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1956-05-29 第24回国会 参議院 法務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十九日(火曜日)    午前十一時二十四分開会     —————————————    委員の異動 五月二十五日委員小柳牧衞君、井上知 治君及び中山福藏辞任につき、その 補欠として小幡治和君、池田宇右衞門 君及び岸良一君を議長において指名し た。 五月二十六日委員小幡治和君、池田宇 右衞門君及び島津忠彦辞任につき、 その補欠として小柳牧衞君、井上知治 君及び泉山三六君を議長において指名 した。 五月二十八日委員井上知治君、一松定 吉君及び亀田得治辞任につき、その 補欠として森田豊壽君、大野木秀次郎 君及び菊川孝夫君を議長において指名 した。 本日委員森田豊壽君、大野木秀次郎君 及び菊川孝夫辞任につき、その補欠 として一松定吉君、井上知治君及び亀 田得治君を議長において指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     高田なほ子君    理事            宮城タマヨ君    委員            井上 知治君            岩沢 忠恭君            一松 定吉君            赤松 常子君            亀田 得治君            羽仁 五郎君            市川 房枝君   政府委員    調達庁長官   今井  久君    調達庁総務部長 眞子 傳次君    調達庁労務部長 海老塚政治君    法務政務次官  松原 一彦君    法務大臣官房経    理部長     竹内 壽平君    法務省矯正局長 渡部 善信君    法務省人権擁護    局長      戸田 正直君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務大臣官房経    理部営繕課長  関根 達夫君    法務省民事局参    事官      平賀 健太君    法務省人権擁護    局調査課長   斎藤  巖君    外務省アジア局    第一課長    針谷 正之君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (第三国人人権擁護に関する件)  (板付基地及び立川基地勤務者の人  権擁護並びに裁判管轄権に関する  件) ○人権擁護事業予算増額に関する請願  (第一六号)(第八〇号)(第八七  号)(第九七号)(第一〇五号)  (第一〇六号)(第一七七号)(第  一八三号)(第一八四号)(第一八  九号)(第二二七号)(第二五七  号)(第二八〇号)(第二八二号)  (第三五七号)(第三六八号)(第  四六八号)(第四七三号)(第七八  八号)(第八四四号) ○大阪拘置所都島区内移築反対に関  する請願(第三一六号)(第三二八  号)(第四六〇号) ○大阪拘置所移転にかかる国有財産不  当処分反対請願(第一〇四五号) ○大阪拘置所茨田横堤移転に関す  る請願(第一三〇四号)     —————————————
  2. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) これより法務委員会を開会いたします。  議事に入る前に委員の変更について御報告いたします。  五月二十五日付中山福藏君、小柳牧衞君、井上知治君がそれぞれ辞任せられ、その補欠として岸良一君、小幡治和君、池田宇右衞門君がそれぞれ選任せられました。五月二十六日付で小幡治和君、池田宇右衞門君、島津忠彦君がそれぞれ辞任せられ、その補欠として小柳牧衞君、井上知治君、泉山三六君がそれぞれ選任せられました。五月二十八日付で亀田得治君、井上知治君、一松定吉君がそれぞれ辞任せられ、その補欠として菊川孝夫君、森田豊諸君大野木秀次郎君がそれぞれ選任せられました。本日付菊川孝夫君、森田豊壽君、大野木秀次郎君が辞任せられ、その補欠として亀田得治君、一松定吉君、井上知治君が選任せられました。     —————————————
  3. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) それでは最初に第三国人人権擁護に関する件を議題に供します。  御質疑の方は御発言願います。
