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1956-02-16 第24回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月十六日(木曜日)    午前十時三十四分開会     —————————————    委員の異動 本日委員木村守江君、堀木鎌三君及び 近藤信一君辞任につき、その補欠とし て田中啓一君、川村松助君及び森崎隆 君を議長において指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     西郷吉之助君    理事           池田宇右衞門君            堀  末治君            三浦 義男君            安井  謙君            秋山 長造君            館  哲二君            豊田 雅孝君    委員            秋山俊一郎君            石坂 豊一君            井上 清一君            伊能 芳雄君            川村 松助君            木内 四郎君            佐野  廣君            高橋進太郎君            西岡 ハル君            野村吉三郎君            吉田 萬次君            亀田 得治君            相馬 助治君            戸叶  武君            羽生 三七君            田村 文吉君            中山 福藏君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    外 務 大 臣 重光  葵君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 清瀬 一郎君    厚 生 大 臣 小林 英三君    通商産業大臣  石橋 湛山君    労 働 大 臣 倉石 忠雄君    建 設 大 臣 馬場 元治君    国 務 大 臣 太田 正孝君    国 務 大 臣 高碕達之助君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    公正取引委員会    委員長     横山 正俊君    自治庁行政部長 小林與三次君    自治庁税務部長 奧野 誠亮君    経済企画庁計画    部長      大来佐武郎君    外務事務官    (公使)    木村四郎七君    外務省経済局長 湯川 盛夫君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省銀行局長 東條 猛猪君    文化財保護委員    会委員長    高橋誠一郎君    文化財保護委員    会事務局長   岡田 孝平君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省医務局長 曾田 長宗君    厚生省保険局長 高田 正巳君    農林政務次官  大石 武一君    水産庁次長   岡井 正男君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君    通商産業省企業    局長      徳永 久次君    通商産業省重工    業局長     鈴木 義雄君    中小企業庁長官 佐久  洋君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十年度一般会計予算補正(第  1号)(内閣送付予備審査) ○昭和三十年度特別会計予算補正(特  第4号)(内閣送付予備審査) ○昭和三十年度政府関係機関予算補正  (機第1号)(内閣送付予備審  査)     —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それではただいまより予算委員会を開会いたします。  昨日に引き続きまして三十年度予算補正案につきまして、一般質疑を続行いたします。
  3. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 まず最初に大企業支払い遅延問題につきまして、公取委員長通産大臣お尋ねをいたしたいと思います。  まず公取横山委員長お尋ねをいたしますが、最近の未払いないし支払い遅延状況と、これに対して公取がおとりになりました措置について伺いたいと思うのであります。
  4. 横山正俊

    政府委員横山正俊君) 公正取引委員会におきましては、昭和二十八年以来、この下請代金支払い遅延の問題につきましていろいろ調査もいたし、またその改善策を講じて参ったわけでございまして、二十八年、二十九年と調査範囲を次第に広めて参りまして、最近におきましてはさらにその範囲を広めまして、親企業百四十九社につきまして、内容を申し上げますと、上場会社の中で造船十一社、車両十社、自動車八社、オート三輪およびオートバイ七社、自転車四社、電気機械十四社、電線五社、通信機六社、計器二社、産業機械——機械です——二十五社、紡績機械十一社、電動機三社、光学および精密機械六社、兵器七社、ミシン六社、時計四社、そのほかに新たに建設五社、それから紡織十五社、うち紡績を九社含めておりますが、二業種を加えまして結局十九業種、百四十九社を調査対象といたしまして、昭和二十九年の九月から三十年の春にかけまして調査をいたしまして、その調査の結果、この百四十九社のうちの支払い能力があるようにみえながら支払いが遅延しておると認められまするもの、それは当委員会が二十九年の三月、下請代金支払い遅延に関する認定基準というのを一応発表いたしましたが、その基準に照らしまして、一応基準に抵触いたしておると認められまする四十四社、その内容を申しますと、造船が四社、車両が五社、自動車が四社、オート三輪及びオートバイ三社、自転車一社、電気機械五社、電線二社、通信機三社、計器一社、産業機械六社、紡績機械四社、電動機二社、光学及び精密機二社、兵器一社、時計一社、合計四十四社につきましては、さらに支払い状況及び支払い能力につきまして精密な調査をいたしたのでございます。もちろんこれは公正取引委員会だけで、これだけの多くの会社の親企業側並びにその下にございます数千に及びまする下請企業調査いたすことはできませんので、主といたしまして下請関係の方は中小企業庁の御協力を得まして調査をした次第でございます。この支払い遅延のいろいろな原因があるわけでございますが、最近の事情といたしますると、いろいろ親企業側販売が非常に不振になっておるとみられる業界がかなりありますのと、それから親企業側にやはり代金の回収がうまくいかないというような事情が相当に見られる業界もございましたし、もう一つ見逃すことのできないのは下請のいわゆる系列化が相当進んで参りました結果、親企業系列に入り得ない下請というものが非常にみじめな地位に落ちまして、そういう下請業者が仕事を得んがためにかなり無理をしておる。また親の方からいいますと、そういうものに対しては、かなりその地位を利用いたしまして、支払い遅延をしておるというようなこともございまするし、あるいは鉄鋼会社等におきまして支払い条件を非常に厳格にいたしました結果、鉄鋼を材料としておりまする下請関係に、いろいろなしわ寄せと申しますか、それが及んでいくというような状態も見られたわけでございます。そこで先ほど申しました四十四社の中にさらに精密な調査をいたしました結果、三十社につきましていろいろ会社事情を調べまして、担当の人に来てもらいまして、いろいろ支払い改善につきまして相談をいたしましたのでございます。その中でさらに十五社、これは相当支払い改善の余地のありまするものが十五社ございましたので、これに対しましては、さらに具体的な支払い改善計画書を提出いたさせまして現在はその支払い計画書の実施の状況をいろいろ監視をいたしておるという状況でございます。この支払い計画の具体的なことは一々ここで御説明申し上げませんが、たとえば一例といたしまして申し上げますと、三十年の九月の末におきましては、下請業者に対する買掛残代金が二千万円ありました某会社におきましては、昨年末までにはそれを一千万円というふうに非常に少くいたしておるというようなことがございまするし、あるいはこういう支払いのことだけでなく、親企業本社に設置してありまする外注委員会というような組織を強化いたしますることによって、従来とかく公平を欠いておりました下請業者に対する支払いを公平にする、そしてまた下請業者の苦情や相談本社でもって引き受けて処理するというような具体策を誠意をもって講じておられる親企業もあるわけでございまして、これは時期が少し古うございまするが、いずれ今年、また第四次と申しまするか、調査を開始いたしまして、この支払い遅延状況につきまして非常に監視をしておるという態度をとって参りたいと考えております。一応それだけでございます。
  5. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 いろいろ御努力にはなっておるようでありまするけれども、だいぶん御遠慮にもなっておるんではないかというふうに、今の御報告を承わっても感ずるのでありますが、昨年の夏、経団連石川会長あて公正取引協会会長工藤昭四郎氏の名義をもちまして、下請代金支払い促進に関する要望書というのを送付しておられるのであります。中を見ますと、下請業者との取引は原則として契約書に基いて行うこと、契約書によらず注文書による場合といえども、少くとも次の諸点は明示せらるべきこと、第一が検収期間、第二が滞貨、第三が代金支払い期日、第四が代金支払い方法というようなことを要望書として送付してあるのでありますが、こういうことが公正取引委員会自身から御送付になって要望せられて、ちっとも差しつかえないことではないか、これを特に公正取引委員会外郭団体であります公正取引協会会長の名前をもって経団連あてに出さざるを得ぬという点が、われわれから見ますと、非常に遠慮せられておるのではないか、やりにくい点もおありになることをわれわれは非常に感じ、また遺憾とするのでありますけれども、今の一つ事例を見ましても、非常に遠慮せられて外郭団体を使って、こういうことまでおやりになっておるという点につきまして疑義を持つわけなのでありますが、この点についていかにお考えになっておられますか。
  6. 横山正俊

    政府委員横山正俊君) 公正取引協会でございましたか、それからただいまのような要望書が出ましたことは、私も承知いたしておりまするが、これは何も私ども遠慮をいたしまして、特にこういう団体にお願いをしまして、そういうものを出していただいたのではございません。ただ先ほどもちょっと申しましたように、豊田委員から強く当時御要望もありまして、二十九年の三月に御承知認定基準というものを作りまして、この認定基準周知徹底方につきましては、特に商工会議所等の非常な御尽力も得たわけでございます。なお、ただいまの契約文書化の問題につきましては、われわれといたしましても、その後まだいろいろ研究をいたしておりまして、理想論といたしましては、おっしゃる通りそういうしっかりした証書ができますことは最も望ましいかとは思いますが、その点は役所といたしましてはなお研究の段階でございまして、公正取引協会におきましては、おそらくいろいろの関係の方がお集まりになりまして、研究せられた結果を経団連にお伝えになったことと思いますが、私どももその点はなお研究いたしておるわけでございます。実は今国会に、下請代金支払い遅延防止につきまして、公正取引委員会としまして一つの案を今用意いたしておりまして、これをあるいは今国会にお出しできることになろうかと思いますが、その法律の中にも非常に不十分ではございますが、文書化の問題も取り上げておりますので、現在各方面とも折衝もいたしておりますけれども、なおまだ法制局審議も済まない状況でございますが、これは取り急ぎこの国会にお出しいたしまして御審議を仰ぎたいと考えております。
  7. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 先ほど御報告になりました調査業種百四十九社、これを見ましても、ほとんど全部が機械器具業種であります。もっとも前に御苦労になりました認定基準、これの適用業種というものが兵器下請あるいは機械器具ということになっておる関係もあろうかと思いますが、その後の情勢から見ますると、未払いあるいは支払い遅延状態というものは、単に機械器具関係だけではありませず、繊維関係あるいは土木建築関係、あるいは商社と納入する業者との関係、これらを律するような行き方をいたしませんと、せっかくあの認定基準ができておりましても、特定機械器具だけに適用せられておるというために、全般にこの産業界にそれが普遍していかないという傾向があると思うのであります。ただいま伺いますと、公取としても一つ法案をすでに用意しておられるということでありますが、その法案の中には、適用業種には従来のこの機械器具関係だけでなく、繊維土木建築商社関係にまで及んでいく必要があるというふうに考えるのでありますが、この点につきまして御見解はいかがでありましょう。
  8. 横山正俊

    政府委員横山正俊君) ただいま申し上げました法案の要綱におきましては、親企業範囲をある程度広げておりまして、お示しの建設業等も入るようになっております。まだ成案ではございませんので変るかと存じますが、大体今できております案をちょっと読みますると、「親企業とは、自己の製造加工組立修理または工事に係る物または施設の全部若しくは一部またはその原材料の製造加工組立修理または工事下請企業者に行わせる事業者を言う。」、こういうことになっておりまして、今まで公正取引委員会で主として扱っておりましたものよりはよほど広めておるわけでございます。ただ、ただいまのお言葉の中にございました商社下請に出しましたものは、まだこの法案では盛られておりませんですが、大体その他の点はこの法案の中に入ることになろうかと思います。
  9. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 前の認定基準を適用せられておりました当時に比べますと、だいぶ範囲が広がるようでありまして、その点はけっこうだと思うのでありますが、繊維関係はその中に入るのでありましょうか。まあ製造加工関係ということでありますが、当然入るのだろうと思いますが、同時に工事関係も入るということでありますから、土建もこれによって対象になり得ると思うのでありまして、その面においてはけっこうだと思うのでありますが、商社の抜けておりますことはどういう事情によるのでございましょうか。最初の案には商社も入れるようになっておったかのように仄聞するのでありますけれども、もしも商社を除かれたということでありますと、どういう事情によって除かれるようになったのか、それを伺いたい。
  10. 横山正俊

