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1956-03-10 第24回国会 参議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月十日(土曜日) 午前十時三十五分開会     ―――――――――――――    委員の異動 本日委員佐藤清一郎君及び菊川孝夫君 辞任につき、その補欠として青木一男 君及び山本經勝君を議長において指名 した。     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     西郷吉之助君    理事            堀  末治君            三浦 義男君            秋山 長造君            吉田 法晴君            豊田 雅孝君            中山 福藏君    委員            石坂 豊一君            伊能 芳雄君            川村 松助君            木内 四郎君            佐野  廣君            高橋進太郎君            田中 啓一君            西岡 ハル君            野村吉三郎君            藤野 繁雄君            宮澤 喜一君            亀田 得治君            相馬 助治君            竹中 勝男君            戸叶  武君            山本 經勝君            田村 文吉君            廣瀬 久忠君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    法 務 大 臣 牧野 良三君    外 務 大 臣 重光  葵君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 清瀬 一郎君    厚 生 大 臣 小林 英三君    農 林 大 臣 河野 一郎君    労 働 大 臣 倉石 忠雄君    国 務 大 臣 大麻 唯男君    国 務 大 臣 太田 正孝君    国 務 大 臣 正力松太郎君    国 務 大 臣 高碕達之助君    国 務 大 臣 船田  中君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    内閣官房長官 松本 瀧藏君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    行政管理政務次    官       宇都宮徳馬君    行政管理庁管理    部長      岡部 史郎君    自治庁行政部長 小林與三次君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 林  一夫君    防衛庁経理局長 北島 武雄君    防衛庁装備局長 久保 龜夫君    経済企画庁計画    部長      大来佐武郎君    法務政務次官  松原 一彦君    公安調査庁次長 高橋 一郎君    外務政務次官  森下 國雄君    外務事務官    (公使)    木村四郎七君    外務省アジア局    長       中川  融君    外務省欧米局長 千葉  皓君    外務省経済局長 湯川 盛夫君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和三十一年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十一年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十一年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を開会いたします。  きのうに引き続きまして総括質疑を続行いたします。  最初に御報告いたします。菊川孝夫君、佐藤清一郎君が辞任せられまして、山本經勝君並びに青木一男君がそれぞれ委員に入られました。  秋山長造君。
  3. 秋山長造

    秋山長造君 最初に二、三点疑義を確かめておきたいと思います。一昨日からきのうにかけての亀田君の質問に対する鳩山総理の御答弁は、総理自身速記録をごらんになってもすぐにはわからない。いわんや聞いているわれわれには、支離滅裂で何をおっしゃっておるのか了解に苦しむ点が多々ございます。しかし、しいて総理のお気持を推測いたしますと、結局かつては自衛隊違憲であったけれども、自衛隊法ができたので違憲でなくなった、合憲になった、こういう御見解のように承わるのでありますが、その御見解はその通りでございますか。
  4. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私が解釈を変えましたことは昨日申した通りであります。
  5. 秋山長造

    秋山長造君 解釈を変えたとか、変えぬとかということでなしに、かつては違憲であったけれども、自衛隊法ができたので合憲になった、こうおっしゃっておるのですが、その御見解は間違いありませんかと、こう言うのです。端的に聞いている。
  6. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私が解釈を変えたのです。憲法の上からは……憲法解釈を変えたというのが一番適切だと思います。
  7. 秋山長造

    秋山長造君 じゃその総理の御見解は、今後も変らないと了解してよろしゅうございますか。
  8. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その通りです。
  9. 秋山長造

    秋山長造君 しからば御質問いたしますが、自衛隊法ができたから違憲でなくなった、違憲ではないという解釈に変った、こういうお話でございますが、それはどういうわけでそうなったのか、その意味一つ率直簡明にお知らせを願いたい。
  10. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国が基本の権利として自衛力を持つと思います。そういう解釈によって、憲法九条が、そういう解釈が優先するというように解釈をするようになったのです。
  11. 秋山長造

    秋山長造君 そういう憲法九条に優先するように解釈するようになった、じゃ憲法九条というものはあるけれども、それに対して自衛隊法が優先するのですか。
  12. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 優先するという言葉はどうかしりませんけれども、憲法九条も自衛力を持つということを禁止しない、規定しないというように解釈するようになったのです。
  13. 秋山長造

    秋山長造君 じゃ先ほどの、憲法九条に自衛隊法が優先するという御発言は、これはお取り消しになるのですか。そこをはっきりして下さいよ。
  14. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 優先するというのは、つまり憲法九条は禁止をしていないという意味だと申すのであります。
  15. 秋山長造

    秋山長造君 その点はこれは重大な問題ですよ。憲法九条に自衛隊法が優先するということは、つまり憲法九条以上のものだということなんです。そこらをはっきりして下さい。
  16. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) いや、法律憲法に優先するはずはありません。
  17. 秋山長造

    秋山長造君 そうでしょう。(「そう言ったじゃないか」と呼ぶ者あり)
  18. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そういう意味で言ったのじゃありません。
  19. 秋山長造

    秋山長造君 いや、意味で言ったのではないといっても、その御発言が、これは速記録になって永久に残るのですから、間違いならば間違いと、意味だとか何とか言わずに、はっきりしておかないと困るのです。
  20. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 速記録をお読みになりましても、自衛隊法憲法九条に優先するという意味でないことは、私は明瞭に言っておるつもりです。
  21. 秋山長造

    秋山長造君 では、結局自衛隊法によって憲法解釈が変った、こういうことになると思うのです。そうでしょう。
  22. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は憲法九条を、自衛隊を持てないように思っていたんです。ところが、一国が独立をすれば自分の国を守るという、その自衛権というものは、憲法に書いてあっても書いてなくても、どんな国でも持っておるものと思います。そういう解釈の仕方が自衛隊法が通った――、憲法が否定をしていないという解釈の方が一般に認められたと私は思う。で、自分解釈を変えたのであります。
  23. 秋山長造

    秋山長造君 ですから、端的にいえば、つまり自衛隊法ができたので、自衛隊憲法違反ではないという解釈に変ったということをおっしゃっておるのでしょう。
  24. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そうです。
  25. 秋山長造

    秋山長造君 そうでしょう。
  26. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そうです。
  27. 秋山長造

    秋山長造君 ちょっと待って下さい、官房長官。(「官房長官質問していやしないよ」と呼ぶ者あり)  そういたしますと・自衛隊法ができたことによって憲法解釈が変ったということですから、その自衛隊法国会の多数決によってできたということなんだ。そうでしまう。
  28. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自分解釈を改めたということです。憲法解釈が変ってはいない、正当の憲法解釈としては、だれもかも私が変えた意見をとるでしょう。私自身自分考えの誤りを正したと言った方が正しいと思います。
  29. 秋山長造

    秋山長造君 だから、私は総理自身論理を追って質問しておるのですよ。世間がどうこうということじゃないのですよ。総理自身論理を追って質問しておる。総理自身亀田君に対する答弁におきましても、私は自衛隊憲法違反だと思っておったけれども、その後、自衛隊法というものができて、国会通過いたしまして、そうしてその結果、今日では自衛隊というものは憲法違反ではない、こう考えるに至ったと、こう書いてある。速記録にそう書いてある。また別のところでは、国会の――国民を代表する国会の多数の人が、自衛隊法は、自衛隊憲法違反ではないということをきめられたので、その方が正しいという解釈に変ったと、こうおっしゃっておる。その通りでしょう。
  30. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は自分考え方を改めたと申し上げるのであります。
  31. 秋山長造

    秋山長造君 しかしですね、私、総理自身の御見解としても、私はおかしいと思うんです。きのうまではですよ、きのうまでは総理自身見解においては、少くとも総理自身の御見解においては、自衛隊というものは違憲であった。ところが今日、自衛隊法というものが国会多数によって通過した。その瞬間に、こつ然として総理の頭の中では自衛隊合憲ということに変っておる。法律というものはそういうように……憲法というものは、憲法解釈というものは、そういうように国会の多数によって法律ができたということによって、それほど百八十度の転換ができるものかどうか。その点一つ十分に御説明を願いたいと思う。
  32. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自衛隊法というものは本来は違憲ではないのです。それを私が違憲だと主張したのです。私は違憲だと主張したのですけれども、自衛隊法通過した、その機会において私は前の私の主張は間違っておる。自衛隊というものは、一国が独立しておれば、自分の国を守る自衛力というものは、憲法に書いてあってもなくても、その国が持っておるのだ、憲法解釈上そういうことはできるのだ、独立国は……。そういうように解釈をするようになったと、こう申しておるのです。
  33. 秋山長造

    秋山長造君 総理大臣自衛権というものと自衛力というものとを非常に混同されて御答弁になっておると思うのです。憲法に書いてあってもなくてもということは、どういうことなんですか。憲法に書いてあってもなくてもということは、憲法が認めておっても認めておらなくてもということなんだ。憲法が認めておっても認めておらなくても、自衛力が持てるということは、結局第九条を無視した発言ではないか。
  34. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 昨日も申しましたが、憲法九条は、独立国自衛力を持つということを否定していない、否定しておるとは読めないというように解釈するようになった。
  35. 秋山長造

    秋山長造君 これはまた昨日の議論を蒸し返すことになる。一体憲法解釈というものは、総理大臣がおっしやるように、憲法に書いてあってもなくてもというようなことで、そのときそのときの御都合次第でどうにでも解釈をすべきものか。その解釈というものには一定の基準というものがあるでしょう。基準があると思うのです。無制限に、憲法のワクを越えて、めちゃくちゃな解釈ということは、私はつけることはできぬと思うのですが、少くとも立憲政治である以上は。どういう基準によって憲法解釈をなさっておるのですか。
  36. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は先ほど申す通りに、憲法九条は自衛力を持つということを否定していないから、独立国家としては当然に自衛力は持てる、こう何べんも話しておるのです。
  37. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっとその点、微妙ですからお尋ねいたしますが、総理在野時代自衛隊は持てないという解釈を持っていた、先ほど、持てないように思っていた、こういう御説明。ですから違憲であるという説を持っておったことはお認めになっておると思います。それから、変ったのは、自衛隊法が通ったから考えが変ったのだ、こういう説明をされておる。これは間違いがない。そうしてその理由は、国会の過半数でもって自衛隊法が通った、自衛隊は持てるのだ、自衛力は持てるのだということになったのだから変った、こういう御答弁のようです。これも間違いがないと思います。そうすると、国会において自衛隊法が通ったということによって、従来違憲であると考えておった自衛隊を持つことが合憲に変った、法律の制定によって憲法解釈が変った、こう質問するのは当然だと思います。そこで秋山君あるいは私どもは、法律を作ることによって、自衛隊法を……法律を作ることによって、憲法解釈が変えられておるではないか、こうお尋ねをしておるわけでありますが、一つ一つについてはっきり御答弁願いたいと思います。
  38. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は自衛隊法国会通過したときに、自分自分意見を変えた、自分意見を変える機会を、自衛隊法国会通過することによって自分の間違いを変えたというわけなんです。
  39. 吉田法晴

    吉田法晴君 自分意見を変えたとおっしやいますが、あなたは総理大臣です。政府を代表する総理大臣です。その総理大臣法律通過によって意見を変えたというお話は、政府解釈が変った、こういうことでしょう。これは別問題です。それはそうでしょう。個人の考えではなく、総理大臣考えを聞いているのですから、総理大臣鳩山一郎は、法律が通ったことによって意見を変えた。そうすると、政府憲法に関する解釈自衛隊法通過によって変った、こういうことになるのじやありませんか。
  40. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は昨日申しました通り在野時代にはそういうことを申しましたけれども、憲法についての解釈を、自衛隊法が通ったときに変えたのです。そのときは、やはり在野時代であります。総理大臣にもなっておりません。
  41. 戸叶武

    戸叶武君 関連質問……。総理大臣政党責任政治時代がきたということを、私への答弁についても明確に答えております。この二大政党による責任内閣制の運営の基礎というものは、やはり政権の交替をなすのは、その政策におけるところの対立から生まれてくると思うのです。吉田内閣の打倒の主たる攻撃力は、鳩山さん、あなた自身だったのです。吉田さんがでたらめなやり方でもって、自衛力の漸増の名によって自衛隊を置くというような違憲行為をすることに対して、あなた自身は、自衛隊を置くということには賛成であるけれども、自衛隊を置くことは、それ自体は違憲であるという、違憲論をひっさげて吉田内閣を打倒して、鳩山内閣を成立せしめたゆえんを作った本人です。その人間が今日においてあいまいな答弁をするということならば、あなた自身責任をもって辞職しければならない重大な発言とそれはなるのです。(「その通り」と呼ぶ者あり)少くとも責任内閣制のもとにおける総理大臣の言動と出所進退ということがおろそかにされて、私は責任内閣制というものは確立され得ないと思うのです。その責任において、あなたは責任ある答弁をしてもらいたいと思います。
  42. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 戸叶君の言われたことが事実に違っております。私は吉田内閣のときに自由党に入った。そして自衛隊というものはできているのであります。自衛隊に反対をして吉田内閣を倒して、そうして自分総理になったといういきさつではございません。(「答弁が違う」と呼ぶ者あり)
  43. 秋山長造

    秋山長造君 もう一度重ねて伺いますが、総理大臣が、とにかく理由はどうあろうとも、憲法解釈を変えられた瞬間というものは何ですか。自衛隊法ができたときにお変えになったというお話でございますが、その通りでございますか。
  44. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自衛隊法国会通過しまして、独立国家自衛力を持てるというような……。
  45. 秋山長造

    秋山長造君 そんなよけいなことはいいのですよ。
  46. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その機会に私は自分意見を変えたと、さっき申しました。
  47. 秋山長造

    秋山長造君 結局、総理大臣は、自衛隊法ができたときに変えた、こういうことなんです。そうすると、一昨日の亀田君の質問に対して、自衛隊を持つことは、憲法の成文に合致しないと思う、その疑いがある。とにかく一たびはそうはっきり御発言になった。しかもその文句については何ら取り消しも何もされていない。さらにまた一昨年の暮の二十一回国会衆議院予算委員会におきまして、社会党の河野密君が質問をしたのに対しまして、総理大臣は、違憲疑いは確かにあるのですから、そういうような疑いのもとに日本防衛をするということは非常に不愉快な話であるから云々、こう答弁されておるのです。これは、はっきり権威ある衆議院の記録に残っていることなんですよ。そうすると、今総理大臣は、自衛隊法が成立した瞬間に合憲論になった、変ったということとはっきり矛盾しているではありませんか。いかがですか。
  48. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は疑っておりませんけれども、疑う人はあるだろうと思います。そのことを今申したのであります。
  49. 秋山長造

    秋山長造君 総理大臣人ごとのようにお話をなさいますけれどもですね、これは疑う人があるのは、いつの世にも、いかなる法律についても疑う人があることはきまっています。ただここでは、この河野密君に対する答弁については、総理があくまで自分の主観としておっしゃっているのですよ。違憲疑いは確かにあるのですから、なぜ今おっしゃるようなことならば、自分合憲とは思っているけれども、世間にはこれに疑いを差しはさむ者もあるからと、なぜはりきりおっしゃらないのです。はっきり自分違憲疑いはある、確かにあるのですから、そういうような疑いのもとに日本防衛をすることは非常に不愉快な話である、あくまで主体は総理大臣自身なんですよ。いかがですか。
  50. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は今言ったような趣旨において自分意見を発表したつもりです。
  51. 秋山長造

    秋山長造君 そういたしますと、われわれは国会速記録というものは、国会におけるこれは最高の権威を持った書類だと思っておる。皆さんもその通りだと考えておられる。ところがその権威ある速記録に、はっきりこういうようにしばしば断言をされていることが、あとからあとからそれを全然逆な説明をつけ加えなければ満足な解釈ができないような御発言というものは、私は一国の総理大臣として、また法律を守り、憲法を擁護すべき総理大臣責任者として、はなはだ私は不穏当なあるべからざる態度であると思う。その点について御責任をお感じになりませんか。
  52. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は自分言葉の足らなかったことを遺憾としております。意味はただいま申す通りであることは当然なことだと思っております。
  53. 秋山長造

    秋山長造君 結局総理大臣は、おっしゃることがそのときそのときで変っておるのですね、ネコの目のように。昨日の亀田君の質問に対して国民に疑惑を与え、世間に誤解を与えていることについては、責任をもってそれを正すようにする、はっきり責任をもって正されるのであるならば……、そのときそのときにこういう別々な発言をされるということがまずその趣旨を裏切っておる。またこういうものについてあなたの真意でないならば、ただ回りくどい、回りくどいこじつけた説明あとから加えられるのでなしに、はっきりお取り消しになったらどうですか。はっきりお取り消しになったらどうですか。
  54. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 前後を読んで下されば、私の言った通りになっているのですから、(「冗談じゃない」と呼ぶ者あり)おわかりになると思います。
  55. 秋山長造

    秋山長造君 そこで私はもう一度お尋ねをいたしますが、では今の瞬間は、今の瞬間は総理大臣は、自衛隊法というものはあくまで合憲なものだ、一点疑いのないものだ、こういうようにお考えになっておるのですか。
  56. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そう考えております。そのように考えております。
  57. 秋山長造

    秋山長造君 では過去におけるいろいろな機会でのご発言はすべて間違いであった、今おっしゃることが、これは最終確定の御見解なんですか。将来も変りありませんか。
  58. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自衛隊憲法に違反していないということは昨日も申しております。今日もそう思っております。
  59. 秋山長造

    秋山長造君 では私は自衛隊法の問題について一点だけお尋ねしたいと思う。大体自衛隊法というものは、われわれは非常に憲法疑義があると考えておるのです。時間がありませんから多くの点は申し上げません。ただ一点だけ、自衛隊法の第七十六条の防衛出動防衛出動総理大臣責任者です。防衛出動という問題についてお尋ねをしたい。一体防衛出動ということは、これはどういうことなんですか。防衛出動ということはどういうことなんですか、法律上。総理大臣責任者なんですよ。
  60. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 急迫不正なる侵略がありまして、外部からの攻撃がありましたときに出動をする意味であります。
  61. 秋山長造

    秋山長造君 外部からの攻撃があったということは、現実外部から攻撃を受けたということなんですか。
  62. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そうです。
  63. 秋山長造

    秋山長造君 では、攻撃を受けるおそれがある――攻撃は受けてないけれども、攻撃を受けるおそれがあるという場合までは含まないわけですね。
  64. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 防衛庁長官から答弁させます。
  65. 秋山長造

    秋山長造君 いや、総理大臣、あなたが最高責任者ですから防衛庁長官なんか要りませんよ、あなたの見解を聞いているのです。
  66. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は答弁いたしました。
  67. 秋山長造

    秋山長造君 攻撃現実に受けたときだけですね。
  68. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はそう思う。国務大臣船田中君) 七十六条に、「外部からの武力攻撃に際して、わが国を防衛するため必要があると認める場合」ということになっておりまして、現実武力攻撃を受けたときに発動されるものと存じます。またさように政府考えております。
  69. 秋山長造

    秋山長造君 ところが、この七十六条の条文にはこう書いてあるのですよ。「外部からの武力攻撃」、そうしてカッコをして「外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む」と、こう書いてある。
  70. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) それじゃそれでいいじゃないですか。法律に書いてあればそれでいいじゃないですか。
  71. 秋山長造

    秋山長造君 何を言っているのですか。法律そのものについての疑問をただしておるのだ。要らぬことを言ってもらっちゃ困る。総理大臣は、防衛出動という場合は、外部から現実攻撃を受けた場合に限る、攻撃のおそれのある場合というものは含まないとおっしゃった。長官もそうおっしゃった。ところがこの法律にははっきり「外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む」と書いてある。どうですか、それは。最高責任者防衛庁長官がそんなちゃらんぽらんなことを言っておったら大へんですよ。これは国の運命にかかわる問題なんだ。
  72. 船田中

    国務大臣船田中君) 武力攻撃のおそれのある場合におきまして、当方といたしまして、これを防衛するために武力行使をし得る状態に置くということはできるのであります。しかし現実に反撃をするということは、現実武力攻撃が加わったときに初めて発動されるものと考えます。また政府としてはさような考え方を持っておる次第であります。
  73. 秋山長造

    秋山長造君 それは私が質問していることと違うのです。私は、武力攻撃をするとかせぬとかということを質問しておるのじゃない。まだその前の段階を質問しておる。防衛出動をする場合は、防衛出動をする場合はですね。現実外部から攻撃があった場合に限るのか、それとも攻撃のおそれのある場合も含むのかということを質問したところが、総理大臣防衛庁長官も、現実攻撃があった場合に限る、おそれのある場合は含まないとおっしゃった。何も現実に鉄砲を打ったり、大砲を打ったりすることを私は聞いておるのじゃない。防衛出動ということを聞いておるのですよ。
  74. 船田中

    国務大臣船田中君) 防衛出動をいたしまして武力を行使し得る状態に置くということはできるのであります。(「変ったね」と呼ぶ者あり)
  75. 秋山長造

    秋山長造君 それはごまかしだ。ごまかしですよ。総理大臣のさっきおっしゃったことも、防衛庁長官のおっしゃったことも、これは、はっきりしておるのです。防衛出動は、武力攻撃のおそれのある場合、おそれのある場合は含まないとおっしゃっておる。ところがこれは自衛隊法には、はっきり「含む」と書いてあるので、こういう国の重大問題についてはその局に当る責任者すら法律解釈がそのようにまちまちなんです。これは非常に重大な問題だと思う。さらに、国会の承認を得なければならぬ。ところがですね、この防衛出動ということを具体的に考えてみますと、時と場合によりましては、これは、せんだって総理大臣がおっしゃったように、敵の基地の攻撃すらも予想されておるのです。敵の基地を攻撃するということは一回限りで済む問題じゃない。近代戦争の常として、当然さらに引き続き彼我の応酬があるわけです。結局これはもう自動的に全面的な戦争になりかねない。国家民族の運命を左右する問題です。憲法法律も吹き飛びかねない状態です。そういう重大な問題を、ただ国会の承認、具体的にいえば国会の多数決、国会の定足数は三分の一あれば足りるということになっておる。だから一番極端な場合を考えると、国会の三分の一プラス一名の人が出席をして、そうしてそのまた過半数――そのまた半分の賛成があれば、これはやるということなんだ。議員個人の除名ということですら、定足数三分の二の賛成がなければ、三分の二の多数決でなければ国会は決定できないのですよ。ところが、一国の運命にかかわるような、全面戦争になりかねないような、こういうおそれのある防衛出動という問題が、単純多数決で決定されるということは、私は、はなはだ不穏当である、不安を持つ。総理大臣は率直にそのようにお考えになりませんか。
  76. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国会では多数決によって決定される以外に方法はないと思います。
  77. 秋山長造

