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1956-03-08 第24回国会 参議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月八日(木曜日)    午前十時二十七分開会     —————————————    委員の異動 三月七日委員横山フク辞任につき、 その補欠として西岡ハル君を議長にお いて指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     西郷吉之助君    理事     池田宇右衞門君            堀  末治君            秋山 長造君            吉田 法晴君            豊田 雅孝君            中山 福藏君    委員            青木 一男君            石坂 豊一君            井上 清一君            川村 松助君            木内 四郎君            佐野  廣君            田中 啓一君            西岡 ハル君            野村吉三郎君            平林 太一君            藤野 繁雄君            吉田 萬次君            岡田 宗司君            亀田 得治君            菊川 孝夫君            佐多 忠隆君            竹中 勝男君            羽生 三七君            湯山  勇君            小林 政夫君            田村 文吉君            木村禧八郎君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    外 務 大 臣 重光  葵君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 清瀬 一郎君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  石橋 湛山君    運 輸 大 臣 吉野 信次君    労 働 大 臣 倉石 忠雄君    国 務 大 臣 太田 正孝君    国 務 大 臣 高碕達之助君    国 務 大 臣 船田  中君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    内閣官房長官 松本 瀧藏君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    自治庁税務部長 奧野 誠亮君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 林  一夫君    経済企画庁調査    部長      小山 雄二君    経済企画庁計画    部長      大来佐武郎君    外務事務官    (公使)    木村四郎七君    外務省アジア局    長       中川  融君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省銀行局長 東條 猛猪君    文部省大学学術    局長      稲田 清助君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十一年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十一年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十一年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を開会いたします。  まず、委員辞任補欠を御報告いたします。小滝彬君が辞任されまして、高橋進太郎君が補欠として、相馬助治君、菊川孝夫君、矢嶋三義君が辞任されまして、久保等君、大和与一君、湯山勇君が補欠として、川村松助君が辞任されまして、関根久藏君が補欠として、久保等君、西岡ハル君が辞任されまして、菊川孝夫君、横山フク君が補欠として、関根久藏君、大和与一君が辞任されまして、川村松助君、矢嶋三義君が補欠として、横山フク君が辞任されまして、西岡ハル君が補欠として委員になられました。  以上御報告申し上げます。     —————————————
  3. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 本日は総理に対する総括質問を二十九日に引き続いて続行いたしまするが、その前に委員長より石橋通産大臣に一言御注意を申し上げます。  去る二十九日の総括質問の際、石橋通産大臣小林政夫君に対する答弁には、はなはだ粗漏な点があり、かつ不用意な答弁でありましたが、今後本委員会答弁につきましては、慎重かつ懇切に答弁をされまするよう、この際、委員長より石橋通産大臣に要望いたしておきます。
  4. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) 去る二十九日午前の小林委員の御質問に対して、私ちょっと不注意がありました。実は企業別というふうに、私は不注意のために聞きそこないまして、そのつもりで答弁いたしましたが、しかし速記録企業別がやはり規模別となっておりまするから、これは何ら弁明いたす余地はないと思います。その点は私の不注意でございますから、企業別調査がということはお取り消しを願うと同時に、はなはだ不注意であったことを深くおわびいたします。
  5. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは総括質問に入ります。池田宇右衞門君。
  6. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 鳩山総理が老体にもかかわらず、先々国会よりいつも各大臣に先んじて出席し、誠意を披瀝してその責任を全うする精勤に対しましては深く敬意を表するものであります。  新聞の報道によりますと、フィリピンに対する賠償は五億五千万ドルの賠償と、二億五千万ドルの借款二本立て協定になっているとのことでありますが、当初フィリピン側要求したところの二千万ドルの現金賠償は、サンフランシスコ平和条約第十四条に対する違反であり、われわれの最も反対した点であります。さらにまたこれらの賠償が大きな額であるのために、将来わが国経済貿易の圧迫になりはしないか。またビルマ賠償との関係がどうなるのか。重きに失しはしないか。また借款には政府保証を付し、または政府の負担に帰するような取りきめをすべきでなく、純粋民間ベースにすべきであるというのか。これらの点がいかように解決されるのであるか、まず総理大臣及び外務大臣にお伺いをしたいと思うのであります。
  7. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お尋ねの日比賠償のことでございますが、目下その交渉の終結を期待して精励努力をいたしておるわけでございます。その交渉をしておることの内容をあまりに詳しく申し上げることは相手国の同意をも要しますので、それを一々詳しく申し上げることを差し控えたいと考えます。しかしながら当然のこととして、大体のことについてお答えをすることは私の義務でございますから、お答えを申し上げます。御質問に数々の点がございました。もし私の御答弁漏れの点があるならば、また御質疑を願いたいと思います。  日比賠償交渉を今お話通り純粋賠償と、また経済的に両国の経済協力のために別に借款を提供すると、こういう二つのカテゴリーによって解決をしようと、二本立てにするという、このことにつきましてはその通りでございます。従いまして賠償額が五億五千万であるということを今報ぜられておるのは、それは正しいことでございます。そのうちに現金賠償ということが報ぜられておる、こういうのでございまするが、これは少しく正鵠を欠くように思います。むろん現金賠償についても先方要求があったのでございます。それはサンフランシスコ条約趣旨に反するじゃないか、こういうことでございますが、サンフランシスコ条約フィリピンはまだ加入をいたしておりませんので、フィリピンにこれを法理的に適用するわけにいきません。要求するわけには参りません。しかしながら、わが国としましては、サンフランシスコ条約趣旨によって、できるだけその趣旨に沿うように交渉を進めていきたい。また努力をすることは、これまた当然のことでございます。  そこで賠償を、現金払いをしないで物で払うようにするということが一番いいじゃないか。役務で払う、物に加工して役務で払うというようなふうに持っていくことが一番いい解決方法じゃないか。またそれが先方の目的をも達し得る方法、それが妥結方法一つであると考え努力すべきことではないか、こう考えまして、せいぜい双方主張を入れ得るような、実質において妥結を見るように努力をいたしておる次第でございます。  大野ガルシア協定との比較がございました。これは大野ガルシア協定が一応できたのでございます。それは賠償問題を交渉する上において大きな一つの足がかりになったということは、これはいいことであると思います。しかしながら大野ガルシア協定をいつまでも日本側で固執するということになってきては交渉がまとまりません。向うは絶対にこれを受け入れぬという態度をとってきたのでございますから、それを離れて交渉を進めなければならぬことに相なったのでございます。しかし、それじゃその内容がどう違って、どういうふうにわが国に有利であり、もしくは先方に有利であるというようなふうに議論をすることは、実はなかなかむずかしいことでございます。大野ガルシア協定を詳細にわたってこれは比較研究しなければなりません。もっとも表面の額は大野ガルシア協定は四億ということになっております。そこで今回のは五億五千ということになっておりますから、そこに差のあることは、表面の額においてはこれは認めざるを得ません。これはしかし双方交渉の結果、誠意をもって交渉をして妥結をするのには、どうしてもぎりぎりのところはそこに来たのでございます。  さようなわけでございますから、この比較は専門的の知識をもって十分に御検討をいただくことは、これまた適当であろうかと考えます。けれども大野ガルシア協定とは離れて、日本側としてはあくまで日本側主張を十分に貫くことに努力をいたしまして、その結果、かようなところに落ちつきつつあるのであることを御了承願いたいと思います。  その他のことについてもし御答弁漏れがありましたら御指摘を願います。
  8. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 御承知通り米国フィリピンとの関係から見まして、日比貿易について政府としての確信が持てるか、今後貿易わが国に対して安全に貿易の見通しがついているか、この点を一点と、それからさらに今大野ガルシア協定より一億五千万ドルも多くなっている、こういうことにつきましてはよく詳細に御答弁がございましたが、通商協定締結等わが国利益になるという面もあると思うのだが、もしわが国利益になるような面があるならば、その点はさらに重ねて御答弁を願いたい。この二点。  さらにまたフィリピンについて、二十八年三月沈船引揚協定が締結され、総経費二十九億円を投じて約五十隻の引き揚げを行うことになっておったはずでありますが、このいわゆる中間賠償実施状況はどうなっておりますか。  以上三点についてもう少しく明らかにせられたいのであります。
  9. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お答え申し上げます。日比賠償の問題を早く解決をいたしたいという方針日本側も相なってきたのでございます。またフィリピン側もこれはできるだけ早く解決をしてもらいたいということはむろんのことでございます。その解決をしたいという精神がどこにあるかということは、初めから、日本側はまず第一に日比賠償解決して、国交を正常化して、そして日本東南アジア方面において漸次経済的の発展と申しますか、さような順調な足場をこしらえていく、こういうことに方針があったことは御推察にかたからぬことでございます。これはフィリピン側日本平和関係を回復して、そして貿易経済上の親善関係を進めていく、こういうことは希望するところだという話し合いを、最初から双方の間に合意をもって、この賠償の問題は進めて参ったのでございます。そこで今日までの間に、将来賠償の問題でも解決すれば、貿易の問題なんぞは、これは伸張することは当然のことであるということをフィリピン側もたびたび申しております。そういうことは交渉の間において口頭だけでなくして、書きものについても、そういう意思を表示しておるのでございますが、さようなわけでありまして、この敗戦国として戦後の処置をし、また戦後の経済発展をするという場合におきましては、その負担しておるいろいろな義務がある。国際上の義務がある。賠償のごときものはなるべくすみやかに解決をして、そうしていくことがその基礎であるということは、これは従来はっきりしておることでございます。第一次戦争後のドイツの対外経済発展経路を見ましても、いろいろなことを何してみましても、まずさような地ならしをして進んでいくということが当然の処置でなければならないのでありまして、それができれば、経済発展と申しますか、貿易伸張と申しますか、双方利益のためにさような経済上の関係が密接になるということは、これはほとんど疑いを入れぬところでございます。また単純に、そういう見込みとしてそういうふうに考えて進めておる、こういうことでなしに、さらに貿易の増進ということは貿易協定もこしらえなければなりません。さようなことに、着々この賠償問題が片づけば、それを基礎として、それを手がかりに貿易伸張話し合いが進んでいく手はずに相なっておるのでございます。さようでございますから、この問題と日本経済発展の問題というものが密接に関連をいたしておると申し上げて差しつかえないと思います。単にフィリピン関係だけじゃございません。フィリピン関係解決し、さらに進んでその他の地域に対する同様な問題なんぞを解決していくという機運になってきまするならば、これは大きく日本経済外交平和外交に資することだと、こう考えておる次第でございます。  それから次の点の沈船引き揚げの民間賠償の作業の終了するのは三十二年度でございます。三十二年度でございますが、今日はきわめて順調にこれが進んでおることを申し上げてお答えといたします。大体答弁は済んだと思います。
  10. 吉田萬次

