運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-03-15 第24回国会 参議院 法務委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月十五日(木曜日)    午前十一時八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     高田なほ子君    理事            一松 定吉君            亀田 得治君            宮城タマヨ君    委員            井上 清一君            赤松 常子君            中山 福藏君            羽仁 五郎君            市川 房枝君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   公述人    神戸土地区画    整理委員    南  恒治君    横浜土地協会理    事       武山喜久郎君    朝日新聞法律相    談所弁護士   下光 軍二君            大古田長治君    日本弁護士連合    会代表     佐々木正泰君    日本ビルデイン    グ協会連合会会    長       宮田 正男君    横浜市中区接収    解除跡地処理第    二地区委員長  岩本鉄次郎君    芝浦土地株式会    社取締役社長  原 信次郎君    全国接収借地借    家復権期成同盟    会長      山田新之助君    東京大学教授  有泉  亨君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○接収不動産に関する借地借家臨時処  理法案衆議院提出)(第二十三回  国会継続)   —————————————
  2. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ただいまから法務委員会公聴会開会いたします。  開会に当りまして公述人の方に一言ごあいさつを申し上げます。本日は大へん御多忙のところ、公述人各位方々にはわざわざ御出席をいただきましてまことにありがとうございます。本日は接収不動産に関する借地借家臨時処理法案につきまして、公述人各位から忌憚のない御意見を十分に承わりたいと存じます。公述人方々に十分のお時間をと存じましたが、大体運営の面もございますので十五分という程度で御意見の開陳をお願いしたいと存じます。なお公述人に対しまする質疑は後ほど一括して行いたいと存じますから御了承をお願いしたいと存じます。  それではまず神戸土地区画整理委員南恒治さんにお願いをいたします。
  3. 南恒治

    公述人南恒治君) 私が今御指名を受けました南恒治でございます。時間の制限を委員長から御発言がありましたが、詳細なることはまことにその時間では陳情いたしかねますが、私は実は一昨日急遽出て来いという御指名を受けましてやって参りました関係上、まとまったことのそごする点もあらかじめあるということを御了承願って発言をお許し願いたいと思います。  私はこの法案につきましては、大体において賛成であります。しかしながらこの法律案の各条に対して私が疑義のある点を委員長に御質問してもいいかどうかということを、あらかじめ御了承を願いたいのですが、いかがでしょうか。
  4. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) これは私に質問をすると申しますよりは、十分に御意見を開陳され、しかる後に委員会としては本格的に質疑をいたしまして結論を出したい、こういう考え方でありますから、きょうは公述だけにしていただき、委員質疑に答えていただく、こういうふうにしていただきたいと思います。
  5. 南恒治

    公述人南恒治君) 承知いたしました。  私どもはこの法案賛成であります。日本弁護士連合会のおっしゃるような憲法違反するとか、「時期を失し」ているとか、こういうことにつきまして、その反対論を、ここで陳情します。なおまた、法務省の民事局が言うておるがごとき憲法違反である。いわゆる私権の侵害であるというような御意見には、全然承服ができないのであります。その理由は、御承知戦災後のあの昭和二十年の十二月ごろに各地で接収せられたのであります。当時の状況は、私が詳細に申さなくとも、委員各位においてはおわかりのことと存じまするが、今日の罹災都市臨時処理法が施行せられましたのが、二十一年の九月の十八日と私は記憶いたしておるのであります。その当時におきまして、神戸市の例をとりますると、昭和二十一年の十一月の十六日いわゆる特別都市計画法施行令第四十五条によりまして、神戸市が所有権以外の未登記権利者、これに対して申告をせよ、いわゆる特別都市計画法というものは、二十一年の九月の十一日に施行せられたのであります。しこうして神戸市は二十一年の十一月の十六日より一カ月間の受付期間を定めまして、未登記借地権者に対しての申告を告示したのであります。しこうしてその以外の借地権に対しましては、市は受付を受理をしないのであります。御承知のごとく昭和二十七年の四月に私どもが待望の講和発効ができまして、それによって私たち借地権が主張ができるのは当然だと考えておったのでありまするが、都市計画の面におきましても、この昭和二十一年の十一月十六日、すなわち昭和二十一年の十二月十六日以降は借地権区画整理に対しましても、届出を受けないということによって、われわれ借地権者は、あるいは借家権者は、救われないというところの結果に至ったのであります。ゆえに今日この法案を私どもは同志と相たずさえまして、衆議院へ提出した根本理由はここにあるのであります。  なお現在におきまして、特別都市計画法が変更せられまして特別都市計画法の八十五条によりまして、現在いわゆる戦災処理法の第十一条にありまするところの借地権は十年間にみなすというあの規定によりまして、九月の十四日までは申告を受け付ける。申告をするわれわれの権利は持っておりまするけれども、実際面におきまして、いつ接収解除になるや、われわれの戦災土地がいつ返えるかわからない現在におきましては、この特別都市計画法の八十五条の規定によるところの申告有名無実に相なるのであります。従いまして現法案に対しまして私ども賛成するのでありますが、私はこの法案の、衆議院から回って当委員会に御審議中の法案条項を拝見いたしますときに、第十二条をごらん願いたいと思うのでありますが、第十二条に、「第三条(第二項を除く。)、第四条(第二項を除く。)及び第五条から第七条までの規定は、罹災都市借地借家臨時処理法昭和二十一年法律第十三号)第九条の疎開建物敷地借地権者であって、昭和二十三年九月十四日現在において当該疎開建物敷地接収中であった者に準用する。」というこの条文があるのであります。私は今日のこの条文から見ますると、第三条第四条の二項二つを除くということになりますならば、われわれ戦災土地借地権者は救われないのであります。従ってこの第十二条におきまして第九条の疎開建物の、戦災土地借地権というものを御修正願わなければ、戦災土地、いわゆる接収せられておるところの借地権者は救われないのであります。ただ疎開建物のみこれによって救済せられるのであります。本案の一応重要なる点は、この十二条州修正いただけなければわれわれ借地権者は救われないということを私の総括的な意見として申し上げます。以上。
  6. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ありがとうございました。   —————————————
  7. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 続いて横浜土地協会理事武山喜久郎さんお願いします。
  8. 武山喜久郎

    公述人武山喜久郎君) 私武山でございます。本日の公聴会にお招きいただきましたことを心から感謝するものでございます。社団法人横浜土地協会を代表いたしまして協会意見を申し上げたいと思います。本日は会長出席の上で申し上げる予定でございましたが万やむを得ざる事故のために出席いたしませんので、私かわりに出席さしていただく次第であります。  その前に、横浜土地協会のことについて一言申させていただきたいと思います。横浜土地協会は明治の末期に設立されまして、土地所有者だけで組織されておるものであります。現横浜市長平沼亮三氏も長らく当協会会長として非常に御尽力をいただいたものでございまして、現在の会長渡辺富三郎氏でございます。会員は正会員約二百名ほどありまして、土地に関する一切の研究調査陳情等を仕事にいたしております。  さて本法案につきまして協会意見を申し上げますが、結論から申し上げますと、終戦後はや十年以上を経過いたしました現在、本法案はその必要がないものと考える次第でございます。以下六つの理由によりまして反対をするものでございまして、これから述べさしていただきます。  まず第一の理由といたしまして、横浜特殊事情につきまして、とくと申し上げて皆様方の御参考に供したいと思っております。皆様も十二分に御存じのことと存じますが、横浜市は全国重要都市のうちでもってその接収されております坪数は最大を占めておりまして、ことにその特色とするところのものは市内重要市街地のほとんどを占められておる状態であります。数字をもって示しますならば、横浜市の調査によりますと、横浜市内だけで再接収と申しまして、一度接収をされまして解除になって、その土地が再び接収された部分を含めますと、総計四百五十九万二千九百三十一坪という膨大な——これは横浜市内だけでございます——坪数で、この坪数横浜が現在十区ございますが、その十区のうち中区と西区という二つの区を合わせた坪数とほとんど匹敵しておるのでありまして、行政協定当時におきまして、これは特認調査でありますが、そのときでさえ二百四十五万八千二百一坪という接収地があったわけであります。昭和三十年分昨年の七月の三十日現在においても未解除地が二百九万七千百七十一坪という広さになっております。この未解除地二百九万七千百七十一坪のうち、永久接収と、これは私どもが言っております言葉でありますが、永久という言葉はあり得ないのでありますが、将来、いつ解除になるか見当のつかない、要するに永久接収されると見込まれる坪数が百四十二万三千余坪の広さを持っておるのであります。一時接収炉そのほかに六十七万三千余坪と、こういうふうな現在の未解除地の内訳になっておるのであります。  以上の数字もとにいたしまして、同じく特認の資料によりますと、これは二十年の接収の当初から昭和二十二年の十月までの接収地土地所有者数字は、横浜市内だけで五千四百六十六人おるわけでございます。約六千人でございまして、これは昭和二十二年十月までの分でございまして、それ以後の接収は当然この六千人の土地所有者よりも数段上回るわけでございます。一応この六千人の数字もとにいたしまして、この土地所有者一人につきまして、借地人借地権者の数は、これは推定でございますが、十数人あると仮定いたしますと、借地人だけで約十万の数になるわけでございます。これは横浜市内接収地だけでございます。この十万人の借地権者のうち、本法案関係のある人数と申しますのは、どのくらいか、これを推定するということは非常に困難でございますが、非常に数が多いということだけは考えられると思っております。この多数の方々が本法案制定によりまして、将来一応紛争の対象となった暁においては、非常な混乱社会の不安というものを来たすということは火を見るよりも明らかなことであると思っております。私ども接収に関するところの御立法をなさいます前に、ぜひとも、一度ならず、幾度でも横浜市を十分に御研究をいただきたいと思っております。幸か不幸か横浜市はあらゆるこうした問題を解決するに必要な条件を備えておる所であります。  次にこの法案には永久的に効力が継続しておることになっております先ほどの未解除地二百九万七千百七十一坪のうちには、永久接収の先ほど申し上げました百四十二万三千余坪が含まれておりますが、このうち横浜市内本牧を中心とする四十六万余坪の住宅地区等は、いずれももと住宅地区でございまして、りっぱな市街地であったのであります。これまたここには非常に多数の借地人の方が存在しておったのでございます。永久接収と申しながら、長い期間の経過の後におきまして、遠い将来には、必ずや日本人の手に自由に使える時期が来るとは信じておりますが、そのときにおきましては、現在の土地所有権者と同じく借地権者というものはおそらく大部分継承されまして、その継承者権利が移行しておることと想像せられるのであります。借地借家法ですら期限をきめておるにもかかわりませず、本法によりますと無期限であります。その継承者権利義務があると考えますときには、不必要に紛争の種を遠い将来にまで法律の力によりまして今からまいておくという考え方が出てくると思うのであります。すなわち本法案制定しようとした精神とかけ離れた結果になると信ずるのであります。以上をもちまして第一の反対理由といたします。  第二の理由といたしまして、法律の乱用に陥りやすいとともに、利権屋、ブローカーの暗躍ということによりまして、借地権の売買がたちまち行われまして、必然的に長期の紛争に移って、土地の利用というものは非常に困難になりまして、復興の大業を阻止するというふうなことになるのであります。真にその土地を利用せんとする借地人ではなくして、十年以上にわたりまして一応新境地を開拓されました旧借地人を起して利権のために利用せられるという憂いが非常に多いのであります。  第三の理由といたしまして、他の法律によりましてすでに平穏のうちに処理されまして使用収益が行われている土地権利を、本法案によりまして無理に剥奪するということは、法律は信じがたいものであるという気持を国民に植え付けまして、法治国の意義を危うくするとともに、考え方によりましては憲法違反の問題が出てくるんじゃないかと、こういうふうに考えるものであります。  第四の理由といたしまして、法律の不遡及の原則に反すると考えるものであります。数年前接収解除土地が、法律とかあるいはお話し合いによりまして処理されておるものにまで遡及しまして、本法効力を及ぼすということは、社会の不安と紛争を助長するとともに、善意第三者に不測の損害をこうむらせ、言いかえますれば善良な第三者の重大な犠牲において旧借地権者に利得をさせるという結果になりまして、著しく公平を欠くと信ずるものであります。  第五の理由といたしまして現在適用されております罹災都市借地借家臨時処理法によりまして足りるものと信ずるのであります。土地につきまして正当な権利者でありさえしますれば、必ずや訴訟を提起しまして、裁判所は正当の権利者に対して十二分の保護を与えておることと私は信じております。  第六の理由といたしまして、戦争の結果損害を受けたものはひとりただ接収された土地借地権者だけではないのでありまして、ここを考えました場合に、より多大の損害をこうむったものが多数あるのでありまして、こういう方々に対して一々法制化しまして保護を与えていないのに、接収土地借地権者のみに特に本法制定して保護するということは不均衡のそしりを免れないと、こういうふうに協会として考える次第であります。  以上の諸理由によりまして、本法案制定に対して反対するものでございます。はなはだ漠然としておりましたが、以上をもって私の意見を申し上げました。
  9. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ありがとうございました。   —————————————
  10. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 次に朝日新聞法律相談所弁護士下光軍二さんにお願いいたします。
  11. 下光軍二

