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1956-02-29 第24回国会 参議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二十九日(水曜日)    午前十時三十分開会     ―――――――――――――    委員の異動 二月二十七日委員竹下豐次君杉山昌 作君及び後藤文夫辞任につき、その 補欠として高木正夫君、小林政夫君及 び片柳眞吉君を議長において指名し た。     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     西郷吉之助君    委員           池田宇右衞門君            堀  末治君            三浦 義男君            安井  謙君            秋山 長造君            曾祢  益君            吉田 法晴君            豊田 雅孝君            中山 福藏君    委員            青木 一男君            秋山俊一郎君            石坂 豊一君            井上 清一君            伊能 芳雄君            川村 松助君            佐野  廣君            田中 啓一君            野村吉三郎君            平林 太一君            藤野 繁雄君            宮澤 喜一君            吉田 萬次君            亀田 得治君            佐多 忠隆君            竹中 勝男君            戸叶  武君            羽生 三七君            北 勝太郎君            小林 政夫君            廣瀬 久忠君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    法 務 大 臣 牧野 良三君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  石橋 湛山君    運 輸 大 臣 吉野 信次君    国 務 大 臣 大麻 唯男君    国 務 大 臣 太田 正孝君    国 務 大 臣 高碕達之助君    国 務 大 臣 船田  中君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    内閣官房長官 松本 瀧藏君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    自治庁財政部長 後藤  博君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    経済企画庁審議    官       金子 美雄君    経済企画庁計画    部長      大来佐武郎君    外務事務官    (公使)    木村四郎七君    外務省アジア局    長       中川  融君    外務省欧米局長 千葉  皓君    外務省条約局長 下田 武三君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主税局長 渡邊喜久造君    農林政務次官  大石 武一君    農林大臣官房長 谷垣 專一君    水産庁次長   岡井 正男君    労働政務次官  武藤 常介君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠互選昭和三十一年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十一年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十一年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を開会いたします。  本日より昭和三十一年度本予算に対しまする総括質疑をいたします。本日より五日間の予定で総括質疑を行いまして、来たる六、七、両日は公聴会を開きます。  まず御報告申し上げます。予算委員のうち、竹下豐次君杉山昌作君、後藤文夫君が辞任されまして、新たに高木正夫君、小林政夫君、片柳眞吉君が就任されました。  なお、理事館哲二君が辞任したい旨の申し出がございましたが、これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 御異議ないと認めます。よって理事補欠互選は、先例によりまして委員長より御指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 御異議ないと認めます。それでは中山福藏君を理事に指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) これより総理に対する総括質疑を開始いたします。
  6. 羽生三七

    羽生三七君 昭和三十一年度一般会計予算並びにこの関係法案を審議するに当りまして、本来なら予算全般にわたっていろいろ承わりたいことがあるのでありますが、私は、本日は主として外交問題について総理の所見をお尋ねいたしたいのであります。  というのは、総理も御承知のように、第一次鳩山内閣成立した当時のいきさつを顧みますると、民主党が比較多数ではあっても、第一党になったのは、何といってもソ連中国等国交回復国家との戦争状態の終結とその国交回復ということが主要なる目的であったと思うのであります。このアピールは確かにききました。そうしてある程度社会党の票まで食って、そうして第一次鳩山内閣成立したと考えるのであります。鳩山総理はその後、社会保障の問題、その後というよりも、その当時、社会保障の問題とあるいは住宅政策の問題、あるいはその他内政問題について幾つかの公約をされております。しかしその公約中心は、何といいましても日ソ交渉であったことは先にも述べた通りであります。これは間違いのない事実であります。また昨年鳩山総理は、日ソ交渉と保守合同問題との関連を私がお尋ねした際に、どんなことをしてもこの問題は、つまり日ソ交渉はなし遂げたいと答えられたのであります。このようにして日ソ交渉は昨年の六月ロンドン会議が開かれたわけでありますが、交渉が開始されてからずいぶん長いことになります。そこで政府ほんとう交渉妥結させる熱意を持っておるのかどうか。もちろん私は、政府が本気でやっておると思うし、鳩山総理熱意を疑うわけではありませんが、とにかくあまり長くなりすぎる。私が昨年お尋ねしたのは七月二十六日でありますから、ちょうどきょう私がここでお尋ねすると満七カ月目である。であるからこういう問題に、つまり交渉のさなかに、今現に交渉マリクさんのソ連帰国で若干中絶状態になっておりますが、大まかに言って交渉が継続中に立ち入った質問をするのはどうかと思いますけれども、しかし野党の者が七カ月目でこの問題に触れるということは、必ずしも私は当を失したことではないと思う。この際この辺で一つ外交交渉の過程に立ち入った内容的なものは別といたしまして、総理は今この段階をどういうように理解されておるのか。そんな事務的な外務省関係でなしに、総理としてどういうような御判断をなさっておるか、その辺のところをまず最初お尋ねいたします。
  7. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 最初に御質問になりましたのは、世界情勢意味もお聞きになったのですか、ソ連との関係中心に……。
  8. 羽生三七

    羽生三七君 世界情勢はずっと後にお伺いいたします。今は日ソ交渉の現在の段階お尋ねしておるのであります。
  9. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日ソ交渉は、現在は平和条約を逐条的にきめていこうじゃないかというようなマリクとの話し合いで、逐条的に相談中と聞いております。
  10. 羽生三七

    羽生三七君 いや、それはわかったことでありまして、逐条的におやりになってきたのです。それでマリクさんがソ連共産党大会のために帰国されて、近くおそらく数日中にロンドンへ帰られて再び交渉が再開されると思う。そこで私のお尋ねしたいことは、そういう逐条審議をやっておるとか何とかいうことでなしに、率直に言って、私は交渉停頓状態だと思うのです。そこで私の推察にして誤りがなければ、問題はすでに第一線の松本全権がこの上さらに長く相手方と話し合いをし合うようなそういう段階は過ぎておる。まさに過ぎようとしている。過ぎていると言うのはまだ早いかもしれませんが、過ぎようとしている。だから政府みずからが、特に鳩山総理みずからが決断を迫られておる段階に近づいておるように思うのでありますが、総理はそうはお考えになりませんか。
  11. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 今日はまだ決断をしなくてはならないという時期には到達していないと思っております。
  12. 羽生三七

    羽生三七君 私は見通しの上から判断をしておるのであります。私は今交渉内容がどういうことになっておるか、こまかく知るすべもありませんが、しかし私は種々なる情勢から判断をして、これは停頓状態にあると解釈をいたしております。しかし、先ほども申し上げましたように、こういう重要な問題を私は立ち入ってお伺いする気は少しもない。そこで抽象的なお尋ねをするわけでありますが、鳩山総理は、この交渉は石墨だとお考えになっておられるか。交渉見通しですが、有望であるとお考えになっておるかどうか。
  13. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 非常にむずかしい質問ですが、とにかく話し合いをつけなければならない問題だと思っております。
  14. 羽生三七

    羽生三七君 私は話し合いをしなければならないという総理決意を大いに買うのであります。そうしていただきたいのであります。しかし私は、実際には見通しとしては非常な困難なところへ来ている。しかも野党のわれわれがその内容に立ち入ることをあえて避けなければならないようなほどのまた重大な問題でもあるわけであります。しかし私は興味深い問題として、この日ソ交渉以外の各種の今日までの平和条約交渉開始の町から妥結に至りますまでの時期というものを調べてみたのです。これは興味深い問題だと思うのであります。たとえば日清戦争についてみますと、これは明治二十八年の三月二十日に日本側が伊藤、陸奥全権相手清国側李鴻章全権で、この第一回会見が下関、で行われたのです。三月三十日に休戦条約締結せられております。続いて四月十七日には日清講和条約及び付属書が調印されておるのであります。わずかに一カ月足らずの期間であります。次に日露戦争の場合を見ますると、これは一九〇五年、つまり明治三十八年でありますが、この八月十日に、御承知のように日本側小村全権と、ロシア側ウィッチ全権との第一回会議がポーツマスで行われました。九月一日に日露休戦に関する議定書が調印をせられて、続いて九月五日に日露講和条約成立いたしております。僅々二十五日間であります。  さらに第一次世男大戦の場合、すなわちヴェルサイユ平和条約ですが、このときはどうかと見まするというと、一九一九年、すなわち大正八年でありますが、その年の一月十八日にパリ講和会議の第一回総会が開かれております。続いて同年の六月二十八日にいわゆる連合国ドイツ国とのヴェルサイユ平和条約締結されておる。五カ月と少し余であります。  戦後を見ますと、イタリアの平和条約の場合は一九四六年、昭和二十一年の四月二十五日にパリ四カ国外相会議が開かれて、七月十二日に外相会議を終結し、同年の七月二十九日に二十一カ国参加の講和会議が開始されて、同年十月十五日、講和会議が終結いたしております。この場合は約六カ月であります。  私は先にも申しましたように、重要な平和条約を拙速でいいとは申しません。そんなことは毛頭考えておらない。しかし、今述べたような過去の類例を見まするというと、現在の日ソ交渉とこれを照合した場合に、ほんとう政府がやる気があるのかないのかを私が疑うことは、必ずしも当を失したことではないと思うほどに、それほどに遅々としている。世界のあらゆる重要な講和条約が……。最近のアデナウアー首相ソ連訪問に伴うあの疾風迅雷的な条約締結はこれは別としても、歴史的に講和条約締結というものがかくも長く時間を要するということはほとんど類例がない。それだから、何でもいいから早くまとめろとは私は申しません。しかし、このような事実を見た場合に、私は先にも申しましたが、拙速でいいとは言わないけれども、政府熱意というものを実際に疑いたくなる。しかし、今ここで私は平和条約方式がいいとか、あるいは暫定方式がいいとか、あるいは領土問題はどの程度なら話し合いをつけたらいいとか、そんなことは毛頭お開きいたしません。しかし総理日ソ交渉成立希望していることもさっきのお答えでよくわかる。ぜひ成立させたいと言っていらっしゃる。しかし問題は総理のこの問題に関する基本的な態度であります。すなわち鳩山総理は、この国家的重要問題をあまり党内事情関連させすぎておりはしないか。ここのところは総理一つよくお聞き願いたい。この重要問題を総理はあまりに党内事情関連させすぎておる。超党派外交どころか、与党内の調整さえ困難ではないですか。もちろん、私は総理交渉をぜひ達成させたいと念願しておることを信じております。しかし自由民主党内には、まだあなたと方針を異にして、ときには足を引っぱろうという勢力もいるのです。しかも悪いことには、これが総裁問題と関連をしておる。これは事実であります。もし、総理日ソ交渉について真に熱意を持つならば、もっと努力して党内をまとめなければだめであります。そういう努力がない限り……、ソ連の百パーセントの譲歩があれば格別ですよ。しかしそうでない限り、日ソ交渉は私はデッドロックに乗り上げる危険性は十分にあると思う。外交交渉でありますから、相手が百パーセント譲歩するか、こっちが百パーセント譲歩するか、そうでなければ妥協か、これ以外にはない。だからあなたが党内の取りまとめをやらないとするならば、ソ連の百パーセントの譲歩がない限りはこの交渉は非常に困難なところに落ちてくる。だから総理先ほどお話しになったように、もしほんとうにこの日ソ交渉成立を念願しておるならば、総理は、党内の少くとも総理と見解を異にしておる人たち意見を取りまとめて、交渉妥結方向に進むよう努力をせなければならぬと思いますが、そういう努力をお払いになる考えがありますか、いかがでありますか。
  15. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 世界戦争がどうしても起らないようにできるだけ努力をしなくちゃならないと思っております。米ソ戦争でも始まったならば、イーデンが言うまでもなく、世界文明国はつぶれてしまうわけでありまするから、戦争の起らないようにしなくちゃならないのですけれども、この世界情勢というものはなかなかそう……、非常にいい空気になってきたと思うと、また悪い方向に転換したり、また原爆、水爆を競争し合ったりいたしまして、急にその冷戦が終ったとか何とか甘えないような時代だもんですから、やはり日ソ交渉もそれと関連いたしまして、なかなかまとまらないだろうと思っております。けれども、とにかく長い間ソ連にいまして、帰ってこない邦人がたくさんいますし、その人たちは一日も早く日本に帰りたいし、帰さなくちゃならないのでありまするから、戦争の起らないような世界平和の大眼目から考えましても、日本人を早く帰したいということ、その心情から考えましても、どうしてもこの問題は早く解決しなくちゃならない問題であります。事情がよくわかれば、大して問題になる点はないだろうと思う。今のところ、領土の問題はむろん問題になっておりますけれども、この領土の問題も、考え方によりますれば、そう解決できない問題ではないと思う。戦争がないということにきまれば、じき解決できる問題で、戦争があるということになれば当分は解決できないということになる。それですから、話し合いをしていけば、領土の問題は、日本に返すということがきまりましても、戦争がないということがきまればソ連は同意をするに違いない。戦争があるかもしれないと思えば、ソ連はなかなかすぐは同窓はしないというような工合に、関連している問題ですから、急にはなかなかいかないでしょう。しかしながら、全部ソ連日本の要求に応じないといって、ソ連に大して利益のある問題ではないのですから、話し合いの結果は、ある程度においてその話し合いがつくものと今日では思っておるわけです。私は決して希望は捨てません。
  16. 羽生三七

    羽生三七君 どうも総理大臣、私の質問をお取り違えになっておるじゃないかと思う。与党の中に、総理大臣考えられておる日ソ交渉方式と違った意見を持っている人がおるですよ。それをまとめなければ、ソ連の百パーセント譲歩がない限りは、この交渉デッドロックに乗り上げる。向うの譲歩があるならば別ですよ。それはとにかくとして、今与党内意見の対立があるが、私は確実にあると思うのですが、それをおまとめになる御協力をなさるか、ただ漫然と時期の来るのをお待ちになっておるか、与党内反対意見を調整するような努力をなされるかどうか、これは非常な微妙な問題だと思いますが、お答えを願いたい。
  17. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 大体において与党内意見の相違は領土問題から来ていますから、世界戦争がないことにきまれば領土の問題は片づく問題だ、その世界情勢と相関連してこの問題がきまるだろうと私は考えておるわけです。
  18. 羽生三七

    羽生三七君 世界戦争がなくなれば領土問題は片づくだろうというようなことでは、とてもこの日ソ交渉は、ここ半年、一年に片づく可能性がないということです。これは私の質問に対しては非常に的がはずれておるわけでありますが、それはあとから順々にもっとお尋ねしていきますけれども、総理松本全権から、総理みずからモスクワを訪問して徹底的に話し合いをするということを要請された群集はありませんか。
  19. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 要請された事実はございません。
  20. 羽生三七

    羽生三七君 ソ連共産党大会がありまして、その際日本との関係改善が取り上げられたと思いますが、日ソ交渉にこのことは有利に響くとお考えになっておりますか。
  21. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 何がですか。
  22. 羽生三七

    羽生三七君 ソ連共産党大会日本ソ連との関係日ソ関係をもっと改善しなければいけないということが言われているのです。これは日ソ交渉に有利な影響を与えるかどうかという問題です。
  23. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はよくその事実を知りませんでしたが、日ソ交渉に対して、ソ連もこれをなし遂げたいという希望は持っておるものと私は思っております。
  24. 羽生三七

    羽生三七君 総理は去る一月二十六日の記者会見の際に、日ソ交渉通常国会中に仕上げたいと言明されております。あの例の暫定方式とか平和条約方式とかいうようなことについては、これはあとから取り消されました、総理は。しかしこの部分は取り消されておりません。そこで一月二十六日の記者会見通り日ソ交渉は今通常国会中に仕上げたいというお考えに変りはないかどうか、これをお尋ねいたします。
  25. 鳩山一郎

    鳩山一郎君 それは今日ちょっと不明です。松本君からしばらく何とも言って参りませんし、私は重光君から聞いておりませんので、どういう情勢にあるか、全然知らないのであります。(「ちょっと的がはずれている、総理希望がどうか」と呼ぶ者あり)予想でしょう、できるかできないかという。そればちょっとわかりません。(「決意だよ」と呼ぶ者あり)決意はやりたいと思っております。
  26. 羽生三七

    羽生三七君 実は総理からだですね。弱々しいからだを見ていると、あんまりしつこく質問をするのは実は私もいやになるのです。しかし政治家としての良心は、もっと問題を明確にしなければいかぬということを私に命じますから、はなはだ総理は不愉快でありましょうが、なお私はこの問題をもっと重ねてお尋ねをいたします。  先にも私が申しましたように民主党が第一党となって、第一次鳩山内閣成立してからの総理の実績を見て参りますというと、これはいささか言葉が過ぎるかもしれませんけれども、率直にいって、予算編成など人まかせで、それは確かに若干電話のお打ち合せくらいはあったでしょうけれども、ほとんど予算編成人まかせである。しかも強力な民生安定を提唱されたのです、あのときは。しかしその当時の五カ年計画に比較して、第一回の総選挙、つまり民主党が発足するときの総選挙の五カ年計画に比較して、今年度予算は、防衛費の増加を特徴づけるだけで、民生費はことごとく頭打ちをしておるのです。健康保険など逆に国民の負担を加重させておる。しかも一方では国民の多数が必ずしも欲しない憲法改正考えたり、再軍備の増強を計画したり、さらに、それを達成させるために、全く無謀というほかのない小選挙区制を強行しようとされておる。また総評の春季闘争なんかについては、総理社会党鈴木委員長との会談さえ断わられておる。鳩山総理国民期待しておったものは、前吉田内閣権力政治アメリカ一辺倒外交を、鳩山総理ならば、鳩山氏ならば是正するかもしれない。そういう漠然たる期待であったのであります。しかもこの国民期待の中の最大のものが国交回復問題だった。つまり日ソ交渉だった。だからほんとう日ソ交渉をまとめようとする熱意があれば、私は道はおのずからあると思う。それは一月二十六日の総理記者会見の際における考え方も、これは私はりっぱな一つ方針だと思う。あなたはあと重光外相との食い違いを究明されて、これを取り消されましたが、取り消される必要はない。あれはりっぱな、あなたの一つの見識であります。われわれ社会党も、さきにこの委員会で同僚曽祢君が述べたように、交渉方式については別個の考え方を持っておる。しかし、私は今それは申し上げません。問題は鳩山総理総理大臣地位につく場合の最大公約が中ソ等との国交回復であったのですから、もしこれが実現しなかった場合、これは重大な公約違反であります。その場合、総理大臣政治的責任をおとりになりますか、いかがでありますか。
  27. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) このソ連との話し合いがうまくいかない場合におきましてはむろん責任をとります。
  28. 羽生三七

    羽生三七君 日ソ交渉が不成功に終った場合には政治的責任をとられることが明かになりましたが、しかし私は首相政治的責任をとることを目的に発言をしておるのではない。われわれは正しい交渉成立期待しておる。はなはだ何といいますか、失礼な言い分かもしれませんけれども、鳩山首相から日ソ交渉を引いたら、この公約実現を引いたら何が残るか。これは非常に失礼な言い分ですが、これは私のいつわらざる感想でもあれば、同時に国民大衆の大多数も同じことを考えておると思う。(「その通り」と呼ぶ者あり)先に申しましたように、日ソ交渉総裁の問題とは相当深い関連性を持っておるように思います。まあ立場が違いますから、こんなことを言うのもどうかと思いますが、単にあなたが総裁になることだけにどれだけの意味があるか。何もなすことなく何カ月初代総裁地位についてどれだけ意味があるか。それも一つの人生の生き方かもしれない。しかしあなたは現に総理大臣なのです。現職総理大臣なのです。だから自分の所信を貫くに一番いい立場にある。やろうと思えば何でもできる。もしあなたが総理大臣地位にあるうちに歴史的な業績を残すとすれば、私はこの日ソ交渉成立させることだと思う。総理は多年の念願がかなって吉田首相に取ってかわった。そしてまたさきにあなたと初代総裁地位を争う立場にあった緒方竹虎氏を失ったのであります。あなたはあなたを取り巻く人たちの言うことさえ聞いていれば初代総裁はまず間違いない。しかし私はあなたが真に責任を自覚する政治家でおありになるならば、この公約を果す道をお選びになることを希望いたしておきます。また交渉デッドロックに乗り上げた場合には、最初から総理がよく言われた、戦後十年たってまだ日ソ間に戦争状態が続くということは好ましくないという、従ってそれゆえにこそ日ソ交渉をやるんだと言われたあなたの希望もだめになる。あなたは現職総理大臣中に、今申し上げたような、党内のバランスの上にのみあぐらをかかぬように、積極的にこの交渉成立のために努力されるかどうか、重ねてこの問題をもう一度お尋ねしておきます。
  29. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ソ連との間の戦争状態が終結するということは私は必要なことだと思いまするから、そのためには努力をいたします。
  30. 羽生三七

    羽生三七君 いろいろまだお聞きしたいことがありますが、微妙な段階にありますので、日ソ交渉問題はこの程度で、次の問題に移ります。  次にお尋ねしたいことは、やはり総理が第一次鳩山内閣成立の際に言われた中ソとの国交回復でありますが、中共問題についてお尋ねいたします。  この問題は、衆参両院の本会議委員会でずいぶん論議されたのであります。政府考え方もある程度わかっております。私の方から政府考え方を要約いたしますと、中共問題は台湾政府との関係や国際情勢にも関係があるので、今直ちに中共を承認するとかしないとか具体的措置をとり縛る段階でない。今のところは貿易の拡大等に重点を置いて施策を進める。これが要約した政府立場であります。これは間違いないと思います。  そこで、私はここで同じような質問を繰り返そうとは毛頭考えておりません。また同じような答弁を聞きたくもないのであります。私のお尋ねしたいことは、問題は国際情勢に変化が起るまで、つまりこれをもっと具体的に申し上げますというと、アメリカの対中共方針や国連の方針が何らかの変化が起るまで日本としてはどうにもならないという立場をとるのか。つまりですね、政府は国際情勢もあるし台湾政府もあるから、中共問題は今直ちにどうするわけにもいかぬから、せめて貿易を拡大すると、そういう場合、進んで日本が国際情勢の変化を求めるような積極性を持つ意思はないか。国際情勢が変れば日本はついていくというのでなしに、その国際情勢を変えていくというような努力をする意思はないか。そのためにアメリカともっと話し合いをしないかということの必要性を私は痛感するのでありますが、そういう御意思がありますか。そのためにはアメリカともよく話し合わなければならないし、またアメリカや中共を含めてアジア会議を提唱してはどうかとも考えている。私はずっと前の予算委員会でも総理お尋ねしたことがある。だからアメリカと話し合う、あるいはアメリカと中共とを含めたアジア会議を提唱して、積極的に国際情勢を変えていく、変ったら日本もついていくというのでなしに、日本もその一環に加って国際情勢を漸次変えていく、そういう努力をなさる考えはないか。つまりそういう積極性をお持ちになる意思はないかどうか、これをお伺いいたします。
  31. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は昨日のユネスコのアジア会議に出席いたしまして、新民族主義ということを申したのでありますが、とにかく民族はお互いに積極的に仲よくしていこう、新しい民族主義を作らなくてはいけないというような意味の話をしたのですが、そういうような意思に沿うような理想のもとに中国とも交際を続けていきたいと思います。
  32. 羽生三七

