○左藤義詮君 ただいま議題となりました
日本国有鉄道法の一部を
改正する
法律案につきまして、
運輸委員会における審議の経過並びに結果を御
報告申し上げます。
まず、政府が今回この
法律案を提出するに至りました経緯の大要を提案理由により申し上げますと、
日本国有鉄道は、公共企業体として
昭和二十四年発足以来、すでに六年余を経過したのでありますが、この間、管理
組織の
変更、その他制度的に幾たびか
改正を加えて参った次第であります。しかし何分にも
組織が膨大な企業でありますので、過去においていろいろ国民の批判もあり、また国会においても絶えず批判と指導を受けて参ったのであります。他方、政府においても
日本国有鉄道を国民のためにより能率的に
運営し、公共の福祉に資するよう努力し、種々検討を加えて参ったのでありますが、最近に至り、臨時公共企業体合理化審議会および
日本国有鉄道経営調査会の答申を参酌し、さらに今日まで国会においてなされた決議その他を十分尊重して検討を加えた結果、
日本国有鉄道の
組織、財産管理等につきその改善の方途に結論を得ましたので、これをすみやかに実施に移すため、この
法律案を提出したのであるということであります。
次に、おもなる
改正点について申し上げますと、第一点は、経営
委員会を廃止しまして、新らたに総裁、副総裁及び五人ないし十人の
理事をもって構成する
理事会を設け、
日本国有鉄道の業務の管理及び
運営についての意思決定機関としたことであります。第二点は、
日本国有鉄道の業務執行機関として、総裁、副総裁並びに若干名の常務
理事を置くこととし、総裁は
日本国有鉄道を代表して
理事会の決定に従って業務を執行することとしたことであります。このほか技術の改善及び進歩についての補佐機関として技師長制を設けたことであります。第三点は、
日本国有鉄道の業務の監査機関として、三人ないし五人で
組織する合議体の監査
委員会を設けたことであります。この監査
委員会は、監査の結果を総裁に
通知し、また監査の結果、業務の改善を必要と認めた事項については、運輸大臣に意見を提出し、または
理事会に意見を述べることができることとなっております。なお、今後
日本国有鉄道が運輸大臣に提出する決算関係の財務諸表には、新たに監査
委員会の監査
報告書を添付することを要することといたしました、第四点は、
日本国有鉄道の役員を総裁、副総裁、
理事及び監査
委員会の委員とし、その任期は、総裁、副総裁は従来
通り四年、その他は新たに三年と定めました。その任命については、総裁は
内閣が、また副総裁及び
理事は運輸大臣の認可を受けて総裁が任命し、監査
委員会の委員は運輸大臣が任命することとなっております。なお、技師長及び常務
理事は、総裁が
理事のうちからこれを任命することになっております。また、役員に支給する給与及び退職手当につきましては、新たに
規定を設けまして、職員に支給する給与総額とは別ワクに取扱いをすることといたしております。この
法律改正後、役員の性格は、現行法での役員の性格と異なることとなりますので、恩給法の準用をなくし、国家公務員等退職手当暫定措置法の適用を排除し、また国家公務員共済組合法の準用については、短期給付のみに限定する等、所要の
改正を加えてあります。第五点は、会計規程に
規定すべき事項を新たに明示いたしまして、財産管理規程もこれに包含されることとし、その規程の基本事項も運輸大臣の認可を要することとして、財産管理の万全を期するようにしたことであります。第六点は、
日本国有鉄道の営業線の
貸付等の処分をしようとするときは
法律によることとし、車両その他運輸省令で定める重要財産を貸し付け、その他これを処分しようとするときは、原則として運輸大臣の許可を要することとしたことであります。また、
日本国有鉄道がその所有する不動産を貸し付けた場合、貸付期間中に業務上必要を生じたときは、その貸付契約を解除することができることとし、この場合、借受人は損失補償を求めることができることとしました。第七点は、運輸大臣の監督事項中、許認可事項に鉄道の電化その他運輸省令で定める重要な工事を加えたことであります。
以上が
改正のおもなる点についての概要であります。
委員会におきましては、各委員より熱心な質疑が行われましたが、詳細は
会議録に譲り、そのおもなる事項を申し上げますと、まず第一は、経営
委員会を廃止し、
理事会を設けた理由、
理事会の
構成等についてでありまして、これに対する政府の答弁は、「現行の経営