    吉田萬次君 きょうの新聞を見ますると、日比賠償につきまして貿易上非常にそこにアンバランスがある。それについて今度の賠償物資というものに対しても相当注意をしなければならぬということにつきまして、ネリがこの前賠償物資の視察に参りましたときに、一カ月を要して、大は船舶から小はピンセットに至るまで二千数百種類の賠償物資というものを書き上げていったといううわさを聞いております。従ってわが国経済、また将来の貿易方針から見まして、かような、ものを賠償物資に入れるということは、わが国貿易の将来に対して、あるいは現在のあり方に対してどういう影響を及ぼすかということを非常に私は心配するものでありますが、その点と、もう一つは、先ほど池田委員からも御質問がありましたが、二千万ドルの現金賠償というものの根本というものは、いわゆる向う戦災孤児あるいは未亡人というようなものに現金を与えたいというために要求したかに聞いております。これはサンフランシスコ条約の第十四条において、その対象とせずということになっておりまするのと、ただいま大臣の言われました、いわゆるフィリピンがその当時介在しておりません関係から、現金というものは考える必要はないかもしれません。しかしながら要求がそういうものであって、従ってこれに対する方針を誤まるということでありましたならば、将来インドネシアの戦災孤児未亡人に対して、十数倍の人間があるということから考えましたならば、これは非常な重大な問題であると考えまするので、かような問題に対する外相の所見を承わりたいと思います。
  11. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お答え申し上げます。いよいよ賠償問題が片づきまして基礎的の取りきめができますとなると、直ちにその方法、いわゆる細目について相談をしなければなりません。そのときにおきましては、おそらく物資の問題なんぞにつきましては先方も十分に要求もございましょう。また調査もいたしておるのでございましょうが、しかし払う方もまた払う方としての利害関係がございます。そこでそういうことを十分に検討いたしまして、わが方としてはわが国利益を擁護することは、これはやらなければならぬことでございまするから、そういうことによって調節をし、また利益を擁護して参りたいと、こう考えておるのでございます。  それからまた今現金払いを云々ということがございました。これはいろいろな交渉経路においては、いろいろな向う側に言い分があったことは私は否定もいたしません。またそういうことは当然のことでございますが、先ほど申し上げました通りに、わが方としては物資で払うという建前をとり、向うはそれを金にかえてどう使うかということは、あるワク内においてはこれは向うの自由である。こういうことに妥協すべきが順当なことではないかと考えて今進んでおるわけでございます。しかしそれがほかの国との賠償問題に支障があるかないか。またほかの国も同様なことを、またそれを聞き伝えていろいろ主張してくるかもしれない。しかし、そのときには、こちらは、それはこういう事情であって、こうであったのだと言って、わが方の立場や考え方も十分に説明をし、納得を得ることもでき得る、こう考えておるのでありまして、それが直ちにほかの国との関係において支障を来たすとはごうも考えておりませんことを申し上げておきます。
  12. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 ただいまの答弁によりますと、日比賠償については、米国フィリピンの間に特殊な関係があっても、先進国はこれに理解を与え、さらに貿易上には今後支障がなく正常化していく、かような確信があるというふうに大臣答弁をとってよろしいですか。
  13. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今の御質問は、あるいはこのフィリピン米国との関係関連をしての御質問じゃないかと思います。米国は、御承知通りに、フィリピンを領有しておった、米国の一部分であったフィリピンが独立したのでございます。そこで、経済上、また関税方面においても、完全にフィリピンが独立する間、約十年というものは、米国は従来国内法的に取扱っておったフィリピン関税関係上の問題を漸進的にその特恵を放棄していく。そうしてある期間、大体十年のようでございますが、その後においては完全にフィリピンは自由にこれを処理し得る、こういうことになっております。そこでその特恵関税がある間は米国はそれだけ利益を持つわけでございます。これはしかし、従来自分の領土であった関係上当然のことでございます。今、いかなる場合においても特恵関税なんぞというむのはできるだけなくするということが世界の通念でございまして、ガットもそれをやっておるわけでございます。日本も十分にそれを主張しておるわけでございます。そうでございますから、日本米国と同じような特恵をもらうということは、実は実際上不可能でありますし、また時勢に逆行することで、日本としてはなるべくすみやかにさような特恵がなくなるように漸次に馴致していくということが方針でなければならぬ、こう考えます。それは米国関係のことでございますが、さようなことがありますのにもかかわらず、最近のフィリピンに対する貿易伸張ぶりは、統計によりますと非常にたくさん輸出入とも伸張を見ております。この数字は御必要ならばまた調べて差し上げますけれども、非常に伸張を見ております。従いまして、賠償問題なんぞが片づけば、その伸張の度合は少くとも従来よりも多くなるのじゃないか、少くはならぬ、こういう見込みが確かな見込みのようにわれわれは思っておるわけでございます。さようなわけでございますから、今後の貿易は、賠償問題を片づけることによって、さらに伸張をする、こう見当をつけて差しつかえないと私は考えておる次第でございます。
  14. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 次に、大蔵大臣にお伺いいたします。三十一年度予算総額は一兆三百四十九億円となり、これによりまして、一兆円予算という言葉は過去のものではないかというように国民の中に認識する者もあるのであります。財政健全化ということが少しも崩されていないとお考えであるかどうか。また大蔵大臣健全財政を一枚看板にしておられるようにも見えるのでありますが、大蔵大臣のいわゆる健全財政という意味は、常に必ず普通歳入の範囲内でまかなうものであり、公債は絶対に発行しないという意味か。あるいはまた公債を発行しても、経済十分消化の力があり、インフレの懸念が全くなく、しかも積極政策を必要とする情勢になるならば、公債発行を行っても差しつかえないという意味に解してよろしいのか、この点を大蔵大臣にお尋ねいたします。
  15. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。予算総額一兆ということは、健全財政をきわめて端的に示す言葉でありまして、また同時に、健全財政に対する政府の決意を表明する意味を持っておるものであります。単に一兆という数字が実質的に非常な意味を持つものとは私は必ずしも考えていないのでありまして、結局予算規模については、たとえば国民所得についてどういう割合か、今回一兆三百四十九億になりましたですが、これは国民所得に対しまして約一四・八%、これは三十年度の一兆円の予算国民所得に対する割合は同じであります。それから総生産に対する関係から見ますれば、大体総生産の伸びが四・二%でありますが、予算の前年度に対する関係は四・四程度であります。大体経済的に考えましても、バランスがとれる、こういうふうなこともやはり予算規模を見る上の一つの重大なる指標であると私は考えております。そうして予算構成自体が、ただいまお話のように、普通歳入をもって、言いかえれば、租税専売益金、等の普通歳入をもって歳出をまかなう、借入金に依存しない、これはやはり実質的な健全財政の限界である、かように考えておるわけでございます。むろん、財政自体が健全であるかどうかは、どういう方面歳出として使われておるか、いわゆる歳出内容自体にも批判を加えなくてはなりませんが、大体から申し上げると以上のような点であります。なお、公債発行については、財政というものは常に健全性を持続しなくちゃならぬ、そういう意味におきまして、公債借入金というような財源によらないことが常に適当であり、またそうあるべきである。国の経済が順調に行けば租税収入も当然ふえるのでありまして、そういうふうな借入金によらぬ形態がよろしい、こういうことを考えておるのであります。しかし、それは一つの理論的な考え方でありまして、国にはそれぞれの事情もあり、またその場合において国が何をなさむとするかというような事柄もありますので、一概には申し上げかねるのでありますが、国債を発行して、それが民間十分消化ができるというような場合において、全然いかない、こういうようにも必ずしも考えてはおりません。そういう場合においてはとくと考えてみたい、かように考えております。
  16. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 最近数年間の国家財政の構造を検討してみますると、公共事業費が年々削減されて、地方財政費とか、その他の経費に回されてきております。また、農林省関係普通補助金にいたしましても、二十九年度以降年々減少してきております。三十一年度予算について見ましても、農産物増産対策費関係補助金が十一種もなくなって、農業改良基金というものになっておりますし、また災害復旧費にいたしましても、七十二億円も削減されております。地方における過年災害復旧状況から見ましても、こんなに不用になるはずはないのであります。たとえ来年度において不用であるといたしましても、一時的に他に財源を回すということをしないで、進んで食糧増産関係経費に回すべきではないか、これらの状況からみまして、政府食糧自給度向上というわが国農政基本方針が、多少減退してきやしないかという印象を受けるのであります。これが最近の世界的な食糧過剰と、国際収支の一時的好転に安心をして、食糧増産の大方針がぐらついてきた現われではないか、これが農政の後退となって予算の上に現われたのではないかという気さえ起すものがあるのであります。これに対して総理はどうお考えになりますか、もし総理でなければ、大蔵大臣、経審長官等に、どういうお考えであるかということをお尋ねいたします。
  17. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 農林大臣から、お答えいたさせます。
  18. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私から便宜かわってお答えいたします。  ただいま御指摘になりました点につきましては、政府といたしましては、食糧自給度の向上ということは、ゆるがせにすべきものではない。この基本方針は五カ年計画にもわれわれはきめておりまする通りに、五年の将来を見通しまして、人口の増加はありまするけれども、輸入量はふやさないという基本的な方法をきめておるわけでございます。ただ、しかし私といたしましては、現在の農村の事情から考えまして、食糧の自給はこれを増加しなければなりませんけれども、一面農家の経営状態が必ずしもよくなっておりませんし、これについて深い関心を払わなければなりませんので、この農村経営の改善と、食糧の自給度を拡張、拡大するという二つの目標を見合いつつ政策を進めていこうと考えておるのでございます。そういう関係からいたしまして、今予算について御指摘になりました通りに、災害関係等で前年に比べて予算の減っておるものもございますが、これらは他に社会政策、その他当面ぜひ緊急にやらなければなりませんものがございますので、その方面に一時予算を回しておりますけれども、増加がその方面が急になっておりますけれども、農林省関係におきましては、食糧増産はただいま申し上げました通りに、五年間の計画の上に立ってやっておりますので、五カ年計画の完遂の年には今申し上げたような方向にいきたい。これを見合いつつ農家経済の改善、営農の改革という方向にいこうということにいたしている次第で、今年度のような予算を組んだわけでございます。
  19. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 農林大臣より、お答えでありますから、もう二つ関連してお尋ねいたしますが、戦後における農村振興方策というものは、複雑な諸制度によって分立しており、十分な効果をあげ得なかったことは御承知通りであります。これを改めて農村の実態に即した農民の創意と自主性において、新しい村作りをしようというのが、このたびの新農村建設計画であると了承し、ことに青年層の奮起を得て中堅体となす構想を着々として、新農村態勢がそこに芽ばえて、順次実現いたすことと期待いたすものであります。新農村建設計画を推進する特別助成五カ年計画でありますが、提出されました予算は、わずかに計画推進費及び施設費、補助金を合せて十五億円より計上されておらないのであります。当初計画の年割額の半分にしか当っておりません。世界の先進国をつぶさに調査され、また農業政策に対しても相当腹案を抱かれて農林大臣はお帰りのことと思います。農村の充実を来たし、わが国の農産物も順次海外に輸出されんとするところの状態にあるということも御趣旨通りでございます。かかる観点からいたしまして、農林大臣は当初の計画通り進めていく御熱意はあると思うが、予算がこれに伴っておりません。従ってそこに何とか新構想を計画しつつあるというようにもお伺いできますが、この五カ年間を十カ年間にするとか、次の年に、あるいは三年度あたりにおいて、また十分な研究と構想を立てて、そこに大幅にこれを樹立するお考えがあるかどうか、その点をお伺いいたします。
  20. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) ただいまお答え申し上げました通りに、戦後国際的に食糧が非常に不足いたしておりましたときに、国内でどうしても食糧の増産をしなければいけないという非常に大きな要望にこたえて、食糧増産費が非常に強く見積られておりまして、この反面におきましては、御承知通り米価の決定に当りましては、いわゆるバルク・ラインと申しますか、生産費を対象にとらない非常に高回ったものがある。この高回ったものにつきましては農家の負担において米の生産をしておったということでございまして、言葉を強く申しますれば、農民の犠牲において国家の要請にこたえておったということもあるわけでございます。しかしそういう事態はこれ以上続けることは私は適当でない。国際的な食糧の増産に見合いまして、農家の経済の維持確立と見合いつつ増産計画は立てていくべきだ。従って生産費の切り下げになる、土地の改良になるというものには強く打ち出しますけれども、その他の面についてはむしろ農業経営の改善に強く考えを及ぼすべきものであるというふうに考えまして、今御指摘になりました新農村建設計画を始めたわけでございます。そこでこの新農村建設計画につきましては、予算は御指摘の通り半額に一応いたしましたが、これは一面において農業金融等の方から融資をいたそうとか、ないしはまた別途補助金等を組み合せまして進めて参ろうとか、いうようなことをも勘案しつつ、全体の農村の計画としては、五カ年間にこれをすることに方針は変えておりません。ただ初年度でございますから、いろいろ準備等もございますし、すぐに年初からこれに入ることができませんから、一応そういうことにいたしておりまするが、これは引き続き政府といたしましては、しり広がりにやっていきたいというふうに考えておる次第であります。
  21. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 現下のわが国経済に課せられた最大の課題は、経済自立と完全雇用の問題でありまして、この問題を解決するために経済五カ年計画が立てられ、政府の手によって着々実行に移されていることは御承知通りであります。このうち経済自立の方は、政府財政健全化政策と輸出の振興政策等によりまして、三十年度の国際収支は三億八千九百万ドルの黒字を出し、また三十一年度計画におきましても二億ドルの黒字を見込まれ、特需の減少に備えて着々自立化が進められているわけでありますが、ひとり完全雇用の問題だけは依然として困難な問題として残されております。完全失業者の統計を昨年の一月から十一月までの平均で見ますと、六十九万人で、二十九年同期の平均は五十八万人でありまして、かなり高いのであります。また三十年度の新規学校卒業者の就職状況を見てみましても、三十年十一月三十日現在で、就職希望者に対する就職決定率は二五%、これは前年同期の一七%に対しては相当な向上ではありますが、非常に低いのが事実であります。こういう状況に対しまして、友愛精神の主張者であられる鳩山総理はどうお考えになっておられますか。また主管大臣たる清瀬文部大臣は学校卒業者に対する就職対策として、三十一年度においていかなる構想をお持ちになりますか、お伺いしたいのであります。
  22. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいま池田君が言われました通りに、ごくわずかは卒業生の就職率が向上いたしました。けれどもこのくらいの向上では決して満足はできません。非常にわれわれの、心を痛めるものは卒業生の就職であります。ほんとうに気の毒だと心から思っておりまして、どうしてもこれらの就職率をよくするには、やはり経済計画、経済の繁栄政策、これと相待ちまして、就職率の向上をはかるよりほかしかたがないと思っております。これに対しては、政府としては常に全力をあげて努力をしておる次第でございます。
  23. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今の池田さんの御質問関連いたしまして、少しく申し上げたいと存じます。  本年度の卒業予定者は十三万九千人でございます。そのうち就職を希望いたしておるものは十一万一千人でございます。非常に大きな数であります。一月三十一日までに就職の決定いたしたのは、そのうち四万三千人でございます。その後二月一ぱいには、多少進んだと見られまするが、まだ数字は得ておりません。それゆえに、一月三十一日現在では、まだ六万七千人の未就職者があるのでございます。昭和二十七年に初めて新しい制度の大学——新制大学が卒業者を出したのでありまするが、それ以来の成績は、二十七年は九一・七%でありました。初めは相当よかったのです。二十八年は八八・八%に下がりまするし、二十九年には八七・一%に下がっております。漸次就職率が下がりまして、今総理大臣御説明の通りわが国の学校制度と関連して、まことに心配にたえないことでございます。このうちいかなるところが弱点かといえば、やはり二年制の大学が弱点なんです。その就職率が非常に悪くなってきております。そこで根本の策といたしましては、わが国の大学制度の行き方を考えなければならんと存じまして、いずれ参議院においても御審議願いまするが、今回は、臨時教育制度審議会というものを作りまして、ほかにも重要なことがありまするが、わけても大学制度については、専門家の意見を聞いて、十分に再検討いたしたいと思っております。さしあたりのところとしては、労働省と相談をいたしまして、学生就職対策本部なるものを作って、実業家の方にも、また学生並びに父兄の方にも、就職ができるように極力努めておる次第でございます。
  24. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 次に地方財政について一、二質問したいと思います。  地方公共団体は、御承知のごとく住民の意思を最もよく反映した政治形態でありまして、現代民主政治の基盤であることは御承知通りであります。地方公共団体の四割近くが財政に赤字を出し、この処理が国家財政における最重要問題の一つになっていることは、これまた御承知通りであります。そこでお伺いいたしたいのは、先般の臨時国会において、自治庁長官は、二十九年度までの赤字については、再建促進特別措置によって解消し、三十年度の赤字については臨時交付金によって解消する。しこういたしまして、三十一年度においては抜本的な対策を講じて、赤字の出ないようにするということを言われておるのであります。二十九年度までの赤字の解消の進行状況はどうなっておりますか。また三十年度は、単に年度赤字が出ない見込みでありますか、まずもってこの点をお伺いいたします。
  25. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) お答え申し上げます。この間の臨時国会のときに、今、池田さんが申されました通りのことを私は申しました。過去の赤字、すなわち二十九年度までの赤字、それから現在の三十年度の赤字、三十一年度の赤字と、これが出ないようにという考え方のもとに施策を進めておると申し上げました。ただいま御質問の二十九年度までの赤字につきましては、再建措置法によりまして進めております。この法律が昨年の暮にできまして、各地方からだんだんと再建の計画を立てられまして、再建債を出したいと、こういうお考えが昨今集まりつつあります。どんなふうにいくか、こう申し上げますると、申し上げるまでもなく、二十九年度までの赤字は六百四十八億円でございまして、これに対しまして、政府においては四百億円を再建債によってたな上げしていく。その利子を補給していく。こういう手だてをとっております。これが地方議会等を通し、また大蔵省と相談いたしまして、結局どういうようにそのうちの四百億円を出していくか。政府資金と公募債とございますが、四百億円だけを六百四十八億円の中で見込んでおるわけでございます。この計画を立てられまして、健全なる方針のもとに、このたな上げしたる借金を年々返していく、こういう方向に進むべく今地方議会も進んでおりまするし、昨日再建債の処理についての審議会を新たに設けまして、日本銀行の総裁等、お集り願って審議したような次第でございます。これによりまして、四百億円の赤字が解消する計画が進んでいるわけでございますが、もちろん地方のお考えによって、再建債のこの法律によらないものがございます。自主的に、独立的に、みずから再建計画を立てているものがございます。従って再建債によらない赤字団体と再建債による赤字団体と、この二つによりまして、二十九年度前の赤字というものを処理していくのでありますが、なお少し似た問題でございますが、国の直轄事業に対しまして納付金もまだ納めきらない額が八十七億円ばかりでございますが、これは交付公債によってやっていくのでございますから、形式的には赤字の減ることの助けになることと思います。かようにいたしまして、大体本年度、三十一年度においては、二十九年度前の赤字解消のめどがつく考えでございます。申し上げるまでもなく、これは二十九年度前の借金でございまして、三十年度につきましては補正予算まで出していただいてその措置を講じております。三十一年度につきましては、大蔵大臣と相談いたしまして、今御審議を願っておる、今までにない、あるいは自主的財源を作りますとか、あるいは停年制をしきますとか、あるいは国の補助金地方に対して多く出すとか、こういうような長く唱えられて今まで行われなかった問題に手をつけまして、三十一年度における赤字というものの出ないようにという財政計画を進めておる次第でございます。
  26. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 次は財源の偏在是正についてお伺い申したいと思います。現行の地方税制はシャウプ税制でありまして、都市中心の税制であり、農村県と都市県との間に財源の開きが多すぎるのであります。この偏在を是正してやることが三十一年度の地方財政対策の一つの眼目であったと思うのであります。三十一年度予算編成の前提となっている地方財政対策を見ますと、わずかに入場税について不交付団体の分を二割だけ交付団体の方へ回すことにしているにすぎない。当初伝えられましたところの事業税及び住民税の法人分の一部を国税に移し、吸い上げて、交付税特別会計を通じて交付団体に配分するという方法をなぜおとりにならなかったのであるか、この点をまずお伺いしたい。
  27. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) 地方税の改め方につきましては御指摘のような、いわゆる富裕団体と称せられるところから貧弱団体の方へ金を回すという考え方は、地方制度調査会においても答申なされたところでございます。今回はただいま御指摘の通り、入場譲与税しかわずかに行えなかったのでございます。なぜもっと根本的な問題に手をふれなかったかと、こう申し上げますと、今お言葉にありました事業税のごときは、実は非常に俗に言うコクのある税でございまして、これを移すということが非常に大きな問題にほります。また一面に富裕団体と申しまするけれども、たとえば東京のごとき、あるいはたとえば大阪のごとき、非常に他の都市と違いましたいろいろな財政需要、との仕事もしなければならぬ、あの仕事もしなければならぬというものさしがございまするので、一つのものさしで、ただ金が余っているから他へ渡すということはできないのでございます。自治体本来の姿をよく眺めてみますると、この方面からも問題がございます。この税そのものにつきましては、事業税等にふれることは、今の政府の唱えております国、地方を通ずる税制改革のときにとくと考うべき問題である、こういう意味において見送られたのでございます。しかして世間でよく言われるごとくに、東京は何百億円余裕炉あるじゃないか、この余裕という文字も、東京都の使う支出の面をよく考えなければ、すぐこれを貧弱団体に渡すということはできませんので、かような点、税の立場からも、こういう富裕団体の事業面からもよく考えまして、さらにこの問題を掘り下げ検討していきたいというので、はなはだ不満足ながら、今回入場譲与税だけにとどまったような次第でございます。
  28. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 地方財政対策の中でもう一つの大きな問題は、給与費の問題であります。先般地方公務員の給与実態調査の結果、地方財政計画上の人員と実人員との開きが五万一千人あることが明らかとなったのでありますが、この五万一千人が整理されることによって、いわゆる整理が円満に行われることによって財政健全化するということが聞かれるのであります。これに対しましてどういうような方法をおとりになるか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  29. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) 今お言葉のように、昨年の暮に発表いたしました給与実態調査の結果、現在の財政計画と実態調査の開きは五万一千人の差があると記憶しております。給与問題を処理するにつきましては、国家公務員との間の差のないようにしようという大原則がございますので、その措置をとりますということが給与の性質上問題でございます。さらに多くある人をどうして減らすか、これは自治体によっていろいろな事業の性質や自治体そのものの動きによって違いますから、仕事の様を見なければ、姿を見なければこの判断を実行に移すととは非常にむずかしい問題でございます。しかしながら、他の一面において町村合併の問題もございますし、また新陳代謝の意味において、非常に世間で地方財政は放漫と申しますが、なかなかこのごろは再建のために犠牲になって、大胆に、また率直な整理案を立てているようなところがございます。こういうのが大体一万五千人見当あるかと思います。こういうふうにして給与を直し、人を減らしてゆくという方向におきまして、ただいま財政計画におきましては、その一万五千人のうち、過去の整理された者を除いて約九千人ばかり減ることの計画を立てております。むろんこれをやりますのは地方自治体そのものでございますので、国家財政におけるがごとき何人を整理するというようなことはできません。自治体といたしましては、みずからの立場におきましてその健全な財政を維持してゆくよう、御指摘のような方向に進んでいることと信じます。
  30. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 一般地方債については、来年度は公債費の圧迫緩和のために、元本において八十億円の借りかえが行われることになっておりますが、現在地方財政において給与費の問題に次いで大きな負担となっております公債費の状況から考えますれば、さらに多くの地方債について借りかえの措置を行うべきではないか。また地方債の引受先についても、政府資金による引き受けが四百五十億円、公募が二百九十億円となっておりますが、公募の分をもっと少くし、政府資金による引き受けを多くすべきではないか、この点につきましてお伺いいたします。
  31. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) お答え申し上げます。地方債につきましては、御心配なさるごとくに過去のものも非常に多くなって、四千七、八百億ですかになっております。それから年々の、非募債主義を国がとるにもかかわらず、地方におきましては地方公債を出していかなければならぬ。そこで過去のものについては借りかえの問題がございます。また御指摘のような金を政府資金にもっと頼ったらどうか、出してもらったらどうか、こういう問題がございますが、これは大蔵大臣からお答え願うのが正しいことでありますが、私どももこの点につきましてでき得る限りの心配を大蔵省側にも頼みまして、その結果精一ぱいあそこのところの数字までこぎつけたのでございます。もちろんまだ利子補給の問題とか、地方債そのものの処理というものは大きな問題でございますが、現下の国の財政の建前から、地方財政要求を入れ得る限度というものは、ただいまのところ今回予算の審議を願っておる限度以上には進められないことを残念に思います。ただし、地方財政問題というものの将来の一番残った問題は、私ども抜本的と申しましたが、この点はそこまで及びませんでした。この点につきましては、金をどういうふうに作って、政府資金をどういうふうにふやしてゆくのか、利子補給をどうしてゆくのかという問題等が今後に残された問題であると信じます。
  32. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 農業に対する減税についてお伺いしたいと思います。三十一年度の税制改正において勤労所得税につきましては、給与所得の控除引き上げによりまして百五十一億の減税を予定されておりますことはまことに当を得たことであろうと思います。給与所得につきましては源泉徴収でありますから、所得の把握率は百パーセントであり、非常にきびしいことは事実でありますが、農民の所得の把握率もそれに決して劣らない高いものであります。すなわち、最近の農家経済調査によると、その把握率は七三%にねっておりまして、中小企業者の四〇ないし五〇%に比してかなり高くなっておるのであります。また三十年度の農業所得に対しまして一七・五%しか占めておらないにもかかわらず、固定資産税についてこれを見まするならば、固定資産税総額九百六十九億円に対しまして、そのうち農家の負担金は三百五十四億円であります。三六%六に当っております。またその他各種の法定外普通税あるいはその他の公課において多額の負担をしておるのであります。各種の奉仕労働、夫役もいたしております。現在の農家の税負担は非常に過大であるのであります。農家の固定資産税について減税を行う意思があるか、考えがありますか、自治庁長官並びに大蔵大臣にお伺いいたします。
  33. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) 税金が高いということは、国税、地方税を通じて定説にもなっているところでありまして、わけて農村がどうか、こういうお言葉でございまして、本年の計画におきましても、初めのころは地方制度調査会で農業事業税八十億円を見込んだような案が出されたのでございますが、私どもは農業政策の建前から見ましても、従来の負担の関係から見ましても、今この際これを踏み切るだけの勇気がございません。しかし問題は大きいのでございまするから、税制改革のときに譲ろう、こういうようなわけでございます。  問題の固定資産税が高いか、減らすか、こういう問題でございますが、申し上げるまでもなく、固定資産税の評価は収益の還元の法則で見出すのでございます。本年度につきましては前年度の評価をもってしております。その評価はどのくらいな割合になっておるかと申し上げますと、二十七年から二十九年の三年間の平均反当りが六万二千七百六十八円になっております。二十七年から八年、九年、三年の平均反当り収益還元の方式で算定した額は六万二千七百六十八円になっておりますが、その六割程度、それに掛けるのその六割程度、すなわち三万五千六百六円になるのでございます。これは全国平均でございまするから、収益の評価からその六割を見ている、しかも前年の額を上げないという法難になっておりまするので、本年は三万五千六百六円、高くない率と私は信じます。なぜ高くないか、一つの標準を申しますれば、勧業銀行における田畑の反当りの販売価額が十万円見当と承わっております。それに対して三万五千円でございまするから三分の一近いところへいっておるので、まずこの辺ならば農家に対してもがまんをしていただきたい、かように考える次第でございます。
  34. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 次に米の予約買い上げに対する減税予算でありますが、石当り千二百円に早場の格差を加えたものを非課税とする減税が三十一年度の予算にも計上されてあると思うのでありますが、やはり前年通り実行する考えか。食糧増産、自給度向上の上から非常な農村によき印象を与えるものであると思うのでありまして、重ねてお伺いいたします。
  35. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 三十一年度産米の農家の売却代金につきまして一部ある程度の非課税にしてはどうか、これはそういう必要もあるかとも思うのでありますが、今後の状況を見ましてきめたい、かように考えております。
  36. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 次に給与担当大臣にお伺いいたします。  地域給の不均衡是正については政府においても非常に研究調査をされておるということを聞いております。たとえば北海道から秋田、青森のような東北、新潟、長野、富山というような北陸地方の地域給はきわめて恵まれていないということは大臣がお知りの通りだと……。ことに長野県に一つの例をとってみますならば、県庁の所在地であるところの長野市あるいはその他の松本を初めとして市が一級地でありますが、他はないのであります。かつて五十カ町村が一級地であったのが現在はなくなっております。公務員に対し非常な不利不便を与えておりますが、特に県庁の所在地であって地域給が一級地であるところは四十六都道府県中長野市外二、三県にすぎないのであります。一方において寒冷地手当につきましても四級地になっておりますが、その手当も十分と言えない状況であるのでありまして、積雪寒冷地帯における都市、町村は地域給にも恵まれず、寒冷地手当等も十分に恵まれていないということは、これまた御承知通りであります。今年のごとく降雪がはなはだしく、今もって厳寒の候を呈するような土地に住めるところの公務員の給与の不利は何とかして是正してやらなければならないと思います。一つの例を申し上げますならば、二万ぐらいの給与を取る公務員が、今日の四級地から長野県へ参りますならば月三千、年に三万六千円ぐらいの給与の減額を来たすのでありまして、これは昨年度、一昨年度においては、両院の人事委員会を通過しておるのでございまして、早期に、全国の公務員の給与体制から申しまして、是正していかなければならないという世論の叫びでございます。これに対しましてどういう御対策をお立てになっておりますか、またどういう今後の御方針でございますか、御所見を伺いたいと思います。
  37. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 勤務地手当のことにつきましては、昭和二十九年五月に人事院から勧告がございまして、私どももこの勤務地手当のことについてはただいま御指摘のようにいろいろな問題があることをよく承知しておるのでございます。この勤務地手当の問題につきまして一たびいう是正いたしますと、今度はいろいろなそれに伴って難問題も出て参ります。たとえば人事の交流に困難を来たすとか、あるいはまた地域区分の基準決定について御承知のように各地から陳情、請願等が続出いたして参りまして、収拾のつかないような状態になるわけでありまして、人事院の二十九年五月の勧告をかりにこれを実施いたしましても、莫大なる国費を要することは御承知通りでございます。そこで重大な問題でございますから、政府は御承知のように、公務員制度調査会にこれらの問題も慎重に御検討願いまして、その答申案が出ております。この答申案に基いて公務員その他の給与体系を根本的に是正するという建前でただいま研究いたしておる次第でございます。
  38. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 積雪寒冷地帯における住民の負担の状態は、温暖地方に比して過重であり、気象条件が地方産業の伸展に重大なる障害となっていることはこれまた御存じの通りであります。従って政府においては地方交付税法に基く寒冷適正化を初め、積雪地帯産業振興対策を講ずる必要ありと思うのであります。ことに寒冷地帯の住民の越冬のための生活費は増額を来たす結果、公務員はもちろん、一般住民に対しても安定策を樹立いたす必要あると思います。冬期間中職のない住民に対し失対事業を救援するの施策を研究、または構想をお立てになっておりますか。昨日自民党総務会で積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に対する特別措置法案を議員提出として国会に提出することとなったと新聞に報道されました。これに対しまして経済審議庁の長官または労働大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  39. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 前半の問題については審議庁長官からお答えがあると存じますが、積雪寒冷単作地帯等について今まで特別立法がございました。そこでただいま御指摘のような施策を議員提出法律案でおやりになるというお話も承わっておりますが、労働省では特にこの冬期間仕事のない地方にも、御承知のように積雪を排除するような事業を特に選びまして、失業対策事業に加えてやっておることも御承知通りでありますが、なお東北、北海道、北陸方面についてのそういう時期における失業対策事業については、労働省におきましてもそれぞれの地方の要望に応じまして、できるだけのお手伝いをいたしておる次第であります。
  40. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答えいたします。長期経済計画を立てまするにおきまして、人口問題を解決する上においてできるだけ未開発地域に入口を吸収したいと、こういう建前からいたしますというと、東北及び北海道のごときは冬季の間の仕事のないところにどうしても人を入れなければならない。それをやるには冬季に対する事業をどういう仕事をやったらいいか、こういうふうなことにつきましては特別の考慮を払いたいと思っております。
  41. 中山福藏

    ○中山福藏君 まず私は総理大臣に御質問をいたしたいと思います。総理は先月二十九日の羽生委員の質疑に答えられまして、日ソ交渉が万一決裂したならば責任をとると、こういうお言葉を承わったのであります。この言葉は非常に重大なる意義を持っていると考える。簡単に申しますると、鳩山内閣の運命はソ連の掌中ににぎられたと、こういうことに落ちついてくるのじゃないかと思う。なぜかならば、鳩山内閣を倒そうと思いますれば、ソ連がこの日ソ交渉を決裂さしたらそれで終りなのです。これはまことに重大なお言葉だと考えますが、もし日ソ交渉妥結させようと思いますれば、そういう言辞のもとにおきましては、屈辱外交というものを結局やって、そうして条約の締結というところに落ちついてこなければならぬ、論理的にそうなると思う。そこで鳩山首相は責任をとるとおっしゃったのはどういう意味なのでしょうか。これは内外に対する影響は相当大であると考えますから、この点を一つ鮮明にしていただきたい。まずこれを首相にお尋ねいたします。
  42. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はソ連との国交を正常化するということは、世界の平和のためにも、日本の平和のためにも非常になさねばならぬことと思っておりますので、これに対しては非常な責任をもって自分は考えております。責任をとると申しましたのは、私は非常な熱意のあるということをこの言葉をもって表わしたつもりでおります。
  43. 中山福藏

    ○中山福藏君 責任をとるという言葉は、従来の慣例に従いますると、内閣は総辞職をするという意味にとれる。でございますから、私は特にその点を明確にしておかれないと、非常獄影響が現われてくるのじゃないかと存じましたので、一言その点に触れたのです。責任をとるというのは、内閣総辞職という意味じゃないのですか、重ねてお伺いいたします。
  44. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) あなたは、その私が明確にするということが屈辱外交の意味になるというような御論でありまするから、これはさほどに明瞭にしない方がむしろいいのじゃないでしょうか。
  45. 中山福藏

