○千葉信君 私は日本社会党を代表して本
法案に反対いたします。
国民経済の自立と
発展のため、立ちおくれた
わが国の
科学技術の振興が刻下喫緊の要務であることには、われわれも異存がありません。しかし原子力研究を頂点とする
わが国の
科学技術の
行政が、もしもかつての
科学技術院のごとく、それが独善に陥り、あるいは国民生活に寄与するよりも、その破壊に役立つがごとき角度の
行政が行われる等に対しては、厳にこれを警戒し、あくまでも民主的に、公明に運営されるものでなければならないことも自明のことわりであります。そのためには
科学技術庁の出発に当っては、その合理性、その民主性とともに、いやしくもその権限に明確さを欠いたり、あるいは
現行行政法に抵触するがごとき疑義等に対しては、慎重かつ周到な用意のもとに十分に検討をさるべきものであって、如上の見地からいたしますれば、本
法案がその立案の過程において先陣争いの傾向がつきまとったこと、その修正に際しても、万全を期されたとは言いがたい個所が散見されますること等は、きわめて遺憾と言わなければなりません。特にわれわれが修正案を提起する必要を認めざるを得なかった次の諸点は、同時にまたわれわれがここに本
法案に反対せざるを得なくなった要素ともなったものであります。
その
理由の第一は、
国家行政組織法に違反する事実であります。
国家行政組織法第七条によりますれば、外局としての庁設置に際しては、官房並びに部及び課を設けることとし、局の設置は認められていないのであります。例外としての部局の設置を認める場合には、同法第二十一条及び付則第二十四条に確然と
規定されているところであります。
委員会の
審議に際しては、
政府はこの事実について、防衛庁の設置に際して前例ありとして、法違反の悪例をたてにとり、また
科学技術振興の重要性に名をかり、あえて局を設けるに至ったとして、われわれの了承を求める態度に出たのであります。
行政機関の
組織の基準を定め、その
組織を整備することを
目的とした
国家行政組織法が、かくのごとき、
理由とはなり得ない
理由のもとに、かくも簡単に、ないがしろにされてかまわぬという考えそのものにも問題があるし、法制局、
行政管理庁等が、当初このやり方に反対をしたのにかかわらず、これを押し切った独善ぶりそのものにも容赦できないものがあるのであります。
反対の第二は、
科学技術振興の重要性に籍口して、
行政権発動の根源をなす
内閣法第四条を著しく歪曲していることであります。本
法案第十一条第五項によりますれば、
長官は各
関係行政機関の長に対し、同条第三項に基いて勧告した
事項について、もしもその
措置に不満を有する場合は、さらに
内閣総理大臣に対して、これを閣議で決定せしめるため、
意見の申し出をすることができるという点であります。人事院のごとき第三者的立場で行う勧告の場合を除き、
行政各機関が他の機関に対して行う勧告そのものは、さながら右手が左手に指図を与えるごときものであり、
国会に対して、本来一体となって責任を負うべき
行政機関の内部でとられる
措置としては、必ずしも当を得たものでないとする
意見、任務と権限が明確に区別され、その上に立って有機的な連絡をもって
行政に当るべき各
行政機関内部に勧告云々の
措置を認めることは、相互の権限に混淆を来だすおそれありとする
意見のあります中に、この第十一条第五項は、さらにその勧告がきかれなければ、もう一度総理大臣に対し閣議で決定させて、無理やり押し切ってもよいという、これはおそるべき独善的態度と言わなくてはなりません。いわんや閣議には、各閣僚がそれぞれの立場において、対等に議案を提出して
審議を求め得るという
内閣法第四条からすれば、これは
科学技術振興の名に隠れた独裁であし、他にその事例を見ることのできない行き過ぎであります。
反対の第三は、本
法案による
科学技術庁の権限の不明確という点であります。御
承知の通り、任務権限を規制した第三条、第四条においては、人文科学についてはこれを排除しているのであります。しかるに
科学技術庁自体の任務外、権限外とした人文科学の分野も含めて、学術
会議の諮問、答申、勧告が第七条
企画調整局の行う
事務の項に規制され、それに基いて一たん排除した権限が単なる部局の
事務規定で行い得るというのだから、まさにこれは支離滅裂と言わなければなりません。
日本学術会議から参考人として出席されました茅会長が、この疑問に鋭く触れられたのは、しごく当然と言わなければなりません。
以上がその反対の主要な点でありますが、最後に申し上げたいことは、
委員会に於ける
審議に際しましては、これらの点について、その非を認める態度に終始された同僚
委員中、是を是とし、非を非として修正の態度に出ようとされなかったことは、きわめて遺憾なことであり、
参議院の良識が居眠りをむさぼり、与党また
国会対策上の考慮から、これに同調してタヌキ寝入りに終始したことは、心ある国民の批判に値する態度と言わなければなりません。
以上をもって私の反対
討論といたします。(
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