○秋山長造君 私は、本朝来の本
議場が、警察官の重囲の中に、あたかも戒厳令下のごとき、まことに芝居がかった、ものものしい雰囲気のもとに、きわめて一方的、
党利党略的な
議長の
国会法並びに
議事規則を全く無視したところの、きわめてへんぱな、しかも強引な
議事運営によって進められつつあることを、衷心より遺憾とするものであります。(
拍手)
第一、今、
議長席に着いておられるところの
寺尾副
議長に対しましては、けさほど、わが党から不信任案が提出され、そして事務総長が
議長席に着かれまして、そして仮
議長の
選挙をやっておったのであります。従いまして、副
議長の不信任案は、すでに
審議の途中にあった。そこに、のこのこと
議長が入ってきまして、交代したものと思ったら、いきなり、すでに
審議中の副
議長不信任案を破って捨てて、そして独断的にわれわれの不信任
動議というものは、うやむやに破棄されてしまった。さらにまた、その次にわが社会党から、
松野議長に対する不信任
動議を提出いたしました。不信任案というものは、およそ一切の案件に先だって先議せらるべきものであることは、
国会法におきましても、
議事規則におきましても、これは炳乎として一点疑う余地のない大原則なんです。(
拍手)しかも、
混乱の中に、手から手に手渡されたというようなものでなくて、周到なる手続を経て、そうして事務から事務総長へ、そうして事務総長の手から、静粛裏に、平和裏に、成規の手続をとって
松野議長の手元に手渡されておるのであります。にもかかわらず、
松野議長も、これをもみくちゃにして、あえて取り上げないし、さらに、これに代って
議長席に着いたところの、
議事運営のベテランなりと称せられているところの
寺尾豊副
議長も、また成規の手続をもって
議長の手元に提出されているところの、当然、
松野議長から申し送られているところの
議長不信任案は、いまだにこの期に及んでも、どういうわけか、言を左右にして、あえて
議事規則に従わず、
国会法を無視して、そうして与党自民党の一方的なる
議事運営のコースに乗って行こうとされるのであります。そういう
国会法を全く無視した、
議事規則を頭から無視したところの、きわめて横車的な
議長のやり方に対しまして、私
どもは衷心より痛憤を感ずるものであります。(
拍手)
従いまして、こういうむちゃくちゃな
議長のもとで、私はものを言うのは、はなはだ不愉快でありますけれ
ども、しかしながら、ものを言わねば、ますます皆さんは多数を頼んで、図に乗って、一瀉千里にこういう重要な問題を、重要
法案を片づけてしまわれると困るから、やはりお互い、かわいい子供を持った親である、
国民の一人一人の
立場に立つときに、あえて私はこの不愉快な感情をかみ殺し、
議長の
横暴なやり方に対する痛憤を腹の中におさめて、あえて
登壇をして、この重要な
教育委員会の
法律の問題について、ただいまの加賀山委員長の中間
報告なるものに対して、若干の質疑をいたさんとするものであります。(
拍手)
まず、第一に申し上げたいことは、
一体今回のこの
教育法案なるものは、私
どもの子弟を預かるべき
日本の
教育行政の基本を定めておるところの
法案であることは申すまでもございません。きわめてこれは重要な
法案です。
日本の百年の運命を左右するほどの重要性を持った
法案なんです。こういう
教育の基本を定めるところの
法律案の
審議は、およそ
教育とは似ても似つかぬところの制服で、あごひもをかけたところの、ものものしい警察官の重囲のもとに、戒厳令下のごとき、ものものしいこの空気の中で
審議されるということが、
一体日本の
教育のために喜ぶべきことでございましょうか。私はこういう空気の中で、この重要な
教育法案が
審議されるということは、とりもなおさず、この
教育法案なるものは、すでに生まれる前から、何か警察権力的ないわく因縁につきまとわれておるところの、きわめて不明朗な
法案であるかの印象を濃くせざるを得ないのであります。(
拍手)まさに本
法案は、後ほど言及いたしますごとく、すでにその生みの悩みの当初におきまして、きわめて陰惨な不明朗な影を宿しておる。いわば、のろわれたる運命をになっておる
法案ではないかと断言しても、あえて過言ではないと思うのであります。(
拍手)
警察と
教育、およそこれほど相隔たった概念はございません。ところが、故意か偶然か知らぬけれ
ども、今度の