    ○中山福藏君 明瞭にしないでもいいと仰せられれば明瞭にせずにおきましょう。ただし、すべて人間は常識を持っておりまするから、その言葉を常識的に判断する問題はまた別であります。一応さように承わっておきます。  質問の第二点は、外務大臣にも関係ありますから、よくお聞きを願いたい。昨年の暮でございましたか、ことしにかけて、東南アジア公館長会議というものを開かれた。結論的に申し上げますると、五つの要綱が発表されております。第一に貿易省を設置しちゃいかぬ。第二にコロンボ計画というものをあくまでも援助するために、経済的な裏づけをしておかなければなるまい、これが第二。それから第三に外交官に対する門戸開放をやらなければいかぬ。第四は何かと言えば、冷房装置をやれ、公館に冷房装置を設けなければいかぬ、それから宿舎の提供を十分にしなければいかぬ。第五はどういうことを言っておられるかというと、研究生、留学生を派遣しろ、これだけで終っておるのですね。これくらいのものをそうぞうしくこの東京に公館長の会議を開かれて首脳者をお呼び出しになって、そうして外相みずからが出て、その外相の口をついて最初に出たものは何かというと、経済外交の推進、この一点だけです。これくらいのことで東南アジア公館長会議を開く必要があるかどうか。私をしてこれを言わしむれば、実にこれはあぜんたる気持になる。あれはこれだけですか。まだほかに何か重要な決議があったでしょうか、それをまずお伺いいたしておきます。
  46. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 公館長会議を東京で開きましたことは、その通りでございます。そのときにどういうことを議したか、意見の交換をしたかということは、正式には発表したものはございません。いろいろ報道はございました。そして今御指摘のようなことも議論に上ったことは鱗雲のようでございます。もっとも公館長会議全部について私は出席いたしておりません。しかしながら、かようなアジア地域における公館長を東京に招集をいたしまして、親しく政府考え方もこれらの公館長の頭に注ぎ込み、また現地の状況を十分に政府方面に報告をせしめるということは、これは非常に重要な意義を持ちまして、その点には効果をあげたと信じます。また各公館長も東京に来ていろいろなことを、意見の交換もして、非常に有益であったといって帰っておる次第でございます。そうでございますから、そこにおいて討議をしたことが報道されたようなことだけであると、こう申し上げるわけには参りません。参りませんが、かような会議の性質として、各方面にわたって連絡をし、そして打ち合せをしたと、こういうことは、将来の日本東南アジア方面に対する外交上の活動、特に経済外交方面においても有意義であったと、こう考えておる次第でございます。
  47. 中山福藏

    ○中山福藏君 私は外交というものは、将来の日本の立場としても輸出貿易を振興するという意味から非常に重大な意義があることは、私が言わないでも外務大臣とくと御承知通りと存じます。しかもその点について経済外交の推進という新しい言葉を用いておられるくらい、これは東南アジアにとっては大きな外交上の推進力とはり、その影響するところ甚大だと考えておる。しかし日本の外務省のとられている方針は、これはやはり従来のいわゆる慣行的な外交をやっておられるので、少しも斬新味が現われていないのじゃないかとこう思う。はなはだ失礼な申し上げようかもしれませんが、私はそう考えておる。御承知通り、この東南アジアに対する外交というものは、歴史を基礎にしなければ外交はできない。ソ連というものが歴史の事実に基いてこの原住民の心理状態をつかんで外交をやっておる。御承知通りフルシチョフがビルマに行きましたときにはどういうことをやったかというと、英国というものはビルマより文明はずっとおくれておったのだ。しかるにおくれた英国というものが先進国のビルマを支配しておった。これはけしからぬと、これは歴史というものを利用しておる。三、四日前にヨルダンのフセイン国王がグラブ中将という者を解任した、アラブ軍の長官を解任しました。何を理由にしたかというと、何がそこにこの問題を持ってきたかというと、歴史的な心理的反撥がそこに持ってきた。英国というものによって長く支配されたわれわれは、民族主義の上に立って断じて立ち上らなければならない。歴史がものを言っていると、だからこれと同じくブルガーニンとフルシチョフの外交というのは歴史外交ですね。これは言葉からいいますと、ことごとく歴史を利用して被圧迫民族を扇動して、そうして中立的立場にあったものを味方に引き入れようとするのがソ連の外交です。この過去の歴史というものを見落しておったのでは、この東南アジアの外交というものはできない。幾らイギリスが力を入れても、また直接、間接に恩恵を施しておるアメリカがこの東南アジアを引き込もうとしても、英国の親類筋に当るアメリカにそう容易になびくはずがない。英国というもの、オランダというもの、フランスというもの、それからポルトガルというものが東南アジアを支配しておったことは、これは過去の事実であります。この事実に対する反撥心というものがコロンボ会議の結果に現われているのです。コロンボ会議の最後の結論はどうなったかというと、東南アジア民族の独立ということだった。植民地主義の反対を実行しなければいかぬ、こうなったのであります。この二点がコロンボ会議の結論なんであります。   〔委員長退席、理事池田宇右衞門君着席〕 これは歴史がこの結論を持ってきている。東南アジアでもアラブでもすべてそうであります。この歴史上の経路を見落した日本の外交は、世界の情勢の動きに対しては何らの価値もないのではないか、こういう問題に対してなぜ東南アジア公館長会議において議論がなかったか、そういう問題は論ぜられましたかどうか。この際確めておきたい。
  48. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お話の要点は、アジア方面における民族主義を尊重しろ、こういうことに尽きておると私は思います。  一体、民族主義がどういうわけで起ってきたか。御承知通りに第一次世界戦争においてはヨーロッパの民族主義が確立しましてヨーロッパの各国が興ってきた。第二次世界戦争においてはアジア、ひいてはアフリカ方面の民族主義が確立すべき時期であると、こう歴史家は見ておる。これは見落ししてならぬことはむろんのことであります。しかもそのアジアの民族主義の確立については、私は日本の戦争を何ら批判し、もしくは弁護するということは少しもいたすものではございませんけれども、しかしながら、第二次世界戦争——太平洋戦争というものが大きなここに関係を持っておるということは否定することができません。この意味においては、私は日本はアジアの民族主義に貢献したという意味において、日本人としてもややその点においては満足感を持つものでございます。しかしそれはそれとしておきまして、これはどうしても民族主義を尊重しなければならない、これが根本であることはむろんのことでございます。  ソ連のことを、言われましたが、むしろソ連が民族主義を絶えず利用して、そうしていろいろ反西欧的の宣伝に近い政策を持っておるということはその通りでございます。われわれは何も他国を排斥するためにこれを認める必要はございません。しかし日本はアジアの一国として自分の体面から言ってもアジア各民族の民族主義に対しては最も同情を表するものであることはこれは当然のことでございます。そうして当然のことを十分に理解してもらう。東南アジアに対する経済進出と言ってもなかなか容易なものではございません。先方の状態をよく日本が理解をし、日本においてはまた先方に対する好意が十分にあるということを向うに理解してもらって、そうしてそういう基礎のもとに輸出経済上の伸展ができるのでございますから、むろん外交上におきましては民族主義に重きを置くということはこれは当然のことでございまして、それは日本の外交の一つの大きな支柱であることは言うまでもございません。従いまして、さようなことを頭に置いて、この公館長会議などにおいてもいろいろ意見の交換のあったこともこれは当然のことでございます。さようなことで十分に現地の状況などを報告せしめて、そうして理解に努めたわけでございます。
  49. 吉田法晴

    吉田法晴君 関連。ちょっと重ねてお尋ねいたしますが、今の外務大臣の御答弁中、これは大東亜戦争あるいは太平洋戦争と呼ばれておりますあの第二次大戦、日本から起って参りましたアジアの戦争によってアジアの民族主義の興隆に寄与した、こういう意味の御答弁がございましたが、重ねてこの点をもう少し明確に願いたいと思います。戦争をほめるわけじゃない、謳歌するわけじゃないけれども、民族主義の興隆に寄与した、こういうお話でございますが、名前をあげられませんでしたが、大東亜戦争によってアジアの民族主義の興隆に日本が寄与した、こういう意味であったかと思います。どういう意味と経緯でそういう民族主義が興隆したのだ、日本が戦争によってあるいはイギリスあるいはオランダ、その他の帝国主義の勢力を駆逐をしたからそれで民族主義が興隆した、こういう御意味なのでしょうか。世界はかっての……、大へん失礼ですが、あなた自身の戦犯にも関連をいたしましたような過去の思想があるように観取いたしました。もう少し詳しく御説明をいただきたい。
  50. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私の御説明は、さような戦争によって日本がどうしたということをすぐ申し上げるつもりではございませんでした。しかし今日の歴史で、この第二次世界戦争によってアジア諸国が次々にと独立をしていったという事実は、これは歴史の事実でございます。そのことを私は申して、もしその事実を認めるなら、またこれは正当な行き道でございます。そこで日本もその正道に乗っておる民主主義というものについては十分に考慮を加えて、そして同情を持っていかなければならぬ。そういうことがわれわれの平和外交と称する、また経済外交と称するものの背景になって進んでいくことが必要である、こういうことを申し上げた次第でございます。
  51. 吉田法晴

    吉田法晴君 大へん失礼ですけれども……。第二次大戦によってアジアの各民族が独立した、こういう事実を述べられたのじゃなかった、先ほどは。日本が民主主義の興隆に寄与をした、こういう御答弁でしたから、日本が民主主義の興隆に寄与をしたというのは、その前の方に戦争の肯定をする、あるいは奨励をするわけではないと、こういうお話でしたから、戦争によって民族の独立に日本が寄与をした、こういう意味ですか、こういう質問をいたしたのであります。日本とそれからアジアの各民族の独立とにどういう関連があるのか、それと大東亜戦争というものと国連があったとお考えになりますかどうか、それをもう少し明確に願いたいと思います。
  52. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私はその点はこれは歴史専門家にまかしていきたいという従来の考え方でございます。私どもが絶えずアジアの民族主義ということを主張しておったことから見て、私はそのアジア民族のアジア独立がだんだんできてきたことについて、私自身がこれは非常にけっこうなことであるといって幾分の満足感を持っておると、こう申し上げた点でございます。
  53. 中山福藏

    ○中山福藏君 今、お答えを聞いていますと、私の尋ねましたことを少し曲解しておられるように思うが、私は、歴史に基く心理作用というものをいかに利用するかということを申し上げておるわけです。東南アジアの外交を推進するためには、過去の、歴史を基盤として、この歴史の上に立った東南アジア原住民族の心理というものがどういうふうに動いていくか、その動いた先端に日本というものが乗っていかなければ、東南アジアの貿易の推進なんかというようなものは決してできるものじゃない。従ってこの点を巧妙に利用しておるのがソ連である。ソ連というものはその点においてすでに英米というものをしりえに瞠若たらしめておるということを申し上げておる。そこで日本が東南アジア貿易、いわゆる経済外交の推進をやるには、日本及び日本人の現在の心境を十分徹底せしめなければ経済外交は伸びていかないと思う。吉田内閣時代から相当に東南アジア貿易というものは力を入れておられる。しかるに昨年の貿易関係から見ましても、むしろアフリカ貿易の方が東南アジア貿易にこえておるのじゃないかとすら私は見ておる。そういうように一向効果が現われないというのは、こういう外交の打つ手に新天地を開拓するという気分に欠けておるのじゃないか、従来の惰性に生活しておるような外交では、私はとうていあなた方の御期待というものは現われてこないのじゃないかということを憂えますがゆえにこの質問をあえてするわけです。要約すれば、現在の東南アジアが日本におそれているのは何かというと、もう一回日本というものは侵略してくるのじゃないか、この点なんです。ゆえにこの憂いを払拭するということが外交方針しても、また外務省としても努力をされなければ効果は現われません。その点に対する構想はきまっておるのでしょうか、どうでしょうか。その具体策はどういうところにねらいを置いておられるのか、それを一つ承わっておきたい。これは国家のためですから、遠慮なく私はお尋ねする。
  54. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 御意見はほんとうに重要なことだと思います。従来の、歴史のお話がありましたが、歴史によって日本は非常に誤解を受けておるということは事実でございます。そこでその誤解を解くことが、特に東南アジア方面においては最も大きな外交機関の使命であるということもはっきり申し上げて差しつかえないのでございます。これは非常に時日を要します。また忍耐を要します。それは相当困難な事業でございます。しかしながら、それをやらなければすべての日本の海外発展はこれは期待することができません。相手方が十分に日本の真意を了解してくれるということが非常に必要でございます。先ほど申し上げました民族主義を日本が了解するということは、相手方の事情をよく了解するという方面でございます。しかし、それと同時に日本の真意を了解せしめるということがある意味においてさらに必要なことでございます。そこで日本は侵略の意向は少しも持たないのだ、あくまでも平和的手段でいくんだと、おつき合いをするんだと、これは私どもが局に当りましても絶えず政府方針として宣明をしてきたところでございます。その方針によって出先も行動をしてきたのでございます。そこで日本は一切侵略の意思はないのだということを証明するために、幾多のことを時と場合によってはやらなければなりません。たとえば日本がバンドン会議において国際的の紛争はあくまで平和的手段でやるのであって、これは力によって紛争を解決することは一切反対であるという大きな主義を高らかに掲げたのもその一端でございました。それからまた日本といたしましては、もし相手方がそれを希望するにおいては、われわれは国際間の、両国間の、相手国との間の紛争は平和的手段においてあくまで解決するんだということをはっきりと約束することに少しもやぶさかではございません。またさような意味のことを相手方に十分に理解せしめて、そうして日本の平和的の考え方を理解せしめる、過去の誤解を一掃するということに極力努めておるわけでございます。それがために、実は東南アジア方面における過去の誤解は漸次に解けてきたと申し上げて差しつかえはないと思います。特にシンガポールを中心とする状況についても十分報告を受けておるのでございます。その報告は、外務省出先機関の報告だけではございません。その国の人々の直接の話し合いによって確かめておるのでありますが、非常に空気が改善されたということでございます。これは私ども喜ぶべきことだと思います。それが何も在外機関の活動によってそうなったのだということをここで御吹聴申し上げるわけではございません。時が一つ解決し、日本国民全体の努力がそこにきたのでございます。しかしそれに呼応して在外公館の機関もその方針によってこれまで仕事をして参ったのでございます。さらにこれが一そう改善をしていくことにあらゆる努力を費したいと、こう考えておる次第でございます。
  55. 中山福藏

    ○中山福藏君 時間がありませんから、くどいことは申し上げかねますが、東南アジアの公館長会議の結論を五項目拝見しまして、実に国家のために泣いた。あれくらいのことでしたら、私は別に大げさな大騒ぎをやって東京に御招集なさる必要はないと、こう考えております。外交官という名誉の地位に安居するということが、私はいわゆる独創力というものを発揮しない理由だと考えております。今日の外交というものは、戦前の外交とは非常に日本の立場が違っておりまして、常に独創力というものを外交の方針の上に打ち出さなければ、今後の日本のまことに窮屈な立場という、ものを打開することはできぬのじゃないか。そういう意味において、実はお尋ねしておるわけです。それで冷房装置をしろとかそういうことは児戯に類しておることだという私は感じを受けましたから、特にそのことを取り上げたわけであります。   (「同感」と呼ぶ者あり)  そこで、東南アジヤに関係のある問題だから、高碕長官にお尋ねしますが、昨年の十月のコロンボ会議へ石橋さんがおいでになった。そのときにどういうことを石橋さんが発議したかと申しますと、モデル工場を設置する、あるいは技術訓練センターを作る、あるいは資源開発に協力する、従って日本に帰ったならば外務省を中心にしてその推進方法というものを談合するのだということを発表しておられる。あなたはその御協議を受けられて、何か政府として新しい構想というものが、その点において生まれ出たでしょうか。この点をお伺いしておきたい。   〔理事池田宇右衞門君退席、委員長着席〕
  56. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) コロンボ会議の結果、日本側としていろいろ主張いたしましたことは、よく通産大臣とも打ち合せてやったわけでございまして、その結果によりまして、現在経済企画庁といたしましても、どういう方法でやるかということについては、今審議すると同時に、相手方もあることでありますから、その方のことにつきましては逐次交渉しておるわけであります。
  57. 中山福藏

    ○中山福藏君 昨年の十月からだいぶ日もたっておりますがね。ただいまお聞きしたのは、新聞の発表した事柄以外には一歩も出ていないと思うのです。もう少し深い何か方策というものが、すでに講ぜられていなくちゃならぬだろうと私は思うのです。石橋さんは二、三日前の小林政夫委員質問に答えて、下僚の答弁ととんちんかんなことを言われた。あのたくさんな国費を使って海外へ行かれて、ただ新聞にああいうことを発表しただけで、何ら実行に着手していないでは困るのでありますが、もう少し何かはっきりした線は出ていないのでしょうか。お尋ねいたします。
  58. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) すなわち関係する方面が多いわけでございまして、これを日本だけでそういうものを主張すべきものでなく、相手方があるものでありますから、相手方の意向等もよくそんたくしなければなりません。そういう点から今、非公式にいろいろな点を経済企画庁は検討いたしておるわけであります。
  59. 中山福藏

    ○中山福藏君 そこでもう一点高碕長官にお尋ねしておきますが、これは東南アジア経済外交の推進という点に関連しておりますからお尋ねしておきます。あなたは経済六カ年計画で昭和三十五年度には大体輸出総額というものを二十六億六千万ドルという標準を立てておられるようだ、そうして雇用の拡大と経済水準の向上をはかる、こういうようになっている。ところがその成否は一にかかって海外の動向によって決定せられると思う。いわゆる日本においては産業の合理化あるいは海外の動向を見きわめて貿易の振興対策というものを立てるということになりますが、万一そのあなたの見込みがはずれて、雇用の拡大あるいは経済水準の向上ができなんだというようなときには、それに肩がわりをするところの方策は何か別ワクを立てておられますか、その目標がはずれたら、この六カ年計画というものは水泡に帰するというようなことになるのじゃないか、私はただいまの外交上の問題に関連してその点を確かめておきます。
  60. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申します。過去の実績から申しまして、私は五カ年後に二十六億五千万ドルの輸出は私は容易だと思っております。あるいはもっと上回るということを見当においてやっておるわけでございますが、しからばそういうことをやってできるかと、こういう問題でございますが、これは一に海外の情勢にかかってくることでございますが、ただいまのわれわれの見当では、非常に海外の情勢が悪化するとも考えられず、またこれが国際的な大きな変化が起るということはこれはまあ別でありますが、国際情勢の変化というものは、現状でいけば大体の見当はつくものだということの目安をもってやっておるわけでありますが、それにつきましても、やはり貿易のやり方につきましては従前とは方針を変えなければならぬ。で、それは計画にも織り込んでおりますが、従来は綿製品が主体であったのを、これは繊維製品を輸出いたしますにつきましても、化学繊維にどんどんかわっていくだろう。また輸出の大きなアイテムといたしまして、機械類、運搬機械というような機械類に重きを置いておると同時に、また東南アジアにつきましては、賠償問題をまず解決して、相手方の感情をよく融和させて、そうして経済協力をし、同時に投資もし、同時に彼らと一緒に彼らの仕事をよくし、彼らの資源を開発するというようなことでもっていけば、これは必ずできる。そういう方針を立てて進んでおるわけでありますから、私はこの経済五カ年計画における二十六億万千万ドルの輸出は容易にできるという感じでやっておりますから、できなかった場合にはどうするかということはまだ考えておりません。
  61. 中山福藏

    ○中山福藏君 できなかった場合にはどうするかを考えていないでは、これは政府の当路者としてはまことに職務怠慢じゃないかと思うのです。元来政治というものはこれは小細工じゃいけない。玉突きと同じですよ。玉を左に突いたら結局しまいにはどこの穴に落ちて行くかその穴を見きわめていくのが政治です。政府にその玉の落ちていく見きわめる力がなければ、内閣として政治を担当する力はない。で、私はそういうところに目標を置いてお尋ねしておるわけです。  それから外務大臣にまた逆戻りしてお尋ねしたい。一月の三十日のワシントンの特電によりますと、陸軍長官のブラッカーがアメリカに帰って、戦略的に必要がある間は沖繩は返さないと発表しました。戦略的の必要とはいかなる戦略的の必要か、その条件というのはどういうものか、外務省あたりではすでにそれははっきりしておるわけでしょうが、その必要の間は日本に返さない。しからばその必要の条件が満たされるのはどういう場合か、それが具現した場合においてはあの島を直ちに返すのか、それをはっきりと外務省から承りたい。
  62. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今お話新聞報道はちょっと私は記憶をいたしておりません。おりませんけれども、私どもはこう了解しております。世界の情勢にも関係をいたしますが、主として東亜の形勢が変化して一平和的になって、そうしてアメリカが特に沖繩に軍事基地を持つ必要がないと、こういうようなことになったときには、アメリカはこれを日本に返す、それまでは日本に潜在主権は認めるけれども、いろいろな行政、司法等の統治権はアメリカが持たなければならない、こう言っておることを承知いたしております。そこで今のアメリカの軍事専門家の言説もそういうことを頭において言っておることだと推測されます。それでは一体この平和的事態になって必要がないと認める時期はどういう時期かと、こういうことになりますと、これは私は世界のだんだん形勢の変化も見なければなりません。そしてその変化に応じて、結局はこれまた外交折衝の問題になると思います。アメリカがどうしてもその時期でないと、こういう場合においても、日本から見ればその時期であるというふうに観察し得ないとも限りません。それは意見の交換をし、折衝をしてこれをきめなければならないと考えております。
  63. 中山福藏

    ○中山福藏君 そこがアメリカ側がきめるのか、日本側がきめるのかということは、これはそのときになって交渉しないとわかりませんでしょうが、そこで一つ問題になってくるのは、その沖繩の必要な事情というのは何かというと、台湾問題というものが解決しないからです。それで台湾はみずから中国全体の主権者であるということを唱えている、中共は台湾を含めた自分の方炉主権者であるということをこれは世界に宣言しておるわけです。まあインドとかイギリスとかいうのはその方にちょうちんを持っておるわけです。ところがこの二つの中国に対する日本の外交の基本方針というのは、日本にないのじゃないか。この二つのものに対する現実の問題を解決する具体的な方針を見せてもらいたい。しかも中共に対して国民政府は交戦団体としての承認も与えていない、日本も交戦団体として認めていない。そうして日本の二つの中国に対する方針は、一にアメリカの動向によって付随的にきまっていくという外観を呈している、少くとも日本としての指導的な立場に立った外交の方針というのがないような感じを受ける。しかしてその二つの中国に対する基本的外交方針政府にできておるのか、できていないのか、それを承っておきたい。かりにアメリカがどうあろうとも、日本はこうするのだという外交方針ができているのでしょうか。
  64. 重光葵

    国務大臣重光葵君) その問題は、これは日本の立場として、日本の外交方針として、きわめて重要な一点でございます。そうしてそれについては過去において私の外交演説等においてもその根本問題は繰り返し申し上げておる通りであります。二つの中国と言われます中国は、今、日本政府としては台湾国民政府を中国政府として承認しておる、こういうことでございます。これは今の内閣は承認したという意味のものではありません。日本が承認しておる、過去において。これはわれわれとしては十分に尊重をいたさなければなりません。しかしながら同時に事実上シナ大陸において大きな勢力すなわち中共の政権がここに設立されておるというこの事実を見のがすわけには参りません。隣国といたしましては、必要に応じて、特に人道上の問題に関するがごとき引き揚げ問題等においては、十分に道を通じてその目的を達するようにしなければなりません、これははっきりしている。しかしながら今直ちに国民政府の承認を否認して、そうして中共政府をかわって承認するということは、日本国際的の立場からいって、また国際全体の日本の信用の問題からいって、今すべきでない、こう考えておる次第であります。しかし世界は非常に変りつつあります。この変遷を十分に注意して、日本としては注意深く変遷を見なければなりません。先のことも考えなければなりません。しかしながら今それならば従来の日本のとっておる道をすっかり変えていくということは、日本利益であるか、得策であるか、こう考えるというと、これはそうすべきでないという判断をはっきり持って進んでおることはたびたび申し上げておる通りであります。これがお答えであります。
  65. 中山福藏

