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1956-03-13 第24回国会 参議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月十三日(火曜日)    午前十一時四分開会     —————————————    委員の異動 本日委員秋山俊一郎君及び岡田宗司君 辞任につき、その補欠として堀木鎌三 君及び永岡光治君を議長において指名 した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     西郷吉之助君    理事           池田宇右衞門君            堀  末治君            三浦 義男君            秋山 長造君            曾祢  益君            吉田 法晴君            豊田 雅孝君            中山 福藏君    委員            青木 一男君            石坂 豊一君            井上 清一君            木内 四郎君            川村 松助君            佐野  廣君            田中 啓一君            西岡 ハル君            野村吉三郎君            平林 太一君            藤野 繁雄君            堀木 鎌三君            吉田 萬次君            亀田 得治君            菊川 孝夫君            相馬 助治君            竹中 勝男君            戸叶  武君            羽生 三七君            片柳 眞吉君            田村 文吉君            館  哲二君            廣瀬 久忠君            八木 幸吉君   国務大臣    外 務 大 臣 重光  葵君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 清瀬 一郎君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  石橋 湛山君    運 輸 大 臣 吉野 信次君    郵 政 大 臣 村上  勇君    国 務 大 臣 大麻 唯男君    国 務 大 臣 正力松太郎君    国 務 大 臣 高碕達之助君    国 務 大 臣 船田  中君   政府委員    総理府原子力局    長       佐々木義武君    警察庁長官   石井 榮三君    防衛庁次長   増原 恵吉君    防衛庁防衛局長 林  一夫君    防衛庁経理局長 北島 武雄君    経済企画庁審議    官       細田茂三郎君    公安調査庁次長 高橋 一郎君    外務事務官    (公使)    木村四郎七君    外務省移住局長 矢口 麓藏君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主税局長 渡邊喜久造君    大蔵省理財局長 河野 通一君    大蔵省銀行局長 東條 猛猪君    農林大臣官房長 谷垣 專一君    農林省農地局長 小倉 武一君    通商産業政務次    官       川野 芳滿君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君    通商産業省通商    局長      板垣  修君    運輸省観光局長 間島大治郎君    郵政省電波監理    局長      濱田 成徳君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    日本国有鉄道経    営委員会常任理    事       藤井松太郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十一年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十一年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十一年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を開会いたします。  昨日に引き続きまして、昭和三十一年度総予算案に対する一般質疑を続行いたします。  最初に御報告いたします。岡田宗司君が辞任されまして永岡光治君が委員になられました。戸叶武君。
  3. 戸叶武

    戸叶武君 一番最初外務大臣にお尋ねいたします。先般のアメリカ大統領ソ連総理大臣との書簡の交換を見ても、米ソ関係が非常に対立から話し合い方向へ向いつつあるという傾向を示しておるのでありますが、もちろんどんなに日米関係が融和してきても、軍事的な警戒性を解いてはいけないという観点に立っている今の政府としては、われわれと若干見解が異なるかもしれませんけれども、いずれにしても世界的に大きな転換がなされようとしておるので、原水爆戦争を避けようというこの全人類をあげての努力というものは、私は非常に大きな努力が今動いておると思うのです。ダレスさんがこの十八日には参るのでありますが、ダレスさんが日本をたずねるということは、非常に少期間ではあるけれども非常に意味があることであって、ダレスさん自身も、私はアジア国民米国ほんとうアジアの友であり、彼らが平和と自由に対して抱いているあこがれに真の理解と同情を持っているものであることを印象づけるものであるという声明を、出発に際してやっているくらいでありまして、このアメリカアジアとの現在の調整というようなのは、アメリカの本国で考えているより非常に困難な問題が横たわっていると思うのです。  そこで日本人として一番最初にやはり気にかかる問題は、原水爆いろいろ実験に関して、日本がこうむる迷惑だと思うのです。おそらくは十八日の日にはそういう意味で焼津その他の漁民の死活線を守るために、代表者というものはダレスさんに面会を求めに私は押しかけてくるんだと思います。しかもそれらの人々の今の願いというものは、もう賠償や金一封じゃないのだ、どうしてもこれはやめてもらいたいのだ、この自分たちの悲願を、政府向う側へ伝えてくれるようにということの一本にまとまってきているようです。ところが、この間外務大臣の本会議におけるところの曽祢さんに対する答弁等を見ると、いろいろに外務大臣も思い悩んでおるようでありますが非常に冷静過ぎるほど冷静に客観的に問題をさまざまに分析しておるようですが、それだと水産業者たちは納得しないんじやないか。外務大臣としては、言ってもだめじやないかというような気持があるのかと思いますが、その辺のところを、もっと外務省としてどういうふうな手を現在打っており、また、ダレスさんにはどういうふうな形でお願いするか、それをお聞きしたいと思います。
  4. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 御質問原水爆実験禁止の問題でございます。原水爆実験禁止の問題につきましては、私は国会において本委員会のみならず、他の機会においても同様なことをたびたび御説明を申し上げたわけでございます。国会においてこの問題が参衆両議院のともに決議を経ております。その決議の字句はむろん同一ではございませんが、その精神は全然同一であると私どもは心得ております。そうしてその趣旨国民的感情を十分に表わしておるものだと考えております。さようなわけでございますから、政府といたしましても、むろんその趣旨に沿うて従来の方針と少しも変りはございませんが、さらにその趣旨を十分に体して趣旨実現努力をする、またしてきたことを申し上げてきたのでございます。すなわちそれは関係各国にその趣旨実現要請するとともに、国際連合に対しても国際的にこの問題を取り上げて、わが方の要請実現を期するようにせいぜい努力をして参り、また今日努力をしてきておるわけでございます。ただ、私の申し上げた点は、この問題の内容でございます。これはぜひその努力に効果あらしめたいとしてやっておることは言うまでもございません。しかし、事それ自身においては、いろいろな困難をも予想しなければならぬという第二段の点のことについて、私は御説明をしたことを覚えております。それはこの問題がまだ国際法的にきまっておらぬ問題であるという点に困難がある。第二は、実際問題として国際情勢の現況から見て、この問題が容易に解決をみる機運にまだ向いておらぬ、軍縮の問題と関連いたしております。そういうわけでありますから、困難の存するということは、第二段にむしろ私は御説明を申し上げたのであります。しかし、わが方としては、その既定の国民的要請実現すべく、政府及び政府機関といたしましては全力を尽すと、こういうことを御説明をいたしたわけでございます。
  5. 戸叶武

    戸叶武君 外務大臣の御答弁軍縮との関連を説いておりますが、この十九日からロンドンでは国連の軍縮に関する会合が開かれて、アメリカからはスタッセン氏が出ますが、スタッセン氏もこの委員会における目的は、世界に与えている原子核兵器の脅威を軽減するにあるというふうに声明して臨んでおります。このことは軍縮の重点を兵力よりも兵器に置くというアイクの見解と一致していると思うのでありますが、とにかくこのままで行っては、とんでもない事態に頭を突っ込んでしまう。この原子兵器の問題と取っ組んで、これをあるところまで押えていかなければならないという動きが出ておるのですが、こういう空気の中において、日本では大体原子兵器をどんどん日本に入れようとしている。われわれが聞くと、それは原子兵器とは関連がないのだなどと言っているけれども、大体この誘導兵器原子兵器と結びついたものだと思いますが、外務大臣としてはその点はどう考えておられますか。
  6. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 原子兵器使用は、これは世界の平和に逆行するものであるとして、主義上原子兵器使用ということに反対をしておるのが、われわれの考え方でございます。少しでもそういう方向に向けたいと、こういう考え方を持っております。ただ日本の国防に関係することは、米国との関係におきましては、いろいろ条約上の規定もございます。そういう規定によって処理するよりほかに道がないことと思います。そこで今の新式の飛行機等到着、これは従来の普通兵器の部類によって到着をいたしておるわけでありますが、これがまあ原子爆弾等を運び得るという理論に基いて、原子兵器であるとして議論をするのも一つ方法かもしれませんが、しかし、それは専門家にまかせるよりほかにしようがございませんので、専門家意見を聞いてみますと、これは普通の兵器だと、こういうことになっておるわけで、従来の取扱い通りにいっておるわけであります。この辺については、またいろいろお立場、お立場によって普通の兵器専門家が言ったって、そうじゃないのだ、もしくはそうであっても、これは政策上こうしなければならぬという御議論もございましょうが、今政府考え方としては、それは普通の兵器であるならば、従来の取扱いに準じていって差しつかえはないのじゃないかというふうにまあ考えておるわけでございます。以上をもってお答えといたします。
  7. 戸叶武

    戸叶武君 原水爆実験禁止の問題とともに、もう一つダレスさんに十八日にお願いに行く催しというのは、沖繩島民人たち日本に帰りたいという大会を十八日に開いて、ダレスさんの所へ押しかけようという催しがあるそうです。現在沖繩における選挙の状態等を見ましても、親米派以外の者に対しては相当に政治的制圧を加えられておるようでありまして、島民ほんとう願いというものは、やはり日本に対する帰還だと思うのです。今、日ソ関係国交調整の問題で一番問題になっているのは、やはり領土の問題でありまして、ソ連側におきましても、気のきいた政治家がいるならば、変な領土問題だけにこだわらないで、やはり千島程度日本にお返ししましょうというくらいの手を打って、そうしてソ連に対する日本警戒性というものをなくさせてゆくことが、ソ連政治家としてとるべきだと思っておりますが、しかしソ連立場に立つとするならば、やはり沖繩小笠原、特に沖繩が軍事基地化されておって、ソ連の方にだけは樺太、千島を返せというようなやり方では応じ切れないというような点が、私は問題の暗礁になっているゆえんだと思うのです。で、沖繩島民代表者ダレスさんにそういう請願をされると思いますが、これに対して外務大臣は、それは沖繩のことだから知らぬというわけにゆかぬでしょうけれども、外務大臣として沖繩の返還に対しては、どういうふうにお考えになっておりますか。
  8. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 最初小笠原島民帰還の問題を言われたように思いますが、その問題はずいぶん前からこれは米国側要請をし、話し合いをしておったのであります。私が渡米したときも、それを持ち出したわけでございます。そうしてその後漸次に向う側了解も進んできたように考えます。そうして先方においてもできるだけの好意をもってこの問題を検討しておるというのが、まだ現状であるようでございます。  それから日ソ交渉においてソ連日本国民の正当と信ずる領土に関して、正当と信ずる主張をしてくることが、将来日ソ国交調整のために非常に有益であるというのは、日本側議論であるとしても、私は非常にこれは意味を持っておることだと思います。日本側がいまだかつて日本側領土でないと思われたこともない問題をソ連講和条約によって何と申しますか、日本から引き離すということは、私は将来の日ソ交渉国交調整について決していい影響を与えない。御同感でございます。しかしこの問題は、今日までの外交交渉の経緯から見まして、これは小笠原の問題とか、沖繩の問題とかいう問題と引っかかっておる問題ではございません。小笠原及び沖繩の問題は、これは米国に対して日本要請しなければならない問題でありまして、その要請はいたしております。引き続きいたしております。いたしておりますが、米国としては日本潜在主権は認めるけれども、サンフランシスコ条約規定によって、統治権はこれはアメリカが当分の間、必要の間持っておるということになって、今続いておるのであります。さような関係日ソ交渉においてはございません。そこでこれは別問題でございます。そうして小笠原にいたしましても、沖繩にいたしましても、日本潜在主権のみならず、統治権をも返してもらうような時期の少しでも早くくることを期待しておるわけでありまして、これは東亜国際情勢全局にもむろん関係する問題でございますから、さような大きな、大局上にもでき得るだけの、日本の地位としてのできるだけの努力をいたし、またそういう方面に対して常にアメリカ側にもいろいろ連絡をして、協力をいたしておるわけでございます。
  9. 戸叶武

    戸叶武君 この問題が引っかかっている、引っかかっていないの問題は見解の相違で、議論しても仕方がないと思いますけれども、米ソ対立というものが完全になくなっていない今日においては、やはり私は関連性が非常にあると思うのです。とにかくアメリカとしては、小笠原等は無条件で早く日本に返すべきであるし、ソ連といたしましても、樺太問題はあとになるとしても、問題を十分協議を尽さなければならないにしても、千島あたりはやはり日本に返すという態度は私たちとしては望ましいのですが、これは他に対するわれわれの希望ですが、われわれの方ももう少し近接諸国に対しては、自分たちの胸襟を開いて、向う側とも和を結んでいく方法をとらなければならないと思うのですが、その問題で一つお聞きしたい点は、今中共との関係見本市が今年は北京上海に開かれようとしておるのです。その見本市を開くからには、中共日本に持ってきた見本市でもあれほどの関心を国民に巻き起したのに、日本ココム制約を受けているからというので、みすぼらしい見本市上海北京に開いたならば、これはばかにされると思うのです。やはりソ連なりチエッコなりの共産圏におけるところの国々の躍進を示すようは見本市が続々と開かれているときに、お隣りの日本がいろいろな制約を受けているからという形で、見本市に対する出品もいろいろな制約を受けるというのでは情ないので、ごく機密に属するものは別でありますが、ココム制約といっても大したことではないのですから、しかも向うに置いてくるのでなくて、こっちに、見本市に出して戻すという条件ならば、アメリカ側に、あるいはココム関係諸国外務大臣が説いて、それくらいの品物は出して見せてやった方がいいんじゃないかということでこれは解決がつくと思うのですが、この問題に対しては、外務大臣どういうお考えをお持ちですか。
  10. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は今国際情勢全般について言われた御意見には非常に共鳴を感ずるものでございます。これは国際情勢全般——全般と申しましても、特に主とした問題は、お説の通り米国ソ連との関係が主でございますが、それを中心とした国際全体の状況が改善されることは、これは非常に希望しなければならぬ問題だと思います。まあそういうことが実現しました後においては、よほど日本との関係と申しますか、東亜関係国際的に解決のできる問題が多いと考えております。また従いましてさような情勢を作ることに努力をしなければならぬことはむろんのことと思います。そこでそういう全局見解に立って、東亜各国との間にいろいろ注意をして施策をしなければならぬことは、これは当然のことでございます。ただ私はこれは日本ができぬようなことまでもできるようなふうで、中途半端な態度をとるということは、かえってその相手国に迷惑をかけたり、また誤解を与えたり、事態を混淆紛糾させるだけのことでありまして、できぬことはできぬという、日本立場はこうであるからと言って、はっきりさせることが私は必要だと思います。しかしそれが何も大局上の大方針影響するわけではないと思っております。  見本市の問題でございますが、見本市の問題につきましては、でき得るだけ関係方面希望をも達成せしめたいというわけで、いろいろこれは国際的にまた関係国と話をしておるわけでございますが、これはまあ先例もございますので——先例もございますというのは、ヨーロッパで共産国の中でそういう企てもあったときの先例でございます。ココム品物については出さないということになっておるような先例がございますので、いろいろ困難を感じております。私はそういうことはあんまりお話通りに、ココムだから見本市に出さない、出すべからざるものであるという工合に、非常に窮屈には考えておりませんけれども、やはりこれはその関係方面了解を得るということも全局上また必要でございますから、その手段を今とりつつあるわけでございますが、しかしこれにも相当今先例等によって困難があるということを申し上げておいた方がいいと、こう考えるのでございます。
  11. 戸叶武

    戸叶武君 アメリカSEATO外交等を見ましても、アジアに触れた感想からするならば、中近東東南アジア諸国というものが、軍事的な援助よりも経済的援助を求めているということがはっきりしておりますし、イギリス等も同様の見解を示していることを、ダレス氏も、私はわかったと思うのですが、アメリカの今度の対外援助費支出というものが四十九億増の中において依然としてまだ軍事援助費が多く、経済援助費はそれから見るとずっと少いのでありますが、去年から経済援助費が二億ドルふえたということだけでも、アメリカ国会あたりでは若干問題化されているように伝えられておりますけれども、アメリカ自身世論を構成している、特に納税者代表という形における国会代表人たちなんかは、納税者人たちアメリカ防衛のためならば外国に金を援助してやってもいい、しかし外国の貧乏まで救ってやるという慈善事業のために自分たちの金は使えないという意見も確かにアメリカ世論の一部にはあると思うのです。しかしそれを良識あるところの政治家がそういう形においては、軍事的な防衛というような形だけによっては、平和は保てるものじゃないんだという形で、経済援助の方へ転換しようという気持は確かに働いておるし、アメリカ指導者だけでなくて、むしろその援助を受けておるところの中近東なりアジアの意向というものははっきり打ち出されてきているのでありまして、ダレスさんがネールさんとお話し合いしたり、あるいは東南アジア諸国指導者と会って、日本に訪れるときには、当初出発のときに言ったような意見を成果あらしめるためには、私はダレス構想なり何なりというものが日本で打ち出されると思うんです。特にジョンストン構想が財界その他に問題になったときにおいてでも、藤山さんあたりダレスさんの訪日によってもっとあの構想はわかるだろうというくらいに言っておるんですが、このことに関連して、外務大臣として何らかの対案をお持ちでございますか。
  12. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今お話のように、アメリカ考え方全局としてこの問題について相当変ってきたことを私は承知しておるのでございます。いろいろアメリカの何も国内議論議論する人によっていろいろございましょう。しかしアメリカとしては初めはこれは軍事援助でなけりゃなかなか金の支出も困難であるという状態に概括的に見てあったのであろうと思います。今日特にアジア方面事態もよくわかり、また国内いろいろ意見もありまして、軍事援助よりも経済援助でなけりゃならぬのだ、それはソ連政策にもよりましょう。そういうことにだんだんなって、ダレス長官出発前に米国において経済援助に力を尽すべきだということを強力に演説しておることを承知しております。そういうわけでありますから、今度SEATO会議で来られてそうしてアジア各国日本をも経て帰国をされる、この状況においてそういう方面の観察を聞いてみたいと思いますが、おそらくそういうような考えで来るようになっているとこう考えます。これは私は日本としては非常に喜ぶべき、歓迎しなければならぬことだと考えます。ちょうどわれわれも御承知の通り東南アジアに対する経済外交経済発展とかいうようなことでいろいろ考えておったところでございますから、その何は経済外交をやるのにはコロンボ会議のごとき国際会議を利用しなければならぬということはむろんのことでございますが、米国態度がそれにしてもきわめて重要でございます。それでありますから、米国態度経済援助に傾くということは非常に日本経済外交を推進する上においても重要な影響をもつことは当然でございます。そこでこういう方面において米国の重要な人物の意見がその方向にだんだん進んでくるということは私は歓迎すべきことだと思います。そこで今どういうことを今日まで考えておった以上に日本当局として考えているか、こういう御質問でございますと、今までの以上に特に考案を、検討は常にいたしておりますけれども、具体的の考案を今もっておるということはございません。これらのことを十分内外専門家によって検討してもらいたい、そうしてその具体案でもあればそれを示唆して一つ進みたい、こういう状態でございます。
  13. 戸叶武

    戸叶武君 国会におけるきのうの質疑においても、日本の人口問題という、ものが非常に問題になって、特に働きたい希望をもっておる人が職場を追われて非常に苦労をしておるということに対して、政府が手を差し伸べなければならないという意見が非常に強く出ていたと思うのです。国内における産業部門においてでも、合理化を名として逆に労働者が締め出されているような状況であり、農村においても余剰農産物その他の余波を受けて、働く農村の二、三男の人たちというものが希望を失っておるような状態で、移民の問題に対しては、先ほど朝日新聞でアメリカ移民の問題を取り上げましたときにも、全国から何十というやはり問い合せの手紙が来ておるのですが、私たちアメリカのいろいろなことを誤解や刺激を受けてはいけないという形で外務省が慎重な態度でやっているのはわかるのですが、これはアメリカだけでなくて、南米に対してもあるいは中米に対しも、豪州に対しても、東南アジアに対しても、やりようによって私は移民は積極的にもっと出せると思うのです。とりあえず、この間外務省では、カンボジアに対して大量移民の問題で打ち合せに移住局長が行かれましたが、その成果は相当あったかどうか外務大臣からお聞きしたいと思います。
  14. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 移民の問題についてはお話通りに、特に受け入れ国の状況を十分に考慮してやらなければこれは失敗に終ることがあることを考えなければなりません。そこでお話通りに、受け入れ国の状況を慎重に考えて、そして失敗のないように進めていかなければならぬと考えます。その点においては、今問題になっている米国だけではございません。中南米はむろんのこと、それからまたお話のカンボジアの問題もございます。カンボジアの問題はそう非常に大きな問題ではございませんが、しかしながらカンボジアのこの計画は、相当近いところにあるので有意義なものでございます。そこでその内容等は十分に打ち合せをしてやらなければなりませんので、移住局長を特に派遣をいたしましていろいろ向うの内情を調査いたしまして、その結果はいろいろと向うの意向もわかりますし、状況はわかりました。わかりましたけれども、これは今相当な案ができなければ、どういうふうな方向に向けていいかということを国会で御報告申し上げるのは、少しその点は差し控えたいと思います。何分移民の問題は、諸外国に与える影響もございますので、できるだけ慎重に考えたいと思っておるわけでございます。なお、この問題もこれから漸次に進めまして、適当な時期が来ましたならば、大よその考案を申し上げ得ることと存じます。
  15. 戸叶武

    戸叶武君 農林大臣が衆議院の方の委員会に出席する予定もあるそう並んで、それじゃ農林大臣にお尋ねします。  この前質問したときに、この農業団体の再編成の問題と、新農村計画なる農林大臣が提唱している二つの問題が十日前後に成案を得るから、発表はそのときにしてくれというお話だったので、その後遠慮しておったんですが、新聞には少しずつ出ておりますが、どこが真意かよくわからない点もありますので、この機会に農林大臣から御意見を承わりたいと思います。
  16. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えいたします。大体農林省といたしましては法案の要綱の作成を一応終りましたが、ところが与党の方にまた別に案がございまして、それと今調整をいたしまして、大体明日、明後日のうちに最終案を取りまとめるようにしたい、こういうふうに今しているわけでございます。
  17. 戸叶武

