふうなものと比較検討いたしまして、高速道路を開くことによってどれくらいの経済変動を来たすかという、むしろ経済的の調査を主体において今度アメリカから学びたいと思っておりますが、これは今アトキンソンという人に、有名なこの道の経済学者でありますが、日本経済に及ぼす影響、高速道路が日本経済の発達に及ぼす影響等をよく検討してもらいたいと、こう思っておるわけであります。しからばなぜアメリカを呼んだかということになりますと、アメリカのその方面の研究は一番今日の状態においては進歩しておる、こう存じたわけでありまして、それによって外資をどうするか、こういうお話しがありますが、ただいま申しました通りに、今日の日本の道路を作るということになれば、これはアメリカから持ってくるものというものはごくわずかの機械しかない。大多数は国内の資材、国内の労力によってまかなえることでありますから、必ずしも外資というものは導入する必要はないと存じておりますが、しかしこういうようなことによって検討されて実行されたる有料道路ができた場合に、もし日本に外貨の必要があった、どうしても外国の金を借りなければならぬ、今日は幸いに外貨は相当手持ちがありますが、もし必要があったといった場合には、これは担保とするのには一番道路が安いのだと思いますから、そういう場合には利用することもできるだろう、こう存じておりますが、これによってすぐに外貨を導入するという考えは、ただいま持っておらないわけであります。
  142. 青木一男

    ○青木一男君 長官のお考えは、そういう高速道路の日本経済に及ぼす影響をただすのだというお考えで、その点わかりました。しかし私の知る限りにおいては、日本の高速道路は国土の開発ということを主眼とするものでございまして、その点においては戦前ヒットラーの作ったアウト・バーン、これに匹敵するものと思います。ところがわが国の高速道路はむしろ交通緩和を目的とするものであるだけのように私は考えておるのでありまして、その点において少し長官の御説明と、私の今まで知っておったのと違いますけれども、まあこれは細論になりますから、これ以上はお伺いいたしませんが、ただ私の主眼とするところは、日本の国策、経済の現状から見て、どうか外資に依存するというその考え方は、まあ将来国際情勢が変ればお説の通り、また考え直す機会がありましょうが、現状において推移する限りは、一つ断念していただきたいということを希望申し上げておきます。  次に大蔵大臣外国銀行の取締りについてお伺いします。外国銀行と申しましても、これは主としてアメリカの銀行のことでございますが、アメリカ日本の銀行の支店に預金の吸収の営業を認めておりません。しかるに日本ではアメリカの銀行に国内で預金の取扱いを認めておりますが、私はこういうことはレシプロカリーにやるべきものだと思っておるのでございますが、どうしてそういうような片務的に許可をされたのでございましょうか。私はどうもその点が従来からよくふに落ちないのでございますが、その点説明をお伺いいたします。
  143. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。私もやはり国際的な関係もございますから相互主義がいいと思います。先方で許す点をこちらでも許す、これでいいと思うのでありますが、当時のアメリカの支店の営業範囲につきまして、政府が許可したそのことについて私は今十分な知識を持っておりませんが、おそらく当時の政情があるいは状況がさようなふうに至らしめたのであろうかと思うのであります。なお詳しいことは銀行局長がおりますから、お答えいたさせます。
  144. 東條猛猪

    政府委員(東條猛猪君) アメリカで特にニューヨーク州におきましては、先方の州法の関係で新しくできます銀行につきまして、預金の取り扱い業務が制限をせられているわけであります。従いまして、戦後ニューヨークに日本の銀行の支店の設置が認められました場合におきましては、そのアメリカ国内の法規の関係上、預金業務が制限せられた、かような結果に相なったわけであります。従いましてもちろん日本の銀行の支店のみがさような取り扱いを受けたのではなくて、州法制定後の進出を認められましたところの外国アメリカ国内における銀行は、すべてさような州法によって預金業務が認められなかった、かような制限を受けた結果になったのであります。一面におきまして、日本の国内におけるアメリカ系の銀行の支店が、それに引きかえて預金業務を認められておるではないか、かような点でありますが、これは御承知のように、日本の現在の銀行法では、外国銀行につきまして制限を当初からぜひ置くという方針をとって参りますならば、法規上不可能ではないのでありまするが、終戦日本にできましたアメリカ系銀行におきましては、当時の事情といたしまして、また従来日本における外国銀行の支店について、預金の業務の制限をつけておらなかったという経緯等もあったと思うのでありますが、終戦後の米国系の銀行につきましては預金の業務は認められて参った、この点は御承知の日米通商航海条約が双方の政府の間でいろいろと協議が行われましたときに、この取り扱いの実際において不権衡があるということは、政府間においてもいろいろ話し合いを続けたのでございますが、右申し上げましたようなアメリカ側におきましては、州法の関係、また日本側は事実上さような結果になっておるという実情等をも考慮いたしまして、いろいろと話し合いを続けたのでありますが、今日におきましてはさような結果に相なっているわけであります。またさように大多数の外国系の銀行の日本の支店に預金の業務が認められているということに相なっておるわけでありまするが、さような場合にたまたま新しいたとえば独立後の事例といたしましては、アメリカン・エクスプレスという銀行に事例があったのでありますが、さような場合におきましても大多数の銀行に預金が認められておるという場合において、その新しい特定の銀行のみに預金業務を認めないという制限を課することもどうであろうかという配慮から、当時新しいアメリカン・エクスプレスの支店につきましても預金業務が認められた、かようないきさつであると承知しております。
  145. 青木一男