    秋山長造君 それはわかり切っておりますよ。多数決はわかり切っておるのですけれども、多数決にもいろいろある。二分の一多数決であるというふともあれば、三分の二多数決というふともあるのです。だから憲法は、特別重要な問題については三分の二多数決という一つの制限をおいておる。ところが、こういう重大な問題が、ただ普通の一般の議案と同じように、ただ単純な多数決、過半数ということでもって決定されるということは、憲法の規定から考えましても、またわれわれの常識から考えても、これは相当疑義があるのじゃないか。だからそういう法律では、なるほどそうなっておるけれども、しかしそういうことは穏当ではないのじゃないか、適当ではないのじゃないかとお考えになりませんか――ということを言っておる。
  78. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はそういうような場合は非常に明瞭なときに起る事件だと思うのです。急迫不正な侵略がありまして、急迫な事態というものは目前にあるわけでありますから、そういうような事態においては多数決で十分足りるものと思います。疑問のある戦争じゃない。
  79. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと関連して。防衛出動の中で、総理大臣がせんだってから、特殊な場合に外部に対して敵の基地をたたく、攻撃する。それは特殊な場合に可能だ、こういうことをおっしゃっております。そういう場合を予想しますると、それはおそらくこの今問題になっている自衛隊法七十六条のただし書きですね、ただし書きに該当する場合であろうと思います。つまり非常に急迫な事態、そういう場合には、ただし書きによりますと、国会の承認を要らない、こう書いてあるわけであります。それで、この点は総理大臣はどういうふうにお考えでしょうか。私は、普通のゆるい事態の場合には国会の承認を受ける、ところが非常に急迫してきて、その場合には国会の承認を要らないが、しかし結果からみますると、その方が今度は影響としては非常に大きな問題が起ってくるわけなんです。私は今の自衛隊法というものは、ともかく外国は、日本はそう簡単に外へは出てこないだろう、こういうやはり一つ考え方を持っていると思うんです。だから出てくる場合には、これは国会にかかるだろう、こう大体考えているところに私はまだ幾らか恕すべき点があろうかと思います。ところが総理大臣発言をされて、非常にこの特殊な場合として問題になった、そういう場合はただし書きにあたる、だからそういう場合には国会にかけないで、そのときの総理大臣の意向によってぱっと独断的に発動される場合があるわけです。この点は、私は、はなはだ不適当だと思うんですが、これはどういうふうにお考えですか。
  80. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 急迫不正の侵略がありまして、それに対して防衛をするという手続をとる以外に防ぐ道がないというような場合に、初めて出動というような問題が生ずるわけであります。そういう場合には、ただいまの規定でもって十分足りるものと考えております。
  81. 亀田得治

    亀田得治君 ただいまの規定というものは、つまり国会の承認を得ないでやるということですか。そういうことは非常な問題とは思いませんか、現在の日本憲法のもとにおいては……。
  82. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 議会の議決を得るということはその条文上原則でして、そのひまのない場合、ひまのないときにには……。
  83. 秋山長造

    秋山長造君 これは総理大臣のおっしやることは矛盾していると思うんですよ。急迫不正ということは、急迫不正の侵害がある場合ということは、つまり国会でゆっくり審議をしてもらうという余裕がないという場合に初めて言えることなんですよ、急迫不正の侵害があるということは、急迫しているんですからね、これは猶予を許さぬ。
  84. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そういうようなことは、事情を想像すればいろいろな事情が想像できまして、議会開会中にはそういうような事実はすぐできると思います。急迫不正の侵害があっても、議会開会中ならば議会にかけるということは、ほとんど時間のかからないことでありますから……。
  85. 秋山長造

    秋山長造君 で、まず国会へかける前にですよ、国会にかける前に、まあできるかできんかしらんけれども、できれば国防会議にもかけなければいけない。そうすると、さらにその上に国会にかける。そうしてその上で急迫不正の侵害に対して防衛措置を講ずる、防衛出動をする、急迫不正は済んでしまって、もう過去のことになるのじゃないのですか。そういうことが、特に時間的に非常に短縮された、瞬間的に短時間に物事が決せられるような近代戦争において、そういうゆうちょうなことが考えられますか。いろいろな場合を具体的に考えて下さい。たとえば総理大臣は、せんだっての本委員会また衆議院内閣委員会において、政府の統一的見解として、座して自滅を待つことは、現憲法の精神であるとは思えない、こういう発言をしておられ、さらにそのあとに、誘導弾等の攻撃を受けた場合は云々、座して自滅を待つということは、言葉では簡単ですけれども、自滅ということは、具体的に考えてごらんなさい。これは大へんなことですよ。どの程度のことを考えておられるか。さらにまた誘導弾等の攻撃に対して云々、具体的に誘導弾の攻撃を受けたような場合には、その基地をたたくというためには、ただヘリコプター、飛行機でのこのこ出かけて行くようなことは、これは問題にならぬ、誘導弾の攻撃に対して基地をたたくということならば、誘導弾以上の強い武器を持っていかなければたたくことは不可能なんです。誘導弾以上の武器というのは何ですか。今考えられるのは原爆以外にはないでしょう。急迫不正の侵害を防衛するためには原爆をも持つことができるとお考えになっておるんですか。その二点についてお尋ねしたい。
  86. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は事件を想像しましてお答えはできない。原則としてはできるだけ慎重な方法をとった方がいいと思いますので、なるべく国会にかけて出動はきめた方がいい、こう考えます。
  87. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっとさっきのことに関連して。
  88. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) あまり関連質問をなさらんように……。
  89. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと簡単に。そういう考え方なら、疑惑を与えるようなこのただし書きですね、特殊の場合には国会にかけないで行政権だけで発動する、こういうことは、やめたらどうですか。総理大臣は先ほど、そういう場合には国会にかけてもさほど手間をとるとは思わぬ、こう言っておる。簡単に国会にかけられるなら、こういう問題になるようなただし書きというものは取った方がいいんじやないですか。
  90. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) いろいろな事実を想像しまして、それで非常に急迫の場合もあるし、どういうところまで急迫な場合があるかということはなかなか想像はできません。だけれども、原則としてできるだけ国会にかけようとする趣旨を申したのであります。そのひまがない場合はやむを得ず国会にかけずに出動する場合もあり得るだろうというわけで、そういう規定を入れたんです。(「結局軍隊に引きずられてしまう」と呼ぶ者あり)
  91. 秋山長造

    秋山長造君 総理大臣は、この法律を運用していく心がけの問題としてそれはおっしゃっておるんです。われわれは法律というものは、ただ心がけだけでなしに、かりに万一将来軍部が非常に力を持ってくる、これも十分われわれは今から想像して、それに対する予防措置というものを講ずる必要があると思う。われわれは、ついこの間そういう苦い経験を持っておるんです。一度あることは二度ありがちなことは歴史が証明しておる。だから、いかなる人が出て来て、いかなる政府ができても、そういう国会を無視して、このただし書きを悪用して、そうしてむやみに危険な行動に手を出すというようなことは、しようにも法文の明文によってできないということにしておきたい。それでなければ無意味です。単なる心がけでは無意味だと思う。その点いかがですか。
  92. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいまは国会において選挙されて内閣ができました。今のような制度においては昔のような危険はないと思います。
  93. 秋山長造

    秋山長造君 危険はないと断言はできないと思う。現にです、現にあなたの党の平林さんですら、昨日のこの席において、長時間にわたって、この問題についての深い憂慮の心情を御発表になったじゃありませんか。これは党派を超越して、われわれはほんとうにこの問題は真剣に考えておく必要があると思うのです。これは簡単に、今日は議会が国権の最高機関だから昔のようなことはやろうとしてもできぬというように簡単に即断されることは、私は、はなはだ危険だと思うのであります。今日すでに巷間伝うるところによれば、自衛隊内部において、防衛庁内部において、文民優位の原則が事実上崩れつつあるということすら言われておるのですよ、そういう点について一点の御不安もないのですか。
  94. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は現在のように統帥権が独立してない現行におきましては、そういうような危険はないだろうと思います。
  95. 秋山長造

    秋山長造君 総理大臣はいつまで生きておられるのか知りませんけれども、そう三十年も五十年も生きられるわけじゃないと思う。総理大臣はそういうことを至極簡単におっしゃっておるけれども、今あなた方が播いておられる種は次のわれわれが刈り取らなければならぬ。あるいはわれわれの子や孫が刈り取らなければならぬ。だから簡単にこういう問題を片付けられるのじゃねしに、ほんとうに深刻に将来のことを考え、将来の不測の事態に備えて慎重に考慮されておく必要があると思う。これが総理大臣が満州事変以来、五・一五事件、二・二六事件あるいはその他いろいろな政治家として事件を経験されて来ておるから、当然総理大臣は過去の経験にかんがみて、将来この苦い経験を無にすることのないように十全なる処置をされておく必要が私はあると思う。その点についてそうお考えにならぬかどうか。
  96. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) あなたの御心配についてはむろん深く考えております。そういうような心配の起らないように、万全の策を講じて今回の処置をとっておるわけであります。(「それにはただし書を取らなければだめですよ」と呼ぶ者あり)
  97. 秋山長造

    秋山長造君 時間がありませんから、あまり繰り返すことはできませんけれども、今この自衛隊法の第七十六条一つ取ってみましても、相当疑問がある、不安がある。第一、防衛出動をする場合についても、この法律に書いてあることと総理大臣長官のおっしゃっておることに食い違いがある。これはこういう問題こそ私は憲法の成文においてはっきりと書かるべき問題だと思う。だから、こういうことを認める以上は、まず憲法を改正して、しかるのちに自衛隊法ということが私はものの順序だと思う。少くともそれが穏当なやり方ではないか。法律上合理的な定石的なやり方ではないか。それをあべこべに、先に自衛隊法でこういうことをこしらえて、そしてあとから憲法をそれに合わせるように改正するというようなことは本末転倒もはなはだしいのです。これは憲法第九十八条ですか、憲法は、国の最高法規である、これに違反する法律も政令もあるいは詔勅もすべて無効である、この原則がもう事実によって破られておるじゃありませんか。こういう本末転倒のやり方は、われわれはこれは違憲だと思う。しかし百歩を譲って、総理大臣は、少くともこういうやり方よりはまず憲法、その次に他の法律、こういう順序を踏んだ方が穏当であるとお考えにならないかどうか。
  98. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は先刻申しました通りに、自衛隊法違憲だとは思いませんから、自衛隊法によって応急の措置をやっていくということは必要だと思います。しかしながら、あなたのおっしゃるような考え方憲法に加えるということを必要であるとやはり思います。
  99. 秋山長造

    秋山長造君 私は自衛隊法憲法において認めてくれといって陳情しているわけじゃないんですよ。(笑声)そんな勝手のいい解釈をして下さっては迷惑です。そうじゃなくて、あなたのやっておられることは、最高法規はあと回しにして、先に法律を作って、あとから最高法規たる憲法をこの法律に合致させるような本末転倒なやり方をしている。しかしそれはあなたの意見によれば、そうじゃない、こうおっしゃる。だから私は百歩を譲って、少くともそれが違法なり不当ではないにしても、大体は最高法規たる憲法が先で、そうして法律はそのあとからにすべきじゃないか、あとでもいいのじゃないか、こういうお感じを、これは率直にざっくばらんに鳩山総理大臣はお持ちにならないかどうかということを聞いているのです。
  100. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はあなたのおっしゃる通りにはいかないと思います。やはり自衛隊というものはどうしても持っていなくてはならない情勢だと思います。自衛隊を作る必要がある。
  101. 秋山長造

    秋山長造君 時間がありませんから次の問題に移ります。ただ、次の問題に移る前に、もう一点今の問題でちょっとお尋ねしたいのですが、総理大臣は昨年の六月六日の衆議院内閣委員会において、自由党の江崎真澄氏の質疑に対してこういう御答弁をしておられる。これは速記録で申し上げなければ、抽象的なことを言ったのでは、そんなことを言った覚えはない、こういって逃げられるから、あえて速記録をもって御質問する。「憲法第九条については改正したいという従来の態度と今日とは違う。その後自衛隊法ができたので以前ほど改正の必要があるとは思わない。憲法の中で特に改正したいと思っている点は、予算に関する国会の権限、最高裁判所の制度、国会議員の議員提出法案の問題などである。」。また昨日も総理大臣吉田法晴君の質問に対しまして、今では憲法改正はそう急ぐ必要はない。日にちをかけてゆっくりとやってもいいと思っている。こういう御答弁をなさっている。だから、いっそのこと、この際しばらく憲法改正というものはおあずけにされたらどうです。それほど急がれない問題を、こういうふうに国内をまつ二つに割るような――総理大臣は二大政党対立主義ということを言っておられる。二大政党対立主義ということは、とりもなおさず憲法擁護という、あるいは立憲政治という共通の立場に立って初めて考えられることなんです。ところが、その共通の広場であるべき憲法そのものについても改正か否かという見解が根本的に相対立している。そういう事態の下に、あえてこの際、無理押しをして憲法改正へ持っていこうということは、私は総理大臣自身論理として非常に矛盾している、また悔いを後世に残す大きな災いのもとになるのじゃないか、このように考えるのですが、総理大臣はそうお考えになりませんか。
  102. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) とにかく憲法改正というようなことは、憲法の要求する三分の二以上の国会の同意を得たい。それですから、憲法についてわれわれの考えている案が具体化していけば、社会党との間にもそんなに多くの距離がなくなるだろう、こういうように考えているのでありまして、これはゆっくらやっていけば、全国的の国民の意思の表明される憲法ができるような気分を持っておりますので、調査会を設けてゆっくらやっていけば、それに社会党の人も参加してもらえれば、そんなに議論をするような点がないだろう、こう思うのです、私は。
  103. 秋山長造

    秋山長造君 総理大臣が、あるといったところで、それは書斎の寝言なんです。総理大臣現実の政治家です。現実国会の中の情勢ということはよく知っておられるはずねんです。社会情勢というものは知っておられるはずなんです。国会においてもまっこうから対立しているじゃありませんか。まっこうから見解が分れておるのです。何を好んでこういう国の基本法を、重大な問題を……、できることなら私どもは、九九%、あるいは全員一致というような形でない限り、憲法改正というようなものは軽々にすべきじゃないと思うのですが、ところが今の形は、二大政党という、その二大政党、議会政治がよってもって立っておるところの二大政党の片方は全面的に反対しておる。それを片方は強行突破で強引に押し切ろうとしておる。あなたは施政方針演説なりあるいは内閣の声明なりにおいては、謙虚な気持を持って少数党の意見をも十分尊重してやっていくということをしばしばおっしゃっておる。ところが、事、憲法問題になると、がぜん態度が変っておる。一月二十八日の共立講堂における自主憲法期成同盟大会ですか、あのときの鳩山総理の演説を私は聞いた。社会党をこのためには抹殺するということまで、あなたはおっしゃっておる。二大政党の片方を抹殺したら、一党独裁専制じゃありませんか。(「その通り」と呼ぶ者あり)しかもそのためにあなたは小選挙区制を強引にこの国会で押し切ろうとされておる。小選挙区制をあなたは憲法改正のためじゃないとおっしゃっておるけれども、正月の朝日新聞に載った鈴木委員長との対談においては、はっきり憲法改正も小選挙区制の目的の一つであるということをおっしゃっておる。これはざっくばらんにおっしゃっておる。そのときが本心だと思う。何ならここで新聞を読み上げてもいいのですが、時間がないから読み上げませんが、そうおっしゃっておる。私の記憶にある通り。ほんとうに二大政党主義ならば、健全なる野党というものを育てて、政権を相互に平和的に授受していくという二大政党主義を考えておられるのであるならば、こういう問題にしても、この早々の間に、にわかに多数をもって押し切る。しかもゲリマンダーならざるハトマンダーということが言われておる。ハトマンダー、わかりますか、鳩山さんは。鳩山さんの手によって選挙区を勝手気ままに引っぱり回して、そして自党の都合のいいようにあっちこっちこねあげるのがハトマンダーですよ。これは永久に日本の選挙史上にハトマンダーという言葉は残りますよ。立権政治家としてそういう汚名を後世の歴史の上にまで残していいのですか。私は、外国には小選挙区制の例はあるでしょう。あるでしまうけれども、日本のような国民のいろいろな階級関係、階級構成というものが非常に複雑な国では、できるだけあらゆる層の政治的な発言機会というものを国会において与えることを私はまず考えなければいかぬ。小選挙区制ほど死票がたくさん出る。死票ができるだけ少くなる方法を考えるべきなんです。だから今の選挙制度をいじくろうとするならば、むしろ今の選挙制度に、少数意見を忠実に国会に反映する意味で比例代表制を加味する方向に行くべきだと思う。どうですか。総理大臣は何十年来の政治の経験がおありになる。選挙の経験がおありになる。いかにお考えになりますか。
  104. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 比例代表は、国民がそういうようなことに触れてくれば、いい制度だと思います。(「ならしたらいいだろう」と呼ぶ者あり)まだ国民は比例代表をするというほどに経験がありませんから、だんだんにそういうように持っていくべきだと思います。
  105. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、理論的には比例代表の方がいいと、こういうように解釈してよろしいですか。
  106. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は比例代表は理論的にはいい制度だと思っております。
  107. 亀田得治

    亀田得治君 いいことのために一つ努力するお考えはありませんか。
  108. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そういう時期の早く来ることを望んでおります。
  109. 秋山長造

    秋山長造君 であるならば、小選挙区制というものは、あなたは政界に入られた当初において一度御経験がおありになる。それでは弊害が多いからというので今日の中選挙区制になったのでしょう。そうしてしかも、これは少くとも普選以来三十何年にわたって一応安定した選挙区制度としてあなた方はやってきておられる。それをなぜ小選挙区制度よりもむしろ比例代表制度に持っていく方がよろしいというお考えを持っておられるのでありますか。この早々の間に、多数で何でもかんでも強引にとれを押し通そうとなさるのか。しかもその具体的な一つ一つの選挙区についてはハトマンダーを徹底的にやって、そうして、これこそもう党利党略です。だんごをこね回すようなことをやっておる、自民党では。そういうことをあなたはそばから手をこまねいて見送っておいて、責任がお済みになるとお考えになっておりますか。いかがですか。
  110. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 小選挙区は決して……、二大政党になって小選区になる方が政局の安定にも資するところがあるし、それから国民の意思を直接に議会に反映せしむることにも便宜があるし、こういう長所があるものですから、小選挙区制をやってみるというのもいい時期だろうと考えます。
  111. 秋山長造

    秋山長造君 総理大臣は、さっきは比例代表制がいい、比例代表制に早く持っていきたい、こういう御発言をしておられる。ところが別に今度は小選挙区制がいい、小選挙区制に持っていきたい。これは一体どっちを目ざしておられるのですか。どっちへ向いていっておるのですか。
  112. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 比例代表制というのは、政党の組織というものがもう少し進歩をしていきませんと、なかなかむずかしい、実施が。そうは行かない。比例代表ということになれば、政党において当選者の順位をきめなければならぬ。その順位を政党がきめるようになるのには、やはり政党がもう少し進歩しませんと、その間に国民の意思に沿わないようなことになる場合があり得るのですから、それですから、やはり比例代表というものは、政党組織炉もっと進みまして、政党の幹部というものが非常に国民の意思をよく考えてやるというような制度になってきませんと、なかなか比例代表は理屈ではいいですけれども、実際においては政党の専制みたいになる場合が想像できるわけですから、これはやはり時期をもう少し待った方がいいだろうと思います。
  113. 亀田得治

    亀田得治君 政党といいましても、現在では大きなものは二つしかないわけです。社会党の方はもう十分準備ができておるわけです。だからあなたの方だけでしょう。あなたが実権を持っておるのですから、そういうふうに努力したら解決つく問題でしょう。  それともう一つは、そういう考えを持っておられるのなら、至急あなたの党内を、そういうふうに進んでいくように、これは党内自身の問題である。国民に対するこれは義務です、党の責任者として。少くとも自民党がそういうふうにきちっとなるまでは社会党も待ちますから、少くとも現状においては、それと反対の方向にいくような、今のこの選挙区をもっと小さくして妙ないろいろなものを作っていく、これだけは少くともストップすべきじやないか。少くともストップしてもう少し余裕をもって考えることぐらいは、私は最小限度必要だと思う。総理大臣のそういう考えならば、どうですか。
  114. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 比例代表は理屈の上ではいいところもありますけれども、国民の意思を反映せしめるという点からみれば、私は小選挙区もいいと思っております。今のところでは小選挙区の方が、二大政党の場合において、小選挙区の方が、全国的に採用しておる制度でありますから、その制度をとってみるのがいいと思います。しかし比例代表まで進んで、比例代表が理想的に運営されるような時代がくるということを望んでおります。(「それは民自党内の問題だ、社会党は用意ができている」と呼ぶ者あり)
  115. 秋山長造

    秋山長造君 総理大臣は比例代表制にしたら政党の専制になるというけれども、自民党で、今準備している政党法なんかというものは、全く少数党を無視して、そうして紙の上で二大政党、大政党を紙の上ででっち上げて、そうしてこね上げた多数というものを作り上げて、その上に絶対多数を握って、そうして自民党があぐらをかこうとしている。これは全く党利党略のかたまりですよ。政局の安定というけれども、衆議院において三百名を握っておられれば政局は安定でしょう。それ以上のものはなかなかない。犬養内閣の当時はどうか知りませんけれども、おそらく昭和の年代においても、犬養内閣の総選挙以来今日くらい与党の頭数がそろっていることは、かつてない。だから、かつてないくらい政局は安定してなきゃならぬはずだ。にもかかわらず、安定していないといたしまするならば、それはあなたの党の党内事情なのです。決して選挙制度の問題でもなければ、国民が悪いのでもなければ、何でもない。自民党の党内事情なのです。いまだに総裁もできないような党内事情なのです。顧みて他を言うのも、はなはだしいと思う。私は時間が参りましたから、もうこの程度で終りますけれども、さらに二、三点これは項目的に申し上げまして、重光外務大臣及び船田防衛庁長官の懇切なる御答弁をお願いしたいと思います。
  116. 相馬助治

