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江田三郎君 ただいま問題になりました決議案は、
本院は、事務総長芥川治君を不信任する。
右決議する。
理由は、「事務総長芥川治君は参議院事務総長として国会法、参議院規則等諸規則に通じ正、副
議長を補佐し、院の円滑なる
運営に責任を負うべき立場にあるにもかかわらず、
議事の
運営、衛視の使用等にしばしば誤りを犯し、混乱におとしいれたるは誠にその責任重大である。よって本院は、事務総長芥川治君を不信任する。」というのであります。
そこで、そもそも事務総長とはどういう役をするかということでありまして、事務総長芥川治君は、今は事務次長がすわっておりますが、この席にすわる人であります。
事務総長というものは、これはよく誤解があってはなりませんから、念のためはっきりしておきたいと思うのでありますが、これは
昭和二十二年四月三十日
法律第七十九号の国会法による職務なのであります。で、この国会法は
昭和二十二年十二月法百五十四、
昭和二十三年七月法八十七、
昭和二十三年十月法二百十四、
昭和二十四年十月法二百二十一、
昭和三十年一月法三、こういうようにたびたび
改正をされておりますが、この国会法は、第一章から第十八章まであります中の第三章が、「役員及び経費」というのであります。その第三章の第十六条に、「各議院の役員は、左の
通りとする。」となっておりまして、そこに、わかりませんか。(「わからない、大事なところは二回繰り返して下さい」と呼ぶ者あり)のどが痛いんですから、あまりしゃべらさぬようにして下さい。なるべく簡単にやりたいですから……。(「水を飲んで」と呼ぶ者あり)あとで飲みます。
第十六条の「各議院の役員は、左の
通りとする。」それが、一が
議長、二が副
議長、三が仮
議長、四が常任委員長で、五が事務総長であります。そこで事務総長というものは、この国会法第十六条に規定するがごとく議院の役員でございますから、
諸君の、議員よりは一段高いこの位置にすわるのであります。その点につきましては、役員だから上に上るのがいいか、あるいは役員も、もう少し下の方へおりるのがいいかということは、いろいろ諸国の制度を検討いたしますと問題があることでございますが、わが日本の参議院という所は、衆議院の方は別にいたしまして、この参議院は貴族院以来の伝統を持っておりますので、だいぶこの事務総長のいすの位置が高いようでございます。そういう高い所にいすがあるということは、
議場混乱の際、いすのひっくり返るおそれもあって(笑声)、先ほどさようなことを散見いたしましたが、将来一つ、これは検討をすべきものと存じます。
そこで、いよいよもう少し進めて行かなければなりませんが、そもそも事務総長とはどういうものであるかといえば、第十六条の役員でありますが、第二十七条によりまして、「事務総長は、各議院において国
会議員以外の者からこれを選挙する。」ということになっております。従って事務総長芥川治君は、国
会議員ではないのでありまして、国
会議員以外から選挙されておるのであります。選挙ですよ、間違えちゃいけません。羽仁君のような学識経験者におきましても、事務総長がいかなるものであるかということがおわかりにならないことは、私は非常に遺憾とするところでありまして、従って私は、この国会法に基いて、まず事務総長とはどういうような仕事をするかということをはっきりしなければ、なかなか先へ進まないのであります。いやしくも人を不信任するということは、これはその人の将来にとりまして重大なことでございますから、一体事務総長ならば、どの程度の欠格条項があれば不信任していいかということを考えるのに、そもそも事務総長とは何であるかということが羽仁君のような人でもおわかりにならぬ。それでは誤解を起しますからして、私は、あえて事務総長とは何ぞやということを、
諸君が手元に持っておられます国会法に基いて、一番間違いのない説明をしておるのでございます。そこで……、どこまでいきましたか、ちょっと忘れましたが、(笑声)第二十七条で「選挙する。」となっておりまして、その選挙された事務総長は、「
参事その他の職員は、事務総長が、
議長の同意及び
議院運営委員会の承認を得てこれを任免する。」というのであります。従って、ここに並んでおるところの
参事にいたしましても、今、事務総長のかわりに席についている河野事務次長にいたしましても、この衛視
諸君にいたしましても、あるいは
諸君がお茶を持ってきてもらうあの人にいたしましても、エレベーターの職員は何人おるか知りませんが、あのエレベーターの女の職員にいたしましても、あるいはたばこを吸うたときのあとを掃除してくれる人も、これまた何人おるか知りませんが、ことごとくこれは第二十七条の後段によりまして、「事務総長が、
議長の同意及び
議院運営委員会の承認を得てこれを任免する。」と、私は解釈するのでございます。ただしかし、ただいまの私の解釈につきましては、「