    戸叶武君 自民党の方の人から非公式に聞くと、農林大臣は当初強気に出たが、結局党の言うなりに——言うことを聞かなくちゃならないので、結論は党の言うなりになるよりほか仕方がないんじゃないかというような御意見を承わっておりますが、農林大臣も当初の出発からみるとだいぶ弱気になったようですが、そういうふうな方向にまとまりそうでございますか。
  18. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) この問題は私の非常に不手際で、いろいろ農業者の間に誤解もありますので、この誤解のままにここで国会に提案をいたしますことは適当と思いませんので、今それらの意見を十分調整をして、党との間に一本の方向にまとめ上げて出したい、こういうふうに考えております。
  19. 戸叶武

    戸叶武君 これは農林大臣は、これ以上聞いてもいろいろお話ができないような、今非常に煩悶期に珍らしく立っているようですから、私は農林大臣に対する質問は、この問題に関してはむだだと思うのですが、ただ一点お聞きしたいのは、例の砂糖の問題です。砂糖の問題は、これはあとから大蔵大臣に聞いた方がもちろんよいと思うのですが、農林大臣の製糖業者の儲けを吸い上げる考え方というものもだんだんぼけてしまって、結論的には大した収穫はなかったんですが、現在のようなああいう形で、今後も政府は続けていくつもりでしょうか。
  20. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 砂糖の問題は、今のお話は少し誤解があると私は思うのであります。これは最初私がいろいろ申しましたのは、サツマイモ澱粉と砂糖との価格の関係で、われわれ農林行政を担当いたします者といたしましては、カンショ澱粉のある程度の価格の維持をするために、砂糖の価格の維持を必要とするという立場からいたしまして、砂糖が粗糖を輸入いたしますものとの間に価格の差益が生まれてくる、この差益は政府が吸収すべきものであるという立場をとっておるわけでございます。そこで政府は部内においていろいろ研究いたしました結果、大蔵省の提唱されまする関税によってこれをとろうということで、これはこの予算の中にも歳入として上っておるわけでございまして、この歳入として見込んでおりまする金額は、すなわちわれわれが要望いたしまする大体七十四、五円見当というところに糖価が安定いたしました際に、この程度の差益をとれば、まず合理的に製糖業者としても、利益が非常に製糖業者によどまないということになる結果をわれわれは見当をつけておるわけでございます。ただ、これが果して今のままで、砂糖の価格が為替の操作だけで七十四、五円のところに安定さすことができるかどうか、糖業者はこれを自主的にその施策を講ずると言っておりますけれども、それだけでは多少私といたしましては不安定な点がございますので、ぜひこの国会に糖価安定に対する法案を提出したいと、目下せっかく検討中でございます。
  21. 戸叶武

    戸叶武君 私たちは農林委員会で一番悩まされた問題は、この砂糖の問題と硫安の問題だと思います。砂糖の問題はあとで大蔵大臣からお聞きしますが、硫安の問題も通産大臣からお聞きしたいと思っておりますが、問題は外貨割当の操作、原糖割当のからくりというようなところに非常に問題点がありますので、このこまかいデータはあとで農林委員会なり分科会でまた御質問したいと思いますが、私たちがいろいろなことを審議する場合においても、問題は、生産のコストの数字等をつかまえようとした場合においても、お役所の方で持っておる資料というものをなかなか出してくれないのです。たとえば硫安の問題でも、柿手肥料部長を半年間河野さんの弟さんの謙三君などと一緒に私たちが攻めあぐんだのだが、あぶら汗を流してがんばって材料を出さない。おかしなことが役人というものにはあるものだなと思っておりましたところが、柿手肥料部長はいつの間にか硫安協会の常務理事に御栄転なすっておる。こういうように、このごろ参議院の選挙を前にしてだいぶ役人が国家、お役所の金を使って選挙運動をやっておる向きもあるので非難もされるが、経済関係の各省における役人というものが、建設省における役人が土建業者と、また通産省や農林省における役人がそれらの省と結びつくところのいろいろなところと密接な関係、密接過ぎるような関係を持っておるということは、きわめて私たちは不明朗な感じしか受けないのでありますが、そういう意味において、砂糖とともに硫安の問題もまたお聞きしたいと思うのですけれども、この前から河野さんは事硫安の問題に対しては六月に下げさせるということを言明しておるのですけれども、具体的な数字においてそれが三十円に下げさせるとか、四十円に下げさせるとか、そういう見通しを今のところは持っておりませんでしょうか。
  22. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御承知の通り、六月、七月の年度がわりに、それまでの最近の生産の状況もしくは生産費等を厳密に調査をいたしまして、その上で数字をきめることになりますから、ここで見当はちょっとむずかしいと思います。ただし趨勢としてそういう傾向にあるということを私は申し上げて、大体明肥料年度の更改期には、さらに硫安は値下げをすることができるというように見当をつけておるわけございます。  それから、これは私から申し上げるのはどうかと思いますが、今官吏が旅費やそういうもので選挙運動をするということでございますが、これは全部昨年末、大体今回の選挙に立候補しょうという希望のある官吏は一応退官いたしまして、現在役所の中には、今回の参議院選挙に立候補しょうとする人はおらないということの処置が一応とってありますから、この点は一つ了解願いたいと思います。
  23. 戸叶武

    戸叶武君 農林大臣にはまた別な機会に御質問することにいたします。  砂糖の問題が出ましたので、この砂糖の価格の差益の吸い上げの問題と、もう一つは関税引き上げの問題、ともに関連しまして大蔵大臣にお尋ねします。これは学者によっては差益金で吸い上げた方がよいという意見を述べておる人もあり、砂糖関税の引き上げというものは間接税の引き上げになり、また貿易関係においてでもこの引き上げの率が高いということが他の方にも影響を及ぼして、悪影響を与えるのではないかというような御意見を述べておる方もありますが、大蔵大臣としてはどういうふうにお考えでしょう。
  24. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今度の砂糖の関税の引き上げは、一面テンサイ糖の価格、これを保護する等の関係もあります。がしかし、この引き上げによってすぐにこれが消費者に転嫁されるとも思っておりませんが、そういうふうな関係におきましては、砂糖の輸入量を今後適当にかげんすること及びこの輸入時期を円滑にするというようなことで、国民生活には悪影響を与えないように努力したい、かように考えております。
  25. 戸叶武

    戸叶武君 ビート糖に対する影響ということだけを考慮してこの処置をやっておるように、先ほど河野農林大臣も大蔵大臣も答弁しておりますが、砂糖の問題に対する政府の処置というものは単なる北海道のビート糖の価格の維持に努める施策というものよりも、もっと私は大きな問題が含まれておるのではないかと思いますが、ただそれだけの理由ですか。
  26. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 大体保護する目的としましては、テンサイ糖、それから澱粉というふうなものの安定というふうなことを考えております。
  27. 戸叶武

    戸叶武君 これは私たちビート糖や澱粉だけの問題ではないと思いますが、政府はそういうふうな考え方から出てないということははなはだ残念だと思います。  そこで大蔵大臣にお尋ねしますが、手持ち外貨が十五億ドルにも近づいて参りましたのですけれども、輸入の自動承認制の拡大ということについて、大蔵省としてはどういうお考えを持っておられますか。
  28. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 最近二月十日現在のところで、外貨の保有は大体十三億五千万ドルでありますが、このうちから、いろいろな内容のものもあります。たとえば短期借入れ、これは時によって変動をいたしておりますが、これがおそらく二億ドル前後あるかと思います。その他債権の形になりましてすぐには使えないというものも、これがやはり二億七、八千万ドルあるとか、約五億ドル近いものがあります。残りが八億五千万ドルということになると思いますが、まあしかし相当のこれは増加であります。今後におきましては物価等の関係、さらにまた国内産業に及ぼす影響等を十分勘案をいたしつつ、輸入量をふやしてゆく、むろんそういうふうな見地をもってAA制も拡大してゆきたい、こういうふうに考えております。
  29. 戸叶武

    戸叶武君 この問題に関連して、大蔵省側と通産省側と若干の見解の相違があるということでありますが、その相違点はどういうところにありますか。
  30. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 通産省と大蔵省との考え方において私は相違はないように思っております。
  31. 戸叶武

    戸叶武君 貿易がイギリス側なんかの意向をみてもだんだん自由貿易の方向に進もうとしておるので、この問題も十分政府において考えなければならない問題だと思いますが、先ほど外務大臣にもお尋ねした、ダレスさんが来る前に、当然大蔵大臣は経済閣僚としてダレスさんとお目にかかることだろうし、またアメリカ側においては他の閣僚に比較して一萬田さんは相当買われておると思うのです。その関係から先ほどのジョンストンさんが参りましたときでも、一萬田さんが非常にこれに積極的に金融公社の設立に熱意を見せたというので、新聞あたりではひやかしておる向きもありますけれども、やはり私はこれは架空のできごとではなく、単にアドバルーンではなく、ダレスさんの前振として、瀬踏みとしてやはり来られたと思うのですが、これと前後してアメリカ政府の方から余剰農作物を日本に買ってもらい、その円でアジア各国が必要とする物資を日本から買ってそれらの国に援助する、そういうことによってソ連の経済攻勢にアメリカは対処しょう、こういうような考え方があるようにも承わっておりますが、そういうことが外務省へ入っておるのか、あるいは大蔵省へきておるのかわかりませんが、どういう形において政府側においてはその意向を受けとっておりますか、大蔵大臣なり外務大臣から御答弁願います。
  32. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 先ほど申し上げました通りに、さようないろいろ国際的の考案につきましては、今はいろいろ意見各国とも出しつつある状況でございますので、今のジョンストンの話もその程度にとどまり、またその程度の非常に有力な意見になっております。そこでそういうようなことを考案をし、また米国の大使館においても非常に経済方面では有力なスタップを持っておりますから、これと絶えず連絡をいたしております。その検討によりまして、将来の考案を十分に立てたいと思っております。わが方においては、むろん経済各省との間の連絡も密接にいたしておるのでございます。以上であります。
  33. 戸叶武

    戸叶武君 大蔵大臣に承わります。この間予算局の問題で、河野君がこの予算委員会でも御意見を開陳しておりますが、大蔵大臣といたしましては、予算局の設置ということに対して、どういうお考えを持っておられますか。
  34. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 御質問の予算局というものの内容がつまびらかでありませんから、正確にお答えができるかわかりませんが、いわゆる予算局、大蔵省の予算編成事務を内閣に移すという意味における予算局は、私は賛成いたしておりません。ただしかし、予算案内閣においてこれを決定するのでありまするが、その補完的な意味をもちまして、閣僚等におきまして委員会を構成いたしまして、そうして予算の基本方針をここで十分審議をする、あるいは閣内の調整または党との関係調整に当るということは、よりいい予算を作る、特に政府政策を最もよく予算に具現をするという意味において、同時にまた健全な予算を組むという基本点を持つという意味合いにおきまして、賛成をいたしておるのであります。
  35. 戸叶武

    戸叶武君 この間の河野君の説明によると、党の政策を予算の上に推し進めていかなければならないので、そういう予算局を内閣に置くようにするんだというふうな御意見のようでしたが、そのやり方というのは、アメリカで一九一二年に予算及び会計法によって大統領の下に予算局を置くようになった、ああいうふうな形で持っていこうとしておるのでしょうか。
  36. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) そういう今考えられておりますことは、すでに行政官理庁からの案としても出ておりますが、今お話とは全く違い、特にアメリカは予算制度が日本とは非常に違いまして、あれは国会で大統領が教書でもって勧奨をする、こういうふうな形になっております。大統領の下に、予算局は予算編成に関する資料を集めるという役割りを演じている、かように私は考えております。
  37. 戸叶武

    戸叶武君 政府側として意図している予算局設置、内閣の方へ持っていくということによって、今までの大蔵省が持っていた権限というものがそれによって非常に削られると思うのですが、それに対する大蔵大臣の見解はどうですか。
  38. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 削られることはごうもない。同時に、また責任も同じようにある。ただ補完的な意味において予算の編成を円滑にして、効果的に持っていく、かように考えております。
  39. 戸叶武

    戸叶武君 通産大臣はまだお見えになりませんか。
  40. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) もう見えると思います。今政務次官が来ておりますが、大臣は間もなく見えると思います。
  41. 戸叶武

    戸叶武君 それでは防衛長官にお尋ねします。防衛庁長官、主として今まで私たち総理大臣に、鳩山さんにお尋ねしておったのですが、衆参両院においてでも鳩山さんと船田さんに追及した点の重点というものは、船田さんが敵の基地を飛行機で爆撃し得るという答弁をしたのに対し、二十二国会で鳩山さんが飛行機で爆撃はできないという答弁をしておるのとは、非常に行きと帰りほど違うじゃないか、その食い出遅いをどういうふうに考えるかという点であったのですが、政府の方ではすなおに、どっちかが間違っているのだとかどうだとかいうことを言わないで、何だかんだといって答弁に尾ひれをつけて、ついには失言したり、いろいろ釈明文が出たりしておるのですが、一体その問題はどっちの答えが正しいのですか、もとへ戻るようですが、明快な答弁願いたいと思います。
  42. 船田中

    国務大臣(船田中君) 私が総理大臣のかわりに、衆議院の内閣委員会におきまして政府の統一した見解を申し上げたのでありますが、ここにそのときのことをもう一ぺんはっきり申し上げておきますが、こういうことでございます。「わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。昨年私が」、「私が」というのは鳩山総理大臣であります。「私が答弁したのは、普通の場合、つまり他に防御の手段があるにもかかわらず、侵略国の領域内の基地をたたくことが防御上便宜であるというだけの場合を予想し、そういう場合に安易にその基地を攻撃するのは、自衛の範囲には入らないだろうという、趣旨で申したのであります。この点防衛庁長官と答弁に食い違いはないものと思います。」この政府見解を申し上げたわけでございまして、これによって明瞭であると存じますが、きわめて例外的な、そうしておそらくまれなことであろうと存じますが、こういうただいま申し上げましたようなことも自衛権の範囲内には入り得るし、普通の場合におきまして、外部からの侵略を受けたという場合におきましては、この席上からもたびたび申し上げましたように、また総理大臣答弁されておりますように、日米行政協定の二十四条によりまして、いかなる措置を講ずるかということにつきまして協議をしなければならぬということになっております。その場合におきまして、わが方の自衛隊といたしましては、憲法および自衛隊法、その他国内法規の範囲内において最善の処置を講ずる、こういうことになると存ずるわけでありまして、いわゆる先制攻撃であるとか、あるいは敵基地を早くたたいておけばよかろうというようなことで敵基地をたたくのではないということを、繰り返し申し上げておるわけでありますが、今日なお政府といたしましては、さように考えておる次第でございます。
  43. 戸叶武

    戸叶武君 私たち質問として提示したものは、片方は爆撃できない、片方は爆撃できるというので、非常に違うのだが、その朗読した釈明文を都合のいいように解釈すれば、そういう表現も同じだという意味なんですか、今の釈明文は、釈明文の言わんとするところは。私たち質問は、あなたは飛行機でもって敵基地を爆撃できると言ったり、それから鳩山さんは飛行機で爆撃できないと言った。この非常に行きと帰りほど違う対立した意見が、今の釈明文をよく読んで善意に解釈すれば、それは一致した見解になるということを意味するのですか。
  44. 船田中

    国務大臣(船田中君) 私の申しましたのも、敵基地を爆撃することが自衛権の範囲であるというようなことは申しておりません。ただいま私が繰り返して政府の統一意見として述べました範囲のことを申したのでございまして、いわゆる先制攻撃をするか、あるいは渡洋爆撃をするというようなことが、自衛権の範囲であるということを申しているのではありませんし、またさようなことを政府考えているのではないということをはっきり申し上げておきます。
  45. 戸叶武

    戸叶武君 何か手品を見ているような形で、言葉のあやにひっかかっていくようですが、とにかく総理大臣がその後、一日の衆議院内閣委員会で根本さんに朗読させた釈明文によると、誘導弾等による攻撃を防御するのに、ほかに手段がないと認められる限り、誘導弾などの基地を爆撃することは法理的にもやむを得ない処置として可能な処置と思う、という見解を述べておりますが、防衛長官も同感ですか。
  46. 船田中

    国務大臣(船田中君) 急迫不正な侵害がございまして、そうしてこのままではもう自滅を待つ、そうして普通の手段によって、先ほど申し上げましたように、行政協定二十四条によってどういう措置を講ずるか、あるいは国連に提訴する、そういう手段よりほかにもう方法がない、米軍の飛行機の援助も得られないというような万やむを得ない場合におきまして、自衛隊が敵基地を攻撃することは可能である、こういうことを申したのでありまして、その点におきまして、総理大臣答弁されておりますことと、私が答弁いたしておりますこととは、何ら食い違ってはおりません。
  47. 戸叶武

    戸叶武君 急迫不正の場合の認定は、だれがいたしますか。
  48. 船田中

    国務大臣(船田中君) これは具体的に現実の急迫不正な侵略があった場合におきまして、わが方において総理大臣が認定するということに結局なる次第でございます。
  49. 戸叶武

    戸叶武君 急迫不正な場合にといって、もうすでにそのときは総理大臣の御意見を伺っているひまがないからなんといって、大体真珠湾攻撃みたいなのが自衛のためといいながらされる危険性は多分にあると思うのです。それと憲法第九条の「国の交戦権は、これを認めない。」というこの憲法の条項と  は、どういうふうにして調節できますか。
  50. 船田中

    国務大臣(船田中君) これは現実に急迫不正の侵略が起った場合でございまして、そのおそれのあるような場合を私は論じているのではございません。これはどうしてもやはり個々の具体的の事実について申さなきゃなりませんが、先ほども申しましたように、このままでおけばもう自滅を待つというような急迫不正の侵害のありましたときに、やむを得ず、他に何らの手段がない、考えられないという場合において、敵基地をたたくこともこれも自衛権の範囲である、こういうことを申したのでありまして、いわゆる今おあげになりましたような自衛権に名をかりて戦争をするというようなことを申しておるのではないのであります。
  51. 戸叶武

    戸叶武君 この問題はまた別の機会にすることにして、通産大臣が参りましたから、通産大臣にお尋ねします。  通産大臣にお尋ねする点は、先ほど農林大臣に砂糖と肥料の問題をお尋ねしたのですが、肥料の、特に硫安の価格を六月に大幅に下げるというのは、河野さんの答弁で私はあるところまで納得できたのですが、この砂糖の場合でも、硫安の問題でも、製造会社からいろいろな生産のコストをわれわれが知りたいと思って、資料を、そういう農林省なり通産省なりに求めるときに、それを担当しておる役人が、国会が審議権を行使する必要上資料を求めても、なかなか出してくれないのです。その一つの例としては、肥料部長であった柿手君が、われわれの追及に対して半年以上も油汗を流しながら、その資料を出すことを拒んだ実例があるのです。なぜそんなに拒むのだろう、大体その硫安会社のこれは手代かひもつきかなと思っておったのですが、まさか役人だからそうではあるまいと思ったら、このごろ硫安工業会の常務理事かなにかに御栄転なされたということでありますが、とにかくお役所におって、お役所の勤めをまじめにやるというよりは、業界の利益擁護のためにきゅうきゅうとして、そうしてあとでもって栄転を策するというような弊風が出てきたならば、私たちは役所を信ずるわけにはいかないのですが、通産大臣、こういうことはいかがですか、御感想を述べて下さい。
  52. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) ごもっともなことで、役所におって業界を代弁されては、これはたまりませんから、もしそういう事実がありますれば、適当な処置をいたします。
  53. 戸叶武

    戸叶武君 これは実例として社会党はたくさん持っているようですから、いずれ総攻撃の形で実例を出していくということになると思いますが、いま一つの、質問は、どうも通産大臣がおくれて来たので、時間がなくなっちゃったんで、急いで簡単にしか質問できないのですが、中共北京上海見本市が開かれるのです。この見本市が開かれるのに当って、見本市を開く以上はあまりみすぼらしいものを開きたくないというのが、産業界の人々の私は心痛の種だと思うのです。一つは、ココム制約を受けておる品物でも、向うへ置いてくるわけじゃないから、見せるだけだから、持って行ってもいいじゃないか。このことは外務大臣に頼みましたら、いろいろ答弁はいただきましたが、もう一つは、見本市は開設するに当って費用が相当かかるので、政府の方から一億円程度の金をたしか出してもらいたいというようにお願いしても、政府の方では五千万円くらいしか出せないというようなところで、出ししぶっておるというような話も聞いておりますが、その間の事情はどうなっておるのでしょう。
  54. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 見本市を計画しておる当事者の間に、お話のように、補助金を出してもらいたいという希望があることは存じております。しかし政府としては今、五千万円もまだ出すというようなことはきめておりません。全然まだ白紙であります。
  55. 戸叶武

    戸叶武君 まだきまってないならばちょうどよいですけれども、石橋さんは現内閣の中でも割合思い切ったことをやってくれるのじゃないかという期待が、民間側においては一つの信仰になっておると思う。大臣になったらさっぱり何もやらぬじゃないかという批判も、このごろじゃしょっ中出ておるようです。特に中共貿易というようなものは今後の日本経済自立に密接な関係があることなので、一億円程度の金はあっさり出してやったらいいじゃないか。あるいは石橋さんのことだから、もっと、一億円くらいじゃ足りないから、もっとたんと出せということになるかとも思いますが、あなたの現在のお考えはどうですか。鳩山内閣というものも、政権を取るまでは非常に景気のよい話をして、政権を取ってしまったらけちくさくて話にならぬというのが一般の世評ですが、石橋さんから御答弁願いたい。
  56. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 金だけの問題なら、また考えようもあるかと思いますが、中共の問題は、御承知のように、いろいろな厄介な外交問題もからんでおりますから、ただ貿易とか通産という点からだけ判断するわけに参りません。この問題についてはなお十分外務大臣等とも打ち合せました上で、見本市に対するわれわれの態度をきめたい、かように考えております。
  57. 戸叶武

