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木村禧八郎君 そういうことを言っていますけれ
ども、この五カ年
計画でもはっきり低所御者、短時間就労者のいわゆる不完全就業者が多数存在しておって、そういうことを考えると、今後相当期間はこういうような雇用の問題について特別の考慮が必要だと思う。ところが特別の考慮が払われていないと私は思う。そこで第二にしわが寄ってきているのは、失業
対策もこれは見解の相違になるかもしれませんが、私は不十分だと思います、それはやはり五カ年
計画でも生産性向上の要請が強いので、生産の増大にかかわらず比較的雇用の方が大きくない、こう言われております。生産がふえても雇用が増大しない、そこで第二にしわが寄るのは社会保障の面なんです。今度の
予算について社会党の河上氏が衆議院でこの
予算は軍事偏重で、社会保障を考慮されていないじゃないかと言うた。ところが百二十二億ふえているじゃないか、社会保障費は。そういうふうに鳩山総理は
答弁されましたが、しかしこの内容をみて見ますれば、非常な後退を示しています。時間が経過して参りましたから厚生
大臣に要点について伺いたいのですが、この社会保障の
政策の内容は後退していまして、それで老人とか子供に対する、経済的弱者に対する
対策が著しく後退しています。これで社会保障の前進と一体言えるかどうか。たとえば六十才以上の老人が全国に七百十六万いると言われますが、この中でどうしても今緊急に救済しなければならん人が九万五千人いる。これに対して救済施設は全国で四百五十カ所、収容人員は二万五千人にすぎない。有料保護施設は二百五十人を収容するにすぎない。しかも有料の方は年負担金は二十万円も要るんです。一体こういう老人九万五千人は、これは緊急に救済しなければならない。それで二万五千人以外にこれだけ救済しなければならない。それから児童については、特にこの児童
対策は非常に後退しています。厚生省がせっかく今の養護児童の一日の給食費五十七円六銭を十円三十六銭上げようと思って、一億七千六百万円の
予算を
要求した。これを七千七百万円に切り下げられたのですよ。養護課長のお話しによると、親のない、
政府が養っている養護児童に対して、四日に一ぺんリンゴを一個食べさしてやりたい、三日に一ぺんミカンを一個食べさしてやりたいというので、一億七千六百万円の
予算を厚生省が
要求した。それに対して
大蔵大臣は、よく聞いておいて下さい、七千七百万円に切り下げてしまった。児童憲章というものがありますが、一体これで児童福祉なんていうことが考慮されているのかどうかです。
大蔵大臣、今度末端に行ってこれをごらんになるとよくわかりますが、児童に対する保護施設が一番おくれています。私はこの間名古屋市に行って、
割合に
赤字を出していない余裕のある町村について調べてみました。市の中でも一歩黒字を出して非常に成績のいいと言われている、それでさえ、
政府は
一般会計には百二十二億も
予算をふやしたといばっていますが、社会保障なんて末端に行ってみますと、惨たんたることになっているのです。たとえば保育園を見ますと、保母は児童三十人に対して一人です。そうして国の負担は十分の八で、府と市で八分の一ずつ負担するのですが、負担しきれないものだから、この保母をふやすことができない。あるいはまた蹄弱児童ですね、虚弱児童の収容所、精神薄弱児ですね、こういう者を収容する「ひばり荘」というのがあるのですが、それは五十三名しか収容できない。ところが名古屋には年間二百人も収容しなければならぬ児童がいるんです、そうすると年々三名か五名しかあかないんだそうです。そういう施設がもうほったらかされている。そうしてスイスのエリコン社から誘導弾を一三億六千二百万円で買っている。このかわいそうな気の毒な養護児童に、三日か四日に一ぺんリンゴ一個、ミカン一個食べさしてやりたいという一億七千六百万円の