    ○青木一男君 今の銀行局長の説明はちょっと納得のいかない点があると思うのです。アメリカの州法の関係で、外国は一律にやっているということは私もよく知っておる、ただこういう外国の扱いについては相互的にやるのが国際慣例ではないかと思うから私は質問した。それから終戦アメリカの占領下においてアメリカの銀行がある業務をやっておった、これは一種の既得権みたいなものでも、それを尊重したといえばそうでございましょうが、それは銀行局長みずからが言われた通り、独立を回復した後において同じ扱いをやったということは、これは私は非常に問題だと思う。まるでほかの方へ既得権を与えたんだから、あとのやつにも与えなければならぬということは、私はこれは既得権にならぬと思うのです。その点をお伺いしておったのであります。次に外国銀行に営業を許可した以上は、私は銀行法の命ずるところによって、日本の銀行も外国の銀行も一律に同じ取締りをすべきものだと思う。私は自分のことを言っちゃ何ですけれども、一昨年でした、軽井沢であるアメリカ人に会った、私は忘れておったが、その人が久しぶりだと言って握手を求めたので、会ってみたらば、外国為替管理法施行当時、私が管理部長当時、ナショナル・シティの支店長をやっておった人なんです。その人が私にこう言った、お前は為替監督官として非常に厳格であった、しかし非常に公正であったと私を批評しました。彼らは厳格であっても公正であれば決して文句を言わないのであります。ところが近時伝えられるところによると、どうも外国銀行はルーズだ、ほとんど大蔵省は内国銀行のように監督を行なっておらないという声を聞くのであります。その取締りの方針はどうであるか、一応伺っておきたい。私は一つの実例をもって後ほどお伺いいたします。
  146. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 外国銀行の監督につきましては、外国銀行が銀行法によって営業が許されており、国内銀行と同じような業務を営むという場合に同じ監督に服するが当然でありまして、政府といたしましても同じに扱う方針であります。ただ実際上からいって従来これも相互主義になるんですが、先方において検査をしないというような国におきましてはこちらも比較的寛大に扱う、こういうことはあったようであります。がしかし方針としては、あくまでも私は厳格に監督をしてゆきたい、かように考えます。  それからもう一つこの際つけ加えておきますが、これは私まだ日本銀行におった当時でありますが、外国銀行が営業預金を取ることまで当時許したんですが、当時私ども外国銀行の人々と接触し、かつまたこの問題についていろいろと外国銀行筋が話しにきましたときに、自分たちは法律の上では許されるが、実際は為替業務の必要の限界において営業をやるのであって、決して日本の国内金融に深入りするとか、あるいは特に営業預金を取るとかいうことはしないという私は大体の了解はあったように思っておりますので、今後やはりそういうような精神は法律にかかわらず、実際はそういうふうな方針で私は指導して参りたい、かように考えております。
  147. 青木一男

    ○青木一男君 外交上の相互主義によって取締りに手かげんをするということは私は少しも異議はございません。その他の点においては私は内国銀行と同じ取締りをしていただきたい。これは単に同業者間の競争の問題ではなく、私は預金者その他一般日本国民の保護の見地から特にそのことを要望する次第であります。その一例として先ほど銀行局長が指摘されたアメリカン・エクスプレスの問題があります。これはすでに新聞に出ておりますから御承知のことと思いますが、実に驚くべき事態があるのであります。銀行といえばこれはお互いに信用すべきものという印象を私どもは持っております。私どもは銀行から受け取った札の数を数えたことはありません。預金しても私どもは忙しいときには預金帳などはすっぽかして帰ってくる。つまり銀行というものは信用するものというふうに日本人の慣習はなっている。いわんやアメリカの銀行ですから、これは日本人の銀行よりさらに信用があると考えるのは当り前であります、終戦後において。ところが、今の問題になっておるアメリカの銀行は、今、刑事事件になっている数だけでも七人被害者があるわけですが、それはどういう方かというと、預金を申し込んだときに、それは英語のできない連中だからかどうか知りませんが、とにかくあとからわかったのでございますが、保証状という英文に知らない間にサインをさせられておった。全く関係のない会社の債務を保証するという英文の文書に署名させられておって、そのために預金の期限が来ても払わないという事件でございまして、これは刑事事件で今日公訴になっておるわけです。私は日本で商売するならば、そういう重大なる預金者の利益に関することは、少くも日本文の訳文をつけて、のみ込ましてやらなければ、銀行たる資格は私はないと思うのです。しかも、それがもうすでに沖繩で事業をしているある会社に貸し付けた金が焦げついていて、その焦げついた金を回収する目的で第三者にそういう迷惑をかけている。しかも、その保証状たるや、私は法律を専門にやっている人間であり、英国にも数年おった人間でございますから、英文のそういう保証状を見るには、私は最も資格があると思うのだけれども、私がこれを読んで、この保証状の訳文を書けと言われてもなかなかできないようなむずかしいものであります、長いもので……。そういうものを種に使っておる。それからまた日本の民法によりますれば、たとえば預金証書というような債権証書を担保に取った場合は、その債権証書を引き渡さなければ質権が成立しないということに民法の原則がなっている。それでございますから、もし自分の預金証書が質権に取られたといえば、預金証書を巻き上げられるからすぐわかる。ところが、この場合は返しておる。そして、他の方法で担保権の設定をやっておる。そういうことは、私は刑事事件として、アメリカの名誉のために実に悲しむべきものでありますが、そういう事実が起きている。私はそういう営業方針をなぜはっておかれるのか、少くも日本で商売するならば、日本人は英語が諦めないくらいはわかって、親切にやらなければ、私は銀行の全体の信用というものをくつがえすと思う。この点について、大蔵大臣及び銀行局長所見をお伺いしておきたい。
  148. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) アメリカン・エクスプレス銀行の件は、はなはだ遺憾なケースであります。今お話のように、預金をした者に保証させる、全く想像がつかないのであります。おそらくその場合には、預金に非常に高い利子でも、いわゆる非常に高利であるが、そのかわりあるいは保証というのが出ておるのだろうと私は思うのです。私、今その契約文を読んでおりませんから、つまびらかには申し上げられないのですが、さようであろうと思うのであります。いずれにしても、さようなやり方というものは全く信義を元にする銀行業務の本旨に反しますことは言うまでもありません。従いまして、大蔵省としては銀行当局者には厳重な警告を与えているのであります。なお、同時にこのことは外交の問題ともまた関連いたしますので、慎重に事件の推移を見ておるのが現状であります。
  149. 東條猛猪

    政府委員(東條猛猪君) 青木委員は詳細、内容を御承知のことと思いますので、中味については申し上げませんが、この事件がわかりました当時、もちろん私どもといたしましては、預金者側と銀行責任者の双方からそれぞれの主張と申しますか、言い分を聞いたわけであります。銀行側の言い分は、なるほど確かに日本訳文をつけなかった点は申しわけないが、長い間、外国為替業務に従事しておりますところの日本の職員に、練達した職員に十分保証状の内容を説明せしめて、つまり、ある会社に対するエクスプレスからの貸し金の定期預金は担保になるのだ。従って、もしその会社に対する銀行からの貸付金の返済がなければ、この定期預金は返さないのだという趣旨は十分納得せしめて、サインをしてもらった上で、この定期預金を預ったのだというのが銀行の言い分であります。預金者の方では、そういう十分の説明はもちろん聞いておらないし、銀行側の手続に遺憾な点があるというのが預金者側の言い分であります。いずれにいたしましても、かような事態が起りましたことはまことに遺憾でありまして、特に外国銀行が日本で営業いたします場合に、さような訳文を添付しなかった、それがためにかような紛議の原因になったということは適当でありませんので、自後、厳重に訳文をつけるようにということは申し渡しまして、もちろん実行いたしておるわけでありまして、さようなことに相なっておりますので、私どもも十分に銀行側に対しましても警告を発して、今後を戒めておる次第でありますが、この具体的案件につきましては、検察当局でもいろいろ実情を目下調査中のことでございまするので、今しばらくその内容等をも見まして、適当な措置を考えて行くと、かように存じておる次第でございます。
  150. 青木一男