    公述人下光軍二君) 私下光でございます。意見を述べる前にちょっと私の立場を申し上げますと、朝日新聞法律相談所昭和二十四年の五月から開設いたしまして、毎日庶民相談に当っております。私も創設以来関係しておりまして、まあ全国でただ一つ常設法律相談所というような立場で、いろいろな問題の相談を受けておるのでありますが、すでに七年相談を受けまして、いろいろ法律問題に関する限りあらゆる問題について相談を受けたとわれわれは思っておるのであります。そういう相談を受けておるわれわれの立場から意見を述べさせていただきたいと思います。  大体この本案の成立には賛成いたします。ただし若干の字句の問題につきましてはあとで意見を述べさせていただきます。本案必要性ということにつきましては、この接収された土地借地権の問題につきましては、最初に土地工作物収用令、これで国家が使用権を取得しておるわけでございますが、これによりますと、大体借地権はその行使を停止しておるのだという解釈を私はとります。接収中は停止しておるのだ。従って接収解除になれば、その停止を進行させるべきだ、こういうふうに考えます。また強制疎開の場合には、これは戦災都市借地借家臨時処理法保護されておりますけれども接収ということのためにその保護が与えられなかったというようなことから、これに対しても保護をする必要がある。そういうふうな立場からこういう法律はぜひとも必要なものである、まあかように私は考えます。実際に私たち法律相談に当っておりますと、大体相談に来る方というのは弱い立場の人、権利を侵害されておる人というのが統計上からほとんどでございます。従いまして相談者の中で借地の問題についてはやはり借地人側相談が多い。借家問題におきましては借家人側相談が多いのであります。そしてわれわれが常に痛感いたしますのは、法律不備あるいは法律盲点というものがありまして、気の毒ながらどうにもならない。そういうことがしばしばございます。その相談者が、われわれが法律的な見解を述べますと非常に落胆し、涙を流して何とかならないかということを訴えられるのでありますけれども、そういう場合に、われわれは法律家として、相談担当者としていかんともなし得ない、暗然とする場合がしばしばございます。本件のような、接収された土地借地権者訴えもしばしばわれわれは聞いたのでございます。そうしてわれわれはその訴えを聞いて、現在の法律ではどうにもしようがないということで、やはり暗然としてわれわれの無力を痛感したのであります。そういうような立場でも、何とか救済する方法を講じなければならないということは痛感しておりました。従いましてわれわれ相談担当者が八人ございますけれども、これは法律盲点法律不備の点を一つ徹底的に研究をして、何とかやろうじゃないかというので、法律盲点研究会ども開きましていろいろやったことがあるのでございますが、しかしこれは発表したりなんかすると、逆に盲点を利用してやられるというようなおそれもありまして、慎重に今検討しております。そういうようなことから、やはり借地権者というものもぜひとも救済する必要があると、こう考えるわけであります。つきましては、この条項の中で私が疑問に思いますのは、三条の六でございます。三条の六に「借地法第二条の規定にかかわらず、二十年とする。ただし、建物が、この期間満了前に朽廃したときは、賃借権は、これによって消滅する。」とこうあるのでございますが、これは罹災都市借地借家臨時処理法の第五条を受け継いだ——受け継いだと言うよりは、それをそのまま持ってきたかと思うのでございますが、罹災都市借地借家臨時処理法の五条は、「設定された賃借権存続期間は、借地法第二条の規定にかかはらず、これを十年とする。但し、建物が、この期間満了前に朽廃したときは、賃借権は、これに因って消滅する。」、こういう規定をそのまま持ってきたものと思われますが、これは私たち相談所でも、現在借地借家臨時処理法第五条の問題が非常に悩みの種になっております。というのは、この処理法が施行されましてちょうど十年になりまして、この「十年とする。」という十年の期間がようやくこようとしておるのであります。そこで地主の方ではこの期間がきたのだから明けてくれと、こういう請求が非常に最近ふえております。借地人の方では、こう言われておるのだけれどもどうでしょうかというような相談を持ってくるのであります。そこでわれわれが調べてみましたところが、なかなかこの五条の解釈学者の間で分かれております。この処理法は、戦災直後の混乱状態の場合にこの戦災地を臨時的に処理するために作られた法律だから、この十年の期間借地権は消滅するのだという学者の説と、それからそうではないのだ、十年の期間が満了したら今度は借地法に返って、借地法規定に従ってこの期間更新するのだ、二十年または三十年の更新をするのだという学説が対立しておりまして、われわれもこの見解のどちらに従ってよろしいかということで非常に悩みまして、先般二十二の大学で四十人の学者にその意見を聞きましたところが、これはもう十二の大学の二十人の学者から返答が参りましたけれども、いずれも——いずれもというよりもその大体を申し上げますと、十年で満了するのだという人が八人、それから借地法に返るというのが九人、それから十年の期間が経過したら今度はまた更新は十年だというのが一人、それからいずれともよくわからないから新しく立法すべきだというのが一人、そういうような色分けになっております。しかもその中で新しくこれはこの際立法してはっきりすべきだ、こういう意見の人が十三人、それと立法は必要としないというのが五人、不明が二というような色分けになっております。そういうようなことがありますので、この二十年が満了した場合、またこれはどうなるのだろうかというような問題が起ってくる可能性があります。そこでそういうようなことのないようにここでこの期間が満了したらどうするのだという規定をただし書きか何かでちょっとつけ加えてもらうと非常に都合がいいと思います。この規定の二十年が満了した際、今度はどうなるかという規定をちょっと設けてもらいたい。そうすれば非常にはっきりして学者がこういうような対立した見解をもって争うということはなくなるし、一般の国民もはっきりして、無益な争いをしないと、そう思われます。ことにこの二十年という期間が、この借地借家臨時処理法と、罹災都市借地借家臨時処理法の十年の権衡上ちょっと長きに失しはしないか、これをなぜ二十年にされたかということが私ははっきりのみ込めませんので、少し長きに過ぎるのではないかと、こういうふうに思っております。  それから第九条、第九条にこの「残存期間が、この法律施行の日において二年未満のときは、これをこの法律施行の日から二年とする。」これは少し二年という期間はまた短きに過ぎやしないかと、残存期間が二年あったのじゃ建物を建てるといったって二年間の建物を建てるというわけにいかないし、これじゃあってもないのとひとしいのじゃないかと、二年間だけ建物を建てて使うということはちょっと考えられないのです。  それから第十九条ですね、まあ本件についての争いは「地方裁判所が非訟事件手続法により、これをする。」やはり非訟事件手続ではちょっと手続が簡単に過ぎると思うのです。といいますのは、法務省や、弁護士連合会あたり反対しておられるというのは、やはり善意第三者権利を侵害するということが非常に主張されております。そういう意味でこの善意第三者保護するのは、裁判所がことに正当事由などについて考慮をしてくれれば私は十分保護されると思いますので、この非訟事件手続法でやるよりも普通の訴訟手続でやっていただけば、従来の例によりますと、この点は心配する必要はない、法務省弁護士連合会で言っておられるような心配はないと私は考えるのであります。  私の総括的な意見は終りでございます。
  12. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ありがとうございました。   —————————————
  13. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) では大古田長治さんにお願いいたします。
  14. 大古田長治

