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1956-03-12 第24回国会 参議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月十二日(月曜日)    午前十一時五分開会     ―――――――――――――    委員の異動 本日委員佐多忠隆君辞任につき、その 補欠として菊川孝夫君を議長において 指名した。     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     西郷吉之助君    理事           池田宇右衞門君            堀  末治君            三浦 義男君            安井  謙君            秋山 長造君            豊田 雅孝君            中山 福藏君    委員            青木 一男君            石坂 豊一君            井上 清一君            伊能 芳雄君            川村 松助君            木内 四郎君            佐野  廣君            田中 啓一君            西岡 ハル君            野村吉三郎君            藤野 繁雄君            吉田 萬次君            亀田 得治君            菊川 孝夫君            竹中 勝男君            戸叶  武君            館  哲二君            廣瀬 久忠君            木村禧八郎君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    外 務 大 臣 重光  葵君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 清瀬 一郎君    厚 生 大 臣 小林 英三君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  石橋 湛山君    運 輸 大 臣 吉野 信次君    労 働 大 臣 倉石 忠雄君    国 務 大 臣 高碕達之助君    国 務 大 臣 船田  中君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    総理府恩給局長 三橋 則雄君    行政管理政務次    官       宇都宮徳馬君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 林  一夫君    防衛庁経理局長 北島 武雄君    防衛庁装備局長 久保 龜夫君    経済企画庁審議    官       細田茂三郎君    経済企画庁調整    部長      小山 雄二君    経済企画庁計画    部長      大来佐武郎君    外務政務次官  森下 國雄君    外務事務官   法眼 晋作君    外務事務官    (公使)    木村四郎七君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主計局次    長       原  純夫君    大蔵省主税局長 渡邊喜久造君    大蔵省理財局長 河野 通一君    大蔵省管財局長 正示啓次郎君    大蔵省為替局長 石田  正君    厚生大臣官房会    計課長     堀岡 吉次君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省医務局長 曾田 長宗君    厚生省社会局長 安田  巌君    厚生省児童局長 高田 浩運君    厚生省保険局長 高田 正巳君    農林政務次官  大石 武一君    農林大臣官房長 谷垣 專一君    運輸省海運局長 粟澤 一男君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和三十一年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十一年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十一年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を開会いたします。  本日より昭和三十一年度総予算案に対する一般、質疑に入ります。  なお、御報告申し上げますが、佐多忠隆君が辞任されまして、菊川孝夫君が委員に入られました。菊川孝夫君。
  3. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 まず大蔵大臣にお伺いいたしますが、ことしの予算編成に当りまして、各大臣から猛烈に復活要求がされまして、さすがの大蔵大臣予算閣議において各大臣からつるし上げを食うというような状態であった。中で船田防衛庁長官だけは涼しい顔をして、防衛庁から予算復活を強く要望しているというような話をわれわれは聞かなかったのであります。軍事費につきましては、新しい言葉で言いますと防衛費でありますが、旧来から軍事費復活ということは、予算編成上の一番重要問題になったのであります。ところが今年、まあ昔の平時編成でいきますと約一個師団半陸上自衛隊、すなわち陸軍が知らぬうちにふえるのであります。それにもかかわらず防衛庁予算折衝はきわめてスムースに行われたということは、われわれも奇異の感を抱くのでありますが、そこで大蔵大臣にお伺いするのは、予算編成に当っては、この防衛関係費というものはまず優先的に大蔵省の方で確保したのであるかどうか。それから第二点にお伺いしたいのは、この防衛関係費は単に日本政府意向のみによってはこれはできないものであって、やはり日米安全保障条約の精神に従って、アメリカと緊密な折衝の結果、まず優先的に確保する、そのためにアメリカ意向を無視しては編成できないものにあるかどうか、この二点をお伺いいたしたい。
  4. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。防衛庁費を優先的に考えたということはございません。これは予算全体の立場から割り振りを考えておるわけでありますが、なお、防衛庁予算については、防衛庁大蔵当局におきまして、しさいに防衛庁の方の要求を査定をいたしまして、そうしてこれを積み上げまして日本の国力に応じて防衛力を漸増するという線にのっとりまして組んだわけでございます。
  5. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それでは防衛支出金の一応減額アメリカ折衝の結果認められた。その反対に今度は自衛隊経費が増額されておる。これはやはり自衛隊経費増額を条件として、防衛支出金減額を認められたものであるか。ただそれとは関係なしに、防衛支出金減額を向うは承認したものであるかどうか、この点をお伺いいたしたい。
  6. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これはアメリカ日本との協定によりまして、相互において日本防衛力を適当に増加するということを期待されて、そういう話し合いになっておると考えておるのでありますが、従って日本防衛力が増加するにつれて、分担金についてアメリカ減額を考慮する、かように話し合いでなっておるのであります。
  7. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それでは防衛支出金はだんだんと減ってきておるのでありますけれども、一体この防衛支出金の減り方につきまして、この予算説明によりますと、三百億となっているのだが、これ以上はもう減額の余地がないものであるか、それとも自衛隊をどんどんふやしていくに従って、これはもうしまいにはゼロになる。従って私のお聞きしたいのは、アメリカ兵隊がおっても、自衛隊さえふえればもう防衛支出金がなしにやれるものか、それともおる以上は、何らかの防衛支出金はあくまでもこちらで負担しなければならぬものであるかどうか、この点をお伺いしたい。
  8. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は日本防衛力の増強につれて分担金減額されていき、自然になくなっていく、かように考えておるわけであります。将来、これは防衛庁長官の御答弁の方がいいと思いますが、何らかの理由で、アメリカ兵隊がおるという場合におけるその措置については、またそのときに考えられていくものではなかろうかと思っております。
  9. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に、健全財政ということを大蔵大臣も固持しておられるんだが、健全財政というのは、国全般健全財政であって赤字を出さぬということだとわれわれは理解するんだが、地方財政がどこでもほとんど赤字を出しているというときに、ただ国財政だけが歳入歳出均衡がとれておって、地方赤字を出しておっても、これを健全財政と言えるか。すなわち国の均衡のとれたのは地方にしわが寄って、地方でどんどん赤字を出していくということになったんでは、せっかくの国の健全財政意義がないと私どもは考えるんだが、この点は大蔵大臣はどう考えられるかお伺いしたい。
  10. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 財政健全性ということが中央地方を通じてのものであるべきことは私御意見通りと思います。ただ日本がああいう戦争をやりまして、ああいう負け方をいたしました。そのあとの日本財政健全性を取り戻すためにどういうふうにやっていくかというところが私問題であると思う。むろんすみやかに中央地方を通じて財政健全を実現することに努力することは言うまでもありませんが、そのやり方について、あるいは中央地方も平均的にいくというのが一つのある行き方かもしれません。しかし同時に行政機構等において相違もありましょう。これの変革を要する点もありましょうから、なかなかむずかしい点もありますが、今日におきましては地方財政がなお十分な健全性を持っていないということは、これは率直に考えなくちゃならない。今日のこの財政をいかに健全化するかということに努力を払っておるというのが今の段階であるのであります。
  11. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 赤字公債発行しないという建前をとっておられる。国の財政ではとっておられるが、地方では、地方自治体における財政問題といったら、もうほとんど起債に狂奔していると言っても言い過ぎではないというような状態であります。地方起債というのは要するに公債だと思う、赤字だと思うのですが、さて国はなるほど公債発行しない、地方はどんどん発行しているというんでは、これはほとんど赤字公債発行しないという意義はないと思うのでありますが、この点、国さえ発行しなければ、公債政策はとらないということを言って平然としておられるものかどうか。国の公債というものと地方債というものは全然意義の違うものであるかどうか、この点重ねてお伺いしておきたい。
  12. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。地方債がすべて赤字の借り入れであるとは考えませんが、しかしやはり地方債は今日のように膨張しておるということは適当でありません。特に地方債発行をもって地方財政普通歳入に充てるというようなことがあるといたしますれば、これはむろん私賛成できません。従いまして、今日この地方財政をいかに健全化するかということに関連しまして、大きな問題は、やはり地方債処理であります。私どもといたしましては、できるだけ今後地方債発行を少くして、だんだんと減らしていって、しかも地方財政が成り立っていくようなあり方にいたしたい、かように考えておるわけであります。さしあたり、まず普通地方債をなるべく減らして、そして公営事業地方債はある程度認めていく、こういうような行き方に三十一年は変えて、全体の起債額を思うように減額できなかったことは私も遺憾に思っております。今後税制根本的改革をいたしまして、これは中央地方を通じてのことでありますが、この税制改革ともにらみ合せまして、今後地方債処理に万全を尽したいと、かように考えております。
  13. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それじゃ地方債公債も大した違いのないものであって、なるほど国が公債発行しなくても地方地方債発行するということは、国の健全財政をとるという建前からして好ましくないということだけは大蔵大臣もお認めになるわけですな。  次に民間資金活用千三百九十七億を見込むと言っておられますが、一体これはどういう方法で民間資金活用をせられようとするのか。すなわち市中銀行へどれだけ、あるいは地方銀行へどれだけ、あるいは相互銀行へどれだけ、こういうふうな割当をするつもりであるか、それとも日銀を通じてやられるつもりであるか、その点どういうふうに活用されようとしておるのか、伺っておきたい。
  14. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 従来この産業資金につきましては、本来民間資金でまかなわるべきものが、民間資金蓄積量の点並びに金利点等から、それが実行ができなくて、財政資金によっておった分が少くないのであります。これが金融状況変化によって、民間資金量もふえまして、金利も相当低下し、なお、今後も下るという状況になって参りましたので、これらの民間に移していい産業資金というものを民間に移す。具体的に、たとえば開発銀行等からずいぶん鉄鋼関係資金も出ております。あるいは造船資金もずいぶん出ておる、あるいは電力についても……。こういうようなものは民間に移してよくなったと私は考えておるのでありまして、移し方については、あまり急激な変化も避けねばなりませんので、従来協調融資になっておる市中銀行開発銀行とがそれぞれ協力して融資している、その割合を徐々に変更を加えて、なるべく民間資金が多く参加する、かような仕組み。さらにまた金融債等長期資金を出します。たとえば興業銀行とかあるいは長期信用銀行とか、こういう銀行等の債券の発行について、財政資金で引き受けた分を民間資金でこれを引き受けさせる。あるいはまた社債市場相当消化力を持つに至りましたので、従来資金によった分も含めて社債発行して、民間資金に移す、かように考えておるわけでありまして、私は今日の資金状況等から見れば、これは金融関係にまかしておいても十分調達を可能ならしめる、かように考えておるわけであります。
  15. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると、これはまかしておくのであって、千三百九十七億、四百億くらいの命はまかしておいて、自然にそうなるだろう、こういうあなたの方の期待が、もしできなければ何らかの強制的な手を打つ覚悟を持って、こういうような予算編成されたのかどうか。
  16. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) あるいはまかすという言葉が俗語になりまして、誤解を招くかもしれませんが、今日のこの資金量等からすれば、御承知のように、今日もすでにそうでありますが、漸次借り手市場金融市場がなっている。そうしてまたこの資金量も今後一そうその程度が強くなってくると考えておる次第であります。従いましてそこに、政府においても五カ年計画も立てております。これに基いて具体的な考え方もはっきりして来る、こういうようなことで、これを受けて私も資金委員会というものを大蔵大臣諮問機関として作りたい、かように考えておりますので、この資金委員会資金流れ等についての極く基本的な点をはっきりして行く。こういうようなものを受けまして民間における融資委員会、これはまあ名前はあるいは正確でないかもしれませんが、民間の自主的な融資を経営する委員会、これが自主的に資金を受けて資金を供給する。かようにすれば、きわめて弾力性を持ち、かつ適正に資金が流れる、かように考えておるわけであります。
  17. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に、この予算も一兆三百四十九億の総ワクにするために、相当無理をして私は編成をされておるように見えるのであります。従いまして、どちらかと申しますと、余裕と申しますか、幅はきわめて少いように思う。従来は割合に租税の自然増収なんかも見込まれるように、私ども見ましても大間考えられましたが、これはもう自然増収もあまり見込まれるように思わぬ。従って不時災害等、三十年度のように無事におさまればいいが、三十一年度において、三十年度通りにうまく行くと、あまり楽観的に考えるわけにも行かぬので、ある程度は不時の備えもして、おかなきゃならぬと思う。そういう際にたちまち困ると思うのだが、そういう際も、大蔵大臣はあくまでも三十一年度においてはせめて公債だけは発行しない、この方針だけは堅持して行くつもりであるかどうか。これを伺いたいと思います。
  18. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 三十一年度の予算弾力性があるかどうかという問題のようでありますが、何さま今日一般歳入に比しまして、歳出といいますか、財政需要が非常に大きい。これが日本の今日の現状であるので、できるだけこれを重点的にとりまして、支出の抑制をはかったのでありますが、それにいたしましても相当私はやはり歳入歳出との関係において、従前に比べて弾力性を少くいたしておるということは、これは私も率直に認めざるを得ないと考えます。まあこれが今日、日本における現状である、姿であるとも言い得ると思います。まあやむを得ない。今後ある程度弾力性を持つように、日本財政を持ってゆくことが必要であると考えております。ただしかし、余り弾力性を持つということも、これはまたやはり財政としても問題があるかと思っております。  なお、三十一年度において、公債発行する意思はないかという御質問につきましては、私は公債発行することは考えておらぬわけであります。
  19. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 重光外務大臣が御出席になりましたので、外務大臣にお伺いしますが、現在の世界情勢下におきまして、アメリカの大統領の演説と、ソビエト共産党幹部演説は、何と言っても日本外務省として、これを正しく把握いたしまして、これに対する態度というものを立てて行かなければ、決定して行かなければならぬと思うのでありますが、そこで、ソ連共産党大会におけるフルシチョフと、ミコヤン演説は、従来私どもが受けておった、聞いておったソ連共産党幹部演説とは、ずいぶん性格の変ったものが、大胆率直に打ち出されたと思うのであります。なお、その後意外に感じましたのは、トロッキーに対する態度まで、まるっきり変ってきた。ちょうど日本の昔の、歴史で言うならば、足利尊氏が忠臣になったようなものであります。こういう情勢変化に対しまして、従来外務省は、第三課ですか、あそこで立てておった、昔の古いレーニンの論文であるとか、あるいはスターリン演説集というものを根拠にして、極端な反共思想を、外務省のどこから出ているかは知りませんが、名前を言えというなら、権威者名前を申し上げてもいいと思うのですが、そういう考え方の上に立って国会の答弁でも、また外務省ソビエトに対する態度もとっておられたように私は見受けられるのでありますが、この重大なソビエト態度変更に対しまして、当面の外交責任者である重光外務大臣が、これをいかに把握し、これに対していかに対処しようとせられるか。なかんずくロンゴンにおいて日ソ交渉が開かれている現在、きわめて重大なことだと思いますので、ここで詳しく、一つ外務大臣からわかりやすく御説明を願いたいと存じます。
  20. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 非常にむずかしい御質問でございますが、私の及ぶ限りの御答弁を申し上げたいと思います。お話の通りに、外交運用に当りましては、世界の動き、情勢というものを正確に判断し、これを把握するということが基礎になることは言うまでもございません。しかして、今日世界を動かしている有力な国といたしましては米国あり、ソ連あることも言うをまちません。従いまして、これらの有力な国々の指導者言動ということは、その片鱗も見のがすことはならないのでございます。従いましてそれにつきましては、私どもといたしましては、自分の力の及ぶ限り検討を従来ともいたしているわけでございます。またそのつもりで政策運用いたしております。従いまして従来の政策が、ただ気持の問題で動いているというようなことはないつもりでございます。そういうものの検討の上に立った政策及び言動をいたしているつもりでございますが、これはいろいろ御批評もあるようでございますから、それはそれにしておきまして、そこで今回のソ連の、第二十回党大会におけるソ連指導者言動というものは、実にこれは重要な意義を持っているものである、こう考えます。特にお話しの通りに、党部首脳者でありまするフルシチョフ氏の演説、これはもう四時間も続いたそうでございます。しかしその主要の点は、全部ソ連の発表によりまして正確に受けておりまするから、それは十分研究をいたしております。それからまた引き続いて行われた副首相ミコヤン氏の演説もきわめて重要なものであって、特に対外関係においてこの演説は非常に異議を持つものだと、こう考えて検討をいたしておるわけであります。  そこで、その点について詳しい批判を一々いたしますことは、これは容易ではございません。しかしこのソ連首脳者発言が、重要なる意義ソ連内外政策に対して持っておるということは、世界の有力なる評論家においてほとんど一致した意見でございます。そして、それではそういう重要な発言がどうして行われたかとか、その発言の内容は一体一部々々どういうことを意味しておるのだと、そういう第二段的の問題につきましては、世界評論家意見は非常に分れておるようでございます。ございますが、今言われました通りに、大体これまでの独裁者スターリンやり方内外に対するやり方は、これは非常に批判をいたしておりますわけでございます。スターリンやり方をやめて、今後は集団指導、つまりみんなで相談して、中央党部において首脳者が相談をしてやろう、こういうことになったということをはっきり申しております。私自身としては大体それを信じます。もっとも評論家の中には、そうじゃない、フルシチョフ一人でやるのだというような批評もございますけれども、私はその後のやり方は、大体マレンコフ政権もこれに含めて、そういうスターリン式やり方を訂正をするという方向に向いたということを信じます。しかしいずれの演説もマルクス・レーニン主義はあくまで維持するのだ。それは少しも変りはないのだということを非常に力説しておるようでございます。そこでやはり共産党やり方、とくに対外政策としては、大体政策運用スターリン式から新たに集団指導制の型に変えてきたと、こういうことじゃないかと思っておるのでございます。そこで対外的については、さような従来の行き方とはだいぶ違った方向に向くのだということは、これは明らかに頭におかなければならんと思います。  そこでゼネバ会談前後からのソ連やり方は、ヨーロッパに対しても、それから、またアジアに対しても、その重きが異なっておる。ヨーロッパ以外の地域に対しては、ソ連やり方は非常に経済政策運用ということに重きを置いて、それによって外国にソ連の勢力を伸ばすと申しますか、ソ連をよく了解さしてソ連の力をその方に伸していこうという考え方を非常に持っておるようであります。それはアジアに対しても、それからアジア以外のアフリカに対しても、中南米に対しても、それが行なわれておる。こういうことで、かような点については、西欧側と申しますか、米英側も非常に注意して、これに対策を講じつつあるようでございます。  日本といたしましても、その変化に伴って十分に一つ対策をも講じなければならぬと思います。しかし今回のソ連政策運用変化が、日本に対してすべて根本的の考え方、またやり方日本に対しては変えてきたのだ、こういうふうに判断する材料は少しもございません。従いまして、ロンドンにおける日ソ交渉に対して、これがどう影響するか、ということを非常に注意深く私は見ておるのでございますが、これは、従来のソ連の主張を少しも曲げる、もしくは変更をする様子は見えません。さようなわけでございますから、日ソ交渉日本としても、また従来の方針を十分堅持して進んでいって差しつかえない、こう思っておるわけでございます。しかしながら一般問題  としてソ連の将来の政策運用ということを十分に検討し、注意をして、これに対応する方策をいろいろ検討しなければならぬということは当然のことでございますので、そのことを十分に今、努力をいたしておる次第でございます。  大体以上のことで御了承を得たいと存じます。
  21. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 どうもながなが御答弁を願ったが、あまり要領を得ないので、新聞を読んでもわかる経度の御説明だったんだが、外務大臣として今重要な日ソ交渉を目前に控えまして、ああいう指導者発言が行われたら、ときを移さずこれをとらえて立ち上って、受けて立つというだけの私は雅量を示すべきだと思う。ということは、ああいう態度は今までよりはいいことはいい。今までとった態度よりは歓迎すべきだと思う。従ってこれは受けて立って、この機会をのがさずに日ソ交渉を解決するという方向に私は持っていくべきだと思う。ところがほとんど新聞の論説を聞いているような御説明態度の表明よりなかったのは非常に残念でありますが、お前の方はいいことを言った。そうなら、なぜいまだに戦犯だといって抑留しているような日本人を早く帰さんか、というふうに立つべきであり、それから向うがそういう態度で出てくるのならば、率直に申しまして、今、鳩山さんが相当あせって考えておられるような早期妥結の方向をむしろとって、そして領土問題あるいは漁業問題、通商問題等はあとへ回す。こういうときこそ、時期をとらえてやるべきじゃないかというふうに思うのであります。と申しますのは、向うで抑留されている同胞は、もうすでに十年の長い間、シベリアの酷寒で厳冬を迎え、今年こそは帰れると思って期待しておったにもかかわらず、まだ帰れないのであります。ぐうたらな外交で、いつまでも引っ張っておかれる。またこちらはそれに乗っていくといいますか、引きずり回されているということでは、いつまでたってもこれは帰れない。向うに抑留されている人たちのことを考えたときに、何もこちらはソビエトに戦争をしかけたんじゃないのだから、戦犯じゃないといってみたところで、実力をもって取り返すわけにいかないのでありますから、これはどうしても外交交渉で解決しなければならぬのでありますから、こういうのを控えている以上は、どうしてもしっかりと腰を落ちつけなければ私は交渉はできないと思う。ロシア人の国民性、民族性というものは、重光外務大臣よくおわかりのはずであります。これは、そんな半年や一年で、しかも鳩山さん、どちらかと申しますと、まあおからだの関係もあって、何らか在任中に一つあっといわせるような功績を残しておきたいというあせりがわれわれに見えるわけであります。特に指導者があせってはだめだ。こういう国際情勢下においてまあソビエトの、アメリカでもですが、ソビエト指導者があせったらソビエトが負けだし、アメリカ指導者があせったらアメリカの負けです。まして日本指導者鳩山さんがからだの関係上非常にあせっておられるようでありますが、あせられるとこれはとてもうまくいくものではない。あせらないようにするためには、できるだけそうした国民の感情からしてがまんのできないような問題は先に解決して、そうして少々おくれてもどうせおくれついでだというような、領土問題、漁業問題等はあと回しにするという行き方がむしろ利口だと思うのでありますが、この点について重光外務大臣一つお考えを伺っておきたい。
  22. 重光葵

    国務大臣重光葵君) ソ連首脳者言動に対する私の考え方を実は率直に申し上げたつもりでございます。それに対していろいろ御批評はこれは伺うことにいたしておきます。私はそう考えるのであります。  それからまたソ連との関係について事を急いではいかぬ、言うべきことは大いに言わなければいけないが、事を急いではいかぬ、じっくりと一つやって目的を産しなければいかぬ、私はその通りだと思います。  そこで今、最初の部分についてですが、ソ連がこういう態度党大会で表示したのだから、それを受けて立ってすぐ一つ承諾して、日ソ交渉でもまとめて早期解決をやるべきだというようなふうな御意見もちょっと言われました。私はソ連政策変更ということは、いい部分もたくさんにあると私は実は思っております。いい部分もあると思っているけれども、日ソの間にはすでに交渉をやっておるのである。やっておるのであるから、そのいい政策に変ったならば、交渉においてはっきりそれを示してもらわなければならぬ。そこで交渉以外のところで、公開の席でさような一般的な議論をして、それにすぐ飛びついて、そうして具体的の問題について、日本ソ連の言う通りにこれをするということになったら、これは交渉は私は十二分というわけにはいかぬ。それでソ連はそれだけの何をもって、一般方策を変えて、日本に対する態度をも変えて、日本要求をもいれるということの実際の何を交渉において示してもらえば、日本としてはそれを非常に多として、そうして日本もこの交渉をさらに進めることに努力をしいいということになってくると思います。私は順序としてそうであります。そこで今最後に言われた通りに、ソ連のことについてはとくと検討をして、急ぐべきものは急ぎ、またじっくりと取っ組んで進まなければならぬところはじっくりとやるべきだという御意見の大体のことについて、私もそう考えております。  それからの引揚者のことにつきましてお話がありました。まことに私はその通りです。引揚者は早く、実をいえば私は、戦犯であるとか何とかいう議論をしておるのじゃない、早く帰してくれればいいのだと実は思っております。そういう空論にふけっておるわけではございません。ソ連一般政策から見ても、これは抑留者だけは早く帰してもらいたいのだということば、ロンドンにおいても松本全権が繰り返し繰り返し再開後も要求をしておる次第でございます。何らか反響があることを私は期待しております。さようなことで交渉の空気もよくなります。そうして先へ進めたい、こう考えておる次第であります。
  23. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私の質問をちょっと誤解されたようでありますが、こういった新たな事態に対して、日本政府として、松本全権に対して何らかの新しい指令、訓令を発したかどうか、既定方針通りで進め、こういうだけであるかどうか、この点を伺います。
  24. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今の新しい情勢に対しては新しい対策をもって進まなければいかぬということは、これは一般訓令でございます。しかし、日本日ソ交渉に対する要求をどういう工合にするかということは、この要求と申しますか、日本の主張でございます、それは従来の通りの主張である、こういうことになっておるわけでございます。御了承願います。
  25. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それでは最後に、日ソ交渉には一応やはり重光外務大臣も目標をつけてということは、私は、懸案の解決につきましてはじっくりやることも、これはどうせおくれついでであるからやむを得ないというのだが、せめて向うに抑留されておる人たちは早く帰して、その上で腰を落ちつけてやる、こういう主義、だからその抑留者のせめて見通しぐらいは立つかどうか、それもかいもく立たぬのかどうか、この点だけ最後に一つ伺っておきます。
  26. 重光葵