    ○相馬助治君 関連して。今の同僚秋山委員が指摘しております小選挙区制度の問題ですが、これは何としても両党が議会主義を尊重して責任政治を確立するというためには、国会構成の基準となる選挙制度の問題というのは、当然大きな政党が二つしかないのですから、両党で話し合うことが望ましいと思う。社会党に話しても意味がないと、こういうふうなお考えの案件はあろうと思う、根本的に対立するために。ところが選挙区制の問題は私はそういう筋のものではないと思う。それで比例代表制をやれば政党の専制が憂慮されるとおっしゃっておりますが、これは首相の考え方は逆で、誤まりではないかと思うのです。と申しますことは、自民党自体が個人の立会演説から街頭演説まで削って、政党の選挙活動を大幅に認めるということを、小選挙区制と照らしてそういう改正を予定しているやに新聞が報じている事実が、私はこれを明瞭に物語っていると思う。そこで、とにかく鳩山首相は、最近ではどうも、いろいろ大きな世帯の上に乗っかって、心にもないようなことをおっしゃるけれども、あなた自身はきわめて民主的な政治家であると私は尊敬しています。そこで、どうでしょうか。小選挙区の問題だけは、両党で話し合って共通の議論をする広場を作って、しかる後におやりになるように、しばらくおやめになったらどうでしょうか。そうして具体的にいえば、連座制の強化だとか、政治資金規正法の改正だとか、そういうものをみっしり法制化すると同時に、政党政治の発達の現段階に照らして、もうちょっと下部組織を確立して、社会党はできておりますが完全でありません。自民党に至っては何をか言わんやでございまして、私は他党の批評はいたしません。こういうものを下部組織を確立するまで、もう一度よくお考えになって、そうして小選挙区制がいいか悪いかを一つの公約として、現行法で一回解散をやる。その後でも遅くないのではないでしょうか。まさに反省すべき時期だと思うのですが、小選挙区制についてどのように首相は基本的にお考えでございますか。
  117. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は小選挙区については先ほど答弁した通りで、それ以上つけ加えるものはありません。ただし民主自由党は勝手な選挙区を作って自分の党の利害のみを土台として選挙する考えはございません。(「やっているじゃないか」と呼ぶ者あり)
  118. 秋山長造

    秋山長造君 私はこういうような重大な問題について、これは二大政党主義の根本の建前であるところの共通の基盤に立っての話し合いということが全然無視されるようなやり方を、何を好きこのんでこの際総理大臣が強行されようとするのか、その点、非常に疑問を持っているのです。昨日の夜、岸幹事長が記者団に語ったところによれば、総理大臣は健康その他の理由によって、この国会が終了次第参議院選挙前にやめるかもしれぬ、引退するかもしれぬ、こういうことを言われておる。また三木武吉氏あるいは河野農林大臣、こういうような自民党の幹部の方々も、しばしばあるいは十月引退、あるいは参議院選挙直後引退、あるいは四月引退、いろいろなことを言っておる。また昨今来の総理大臣の御健康状態を見ておりましても、これはもうだれが考えても、総理大臣はそう長くおやりになる御意思はないものと思わざるを得ない。また客観情勢からいってそう長くお続けになれないというのが、もうこれは通り相場です。自民党の者さえみずからもうすでにそういう判断に立って動いておられるのではないかと思う。従いまして、はなはだ申しにくい言葉ではあるけれども、余命幾ばくもないところの鳩山総理大臣が、その政治的生涯の最後に当って、こういうような憲法問題にしても、小選挙区の問題にしても、国会において根本的にひびを入れるような、こういう禍いを後世に残すような、禍根を後世に残すようなことに血道を上げられることは、決して最後を飾るゆえんではないと思う。私はそうではなくして、二大政党が共通の立場に立ってざっくばらんに話し合い、協力できる問題は、他にあると思うのです。日ソ交渉にしてもそうです。あるいは対米外交にしてもそうです。中共との国交回復問題にしてもそうです。あるいは国内の社会保障制度の問題にしてもそうです。こういう目先きの問題、しかも最も重要な火のついている問題に、もう少し二大政党主義のルールに立って渾身の努力を注がれることこそ、民主政治家、立憲政治鳩山総理の最後を飾るゆえんではないかと思うのであります。そういうような意味におきまして、私は時間の関係から、まず中共との国交回復の問題について端的にお伺いしたい。  総理大臣は、鳩山内閣成立以来中国との国交調整というスローガンを掲げて来られた。そしてそれが鳩山内閣が一時的に人気をあおった最も著明なるスローガンの一つであった。そしてこの正月の鈴木委員長との対談におきましても「中国はすぐ隣りなんですから、この国と親密な国交を持つことは当然なことだと思います。だから私は、何も周恩来に会うこと、毛沢東に会うことを回避しているわけではないので、むろんそういう必要がある場合においては出かけたいと思っております」、こう言っておられる。また重光外務大臣は一月四日別府航路の船の上で、この昭和三十一年の抱負を語られまして、「東亜の大きな問題は二つの中国の存在で、これはことしの世界の最大の問題となろう。日本も中国との地理的関係から現実にこの問題に取り組まなければならない時期に来ておる」、こうおっしゃっておる。私は全面的にこれに賛成です。ぜひそのようにやっていただきたいと思う。ところが遺憾ながら、一たび国会議場に御出席になりますと、総理大臣の施政演説を聞いても、重光外務大臣の外交演説を聞きましても、まことに奥齒に物のはさまったような煮え切らない外交方針しか承わることができないのです。はなはだ私は遺憾に思う。そこでこういう抱負をお述べになった総理大臣なり外務大臣なりが、一体今後具体的にどういうように一歩々々この方針を進めておいきになるおつもりであるか、この点をまず第一点として総理並びに外務大臣にお伺いしたい。  それからついでにもう一点お伺いしておきます。第二点は一体、将来の問題は今お尋ねした第一点、過去において鳩山内閣第一次以来もう一年と四カ月になる。で、この過去一年四カ月の間に一体あの中国との国交調整というスローガンのもとに何をおやりになってきたか、たとえばいつも問題になる経済外交、まず貿易からということをおっしゃるが、貿易ということになれば、やっぱりココムなりチンコムなりの禁輸品目の解除ということが問題になる。一体ココムの禁輸品目は鳩山内閣になって何種類解除になったんですか。また今後の見通しはどういうことになっておるのですか。アメリカあるいはイギリスでいろいろな説がなされておりますが、それらの詳細についてお承わりしたいと思います。総理大臣からます。
  119. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私が先にお答えいたします。よろしゅうございますか。
  120. 秋山長造

    秋山長造君 ええ。
  121. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 中国問題についていろいろな御意見をまぜた御質問でございました。第一点については中国との国交回復をやるべしだという御意見のもとに御質問がございました。中国との国交回復ということが、中共政権をそのまま中国の政府として承認すべしと、こういう御趣旨であるならば、それは今の国際情勢、日本の置かれておる地位から見て、これは当分できないことであって、やるべきでないと、こういうことは私は過去の機会において繰り返し申し述べた通りでございます。あいまいではございません。しかしながら私が現に、実際問題として、日本の承認をいたしておる台湾の国民政府以外に、大陸において大きな中共政権が存在しておるという、この事実は、これを二つの中国として表現をしておる、表現すべきような事実はこれは認めなければならない。そこでこれに対しては十分に東亜の平和安定の全局から考えてみて、いろいろこの点については検討もし、政策を運用しなければならんと、こう申したことは事実でございます。また私はさように考えております。またさような大きなことについて、国際情勢が漸次に動いてくるということも、よく注意してみなければならぬと思います。  そこで実際問題として御質問の第二点でございます。それは貿易などはでき得る範囲内においてしなければならぬのじゃないか、またでき得るならば禁止品目も減少してゆくべきではないかという御趣旨の御発言であったと思いますが、これは私はその通りに思います。そこで政府といたしましても、実際上中共政権がそこにあるのでありますから、その地域との貿易は、国際義務に反しない限りにおいて、そのリミットの範囲内において、これはやるということは当然でございます。またそれを進めておるのでありまして、それには私は実際問題として相当の増加が今日貿易においてあることは、これは認めざるを得ません。つまり成績は上ってきておると思います。しかしながらただそれだけで満足をするわけには参りません。また中共に関する全面的の、全局の政策は、これは国際情勢の全局からきまる問題でありますから、これは動かすことはできません。しかしその全局の政策のもとにおいて、差しつかえない禁止品目の増加ということは、これは私は要求し得ると思います。
  122. 秋山長造

    秋山長造君 増加ではない、減少ですよ。
  123. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 禁止品目の項目を増加するということは……。
  124. 秋山長造

    秋山長造君 禁止品目を少くすることですよ。
  125. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 少くするということは禁止品目のリストを多くするということですね、御趣旨は。
  126. 秋山長造

    秋山長造君 リストを多くするのではない。少くするのではないか。そんなことを言われては困る。リストをふやすというようなことを言われては、とんでもないことです。
  127. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 貿易をし得る品目をふやす、そうでしょう。そうではないですか。
  128. 秋山長造

    秋山長造君 リストをふやすというので……。
  129. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) リストをふやされたら反対の結果になるんじゃないですか。それは少し言葉の……。今、問題は、そういうことではないんじゃないですか。あなたの言われることもよく……。
  130. 秋山長造

    秋山長造君 正しいことを答弁して下さいということだ……。
  131. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 正しいことを答弁しておる、つまり禁止品目を少しでも少くして、貿易品目というものを増加したいと、そういうことに努めることは当然だと私は思う。全局の政策のもとにおいて、それをやっておるわけです。しかしそれについて私は説明を、どういう経過になっておるかということは、この点については私が答弁したときも、それをよく理解をしてもらって要求をしたのでございます。そのとき以来、アメリカの態度は未だに変っておりません。よくわかっておる。しかしアメリカとしてはこの中共に対する政策の根本を、貿易禁止の根本の方針を変えるわけにいかない、しかしながら品目についていろいろ相談をすることは、相談に応じようということで品目について相談をし、非常に複雑なことになって、品目でございますので専門的知識をもって相談をさせておるわけでございます。  それからまたアメリカとの関係におきましては、イギリスその他の国も日本の態度には同調するような国がございまして、米国側に相談をしているようでございます。それらの国の相談も十分に日本側としては利用もいたしまして、目的を達しようといたしております。しかし品目一々について、どれだけのそれでは成績を得たかということを、今一々申し上げるという域までには達しておりません。(「大よその数だ」と呼ぶ者あり)しかし専門的の言葉で表示したこの項目については、相当の手加減を加えられていることも現実でございます。それらの点について他日詳細の調査をいたしました上で、また御報告申し上げることにいたします。以上の通りであります。
  132. 秋山長造

    秋山長造君 まだ総理大臣の御答弁がないので一つ先ほどの私の質問に対して総理大臣の御答弁を願います。
  133. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 大体重光君から答弁されまして、その通りでありますが、とにかく国民政府は国連が認めておりまして、日本とは友好関係が深いのでございます。それでありますから、そういう関係から中共を直ちに承認するというわけには参りませんけれども、この中共との緊密なる提携は、ますます緊密にすることについては、できるだけの機会をとらえて努力すべきものだと思っております。そのためには幾度も申しました通り、まず貿易からというような工合にして、貿易について日本はできるだけ中共と貿易をするように努力する、いろいろな機会をとらえるというような方法をとっているわけであります。
  134. 秋山長造

    秋山長造君 総理大臣は中共と緊密な提携をしていきたい、そしてそのためにはまず貿易の改善をはかっていきたい、こうおっしゃる。総理大臣と外務大臣と多少このおっしゃるニュアンスが違います。総理大臣は同じことを正月に言われたことも、これは必要とあれば毛沢東にでもあるいは周恩来にでも会いに行く、またこれは思いきった発言なんです。われわれは全面的な拍手かっさいを送るものなんですが、今そこまでの御意思が依然としておありになるかどうか、もう一度ちょっとお尋ねしたい。
  135. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) あの当時において周恩来が会いたいというようなことを、うわさにありましたものですから、私はその発言をいたしました。これは状況によって会うことを辞しません。
  136. 秋山長造

    秋山長造君 総理大臣の御決意を伺ったわけでございますが、では周恩来から鳩山総理に会いたい、できれば飛行機を提供するから北京まで来ていただきたい、こういう申し入れがあったら、喜んでお行きになりますね。
  137. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 四囲の状況によりまして、なるたけ行きたいと思います。
  138. 秋山長造

    秋山長造君 よくわかりました、総理大臣のお気持は。で、外務大臣にお尋ねしますが、この禁止品目の解除は、今具体的に答弁できないという、こういうお話なんですけれども、私は数日前から外務省の係の人に連絡をいたしまして、この問題については、具体的な数字を出してほしいということを言っておいた。ところがけさ廊下で会ったら、禁輸品目については、具体的に数字を準備しておりますから、外務大臣から御答弁になりますという私に耳打ちがあったのですが、それは何かあなたは勘違いしておられるのじゃないのですか。ちょっと調べてみて下さい。
  139. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 実はまだ今言われた連絡が十分に私のところにございませんから……。中共貿易はこういうことになっております。これは少し御質問のポイントとは違うかもしれませんが、昭和二十八年度には七百万ドル、対中共輸出貿易でございますが、七百万ドル。二十九年には千九万に増加している。三十年には二千八百五十万ドルに激増をいたしております。この増加は禁輸品目の緩和について、ある程度手加減が加えられた結果であると、こう想像されているので、この激増の情勢は助長したい、こう考えていると、こういう今連絡でございます。私もそう思いました。そこでこの品目の詳細の点については、さらに調査ができましたらば御報告を申します。
  140. 秋山長造

    秋山長造君 で、この品目は、実は私の承知する限りでは一件もないのです。鳩山内閣になってから今日まで、ココムの禁輸品目ではっきり解除された品目はないのです、一ぺんも。ただ醋酸と重クローム酸とソーダその他六品目だけが、一時的に一回きりの特免になっている。私はそう承知している。私はもう少し、鳩山内閣吉田内閣の外交に対して、自主外交ということを特に強調されてきた、あの秘密独善外交廃止、自主国民外交ということを強調されてきたその裏にわれわれの期待するものは、何もアメリカと仲を悪くしろということを言っているのじゃないのですよ。もっと自主性を持った協調外交をやってもらいたい。井口大使も帰ってきて、もっと日本は遠慮せずに率直にアメリカに発言した方がいいということを言っておられる。現にセイロンやビルマやインドネシア等等の国々は、あの禁輸品目ではっきり禁止されているなまゴムその他について、特別扱いで自由に貿易をやっているのです。そういう事実があるのです。日本だけがいつまでもちぢこまって、言いたいことも言わずにおらなければならぬという理由にはならぬと思う。その点についての外務大臣のもう一つ御決意をお尋ねしたい。  それから第二点は、ついでにもう全部をお聞きします。第二点は、あるいはすぐは国府の条約がある関係で、中共承認あるいは直ちに国交回復ということはできないということはわかります。これはよくわかります。で、しからば現状はそうであるが、しかし少くとも目標は、外務大臣なり総理大臣の目標は、やはり国交のすみやかなる調整という目標が立っているのですから、だから今の情勢では直ちにというわけにはいかないがということの裏には、将来どういう状態になったら、どういう条件が揃ったら、中共との天下晴れての国交回復の交渉に入れるのか、その入れる具体的な条件、どういう情勢になったら、たとえば中共が国連に加盟したらとか、そういう情勢、考えられる限りの情勢、条件というものを一つお教え願いたい。  それから第三点は、原水爆実験の問題について先般来国会で問題になっている。この問題についても、私は時間がありませんから多くは聞きません。ただ一点、昨晩の都内の各新聞を見ますと、ある新聞は、アメリカはあの原水爆実験についての補償をする、申し入れてくれれば補償しよう、こういうことが書いてある。また別な新聞には、補償はしないと書いてある。全く相反することが大きな見出しで各新聞に書いてあるの、ですが、一体この問題について、国務省から外務省に対して、あるいは政府に対して、具体的にどういう連絡があったのか、国会のあの禁止決議のその後の取扱い、また先だって申し入れがきてからのちの政府がとられたいろいろな具体的な方策、こういうものもあわせて一つこの機会にお伺いしたいと思います。
  141. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 今の御質問の第一の点は中共の問題に関係しておりますが、つまりこれは非常な大きな、大局を論じられた御質問だと思います。中共、中国に対する日本の全局の政策をどう運用するか、私は将来東アの形勢がどうなるかということを予言することは、これは困難であります。これはだれにも困難でありますが、私といたしましては、また日本としては、でき得る限り東アの平和安定の方向に導いていかなければならない、これが政策の基本であると考えます。それは、それじゃどうするのか、そうして将来中国、中共をも承認すると、どういう工合になったら承認するか、私は今日承認するとかしないとかいうことを決定するわけにはいかぬと思います。しかし将来国際情勢が変化するということは、これは世界の大勢上どう変化するかということは今断言はできぬでも、変化するということだけは事実であります。これをよく検討して、そしてこれに応ずるために日本の利益を擁護しつつ、これに十分の措置を講じなければならぬと思いますから、これは一つ国際情勢の変化を詳細に検討しつつ、進んでこれに対して手落ちのないように措置をしていく、こういうことは、これはまあ当然のことであるといって、またおしかりをこうむるかもしれませんが、私はそれだと思います。これは容易なことではございませんが、手落ちのないように一つやっていきたいと考えておるわけでございます。  それから原水爆の問題でございます。原水爆の問題につきましては国会の両院の御決議がございました。その前におきましても元来かような原水爆使用はむろんのこと、実験なんぞは特に他国の利害に関係するということは、これはやってもらいたくないんだという方針をもって進めてきておるということは御説明をいたしたと思います。そこで国会の決議がありました、その決議の内容はわれわれの従来の方針を遂行するのに非常な大きな力となったわけでございます。そこでこの国会の決議は遅滞なく関係国すなわちアメリカ、ソ連、イギリスがおもなものでございますが、しかし漏れないためには、また一番有効な手段として国際連合に持ち出したということは、御報告の通りでございます。そして強く日本側の希望を、述べておるのでありますが、これに対する回答が昨今来きつつございます。それを、来ましたときにおいては、これは相手国の承認を得て、つまり相談をして直ちに発表をいたすことにいたします。御報告を申し上げることにいたします。さような状態でございます。しかし私は原水爆の実験の禁止ということを、自分の領域もしくは領域に類する統治権の及ぶ所でこれをやるということを禁止する国際法がまだきまっておらないということもたびたび申し上げております。そこでこの問題が困難である。そういう国際法を樹立すべく立法論として大いに努力をしなければならぬ、こういうので今努力をしつつあるのである、この筋道を申し上げました。それはその通りでございまして、しかしその筋道を追うておる間に実験が行われた場合にどうなるかということは、これは現実の外交として国家国民の利益を擁護するために常に考えなければなりません。そこでその理論を確立する手段を講ずるとともに、実際問題としてこれが行われた場合にはどうするかということを交渉――相手方の意向を十分突きとめなければなりません。そこで損害が他国民日本民族に及ばぬようにしてもらうということが第一の実際的の措置でございます。それからその点についてはいずれも正式のまだなにではないと思いますが、いずれも最大の努力をすると、そして従来間違って――この前にもあったけれども、今度はそういう間違いはないように努力をするということは申しております。しかし万が一間違いがあったときどうするかという補償の問題でございます。これが今御質問の最後の点でございますが、補償の問題は、あくまでも間違いがあったときは補償を一つ考えてもらわなければならぬということを申し入れておるのであります。(秋山長造君「向うかうそういう話が来たのかどうか、きのうの新聞で……」と述ぶ)それは今交渉中でございます。そういう場合にすぐ補償するという結論はまだ得ておりませんけれども、これらについては十分話し合いをする余地があることだけは確かでございます。そしてこれを万が一にも日本人のそういう点について被害がないように、またそれについて補償もでき得るように、最善の努力を費したい、こういうふうに今措置しておるところでございます。以上でございます。
  142. 秋山長造

    秋山長造君 もうこれでやめます。今アメリカの議会で、日本の綿製品の輸入制限法案というものが昨年以来継続審議になっておる、これは日本品の排斥運動と連関して、さらに全面的にアメリカ大陸に広がろうとしておる、カナダにも広がろうとしておる、それからさらにまたこの問題と、マグロのカン詰の輸入制限の問題もあるし、それからこの一昨年問題になった可燃性織物の輸入制限の問題も未解決のままになっている、こういう問題を一体日本政府はほんとうに真剣に取り組んでやっておられるのかどうか、われわれは疑わざるを得ない、企画庁長官のお立てになった経済五カ年計画の中を開いて見ますと、今後五カ年の間に日本の輸出はドル地域に切りかえて行く、輸入は非ドル地域に転換して行く、こういうことがはっきり書いてある、さらにまた海外市場開拓の方針としては、まず第一にアメリカ市場を開拓するということがうたってある、この経済五カ年計画の方針とまっこうから逆な方向に現実の事態は動いていると思うのです。その点について政府はどのようにお考えになって、どのような具体的な努力をやっておられるのかどうか、その点一つ外務大臣と企画庁長官の御両所から御説明を願います。
  143. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それじゃ私から御説明します。今の企画庁長官の五カ年計画というものの大体の趣旨はその通りだろうと思います。そしてそれは、今政府のやっておる措置と少しも矛盾はございません。そういうふうに進んで行きたいと考えております。外交上におきましても。それでまた今お話通りにアメリカにおきましていろいろ綿製品の問題、マグロの問題について年中行事のようにいろいろこれに対する輸入制限というような運動があることも、これも事実でございます。しかしながらそういうことが日本の不利益に実現しないように、これまたあらゆる努力をいたしておるのでございます。今一向努力をしていないようだというお話がございますが、実はそういうことを食いとめるように尽力することが、在外公館、大使館とか領事館等というふうな方面に働いておる人間の主要なる任務でございます。それをずいぶんやっておるようです。公けの手段においてもまたそうでない私の手段においてもいろいろやっておるのであります。それで今日まで幸いにそれが具体化いたしておりません。それのみならず米国政府としてはこれは日本の経済上の立場をよく認めて、そういう国内の選挙にもこれは関連しますので、国内情勢からそういう議論が非常に出てきておるのは事実でございます。それを食いとめるべく国務省――アメリカ政府は、非常に好意をもって尽力してくれておるということも事実でございます。それがために、今日まで日本側の経済計画も少しも矛盾なく行われ得るという見通しをもってやっておるわけでございます。なお一そうそういう方面には力を尽したいと、こう考えておる次第でございます。
  144. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。五カ年計画におきましては、現在におきましてドル地域にはドルの支払い勘定が多くなり、ポンド地域につきましてはポンドの受取勘定が多くなる、そういう意味におきまして今後はできるだけ輸入はポンドの方に切りかえていきたい、輸出の方はどうしてもドルの方に持っていきたい、先ほどマグロなりあるいは綿製品のお話がありましたが、これは外務大臣がお答え申し上げた通りでありますが、大体向うの業者とよく話し合いをつけて、そうして向うのためにじゃまにならぬような方針をとって、今業者なりまた政府なりとせっかく折衝しております。
  145. 秋山長造

