○岡崎真一君 ただいま議題となりました六
法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御
報告申し上げます。
まず、
所得税法の一部を
改正する
法律案(閣法第八号)について申し上げます。
政府は、最近の諸情勢に即応すべき合理的な租税制度を確立し、その全面的改革を
昭和三十二年度より実施する
見地より、昨年八月臨時税制調査会を設置し、目下鋭意検討中でありまするが、昨年十二月発表の中間答申において、
給与所得者の負担が他の所得者に比べ特に重いと認められるので、この不均衡の
是正だけはあとう限り
昭和三十一年度において行うことが望ましいという
趣旨の答申があり、本案はこの答申を尊重し、本年度において
給与所得者の税負担を軽減するため所要の
改正措置を講じようとするものであります。
次に、本案の
内容について申し上げますると、
給与所得控除額を引き上げるため、控除率を現行の一割五分から二割にするとともに、最高限度額を現行の六万円から八万円に改めようとするものでありまするが、本年度は財源の
関係上、実施時期が七月一日となっておりまするので、控除率は一割七分五厘、最高限度額は七万円といたしております。この軽減
措置によりまして、
給与所得者の税負担は相当程度軽減されることになり、たとえば、夫婦子供三人のいわゆる標準世帯の場合で申しますると、その課税最低限は、現在の年収二十三万一千二百五十円が、本年度二十三万八千七百十円、平年度で二十四万六千六百六十七円となり、平均月収二万円までは非課税となるわけであります。なお
給与所得に対する源泉徴収については、本年七月一日以降、平年度計算による
改正後の控除を用いて行われることになっておりまするが、年の途中で死亡したり、または出国したりする者の準確定申告について、納税者の便宜をはかるため、本法の施行は四月一日にいたしております。さらにまた、この減税
措置による減収額約百五十億円は、別途提出の
租税特別措置法等の一部を
改正する
法律案等に規定されておる交際費の損金不算入
措置の範囲を拡大し、退職
給与引当金の積立限度額の制限及び砂糖消費税率を引き上げる
措置による増収分をもって充当することといたしております。
本案の審議の詳細につきましては、速記録によって御
承知願いたいと存じます。
討論に入りましたところが、岡委員より、「今回の減税
措置はおそきに失した感を受け、少くとも四月一日から実施すべきであり、依然不満な点が少くないから、三十二年度の本格的な税制
改正の際には控除率を二五%に引き上げることが望ましい。また財源の捻出方法についても必ずしもふさわしい
内容を持っていないから、今後十分検討し、
給与所得者の納得する方向において善処されたい」との
要望を付して賛成
意見が述べられ、続いて土田委員より、「中堅所得階級の安定をはかる意味から、最高限度額を十万円にすべきであり、同時に減税の恩典が少い中小企業者に対しても特別の配慮が望ましい。また今回財源として交際費、退職
給与引当金等が対象となっておるが、資本蓄積不要化の懸念、中小企業への悪影響等を考慮すれば必ずしも妥当なものとは思われない。さらにまた、退職引当金
措置のごとく巨額な増収分が、
法律によらず政令で
処理されていることは適当でないから善処されたい」との
要望を付して賛成
意見が述べられました。最後に木村委員より、「現在の税制は資本蓄積に重点が置かれ過ぎており、公平の原則から見ると不均衡の面が多く、特に租税特別
措置法により、大法人に有利な税制が行われていることは適当でなく、根本的な
改正を要する。また、
給与所得者に対する軽減
措置は不十分であり、とりあえず控除率を二五%、最高限度を十万円に引き上げ、本年の四月一日から実施すべきである。さらに減税の恩典を受け得ない貧困階級にとっては、間接税の引き上げによって、かえって税負担が加重せられ、今回の減税
措置は、家計の影響を考慮すれば、名目的な減税にすぎない」との反対
意見が述べられ、かくて採決の結果、多数をもって原案
通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、
租税特別措置法等の一部を
改正する
法律案について申し上げます。
本案は、租税特別
措置法、有価証券
取引税法及び登録税法について所要の
改正を行おうとするものであります。
以下、おもなる
改正点について申し上げますると、第一点は、租税特別
措置法に規定してあります法人の交際費等について、損金不算入
措置を拡大するとともに、航空機の燃料用揮発油に対する揮発油税及び地方道路税の免税
措置が、本年三月末日をもって終了することとなっておりますので、航空機事業育成等の
見地から、免税期間を今後三年間、すなわち
昭和三十四年三月末日まで延長するものであります。交際費の損金不算入の規定は、御
