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東隆君 私は、提案理由の
説明に先立って決議案を朗読いたします。
決議案
本院は、
国務大臣河野一郎君を戒
告する。
右決議する。(拍手)
非常に重要な案件でありまするから、もう一度決議案を朗読いたします。
決議案
本院は、
国務大臣河野一郎君を戒
告する。
右決議する。
私は、あえて二度決議案を朗読いたしたのでありまするが、この問題は、きわめて重要な問題であり、一人の人、人格を持った人に対するところの問題でありまするから、詳細にわたって
説明をすることが、御本人にとって当然のことであろうと思うのであります。しかるに、先ほど
動議を出されまして、十分間、こういうような
制限をせられたのであります。これははなはだしい、戒告を受けるところの人に対するところの非礼であり、議会としてこれは許すことのできないことであろうと思うのであります。(「その
通りだ」と呼ぶ者あり、拍手)
昔、十銭均一という店がございました。その中には大へん品物のいいものもございました。しかし、きょうの、十分にすべて均一にしてしまうというこのやり方は、これは、はなはだしいものであります。提案をされました、
動議を出されました
川村松助君は呉服屋さんでありまするから、私は布について、御商売をやっておるところの品物についてお話を申しましょう。御商売をなすっておるところの反物、これを十センチずつに切って、そうしてものの役に立ちましょうか。こういう明々白々なことを、国家の最高機関であるところのこの国会に
動議として出されておる。これは私は、後世歴史をひもとく者に、はなはだしいその当時におけるところの政治的な意識の低い者がおったということを証明するものであろう、こう考えるのであります。(拍手)私はそういうような意味において、きわめて卑近な例をとりました硬あるいは
川村君に非礼かもしれませんけれども、私はこのことを最初に申し上げて、私の
趣旨弁明を進めようと思うのであります。
河野農林大臣に対する戒告に際して、非常に心配をされて鳩山首相が見えております。目の中に入れても(「痛くない」と呼ぶ者あり)痛くない、こういうような河野農林大臣、これに対して戒告の決議をするというのでありまするから、御出席は当然でありましょう。また、河野農林大臣は、外交方面のことを、これは商売違いではありますけれども、非常におやりになりました。そして外務大臣河野
一郎、こういうふうに世間の人は言うのであります。(「外務大臣いない」と呼ぶ者あり)従ってきょうは外務大臣も出席をされるはずであろうと思いますが、本物の外務大臣を横に置いて、私はこれを、
趣旨を弁明いたしたいのであります。しかし、ただいま議席におらぬようでありますが、即刻出席をするように、私は
議長に要請をするものであります。
そこで
説明をいたしますが、昨今の河野農林大臣の行動は、私は奇怪きわまるものがあると思うのであります。二十六日のアメリカからの帰国に際して、万に余る人々のお迎えを受けたため逆上しておったようでございます。この国の国務大臣であることを忘れて、ラジオの声優、テレビのスター、新聞の寵児になったがごとききらいがあります。昨晩の河野農相のラジオの声優ぶりは、遺憾ながら、国会が深更に至ってついに延会するという状況であったため、私は聞き漏らしてしまいました。また、テレビのスターぶりも見ることができませんでした。新聞の寵児ぶりは、俗な言葉で申しますると、売れっ子でありますが、その売れっ子ぶりは、けさの各紙の朝刊を見るに及んで、私はあきれてしまったわけであります。さすがはその昔、朝日新聞の記者をやられたためだと、つくづく思わせられたのであります。記者くずれとは申しませんが、記者上りの農林大臣は大切なことが抜けてしまいました。よくもぬけぬけと座談会に出演されたものだと思わざるを得ません。議員
諸君は、本日の朝刊に目を通されたと思いますが、本日の日本経済新聞は、二面を全部使って、「モスクワ交渉の疑点を衝く」と題しまして、河野農相と
佐藤榮作氏の対談を掲げています。