    秋山長造君 アメリカ市場の開拓については、具体的にどう考えておりますか。
  146. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) アメリカ市場の開拓といたしましては、アメリカは現在世界全体から申しまして非常に富裕な国でございますから、この方面におきましてはアメリカの方の事業に関係のない、できるだけアメリカの人たちのじゃまにならぬというふうな商品を持っていきまして、それに対して逐次宣伝なり広告なりをいたしまして……。
  147. 秋山長造

    秋山長造君 具体的にはきまっていないのですね、どういう商品ということは。
  148. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 具体的には逐次さような製品等につきまして、その方法を講じておるわけでございます。
  149. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 総理並びに大蔵大臣にお聞きしてみたいと思いますのは、三十一年度の予算編成の根本方針についての問題で一・二お伺いしてみたいと思うのであります。  従来とかくわが国経済の構造の底は浅いとかあるいはいろいろわが国経済への悲観的な見方が多かったのでございます。近時わが国経済の上昇は確かに見るべきものがあると思うのでありまして、これを国際貿易の進展であるとかあるいは工業生産の増加等、諸般の経済事象は、決して他の諸国に比肩いたしまして遜色があるものとは思われないのであります。これは国際経済全体の上昇にも関係するのでございましょう、やはりここ二、三年とり来たったところの政府の施策の成果と国民の努力の結果であると思われるのであります。従ってかかる経済界の上昇並びに国際貿易の現状から見まして、三十一年度の予算編成に当って、政府は次の施策を考えられたかどうか、その点についてお伺いをしてみたいと思うのであります。  まず第一点は、国民は戦時並びに引き続くところの敗戦によりまして、かつまたここ二、三年間とり来たりましたいわゆるデフレ政策の施行に伴って、何となくこの辺で一息つきたいと、こういう気持はいなめないと思うのであります。従ってこの際大蔵大臣の言葉を引用するならば、ミルク一いと、こういうようなところではなく、政府は三十一年度の予算編成に当りましては、十分この辺で相当の公債政策等を取り入れまして、まず相当思い切った減税を断行するという考えはなかったのかどうか、またこの線に沿った一体税制改革等をお考えにならないのかどうか、これらの点につきまして総理並びに大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
  150. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申します。日本の経済が順調な推移をたどりつつありますことはまことに同慶に存ずるのでありますが、しかし今日のこの日本の経済のよさというもののよって来たりまするところをしさいに検討いたしますると、私が財政演説にも詳しく申し上げました通りに、なお決してこの前途について楽観を必ずしも許さない事情が多々あるのでありまして、大体一口に申しますれば、海外の状況が非常に日本の経済に幸いした、それを受け入れる努力を国民がした、こういうところに結局帰するのであります。ところが海外の情勢も必ずしも先行き楽観を許し得ない事情もある、日本の経済の今日のよさを持続するのには、どうしてもやはり従来の政策、言いかえますならば健全なる財政を堅持していくということが基本にならざるを得ないのであります。そういう意味におきまして、今日公債政策をとりますことは、なおその意味ではむずかしい、かように考えております。なお、税制につきましては三十二年度を期しまして基本的な改革も今日研究されておるのであります。がしかし減税のために公債を発行す、公債を発行して減税するという考え方は、私としては今持っておりません。
  151. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 諸般の情勢から今大蔵大臣のお話では減税は困難だと、こういうようなことに承わったのですが、それならばこの際公債政策等を相当取り入れまして、かねて国民が待望しておるところの住宅建設であるとかあるいは新線の建設である等、国民の生産力の向上に資するような事業を、こうした経済の上昇期において思い切ってやるということが必要でないかどうか、特に私がお伺いしたいのは、たとえば問題になっておりまする本州縦貫道路のごとき、中国の万里の長城にも比すべき国民的建設事業を、敗戦後の日本国民の意気消沈しておる中を、祖国再建というようなこの明日への希望をつなぐような国民的な事業を、この際思い切ってやって、そうして今は苦しくとも、われわれの子供なり孫の時代にはというような、こうしたあわせて国民精神をも作興するような事業を、この機会にやるということが必要であろうと思うのでございますが、この点に対する総理並びに大蔵大臣の御所見を承わりたい。
  152. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。このお考え自体を決して私は否定するのではありません。ただこの際この時期にという点において問題があるのでありまして、私はくどくど申し上げるまでもありません。日本の産業というものはどうしても輸出を基調として拡大をはかっていかなければならぬ、それには通貨価値がまず安定をして、言いかえれば物価が国際物価に比べて十分な競争力を持つということが基本になるのであります。従いまして今日の状態において通貨価値の安定を害するというような懸念のあることはしばらく避けることが必要である。かように考えておるわけであります。
  153. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 大蔵大臣の話でございますと、現在の状況から減税もむずかしい、あるいはまたこうした生産的な仕事も急に拡大することは困難だというお話がございますが、それなら第三点に、一体こういうようなこの経済的な上昇期を利用いたしまして、わが国の生産施設の徹底的な整備改善を行う意思がないかどうか。言いかえるならば、わが国の生産機構というものは、まだまだ欧米等に比較いたしましてきわめて劣っておると思わなければなりません。結局わが国の経済力の根幹をなすものは、わが国の生産性というものを向上して、そうしてこれを徹底的に改善整備するということが日本経済の最も根幹をなすものであって、しかもこういうことは、現在のような国際貿易がきわめて順調なときをおいてほかになし得ないと思うのであります。従ってこの点についての大蔵大臣並びに経済審議庁長官の御所見を承わりたいと思います。
  154. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お説ごもっともであるのでありまして、問題はやはり時期の問題でありますが、今日われわれが努めなければならぬことは言うまでもなく生産性の向上ということにあります。これは今日国際的な意味において経済活動の根幹をなすと考えておるのであります。この生産性の向上にはしかし非常にいろいろな問題もありますし、また順序もあります。私どもとしては、たとえばただいまお話しの、日本の産業構造の改善にいたしましても、むろんこれはやらなければならぬ。今日私の考えでは合理化ということが基本になりますが、合理化ということは、単にいい技術を入れ、いい設備をするというだけではないのでありまして、やはり産業自体においてその構造の合理化、全体を通じての合理化ということがどうしても取り上げられなければならない。そうしないと、ここに過剰投資という問題が生じて、通貨価値の安定を害し、貿易を阻害する。言いかえれば物価が上るということになるでありまして、そういう見地で今度進めていきたいと思っております。  また一方、資金面も今日やっと資本蓄積が輸出の増大を通じてできかけつつあると申すのがむろん妥当であります。この状況をぐっくんぐっくん進めまして、資金量もふやし、金利も下げて、ここにやはり資金面からも生産性の向上をはかっていく、かように考えております。
  155. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 輸出を増進するということが根本の現在の方針でございます。それにはどうしてもインフレーションを起さないということが前提である。同時に物価を引き下げるということが大事でありますから、この方針に基きまして、その範囲において生産設備等も拡大していきたいと思っておりますが、えてしてこういう時期には過剰投資、二重投資が行われるものでありますから、そういう点もよく考慮し、そうしてできるだけこの生産を向上しつつ効率的にこの資本を利用していきたい。こういう方針で進みたいと考えております。
  156. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 この問題について最後に大蔵大臣にもう一ぺんお伺いしたいと思うのですが、以上申し上げましたようなことが、諸問題の解決のためには、予算編成上にもいろいろ考えなければならぬと思うのでございますが、同時にやはりこれとマッチする金融政策も並行して考えて、初めて所定の計画が遂行されると存ずるのであります。従って政府は、これらの施策に適応させるために、金融に対しましてどういう手を打たれるのか。何か資金運営委員会等を考えられたがそれにどうも反対があって取りやめになったというようなお話がございますが、やはり金融につきましても国の方針に沿うた一つの施策、計画性のある施策を進めることが必要であって、その点についてやはり相当の計画性ある資金運営の施策を持つこと、あるいは措置を持つということが必要だと思うのですが、この点についての大蔵大臣の御意見を伺いたい。
  157. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今後におきます金融政策といたしましては、申すまでもないのであります、さっきから繰り返して申しますように、通貨価値の安定のもとに資金の蓄積を増大いたしまして、そうして一そう金利の低下をはかり、重要産業の資金を確保していくというところにあるのであります。しからばそういう方針をどういうふうに具体化するかということが次の問題になると思います。これにつきましては、私はやはり金融という本質からいたしまして、むろん金融自体に計画性を持たせるということに異存はございません。さようしなくてはならぬのでありまするが、しかし命令融資的な、たとえば政府が一方的にああしろこうしろというような命令融資的血行き方は、非常に弊害があり、資金の効率を妨げる。こういうまあ金融の本質と私は考えております。従いましてできるだけそういう措置をとらずして、自主的な態勢におきましてこの資金を国家目的に配分が結果としてできていくというように仕組んでいくのが最も適切である、こういうふうに考えておるわけであります。またこのためには今日のこの銀行法、日本銀行法さらにはまた金融制度自体にも改善を加えていかなければならぬ。あるいはまた金融自体の取引といいますか、いわゆる市場、金融市場自体についても改善を加えていく必要がある。これを今後金融制度調査会を作りまして、ここで十分検討を加えつつやっていきたい、かように考えておるのであります。
  158. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 次に問題を変えまして、行政改革の問題について総理並びに河野長官に承わりたいと思うのであります。根幹のことにつきましては、私、総理自身から一つ意見を承わりたいと思うのでございます。  ただいままで申し上げましたように、日本経済も立て直るには一番現在がいい機会であり、またこれがためには相当計画性を持って国民経済の運営をはかるということが、やはり国家百年の計を立つるゆえんであると思うのであります。従来わが国の行政機構を見ますると、いわゆる各省あって国家なしとまでいわれるほどどうも各省の機構がばらばらでありまして、これを総合し、統一し、そうして強力に政府の施策を施行する、ということに、あるいは十分でなかったのじゃないか。もちろん従来のような自由放任の経済時代あるいはそうした時代には、こうしたいわゆる各省行政もある意味においては意味があると思うのでございますが、今日の事態におきましては、どうしてもそうした施策の総合性なり統一性なり、あるいは徹底ということを期するためには、やはりここに相当思い切った行革の問題を考え、行革の問題を取り上げるということは、私はまことにこれは政府としてきわめて時宜を得たものであると思うのであります。しかしながらこの行革の私は構想の最も目玉となり根幹となるというのは、ただいま申し上げました行革のねらいというものをやはり貫く、そこに一点をまず置く、構想の根幹を置くということが私はやはりまずほんとうに行革を行革としての意味あらせるゆえんであって、単に各省を統合したり、あるいは二、三の省をやめたり、あるいは新省を作ったりということのようね従来のやり方では、これはほんとうの行革ではないのじゃないか、いわゆる機構いじりのための機構いじりに過ぎないのじゃないか、そういうような観点からいたしますると、一例でございまするが、現在の私は日本の施策、並びに経済の現況から申しますれば、予算編成というものがどうしても国の施策の根幹をなすものと思うのであります。従ってこの予算編成というものと一方経済企画というものが渾然一体となって、しかも大所、高所に立って、いわゆる政治が事務に優先して初めて国民の要望にこたえ得るような施策なり施行なりができると思うのであります。で、こういうような観点から見ますれば、やはり内閣総理府に予算局をお作りになって、そうして経済調査局と連繋を持たしめ、同時に閣内に関係閣僚会議を持つ等のような、この国の総合的な施策の基本をまず考えられるということが、今回の行革のほんとうに行革をして意味あらせるゆえんであると思うのでございますが、この点に対する総理並びに長官の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  159. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいま御指摘の点につきましては、河野行政管理庁長官からよく聞いておりまするので、御指摘の行政審議会におきましては慎重に検討された問題でございますが、当審議会はこのことに関しまして内閣に予算閣僚委員会を設けまして、予算編成方針の審議及び各省予算概算調整に当らせるべき旨答申がしてありますので、政府は右答申の趣旨にかんがみまして善処をしたいと思っております。詳細のことは河野長官から答弁いたさせます。
  160. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えいたします。御意見はまことにごもっともでございまして、われわれといたしましても、そういう点でいろいろ検討もいたしたのでございますが、ただいま総理からお答えがありました通り、今回の行政改革につきましては、民間の各方面の御意見を十分拝聴した上でやっていきたいという趣旨にのっとりまして、行政審議会を作ったわけでございます。その答申がただいま総理のお答えのような答申を得たのでございまして、実はもう少し深く答申の内容について申し上げますと、歳入の面と歳出の面とをどういうふうに合わしていくかということが非常に大きな問題でございます。そういうふうな点から考えまして、この際は主計局は大蔵省に置きますが、その基本になる編成方針を、閣僚懇談会を法的にいたしまして、そこにしかも従来のような事務局と違った意味の事務局を作りまして、これで党と政府との間の連絡を緊密にいたしまして、党の政策、意見を十分とり入れて、閣僚審議会におきまして内閣の基本的方針を定めまして、その決定に基いて、基本方針にのっとって主計局で予算化するということが一番適当な方法であろうという答申の精神でございます。従いましてこの答申の精神を十分活用いたしまして、今せっかく具体案を検討中でございまして、いずれ案として御審議を願うというつもりであります。
  161. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 さらに行革の一つの構想といたしまして、今各省が非常に行政運営において入りまじっております。しかもその間自分の出先機関と中央との関係、あるいはまた国の行政と自治体との行政というようなものもきわめて複雑多岐でありまして、いたずらに国民をして一つの問題の解決のために右往左往させ、またいたずらに中央でなければきまらぬ、ささいなものまでも中央でなければきまらぬというようなことから、現在の行政運営上相当国民といたしましては煩瑣にたえないであろうと思うのであります。従って今回の行革に当りましては、この各省の事務というものをできるだけ責任制を確立いたしまして、そうして共管を、なるべくこれを廃除し、簡素化するとともに、地方の公共団体にあるいはその出先機関等に任せる事務は思い切って任せると、そうして中央は主として企画的な仕事に当って、日常の生起するところのいろいろな行政事務というものは、あるいは公共団体なり、あるいはまた地方の出先機関において処理し得るような体制ができて初めて行革の目的も達し、また現在のような煩瑣な行政に悩まされる国民の要望にこたえ得るゆえんであると思うのでございますが、この点に対する長官の構想、これに対する御所見を承わりたいと存じます。
  162. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) その点につきましても、実は政府といたしましては御趣旨通りに進んでいきたいという意味で、まず最初に中央におきまする課の規定が非常に多くなっております。これは御承知の通りに職階制で俸給の関係等からなった点もございますし、また進駐以来の煩瑣な点もございますので、この際大幅に課を統合いたしましてこれを少くして、今お話しのように右往左往するということのないようにいたしていきたい。ただし指導責任制を確立する意味におきまして、いわゆるトップ・マネージメントと申しますか、上の方をふやして、上の方で十分責任をとっていけるようにしていきたいと思うというふうに考えております。なお今回は第一次の答申でございまして、引き続き地方の組織についても答申があるということに考えておりますが、ただ御注意いただきたいと思いますことは、現在の税制のもとにおきましては、地方と中央の税の分配が必ずしも今お話のように進みかねる点もあるわけでございます。従いまして、明年度税制の根本的改正がありましたのと並行してそれらの点については考えることが適当であろうというような意味合いから、今回は第一次として中央のおもな基本にふれる問題についてのみやりたい、こういうふうにしておるわけでございます。
  163. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 なお簡単に河野大臣からお聞きしたいのですが、何か世上伝えられるところによりますれば、内政省等を設置いたしまして、現在の自治庁と建設省が一緒になると、こういうような話がございますが、ところが一方は事業官庁であり、一方はまあ指導官庁であって、必ずしもこの仕事の面が一致しない。ただ仕事の事務と分量と、そういうものを機械的にくっつけると、こういうことではなかなか行革のほんとうの意味がないのじゃないか。これは単に内政省だけの問題じゃない、そういうふうに単にその仕事の実質から離れて、分量その他から、省を作らんがために一緒にするというような考え方では、行革のほんとうの趣旨が徹底しないと思うのですが、これらについての大臣のお考えを伺いたい。
  164. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お話通りに、考え方としては二つあるわけでございまして、一方は社会党の人の申しておられますように国土省的な考え方でございます。しかしわれわれといたしましては答申にもありました通りに、現在の地方財政の立て直しをいたしまして、地方をますます健全に発展させていきたいという点から考えますと、中央において建設省で計画いたしますのは、地方財政に及ぼす影響が非常に多いわけでございます。そこで中央地方を一本ににらんだ上でこれらの計画を立て、施行していくことの方が非常により有効であるというような意味合いから、建設省と自治庁と合せて地方自治の円満な発展に協力しつつ、かつまた国土の開発に寄与していきたいというところに狙いを持っているわけでございまして、ただそこで問題になりますのは、建設省は従来技術者の有力な人が非常におられる、そこに優秀な技術者陣を擁しておるのでございますが、とにかくその上に、事務官僚が上位にあります際に、事務的な人を上位にして技術者は下積みになるという点に、多少留意しなければならぬ点がございますので、これらにつきましても十分機構を整備いたします際に留意しつつ目的を達していきたい、こう考えておる次第でございます。
  165. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 最後に総理大臣にお伺いいたしたいと思いますのは、外交上の問題でございます。その一つは、日比賠償交渉の問題でございますが、私自身も十数年、特に南洋各地をむしろ足で歩いて参ったものであります。南はニューギニアからあるいはタイ、ビルマあるいは仏領インドあるいはボルネオの奥というような工合に、ほとんど東南アジアの各地を歩いて参ったのでございますが、なかなか一口に東南アジアというものの開発あるいは日本との経済提携といっても簡単にはいかないのであります。たとえば私はタイの奥にも入ってみましたけれども、それならそこで経済提携をどうしてやるかということになると、まずもってそれじゃ鉄道を敷かなくちゃいけないとか、あるいはいろいろの問題があるのであります。そういう点から見ますと、私も約一年以上フィリピンにも行ったのでございますが、その経済構造が同じように自由主義経済体制であるというような点、あるいはまた日本から最も近い島々であるというような点、あるいはその資源関係が日本との経済提携において初めてそれらの資源が生きていく。たとえば鉄鉱にいたしましても、アメリカに持っていったのではほとんどこれが割り高になって意味がないけれども、日本の経済と結び付くことによって初めてその資源が生きてくるとか、あるいはまたこちらから申しますれば、砂糖あるいはマニラ麻、一々資源をあげましてもきわめて日本経済と直接の結び付置があり、また日本経済とほんとうにお互いに隔意なく開発して両国の幸福あるいは経済発展になり得ると考えられるのであります。従って一口に東南アジアの開発ということを申しましても、私は最も近道は、この日比の経済提携にあって、これが大きなくさびとなり、一つ日本のそうした経済あるいは両国の経済発展の礎石となると思うのであります。従ってそういう大所、高所から考えて、その障害になっている日比賠償の問題を一日も早くこれは解決することが、私はそういう観点からも必要だと思うのでございますが、これに対する総理のお考えを承わりたいと思います。
  166. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 高橋君の東南アジアに対する観察と日比賠償をすみやかにせよという御意見には全幅的に賛成であります。政府におきましても日比の賠償問題をできるだけすみやかに解決したいと思って努力をしております。
  167. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 最後に総理にお伺いいたしたいのは、この前の委員会でも東北開発の問題を私は総理にお伺いいたしたのであります。党も東北開発のために特別委員会を設け、また北海道につきましても今回の予算におきましてようやく具体化して着々その成果を急いでおられると思うのでございますが、これは私から申し上げますれば、私自身が東北出身だからではございませんが、日本の従来のいろいろな施策は、むしろ満洲であるとか朝鮮、台湾とかいうものに飛び、あるいは東北を越して北海道の開発ということがせられたので、その間たまたま本州であるというので東北の後進性、経済的な後進性といろものがきわめて閑却され、これが開発がおくれておるのであります。たとえば税金その他の関係から見ましても、むしろ中央に還元する方が多いのであり、金融的に見ましてもむしろ東北で投資されるよりは中央に吸い上げられるという方が多い。こういうような現状では、ますます東北の後進性が改められることが困難と思うのでございますが、この東北の開発については、総理は思い切ってこの点を十分お取り上げになっておやりになられるか、その熱意のほどを一つこの機会に承わりたいと存じます。
  168. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 政府におきましても東北に対して特段の措置をとる必要があると考えまして、本年度はその調査費を予算からもらいまして、調査して特段の措置をとりたいと考えております。
  169. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 最後に大蔵大臣に一言だけお伺いいたしたいと存じます。朝鮮、台湾等、いわゆる外地その他中国等から引き揚げられた方の在外資産の問題、これについては本年度予算等についても調査費を計上せられておるようでございますが、これに対して主管大臣といたしましてどういうふうな進め方をせられるか。一日も早く、これら外地から引き揚げられてその生活の根拠を失われたこれらの人々に対して、あたたかい方策を与えられることが必要だと思いますが、大蔵大臣のお考えをお伺いしておきたいと思います。
  170. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) まことに御同情すべきことであるのでありますが、これは問題が非常に複雑多岐と申しますか、内外の関係があるのであります。今回調査会を設けまして十分調査をいたしたい、かように考えております。
  171. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは二時まで休憩いたします。    午後零時五十九分休憩      ―――――・―――――    午後二時二十四分開会
  172. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を再開いたします。  午前に引き続いて、総括質疑を続行いたします。相馬助治君。
  173. 相馬助治

