○永岡光治君 私は
日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されました
公共企業体等労働関係法の一部を
改正する
法律案について、その基本的な点について
政府の
所信をたださんとするものであります。
その第一点は、
公共企業体等労働関係法の本法制定の
趣旨と、本
法律を尊重するということについての
政府の
態度についてであります。
すなわち本法のねらいは、三公社五現業の労働者、
使用者側の間における紛争を調停制度によって、これを円満に解決しようとするところにあると私は
考えるものであります。しかりとするならば、三公社五現業の労使間の賃上げ紛争に対しまして、現在起きておりますこの紛争に対しまして提示されました中央調停
委員会の調停案を、公社当局がこれを受諾をいたしまして、さらにこの調停案の中に示されておりまする不明確な点を
話し合いの上で解決をするよう、
政府は積極的に協力すべきではないかと、かように
考えておるものであります。
先般、三公社労使間に起きておりますこの賃上げの紛争の解決のために、中央調停
委員会は慎重審議の結果、次のような結論が出されております。すなわち、現給与は不当であるのですみやかに是正をすること、暫定
措置として本年度内、三十年度内に一人当り五千円以上を支給すること、期末手当を〇・二五カ月分増額支給すること、定期昇給及び給与体系是正のため予算
措置を講ずること、等を含めました給与改訂を適当とするという、こういう調停案が示されておるのであります。本調停案に対しましては、労働組合側は事態の円満なる解決のためには、まことに不満であるけれども、しかしこれを不明確な点を明確にするということを条件にいたしまして、受諾をいたしました。まことに私は、建設的な
態度だと
考えておるのでありまするが、しかるに
政府と公社当局においては、今日に至りましても、なおかつその
態度を明確にいたしておりません。いたずらに紛争の解決を遷延せしめているということは、まことに私は遺憾にたえないと存ずるものであります。官公労組の今次賃上げの闘争というものについては、開始以来すでに一カ月をこえております。
政府、自民党の一方的弾圧と威嚇による挑戦的
態度によって、次第に重大なる様相を呈してきておりますことは、すでに皆さん御
承知の
通りであります。このような事態の解決には、どういたしましても
政府と公社当局とが本調停案を受諾し、組合側と誠意をもって話し合う以外に方法はないと
考えるものであります。ところが組合で行なっておりまする職場大会等には、自民党の代議士諸君が監視の
立場でこの大会に出席をいたしまして、これに威圧を加えております。それのみか、組合員の数よりは多い警官を動員しております。たとえば田端における国鉄の職場大会等の例を見ますると、組合員六百名の職場大会を開いておる、ここに警官六百名、公安官三百名、調査員百名という、まさに組合員を非常に上回る膨大な警察権力を動員いたしまして、挑発的
態度に出ておることは、これまた新聞紙上を通じて皆さん御案内の
通りでありまするが、このようにして混乱に陥れて、従来許されておりました労働慣行に対しましても、これを不当なりといたしまして、ある代議士のごときは、警官をその現場に連れて行って写真をとらして、このような現場であるからというようなことで国鉄当局に処断を迫り、断固たる処断をせよ、もし処断をしなければ、その管理者に対して、自民党の名においてその
責任を追及するという、こういう不当きわまりないところの干渉がなされておるのでありまして、こういうことからいたしまして、労働紛争というものは円満なる解決の
方向に進むどころか、ますます拡大の
方向に今日追い込まれておるのであります。従って私たちの
考えからいたしまするならば、調停を長引かしておるその
責任というものは、これは
政府側あるいは自民党側がとっておる
態度にあるのでありまして、むしろ問題を円満に解決しようという、そういうことに
努力しておるよりは、争議をますます拡大して、社会を不安混乱に陥れようという
態度にのみ
努力をしておるとしか
考えられないのが今日の状態であるわけであります。(
拍手)このようにして、このような状態でありまするから、もし調停案を拒否して事態の解決をいたずらに遷延せしめるということでありまするならば、それによって発生する一切の
責任は、あげてこれは
政府が負わなければならぬのは当然であります。この
態度は、何も社会党のみがここで皆さんに申し上げ、
政府に対して
質問を申し上げるだけではないのでありまして、大新聞でありまする毎日新聞の社説におきましても、
政府は、公社に対してこの調停案を受諾させよという論説を掲げております。その中の一節を読み上げまするならば、「
政府が調停案を拒否して仲裁委に持込もうとして、公社当局に圧力を加えているといわれるのも、こんなところからだ」とし、明らかに毎日新聞は、
政府当局は公社側に圧力をかけて、この調停案をのませないようにしておるという動きがあるということを認めておるのであります。「五現業についても同じ