  4. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 日本におられます朝鮮方々の問題について、法務省並び外務省の所見をただしたいと考えます。これは厚生省にも関係しておりますが、まず外務省並び法務省の方のしっかりした方針を伺わせていただきたいと思います。伺いたい要点は二点であります。  第一点は、生活保護関係に関連してであります。それから第二点は、現在日赤本社前で、帰国を切望してすでに二カ月に近い日々を苦しい生活をして訴えておられる方々の問題についてであります。本委員会においては、私は繰り返して申し上げたので、それを繰り返すことはおそれ入りますし、繰り返したくないのでありますけれども、われわれ日本国民が、日本に長くいていただいた朝鮮方々に対して、どういうふうな解決をするかということは、新しい日本の試金石だと私は考えております。どうか過去の帝国主義時代日本考えを捨てていただいて、日本は今日小さいが、しかし平和な、そうして民主主義的な国として、まず第一には、過去に言いがたい苦しみを与えた国々、中でも朝鮮に対して、全く新しい態度をとり、将来において日本がまず第一には朝鮮に導かれ、助けられ、日本の国の新しい幸福というものを築いていかなければはらないと思うわけであります。この点、外務省は、やはり世論の指摘するように、明治三十年代に外交官試験を受けたような頭が、変っていないのじゃないか。これは極東問題の権威であるラティモア教授も言われたように、昔は日本が動くようにアジアを動かすというようなこともあり得たのかもしれない、今日は全くそうではない。アジアの動く方向に従って日本が生きて行くよりほかに方法はない。それを認識しないならば、日本を亡国に導くだけである。外務省はこの点において国民の期待にそむくこともはなはだしい。われわれは、日本国民の実際過去の誤まりを、また過去の罪悪を許される唯一の方法は、今日朝鮮あるいは中国、それらの国民の示されるところから深く学び、それに従って日本の新しい道を発見すべきだと思うのです。この点においてはどうか外務省はディアメトラルに考え方を変えていただきたい。私のただいまの任期の最後の外務省に対するお願いです。その点から第一に、講和条約発効後、外国人に対するいろいろな法律が立法されました当時に、日本帝国主義朝鮮植民地としていた時代朝鮮方々に対してとった態度というものが解決されない間は、朝鮮方々を決して直ちに外国人として取り扱うことはできない。これらの問題を解決されなければ、そのあとの問題の解決ということはあり得ない。従って当時の外相であった岡崎君は、法務委員会の席上で、この過渡期において、日本法律によって、日本に長く苦しい生活をしていただいた朝鮮方々に対しで、いやしくも人情に反するような処置はとらないということを言明されている。その意味から、最近新聞で見ますると、日本におられる朝鮮方々に対する生活保護について、何か不当に生活保護を受けられていた方々に対して、それらを打ち切ったことを、政府は得々として発表している。その識見のレベルの低いことは驚くに足る。これは直接の問題は厚生省でありますが、しかし厚生省がそういうふうな処置をとられる上に、外務省としてはおのずからお考えがあるはずだろうと思う。今日朝鮮方々が不当に生活保護を受けているなんということは、常識に反しますよ。日本国民でさえも失業あるいは生活の低さに苦しんでいる。いわんやそういう日本失業状態の中で、朝鮮方々がどんなに仕事を得るために苦労され、また仕事があってもその仕事から十分生活ができるような収入がないということは、言わずして明らかだ。しかも、事は外交関係している。日本朝鮮との将来、百年の大計ということに関係している。これを数億円の金を惜しんで、そうして両国間の永久の友情というものを築くことを妨害している。もう外交ではない。そういう意味で、外務省は、最近厚生省がとられた、あるいはとられようとしているような在日朝鮮人に対する生活保護の打ち切り、これに対してどういうお考えをお持ちであるか、また法務省もこの点については御関係がおありになりまするが、どういうようなことをお考えになっておられるか、伺いたい。
  5. 針谷正之

