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曾祢益君 私は
日本社会党を代表いたしまして、ただいまの
外務大臣の御
説明に対しまして
質問をいたしたいと存じます。
ただいま
外務大臣から、
ロンドンにおける
日ソ交渉の最近の
情勢について御
報告がなされました。それは
交渉の技術上の点を
中心とした
通り一ぺんの
説明であり、かつ巧みに
ソ連だけに
交渉決裂の
責任を帰しようとするものであるとともに、
日ソ国交調整問題が今や重大な段階に達したという事実を、しいておおい隠そうとする、全く誠意を欠いたものであることを深く遺憾といたします。(
拍手)
よって以下若干の点について、総理並びに
外務大臣の所見をただしたいと存じます。
最初に、
重光外相にお伺いいたしたいことは、三月二十日
両国全権の
共同コミュニケに示されたところの
交渉の無
期限休会についてでございます。これについて
外務大臣は、
双方の合意する時期に将来再び開かれることになった、と言っておられまするが、これは無
期限の
休会という
事態を
説明する
表現としては、はなはだ不適当でございまして、もっと率直に、
双方が同意するまでは
交渉は
再開されない、という
否定的表現を用いらるべきと信じます。
外務大臣は、
政府としては、もとよりすみやかに
交渉の
再開の
情勢とならんことを希望する、こう述べておられまするが、
外務大臣みずから、すでに
交渉が
領土問題において
双方の
主張が完全に対立したことを認められておるのであります。してみれば、いずれか、あるいは
双方がその
主張を譲ってこない限り、
再開の
情勢はでき上らないことは、理の当然でございます。従いましてこの際
外務大臣から
交渉再開の
情勢についていかなる見通しを持っておられるか、また、それは大体においていかなる時期と予想されておられるか、明らかにされたいのでございます。
私の憂うるところは、
政府は民主党の選挙における公約の手前もございますし、かつは
抑留者の帰国がおくれる。これに対する世論の反撃もおそれておるあまり、無
期限の
休会、すなわち
交渉の完全な中絶であり、
日ソ国交調整問題は、今や重大な岐路に立っておるという正しい認識を、国民に与えることを故意に避けようとしておられるのではないかと存ずるのであります。
さらに、この点に関して重要ないま一つの点は、
松本全権の
帰朝でございます。
外務大臣はただいまの御
説明によりますると、
松本全権から請訓があった、それに対して
政府は許可を与えたと言っておられます。また
新聞報道によれば、
日本全権団筋では、この
自然休会は、
マリク全権からの提案だと発表されております。しかも、これより先、三月十五
日本院の
外務委員会におきまして、
羽生委員に対する答弁の中で、
交渉の一時
休止もあり得るということを、当時から
外務大臣は言っておられたのであります。これでは果してこの
自然休会なるものが、
日本側のイニシアチブであるのか、
ソ連の方が主であるのか、あるいは
双方の話し合い、なれ合いであって、この「
決裂にかわる
決裂方式」をとったのであるか、この点も明らかにしていただきたいのであります。
さらにこの点に関して、ほんとうに
松本全権が
報告並びに打ち合せのために
帰朝するというのでございますれば、そのために
交渉が一時
休止になったというのでございまするならば、当然に
全権がまた再び
ロンドンに赴任すべきであろうと思いまするが、果して赴任させる
用意がおありであるかどうか。またもし、再赴任の
用意がないというのであるならば、
政府はよろしく他の
全権、たとえば
ロンドンの
西大使をして、いつでも同僚の
マリク大使と
交渉せしめ得るように
全権の入れかえを行うべきと思いまするが、果していかなる
対策をお持ちであるか、この点も明らかにされたいのであります。
次に、私は、このように
日ソ国交調整に関する
交渉が、事実上
決裂も同様な
状態になったことに関する
日本側の
責任について、総理に伺いたいのであります。まず総理は、
日ソ国交調整の早期実現を選挙の最大の公約の一つとしてこられたことは、よもやお忘れではないと存じます。このような安易にして無
責任な見通しと
準備の不足、たとえば
ソ連に対する
領土権の
主張を通すためにも不可欠と申すべきものは、アメリカに対する
領土権の
主張でございまするが、これらについて何らの手も打っておられなかったこと、これらにつきまして、
交渉行き詰まりの今日、総理は深く
責任を感じておられると思いまするが、総理の御答弁を願います。鳩山総理の認識の甘さ、しばしばの失言、これは責めらるべきでありまするが、その鳩山さんの
日ソ国交調整に対する熱意は、われわれも同感を惜しまないところであったのであります。しかも総理は、しばしば保守合同の便宜のために、
日ソ国交調整を犠牲にしない旨を断言されましたにかかわらず、自由民主党の結成に当っては、この言明を裏切って、自由党の