    国務大臣重光葵君) その点については前にたびたび状況を御説明いたします機会があったと記憶をいたしております。抑留者を帰してもらいたいということは、これは平和条約、国交回復の問題とは離れて、これだけは一つ解決をしてもらわなければならぬのだ、これは人道の問題からいっても当然のことであるというので、ずいぶん繰り返し要求したのでございます。ソ連側の方は、従来はこれは平和が、国交が回復すればいつでも帰してやるということであったことを御報告を申し上げておきました。私どもはどうも国交が回復する、すなわち平和条約を作る、ロンドン交渉を解決する、すぐ妥結に導くということを条件にして、この人道問題である抑留者の問題を引き延ばすということは、私はどうも合点がいかぬのでございます。これはそういう国交回復の交渉とは離れて、そうして人道問題として一日も早く処理をしてもらうということが、どうしても私は人道上の見地からいってもこれは私は正当な、主張だと思って、なるべく一つそれを実現するように今向うを常に、同じことでございますが、常に説得することに努めておるわけでございます。私は実際問題としても、そういうことは漸次向うの耳には入って、向うを動かす力ができつつあるであろうと思います。これはしかし全部が全部、いつ帰してくれるかということを、私は今すぐ帰すということを見込みをつけたとは申し上げられません。ソ連の言い分は変らないのでございます。しかしながら、これはもうあくまで繰り返して日本側の正当と信ずる主張、要請をしていけば、あるいは少しずつでもこれは実現をし得る問題だと、こういうふうに考えて今努力をいたしておる次第でございます。
  27. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 外務大臣日本ではソ連通であるべきはずであって、私はこういうことを申し上げるのはどうかと思いますが、今、人道問題というようなことを盛んに言われるのでありますが、これは人道問題を、ソビエト人に人道問題だと言って訴えても、向うの連中にはぴんとこないのです。それは向うのソビエト人でも、国内の本国人でさえも、監獄へぶち込んでシベリアへ流されてしまったら、戸籍もわからなくなったり、故郷はどこにあるのかわからなくなるというあれだけ大きな国ですから、アメリカでも字の書けない者も、戸籍もわからない者がたくさんあるのですから、ソビエトも同様だと思う。日本のようなスケールで考えたらとんでもないことだ。日本のような尺度で人道問題だといって、こちらで残っているからと言ったところで、向うの人間から考えると、そんなことはもういわゆる共産主義革命三十年のかれらは訓練を受けてきているので、こちらの考える人道問題とだいぶ違うと思う、ずれている。人道問題ばかりでこれは幾らこうしておっても解決はつかない。むしろやはり向うの方の利害関係だと思う。だからこれを全然度外視してしまって、人道問題、人道問題といっておったのでは、これは赤十字会のやることであって、外務省のやることではないように私は考えるのだが、この点もとくと一つ御勘考を願わなければだめだと思う。
  28. 重光葵

    国務大臣重光葵君) この点につきましては、私はそういう御観察はごもっともだと思います。ソ連、共産主義国がすべて科学的な、利害関係において動くということの見方はその通りでございます。しかし、ソ連といえども世界の世論、この問題に対する世界の世論というようなことについては、利害関係の問題としてある考慮を払わなきゃならぬことは当然でございます。日本が正当と信ずる人道問題をひっさげてゆき、それが国際連合その他の場所においてもっともだという感じが起る場合においては、ソ連にも相当影響を私は与えると思う。それを私は怠ってはならぬ、また当然これはやらなきやならぬ。それじゃそういう抑留者を帰してくれるから、どういう利害の交換条件を出すかというようなことは、私は今問題にすべきじゃないと、こう考えるのでございます。
  29. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に、それでは簡単に、今、日ソ交渉についてお伺いしましたが、次に重大な外交問題は何としても日比賠償だが、今、重光大臣がここへお見えになる前にその話をつけてこられたと思うのでございますが、いよいよ最終的に決定して、調印を待つばかりになったのかどうか。それからわれわれの今まで聞いているところによると、五億ドルは資本財で、三千万ドルは費用で、二千万ドルは現金で、三億五千万ドルは民間の借款だ、この基本線には変りないですか、これで進むことになる……。この最終決定をするに当って旧自由党系の人たちは、これだけは一つ認めてやろう、そのかわりに日ソ交渉はなかなか鳩山総理の思う通りにはやらせぬぞというひもつきで、この日比賠償問題がどうやら党内で調整はついたというようなことを聞いているのだが、巷間伝えられておるが、そういうことはあるのかないのか。  それから私が今申し上げた数字というものは、これは政府で今決定されたもので、もうこれは動かすことのできないものかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  30. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 日比賠償の問題でございます。日比賠償の問題はなるべくすみやかに解決したい、またすべきであるという方針で進んでおることはたびたび申し上げた通りでありまして、御了承を得ておると私は信じております。  今御質問の点で、日比賠償の問題は、大体のワクについては双方の了解ができたということを、この前この委員会だったと思いますが、御説明申し上げました。それは今言われたことと大同小異でございます。つまり五億五千はこれは賠償の方としてやるのだ、しかしやっぱりこの問題を円満に解決するためにはさらに経済協力という方面も考える必要があるので、三億五千万ドルの経済協力を、民間借款をやるという大体のワクでこれが妥結をみておることは報告申し上げました通りでございます。その大体のワクの中で取りきめをするのでございますから、いろいろと漏れのないように取りきめを、正式取りきめをいたさなければなりません。その段取りにすぐかかることに相なっておるのでございまして、しかし調印とまではまだ参りません。それができました上でまたそれをこしらえ上げるために全権団を派遣するという段取りになる、こういう状況でございます。  それから日比賠償の問題について政府の与党の内部でいろいろ議論があったということは、これはその通りでございます。いろいろ考え方がございました。それについてはとくと協議もいたしますし、そして事情もよく話し合いをいたしました。大体この話し合いがつきましたことも事実でございます。しかしそれは何も……、それでは日比賠償をこうするから日ソ交渉をこうしろ、そういうようなことは私は今初めて実は伺いました。日ソ交渉も日比賠償も、私どもとしては一応考え方としてはすでにもう自由民主党の結党のときに輪郭はできておるのでございますから、それによって自由民主党を基礎とした政府ができておるわけでございますから、政府方針はそのワクを忠実に尊重していくという方針できておるのでございまして、双方ともできるだけその方針のもとにおいてすみやかに妥結をみるように努力しなければならぬというので一生懸命にやっておるわけでございます。一方ができて一方ができぬ方がいい、そういうようなふうな考え方話し合いにもございませんし、またわれわれの考え方には少しも入っておらぬのでございます。その点を御了承得たいと考えるのでございます。
  31. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 最後に、外務大臣がここで答弁をされるところはなるほど理屈に一応合っているのだが、われわれ局外から見ておりますると、ややもすると重要な問題について外務大臣がほんとうの肝心なところになってくると、どうかすると鳩山総理大臣意見を異にするとか、あるいは外務大臣がどちらかというとちょっとたな上げをされて、ほんとうの大事な点の手を打つときには鳩山、河野、これらの連中の間できめられて、いよいよあとであなたは聞かされてあわてるというような印象を受ける。そんなことはあってはならぬし、事外交に関する限りはやっぱりあなたは副総理であるし、最高責任者としてあくまでも細大漏らさず、責任を持って局に当られるべきであるのであって、そんなことはあってはならぬと思うのだけれども、どうも局外から見ておりまするとその危険多分にあるわけであります。こういうことが海外に与える影響というものは特に悪い影響を与えると思うので、今後はこういうことのないように、いやしくも外交に関することはまずあなたが先にすべて態度をきめ、情報をつかんで、そうして、これを閣議に諮る、こういう方法、あるいは総理と相談するにしても、あなたと総理がまず協議されて、その上で閣議へ諮る、こういう方針でやってもらわないと、一部の閣僚が先に相談して、結局外務省はその方針に従って動くというのでは、動くような印象を与えるということは好ましくないと思うので、今後は十分注意してもらわなければならぬ、こういうふうに思いますので、これは意見として申し述べ、第二にお尋ねしたいのは、ここで一つ外務省もとっくりと考えてもらいたいと思うのであります。  どうも最近の外務省はいわゆる三代目外交になってしまった。なるほど明治初年におきましての外交官というのは、一応鍛えられた、筋金の入った外交官だったと思うのです。従って外国と折衝をするに当りましても、日本の国を背負って立つという気概をもってとにかく立っておると思うのだが、どうも最近の外務省態度を見ておりますると、なるほど時の権力者には追従することが非常にお上手であって、栄進を望むような官僚主義というものにどうも堕し過ぎているのではないかということをおそれるのであります。と申しますのは、まあ外務省には大学の優秀な秀才が、外交官試験を通って採用されて、大体外務省の定石としては、在学中に外交官試験をパスし、それが秀才であるからというので、迎えられて旧華族の令嬢あるいは大実業家の令嬢を妻にめとる、これが外務省における出世の条件であった。そういう連中が、苦労知らずの外交官が今や大公使級になって各地にばらまかれている。それが敗戦日本の外交を背負って立つというのでありますから、これはとてもソビエトの鍛え上げた連中を向うへ回して折衝をやろうというのでは、いささか頼りない気がいたします。従って新しい日本の外交を背負って立つような――外交官研修所というのがあるようでありますが、外務大臣がこの研修所においてどういう一つ方針で教育をされていこうとするか、この点だけを伺って、外務大臣に対する質問を打ち切りたいと思います。
  32. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 外交官のあり方について今御意見を示されたわけであります。私はそれは少しも異存はございません。これは外交官が国家を背負って立つ気概がなければこれは非常に危険なことでありますから、筋金を入れてやるということは当然のことでございます。私どもも過去の何においてそういうような気持は持ってずっと参ったのでございます。しかしそれにもかかわらず、今お話のような心もとなさがまだある、こう言われるのでございます。有力な国会の方においてそう言われるのでありますから、これはほんとうになお一つそういう疑いのないように努力しなければならぬ。これは私も非常に気をつけたいと考えましてできるだけのことをいたしたいと考えます。研修所も、これは研修所は筋金もむろん入れるという方向もございますが、これは相当技術的方面のことも教えております。そういう気持をもってやることにいたしますから、その点はどうぞ御安心を願いたいと思います。外国に対して非常にそういうようなことについて悪い影響があっては困ります。どうかさようなつもりをもってやっておることだけは御了承を願って、そうして大いに対外的には同じような気持でもって背後から御鞭撻を願いたい、こうお願いします。
  33. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 えらい悪口を言って申しわけないようでありますが、私も二三年前に各国を一応問って、ほんとうの赤げっとうの回りであったが、在外公館をおとずれまして、いろいろの会合にも、出先外交官の諸君にも案内願ったのでありますが、まあ率直に申しまして、外で見ておりまして、きれいにほんとうに冗談を飛ばしながら会話を十分にこなせるという外交官が少かったわけです。それはたどたどしい通訳で、誤訳があったりそれはとてもこれが日本の外交を背負う第一線の連中かというのには非常に心もとないと思いましたので、この点技術も十分研修されるといったのだが、それはいろいろ申し上げるときりはないのでありますが、一つ取り上げてもそんなものでありますから、これではろくな取引はできっこないと思います。  次に船田防衛庁長官にお伺いいたしますが、本年、まあ昔の考え方ですると約一個師団が陸上自衛隊増強されるのであります。昔師団一個師団増強されるというならば、国内の世論がずいぶんけんけんごうごう、賛否両論対立してやかましかったのでありまするが、ところが、ほとんど国民の知らぬうちに一個師団の増設が行われるのでありますけれども、こういうふうにして憲法に違反してどんどんと陸軍が作られていって、一体これがどのくらいな目標で増強しようとするのかということは、まああなたの方では間接侵略、直接侵略にたえ自衛力の漸増を行う、こう言っておりますけれども、仮想敵国はどこかと聞いたらこれは答えられない。だから日本を守るための力をこしらえるのだ、こういうだけでありますから、どこまでふえていくのか、これまでふえたら安心だということはなかなか国民としても聞きたいところだし、これは一体底なしにふえていくように思うのでありますが、そこであなたの目標としては一体どのくらいまでふやしたら、まず間接侵略、直接侵略を防げるのだ、こういうつもりでふやしておられるのか、まずことしあたりは限度、こういうふうに考えておられるのか、この点伺いたい。
  34. 船田中

    国務大臣船田中君) これは当委員会におきましても、先般詳細申し上げておったことでございますが、防衛庁の試案といたしましては、昭和三十五年度を最終年度といたしまして、そのときに陸上において自衛官十八万名、海上艦艇が十二万四千トン、飛行機百八十機、それに航空自衛隊の方におきまして、練習機を含めて千三百機というものを一応の目標といたしております。しかしこれは防衛庁の持っておる試案でありまして、たびたび申し上げておることでございますが、これを防衛の責任者といたしましては、政府の確定案としてもらいたいという考えを持っております。国防会議法が通りまして国防会議が設置せられましたならば、それに諮問をいたしまして、できるだけ早い機会に確定策として、政府案としてこれを一応の目標として立ててもらうようにいたしたい、かように努力いたしておる次第でございます。
  35. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それだけの増強をされた暁には当然アメリカ軍の撤退も行われるものとわれわれは期待するわけでありますけれどもアメリカ軍の撤退が行われた場合、その今言われました防衛庁試案に基くと、防衛庁の試案としては、どのくらいな兵力が直接侵略を行なった場合に何カ月間くらいたえ得るだけの防衛力になるかどうか、これもやっぱり想定しておられると思うのだが、伺いたいと思います。
  36. 船田中

    国務大臣船田中君) ただいま申し上げました最終目標が達成されたときに必ず米軍が撤退するかと申しますると、必ずしもこれは見合うものではございません。今申し上げたような防衛力が増強されますれば、米軍撤退の基礎は一応これでできることになります。しかし米軍の撤退ということは、これは国際情勢にもよることでございますが、日米間の合意によって撤退が行われるということになるのでございまして、ただいま防衛庁で持っております試案が達成されたから必ず米軍が撤退するということには申し上げかねると存じます。  これだけの目標のものができたときにどれくらいの侵略に対抗できるかということは、侵略の時期、方法、あるいは侵略の程度によることでございまして、今からどれだけの侵略に対して抵抗し得るかということは正確に申し上げることはできませんけれども、しかし、わが国の防衛につきましては、御承知の通り日米安保条約によりまして、日米共同して日本の国土を守るという建前をとっておりますので、今内外情勢を勘案をいたし、ことに国際情勢から考えられるいろいろな場合を想定いたしまして、侵略がありましても、この実力をもってしますればある期間の抵抗はできる、防衛ができる。で、その間には国連に提訴するとか、あるいは日米共同で作戦計画を立てるというようなことがございますので、その方法によって適当なる措置を講じて、国土の防衛の全きを期していきたい、かように考えておる次第であります。
  37. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 防衛支出金防衛庁経費を含めまして千四百七億六千五百万円ですか、これだけの金を使うのに、一体これはどれだけに間に合うかということを知るのが一番大事だと思います。使ったって間に合わぬものであれば、これはもったいない話であります。だから今年の支出金が一千四百億として、一千四百億がどれくらいの値打があるかということは、一応目安としてわれわれ知っておかなければならないと思うのだが、どれだけの侵略に何カ月間くらい、今年のこれだけの予算が通ったら、三十一年度の年度末においてはどれだけくらいの実力がたくわえられることになるのか、この点重ねてお伺いしておきたいと思います。
  38. 船田中

    国務大臣船田中君) 現有勢力から申し上げますと、御承知ではありましょうが、昭和三十年度の末におきまして、陸上においては自衛官が十五万名でございます。その他の平服の職員が一万一千六百余名、それから海上自衛隊においては、主として艦艇を申し上げた方がはっきりすると思いますが、昭和三十年度末において動きます艦艇が三百六十二隻、八万二千八百三十トン、それから航空自衛隊においては、動きます飛行機が、練習機を含めて四百十一機、それから昭和三十一年度におきまして陸上において自衛官一万名を増強いたします。その他の平服の職員が三百六十二名、これは主として陸上は御承知の通りマン・パワーを主といたしておりますから、人数を申し上げます。それから海上におきまして艦艇は五十四隻、一万二千二百七十八トンを増強することになっております。航空機において三十四機、それから航空自衛隊におきましては百七十一機増強いたすことになります。従いまして三十一年度末における自衛隊の勢力は、陸上におきましては自衛官が十六万名、平服が一万二千余者でございます。それから艦艇は四百十六隻、九万五千百八トン、飛行機が百二十七機、航空自衛隊におきましては飛行機が五百……練習機を含めて五百八十二機、こういう勢力になることに相なるわけであります。  従いまして先ほど申し上げましたように直接の侵略がありましても、ある期間わが国土を防衛することができる、こういうことになるのでありまして、侵略の程度によりましてもちろん違って参りますが、それは先ほど申し上げましたように日米安保条約の規定により、また国連に提訴するというような措置を直ちに講じなければならぬということはもちろんそのときに前提として考えておる次第でございます。
  39. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 まあこれはどのくらいの戦闘力を……、兵員数ということはわれわれはわかっておるが、これだけの戦闘力を……、今の国際的な水準からして、一体防衛庁の幕僚連中としては、これだけになったらどこの国の軍備ぐらいに匹敵するというくらいの評価をしておるか。これは戦闘力はどのくらいあるのかということをお聞きしたいのです。三十一年度のこの予算が通って、そうして非常にこのような増強が行われた場合には、兵員数はわかる、しかしこれは一体実力を強化していった場合に、タイ国に相当するぐらいなものか、台湾の国民政府軍に相当するぐらいのものか、それとも韓国の李承晩軍に相当するくらいのものか。大体、あなたは専門的でないからわからぬかもしれんが、幕僚としてはそれくらいな考えを持たなくちゃならん。まさかそれはソ連や中共、アメリカあたりと対等のようには考えられておらないでしょうが、大体どこの国に匹敵するぐらいの値打ができたというくらいのことは、当然幕僚会議の諸君としては考えられると思うのだが、その点一つ伺っておきたいと思います。
  40. 船田中

    国務大臣船田中君) 自衛隊といたしましては、これは仮想敵国というものを持っておりません。従いましてどの国と対抗してどれだけの実力を持てばどれだけの期間国土の防衛ができるかということについては、ここで正確に申し上げることはできませんが、先ほど来申し上げておりますように、わが国土の防衛ということは、どこまでも現在におきましては日米安保条約というものを前提といたしまして、日米共同して防衛するという建前におきまして、これだけの力を持てば、先ほど来申し上げますようにある程度の抵抗ができ、国土の防衛に支障はなかろう、こういう考え方を持っておるのであります。それを隣国の韓国とかあるいは国民政府軍と比較してどうなるかということはここに申し上げることは差し控えたいと思いますが、わが方といたしましては、相当の実力を持っておるという自信は十分持っておる次第であります。
  41. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それではここで船田長官に最後に伺っておきたいのは、自由民主党の党員の諸君の中では、盛んに、自衛力がないからして韓国にまでにばかにされて、竹島問題、李承晩ラインの問題、すぐ自衛力がないからこういうことになるんだということを言っておりますけれども、決してあなたの方の防衛庁としては、そんな竹島や韓国の問題を実力でもって解決しよう、またこれで実力をたくわえたから韓国の問題が解決するような考えを持っておるものではないと思うし、また同じく日本日米安全保障条約の定めるところにということを、あなたも強く強調されましたように、あの日米安全保障条約の精神というものは韓国を相手にしたものではない、韓国もやはりアメリカとともにこれは共同防衛の体制にあるわけであります。従いまして、同じ、どちらかと申しますると、アメリカが親分とするならば、兄貴分とするところの日本と韓国とが武力でもって威嚇をし合って、李承晩ラインの問題、竹島の問題が解決する現在の情勢にあるものではないということを、あなた方は十分考えておられることと思うのだが、ここではっきりとその点を伺っておきたいと思います。
  42. 船田中