    政府委員横山正俊君) お答えいたします。最初から実はこの商社は案に入っておりませんのでございましたが、これは別に特に商社を除いたということではございませんので、これは私どもの方の調査が不行き届きの点があろうかと思いますが、商社関係におきましてはなはだしく不当な事例がございますれば、その点も調べまして、あるいはこの法案もまだきまっておるわけでもございませんので、それらの点を今後もう少し検討いたしていきたいと思います。
  11. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 私ども調査いたしたところによりますと、工業関係もさることでありますけれども商社納入業者との間における未払い支払い遅延が相当顕著なものが多いのであります。従って、まだ法案も固まっておらないということでありますから、幸いこの際商社の問題について十分御検討になりまして、そうしてこれをぜひ取り入れられるようにせられたいと思うのであります。で、この未払い支払い遅延の問題につきましては、公坂の方ではただいま承わりますと、相当積極的な態度をとっておられるようでありまして、従来の機械器具関係のみならず、工業一般に及び、また土建関係にも及び、さらに商社関係にも及ぼうということでありまして、私どもこの実情を調査いたしましたるところから見ますると、この行き方が当然だろうというふうに考えるのでありますが、通産大臣としては、この問題についておそらく御同感だと思いますけれども、御見解を伺っておきたいのであります。
  12. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) 通商産業省においてもいろいろ研究いたしまして、今の公取委員長が言われました案、そのほかの案も研究したのです。けれども、今のところではわれわれの結論は、公取が作られた原案が最も適当であろう、こう考えておりますので、これに一つ協力していきたい、こう考えております。
  13. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 ただいまの御答弁で満足をいたします。どうか通産省と公取とにおかれまして、今後一そう両者協力せられまして、この取締りの制度がほんとうに確立せられ、またその実効の上りまするように、この上とも御尽力を願いたいと存ずるのであります。  次に、百貨店問題につきまして通産大臣に伺いたいと思うのでありますが、百貨店法案もいよいよ提案せられるということになって参ったのでありますが、これに関連いたしまして、百貨店の新増築、あるいは売り場面積を拡張するという計画が急に増加をしてきておるように聞くのでありまして、へたをすると、百貨店法がかえって百貨店保護法になりそうな傾向もあるように見るのであります。従ってこれが至急提案せられまして、また至急に施行になる必要があるのだろうと考えるのでありますが、いつころ御提案になる見込みでありますか。その点を伺いたいと思います。
  14. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) 百貨店法法律案もなかなかいろいろのむずかしい点がありまして、検討にひまがかかりましたが、もうほとんど固まって参りましたから、ごく近いうちに一つ提案して御審議願いたい、こう考えております。幾日ということをちょっと申し上げかねますが、もうそう遠くない間にできると思います。
  15. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 至急に御提案になることを要望いたしますと同時に、工事中のものはある程度認めるというふうになりますか、あるいは押えるということにもなろうと思うのでありますが、どの程度工事中のものを押えるかということは、ただいま申しましたように、百貨店法変じて百貨店保護法になる危険があるのでありまするので、この際、特に伺っておきたいと思うのでありますが、これは厳に解釈をし、また抑制していくことが法の精神だろうと思うのでありますが、どの程度工事中のものは抑えるという御研究になっておるのでありましょうか、これを伺いたいと思います。
  16. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) これは場所にもよると思いますから、どの程度という割合をまだ決定はいたしておりません、どうせこれは審議会にかけてやることでありますから。が、とにかくこの商業者に対する関係調整でありますから、その目的と、それからこれまた工事の相当もうできかかっておるものを頭を抑えてしまうということも、これはいささか常識に欠けるところがありましょうから、それらを見合って、ケース・バイ・ケースで適当に判断をいたしていきたい、かように考えるのであります。
  17. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 百貨店法の制定せられることを急に見合いにいたしまして、工事に取りかかったというようなものは、これはどうしても押えなければいかんと思うのでありまして、そういう線で御検討を願いたいと思うのであります。ただいまの御答弁でも大体そういうふうに解釈し得ると思いますので、その点についてはその程度にいたしますが、と同時に既存建物賃貸借契約でやりますとか、あるいは売買契約によって百貨店に変えていこうというようなこともあろうと思うのでありますが、こういうものもまた、ただ急いで契約をやっているというような程度のものは、もちろん許可すべきものではなかろうと思いますがその点につきましての御見解をお聞きいたしておきたいと思うのであります。
  18. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) 具体的にはその場合その場合を見ないと、ちょっと一括してカテゴリカルにはきめられないと思いますが、御趣旨の通りのつもりでやりたいと思います。
  19. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 次には百貨店問題に関連いたしまして、月賦販売の問題についての御見解を伺いたいと思うのでありますが、御承知のように百貨店というものは、商品を広く展示いたしまして、そうして不特定多数の者に現金取引販売するというのが、百貨店経営本質だと思うのであります。従ってこれが不特定多数の者に月賦販売、あるいはそれに準ずるような行き方でやるということは、これは百貨店本質的な経営ではないと思うのでありまして、そういう考え方からいたしますと、そういう行き方をしておるのは、百貨店経営としては行き過ぎだということになると思うのであります。それと同時に、一般商業者月賦販売でいくことによって辛うじて百貨店と対抗していこう、こういうふうになっておることは御承知通りであります。従って今後百貨店法が制定せられますと、月賦販売あるいはそれに準ずる行き方というものを抑制し得るかどうかということが、私は一つのポイントだと思うのであります。この点につきましてどういう御見解を持っておられるのでありましょうか。法案の中には勧告制度があるようでありますが、この勧告によってその実を上げていくということが当然かと思いますが、この点を一つ伺っておきたいと思うのであります。
  20. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) 小さな商業者百貨店との関係調整にいろいろむずかしい問題がありますが、今の、ことに月賦販売のことは、どうも月賦販売をやってはいかんということまでに果していくのが適当かどうか。これは外国の例を見ましても、ずいぶんアメリカあたり百貨店月賦販売は非常に多いようであります。これは外国はどうでもよろしいのでありますが、国内でも一般小売商月賦販売はよろしいが、百貨店だけは月賦販売はしちゃいけない、こういうふうにやれるもあかどうか、だいぶ議論があると思いますが、いずれ法案が出ましてから御審議願いたいと思うのであります。今のところでは月賦販売は頭から禁止するという条項は入れておらないつもりであります。
  21. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 これは議論になるのでありますけれども百貨店百貨店本来の経営に徹していく、そうして一般独立小売商はまた独立小売商としての特徴を発揮していく、こういう線で両者の調整をはかっていく以外に、ちょっと道がないのではないかと思うのでありますが、そういう前提に立ちますと、百貨店特定の常時の取引のある人に掛け売りをやるというようなことは、これはやむを得んでありましょうけれども、不特定多数のサラリーマンにチケット販売をやっていく、あるいはそれに準ずるやり方をやっていくということは、私はやはり百貨店経営本質を越えてきているものと思うのであります。売場面積制限、あるいは新設、拡張制限をやるということ自身も、これは議論をすれば問題があろうと思いますが、あまりに行き過ぎになるということについての、これは抑制ということが、社会公共の立場から見て必要だという考え方からきておると思うのでありまして、そういう考え方からいきますと、月賦販売百貨店がやる、これはこまる、で、露店商人月賦販売を始めるような点が一面あるわけであります。そういう点においてこの御研究を今後願いたいと考えるのであります。あまり議論になりまするとなんでありますから、この程度でこの問題はなにをいたしますが、御研究を切に要望をいたしておきます。  次に、経済企画庁長官に伺いたいのでありますが、先に経済六カ年計画を御説明になりました際に、労働可能人口は四百三十二万増加する。そのうち約二百万は商業、あるいはサービス部門に収容していくのほかはないというふうに弁明をせられたのであります。そのときに私はただいまの、この商業サービス部門の現状を見ますると、収容するどころではなくて、ほかへこの人口を移していかなければならぬような状態であり、また政府もむしろそういう政策をやっておられるような傾向すらある。従ってどうしてもこの経済六カ年計画によりまして、完全雇用をやる、しかもその大きな受け入れ先商業部門なり、サービス部門になるということになりますると、それができるような対策を政府みずからお立てにならぬといかんのではないだろうかというふうに当時考えたのでありますし、また申したのでありますが、その後この経済六カ年計画、今度の経済五カ年計画完全雇用の見地からする中小企業対策、特にこの中小商業の対策というものには、画期的な対策なくんば、とうていお考えになっておるところが実行できないと思うのでありまして、この点について御見解を伺いたいと思うのであります。
  22. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これはこの御質問の御趣旨は、私ども同様の心配をしておるのでありますが、しかし第二次産業の方には約一七%八という就業率をもって増加していきたいと思っておりますが、一方第三次産業に二〇%、これは多いではないか、こういうことでありますが、このサービス業というものになりますというと、これはひとり工業、あるいは商業だけの関係でなくて、社会保障等がふえて参りますので、お医者さんがふえるとか、そういうふうなこともありますから、それの方面にも相当増加いたします。しかしこのままで置いておきますというと、どうしても今の豊田さんの御心配のごとく、小さな工業者、あるいは小さな商業者の方に流れていくことが非常に多いだろうと思います。これに対しては、これは特にやはり社会保障関係的と言いましょうか、あるいは政策的に言っても、あるいは金融面なり、あるいは政策面においても、相当方策を講じなきゃならんかと思いまして、ただいま考えておりますことは、この中小企業者、特に中小商業者の協同組合を強化さすということを一つ考えておりますことと、それに対して金融の道をできるだけ講じようではないかということのためもありまして、今回三十一年度の予算におきましても、三十年度と比較いたしまして、中小企業金融公庫だとか、あるいは国民金融公庫、それから商工中央金庫等の方に、昨年よりも約百十二億、予算をふやしておるようなわけでありますので、一方この中小工業者の方でございますが、工業者の方も、これはどうしてもやはり大工業の方が近代化されると、そっちへ人間が流れていくものです。ところがこれを近代化する力が各自にないわけでありますから、これがためには、この中小工業の設備を近代化するということのために、わずかでありますけれども、約四億円ばかりの予算をもって、政府が補助しよう、こういうふうな方針できておるわけであります。
  23. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 ただいまの問題につきまして特に経済企画庁長官お尋ねをいたしましたのは、完全雇用を見込んでいくためには、画期的な一つの対策を講ぜなきゃいかぬということを申したのでありますが、具体的な問題といたしまして、今非常に商業部門が脅威を受け、困っておりまする問題は、購買会、それから大がかりな生活協同組合、それから共済組合の大規模なもの、これの非常な進出によりまして、先ほど申しまするように、かえって商業部門からは失業者が出てきそうな状態にまでなりつつあるのであります。このまま放っておきますると、いよいよもってこの傾向が激成せられると思うのであります。まあいろいろ伺いますると、少いながらも漸次対策をお立てになっておられるようでありますが、一つの緊急な問題といたしまして、購買会等に対しまする一つの対策をお立てになりまして、そうして商業部門に失業者が出ない、むしろそこへはさらに税制、金融筆の考慮を加えるならば、漸次労働可能人口を収容し縛るという、はっきりした対策を、人口問題の上からもお立てにならないといかぬのじゃないかというふうに思うのであります。この購買会に対しまする一つの具体的な措置といたしましては、これは結局大きくいいますると、生産するものは生産で、また商業者商業で、サラリーマンなり月給取りはその面で安住し得るような行き方を確立するということでありまするけれども、差しあたり具体的な購買会対策といたしましては、第一には市価販売を購買会にやはり厳守させなきゃいかぬと思うのであります。購買会は化粧品あるいは薬品等でありますと二割五分から三割引で売る、これが一般の消費者にも商品が購買会あるいは生活協同組合へ行けば安いのだという観念を与えることによりまして、非常に問題を起してくるのであります。従って市価販売を購買会等にも厳守させる行き方を確立する。そうして利益をどうしても購買会あるいは生活協同組合はよけいに残すことにはなるでありましょうから、その余剰金は割り戻しで組合員に戻す、しかし市価販売は厳守させるという行き方をまず第一にお考えになりますることと、第二には都会地においての購買会等の員外販売を抑制せられる必要があると思うのであります。これはコーポラティヴの思想から考えまして、組合員だけにあまりに福利厚生がよくなる、それが第三者たるアウトサイダーに感情的に悪影響を及ぼすという点等から、員外販売ということも認めるようになってきておると思うのでありますが、これは山間の鉱山でありまするとか、あるいは非常にいなかへ工場が誘致せられた場合でありますとか、さような場合にはもちろんそういうことが認められてもいいと思うのでありますが、都会地において、さなきだに配給業者がしのぎを削っているような、むしろ便利すぎるようなところにおいて員外販売をさせるということは、これはコーポラティーヴの一つの行きすぎであろうと思うのであります。従って都会地においての員外販売は禁止せられるということが第二の道としては私は必要なんじゃないかと思われる。もう一つ第三の道といたしましては、購買会あるいは大がかりの生活協同組合に対しまして、第三者の援助が相当大きなものになっておるということであります。これは大がかりな生活協同組合に対しまする大企業の援助等を見まするとこれは施設費であるとかあるいは事務費、運転資金の便宜をはかるとかいうようなことで、調査したところによりますと、一つの購買会に当って平均四百万円くらいの外部からの援助があるのであります。しかもその税金は免除せられるというような行き方でありまするから、一般独立小売商が参ってくるのは当然であります。従って自己資金によってやることは、これはもちろんフェアーな競争でありますからいいのでありますが、第三者の援助というものを抑制しなけりゃいかん、こういう三つの点、要するに市価販売を厳守する、そして余剰金があれば割り戻していく、第二には都会地における員外販売は抑制していく、第三には第三者援助を抑制していく、こういう三つが少くとも差しあたり打たれなければならぬ手ではないかというふうに考えるのであります。これを放任しておきますと、先ほど申しましたような大きな問題になってきそうなものでありますから、完全雇用を特に重視しておられまする経済企画庁の経済五カ年計画に関連いたしまして、商業部門に対する対策として、これをお取り上げになって然るべきじゃないか、この点についての御見解を伺いたいと思うのであります。
  24. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく、中小工業といいますよりも、中小商業の方になりますというと、一方においては百貨店の圧迫を受け、一方においては購買会等の圧迫を受け、両方の圧迫を受けて非常な窮況に陥っているということは事実でありまして、これに対する対策等はただいま御指摘の三つの対策も、これは一案だと私どもは存じておりますが、そういう点は十分考慮いたしまして、今後政策を講じていきたいと思っております。
  25. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 ただいま経済企画庁長官としてはこれをお取り上げになるようでありまするから、これに関連いたしまして、通産大臣として如何にお考えになりまするか、いずれこれは経済企画庁で御企画になるでありましょうけれども、実際面は通産省の問題になってくると思うのでありまして、この際通産大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  26. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) 生活協同組合とか、それから一般会社その他の購買会については今研究いたしております。いろいろむずかしい問題がありまして、すぐに百貨店のように簡単に片づけるわけにはいかない問題のようであります。  それから今お話しのように市価販売で、それから利益があれば、あとで割り戻すというのは建前ですけれども、そうするとなかなか購買会が成り立たないというようなことから、おのずから割引値段で売るようになったのだろうと思います。一つはやはりもう少し景気がよくて物が売れれば問題ないのですけれども、物が売れ出すと小売商の方が強くなって購買会の方がかえって圧迫されることになるのじゃないかと思います。私自身も実は昔購買会をやったことがありますが、えらい失敗で差し押えを食ったりして弱ったことがあるので、なかなか購買会はそううまく成功するものじゃありません。今の特に大きな会社が大へん支援するとか——われわれの知っている限りでは鉄道の購買会だけがそれに成功しておる。これは運賃無視でもってどこからでも安いものを持ってくるというような特別の便宜があったために鉄道だけが成功したが、ほかの購買会は政府が進んで援助し、税金を援助したにもかかわらず、やりましたものは大がいみなえらい目にあった。しかも時世が変りまして、逆に小売の方が購買会等に圧迫されているとか、まあ、どうしてもやはりもう少し商売が繁盛するということが根本だろうと思いますが、しかもなお購買会の問題については研究いたしております。で、お話のように何らかの手を打たなければならぬと考えております。
  27. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 通産大臣、前に購買会をおやりなりまして御失敗になったというなんでありますが、当時と今とはもうすっかり事情が変ってきまして、御承知のごとく組織力というものが非常な力を出すようになってきております。大きな組織によってやる購買会なり生活協同組合、共済組合というようなものは、これは通産大臣がおやりになったころとまるで違ってきているのであります。これはもう一種の大企業に近い行き方ができるのでありますから、それで問題になるわけでありますので、どうかこの問題を一つ真剣に御研究を願いたいと思いますが、特に経済企画庁の方では取り上げられるようでありますから、通産当局の方でブレーキをおかけにならぬように、むしろ共同推進をする意味で御検討を願いたいと思うのであります。  次の問題は、これは中共貿易の問題でありまして、通産大臣と外務大臣に伺いたいと思うのでありますけれども、外務大臣は見えぬようでありますから、その面だけ後刻に譲ることにいたしまして、通産大臣だけにお伺いをいたします。  中共貿易につきましては御承知のように絶えずココムの物質の緩和が一番の問題になってきておるのでありますが、最近の情勢はどういうふうになっておるのでありましょうか、また通産御当局としてはどういうふうな御努力をせられておるのでありましょうか、その点をまず伺いたいと思います。
  28. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) 実はココムの問題はあまり言いたくないのです。というのは、非常な努力はしております。おりますが、何かやっぱり新聞欄に出るとかえって逆効果が多いものですから、なるべく一つ話がまとまるまでは何にも言わぬというのが有利のように考えておりますが、努力は非常にいたしております。で、幾らか前途に光明もあるのじゃないかという程度のことは考えております。
  29. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 それでさしあたり中共で見本市を日本がやらなければならぬようでありますが、この見本市にココム物資が出るか出ないかによりまして見本市の盛観であるかどうかということは非常に違ってくると思うのであります。ココムの物資を見本市に関する限りは出すことをお認めになるのかどうか、同時に、これに対しまして、やる以上は相当なことをやらないと国威にも関すると思うが、補助金につきましてその後見当がどんなふうにおつきになっておるのでありましょうか、この点を伺いたいと思います。
  30. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) お尋ねの問題はかねて私も心配をいたしておりまして、やる限りはりっぱな見本市をやりたいのでありますが、やはりココム関係で持ち帰るという条件がつきましても、果してうまくいくかどうかということで実は心配しておりまして、外務省とも二つ話し合って、至急に何とか片づけなければならぬと、こう考えております。補助金の問題も同様であります。どうも今の形では大っぴらに政府の予算で補助金を出すということもいかがかと考えております。そうかといってほかにどういう工面をするという道も大してないものですし、要求されている金額は相当大きいものですから、実は苦心をしておりますが、それらもなお一つ十分外交関係とともに研究いたしまして、できるだけ早く何とか腹をきめたいと、かように考えております。
  31. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 もう一つの問題はやはり中共貿易に関連いたしまして、従来通商協定は御承知のように特殊の事情から日中貿易の促進議員連盟と国際貿易促進協会とが当って参ったのでありますが、今後もこういう行き方でいかれるのか、その点について御方針を伺いたい。
  32. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) これはみんな民間団体でありますから、政府としてとやかく干渉するわけにいきませんが、しかし私の希望を申せば、輸出入組合一本でいきたい。この間当事者の方々が偶然私のところにお集まりになったときに、その希望を申し上げておきました。大体村田君にしても議員連盟の方の諸君にしても異論がないようでありますから、私としてはぜひ一つ今後は輸出入組合一本でいくように指導していきたい、こう考えております。
  33. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 ただいまの御答弁に関連いたしまして、国際貿易促進協会もまあ中共との関係から見ますると、感情の面でありまするとか、その他の面におきまして、これを利用する点が相当有利であるのじゃないかというような面もあるわけでありまして、この面につきまして新しくできた輸出入組合を大いに利用することもちろんけっこうでありまするけれども、国際貿易促進協会自身も従来の知識経験を活用するということが同時に必要なんじゃないかというふうに考えるのでありますが、この点についての御見解はいかがでありますか。
  34. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) むろんそういうことについては何ら異論ありませんし、今までの経験者にその経験を十分生かしていただくようにしていただかなきやならぬと考えております。ただ協定とか何とかという実務については、なるべく輸出入組合が中心になっていくようにしてほしいとだけ考えておるのであります。
  35. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 次の問題といたしましては、農業関係と中小企業関係の予算のアンバランスがあまりにひどいものでありますから、この点について通産大臣と大蔵大臣に伺いたいのであります。  これは従来からどの予算を見て参りましても、農業関係の予算というものは相当以上の額になっておるのでありますが、農家の数は六百万、中小企業者の数は戸数として約三百万、大体そういうふうになっておるのでありますが、数の多い点においてはおそらく日本の産業界における両巨頭だろうと思うのであります。ところが予算関係自身は非常に月とスッポンになってきておる。農村関係につきましては、食糧増産対策費その他重要経費としてもちゃんと載っておるのでありますが、中小企業の方になりますると、中小企業の振興々々と非常に最近は言われまするけれども、実際予算の面は、重要経費欄には全然姿も見せておらぬ。一体どこに入っておるのかわからぬというような状態であります。しかも税金はどんどん取られて、一番よけいに取られておるというような状態でありまして、これでは業界がおさまらなくなるのは私は当然だと思うのであります。このきわめて具体的な例を一つあげるわけでありますが、農業協同組合の中央会に対する補助金、それから中小企業の協同組合の中央会に対する補助金、この両方を比べてみまするというと、農業関係の中央会の補助金は特別に予算書に掲記されておる。そうしてその額も六千万になっておるというわけであります。ところが中小企業関係の中央会の補止金というものは別に特掲はせられておらぬ。どこにあるのやら調べて見ても表には出とらぬ。その額も非常に農業協同組合の中央会に比べるというと、はなはだしいそこに差等のありそうなものになりそうだというのでありますが、ともに中央会でありまして、そういう面から見ますると、これは農業関係であろうと中小企業関係であろうと、そこに差別をするということは、私は非常に問題じゃないかというふうに考えるのであります。従ってこの面についてはこの両者のバランスをとるようにすることが必要じゃないか、これはただいま申しまするように、農業あるいは中小企業、ともにその数は多い。その重要性を最近ともに相並んで言われておるが、その扱い方はかようなアンバランスがある。これについてどういうふうに通産大臣としてはお考えでありましょうか。またこれについて大蔵大臣としてもいかにお考えでありましょうか。その点を伺いたいのであります。
  36. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) 戦前から戦後にかけまして、第一に悩んだのが食糧問題であるというような関係から、どうしても農業に重点が今まで置かれたということは、これは歴史的にやむを街ないことだと思います。中小企業につきましても、あるいはそのほかの一般の商工業につきましても、最近は政府もできるだけ一つ予算も増額していくという方針で、大蔵省も承認されて、まあ十分とは申せませんけれども、昨年以来逐次予算がふえていることは御承知通りであります。三十一年度においてもなるほど中央会の補助金というものは特掲されておりませんが、協同組合の施設の改善その他を含めて四億七千万円ほどの予算が組まれておりまして、その中でそれをどういうふうに分配するかということは、今検討をいたしております。中央会等の仕事の様子を見まして、しかるべく補助金等も出したい、こう考えておる次第であります。
  37. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。この予算の上におきましては、私といたしましては、中小企業についても農業についてもそれぞれできるだけの措置をとったわけなんでして、金額等において差異があるから、あるいは農業を重んずるとかどうというような、そういうような考えは毛頭ありません。これはやはり農業、中小企業それぞれの状態を異にするところもあるのでありまして、単に予算面の金額の上から判断されるのはよくないかと思うのであります。特に中小企業につきましては、金融面において三十一年度においては特に深い配慮を加えておりますことは、先ほど経審長官から答弁があった通りであります。なお、しかし、今後におきまして、中小企業に対するいろいろの対策が必要となり、かつ重要になりますことも十分考えられまして、一そう努力をはかっていきたいと思っております。
  38. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 ただいま通産大臣は、今後バランスをとるべく御研究になるということでありまするから、それで満足をいたしまするが、大蔵大臣の御答弁によりますると、金額だけで判断ができぬというふうなんでありまするが、これは産業の実態等に触れる問題になりますると、あるいはそういう考え方もあり得るかと思うのでありまするけれども、ともに単に中央会という一つの指導団体になりますると、そこにあまりに大きな開きあるいは差別待遇が出るということは、非常に農林関係と商工関係の予算のアンバランスを全くそこに露呈をしておるということになるわけでありまして、これは今後農業対策あるいは商工業対策の上から見まして非常にやっぱり問題になるのじゃないかというふうに考えるのであります。そういう点から、今後通産当局の方からいろいろ折衝があることと思うのでありますが、その際には両者のバランスのとれる程度のことは少くともお考えになるように御検討を願っておきたいと思うのであります。  次に大蔵大臣に伺いたいと思いまするのは、不動産銀行の問題でありますが、不動産銀行を特設しようという構想が一部にあるようでありますが、今日金融機関の種類を見ますると、その種類は少いのではなくて、むしろ多過ぎるくらいでありまして、少いのは決して金融機関の種類ではなくて、むしろ政府資金といいますか、低利資金といいますか、そういうところに問題があると考えるのであります。従って貧弱なものをいろいろ作り上げるということは、かえって後日問題を残し、これは中小企業金融公庫ができた後の模様を見ましても、実情からそういう点がはっきり出てきておるのであります。従って新規にいろいろと作るよりも、既存のものを補強していくことが必要ではないか、既存のものに対しまして低利資金なりを十分に投じまして、そうしてこれを活用していくということの方が必要なんではないか、または適切なんではないかと思うのでありますが、これにつきましての御見解を伺いたいと思うのであります。
  39. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私も大体同じ考え方をいたしております。
  40. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 それでは満足をいたしまするが、次の問題といたしまして、中小企業専門金融機関の間の合併の問題がまた一部に伝えられておるようであります。これにつきまして伺いたいと思うのでありますが、中小企業金融の中でも特に政府みずからが重点を置いていかんならぬものということになりますると、まず第一は中小企業の組織化を推進していくという上においての組合金融、これに力を入れていくということが一つだろうと思うのでありますが、第二には社会政策的な見地から零細金融にどうしても力を入れていかなけりゃいかぬというふうに考えるのであります。そういう面から見まして、組合金融の専門機関としての商工中金と中小企業金融公庫を合併したらというような考え方は、これは性格も非常に違うものでありまするがゆえに、そういう行き方というものは非常に問題じゃないか。これはもうはっきり組合金融機関として独自のものを一つは残し、これを育成強化していく、そうして一面におきまして零細企業に対する金融を社会政策的に今後は非常に力を入れていく必要があるのじゃないかというふうに考えられるのでありまして、そういう面から、むしろ国民金融公庫と中小企業金融公庫を合併いたしまして、そうして貸出の一件当りの金額などはできるだけ低くいたしまして、広く零細企業に対する金融を国家の力でやっていくということが必要なんじゃないか、また実情に即するのじゃないかというふうに考えられるのでありますが、この点につきましての御見解を伺いたいと思います。
  41. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 商工組合中央金庫と中小企業金融公庫と合併するというようなことは、私考えておりません。これはもう申すまでもなく、またお説のように、商工組合中央金庫は組合金融で、特にまた性格もほとんど民間と言ってよろしい。これを合同するということは考えておりません。なお、国民金融公庫と中小企業金融公庫を合併した方がよくはないかという御意見でありますが、これもまた私今そういう考えを持っておりません。それは国民金融公庫は御承知のように、零細な資金を供給する、特に生業資金、生活といいますか、生業資金を供給するところであります。一方の中小企業金融公庫の方は、事業体として相当な基盤を持っておる中小企業に対しまして長期の資金を供給する機関であります。これは私、日本の現在の段階では、そういうふうなごく零細の資金を供給する機関と、そういう事業体に対するしかも長期の資金を供給する機関とはやはり別々にして、それぞれその分野に専念させる必要がある。そうしないと、もしもこれを合同して一つの大きな金融機関にすれば、なるほど資金量もふえ、運営がいいかのように見えるが、下手をすると融資金額が大きくなったり、めんどうな零細な資金を供給するというような熱意を欠いて、所期の効果を発揮せないのじゃないか、かように考えております。
  42. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 零細金融の方でありますと、これはどうも社会政策的な見地からいかなけりゃいかぬという点におきまして、一種の金融国営的な行き方といいますか、それが出てくることも、現在の情勢から見るとやむを得ないのじゃないかというふうに考えられるのでありますが、それよりも上の階層に属しまする中小企業、まあどっちかといいますと中あたりの金融になりますると、これは全く一つ産業金融でありまして、こういう面から考えますると、国家資金あるいはそれに準ずるような資金だけをもってやるという行き方が、ほとんどもう金融国営が始まっておるのではないかということを考えさせられるのであります。従って普通金融というものはやっぱり民間金融の形でいくべきじゃないか、そうしてこれを国が助成するものは助成していく。しかし国自身がほとんどまるがかえでいくようなものというのは社会政策的な行き方のものというようなふうにはっきりしていかないと、だんだん金融制度というものは混乱してくるのじゃないかというふうに考えるのでありますが、この点についての御見解はいかがでございましょうか。
  43. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいまのお考えも私別に異存はありません。同じように考えます。ただその区分が非常にむずかしいのであります。私の考えでは社会政策的のものを帯びない、いわゆる中小企業金融というものは、今日でも比較的私はよくいっているのではないかと思うのですが、その辺の境が非常にむずかしい結果になる。そういうところにいろいろ今日、中小企業金融として解決に迫られておるところがあると思いますので、そういう点についてはお説のような考え方で十分検討を加えてみたいと思います。
  44. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 金利問題につきまして通産大臣と大蔵大臣に伺っておきたいのでありますが、御承知のように一般金利低下の情勢が出て参っておりまして、これはまことにけっこうでございますが、これに関連いたしまして、従来から中小企業金融の方の金利が高かったのでありまするけれども一般の金利の引き下げに関連いたしまして、だんだんバランスが一そうとりにくくなってきておるというような状態でありまして、ここに非常に問題があるのではないかと思うのでありますが、いろいろ御検討になっておるようでありまするけれども、特に割高になっておりまする中小企業金融の金利というものを下げていくということにつきまして、どういう具体的なお考えを持っておられるでありましょうか、この点についてはもう通産当局は特に御心配になっておられると思いますが、まず通産大臣に伺って、後に大蔵大臣に伺いたいと思います。
  45. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) お尋ねの点については、大蔵大臣ともよく始終話し合いまして、できるだけ中小企業金融の金利を下げたい。ことに問題になっておる商工中金の金利につきましては、三十一年度においては御承知のように二十億円程度政府資金をこれは出資してもらいまして、それとそれからなお商工中金自身経営努力とあわせて、できるだけ下げたいと考えて今努力いたしておるところであります。
  46. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいまの御質疑で具体的な点の第一は、商工組合中央金庫の貸出金利であると思いますが、これにつきましては今お話がありましたように、今回二十億ばかり財政資金を出しておりますが、さらに商工中金債の発行条件も改訂も加えたい。なお、これにはやはり組合の中間の手数料みたいなものも同じくこれも私引き下げていきたい。なお従来の相当高い金利で債券を発行しておるいわゆる既発債があります。これを何とか今日の安い金利に直すことを一つ検討を加えてみたい。まあかようにいろいろと方法を講じまして、まず、商工組合中央金庫の金利は下っておりませんが、これをだんだん下げるとか——おそらく三十一年度になりますれば、国会も済んだあとくらいになるかもしれませんが、あるいはもう少し早く実現できるかもしれませんが、今三銭くらいに短期貸付がなっておりますが、そうすると一割をちょっと超えますので、これを二厘ないし三厘程度は下げるような方針を今出ておるような方向で実現したいと思っております。  それからなおその他の中小企業関係の金融機関の金利、これもできるだけ下げるように努力していく。実際今日では一割ちょっと割りまして九分五、六厘程度になっておると思いますが、この金利も下げるように努力していきたいと思います。ただ財政資金だけに依存することもなかなか、資金源の問題もあるのでありますのですが、今後は、これはあるいは私の一つの考えで、言い過ぎになるかもしれませんけれども、私としましては、なるべくこういうふうな中小企業の金利については、金融界全体として、やはりある程度互いに各金融機関が安い金利で金が出せるように、金融機関全体としてお互いに考えてみようじゃないかというような一つの雰囲気からある具体的なことを一つ引き出してみようかと、こういうような考え方をしております。はなはだ申しようがもやもやとして抽象的ですけれども、まだ十分話し合いを進めておりませんが、私の一つ考え方を申し上げておきたいと思います。
  47. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 いろいろ御検討になっているようでありまして、漸次具体的になりつつあるようでありますので、まことにその点はけっこうと存ずるのでありますが、御承知のように、大企業金融の方は、露要供給のバランスから自然に金利が下ってくるというような点もありまするが、中小金融の方は独自の事情がありますることは、大蔵大臣もよく御承知通りでありまして、そういう点からはどうしても人為的に手を打っていかぬと、いよいよバランスがとれぬことになりそうでありますので、特にただいま既発の債券金利の引き下げについても実勢に合うように御研究になるということでありますので、一つの問題が解決の曙光を得るかというように考えるのでありますが、この点ぜひ御研究を願いまして、実現を見まするようにこの上ともの御努力をお願いいたしたいと思うのであります。  同時にただいまお話の金融界全体で協力してこの中小金融の金利引き下げになり、金融圧迫を打開していくという御構想をぜひ具体化するように御努力をお願いたしたいと思います。  これに関連いたしまして資金運用部資金が、何といいましても今後中小金融の中心にならざるを得ない面が出てくると思うのであります。従いまして資金運用部の審議会のメンバーに中小企業関係の代表者を入れることがどうしても必要なんじゃないかというふうに考えるのでありますが、御承知のように、資金運用部資金は零細なる業者の預金蓄積が多いのでありまするし、またこれがいかに運用せられるかということが一番中小企業にはぴんと響いて参るのであります。この資金運用部審議会に中小企業の代弁者といいますか、そういうものを何らかの形でお入れになるお考えがあるものかないものか、その点一つお伺いいたしたい。
  48. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お考えと——これも私同じ考えで、一致するわけでありますが、従いまして具体的には、昨年でありましたか、この審議会委員を二人ふやしまして、中小企業の直接の代表とは言えませんかもしれませんが、特に中小企業金融を今日非常に専門にやられている都民銀行の頭取の工藤昭四郎君を一人、それからやはり中小企業等について学識を持たれておる中山伊知郎君、その前には小汀先生を委員にしております。そういうようにして、できるだけ中小企業に関心の深い方を委員に入れまして、中小企業のためにいろいろと御意見を出されることを期待いたしております。
  49. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 まことにけっこうでございますが、通産当局の方から資金運用部審議会にはだれが常時その会合ごとに出ておるのでありましょうか、その点を伺っておきたいと思います。
  50. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) ちょっと今委員の顔ぶれをよく存じませんです。しかし必要に応じてむろん連絡は常にしておるつもりであります。
  51. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 今後通産大臣とせられましては、通産当局の方からもこの資金運用部審議会にはぜひ当然参加し得るように一つ、大蔵大臣はだいぶ御理解があるようでありまするから、御交渉になりまして、そうしてその事務当局としてもそうでありますが、さらにこの利害関係をはっきり、中小企業面を資金運用部資金運用審議会に反映できるように、官民両方からそういう構成が審議会のメンバーにとれるように御努力を願いたいと思うのであります。同時に同様の意味でありますが、日銀政策委員にも中小企業の代表者を入れる必要があると思うのでありますが、それと同時に今後できそうになっておりまする資金運用審議会でありますか、前々からいわれております資金委員会、これにもぜひこの中小企業の階層の代表者を入れなければいかぬのじゃないかと思うのでありますが、この点通産大臣いかがにお考えでありましょうか。
  52. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) 御意見はまことにけっこうと思いますが、なお大蔵大臣と十分一つ打ち合せたいと思います。
  53. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 日本銀行の政策委員会は私からくどくど申すまでもありませんですが、これは金融政策の最も基本なところを、ごく大きなところ、特に流通資金量がどういうところが適正であるかとか、これを調節するにはどうすればいいかというごく大まかな、従いましてあの政策委員会には農業、それから産業一般、それに金融界、これを代表する人、それに通産、それから企画庁、それに大蔵省の官庁代表、この七人でもって構成されております。私は日本銀行の政策委員会は、これはあまり利害代表が入ってこられますと、これはまた話が非常に具体的にもなりますし、ほんとうの中央銀行の最高政策決定としては私は不適当じゃないかと思っております。そういう意味におきまして、中小企業金融とか、中小企業者の関係を軽く見るというわけじゃありません。今のところで十分私は代表されておると思っております。特にあそこには通産省からの代表も来ておる、企画庁からも来ております。それから金融界では地方銀行の代表がおる。こういうふうなわけでありますので、十分代表されておる。  その他の、もう一つは資金委員会ですか、今度の資金委員会、これは資金運用に関することですから、何も今どういう方をメンバーにするということはきめておりませんけれども、その際は十分考えてみたいと思います。
  54. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 ただいま大蔵大臣の御答弁でありますが、もちろん通産当局からも出ておるのでありますけれども、これはもうほとんど大企業の経験者の人、あるいはそういう立場に立っておったところから行くのが実情でありまして、中小企業庁としての代表者が日銀政策委員会に行くというような例はほとんどまあないのであります。常時メンバーになるということはもちろんないことであります。それからまた銀行、産業界の代表者を見ましても、商業関係は大産業の代表者、それから地方銀行の代表者は出てはおりますけれども、地方銀行というものが今日中小企業を専門にやるというふうにはなっておらぬ実情でありますので、中小企業専門金融機関の代表者を一人入れるのがいいんじゃないか。もう今日中小企業の専門金融機関は相当の数になっておるのでありまするから、そういう代表者を一人入れるべきじゃないかという点から御質問いたしたのでありますが、今後一つ研究をお願いいたしたいと思います。同時にまあ通産当局の方からは、中小企業のエキスパートを日銀政策委員の方へお選びになるということをさしあたりお考え願いますと同時に、ただいま申しまするような中小企業代表というものを、専門金融機関の方から入れるようなことにつきまして、今後通産大臣の非常な御努力をお願いをいたしまして、私の質問は終ります。
  55. 千田正