    ○青木一男君 銀行局長考えが少し私は甘過ぎると思うのです。銀行当局の説明を同じ程度に信用されたとすれば、私は監督官の資格がないと思うのです。そういうことは、第一お調べにねってわかるでしょうが、沖繩における事業会社というものは、全く担保力のないそういう人間に一体保証するというならば、何か縁故者とか、何かの理由がなければそんな保証をするはずはありません、常識では……。そういうことをむしろ調べて、それでもなお保証するかというくらい念を押すのが、私は日本の銀行であれば当然の措置だと思うのです。それだから、銀行局長はそういう銀行を無条件に同じように信用するというようなことだから今までルーズにしておるのです。こういう点は、私は厳重に警告を発しておきます。  次に、法務大臣に伺います。時間がありませんから、簡単にお伺いしますが、まず第一点は、最高裁判所の改組問題でございます。これはもう何年来となく、今のように訴訟事件が停頓しては困る。何とかこれを迅速に処理をしなくちゃいけないというこの能率の問題が第一点、それからさらに私が申し上げるまでもなく、刑事訴訟法の四百五条という上告理由を規定しておるのが非常に非実際的であるという点でございます。国民の権利擁護の点に非常に欠くるところがあることは、これはもう法曹界全般の意見の一致しておるところであります。ことに現状のままでありましたならば、憲法違反と判例違反だけが上告理由となるとなれば、最高裁の判例のない事件は一体どうなるのでございますか、まるで抜けてしまうのじゃないですか。また判例が古いから変えようという、その変える動機がなくなってしまう。刑訴法四百六条には、さらに最高裁判所の判断で重大なる法律違反があれば、上告を受理してもいいと書いてある。私はこれは実際的であるが、その四百五条との関係を見れば、これは正直者がばかをみるということになる。正直者は、憲法違反と判例違反だけが上告理由となるから、この事件は法令違反だけれども、右の両方に該当しないから上告をあきらめるという人は救済されていない。しかるに多くの人がやっているように、憲法違反とか、判例違反にこじつけて出した人がたまたま救われるというようなことになっているのです。これは私は法の権威のためによろしくないと思う。それでございますから、弁護士連合会はもとより、あるいは最高裁判所でも、あるいは法務省の審議会等でも検討されているようでございまするが、すみやかに事務の処理の能率改善と、それからまた上告理由のはっきりした、あるいは民事訴訟法で規定しているような、少くともあの程度まで改善しなくちゃいかぬと思うのですが、その点について、一体法務大臣はこの改革案を至急に成案にされて、これは議論をしておっては切りがございません。みんな同じ意見ということはありませんから、やはり適当なところで私は結論を出されて国会に出さるべきだと思うのですが、この点についての法務大臣の御意見を承わりたい。
  151. 牧野良三

    国務大臣(牧野良三君) お答えを申し上げます。  青木委員の御意見、私は全面的に賛成であります。従って私は法務に任を受けて以来、直ちにそれに着手いたしました。幸いに、えらくむずかしいところがもみ下げることができまして前途に光明を見出しました。だから必ず私は成案を得て進めたい。さような決心でおりますから、どうかその方面の御援助を賜わりたいと存じます。
  152. 青木一男

    ○青木一男君 その改組案は今国会に間に合いますか、あるいは間に合いませんですか、いかがですか。
  153. 牧野良三

    国務大臣(牧野良三君) 実は最高裁判所の長官が外国へ行っております。留守中にものにしてしまっては、これは徳義上もいかがと思います。何と言いましても憲法上の最高の機関のその長官であります。それでもう二、三日のうちに帰ります。帰りましたところで私は直接に懇談をいたしまして、問題を決し、どうしても私としてはこの国会に出したいと思っております。さような心持で進めております。
  154. 青木一男

    ○青木一男君 ぜひその努力を希望いたします。  次に、訴訟の停滞ということは単に最高裁判所だけではございません。下級審においても、程度の差はございますが、みな同じような弊害にさらされておるのでございます。これは今に始まったことではございません。しかしながら、実に困った問題でございます。それで世間では最高裁だけを問題にしておりますが、私は下級審においてもああ事件をためないように——、アメリカその他外国の例を見ましても、日本のように民事、刑事ともにあんなに長くかけてやっているところはないようでございます。どうも日本の訴訟の准行の工合というものは世界無類に緩慢なんです。結局いつかは扱わなくちゃいけないのでございますから、古い事件をあとからあとからと追って行くことになって、これは口頭弁論主義の方針にも反するし、またたとえば証言の信憑力というものは何年かたてば忘れてしまう。ことにその間に裁判官がかわるのです。そういうことからいたしまして、下級審の審理促進についても何らか私は法的改善を考えなくちゃいけないのじゃないか。これについては訴訟当時者である弁護士団その他の協力ももちろん必要でございますが、やはり制度としても一考を要するのじゃないか。その点については、牧野法務大臣は多年在野法曹界にあってこの実情はお知りになっているわけでございますから、何かこれについての改革案がございましたならば、その片鱗でも伺っておきたい。
  155. 牧野良三

    国務大臣(牧野良三君) これも青木委員のおっしゃる通りのことでございまして、また私もそこへ心を寄せて、この点を改めなければ皆さんに申しわけがないと思っております。刑事の面におきましては、大体私は従来の検察の態度が誤まっている、こう思いまして、実は青木さん、少し行き過ぎであるかもしれんが、思い切ったことを言っておるのでございます。次席の全国の会合の席にも少し物議が起きたかもしれませんが、思い切ったことを言った。一昨々日の検察庁の会議におきましても、従来とは全く違った思い切ったことを言いましたが、どうやらようやく私の気持をのみ込んでくれたようでございまして、無理に訴訟に勝とうとか、無理に犯罪を維持しようとか、無理に人を罪そうとかいう心持を持っちゃいかぬと思う。国をよくし、社会をよくし、人に反省自粛を促すことは、うるさくやかましくつき添うことじゃなくて、やはり寛大に彼らの心持を飜させるというところにある。その任務が私は検察官の大へんな任務だと思いますので、その方面を改めて、弁護士と一緒に立証の争いに日にちをとるようなことをなくしたい。さような心持で、ただいま全検察官との間にその心持を合せようと苦心、努力いたしておりまするが、私のただいまの考えでは目的を達すると思います。  第二に、民事の方と刑事の方とを合せて、私はぜひこの機会に皆さんにも考えていただきたいと思うことは、アメリカの民主主義ということのために、むやみやたらと証拠の出し合いをする弊風が戦後ことにふえてきたと思うのであります。それで私はこの間バー・アソシェイションでもこのことを申しまして、どうか訴訟を簡単に進行して、そして心証というものを中心にして行く。万一誤まっておれば控訴の道があり、上告の道があるということを頭において、さっさと川の清い流れが流れるように進めてくれませんかということに心を尽している次第であります。私は甘い考えかもしれないけれども、どうやらこの方針は近いうちにどんどん実現して行くのじゃないかという期待をもって微力を尽しております。この点もどうぞ御支援を賜わりたいと思います。
  156. 青木一男