    国務大臣船田中君) 日韓関係の問題につきましては、外務大臣がこの席上におきましてもたびたび御説明申し上げておりますように、私はまことに遺憾千万に存じます。ただいま御指摘にもございましたように、韓国を威嚇するとか、あるいはわが方の自衛隊を李承晩ラインの問題について使うとかいうようなことは全然考えておりません。ただ、私少しくよけいなことになるかもしれませんが、申しておきたいことは、李承晩大統領の考えております点が、だいぶ私は誤解があるのではないかと存じます。この誤解を解くことがきわめて肝要なことでございまして、その誤解とは何であるかというと、韓国は北鮮から侵略を受けて、これに身をもって抵抗しておる。血をもって国土を守っておる、しかるにもかかわらず日本は特需によって金もうけをしておる、そればかりではない、日本の中には五、六十万の北鮮系、すなわち李承晩に反対する勢力がおり、そうしてそういう者が韓国の方に入って来る、そこでそういう者を防ぐためには、どうしても平和ラインを作らなければならぬというので李承晩ライン、いわば李承晩ラインではなくして平和ライン、すなわち李承晩政権を打倒しようというような、そういう破壊分子の入って来ることを防ぐために李承晩ラインを設けておるんだ、こういうような考え方を持っておるようであります。そのほか請求権の問題にいたしましても、あるいは久保田発言の取り消しを要求しておるような点につきましても、わが方にも十分言い分はあると思いますけれども、しかし李承晩大統領としては、そういう根本の問題について非常に大きな誤解があるようでございまして、わが方といたしましては、これを何とか外交手段によりましてその誤解を一掃することに努めて参りまするならば、日韓両国の間の友好関係というものは取り戻すことができるのではなかろうか。私は防衛庁長官という立場ではございますが、できるだけこういうことに努力いたして、今後におきましても何とか日韓の間に国交が再開、早い機会に日韓会談が再開されまして、両者の間に国交の調整ができますように念願をいたしておる、希望いたしおる次第でございます。
  43. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 もう一言だけ厚生大臣に……。時間がございませんので、厚生大臣一つ遺家族の処遇の問題について伺いたいと思います。戦争中に、徴用であるとか、学徒動員、あるいはまた応召等によって、まあとにかく赤紙一枚で引っぱられた連中が、いろいろの急激な変化のために精神的に異常を来たしたり、ちょっと身体の弱い者でもおかまいなしに引っぱった結果、そこで変死を遂げた者もございましょう。中には、あるいは戦没いたしましても、その原因等がはっきりしないために、いまだに遺家族に扶助料も恩給も適用をされずに、厚生省には山のような審査請求書が山積しておる状態でありますが、そこで、それらの遺族の立場からするならば、一日も早くこれらを解決して、その恩典に浴したいというのがだれでも考えるところでありますが、従ってこの際はあまりもうかた苦しいことを言わずに、戦争犠牲者に対しては逐次適用範囲を拡大する、法の解釈を広げていく、憲法の解釈でさえも総理大臣が広げていく時代になっているのでありますから、こうした国民の利益になるような解釈は広げていく、しかもどうしても解釈だけでできない問題は法律の改正案を提出する、こういうふうにお取扱い願われたいと思うのであるが、厚生大臣の御所見を伺いたいのが第一点。二つ目には、項目が多いのでありますが、今度の予算で見てみますると、結核対策費につきましては四億だけふえておるのでありまするけれども、大体国立病院の結核病棟あたりは旧軍の古い施設を転用したのがきわめて多いので、しかも戦争中に建てました粗製乱造の建物でありまするために、結核患者を収容しましても、厳冬の候においてはすき間風が入りしだいである、きわめて設備が悪い。それがもう十年たって荒廃の域に達している、改築を必要とする病棟がたくさんあると思うのでありまするけれども、この百三十四億の結核対策費の中ではとても……、去年は百三十億で今年は百三十四億でありまするが、そんなものでは手が回り得るものではないと思うのでありますが、もっと、社会保障、社会保障と言って保守党の方々もやかましく言われた問題でありますが、少くとも結核患者をじゃま者扱いにして、古い軍の病院に送り込んでいる、というような考え、そういう政府が考えを持っておるんだというような、ああいう長い病人にひねくれたというか、ひがんだ感情を持たせないように、一日も早くこれは全快をさして、そして社会へ再び送り出すんだ、こういうあたたかい気持を示すためには、今の国立の結核療養所、国立病院の結核病棟はきわめて不適当なところが多いと思うのであります。これをあたたかい設備にするためには相当の予算が必要だと思うのでありますが、厚生省は百三十四億くらいに削られて、これではとてもそういうような施設ができないと思いまするが、厚生大臣はこれに対しまして、最初にどういう考えをもってこの結核対策に臨まれようとするかということと、ことしはこういうふうに削られてしまったが、今後の結核対策に対しましてどういう方針をお持ちになっておるか伺いたいと思います。
  44. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 菊川君のお尋ねになりました戦争犠牲者のための処遇の問題につきましては、今お話がありました通りに、できるだけそれらの方々に、まあ好意的と申しまするか、できるだけいい方の解釈をいたしまして処遇をすることにいたしたいと思います。こういうふうに私は常に思っておるのであります。たとえば扶助料の問題にいたしましても、現在多数残っておりますけれども、ほとんどこれらの問題は解決をいたしておるのであります。多少残っておるものにつきましても、十分に御趣旨に沿うようにいたしまして、これが解決をいたしたいと思っております。  それから結核対策の問題といたしましては、本年は昨年の百三十一億円に比べまするというと、約四億円の増でございまして、今、菊川さんのおっしゃいましたように百三十五億四千万の予算をとっておるのであります。仰せのごとく国立結核療養所は非常に各地とも老朽いたしておるものが多々あるのでございまして、毎年これが整備をいたしておるのであります。本年は昨年よりも約一億円増で、四億七千五百万でやっておりますが、十分とは思いませんけれども、そのかわり、できるだけ緊急なやむを得ないところから先に着手をいたしまして、そして引き続いて来年度も十分にこの方面の予算を取りましてやって参りたいと思っております。なお、この百三十五億円とは別個に、御承知の国立病院の施設整備費といたしまして十二億円ございます。これもやはり同様な趣旨で、緊急に一つやって行きたいと思っております。
  45. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 現在在外正貨が十三億ドルありますにつきまして、この十三億ドルというものがあるがために、わが国の貿易上における信用というものに対して相当有力なものであり、これがあるがために貿易の伸展あるいはすべての方面におけるところの影響が好転しておるように考えておるのであります。しかしながら、この十三億ドルというものがただあるというふうのことだけを考えずして、この問題に対して、いわゆる海外の投資の活発化をはかるとか、あるいは輸出余力の十分の何か計画をするとかというような必要があるように考えるのであります。  そこで私は大蔵大臣に、この在外正貨十三億ドルというものについて直接に考えてみますると、外債の返済であるとか、あるいは外資の導入というようなことを食いとめるというようなことについてどうお考えになっておられるか、最初に質問いたします。
  46. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。今お話のように、在外正貨はこの二月の十日現在で十三億五千万ドルでございます。これはまあ若干その後の移動もあるかと思うのでありますが、このうちで短期の借入、それから今すぐ使えない、まあ債権の形になっておるもの、これが約五億ドル近いものになると思います。それを差し引きまして、八億五千万ドル前後が問題に差し当ってなるのであります。私どもがこの在外正貨の蓄積、これをただためておればいいというふうな、そういうふうな考えは毛頭持っておりません。ただこの蓄積がかようになりましたのも、三十年度における事柄でありまして、これも三十年度の後半に行くにつれまして実際はふえて来た。今日これをいかに使うかということに思いをいたしております。ただこれを考えます場合に、今後こういうふうな情勢が続いて行くかどうかということも十分考慮に入れなくてはなりません。この点については今後の国際経済が急に悪くなるというようにも考えておりませんが、しかし貿易の競争がいよいよ激しくなると、決して日本の国際収支の前途をあまり手放しに楽観をするわけに行かないというのが大きな基本であります。こういうふうな情勢を考慮に入れて、基本的にはこのふえた外貨をもって輸入をふやすということに私は持って行くべきであると考えておるのであります。しょせん外貨を使うのではありますから、どうしても外国から物を入れる、また海外に対して経済の協力をする、こういうふうな場合に、いかにも手持ちにしているドルを出せばいいかのような感じを持たれる方もあるかもしれませんのでありますが、それはそうでないのでありまして、海外に経済協力をするという意味においては、日本の役務なり、あるいは生産材、あるいはその他の日本で生産されるものを輸出する、こういうことになる。その支払いがあるいは長くなる、これを認めてあげる、クレジットの形でそういうふうな経済協力をする。そうすれば、そういうふうなものを生産するための原料というものを、どうしても多分に日本に入れないと日本の物価騰貴をきたしますし、また生産も増強できない。ですから、その輸入の増大に手持ちの外貨を使う、こういうふうな過程を今後続けて行くというのが基本になると思うのであります。ただいまお話のありました外貨等の利払い、これは大体きまった通常のものでありまして、また今後予定される賠償もあるのですが、しかしこの賠償は別に現金で払うわけじゃありませんので、御承知のように、役務あるいは日本の生産されるもので払う。ただ、これが日本の輸出に対してある程度の影響を与える。従って輸出が伸びないだろう、こういうことが考慮される。こういうことになるのであります。差しあたっては私は輸入を――むろん日本の産業のことも考えなくちゃなりませんが、日本の産業に悪影響を及ぼさざる限りにおいて輸入を割合に有利にしてく、こういうふうな考え方で進めたいと思っております。
  47. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 私が御質問申し上げた中の外資の導入という方のことについて、この命があれば外資の導入に対して考慮をすることができるのではないかということを私は御質問申し上げた。御返事がありませんでしたが。
  48. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。申し落しましたが、外資の導入につきましては、もう私はそう窮屈に考えることもないと思っております。ただしかし、何でもかんでもという必要はもうない。よく撰別をいたしまして、長期にわたるような外資導入については考慮を加えて行く、あるいはまた特に日本の輸出を増大するというようなものについては考えて行く、こういうことであります。
  49. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 それからこの十三億ドル、きょうの新聞を見ましても、二億ドルあるいは三億ドルという投資ということも十分にでき得る態勢にあるというようなことが出ておりました。同じように、私もせっかく在外正貨がこれだけあるときに当って、何らかはっきりした事業を起し、そうして将来のためになるようなことを考えておくべき時代じゃないかということを考えます。たとえて申しますと、内地に適用するということであったならば、あるいは電源開発だとか、あるいは縦貫道路だとか、あるいは港湾の施設に対してやり得ないような問題を、この問題においてやってもらうと非常にいいがということも考えます。さらに海外の問題につきましては、カンボジアの移民ということに伴っての発展というようなことについても、工業力を非常に要求しておるというような点につきましては、私はこれが今利用するに最も適したときではないかということを考えまするし、さらにブラジルにおきましても、今、新大統領は工業というものに全力を注いでおる。従って日本の輸出というものに対して相当な影響を将来受けるものであり、ブラジルに対する輸出というものの将来が悲観的になるということまで叫ばれておる今日、東洋紡がブラジルに紡績工場を設置しまして非常な貢献をしておる。あるいは造船所を作ろうとしておる会社がある。しかしながらその造船所が今日の造船ブームにおいてもう発展する気力を失ったというようなことがありまするが、ブラジルの造船というものは修繕におきましてもアメリカまで持っていかなければならない。しかしながらこの技術を持っておる日本が一応計画したというようなことであるならば、かような点について発展させる。そうしてかような成果をもって、そうして強力に後援してやれば、私はでき得る可能性があるというようなことも考えますので、これはこの三億ドルか三億ドルか存じませんが、これを利用するということは非常な私は大切なことだと思うのであります。さらにチリーと、アルゼンチンの先にあるところの、いわゆる南方にあるところのフェゴ島なんかの漁業問題につきましても、今心配しながら北洋漁業を進めておりまするけれども、かような所へ進出するというふうのことができ、カン詰会社、あるいはその他の設備ができるものでありましたら、一反に対して一匹や二匹のカニをあさっておるよりも、一反に対して二、三百匹もおるというふうな所で、だれもはばむもののない方面へ発展するというふうのことも、私は非常に必要なことだと思うのであります。この十三億ドルというところのものに対して、現在漫然としてこれを金があるからといって見送るということは、すこぶる策を得たものじゃないと思いますが、これに対する考えを大蔵大臣あるいは通産大臣にお尋ねしたいと思うのであります。
  50. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。先ほども申し上げましたが、決して漫然としておるわけではありません。かつまた今日外貨の手持ちが十三億ドルあるといって、これはまあ大変なことだというふうに考えることでもありません。今後の貿易情勢、さらにまた賠償支払い等の日本の輸出に及ぼす影響等を考えてみますると、そう楽観は許しません。さしあたり下期といいますか、今後の外貨予算編成に当りまして、この外貨の手持ち状況をよく勘案いたしまして、そして先ほどから申しますように、やはり必要とする原料の輸入というものを豊富にしまして、同時にこれはまた日本の物価を下げる要因にもなる。そこで生産は増大をして、その増大した生産物をもって海外にこれを供与するというふうにして、海外の特に東南アジア等の未開発地の開発に資する。日本の機械を持っていって開発をする。こういうふうな格好に私はいたすべきであろうと思います。  また国内のことについてのお話がありましたが、国内の金融についてはこれは円資金でやればよろしいのでありまして、外貨を特に使うことはありません。ただ国内の重要産業等において日本で生産し得ないような能率の高い、あるいはまた必要な機械を海外から輸入する。こういうような場合については、私これを合理化という意味から特に重複にならぬというような場合において、計画的に輸入は割合に楽にしてよかろう、かように考えておるわけであります。
  51. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) ただいま大蔵大臣からお答えしたことで大体尽きておると思います。私も、海外投資とかというようなことは、必ずしも外貨がなければできないことではありませんが、しかし今日のように外貨が豊富であるということは、海外投資をするについて安心感がある。すなわちリザーヴとして一つの異議があると考えます。これはぜひやりたいと考えます。
  52. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 次に厚生大臣にお尋ねをいたしますが、それは新医療費体系についてでありますが、新医療費体系については厚生大臣は考慮をするということを言っておられます。しかしながら考慮するというふうなことがどういうふうのことであるかということがはっきりしないのと、それからあなたがたの考慮というふうのことが、われわれの希望しておる点と合致するかどうかということも考えなければなりませんので、一応私は、この新医療費体系が矛盾したものであり、非常に改良、改善すべきたくさんな点があるということについてこれを検討しまして、そうして質問してみたい、しかもそれは常識的に質問してみたいと思うのであります。この問題は多岐にわたるものでありまして、今川発表のこの体系が医療体制の革命ともいうべきものであって、厚生省が赤字解消に専念しました結果、医療の実態を考慮せずに作ったものであって、社会医療制度を破壊するようなものであり、私は医療の進歩を妨げるものだと解釈するのであります。しかもその結果というものが医師にしわ寄せを持ってきまして、医師の犠牲によって、そうして保険経済というものの危機というものを乗り切ろうとするというようなふうのことを考えてみましたときに、これはすこぶる遺憾なものであると思うのであります。またこの発表せられたところの体系を見ますると、微に入り細をうがち数字的にきわめて難解にこの問題がでっち上げられておりまするが、それだけの余裕というものがあったということは、結局二千六百万円と言われているような巨費を投じてこれを作成せられた結果であろうと思いまするが、さような点から考えまして、なぜ、こういうふうの余裕があり検討すべきところの重大問題があったならば、これに携わるところの医界に対して御相談がなかったか。一方的にこれをでっち上げられて、そうして最も影響のあるところの医界の方面に対して御相談がなかったというふうのことは、私どもすこぶる遺憾に思いまするが、これに対する大臣の御所見が承わりたいと思います。
  53. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 吉田さんの新医療費体系に関しまする今の御意見は、大へんに私は誤解があるように思っております。ちょうど新医療費体系は御承知のように四月一日からスタートいたすことになっておりまする医薬分業にマッチいたしまして、従来の医療費の考え方を物と技術とに分けて考えようとする考え方にしたのでございまして、今の健康保険の赤字対策というものは、これは健康保険そのものの進歩向上をはかるために改正をするものでございまして、ちょうどこれは時を同じくしてこの国会にわれわれが提案をいたしておりまするから、そういうように誤解をなさったのじゃないかと思うのでありますが、この問題につきましては、私も最初から医療担当者の代表者の諸君にたびたびお目にかかっております。おそらく私は千人近くの人にもお目にかかっておると思うのであります。お目にかかった際には、いずれもこの健康保険の赤字対策あるいは健康保険の改正案というものが、あたかも新医療費体系に関係があるかのごとくにおっしゃっておりますが、しかしこれは私ども説明によりまして漸次そういう誤解が解かれておると私は確信をいたしております。ただ今御質問にありました新医療費体系についてなぜ学界その他に前もって相談をしなかったかというような御質問もあったようでありますが、これは御承知のように法的にできております。中央社会保険医療協議会というものが諮問機関として存在いたしておりまして、これには医療担当者の諸君、専門家の諸君が六人も出ておられまして、私どもはこの新医療費体系につきましては、この諮問機関に諮問いたしまして、そうして十分に慎重に審議をしていただいて厚生省の案が悪ければまた別の形のものができて結構でございます、いずれにいたしましても十分慎重審議していただきまして、そうして御答申を得てこれによって私どもやっていきたい、こういう考え方をもっておったのでありますが、四月一日からスタートいたしまする医薬分業に対しまして客観的に考えましても間に合わない、こういうように考えましたので、今日医薬分業が行われる程度に、差しつかえない程度の一つの暫定案を医療協議会にお願いしてあるのであります。ただいま御審議願っております根本的の新しい医療費の体系問題につきましては、引き続いて慎重に御審議を願いたい、こういうことに相なっておるのであります。
  54. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 なるほどこれに対する審議の機関というものが設けられておるということは私も了承しております。しかしながらその間におけるところのいろいろな問題がありまするけれども、かような席でまあ申し上げる必要もありませんが、また大臣がたびたび当路者と折衝しておるということも言われましたけれどもこの問題が難上に上ってからの問題でありまして、私は事前にこれに対する交渉というふうなことについてはさようにまでやっておらぬように、解釈するのであります。また健康保険の問題とこれに対して、またこれがある一部負担の問題に対して関連があるとおっしゃるこのことはもちろんでありまして、これを切り離して考えるというふうなこともでき得ないのであります。従ってその方面へ波及するということは私はやむを得ぬ現象と考えるのであります。  次に治療につきましてみましても、診療報酬というものはいわゆるイコール人件費プラス物質プラス技術料というようになっておりますが、簡単にかようなことは割り切れることではないと思うのであります。人件費にいたしましても医師単独ではありませんし、また物質からみましても、手術の資材にいたしましても調剤に対する薬品にいたしましても、ただそれだけのものではないのであります。技術に至ってはこれは単一の技術と考えることはでき得ないのであります。この問題をみましたときにその難易ということについては考慮されておりますけれども、頻度、回数に関する方面に対する考え方が非常に私はずさんであり、そうしてこれに対してしわが寄せてくるように考えられるのであります。従ってこの頻度というものは非常に大切なものだと思いまするが、この頻度というものについて新医療費体系を改めて作られるときに、考慮を願えるかどうかということをお尋ねいたします。
  55. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 吉田さんの今仰せの通りに、新医療費体系の発表いたしましたまでの間におきまする作業というものは、非常にこれは困難なむずかしい問題でありました。現に厚生省が昨年の十二月に発表いたしましても、一方におきましては、医療担当者の諸君はこの点数炎では今までよりもからいというような御意見があり、また保険者の方からみますと、これでは医療担当者がもうけ過ぎるのではないかと言って御反対、なっていることもあります。私もいろいろな関係者にお目にかかりまして、つぶさにいろいろの御意見を拝聴いたしておるのでありますが、何と申しましても、四月一日からスタートいたしまする医薬分業には間に合わない、十分に一つ慎重にこれを引き続いて審議していただいて、そうして各方面が納得するような線に持っていきたい。こういうことで今日暫定的の問題が済みましたら続いて御審議願うようにいたすつもりになっております。ただ頻度の問題ということも私も多少は承知いたしておりますが、一応この頻度の問題につきましては、いろいろむずかしい説もあると思いますから、事務当局から一応説明いたさせます。
  56. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 まあよろしい。さらにこれを具体的の私は例をあげて、そうしてこれが適当であるかどうかというふうなことの御判断が願いたいと思います。たとえて申しますと内科でありますが、内科に対して、投薬についてはまあ計算すると損がいくというようなことが言われておりますが、これは投薬の薬剤等にも関係することでありますからしばらく差し控えるといたしまして、注射にいたしましても、一点が一点でもその一点が十一円五十銭である。これは大都市は十二円五十銭になっておりますけれども、大半が十一円五十銭でありますから、これによって計算して参りますと、ペニシリンのようなものを打っても十一円五十銭である。しかしこのペニシリンそのものに対する副作用というものに対してすでにどうかというと、これに対して死亡した例が七例も発表になっておる。あるいは静脈注射は二点二十三円である。そうしてこの静脈内注射はサルバルサンにつきましても不慮の死を遂げた者がある。いわゆるヨード過敏症によって不慮の災厄を起しているというようなことを考えましたときに、その責任というものはだれが背負うのか。注射器が悪かった、あるいは針が役にたたなくなったようなことは別といたしましても、これは重大な異議のあるものであって、この点数によって果してその報酬が適当なものであるかどうかということを私は考慮しなければならぬと思います。  さらにこれを厚生省と農林省とについて比較いたしますると、血液の検査にいたしましても、厚生省が健康保険の技術料として払っているのは五点であります。しかるに農林省が家畜保険技術料としているのは二十八点であります。また血液学的の検査にいたしましても、六点と八点、あるいは皮下注射一点に対する八点、静脈注射二点に対する十点、さらに検尿に至りましては、厚生省が一点であるのに農林省は十九点である。これを考えますると、厚生省の点数では尿を検査するのは十一円五十銭であり、農林省の尿を検査する点数からみますと二百十八円五十銭という金額になる。これは尿の量で考えるべきものでありません。馬の小便を全部集めて検査するのではない。かような点から考えますと、人間の小便を検査するのは一点であって、馬の小便を検査をするのに二百十八円五十銭というような違いがあるということを考えまして、わずかな尿の量、全体を調べるものでなくて、その一部分を検査する点からいえばこれは妥当であるかどうか。憲法において基本的人権の尊重ということが言われておるが、人間と馬との間にこんなに比較して差があって基本的人権というものを考えてみたときに、私はおもしろい結果が出るだろうと思うのであります。  また処方せんにいたしましても(「厚生大臣しっかりしなさい」と呼ぶ者あり)処方せんが一点でありまして十一円五十銭である。今日役場へ行って一枚の紙に書いたものをもらいましても、あるいは印鑑証明にいたしましても三十円なり五十円なりを取る。しかるに責任あるところのこの処方せん料というものが十一円五十銭で果して妥当であるかどうか。かような点を考えましたときに、厚生大臣は考慮しようというお気持を持っておられるかどうか。
  57. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 今御質問のありましたようないろいろな問題もあると思います。こういう問題もあわせまして、医療協議会におかれまして、医療担当者の専門部会にも十分に入っていただきまして、あらゆる点が納得いくような新点数表というものを近い将来に発表いたしたいと思っております。なお今のお尋ねの中にありましたように、今日馬と人間との比較におかれまして、同じ尿の検査等において一点と十九点というお話があったの、ですが、参議院の予算委員会におきましてこういう問題を私がこのままにいたしておきますと、いろいろ大きな誤解があるかと思いまするから、この問題につきましては一応事務当局に説明さしたいと思います。
  58. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) お答え申し上げます。農林省の家畜の医療費の点数を詳細には私研究いたしておりませんですけれども、確かに今御指摘のように向うの方が高いということは承知をいたしております。ただこれは御存じのように家畜の場合には同じ小便をとるにいたしましても、いろいろやるにいたしましても何人も人手がかかるというふうな事情もあるとかというふうに聞いております。一番大きな問題としましては、今吉田先生がその前に御指摘になりました頻度の問題が非常に大きかろうと思います。この人間の診療の場合には非常に頻度が多うございますけれども、家畜の診療というものは頻度がさように多くはないということ、従いましてもしさようにアンバランスがあるものとしますれば、頻度が同じであるとしますれば、一般の医師の方よりは獣医師の方がずっと所得が多い、生活が高くなるはずでございます。しかしながらさようにはなっておりませんのは、今先生御指摘の頻度の問題が一番大きな影響を持っておるものと、かように存じております。なお私ども今後家畜の点数表につきましても十分検討いたしまして、皆さんの御期待に沿いたいと思います。
  59. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 頻度の問題は、これは一番重大な関係のあるのは外科であります。外科の大手術というものに対しては非常な今度は手をふやしておられまするが、大手術というようなものは年に何回というようなものであって、いわゆる小手術あるいは手当というような、処置というようなものが一般に非常に多い。これに対してはだんだん低下してくるような傾向にあるというようなことがありまして、この頻度ということに対しては私は外科に一番重点を置いて考えてもらわなければならぬと思うのであります。それから最も世間でやかましく言われておりまするところの産婦人科の問題についてこれを調べてみますると、洗滌が一点で十一円五十銭、今日冬期尻から下を保温するということにつきましての暖房装置あるいは洗滌をするところの液を暖めるというような点から考えるところの光熱費というものを考えてみまして、果して一点十一円五十銭でこれができ得るだろうかどうだろうかということは考えてみてもおわかりになると思うし、眼科の一点に対する婦人科の一点というものは面積から考えましても相当広いものだと思うのでありまして(笑声)またそれに対する材料も私はそれに比較してみたいと思うのであります。かような点から考えまして、どうも一点では私はこれは納得がいかないと思うのであります。ことに最も大事なのは異常分娩に対するかん子の使用であります。要するに子供が逆児として生まれてくる、ただこれを手をもって引張り出してやることなら、そりゃ七十点の八百五円でもいいでありましょう。しかしながらこのときには、ことにこれが男子であるということがはっきりわかったどきに、医者としてもまた家族としても子の満足に生まれることを熱望するのであります。高等技術を施すのが八百五円である、一つ間違ってかん子をかけそこなったら、目にかかったら失明してしまうという、この重大問題に対して、千円以下の金においてこの処置をさせるというようなふうなことについて、私はもう少し考えなければならぬと思うのでありますが、ことにまた産科の往診などは普通の往診などとは違いまして非常に手間がかかる、十点面上五円によって、そして何時間もかかるというようなことを考えました場合においては、私は非常にどうもこれは気の毒だと思うのでありますし、胎児の蘇生術が十点から二十点、であるというふうなことは、非常に考慮しなければならない。今日婦人科のドル箱というものが、いわゆる人工流産というふうなものによって利益を占めているといわれますけれども、これはようやく七十点にすぎないというような点から考えますると、産婦人科に対する方面については十分な考慮を払ってもらわなければならぬと思うのであります。それからまたこれに対するお考えはどうであるとかというようなことは、考慮していただけるかどうかということにとどめておく次第であります。  さらにこれを眼科の方面から考えますると、眼科というものは長年月にわたるところの間接的の処置でありまして、これは一種の技術的処置である関係上、その病状の軽重いかんを問題にしませんし、またすべてを問題にせずにすべてを同一視するということは、これはきわめて不合理なことであると思います。ことに眼科というものは高点の手術が少くてそのほとんどがトラホームであるとか、結膜炎とかにとどまっているのであります。かような点から考えまして、この眼科というものはことに下層階級に多い病気であります。従って伝染も非常に多いというようなことを考えましたときに、これは汽車のちょうど各駅停車の三等車で遠い旅行をするようなものでありまして、汽車では一ぺんに切符を買っておきますけれども、これは一々払っていかなければならないというようなことから考えまして、再診療三点というものから計算してみますと一カ月九十点であり、そして全金額が千三十五円になるというような、千三十五円というものは果してこれを患者が負担し得るだろうかどうか、紡績工場などの工員であるとか、女工というようなものがこれだけの金額を負担することができるであろうか、しかも毎日通院ということによってできるだろうかどうかということを考えましたときに、自覚的症状のないものはおそらく放任するおそれがあります。しかも放任すると伝染的のこの重大な疾患に対して治療ができなくなるというようなことになる点からいいますと、これは非常に考慮しなければならぬと私は思いますし、耳鼻におきましても一カ所の処置を認めて他を認めないというようなこ  とは、これは間違っておりはしないかと思うのでありますが、かような点に  つきましてどういうふうに大臣はお考えになっておるか、すべての点に対して考慮するという御意思があるかどうかということを承わりたいと思います。
  60. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 先ほど申し上げましたように新点数表というものは従来の長年の日本の医療費の形からも考えまするというと、画期的な問題でございまするので、私が申し上げましたように、十分に慎重にこれが検討されて、きわめて近い将来に新点数表ができ上らなくちゃならないと思っております。専門家であられます吉田先生のただいまのいろいろな御高見等も拝聴いたしましたが、こういうふうなものもあわせて十分に検討さるべきものと確信いたしております。
  61. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 私は以上につきまして総合的に観察をいたしますると、この監査しましたときに、この新医療費体系を作られるときに抽出方法をとってやられたというようなことに対して、私はそこに相当な疑義があると思うのであります。厚生大臣は御存じでもありませんでしょうが、収入の標準というか、医者の収入の標準というものをどこに求めたかということについて、聞くところによりますと、国立病院の医師というものの俸給を基準にして計算をした、しかしながらこの国立病院の医師というものは内職というものがあります。従ってこれは考慮せなければならぬと思いますが、この本俸のみをもって計算せられたように解釈するのが適当でないかというように考えられます。いずれにしましてもこれを主体にしてそして計算いたしますると、医師の稼働時間というものをこれを時間的に計算してみますると、一分間が四円となると聞いております。新聞には三円八十銭というようなことも書いてありましたが、かりに一分間四円といたしましても一時間が二百四十円、二百四十円というような金はこれは芸者の花代よりも安いと言わなければならない、昔はりっぱななりをして、そしてしかも、しかしながら内心非常に心労が多くて、そして収入のそれに伴っておらぬものを医者、役者、芸者ということをいいました。ところが今日から考えると、今日では役者、芸者、医者といわなければならぬというような状態になってくると思います。いずれにいたしましてもこの基準というものに対する私は間違いがありはしないか、もう少し考慮する必要がないかと思うのであります。かような点を考えますると、人より長い年月の研究と学資を使って、そしてしかもどうだというと、こういうような結果を見るところのものに従事せなければならぬということに対する、その労力というものに関する報酬というものに対して、私はもう少し考慮せなければならぬということと、これから進歩するところの医術というものをこれによって退歩させるおそれがあると思うのであります。かような点から考えまして、この点再考慮せられるところの御意思があるかどうかというふうなことを承わりたいと思います。
  62. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 新しいこの医療費の組み立て方というものは、私もしろうとではございますけれども大臣に就任いたしましてから、いろいろとタッチしてみまして、いかにむずかしいことであるかということを承知をいたしております。  それから全国の医療担当者の代表でありまする方々といたしましても、おそらく私は同じ医療担当者でありましても、今古田さんのおっしゃるようなことをおっしゃる方もありましょうし、また角度を変えた考え方をおっしゃる人もありましょうし、いろいろ私はあると思います。こういうような問題もあわせまして、慎重に私はこれを検討すべきものだと考えております、
  63. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 ただいまおっしゃった組みかえでありまするが、私はこの点数の組みかえ方というものに対してはきわめて重大な意義があり、これは机上の論に終らせないようにしてもらいたいと思うのでありまして、たとえて申しますると、標榜科目というものにつきましても、表面は内科というふうに標榜しておりましても、実際あれもこれもやっている人がありまして、これは標榜科目というものに対して厚生省がおとりになったあり方は間違っておると思うのであります。またこの医者の生活の基本的調査というものも十分できておりません。ただその医業そのものに専念をして生活をしているものとそうでないのとが区別されておらない、病気そのものを主体にして考えられたものなら私は間違いないと思いますけれども、しかしその医師そのものを主体にして考えられたところに矛盾があるようにも考えられまするによって、この点は点数の組みかえ方というものに対しては私は十分考慮してもらわなければならぬと思うのであります。この実態調査というものについて私はきわめて不備な点があると考えまするが、この組みかえに対する御考慮が願えるかどうであろうかという……。
  64. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) ただいま申し上げましたこの新しい医療費の体系を作業いたすにつきましては、厚生省といたしましては全国各地に基礎調査をいたしまして、そのあらゆる調査をいたしました中から適当なものを拾い出しまして、そうして基準にいたしたのでありまして、いずれにいたしましても、お説のような問題につきましては今後十分検討すべきものと考えております。
  65. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 それから入院の事前審査であるとか、あるいは官給診療報酬請求明細書の問題というようなものは、これは非常にいろいろと議論せられておりますことでありますが、だれが考えましても当然これは医者にかかりにくくするようなものになっております。これはもういろいろ例をあげぬでもわかるのでありまして、会社からその証明書をもらってくる。そうして医者にかからなければならぬ。ところが会社は遠い、病気は急病であるというようなときに、もらいに行っておるひまがない。しかしもらいにいかなければかかることができないというような、かようなことは通俗的に考えましても、これは私はきわめて不備な問題だと思うのでありまするし、かような点につきましていろいろ厚生省の方においてお考えになっておる点、もろともだと思う点もわれわれよく了承しております。しかしながらこの被保険者証の不正な使用というようなふうのことは別の監督の機構で十分お取り締りを願い、あるいは入院の適否というものは主治医の判定にまかせるというようにしてもらうにいたしましても、私は手軽く、かつ早期に診断が受けられるよう考慮をしてもらいたいと思うのであります。これに対して、その証明書なんかについても、大臣は考え直すというお考えを持っておられるかどうか承わっておきたいと思うのであります。
  66. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) ただいまお尋ねの、官給診療報酬請求明細書の問題、これは今厚生省が考えておりましたといたしましても、吉田先生のおっしゃったようなこととは遣うのでありまして、これは一々そのつど遠い所へ取りにいって持っていかなければ診断を受けられないという考え方じゃないので、その月中に間に合うように医者の所へ届ければいい程度のことを考えてのおるのであります。しかしいずれにいたしましても、この問題につきましては十分にすべてのこの受診意欲等をそがないように、患者のために、従来の早期診断意欲をそがないように十分に検討いたしましてやるつもりでございます。
  67. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 ただいま一カ月以内にということをおっしゃったのでありまするけれども、それではかかるときにどうしてかかることができますか。何を、そのはっきりと証明するようなものを医者に見せてというようなことは……、あとで持ってきますというようなことで果してそれでできるだろうかというようなことを考えますによって、かような点は十分当局において考慮していただきたいと思うのであります。  それから私は希望的意見としてここに一つ聞いておいていただきたいと思うのは、相当今日までの厚生省の考え方というものは、医師そのものを主体にして考えられておったのでありまするが、これを病気そのものを主体にして考えた場合において、たとえて言うならば盲腸炎ならば盲腸炎というものを主体にして考えますると、これはまた非常に違ってくるのでありまして、統計的な観察から見ますると、これを都市あるいはいなかの平均をしましても、全部その統計的な観察から見ますると、平均一・五倍になるのであります。今の点数から考えて一・五倍であったならば完全にこれが処理できるようになっておる。かような点から考えまして、そうしてこの問題を解決するについて御考慮願うということも一つの私は方策だろうと思いまするので、このような点について御考慮が願えるかどうか。この町方から納得のできるところの採点というものを考慮するに当っての私はこれは一つの材料となると思うが、これについて大臣はかような点も考慮しておるというお考えがありますかどうですか。
  68. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 今仰せになりました御恩児等につきましては十分考慮いたしたいと思います。
  69. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 最後にもう一つ私は質問しておきたいと思いまするが、それは先ほどもお話がありました結核の問題であります。結核とその他の病気というものを対照いたしまして考察をいたしますると、件数の百分比におきまして結核は五五・一その他のものが四四・九となっております。また総点数からの百分比を見ますると、結核が六五・九に対するその他が三四・一ということになっております。かような点から考えますると、この保険に関する大半というものはほとんど結核が取っていってしまう、たくさんの金が使われると解釈せられまするその大半が結核であるということを考えました場合に、また亡国病としての結核、今それは先進国では糖尿病というようなものが非常に多くなって、結核はすたれていくというものの、まだわが国におきましては、何といいましても結核が一番重要な病気になっておる、この亡国病結核というものに対する考え方、国家がある程度まで力を入れて、そして解決しなければならぬと思いますが、この保険の問題につきまして結核というものを分離して、そして将来考えてみようという御意思があるかないか、承わっておきたいと思います。
  70. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 政府管掌の健保の赤字に対しまして、結核というものがその赤字のウエイトの上に非常な大きな問題になっていることは、これはおっしゃる通りでございます。しかし現実の問題といたしまして、今日結核患者というものは健保によらない場合におきましては、非常にやって行くことはむずかしい問題だと思います。また将来健保あるいは国保あるいは今の仰せのありました健保に対して結核患者はどうするか特別に結核患者だけの保険を作るか、あるいは重症者、軽症者の問題に対してどういうふうに取扱いをしたらよろしいかといういろいろな問題が多々あると思います。こういう問題を将来国民皆保険ということを目途といたしまして、至急に調査研究を進めておる次第であります。
  71. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 ありがとうございました。
  72. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それではこれにて休憩いたします。二時半再開いたします。    午後一時二十四分休憩      ―――――・―――――    午後二時四十九分開会
  73. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより委員会を再開いたします。
  74. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まず最初に、三十一年度の予算編成の特徴といたしまして、今度の予算編成に当りましては、従来の予算編成と趣きが違いまして、いわゆる政府与党の発言権が非常に強くなったということが言われているわけです。それと関連して、その前に、大蔵省予算編成権を内閣に移したらいいのじゃないか、河野行政管理庁長官はそういう発言もされ、そうして行政機構改革の一環として、予算編成権を内閣に移管するという問題が提起されたわけであります。従いまして河野行政管理庁長官は今お見えになりませんが、あとからお見えになるそうですから、河野長官にもお聞きしたいと思うのですが、その前に、大蔵大臣としてこの問題についてどういうようなお考えをお持ちになるか、お伺いしたいのです。
  75. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。予算編成につきましては、私は内閣といたしまして、各閣僚が国務大臣としてどういうふうな政策を打ち出していくかというような観点から、予算編成の基本方針をまずきめる。それに基いて、政府として予算編成をやっていく。むろんその過程において、政党内閣でもありますし、党の意向を十分聞いて、党とも相談する。かようにいたしていくのが私はいいと、かように考えております。
  76. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これまでも予算編成基本方針というのは閣議できめたわけですね。大蔵大臣は、今までの予算編成の仕方と、それから今後の予算編成の仕方とについて、どういうふうにしたらいいとお考えか。今まで通りでよろしいのか、それとも、予算編成内閣移管の問題が起っていたのでありますから、それは私個人としてもいろいろな意見を持っておりますが、世間でも相当これは論議になっておるわけであります。従いまして、各国の例もいろいろございましょうし、日本の今までの経験やら、それから今後のあり方等を考えまして、大蔵大臣の所見を伺いたいわけなんです。
  77. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 一応のあり方といたしましては、私、従来必ずしも具体的なあり方の問題、法律関係じゃありませんが、あり方の問題としては十分でなかったように思います。これはたとえば予算編成方針というのはごく最近、おそらく私の前は内閣としてどういうふうにおきめになって  おったか、大蔵省には予算編成をこうするという大蔵大臣の考えはあったように思うのですが、内閣で、鳩山内閣になってきても、内閣の閣議で予算編成方針国務大臣として一つみんな出し合わそう、こういう程度で、それが文書になって、大蔵省でまとめて、次の閣議にかけて方針をきめるのでありますが、これは私はもう少し具体的に、閣僚で持っておる閣僚委員会というものにまで持ってきてやる、そうしてこの委員会が党との関係においても十分調整をやる、こういうような形がいいのじゃないかと思っております。しかしこれはあくまで、予算内閣がきめるという法律的な点は、今後もくずすべきではないのでありまして、それを補完していくという意味合いにおいて、こういう制度を考えるということは一そういいだろうと、こう考えております。
  78. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その閣僚委員会というものの構成なり、それからその権限というのですか、そういうものは、どういうようなものとしてお考えになっているのですか。
  79. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 各予算に関します閣僚委員会については、ただいまは行政管理庁から一応の案が、要綱的なものが出ているのですが、まだ内閣としてはきめておりません。おりませんが、大体構成メンバーは、総理大臣委員長で、大蔵大臣、経審長官、その他総理大臣の指名する国務大臣というようなところで私はいいのじゃないかと思っております。
  80. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこと党と連絡をとって、緊密な連絡をとって、閣僚委員会で、そうして内閣としての予算をきめる、こういうお考えなんですか。
  81. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私の考えは、ここで予算編成の基本的なところを一応きめまして、その過程においていろいろと党とも調整をしていく、かように考えております。
  82. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 三十一年度の標準予算はどのくらいでございますか、標準予算は、義務的経費は。
  83. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 三千六百億前後であったと記憶いたしておりますが、詳しいことは今すぐ調べまして、お答え申し上げます。
  84. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 前年度と比較しまして、どのぐらいふえるのでしょうか。
  85. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 前年度と大した増減はなかったように記憶いたしております。この点も今調べて、すぐ申し上げます。
  86. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それが問題だと思うのです。まあ数字を伺わなければなりませんが、大蔵大臣は、今度の三十一年度の予算編成過程において、大蔵省の、あるいは大蔵大臣の最初考えられた予算規模と非常に変ってきているわけですね。最後は一兆三百四十九億、約一兆三百五十億になりましたが、その過程において大蔵省は、財政懇談会ですか、ああいうところに示された最初の案では、三十一年度の税収の見積りは一兆二百億、一兆三百五十億ぐらいしかとれない。なかなか見積り困難だ。義務的経費が相当ふえてくるんだ。そこでまあ一兆二百五十億くらい、これ以上ふやせないのじゃないか、こういう諮問を出されておるのですね。その結果として、与党の発言が非常に強くなってきた。私は政党内閣としては政党の予算に関する発言権が強くなるということは、決して私は否定するものではありませんし。それは従来大蔵省偏重の予算編成の仕方に対して、ある一面では一歩の前進だと思うのですけれども、しかしその間において、まあいろいろ私は意見があるのですけれども、今度の予算編成の仕方には、どうも私はそこに割り切れない点がある。税収見積りからいって、財政見積りからいって、一兆三百四十九億はとても最初は見積れないと思っていた。それがだんだんふくらんで、与党の要求が多くなって、その結果として、今私が質問しましたいわゆる標準予算というものが、非常な無理な編成になっているのじゃないかと思うのです。そっちを圧縮するという形になってきている。たとえば旅費の問題、そこで今の標準予算について、標準予算における旅費というものと政策経費における旅費というものを、これは区分できますか。区別できるかどうか。それはやはり同じであるかどうか。それでどうも私は、政党の発言権が強くなるということは、正しい基調である場合はいいと思うのですよ。ところが、現状の、そう言っちゃ失礼ですが、保守政党のあり方として、りっぱな方もおられますけれども、しかし、どうしても今日までの経験からいって、この予算要求が多くなるわけですね。あるいは選挙対策とか、あるいはまた利権的な要求とか、そういうのでふくらんだんじゃないですか。そのふくらんだ結果として、義務的経費の方が圧縮されてきた。そうなると、行政の方がうまく行かなくなる結果が私は出てくるのじゃないかというので、そういう点で今標準予算ということで伺ったわけで、非常に無理があるのじゃないか。その点、いかがですか。
  87. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 仰せのように、今日やはり歳入においては限界がありますが、歳出と申しますか、財政に対する需要は、今日の日本状況からいたしまして、はなはだ大きいのであります。従いまして、その間において予算編成がなかなか容易でない。これがいろいろな形において私は現われてくると思うんでありますが、しかし、従いまして、非常にゆとりのある予算は容易に三十一年度にも組めなかったのでありますが、しかしそれだからといって非常にここに無理があるということでもないと私は考えております。ただいま歳入等について、いろいろと要求があった結果、水増し的に考えたんではないかというようないろいろのお話があったかと思うんでありますが、決してそういうわけではありません。むろん一兆二百億前後の線について主計局で一応考えたこともあるようでありますが、しかしそれは別に正確に考えたというわけでも私はないと思っております。要するに、こういう点について、何といいますか、将来において自然増収というものがどういうふうになるかということに具体的に現われてくるのじゃないかと、かように考えておるわけであります。
  88. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 問題は歳入の問題に移りましたから伺いますが、これは新聞記事に出ていたことを基礎にして質問しますと、いつもそれは新聞記事だからといって、どうも責任を回避する向きがあるのですけれども、大体大蔵大臣が最初談話を発表したときに、三十一年度の歳入はまあ一兆二百五十億ぐらい、それ以上にふやすことは非常に困難である。それは一兆三百四十九億、いわゆる与党の要求をも押える意味で言われたのかもしれませんが、非常に困難だと言われた。それがですね、一兆三百四十九億に財政規模がふくらむと、歳入がつじつま合うようになってきている。どうも私はその間に割り切れない点があるのです。これは自民党の政調会の発表を見ますと、こうなっています、徴税に特段の努力を払う、そういう一項目があります。ですから、大蔵大臣は水増しではないと言われましたが、そのかわりに、徴税に特段の努力を払う、いわゆる徴税強化が行われるのじゃないか、私はそう思うんですが、大蔵大臣はどうでありましょうか。
  89. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) そういうような、結果から特別に徴税を強化するということは、私はないと思うのであります。しかしながら、税金でありますので、公平に徴税すべきものは徴税する、これはもう間違いはないのであります。
  90. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 税金の国民に対する負担は、三十年度に比して相当ふえると思いますし、国民所得の増加率よりも税金の増加率の方が多いと思うのです。従って、税負担は三十年度よりも全体的にいって重くなると思うのですが、この点、いかがですか。
  91. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。私、今数字的に詳しく申し述べない点は主税局長からいたさせますが、私の今考えたところでは、国民所得の年間の増加率が約二・八%ぐらいではないかと今思っております。それが、徴税の増加率がどうなっていますか、私はそれよりも低いのではないかと思っておりますけれども、これは誤っておれば訂正をいたします。
  92. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私の計算したところでは、国税一人当り、三十一年度は一万七百二十円、もっともどれには、今度の授業料値上げというものも私は含めて考えました。授業料値上げも入れまして一万七百二十円。そうしますと、四百七十五円の増加です。四%増。地方税につきましては、一人当り四千四百十八円で、四百十七円の増加、一〇・四%の増加です。国税、地方税合せまして、国民一人当り一万五千百三十八円の負担です、赤ん坊一人まで含めて。前年度に比べて八百九十二円の増加、六・二%の増加です。国民所得の増加は、経済企画庁の方では三・四%です。今国民所得の増加は二・八%と言われましたが、経済企画庁では三・四%と見積っております。ですから、国民所得の増加率よりも税金の増加が、地方税も含めて、税負担は重くなる。この点、地方税をも含めて考えますと……。
  93. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 国民所得に対する租税の負担の割合でございますが、補正予算後におきまして、三十年度の数字は、国税だけで一三・九、地方税を込めて一九・三。それが二十一年度におきましては、国税だけでございますと一三・八、地方税まで込めて一九・五。地方税まで込めますと、昨年よりも一応負担率はふえます。ただ地方税におきましては、御承知のように、三公社税とかいろいろな関係になっておりまして、必ずしも一般的な増税ということは考えておりませんが、現状において地方財政が窮乏しているというところから、負担の権衡をも考えながら、許す範囲においての増税も考えられる、こういったこともございまして、一応そういった結果になるのじゃないかと思います。
  94. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうも今、地方税を込めればやはり負担は大きくなるというお話がありましたが、私の計算では、国民一人当り一これはあとでまた詳細な資料を、大蔵省の方から計算を出してもらいたい。私は私で計算してみましたが、それは確かに多くなるのです。どうしてそうなるかというと、結局自然増収を、非常にこれは何か、国民所御の増加に応じ、自然増収というものを多く見込んでいるようですが、この中には、いわゆる徴税強化分が相当私は入ってくると思う。たとえば捕捉率の強化、それから法人の査察の強化、といっても、中小法人の査察の強化になりますし、聞くところによると、青色申告の指導を大体もうやらぬ、青色申告の指導を親切にあまりやると、税収入が減ってくる、従って青色申告の指導は、大体もう三十年度程度、三十一年度はやらぬというようなことも聞きますし、こまかいことでありますが、時間がありませんから言いませんが、たとえば扶養控除の査定についても、なるほど法律上は、たとえば妻の扶養控除については、年収三万円以上あれば、これは扶養控除は認めないのですけれども、今まではそんなに厳格に言っていなかったのです。今度はそういうものを厳格に査定するとかこれは法律上はなるほどそれでよろしいのですけれども、三十年度より徴税の強化が行われることは必死ですし、地方税については特に今度の地方財政計画において、赤字県の指定を受けたところは徴税強化をやるということが前提になっている、過去三カ年間の最高の徴税成績以上に税金を取れということになっています。従ってどうしても私は全体としての税負担は重くなる、こう思うのですが、その点いかがですか。
  95. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 今度の税収見積りに際しまして、徴収率がある程度最近漸次上ってきておりますので、それをも見まして同時にやはり滞納も漸次防止し、なくしていくという努力は、これは税務当局として当然しなければならぬ、こういう意味におきまして税務行政を能率的に運営していく意味においての徴収額の増加、これは一応考えておりますが、しかし、いわゆる徴税強化という名前でいわれております、いわば苛斂誅求的なことは全然考えておりません。
  96. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この点についてはあとで大蔵省も数字の問題ですから、私はさっき数字を言いましたから、自分で計算したのです。これが間違っているなら大蔵省の方で数字を出して、こういう点が違っているという点を、国民所得の伸び三・四%に対して六・二%とにかく地方税国税合せて重いのですから、数字的に一つ反駁されるなら反駁をされる資料を出していただきたい。それからまた質問します。  それから標準予算のことは、あとでまた数字を伺いまして質問いたします。とにかく私は質問が細目の面に移ってしまいましたが、予算編成の問題で、だんだん政党の発言権が強くなってくるということなんですが、現状のままでは大蔵大臣今度の予算編成で体験されたと思うのです。どうしても私はたとえば防衛費はあとで御質問しますが、ふえていく一方である。それから標準予算というものもふえてくる、義務的経費はまたふえてくる一方である。そこへ政党のいろいろな利権的、選挙対策的、あるいは汚職的、そういう予算要求がこの中に入ってくれば、どうしても予算は私はふくれてくると思うのです。膨張せざるを得ない。従ってこの予算編成のこの件の問題については閣僚委員会を作って、与党といろいろ話し合って、与党の要求を反映することは、そのこと自体としては制度的に悪いことではない。しかし、それには前提がありまして、今までの政党のあり方というものは、ここで改めなければだめだと思うのです。今までのようなですね。それで三十年度予算でも、あれはぶんどり予算でしょう。ぽんと二で割ったどんぶり勘定で予算を取っておいて、あとでぶんどりするのです。そういうようなことでは、どうしたって予算が乱費されますし、どうしたって膨張してくる、インフレ予算にならざるを得ない。今度の三十一年度の予算が、これをよく物語っていると思う。大蔵大臣幾らがんばったってそうなってきてしまった。従って閣僚委員会を作り、与党との連絡を調整すると言いますが、だんだん政党の予算編成に関する発言権が強くなる。それに対してこれが乱費に陥らないように、不当な要求が出てこないような、大蔵大臣としてはそれに対して何かの十分な用意があるのか。用意なくしてそれをやったらそれはふくらんでゆくばかりですよ。来年度の予算編成で必ずまたそういうことが起ります。今度の予算編成大蔵大臣は苦い経験をお持ちだと思う。これに対する用意、準備、そういうものをお持ちかどうか。それなくして手放しでやったらですよ、今までの大蔵省中心のやり方には問題がありますけれども、いいところもあった、そういうものを押えるという意味で。しかし押え方についてわれわれ反対の意見もあるんですけれども、とにかく政党の不当なそういう利権的な要求を押え得るいい面もあったと思う。この点大蔵大臣慎重に考えなければならぬと思うのですが、そういう用意がおありかどうか。
  97. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。私率直に申しまして、私自身も同じような心配を持つわけでありまして、がしがし予算編成に際しまして、大蔵大臣の責任、また内閣の責任はごうも変るところはないのでありまして、ただ予算編成についてほんとうに内閣として衆智を集めて、しかもその結果について関係の者が十分責任をとってゆく、言いかえればよりよい予算編成の仕方がどうあるべきかという点についてそういう委員会を、予算に関する閣僚委員会というようなものを考えておるわけであります。そうしましてこういうふうな委員会と党との折衝によって、それぞれの要求が一そうよく調整されるだろう、かように考えておるわけであります。
  98. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 河野行政管理庁長官が見えませんから、この点についてはあとで……。
  99. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 今じきに見えます。今政務次官がかわりに来ています。
  100. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に、今度の予算編成について非常な中心の問題になりました防衛分担金について伺いたいんですが、一月三十日に防衛分担金削減に関する日米共同声明が出されたわけでありますが、この結果として、防衛分担金はいつごろなくなるお見通しであるか伺います。
  101. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 御承知の通りに来年度は三百億ということになっております。その次は防衛費と申しますか、全体の防衛費の増す分の半分ずつを減らすという方式になっております。そういう関係でございますから、その増す分が多ければ多いほど、防衛分担金は早くなくなるという関係になります。そういう関係になりますから、何年度にこれがなくなるかということは将来の問題でございますが、つまり日本の防衛努力の増加に伴って防衛分担金も早くなる。こういう大体のことになっておるわけでありますから、増加分が数年間に非常に増せば、それはなくなり得る計算になります。その計算は将来のことでありますから、今申し上げるわけに参りません。
  102. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 政府は経済五カ年計画というものを立てておるわけですね、防衛庁では防衛六カ年計画というものを立てておるわけで、この経済五カ年計画、あるいは防衛六カ年計画においては、昭和三十五年度においては防衛分担金というものをどう考えておるか。
  103. 船田中

