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1956-05-09 第24回国会 参議院 本会議 第45号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月九日(水曜日)    午後三時四十四分開議   —————————————  議事日程 第四十五号   昭和三十一年五月九日    午前十時開議  第一 副議長辞任の件  第二 地方交付税法の一部を改正   する法律案内閣提出衆議院   送付)      (委員長報告)  第三 地方財政法等の一部を改正   する法律案内閣提出衆議院   送付)      (委員長報告)  第四 地方財政再建等のための   公共事業に係る国庫負担等の臨   時特例に関する法律案内閣提   出、衆議院送付) (委員長報告)  第五 土地収用法の一部を改正す   る法律案内閣提出衆議院送   付)       (委員長報告)  第六 日本国有鉄道法の一部を改   正する法律案内閣提出、衆議   院送付)     (委員長報告)   —————————————
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、 朗読を省略いたします。   ————————————— 去る四月三十日議長において、左の常 任委員辞任を許可した。  内閣委員      加藤 武徳君  同         高橋進太郎君  同         小野 義夫君  同         江田 三郎君  同         藤原 道子君  地方行政委員    高橋  衛君  同         木村 守江君  法務委員      草葉 隆圓君  大蔵委員      長島 銀藏君  同         深川タマヱ君  同         岡  三郎君  文教委員      村尾 重雄君  同         矢嶋 三義君  同         荒木正三郎君  社会労働委員    西郷吉之助君  同         井上 清一君  同         最上 英子君  同         中山 壽彦君  同         山本 米治君  同         西岡 ハル君  同         吉田 法晴君  農林水産委員    紅露 みつ君  同         戸叶  武君  商工委員      川村 松助君  同         佐藤清一郎君  同         横川 信夫君  逓信委員      大矢半次郎君  同         田畑 金光君  同         久保  等君  建設委員      榊原  亨君 同日議長において、常任委員補欠を 左の通り指名した。  内閣委員      西郷吉之助君  同         井上 清一君  同         佐藤清一郎君  同         吉田 法晴君  同         田畑 金光君  地方行政委員    川村 松助君  同         横川 信夫君  法務委員      中山 壽彦君  大蔵委員      大矢半次郎君  同         山本 米治君  同         村尾 重雄君  文教委員      岡  三郎君  同         久保  等君  同         戸叶  武君  社会労働委員    加藤 武徳君  同         高橋進太郎君  同         紅露 みつ君  同         草葉 隆圓君  同         深川タマヱ君  同         榊原  亨君  同         藤原 道子君  農林水産委員    長島 銀藏君  同         荒木正三郎君  商工委員      高橋  衛君  同         小野 義夫君  同         木村 守江君  逓信委員      最上 英子君  同         江田 三郎君  同         矢嶋 三義君  建設委員      西岡 ハル君 同日内閣から予備審査のため左の議案送付された。よって議長は即日これ を内閣委員会付託した。  内政省設置法施行に伴う関係法令  の整理に関する法律案 同日委員長から左の報告書を提出し た。  地方交付税法の一部を改正する法律  案可決報告書  地方財政再建等のための公共事業  に係る国庫負担等臨時特例に関す  る法律案可決報告書  地方財政法等の一部を改正する法律  案可決報告書日本院は、衆議院送付の左の内閣提 出案を可決した旨衆議院通知した。  北海道開発公庫法案  日本原子力研究所法案  原子燃料公社法案  核原料物質開発促進臨時措置法案日本院は、衆議院議員水田三喜男君 を日本国フィリピン共和国との間の 賠償協定及び経済開発借款協定につき 交渉し且つ署名する全権委員に任命す ることができると議決した旨内閣に通 知した。 同日左の法律公布を奏上し、その旨 衆議院通知した。  北海道開発公庫法  日本原子力研究所法  原子燃料公社法  核原料物質開発促進臨時措置法 去る一日議長において、左の常任委員辞任を許可した。  文教委員      笹森 順造君  商工委員      木村 守江君  同         豊田 雅孝君  運輸委員      剱木 亨弘君 同日議長において、常任委員補欠を 左の通り指名した。  内閣委員      豊田 雅孝君  文教委員      剱木 亨弘君  商工委員      笹森 順造君  運輸委員      木村 守江君 同日議長内閣総理大臣宛、左の者を 第二十四回国会政府委員に任命するこ とを承認した旨回答した。     中央気象台長 和達 清夫君 去る二日議長において、左の常任委員辞任を許可した。  法務委員      赤松 常子君  文教委員      戸叶  武君  社会労働委員    高橋進太郎君  司         相馬 助治君  同         藤田  進君  同         山本 經勝君  農林水産委員    松原 一彦君  商工委員      竹中 勝男君 同日議長において、常任委員補欠を 左の通り指名した。  法務委員      相馬 助治君  文教委員      山本 経勝君  社会労働委員    松原 一彦君  同         赤松 常子君  同         竹中 勝男君  同         戸叶  武君  農林水産委員    高橋進太郎君  商工委員      藤田  進君 同日衆議院から予備審査のため左の議 案が送付された。よって議長は即日こ れを法務委員会付託した。  罹災都市借地借家臨時処理法の一部  を改正する法律案法務委員長提出) 同日衆議院から左の議案を提出した。 よって議長は即日これを法務委員会付託した。  罹災都市借地借家臨時処理法の一部  を改正する法律案同日衆議院から、同院において修正議 決した左の内閣提出案受領した。 よって議長は即日これを委員会付託 した。  倉庫業法案   運輸委員会付託  性病予防法等の一部を改正する法律  案     社会労働委員会付託 同日衆議院から左の内閣提出案受領 した。よって議長は即日これを委員会付託した。  国防会議構成等に関する法律案          内閣委員会付託  身体障害者福祉法等の一部を改正す  る法律案  母子福祉資金貸付等に関する法律  の一部を改正する法律案        社会労働委員会付託  電源開発促進法の一部を改正する法  律案     商工委員会付託  郵便振替貯金法の一部を改正する法  律案      逓信委員会付託 同日内閣から予備審査のため左の議案送付された。  売春防止法案 同日内閣から左の報告書受領した。  昭和二十九年度第二・四半期におけ  る国庫状況報告書 同日内閣総理大臣から議長宛中央気 象台長和達清夫君(去る一日議長承認 のとおり)を第二十四回国会政府委員 に任命した旨の通知書受領した。 去る四月二十八日中央気象台長事務代 理吉村順之君は事務代理を免ぜられた ので政府委員自然消滅となった。 去る四月三十日死去された議員宇垣一 成君に対し、去る三日左の弔詞を贈っ た。  参議院は正二位勲一等宇垣一成君の  長逝に対しまして、つつしんで哀悼  の意を表し、うやうやしく弔詞をさ  さげます。 去る四日議長において、左の常任委員辞任を許可した。  内閣委員      青柳 秀夫君  同         佐藤清一郎君  同         本村篤太郎君  同         岡田 宗司君  同         田畑 金光君  同         亀田 得治君  同         島村 軍次君  地方行政委員    伊能 芳雄君  法務委員      木下 源吾君  同         相馬 助治君  同         小林 亦治君  外務委員      松浦 清一君  同         梶原 茂嘉君  大蔵委員      藤野 繁雄君  同         菊田 七平君  文教委員      中川 幸平君  同         三木與吉郎君  同         山本 経勝君  同         久保  等君  社会労働委員    加藤 武徳君  同         草葉 隆圓君  同         戸叶  武君  同         赤松 常子君  農林水産委員    重政 庸徳君  同         荒木正三郎君  運輸委員      有馬 英二君  逓信委員      最上 英子君  同         植竹 春彦君  同         矢嶋 三義君  建設委員      石井  桂君  予算委員      三浦 義男君  同         吉田 萬次君  同         田中 啓一君  同         吉田 法晴君  同         亀田 得治君  同         秋山 長造君  決算委員      白井  勇君  議院運営委員    佐藤清一郎君  同         木島 虎藏君  同         斎藤  昇君  同         高橋  衛君  同         寺本 広作君  同         雨森 常夫君  同         石井  桂君  同         田畑 金光君  同         相馬 助治君  同         加瀬  完君  同         阿具根 登君  同         河野 謙三君 同日議長において、常任委員補欠を 左の通り指名した。  内閣委員      伊能 芳雄君  同         藤野 繁雄君  同         菊田 七平君  同         松浦 清一君  同         木下 源吾君  同         小林 亦治君  同         梶原 茂嘉君  地方行政委員    青柳 秀夫君  法務委員      田畑 金光君  同         赤松 常子君  同         亀田 得治君  外務委員      岡田 宗司君  同         島村 軍次君  大蔵委員      佐藤清一郎君  同         木村篤太郎君  文教委員      石井  桂君  同         重政 庸徳君  同         荒木正三郎君  同         矢嶋 三義君  社会労働委員    最上 英子君  同         植竹 春彦君  同         山本 経勝君  同         相馬 助治君  農林水産委員    三木與吉郎君  同         戸叶  武君  運輸委員国会法第四十二条第三       項の規定によるもの)            石川 榮一君  逓信委員      加藤 武徳君  同         草葉 隆圓君  同         久保  等君  建設委員      中川 幸平君  予算委員      佐藤清一郎君  同         高橋  衛君  同         寺本 広作君  同         相馬 助治君  同         加瀬  完君  同         阿具根 登君  決算委員      木島 虎藏君  議院運営委員    三浦 義男君  同         白井  勇君  同         有馬 英二君  同         吉田 萬次君  同         田中 啓一君  同         川口爲之助君  同         野本 品吉君  同         永岡 光治君  同         吉田 法晴君  同         亀田 得治君  同         秋山 長造君  同         高橋 道男君 同日委員長から提出した左の公聴会開 会承認要求に対し議長は、即日これを 承認した。    公聴会開会承認要求書  一、議案の名称 地方教育行政の組   織及び運営に関する法律案   地方教育行政組織及び運営に関   する法律施行に伴う関係法律の   整理に関する法律案  一、公聴会の問題 地方教育行政の   組織及び運営に関する法律案   地方教育行政組織及び運営に関   する法律施行に伴う関係法律の   整理に関する法律案について  一、公聴会の月日 昭和三十一年五   月十一日及び十二日  右本委員会の決議を経て、参議院規  則第六十二条により要求する。   昭和三十一年五月四日      文教委員長 加賀山之雄    参議院議長松野鶴平殿 同日委員長から提出した左の委員派遣 変更要求書記載通り議長は、即日 これを承認した。    委員派遣変更承認要求書  昭和三十一年四月二十七日提出し、  即日議長承認を得た京都地検にお  ける犯人誤認事件実情調査のための  委員派遣承認要求書中派遣委員  「小林亦治」とあるのを「亀田得治」  に、費用「概算一八、〇〇〇円」とあ  るのを「概算二三、四〇〇円」に変更  いたしたい。  右要求する。   昭和三十一年五月四日      法務委員長 高田なほ子    参議院議長松野鶴平殿 一昨七日議長において、左の常任委員辞任を許可した。  内閣委員      伊能 芳雄君  同         藤野 繁雄君  同         菊田 七平君  同         小林 亦治君  地方行政委員    青柳 秀夫君  同         佐多 忠隆君  法務委員      田畑 金光君  大蔵委員      佐藤清一郎君  同         木村篤太郎君  同         遠藤 柳作君  同         東   隆君  文教委員      石井  桂君  同         重政 庸徳君  社会労働委員    最上 英子君  同   (国会法第四十二条第二       項の規定による辞任)            松原 一彦君  同         植竹 春彦君  農林水産委員    小幡 治和君  同         菊川 孝夫君  運輸委員      石川 榮一君  逓信委員      加藤 武徳君  同         草葉 隆圓君  同         江田 三郎君  建設委員      中川 幸平君  予算委員      高橋  衛君  同         寺本 広作君  同         西岡 ハル君  同         佐藤清一郎君  同         阿具根 登君  同         加瀬  完君  決算委員      本島 虎藏君  議院運営委員    田中 啓一君  同         三浦 義男君  同         白井  勇君  同         有馬 英二君  同         吉田 萬次君  同         川口爲之助君  同         野本 品吉君  同         秋山 長造君  同         吉田 法晴君  同         亀田 得治君 同日議長において、常任委員補欠を 左の通り指名した。  内閣委員      青柳 秀夫君  同         佐藤清一郎君  同         木村篤太郎君  同         田畑 金光君  地方行政委員    伊能 芳雄君  同         江田 三郎君  法務委員      小林 亦治君  大蔵委員      藤野 繁雄君  同         菊田 七平君  同         植竹 春彦君  同         菊川 孝夫君  文教委員      中川 幸平君  同         小幡 治和君  社会労働委員    加藤 武徳君  同   (国会法第四十二条第三       項の規定によるもの)            中川 以良君  同         草葉 隆圓君  農林水産委員    重政 庸徳君  同         東   隆君  運輸委員国会法第四十二条第三       項の規定によるもの)            有馬 英二君  逓信委員      最上 英子君  同         遠藤 柳作君  同         佐多 忠隆君  建設委員      石井  桂君  予算委員      吉田 萬次君  同         田中 啓一君  同         斎藤  昇君  同         三浦 義男君  同         秋山 長造君  同         吉田 法晴君  決算委員      白井  勇君  議院運営委員    寺本 広作君  同         佐藤清一郎君  同         木島 虎藏君  同         西岡 ハル君  同         高橋  衛君  同         雨森 常夫君  同         石井  桂君  同         阿具根 登君  同         加瀬  完君  同         田畑 金光君 昨八日議長において、左の常任委員辞任を許可した。  内閣委員      井上 知治君  同         松浦 清一君  地方行政委員    木島 虎藏君  同         川村 松助君  同         江田 三郎君  同         森崎  隆君  法務委員      大屋 晋三君  同         小林 政夫君  外務委員      鶴見 祐輔君  大蔵委員      井村 徳二君  同         村尾 重雄君  同         中山 福藏君  文教委員      小幡 治和君  同         岡  三郎君  同         飯島連次郎君  農林水産委員    三木與吉郎君  同         河井 彌八君  運輸委員      一松 政二君  同         安井  謙君  同         山縣 勝見君  逓信委員      石坂 豊一君  建設委員     小笠原二三男君  予算委員      三浦 義男君  議院運営委員    高橋  衛君 同日議長において、常任委員補欠を 左の通り指名した。  内閣委員      木島 虎藏君  同         江田 三郎君  地方行政委員    井村 徳二君  同         小幡 治和君  同         松浦 清一君  同        小笠原二三男君  法務委員      井上 知治君  同         中山 福藏君  外務委員      安井  謙君  大蔵委員      大屋 晋三君  同         岡  三郎君  同         小林 政夫君  文教委員      三木與吉郎君  同         村尾 重雄君  同         河井 彌八君  農林水産委員    一松 政二君  同         飯島連次郎君  運輸委員      川村 松助君  同         鶴見 祐輔君  同         石坂 豊一君  逓信委員      山縣 勝見君  建設委員      森崎  隆君  予算委員      高橋  衛君  議院運営委員    三浦 義男君 同日各委員会において当選した理事は 左の通りである。  地方行政委員会   理事 伊能 芳雄君(伊能芳雄君    の補欠)  農林水産委員会   理事 青山 正一君(佐藤清一郎    君の補欠)   理事 重政 庸徳君(重政庸徳君    の補欠)   理事 戸叶  武君(戸叶武君の    補欠)   理事 三浦 辰雄君(三浦辰雄君    の補欠)  運輸委員会   理事 岡田 信次君(岡田信次君    の補欠)  建設委員会   理事 石井  桂君(石井桂君の    補欠) 同日衆議院から、同院において修正議 決した左の内閣提出案受領した。 よって議長は即日これを内閣委員会付託した。  運輸省設置法の一部を改正する法律  案 同日衆議院から左の内閣提出案受領 した。よって議長は即日これを外務委 員会付託した。  千九百五十五年五月三十一日に東京  で署名された農産物に関する日本国  とアメリカ合衆国との間の協定第三  条を改正する議定書締結について  承認を求めるの件  農産物に関する日本国アメリカ合  衆国との間の協定締結について承  認を求めるの件 同日委員長から左の報告書を提出し た。  土地収用法の一部を改正する法律案  可決報告書  日本国有鉄道法の一部を改正する法  律案可決報告書 同日衆議院から、左の本院提出案は同 院において これを可決した旨の通知 書を受領した。  公共企業体職員等共済組合法案 同日衆議院議長から、左の法律公布 を奏上した旨の通知書受領した。  公共企業体職員等共済組合法 同日内閣から、左記の者を在外財産問 題審議会委員に任命したいので国会法 第三十九条但書の規定により本院の議 決を求める旨の要求書受領した。      記      衆議院議員 愛知 揆一      同     受田 新吉      同     大平 正芳      同     藤枝 泉介      同     古屋 貞雄      参議院議員 遠藤 柳作      同     小西 英雄      同     田畑 金光      同     竹下 豊次 同日内閣を経由して土地調整委員会委 員代理から土地調整委員会設置法第十 九条の規定に基く左の報告書受領し た。  昭和三十年度土地調整委員会年次報  告書 同日内閣から左の報告書受領した。  日本銀行法第十三条ノ三第十号の規  定による報告書    ————・————