    戸叶武君 今までいろいろ、私たちはなるたけ静かに、政府側をあまり興奮させないように、いろいろと御質問をいたしたのでありますが、今の鳩山内閣の基本方針というものは、われわれはなかなかつかみにくい。とにかくアメリカのごきげんを伺ってぶら下っていようというような態度が強過ぎる傾きがあるのですが、アメリカ自身だって今では、今までのやり方というものに立往生して、転換しなければならぬというときに来ておるのだと思う。私はやはり日本の政治にもっと見識が必要である、経綸が必要である。こんなにいくじのないじめじめした政治が行われていたならば、民族というものはほんとうに私はひしがれてしまうと思うのです。この大きな転換期に、鳩山内閣のように萎靡沈滞して、無気力で、詭弁だけをやっておるような、政治の手品師によって、タヌキかキツネと思われるような政治技術の老獪なからくりによってされておるということは、非常に残念だということをつけ加えて、私の質問は打ち切ることにいたします。
  58. 中山福藏

    ○中山福藏君 私はまず外務大臣にお伺いをしたい。ただいま戸叶委員が触れられました移民問題についてもう少し踏み込んでお伺いをしておきたいと思います。  大体近ごろ日本で産児制限という言葉が盛んに使われまして、せっかく人間に生まれるはずのものが、無情にもあの世に葬むられていくというようなことになっておる。結局日本は人間が多くて土地が狭いからいたし方のないことでしょう。つまり食べ物が足らぬ。そこでこの四つの小さい島にうようよした人間が九千八百万人どうして飯が食ってゆけるかというところにこの問題が発足しておるわけでございます。でありまするから、今度の三十一年度。予算説明書を開いてみましても、民生安定の一環として移民問題が取り上げられておる。私は今後国民が安定した生活をするには、日本としては四つしか食える方法がないと、こう考えておる。四つの方法というものをうまくやれば食えるのじゃないかと思う。まず第一には、穀物の輸入を盛んにする。第二には、国土の開発をやる。第三には、移民。第四には、産児制限、こういういろいろなことがあるわけですが、そのうちで一番やりやすいのは何かというと、やはりこの移民問題をうまく解決していただくということが最も肝要だと信ずる。人間として、生まれるのを生まれさしてですね。この方法こそが平和な社会を作るために一番いいんじゃないかと考えておるのです。近ごろ産児制限もどんどんやって差しつかえはないことになっておりますが、これは私個人としてはあまり賛成のできたことじゃないと思っておる。  そこで、移民問題に対して私がもう少し突っ込んで聞きたいというところは、一体どういう方法で、どういうかけ合をしておられるのか。もう少しそのかけ合いの状況というのを知りたいのです。たとえばブラジルというところはしばしば政界上層部の幹部だけの革命が起きると、アルゼンチンもまたそういうふうな工合でありまするけれども、とにかくこの南米一帯に対してどういうふうな手を打たれてあり余る国民移民の方に差し向けるか。そういう点に関しては何か特殊の手を打っておられるでしょうか。あるいはまた向うさんの出よう次第でこちらもそれに応ずる、という立場をとっておられるのでしょうか。その点をお伺いいたします。
  59. 重光葵

    国務大臣重光葵君) わが国の急迫しておる人口問題の解決の一助として、移民問題が重要であるという点は全然その通りであろうと思います。そこで移民問題には非常に力を尽さなければなりません。この移民問題の重要性についてやや一般国民の認識がその重要性に比例して行われておらぬというような傾きが私はあるように思います。これはまあむろんわれわれ政府の者としてもいろいろ世間の教育の努力も一そうやらなけりゃならぬと思いますが、何といっても移民の問題は他国に日本人を送るということでございますから、いろいろそういうことについて了解を得るためにも、また手続を進めるためにもいろいろ手数をかけなければならぬことと思います。  そこでただいま直接御質問の、それじゃ一体移民の、特に中南米方面に対してどういう手を一体打っておるのか。これはむろん日本移民がその受け入れる国の発展に非常に貢献をするということを向うに認識してもらわなければならぬのでございます。また日本移民趣旨は決して昔行われた、もしくはある一部に懸念されておったような政策問題として国の利益、直接の政策を運用するためとしてやるのじゃないというような、いろいろ誤解を受けないようにする方策も講じなけりやならぬ。これは移民の根本問題でございます。ところが現在の状況は幸いにして、従来——というのは戦争前のことでございますが、ずいぶん日本移民が排斥されるというようなことがございました。誤解を受けた点がございました。その誤解を除くというよりも、幸いにして誤解はもうなくなったという時代に到着をしまして、そうして向うの方はむしろ手を広げて待っておるという状況でございます。そこで政府の施策といたしましては、いかにしてその受け入れ態勢に応じてこちらが移民を出すかということにむしろ今集中されておるような状況でございます。これは移民政策としては幸福な展開でございます。移民は御承知の通り、受け入れ国の状況が一番これは重要なものであるということは繰り返し申し上げておる通りでございますから、そこで移民を送り出すことを十分に計画をいたさなければなりません。それには国民的の理解がこの問題について一そう高められることが必要であろうと思います。政府といたしましては、単に移民を何人送り出すということのためにこれに対する援助をすると、人に対して援助をするということのみならず、第一に移民を送り出すのにはどういう方法で送り出すか、船の問題までも考えなきゃならぬような状況でございます。そこで相当こういう方面には私は費用を要すると思います。それらの点については常に大蔵省とも協議をいたしましてこの推進をはかっておるわけでございます。中南米方面においては、その施設が進むに従って効果を上げ得る状況であることは喜ばしいことだと思っておる次第でございます。
  60. 中山福藏

    ○中山福藏君 向うが手を広げて待つという状態までこの受け入れ国の態度が変ってきたということはまことにけっこうだと思いますが、ただいま承わりまするところでは、手段、方法というものがごく大ざっぱで私にはよく理解しかねるのですが、どうしても日本人が移民をやるか、海外から物を入れるか、国土の開発をやるか、産児制限をやるかと、この四つ以外にはないわけですから、どうしても私はやはり移民というものが一番そのうちでとるべき方策じゃないかと存じます。  そこで、政府がただいま仰せられたことを聞きますと、いかにも移民がいつでもで選るかのごとく聞えるのですけれども、今までに一向実現せないのですね。たまたまブラジル方面に出かける船の神戸埠頭における別れの状況などを見ておりますと、まことに盛んに移民が行われておるようね感じを受けるのですけれども、それはほんとうはわずかなものでありまして、イタリアなどの移民に比較すると問題にならぬのです。幸いにして国連に人道委員会というのがございます。ことにこの人道委員会関連した者のうちには、カトリック教の信者が多いと私は聞いております。従って産児制限というものには非常に反対をしておる、これらの連中をとらえて、人道委員会に訴えて、飯を食えるような方策を講じなければ戦争というものの種をまくのだということを、これらの委員の連中に徹底的に日本立場から説き起して、理解せしめて、そうして移民を国連を通じて行わしめるというようなことには運べないものかどうか、まず外務大臣の御見解をお伺いしておきます。  それからウルグァイとか。パラグァイ、それからペルーの辺にでも、ぺルーなんかにはわずかの日本人しかいないように承わっておりますが、もう少しチリーなんかに移民というものの交渉を一つやったらどうか。そういう方面には少し手を伸ばしておられるでしょうか、いかがなものでございましょう、承わっておきたいと思います。
  61. 重光葵

    国務大臣重光葵君) むろんさような国々に対しても移民の余地があるかないかということは、絶えず向うと折衝の機会を探っておるわけでございます。その一々のことは、私ちょっと今詳しく御説明をする記憶を持っておりませんけれども、相当これはいろいろ関係がございます。しかしそれよりも何よりも、外務省の言うのは、受け入れ国の歓迎する所から、はっきりしておる所からどんどん先にやろうということで今相当の数は計画をして出しておることは、予算の面についても御承知の通りでございます。決して十分ではございませんが、移民の全体の、日本人口問題等に対する全体の問題はよく伺いました。ただこれを国際連合によって解決をし得るかということになりますと、国際連合において食糧問題を出して、いろいろと食えない国民に対して食えるようにしなければいかぬというような一般論については、私はきわめて有効なことだと思います。これすなわち東南アジアの開発とか何とかいう問題が大きく国際的にも意義を持つわけでございます。日本の問題も、人口問題であるといって盛んに他国において論ぜられ、またこれには十分の同情がまたなければならぬという空気が起っておることは事実でございます。またそういうようなことで移民の問題も徐々にさらに好転をするということにもなろうかと考えます。かようなことをすべて総合して、移民の施策はあやまちのないように、そうして具体的に進んでいくように努力をいたしたいと、こう考えております。
  62. 中山福藏

    ○中山福藏君 この問題はお考えをたまわらないといかぬことだと思うのです。今度マレー連邦が独立しようという姿から見ましても、前世紀からの中華民国の移民というものがいかに今日政治的、経済的に、重大な影響東南アジアの一角に及ぼしつつあるかということは、これは私どもとしてはもって範としなければならぬことであると考えます。ことにシンガポールの状況なんかは原住民の数と中華民国の移民の数というものの差はわずかなんです。今度独立するということになりましても、ひょっとしたら中共の属領になるのじゃないかとさえ考えられるぐらいにたくさんの中国人が移民として受け入れられているわけですね、ケダ、ツリンガヌ、ケランタン、ジョホールなどというところの人間の数を見ましてもその感を深くする。これは実際五十年、百年先を見通しての移民をやらなければいかぬということがマレー連邦の独立並びにシンガポールの独立にかんがみましてもうなずける事柄でございます。それは私ども大砲を手から離した今日、やはり人間の弾を撃つということを忘れないようにしなければならぬ、この点を十分外務省も翫味せられて、中南米などに対しては国連を通じ、あるいは直接御交渉下さいますよう心からこの際お願いをいたしておきたいと思います。  その次に今度の経済自立五カ年計画を見てみますと、そのうちにはやはり中ソに対する貿易をもう少し進展せしめなければいかぬということをちゃんと書いてあるのですね。ところが事実ココムの制限緩和などということは一向具体的に現れてこない。今度ダレスが十八日においでになりますと、まずこういう点について外務省としてあるいは通産省としては御交渉なさることが、この予算の説明書に出ている事柄を生かすということになるのじゃないかと思うのですが、今度ダレスが来た場合においては、何を一番先に外相としては御交渉なさるつもりか、それをついでにお伺いしておきたいと思います。
  63. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 米国ダレス長官が今回SEATO会議に列席された帰途に日本に立ち寄るということになりました。ごく短時間でございます。ごく短時間でございますから、いろいろ交渉ごとにすべてを利用するということは困難だと思います。困難だと思いますが、私はその短時間で折衝し得る機会に、できるだけ全局の問題について、いろいろ各方面の各問題について話し合いをしたい、こう思っております。今申された問題についても、日本のこれは従来ともはっきりした要請を持っているのでございますから、その連続で今までも交渉しておるようなわけでございますから、それについて十分注意してもらうように努力をしたいと、こう考えております。
  64. 中山福藏

    ○中山福藏君 大体日本という国はただいま敗戦病にかかっているわけですね、戦争に負けた病気に。敗戦病にかかって相当熱が下ってきましたけれども、いまだに相当苦しんでいる。こんなときには世界のどこからでもひものつかない見舞金をもらうということはちっとも差支えないと思うのですね。その見舞金にひもがつくから困る。病気見舞を受けるなどということはこれは当然なことでして、別に遠慮する必要はないと思う。金をもらったからひもがついているとよく世間で言いますけれども、私はそうじゃないと思う。インドネシアはなるほどかつてアメリカから経済援助をしようと言って申し込んだときに、ひもがつくおそれがあるからごめんこうむると言って断わった。これははっきりしたことは断わっていい。しかし私は病気の間は見舞金を持ってくるのだったらあっさりともらっておいて、そうか、どうもありがとうと言って、返済したいというときが来たらやったらいいと思うのですが、今度ダレスさんが来られたら、けちけちした防衛分担金なんかを日本に出させて、駐留しているということは、実にアメリカとしてはとるべき行動じやないと私は考えておりますので、何とかこの点もお話し合い願いたい。今度東南アジアにも回って来られたでしょうが、それはソ連が一の力をいたすところにアメリカは十の力をいたさなければ平均がとれない。これは歴史に基く心理作用ということはこの前にも申し上げた通りであります。マレー半島にカユ・オラソポテというマレー語があります。これはどういう意味かというと、カユというのは材木であります。オラソポテというのは白人、西洋人のことであります。いわゆる白人の木という木があすこにはあるのですよ。どういうことを指しているかというと、一本の木が川端に成長していますと、そこにカツラが巻きつく、そのカツラが幹の上を枯して、自分が幹になってどんどん伸びていく、これを土人はカユ・オラソポテと呼んでいます。西洋人というものは東南アジアに来て、自分が幹になって栄えているということを戦争前に土人が言っている。今日その感じが抜けていない。だからソ連の力というものは、アメリカの十分の一の力で東南アジア全体を操縦することができると私はみている。こういうふうな立場に立ってダレスさんが今度来たときには、その東南アジア全体に注ぐ金を日本だけに持ってきて注いだ方がまだ利益があるわけです。そういうことを外務省としてははっきりねらいをつけられて、そうしてもう少しあっさりとたくさんの金を、利子のつかない金を一つ融通せいということを談判なさる気はございませんか。お伺いしておきます。
  65. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今の御意見は十分拝聴いたして、そのつど一つ参考に供したいという程度にお答えをしておくことが一番いいと思います。あしからず。
  66. 中山福藏

    ○中山福藏君 まあ一つよろしく御善処願います。  それから対外債務の処理の問題ですが、この問題は日本にとっては信用回復の面からいって非常に大きな問題でございましょう。しかし、非常に国歩艱難の際でございますから、その支払い方のいかんによっては重大な影響日本の経済界にもたらすものだと思います。そしてそのうちには、日本が承諾いたしましたものと単に申し込みを受けたものと含んで七千五百三十一億八千三百万円、ドルに換算して二十億九千二百万ドルと、こういうことになっておる。そこでかねがね私が一番疑問に思っておりますことは、津島さんがフィリピンにいらしたときから私はそれを考えておったのですが、普通の裁判でも原因を明確にいたしまするまでにはまず三年ぐらいかかる。ところが、外交の問題は、一方的に損害の額をきめて日本に持ってきておるのですね。お互いに立ち会ってそうしてこれはこうじゃないかという工合に損害の額を定めたものじゃないわけです、外交上の損害賠償の請求というものは。大まかに向うさんから申し込まれたものを、これくらいに一つ天引きにしてかんにんしてくれんか、このくらいのところで一つ話し合いをつけようじゃないかということになって、今度も八億ドルですか、フィリピンとの話がつくということになっているように思われる。それで外務省としてあるいは政府として、インドネシアの損害の額はどれくらい、ビルマの額はどれくらい・フィリピンの人的、物的の損害というものはどれくらいだというような調査というものは一応なさっておられるのでしょうか。あるいは向うさんの言いなりほうだいにそれをうのみにしての御交渉をなすっておられるものでしょうか。それを承わっておきたいと思います。
  67. 重光葵

    国務大臣重光葵君) インドネシアの問題は、まだ具体的の交渉の段取りには入っておりません。  が、その前の問題でも交渉の心がまえについて御質問ございました。それはお話通りに、損害について双方とも交渉するのでございますけれども、その損害の見積りについては彼我の間に非常に大きな開きがあるということも、これは私は御推察に難からぬことだと思います。それでむろんわが方といたしましては、損害の額について十分でき得る限り詳細な調査をしなければなりません。それからまたそれについてはでき得るだけの調査をいたしております。しかし、これはすでに外国でございますから、それがすべて完全であるということは申すことはできませんけれども、でき得るだけの調査をして、向うの言い分と突き合して、そしていろいろ折衝をするわけでございます。結局はお話通りに大づかみで政治的の解決ということに行くよりほかに実際方法はございません。しかしそれは専門的の具体的の調査に基いて、だんだん議論をせばめていってそして最後の妥結を、みるという事態になっております。日本の現在の状態からみてこれは非常に日本努力しなければできません。できませんけれどもまあ難きを忍んで大いに努力をしていって、これらの問題は逐次解決をしなければならん問題だとわれわれはそう感じております。そこでインドネシアの問題もさらに進めていきたいとは考えておりますが、まだその段取りには参っておりません。
  68. 中山福藏

    ○中山福藏君 邦人の、いわゆる日本の在外資産の状況は大体わかるのですね。これは外務省あるいは領事館、公使館を通じてよく調べていらっしゃるから。しかし今度の戦争の損害というものは実に大ざっぱなもので、私は向うさんの言いなりほうだいだという見通しをつけておる。しかし、政治的に言えばそんなものだろう、過去の実例にかんがみましてまあ大体それがいわゆる損害の実体じゃないかと、実体と言っちゃ語弊がありますが、そういう交渉が行われるのが本筋じゃないかという気をもって、寛容な気持でこれを私は眺めておるわけなんです。しかしながら、とにかく血税というものによってまかなわれる賠償でございまするから、そのうちにもやはり十分の考慮を払っていただいて、これは御検討なさる責任と義務が、政府としてはあると私は考えるわけです。どうか一つお含みおきを願いたい、それじゃもう外務大臣、けっこうですから、どうぞ。  それじゃ大蔵大臣に一つ願いいたします。大蔵大臣は、御承知の通り、地方財政の赤字を解消するということには相当力を入れられたように私は見受けておる。二十九年度の赤字をどういうふうにして消すか、三十年度の赤字をどういうふうにして消すかということは、これはこれまでの議会でおやりになった。いわゆる地方財政再建促進特別措置法で二十九年度の赤字は一応解消されたという形になっております。三十年度の分も、これはせんだっての補正予算でまずまかなわれた。こういうことになっておりますが、それじゃこれから赤字を出さんという立場になってくると、どういうふうな対策をおとりになるかということは、いろいろ予算書を読んでみても単に合理的な言葉をもって埋め合せをつけるということになっておるわけです。しかしながら一番大事な点が抜けておるのじゃないか。それはどういう点かというと、つまり給与費だとか公債だとか恩給費というようなものがどうも手がつけられておらんのじゃないかというような感じを受けるのです。大蔵省と自治庁の交渉というものがうまくまとまっていないのじゃないか。そこで地方公務員の数と給与費の量というようなものが、はっきりと現れていないのじゃないかというような感じをこの予算書では受けるのですが、そういう点についてはどういうお考えを持っていらいしゃいますか、一つ承わっておきたい。
  69. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 地方財政の赤字につきまして従来特に問題になっておったのが給与費であります。大体地方公務員の給与も国家公務員に準ずることになっておるのでありまするが、実際は過去におきましてまちまちであったようであります。それで昨年から地方自治体の公務員の給与の実態調査をしたその結果によりまして、今回は国家公務員に準ずることにいたしまして地方財政計画を策定をいたしたのであります。今後におきましては一そう私どもの考えといたしましては、地方で従来のように無理なといいますか、適当でない昇給や昇格をやるというようなことも厳に戒めてもらいまして、特にやむを得ないというような事態があれば、財源自体を地方で捻出していくというくらいな努力は当然払っていく。この給与関係から地方財政が将来従来のような赤字が出る、というようなことはないように厳にいたしてもらいたいと思っております。公債の関係につきましては特に地方債につきましては、これは私自身も完全な解決を見ておるとは考えておりません。もう少し今後におきまして起債額というものが減っていくように、公債費は大きな地方財政負担にならないように漸次持って行く。それには順序を追ってそう一挙に行きませんので、とりあえずとしては起債によって、この歳入といいますか地方財政の財源にするというようなことは、これはやめる。そういうことは従来あったということはありましょうが、そういう結果になったこともあろうと思いますが、そういうことのないように、言いかえるならば普通債の起債は特に減額するようにしまして、公営事業等の十分元利の償還ができるという、そういうものにむしろ起債を認めていくという方向に三十一年度から切りかえるつもりでおります。しかしこの絶対額をまだ減額するように持っていかなくてはならぬと思っておりますが、これは三十二年度の税制改革とも関連をさせまして一そう考えていきたいとかように考えております。
  70. 中山福藏

    ○中山福藏君 どうも大蔵大臣遠慮しておられるようでよくわかりませんが、三十年度の七一百九十億万円のこの地方債、これはこのままいいかげんのことをして放っておきますと、二年もたてば毎年々々これぐらいの借金をしていかなければつじつまが合わぬようになる。それでこの点が最も大事なところだと思うのですが、そのワクを設けて起債を許すというようなふうに聞えるのですが、もう少しその点を明確に一つ答弁を願って、断じてこれを処理するのだという処理の方針を明確にしていただきたいと、かように考えます。
  71. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは私の考えではやはり今後におきまして地方公共団体のあり方にも関連すると思うのです。特にこの行政機構等においても基本的にやはり考えてみる必要もあると思うのでありますが、しばらくこれをおきまして、財政面からいたしますれば単に財政的な点からいえば、これはどうしても起債を減らすためにはこれは財源を与えなくてはならぬと思う。それを三十二年度の税制改革に関連して考えてみたいと、かように思っているわけであります。
  72. 中山福藏

    ○中山福藏君 よくわかりませんが仕方ありませんから次に移ります。従来大蔵省の監督になっておりまする国民金融公庫の貸付に関する監督を厳重にしていただきたいというお願いに関した質問であります。大体この国民金融公庫というのは、一般国民大衆に十万円ぐらいを単位として貸し付けるというのが、本来の国民金融公庫を設置した理由だと思っております。ところが実際私どもがいろいろ紹介して借入の申込に当ってみますると、どうも公庫の方では申込人のほかの銀行の取引関係なんかをよく調べて、それから本人の経済状態をよく考えてなかなかうまくいかずに、結局この金を借り得る者は相当の資産のある人でないと金を借りられないというのが実情ではないかと見ておるのです。これは大蔵省で相当の監査機関を設けて、果してその公庫法設定の目的に沿った行動がとられておるかどうかを実地に御調査なさることが絶対に必要じゃないかと、かように考えるわけであります。こういう方面についてはどういうふうな処置をおとりになっておりましょうか、お伺いしておきたいのです。
  73. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 現在も銀行局で十分監督をいたしておるつもりでいたしておりまするが、しかしお説の点もあり、なお一そう厳重に監督させることにいたしたいと思います。
  74. 中山福藏