参事その他の職員は、」とありますのが、その辺でたばこの吸いがらを集める人も職員という名になっておるかどうかということが、これは多少疑問の存するところでありまして、もし、これにつきましては、
諸君の中で御疑問等がございましたならば、事務当局をして答えしめたいと存じますから、その点はそのままにして、前に進みたいと思います。
そこで、どういう仕事をするかということの中で、
参事その他の職員を任免するということは、ただいま私が申し上げた
通りでございますが、第二十八条によりますと、「事務総長は、
議長の監督の下に、議院の事務を統理し、公文に署名する。
参事は、事務総長の命を受け事務を掌理する。」こうなっておりまして、ここのところがちょっと問題なのであります。というのは、「事務を統理」するという言葉と、「事務を掌理する。」という言葉があります。統理の「とう」は統制の「統」、掌理の「しょう」は「たなごころ」この統制の「統」でいく統理というのと、「掌」の下に理のついている字句とが、どれくらい違うかということが、これまた疑問の存するところでございまして、この点につきましては、また疑義がございましたら事務当局に答えさせることといたしまして、私の提案理由をもう少し続けて行きたいと思います。(拍手)
そこで、この統理、掌理という問題がございますが、「事務総長は、
議長の監督の下に、議院の事務を統理し、公文に署名する。」という役割を持っておるわけでありまして、従って、統理というものがどういうことかは別にいたしまして、なかなかこれは大へんな仕事でございますからして、この第十六条によって国会の役員となっておるのであります。そこでこの事務総長に、こういう役員に事故があったときにはどうなるかというと、これは明らかに第二十九条にきめてありまして、「事務総長に事故があるとき又は事務総長が欠けたときは、その予め指定する
参事が、事務総長の職務を行う。」、ただいま河野事務次長がこの席についておりますのは、二十九条によってやっていることでございますから、これは河野君の間違った措置ではございませんから、御安心を願います。なおまた、
議長としても、これにつきましては私は責任がないと思います。第二十九条によって、事務総長に事故があるから、河野事務次長がここにすわっておるわけであります。
それで、そもそも国会法のどことどことに事務総長の規定があるかということは、私もちょっとよくわからぬ点があるのですが、次に国会法を受けますところの参議院規則によりますというと、これは
昭和二十二年六月二十八日の議決による参議院規則、その後、
昭和二十三年十月十一日、
昭和二十四年十月二十六日、
昭和二十五年七月十四日、
昭和二十六年十二月十五日、
昭和二十七年十月二十四日、
昭和三十年三月十八日、これだけちょっと日付を早く申しましたから、お聞き取りにくかったかもしれませんが、もう一ぺん重ねて申しますと、
昭和二十三年十月十一日、
昭和二十四年十月二十六日、(「早い、早い、わからぬ」と呼ぶ者あり)
昭和二十三年十月十一日、よろしいか。(「明瞭々々」と呼ぶ者あり)
昭和二十四年十月二十六日、よろしいか。(「よろしい」と呼ぶ者あり)
昭和二十五年七月十四日、(「よし」と呼ぶ者あり)
昭和二十六年十二月十五日、(「よろしい」と呼ぶ者あり)
昭和二十七年十月二十四日、(「よし」と呼ぶ者あり)
昭和三十年三月十八日、(「よし」と呼ぶ者あり)こういうように、これはしばしば
改正になっておるということは、この規則もなかなか欠陥があったんだろうと思いますが、今のところ、これに欠陥があるかどうかはよくわかりませんが、(「どういう理由で
改正したのか、それを説明されたい」と呼ぶ者あり)その点は、もう羽仁君から御質問がございましたならば、詳細事務当局にお答えさせますから、私の
発言をあまり妨害しないようにしていただきたいと思うのであります。一体この事務総長が、大事なことでありますから申し上げておきますけれども、芥川治君が不信任ということになると、あとの後任の選挙をしなければならぬのであります。あなた方の中には、芥川君を不信任すると、もうこれで
運営がとまってしまうのじゃないかというようなことをお考えになっている人があるかもしれませんが、そうではないのでございまして、芥川君の不信任案が通過いたしましたら、たちどころにこの参議院規則によって選挙をいたしますからして、その点は遠慮なしに不信任に御
賛成願いたいと思うのであります。(「時間がたったぞ」「今のところは序論だ」と呼ぶ者あり)結論を急げといったところで、簡単な結論をして、人の一生にかかわるようなことに誤解を起さしてはならぬことでありまして、そういうことはやはり慎重にやらなきゃなりません。(「
議長注意」と呼ぶ者あり)その辺からあまりヤジを言うので、参議院規則のどこに何があったかわからぬようになっちまう。(笑声)提案者の頭を混乱させぬように御注意願いたいと思うのです。