佐藤榮作氏のことについては、
諸君はもう十分に御承知の方であります。かつて汚職に非常に関係をされた人と、二人相まみえて、そうして座談会をされておるのでありまするが、これは、きわめて大きな活字で書かれておるのであります。六段抜きというような大きな活字でもって書かれておるのであります。また、本日の毎日新聞は、その一面に、「河野農相
日ソ交渉を語る」と、こう題して、毎日の
松岡政治部長、滝本経済部長を聞き手として農林大臣が答えている。この方式でもって、一面全部を使って座談会の記事を編集をいたしておるのであります。また読売新聞は、「
日ソ交渉の新情勢」と題して、河野農相と淺沼社会党書記長の対談を掲げております。これは三十日に上の部が出ているのでありまするから、二十九日以前にこの対談をやったに相違ないのであります。朝日新聞は、三十日の朝刊の一面に「
日ソ関係の出発点」の4として、モスクワ交渉結果を一問一答の形式でもって編集をいたしております。こういうような記事を見ましたときに、新聞の売れっ子河野農相、こういうことがはっきりと皆さんはおわかりになるであろうと思います。しかしながら、一国の国務大臣が、国会で
報告することをやめて、新聞を優先したことの奇怪な行動の中に、これこそ私は糾弾しなければならぬ。ことに本院は、このことによって大いなる権威を汚されたものであると考えざるを得ないのであります。(拍手)国民に私は放送することも、これはよろしいと思います。テレビに出演することも私はよいと思います。新聞に出ることも私はよいと思います。しかし、前後をわきまえない行動は許すべきものではないと思います。国会に
報告することをせず、報道機関を優先せしめたことについては報道関係者も驚いておるのであります。東京新聞の二十九日の夕刊を見ますると、すでに二十九日に河野農林大臣は、明らかに参議院で
報告をしたように新聞では編集をされておるのであります。これが少くとも報道人の常識なのであります。この常識をはずれた行動を、ここに私は実に嘆かわしい、当然戒告をしなければならぬところの明らかな原因があると、こう考えるのであります。(拍手)
昨日、本院の本会議において、農林大臣は
日ソ交渉の経過
報告を行うことを通告し、その
発言を求められたにかかわらず、定刻に至るも登院いたしません。この河野農相の行動に対し、与党の自民党はろうばいをし、緑風会はあぜんとし、わが社会党は、本院の
議事日程に支障を与えたこの行動は、立法府の権威に対する非礼きわまる行為であるとし、わが党の
諸君は、私をして
国務大臣河野一郎君を戒告するの決議案を上程せしめたのであります。(拍手)
しこうして、事のここに至るまでには次のごとき経緯があるのでもります。河野農林大臣の
報告を聞くことについては、河野君が、なおアメリカに滞在していた本月の二十四日に決定をみていたのであります。その日時は、昨二十九日に予定されておりました。衆議院は与野党一致して、本会議で
報告を聴取するとの約束を政府といたしていましたし、本院においても、当時すでに政府に申し入れ、衆参、相前後して
報告を聞くべきであるとの了承を得ていたはずであります。このことは、政府もよく承知し、河野農林大臣も十分承知しているはずであります。しかるに、河野農林大臣は、本月二十六日に帰朝しましたが、政府からは何ら国会に
報告するとの申し出がありません。よってわが党は、河野農林大臣の
報告方を督促をいたしました。しかしこれに対し、
報告の準備ができないとの理由で昨二十九日に至ったのであります。昨日の午後一時半過ぎの議院運営
委員会の理事会で、十一時五十九分、政府より文書をもって、河野農林大臣による
日ソ漁業交渉経過
報告を本日の本会議にいたす旨の通告に接したとの
報告がありました。しかし、当時わが党の議運理事の
諸君は、報道関係者から、河野農林大臣は本日の午後三時以降、引き続き新聞、ラジオ、テレビ等の座談会に出席を約束していることを知らされておりました。従ってわが党は、河野農相は衆議院の本会議のあとに本院の本会議に臨むことは事実上不可能であり、本院において
報告する意思は全くないものと判断しました。そこで、二十九日を指定した本会議
