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河井彌八君 私は、このたび
参議院議長の職を
辞任いたしたいと存じまして願書を差し上げましたところ、本日、院の御許可を得ましたので、まことにありがたく存ずるのでございます。
ただいまは
石坂君から、
参議院を代表せられまして、私に対しまして過分なお言葉をちょうだいいたしました。まことに恐縮にたえません。感謝にたえないのでございます。
私は、
参議院議長を
辞任いたしましたのは、自分の都合によって
辞任いたしたのではございません。私の
辞任いたしました
理由は、すでにこの
議場において発表せられておると考えまするから、ここに詳しく申し述べることは差し控えます。しかしながら、少しつけ加えたいと存じまするのは、何といたしましても、私の
任期が六月三日に終了するのであります。すなわち、そのままに
議長の職を汚しておりまするならば、その日をもって、
議長が
参議院になくなるわけになります。私の職務を代行すべき副
議長もまた同日に
任期終了となるのでありまして、そうなりますると、新しい
議長、副
議長の選任というものは、
半数改選の後の
国会の召集を待たなければなりませんが、その召集については憲法上何ら明確な期日は規定してございません。従いまして、相当長期にわたりまして、この
参議院、実に国家の最高の機関としてのこの
参議院に、これを代表すべき
議長が欠けるということになるのでありまするから、これは何としても、私、
議長の職にあった者といたしまして、これを防止しなければならぬと考えたのであります。幸いにして私の辞意が聞き届けられまして、
松野議長が後任として御就任になったというので、まことに私は心を安んずる次第であります。
また私は、なぜ今やめたかというようなことが、だいぶんやかましいようでありますが、一番
国会が平静なときにやめることが正しいと考えたからでありまして、ちょうどこの時期を選んだ次第でありますことも御承知を願います。私が
参議院議長を
辞任いたしました
理由は、それだけなのであります。もう他に、何ら私は考え、意図するところなどは持っておらないのであります。このことをどうぞ御了承を願いたいのであります。
ついでに、私は過去のことを回想して
一言申し述べることをお許しを願います。
それは、私は
昭和二十八年の五月十九日に
議長の職を拝命いたしたので、そのときに、私はこの壇上から、
議長の職を行うに当りましては、憲法及び
国会法を固く守りまして、そうして最も公平に、最も正しく
参議院の
運営に当りたいということを申し述べたのであります。どうか、さようにいたしまして、
参議院を真に国民から信頼される
参議院たらしめたいというのが私の念願でありました。自来約三年、
諸君のお助けによりまして、辛うじてその職務を尽して参ったのでありまするけれども、しかし、ときにあるいは私の考えと違い、
諸君のお考えとも
反対なような事件がありましたことは、まことにこれはざんきにたえないのであります。これはおわびを申し上げます。
今ここに
松野新
議長を迎え、新
議長の豊富な
政治上の御経歴、また新
議長の徳望というものは、これは真に大したものであります。こういうお方を迎えましたので、
参議院の今後の
運営というものは、先に私が考えましたことが、もっとより以上に必ずりっぱに進展するであろうと深く期待申す次第であります。私どもの考え方は、
国会というものは、ある人々には、闘争の場所であるというがごとき考えがどうもあるようでありまして、現に
参議院の控え室のある所には、
国会闘争委員会なんという看板がかけてありますが、これは一体どういうことであるか。(
拍手)私はそういうことに対して、はなはだ遺憾に考えます。外国の言葉を引くのはどうかしれませんけれども、イギリスにおいては、
国会をパールメント、すなわち
話し合いをする場所というのでありますが、すなわち闘争ではない、暴力の場所ではない、どこまでも平穏な
話し合いをする場所であるというような、ほんとうの意味、民主
政治となって決定される場所が
国会なんです。私は日本の
国会もそうあるべきものと考えています。願わくば、闘争の場所というような考えを今後一蹴せられまして、
議員諸君が新
議長の尊厳のもとに、国家のために真に正しい
話し合いをする場所に、
参議院をすみやかにしていただきたいと念願いたします。(
拍手)どうか
参議院をしてもっともっと大きく、ほんとうに国家の大経綸を行うところの立法府として活躍されるようにしていただきたいのであります。すなわち小さい小ぜり合いはやめまして、そうして、ほんとうに意義ある
参議院にしたいものであることを念願いたすのでございます。(
拍手)
私は、この言葉をもちまして、新
議長に対して、切に御健康を祈り、また
議員諸君に対しまして御自愛あらんことをお願いするのであります。
以上をもちまして、私のごあいさつといたすのであります。(
拍手)