    羽生三七君 いや……、これも実は質問とだいぶこのお答えが違っているのですよ。(「逃げることばかり言っている」と呼ぶ者あり)話が横へそれますがね、総理大臣はこの間の問責決議案からだいぶ慎重になられて、ほんとに故意になさっておるのか、あるいはほんとうにそうお考えになっているか、質問に十分答えられておりません。予算委員会なんかでそんな問責決議もありませんから、だろうと思いますから、一つ気を許して所信を述べて下さい。  そこで、今お答えは非常に抽象的であったから、もう少し具体的にお尋ねしますが、来月に入りますとダレス長官日本へ参ります。この機会をつかまえて総理はどういうことを話し合いなさろうとしておるか、一つ考えがあったら承わりたいと思います。
  33. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ダレスが来月参りますから、そのときには両方の、日本がどういうことを考えているかということを理解させる必要があるというふうに私は考えています。そういうような点についてダレスと話をしたい。またアメリカの考え方も、大体わかっていても、アメリカの考え方も聞きたいと思っています。
  34. 羽生三七

    羽生三七君 私はそれは総理の非常な進歩だと思うので、というのは、あなたは一月二十六日の記者会見に、ダレス長官とは会談の必要なしと、こう言われたのに、今必要を認められたことは非常にけっこうだと思います。というのは、日本は西欧との親善関係外交の基調とするということをよく言われておる。ところがこのダレス氏は、よかれあしかれ西欧外交の支柱になっている中心的な人です。だからこの機会に日本考えを率直に述べられ、またアメリカのアジアに対する考え方をただされるのには非常に私はいい機会だと思います。だからこの場合に、対中共問題、貿易制限緩和の問題、何かきょう新聞を見ますと、民間団体もダレスにこの希望を述べるようでありますが、そういう貿易制限緩和の問題あるいは安保条約、行政協定の改訂の問題、あるいは小笠原旧住民の帰島問題、そのほか数え上げれば切りのないほどたくさんありますが、何を中心にお話をなさろうと思っています。ばく然と何か話してみたいということでなしに、やはりそれほどの西欧外交の支柱であるダレスが向うから来るのですよ。重光外相は去年足を運ばれましたが、向うから来る。滞在わずか二十四時間といわれますけれども、とにかく来る。社会党すらも時間をもらって話し合いをしようということを国際局で考えている。だからこんないいチャンスはないときに、ただばく然と考えてみるということでなしに、何を話そうとお考えになっておるか、具体的にもう少しお話し願いたいと思います。
  35. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は今具体的にあなたにお話しするだけのことを考えておりませんが、とにかくそういうような趣旨において、われわれは相談しておきたいと思って、そういう用意をしております。
  36. 羽生三七

    羽生三七君 実に残念なことでして、私は非常にいい機会だと思いますが、まあしかし時間がまだちょっとありますから、十分どういう問題を中心話し合いをされるか、お考えを願いたいと思います。  次に国際情勢関連して総理の所見をただしておきたいと思いますが、私はさきに、日本の国連加盟が失敗に終った際の緊急質問の際に、総理に要望した問題があります。それは世界情勢が大きく変化している際に、日本外交はあまりにも積極性や機動力がないということです。たとえば政府は、今憲法を改正して、軍事力を強化しようと考えている時期に、世界情勢は、特にアジア諸国においては軍事同盟方式というものがきびしく批判されており、話し合いによる外交に重点を置く方向に進んでおるのであります。先ごろタイにおいて行われたSEATO、東南アジア条約機構の軍事演習というものはきわめて評判がよくない。またカンボジアあたりなども、SEATOには参加をせぬという意思表示をついて先日もやついている。日本の国連加盟なども、台湾政府の無謀な行為から、結果的に外モンゴールと抱き合い心中という運命になりましたが、これもしさいに検討してみるというと、世界の中に、わけてもアジアやアフリカ諸国の中にほんとうの友がなかったということです。どうしても日本を国連に加盟させなければならぬという尻押しをしてくれる、積極的支援をしてくれる国がほとんどなかった。これはもう重大なる問題だと思う。とにかく世界は今大きく変化しようとしております。すなわち原水爆を伴う新らしい戦争というものが、もう勝者も敗者もない。ただ人類の破滅を招来するだけだ。そういう意識から、力による平和というこの軍事力オンリイの政策がきびしく再検討されようという時期であります。現に一昨日イギリスの議会におきましては、御承知のようにイーデン首相は、大胆率直にこの見解を述べている。またソ連共産党大会でもいろいろと自己批判が行なわれ、またアメリカにおいても今ダレス外山父がきびしい批判にさらされております。たとえば一昨日のワシントン電報によりますというと、米国の上院外交委員会の席上で、民主党のフルブライト議員は声明を発表しまして、軍事力を通じてのみ平和を求めるというような誤った印象を諸外国に与えたということで、痛烈なダレス長官批判をやっている。米国自身が、今施政を変えようという前夜にあるのであります。そういう感じがするのであります。そういう時期に、またそういう世界情勢の中で、日本政府が旧態依然たる外交をやっている。米国の方針にだけ追随しているというような、そういう行き方であります。これでは世界情勢に対応できるはずがない。私はこの前も本会議総理希望を述べましたけれども、私はからだの不自由な総理大臣に、あえて飛行機で世界を飛び回れとは言わない。しかし機動力も何もない、積極性もない、今の外交を続けるならば、私は日本が将来この国際的に必ずしもいい地位を保つことができないということを憂えておる一人であります。こういう世界情勢に対応して、総理がもっと外交に機動力、積極性を持たせる。ダレスさんが来るならば、その時期をつかまえてもっと積極的な外交をやる、こんないい時期はないじゃないですか。私は情ないと思う。これは与党野党の問題ではない、日本として情ないことです。こういう国際情勢に対応してもっと積極的に外交施策をおやりになる抱負はありませんか。あえて総理のその御抱負をお聞きしたいのであります。
  37. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 米ソ戦争を避ける、世界戦争を起さないようにするのにはいろいろなことをしなくてはならないとむろん思っております。けれどもソ連とアメリカとは、われわれの希望に反して、とにかく水爆とか原爆の発明に努力いたしまして、日進月歩といっていいくらいに原水爆の問題は発達をして、それでソ連はどの程度までアメリカを凌駕したとか、アメリカがこれに追いついたとかいうのが現状でありまして、戦争希望して、原水爆の戦争をすれば世界は破滅だということがわかりながら、原水爆の研究には米ソともに非常な熱意を持っている、そういうような状態でありまするから、日本外交も非常にむずかしいのでありまして、平和を持ちきたすにはどうしたらいいかというのは非常にむずかしい問題であると思うのです。とにかくソ連との戦争状態終結を末確定にしておくということは最も悪いことだと思うので、これだけを早くしたいと私は思います。
  38. 羽生三七

    羽生三七君 実はそれも必ずしも今の私の質問に対しては当っていないのですよ。それはもうさっき日ソ交渉のときに十分承わったことで、そうではない。鳩山内閣外交に機動性がない、積極性がない、その日暮し、出たとこ勝負だ、これではもうだめだ。率直に言って外交がないと言っても私は過言ではないと思う。日ソ交渉だけを申し上げておるのではない。この際、この世界情勢に対応するために、加盟が失敗に終ったときのようなあの孤立外交に陥らないようにするために、東南アジア諸国との親善関係、貿易促進にも積極性を持たせなければならない。この前、私が申し上げましたように、ソ連が東南アジアと経済提携をやる、この場合も単なる消費品のそのとき限りの売買ということなら問題はない。しかしソ連の東南アジアに対する経済援助を見ておりますと、計画的な財政投融資なんです。五年、六年にわたって資材なりあるいは金融をしてやるのです。だからよほど気をつけないと、将来日本なんか東南アジアに今までの貿易規模を維持できるかどうかわからないような事態すら起らないとも限らない。そういうような問題もありますから、もっと外交に機動性と積極性を持たさなければだめだということを言っておるのでありますが、総理お答えがないから、この問題はこの程度にして、また時間もありませんので、次の問題に移っていきます。  次の問題は、総理は昨日でしたか、衆議院の内閣委員会で、自衛力の問題で船田防衛庁長官が何か言われたことに関連してお聞きになったと思いますが、あの船田防衛庁長官は、新聞の報道するところによると、飛行機で敵基地を爆撃しても一向差しつかえないのだということを言っておられたのですが、これは総理大臣の二十二国会における言明と反するということで、院の内閣委員会総理をきょう呼んで問題を究明されようとしておる。総理は船田防衛庁長官のあの発言でいいとお考えになるかどうか、この機会に一つ承わっておきたいと思います。
  39. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、表現は船田君と私とは違っていますけれども、意味は同じだろうと思うんです。何も日本を爆挙してくる基地に対して船田君も爆挙に行ってもいいということを無条件に言ったのではないと思います。(「無条件に言っておるじゃないか」と呼ぶ者あり)無条件に言っておるのではないと思うんです。やはりそれをしなければどうしても日本の自衛ができないという、やむを得ない、またそのほかに方法がないというような条件がある場合においては、自衛のために基地を攻挙しなくちゃならないのは当然でありまするから、そういう意味で船田君は言われたものと思います。海外派兵というような問題のときに私は答えたのでありますが、私はそういうような場合に、ただ日本に不便だからとかいうようなことで、日本を攻挙してくる基地にどこへでも出かけて行っていいというわけではない。船田君もそういう考えだろうと思うんです。
  40. 羽生三七

    羽生三七君 この問題は非常に重要な問題でありますが、私は時間がなくなってしまったし、もう一つは同僚議員がこの問題については後に十分ただします。また衆議院の内閣委員会でもも一つと問題を究明するだろうと思う。  ただ私は抽象的に違った意味総理大臣の注意を喚起しておきたいことがあるんです。自衛力の限界に対する問答は、きょうはやりません。根本問題です。私は、総理戦争が起ったらどうするかという考えはもうやめたらいいと思う。政府はもうやめたらいいと思う。戦争になったら自衛力を使うという考えはやめたらいいと思う。私は戦争になった場合は終りだと思う。これは第三次世界戦争意味するんです。戦争にならないようにするのにはどうすればいいか、それに巻き込まれないようにするにはどうすればいいかということが、新しい意味の自国の防衛の概念だと思う。戦争になったら相手の基地を攻撃してやろうとか、向うが攻撃したら自分は守ろうとかいうことは私は問題にならぬと思う。そうなったら終りです。そうならない工夫なんです。だからこそこの日本の新憲法が生きているんです。この根本的な考えを誤ると、とんでもないことになる。あの昔の軍人さん方の若干の経験を活用しようというけちな根性になってしまう。私はそう思う。前に吉田総理が、君はそういうことを言うけれども、お隣りの朝鮮を見よ、中国を見よ、インドシナを見よ、戦争をやっているじゃないか。なぜ日本だけが安全なのかと言われたので、私はそのときにこういうことをお答えした。朝鮮へどこの国が攻めてきたか、朝鮮は北と南の戦いであります。中国へどこの国が攻めてきたのか、これは本土と台湾との争いなんです。インドシナへどこの国が攻めてきたのか、これは北と南の争いなんです。どこからも攻めてこない。だから日本は、海を渡ってくるような戦争が起れば、これはローカル・ウォーじゃないんです、局地戦じゃないんですよ。海を越してくるような戦争がもし日本にあれば、これは全面戦争になる。そのときは終りであります。そのときに日本の国をどうして守るかということを考えるよりも、日本は新しい憲法を持って、そうしてあくまで戦争によらない、話し合いによる平和でいくべきだと思う。この基本方針を確立すべきだと思う。総理はあくまで憲法改正をしてやって、再軍備がいいとお考えになるんですか。この問題を一つお聞きしておきます。
  41. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はあなたのように戦争の形式を一元化するということはまだ考えておりません。いろいろな種類の戦争が起らないということは断定できないと思う。そういう場合に、やはり日本は自分の国を守るべき相当の限度の兵力を持つ必要があると思う。それを自衛力と言っておるわけであります。その必要はあると思っております。
  42. 羽生三七

    羽生三七君 これはこんな残された数分の間に論議するにはあまりに大き過ぎますから、私は他日あらためてもし余裕があればお尋ねいたします。私が特に最後にこの問題をお尋ねしたのは相当に意味があると思う。というのは、第一次鳩山内閣成立したときの民主党公約、あの六カ年計画を見ると、なかなかあれはいいものです。われわれとは相当距離がありますけれども、なかなかいいものなんだ。ところがあの民生安定というようなものはほとんど頭打ちをしてしまって、昭和三十一年度予算で頭を上げたものは防衛費だけです。防衛費の増強だけなんです。確かにそれは社会保障費なんかは増額を、百幾億ふえておりますよ。しかしこれは人口の自然増や、全体としての国民所得の増大等から見れば、必ずしもこれは強化したことにはならない。民主安定費が強化されたことにはならないのです。ただ一つふえたものは防衛費だけです。しかし鳩山内閣が当初の公約に基いてその後保守合同をしましたけれども、もし発足当時の鳩山内閣の清新な気持に立ち戻って民生の安定をやろうと思うならば、今申し上げた防衛費を押えない限り、これはどうにもならない。だから今度の予算は率直に申し上げて、これは一萬田蔵相もそこにおられますが、平凡な予算です。もし特徴があるならば防衛費がふえたことです。何も特徴のない予算です。  そこで最後のお尋ねをいたしますが、前の吉田総理大臣、これは独裁的権力をふるった。なかなかふるった。だから国民のきびしい批判を受けた。しかし彼には何事かをなそうとする積極的な意欲があった。内容のよしあしは別であります。ところが今鳩山総理は、党内の派閥のバランスの上に、率直に言ってあぐらをかいている。そうだからこそ何事もできない。安泰ではあるが、また同時に何事もできない。だからもし国民大衆が第一次鳩山内閣成立希望したとすれば、それはほかでもない、総理のよく言われる友愛精神なんです。からだの弱い鳩山さん、多年の念願をかなえてせめて何ケ月でも総理大臣地位につかせたい、この素朴な気持があなたの総理大臣になったことを国定がある程度歓迎した。ところが今あなたは、日ソ交渉停頓状態です。内政上これという見るべきものはない、ほんとうにありません。一年何カ月になる、あなたが地位につかれてから一年ちょっとになります。何がそれでは業績として残ったか。ただ派閥の上にあぐらをかいているだけだ。私はこれではいけないと思う。そこで私は、平和を確立し、国際的親善関係を強化して、そうして防衛費を極力押えて民主安定費に回すことだと思う。そうして総評の春季闘争なんかについても積極的に鈴木委員長あたりと話し合いをして、そうして第一次内閣成立の際に約束されたような初志に基いてあなたが勇往邁進することです。そのために総裁地位を失っても何ともないじゃないか。あなたは総理大臣現職なんです。勇気をもってあなたが所信に邁進をして、そうして日ソ交渉その他を達成させることを希望いたしまして、これはあえて御答弁を求めません。こういう希望を述べて私の質問を終ります。
  43. 西郷吉之助

  44. 野村吉三郎

    野村吉三郎君 九千万人の同胞が乗っている日本丸の舵をとっておられる総理大臣に対して、二つの点で総理大臣のお考えを伺いたいのであります。時間を割当てられておって少ししゃべりますが、お答えはもう簡単でけっこうでございます。  私は長い年月の間国家の禄をはんでおったのでありまして、戦後は祖国が再建され、りっぱな国になることを望んで、それに微力ながら協力できて国恩に報じたいと思っております。戦後に採択された民主主義は、これは私はよいと思って、これを玉成すべきことが国民の利益だろうと思っております。政府国民全体の政府であって、国民の選んだ人たち政府の衝に当っておる、国民全体の幸福を向上する、これが民主主義だと思っております。金持ち階級、特権階級、その他特殊のグループ、これらの人だけで政治を行うということは民主主義とは相いれぬものだと自分は思っております。従って今日、自由民主党は政権の座にありますが、常に国民全体のことを考えて、野党の長所はこれを取り入れても、一向それがために品位を汚すというものじゃないと思っております。また野党与党の長所は自分の政策とするよう願っております。  英国人は労働党になっても国民は大して変化ない、おおむね同じだということを申します。米国の共和党が民主党にかわっても国民に大して影響はない。従って昔のようにあるいは戦争をやり、あるいはシビル・ウォーをやり、天下の権を争ったときに比して、今日の欧米諸国の政治、なかんずく英米の政治は進歩しておりまして、政権の交代というようなことは、相撲取りが土俵で覇権を争うような格好になってきておると思っております。わが国においても願わくば国内で形而上の三十八度線ができるとか、あるいは南北戦争のまねごとでもやらない、ように願っておるのであります。  アメリカは生産旺盛でありまして、従って各人の収入、すなわちパーカピタの収入はわが国の十倍以上に達しております。国防費は日本の百倍程度ある。しかし社会政策もかなり発達して、不幸な人は少い。勤労者は自動車を持ち、テレビも持っております。ブルジョアとかプロレタリアートという区別は漸次なくなっておるのであります。これは生産力が高くて総所得が多く、利益の分配も比較的合理的であるからというのであります。  わが国は東洋において貧乏だ貧乏だといいますが、生活程度は東洋諸国においてはずっと上でありまして、第一位だと私は信じております。米英に比しては、はなはだしく劣っております。それは国民の総所得が欧米に比して少額であるからであって、国の生産向上、サービスの進歩によって国民総所得を増加して、それの合理的な分配によって国民生活を向上せねばならぬということは申すまでもありません。デモをやってみたり、争奪戦をやってみたりするよりも、国民総所得増加に協力すべきときだと思っております。ベース・アップも、ベース・アップだけ見れば私は道理はあると思います。しかしながら、これに応ずる源がないゆえに、野党の方では自衛費の削減、日米分担金削除というようなことを提唱しておるようにまあ見えます。  およそ欧米諸国、ソ連、中共その他あらゆる国はことごとく国家安全の保障を政治の第一に取り上げておって、政府責任者は、国家の安全保障の費用を高遠の理想のみによって軽視することはないように私は見ております。この際国民は苦楽を分って、国の総所得を増加するということに努力して、その公平なる分配によって生活を向上する以外に良薬があるとは思わぬのであります。あるドイツ人が申しましたが、戦争に負けた、財産を失った、十年間しんぼうすれば英米に追いつく、それから平等に競争するのだと言っておりましたが、今日までその通りやっておると思います。今日の日本は、繰り返して申し上げまするが、お互いに争うのじゃなくして、同じ日本人であるから協力すべきときだと私は思っております。  スエーデンは人口七百万の国であります。社会党は過去二十五年間政権の座にあります。二大戦争の厄を免れ得たせいもありますが、社会政策は理想的に行われており、ヨーロッパ第一だといわれております。しかし、社会党出身の国防大臣は、国際環境を見て国防費をふやし、それが小さい国で国防費は日本よりも多いのであります。会社だとか個人企業も栄えております。ここまで政治が発達してくると、保守だとか革新だとかいうことがなくなって、国民全体を基盤として切磋琢磨、国民の幸福を互いにはかるために競争するということになると思います。  私は鳩山総理大臣を知ることがおそらく四十年、数十年になります。日本に公明清潔なる新しい政治が行われて、その民主政治上治績をあげられることを陰ながら望んでおるのであります。せんだって外交委員会で私の質問に対して、超党派外交に御同感のように承わりましたのでありますが、私は政治家はこれを目ざして努力をすべきだと今でも信じております。外交は綱引きのごときものであって、すべてのものは小異を捨て、同じ方向に引っぱるべきものと思っております。民主政治発達の途上にあるわが国においてこのことはずいぶん困難だとは思いますが、さりとて政府は絶望すべきではない。政府方針にことごとく野党の共鳴を得るは困難だからといって、直ちに嫉視反目するのが能事とも思わぬのであります。何とか手段を講じて、超党派といかなくとも、もっともっと胸襟を開いて、外交の大筋は、同意を十分取りつけ得なくても、少くとも誤解し、曲解されない程度くらいまでは政府において工夫すべき必要があるのじゃないかと思います。行政権は内閣に属しておるのでありますから、枝葉末節のことまで外部から干渉して、国務を渋滞せしむることは好ましいことではありませんが、内閣においても、大筋においては少くとも反対党から誤解され、曲解されないくらいの程度までは可能じゃなかろうかというふうに思うのであります。これは私の第一の質問であります。その御所見を承わりたいのです。
  45. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 野村さんの今おっしゃられた、外交超党派外交であるべきだということは、この前に野村さんに答えた通りに私も必要なことだと思います。イギリスでもアメリカでも、外交問題について与党野党との間に意見の相違があまりないということは非常にうらやましいことであって、これも二大政党ができたばかりでありますから、最初のうちは摩擦がありましょうけれども、だんだんと経験を積んでいけば、超党派外交というものは、だれだって日本のことを第一に考えているのでありますから、超党派外交はだんだんと成立するものと思います。
  46. 野村吉三郎