    説明員針谷正之君) お答えします。最近厚生省生活保護をやっておりまして、中に不当に取っている方があるので、それを慎重に審査した上、不当に取っておる者は中止をし、また取るべくして取らない方がおったら出すという建前で厚生省はやっておるはずでございますから、その点は、取るべくして取る人は当然取っており、また取ってはいけない人はこれを打ち切ることは、厚生省としてこれはやむを得ないことだと思っております。
  6. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 法務省は。
  7. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 直接の担当事項ではございませんが、生活困窮者であって、公けの扶助を受ける者は、外国人である限り本国に送還するという国際慣行があるのでございますから、朝鮮諸君外国人として一般の拘束を受けるものであるならば、同時にこの生活扶助などは受けられないはずでございますが、しかし、今羽仁委員お話通りに、長い歴史もありますし、人道に基きまして、ただいまも二十数億円の生活保護が出ておるのでございます。困窮のゆえをもって強制送還などをいたしてはおりません。入国管理は私の方の責任でございます。ただいまのところでは、そういう処置は取っておらないのでございます。以上お答え申し上げます。
  8. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 外務省の方のお答えは、全く満足することはできません。重ねて伺っても御無理かと思うので、さっき述べました点を十分外務省の最高の責任者お伝えを願って、そうして十分考えて、次の機会に重ねて伺わせていただきたいと思います。  法務省の方では、どうかただいまの御答弁にございましたように、かつて強制的に日本国民として取り扱い、そして永久に消し去ることのできないような苦しみを与えた方々人権を擁護するように、格段の御努力を願い、次に第二点に移ります。  第二点は、現在、朝鮮民主主義人民共和国の方に帰りたいという希望を持たれて、そうしてその可能性があるというふうにごらんになって、日本全国から、家財道具を売り払われて一刻も早く帰りたいということで東京に集まられ、そうして日赤本社の前で、もうすでに一カ月半以上にもわたって訴えておられる方々がございます。これに対しては、衆議院法務委員会あるいは外務委員会または社会労働委員会でしばしば質疑がすでにありました。牧野法相は、朝鮮方々帰国について全面的に賛成しているし、大村収容所に収容されている方々も早くお帰りになれるようにしたいということを委員会において述べられている。それから第二に、十二月十六日に衆議院外務委員会において、外務大臣は、在日外国人帰国は本人の自由であり、生活困窮者は帰るまで生活保障をいたすし、お帰りになるときは船賃まで出して差し上げる方針であるし、また現実にそういうふうにやっているというふうにお答えになっている。さきほど申し上げた朝鮮民主主義人民共和国にお帰りになりたいという方四十八名は、四月六日から家を整理して、妻や子供などを連れて日赤の前にすわり込んで、十七日の小島丸で帰してほしいというふうに要求されてきたのだけれども、いまだに日本外務省がそれを拒否して、四月二十四日には外務省法務省厚生省入国管理局日赤国会議員などの懇談会があって、その結論として、日赤前の四十八名の方々バターフィールド号でお帰りになるようにすることに意見の一致を見て、その費用は厚生省政務次官が何とかして見るというふうに言明されているのであるけれども、いまだ実現されていない。この問題については外務省では現在どういうふうにお考えになっているのか、それを伺いたい。
  9. 針谷正之

    説明員針谷正之君) お答えします。日赤前のすわり込みの朝鮮人の方については、非常に気の毒なケースであると思いまして、関係各省とも寄り寄り協議いたしておりましたが、きのうのお話によりますと、来月の二十二日バターフィールド号で帰ることに手はずがきまりまして、日赤のあっせんで動いておるそうでございます。  それから一つ今羽仁先生のおっしゃられた中に、十二月十六日外務大臣船賃を出すと言われたということは、それは出すということはできないというようなことを言われたということに了解しております。いろいろ外務省でも考えよう、けれどもたとえば船賃を出すというようなことは、そこまではできないというような趣旨お答えしたというように聞いております。