予算を七千七百万円に削って、エリコン社から誘導弾を買うのにはすぐ三億六千万円オーケー、ジェット機一機一億六千万円、そういう費用の方は簡単にどんどん出して、そうして老人とか、こういう弱い子供の方のそういう施設がほったらかされてあるのです。末端に行ってごらんなさい、惨たんたるものですよ。この間私は八幡の戸畑に行った。七十才の老人で肺を病んで、ぜんそくで、びろうな話ですが、痔が悪いのですね、それにその老人が日雇いに雇われておって、そうして痔が出てくるので、苦しいのでスコップをこれに当てて痔を直して、また泥を運んでトラックに入れているのです。そのおじいさんに、なぜあなたは生活保護の適用を受けないかというと、生活保護では食っていけないのです。厚生
大臣ご存じでしょう。一人だと幾らです、一ヶ月。生活保護の保護費はどこの末端に行ったって、今の基準はあまり低すぎる。千五百円や六百円で食っていけますか。そこでその老人は、自分は生活保護では食っていけないので日雇いに出ている。日雇いに出れば二百四十円その他一日でもらえるんです。生活保護を受けたんでは食っていけない。それから少し収入があれば、今の保護法の仕方は、その千五百円か六百円から差っ引いてしまう。そこで、どこへ行っても二千円くらいの収入まではこれを黙認したらどうか、それはもう最近厚生省から、りっぱな自動車に乗って役人がどんどん乱給を防止上するために行って、なるべく厳粛に生活保護の適用を受けるようにしている。そのために、かせぐと引かれてしまう。それだから正常の働く意欲がなくなる。しかもそれが食っていけない。いけないからからだが悪くてもニコヨンになっている、そういうおじいさんがいるんですよ。そういう人をほったらかしておいて一体何が社会保障ですか。さっきのリンゴの話ですが、あの養護児童は一日五十七円六銭のほかに、身の回り品として十円の
予算があります。十円で身の回り品は何が買えますか。私はそこの保母に聞きましたが、
予算がないので便所に行くちり紙、はなをかむちり紙一枚、二枚しかやれない所がある、そういう
状態です。養護児童は五十七円六銭の食費、新聞にも出ましたが、野犬狩りの犬の食事と同じで、あまりかわいそうなんで一億七千六百万円の
予算を
要求したものを削った。そうして誘導弾は三億六千二百万円で簡単に買っちゃっている。F86ジェット機一機節約すればそのくらい出るんですよ。それから学校の今の月謝を上げました。月謝を上げて増収は四億五千五百万円じゃありませんか。ジェット機三機節約すれば出てくるんです。そういう社会保障をほったらかしておいて、どんどんジェット機とか誘導弾なんか、今戦争が迫っているわけじゃない。社会保障をまず充実するのが先決じゃありませんか。厚生
大臣は、一体末端に行って今の生活保護なり結核
対策なり児童保護なり、あるいは社会保険なり、遺家族援護の問題、そういう問題、あるいは失業
対策を末端へ行ってごらんになりましたか。国会で
一般会計のこういう大きな何百何十億という社会保障の
予算の数字を見て、百二十二億ふえたから社会保障が充実しているなんて、とんでもない話です。
日本の経済は安定したなんといっているが、安定していない、失業者は激増していて、あぶれる人がたくさんある。末端へ行ってごらんなさい、そんな再軍備するどころじゃない。再軍備するのがいい悪いは一応別としまして、民政の末端へ行ってごらんなさい、全く社会保障の充実なんか、これはもう鳩山
内閣が――なんというのは僭越ですよ。ほんとうに僭越です。末端へ行ってごらんなさい、惨たんたることになっているんです。そういう点に十分留悪しないで、そうしてこれが再軍備偏重
予算である。社会保障を十分に考えていると言っておりますけれ
ども、シワ寄せになる人がたくさんいるんですから、もっともっとそれらを真剣にそういう人の身になって、あまり簡単にジェット機とか、あるいは誘導弾ということでなく、もう少し血の通った人間としたならば、愛情をもってそうした民政を考えるべきです。全く愛情の片鱗さえもない、
予算をごらんなさい。それがうそなら末端まで行って御研究になってほしい。厚生
大臣について、もっと私は詳細に具体的な点についていろいろ伺いたかったけれ
ども、時間が経過して十分に時間がございませんので、最後に厚生
大臣に、この点誠意のある、またなるべく具体的にその御
答弁をわずらわしたいのです。