    野村吉三郎君 第二には、ただいまは野党に対する態度について御所見を承わったんでありますが、今度は国民に対してのところに対して御所見を承わりたいのであります。こんなような質問を今繰り返すのは、ここに私は強い過去の経験からして理由を持っているのであります。それは太平洋戦争の起った原因は、昭和十二年、満洲事変もありましたが、昭和十二年シナ事変が発生した。当時の内閣はこれを局地解決することができなかった。無能と言わぬですが、よくしなかった。それで漸次拡大した。かつシナの商売は、私はシナを回りましたが、シナの商売は漸次日本で独占しておった。それから三国同盟をやった。そうして新秩序の建設、東亜共栄圏をうたって、欧米その他の国をことごとくシナ大陸から排斥した。これが戦争の遠因であったと思います。しかしながら直ちに原因ではなかった。直接の原因は、昭和十六年七月、仏印南部に日本が出兵した。その結果、米英その他の国が連合して日本と経済断交をやったためと私は思っております。当時の日本は、生産部面においては米一国に対して一割、十分の一程度であったと思いますが、経済断交によって油が来なくなったことは非常な痛手でありまして、漸次乾坤一擲のギャンブリングに突入することになり、真珠湾攻撃というようなところになったと思います。  政治家は、彼を知り、おのれを知らねばならぬが、私は帰朝後いろいろの人に接する間に、作戦の高級責任者をもってして、私らは米国をよく知らなかったという述懐も聞いたことがあるのであります。この戦争になるまで、当時の政府、議会、国民は、各国の情勢をどれほど検討しておったか、そういうことについて私は疑問を持っておるのであります。日本は将来かかるあやまちを繰り返してはならない。繰り返しては大へんである。私は今日の国際環境で直ちに大戦争になるなどとは予想しておるものでもありません。また憲法九条にある戦争放棄の部分にも、戦争放棄そのものには賛成しております。現に鳩山さんが書記官長をやっておられた田中内閣、これは昭和の初めでありますが、不戦条約に加盟しておる。パリスで調印して、その後枢密院でいろいろ議論になったのですが、これは批准されております。しかし、さりとて未来は、単に高遠なる理想の通りいって、一切他国を侵略するものがないとか、経済圧迫を加えて来るものはないとか、ただしは口に平和的交渉、他国に不干渉を唱えて、そうして実際干渉するものがあるとか、地下工作を試みるものがあるとかいうような点においては、いまだ世の中は楽観すべきほど進歩しておるとは思わぬめであります。ついては自衛手段は持たねばならぬ。  現在日本の貿易は私は日本の死活問題になっておると思う。ライフ・ラインになっておると思う。九千万人の食糧の二割以上、去年は豊年だといわれますが、やはり食糧は相当輸入せねばならぬ。油も一千万トンか輸入しておる。製鉄原料は一千数百万トン輸入しておる。木綿等の原料、重量で総計三千数百万トン、一万トンの船で三千隻以上で輸入しておる。合せて総体で三千隻以上です。米ドルで二十数億のものを輸入しておる。またこれにほぼ相当する金額のものを輸出して、ようやく国民生活ができるのであります。今や交通通信は発達しておって、至るところ近くなりましたからといって、かつて唱えた善隣友好主義を拡充して、あらゆる国と親善を保って、そうして貿易を拡大していかねばならぬ。そうして国民生活を豊かにせねばならぬということは申すまでもないのです。しかしながら、現状において日本が輸入しつつある必需品、これは主として自由諸国よりでありまして、共産圏よりはわずかしか入ってこないと思います。また入る見込みはないのです。従って貿易上、共産圏をもって、自由圏に変えるというようなことは不可能であります。もちろん、私は賠償問題をなるべく早く解決し、東南アジア方面へ時期を失せず経済的に進出すべきだと思っております。これらの点をよく考慮した上で、私は自由諸国との密接な関係は、まさに日本のライフ・ラインと言って間違いないと思っておるのであります。ややもすれば西洋では、日本はクロス・ロードにあるということを言っておりますが、私は以上の考えを持っております。もしこれらの事実を閑却して、感情にまかせて米国その他の国に対して極端な排斥運動を始めるということになると、またまた経済圧迫を受くる危険が全然ないとは申されぬと思います。万々一そういうことになれば、またまた一合五勾の配給、木炭自動車、人力車、牛馬車全盛時代にならぬとも限らない。私は今度の戦争のあやまちを繰り返してはならぬと思っております。太平洋戦争前に勢いに乗じていささか理性をうしろにした感があって大戦に突入いたしました。そのあやまちを避くるためには、英国はよい例になると思っております。英国人一般が、自国の生命線たる貿易路、トレード・ルートのことをよく承知しておりまして、軍縮会議その他においては絶えずこの問題を根本にして議論しますが、保守党も労働党もこれを守るに意見が一致しておるのであります。その他、国策の根本においてもほとんど差異ない考えを持っておる。  こういう点を考えますと、日本もこれらの点にかんがみまして、国民に真実を語り、真実の情報を普及せしめたならば、日本の文化はかなり進んでおるのだし、国民一般も常識を持っておるのであるからして、ばかなことはしないであろう。平和を保ち太平洋戦争を繰り返さぬためにはそういう手段をとられるのが必要である。私はその必要を痛感して種々の場合にその必要を説いておるのであります。ある外国人は、その人は鳩山さんも御存じの人ですが、その人が申すのには、英国はこういう目的のために巨額の金を出しておる。従って国民はイギリスは貿易によって生活をしておるということをよく承知しておる。それで国民は共産党の実体までもよく承知しておる。日本政府はこういう点に無関心で一向金を出さないと不審がっていましたが、私はもっとものことだと思います。新聞があります。新聞はややもすれば、気に入ることはどんどん報道しますが、気に入らないことはあまり出さぬというようなところもあるように思いますが、まあこういうところを考えてみねばならぬと思います。  私がアメリカに在勤中に、フランクリン・ルースヴェルトが――この人は口も達者なせいもありましょうが、その人の好みでもあろうと思うのですが、大統領のときにはよくラジオへ出てファイアサイド・チャットといって、国民に報告をしておるのであります。言葉はきわめて簡単な言葉で、そうして何人にもわかる。漢語を使わないのです。(笑声)むずかしいことを言わないで国民によくわかるのであります。ユア、ガヴァンメント、こういう考えを持っておりまして、皆さんの御期待に沿うように努力しているから、まあ安心してくれというわけなんです。私は政府としては、昔のような、よらしむべし知らしむべからずというような態度と逆に、国民に真実を告げられ、真実を語られ、その真実の知識を普及せしめる責任があるのじゃないか。機密を保つことは、これは特殊のものに限っておるのですから、これはまあ別でありますけれども、こういう点において、先の戦争ではむやみに強がって、いわゆる躍進外交戦争に突入した躍進。もけっこうですけれども、とんでもないところへ突っ込まれては困るのでありますから、こういう点において国民に真実を語られるように、総理大臣の方において何かお考えになっておらないか、そういうところの御所信を承わっておきたいのであります。
  47. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいま野村さんの言われる通りに、国民に機会あるごとにいろんな事情を知らして、そうして国民の協力を得てその方向日本を持っていくということは、これは非常に必要なことだと思っております。そのために政府としても、このたびの予算はそういうようなことを理想として幾分計画をしたつもりであります。貿易の必要なることもおっしゃった通りでありまして、できるだけ世界各国と自由に貿易の伸張をはからなくてはならない。やはり自由主義国家と提携をしていくということは、これはむろん当然なことでありますけれども、自由主義国家とばかりではなく、中共やあるいはソ連や、共産主義国家とでも貿易を盛んにするのには何もちゅうちょすることはないのでありまして、そうしてやはりくだらないところから戦争というものが起るのでありまするから、やはり自由主義国家と仲よくすると同時に、共産主義諸国とも貿易の振興をはかって、そうして世界戦争が起らないようにできるだけ何ごとでもやっていきたいというのがわれわれの希望なのでありまして、そのために中共との貿易についても政府としてはいろいろのことを考えておるわけであります。たとえば見本市のことについても、政府としてはできるだけ中共との見本市については援助をしたいという考え方をしているわけであります。  賠償問題なども、東南アジア諸国との賠償は、とにかく賠償問題を片づけないと、向うとの貿易がどうしても起らないのです。でありまするから、日本では幸いに買いたいものが東南アジア諸国のどの国も持っておるのでありまするから、買いたいものを買えば売りたいものも売れるというわけで、貿易は賠償問題を片づければ非常に振興するものと思っております。で中共やソ連や東南アジア諸国と貿易が伸張していけば、共産主義が勢力を得てくるという余地はないのでありまするから、決して戦争は起きないという大体の考え方をしているわけであります。
  48. 野村吉三郎

    野村吉三郎君 私は日本国内はほんとう一つに固まるべきものだと、国内に形而上の三十八度線ができるというようなことは実に不幸なことである。アメリカも、かつてそういうところで南北戦争が起ったというようなことを考えてみると、それは百年前のことであって、まさか、そんなばかなまねをするとは思わぬですが、こういう点において意を用いなければならぬ。そうして日本がどうして生活しておるかというような点については国民がよく了解せねばならぬであろう。そうして貿易路はどういうふうな物を運んできて、どういうふうになっておるということもよく承知せねばならぬだろう。私は内閣にかつてそういう中央機関のあったことを思って、やはりそういう機関が必要とされるのじゃなかろうか。その人があまり一方に偏した人であるというと、いろいろ先に、そういう話があった折にもつれて実現しなかったですが、私はまあそういう点の必要を感じておるものであって、アメリカではやはりダレスなんかもやっておるのでありますし、そういう点もあって、そうしてそこには実にえらいブレーンがそろっておるということでありますが、そういう点について御考慮を願いたいのであります。別に御答弁は求めません。即答は求めませんが、どうかそういう点について御考慮を願いたいと思います。
  49. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 情報宣伝という意味ですか。
  50. 野村吉三郎

    野村吉三郎君 情報局というのじゃないですが、先にもそういうものはあったですが、何かやはりその人に対していろいろの非難攻撃があって……、これはやはり中立的で、ほんとうに真実を告げる人でなければならぬだろうと思っておりますが、まあそういうことを一つ考えおき願いたいです。
  51. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 承知しました。
  52. 西郷吉之助

  53. 小林政夫

    小林政夫君 私は主として経済自立五カ年計画中心質問をいたしたいと思います。  政府においては当参議院の予算委員会における審議の状態を十分考慮されて、前回、三十年度予算と同時に発表された経済自立六カ年計画の審議を当委員会においてやったその審議の経緯を十分尊重されて、かなりその後において再検討を加えられ、新しくここに五カ年計画として発表されたという努力に対しては、質問に先立って敬意を表します。が、この鳩山内閣のこの五カ年計画というものは、一体鳩山内閣の五カ年計画なのか、あるいは自由民主党内閣としての五ケ年計画であるのか、その点をお伺いします。
  54. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 内閣としての五カ年計画であります。
  55. 小林政夫

    小林政夫君 その意味は、鳩山内閣がやめられて、そうして次にだれか自由民主党の人が総理大臣になったという場合には、この、五カ年計画に対してはその後継内閣責任を待たないということですか。
  56. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいまのところ、それはちょっと予見ができません。
  57. 小林政夫

    小林政夫君 それは、はなはだ頼りない話でありまして、われわれは鳩山内閣は、はなはだ鳩山総理自身に申し上げて恐縮でありますが、よく新聞紙上等にも伝わっておるように非常にからだが弱い、こういうことでおそらく五年は続かぬだろう、こう思っておるのであります。しかし自由民主党内閣というものは、いろいろ問題はあるかもしれませんが、とにかく今の政治情勢ならば五年くらいは続くかもしらぬ、こういうふうに思うので、いやしくも五や年計画というものを相当力を入れてやるということであれば、自由民主党としてこの五カ年計画には責任を持つのだ、こういう態勢を確立されておかなければ信憑性というものはないと思うのであります。その点いかがですか。
  58. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 御質問の趣旨はわかりました。むろん政府と党とは密接な関係にありまして、党との相談によって五カ年計画成立いたしまするから、たとえ私がやめましても、自由民主党内閣ができれば五カ年計画を踏襲するものと思います。
  59. 小林政夫

    小林政夫君 その点、経済企画丘長官は、総理大臣と同じ考えというか、この五カ年計画策定の当面の責任者として、与党自由民主党がそのように了承しておりますか。
  60. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) もちろん五カ年計画は、自由民主党の党議におきまして全く一致した意見でやっておるわけであります。
  61. 小林政夫

    小林政夫君 当面一致しておるのだが、五カ年計画でありまするから、この計画について自由民主党は党議として尊重というか、まあ遂行の責任を感じ、このワク内においてやるのだ、こういうふうに十分な了解というか、政策としても党として責任を持つ、こういうふうのところまで徹底しておるのかどうか。どうも私はその点が危惧されるのでありますが、長官はそういうまあ確約というか、保証を取りつけておられますか。
  62. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私はこう考えております。この五カ年計画というものは、少くともこの現内閣において責任を持ち、現内閣を支持されておるところの与党とはよく連絡をとっておりますので、少くともこの計画というものは超党派的であって、どこまで行ってもいいものだと、だれが考えてももいいものだと、こういう考えでやっておりますので、私の希望といたしますれば、こればかりに社会党が天下を取られても、私はこれを継続されるものと信じてやっております。
  63. 小林政夫

    小林政夫君 当面の責任者としてそのくらいの気持があることはうれしいのですが、実際において現在の嶋山内閣はそう長く続かぬと思いますが、総理の健康上から引き続いて後継内閣でも自由民主党内閣ならばこの線に沿うていくのだ、こういうふうに言われたと――そう実際になっておらなければ、そうされなければならぬという紙帳で申し上げておきます。  総理大臣は、一体計画といいますか、私は計画というよりは目標を掲げているのだと思っておりますが、この五カ年後の日本経済の到達する目標として、この目標を強力に推進するというのに、先ほど羽生氏から活がありましたが、三十一年度の予算についてもあまり積極的に関与されておらないし、この五カ年計画自体ということについても、総理自身がどの程度の熱意を持ち、どの程度のウエートを置いておられるのか、少くとも私はこれだけのことをやるのに、総理みずからが経済企画庁長官になったような熱の入れ方でなくては、これは施策として推進できない。総理が不幸にして経済問題についてあまり詳しくないということであれば、少くとも副総理格の待遇を経済企画庁長官に与えて推進をする、こういうことでないとなかなかこの計画は、努力目標は達成できないのではないか、こういうふうに思いますが、そのお気持はどうですか。
  64. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 経企長官を信任いたしまして、経企長官の目標が達成するように極力努力をいたします。
  65. 小林政夫

    小林政夫君 それから五カ年計画の目標として掲げられているのは、経済の自立と完全雇用ということであります。一体両方達成できればこれにこしたことはないわけでありますが、経済の自立と完全雇用と、どちらにウエートを置かれるつもりなのか。完全雇用といっても、結局は雇用の拡大という程度にならざるを得ないのではないかとも思っておりますが、しかし経済自立と完全雇用と、どちらへ重点を、もし、どちらか犠牲にしなければならぬという場合にはどちらに重点を置くお考えですか。
  66. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。完全雇用と経済自立、完全雇用ということはお説のごとくなかなかこれはむずかしい問題だと思っております。名前は完全雇用とつけておりますが、できるだけ雇用の機会をふやすということであります。ここでは経済自立と完全雇用は並行していくものと私は存じております。
  67. 小林政夫

    小林政夫君 あとからその点は掘り下げますが、一体それでは経済の自立ということはどういうことを自立と言われているのか。この計画で見ると、特需等の収入が皆無になるという状態になったときが、日本経済は自立したのだという解釈をとられているだけのように思われますが、その点いかがですか。
  68. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 必ずしも特需関係がなくなって、これを貿易によってまかなうというだけをもって自立したこととは私どもは考えておりません。まだ国民生活を安定せしむるためにはいろいろの事情がありますから、筋といたしますれば、特需がなくなるということにマッチするための輸出と輸入を増進していきたいと存ずるわけでございますが、そういうふうな考えでございます。
  69. 小林政夫

    小林政夫君 三十一年度の予算の編成あるいは三十年度の予算の編成、いずれもこの防衛分担金の対米折衝の結果を待たなければ予算が最終確定をしない。こういう防衛分担金を出し、同時にまた日本の防衛についてアメリカにある程度の負担をしてもらっているという状態こそは国民に一本の完全自立を疑わしめる状態なんであります。  そこで、ただ特需がなくなったということだけでもって日本経済が目立をしたということは言い切れないのじゃないか。そうなればこの五カ年計画が達成されたというか、努力目標としての三十五年度には、そういうような防衛分担金は払わなくてもいいし、またアメリカ軍が駐留をして、そうしてアメリカの負担において日本の防衛をやってもらうと、こういう状態は解消するという見込みで、おられるのか。この三十五年における政府購入は一兆八千九百六十億円ということになっておりますが、この政府購入の中で防衛費というものがそういうような含みをもって考えられておるのかどうか。
  70. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之君) 防衛費の問題は、これは国力に相当するだけ増加していかなければならぬということを前提といたしておりますが、国際情勢の変化によってどうなるかというふうなここは、われわれにはわかに今五年先を予想することはできないのでありますが、現在の国際情勢であるということを前提といたしまして、そうして防衛費というものは大体におきまして国定の総所得に対して二・二%というくらいの程度にふんでわれわれは計画を立てておるのでありますが、その五カ年後におきまして国際情勢がどう変化するか、従ってアメリカの駐留軍がいなければ日本の防衛が全うできないかいなやということについては、そこまでは私どもは責任を持って立てるわけにはいかないのであります。
  71. 小林政夫

    小林政夫君 責任を持って立てるわけにはいかないと言われますが、これは政府及び党一体の五カ年計画であるとすれば、その点についての見解が十分明らかにならなければならない。なるほどこの計画においては、経済の自立とは特需がなくなる状態だけを考えておるので、防衛費の方でアメリカに負担をしてもらうというようなところまではまだ、手が伸びてないだと、まあ実情を言ってもらえばいいのです。そうなのか、あるいはこの三十五年には、そのような、まあ例外的というか、アメリカのお世話にならぬでも、われわれが日本としてやりたい防衛だけはやっておく状態に仕上げるんだと、こういう目標を掲げておられるのか。その点をはっきりしてもらいたいわけで、むしろ数字的なことは経済企画庁長官でしょうけれども、総理大臣その点はどうですか。
  72. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) なるべくは五カ年もたてば戦争のない状態を作ってしまいたいと思いますので、五カ年後になおアメリカの駐留軍を必要とするというようなことはただいまのところ考えておりません。
  73. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 関連して。非常に重大な御発言だと思うのですが、五カ年後には駐留軍がいることを予定をしてないし、従って特需収入あるいはそれに類する駐留軍からの収入はない、そういう予定のもとに五カ年計画を立てられているというお話なんであります。しかるに衆議院の予算委員会における船田長官の御答弁では、六カ年計画が、かりにこの通りに進んだとしても、なおアメリカ駐留軍の完全撤退は考えられないのだということを明瞭に御答弁になっておる。この最も重大な問題についてかくも大きな食い違いがある。全くあなた方が国防とか何とかいうことを言っておられるにかかわらず、何らこの点については意見がまとまっておらない。支離滅裂という以外にないと思うのでありますが、もう一ぺんこの点を総理大臣からまず明瞭にお答えを願いたいと思います。(「重大だ」と呼ぶ者あり)
  74. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は五カ年後のことはただいま考えておるようにしたいと思っておるのであります。
  75. 船田中

    国務大臣(船田中君) ただいま総理大臣から御答弁になられましたように、私どもとしてはなるべく国力、国情に沿う防衛体制をすみやかに整備いたしまして、駐留軍の一日も早く撤退することのできるようにいたしたいと考えております。そういう意味におきまして、総理大臣はただいま希望的の御意見を述べられたものと考えます。しかし先般私が衆議院の予算委員会におきまして、防衛庁の持っておりまする試案すなわち昭和三十五年度におきまして陸上十八万、海上十二万四千、航空におきまして約手三百、こういう目標が達成されたら、それに見合って必ず米軍が撤退するかといえば、それは必ずしもそういうふうに見合うものではない。米軍の撤退ということは、これは国際情勢にもよりますが、日米の合憲によって撤退するものであり、先ほど申し上げました三十五年度における最終目標を達成するということは、米軍撤退の基礎づけができると、こういうことを申したのでございまして、総理大臣の御答弁なされたことと私の答弁申し上げたことと矛盾しておることはないと思います。(「支離滅裂だ」と呼ぶ者あり)
  76. 小林政夫

    小林政夫君 今の点は、要するに自立計画、この計画自体としては、アメリカ軍のお世話にならなくても日本の防衛はできると、鳩山内閣としてあるいは自由民主党として考えて、防衛はできる体制に持っていけるんだ。が、そのときになって、アメリカと、いろいろまあ今までのいきさつもあるので、話し合ってみなければ完全撤退ということにはならぬかもしらぬと、しかし財政計画としては、その計画努力目標を達成することによって、アメリカのお世話にならぬでも日本の防衛はやっていけると、こういう体制になるんだと、こう言われたと了解してよろしゅうございますか。
  77. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまのお説の通りでございます。
  78. 小林政夫

    小林政夫君 私は先ほど、一体この五カ年計画目的としては自立と完全雇用とどちらに重点を置かれるのかという質問をしたのでありますが、まあ両方並行的に考えると言われるけれども、当面、たとえば国連軍の撤退において相当、主として呉市等においては非常に失業者が出るということで困っておって、この雇用の問題というのは非常に重要な問題である。そこで特需等が皆無になっても日本経済がやっていけるということは望ましいことではありますけれども、やはりその雇用の問題を考えるときには、場合によっては、しいて毛ぎらいをしなくても、もらう収入があるものなら、もらってもいいじゃないかと、こういうふうに考えて、むしろこの計画の重点としては、完全雇用こそを第一目標にすべきではないかと思うのですが、そういう点はいかがですか。
  79. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) もとより特需関係等におきましても、これは相手のあることでありますから、これは五年後にはなくなるということを予定いたしておりますが、しかしながら、これは注文を取れることになれば、それだけ国家の経済もよくなりますし、お説のごとく完全雇用の目的にも沿うことでありますから、こちらから断わるべきことではなく、できるだけこれは強力に注文を取るという方針で進んでいきたいと、こういう方針であります。
  80. 小林政夫