    ○千田正君 私のお尋ねしたい担当の大臣の方々あまりお見えになっておりませんが……。
  56. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 今申し上げますが三…。
  57. 千田正

    ○千田正君 時間の工合によっては考えていただきたい。
  58. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 今の千田君の要求大臣のうち、農林大臣は病気でございまして、今政務次官を交渉しておりますが、衆議院の農林委員会へ出席中でありまして、すぐ参れません。厚生大臣は出席せられております。官房長官は参議院の内閣委員会で今答弁中でございますから、済み次第こちらに来れると思います。外務大臣は午後出席いたしますから、午後まで留保していただきたいと思います。今厚生大臣がおりますから……。
  59. 千田正

    ○千田正君 ちょうど大蔵大臣おいでになりますからお伺いしたいのですが、最近のニュースとしまして、インドネシアの銀行が日本側の銀行とタイアップして、両国間の金融面における一つの交流をはかろうと、こういうことを伝えられておりますが、この辺の消息は、大蔵省としましてはどういうふうにお考えになっておられますか、御存じでございますか。
  60. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今お話のようなことは一、二年前から話がありました。がしかし、その後いろいろな事情で具体化いたしませんでした。今回もまたそういう話がありまして、私まだ具体的に報告を受けておりません。
  61. 千田正

    ○千田正君 小林厚生大臣にお尋ねいたしますが、まず第一点としまして、終戦後十数年たった今日、なお引き揚げてこない問題の留守家族の人たちが、すでに死亡しておるという問題については通知があるし、またわかっておりますが、また戦犯、あるいは生きているというのもわかっておるのですが、その他の行方不明者であるというのが相当数に上っておると思います。これに対しまして留守家族としましては待っているのは原則であるけれども、大体においてもう死亡しているのではないか、それであったならば、われわれは遺族としての立場を考えなければならない。中にはまことに悲惨な家庭的なトラブルでいろんな問題をかもしておるのでありまして、こうした問題は一日も早く解決したいのは、もちろん大臣もそうお考えであろうと思いますけれども、一体十年たっても行方不明というままで放置していいかどうか。現在においてはわれわれは、とうていその家庭内の実情その他を考えましたときに、まことにこの問題は速急に解決しなければならない問題の一つであると思いますが、これに対しましてはどういうふうにお考えになっておられるか、この点を一つ伺っておきたいと思います。
  62. 小林英三

    国務大臣小林英三君) ソ連地区あるいはその他の地域におきまして、今なお生死不明の方たちがおられまして、その家族の方々があらゆる意味において悩んでおられまするということは、まことに御同情にたえないと思うのでありまして、大体このソ連地区の未帰還者につきましては、政府調査によりますと、ただいま約一万二千名が帳簿上の未帰還者になっているのでありまして、このうちには今お話しのような生死の資料の得られないもの、及び古い年度におきまする生死の資料しか得られない、いわゆる状況の不明者が一万二千名のうちで大部分であるのでございまするが、そこで未帰還者の調査ということにつきましては、厚生省の未帰還調査部が都道府県の協力を得まして、全国的に有機的かつ系統的な調査を進めまするとともに、国の外からの資料をもあわせて利用いたしまして、その成果を上げることに努めているのでございますが、調査対象といたしまして、特に困難かつ重視しておりますることは、古い時期の資料のみが得られているもの、それから生死の資料が全く得られていないものでございますが、これらの個人の資料を入手いたしますには、主といたしまして部隊であるとか、あるいは収容所、開拓あるいは地域団体等、その所属していた集団の状況をまず明らかにいたしまして、これを基礎にいたしまして個人についての調査を進める方法を今日までとっているのでございます。調査、究明を進めまするには、すでに得ておりまする資料の整理、利用とともに、国の内外から資料を入手いたしまして調査に用いるのでございまするが、国内資料といたしましては、すでに帰られました帰還者及び留守宅の資料がございますが、国外からの資料といたしましては、帰還者がもたらすもののほかに、在外公館でありますとか、あるいは国際赤十字の組織を通ずるもの及び現地通信があるのでありまするが、比較的古い時期に死亡したものにつきましては、特にこの国外の資料の提供が今日望まれているような状態でございます。  なお、中共の地区の未帰還者につきましては、私ども調査によりますれば四万六千名となっておるのであります。昭和二十八年から二十年十月に至る間におきまして中共地区から帰還した引揚者の証言、それから現地からの通信簿を総合いたしますると、同地区に生存残留するものは一千名を下らないものと今日推定されておるのでございます。  南方諸地域につきましては、引き揚げは一応終了しておるのでありまするが、終戦時におきまして生死の確認されていない軍人、軍属及び終戦後部隊が引き揚げる際に部隊を離れまして現地に残留したものが約二千二百名ある状態でございまして、いずれにいたしましても今お尋ねのような家族の御心中を察しますると、まことに御同情にたえないと思いまするから、厚生省におきましてもできるだけこの問題は早く解決いたしたい。  それから先般御承知のように松本全権の随員として参りました田辺引揚援護局長、これもやはりソ連におきます向うのリストとこちらのリストを十分に的確に比べてみたい、なおそのほかの問題もございますが、そういう問題もあわして実は随員として派遣させたような次第でございます。
  63. 千田正

    ○千田正君 それではこれは日ソ交渉であるとか、あるいは日中間におけるところの交渉が妥結しなければこの行方不明者、生死不明者に対する死亡の確認ができない、こういうお考えでおられますか。
  64. 小林英三

    国務大臣小林英三君) その通りでございます。
  65. 千田正

    ○千田正君 次に厚生大臣に、最近起きてきた問題とは思いませんが、これは昨年から重大な問題としてわれわれも非常に考えておるのでありますが、売春禁止法が昨年の衆議院においてお流れになった。最近またこの問題を中心に婦人団体の大会あるいはその他において問題になっております。当然これはいずれまた国会にこの法案が議員提出にしろ何にしろ出てこられると思いますが、それに対しまして、この売春禁止法の根源になるところの問題を一体どういうふうに政府が考えておられるか。ことに現在従業しておるところのこうした売春婦の更生に対する政府の対処方針はどういうものか、あるいはよってくるところの原因を考えて、生活の不安定を除きながらこうした問題を解決するという方針をどこに持っておられるか、こういう点に対しまして厚生大臣として御方針があると思いますので、お答えをいただければけっこうと思います。いかがでございますか。
  66. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 今の売春婦の問題につきましては、将来そういうふうなものができないような施策をするということは、これは大きな問題でございまして、今おりまする売春婦の問題につきまして、ただいま法務省におかれましてどういう形でお出しになりますか、とにかく売春禁止法というものをお出しになると思いますが、私どもといたしましては、現在おりまする売春婦の諸君に対して、今後の身の振り方をどうするかという問題につきましては、やはり全国的に各府県に相談所を作りまして、あるいは一たん解放された場合におきまして、それらの中で特に収容しなくちゃならぬというような人につきましては、収容所を設けるとか、身の振り方をどうするかという問題が必要であると思いますので、各都道府県に相談所、窓口を作りまして、それからまたそれらの人で特殊の方につきましては、いろいろな意味の収容所を作りたいという希望を持っておったのでございますが、いろいろ国の財政上の問題もございまして、本年はまず四千万円だけ予算を得ましたが、これではいかんともいたし方ないと思いまして、年次的に考えて、本年はまずおも立った六都道府県——北海道並びに福岡等におきまして窓口の相談所を作りました。それからまた規模は小さいのでございますけれども、とりあえず二十人ばかりを収容するものを作りましたり、そのほか予算の範囲内においてでき仰る限りそのほかの府県におきましても相談員というものを三、四名配置したり、こういうことで今いろいろ計画をいたしておる次第でございます。
  67. 千田正

    ○千田正君 厚生大臣に対するお尋ねは一応打ち切ります。  農林大臣にお尋ねいたしたいと思います。農林大臣はきょうはお見えにならないというので、実は農政問題について特に聞きたいのですけれども、きょうはお見えになりませんから、北洋問題につきまして一応承わりたいと思います。昨日外務大臣に私は現在日ソ交渉が頓挫をしておる。頓挫をしておるということは、国内的には日本の水産に対する影響が非常に大きい。そこで最近民間人が、もしもこのままのような状況で日ソ交渉というものは行き詰まっておるとするならば、早く手を打たなければならないのじゃないか、それで民間代表が行って向うと交渉してくる、こういうようなことが新聞に伝えられております。これに対して今の日ソ交渉の交渉中において、そういう民間的な外交が果してプラスになるか、マイナスになるかということは非常な大きな問題でありますので、外務大臣にその点の所信を聞いたのでありまするが、明確なお答えがなかった。それで私はきょうは農林大臣のかわりに農林政務次官お尋ねしますが、実際の問題として、この問題がソ連側が言うようであるとするならば、日本の北洋漁業というものに対しては制約を受ける。もうすでに農林省としましては業者に指示を与えて、北洋船団の組織が着々と準備中であるのに、そうした制約を受けるとなれば、これはまた国内的にその組織の転換を考えなければならない事態が生ずるおそれがある。これに対しまして一体民間外交をやって、果してプラスになるかマイナスになるか、やった方がいいのか、それとも全然政府の交渉おかまいなしに、従来通りとにかく北洋に進出して所期の目的を達成する、こういう方針に向って農林省としては今の業界を指導しているのだ、こういうお考えなのかどうか、その点をはっきりしていただきたい。この点をまず第一点にお尋ねしたいと思います。
  68. 大石武一

    政府委員(大石武一君) お答えいたします。わが国の現在までの北洋漁業に関しましては、何らソ連との間にむずかしい問題もございませんし、何らの制約も受けておりません。自由に十分な漁をしておるわけでございます。ただ最近に至りまして、新聞紙上に報ぜられるようなあのいろいろな北洋漁業に関するソ連側の言葉が伝わっておりますが、あれは私どもといたしましてはどのような真意から出たかわかりませんけれども、あるいはロンドン交渉に関する一つの牽制策かもしれませんが、私どもといたしましてはああいうようなことはあり得ないと考えておりまして、そうして既定方針通り漁を進める方針でおります。従いましてこのような問題に関しまして民間から団体が交渉にソ連に、あるいはロンドンに出向くということは果してどのような問題であるか、これは外務省関係のの問題でございました、われわれはお答えをする見通しがつかないのでございますけれども、われわれは少くとも今後も今までの方針で、既定方針通り進めて参りたい所存でございます。
  69. 千田正

    ○千田正君 きのう申し上げたのですが、終戦後における日本の漁業、いわゆる公海の操業の自由の原則というものは非常に狭められてきておる。終戦直後におきましてはマッカーサー・ラインがしかれ、それが解除になったと思いまするというと、漁場の資源の確保のためと称しまして、日・米・カナダの三国におけるところの漁業条約が結ばれておる。しかもその漁業資源というものをあくまでも確保しなければならないという各国の意見が一致して、日本側はそれに屈服しなければならなかった。おそらく今度は日ソ交渉が順調に進んでいった場合において、ソ連側も資源の確保ということを名目にしまして、同じようなこの公海に対するところの漁獲というものに対しては制限を加えてくるものとわれわれは考えざるを得ないのであります。そういう場合ができたときは仕方がないが、そのときとしまして、今まで通りやるのだという考えなのか、そうした資源という問題を中心として論ぜられるところの国際漁業会議に対しまして、農林省としましてはどういう態度で一体臨んでいくのか。これは北洋ばかりではありません。南に行きますると濠州のいわゆる大陸だなの問題が、やはりこれも漁獲の制限をされておる。目の前にくるのはいわゆる御承知通り李承晩ライン、このように日本の海域というものは、いわゆる漁業が、公海の自由の原則を主体として日本の水産業は進出してきたものが、そういうことによってどんどん制限されていくということは、非常に私は日本の水産業の大なる圧迫だろうと思う。これに対しまして農林省としては一体どういうふうに考えられるのか。たとえば、おそらくソ連側が持ち出そうとするのは、漁業資源確保のために、日本は乱獲をしておるんだ、こういうようなデマを飛ばしております。日本側でそれはデマである、乱獲しておらないと、これは何をもってそれを証明するか。これは当然農林省、水産庁としましては、当然これに対立するだけのデータと、それだけの十分なる用意がなければならないと思うのでありますが、それだけの用意をしておられるかどうか、この点一応承わっておきたいと思います。
  70. 大石武一

    政府委員(大石武一君) お答えいたします。今千田委員の仰せの通りでございます。われわれはあくまで公海自由の原則によりましてわれわれの権利を主張して、今後ともこの方針で漁業を進めて参る方針でございます。ただお話のように漁業の資源の開発であるとか保存という問題に関しまして、たとえば何かの措置をとる必要が出て参ります場合には、当然これは関係国が平日の立場に立ちまして、そうして客観的科学的な基準に基きましてお互いに話し合いをして、納得ずくの上で行うことがわれわれの方針でございます。これがまた一つの今までの国際的なやり方であると考えておりますので、十分このような方針によりましてわれわれの信念と、それからわれわれの研究とを持ち寄りまして、そうしてあくまでもわれわれの今までの方針を貫いて参る所存でございます。
  71. 千田正

    ○千田正君 今大石次官の御所信はまことにけっこうですが、そういうお考えであるならば、農林省のうちの特にそうしたこの漁業資源の調査研究と、こういう面における予算が十分に盛られておらなければならないはずと私は思うんです。ところが内容検討するというと、まことにお恥かしい次第であって、おそらくあなた方の方から、こういう国際問題が出て、海外の学者と論争するだけの材料と、それだけの人間を派遣するだけの十分な準備がなされておらないと思う。私はこの水産問題は将来必ず国際問題として、外交とうらはらの立場においてこの問題は当然クローズ・アップされてくるに違いないと思う。そうしたときあわてて、もうどろぼうが来たからとなわをなうようなことをやっていたんでは間に合わないのでありまして、今度の予算やその他に対しては十分にこうした研究調査費、あるいは海外派遣費というものは盛っておいて、そうして日本の外交の裏づけとして、当然堂々とやらなくてはならないと思うんですが、そういう点に自信があられるかどうか、その点も伺っておきたいと思います。
  72. 大石武一

    政府委員(大石武一君) お答えいたします。全く千田委員の仰せの通りでございます。私どもといたしましても十分なる予算を取って、対処するように努力いたしましたが、いろいろな客観的な情勢によりまして、ごらんの通りの予算その他に落ちついたわけでございまして、われわれは決してこれで十分とは思っておりませんので、今後ともこの面に努力いたす所存でございます。ただわれわれ、十分な予算は取れませんでしたけれども、でき得る限りの努力をいたしまして、今千田委員の仰せられたような方面に向ってあらゆる努力をいたす決心でございます。  たとえば現在におきましてもオットセイの問題がございまして、今四ケ国で協議中でございますが、これも非常にわれわれといたしては条件が不利でございます。反対も多いのでございますけれども、対等の立場に立って一生懸命にこれを打開しようと働いているような次第でございまして、何とかして、乏しい予算でありますけれども、所期の目的を達しようと、一生懸命働く所存でございます。
  73. 千田正