    国務大臣船田中君) 防衛庁の試案として持っておりまする昭和三十五年度を最終年度といたしまする防衛計画につきましては、これはたびたびここで申し上げておりますから、その増強の数字は申し上げませんが、それはまだ政府の確定案ではございませんが、経済五カ年計画の中にはそれを一応取り込んで、つまり経済五カ年計画の中でまかないのつくということをめどとして計画を立てておるわけであります。
  104. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういうことじゃないのです。三十五年度にはなくなるのかどうかというのです。
  105. 船田中

    国務大臣船田中君) 年次計画がまだできておりませんので、三十五年度に必ずなくなると、防衛分担金がなくなってしまうということは、ここでまだ申し上げかねます。
  106. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 年次計画ができていないったって、最終計画ができていれば、わかるはずじゃないですか。
  107. 船田中

    国務大臣船田中君) 三十五年度において、陸上十八万云々という、その最終目標はできておりますけれども、それについての年次計画はまだできておりません。
  108. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 三十五年度の陸上十八万、海軍十二万四千トンですか、空軍は千三百機、それはどのぐらい維持費が要るのですか。その防衛費はどのぐらいなのですか。それは計算できるはずです。そうすれば現状からして推算できるのですよ。たとえば防衛分担金が三百億になったでしょう。六百億にすれぼ三百億がなくなるのですよ。そういう計算からいけば、幾らになるかということはわかるはずです。ですから三十五年度は維持費はどのぐらいですか、これを伺いたいのです。
  109. 船田中

    国務大臣船田中君) 今御質問ですが、増強をいたしまするにつきまして、大体初度調弁に属しまする艦船、兵器、飛行機というようなものにつきまして、大部分はアメリカ側の供与に待たなければなりません。それを当てにいたしまして増強をいたしておるのであります。ところがアメリカ側の供与というものは、まだ、そこまで確定されておりませんので、今後アメリカ側と折衝をいたしまして、それがはっきりしませんというと、今、御質問のような数字も出てこない、こういうことになるのであります。従いまして年次計画を今日申し上げるわけに参らないということを先ほど申し上げたのです。
  110. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 年次計画ではない、最終計画ですよ。最終の三十五年度の防衛規模というものは御説明になったじゃないですか。その防衛規模を維持する予算は幾らかと聞いているのですよ。
  111. 船田中

    国務大臣船田中君) それは、先ほども説明申し上げたように、アメリカ側の供与の関係もございますので、はっきりした数字の計算はまだできておりません。
  112. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 高碕長官は今後防衛費は大体国民所得の二%程度、あるいは二%を若干こえるかもしれん、昭和三十五年の国民所得は五カ年計画によれば八兆八百八十億になっております。八兆八百八十億の二%とすれば千六百億ですね。そうしますと、防衛庁の試案として、三十五年度の維持費として要すると伝えられるのは、二千百五十億と言われています。これはどういう数字か、防衛庁長官ご存じだと思うのです。今の防衛六カ年計画の陸軍十八万、海軍十二万四千トン、空軍千三百機を維持するためには、昭和三十五年で二千百五十億と言われるのですよ。ところが、国民所得の大体二%といいますと、八兆八百八十億の二%は千六百億です。これでいいのですか。その間に非常な開きがある。もっと数字的にわかるような説明をしてもらいたい。大体これまでの日本予算編成において、防衛費というものは非常に重要なのですよ。その見通しもわかりません。三十五年度の防衛規模が大体わかっておきながら、それで財政規模をどういうふうに持っていくかという主体的意図がなくてどうするのですか。アメリカさんが供与してくれるかくれないかわからないからわかりません、そんな自主性のない防衛計画でいいのですか。そんな自主性のない予算の組み方で一体いいのですか。大体自主的にですよ、予算編成して、そうしてそれと合わない分はむしろアメリカと外交交渉で調整していくのが当りまえじゃないですか。逆じゃありませんか。アメリカさんの方の供与がわからないからわかりません、そんな自由性のない防衛予算の組み方というのがありますか。大体きまっているのでしょう。大体大よその、この食い違いですよ、それをどういうふうに納得させてくれますか、お伺いしたい。
  113. 船田中