  10. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 前段のお答えは、そうしますと、現在日赤の前で訴えておられる四十八名の方々は、来月の二十二日にバターフィールド号で帰られるという方針が決定していると伺ってよろしいのでしょうか。
  11. 針谷正之

    説明員針谷正之君) それは、方針というより、向うの方で日赤なんかと協議した上、事実上そういうことになったそうでございます。政府としてバターフィールド号で帰す方針ということではなく、日赤並びにすわり込みをやっておる方たちの間で、事実上帰るというととが決まったそうでございます。
  12. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 そうすると、そのお答えがはなはだ含蓄に富んでいて、ちょっとわかりにくいのですが、先ほど前提に申し上げましたような、朝鮮日本との関係歴史的ないろいろな点をも十分考慮した新しい外交方針というものに沿うて解決せられるならば、かつて日本が無理やり引っぱってきた人たちですからね、お帰りになるとすればその本国に帰られるお世話を全部するのが当然です。それは外務省もそのことはおわかりになっているのだろうと思うのです。そんなことがわかっていないなら、外交をやめてもらわなければならぬ、これはわかっているはずです。従って今度お帰りになるのも、やはりその線で帰っていただくという努力をあくまですべきです。そうして従ってその船賃などの問題も外務大臣はそうその会計職員のようにそろばんなどはじいてばかりいてはだめですよ。そうではなくして、朝鮮の方方は日本国民、あるいは過去の日本に対して、どんなに悲しいふうに考えておられるかということを忘れてはだめですよ。従って今度は日本がほんとうに最も近い隣の兄弟姉妹の国だというように感じていただくためには、それこそ向うの御要求のことはすべてするどころか、御要求のないことまでするくらいでなければ、そういう前の最も悪かった関係を、今度最もよくしていくということはできないのです。ですから今のお答えは、おそらくは実質上に帰られるというのは、まあそういう船賃なんか自分で出して、それで行かれるというふうなことじゃないかと思うのですが、それは実にけちくさい量見です。そういうことではとても日本朝鮮とが将来善隣友好の新しい関係を実現するということができないのです。ですからその点はただいまおいで下さっている方ではお答えにくいかもしれないのですけれども、一つ考え下すって、もう一ぺん検討して下さるように、御尽力下さるようなお答えがいただけますかどうでしょうか。私の質問の要点はおわかり下すったことと思いますが、先ほどのお答えでは、実質上、事実上帰れるようにするということは、おそらくはその帰る方の自費帰国というような意味合いじゃないかと思うのですが、それでは無理じゃないか。で、日本としてはかつて首になわをつけて引っぱってきたようなことなんです。そうしてまたその方々が、個人的にそうであるかないかは別として、あるいは生命を奪ったりあるいは言語を奪ったり、あるいは財産を奪ったり朝鮮に与えた損害というものは、それは数千億ドルをもってしなければならぬ。もしも将来朝鮮がりっぱに独立せられて、日本賠償要求せられればどういうことになるのか、そのときになって外務省が腰を抜かしてみたって、賠償を払わなければならないのは国民なんです。もう朝鮮日本賠償など要求する権利はないとかそんなことは言っておられないのです。日本帝国主義朝鮮に与えた損害というものは、はかり知られざるものなんです。そういう賠償要求せられて初めて目がさめるということではなく、そういう事態に立ち至らないように十分努力せられたい、これらの点を再検討するように御尽力下さるというお答えがいただけるかどうか、もう一ぺん伺います。
  13. 針谷正之

    説明員針谷正之君) 先生が今おっしゃったことは十分わかりました。及ばずながらその線に努力はしたいと思っております。ただ、今なぜ北鮮の方に帰ることができないかということは、遺憾ながら朝鮮二つに分れております。これはしかも相対立している状態でございます。それでわれわれといたしましては、一番近いところの韓国とまず友好関係を作ろうということが最大の目的でございまして、そういうわけでありまして、北鮮とはこれはやむを得ずはたから見ますと友好関係に立たないような結果になっておる次第でございます。その点は一つ御了承おき願いたいと思います。