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  議員宇垣一成君は、四月三十日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。同君に対しましては議長はすでに弔詞を贈呈いたしました。  青木一男君から発言を求められました。この際、発言を許します。青木一男君。   〔青木一男君登壇、拍手〕
  4. 青木一男

    青木一男君 参議院議員宇垣一成君は、去る四月三十日逝去されました。私はこの際、諸君の御同意を得て、議員一同を代表し、つつしんで哀悼の辞を申し述べたいと存じます。  君は、明治元年岡山県に生まれ、陸軍士官学校を経て、明治三十三年に陸軍学校を卒業し、直ちに参謀本部付となり、明治三十五年及び同三十九年の二回にわたってドイツに留学、つぶさに軍事学を研さんされ、また、その間、第八師団参謀として日露戦争に従軍せられたのであります。大正八年には、陸軍学校校長となり、後、第十師団長参謀本部長陸軍大臣朝鮮総督内閣参議外務大臣拓務大臣等、終戦に至るまで軍部内並びに政府部内における各種の要職を歴任されました。また、戦後は、国民の輿望をにない、参議院に籍を連ねて、憲政のために尽瘁されたのであります。  かくのごとく、君がつとに軍籍に身を投じ、あるいは軍政の衝に当り、あるいは朝鮮統治の大命を拝し、また、しばしば台閣に列する等、国政の上に多大の功績を残されたことは、すでに諸君の御承知の通りであります。  わが国憲政史上、君の残された足跡の中で、特に顕著にして、私どもの心に深く残っておりますのは、大正十三年の第一次加藤内閣において、陸軍大臣として四個師団廃止の軍縮を断行せられたことであります。当時の軍部の圧倒的勢力下において、加うるに陸軍部内の下剋上の風潮盛んなりし時において、かくのごとき軍縮を断行することは、きわめて至難の事業であって、凡人のよくするところではなかったのであります。私どもは、これによって、君が一身の毀誉褒貶を顧みることなく、自己の信念に従って、その正しいと信ずる道を堂々と進まれる方であったということ、また、君が単なる一介の武弁でなくして、卓越したる政治的識見の持ち主であったということを十分にうかがうことができると思うのであります。また、君は、朝鮮総督として、ひたすら温情をもって内鮮融和をはかられ、万人から慈父のごとく慕われ、名総督の名をはせられましたことも、また、君がいかに偉大なる経世家であったかを示して余りあるものと思うのであります。  君は、その人物からしても、経歴からしても、当然政権を担当すべき器であったのであります。昭和十二年、日華事変の始まる直前、君は組閣の大命を受けたにもかかわらず、いわゆる宇垣内閣流産のうき目を見られましたのは、当時、とうとうたるファッショの流れを阻止せんとする君の進出を喜ばす、また、過去の軍縮断行を快しとしない軍部の一部の者の妨害によったものであります。その組閣の不成功は、当時国民をいたく失望せしめたのであって、かかる事実にわが国の悲劇の根源があったと思うのでございます。  昭和十三年、近衛内閣外務大臣たりしとき、君は、日華事変の早期解決を主張して、興亜院設置に反対し、外務大臣辞任されましたが、これまた誤まれる時流に屈せざる君の信念のほとばしりであったのであります。  戦後、わが国が平和国家、民主国家として再出発するに当り、君は、昭和二十八年、参議院選挙に立候補せられ、全国区最高点で当選されました。この事実こそ、いかに多くの国民が君の徳を慕い、君の才幹と経験に信頼を寄せておったかを示すものと思うのであります。  今や国家の前途いよいよ多事多難の折柄、君のような偉大なる政治家を失ったことは、まことに痛惜の至りであります。  ここに宇垣君の御長逝に当り、その人となりを追慕し、その功績をしのび、つつしんで敬弔の誠をささげ、その御冥福を心からお祈りするものでございます。(拍手)    ————・————
  5. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第一、副議長辞任の件  四月三十日、副議長重宗雄三君から辞任願が提出されました。辞表を参事に朗読させます。   〔参事朗読〕
  6. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 本件に対し、討論の通告がございます。発言を許します。森下政一君。   〔森下政一君登壇、拍手〕
  7. 森下政一

    ○森下政一君 重宗副議長は、そのきわめて円満なる人格をもって河井議長のもとにおいて、さらには松野現議長のもとに至るまで、長きにわたって本院の円満なる運営のために多大の努力をいたされまして、功績をあげられましたことは、私どものひとしくこれを認めるところでありまして、その御苦労に対して、日本社会党は深甚なる謝意を表したいと思うのであります。(拍手)まことに今回辞任のお申し出を受けましたことは、惜しみても余りあることでありまするが、きわめて近い機会に、議員としての任期が満了するということがその理由であろうと考えますると、今日の段階におきましては、お互いにこれを承認するほか道はないと考えるのでありまして、社会党もこれを了承いたしたいと思うのであります。  ただ、しかしながら、この機会に私どもがほんとうに欽慕する重宗副議長辞任をして、ほんとうに意義あらしめることのために、本院のきわめて重要なる役員である議長、副議長というがごとき地位を一党が独占して、これを掌中におさめるということは、本院の将来における運営上、正常かつ円満な運営に多大の支障を残す憂いがあるのじゃないかということを考えまして、一党が多数をたのんで議長、副議長を壟断すべきではない。もし話し合いでそういうことができるといたしまするならば、第一党から議長を選び、第二党から副議長を選ぶ、こういうことが各党各派の了解を得られて実現するということに相なりますならば、私は二大政党による責任政治の運営のために、まことに民主的な一つの道を開くことになる。こういうことが話し合いで行われて、何回となく積み重ねられて参りますならば、やがて万人の認めるところの美しい慣習となって育って行くであろう。(拍手)日本社会党はかような信念に立ちまして、ぜひこのことをこの機会に実現せしめたいという念願を持ち、また、この念願は決して誤まっていないという確信のもとに、七日以来、各党各派に対してこのことを申し出て参って、その了解を得ることに努めたのであります。  現に、去月三十日ごろまでの衆議院における小選挙区法案を中心といたしまする審議の状況を振り返ってみますると、自民党、社会党、この両大政党が激突寸前の状態をかもし出しまして、その進展がどうなるであろうかと、国をあげて憂慮いたしておったと思うのでありまするが、たまたま衆議院においては議長が自民党から選ばれており、副議長が社会党から選ばれておる。その両者の話し合いによりまして、自民党並びに社会党に呼びかけて、その党の長老会議が持たれ、さらに議長のあっせんというふうな段階を経まして、激突寸前の状態にありましたあの険しい姿がたちまちにして解消いたしまして、著しく緩和されて今日の状態になった。はなはだしく緊張が解かれたということだけではない、その間に特別委員会におきましては、この法案の審議の過程において、みじんもさようなことが考えられなかったのに、この緊張緩和の成果といたしまして、さしもに自民党にも大きな反省の色が現われて、あるいは区割りの問題について、あるいは連座制の強化の問題について、あるいは立会演説の存続など、まことに今日は自民党が打って変った態度を示すに至ったということは、私は第二党の社会党が、副議長を出しておって、議長との話し合いにあずかったということも、またあずかって大きな力があった、かように思うのであります。(拍手)  そういうふうな実例を、今われわれはまのあたりに見せつけられたわけなのでありまするから、たまたま重宗副議長辞任されて、続いて副議長選挙が行われようというこの機会に、わが参議院におきましても、何らか各党各派の話し合いによって、第一党から議長、第二党から副議長というふうなことが具現するならば、これにこしたことはない、かような考えで、今日まで各派に了解を得るために非常な努力をして参ったのであります。社会党のこの主張は、何も今思いつきでにわかに主張したことではないのでありまして、前議長辞任された直後に、引き続いて行われた議長選挙の際にも、私どもはこの念願を持っておったわけであります。前議長辞任に対しては、私どもは当時発表された理由だけでは、その辞任を容易に了承しがたいという考えで、さような態度をとりましたけれども、いよいよこの辞任が認められて、続いて議長選挙が行われるというときには、御承知でありましょうが、社会党は暫時休憩をしてもらいたいということを動議によって提議したのでありますけれども、これはついに受けがわれなかったのであります。なぜ私どもは、さような休憩の動議を出したかと申しますると、何とかしてこの機会に、議長は第一党から、副議長は第二党からという、ただいま申しますような、話し合いによる一つのルールを作ることができないだろうかという考えをもちましたので、何も態度のきまっていない社会党の態度をきめますことのために、しばらく休憩してもらいたいという動議を出したのでしたか、ついにその動議は成立しなかったのであります。そこで、私どもは、全く後任議長にだれを選ぶか、党から独自の候補者を出すのか、自民党の出される候補者に対して同調をするのか、態度がきまっていないから、これを何とかきめたいというので、休憩を要請したような次第であったので、そのときも、話し合いがととのいますならば、自民党の、第一党の推す議長候補に対して同調したいという考えを持っておって、当時からの私どもの切なる念願でありまして、今度、重宗副議長の辞職に際しても同じ考え方をもって、ひたすら各派の了解を得ることを懇請をしたのであります。実は私はほとんど望みがないかと思いましたけれども、戸叶君とともに、一昨日、松野議長を訪ねて、私どもの信念を吐露しますとともに、どうぞ議長に一つ協力してもらいたいということを強く呼びかけました。さらに今日も重ねて松野議長を訪ねまして、私は最後までこの願いを捨てません、こうすることが私は参議院の将来のあり方のためにも、まことに望ましいことだと、この信念は動かぬ、ぜひ協力してもらいたいということを、今日も私は重ねて松野議長にお願いをしたような次第であったのであります。全くそういう考えで、社会党はもっぱら熱心に各派に呼びかけて参りました。議長、副議長の選挙は今後も繰り返されることであります。おそらくこの近く行われる参議院の通常選挙が終りましたならば、松野議長も、きょう選ばれる副議長も、新しく出てくる半数の新議員の意思もあることであるから、その心持ちも尊重する意味において、正、副議長辞任されて、この後任を続いて選挙することになると思うが、そういうときにいろいろな紛糾を避けて、話し合いによって第一党から議長、第二党から副議長というふうなことが、また積み重ねられて行くということになりまするならば、ほんとうにこれがりっぱな慣習になるであろうということを考えて、是が非でもこの機会に、これを各派の了解を得たい、こう考えたのであります。聞くところによりますと、自民党は緑風会から副議長を出したらどうかということを呼びかけておいでになったらしい。このことは、必ずしも自民党が、一党の掌中に正、副議長を壟断しようという気持は持っていないのだ、こうも察せられる。それならば、緑風会から出さないときまって、社会党がこういう熱心な要望をしておるときに、なぜ社会党に副議長を渡すという雅量を示すことができないのであるか。緑風会ならよろしいけれども、社会党ではいけないのだというのでは、社会党とは一線を画してどこまででもその闘争を本国会において激化して行こうという考えだとしか受け取ることができない。一体そういう考え方のどこに民主的に、ほんとうに円満に正常な運営をはかろうという熱意があるのか、私は疑わざるを得ないのでありまして、かような意味におきまして、重宗副議長辞任を惜しみまするとともに、何とかしてこの機会にこれをとらえまして、先刻来申しますような、美しい慣習を生まれさせたいと、こう考えて今日まで努力したのでありましたが、ついにこの努力は空しく消え去ってしまいまして、副議長選挙が行われることになりましたが、ここに私は重ねて社会党を代表しまして、重宗さんに深甚の謝意を表しまするとともに、社会党が、この引き続いて行われる副議長選挙に、どういう考えをもって今日まで努力をしてきたかということを表明いたした次第であります。(拍手)
  8. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。  これより本件の採決をいたします。  副議長辞任を許可することに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  9. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって副議長辞任は、全会一致をもって許可することに決しまし    ————・————
  10. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、日程に追加して、副議長の選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  念のため申し上げますが、投票は、無名投票でございます。議席に配付してございます白色の単記無名投票用紙に被選挙人の氏名を記入して、白色の木札の名刺とともに、御登壇の上、御投票を願います。  氏名点呼を行います。   〔参事氏名を点呼〕   〔投票執行〕
  12. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 投票漏れはございませんか。……投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。   〔投票箱閉鎖〕
  13. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより開票いたします。投票を参事に点検させます。   〔参事・投票及び名刺を計算、投票を点検〕
  14. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 投票の結果を報告いたします。  投票総数百六十八票、名刺の数もこれと符合いたしております。  本投票の過半数は、八十五票でございます。   寺尾 豊君     百五票   岡田宗司君    五十七票   三木治朗君      一票   白票         四票   無効         一票  よって寺尾豊君が副議長に当選せられました。(拍手)    ————・————
  15. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) ただいま副議長に当選せられました寺尾豊君を御紹介いたします。   〔副議長寺尾豊君登壇〕   〔拍手起る〕
  16. 寺尾豊

    ○寺尾豊君 不肖はからずも、ただいま本院の副議長に当選をいたしまするの光栄を賜わりました。感激おくあたわざるところでございます。と同時に、その責任の重大を痛感をするものでございます。私といたしましては、参議院の高き使命にかんがみまして、中立公正を念といたし、一意、議長を補佐いたし、参議院の権威を高からしむるために、全努力を傾注いたしたいと存じております。しかし、この重責は、浅学非才の不肖といたしましては、とうていこれを遂行することに、きわめて困難と疑懼を持たざるを得ないのでございます。この上は、先輩同僚議員各位の絶大なる御支援、御指導を賜わりますことを唯一の頼りにいたしまして、重責を果して参りたいと思います。  ここに、当選に当りましてのごあいさつを申し上げる次第でございます。(拍手)
  17. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 年長議員石坂豊一君から発言を求められました。この際、発言を許します。石坂豊一君。   〔石坂豊一君登壇、拍手〕
  18. 石坂豊一

    石坂豊一君 私は最年長のゆえをもちまして、皆様のお許しを得まして、恒例によって、本日、新副議長に当選せられましたる寺尾豊君に御祝辞を申し上げ、また、御退任になりました重宗雄三君に感謝の辞を申し上げたいと存じます。  まず、副議長に当選せられました寺尾豊君にお祝いを申し上げますが、寺尾君は、第一回選挙以来、本院に議席を有せられ、その間、たびたび常任委員長に選任せられ、のみならず、ほとんど毎日登院して、民主主義、議会政治のために、粉骨砕身しておられるのであります。また、かつて衆議院議員に当選せられた経歴のあるお方であります。その勤勉達識にして、ことに、議院の運営に通暁せられることは、ひとしく衆目の一致するところであります。  かかる方が副議長に当選せられまして、本日、栄職につかれましたことは、同君の光栄はもとより、わが参議院のために御同慶にたえません。副議長におかせられましては、ますます御自重、御自愛をせられまして、老練なる松野議長のもとに、公正もって事に当られ、本院の威信の高揚に努められますよう切望してやみません。  はなはだ簡単でありますが、これをもって新副議長に対するお祝いの言葉といたします。(拍手)  次に、前副議長重宗雄三君に対しまして、感謝の辞を申し上げます。  重宗君は、去る第十六回特別国会において副議長の栄職に御就任以来、お見受けの通り、温厚篤実、円満なる御資質を備えられまして、公平無私、至誠一貫、その職責に当られ、河井議長と力を合わせ、常に参議院の正しき運営のために尽されたる功績は、まことに顕著なるものがあります。今回、御退任になられましたることは、まことにわれわれのおなごり惜しく存ずる次第であります。どうぞ今後も一そう御健康に留意遊ばされまして、わが国憲政発展のため御健闘あらんことを希望いたしてやみません。  ここに、簡単ながら、前副議長の御功労に対し、深く感謝の意を表する次第であります。(拍手)