    ○中山福藏君 ただいまの件についてはいろいろ議論も意見もありますけれども、それはそれで打ちとめておきます。  そこで目下いろいろと世間の注目を引いておる小笠原諸島並びに沖繩というのは戦略的信託統治になっておる、しからばこの戦略的の信託統治というものは、歴史的にどういう径路を踏んだかと申しますと、御承知通り国際連盟の場合におけるいわゆる委任統治、国際連合の場合における信託統治の中の戦略的信託統治になっており、そうして安保理事会の監督を受けておるわけです。この点をまず外相に申し上げてお尋ねしたい点は、これらの諸島の潜在主権者はだれか、究極するところこの主権は日本にあるとアメリカが言っておるわけです。そうするとこの潜在主権者としての行動の範囲というものはあるのかないのかということを、この場合日本政府として確立される必要がある。一月の二十二日のワシントン電によりますると、日本の人権協会がアメリカの人権協会に交渉を開始している。どういうことをやっておるかというと、琉球政府に対するアメリカ駐留軍の圧迫、独断的な管理、適当な補償を伴わない土地の接収、人権のじゅうりん、こういう問題はけしからぬというので、アメリカの人権協会に頼んでその調査をしてくれ、調査の結果、国防総省並びに国務省に対してこれを是正するようにやってほしいと申し入れているのです。そうしてそのアメリカ人権協会の年次報告書を読んでみますると、日本の言うことは正しいのだ、だから国防総省と国務省にそれを談判をして、何とか取り計いましょうと返答がきておるわけです。一つの人権協会の力でもそれだけのことはやれる。そうしてこの委任統治、信託統治の昔からの事情を調べてみますと、信託統治の目的は、世界平和の確立と原住民の利益の増進と福利増進ということにこれはなっておる。福利増進をはかる、あるいは世界の平和に寄与する点においては潜在的な主権者として日本は何らかの交渉権があるのではないかと私は考えておる、潜在主権というものはただ主権があるだけで、手も足も出ないものか、この行動の範囲というものをこの場合承わっておきたい、人権協会の動きすらがそれだけの力を持っている、いわんや潜在主権者としての日本が何ら手をほどこすことができないということはあり得ない。そういう点について明快な御答弁をわずらわしたい。
  66. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お答えをいたします。  潜在主権を日本が持っている、これは先ほども御説明をいたした通りであります。しかしながら統治の実権はアメリカが持っておる、これが実体でございます。しかし潜在主権を認められておる日本でありますから、それに相当する利害関係を持っておるということ、これは当然のことであります。それでわれわれは、たとえば沖繩住民が一体どこの国の人間であるかというと、これは日本人だと、こう言っていい。外国においてもそういうことで、日本側がこれを保護する立場にある。これは一般に認められておるところでございます。そこで今お話通りに、沖繩においていろいろアメリカがその実権を行使する上において、これに対する住民の不満があったりすること、これは当然そういうことがたくさん起ります。その起ります場合に、その不満を十分に、でき得るだけにおいて調査もし、かつまたその不満をでき得るだけ少くするように処置、尽力するということは、これは日本として当然にやらなければならぬし、またやり得べきことと考えます。そしてそれを日本政府はやっておるわけでございます。そこで今の人権擁護の委員会などの動きがございますが、これも私はもっともな動きであると思います。そして米側の同様な機関がこれに受け答えをして、いろいろ尽力してくれておるということは、私は大へんけっこうなことだと思います。しかし日本政府といたしましては、外交機関を通じてそれの調査のことを十分に検討いたしまして、そしてアメリカ政府に対していろいろ忠告もし、あっせんもしておるわけであります。その結果といたしまして、アメリカ側はその真相を調査するという調査団まで派遣して、できるだけの一つ処置を自分らが住民のためにとろうと、こういう考えを表示しておる状況でございます。その一々の、それがどういうふうになったか、土地がどういう工合になったとかいうことを今一々申し上げる私は記憶をいたしておりませんけれども、そういうことで相当結果をあげておるということを申し上げて差しつかえないように思います。これは日本政府として、また外交機関としてやらなければならぬ職責をやっておるということを申し上げて、お答えといたすことにいたします。
  67. 中山福藏

    ○中山福藏君 それではもう一つ、御承知通りに、これは、将来の世界の文化の向上とか、民族主義の発展とかいうものは、すでにアラビア民族主義というものが導火線となって、暗黒大陸であるアフリカに及んでくる。リベリアとかリビアとか、あるいはスーダンとかエジプト、あるいは近く独立したモロッコ、こういうものが教育が向上すればするほど自己批判、人間の価値というものに民族が目ざめますれば、結局いろいろの国が雨後の竹の子のように独立してくるのではないかと思う。しかるにアフリカに対する外務省の態度はどうか。スーダンには今度公使館ができることになりました。これはけっこうですが、岡崎外務大臣の当時に、私がアラブ七カ国に公使館をこしらえなさいと言ったところが、一向こしらえない。これらの国における公使館設置はドイツから三年おくれました。そのために東南アジア貿易の伸展というものも幾分おくれておる。どうも自分は外務大臣だからというあんばいで、われわれの助言とか質問というものはちっともお聞き入れにはらぬ。  ところが西ドイツでは近ごろごらんのように、鉄工所の御大クルップみずからがパキスタンに参りまして、七十五億五千百万円の製鉄工場を建てておりますよ。またインドには年間百万トンの製鉄工場を個人で建てておる。これは要するに、あの当時に外務省が私どもの助言をお聞き入れになっておればこんなにおくれることはない。これと同じように、この際アフリカ局というものを置くことは必要だと信ずる。それで、リベリア、リビアに公使館もないじゃないか、総領事館も設置されておるかどうか。外務省にはアフリカ局を設置して今から諸外国に先鞭をつけて、やわいところにくぎを打った方がくぎの打ち込み方がたやすいのじゃないか。だから諸外国がまだそれに目をうけないうちに、アフリカ局というものを外務省にこしらえて、今から十分に準備をしておかないと、とんでもないことになるのではないか。ことにベルギーのコンゴーなんか、世界のウランの六割ぐらい出していると聞いておる。しかも綿製品、綿糸の需要が多い、こういうところに対しては、外務省も相当力こぶを入れて、これに対する対策を講じておかれることが必要だと考える。その点についての、お考えはないですか。
  68. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 外務省といたしましては、今のようなお説のようなことが、どんどん実現をいたしまして、そうして仕事を進めたいということに、十分熱意を持っているわけでございます。ただ私考えてみますのに、戦敗の日本の今日の状況において、これは非常に貧乏人でございます。賠償問題すら、非常に容易なことでない状態でございますので、外交機関といたしましても、もう切り詰めた切り詰たところでもって、そうして一つ、あらゆる努力をしてみたいという気持をもってやります関係上、今お話のような施設が、次々に伸びていくというふうにはなっておりません。なっておりませんけれども、これは伸ばさなければならぬと思います。お話通りに、アジアの民族主義が実現し、次はアフリカの民族主義、アラビアの民族主義は大体できておるとしても、アフリカの民族主義がどんどん実行に移されるということは、これは時勢の当然のことでございます。従いまして、今回スーダンにおいてようやく公使館を置くことに、これもいろいろない袖を振ってこしらえるような状況で、これをこしらえることに相なりまして、今回議会に提出しているわけでございます。またその他リベリア方面に領事館を一つ置いたと思います。ゴールドコーストでございましたか……そういうふうなことにして一館を置いて、その近所かけ持ちにしてやるという、はなはだ不完全な施設ではございますけれども、これにあらゆる努力をして、勉強して施設を補うというような気持で、督励をいたしたいと考えておる次第でございます。
  69. 中山福藏

    ○中山福藏君 石橋さんに一つお尋ねするのですが、せんだってイスラエルから三千万ドルの武器購入について、あなたの方に交渉がきましたかどうですか。その点ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  70. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) お答えいたします。そういう交渉はございません。
  71. 中山福藏

    ○中山福藏君 この間新聞でしたか、どなたか三千万ドルの購入の交渉がきたけれども、アメリカの意向を聞かなければ、日本政府としては態度を決しかねるというようは報道を、私どもある方面から受けたのですがね、そういう事実はございませんか。
  72. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) 少くも通産省としては、さような事実はございません。
  73. 中山福藏

    ○中山福藏君 それでは鳩山首相にまたお伺いいたします。私はどうも一つの病気がございまして、やりかけたら、それを最後まで突き通さないと、気がおさまらぬという人間でございますから、くどいようでありますけれども、もう一回両極の問題を取り上げて、お尋ねしたいと思うのであります。これはあのサンフランシスコ条約の第二条の(e)項というものは、契約としては無効じゃないかと考えている。信義、誠実の原則に反する。日本の民法だったら当然無効なんです。これはもう国際間においても同じでなくてはならぬ。私は今、カイロ宣言とかポツダム宣言を見ておったのですが、南極に対してはこれは一つも書いてない。それが無条件条約ということからサンフランシスコ条約に現われておる。それでですね、ああいう無慈悲で残忍で、人間を食わせないようにする条約というものは、ある意味において無効だと確信する。この無効ということの私の考え方は間違っていないと思うのです。もし間違っていないとすれば、国際司法裁判所にこの問題を提起してその判定を日本行政としては待つのが当然じゃないかと考える。どうでございましょうか。首相はかつて弁護士として、ことに優秀な弁護士として御評判の高い方でございますが、法律的にこれを取り上げて政府がおやりになる気はないか、どうですか。国際司法裁判所に御提起になる考えはございませんか。これは侵略と攻略と盗取ということからすべてのポツダム宣言の領土に関する規定はできておる。南極は何も日本がどろぼうした所でもなければ、侵略した所でもない南極を、何の必要あってこのサンフランシスコ条約の第二条に規定したか、その意味がわからぬ。さすがに向うは政治家です。今日あることをちゃんと見通しておるのですから。昨晩ですか一昨晩ですか、南極を制する者は世界を制する時代が来たとある新聞が書いておる。それだけ重大な意義のある南極の問題ですから、そう政府から拒否されたからといって私は泣き寝入りすることは国家のためにできない。どうしても政府の意向を確かめておきたい。その点を明らかにしていただきたい。もう全然やらないのか、あるいはサンフランシスコ条約であれはきめたのだから、それだけでもう放置しておくとおっしゃるのか。いわゆる大和雪原なんか要らないということをこの間たびたび新聞にも書いてありますが、これは大へんな問題だと思う。アメリカとヨーロッパ全体を引っくるめただけの大きさを持っておる、しかも地下資源の豊富な南極というものは私は等閑視することはできない。どうか政府の御意向岸明確にお聞かせ願いたい。
  74. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はそれについてあまり知識を持っておりませんけれども、サンフランシスコ条約というものについてはいろいろ不満の点があります。それですからしてサンフランシスコ条約を検討いたしまして、主張すべきことは主張しなくてはならないと思いますから、よく慎重に審議をいたしたいと思います。
  75. 中山福藏

    ○中山福藏君 昨年の九月のベルギーの世界地球観測年会議でこういうことをきめておるわけですね。日本もプリンス・ハラルド海岸という所に日本の基地を設ける。各国もまたおのおのその基地を定めてですね、その観測の任務を遂行したい。しかもこの基地というものは、観測基地というものは永久にこれを基地としてその国は使えるのだという意味のことを決議をしていると承わっておりますが、これは日本の永久の基地として主張ができるものかどうか。何でしたら根本官房長官でもけっこうです。鳩山首相が御存じなければ、どなたでもけっこうですから、一つお答え下さい。
  76. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 答弁になるかどうかはわかりませんが、この問題は、各国ともああいうような基地を設けて調査するということで行っているのでありまして、新たな領土を取得するという目的のために、そうしてその了解のもとにあの学術研究がなされていろとは思わないのでございます。従いまして今直ちにあそこに基地を設けたらそれによって従来の、新たなる無主の領土を占取したということによって、その領土権を主張するというようなことは困難ではなかろうかとこう思っております。従いまして、この点は私ども十分研究いたしておりませんので、政府としても十分研究してみたいと考える次第であります。
  77. 中山福藏

    ○中山福藏君 根本官房長官は、私より十も幾つも若いのです。しっかり一つ時代の感覚を働かして、十分そういうことはやっていただきたいと思う。今から研究するなんということは、まことに政府当路者としておそいのではないか。  次に鳩山首相に御答弁をわずらわしたいことは、せんだって鳩山首相は、三木武夫氏を東南アジア十一カ国に派遣をされまして、親善の目的で旅行をさせられた。これは外交上の目的があったわけですか、また親善だけの意図でございましたか。フィリピン並びにインドネシアにおいては、賠償問題について談合するということがちらほらとあちらこちらに見えております。なぜこういう質問をするかといいますと、私は昭和二十七年にインドに行ってネールに面会いたしましたときに、首相の特使という人がニューデリーに来たというのです。この首相の特使はどういうことをネールに話したかと申しますといいますと、私は話すことはできないけれども、英語を聞くことはで選るので、理解する力を持っているのだと、こういうことを言って、その、面会の翌日に、ニューデリーの各新聞に、自分のネールと話した談話を発表された。そのために日本人は一年間面会することができなかった。面会を拒絶された。非常にインド首相のネールは怒りまして、話しもしないことを話したといって、非常な憤激を買った。私どもが行ったときには、一年ぶりに初めて日本人を引見するのだということを言っておった。それぐらい重大なものなんですね、特使というものは。それが日本にいてはわからぬのです、どんなことを言ったか。外国の新聞はどう書いているか、外地に行って初めてその人の行動に対する現地の批判というものがわかる。これは重大な問題であって、首相の特使という資格からくる外交上の影響は大きな問題だと思うのですが、事前に首相とどういうことを話したか。何にもなくて、単に旅行してこいというおぼしめしで派遣されたものかどうか、一つ承わっておきたい。
  78. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 三木君が参りますについて、三木君は外交の交渉、外交についての話し合いはしないことという条件で参りました。すでにとにかくソビエトは経済の援助を東南アジア諸国でもやるし、アメリカもそれに対抗してやっておる。日本も東南アジア諸国とは、ほんとうの親善関係を結んで、そうしてそのお互いに了解をしていかなければいけないから、よくそういうことができるように、そういう話だけをするという意味で参りましたので、決して外交問題には一切触れておりません。つまり損害賠償とか何とかいう問題についても触れておりません。
  79. 中山福藏

    ○中山福藏君 外交問題とか賠償問題に触れていなければまことにけっこうです。へたなことを話されますというと、国民が困りますからお尋ねしたわけであります。  そこでお尋ねしたいのですが、せんだってブルガーニンとフルシチョフが第二十回の共産党の大会に臨みまして、演説をいたしておる。イーデンとかフランスの首相が会合をして、これに対する分析をやっておるのですね。アメリカはもちろんのことでしょう。日本政府としても、ソ連が従来の行き方の外交をやるのか、あるいはこの演説を分析して、そこに何らかの外交上の方針のこの異変と申しますか、転向というようなものが現われてくるかどうかということは、これは二大勢力の対立下に現世界があります今日において、日本としては当然この問題というものを分析、検討する必要があると私は見ておる。これを分析して、どういう御感想、御方針日本政府はおきめになったか、それを承わっておきたいと思います。
  80. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 調査室において、そういうことは調査を懸命にしておるのでありますけれども、いまだ結論は来ておりません。とにかく、ただいま、ソ連がどういう態度に将来出るのかは世界注視の的でありまして、これについてはすべての国民が熱心に研究をしておることと思います。わが内閣調査室におきましても、いろいろな資料を集めましてただいま研究中であります。
  81. 中山福藏

    ○中山福藏君 できるだけ十分御研究願いまして、万遺漏なきを期せられんことを私はお願いしておくわけでございます。  そこでお尋ねいたしますが、せんだってからいろいろ憲法改正の問題なんか起きているのですが、この憲法改正のうちで一番問題になっているのは憲法第九条であります。これに対して侵略問題がせんだって起ったのですが、そんなことを今日聞くのじゃございません、私は……。それで憲法を改正して自衛軍を設置するということは、これはまあその人の立場々々で意見が違うでしょう。しかしながら一応こういうことを一つ考えておく必要があるのじゃないかと思うのです。それはどういうことかと申しまするというと、大体政府としては、今日の世界の情勢のもとにおいては、戦争というものが起り得る可能性があるかどうかという一通りの見通しだけはつけておく必要があると私は思うのです。そこで原子爆弾、いわゆる核兵器の乱用と応用というものがありまする今日においては、戦争というものはないものだろうかというようなお見通しをおつけになっているのでしょうか、そこはどういうふうなお見通しを持っておられるのだろうか、そこを一つお聞きしておきたいと思います。
  82. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は憲法改正をしたいと思いましたり、またこれに努力をしたいと考え出しましたのは、やはり武力を、自衛軍を持つということが平和のためになると思ったからであります。私が主張した当時は今日と時代が違いまして、アメリカにおいての大ていの世論、イギリスにおいての世論というものは、一九五二、三年ごろに戦争があるということを、ほとんどどの雑誌にも響いてあるような時代であります。そうしてそういうような、戦争が起るということが一九五二、三年ごろということになっておりましたものですから、そのときにソ連と日本とが国際関係を正常化していないということは非常に残念なことだと思いまして、国際関係を正常化したいと思うことが一つと。またその機会に朝鮮なり、中共なりが日本に入って来ないとも——入って来るかもしれないというようなうわさもありましたものですから、自衛隊を持ちたいと思った。この二つが私の眼目であったのです。今日その当時とは、私は戦争の気分というものは遠のいたように思います。その当時においては、ほとんど演説ごとにチャーチルも、武力の力による平和だ、力を持っていなければ戦争だ、力があるために戦争がないのだということを、大ていの演説のときに言っていた時代であります。それは私もそういうふうに思っておりました。自分もやはり、婦人の方が侵略されることが多くて、男子の方が抵抗力を幾分か持っているから、男子の万がまあまあ侵害を受けるのが少いというような原則は正しいものだと思っていた。それでどうしても自衛隊を作るということが必要だと思っておりました。今日戦争が、その当時とは、私は幾分遠のいておるような気がしております。  それはどうしてかといえば、水爆、原爆の発明によって、戦争の被害というものは非常にひどいものでありまするから、戦争をすれば、勝ったり負けたりにかかわらず、勝敗者ともに致命的の被害を受けるから、めったに戦争に手出しができなくなったという事実が、戦争を遠のけたことと思います。そこで米国の大統領を初めとして、ソ連の首相たちも、戦争をなしに、平和で行くようなことを言い出したのではないかと思いますので、戦争は幾分か遠のいておると、急いで兵力を増大し、急いで原爆の研究をするという必要は日本としてはないものと、私はそういうふうに考えます。
  83. 中山福藏