    国務大臣船田中君) 防衛六カ年計画の最終年度における目標は、しばしば申し上げたようなことでございますが、それを達成するためには、これをまず政府案として確定しなければなりません。それはこれにつきましてもたびたび申し上げておりますように、国防会議が設置せられましたならば、これに諮問をいたしまして政府案として確定してもらおうということを、われわれとしては努力しておるわけであります。しかし、これを達成するにつきましても、先ほど申し上げましたように、初度調弁に属します艦船、兵器等はアメリカ側の供与を受けなければなりませんし、供与を受けるためには米側との折衝をして参らなければなりません。従いましてそれらの数字を、最終年度においてどれだけの金額が必要になるかということを、今日直ちに計算するというわけには参りませんので、そのことを申し上げたわけであります。ただ、先ほど経済五カ年計画の中に大体予定していただいておるというのは、総額につきまして二%強というものを大体考えてもらっておる、こういうことを申し上げたわけなのであります。
  114. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと実際の数字が非常に合わないのです。じゃ千六百億ぐらいでいいんですか、足りますか。この防衛六カ年計画において昭和三十五年千六百億程度で実際足りるのですか。
  115. 船田中

    国務大臣船田中君) 今その数字が足りるか足りないかということを、ここに責任をもって申し上げる段階には達しておらないのでございまして、その点は御了承を願いたいと思います。
  116. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは非常に重要問題ですよ。防衛費がどのくらいになるかということを心配して、大体国民所得の何%ぐらいになるかということを聞いたところが、大体二%強というのでしょう。ところが五カ年計画が大体政府の試案として出ていまして、八兆八百八十億に対して二%強というのは大体千六、七百億ですよ。ところが六カ年計画を維持するためにはどうしても二千百五十億要るという計算になっておるのですよ。それでは前のお言葉は責任を持たないのですか。国民所得に対して二%強というのは、あれはその当座の言いのがれであって、五カ年計画にはこれは適用ないんだ、その場、その場でもってまた変ってくるのだ、こう解釈せざるを得ないのですが、それでいいんですか。実際に合わないのですよ、今の防衛庁長官のお話しでは。そんな無責任なことを言ったって……。
  117. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答えいたします。二十八年から三十一年にわたりまするこの間の平均をいたしますと、大体が防衛庁費というものは、国民所得の二・〇という程度になっておるわけでありますが、今後の国民所得の標準で二・二をもっていきたい、こう考えておるわけでありますが、国民所得というものは昨年に比較いたしまして、われわれが予定いたしておりましたよりも非常に大きな数字に相なったのでありまして、国防費というものにつきましても、これはあるときには二・四になるということもありましょう、あるいは二・〇になるということもありますから、今ここに三十五年度はこうだというこの数字を出すということは相当困難だと存じておるわけであります。全体を通じまして大体標準で進んでいきたいと、こう存じます。
  118. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 五カ年計画で大体昭和三十一年から三十五年までの一般会計の規模及び内容というものがわれわれに示されております、経済企画庁から。それで三十一年から三十五年までに五兆六千六百億、こういうことになっておるわけです。これは防衛費というものはどういうふうに織り込んであるか、なるほど年次計画がなくて防衛費というものを織り込まなければこういう数字が出てこないわけです。こういう作業があるわけです。こういう作業において防衛費というものをどういうふうに見込んでおるのか、この点がわかるはずです。そうじゃなければ、こういう数字が出てくるはずがない、防衛費を除外してこういう数字は出てきません。従ってそれが今後の国民生活なり、それから経済循環なりに、そういう不生産的防衛費というものがどの程度を占めるかということは重大問題であります。それを聞きたいわけです。今企画庁長官は、大体二・二%程度、昭和三十五年でその程度で済むのですか、実際問題としては済まない。子供だましのようなことを言わんで下さい。防衛六カ年計画の最終年度の維持費がどのくらいということは、大体見当がつくはずです。つかないはずでありません。それじゃなければ、なぜ防衛計画を立てているのですか、それはアメリカとの関係もあることでしょうが、これまでだってそうですよ。アメリカの供与を予定した、ところが、軍艦をくれなかった、くれなかったので、また日本で軍艦を作らなければならない。しょっちゅう変っているのです。そんなことで日本の防衛々々と言っているのでしょうが、日本の防衛じゃないのです。それではアメリカのための防衛じゃありませんか。アメリカの都合によって変るんなら、全く自主性がないと言わざるを得ない。どうしても私はこの食い違いを、二千百五十億と千六百億の食い違いをどういうふうに説明されるか、ほんとうに千六百億くらいでいいんですか、いいならいいでこれははっきり言っていただきたい。それならばわれわれは納得がいきます。大体二・二%程度で押し通すのだ、それが政府方針だと言われれば、大体千六、七百のものです。そう了解して国民も大体見当がつく、それが三十五年はそうじゃなかった。とんでもない、二千百五十億になるのだ、これは非常に違いが出てくるのですよ。その点伺いたい。
  119. 船田中

    国務大臣船田中君) 昭和三十五年度において、防衛関係費が二千百五十億という数字は承わりましたが、それは防衛庁としてもそういう数字は出しておりません。先ほど来申し上げておりますように、アメリカ側といたしましても、国会関係がありまして、長期にわたっていかなるものをどの程度に供与するかということについては、期計画は立てられないのでありまして、しかしさればといって、防衛関係が決してアメリカの防衛ではなくして、わが国土の防衛である。もちろん自主性を持ってこちらが案を立てまして、そしてこれについてこれだけのものをもらいたいということを、アメリカ側に交渉して供与を受けておるというのが、実際やっておることでございまして、自主性を失っておるものではございません。
  120. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは言葉だけで自主性を失ったものじゃないというだけでありまして、実体はそうじゃありません。二千百五十億というのは、いつでもそうです。新聞に出たものですから、これは防衛庁の関知しない……、そんなこと防衛庁内部に行ってお聞きになれば、試案ができておるのです。財政的な試案もないということはおかしいと思う。もしないのならば、一応大体想定というものはあるでしょう。アメリカが貸すか貸さぬかわからんけれども、大体こちらの供与希望分というのがあるのです。大体これだけ供与を受けてこれだけ日本がまかなう、それだけ供与を受けられるか受けられないかはわからぬけれども、一応日本の案というものはなければならぬはずじゃないのですか。そして供与を、これだけ前提にして、これだけ要るのだ、しかし、これはまだ今後の折衝に待つのだからわからぬというのなら話はわかります。ところが全然防衛計画には、財政的な面からの案がないのじゃないですか、全然。ですから自主性がないというのです。今五カ年計画は試案で、今度は国防会議等ができた。それを正式の案にするのだと言われたが、この試案が大体正式な案になる予定なんですか。
  121. 船田中

    国務大臣船田中君) これにつきましては十分検討を加え、なお国際情勢をよく勘案いたしまして適当な案を作りたいと考えております。
  122. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 また試案と違ってくるわけですか、試案と違いますか、今度そうするとまた……。
  123. 船田中

    国務大臣船田中君) それらの点につきまして、十分今後検討をいたして参りたいと存じます。大体におきましては、防衛庁の試案を元としてやりますけれども、しかし必ず同一のものが出るかどうかということは、ここではっきり責任を持って申し上げることはできません。十分検討をいたしまして、最も適当と考えるものを、わが国の国力及び国情に沿う最小限度の防衛態勢を整備するということを基本といたしまして立案をして参りたいと考えます。
  124. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで結局まあこの協同声明によりますると、この一般方式を採用するまでには、ずいぶんいろいろ、昨年八月ワシントンにおいて、外務大臣と米国国務長官との間に話がかわされてからいろいろ曲折を経て一般方式がとられたわけですが、この一般方式を採用するに当っては、その防衛計画というものが、これがきちんと出てなきゃならんはずです。それでその結果、結局防衛分担金は三十五年度に、毎年幾ら減っていくかということは、これはその年次計画になければわからんというのですから、かまいませんが、大体三十五年になくなる意図をもってやっていくのかどうか。なくす意図をもって、そういうことをもって重光外務大臣一般方式を採用して、防衛分担金を最終的になくすという前提でお話をしたのじゃありませんか。
  125. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は今先ほど申し上げた通りに、日本防衛力を増強するという方針をとっておるわけでございますから、その増強分に対する分担割合をきめておけば、漸次分担金はなくなる、こういうふうに考えました。そのなくなるのはいつごろなくなるかということを考えんことはございませんでした。それはなるたけ早くこれはなくなる方がいいのだけれども、それには防衛力の増強ということを非常に奮発しなければなりません。そこにかね合いがございまして、かね合いがございますから、その数字は、これはもう防衛当局の数字にこれは待つよりほかにしようがないと私は考えました。さようなわけで、私はこれはなるべく早く分担金はなくなるように向けたいと、こういうふうに考えてこの協定をこしらえたわけでございます。
  126. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ防衛当局に伺いますが、いつごろこのなくす目途をもって防衛計画をやっていくのですか、目途です。その通りになるかならんか知りませんけれども、一応目途がなきやならん。これはもう全体の経済計画と関連がありますから、経済企画庁長官も、いつごろを目途としてやはりこれをなくしていこうとしておるか。
  127. 船田中

    国務大臣船田中君) 今直ちに、いつを目途として防衛分担金がなくなるように防衛増強をしていくかということは、まだその数字をお示しするまでには至っておりません。
  128. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答えいたします。長期経済計画の面におきましては、防衛費といたしまして、防衛分担金防衛費とを合計して、これを防衛費として認めるわけですから、これをどういうふうに内訳されるということは、まだ検討いたしておりません。
  129. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 防衛計画はどうなっているのですか、五カ年計画ではどうなっている。
  130. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまお答え申し上げました通りに、五カ年計画は、防衛分担金防衛費とを合計したものをもって認めておるわけなんでございまして、この内訳はどういうふうになるかということは、まだ私ども検討いたしておりません。
  131. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういうあれがはっきりしないで、経済計画というものは立ちますか、非常に作用が違いますよ。防衛分担金というのと防衛費というのは非常に違いますよ。
  132. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく、そういう方面の内容がはっきり検討されていきますれば確かに計画はよくなってくるだろうと思いますが、ただいまのところは、そこまで進むことができない状態でございます。
  133. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうすると、まあ今までの御答弁でははっきりせんわけですね、今後防衛費がどうなっていくのか、全くわからんのです。こんなことで長期経済計画とか何とかいったって、全くこれは抽象的な作文に過ぎないじゃないですか。まず年次計画がないということ……、まだ五カ年計画については質問したいことがあるんですが、すいぶんおかしな計画になっているので、あとで雇用計画について伺いたいのです。  次に、河野長官おかげんが悪いそうですから先に伺います。さっき大蔵大臣予算編成の問題で、編成権を内閣に移管するという問題、これは河野長官が前に主張されたやに新聞に伝えられております。で、河野長官はこの予算編成権についてどうお考えか、大蔵省のあり方というものについて、行政機構改革と関連してどういうふうにお考えか、この点を聞いておきたいと思います。
  134. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御承知の通り政党内閣制の建前からいたしまして、政党の政策を政治に具現して参りますには、従来の政治のあり方をそこに相当の変更をいたしまして、主として内閣において予算編成をして参ることが、この指導権を強く持つことが必要であろうというふうに考えているわけでございます。
  135. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 さっき大蔵大臣にも伺ったんですが、その結果としての弊害というものについて考慮されたことがあるかどうか。その建前は私は反対じゃないんですよ。しかし今の、これまでの政党のあり方として、それが非常に予算の不当な膨張を招く危険がないかどうかというんです。
  136. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お説の通り、その点につきましては、十分に考慮しなければなりませんが、しかし予算の膨張につきましては、一方税制の問題がからんで参りますから、今日の各党の立場を御理解いただきましてもおわかりの通り、なるべく国民負担の軽減をはからなければいかぬ、負担の公平を期さなければいかぬという立場に立って、各政党とも十分研究しておられるのでございますから、それこれ見合って、その弊害はある程度除去される、その弊害はそう大して心配はないというふうに考えております。
  137. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はそう楽観できないと思いますが、時間が経過しましたから次に移ります。  これまで鳩山首相、それからその他の、重光外務大臣も失言をされたようであります。それはこういうところからきているんじゃないかと私は思うんですが、この間防衛庁長官は、自衛のためなら敵の基地を攻撃してもいいというお話しですね。このことは昨年重光外務大臣アメリカに八月行かれたとき、防衛分担金のこの一般方式をきめるについて、これを漸減するについて、そうしてそれがなくなるときにはアメリカ軍は撤退する、ところがこれは新聞に出た記事でありますが、しかし一般方式を採用するには、しっかりした防衛六カ年計画というものがなければならない。そうして米軍が撤退するためには、海外派兵ができなければ、米軍が撤退した場合、それは日米の共同防衛はできないわけです。そこで一般方式を採用して防衛分担金を漸減するについては、海外派兵の問題がどうしても懸案になる。で海外派兵の問題は、今の日本の憲法では禁止している。でありますから憲法を改正してからこの問題は話し合うべきだと、そこでこの一般方式の話し合いは話がつかずに帰ってきた。ところが憲法改正をやろうと思っても、その後の選挙において革新政党が三分の一以上占めてしまった。だから憲法改正はできない。そこでダレスさんも最近やって来る、これについては憲法の解釈を今度は変えて対処するよりほかない。つまり敵の基地を攻撃するには、海外に派兵しなければできないのですが、しかし日本の憲法を改正しなければ、これはできない。しかし憲法改正は、三分の一以上革新政党が取ったから、これは困難だから、ここ当分憲法改正が行われるまでは、自衛のためならば海外の敵の基地を爆撃してもよろしい、こういうふうに憲法解釈を拡大した、これが真相ではないのですか。従って重光外務大臣は昨年八月ダレスさんとこの一般方式について話し合ったときの、これは内容が新聞に伝わっておるのです、憲法改正が前提であるとなっておった。ところが憲法を改正しないうちに、この一般方式は共同声明で妥結になったのです。その点がどうもわれわれは非常に疑心暗鬼を生んでおると思うのですが、その経過を御説明願いたいと思うのです。
  138. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 昨年八月の私が渡米したときの日米共同声明、この声明についてはいろいろな誤報が伝わりまして、そのためにずいぶんと議論がありました。そうして国会においても御質疑がありましたので、委細その御質疑にお答えをいたしてきたのでございます。さらに今御疑問の点がございました。そこで私ははっきり申し上げます。防衛分担金の漸減方式をこしらえるということは、何にも憲法の問題とか、それに関連する議論があったわけでも何でもございません。防衛分担金の問題については、年々予算に関連して防衛分担金話し合いをすると、まことにややこしくて、そのために議論を沸騰させるというようなことは、両方の関係上よくないことだと、そこで一つ一般方式をできるものならこしらえようじゃないかというのがもとで、便宜上のこれは考案でございました。憲法改正の問題だとか、それからまた自衛権の解釈の問題だとか、それからさらに進んでは海外出兵の問題なんということは、全然話し合いには上ってこなかったのでございます。これはその当時発表もし、日本だけではございません、米国側もその疑問に答えて発表をいたした通りでございまして、これは何も問題はございませんでした。問題が防衛問題にありましたのは、日本が負担しておる防衛力の増強ということについては問題がございました。これはできるだけ増強するのだということは、むろん私も話したのでございますが、その他のことについては話し合いがございませんでした。防衛力は増強しなければならないというので、これは日本の防衛のためにも増強しなければならぬという、それが海外の派兵を要望するという市はまだアメリカには少しもございませんでした。いわんやわれわれは初めから国会において申しておる通りに、そういう方針でないということを初めから、これはもう向うも了解しておったのでございますから、防衛分担金の問題はさような問題に少しも関連がなかったことをさらに私から申して上げておきます。
  139. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 防衛庁長官に伺いますが今の憲法のもとにおいては、自衛以外の場合には海外派兵は禁止されていると、自衛という意味はこの前にあなたが鳩山総理のかわりだ御答弁になったような、自分を守るために敵の基地を爆撃する、そういう場合以外に海外派兵は禁止されておるものと解釈されておるかどうか、今の憲法を。
  140. 船田中

    国務大臣船田中君) 海外派兵というようなことは、現行憲法において禁止されておると存じまして、私も海外派兵というようなことは未だかつて申したことはございません。
  141. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 日米共同防衛の立場から、アメリカからそういうことを要請された場合にはどういうお考えですか。
  142. 船田中

    国務大臣船田中君) 侵略が海外から、外国から行われたというような場合におきましては、行政協定の二十四条によりまして、いかなる措置をとるかということについて日米間において協議をしなければならぬことになっております。そういう場合におきまして、わが方といたしましては憲法及び国内法の範囲内において最善の防衛努力をするとこういうことになると思いますし、また、政府としてもそう考えておるわけであります。
  143. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その最善の防衛努力をするということは、憲法、国内法に合わない場合にはこれは拒否できるのですか、するのですか。
  144. 船田中

    国務大臣船田中君) わが憲法及び国内法の命ずるところに従ってやるということでありまして、憲法及び国内法の禁じておることを引き受けるということはございません。
  145. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に、防衛歩長官に伺いたいのですが、防衛費のうちで、国内で兵器を作る分がだんだんふえてきておりますね。特に空軍の経費がふえてきておりますが、兵器の価格ですね、大体兵器の価格はどのくらいか伺いたいのですが。それからその兵器を作る場合、日本だけで作れないので、アメリカの会社といろんな特約をやっていると思う。たとえばF86F、T33について伺いたいのですが、これはどういう契約内容になっているか。F86Fは一機幾らで、そこでアメリカとの分担内容はどういうことになっていて、これはノース・アメリカンとの契約だと思う。それからT33はロッキードとの契約だと思う。その契約については相当の特許料を払わなければならぬと忍べ。そこでその契約内容がどういう契約になっていて、そうして三十一年度はF86Fは百十機ですね、T33は八十三機、そうなるとアメリカに特許料として払う分はどのくらいになるか、その点伺いたいのです。どのくらいのものを払うか。今後どんどん空軍をふやしていきますと、ノース・アメリカンなりロッキードに相当の特許料というものを払わなければならぬ。それから聞くところによれば、アメリカではもうF86Fは作らないという、もう償却済みのものであるといわれている。F100とかF102を作っておる。償却済みのものを日本に特許を与えてその使用料を相当取るわけです。その金額はどのくらいになるか、三十一年度の予算でどのくらいになるかを伺いたいのです。
  146. 船田中

    国務大臣船田中君) F86Fは現在でもアメリカで第一線機であり、ことにヨーロッパにおきましては第一線機として使っております。なお今お示しのようにわが方とアメリカ側との飛行機生産についての分担割合というものはだんだんアメリカ側の方が少くなりまして、わが方の負担が多くなりまして、そして結局全国産のできるように持っていきたいとかような考えをもって進んでおります。なお、その日米の間においてどういう取りきめをしておるかということにつきましては、局長から御説明を申し上げます。
  147. 久保龜夫

    政府委員(久保龜夫君) こまかい点についてお答えをいたします。F86FとT33の契約の関係につきましては、御承知のように日本政府アメリカ政府との協定をもとにいたしまして、米国側が日本政府に部品、あるいは一部治具等を供与いたしまして、私どもの方は、それを受け入れまして三菱、あるいは新三菱もしくは川崎等で組み立て、あるいは漸を追うて国産化の契約をいたす、かようなことになっております。ただいま御質問の件につきましては、ノース・アメリカン及びロッキードはそれぞれ機体の製造、または同会社でやっております部品の製造につきましていわゆる製造権、ノーハウ権を持っております。これは御承知のように、通常の場合、最初の、イニシアルペイメントと申しますか、最初の支払いです。それからローヤリティ、完成品ごとに支払うものとございまして、これは協定上は、最初の支払いは製造権に関しましては全部米国政府がノース・アメリカン及びロッキードに支払いまして、これを無償で日本政府に使わせる、これは当然日本側の会社に使わせる。これは百万ドル程度とみておりますが、これは正確に承知いたしておりません。それからローヤルティ、つまり一機ごとに完成いたした場合に、会社に支払います分は、これは協定によりますと、日本側の負担ということに相なっておりまして、これは当初組み立てのころから漸次国産化の段階に至りまして、金額が変っております。F86Fにつきましては、最初は一機当り五千ドル程度から約九千ドルに及んでおります。それからT33の方につきましては、同様ノック、タウン二千五百ドルから約五千ドル程度に至っております。これは一機当りの計算でございます。
  148. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから部品においても何か使用料が……。
  149. 久保龜夫

    政府委員(久保龜夫君) 部品につきましては二通りございまして、ロッキードもしくはノース・アメリカンが自分のところで作っております部品がございます。これにつきましては、第一回の支払いは全部米政府の負担で日本側に提供する、ただし、ロッキードもしくはノース・アメリカンで作っておりませんものがございます。たとえば通信機でございますとか、計器類でございますとか、そういったものは特許権もしくは製造権等のありますものにつきましては、これは個々の会社同士の契約に対しまして両政府が承認をいたすわけでございますが、これは非常に多岐にわたっておりまして、ものによりましてあるいは当初に支払いをいたすものがございます。あるいはそれに続いてローヤルティ等のあるものもございます。これは個々の契約等によって違っております。
  150. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ノース・アメリカンの場合は、部品を日本で作った場合には、大体製作費の技術料として六%、それからロッキードの場合、川崎航空機の場合は部品の技術料は五%と聞いておりますが、大体三十一年度の予算でこの防衛費の中からどのくらいアメリカのノース・アメリカンとロッキードに金を支払うことになるのですか。大体その金額です。
  151. 久保龜夫

    政府委員(久保龜夫君) 協定の内容につきましては、これは目下交渉中でございますが、大体の姿としては、具体的に両方の分担金額は実は表現されておりません。そうでありませんで、具体的に国産化の程度、機体の部分、もしくは部品等についてどの程度国産化するか、あるいは米側が協力してくれるかという協定の内容になるわけでありまして、金額は正確には出ておりません。ただ私どもその向うから供与を受けます部品等の、あるいは装備品等の推定代価を一応積算いたしまして見当はつけております。それによりますと、大体向う側の負担分はF86、T33と合せまして、百億前後でなかろうかというふうに推算をいたしております。
  152. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、向う側の負担が百億で日本側はどうなんですか。
  153. 久保龜夫

    政府委員(久保龜夫君) お答えいたします。日本側の負担は予算提出いたしております通り、合計で百十二億、両方を合せましてこう相なっております。T33とF86を合せて百十二億、そうして米側が行徳前後、かような数字になっております。
  154. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういうのが大体特許料とか技術料、そういう形で支払われるのですか。そういうものなんですか。
  155. 久保龜夫

    政府委員(久保龜夫君) 日本側で支払います百十二億の大体の内容を申し上げますと、これは時期によって違いますが、一つは組み立てる労務費、それから川崎並びに新三菱の飛行機会社でいたしまする部品の製作、組み立て、それからだんだんのちの生産品に至りますと、部外に対する部品の発注、あるいは装備品の発注、それからものによりましてはしまいの方になりますと、防衛庁が直接官給いたしますもの、通信機の高度のものにつきましては、私どもの方から直接買いまして支給するというものもございます。それからそれとただいま申されました特許料と申しますよりもロイヤルティ、製造権に対する個々の支払い、それが川崎に支払われまして、それが通り抜けでロッキードに支払われる、ただ部品等につきましては、これは部品の代金の中に当然必要なものは含まれてくる、その種のものは含まれる、かように相なっております。
  156. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ですから、そのロッキードやノース・アメリカンに支払われる額はどのくらいですか、三十一年度で。
  157. 久保龜夫