    小林政夫君 総理大臣に特にその点を認識してもらっておかなければならぬのですが、国内問題としては、何をおいても完全雇用の達成ということが政治の第一の目的であるということを、総理大臣は今の経済企画庁長官と同様にお考えになりますか。
  81. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 完全雇用は非常に重大な問題であると思います。
  82. 小林政夫

    小林政夫君 そうすると、この計画で投融資の問題について、一体どういうところに投融資をするかという際に、雇用効果というような点は、検討されておるのか。
  83. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。根本的に完全雇用を達成するためには生産をふやさなければならない。それには輸出産業というものを増進しなければならない。それには産業基盤をよくしなければならない。そういう方面に根本的に考えておりますが、当面の問題といたしまして、完全雇用をするためには、生産を合理化するためには、時には第二次産業のごときは雇用者の数を減らさなければならないというふうな場合も生じますから、そういう場合をおもんばかりまして、これは失業者を救済するために、あるいは建設事業なりあるいは道路工事なり、いろいろな方面にもこの雇用者の収容の率をふやしていくように努力いたしていくつもりであります。
  84. 小林政夫

    小林政夫君 私は産業基盤が拡大すれば当然雇用量が増大すると、こういうふうなことで投融資を考えていくと、さらにもう少し同じ金額の投資によって、こういう産業部門に投資すればどうなるという、雇用効果を織り込んだ投融資の検討ということがなさるべきだという意味で、一つの示唆として申し上げておきます。今後そういうことで検討されることを望みます。  さて、少し計画内容に即して御質問したいのでありますが、農業で、農林業における雇用、こういう問題について、この計画によると、最終年度の三十五年度には、二十九年度と比べて七十三が人の農業において就業人口がふえる、こういう推算になっておる。三十五年度に七十三万人の就業人口がふえるということは期待できないのではないか、また期待すべきでない、こういう気持を持っております。そういう点について少し、結論を光に申し上げたわけでありますが、掘り下げて農林大臣にも御答弁をわずらわしたいのでありますが、日本の農業政策として、食糧増産と同時に農家の生活水準を引き上げ、同時にそれが食糧価格にはね返らない、こういう施策を推進していくのに一体何が一番重要な問題か、どこに日本農業として考えなければならぬ問題があるかというふうにお考えになっておりますか。
  85. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ちょっと小林君に申し上げますが、農林大臣が衆議院に出ておりますから、政務次官がおりますが、高碕長官から……。
  86. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく、第一次産業に七十何万人の人口を吸収することは非常にむずかしい問題だと思うのでありますが、しかし現在の日本の農村を考えた場合におきましては、農村の不況と申しますか、農村を多角経営するとかいう方面から考えまして、農産物の加工――農産物をそのまま市場に出すということよりも、これにある程度の加工をして出すということにすれば、これは農村の生活もよくなるだろう。そういうような意味からいたしまして、畜産業の振興等も加味いたしまして、できるだけこの趣旨に沿うようにやっていきたいと考えております。
  87. 小林政夫

    小林政夫君 畜産に力を入れ、瀞産において雇用量をふやしていくということの計画にはなっておりますが、しかし米麦生産だけで……、今のこの第一次産業をあなたの方の計画によると、農林業と水産業とに分けて、この農林業において七十三万人がふえるということになる。その多くのものは米麦の生産が期待されておるような計画になっておる。そこでこれは過去の実績からいっても、二十八年度にはむしろ農村から都会地へ二十五万人分人口移動があり、そうして二十九年には二十万人、こういうようなふうで、むしろあのデフレ政策がとられて、戦前の状態ならば、都会で失業した者が農村へ帰っていくという傾向になっておったにもかかわらず、それがあのデフレ下においても逆に農村から都会へ人口が流れていく。こういうことは、すでに日本農林業においては、増大する労働力を受け入れる余地がない。戦前に比べて二割程度農林人口がふえておる。そうして一方には機械化等によって、米麦生産に要する反当り投下労働力というものは減ってきておる。それにお説のような畜産等が加わって、ある程度戦前と比べて農家の畜産関係において手数を要するという事態が起ってはおりますけれども、主たる米麦において相当投下労働力が減っておるということは、農林業における就業数の増大を考える余地はないので、むしろ農林業の振興をはかるのには、農林人口をいかにして間引くかということが問題じゃないかと思うのです。この計画によれば、そういう線には沿ってなくて、むしろある程度農林業でも労働力人口をかかえていこうという計画になっておる。こういう点が非常に私は納得できない問題であります。もう一つは農地の潰廃ということが相当行われておる。そうしておそらく年にして二万五千町歩くらいは潰廃されるのじゃないか。従って一方に毎年々々八十万石くらいの米麦の減収を考えるが、同時に六年間に千三百万石の米麦の増収が考えられておる。このためには土地改良、食糧増産施策がどう進められるのか、その点について少し詳細に御説明をお願いしたいと思います。
  88. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく農村に人口を吸収せしめるということは非常に困難だと存じますが、労働力人口が非常な勢いでふえて参りますから、全体的の生産をふやしていきますには、できるだけ第二次及び第三次産業にこれを持っていきたいということの数字を出したのでありますが、何しろふえる数字が非常に多いわけでありますから、これは農林業の一人当りの収入がそう減らないという程度におきましてある程度持っていくということになれば、ただいま申し上げました通りに、ほかの方には非常な大きな比率でこれは吸収してもらわなければならぬが、農村に吸収する数字というものは非常に低く見ておるわけでありまして、その数字はまたお手元にございまするから、私は説明いたしませんが、少しは無理もあると存じますけれども、この人口の増が多いものですから、やむを得ずこういうふうになっておるわけなんで、できるだけそれに沿うように進んでいきたい、こういうふうに存じておるわけであります。
  89. 小林政夫

    小林政夫君 そこで農林大臣はそれでいいのかということを聞きたいわけであります。食糧増産費としてこの計画で予定されておるのは、三十一年から三十五年の五カ年間に千六百九十四億円、これを五カ年間一年割りにすると三百三十九億円、本年三十一年度予算を見ると、外資導入まで入れて二百四十七億円、こういう状態で、食糧増産がこの計画通り達成できるかどうかという点、そうしてまた今のように労働力人口増大の吸収を農林業においてある程度負担をしなければならぬと考えておるのかどうか。
  90. 大石武一

    政府委員(大石武一君) お答えいたします。仰せの極りに農林省におきましては五カ年計画といたして一千三百万石の増産と、それに要する費用約一千七百億円の増を考えております。お説の通りこれを五カ年に平均いたしますれば三百何十何がしかの金になるわけでございますが、別に現在正確に年次計画は立てておりません。そのつどそのつどの国家財政を十分勘案いたしまして、そうして正確にこの目標達成をする予定をいたしております。本年はお説の通り平均よりは少うございますけれども、いろいろな公共事業におきましては昨年度より多少上回っておると考えております。なお小団地開発整備事業等につきましても昨年より相当額増加しておりますので、これによって初年度としての機能は十分果し得るものとわれわれは考えております。  なおこのふえて参る人口を農村で収容する問題でございますが、これはお説ごもっともと考えております。しかし、やはりわれわれは何といたしましても、今後ますます増加する人口を何とか処理しなければなりませんので、農村におきましてもいろいろな技術の向上であるとか、生産増強、あるいは国外における食糧市場の開拓等に努力をいたしまして、でき得る限り人口を収容して参りたい、こう考えております。
  91. 小林政夫

    小林政夫君 そういう今述べられたような気持ちでは、日本の農家の生活水準を引き上げると同時に、食糧消費者に迷惑をかけない、農産物価格の引き上げを伴わない増産施策というのは非常に困難じゃないか。やはり何としても日本農業の致命的欠陥は、一農家当り耕作反別が小さすぎる、こういうところに問題があるので、その点についての打開として、少くともこの五カ年計画において労働力人口を農林業に吸収するなんということを安易に認める農林当局の態度というものは、われわれとしては納得できない。このことだけ申し上げておきます。  そこで農林業において増大する労働力人口を吸収するということができないということであれば、次はやはりそれをかかえていくものは第二次産業、第三次産業にならざるを得ない。この第二次産業、第三次産業、商工鉱業あるいはサービス業事においてかなりの雇用の増大が見込まれておりますが、この数字というもの、この見込みというものについては、通産大臣は十分責任を持てる努力目標であるか、その通りかどうか。
  92. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) お答えいたします。責任を持てると存じます。(笑声)
  93. 小林政夫

    小林政夫君 私はむしろこの農林業においで今の増大する労働力をこの計画で吸収しようという七十三万すら入れられない。むしろ逆に私の見解をもってすれば、農林業から労働人口を吐き出さなければならない。こうなれば第二次産業、第一三次産業へはこの計画よりももっと負担がかかるはずであります。この点について一体、今通産大臣は十分確信があるとおっしゃったが、それでは商工鉱業のこの計画に盛られた産業規模ですね、規模の検討がなされているかどうか。この各種産業部門における大企業、中小企業、産業の規模別の雇用等についてある経の検討がなされているのかどうか、その点を伺います。
  94. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 規模別につきましては、企画庁あるいは通産省その他の各省の専門の知識を持っている者が集まって十分検討したのであります。数字的にはむろん検討されておりますし、誤まりもないと思います。しかしなお私どもはこの数字以上にやりたい、かように考えております。
  95. 小林政夫

    小林政夫君 それでは十分検討されておるならば、この二次産業、三次産業におけるいわゆる資本金、今、日本の法制上中小企業といわれている資本金一千万円以下、従業員三百人以下、商業の場合におきましては三十人以下、この中小企業においてどれだけの雇用をかかえていくのか、労働力人口をかかえていくのか。大企業においては、これ以外のいわゆる大企業においてはどうなんだという資料が出せますか。
  96. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 政府委員からお答えいたしたいと思います。
  97. 大来佐武郎

    政府委員(大来佐武郎君) お答えいたします。この五年先の雇用の計画につきましては、産業別にこまかい内訳を一応計算しておりますのですが、その産業別の内訳を規模別に分けるということはやっておりません。(「通産大臣うそ言っておるぞ」と呼ぶ者あり)  たとえば硫安工業とかセメント工業とか、あるいは卸小売業、その卸小売業でもいろいろな分野がございますが、そういうきわめて経済規模の拡大に応じた雇用の吸収度というものを、過去の実績にかんがみまして一応計算して積み上げてございます。
  98. 小林政夫

    小林政夫君 それは大来君の答弁はその通りと私も了解をしておる。ところが通産大臣は、その規模別の雇用吸収資料があるということですから、はなはだ奇特の至りであると思ってお伺いをしたわけでありますが、今のお話では、ない、(「通産省にはあると思う」と呼ぶ者あり)通産省にあるならば一つ拝見をしたい。そうして特に中小企業庁を担当している通産省としてそのような検討がなされなければいかぬと思うのです。その点どうですか、通産大臣。
  99. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 先ほども特に規模例の調査があるとは申し上げないのです。ただ各企業ごとに、今大来政府末女員からお答えした通り、そういう検討をいたしまして積み上げておるわけであります。
  100. 小林政夫

    小林政夫君 それでは、今ないということであれば、今後やられますかどうか、至急にやってわれわれにその資料を出されるかどうか。
  101. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) これはなかなか調査は規模別に、各業種について資本金何千万円以上何千万円以下という計算を出すことは非常にめんどうな調査費だと思います。しかしこれはやらぬとは申しませんが、今のところすぐにその資料をお目にかけるだけの準備はない。
  102. 小林政夫

    小林政夫君 私はきょうあすにその資料をもらいたいということを言っているのではない。それだけの調査をすべきである。同時に、だからぜひそれによって作業をしてわれわれに資料を提出する、こういう約束を通産大臣及び経済企画庁長官において一つ約束してもらいたい。
  103. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいま御質問の問題は非常に重要な問題だと思いまして、これをどうして把握するかということの方針を今考えておるわけであります。たとえば商工業者と申しますけれども、小さなかんな一丁持っておる大工さんも工業者であります。ぼてふりの商売人も商業者でありますから、これをどの程度に、どういうふうに持っていくかということになれば、非常にむずかしい問題でありまして、資本金が幾ら以下、人間が何人以下、以上というふうなことならば、つくだろうと思って、これを今私の方の企画庁といたしましても、一生懸命検討しておるようなわけなんでありまして、これができますれば、通産省とお打ち合せいたしまして、資料を集めることには努力いたしたいと思っております。
  104. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 今、岡崎長官からお答えした通りであります。実はその中小企業の調査をことしからやりたいと思いまして、予算にもその費用を計上しておるわけであります。
  105. 小林政夫

    小林政夫君 おそらくその調査の結果を持たなければなりませんが、この増大する労働力の吸収をする部面というものは、おそらく二次産業、三次産業を通じて、いわゆる中小企業が圧倒的であろうと思う。そうなれば、鳩山総理も、完全雇用の問題を第一義に考えるということであれば、中小企業対策というものは、非常に今までのような、さしみのつまのようなものではいけないので、ほんとうに第一の、完全雇用解決の方法として、経済施策としては最も両点を置いて進めらるべき施策になる。この提出された資料によっても、たとえば卸小売業等におきましては、二十九年をベースとして、一三十五年には二割三分五厘という就業者の増を考えている。今百貨店あるいは消費生活協同組合、あるいは購買会等の問題で、この小売商が相当問題を起しておりますが、そういうふうにこの小売商、あるいは卸売業に対して雇用の吸収を大いに期待しておるけれども、現実の施策というものは、そうなっていない。こういう点、いろいろ施策的に、今までの皆さん方が考えておられる重点の置きどころをかえた中小企業施策というものが生まれてくると思う。そういう意味において、十分これは資料をととのえて検討をされることを強く要望を、するわけでありますが、この今の私の見解について、経済企画庁長打、どうですか。
  106. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 仰せのごとく、失業者がいつも逃げ込むところは中小工業者でありまして、それがこの統計には失業者として現われないということだから、統計の魔術にかかっておるわけなんでありまして、これは大きな間違いだと思います。それが中小工業者の方に吸収されておるから、これは失業者が少いのだと思ったら間違いで、それは何だといったら、結局不完全な失業者、不完全失業、十分の働きができなくても、その方に吸収されておるわけでありますから、この点はよほど十分に検討して、実際の数字を把握する必要があることは、適切に感じております。
  107. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 関連して。先ほど通産一大臣は、規模別就業収容予想は、すでに通産省なりあるいは企画庁の専門家によって十分検討されているということを御答弁になったと思うのです。従って非常に奇怪な答弁だと思っていたのに、次に立たれたときにはそういうことは言わないで、企業別だというふうに言ったというお話でありますけれども、そういうごまかしで通すような習慣は作りたくありませんので、一応速記録を正確にお調べを願って、もし言われたことが間違っているならば、その点は明瞭に取り消しをしていただきたい。そしてもっとそういう質疑応答は責任をもって、ちゃらんぽらんでなくて真剣に討議をするという習慣を、少くともこの参議院においては確立をいたしたいと思いますので、そういうふうにお取りはからいを願いたいと思います。
  108. 小林政夫

    小林政夫君 今の中小企業問題についての通産大臣の所見はどうですか。
  109. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 委員長、私のあれはどうですか。
  110. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 今の佐多委員の御意見はごもっともだと思いますから、よく速記録を調査いたします。
  111. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 失礼ですけれども、もう一度質問の要旨を……。
  112. 小林政夫

    小林政夫君 お聞きのように、あなたの方でこれから経済企画庁と協力をして規模別の雇用労働力人口吸収状態を調べて資料としてすみやかに出す、こういうことに約束をされたわけです。ところがおそらくその結果ができ上ってみると、圧倒的な労働力吸収部門は商工業における中小企業である、こういうことになるわけです。そういうことであれば、この中小企業の安定振興ということは、ただ弱い者だから助けてやるのだというような今までのお情け行政でなくて、ほんとうに完全雇用を第一とする国の政策を担当する一線として考えるべきではないか、こういうことを申し上げた。
  113. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) お説の通りでありまして私も常にそう考えております。どうも中小企業対策というものは救済事業に考えておったのでは、これはいけない。どうしても中小企業そのものが、日本において経済的に存立するような基礎を作ることに努力いたさなければならぬ、かように考えてやっておる次第でありますが、しかし先ほど申しますように、実は中小企業の問題というものはずいぶん古いにかかわらず、十分調査も行き届いておりません。中小企業そのものの実態が実はほんとうに把握されていないといううらみもありますので、そこで中小企業についてはことしからあらためて根本的に調査をしていく、かようなわけで着手をいたす心がまえでおる次第であります。
  114. 小林政夫

    小林政夫君 先ほど佐多委員からも注意があったように、今の答弁なら少し誠意があるように思いますが、ちゃらんぽらんでなく、実際にその通り強力に推進をしてもらいたいと思います。  さて、大きなわれわれの個人及び企業の創意を尊重していく、この現在の日本の経済体制において、これだけの努力目標を達成する方法です。方法について経済企画庁長官としてはどういうふうに考えておられるか。修正資本主義だとかあるいは新資本主義だとか、いろいろ言葉が生まれておりますが、どのような施策の進め方をされるのか。あまり時間がないようですから、もう少し具体的にお伺いしますと、各計画担当者になるものと十分な話し合いによってやっていく。たとえば金融統制等も、資金委員会等を設けてやろうという自由民主党からは案が出た。しかしなかなか金融機関はそうまでされんでも、自主融資規制委員会等も作ってやっているのだから、あるいは投融資委員会等において自発的に協力いたしますから、もう少し時期を待ってそういうことをやるならやってもらいたい、こういうふうに業界の自制によってやっていく、こういういき方もありましょう。あるいは石炭合理化促進法あるいは重油規制法、また目的は違いますが、税収確保という意味における酒や塩の統制というふうないき方をとっている部面もある。法的にそういうような措置を考えてやっていくのか、その点はどのように三…。あるいはまた最近新資本主義として企業というものは営利性のみでなしに社会公共性を第一義に考えていくように、いわゆる経営者倫理を確立する必要がある、こういう説教めいたことも出ておる。そういうような点についてどのような施策を、どのようなお考え政府としてはお持ちになっているか。
  115. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) まず最初計画の立案に当りましても、これは政府が独善的にこの計画を立てるのではなくて、できるだけ各界の業界の方々、学識経験者等の御協力を願いまして、この計画を立てたわけであります。また今後立てていきたいと存じているわけであります。その意味におきまして、各方面の方々が立てられた計画であるから、これは自分の作った計画であるということをよく了解していただく、そうしてこれをできるだけ国民諸君に知らしめたい、こう存じまして、今回の五カ年計画のごときも企画庁の予算は少いものでありますので、これを雑誌社に頼みまして、この計画書をできるだけ出す、低廉で市販ができるようにいたしまして、国民諸君にわかりやすいように、これをお示ししたい。国民の支持を得るということが第一であります。国民の支持さえ得られますれば、私は強権を用いなくても、かくすればかくなるということを国民さえ了解していただきますれば、各界はこれに協力していただけることと存じまして、まず資金の面におきましても、財政と金融とを一体にするということになれば、金融界の協力を得なければならん、これはできるだけ力を避けて、その方々の御協力を得られるものと私は信じております。また一つの事業を合理化いたしますにつきましても、合理化した結果については、こうなるということがよくわかれば、これは御協力を願えることだと存じておりますが、これがどうしてもできないということになれば、そのときになれば、ある程度のやはり国家の力をかりなければならぬこともあるかとは存じておりますが、ただいまはそれは必要ないと存じております。
  116. 小林政夫

    小林政夫君 話し合いによって計画を周知徹底せしめ、話し合いによってやっていきたい、こういう御趣旨でありますが、この話し合いを進めていくのに、また計画を周知徹底させるという方策として、今のようにただ計画を解説をして、市販をして、なるべく皆さん買って読んで下さい、こういうような程度では、下からの盛り上る協力というものはなかろうと思う。そこで、たとえば金融機関はかなり同業者相寄った一つの同業団体というものがしつかりしておる。ところが他の鉄鋼、あるいは石炭は今度ああいうことになりましたが、その他の業種においては必ずしも大企業、中小企業を含めての同業者団体というものの確立はない。この事業者団体というのは、昔のようなこれで統制をやるとかカルテルをやるんだというようなことでなしに、この五カ年計画に協力を求める意味において政府の意図を徹底さし、同時にまたその方の資料を収集して施策に誤まりなきを期する、こういう中小企業者は中小企業等協同組合法その他によって一つの組織化を企てられておりますが、その中小企業の組織化と同時に、同業種間を取りまとめた一つの同業団体的なものを、これは何も統制ということを必ずしも意図するものではないが、そういうような考えをお持ちにならないかどうか。  もう時間がないそうですから……。また何としても法の計画の最重点は、完全雇用にあるとすれば、雇用安定法というようなものを作って、この施策が十分各界の協力が得られるように推進して、法的にも推進していく基礎を作っていく、こういうことについての考えはあるかないか。
  117. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 現在のところ、金融業者だとか、あるいは鉄鋼業者だとか、あるいは石炭業者だとかいう大きなものについては相当のまとまった意見が出るのでありますが、どうしても一番の私どもの聞きたいところは、中小企業者の意見を聞きたいと思っておりまして、この方面のまとまった団体を一日も早くできることを希望いたしますと同時に、農業団体も比較的まとまっておるようでありますが、同時にできるだけ声なき声を聞きたいということを、これをどういうふうにしてやったらいいかということについては、よく御協力願いまして、できるだけそういうような方面にも達成するように努力いたしたいと存じております。
  118. 小林政夫

    小林政夫君 雇用安定法の方は……。
  119. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 雇用安定法のことにつきましては、これはよく検討を今したいと存じております。
  120. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは午前中はこの程度にいたしまして、午後二時まで休憩いたします。    午後零時四十五分休憩      ―――――・―――――    午後二時三十一分開会
  121. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより委員会を再開いたします。総括質問を続行いたします。千田正君。
  122. 千田正