    ○中山福藏君 ことに十人くらいの連帯でありますと二百万円借りられる、個人としては最高百万円くらいだと思いますが、どうも大口の方にこの金が流れていって一般大衆の方には回っていないように私見ておる。これは私どもの政治的な関係立場から紹介してくれといってたくさん頼みにくる。ところがやはり資産状態というものを調査の上でなければ一向返答がもらえない。ことにたまたま返答をもらってうまくいっても二カ月、三カ月かかるというような実情なんです。これは十万円くらいを借りるという人はもうできるだけ短時間にこの金を融通していただかなければやっていけないというような、細民にひとしいような家庭工業なんかやる人が多いのですから、この二百万円とか百万円のいわゆる連帯的な借金の申し入れに対して、そういうところは一つ法律でも改正して十万円以上は貸さないとか何とかという処置をおとりになる気持はございませんか。お伺いいたします。
  75. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私の考えではやはりある程度の調査もこれは資金の融通でありますから必要と思いますが、しかしできるだけすみやかに融通の実をあげる。これはぜひ必要でありますから、実際どういうふうに現在なっておるか、とくと調査してなるべくお説の趣旨にかなうようにいたしたいと思います。
  76. 中山福藏

    ○中山福藏君 それから農林漁業金融公庫というのがございますね、これは製塩業だとかあるいは農林漁業というものに貸し付けるということになっておりますが、この貸し付けられた金に対しては、政府から補助金が下ればこれでもって直ちに借りた金を返すというふうになっておるのじゃないかと私はしろうとながら考えておる。ところがその補助金というものは一向そういう方面に使われずに、いろいろな堤防だとか学校をこしらえるということにだけ回されて、どうも補助金が貸付金の返済に充てられていないというような風に見受けるのですが、こういうところに対しては大蔵省は監査の手を伸ばしておられるのでしょうか。
  77. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) そういうふうなおもしろくなかった点が前にはあったようであります。その後公庫で監査制度を充実しまして、目下では大体年度初めにこういう程度回収するという以上の実績を上げておるという状況であります。一そう御趣旨の点を体しましていい結果をあげたい、かように考えております。
  78. 中山福藏

    ○中山福藏君 もう私は大蔵大臣にはそれだけです。  次に運輸大臣に伺います。この前の委員会でお尋ねした観光問題ですね、ことしは雀の涙といいますか、八千万円の宣伝費ですか、補助費を取っておられますね。運輸省はこの観光問題に対して昨年の五千二百万円よりも二千八百万円ふやしてだいぶ得意になっておられるようですが、この金が全部観光協会に補助金として下っておるわけです。あなたの方に残る金はどのくらいあるのですか。それだけで全部ですか。観光事業に使われる金はほかにないのですか。全部観光協会に渡されて観光協会が全部勝手にこの金を使用するということになっておるのでしょうか、これはどうですか。
  79. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) お話の八千万円の点は観光協会に全部渡すわけです。大体あの観光協会というものは御承知でいらっしゃいます通りに、あれは別に業者が利益のためにやっておるわけではない。つまりあの観光事業というものは本来いえば国が全部やる方がいいと思うのですけれども、今までは何といいますか、国のエージェント、代理機関としてああいうものを設けておるものですから、従ってああいうものは国の代理機関のつもりで仕事をまかしておる、こういうわけであります。
  80. 中山福藏

    ○中山福藏君 これはそうするとこのさやかせぎをやるなんという憂いはありませんか、観光協会では……。これはやはり運輸省直接に観光局がある以上は、すべての何と申しますかね、推進運動をなさる方がいいのじゃないかと思っておるのですが、その間に悪い人間が入るとさやかせぎが相当に出てくると思う。八千万の金をお出しになっても六千万円か四千五百万円くらいしか使われていないような気がするのですがね。どうでしょうか、そういう点は。
  81. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) そういうことはない建前なんです。ということは国際観光事業の助成に関する法律というものがございまして、今私が申しましたようにこれは国家の代理機関でございますからね。それですからこの観光協会が法律に基きまして予算なり事業計画というものを一々持ってくるわけです。そうしてまた補助金をやりますのは御承知の通りあれは四半期ごとにやっておりますものですから、四半期ごとにこれをチェックすることになっておりますから、今おっしやるようにさやかせぎとか何とかいうことは絶対にできない仕組みでございまして、まだ実例もそういうことはございません。
  82. 中山福藏

    ○中山福藏君 どうも吉野先生は非常に人間がいい方のように私見受けるわけです。(笑声)ごらんなさい、人を調べる検察庁でさえ使い込みがあるのですよ。検察庁なんかの事務官が保証金や保釈金を使い込むのはそこなんですよ。上の人が信用し過ぎるのです。これはもう日本中をお調べになると下僚の人がどういうことをやったかということは、私が過日法相に実例を上げて説明しておいたからよくおわかりでしょう。そういうところに食い込まれるのですね、下僚から。そうしてわれわれの税金は空に消えていくというのがほんとうなんです。どうかそういう人様まかせのお仕事をおやりにならずに直接おやり下さるようにお願いする一方、現在においては十分な勧督が必要だと思う。わずか八千万円くらいの金で、観光客十二万人ですか、あなたの今年の目標は、今度誘致しようというお客さんは。そして五千七百万ドルの金をかせごう。これを私は有効に動かせばまだまだたくさんお客さんがくると考える。どうかそういう点御参考にして御注意をわずらわしたい。  もう一つお伺いしたいのですが、航空路の拡張を日本内地、ことに北海道には絶対に数カ所必要じゃないかと思っておりますが、そういう点についての施設が少いように思う。この予算にもそういう点がはっきり現われておりませんが、そういう点については何か御計画がございますか。
  83. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) 国内航空網の整備ということはお話通り必要だと思いまして、ことし初めて一億円ばかり出して国内航空路の整備に関する予算を組みました。これはちょっと頭を出した程度でございまして、逐次そのために法律も出しましたですから、いずれ御協賛を願うわけですから、だんだんそういう仕組みをいたしまして、財政の許す限りだんだん広げて参りまして国内の航空綱というものの整備をもっとなるべく早くやりたいと、こう思っております。
  84. 中山福藏

    ○中山福藏君 国内航空路の整備もまことに必要でありますが、古い飛行機をアメリカなんかから買い込んできて、この間実は何でございますよ、大阪の飛行場では発航を差しとめたことがあるのですね。それはどういうわけかというと、飛び上がるときはナットがしっかりしているけれども、帰って来るとくぎがゆるんでそこから空気が抜けているというようなことで、だいぶ危い飛行機を使われておりますが、そういう点に十分検査は行き届いておりましょうか。その検査方法はどういうふうにしておやりになっておりますか。旅客機に対する検査方法はどういうふうになっておりますか。
  85. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) こまかいことは私も承知いたしておりませんが、定期的に機体というものについては運輸省でもって厳重に監督しておりますから、それですからそういうことはない建前になっております。
  86. 中山福藏

    ○中山福藏君 青函トンネルの御調査の結果をちょっと簡単に承わっておきたいと思います。これは去年でしたか調査費が少しとれたはずだと私考えております。
  87. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) お尋ねの点につきましては、私が受け売りして申し上げるよりは国鉄の係の方から説明さしたいと思います。
  88. 藤井松太郎

    説明員藤井松太郎君) 私、国鉄の技術関係を担当しておりますので代って申し上げます。青函のトンネルのことにつきましては、過去およそ十五年くらい前からよりより研究しておったのでありますが、これを本格的に調査を始めましたのは一昨年でございまして、広くわれわれのみならず学界であるとか、実際家というものを網羅しまして海峡の隧道研究会というものを作りまして調査いたしたのであります。あの海峡を隧道で渡ろうという場合に、一応どなたもお考え願えるように下北半島から渡る方法丁と西津軽半島のほうから渡る方法がある。隧道を掘るということを前提にいたしますと、第一義的に海が浅いということでございまして、下北半島は大体二百四、五十メートル、それに比べまして、津軽の竜飛から白神に渡りますと大体深さは、一番深い所で百四十メートルくらい、従って海の深さからは津軽半島は有利でございますし、かたがた隧道を掘ります場合に一番問題になりますのは、隧道を堀るその地質は水を通すものであるかどうか、絶対に通さぬということはあり得ないのでありますが、通りづらさの問題でございますが、これは下北のほうは火山岩が出ておりまして水は通しやすい、しかるに津軽半島のほうは第三紀層と申しまして比較的若い地層でございますが、水が通りやすいということでございまして、要するに下北か津軽かという議論は、津軽半島のほうがはるかに有利ということでございまして、現実にこのトンネルを堀るのに一体海底の地質がどんなふうな構造をなしているかということでございますので、昨年までに地上に六、七カ所のボーリング、つまり地質のサンプルを取る作業をやると同時に、海底の土砂をつまみ取る、サンブリングを取りまして、かたがた地震波、弾性波と申しておりますが、地震のような小さい波を海底に通しますと、構成している岩質によりまして固い所は地震波の伝達が速くなる、たとえば毎秒四千メートルとか五千メートルになる。しかるにやわらかい、隧道を堀るのに困るような所は従って速さが落ちてくるというふうなことでございますので、そういった弾性波のサンプリングを取って、表面にはどんなものが出ているかということ、並に地上においてボーリングをやりましてどんなふうに地層が重なっているかというようなことを検討いたしました結果、大体研究会の結論といたしましては、当初は、相当世界に例のない深さを持っているし長いので、技術的に可能であるかというような懸念もありましたが、その結論としては、これは技術的に明らかに可能である。ただその調査の結果、断層と称しまして、地層に割れ目がございますが、これはあれくらいの距離になりますと、いかなる所を通っても若干の断層にぶつかることは避け得ませんので、津軽海峡のわれわれの想定している箇所におきましても、小さいもの五、六本にはぶつかる。しかしながらこれは現在持っている技術で水を通さぬように、つまり隧道を掘り得る程度に水を押えることは可能である結論になりまして、大体隧道の長さといたしましては、海の底を下っていく長さを加えまして海底部分二十二キロくらいでございますが、前後加えますと三十七、八キロの隧道になり、工期的に見まして、大体準備期間も入れまして十年くらいを費せば技術的に掘ることは可能であるという結論に相なっておりますので、御了承を願います。
  89. 中山福藏

    ○中山福藏君 まことにうれしい報告を受けて皆さん方の御苦労を感謝いたします。それからもう一つ運輸大臣にお尋ねしますが、懸垂電車というものを近頃世界のあちこちでやっておりますね。針金にぶらさがって電車が走るやつ、プロペラーをつけた電車、私は市街地には将来懸垂電車をやらなければ、今日の雑踏した市街地を見て、ことにたくさんの轢死人なんかがあるという実情から顧みまして、これは将来は市街地、ことに五大都市なんか懸垂電車を一つ伸していかなければいかんのではないか。こう考えておるのですが、そういうことについての運輸省では御調査が進んでおりますかどうですか、一つお尋ねしておきます。
  90. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) お話の懸垂ですか、いわゆるシュヴェーベバーンの話だと思うのですが、これは古くからその考えはドイツにございまして、ドイツでも多分運河、谷というような特殊な地形の所では動いておるという話は聞いております。まだ世界中で市内電車としてやるということは私は存じておりません。しかしいつでしたか東京でも昭和通りの方にどうだというような話もございまして、その程度に関心は払っておりますが、正直に言って今の国鉄の現状でこれを近く実現するという意味で調査はおそらくはやっていないのだろうと思います。しかしお話の点は、これは将来どうしても都市交通の緩和の面であれがもし利用できれば、これは一つ方法じゃないか、こう思っております。一つお話の点はこれから国鉄の方に伝えて調査を進めたいと存じております。
  91. 中山福藏

    ○中山福藏君 それでは正力さんにお願いします。大体エネルギー源の利用というものが相当に将来の国の運命を決するというようなところまで各国が来ておるようであります。ことに原子エネルギーの利用というむのが文化の向上の上に非常な貢献をするものであるということは、私よりずっとあなたの方々が御存じであります。そこでお尋ねしたいのでありますが、大体日本の水力並びに火力のエネルギーというものの供給が消費に追いつかないというときは、これから幾年くらい後だというお見通しでございますか、それをまず承わっておきたい。
  92. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) お答えいたします。水力、火力が消費に追いつかんのはいつごろかというお話でありますが、これははっきりしたことは申しかねますが、少くとも十年たったら追いつかんことはたしかです。中にはもう五年ですでに追いつかなくなるだろうという人もありまするし、もっと早く追っつかなくなるだろうという人もあります。いずれにしてもここ五、六年たてば水力・火力とも需要に追いつかなくなりつつあるということは事実だと信じます。
  93. 中山福藏

    ○中山福藏君 今の正力国務相のおっしゃいました十年か五年かわからないが、消費に追っつかなくなるのは必ずそういうことが起ってくるだろうという御答弁でございましたが、これは原子力担当の正力国務大臣のお言葉としては、どうもあまりにそれは不鮮明じゃないかと私ははなはだ失礼ですが考えます。あなたがおわかりにならなければ他の閣僚はわかりません、この原子力のことは。そこで五年か十年かということについては、これは一月一日から原子力法も発効しておるし、また原子力の研究所ですか、それには七億円、あるいは予算外の契約は十二億五千万円というような金もお取りになっておるし、これはこういう金をお取りになる上はやはりそういう見通しがついておるのではないかという気がいたしますが、あなたは年数がわかりませんと言うが、その年数がはっきりわからないと、火力発電あるいは水力発電の必要量がわからない上に、時期がわからんということになりますれば、原子炉の据付けがいつ完成するかしないかということもそれによってきまるわけですから、非常なそこに私は食い違いが生ずるのではないかと思うのですが、その大体のめどは政府としてどこへつけておられるか。それをはっきりと一つ明示していただきたい。
  94. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 私がわからんのは正確にわからんということを申し上げたのでありまして、大体五年たつと需要供給がとんとんになる。それですからもう六年目から足りないというふうに大体なっております。これは正確でありませんが、しかし私から言わせると、もっと足りなくなるのは早くないかと思っております。
  95. 中山福藏

    ○中山福藏君 それでございますればなおさらのことでございますが、原子炉というものは大体いつ日本人の手で発電用のものができるお見通しでございますか。いつごろそれはできますか。あの昨年の十一月の十四日でしたかね、日米原子力協定というものができて、これには実験用の原子炉と濃縮ウラン二つしかアメリカから来ないことになっておりますが、発電用の原子炉というものは日本の手で作ることになっているのじゃないでしょうか。それはどういうふうになってくるのですか教えて下さい、そこを。
  96. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 動力発電は五年後に日本人の手でやりたいと思っております。
  97. 中山福藏

    ○中山福藏君 どうもやりたいと思っているとか、こうじゃないかというような、これはまあ無理もないことですけれどもね。専門家の湯川さんみたいな人がおられるのですから、何とかもう少し正確に教えていただくことができはいかと実は私期待して今日来たわけです。それが不明確だというと予算の組み方なんかも相当に私はやはり議員としては考えなければならんことになると思うのですね。それでは金を余計にかければ早くできるというような事柄になってくるのですかどうですか。そこは金を余計入れてもやはりいつできるかわからん、こういうことになるのでしょうか、どういうことですか。
  98. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 大体動力発電がそろばんべースに合うのはいつかというととは外国でもまだはっきりしておりません。従って日本でもわからんというのがほんとうです。しかし私どもは五年後にどうしても日本人の手によって発電したい。そうしてできるだけ早く経済ベースに合うように持っていきたいと、こう思うのです。私どもはそう思う。ただ思うだけではありません。これには幾らか根拠を持っております。それは御承知の通りアメリカでは、昨年GEという大きな会社で、十八万キロワットの動力発電を着手後三年で完成するという発表をいたしました。そうしてそのコストにつきましては、アメリカでは経済ベースではいかんが日本では経済ベースでいくような発表をしております。ことにイギリスに至っては今年の十月にもう動力発電をやるのであります。この間ちょうど幸い元動力相のロイド氏が日本へ来まして私、会いました。そうして英国の事情も聞きましたところがロイド氏の話によりますると、動力発電は十月にやるが経済ベースにまで合うだろうと思っている、こういうことで私は驚きました。私は経済ベースに合うのはもっとあとだと思っておりました。ところが多分合うと信じていると、こういうことを動力相が言いまして、ちょうど御承知のごとくイギリスと日本は電力の不足の点では非常に似ております。幸い日本に似た英国の方でそういうことができるということは、これはまことに喜ばしい情報と思いまして、それで私はそれでは日本における電力に関するデータを君の方へ出すが、そいつをすぐイギリスと比較して調査をしてくれぬかと頼みましたところが、それは実にいい話だから、自分らもできるだけそうしてやろう、こういうことを言いました。こういうふうにイギリスがもうことしの十月に経済ベースに合うと思うておるというところまできておりますし、またアメリカでは、着手後の三年後にはアメリカでは経済ベースに合わぬが、日本からいうと経済ベースに合うという程度にきておるのであります。  ところで日本は御承知の通り、この原子力の研究は浅いけれども、原子力の理論物理は日本の学者が非常に進んでおります。ただ、その基礎の学問ができておるものであるから、この基礎の学問の上に欧米の原子力の研究をするならば日本も案外早くいくだろう。これがいわゆる世の中に伝わっておる、われわれが五年でやっていきたいというのはそこから出たものであります。そういうわけであります。
  99. 中山福藏

    ○中山福藏君 一つ御奮闘をお祈りいたします。  そこで最後に正力国務相にお尋ねするのですが、大体この原子力協定というのはアメリカだけと結んでおるのですね、日本が。もし万一必要な場合においては多面的な協定を結ぶ、いわゆるアメリカ以外の国とも同じような原子力協定を結ぶという気があるのですか、どうですか。そういうお気持は全然ございませんか、それをお尋ねしたい。
  100. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 協定はアメリカとは結びましたが、元来原子力は平和利用でありますからして、どこの国でも日本のためによいと思えば結ぶつもりであります。
  101. 中山福藏

    ○中山福藏君 郵政省に一つ……。経済の自立五カ年計画にはいろいろな項目がうたってあるわけでございますが、一つここで私は郵政大臣にあまり質問する人がないですから私が質問したいと思います。この日本の電信電話というむのは全部路面に電柱を立てて、実に不体裁きわまるものであると私は見ております。これは時勢おくれであると私は見ております。これを全部地下線に切りかえるというような御構想はございませんか。これはもちろん金の問題ですからね、ない金を無理やりにしぼり出せというのではございませんがね。相当の予算を組んでそういうふうに切りかえるというおぼしめしがないか、こういうふうにお尋ねしておきたい。
  102. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) お答えいたします。地方の小都市は別でありますが、大体東京初め大都市は主要幹線はほとんど地下ケーブルによって流れております。地方におきましてもその都市の市街線はこれはほとんど地下ケーブルを利用いたしております。ただいま御指摘の架空線を全部廃止せよという御意見でございますが、私どもといたしましても御指摘のように、予算の許す限りさようにいたしたいと思いますが、加入者の末端に至るまで地下線でもっていくということは今日の経済状態から申しますとちょっと困難であります。しかし努めて御期待に沿うようにいたしたいと、かように思っておる次第であります。
  103. 中山福藏

    ○中山福藏君 もう一つお尋ねしておきたいのですが、放送法を今度改正されると、あなたは……。それで一番ねらいとしておられるところはどの点か、一つ私は念のためにお聞きしておきたいと思います。
  104. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 放送の国民生活に及ぼすその地位が非常に重大になったことにかんがみまして、現行の放送法に再検討を加えたいと思います。御案内のように現行の放送法は、日本が占領下にあった昭和二十五年の二月に制定されたものでありまして、  この当時政府並びに国会は、NHKに対する経営の面とかあるいはまたその運営の面にいろいろと意見を申し述べたのでありましたが、どうしてもこれが聞き入れられなかったのであります。また当時は商業放送とかあるいはまたテレビ放送等の全くなかったときでありまして、今日のこの各種の放送が非常に国民生活に重大な影響を及ぼしておるときでありますので、これに検討を加えて放送法の改正をいたしたいと、かように思まいして、先般全く政府の素案を発表いたした次第であります。
  105. 中山福藏

    ○中山福藏君 世間では言論統制とか、あるいはすべての演劇放送なんかについて統制を加えるのではないかという杞憂を持っておるようでありますが、そういう点については相当御考慮を払っていらっしゃいますか。これはやはり憲法上いろいろな問題なんかもその点に関連して起ってくるのではないかという気もいたしますので、特に一つ郵政省の御意見を承わっておきたい、かように考えます。
  106. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) NHKの中立性を確保することは、これはあくまでもこれを守っていきたいと思っております。さような言論の統制とか言論の圧迫というようなことは断じて考えておりません。先刻お示しいたしましたその試案につきましても、今明日中に放送審議会委員を委嘱いたしましてこれによってこの審議会委員の慎重な御審議を願った上で初めて原案ができるのでありますから、私どもとしましては、この中立性をあくまでも確保するというような意味において、必ず審議会におきましてもさような答申が出ることと思っておりますし、またそれを期待いたしておる次第であります。
  107. 中山福藏

    ○中山福藏君 次に防衛庁長官にお伺いししたいと思います。この三十一年度の政府の予算の説明を聞きますというと、千四百七億円という防衛関係費が計上されておりますね。そこで私がお尋ねしたいのは、この防衛分担金というものが要らなくなるいわゆる時期、これは昨日もどなたかちょっとこれに触れておられたようですが、つまりその自主自衛の立場をとり得る時期はいつごろだというお考えでございますか、一つ承わっておきたい。
  108. 船田中

    国務大臣(船田中君) 昨日この席から答弁申し上げたことを繰り返すようになりますが、防衛庁の今試案として持っておりまする昭和三十五毎度において陸上十八万、海上艦艇十二万四千トン云々というこの最終目標を達成するということになりますれば、米軍撤退の基礎はできると存じます。しかしそれだからといって直ちに米軍がそれに見合って撤退するかと申しますれば、そのことは国際情勢等にもよることでありますが、必ずそうなるということは申し上げかねると思います。その時期に防衛分担金が全くなくなるかということでございますが、これは財政計画によることでございますので、これまたいつ防衛分担金がゼロになるかということははっきり今のところ申上しげかねるのであります。しかしただいま申し上げるような最終目標、すなわち三十五年度においてこれだけの態勢が整って参りますれば、これはかなりわが防衛態勢といたしましては強力なものになると存じます。しかし国際情勢を見て参らなければなりませんので、これで全く米軍の協力なしに独力で日本を守り得るということは私は言い得ないであろうと思います。今後の国際情勢によることでありますが、やはり集団安全保障ということを考えていかなければなりませんので、もちろんそういうときになりますれば、あるいは安保条約、行政協定等の改訂ということもあるかもしれませんけれども、しかしなかなかそれだけの態勢が整ったから独力でわが国土を防衛するということは断言できないと思います。しかし、ただいま御質問のうちにありましたように、自主的かどうかということになりますというと、今日といえども自主的にこれらの態勢を整備するということには努力をいたしており、またその通りにやっておるのであります。ただアメリカ側から新しい兵器、艦船、飛行機等、ことに初度調弁に属しますものは大部分をアメリカの供与に待っておるということはございます。しかしそれだからといってアメリカの指図によってわが防衛態勢を整備しておるということではございません。どこまでも自主性を持ってわが防衛態勢を整備するということで今までもやっておりますが、今後におきましてもそれでやって参りたいと考えておる次第でございます。
  109. 中山福藏