方向の調停案が出るならば、予算面でやりくりがつかぬとして、この調停をきらっていると察せられる。しかしこの悩みは、調停委も味わっているところである。だが調停委から仲裁委への道を選んだところで、
政府の負担が軽くなるとの見通しはない。それどころか、組合側が調停案を受諾し、当局が拒否したとなれば、
政府の
立場はきわめて不利になる」こういうようにはっきり社説に掲げておるところを見ても明らかのように、私はこの調停案を今日に至るまでも
政府が受諾をいたさないで、公社側が受諾するように
政府は協力しないで遷延さしておることが、この争議を遷延させ、しかも労働組合に、争議をいよいよ拡大していくという
責任を負わせるものであると
考えるものでありまして、この点に
政府の強い反省を
要望いたしたいものであります。
そこでわが党は、この
政府に対しまして
法律を尊重する
立場から、公社が本調停案を受諾いたしまして、不明確な点をさらに明確にするための誠意ある
話し合いによって、事態の円満なる解決をはかるべきことを積極的に協力すべきであるということを要求するものでありますが、これに対しまして鳩山
総理大臣の所見はいかがなる
考えを持っておりまするか、明確に
お答えをいただきたいと思うのであります。予算上、資金上、これができるとかできないとかいうことは、明らかに私が冒頭指摘いたしましたように、本公企労法の精神に反するのでありまして、
政府は、今日までどういう
態度をとってきましたか。労働組合が法に照して違法な行為を行うならば断固たる処断をするという、みずからが法を侵してもそれについては知らぬ顔をするのみか、この争議をますます大きくしようとしている。こういう
態度は、私たちは絶対に見のがずことはできないのでありますから、この点について誠意ある
鳩山総理の所見を承わりたいと思うのであります。
次に、先ほど倉石労働大臣から提案理由の
説明の中にもありましたように、その言をかりるならば、この公労法は、占領行政下の特別な異例
措置として制定されたものである、こういうことを言われているのであります。
昭和二十三年七月のこれはマッカーサー書簡に基いた、いうところの政令第二百一号の落し子といたしまして、不手ぎわと実に無理に満ちた
法律であることは、倉石労働大臣みずからが十分お知りのところであると思うのであります。従いまして本来この
法律は、今日の状態からいたしますならば、当然これは廃止されてしかるべきと私は思うのでありますけれども、この点について
鳩山総理はどう
考えておりまするか、その所見を第二点としてお伺いを申し上げます。
廃止しないまでも今日の
日本の情勢からいたしまするならば、国家行動の基準が憲法にあるのでありますからして、合憲的な
立場に立って修正さるべきだと
主張しなければならぬと思うのであります。しかるに今回の
政府の
改正案は、なお多くの違憲的欠陥を残しております。不合理と不備の点を放置しておることは、まことに私は遺憾にたえないのであります。
そこで以上その具体的な欠点を指摘いたしまして、
改正案に対する
質問を行わんとするものでありますが、以下の
質問に対しましては、倉石労働大臣の御
答弁を求めるものであります。
第一点は、臨時
公共企業体等労働関係法改正審議会が各界の代表を集めまして持たれたのでありますが、その答申案に対して、公益
委員側がこれをまとめたのであります。そうしてその審議会の答申案というものを作ったのでありますが。その答申案の全部をこれを受け入れていない。というよりは最も重大なる点において、この答申案をこの
改正案には取り入れていないというところに、私は最も大きな不満を持つものでありまして、この点について、たとえば先ほども問題になりましたけれども、仲裁裁定が出されて、それを尊重するとは言いながら、予算上、資金上、これは
政府は、
政府の
立場からするならば、予算上、資金上、これが実行不可能ということであれば、この裁定を拒否してもよろしいという今日の
態度は、それはいけない、いけないからこの答申案の中には、当然予算の移流用によって、それは実行いたしなさい、こういう答申を出しておるにもかかわらず、それについての取り上げをいたしておりませんし、あるいはまた、先ほども倉石労働大臣からの
答弁の中にありましたけれども、国鉄の職員でない者でも役員になり得るということをこの答申案はなしておるのでありまするけれども、それについても採用していない。何がゆえにこの
公共企業体等労働関係法の
改正の審議会の答申案を受け入れなかったのか。その点が私は非常に不満でなりませんし、きわめて遺憾でありまするので、この点についての所見を承わりたいのであります。
次に本法が、従来持っておる当事者の、特に労働組合側の自主
決定に加えられてきましたところの制限を、そのまま看過している点であります。その
一つは、オープン・ショプ制を強制しておるところの公企労法第四条であります。その王、公企体の職員でなければ組合員または役員となれないという締め付けを行なっておるというこの規定は、公企体の労働運動を歓迎しないという
態度の端的な現われである、こう言わなければなりません。ほんとうに
政府が近代労働組合主義を理解するならば、当然にユニオン・ショップ制ないしクローズド・ショップ制が認められてしかるべきではないかと