  19. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 重宗雄三君から発言を求められました。この際、発言を許します。重宗雄三君。   〔重宗雄三君登壇、拍手〕
  20. 重宗雄三

    ○重宗雄三君 ただいま石坂君から、議員一同を代表されまして、御丁重なるお言葉をいただきまして、まことに感激の至りに存じております。  在任中は、皆様方の御同情と御援助によりまして、重責を大過なく果し得られましたことを、厚くお礼を申し上げる次第でございます。今後とも、皆様方の相変らぬ御懇情にすがりまして、一つよろしくお引き立て下さいますることをお願い申し上げまして、私のあいさつといたします。(拍手)    ————・————
  21. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第二、地方交付税法の一部を改正する法律案  日程第三、地方財政法等の一部を改正する法律案  日程第四、地方財政再建等のための公共事業に係る国庫負担等臨時特例に関する法律案(いずれも内閣提出衆議院送付)  以上、三葉を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長報告を求めます。地方行政委員長松岡平市君。   —————————————   〔松岡平市君登壇、拍手〕
  23. 松岡平市

    ○松岡平市君 ただいま議題となりました地方交付税法の一部を改正する法律案地方財政法等の一部を改正する法律案並びに地方財政再建等のための公共事業に係る国庫負担等臨時特例に関する法律案の三法案について、委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、地方交付税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法案は、地方財政の窮状打開とその再建推進のために、政府の企図する地方行財政制度改正の一環として立案されたものでありまして、その内容の要点は、地方交付税の総額について、所得税、法人税及び酒税の収入額の百分の二十二を百分の二十五に改めること、教育委員の公選制の廃止等、行政制度の改正、軽油引取税、都市計画税の創設、国庫補助金の補助率、単価の改正等、特定財源の増減、期末手当の増額等に伴い、単位費用に所要の改正を加えること、道府県について投資的経費にかかる行政水準の標準化に必要な財源を確保するために、投資的経費の割高となる度合いについて、新たに道府県の態容に応じて補正する道を開いたこと、国有資産所在市町村交付金及び納付金等の創設に伴い、都道府県交付金及び納付金の収入見込額の百分の八十並びに市町村交付金及び納付金の収入見込額の百分の七十の額を、それぞれその団体の基準財政収入額に算入するとともに、入場譲与税の譲与方法の改正に伴い、入場譲与税にかかる基準税額の算定の基礎を改めること等であります。  次に、地方財政法等の一部を改正する法律案について申し上げます。  前法案と同様の趣旨に基く立法でありまして、その内容の大体は、地方財政法の一部を改正して、義務教育職員の恩給費に対する国庫負担制度の創設に伴い、国と地方公共団体の相互の利害関係がある事務のうち、国がその経費の全部または一部を負担すべきものの中に義務教育職員の恩給を加えるとともに、都道府県がその行う事業について、市町村から負担金を徴収することができる事業の範囲を土木その他の建設事業に改め、地方財政再建促進特別措置法の一部を改正して、財政再建団体が財政再建計画の承認の前に退職手当の財源に充てるために起した地方債は財政再建債とみなすものとすること等であります。  次に、地方財政再建等のための公共事業に係る国庫負担等臨時特例に関する法律案について申し上げます。  本法案は、前述の二法案と同様の趣旨のもとに、地方団体の財政負担の軽減をはかり、地方財政の再建に資するため、昭和三十一年度分から昭和三十三年度分まで、公共事業について国の負担または補助の割合を引き上げ、受益者分担金等を努めて徴収せしめるようにし、公共事業費にかかる受益者分担金等の額は、公共事業費にかかる負担金または補助金の算定の基礎としないものとする等のことを定めるものであります。  地方行政委員会におきましては、以上の三法案について、それぞれ政府側より提案理由の説明を聞いた後、三法案を一括して審査を重ねました。その詳細については会議録によってごらんを願いますが、その間、政府側との質疑応答に現われた問題の二、三について、以下、簡単に御報告をいたします。  すなわち、「地方交付税の率が今回百分の二十五に引き上げられるが、政府のこれに対する基本的な考えはどうか」との質問に対しては、太田国務大臣より、「百分の二十五を絶対不動のものとは考えないが、三大国税の二五%という率は相当に重い意味を持つものと考える」旨の答弁がありました。「現在、地方債は四千数百億円に達し、地方財政に対する重圧となっているが、政府の対策いかん」との質問に対しては、一萬田大蔵大臣より、「国家財政と地方財政を一体的に考え、かつ、従来国にも配慮の十分でなかった点があったことを心にとどめつつ、今後何らかの財政措置を講じたい」旨の答弁がありました。「地方財政再建促進特別措置法の規定による財政再建債の処理を敏速にせよ」という各委員の異口同音の強い要望に対しては、関係当局より、「御趣旨に沿うよう善処する」旨を答えられました。  四月三十日討論に入り、森下委員は、「交付税の率の引き上げが今回の案ではいまだ不十分である等の理由から、地方交付税法の一部を改正する法律案には反対、財政再建団体の退職債の取り扱いにも触れている地方財政法等の一部を改正する法律案に対しては、地方公務員の首切り反対の立場から法案にも反対せざるを得ない、地方財政再建等のための公共事業に係る国庫負担等臨時特例に関する法律案には賛成する」旨を述べられ、小林武治委員は、「交付税の率の引き上げを今回までにとどめること、国税と地方税について税源の再配分を考えること、地方財政の規模の拡大を防止すること、地方債の増大並びにその重圧に対し適切な措置を講ずること等を政府に要望して、三法案に賛成する」旨を述べられ、伊能委員は、「地方財政再建等のための公共事業に係る国庫負担等臨時特例に関する法律案の趣旨を、臨時特例にとどめず、これを恒久化して、国と地方との間に財源の再配分を考えること、再建債の敏速処理等の要望を付して、三法案に賛成する」旨を述べられました。  かくて採決の結果、地方交付税法の一部を改正する法律案は多数をもって、地方財政再建等のための公共事業に係る国庫負担等臨時特例に関する法律案は全会一致をもって、地方財政法等の一部を改正する法律案は多数をもって、いずれも衆議院送付通り可決すべきものと決定した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)
  24. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別刑に御発言もなければ、これより三案の採決をいたします。  まず、地方交付税法の一部を改正する法律案地方財政法等の一部を改正する法律案。  以上、両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  25. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって両案は可決せられました。    ————・————
  26. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 次に、地方財政再建等のための公共事業に係る国庫負担等臨時特例に関する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  27. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。    ————・————
  28. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第五、土地収用法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長報告を求めます。建設委員長赤木正雄君。   —————————————   〔赤木正雄君登壇、拍手〕
  29. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 ただいま議題となりました土地収用法の一部を改正する法律案について、建設委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本法案は、昭和二十六年、土地収用法施行以来の実情にかんがみ、収用または使用の手続を簡素化するとともに、法の適用について迅速かつ公正な運用をはかろうとするものであります。  その内容の第一点は、土地収用法による事業の認定に関する処分についてであります。すなわち従来の建設大臣が認定していた事業のほかに、その利害が一つの都府県の区域をこえ、または道の区域の全域にわたる事業および重要港湾、飛行場、国際電信電話施設、電気事業工作物および発電施設等に関する事業の認定は建設大臣の所管に加えたことであります。第二点は、事業認定申請に関する手続の簡素化についてであります。  本法案に対する質疑のおもなるものは、空中に架設した施設物による損失に対する補償問題等についてでありました。  質疑を終り討論に入りましたところ、小澤委員より、自由民主党を代表して、「近時、ダム、道路等の公共事業土地収用法の適用を受けるものが多くなってきた実情から、その手続を公正かつ迅速に行い得るように改正することは、公益優先の立場から時宜に適したものとして原案に賛成する」と、また、日本社会党を代表して田中委員から、「本案については、やむを得ず賛成するものであるが、その運用に当っては十分私権の擁護をはかるよう要望する」との発言がありました。  かくて討論を終り、採決の結果、全会一致、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)
  30. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  31. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。    ————・————
  32. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第六、日本国有鉄道法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長報告を求めます。運輸委員長左藤義詮君。   —————————————   〔左藤義詮君登壇、拍手〕
  33. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 ただいま議題となりました日本国有鉄道法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、政府が今回この法律案を提出するに至りました経緯の大要を提案理由により申し上げますと、日本国有鉄道は、公共企業体として昭和二十四年発足以来、すでに六年余を経過したのでありますが、この間、管理組織変更、その他制度的に幾たびか改正を加えて参った次第であります。しかし何分にも組織が膨大な企業でありますので、過去においていろいろ国民の批判もあり、また国会においても絶えず批判と指導を受けて参ったのであります。他方、政府においても日本国有鉄道を国民のためにより能率的に運営し、公共の福祉に資するよう努力し、種々検討を加えて参ったのでありますが、最近に至り、臨時公共企業体合理化審議会および日本国有鉄道経営調査会の答申を参酌し、さらに今日まで国会においてなされた決議その他を十分尊重して検討を加えた結果、日本国有鉄道の組織、財産管理等につきその改善の方途に結論を得ましたので、これをすみやかに実施に移すため、この法律案を提出したのであるということであります。  次に、おもなる改正点について申し上げますと、第一点は、経営委員会を廃止しまして、新らたに総裁、副総裁及び五人ないし十人の理事をもって構成する理事会を設け、日本国有鉄道の業務の管理及び運営についての意思決定機関としたことであります。第二点は、日本国有鉄道の業務執行機関として、総裁、副総裁並びに若干名の常務理事を置くこととし、総裁は日本国有鉄道を代表して理事会の決定に従って業務を執行することとしたことであります。このほか技術の改善及び進歩についての補佐機関として技師長制を設けたことであります。第三点は、日本国有鉄道の業務の監査機関として、三人ないし五人で組織する合議体の監査委員会を設けたことであります。この監査委員会は、監査の結果を総裁に通知し、また監査の結果、業務の改善を必要と認めた事項については、運輸大臣に意見を提出し、または理事会に意見を述べることができることとなっております。なお、今後日本国有鉄道が運輸大臣に提出する決算関係の財務諸表には、新たに監査委員会の監査報告書を添付することを要することといたしました、第四点は、日本国有鉄道の役員を総裁、副総裁、理事及び監査委員会の委員とし、その任期は、総裁、副総裁は従来通り四年、その他は新たに三年と定めました。その任命については、総裁は内閣が、また副総裁及び理事は運輸大臣の認可を受けて総裁が任命し、監査委員会の委員は運輸大臣が任命することとなっております。なお、技師長及び常務理事は、総裁が理事のうちからこれを任命することになっております。また、役員に支給する給与及び退職手当につきましては、新たに規定を設けまして、職員に支給する給与総額とは別ワクに取扱いをすることといたしております。この法律改正後、役員の性格は、現行法での役員の性格と異なることとなりますので、恩給法の準用をなくし、国家公務員等退職手当暫定措置法の適用を排除し、また国家公務員共済組合法の準用については、短期給付のみに限定する等、所要の改正を加えてあります。第五点は、会計規程に規定すべき事項を新たに明示いたしまして、財産管理規程もこれに包含されることとし、その規程の基本事項も運輸大臣の認可を要することとして、財産管理の万全を期するようにしたことであります。第六点は、日本国有鉄道の営業線の貸付等の処分をしようとするときは法律によることとし、車両その他運輸省令で定める重要財産を貸し付け、その他これを処分しようとするときは、原則として運輸大臣の許可を要することとしたことであります。また、日本国有鉄道がその所有する不動産を貸し付けた場合、貸付期間中に業務上必要を生じたときは、その貸付契約を解除することができることとし、この場合、借受人は損失補償を求めることができることとしました。第七点は、運輸大臣の監督事項中、許認可事項に鉄道の電化その他運輸省令で定める重要な工事を加えたことであります。  以上が改正のおもなる点についての概要であります。  委員会におきましては、各委員より熱心な質疑が行われましたが、詳細は会議録に譲り、そのおもなる事項を申し上げますと、まず第一は、経営委員会を廃止し、理事会を設けた理由、理事会の構成等についてでありまして、これに対する政府の答弁は、「現行の経営委員会は、限定された意思決定機関であると同時に、監査機関的性格及び諮問機関的性格を帯びているが、五名の委員はいずれも非常勤で、実情は期待する効果をあげがたいという批判もあったので、今回、意思決定機関として理事会を設け、これと業務執行機関とを表裏一体として運営して行くことにしたのである」とのことでありました。なお、「理事は五人ないし十人とし、部外者からも任命されることを期待している」とのことでありました。第二は、監査委員会の性格、構成につき熱心な質疑が行われましたが、これに対する政府の答弁は、「監査委員会は国鉄の内部機関であって、意思決定機関及び業務執行機関と並立する別個のものであり、合議体として活動するものである。すなわち、決定された意思が忠実に実施されているかいなか、その経営が適正妥当に行われているかいなかを検討する機雷である。もちろんこれは国鉄の内部機関であるので、外部監査機関としての会計検査院または監督官庁としての運輸省の行う監査とは別である。また、委員の数については、理事会、業務執行機関とのバランスを考えて定めたもので、少数とは思わないし、監査委員会には事務局を設け、現在の監察局をこれに充てたい考えである」旨答弁がありました。第三に、大臣の権限強化等に関連し、国鉄の自主性、特に財政の自主性の点に関して質疑が行われましたが、この点についての政府の答弁は、「経営合理化の線を進め、漸次一つずつ片づけて行きたいとのことであり、ことに経理の合理化につきましては、目下鋭意検討中である」旨の答弁でございました。第四には、「日本国有鉄道経営調査会の答申にもあった諮問機関を設置しなかったこと」についての質疑がありましたが、政府及び国鉄総裁のこれに対する答弁は、「法律改正事項とはなっていないが、国鉄部内制度としてこれを設ける」とのことでありました。第五に、「今回の改正は、臨時公共企業体合理化審議会及び日本国有鉄道経営調査会の答申を参酌し、将来を見通して、もっと根本的に国鉄経営のあり方について検討し、改正をなすべきではなかったか」との質疑に対しましては、「日本国有鉄道法関係としては、今次の改正で、組織の問題、財産管理の問題等、根本的な改正を行なったと考えている」との答弁であり、「運賃関係、労働関係、財産関係等は、いずれも日本国有鉄道法改正の問題としてでなく、別個の法律改正によるべきものと思い、その趣旨で目下検討中である」とのことでありました。最後に、「一般交通政策の確立、国鉄の受け持つべき分野、機構改革、人事の刷新、国鉄経営の現状等」につき若干の質疑がありましたが、政府の答弁では、「国鉄の経営については、近く決定される交通審議会の答申その他都市交通審議会の答申にも徴し、国鉄がみずから解決すべき事項については、その六カ年計画にものっとり、国鉄の受け持つ分野につき、電化、ディーゼル化等経営の近代化を進め、サービスの向上を図りたい」とのことであり、特に国鉄総裁よりは、「人事の刷新について必ずしも既往の学歴のみによらず、再教育をなし、有能の士を起用し、職員をして国鉄経営の合理化とその再建の意欲を阻害しないよう、十分努力を払っている」とのことでありました。  以上で質疑を終り、討論に入りましたところ、片岡委員より、「本法律案に賛成する」との意見の開陳があり、さらに要望として、「国鉄の経営は困難な現状であり、将来についても楽観は許さないものがあると思う。この困難な状態は、終戦後における経済上の混乱によるところ大であるが、同時に変転する経済情勢に即応して、適宜な法制上の態勢がとられていなかったこと、国鉄の人事管理の不均衡、ことに学閥の偏重と幹部の経営に対する熱意の不足等によるものが大であると思われる。また国鉄は今日すでに自動車、航空機等との競争状態にあり、独占企業ではないので、政府はすみやかに一般交通政策を立て、国鉄のなすべき分野を確立し、百年の計を樹立すべきであって、これらの点については、日本国有鉄道経営調査会からも政府並びに国鉄に対し注意を喚起しているところである。以上の点にかんがみ、日本国有鉄道については、関係法規はもとより、機構問題、財政予算問題等について、全面的、抜本的改正をなすべきであるが、今次の改正案は、日本国有鉄道経営調査会の答弁を尊重していることは認めるが、現行法にとらわれすぎ、不十分なものであると認められる。よって政府は、国鉄の自主的経営の責任を負うに十分な機構上の態勢の確立に格段の努力をなすべきであるとの要望がありました。  以上で討論を終り、直ちに採決に入りましたところ、全会一致をもちまして、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)