    公述人(大古田長治君) 私が大古田でございます。  私は接収されてことしで十一カ年になります。いまだに接収が継続しております。昭和十年に赤坂の溜池の土地へ実測九十五坪、地上建ては百坪の建物を所有しまして自動車の営業をいたしておりました。ところが二十年の五月戦災でその建物が焼失いたしまして、ちょうどそれから一年、昭和二十一年の五月に焼け跡へと店舗兼住宅というようなものを建築いたしまして営業を再開いたしておりました。ところがその年の二十一年の九月に突然東京都から接収命令が参りまして、三日間で除却をしてしまえという命令が参りまして、やむを得ず除却いたしました。その後になりました二十三年の五月、これはその土地が元の地主から先の第三者の地主へと譲渡されました。それで、さっそく新しい地主の方へ参りまして、その土地を引き続いて貸してもらいたい、接収解除があった際に貸していただきたいと言って申し入れしましたのですが、どうもらちがあかないので、そうこうしているうちに二十四年の十二月になりましてまた地主がかわりましたので、またそこへと参りまして、接収解除後ぜひ一つ引き続いて貸してもらいたいという申し入れをいたしました。ところが借地権があるということを私の方は聞いてないで譲渡を受けたんだから、あなたの借地権は認められないというお話でした。で、その点につきまして、調達庁に二十五年から陳情に上りましたのです。と申しますのは、臨時処理法関係がございまして、あれが終期になって、あの効力がなくなるということになりますと当然争う方法がなくなることになりますので、何とかその法律を再延長するか、さもなければ何かそれにかわるべき法律を一つ作っていただきたいと申し入れをいたしましたところが、調達庁ではそれは何とかしようということになって、東京局の不動産部長花形弘三郎氏、それから佐野同課長、それから本庁の小平課長補佐で盛んに何かやっていましたけれども、どうもそれが成果を見られないような様子でございましたから、たびたびそれについて伺ってみたんでございますがどうもあやしくなって参りまして、それではこのまんまほっておくと二十六年の六月三十日に臨時処理法が終期にほってしまうので、そうすると私たちの救われる法律がなくなってしまう。仕方がございませんで、いろいろ調達庁に行って交渉しました結果、調達庁は大体借地権者というものは借地権登記のある者、さもなければ裁判の確定判決、これがなければ認めないというお話をせられまして、やむを得ず、ちょうど処理法のまだ終期にならないずっと前から、これは裁判というやつは私たち商売人のやる仕事ではなくて、これをやりますと費用がかかりますし、また裁判の関係が悪影響を及ぼすということになりますので、所有者との関係がどうもおもしろくなくなるということは、当然もう火を見るよりか明らかなんでして、やりたくなかったんでございますが、それをやらなければ結局自分の権利が消滅するという形になるので、やむを得ず裁判を提起いたしました。ところが、当然前述の通り、昭和十年からその土地におりまして、戦災後二十一年五月にはそこへと帰って建築してモーターを引き、商売を再開しておりましたのですから、当然借地料も支払ってありまするので、借地既得権がそのときにはございました。でありますから、裁判の結果は第一審も勝訴で、このときも調達庁に陳情しました。第一この通り勝訴になっていると、でその内容は当然坪数争いだけになっておりまして、借地権がないということは、先方の地主も主張しなかったのでございます。であるからこの判決によって何とか私の借地権者としての取扱いをしていただきたいということを申し上げたのですが、すぐに上告いたしておりましたから、それで第二審にかかったものでございますから、その第二審の判決ということになって二審も勝ちましたのでございます。そうしたところが今度はまた最高裁へ上告しました、先方で。それでやむを得ず……
  15. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 大古田さんにちょっとお願いいたします。この法律に対して賛成反対かということ一応明確にして意見を述べていただくと、大へん時間が節約されますので……
  16. 大古田長治

    公述人(大古田長治君) 私の事情からお話申し上げないとわからないのじゃないかと思います。私のような場合に、こういうふうに存続期間もあり、対抗要件も具備しているものでございますね。これが結局最高裁の判決では三十一年、ことしの九月の十四日丁ということになっております、そうすると、そういう実際の存続期間のある借地既得権者が、何といいますか九月の十四日になりますと消滅することになるのでございます。でありますから、これをよく理解していただいて、それからでないと思いまして御説明申し上げておるのでございます。あんまりどうもくだらない……、私もこういうことはやりつけなくて、自分の身にふりかかった問題でして、これが二十五年あたりから、私の唯一の財産で、命とかけがえの財産ですから、夢中になって調達庁へも運動しまして、ない金を運動費にかけまして、もうほんとうにこじき同然になっちゃった。ところでせっかく金をかけて判決を受けたその判決が、そうしますと九月十四日過ぎましたらどうなりますか。現在のところでは調達庁へ向ってお願いしておるのでございますけれども、それは約束があるのでございます。借地登記があるか、さもなければ借地権の確認、裁判所の確認があれば、確定があれば、何とか借地権者として取扱うという約束があるのでございます。それでそれももう最高裁の判決が三十年の十二月、去年の十二月ございました。それでさっそくその写しを持って調達庁へ参りまして、調達庁でもって何とか処置をしてくれないかといってお願いをしたのでございますけれども、いまだにその具体的な処置がないのでございます。そうしますと、そうこうしているうちにすぐに九月になってしまいます。そうすると消滅しちゃうのですね。ちょうど溜池の土地ですというと今私のところが坪三十万円くらいですから二千四、五百万円の財産権になっております。それが消滅する形になります。
  17. 一松定吉

    ○一松定吉君 今委員長が言われますようにこの法律案賛成反対か、それを一つ先に前提に言うて、それから何ゆえに賛成だ、何ゆえに反対だと、こう言って下さればわれわれ聞いておる者によくわかるのですよ。私どもにわからせるためにあなたにそこで述べていただくのだから。
  18. 大古田長治

    公述人(大古田長治君) 一生懸命になってやっておりますが。そういう事情がございまして、私はこの請願は十三国会からやっておりますが、私が代表としまして請願いたしたのでございます。そういう関係上これは賛成であるか賛成でないか、これは問題じゃないのですから……(笑声)
  19. 一松定吉

    ○一松定吉君 それを聞くのですよ。それがなかったら聞く必要がない。前提をはっきり……。
  20. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ちょっと自由な発言はおやめ下さい。大へん大古田さんは御熱心に御発言でございますが、ただいま一松さんも私も申し上げたように、この法律案に対して賛意を持っているか、反対かということを一応述べて理由をおっしゃって下さると、非常に聞いている者もわかりやすいのでございます。なれないようでございますから無理にとは申し上げませんが、なるべく要領よく一つ。
  21. 大古田長治

    公述人(大古田長治君) 賛成でございます。どうも長く苦しめられておりますから興奮しまして、それで前後をわきまえないで失礼を申し上げまして申しわけございません。
  22. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) どうぞお述べ下さい。
  23. 大古田長治

    公述人(大古田長治君) 時間のズレのお話がございましたけれども、この立法の運動につきましては二十五年から調達庁に運動しておりますし、また陳情もしております。それからそういう関係で調達庁もいろいろやりましたのでございますが、これも不成立に終って、私たち接収されたのは元東京都庁で接収をいたしたものですから東京都庁へ参りまして、安井都知事に陳情いたしましたところが、都知事はそれは申しわけない、何とかそれじゃ自分の方でも協力してあげようというので、二十七年二月に安井都知事の意見書として総理大臣、調達庁長官、法務総裁に意見書を提出して、その意見書に基きまして調達庁では立案いたしましたものを次官会議まで持っていきまして、次官会議で否決されたのでございます。そしてそれが否決されましたから行政協定に基いた不動産提供の法を作る場合に、付則として対抗要件と存続期間関係をつけまして、そしてこれを法務省へ審査に持っていった結果が、法務省でこれもまた削除されたということになって、それでは調達庁では政府立法はできないという見通しをつけまして、私たちは十三国会に初めて請願をいたしましたけれども、不幸にいたしまして今日に至ったような次第でございます。
  24. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 大古田さんまだおありのようでございますが、あとまた質疑もございますから詳細の点についてはその節述べていただいて概略の結論だけをどうぞ。時間が正午を過ぎておりますから。
  25. 大古田長治

    公述人(大古田長治君) では以上をもちまして、私の借地権もこのままでもっていけば消滅することになりますので、何分御賢察の上適当な御処置を願いたいと思います。
  26. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ありがとうございました。
  27. 一松定吉

    ○一松定吉君 議事進行について。もう十二時過ぎですから、あと五人もあるので継続してやると困りますから、ちょっと休憩して午後一時なら一時から始めていただきたい。
  28. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 一松さんから議事進行で以上のような御意見ですが、御異議ございませんか。
  29. 井上清一

    ○井上清一君 ただ午前中公述された方に対する質疑は午前中で、十分くらいでやって、お帰り願った方が……一日中ここにお出を願うことはお忙しい方にはごめいわくじゃないかと思いますが。
  30. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) いかがでしょうか。そういう御発言ですが御都合もございましょうが、しかし前後の関連のある問題もあると思いますので、皆さんの御都合をお伺いしてみてきめていきたいと思います。午前中の方は午前で切りますか。ちょっと速記とめて下さい。   〔速記中止〕
  31. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) それでは速記つけて下さい。ただいま午前中の公述が終りましたがこれについて御質疑のおありの方は順次御発言願います。……別に御発言が広ければ暫時休憩をいたしまして、午後一時から公聴会を再開いたします。    午後零時十分休憩    ————————    午後一時二十七分開会
  32. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 休憩前に引き続いて公聴会を再開いたします。  それではまず日本弁護士連合会代表佐々木正泰さんにお願いいたします。   〔委員長退席、理事宮城タマヨ君着席〕
  33. 佐々木正泰