    ○中山福藏君 戦争があるかないかという見通しは、大へんこれはむずかしい問題で、私も首相のおっしゃったようなことを実は考えております。ところが、二月の十六日の英国のイングランドのブラッドフォードでイーデンが演説をしておりますのを見ますと、近来の様相というのは実におそるべき様相であるけれども、英国は恒久的な平和を欲している。この平和が数年前に比較してわりに危険がないというのは、まったく核兵器の制止力の結果である。しかしながらその核兵器というものをなくしたら、戦争が始まるといった演説をしているわけです。それからこの間のフルシチョフの演説を読んでみましても、道徳的に、思想的に、精神的に、武装というものは解除してはいかぬ、こういう演説をしているんですね。あの共産党大会の三日ほど前だったと思う。それからアイゼンハワーも、同じように、戦争の危険というものを説いている。ただいまSEATOの会議において、秘密会議を開いて、同じような話が相当進んでいるのじゃないかという疑いすらも持たれている今日。そこで私は日本政府としても、オネスト・ジョンとかなんとかいろいろある関係上、これは税金とも関係がありますから、いろいろ考えてみたのですが、これは戦争があるかないかということは、人間の本性というものから考えて、やはり結論を出しておかないと危ないのじゃないかと見ているのです。  これは十八世紀に社会主義が起ったというのは、飯が食えないから起った。いわゆる機械文明の発達のために失業者ができて、いかにしてお互いに食べものを分け合って食べるかということで、法律の力をもって社会主義を実行しようという、いろいろ要素はありましょうが、そういうものも私は一つの原因になっていると思う。これは飯が食えないからそういうことが起っているわけだと思う。日本人は人間であると同時に、動物なんですね。動物の本性というものは、毎日生きものを殺して食べるというのが本性です。われわれは牛馬を殺して食べ、また鶏を殺して食べている。野菜も米もみんな生きている。生きものを殺して、自分の生命を保持するというのは、人間、動物の本性です。人間が、なぜお互いの同士を殺さないのかというのは、道徳あり、宗教ありというわけで、けれども、飯が食えなくなったらどうなるかというと、動物の本性にかえる。ニューギニアの戦争のときに、一そうの船の上に乗って流れていた兵隊たちが、食べものがなくなったときに、くじ引きをして、くじに当ったものが殺されて、自分の肉がなべに入れて煮られて、友人に食べられた。これは動物の本性です。そのときは宗教もなければ、道徳もない。日本は人口がふえて参りますが、だんだん窮屈な土地に住んでおって、飯が食えぬようになったら、どういうふうになるかというと、動物の本性が現われてくる。各国とも同じような現象が私は起きてくると思って見ております。だから、世界の政治家がここに目をつけなければ、世界の平和は来ない。  こういうことから考えるというと、私は戦争と平和、この戦争を欲せずに平和というものを招来するためには、日本というものが実際原爆の見舞を受けて、ひどい目にあった今日においては、日本の戦争を——いろいろまあ軍部の野心もあったでしょう。しかし日本がなぜ戦争をしなければならなかったかという由来というものを世界に訴えて、世界の、私はすべての人類が飯の食えるような世界制度を打ち立てるということを、外交の方針日本政府として持ってゆかなければ、幾ら憲法の第九条を議論して見たところで、これは私は痴人の夢だと考えている。私個人としては、これは動物の本性と倫理観というものを一緒に、二つ並べて考えなければ、世界の平和は招来しないと、こう考えているのです。こういう点について首相はどういうふうにお考えになっているでしょうか。
  84. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) イーデンがブラッドフォードで戦争の危険を説いたことは、ちょうどチャーチルが戦争の危険を説いたのもやはりブラッドフォードでありまして、ブラッドフォードの保守党大会でチャーチルがどうしても軍備をしなくちゃいけないという演説をしたのでありまして、私はその演説に非常に敬服したのであります。やはり今日は武器を持っていなければ戦争は起るものと、私は確信します。自分を守るだけの力を持って、力の平均というものがなければ、勝つ人が必ず負ける者を負かすだろう。その原理が、あなたのおっしゃる通りに、自国の国民の生活の安定から来るかどうかは、これはまずおきましても、とにかく自分が危ないから自分を守る意味からでも、戦争は始まるものと思うのです。それですから、武力を相当に持つ、武力の平衡というか、バランスということはどうしても必要だと思います。  それからあなたのおっしゃる通りに、人間が衣食住足りるということは、これは人間が争いをしない根本の原因になりますので、これはあなたのおっしゃる通りに、世界的にそういうことを考えている人が非常に多いのであります。それで、どうして世界的にそういうようなことをなくすか。まず世界政府を作って、そうして平等にみんな生活できるように考えた方がいいという——同じ一つの国になって、世界国家を作って、そうして同じ議会を作って、同じ、ように平等に世界の人を食べさせるということにして、初めて世界の平和が持てるのだから、そういうような理想に進まなければいけないとしきりに言っている人がありますが、そういうような時代の来ることをこいねがっておるわけであります。  あなたの根本の論理に対しては、両者ともに私は賛成であります。
  85. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 午前は、これにて休憩いたします。    午後一時三分休憩      —————・—————    午後二時二十二分開会
  86. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を再開いたします。  午前に引き続きまして総理に対する総括質疑を続行いたします。
  87. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は一般質疑でございますので、三十一年度予算編成の前提条件について伺いたいのでありますが、しかしその前にぜひとも総理に伺っておかなければならない問題が二つあるわけです。その一つは、総理はみずからの御答弁に責任を持たれるかどうか、この点をまずお伺いしてから質問に入りたいと思います。
  88. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) むろん責任をとります。
  89. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、この前鳩山総理は、三十年度においては補正予算を組まない。もし組んだような場合には責任をとる、責任とは何ぞやという質問をいたしましたところが、総辞職なりあるいは解散なりされるということを言われたのであります。速記録にはっきり残っております。ところで、三十年度は御承知のように三百四十六億円の非常に巨額な、三割以上に達する大きな補正をやっておるのであります。これに対して総理は何ら責任をとられておらないのです。その点どうお考えになりますか。
  90. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は補正予算を出さないということについて熱意を持っておったのであります。それで、それについて出さないようにできるだけの責任をとったわけであります。やむを得ざる場合はいたし方ございません。
  91. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その点はあらかじめ念を入れて私は質問したわけです。三十年度においてはもう補正は不可避の状態にあったのであります。にもかかわらず、組まぬ、そういうお話でありましたから、われわれはそれを前提として予算を審議したわけであります。九千九百十四億の予算が、補正の結果非常に大きな予算になったわけです。一兆百三十三億ですか、そういう大きな予算になっておるのです。従って最初九千九百十四億を前提にしてわれわれは予算を審議したのでありますが、あとになって非常に予算が違ってきた。それでは過去のことは一応問わないとして、責任をとると言われたのですが、責任をおとりになっておらないから私は質問したのですが、それはやはり今後の私の質問に対して総理が御答弁になったことが、また責任をとられないとまじめに質問ができませんからお伺いをするのですが、では三十一年度においては補正予算は組まないんでありますか、総理に伺っているんです。
  92. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 現在は組む希望を持っておりません。
  93. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 現在はと言いますと、もうそれは今予算がここに出ているんですから、現在組むわけにはいかない、将来においてはですよ、いかがですか。
  94. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 特別の事情が生じない限りは組まないというように御解釈を願いたいと思います。
  95. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その特別の事情というのはどういうのですか、この点大蔵大臣にお伺いしたいのです。
  96. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいま総理の御答弁になりましたように特別の事態、特別の事態と申しますのは、必ずしも今ここで予測を許しませんが、大きな災害でもあれば、これもやはり一つの特別の事態になると思いますが、今後において国政運用の上において、ぜひとも何らかの予算措置を必要とするということがわかれば、これは私は考えなければなるまいと思うのであります。
  97. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんなしらじらしい御答弁では承服できません。この三十一年度予算の編成の過程において大蔵大臣はよく御存じなわけです。賠償費は最初三百五十億組んだ。ところが自民党の予算増額要求に妥協しまして、これを百億に減らした。予備費は八十億であります。どうしたってこれは補正含みの予算と見なければならぬ。そういう前提に立ってわれわれはこの予算を審議しなければならぬと思うのですが、そういう点、高碕長官新聞記者には発表しております。もし日比賠償妥結された場合には補正を組まなければならぬであろう。こういうような談話を発表したのを私は記憶しております。この点、高碕長官がおられますが、いかがですか。
  98. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私は新聞記者にははっきりはそう申しません。ただ賠償問題が解決すれば、あるいは大きな金が要るかもしれないと、こう思っておりましたが、しかしフィリピン賠償解決しても、これは別に補正予算は組まなくてもいいということははっきりわかっておりますから、今はそういう気がいたしておりません。
  99. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間がありませんから次に進みますが、補正を組まぬと今度ははっきり言っておりません。われわれは補正含みの予算であるという前提で審議したいと思っております。次に伺いますがF86ジェット機は原爆を積むことができるのかどうか、船田長官に伺います。
  100. 船田中

    国務大臣(船田中君) 現在自衛隊の持っておりますF86Fには原爆はそのままでは積めません。
  101. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 上村航空自衛隊幕僚長は、北海道内のレーダー地視察のため二月十日北海道に参りまして、新聞記者にこういう談話を発表しております。F86は一・四トンの積載能力があるが、現在の原爆は八十キロぐらいだから、同機には十数発の原爆を積むことができる、従ってオネスト・ジョンよりはるかに有効で、オネスト・ジョンだけを重視しても意味がない、こういう注目すべき談話を発表しております。ただいまの船田長官言葉とこれは食い違っております。この点どうお考えですか。
  102. 船田中

    国務大臣(船田中君) 上村航空幕僚長が北海道へ参りまして新聞記者諸君と会ったときの談話が、今御指摘のように出ておりますけれども、これは幕僚長から、私、長官として直接聞きただしましたところ、その新聞記事はだいぶ違っておるようでございます。F86Fには、現在の自衛隊に供与されておりますものはそのままの姿で原爆を積むということはできません。
  103. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今の御答弁には二つ問題があります。今のF86はそのままの姿では原爆は積めない、それから今後作る分、三十一年度以降百十機が第二次計画になっておりますが、その分は積めるのですか。それから今のものは多少装置すれば積めるのですか。
  104. 船田中

    国務大臣(船田中君) 御承知通り原爆はだんだん小さくなっておるということは事実でございます。ですから目方だけを比較いたしますれば、それは積める、目方の上から申しますればそういうことになるかもしれませんが、しかし現在わが国の自衛隊の使用いたしておりまするF86には原爆は積めません。これが事実でございます。それからなお現在第二次計画で生産をいたしておりまするものも原爆は積めません。また積む意思は全然持っておりません。
  105. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この新聞記事にははっきりと、現在航空自衛隊で使用しているジェット戦闘機F86にも原子爆弾を積むことが可能であると、次のような注目すべき談話を行なったということになっております。上村幕僚長をここへ呼んで、私は船田長官の言明ではこれは満足できない。自衛官が国会に出席することは困難なんです。従ってわれわれは制服の人をここへ呼ぶのは遠慮しておるのですが、国会に対してこういうものは、責任をやはりとらなきゃならぬ人が国会へ答弁に容易に出てこられない、出てくることが困難な事情にあることは御承知通りです。にもかかわらず、こういうふうに新聞記者に談話を発表しまして、世間にこれが伝わって取り消しも行われておりません。こんな重大な問題に対して、今の船田長官の一片のここにおける御答弁では満足できない、これは私は重大な責任があると思うのです。取り消すなり、はっきりと何らかの形で、私は上村幕僚長がここにお見えになって、はっきりとみずからの言葉において取り消すことを要求いたします。そうしなければ信頼できません。
  106. 船田中

    国務大臣(船田中君) 先ほども申し上げましたように、私は上村幕僚長を呼んでその真相を確めたのであります。その上で先ほど答弁申し上げましたような結論に達したのでありまして、決してその新聞記事がそのまま上村幕僚長の申したことではございません。なお念のため申し上げておきますが、国会において私が責任をもって答弁申し上げておることが事実でございまして、その新聞記事については私は責任を持つことはできないのであります。なお原爆を将来とも積むというようなことについては、全然防衛庁の責任者としては考えておりません。
  107. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 こういう新聞記事が出たことに対して何らの措置をとっておらないのですか、きょう私が質問するまでそのままなのですよ。こういうことが一般に伝わって信ぜられておると思う。何らかこれは取り消すなり何なりの措置をとられますか。
  108. 船田中

    国務大臣(船田中君) 新聞記事については私は責任を持つわけにはいきません。しかし、ただいま御注意のありました点につきましては、将来の問題として善処して参りたいと存じます。
  109. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 われわれは技術専門家でありませんから、技術的にこれを判定することは困難でありますが、今、船田長官が言われましたように原爆の形はだんだん小さくなってきておる。こういう言葉は、従ってこれを積むことも可能であるというふうにも受け取れるわけです。しかもこういう談話が発表されておる。現にアメリカのB57は原爆搭載爆撃機であります。前にも日本を原爆基地にすることは反対であるという決議が行われており、もしこういうことが事実であるとすれば、これは重大な問題であると思います。新聞記事には責任は負えないと言われましたが、この及ぼす影響というものは大きいのです。日本を原爆基地にすることは反対だという決議があるのです。そういうところにこういう談話が行われておる。これに対して取り消すなり、あるいは釈明文を出すなり、何らかの措置をおとりにならなければ私は無責任じゃないかと思う。この点いかがですか。
  110. 船田中

    国務大臣(船田中君) 将来の問題として十分善処して参りたいと思います。誤まりのないように期して参りたいと思います。
  111. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 こういう問題についてどうするのですか。
  112. 船田中

    国務大臣(船田中君) その新聞記事につきましては私は責任は負えません。
  113. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 責任は負えないと言われるが、こういうことが報道されっぱなしでいいのですか。
  114. 船田中

    国務大臣(船田中君) ただいま私がこの国会において責任をもって答弁いたしましたことによって御了承を願いたいと存じます。
  115. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 根本長官のアドバイスで一応そういう御発言があったので、一応それでは私は時間がありませんので、今後われわれもよく専門的に調査しまして、ほんとうにこれが技術的に積めるのを積めないとそういう御言明をなすっておるから、われわれも調査しまして、また改めて質問いたしたいと存じます。  次に、鳩山総理に伺いたいのですが、三十一年度の予算編成の前提条件は三つあると思うのです。総理の施政方針演説にもはっきり出ております。その第一は、日本経済は安定し正常化した。こういう前提に立って三十一年度の予算を組まれております。第二は、施策の重点を生産基盤の強化、生産費の切り下げ、輸出の増加、雇用の増大、こういう点においておる。それから第三の前提条件は経済五カ年計画の第一年目の予算である、そうして編成したのである。その三つが三十一年度予算の編成の前提条件になっております。総理の施政方針演説にはっきりそう書いてある。  それで第一にお伺いしたいのは、日本経済は正常化した、安定化したと言っていますけれども、それは一体どういう意味ですか。国民の生活は決して安定はしておらないのです。具体的にお話申し上げる時間がありませんが、それで経済が正常化し、安定したということは一体具体的にどういう意味でありますか、この点まず伺いたい。
  116. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 大蔵大臣から答弁をしてもらう方がいいと思いますけれども、私の考え政府としては健全財政をとりたいということ、それに進んで来たわけであります。その健全財政をとるという方針が一応目的を達成しつつあるという意味で言ったのであります。大蔵大臣から補足をしてもらいます。
  117. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。日本経済が安定し、正常化したというのは少し言葉の上ですが私は言い過ぎと思います。安定し、正常化しつつある、こういう意味が妥当と考えます。それは現象形態でどういうふうに現われているかと言えば、やはり生産が増加しておる、国民所得もふえておる、貿易を初め国内取引量も増加しておる。しかもこの物価は横ばいである。雇用の関係もむろん安心する状況でありませんが、最悪の事態は脱したように見ております。このありさまはまさに私は日本経済が安定し、正常化しつつある、かように考えるわけであります。
  118. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まああげ足をとるようで悪いですけれども、大蔵大臣財政演説でこう述べております。最近におけるわが国経済の推移を見ますと、いわゆる経済正常化が推進せられ、安定した基調のもとに経済の拡大、発展が行われつつあります。だから安定しつつじゃないのですよ、安定した基調のもとに、これはあげ足とりみたいになりますけれども、しかし具体的に考えてみますと、国民は迷っているのです。経済は安定した、正常化したと言いますけれども、暮しの方はちっとも安定していないのです。その証拠には実態はどうなっているか。労働省が発表いたしました発表によればですよ、景気がよくなり、経済が正常化すれば失業者が減るのがあたり前です、ところが昨年一月から十一月までの月平均失業者は六十九万、前年度より二五・五%増加しております。職安に職を求めに行った人は同じく一カ月平均百三十万人、前年度よりも一一・七%もふえております。そればかりでなく職安に職を求めに行って職のなかった人、あぶれた人は一月から十一月までの十一カ月間に百五十四万人です。三五一九%、三割六分も前年度よりふえている。景気がいいと言われながらこんなに失業者が増大している。これで経済が安定していると一体言えるでありましょうか、この点いかがですか。
  119. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この雇用の関係から見た経済の安定性でありますが、これは他面において年々の人口増加があることも考えなくてはなりませんが、経済の安定する、あるいはまた安定に基いて経済が拡大していく過程におきまして、特に日本みたいように貿易を制心として経済が拡大されていくというような国柄におきましては、どうしてもそういう雇用面が経済発展にややおくれる傾向をとる。それは貿易が非常に伸張するためには非常に合理化もやらなければならない。生産形態にしてもやはり大規模生産にいかなければならない。要するに生産単位を安く作るということが必要であるからであります。そうしますと、雇用関係から見ると必ずしもそこに有利とも言えない面もある。ところがその貿易の増大によって利潤もふえ国民所得がふえる、あるいは企業利益がふえるということから、国の経済が拡大されていくに従ってここに雇用がふえていき失業者が吸収される、こういう過程をとると思う。ですからごく短期間の状況のみを見て、いかんじゃないか、また経済の正常化というがいかんじゃないかといえば、それは私その通りだと思う。先ほどお言葉もありましたが、経済の安定は、私は、やや安定したという段階ですが、その安定に基いての経済の拡大は、今よくなりつつあるというところに雇用の問題との食い違いがある、かように思います。
  120. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その雇用の問題は短期の問題ではない。景気がいいのにもかかわらず失業者が出るについては二つの大きな原因があるわけです。これは高碕長官経済演説で述べておりますように、近来特に生産年令人口は著しくふえているんです。生産年令人口の重圧という言葉を高碕長官は使われております。人口自然増加三十年度においては九十一万に対して、百三十五万も生産年令人口が激増しているんです。これが今日本の重大問題なんです、雇用問題が。そうしてこれを雇用したとしても、三十年度は百二十二万を雇用したといわれても、雇用内容は著しく低下しておる。臨時工とか日雇いとかそういう形で雇用が増大しているんです。しかもその上に今の産業労働人口の構成を見ますと、いわゆる第一次産業と第三次産業にこれが偏しておって、第二次産業の製造工業が一番少い。その方面に吸収しなければならんのに、オートメーションとか生産性向上の合理化でその方面から失業者を出しておる。行く所がないんです。この二つが景気がいいにかかわらず従来の好景気と違って失業者が激増している原因だと思う。従ってこの面に対して対策を講じなければならないのです。この点については高碕長官にお伺いしたいんです。
  121. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。このただいまの御質問の御要点につきましては、私はその数字ははっきりお認めいたします。が、こういったふうな問題が、日本は特殊な状態があるということは、私どもは景気がよくなって来て仕事がふえてくれば、この就業率というものは当然減ってくるものだと思う。アメリカの例から申しましても、景気がよくなってくると六〇%の就業率のものが、だんだんこれは減って来て、そうして勉強する人がふえ、あるいは女は働かなくなるということで五四%になっておる。私どもはこれを六七・八という数字でふんでおったのであります。ところが日本の方は特に景気がよくなってくると、これは減るものだと私どもは見ておったんですが、これが逆にふえておる、就業率がふえた。ということは国民の勤労意欲が非常に外国と違って多いということを感じたわけであります。  もう一つは、これは日本の景気全体が、収入が少かったもの。が収入がふえて来た、就業の率がふえて来た、そういうような結果就業率がふえたのでありますが、これは一歩々々国民経済根本的な安定に近寄りつつあるものと私はそう見受けます。
  122. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは逆ですよ、三十年度の労働力率は六八・五、そうですね、実績はそうでしょう。それでは三十一年度の労働力率は幾らに見ておられますか。
  123. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 六七・八と、こう見ております。三十一年度はそう見ておったわけでありますが、お話のごとく三十年度は六八・五、こう出ておるのでありますが、それは私は御説明申し上げたのであります。
  124. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 三十一年度はどうなんですか。
  125. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 三十一年度も私どもの予定では六七・八とこうみております。
  126. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは労働大臣に伺いたいのです。本会議でも私は申し上げた。最近この雇用の問題について雇用はされておるけれども雇用内容が非常に低下している、そうして生産年令人口の圧迫がだんだんひどくなって新らしく職を求める人を吸収するのに追われておって、今ニコヨンの人はニコヨン以上になれないのですよ。この経済五ケ年計画を見ましても、三十一年度の雇用計画を見ましても今までのニコヨンの人はどうなるかということです。ニコヨン以上にそういう人たちを引き上げる対策はないのです。次から次へと新らしく生産年令人口がふえていく、そうしてこの労働人口全部を吸収できない、失業者が出る、政府はそれを失業対策ニコヨンとして救っている、雇用内容はだんだん低下しているのです。従って労働対策として雇用内容の低下を一体どういうようにお考えになっているか。これは重大な問題だと思うのです。単なる新らしく来た人を就業させるだけではないのです。雇用内容の引き上げが全然ない、五ケ年計画によったらニコヨンの人たちはいつまでたってもニコヨンですよ。それで経済が安定した、正常化した、そういう状態をもって安定化し正常化したというならニコヨンの人はどうしたらいいのですか。そういう雇用内容であるから安定していないのです。ですからそういう状態を前提としてこの予算を組まれたのではそれはもう貧困者、ニコヨン者が困るのです。そうでなくやっぱり経済はまだまだ正常化していないのだ、不安定なのだ。また輸出がふえてもこれは外部的事情によったものであります。輸出二十億五千万ドルにふえても数量計算ならばまだ七割くらいなものです。七割にも達しないでしょう。よその国は戦前水準を抜いておる。人口は戦前に対して三割もふえておるのに貿易は数量計算ではまだ六割に達しないのです。特需を入れても八割くらいのものです。そこに問題があるわけですけれども、従って経済が安定化したなんということはとんでもない話です。輸出が二十億ドルと喜んでおるどころではない。数量計算でも戦前水準に達していないのです、まだ。しかも人口は三割も戦前よりもふえておるのです。ここに日本経済の大きな盲点がある。従って経済は依然として不安定である、失業者もたくさんいる、ニコヨンがたくさんいる、しかも毎年々々生産年令人口は百三十数万ふえておる、それを吸収しきれない。労働対策としてこれをどうやる。ただ総評と労働大臣が宣伝戦をいろいろやっておりますけれども、もっと根本的に雇用問題について労働政策の上からどうこれを処理しようとするのですか。これは重大問題ですよ。この点長期計画として高碕長官から伺いたい。三十年度が労働力率が六八・五であるのに三十一年度では六七・八とふんでおります。ですから失業者が少く出るような計算になっておるのです。現に三十年度はもう六八・五なんですよ。なぜそんなに少く失業者を出すような計算をしたか。その点とそれから今後の労働対策の面からみた雇用の問題、雇用内容の低下をどういうようにして防ぐかこの点伺いたい。
  127. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) はなはだ申しわけありませんが、ちょっと取り消さしていただきたいと思います。三十一年度は六七・八と申しましたのですが、これは六八・四とこういうことにふんでおります。私の覚え違いでありますからさよう御承知願いたいと思います。それでありますが、将来におきましてはどうしても生産をふやさなければこの問題は解決しない。ここ十年間が一番むずかしいときでございまして一二%もふえる。この人たち、労働のふえることについては十年間は非常に苦しいときでありますから、この間はどうしても物をふやしていかなければならない。生産さえ伸びてくればこれはおのずから解決する問題を、こう思っておりますが、しかしながらあるときには時期的には失業者もあるだろう、それがために特別に失業対策を講じる、あるいは特別に社会保障制度を講じるということをやっていかなければならない。終局におきましては私は現在とっております五カ年計画をもって、すべてこの方針をもっていけば解決できると私は信じております。
  128. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 経済自立の五カ年計画のことにつきましては、企画庁長官からいろいろお話を申し上げたと存じますが、私どもの立場から雇用と失業の問題につきましては、五カ年計画が予定通り成功いたしましても決して楽観をすべきでないという考え方は依然として変っておりません。そこで先ほどお話がございましたように、五カ年計画におきましては、三十一年度の労働力率は六八・四という今年度よりもよく見ておるわけでありますが、この計画を実行いたしてこういうふうに労働力率を引き下げるというところまでいたすにしても、相当なこれは努力を要しますし、五カ年計画の私どもが努力をいたそうとしておる最終年度の三十五年度におきましては、この前の機会に私が当委員会で申し上げましたが、労働力人口が大体四千五百三十一万と今の順序でいきますと想定されますが、その一%の四十五万人にとどめたいと、こういう完全失業者をその程度に食いとめたいと、こういうことでございますが、ただいま御指摘のその間における雇用条件が非常に悪いのではないかというお尋ねでございます。これはもう木村さんもよく御存じのように、日本経済機構がこういう状態でありまして、いわゆる自由業方面に相当な人口が吸収されておることは御承知通りでございます。そこで完全なる雇用条件を持たなければ、それが非常に不安定な状況であるという説をなされる方のお立場から見ましたならば、なるほどイギリスやアメリカに比べますと、いわゆる雇用契約を持っておる雇用人口というものは大体現在三三%ぐらいしかございませんからして不安定とも申せましょうが、この三十五年度までの計画を遂行いたしましたときには、ここに政府が示しておりますように、いわゆる第二次産業の増加率を見ております。これが第一次及び第三次よりもこの点の発達、増進を期待いたしておるのでございますから、こういうものが増強されるに従って、それにつれてやはりサービス業であるとか商業方面のものも、御承知のような経済機構でございますからそれにつれて増加いたしていく。完全なる雇用関係を持つものの率もふえますけれども、そういう面でいわゆる生活的に安定する状況が今よりはよくなるのではないか。こういうことで私どもとしましては雇用の問題、つまり失業者ならざる状況におく人々をふやしていこう。こういう計画でありますが、それは民間産業が主としてであります。従ってそれに加えてたとえば北海道開発公庫であるとか、道路公団だとかというふうな政府事業も御承知のようにこれからやって参る。そういうところにも両々相待ってこれを吸収して、そうして完全失業者は先ほど申し上げましたように最終年度、三十五年度には四十五万人程度にとどめるべく努力をする。こういうことでございますが、私どもは繰り返して申しますが、この五カ年計画を完全に遂行することができましても、そういう意味では雇用、失業の問題を決して楽観してはいけない。こういうふうに考えております。
  129. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 高碕長官も労働大臣も、生産をふやすことによって雇用を増大させると、ところが実際に三十年度は生産がふえたのです。ふえたけれども失業者が増加しているのですね。ここに問題があるわけですよ。それは第三次産業に吸収しなければならぬと思います。が、第二次産業ではいわゆるオートメーション、合理化、これがどんどん行われてくるわけです。そこで総合政策としては自給度向上政策によって、たとえば食糧自給政策であるとかあるいは合成繊維の増産をやって、綿花、羊毛を節約する、あるいは石炭の増産、電力あるいは船舶の増強、こういう方面の自給度向上政策が第二次産業における合理化を促進し、それによって出てくる失業者をそちらの方にまた吸収するということと相待ってこれは解決できる問題と思うのです。それだけでは全部解決はできませんが、さらに輸出を飛躍的に数量計算で戦前水準くらいにふやす見込みをしなければ、人口が三割ふえているのですからいけないと思いますけれども、ところが前の政策では自給度向上政策というのが相当強く出ておったと思うのです。自給度向上及び生産基盤の拡充、こうなっておった。ところが自給度向上政策が今度落ちているのですよ。それは理由ないことじゃないのです。特に食糧増産計画においては、主食はアメリカの余剰農産物によるということによって、特に農業生産についてはその自給度向上政策が後退しているのです。それでは農村における過剰人口はますます吸収困難、第一次産業ではもう一ぱいでありますから、今、労働大臣お話のように、第一次産業、第三次産業が満員になっておけるのですから、第二次産業に吸収しなければならぬ。ところが第二次産業で失業者が出てくるのですよ。三十年度あんなに景気がいいにかかわらず完全失業者がふえている。そこで自給度向上政策について前に経済企画庁にあったでしょう、案が。あれは一体どうなったのですか。それから食糧自給計画について、どうなったか、特に生産性向上……。時間がありませんので、あと要点を御質問いたしますが、生産性向上運動の一環として生産性本部があります。昨年度は余剰農産物のお金一億五千万円貸し付けました。三十一年度の予算では十億円貸し付けております。この償還計画は一体どうなっているか。貸付利子は幾らであって、償還計画はどうなっているか。三十年度の償還計画はどうなっておるか。三十一年度の十億の償還計画はどうであるか。聞くところによると、生産性本部に貸して、生産性本部から商工中金に浮き貸しをするのですよ。これは浮き貸しですよ。そうして金利をかせぐ。こういうことが果していいかどうか。それからその償還計画はどうなっているのか。あれは生産会社ではありませんから、これは非常に不安定ですよ。その償還計画をはっきりお示し願いたい。  それから最後に五カ年計画について。すでにさっきお伺いしましたような労働力率については三十年度の実績として六八・五と言われましたが、三十年度の実績が大体わかっているのに、なぜ五カ年計画においては三十年度を基礎にしてわれわれにこの資料を示さないか。みんな二十九年度になっているのですよ。なぜ三十年度を基準にして五カ年計画の積み上げ作業をした計画を示さないか。三十年度を基礎にした計画を示してもらいたい。  それからもう一つは、三十五年の財政計画にしても金額がみんな出ているわけですね、従ってこれは年次計画が出てこなければ、トータルは出ないわけです。従って年次計画も示してもらいたい。トータルが出ているのですから、年次計画があるはずであります。特にこの財政計画については、われわれ予算委員としては非常にこれを参考にしなければなりません。従って年次計画ですね、ことに財政計画、それと防衛計画予算との関連です。防衛六カ年計画との関連、これを財政計画について特に伺いたい。それではっきりさしてもらいたいことは、今の生産性本部に対する貸付金の金利及び償還計画、それから五カ年計画の三十年度を基礎にした計画、それから年次計画、特に財政について。防衛計画、防衛六カ年計画ということを言われておりますが、それと財政的な年次計画ですよ、防衛計画と関連した……。これを示していただかなければこれは意味ないと思うのです。  それからもう一つ最後に防衛庁長官に伺いたいのですが、防衛六カ年計画は試案々々と言っていますがね、これはどれだけの信頼性があるのか、予算は皆試案で組んであるのですね。そうしますと、われわれ長期的な観点からもこの予算を見なきゃならぬのです。ところが試案丸々といって確定案でないのですから、これはどうにでも変り得るのですね。この試案というものの意味です。これを伺いたい。  それから最後に、もうこれだけでおしまいになりますから、委員長御了承願いたいと思うのですが、重光外務大臣がちょうどおられますから、いい機会ですから伺います。生産性向上に関する日米交換公文というのがあるのです。これはなぜ国会に承認を求めなかったのか、その理由を向いたいのです。生産性向上に関する日米交換公文、これは非常に重要な規定を含んでおります。ことにわれわれ予算委員としては、今後の予算を拘束する、ような取りきめが行われております。その取りきめの六条に、「日本政府は、日本生産性本部の運営を支持するため十分な資金を提供しまたは提供することを取り計らうことにできる限り努力するものとし、また、本項に従って締結される取極に基いて日本生産性本部に割り当てられる生産性に関する計画の経費又は費用の支払のため同本部が資金を支払い又は提供することができるようにできる限り努力するものとする。」日本政府生産性本部に対してこういう資金的な責任を持つ。その結果として三十一年度予算では十億円これを貸し付けるわけです。こういう取りきめをやることは、予算についてはこれは拘束的な取りきめであります。この交換公文というのはどの程度の義務内容としているのか。予算関係があるのです。こういうような重要な問題をただ重光外務大臣とアリソン大使との間の取りきめになっておる。国会の承認を求めていないのです。これは非常な義務を負うものだと思うのです。どの程度の拘束力を持っているのか、最後に重光外務大臣にこの点伺いたいのです。以上であります。
  130. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お尋ねの第一の問題でございますが、これは産業基盤の強化、輸出伸張をすると同時に、やはり国内の自給度を向上するということは捨てていないのでありまして、現に食糧増産のごときも昨年と比較いたしましてごくわずかでありますが三億五千万の増加をいたしております。こういうわけでございます。  第二にお尋ねの生産性本部に対する昨年度の貸金、本年度は十億円を金利をつけてかせがしておる。これは本年度の十億円も金利をかせがせていることは事実であります。昨年度の一億五千万円につきましても追い追い各生産が向上して参りますれば、向上によって利益を得た方面からこれを回収いたしましてこれを償還せしめるという方針でございます。
  131. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その計画はないのですか。
  132. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 計画を今立てておるわけであります。その計画を立てて、逐次償還せしめるという方針で進みたいと思います。  それからどういうわけで現在六八・五である労働力率を六七・八でやっているか、こういうお話でありますが、実はこれはだんだん景気がよくなって経済が安定すれば減るだろう、六五くらいに持っていきたいという考えで進んだのでありますが、(「非常に誤算があった」と呼ぶ者あり)ところが大間違いだったということが逐次わかって参りましてのでありますが、この問題につきましては、十分検討しまして、これはよく修正すべきものは修正いたしたいと、こう存じておるわけなんでございます。特に経済五カ年計画におきましては、よく御了解を得たいと存じますのは、初めてわれわれはこういう仕事を始めたのでありまして、非常に困難があるということが、やってみればみるほどわかったのでありまして、特に三十年度の経済のごときは、最初十六億五千万ドルくらいの輸出ができればせいぜいだと思っていたのが、一躍二十億になるとか、あるいは農産物があんなにたくさんできたとかいうふうなことで、われわれの予想を裏切る点がたくさんあったのでございます。これは実はわれわれ国民努力だけではいかない、また政府努力だけではいかないのでありまして、特に日本経済は、対外依存率が多い。外国の景気いかんが非常に日本経済計画に影響することが多いのでありますから、これをよく見きわめてやるのは当然であります。従いまして、五カ年計画は、五年先の目標を立てておりますが、年次別の計画は、最近の年次によって、それによって積み立て式でやっていくことが間違いないだろう、こう存じまして、今後はそういう方針で進んでいきたいと存ずる次第でございます。  それから最後に防衛費の問題でございますが、これは過去の実績、戦前の実績等いろいろ考慮いたしまして、大体は現在のところ国際情勢が大きな変動のない限りにおきましては、国力に相応したる防衛力を持たねばならない。国力とは何ぞや、こういうことになれば、これは国民所得というものをもってみるより方法はない。国民所得の大体は二・二%というぐらいで踏んでいきたい。ところが、本年度のごときは二%といっておりますから、これは平均いたしまして大体二・二、ある年はあるいは二・四になるかもしれませんが、そういうことで大体の経済計画を立てていきたい、こういう所存でございます。
  133. 船田中