    ○中山福藏君 なおお尋ねするのですが、集団安全保障体制に参加するということにつきましては、そこに何か条件というものがつくとお見通しになっておりますか、無条件に、これは近代装備のあるなしにかかわらず参加でき得るというお考えでございましょうか、それを一つお伺いたしたい。
  110. 船田中

    国務大臣(船田中君) これは一つにはわが国の憲法、それから国内法規の関係がございますから、これはどこまでもわが現行憲法のもとにおいて参加していくわけでありまして、憲法に違反するようなことはできません。また装備等につきましては、これはもちろんなるべく精鋭なもので、人力を節約していくというのが、近代国家におきましては、どこの国でも努めておることでございますから、わが国といたしましてもそういう方面においてはできるだけ科学技術というものの方面に力を入れまして、そうして科学的な高度の技術を取り入れました精鋭な装備を持っていくということにいたしまして、人員をいたずらにふやすということは得策ではなかろうと考えて、その方針でやっておるわけであります。
  111. 中山福藏

    ○中山福藏君 もう二点だけお尋ねいたします。通産大臣お急ぎのようですので、ほかは省略してあと二点だけ簡単にお尋ねいたします。  それは近代装備をやることは、今日の日本の財政状態ではできないわけです。これはとうてい十年も二十年も欧米に装備がおくれている。しかしそれはおくれたらおくれたままで、やっぱり仕方がないからそのままにして、一つぼっぼっついていこうという考えを持っておられますか。  それからもう一つ重光ダレス会談に関する日米共同声明というものがございます。このうちに、三ページのところのあとから六行目のところで、「戦略上の要請に照して随時再検討されるべき」であるという文句が現われてきておるのです。この「戦略上」というのはどういうことを前提にして「戦略」という言葉を使われたのですか、それを一つ防衛庁長官から承わっておきたいと思います。これは外務大臣ではないとわからぬかもしれませんが、あなたに関係のあることですから特に伺いたい。
  112. 船田中

    国務大臣(船田中君) 御承知の通り現在日米安保条約、行政協定等によりまして、日米が共同してわが国土の防衛に当っております。そこでまた、ただいまも申し上げましたように、アメリカ側からして兵器等の供与をたくさん受けております。従いまして、随時それらのことにつきまして、わが国土の防衛につきまして日米間において意見の交換をいたし、また兵器使用等についても十分話し合いをいたしまして、そうして共同して防衛のできますようなことを進めておるわけであります。
  113. 中山福藏

    ○中山福藏君 私はただその「戦略」という言葉がいかにもどぎつい感じを受けましたので特に質問したんです。けっこうです。  それじゃ通産大臣にお尋ねしたいんです。政府は三十一年度の輸出額というものを二十二億五千万ドルと見込まれておられてですね、まあいろいろな対策をこれからやっていくのだといって、項目を並べておられますが、そのうちですね、海外市場の維持というのがあるんですね。この海外市場の維持というのは、一体これはどこにあるのを維持されるという、大体のその範囲をお示しを願いたいと思うのですね。どこを一番主にしてそういう市場を確保しなければならぬかという問題。
  114. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) お答えいたします。たとえばこのアメリカにいたしましても、いろいろの文句が出て、こちらもやむを得ずある程度制限をしなければならないような問題も起ります。あるいは先般人をやりましたアルゼンチンのような問題も起ります。そういうことで、それらの市場の維持をするためにはそれぞれの手を打たなければならぬ、こういうことで全般のことを申しておるわけであります。
  115. 中山福藏

    ○中山福藏君 これは私の考えでは、その統計の上に輸出額あるいは輸入額というものを表わしていただいて、それには段階があると私は思う。その市場の重要性ということは、その統計の上に表われた取引の多いところがやはり大事なお得意さんだと、日本からはこう考えられるのですね。それでその市場のうちでも大体通産省は五つくらい項目、頭になりまするものをお示しを願いたい。あるいは今日までの取引の関係というものは、今度世界情勢の変化によってこういうふうに変ってくる見込みだから、かりに統計の上からは取引は少いけれども、今度はこの点について市場を確保しなければならぬというふうな移行性、移動性と申しますか、そういうふうな点についてのお考えというものはあらなければならぬと思うのですがね、そういう点はいかがなものでしょう。
  116. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 輸出入とも各方面でやっておりますが、おのずから性質が違います、たとえばアメリカあるいはカナダのごときドル市場は日本の、ことにこのマーケットとしてさしずめ物を売るということにおいては非常に必要な市場でありますから、これらにことにこの日本の高級な品物の販路を開くということについては特に努力しなければならぬと考え、まあいろいろ見本市とかあるいはそのほかデパートを使うとか、あるいは宣伝広告をするとかいうようなことを努力しておるわけであります。  しかし、それだけではいけないのでありまして、たとえば今度東南アジア中近東ということになりますと、すべての消費物費が見込みがありますが、ことに彼らの今の最も必要とするところの国土開発に要するところのいろいろの機械類あるいは資材というものがこれらの市場には向きます。そこでおのずからドル市場とはまた違った意味においてこれらの方面に向っては機械の宣伝をやるとか、そのほかこういうふうな考え方でやっております。
  117. 中山福藏

    ○中山福藏君 それから通産大臣になおお尋ねしておきますが、この東南アジア方面に貿易をやるということになりますれば、政情が非常に不安定ですから相当の危険を伴うんですね。だからアメリカがやっておりますように市場リスクに対する保証制度というようなものが、絶対に貿易を伸展させるには必要じゃないかという感じを受けるのです。その保証制度なるものを今日一つこしらえてみようという感じはありますか。今お話通りではできておるということですが、ほんとうですかどうか、一つ説明願います。
  118. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 輸出保険の拡張を一つはしまして、その中へたとえば、それだけでなく、建築の請負等についても保険ができるということにいたすということ、もう一つは投資保険をいたしたいと思いまして、その法案を今国会提出しておるわけであります。ただしこれは十分とはまだ申せません。まだ大いにその法律そのものの内容もさらに充実いたしたいと思いますから、とにかくとりあえず今国会において今申し上げた程度のことをやってみたいと思って法案を出しております。
  119. 中山福藏

    ○中山福藏君 これは近ごろよく世間の注目を引いてきた問題でありますが、この間どの新聞でしたか、財団法人海底資源開発協会というものができて、この四月一日から発足するということが出ておりますね。これはだいぶん世界中で騒いでおるような問題ですが、これは全部協会の方におまかせになって、通産省としては何らこれには関係なさらないというお立場ですか。
  120. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 協会というのは今度新しくできるというのでありますが、今まで政府のやっておりますのは、たとえば石炭に関しては長崎県で通産省の地質調査所がやっております。それから石油等に関しては、主として秋田県でありますが、今まで帝石がやったのを、昨年、今度は石油開発会社が引き受けまして、それで大陸だな、つまり海底の石油の探査をやるということで、昨年以来相当強力にやる計画を立ててやっております。
  121. 中山福藏

    ○中山福藏君 これは私は海上自衛隊の、保安庁の水路部ですか、そういうようなものが皆協力してやっておるというお話は承わっておりますが、どうですか、この二百メートル向うにいけば断崖になって深くなっておるというのですね、海が……。そういうときには相当のがけくずれをするおそれというものはそういうことから……、そういうところを掘っていくということになりますれば起ってくるのではないかという憂いを持つのですが、そういう点もあわせて御調査になっておりましょうか。地質学者は当然そういうところは着目することだろうと思いますが、そういうところはやはり石油会社なら石油会社、石炭会社なら石炭会社がそういうことを責任を持って調査しておるのですか、いかがなものですか。
  122. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 私は技術のことはよく存じませんが、石炭及び石油とも会社がそれぞれ責任を持ってやっておる。ことに今はだいぶボーリングをする機械が進みまして、四千メートルぐらいまで地下へゆき、それから奥へ四千メートルくらい探査ができるような機械ができております。陸上からも相当遠くまで海底を捜査できるようであります。そういうような機械を使いましてこれからやることになっております。もうすでにこの機械もきております。
  123. 中山福藏

    ○中山福藏君 私は秋田県に行って実際を見たのですけれども、四千メートル掘るという実情はちゃんと知っているわけですけれども、それにつけても数千万トンですか、何とかといって大それたことが新聞に出ておりますので、それでそういうふうなことであれば、よほど将来日本としては幸いだと思って実はお聞きしたのですが、きょうは時間がありませんからこれぐらいでその点はやめておきます。  そこで清瀬文部大臣にちょっと一言お尋ねしておきたいのであります。民主党から発行された「うれうべき教科書」という第一、第二、第三の本がありますね。あの中に書かれております事柄は事実ですか。御調査になった結果はいかがですか。
  124. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 調査よりも、あれは私が政務調査会長をやった時分に全部検閲して発行を命じたものでございます。ミスプリントは仕方ありませんが、その他は全部ほんとうのことであります。
  125. 中山福藏

    ○中山福藏君 次にせんだって高知県の、紀元節に日の丸の旗をあげて、君が代を歌ったという学校の校長さんが、教員というものは労働者ではないということを自分で言っているわけです。労働者の定義というものは、まあ知能労働者だとか、筋肉労働者だとか、大ざっぱな定義がいろいろと掲げられておりまするけれども、経済問題というものを前にしての労働者というものと、あるいは教育問題というような事柄を前にしての労働者との立場、あるいはその性質、いわゆる言葉をかえて言うと、官公労なんかも今度はだいぶストに入っているようですが、この労働者というものの区分けというものは政府においてできているのですか。どういうふうになっておりますか。
  126. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) ただいま労働基準法等の法律がありまして、どれが労働の限界であるかは、法律適用上必要な観念の一つでございます。私は担当ではございませんが、私の担当する教育に関する限りにおいては、教職員は労働者とは思っておりません。
  127. 中山福藏

    ○中山福藏君 それを承わって、私どもは後日非常に参考になるわけです。それだけで私はけっこうです。大麻さんどこに行かれましたか。
  128. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 警察庁長官並びに公安調査庁の次長がおりますから……。大臣はすぐ参ります。
  129. 中山福藏

    ○中山福藏君 公安調査庁の次長に一つお尋ねいたします。今度フルシチョフやブルガーニンがああいう演説をして、柔軟外交というものがとられて、いかにも穏やかになったという体裁が表われているわけですが、一体あの後に共産党の動き方並びにその特徴ですね。その後どういうふうな経路を示しておりますか、一つ承わっておきたいのです。
  130. 高橋一郎

    政府委員(高橋一郎君) お答えいたします。ソ連党大会後、共産党の内部に相当衝動があるようでございますけれども、党自体としましては、今党内問題で非常に精力を使っておりまして、まだソ連党大会の結果を全党的に検討するといったような段階にはまだ参っておりませんので、具体的な動きがございません。ただ党中央ではむろん正確な党大会の報告を受けて大いに検討しておるようであります。
  131. 中山福藏

    ○中山福藏君 もう一点お尋ねしておきます。大体生活保護費というものが相当朝鮮人にいっておるのです。約二十四、五億円と厚生省は言っておられますが、その中の相当と申しますか、何パーセントかは共産党の資金に流れ込んでいると承わっているのですが、そういう点について御調査になっておりますか、伺っておきたいと思います。
  132. 高橋一郎

    政府委員(高橋一郎君) お話のように、在日朝鮮人に対して年間二十億以上の生活保護費がいっていることは事実でございます。それで以前にはそれが相当ルーズに支給されて、その一部が左翼の政治運動に流れておったという疑いは十分ございます。ただそのパーセンテージ等はわかっておりません。しかしこの傾向は最近非常に改善されております。
  133. 中山福藏

    ○中山福藏君 改善されただけではどうもわからぬですね。どういうふうに改善されたか、改善とはどういう意味ですか。
  134. 高橋一郎

    政府委員(高橋一郎君) 全般的に厚生省及び各府県の努力によりまして、またこれに対する実力抵抗なんかが予想される場合には警察、警備なども相待ちまして、生活保護を受けている実態の調査ということは大へん進んでおります。そうして不当な受給ということは次第に整理されつつございます。それからまた詐欺罪等に該当するような違反につきましては、これを検挙するといったようなことで非常に改善されつつあるのであります。  それから先ほど政治運動にかつて流れておったという場合も、どうも日本共産党まで相当流れておったという点については、むろんそういう疑いもございますけれども、大体において朝鮮人自体の、つまり前の民鮮であるとかあるいは祖防であるとかいう団体の政治資金に使われたのが多いんじゃないかというふうに考えております。
  135. 中山福藏

    ○中山福藏君 多いんじやないかと考えておるというようなことでは、私は公安調査庁としてはどんなものかと思うのです。使われておったならおったと、はっきり線が出てこなければならぬと私は思うのです。しかし仕方ありませんからそれぐらいで、後日またある機会にお伺いするとして、最後に大麻国務相に一つお尋ねいたします。  近ごろ警察官の中には強盗とか窃盗とかいうものをやる人間がぼちぼち現われてきた。それでこの前、昨年の八月二十一日だったと覚えておるのですが、私が直接交番に行って聞いておりますというと、貴様ばかと言って、大きな声でどなっておるのですね、警官が。それで、お前は何という野郎だなんてやっているものですから、これを私がとめたのですが、ぼちぼちもとのおいこら時代に復元してきている。これはよほど私どもとしては慎重に考えなければならぬことで、結局もとのような、戦前のような警察官になりまするというと、憲法の改正問題というものが浮んでくるのですね。これを改正したらどういうふうなところにこれが影響してくるかということを考えさせられる。そういうふうな官吏がいばるという国民性と申しますか、そういう国民性を持ったわれわれ国民のうちの官吏が、国民をちりあくたのような取扱いをし、あるいはときたま強盗もやる、窃盗もやるということになりますると、せっかくあなたが国務大臣としてこの担当者としておられても、これがやはり選挙なんかに利用されるんじゃないかという疑いを持ってくるわけです。そういうふうなことになりますと、いろいろなことで、この選挙ということは一例ですが、しかし万事万端国の力を背負ってむちゃなことをやる警察が現われてくるんじゃないかという憂いを私ども国民として持たされる。これはよほど、一つ十分そういう点については御考慮をお払い下すって、何とか一つ指導方針とかあるいは監督方針とかいうよう血ものを打ち出していただかなければならぬときにきているのではないかと思う。これは大事なときです。憲法改正を前にして、私どもはどういうふうに国家の動向が決定されるかということについて多大の関心を持っておりまする今日においては、こういうことが一番国民に対する影響が大きいんじゃないかと考えるので、一言その点についての御方針を大麻国務大臣から承わっておきたいと、かように考えておる次第であります。
  136. 大麻唯男

    国務大臣(大麻唯男君) お答えを申し上げます。まことに適当触る傾聴すべき御意見、つつしんで承わりました。御承知のように今日の警察は全く戦前の、昔のやり方と違った考え方を持っておるのでございます。また当局といたしましても、また国家としましても、国家公安制度というものを置いて、これが管理をいたして、そうして警察は厳正公平な立場でいかなければならない。あるいは時の政府とかあるいは政党とかいうものの力に左右されては断じていけない、こういう建前から厳正公平、中正を守っていくということを一生懸命やっておるのでございます。また皆さんにもそれで御協力を願っておる次第でございます。私も一昨年就任以来その趣旨にのっとりまして全く公平にやってきたつもりでございます。  昨年の選挙のときなど、妙なことを申し上げて相済まぬですが、衆議院の予算委員会などで、私が何か昔の政党で選挙が上手だとか何とかいわれた時代があったのでございます。(笑声)それだから何か選挙干渉でもするように御心配になっておったようですが、それで私ははっきり申し上げました。警察官がいばったり何かしてはいけない。私が就任早々まず第一にやったことは大臣の護衛廃止です。大臣だからといって護衛するわけはないといって——小さな問題のようでございますが、まずそれから始めました。選挙におきましても、選挙は警察官の力で勝とうとは思わない、ほかの方法で勝たなければならない。また、今のような世の中に警察官のサーベルの力で投票を集めようとしても集りっこありません。(「サーベルじゃないぞ」と呼ぶ者あり)こん棒です。失言しました。しかし今のは形容詞ですから一つ大目に見て下さい。(笑声)そういうような次第であって、私は昨年の選挙のときにも、これから先は干渉がましいことをしたくないと言ったら、かえって与党の方から、大麻だめじゃないか、昔の元気がないじゃないかといわれたくらいに非難を受けたわけです。私はそれは甘んじて受ける。警察というものは厳正公平にやらなければならぬ。警察の力で選挙の投票を得ようなんと、そんな考え方は毛頭持たないと言ってきました。幸いに昨年の選挙のときには選挙干渉という声はなかったと思う。中山さんはよく知っておるのですから、ほめてくれてもいいというくらいに私は思っておる。さような次第でありますが、ただしかし、警察官の中に強盗や何かする者、があるのはまことに恐縮千万で、しかもおひざ元の大阪にございまして、これは赤面の次第で、指導、教養については特段の注意を警察庁長官なんかに払ってもらっておる次第でありまして、非常に注意をいたしております結果、大多数の警察官はやはり厳正公正で、正しい道を行こうとしておるのでございますから、せっかく皆そういうつもりでおりますから、いい点があったら少しほめてやって下さい。お締めになるばかりが能ではなかろうと思う。それだけのことをはっきり申し上げておきます。
  137. 中山福藏

    ○中山福藏君 よくわかりました。しかしこれから強盗や窃盗の出ないように一つ御指導を仰ぎたいのであります。  それから警察官に対する教育の方針も、時代がだいぶ違っておりますから、これもよほどお考えになって、一つあやまちのなきことを期せられるようひとえにお願いします。ただ大麻国務大臣は寝わざの大将といわれておりますから、その点を下手に誤解されないように、一つ寝わざでなく、立って警察官全部を御指導下さるように私は特にお願いをしておきます。
  138. 大麻唯男

    国務大臣(大麻唯男君) 御忠告かしこまって承わりました。(「立わざでやれ」と呼ぶ者あり)立わざでやります。寝わざはあれは柔道の手だろうと思います。寝わざは禁手じやゃない、正しいことであれば禁手じゃない。卑怯なことはいけないから、それはいたしません。中山さんはよく私を知っておる人ですから、世間に誤解があったら解いてくれなければならない立場にある人なのに、ほこをさかしまにして攻めるなんてちょっと殺生だと思います。冗談ではございませんが、ほんとうにまじめに日本の警察は、一、二のあやまちはありました、これはつつしんでお詫びを申し上げます。けれども、大多数の警察官はすこぶる健全な思想でもってまじめに一生懸命黙黙と働いておりますから、どうぞこれだけは一つお認めおきを願います。
  139. 中山福藏

    ○中山福藏君 これで終ります。
  140. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 二時四十分まで休憩いたします。    午後二時一分休憩      —————・—————    午後三時九分開会
  141. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは委員会を再開いたします。  午前に引き続きまして一般質疑を続行いたします。
  142. 曾禰益