    公述人佐々木正泰君) 佐々木でございます。日本弁護士連合会におきましては、さきの十六回のこの法務委員会に対しまして、会としての意見書を提出してあるはずであります。そしてまた三十年の七月二十六日この法務委員会で代表といたしまして、時の司法制度の調査委員会の副委員長の片山君が参りまして、意見を申し述べております。ところが本年になりまして借地人借家人の連名の委員会から、その日本弁護士連合会意見の訂正をしてもらいたいという陳情がありましたので、私どもの連合会におきましては今回は理事会においてこれを討議するのが適当であろうということになりまして、連合会の理事をもちまして小委員会を作りまして、そこで検討することに相なりましたのであります。その委員会委員長に私が選ばれて事務を担当することになっておりますが、委員会におきましては数回の討議をいたしましたが、まだ結論に達しておりませんので、委員会意見として申し上げるわけには参りませんが、しかし委員会の意向を体しまして、私の個人の意見を加えたのを意見といたしまして申し述べさしていただきまして、私の意見に連合会の委員会の気持が加わっておるという程度でお聞き取りを願いたいと存じます。  連合会におきましては、本法案憲法二十九条の財産権の侵害になるのだという点におきまして、この法案そのままでは反対するのほかないのだという結論になっております。そのどういうところが憲法違反になるかという点につきまして、前回片山君がここで意見を述べられておりますが、それだけでは連合会の意見が当委員会へ通じてはいないのではないかというので、補足意見を述べまして当委員会皆様の御参考に供したいと思います。  この接収土地及び建物に対して、借地人、借家人を保護しなければならないということは、これは日本弁護士連合会におきましても同様であります。これを既定の法理に基いて保護するのか、本案のごとき臨時立法によって解決するのかというところに分れるものがあるのであります。連合会におきましては、接収土地におきまするところの借地、借家の権利関係は、接収と同時に消滅するものではないという前提をとっております。のみならず、なお、かつ、その接収期間中は、期間の進行をしないのだ、一時使えなかった間だけは賃貸借期間が延びるのだ、それゆえに接収解除になれば、当然権利が復活して、そのときから賃貸借期間が進行するのだ、あるいは借地期間が進行するのだという建前であります。そのような建前でありますから、本法案の第三条をごらん下さればおわかりの通り、第三条におきましては、接収によって直ちに借地権、借家権が消滅するものではないという立場にあることは、連合会と同様でありますが、貸借期間の進行につきましては、やはり貸借期間は進行しておるのだ、その接収期間、いわゆる現実に使用しなかった期間もやはり期間のうちに加えるのだ、その期間の満了によって賃貸借は消滅するのだ、こういう考えのもとにこの三条の第一項ができておるかのように見受けられます。当時委員会方々も御承知の通り、裁判所の方におきましても、普通借地借家及び民法の賃貸借関係その他の権利消滅の法理からいたしまして、裁判所におきましても、接収によって賃貸借契約は直ちに消滅するものではない、のみならず、またその間は眠っているだけであって、期間は進行しないのだという裁判上の保護を与えておりました。そういうことになってみますと、私どもは、借地人、借家人は、接収期間中はやはり権利を持っておるのだという建前でおります。従ってこれを本案のごとき考えで、接収期間中といえども貸借期間炉進行して、それによって賃貸借が消滅するものだとなりますれば、借地人、借家人の権利を侵害することになる。いわゆる賃貸借の期間の利益を剥奪することになる。その点において財産権の侵害になり、憲法二十九条の違反になるという見方があるのであります。とともに、三条の六項でございますか、新しく設けられた期間は「二十年とする。」こういうことに相なっております。そこでその関係において土地の所有者の所有権に大きな制限を加えることになる。私ども立場から申しますと、接収土地建物に対する賃貸借は、接収解除後から進行するのでありますから、その残存期間だけを保護すればいいんだ、かりに接収期間を除いた期間が三年あれば、その三年だけ保護してやればいいんだ、二十年も保護する必要はないんだというのが建前であります。その関係におきまして憲法違反になる。従ってこの法案には賛成できない。この第三条を、接収期間中には期間が進行しないという建前をとられまして、この場合の借地残存期間は、接収期間を控除したその残存期間だけだと、こういう工合にお改め願えば、連合会は何も反対するところはない、こういうところであったのであります。  ところが一方的にちょっと前の委員会におきまして、片山君が、二十年間の延期は、いわゆる地主、所有者に対する権利の侵害になるんだという点のみ述べまして、借地人、借家人の期限の利益を剥奪したことに及ばなかったので、はなはだ片手落ちなような見解を述べたように受け取られましたけれども、当時私も司法制度の委員として、あの決議の作成に参加したのであります。この意見書はその意味で作られた。絶対に臨時措置法案を作ることに反対ではなかったんです。ただ、今言う通り、接収におきましては罹災土地のように、直ちに法令が作られない、接収解除との間には相当期間がありまして、その期間中にあるいは処分されたり、新しい権利が設定されたりされておることは、これはもう当然のことです。この旧借地人借家人の権利と、新しく取得された権利との衝突の場合に、どういう工合に取り扱わなければならないかという措置法案を作るには、何ら異存はないのであります。ただこの法案が、ただいま申しました通り、裁判所も認められ、われわれの法理観念としても認められる借地人、借家人の権利を顧みずに、直ちに期間の進行によって消滅するものと認めたという点、並びにその後に新しく、新しくといっては語弊がありますが、進行される貸借の期間が二十年にも延びるというような、地主、所有者に対する過酷なる負担をかけるという、所有権の制限をするというような事柄には反対だ。こういう建前であったのであります。  大体その他、あるいは時期におくれた法案であるというような話が出ておりますけれども、それはただいま申し上げました通り付随の問題でありまして、何もこの措置法が不必要という意味で反対したのではありません。ただ憲法違反の措置法案にならないように留意を願って、立派なものとして借地、借家の関係を処していただきたいということに尽きるのであります。  なおそういうようなわけで、当時裁判所において借地人、借家人を保護しておるにかかわらず、この法案において保護を失うということでは、これは法案の作成よりか、裁判所の裁判にまかした方がよろしいのだという結論意見を出したのでありますが、しかし考えてみますと、裁判を待つまでもなく、当事者の法律関係をすべての人に知らしめて、争いなくして事前に事柄を処理するという心がまえを国民に持たせることは、非常に必要なことと思いまして、この個々の条章につきまして相当意見はありますけれども、大体論としまして連合会の意見はかくのごときでありまして、作るならば憲法違反にならないような、しかも当事者の権利の範囲を普通法において認められる限度で食いとめて、矛盾なき法律を作られんことを希望すると、こういうことでございます。  なお法案の個々の点につきましては後刻質問がありましたらお答えすることにいたしまして、私の意見を終りにいたします。
  34. 宮城タマヨ

    理事宮城タマヨ君) ありがとうございました。   —————————————
  35. 宮城タマヨ

    理事宮城タマヨ君) 次に日本ビルディング協会連合会の会長、宮田正男君からお願い申し上げます。
  36. 宮田正男

    公述人(宮田正男君) 連合会の会長をやっている宮田でございます。この法案にわれわれの連合会としては反対でございます。連合会と申しまして、これは大体東京、大阪、横浜神戸、名古屋、京都、福岡、札幌、この八大都市にこの協会がございまして、それを連合したものを日本ビルディング協会連合会、こう申しておるのであります。大体参加しておる法人、個人約三百名くらいになっております。  一がいにビルと申しましても、非常に皆さんに御理解がうすいのでございますが、ビルと住宅というものはいつも混同されておりまして、これがすべての問題の根源になっております。進駐軍が参りましても、この問題でわれわれも非常に迷惑をしたのでありまするが、住宅は生活の本拠でございますが、ビルは申せば頭脳のようなものでありまして、住宅とはおのずから違いがあっていいのじゃないか。従って現在これはビルディングを規制する法律は、民法の法律と、それから借地借家法、こういうものによって現在規制されております。これに対しても、われわれ連合会としては、ビルディングというものは、最近非常に発達をいたしまして、いろいろ違った面の使用その他がございますので、あらためて後日またビル運用法といったものを立法を願いたいと思っておりますが、そこで今度のこの問題につきましても、先ほど来お話のありましたように、借室権があるものということを前提としてすべての立法がなされておるようでありまして、われわれ連合会としては借室権というものはないのだと、こういう解釈をとっております。それは接収されました当時に、敷金その他は大体において全部返しております。そうして部屋もこちらが受け取って進駐軍に渡しておりますから、その後十年たっておる。この事実から見ても、借室権というものはもうないのじゃないかという解釈をわれわれはとっております。従ってこの法律の建前が私どもの考えと非常に違っております。この点は法務委員会でよく御研究いただいて、借室権というものが一体あるのか中断をしたのか、あるいは私どもの言うようにないものか、この点が私はむしろ前提となるべきものじゃないかと思います。  なおこまかく申し上げる必要もないと思いますが、差し上げました意見書にもありますように、もうすでに接収をされました。ビルがほとんど九割がた解除になっております。そうして適当な社会的な用途にこれは使われております。主として前にお使いになった方に、これは法律的に解釈したのじゃございませんで、商業的な道徳と申しますか、従来お使いになっていたお方に原則としてはお話をして、その方が前にお使いになったと同じ目的でお使いになっているならば、これは私どもは喜んでお貸しする。ただし経済情勢がこういうふうに変化しておりますから、十年前の条件とはすべての点が変っております。そこで問題になりますのは、別に自分は必要はないが、今借室権を主張して、それを第三者に適当な権利を取って転売しようとか、あるいはもうけをしようという、こういう考えの方が割合に多いのでございます。というのは、戦後にビルが払底いたしまして、相当な権利を出さなければ借りられないというような状態がございましたから、それでそういうことをお考えになる方がある。それにこの法律がもし通過するならば、法律的なバックをつけて、おれが当然借りられるのだと言ってこられる。これはビル業者としては非常に困る問題でございます。また社会的に見ても、必要のない方がそういう足りないものをお使いになるということも私どもどうかと思います。先ほど申し上げましたように、今東京でもビルの関係で申しますと、ごく最近調べましたものでも、もう二、三万坪しかビルとしては残っておりませんので、今までのビルは全部相互の話し合いで処置がついて、おさまっておる所であり、また波乱を起して寝た子を起すということになって、かえって混乱を招くということになるのじゃないかと思います。東京が二万坪、それから横浜炉割合に多いのでありますが、これは土地関係が多いのでありまして、ビルとしては坪数は東京程度であろうと思います。それからあとは、名古屋、ただこの三都市でありまして、しかも申し上げましたように坪数がほとんど少くなっておりますので、特にここで立法によって前の借室権者の権利を擁護しなければならぬといったようなことには反対ではありますが、法律を出すことは私どもとしては非常に意を得ないと思います。どうしても立法化しなければならぬということになりましても、私どもはこの新しい法の十三条、十四条これをビルの場合には除外をしていただいたらばいいんじゃないかと思います。そんなわけで私どもとしては、一番冒頭に申し上げたように、借室権は継続していない、この建前から今申し上げましたのがわれわれの反対理由でございます。  簡単でございますが、これをもって私の意見にかえます。
  37. 宮城タマヨ