    政府委員(久保龜夫君) 今ちょっと数字を整理しておりませんので、先ほど申し上げました一機当りロッキードの場合は二千五百ドルないし五千ドル、それからノース・アメリカンの場合は五千ドルないし九千ドルということで、この組み立ての程度によって変っていきますから、それにそれぞれの機数をかけたものでございます。それはその数字は整理して御報告申し上げたいと思います。
  158. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ではあとで資料として出して下さい。  次にお伺いしたいのですが、今度の予算では防衛関係以外の重要な政策としては民生安定政策ですが、その中で一番重要なのは雇用の問題だと思うのですが、雇用問題については、この経済五カ年計画、経済企画庁から出されましたこの中にやはり非常に強調されておりますが、雇用問題が非常に困難になってきている。特に最近は生産年令人口が非常にふえてきて、今後約十年間は欧米先進国においても経験したことのないような、非常に大きな規模と速度をもって生産年令人口が激増する。そうして、それにどう対処したらいいかということが一応ここに示されておるのです。しかし政府の実際の政策はこれとは逆になっておるのですよ。予算に現れた政策は逆であります。どうしても私はそこでわからないのですが、お聞きしたいのは、この五カ年計画計画期間中には雇用の問題を十分に解決されないということになるのですが、そこでそれに対処する道は、根本的には生産規模を、経済規模を拡大するほかない。しかしそれに対処する根本政策は実際今までは公共事業なり失業対策、社会保障、そういうものが重要だということになっておる。ところが社会保障の内容を見ますと、予算は百二十二億ふえましたけれども、むしろ内容は後退しておるのです。次に社会保障のことを伺いたいのですが、雇用問題をどういうふうにして解決するのか。この問題、この前に労働大臣にもそれから企画庁長官にも伺ったのですが、どうもはっきりしない。そうして三十年度の、ことに労働力率ですね、労働力率が五カ年計画では非常に低く出ておるわけです、この点一体どうしたのか。もうすでに三十年度では六八・五でしょう、三十一年度は六八・四と聞きました。ところが五カ年計画では六七・八になっておるのですよ。そうしてそれでは生産年令人口の圧迫はこれ一年の短期間の問題かといえば、大蔵大臣はこの間、これは短期間の問題で、苦痛はしんぼうしてもらわなければならぬと言いますけれども、経済企画庁で出したこの計画では十年間は生産年令人口が非常にふえることになる。ところがこの五カ年計画は十年の半分ですが、それだのに労働力率を六七・八として組んでおります。実際には失業者はもっとうんと出ます。もし六八・五で組んでごらんなさい。完全失業者は最終年度――この五カ年計画で組んでおるようなものじゃございません。四十五万ですか、そんなものじゃない、もっとうんとふえると思います。どうも労働力率を故意に低く見積もっておるのじゃないか。そうして数字でこれを失業者がふえないように、ただ数字的な作業で出ておる。それから三十一年度の失業対策をごらんになりましても、前年度に比べて二万八千人しかふえていないでしょう。三十年度は五万人出ておるのですよ。ところが景気からいいましても、生産の上昇カーブからいっても、生産年令人口からいっても、三十一年度は三十年度よりも失業対策費をふやさなければならないはずでしょう。それだのに二万八千人というのは、どういう数字的な根拠から二万八千人しか雇用対象人員がそれだけしかふえないのか。むしろ三十年度よりふやさなければならないのです。ここに私は非常に数字的にこまかし――こまかしと言っちゃ失礼かもしれませんが、誤算があると思う。それで企画庁長官もこれは気がつかなかったのだ、これは最近には重大な問題だと言っておる。最初はこんなに生産年令人口がふえるとは思わなかった、それで思わなかったということで政策を立てていたのですよ。ところが十年間は大変なことになっております。生産年令人口は欧米先進国においても前に経験したことのないような大きな規模と速度をもって増加してきておる。これは今の日本の経済にとって一番重要な問題になっておるのですよ。それは企画庁長官も労働大臣もよくお認めになる。ところがそれに対する三十一年度の予算の組み方はそうなっておらないのです。逆になっているのですよ。その点をここで詳細に納得のいくように数字的にお伺いしたいのです。労働力率はどうしたっておかしいと思うのです。五カ年計画との関連もおかしいし、三十一年度予算との関係もおかしい。
  159. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。  お説のごとく労働力人口が非常な勢いでふえるということは、これは私ども初めから考えはしておったわけであります。大体五カ年間に一二%ふえる、こういうことは考えておったのですが、ここに私ども多少誤算をいたしておりましたことは、だんだん生活がよくなってくれば労働力率というものは減退するものだ、これはアメリカの例等において見ましても非常に低いから、私どもは六七・八という率であるが、これは三十五年度には六五くらいに下げたい。ということはできるだけ老人などは働かずに済む、こういう工合に持っていきたい。こういうふうな感じでおったのでありますが、それが三十年度において全然裏切られまして、三十年度は生活がよくなってきた。幾らかよくなったから労働力率は減るだろう、こう思っておりましたところが、それがいずくんぞしらんお話の通り六八・五という数字が出たのでありまして、これはどういうわけかということもただいま検討いたしておりますが、とにかく事実はそうして現われたわけでありますから、三十一年度は六八・四でもってやるが、しかし三十五年度は六七・八をもってまず一応やっていこうという工合に今進んでおるわけでございます。決して故意にやっておるわけではありませんので、よほどこの点は検討しなければなりません。でこれは本日まで私どもの経験がなかったことでありまして、外国の例も見るわけにいかない。こういうふうな結果こういうふうになっているわけでありますから、その点は一つよろしく御了承を願いたいと存ずるわけであります。  それから大体の雇用率におきましては、三十五年を期しまして輸出は六六%ふやす、国民の生産は大体三三%ふやす、こういう数字でございまして、これに対して労働力率の、労働者のふえる数字は一二%でありますが、就業関係といたしましては一二・七をもって就業率をふやしていきたい。こういう考えでございますから、幾らかこれはよくなるだろう、こう思っておりますが、しかし五年先においては先ほど申し上げました六七・八といった比率でいい、ほんとうにそれで済むかどうかということにつきましては、はっきり申しますと、私どもまだ相当疑問を持っておるわけなのでございますが、そういう状態でございますから、さよう御承知を願いたいと存じます。
  160. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) しばしば私が申し上げておりますように、政府の策定いたしました五カ年計画がかりに完全に成功するといたしましても、雇用と失業の問題について決して楽観をしてはいけないと私どもは考えております。ただいま御指摘の第一の点は高碕長官から申し上げましたが、三十年度は御承知のように二十九年度を基準として六八・五といたしましたが、この三十年度の六八・五に対して三十一年度は六八・四%にいたしておりますが、このことは一般経済活動の上昇速度が、木村さんも御同感だと思いますが、私どももいろいろな情勢を見まして、三十年度に比べてこれは鈍化いたしていくと考えなければならないと存じます。そこで五カ年計画には就業者の増加を大体九十万とみておるようなわけでありますが、今のこの生産力人口が非常に急速にふえてきて、一般人口の増加率をずっと上回っているのは、戦争中の、終戦当時の生めよ、ふえよといった時代のあの影響が、今日になって生産力人口となって現われてきていることは、これはもう争べことのできない事実でありますが、そこで今申し上げましたような鈍化に影響されて就業者の増加を九十万人と企画庁は見た、そういうこと、及び御承知のように分配国民所得を五カ年計画では四・三%の増加と見ております。従って就業者一人当りの所得水準も二・一%程度上昇する、こういうふうに見ているわけでございますから、つまり家族に対する扶養力率も従ってふえてくるのではないか。従って労働市場に現われて参りまする労働力が、非労働力が労働力化する勢いも鈍化するのではなかろうかと、こういうことでこの三十一年度の六八・四を見たものと思いますが、そこで私どもといたしましては、ただいま企画庁長官から申し上げましたように、この五カ年計画を遂行することによって、最終年度においては六七・八という見込みを立てて、それに努力をいたして参る、こういうわけでございます。  第二点のこの失業問題の三十一年度予算についてでございますが、二万八千人というお話でございましたが、そのほかに私どもは例の石炭合理化法によって現われるのであろうところの、失業者を吸収する目的をもって川崎線建設を予算に計上いたしておりますが、あれで二千人吸収するということで、昨年に比べて三万人増加と、こういうことで計画を立てました次第でございます。そこでその程度では不足ではないかというお話でございますが、これで私どもは十分と申しているわけではございませんが、三十一年度においては五カ年計画の初年度で、まず長官が申し上げましたように、さらに輸出を増進することによって経済規模を拡大し、いわゆる第二次産業の吸収率を増加いたしていく。しかし民間産業に依存するだけでは足りませんから、たとえば北海道開発公庫であるとか、道路公団であるとかいったような政府事業も引き続いて起して、その上に失業者を吸収するということをもって、まず大体この程度の計画で局間と政府側との事業をあわせて推進いたしていったならば、大体これで失業対策はいけるではないかと、こういう見込みを立てたわけであります。
  161. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういうことを言っていますけれども、この五カ年計画でもはっきり低所御者、短時間就労者のいわゆる不完全就業者が多数存在しておって、そういうことを考えると、今後相当期間はこういうような雇用の問題について特別の考慮が必要だと思う。ところが特別の考慮が払われていないと私は思う。そこで第二にしわが寄ってきているのは、失業対策もこれは見解の相違になるかもしれませんが、私は不十分だと思います、それはやはり五カ年計画でも生産性向上の要請が強いので、生産の増大にかかわらず比較的雇用の方が大きくない、こう言われております。生産がふえても雇用が増大しない、そこで第二にしわが寄るのは社会保障の面なんです。今度の予算について社会党の河上氏が衆議院でこの予算は軍事偏重で、社会保障を考慮されていないじゃないかと言うた。ところが百二十二億ふえているじゃないか、社会保障費は。そういうふうに鳩山総理は答弁されましたが、しかしこの内容をみて見ますれば、非常な後退を示しています。時間が経過して参りましたから厚生大臣に要点について伺いたいのですが、この社会保障の政策の内容は後退していまして、それで老人とか子供に対する、経済的弱者に対する対策が著しく後退しています。これで社会保障の前進と一体言えるかどうか。たとえば六十才以上の老人が全国に七百十六万いると言われますが、この中でどうしても今緊急に救済しなければならん人が九万五千人いる。これに対して救済施設は全国で四百五十カ所、収容人員は二万五千人にすぎない。有料保護施設は二百五十人を収容するにすぎない。しかも有料の方は年負担金は二十万円も要るんです。一体こういう老人九万五千人は、これは緊急に救済しなければならない。それで二万五千人以外にこれだけ救済しなければならない。それから児童については、特にこの児童対策は非常に後退しています。厚生省がせっかく今の養護児童の一日の給食費五十七円六銭を十円三十六銭上げようと思って、一億七千六百万円の予算要求した。これを七千七百万円に切り下げられたのですよ。養護課長のお話しによると、親のない、政府が養っている養護児童に対して、四日に一ぺんリンゴを一個食べさしてやりたい、三日に一ぺんミカンを一個食べさしてやりたいというので、一億七千六百万円の予算を厚生省が要求した。それに対して大蔵大臣は、よく聞いておいて下さい、七千七百万円に切り下げてしまった。児童憲章というものがありますが、一体これで児童福祉なんていうことが考慮されているのかどうかです。大蔵大臣、今度末端に行ってこれをごらんになるとよくわかりますが、児童に対する保護施設が一番おくれています。私はこの間名古屋市に行って、割合赤字を出していない余裕のある町村について調べてみました。市の中でも一歩黒字を出して非常に成績のいいと言われている、それでさえ、政府一般会計には百二十二億も予算をふやしたといばっていますが、社会保障なんて末端に行ってみますと、惨たんたることになっているのです。たとえば保育園を見ますと、保母は児童三十人に対して一人です。そうして国の負担は十分の八で、府と市で八分の一ずつ負担するのですが、負担しきれないものだから、この保母をふやすことができない。あるいはまた蹄弱児童ですね、虚弱児童の収容所、精神薄弱児ですね、こういう者を収容する「ひばり荘」というのがあるのですが、それは五十三名しか収容できない。ところが名古屋には年間二百人も収容しなければならぬ児童がいるんです、そうすると年々三名か五名しかあかないんだそうです。そういう施設がもうほったらかされている。そうしてスイスのエリコン社から誘導弾を一三億六千二百万円で買っている。このかわいそうな気の毒な養護児童に、三日か四日に一ぺんリンゴ一個、ミカン一個食べさしてやりたいという一億七千六百万円の予算を七千七百万円に削って、エリコン社から誘導弾を買うのにはすぐ三億六千万円オーケー、ジェット機一機一億六千万円、そういう費用の方は簡単にどんどん出して、そうして老人とか、こういう弱い子供の方のそういう施設がほったらかされてあるのです。末端に行ってごらんなさい、惨たんたるものですよ。この間私は八幡の戸畑に行った。七十才の老人で肺を病んで、ぜんそくで、びろうな話ですが、痔が悪いのですね、それにその老人が日雇いに雇われておって、そうして痔が出てくるので、苦しいのでスコップをこれに当てて痔を直して、また泥を運んでトラックに入れているのです。そのおじいさんに、なぜあなたは生活保護の適用を受けないかというと、生活保護では食っていけないのです。厚生大臣ご存じでしょう。一人だと幾らです、一ヶ月。生活保護の保護費はどこの末端に行ったって、今の基準はあまり低すぎる。千五百円や六百円で食っていけますか。そこでその老人は、自分は生活保護では食っていけないので日雇いに出ている。日雇いに出れば二百四十円その他一日でもらえるんです。生活保護を受けたんでは食っていけない。それから少し収入があれば、今の保護法の仕方は、その千五百円か六百円から差っ引いてしまう。そこで、どこへ行っても二千円くらいの収入まではこれを黙認したらどうか、それはもう最近厚生省から、りっぱな自動車に乗って役人がどんどん乱給を防止上するために行って、なるべく厳粛に生活保護の適用を受けるようにしている。そのために、かせぐと引かれてしまう。それだから正常の働く意欲がなくなる。しかもそれが食っていけない。いけないからからだが悪くてもニコヨンになっている、そういうおじいさんがいるんですよ。そういう人をほったらかしておいて一体何が社会保障ですか。さっきのリンゴの話ですが、あの養護児童は一日五十七円六銭のほかに、身の回り品として十円の予算があります。十円で身の回り品は何が買えますか。私はそこの保母に聞きましたが、予算がないので便所に行くちり紙、はなをかむちり紙一枚、二枚しかやれない所がある、そういう状態です。養護児童は五十七円六銭の食費、新聞にも出ましたが、野犬狩りの犬の食事と同じで、あまりかわいそうなんで一億七千六百万円の予算要求したものを削った。そうして誘導弾は三億六千二百万円で簡単に買っちゃっている。F86ジェット機一機節約すればそのくらい出るんですよ。それから学校の今の月謝を上げました。月謝を上げて増収は四億五千五百万円じゃありませんか。ジェット機三機節約すれば出てくるんです。そういう社会保障をほったらかしておいて、どんどんジェット機とか誘導弾なんか、今戦争が迫っているわけじゃない。社会保障をまず充実するのが先決じゃありませんか。厚生大臣は、一体末端に行って今の生活保護なり結核対策なり児童保護なり、あるいは社会保険なり、遺家族援護の問題、そういう問題、あるいは失業対策を末端へ行ってごらんになりましたか。国会で一般会計のこういう大きな何百何十億という社会保障の予算の数字を見て、百二十二億ふえたから社会保障が充実しているなんて、とんでもない話です。日本の経済は安定したなんといっているが、安定していない、失業者は激増していて、あぶれる人がたくさんある。末端へ行ってごらんなさい、そんな再軍備するどころじゃない。再軍備するのがいい悪いは一応別としまして、民政の末端へ行ってごらんなさい、全く社会保障の充実なんか、これはもう鳩山内閣が――なんというのは僭越ですよ。ほんとうに僭越です。末端へ行ってごらんなさい、惨たんたることになっているんです。そういう点に十分留悪しないで、そうしてこれが再軍備偏重予算である。社会保障を十分に考えていると言っておりますけれども、シワ寄せになる人がたくさんいるんですから、もっともっとそれらを真剣にそういう人の身になって、あまり簡単にジェット機とか、あるいは誘導弾ということでなく、もう少し血の通った人間としたならば、愛情をもってそうした民政を考えるべきです。全く愛情の片鱗さえもない、予算をごらんなさい。それがうそなら末端まで行って御研究になってほしい。厚生大臣について、もっと私は詳細に具体的な点についていろいろ伺いたかったけれども、時間が経過して十分に時間がございませんので、最後に厚生大臣に、この点誠意のある、またなるべく具体的にその御答弁をわずらわしたいのです。
  162. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 木村さんのお説のように、全国各地におきましていろいろ困っておられる方がたくさんおられることはわれわれよく承知いたしております。国といたしまして、一方においては社会保障をやりたい、一方においてはこういう施設をしたい、いろいろの問題がたくさんあることですが、私はたとえば今おっしゃったように誘導弾の問題にいたしましても、これをこの程度にして社会保障をもっとふやせとか、あるいはそのほかの問題を削ってこの方に持ってくるとかいうようなことにつきましては、私はいろいろ所見によって違うこともあると思います。しかし私はいずれにいたしましても、今日昨年度よりも厚生省予算にいたしましても六十数億円の増加を見たということは、決して後退ではないと思います。ただ日本が今日まだ戦後十年でありまして、ほんとうにこれからいよいよ再建しなければならぬ途上におきまして、そういう困った方々がありますることは、これは見のがせない事実でございますけれども、しかし社会保障の問題にいたしましても、たとえば生活保護にいたしましても、あるいは結核対策にいたしましても、あるいは児童の問題にいたしましても、いずれにいたしましても、私は毎年々々多少の変更はありますけれども、社会保障費の増加もいたし、国がこれを手を伸ばし救おうといたしておることは事実でございまして、今後木村さんのおっしゃったような問題につきましても、十分に緩急よろしきを得て推進をいたしたいと思っております。
  163. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もうこれで終りますが、この問題は私は保守とか革新とか、イデオロギーの立場の相違から見る問題より以前の問題と思います。良識の問題だと思うのです、社会保障の問題は。それさえほったらかされておる。それはここで今厚生大臣が一応私の質問に対して答弁されれば、それでここは事は済むかもしれませんが、しかしその現実は、事は済んでいないわけです。私はもっと、バターか大砲かと言いますけれども、そんな抽象的な問題ではないのですよ。もっと生活の末端に行ってよくお調べになって、良識があったら、愛情の問題ですよ。人間味があったら、ジェット機を作るのとそういう人たちを救うのとどっちが先かということは、イデオロギーとか何とか立場の相違じゃありませんよ。私はもっと政治的に良識を回復してもらいたい、取り返してもらいたい。  最後に大蔵省標準予算についてさっき質問いたしましたが、御答弁ありませんが、その点御答弁いただきたいと思います。
  164. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 三十一年度の標準予算は、三千六百四億でございます。それに見合う前年度の標準予算額は三千四百十九億でありまして、百八十四億増加いたしておりますが、その増加の一番大きなものは、恩給でございます。恩給のところで標準予算系統の金額で増加いたしました金額が百三十九億でございます。この関係が大きく増加いたしました。その他の関係は前年度と同じような金額でございます。
  165. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでさっき御質問した点ですね。そのために旅費その他の事務的経費が不当に圧縮されていることがないかどうか。
  166. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 標準予算に織り込みまする旅費は、いわば人頭的な旅費ないしは出張費でございまして、これにつきましては、当初作成いたしました標準予算額を、最後に予算編成が難航した際にさらに圧縮したという事実はございません。当初から必要最小限度のものとして相当圧縮をした予算を組んでおりましたので、予算編成の最後の段階で、難航いたしましたためにこれをさらに圧縮したというような事実はございません。
  167. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 官房長官にお伺いします。総理がこの前の金曜日の予算委員会で、先制防御の意味での敵基地をたたくということは、事前であれば憲法違反だと、こう言われました。三月一日の衆議院内閣委員会での釈明文では、事後であれば合憲である、こう言われたのですが、その限界の解釈を伺います。
  168. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。総理が先般お答えいたしましたのは、これは自衛権の発動としての行使のことを言っておるのでございまして、従いまして、予防措置とか先制攻撃ということはやらないという旨を御答弁申し上げておる次第でございます。なおまたこの前衆議院の内閣委員会における答弁は、これまた船田防衛庁長官に対する質問におきまして、これは相手側がどんどんわが国を侵略して参りまして、そうしてこれを防ぐ手段がなくなってきた、こういうような場合においても敵の基地をそのままにしておく意思かと、こう問われたときに、座して自滅するわけにはいかないから、その場合には相手方の基地をたたくことができる、これも自衛の範囲だ、こういうふうに申したことに関する総理の意見を聞かれたのでございます。この問題は本来非常に仮説が多いのでございます。本質的な政府の見解といたしましては、自衛のためでありまするから、自衛の限度を越えたことはしない。従って相手側に派兵をするということは毛頭考えてないということを前提としまして、ただ誘導弾とか何かでやられてどうにも処置がなくなった場合には、理論的にはそうしたものをそのままだまって自滅するわけにはいかないから、こちらでも自衛の措置を講ずる。その表現を攻撃というふうに申した次第でありまして、事前であれば憲法違反であり、事後であれば合憲である、そういうふうに割り切った、事前、事後を通じての合憲、非合憲を申したことではない、かように解釈していただきたいと思います。
  169. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 自衛力の行使そのものについてはいろいろ議論はありますけれども、結局突きつめてくると、こっちから先、撃つのは憲法違反だ、向うから一発来てすぐ撃ったらかまわぬ、こういうことになるわけです。そこで紙一重になるのですが、防衛出動時の武力行使の限度を規定している自衛隊法の第八十八条に、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」、こういうきわめて抽象的な規定があるわけです。そこでこれを一体実際に当てはめてみると、どういうふうに具体的に解釈するかという点を、これにからんで続いて御説明いただきたい。
  170. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。先般の御質疑におきましても、この問題が大分追及されたようでございまするが、総理の御答弁は、一発向うから撃ってきて処置ないからすぐやるということでなくて、どうしても方法がなくなった、黙っておれば国家の非常な存亡に関するような非常事態になった場合において、黙っておるわけにいきませんから、理論的に見て、そういう場合に敵の基地をたたくことも自衛の範囲に属する、こういうふうに申し上げたのでありまして、自衛隊法に規定してあるところの防衛出動に関連してこれを申したのではないのでございます。しかしただいま八木先生の御質問は、防衛出動に関連しまして、防衛出動ということは相手方が攻撃して来たとき、それからまたカッコの中にはそのおそれのあるときということを含んでおる、その運営をどうするかということの御質問と解釈いたしますが、その場合におきましても、おそれがあるというために、直ちに武力を行使するというような意味においてではなく、おそれのあるときに準備行為として動員をかけておく、動員をかけるということが一つのこれは出動の内容をなすわけでありますから、そういう意味に解釈しておるという旨を、先般総理並びに防衛庁長官から御説明申し上げたと存じております。そのように解釈いたしております。
  171. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 昨年の六月の十一日の当委員会で、林法制局長官が自衛権の行使の限界について、「自衛のための必要相当限度の戦う力」、こういうことを言われている。それから、しかし、それには一定の段階があるのだ、無制限ではないのだ、こういうお話があったのでありますが、そこで私が伺いたいのは、憲法第九条の第二項に禁ぜられている、いわゆる自衛のための必要相当限度の戦う力の禁止段階は一体どこにあるのか。
  172. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。憲法第九条におきましては自衛権を禁止していない、従ってこれは自衛権はあるという解釈に立って、自衛隊もこれは合憲なりという立場になっております。自衛権は個人で言う場合における正当防衛というように考えて差しつかえないと思いますので、従いまして純粋に自己防衛ということに限定して考えているわけであります。そうなりますというと、その限度というか、限界と申しまするのは、相手方から不正な侵略が行われたということが一つの条件でございますし、第二の条件は、その場合においてどうしても実力をもってみずからを防衛しなければならないということが第二の条件であり、第三の条件は、しかもそれが自衛のための最小限度の実力の行動、こういうふうに考えているのでありまして、具体的にはどうということになりますると、これはその事態に応じて考えなきゃならぬことでもありまするし、しかもこれは非常に具体的にこの場合この場合ということを明確に数字的な、あるいは条件をそれ以上に申し上げることは困難だと考えている次第であります。
  173. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 法制局長官の御意見を。
  174. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいま官房長官からお答えしたことに尽きておると思いますが、御質問の中のいわゆる自衛のために必要相当な限度と申しますか、つまり憲法九条二項がその保持を禁止していない戦う力という限界でございます。これは結局、前に総理大臣からもお答えしたと思いまするけれども、結局国際的な客観的な環境で、その日本なら日本としての持ち得る限度というものに限界があると思うわけであります。これは一概に数字的な限界というものをお話するわけには、これはやはりむずかしいのじゃないかと思います。この点は前に近代戦争遂行の能力というような言葉で表わされた場合にも、これは同じことだと実は思うわけであります。抽象的な観念として、そのときどきにおいて合理的に判断せられる限度、かように考えるわけであります。
  175. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 吉田内閣時分の解釈の方はとにかく筋が通っておりましたけれども、現内閣のその点は非常に実はあいまいなんで、昨年の六月の当委員会での法制局長官は、「戦う力を戦力と考えれば、二項で禁止されておる戦力には段階がある、」こういうことを言っておりますので、おのずからそこに段階があるわけでありまして、私はこの段階の判定基準はどこに置くか、このお答えを法制局長官からいただきたいと思います。
  176. 林修三

    政府委員(林修三君) 自衛のため必要相当な限度というのは、結局自衛のために持ち縛る限度ということでございまして、他国に対して出て行って、他国の領土を侵略するというような力、これは持ち得ないことは明らかだと思います。従いまして、そのときそのときの国際情勢を考えまして、自国の防衛のために必要な範囲、必要な限度、最小限度ということでございまして、それ以上には出られないものと、かように考えております。
  177. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 大へんに抽象的ですが、もうちょっと具体的に……。つまり今の自衛隊は目的として外敵の侵略に対して国の安全を守る、こういうはっきりした目的を持っておって、内容としては陸上十六万、艦艇九万五千トン、航空機は五百八十二機、これは相当の装備をもって編成されておる。しかもこれが常備的なものである。こういう目的と内容、実質を有しておる。この実力が日本よりも劣勢な国から見れば、これは非常な脅威になることは明らかでありまして、これが九条第二項に禁止しておる戦力でないものとは考えられない。これはどうも自衛ということを言いましても、自衛権の行使の手段の域を越えておる。こう私は考えるのですが、越えてないというもう少し納得のできる説明法制局長官から承わりたいと思うのです。
  178. 林修三