教育法案の内容をぺらぺらとめくってみますと、見のがすことのできないこういう一点がある。今日までの制度のもとでは、小学校、中学校の校長先生、あるいは地方の
教育行政の事務を預かっておるところの
教育長、こういう人たちの任用には、
教育公務員特例法によって一定の資格要件というものを必要としたのです。だれでもはなれなかった。ちょっと警察署長を、教員を取り締るのに便利だからといって引っぱってきて、
教育長にしたり、校長にしたりすることはできなかったのです。やはりそれ相当の
教育的な素養、資格要件を持った人でなければできなかった。ところが今度の
法律案を見ますというと、そういう資格要件は一切外されてあるのです。従いまして、校長にだれをもってこようと、
教育長にどういう人をもってこようと、一にかかって
教育委員の胸三寸にある、大いに特高的な取締りを旨としようという方針ならば、警察署長上りの人を持ってきてもよろしい、あるいは、昔、特高警察をやっておったような人を連れてきてもよろしいのです。しかも従来は、地方の
教育委員会が独自の権限で任命できておったところの
教育長というものは、市町村の
教育長は、都道府県の
教育委員会が承認をしなければ任命できない、そこで
一つくくられておる。また都道府県の
教育長の任命には、文部大臣の承認が要るというところで、首根っ子を
一つ押えられている。これはもう、体のいい、上意下達ということが
戦争中言われましたが、全く上意下達の
教育行政なんです、今度は。しかも今度の
法案の
審議に当って、特に問題となりましたところの五十二条という条項があるのであります。これは、文部大臣の地方
教育委員会あるいは地方公共団体の長に対する措置要求権ということを規定した条文なんです。どういうことかと言いますと、地方の府県知事や市町村長、あるいは地方の府県の
教育委員会や市町村の
教育委員会が、
教育的に見て適当でないことをやっておると認めたときには、文部大臣がこれを是正しろという措置要求ができる。事によったらみずからやれると、こういうきわめて強力な権限を文部大臣に与える規定なんです。
先ほど私が申し上げました点、あるいは今申しました点、さらにまた、三十三条というところで、しばしば問題になっております学校で教員が教材を使うときに、一々
教育委員会の
許可を得なければならないという条文がございます。これも非常に問題なんです。教材というものは森羅万象すべてが教材なのです。昔の
教育のような、まるで木か石のような、木石のような、死んだ灰のような、味もすっぱもない教材ではないのです。今日の
教育はきわめてバラエティに富んだ、生気あふるる、豊富な、森羅万象すべてのものを教材に使って行くという
教育になっておる。その日の学校放送、その朝の新聞その他あらゆるものを使う。一々
教育委員会に届け出て、
許可を得なければならないということで、この豊富なバラエティに富んだ新
教育というものができますか。(
拍手)たちまちにして、これは枯木のごとく枯れてしまうことは火を見るごとく当然なんです。その他いろいろな点を総合的に見ますというと、どうも今日まで、横と横との関係で、
教育行政が地方分権と地方の自主性というものが建前になって行われておったのが、文部大臣、そして府県の
教育委員会、市町村の
教育委員会、そうして現場の教員、全く上意下達、上から下への命令監督、指揮服従という関係においてつながれようとしておるのであります。で、こういう点は、幾らここで繰り返し強調いたしましても、強調し過ぎるということはございません。
そこで私は、加賀山文教委員長に対してお尋ねしたいことは、加賀山文教委員長は、従来から文教委員といたしまして、この
教育問題に対しては相当の抱負と自負とを持ってこられたやに聞いておるのでありますが、ただいまの御
報告によりますと、加賀山委員長御自身も、今日までの、現行の
教育委員会制度よりも、今度の
教育委員会制度の方がいいようなお話がございましたが、加賀山委員長御自身は、この点につきまして、いかようにお考えになっておるかということを、まず御質問したいと思うのであります。
第二は、ただいまの加賀山委員長の
報告によれば、大体
政府与党の線をそのまま受け売りされまして、ただいま提供されておるところのこの
法案が、あたかも金科玉条であるかのごとくおっしゃったけれ
ども、われわれ漏れ聞くところによれば、緑風会におきましては、この