    国務大臣(船田中君) 防衛六カ年計画と申しまして予算委員会等において説明申し上げておりますのは、防衛庁内部において持っておる一応の目標でございまして、国防会議が設立されるようになりましたならば、これに諮問をいたしまして、政府案下として確定するようなしっかりした長期防衛計画を立てるようにいたしたいと、かように考えておるわけでありまして、ただいままでお示しいたしておりますのは、防衛庁内において作っておりまする試案にすぎないのでございます。
  134. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 生産性向上の交換公文を議会になぜ出さなかったかというお話でございました。これは生産性向上に関する公換公文は、MSA協定の、実施のためにできた交換公文でございまして、その生産性向上に対する目標をきめたものでございます。そこで、これは目標を定めたものであって、技術の援助とかいうようなことをこれに記載しております。そのMSA協定の実施になりますわけでございますから、これは協定そのものではございません。したがいましてそれを議会に提出をいたしませんでした。それによってMSA協定の実施を促進することになると、こう考えておるのでございます。
  135. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 木村君、時間があまりに超過しておりますから……。
  136. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今MSA協定の実施のためということは、これは非常に重大なことだと思いますが、時間がありませんので、一般質問のときに保留しまして、これで打ち切ります。
  137. 亀田得治

    ○亀田得治君 最初に私は、本日の午前中に外務大臣が答えた中で、はなはだ不穏当な点がありますので、この点について質問をいたします。速記録によりますと、重光外務大臣は、こういうふうに答えられました。「私は日本はアジアの民族主義に貢献したという意味において、日本人としてもややその点においては満足感を持つものでございます。」と、こういう答弁をされております。私は外務大臣がこういうことを言われるのは、はなはだ誤解を内外に与えると思うのですが、外務大臣の私は取り消しを実は求めたいと思っているのです。所見をまず伺いたいと思います。
  138. 重光葵

    国務大臣重光葵君) さように私は申し上げました。私は実は従来ともいつもアジアの民族主義というものはどうしても日本は尊重しなけりゃいかぬのだ、日本の対支政策は私どもが関係をいたしましたときに、これは従来の対支政策の考え方を改めて、そうして民族主義に基いてそうして了解に基いてやらにゃいかぬということは絶えず主張して参ってきたものでございます。そういうわけでございますから、私はその主張が、実現をして、これはその主張のために実現をしたわけではございませんでしょうが、この戦争の結果としてそうして東洋の諸民族が民族主義の多年の実現を希望しておったその希望を達したということに対しては、私は非常にこれはけっこうなことだと、私どもも絶えずそれを主張しておったのが実現した、その意味において私はこれを非常に喜んだのでございます。そういう意味で申し上げたのでございます。
  139. 亀田得治

    ○亀田得治君 アジアにおける民族主義の発達、こういうことはこれは歴史的な必然の運命を持った道なんです。何も大東亜戦争があるなしにかかわらず進んで行く問題なんです。現に戦争が終了したって、アフリカにおいても民族主義というものはやっぱり勃興して行くわけなんです。それを大東亜戦争をみずから起して世界の批判特にアジアの批判、それを非常に受けておるのですね。その起した張本人である日本外務大臣が、何かこういう言い方をしますると、大東亜戦争そのものを合理化しておる、こういうふうに受け取れるんです。だから、私はそういう意味でこれははなはだ誤解を与える、取り消してもらいたいと思うのですが、いかがでしょう。私はそれと関連して重光さんに一つ考えを聞きたいのは、大東亜戦争そのものをあなたはどういう性格の戦争と見ておるか、この見方によって個々の言葉のとり方が非常に違うと思いますので、その点もあわせて一つ見解を明らかにしてほしいと思う。
  140. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は今申し述べた言葉が外国に誤解を与えるとは思いませんが、もしそういうことであるならば、これはむろん私は取り消すにやぶさかではございません。私は大軍亜戦争そのものは日本は誤まった戦争だと、こう考えております、けれども、私どもはシナ問題に関係しておったときから常に今申し上げたような考え方を持って進んでおったのでございます。つまり民族主義の実現ということをもって常に努力をしてきたわけでございますから、その点については私は民族主義の実現は喜ばざるを得ないと考えます。なおまたこれは大東亜戦争と関係はない、また第二次世界戦争とは関係はないのだという御意見は、これは私十分拝聴いたします。これらのことは十分歴史家の研究によって私はきまることだと、こう考えております。
  141. 亀田得治

    ○亀田得治君 ただいまの御答弁の中で、大東亜戦争は誤まった戦争だと思う、こう言われましたが、これは大東亜戦争は侵略戦争だった、そういうふうな意味でございましょうか、はっきりと。  それからもう一つは誤解を与えるようなら取り消してもよいが、と言われましたが、それは取り消されたのですか、どういう意味なんです。もう一度お聞きします。
  142. 重光葵

    国務大臣重光葵君) そういう言葉についてこの席で、誤解があると、こういうふうに今御批判があるわけであります。そういう御批判に基いてそういうことなれば私は取り消します、取り消したことに一つさしていただきたいと思います。  大東亜戦争が侵略戦争であるかないかということは私は歴史家の判定によってきめ得ることだと、こう考えております。これは私自身としては大東亜戦争はやらなかったらよかった、日本としては間違った戦争である、こう考えていることを申し上げたのでございます。
  143. 亀田得治

    ○亀田得治君 妥当ではなかったけれども、非合法ではなかった、こういう意味ですか。やらなかった方がよかったという意味は、妥当ではない、しかし合法的なんだ、こういう意味でおっしゃっておるわけでしょうか。
  144. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 戦争ですか。
  145. 亀田得治

    ○亀田得治君 ええ、戦争です。
  146. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は国家の政策としてそういう戦争は誤まった戦争だ、こう申し上げたのであります。しかしこれが倫理的にいいとか悪いとかいうことはこれは歴史家の眼光をもって見なければならぬことだと思います。それは歴史家にまかせてしかるべきだと、こう申し上げたのでございます。
  147. 亀田得治

    ○亀田得治君 どうも同じくはっきりしませんが、総理大臣のこの点に対する見解はいかがでしょうか。大東亜戦争そのものに対する合法、非合法の問題です。
  148. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は戦争はしなかった方がいい、戦争はしない方がいいとその当時から思っております。
  149. 吉田法晴

    吉田法晴君 関連して。今総理は戦争はしなかった方がよろしい、外務大臣も大東亜戦争は間違っておったと言われるのは、戦争は悪かった、侵略戦争であるかどうかは歴史家が判断する。そうすると日本として、あるいは鳩山内閣としては大東亜戦争なり、あるいはその緒戦と申しますか、日華事変等々についてはこれは価値判断はしておられぬ。そこで問題は大東亜戦争なり、あるいはその緒戦でありました日華事変等をどういう工合に考えているか、これが質問の要点だと思います。その中で外務大臣はシナという言葉を使われましたが、シナという言葉自体が今日においては私は妥当を欠くと思う。外務大臣言葉としての妥当を欠くと思うのでありますが、対中国態度、それを当初あるいは——どの点まで言われるか知りませんけれども、シナ問題あるいは対支政策というものについては外務大臣は間違っていなかったのだ、こういう意味のことを言われたのですが、シナ問題についての私の態度、あるいは当時の日本の政策というものは妥当であったという意味の発言があったと思うのであります。その点についての判断あるいは価値判断というものをここで一つ承わりたいと思います。対中国態度、いわゆる日華事変あるいはシナ事変と言われました当時からの態度、それから大東亜戦争、こういうものについての考え、それからその中でのアジア民族運動についての考えというものを明らかにしていただくならば事態は次第に明らかになって参るだろうと思います。
  150. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私はアジアにおける民族主義が漸次盛んになってくるというのはこれは当然の道順であって、それはいいことだと、こう考えて従来参ったものでございます。そこでその民族主義を尊重する政策を日本がとるべきだと、こういうことを絶えず主張してきたものでございます。その意味において民族主義の実現ということについては私はこれを喜ばざるを得ないのでございます。これが私の所信でございます。そこで戦争が起ったことにつきまして、これは日本が戦争に突き進むことの政策をとらなかった方がよかったと、こう思いますが、しかしその戦争自身をどういう価値判断をするかということはこれは世界の歴史家の検討に待ってしかるべきだと、こう考えているのでございます。
  151. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちょっと関連して。どうも外務大臣のおっしゃることがはっきりしないのですが、まず第一点としてお伺いしたいのは、外務大臣は、従来私としては、あるいは私どもはアジアの民族主義というものを念願してやってきたということをおっしゃる。これはときにより私としては、という外務大臣個人の表現を使われ、またさっきは私どもというあたかも外務大臣を含む当時の外務省なり、あるいは日本政府としての見解を述べられたようにも聞えるのですが、その点ただ個人的に頭の中でアジアの民族主義を尊重していくべきだということを個人的に考えながら、宮仕えの悲しさで日本政府のやはり一外交官として心ならずもそれとは別の方向に引きずられたということをざんげなさっておっしゃっているのか、それとも個人としてアジアの民族主義を尊重してその線に沿ってきたということと、そうして当時外務大臣がお仕えになった戦争中の歴代の政府のやっていることとはすべて一致してやってきたということをおっしゃるのか、その点をはっきりお伺いしたい。  それから第二の点は、外務大臣はあの二十年の八月十五日の敗戦直後に成立した東久邇宮内閣外務大臣として活躍されたと思うのです。あのときに東久邇宮内閣国民に対して一億総ざんげということを繰り返して説得なさった。一億総ざんげ、これは外務大臣も御記憶だろうと思います。一億総ざんげ、これは何をざんげされたのか。悪かったのか、よかったのか、これは一般の歴史家の批判に待たなければわからないということならば、何も一億総ざんげということをおっしゃる必要ははなかった。やはりこの戦争は間違った戦争だった、さらに具体的に言えば、アジアの民族主義、かつ近隣の民族に対して非常な損害と打撃を与えた、これに対して一億総ざんげするということでなければ何もつじつまが合わないと思います。一億総ざんげという意味はどういう意味でおっしゃったのか、この二点についてお伺いしたい。
  152. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 民族主義を尊重したいということはむろん私個人の意見であるとともに、私がおりました職責上においても常にそれを努力して参ったのでございます。これは記録にはっきりいたしております。主として戦争が済んだときに一億総ざんげということが盛んに言われました。それが時の政府の正式の言葉であったということを私は今記憶いたしておりません。しかしながら私も一億総ざんげということはその当時としては考えるべきことだと思いました。それはどういうことであるかというと、こういうふうに戦争に突き進んでこういうことになったということは、これは私はよくなかったことだ、こうはっきり思います。これはざんげしなければならぬことと、こう思っておりました。それで私はいいことだと思いました。しかしながら戦争それ自身がどういう歴史上のなにを持っておるかということは、これは私はその後の史家の研究でなければ定まらぬことだと思うのであります。それを申し上げておるのでございます。
  153. 亀田得治

    ○亀田得治君 政府の大東亜戦争に対する見解が非常にあいまいになった、どんなに聞いても……。私どもが聞いておるのは、戦争をしなかった方がよかったとか、戦争がない方がいいとか、そういうことを聞いておるのじゃない。現実に起された大東亜戦争そのものをこれは不法な戦争だったというふうに考えているかどうかということを聞いておるのです。何回そういうふうに聞いても、ただ戦争はない方がいいとか、そういうあいまいなる答弁しかされません。  そこで私はもう一つ進んで聞きますが、たとえば日本も加盟しておりました例の不戦条約、戦争放棄に関する条約、この第一条、これによりますと、「国際紛争解決のため戦争に訴ふることを非とし、且其の相互関係に於て国家の政策の手段としての戦争を抛棄することを其の各自の人民の名に於て厳粛に宣言す。」これは当時非常に問題になった条約でありますが、日本がこれに加盟しておるのです。大東亜戦争はこの条約の第一条に違反して起されたことはこれは間違いないでしょう。国家の政策の手段としてやったんでしょう。その政策そのものがよかった、悪かったということを一言っておるのじゃない。不戦条約はそれが妥当であろうが、妥当でなかろうが、そういう政策の手段として戦争を起すことはいけないのだ、こう不戦条約がはっきりいっているのです。それをやったわけでしょう。  もう一つは開戦に関する条約、これによれば、いわゆる事前に明確な通告なくして敵対行為を始めてはならないという趣旨のことが明確にされておる。真珠湾においてもマレー沖においてもやったわけでしょうが。私どもはそんなあいまいなことを言っているのじゃない。私はこういうことを思い出して言うのも、これは悲しいことなのだ、私自身においても……。しかし今後の日本民族のあり方ということをお互いに考える場合には、しからば過去において犯したところのあやまち、それがほんとうにあやまちであったならば、あやまちだということが明確にならなければだめでしょう、私はきょうは憲法並びに自衛権に関する問題について、主として総理大臣に質疑したいと思っていたのですが、その根本はここですよ。こういうことが不明確にされておるから、自衛権に関する拡大解釈とかいろいろなことが疑惑を持たれる。私が今二つ根拠を示したわけですね、不戦条約と開戦に関する条約、私はこれにはっきり違反して起されたのが大東亜戦争である。そんな妥当であったかどうか、そういうことを聞いているのじゃない。合法的であったかどうかということを聞いている。その点はどうなのです、外務大臣、あなたも条約の専門家だから……。
  154. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は、その点は条約専門家の見解によって決定して差しつかえないことだと思います。またそうしていいことだと思います。私が外交当事者として言うことは、さようなことをしたことはよくない、日本のしたことはよくなかった、しない方がよかった、こういうことを申し上げたことによって私の意見ははっきりいたしておると、こう考えます。
  155. 亀田得治

    ○亀田得治君 重要な点ですから、総理大臣の御見解を。
  156. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は戦争をすることは避けたいと思いました。
  157. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは何べん言っても同じ答えをされるのですが、そういうことはだれだってわかっていることです。私はことさらに時間をつぶしてはいかぬと思うから、条約の条文なんかを読むのを避けたかったのです。しかしながらなかなかはっきり言われないからわざわざ読んだわけなのだ。それに反した戦争であるかないかということは、専門家の判定を待たなければわかりませんか、大東亜戦争の場合において……。外務大臣、どうですか、もう一度お答え下さい。
  158. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私の申すことは、それは条約専門家、歴史研究家にまかすべき問題である、こう申しておるわけでございます。私はさような日本側が当時とった政策はよくない、またしなければよかった、こう申し上げておるのでございます。
  159. 亀田得治