    政府委員(林修三君) 具体的に幾ら、数字になればどうということは、これはなかなか限界としてはむずかしいことだと思うわけでございますが、抽象的に申せば、先ほどから申し上げました通りに、いわゆるわが国の防衛という必要な限度にとどまるべきものだと、また現在の自衛隊もその範囲にとどまっておるものと考えるわけです。他国に対して攻撃的に脅威を与えるような装備を持つ、あるいは編成を持つということは、これはいけないわけでございますが、自国の防衛という必要限度にどとまっておる限り、この憲法九条に違反しないものと、かように考えておる次第であります。
  179. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 ソ連アメリカ、イギリス等には脅威を与えぬでしょうけれども、東南アジアの小さい国に対しては、これだけの実力でも相当の脅威を与えておると思う。その点で自衛の範囲を越えておると思うが、そうでないという説明を承わってみたいと思います。
  180. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) かわって………。これは答弁にならぬかもしれませんが、御指摘のように、現在東南アジアの諸国におきましても相当の武力を持っておるほかに、あるいはSEATO協定に入っておる。こういう観点からみますれば、日本が独力でやり得るというようなことは、これはもちろん日本も考えていないのみならず、あるいは米国との関係、あるいはその他の国々との関係において集団安全の措置をとっておるようでございます。それから日本自身でありましても、日米安全保障条約によりまして、これは共同の防衛の態勢にありますので、従いまして、そういう観点から日本がただいま御指摘になりました程度の自衛のための自治力を持つということに対して、侵略的な意図があるというふうに解釈することはおそらくあるまいではないか、かように考えておる次第でございます。
  181. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は侵略の意図があるとは申しませんが、脅威にはなり得ると、こう思うのですが、次の問題に移ります。  政府は大審院の判例にある通り、最高裁判所は具体的な事件を通じてのみ法律の違憲性を審査することができる、こういう見解をとっておるわけであります。そうなれば、もし自衛隊法が違憲という判定がせられましたならば、自衛隊法の成立を理由として自衛隊合憲説に変わられました総理の政治的の責任は、一体そういう場合どういうふうにしておとりになるか、官房長官にお尋ねしてみたいと思います。
  182. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。総理は先般の当委員会における質疑におきまして、最初言い回しが不明確であったためにだいぶん追及されましたが、総理は自衛隊法の成立をもって自分が合憲なりと判断したというよりも、自衛隊が成立した時期に自分の意見を変えたと、こういうふうに言っているのでございます。従いまして、これは法理論的にも当然のことでございまして、一つの法律の制定をもって憲法の条章を否定するということは、これは何人も考えられないことです。ただし言い回し方が従前その点において不明確な点がありましたので、ずいぶんここで論議に論議を重ねられて、その点を訂正されておる次第でございます。なおまた自衛隊法は、これもいろいろ御議論がございましたが、政府といたしましても、一般考え方といたしましても、第九条においては自衛権を否定していない禁止していない。これは社会党の方々も自衛権があるということは認めておられる立場にあるのでございます。従いまして、その権利を持っておる以上、それを現実の力として持つこともこれは合憲である、(「飛躍だ」と呼ぶ者あり)こういうふうにわれわれは考えておる次第でございます。  なお最高裁判所が憲法の規定に基きまして、ある一つの法律並びに命令が憲法に合致するかいなかを審判するところの権限があることは御指摘の通りでございますが、しかしこれは日本現状におきましては、個々の法律そのものを抽象的に合憲なりや非合憲なりやを審議する機関ではなくして、具体的な訴訟を通じて合憲非合憲をこれはやるという立場にありまするので、われわれといたしましては、自衛隊法が合憲なりや非合憲なりやということの裁判がもし訴訟によって行われても、それは従来の判例から見ましても、これによって直ちに非合憲なりと判断されることはないと、こう信じております。従いまして、今御質問になりましたような意味におきまして、総理が従来自衛隊は合憲じゃないという野にあったときに言ったことが、説を変えたというために起る政治的責任は、この自衛隊法の合憲非合憲を通じて責任が新たに起るものとは考えていない次第でございます。
  183. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は独立的の法律そのものの合憲性の議論を今しているのじゃないのです。政府の見解に従いまして、具体的事件を通じての違憲性が裁判所で確定されたときのことを申している。たとえば一つの具体的の問題があって、その具体的の問題を判決するについて、その前提となる法律が憲法に違反しているかどうかということは、当然これは普通の裁判所でも審査され得るのですから、前提となる法律の合憲性を裁判所が審査して、そうして違憲であるがゆえに具体的の裁判ではこうなる、こういう結果を得た場合に総理の責任はどうか、こう聞いたんです。  それからもう一つは、これはもうこの間の予算委員会でしばしばおっしゃっているのですが、総理は自衛隊法というものが国権の最高の機関である国会を通った、この法律が通ったんだから、この法律に従っての組織される自衛隊は私は違憲ではないと思った、法律が通ったということが変説の事由なんだ、これはもう速記録をお調べになればよくわかることなんですが、しばしばおっしゃっておる。そこでこの自衛隊そのものが今の前提としての自衛隊法が憲法に違反するという判決があれば、当然自衛隊法を自分の説を変えられた根拠にしておられる総理としては、政治的の責任をとられるのは当然でありまして、その場合どうされるかと私は伺っておるわけです。まだ憲法第八十一条の最高裁判所の違憲裁判の問題には触れておらぬわけです。
  184. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 現実にまだその問題が出て参らないときに、違憲になった場合の責任をあらかじめ――ということはちょっと今適当じゃないと私は考えております。なおまたその場合における政治責任ということになりますれば、これはおそらく総理のみならず、この自衛隊法設置に関しまして賛成した議員すべてが、これは責任を何らかの形においてとらなければならない事態になると思いますが、私は現在のところ、先ほど申し上げました理由によって違憲というものが、これも仮説でありまするから、押しつけることはもちろんできませんが、これを違憲なりや合憲なりやという具体的の事例が出ないときに、今ここでその論議をすることは適当ではないと思っておるのであります。
  185. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、先ほど長官がちょっと述べられた法律そのものの独立的な違憲の問題について伺います。憲法第八十一条では、法律そのものの違憲性を審査し得ないのであると、これが政府の解釈でありまして、その解釈の起ってくる理由としては、司法権の範囲に属しないという従来の通念からこれは主張しておられることだと思います。しかしながら憲法の第七十六条には、司法権の帰属は規定しておりますけれども、司法権の異議並びに範囲はどこにも御承知の通り憲法には規定しておりません。しかも司法権の内容というものは必ずしも一定不変のものではないのであります。そこで私の申し上げたいのは、憲法第九十八条第一項は違憲立法の無効をきめております。ところが違憲立法の無効はきめておりますけれども、しからばこの無効というものを一体だれが判定するか、判定する規定がなければこの憲法第九十八条第一項というものは何ら具体的の内容のない規定になってしまう。そこでこれを救済するために無効を決定する機関として、憲法第八十一条はその権限を最高裁判所に与えたと当然見るべきであると思います。そこで違憲手続法さえ完備すれば、第八十一条によって最高裁判所は憲法の違憲性を、法律そのものについて審査決定し得る権能があると、こう私は見るのですが、これに対する政府の見解はいかがですか。
  186. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。今、八木さんが御指摘になった通りに、明確に九十八条におきましては、法律並びに命令が、政府の行為が憲法に違反するものはこれは無効であると、はっきりと規定し、しかもこれを判定する権限が八十一条におきまして最高裁判所にあるということも、これはその通りだと存じます。ただ御指摘になりました司法権の範囲というものが明確に憲法上規定がないから、そこで、従いまして、具体的な個個の訴訟事件を通じてのみこれは憲法違反なりやいなかということが判定されなければならない、こういう解釈に対して強い疑義の念を持ちまして、これはやはりそうした具体的な訴訟事件なくしても、一つの法律を直ちに憲法土合憲なりや非合憲なりやということの権限がありと、こういうふうに八木さんはお考えになっているようでございます。ところがこれにつきましては、最高裁判所自身におきましても、判例上これは明確に個々の訴訟事件を通じてのみ判定するものとの見解をとっておりますし、またその方が至当であると政府は考えておる次第でございまするが、なお法律上の非常に深刻な問題でございまするので、私の法律知識ではあるいは足らないと思いまするので、補足的に法制局長官からお答えしていただきます。
  187. 林修三

    政府委員(林修三君) お答えいたします。ただいまの点につきましては、先般も私この席でお答えしたわけでございますが、ただいま八木先生からおっしゃったような意味で今の憲法を解釈しておられる方もあることは、これは御承知の通りだと思います。ただ、しかし、私どもといたしまして相当な多数の学者が……、今の憲法解釈として結局司法権とは何だということになるわけでございますが、司法権は、これはやはり従来の三権分立の考え方における司法権は、具体的な権利義務について争い、疑いがあるときに、そのときに裁判機関がそれを裁判によって、その場合にいかなる法律関係を適用すべきものか、いかなる法律関係があると判定すべきものか、こういう作用が司法権だ。これが伝統的な解釈であります。そういうふうに解釈いたしておる。従いまして今の憲法の八十一条で最高裁判所に与えられておるその違憲立法審査権も、この司法権の範囲のものと、かように考えておるわけであります。これはこの前も御説明いたしたと思いますが、ある法律を、それが直ちに抽象的に憲法違反である、あるいは合憲であるということを判定するのは、ただいま申した通り、司法権の範囲より外に出るものと考えられます。伝統的な司法権の範囲の考え方の外に出るものと考えます。これは結局司法権の範囲を越えて最高裁判所に特殊の権限を与えるもの、かように考えられるわけでございまして、これにはやはり特別の憲法上の規定がなければおかしいのではないか、特別に規定がなければ、そこまで権限があるものと解釈すべきものではないのではないか、かように考えるわけでございます。これは相当多数の学者もそういう見解でございますし、最高裁判所の考え方もこの見地に立ってこの前の判決があったものと、かように考えております。これは何と申しましても、国民の代表である立法機関が制定したものを、直ちにある他の直接に国民の代表と申しますか、国民が選挙しない最高裁判所に、その国民の代表によって組織せられておる立法機関が制定した法律の違憲性を判定する権限を与えるためには、やはりどうしても憲法にはっきりした規定がなければならぬ。さように考えるべきが至当である。かように考えておるものでございます。
  188. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 立法権と司法権の限界についてのお話がありましたけれどもその問題からいえば、今最高裁判所の判例が示しておるように、前提としての違憲性は、算定し得るとすれば、その問題はやはり程度の差こそあれ問題になると思う。しかしこれ以上触れることは時間の関係上避けますが、ただ一点、現行憲法には司法権の範囲というものはきまっておらぬのですから、やはり第八十一条では独立違憲性というものは判定し得ると思う。というのは、九十回の憲法議会の衆議院の帝国憲法改正委員会で、修正で内容は変っていないと報告を芦田さんがしておられるが、最初政府の原案というものは、八十一条は七十七条で、第一項は、最高裁判所は終審裁判所であるということが一つ、それからもう一つは、最高裁判所は一切の法律、命令、規則または処分が憲法に適合しておるかどうかを決定する権限を持つ、この二つになっていたのを一つにきめてしまって、今の八十一条というものは、終審裁判ということと、憲法裁判とが一つになって非常にあいまいになっておりますけれども、これは終審裁判以外に、憲法違反というものを判定し得る権限を十分持っておるのだ、こう私は考えますけれども、これ以上この点に触れることはいたしません。  さて今官房長官なり、法制局長官が御説明されましたように、もし憲法を改正しなければ法律そのものの違憲性を最高裁判所が決定し得ないのだ、こういうことが正しいとすれば、今回社会党から御提出になっておりまする違憲裁判手続法案、並びに裁判所法の一部改正法案、これは一体社会党が現行憲法でできないことを国会に出しているということになるわけなんですが、この両案に対して政府はそういうふうにお考えになりますか、無意味なことを社会党がやっている、こうお考えになりますか。
  189. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今の御提出の問題でありまするが、ちょっと循環論法のようなことになるのです。憲法第八十一条においては、最高裁判所は終審として、法律が違憲であるかないかを裁判するのであります。これが裁判されれば、われわれもこれに従わなければなりません。ところがある事件が起りまして、現在日本の裁判法では、いきなり法律を裁判するのが否定されて、具体的の事件と組み合って最高裁判所のところへ持ってきた時分に裁判するのだ。このことがいいか悪いかが問題になっております。最高裁判所はその裁判法はいいと判断しておるんです。それゆえに八十一条の解釈としては、具体的事実と組み合って最高裁判所に持ってこられたときに裁判しても、それは裁判するという裁判法は違憲でないという判定を下しておるんです。それで政府はそれに従っております。最高裁判所がそういう判定を下しておるのに、最高裁判所は間違いだとわれわれが言ったら、これは問題であります。こういう今立場にあるのであります。  それからして、社会党の御案のことです。今の憲法の解釈としては、事実と組み合って一審から三審にきた時分に裁判するということは違法でないという判定までは下しましたが、また立法機関の作用としてその裁判法を変えて、法律解釈を含んだものは、いきなり最高裁判所へいってもいいという法律を作ったら、最高裁判所は、その法律は私はおそらくは憲法違反ではないと判断するのじゃないかと思います。
  190. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 政府は、憲法改正をしなければ、違憲裁判手続法を作っても、独立的にある法律そのものの合憲性を判定することはできない、こういう立場に立っておる。ところが社会党はそうでない。独立の合憲性を最高裁判所は八十一条で判定し得るのだ。ただ手続がないからやれんのだ。だから手続法を提案したんです。立場はまるで違うのです。政府はどうとられますか。
  191. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今最高裁判所がきめておる最高裁判所判例は、現在のごとく事実と組み合って初めて裁判さるるという裁判法は違憲でないということを言っておるんです。それを改めて、ドイツの事実と同じように、ある手続で今の裁判法を改めて、ある手続でいきなり裁判せいということをやった場合に、それが合憲か違憲かはまた別問題であります。私自身から考うれば、最高裁判所はそれを否定はすまいと思います。
  192. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 法制局長官一つわかりやすく聞かして下さい。
  193. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいままで申し上げておりました通り、まあ今の憲法の多数の解釈及び私どもの解釈といたしましては、やはりいわゆるドイツ式の独立の憲法裁判所を作ることは、やはり憲法を改正して行うのが至当である、かように考えております。従いまして、ただいま社会党から御提出のあの法案、ああいう形でできるという説もこれはございます。ございまするから、私ども一がいにそれをとやかくいうのはどうかと思いますけれども、これは結局最高裁判所がああいう法律ができた場合には、いかに判定するかということにかかって、憲法違反かどうかということがまた最後的にきまるわけだと思いますけれども、先ほども申し上げました私どもの考えから申せば、やはり憲法を改正して行うことが至当じゃないか、かように考えておるのでございます。
  194. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そうすると法制局長官のお考えではこの法案は無意味だ、こういう見解ですか。
  195. 林修三

    政府委員(林修三君) もしもこういう法案が成立いたしました場合に、最高裁判所はいかなる判定をするか、これは今から予測はできません。最高裁判所の前の判決は、一応私どもの理解するところでは、具体的事件を通じてこなければ、裁判所はある法律が憲法違反かどうかの判定はできない、という立場に立っておるように、私ども解釈しておりますけれども、しかし今のような法律ができた場合、それが現在の裁判所法を前提として考えておるのか、あるいは今のような法律ができた場合には別な考えをとるのか、これは必ずしも今から予測できないことであります。最高裁判所がどういう解釈をとるかは、これは私ども予測するのは今は差し控えますけれども、多数の学者の考え方は、やはり裁判所法を変えただけではだめだという考え方が多い。またそれが合理的ではないかと私どもは考えております。
  196. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 政府の見解は無意味かどうか、はっきりそこのところを一つ、裁判所が何を言ったってかまわぬから……。
  197. 林修三

    政府委員(林修三君) 別にまだ政府としてはっきり無意味とも、あるいは意味があるとも言うのは、これは私どもとしては差し控えたいと思いますけれども、先ほどから申し上げました見解によってお考え願いたいと思います。
  198. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そんな回りくどいことでなしに、政府が無慮味だと言うことは、当然の論理上の帰結だと思うのですが、今の考えでは無意味だとここではっきりおっしゃっていただきたいと思います。
  199. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほどから御説明いたしました通りに、最高裁判所の考え方を私が御説明したような考え方でとる限りにおいては、やはり最高裁判所も、今のような法案でございますと、果してそれを合憲なりと考えるかどうか疑問に思います。
  200. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 いや私は最高裁判所の意見法制局長官を通じて伺ったのではない。政府のこの法律解釈の最高権威であるべき法制局長官が一体この間からの質疑応答では当然憲法を改正しなければかような手続法は無意味であると、これは論理上そういう私は結論になると思うのです。そこでそうであるかどうかあなたの御見解をはっきりここで伺いたい。
  201. 林修三

    政府委員(林修三君) 私の考え方はこの間から申し上げた通りでございまして、やはりああいう独立の今の最高裁判所、西独式ないわゆる完全な違憲裁判所と申しますか、抽象的にある法律を直ちに審査するというような裁判所にするには、今の憲法上は無理ではないかと考えておるのでございます。ただしこの法律案が成立いたしました場合に、最高裁判所がそれをどう考えるか、これはまた別の問題でございますから、この点は先ほどから申し上げた通りであります。
  202. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私の伺っているのは、この社会党の二案は提案そのものが無意味じやないか、こう政府はお考えになるのが当然であると思われるが、どうか。どういう話になるかそれは抜きにして、無意味じゃないか、結論だけすらっと一つ伺いたい。
  203. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいままで御答弁したことで大体おわかりのことと存ずるわけでございますが、これはしかしあくまで国会が御制定になる法律のことでございますから、政府はいろいろな見解を申しましても、これは結局国会が御制定になり、あと最高裁判所がいかに判定するかということできまるわけでございます。私の見解は今まで申し上げたところで御想像、またおわかりのことと存じます。
  204. 戸叶武

    戸叶武君 関連して。今の論争で私たちが考えさせられるのは、先ほどの根本官房長官の答弁というものは、鳩山答弁のやはりいつものすりかえ答弁です。鳩山さんは根本さんの言ったような答弁は蔭の声だから聞えなかったでしょうけれども、亀田君に対する答弁は明らかに、鳩山首相が自衛隊が国会を通ったとき自分で自分の違憲を変えた、間違いを直したと言っているのであって、その考えを変えた動機というものは、自衛隊法が国会を通ったこのことによる変更を意味しておるので、あなたのは丁度そのころとかそのときとかそれをぼかしているのですけれども、これは幾たびか鳩山総理大臣が繰り返して述べた言葉でありまして、取り消しはされていないと思うのです。私たちは言葉のあげ足をとろうとしておるのではないのです。総理大臣並びにあなたたちの答弁というものは、在野時代に述べたのであって、総理大臣としては述べないというようなことで逃げを打とうとしておるのでありますけれども、今のように憲法解釈の問題が質問者によって追及されているように、国会における解釈というものが現行憲法の上においては非常に大切だと言われている、そういうところにおける一国の総理大臣言動というものは、やはり憲法解釈の上に大きな影響を与えるのです。それをいつもごまかし答弁とすりかえ答弁でやられるのではどう解釈されるのかわからないという点が一点。  それから問題を一番最初に起したときにさかのぼりますが、簡単に言うと、そこにいる船田さんが、敵の基地を爆撃することができるという答弁と、鳩山さんが二十二国会でやったところの爆撃はできないという答弁に対する回答をわれわれは求めていたのであって、あとのすりかえ声明におけるところの誘導弾何がしというようなことを、速記録を読めばわかるように、あとであなたが衆議院の内閣委員会であの釈明文を読んでおりますが、われわれの質問に対する答弁じゃないのです。国会におけるところの国会議員というものは審議権を持っておるのです。国会は国の最高機関であって、内閣は行政機関の最高機関に過ぎないのです。国会の諮問権に対してすなおに答弁しないで、いつもすりかえ答弁をやっている。しかも憲法上の疑義をわれわれがただそうとするときに、それを混乱に陥れておる。こういうことがあなたの朗読した釈明、根本長官の読んだ釈明によると、属僚があとでつづり方を作って、そうしてすりかえ答弁をやっておる。今のことでもそうです。一体憲法上における疑義は、国会以外においてこの問題を解釈することができないというような政府答弁をもってするならば、そうあいまいもこたる問題の片づけ方で憲法の疑義を解くことができるか。そこに社会党がやむを得ずして国会外の所にまで、最高裁判所にまで訴えて憲法を擁護しようという悲願が生れてくると思うのです。われわれはその一員として、
  205. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 戸叶君、関連問題は簡単に願います。
  206. 戸叶武

    戸叶武君 いや、これは重大な問題ですから。この問題に対して二つの点の答弁を願いたいと思います。
  207. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 戸叶さんの今のお話はちょっとどうも私に対する質問の内容が明確になっていないのでありますが、一つは先般の総理が釈明なさった点が、すりかえて私が言っておる、こういう点に重点を置かれておるようでございます。この点はすでに先ほど申しましたように、総理が不明確なお答えをしたために、そのために非常に論争が続いた。けれども最終的には総理は自分が自衛隊の非合憲を合憲なりと明確にしたのは、自衛隊が成立した時期において、その契機においてやったのである。しかしその合憲論の基礎がこれが第九条におきましては自衛権を禁止していない、規定していない。従って国家が独立国になっておる以上、自衛権を持つことが当然であり、従ってそのために自衛権を行使するための実力を持つこともこれまた合憲である。こういう論点に立ってこれは合憲なり、こう申したのであります。ただし自分が野にあった当時にはその点の研究が足らなかったと、あとで明確にいたしておるのであります。従いまして私はすりかえはいたしていないのでございます。  それからもう一つ。今違憲裁判所の問題についての御質疑でございましたが、この点は今、八木さんと法制局長官並びに清瀬大臣との間において、これは法理解釈上の問題として展開されたわけでございます。現在の憲法におきまして、合憲、非合憲の暴走権は最高裁判所にあるという、そうしてまた最高裁判所において判定されたことが最終的な判断である。この前提に立っているのであります。ところで最高裁判所の判例におきましては、抽象的に法律が合憲、非合憲なりやということを取り扱わないで、具体的な訴訟を通じてそのことを判定するという判定をしておるわけであります。その観点からいたしまして、これはいわゆる司法権の内容についての御議論がありまするけれども、それについても明確に、まあ間接的でありまするが、判決を下したと見ると、こういう前提に立ちますれば今、社会党で出されようとしている、あるいは出しておるところの違憲裁判所と申しますか、この問題を提出するということは、法律解釈上からすれば合理性を持っていないという、まあ大体の判断をしてよろしいと、しかし今その論争をここで法制局長官としてはまあ遠慮されたと私は見ているのでございます。従ってそういうものを出すという意思を持っておるのに対して、それはむだだからやめなさいというところまでは言い得ない立場にあるのは当然だと思います。その意味において、この問答が若干そこに明確に言い切れなかった点があるのじゃないかと、こう考える次第でございます。   〔戸叶武君発言の許可を求む〕
  208. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 関連は簡単に願います。
  209. 戸叶武