    ○千田正君 現実に今ラッコ、オットセイの問題でワシントンにおいて国際会議が開かれておりますが、今農林次官がおっしゃるように、現在の立場は三対一、アメリカ、カナダ、ソ連、それに対抗しまして日本側の主張が通るか、通らぬか、そういう非常な事態に到達しております。この面を考えましても、会議がどんどん流れて、そうして日本側のバック・アップは十分でない、こういうことではとうてい所期の目的は達せられませんので、こういう問題に対する研究調査費あるいは海外派遣費というものは十分に盛っておらないということは、今後のこうした国際問題に対して日本側の水産を代表するところの現業官庁の農林省としては明らかに敗北と思いますので、十分にこれを盛っていただきたい、これは強く要望しておきます。
  74. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 千田君、官房長官が出席いたしました。
  75. 千田正

    ○千田正君 官房長官がお見えになりましたから……。特にこれは官房長官が長い間お考えになっておられました、いわゆる引揚者のすでに十年たった今日、なお恵まれないところの重大なる問題の一つとして残っております在外財産に対する処理の問題に対しましては、すでに内閣におきましてその審議会を設置されておるということは私は了承しております。本年度の予算のうちにも調査費を盛っておられるようでありますが、この問題は一体いつまでに解決するのか、調査々々で日を追っていては、こうした幾多の人たちの期待と要望が実現しない。この問題は一体いつまでに解決するのか、どういう目安で一体これを解決していくのか、その点を長官から一応御説明いただきたいと思うのであります。
  76. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。在外資産の問題は、御承知のようにこれは非常に複雑多岐にわたる問題でございまして、しかもまたこれの調査には実際上日本政府の手が及ばないところに問題がございますので、非常な困難をきたしているのでございます。しかしこの問題は非常に重大な問題でございまするために、学識経験者の十分なる意見をも徴し、そうして手配をしなければならないというので、ただいま御指摘のありましたような審議会を設けておりまするが、なかなか進展して参りません。そこで政府は明年度予算におきましては少し経費を多く出しまして、もっと徹底した調査の手段が講ぜられるようにということで三千万円の予算を計上し、しかもこれは政府ばかりでなくて、引揚団体等にも場合によっては委嘱をいたしまして、そうして調査の便宜をはかりたい、こういうふうに考えている次第でありまして、いつ結論を出すというふうなことまではちょっと今のところ見通しついておりません。しかし今回この予算措置によって調査が相当進展するものと期待しまして、それに基いて答申ができるだけすみやかに出していただけるように、政府としてせっかく今その点を配慮しておる次第でございます。
  77. 千田正

    ○千田正君 今の長官のお答えはまことにけっこうですが、今盛られておるところの予算三千万円でしたかね。三千万円の調査費で大体三十一年度の会計年度内において一応その答申がまとまり、まとまった場合において、それによって方法は幾らもあるでしょうが——それによって対処する方針をきめる、こういうことでありますれば、昭和三十一年度の会計年度末あたりには一応……、あるいは年度末と言わなくても、昭和三十二年の瀞早々くらいには一応のめどがつく、こういう大体の見通しでこの問題を進めておられるのでありますか、それともあと二年も三年もかかるんだ、こういうお考えでありますか、どうでありますか。
  78. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。この問題は非常に複雑かつ手の届かない点がございまするので、本年中に全部の結論が出るかどうかは非常に疑惑を持っておる次第でございます。しかし、少くとも総合的なものが出なくても、あるいは中間報告、中間答申というものがありますれば、そうしてその政府としてなすべき具体的な策が立てられるならば、少くともそれからでも着手していくことが適当ではないかというふうに私は考えておるわけでございまして、明年度調査の結果に基いて判断しなければ、にわかにいつごろまでに結論を出すことができるであろうということは、ちょっと今申し上げかねる次第でございます。
  79. 千田正

    ○千田正君 これは当然各都道府県並びにそうした引揚団体等の間に密接な連絡をとられて、一日もすみやかにこの問題の対処方針を決定していただきたい、これは特にお願い申し上げます。  時間はあと外務大臣との質問を残しておきますが、大蔵大臣にもう一ぺんお尋ねしたいと思いますが、きのうの外務大臣の日比賠償問題の御説明の中に、二億五千万ドルの借款という問題があったのです。それから五億五千万ドル二十年間年賦償還という問題があったのですが、これは大蔵当局としてはこの外務大臣のきのうの御答弁に対して、この裏づけとしてはどういうふうなことを考えておられるのですか。もう一度言いますが、きのう大体フィリピンに対する賠償問題に対しては、二千万ドルの現金賠償のほかに、借款というような問題においてこれをある程度考えておるのだというのは、いろいろの問題が起きてきているのですよ。この借款の内容というものに対しては大蔵省として関知していないのですか。
  80. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 昨日外務大臣が御答弁になりました日比賠償のうちで、二億五千万ドルでしたか、民間借款という言葉があったようでありましたが、それについてのお問と思いますが、これは純民間の借款と私どもは承わっておるのでありまして、普通の民間がフィリピンにおいて事業をする、そういうようなときにおける資金の需給関係と何ら変りはないと、かように考える次第でございます。
  81. 千田正

    ○千田正君 そうすると大蔵省の関係から、いわゆる国費から出すという、賠償としましてはよく言われておるところの二千万ドルの現金賠償だけでありますか。
  82. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この日比賠償の内容については、ただいま外務省におきましてせっかく日比賠償について交渉中と私は承知しておりますので、その問題について外務大臣が御発表になりました以上のことについては私は十分な知識を持っておりませんし、またそれ以上に私は申し上げるわけにもいかぬと思います。
  83. 千田正

    ○千田正君 なかなかこの問題は、幾ら言ってもおそらく大蔵大臣は今のような御答弁で逃げられると思いますから、これ以上申しませんが、外務大臣に対する質問時間を残しまして、私これで終りたいと思います。
  84. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして午前の委員会を終りまして、一時半まで休憩いたします。    午後零時二十九分休憩      —————・—————    午後一時五十六分開会
  85. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより委員会を再開いたします。  午前中に引き続きまして昭和三十年度予算案に対する一般質問を続行いたします。
  86. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 最初に、文部大臣にお伺いをいたします。今回の補正で公立文教施設費として三億六千二百万円が減額補正されておるのでありますが、その中には公立諸学校の危険校舎改築費補助金一億四千七百万円が含まれております。この最も急を要する危険校舎の整備費が予算が余るということは私は納得がいきませんので、どういう事情であったか大臣から承わりたいと思います。
  87. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) ごもっともでございます。公立文教施設の補助金につきましては、従来敷地の決定がはなはだ遅延する場合があるのでござ、います。所有者との間に学校の敷地の協定がつかないといったような理由が多多あるのであります。それからまた設計の遅延なり、そのうちに気候が寒くなってできないというようなことで、従前ともある程度やむを得ない理由で遅延いたしておりました。従って繰り越しになっておるのでございます。これらには成規の手続を経て延ばしておるのでありまするが、本年も例年同様、ある程度の繰り越しはあるものと想像せられるのでございまして、現在いまだ敷地が決定されないもの、設計がいまだできないもの、あるいは冬季に入って、これから着工できないもの等、来年度に相当繰り越されるものはございます。この予算を来年度に繰り延べても全く工事には支障は来たさないのであります。そこでこちらは補助でありまするが、補助を受ける元の地方の財源でございます。地方財政自身は前国会、この国会で論議の中心となっているように大へんな赤字でございまして、無理にこれを、すなわち施設をふやすこともいかがかと思われます部分がありますので、それで本年も繰り延べということになりまして、政府の予算も自然少くなったような次第であります。二部教授、すなわち不正常教授等をすみやかに解消し、また危険校舎の改築をいたしたいのはやまやまでございますけれども、わが国の財政がいまだ十分に立ち上っておりませんので、こういう結果に相なりましたことは遺憾でございます。
  88. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 危険校舎の総面積は今どのくらいでございますか。
  89. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 次回に正確に報告いたします。これは調べたものがあるのでございますが、今数字が間違ってはいけませんから……。
  90. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 従来危険校舎の改築は全部やり直すといったようなことがありまして非常に金がかかる。われわれわずかな金でやるのには補強工事で十分台風等には耐え得るのでありまするから、日本の財政状態から考えまして、私は補強工事による一定度の台風等に対しても、また耐震的にも改築工事をやる、その方針で作業をお貫きになりまして、一刻もすみやかに相当の台風がきても、また地震に対しても校舎が倒れて児童に危険を及ぼすことのないように、先にその方をやっていただきたい、かように考えるわけであります。
  91. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 私自身も、世間で言う危険校舎なるものを数校実地に見ましたのでございます。現在危険校舎は補強工事をして倒れないようにいたしておりまするが、なかなか実際行って見るというと、ほんとうに危険なものがあるわけであります。その実際危険なものから先にやろうと、かように考えております。使えるだけは使いたいと思っております。
  92. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、正倉院のことについてお伺いをいたしたいと思います。それは正倉院の近くに観光道路ができまして非常にほこりがふえ、去年の十二月の暮に大阪の気象台が検査しましたら、十二月ですら、すでに大都会の住宅地域に匹敵するだけのほこりがある。これが観光季節になれば、おそらく工場地帯と同様の汚濁が予想されて、千二百年も続いた御物にも致命的の影響を与えると関係者は心配をいたしておる。こういうことが新聞に出ておるのであります。私は世界的な日本の誇りである正倉院の御物が、一観光道路のためにさようなおそれがあるということは非常な問題でありまして、どんな理由で観光道路が許可されたか存じませんけれども、まずとりあえず、このほこりの多い時分にはその通行を禁止するくらいの勇断をもって、御物を保護するという手段をとっていただきたい。かように考えますので、高橋先生もお見えになっているようでありまするが、この辺に関する事情を承わりたいと思います。
  93. 高橋誠一郎

    政府委員高橋誠一郎君) ただいま御質問を受けました点でございますが、この点は文化財保護委員会におきましても早くから問題といたしておる点でございます。御承知のように正倉院は宮内庁の所管でありまするので、まず宮内庁に調査を依頼いたしまして、宮内庁側の意見を聞きましたのであります。宮内庁では、この観光バスを通さないことがむろん一番望ましいのであるが、しかしながら、どうしてもこれを通す必要があると、こうするならば、観光そのほかの見地から申しまして、どうしても通さなければならぬということであるならば、これだけの施設はどうしてもやってもらいたいと、こういうことでございます。たとえば、鋪装するということ、あるいは散水を行うということ、これだけのことをやってくれまするならば、やむを得ないものとして許しても差しつかえないと考える、こういう意見を宮内庁から受けましたのであります。これはかつて衆議院の文教委員会でも問題になりまして、われわれ文化財保護委員会は他の機関に依頼いたしまして、この塵埃、そのほかの程度研究してもらっておったのでありまするが、文化財保護委員会の所管に属しておりまするものでも、奈良文化財研究所がございまするので、なぜ奈良の文化財研究所で研究をしなかったのかというような御質問もあったのでありまするが、奈良は創設日が非常に浅いのでありまするし、その上に研究対象となっておりまするものが、こういう科学的な方面でございませんので、むしろこれは東京の国立文化財研究所において研究さすべきものではないかと、こう考えまして、東京文化財研究所に科学的な調査を命じたのでありまするが、何分まだこういう方面の研究に十分になれておりませんのでありまして、相当時日も経ったのでございまするが、中間的な報告を聞いたのでありまするが、これによりまするというと、ほんとうに十分な学問的な報告はできかねるように申しておるのでありまして、相当長い期間をかけなければ確かなことは申せないと、こういうことでござりまするので、こちらといたしましては、なお最終的な報告を待ちますると同時に、文化財保護委員会には専門審議会というものがございまするので、この専門審議会の意見を徴しまして、さらにまた文化財保護委員会におきまして検討をいたしたいと、かように考えているのでありまして、どうもこの正倉院を保護いたしまする上から申しまするならば、むろんバスなどは通さない方がいいのでございまするが、先ほども申しましたように、他の利益をいろいろ考えまするというと、全然これを通さぬということもまたどうかと考えまするので、十分に慎重な態度をとって決したいと考えておるのであります。
  94. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 いろいろ科学的な御調査もあるようでありまするけれども、人間の能力には限りがありまするし、とにかく千数百年続いている大切な世界的の宝でありますから、これはわずかの研究の結果に待たずに、バスを通さないというふうに問題の解決策を持って行くような、一つお考えを私はお願いしまして、次の問題に移りたいと思います。  きょうの毎日新聞に、日本版「暴力教室」という題で、岐阜県立の本巣高校で教師を一昨年生徒が集団的になぐった、また集団の万引をして三十五名の生従が停学処分に付され、そうしてこれはもう前々から父兄の間で非常に学校の悪いということが問題になっていたということが出ているのでありますが、かような不良な評判のある学校というものは、相当文部省でも強力にこれはお取締りになる必要があると思いまして、きょうの問題それ自身については、まだ文部大臣にも十分な報告がきていないと思いますけれども、全般的に見て、こういうふうな評判のある学校にもっと監督を厳重にするという点についての文相のお考えを承わりたいのであります。
  95. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 岐阜の本巣高等学校のことは私も本朝新聞を見て驚いたのでございます。さっそくまず電話をもって様子を聞かしております。まだ今の時間までにはわかっておりませんが、これまたわかりましたら御報告いたしたいと思います。本巣のみならず、ほかの全国の私立学校に往往にしてこれがあるのでございます。先日東京都内にも一つございました。今の学校教育法、私立学校法等においては、文部省のこれに対する権限が非常に少いのです。監督権がないのです。しかしながら、法律に監督権がなくても、教育がどう進みつつあるかを知って、適当なる指導、助言をしなければならぬことはむろんのことであります。本年の予算でこれらを調査する職員をふやすことを求めておるのであります。今、視学がたった二人なのです。これは八人にふやしておりますが、平素から学校のやり方をよく調べまして、適当なる指導、助言をいたしたいとかように思っております。  それから先刻お聞きの危険校舎のことでございます。あれは義務制でございます。小学校、中学校、それがまだ四十五万坪あるのであります。義務制じゃない高等学校、それが十万四千三百坪修築しなければなりません。
  96. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次は、自治庁長官にお尋ね申し上げます。  地方各種議員の退職金の問題でありますが、御承知通り地方各種議員の退職金に対しましては、退職金支給に関しましては、地方自治法には何らの根拠がないわけであります。実際それじゃどうやっておるかといえば、御承知通り、条例なり、規則を設けまして、それによって予算措置を講じて支給している場合もあれば、そういうことなしに、議会の議決だけで、はなはだしい場合には予算外の流用をやって支給している、こういう場合があるのであります。そこで御承知通り地方自治法の第二百三条には、議員の報酬、費用の弁済の額、支給方法を条例できめる、こういうことがきまっておりますし、第二百四条には地方公共団体の長や常勤職員の給料、旅費、またその額、支給方法を条例できめる。二百五条には常勤職員等の退職年金及び退職一時金等はやってもよい、こういうことが法令にきめてあるのでありますが、国会法でも第三十五条で歳費のことがきめてあり、三十六条で、私は反対ですけれども、退職金を受け縛る、とにかくこういう規定があるわけです。そこで全般を通じまして、退職金をやるときにはそれぞれ特別の法難があるわけでありますから、法律のない反対解釈から申せば、地方議員に退職金を支給するということは、これは地方自治法の精神に私は反すると、こう考えるのでありますが、いかが長官はお考えでありますか。
  97. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) お言葉通り、地方自治法及び国会法を御引用なさってのお考えは私も同様に思っております。ただ法律にないと条例でやっておる、それが法律違反かというところまでいく問題になるかと思いますが、実質的にはお考え通りと私は思い
  98. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そこで、私はこれは本質論になれば、選挙された者は退職金をやるべからずという立場におるわけなんですが、かように何ら法的の根拠なくして、実際的に退職金を支給しておるこの弊をためるために、地方の各種議員には退職金を支給してはならないという一項を、地方自治法の中に明確に規定をお設けになるということが時宜に適した問題であると思うのですが、それらに対するお考えはないでしょうか。
  99. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) 今回地方自治法を改正しようとしまして、今まで実は手当にしても何にも制限がないのでございます。それでいろいろなものが出ておるのでございまするが、今度は手当の麺類を制限しまして、同時に制限いたしますために、それ以外のものは出してはいかぬと、こういうことにいたしたいと思うの、で、退職金の問題は今度の自治法の改正の中に入れております。御趣意に沿うことと思っております。
  100. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 昨年の四月の改選を中心にしまして、全国の各種議員並びに長の退職金のお調べがあれば一つ承わりたいし、なければ至急に一ぺんお調べ願いたい。
  101. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) その調べは全国的にまだできておりません。部分的には聞いたものもございますが、調べがつきましたならばお届けいたします。
  102. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、遊興飲食税の公船領収証制度の問題について伺いたいのですが、やめるうわさがあるのですが、おやめになるのかどうか。またやめなければならぬようなうわさが出るというのは、何か実施上に不都合があるのではないか、こういうふうに思うので、それらの点を伺いたい。
  103. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) 御承知通り遊興飲食税の公給領収証制度は、まだ実行して間もないことでございまして、その結果もはっきりとは申し上げられませんが、長所もあり、短所もある、こんなふうに感じております。長所というのは、消費者が課税を受けるという意味においては筋を通している問題ではないか。今まで割当でやったというようなやり方は、税の本来の主義ではないと思います。だからそれはけっこうでございます。だが手続が非常に繁雑でございますとか、その他の問題がございまして、実は私のところへの陳情も両方から参っております。私自身の考えといたしましては、御案内の通りの地方財政の現況でございますから、いかなる案も、減収になることは私は反対する。しかし取り方のいかんにつきましては、いい案がございましたならば、公平の原則に合うような、そうして税がのがれないような、この税の本来の目的を達するというものならば考えていいと思っております。今のところどうこうしようということは、もちろん二、三カ月しかやっておりませんから、政府としてこの案をどうしようということは、今考えておりません。
  104. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 この税収の大体見込み額は、当初の見込みとあまり違わないかどうか、それが一点と、それからもう一つ続いて、ある県で、県とその県の芸妓置屋組合と申し合せて、花代は半額を課税対象にするという申し合せが、公々然と新聞に出たそうであります。これらはどうも実行税法とでもいうようなことでありますか、まじめな国民の納税意欲を減ずるのはなはだしいものであると思いますので、一つ厳重にかようなことは取り締っていただきたい、こう私は考えるのでありますが、いかがでありましょうか。
  105. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) 今までの調査を申し上げますというと、大体におきまして高くなる方が高くなりまして、低い方は減って参りました。そうしてみまして、政府が初め案を立てたときに予定したような金額よりも少しふえております。二、三カ月のことでありますから、今これで判断はできませんが、大勢はそうなっております。不公平のことがはなはだしい云々については、私は承知しておりませんが、もし何ならば、政府委員がおりますから、それでお許しを願いたいと思います。
  106. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 今お話の芸妓置屋組合で不明朗な取りきめをしているところがあるという御指摘でございます。私もそういう府県を一、二聞いておりまして、注意を促しております。何分今まで非常に不明朗な課税が行われておりまして、書かれております法律と行われている法律の間には非常に大きな、ギャップがあったわけでございます。これを一挙に書かれている法律にまで持って行くにつきましては税率も大巾に引き下げられたのでございますけれども、それにいたしましても負担が実質的に膨大になるというふうなことから、暫定的にやむを得ずそういうことにしたのだ。しかしこれは早急に改正するということで、現在におきましては改められているだろうというふうに存じております。なお今、長官からお話になった点でありますが、十一月からこの制度が実施になったわけでありまして、十一月一カ月の実績について申し上げますと、それまでの毎月平均と比べてどうなっているかということでございます。昨年の十一月、一昨年の十一月と比較するのも一つの方法でありますけれども、大体大同小異でございます。普通の飲食店におきましては、従来毎月二億八千六百万円であったものが、一億九千九百万円に減っておりまして、六九・六%に当っております。その次に旅館でありますが、全体では三億三千七百万円であったものが、三億百万円に減っておりまして、八九・四%に当っております。この旅館のうちでも、割烹旅館におきましては一〇四・五%にふえているのでありますが、普通旅館におきましては六四・八%に減っております。次に、芸者及びこれに類するものの花代が、一億一千七百万円から一億三千五百万円に、一一五・九%にふえております。その次に、料理店等におきましては、二億七千二百万円が三億七千六百万円に、一三八・一%にふえております。次に、キャバレー等におきましては、九千七百万円が一億四千百万円に、一四五・八形にふえております。これは十一月分につきまして、納期限内に申告納税された分だけでございまして、従来の実績は更正決定分も含んでおります。新しい分は更正決定分を含んでおりません。従いまして、なお若干ふえるのではないかと思いますが、その結果は全体として一〇三・八%ということになっております。
  107. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 言葉じりをとらえるわけではありませんが、今の県の弁解として、「一挙に税がふえるが」云々という言葉がありましたが、まじめな納税者からいえば、そういう点は非常に困るので、一つ今後ともに、そういうことのないようにお願いをしておきまして、次は、建設大臣にお尋ねをいたします。  昨日、住宅建設の進捗状況報告をいただきましたのですが、その中で公営住宅五万戸が、着工率が約九九%であると、こういう御報告を得たのですけれども、予算の方から見ますと、九十七億二百万円の中で、まだ使わなくて減額補正されておるのが三億九千百万円、約四%になるわけでありまして、お示しの資料とはちょっと数字が違うのですが、いかがでございましょうか。
  108. 馬場元治