    ○青木一男君 商法の改正について一点お伺いします。占領当時において、どういう考えか、占領軍日本の民法、商法というふうな司法の基本法にまでも干渉して変えさせたのです。当時法制審議会では全員が反対したようなのまで改正させているのは実に不可解でございます。果して日本の国情に合わないものがたくさんできてきました。その最もいい例の一つは、例の株主の新株引き受けの問題でございます。これがどのくらい日本経済界に波乱を起したか、これは御承知通りなんです。これは一昨年ようやく法律を改正して今後はなくなることになりますが、あの過渡期の問題は今後法廷においてたくさんむずかしい問題が残るのでございます。それからもう一つは、私は同じような点において不可解なのは、商法の二百五十六条の四の取締役の選任の場合の累積投票の際、この改正法によりますというと、累積投票が敏速なように書いてある。そうして定款で反対な規定ができると書いてある。しかし定款で反対の規定をおいても、四分の一の株主が請求した場合はその定款の規定は無効になるように書いてあるのです。ところが日本の商事会社の定款をごらんになれば、法務大臣御存じの通り、累積投票を認める定款なんというのは私は見たことがございません。これはつまり日本の国情に合わない、経済界の実情に合わない証拠でございます。しかるにもかかわらず、こういう原則を変えた方針をどうして維持しておく必要があるのか。やはり経済界の実情に沿ったそのやり方でいいのじゃないかと私は思うのでございまして、これは一つの例として申し上げましたが、日本の国情に合わない占領軍の方針によって改正をした商法は、一昨年の改正に引き続いてやるべきものと私は思うのでございますが、この点について法務大臣から御腹案でもあったら伺っておきたい。
  157. 牧野良三

    国務大臣(牧野良三君) 全く同感でございます。占領の際に、あの権力を振って思いのままなことをしてくれてまことにみじめなものになっている状況は、徐々としてこれを改めなければならないと思っております。必ず御期待に沿うようにしたいと思っております。
  158. 青木一男

    ○青木一男君 先ほど法務大臣は刑事事件について、検察当局の心得について訓示をされたお話を伺って、私、非常に意を強ういたしました。人権擁護の全きを期するには、やはりどうしても検察当局のそういうような気持が私は根本だと思うのであります。ところが、それは私は民事事件についても言い得ると思うのでございます。ただいまでは、法務大臣が国を相手の訴訟の全部を引き受けておられます。そうして指定代理人によって訴訟をやっておられますが、法務大臣のこの訴訟当事者となって訴訟をするということは、法務大臣の法務行政の重大なる一部であると私は考えておるのでございます。従って、これについては法務大臣は、国会その他において十分責任を負うべきものと私は考えるのでございます。ところが私が説明申し上げるまでもなく、本来よく御存じの通り、今日までの法務省の下僚、あるいは各省、大蔵省も入りますが、その下僚が、法務大臣の指定代理人として法廷において主張しているところを見ると、実にこっけいしごくで、会計法あるいは税法その他の解釈についても勝手なことを言って、それでどうして日本経済秩序が保てるか。例を申せと言えば私はここにたくさん例を持っておりますが、時間の関係上申しません。そういう会計法なり税法なりその他の法律を全然無視したような、一口に言えば三百代言的な全く愚にもつかぬ口実を出して訴訟に勝とうとする。まあこれは下僚としては、訴訟に勝てば非常に功績のつもりでやっておるのかもしれませんが、法務大臣は訴訟当事者として国家の利益を擁護すると同時に、法務行政の担当者として裁判所と協力して正しき法を運用する、法令の解釈なり運用について正しき行き方を発見するというのが法務大臣の任務だと思う。その点が、国家国民の間の訴訟と、国民同士の訴訟と私は違うと思う。どうして無理やりに、どんなへ理屈をくっつけても、訴訟に勝たなくちゃいけないというような行き方は、私は間違っていると思う。それでどうしても、法廷において法務大臣の代理人が主張したことは、その法律の解釈なりその他について、法務大臣が国会に責任を持てる限度にとどめてもらいたいと私は希望するのでございます。これは先ほどの検察当局に対する訓示と相通ずるものがありますから、この点について法務大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  159. 牧野良三

    国務大臣(牧野良三君) これも全く残念ながら同感でございます。恥じ入ります、いろいろの事例のあることを。そしてすでにこのことは御指摘ある前に省議におきまして私がこのことを申しまして、国というものは是が非でも訴訟において勝たなきゃならぬことはない。法の正しい解釈を司法廷で明らかにするということを精神にして、勝つことを目的としなくて、法の精神を明らかにすることを目的としてくれと言いましたところが、幸いに訟務局長を初め皆が同意を表してくれました。従って過去に恥かしい事例があればそれは忘れて下さい。今後はさようなことのないように努めたいと存じます。
  160. 青木一男

    ○青木一男君 ただいまの法務大臣の言、非常に私は多とするものでございます。牧野法務大臣にしてこの英断がなし得たと思います。これはほんとうに見るに見かねるものがございます。この点については今後ただいまの法務大臣の方針が下僚に徹底するように、一段の御努力をお願いして、私の質問を終ります。
  161. 小林政夫

    小林政夫君 まず経済企画庁長官に伺いますが、先般の総括質問の際に、時間切れで最後にちょっと触れた程度に終りましたので、前回の続きとしてお伺いをしたいと思います。  アメリカに、一九四六年の立法で雇用安定法、エンプロイメント・アクトというのがございますが、この法律について高碕長官はどのようにお考えになっており、またこのアメリカにおける今日までの実施状態について、一応前もって伺っておきたいと思います。
  162. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 一九四六年にアメリカで出しましたエンプロイメント・アクトというのは、雇用の問題と思っておりましたが、これをよく調べてみると雇用だけの問題でなく、現在アメリカにおきましての生産と消費と購買力、それから雇用を拡大するためにアメリカが持っておるあらゆる機能と資源とを開発していく、こういうふうなことから、毎年一年に一回、大統領はその年における経済の見通しと、それからその年における経済計画とを立案いたしまして、これを一応、法によって定めたる経済諮問機関がありまして、その委員会に諮って、その勧告と助言とをもってこれを作成いたしまして、この作成したる結果を経済白書として国会に報告する。そうして毎年その結果をまた国会に報告するということを法律で定めておるのでありまして、完全な雇用を達成するためにはどうしても生産を拡充しなければならぬ、購買力もふやさなければならぬということの趣旨から出ておる法律でありまして、詳細のことは政府委員から説明さしてもよろしいのでございますが、結局そういうふうなことによって、法の力をもってこれを実行に移すというような方針でありますが、ちょうどこれは私ども計画いたしておりまする経済五カ年計画、これとほぼ似寄ったところでありますが、今後われわれがやって参りますことは、これはもちろん政府の責任において実行いたしたいと存じておりますが、これは法的の根拠はまだない。こういうわけでありますから、この経済五カ年計画をさらに完璧にしたものといたしまして、できますればアメリカのエンプロイメント・アクトと同じようなものに持っていきたいということで、ただいま、せっかくその方向に持っていくべく検討いたしておるような次第でございます。
  163. 小林政夫