  34. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  35. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。    ————・————
  36. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、日程に追加して、売春防止法案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。松原法務政務次官。   〔政府委員松原一彦君登壇、拍手〕
  38. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 売春防止法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  終戦後の世相の混乱と道義の頽廃並びに性道徳の低下によりまして、売春を行う女子の数が著しく増加いたしましたばかりでなく、それがすこぶる露骨となって参りましたことは、すでに御承知の通りでございますが、さらに最も遺憾にたえないことは、日本国憲法が侵すべからざる基本的人権の存在を確認し、個人の自由と尊厳とを明らかにし、その奴隷的拘束を除去すべきことを宣言しているにもかかわらず、売春に関連して、これに反する事態のますます増加の傾向にありますことであります。このような状況を黙過することは、善良の風俗の維持、保健衛生、女子の基本的人権の確保等の観点から、とうてい許されないところでございまして、すみやかにこれが対策を樹立して、その実効を期さなければならないものと考えておるのであります。  しこうして、これが対策といたしましては、国民一般の民主主義的自覚、道徳観念の高揚、衛生思想の普及向上を要請されることはもとよりでありますが、これと同時に、売春を助長する行為等を処罰する諸規定を整備強化するとともに、社会政策的見地から、その性格、行状または環境に照らしまして、売春を行うおそれのある女子に対し、保護更生の措置を講ずべき総合的文化立法制定の必要が痛感される次第でございます。従来のこれに対する立法措置といたしましては、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務府関係諸命令の措置に関する法律による婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令、刑法、児童福祉法、労働基準法、職業安定法、風俗営業取締法、性病予防法等があり、さらに地方公共団体が各地の状況に応じまして、それぞれ制定いたしました取締条例があって、それらの運用によってこれに対処して参ったのでございますが、これらの法令は、その制定の時期、立法目的等を異にしているため、これを総合的、統一的に運用することには事実上少からぬ困難がございまして、十分その実をあげているとは申せない状態であるのであります。そのため、かねてから総合的立法措置の必要が叫ばれておりましたのでありますが、ついにその実現を見ず、昨昭和三十年第二十二回国会におきましては、売春等処罰法案が重ねて衆議院において提出されましたが、同年七月十九日の同法務委員会において否決され、その際「いわゆる売春等に関する諸問題につき、すみやかに抜本的総合施策を樹立し、これを実施する必要があり、政府としては内閣に強力なる審議機関を設け、その議を経て行政措置、立法的措置、予算的措置等、総合対策を策定し、国会の審議を要するものについては次の通常国会に提出すべきである」との決議がなされたのでございます。  他方、政府としましては、昭和二十八年十二月、当時の内閣の閣議決定により設けられましたる売春問題対策協議会から、昨年九月二日、内閣にいわゆる売春問題対策について答申がなされ、さらに上述いたしました衆議院法務委員会の決議もありましたので、緊急に法律案を立案する必要があるため、十月二十八日、閣議決定をもって内閣に売春問題連絡協議会を設け、前記答申内容を検討する一方、法律案作成の準備を進め、次いで売春に関する諸問題がきわめて重要であり、かつ複雑な問題であることにかんがみまして、内閣総理大臣または関係各大臣の諮問に応じ、売春対策に関する重要事項を調査審議するための恒久的機関として、新たなる構想のもとに売春対策審議会を設けることとし、今国会に総理府設置法の一部を改正する法律案を提出し、その成立後、同法律に基く審議会の発足と同時に、立法措置を含めて総合対策を諮問いたしましたところ、去る四月九日、答申第一号として売春等の防止及び処分に関する立法措置について適切な答申を得ましたので、これに基いて関係各機関相協力して慎重に立案に当り、ここにこの法律案を提出する運びに至ったのでございます。  次に、この法律案の骨子ともいうべきものについて御説明申し上げます。  第一に、この法律案におきましては、法律の目的を明らかにし、売春の反社会性を明確にするとともに、これが防止の対策としましては、売春を行うおそれのある女子に対する保護更生の措置を講じ、他方、単なる売春行為それ自体はこれを刑罰の対象とせず、主として売春の周旋、困惑等による売春、売春をさせる契約、場所の提供、対償の収受、前貸し、いわゆる管理売春、資金提供など、売春を助長する各種の行為を刑罰をもって取り締ることとし、第二に、保護更生措置としましては、既存の公共の福祉に関する施設の活用、現行法令の適切な運用をはかるほかに、新たに都道府県に、性格、行状、または環境に照らして売春を行うおそれのある女子及びその家庭につき必要な調査、指導を行い、あるいは相談に応ずるための婦人相談所を設置することとし、このような女子を発見し、その相談に応じ、必要な指導を行う婦人相談員を都道府県には置くこととし、市には置くことができることとし、なお、都道府県は、右の要保護女子のうち、必要と認める者につきましては、収容保護を行うための婦人保護施設を設置することができることとし、第三に、婦人相談所、婦人相談員、あるいは婦人保護施設の設置、その他都道府県または市の支弁する所要費用につきましては、国が一定額を負担または補助することとし、第四に、この法律の適用に当りましては、国民の権利を不当に侵害しないように留意すべきことを明らかにし、第五に、最後に、いわゆる売春婦あるいは売春業者の保護更生または転廃業のため一定の猶予期間を設け、保護更生に関する規定を、刑事処分に関する規定より先に施行するものとし、また売春に関する地方条例との関係を明確にいたしました。  以上、立法の趣旨及び本法案の要点につき御説明申し上げました。もとより法律のみをもって、直ちによく売春防止の目的を達成し得るものとは考えませんが、関係行政措置の推進と国民の協力のもとに、この法律の適切なる運用を行うならば、必ずや見るべき効果をあげ得ることと確信いたす次第でございます。  以上をもって趣旨の説明を終ります。(拍手)
  39. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。横山フク君。   〔横山フク君登壇、拍手〕
  40. 横山フク

    ○横山フク君 今回、政府より売春防止法案が上程されました。過ぐる二十二国会におきまして、衆議院に提出されました売春等処罰法案が否決されましたときから、今国会には当然政府より提案さるべきものと期待いたしておったのでございます。なぜならば、それは今や単に婦人の人権尊重という問題だけでなく、大きな社会問題として取り上げられ、一時代の要求とさえなっておるからでございまして、婦人に限らず、男子の方々におかれましても、今日の野放し売春に対しましては、何とか規制を加えなければならないと考えておられることは事実であろうと思います。政府におかれましても、その時代の声にこたえるために売春審議会を設置されまして、その答申に基いて今回本法案を提出されたのでありますが、以下、数点につきまして、私は質問を試みたいと思うものであります。  まず第一に、本法案におきましては、売春を刑事罰といたしませんで、売春行為を処罰しないことになっております。もちろん、売春の取締りは、実施上、人権尊重の振り合いから考えまして、非常にむずかしいこととは私も承知いたしております。しかしながら、この売春防止法を制定するに際しまして、売春を処罰しないということは、まことに画龍点睛を欠くうらみがあると思われるのであります。第三条におきまして、「何人も、売春をし、又はその相手方となってはならない。」とうたってあるのみでありまして、売春をし、またはその相手となった者に対しまして、明確な罰則がございませんことは、あたかも児童憲章のようなものでありまして、法律としてまことに間の延びたものでございます。売春をし、またはその相手方となってはならない、これはきまりきったことであります。今までもそうであったのであります。しかも、なお、ここにこの一条を入れたのはいかなる理由によるのでありますか、法務大臣の御所見を承わりたいと思います。  第二に、第四条に、「国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。」とありますが、これまた当然のことであります。しかもなお、ここに入れたのはどういうわけでありますか。これを特にここに入れなければ不当に侵害される懸念があるのでありましょうか。もちろん売春防止問題は非常にデリケートな要素を持っております。売春行為そのものを処罰しないのも、このことに懸念があったからであろうと思われますが、このことは同時に、他の勧誘、周旋等におきましてもむずかしいところがあると思われます。申すまでもなく人権は憲法において保障され、各人が人権の尊重は十二分に認識しているはずであります。にもかかわらず、近くは五番町事件も聞くところでございます。いわんや、かよわき女性、人権侵害を訴える道も知らない無知な女性に対しまして、相手は、ときには賞をかせられ、功を急ぐこともあると思われる警察官であります。当然そこには人権侵害のことも勘案されてのことと思いますが、一面から考えますれば、ここに抜け道ができて、この法律を空文に終らせるおそれがあることも見逃せないところであります。しかも人権の侵害と取調べとは紙一重であります。政府においては、具体的に人権を侵害しないように、かつそれを取り締るためには、どういう考えを持っておられますか、警察担当の大臣に伺いたいと思います。  第三に、この法律の実施により、赤線、青線がなくなるわけでありますが、その結果は散娼がはびこると言われております。集団廃業をした特飲街の報告にも、二十人のうち六人は他の地区にもぐり込んだということであります。この法律の実施は、当然、散娼の増加、それに付随して性病蔓延が考えられるのであります。性病に対しましては、医薬の進歩によりましてその数を減じてきたのでありますが、その反面、不徹底な治療によりまして内攻した悪質な性病のあることは周知のことであります。これら散娼に対する対策といたしまして政府はどういう考えを持っておられますか。さらに、法の盲点から、喫茶店営業は昼夜営業が許され、一ぱいのコーヒーで一晩中ダンスもできる、仮睡もできる、ボックスはカーテンで仕切られておって、外からは中を見ることができない、しかもお客はアベックに限るといった喫茶店が、新宿に三十数軒あるということである。しかもこれが都会の繁華街にその数を増す傾向にあると言われております。本法の実施後、散娼の激増は目に見えているわけであります。五条ないし十一条で果してこれが解決できるものでありましょうか。ゴム袋の一方を圧したために他方がふくれ上ったようなことになってはならないと思います。政府は、この散娼に対しましてどういう対策をお持ちでありますか、お伺いいたしたいと思います。  第四に、赤線地帯の業者の転業対策について伺いたいと思います。これらの業者に対する補償といったことのごときは私は考え汚れませんか、しかし、かつては国で黙認していたところであります。今日法律で禁止したからといって、その人たちをあすから路頭に迷わせるわけには参らぬと思います。これら業者の転業に心から相談に乗り、転業融資の道は何とか相談に乗ってやることが必要じゃないかと考えられるのであります。また放っておいたならば、生きるために法をくぐる他の方法によって同じようなことをやらぬとも限りません。社会の実情は常に取り締る方よりも取り締られる人が一歩先に行っております。政府においては、この法律の実効をあげますためにも、これら業者の転業につきまして指導の手をのべるべきと思いますが、それに対する方法を承わりたいと思います。  第五に、転落女性に対する対策といたしまして、社会党の案によりますれば、刑事処分、保安処分、保護更生措置の三本建になっております。政府案におきましては保護更生の一本建であります。刑事処分については冒頭に伺ったところでありますが、保安処分につきまして、多くの場合、一度転落した女性は、安易な生活に馴れ、困苦欠乏に耐えるという気概が欠けているきらいがございます。従ってそれは、ただ単に保護更生の措置をするだけでなく、進んで少くとも保安処分による強制力を使わなければ目的を達成することは困難ではないかと思います。本法において、保安処分を入れなかったことに対する大臣の御見解はいかがでありますか、お伺いいたしたいと思います。  第六に、本法におきまして保護更生に関する事項を行う所として、婦人相談所を設置することを都道府県に義務づけておりますが、売春防止におきまして保護更生に重点を置くことはわかりますが、それだけに保護更生は文字の羅列であってはなりません。成育した婦女子を指導することはむずかしいことでありますが、その上に、一たびその習癖のついた婦女子を保護更生させることは非常にむずかしいことであります。このゆえに、指導にその人を得ることは一面困難であると思われますが、現在、売春婦、赤線五万、青線二十五万、基地周辺を合せて五十万と言われております。その半数と見ましても、相談所の数において、規模において、非常に大きなたくさんのものを要すると思われますが、政府の意図するところはどのくらいのものであるか、内容、経費等について厚生大臣に伺いたいと思います。  第七に、第十八条によりますれば、都道府県は要保護女子を収容保護する施設を設置することができるとあるのみで、強制設置となっておりません。これは当然必要なものであるが、任意設置として強制設置としていないのは、いかなる理由によるものでありますか。売春防止の前提のもとに売春婦対策を保護更生に主眼を置くとなりますれば、相談所だけで済むものではなく、収容施設は必須なものと思われますが、これを任意設置とし、しかもその費用を国において補助することができるという程度であります。これでは保護の目的を達成せられないと思いますが、いかがでございましょう。その保護施設として考えられるものの内容、経費等について厚生大臣に伺いたいと思います。  重ねて厚生大臣に伺いたいのは、この法律施行と同時に、相当数必要になってくる婦人相談所、保護施設について、一部を国が負担もしくは補助することとなっておりますが、来年度においてはどれくらいの予算を計上されるお見通しでありましょうか。本国会が済んで、夏ごろから各省では予算を編成されることと思いますが、本問題に関しましては少い金額ではありません。全国における相談所、保護施設の建設費等を合算いたしましたならば相当の金額になると思われます。昨年夏、三十一年度の予算を編成されますときに十四億余のこれの面に対する予算を要求された。しかもそれは全部削除されたということを聞いております。法を予定しない昨年度においても、すでに三十一年度において十四億余を要求し、今年度においては、法が実施されるのを前提といたしましては、それを上回ることであると思われますが、これに対する予算措置についてお伺いいたしたいと思うわけであります。なお、これら施設は半額あるいは二割地方負担になっております。地方財政において窮乏を訴えておりますときに、任意設置になっております収容施設においては、なおさらのこと、本法実施期に間に合わないのではないかと案ぜられておりますが、何らかの財政措置をなされるのでありましょうか、お伺いいたしたいと思います。  なお、私は授産施設、職業補導施設が当然なければならぬと考えますが、いかがでありますか。ただでさえ不足しております一般の授産施設、職業補導施設をこのために使えるものではありません。また初めから一般女子と一緒にすべきものでもないと思うのでありまして、この方面の施設は特に要望するところであります。生活の道を考えてやり、生きることに希望を与えないで、その更生は望まれないところであります。当然お考えになっておるところと思いますが、法のどこにも明記してございません。それでやれるでありましょうか、なさるのでありますか、お伺いいたしたいと思います。  次に私は、せっかくの機会に、政府はほんとうに売春を防止する熱意がおありかどうかを伺いたいと思います。もちろんおありと思いますが、すでに熱意がおありでございましたならば、野放し売春は防止できていたはずでございます。先ほど松原次官からも説明がされました通り、刑法の第百七十四条以下、軽犯罪法第一条、あるいは風俗営業取締法の二条、三条、四条、七条、児童福祉法の二十四条、六十条、性病予防法あるいは労働基準法、職業安定法等を忠実に徹底的に施行されましたならば、売春日本の汚名はきせられておらなかったはずでございます。現に、昭和二十九年十一月に都の売春等取締条例違反容疑で手入れいたしましたのが口火となりまして、ついに集団廃業した例もあるのであります。法律は作られただけでは目的は果されるものではございません。忠実に施行されなければ意味はございません。たとえば、未成年者禁酒法のごとく有名無実の法律となってはならないのであります。この法律が龍頭蛇尾、あるいは空文に終らせることなく、真に法の権威を失墜させないためには、政府においてはいかほどの熱意をお持ちでありますか。特に法務大臣に伺いたいと思うのであります。  最後に、法律以前の問題といたしまして、性道徳の涵養について文部大臣にお伺いいたしたいと思います。売春を本能にからめて云々する人がございますが、これは一つには習慣のものであり、すべて本能を理性でコントロールするところに高い人間性があると思われます。私は、私どもの育った時代の性道徳が不変なものとは思いません。新らしい時代には新らしい性道徳があると思いますが、しかし、いかなる時代でも、その時代の公序良俗に反してはならぬことでありますし、他に悪影響を及ぼし、迷惑をかけてはならぬはずであります。近代の出版物、映画等におきましては、若い男女の規律心を麻痺させ、限界をこえた行為を誘発するおそれのあるものもしばしば見受けるところであります。売春の温床もここにあるとも言えるわけでございます。私はこの機会に、売春以前の問題として、正しい性道徳の涵養を求めてやまないのでありますが、文部大臣におきましては、いかなるお考えでありますか、今後いかに御指導なさるお考えでありますか、お伺いいたしたいのでございます。  以上をもちまして私の質問を終ります。(拍手)   〔政府委員松原一彦君登壇、拍手〕