    ○千田正君 鳩山総理大臣にお伺いいたしたい最初の第一点は、憲法改正は、占領治下においていわゆる日本国民の意思に沿わない立場において憲法は設定された、今日独立国家として当然この憲法を改正すべきであるという理論のように思われるのであります。そこで私はその前に憲法を改正するというその理論が同じであるとするならば、かつてアメリカとの間に結ばれたところの日米協定、条約というようなものを、やはりこれも一つのかつての占領下において強制されたような意味の点も相当あると思いますので、この改正が憲法改正前に必要じゃないだろうか。たとえて言いますると、現在におきましても、いろいろな公平でないとわれわれが考えられる幾多の面があるのであります。内地におけると  ころの軍事基地の拡張であるとか、あるいは今なおかつての日本国民でありながら、日本の国に帰属することを悲しい願いとして何年となく要請し続けておるところの沖繩の島民であるとか小笠原の島民であるとかいうような、この人たちの願いさえも十分に容れられておらない。さらにあらゆる面において、そうした独立国家としては無視できない幾多の問題が包蔵されておるこの日米協定あるいは条約というものに対して、まず憲法を改正する以前に国民の要望する点を是正するだけの力をもって、憲法改正の次の段階に進むべきではないかと私は考えるのでありますが、鳩山総理大臣としてはこの観点についてはどういう御所信を持っておられますか。この点をお伺いしたいのであります。
  123. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 安保条約あるいは行政協定、これを改正する時期はやはりくるものと思います。けれども憲法を改正する前に、安保条約、行政協定を改正しなければならないという理由はないと思います。
  124. 千田正

    ○千田正君 私の考え方とそれは違うといたしまして、それならば、もう一点私はお伺いしておきたいのは、この小笠原島の農民がかつての自分らの島に帰りたい、現在七千人くらいおられますが、こうした人たちの要望が常に政府並びに国民に訴えております。少くとも交通の自由であるとか、居住の自由という点においては、これはやはりわれわれと祖国を同じゅうしたところのこうした国民に対しては、日本政府責任をもって、そうした面の解決に当るべきだと私は考えますが、この小笠原島民の復帰に対してはどういうようにお考えになっておられますか。その点を承わっておきたいと思います。
  125. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 小笠原島はやはりアメリカとしては軍事基地として非常に大切なところと考えておりますので、日本の自由にはまだまかせないと思います。けれども、島民は小笠原島に帰りたいという熱望を持っておるということはよく了解しておりまして、これに対して同情をしていることは事実でありますから、そのうちには島民の希望は達成し縛る時期がくるものと私は思っています。
  126. 千田正

    ○千田正君 小笠原島にしろあるいは沖繩島にしましても、なるほどアメリカにとっては軍事基地として必要であるがゆえに、日本との間にそうした取り結びもあったと思いまするが、総理大臣考えておるようにアメリカ側と提携していこうという日本国民が、何がゆえにそうしたところに立ち入ってはいけないという、この理論が成り立つのでありましょう。われわれが少くとも全世界において条約が結ばれ、そうしてお互いの独立国昂としての礼儀と作法と自由を認められる今日において、そうしたところの立ち入りを禁止されるということそれ自体が、すでに日本をある意味において同等の立場で認めておらないというふうにわれわれは考えられますが、その点はどういうふうにお考えになりましょうか。
  127. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日本がアメリカに無条件降伏をしたときに、アメリカが日本に必要に応じて要求したことはやむを得ないことと思っております。
  128. 千田正

    ○千田正君 次に、今春太平洋の洋上において、エニウエトクあるいはビキニにおいてふたたび原子爆弾の実験を行われる、衆参両院におきましては、これに対して禁止要望の決議案をあげておりますが、政府としては当然これは交渉しておると思います。それでもしもこの被害を受けた場合においては、日本は賠償を請求するというお考えを持っておられますかどうですか、この点を承わっておきたいと思います。
  129. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 外務大臣からアメリカの当局に対して、そういうような話はしてあるものと私は承知しております。
  130. 千田正

    ○千田正君 この前のビキニの被害に対しましては、日本側は約三十億の要求をしたのであります。それに対しましてアメリカ側は賠償という言葉を使わずに、見舞金として約その三分の一にも足らない命を日本側に支払いました。そうしてそれがおのおの被害を受けた邦人なりあるいは漁民なりに一応配分されたのでありまするが、これは出然名前は見舞金であっても賠償にひとしい金と思うのでありますが、これに対して政府は収入とみなして課税をするという、一体これはどういうふうにお考えになっておるのでありましょう。少くとも賠償と同じような性質のものであり、しかもこれは名前は見舞金であったとしましても、それに対して課税するというふうなことがあるとするならば、その本質的に賠償と見舞金との差別をはっきり今後の問題に区別をつけべきであると私は考えますが、その点に対してはいかがお考えでございましょうか。
  131. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この見舞金については、私は課税しないようにしたいと思っております。
  132. 千田正

    ○千田正君 今大蔵大臣から課税しないようにしたい。現実にそれは課税しないというように指令を出しておられますかどうか。
  133. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは法律的の解釈もありますが、法律に許されれば課税しないことに扱いたいと思います。
  134. 千田正

    ○千田正君 それでは大蔵大臣にお伺いいたしますが、課税する方の立場から言えば、事のいかんにかかわらず、それは個人の収入であり、法人の収入とみなして、そうして一応法律上それを取りたてる、こういうふうな観念の下に課税の問題が起きてきているようでありますが、今大蔵大臣のお考えであるとするならば、かような被害を受けたいわゆる国家的な国民の非常な損害に対して、賠償と同様の見舞金その他が、受け取った場合においては、これは普通の収入とみなさない、課税はしないのだ、こういう立場で今後ともその方針は堅持される、かように承知してよろしうございましょうか。
  135. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) そういう性質の金では私の考えとしては課税いたしたくありませんので、現行の法難の下において、そういう取り扱いができるかどうかということを調査を命じておいたのですが、後ほど主税局長を呼びまして、その経過について答弁いさたせます。
  136. 千田正

    ○千田正君 日ソ交渉が停頓しておる現在において、特に生産に携っておるところの北洋漁民にとっては非常な関心を払っておるのであります。もちろんいろいろな面においてこの交渉は停頓はしてはおりますけれども、将来これは軌道に乗るという見込みの下に、おそらく今年におけるところの操業も可能であろうというふうに考えられておるのでありますが、一部においては、ためにする宣伝かどうかしりませんが、ソ連側においては北洋漁業というものに対してある程度の制限を加えるのではないか、こういうような危惧を持っておる向きさえもあるのであります。  それで幸い農林大臣がお見えになっておりますのでお伺いいたしますが、本年も、この日ソ交渉が進展するしないにかかわらず、昨年と同様の操業を続けていく、かようなお考えでありますかどうかということと、もう一つはこれは外務大臣と農林大臣にお伺いいたしますが、ただいまワシントンにおきまして、御承知通りラッコ、オットセイ等に対する会議が開かれております。北洋漁業は日・米・カナダ三カ国において結ばれた条約に基いてそのラインを堅持しておる。ところがこのラッコ、オットセイ漁業に対しましては、日・米・カナダのほかにさらにソ連が参加しておるのであります。ソ連側においては、あるいはいろいろな議論をしておる向きもあるようでありますけれども、この海獣に対する捕獲に対して、日本側の捕獲に対してアメリカ側あるいはカナダ側と同調して日本の将来の海獣漁獲を許すという方向に進んでおるのでありますか。それとも新たなる制限を加えられて日本はとうてい海獣漁獲はできない、こういうふうに考えておられるかどうかということと、北洋漁業が先ほど申し上げた通り昨年と同様に同じ方向にやっていくのだ、しかしこの北洋漁業に対しても、ソ連が参加することによって、さらに制限が加えられるおそれがあるのではないかとさえ思われますが、それに対するところの農林大臣の御所信を承わっておきたいと思います。
  137. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 北洋漁業は既定の方針通りに出漁はやるつもりでございます。  それからオットセイの問題でございますが、これは昨年の暮から始めまして、その後四カ国の間にいろいろ意見の不一致がございまして、せっかくアメリカが妥協案を出してみたり、いろいろしておりますが、まだ妥結に至っておりません。で、わが方といたしましてはどうしても海獣捕獲をそのままぜひ認めてもらわなければ困るということで、いろいろ実情を具して今せっかく折衝中でございます。今結論を出しておりません。
  138. 千田正

    ○千田正君 このオットセイ及び海獣漁獲に対しましては、非常に遺憾に思うのは、現在、先ほど総理大臣に申し上げましたが、吉田・ダレス書簡によって、日本の国内に住んでおらないところのこのオットセイに対して、日本の漁師が日本の沿岸で漁獲した場合においては罪を科せられる、まさしくこれは屈辱的な法律だと思います。日本領土に住んでおらないところの動物を、しかも日本の沿岸を荒すところの動物を、日本が今沿岸の漁業資源が枯渇している現在、さらに数百万頭のラッコ、オットセイが三陸から北海道の沖合を通過するときには、一日三百数万貫という魚類が食いつぶされる。これを正当防衛的な捕獲をすることが許されない。しかも吉田・ダレス書簡によって許されない。もしも、とった場合においては、日本の漁師が罰金あるいは財産を没収される、かような不当なる法律は、これはやはり占領治下におけるところの強制的な法律だと私は思います。これは一日も早く改正しなければならない法律だと思う。しかしながらそこに一点、国際信義上守って行こう、こういういわゆる国際信義という問題があるのでありまして、それが現在ワシントンにおいて行われておるところの、ただいま農林大臣から御説明になりましたラッコ、オットセイの問題でありまするが、海獣漁獲を許されない。海獣漁獲を許されない場合においては日本側はこの国内法を不当な法律としては認めていますが、改正する意思がありますかどうか、その点はいかがでございますか。
  139. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) ワシントンで四国で折衝中の問題は、ただいま申し上げました通りに、こちらから海獣漁獲をある数量許すようにということを申しておりまして、必ずしも絶対にこれを許さぬというようなことじゃないと私は思います。結論は必ず数字の制限の問題になると思うのであります。そうなりますれば、それに適応した国内法の改正をするということは当然でございますが、何分四カ国それぞれの立場が違いますので、これをまとめることに、しかも各国ともまとめようということでせっかく長引いておりますけれども、そういう状況でございます。
  140. 千田正

    ○千田正君 総理大臣にまた戻りましてお伺いいたしますが、戦争犠牲者のうち遺族あるいは留守家族あるいは傷痕者、こうした不幸な方々に対しては、一応政府がそれに対処する方法を講じておられまするが、そのうちで最後に残ったのが引揚者のもつところの在外資産の問題であります。この資産に対しましては内閣に審議会を設けてそれぞれ調査されておりますけれども、聞くところによりまするというと、自民党の岸幹事長ほか数名の方々がお寄りになって、将来これに対する暫定補償をやろう、とにもかくにもこの国際関係条約がはっきり結ばれて、そうしてこの在外資産の処理が、このかつての占領国内において解決せない限りこの問題は解決しないとするならば、なかなか将来の見通しがつかない。それでとりあえずこれに対する暫定措置を講ずる、こういうふうに承わっておりますが、これは一体いつごろ決定してその裏づけをなされるか。  もう一つは当時満洲及び蒙古等において官吏としておった人たち日本に帰ってきて何らのこれに対しては処置を講ぜられておらない。三公社、たとえば鉄道あるいは専売あるいは電々というような公社の職員は、帰ってきましても、年金法その他に一応救われておる。しかしながら満州、蒙古の政府におった官吏が日本へ帰ってきて公務員として、就職している今日、何らそこに年金その他に対する緩和された処理方法は講ぜられておらない。これは不当ではないかという声が最近盛んになって参っておりますが、これらに対する何か対処方針政府はお持ちであるかどうか、この点、鳩山総理がもしお答えができなかったら、官房長官でもよろしゅうございますから、明確にお答え願いたいと思います。
  141. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。まず第一に在外資産の問題でございまするが、これは御指摘のように現在内閣に審議会を設けておりまして検討中でございます。従来これに関する調査が不十分でございまするので、今回の予算措置において三千万円の調査費用をつけておるのでございまして、この調査に基きまして、それを資料といたしまして、審議会でいろいろと検討していただいて、その答申を経て、しからばどういうふうな措置を講ずるかは、それによってきめたいと思っております。従いまして今直ちに応急的に若干の補償をつかみ金でやるというような結論にはなっていないのでありまして、そういう点をもどういうふうにすべきかということをも、調査の結果に基いて、答申をいただき、それによって政府の態度を決定いたしたい、かように考えております。  第二点の満州国政府並びに蒙古政府に服務しておりました日本人が内地へ引揚げて、そうして官吏として身分を持った人に対して、満州国並びに蒙古政府に勤務しておった場合における恩給並びに年金の措置をどうするかということでございますが、御承知のように恩給並びに年金は、公務員としてその主権国駅に奉仕したために、経済上の取得能力がそのために減耗しておる、これを補償するという立場にあるのでありまして、従いまして、主権国がかわったために、そのために当然補償しなければならないというように解釈はいたしておりません。従いましてただいま御指摘になりました点について、直ちに恩給法外、加算するという結論にはなっていないのでございます。
  142. 千田正

    ○千田正君 そうしますと、今の満蒙旧官吏に対しては普通の引揚者と同様にみなして、将来その問題は解決する、こういう御意向でございますか。
  143. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。現在のところそういう方針でおるわけであります。
  144. 千田正

    ○千田正君 最後に二点、総理大臣にお伺いいたしますが、先般衆議院の予算委員会において、このたび提出されるであろうという選挙法改正について、これがもし通過した場合においては、当然衆議院を解放して、国民にその所信を問うというのは民主国家として当然であると思います。これは総理大臣としましては、これを解散する御意思はもちろんおありであろうと思いますが、時期的には、参議院の選挙はこの六月を目指して改選期とされております。この選挙法が本国会において提出され、本国会の開会中においてすでにそれが解決した場合においては、衆議院を解散する御意思がございますかどうか、その点を承わっておきたいと思います。
  145. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 新選挙区制が採用せられた場合に直ちに議会を解散するという意思はただいま持っていません。
  146. 千田正

    ○千田正君 最後に一点、最近死刑廃止問題が世の脚光を浴びて論じられております。もちろん論じてくるところは宗教心あるいは道徳、あらゆる面から論ぜられておるのであります。過去において、終戦後においてもすでに死刑を執行された者が二百三十七名という大多数に上っておりますが、これに対していろいろの論蔵がなされております。過般は英国の下院においてこれの廃止に対する手続に対する決議が通過しておる。こういうような問題について特に宗教心の厚い鳩山総理大臣は死刑廃止すべきものであるかどうか、こういう問題についていかにお考えになっておられますか、その点を一応お伺いしたいと思います。
  147. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 死刑廃止についてはずいぶん長い剛論議されております。死刑は廃止したいに違いありません。けれども残念なことには凶悪なる事件というものがだんだんふえまして少しも減る傾向はない、それだものですから、死刑を廃止する時期が来たというようにはただいまのところは考えていません。
  148. 千田正

    ○千田正君 理想としては、宗教的な立場からも、あるいは道義的な立場からも死刑を廃止すべきことは理想であると、かようにお考えでございますか。
  149. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) さようです。
  150. 千田正

    ○千田正君 それでは最後に一点お伺いしますが、私は戦争はこの死刑よりもはるかに残酷なところの問題であると思うのであります。死刑はただいま仰せられたように、犯罪を犯した者がその処罰として合法的に制せられるところの一つの法則でありまするが、戦争は無この国民がそのときの為政者によってあるいは侵略戦争にかり立てられ、あるいは防衛の戦前に立たせられ、自己の意思いかんにかかわらず、こればかり立てられるのでありまするが、大量の殺戮にはこれまた死刑と同様の問題を見出すものとわれわれは考えられますが、この点についていかなる御所信を持っておられますか。
  151. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 戦争は絶対に避けたいという希望を持っております。
  152. 千田正

    ○千田正君 戦争は絶対に避けたい、避けたいが平和の大道も守りたい。その意味においても今度のいわゆる再軍備を目標とする憲法改正をされますかどうか、その点はいかがでございましょうか。
  153. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ちょっと聴きとれませんでしたが……。
  154. 千田正

    ○千田正君 戦争は絶対避けたいと総理はおっしゃられる、また一面、戦争は避けたいということは平和の大道に向って合致したいという御希望であろうと思うのであります。平和の大道に合致するところの理想に生きようというお考えだろうと一方においては考えられます。にもかかわらず、たとえば防衛隊あるいは自衛隊その他の殺戮兵器を用意しなければならないということは私は矛盾した理論のように考えられますが、その点は……。
  155. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 戦争は絶対に避けたいけれども、侵略されてきた場合においてこれを避けるという方法がありませんので、それで自衛のための範囲において武器を持つということは、兵隊を打つということはやむを得ないことだと思っております。
  156. 千田正

    ○千田正君 時間がありませんから、これ以上の論争は別の機会にいたしまして、私の質問は終りたいと思います。
  157. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 八木幸吉君。
  158. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 先日の本会議で憲法調査会のことについてお伺いをいたしましたが、答弁が不十分でありますので重ねてこの点を総理に伺ってみたいと思います。  第一点は、憲法調査会法案はまだ御承知通り成立しておりませんが、予算が一千万円計上されておるのであります。これは行き過ぎではないか、こう考えるのでありますが、いかがでございますか。
  159. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法調査会が設定せられることを予想いたしまして予算を請求しております。
  160. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 議員立法の法律一案がまだ成立しておらんのに、その成立を見込んで予算を組んだという前例がありますかどうですか。これは大蔵御当局に伺いたいと思います。
  161. 林修三

    政府委員(林修三君) 過去における前例といたしましては、これは何国会だかちょっと今覚えておりませんが、耐火建築促進法でございますか、これは議員提案でございましたが、政府予算の計上をしてございました。そういう例はございます。
  162. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 これはどうも私は穏やかでないと考えるのでありますが、法制局、大蔵御当局、いかようにお考えになりますか。
  163. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 前例はあるのであります。今法制局長官から前例を詳しく申します。
  164. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいま国会のあれを申しませんでしたが、第十三回国会でございます。もちろんそう大きな金額の予算ではございませんでしたけれども、耐火建築促進法案は、これは議員提出の形で出まして、政府はまあそれを大体見越しておったと思いますが、予算に計上してございます。
  165. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 金額は幾らでありますか。
  166. 林修三