    ○相馬助治君 鳩山内閣総理大臣に対して質疑をしたいと存じます。  鳩山総理はこの予算委員会に対しても毎日恪勤精励されて、われわれの質問に対して答弁をされている。そのことに対しては、私は率直に敬意を表しております。総理が最近国会において、いわゆる正規な機関において、三たび重大な失言をされたということになっておりますが、私は静かに考えてみて、一体その失言というものが、鳩山総理自身のほんとうのお気持を申したのが、国会においていろいろ議会対策上その他の必要から、やむを得ず失言として取り消しになったのではないか、こういうふうなことも実は率直に考えておるものでございます。この失言の問題に端を発して、総理の健康に対する懸念というものが、今日率直に申しまして国会国民の間に大きな関心事となっております。このことは、総理自身にとってもきわめて不幸なことでありますとともに、われわれ国会に席を置く者といたしましても、きわめて不幸なことであると私は衷心考えております。チャーチルが先般、老齢健康上の理由をもって、国民の喝采のうちに退任をいたしましたし、アメリカのアイゼンハワー大統領が再出馬を決意するに至るまでの慎重な態度などを思い合せてみまするときに、外国では責任の重い公務につく人の健康がどんなに重視されているかということがわかります。日本人は、ややもすると、国家のためには倒れてもよいという悲壮な決意をし、大衆がまたこれに対して安価な同情を集めたりする傾向がございまするが、医学的な判断を離れた犠牲的な精神というものが、長い目で見て国家のためでないことは、もう明瞭であろうと存ずるのでございます。従いまして、党内事情その他いろいろおありであると存じまするが、私はこの際、総理自身の口を通じて、今一度明瞭に健康上の自信を国民に宣言する必要があろうと存じまするし、そのことは次の具体的なことをお答えいただくことによって明瞭になるのではないかと存じまして、質問をいたします。  四月の総裁公選には当然立候補されると世間は見ておりまするが、その通りでございますか。この総裁公選に立候補するに当っては、あなた自身の構想として、次期総裁を考えられ、あるいは一歩進んで引退の時期等を明瞭にされて、この間の事情を国民に明らかにしようとする積極的な意図があるかどうか、この点についてまずお尋ねをいたします。
  174. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は自分の健康が国務執行に障害があるとは思っておりません。四月にわが党において総裁を決定することになっておりますが、これは立候補制度をとっておるわけではありませんから、候補に立つということはございませんが、党においてさように決定したときには、これを受諾するつもりでおります。
  175. 相馬助治

    ○相馬助治君 そのことについてはわかりましたが、党内事情をお尋ねしてまことに恐縮ですが、次期の総裁についてとやかくうわさされておりまするが、総理自身、次期総裁と申しましょうか、今度の総裁もまだきまらないのに、その次の総裁の話は妙ですけれども、そういうことに対して今積極的に何かお考えがございますでしょうか。
  176. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は何も考えておりません。
  177. 相馬助治

    ○相馬助治君 次に、憲法上の解釈の点について、一点だけ私はただしたいと思います。  政府自衛権についての解釈が次第に拡張されていくようでございまして、国民が一種の不安を持っておることは、いなめない事実でございます。国の大本を決定しておりますところの憲法解釈が与野党によって非常に差異を持っているということは、国家のために不幸でございます。社会党もまた当然、できるだけ謙虚な立場に立って、この解釈の一致のために共通の広場を設ける気持がなければならないと私どもも考えておるものでございす。総理の先般国会において行われた基地爆撃論というものは、お取り消しにはなりましたけれども、あのこと自体は憲法違反の行為でありまするし、海外派兵に連なるところの自衛権をこえた交戦権肯定の態度であるとして、きわめて大きな問題を引き起したことは御承知の通りでございます。お取り消しにはなりましたけれども、かかることは賢明なる総理におかれては思い違いをもってかような見解を述べられたのでは私はないと考えるのでございます。従いまして、政府与党の憲法改正への中心課題というものが大体この辺にあるとわれわれは了解をするのですが、この際、かつて衆議院等においても問題になったことでございまするが、重ねて念のために伺っておきたいのは、鳩山総理憲法を改正されようとされておる、その理由が、憲法制定の経過から見て、国民の自由意思によらなかったいわゆるおしきせ憲法であるから直さなければならないという点に重点を置くのか、それともまた、現行憲法は実施後国情に合わない点が出て参ったからこの際改正しなければならないとするのか、いずれの理由を重しとされるのか、御明示賜わりたいと存じます。
  178. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいま述べられた二つの理由、ともに憲法改正の理由になると思います。つまり言いかえてみれば、第一は、占領時代に短かい時間でできた憲法だから、日本独立した今日、それにふさわしい憲法にした方がいいと思います。そういう時代にできた憲法の中には日本の実情に沿わない点もあるから、すべてにわたって検討をした方がいいと思う、こういう点から憲法改正をした方がいいと思うわけであります。
  179. 相馬助治

    ○相馬助治君 その辺の御見解はよくわかましたが、そのことは当然、憲法第九条をも改めなければならないという内容を含んでいると了解をしておりますが、さようでございますか。
  180. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その通りです。
  181. 相馬助治

    ○相馬助治君 憲法第九条の条項をお改めになるという決意が明瞭でございまするが、先般、すなわち二月二十七日、衆議院予算委員会におきまして、淺沼氏の質問に答えて、総理は現行憲法の三大原則はあくまで尊重すべきものであると答えておりまするが、この三大原則はこの場合明示しておりませんが、それは何をさされておるのですか。
  182. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) たびたび申しました通りに、主権の在民、それからあるいは平和主義であるとか、基本的人権をきめたこと等につきましては、これを変更する意思はございません。
  183. 相馬助治

    ○相馬助治君 基本的人権の尊重、戦争放棄、すなわち平和主義の確保、主権在民、この三大原則をあくまで守るという総理の御見解に対しましては、私は当然のことでございまするが、敬意を表します。そうしてまた同感です。ところが、ここで問題になって参りますのは、しからば第九条の平和主義の立場をとり、戦争放棄の原則の上に立って、どのように一体改めるのかという問題が必然的に起きて参るわけでございます。そこで首相は在野時代に、憲法を改正せずして自衛隊を保有することは違憲であるとおっしゃったのでございます。当時前の吉田総理は、自衛力の漸増あるいは戦力なき軍隊などというような言葉のあやのうちに、憲法上の疑義にほおかぶりをいたしまして、なしくずしに再軍備を進めて参りました。少くともあの段階において、再軍備論を別といたしまして、憲法に対する解釈論、憲法に対する国民としての義務感という立場からいたしますれば、私どもは鳩山総理の当時の御見解に全く賛成でございます。ところが、今日、先般秋山君の質問にも答えて、自衛隊ができた瞬間に考えを改めたとおっしゃっておりまするが、ここで私はお尋ねしたいと思いますことは、第九条の解釈からすれば、自衛隊を保有することは違憲であるという考えはあくまでそうなのだ、現在もそう思っているのだ、しかし自衛隊法ができたからして、自衛隊を置くこともあながち違憲ではない、かようになったのだ、こういう御立場でございますか。それともまた、自衛隊ができたこの機会に、かつての第九条の解釈、すなわち自衛隊を保有することは憲法第九条の条項に違反しているという考え方は間違っていたので、それで自分はこの際訂正をする、こういうことでございますか。そのいずれであるかを一つお答え願いたいと存じます。
  184. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいまあなたがおっしやいましたあとの方の通りであります。
  185. 相馬助治

    ○相馬助治君 そうすると、在野当時に申した憲法を改正せずして自衛隊を保有することは違憲であるとおっしゃったこと、それ自体が誤まりであるがゆえに、その誤謬を現在正したのだ、かようなことでございますか。
  186. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その通りであります。
  187. 相馬助治

    ○相馬助治君 これはもうまことに明瞭で、かようにあっさりと鳩山総理がかぶとをぬぐということは、私どもとしてはきわめて意外な感じすら持つのでございまするが、その批判的な意味のようなことはこの際、私は申しません。鳩山総理見解は一応明瞭になりました。  そこで私は突っ込んでお尋ねしたいのですが、大東亜戦争は侵略戦争であるかどうかというような同僚委員質問に対しまして、船田防衛庁長官あるいは重光外相、そうして鳩山総理、これは後世の歴史家がこれを判断するであろうというような言葉をもって逃げておいでになりまするが、鳩山総理個人の見解としましては、大東亜戦争は侵略戦争であったと認定されますか、しからずと認定されますか、いかがでございますか。
  188. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私も、歴史家がそれを判断するという重光君の答えを採用します。
  189. 相馬助治

    ○相馬助治君 このことは価値判断ではなくて、私がお尋ねしたいと思いますことは、大東亜戦争は侵略戦争であったという反省的な立場をとるか、あるいはしからずかということが、今後の自衛隊法解釈の問題、すなわち先ほど秋山君が質疑を行いました点に重要なる連関があるのでございまして、後世の歴史家がこれを批判するであろうというようなことでなくて、鳩山総理自身としては、大東亜戦争を、どのような立場に立って、どのような見解をお持ちであるかということは、当然この際国民の前に明示されてしかるべき問題だと思いまするが、重ねて私は答弁をお願いします。
  190. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は大東亜戦争には反対でありました。反対の行動をとりました。しかし、それがどういう理由だというようなことは言いたくないという考えの返事をしました。それはこのためにたくさんの人が死んでもおりますし、おのおのその主張によって、自分の主張によって戦ったものと思いまするが、そういう人の批判になって、今批判をすることはむだだと思いまするから、私はそれに対しての返事をしないのであります。
  191. 相馬助治

    ○相馬助治君 私はお気持はよくわかります。私自身も、三十四歳をもって陸軍歩兵二等兵として召集を受けた経験を持つものでございます。従いまして、そのなくなられた方に対する思いやり、またこの際大東亜戦争の性格を軽々しく批判し、軽々しく価値判断すべきでないという見解そのものに対しては、私はその気分はよく了承いたします。ただ、ここで、憲法解釈から端を発して、自衛隊の性格というようなことをわれわれが論じまする場合に、一体大東亜戦争というものを、反省的な教訓的な立場をもってこれを見るか、あるいはしからずかということにつきましては、きわめて重大な私は意味を持っていると思うのでございます。私は、従って、私自身の気持を申し上げて、重ねて御返事をお願いしたいと思うのでありまするが、大東亜戦争に対して払われた国民の犠牲、あるいは遠く異境において沒せられた英霊各位に対するわれわれの感謝、それはもう十分持っておるつもりでございます。そしてこのことについては、将来国の力をもってしても、遺児の問題であるとか、遺族の問題であるとか、そうした人々に対してはわれわれはできるだけのことをしなければならないと思います。なくなった人に対して大東亜戦争は侵略戦争だなどというようなことを言うことは、むしろこの際失礼ではないかというような個人的な主観的な考え方も当然あると思います。人情として私はよくわかります。しかし私どもが政治上の大きな問題として、ここで二大政党のこの立場に立って、私ども社会党の立場からいたしまするならば、遺憾ながら大東亜戦争というものは侵略戦争としての性格を非常に多く持っていたということをい止めないのでありまするし、そういう立場に立っておるのでありまするし、その教訓をわれわれは学びとることによって今後の憲法解釈しなければならない、日本民族の行く手も定めなければならないという建前を私どもの立場からとっておるのでございます。従いまして、この際、総理に重ねて、大東亜戦争は侵略戦争であったかどうかという私は言葉ではなくて、言葉を変えてお尋ねします。大東亜戦争を教訓的に学びとろうとする態度を政府は持っておるのでございますか。それとも、あの戦争は至当である、やり口がまずかったからただ負けただけなのだ、こういう立場をとるのでございますか。いずれでございますか。
  192. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、大東亜戦争に対して、反省をすべき点があると思います。
  193. 相馬助治

    ○相馬助治君 その一点は明瞭になりました。そうでなければ自衛隊というようなものに対する基本的な国の考え方というものも決定しないのでありまするし、またそういう反省の上にのみ民族の将来のよき運命が開拓されると思いまするので、私は今の総理のお答えを銘記し、同時に、大東亜戦争はあくまで教訓的な立場においてわれわれはこれを学びとるのであるということを確認しておきたいと思うのでございます。  この際、次に移りまして、憲法改正を機会といたしまして、総理日本の現在の二院制度に関しましてどのようにお考えでございますか。もうちょっと具体的にお尋ねいたしますると、参議院というものを抜本的にこの際、非政党化するとか、あるいは推薦制を採用するとか、あるいはまた論者の一部が申しておりまするように、参議院などというものは要らないというふうにお考えになるか。ともかく憲法改正を機会として、日本の二院制度についてどのようにお考えであるか、この際、承わりたいと存じます。
  194. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、二院制度について改正をする考え方を、ただいま持っておりません。
  195. 相馬助治

    ○相馬助治君 参議院について何か具体的にお考えになっておりませんか。現行法でよろしいと思いますか。同じ選挙のやり方で出てきたものが、両院を織組しているという現行法に満足されますか。
  196. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法調査会において十分に審議をしてくれるものと思います。
  197. 相馬助治

    ○相馬助治君 次に私は承わりたいのは、教育の問題でございます。ここに文部大臣もお見えでございまするが、基本的な問題についてまず首相にお尋ねして、それから文相にお尋ねしたいと思うのでございまするが、鳩山総理は、現在の教育委員会の制度を、広い意味で、現在まで政治的効果があったとお考えでございますか。それとも、あの制度は大した効果をおさめ得なかったとお考えでございますか。いずれでしょうか。
  198. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 地方教育委員会は必要な制度であると思っております。――今のですか。
  199. 相馬助治

    ○相馬助治君 現在の……。御承知のように、府県と市町村に教育委員会制度という制度がございます。この教育委員会制度の現行法が、今日まで教育の民主化に貢献があったと思いますか。
  200. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 改正すべき点はあると思います。
  201. 相馬助治

    ○相馬助治君 改正すべき点そのものが問題だと思うのであります。実は鳩山内閣の中において最も弱い面が、文教政策上の無方針という形で現われているのではないかと思うのでございます。清瀬文相が文相の位置につかれたときに、私たちは非常に多くのものを期待いたしました。ところが、清瀬文相は、はっきりと、教育を、自分は自民党の党員であるから、その政策の決定に従ってこれを実施に移したいということをおっしゃったわけです。これは教育基本法にいうところの、教育を不当な支配から守って国民全体に責任を負うという意味とは、非常に離れておると思うのでございます。質問の内容は簡単ですから、よく聞いて一つお答え願いたいと思うのです。文相でなければならないことは文相を立てて下さっても、それでいけないなどということは私は申しません。鳩山内閣総理大臣がこまかなことまで何でも知っているなどとは私は考えておりませんから、どうか私の質問だけは聞いて、それからゆっくり時間をとって相談をして答えてほしいと思うのです。(笑声)  この義務教育をうまくやるということは、将来の民族の発展に非常に大きな意味合いを持つと思うのです。それでこの教育の正しいあり方を決定し、正しい教育を推進するためには、教育の基本をどこにおくか、これをきめることが第一点だと思うのです。よい悪いは別として、戦争前は教育勅語というものによって教育、がやられました。従って、教員も児童も、内容が今日いろいろ批判されておりまするが、よかれあしかれ、自信を持っていたと思います。自信のない教育というものは、これはひどいものであることは、総理おわかりの通りです。従って、教育の基本をどこにおくか、目標をどこにおくか、これをきめることが一点ですし、そのよき教育を進めるために民主的な制度を確保しなければならないというのが第二でございます。従って、私どもは民主的な制度を確保するためには現在の教育委員会制度というものはよきものだと、こう考えておるのですが、これは直さなければならないと、こういうことでございまするが、その直さなければならない具体的なことは文相にあとで聞きます、これはこまかいことですから。私は総理お尋ねしたいことは、教育のこの基本をどこにおくかという問題は、現行法によりますれば、憲法と教育基本法によるほかないのですが、教育と民族の運命ということをからみ合せて見て、総理憲法以上ないしは憲法以前の教育の基礎というようなものがあるというふうにお考えでございますか。私の申していることが明瞭でないでしょうか。憲法だとか教育基本法なんかではきめられねい、たとえば愛国心だとかあるいはこういうふうな問題だとか、そういうふうなものが教育の基本にはあるとお考えでございますか。
  202. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、民主政治の基本は自由主義に出発しております。自由主義というのは、自分自身の人格の尊厳というものを土台としておるのです。自分自身の尊厳を尊重するということが自由主義の基本の考え方であるのですから、つまり言いかえてみれば、人格主義といってもいいんじゃないでしょうかしら。つまり自分自身の人格を信ずる、その尊厳を尊重するというような気持が、子供の時分から頭に入るということが非常に必要だと思う。自分自身の人格の尊厳を尊重すると同時に、他人の人格の尊厳も尊重しなければ、この自由というものは成り立たないのです。それですから、私はそういうような気持が国民に浸透してくるということを、こいねがっておるのであります。私自身が文部大臣をしておりました時分に、そういうような教え方をしてもらいたいと思いまして、そのために師範教育の改善ということを考えました。その当時高橋大蔵大臣にその費用を下さいと言ったら、そういう気分なら出そうといって、出してくれたことがあります。そういう気分で教育をやっていきたいと思っております。
  203. 相馬助治

    ○相馬助治君 そのことは、おっしゃる意味はよくわかります。で、そのことが現在の教育の面に現われているとお考えでございますか、きわめて不十分であると御認定でございますか。
  204. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) いまだ十分なりとは思いませんけれども、そういう方針に教育行政が向っておるものと考えております。
  205. 相馬助治

    ○相馬助治君 個人の自由、そうして人格の尊重、こういうことが教育の基本であるということになりますれば、教育自体は中央集権ではだめだし、一部の役人だけの考え方、あるいは時の政党の力によって支配されてならないということに相なって参るということについては、総理は同感いただけると思うのですが、そうなりますと、非常にここに問題でありまするのは、教育委員会法を改めるというのは大体財政的な理由が多いようなのでございます。あとに文相にお尋ねいたしますが、教育委員会というものはその運営上非常にいろいろな面で支障がありました。直さなければならない点もあることを私は率直に認めますが、しかし教育委員会制度というものが日本の民主教育を育てるために果した功績というものは、沒すべからざるものがあります。鳩山総理は御存じであろうと存じまするが、教育委員会制度というものは、イギリスにその誕生を見、それがアメリカに移し植えられ、そこで育って参ったものであると私どもは承知いたしております。それに比べて、フランスであるとか、あるいはドイツの教育というものは、御承知のように、国家権力をもって文部省が視学官制度というものを完備して、上からの国家権力と役人の意思と、あるいはドイツにおいてはそこで国王の意思も加わりまするが、そういうものをもって教育というものを律して参ったわけでございます。そうしてドイツ民族がああいう不幸な目にあいましたし、またフランスも、御承知のように、農村の教育などというものはめっちゃくちゃになって、フランスの文化的なものはパリにだけ集まったというような悲劇的な姿に、なったのでございます。このドイツの教育制度を移し植えたところの日本の教育というものが、現在の戦争に敗れた、今日までのこの反省的な立場に立ってみまするというと、非常に罪悪的な役割を教育自身が果して来たわけです。それをとにかく直したのが教育委員会のやはり制度だと思います。先ほども申す通り、教育委員会制度そのものにもいろいろな矛盾がありますけれども、これは民主的な役割を果して来たと思うのです。それを今日自民党は、ただ形だけ残して、公選制度をやめ、任命制度をやろうなどというふうに考えておることは、総理の気持に少くとも違反するものだと、かように考えるのでございまするが、総理はこの点をどのようにお考えでございますか。
  206. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私からでなく、文部大臣から答えてもらいます。ただ私としては、内容を改善したいというような気分は持っております。それ以上に考えていることはございません。文部大臣からお答えいたします。
  207. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 終戦後のわが国の教育制度を育てるためには、府県の教育委員会並びに町村に置かれた地方教育委員会の功績は大きなものがあると思います。しかしながら、いかなることでも、やはりやってみまするというと、利のあるところにはおのずから弊害も伴いまするので、われわれは広く研究いたしまして、教育委員会そのものは置きまして、悪いところを今回改めようといたしました。一案を得て、昨日衆議院には提案いたしたのでございます。
  208. 相馬助治

    ○相馬助治君 教育委員会制度というものを今日のような運命に追い込んだこのやり口を見ると、常に保守党の、与党である政府のやり口というものは軌を一つにしていると思うのです。たとえば国警と自治警がありましたが、自治警の場合には、地方自治庁におきましても一警官当りに二十万程度の補助金しか予定していない。それだけの財政需要しか見ていない、国警は三十万というものを見ていた。こういうようにして自治警察というものは経済上とってもやり切れないのだということを府県、市町村にそういう認識を与えて、そうしてこれを踏みつぶしてしまった。今度の地方教育委員会を骨抜きにするのも、全くこれと同じ意図に出ておることはもう明瞭でございます。で、財政上の都合からだけこれを廃止するというならば、むしろ私は前のように府県の教育委員会を残して、これを公選とし、地方教育委員会を全廃すべきだったと思うのです。ところが、あっちからの陳情に首を曲げ、こっちからの陳情に首を曲げ、市町村長にも顔を立てなければならない。教育委員会の人たちの陳情にもこれをむげに断っては参議院選挙に都合が悪い。いやはやその忙しい首の振り方をして、とどのつまりにおいては今日文部省が提案いたしましたように、形だけ教育委員会を残して、実体は民主教育を進める何ものでもないものを押しつけようとしておりますが、これで文部大臣はいいと思うのですか。それともあれは妥協した結果あそこにいったので、やむを得ないとお考えでございますか。
  209. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) ただいまの民主政治の世の中でありまするから、わが党内において研究する場合には、各方面の意見を広く深く研究いたしたことは事実でございます。研究に研究を重ねて、最善と思った案が今提案した案でございます。
  210. 相馬助治

    ○相馬助治君 あの程度のものを出して、これを最善であるとおっしやるに至りましては、何とも議論をする勇気を持ちませんから、これはいずれあの法律案を中心として御見解を承わりたいと、かように存じております。  次に、文部大臣に立ったついでにお尋ねしたいと思うのですが、南極探険のことをちょっと聞きたいのです。三十一年度文部省の予算の中で、南極探険の予算というものはかなり大きなものでございますが、この実施に当って、研究者の生命の保障だとか、その他万般のその実施について文部大臣は自信をお持ちでございますか。というのはですね、文部大臣は推進本部長であるようでありますが、この南極探険の事業の主体はどこにあるのですか。最高責任者はだれなんですか。現地に行く隊長なども新聞辞令だけで、まだ何ら発令されないと聞いておりますが、だれが任命し、だれが責任を負うのでございますか。この辺の関係を明瞭にされたいと思います。
  211. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 責任者は私でございます。これが一つの仕事ではなく、今の日本の行政では、あるいは学術、あるいは地質、天文、交通、各方面の影響がございまするから、文部省に推進本部を置きまして、私が推進本部長となり、各省より適切な職員を集めまして方針を練っておるところでございます。本年の秋には予備調査をいたしまして、来年が本調査でございます。刻々各方面の情報、資料を得て最善の方針を立てようと、かようにいたしております。
  212. 相馬助治