    ○曾祢益君 私はまず重光外務大臣に対しまして若干の点について御質問を申し上げたいと思います。  最初にせんだっての本院の本会議におきまして私が原水爆実験禁止に関する本院の決議の実行について、特にアメリカ政府の今回の南太平洋における原水爆実験決定の点に関しまして御質問申し上げたのでありまするが、いろいろ時間の関係等もあって、まだ十分ね御答弁に接しておらないので、重ねて重要な点について若干お尋ねいたしたいと思います。  その前に、けさも同僚委員の同様な御質問に対して、一般的な外務大臣の御見解は伺っておるのでありまするが、私の拝聴したところによると、あくまで両院の決議を実行ができるように努める、こういうことは一般的の、心がまえとしては伺っておるのでありまするが、その心がまえにもかかわらず、今回アメリカ政府の決定がなされたのであります。従いまして、単なる心がまえというような抽象的な問題で問題はなくなっておるのでございまするから、従来の原水爆実験禁止に関する両院の決議、すなわちけさほども外務大臣が言われたように、わが国民の総意をいかに実現するようにどのような交渉を今日までされたか。これらについて総合的な御説明願いたいのであります。特にこの点については事本院に関しましては、私の承知している限りでは、ほとんど政府からの説明はなされておりません。新聞等によって承わっておるのは、すべて衆議院における委員会等の政府当局の応答、あるいはそれが外務政務次官の説明もありましたし、また外務大臣の御説明もあったようでありまするが、事本院に関してはほとんどされておらないのであります。従いまして、この交渉の経緯についての御説明願いたい。特に私がその中でもちろん重点を置いておりまするのは、アメリカとの交渉でございます。アメリカとのいかに交渉をされたか、その交渉の過程といいますか、交渉の結果わが方の要求が実現しないうちに、今回アメリカの再び実験の決意がなされ、そうして三月一日の決定ということになっております。発表ということになっております。その前に、政府もいっておられるように、アメリカから内報があった。従ってこの内報を中心として、内報までの経過、それから内報後発表までの日米間の交渉の大要、これを御説明願いたいのであります。さらにこのいよいよ公表をされた後に、政府としてはアメリカに対していかなる交渉をされたか。以上の点に分って概要を、しかし明確に御説明願いたいと思います。
  143. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 原水爆実験禁止要請の問題につきましては、大要は本委員会においても御説明をいたしました通りでございます。そして特に米国との交渉を御質問になりましたが、ただいまのところ私が記憶しておるところをで送るだけ詳細に申し上げます。  それは本年の初頭であったと思います。原水爆実験をやるようになるかも知れぬという情報が米国から参りました。これは新聞で伝えられておることがもとでございます。そこでさっそくそういうことがあるのかということを米国の出先にいろいろ情報を確かめたわけでございます。それは出先としても自分からそういうことに対して的確なことを知るために国務省その他に聞き合したのでございます。その結果そういう意向は持っておると、こういうことでございました。そこで元来政府といたしましては、原水爆使用禁止はむろんのこと、実験をもやめてもらいたいという考え方方針をもって進んでおるわけでございます。そこでそれは非常に日本としては、もし原水爆実験をやるということになれば過去のこともあるし、そういうことのないようにしてもらいたいというような意向は表示をいたしましたが、実験禁止するというところまでは向うは意思表示をしないのみならず、これはもう今の国際情勢上やむを得ないところで、原水爆実験ということはつまり原水爆の発達を助長するわけであって、その原水爆というものが今の平和の大きないわゆるデターレント・フォースになっておるわけだからというような趣旨考え方でございますので、非常にこれは実験禁止実現するというようなことは困難な実情であるということが察知せられました。のみならず国際法上においても、公海の原則から言っても、また信託統治の条項等、これまでの国際連合における討議の状況によっても、はっきりとこれを信託統治地域において、また公海に影響のある、かようなことについて禁止をするという国際法が今日成立していないという点から見て、これをすぐに要請をして実験禁止実現するということは非常に困難な情勢であるということがはっきりいたしました。そこでもしさようなわけで、実験が行われる、前回同様行われるということであるならば、これは人道上からいってみても、また第三国の利益、第三国とはすなわち日本ですが、その利益からいってみても、これは十分に、実験から第一に損害を受けないように予防措置を講じなければならぬ。これは当然の要請であると思います。さようなこと。及びあらゆる予防措置を講じたのちでも、まだ損害が他国に及ぶ、すなわち日本国民に及ぶということであれば、これは補償してもらわなければならぬのであるということをはっきりと申し入れたのでございます。わが国会においてこの問題に対する決議要請決議のあったのは、何日でございましたか……。(曽称益君「本院が九日で衆議院がその数日前です」と述ぶ)たぶん政府アメリカに対するその要請ののちではなかったかと記憶いたしております。たしか九日ですね、そういうことになりまして、そうして政府としては、たびたび申し上げておるように、両院の決議は重要な決議であり、かつまた国民の総意を代表しておる決議である、こう考えまして、しかして、これは政府方針同一であるのでありますから、これを十分有効に用いたい、提出してその趣旨実現したい、こういう考えでございました。のみならず、政府にとって、これは非常に何と申しますか、うしろ楯になる決議でございますから、十分にこれを活用したいということで、この決議を特に関係国関係国と申しますというと、米英ソ連、こういうことになります。また、そのほかに、かような問題を取り上げる最も有力な地位の国際連合、これが国際法なぞを将来確立する上において非常に有力でありますから、国際連合に持ち出して、国際連合にその決議趣旨説明をして、その実現に協力をしてもらうことを頼んだのでございます。国際連合事務総長も十分趣旨はわかったということでございました。のみならず、関係国代表者に、国際連合自身が、その写しを回して、またそれをリマインドするというような措置もとってくれました。さようなことで進んできたのでございます。従いまして、この努力はずっと続けておるわけであります。続けておるそのうちで、イギリス側は返答をよこしました。返答をよこしまして、その返答の日付は今月の九日じゃなかったかと思いますが、よこしまして、先方と打ち合せた日取りによって発表いたしました。発表は国会に対する報告の形式で、本会議ではありませんでしたが、委員会で報告するという形式において、これは発表いたしました。イギリス側も発表いたしました。イギリス側から一応の返事は来ておるわけであります。まだ他の国からは直接それに対して返事は参っておりませんけれども、これに対してわが方の要請にできるだけ沿うような返事をもらいたいということで、目下督促の形において交渉を続けておるような状況であります。これが私の記憶している状況であります。
  144. 曾禰益

    ○曾祢益君 ただいまの詳細な御答弁ではございましたが、肝心な点について、どうも、はっきりわからない点があるのです。今のアメリカ関係だけを取り上げて要約してみると、大体本年の初めごろ、アメリカでまた水爆実験をやるかもしれない——これはおそらく本年の初めではなくて、ソ連の水爆実験を再びやり始めたころから、そういう模様が察知されたことは御承知の通りであります。いずれにしても、二月九日、本院の決議の前にそういう情報があったから、政府からアメリカにサウンドをさした。その結果、まあアメリカ考え方から、実験をやめることは困難である、自由世界防衛という見地から、いわゆる一つのデターレント、制御力としての原水爆をみがくことは、自分の方だけではやめられない。むしろ、それをやっている方が自由世界防衛に必要なのだという、政治的、戦略的の見地並びに国際法上も信託統治区域において実験をやっていけないというはっきりした規定もないし、また、公海の使用の自由という観点から言っても、国際法上も別に禁じられておらない。要するに、軍事的、政治的、法律的の見地から、実験禁止させる、阻止させることは困難であるという印象を得たので、そこで政府の方としては、出先きの大使としては、予防措置、どうしてもやるというなら、少くとも予防措置を十分にしてくれ、さらにまた、それでも不測の損害があったときの補償ははっきりしてくれ、損害の補償、この点ははっきりと申し出た、こういうふうに伺った。そういたしますると、これはまあ二月九日の参議院の決議の前であるからやむを得ないという見方も立つかもしれないけれども、それでは事実上向うが困難であるから一その点は私もわかります。困難なことは。先般の本会議でもこれは容易でないということを私申し上げました。しかし困難であるからといって、それじゃ実験はやむを得ないから、交渉の主眼点というものを、予防措置を十分にしてくれ、損害の補償をしてくれというふうに、言葉は悪いかもしれませんが、切りかえられておる。これが二月九日の前であるならば、ある意味でやむを得ないと考えられるけれども、しかし、その後に、参議院の本会議が二月九日、衆議院はそれより数日前にそういうことはわかっておっても……これはしろうとであり、われわれ交渉の当事者ではございませんが、おそらく、そういうアメリカの主張ではあろう。向うの立場はそうであろう。しかし、日本立場から言うならば、それにもかかわらず、実験を阻止してほしい、やめてほしいというのが、これが両院の決議のエッセンスであることは、今さら申し上げるまでもないことであります。従って、これだけの強い国民の決意に対して、一応アメリカにあらかじめぶっかってみた結果はそうであっても、この決意を実現するためにどういうふうに交渉されたか。一々の交渉の日取りとか、あるいはそのときの応酬の言葉なんかを私はここに御発表願おうとは思っておりません。これは当然に内閣として持っておられる外交権の内容であって、一々そういうことをわれわれは外に発表することを要求しているのではないのでありますが、概要において、たとえば事の重要性にかんがみて、総理大臣がアイゼンハワー大統領に親書を出すとか、あるいは外務大臣が特にアリソン大使を招致して、おごそかにこの趣旨を伝達して、その貫徹を期せられたとか、ちょうどその頃日本アメリカ駐在大使がかわるというような一つの不幸な事態もあったようですが、そういうときにもかかわらず、たとえば井口大使なり谷大使がどういう訓令を受けて、そして特に国務長官のダレス氏に会ったとか、あるいは国務長官に会えなかったから、次官なり次官補なりに会って、どういう申し入れをしたというぐらいのことは、これは一つ御発表になってしかるべきではないか。少くともそのくらいの措置をおとりになったものと当然推定するわけです。だから私の申し上げたいことは、ただ両院の決議があったから、これをお伝えしておくというようなものでは私はなかったと思うのです。困難なことはわかっておる話でしょうけれども、外交官として、これは国民の総意に基いてあらためてもう一ぺん交渉したのだ、その結果は、アメリカ実験発表の三月一日の前の段階においてはこうであった。あるいは内報を受けたということを田中情報文化局長は言っているのです、一週間ばかり前に。これは当然だと思うのです。日本からはなるべくやめてくれと言っているのに、結局やることになりましたということの内報が一週間前にあった。そしてまた、一週間前にあったのに対して、それじゃ政府としてはそれでもやめてくれという、どこまで国民の輿望に沿うた措置をとっておられる……今日まで結果がなっておらないことはお互いに非常に遺憾でありますけれども、国民としては政府ほんとうに、俗にいえばからだを張って交渉に当っておったということを聞きたいと思うのです。ですからその点一つ、私は再々繰り返して申し上げるように、交渉の内容のこまかいことでなくて、どれだけの措置をとられたか。これは私は政府当局としては当然にこれを国民にお伝えになる方が有利、という言葉は悪いかもしれませんが、義務であると同時に、一つそういうことをなさる方が国民に対するいい措置ではないかと思うのであります。はなはだ押し返すようで恐縮ですが、その点を明らかにされたいと思います。
  145. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 御趣旨はその通りであります。私もさような国民的の要望についてはあくまで政府としてはその実現努力をしなけりゃならぬ、その努力を惜しんではならぬ、当然のことでございます。そうやらなけりゃならぬ。そしてまた今そうやっておることはるる申し上げておる通りでございます。この点は今まだ懸案中でございます。懸案中と申しましても、アメリカが発表した実験を変更するという見込みのある懸案ではございません。しかしながら、将来こういう実験をやめるように一つ国際的に話し合いをつけようじゃないかという提案に対しては懸案でございます。そこで国会決議を強く、政府考えも同様であると、日本国民の総意であるという意味において、強く先方に申し入れたことは、これはもうたびたび申し上げた通りでございます。しかるにもかかわらず、それは、そのやる機関はワシントンでやっております。かような問題、重要ではありますが、普通の外交機関でやることが適当であると考えまして、この問題について特にダレス長官なりアイゼンハワー大統領触りに日本政府首脳から通信を出すというようなことは、そういうことの問題ではないと思います。そういうようなことはよほど事自身としてやるのに注意を要する、慎量な態度をとらなけりゃなりません。これは普通の外交機関で押すことは十分にできる問題でありますから、そういう処置をとります。それにもかかわらず、新聞報道にはいろいろな報道がされる。ワシントン方面から参りました。どうも国会決議を取りついだというような、軽い措置をとったというような電信が参りました。これはアメリカ筋の電信でございます。私は不思議なことと思って外務省の電信を詳細検討しましたところが、詳細に先方との応答の報告も参っております。出先の大使は十分にこの意思を取りついでいるのでございます。それにもかかわらず、いろいろな何がありましたから、さらに大使をして先方に日本政府の意向を間違いのないように詳細に繰り返して申し入れをさせまして、これは日本国民の総合的の意思表示であるというようなことを、相当各方面からの理由を付して納得のいくように説明をして、そしてその措置を促しておるわけでございます。これは最初に言われた、実験はやむを得ないから、あとの事後処置を、私どもの考えではなかなかこういうことを、たとえ国会決議であっても、アメリカがすぐなかなか……それは私は、そうであるからやめましょうとはいう見込みは立ちません、これは実際のところ。しかし見込みが立たん以上は、後のことを考えなければ、国民の利益に対して忠実なものではないと考えまして、私は補償の問題までも今から言い出しておるような状況でございます。これはお話通り、また非難を、各方面からいえば、もう向うのやることを認めて、あとの祭を相談しているのじゃないかと、こういうふうに言われることも、これは批評の方法としてはあり得ると思います。しかし実際問題としては両建てでいっておるわけです。そういうようなことは禁止をするように、あくまで将来し向けていこうという努力と、それにもかかわらず、やったときに、損害があったときには補償をとるぞと、こういって十分前もって伏線を張っておくということは、私はこれは国家国民の利益を考慮する上において適当な処置だと考えてやっておるわけでございます。その点について御了承を得たいと思いますが、そういうふうな工合にしてやっております。そこで一般国際間においてこういう原水爆実験禁止しようという方向に向ける努力は、これはことに国会決議を契機として、非常に日本態度がさらに強力になってきておるわけでありますから、それを利用してさらに今後同じ態度をとって進めていきたい、これは私自身考えとしては、なかなかアメリカだけの問題では片づかぬ、やっぱり国際連合の多数の国の考えを動かすことがむしろ適当であるように考えます。その方面においては適当な措置を怠らずやっておるわけでございます。
  146. 曾禰益

    ○曾祢益君 まあわれわれの考え方、あるいはセンスからすれば、今おっしゃった交渉のやり方について、あまり批評がましいことを言うのは適当ではないと思うのです。われわれのセンスからいえば、やはりやめてくれというときに、それでもやったら、これだけの条件でということをいうと、まあわれわれの言葉で言うと、いわゆる条件闘争になってしまって、基本的な反対ということがぼける感じがいたします。しかしこれは外交交渉でありまするから、そういうわれわれのやっておりまする賃上げ闘争みたいなわけにもいかないだろうと思いまするから、私は両建てということを一概に非難はしないつもりです。しかし私の申し上げたのは、つまり両院の決議を伝達した、軽い伝達に過ぎなかったというのは、アメリカの通信社の通信によっていっているのではなくて、むしろ今外務大臣からの御説明の中でもいわゆる予備交渉といいますか、院議の決定の前の交渉の際には、まあ少くともはっきりやめてくれというよりも、一つ探りを入れたらなかなか困難だと、あなた自身がそう言われるのですから、はっきりこの点は先ほどの御答弁を、これは私は正確に言うならば、速記録について調べてから御質問するのがほんとうだと思いますが、要するにそうやかましいことを言わなくても、あなたの御説明の中にはっきりと、この予備的な交渉の際にやめてほしいと言ったというよりも、まあそう言おうと思っていたけれども、向うの話を聞いてみると、非常に困難だ、それでは少くとも損害の補償と、予防について強く申し入れた、これははっきり申し入れたとあなたがおっしゃったので、そのあとのあなたの御答弁によれば、政府の意向は詳細に強く申し入れたと言われるけれども、その政府の意向とは、どっちなのかよくわからない。そこでほんとうに困難ではあるけれども、ほんとうに基本的にはやめてほしいということを、院議がきまって以来さらに今日まで強くやっておられるということを明確に御答弁願えればわれわれとしても一応の納得はするのです。ところがそういう誤解が出た。私自身誤解するのも無理ないのであって、あなたの答弁の中にもさらに誤解を生むような御答弁もあったことだし、ことに三月二日の外務省の当局談によれば、それらのことは一つも触れてない。そうしていきなりこの予防措置の方と、それから損害補償の方について申し入れた、ところが予防措置については一応の回答があったけれども、損害補償の方は何も回答がなかった、こういうふうになっているもので、それじゃ国民から見れば、やはりぶつかってみたけれども困難であるから、戦法を切りかえて単純に条件闘争に移っているのではないか、こういう私は感想を得る方がむしろ当りまえではないかと思う。でありまするから、あらためて説明の不足と言っては失礼ですが、そこからきた誤解はあったけれども、従来からやはり困難であったけれども、この基本的な反対の立場に立って、そうしてやめてほしいという交渉と、それといわゆる条件的な交渉と言いまするか、予防措置の点、損害賠償の点についてもあわせて交渉をやっているんだということならば、これはわれわれとしても半分は少くとも納得できると思いますが、その点もう一ぺん明確に御答弁願いたい。
  147. 重光葵

    国務大臣重光葵君) これは私がたびたび御説明している通りでありまして、今曽祢君の言われるところを聞いてみても、何も私は大差はないように、われわれにはわからぬ、わからぬと言われるけれども、同じことであります。私は初めから政府方針としては、原爆の使用はむろんのこと、実験をも禁止してもらいたいという要請を常に政府は進めてきた、こう申しておったので、これは何も私はわからぬことはないと思います。そういうことを申し上げておる。それは一々この問題があってからじゃなくして、実は私はそれをずいぶん長い間、特に東京においても米国の大使としょっちゅう連絡して、しょっちゅうそういうことを実はつぎ込んでおったのであります。それにもかかわらず、アメリカがいよいよ原爆の実験をやると、こういうふうにだんだんなってきて、それは困ると言ってみたけれども、どうしてもやるんだ、今の情勢ではやむを得ないということになったから、そこで私はいよいよこれは補償まで要求しなければならぬと思って要求したのであります。しかし国会決議があるということは、われわれの従来の主張を、先ほど申す通りに非常に力を得て、これが背景になりまして、その背景をもってそれをさらに利用して、それでもって要求を続けておると、こういうことを申しておるわけでございます。これは将来もそういうつもりで私はやることを繰り返して申し上げるわけであります。
  148. 曾禰益

    ○曾祢益君 まあ国会決議を利用してといいますか、それに力を得てさらに交渉願いたいのですが、しかし一方においては日切れの問題があるわけです。四月二十日以降やると言っているのですから、そこでどうしても何とかしてやめるように特に御努力願いたいわけでして、従って私はその場合にも、この前の本会議質疑応答の際にも問題になりましたように、きょうは時間がありませんから簡単に触れておきますが、やはり公海自由の原則の乱用であるといったような法的な立場をはっきり出して、国際法が必ずしも禁止してないから、公海自由を乱用してはいけないというような見地から、強く言うことをはばかっていられるような感じがするのですが、ただ単に困るからやめてくれというだけでなくて、やはり従来の海上における海軍の実弾射撃のような場合は、これは公海の自由の名においてやられても、これは免除されておったと思いますが、全然新たなこんな危険なものについては、日本見解によれば、これはまだ国際法の解釈が一定していないからこそ、日本見解としてはやはり法的な立場から、あなたの言われる立法論的な立場から、少くともそういう無制限な自由は認められないという、こういう見解もあわせて強く、ただ単に国民の総意であるというような感情的なアッピールだけではなくして、やはり国際法上の問題としても、日本立場は、新しい国際法の観念から無制限な公海使用の自由としての原水爆実験ということは認むべきでないという強い態度で押していただきたいというのがわれわれの考えでございます。従って、国際法上のその問題が一定しておらないから、その点についてははっきり言えないという立場をとるならば、これは補償の要求も非常に私は力弱くなるんじゃないかと考えますので、今後の交渉についての態度については、やはり国際法上の問題をとらえて、積極的な意見を展開していただきたい、これが第一点であります。  それから第二の問題は、あとでも申し上げたいのでありまするが、今後の交渉のいろいろな方法について、一々議会から差し出がましいことを言うのは私は筋違いと思いまするけれども、この国民的な総意を受けて、いよいよ三月十八日にダレス氏との会談があるのでございまするから、これは総理も議会の答弁で肯定されたように私は聞いておりまするけれども、外務大臣からも多くの一般的な問題についてダレスと話されるときに、一つのこれはどうしても入れていただかなければならないトピックとして、はっきりとこの原水爆実験中止の問題についてもう一ぺん一つ交渉していただけるかどうか、この二点をお伺いしたいと思います。
  149. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私はこの問題は日本国民の総意であって、重要な問題であると申し上げた意味は、あらゆる方面から有利な議論を動員してこれに使うつもりでおるのであります。これは本会議の御質問に対しても答えたと思いますが、何も国際法上きまっておらぬ問題であっても、少数意見であっても、それについて理屈に合うと思うことは十分に主張して差しつかえないことは当然のことであります。そういうことは当然利用して言うつもりであるということを申し上げたと私は記憶しておりますが、今日もそういうようなことは十分利用して差しつかえない、また利用すべきだと、こう考えております。これはただ単にワシントンにおける交渉、もしくはニューヨークの国連における交渉だけに限らず、その他のあらゆる機会においてこういう問題は持ち出して差しつかえ広い問題だと思います。従いまして、ダレス長官あたりが東京に見えますときには、あるいはそういう機会があると、こう私は思う。またそういう機会を作ろうと考えておる次第でございます。
  150. 曾禰益

