○山本經勝君 最後に
外務大臣にお伺いを申し上げたいのですが、実は行政協定の第十二条の四項並びに五項に労務協定に関する問題で規定がございます、御承知の
通り。ところが最近全国のこれら基地並びにキャンプ等に働いておる
日本の労務者で、これは大部分は直用なんでありますが、この直用夫、あるいはまた間接雇用を含めまして、組合運動をやったとか、あるいは組合に加入したとか、あるいはその他いろいろ日常の組合活動、業務等を調査し、そうして不当に干渉された事実が幾多現われて参ったわけであります。このことをいろいろと各
方面に調査をし、検討して参りますというと、労働組合法によって当然保護を受けるこれらの直用夫、あるいは間接雇用の
日本人労務者、こういう者に対して非常に強い圧迫が加わっている。ところがこの問題を掘り下げて参りますというと、軍の言い分としては、軍が公務上やった行為については責任を持たない、こういう態度をとっております。そこでせんだって二月の二日でございます、福岡板付基地において二十二名のうち十八名の出勤停止と四名の即時解雇という事件が起りまして、これは法務
委員会からも現地出張を願って調査をしていただいておる問題でありますが、とりあえず四名の即時解雇者については組合が身分保全の仮処分の申請を福岡地裁にいたしました。ところがそのとき福岡地裁の二月七日の口頭弁論の呼び出しに当って、軍側からこういう文書回答が来ております。第八戦闘爆撃機隊司令部といたしまして、一九五六年二月七日土星県知事並びにこれは福岡地裁の所長あてでございます。「本書状は下記署名の者に一九五六年二月七日出頭すること、不当解雇申立の苦情に対して書面をもって回答することを福岡地区裁判所が依頼してきた一九五六年二月三日附帯簡に対する回答であります。その手続又は調査は合衆国の将校又は
機関によって公務遂行中に為された行為に関するものであります。(事件がどのようなものであれ)公式指令によって回答者が出頭することは許されておりませんし、又
自分で回答することも書面で回答することも許されておりません」、こういうような
意味の回答が参っております。それからまた現に労働
委員会でもって不当労働行為として取り上げられた事件は全国に二十四件、現に審査中のものを含めまして、あるいは命令が発せられたものを含めまして、二十四件に上り、
関係しております人員は六十八名でございます。ところが
先ほど申し上げましたように、これは組合運動をやったとか、それから懲戒解雇あるいは保安解雇、ストをやったということの理由、それから文書を頒布したとの理由あるいは組合に加入したことの理由、こういうような内容によって申し上げますような幾多の不当労働行為が起っておる。そこで令状に対しても服しないし、ましてこれらの審問、審査についても
先ほどの文書の
通りでありまして、出頭もしない、こういうことになりますと、
日本国の労働
関係法で守られなければならぬ、また守ることになっております
日本人労務者の救済が何らできないのであります。ところが行政協定には明らかに十二条の五項によって、
日本人労務者あるいは
日本に在住する外人であっても同じ取扱いを受ける。しかも国法の保護を受けるのだという規定がありながら、こういう
状態に置かれておる。ところが、このことを掘り下げて軍当局に対しても
質問をし、そうして調査をしてみますというと、実はこういうことが言われておる。
昭和三十年五月十三日付で日米合同
委員会合衆国代理、海軍少将、ロイ・ゲイノーという名できておる。これは
政府に参ったものなんでありますが、「一、合衆国軍軍人軍属が、公務執行の間になされた行為に対する一切の審査又は判定の手続において
日本側裁判所又は準司法的行政
機関の発する同状に従う義務に関して、合衆国は次のような見解を持っていることを
日本政府に御伝達願いたい。」それかa、ら合衆国軍人軍属は公務執行の間になされた行為については合衆国軍当局に対してのみ責任があること。b、したがって、かかる職員は公務執行の間になされた行為に対して
日本側裁判所又は準司法的
機関の行う審問審査の手続に出頭し又は口頭若しくは文書で回答することの
要請に応ずる許可を与えられていないこと」、こういうことなんであります。それからさらに、「c、かかる令状が発せられるに至った審査又は判定の対象である行為が公務に
関係があるかどうかの決定は合衆国当局においてなされるであろうこと」、こういうふうに表明をされております。
同じく三十年七月九日付で、
政府の方の態度が表明されておりますが、これらの中で問題となって参りますのは、たとえば「
昭和三十年五月十三日付、合同
委員会への合衆国側覚書、主題――合衆国軍人軍属の公務に関して起された訴訟において発せられる令状に服する義務」、これは三十年の五月十九日の合同
委員会に
提出してあると言っておる。
それからまた労働問題に関するところを引用しますれば、「労働問題を規律する規定及び所得税及び社会保障の
ための納付金の源泉徴収及び納付の義務並びに別に相互に合意される場合を除く外、賃金及び諸手当に関する条件のような雇用及び労働の条件、労働者の保護の
ための条件並びに労働
関係に関する労働者の権利は
日本国の法令で定めるところによらなければならない」と、それぞれ規定してあることがあげられて、これらについて
日本側
政府としてはこれを認めておるものではない、こういう態度が表明されております。この間の状況が私
ども十分にわからないので、
外務大臣の御
説明をいただきたいと思います。