  41. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 横山議員からのただいまの法務大臣への御質問は、第一は、単純売春を何ゆえに取り締らないかということ、第二は、散娼対策はどうするか、第三は、赤線業者に対してどういう手段をとるか、第四は、保安処分のないのはどういうわけか、第五には、これを実行する熱意があるかというふうにお尋ねがあったものと心得まして、お答えを申し上げます。  第一の、単純売春を今回刑罰の対象としていないことにつきましては、売春婦人をこれを刑罰の対象とするというよりも、むしろ救済の対象とするというのがこの法律案の骨子でございます。むしろ婦人の人権を擁護するというところに特に重きを置いておるつもりでございます。ただし問題はございます。いろいろ問題はございますが、この問題につきまして、いろいろ総合して意見をとりましても、なかなか売春行為そのものを、性行そのものを取り締ることにつきましては、挙証上の——証拠をあげる上における非常な困難があり、人権じゅうりん等の問題につきましても、これを引き起すおそれもありますので、外に現われたる面から厳重に取り締って行って、その行為の絶滅を期するという方針に進んでおりますのでございまするが、しかし決してこれでもって尽きたとは思いません。問題は残ります。なお、今後売春対策審議会等において、十二分に研究をしてもらうことにいたしておるのでございます。  第二に、散娼対策でございますが、私どもこれは非常に心配にたえません。赤線区域を絶滅しましても、これが散りますことは想像せられまするけれども、この法案は、街路その他において現われたる面に一々厳重なる取締りを行なって、その風紀を乱すような行為につきましては十二分に取り締ることになっておりますが、これが徹底しまするというと、おのずから部屋を貸す者も、あるいは譲渡する者も、あるいは散らばってもぐっている者も、おのずからそこにかような行為ができなくなるように誘導いたしたい。非常にむずかしい問題とは思いまするけれども、この方針をもって進むつもりでおるのでございます。  第三の、赤線業者に対しましては、これは明年の四月一日から保護更生の面に力を注ぎます。そうして極力一年間に保護更生等によって売春婦人の救済をはかります。そうして明後年の四月一日からは、こういう業者の絶滅を期するのでございまするからして、その間に約二年ございまするから、もし理想的に参れば、そのころには売春婦人はなくなるのでありますが、なくならないまでも、この間において転廃業等を十二分にやってもらいたいと思うのでございまして、その家屋をいかに利用するか等のことにつきましても、これは売春対策審議会の方において、なお残されたる問題として研究をしてもらうことになっております。  第四の、保安処分につきましては、これは第五条の売春婦人に対する刑罰があるのであります。売春婦人も刑罰の対象にならないとは申さない。外に出て引っぱったり、あるいは勧誘したりする行為があった場合においては、婦人といえども取締りの対象になる。刑罰の対象になりますが、これは少年裁判所等において裁判の結果、保安処分にかえることができるようにいたすことになっております。ただし、具体的な方策につきましては、ただいまなお売春対策審議会において研究中でございまして、法務省は一応の案を備えましたが、ただいま御報告申し上げるまでには参っておりません。実施までには、なお二年間ございますので、十二分に保安処分をもってこれにかえる用意を持っております。  最後の、この法案を厳重に実施する熱意があるかというお尋ねでございますが、十二分の熱意を持っておるとお答え申し上げます。ただし、それではこの法案によって売春等の反社会的な悪がなくなるかということになりますと、これは私は、単に一片の法律をもって本能的なかような問題が尽きるものとは思われません。これには何と申しましても、性道徳の涵養、純潔教育の徹底あるいは宗教面からの戒律等が、人格の上に自律的に行われざる限り、絶滅を期するということはむずかしいものだと思います。しかしながら、法において定められたる点につきましては、私どもは全力をあげて、この遂行を期しておる次第でございます。  以上、お答え申し上げます。(拍手)   〔国務大臣小林英三君登壇、拍手〕
  42. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) 横山さんの御質問にお答えいたしたいと思います。  この法案によりまするというと、婦人相談所、それから婦人相談員を設けなければならぬことになっておるのでありまするが、現在三十一年度、本年度の予算におきましては、婦人相談所を六大都府県と、北海道と福岡県との八カ所に取りあえず設けることになっております。それから婦人相談員は、大体十万人以上の都市に対しまして、大体基準といたしまして三、四人、二十万以上の都市に対しまして五人くらいという程度に基準を作りまして、大体、ただいま四百六十八名の婦人相談員を置こうといたしておるのであります。これはやはり各都道府県とも十分折衝いたしまして、適当にこれを配分いたすつもりでございます。これは本年度の予算に計上いたしておりまして、大体四千万円のただいまの予算の範囲内においてやっておるのでございます。なお、この法律施行せられたと仮定いたしますると、御承知のように、刑事罰の問題につきましては、昭和三十三年の四月一日から実施されるのでありまして、この婦人保護、更生保護の問題につきましては、昭和三十二年四月一日から実施せざるを得ないのでございまするから、ただいま私どもといたしましては、昭和三十二年度の予算の通過次第、できるだけ早くこのすべての、八カ所のほかに残っておりまする三十八カ所を至急に建設をいたしまして、手配をいたしたいと思っておるのであります。なお、この場合におきましても、各府県によりまして相当事情も異なっておりまするし、売春環境というような問題につきましても、それぞれ地方によっても異なっておりまするから、この規模その他の問題につきましては、必ずしも一律の規模のものにする必要はなく、それぞれ府県の状態に適応いたしましてやりたいものだと考えております。それからこの婦人保護施設につきましては、御指摘になりましたように、各府県の任意、つまり必置でございませんで、各府県の任意設置ということになっております。しかしこの問題につきましては、ただいま現在全国に、各都道府県から委託の形でやっておりまする矯風会、あるいは救世軍、あるいは東本願寺というようなものが全国に十七カ所ございまして、とりあえずこれを利用するわけでありますが、この婦人保護施設の問題につきましても、先ほど申し上げましたように、各府県の売春環境等も十分に勘案をいたしまして、今後国の予算の許す限りこれを設置いたしたいと思っておるのでございます。  それから御質問の中に、来年度、いわゆる三十二年度以降の予算についてどうかというような問題もございましたが、大体本年度以降の、あと残りました三十八カ所の婦人相談所の開設、あるいはこれに伴いまする諸経費等を勘案いたしますと、大体一億二、三千万円、それに今度は各府県の任意の設置の問題等と勘案いたしまして、大体私どもといたしましては、四億五、六千万円ないし五億ぐらいあれば、これが昭和三十三年までの間において早急にこれの配置をいたせばいいのではないか。なお、その間において施設のない、いよいよ三十三年度以降になります前におきましては、これはそれぞれ職業安定所でありますとか、あるいは福祉事務所でありますとか、あるいは保健所でありますとか、警察でありますとか、病院でありますとかいうようなもの、並びにそれぞれの法規を運用いたしまして、そうしてそれらの問題につきまして解決しないようなものにつきましては、先ほど申し上げましたように、婦人保護施設において収容いたしまして、この法の施行に伴いまして万全の策を講じたい、こういうふうに考えておるのでございます。(拍手)   〔国務大臣清瀬一郎君登壇、拍手〕
  43. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 御質問の末段の、青少年の性道徳の向上について、文部省は何を考えておるかという意味の御質問でございました。  この問題の第一は、何と申しましても人格尊厳の思想を普及徹底することでございます。売春行為は、言うまでもなく人身売買なんです。日本の新道徳としては、人間が最も尊いものであるということを順守徹底して、子供のときからこれをよく腹に入れてやらなければなりません。そこでこれらをどうすればいいか、非常にむずかしいことでございます。臨時教育制度審議会をお作りを願いまして、第一に諮問するところは、日本の道徳基準をどう持って行くか、これが一番大切なことでございます。今言った今日の人身尊重の思想、また性道徳の向上、純潔教育、これを徹底する方法をお考え願いまして、実行して行きたいと思っております。  第二は、近時ややもするというと、各種の挑発的な出版物がある、映画がございます。これについては、はなはだ遺憾なことは、今日の憲法では検閲は許されておらぬのです。しかしながら、必ずしも表向きの検閲ではなくても、いいものはこれを推奨し、悪いものは排斥する風潮を養うことによって、これらの挑発行為を少くすることができようと思っております。  以上二色のことに熱心いたしまして、横山さんの御心配のことをなくいたしたいと、かように考えておるのでございます。   〔政府委員石井榮三君登壇〕
  44. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 大蔵大臣が所用のため出席できませんので、お許しを得まして、私かわってお答えさしていただきます。  大よそ、すべての犯罪捜査に当りまして、人権尊重の基本理念に立って、合理的捜査によりまして犯罪の実態を明らかにするということが、警察の犯罪に対する取締りの基本方針であることは申すまでもないところでございまして、私ども従来そういうふうに努めて参っておるのであります。しかしながら、なお十分それが徹底しないために、若干人権侵犯の違反を起しておるようなことがありますことは、まことに申しわけない次第であると思っておるのであります。  先ほどのお尋ねでは、本法案の第四条に、人権の尊重すべきことは当然であるにもかかわらず、この法律適用に当っては、国民の権利を不当に侵害することのないように留意すべき旨の規定のあるのは、その必要がないのではないかというふうなお尋ねであったと存ずるのでありますが、わかり切ったことをあえてここに明記いたしますゆえんのものは、本法案の定める犯罪は、その性質上国民の個人生活に直接関連し、しかも淫靡の私生活に関連を持つことがきわめて多いのであります。従いまして、これが取締りに当ります者といたしましては、よほど慎重にこれに当らなければ、ややともすれば人権を侵害するようなおそれが多分にあるのであります。従いまして、そうしたことの絶対にないようにということを特に念を押して、銘記せしめるという意味合いにおきまして、第四条にこうした規定規定されたものと、かように考えるのでございます。  しかも、この法律に定められる犯罪は、その性質上、他の犯罪と違いまして、物的証拠等もきわめて少いものが多いのであります。そういう関係からいたしまして、今後この法律成立の暁におきましては、私ども警察といたしましては、国民各層の方々の御協力を得まして、特に目撃者その他の関係者等の御協力をいただきまして、あくまで慎重に合理的な捜査を進めまして、厳正なる取締りの実を上げて参りたいと、かように存じておるのでございます。そのために、今後取締りに当りまする警察官に対しましては、その取締りの態度、心がまえ、あるいは捜査技術といったような点につきまして、十分に指導、教育を加えまして、誤まりなきを期すると同時に、実効ある取締りができますように、一そう工夫をこらして参りたいと、かように存じておるわけであります。(拍手)   —————————————
  45. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 高田なほ子君。   〔高田なほ子君登壇、拍手〕
  46. 高田なほ子

    高田なほ子君 日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されました売春防止法案に対して若干の御質問を申し上げます。  戦後十年、戦乱の廃墟の中からようやく立ち上りました日本は、最近では国土復興の実も上り、国際的地位もようやく軌道に乗りつつあるとは申しながら、事、売春に関する限り問題は全く別であります。世界で公認売春の現存するトルコ、コスタリカの二国と、その点で肩を並べている日本の現状に対して、長い売春禁止の戦いがわが日本社会党を初め多くの婦人たちによって展開されてきたが、これはまことに社会悪に対する人類の崇高な文化闘争の歴史であります。  第二国会以来、わが党提案にかかります売春禁止法案は、そのつど成功の機会を、政府与党の手で、あるいは業者の暗躍等によって葬られて参りましたが、国民の世論、わけて婦人たちの声は、ようやく政治を動かす力となって、政府は本国会に至ってようやく重いみこしを上げ、過般売春対策審議会を設け、文教、保健、社会秩序維持、その他各般の施策の総合的樹立との関連において答申案が出され、おそまきながら本法案の提出を見るに至りましたことは、国民の世論の証拠として、まことに慶賀にたえないところであります。しかしながら、第二国会以来、提案されました各売春等処罰法案に比較いたしますと、前国会における同法案に対する付帯決議の線に基いた強力なものとは思われませんが、私は百歩を譲って、諸般の事情を勘案したといたしましても、単純売春に対する処罰規定を削除したことは、本法案のねらう効果を極度に抹殺していると考えられますが、これはまことに画龍点睛を欠くうらみを持つものであって、政府は、本案を暫定次善の策という観点に立って提出されたものでありましょうか。もし暫定次善の策であるとすれば、同時にこれが改善策が樹立されておらなければならないと思考するのでありますが、この点に関する首相の見解をただしたいと存じます。  伝え聞くところによれば、かかる法案に対しても、政府与党内部には強い反対の空気があり、一部には審議未了に追い込む動きすらあるやに仄聞いたしまするが、過般来業者の集団入党のうわさともにらみ合せて、首相みずから陣頭に立たれて、挙党一致、献身的な努力なしには、本案のねらう精神を実現することは、きわめて困難であると予想されますが、党内部の社会悪の根源を断ち切るための思想の統一は、一体、できておるのでありましょうか。現に議席を有せられる議員の中にも、なお、一家の犠牲になって働く者は、公娼がなくなると、行くところがなくなるではないか、そう考えると公娼制度は、政府として最も親切な態度であると述べているということが、活字の中にも見られますが、今回の審議会に対する業者の働きかけもあるやのうわさもうかがえる際に、首相は万難を排し、天下の公党たる自民党が、いやしくも世人から赤線党などとふまじめなデマの散布をされることのないように、きぜんとして公約実現のため、本法案が今会期中に実現されるよう努力さるべきと思いますが、この御決意のほどを再度お伺いしたいと存じます。  次に、終戦後、法的には売春は禁止され、性病予防法、児童福祉法、風俗営業取締法等、地方の条例設置にからみまして、相当に取締りは強化されておりますが、実際には政府官許の売春行為が増加の一途をたどりつつあります。売春行為の禁止は、単に一片の法律によってのみその絶滅を期することはもちろんでき得ませんが、こうした社会現象の原因を除去しようとする時の政治家の情熱いかんにかかっているということを互いに認識せねばなりますまい。本議場では、先ほどの副議長選挙には、満場の議員さんがおられましたが、遺憾ながらこの政府提案に対する与党議員の議席は見らるるごとく閑散なることは、その熱意のほどを示すに十分ではないかと考えられます。(拍手)  特に、鳩山首相は友愛精神を説いておられますが、けなげに働いておる母子家庭の福祉のための貸付金を、本年度は五千万円も削り、結核対策の実質的後退をさせたり、一連の社会保障対策を怠ったのでは、とうていこれが根絶を期することはむずかしいと考えられます。性道徳の低下の大きな線は、実に外国軍隊の駐留以来、画期的な下降線をたどっているということを考えてみても、こうした幾多の原因を明確に把握することなしに、この法案のねろう成果を期することは、まことに困難であると考えられます。従って首相は、こうした売春横行の原因がどこにあるのかというこの点を明確にここでお伺いしたいと存じます。特に性道徳向上のために、政府みずからその陣頭に立ち、国民にその範を示す用意が必要と思いますが、現に議席を持つ方々の中にも、芸者賛美論者があり、待合の温存をはかるあり、基地周辺の環境浄化に目をおおっておるようなことでは、盗人が「悪」という概念と同じ比重で売春の社会悪を根絶することもまた不可能でありますが、クリスチャンであられる首相は、本法案成立のために大いなる使命を持つと考えられますが、同時に、文相のこれに対する御所見をあわせてお伺いしたいと存じます。  今日、売春業者の大部分は、相互扶助、生活権擁護、性病予防を目的として地域的な組織を作り、その多くは県連合会をもって全国性病予防自治会を組織しておりますが、これは裏を返すならば、売春温存のための社会の最も深い根となっておると思います。よい社会を実現するために、社会良俗の破壊を招くおそれのあるこの種の団体に対して、首相は解散を命ずる勇気はないのか、かかる業者組織の刊行物は、売春行為の助成の宣伝がきわめて多いが、これが発行を停止せしめる用意はないのか、首相の御所信をただしたいと存じます。特に業者には、婦人の肉体の搾取によって肥え太り、公職、名誉職についておる者が非常に多くあります。五十地域中七十三名という数字を示しておりますが、これらの中には公職選挙法によって選ばれた者も十九名を数えているが、かかる業態の蔓延は常に政治との深い結びつきによることは今や明白な事実であります。この際一つ道徳向上のために、立候補の権利についても、党における公認等の問題について、何らかの拘束を必要とするのではないか。行政措置によってでも、不徳な業界と政治に強い一線を画す用意がなければ、明日の明るい政治を生むことはできないと存じますが、首相の、みずからこういう点にきびしい反省と実践の上に立たれた御所信をお伺いしたいと存じます。  次に、人身売買と家族制度の関連についてでありますが、なかんずく一身の犠牲によって家族を救済するという古い家族制度のきずなに縛られておる者が、今日の売春婦の中に多いのであります。これらの家族関係は、その四〇%が夫に死別した者であり、そのうちの七〇%は一人ないし五人の子持ちであり、母子福祉問題と深いつながりを持っております。また未婚者においてもその半数は四人以上の兄弟を持つ特に長女が多く、五〇%以上は親元に送金をいたしまして孝行を尽しておるという実情であります。この国の貧困と家族制度とのつながりの深さをしみじみと思わせられる問題でありますが、今般憲法改悪にからむ家族制度の復活は、誤まった親孝行の概念と結びつく人身売買、売春行為を容易ならしめる原因を作るので、かかる見地からも、家族制度の復活は絶対に企図すべきものではないと考えられますが、首相の見解をただしたいと存じます。