    ○曾祢益君 私はもう一つ外務大臣にフィリピン賠償の問題で伺いたいのでありまするが、非常に時間がないので、きわめて重要な点だけをお伺いしたいと思います。これは先般、同僚羽生委員もそういう態度で、外務委員会で御質問方法について非常に自制されておったのですが、私も今交渉のデリケートな段階で、内容のこまかいことについてお伺いするのは差し控えますが、新聞の伝えるところによれば、いよいよすでにマグサイサイ大統領に対する鳩山総理の返信が、少くもアドヴァイス・コッピーが先方に渡され、さらにはいよいよ全権団の先がけとでも言いますか、藤山愛一郎氏が交渉に乗り込むという、こういう段階に立ったようであります。従って政府はもとより過般の野党、与党の首脳者会談において、適当な段階になったならば、このフィリピン賠償問題の中間報告を議会でされるということに与党としては少くとも賛成しておるのであって、その点は政府も御承知だと思うのです。しかし、その段階であるかどうかについての解釈の問題は、私は詳細な中間報告を要求しているのではございません、今日は。しかし少くともマグサイサイ大統領の書簡というのは、一つの具体的な提案をしておるわけです、フィリピン賠償問題についての。それに対する返簡がなされ、続けて全権団が派遣されるということは、これは申し上げるまでもなく、かっての大野・ガルシア協定ができたつもりで全権団を送って、それが失敗に終ったというようなことは、断じて避けなければならない見地から、これは相当の下地があって、いわばまあ条約調印の儀式に全権団を送ることでもないでしょうけれども、大体マグサイサイ大統領のいわゆる賠償五億五千万ドル、そのうち二千万ドルが現金で、三千万ドルが役務である、そうしてそのほかに二億五千万ドルのいわゆる借款、こういうその大ワクについてのおおむね合意が成立して、それのワク内のいろいろな調整の問題も大体できたから、いわゆる全権団を派遣し、またその前提として、大体受諾的な返事を出されたものと思う。私は今日内容を発表しなさいとは申しません。しかし、これは申し上げるまでもなく、藤山愛一郎氏がフィリピン政府にこれを渡した場合には、正式の文書を渡した場合には、向うは発表すると言っている。だから、これは数日間に発表されるものであるし、少くともフィリピン賠償の大ワクがきまる、こういう状況であると推定することは正しいと思います。従って一体そういうものであるかどうか、大ワクにおいて五億五千万ドルの賠償、そうして二億五千万ドルの借款、そういうような内容について政府がこの際決意をして、大体それでまとめようとしておる、こういうものではなかろうかと思うのですが、果してそうであるかどうか、お示し願いたいのであります。
  151. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 日比賠償の交渉について御質問がございました。この交渉の今日までの経過につきまして今まで報告をいたしております後の経過について、私はこの席であらためて御報告を申し上げます。  昨年の五月前後におきまして、フィリピンのネリ大使が来て、いろいろ内交渉をしたということは、御報告をいたしました。そうしてその結果、ネリ大使が帰って、一つの正式の提案がマグサイサイの名前をもってなされたということまでは報告をいたしております。そのフィリピン側の提案は、それまで東京において行われた内交渉の結果できたものであることには違いはございません。しかしながら、いよいよその提案を取り上げてこれを正式の取りきめとするのには、十分にその提案の内容について誤解のないように、かつ正確な解釈をいたすように、やはり理解を進めていって、内交渉を進めていかなければなりません。そこでその内交渉の期間がずいぶん長く続きました。長く続きまして、これはマニラでやったのでございます。そうしてこの大体のワク、大体のワクというのは、今申されました通り、かつまた、これは私も国会に対しては、本委員会にもそうであったと思いますが、申しました通り、賠償額は五億五千万で大体いこう、それからそのほかに経済協力と申しますか、経済関係を密接にするために、二億五千方ドルの民間借款をしようと、こういうことでございます。この大体のワクはそういうワクで来ております。しかし、その中をどうしようかということは、いろいろ内交渉でこれを進めてきたわけでございますが、結局のところは、本交渉の結末まで、取りきめによってこれは決定をすべき問題でございます。そこで今日の状況では、その内交渉がずいぶん長くかかりましたが、これが大体終ったという状況でございます。フィリピンとの間においてはそうでありますし、また、これは内側のいろいろ意見の取りまとめも必要でございました。さようなわけで、この内交渉の議題を終結することができましたので、ここにいよいよ本交渉と申しますか、正式の取りきめをこしらえなければならないのでございますが、それに今日すぐ着手をいたすことに相なりました。この賠償交渉は御承知の通りに、これは経済関係が主でございまして、日比の経済関係、それにまた、その中の一部分として民間の借款の問題もございますので、民間の有力な経済人がこれに参加をするということは、きわめてこれは有意義でありまして、賠償の将来の実施の点からいってみても、これは必要でございます。のみならず賠償問題は、元来日比の経済関係を増進するということで、貿易も将来も、どんどん今伸びております、これを伸ばしていきたいという双方の国の意見の一致を見ておるわけでございますから、さような方面で経済人の活躍を期待する点が非常に多いのでございます。さような意味をもちまして、藤山愛一郎君の御奮発を願って、そうしてさようなことも遅滞なく先方と話し合いをするために出立することに相なりました。さようなわけで今申されました通りに、全体のワクの中で、そうしてその後の内交渉ではっきりしたその内容によって本取りきめをするということに相なったということを確認する総理の手紙がもうすでに、その写しと申しますか、それは向うに渡してございます。それでもって、どんどん本交渉に進んでおるわけでございます。さよう数わけで、本取りきめの内容、草案等がどんどん進むに従いまして、ある時期が来ましたならば、なるべく早い機会にまたその中間報告なりを正式に申し上げたいと思いますが、私の今申すことがほとんど全部でございます。そうしてそれがある程度の進捗を見ましたときに、全権団を組織して、これを最終的に決定をいたしたい、こういう段取りに相なっておるわけでございます。
  152. 曾禰益

    ○曾祢益君 大臣は今、ワクがきまったということについても、本委員会等でたしかおはなしになったkとがあるということでありましたが、私はそういうことはなかった。従来はまだ内交渉の段階で、いわゆるマグサイサイ提案を認める認めないなんかということは、どっちとも言えないのだというように説明されておったと、私は少くともそう考えております。そこで五億五千万ドルのワク、それから二億五千万ドルの民間借款ということを言われましたが、これは非常に基本的な問題であって、との問題については、はっきりした政府がそのワクを受諾したということは、大きな問題だと思って、いずれこの問題については、われわれの見解も述べながら御質問申し上げたいと思います。しかし、いずれにいたしましても、現金条項あるいは役務条項と生産財との関係がどうだとか、あるいはいろいろな問題について御質問しなければならないので、きょうはそれをやめますが、ただ二点だけ基本的な問題で伺いたいのであります。一つはこの五億五千万という総額は、これは何といっても他の求償国すなわち賠償協定をやりましたビルマ等に対する影響も十分にお考えの上、またインドネシアに対する関係も十分にお考えの上、さらに言うまでもなく総額として日本の負担能力等についてもいろいろな影響も十分にお考えの上、踏み切られた私はワクだと思う。少くとも今日伺いたいのは、特にビルマとの関係において、御承知のように再交渉の条項もあることでありますので、果してこの五億五千万というワクを受諾することが、ビルマからの再交渉——同率にしてくれ、同等な扱いをしてくれという問題を起さなくないという判定にはっきり立たれて、それだけの手を打たれて、五億五千万というワクを呑むことにされたのかどうか、との点を第一点として伺いたい。  それから第二点は、民間借款だということを言われましたが、この点についてはフィリピンの立場もありますので、あまりえぐった話をしたくないのでありまするが、はっきりと国民の負担にならない、納税者の負担にならない純然たる民間賠償であるということが断言できるのか。それからこれに関連して、藤山氏寺を送られる政府気持といいますか、与党内の複雑な状況もあって、民間借款とするならば、また今度は通常貿易のワク内に入ってきたんじゃ何にもならないじゃないかという無理からぬ違憲が与党内にもあると聞いているのです。従って政府としては同時に、かりにこの総ワクを呑んで賠償協定を作る場合には、これにわずらわされないような大きな貿易協定を作る、こういうつもりで民間借款等を二億五千万を入れたのかどうか、この二点については一つ基本的な問題でありまするからお示しを願いたいと思います。
  153. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 第二の問題、つまり民間借款と貿易の増進の問題。貿易の増進の昨今の趨勢は相当フィリピンとの間においては激増しつつあるということは、これは御存じの通りであります。あるいはこの委員会で数字は出したのじゃないかと思いますが、数字を差し上げてもよろしゅうございます。そこで賠償協定等ができますれば、いろいろこれはアメリカ関係との問題もございましょう。アメリカは特恵を持っておりますから、ございましょうけれども、日本との貿易は現情でも伸びておるわけだから、賠償協定ができれば、さらに大きく伸びるということは、これはごく穏当な私は見方だろうと、こう考えます。さようなわけでございますから、将来賠償協定も済まして、さらに貿易協定をするというときになったらば、さらに多額の貿易の額の見込みができ得るだろう、こう思っておるわけであります。またそれは、そういうふうにしていきたいというのは日本だけではございません。フィリピン側もそういう望みを持っておりますから、話し合いはつくだろうと思います。さようにして貿易を伸ばしていきたいというふうに考えておる次第でございます。  第一の点は、これはむろん賠償をやる上においては、日本の負担能力全体、その他の国との賠償のことも考えて、およそのことを考えてやらなければなりません。そのおよそのところは考えた上で、まあこれくらいならば負担は不可能ではむろんないのである。非常に楽ななにではないけれども、賠償は少ければ少いほどいいのだけれども、これはどうもやむを得ない、これまでこういうふうになった以上はやむを得ないというふうになりまして、これが大体政府が呑むことに決定はいたしているわけでございます。  ビルマとの関係でございますが、それもビルマもインドネシアもむろん考慮に入れたわけでございます。考慮に入れたわけでございますが、ビルマとの条約には、条約の明文に御指摘の点がございます。この明文を変えるわけには参りません。が、しかしながら、わが方としてはその明文にあてはまらないように考えて進めてきているのである。端的に申せば、この点については十分自信をもって進めてきたのである。この点だけを申し上げてお答えといたします。
  154. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連して。大ざっぱなことで、一点だけお伺いしたいのですが、前の四億ドルの大野・ガルシア協定が失敗に終って、今度の総額借款を含む八億ドル方式にまとまりそうなんですが、前はフィリピンの方が国内事情に、よって拒否したわけです。今度は、日本側においても最初は保守合同の前後を通じて当時の自由党がなかなか強硬であったと思う。ところが、この数日来の動きを見ていると、大体旧自由党も了承されて、一応借款を含む八億ドルの線でまとまりそうだということでありますが、そこで承りたいことは、前の四億ドルに比べて非常次不利になっているけれども、鳩山総理が内約をされて政治的にやむを得ないから妥協されるのか——これは大事なところだからお聞き願いたいのですが、内約をされてやむを得ないから政治的に妥協されるのか、それとも前の方式と今度と比べて、実質的に不利ではない。総額は確かにふえているけれども、実質的に閉鎖的な日比貿易なんかを打開したり、その他の方式によって実質的には不利ではない、だから妥結するというのか。もう一度繰り返しますが、鳩山さんの顔を立てるためにやむを得ない妥協として妥結される方式であるのか、実質的にどうなんでありましょうか、この一点だけ一つお答え願いたいと思う。
  155. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は、今回近き将来において本ぎまりになりますこの賠償問題の解決方式が、果して大野・ガルソア協定と比較してどうなるかということは、私は相当今までも議論がございましたし、議論があり得ると考えます。しかし、むろん交渉の当事者としてわれわれが交渉する場合においては、大野・ガルシア協定のことなども十分に検討してかかった問題であることは事実でございます。そこで大野・ガルシア協定と比較してどうお前は考えるかということになりますが、それは私に言わしてみるというと、実はその比較は非常に困難でありますが、私はどちらが有利であり、どちらが不利益であるというふうに、あまりにそれを離れたものとして考える必要はないように考えます。これは議論の差がありましょう。それですから、私はあえてそのことについてどうとかこうとか申すわけじゃございませんけれども、四億で十年ということになっておりますから、また一方二十年にすることもできる——しかしこれは他方が同意を要するわけであります。それからまた結局フィリピンの手取りは十億だ、こういうことにもなっております、大野・ガルシア協定では。そこでなかなかそれらの点を検討してみますというとむずかしゅうございます。しかし外交交渉のことでございますから、さようなことで交渉をまとめたということは、私は実は大野・ガルシア協定にまとめたということはよかったと思います。そこでわれわれも四億ぐらいにとどめたかったのであります。しかしどうしても大野・ガルシア協定というものは、向うは非常な勢いでこれを破ってきたのでございまして、あれをもととしては話は全然できないということなんでございますから、そこでだんだんと妥協の措置をとりまして、また内容を申し上げればまあせめて五億ぐらいにとどめたいということもずいぶん努力をいたしたのでありますが、結局八億ということになりました。しかしそれにしてもこれをまとめて先に進んでいく、打開をして東南アジア方面に、これは経済関係を進めていく、平和関係を進めていくということが、全局の考慮からいいと考えて決定したことには違いはございません。そこで大野・ガルシア協定との内容を、それじゃどうかといって、先ほど申します通りに、これにあまりに何と申しますか、こだわって比較する必要は私はないように考えます。まあ同じものだといえばまた議論がすぐ沸きますから、私はそのくらいな程度で、実はそれも利用して大いに努力をしてみてこういうことになったんだと、こう申し上げて了解を得たいと私は切願する次第であります。
  156. 曾禰益

    ○曾祢益君 議事進行ですが、外務大臣もう時間がない。それでは私は外務大臣に先に御質問するのはちょっと筋違いなんであって、正力国務大臣に先に伺ってから締めくくりとして外務大臣に御質問したかったのですが、実は海兵隊の現在使っておりまする施設を、原子力研究所の用途として解除を要求する、こういう問題でございますが、この点についてはあとで関係大臣に御質問するように、どうも政府態度がまだはっきり最終的にきまっておらないやに見えるのであります。従ってそれを伺ってからと思いましたが、政府態度がいよいよすべての専門家が見た一致した意見のように武山が原子力研究所すなわち実験炉の設置場所として原子力研究をスタートするのに最も適正な場所であるということのはっきりした決定に達し、その決定に基いてアメリカに正式に交渉する場合には、これは一つ外務大臣によくお考え願いたいことがある。これはどうもどこの国でもそうでありまするが、アメリカもその御多分に漏れず、どうも軍人というものは施設を返還するのはいやがるものです。で、やはりそういう点については軍人はなかなか施設を返還したがらないし、やむ声得ない場合、でも何かかえ地とかあるいはいろいろな条件をつけてくるのは通例でございまするけれども、これはぜひともアメリカの方できれいさっぱりと……。原子力の研究という非常なアメリカ自身も国策の大なるものですから、軍人的なセンスでものを考えられたのではわれわれが迷惑するのみならず、あえて言うならばアメリカ自身も非常に大きな政治的なねらいを失する問題だと私は考える。そういう意味から政府がそういう決定をしたならば、一つ外務大臣も十分に大使館あるいはワシントンの最高当局にこの問題の重要性がよく所が——アメリカの軍人の戦略的なこれも大きな問題かもしれません、彼らの立場から言えば——そういう見地から動かされることのないように、非常に大所高所から交渉されるべきではないか、かように考えます。私はただ一市民として実は先日アメリカ大使にもそういう意見を述べておきました。これはもうほんとうの自由な市民の意見ですから、勝手なことを述べたんですが、これは外務大臣としてもぜひそういう気持で大所高所から交渉していただけるものかどうか、この点につきましての御答弁願いたいと思います。
  157. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 武山の問題を今外交的に取り上げる段取りにはまだ今日まで参っておりませんが、そういうことに相なりますれば、御趣旨に沿うて私も努力をいたしたいと考えます。社会党の首脳として曽祢君がアメリカの大使に直接意見を申されたことでありますから、これは十分響いておることと考えますので、私もその趣旨に沿うて努力したいと思います。
  158. 曾禰益

    ○曾祢益君 外務大臣はけっこうですから……。  次に防衛庁長長官に伺いたいのですが、この武山の問題について先ほど申し上げたような経緯で武山が原子力研究所に最適地だということで、しかも現地側の官民がほんとうに超党派的にして……、こういうことは私はある意味では珍しいと思う。ぜひ原子力研究所を自分の土地に無理やりに競争して取ってこようというのではなくて、専門的見地から見て最適地だという折紙をつけられたのでそれではぜひ武山と待て、まあ言ったかどうか知りませんが、少くともこれはその意味で伺うのですが、吉田という人が海上自衛隊の何かのその方面の偉い人らしいのですが、自分の方でも使いたい。要するにかりにアメリカから解除されても原子力平和利用の方ではなくて、日本の自衛隊の方で使いたい、こういうような横やりが入った、という問題が現実にある、そこで一体防衛庁の方はそういったような計画であるのか、原子力の研究、平和的利用よりも防衛庁の必要から、かりにアメリカから解除されても、防衛庁の方で使うのだと、こういう正式の決定をしておられるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  159. 船田中

    国務大臣(船田中君) ただいまお話がございましたが、防衛庁としては横やりを入れておるというようなことは全くございません。これは事実に反します。ただ、あの武山の地域、施設は、自衛隊として将来自衛隊がさらに増強されますときにはぜひ必要である、ということでこれはもう数年前から米軍側には申し入れてあることでございまして、今日においてもその考えは持ち続けております。しかし原子力研究所をどこに設けるのがよろしいかということについては、政府としてはまだ最終決定をしておるわけではございませんので、政府部内において十分意見調整をいたしまして適当な措置が講ぜられることと存じます。先ほどお話がございましたが、私の方から横やりを入れておるということはまだございません。
  160. 曾禰益

    ○曾祢益君 まあ横やりを入れたので話し合いが結果において横やりになっておることはこれはお認め願わなければならないと思います。  そこで防衛庁が一体この四十万坪の全部をどうしても近い機会において取らなければならないほど緊要なのかどうか、もしそうならばどれだけの防衛庁の計画並びに六カ年計画、具体的に   〔委員長退席、理事池田宇右衞門君着席〕 旧海軍の海兵団で使ったような施設までこの防衛六カ年計画の過程においてどう組み入れておるのかどうか、現実にただ昔の海軍の使っていた所だから、やはりあそこにつばをつけておきたという程度ならこれはよほど問題じゃないか、一体防衛計画の全般から見て、その優先順位はどうなのか、現実には平和利用のためにスタートするには半分で済む、アメリカの海兵隊は現在はどんどん、どんどん撤収しつつある、従ってかりに半分今ただちに解除して平和利用の方に振り向けて、そうしてあとの半分の方で将来ほんとうに具体的の計画のもとにどうしても盛るのだというならば、これは何といいますか話し合いの余地がある。ただそうでなくて海軍のむのだから先にそこにただつばをつけておいた、これは横やり以上にけしからぬ。ほんとうに計画の裏づけがあるのかどうか、それをはっきり伺っておきたい。
  161. 船田中

    国務大臣(船田中君) 先ほども申し上げましたように、防衛庁といたしましては将来自衛隊を増強するときにぜひ必要であるという候補地といたしておるので、ありまして、現在それについ使う使わないか、あるいは解除をアメリカ側に交渉するかしないかということにつきましては、それは政府部内で数日のうちに意見は決定して交渉されることと存じますので、私の方としては、それに対して横やりを入れているというような意味のお言葉でございましたが、決してそういうことはいたしておりません。
  162. 曾禰益

    ○曾祢益君 きわめてばく然たる軍人的な欲ばりで、あると私は考えます。  そこで正力さんに伺いたい、まあさっきからむずむずして御答弁に立ちたがっておられるようですから。(笑声)実はあなたから伺うのが順序だったかとも思いますが、どうもこの問題について不明朗な点が多々ある、といいますのは、私の承知している限りにおいては、武山にきまったというのは、ある代議士みたいに地元に誘致という問題が起ってからではなくて、純然たる専門家の厳重な審査の結果武山が最適地だということがきまった、従って地元ではやはりそれは国民としてはまあ原子力もけっこう、平和利用もけっこうだが、それでも危険がある、いろいろな苦悩がございましたが、まあそういう危険は実際ない、純然たる平和利用に限るのだ、そういうことで、むしろその苦悩を越えて今や官民一致の態勢ができて、もしそうならば喜んでやるとこうなったと思います。ところが二つの故障が起った、一つ防衛庁の旧軍人的なばく然たる私は欲ばりだと思う、単なる一つの候補地にすぎないですよ。片っ方のあなたの関係しておられる方は、これは明白に折紙をつけられた日本一だ、他にかけがえがないと言ったら語弊があるかもしれないが、一番いい。ただ、一つの候補地じゃない——多くの候補地のうちの一つではない。こういう問題になっておるのに、今日依然としてあなたの方で正式に閣議決定までできないというのは、これは一体どういうわけか、すなわち防衛庁のいろいろな横やりといって今しかられましたが、その欲ばり。それからさらにはアメリカと交渉といいますかいわゆる探りを入れた結果これが困難だとなる、ちょっと簡単に無条件で解除ができなさそうなものだということになると、また不思議なことには党利党略的な、それならおれの方が先口だというふうな変な政治的運動が行われて、それをあなたは御承知で、まあちりがおさまるのを待っておられたのかもしれませんけれども、国民としてはあなたが平和利用の親玉と思っているのに、きわめて政治的態度が不明朗だという気がしてならない、あなたはこの問題についてどういう考慮をしておられるか、はっきりお示し願いたいと思います。
  163. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) お答えいたします。武山の問題については少しも不明朗なところはございません。はっきりしております。先ほどずっと前にきまったというようにおっしゃいましたが、そうではありません。委員会が議題にしたのは二週間前であります。実は原子力の研究所の施設につきましては、非常に慎重にやりまして十数カ所でありまして、それを専門家をして十分調査さしました結果、二週間ほど前にようやくすべての条件からしてここが第一候補地としてよかろう、しかし何分にもアメリカに接収されておる、そうして聞くところによると、防衛庁からもあったけれども、なかなか離さぬ、そんなむだなことをしていないで、一応委員会にかける前にアメリカの意向を探ることにしてみようということにしまして、そこで調達庁をして探らせました。そうしたところが、調達庁ではアメリカ軍の意向としては四十万坪のうちの半分ぐらいは返還してもよろしい、しかしあそこにはアメリカ軍のいろいろな施設があるから、大体それを日本の方で保障せよ、しからば施設だけで土地はどうか、土地の点はまだはっきりしておりません。しかしいずれにしてもアメリカ日本政府から正式の交渉を持ってこい、その上でアメリカは詳細に申し出るということでありました。そこで私どもは、委員会が決定したのがようやく一週間前で、それならアメリカに正式に交渉してみようということで、すでに一昨日ですか、総理の方に出しまして、従って政府の決定も今度の、この次の金曜日に決定されるものと思っております。そういうようなわけで、ことさら延引したこともありませんし、防衛庁から横やりも何も入りません。全くはっきりと公明正大にやっております。
  164. 池田宇右衞門