    国務大臣(馬場元治君) 昭和三十年度の公営住宅の建設は、お説の通りに五万戸の建設計画を進めて参ったのであります。その進捗の状況でありますが、これはお手元に差し上げました資料に間違いはございません。二月一日の現在で約九九%の着工を見ておるような次第でございます。
  109. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 資料に間違いはむろんないでしょうけれども、この補正予算の方の金額は三億九千一百万円、パーセンテージにしますと四%、こちらは一%で、そこに開きがあるのです。
  110. 馬場元治

    国務大臣(馬場元治君) これは御承知通りに、本年度の予算の成立がずっとおくれましたことと、地方の財政事情なんかの関係で、残念なことに、年度末までに完成を見ないものが相当あるのであります。翌年度に繰り越すべき事業につきましては、年度内に支出することを要しない経費、ただいまお話の三億九千百万円というものを削減することといたしたのであります。これはもとより三十一年度の完成の暁には、昭和三十一年度の予算によって処置する見込でございます。
  111. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 非常に住宅が今不足しにおるのに、予算が四億近くも残るということは、何かそこに手続上の問題と申しますか、ネックがあるのじゃないか、どういうふうに今後打開されるおつもりであるか、それが一点。それからもう一つは、公団住宅は二万戸をお作りになる予定であるのが、まだ五七%しか着工していない。政府資金による住宅三万、見聞自力による住宅二十四万五千戸、これが二月一日現在で着工率がわずかに五六%である、こういう資料でありまするし、ことに九月に発足した住宅建設は、大阪、名古屋、福岡地区では大体土地の手当も終って、いずれも三月までに予定戸数の工事契約ができる見込である。ところが不幸にして東京地区の場合は、予定一万戸の中で土地の手当の済んだのが、昨年末わずかに千葉県の稲毛の二百四十戸だけであって、東京地区がおくれておる原因は、土地がないことと高いこと、こう公団では言っておられるようでありますが、最悪の場合は東京の建設予定を減らして、名古屋等、収容力のある方へ振り向けて、何とか今年一ぱいに二万戸まで着工したいというふうな御計画であると承わっておるのですが、どうも現内閣が住宅政策の一つとしてお掲げになって、われわれもこの住宅問題を非常に重視しておりまするがために、これは重点的に一生懸命に一つやっていただきたい。予算はまだまだ取って大いにやるがいいというふうに思っておりますけれども、実際やっておられます実績から見れば、はなはだなげかわしい実績になっております。そこで、ただいま申しました公団住宅の着工率が六割に満たない、その他の住宅もやはり六割に満たない、東京では非常に情ない状態になっておるといったような、これらの、なぜこういうような状態になったかという理由についての建設大臣の御説明を伺いたいのと、もし何らかそこに手続上なり、いろいろな障害の原因があれば、いかにしてこれを除くかという対策をお持ちになっておれば、あわせてこの問題について明確な将来の明るい見通しについて御方針を承わることができましたら、非常に住宅不足に苦しんでおる私らとしてはありがたいことだ、かように存ずるわけであります。
  112. 馬場元治

    国務大臣(馬場元治君) 住宅難を一日も早く解消せしめたいという御熱意に対しましては、全く敬意を表するものであります。われわれもまた御同様に、この問題の解決に特に力を入れておるつもりでございます。ただ、お説のように、事業の中でなかなか思うように進み御ない部分がありますることも事実でありますが、特に困難をいたしておりますのは土地の関係、これは非常に困難な状況にございます。特に都心であるとか、あるいはその他の繁華な地区につきましては、土地の獲得をするということに非常な困難をいたしております。そのために着工も次第におくれるというような実情にあることが非常に多いのであります。東京地区につきましては、御指摘もございましたが、青砥であるとか、桐ヶ丘、あるいは晴海などというところにつきましては、すでに土地の手当も、見通しもようやくついて参りました。三十一年度はなるべく早期に着工するようにいたしまして、住宅難の解消に誠心誠意働いてみたい、かように考えております。住宅関係に働いておりまする者、中央の官庁におきましても、地方におります者にいたしましても、住宅問題の切実なる要求に対して、何とか一日も早く解決をしたい。かような熱意を持って努力いたしておりますることを御了承いただきたいと思います。
  113. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 次に相馬助治君。相馬君に申し上げますが、要求大臣のうち、労働大臣は現在衆議院の本会議に、答弁中でございますから済み次第こちらに参ります。厚生大臣が参っております。
  114. 相馬助治

    ○相馬助治君 私はこの際小林厚生大臣に、質問いたしたいと思います。  現在新医療費体系の問題をめぐって、関西方面において一日休診というような問題が起きて大きな社会問題と相なっておりますが、このことに対しては、厚生大臣としてどのように政治的責任の面からお考えであるか。そしてまたこれに対しては厚生省としてはどのように処置されるお考えか、基本的な態度並びにその見解お尋ねします。
  115. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 新医療費体系は、御承知通り、四月一日から行いまする医薬分業に関連いたしまして、厚生省で発表したものであります。ただいま医療協議会におきまして諮問をいたし審議中でございますが、私はこの問題につきましては、先般の社会労働委員会等におきましても私の所信を申し上げておるのでありますが、とにかくこの医療担当者その他の関係者といたしましては、今回の新医療費体系並びにそれに関連いたしました新点数表というものは非常に画期的な変革でございまして、従いまして厚生省といたしまして発表いたしましたものは、厚生省自体といたしましては、これならばできるだろうという最長のものとして発表いたしたわけであります。しかし私はたびたび申し上げておりますように、人間の作りましたものでありますから、あらゆる角度から見ました場合におきましていろいろな御見解があり、またいろいろな異論もあると思うのであります。私はつとめてこれらの関係の諸団体の幹部あるいは全国各府県の医師会長さん、その他の方々にもつとめてお目にかかって、できるだけ民間の御意見をつとめて拝聴いたしておるのであります。ただいま相馬委員の御質問にありましたような事態が起らないというように確信をいたしております。それは私がいろいろな意見を徴しまして、そしてそれらの意見も十分に受け入れるものは受け入れてやっていきたいという信念でおりますから、そういう事態は起らないものと考えておりまするから、従いまして、それに対するこういう対処をするということはただいまのところ考えておりません。
  116. 相馬助治

    ○相馬助治君 そういう事態が起きないであろうではなくて、すでに一日休診というような形が起きているので質問いたしたのでありますけれども、その点については若干食い違いがありますが、今の厚生大臣の誠実な答弁に対しては敬意を表し、同時に大いに民間その他の意見も聞いて、これの実施については万全を期するということについて期待をいたしたいと思っております。  そこで、日本の医療制度上、革命的な変革である今度の医薬分業及びこれに伴ってなされますところの新医療費体系の実施、そうしてこれが当然健康保険法改正その他と連関を持って参りますが、この医薬分業並びに新医療費体系実施に関係のある法規を厚生省においては御提出が見込まれていると思うのですが、どのような法律をいつごろ国会にお出しになるか、大体の見通しを承わっておきたいと思います。
  117. 小林英三

    国務大臣小林英三君) ただいま私どもが緊急に考えておりますことは、健康保険の一部改正法律案、それから船員保険の一部改正法律案、なお年金保険等の一部改正法律案、こういうものを考えておりまして、これらのものにつきましてはできるだけ厚く閣議でまとめまして提出をしたいと考えております。
  118. 相馬助治

    ○相馬助治君 ただいま御答弁の中にも現われて参りました健康保険の一部改正に関連して、私は健康保険の根本的な問題について二、三承わりたいと思うのです。  日本の健康保険は三十年からの沿革を持っておりますが、年々赤字財政ということになって、これが保険制度の崩壊、保険財政の一大危機というようなことがここ一、二年続いて参ったわけです。この際これは政府もまた立法府のわれわれといたしましても、十分に反省すべきものは反省して抜本的なこの問題の処置に当らなければならないと、こう思うのです。私は建設的な立場から質問したいと思うのですが、この赤字というのは厚生省は健康保険の事業運営の拙劣というところに原因を求められているか、それとも日進月歩による近代医療の改善向上によって当然この医療費が自然増となってやむを得ないものだと、こういうふうに考えておるか。それとも制度上、立法上本質的に健康保険というものが欠陥を持っていると今日お考えであるか。これらの点について承わってみたいと思います。
  119. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 私は、今御質問のありましたように赤字が二十九年度あたりからだんだん出て参りまして、二十九年度には約四十億、本年度は約六十億、昭和三十一年度におきましては六十六、七億を予想しております。こういう赤字が出て参りました根本の問題というものは、私は健康保険そのものが非常に進歩向上したというふうに考えております。
  120. 相馬助治

    ○相馬助治君 健康保険そのもの、医療費の自然増であるというふうにお考えだということですが、正直のところ申せば、運営の拙劣という点も一部には認めなくちゃならぬと思うのです。それからまた制度上についても日本の財政規模から考えて、これは本質的に考えなくちゃならない段階にもやはり私は来ていると思うのです。保険制度であるからどうしても収入面と保険料の支出面とのバランスというものは当然考えていかなくちゃならないと思いますけれども、現在日本の健康保険制度という制度があって、この赤字に対して保険料の引き上げとか標準報酬の改訂とか収納率の引き上げ、こういうことだけではある程度限界が見えていると思うので、やはりこの際鳩山内閣の公約でもありまするから、国家においてこの赤字に対しては支出するということを明確に法律の上で規定するというような抜本的な措置がなされる段階ではないかと思うのですが、この点についてはどういうふうにお考えですか。
  121. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 相馬さんの御質問によりますと、このように累年漸増いたしております赤字の対策、これはまあいろいろ赤字を克服するには手があるだろうと思います。たとえば二十九年度の四十億と三十年度の六十億の赤字、この百億円を従来暫定的の措置といたしまして、一部は七十億を資金運用部から借金をいたしまして、その他は料率を上げまして克服した。しからば三十一年度のこの六十六、七億の赤字をどうするかという問題でございますが、これも赤字によって一時的に糊塗してよろしいか悪いかということになりますと、私どもはそういうことはよろしくないことだと思います。しからばこれを全額国庫負担すべきであるか、あるいはどうであるかという問題につきますと、今日のように数年前よりも健康保険の内容そのものが非常に進歩向上いたしておるのであります。またわれわれといたしましては、将来経済六カ年計画の最終年度におきましてはやはり国民皆保険、ただいま国保におきましても三千万人も未加入者がいるような状態でありまして、それから健康保険にいたしましても、五人以下の従業員でありまする者は参加していない。その他にもありますが、とにかくこういうようなものをおしなべて全部国民皆保険にいたしたいという一つ計画を立てておりまするし、しからばその際に、従来と同じようにこれらのものは全然被保険者が一部負担しないで全額国庫負担していくべきかどうかというような点につきましては、これはいろいろな観点において議論があると思います。私どもといたしましてはやはりそういうふうな、外国にもいろいろ例はございまするが、老令年金等も入れて、そして社会保障の完成をするためにおきましては、やはり被保険者も相当に負担をする、国家も相当に負担をする、健保の場合におきましては事業主もある程度の負担をするというようなことも考えるべき時期が来ると思うのであります。従いまして私はただいまの健康保険の赤字の対策ということにつきましては国庫も負担をさす、そのかわり被保険者も一部を負担する、事業主も一部を負担する。国庫の負担という問題は、どの程度するかということは大きな問題でありますけれども、私はとにかく被保険者が負担するに見合うだけの国庫負担をすべきである。なお国庫が負担するという問題につきましても、ただいま法制化しておりません。しかし私の考えといたしましては国庫が負担するという問題については法制化さしたい、またそれに対する努力をいたしたいと、こういうふうに考えておるのでございます。
  122. 相馬助治

    ○相馬助治君 健康保険については国庫負担を法制化したい、その努力をしたい、非常にけっこうなことです。私はやはりその信念を固めて進んでいただかなければならないと思うのです。で、この医療費の増大について、一部で非難しているように保険医の水増し請求だとか乱診、乱療、こういう問題も一つにはありましょうけれども、これが保険財政を危機に追い込むほどのものであろうとは私は考えられない。今日の保険財政の赤字というものは政府みずからが作ったと思う。政府みずからが作ったということは、実は今までの保守党内閣にしては、また言葉を変えて言えば逆によくやったなというところなんですが、要するに療養期間の延長、入院料、往診料の改訂、化学療法の全面的採用、こういうものを今までかなり大胆に取り上げて参ったこの政府態度に対しては私は敬意を表します。しかし問題は、こういうことをやるときに、将来国庫負担はどうなるのだ、これは当然赤字がくるのではないかということを当然私は予想したはずだと思うのですが、それらは一体どういうことになっているのでしょうか。もちろん小林厚生大臣の前任者、前々任者の問題ではありますけれども、一連のやはり政治責任として私はあなたの見解を尋ねておきたい。すなわちこういう赤字は当然予想したはずではないか。予想したとするならば、僅少な保険料をもっては当然まかなわれないということがわかるならば、国庫支出の立法措置というものを当然当初からすべきではなかったか。今するところだ、努力するというお答えですから私は非難を含めていない。むしろその今のお答えをより強めてこの際国庫負担の立法化をはかるべきだと思うのですが、これらについてはどういうふうにお考えでございますか。
  123. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 今相馬さんのお尋ねの中に、二十九年度におきまして点数の一部を改正する、あるいは抗生物質を採用する、あるいは医療の年限を二年間を三年間にいたした、これは前任者の時代にいたしたのでありますが、しかしその前任者がいたしましたときにおきましてはいろいろなまた理由もあり、あるいは政治的のいろいろな含みもあったかもしれません。しかしそのさかのぼった前任者のやられたことですけれども、とにかく私は今日のような進歩向上した健康保険の姿というものは国家全体といたしまして非常に望ましいものだ、社会制度の上から非常に望ましいものだと思うのでありしまて、この際におきまして、この健保の財政をいかにするかということをわれわれは考えなくちゃならないと思います。従いまして、今相馬委員から御質問のありましたような点につきましては、私は極力努力いたしたいと考えております。
  124. 相馬助治

    ○相馬助治君 それと連関しての問題ですが、医療費の増大の中には結核対策の問題を見残しては解決しない段階が来ていると思うのです。政府が意識的に抑制措置をとっているというふうに伝えられております。ところが一方では結核対策としてどんどん病床等を増加して、そうしてこれに対して本腰を入れる、こういうふうにいわれております。この矛盾を一体どこで解決しようとするのか。ですから抗生物質の値下りを理由とした薬価基準の改訂とか、入退院基準の設定とか、あるいはつき添い婦看護婦の廃止というような、こういう一つ一つとしてはまことに困った問題、言葉をかえていえば、政府としては実に拙劣なこういう部分的なことをやらざるを得なくなってきている。しかも今日結核療養所は空床がだいぶ出てきている。こういうような今日結核対策については非常に矛盾した姿が現われておりますが、政府は保険財政の面からもまた結核療養の立場からみてもなにか抜本的にこの結核医療に関してお考えがあるかどうか。いわゆる保険財政から切り離すとか、それからまた結核医療に関しての特別な措置をこの際施行するとか、こういうふうな具体的なことがあったら聞かしてください。
  125. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 今の結核の対策につきましては、厚生省といたしましては非常に力を入れておりまして、結核の患者と称せられているものは御承知のように二百六、七十万人いるのでありまして、これに対する要入院者がどのくらいあるかということはいろいろ議論があると思いますが、結核の病床そのものも昨年の一万床に比べまして今年は三千床になっております。これなんかもやはり私は予算の折衝中いろいろ考えたのでありまして、大体昭和三十三年頃までには二十六万床ということを、現在のいろいろな観点から考えまして、目途として進んで参っているのでありますが、もうすでに自然増といいますか、民間あるいはその他の方面におきまして病床がだいぶふえて参りまして、ことしのただいま二十三万床近くはもうすでにあるいはそれ以上できておるようなわけでありまして、従いまして昨年の一万床を本年三千床にいたしましたのも決して結核に対する考え方を後退したわけじゃないので、そういうふうな自然増なんか見込みまして、その他の方面に使いたいというわけでやったのであります。  それから結核の対策といたしまして、私はどうしても、病人になっているものをどうするかという問題ももちろん必要でありますが、病人になる前に病人を作らないようにすることが第一の問題でございますので、本年は昨年に比べますと健康診断等も一千万人をふやしていきたい、あるいは予防接種等も七十五、六万もふやしていこう、こういうようなことにいたしておりまして、結核全体といたしましての支出というものは私は決してないがしろにしたわけではないと思うのです。ただ今御質問になりました健康保険の赤字の問題に関連して、結核対策を抜本的にどうするかという問題、これは非常に大きな意義のある御質問だと思うのです。私どももこの問題に対しては、健康保険の赤字対策の面と関連いたしまして、相当突っ込んで考えてみたことでございます。かし現実の問題といたしまして、この問題も将来たとえば重病患者をどうするか、あるいは軽症患者は比較的どうするか、いろいろな問題がそこに含まれておると思うのです。ただいまの現実の問題といたしましてはやはり総合的に考えまして健康保険財政を立て直すことをいたしたい。将来健保をどうするか、あるいは国民保険をどうするか、また未加入者をどうするか、あるいは結核のこれらのお聞きになりましたようなことをどうするかということにつきましては、並行して私はこれを考究いたしまして、できるだけ近い将来においてそれらの問題を解決していくようにいたしたい。こう考えております。
  126. 相馬助治

    ○相馬助治君 厚生大臣にあと一点だけお尋ねいたします。前の国会で問題になったつき添い婦廃止のことに関しましては、当時川崎厚生大臣はつき添い婦で馘首されるものについては厚生大臣とも十分連携をとって、これを失業対策の簡易事業の方面等になるべく吸収してもらうように努力をする、こういう言明がなされております。現に三月一ぱいで厚生省はつき添い婦を廃止しようとして各療養所において態勢を進めておるようです。そこでこの失業というものにおびえてつき添い婦の人たちが中心となってまた一つの大きな問題が持ち上ろうとしておる矢先きですが、この問題については厚生大臣としては労働大臣とどのような話し合いをされたことがありますか、あるとすればそのことについての内容を承わりたい。また大臣同士でそういう話がない場合には、事務当局においてそういう面についての連携があったかどうか。あったとしたらその内容を承わりたい、これは厚生大臣からまずお聞きしたい。
  127. 小林英三

    政府委員小林英三君) 今お尋ねのつき添い婦の問題につきましては、ちょうど私が参議院の社会労働委員長をいたしておりました当時の問題に関連いたしておることであります。私はこの問題につきましては、就任以来担当の事務当局とも十分に相談をいたしまして、また私の意見も十分に伝達をいたしまして、できるだけつき添い婦の人で適当な人はできる限り同情的にこれを採用するということを申しつけてあるのでありまして、ただいま三分の一はたしかに新しいいわゆる厚生省に所属する従業員として採用いたし、またそのほか労働大臣あるいは各都道府県の知事等にも連絡いたしまして、できるだけこの問題について善処方をお願いいたしておるのでありまして、私の聞くところによりますと、さらにその残りの三分の一は処置をしたというように聞いておるのであります。その他の問題につきましては必要があれば関係当局から御答弁させたいと思います。
  128. 曾田長宗

    政府委員(曾田長宗君) ただいま大臣から大体のところはお答えいただいたのでありますが、私どもも事務的に労働省の方とはいろいろ連絡をとっておりまして、特に職安関係の部局と連絡をしておるわけであります。御承知かと思うのでありますが、昨年の十一月でございましたかには、労働次官と厚生次官の連名の通牒も出しまして、かようなことが予想されるので、一つどもの各地の療養所の関係者が労働省の出先とも連絡をとっていろいろ御相談に参ることにいたしておりますので、ぜひ一緒になってこの善処方をお願いいたしたいということを申し上げてあるわけであります。ただいまの特別失対というようなものにからんでどういうような話があるかというようなお話につきましては、実はそれについてこの昨年の暮も特に御相談を申し上げたのでありますが、多少労働省の方でその後の計画が変更されておるようでありますけれども、このただいまの私どもが当面いたしておりますこの事態についてはできるだけ労働省も協力をしてくれるということでお話し合いをしているのであります。今後ともさらに緊密な連絡をとって善処いたしたいと考えております。
  129. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は次に労働大臣にお尋ねをいたします。労働大臣は折から春季闘争で相当頭をいためていると思うのですが、これについては同僚議員からいろいろ質問をいたしたので、私はその以前の失業問題についてきょうは徹底的に質したいとこう思っているのです。  このもろもろの社会悪、あるいは社会不安、こういうものの原因の中に私は失業ということは実に大きいと思うのです。そこで倉石労相においても早くからこの問題については深い関心を示しているということは社労委員会等で承わっているのですけれども、最近の労働力の調査においても、統計局の労働力調査によれば、一昨年の九月と昨年の九月とで比較しては百万人人口が増加しているが、十三才以下の者は五十九万人減っている。こういうふうにいっている。十四才以上の生産年令人口が百五十九万人も増加している、こういう傾向は今後長期間にわたってわが国の雇用問題の解決の基調をなすものになると思うのです。そこで政府の三十一年度経済計画によれば、完全失業者は六十七万とこう押えているようでありますが、これで五カ年計画の最終年度においてはどういうことになりますか、大体の年次別にその目標数字を示して、この失業問題についてはかような見通しであるというようなことがあるならばこの際承わっておきたいと思うのです。
  130. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御説のように雇用失業の問題は一番頭を悩ますところでございまして、政府は五カ年計画を立てまして、その一番のねらいは経済自立と雇用量の増大ということにおいておるわけでありますが、ただいま御指摘の数字はこれは内閣の統計でございますが、御承知のように昭和十九年から二十年というころは戦争の末期でありまして、青年がだんだん帰郷いたして参りました。それからその直前が産めよふえよといった時代でありまして、その影響がつまりただいまお話にありましたようないわゆる十四才すなわち労働力、生産力人口と言われておる人々の人口がその方面にふえてきたと、こういう結果に現われておるようであります。一般人口増加率よりもいわゆる生産力人口がふえておるのはそういうふうな点であろうと解釈いたしておるのでありますが、その生産力人口がだんだんふえるということがいわゆる労働力人口増加でありますから、経済五カ年計画がかりに予定通り成功するとしてもなかなかこれを御指摘の通り、雇用失業問題は重大な問題であると私どもは心配いたしております。そこで本年度六十七万と算定されております完全失業者は五カ年計画で増大してくるであろうと予想される労働力人口は、今の人口増加の率を追って計算しますと、最終年度の三十五年度には約四千五百三十一万人と推定されております。労働力人口が。そこで五カ年計画を遂行することによってその一%すなわち四十五万人の完全失業者にとどめたいと、こういうのが五カ年計画の大体の失業に対する予定でありまして、その本年度を初年度とする五カ年計画で始まります雇用失業の問題については最終年度は今申し上げた通りでありますが、そこで政府が一番力を入れておりますのは、しばしばここで他の閣僚からお話があったようでございますが、私どもといたしましては幸いなことに日本の経済はやや安定の緒について参りまして、諸外国の好景気の影響とは申しながら、三十年度は非常に輸出のバランスも黒字になってきた。そこでさらにこの勢いを増強いたしていって、そしていわゆる第二次産業の生産力を増強してその方面に雇用量を増大いたしていこう、こういうのが五カ年計画の大体のねらいであります。そうすることによってもちろんいわゆる第三次産業、自家営業の方面にもそれは労働力人口の吸収は多くなって参りますけれども、主として第二次産業の方面に吸収するように努力したいと、こういうことで最終年度四十五万人程度の完全失業者にとどめるように努力するという目標が五カ年計画の最終目標と、こういうことで今年度から努力を始めておるわけであります。
  131. 相馬助治