    政府委員(林修三君) 金額点は取り調べましてお答えいたします。
  167. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 どうも本質的にやはりこれは予算の編成の行きすぎの悪例である、こう私は考えるのでありますが、大蔵御当局並びに法制御当局は、いや悪例ではない、一向差しつかえないのだ、こういうお考えであれば、その理由を承わってみたいと思います。
  168. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。憲法調査会設置法の提案につきましては、実は当初政府提案にするつもりであったのでありまするが、その後、与党の方において出したいというような形になりましたので、率直に申し上げまして、これは調整の結果、議員立法にするようにいたしたのであります。その理由は、先般これはこの前の国会におきましては議員立法として出て、衆議院を通過いたしまして、参議院の方に回ったのでございます。そういう関係からいたしまして、今回この前と同じように議員立法にする方がよろしいというような結論になりましたので、これは政府内閣に置くという方針と変っておりませんので、便宜上議員立法にした、こういうことでございます。
  169. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 予算を組むくらいなら、私はやはり政府提案であるのが正しいと、かように考えます。また今お話の政府提案をやめて議員立法がよかろうという意味は、これは、憲法の改正発議は御承知通り国会にある。発議原案の提出権は、これは議論のあるところでありますが、私は内閣にもあると思うのでありますが、さようなめんどうなところがあるというので議員立法にせられたくらいなら、これは次の質問に移りますが、憲法調査会というものはどうしてもやはり国会に置くのが正しい、こう思うのですが、なぜ国会をお避けになったのか、この点を伺ってみたいと思います。
  170. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。この問題については先般来いろいろ御議論がございましたが、今度設置せられまする調査会は、これは国会議員のほか学識経験者も同様な資格において御参加を願う。そういたしますれば、これは内閣に置いた方が従来の慣例から見ても、また実質上の運営からも便宜である、こういう意味において内閣に置くというふうになったものと解釈いたしております。
  171. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 それならば私もう一ぺん突っ込んで伺いますが、第一次鳩山内閣の施政方針のときに首相の御演説の中で、国会に超党派的の憲法調査機関を設置したい、こうおっしゃっておられます。そのときはこれは超党派的の憲法調査機関であって、そうしてしかもやはり学者とかいろいろな方が入るということをおっしゃっておった。だから学者をこの憲法調査会の中に入れるからそれで内閣でなくちゃ便宜が悪いのだ、国会では困るのだという理由には、私はならないと思います。そこで私は突っ込んで伺いたいのは、第一次鳩山内閣の施政方針で、国会に超党派的の憲法調査機関を置いて学者その他を入れる、その構想は一体どういうのであったか、詳しく一つ聞いてみたいと思います。
  172. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 八木君の言われる通りに、国会に憲法調査会を置きたいということを私は言いました。言いましたけれども、だんだんと考えてみまして、外部から学識経験者を多数入れる場合においては、内閣委員会を設ける方が例が多うございまして、その方が便宜だと考えまして、前に国会に置くという私の意見を変更して内閣に置くことにしたわけであります。
  173. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今総理は前にも例があるということを仰せられましたけれども、前の例というのは憲法改正のような内閣に議案提案権があるかないかというような議論のあるような問題のものではなくて、普通のいわゆる法律案等の諮問機関としての構想であろうと思います。従ってこの場合はそれは前例にならぬと思います。この問題について、かつて第二十二国会で淺沼氏の同じような趣旨の御質問がありましたときに、総理は実は自分は考えを変えた、というのは反対が多ければこの案を作るのにはなかなかめんどうだから、自分は少数の党派でもあるしやめたのだ、こういう御答弁があったのです。ところがその後保守合同ができまして、議席もふえて国会における数という問題では心配がなくなった、また反対云々のお話がございましたけれども、今度は反対を表明しておられる社会党へも参加を呼び掛けるというぐらいな超党派的なお気持でおやりになるというならば、どうも国会を避けて内閣に設けるという意味は私にはのみ込めないのですが、その辺を一つ御説明いただいたら幸いだと思います。
  174. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 外部から、外界から学識経験者を多数入れる場合においては内閣に置いた方が先例が多いものですから、深い意味なくそういう道をとりました。決してこれによって国会の決議権というものは少しも減るものではありません。国会の決議権というものはじゅうりんせられる例というものはあり得ないものですから、この内閣に作っても一向差しつかえない、私はそう信じております。
  175. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ちょっと先ほどの御質問に林法制局長が答弁をするそうですから。
  176. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほどお答えいたしました耐火建築促進法案の場合の経費でございますが、今調べたところによりますと、二億円でございます。
  177. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次の問題に移りたいと思いますが、年間五千万円という金が自由民主党に立法調査事務費として国から渡っています。そこで、私は、もうこんなややこしいことはやめてしまって、自民党内に朝野の権威を集めて、この金で理想案を作って堂々と国会に出されるのが一番筋が通って、簡単明瞭じゃないかと、こう思うのですが、いかがですか。
  178. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国会の決議権というものには少しも影響のないことですから、あなたの、やり方というものも違憲だということは言えないと思います。けれども、便不便の点から考えてみますれば、内閣において委員会をこしらえて、直接に代議士諸君の中に入って、一緒に討議をする方が便宜だと考える次第であります。
  179. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次の問題に移ります。憲法改正の限界についてお尋ねいたしたいと思います。憲法調査会法案は、憲法の再検討ということをうたっておりますけれども、これは憲法改正を目途としておるということはもう明らかでありますから、その前提に立ってお尋ねいたしたいと思うのであります。  日本国憲法は、明治憲法の主権在君の憲法を主権在民に改めたのでありますから、改正というべきものではなくて、明治憲法の第七十三条の改正手続では、法的にはこれは不可能なものであったが、占領治下という特殊な事情によってあえてこのことが強行されたのである、かように私は考えるのであります。そこで、現行日本憲法の改正にも一定の限度がある、ということは、一部の学者が唱えるところでありますけれども、私は、今の憲法の成り立ちが、ただいま申しましたような占領治下の特殊の事情のもとに成り立っておりますから、今度の日本憲法の改正は全面的に改正し得るものだ、こう考えるのでありますが、総理は、かようにお考えになりますか。
  180. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法調査会において調査し得る範囲内におきまして、改正する必要があるかいなか、その点を初めとして、全般にわたって審議をしてもらうわけでありますけれども、われわれの考え方はどこにあるかと言えば、自然と限界があるものと、それは現在の憲法はとにかく日本戦争に突入にいたしまして、えらい経験を得たのでありますから、その戦争に突入して得たところの経験はやはり生かしていくことが必要だ、それは主権在民の方が日本の将来のために危険が少い、そういう経験を今度の戦争によって得たのでありますから、この主権在民ということは憲法改正のときには触れないでおきたいというわれわれは意向を持っておるのであります。なお、しいて言えば、基本人権などについても幾分か書き方ぐらいは直す所があるかもしれませんけれども、大体においては、その考え方はいいと思っております。それから男女の平等であるとか、戸主権の廃止などについても、われわれはそれを直す考えは持っておりません。そういうふうに数え来たれば、憲法を改正するのにも、自然に改正し得ないという限界はありますけれども、大体においてはすべての点を審査会において審査するという態度でゆきたいと思います。
  181. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 昭和二十一年に、憲法改正に関するマッカーサー草案が出る前に、各政党がいろいろ憲法改正草案を発表したのは御承知通りであります。そのとき、進歩党は主権在君の立場をとっております。自由党は主権国家にありという立場をとっております。社会党は、主権は天皇を含む国民協同体たる国家にある、かようにしておったのでありまして、ただひとり共産党と高野岩三郎氏らの憲法研究会のみが主権在民を主張いたしました。しかるに一たびマッカーサーの草案が政府から憲法改正草案要綱として発表されましたら、自由党も進歩党も、雷同するがように、いろいろと牽強付会の理屈を付しまして賛成しましたのは、占領治下ではあったけれども、まことに見苦しい態度であると現在でも私は思っております。そこで、私の総理に伺いたいことは、今回の憲法改正は、占領治下から脱して、自主独立の全面的の憲法改正を行わんとするのであれば、冷静にかつ確固たる信念に基いてこれをなすべきものであると思うのでありますが、いかがでありますか。
  182. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) お説の通りに厳正に審査をしてゆかなくてはならないものだと思っております。
  183. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そこで、私は、これは古くて、はなはだ何と申しますか、御記憶がどうかと思いますけれども、昭和二十年に、総理は第八十九帝国議会で幣原首相に、自由党総裁として民主政治確立について政府の所信をただしておられますが、その中で、民主政治の限界に言及して次の通り述べておられるのであります。ちょっと読んでみます。「即チ各国ソレゾレガ兵ノ国民ノ信念ニ基イテ独自ノ政治形態ヲ持ツト云フコトが許サルベキデアリマス、即チ我が日本ニ於テ 天皇が我ガ国ヲ統治シ給フト云フコトハ、我が国民ノ血肉トナッテ居ル信念デアリマシテ、是ガ是非ノ論ハ冒涜ノ感ヲ抱クト云フコトガ、我々国民ノ偽ラザル感情デアリマス、日本ハ族長国家ノ典型デアリマス、即チ、一大家族的集団デアリマス、社会形態ノ最モ理想的ナルモノハ家族ニ求メ得ラルルノデアル、ソコニハ全体ト個体、権威ト自由、命令ト服従、本能ト理性或ハ道徳ト経済ト云フヤウナル対蹠的ノモノが調和一致スル所デゴザイマス、此ノ美シサノ上ニ建設セラレタノガ我ガ日本帝国デアリマス、其ノ中心ハ 天皇デアル、……私ハ所謂民主政治ニハ日本的ト云フ所ノ限界ガナケレバナラヌト思フノデアリマスガ、之ニ対シテ政府ノ所信ヲ承リタト思フノデアリマス、」これが当時の御演説であります。そこで、総理に私は伺いたいのは、このときの、今朗読いたしましたお考えが現在は変っていないかどうか、また変っておるとすれば、どの点がどういうふうに変っておるか、何がゆえにそう変っておるか、これはきわめて重大な問題であると私は思いますので、率直にかつ冷静に国民にわかるようにお話しをいただきた  いと思うのであります。
  184. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 明治憲法が生きておりました当時においては、明治憲法を最上の憲法だと私は思っておりました。それに率いて演説をしたも  のであります。
  185. 八木幸吉

    ○八木幸君 そうすると、今の憲法では、今の演説はあなたのお考えと違っておりますですか。
  186. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 戦争に敗れ  まして、現在の憲法ができたときには自然と私の意見も変りました。
  187. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 戦争に敗れましてとおっしゃいますけれども、これは昭和二十一年の十一月のたしか三十日、戦争に負けて、日本が憲法を改正しなければいけないということが国民の世論でいろいろと大騒ぎをしておったときに、在野一党の首領として仰せられた言葉でありまして、戦争中でも何でもないわけであります。そこで今読みましたところのお答えと、現在主権在民がいいと言われているお考えの中には、相当根本的な大きなギャップがあるわけであります。ギャップがあることは、私は悪いとは申しませんけれども、ギャップができておれば、そのギャップはどういうところに根拠があって、どういう経過をたどって、こういうふうに変ってきたのかというところを一つ親切に仰せいただきませんと、今私が引用いたしましたように、当時の政党は全部といっていいくらい、主権在君もしくは主権は自家にあるという立場をとっておったのが、マッカーサーの草案が出れば手のひらを返すように、どうもマッカーサーの草案に賛成だという態度を示しまして、私たちは非常にそれを不愉快な阿諛的な情ない態度だと私は思いました。でありますから、今度これをおかえになりますにつきましては、こうこうこういう理由があるので、こういうので自分はこういうふうに意見をかえたのだというところの説明を一つ伺わなければ、まことにどうも何といいますか、信念のないたよりないことだと、こう思わざるを得ませんので、もう一度おそれ入りますが、その点をお示し願いたい。
  188. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法が改正されるとき、現在の憲法ができますときには、まだ明治憲法になれておるわれわれは、とても主権在民ということが、何といいますか、円滑に日本に行われるものではないと思っていました。それがやはり戦争に負けて国民の感情も激変いたしまして、それで憲法の改正後すでに五年もたって、その間主権在民の政治というものが円滑に行われる経験を日本は得たのでありますから、私の考え方も自然と変るのもやむを得ないと思います。
  189. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 それでは一つ伺いますが、主権在君にはどういう点に悪いところがございますか。
  190. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) とにかくすべての政治のおもなることが国民の多数の意思できまるということになれば間違いも少いいうのが一番大きな理由だろうと思います。
  191. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 君主が政治並びに法律的に責任のないという体制であれば、主権在君でもかまわないのだし、現に日本自由党は当時そういったようなことを主張しているのでありますが、それだけではその弊害は除去できませんか。
  192. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 主権在君時代にはいろいろの制度がこれに付加して、そうして君主を助けてきたわけであります。従って枢密院であるとかもいろいろなその他の制度がありまして、すべての制度が日本をやはりこういうふうにしたという責任があるわけでありますから、それらの制度をみんなやめて、新しい時代になったのでありますから、今度の憲法による筋を大体の筋としていくというのが国民としては当然であろうと私は考えております。
  193. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 主権が国家にありという立場はいかがでありましょうか。
  194. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 主権は国家にあるという議論もむろんあります。ありますが、国家というのはなんでしょう。(笑声)国家というのはやはり国民が主じゃないでしょうか。土地と国民――そうすれば国家にあるというのも、主権が国民全体にあるというのと大しての変りじゃないと私は思います。
  195. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 主権在民の民主主義をそのまま押し進めて徹底させれば、結局共和政体になると思うのですが、いかがでしょうか。
  196. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 共和政治というのには特別の意義がついておりますものですから、私はそれは近ごろそういう言葉は使わないのですけれども、すべての国民が主権者であるということは、民主政治においては、これは通用の論でありまするから、アメリカでも、イギリスでも、どこの国でも、すべて主権は在民だ。少しも疑っておりませんから一向差支えないと思います。
  197. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 最後に、「君主は君臨すれど統治せず」というあのイギリス式のやり方は、日本に適当しているとはお考えになりませんか。
  198. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日本の憲法の君主の象徴という制度はほとんどイギリスに似ておると私は考えています。
  199. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 なお、佐々木惣一博士の憲法法案はまだ未発表になっておりますが、もし政府でお差しつかえなければ発表さしていただきたいというのが一つ。それからこれは国会の話でありますけれども、憲法議会の速記録の未発表の部分をなるべく早くお話し合いになって、発表できるようにしていただきたいということをお願いしたい。
  200. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それは国会できめるのじゃないでしょうか。発表とか何とかは国会できめるべき問題だと思いますが……。
  201. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 与党としてそれを推進していただきたい。
  202. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) よく考えます。
  203. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 最後に国防会議のことについてお伺いしたいのであります。第二十二国会の政府提案は民間人が五名入っておりましたが、今回は除かれたそうでありますが、その理由はいかがでしょうか。
  204. 船田中

    国務大臣(船田中君) 国防会議法案の担当大臣として答弁申し上げます。  国防会議に民間人を入れる方がいいじゃないかという御意見につきましては、まことに御もっとものところもございますが、これは御承知通り、国防会議というものは内閣総理大臣の諮問機関でございまして、国防の重要な立案あるいは防衛出動というようなことについての意見内閣総理大臣に答申するという機関でございます。そしてなお国防会議の議員といたしましては、大体五人の閣僚を予定いたしておりますが、そのほかに関係の統幕議長その他の関係者を呼んで、議長が必要があるときは随時意見を聞くことができるようになっておりますので、従いましてこの民間議員を入れなくとも十分目的を達成し得る。かように考えまして、今回の法案の中には民間議員というものを入れておらないのであります。
  205. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 一点だけ。閣僚だけで国防会議を構成されるのであれば、私は閣僚懇談会で十分であると思います。それを総理大臣が、同じ総理大臣が議長である国防会議に諮問するという必要はないのじゃないか。  それからもう一つは、これはきわめて私は重大なことで国防会議の構成と性格に関係のある問題なんですが御承知通り、自衛隊法の第七十六条第一項ただし書きには、自衛隊の緊急防衛出動の場合は国会が開会中でも総理大臣の独断で自衛隊の出動を命ずることができる、こういう規定があります。ところが自衛隊の出動というと、大へん、こう、ぼやっとしていますけれども、これをもっとはっきりした言葉で言えば、これは戦端を開くということであります。もちろんそのあとの項では、後に国会の承認がなければ、出動した自衛隊というものは直ちに撤収しなければならぬ、こういう規定はありますけれども、しかし一たん戦争がおっ始まってしまえば、事実問題として撤収するということはなかなかむずかしい。そこでこの国運に重大な影響のある戦端を開くというようなことを、総理大臣の一存で、しかも国会開会中でも総理大臣だけで単独にきめ得るということは、これはりっぱな総理大臣ばかり出ればよいけれども、ずいぶんむちゃ者の出る場合もあるし、むちゃ者でなくても善意の過失ということもあるわけですから、この緊急防衛出動だけはどうしてもこれは国防会議の、その場合だけはせめて同意を得てから後に出動さす必要がある、こう私は考えますので、そこで国防会議の構成員というものは、単なる政府の閣僚だけでなしに、民間のオーソライズされた人に、たとえば両院議長であるとか、総理大臣の前歴のある人とか、という資格によってきめられた人を国防会議の構成メンバーにして、そして緊急防衛出動の場合だけは、ほかは諮問機関でもけっこうでありますけれども、この場合だけはその同意を要する議決機関とする、これが国防会議の最も重要な一つの。ポイントであろうと私は思います。この点につきましては、第二十三国会で総理にこの席で申しましたら、君の話を聞いたらなるほどもっともだと思うから、一つ検討してみようと、こういうお話があったわけですが、これは私は船田長官にも一つ、何でもないときはようございますけれども、そういうことも予想されるのでありますから、これは一つ緊急防衛出動の場合だけは、特に慎重に一つ何とか構想をお練り直しをお願いして、かつ御意見も幸い聞ければ仕合せだと思います。
  206. 船田中

    国務大臣(船田中君) 防衛出動というようなことはきわめて重大なことでございまして、これは自衛隊法にも明記されておりまするように、国会の承認がなければ出動できないことになっております。ただいま八木委員の仰せられましたように、緊急出動というような場同におきまして、国会が開かれておるというような場合には、その国会を無視して出動が行われるというようなことはなかろうと存じます。従いまして、先ほど答弁申し上げましたように、民間委員を入れるということは、そのために特に必要であるとは考えませんでございます。
  207. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今、船田長官のお言葉ですけれども、第七十六条の第一項のただし書きは、国会開会中でも独断で出動を命じ得ると、これは、はっきりと防衛庁の方の解釈であります。その意味での御答弁であればようございますけれども、命じ得ないという御見解ならば、前の内閣委員会等における防衛当局の御意見とは違うのですが、命じ得るか得ないかという点をここで一つはっきり言明をいただきたいと思います。
  208. 船田中

    国務大臣(船田中君) 法律的にはただいま八木委員の仰せられたようなことに処置し縛ると思います。しかし実際問題としてさようなことは起らないだろうと存じます。
  209. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 実際問題として国会の同意を得るというのはどういう手続をなさるのですか。
  210. 船田中

    国務大臣(船田中君) 国会開会中に防衛出動しなければならぬというような場合には、もちろん国会の緊急召集というようなこともございますから、これは十分それでやれると思います。ただ法律的には、先ほど八木委員の仰せられたようなことを、やり得るということにはなっております。
  211. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 緊急集会ではなくて、国会は現に開かれておる、今緊急出動を命ずることは、国会でどういうことになりますか。ちょっとそこのところ私よくわかりませんから。「(法律的に説明せよ」と呼ぶ者あり)
  212. 船田中

    国務大臣(船田中君) 国会が開かれておるときに、防衛出動をやらなければならぬというような場合におきましては、もちろん国会の御審議によりまして、その可否が決定せれらる、こういうことになると存じます。しかしそれでも、そういう時間もないというような場合におきましては、法律上においては、防衛出動を内閣総理大臣が命じ得ることにはなっておりますけれども、おそらくそういう場合は起り得ないだろうと存じます。
  213. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは、先ほどの千田君の質問に対しまして、大蔵省主税局長から、この際答弁をいただきます。
  214. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) ビキニ原爆実験による被災者が、損害を受けたことによって受けた金品に対する課税対象でありますが、大きく分けまして、この損害により受けた金品は三つに分け得ると思います。その一つは船員保険法の規定によって支給を受けた金品でありますが、これは船員保険法の二十六条の規定に該当いたしますから、その関係で非課税であります。  それから第二は、第五福龍丸の乗組員が受けた慰謝料及び被災者家族の受けた見舞金でございますが、これは所得税法第六条第十二号に規定する慰謝料またはこれに類するものと、こう考えまして、課税しないということに考えております。  それから第三は、被災漁業経営者、魚類販売業者の受けた補償金でございます。これは漁獲物を廃棄したことによる損害、危険区域設定による漁船の損害、漁価低落によるマグロ生産者の損害、それから流通業者の損害、こういったものに対する補償金でございます。この関係は、こういう損害が片方で赤字になります。いわばその補償の分はそれの見合い勘定で、一応収入金に入りますが、赤と黒と消えて、実際問題として課税処分にならない、こういうふうな関係になっております。この関係につきましては、本年の二月十六日に国税庁長官から具体的に例をあげまして、各関係の税務官庁に通達をいたしております。
  215. 千田正

    ○千田正君 今の主税局長の御説明であるというと、全然それではこのたびの見舞金は課税しないということになりますか、実際は。
  216. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 概括的に申しまして、課税しないという結論になると申し上げていいと思います。
  217. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 簡単に一問だけお願いいたします。
  218. 千田正

    ○千田正君 これは大蔵大臣にお尋ねするのであります。今大体において課税しない、しかし当時の吉田内閣のアメリカ側に対する要求は、国民の要望はあくまでも損害賠償であった。ところが外山父折衝の途中において、それが見舞金という名前に変ってきた、現内閣としましては、損害賠償及び損害賠償類似の今の見舞金というものに対しては非課税にするのだ、こういう方針を確立してもらいたいと思うのですが、この点はいかがであるかということをはっきりしていただきたい。ということは、とかく損害賠償その他というものは、完全に損害の補償は出されていないというのが従来の慣習であります。でありますから、その収入に対して課税するということは、われわれとしては、ふに落ちないし、そうあってはならないと思いますので、現鳩山内閣のはっきりした方針を出されてもらいたい。大蔵大臣はどういうふうにこの問題について御答弁なさいますか、所信を明らにしていただきたいと思います。
  219. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 私が大体においてという言葉を使いましたので、まだ御疑念が起きたと思いますが、多少問題になりますのは、最後に申しました片方に損害があって、そして片方に見合いの収入金の問題でありますが、こういう場合におきましては一応収入金に上げますけれども、片方に損害があるという関係でもって、結局するところは所得として課税する問題は起きない、ただ一応収入金に上げるということがございますので、多少御心配もあるようでございますが、その点につきましては、損害と収入金とをよく見合いまして、実情に即するように、そのように指示してございます。
  220. 千田正

    ○千田正君 これは問題が問題でありますから、重大な問題であります。今後こういう問題が起きた場合に、少くとも大蔵省の観点が収入というものとみなして、所得の中に赤字というものとの見合いということが残されておるとするならば、賠償金あるいは見舞金というものの制度に対してははっきりした線を引くべきである、これは当然今後起きてくる問題だとわれわれは考えられるときに、損害賠償はあくまで損害賠償、これも収入だからそれに対して課税するというような、あるいはそこに実際的に技術の面において多少参酌する面があったとしましても、そういうように明確に規定しておくべきものだと私は思います。この点大蔵省、むしろ大蔵大臣からはっきりしてもらいたい。
  221. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは実際の扱いは損害賠償ということになれば実際は課税しておらないと思います。しかしそうでないとすれば、そのときの法規において許される――私は今回のような場合においては見舞金と思っておりますが、これはやはり見舞金としての解釈をとらなければなりません。その場合には法規で許される最大限の寛大な取扱いをいたすべきだというのが私の考えであります。できればこういうものから税はとらぬのがいいのじゃないかという気持は持っております。しかしながらやはり法律の解釈ではそういうわけにもいかぬということになれば、法規の上からそういうことにしていかなければならないと思います。
  222. 戸叶武

    戸叶武君 農林大臣が四時にお出かけになるので、総理大臣及び外務大臣に対する質問の前に、まず農林大臣にお尋ねいたします。  河野農林大臣が今推進している農業団体の再々編成の問題、それから新農村建設計画並びにその運動、それから農協の信用事業に対するお考え等に対して、衆議院の予算委員会及び農林委員会等において数度にわたって述べられておりますが、それを検討してみますると、非常に考え方がいろいろに動揺しておって、真意がどこにあるか把握するのにきわめて困難で、各農業団体及び農協等でもいろいろに取りざたしておるのでありますが、この際に河野農林大臣からあなたのお考えを明確にここで示していただきたいと思うのです。
  223. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 農業団体の問題につきましては目下検討中でございまして、三月の十日ごろまでに結論を出して、そして中旬に党との意見を調整して国会に議案を提出いたしたい、こう考えておりますので、今お話のように、御質問によってお答えする角度によってそれがいろいろなふうに取りざたされ、不安を与えるような結果になりますことは、かえって避けたいと思いますから、しばらくその問題については御猶予をちょうだいいたしたいと思います。
  224. 戸叶武

    戸叶武君 それでは農林大臣は、今までの衆議院における、予算委員会及び農林委員会におけるところの答弁はいろいろに考え方が動揺し、変化しておるのであるから、それに対しては責任を負えぬということを意味するのでありますか。
  225. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 基本的には考えはまとめております。基本的にはまとめておりますけれども、それを各団体間の関係、実情に即して検討いたします上におきまして、今申し上げますように最終決定をなるべく早くという気持でいたしておりますから、しかもこの委員会を通じて答えたことはみなばらばらだとおっしゃいますけれども、一応は私としては基本的な線は変えていないわけであります。
  226. 戸叶武