承知のごとく、法人の交際費等の
経費を抑制するための目的で、
昭和二十九年四月一日から、三年間を限って、資本金五百万円以上の法人等が各事業年度に支出した交際費等の金額が、基準年度の交際費等の支出額の七割に相当する金額と、
取引金額に一定割合を乗じて算出した金額のうち、いずれか多い金額をこえた場合には、その超過額の二分の一相当額を損金に算入しないこととしてありますのを、今回その超過額全額について損金不算入の
措置を講ずることといたしております。
第二点は、有価証券
取引税についての
改正でありまして、本年四月一日より
公社債市場の
再開が予定されておりまするに伴い、
公社債等の譲渡にかかわる有価証券
取引税の税率を引き下げるため、現在証券業者を譲渡者とする場合の課税率万分の三、その他の者を譲渡者とする場合の課税率万分の七を、それぞれ万分の一及び万分の三に引き下げております。
第三点は、登録税法についての
改正を行おうとするものであります。すなわち昨年十一月ころより償還期限五年の長期信用銀行債券が発行されておりますることに伴いまして、この際、社債の払い込みについての規定のうち、戦前の興業債券、勧業債券等を整理するとともに、長期信用銀行債券で、償還期限が三年をこえるものについては、千分の二の軽減税率を適用することといたしております。
なお、交際費課税の
改正による増収見込額は約十億円、航空機用揮発油の免税
措置によって約九億五千万円、有価証券
取引税の
改正によって約二千万円、それぞれ減収が見込まれております。
本案の審議の詳細につきましては、速記録によって御
承知願いたいと存じます。
討論に入りましたところ、岡委員より、「航空機用揮発油、有価証券
取引税、登録税の
改正措置については賛成であるが、交際費の損金不算入
措置の基準額について、何らの
改正が行われなかったことは不満であり、また本法に規定するものの取捨選択についても問題があり、抜本的にはその全廃が望ましい」との反対
意見が述べられ、ついで木村委員より、「本案の
内容を見ると、相互に関連のない事項が一緒に提出されており、提出の仕方が不親切で、あり、矛盾している。また交際費の
改正措置についても、岡委員と同様な
見解に立って徹底的な
措置をとるべきである」との反対
意見が述べられ、かくて採決の結果、多数をもって原案
通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、
砂糖消費税法の一部を
改正する
法律案について申し上げます。
本案は、最近における砂糖
取引の実情にかんがみ、砂糖消費税の納期限を改めるほか、所要の規定の整備を行おうとするものであります。
以下、主なる
改正点について簡単に申し上げます。
第一点は、納期を変更することでありまして、現行法においては、製造場から移出する際、砂糖消費税を徴収することとし、別に税相当額の担保を提供する場合には、三カ月以内徴収を猶予する規定を設けておりまするが、通達によって現在は二カ月間の徴収猶予が認められております。しかし砂糖
取引の決済
状況や酒税法等、ほかの間接税の納付制度に徴しましても、この際、徴収期間を短縮することが適当と思われますので、保税地域から引き取る場合を除き、製造場から移出する砂糖類に対する課税は、移出の月の翌月末日までに徴収するとともに、課税相当額の担保の提供があった場合には、一カ月以内徴収猶予することができることとしております。もっともこの徴収猶予の規定につきましては、当分の間適用しないこととしておりますから、実質的には半カ月間程度の短縮が行われることとなります。
第二点は、農家で製造される黒砂糖等については、小規模な製造者が多数あります
関係上、納税者、徴収者双方とも煩雑な手数を要する実情であり、今回製造者が集荷機関である協同組合等に委託して製造場から移出する場合には、従前
通り、受託者である協同組合等を納税義務者とすることによって、事務手続の簡素化をはかるものであります。
このほか、国の買上げるテンサイ糖についても、納税制度の合理化をはかる
措置を講じております。
なお、納税期限を短縮する
措置によりまして、
昭和三十一年度の砂糖消費税は十三カ月分の収入が計上されることにより、約四十億円の増収が見込まれております。
本案の審議の詳細につきましては、速記録によって御
承知を願いたいと存じます。
討論に入りましたところ、岡委員から、「砂糖関税の引き上げは、最終的には消費者に転嫁され、本案は、その法的根拠を確立したことになる、また砂糖専売制度の実施、もしくは
政府の保有砂糖をもって、財源の確保、価格の安定等をはかるべきである」との反対
意見が述べられ、ついで木村委員より、「租税
対策は単に直接税より間接税への移行をもってしては、根本的な
打開策とはならず、防衛