    ○相馬助治君 統計局二十八年の労働力臨時調査では失業意識を持っている人約九百万人、こういうふうに出ております。このような潜在失業者に対しては政府経済自立五カ年計画ではどういうふうに見ておるのですか、この点は考慮されないのですか。
  132. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いわゆる潜在失業者というのが、これはしばしば議院の中にもあるいは各方面で論議される問題でありますが、このいわゆる潜在失業者というものがどのくらいあるかということにつきましては、内閣の統計その他でいろいろまちまちでございます。就業希望があっても、一週間の間に一時間も就業ができなかったというふうなものは、これはいわゆる潜在失業者でございましょう。しかもなおその人が安定所に登録を申し出ない、それでまあ自営業というか仲立業というか、そういう方面に働いておる。そこでそういう人々は非常に不安な雇用状態にあるのだ、これを何とかしなければいけないではないかという御意見が非常に多いようであります。御承知のようにアメリカやイギリスに比べますと、完全なる雇用関係にあります日本の労働者というものは、大体去年の暮で三三%くらいかと思いますが、英米に比べて非常な低位であります。そこに日本の完全な雇用を持っておらないから不安ではないかということでございますが、何しろ敗戦によってたたきのめされた日本の経済力でありまして、従って完全なる雇用関係を持っているものが少い率であることは、これは私どもも非常に注意いたしておるのでありますが、しかしながらいわゆるその職業を持っておるという  エンプロイーという中には、これは御承知のように外国でもやはり自営業や仲立業を置いたサービス業をいたしておる者も失業者としては数えておりませんので、潜在失業者という定義もなかなかむずかしいことだと思いますが、私どものねらいとしてはそういう不安定なる状態から完全なる職を持ち得るようにもちろん進めていかなければならないと、こういうふうな方向で雇用問題を考えておるわけであります。
  133. 相馬助治

    ○相馬助治君 昨年末のこの失業対策審議会の答申によると、最近の雇用情勢は生産、貿易の好調にもかかわらず、好転のきざしを見せていないから、直接的雇用対策を十分に行うようにと出ているようです。そこで今日労働省が要求し、しかもそれが予算の面に現われたものを見ますと、わずかに三万人の増加しか見込んでいないようですが、これでは答申の趣旨とも一致しないし、また大臣が最初に構想として持った考えからもへだたることが非常にはなはだしいと思うのです。昨年十二月十二日の朝日新聞かで、倉石労相がだいぶ大々的な構想を述べられていたことを見て気を強くしていたのですが、結果はどうもうまくないようでございますが、これらのいきさつ、そうしてわずか三万人しか見込めなかったこれらのことで、一体完全失業者数がいよいよ多くなるという矢先にどうしようとするのか、一つお考えを承わっておきたいと思います。
  134. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 三十一年度予算の失業対策の問題でございますが、御承知のように今まで失業対策事業というのが当初始まった歴史は生活保護的な気持で、とにかく終戦後出てくる失業者に何かの形で現金収入を与えてあげなくちゃいけないじゃないかという考え方でああいう事業ができて参りました。従って初めのうちは、相馬さんも当時衆議院におられて御存じのようにしばしばこれも国会で論議されたのでありますが、非能率的な仕事をやっておるという非難がだんだん出てきました。そこで、しかしながら最近は一般失業対策についても、地方の町村などが非常に理解をされまして、経済効果の上る仕事をだんだんやってきた。東京などでは非常に喜ばれてよい成績もあげておることは御承知通りでありますが、なお能率の点については労働省も労務管理をもっと完全にやるようにして、国民の非難を受けないようにしたいと思いますが、その一般失業のほかに昭和三十年度予算で三十六億円で三万人の人員を吸収して、これは財源がガソリン税でございました。そこで建設省と打ち合せまして、特別失対という名目で道路五カ年計画の事業をやるようにいたしまして、そうして労働省に予算を盛って建設省に移しかえをして、失対の仕事は建設省にやっていただくということでありまして、それを三十一年度予算の編成に当りましては、建設の方は御承知のようにガソリン税は道路五カ年計画の道路事業に使うのだという建前でありますから、そこで建設は去年はあれだけやりましたが、三十一年度においては百億円とりましてもなかなか五カ年計画で仕事のある場所には失業者がおらないと、こういったような心配がだんだん出てきましたので、本年度はその同じ三十五億円でありますが、それを労働省において、そして人員は二万人と、これは御承知のように地方自治体の赤字を幾らかでも生じないように助けてやろうというおもんぱかりから、補助率などを引き上げました結果、金額は同じでありますが、人員は一万人減らして二万人。そのほか六十九億円の財源をもって建設省独自で緊急就労対策事業というものをやらせまして、これは財源は全部ガソリン税であります。そこでそれに二万人を吸収することを政府部内で建設と労働とが話し合ってやることにいたしました。そのほか一般失業をやる。さらに一般失業の中で先ほどちょっと厚生大臣にお尋ねがありましたようなああいう御婦人など、あるいはお年寄りのおじいさんなどでやはり何か働かなくちゃならぬという者には軽度な仕事をしていただこうということで、簡易失業事業というものを一万人の予算を組んだわけであります。そういうものを合計して本年度は昨年より三万人増強して二十五万人と、私どもの職業安定所に現われて参ります失業者状況を見まして、政府のやる事業はまずこれで大体出てくる。安定所の窓口から吸収される失業者は大体これでよかろう。そのほかにすでに政府がいろいろこれから御審議願う法律案などで、たとえば北海道開発金庫とか、道路公団であるとか、あるいは愛知用水といったようなところにさらに雇用量の増大をはかってその方面で吸収してもらう計画も立っておる。こういうことでまあ三十一年度は百パーセント完全だとはいえないが、まずこの辺でただいまのいわゆるほんとうの失業者の救済はできるではないか、こういうことで予算をきめた次第であります。
  135. 相馬助治

    ○相馬助治君 この倉石労政の御自慢の特別失対事業というものが、私は、実は今からやるのですけれども非常に懸念される面を持っていると思うのです。それは国費を使うのですから失対事業といえども事業効果というものを上げようとすることは一応わかるのであります。ところが特別失対ということでそういう事業量を大きく問題にしてきますというと、社会保障制度的な考え方の、救済事業的な考え方の失業対策としての性格を失っていくということに相なると思うのです。こういうような二つの矛盾した面をどこでどの程度の調和をさせるかということについて問題になるのですが、私は労働省自体がこの予算を使って最後までおやりになるのでしたならば、倉石労相がお考えの通りにあるいはいくのではないかと思いますけれども、この予算は各官庁に移管して実施されることになっておる。ここに大きな問題があると思うのです。果して建設省や厚生省が労働省の要求する失業者吸収率等について事業効果を上げるために応じない面が出てくるのではないかと、こういうふうに思いまするが、予定人員が吸収されるかどうかということについては、どこで保証を求めるのですか。両者間においてどのような話し合いがなされておりますか。この経過を聞きたいのです。
  136. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、昔からあります緊急就労対策などでも、労働省が予算を持っておりませんというと、各省が勝手におやりになったのでは、相馬さんの御心配下さるようなおそれがあるわけであります。そこで今この特別失対……一般失対はもちろん御承知のようなやり方ですが、特別失対につきましては、事業地を、労働省と建設ならば建設省で打ち合せるのでございます。それでこの方面にこれだけの失業者がおる。そこでこの地域でまずちっとは遠くても何分ぐらいで現場まで行けるかというような具体的な相談をいたしまして、そこでその特別失対をこの地域でやる。しからばどこの安定所の登録失業者をここへ持って行くかという、そういう具体的な計画を立てるのでありますから、私の方で持っておる安定所の失業者を基礎にした事業計画を立てていただくのでございますから、失業対策が本質的な仕事の実態でありますから、その点は御懸念のないように各省と私どもの方とそれぞれ事務的に打ち合せをした上で、失業者を配分いたしておる、こういうわけでございます。
  137. 相馬助治

    ○相馬助治君 昨年の緊急就労下水補助が四億一千万取ってあって、これについては失業者が六五%吸収されたと聞いております。ことしはこれを特別失対補助の下水というところで五億取っていて、労働省は八〇%の失業者の吸収を厚生省に期待していると聞いておりますが、厚生省が八〇%の失業者を使えということが前提になるのでは、事業量その他からうまくないというので、調整がついていないということを聞いておりますが、調整はつきましたのですか。
  138. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) そういうようなことについて両者の間に事務的な打ち合せをして、そうしてこちらから提供する労働者を吸収してもらうということでありまして、個々別々の具体的な場所の相談の経過については詳しく私は存じておりませんが、必要がございますれば後刻安定局長からでも御説明申し上げるようにいたします。
  139. 相馬助治

    ○相馬助治君 この問題はやはり非常に重要な問題だと思うのです。で、失業対策の場合には残業を認めないのですね。そうしますと厚生省が管轄で下水工事をやっても、ちょうどコンクリート打ちが始まったけれども時間がきてしまった。そうすると普通の事業なら電灯をつけてやっているのだけれども、失対事業だからというので時間でぴちっとやめて、そうして朝から始めるということになったのでは、これは厚生省自体が承知せぬと思うのですね。こういうふうな事業の特殊性、それから失業者の吸収率、こういうものについて各省間でやはり調整できない面がいろいろあろうと思うのです。一つこれらについて具体的なことを承わりたいと思ったのですが、その担当事務局の方がいないとならばやむを得ませんから、これは一つあとで正確にどういうふうに話し合いがついているか、ここに報告をして下さい。  次に移ります。特別失対、一般失対でもって地方財政にも寄与したいということをおっしゃっておりますが、大体昨年度地方から補助率の引き上げを非常に強く要望されていたと思うのです。ですから失対事業をもらうことはいいが、地方自体がこれに負担分をつけることについては非常に困るというふうな話が多いのでございまするが、今のところ計上した予算は全部完全に消化でき得る見込みですか。そうしてまたこの補助率は適当だと思いますか。
  140. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 失対事業がだんだん喜ばれて参りました傾向は御承知通りでありますが、失対事業は割合にこの地方市町村が負担率が多いのでございまして、どこからもそれに対して陳情がございました。そこで私どもは来年度はいわゆる失業者多発地帯、全体の約一〇%ぐらいでございますが、そこは五分の四の補助率に引き上げました。今までは三分の二でありました。それから一般失対でも事務費の補助、資材費の補助もそれぞれ引き上げました。まあ全額国でやればけっこうでありますが、財政の都合もございますので、大体今度引き上げた程度で各地方でも満足しておられるのではないかと、こういうふうに思っております。
  141. 相馬助治

    ○相馬助治君 次に別問題ですが、本月の八日に臨時公労法審議会から公労法改正について労働大臣に答申があったように承わっておりますが、いつごろ国会に公労法の改正をお出しになる予定ですか。しかも答申の中には公労使一致したものと一致しないものがあるというふうに聞いておりますが、大臣はこの点についてはどう考えておりますか。また今の問題となっておりまする春季闘争とからんで、政治的にまたこの改正の問題を何らか考慮しておりますか。これらについて御答弁願います。
  142. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 公共企業体等労働関係法は成立の当時から相馬さんも御存じのように、これが非常に舶来の法文でありまして、英文を翻訳したりなどして私どもは非常に不満であった法律であります。果して適用いたしましてから従業員も不満を持つし経営者も困っておる、そしてまた国会に最終的に持ち込まれるといったようなことで、これは何とか改正しようではないかということを私はしばしば申しおった。改正については経営者側も組合側も賛成でございます。そこでなるべく両者の意見のほかに、公平なる第三者の御意見をということで、審議会を設けて、それに答申を出していただいたわけでありますが、この答申についてただいま労働省として検討中でございまして、なるべくトラブルのないようにしてこれを提案いたしたいと考えておりますが、ただいまお話の、いわゆる総評の春季闘争にこれが悪用されるようなことがあっては困るのでありまして、この法律の改正というのは、全く事務的なことでありまして、いかにしたならば仲裁裁定を政府が尊重できるか、それからまた組合側も経営者側も不便に思っておったところを、そういうところを是正しようという事務的な考えでありますから、春季闘争にからんでどうこうということを全然考えておりません。
  143. 相馬助治

    ○相馬助治君 いつごろ国会に出しますか。
  144. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) それは今申し上げましたように、審議会の答申に基いて今法文化しておるところでございますから、なるべく近い間に提案をいたして御審議を願いたい、こう思っております。
  145. 相馬助治

    ○相馬助治君 いわゆるスト規制法というようなものは、本年一月で一応期限切れに相なります。国会に存続するか否かの決定を求めなければならないということになっておりますが、大臣はこれを存続させるつもりですか。聞くところによりますと、威嚇的に、春季闘争における労働者の態度いかんによっては、石炭、電気事業以外の方面にも拡大してスト規制法をやるつもりだというふうにおっしゃったとかとも聞いておりますが、そのような事実がございますか。要するにスト規制法の取扱いに対して現政府は、特に倉石労相は、どのようにお考えでございますか。
  146. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いわゆるスト規制法につきまして、ただいま威嚇的に、今度のストのやり方によってはもっと拡大して延長するのだというふうなことを私は一ぺんも言ったことはございません。私は基本的にこの法律はあんまり自慢になる法律ではないという考え方であります。なぜかと申しますというと、どこの国でも御承知のように、国家の大事な財産を滅失してしまうようなばかげた労働争議というものはやるべきでないと思っておるのであります。しかるにあの法律では、保安要員は引き揚げてはならない、電気産業の労働者はスイッチ・オフをしてはいけないといったようなことを法律できめておるのですから文明国人としては恥かしい法律であります。従ってこういう法律はない方がいい。しかも御承知のように公益事業法でありますか、それにはスイッチ・オフはいけないということになっております。それから鉱山保安法にも保安要員の行動について制限があるのです。罰則もあるのです。それだのにあの当時どうも危険なことが予想されているということで、やむを得ずああいう法律を作らざるを得なかった。でありますからその後の経過を見ておりますというと、この法律を存続する方がまだいいかどうかということについては、静かに私ども、又皆さんも検討を続けておいでになったでありましょう。そこで八月の六日にこれは切れるはずでありますが、あの法律によれば国会休会中に法律の期限が切れた場合には、次の国会が始まって十日以内にこれを提案して、もし存続するとすれば存続の議決を要するということでございまして、議決があればそのまま延長されるわけであります。従って私はまずしばらくの間様子を見ておって、そうしてどういうふうにするかということの政府の意思決定をいたしたいこういうふうにただいまは思っておるところであります。
  147. 相馬助治

    ○相馬助治君 できることならば廃止をしたい、こういう基本的な態度だと了解をしておきます。  次に担当大臣として最後に一点、恩給の問題について承わりたいと思います。軍人恩給が七百二十六億余も今度の予算に計上され、しかも文官恩給においては百七十二億計上され、ようやくにして恩給というものが国民の間に大きな問題となっておることは御承知通りです。私は恩給を受領しておりまする軍人並びに文官に対しては心から敬意を表するものですが、角度を変えて、やはりまじめな意味で国家財政というものを考えてみた場合には、これは近代国家としては国民年金制度というようなものを採用して、こういう国の恩典を普遍的ならしめるか、ないしはともかく何らかの形でこの問題は抜本的に考えなければならない段階がきていると、かように思いまするが、倉石労相はどのようにお考えでございますか。
  148. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ごもっともでございまして、国家財政に恩給金額が非常な圧力を加えつつあることは何人も否定することのできない事実でございますが、さりとてやはり恩給を受給しておられる方々の過去のお立場、そういうことを考えてみましたときに、田がやはり法律によって保証をいたしておった恩給でございますから国家財政が許すならばこれは当然やるべきであると存じますが、諸般の点はただいまお示しのようなことでありまして、私どもとしてもこの恩給の問題につきましては公務員制度調査会から公務員制度について答申がございました。そういう中にも恩給制度の根本に触れた御意見がありますので、政府ではもっぱら公務員制度調査会の答申案に基いて、将来の恩給政策を決定いたしていきたい、こういう考えであります。
  149. 相馬助治

    ○相馬助治君 次の一点は大臣直接数字その他において詳しくなかったならば、事務当局からでもよろしいと思いますが、文官恩給のでこぼこ調整のために新たに二億七千万今度計上されたようにわれわれ承知しておりますが、これは恩給法の改正というものを予見して、そうしてこの費用を計上していると、かように了解をするのですが、恩給法改正においてはどのようにでこぼこ調整をする御予定ですか、財政的に見ますと二億七千万というのは年間予算の四分の一だとも伝えられておりまするが、その辺の事情はどのようになっておりますか、この点についてはかなり詳細に一つ数字の上で御説明を賜りたいと思います。
  150. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 方針につきましては、二億七千万円は、明年度、昭和二十三年六月以前にやめたいわゆる文官恩給の不均衡是正につきまして、相馬さんの御指摘のように、年間の四分の一という見込みで計算をいたしました。従いましてやはり御指摘のように、恩給法改正案を提案して御審議を願うはずでありますが、数字のことについてただいま政府委員から御説明申し上げます。
  151. 相馬助治

    ○相馬助治君 よろしいです。その点が明確になればよいのです。倉石さんの答弁は明瞭に何ら疑念を差しはさまない形で答弁されているので、それでよろしいのです。要するに二億七千万、これは四分の一規模である、かような了解が閣内においても成立して、提案されたものと見て、私は了承いたします。私の質問を終ります。
  152. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それではこの際豊田君並びに千田君の外相に対する質疑を、出席されましたので、していただきます。
  153. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 外務大臣に二点ばかりお尋ねいたしたいと思います。御承知のように、近く中共におきまして日本の見本市を開催しなければならぬことに相なっておるのでありますが、これに関連いたしまして、中共に対するココム物資の輸出につきまして、最近緩和方につきまして、どういう情勢にありまするか、あるいはまた外務当局におかれまして、どういう程度の御努力をせられておりますか、この点について伺いたいのであります。
  154. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) お答えいたします。ココムの制限を緩和したい。御承知通りココムの制限はヨーロッパ方面の共産圏に対する制限と、中共に対する制限とは違っております。中共に対する制限の方がはるかに強いのでございますから、少くともヨーロッパ並に制限を緩和してもらいたいという強い希望を日本政府としては表示しておるのでございます。そこでココムの制限を緩和するためには、まず第一に、アメリカ側の同意を受けることが捷径であると考えまして、アメリカ側とは絶えずその問題では話をいたしております。もっともココムの手続を全部経るためには、パリー等におけるココム機関に諮らなければなりません。それじゃ米国との間にはどういうふうな話し合いを進めておるか、こう申しますと、これはその前からもあったわけでありますが、私が昨年八月に渡米をいたしましたときに、この問題を直接ダレス長官に対して持ち出しまして、そしてこれはもうぜひ日本側の希望をいれてもらいたいのだということを申し入れたのであります。そこでこれはその前からずいぶん懸案になっておったのでございますから、すぐ了解をいたしまして、そこで大体の米国の態度はどうであるかというと、中共に対する一般的の方針は変えるわけにはどうしてもいかぬ、これは大局上どうしても変えるわけにはいかぬ。従って中共に対する軍需品の輸出制限というような一般的の制限は譲るわけにはいかぬのだ。しかし日本として個々の品物についていろいろ希望があれば、これは十分に一つ申し出てもらいたい、その個個の問題について考慮してみよう、できるだけの考慮をしよう、こういうことで分れたのでございます。その後その了解によって米国側と交渉を進めておるわけでございます。その了解につきまして、いろいろその品物の程度がございますから、詳細な専門的の検討を経まして、そして適当な数のリストをもって今交渉は進めておるわけでございます。いまだ結末はついておりませんけれども、漸次これは先方の考慮をしてもらうことができると、こう考えております。そこで、かような立場をとっておる国は日本だけではございません。イタリアもそういう同じような立場をとっております。それからまた英国も大体似たような立場をとっておると見えて、先ごろイギリス総理大臣イーデン氏が米国を訪問したときもこの問題を持ち出した模様であります。その内報に接しております。その米国側との話し合いは、私が渡米したときの話し合いと同じ結果になっておるようでございます。そうして米国側も日本側からもいろいろ希望が出ておるのだ、それで個々の問題について話し合いを進めても差支えないということで、イギリス側もそのつもりで話し合いを進める模様でございます。そういう内部の情報は十分わかっておりますから、それとよくそういう連絡をいたしまして、呼吸をはかって、できるだけわが方の希望を達成いたしたいと、こういうふうに考えて進めておる次第であります。相当これはむずかしい問題だと見込まれますけれども、でき縛るだけの希望を達成するようにしなければならぬと努力をいたしておる次第でございます。
  155. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 もう一点。一般方針と申しまするか、これはただいまの御答弁で一応了承いたしました。しかしいよいよ近く中共で見本市を開催しなきゃならぬということは、これはまた別の問題でありまして、見本市を日本が向うで開催いたしまする以上、ココムの制限下においてやるということになりますると、ほとんど日本の見本市としては体裁をなさないような格好になるであろうということが予想せられるのであります。従って今の一般方針の問題は一般方針の問題として解決するように御努力願うのでありますが、目下見本市関係だけの、現実の日本としての輸出につきましては、ココム制限下においても特別の計らいができるということでないと問題にならないのだろうというふうに考えられるのでありまして、この点についてのお見通し、これは特別の例外的措置として如何に考えるべきか、これはただいま民間の方でも着々見本市の準備をしておるのでありまして、ココム物資が見本として出せるどうかということは、計画上非常に重大な関係がございますので、この点を伺っておきたいと思うのであります。
  156. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私はその見本市の問題について一般的の方針についてお答えを申し上げます。見本市の開催ということは、国際義務の範囲内において貿易を促進したいという方針に基いてやるわけでございますから、これはその範囲内においてけっこうなことだと思います。しかし今お話のように、その国際義務の範囲内でやるということを厳重にすれば、言いかえれば、ココムの範囲内の品物だけに限ったならば体裁をなさない、それならどうしたらいいかということにつきましては、私はこれは現実の問題として、よく当業者等とも協議した上で検討しなければ、どの程度にどうしたらいいかということを、私から一々申し上げるのには材料がございませんが、それらの問題について、なお私の説明を補足する意味において局長から説明をさせることにいたします。
  157. 湯川盛夫