    戸叶武君 簡単にします。今の根本さんのは、法制局長官答弁と違って、かなり積極的に、そういうことはできないということを政府側を代表して述べたことを、私たちはその政府の立場は了承します。しかしそれによってこの違憲論争というものは国会においてきわめて重要性を持っているのです。そういう点からしましても、言ったことを速記録にあったが、間違いだというようなことをあなたは公然と言っておるところを見ましても、物事をごまかそうとする意図が明らかにこの間も感知されたのですが、今後この問題は当然国会において特別な時間を持って、事、憲法上の重大問題でありまするから、やはり論議されなければ、国民というものが、憲法違反の疑いあるところの問題は、国会において片づけるよりほかに場が事実上においてないということになると、国会においてこの問題を中心としてやはり時間をとってもらわなきゃならないことになると思いますが、これは委員長においても、予算委員会から起きたでき事であるし、今後御考慮を願いたいと思います。
  210. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 今、私に触れられまして、私が答弁をごまかそうとしておるということが一点ありましたので……、私もやはり国会議員であります、この点は、あなたは解釈されるとも、私はそういう意思は全然ないということだけは明確にしておきます。(「具体的に事例をあげて下さい」と呼ぶ者あり)
  211. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 官房長官、政府は小選挙区制を提案されるということでありますが、その理由と利害を御説明願います。
  212. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 選挙制度については、これはおのおの利害長短相伴うものと考えております。特に最近、この数年前から一般国民の世論といたしまして、小選挙区制を持つことによって、政局の安定と、また有権者の意思が明確に、簡明に反映するという観点からいたしまして、これはむしろ一般評論家並びに民間人の方から強く叫ばれておったのでございます。この世論にわれわれは耳を傾けて、そうしてまた現在政党政治の確立の過程にある、特に二大政党の対立の端緒も今すでにできておる状況でありますので、そういう観点からいたしまして、小選挙区制をとることが現在の時局において適当である。かように考えておる次第でございます。
  213. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 総理は先日比例代表が理想的だとこの席で仰せられました。比例代表のいいところは、結局国民の考え方が縮図として国会に反映する。小選挙区というものは半数は、極端に言えば四割九分九厘まで国民の意思が反映しない。比例代表とはまるで逆なんですが、その点をどう調整されて説明されますか。
  214. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。比例代表制度は、御承知のように今御指摘のように、有権者の意思が比例的に国会に反映される、いわゆる国民の意思が縮図として国会に反映するという点においては理想的だと、こういうことでございます。しかし現実の各国の例を見ますと、比例代表制をとりますると、これは非常に小党分立の傾向が強くなってくる。現在でも小選挙区制度をとっておるのは、イギリス及びアメリカが最も端的な例でございましょう。これは二大政党になって安定している。比例代表制をとっているのはイタリア並びにフランス、これが非常に混乱を来たしておる。こういう事例が最も端的な例だと存ずるのでございます。ところで総理が、比例代友制度は理想としてはその方がいいけれども、現在の国民の政治上の訓練というか、意識というか、その点からするならば、これはまだ非常に実施の段階に来ていないのじゃないかという点において、これはにわかにとり得ない、こう申されたのでございます。   〔委員長退席、理事池田宇右衞門君着席〕 それで、小選挙区制度になりますれば、御承知のように政党本位の、これは戦いになってくるわけでございます。しかもその場合においては候補者とさらに政党とが密着して参ってくるのでございます。現在の国民は政党と同時にやはり個人に対する評価が非常に強い。こういう意味において一見逆に見えまするけれども、今現実の国民の意思をできるだけ公明に反映させまして、そうして政局の安定をはかるということが現在の日本国民の要請しておるところでございまするので、それで小選挙区制度を現在採用することが至当であると、こういうふうに総合的な判断をしておる次第でございます。
  215. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 政党本位の選挙ということを言われましたが、それには政党の自戒自粛が必要である。数の問題があげられましたが、少数が必ずしも道理にそむくというわけではありませんが、この点に触れることはやめまして、小選挙区が、これは理想であるとすれば、むろん一人一区です。ところが二人一区が十七も十八も今度提案されるということが新聞で伝えられておりますが、これはどう考えても私は無意味であって、党利党略以外の何ものでもない。だから小選挙区をおやりになるならば厳重に一人一区をおやりになるがよろしい、こう思うのですが、いかがですか。例外をお認めになりますか。
  216. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) ただいままだ正式に答申案が参っておりませんし、従って政府としても選挙区の具体的ないわゆる別表についてはまだ審議いたしておりません。従いましてこれについて政府の見解を直ちに申し上げることは困難でございまするが、もし過去においてありましたごとくに小選挙区制度をとる場合においても、あるいは二人一区制度があった場合もあるようでございまするが、これはやはり党利党略という見解もございましょうが、その場合にはあるいはその地方の行政上の特殊性とか、あるいは地勢その他経済、社会の条件からして、たとえば一つの市で一名とれなくて、やはり経済上、社会上あるいは歴史上非常に関連が深い所と合せて初めてそれが均衡がとれるという場合には、そういうものもできたものではなかろうかと思います。しかし今直ちに私は、どの区についてどういうということも全然わかっておりませんので申しかねまするが、小選挙区制度については一人一区が原則であるということは当然だと思います。
  217. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 人口上でも十一万から二十六万という開きがあるのでありますから、二人区を認められれば党利党略であることははっきりいたしますが、次の問題に移ります。  政府は今度戦争犠牲者の補償の審議会を総合的に設ける、こういうふうに新聞に出ているのですが、家が焼かれたり、農地改革で地主の父祖伝来の地面を取り上げられたということは、まことにお気の毒でありまして、農地改革の当時には、私どももそのやり方が乱暴であると思って、非常に憤慨したのでありますけれども、しかし現在の段階におきましては、戦争で命をなくした人さえも、まだ十分に償いができていないという財政状態にあるのでありますが、いかなる一体成算と確信があってかような問題をお取り上げになったか。およそものには順序があるのに、本気で一体これをおやりになる気か。私は世間で言われるように、参議院選挙対策のにおいが非常に多いということで、かようなことで、ただいたずらに喜ばされたならば、結果においてむろん財政的にこんなことはできないようなことが多々あるわけでありますから、むしろ寝た子を起したような残酷な仕打ちになるのじゃないか、やるのならば一体どういう成算があるのかということを承わりたい。
  218. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) この問題は実は今、八木さん御指摘になりましたように、非常に実は多くの、陳情それから請願がもうたくさん出ております。そこでそのまま放置しておくわけにもいきませんので、丁度在外資産の問題が、御承知のように両院から強く要請されて審議会ができたのでありますが、在外資産だけの問題を取り上げて、それと同じように他の問題を取り上げないのは不均衡であるという強い民間からの要請がありました。しかし御指摘のように、これは非常に大きな問題でございまして、そのために一体こういう問題をどういうふうに処理すべきか、こういうことを研究するために、内閣……最初は主として関係各省の役人をもってこれを研究させ、一定の段階になりましたならば、やはり民間の有識者も御参加願いまして、そうしてこの取り扱いについての研究をいたしたい。取り上ぐべきかいなか、あるいは取り上げるとすれば、どういうふうにすべきかということも研究して、やはり毎年のように陳情、請願が殺到して参りますので、そのまま放置するわけにはいかない。しかもこれは一省のことだけではいかない。そこでやはりこれを研究するための調査会のようなものも設くべきではないか。今その構想もきまっておりません。それで研究いたしたいと考えております。   〔理事池田宇右衞門君退席、委員長着席〕
  219. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 まず、戦争で命をなくした人から順にやってもらうということで、できそうもないことはできないということをはっきり言ってやるのがむしろ親切だと思いますから、そこで選挙対策のような、かりそめにもにおいのないように、できぬことはできぬとはっきり政府から言ってもらうように希望いたしまして、次の問題に移ります。  昭和二十三年の七月以前の文官の退職者の恩給をバランスをとるために上げる。本年度は純計で二億七千万円、事務費を入れて三億円、平年度十億八千万円こういうことが予算に計上されております。これで文官と軍人の恩給が本当にバランスがとれるのかどうか、どうもそこのところがはっきりしない。もしこういうことが許されますならば、公務員のベース・アップがある。ベース・アップに続いて文官の恩給が上がる、これが軍人恩給にはね返る。今でも恩給費は九百億円になんなんとしている。財政上こんなことをやっておればいたちごっこで、とてもたえられない。やはり恩給は命を的にしてやった軍人の方が文官より多いのは至当である。それにベース・アップの関係で平年度十億円以上も文官の恩給をふやすということは私はどうも納得ができない。今も木村さんから生活保護の話がありましたが、鳩山さんは友愛精神を説かれる。またそこにいらっしゃる重光副総理は涙の政治ということを言われている。文官に平年度十億円も退職金をふやすならその金を生活保護の方に回してもらいたい。このバランス、一体こういうことについてどう考えておられるか、承わってみたいと思います。
  220. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。恩給制度が国家経済に及ぼすところの影響の甚大であることはひとしくわれわれも同感でございます。また恩給制度について文官と軍人と差別待遇する考えは毛頭ございません。そこでこの恩給制度につきましては、現在の恩給制度をもっと根本的に検討すべきじゃないか。そうして国民全体の、そうした恩給とは違った意味において、生活安定のためにむしろ経費を使うべきではないかというこの政治論は、確かに傾聴に価いすると存じます。しかし現在のところ恩給は、これは過去において国家に奉仕することによって、その事後における経済的な取得能力を喪失したと見られる者に対して、政府の補償のような形になっているのが、現在の各国の恩給制度でございまするので、今これをすでに持っている人の権利を全部否定するということは、これは到底できないのでございます。この点は将来の研究に属することと考えている次第でございます。
  221. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 官房長官のをちょっと中断しまして外務大臣に先にお尋ねいたします。  十八日にダレス長官が参りまして、原爆問題についても懇談する用意がある、こういうことが外電に報ぜられております。そこでそのときの懇談の内容について私希望かたがた申し上げたいのですが、第一にソ連の原爆実験よりもマーシャル群島での実験の方が日本国民を非常に刺激しているようだ、こうアメリカは言っているのでありますが、これはソ連の実験は自分の国の中でやっているし、アメリカの実験は信託統治の中でやっているのでありますから、これは日本国民を刺激するのは当りまえである。それから第二には、海水が汚染されたために日本の日日の食生活に直接にアメリカの実験が関係を持ちましたから、やはり日本でやかましく言われた。第三には、福龍丸の問題がある。この三つのことがありますほかに、またアメリカは、日本が原爆実験を自由世界全体のものとして考えていないのではないかというふうなことを言っているかのごとくに新聞に出ていますけれども、さようではなくて、日本が原爆の最初のかつ最大の被害者であるし、アメリカは無被害の国民でありますから、考え方が違うのは当りまえでありますので、その点を一つ十分に話し合いをしてもらいたいということと、もう一つアメリカは国際法上の先例となるような補償は考えていない、見舞金程度というふうに外電は報じているのでありますけれども、直接の被害ではなくて、間接でもありませんけれども、雨水大気による農作物並びに遺伝等への影響というものは、これは金銭的には見積ることができません。また一方危険防止には万全の措置を講ずると、こう言っていますけれども、直接目に見えるもの以外の危険防止の万全の策というものはありようがないのですから、やはりもとにかえりまして原爆の実験はどうしてもやめてもらいたい。おやりになるのなら、せめてアメリカ本土まで引き下って一つやってもらいたい。こういう意味での話を会談の内容にしていただきたいという希望が一つと、それからもう一つは、政府では相当この問題については努力はしておられましょうけれどもアメリカの世論を喚起するために、民間外交として米国内で相当知られている、たとえば賀川豊彦、鶴見祐輔、私はその他の人は知りませんが、とにかくアメリカ人に名前を知られている人を相当の費用を使ってアメリカに出すという考え方はどうだ。この二つの点について外相の所見を承わりたいと思います。
  222. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 原水爆の実験を中止してもらいたいというのは、国会参衆両院のはっきりした決議でございます。これは国民的意向を代表しているものとして、政府もその実現に向って大いに努力をいたしておるわけでございます。しかしそれにもかかわらず、この問題が今の国際情勢から見て、非常に実現に困難な状況にある。国際法上の理論から見ても困難な点が多々あるということを私は御了承をいただきたいと思う。そうでありますから、いろいろなことを考えて、これは実現にあらゆる機会をとらえて努力をいたさなければなりません。今述べられました数々の点は、私はとくと速記録をも一つ検討いたしまして十分参考にいたして、その努力の資料として用いたいと、こう考えますが、一つまたその他にもお考えがありましたら、それは議場外でもお聞かせを願いたい。こう考えております。  それから民間人を派遣するということも、これは考えていいことだと思います。いいことだと思いますが、今すぐそれじゃだれをやろう、こういうふうに私はお答えすることは用意を持ちませんけれども一つそれも一つ十分に検討してみたいと思います。
  223. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 官房長官、軍人文官恩給のアンバランスの問題お答えがなかったようでありますが、次の機会に伺いたいと思います。  その次に伺いたいのは、新生活運動の問題でありますが、三十年度では五千万円、三十一年度では一億円の費用が予算に計上されておりますけれども、役員の報酬や車馬賃等は一体このうちで幾ら入っておりますか。人件費はどうなっておるか。事業費と称するものは幾らか。その実績と将来の見通し、御承知の通り民生委員などは年に一千円くらいの安い手当でやっておるのですから、この運動にかかわる人は、これは無報酬、手弁当でやるべきものだと思うのですが、その実績等を一つ承ってみたいと思います。
  224. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 新生活運動の経費の使途でございますが、これは御承知のように、政府が管掌いたしませんで、一括して新生活運動の協議会の方に補助しております。それで三十年度における実施の状況を見ますというと、協会の創設費が四百六十四万八千円になっております。それから事務費が六百二十五万八千円、事業費が三千九百九万四千円でございます。内訳は、新生活運動協議会等開催費が二百十四万九千円、講師あっせん費が二百五十万六千円、調査費が三百七十万円、それから機関誌発行費が百二十万二千円、それから宣伝用パンフレット刊行費が一千百八十五万二千円、表彰費が二十万円、事業委託費が千七百四十八万五千円でございます。  それから三十一年度新生活運動助成に必要な経費一億円は、これは総理府に計上いたしまして、全額を新生活運動協会に補助する予定であります。その内訳は、事務費が千六百五十九万一千円、事業費が八千三百四十万九千円でございます。その事業費の内訳は、各種事業集会開催費が七百八十九万九千円、講師あっせん費が四百二十八万七千円それから専門委員会費が百八十九万円、調査費が四百七十六万一千円、広報資料作成頒布費が千四百六十六万五千円、表彰費が百二十四万二千円、関係団体大会共催費が百万円、事業委託費が四千七百六十六万五千円、こうふうになっております。なお、人件費の講師とか何とかの費用等についてはどういう内訳になっているか、これはまだ調べておりませんが、早速取り調べまして御報告いたしたいと思います。
  225. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 効果はどうですか。
  226. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 効果は最近新聞なんかでも取り上げておりますように、中央においてはなばなしいあれは動いていないようでありますが、従来から各町村などでやっておられて非常に推進しておられるということで、ある新聞のごときは特にこの問題を取り上げて、これを報道しておる向きもあるようであります。
  227. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 新生活運動の効果に対する政府の見解を資料として御提出を求めておきます。  それから最後に、総理の健康の問題についてでありますが、この問題は総理個人の問題ではなくて、政治上の非常に重大な問題ですから、主治医の永井博士、佐々廉平博士、布施信良博士といったような首相を診断した相当日本の権威のあるお医者さんの診断書に総理の見解をつけて、資料として出していただきたい、これをお願いいたします。
  228. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。これは私が一存で申すことはできないことでございまして、総理並に主治医の人にも相談をしてみなければならぬと思います。
  229. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に防衛庁長官にお伺いいたします。  自衛隊法第七十六条第一項ただし書の中で、総理の専断で緊急防衛出動ができる、この先制防御の攻撃等の場合、国会に相談されると言われるが、事実そのいとまがない。そこで国会に相談するという方法をどうするかということについて、少くとも両院正副議長、常任委員長ぐらいに相談する、この席でこういう御言明をいただければ非常に国民が安心するだろう、この点が一つ。  それからもう一つは、防衛庁費の乱費等が非常にやかましい問題になっておりますが、これは人の問題、精神的の問題もありますけれども一つには調達庁の事務系統がサイエンティフィックになっていないということを、こういうことを痛切に感じておりますが、これについて改善の対策は何かお考えになっただろうか。あったらお聞きしたいと思います。
  230. 船田中

    国務大臣船田中君) 第一の御質問でございますが、これはまことに私どもとしては傾聴すべき御違憲と存じますが、しかし両院議長または常任委員長、常任委員会の承認ということと国会の関係、国会の問題がございますから、これについてただいま直ちに八木委員の御指摘のようなことをやるということは申し上げかねます。十分これは研究いたしますが、政府としては遺憾ないようにいたしたいと存じます。で、昨日からまたたびたびこの席上でも申し上げておりますように、乱用されるということのおそれのないように十分努めて参りたいと考えます。  それから防衛庁費支出の問題につきまして会計検査院からいろいろ御指摘を受けました。しかしそのうちには必ずしも当らないものがございます。私はそれらのことについては具体的に事情を十分調査いたしまして、これに対しまして三十数名の者を処置いたしたのでございます。しかし今お話のございましたように、機構の上、あるいは会計担当者の経費支出等についての素質の問題、これらにつきましては今後においても十分研究をいたし、また戒飭していかなければならぬものがあると存じますが、しかし直ちに調達関係の機構を改革するということについては、私はむしろ改革をしないで、せっかく調達実施本部というものができ、建設本部もできておるのでありまして、それが一昨年初めてできたのでございますから、この機構を十分活用して間違いのないようにして参りたい、従いまして今直ちに大きな改革をするということは考えておりません。しかし今御指摘のありましたように、防衛庁費の使途につきまして、使い方につきましては、私就任以来特段の力を入れまして間違いのないようにいたしつつあるのであります。
  231. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 緊急出動は法律で国会開会中でも総理の専断でやれることになっているのですから国民は不安でたまらない、そこで具体的な考え方を別の機会でもようございますから、御発表を願いたいと思います。  それから庁費の問題は、これは機構の上でやはり改善すべき点が多々あると思うので、今長官は庁費の節約を就任以来非常にやかましく言われているということは、私は敬意を表しておりますが、一つ慎重にお願いたしたいと思います。  通産大臣に次に伺いたいと思いますが、原子力関係の費用が二十億円で、その他の科学振興費が十一億四千万円、私はバランスがとれていないように思います。そこで昨年十一月にはアメリカで太陽熱利用のための世界学界が開かれております。また名古屋の工業研究所でも太陽炉ができた。この問題は将来これは非常に大きな問題になると思いますが、一体現在はこの方面にどのくらいの費用が使われておって、そうしてどんなことが日本で行われているか。  次に、海底資源開発協会が最近できるそうでございますが、日本周辺の海底資源の開発に対して通産大臣はどれくらいの熱意をお持ちになっているか、これが二点。  第三点は、アメリカ政府の印刷局では非常に官庁資料等、統一販売していますが、日本では御承知の通り定価のつかない非売品が多くて、外国人からもこの点指摘されておりますが、将来定価をつけた官庁資料の統一販売機関を作るようにお願いしたい。これは通産大臣も経験されていることだと思います。で、一つ強力に推進していただきたい、こういうことを思うのですが、その三つをお伺いしたい。
  232. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 太陽熱につきましては三十年度に名古屋工業技術試験所で二百五十万円ほどの予算をもって直径メーター加熱温度二千三百度という太陽炉を試作いたしました。現在この太陽炉を利用して、超高温耐熱材料の研究とか、耐火物の熔融試験というようなことを行なっております。三十一年度におきましても続いて百万円ほどの経費と十四名の研究員を動員いたしましてこの研究を継続することにいたしております。またこの今お話の昨年十一月ニューヨークで開かれた太陽熱利用に関する国際会議には、名古屋の研究所の久田所長を出席させまして、向うの状況十分研究をさせたわけであります。  次に、電気試験所でも三十年度に八十万円を研究費として、太陽発電の研究に必要なシリコーンの研究を行なっております。また三十一年度にも八百五十万円の特別研究費と三十万円の経常研究費を計上いたしまして、原子技術太陽発電の研究を行う予定であります。また発酵研究所では太陽熱を利用して培養するクロレラの研究を行なっております。すなわち三十年度に百八十四万五千円の予算でクロレラの培養装置を設けまして、三人の専門研究員を置いておりますが、三十一年度にも二百五十万円の特別研究費を計上して、一そう研究を促進する予定であります。これが太陽熱の一つであります。  それから原子力と一般の科学研究の予算の問題でありますが、これは御承知の通り、原子力は今回いよいよスタートしようというスタートの場合でありますから、少し力を入れて予算も多かったものと存じております。  それから海底資源、これは現在におきましては、大体石油開発が、ボーリングの新しい機械を入れておりますので、それをして第一に石油資源の開発の方面から海底の資源探査をやる予定でおります。
  233. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 官庁刊行物……。
  234. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) これはもうかねがね、お説の通りでありまして、なるべく一つ統一して、だれでも容易に手に入るようにいたしたいと存じます。
  235. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 文部大臣に、文相は多年政界革正に努力されたのですが、根本は国民の政治教育にあると思うのですが、この方面の抱負と費用。  第二点は、岐阜、大阪に学校の暴力半作がありましたが、先日視学官をふやすという御答弁であったが、もっと根本的にメスを入れる必要があると思うが、これに対する対策。  第三点は、学校給食の問題を伺いたいのですが、現在文部省では給食の設備補助が一億五千万円、事務費が五千万円、日本給食会に一千四百万円、それから食管会計で小麦粉の配給のために十五億四千万円を使っておるわけです。この配給の機構を調べてみますと非常に複雑な機構になっておりまして、学校から文部省を通って、食糧庁を通って、食糧統計事務所だとか、指定倉庫だとか、給食会だとか、いろいろなものがありまして、結局パンの工場までいくんです。給食会ではこの前何か家宅捜査まで受けたとかいうような問題があるんですが、私はこういった機構を回り回ることを一切やめてしまって、児童一人当り国が幾ら補助するということで、人数で国からいきなり金をやられれば、パンの上前をはねるようなみっともない汚職問題は起らないで済むというようなことを考え、この現金補助の形態に変えたらどうか、こう思うのですが、これらの点について文部大臣に御違憲を伺います。
  236. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) お問いの順序によってお答えいたします。  政治教育はまことに必要なことでございまして、学校内においては党派に偏せざるよう政治の理解に努めたいと思っております。また社会教育、わけても青年教育、婦人教育についても、十分これを徹底いたしたいと存じております。先刻あなたから御質問がありました新生活運動の実践要領の一つとしても、選挙の粛正ということを一方で意図しております。一そうこの方面には尽したいと存じておるのであります。  学校の世間で言う暴力教室的なことが一つでなく二つも三つも起りました。実にこれは遺憾なことであります。その原因を考えますると、私は二色あると思います。一つは今の教育に道徳的な要素が非常に薄弱ではないか。ことに東洋においては師の、先生の御恩ということを唱えておりまするが今の教育基本法ではそれがないのじゃないか、親の恩も国の恩も、一は十分意を尽しませんが、そういう道徳的なエレメントが少いということ。もう一つは、この教育職員に対してわれわれの指導力が及ばないということであります。文部省がかれこれ言うのはけしからぬということになってしまっておる。私も一新党派を作る以前、また保守合同以来、非常にこのことを痛感し、同志にも相談いたしまして、今回はこういう提案をしております。一つは教育制度審議会をこしらえてもらいまして天下の知識を集めて、これは多少摩擦もあることと思いまするが、道徳教育を一つ教科に入れることといたしたい。これが別にやっている臨時教育制度審議会の工夫であります。もう一つは、世間で指導機構などというと、非常にいやがられることでありまするが、今回の教育委員会制度におきましては、本日の本会議で御質問を受けましたが、やはり先生方の研修ということに多少の援助指導をいたしたい。それからよくよく都合の悪いことがあれば、昔のような監督じゃございませんけれども、措置要求ということをいたしていきたい。こういうことで、一つは制度の方から、一つは思想の方から改善いたしたいと思うのが念願でございます。しかしながら教育のことは、ほかのことのように法律や行政でぴしゃっと一ぺんに魔術のようなことをするわけにはいきませんから、ぼつぼつ数年の年月をもらいまして、日本の教育を改めたいというのが私のほんとうの、心からの要求でございます。  次に配給のことですが、これもいろいろむずかしいことで、近頃問題などを起して実に相すまんと思っております。今の小麦のこと、パンのことですが、あなたのおっしゃる通り、金をやってすぐこうせいと言えば簡単ですけれども、特殊な事情があってアメリカのプラントをもらっている、それを農林省が売って非常に安く、学校だけが買うことになっておるのでして、今五円何がしくらいで一食のパンが学校で配給されているのです。少し複雑なのがアメリカのプラントの……、今年は洋服を断わったがために、たくさん入ってくる。それを農林省が受入れて、地方へ持っていく、そうして文部省の方の切符でそれを教育委員会に渡して、委員会がパンをこしらえる、工場へ委託してパンをこしらえて、そうして五円何がしくらいでパンを配給する。こういうことになっておりまするので、よくあなたのお説のことも考え、参酌いたしますけれども、そういう特殊な事情が一つあるのでございます。御了承願います。
  237. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 最後に運輸大臣に伺いたいのですが、外航船船建造利子補給を受けている会社が、配当を復活したいということが新聞にちょいちょい出ておりますが、むろんこれは申請があって許可をされると思うのですが、その許可の基準を承わりたい、われわれの考えとしましては、利子の補給を国家から受けている会社が他方で株主に配当するというのはどうも納得がいかないので、まず補給の問題を解決してから配当の問題に移るのが当然だと、こう思うので、この点を伺いたい。  それから大蔵大臣に私は伺いたいのは、国際電々公社の株が百三十二万株まだ売れないで、大蔵省にあります。御承知の通りこれは国際電々株式会社法の付則の第二十一条で、有価証券の市場の情勢を勘案して、なるべく速やかに売れと規定されている。そしてその金を日本電々公社に渡すことになっている。御承知の通り日本電々公社に建設資金がないので、電話設備負担臨時措置法の有効期限がことしの三月三十一日に切れるのを、もう五年ふやそう、それでことしは十八万五千個の電話を増設するために、五十五億円の民間加入者に負担をかけよう、こういうことが今法律案として出ていますが、この今の百三十二万株を売れば、五百円の株が六百円にも売れるのですから、たちまち八億円くらいの命が入ってくるわけです。しかも法律では、なるべくすみやかに売れということをきめておりまして、御承知の通り配当の規則もきめぬくらいに早く売ることを予定しておるのでありますから、一日も早くこれを売られるがいいと、こう思うのですが、この点についての大蔵大臣の御所見を一つお伺いしまして、私の質問、あと行政管理庁の分があるのですけれども、きょうは御病気でお帰りになりましたから、それを残して、あとは終ることにいたしたいと思います。
  238. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) お尋ねになりました、利子補給を受けている会社の配当を承認する場合の基準は、これは現行法にその規定がございます。すなわち払込資本に対する一割までの利益が出ました場合には、配当してもいいことにしております。一割をこえる場合には――利益でございますよ、利益がこえる場合には、その期の利子補給はしない。さらに一割五分をこえるような利益があったという場合には、その一割をこえる五分ですね、その五分の一部分は、半分だけは、今までたくさん滞っておりますから、その方に払う、こういう建前になっております。それで多分お話の点はその利子の補給を受けておきながら配当をするのはどうかと、こういうお心持だろうと思う。実は私もその点は心持ちは同じように考えております。ただその問題はしかし今に始まったことではないのでございまして、立法するときにやはりその問題があったのであります。ただそのときに利子補給を受けておるものが、その利子の補給を受ける状態のもとにおいては配当をやめたらいいじゃないかということは、そのときからの立法問題がございましたけれども、何分にも日本の海運会社は自己資金が非常に少いのでございます。現に私の承知しておるところでは、今の海運会社は借入金の方が二千数百億になっておって、自己資金は三百億円しかない、こういう状態でございますから、ある意味からいえばやはり自己資本というものをふやしたい。それには若干配当というものがございませんというと、増資ができないという、いわばジレンマに引っかかっておる、こういうことになると、法律はそうでございますけれども――それでございますから、運用をするときには、幸いに一年半以来海運界は好況でございますから、実はお話の通りぽつぽつそういったような要求もございますが、その場合には私は心持は八木さんと同じように私も考えておりますから、立法の精神を厳格に解釈して、あまり都合のいいことだらけに陥らないように措置をしたい、こう考えております。
  239. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 国際電信電話会社の株式は、お話のように、市場の状況を見ましてなるべくすみやかに売却するということが法律のきまりでありまして、そこで大蔵省といたしましても、百四十八万株売却済みで、これはすでに公社に代金も交付いたしましたのでありますが、なお百三十二万株残っております。ところがこれは総株数の五分の一に当るのでありますが、ところがちょうど今日本電信電話公社法の一部改正法律案が参議院の方に前国会からの継続審議になっておるのでございます。これによると、日本電信電話公社が国際電信電話会社の株式を五分の一持つように、ちょうど今残っておる百三十二万株を持つようにという、そういう改正案が今参議院で審議されております。その結果を持ちまして、待つのが適当であると考えてそれで売却を控えておるわけであります。
  240. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今の法律案は五分の一持ち得るという規則で、必ずしも持てというのじゃない。そこで電々公社がほしければ市場で買ってもいいのですから、政府は金がなくておるのだから、一応市場が悪くならぬうちに早く売ってしまわれたらいい。その売るということ法律案とは必ずしも何ら――何らとはいいませんけれども、必ずしも必然的の関係があるわけではないですし、片方は、とにかく法律はすみやかに売れ、こう命じておるのですから、私は売るように、一つ大蔵省の方から逆に郵政省の方へ、これを売りたいがということを積極的に話してもらいたい。これが私の考え方でございます。
  241. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 御意見もっともであるのでありまして、なお十分考慮いたしまするが、ただいま御審議願っておる法案の審議経過等からみまして、ただいまのところ売却を控えておるわけでありまして、なお、十分研究いたしたいと思っております。
  242. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 本日はこれにて散会いたします。    午後六時十一分散会