これはあとでまた参議院要覧のことに触れるといたしまして、そもそもわれわれが、こういうような国会役員でありますところの芥川君を、なぜ不信任を出したかということであります。芥川君は、しばしばここにすわっておりましたからして、皆さんもよく御承知と思います。なかなかりっぱな人柄であります。まずイギリス流の紳士というところでございましょうか。こういう点は外交官の小瀧君あたりに鑑別をしてもらった方がいいと思いますが、まず相当な紳士だろうと思います。どうでしょうか、小瀧君。(拍手)一体そういう紳士とは思いますけれども、なおまた単なる、紳士というのじゃなしに、芥川君はロマンス・グレーでありましてもこの点なかなかよろしいところがあと思います。近ごろはこのロマンス・グレーというものがなかなか魅力があるということになっておりますので……、この大事な提案のときにだんだん退場する人があるということは、私もまことに残念に思うことでありまして、これは一つ
議長の方でよろしく御注意を願いたいと思うのであります。(拍手)私が、人の一生にかかわることを提案しているのでございますからして、これは首尾一貫、前後を終始お聞き願って、それから御判断を願わなければ、途中で立って、まん中の大事なところを切られたために誤解をされて、皆さんが不信任すべからざる者を不信任したり、不信任すべき者を不信任しなかったということでは、これはその人、芥川君個人のためにも、また議院の
運営、今後の問題につきましても、いろいろと、悪影響があることでございますから、これは一つ慎重にお聞きを願いたいと思います。残念なことには、この間うちの国会で、いろいろございましたので、私も少々のどを痛めまして、声が少しかれましたが、これは少しごしんぼう願って、私の毎日の精励恪勤によるところの、こののどの痛め方でございますから、御容赦を願いたいと思うのであります。
そこでこの、(「討論終り」と呼ぶ者あり)討論ではない、
佐藤君でもお間違いがある。私は提案理由の説明をしているんであって、あなたがすぐに、私のを討論とお聞きになるようなことだから、私が繰り返して慎重にお聞きを願いたいと言っておるのであります。その点は
佐藤君もよく御注意を願いたいと思います。
それで、芥川君はなかなかの紳士でございます。昔の貴族院の時代でも、これぐらいの容貌端麗なイギリス流の紳士、しかも顔色を見ますというと、絶えず処女のごとく、ほおを桃色に染められておりまして、こういう点、しかも先ほどちょっと申しましたが、ロマンス・グレーでもありますし、なかなかこの席に置くのには、りっぱな格好がついた人だと思います。それなんですよ、その格好だけではいかぬというところに問題があるわけで、私がこの議席からつらつらと芥川君の面相を観察いたすところによりますと、この芥川君はまことに正直な人である。その点においては間違いない。ばかをつけるか、つけないかは
諸君の勝手でありまして、私はそういう言葉を使っておりません。芥川君は正直な人であると言っておるのであります。私は少くともそう見受けるのであります。従ってこの人は、もし
諸君が不信任を、これを通過させて、この席からほかの席へ移ってもらうようなことがありましても、正直な人でありますから、なかなか使い道はあるだろうと思います。その点は一つ御遠慮なしに不信任案に
賛成を願いたいと思うのであります。(拍手)同時に、しばしばこの退職官吏というもの、これは役員ですから、官吏かどうかちょっとよくわかりませんが、こういう大事な仕事を退職した人は、この在任中にいろんなコネクションを持っておりまして、退任するとあやしげなことをやる。中には退任いたしましても、自分の住んでおる公舎だけでも、一つ勝手に使うというような、これは一番小さい悪事とは思いますけれども、そういうことがあるんでございまして、(「交換はないか、交換は」と呼ぶ者あり)参議院の場合に公舎の交換があるかどうかということは、寡聞にして私は知りませんので、そういう点につきまして、
諸君のもしお疑義がございますならば、後刻御質問下されば、事務当局に詳細にお答えさしたいと思います。
大体正直な人であるとは思いますし、また悪いことができる人ではないと思いますけれども、ずっと観察をしておりますというと、この人はどうも、先ほどいすがちょっと倒れましたけれども、いすの倒れるような傾向があると思うのであります。というのは、あらしに対して弱いということなんであります。容貌端麗にいたしまして、なかなか事務能力にすぐれておりますけれども、世の風に対しては、きわめて抵抗力が弱いということで、この点は、事務次長河野君に至りましては、次長ではございますけれども、これは大したものでございまして、この点は、いかなるあらしが参りましても、何かいたしましても、一番隅っこで、じっとからだを持ちこたえて、けがも何もしないでいるというほどの、この処世の術を心得ておるのでございますが、芥川君の場合には、どうもそういう点につきましては、私は疑問だと思うのであります。