    理事宮城タマヨ君) ありがとうございました。   —————————————
  38. 宮城タマヨ

    理事宮城タマヨ君) 次は、横浜市中区接収解除跡地処理第二地区委員長岩本鉄次郎さんにお願いいたします。
  39. 岩本鉄次郎

    公述人岩本鉄次郎君) 私はただいま委員長からお呼びになりました岩本でございます。私は至って話下手でございまして、ましてこういうところへ出てお話し申し上げるのは初めてでございますのですから、何から申し上げてよいやらほとんど見当もつきませんし、また私の申し上げましたことが先生方の御参考になればけっこうだと思いますが、とりとめもないお話を申し上げまして、おわかりになりませんでしたら、おあとで御質問がありましたら自分のわかります範囲はお答え申し上げたいと思います。  私は、ただいま委員長さんのおっしゃった通り跡地処理をいたしております関係上、自分も借地人の一人でもありますし、また小地主の一人でもございますものですから、借地人とも地主ともつかず、公平な立場からこの法案賛成いたします一人でございます。  私は横浜の現状を少し申し上げて御参考に供したいと思います。横浜はあまりにどうも接収が長かったために、日本の玄関である横浜港がいつまでも、ましてや日本波止場があくあくということはもうとうから私ども聞いておりますので、その代替地として水保桟橋がもうでき上っておりますにもかかわらず、なかなか返してくれませんので、それがために横浜の疲弊は非常にひどいものでございます。四、五年前は貿易商などが片っ端から倒産して参りまして、その後非常に接収も長びいておりますために横浜の復興はおくれ、非常な疲弊をしておりますので、今横浜の現状を見ますと、三年くらい前から関内と申しますある横浜の台地のところが相当解除になりましたのでございますが、ほとんど牧場のような草ぼうぼうとしております現状でございます。それというのは、横浜があまり疲弊しておりますために、家を地主によらず借地人によらず建てることができない。また横浜の亀善と申しますりっぱな貿易商の方がビルをもう三年くらいになりますか、十四戸建てましたうちで、まだ二戸しか人が入っておりませんような現状でございます。家もぽつりぽつりと多少はできて参りましたけれども、ほとんど草が生えておりますような現状でございます。  それから借地人に対しましては、これは悪い地主さんは御自分の名義を変更してしまって、借地人に口をきかせないようにしてある方の借地人は非常な自分の心持を疲弊してしまいまして、今日の生活にも窮しております人が多々あります。そこへ参りますと、私などは同じ借地人でも私の地主は非常にわかりのいい地主でありましたために、もう登録もしてありますものですから、従いまして、自分の土地解除になりまして、政府の御援助を仰ぎまして融資を受けて、ただいまビルを建てまして、この間日本経済並びに朝日新聞の地方版にげたばきのビルができたと発表されましたのが私のビルでございますが、そういう工合で、地主さんの理解のある方と理解のない方の借地人は非常な差がありますと思いますので、ぜひともこの法案の一日も早く通過をいたしまして、悪い地主さんの取締りのことをお願いいたしたいと思います。  また借地人で、この法案が通過しますと、自分の借地権があるために家を建てなければならないために一生懸命私は働いて貯蓄もすると思います。そういう関係からぜひともお願いいたしたいと思います。  また大きな地主さんは、これは反対するかもしれませんが、小さな地主さんによりますと、私などは跡地処理の関係からよくお尋ねに来る方炉ありますけれども、私は三十坪、五十坪しか地所がないのだが、これを借地人に取られると自分の家を建てることができないのだ、どうしたらいいのだ、というような御質問がありますけれども、そのたびに私は、いやそういうことは絶対ありません、衆議院の法務委員の先生方はみな法律家でおありになるので、決して借地人にばかりいいような法律は作ってありません、これは御自分炉実際お建てになるならば、なにも借地人にその由を申せば、なんでもそれを借地人にやれということじゃありません、ですからむろんあなたが地所を百坪、二百坪と持っておったら、あるいはまた裁判などに持ち出されて、少し多いから半分分けてやれというようなことを言われるかもしれませんけれども、事実自分の家を建てるだけの地所であるならばなんでも借さなければならぬということはないのですか、そういう御心配はいりませんということを私はよく申しておりますのです。  それから先ほど地主さんの方から、長きにわたるといつまでも借地人に権限がついて困るというようなお話がありましたけれども、これはやはり地主さんは長くなっても地代は特調から受けておりますけれども借地人損害は莫大なものでありまして、長くなれば長くなるほど借地人は困っているのでありますから、先生方がどちらが実際にかわいそうであるか、不利であるかをお考え願いたいと思います。  それからまた、先ほど権利を他に売買するというような御意見がありましたけれども衆議院の通過しました法案を拝見いたしますと、絶対そういうことは一言も入っておりませんと思います。借地人が他に権利を転売したりなんかしますれば、当然その権利は消滅するものと私は思いますので、この法案の一日も早く通過して、新聞なり官報なりに発表していただけば、かえってわれわれ小さな地主、大衆地主は喜んでこれをお迎えすることができると思いますので、この法案賛成をいたします。
  40. 宮城タマヨ

    理事宮城タマヨ君) ありがとうございました。   —————————————
  41. 宮城タマヨ

    理事宮城タマヨ君) 次は、芝浦土地株式会社取締役社長原信次郎さんにお願いいたします。
  42. 原信次郎

    公述人(原信次郎君) 私芝浦土地の原でございます。ちょっとからだを悪くしておりましたので、午前中から参っておりませんので、前の方が述べられましたこととあるいは重複する部分があるかと存じますが、本案につきましての私見を一つ申し上げてみたいと思います。私の会社で持っておりまする土地強制疎開で疎開されました跡地でありますので、主としてその点を中心といたしまして御意見を申し上げたいと存じます。  まず最初に結論から申し上げますると、本法案全体につきましては、私反対立場でございまするが、ことにそのうちの第十二条に、強制疎開跡地につきましてのこの条文は削除をしていただきたいというふうに考えておる次第であります。以下理由を簡単に申し上げまするが、第一番に全般的に申しまして法律は私ども今まで聞いておりました範囲では、不利益に遡及しないというふうに聞いておったのでありまするが、本案によりますると、遡及いたしまして所持権者でありますとか、あるいはまたその他のいろいろ権利を取得した者に対しまして、遡及して制限を加えられるというふうになるようでありまして、従いまして接収中に権利を取得いたしまし光り、あるいはまたその上に担保権を置いておるというふうなものにつきまして、すなわち第三者に対しまして非常な損害を及ぼす場合もあり得るというふうに考えまして、これが先ほどもお話がありましたような憲法違反の疑いがあるのじゃないかというふうなことにもなるのではないかと思うのであります。  それから第二に強制疎開地に対しましては、御承知のように疎開当時におきましてすでに借地権につきましても補償を国家は出しておるのでありまして、現に私どもの会社におきましても当時借地権の証明書を借地人に出しまして、それによって借地人方々はそれぞれ補償を受けておるわけであります。従いまして私どもの会社といたしましては、その後借地権者はなくなったということで、都庁の方と借地契約をいたしまして、たまたまその後この土地接収になりましたので、現在は特調と私どもの方と借地契約を結んでおるというふうな状況であるわけであります。従って私どもといたしましては従来の借地権を持っておられた方は、強制疎開によりまして補償を受けて借地権を失っておるというふうに解釈しておるわけであります。  その次にこの法案につきましては、時宜を失しているんではないかというふうに考えますわけでありまして、それは先ほど申しましたように、その後の権利取得者に対しまして、非常な不測な損害を与えるというふうなことになる場合が非常に多いのではないかというふうに考えるわけであります。現に私は現在の会社を四、五年前に実は経営を始めておりますので、その際にはこの土地につきましては、先ほど申しましたように、すでに強制疎開当時に補償を受けて借地権は消滅しておるという前提のもとに、すなわち自分で自由にこれを使い得るというふうな考えのもとに現在の会社を経営し始めたのでありまして、もし本案のように借地権が復活すると申しますか、旧借地人が非常に有利な条件でそれに借さなければならないというふうになりますと、非常にそこに損害をこうむるということが現に生ずるわけであります。それからなお時宜を失しました結果、これは先ほどお話がありましたが、接収中のものですでに解除になってしまっておるものというものはそれぞれ自分でお使いになるならば貸すということで自分の自由にこれはお使いになっておるわけでありますが、そのものとの間に非常に不均衡を生ずるということになるように感ぜられます。実はもうすでに早く接収解除になりましたものは、ただいま申しましたように自分で使われておるのでありますが、私どもは現在もまだいつ解除になるかわからぬということで非常に迷惑をこうむっておりまして、迷惑を長くこうむった者はこの法案によってさらにまた迷惑をこうむるということになりますることは、まことに不当ではないかというふうに私は考えておる次第であります。  それから次にこの法案中に「相当な条件」というふうな言葉がございますが、これも私法律の専門家でございませんからはっきりいたしませんけれども権利金と申しますか、貸します際の権利金等につきましては、これを包含していないというふうに伺っておりまするが、そうなりますると優先的に有利に前の借地人に貸さなければならないということになるのじゃないかと思うのでありまするが、もし先ほどもちょっとお話がございましたが、同じような条件でありますればもちろん私ども貸す意思がございますれば前の借地人の方に貸すのはこれは当然でございまするが、この場合には自分でそれを使うとか、あるいはまた条件が違ってくるという場合には、他に貸さなければならぬということになるわけでありまして、優先的に貸すというふうな、こういうふうな一方的な義務を課せられるということにつきましては、相当困った問題があるのじゃないかと思うのであります。  それから次に強制疎開につきましては、従来いろいろお話も伺っておりまするが、これは非常に自分の意思によらずしてやったまあお気の毒なわけでありまするが、こういうような戦争によりまするいろいろな不公平な問題はひとり強制疎開というふうな問題ばかりでなしに、私自身といたしましても家を焼かれたりいろいろな戦災をこうむっておりまするが、私はまあやむを得ないのじゃないかというふうな一面見方もあるようでございまして、もしかような戦争によりまする不公正といいますか、不公平といいますか、そういうようなものを是正する必要がありますれば、これはひとり地主の負担においてだけこれを解決するということなくして、むしろ国家が補償すべきものではないかというふうに考えておるわけであります。なおこれは強制疎開につきましてちょっと余談のようになりまするが、当時私ども強制疎開のことにつきましていろいろ伺ったのでありまするが、強制疎開にならぬところが焼けましてその場合には全然補償を受けられない、むしろ強制疎開になった方がよかったのじゃないかというふうな声を当時聞いたこともあるわけでありまして、これはまあいろいろ事情も変っておりますのでまた考えも変って参りまするが、そういうような見方もあるのではないかというふうに考えるわけであります。  それから最後にこの法案罹災都市関係処理法案でございまするが、それとよく比較して申されるようでありまするが、罹災都市処理法ができました当時は、非常に御承知のように借地人方々もいく所もないというようなことで非常に混乱した時代でありましたので、ああいう処理法も必要だったと思うのでありまするが、現在におきましてはもう戦争後十数年もたちまして、それぞれ借地人方々も新しい住居を持たれ、そうしてやっておられるのでありまして、これを、せっかく安定しているようなこういうふうな状況をこの法案で変えますることは、かえってこの法律の秩序を乱すのではないかというふうなことも考えられるのでございまして、先ほどビルディング協会の方がおっしゃいましたように、場合によってはこれが権利の売買というようなことで、かえって法律の秩序を乱し、また、混乱を来たすのではないかというふうなことも考えられると思うのであります。非常に雑駁でございますけれども、ただいま申しましたような事由で、私は本案には全体として反対しますと同時に、かりに本案が通るといたしましても、ただいま申しましたような理由で、第十二条は削除されるべきものであるというふうに考えております。簡単でございますが、これをもって。
  43. 宮城タマヨ