  14. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 先ほどの私のお尋ねに対しては、極力全力的に御努力下さるというお答えをいただいて、あとの段については、これはきょう時間もありませんので特に伺わないつもりでありましたが、おっしゃるので、それを了承するわけにはいかないということを申し上げておきます。これは二つの点でそういう考えでは困るのではないかと思うのです。その第一は、やはり昔の外交というものは、政府だけを相手にしておる外交であったかもしれませんが、今日はだんだんそうでないのです。ですから現在朝鮮国内事情というものがおありになる、それに対しては日本はやはり絶えずニュートラルな、中立的な立場をとって、いやしくも内政干渉疑いを受けるような態度をとらるべきではない、従ってそのいずれを近しと考え、いずれを遠しと考えるような考え方ではだめです。そういうことだから日本外交もペンタゴンによって指揮されておるというように言われるのです。世界の物笑いになっておる。岡崎君がどこの外務大臣だかわからないと言われたように、現在の外務大臣もどこの国の外務大臣だかわからない。ことに日本のすぐお隣りの朝鮮ですから、それについて国内事情については特にニュートラルな、そして日本側でもってそのいずれを近しとし、そのいずれを遠しとするような、場合によっては内政干渉というような、そういう疑いを受けることがないように、その立場が当然のことだと思う。  第二には、かりにそれらのことがあるとしても、そのために現在非常に苦しんでおられる方々人権を尊重しないということはまた許されないことです。それはまたそれで別問題です。朝鮮二つに分れておられるということのために、日本政府朝鮮方々人権を踏みにじっていいということはない。そういう意味でもやはり今のようなお答えでなく、今直ちに別のお答えをちょうだいしたいと思いませんけれども、どうぞ私の申し上げる衷情をおくみ取り下すって、十分お伝えを願い、再検討を願いたいと思うのです。  世界歴史は日々に変っています。進歩しています。外務省もどうかきのうはきょうでない、あすはもうきょうではないのですから、従って過去においてもちろん条約そのほか外交上の方針も決定されておるものがありますけれども、しかしそれをただしゃくし定木に当てはめていけばいいというものでなく、絶えず過去において結んだサンフランシスコの条約なり何なりというものが、新しい事態に適応できなくなっておる面は、やはりもうアメリカ日本とそういうふうにきめているのだから、だからできないというようなことではなく、新しい事態がどんどん起ってくることについてもやはり解決を工夫していただかなければ宏らない。現在、昨年のバンドンにおけるアフロ・アジアのコンファレンス以来、アジアにおける状況がよほど変ってきていることは申し上げるまでもないと思う。アジアにおけるいわゆる平和地域拡大中立主義拡大、あるいは民族主義の成長というものは、アメリカ自身においても新しい方針を立てなければならないということは、現在問題になっておることですし、いわんやそのアジアの最も新しい方向を発見しなければならない日本としては、そのアジアの新しい動き方の上に生きていくという意味から、今おっしゃったように韓国とだけうまくいけばいいんだ、またアメリカとだけうまくいけばいいんだというお考えは、ぜひこの際一御していただいて、すべての国と最もよい関係を結んでいくという方面で工夫をしていただきたいというようにお願いをしておきます。またそういうふうに御承知願い、御検討願うようにお願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  15. 針谷正之

    説明員針谷正之君) 御趣旨は十分わかりました。そのように上司に伝えて、また自分でも検討してみたいと思います。     —————————————
  16. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) それでは引き続いて請願議題に供します。  まず人権擁護事業予算増額に関する請願について御審議をお願いいたします。  西村室長から御説明いただきます。
  17. 西村高兄

