○曾祢益君 ただいまの詳細な御
答弁ではございましたが、肝心な点について、どうも、はっきりわからない点があるのです。今の
アメリカの
関係だけを取り上げて要約してみると、大体本年の初めごろ、
アメリカでまた水爆
実験をやるかもしれない——これはおそらく本年の初めではなくて、
ソ連の水爆
実験を再びやり始めたころから、そういう模様が察知されたことは御承知の
通りであります。いずれにしても、二月九日、本院の
決議の前にそういう情報があったから、
政府から
アメリカにサウンドをさした。その結果、まあ
アメリカの
考え方から、
実験をやめることは困難である、自由
世界の
防衛という見地から、いわゆる
一つのデターレント、制御力としての
原水爆をみがくことは、自分の方だけではやめられない。むしろ、それをやっている方が自由
世界の
防衛に必要なのだという、政治的、戦略的の見地並びに
国際法上も信託統治区域において
実験をやっていけないというはっきりした
規定もないし、また、公海の
使用の自由という観点から言っても、
国際法上も別に禁じられておらない。要するに、軍事的、政治的、法律的の見地から、
実験を
禁止させる、阻止させることは困難であるという印象を得たので、そこで
政府の方としては、出先きの大使としては、予防措置、どうしてもやるというなら、少くとも予防措置を十分にしてくれ、さらにまた、それでも不測の損害があったときの補償ははっきりしてくれ、損害の補償、この点ははっきりと申し出た、こういうふうに伺った。そういたしますると、これはまあ二月九日の参議院の
決議の前であるからやむを得ないという見方も立つかもしれないけれども、それでは事実上向うが困難であるから一その点は私もわかります。困難なことは。先般の本
会議でもこれは容易でないということを私申し上げました。しかし困難であるからといって、それじゃ
実験はやむを得ないから、交渉の主眼点というものを、予防措置を十分にしてくれ、損害の補償をしてくれというふうに、言葉は悪いかもしれませんが、切りかえられておる。これが二月九日の前であるならば、ある
意味でやむを得ないと
考えられるけれども、しかし、その後に、参議院の本
会議が二月九日、衆議院はそれより数日前にそういうことはわかっておっても……これはしろうとであり、われわれ交渉の当事者ではございませんが、おそらく、そういう
アメリカの主張ではあろう。向うの
立場はそうであろう。しかし、
日本の
立場から言うならば、それにもかかわらず、
実験を阻止してほしい、やめてほしいというのが、これが両院の
決議のエッセンスであることは、今さら申し上げるまでもないことであります。従って、これだけの強い
国民の決意に対して、一応
アメリカにあらかじめぶっかってみた結果はそうであっても、この決意を
実現するためにどういうふうに交渉されたか。一々の交渉の日取りとか、あるいはそのときの応酬の言葉なんかを私はここに御発表願おうとは思っておりません。これは当然に
内閣として持っておられる外交権の内容であって、一々そういうことをわれわれは外に発表することを要求しているのではないのでありますが、概要において、たとえば事の重要性にかんがみて、
総理大臣がアイゼンハワー大統領に親書を出すとか、あるいは
外務大臣が特にアリソン大使を招致して、おごそかにこの
趣旨を伝達して、その貫徹を期せられたとか、ちょうどその頃
日本の
アメリカ駐在大使がかわるというような
一つの不幸な
事態もあったようですが、そういうときにもかかわらず、たとえば井口大使なり谷大使がどういう訓令を受けて、そして特に国務長官の
ダレス氏に会ったとか、あるいは国務長官に会えなかったから、次官なり次官補なりに会って、どういう申し入れをしたというぐらいのことは、これは
一つ御発表になってしかるべきではないか。少くともそのくらいの措置をおとりになったものと当然推定するわけです。だから私の申し上げたいことは、ただ両院の
決議があったから、これをお伝えしておくというようなものでは私はなかったと思うのです。困難なことはわかっておる話でしょうけれども、外交官として、これは
国民の総意に基いてあらためてもう一ぺん交渉したのだ、その結果は、
アメリカの
実験発表の三月一日の前の段階においてはこうであった。あるいは内報を受けたということを田中情報文化
局長は言っているのです、一週間ばかり前に。これは当然だと思うのです。
日本からはなるべくやめてくれと言っているのに、結局やることになりましたということの内報が一週間前にあった。そしてまた、一週間前にあったのに対して、それじゃ
政府としてはそれでもやめてくれという、どこまで
国民の輿望に沿うた措置をとっておられる……今日まで結果がなっておらないことはお互いに非常に遺憾でありますけれども、
国民としては
政府が
ほんとうに、俗にいえばからだを張って交渉に当っておったということを聞きたいと思うのです。ですからその点
一つ、私は再々繰り返して申し上げるように、交渉の内容のこまかいことでなくて、どれだけの措置をとられたか。これは私は
政府当局としては当然にこれを
国民にお伝えになる方が有利、という言葉は悪いかもしれませんが、義務であると同時に、
一つそういうことをなさる方が
国民に対するいい措置ではないかと思うのであります。はなはだ押し返すようで恐縮ですが、その点を明らかにされたいと思います。