    理事宮城タマヨ君) ありがとうございました。   —————————————
  44. 宮城タマヨ

    理事宮城タマヨ君) 次は、全国接収借地家復権期成同盟会長山田新之助氏にお願いいたします。
  45. 山田新之助

    公述人山田新之助君) 私、復権同盟会の山田でございます。私どもがこの法案に対しまして立法方を請願いたしました関係で、もちろんこの法案には賛成でございます。ただいまいろいろ専門家のお話がございまして、法律の問題につきましては私どもはあまり申さないで、実はこのことにつきまして、ぜひとも皆様に御了解を願いたい、そして私どもの切なるお願いに対しましての真相をどうか一つわかっていただきますならばまことに幸いである、かように考えるのでございます。この法案と申しまするものは、これは法理論ではございませんで、いろいろ住宅難であるとか、あるいはまた産業経済でありまするとか、社会の問題の推移でありますとか、戦後の処理であるとかいったような問題から、大いに検討する必要があるのでございまして、私どもがこの法案につきましての請願をいたしましたことにつきまして、簡単に申し上げまして、一つ御参考に供したい、かように考えるわけでございます。  接収と申しましても講和発効後の接収と、それからまた、進駐軍が上陸をいたして参りまして、直ちに接収されました状況、この差はとうてい今日の場合におきまして想像もつかないのでございまして、全くむごい接収でございました。特に、この芝浦のごときにおきましては、降伏が八月の十五日、米軍が上陸して参りましたのがちょうどその年のお彼岸でございました。九月の二十一、二日だったと思っておりますが、そうして、しかも短時間のうちに立ちのきを命ぜられました。そうして、私どもばかりではございません、全国そうだったと思うのでありますが、第一回の接収というものはまことにひどいのでありまして、胸にピストルを突きつけられて、そうして立ちのきを命じられた。むろんこれに対しまして営業補償も何もない。借地権の補償もいただいておりません。ただ一方的に、都の方から、あるいは地方長官の方からの命令によりまして、わずかの借地権の補償というものをあてがい扶持にいただきましたけれども、この借地権の補償と申しまするものは、これは特殊預金でございまして、五万円を限りまして、あとは全部たな上げ。現金をいただきましたのは今から四、五年前でありまして、五万円の金では一坪も買えないというような貨幣価値の下落でございました。全くこれは没収のようにやられたものでございました。私は今芝浦におります。ただいま公述なさいました地主代表の方、これは越後の有名なるところの財閥の中野興業株式会社、石油大尽と申しますか、この方が所有になりましたので、現在は商号を変更いたしまして、芝浦土地株式会社となっております。ここに実は私ども住まっておりましたのでございます。それで、実にどうも私どもは情ないのでございまして、幸いそのときには焼けなかったのでございます。そうして私どもだけが強制疎開に会いまして、そうして立ちのきを命ぜられた。仕方ありませんから付近に間借りをするなり、あるいはバラックを作ってそこでまた焼けました。大部分の人が二重の災害を受けておるのであります。そうして、当時は調達庁がございませんでしたから、各都道府県の知事がこれに対しまして渉外部を設けまして、全部これは処理いたしました。後日において、三年後において調達庁ができまして、そして地主と賃借契約を結んだのでございます。そうして借地権というものは全然相顧みない。そうして地主と賃借契約を結んだ。従いまして、これが解除の場合になりますると、当然さら地でそうして地主に返還されます。これは当時の防空法におけるところの精神、これはすなわち強制疎開でありますとか、こういう場合におきましても、これはもうもちろん戦争が勝てば元へ帰れるというので、私どもはまことに不本意でありましたけれども、いさぎよく立ちのいたわけでございます。ところで、接収解除の場合になりまするというと、これは地主の方にさら地で返って参りますので、われわれの方に借地権利というものは全然なくなる、及び借家権もなくなる、こういったような関係になるのでございまして、これは大へんだというので、実は不動産関係におきましては、この問題のお世話をやいております建設省の住宅対策審議会の委員であるとか、あるいは調達庁の不動産審議会の委員でありますとか、固定資産の評価の関係もございますので、実はその点についてはよく知っておるのでありますが、調達庁長官も非常に御心配になりまして、また、東京都知事も非常に御心配になりまして、何とかしてこれは救済しなければならぬということにおきまして……。これは東京都知事ばかりではございません。全国関係の知事が調達庁の方に対しまして、口頭あるいは文書をもちまして、何とかこの借地権者保護せなければならぬ、あるいは強制疎開者に対するところの優先賃借……、法は平等であるし、政治は公平でなければならぬという点からいたしまして、われわれ以外の者、ただいま戦災について云々、不平等であるということを申されましたけれども、これは私ども承知いたしております。しかしながら、私どもと同じでありまして、焼けたもの、あるいは強制疎開になったものは、接収なかりせば、接収にならなかったならば、私どもは元の所におりまして、そうして営業もできまするし、また居住もできたわけであります。これは罹災都市借地借家臨時処理法の第九条の適用によりまして、私ども以外の戦災者は全部元の地に復してうらやましい限りでありまして、みな居住し商売をしております。私どもだけでございます。でありまするからして、何とかしてこれを救済しなければならぬというので、知事あるいは各都道府県の関係の方面からの陳情によりまして、そうしてこれを救済すべくこの法案法務省の方に申請したのであります。ところが、法務省の方では、戦後の状態はこの借地借家という問題の観点が非常に違っておりまして、これは国家が補償すべきものである、国家が補償するのである、これは法理論から言ってそうである、こういうことでございまして、その法案をけったんであります。そうして、残余の問題は、当時不動産提供法案という法案でありましたが、現在は名前が変りまして、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法という法律、この中へ織り込んで、そうして補償をするというようなことであったのでありまするが、その後の閣議におきまして、次官会議におきまして、とんでもない、この補償ということは絶対できないんだ——それは人もよくわかっております。調達庁の公務員でありまするから、わかっておりまするが、この権利の補償というものは、最近はございます。講和発効後の補償は、営業権でも漁業権でも、小作権でも、借地権でも、全部ございます。借家権までございますが、第一次のときには権利金というものは一つも払った例がない。この借地権だけを払えば全部払わなければならないというので、調達庁に参りまして、谷という大蔵省の課長さんが参りまして、現在の財政状態では絶対に出すことはできないのだ、さなきだにその税が重くて、そうして税のために、財産税であるとか、あるいは非戦災者特別税であるとかいろいろな税のために一家心中する者、気違いになる者数知れず、こういうときにおきまして全部の権利を出したならばどうなりますか、絶対にこれは法の上からいったならば出すべきでありますけれども、事実において、現在の疲弊したところの戦後の財政においては出すことはできないのだ、こういうのでぴったりお断りがありましたので、従ってわれわれの借地権及び補償という問題は万事事切れたのであります。そういったような状態にあるのでありまして、仕方がありませんから、どうしてもこの問題を解決いたしまするには国会に持ち出しまして、そうして議員立法より道がないというので、実は私どもは東京選出の花村四郎という代議士にお話しした。これは当然であるからしてさっそく法務委員会に取り上げなければならぬ、幸いにおきまして法務委員会は全会一致、また衆議院においては各派共同提案で全会一致、そうして参議院に送られましたけれども、不幸にいたしまして解散が……閉会になったために、法の示すところによりまして廃案となりましたので、従いましてまた再び国会に請願をいたしたところが、以前と同様各派共同提案で全会一致をもちまして可決いたしまして参議院の方に送られたというような状態でございます。そこでこの問題につきましてはいろいろに反対というような問題がございまするが、この実情において法理論は私はあまりしたくないので、専門家がたくさんいらっしゃいますから、実情を申しまするが、この善意第三者の不測の損害、こういうことはあり得るということでありましたが、これはあり得るでしょう。法理論から申しますればあり得るのでありまして、しかし実際においてこの土地において善意第三者というものがあり得るかどうか、そうしてまた不測という損害があるかどうかということは、民間の売買におきましてはいささか疑義を持つ点がありますけれども、一例を申しますならばこの芝浦におきまして今から八年前に死にました人があります、この人は相続税において物納した地面が二カ所ありますが、今日になってもそれは売れません。買い手がございません。あっても全く捨て値でありまして、物納のときは千八百五十円でありましたが、ここに一定の地面においても標準があります関係上、ある程度の線を引きます。それは大体におきましてのさら地の売買の二五%から三〇%でもって出しておるでありますが、買い手がありません。俗にわれわれの仲間で申しますとそこ地と申しますが、そこ地というものは大体において三割くらいの程度のものであります。それで売れない。同じ芝浦で現在接収地区のいいところでありますが、ちょっとはずれたところでも最近の先月の二十七日の東京都の入札、これは五万円が下値でもって入札した事実があります。昨年は五万八千円であります。それがバリケードがあって、番兵がおって、いつあくかわからないということになりますというと、その価格の一割でも買い手がない、八年間売りに出しても買い手がない。これをもって見ても、善意第三者の不測の損害というものがあり得べきではない。私たちが茶わんを一つ買うにしてもきずものは買わない。それを地面を買うのに五百万円、一千万円という金を出して買う人がこの地面に瑕瑾があるかどうかということを調べるのは常識であります。そこ地のものをさら地のごとく買うものは、これはすなわち絵で申しますならば狩野探幽の絵を十万円で買ったが、にせものである、きずものをつかまされたのでありまして、それはその人が土地を買うところの常識がなかったということでありますので、これは災害であります。まともにおいて接収地区においての善意第三者というものはあり得べきことはないのであります。これは全国において私どもは例を見ません。しかしあり得るという法理論にはなるのであります。  続いてその次の問題でありまするが、憲法違反という問題が起りますけれども、これは明治四十二年の建物保護法以来、大正十年の借地借家法以来ことごとく家主地主というものは、法律ができる、あるいは改正においての場合において、ことごとく損害というものは仕方がないのであります。最近は罹災都市借家臨時処理法、あるいは関東の大震災の際においてもそうであります。さようなわけでありますので、こういうことはどうかと思うのであります。  続いて私どもはこれは議論になりますが、どうかこれは情の問題で参りますなれば私どもが申し上げます通り、もと接収と申しますのは以上でありまするが、最近の接収の際におきまするというと、砂川におきましても、内灘におきましても、妙義山におきましても、地元の市町村議会議員は全部でありますが、付近の地区の代議士、参議院の方は全部応援下さいまして、東京都におきましては都知事まで出まして、もちろん補償の問題、あらゆる問題は全部出す。でその場合に私どもは職掌柄立ち会ったこともございます、代議士の方でもって応援にお出かけになりましておけがをなすった方もございまして、また調達庁の部長もけがをしております。かような状態でございますので、これはよくおわかりになりますところの政治家の方には私どもが申し上げるまでもないのでありますが、かようなわけでありまして、政治というものはどうしても公平でなければならぬと思いますし、一方私どもの方の点もよくお考え下さいまして、現在私どもは全くいずれも接収されまして以来、これはみんなルンペンをしておる者、ニコヨンになっておる者、あるいはおかみさんが料理屋の女中になっておる者もあります。かようなわけでありまして、どうか私どもの犠牲において接収解除の場合になりますというと、一晩において一人の地主が何億円という金をもうけるということは、社会情勢から参りましても、あるいは思想問題から参りましても重大と考えますので、どうか一つよろしく御審議のほどを賜わりたいと思います。
  46. 宮城タマヨ