特に一身の犠牲による親孝行という概念の払拭のために、政府は更正婦女子のために育英資金の拡大をはかり、あるいは老父母の生活扶助を考慮する等、諸般の考究がなされなければならないと存じますが、この際、首相の御見解をただしたいと存じます。  特に文部大臣にお尋ねをしたいことは、今日の教育の目標として、個人の価値の尊厳、また労働の尊さを把握させて行くべきは当然でありますが、貧困の中においての捨て身の生活保持の態度は、往々にして封建的な社会の通念の中から生まれてくる親孝行または犠牲的精神と結びつくおそれが多分にあります。文相は、国民道徳の根幹として、国に対する忠誠、親孝行という二本の柱を力説されておる模様でありまするが、人身の売買は、常に親孝行という誤まった概念のもとに行われておるのでありますが、とかく逆コースを走りつつある今日の文教政策の面において、売春の防止、性道徳の向上とともに、かかる国民道徳の基準である親孝行または国に対する忠誠という概念の説明を十分に承わりたいと存じます。私がなぜこのような御質問を申すかといいますと、これは人身売買に、ある学校で次のような授業をされたのですが、これは修身のあった時代です。「木曜日の修身の時、新しい親孝行の勉強をしました、私らは、何でも親の言う通りになるだけではいけません、お父さんやお母さんの考えが正しくないなら反対してもよい、反対して、もっと別な親孝行の仕方を見つけなければならないときめました、むやみに反対するのではないが、もっとよい方法があったなら反対してもよいのです」という。この授業を担当した先生は、「修身科にあっては、親の言うことに盲従するのは封建的道徳なりとし、おのれが正しいと信じた場合に、親に反対してもあくまでこれが実行をはかるべきものとして、革命に対する態度を示唆し、もってコミンテルン及び日本共産党の目的に資したるものなり」として、治安維持法違反で有罪になった事実があります。こういう事実は、決して過去のことではない。まさに今日の逆コースを行く文教政策の上における道徳の基準を明確に示すべきであるということを考えまするがゆえに、どうぞお答えを願いたいと存じます。  次に、法務大臣にお尋ねを申し上げます。本法案の第三条には、「何人も、売春をし、又はその相手方となってはならない。」という説話的条文で売春悪を指摘しておりますが、なぜ単純売春を罰則規定の中に入れなかったか。先ほど法務大臣は、婦女子を罰するのが目的ではない、むしろ保護更生の面に重点を置くのだと言っておりますが、われわれもまた婦女子を罰するために単純売春の規定を設けようとするものではない。あくまでもこの更生を前提とした保安処分を行う際に、何の法的根拠があってこれを行うのでありましょうか。単純売春を罰則の規定の中に入れるということは、婦女子を縛るということではなくて、保安処分による保護更生を明確ならしめる法的根拠を与えることになるのでありますから、松原政務次官の御答弁は、若干お答えが的をはずれておるように思いますが、再度御答弁を願いたいと存じます。特に、答申案に、単純売春を除外されたということによって業者は凱歌をあげたと伝えられる。この際特に明確にお承わりをしたい。売春の看板を掲げては、もはや堂々と営業をやって行きにくいというような見通しで、早くも業者間には別個の施設の準備も進められ、ある地区では、相当の大きな施設が完成されたと聞きますが、本人の自発的意図による売春は、よし常習者であっても罰することができない、これはまことに重大なる欠陥であります。場所の提供に対する罰則が明記されておりますが、情を知らざるゆえをもって法網をくぐることはまことに容易なることでありましょう。従って現行旅館業法における公衆衛生の見地からのみ許可するのではなく、道徳的社会秩序を乱すがごとき業態発生に対して、これが防止策を行政措置によってなし得るというような法的根拠を与えることは、まことに緊急の問題であると考えられます。一九五〇年、わが党山下議員提案による同法修正案は、ついに否決されておりますが、道徳的社会秩序の上から不適当と認めらるる場合には、許可を与えないというようにする意図はないのか、この際お承わりを申し上げます。  次に、本法案の目的達成のために、現行の風俗営業取締法にいう「待合、料理店、カフエーその他客席で客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業」と規定しておりますが、酒食の持ち運び以外のその他の客の接待とは何を指しているのでありましょう。これは明らかに売春を黙認する法的根拠を与えていることであって、かかる不明確な売春公認の根拠は、すみやかに削除すべきものと考えられますが、これに対する御見解をただしたいと思います。  さらに、本法に保護更正の面が明文化されたことは、一つの進歩と考えられてよいと思いますが、この適用に当って、単に性行や環境に照らして売春を行うおそれのある者というような予防措置が規定されておりますが、今日すでに転落した女性の保護更生を除いては、問題の本質をそらす危険なしとしませんが、売春のおそれのある者に対する保護更生とは何を指すのか。それほどの親切心があるなら、なぜわが党が強く主張した保安処分を規定し、法に基く保護観察、また真に更生の道を選ぶための、家庭その他の環境調整のための実情に即した保護方策がなぜ講じられなかったのか、私はこの点を再度お尋ねしたい。特に、本文にいう保護更生は、全く予算措置とともに空文に終るのではないかという危惧を持っているものでございますから、これもあわせてお答えを願いたいと存じます。  最後に、本法案の最大の眼目ともいうべき売春の勧誘、周旋、困惑による売春、前貸し、売春をさせる契約、場所の提供等、一連の売春業者に対する刑事処分は、強力かりすみやかに措置するよう配慮すべきであるのに、なぜ一年九カ月もの猶予期間が置かれなければならなかったのか。悪を改めるに一日の長を願うは、よい政治のとらざるところであると存じますが、この間の経過措置とともに、明快な御答弁をわずらわしたいと存じます。  次に、大蔵大臣にお尋ねを申し上げますが、今日まで売春禁止法に反対をした最大の政府の理由は、その財源的措置にあったように思いますが、大蔵大臣は、一体本問題についてどれだけの熱意をお持ちになっておるのでしょうか。過去の実績に照らして、はなはだ心もとないものを感じますので、この際、特にこれに対する御所見を承わります。特に、三十一年度予算要求においては、売春等処罰法案の成立を目ざして当初十四億の予算要求がされておりますが、これはほとんど跡形もなく削減されております。本法にある婦人保護更生のための相談所、相談員、保護施設、収容施設などには、いずれも都道府県及び市の支弁が規定されているが、今日の赤字財政に苦しむ地方の財源は、おそらくこの法の実現を許さないでありましょう。国の負担及び補助は、いずれも都道府県費による施設に対するものとして、予算の許す範囲内においで、十分の八以内または十分の五以内という幅の広い削減をも含めた補助率を示しているが、施設の任意設置の規定と相待って、まことにこれは空文に終るおそれが十分にあるのでありますが、地方財政の中に、どのような計画で実現のための費用が織り込まれようとするのか、本法案に基く財源措置は、今後いかなる形でこれがとられるのか、補正予算において考慮されて行くのか、地方財政計画と関連しての明快な答弁をわずらわしたいと存じます。  小林厚生大臣に対する質問は、ほぼ横山議員の御質問によって尽されたと存じますが、次の一点だけを確かめたいと存じます。当初の厚生省の婦人保護更生施設の予算を含めた一連の売春対策費として十四億の予算が計上されておりますが、一挙にして十四億から六千万円にこれは転落した。予算の転落であります。しかもただいまの説明によりますと、年次計画を示されまして、三十三年度までに五億円程度のものがあれば、保護更生施設は万全であると述べられておりますが、しからば何ゆえに当初十四億の予算が計上されたのか。五億円というものが果して良心的に、小林厚生大臣は、任意設置を排除して、保護更生の面に重点を置いた予算として考えておるのか。この点については、まことに当を得たお答えをちょうだいしたいと思いますので、十分に了解のできる御答弁をわずらわしたい。特にただしたいことは、三十三年度まで五億円あればよいというが、これは私どもが常識的に考えてみても、非常に僅少な予算だと考えられます。政府は三十年度の予算編成に際して、日米共同声明をもって再軍備の増強を約束いたしました。すなわち昭和三十一年度以降打ち続く年間において、わが国の資力の、より十分な部分を防衛力の増強に充てることが日本政府の意思であり、政策であると、御丁寧にもアメリカとの共同声明において、日本の重要な財政計画の基本を述べておられますが、おそらく再軍備優先の中において、涙をのんで小林厚生大臣は五億円の予算を計上した最小の年次計画を立てられたものと考えられますが、これの関連において明確に御答弁をわずらわしたいと存じます。  以上をもって質問を終ります。(拍手)   〔国務大臣鳩山一郎君登壇、拍手〕
  47. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 高田君の御質問にお答えをいたします。  お話がありました通り、売春問題は各般の総合対策を必要とするものであると考えます。今回の法案をもってその総合対策が完全に実現されたとは申し上げられませんが、この法案の実施をその第一歩として、今後はより完全なものにして参る所存でございます。  第二に御質問がありました点について申し上げます。戦後の世相の混乱と道義の頽廃並びに性道徳の低下によりまして、売春行為が著しく増加しておることは御承知の通りであり、もとより法律のみでこれを根絶し得るとは考えておりませんが、各種行政措置と相待って絶滅を期する考えでございます。  第三の御質問にお答えをいたします。売春問題の重要性にかんがみまして、政府は先に売春対策審議会を設け、各政党を初め、広く学識ある方々の御意見を承わり、緊急にこれが対策を立てることといたしたのでありますが、本法案は、同審議会の答申に基いて、緊急対策の第一歩として立案したものであります。その実施に当っては、政府各機関が一致しまして、万遺憾なきを期する所存でございます。  なお、お説の通り、貧困打開のためには、社会保障制度の確立が必要であります。これが売春問題解決の主要点であることは申すまでもないところと存じます。今後とも社会保障の拡充には努力をいたしたいと考えております。  なお第五点として、選挙権、被選挙権は、憲法上認められた国民の重要な権利であります。現在、公職選挙法は、禁固以上の刑に処せられ、その執行を受けることがなぐなるまでの者など、特に選挙権、被選挙権を行使せしめるのを相当としない場合をあげて、その場合に限り、選挙権及び被選挙権を有しないこととしております。御質問の場合も、これに該当するときは、事実上立候補の自由が制限されるのでありまして、この限度をもって相当と考えております。  第六点として、本法案においては、売春を助長する行為については厳重に処罰し、他方、売春を行うおそれのある女性については、保護更生の措置を講ずることとしておりますので、本法の適切なる運用によりまして、十分転落防止の目的をも達し得るものと考えております。  なお、憲法改正について、家族制度のことについてお話がありました。憲法改正の必要の有無及び範囲については検討中でありますが、非民主主義的な家族制度の復活については、現在は考えておりません。  最後に、業者の大部分は、相互扶助、性病予防を目的として地域的な組織を作り、その多くは県または全国的な組織を持っている、これはいずれも売春悪を助長させるものであるから、社会秩序保障の観点から、かかる団体の解散及び発行物の停止をする勇気を今日持っていないかという御質問があったと思いますが、本法案の施行によりまして、売春業者は当然取締りの対象になるわけでありますから、お尋ねのような問題は自然なくなるものと考えております。  他の点につきましては、他の大臣から答弁をしてもらいます。(高田なほ子君「首相は、一つ答弁漏れがありますから、その場所でお答え願いたいのですが、発言してもよろしうございますか。」と述ぶ)私はかまいませんが……。(高田なほ子君「議長発言をお許し願えますか。」と述ぶ)
  48. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 高田なほ子君、簡単に願います。
  49. 高田なほ子

    高田なほ子君 おからだが御不自由だと思いますから、途中で、質問させていただきます。  それは、非常に重要な点でありますが、この売春防止法案を今国会に必ず通すかどうかということが大切な質問であります。これをどうぞ御答弁願います。
  50. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君)(続) 必ず通したいと思っております。先ほど御質問の中に、わが党で意見が分れておるようなお言葉もありました。現在、そういうことはございません。(拍手)   〔国務大臣清瀬一郎君登壇、拍手〕
  51. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 私に対するお問いの一つは、親孝行ということでございました。私は家庭生活としては、親は子供を愛し、子供は親を愛する友愛精神に満ちた家庭を予想いたしておるのであります。それゆえに、売春行為をして親を助けるなんということは親孝行のうちじゃございません。しかしながら、一般に見て、わが国においては子供が親に孝行をするのを悪いとは、私は考えておりません。親孝行はいいと思っております。  もう一つは忠誠のことでございました。昔は主権者、わけても天皇に主権がありましたから、あの通りの忠誠解釈であります。戦後、憲法が変りまして、国の主権者は、国民でございます。全体としての国民でございます。これに忠誠をすることが近代の忠誠でございます。これはむずかしいことでありまして、なお機会がありますれば徹底的にお答えいたしたいと思いまするが、本日は、この程度のお答えをいたしておきます。(拍手)   〔政府委員松原一彦君登壇、拍手〕
  52. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 法務大臣へのお尋ねが四点あると思いますから、お答え申し上げます。  第一は、この法案には、単純売春に対する処罰規定がない、こういうことでございまして、これはさっきお答え申し上げましたけれどもが、横山さんへのお答えでは足らぬということでございますが、全くお尋ねの通りに、これは非常に問題でございます。ただしどこまでも売春は悪であるということだけは、国の意思として第三条で明らかにいたしてございます。これは悪であります。ただし、これが犯罪として刑罰の対象になるという点につきましては、先刻も申し上げましたが、第一に挙証が困難であって、公判廷においては成立せぬおそれがたくさんにある。また社会党の方でも、この行為に対しましては三千円以下の罰金、科料等の、ごく軽いお扱いになっておるように拝見いたしておるのでございますが、これは大へんむずかしいのでございまして、一応この段階にとどめておきまして、さらに私どもは、こういう立法というものは、幾多の経験を重ねて、そうして練り直し、こね直して、よいものにして行きたいと思いますので、どうか御了承願いたいと思うのでございます。  第二は、風俗営業取締法第一条第一号に、「待合、料理店、カフエーその他客席で客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業」等の規定があるが、これは売春をなすおそれが多分にある。この規定を削除する意思はないかというお尋ねのように思いますが、これらの営業者すべてについて、単なる売春をなすおそれがあるからという理由をもってその営業を禁止することは、憲法上から申しましてもいかがかと考えらるる節がございます。本法案を十分活用いたすことによりまして、特に規定を削除する必要はないようにいたしたいと考えておる次第でございます。  第三としましては、この法案の第三章の「保護更生」の条文中に、「売春を行うおそれのある女子」という規定があって、現に売春を行なっている女子に対する規定がない、こういうお尋ねでございます。まことにごもっともだと思います。法律案第三章「保護更生」の部分に規定いたしてありまする「性行又は環境に照して売春を行うおそれのある女子」の中には、広い意味におきましては、現に売春を行なっている女子も包含せられるわけでございますが、これらの女子が犯罪を犯し、本法によって検挙されました場合には、法務省関係としては、ただいまでも東京地検に設置しておりまする更生保護相談室がございまして、相当の実績を上げておるのでございます。これをとりあえず主要地検にも及ぼして行く計画を立てております。なお更生保護相談室の実績につきましては、いずれまた詳しく申し上げる機会を得たいと思います。保安処分につきましては、もちろん先ほども申しましたが、十分の用意を持っております。  次に、第四としまして、刑罰の実施をおくらした理由はどうか。二年後に刑罰を持ってきたのは怠慢ではないかという御意見でございますが、私どもは刑罰というよりも、保護更生を先行させる、保護更生に十二分に手を尽す、これによって刑罰の部分がだんだんなくなることを期したいのであります。刑罰が目的であってはなりません。刑罰なからしむるように導きたい。そのために明年四月からは予算を備えて、まず保護更生に十二分に努力をいたす。そうしてその一年後には、もし理想通りに参れば、これは当然もう消滅して刑罰の対象がなくなるわけでございますが、さようなことはもちろん予想もつきませんけれども、保護更生を先行させる。そうして刑罰に値いすべきものの解消を一年後に期するという点につきましては、どうぞ御了解をお願い申し上げたいのであります。(拍手)   〔国務大臣小林英三君登壇、拍手〕
  53. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) お答えいたします。  この売春防止法案が成立いたしました場合におきましては、多数の赤線あるいは青線地区の従業婦の身の振り方をどうさばいてあげるかということが問題となるわけでありまするが、このためには、先ほども横山さんの御質問の中にも申し上げておきましたが、刑事処分の規定施行前におきまして、婦人相談所あるいは婦人相談員の活動によりまして、既存の関係の諸法令の適切な運用と、公共の福祉に関しまする諸施設を活用いたしまして、その保護更生をはかりまするとともに、これらによりましても他に方法のないというようなものも、当然生じて参ると思いまするが、こういう場合におきましては、全国に設けられまするところの婦人保護施設によりまして、これを救済して行く、そうして保護をして行くというのでございまして、先ほど厚生省におきまする三十一年度予算において、これらの予算として十四億円何がしを要求しておったが、私の先ほどの答弁では非常に金額が違うではないか、こういうふうなお尋ねもあったのでありますが、十四億円の予算につきましては、まだこの法案の内容等が決定しない際でありましたので、一応われわれといたしましては、一万人程度の婦人を収容することを考えて、そうしてそういうような計画をいたしたのでありますが、この法案の内容というものが漸次明らかになりまして、しかも一年間の猶予期間もありまするし、この間に漸次それらの問題を拡充して参りたい、こういうつもりでございます。従いまして、私ども考えておりますることは、最初の方針によりますと、婦人保護施設を相当数置くという考えのもとに、そういう予算を計上したのでありまするが、いろいろの事情も勘案をいたし、また先ほど申し上げましたように、各府県の売春環境等とも、にらみ合せいたしまして、既設の十七カ所の施設も活用し、漸次これを拡大して行きたいと、こういうつもりでおるのでございます。  それからこの旅館業法の改正について云々という御質問がございましたが、旅館が売春の場とならないように、目下旅館業法の改正も検討中でございまするから、その成案を得ました暁におきましては、売春対策審議会等にも御審議を願いまして、そうして近い将来に適当の処置を講じたいと考えておるのであります。(拍手)   〔国務大臣一萬田尚登君登壇、拍手〕