主張に屈し、その実現の見込みのない
領土問題を
中心とする
日ソ交渉妥結の条件をうのみにし、もって
交渉行き詰まりを必然たらしめたのであります。われわれは当時から、この鳩山総理の行動は、言動は、保守合同のために、いな鳩山
内閣の存命のために
日ソ国交の根本を誤まり、かつは政治家鳩山一郎の節操を汚すものであることを指摘して参ったのでありますが、ついに今日の
事態を見るに至ったのであります。鳩山総理はこの局面に当って、果して
責任を感じ善処される御意向がおありであるかどうか、この点を全国民の前に明らかにされたいのであります。
次に総理並びに
外務大臣に、それぞれお伺いいたしたいのであります。われわれはつとに今日あることを憂え、再三再四警告を発して参ったのであります。それにもかかわらず、首相も外相も
交渉決裂はおろか、停頓などは予想したくもなければ、また想像もできないという楽観的なほほかぶり主義で押し通し、われわれの忠告に耳をかされなかった次第であります。
重光外相は特に鳩山総理の妥協的態度を押えながら、対ソ強硬方針を貫いて、今日のデッド・ロックを来たした当面の
責任者であります。
交渉の事実上の
決裂について
責任をおとりになるお
考えはないか、
外務大臣から明確に御所信を伺いたいのであります。(
拍手)
さらに、もし鳩山首相並びに
重光外相が今日の段階においても、なお
日ソ国交回復実現の熱意を持っておられるというのであるならば、果して局面の打開についていかなる自信と成算とをお持ちであるかをお尋ねいたしたいのであります。
最後に今後の
対策についてお伺いいたします。今後の
交渉の成り行きについては、私見によれば、大まかなところ四つの方向が
考えられると存じます。
第一は、
政府がお
考えであるかと思われる方向でございまするが、それは、このまま
交渉の停頓
状態を続けることであります。しかしこれでは
日ソ国交回復という大局を見失うばかりでなく、焦眉の急である
抑留者の帰国が解決できません。北洋漁業やわが国の国連加盟も解決のめどがつきません。ことに
自然休会と時期を合せた北洋におけるサケ、マスの漁獲制限についての
ソ連の
措置のごときは、あまりにも底の見えすいた政略でありまして、その不当なことは言うまでもございませんが、しかしながらこれらの問題について、ただ
ソ連の出方が悪いからだと攻撃してみても、問題の処理になるわけではございません。さらに国際
情勢の変化を待つというのも、これも実際上は解決策ではないのであります。従って、この私が今申し上げた第一の方向はとるべきでないと信じます。
第二の方向は、
ソ連の
主張をそのまま受け入れて
平和条約を結ぶことでございますが、それは
日本海に通ずる海峡の航行権の問題についても、また
領土問題についても、われわれが賛同し得ないところでございます。
第三には、
平和条約の
交渉は停頓のままにしておいて、
抑留者問題、漁業問題などの懸案の中で解決できるものから解決をはかるという方向でございます。しかしこれは第一の全部を停頓させる方向と同様に、
国交調整の大局を失うばかりでなく、実際上このような個々の懸案解決方式は、その実現が乏しいことは、これは
政府当局がよく御存じのところと信じます。
従いまして第四に、
最後に残る方式としては、いわゆる暫定協定の方式があるのみでございます。われわれはかねてから、
平和条約の方式が最も望ましい、しかして
領土問題についてのわが方の正当な権利は、アメリカに対しても
ソ連に対しても同様に
主張すべしという態度を明らかにして参ったのであります。しかしこれがために
日ソ国交回復の大局を誤まってはならないと信じます。
領土問題の全面的な解決か、あるいは
国交回復かという重大段階に立ったならば、
平和条約方式にのみとらわれることなく、将来
領土に関するわが方の
主張を生かす余地を残しつつ、とりあえず戦争
状態の終結を確認し、
国交を回復する趣旨の暫定的協定を結ぶとともに、
抑留者の帰国の実現並びに
歯舞、色丹の占領解除、
返還を実現すべきことを
主張して参りました。これすなわち、俗にいう暫定協定方式であります。われわれは
政府の
交渉が継続している限り、これに水をさすやに受け取られるような言動は慎んで参ったつもりであります。しかし今や
日ソ国交調整の
交渉が重大な転機に立ち至ったので、ここに改めてわれわれの所信を明らかにし、
政府が近く
松本全権を交えて今後の
対策を考究されるに当って、真剣なる再考を促したいと存じます。
鳩山総理並びに
重光外務大臣は、従来、アデナウアー方式はとらないとか、目下
交渉中であるから行き詰まりに際しての転換策等については目下何とも言えないとか、こういう返答をされて参ったのでありますが、今日の段階においては、もはやそのようなその場のがれの口上では済まされないと存じます。どうか慎重な考慮の上に、それぞれ首相並びに外相からの的確なる態度の表明を要求いたしまして、再
質問の権利を留保して、一応これをもって私の
質問を終ります。(
拍手)
〔
国務大臣鳩山一郎君
登壇、
拍手〕