考えておりまするけれども、これらの点について、どのように
考えておりますか、その点を伺います。しかも第七条ではさらに組合専従者の定数につきましても介入をいたしておる点であります。この点についても労働大臣の所見を承わりたいと思うのであります。
次にはタフト・ハートレー法第九条にならった
交渉単位制度と
交渉委員会制度であります。この
交渉委員会制度につきましては、
アメリカの鉄道労働の慣行によるものでありますけれども、今回の
改正案では、単位制度だけは廃止はしておりまするが、
交渉委員会制度をなお存置いたしまして、先ほども
答弁の中にありましたけれども、職員以外の
交渉委員を排除することによって、第四条との関連で団体
交渉権の基本的あり方と労働組合の団結権を不当に弾圧し、その弱体化をねらっておるものと
考えられるけれども、この点についてはどのような
考えを持っているか、これを伺いたいのであります。本来、団体
交渉の実際とその理論というものは、近代の労働法が明らかに示しておるように、労働組合の自主的
決定によるものでありまして、このことを特に私は強調しなければならぬと
考えておるものであります。
さらに予算上質金上不可能なる支出を
内容とする
協定または裁定に関する第十六条及び第三十五条の問題でございます。これは本法最大の問題の
一つでありまするが、
政府もこの点を重視いたしまして、予算総則の制度を改善いたしまして、裁定の実施に誠意をもって
努力することでなくてはならぬと思うのであります。一体、
政府の所定の行為がなされるまで、事前の
協定とかあるいは裁定の実施をこばみ得るという
見解に立って、従来
通り政府は拘束を受けないという、こういう
態度を改めるというならば、給与総額をこえる場合であっても、あとで
国会に追加予算案の
提出をして
承認を受けるというのか、その点を明確にしてもらいたいと思うのであります。すなわち第三十五条には、「
委員会の裁定に対しては、当事者は、双方とも最終的
決定としてこれに服従しなければならず、また、
政府は、当該裁定が実施されるように、できる限り
努力しなければならない。」、このできる限り
努力しなければならないというこの実際の運営の問題であります。もちろん私は、ここにそのあとに、「ただし、公共企業体等の予算上又は資金上、不可能な資金の支出を
内容とする裁定については、第十六条の定めるところによる。」と、こういうことでありまするけれども、このことは条文から
考えまして、この
努力しなければならんというのは、単なるこれは
努力程度であって、
政府が今日までとって参りました
態度をごうも変える
考えがないのかどうか、この点をあらためて労働大臣の
見解を承わりたいと思うのであります。
本来、
国会の審議権とは予算案についての審議権でありまして、
協定や裁定について、
国会の審議はこれは無
意味なことでありまして、その調停がいいとか悪いとかということをこの
国会で審議する
権限は実はないのであります。それゆえにこそ公企労法が制定されておるのでありまして、
国会はただ出て参りましたその調停を実施する予算案の
内容を見て、その予算案がいいか悪いかということを審議するにとどまるのでありまして、この調停案の
内容について審議さるべきものではないと
考えておりまするが、この点についての労働大臣の御所見を承わりたいと思うのであります。
さらに第十七条の争議の
禁止でございますが、第十八条について次に最大の問題の
一つは、ストライキ権の剥奪であるわけでありますが、従来も
政府は、社会性、公共性、公益性あるいは公共の福祉を理由といたしまして、労働者の生存権的基本権を奪っててん然といたしておるのでありまするが、一体、一般の電気、ガス供給事業や私鉄事業と、国鉄、郵便と電信電話等の交通、通信事業と、どのような理論的相違を認めさせようとするのでありましょうか。企業主体が、公社であれ株式会社であれ、企業体の公私を問わず、近時特に公益性や公共の福祉は当然要求されているものでありまして、何も公企体にのみ特有なものではないと
考えるのであります。
政府があくまで公共の福祉論を持ち出すならば、憲法十三条に反する場合として、その基本権を
内容的に制限する建前をとることが至当ではないかと
考えますが、しかし公共の福祉を理由にして労働基本権としての争議権を剥奪できないことは、憲法第十一条、第九十七条に明らかにしておるように、それが永久の
権利として保護されておるからであります。断じて全面的
禁止は許されません。
政府の明確なる
答弁を求めるものであります。
最後に、労働
委員の任免制度についてでありますが、紛争処理の公益
委員は、法理論上両当事者の意思を基礎とすべきことは当然のことでありまして、その
委員が
政府の手によって
国会の
承認だけで選ばれるのは、政治的見地からの介入ではないか、あくまで労使
委員の同意によって任命すべきであると
考えるけれども、この点についての労働大臣の御所見を承わりたいと思うのであります。
以上をもりて私の
質問を終ります。(
拍手)
〔
国務大臣鳩山一郎君
登壇、
拍手〕