委員会は、限定された意思決定機関であると同時に、監査機関的性格及び諮問機関的性格を帯びているが、五名の委員はいずれも非常勤で、実情は期待する効果をあげがたいという批判もあったので、今回、意思決定機関として
理事会を設け、これと業務執行機関とを表裏一体として
運営して行くことにしたのである」とのことでありました。なお、「
理事は五人ないし十人とし、部外者からも任命されることを期待している」とのことでありました。第二は、監査
委員会の性格、構成につき熱心な質疑が行われましたが、これに対する政府の答弁は、「監査
委員会は国鉄の内部機関であって、意思決定機関及び業務執行機関と並立する別個のものであり、合議体として活動するものである。すなわち、決定された意思が忠実に実施されているかいなか、その経営が適正妥当に行われているかいなかを検討する機雷である。もちろんこれは国鉄の内部機関であるので、外部監査機関としての会計検査院または監督官庁としての運輸省の行う監査とは別である。また、委員の数については、
理事会、業務執行機関とのバランスを考えて定めたもので、少数とは思わないし、監査
委員会には事務局を設け、現在の監察局をこれに充てたい考えである」旨答弁がありました。第三に、大臣の権限強化等に関連し、国鉄の自主性、特に財政の自主性の点に関して質疑が行われましたが、この点についての政府の答弁は、「経営合理化の線を進め、漸次一つずつ片づけて行きたいとのことであり、ことに経理の合理化につきましては、目下鋭意検討中である」旨の答弁でございました。第四には、「
日本国有鉄道経営調査会の答申にもあった諮問機関を設置しなかったこと」についての質疑がありましたが、政府及び国鉄総裁のこれに対する答弁は、「
法律改正事項とはなっていないが、国鉄部内制度としてこれを設ける」とのことでありました。第五に、「今回の
改正は、臨時公共企業体合理化審議会及び
日本国有鉄道経営調査会の答申を参酌し、将来を見通して、もっと根本的に国鉄経営のあり方について検討し、
改正をなすべきではなかったか」との質疑に対しましては、「
日本国有鉄道法関係としては、今次の
改正で、
組織の問題、財産管理の問題等、根本的な
改正を行なったと考えている」との答弁であり、「運賃関係、労働関係、財産関係等は、いずれも
日本国有鉄道法改正の問題としてでなく、別個の
法律改正によるべきものと思い、その趣旨で目下検討中である」とのことでありました。最後に、「一般交通政策の確立、国鉄の受け持つべき分野、機構改革、人事の刷新、国鉄経営の現状等」につき若干の質疑がありましたが、政府の答弁では、「国鉄の経営については、近く決定される交通審議会の答申その他都市交通審議会の答申にも徴し、国鉄がみずから解決すべき事項については、その六カ年計画にものっとり、国鉄の受け持つ分野につき、電化、ディーゼル化等経営の近代化を進め、サービスの向上を図りたい」とのことであり、特に国鉄総裁よりは、「人事の刷新について必ずしも既往の学歴のみによらず、再教育をなし、有能の士を起用し、職員をして国鉄経営の合理化とその再建の意欲を阻害しないよう、十分努力を払っている」とのことでありました。
以上で質疑を終り、討論に入りましたところ、片岡委員より、「本
法律案に賛成する」との意見の開陳があり、さらに要望として、「国鉄の経営は困難な現状であり、将来についても楽観は許さないものがあると思う。この困難な状態は、終戦後における経済上の混乱によるところ大であるが、同時に変転する経済情勢に即応して、適宜な法制上の態勢がとられていなかったこと、国鉄の人事管理の不均衡、ことに学閥の偏重と幹部の経営に対する熱意の不足等によるものが大であると思われる。また国鉄は今日すでに自動車、航空機等との競争状態にあり、独占企業ではないので、政府はすみやかに一般交通政策を立て、国鉄のなすべき分野を確立し、百年の計を樹立すべきであって、これらの点については、
日本国有鉄道経営調査会からも政府並びに国鉄に対し注意を喚起しているところである。以上の点にかんがみ、
日本国有鉄道については、関係法規はもとより、機構問題、財政予算問題等について、全面的、抜本的
改正をなすべきであるが、今次の
改正案は、
日本国有鉄道経営調査会の答弁を尊重していることは認めるが、現行法にとらわれすぎ、不十分なものであると認められる。よって政府は、国鉄の自主的経営の責任を負うに十分な機構上の態勢の確立に格段の努力をなすべきであるとの要望がありました。
以上で討論を終り、直ちに採決に入りましたところ、全会一致をもちまして、原案
通り可決すべきものと決定いたしました。
以上、御
報告申し上げます。(拍手)