    ○亀田得治君 はなはだしつこいようですが、これほど明確な問題をあなたがそういう言い方をされるから、私も簡単に引けないわけなのです。不戦条約の点はしばらく抜きにしても、開戦に関する条約はどうなのですか、事前に明確な通告なくして敵対行為を始めることはいかぬ、これはどうですか。これに反したでしょう。
  160. 重光葵

    国務大臣重光葵君) その点も条約問題でありますから、十分私は専門家の検討にまかして差しつかえないと思います。しかし私はそのことについては、これはそういうことはよくなかった、日本の政策はよくなかった、こう申し上げてそれでおわかりだろうと私は思うのであります。
  161. 亀田得治

    ○亀田得治君 政策がよくなかったということと、合法かどうかということは、これは別な問題なので、おそらくあなたもそれは承知の上でそういう答弁をされていると思う。で、私は政府が自衛権の問題について非常に誤解を受けやすいといいますのは、こういうことをはっきりせぬからなのです。だれが見たって二つの条約を犯してやった戦争、これはあなた大東亜戦争に賛成しておる人でも認めざるを得ないでしょう。そういう事実は、もし大東亜戦争がそういう合法かどうかという点について疑いがあると、こう政府がどうもそういうような意向らしい。ところが、一方ではアジア諸国では、あれは明白な侵略戦争だと、こう考えているのですよ。アジア諸国の人が明白な侵略戦争と考えていることを、日本政府がそういうように考えないというのであれば、日本政府は侵略しない、侵略しないと言っても、その意味が相当違うのだと、こういうふうになってくるじゃありませんか。外から見たら、日本政府の言う侵略戦争というのは、不戦条約第一条に反していても、それが侵略戦争じゃないというのですから、この侵略戦争の考えが多少違ってきますわね。こういう点は、私はむしろ進んで、ほんとうに内外の疑惑を解くというのなら、もっと明確にみずから進んでやるべきことだと思うのです。不戦条約に反しても侵略戦争とは……、私ははっきり侵略戦争となると思うのですが、侵略戦争にならぬでしょうか、どうでしょう。
  162. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私はそれを侵略戦争であるとかないとかということを申し上げておるのではございません。私はそういう、時の政策はこれは間違っておった、こういうことを考えておる。そこで私は、それは世界の識者、識者と申しますか、歴史家の判、定にこれはまかしていい問題であると思う。そしてその判定によって、日本はもしあなたの言う通りにみな侵略戦争だと、こう一言っておるという事実がそこにあると仮定し、また私はそういうことは、ずいぶんそういう意見があることは知っております。その判定には、これは日本としては不利益で、幾ら不利益であってもこれに従わなければいかぬ、そうして、それに対する誤解を取り除けるようにあらゆる努力をしていかなければならない。それをやるのが私はその後に来たるべき政治家であると、こう考えておるのであります。その点はそれで御了承を得たいと実は考えます。
  163. 亀田得治

    ○亀田得治君 総理大臣に聞きますが、今年の二月二十二日の衆議院内閣委員会、ここにおきまして憲法調査会法案のこの説明の責任者であられる山崎さんが、大東亜戦争を、こういうふうに意見を述べております。それによりますと、「初めは大東亜戦争というものは、自衛のために起されたものであると思いますけれども、その戦争の過程におきましては、非常に逸脱した点があったというふうに、私は申し上げたつもりであります。」こう言っておりますが、この見解に総理大臣は御同感ですか。
  164. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、支那事変並びに大軍亜戦争ともに、そういう戦争はしない方がいい、当時から終始一貫しておりました。それをどういう理由でそういう態度をとったかということを、ただいま私は言いたくないから、申しません。
  165. 亀田得治

    ○亀田得治君 山崎さんは同じ委員会で、防衛とか、自衛という問題につきましては政府の見解と全く同じである、こういうことを述べております。これは総理大臣は山崎さんの思想なりそういうことはよく御存じでしょうが、防衛問題等に関する考え方は同じですか。
  166. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、自衛ということは、急迫不正の侵略をされた場合これを守るという、その自衛の権利があるだろう、こういうことを言っておるだけであります。
  167. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういたしますると、急迫不正の侵害がなかった場合には、自衛ということは否定されるわけですね。
  168. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自衛という概念は起きないわけです。
  169. 亀田得治

    ○亀田得治君 起きないというのは、もちろん起してはいかぬという意味ですね。
  170. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そういう意味です。
  171. 亀田得治

    ○亀田得治君 ところがですね、大東亜戦争の場合には急迫不正の侵害がありましたか。その点はあなた戦争をごらんになっていて、どうお考えですか。
  172. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はその当時において、支那事変の拡大についてもおもしろからないと思いまして、近衛総理に会いに行きましたし、その後の大東亜戦争もこれをやめることについて努力したのであります。そういう戦争、いいとは思っておりません。
  173. 亀田得治

    ○亀田得治君 いい悪いということを言っているのじゃない。すべて戦争はそんないいものじゃない。あなたは、自衛というのは、これはせんだってからも失言問題等に関連して何回もあなたおっしゃっている。急迫不正の特殊な場合、その侵害があったときに、こちらもこの特殊な条件のもとにおいてこう打ち返す、こういうふうにあなたがおっしゃっている。そこで大東亜戦争の場合に、真珠湾攻撃なり、あるいはマレー沖の攻撃なり、その直前にそういう事態がありましたかということを、あなたにお尋ねしているのです。
  174. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はその当時のことについてお話をするのはお断りをいたします。(「なぜ」と呼ぶ者あり)
  175. 亀田得治

    ○亀田得治君 これはそういうわけにいきませんよ。(笑声)政府の重要な地位にある人が大東亜戦争に対する、自衛であったかどうかということの批判をしているのです、内閣委員会等において。ところが一方ではこれは自衛のために起されたと、こう言っている。ところがその自衛ということの解釈は何べんも総理大臣がせんだってから明らかにしているわけなんです。これは大東亜戦争に賛成、反対は別にして、総理大臣がおっしゃるような意味での急迫不正の侵害はあの当時なかったと、これだけ私はきわめて明白だと思うのですが、外務大臣どうです、それは。外務大臣はその当時いろいろタッチしておられた……。
  176. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は自衛権ということは、なるべく局限して解釈しなければならぬと考えております。これを広げていけば、これは切りのないことでございます。そこで自衛権が国際法上今はっきりきまっておりません。論議は非常にありますけれども、きまっておりません。しかし、私は政策として、特に日本の政策としては、自衛権の行使はでき得るだけ局限して解釈すべきものであると今日考えております。
  177. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると大東亜戦争はこれは侵略戦争だったと、こう解釈すべきじゃありませんか、あなたの今のお言葉によると。それはおそらく鳩山総理がせんだってから言われておる、その自衛の概念に基いて言われているのだろうと思う。そうすれば大東亜戦争はあのころ何もアメリカ、イギリスが日本に侵略したということありませんよ。侵略が来るだろうというようなことを総理大臣は、この間から想定しているわけじゃないですわね。現実に来た、初めてそれに対してこう打ち返すと、こういうことを盛んに言っておられるわけですから、もっとはっきりこちらの問いに対して答えて下さい。質問事項がたくさんあるのですからね。
  178. 重光葵

    国務大臣重光葵君) その点は私も繰り返し申し上げた通りでございます。私は自衛権は、少くとも今日日本が自衛権を運用する場合においては、きわめて局限してこれを運用しなければならぬと考えております。しかして過去における事柄を同じ思想をもって評すれば、私は自衛権のなんでもっていろいろ説明することはよくなかったと、こう思っております。しかしながらこれは果してどういう意味合いであったかということは、これはその当時の各方面のことを直接間接の事態も検討しなければなりますまいし、歴史家の判断にまかして少しも差しつかえないと、繰り返し申し上げている通りであります。しかし、私はそういうことはよくなかった、やらなければよかった、こう思っておることを申し上げておるのであります。
  179. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういうあいまいなことを総理大臣外務大臣が言われるから、せんだって失言問題に関連して、そうして最後には、総理大臣の方ではほんとうに特殊な場合にだけ日本が敵基地をたたくのだ、こういうふうな説明をされましても、結局は拡大解釈をして、先制攻撃ということがあり得るのじゃないか、こういうふうにわれわれはとるわけです。あなたの方がはっきり大東亜戦争は侵略戦争だった、こう断定されない以上は、これほど明確な侵略戦争はないのですから……。それを侵略戦争と断定できないような人が、幾ら言葉の上だけで自衛権の範囲というものを非常に縮めたことをおっしゃったって、世間はそんなことは信用しませんよ。まあこのくらいにしておきましょう。
  180. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっと、お尋ねしている点に正確にお答えがないから時間を取るのですが、これからの方針、これからというか、政府方針関連をして、過去における大東亜戦争を侵略戦争と考えられるかどうか。どういう意味合いか、歴史家の判断にまかせる云々という話しですが、政府は、今の鳩山内閣は大東亜戦争を侵略戦争と考えられるかどうか。それから民族主義の勃興を歓迎する云々と、替われましたが、アジアの過去の政策というものを、これを日本の政策と、あるいは外交的な態度、外交方針、そういうものが正しかったと考えられるかどうか、これを明確にお答えを願いたい。  それからもう一つは、侵略戦争であったか云々ということをお尋ねするゆえんのものは、あの極東軍事裁判について重光氏を含んで裁判を受けられたわけでありますが、侵略戦争であるというはっきりした定義が述べられた。あの大東亜戦争は侵略戦争であったということがはっきり言われた、判決の中に入っている。ある意味においては世界的に価値判断がされたと思うのでありますが、それにもかかわらず、侵略戦争であるかどうかという点はこれはまだはっきりしておらぬ、今後の歴史家の判断に待ちたいと、こういう工合に言われるのかどうか、はっきりお答え願いたい。
  181. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 御質問の点は、日本の戦争が法律上、国際法上侵略戦争というべきものであるかどうか。これは侵略戦争であると言って東京裁判は判決を下したじゃないか、こういう点が一つの点だったと思うのであります。私はその点についてはこれは先ほどの御答弁を繰り返します。私は法律問題としてこれが侵略戦争であったということをはっきりするためには、これは法律家もしくは歴史家にまかして差しつかえのない問題であると思います。というのは、裁判も裁判でございますが、それに反対した有力な諸君、法律家もございます。しかしながら、国の政策としてはさようなふうに一般に世界の世論がそういうこになったということの事実があれば、これは十分に認識をして、そうしてこれに対しては対応策を講ずる、すなわちそういう一億総ざんげですか、それもして、日本の真意を世界に示す、こういうことが私は必要だろうと考えるのでございます。その法律的のことにつきましては、これは過去の歴史上においても、私がここでどうはっきりと申し上げても、それはあまり価値のないことだと私は思います。これは歴史家にまかして少しも差しつかえないことだと思います。それから……、それで大体お答えは済みましたか……。
  182. 吉田法晴

    吉田法晴君 過去の政策、アジア、中国政策を含んで正しいものかどうか。
  183. 重光葵

    国務大臣重光葵君) これは私は非常に批判があると思います。その批判が、相当日本の過去の何についてきびしい批判があることは、われわれとしては認めなければならぬと思います。その民族主義の問題それ自身につきましては、その当時におきましてもわれわれは、私はそういう考えを、先ほど申し上げたような考えを持って進んできておった。こういうことは私は申し上げ得るのでございますが、日本自身の政策についていろいろ批判があるということも、これまた私は認めざるを得ません。そうしてそれについては今後とも十分それを頭において、日本に対する、日本の真意を解明することに努めなければならぬ、こういうふうに考えておるのでございます。
  184. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではもう一ぺん念を押しますが、大東亜戦争が侵略戦争であったかどうかということは、法律家なりあるいは条約の詳しい者にまかせるべきであって、これに対する対策はやるべきだ。一億総ざんげであるとか、対策は立てるべきであるけれども、侵略戦争であったかどうかということは、ここでは言えぬというのですか、はっきりいたしません。軍事裁判等もあったけれども、それにも有力な反対意見があった。ところが聞いておるのは、重光さん自身が有罪であったかどうかということではなくて、その中にあった侵略戦争であったという判定、これについて今鳩山内閣としてはどう考えるかという点をお尋ねをしておるのであります。今までのところでは、侵略戦争であるかなかったかということについては判断の発言がございませんから、その判断を願いたい。そういう判断に対して……、これが一つ。それからあとの点は、これもまだはっきりせぬのですが、対支政策云々ということがございました。民族主義の発展については希望をすると言われましたが、そうすると民族主義の発展は過去においても望んできた。そういう政策が、アジアの諸国の民族独立運動についてはわれわれも希望をしてきたのだ。ただ戦争に訴えたのが悪いだけであって、あるいは満州国をこしらえたことも、あるいは冀察政権をこしらえたことも、そういう点は善意に出たことである。ただ戦争の手段に訴えたということが悪かったと言われるだけのように聞えますから、そういう政策というものに批判があると言われますけれども、批判ではなくて、政策、やり方、それからその政策の一つ方法として戦争という問題、手段も出てきたと思うのでありますが、そういうものをひっくるめて、もう少しはっきり一つお答え願いたい。
  185. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は今の御指摘の点についても、前の私の考え方を繰り返さざるを得ないのでございます。過去の日本と申しますか、当時の政府のやり方については、いろいろ今日批判すべきことがあると思います。それからまた、非常にわれわれはこれを残念に思うところ炉たくさんございます。ございますが、私どもがこの渦中におりまして、いろいろな地位におりましても、何とかこのアジア民族の民族主義というものは、これは是正していくような政策をとることが必要である、こういう考えを持ったことは私は間違いはないと考えておるのでございます。そこで戦争がどうして起ったか、日本が戦争をしたと一がいに言い切ってしまわれておるのでございますが、それもお説でございます。世界のずいぶん多くの人がそう申します。これは認めなければなりません。先ほど申しました通りに、その事実の上に立ってこれに対処することを考えなければなりません。しかしながら今日日本が侵略戦争をしたのであるということをこの席において私が断言することは行き過ぎだと私は考えます。これはそういう世界の世論、また歴史家の研究なりによってはっきりきまることであるから、それがむしろオーソリティのあることでありますから、それにまかして差しつかえないと思います。ただ私の申し上げることは、過去において残念なことがあった、そういうふうにいかない方がよかったということをはっきり私は申し上げるわけでございます。それは私は御答弁としてきわめて明瞭であるように私には考えられます。それで御了承を得たいと思います。
  186. 亀田得治

    ○亀田得治君 あとからまたとの問題に触れるようにしたいと思いますが、少し若干ほかの問題をお聞きします。  これは総理大臣にお聞きしますが、自衛という目的さえあれば、自衛隊はどれだけ持ってもいいのだ、自衛という目的さえはっきりしておればどれだけ軍隊は持ってもいいのだ、こういうふうにお考えでしょうか。
  187. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自衛というのは幾度も申します通りに、急迫な、そうして不正な侵略に対して最小限度の防御をする、こういうように考えておりますので、自衛のためといって……、まあ国力に相応し、最小限度という条件のもとに、その範囲内において自衛の目的を達成したいと思っております。
  188. 亀田得治

    ○亀田得治君 その理由はどういうことになるのでしょう。吉田内閣のころには一つの物理的な大きさというものを考えて、戦力に至らない程度の大きさのものであれば憲法違反でない、こういう立場で自衛隊の合憲性ということを主張して来ました。ところがあなたの場合には、そういう軍隊の大きさという問題はもう触れておられないのです、ほとんど。それで自衛と、その目的ですね、その方に重点を置いて言われておるわけなんです。それで聞くわけですが、どの程度の大きさになるのです、憲法上許されるものは。
  189. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいま申しました通りに、不正急迫な侵害を防御し得る最小限度の自衛力を持ちたい、こう思っておるのであります。
  190. 亀田得治

    ○亀田得治君 また同じ言葉を繰り返すようですが、たとえば試案のようですが、防衛庁で六カ年計画を持っております。それによりますと、六カ年の計画の最終年度の昭和三十五年には陸上自衛隊が十八万、海上が十二万四千、飛行機が千三百機ですか、こういう大まかな目標が出ております。これはその最小限度の限界内なんですか。
  191. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 最小限度ということは、まあ理論的に言えば国際情勢を勘案しなければ出てこないものと思いますけれども、現在におきましてはその程度ならば十分なことと考えております。とても日本の独力をもって防衛するというような力はないと思います。とにかく日米安全保障条約を基本とした防衛計画を立てる以外に日本としては道は今日はないと思う。
  192. 亀田得治

    ○亀田得治君 いや、そのどちらに重点があるのです。自衛ということを考える場合に、自衛権の大きさですね、独力で一応やるという立場で大きさを一応考えるのか、あるいは日米共同でなきゃ動けないと今そういう意味のことをおっしゃったんだが、両方含めたものでこの大きさというものを考えておるのか、どちらなんです。
  193. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 現在におきましては、日米安全保障条約を基本として考える以外に道はないと思います。
  194. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、日米両方の軍隊が全部一つのものとして考えておるわけですね。そうなれば最小限度の自衛くらいはだれが常識的に考えたっていけるじゃないですか。それはどうです。アメリカの軍隊はそんな小さいものじゃないでしょう。
  195. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 最小限度といいますのは、日本の国力の最小限度、国力に沿う最小限度の自衛力を持つ、こう言ったのであります。
  196. 亀田得治

    ○亀田得治君 自衛のために必要な最小限度、そういうふうにおっしゃったはずですが、またそうでなきゃおかしいんじゃないですか。
  197. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自衛隊はあなたのおっしゃる通りでありますけれども、自衛隊を持つといいましても限度が、日本の国力に沿う最小限度きりできないのでありますから、そういう限度をつけた方がいいと思います。
  198. 亀田得治

    ○亀田得治君 どうもこの点もはなはだ不明確ですが、それでは結論的にいって、あなたは日本の今の憲法のもとにおいてどの程度まで拡大できるものだと、こうお考えでしょう、最大限を一つ聞かして下さい。
  199. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私としては、ただいま申しましたような限度以外にお話をすることはできないと思います。
  200. 亀田得治

    ○亀田得治君 その限度が不明確ですからお聞きしておるわけですが、これは防衛庁長官はどういうふうにそこを考えておりますか。あなた自身が直接やっておられることですが、もちろん憲法のワクを越えようとは考えておられないでしょうが、そこにおのずから一つの限界があろうと思う。最大限をどの程度にあなたはみておられますか。
  201. 船田中

    国務大臣(船田中君) 先ほど総理大臣から御答弁のありましたように、わが国の国力及び国情に沿う最小限度の自衛態勢ということでございまして、これにしからばどれだけの人員あるいは艦船、飛行機が的確に当てはまるかということは、これはなかなかむずかしいことと思います。国際情勢にもよることでございます。しかし先ほど来防衛庁試案として持っておりまする最終年度、すなわち昭和三十五年度において陸上十八万、海上艦艇十二万四千とん、飛行機百八十機、それに練習機を加えた航空自衛隊が約千三百機、この程度のものは、これはもちろんわが国力及び国情に沿う最小限度の自衛態勢の中に入るものと私は考えております。
  202. 亀田得治

    ○亀田得治君 長官に重ねて聞きますが、わが国力並びに国情とこう言われたわけですが、まあ国力の点は了解しますが、国情というのはいかなる意味でしょう。
  203. 船田中

    国務大臣(船田中君) これは国際情勢なりまた国内の情勢、ことに自衛隊を整備して参りまするのに日本の従来の伝統、歴史、また民族性、それから地理的事情、そういうようなものも勘案してわが国情に沿うような自衛態勢を整備していきたい、かような意味で国情ということを申し上げた次第であります。
  204. 亀田得治

    ○亀田得治君 結局そういうことになりますと財力が許す、それから内外の情勢が必要とする、そうなればもう無限にやれるわけですね。そこの主観的な判断によってどうにでもなりますな、そういう基準で政府が防衛庁の拡大ということを考えているとしたら。そうなりませんか、線が引けますか。
  205. 船田中

    国務大臣(船田中君) 御承知通り、今日国会を中心として政治をやっておるのでありまして、それらについて政府の見るところをわれわれは率直に申し上げて、そうしてこれについては国会における多数の諸君の正確なる御判断によってきまることでありますから、無制限に自衛態勢が拡大していくというようなことは絶対にないと私は信じます。
  206. 亀田得治

    ○亀田得治君 日本のような憲法のない国におきましても、国力を無視し、内外の情勢を熟視して軍隊の拡大はいたしません。これは全然違っためずらしい憲法があるわけなんですね。そこのもとにおける解釈としては、そんなことではこれは私は大変なことになると思うのです、この説明を聞きますと。外国の憲法と少しも変りませんよ。どこでもそういう説明をしております。不必要な軍隊はどこの国だって持とうとしておりません。防衛庁長官に一応この六カ年計画の三十五年度を目標にした先ほどの数字ですね、この程度は憲法のワク内だとこうおっしゃったのだが、少しこまかいことになるかもしれませんが、その中で特に航空機ですね、航空機の中で戦闘に使える航空機、これはどの程度になるのか、千三百のうちで。これを一つ明らかにしてほしい。それからもう一つは誘導弾ですね、この研究等も始めておられるようですが、最終年度の三十五年度においてはそれはどういうふうな状態になるという見当でしょうか。
  207. 船田中

    国務大臣(船田中君) 最終年度三十五年度におきまして、練習機を含めて航空自衛隊の飛行機保有量を千三百機と申しましたが、大体そのうちの半分は練習機でありまして、半分が実用機になると存じます。誘導弾につきましては、従来文献等によりまして研究をしておったのでありますが、三十一年度の予算が通過した後におきましては、これを実物について研究したいという計画を持っております。しかしまだその程度でございまして、三十五年度にどれだけのものを持つかということは今後の研究に待たなければならないことでありまして、今ここにどれだけのものを予定しているという数字的な基礎はまだ何ら持っておりません。
  208. 亀田得治

    ○亀田得治君 その千三百機のうちの約半分が実戦に使えるものと言われましたが、それはジェット機かどうかということ。それからもう一つ誘導弾に関してですが、これは報道等によりますと、スイスのエリコン社に防衛庁の方からすでに注文を発したというふうに聞くのですが、それは事実でしょうか。国務大臣(船田中君) 千三百機の約半数が実用機でありますが、それはその中にはF86Fのようなジェット機がだいぶあります。しかし全部がジェット・エンジンではございませんで、従来の通りのプロペラ・エンジンも残ります。しかしその内訳等につきましてはまだ数字的な内訳を持っておりません。  それから誘導弾につきましては、先ほども申し上げましたように研究を始めたという程度でございまして、予算が成立いたしました後において、エリコン社の誘導弾等を注文するということになるのでありまして、まだ現在まで注文したという事実はございません。
  209. 亀田得治

    ○亀田得治君 総理大臣にお聞きしますが、総理大臣はそういう航空機に関して今防衛庁長官が説明された内容、こういう点は大体聞いておられますか。
  210. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) あまり詳しくは開いておりません。
  211. 亀田得治