    専門員西村高兄君) それでは御説明申し上げます。  人権擁護事業予算増額に関します請願は、第十六号以下全体で二十件ございます。その趣旨はほとんど全部同一でございますが、一応号数を読み上げますと、第十六号は岐阜市の人権擁護委員連合会の上井さんからの請願でございまして、小酒井先生の御紹介でございます。それから八十号、これは高知県の人権擁護委員連合会岡田さんの請願で、寺尾先生の御紹介であります。それから、第八十七号、これは埼玉県の人権擁護委員連合会会田さん外八名の請願で、石川先生の御紹介であります。第九十七号、これは青森県の人権擁護委員連合会葛西さんの請願で、笹森先生の御紹介であります。それから百五号、これは福岡県の人権擁護連合会鶴田さんの請願で、御紹介吉田先生でございます。それから百六号、これは熊本市の長野さん外一名の請願矢嶋先生の御紹介、それから、百七十七号、これは熊本県の人権擁護委員連合会木見田さん外一名の請願で、寺本先生の御紹介、それから百八十三号、これは群馬県の人権擁護委員連合会水島さんの請願でありまして、御紹介議員の諸先生は、鈴木先生伊能先生最上先生土田先生飯島先生の御連名であります。それから、百八十四号、これは鹿児島県の人権擁護委員連合会の榊さんの請願で、御紹介西郷先生であります。それから百八十九号、これは愛知県の人権擁護委員連合会友田さんの請願で、御紹介草葉先生青柳先生であります。それから、二百二十七号、これは岡山県の人権擁護委員連合会安井さんの請願で、御紹介加藤先生、です。それから、二百五十七号、これは山梨県の人権擁護委員連合会飯島さんの請願で、御紹介廣瀬先生、それから二百八十号、これは札幌人権擁護委員連合会岩沢さんの請願で、御紹介東先生、それから二百八十二号、これは千葉県の人権擁護委員連合会笠原さんの請願で、御紹介川口先生であります。それから三百五十七号、これは香川県人権擁護委員連合会大西さんの請願で、御紹介白川先生、それから三百六十八号、これは大阪市の吉長さんの請願で、御紹介中山先生であります。四百六十八号、これは徳島県人権擁護委員連合会木村さんの請願で、御紹介紅露先生です。それから四百七十三号、これは山形県の人権擁護委員連合会小林さんの請願で、御紹介小林治先生であります。それから七百八十八号、これは栃木県の人権擁護委員連合会新江さんの請願で、御紹介植竹先生であります。それから八百四十四号、これは京都府の人権擁護委員連合会梅林さんの請願で、御紹介竹中先生でございます。  ただいま件名を順番に読み上げましたこの二十件の人権擁護に関します予算増額に関する請願趣旨は、ほとんど同様の趣旨と申し上げていいのでありまして、その請願趣旨は、この人権擁護委員制度は、国民権利保護の根幹をなすものでありまして、わが憲法上の社会保障制度の重要な一環をなすものでありますが、長い間にわたる根強い封建思想は、一朝一夕に改められるものではなくて、これを啓蒙向上させることがきわめて困難な事業でございます。しかしこの重大な使命の完遂に必要な費用が不足しておりますために、この委員制度の運用がはなはだ思うように動いておらないという現況でございますので、この事業目的の達成のために、本予算の増額措置を至急講ぜられたい、これが全部に通じましての趣旨でございます。  それで、三十一年度の法務省所管の予算を拝見いたしますと、そのうちの人権擁護関係だけの予算を申しますと、三十一年度に法務省要求しておりますのは七千三十八万九千円の要求をいたしておりまして、それに対して認められておりますものが一千八百二十六万七千円のようでございます。前年に比較いたしますと、六百五十九万五千円ほどの増額が認められておるのであります。それで本省の人権擁護局の方の予算増額はごくわずかでございますが、地方法務局の方の予算で人権擁護委員制度の運営に必要な委員旅費、これが三百二十万五千円ほどの増額を認められており、なお人権侵犯事件調査に必要な経費といたしましての人権侵犯事件調査旅費、これが前年度に比して四十三万三千円の増、それから人権擁護委員実費弁償金が前年に比して二百八十九万九千円の増を認められておるのでありまして、この状況を見ますと、なおいろいろ人権擁護委員の活動状況なんかを拝見してみたのでございますが、割合にこの予算は、よく認められておると思います。この予算の活用によりまして、相当に認められるとは思いますけれども、なお予算要求総額から見ますと、この認められた金額は十分ではないのでございまして、この人権擁護事業の活動ということは、いろいろ今後なすところが多いもののようでございますから、この請願趣旨は、全部一括御採択いただくことが適当と存ずる次第でございます。