    小林政夫君 御答弁で大体満足なんでありますが、高碕長官は、先般この計画は、さらに与党だけではない、社会党といえども満足、継承すべく遺漏のない計画にしたいというような非常に大きな抱負を持ち、張り切っておられたわけでありますが、まあその高碕さんがおられる間ならばどうにかそういう気持でやられるかもしらぬが、同じ自民党内閣でも、責任者がかわると必ずしもそういかないのじゃないか。そういうふうなことも懸念されますので、今のエンプロイメント・アクトのような方法で、政府が義務的に必ずそのような長期の日本経済の見通しを立てて、それを国会に報告する。同時にその見通しが狂ったり、また事情の変更によって結果的には変ってきたというような場合には、それを責任をもって国会に報告する。まず今のような個人及び企業の創意を尊重する。この経済体制において少しでも方向づけた経済計画を推進していこうとすれば、先般来お話があるように、この目標の内容自体というものを国民に周知徹底せしめるということが第一であります。そういうような意味において、雇用安定法のごとき立法措置が私も望ましいと思っておるのであります。長官も御同感のようでありますからこれ以上は触れませんが、一つ与党ともお話し合いになって、その長官の希望が実現するような方向に重ねて御努力を願いたいと存じます。
  164. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この問題につきましては、先般経済審議会におきましても、私ども考えと全く一致しておりまして、この経済審議会の答申案の中にも、私がただいま申しました、また小林さんがおっしゃったと同じようなことを実行に移せ、こういうことが勧告されておるわけであります。これはかりに私がやめましても、どなたが経済企画庁の長官になられても、あの経済審議会というものがあって、これが国民の声によって立っておるということであれば、私は必ず実行できる、また、せなければ、そのような計画を立てる意義がないのではないかと考えておるので、非常に重要視いたしておるのであります。さように御了承をいただきたい。
  165. 小林政夫

    小林政夫君 それでは次に大蔵大臣に伺いますが、これは、先般国会を通過したのですが、給与所得税を軽減するという一方、退職給与引当金の損金算入という制度に対して改正を加え、また交際費等についての扱いを変えていく。こういうことで財源を捻出し、また砂糖関税の引上げでそういう財源を新しく捻出して、給与所得税の軽減措置を講じた。こういうことで、給与所得者の所得税の負担の軽減をはかるということは、だれしも異論のないところでありますが、その減税財源として新しく増徴を考えるというところに私は問題を置くのであります。こういうことについて、今後の一体、国民の税負担を軽くするということについてと、一方、財政需要の点等をかんがみまして、大蔵大臣は将来の方向としてどのように考えられるのか。
  166. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。今日の財政に対する支出の需要といいますか、財政需要からすれば、これはなかなか大きいものであります。しかも健全財政はどうしても貫いていかなければならんとするならば、そう私は減税という余地も大きくないように考えております。むろん今後におけるいろいろな歳出の圧縮をはかっていくという点も考慮されますが、それにしてもやはり限界があるようであります。こういうような場合におきまして、今日の税制を見ますと、御承知のように、シャウプさんがおいでになって、一応理論的な体系は私はいいと思うのでありますが、非常に直接税に偏しておるといいますか、ほとんど直接税一本でいくという税制になっている。それがその後漸次是正はされてきてはおりますが、なおしかし比重はやはり直接税の方が重たい。どのくらいであるか、今主計局長がおりますが、まだ五一%くらいが直接税だと思いますが、大体戦前の安定した年として指数の基準になっている昭和九年、十年、十一年、この三カ年あたりの当時の税を見ますと、直接税は三六%、四〇%以下、こういうような状況であります。今後どういうふうなパーセントにするがいいかは別として、なお私はやはり直接税が重たい、こういうふうに考えておるわけでございます。従いまして、公債発行ということをしばらくおきまして、健全財政を貫くという必要のある限りにおきまして、そう減税もできない。そこで今言ったように、直接税から間接税に比重を移していくことがどうしても適当である、かように考えておるわけであります。そういう意味合いももちまして、今回直接税のうちでも最も急を要すると考えられました、給与所得者の所得控除の引き上げを行なったわけでありますが、それで、それに所要の財源をただいまお示しのような砂糖関税の引き上げ、賞与に対する課税、交際費に対する課税、それから退職金引当制度を改正して課税を強化した。こういうふうにやったのでありまするが、これはまあ今回は根本的な税制の改革でなくして、当面緊急を要するものをかような措置でやった。かようにいたしたわけでありますが、しかし今日考えてみますと、間接税というものを将来考えてみましても、相当なやはり決意をしないと、なかなか大きなそこに財源を見出して、直接税を減ずるということも困難な状況にあると思います。従いまして、これは十分衆知を集めましてやることがよろしいというわけで、ただいま臨時税制調査会にかけて審議を願う、かようにいたしておるわけであります。
  167. 小林政夫