    戸叶武君 一々例をあげて御指摘して御質問したいんですが、それには時間がありませんから、あらためてまた予算委員会の席上なり、農林委員会の席上で農林大臣にお聞きいたしますが、農林大臣は先ほど春季闘争のさなかに労働組合の賃上げ闘争を押えるような発言を硫安問題をめぐっていたしておりますが、この硫安の値下げに対して私の前回における質問においては、六月に硫安の値下げを行うということを言明しておりますが、その値下げの内容は具体的にはどの程度値下げする予定でありますか。
  227. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 来肥料年度の価格を決定いたしますのが大体六月から七月にかけてでございます。従ってその際に現在の情勢をもっていたしますれば、硫安の価格はさらに引き下げのできる要因がいろいろございますので、それを下げる方向で行きたい、こういうふうに申したのでありまして、これは御承知通り政府において生産費等を十分勘案いたしまして、原案を作って肥料審議会の議を経ていたすことでありますから、幾らということは出ませんけれども、御承知通り最近もしくは昨年末以来の硫安の各会社の業績等を勘案いたしますれば、相当に値下げができるんではないかというように考えております。
  228. 戸叶武

    戸叶武君 農林省の施策の中において特に食管会計の食管制度の問題が今後問題にされなければならないのでありますが、この食管会計の内容というものが一般の人になかなか把握できないような仕組みになっておるのでありますが、これを国民一般にわかるような形において農林省から白書の形においてでも国民を納得させるような、疑惑をなくさせるような方法を講ずるお考えはありませんでしょうか。
  229. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) ただいまのお話でございますが、米に関する新聞の記事、雑誌の評論等は非常にたくさん出ておりますので、しかもこれが必要に応じて時々これらを通じてお話をいたしておりまするから、ある程度御理解をいただいておると思うのであります。もっとも中には全然間違った方向の認識を与えるような記事もありますけれども、大体の見当は御了解を得つつあると考えておるのでありまして、必要があればその措置をとることもやぶさかでございませんが、さしあたりは考えておりません。
  230. 戸叶武

    戸叶武君 これは専門の学者の人も、また国会における相当練達の人も非常に困っている問題だと思うんです。この際やはり食べもののたたりというものはこわいものですから、やはり食糧庁をめぐるいろいろな問題が山積している際でありますから、これを明らかにするような白書を農林省から出してもらうことを希望いたします。  農林大臣に対する質問は、その他砂糖問題、飼料の問題、いろいろありますが、先を急いでおるようでありますから、一応打ち切ることにいたします。  それでは鳩山総理お尋ねいたします。鳩山さんは、二大政党の対立が実現したことは、わが国の憲政史上画期的な意義を持つことを強調し、この機会に、自由民主党及び日本社会党は、両党の責任において政党責任政治のあり方を国会運営の上に反映させなければならないという施政方針を今国会の冒頭に述べられましたが、この点の持っている意義というものは私は非常に大きいと思うのです。歴史的なやはり演説だと思います。しかしながら、その内容に至っては非常に抽象的であって、政党責任政治のあり方を国会運営の上においていかに具体的に表現しようとするか、その原則的な考えは何か、そういうことがあなたの見識なり、経綸を通じて出ていないのですが、この際に承わりたいと思います。
  231. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 二大政党の運営は、やはり責任をとるということが第一だろうと思います。自由民主党あるいは社会党は各党ともに責任をとる。その次には、お互いに寛容の精神でもってつき合う、そうして、ちょっと申しましたように、だんだんと話し合えば、誤解がなくなれば、政策というものは自然と近似してくるものと思うのであります。誤解があれば政策が飛び離れて違うように見えますけれども、よく相談をしてみれば政策というものはだんだん近似してくる。日本をどういうように持って行くかというようなことについて、さほどにとっぴに離れているということはほんとうはあり得ないことと思うのです。ですからして、二大政党は政策を明らかにして、そうして寛容の精神でつき合って、話し合いをして、そうして政策が近寄ってくる、政策が近寄ってくれば政権の移動ということが容易になると私は思うのです。
  232. 戸叶武

    戸叶武君 今の御答弁は明答弁だと思います。そこで二大政党の対立と今あなたが責任内閣制のあり方について述べられましたが、二大政党対立の意義というものは、お互いに責任をもって国政を担当しようとする態度が確立することにあるということはあなたの言われた通りであります。この二大政党のルールが確立するのには、まず責任内閣制の確立から始めなければならないことは、これはイギリスの歴史をみても御承知通りであります。ウオルポールの二十年の長期政権の時代を経て責任内閣制は確立せられ、その後しばらく過ぎてから、一八六七年の選挙法改正後において、グラッドストンからディスレリーの十八年間におけるこの二大政党対立の時代から、この政権の時代から責任内閣制が発足したというのがだれも認めているところでありますが、そこで私はこの責任内閣制のあり方に対して第一に承わりたい。それば政党のリーダーが、高邁な見識と経綸を持つ政党がりっぱな政策を持つというが、これが第一、第二には、内閣は行政機関の最高機関としての執行に当るのであるから、政策を公約した以上は公約を政治責任をもって実行するということである。第三には、理想の選挙を行う。選挙に金がかかったり利権と結びついたり、あるいは政党がリベートをとったり、選挙干渉が行われたりすることのないようにすることだと思うのです。この三つの条件のうち、鳩山内閣はその一つだに実行していないと思うのですが、鳩山さんはみずからこの点をどう考えておられますか。
  233. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は第一次鳩山内閣を作って以来、自分の国民に申し述べたことの実行に努力しております。その通りになかなか行くものではありませんけれども、努力をしてそれに近寄った政治をやっていると思っております。
  234. 戸叶武

    戸叶武君 新聞の漫画を見ても、公約不実行の場合には、鳩山さんの顔をかけば、大ていの人がなるほどというふうに納得するほど、およそ鳩山内閣が実現して以来、公約不履行という代名詞のようになっていると思うのです。そこで私たちは、二大政党のりっぱな政治的な戦いというものは、外交と財政の問題を通じての論争によって政権の交代が行われるべきだと思いますが、現下の日本においてはそれ以前の問題、すなわち当面している憲法改正の問題に対して私たちは論議を特に戦わさなければならないのでありますが、国の基本法たる憲法に対して、この改革を軽率になさるべきではないと思うのでありますが、鳩山首相が今推し進めているやり方というものには無理があるように思いますが、鳩山さんはこれでいいと思いますか。
  235. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は憲法の改正は政権をとる前から主張をしておりました。まだ自分が追放時代からも、憲法は改正しなくちゃいかぬということを考えていたくらいに、私の憲法を改正しなければならぬというのは古いものです。決して最近に考え出したわけじゃございません。
  236. 戸叶武

    戸叶武君 このことは、さき鳩山さんの八木君に対する答弁でもわかっておりますが、大体鳩山さんには明治憲法がしみ込んでおって、それが最高のものと思いつめてきた人でありますから、新憲法の意義というものがほんとうにわかっておらないのだと思うのです。そこにあなたの頭の回転の困難な点があるのじゃないかと思うのですが、そのことを私たちは認識した上において、あなたのこの憲法改正というものが明治憲法への逆戻りを意図するものであるというふうに思われるのですが、自分自身ではそういう意識をお持ちにならないのですか。
  237. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自分自身は明治憲法に逆戻りするような気分は持っておりません。ただ、とにかく占領時代に作られた憲法であって、非常に短かい時間に作られた憲法であり、アメリカの強い強制もあったし、とにかく今日自由を得た日本が、国民の自由意思の多数に従って改正すべき時期は来たものと思っております。
  238. 戸叶武

    戸叶武君 鳩山首相は現行憲法否定の上にその考えが当初からあるようです。わが党の河上顧問に対する回答においても、日本の憲法を国民の総意によって自主独立の態度に合致するように作りかえたい。日本の独立が完全でない占領時代に押しつけられた憲法は、日本人の総意によってでき上った憲法ということはできない。あるいはまた淺沼書記長に対する答弁にも、現行憲法は占領時代の強要によって作られたものだ、こういうふうに述べられておるのでありますが、これを承わっていると、鳩山首相は現行憲法否定の上に立ってこの現行憲法改正に当ろうと思っているようでありますが、その通りでありますか。
  239. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 現行憲法を全部否定するという考え方は持っておりません。現行憲法の上にもよい個条があるものと思っております。
  240. 戸叶武

    戸叶武君 現行憲法の中にもよい個所があるという程度では、現行憲法の根本的な理念というものを否定してかかっているようにしか受け取れないのでありますが、鳩山首相は、現行憲法は占領時代の強要によって作られたものだという、その現行憲法否定の上に立って憲法改正をやろうとされておるのでありますが、この現行憲法改正の場合においても、現行憲法の三大原則は堅持しようと思っていると衆議院では答えておりますが、その三大原則とは何を意味するものでありますか。
  241. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 第一は、主権が在民だと、主権が君主になくて国民にある、これが第一であります。第二には、基本人権を作ったということも一進歩だと思っております。それから、国際紛争を戦争によって解決しないというこの平和主義も、今日世界中の国民がすべてこの平和主義をとらなくてはならない。これらが基本の三大原則と思っておるわけであります。
  242. 戸叶武

    戸叶武君 総理大臣の今の説明は、大体はよいのでありますが、三大原則を端的に言うならば、やはり基本的人権、戦争放棄、主権在民に要約されると思うのです。この三大原則をお守りの上で憲法改正に当られるという御信念に間違いはありませんか。
  243. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 間違いはございません。
  244. 戸叶武

    戸叶武君 今、政府の意図しているところの憲法改正は、再軍備につながるものとして一般の人が非常におそれておるのです。特に鳩山総理大臣のように、明治時代にはなやかな生を受けた方には、その観念を切りかえるのは困難かと思うのでありますが、とにかくそういう古い観念の上において今憲法改悪をやろうとしていることを警戒するために、現行憲法の前文には、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」と書いてあります。これは政府の行為を制約しているものだと私は思うのでありますが、鳩山さんはこれに対してはどういうお考えですか。
  245. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はそれに対して少しも異存はありません。戦争をするようなことは将来再びないようにしたい、戦争をすることがないようにしたいが、侵略せらるることに対しては、これも侵略せらるるようなことのないようにしたい。すなわち自衛軍は持たなくちゃいかぬ、自衛軍を持つということは公然に許されべきことだと、これが私の考え方です。
  246. 戸叶武

    戸叶武君 ここで憲法改正の手続の問題でありますが、憲法改正というものは簡単にしてはいけないということが憲法前文にうたわれており、鳩山首相もそれを納得しておりながら、憲法改正を強行しようとするのに当って、鳩山首相憲法改正の原案を憲法調査会で作ろうと思っていると言われておりますが、憲法調査会で作り上げた憲法改正案が直ちに政府憲法改正案となるのでありましょうか。
  247. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そういうことは言えないと思います。憲法改正案を議会に提出するのは政府あるいは議員でありまして、国会議員あるいは政府以外には原案は提出できないのでありまするから、憲法調査会が提出する原案を作るということには語弊があるから、そういうことは言わぬ方がいいと思います。ただ原案を作る一助になることを調査会はするという程度のものだと思います。
  248. 戸叶武

    戸叶武君 鳩山さんは衆議院で言われた言葉を多少訂正しておられるようでありますが、しかしこの憲法改正調査会を国会に置かず、内閣に設けたということに対しては、八木さんの追及に対しても答弁が非常にあいまいだったと思います。鳩山首相が、最初国会に置くつもりであったが、学識経験者を入れる便宜上、これを内閣に置くということをその理由の一つにあげられておりますが、ただそれだけの理由でありますか。
  249. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そうです。他に理由はございません。
  250. 戸叶武

    戸叶武君 これは驚いた理由です。まさか私はそんな簡単な頭で憲法改正をやるとは思いも設けておりませんでした。憲法の前文にあるところの、政府がよこしまな考えを、よこしまでないにしても、本人は正しいと思うか知らないが、軽々率々に憲法改正の逆戻りを、憲法改悪をやらないように、憲法前文ではとどめが打ってあるのであります。それにもかかわらず、その政府の意思によって、しかも内閣にそういう機関を設けるというようなやり方は、全く政府の行き過ぎだと思いまするが、行き過ぎと考えておりませんか。
  251. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法が要求する憲法改正についての諸条件は、これはすべて順守するのであります。国会を無視したり、国会を軽んじたりして憲法を改正する意思はなく、国会の三分の二以上の同意がなければ国民に対して発議をしない、これは憲法上明白なのであります。改正の手続というものは憲法に厳として規定してあるのでありまするから、それを順守することは当然なことであります。
  252. 戸叶武

    戸叶武君 憲法改正策の発議及び提案権は国会にあるということは、これは明確に憲法第九十六条に規定されておるのでありまして、それは今、鳩山首相もそのことを認めております。しかし鳩山首相は、淺沼書記長に対する答弁においても、また今日の答弁もそのようでありましたが、憲法改正の原案は政府で作ってもよいとの見解を披瀝しておりますが、その見解は正しいと思いますか。
  253. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法改正案を提出する権利を持つものは政府、議員、それ以外にはないのでありまして、憲法調査会が提案権を持つというわけにはならないのでありまするから、原案を調査会が作るといった言葉には誤解があると思って、今日のような私は話し方をしたのであります。
  254. 戸叶武

    戸叶武君 総理は憲法前文をよく了解して下さい。それから憲法第九十六条において、「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。」と規定してあり、前文においても、九十六条においても、政府ということが出ていないと思いますが、政府及び国会と言われるその根拠はどこにありますか。
  255. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は国会にも政府にもあると思いますが、政府にあるという条文はほかの条文であります。これは法制局長官から答弁をいたします。
  256. 林修三

    政府委員(林修三君) 憲法第九十六条に書いてございますことは、国会が国民に向って発議するについては、会が各議院の三分の二以上の賛成をもってやる、こういうことが書いてあるのでございます。国会がその憲法改正の発議をするについての、議案を審査する場合の、その対象となる議案をだれが提案するかという問題でございますが、これについては学説がいろいろあることは御承知通りでありますが、政府といたしましては、これは一般原則に従って、国会議員が持たれることは当然でありますが、内閣も持っている。それについては憲法第七十二条等によりまして、内閣総理大臣内閣を代表して議案を国会に提出する。こういうところからもそういうことは肯定さるべきものだと、かように考えておるものでございます。
  257. 戸叶武

    戸叶武君 今のは詭弁です。一般の議案とは違います。憲法改正に対する規定は、憲法の前文と、第九十六条に規定されている以外にはないと思うのです。(「その通り」と呼ぶ者あり)しかもその法制局長官の今の詭弁は、これは全く、何と言いましたかな、あなたは変なことを言っていましたが、政府としては一般原則、一般原則というのはすべての人の通念を言うのです。そんなこけおどかしの、漢語まじりで、へ理屈を並べられては困ると思います。それから根本官房長官は、これまた従来の慣例からしてということを語っておりますが、従来の慣例に対する具体的例をここであげてもらいたいと思います。
  258. 林修三

    政府委員(林修三君) 今、私の申し上げました点につきましては、これは  一般に多少幾つかの学説があることは、これは御承知通りだと思います。しかしこの憲法第九十六条は、結局「国会がこれを発議し、」といって、いることは、結局国会が国民に向って憲法改正の発議をする、その手続を書いたものでありまして、その前提として国会において憲法改正の議案をいかに審査するか、またその審査すべき議案をだれが出すかということは、憲法九十六条は直接定めておらないということは、学説の相当多数のものがそう解釈しているわけであります。政府もさように解釈しているわけであります。しからばだれが出すかということにつきましては、これは国会が立法機関であることから、国会議員がお出しになる権限を持っておられることは当然の  ことでございますが、政府もまた持つということが憲法第七十二条の規定からして認めらるべきことである。出すか出さんかということは、これは政治的に考えるべき問題でありますが、法律的にそう考えてしかるべきである、かように考えておるのであります。  それから先ほど官房長官の答弁は、私からお答えするのははなはだ僭越かも知れませんが、従来の例と言われたことは、憲法改正の例はもちろんござ  いませんけれども、一般に国会議員のみならず、学識経験者を含めた審議会を国会に今まで置いた例がない。従ってそういうものは内閣あるいは総理府等に置くことが例である。こういうふうに言われたことだと思います。
  259. 戸叶武

    戸叶武君 これは法制局長官や、官房長官の属僚の解釈によってわれわれは納得できない。少くとも憲法改正は、この七十二条にあるところの、一般の議案を国会に提出しということとは全然違う。それがためにこの憲法前文における規定があり、憲法九十六条一における規定があるのでありまして、わざわざこういう規定があるにもかかわらず、これを一般原則としてとか、通念としてとかという今の解釈の答弁は、法制局長官、多少幾つかあるという、多少幾つかというのと、一般原則とは大なる違いである。そういう概念規定もできない法律解釈のもとにおいて、政府が勝手な解釈をして、政府提案によって憲法改正を行うなどというようなことは由々しき大事だと思いますが、この問題は追って私は追及をいたしたいと思いますが、総理大臣として、少くとも憲法改正に対して軽率な挙に出ずるようなことがあったならば、重大な問題が起きると思われますが、総理大臣の答弁を願います。
  260. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、憲法改正について非常に主なることは、議会の三分の二の多数をもってしなければ、改正案といいますか原案というものはできないということ、これは非常に一つの大きな問題だ。これはまた国民に問うて、国民の多数の同意を得なければ憲法法の改正ができない。これが憲法改正に対しての二つの大きなる要件であります。これを紛糾しようとするような考え方は毛頭ないのであります。
  261. 戸叶武

    戸叶武君 総理大臣はその九十六条のあとの方だけ覚えていて、大切な頭を忘れている。第九十六条の頭は、「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」この前文を私はよく見て、その上でこの憲法前文に盛られた憲法精神というものをよく把握して、明治憲法の頭脳を洗脳して、そして憲法改正に当るのに対しても、もっとしっかりとした態度で当るようにしてもらいたいと思うのであります。
  262. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいまあなたのお読みになった条文はその通りにやるつもりであります。決してそれをごまかしたり、ゆるがせにするという念は毛頭ありません。
  263. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 吉田君の関連はいいですか。
  264. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじゃ関連して。先ほど来、憲法調査会で作られる、検討される案が、政府憲法改正案になるかどうかはわからぬ、こういう御答弁でございました。ということは憲法調査会というのは諮問機関として、出てきた結論を政府は検討をして案を作るかどうかと、そういう意味なのか、その点を一点お尋ねいたします。  それからもう一つは、憲法改正の提案権の問題を今論議をしておるのであります。総理大臣は九十六条の手続が、国会で三分の二以上の賛成でこれを発議して、国民審査に付する、そういう手続はちゃんととるのだ、こういうふうにまあ言われますが、もっと前の点を戸叶君は質問をしておるわけであります。で、主権在民、あるいは民主主義というのが、他の二つの原則と並んで、この憲法の基本原則であるという点は、鳩山首相もお認めになりました。この主権在民、民主主義が、日本国憲法を貫いて、主権は国民にある、その国民の主権を憲法の規定の上で代表するものは国会である、従って国会が国権の最高機関である、こういう条文もございます。条文じゃない、規定もございます。それから国政は国民の信託によって行われる、第五章ですか、内閣に関する規定は、これは行政権として国会から選ばれる、あるいは基本的に一番下の点から言いますと、国民の信託によって国民から間接に選ばれたこれは行政権であると、こういう工合に建前がなっておるということは、私が申し上げるまでもなかろうと思います。そうすると、法制局長官は普通の議案と同じに、行政機関としての内閣が、単なる普通の議案として国会に議案を提出することができるように、憲法改正原案を国会に付議することができる、こういう説明をしておるわけです。ところが憲法は国民主権の上に立って、その最高の機関は、国民を面接代表するものは、これは国会である、国会が唯一の国民を代表する最高の機関である。その国会が憲法改正原案を作るのだと九十六条に書いておるわけであります。   〔委員長退席、理事池田宇右衞門君着席〕 そうすると、国会に対しても唯一の立法機関、あるいは国権の最高機関としての国会というものがこの憲法によって認められておりますならば、法律を作るということは、狭義の法律です、法律を作るということはこれは国会の専属的な権能である。従って法律を内閣が提案をするというのも、これは憲法の建前からいうならば、それは憲法違反だとはっきり申し上げるという議論もありますことは、これは法制局長も御存じであろうと思うのです。憲法そのもの、最高の憲章としての、国民の憲章としての憲法の提案権は、憲法の精神、憲法の建前に従って行われなければならないのであって、普通の議案と同じように政府に提案権があるというのは、それはこの憲法の精神、あるいはこの制度に反するのではないか。こういうことを尋ねておるのが戸叶君の質問なのであります。憲法全体の建前、それから制度の点からいって重ねて御答弁を願いたいと思うのでありますが、少くとも憲法の改正提案権はこれは政府にはないというのが私は通説だと思うし、憲法全体を考えるならば当然そうであろうと思うのでありますが、重ねて御答弁を願います。
  265. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 憲法改正についての手続は、あなたがおっしゃる通りであって何人も疑いません。憲法改正の提案権、案を出すということについては、その条文には書いてないのです。書いてありません。それで、それは政府も出せるし、国会も出せる、こうまあわれわれは考えておるのであります。その憲法に書いてある改正についての手続を変更するという意思は毛頭ないのでありまして、ただそのあなた方のお読みになった条文は、どこまでそういう解釈をとるのだということが問題だと思うので、それは私は、案がきまるのには三分の二の定数が必要であり、これを国民に発議するのにはレフェレンダムによる以外には方法はない、こう思っておるわけであります。
  266. 戸叶武