    ○相馬助治君 隊長の任命ですが、それはだれがやりますか。それから船長の任命はだれがやりますか。
  213. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) この任命は所属の省でいたしております。あるいは運輸省とか、ということになると思います。
  214. 相馬助治

    ○相馬助治君 きわめてつまらぬことのようですが、いざとなると大切じゃないかと思って聞くのですが、隊長と船長は、命令権者としてはどっちが上なんですか。
  215. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 階級の上下はございません。
  216. 相馬助治

    ○相馬助治君 隊長はどうしてもこうしてもあそこへ行って調査をしたい、船長はこの船ではとても人命の保障ができかねるから行くことはできない、こういう見解の相違があったときには、だれがこれを最終的にこちらの命令に従えと・こういうふうに言う資格になっておるのですか。
  217. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 航行のことについては船長にまかすつもりでございます。研究のことについては隊長にまかすことになっております。
  218. 相馬助治

    ○相馬助治君 両方の意見が一致しない現実ができたときは……。
  219. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) そういうことはないと思います。航行のことについては船長がきめる。研究のことについては隊長がきめる。しかしながら航行の理由で現地に行けないとか、引き返すということになりますれば、研究はすでにできぬことであります。事柄によって結論はつくと思うのです。
  220. 相馬助治

    ○相馬助治君 この点について次の一点。これは国の重要な事業であると思います。この予算から見てもそう思いますが、一部の新聞との関係について世間に一種の取りざたが行われておりますが、このことについて私はお尋ねしたいのです。ある新聞が独占的にこれを後援をしているように私も承知しております。このことは学術研究のために、この新聞に対しては私は心から敬意を表しますが、隊員の北海道での訓練なども、一新聞社の主催した仕事としてこれがなされたというふうに聞いておりまして、他の新聞社が取材の自由を必ずしも確保できなかったとも、こういうふうに聞いておるのでございまするが、文部省はこの辺をどのように御理解でございますか。
  221. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 政府の仕事として企画しておるものについて、一新聞に独占的の権利を与えるということはございません。ただ、あなたの仰せになるのは、今の耐寒訓練ですね、あのことだと思います。昭和三十一年の予算にはあの通り皆様の御賛成を求めるために計上しておりまするが、三十年度、ただいまの年度にはその予算もございませんことでありまするし、某新聞がやっておる訓練に便宜参加して、隊員の人々があるいは登山し、あるいは雪中の建築等をやってからだを練っておることは事実でございます。ほかの新聞が計画する場合に、これに参加するなと言ったことはないのでございます。
  222. 相馬助治

    ○相馬助治君 そうすると特殊な新聞にスポンサーを求めたのではない、各新聞社がこれに対して経済的その他後援の態度を示すならば広く門戸を開放すると、まあこういうことだと思いまするが、この種のことは、もう少しやはり国自身責任を持って、この予備訓練なんかも政府自身がやるだけの心がまえが必要なのではないかと存じて私はお尋ねをしたのですが、私が質問したことについては大体わかりましたので……、その内容については了解できないのですが、御返事そのものはわかりました。  次に総理お尋ねしたいんですが、私は停年制のことについてお尋ねしたい。最近地方自治法の改正に伴って地方公務員に停年制をしこうとしているということが報ぜられて、非常な恐怖を与えているわけでございます。私はちょっとおかしいと思うんです。国が施策として地方公務員に停年制をしくようにするというこの考え方をするならば、当然国家公務員をどうするかというようなこと、それからまた停年制をしくについてのどれだけの実効が上るかということ、こういうことを十分考えてやるべきだと思いまするが、国家公務員についてはこの際言及せずに、地方自治法の改正に伴って地方公務員にのみ停年制をしこうとしておりますが、鳩山総理は弱い者に味方をするのが政治だとこうおっしゃった、言葉はまことによろしい。ところがこういうことで世間をおどかしているということは、いささかふに落ちないのでございまするが、この問題についてはどういうふうに総理はお考えですか。  今度具体的なことになりますから自治庁長官お尋ねしたいことは、停年制の基本的なことは総理からお聞きしたいと思うんですが、具体的には地方公務員に停年制をしくというのは、積極的な期待をしているんですか、消極的な期待をしているんですか。具体的に申しますならば、停年制をしくならばしいたらいいだろう、そのためには法律でやれるようにしておいてやるぞ、こういうのか、それともまた積極的に人員整理その他をするために停年制をしけ、こういうのか、これが第一点。それから第二点は、国家公務員を将来どうするつもりかということであり、それから条例を作る場合に、基準の年令を示すような用意が太田さん自身はあるかどうかということ、それから具体的にどれほどのことを期待しているか、こういう四つをお尋ねします。
  223. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自治庁長官より答弁をしてもらった方がいいと思いますが、簡単に私からも申し上げます。地方公共団体がそれぞれの実情に応じまして停年制を設けることができる道を開くことは、地方公共団体のかねてからの要望でもあり、必要でもあると政府考えたのであります。
  224. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) 相馬委員にお答え申し上げます。今回地方公務員につきまして停年制をしくことにしようという法律を出しました理由は、御案内の通り新陳代謝ということは国と地方とを問わず最も大切なることであると私は思います。しかして国家公務員の方におきましては戦後において相当多数の人の入れかわりがございまして、たしか人事院のお話しであったと思いますが、八割見当になっておる。その点におきまして地方の方はどうかというと、そこまでいっておりません。長年の間、停年制をしくべしという声があり、また実際におきまして地方制度調査会及び公務員制度調査会の二つの答申においても、このことが強調さております。過去におきまして停年制のあったときも地方においてございましたが、戦後における法制のもとにおいて行うのには、解釈上においても疑義があるようなことはいかないのであるから、地方公務員につきまして今回停年制をしいたわけでございます。これが消極的効果をねらうものであるか、また積極的効果をねらうものであるか、こういう意味におきましては消極、積極の意味もございましょうが、地方が今までそういう望んだ問題もありまするので、条例においてその地方団体、その地方団体において適当にこのものを施行していくことと思うのでございます。従って個々の地方団体におきましてどういう条例を作る、あるいはあとでお答え申し上げますが、年令をどのくらいにとるかというような問題は、その地方その地方における団体のきむべきことと思っております。国家公務員になぜ先だってこれだけやったか、こういう問題でございます。先ほども申し上げましたように、地方自治体におきましては、国家公務員よりも新陳代謝を要すべき事情が強いのでございまして、ことに市町村においてはその事情があるように存ぜられるのであります。国家公務員においてそのことの必要がないと申すのではございません。すでに公務員制度調査会におきましても、国家公務員の問題を全面的に取り扱うときには、この問題は必ず入れるように考慮せよ、こういう答申がございます通りでございまして、決して地方だけをやるという考えでなく、ただ今回が地方公務員の方が先になったというのでございます。  年令の点につきましては、私どもとして指導するという考えはございません。さりながら、一般民間の年令が五十五才、また恩給における若年停止が五十五才、こういうような点も考えまして、大体その辺が世の中の常識ではなかろうか。しかしながらお仕事の関係におきまして考える問題もございましょう。主たる筋肉労働もございますれば、あるいは知能労働もございますれば、それぞれによって地方団体はしかるべき年令を定めることと思うのでございます。国家公務員におきましては、すでに相当な種類におきまして停年制がしかれております。全面的でないだけでございますが、あるいは裁判官でございますとか、あるいは検察官でございますとか、大学の教授でございまするとか、また防衛隊においても年令が定められております。こんな点を考えますというと、まず五十五才見当が常識ではないかと思います。しかし、この点はとくと考えまするが、ただいま普通に考えるのはそうじゃなかろうか、ただし、御案内の通り人の体育と申しますか、身体の力と申しますか、医学の進歩とともに違っておりまするので、こんな点も今後においては考えねばならぬものではないかと、こう考えております。  第四点として御質問になりました、これによってどれだけの地方財政に期待するか、申し上げるまでもなく、各地方自治体の自主的な考えによってこの制度を行うのでございまするから、また、その年令等もわかりませんによって、これをうまく利用するといいまするか、いわゆる新陳代謝の道を開くということがわれわれのねらいでございまして、地方財政計画においては、停年制をしくためにこれだけの金が上るというように計画は立てておらないのでございます。お答え申し上げます。
  225. 相馬助治

    ○相馬助治君 御承知のように停年制をしくためには、年令の構成、平均寿命、生活条件、そういうような方面から十分な研究がなされなければならないと存じます。腹案で五十五才ということが示されましたが、長官も御承知のように、昭和二十二年では平均寿命が男は五十才、女は五十四才、それが三十年になりますと男は六十四才、女は六十八才と九年間に十四才も延びております。そこにもつてきて、近代社会の当然の結果としてでありましょうが、結婚年令がおくれてきて、どうも五十才から五十四、五才というのは子供の教育盛りで、ある意味では一番金の要るときでございます。そういうようなことを思いあわせますと、弱者に味方をするのが政治だと言った鳩山さんのもとにおいて、経済的な効果があまり期待できないこういうものをやって世間をおどかすというのは、いささかどうもやり口が下手だし、同時にまずいということを私ども考えるのでございますが、この点について重ねて見解を述べていただきたいし、第二には教育公務員についても右へならえするのですか。付則においてその特殊な職種であるということを考えて、特別の措置をしますかというのが第二、第三には停年後の、停年制で退職した後の、その人たちの生活を確保するための、何らかの措置というものを、積極的にお考えであるかどうか。この三点承わっておきます。
  226. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) 第一の停年制のしかれる限界という言葉は、私も申し上げたのでございますが、相馬委員の言われる通り、近代の体育状況が違っておるという点などから見まして、慎重に考えなければならぬと思います。私はむしろ五十五歳は最下限であって、それ以上ということを考えておる次第でございます。  第二の点は教員の取り扱いを別個にするか、こういうお言葉でございますが、教員におきましては新陳代謝が相当にあるようでございまして、従ってその数も少いというように承知しております。けれど、地方公務員と、教職員との関係を別に取り扱うという考えは持っておりません。やはり同様にお考え願いたい。しかもそのことは自治体自体が各個に考えられることでございますによって、その自治体に適応したいろいろな措置をとっていくことと思うのでございます。
  227. 相馬助治

    ○相馬助治君 私の持ち時間は切れたようですが、終りに厚生大臣に一点お尋ねしたいと思います。三月八日づけの毎日、読売、産経、その他の新聞を見ますと、現在問題になっておりまする新医療費体系については、ほとんど白紙の状態にこれを戻して、何らかの措置をし、四月一日から発効いたしますところの法律二百四十五号、すなわち医薬分業法案の実施と見合わせて措置をとると、かようなことが新聞記事に伝えられております。このことは影響するところきわめて大でございますので、医薬分業法案を当然推進するためには、新医療費体系というものがこれと付随して実施されなければならないのが建前であろうと存じまするが、一体厚生大臣はこの問題について現在どのようにお考えであるか。これはやり方によっては、日本の医療制度というものを根本的に攪乱するほどの大問題になろうと考えます。厚生省が一年の歳月を使い、二千六百万の国費を使って作り上げたところの新医療費体系を一たん引き下げて、どのような案を出して世間を納得せしめんとするのか。これらの点につきまして明快なる御答弁を願いたい。この問題はことと次第によっては、厚生大臣、あなたの命取りになるほどの私は重大な政治責任を含んでおると思いますので、明瞭に御答弁を願いたいと思います。
  228. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 相馬さんのお尋ねになりました数日前の新聞紙の内容につきましては、私は存じていないのでございます。新聞に出たことは存じておりまするが、新聞の内容はよほど違っておると思います。まずこの問題を先に御了承願いたいと思います。ただ、私どもといたしましては、四月一日から医薬分業が実施されることになっておりますし、かねてから厚生省におきましては、この医薬分業実施になくてはならないと思いまする新しい医療費の体系を作業いたしまして、昨年の十二月に発表いたしますと同時に、法的にできております諮問機関である医療協議会に諮問をしておるのであります。医療協議会におきましては、今日まで約十二回、回を重ねまして御審議を願っておるのでありますが、私どもがいよいよ四月一日から医薬分業をスタートするといたしましても、今日の客観的、あらゆる情勢から判断いたしまして、このただいま諮問をいたしておりまする新いし医療費体系というものが、はっきりと答申を得る段階になっていないと判断をいたしたのであります。従いまして、今相馬さんがおっしゃったように、諮問をいたしておりまする新医療費体系そのものを撤回したのではないのであります。これは引き続いて医療協議会においては十分に御審議願うといたしまして、とりあえず四月一日からの医薬分業に間に合う程度の暫定的な措置を御依頼申し上げているのでございまして、従いまして暫定的のこの新しい医療費の問題というものは、これは近い将来におきまして根本的な新医療費体系ができる間までの暫定的な措置といたしまして諮問いたしていることを御了承願いたいと存じます。
  229. 相馬助治

    ○相馬助治君 新聞に出ていることと違うと言いますが、一新聞がすっぱ抜きに記事を出したのと違って、言葉はちょっとおかしいが、大新聞と言われるものでも、朝日が一行も書かなかっただけで、あとはほとんどの新聞がこの問題を、全く同じ内容を書いておるのです。従って新聞記者諸君がドアの外から聞き耳を立てて鉛筆を走らせた材料ではこれは絶対にない。どこからあの材料が出たのですか。そうしてこの新聞が報じたことと、どういうふうに違っておるのですか。概略でいいから、そこのところを説明して下さい。
  230. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 実のところを申しますると、新聞の出ました前の日でありますが、何日でございましたか、その日に私ども、八日と思いますが、大体厚生省といたしまして、現在の段階におきまして一応新医療費体系に対する方針だけはきめておこうということで、省内の幹部が集まりまして、いろいろ協議をいたしたのであります。その内容につきまして、それでは暫定的の新しい医療費をどうするかとか、こうするかとかというふうな掘り下げた問題についてはいたしていないのでございまして、ただ方針といたしましては、今日の客観的情勢としては、とうてい今のわれわれが諮問いたしておりまする新医療費体系の最後の断案というものを下せない、こういう結論になりましたから、それではこれは引き続いてゆっくりと御審議を願うとして、暫定的に一つこの問題をやっていこう、こういうふうにきめたのでございます。むろん私どもも党出身の閣僚でございまするから、こういう方針のもとに党とも、あるいは閣僚各位とも十分打ち合わせをいたしまして、そうしてやろう、こういう方針を立てたのでございますが、それがはからずもああいうふうに誤伝をされましたことは、はなはだ遺憾に思っておりますが、ただ内容につきましていろいろなことが出ておりまするが、それは新聞紙におかれまして適当に判断をなされたものだと思っておりまするが、私どもといたしましては、その内容につきましては全然関知していないのでございます。
  231. 相馬助治

    ○相馬助治君 私はあの新聞の内容について、大臣に責任を持てと、こういうむちやなことを言っておるのではないのです。ただ責任ある、公共性を持つ新聞が、軌を一にして同じことを書いておる。で、私はこれはかなり問題だと思ったことは、御承知のように三月一日の参議院の社会労働委員会においては、厚生省の態度をお尋ねしたところが、山下厚生次官、それから小林厚生大臣、事務局必ずしも見解が一致していないやに見受けたので、われわれはこれを追及のための追及をすべきではないとして、統一的見解を三月八日にはぜひ承わりたい、そうして新医療費体系の問題を政争の具に供することなく、超党派的にこの問題は片づけたいとして、参議院の社会労働委員会は慎重審議を十数回にわたって重ねた結論を出そうとしていたのでございます。しかるところ、その朝の新聞紙が一斉にこれを報じた。従ってこれが厚生省の態度であるかと私どもは期待して、社会労働委員会に出たところが、御承知のように、あとで聞くところによりますと、自民党の政調会が混乱をきたし、そうしてこの新聞の記事の出場所についていろいろ省内においても問題が惹起されたということを聞いたのです。そこで私どもはいろいろ事情もあろうとして、社会労働委員会を開くことをしばらく待って、十二時過ぎに至りましたところが、厚生大臣は参議院を軽視し、衆議院の社会労働委員会に出向きまして、この問題については厚生省としてかくかく考えておるというような答弁がなされたのでございまして、御承知のように参議院の社会労働委員会は与党を含めて、厚生大臣がそのような態度を改めない限り、厚生省関係の議案は一切審議し広いという態度を確立しておることは大臣御承知の通りでございます。そうしてその後厚生省はどうしたのか、われわれはさっぱり知らない。私はその新聞記事に責任を持てというのではないのです。事務局がこれを漏らしたのかと思っていろいろ調べてみたところが、そうでもなさそうだ。大臣自身はもちろんこれは漏らしていない。かなり責任のある者がこういう取材を新聞社にさせたことはほぼ明瞭でございまして、これでは一国の医療行政を担当する厚生省としてはうまくないということを私は申すのであって、新聞の誤伝だなどということはわれわれは絶対に了承できないのでございます。  その問題はそれといたしましても、一体暫定措置をやると言いまするが、法律二百四十五号の医薬分業法案と新医療費体系というものは不可分なものだと思います。日本の医療制度を革命的に改めましたこの医薬分業の法案が施行されるに当りまして、新医療費体系の問題が中央医療協議会からも答申されないということは遺憾です。また、国会の社会労働委員会も立法事項ではございませんけれども、この問題について審議をしてきた者として、結論が出ないのもわれわれは遺憾としております。中央医療協議会、あるいは国会が結論を出さなくても、四月一日からこれを強行する御意思でございますか。
  232. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 医薬分業の問題につきましては、国会が御決定になっておるのでございまするし、法律で制定した問題でございまするから、医薬分業は実施したいと思っております。ただ、新しい医療費の体系でございまするが、昨日まで協議会におきまして回を重ねて御審議を願っておりました新しい医療費体系、これは私どもといたしましては百年来のいわゆる画期的の改正でございまするから、十分に慎重にも慎重を重ねまして、これを決定することが正しいと思っております。今日の段階におきましては、四月一日からスタートいたしまする医薬分業に対してこれを決定するということは、あらゆる角度から見ましても無理でございまするので、この問題は将来できるだけ早く根本的の問題を御審議を願って、そうして四月一日からスタートいたしまする医薬分業に対しましては、とりあえず暫定的の措置を講じたい、これでございます。
  233. 相馬助治