    小林政夫君 当面、本年三十一年度のとりあえずの施策として、一番負担のアンバランスと思われる点を直したのだということになるわけでありますが、今もお話のように、臨時税制調査会において、税制の根本的な改正についての諮問をされておって、その成案がまとまれば三十一年度から根本的に考える。こういう方針でありますが、たとえば直接税の負担が重くて、間接税が戦前に比べて軽いという、数字的にはだいぶ戦前の比重に近寄っては参っておりますが、戦前のパーセンテージからいえば、そういうことは言えるわけですが、さてそれじゃ新しい税を起して、間接税を増徴というか、新規の税源を見つけようというような場合に、今までの経験に徴しましても、相当関係業界からの強い抵抗が起ってくることは事実であります。つまり抵抗が起るゆえんのものは、非常に国民の租税公課の負担が戦前に比べて重いという事実であります。国民所得の伸びと、そうして中央、地方を通じての国民の租税公課の負担額、これを比べて見れば明らかなことでありまして、現在の国民の負担しておる租税公課は非常に戦前に比べて重い。こういうことが根本的な原因だと思う。そこでなるべく機会あるごとに、この国民の租税負担を軽減するという方向に進まざるを得ないと思うのですが、しかし一方、国の財政需要もかなりあるのだから、というようなわけで、安易にそこが、ただでこぼこを直すというような考え方で、この税の軽減というような問題と大蔵大臣が取って組まれたのでは、実際的には国民の租税負担というものはそう軽くならん。そこで大蔵大臣としては、戦前の国民所得に対する国民の租税公課の負担割合が非常に高過ぎるという事実を肝に銘ぜられて、機会あるごとに軽くしていく、全体的に、一方を軽くするために一方をふくらますというような安易な考え方を持ってもらっては困るのではないか。たとえば今回の給与所得者の負担を軽減するという場合においても、同じ直接税の中で退職給与引当金の積立方式を変えることによって七十八億生み出し、交際費の課税の改正をすることによって十億生み出すということは、同じ直接税の中で考えておる。こういう今のお話は、直接税と間接税の話でしたけれども、その直接税の中で、あっちから引いてこっちをふやす、こういう態勢がとられておる。こういうことでは国民の租税負担は軽くならないと思うし、今の国民気持には合わないと思う。軽くなった方はもちろん喜びます。喜びますけれども、しかし全体としての国民の租税負担というものは軽くなっておらない。こういう点について、むしろ減税をするという場合には給与所得者の負担が他の納税者に比べれば重過ぎる。だから一つこれを軽減するという場合には、その軽減財源は、国民所得の増大による租税の自然増収分を財源とする、これが減税の限度である。あるいは公債発行の問題に比べたけれども、施策の効果が後年度に及ぶ施策についてはある程度公債でまかなうということは、これは政府及び与党さえしっかりしておればやって差しつかえないのですけれども、もちろん三十一年度を対象として考える場合に、われわれ安易な公債発行に賛成するものではございません。幸いまあわれわれもそういうことをやってもらってもいいという政治態勢が確立されれば、この施策効果が後年度に及ぶものについてはある程度公債によってまかなってもいい、それが減税の財源になるのだ。歳出の需要、国の財政需要を一方に充たしながら減税をやっていくという場合に、このどちらをとるかといえば、財政規模の圧縮ということに主力をおいてもらわなければならぬと思うのです。その減税財源というものは財政規模の圧縮か、あるいは自然増収か、これ以外に財源は求められない。当分こういうような心がまえでやっていただけるかどうか。
  168. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。御意見と全く違った点はないと思います。私は今当面なすべきこと、なし得ることを申し上げたのでありまして、第一におきましてこれほどの戦争をやり、こういう負け方をして、そうして国民が、すべて税金が重い重い、なるべくすみやかに軽くしなければいかぬじゃないかという点についても、やはり国民としても私は反省する必要があると思うのです。あの戦後の、敗戦をした跡始末まで易々としてできるものじゃない。従いまして、ある程度税が重いということも覚悟しなければならない。しかしこの重い税をなるべくすみやかに軽くして、国民生活を安定させるにはどうしたらいいかということが一つの問題だと思うのでありまして、その間においてなし得ることをなしつつ、基本的にはやはり経済を盛んにし、国民所得をふやしていく、そうして税は納めるが、国民生活は比較的に楽になっていくという方向にいかなければならぬ。同時にまた敗戦後における日本あり方としては、私はむだも少くないと思うのです。しかしそういう面において歳出を厳重に減らすということも必要だ、こういうふうに来年度からいくべきだという考えを今いたしております。
  169. 小林政夫

    小林政夫君 今のお話しになったことは、私の言ったことと方針的には変りはないのでありますが、現実に今度とられようとする、国会では通っているわけですが、措置というものは、同じ直接税の間で負担の入れかえをしたということにすぎない。もちろん間接税としての関税の引き上げが一部その財源に充てておりますけれども、そういうやり方は困るじゃないか。それは国民が、敗戦あるいは戦災によって国民が窮乏化して、おそらく今所得税を納める階層は国民の三割六分九厘です。その納める階層と納めない階層に、扶養者も入れて、国民を納税階層と非納税階層とに分けると、三割六分九厘が納税階層、しかもその納税階層の中で年所得三十万円以下という者が、この源泉所得税を納める階層においては八割近く、八割何がし、それから申告所得税を納める者においては七割何がし、こういうような数字でありますから、私も講演等においては国民皆貧になったということを言っておる。(笑声)国民皆貧の状態だということは、こういうことは事実である。それなればこそとにかくなるべく努めて減税をやる。この減税をやるのに、ただ安易に甲のものから乙のものに負担を移しかえるというような考えでおつては困る、こういうことです。その方針としては賛成だと言われるけれども、実際に本年度とられた措置は、私の今こういうことを特に大蔵大臣にだめ押しをしなければならぬ施策が安易にとられておるということを申し上げておく。
  170. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 直接税を軽減するために間接税を多くする。これは安易にやる、シーソー・ゲームみたいにというそういうことは決してないのであります。ただ三十一年度の予算も、ごらん下さいますように自然増収も従来と比べればそう多くを期待できません。言いかえれば弾力性においても乏しいと言えるのであります。反面歳出をカットしてもなお今の財政需要は大きいのであります。従いまして今そう積極的な減税というものはどうもできがたい事情にあるのであります。従いまして今さしあたり緊要としてなし得べきことは、これは先ほど申したように、給与所得者の負担を少しでも軽くする、そのかわり若干他の面において、たとえば消費税等において重くなるが、まあ給与所得者を減税した方がよかろう。現状においてはなし得べきことを一歩々々なしつつ財源を培養いたしまして、ほんとうの意味の減税ができるようにもっていきたい、かように考えております。
  171. 小林政夫

    小林政夫君 まあ砂糖関税を上げるということも、そういうことは困るというわけなんです。砂糖の関税引き上げの問題は、これは見返り財源という意味のほかに、まあ前国会、前々国会来の問題もありますから、多少違った意味考えていいのじゃないかと思うのですが、まあ一方に必要度が高い、まあこれくらいのことは増徴してもいいのじゃないかという気持でおってもらうというと、甲から乙に負担がえをするという結果になる。だから全体が負担が重い。その重いものを軽くする必要がある部門には、先ほど申すような国民所得の増大に見合う今までの税制による自然増収分が唯一の財源、こういうことで考えてもらわないと、結局国民の負担は軽くならないのじゃないか、そういうことであります。言葉としては御了解になっておるようですけれども、実際の施策としてそういうふうにやってもらわなければならぬし、また税制調査会等の答申、諮問の仕方にしても、ここにはいわゆる各界のエキスパートがおられるから、そういう点は十分考慮されるでしょうが、その研究は十分にしてもらう必要がある。たとえばただ租税特別措置法のごとき税制を非常に複雑ならしめ、また負担の公平を欠いておるようなものについてこれを全廃する。同時にその結果として一律減税が可能になる財源も浮んでくる、こういう場合における租税特別措置法によって特別軽減措置を受けておった者がある程度負担がふえてくるということは、これはやむを得ないことだと思うのですけれども、その税制の筋としては、そういうような税制の簡素化と同時に、負担の軽減ということに主力を注ぐという意味において、一方の負担を一方に移しかえるというような頭を全然捨ててもらいたい。これははなはだくどいですけれども、だめを押しておかぬといけないから……。
  172. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 全く私も同じことを考え、同じことを申しておると思うのですが、先ほど申し上げました通り、やはり財源としては、経済を盛んにし、国民所得をふやす。これはまあ税の上においては自然増収になって現われることは言うまでもないことであります。ただそういうことをなしつつ、なおかつ当面なし得ることをなす、まあかように申し上げておるわけであります。御意見の点は私は全く同感でありますから、けんけん服膺いたします。
  173. 小林政夫