    政府委員(湯川盛夫君) ただいま外務大臣から一般的に御説明した通りでございますが、禁輸品の展示につきましては、実は前にココムでそれは認めない。輸出できないものをば展示すると、相手の購買力をそそるだけだからそれは認めないという前提がございますので、見通しとしては非常に困難だと思われますが、しかしこの際もう一つその点についてココム各国の意見を聞いて方針をきめたい、こういうふうに思っております。
  158. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 ただいまの御答弁によりますと、なかなか見通しは困難だというお話でありますが、この見本市というのは、現実に輸出するしないという問題のほかに、一国の産業を商品によって展示し、その全貌を見せるというところにまた大きな意味があるのでありますから、ココムの制限下においてはほとんど日本の産業の威力といいますか、それは見せ得ないことになるのでありまして、むしろそんなことなら見本市はやらぬ方がいいということになってくるということは自明のことであります。従ってぜひ見通しは従来の前例は前例としまして、見本市をやる場合に日本の国威の現状を示し得る程度にはぜひともココムの制限を、きわめて例外的な措置として緩和するように、最善の御努力を、これは外務大臣にお願いをしておきたいと思うのであります。  以上希望を申し述べまして質問を終ります。
  159. 千田正

    ○千田正君 外務大臣に重ねてきょうお伺いしておきたいと思いますのは、昨日大臣の御答弁の中に、まだ私はっきり了解しない点があるのであります。それはただいま日ソ交渉が一応マリク全権の帰国によって停頓しておる、その間においてこれはソ連側のあるいは放送であるかあるいは宣伝であるかどうかわかりませんが、とにかく北洋漁業に対する資源確保という名前のもとに、日本の乱獲というような問題を放送しておる、これではいつ日ソ交渉が妥結するかわかりませんとき、日本の産業一つである北洋漁業が非常に狭められていくから、民間の代表者が行って、ソ連側との間に民間外交をしていきたいというようなことが述べられたことに対しまして、外務大臣の御所見を昨日、質したわけでありますが、一体こういう問題が、果して行った方が現段階においてプラスになるのか、マイナスになるのか、マイナスになるとするならば、今の少くとも国力をかけての日ソ交渉のこの段階において、そうした民間代表が行くということは遠慮しなければならないだろうし、もしも、それはそれとして、裏面におけるところの民間外交が一歩前進をして、何らかの日ソ交渉に役立つとするならば、これはあえて押える必要もない。一体この点はどっちが現段階の外交において、行った方がいいのか、行かなくてまだ日ソ交渉のこの段階をずっと見守った後に、何か方途を講ずるのがいいのかというこの点についての外務大臣の御所見を、もう一ぺん私は伺っておきたいと思うのであります。
  160. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 民間使節をやった方がいいか悪いかということについて、私がはっきり申し上げることは非常に責任を感じます。しかし私のさしあたっての意見を申し述べますれば、漁業問題はこれは昨日も大体その意味で申し上げたのでありますが、漁業問題についてはすでにもうロンドン会議で取り上げられております。向うもその話はしておるわけであります。もっとも意見がすぐ一致しておるというわけじゃございません。ロンドン会議においておそらくロンドンの協定ができても、詳細なことはその中に入らないことになると思います。それは別の協定で次にやらなければならぬことと思います。基本的の問題は少くとも話し合わなければなりません。その話し合いができますれば、すぐ詳細な取りきめにかからなければなりません。そういう場合において、そういう方面の業者と申しますか、人々の知識をこれに参加せしめるということは、非常に私は必要になってくると思います。これは過去の経験においてもそうでございます。さようなとき私は協力していただくようにしなければならぬように考えます。一応の考え方としては、そうしていったならば最も能率的に民間の知識も吸収して進んで行くことができるように考えます。それで結論的に申し上げれば、漁業問題に対する基本的の話し合いを今少しく進めた上で考えてみてもおそくはないんじゃないだろうか、こういうように私はさしあたっての考えとしてお答えを申し上げます。
  161. 千田正

    ○千田正君 もう一つは日韓問題でありますが、これはただいまのところ、これは外務大臣にお伺いしたいのですが、一応これもペンディングになっているんですが、御承知通り実質的においては日韓間の貿易は表面のところは現在のところ中止しておる。現実において約四千万ドルの貸し越しになっておると私は承知しておるのですが、これが再開は一体いつなのか。従来だというと、この貸し越しに対する一つの回収政策として、鮮魚あるいは軸国産のノリというものを輸入して、逆に国内のノリ業者その他の漁業に圧縮を来たした。それでわれわれは農林水産委員会においては韓国のノリの輸入に対しては、断固として反対せざるを得なかった過去の問題がありますが、一方において李承晩ラインというような勝手なラインを引いて、これまた日本の漁業の進出をはばんでおる。ことごとくそのしわ寄せが日本と韓国にわたるあの漁業というものに寄せられてきておるという点からいって、日本の水産業の発展のために非常に嘆かわしい問題でありますが、一体この日韓問題はいつごろ解決の見通しがあるのか。またそれによってペンディングになっているところの日韓貿易というものは当然再開されると思いますが、そういう場合になってやはり水産問題というものが貿易の中心になると考えますが、外務大臣のお考えはどういうふうにこの問題を解決されていくかという点について御所見を承わっておきたいと思います。
  162. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 日韓貿易の問題、特に水産に関連する問題が御質問の主点であったと思います。むろんお話の通りに、これらの問題は日韓全体の関係、全面的の交渉が開かれて後に解決をだんだんしていくというのが、これが理屈の上では順序でございましょう。そこで日韓関係を少しでも早く打開し縛るように持っていかなければならぬと、こう思うのであります。それはこの問題だけではなくして、日韓の関係は全面的にそういうところに帰港をいたします。  そこで、そういうことに努力をいたしておるのでございますが、これはまたさきに御説明を申し上げたと思いますが、いろいろまた故障がございまして、そうしてまた順序等もございまして、その故障を打開し、順序を経ていくのにいろいろ今苦心をしておる最中でございますことを一応申し上げておきます。  これもそれでは今後見通しはどうかと、こういうことになりますというと、なかなか全面的の問題、李ラインの問題もございますし、それから財産権の問題、非常にこんがらかった問題になりそうであります。そういう問題はむろんのこと、漁夫の帰還問題、大村収容所に関する問題ですら十分に思う通りに今参っておらぬような残念な状態でございます。そうでありますから、希望通りにこれがすぐ、いつ打開ができるということを実は申し上げかねるのでございます。ただ、私の申し上げ得ることは、これは日本側としてどこに出しても通り得るような態度を持ち、また条件を持って、そうして韓国側に妥協を申し込むと、こういう方針をもって進んでおるわけでございます。  そこで今の物の交易の問題でございますが、これはその間においてもいろいろ考慮しなければなりません。米を買うとかいう問題もございます。これらはその物についてそのつどそのつどやはりこれは考慮していかなければならぬと思います。そこで今ノリのお話がございましたが、それらも日本の同業者の利害関係もこれは考慮しなければなりません。それで果してそれが交換の条件として日本に受け入れ得るものであるかどうかということも、そのつどこれは検討しなければなりませんから、さようにして物の交易は実際的に進んでいかなければならぬと思います。そういうことが少しでも解決していけば、またそれによって日韓関係に良好な影響を与えますから、そういうことも常に気をつけて努力をしなければならぬと思ってやっておる次第でございます。
  163. 千田正

    ○千田正君 私はこの日韓問題は、まず第一に今の抑留されておるところの日本の漁師を一日も早く返還していただきたい。その面において特に努力していただきたいと思います。  最後に、私は最近日ソ交渉、あるいは日比賠償問題等、日本の外交の、外に向けてのいろんな問題がクローズ・アップされておりますが、一面、東南アジア等におけるところの問題が等閑に付されたような感さえも最近感ずるのでありまして、御承知通り、終戦後に起きたエカフェの問題あるいはさらにコロンボ・プランの問題に対して、日本の一体立場はどの程度その後進捗しているのか、どういう観念のもとにこうした機構の中で日本が海外と手を結んで活躍しておるのか、その辺は私は最近の状況を十分承知しておりませんので、東南アジアを中心とした日本の将来の国際的なあり方という面から考えましても、東南アジアを等閑に付するわけにいかぬと思いますので、エカフェ及びコロンボ・プラン等に対しまして外務省のとっている御方針があるならば、それを簡単でよろしゅうございますから、重点的な問題を御説明願いたいと思います。
  164. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) エカフェの会議、コロンボ・プランとも、日本の加入したのはまだ日が浅うございますことは御存じの通りでございます。これらの国際経済協力機関に加入して、そうしてその中にあって日本の地位を有利にやっていこうという大体の考え方で進めておることは、これは御想像にかたからぬことでございます。そこでコロンボ・プランでございます。コロンボ・プランでございますが、コロンボ・プランでも、すぐ事務的にこれがどういう援助でどんどん進むとこういうふうには参っておりません。米国は、本年度一億ドル、来年はさらに多くの資金を東南アジア開発の目的でもって出そうと、コロンボ・プランなぞによっていろいろな計画をこしらえるということも米国は希望しておるわけでございます。  そこで日本といたしましては、コロンボ・プランには入っております。入っておりますけれども、日本がそれじゃ何を東南アジアの開発に対して援助し得るかと、こういうことでございます。日本には不幸にして資金を供給して、そうして開発に資するというような考え方を持つことはできない状況でございます。そこで主として技術方面、技術方面をもってそれに貢献しようと、そういうことによって経済関係を、日本との間にも漸次密接な関係を結んでいきたい、こういうふうに進めておるわけでございます。それに対して若干の費用が要ります。要りますために、予算にもはなはだわずかな費用でありますけれども、それを計上しておるわけでございます。将来はそういうことに、特にこの東南アジアの学生を日本に招致し、また技術家を養成するために子弟を日本に招致するというようなことに日本は非常に力を尽したいと、こういうふうに考えております。それの費用の問題でございますが、与えられた費用をそういう方面に活用いたしたい、こう考えております。主としてまあそういう考え方は、エカフェの機関に対しても同じような考え方を持って、どういう機関でなければならぬということではございませんけれども、そういう基本的な考え方でもって経済関係を密接にしていきたい、こういうふうに思っております。東南アジアの開発にやはり日本が力を入れ、尽力をするということでないというと、その経済関係が密接には参りませんで、そういう方面の考案をしきりに考えておるわけでございます。いろいろなこまかいことについてなお補充することがあれば政府委員から補充させます。
  165. 千田正

    ○千田正君 今大臣からコロンボ・プランとエカフェの問題がありましたが、実質的には今お話のありました通り、十分なる財政上の余裕がない日本が、財政的の援助はもちろんなかなか容易でない。だとすれば技術的援助あるいは技術の交流、もしくは実際のプラントの貸与というような問題が相当私はやらなくちゃならないんじゃないかと思うのでありますが、今のお話であるというと十分な予算がない。  私は東南アジアを歩いてみましても、ヨーロッパやあるいはイギリスあたりの進出の仕方と、しかも東南アジアは日本に最も近い、日本の将来伸ぶべきマーケットであるにかかわらず、これは日本の一商社あるいはその他にまかせてあるような状況であっては、日本の将来の東洋におけるマーケットの獲得というのは容易でないだろう。そうでございますので、この点は特に将来力を入れていただきたい。実質的な問題としてどんどんやっていただきたいと思いますので、特に御考慮を願って私の質問を終りたいと思います。
  166. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 戸叶君に申し上げておきます。大蔵大臣は間もなく参りますが、農林大臣は病気のため、政務次官が出席しております。通産省は鈴木重工業局長が出席しております。
  167. 戸叶武

    戸叶武君 それでは外務大臣にお尋ねいたします。ただいま重光さんは、日本は東南アジアより学生等を迎え入れて、そうして技術的に訓練していくというようなやり方をやっていきたいということでありますが、これは日本の東南アジアに対する一つの対策としてまことにけっこうだと思うのであります。しかしそれと同時に、日本の今日の農村における二男、一二男に対する対策というものをもっと私はしっかりやってもらいたいと思うので、青年にはアンビシャスなものを持たせなくちゃならないのに、今日の日本ほど青年が希望をもぎ取られている不幸な目に会っているときはないと思うのです。それでどうやってこの農村にうずくまっている二男、三男たちを海外に進出させていくかということは、これは外務大臣や農林大臣が協力して行わなければならない一つの施策だと思うのです。実は昨日アメリカのファーム・ビューロー・フェデレーションのロサンゼルスの理事をやっている在留邦人の方から手紙が参りまして、五百名ほどの農村の青年たちをロサンゼルス一帯に受け入れたいという考え方がこの有力な農業団体の中において成熟してきた。問題は渡航費の問題で、渡航費を十八万ないし日本金にして二十万ぐらいかかるが、それを銀行で立てかえてもらって、六カ月ぐらいにそれを返せるのだから、その保証なりあっせんを政府でやってもらいたい。総領事に話しても、なかなか総領事だけでははっきりした返事はいただけないからというような手紙の内容でございました。私は昨年の一月にロサンゼルスをたずねましたときに、総領事のあっせんによってその方にも会うたのでありますが、アメリカの内部からこういう空気が盛り上ってきたのは、一つには四カ年にわたって日本の農業実習生たちが二百二十人ほどアメリカの各農家に働きに参りまして、農業技術を修得した。その生活態度というものがアメリカ側から非常に歓迎されるような素地を作ったのではないかと思うのです。ただここで問題になるのは、メキシコ等から季節労働として年に八万五千人くらいの人が入っておりますけれども、日本の労働者としてアメリカへ割り込むというのではなかなかむずかしいのであって、結局二年ないし三年の期間を限って農業技術の修得、今までの人たちと同じような形において、その八カ月のやつを長期にわたって滞在するというようなことにして、そうしてアメリカにおけるところの進んだ農業技術を日本に受け入れてくる。あるいはそこで二、三年間に修得した技術と資本とをもって南米その他へ飛躍していく足場にしていく。アメリカに居すわるということさえなければ、向う側を刺激することがないので、順調にいくのじゃないかと思いますが、この問題は私のところだけ来た手紙ではいけないと思いまして、きのう国際農友会の那須皓博士をたずねまして、夜お話をいたしましたら、那須さんはローマの会合の帰りにアメリカをたずねて、そうしてアメリカのこの有力なファーム・ビユーロー・フェデレーションの幹部たちと会って話をした結果、そういう機運がやはり熟しているのだ。何とかしてアメリカ側の了解のもとに成功させたいものであるというお話でありましたが、これに対して外務大臣としては、私は大した金もかからないのだと思いますが、問題は、日米の友好関係の結びつきいかんということによって問題は解決していくのじゃないかと思いますが、どういうふうなお考えを持っておりますか。
  168. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 今お話の問題は、われわれのところも詳細にわかっております。那須博士の御尽力も十分に検討をいたしております。そこで今はお話の通りにこれが実るよう、時期がなるべく早く来ることを今希望して、各方面ともそういう方面に努力をいたしておるわけでございますが、ロサンゼルスその他の総領事館、ワシントンにおける大使館はむろんのことであります。十分それの内容、その他性質、その規模等の問題について十分に研究をいたして、米国側とも密接な連絡、協議のもとに進めております。ただしこの問題はです、今そういう話し合いの途中にありまするわけでございますから、以上の輸郭を申し上げて、私のお答えとして御了承を得たいと考えます、いずれ時期が来ましたらば、また詳細のことをお話し申し上げたいと、こう考えます。
  169. 戸叶武

    戸叶武君 私はこの問題がロサンゼルスで取り上げられた際にも、ちょうどロサンゼルスの日米協会で講演を頼まれた際、あすこの会長であるイーストマン氏と会い、MRAの幹部をしておられるので、イーストマン氏に積極的な協力を頼んだのでありますが、私はこれは日本側でさえしっかりとした態度で問題をスムーズに運ばしていけば、これは必ず実るものだと信じております。  また今の問題は移民という形とは違いますが、移民の問題で、最近カンボジアから日本の移民を十万人受け入れるという呼びかけがあったのに対して、日本では態勢ができておらないので、一年一万人というわけにはいかないので、とりあえず三千人くらいしか入れられないというような状態にあるということでありますが、そういうような態勢にまだあるかどうか、そのことについて外務大臣から承わっておきたいと思います。
  170. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) このカンボジアの移民は、先方の最初の申し出、希望等は、今御指摘があった通りだと思っております。しかし実際これをやるのはそう簡単な問題ではございません。第一こちらの準備というよりも向うの受け入れ態勢のことをよほど検討いたしませんというと、かっての経験もございますし、人をたくさん送り込んでいって、そうして非常に苦しめて、そうしてただ無為にして帰ってきて、あとは悪い印象だけ残すというようなことであってはならないのでございます。そうでございますから、これはよほど現地の事情検討をいたしまして、そうしてむろんこちらの準備も進めなければなりません。そうして一度に理想的にいくよりも、実際的に着々進み縛るように、つまり途中でくじけないように、むしろ細く長くでもいいから着実にやっていきたい、こういう実は考え方を持っております。一がいに十万人を入れると言いますけれども、向うの地勢その他を考え、なかなかこれは簡単には参りません。そこで今移住局長などを派遣いたしまして、現地について調査をいたしておるような状況でございます。
  171. 戸叶武

    戸叶武君 そのカンボジア移民に対しても、向うの受け入れ態勢を十分に調査するというその態度はまことにけっこうだと思います。ただ私がこの移民問題で心配しておるのは、ブラジル等の移民の問題は、日本では非常に好材料をそろえて宣伝されておるけれども、アメリカのカリフォルニアにおける移民の先駆者たちが心配して、いろいろなブラジル、特にアマゾン流域の悲劇を聞いて、人を派遣して調査してみたところが、五百人もの気違いが病院に入っているというような悲惨な状況もある。アマゾン流域の開拓というものはアメリカの財団をもってしても非常に困難であったので、問題はアマゾン流域に入ってもそれから抜け出して、そうしてもっとよいところにのがれた者が成功しているという話が多いのだというようなことも、これは相当信用のおける人たちから聞く機会を得たのですが、カンボジア移民に対してそういうふうな用意周到な受け入れの準備態勢を作るために移住局長をやられたというからには、移民受け入れにおいては非常に大きな期待をされているところのブラジルに対しても、もっと精密な調査なり受け入れ態勢というものをやはり作り上げなければいけないと思いますが、外務省の今までの調査程度はどの程度のものですか。
  172. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) ブラジルの問題——特にアマゾン地域の問題等について私から概括的に申し上げるのでは、少し御納得を得ないかと思います。移住局長いないことを非常に遺憾といたしますが、いろいろな情報を持っていることは、外務省もよくその点は同様であるのでございます。アマゾン地域の移民が非常に不成功に終っておるというようなこともございますが、私が今日まで聞いている確かと思う情報をごく一般的に申し上げたのじゃ恐縮でありますが、これはそう非常ないいこともむろんないようでございますが、あまり極端な話も少し行き過ぎておるのであるという印象を持って、私は着実にやることをたえず注文して指導いたしておるわけであります。新聞記事等にはいろいろございますが、いずれにしてもあまり悲観の材料だけではないようでございますから、将来とも着実に移住民の成功をみるように指導していきたい、そういう方針ですべてを指導していきたい、こう考えております。
  173. 戸叶武