  54. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 私に対しますお尋ねの一つは、地方財政は今日赤字がちであるが、婦人更生保護施設に要する費用が地方負担が多いようである。従って効果が危ぶまれる、かような御質疑であったと思うのでありまするが、この婦人更生保護に要します地方の経費は、地方財政計画に織り込んで所要の予算措置も講じてありますので、御懸念の事態は生じないであろうと考えておるわけであります。  なお、この三十二年度の予算につきましても、地方財政計画に織り込むのでありまして、従いまして補正予算ということは起らないと考えております。  なお、負担率の十分の五、十分の八というような負担の補助率についてお尋ねがありましたが、これは生活保護費その他の現行の保護費における国庫補助率と均衡をとって定めた問題であります。たとえば生活保護費におきましては、施設整備費補助は十分の五、被保護者の収容費につきましては、十分の八を補助するというふうになっておりますので、かようにきめたわけであります。  なお、婦人更生保護についての大蔵大臣としての態度についてのお尋ねでありますが、私も非常に熱意を持っておることを申し上げておきます。従いまして、将来予算的にも、できるだけのことはいたしたいと考えておる次第であります。(拍手)   —————————————
  55. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 宮城タマヨ君。   〔宮城タマヨ君登壇、拍手〕
  56. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 ただいま提案されました売春防止法案に対しまして、前議員の質疑と重複しないように、総理大臣、法務大臣、文部大臣に二、三の質問をいたしたいと存じます。  第二国会で政府提出の売春等処罰法案が廃案になりまして以来、実に幾多の経緯を経まして、今日までとうとう日の目を見ないで参りました売春対策の法案が、やっと今回おそまきながら売春防止法案の名を打ちまして、ここに政府が提出いたしまして、つい先刻、鳩山総理はこの法案に対しまして、必ず成立を約束するという発言をしていただきましたことは非常な喜びでございます。しかしこの法案の内容自体につきましては、私は全体的には決して満足し得るものではございません。が、本法案は、大体は売春対策審議会の答申案に基いておるもので、私もその審議会の一員といたしまして、このふできでございます責任を感ずるもので、やむなく、今回はまず売春対策につきましての第一段階の解決であるというところにおきまして、しかも今後だんだん回を追って、この日本の国情と国家財政面とにらみ合せまして、売春対策審議会で審議を重ね、逐次この法案の完成を期待するほかないいろいろの事情がございましたのでございます。今日はこの段階におきまして、各大臣にお伺いを申すのでございます。  第一番に法務大臣にお願い申し上げます。本法案によりますと、いわゆる集娼窟、赤線地帯でございます。集娼窟と、散娼、街の女とは、一応取り締ることができることになっておりますから、表面上目ざわりになります状態は払拭される結果になりますが、その取締りが行き届けば行き届くほど、売春婦も業者も業態を変えまして、巧みに法の盲点をついて逃げ隠れ、業態はいよいよ深刻のものになるというおそれがございます。その法の盲点の最も大きいところは、単純売春を罰していないという事柄でございます。しかし、この点につきましても、取締り当局の誠意と熱意とがございますならば、人権じゅうりんの問題もあまり起らずに取り締ることができるのではないか。それには現在の警察陣、検察陣の陣容の整備を要すると思いますが、一体予算の関係はどうなっておりますのでございましょうか。本年度に計上されております法務省の予算三百五十万円程度では、何にもならないと思っておりますのでございますが、陣容の整備の問題と予算関係について法務大臣にお伺いいたします。  次に、悪質者や常習者に対しましてなされるところの刑事処分の際に、私はできるだけ刑の執行猶予をしまして、それに保護観察を付することを希望いたします。ただ、これに対しまして保護司の陣容はどうなっておりましょうか、当局のお考えはどうでございましょうかをお伺いいたします。  なお、ここで非常に重要な問題は、第十九国会におきまして、刑法の一部改正によって、初度目の執行猶予者に保護観察をつけることができることになったにもかかわらず、その後の成績を見ますというと、裁判所の方では案外この恩典を利用していない実情でございますが、今回の売春婦の取締りにつきましては、そのことは決して許されないことでございまして、必ずこの執行猶予をし、保護観察をつけるということの実現をされなければならないと、願いますのでございますが、裁判所との連絡はどういうふうになさるつもりでございますか、それもあわせてお伺いしたい。  また、万やむを得ず刑務所に入れる必要のある婦女に対しましては、一体刑務所は、どうなさるつもりか。今までの女囚監を利用するというつもりか、それとも少年院式のものを新たにお作りになるつもりか、これも伺いたいのでございます。私の願いは、普通のどろぼうと一緒に刑務所に収容することは、これは好ましくない。彼女たちにいたします刑は、あくまで応報刑でなく、教育刑の精神によりまして生活の更生を実際に指導し、社会に復帰しました暁には、日本女性の責任を自覚し、特に母として子女の教育の任を果し得るように、女性の愛情と真実とを確かに復活させるような指導をするということと同時に、いかなる実生活にも絶え得るように、刑務所はその教室であらせたいと私は願うのでございます。  なお、いま一つ重大な問題として、自然に子供をはらんで参ります売春婦の点でございますが、実はここ十年間のデータを見ますというと、一カ年に刑務所の中で生まれて出ます子供が百人内外おります。その子供は、かわいそうに刑務所の番地がつくのでございます。そうして生まれた子供は法律によりまして、一カ年間は母によって刑務所の中で育てられることになっております。あの暗い、くさい、息詰まるような空気の中で、特に感受性の強い、と言われております一カ年間を、あそこで育てられ、暗い人生の第一歩を踏み出すことになり、やがて学校の入学にも、就職にも、特に結婚ともなれば、必ず重大問題を起す結果になるのでございまして、結果的に見ますというと、やっぱり親の轍をふむよりほかに仕方がないという運命を運命づけられる多くの子供のございますことを思いまして、今また、新たに売春婦の生みます子供たちがこれに加えられるということには、私は耐えられないのでございます。基本的人権の尊重だとか、児童憲章などというような、いかにも体裁のいいことを私どもおとなは言っておりますけれども、実に子供たちに対しまして、無責任きわまるものであると恥じたいのでございます。(拍手)当局のこれに対しまするところの対策を伺いたいのでございます。  私の長年の希望の一つに、出産をする女囚には特別な産院を用意いたしまして、そこで分べんをさせまして、もし出産後も、親子一緒に生活をさせることを許されていい女囚に対しましては、やっぱり一年間ぐらい子供と一緒に生活をさせたい。そうして母乳で、産院でこの子供を育てさせたいということでございます。そこでその特殊産院とでも申しましょうか、この際そういう新しい構想によるところの産院を設置なされてはどうでございましょうかと、私は願うのでございますが、それに対しまして大臣のお考えを伺いたい。この刑事処分をされましたあの者を産院に収容し、それから子供の取扱い、衣食住に関しますところの実生活の修養を、その新たにここに収容を必要とするいわゆる売春婦を使って子供の育て方や生活の仕方を指導しながら、役に立たせながら、そうして今度社会に復帰いたしましたときの一人前の婦人にしたら、どんなものでございましょうかという私の希望でございます。  次に、文部大臣にお伺い申します。本法案の前文に倫理規定が設けられて、売春は悪であるということがはっきり示されております。これは審議会におきまして、私どもが強く要望した結果でございますが、しかし法律規定以前に、それ以上に根本問題がございます。それについて、文部大臣に伺いたいのでございます。私は昨秋、法務省の委嘱によりまして、二カ月近くヨーロッパに渡り、そのヨーロッパの売春状態及びその立法措置を調査して参ったのでございます。ヨーロッパのどこに行きましても、やっぱり街の女はおりましたが、日本の街の女と比べまして一番目についたことは、その女たちは恥を知って、恥かしげに、私どもが参りましても、逃げ歩いておったというかわいらしい態度でございます。日本の街の女、あるいは集娼窟の女にいたしましても、実に彼女らは、口々に政治の貧困を唱えながら、だから結果として当然だよということを言っております。しかも女で最高の収入者である、婦人議員どもどうだ、負けるだろうというような、そういう実に不謙遜な態度をいたしております。ことに私は電車や汽車に乗って、いつも残念に思いますことは、いなかから出ました純朴で、そうして質素なあのいなかの娘たちに対しまして、その娘をしり目にかげながら、着飾って、一段上の存在であるというような態度をいたしております。恥を知らないにもほどがあると私は思います。  そこで、文部大臣にただしたいことは、一体売春の恥と限らず、人間生活におきまして最も大切だと思います恥を知るという教育は、一体どこでどういうふうにされておるのでございましょうか。学校の教科書を一通り調べて見ましたが、私はその恥を知れという教科題目を見出すことができませんでございました。同時に純潔問題、貞操問題というような、先ほどからも論じられました点につきましても、今日女だけに要求するということは許されません。男女同様にこの責任を負うべきだと思っておりますが、これらの教育は文教の府である文部省の、しかも監督大臣の私は責任ではないかと思っておりますが、御答弁を願います。  それから、ついでに、人間生活の根本教育問題であります今言った恥を知るというようなことや、また、今日自殺や、他殺や、つまり命を断つということなどが、あまり容易にされておりますのでございますが、実際わが命を尊び、人の命を尊ぶというような、こういう観念を、こういうことに対しましての一体教育問題は、どこで研究し、教えなければならないか。つまり、内閣がかわりましても、また時代が変りましても、変ることがないこれらの問題について、私はときどき譜代の大臣に伺って見ておりますが、そのたびにがっかりいたしますことは、教育基本法の陰に隠れていらっしゃるということであります。そんな無責任な考え方を、教育基本法のもとにされるということはゆゆしい問題じゃないかと、いつも思うのでございますが、現大臣の御答弁を伺います。  それから最後に、鳩山総理に伺いますが、今回提案になりました法案は、成立いたしても、それは売春対策のほんの一角がつまり解決されたに過ぎないことでございまして、これが根本問題は、何と申しましても国民の生活の安定にあると思っております。今日ほど国民生活の精神的にも物質的にも不安な時代は、私はほとんどあるまいかと心配しておるものでございます。あの本年の三月、東京の一角にございました十九の娘が不良の男性との間にはらみました身の始末に困りまして、母親に打ちあけましたところが、母親はびっくりして、しかりました。ところがその腹いせに、即座に母に毒を盛りまして毒殺をし、ついでに弟さんもまた毒殺したという事件などは、言語道断のできごとでありながら、しかし、あの当時気をつけてみましたが、国民もまた、こんなことは日常茶飯事であって大したことではないというような、非常な無関心な物の考え方をしておりますということは、これは実にどういたしたらいいものでございましょうか。この娘を五月二日に尊属殺及び殺人で起訴されましたが、起訴されたことによってこの問題の解決をみたということではなくて、売春問題といい、青少年の不良化問題といい、またいろいろ日々起って参ります殺人事件等々、一体政治の責任を私は十分に追及しなければならないと思います。また政治家の端くれでございます私なども、ほんとうに日々反省しなければならないと精進いたしておるのでございますが、これらに対します総理の御所見を伺いたいのでございます。  なお最後に、新生活運動につきまして、一体内閣は何を意図していらっしゃるか、かけ声だけは大へんにぎやかでございまして、しかも相当の予算をとってございますけれども、一向国民の生活に響いてこないのでございますが、これは総理のお考えを伺いたい。国民生活の安定を願いますその一環といたしまして、どうしてもこの新生活運動には非常な意義があるのでございます。それで首相のお考えを伺いたいのでございますが、この大戦後、世界各国は、まず家庭生活の安定と、それから社会保障制度の確立、教育の伸展ということを競ってはかっておりまして、それは御存じの通りでございますが、最近参りましたヨーロッパにおきましても、数カ国には内閣に家庭省あるいはまた生活省というものを作っておる所がございます。そうして独立した大臣によって新生活運動が指導されておるのでございます。ドイツなどの家庭省は、たったスタッフは四十人足らずでございますが、家庭大臣のその活躍は非常に目ざましい。一例を売春防止の問題にとってみますというと、これも家庭生活に非常な関係のある問題でございますとして、各省と連絡をとって、売春婦が一人もないように、それを期待して、今非常な努力をされておるのでございます。国民生活の安定につきまして、総理大臣の御所見を伺いたいのでございます。  私への御答弁は御自席からなさって下さいますように、議長において特別のおとりなしを願いまして、私はこれでおしまいにいたします。(拍手)   〔国務大臣鳩山一郎君登壇、拍手〕
  57. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 宮城さんにお答えをいたします。  ただいまお話がありました通りに、生活の立て直しがやはりこの問題と非常に関連があるということはお話の通りであります。国民生活の立て直しを真剣に積極的に考究すべきことはもちろんでございます心そのために新生活運動におきましても、物心両面における国民生活の立て直しを国民が自主的に盛り上げて行く組織として、昨年五月、新生活運動協会の発足を見たのでございます。政府としては、この国民的運動を助成いたしますとともに、こめ運動に大きな期待をかけているのでございます。  ただいまお話のありました生活省あるいは家庭省の設置につきましては、ただいまのところ政府ではまだ考えておりません。(拍手)   〔政府委員松原一彦君登壇、拍手〕
  58. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 宮城議員からのお尋ねの第一は、この赤線地帯は解消するが、法の盲点は、売春を処罰しないというところにあり、適当なる陣容を備え得れば、処罰もまた困難でないのではないかというお尋ねは、一応私どももさように思います。けれどもが、ただいまの私どもの段階としましては、先刻もお答え申し上げました通りに、今日の挙証の困難な場合に、性立法として、男女の性行そのものを犯罪の対象として検挙するということに至難なものがあるということを思うのでございます。従って私どもは、むしろまわりから攻めて行って、その行為の行われないように、風紀的な取締りを強化するということにいたしたいと思うのでございまして、その用意に対する予算等は、実は相当額を要するので、今年度の予算では、とても足らないことは御承知の通りでございます。ただいま検察、警察ともに予算増加が要りますけれどもが、どうか啓蒙や、あるいは取締りに先行するところの更生保護等によって、取締り対象を極度に少くすることによって、適正なる予算を計上するようにいたしたいと思っておる次第でございます。  第二の、刑の執行猶予を行なって、応報刑でなく教育刑とし、保護観察等に重きを置かねばならぬということは全く御同感でございまして、その通りに私どもも考えておる次第でございます。これは、広範なる行政各般の措置と伴って、資金の貸し出しもやらねばなりますまいし、職業の補導も行わねばなりますまい。極力更生保護によって、将来を明るく立たれるようにいたしたい。懲罰が目的ではございません。また、裁判官の認識によって、将来十分その処遇があたたかく行われますようにいたしたいのでございまして、保安措置に関しましては、先刻も申し上げましたが、用意をいたしております。必ずこれに沿うような措置をとることをばお約束できることと信ずるのでございます。  第三の、悪質の常習犯罪者等を刑務所に入れるのか、あるいは少年院等に収容するのかというお尋ねでございますが、刑事処分に付する場合には、女囚の入りますところの刑務所、すなわち女囚監に収容するほかにございません。なお、年少者に対しては、少年院に収容いたします。少年院には、男女の区別がございまするから、その区別に従って収容するようにいたしたいと思っております。なお、宮城さんの、分娩等、刑務所の中におけるお産、育児のこと等に対する御懸念、つまり矯正の仕方に対するお考えは全く御同感でございまして、私も最辺数カ所の刑務所を見ましたが、中でお産をし、赤ん坊に乳を飲ましております。私どもしろうとの考えといたしましては、せめてその間だけでも刑の執行が停止せられていいのではないかと思います。しかし、いろいろ関係もございましょう。宮城さんのかねての御理想は、どこかにこういう者を収容する一つの施設を持ちたいというお考えでございますが、私どももよく考慮しまして、その道の人々とともに、この方面の研究を進めたいと思うものでございます。  以上、ごく大要でございますが、お答えを申し上げます。(拍手)   〔国務大臣清瀬一郎君登壇、拍手〕
  59. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) ただいま宮城さんより、恥を知る心、わけても羞恥心について御質問があったのでございます。今は一体どこで教えておるか、まことに適切、急所をつくの御質問でございます。これはこの戦争以前においては、修身教科で日本人が恥を知ることは、非常に説かれたものであります。敗戦後、昭和二十年の十二月三十一日、忘れもいたしませんが、修身教科を禁じられたのです。しばらくはそれゆえに道徳倫理を説く科目がなくなってしまったのです。その後、翌年に至って社会科というものを設けられました。社会科では、青年に社会生活を理解さして、その進展をなすことの態度と力を養うと定義されております。この定義のうらに道徳も入るのでありまするけれども、いかにも抽象的なことであって、とうてい青少年に正しい道徳をしっかり打ち込むだけの力のないことは、これは事実でございます。私も就任以来、教科書を調べてみましたが、親孝行という文字もありません、羞恥という文字もないんです。忠誠という文字もないんです。実に遺憾なことでございましたから、このままで放置はできぬと思いまして、そのほかのことも含めて、臨時教育制度審議会を立てることを総理大臣に進言いたしました。閣僚諸君の御同意を得て、この国会に提出いたしております。参議院内閣委員会に係属しております。皆さんの御同意を得て、この道徳問題について国内の大家耆宿を集めて、どうしてやるかということを考えたいと存じております。その節には、貴重なる御意見は十分に参考にいたしたいと存じております。(拍手)   —————————————