    ○相馬助治君 暫定措置というのは、旧点数表をそのままやるのですか、それとも現在出しておりまする新医療費体系の一部を直して暫定的にやるとするのですか、どちらですか。
  234. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 厚生省といたしましては、ただいままで御審議を願っておりました新医療費体系は、そのまま継続して御審議を願うといたしまして、四月一日からできるあとう限りの暫定的な新点数表によってやってゆこう、こういう考えでございまして、この案にいたしましても、私はただいま御審議を願っておりまする協議会におきまして適当なる暫定的の点数の御答申を願いたい、こういう方針でございます。
  235. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 竹中勝男君。
  236. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 最初総理お尋ねいたします。近代政党、現代の政党が社会保障ということを政策の重要なものの一つにしておることは当然であります。総理はたびたび社会保障の充実、前進をやるということを国民に公約しておられますが、三十一年度の予算をごらんになってどのように前進したと思われますか。あるいは大して前進してない、あるいは後退しておるというようにお考えでしょうか、まずその点からお伺いしたい。
  237. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 明年度の一般会計予算において厚生省関係経費は本年度に比較して約六十一億円の増加となっております。さらに失業対策費の増加等社会保障関係費は本年度に比較いたしまして約百二十二億円を増加しておりまして、相当程度に社会保障の充実強化がはかられたものと考えております。
  238. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 百二十億という中には、非常に大部分の恩給に関する費用が含まれておると思います。正確にいわゆる社会保障費といわるべきものは六十億ほどあると考えます。しかもそれがほとんど重点的にでもなく、各項目にばらまかれておるような状態で、名目的には充実の形が出ておるかと思います、増加の形が出ておりますけれども、実質的には一つの積極的な意味もなく、また実質的に従って増加されてはいないのであります。充実といえばそれがプラスされておるということなのです。ところが社会保障というものは固定されておりませんので、対象者が絶えずふえておる。失業量も決して減っておりません。それから潜在失業というものも決して減っておりません。すなわち生活の困難、その中には医療費を持っていない者、そういう者は決して減っていないのみならず増大しております。年々新しい結核患者が三十三万人ずつふえております。すなわちこれはまあウサギとカメの競争のようなもので、ウサギが一里走るときにカメは一町しか走れない。確かにカメだけを見ておれば一町だけは前進したことになりますけれども、こういうことは絶対的な前進でありまして、相対的に見れば前進どころか、これは後すざりしておるわけであります。従って社会保障が充実したとは、私どもは冷静に考えて前進しておるとは思えません。総理も御存じの通りに、全国の医者が大会を開いて、保険医が保険医を総辞退したいという決議をしております。また、医者も労働組合も、一般の市民も、こぞってこの社会保障のための健康保険、あるいは新医療費体系のことを問題にしまして、国会にも押しかけ、総理のお家にも参っておるわけであります。これは社会保障が充実し過ぎたから、もうちょっとやめてくれといって陳情に来ておるのではなくて、政府国民に公約したところの社会保障が充実されないのみならず、逆にこれが後退しておる、患者に一部負担がさらに増強しておる。保険料を納めたところの者が、来年の四月からは医者へ行くごとに五十円、二度行くごとに十円あるいは三十円、貧乏な人が入院するごとに毎日三十円ずつ六カ月も出さなければならない。またさらにその家族の療養についてもこの制限を加えておる。あるいは保険の掛金については標準報酬が上ってきておる。こういう事実が日本の動労階級には非常に敏感なのです。日雇労働者までこれに入るのです。この人たちは医者に行こうと思っても、電車賃まで節約しなければならない人たちなのです。そういう人たちが五十円、三十円という現金を出さなければならないというと、医者に行けない。医者に行けなければ病気が重くなる。そうすれば早期発見、早期治療というようなことはとうていできません。従って、日本の医療費はさらにみなが不健康な病気になるからして、医療費はさらに増大して参ります。こういう状態をごらんにねって、総理は社会保障の充実ができている、そういうようにお考えですか。もしできていないのだったらばその理由はどういうわけです。そして国民の前にそのことをはっきりしていただきたいとお願いします。
  239. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいまの御質問に対して大蔵大臣から御答弁いたします。
  240. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) だいぶんお詳しい御質疑でありますので、私から答弁いたします。むろん今日の財政状況から見まして、社会保障費がきわめて満足すべき状況にあるとは私も思っておりませんが、しかし何さま今日、この財政需要が大きいのであります。一方健全財政を貫ていく関係からも思うようにもい営ません。が、しかし三十一年度は前年度の、補正以後の三十年度に比べても百一億増加であります。ちょっとこれを数字的に考えてみますと、約前年度に比べて一%程度の増加になっております。一方国民所得はその間において二・八%、また昭和三十年度の社会保障費と国民所得の関係は一・五%、三十一年度は一・六%、こういうふうになっておりまして、漸次社会保障費は増加し、かつ増率を示しておるというのが現状であります。むろんお話しのように、それは人口も増加し、社会保障の大切な人が多いからごもっともな御意見でありますが、先ほど申しましたように一方またこの財政には限界があるし・財政需要も多いのでありますから、そういうふうにふえていくところを特に御了承を私は得たいと思います。  なお、受益者の方も今回たとえば健康保険において負担するじゃないか、こういう御意向もあったようでありますが、一方また、それに対応して従来かってなかった、健康保険に対して国家が新たに補助をするという新しい財政制度も創設いたしました。そうしてこの社会保障制度の確立促進をはかっておるわけでありまして、政府といたしましては極力社会保険の充実に意を用いておりますことを御了承得たいのであります。
  241. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 大蔵大臣にさらにもう少し専門的な、この点は前からもっとはっきりお伺いしたいと思っておったのですが、財政の権威者として、また日本の財政の当局として、これは社会保障もいろいろ国によって、国の国民経済とか、国民所得とか、それから国民所得の不平等性というよう血ものに直接関係しているものですが、アメリカのように国民所得が大きい場合には不平等性が相当あっても、これは割りに緩慢に社会保障というものは進めてかまわないというのが現状であるように思われます。英国のことは今省きますが、日本では国民の所得分配が非常に傾斜が強いのです。強いというか、あるいは英国よりは強くないと思います、緩慢でありますけれども、しかし国民所得が小さいから、その傾斜が、不平等性の傾斜が非常に敏感に国民に響いてくるのであります。五十円とか三十円という金でも、これは非常な大きな負担になり、それが医療行為を受けるということを阻止することになるのですね。そういうところにおいて社会保障というものを充実しようと思われるならば、私は一つの社会保障の限度というものと同時に、速度だとか、あるいは深度といいますか、どこからやるかというようなことが、もっと総合的に政府によって研究されて、早く実施すべきものを実施しなければ、社会保障経済・保険経済が破産するのは当然だと私は考えております。  そこで厚生大臣には、まあ委員会がありますから、大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、私どもの考えるところによると、今日国民社会保険の赤字というものの最大の、あるいは唯一の原因は結核なのです。結核に非常血長期の支出が要るし、それから薬が高いし、そうして治療炉進んで外科手術が発達したために、それが赤字の原因になっております。これが大体そうなんです。そこでもし結核対策費に重点を置かれるならば、健康保険の赤字はこれは解消する、あるいは生活保護法の負担というものもよほど軽減してくると私どもは考えておるのですが、わが国の社会保障制度が一つも前進しないのは、総合的な企画性がないからだと思うのです。それは財政当局が社会保障ということの重要性というものの認識が私は足りない。大蔵大臣が足りないと言っておるのじゃないのです、日本の政治指導者が足りない。そうして昨年は実は私もそのことを発言したのですが、厚生省に何か総合企画室というものができたそうですが、そういう小さい、何百万円の予算しかないというようなところで、この二千億に近いところの社会保障という問題の解決、総合的血企画というものは絶対にできるものじゃありません。これは疾病の場合、あるいは老齢の場合、あるいは失業の場合、また住宅というようなものを総合的に企画しなければ、そうしてそれには速度があり、深さがあり、そうしてそこから始まるという、そういう重点があるわけですから、そういう点について大蔵大臣が、はっきりした社会保障に関する計画が財政当局としておありであれば伺いたいのです。ほんとうは総理からもお伺いしたいのですけれども……。
  242. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 総じて政治家が社会保障に熱心でないというのは私は違っておると思います。だれもが政治家として社会保障に大いに熱意を持っておることは言うまでもないのでありますが、ただままならぬというのが、(笑声)実は現状であろうと思うのであります。政府といたしましては、今お話しのように鳩山内閣において画期的に住宅政策というものを取り上げて参りました。もちろんこれについてもいろいろなこまかい御批判がありまするが、しかしやはりこれを取り上げたのもそういう社会保障、たとえば結核というようなものに対して、一番源泉について一つ立てていきたいというのが、単なる住宅政策以外にそういう意味も深くあったわけであります。また、今日従来と違って経済に計画性を与えまして、いわゆる五カ年計画も作りまして、そうして経済の自立、そうして雇用の拡大というふうにしまして、国民生活の向上をはかって、そうして国民所得はふやしていくというのが、やはり社会保障の私は根本に触れる政策と、かように考えておるわけであります。そういうことを今後政府としては強く私は打ち出して実行をしていく、これがすみやかな成果をおさめるほど、やはりこの社会保障に資するということになると思います。他面たとえば今申された結核対策でありますが、これを健康保険等の保険制度から離せば、一方健康保険等の赤字はなくなるじゃないかという御意見、それは私もそうであろうと思うのでありますが、これはまあしかし御意見として十分尊重しますが、各般のことを考えていかなくてはなりませんので、そういう方向を指向するといたしましても、やはり今すぐというわけには私は参らぬ。今日においてはやはり結核予防法に基く対策、それからこの保険制度というものを十分総合的に運営をして、なるべく成果を上げていくというのが、今日に私は実際実行可能なことである、まあかように考えておるわけであります。今後としましてはそういうふう血社会保障の拡充について、国としても十分厚生省等の関係当局の相談にもあずかりまして確立していく、他面先ほど申し上げましたような社会保障を必要とする根源。それはなるべく国の施策において少くしていく、かような政策を進めたい、かように考えておるわけであります。
  243. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 総理大臣にもついでにもう少し関連して申し上げたいと思いますが、ままならぬと言われるわけですけれども、ままならぬだともう一つさらにままならぬような事態が起るわけです。医療費というものは・これは早期にやらなかったら過大になってくるのみならず、労働力の面で労働ができない、あるいは労働力が非常に低下してくるわけで、そうしてそういう悪循環を繰り返します。そうして所得が非常に減ります。病気すると所得が減ります。失業者が固定化して、いわゆるルンペン・プロレタリア層がどんどん増大していきます。これはまた、思想的にも、非常に不健全なものになるわけです。国防ということは、防衛ということはそういう武器だけの防衛というように私どもは考えておりません。われわれはやはり国民生活を防衛しなかったら、絶対に防衛力というものは出てこないということを考えておるのです。それから結核対策は、もし現在の結核対策費の倍額百二十億支出されれば、私は五年支出されるなら、日本から結核は大体なくなるという計算を社会党ではしております。これはこまかいことになりますけれども、そういう政策があるのです。それをなぜ鳩山内閣はやらないのですか。国民の生活を防衛するという熱意がないのですか。ただ兵隊をふやして防衛するというのであるならば、これぐらい危険なことはないと私は考えておりますが、総理はもう一度国民に向って、社会保障に対する公約を実現することを誓っていただきたいと思う。
  244. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 社会保障に対しては、政府としてはずいぶん熱意があるつもりであります。あなたのおっしゃる通りに、国家の防衛は武力のみによってできるものとは全然考えておりません。国民生活の向上によって日本防衛力、あるいは日本の何といいますか進歩をそこから発見していかなければならないと思っております。
  245. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 最後に私は、まだ言いたいことがあるのですが、防衛費と社会保障費がアンバランスであると言っておるわけなんです。  もう一つ最後にお尋ねしたいのですが、これは外務大臣にお伺いしたいのですけれどもお見えになっておりませんので、総理あるいは他の、根本官房長官に関係を多少今まで私持ったものですから……。実は中国人を、日本昭和十七年十二月に東条内閣の閣議決定によりまして中国から日本に捕虜及び一般市民を約四万人連れて参りました。そうして終戦前後にこれらの人がたくさん死にまして、外務省の発表しておるところによりましても、七千人の中国人が日本で亡くなっております。われわれ民間団体が慰霊実行委員会というものをこしらえまして、委員長は大谷瑩潤議員です。そうして労働組合の協力を得まして、あるいは宗教界やその他の民間団体の協力を得まして、各地に散在している中国人の遺骨を発掘し、それを収拾し、そうして中国本土に送り返しております。昨年第五回目の遺骨を私が団長として持って参りました。大へん中国ではそれを、心から感謝いたしております。これは政党や、政派や、イデオロギーや、政治に関係なく、純粋な人道的な立場から、われわれがアジアにおいて、日本が果すべき義務を日本人がしているという立場からやっておるのであります。周恩来総理も私に二時間も会いまして、非常に心から感謝いたして、こういう行為こそ、いかなる過去のこともこれによってもう十分帳消しできる、忘れることができると言って真剣に感謝されました。その節、中国に、日本政府は四万のまだ日本人がいるということを外務省はジェネバの出先を通して言っておる。しかしその中には、その数については確実でないけれども、たくさん死んだ人がいる。日本の遺族からも、その遺骨を日本に送り返してほしいという要求があると私どもは聞いております。相当強い要求があります。で、周恩来総理は昨年十二月の何日でしたか忘れましたが、暮に私が参りましたときに、それも皆さんがこうやって中国人の遺骨を発掘して送り返すのであるならば、私どもとしても必ずその遺骨を尋ね、亡くなった日本人の姓名を調べて必ず日本に送り返しますということをはっきり申されました。これはアジア、日中の関係においてきわめて重要な、国交回復の上にもアジアの平和の上にも重要な意味を持っておると私ども思いまして、こういう民間の仕事に従事しておるわけであります。また、居留民の問題にいたしましても、今中国に何万人日本人がいるか知りません、日本には中国の人が六千人ほどおります。ところが日本人と結婚し、中国人と結婚し、籍がありますので、お互いにどうしても交流ができない、お互いに行き来ができない、そういう問題も早く解決しなければ、これは人道上夫婦親子が別れて生きていかなければならないという悲劇が至る所に、今度行ってみても私はそれを痛感したのでありますが、けさほど鳩山総理は大へんわれわれとしても日本人として心強い発言をされました。もし周恩来総理鳩山総理を招待するなら、自分は行ってでもこの日中に横たわるところの難問題を解決しようという熱意を示されたということについて、私どもは心強く感じておりますが、われわれはまず国交の回復以前に、人道的な立場からやっておるこの遺骨送還事業というものに対して、政府が直接、これは東条内閣が直接やった仕事のあれでありますから、当然政府責任を負うべき仕事だと思っておりますが、国交が回復していない現在、政府が直接やることができないのではないかと思っておりますが、これは文化の交流の上からも、貿易の上からも、あるいは居留民往来の上からも、早く解決していかなけりゃならぬ一つの重要問題だと思いまするので、政府におきましてこういう民間団体の仕事に経済的助力を考慮する余地があるかどうかということをお尋ねしたいのです。
  246. 森下國雄

    政府委員(森下國雄君) 竹中さんにお答え申し上げます。ただいま外務大臣が他の委員会に出ておりますので、かわって申し上げます。  ただいまのお話は、ちょうど昭和二十九年の秋に、竹中さんの御関係しておりました厚生委員会が決定いたしたのでございまして、その遺骨送還の仕事は日本赤十字にやらせるのがいいのではないかということがきまっておりました。日本赤十字の方でそれをやっていただく場合には、政府におきましては必要な経費はこれを負担したい、かように考えております。
  247. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 次官に対してお尋ねいたしますが、その後、日本赤十字社と種々交渉いたしましたところが、赤十字が出してくるところのいろいろ条件にですね、現実に合わない事態がたくさんありますのです。ある団体と縁を切ってくれといいますけれども、実際この遺骨があるのを知っておる、どこに埋めてある、何体ここにあるということを知っておるのは、労働組合の人々でないと知らない。事業場の出先の人々でないとわからないことが多い。またこの人々が自分らの金を出し合って、今までもう何百万円の金を積み上げて、こういう日本の労働者や宗教家がやってきたことなんです。それを、そういうところから全部手を切って、赤十字一本でやれというような割にむずかしい条件が出てくるものですから、私どもは事実できないうちに経過して、もう一年半にもなるものですから、集まってくる遺骨、掘ってくるところの遺骨を実行委員会という組織でやっておるのですが、今になって考えてみますと、その方が適当であると考えておりますから、この間の事情をいろいろ勘案いただきまして、いずれ具体的なことは政府に対して申し入れますから、御相談いたしますから、その際、とにかくこの遺骨送還の問題について、財政的な助力をお約束いただきたいと思っております。
  248. 森下國雄

    政府委員(森下國雄君) 仰せの通り、大切なことでございますから、よくそれぞれの関係団体等ともさらに相談をいたしまして、善処いたしたいと思っております。
  249. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 もう一つ小林厚生大臣に。医薬分業は先ほどの同僚の祖廟議員が質問されたのでありますが、一つの点はどこまでも医薬分業、内容的にいえば、日本医療行為におけるところの物の対価と、医療あるいは、調剤というような技術の対価の、はっきりした医療費の体系をどこまでも、近い将来に強行して、これは日本医療の進歩の上から、あなたはかたい決意をもって、職を賭してもこれを実行される意思があるかどうかということが第  一点。  第二点は、健康保険の政府の三十億というものを、これは臨時的な補助でない、恒久的な財政支出として、どこまでも政府にそういう責任を持ってもらうところの自信がおありかどうかということを、お願いします。
  250. 小林英三

    国務大臣小林英三君) お答えいたします。すでに四月一日からして医薬分業が実施されまする以上は、医薬分業の、実施に必要な、根本的な新しい医療費体系は立てるべきものだと考えておりまするし、近い将来、これらを法的な医療協議会にもお願いをいたしております。必ず近い将来には根本的の対策が立てられると思っております。  それから今の政府の補助金の問題でございまするが、これは大蔵省とも私どもとも一致しておりまして、健康保険の立て直しのために、また社会保障の確立の見地からいたしまして、政府も毎年、これを補助いたすということに相なっております。本年は取りあえず三十億円ということになっているのであります。
  251. 吉田法晴

    吉田法晴君 おそくなって、なお憲法問題、それから首相のいわゆる自衛権の問題について質問をいたしますことは、病首相に対して私ども心苦しいところであります。国の運命、国民の存亡に関します問題でございますので、私どもこれは厳粛に、総理の席におられる以上、明らかにせられなければならぬと考えるので、質問をいたしたいと思うのであります。  午前中、同僚秋山議員から申し上げましたが、これは客観的に見まして、鳩山内閣余命幾ばくもないことは、これは残念でございましょうけれども、事実だと思うのでありますが、その鳩山首相が、政治的な、民主政治家としての最後に、何をなそうとせられているか。論議いたしております憲法改正あるいは自衛云々という問題で、日本の国と国民とを滅亡に導くあのドイツの第一次欧州大戦後の失敗を、ここに再び繰り返されるのではないかということを心配するのでありますが、過去を顧み、国の将来を考えて、明答を願いたいと思いますが、在野中に追放から解除されて、あるいは吉田首相にかわって、あるいは総裁にかわって、政治生活を復活したいという気持からでもございましたろうが、憲法改正を言われた。午前中の質問に答えては、じっくりやりたいというお話、あるいは慎重にやりたいというお話でしたが、依然として、自分の政治的な任務として、憲法改正をなおやろうとせられるか。あるいは国と民族とを滅亡に導く危険のあるこうした憲法改正問題は、ここで再考慮をすると言われるか。私ども民主政治家としての鳩山首相が、ここにおいて、あるいは京大事件、あるいは「世界の顔」を除くならば、私どもにも鳩山首相の、心情と申しますか、政治家としての心情というものもわかりますが、この迫りました鳩山内閣の最後になって、なおそういう汚点、失敗を繰り返そうとされるかどうか、承わりたいと思います。
  252. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 内閣の施政方針の演説は、議会においてしたのでありまして、そういうようなことを理想として、政治をやっていきたいと思っております。  憲法の改正は、やはりやりたいと思いますけれども、決して憲法を改正して、日本に再軍備をこさえ、侵略戦争に備えるというような考え方は毛頭持っておりません。
  253. 吉田法晴

    吉田法晴君 再軍備をやっているのだと思うのでありますけれども、それはあとお尋ねをいたします。  憲法を改正したい、その憲法改正の原案を作るために、あるいは憲法について、これは改正が前提になっていると思いますが、改正のために全面的に検討をする、こういうことで憲法調査会法をお出しになる。しかし憲法調査会法をお出しになる際に、政府に提案権がありといいながら、議員立法でお出しになる。そこには、これはほかの問題でもそうでございますけれども、やっぱり鳩山首相にも一片の良心と申しますか、疑問がおありになるのだと思う。そこで政府提案にしないで、議員提案にされたのだと思うのでありますが、憲法改正そのものが、あるいは言われておりますような憲法改正が、総理なり、あるいはこれは総裁は兼ねておられませんけれども、自由党の最高幹部であります総裁が、総理として国会憲法改正のための調査会法を出すということが、憲法改正を企図するということが許されるかどうか、あるいは妥当であるかどうか。この点については、これは御反省もあろうかと思いますが、重ねて伺いたいと思います。
  254. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法改正――ちょっと質問がわかりませんでしたが、憲法をどこまでも改正するかという御質問ですか。――憲法調査会の任務とするところは、改正する必要があるかどうかもやはり憲法調査会において審議することになっております。
  255. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは憲法改正ということを最初おやりになりますかと言うと、憲法改正という点は内閣としてやりたい、総理としてやりたい、こう言われる。そこで憲法改正が前提になって、憲法調査会法をお出しになっている。総理としては、憲法九十九条もございますが、憲法改正を前提にした調査会法を出す、憲法改正の企図を進めるということは、憲法九十九条違反の疑いがある。私はこれは違反しておると思いますけれども、総理としてもこの点はお考えになりましょうから、総理憲法改正の議を進めるということはこれは憲法違反ではございませんか。今あなたは改正するかどうかということを検討をしたい、こう言うのですが、それでは憲法改正を前提にしないで、調査会法をお出しになったのですか。
  256. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) あの法案には、憲法を改正する必要があるかどうかも審査をしてくれというように書いてあるから、そのことを申し上げたのであります。
  257. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは、憲法改正の議は進めておらぬ、ただ憲法を改正するかどうかということだけを諮問しておる、こういうことですか。
  258. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法を改正するということも、憲法を改正する必要があるかどうかということも、ともに審査をしてもらうようにあの法案はなっております。
  259. 吉田法晴

    吉田法晴君 こともですが、その点を言っておるのではない。憲法を改正することが必要かどうかということを言っておるのではありません。先ほど、内容なりあるいは憲法改正ということをあなたはおやりになりますかと申し上げたら、それは憲法改正をするという従来の方針は変えないとおっしゃるから、そういう憲法改正の議を進めることは総理としては九十九条違反ではないか、あるいは先ほども申し上げますような、国と民族の危急存亡に関する問題を総理が議を進めるということは、不当ではないか、あるいは不法ではないか、こういうことをお尋ねする次第であります。
  260. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は憲法改正をする意思は持っております。そのことは憲法違反だとは思っておりません。憲法調査会におきましても、憲法を改正することについて審議をしてもらいたいと思う。
  261. 吉田法晴

    吉田法晴君 憲法改正をするかせないか、それだけを調査会にかけられるというならば、これは問題ない。
  262. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) いや、内容も調査してもらう。
  263. 吉田法晴

    吉田法晴君 憲法を改正するということをあなたがそういう工合に言われて、そうして調査会にそれを期待されるということは、九十九条違反ではありませんか。九十九条は憲法を守らなければならぬと書いてある。
  264. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) いや、そういうことは考えません。憲法を守るということはむろん当然なことです。けれども、日本憲法憲法改正を予期していないことはないんです。その手続が規定されておるのでありまするから、その手続に従って憲法を改正する以上は、日本憲法違反にはならないと思います。(「了解々々」と呼ぶ者あり)
  265. 吉田法晴

    吉田法晴君 要らぬことを言いなさるな。――議論をすると長くなりますが、憲法を擁護しなければならぬ義務と、憲法を改正するということは、矛盾するとお考えになりませんか。
  266. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 矛盾はいたしませんよ。現在の憲法憲法を改正することについて規定があるのです。予期はしております。
  267. 吉田法晴

    吉田法晴君 憲法自身は予定をしております。しかしながら、その憲法の改正を、だれが憲法改正の原案をどういう工合に提出してゆくか、提案権の問題は九十六条の書くところです。国務大臣憲法改正を進めてゆく、こういうことは九十九条で禁止している。(「そんなことはないよ」と呼ぶ者あり)これは憲法を厳密に解釈する人は、これはおそらくその他の点においてはあるいは皆さんと説を一緒にされる佐々木惣一博士にしても、それをはっきり言っておられる。その点は、私は法理論として当然憲法に服しなければならぬと思うんですが、総理憲法改正を進めることは憲法違反だと信じます。もしそれが進められるならば別の方途を講ずるより以外にありませんが、なお憲法改正を論議しておる人、これは内閣の閣僚等も含んででありますが、憲法改正を言い得る人には、これは資格がある、あるいは時期があると思うんです。百歩を譲って、憲法の再検討をするといたしましても、これは憲法制定後その機会が与えられましたその際に、あるいは自由党なり民主党の先輩がそのときに意見を出されたかというと、そのときには意見を出されなかった。なお今占領は解けました。しかしながら、実質的には、予算を一つ、あるいは防衛分担金一つ取ってみても、これはアメリカの意向というものと離れて決定はなされ得ない。こういう占領が継続せられる時期、あるいは占領継続と同じような状態が続いている時代、あるいは人について、追放された人あるいは追放に値するような旧憲法的な思想を持っておる人、そういう人によって憲法改正が論議され得るかどうか。実質的にこういう人たちによって憲法改正が、話が進められるならば、これは明治憲法に返るでしょう。あるいはアメリカの影響がありますもとにおいては、アメリカの要請によって再軍備を進めるために憲法を改正する、こういうことになると考えますが、時と人とについて、その時ではない、あるいはその人を得ていないようにお考えになりませんかどうか、お尋ねいたします。
  268. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はその点についてあなたと考えも違いますし、アメリカには占領当時と同じような状況にはありません。アメリカは現在日本を占領しているとは思いません。
  269. 吉田法晴