    ○亀田得治君 あまり詳しくと言いますと、つまり半分程度実戦用の航空機、そしてその中に相当数F86ジェット機等が含まれている、そういった事実は聞いておりますか。
  212. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 陸軍を十八万、その他のものを、先刻防衛庁長官が申しました数年後の計画の数字は、それは聞いたことがあります。けれども飛行機が半数どうなるかというようなことはまだ聞いたことはございません。
  213. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは私またはなはだ心外に思うのですが、自衛隊は自衛隊法によりますと、総理大臣が最高責任者なんです。私は兵隊さんの数とか、そういうことよりも、現在の軍備といえばこういう航空機の状態がどうなるのかとか、そしてあなたはとにかくおれたちの軍隊は自衛だ、こう言っているのですから、その装備の仕方によってこれが非常に違ってくるはずでしょう。だからこまかいことを聞かんでも、そういう大きな方針については総理大臣が知っておらなければならないし、むしろ私は総理大臣が指示をすべきだと思うのです。そういう点はどうなんでしょう。
  214. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいま防衛庁長官の申しましたことはきまったことではなくて、防衛庁の試案をここで話したものと思います。政府のきまった方針ではございません。
  215. 亀田得治

    ○亀田得治君 もちろんこれは試案でしょう。試案ですけれども、たとえば昭和三十一年末にはF86ジェット機が今の計画でいくと百三十五機になる、これは昭和三十一年末のものは現実に出ている予算の問題なんです。この昭和三十一年の百三十五機にしたところで、これはその次の年にはさらにふえる。そういう一つのずっと——たとえ試案であっても連絡があるものなんですね。だからこういう重要な問題ですから、確定的な六カ年計画でなくとも、これはいやしくも自衛隊の最高責任者である総理大臣がそういう大事な点はちゃんとつかまえていくのがほんとうだと思う。どうでしょう。
  216. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 近く防衛会議ができますれば、すべてのことが防衛会議にかかりますから自然に知ることができますけれども、今日はまだ防衛会議ができておりませんので、そういうような組織がありませんから、試案の間は私が知らないという部分もあります。
  217. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちょっと関連して。防衛庁長官にお尋ねしますが、今問題になっております防衛六カ年計画の最終年度、すなわち陸上十八万、海軍十二万四千トン、空軍千三百機、これの完成年度における防衛庁費はどれくらいになるか。こういう計画があるからには、当然その裏づけとしての財政面ということも考えておられるだろうと思いますから、その防衛庁費はどれだけかかるかということをお伺いしたい。
  218. 船田中

    国務大臣(船田中君) 防衛庁費が昭和三十五年度においてどれだけになるかということは、実はまだ数字をはっきり申し上げる段階に達しておりません。と申しますのは、現在自衛隊を増強しつつありますが、そのうちの大体初度調弁に要しまする艦船、飛行機あるいは火器類、そういうものは大部分アメリカの供与によります。従って、そのアメリカから供与されまする兵器、艦船、飛行機等がどういうものであるか、また大砲の口径がどういうものであるかというようなことを突き詰めて参りませんというと、数字が出ませんので、防衛庁の試案におきましても、最終年度の予算がどれだけになるか、また年次計画がどういうふうになるかということにつきましては、まだ数字がきまっておりません。
  219. 秋山長造

    ○秋山長造君 そうしますと、先ほど亀田君の質問に対する長官なり総理大臣の御答弁で、国力相応の自衛力の限界というのは、長官のおっしゃった防衛六カ年計画の最終年度の線ぐらいが国力相応の自衛力だと思うというお話があったのですけれども、では、その国力相応の自衛力という判断の根拠は何にあるのですか。先ほど木村さんからの質問に対して企画庁長官お答えになったように、国力相応という国力とはすなわち国民所得ということだ、それ以外に基準の取りようがない、だから、国力相応の自衛力とはそのときの国民所得に対する相応した自衛力という意味だと、そうしてそれは幾らだといったら、二・二%だと、こういうはっきりしたお話があった。ところが、今のお話では、この防衛六カ年計画の最終年度の数字、飛行機が幾らとか、あるいは海軍が幾らとかいう数字だけは出ておるけれども、その根拠になる費用、そうしてそれの国民所得に対するパーセンテージ、そういうものは全然考えずに、ただ防衛庁の方で人の頭数や、軍艦や、あるいは飛行機の数だけはじき出して、そうしてただばく然とそれが国力相応の自衛力の限界だとおっしゃるのは、私はおかしいと思うのです。全然これは大ざっぱなでたらめだということになってしまうのですが、何か国民所得に対し二・二%、三十五年度の国民所得がこれだけだ、それに対してさっきの高碕長官お話では二・二%というと、これだけだ、そうしてその予算でまかなえる自衛力は陸上十八万、海軍十二万四千トン、空軍千三百機、こういうことになるのだ、こういう説明でもなければ、われわれ、ただ三十五年度におけるこの数字が国力相応の自衛力の限界だというようなことを総理大臣長官がばく然と言われても、私どもは納得ができないのでありますが、その点いかがですか。
  220. 船田中

    国務大臣(船田中君) その点につきましては、先ほど高碕企画庁長官が申されましたように、経済五カ年計画の中において防衛関係の費用を幾らに見積っておるか、こういうことになりますが、大体においてまず二%強というところを見積っておるということを先ほど申されておったのでありますが、私どもも大体そういうような考え方の上において先ほど申し述べましたような数字を出しておるわけであります。
  221. 亀田得治

    ○亀田得治君 先ほどの総理大臣の答えでは、国防会議ができてから、こういうお話ですが、すでに三十一年度において手をつけておる、今度の予算で手をつけておる、しかもそれは六カ年計画の一部のものなんです。そういう意味で国防会議がなくても、最高責任者たるものは大まかなところはどういう方針でやっておるか、これをつかんでいかなければいかぬと思う。そうせぬと軍隊というものは勝手なことをする、そういう意味で尋ねたのですが、これもまあちょっとこの程度にしておきますが、そこで次に憲法の問題に入ります。  で、いろいろこれはありますが、端的に二つのことを総理大臣にお聞きしたい。それは鳩山総理は憲法第九条を改正して、一つは海外派兵、一つは徴兵制をしく、この二つのことを目的にしておられる、私はいろいろな角度から総合してこう考えておるのですが、どうでしょう。
  222. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法を改正して徴兵制度を作るという意思は持っておりません。また海外派兵をするというような考え方も持っておりません。憲法を改正いたしましても、現在の憲法の基本方針を捨てるつもりはないのです。平和主義なり、主権在民主義なり、基本的人権なりを捨てるというような考え方は持っておりませんので、ただ自衛隊というのについて、自衛隊が持てるか持てないかということが疑惑の焦点になっておるわけでありますから、それで自衛隊も自衛の目的のために兵力は持てないというように、憲法の成文にはそういうように見えるような条項があるのでありますから、自衛のためならば、正当防衛のためならば軍隊が持てるということを明確にした方がいいと思うので、憲法九条の改正をしたいと、こう考えておるのであります。
  223. 亀田得治

    ○亀田得治君 海外派兵、徴兵制ということは憲法改正に関連して絶対考えておらない、これははっきり断言できますか。
  224. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 考えておりません。
  225. 亀田得治

    ○亀田得治君 たとえば徴兵制については、衆議院の内閣委員会で、憲法を改正して徴兵制をしく意思は今日持っておりません、こういう言い方をしておる。今日……。
  226. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私がですか。
  227. 亀田得治

    ○亀田得治君 茜ケ久保君の質問に対してこういう今日というあいまいな言葉を使われることは、これははなはだ誤解を生む、こういうことは取り消して、絶対にそういう考えは持っておらぬということをここで確認していいでしょうか。
  228. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) とにかく今日持っていないことだけは一番よく知っておるものですから、で、今日持っていないという……。
  229. 亀田得治

    ○亀田得治君 政治家はよくそういう言葉づかいを今までしておる。今のところはとか、今日はとか、絶対ないと、先ほどそういう意味でおっしゃったようですが、もう一度確認していいでしょうか。
  230. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 絶対とか、もう必ずとかという言葉を使う人もなかなかあるのですけれども、そういう言葉を使わなくても、まあ私の今日持っていないということを信用してもらいたいです。
  231. 亀田得治

    ○亀田得治君 やはり今日が入るのですか。絶対持っておらなければ、絶対という言葉を使って少しも悪いことはないでしょう。
  232. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 今日は絶対持っておりません。(笑声)
  233. 亀田得治

    ○亀田得治君 そこで私は憲法第九条改正の政府の意図、これはたびたびの説明は聞いておるのですが、きょうのようなこの、質疑の過程から見ますると、九条改正の必要がないじゃないかという感じがするのです。九条を改正しなくとも、政府考え方からいけば相当大きな量のものが持てるのです。これはもう戦前の日本の平常時における軍隊よりもはるかにこれはもう突破しておるのです。それからその軍隊の行動に関しても先だってから問題になっておるように、海外派兵もしない、こういう立場をとっておるなら、少しも今の憲法で行動の土において不便を感ずることはないのです。ない、絶対にない。量の面からいっても、行動の面からいっても、そういう不便は感じないということはあなたはお認めになるでしょうか。
  234. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) とにかく吉田内閣時代においては兵力を持ってはいけない、戦力を持ってはいけない、従ってその武器にはこういう制限があるというようなことが言われておったのであります。自衛のためならば戦力を持ってもいいということを疑いのないような事態が生ずれば、何も急いで憲法を改正する必要もないと思いますけれども、現在においてはそういうようになっていないと思うのであります。現在はやはり日本は軍隊を持ってはいけない。とにかく明瞭に陸軍は持たず、海軍は持たず、空軍は持たないと書いてあるのですから、これが自衛のためならば、その範囲内において国力に沿う最小限度の兵力は持ってもいいというように憲法が書きさえすれば私はそれでけっこうなんでして、憲法において自衛力の制限をすることは私は一向差しつかえないと思います。日本が侵略戦争のできないような、あなた方がそう御心配になるならば、そういうように憲法を修正すればけっこうだと思うのです。
  235. 亀田得治

    ○亀田得治君 こういう点はどうでしょうか。現在の憲法をこのままにしておいた方が軍隊に対していろいろな、確かにこれは消極的な、制限的な考え方というものが今の憲法の下においてはどうしてもこれは強く出てきます。今の憲法をこのままにしておけば、自衛隊が若干大きくなってもそれに対して制限していこう、あるいはその行動についても制限していこうという考え方がこれはずっと続くと思うのですね。ところがこれを改正すれば、どのように書いてもこれは現在よりも相当ゆるくなったのだ、こういう感じを与えることは私は間違いないと思うのですが、それはどうでしょうか。
  236. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それらの点については、憲法に自衛軍のことが書かれるようになれば、その組織だとか運営などについても御心配のないように憲法に挿入されたらいいだろう、そうすればかえって憲法に自衛軍を持てること、その運営はどうするかというようなことが確定できますから、むしろわれわれの主張は完全に実行できる保証がとれるようなものであると私は思っております。
  237. 亀田得治

    ○亀田得治君 憲法というものは字句とか、そういう問題では私はないと思うのです。字句などのことをいうならば、イギリスの憲法なんかずいぶんこれは不備なものです。そういうものじゃないので、やはりこの憲法というものはそれができたときの気持、その後のいろいろな経過、それにその憲法にしみこんでいる国民の気持、そういうことが大事なんだと思うのです。ですから、ともかくこの憲法が平和憲法ということで出発して十年間やってきた。それをどういう形で手をつけるにしろ、手をつければこれが若干ゆるんでいく、この感情を私は国民に与えることは間違いないと思うのですが、これはそういう条文の体裁の問題じゃないと思うのです。その点どうでしょう、ざっくばらんに。
  238. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) まあ私はそういうように、先ほど申したように考えておるのでありますから、社会党の連中とよく相談をして……。   〔秋山長造君「連中とは何だ」と述ぶ〕
  239. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) あまり差はないだろうと思うのです。   〔秋山長造君「社会党の皆さんと言え、連中とは何だ」と述ぶ〕
  240. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 連中はいけませんか。   〔秋山長造君「連中なんというようなことは、今使わんですね」と述ぶ〕
  241. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ああそうですか。社会党の諸君とも相談して、そうした憲法改正を相談をすれば大して違いはないと思いましたから、民主自由党からは社会党の方に憲法の改正について相談をしようじゃないかという申し込みをしたぐらいであります。決してその心配していることも大して違いないだろうと思う。よく相談をしていい憲法を一緒になって作ろうじゃないですか。(「違う違う」と呼ぶ者あり)
  242. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは予算委員会等ではなかなか詳細に質疑できませんからこの程度にして、ちょっと問題を進めますが、総理大臣は在野時代には例の自衛隊違憲説、これをとっておりました。政権の座にすわってから、いわゆる合憲説と、こうなってきたのですが、その理由をたびたび委員会等において総理大臣が述べられておられるところによると、自衛隊法ができたものだから自分も考えを変えた、こうおっしゃっておりますが、そういうわけでしょうか。
  243. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 最初はまあ国民の多数は、自衛隊というものは保安隊のように、巡査のようなものに考えておりまして、兵隊とは思っていなかったのであります。それですから、吉田君も兵器についての制限もするし、少しめんどうな説明をしなければならなかったのです。これは実際の実情だと思うのです。それがだんだんに正当防衛は個人が持っていると同じように国家が持てるというような考え方が、独立国家は自衛権を持つというその考え方が浸透して参りまして、今日では自衛隊は軍隊だ、兵力だ、戦力だというようなことを常識のように言うようになったのです。それは私は近いと思うのです。このごろだと思うのです。それですから、やはりそういう疑いのある憲法九条は改正をして、自衛隊の人自身がわれわれは国家を守る軍隊だというような自信を持つ方がいいと思いまして、やはり憲法の改正はしたいという考え方を持っております。
  244. 亀田得治

    ○亀田得治君 あの、今憲法改正の問題に関連して聞いているのではないのです。つまりあの自衛隊合憲説になったその理由ですね、それを聞いているのです。
  245. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そうですか。これは独立せる国家が正当防衛権を持つというような考え方が多くなりまして、アメリカが占領していた時代にはそういう考え方日本には行われていなかったのです。ところがやはり日本がだんだんと独立して参りましてからは、独立した国家は正当防衛権を持つということが考えられるようになったと私は思っています。
  246. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、内閣委員会等でその理由として言われた、自衛隊法が成立したために自分としてはそれを認める考えになったという考えはお取り消しになるのですか。
  247. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国会を通りましてから自衛隊というものがだんだんと訂正せられましてからは、私は自衛隊は合法的なものだということに国民は納得したものと思っております。
  248. 亀田得治

    ○亀田得治君 そこを聞いておるのです。つまりあなたは今まで明確に、自衛隊法ができたのでこの違憲説を引っ込めたと、こう言っているのです。ところが法律でもときどきこれは憲法に反する法律ができるとともあるかもしれない、人間のやることですから。だが、法律ができたから憲法の解釈を変えるというのでは、これは大へん危険な考えです。内閣委員会では、そういう世間の常識とか、そんなこと言っておりませんよ。自衛隊法ができたので私の自衛隊違憲説というものを変えたと、こうはっきり言っているのです。そういう考え方が、一体お互い法律の、まあこれは初歩的な知識から言ってもあり得ないじゃないですか。
  249. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国民を代表している権威ある国会が自衛隊を持ち得るというようにきめれば、私が言ったように解釈をすることは一向差しつかえないでしょう。国民がそれを認めるまでは違憲であっても、国民の多数を代表している議会が、ある正当防衛のためならば憲法違反にはならぬということを国会が認めれば、憲法の解釈を変えても私は差しつかえないと思います。
  250. 亀田得治

    ○亀田得治君 たとえ国会が認めても、それが憲法に反するものであるかどうかという見解は、これは別に成り立ち得るものなんです。学者でもそういう考え、国会を通る通らぬにかかわらず、持っている人もあるし、私は政治家でもたくさんあると思うのです。そういう重要な憲法解釈の問題が、一つの法律が通った通らぬによって私は変えるべきものじゃないと思うのです、政治家としては。それなればあの憲法に反する法律というものはあり得ないことになりますね、そういう考えからいけば。
  251. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 本来国家は正当防衛権を持っているというものでありますから、そういうような憲法九条に、表面は違っておりましても、憲法違反ということの解釈を変えることは一向差しつかえないと思うのです。どこの国の憲法にどう書いてあろうが、その国は、独立している国家が自衛権は持つ、正当防衛権を持つということが、これは常識でも当然なことなのでありますから、それですから、常識上当然なことを憲法が承認しているというように、憲法の解釈を変えましても一向差しつかえないと思います。
  252. 亀田得治

    ○亀田得治君 そんな当然なことでは私はないと思うのです。むしろ再軍備に賛成の人でも、今の憲法のもとにおいては、あれは無理な解釈を政府がしている、これがむしろ常識ですよ、実際は。それは別にして、しかしそんな当然なことなら、なぜあなたは在野時代にそういう当然な見解をお持ちにならなかったのでしょう。
  253. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は憲法の成文には、自衛隊を持つということは、憲法の成交には合致しないと思います。この疑いがある。
  254. 亀田得治

    ○亀田得治君 憲法の成文に自衛隊が合致しない、疑いがある。
  255. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 疑いがある。
  256. 亀田得治

    ○亀田得治君 少くとも初めは合致しないと、こう言っているのですよ。私はこれが本心だと思うのです。しかし若干合致しないと、疑いがあると、こう言われたのだが、私は、これは大へんなことだと思うのですよ。いやしくも総理大臣は、これはもういつも問題になることなんですが、好ききらいは別にして、やはり憲法がある以上は、それによってやっていかなければならないわけです。それによって政治をするのです。これが総理大臣国務大臣の任務なんでしょう。ところがその合致しない。あるいは疑いがあると。そういう自衛隊を取り扱う場合には取り扱い方があるでしょう。そうなってくれば。たとえばそういう疑いがあるものなら、少くとも今全部それを解散するということまではいかんでも、増強だけは一応とめるとか、これが国民に対して忠実なゆえんじゃないですか。それを疑いのあるままでさらにこうふやしていく。憲法改正ができなかったらどうなるんです。できるかできないかは今後の問題です。ちょっと待って下さい。私はそういう考え総理大臣が持っておるんなら、少くとも自衛隊の増強だけはここでストップする、これが私は良心的なあり方だと思うのですが、どうでしょう。
  257. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法違反ということが明瞭ならばあなたのおっしゃる通りです。私の考えは憲法の解釈は自衛隊を持てるというように解釈をするもんですから。疑いを持つ者もあったんです。(「そんなことないですよ」「あなたが疑っているんです、さっきの言葉は」と呼ぶ者あり)今疑ってない。
  258. 亀田得治

    ○亀田得治君 それはごまかしですよ。他人が言うとかそんなことではないのです。(「うしろから言うだけだ」と呼ぶ者あり)あなた自身が疑っておる。それであれば、この憲法九十九条の立場からいったって、そんな疑わしいようなことに対してさらに大きくするようなことはやめてもらわなければならない、当然じゃないですか。確信を持っていることならやりなさい。疑いがあると言った以上は確信がないでしょう。そんな他人が言っているとか、そんなことじゃない。あなた自身が今言ったことだ。
  259. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は自衛隊を憲法違反だと、憲法の条文に違っていると思った時代はあります。そういう演説をいたしましたけれども、その後自衛隊法というものができて国会を通過いたしまして、国会を通過した自衛隊法によって曲げられたり、自衛隊を違憲だとは思わない。そういうように憲法を皆さんが解釈するようになった。こう思っているだけです。
  260. 吉田法晴

    吉田法晴君 その点は、先ほど憲法違反だ、まあこれは多少言い足りなかったと思って疑いがあると、こういう工合に言われたんだと思う。その点はあとで速記録を調べて取扱いを御協議願いたいと思う。質問でどういう工合にするか、あるいは違憲とするかは一つ速記録を調べた上で御相談を願いたいと思う。
  261. 亀田得治

    ○亀田得治君 大へん私いろんな問題を用意して来たのですが、政府答弁が非常にはっきりしないものですから、時間をとりましたが、一つだけ最後に総理大臣の率直な見解を聞きたい。それは小選挙区制の問題ですね。これはいろいろ小選挙区制賛成、反対、いろんな議論のあることは私は知っております。ただあまりにも政治的に扱われすぎている、これが。これもいろんな個々の問題に触れれば切りがありませんが、その最たるものは選挙区の区割ですね。自治庁の選挙制度調査会で一つの案を作った。それに対して与党の議員の方がいろんな格好で手を入れている。場所が飛んでおったり、それから保守党の弱いところは二人区にするとか、こういうことが毎日の新聞に出されるわけなんです。私はこういうことはですね、この与党に、あるいは野党に有利不利、そういう問題をこえてですね、政治家というものは何ということをするもんか、こういう私は感じを与えると思うのです。あるいは参議院選挙を予定通りやったんでは、どうも農繁期で保守党に工合が悪いから少し延ばす、こういうことを昨日ですか一昨日ですか、六日の晩ですね、総理大臣の私邸にお集りになって相談をされておる。政治というものはそういう一つの党派だけの恣意によって大事な問題が曲げられるべきでは私はなかろうと思う。まあこまかいことは言いませんがね。少々の党利党略ということはどこだってあるでしょう。言いませんが。たとえば参議院選挙の期日の問題だとか、あるいはこういう大事な選挙区の問題だとか、こういうものは、やみで一方のものだけでそういうものを扱っていく。これで私は政治全体に対する国民の不信といいますかね、そういう感じを起してくると思うのですが、これはどうでしょうか。総理大臣は与党の責任者ですから、答えにくいかもしれませんが、一つ日本の政治をよくするという立場から、率直な見解を伺いたいと思う。
  262. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 小選挙区はどういうような仕儀になっておるか、私はよく存じませんけれども、とにかく国民の意思がそのまま議会に映るようにしたいというような見地から、研究をしておるものと思います。  それから参議院の選挙を延ばした方がいいとか、早くした方がいいとかいうのは、人によって違っております。六日の晩にそういうような話をちょっとした人がありますけれども、相談をしたことはありません。絶対にないのです。どういうわけでああいうふうに新聞に出ましたか、それは私は存じません。
  263. 亀田得治

    ○亀田得治君 じゃ、新聞の取り消しを求めたり、そういうことをされましたか。これは官房長官の仕事かもしれませんが……。
  264. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。あの会合のあとに幹事長も私も新聞記者会見いたしましたが、選挙期日を延ばすとか、あるいは繰り上げるということを申しておりません。また総理がただいま申されたように、そういうものを議題としてあれが催されたのではございません。従いまして、新聞がそういうふうな観測を書いたことについて取り消しを要求するなどということは、これまた政府としてなすべきことじゃありません。あれは観測のようでありますから、よく新聞を見ていただけばわかりますように、私の方でそういうことを申したことはございません。
  265. 亀田得治

    ○亀田得治君 では、官房長官、規定通りやる方針でしょうな、政府も与党も。
  266. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 政府として今、いつやるとかどうとか、これは告示に関することでございますので、まだそれは……。
  267. 亀田得治

    ○亀田得治君 方針ですな。
  268. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 方針については、何らこれについて協議いたしておりません。
  269. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 本日は、時間もだいぶ過ぎましたので、これにて散会いたします。    午後四時五十一分散会