報告は、本院に対するゼスチュアのみであることを、議会運営
委員会において与党の理事
諸君に指摘したのであります。これに対して与党理事
諸君は、必ず本院においても
報告させると確約したので、議会運営
委員会に臨んだのであります。同
委員会においては、人事承認案件等について慎重に
審議しておりますその途中において、政府は松本官房副長官をして、河野農相の
報告はできるだけすみやかに本会議において行い得るよう配慮されたい旨の申し出があったのであります。そこで、わが党は、他の案件の
審議を打ち切り、本会議に臨むこととし、すでに
日程に掲げられた案件の前に河野農相の
報告を聴取することをやむなく承認し、政府与党の理事に協力したのであります。しかるところ、即座に開かるべき本会議は開かれず、午後四時がら五時三十分の一時間半、むなしく議員は待機のまま放置されたの、であります。しこうして五時三十分に本会議は開催されましたが、河野農林大臣は、衆議院の
報告をするや、われわれの指摘したごとく、他の会合、すなわち新聞社やラジオやテレビの座談会等に出席してしまったのであります。従って本会議は、人事関係の案件のみを議了して休憩に入り、河野農林大臣の帰院を待つかのようでありました。その後十時ごろかと思います、河野農林大臣が登院されたのでありましょう、議会運営
委員会が再開されました。この議運においては、私の提案した河野農林大臣
戒告決議案を、
委員会の
審議を省略して上程するための案件でありましたが、この議会運営
委員会において、われわれ社会党は、河野農林大臣戒告の決議案を本会議に上程する前に、河野農林大臣がすでに登院しているのであるから、議会運営
委員会に河野農林大臣の出席を求め、河野農林大臣みずからの当日の行動について、弁明せしめる機会を与えようとしたのでありますが、石原議会運営委員長は、与党委員の多数を頼んで、本
戒告決議案上程を喧騒裏にきめたかのごとくでございました。参議院において、一国の国務大臣を戒告するというがごときは、不信任案を出し得ない参議院としては重大なことであります。従ってわれわれは、本会議前に河野農林大臣を招致して、その行動をただし、その理由を明らかにすることは、河野農林大臣に対するわれわれの武士の情ともいうべきことであって、石原委員長が、招致する事由があれば招致すると言いながら、与党の委員に引きずられて無理に
委員会を閉じ、その後の議運小
委員会にはついに出席せず、これまた
議長職権をもって本会議を進めるという不円滑さを示したのであります。
以上が
戒告決議案が上程されるまでの経緯であります。これによってみましても、一人の無法者が現われて、無軌道な行動をとると、混乱につぐに混乱をもってするということが明らかにされたと思います。議員各位、河野農林大臣の昨日の行動は、以上のごとく、閣議を無視し、雲隠れしたのであります。与党の
内閣を無視したことは、河野
一郎君のお家芸のようであります。自民党の
諸君は河野君のお家芸を賛嘆し、鳩山
一郎首相は、河野
一郎君を目に入れても、よだれは出ても、涙を出さぬほどのかわいがりようであります。つまり、目に入れても痛くないのでありましょう。これでは河野
一郎君のごとき人は、いよいよ無軌道ぶりを発揮するものでありまして、自民党では、すでにもてあましているはずであります。いろはかるたの「憎まれっこ世にはびこる」、まさにこの状態ではないかと思うのであります。自民党の内部において、河野農相のくつわをしっかりはめておかなければ、国会全体が迷惑し、国民全般を苦しめることになるので、まず自民党内部で村八分でも何でもやって、河野農相の無軌道ぶりを是正すべきであります。しからざれば、自民党は内部崩壊を免れないでありましょう。自民党のために惜しむ次第であります。この忠告をあえてするわけであります。河野君の昨日の行動は、本院を侮辱したものであって、このままに放置してはならぬ問題であります。国会軽視、これほど危険な行動はないのであります。事の起るのには必ずよって起る理由があります。少しく最近の河野農相の行動を見ることにいたします。