    吉田法晴君 それはニクソン副大統領が軍隊を持てないような憲法を作ったのは間違いであったという発言にはっきり現われております。時間もございませんから先に進みますが、先ほど憲法を改正するかどうかもというお話で、憲法改正の内容を一緒に付託をするということでしたが、憲法改正について考えておられる点を具体的に承わりたい。憲法九条については午前中質疑応答がございましたが、その他あるいは天皇、あるいは国民主権の問題について、あるいは家族制度の問題等について、その他、国会の予算修正権、あるいは議案発案権等について首相が述べられたこともございますが、一つ一つについて御意見がございますれば一つ承わりたい。
  270. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 一つ一つについて私はただいま申し述べませんが、憲法調査会が全般にわたって憲法の改正について審議をしてくれるものと思います。
  271. 吉田法晴

    吉田法晴君 全体について審議してくれるでしょうが、憲法改正を進める、あるいはその内容を含んで調査会に付託をすると、こういうお話ですから、この点について主要な点についてはどういうことを考えておられますかということを申し上げている。
  272. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 政府としては個々の問題について諮問をしているわけではありません。全般にわたって審議会にゆだねておるわけであります。
  273. 吉田法晴

    吉田法晴君 それはわかっておりますが、先ほど申し上げましたような憲法九条について、あるいは天皇について、国民主権について、家族制度等について鳩山首相はどう考えておられますかということを伺いたい。
  274. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それらについてはたびたび私がここで申し述べましたから、ただいまこれに再び触れません。
  275. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは昨日の平林委員なり、あるいは秋山委員から、自衛隊のシヴィル・コントロールの問題について質問をいたしました。自衛隊を野放しにほっておくならば、かっての軍部の復活のような、あるいは数次の事件のような、あるいは内閣なり、あるいは国民の意思にかかわらず戦闘を開始するような失敗が起るのではないか、こういう心配を吐露いたしましたが、具体的に総理からそれではどういう方策を講ずるのだ、こういうあれがございませんでしたが、具体的にシヴィル・コントロールの点について抱負があるはずでございますから伺いたいと思います。
  276. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) シヴィル・コントロールということはあなた方の御心配になっておるようなことを避けたいために言っておるわけであります。そうして統帥権の問題などについて明白になっておりますれば、あなた方の御心配は解消するものと私は考えております。
  277. 吉田法晴

    吉田法晴君 ですから、どういう点について、心配がないようにしておられるか、こういうことをお尋ねしておる。
  278. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 統帥の独立ということは考えられませんが、それは非常に必要な点だと思っております。
  279. 吉田法晴

    吉田法晴君 統帥権の独立と、言いますと……。
  280. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) かってのようなことを言っているわけです。つまりシヴイル・コントロールという意味をあなたが今おっしゃったから、そういう意味だと思います。
  281. 吉田法晴

    吉田法晴君 統帥の独立を紡ぐというだけだというお話でありますが、ただそれでは私は心配の点が保障できがたいと思うのであります。具体的にお尋ねをいたします。午前中は秋山委員からお尋ねをいたしましたが、防衛出動の場合、その防衛出動の場合に、ただし書きの緊急な場合云々という点がございました。防衛庁長官がおられませんが、林法制局長官がおられますからそれは補い得ると思いますが、防衛庁長官が、急迫不正の侵害があった場合に防衛出動をし得る、初めはそう言われました。それから「おそれのある場合」と法文に書いてあると申しましたところが、おそれのある場合の出動はする、しかし武力行使はしないのだ、こういう説明でしたが、八十八条に、「第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられた自衛隊は、わが国を防衛するため、必要な武力を行使することができる。」そしてその場合には二項がございまして、「国際の法規及び慣例によるべき場合にあってはこれを遵守し、且つ、事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならない」、こういうことが書いてあります。で、八十八条の二項の場合には、総理の言われるような正当防衛の観念あるいは限度ということがこれは働いて参りましょう。いずれにいたしましても出動だけであって、武力の行使はないという防衛庁長官の話でございましたが、法文はそうなっていない。この点についてどういう工合にお考えになりますか。
  282. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいま御指摘の自衛隊法七十六条及びその八十八条でございますか、これについては一昨年自衛隊法審議の際に十分これはいろいろ御質問もございまして、いろいろ、審議せられたところでございまして、その実態につきましては午前中に防衛庁長官からお答えした通りと思いますが、なお繰り返して申し上げますれば、防衛出動はただいまこの法文にもはっきりしております通りに、外部からの武力攻撃、その場合にはおそれのある場合を含むということになっております。従いましてそういう場合には防衛出動を命じ得る状態になるわけであります。しかし実際にその防衛のための武力行使ということは、これは自衛権の本質から申して、おそらくあるだけで、行使できるものではございません。これは現実に侵害があったということに対して、それを防衛するために初めて行い得るものと、かように解釈しておるわけでございます。
  283. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではカッコの中の場合には八十八条の適用はない、こういう御解釈ですね。
  284. 林修三

    政府委員(林修三君) これは防衛出動をして、向うから侵害があった場合に武力の防衛をし得る状態に置くということのために、それがカツコに含まれておるのでございます。実際の武力の行使は、今仰せられた通りに、侵害がなければ正当防衛自衛権の内容としてできるものではない、かように考えております。
  285. 秋山長造

    秋山長造君 今の点は法制局長官はこのように解釈しておるという解釈ということを言っておられるのですが、そうなりますと、また内閣が、政府、がかわったり長官がかわったりされますと、憲法と同じような理屈でそこらまた解釈がかわってきて、やはりこれはどちらの場合にも武力は行使することができるのだというおそれがあるのではないか、ここらは特にはっきりしておかないと、何も書いてないのだから、防衛出動をした場合にはとにかく武力行使はできると書いて、ただし書きも何もつけてないのですから、これは文章をまともに読んでもそういうおそれは多分にある。文章解釈というものは、これは、はっきり確立しておく必要があると思うのですが、この点どうですか。
  286. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいまの点は自衛隊法審議の際にもいろいろ御論議のあったところでありますが、このことは憲法及び自衛隊法を通じて考えますと、いわゆる自衛権自衛権の行使のための範囲において認められておることでございますから、ただいま申し上げました通りに、単におそがあるというだけで、こちらから先に出かけていくということはこれは考えられない、そういうことはあり得ないと、かように考えておる次第でございます。
  287. 秋山長造

    秋山長造君 総理大臣いかがですか。
  288. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいまの解釈通りだと思います。
  289. 秋山長造

    秋山長造君 はっきりしている-。
  290. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) はっきりしていると思います。自衛権というむのは正当防衛と同じなのですから……。
  291. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじゃ自衛権あるいは正当防衛は、それは急迫不正の侵害があった場合に限る、こういうのでしたら、カッコの場合は取り除くべきじゃありませんか。
  292. 林修三

    政府委員(林修三君) これは一昨年のこの審議の際にも立法趣旨としていろいろ御説明があったはずでございますが、現実な、そういう急迫した事態がまさに迫っておるという場合に、まだ向うからの武力攻撃はないけれども、こちらとして一応の準備はしておかなければならぬ。そういう意味で、防衛出動をそういう場合には命じ得ることにしておく必要がある。そういうわけでございまして、そういう態勢を整えるというだけのこれはために、このカッコに入っておるのでございます。
  293. 吉田法晴

    吉田法晴君 その辺総理に伺いたいのですが、今、論議をいたしました、質疑をいたしました七十六条なり、八十八条なりは、今、論議いたしました通り、先般、自衛ということに関連をして、首相は、急迫不正の侵略がある場合には、ほかに方法がない場合には、あるいは飛行機、ロケット砲等をもって攻撃される場合には、外国の基地を侵略することができる。侵略するという言葉取り消したと言われますが、攻撃することができる。これは事態を考えると同じことになると思うのですが、少くとも外国の基地を攻撃することができる、こういうことは言われました。その点は衆議院でも船田長官が首相の意思を代読をいたしました。そうすると、今の条文に関連して事態を考えますというと、敵から、外国から敵の飛行機が飛んできて、日本攻撃を加える、あるいはロケット弾が飛んでくる、そういう場合に、吉田内閣のときと違って、鳩山内閣になってから、飛んで行って――飛んで行ってという言葉を首相は使っておられますが、飛んで行って外国の基地をたたく、あるいは攻撃することができる、こういうことを言っておられる。そうすると、飛行機が飛んで行って外国の基地の上まで行って爆弾を落す、こういう事態が起って参る。これはまあお認めになるだろうと思うのですが、どうでしょう。
  294. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は飛行機で飛んで行って基地を爆撃してもいいと、こういう言葉は使った記憶がありませんが、ただ、私は法理上、仮定の問題として、日本攻撃して参りまして、そのほかにこれを防ぐ方法がないという場合には、その基地をたたくことができる、こう言ったのであります。
  295. 吉田法晴

    吉田法晴君 飛んで行ってたたくことができる。これは、はっきり速記録に言っておられる。これは御否定にならないと思うのです。それから爆撃することができるという一言葉もございます。それは御否定になるのですか、お認めになるのですか。
  296. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 否定はしませんけれども、それには条件がありまして、それ以外に日本を防ぐ方法がない、自滅を待つほかないというような場合には、その基地をたたくことができると、こう言ったのであります。速記録にも確かにそう書いてあると思います。
  297. 吉田法晴

    吉田法晴君 自滅を待つほかないと、そういう言葉を使われたということは私も認めます。しかしながら、飛んで行って外国の基地を攻撃することができる。これはその通り言葉は言われておる。そうすると、飛んで行ってということは、飛行機によって飛んで行って、言いかえると、外国の領土の上、基地の上まで飛んで行って……、こういうことは、これはお考えになっておるのだと思うのでありますが、どうですか。
  298. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それ以外には日本防衛する方法がないという場合には、理論的にはそういうことができると私は申しました。
  299. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、そういう事態は、国会によって海外出動禁止の決議がございますが、そういうのは外国に行くということではございませんか。外国の領空、領土の上にはまさに行っておると思うのでありますが、そういうのは出動とは申しませんでしょうか。
  300. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は海外派兵というものとは意味が違うと思います。その基地をたたくということは、防衛庁長官が言いました通りに、誘導弾を用いることもできましょうし、その他の方法があるでしょう。必ずしも海外に派兵をして、そして、その基地をたたくということに限るとは私は考えません。
  301. 吉田法晴

    吉田法晴君 それが海外派兵になるかどうかということをお尋ねしておるのではない。飛んで行って外国の基地を爆撃することができる、あるいは攻撃することができるというときには、これは飛行機は日本から飛び立って、日本自衛隊の飛行機はよその領土の上に行っている、あるいは領空に達しておる、こういうことは、これは事実としてお認めになる以外にございませんでしょう。判断はあとで伺います。
  302. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そのときに申しました通りに、それ以外に日本を守る方法がないという条件がつきますれば、誘導弾を用い、あるいは無人飛行機かロケットのような方法があるでしょうが、私はそういうような仮定の議論をあまりするのはいやですから、その程度において御了承を願いたいと思います。
  303. 吉田法晴

    吉田法晴君 もちろん私どもも、仮定の問題を、そういう事態を想像したくない。だから、憲法改正をおやりになるべきではないということを申し上げておるのですが、しかし、あなたが質問に答えてではございますけれども、ほかに方法がなければ、そういうことをし得るとおっしやる、そういうことをし得るとおっしやれば、防衛出動なりなんなりに関連して、自衛上、日本自衛隊は今後飛んで参ります。飛んで行って外国の領空に達する、あるいは外国の基地の上に行って爆弾を落すという事態が起る。だから私はお尋ねしている。単なる仮定の問題ではございません。そういうときには、外国の領空、領土の上に達し、あるいは基地の上に達し、領空から爆撃することはできると、こういう工合にお考えになっておるでしょう。
  304. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) あなたが仮定の問題を提出して私に答弁を求められましたから、私も仮定の上でただいま申しましたような答弁をいたしました。
  305. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 吉田君、どうですか、時間が非常に経過しています。
  306. 吉田法晴

    吉田法晴君 それをお認めになりましたわけですね。
  307. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 何を認めるのです。
  308. 吉田法晴

    吉田法晴君 ほかに方法がなければ外国の基地の上に行って爆弾を落すということもあり得ると。
  309. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 海外派兵を認めたとか、外国の基地をどうすることを認めたとかいうことを言われると、私は迷惑に思います。
  310. 吉田法晴

    吉田法晴君 いや、派兵というようなことは、かちゃんとあれいたしますから、派兵とか何とかいうことはお考えにならないで、人間が行って云々という問題もございましょうが、飛行機が外国の基地の上に行って爆弾を落すということはあり得る、こういうことでしょう。
  311. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) かねて答弁いたしました通りに、誘導弾というような方法によって基地の攻撃ということはできると思う。それで申しました。
  312. 吉田法晴

    吉田法晴君 誘導弾もありましょうけれども、誘導弾だけでなくて、飛行機で爆撃をするということを言われたから聞いている。
  313. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 仮定の問題の質問はあなたがなすったから、仮定の議論として私は言った。理論的にそういうことはあり得るということを。
  314. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 時間が非常に経過していますけれども、どうです。二十分ぐらい経過したのですが。
  315. 吉田法晴

    吉田法晴君 時間ですけれども、これは大事な問題だし、質疑をお許しをいただいておるのですから、その点は御了承をいただきたいと思うのですが。
  316. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 時間を非常に経過して、二十分も特に時間をさいておるのです。
  317. 吉田法晴

    吉田法晴君 仮定の問題であると言いますが、これは首相の答弁、あるいは発言に関連をして答弁をせられたその意味お尋ねをしておるのでありますから、これは明らかにしていただかなければならぬ。
  318. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は何回も同じことを言っているのです。
  319. 吉田法晴

    吉田法晴君 ロケット弾だけでなくて、飛行機で飛んで行って爆撃をする、することができると言われたから、そのときには飛行機が外国の基地の上に行っておる、こういうことをこれは事実としてお認めになる以外にないのでございます。
  320. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は何回も同じことを言っておりますから、もうこの点については答弁いたしません。(「もう一ぺんはっきり言って下さい」と呼ぶ者あり。)
  321. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 時間が非常に経過していますから、一つ……。
  322. 吉田法晴

    吉田法晴君 大体総理自体が仮定の問題云々と言われますけれども、事態はお認めになったようで、そういう事態はこれは派兵ではないか。人間が、陸軍が外国の領土に上陸をする云々ということは、これは普通の国際法上の交戦権を持っておる外国の派兵になるかもしれません。そういう事態を言っておられるということはわかります。しかし院の決議は、海外出動の禁止でありますから、そういう事態は海外の出動禁止の決議に違反するということを私どもは申し上げておるわけであります。なお憲法九条に関連をして、防衛出動をすることができる、やむを得なければ、あるいは敵の、外国からロケット砲弾等が飛んでくれば、こっちから応戦をすることができる、あるいはロケット彈でその基地をたたくことができる、それから今質疑で明らかになりましたように、外国の領空まで飛んで行って、爆弾を落すことができる、こういうような事実上の戦闘行為が行われるということになります。ある場合には、鳩山首相は自衛隊自衛権のために戦争することが認められておるわけです。自衛力を行使する点において交戦することは認められておるのですね。こういう工合に言っておられます。これは十二月の二十一日です。それは昨年の十二月の応答を見ても、そういう事態が起ることはこれは首相としてお認めになっておると思うのでありますが、そういう事態が起って参りますから、これこそ戦闘行為であり、あるいはそれがどういう事態でどういう規模であるかは別問題にして、戦争だと言わざるを得ないと思うのでありますが、そういう危険性がありますからこそ、憲法九条を改正せずに守っておかなければならないのだと考えるのでありますが、首相の答弁を願いたい。
  323. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) この点については何回も答弁いたしましたから、それをもって御了承願います。
  324. 吉田法晴

    吉田法晴君 何回聞いてもわからない。はっきりお願いしたい。
  325. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) もう二十五分も時間が経過しておりますので、その程度に願いたいと思います。
  326. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは締めくくりをいたしますから御了承をいただきたいと思います。
  327. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) もう一問にお願いします。
  328. 吉田法晴

    吉田法晴君 憲法九条の解釈によって自衛権があるということにしても、あるいは改正をして軍隊が持てる、あるいは自衛のためといえども交戦権があるようにいたしますならば、これは近代戦の姿を考えまして、敵の攻撃を防ぐ、あるいはそのほかの方法がなければということで、外国の基地をたたく、こういう事態が起って、実際にこれは戦闘あるいは戦争というものが起って参ります。そこで、最初申し上げましたように、ドイツの二の舞を踏まぬためには、日本の国と民族の滅亡を防ぐためには、今言っておられるような総理の方向でなくて、アジアにおいては、平和五原則、主権の尊重、それぞれの主権を尊重する、領土を侵さない、外国の内政には干渉しない、お互いにあるいは政治体制は違おうとも、平等互恵の立場で交際をしたい、平和共存でいきたいと、こう念願をして、五原則が広まっておるのでありますが、そういう平和五原則に転換をする、これこそが、鳩山首相が国民の輿望にこたえようとするならば、とらるべき立場だと思うのでありますが、どういう工合に考えられますか、伺いたい。  それから労働大臣に来ていただきましたから、もう一点だけつけ加えて総理と一緒にお伺いいたしたいと思いますが、給与を上げないということで賃金ストップ政策、あるいは労働運動について弾圧政策をとられようといたしておりますが、貿易を伸張し、生産力が拡充されて、生産性が向上されたというなら、賃金もこれにつれて上るのは当然だと思うのでありますが、国鉄の調停案が出た、しかるに五現業に対する調停案が出てもそれを承認しないで裁定に持ち込む、こういうあくまで賃金は上げない、あるいは陳情に対して従来は許されたものに対して弾圧政策をもって臨もう、こういう労使の関係にまかさるべき問題について、政府として弾圧政策をもって臨まれるのは私は不当だと思うのであります。従来の方針の変更だと思うのでありますが、総理はどういうふうに考えられますか、その二つについてお尋ねしたい。前の点については首相から承わりたい。
  329. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私が平和主義に反対するというようなことは絶対にそんな考えは持っておりません。世界の平和をこいねがっておるということはたびたびこの議場においても申し上げております。
  330. 吉田法晴

    吉田法晴君 だから憲法改正でなくて、平和五原則に方針を切りかえるあれはございませんか。
  331. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 今までのことで御了承願います。
  332. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お話の点は、多分その五カ年計画で国民所得水準などを上げる計画でおるが、従って賃金ベースも上って行くべきではないか、それをストップさせるといったような傾向は政策に逆行しておるのではないかというふうなお話と思いますが、前提に申し上げますが、私どもはベースアップは常にいけないということを申しておるのじゃありませんで、今の段階ではそういうことをしない方がいいというのが私どもの考え方でありますが、別段ストップを命じておるわけではありません。そこでただいま数字で申し上げますと、三十一年度においては、これはしばしば私が賃金政策について国会で申し上げておるところでありますが、二十九年度予算以来、いわゆるデフレ経済をやりまして、物価安定政策をとって参りました、かたがた三十年度においては外国の好景気も手伝いまして非常に輸出は増進された、しかしながら政府の見るところといたしましては、三十一年度の下半期に三十年のような輸出増進の活溌化を期待いたすことは非常に困難であろうと、こういうことを計算に入れております、従って三十一年度の輸出はだんだん鈍って来やせぬかということを計算に入れておるわけでありまして、従って国民所得、個人消費及び支出等の上昇率も五カ年計画をごらん下さればわかりますように、その鈍ってくるであろうということを見通されますから、三十一年度の経済計画におきましてはこのような見通しの上に立って、この国民所得は四・三%、個人消費支出は四%、それから消費水準は、一人当り実質個人消費支出は三%程度の上昇にとどまるという見込みを五カ年計画の三十一年度の計画においてはやっておりますが、御承知のように三十年度は前年度の二十九年に比べますと、国民所得は九%、個人消費支出は六%、消費水準は六・一%という、それぞれ相当の上昇を示して参っておるのでありますが、これと比較いたしますと三十一年度計画におきましては、こういう上昇率は今申し上げましたように相当鈍ってくると、こういう見込みを立てておるわけであります。またただいま賃金の御指摘でありましたが、賃金につきまして見ますと三十年度には前年度に比べまして公務員におきましてはいわゆるベース・アップをいたしませんで、定期昇給のみで約六%の給与上昇率を示しております。民間賃金もまた名目賃金は五・八%、実質においては七%の上昇を示しているのでありますが、先ほど申しましたような三十一年度における経済情勢が伸びが鈍っていくだろうという見込みをつけておりますから、賃金、給与の上昇も当然鈍ってこなければならない、こういうふうに考えるのでありまして、従って政府では公務員給与につきましては、かねがね私が申し上げておりますように、給与改訂は、ベース・アップは行わない。(吉田法晴君「三年もやっていませんよ」と述ぶ)定期昇給による給与の向上をはかる、こういうことであります。民間賃金につきましてもそういう事情でありますから、いわゆる一律のベース・アップを行わないで、昇給でやってもらう方がいいではないかと、こういうことを期待いたしているのでありまして、今申し上げましたように考えてみますというと、つまり経済の伸びが三十年度より三十一年度は鈍化してくるという見通しでありますから、(吉田法晴君「物価は上っていますよ」と述ぶ)従って今申しました賃金の上昇率も鈍化していくと、こういう見通しでございますから、そういうふうにやってもらいたいというのが私どもの考え方でありますから、五カ年の経済計画とはちっとも違っておらないのでございます。  それから調停のお話がございましたが、御承知のように三公社は調停案が出ましたが、五現業のうちほんの先ほど全逓関係の調停案が示されました。なお四現業が残っておるわけでありまして、私どもといたしましては、御承知のように三公社については、公社の経営担当者がございますから、それらの人々が自主的におきめになることであります。五現業につきましては、政府に所属しておる閣僚が、それぞれ責任を持っておる経営者の立場に立っておりますが、これらについてはそれぞれの閣僚が、その経営内容について調停案を検討して態度をきめる、こういうことでございまして、政府はこの調停をのめとかのまないとかというようなことについて、何ら圧迫を加えたことはございませんで、この三公社五現業の調停案が出そろうのを見て、政府としてはこれに対してどういう考えを持つかということは、おのずからそのときに出てくることでありまして、私どもとしては毛頭弾圧などということを考えてもおりませんし、やったこともございませんことはよく御存じの通りでございます。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)
  333. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして総括質問は終了いたしました。来たる月曜日より一般質問に入ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十四分散会