    戸叶武君 外務省では移住局を作り上げましたが、南米や東南アジアに対しては移住というような名前でもいいが、アメリカその他の諸国に人を送り込む場合に移住というような形においては非常にまずいと思いますが、そういうのは移住局じゃなく、国際協力局なりあるいは別な機関なりあるいは農林省の機関なり、そういうものでやられるかどうか、依然としてやはり、名前は別に大したことはないからという形で移住局でやっていくかどうか、また移住局という名前を適当と考えておられるかどうか、その点を外務大臣からお聞きいたします。
  174. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 移住局と申しますのは、移民という字を避けた意味もございます。移民々々とこう言うのは、少し言葉として穏当ではないんじゃないかというので移住局にしたわけでございます。しかしその移住局もまた穏当を欠くという御議論がございますならば、またこれは一つ考えたいと思います。ただしかし、今お話しになりましたいわゆる国際協力局あたりでやった方がよかろう、こういうようなことを言われる御趣旨も、今移民を移住というようにした趣旨と同じように考えます。それはそれで私はけっこうだと思います。ただ海外に日本人を送り込む、こういう仕事は、これは送り込まれるところの国々、これと密接な関係——その意向を離れてはこれはできる仕事じゃございません。そうしてそれを無視してやる場合においては、これは非常に大きな困難が直ちに現われてきます。これはただに移民の問題だけでないので、政治的に問題は波及いたします。これは非常に注意しなければならぬ。そこで私はこういう問題は、対外関係の責任を持っている外務省が注意深くやって運用しなければならぬ、こう考えておる次第でございます。
  175. 戸叶武

    戸叶武君 外務大臣に今度はこの中共貿易の、特にココムの制限についてお尋ねします。先ほどの外務大臣のお話の中に、日本の制限もイタリアの制限も大体同じようであるというような印象を感じさせる答弁がありましたが、ココムの中に日本リストというのがあって、そうして日本には特別の制限を課せられておるのが事実なのではないでしょうか。イタリアよりももっと、少くとも中共貿易に対しては狭められた制限があるのではないかと思いますが、この点はいかがですか。
  176. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 経済局長が帰りましたから、私が知っておる限りのことをお答えいたします。  イタリアと日本との何が、そういう貿易の内容が同じだというような意味のことは申し上げたつもりではございません。イタリアもやはりココム・リストの制限を緩和したいという強い希望を持っておる。その意味において日本も同様であるということを申し上げました。私は日本だけについてココムの制限があるということは知りません。またそうではないと思います。ココム・リストの日本に対する制限の窮屈な点は、それは中共に対する貿易の制限と、ヨーロッパの共産国に対する制限との差がある。差があるから、たとえばイタリアからヨーロッパの共産国に対する貿易は、日本が中共に対する貿易よりも幾分楽であるということになると思います。  そこで日本の希望といたしましては、先ほど申します通りに、ヨーロッパの共産国に対する制限程度くらいに緩和してもらいたいと、こういうことが出発点でございます。しかしそれは相当大幅のことになります。そこで非常に困難があります。しかしそれができなければ、個々の品目について日本の希望を持ち出すから、その希望について検討をしてもらいたい、それは一つできるだけのことをやろうというわけで、今交渉は進んでおる状況である、こう申し上げたわけでございます。日本側もココムにおいて日本の品物についていろいろと、これは何と申しますか、抜け道というわけじゃございませんけれども、品物の定義等について、いろいろ話し合いによって緩和することができるので、それは十分に利用して今やっておるわけでございます。
  177. 戸叶武

    戸叶武君 中共に関して特に日本には強い制限が設けられている。しかし最近は特認という形で多少緩和されてきているというのが実態のようですが、中共貿易に関しては、昨年アメリカに行かれたときに、重光さんがダレスさんと懇談されたというので、ざっくばらんにいろいろのお話があったと思うのですが、大体中共に対して、日本対中共の関係において非常にきつい制限を設けたというのは、アメリカとしては、朝鮮事変に対する報復としてやっておるのか、それとも中国の隣である日本と中共との協力を阻止しようとしてやっているのか、それとも中共の経済建設、特に五カ年計画経済というようなものの推進を阻止しようとしてやっておるのか、その辺はどういう態度でやっておられるのか、その点を承わりたいと思います。
  178. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) アメリカが中共貿易を制限しておるその真意いかんという問題のようでございます。アメリカが日本と中共との貿易を特に阻害しておるという目的も、また事由もございません。これはどの国がやっても、中共貿易は同じように制限をいたしておるわけでございます。従いまして、イギリスあたりも最も熱心にその緩和を要求しておるわけでございます。  それから、なぜそれじゃ中共の貿易を制限しておるかというと、これは朝鮮事変もむろん大きな要素でございましょう。中共との関係において、米国は、何と申しますか、極端にこれを申しますれば、敵味方の関係におるわけでございますから、そこで中共に対する軍需品の輸出はむろんのこと、軍需品となる資材等を供給することを防ごうとするということに相なるわけで、その制限品目が相当広範にわたっておる状況に相なっております。つまり中共との全面的の悪い関係がかようなことになったんだと、こういうふうに考えます。
  179. 戸叶武

    戸叶武君 電光外務大臣の御答弁は、非常に当りさわりのない御答弁のようですが、日本と中共との間を割いておくという態度によって、アメリカが自分の国に有利であり、ま日本の国に有利であると思っているような考え方というものは、全く間違っているので、その間違いを直していく役割が日本の外務大臣に課せられている役割じゃないかと思うのでありまして、事実上においてこの中共に対する日本の制限というのは、イギリスやフランスとは違っているのです。どうぞそういう点をしっかり、外務大臣は属僚だけにまかせないで、実態を把握して、日本と中共とのこの貿易関係をもっとスムーズにできるようにしてもらいたいと思います。  これとは別でありますが、けさの新聞を見ると、イスラエルの方から兵器の買付け申し入れが日本に今なされている。イスラエルは御承知のように、今エジプト及びアラブ諸国と非常に対立抗争の激化している国であります。そこの兵器買付調査団の団長がこちらへ乗り込んできて、そうして通産省との間にそういう話が進めれらておるということでありますが、そのことは事実でありましょうか、これを外務大臣並びに通産省の方からお尋ねしたいと思います。
  180. 鈴木義雄

    政府委員(鈴木義雄君) ただいまのお尋ねでございますが、約十日ばかり前、イスラエル大使館の方が私どもの方の局員のところへ見えられまして、二、三工場についてお尋ねがあったことは事実でございますが、兵器の輸出とか、そういうふうなことについての話はなかったようであります。
  181. 戸叶武

    戸叶武君 二、三の工場に対して尋ねられたといいますが、その工場はどういう種類の工場でありますか、名前は言えませんか。
  182. 鈴木義雄

    政府委員(鈴木義雄君) カメラ等の工場でございます。
  183. 戸叶武

    戸叶武君 今、外務大臣は私らよりもよく御承知のように、イスラエルとアラブ諸国との抗争というものは非常に危険な状態に置かれているんだと思うんです。そういうときにソ連がエジプトへ武器を送ったということで問題が非常に騒がしくなっているときに、日本側がイスラエルたると、あるいはエジプト、アラブ諸国たるとを問わず、そういう渦中に巻き込まれないように努めないと、せっかく中近東方面に貿易関係その他が好転してきた際に、それを阻害するような場合もあると思いますが、外務大臣としてはこの問題に対してどういうお考えを持っておられますか。
  184. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私もこの問題がもし具体的に起るならば、よほど慎重に取り扱わなければならぬと、こう考えております。
  185. 戸叶武

    戸叶武君 新聞ではかなり詳細にうがって書いておりますので、火のないところに煙は立たぬという言葉がありますけれども、カメラの工場から軍需品が出ていくとも思いませんけれども、とにかく非常に日本の今国際的な立場ということが列国から注目して見られているときに、平和憲法を持っているけれども、事実上は日本が再軍備体制に入ってきている。さらに一歩、憲法改正なんかでもってそれを強化しようというふうになっているときに、いろいろな点の疑惑が起るから、慎重にやってもらいたいと思うのですが、特に最近の電光外務大臣の議会の答弁を聞くと、日ソ交渉は交渉中だから、どの程度まで進んでいるのか、やはり話せないかもしれないが、国民には五里霧中の状態で、特に悪材料としては、結局あんなことをやっておって、鳩山さんが日ソ関係調整はやると言っているが、重光さんががんばっておって、事実上これはぶちこわしてしまうんじゃないかというこの空気が、どこへ行っても話題になっておるんですが、その辺のことに対していろいろほかの、電光さんのお話のあるところに聞きにいってみても、重光さんの真意というものがわれわれにもなかなかつかめないし、国民にもつかめないと思うのですが、方向と決意ぐらいは国民に示さないとどこの国の外務大臣かわからぬようになってしまうと思うのですが、その辺のところの心境を披瀝していただきたいと思います。
  186. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 今申されたことは、どういう意味をもって申されたか、私にはよくわかりません。わかりませんけれども、日ソ交渉については、これは今日まで一定の方針を持ってずっと進んで参っております。その一定の方針は、議会においても、本会議委員会において機会あるごとにはっきりと申し上げておる通りでございます。  そこで私としてどう考えておるか、私はそのときに申し上げておる通りに、なるべくすみやかに交渉を妥結に導いて、そうして平和条約を結んで国交を正常化したいと、こういうことであることは、もう繰り返し繰り返し申し上げておる通りであります。どうか誤解のないように、いろいろお骨折りを願いたいと思うわけでございます。これは国家的なことで、私はそれはそう申し上げるのは、決して党派的に申し上げておるわけじゃございません。いわんや個人的の関係で申し上げておるわけではございません。日本としてそう行くことが当然であると、こう考えて申し上げておるわけでございます。
  187. 戸叶武

    戸叶武君 平和条約を早期に妥結したいという考えはわかりますが、自民党から打ち出したところの領土問題に対する主張というものに制約せられて、結局前進できない状態にあるんじゃないか。われわれは、自民党が、虚脱の状態にあったときに、敗戦後において樺太、千島の領土権を社会党だけは主張しておったので、われわれの主張というものは、これは今後といえども捨てないのでありますが、それだけにこだわっておってこの日ソ関係の国交調整ができないのじゃないかという印象が特に深いようですが、その辺のところはどうなっておりますか。
  188. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 今私が申し上げた日本の主張は、これは国家的の主張であるということを申し上げました。私はそう解しておると申し上げました。それは今お話しの通りに、社会党もこれらの日本の旧領土を回復するということを主張するのだと今言われたことによっても、これは反映しておることでございます。しかし、それが全部私は符合しておるとは申しませんけれども、そういう気持は同じであると思います。ただそういうことでいつまでもこだわっておってはいかないから、今日どうしよう、こだわらぬ方がいい、譲れというような御趣旨であるとするならば、私は国家としての方針は実は立てるのも無益だと思うくらいであります。方針を立てた以上はそれを貫徹すべくあらゆる努力をするということが、われわれに課せられた任務でなければならぬ。それに向っては、私は政府だけでなく、議会にも、一般国民、世論にもそれを訴えたいのでございます。さようにして最善を尽して事を処理するということが、当然行くべき道であるのであります。私どもそういうふうにやっておる次第でございます。
  189. 戸叶武

    戸叶武君 前から幾度か聞きました場合にも、領土問題に対しては重光さんは非常に慎重であり、それは責任者として当然だと思いますが、問題は、領土問題をめぐってこの交渉というものが行き詰まってしまった感じがあるのでありますが、われわれが早期に日ソ国交調整を行えというのは、領土権を破棄しようというのではなく、日本の現状をもってするならば沖繩、小笠原が現実においてアメリカの占領下にあり、潜在主権というものは認められておるにしても、そういう状態にある、こういう場合においてソ連にだけ南樺太、千島を返せということは無理であるし、重光さん自身が、歯舞、色丹は北海道の一部であるという点は強く主張しておるが、国後、択捉の問題に対して言葉を触れるときにも非常に慎重な態度でやっておるのであって、そういう個々の問題は私はあまりつかないようにしますが、問題はこの解決の場というものは今ここでなくても、いろいろな方法が私はあり得ると思うのです。一番の失敗は、サンフランシスコの講和会議によってあの腰抜け外交をやったことは一番の失敗で、そのしりぬぐいを重光さんはやっておるわけです。ある意味においては私はお気の毒だとも思うのであります。しかしここでもって日ソ関係の国交交渉が頓挫して動きの取れないようにすることは、将来に禍根を残すのじゃないかと思いますが、その点はどうですか。
  190. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私はその御趣旨には少しも異存はございません。将来に禍根を残さないようにぜひこれは解決をいたしたいと、こう考えております。  ただ、それならば全部領土問題等について困難な問題はすべて譲ってやったらいいじゃないかという御趣旨ならば、これには賛成をするわけには参りません。これは日本の正当と信ずる今日の主張は、十分にこれを貫徹すべく最善の努力をしなければならぬと、こういうふうに考えております。それからアメリカとの関係を言われましたが、今御承知通りロシアと交渉しておるのでございますから、ロシアとの関係において日本の主張すべきは主張しなければならぬと考えますが、また、アメリカに対してはアメリカに主張すべきは主張して少しも差しつかえないと、こういうふうに考えております。
  191. 戸叶武

    戸叶武君 これ以上この問題を追及することはやめますが、いずれにしても、われわれがソ連と外交交渉をやる場合においても、アメリカとの関係を無視してソ連との外交交渉が進められるものとは考えられないので、ヤルタ協定のごときは重光外務大臣も認めることはできないと言っているように、われわれは認めることができないと思っている。しかしながらやはりアメリカ、イギリス、ソ連が組んでやったあの戦時中の軍事秘密協定というものの制約力は若干まだ残っておる形跡もあるので、そういうものをほごして行くのには、やはりソ連と交渉していくのだから、ソ連だけ相手に交渉していくということではいけないのではないかと思いますが、いろいろ水掛論になってはいけませんから、それで外務大臣に対する質疑は打ち切ることにいたします。  農林大臣にきょうは主として質問したいと思いましたら、農林大臣が御病気なので質問ができなくなったので、非常に時間もかかりましたから、要約して質問を農林大臣にかわる方にいたします。  日本の経済自立態勢を作っていくのには、やはり食糧自給態勢を作り上げて、そうしてその基盤を培養して行くことが第一だと思うのでありますが、ここ二、三年間の日本農政の動きを見ると、特に河野農政におきましては安い食糧を外国から買おう、国内の食糧増産は金がかかるから、土地改良その他もそう積極的にやらないで行こうというような態度が非常に強く見えるようでありますが、農林省は食糧増産に対して積極的な熱意を持っているのかどうか、そのことを簡単に伺っておきます。
  192. 大石武一

    政府委員(大石武一君) お答えいたします。農林大臣が風邪のため休んでおりますので、政務次官からかわってお答え申し上げます。  もちろん農林省といたしましても国内の食糧の自給ということを目指しまして一生懸命努力をいたしております。決してこれをおろそかにしているのではございません。
  193. 戸叶武

    戸叶武君 これは非常に捕象的な御答弁で、答弁にならぬ答弁であります。まあ大臣のかわりにだからやむを得ないと思うのですが、河野農林大臣は、今まで土地改良その他においていろいろな不正事件が起き、しかも大蔵省も開拓や土地改良なんというものは、金がかかる割の合わないものだからと言うように、進んでいない。そういう関係からそういうことをあまりやらないというような態度を示しておりますが、やはり土地改良を順調に進めれば、畑地灌漑にしても、あるいは湿田を乾田にする場合においても、これは二倍もの食糧が増産されるのは事実であります。ただ今まで結局資本の投下というものの不足から、補助金というようなものも不徹底なものであるから、結局こんな金じゃどうにもならぬ、何とかごまかさなければならぬというような不正事件というものが続出して、その結果評判が悪くなったのでありますが、そういう不正事件が起きる根底には農政の貧困があったのは事実なんでありますが、今度そういうような補助金制度を整理して、基金制度によってこれを運営して行くという方式を打ち出して来ておりますが、それによって所期の目的を十分に達せられると思っておりますか。
  194. 大石武一

    政府委員(大石武一君) お答えいたします。近ごろ土地改良その他につきまして、あちらこちらに不正事件が起っておりますことはまことに残念であり、申しわけなく思っております。農林省といたしましても、十分地方庁の方にまで監督の手を延べまして、今後はこのような不正、不当事件が起らないように一生懸命監督いたす所存でございます。そのためには、四月から農林省は十分な査察班を各地に繰り出しまして、その仕事の検討、その仕事の内容、あるいは計画というものを十分に検討いたす所存でございます。このような不正事件のために、土地改良にいやきをさして、力を入れないのだというようなお考えでございますが、われわれはそのようなことは毛頭考えておりません。土地改良は、やはり食糧増産の大きな要素でございますので、今までより以上に土地改良を進めて参りたいと考えている次第でございます。本年度の予算におきましても、昨年よりは実質的にも土地改良に対しては予算がよけいついていると考えておりますし、またその他のいろいろな融資の方面におきましても、大きな金が昨年出ているわけでございます。先ほど農業敬具基金のお話がございましたが、私どもは農村の補助政策、保護政策ということを決しておろそかにいたしておりません。御承知のように現在の日本の農村の経営規模というものは、きわめて零細なものであり、他の産業に比べまして、生産発展力というものはきわめて弱いのでございますから、われわれはこれを農村の自立、農家経営の自立というものをたかめるためには、どうしても今後も相当の保護政策というものを行わなければならんと考えております。ただ、今までのように零細な補助金を出さなくとも十分な融資でやれるような、十分に仕事ができるような事業に対しましては、農家の自立という意欲を高めるためにも、補助金制度を、融資の制度にかえたいと考えております。もっともこの融資も無利子でございまして、農家が返えせないような多額な金額ではございませんで、それによって十分な効果を上げ得ると考えている次第でございます。
  195. 戸叶武

    戸叶武君 時間がありませんから、最後に要約して一つだけ質問いたしますが、今の農政において、非常に重要性をもってきているのは、やはり農作物の価格の問題だと思います。米価及びその他の農作物の価格が安定しない限りにおいては、この農民の経済生活というものに安定感というものは与えられないと思うんです。で、この農作物の価格の安定に対する方式は、アメリカのような国においてもいろいろなされ、日本においても若干このごろ取り入れられておりますが、非常に不徹底だと思います。その不徹底なのは、アメリカ自身のやっているところの農業政策は、アイゼンハワーの年頭教書、農業教書においても見られるように、当初今まで行なってきたところの余剰農作物のはけ道を積極的に開拓し、ワクを緩和して行くという態度以外に、結局これほど、こんなに多くものが作られ過ぎては大へんだと、倉庫にも入れられない、外国にも売りつけられないという形において、結局生産制限を三制も行うようにした。しかし制限をやっても農民の犠牲になることなくして、国家がそれを補償してくれる。また土地銀行によるところの融資の方式も作り上げるというふうにして、農民の所得を減らさない、農民の購買力をおとろえさせない、そういう基盤の上にこのアメリカ産業の繁栄というものを維持しようとしているのでありますが、日本におけるところの米価及び農作物の価格に対する態度というものはこれとは違っていると思うんです。やはり河野農林大臣が安い外米麦を買い入れ、これによって消費者米価が高くなるのを適当に抑える操作の材料にするというようなことも、国会で述べておりますが、これは消費者米価だけの問題でなくて、結局米価の価格を抑えるための材料に使っているのは事実でありまして、かえって外国から受け入れるところの米麦の高かった場合においては、政府側においては米の値段を高くすると、諸物価を高めるから、この米価を高めることができないというふうに押え、今度は外国の方が安くなると、それの圧力によって日本の米価というものを押えて、そしてこの生産費を償う米価を決定してくれという生産農民の要求に対してそっぽを向いて、米価審議会の決定に対しても応じないというような態度を持っているのですが、このことは、河野農林大臣も一萬田大蔵大臣も、あるいは共通な基盤の上に立って、そういう政策を遂行しているのかと思うのでありますが、日本の国際収支のバランスを保つためには、輸出を盛んにしなけばならない、輸出を盛んにするには、よい品物を安く作り上げなければならない、それには諸物価を上げてはいけない、諸物価が上る原因を作るところの米価を押え、あるいは労賃を押えるというような、低米価賃金政策によってコストを引き下げて、そうしてデフレ政策を遂行していこうという、こういうやり方のところに非常に無理があるのではないでしょうか。そうしてこの日本の国民の四割三分を占めるところの農民の購買力というものが減退する危険性が非常にある。今豊作だからよいというようなことを言っておりまするけれども、こういう状態を見ると、農民の資本の蓄積も、再生産に必要な金も得られなくなると思いますので、こういう政策を今後といえどもやっていくか、もっと農民の生産に必要な飼料を下げたり、肥料を下げたり、そういうふうな施策をやっていくか、その点を明らかにしてもらいたいので、河野農林大臣は、硫安を六月に下げると言っておりましたが、これはどの程度下げるのか。また砂糖の問題でも、三十億取られたら、急に今度は、砂糖の値段が高くなって、それを業者が回収して消費者の方に転嫁しようとしておる。こういうようなやり方では、政府の施策というものはほんとうにむちゃくちゃじゃないかと思いますが、一萬田さんからこれに対する御答弁を願います。
  196. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私から申し上げるまでもありませんが、この農産物の価格、あるいはまた農業に対する政府の施策が、全然国際主義に立脚しておるということは決してありません。農業の日本経済における地位、または総生産に対する農業生産物の関係、あるいはまた人口問題等からしまして、農業の、特に食糧の自給量を高めることに努めておりますことは御承知通りであります。なおまた価格の点について見ましても、たとえば外国の米とかその他の農産物が安いから、その価格がすぐ日本の農産物の価格に影響があるのでなく、むしろそれを遮断しておる状況であります。価格が形成されておることは御承知通りだと思います。
  197. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは一般質疑は、羽生君の質疑を残しまして他は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。  土曜日の十八日午前十時より質疑を続行いたしまして、討論採決をいたします。    午後四時五十五分散会