  60. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 市川房枝君。   〔市川房枝君登壇、拍手〕
  61. 市川房枝

    ○市川房枝君 私は、ただいま議題となっておりまする政府提出の売春防止法案について、鳩山総理並びに船田防衛庁長官に簡単にお伺いしたいと思うのであります。  売春問題についての直接間接の被害者は婦人でありますので、勢いこの問題については婦人議員あるいは婦人団体が非常に関心を持っております。これは当然でありまするけれども、しかしこの問題は重要な社会問題あるいは経済問題でございますので、男子の方々の協力を得なければ解決はできないと常々考えておるものであります。ところがまあ、きょうの売春防止法案に対する質疑には、たまたま婦人議員ばかり壇上に立つことになりまして、その点から申して非常に遺憾に思うわけであります。ただしまあ、このおそくなりました時間に、男子議員の方々のお残りいただいております方々は、この問題について非常な関心をお持ちいただいておるのではないかと感謝いたしておるわけであります。(拍手)ほんとうは私は法務委員でありまするので、法務委員会でいろいろな点についてはお伺いしようと思っております。ところが私にも時間を、お願いしないのにいただきましたので、とうとうここに立つことになったわけでありますので、簡単にこの席でなければ伺えないようなことだけを伺いたいと思います。  私は、議題となっております売春防止法案に対しては、不満の点あるいは疑問の点がございますけれども、しかしこの前の第二十二国会においての衆議院での公約を守って、政府自身が御提案になりましたことについて、一応の敬意を表したいと思います。ただし、残り少い会期の間に、一体この法案が成立できるかどうか、その御確信が、政府の方と申しますか、鳩山総理におありになるかどうかということについて、実は少なからぬ心配を持っているのです。まあ政府を信用しない、こういうことになるかもしれません。なぜ私はそういう心配を持つかと申しますと、これは第二十二国会のときの経過が、第一に私にそういう心配をさせるのであります。すなわち第二十二国会の衆議院に、婦人議員が中心となりまして売春処罰法を提案した、その審議の際、初めには自由党も民主党も自由問題としてお扱いになったのでありまするが、採決の直前になりましてから、まず民主党が党議で反対をされ、それに自由党も同調された。そして発議者でありました自由党の婦人議員の方も棄権をなすった。こういう実情があるわけであります。この決定が出されるまでの民主党あるいは自由党の党内においてのいろいろな御議論、たとえば、すなわち当時の砂田総務会長、あるいはここにおいでになりまするが、清瀬政務調査会長などもずいぶん強い御反対であったように伺っております。そういうふうな反対は、赤線業者の猛反対によるもので、新聞はその間に多少の金銭関係があったというふうなことを書いております。これは事実は私は知りません。こういう強い反対といいますか、があったのに、一年にまだならないのでありまするが、現在は全く自由民主党の党内において、そういう反対が解消しているのかどうかということに私は一応疑問を持つのであります。  それからなお、今度の法案は内閣の売春対策審議会を四月九日に終っております。答申をされております。ところが、この案が国会に提案されるまで二十日間ぐらいかかっておるわけであります。その途中で、自民党の政務調査会あるいは総務会にかかっておるわけでありまするが、約一週間ぐらいの間、ずいぶんいろいろな御議論があったそうでありまして、漏れ聞くところによりますると、有力な総務の方の中には、絶対に反対だ、からだを張っても反対するというような御議論も出たかに聞いております。こういうことを伺いますというと、果してこの政府案が成立するかどうか、いや、非常なあるいは骨抜きにされてしまうのじゃないか、あるいは審議未了になるのじゃないかという心配を実はせざるを得ない。  それからもう一つの心配は、それは結局、最もこの案に対する反対者でありまするところの赤線業者の問題であります。この赤線業者と自民党と近い関係におありになるということは、これは世間周知のことでありますが、これは何も金銭問題を言うわけではありません。物の考え方といいますか、そういう点についても近いと、こう言えるでありましょうが、業者が、第二十二国会で法案が否決になった。そのことは一応成功したわけでありまするが、その後、いわゆる女たちの生活権を擁護しよう、こういうことで、これは元社会党員の方の入れ知恵で、いわゆる従業婦の組合を結成した、これは周知の通力でありますが、これもやはりあまりうまく行かなさそうだ。それで今度はいわゆる業者、従業婦十万人、会費二千万円を持って、自民党への集団入党が企てられているということが新聞に出ている。ところがこれに対して砂田組織局長は、国家の利益に反するような人たちの入党は受け付けない、断固お断わりするということを新聞紙上で申しておられました。これは私は当然のことだと思いまするが、ところが、きょう私の所へ奈良県から入った情報によりますと、実は奈良県では、特飲業者の組合の正式の会合で、この問題が議題とされ、そうしてそれぞれ割当をしました。その奈良県の特飲街、洞泉寺特飲街と申しますが、その組合は十六軒ある、女たちが百人おる。そこで割当は百人が責任だそうでありますが、このうち七十人が申し込みをして、これは受け付けられたそうであります。この際、職業は無職となっておるそうであります。これは一応一つお調べを願いたいと思いますが、まあこういう事実が奈良だけでなく、ほかにもまだあるということになりますると、いわゆる業者のそういう強い反対、そういう運動がいわゆる政府なり、あるいは与党の方に相当の働きかけがあるのじゃないか、こういうことで、実は私はこの法案が、さっき鳩山総理も、今国会で成立するように努力するといいますか、確言をなされましたのでありまするが、私は少し実は心配になるわけです。   〔議長退席、副議長着席〕  そこで、総理にお伺いしたいことは、今の業者の集団入党、これは一応否定をなさいましたけれども、一体そういう問題に対して、どういうふうにお考えになっておるのか、総理自身のお考えを実は伺いたい。それから業者の反対があっても、あるいは党内に強力な反対があっても、今国会中に必ず成立させたい、させると、こういう御成算がおありになるかどうか、御覚悟をもう一ぺん、くどいようでありますけれども、伺わせていただきたいと思います。  それから次に、船田防衛庁長官に、閣僚のお一人として、この法案についてのお考えを伺いたいと思います。なぜ防衛庁長官お一人に私は特別にお伺いを申し上げますのか、その理由をちょっと申し上げたいと思うのですが、これは少し古いことになります。長官は、昭和十年の二月十九日に開かれました全国貸座敷連合会臨時大会、現在で申しますと赤線業者の団体でございますが、その会合に御出席になりまして、激励演説をなすったことを覚えておいでになるでしょうと思います。実はそのときの速記録が業者の団体から発行されておりました。たまたま私がそれを見ることができたわけであります。それで、長官はその中で、だいぶいろいろおっしゃっております。なかなか拍手がありまして、だいぶアピールしたようでありますが、簡単にその中の一、二点だけ申し上げますと、こういうことをおっしゃっております。「多数の弁士が申されたごとく、この家族制度を維持し、風教を維持することは、この公娼制度を改善し、これを維持することによって得らるるところの方法である。(拍手)これらはすでに論議されておることと思う。」、それからおしまいへ持って行って、「どうかこの大会にお集まりになられた諸君は、このわれわれとともに、帝国議会の公けの席上において、政府をして公娼維持を言明せしむるように、この上ともに御努力なさることを切望いたします。」、まあこの会合には、実は当時の議員の方三十数名の方が御出席になっています。そこで現在も有力な政治的な地位におられます方方としては、大野伴睦氏、あるいは川島正次郎氏、あるいは一松定吉氏、そういうような方が見えておりますし、そういう方々の速記録もちゃんと残っております。これは少し古いことでありまするが、船田長官については、昨年の衆議院で売春処罰法が審議されましたときに委員をなさっておられました。そのときに婦人団体の人たちが伺いまして、御賛成を実はお願いに参ったのであります。そのときに長官は、陳情の人たちに対して、自分は赤線業者から票をもらっておるから、売春処罰法には賛成できない、こういうことをおっしゃったそうであります。これは私はむしろ、何といいますか、ほんとうは反対していながら表面では賛成しますとおっしゃるよりも、率直におっしゃったことにむしろ好感を持つということも言えるのでありますが、昨年までそういうふうにお考えになっておったといいますか、その長官が、現在閣僚の一人として、今度の法案の提出といいますか、法案に対して共同の責任をお持ちになっておるお立場と思います。そこで伺いたいことは、長官ははっきりと、昔の、といいますか、考えを今日はお変えになっているかどうか、お変りになっているかどうか。それからあなたの支持者であるといいますか、赤線業者の人たちとの今度の法案についてのお話し合いはもうちゃんとおできになっておるかどうかといいますか、あるいは今度の防止法案の今国会成立について御努力なさっていただけるかどうか、それを明確に実は伺いたいと思います。大へん昔のことを洗い立てて申し上げて申しわけありませんが、たまたま閣僚として、昔の速記録が残っておりますのは長官お一人でございましたので、相済みませんけれどもお引き合いに出しました。あしからず……。(拍手)   〔国務大臣鳩山一郎君登壇、拍手〕
  62. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 市川さんにお答えをいたします。  先刻高田さんにお答えをいたしました通りに、制度としては、この法案のすみやかに成立を希望しております。  それから党内においての意見があったこともあるかもしれませんけれども、本案提出につきましては、党内一致してこれを提出したのでありますから、誤解のないように願います。(拍手)   〔国務大臣船田中君登壇、拍手〕
  63. 船田中

    ○国務大臣(船田中君) ただいま市川議員から、古いことについての御質問がございましたが、その当時、今おあげになりましたようなことを私が果して申したかどうかということは、今、記憶には残っておりません。しかしながら、本案が政府提案となっておりまする以上、ただいま総理大臣も申されたように、この法案の成立に私も努力するつもりでございます。(拍手)
  64. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) これにて質疑の通告者の発言は、全部終了いたしました。質疑は、終了したものと認めます。    ————・————
  65. 飯島連次郎

    飯島連次郎君 私は、この際、凍霜害対策に関する緊急質問の動議を提出いたします。
  66. 天田勝正

    ○天田勝正君 私は、ただいまの飯島君の動議に賛成いたします。
  67. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 飯島君の動議に御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。飯島連次郎君。   〔飯島連次郎君登壇山〕
  69. 飯島連次郎

    飯島連次郎君 私は緑風会を代表いたしまして、今次の凍霜害に関し、すみやかに万全の対策を確立し、これが実施に遺憾なきを期し、政府の善処を促すため、ここに政府の所見をただし、その方針を明らかにし、関係者をしてその向うところを知らしめられたいと存じます。  本年四月末に発生いたしました全国的に大きな移動性高気圧のために、気温の急激な降下を来たし、最低気温が実に氷点下に下った地方もあり、四月二十九日、特に三十日の朝は全国各地に霜がおり、氷さえ張るという現象を引き起したのであります。かような事態に対処いたしまして、農家は寒空に夜を徹して重油を燃やし、あるいは桑にこもをかぶせる等、被害の防止に懸命の努力が払われたのでありますが、いかんせん自然の猛威に抗しがたく、各種作物に及ぼした大被害はまことに言語に絶するものがございまして、一朝にして緑の広野が冬の荒れ野に帰したのであります。農家営々の努力は水泡に帰したばかりでなく、被害者各位のためには、まことにお気の毒にたえないところであり、また国家のために実に遺憾きわまりなき事態であります。一昨日の参議院農林水産委員会における大石農林政務次官の説明によりますと、被害は三十数県に及ぶものと見られておりますが、ただいままでに報告のありました十数県の被害額のみをもっていたしましても百六億余に及び、一昨年の被害総額の百億に匹敵すると、こういうふうに報告をされておられますが、この打撃は実に農家にとりましては致命的でございまして、ぼう然自失、まことにお気の毒の情勢下にあるのであります。ここで想起されますのは、昭和二十八年四月から五月にかけての凍霜害とその対策についてであります。第十六回特別国会に、昭和二十八年四月及び五月における凍霜害の被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法を提案するとともに、必要とする予算を昭和二十八年の一般会計予算に計上することになったのでありますが、この予算は総額五億八千九百四十万円でございました。これは桑、茶、果樹等の樹勢回復用の肥料代金並びに桑、麦、馬鈴薯、茶、果樹の病虫害防除費、あるいはその他各般の助成措置に充てられているのであります。私は今回の被害について、次の事項に関し政府の所見をただしたいと存じます。  第一は、対策を立てるためには、まず被害状況が明らかにされることが先決であります。調査は急がなければならないのでありますが、被害状況の調査は、現在どの程度に進んでおるのか、いつごろ確定される見通しでありますか、農林大臣にお伺いをいたします。  第二には、対策の確立は一日もすみやかなることが必要でありますが、いつ頃その対策が確立実施される予定であるか、農林大臣から政府の御見解を伺いたいと思います。  第三、その対策の内容でありますが、その被害の甚大なのにかんがみまして、昭和二十八年度の例にならい、各般の措置が必要であろうと思われます。すなわち、樹勢回復用並びに代作用等の災害復旧用肥料の助成であります。それから水稲苗代追播用種子及び代作用種苗の購入、再掃立蚕種購入、予備蚕児配付及び稚蚕児飼育、被害桑園の改植、水稲苗その他種苗並びに桑葉輸送費、霜害の防止、災害対策技術指導強化、被害農作物の病虫害防除等のために、これに必要とする経費の国庫からの助成措置であります。次に、被害農家に対しまして、長期低利の営農資金の融資並びに前回の被害におきまして借り受けをしております融資金の償還期限になっておりますが、今回の災害によりまして、これが償還の不能の事態に陥りましたので、これら既融資金の償還期限の延長がぜひとも必要とせられております。次は、農業共済金の即時支払いであります。さらに被害農家に対する課税の減免措置、これは説明を要するまでもなく、所得税その他の諸税に対しまして農家の担税力が極度になくなって参りましたので、ぜひとも必要とされる措置であろうと考えるのであります。次は、地方交付税の増額並びに開拓農家に対する特別融資対策、その他の措置をそれぞれ実施すべきと存ずるのでありますが、これらの施策のそれぞれにつきまして、農林大臣並びに大蔵大臣の御所見を伺いたいのであります。  それから第四には、当面の緊急対策とともに、災害を未然に防ぐため、今後恒久対策が確立されなければならないと考えるのでありますが、恒久対策の現状並びに今後の方針等につきまして、政府の御見解を伺いたいと存じます。  悲嘆と困窮のどん底にあえぐ被災農民各位に対しましては、まことにお気の毒であり、衷心から御同情申し上げますとともに、ここに一日もすみやかに、真に実効と愛情のある万全の対策が確立実施されますことにより、農民を救済し、奮起せしめるよう切に希望いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)   〔国務大臣一萬田尚登君登壇、拍手〕
  70. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 四月の二十九日から五月一日にかけまして全国的に襲いました凍霜害は、その被害も甚大な模様でありまして、痛心いたしております。その実態につきましては、ただいま関係の者を督励をいたしまして、すみやかにこれを把握することに努めておるのでありまするが、なお両三日要するように思われます。そうしまして、その実態を把握いたしまして、その対策に万全を期さねばならぬと考えておるわけであります。  政府といたしましては、すでにこの被害農民に対する営農資金の融通に関しまして、天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の適用、農業共済金の早期支払いについて検討を開始いたしまして、すみやかに適切な措置をとる用意を整えまするとともに、系統金融機関の資金を活用いたしまして、緊急の資金需要に備えるよう関係方面に連絡をとっておる次第であります。その他、樹勢回復用の肥料につきましては、五月四日、災害による緊急需要に応じますために保管いたしておりまする硫安一万トンの緊急譲渡指令を全購連に対して行いましたほか、代作用の種子につきましては、災害用予備貯蔵種の活用をはかりまする等、刻々判明いたしまする被害状況に応じまして、随時適切な対策を実施して参っておるところであります。  なお、この種の凍霜害に対しまする恒久対策といたしましては、二十八年凍霜害以来、その予測の迅速化と霜害予防方法の試験研究の充実に重点を置きまして措置を進めて参ったのでありますが、いずれも相当の効果を収めて、今次凍霜害においても、その予知等に格段の進歩を見せたところであります。しかしながら、恒久的対策の確立は今後ますます緊要と思われまするので、ただいまいろいろとお述べ下さった御意見の諸点につきましても、十分検討いたして参る所存でございます。なお、この開拓農家の融資につきましては、特に考慮をいたしたいと考えておる次第でございます。  御答弁いたします。(拍手)
  71. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時三十六分散会    ————・———— ○本日の会議に付した案件  一、故議員宇垣一成君に対する追悼   の辞  一、日程第一 副議長辞任の件  一、副議長の選挙  一、日程第二 地方交付税法の一部   を改正する法律案  一、日程第三 地方財政法等の一部   を改正する法律案  一、日程第四 地方財政再建等の   ための公共事業に係る国庫負担等   の臨時特例に関する法律案  一、日程第五 土地収用法の一部を   改正する法律案  一、日程第六 日本国有鉄道法の一   部を改正する法律案  一、売春防止法案(趣旨説明)  一、凍霜害対策に関する緊急質問    ————・————