    理事宮城タマヨ君) ありがとうございました。   —————————————
  47. 宮城タマヨ

    理事宮城タマヨ君) 次は、東京大学教授有泉亨さんにお願いいたします。
  48. 有泉亨

    公述人(有泉亨君) 初めにあやまっておかなければならないのですが、実は私ここへは法律の専門家ということでお招きをいただいたのかと思うのですけれども、こういう法案をほんとうに腰を落ちつけて読みましたのは今度資料を送っていただいて初めてなんです。そこでこまかい法律論を勉強する時間がありませんでしたので、日ごろ考えているその考え方をお話して御参考に供したいと思います。  先ほど弁護士連合会の方、佐々木さんですか、言われましたように、接収された建物借地権とか借家権というものが接収の間眠っているということがはっきりすれば、そうすると問題はすべて解決をする、解除されたときにまだ借地権は途中おるわけですから、そこからつながって残りが十年だとか五年だとかということになるわけなんで、そうしてそれが判例などでもしはっきり確定してきますと問題はかなり違ってくるのだと思うのです。ところが借地権とか借家権というものが眠っておるのかどうかということになると、先ほどからのお話を伺っても、実際にタッチされておる方のお話でも必ずしもはっきりしない。ことに疎開などのときに借家権、あるいは借地権の対価が払われたのかどうかということも、第五次とか第六次とかで違うことがあって、はなはだその辺が不明瞭なんです。そこで立法府としてのことを考えますと、それはもっと早くはっきりさしてやった方がいいんではなかったかというような気がいたします。能力があって裁判所へ出ていって争った者だけがかりに眠らなかったんだという判決をもらったとしても一般の人はそういうことを知りませんから、これはだめだったというふうにあきらめているかもしれない。そういう意味ではなはだ今までもっと早く出なかったということが遺憾であるというふうには思うのです。しかしまあ問題は少し理屈ぽくはなるのですが、土地所有権なり家屋所有権なりと、それを使う使用権というものが現在日本の法制の中でどういうふうに扱われているかということを、やはり考えてみる必要がある。そうしますと、これはあの借地権とか借家権というのは、非常に今日強いものにはなっておりますが、しかしそれは建前としてはやはり使っている人の使用関係を安定させよう、こういうねらいであって、使っている人がそれをどこか譲渡したり、財産として処分しようというときには、これは必ずしも保護しない。だからそういう意味での処分できるような財産としては保護していない。しかしその人がそこで商売をやっている、家を建てている、そういう関係を安定させようと、こういうところではかなり行き届いた規定があって、土地を借りて家を建てれば、ほとんど家がこわれるまでは大体借りておられる。家を借りた場合でも、家主さんの方が焼け出されて行くところがないというふうな事情でもないと、そう簡単には出ていけと言われない。そういう工合に使用関係は非常に保護されておるわけですが、それを譲渡しようというようなことになると、民法に六百十二条というような規定炉あって、貸主がうんと言わないと譲渡ができない、こういう建前だと思うのです。ところがその現実にはどうかといいますと、私もどうもあまり事実をよくは知らないので、はなはだ自信のないところなんですが、借地権というのは、実際は非常に譲渡されておる。東京でも相当の値段で現実に取引がされておる。そういう事実上は財産化している。借家権の方はその点が少し違いまして、なおビルのことは知りませんが、普通の住宅ですと、借家権を譲渡できるということは、まず今日でも考えられていないのですけれども借地権の方になると、かなり譲渡性が出てきておる。そこでまあ法務省などの方でこの法案反対されているようですけれども、その建前というのは、その使用権——借家権にせよ、借地権にせよ、使用の安定をはかっているのだから、そうしてそれがずいぶん長いこともう使わなくなってきている。そうすると、今さら出てきてそれを使うという必要がどれだけあるかというふうな、そういうようなお考えが基礎になっている。それだけではないと思いますけれども、それが底の方にあるのだと思うのです。そこで、ことにそういう安定をはかるという立場から考えると、従来どこかで、たとえば罹災都市借地借家臨時処理法権利を行使する機会などがあったもの、そういうものがもう一ぺんこの法律でよみがえるというようなことがあるいは御心配になっているのではないかと、こういうふうに思うのですが、しかし現実をどの程度に評価するか。そういう現に借地権というようなものが取引の対象になっているということを、どういうふうに評価するかということが、とにかくこの法案に対して私が自分の考えをまとめていく上に非常に重要な問題ではないかと考えた点なのです。そうしてそういう事実の上に、われわれは現在借地借家臨時処理法、簡単にこれから今ありますものを臨時処理法と申し上げますが、臨時処理法というものがある。そして臨時処理法のねらいもやはり使用権の確保ということがかなり使用権の安定といいますか、そういうところが重要なねらいであった。もう一つのねらいは、例の戦争のあとで土地が遊んでいる。そうすると遊んでいる土地を能力ある者に使わせよう、こういうねらいも相当、非常に強い意味で法律の中に盛り込まれてはおりますが、一つのねらいというのはやはり使用関係の安定ということだったというふうに思うのです。そこで今日実情をよく知らないので何とも言えないのですが、戦争後十年もたったあとで、使用権の安定という意味では果して昔十年も前に使っていた人をまたそこへどうでも入れてやらなければならぬという必要があるかどうか、こういうことが問題になる。ところが先ほど伏線として申し上げましたように、借地関係などというとその借地権というものが財産として今日価値が認められている。そうすると十年たとうと、二十年たとうと、十年前の方で没収された、不当に占拠された、こういうものならば補償してやらなければならぬのではないか。それは同時に使用の安定、それから先ほど横浜の方がおっしゃったように、そういうことになれば土地がすぐ利用される。それがどの程度全体——この法律というものは全国的に施行されるものだと思いますが、全体の上でどれだけの重みを持つか知りませんが、そういう作用をも営むかもしれない。そこで借地権についてと借家権についてとでは少し私の意見というのは分れるのでして、借地権について認めることを借家権についてまで認めなければならぬのか、二つを分けて考えることができないか、こういうことが一つ、そうしてそれは現に接収されている場合でもそれが実際にあるのではないかという気もするのです。というのは、ある人の土地を借りて家を建てている、その家が接収されている場合に、その家賃というものの中には借地代が入っているのではないかと思うのです。これは調達庁の方でどういうふうに計算をされているか存じませんが。ところが貸事務所か何かのビルの中の一室が接収されているときには、前に借りていた借家権を接収したからその対価をやるということはどうも問題になっていないようです。はなはだ私の知識を申し上げてあれですが、最高裁判所に真野さんという方がおられます。真野さんの事務所が接収された。そうすると、事務所が接収されたことのその対価をよこせとは、先生言っておられないのですが、そこにあったテーブルや、椅子や、そういうものがそのまま接収されたから、その使用代をよこせ、こう言ってがんばられた。そうして決して調達庁の協議に応じない。そこで必ず東京都の収用委員会にかかってきまして、そうして机を一つ使用代一年幾らというような計算をする。その例でもわかるように、どうも借家の場合には使用権というものの対価は計算に入ってないので、借地と借家では何かそういう違いがあるのではないかと思うのです。そこでそういう使用権をかりに借地というものを中心にして考えてみますと、今言いましたように法律の上では、財産としては保護していないのですが、現実には財産になっている。そうしてそれはしかも半永久的なものになっている。そうしてしかもそれが接収によって使用することができない。使用しないために、使用が不可能になったから権利は消滅するだろうかというと、どうもそうではない。むしろ、たとえば消滅時効に関する規定などは、権利を行使することを得るときから消滅時効は進行します。それとは少し事情が違うわけでありますが、十年なら十年という期間権利を行使できないということになる、そこは切れる、法律解釈としても、そういう解釈ができるのではないか。しかしその関係は、非常にはっきり権利関係として法律の方面で取り扱われていないので、そこの辺がデリケートなところだと思う。そうしてしかもそれは、法律の上で明瞭な権利、財産としての保護規定されていないものですから、一方で、その法律の面をたよった事実関係が積み重ねられてくる。たとえば疎開、まあ疎開の土地の例だと少し工合が悪いのですが、疎開された疎開地の所有者が、どこかでだれかに売るという、まあ接収されているとなかなか売れないという話ですが、そういうことが起ると、第三者が出てきて、その第三者に対して、今度の法案ですと借地権をよこせと、こう言えるということですから、第三者が迷惑をこうむる、こういうことがやはり起きてくるので、その点をまあ法理論を厳格に展開される立場からは心配されるのじゃないかと思うのです。ただそれが、どの程度そういう例があるのかというのは、これは一、二の例を知っているというだけではどうも判断できないのでして、その辺のことになると、事実を確かめない限りは何とも言えない、こういうふうに考えます。  そこで、今まで述べたことを簡単にまとめて申しますと、とにかくもし土地所有者に思わぬ利益がころがり込んでいって、そうして借地権者が、接収されたということから非常な損害をこうむっている、こういうことがあるならば、これはどうも調整してやる必要がある。借家関係でもやや似た事情はあると思いますが、若干事情は違うというふうに思うのですが、それでこれをどういうふうに調整をするか。そうすると今度の法案ですと、法案のたしか三条四項などでは、その辺の仕組み、四項に限りませんが、その仕組みがオール・オア・ナッシングということでできているので、借地権を取得できるかできないか、できるならばまるもうけですし、できないということになればまる損だ、こういうことになるのですが、しかしこれは、はなはだ自信のないところですが、使用権というものが、今日の法の体系の中で、何かやはり事実と、それから形式的な法の建前との中間にあるようなものなので、それを法の建前の方でも、今度作る場合でもオール・オア・ナッシングにしてしまうのはどうだろうか。だから貸してくれと言えば、勝つか負けるかだ、こうしないで、何かそこに調整の方法はないだろうか。その借地権があるのだ、こう申し込んだときに、使用者側が正当の理由があると、こう言えばもう断われますし、正当の理由がないということになれば、借地権が生ずる。そうではなくても、その間で何か話し合いをする機構を作って、そうしてその地主も、思わぬことで自分のところにもうけが残ったんだからこれを補償する、補償した上でノーと言える、こういうふうなゆとりをどこかで作れないだろうか。そうなりますと、実は第三者が現われてくると、なかなかむずかしい問題にはなりますが、   〔理事宮城タマヨ君退席、委員長着席〕 まあそういう事柄がややこしくなるということと、当事者間の公平をはかるために、ややこしいのはがまんするかどうか、こういう問題なので、少しぐらいはややこしくても、公平をはかるために、何かそういう調整というものを入れてはどうか。そうすると自然、第一条のこの法律の目的などというところも、借地借家関係を調整する、単に調整をする、こう言っても、オール・オア・ナッシングですと、どっちかが不平をいうことになるわけで、そこで接収から生ずる損失を両当事者間で公平に負担するような、そういうことを目的としてうたっていただいて、そうしてそういう趣旨のことをどこかに入れていただくといいのではないか、こういうふうに思うのです。  それからもう一点だけ、時間をいただいて申し上げたいのは、使用関係の安定というのが、何といっても基本である。そこで先ほどもちょっと申しましたが、従来臨時処理法で救済を得ようと思えば得られたという関係は、これは今さら済んでしまったことを起す必要は広い。その点はこの法案ではどうなっておるのか、法案を丁寧に読めば、どこかで配慮がなされておるのかしれませんが、臨時処理法で救済を求める機会がなかった、そういう借地権者借家権者保護する、こういうことはぜひ考えていただきたい。  それから第二には、そういう安定ということが中心だと考えますと、講和発効——前でも接収解除はあったと思うのですが、接収解除されたあとで、両当事者間で何らかの話し合いがついたのは、これは今さら寝た子を起さなくてもいいだろう、話し合いがついたということは、結局借地人なり借家人の側がそれを緊急に使用しなければならぬ必要がなかったから話し合いがついたのではないか。もっとも地主の圧力、家主の圧力で、やむを得ずのんだというようなこととか、法律を知らなかったから地主の申出を承諾したとかいうことで争いが起きないとも限りませんが、しかし一応考え方としては、話し合いのついたものは、もう一ぺんここで、この法律、これはなかなか強い法律ですが、こういう法律で起さないように配慮をしていただいた方がよくはないか。  そうして全体としていいますと、どこか、だれかの批評にも出ていましたが、罹災都市借地借家臨時処理法というのはできがよくない法律で、大あわてで作った法律で、解釈上疑義がある。その疑義が必ずしもはっきり解決しておるとも思えないのです。そういう点もなお御配慮をいただきたい。しかし全体として、こういう法律を作って関係を明確にする、そうしてまあ私の述べたような損失、これは国家が補償すべきものかどうかわかりませんが、国家がとにかくさしあたって補償してくれないとなれば、両当事者の間で公平妥当に分担するというような精神で法律をお作り下さると大へんありがたい、こういうふうに考えます。
  49. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ありがとうございました。  以上で公述が終ったわけでございますが、御質疑がありましたら、御発言をお願いいたします。
  50. 一松定吉