    ○理事(池田宇右衞門君) 曽祢さん一つこれだけにして、時間が……。
  165. 曾禰益

    ○曾祢益君 私はまあ原子力担当大臣の交渉ぶりについて批判がましいことを言うのはいかがかと思いますが、また申し上げたくもありませんが、これはある意味では何といいますか、念には念を入れて、せっかく決定してもアメリカの方が返さない、ほとんど不可能な状況にある。決定それ自身ができないであろう、こういう気持からいわゆる探りを正式決定の前にされたと思うのです。その意図はわかりますが、私はそういう交渉はまことに下手くそな交渉だと思う。私は実は自分のことを申し上げて恐縮ですが、三月八日にアリソン大使に会ったときに、実際恥をかいた、日本政府がまだきめて正式に持ってこないものについて、そうして民間人が騒いでたって返事ができない。これは筋が立っている、この方が先だ、日本政府が、ことに日本の原子力平和利用についての親玉のあなたが、アメリカの軍人が返してくれるかもしれない、あるいは返してくれないかもしれないが、最適地の決定を待っている、それで軍人に探りを入れる、軍人に探りを入れればどうせ厳重な条件を言ってくるのにきまっている、そこで向うが色よからざる返事をしたら、それならあなたの関係者が最適地だろうというのをそれを落して、そうして第二の候補地、第三の候補地を選ばれたとしたら、私は政治家としての責任としては追及されなければならないと思う。そんなあやふやなことではなくして、これが最適地だというなら防衛庁が何をおっしゃろうが、一部の代議士の諸君がどう策動しょうが、断じてこれを解除させる、私は先ほどちょっと外務大臣に教訓めいたことを言って恐縮ですが、アメリカ人だってわかる人はあると思う。またわかせるだけの努力をする覚悟ではっきり早く候補地をきめて、そうして正式の窓口から交渉して、そうして強くこれをバック・アップさせてもらうように、閣議全体できめておやりになるのがよくはないか、過去のことはこれは批判になりますから……。少くとも私はそういう感じがする。であるから不明朗でなくても、そのやり方は必ずしも適切ではございません。従ってそれは批判でございまするが、いよいよあなたも、アメリカの方も少くとも条件によってはということがわかったので、腰を据えられたと思う。つきましては、この次の閣議であなたの自信の上に立って、政府全体でまず決定されて、そうして正式に、まあ日米合同委員というつまらない行政機構を通るでしょうけれども、ただ、そこに出すという考えでなくて、そうしてワシントンを動かしてこの問題の完徹ですね、これを期するように御努力が願えるかどうか。この点を伺って私の最後の御質問にしたいと思います。   〔理事池田宇右衞門君退席、委員長着席〕
  166. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) 先ほど、お前のやり方が下手だとおっしゃいますが、これは見解の相違であります。私は決して下手だと思っておりません。何となれば、防衛庁が三年もかかって取れなかった土地です、それをいきなり委員会であの場所がいいといって決定されても無意味でございますが、それだから、まずアメリカの意向をサウンドしょう。ところが御承知の通りアメリカは代替施設を要求しておりまして、これが幾ら最適地というても、代替施設が非常に大きなものになりますれば、これは最適地といえません。やはり安く取れてこそ最適地になるのでありますから、これは重大な要素であります。それだから今までやったやり方において一つも自分はまずいことをしたとは思っておりません
  167. 曾禰益

    ○曾祢益君 今のそれに対する非難とあれは別としまして、閣議で一つきめてそうして実現に強い御努力が願え出るかどうか、この点に対するお答えを願います。
  168. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) すでに原子力委員会で決定して、総理にそれを出したのであります。総理は原子力委員会意見は尊重するということもありますから、むろん合同委員会にいくことだろうと思っております。しかし合同委員会でかかっても、条件が悪かったらこれは進むわけにいきません。これは要するにアメリカ態度による次第であります。
  169. 曾禰益

    ○曾祢益君 時間がありませんからこれで。
  170. 田中啓一

    ○田中啓一君 時間もございませんことでありますし、だいぶ審議の予定も延びておりますので、きわめて簡潔に私はわが国の経済計画と農林水産業との関係につきまして御質疑を申し上げたいと思います。  まず第一には企画庁長官にお伺いしたいのでございますが、わが国の国民経済の構成を見ますると、昭和二十九年におきまして、第一次産業農林水産業の分配国民所得は、一兆三千億であります。これに対しまして、第二次産業の主原動力たる製造業への分配所得は一兆四千億円であります。これが大体いわゆる農工、物を交換をしていくところに国民経済の一番大きな主流があると思うのであります。もっとも、このうちから農民が自分で食うものはこれはのけますので相当減りましょう。また製造業の方は御承知のように今日二十億になんなんとする輸出がございまするので、約六千億以上のものは減るわけでありますが、あとは究局するところ農工の物々交換であろうと思うのであります。そこでそういった経済機構で、しかもまあ農林水産業の方は四割に近い人口存歴史的に持っており、しかもここには潜在失業があると、言われ、のみならず兼業農家が非常にふえておるということは、結局はこれは月給、取りもここに兼業しておるということであろうと思うのであります。つまりそういった俸給生活者の方の盛衰へのクッションにもなっている。そういった非常に国民生活上も重大なことに部門があると言わなければならぬと思うのであります。それでどうしても国民経済というものの規模を拡大して行くということがわが党もまた現政府も一貫した大方針でありまして、それに向って一生懸命進んでおられるわけでありますが、経済規模の拡大ということを考えれば、貿易もさることながら、この農工の交換の量というものもどんどんふやして行く、こういうことでなければなかなか経済規模の拡大はできまい。してみますと、この農工の経済規模の拡大ということに着眼すれば、農作物の増加ということを考えなければなりませんが、結局は今農作物で輸入しておりますものは、主要食糧を初めといたしまして、二十九年も三十年も大体五、六億というところであろうと思うのであります。そのほかにまだ多少農作物が、ございまするしまあの六億前後ということになろうかと思います。まあ三分の一はそういったものを輸入しておるわけであります。その輸入しておるものを農業の方で作っていくならば、売れない心配はないわけです。できるに従って輸入を減らせばいいことになる。一番間違いのない私は増産の方法であろうと思います。がしかしそういった機構でありますが、一番私心配しますのは、こういった国民生活に密接な食糧を六億、それから繊維原料五億、両方で十億余でありますが、かれこれ輸入額の六割でありますが、それだけのものを輸出した代金で買わなければならない。そういうことが一体今後も続けて行けるであろうか。英国等が常に問題にしているところをみましても、それでは不安です。昔のいわゆる植民地をたくさん持っておった時代とはだんだん違ってくるのでありまして、どうしてもそういった方面の自給度を高めなければほらないということで努力をしておるのでありまして、どうも私はこういった国民経済機構を何とか直す努力をしなければ不安のように実は思うのであります。外国の景気に常に一喜一憂していなければならない。幸いここ一両年は大変よろしいのでありますが、これが続くだろうかというようなことで非常にだれもが心配しておる。これらにつきましてまず企画庁長官に御所見を伺いたい、こう思います。
  171. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。お説のごとく農村における人口は大体日本の人口の四五%を占めておりますが、その経済五カ年計画におきましても経済を自立すると同時に、この人口問題と就業問題ということが一番重要な点でございまして、その点から考えてみて、農村というものの考え方は、各方面から考えていかなければならぬと思うのであります。特に経済面におきましても現在におきましてはどうしても輸出を増進しなければ——すべての産業の権衡、拡大、こういうことから輸出増進ということを指針といたしておりますが、同時に輸出を増進するということは輸入を防遇するということになりまして、御承知のごとく大多数の食糧を輸入しておりますこの日本といたしますれば、自給度を向上せしめるというととが大事な点でございまして、政府におきましても五カ年計画におきましても現在におきましては自給度は大体七九・一%になっておると、こういう状態であります。これを三十五年には八一%強に上げたい、こういう考え方でやっておりますわけであります。食糧のごときも輸入は現在以上は増加しないで、増加する人口に対しては現在以上に増加しないでそうしてまかなっていきたい、こういう関係で十分自給度の向上ということについては今後努力していきたいと考えておるのであります。
  172. 田中啓一

    ○田中啓一君 私も実は自給度の向上、ことに農産物についての自給度の向上を強く主張したいのでございますが、今もちょっと長官のお話も触れておりましたようでありましたが、さりとて私が懸念いたしますのは東南アジアとの貿易なのであります。どうも農林水産物の中でやはり将来む相当輸入しなければ輸出できない、こういう向きがあるやに私は思うのであります。そこでまあ通産大臣としまして、どの程度はやはり東南アジアから食糧その他農産物を輸入しなければならないか、もうちょっと減ずることができるのか、これはいかぬだろうか。東南アジアだけはどうも買わなければならぬというふうに思われますが、率直にお見込みをお答え願えれば非常に幸いだと思います。
  173. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 東南アジアも今後農産物ばかりでなく地下資源等の開発、が行われるでありましょうから、そうすればだいぶ様子が変って参りますが、現況におきましてはやはりタイにいたしましてもビルマにいたしましてもやはり農産物は相当、まあ少くとも現在までぐらいのものは、どうしても買わざるを得ないだろう。買いませんと日本の輸出がむずかしい、こう考えます。
  174. 田中啓一

    ○田中啓一君 もう二つ、これはついでで少し恐縮な問題でありますが、通産大臣にお伺いしたいの、でありますが、実は新聞で見ますると輸出工業者の中には、とにかくまあほかの国の輸出できるものと自分らは競争しなければならない。そこでこの輸出工業にだけは一つ日本は相当まあ輸入を制限して、食糧等は商いのだ、それだから安い輸入食糧を食わしてくれぬか。まあ食糧の二重価格でもって自分らのところだけは一つ安く食って、コストを安くして競争したいものだというような要望があるように見たことがございますが、これは別段問題になっておりませんか、いかがでありましょうか。
  175. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) お話のことは存じませんが、どうも工業者だけに安い食糧を供給するということは、これは困難である。やはり国民全体の生活が、コストが低くないといけないと思う。その点が日本の、先ほどお話のありました農業の問題で一番むずかしいところです。数量だけでなくやはり農村の生産性の問題だと思いますね。どれだけのコストで日本で食糧が供給ができるかということも同時に考えないと、ただ数量だけ国内でふやして、それで果していいかどうかということは非常に問題だと思います。
  176. 田中啓一

    ○田中啓一君 そこでまあ結局通産大臣に伺いましても、自給度を高めていく、できればまあなるべくコストを安く、自給度を高めていく、安く高めていく、こういう線でぜひいきたい、こういうお話でありまして、結局はまあ農業の生産性をいかに発展させるかということに帰するだろうと思うのでありますが、経済五カ年計画に、食糧の増産五カ年計画というものがありますが、これらの関係をどう織り込まれて、かつまた今大臣のおっしゃったようなああいうふうなことも、土地改良その他相当強力に盛り込まれているはずだと思うのでありますが、そうすれば、農業生産性が発展をして、そうして、食糧も豊常にもなり、農家の収入もふえ、同時にコストも下げられるのだというようなふうに私どもならぬかと思うのであります。がその辺のお見込みはどうでございましょうか。一つ経済五カ年計画策定の責任者にお伺いをいたしたい。これで経済企画庁長官への御質問は終りにしたいと思います。
  177. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 先ほど申しました自給度の向上ということにつきましては、まず主要食糧である米穀、これは大体二十九年に比較いたしまして、一三%、五カ年間にふやしていきたい、こういう考えであります。それに比較いたしまして、畜産物は五〇%増加するこういう方針でございます。これはどうしても今後の農村の経営というものは多角経営といったふうなことをして、農村の収入を増加するということにしていかなければならぬ。収入を増加するということは全体の生産がふえて、生産原価が下ってくる、こういうことでありますから、どうしても現在の農村はできるだけ近代科学を入れて、農村の生産意欲を増進せしめて、そうして農村の多角経営をする、こういうような方面に進んでいけば、大体この方針は貫徹し得るだろうと思います。
  178. 田中啓一

    ○田中啓一君 大体自給をしていくということもまた近代科学をとり入れて、良質、低廉、豊富にしていくと、こういう線であることも伺うことができたのでありますが、その近代科学のとり入れはいろいろあると実は思います、思いますが、どうも日本の農業の根本的な一番の欠点は、いわゆる耕作農業と家畜農業とのバランスが失われているのじゃないか。で実は水田こそは瑞穂の国だから日本は米の反当収量こそは世界一だと思っておりましたが、必ずしもどうもこれはそうは行っておらぬようであります。いわんや畑作にいたしましては、まず外国の半分だと言えそうであります。どこが違うかというと大へん家畜の数量が違う、従って田畑へ入れる有機質というものが非常に不足をしておる。日本の田畑、ことに畑においては非常な有機質不足になっておるのじゃなかろうか、まあかように思うのであります。まあこれをドイツとかデンマーク等、あるいはフランス等のあるいは農業の歴史を見ましても、どうもナポレオン戦争前に家畜が少くて非常にまあ畑作の収獲も少かったように私は思う。その後急速に家畜を増加いたしまして、そうしてまあ今日のような反当り収量を上げておるように思うのであります。これはまあ一つこの辺から農林大臣にお聞きをしたいのでございますが、実は農林大臣に、どうも日本の農業というものは家畜不足のために非常に有機質不足で、田畑の反当り収量が少いように私は思うのでありますが、そこの農林大臣の御見解一つ、まず第一に伺いたいと私は思います。
  179. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御承知の通り相当なところまで行っておりますから、しかも非常に集約農業で年々追求をしておりますから、よほどあとから有畜農業を取り入れてやっていかなければならないということは御説の通りでございます。
  180. 田中啓一

    ○田中啓一君 結局はもう農業というものは土地から物を作るのでありますから、土地の生産力を発展せしむる以外に手はないと思うのであります。いろいろ工業の方の生産性発揮ということになりますれば、資本をめどにするとか、あるいは労働をめどにするとか、いろいろございましょうが、農業としてはどうしても土地の生産力を発展せしめる。ことにわが国は人が多くて土地が少い、こういうことになっている以上は、人の手はよけいかかっても土地の生産力を発展せしめる。従ってよけいかかるということはよけい多くの人が飯が食えるということになる勘定だと思うのであります。それにはどうしても今申しましたように家畜の増加ということが、まあ大々的増加が必要であろうと実はこう思いましたところが、やはりまあ農林大臣も同じ御見解で着々政策を進めておるというお話でございます。そこで幾らか前に戻りますが、日本の農業におきましても今申しましたようにして参りますれば一〇〇%輸入をしておる砂糖にしましても、あるいは今日まあ割合から言えば五%になりましょうか、大豆にいたしましても、また家畜が増加しますれば皮革、羊毛というようなものにしましても、相当自給度を高めることができるのではばかろうか、かように実は思うのでありまして、かつまたそういったものの自給度が高まるほど土地の生産力が発展をしなければ穀物の方の生産も実は増加しない、こういうふうに思うのでありますが、さしあたりその増産に向っていくべき、着眼していくべきもの、またそれの可能性等につきまして農林大臣の御見解をお伺いをしたいと思います。
  181. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お話だんだん承わりましたが、実はわが国の国民性から申しまして、外国のようににわかに動物蛋白を食料の中に入れて参るということが、収入の点等からなかなか困難性がございます。御承知の通り鶏にいたしましても、卵の価格は決して国際的に高くはございません。しかしこれをその一日の所得から申します、やはり相当に先進国に比べて高くつきますので、少し鶏の数をふやしますと卵が暴落いたします。これは同様に酪農にいたしましてもすぐに需要が供給とマッチしないというような実情にありますので、これを、今お話のように土質の改良もしくは営農の改善等からいたしまして、なるべくすみやかに家畜の数をふやして、多角経営にしていく必要があるのでございますけれども、その畜産からくるところの需要がこれに伴いません場合がございますので、せっかく政府といたしましては食生活の改善等の面から入りまして、一方において動物蛋白を十分に取り入れることの必要性と申しますか、十分できますように一方にいたしつつ、一方農業経営の面において畜産の奨励をして参るということにしていきたいと考えております。  この際ちょっとつけ加えさしていただきたいのですが、食糧の自給度の問題でございますが、私は日本人の食糧は米の消費量にいたしましても、これは麦を米に換算しても同様でございますが、一体米の消費量が少し多過ぎるのじゃないか、これをもう少し動物蛋白に置きかえてそうしてこの消費量を減らすようにしていくことが、相当に自給度を増す上において効果があるのじゃなかろうか。一方また農民の側からしますれば畜産を奨励することの方が収益を上げる上においていいのじゃないか。そこらに今後の食生活を改善していく方向、示唆を十分理解しつつもっていく必要があるのじゃなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  182. 田中啓一

    ○田中啓一君 この農業の経営、食糧の増産並びに食糧の需要、あるいは国民の消費水準というような関連性に関しての農林大臣の御見解はまことにその通りだと実は思うのであります。どうも動物蛋白を食べるよりはとにかく米を食った方が安いのだというところが国民生活の難点なんでございます。従ってやはり動物蛋白を作るにしましてもえさの需給調整などはいろいろ苦労してやられて、少しでも安くできるようにということであり、あるいはまた流通の円滑化をはかるというようないろいろな苦心をしておられるわけでありますが、私もどうしても農家が農業経営の不可分の一環として畜産をやるようになり、えさなぞも牧草等その他自給飼料でやってコストを下げていくようにして、牛乳を飲んでもあるいは肉を食ってもそう高くない、米を食うより高くない、こういうことにしなければやはり現在の生活改善というものが困難だろうということはまことに同感でございます。そこで結局そういったことをただ上から農民の方へ押していくというだけではいかないので、何とか農民の自発的意欲を盛り上らせて、ことに青年、婦人をも加えた農業関係者というものが盛り上げるような、創意をもって一つ新しい農業計画を立てていくようにしたい。そうして農業生産の発展をしたい、そうして今の貿易面からもまた国民生活の面からも改善をしていきたい、こういうようなおつもりなのが今度の新農村計画であろう、実はこう存じまして、どうしても今、日本としてはそういった段階へきておる。政府の経済五カ年計画を遂行していく上におきましても、ぜひそうならなければならぬであろう。ここでまあ農村が飛躍的に生産力を発展していくには、そういった行き方をしなければならぬだろうと、私も同感でございますが、そこで実は考えますると、私も農林行政に縁のなかった者ではないのでございまして、これまでのことを考えてみますと、従来の農林省の行政機構と申しますか、各部局ございまして、まあそれぞれ、あるいは蚕糸局、あるいは畜産局、あるいは米麦をやっておる農産課、そこらのものをやっておる、野菜や果実や特殊の作物をやっておる特産課というようなぶうに分れておりまして、とかく自分の方で取り扱っておる、関係しておるものをよけい作るのだ、こういうことにならざるを得ない。わが仏尊しというやつだと思うのであります。無理はないことだと思うのでありまして、熱のあることはけっこうでありますが、どうも農業の総合的生産力を発展さしていくのだというようなふうには、なかなかうまくいかないのじゃないか、これを実は心配しておるわけであります。でありますから、何か今度の新農村計画について、農林省内に、行政機構的に改善を加えて、そうして総合的に農業全体の生産力を、しかも林業や水産業まで関連した村もずいぶんあるのでございますから、そういうところまで一つ総合的にものを考えて、強力に推進していくというような点を何かお考えになっていらっしゃいましょうかどうか、それを一つ伺いたい。
  183. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 実はお話のような点を十分勘案いたしまして、行政機構も、農林省内で相当大幅に今回改革することにいたしました。近日設置法の改正案を御審議願おうと思っておるのでございます。その中には、ただいま御指摘になりました新農村建設計画を主として推進するために、農村振興局、名前は単に振興局という名前にいたすことにしておりますが、振興局というものを作りまして、従来の改良局をやめまして、このものを従来の各局に移しまして、主として今御指摘のものをこの局で扱って参りたい。それからもう一点は、今回新たに農林省内にあります農村関係の試験場、研究所を取りまとめまして、これらの技術最高会議を設置いたしまして、この最高会議によって、総合的にこの新農村建設計画と見合いつつ研究の方向をきめて、そうしてもっていこうということで、この会議を新たに設置するということにいたしてやって参りたいということにきめて、目下一両日中に成案を得て、次の閣議ぐらいにこれを御相談を願って、国会に提案いたしたいと思って準備しておるわけでございます。
  184. 田中啓一

    ○田中啓一君 まあ国民経済の中における農林水農業の地位並びに今後どう他の部門と調整をしていくかということにつきましては以上のようなことでございます。  そこで大蔵大臣に最後にお伺いしたいと思うのでありますが、結局こういうことをやって参ります、ことに農林省の今、農村振興局とおっしゃったのは、工業界における生産性本部みたいなおそらくお考えであろう、言葉は違いましょうけれども、おそらくそういう精神のものであろうと思うのであります。そうしてこれまでの施策をここに集中をして、強力に進めていくことになるわけでありますが、結局やることは、やはり開墾とか干拓とか、あるいは土地改良でありますとか、あるいは農業の有畜化、あるいは機械化というようなことになると思うのであります。これには結局農民は非常に資本が乏しいわけでありまして、こういった面に対して大きく資本を投下していくほかはない。しかもそれは国の力によらずんば、北海道の農家のごときは、毎戸十万円ずつ借金を持っておる、こういう状態であります。いかに北海道の農業の開発が有望でも、とても農民自身の手ではいかんとも仕方がない、村方によりまして多少事情は異なりますけれども、概して申せば、とうてい商工業のようなふうにはいかないわけでありまして、どうしても金はかかると思うのであります。本年度の予算はしばしば大蔵大臣御説明通り、通貨の安定予算であり、八合目ミルク予算というようなところでありますが、今のように、私は国民経済規模の拡大ということ以外には、実は雇用の増大も、生活水準の向上もあり得ないのでありまして、それに向って強力にいくには、あるいは民間資本、あるいは国家資本を巧みにあんばいして投下していく、これ以外には道はないと思うのであります。でありますから、さだめし大蔵大臣としましては、今日の予算をお作りになりますには、また来年以後の予算編成についても、長期財政計画と申しますか、何らかのお考えはむろんお持ちだろうと存ずるのでありますが、今私が申し上げたようなふうの方向へ相当国の金も入れていこうというようなお考えでありましょうか、その辺のところを一つ最後に、総理大臣はいらっしゃいませんので、大蔵大臣に締めくくりとしてお伺いしておきたいと思う次第であります。
  185. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。ただいま農業政策あるいは農政その他について御意見がありましたが、私ども全く同感でありまして、できるだけ国内資源の開発の最も大事なものとして食糧の増産を、あるいは農地の開発をやらなくちゃならぬと、かように考えております。従いまして仰せのように、これには相当財政的な資金を必要といたします。ただ御承知のように財力にやはり限界がありまして、一方、また国民の税負担を考えなくちゃならぬ。農業の増産のために財政資金をできるだけ配分いたしたいのでありますが、必ずしも十分に従来いっていなかったかもしれません。ただ今後五カ年計画を政府が策定しておりまして、この五カ年計画のうちにはむろん今後における食糧の増産あるいは農業に対するいろいろの施策は盛ってあります。できるだけこの実現を財政上からも期したいと思います。なおひとり農地の開発、食糧の増産は財政負担ばかりではありません、金融面からも考えていかなくてはならないでしょう。が、しかし御承知のように、農業に要する資金は長期のものであり、かつ金利の安いものでなければなりません関係から、従来の資本蓄積の状況から容易にこれが実現を見出し得なかったのでありますが、最近の金融情勢からすれば徐々にそういう方向に進んでおります。なお貿易とも関連いたしまして、食糧増産については私は外資の導入ということを考えてよかろう、かように考えておりまして、できるだけ今後御希望に沿いたいと思います。
  186. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時十一分散会