法案には、ただいま私が申し上げた点をも含めて、いろいろと非常な危険性がある。そこで、これを相当大幅に修正をしたいという話があったやに承わっておる。そして現実に、その修正点を盛り込んだところの相当大幅な修正案さえも準備されたやに聞いておるのでありますが、その修正案なるものが事実あったのかどうか。そうしてまた、その内容はどういう点だったのか、そしてまた、それがもし事実とするならば、緑風会自身ですら、良心的に考えた場合には、この
法律をこのまま素
通りさせたのでは、非常に
日本の
教育のために危険であるということをお認めになっておることになると思うのでありますが、その点はいかがお考えになっておるのでございましょうか。(
拍手)
さらにまた、聞くところによれば、緑風会が立案されたところの修正案について、
政府与党との間にも、いろいろ意見の調整が行われたやに聞いております。そして緑風会の最初の原案
通りではなかったけれ
ども、緑風会の原案に盛られた幾つかの問題点の中の、その中の幾つかについては、
自由党の方もこれをのもうという腹を一度はきめられたやに聞いておりますが、もしそういう点も、委員長から承われるならば、この際われわれは参考のために承わりたい。そしてまた、それが事実であるとすれば、これをしゃにむに多数の力をもって強行されようとしておるところの
政府与党の部内ですら、この
法案をこのまま素
通りさせたのでは、ちょっと行き過ぎではないか、ちょっとこれは危ないぞということをお気づきになっておるこれは証拠だと思うのでありますが、その点についても、
一つ率直に御意見をお伺いしたいと思うのであります。
さらに、ただいまの中間
報告におきましては、きわめて事務的な
報告に終始されまして、何ら今回のこの大きな
法律案のはらんでおるところの重大性というものが盛り込まれていなかったのであります。
そこで、お伺いしたいのでありますが、今春来、この
法案をめぐりまして、各方面にごうごうたる世論が巻き起っておることは、加賀山委員長御存じの
通りであります。特に三月十九日に、東大の矢内原総長初め十人の大学総長クラスの学者の方々が、文教
政策の傾向に関する声明という共同声明を発表されまして、そうしてこれが
一つのきっかけになって、全国至るところの
教育関係の団体あるいは大学教授の団体、さらにまた婦人団体、青年団体、PTA、さらにまた全国の新聞社説、こういうものが、もう筆をそろえて、この
法案に対する疑問と不安と憂慮の情を表明されておるのでありますが、これらの点を加賀山委員長は、委員長個人として、また文教
委員会の
審議の過程において、どのように批判検討をされたかどうか、この点についても詳細お承わりいたしたいと思うのであります。
さらにまた、この
法案が
衆議院から
参議院へ回って参りましたときに、世間の声は、
衆議院では、いろいろな問題でごたごたしたために、この
法案の
審議がごく上っつらだけに終って、
ほんとうに内容に入った、実質に入ったところの
審議というものは、ほとんどなされていなかった、現に逐条
審議のごとき、わずかに第七条までしかやっていない、この
法案は、本法が八十六カ条、そして付属
法律、この
法律の
施行に伴うところの、
関係法律の整理に伴うところの
法律案、つまり付属法規が二十カ条、合わせて百六カ条という膨大なる
法案、きのう来の皆さんのお話によりますと、あの破防法は、これはごくわずかな条文です。あのわずかな条文の破防法ですら、当時八十数日の
審議日程をかけられたということを聞いたのであります。でございますから、この大きな
法案、しかも、ただいま端的に申し上げましたような、
日本の将来を左右するところの、この重大な内容を含んでおるところのこの
法案の
審議でございますから、
衆議院のようなやり方では、これはとても世論が満足しない。そこで世論は、
衆議院の
審議によって裏切られたところの期待を、すべて今後
参議院の慎重
審議に集中して参りました。そしてその世論の期待のさなかにおいて、加賀山委員長が脚光を浴びて文教委員長として登場されてきたのであります。加賀山委員長も、相当な抱負を持って就任されたと思う。四月二十日に、私
どもは文教
委員会において、加賀山委員長のごあいさつを受けました。非常に加賀山委員長は張り切られまして、そうして皆さんととも
どもに、手を握り合って、皆さんの批判と指導とをよく聞いて、謙虚な気持で自分は自己反省をしつつ、この
法案の慎重
審議、世論の期待にこたえてこの
法案の慎重
審議に、一般質問から逐条
審議、徹底的にやりたい、やりましょうということだった。