    小林政夫君 それでは大蔵大臣はけっこうです。  通産大臣に伺いますが、貿易自由化ということで為替管理をだんだん緩和していく。特に外貨ポジションもいいしできるだけ自由体制に持っていきたい、こういうおつもりで、まあそういう意味で施策をされておるわけですが、現在における管理制度の緩和の方針ですね、こういうものについてまあ一応最初に通産大臣の持っておられる、どういう方針で緩和していくという考えであるかということをお聞きしたい。
  174. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) お答えいたします。お話のようにできるだけ自由化のお方へ持って参りたい。ことに輸入につきましては、いわゆる自動承認制にできるだけいたしたいと考えますが、これは実際問題としては、しばしばこの委員会で申し上げたかと思いますけれども、いろいろ国内の農業その他の産業との関係等がありまして、一挙になかなか……実はなかなか一挙にどころではない、ほとんどもうずっと一々調べてみると、ほとんどAA制にできるものはすぐにはないのです。そこで三十一年度としましては、とりあえずできるだけ輸入量をふやそう、まあ幸いに外貨の事情は御承知のようでありますから、だからして必要なる原材料等についてはまあ大体十分な数量を入れるようにいたしまして、それでそうしますと、たといAA制でなくても、数量の上においてふえますと、まあ物価等には好影響を与えると思います。そういうことから始めていきたい。実際ちょっと目ぼしい商品では、今のところでは三十一年度からすぐにAA制がとれるものがございません。これはまあ私としては実は残念ですけれども、ありません。まあやりましても、ほんの小さなもの若干が、やればやれるかという程度でございます。
  175. 小林政夫

    小林政夫君 私も大きな方向としてはAA制の方へ逐次移行すべきだと思うのですが、今私が質問しておる意思は、通産大臣が私の意思をそんたくせられて御答弁された気持よりも多少違うのであります。というのは、今、できるだけAA制に移していく、その物資を検討してみても非常にむずかしいと言われたが、その物資別の検討の際に、通産大臣としてはその物資自体の重要度、日本経済にとっての重要度というようなものを考えての最重点に置かれるか、あるいはそのAA制に移行することによって、当該物資を原材料等として使用する業界に対する影響、国内の経済秩序というような問題から考えての影響等も考慮されなければならぬと思うのですが、そういう今非常にAA制に移行するのにむずかしいと言われたそのむずかしさというものは、どういう点を考慮してむずかしいということになるのか伺いたい。
  176. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) ちょっと御質問意味を私はっきり了解いたしませんので、見当違いになるかもしれませんが、私の申し上げましたのは、たとえばごく簡単な例で申しますれば、砂糖についてAA制にする、これはもう砂糖そのものから考えればAA制で十分やれる。それで数量の上からいいましても、今年が百五万トンほど入れた。もう十万トンかせいぜい二十五万トンを奮発すれば、現在の割当とか、種々砂糖の特別な措置とかいうものも要りませんですから、かたがた行政上の関係から申しましても好ましいと思うのであります。しかしこういうふうにいたしますと、すぐにあめに関係し、サツマイモに関係するというようなことで、これはやはり思うようにいきません。今年は関税をかけあるいは消費税によって農産物価との関係を調整しつつ……しかしながらもう一つは、今申し上げました、国内の産業ばかりでなく、海外のブラジルとか台湾とか、海外の貿易との関係もございますし、これを一挙にAA制にするわけにはいかぬ。こういうようなことで、考慮するところは国内の産業、いろいろな産業に与える影響と、それからもう一つは、今、先ほど申し落としましたけれども、海外の貿易協定との関係、この両方から検討いたしまして、さっき申し上げましたように、結論としてはあまりAA制にすぐに移行ができるものがない、こういうことでございます。
  177. 小林政夫

    小林政夫君 国内の、たとえば砂糖の場合で、日本の農業に及ぼす影響というような、関連業界における影響というようなものも考えていかなければならぬわけですが、同時に、今まで割当制によってやっておったものがAA制に移行するということで、特に業界の微力なところですね。微力な業界、また輸入量も非常に数が少い、ある社がひとりで輸入したその当該物資を買い占めようと思えば買い占めることができるようなごく少量であって、日本経済全体から見てそう重要度が高くはないがというようなものについて、とかく安易にAA制に移行するというようなことになってくる場合に、その関連業界が非常に混乱を来たすという事例があるわけであります。たとえば一例として申し上げると、落ち綿であります。こういうようなものについて、これをAA制に移行するというような場合に、数量もわずかですし、ある商社が一つ買い占めしてやろうと思えば買い占めできるような事態にもある。同時にその業界がほとんど零細企業者である。こういうような点から、先般も問題になった雇用維持の問題からいっても、この業界の安定というような点から勘案して、相当AA制へ移行する場合に、そういう配慮、国内の当該業界に及ぼす影響というようなものについて相当慎重な配慮が望ましい。しかも貿易自由化の方向としてそのような金額の占めるのはわずかな金額でもある。むしろ大きな方を先にして、形式的にはざこのようなものだけれども、それをざこだ、ざこだと言って簡単に考えることは困る、こういう意味で申し上げたわけであります。
  178. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 実例をおあげ下すったので意味がよくわかりました。落ち綿のことはお話の通りであります。ただいま検討いたしております。そういう小さなものばかりを拾い上げてやるつもりは実はございません。お話のように、できるなら世間があっと言うような大きなものをやりたい。小さなものだけ拾って歩くというのもおもしろくないから、業界に対する影響というものは、かりにその業界が小さくても、これは市場の混乱等を起すことは困りますから、十分その点は考慮して間違いのないようにやるつもりであります。
  179. 小林政夫

    小林政夫君 農林大臣に……。
  180. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 農林大臣は今衆議院の本会議に行っておりますので、済み次第参ると思います。政務次官が来ております。
  181. 小林政夫