関係費等を削減して歳出規模を縮小することが
前提でなければならないこと、砂糖会社の不当利潤を吸い上げる構想をやめて、関税引き上げにおきかえたことは、不明朗なものを感ずること、
給与所得者に対する減税も、他方砂糖の値上りを考える場合、見せかけの減税であり、
政府の施策は首尾一貫していない」との反対
意見が述べられ、かくて採決の結果、多数をもって原案
通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、
関税定率法の一部を
改正する
法律案について申し上げます。
本案は、関税収入の増加をはかるため、砂糖等の関税率を相当程度引き上げるほか、最近
輸入価格が安定しつつある実情にかんがみ、カン詰等の糖みつを除いた砂糖等について、現行の従価税率を従量税率に改めようとするものであります。すなわち現在従価二割の原料糖を従量で換算いたしますると、一キログラム、七円六十二銭に相当するものでありますが、これを十四円に引き上げるとともに、精製糖については、現在の従価三割五分、換算して一キログラム当り十七円一銭のものを二十四円に、氷砂糖については、従価三割五分を換算して一キログラム当り二十五円九十銭のものを三十六円に、それぞれ引き上げ、また糖みつについても若干の引き上げを行なっております。
なお、この
措置によりまして、
昭和三十一年度の関税収入は、約六十二億円の増収が見込まれております。本案の審議の詳細につきましては、速記録によって御
承知を願いたいと存じます。
質疑を終了して討論に入りましたところ、岡委員から、「砂糖メーカーは酒造業者に比較して金繰りは楽であるから、さらに納期を一カ月程度に短縮することが望ましい、また黒糖生産者についても何らかの救済
措置を講ずべきである」との反対
意見が述べられ、ついで木村委員より、「砂糖メーカーが徴収を猶予されている資金は一カ月に約四十億の巨額に達し、他の業種に比べて特典を与え過ぎており、今回納期が平均四十五日に短縮されても、依然として不当に徴収期間が長過ぎる」との反対
意見が述べられ、かくて採決の結果、多数をもって原案
通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、
所得税法の一部を
改正する
法律案(衆第十二号)について申し上げます。
本案は、
衆議院大蔵委員長松原喜之次君の提出にかかるものであります。
現在、地方教
職員及び警察
職員等は、条例に基いた互助組合を組織して、家族療養費に対する補完的な共済制度を実施し、これら組合員の掛金に対しては、従前より
所得税法の規定する社会保険料控除の適用を受けていたのでありますが、
昭和二十九年に制定されました市町村
職員共済組合法の附則において除外
措置がとられ、この結果、
昭和三十年度以降においては課税せらるることとなっていたものであります。租税原則の立場から申しますと、かような付加給付にまで適用させることは異論のあるところでありましょうが、今日の社会保障制度の実施
状況にかんがみまして、多少とも社会保障制度の強化に資せしめる意味においても、この際、条例により、地方公共団体がその
職員に実施する共済制度に基き
職員が負担する費用については、保険給付を主目的とするものに限り、社会保険料控除の適用を受け得る
措置を講じようとするものであります。なお、この
措置による減収額は約六千万円が見込まれております。本案の審議の詳細につきましては、速記録によって御
承知を願いたいと思います。
かくて採決の結果、全会一致をもって、原案
通り可決すべきものと決定いたしました。
最後に、
昭和二十八年度、
昭和二十九年度及び
昭和三十年度における
国債整理基金に充てるべき資金の繰入の特例に関する
法律の一部を
改正する
法律案について申し上げます。
昭和二十八年度から
昭和三十年度までの間においては、国債の元金償還のための資金を一般会計から
国債整理基金特別会計に繰り入れる場合、その繰り入れ額は、特別会計法の規定によらないで、財政法の規定によって前々年度の剰余金の二分の一相当額とすること、また
日本国有鉄道及び
日本電信電話
公社が、その発足当時に
政府に対して負うこととなった債務の償還元利金は、直接、
国債整理基金特別会計に受け入れ、一般会計から償還資金の繰り入れがあったものとみなすという、二つの特例
措置がとられてきたのであります。本案は、国債償還の方法を目下検討中であって、いまだ結論を得ていないためと、経理の簡素化をはかるために、この特例
措置を引き続き三十一年度においても講じようとするものであります。委員会における審議の詳細は速記録によって御
承知を願います。
質疑を終了し、討論、採決の結果、多数をもって原案
通り可決すべきものと決定した次第であります。
以上、御
報告申し上げます。(
拍手)