    戸叶武君 この憲法九十六条をよく読んで下さい。
  267. 吉田法晴

    吉田法晴君 憲法九十六条のほかに、三分の二の賛成で国会がこれを決議する、その具体的な規定はないと言われました。これはもし七十二条を引きました法制局長の発言が間違っておる、こういう意味でなら私は正しいと思うのであります。法制局長が引きました七十二条は、これは今申しましたけれども、第五章内閣、行政機関としての、行政権としての内閣が普通の議案を国会に提出する、これは行政の執行について憲法上従うべき制約を書いてあるのでありますが、そういうものを書いたのであって、お話の通りに、七十二条は九十六条の憲法改正原案を発議をする規定でないということはお話の通りだと思うのでありますが、そうすると今まで言って来られました政府憲法改正の発案権を持っておるというのは間違いではございませんか。もう一つ前段に問いました点も落ちておりますが、今の点御答弁願いたいと思います。
  268. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私が申した言葉を九十六条に書いてないというのですか。
  269. 吉田法晴

    吉田法晴君 九十六条の手続はほかにどこにも規定がないという、こういう御答弁です。
  270. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それはさっき法制局長官が話しました通り、その七十二条ですか、七十二条によって提案権を政府一は持っておる、こういって、あなた方はそれに反対をしていらっしゃる、そういうわけです。
  271. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと関連して。政府側の九十六条に対する見解は了承はできませんが、一応それを認めるという立場に立って総理大臣考え方を聞きたいと思う。鳩山総理は結局、国会への憲法草案の提案は、国会議員並びに政府おのおのができる、こう言い切っておるわけです。そこで法律上はたとえそういうふうに解釈できるといたしましても、実際問題として、重要な憲法草案を国会に出すのはだれが適当か、私は今の憲法における国会の地位という立場から考えるならば、これはだれが考えたって、事実上は、国会議員みずからが適当な形でこれを出すということが一番最適であろうと考えるのです。その点に対する考え方はおそらく御同感と思うがどうでしょうか。
  272. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はただ法文の説明だけを申したのでありまして、議会は自分の考えではとにかく三分の二なければ案はできないのでありますから、三分の二以上の人が署名をしてその議員が提案する、こういうのを理想として考えております。
  273. 戸叶武

    戸叶武君 鳩山さんはまだ、憲法改正を規定したのは第九章だけなんですから、その第九章における第九十六条というものをほんうとに理解してないのです。これは憲法改正の規定なんです。そこには発議し、提案してという、この国会におけるところの発議権も提案権も明記せられておるのです。今の政府は、非常に、財政に対しても、こういう憲法改正の問題に対しても、非常に行政機関の最高機関としての内閣と国会の機能とをごっちゃにして、国会における発案権、提出権、それから審議権をめぐるところの区分けというものが、この数年来の討議を聞いておっても明快になっておらないところに、近代的な責任内閣制のもとにおける内閣のあり方、国会のあり方、その機能、そういうことが明確にされておらないことから起きてくるのでありますが、これは明治憲法がこびりついておる人たち相手にするので、いつまでたってもらちがあきませんけれども、国会でこれを明快にする必要がありますから、今後は審議はまた私たちは別な機会で続けることにします。そのいい実例が船田防衛庁長官のあの暴言になっても現われているのじゃないですか。先ほど鳩山総理大臣は、船田さんの言うことも私の言うことも同じだというようなことを、まあまあ友愛精神でごまかそうとしておりますが、この船田防衛庁長官が言ったのは、自衛隊の海外派兵の問題の追及に対して、自衛のため飛行機で敵の基地を爆撃することは、いわゆる海外派兵とは区別さるべきだといって、その基地爆撃を当然化しておるのです。鳩山さんのこれと食い違っておる点は、鳩山さん、あなたが言ったのだから覚えているでしょうが、飛行機で飛び出して敵の基地を粉砕させるようなことはできないと答えておるのです。できないというのと、できるというのとは行きと帰りほど違うのです。船田さんはとにかく向うへ、中共の方へ飛んで行っちゃうのです。あなたはアメリカの方へ飛んで行っちゃうのです。これは鳩の翼が両方に分断されます。こういう答弁をやっていると、私はこの答弁は、日本国内だけなら問題ではないが、ソ連なり、中共なりその他の国々を必ず刺激するのです。朝鮮事変の起きたときに、マッカーサー元帥がこの船田防衛庁長官のような放言をしたばかりに、マッカーサー天皇と言われたあの男は罷免されておるのです。アメリカですら、これだけのきびしい手をもって、こういう言動を取り締っておるのでありますが、船田防衛庁長官の言葉を、あなたはそのまま認めるつもりなんですか、それとも訂正させる意思はあるのですか。それともあなたは自身で訂正するつもりですか。明快な回答を願いたいと思います。
  274. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 海外派兵ということをわれわれは考えておりません。私も考えていないし、船田君も考えてない。飛行機でもって、日本に侵略してくる飛行機の基地は粉砕してもいいというようなことを、無条件に船田君が言うはずがない。これは条件があって、どうしてもその飛行基地を粉砕しなければ、そこに飛んで行かなければ、日本の防衛ができないというような場合には、その基地を侵略してもいい、(発言する者者多く、騒然)侵略というのは、攻撃してもいいという意味であります。(「明確に取り消せ」と呼ぶ者あり)
  275. 戸叶武

    戸叶武君 今の速記録は明快にとどめておいて下さい。単なる失言じゃないです。侵略してもよいという意味は、爆撃してもよいという意味であるということを総理大臣がみずから言っております。これはあらためて速記録を読んでから後に、船田失言とともに鳩山失言を重大な憲法違反としてわれわれは告発し、取り扱わなきゃならぬと思います。これは重大な問題だと思います。さっきは、言い直しをするのだから、御病人だし、仕方がないと思っていたら、何せ、前から言っておるように、あなたは明治憲法のとをには明治憲法がよかったということを確信しておったのです。で、あなたの便宜主義から、今度は新憲法もよかったと確信しておると思ったら、そうでない、前々から新憲法は改正しようと思って虎視たんたん狙っておったという、そういう新憲法に対する反逆精神をもって憲法改正をしようとするこの鳩山首相の言動というものは、ことごとくこういうところに出ておるのです。  もう一つの実例、それは船田失言に関連しておりまするが、防衛五カ年計画が完成しても必ずしも米軍が撤退する必要はないと彼は言う。総理大臣及び経済企画庁長官は、この防衛五カ年計画によって米軍は撤退してもらうことができると言っておるが、これも行きと帰りほど違っております。言葉はあいまいに使って舌足らずなことを言って、前提条件が外れておるなどということによって国会の答弁は許されるものでないのです。幾たびか質問を繰り返されても同じことを言って、その言明を……明らかにしていないじゃないですか。このことに対しても、われわれが今日臥薪嘗胆しておるのは、真の独立をかち縛るために外国軍隊の撤兵ということを期するために、完成を努めておるのが心境であって、それはあなたにも変りはないと思う。その点を明快にしてもらいたい。
  276. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) あなたと同じ考え方です。
  277. 戸叶武

    戸叶武君 今や国際的にこの軍事的な攻勢から平和攻勢に転じ、さらに一転して経済援助というような形において建設的な競争に世界が移ってきておると思うのです。そういう国際風潮をよそにして、朝鮮の李承晩、台湾の蒋介石、日本鳩山さん、この極東の三つの頭が、とんでもない考えを持っておるということは、ほんとうに極東の不安を私は増大しておると思うのでありますが、今日において、鳩山さんのお考えがどうであろうとこうであろうと、とにかくソ連の打ち出してきておる現在の中近東及び東南アジアに対する経済援助の対策の具体化、それに対処してアメリカにおいても立ちおくれておるところのこの経済援助計画の切りかえをやろうとしておる様子が、大統領選挙を前にして、きわだってきておるのであります。   〔理事池田宇右衞門君退席、委員長着席〕 そういう空気を代表して、ダレスさんがこのSEATOの会合にも出席して、来たる十七日には朝鮮から日本にやって来るということであります。このダレス氏がどういうような形においてアメリカにおけるアジア政策の転換を画するか、これは非常に興味ある問題でありますが、ダレスさんが来る前に、すでにその露払いとしてジョンストン氏がアジア経済開発公社の問題をひっさげて日本にまみえております。このジョンストン氏とは一萬田大蔵大臣が本日会談せられる予定だというようなことが新聞に報ぜられておりますが、そのジョンストン氏のアジア経済開発公社の提唱の内容というものはどういうものでありましょうか、一萬田さんにお聞きします。
  278. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ジョンストン氏の東南アジアに対するアメリカの経済援助、この具体的なことはまだ私も聞いておりません。ただ昨日日本商工会議所の午餐会において、ジョンストン氏の話によりますと、アメリカとしても東南アジアの経済に対して長期的資金を供給する等、しかるべき援助を与える意向があるやに承知いたしておるのでありますが、私どももこの東南アジアにつきましては、前からこの地方と日本の経済との関係を密接ならしめるという意味におきまして、この経済の開発に力を注ぎたい、こういう一つ考え方を持っております。こういうふうに考えておるわけであります。
  279. 吉田法晴

    吉田法晴君 議事進行について。  先ほど来、戸叶君の質問に答えて、総理大臣は、攻撃に対しては、これは条件があるけれども、他国の基地を侵略し得る、あとで訂正をして、攻撃し得ると、こういう工合に訂正をせられましたけれども、侵略なり攻撃なりという言葉を使われたことは間違いございません。そこで戸叶君からも提言されましたけれども、速記録を調べて、この取扱いを理事会において協議せられんことの動議を提出いたします。(「異議なし」と呼ぶ者あり)というのは、あるいは戸叶さんの言葉の中にも、他国の国の名前をあげておりますが、これを攻撃し得る、あるいは侵略し縛るという言葉が出たのでは、国際的にきわめて重大な影響を与えます。これは一国の総理が、予算委員会において、あるいは侵略し得る、あるいは攻撃し得るという言葉を使われたということは、きわめて影響重大でございます。速記録を調べて、理事会において善処せられるように提言をいたします。
  280. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 先刻、ただいまではありません、先刻戸叶君の質問のときに申したのは、船田君と私との意見の相違があるというときに、私が申した言葉を大体記憶しているのですが、そのときに私の言いましたのは、船田君が無条件に侵略を……攻撃してもいいということは言うはずがないということを言いました。それは条件があるに違いない。その条件というのは、その基地をも叩かなければ日本の防衛ができないというような条件、そのほかには条件がないというような場合においては、そのときにその基地を攻撃しても差しつかえないだろうという意味で船田君が言ったに違いないと私は思う。それならば私は船田君とは意見の相違はないはずである。こういう答弁を、ただいま問題になる発言の前に戸叶君に私はしたはずです。速記録をよくごらん下さいまして、海外派兵ができるという意味で船田君が言ったのではないだろうという、否定の言葉を言っていることは、記録を見て下さればわかると思います。侵略という言葉は非常に間違った言葉でありまするから、ここに正確に取り消しておきます。
  281. 吉田法晴

    吉田法晴君 大体そのとき言おうとされたことを今言われたのでありますが、しかし侵略という言葉があったこと、それからそれを訂正して攻撃という百葉に直されたこと、これも今の御答弁の通り、あるいは船田長官の先刻の答弁に関連して、それはこういう意味であったろうということでありますけれども、それを総理大臣として肯定をされた。そうしてその最後に言われたことでございますから、きわめてこれは重大な問題でございます。そこで先ほど申し上げましたように、理事会において速記録を調べて、その取扱いについては理事会において協議、善処せられるように委員長に取りなしを要請し、動議を提出いたしますから、委員会の意向をおとりまとめを願いたいと思います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  282. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまの吉田君の動議ですが、午前中の件もそういうのがありますので、今調べて、翻訳をしておりますから、これは明日のことになると思います。今の御動議もございましたから、その翻訳ができまして、明日適当な機会に理事会で御相談申し上げます。
  283. 戸叶武

    戸叶武君 先ほど一萬田さんの御答弁がありましたが、アメリカ側におけるアイゼンハワー大統領の年頭教書の中においても、開発諸計画に対する経済援助継続についての保証を必要としている。そのため私は議会に対してこの棟の開発計画に対して長期間にわたる援助の保証をなし得るような一定の範囲の権限を認めるよう要請したと言っております。そうしてダレスさんがSEATOの会議に出席する前後において、当然イギリスとアメリカにおきまして東南アジア経済計画に対するところの話し合いがなされるであろうということは新聞も報じているところであり、その内容はイギリス側が一九五一年からやっておるコロンボ計画と結びつくものか。それとも新たなる構想においてなされるものか。イーデン首相は、対アジア経済援助を目的とする新しい国際機構の設立について、アイゼンハワー米大統領に同意を与えたというような消息も伝わってきておりますが、外務省には、これらの関係におけるところの何らかの情報が正確に入っておるでしょうか。総理大臣なり政府委員から……。
  284. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はそのことは何も知りませんから、外務省の方から。
  285. 木村四郎七

    政府委員木村四郎七君) お答え申し上げます。  まだ十分なる情報は入っていないのでありますが、目下収集いたしまして、慎重に検討中でございます。
  286. 戸叶武

    戸叶武君 東南アジアの開発については、重光さんばかりでなく一萬田さんもまた高碕さんもアメリカに行かれ、特に高碕さんはホリスター国際協力局長ともかり具体的な話し合いをされたということでありますが、この問題はフィリピンやビルマとの賠償問題にも何らかの関連があるように思われるのでありますが、今賠償問題で一番大きく問題化されておるのは日比賠償の問題でありますが、この日比賠償問題は、ガルシァ副大統領が声明するところによると、ネリ氏と卜部氏の交渉の進展によって重大な見解の相違はすでに調整されたというふうに声明が出ておりますが、日本政府からはフィリピン側からの声明が出ても、何ら公式声明は出てないようでありますが、この賠償の具体的内容というものが、総額は八億ドルで五億五千万ドルが純賠償、総額三億五千万ドルの投資借款、この二つに関する協定を意味するものかどうか。それを明らかにしてもらいたい。
  287. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまのフィリピンの賠償問題は御指摘のような状態で今進みつつあるわけでございまして、ほぼ妥結せんとしておるような状態でございますが、この東南アジアの開発計画、援助計画とはおのずから多少つながりはあるように存じますが、何しろ相手国がフィリピンだけでなく、ビルマにいたしましても、インドネシアにいたしましても、東南アジア全体はようやく今日独立をかち得た国でありますから、再びこれが植民地化されるというふうなことについては相当警戒をしておりますことと、一方、われわれ日本人に対しては過去の侵略的の罪悪についてはなおかつ警戒をしておりますから、この点等はよくわれわれ心得て、今後の開発計画に当って、まずもって相手国の希望するような条件を、どういうふうにすれば一番希望するのだということと、もっと心持ちの持ち方を日本本位でなくて、相手方本位ということで考えていくことが最も必要と思って今立案しておるわけなのでございます。
  288. 戸叶武

    戸叶武君 今の高碕さんの説明では明快になっておりませんが、フィリピン側でもってすでに政府筋から、副大統領から声明が出ているのに、日本側では何にもこれを知らせない。外交がきわめて、重光さん非常に慎重なのはいいが、霞ケ関のいわゆる外交官としての昔の型から抜けないで、全部国民外交を知らせていない傾きがありますが、こういうことはやっぱり国民に同時に知らせるようにすべきだと思います。今高碕さんの言われた、とにかく東南アジア諸国がコロニアリズムに対する警戒と、それから資金は受け入れたいが、その受け入れ方を注意している。そういう点を非常に慎重にしているという点は確かに望ましいことでありますが、いずれにしても、もはや日本自体が再軍備だけに狂奔して、憲法改正なり選挙法の改正なり、ばかの一つ覚えでそれにばかり夢中になっているときに、国際情勢の変化によって、とにかく米ソ対立の、電車的対立から、そうでなくて共産主義の防衛というものも、アジアの貧困をなくさせることから始めなければならない。産業開発、未開発地の開発、そういう経済問題と四つに取り組まなければならぬという段階にきているときに、政府でそういうことに対する基本的な考え方ができていない、ダレスさんが来ても、ダレスさんに会えば、いつでも再軍備の話さえすれば、ごきげんが取るれと思うような考え方では、とんだことになると思うのでありますが、ダレスさんが参ったときに鳩山さんは、一体あなたが歴史に残る人としてどういうお話し合いをしようと考えているか、一つ考えを承わりたいと思います。
  289. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ダレス氏が日本に見えましたときには面会をいたします。そのときには、アメリカの考え方日本考えていることが矛盾をしたり、あるいは衝突していたりしては残念なことですから、そういうことのないようにアメリカの意向も聞いてみたいし、日本考え方も腹蔵なく話したいと思っております。ただ何をどういうふうに話すかということは、ダレス氏が来る数日前に相談をして確定したいと思っております。
  290. 戸叶武

    戸叶武君 あれほど向米一辺倒に見えた吉田さんですら、アメリカを訪問して最後の段階における、ワシントンにおけるプレス・クラブの新聞記者との談話においては、アメリカが貿易でもうけている金五十億ドルのうち四十億ドルでも投げ出して東南アジアの未開発地の開発、経済建設、そういうことに力を注がなければ、強力な近代国家を作り上げた中共の国家資本を動員しての経済建設には対処していけないであろうということを、こまかい数字をあげてアメリカで力説しております。私らが腰抜けと思った吉田さんですらも、アメリカに行ってこの程度のことだけは、言っているのです。私は吉田さんよりは鳩山さんはお人がよいというだけではなく、多少やはり見識を高く持つということを期待しているのですが、今アメリカと日本が親しくなるのは、アメリカに追従するのではなく、アメリカの軍部に政府が引きずられたり、アメリカの間違った財界の世論にゆがめられたりするこのアジア政策の間違いを、かつて国務省が中国白書でもって中国政策が間違っていたという白書を出したように、是正しなければならない段階に私は来ていると思うのです。そのときにほんとうにアメリカをしてアジア政策を改めさせるような見識ある発言というものは、インドのネールさんなり、日本の指導者なりによってなされなければならない私はアジアにおける日本の役割があると思うのです。そういうことを鳩山さんは意識してもらいたいと思うのでありますが、ほかの日ソ交渉の問題に対しても外国ではどういうふうに見ておりますか、日本の国内でわれわれが追及するだけでなく、外国の新聞はあげて電光さんの考え方鳩山さんの考え方は違うと言っているのです。これがほんとうに違わない、二人が話し合って、鳩山さんはそれに中共との国交調整を急いでやろうという考え方を出し、重光さんはそれの反対のやり方を打ち出してそうして、かけ引きをやっているのならば別でありますが、こういうまちまちの外交でいったならば日本の信用がなくなると思うのです。あなたはそうでないと育っているが、われわれも納得しないし、ロンドン・タイムスを初めとし外国のあらゆる新聞がこの二人の外交方針というものは違う路線を走っているような印象を持っておるのであります。これに対して鳩山さんの答弁を願います。
  291. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 双方に誤解のないように努めたいと思っております。
  292. 戸叶武

    戸叶武君 ロンドン・タイムスは、昨年の秋には、日本側の要求は早期解決を希望して、色丹、歯舞諸島の返還にとどまった、しかるに保守合同が日本政府を強化するに及んで、千島列島の国後、択捉の返還が含まれるに至ったというふうに報じております。こういうふうに日本が要求しているが、これに対してソ連側ではどういう回答をしているか、これを私たちは知りたいのです。それからもう一つは、われわれは原則的においては日本領土権は南樺太、千島にもあると思うのであります。しかしこの南樺太、千島の返還というものは沖繩、小笠原の返還と同時でなければほとんど困難であるということはだれでも認めることなのでありますが、一体日ソ交渉デッドロック領土問題だと言われておりますが、どういうところにのし上っているのか、それを鳩山総理大臣からお示し願いたいと思います。
  293. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいまそれについてはお話ができません。
  294. 戸叶武

    戸叶武君 これはむずかしい段階だから、あるいはお話ができないのも無理がないと思うのですが、少くとも、もっと外交国民外交の方に移して、吉田さんの非常に間違っていた点は、そういう国民の理解を求めないで、何か外交というものは外務省で育った外交技術の専門屋でなければ触れちゃいけないもののようにしたところに非常な間違いがあったのだと思うのでありますが、そういうところは改めてもらいたい。  それから今国民の声としてもはや中共承認の叫びがあげられる段階に来たのです。それから外務省の白書においても、中共というものを現実の存在として認めざるを得ないという事態の認識に到達したことを告白しているのでありますが、この中共承認の前提として、この台湾問題に対してどういうふうにこれに政府が対処しようとしているか、その点を総理大臣に承わりたいと思います。
  295. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それらの点につきましては外務大臣から他日答弁をすることといたします。
  296. 戸叶武

    戸叶武君 私は時間が参りましたからまた別な機会に質問を行いたいと思いますが、とにかく憲法改正をやるためにはどうしても多数をとらなければならないという、この考え方から、マキアベリズム的な権謀術策から憲法改正をやろうとし、それによって、再軍備の通路を開こうというようなやり方というものは、せっかく日本の政党政治が、責任内閣制がこれから伸びようとするときに、その当一例から非常にゆがめられていくことになると思うので、特に憲法改正の問題に対しては、憲法に対してわれわれはいろいろな点で考えなければならない点があるとしても、一番基本的な、さっき言ったあの鳩山さんの三原則は守らなければならぬ、あの原則をわれわれはゆがめられるであろうということが一番の心配なんです。その点をよく鳩山さんも憲法全体を読んで、明治憲法によって鍛えられている人を教育するのは非常に困難で、事実上日本で憲法を作り上げなければならないときに、明治憲法の解釈学だけに終始したところの憲法学者においては、新しい憲法を作り上げる能力を示すことができなかったのです。今、私がその憲法改正の調査会においても、あなたは学識経験者というものを高く評価するが、社会において一番大切なのは良識です。人民を代表するところの国会においてこういう問題は十分論議さるべきであって、学者、専門家と言われる人たちはその諮問に応ずべきなのであって、あなたは国会の権威ということをほんとうにまだのみ込んでおらないのですが、この点は今後においてもりっぱな総理大臣として歴史の中に鳩山さんはいい人だったというだけの印象でなく、見識が政治家の生命だと思いますから、やはり見識をりっぱに示してもらいたい。こういうふうに思っております。これについて答弁を一つお願いします。
  297. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) よく注意をいたします。
  298. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十九分散会