    ○一松定吉君 ちょっと有泉さんにお尋ねするが、あなたは、こういう法律は必要である、ただし、これについては双方が納得のいくようにこの法律の成文を是正して、どちらにも不満のないようにすることがよろしい、こういう御意見があなたの御意見ですか。あなたの御意見はどうもあまり広範にして、把握するところがわからないのだが、要点はどうなのです。この法律は必要であるというのか、必要でないというのか、あるいは必要である、もしくは必要でないにしても、この法律を運用するについて、このままではいけんから双方の納得するようにこれをそれぞれ条件をきめてやるがよかろうというのか、あるいはもうこれは接収されたときに所有権はなくなっておるのだから、あとで借地権者炉かれこれ言うのは間違いだというのか、その辺をもっと明瞭に答えていただきたい。
  51. 有泉亨

    公述人(有泉亨君) いろいろ短かい時間に言いましたから御理解していただけなかったかと思いますが、立法府としてはこういうものを早く作るべきだと思うのですから、これは必要だと思う、こういう種類のものは必要だ、このままでいいかどうかということになると問題がある、こういうのです。そこで法律を作るときに両当事者が、各利害関係人がどっちも納得するというわけにはなかなかいかないでしょうし、おそらく反対の方はどこまでも反対されるでしょうから、法律を作るときの問題ではなくて、法律の中に敗戦から来たいろいろな不幸を一部の人——ちょうど爆弾が落ちてその人だけに損害をこうむらせるというような扱いをさせないで、今度はこの法律を作って厳格にそのままいくと、借地人がもうけるか、あるいは正当な理由があって断わると土地所有者が一もうけをするか、どっちかなんです。そうでなくて運営上もそこに何か補償をしあったら——補償をしたら断われるとか、そういう仕組みを入れていただくなり……。
  52. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうすると、御趣旨はこういうようなことは必要であるのだが、しかしこれをこのまま施行するということについては所有者と借地人との間に幸不幸があるからして、それを適当にあんばいしてあまりそう差のないようにする方がよかろう、こういう意味ですか。
  53. 有泉亨

    公述人(有泉亨君) この法案そのものを通すべきかどうか……。
  54. 一松定吉

    ○一松定吉君 これに対してのあなたの御意見を承わっておる。
  55. 有泉亨

    公述人(有泉亨君) これに対して修正すべきだという意見を出しましたのですが、これは通るか通らないか、どっちかにさて手を上げろ、こういう御質問……。
  56. 一松定吉

    ○一松定吉君 そういう趣旨ならそれでよろしい。
  57. 井上清一

    ○井上清一君 日本弁護士連合会の佐々木さんにちょっとお伺いしたいのですが、昭和二十八年七月一日に日本弁護士連合会から、接収不動産に関する借地借家臨時処理法案に対する意見書」というのが出ております。これの意見としては、「接収不動産に関する借地借家臨時処理法の成立には絶対に反対する。とありまして、そして理由といたしまして数項目あがっておるわけでございます。お伺い申し上げたいことは、理由の第一につきましては先ほど佐々木さんお述べになりましたのですが、あとの理由につきましてやはり同じような御意見でございますかどうですか、その点をお伺いいたしたいことと、やはり弁護士連合会としてはあくまで本法の成立に対して強く反対の意向を、今、個人じゃなしに会としてやはりお持ちになっておるかどうかという点をちょっとお伺いしたいと思う。
  58. 佐々木正泰

    公述人佐々木正泰君) お答えいたします。ただいま理事会で組織した小委員会で審議中でございまして、まだ結論が出ておりませんので、ただいま申し上げましたところ以外に別にきまったところはありませんが、しかし接収土地家屋について始末をつけなければならぬ臨時立法は必要だということなんです。
  59. 井上清一

    ○井上清一君 そうすると何ですか、二十八年七月一日の日弁連の御意見というのは変っているというふうにお考えになるのですか。このままの意見が、まだ小委員会意見がまとまるまではこの意見であるというふうに考えてよろしいのでございますか。
  60. 佐々木正泰

    公述人佐々木正泰君) 大体傾向といたしましては、連合会では本法を作るよりも裁判上の保護を受けた方が借地人、借家人の利益だからそれでいいじゃないかという空気が強かったのです。ところが、最近の委員会におきましては、やはり旧借地人借家人の権利と新しく接収解除後に生じた権利者との対立を、何らかの形で調整しなければならぬということは意見が大体一致しているのであります、その点は。従って全然この法案を全部出してはいけないという意向じゃなかったのです。もともとからそうであったのです。
  61. 井上清一

    ○井上清一君 実はここに私が手許にいただいております意見書とはだいぶ違うのですよ。
  62. 佐々木正泰

    公述人佐々木正泰君) 私は大体この意見書を作るときの当時委員をしておりまして、多少参画はしておりますが、非常にこれは字句は強い語気になっておりますけれども、とにかく臨時立法を作る必要はあるのだが、この法案三条の趣旨における法案の成立には反対だ、極力反対だということであったのです。ただいま申し上げました通り、借地権者権利接収によって直ちに消滅するのじゃないということはこの法案は認めておられますけれども接収期間借地期間が進行するという考え方がいけないのだ。進行を停止するのだ。解除によってまた進行を始めるのだという建前からこの法案反対したわけです。
  63. 井上清一

    ○井上清一君 これを見ますと、一番最後に「各条毎に意見を述べれば、不備の点は以上の如く多々あるが、根本より本法案反対するのであるから例示するに止め、斯くの如き法律の成立しないよう願うものである。右意見書を提出する。」、こうなっているのです。
  64. 佐々木正泰

    公述人佐々木正泰君) その「第三条の趣旨における法案は」という前提がついておったわけです。
  65. 井上清一

    ○井上清一君 第三条にもございますし、第四条についても意見がございますし、それから第一条、第二条についても御意見があるようでございます。それから概括的に、たとえば憲法二十九条、十四条に違反している、この法律は。それから時期を失した立法である。それから「本法案は、正当な権利者権利を侵害するに拘らず、損害の補償を与えられていないし、補償を与えても償い得ないものに対して救済方、法を講じていない。」というようなことも反対理由におあげになっている。これは先ほどおっゃしゃったのでありますが、本立法によって不測の損害を与えなくても正当な権利者保護されるというような点を、これはつまり特別立法を作らなくても普通の訴訟でもって救済できるのじゃないかという従来の御主張をお書きになったものだと思いますが、それで、そのほかいろいろの理由が書いてあるようでございますが、お述べになりましたことと、出ております文章とは意見の食い違いが非常にあるように思いましたものですから、ちょっとお伺いしたわけです。
  66. 佐々木正泰

    公述人佐々木正泰君) ただいまのところは理事会の小委員会では、やはりこれは臨時立法は必要だ、ただ三条の趣旨の立法は困るのだ、これだけでございます。これから先、あるいは理事会の総会でどういうことになるかはわかりません。
  67. 井上清一

    ○井上清一君 それはまたできましたら弁護士会の御意見もできるだけ早く、変った御意見がございましたら、一つ取りまとめて御連絡願えれば非常にけっこうです。
  68. 一松定吉

    ○一松定吉君 これは一つ、本日の意見を述べられた方が時間がごく制限されておったがために、十分思うだけの意思表示ができなかったと私は思うのです。でございますから一つ皆さんは、なるたけ近き期間内に御自身の言わんと欲することを一つよく、理路整然とわれわれ委員のわかるようなふうな書面をこしらえてお出し下さるということが皆様の意思が透徹する意味において最もいいと思いますが、一つそういうようなことを委員長からお諮り下さると非常にけっこうだと思います。
  69. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ただいま一松委員から御提案がございまして、もっともな御提案だと思いますので、きわめて要領よく書類をもって当委員会あてに御意見をお述べいただくことができればまことに仕合せだと存じます。あまり先の方に延びましてもいかがかと思われますので、大体向う十日間あるいは二週間くらいのめどでしたら御都合がつくのではないかと思いますが、よろしかったならばそのくらいのめどでお願いをしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
  70. 一松定吉

    ○一松定吉君 もう一つ希望だけ、そこで今委員長から皆さんにお願いしたようなことを御承諾賜わりまして書類をお出し下さるならば法律解釈からすればこうである、しかし救済方面からすればこうである、そうするとわれわれはこういうことがいいと思う、こういうようなふうに一つ書いていただかぬと、この国会は御承知の通り立法府でございますが、その立法府で必ずしも法律そのものの一本やりで法律を作るのではなくて、法律の方面からも、それからその他政治的方面からも各方面から考えて適当に国民の不安を感じないような法案を作ることが国会の任務だから、そういう意味において一つお書き賜わるように特に私からもお願いしておきます。
  71. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 他に御質疑はございませんか。  御質疑がございませんでしたらこれで公聴会を閉じたいと思います。閉ずるに当りまして一言公述人方々にお礼を申し上げます。公述人方々には長時間にわたりまして有益な御意見を伺わせていただきまして衷心よりお礼を申し上げる次等でございます。本委員会といたしましては時間の制約がございましたので、先ほど御依頼申し上げましたごとくに今日まで数々の御意見書を頂戴しておりますが、重ねての御意見を頂戴いたしたく重ねてお願いとともにお礼を申し上げて本日の公聴会を終りたいと存じます。  それではこれで散会いたします。    午後三時四分散会