    小林政夫君 政務次官ではどうも……。では厚生大臣に……。先ほど佐多委員が戦争犠牲者の問題に触れられましたが、私も同様な気持で、同様な気持というか、多少質問としては重複するかもしれませんが、戦争犠牲者の処遇改善ということについて全国遺族会議等が相当毎回々々声を大にして参っております。現在おそらく厚生大臣のところへもわれわれと同様に、第八回全国戦歿者遺族大会の決議事項を実現するように善処してもらいたい、こういう陳情が毎日のごとく来ておると思うのですが、あの遺族大会の決議の内容というものについては厚生大臣承知だと思いますが、どういう厚生大臣としては返答をされるのか、この席で一つ考えのほどを聞かしてもらいたい。
  182. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 遺族大会へ参りまして、全国から遺族の代表者の諸君がおいで願って、いろいろ決議陳情等もあるような次第でございます。私どももよく承知をいたしておるのでございます。遺族の処遇ということにつきましては、前国会あるいは前々国会等におきまして、戦病者戦没者等の遺族の処遇につきましての改正案が通過いたしておりまして、戦地におきまする戦病死につきましての公務死の拡大、それから戦地内地を問わず、非公務の死亡された者につきましての弔慰金の新設、それから年金額のだんだんと増額をいたしつつありまするその他にも、相当改正がされておるのであります。今日私ども承知いたしておりまする遺族の方たちの御希望、願望、いろんな陳情等を通しまして一番大きな問題と思われますことは、おそらく私は公務死の問題を戦地だけでなしに内地にも拡大してくれないかというような問題、それからまたいろいろの遺族大会におきまする陳情、決議等も拝見をいたしておりますが、一番大きな問題は私はこれであろうと思います。この問題につきましてはこういうふうに考えております。内地の地域は戦地に比べますというと、戦闘の激しさであるとかあるいは勤務の状況等はおのずから戦地に比べますと相当異なってはいるのであります。それからまた内地の疾病の公務性を有するものの数が戦地発病のそれに比較いたしますると、これもやはり恩給法におきまする多年の裁定例を見ましても、明らかに戦地の方が多いことは事実でありまするし、またさらに資料を集める、資料を収集するという面からいたしましても、戦地に比較いたしまするというと、内地の方が資料の収集という問題につきましても相当楽であるということは、これもまた事実でございます。しかし私どもが今までこの内地で病死された方々のいろいろな陳情を聞いてみまするというと、なかなかいろいろなケースもございまするが、きわめてお気の毒な事情の方も多々見受けるのでございます。これは国家の財政という問題も大きな問題でございまするけれども、こういう問題につきましては、今後十分に検討して差し上げたいというふうに考えております。  それからなお、その他の陳情等の問題につきましては、先ほどもちょっと御質問があったかと思いますが、被徴用者、それから動員学徒、戦闘参加者、サイパンであるとかあるいは沖繩等におきまして軍人と一緒に戦死したというような戦闘参加者等の遺族に対しまして、やはり遺族年金を支給してもらいたい、こういうふうな陳情もこれも大きな陳情だと私は思います。現在は三万円の弔慰金だけ差し上げておるわけでございます。しかしこれもやはり国家財政の立場からいたしまして相当困難な事情があると思うのでありますが、こういうものもやはり国家財政を勘案しながらできるだけ同情的に考える問題だと思います。内地におきまする公務死の問題、これも相当将来検討してみたいと思います。
  183. 小林政夫

    小林政夫君 その中で私は予算的に相当多いと思うのは、戦没者遺族の公務扶助料を本官と同等にしてもらいたい、こういう要求ですね、これがまた相当強い要望でもあるようです。この点についての厚生大臣のお考えはどうですか。
  184. 小林英三

    国務大臣小林英三君) ただいま御質問でありました点は、これは財政上の問題といたしまして、相当の数字のものでございますので、将来これは大蔵省、大蔵大臣等とも十分に相談をいたしまして、慎重に考慮いたしたいと思います。
  185. 小林政夫

    小林政夫君 先ほど来、いろいろおっしゃった問題を実行してゆくのには、相当財政負担を伴うことでありますから、その中でも、今私から指摘した問題が一番財政負担が重かろうと思います。厚生省としてはこういう問題について遺家族の要望にこたえるのには、どれだけの財政、予算措置が必要であるか、こういうふうな調査はできておりますか。
  186. 小林英三

    国務大臣小林英三君) この数字につきましては、主として恩給局に関連をしておる問題でございますから、今直ちにその数字は詳かにいたしておりません。
  187. 小林政夫

    小林政夫君 では恩給局あるいはあなたの方での所管の問題、政府として今遺家族が要望しておる要望をそのまま呑むとすれば、一体どれだけの財政資金を増加しなければならないか、こういう資料を出していただきたいと思います。
  188. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 今のお尋ねでございまするが、恩給関係は別といたしまして、遺族の皆様方の要望にこたえるといたしますと、大体公務扶助料、遺族年金等合せまして約八十億から九十億ぐらいかかる、こういうふうに考えております。
  189. 小林政夫

    小林政夫君 そうすると、主計局長ではわかるでしょうね。公務扶助料を文官並みに措置するという場合は、どれだけ増額しなければならぬか。
  190. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 昭和二十三年以前に退職しました文官につきまして今国会に提案をいたしまして、最近やめる文官との恩給の是正をはかっておるわけでございますが、かりにこれが軍人遺家族にそのまま波及するという前提で計算いたしました場合の金額は、平年度約五十億、文官の分が十億でございます。前年度十一、二億でありますか、本年度は十三億でありますが、平年度十億に対しまして、軍人の場合は約五十億というような計算に相なります。あるいは御質問の点と少しそれたかも存じませんですが、文官と軍人との関係において現在起って参ります問題は、その問題でございまして、その点を財政的にも憂慮いたしておる次第でございます。
  191. 小林政夫

    小林政夫君 それと公務扶助料の関係で、自然減耗がありますね、それは大体三十一年度と三十二年度と比べると、三十二年度の受給対象その他が三十一年度と三十二年度も同じであると仮定すれば、三十二年度にはどれだけ減りますか。
  192. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 的確な数字は今すぐ調べますが、二十億未満の数字であったやに記憶いたしておりますが、今数字を調べまして申し上げます。
  193. 小林政夫

    小林政夫君 今調べて報告すると言うし、臨時閣議が始まるそうですから、農林大臣も見えてないし……。
  194. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 今言っておりますが……。
  195. 小林政夫

    小林政夫君 あすに保留さしてもらうわけにいきませんか。
  196. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 五分ほどあすに保留していただきます。
  197. 小林政夫

    小林政夫君 農林大臣にぜひ直接質疑したいのです。
  198. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは本日はこれにて散会します。明日は午前十時に開会いたします。    午後四時四十五分散会