  18. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) ただいまの請願について法務当局の御見解を伺いたいと思います。
  19. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 人権擁護委員制度は、わが国独得のものでございまして、その使命の重大性は十分痛感いたしておりますので、従来から委員が活動するに足る十分な予算の増額に努めて参ったのでございますが、幸いに昭和三十一年度は少額ではございますが、予算の増額を見ましたものの、この程度では十分にその効果を上げるほどの活動ができるとは考えられません。さらに予算の増額に努めたいと存じますが、委員の皆様におかれましても御協力をいただきたい。ついでながら実情を少し申し上げてみますが、ただいま人権擁護局そのものが、わずかに十三人の定員でございます。これほど重大な、何もかも人権に帰着するほどの法務行政が、わずかに十三人の局員によって動かされておる。地方に若干の人員を配置してざごいますが、おもに活動しておりますのは第一線における五千一百八十八名の人権擁護委員でございまして、との人々の手当が年間わずかに実費弁償として千五百円というまことに貧寒なものであるのであります。私も数日前に九州で行われました全国人権擁護大会に出席して参ったのでございますが、この人々の異口同音に申すこともこの点でございまして、これはぜひ委員の皆様の御了解のもとに、もっと充実いたしたいのでございます。昨年に比べてことしは約七割の増額だと申しますが、その昨年というのがわずかに一千一百六十七万円という予算でございます。その七割の増額と言うても七百万円に足らぬのでございます。これが日本の入植擁護の予算であるということは、私ども局におりますものも非常に苦しい思いをいたしております。この請願の御趣旨には全く同感でございます。どうか打開に努めたいと考えておる次第でございます。
  20. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) 御質疑のある方はどうぞ。
  21. 高田なほ子

    高田なほ子君 当初の要求額の七千三十八万から見ると、組まれた予算は約四分の一にしかすぎません。そうすると、あと四分の三の費用というものは全く抹殺されてしまったわけになっていますが、このことによって最も支障をこうむったものはどういう点であるか、どういうものが主として削減されたか、これが一つ。もう一つは六百五十九万の増になっておりますが、これは若干の旅費の自然的に増額した分が多く含まれているように考えられますが、その辺の事情を承わりたいと思います。
  22. 斎藤巖

    説明員(斎藤巖君) お答えいたします。削減されました分は全般の費目にわたっております。増加しました点は主として人権擁護委員制度の運営費でございます。
  23. 高田なほ子

    高田なほ子君 数字の面だけでなくて……。実際には相当の額が必要で要求されたのですが、数学的に見ると四分の一になってしまうので、常識的に考えてもこれじゃほとんど活動ができないじゃないかということを危ぶまれるわけなんです。実際にどういう点にどういう支障が来たされたのか、そういう点をもう少し具体的に話して下さい。
  24. 斎藤巖

    説明員(斎藤巖君) いろいろな点に支障を来たしておりますが、まず第一に、人権擁護委員に対する実費弁償金でございます。前年度は一人当り千円でございましたが、本年度は千五百円になりましたが、これではまだ十分な額とは申されないのであります。それからこの委員会の出席旅費も非常に増加いたしましたが、この増加しました額によりますと、全国の協議会を年に一回だけ開催で登る費用でございます。それではこの人権擁護委員のこの連合体としまして、委員の活動を十分ならしめる会議の開催が十分でないということが言えるのであります。  それから審判事件の調査旅費でございますが、この点もほんのわずかしか増額がございません。それも地方法務局分として増額がありまして、本省の分はごくわずかでございますので、これではまだ十分な審判事件調査はできないかと存じます。
  25. 高田なほ子

    高田なほ子君 まことにこれは、年間千五百円という手当というのは、これはこの世の中でも最も珍奇な数字だと私は思って、それに驚き入ったわけですが、それはそれとして、案件も非常に多いのに、定員がわずか十三名、まことにこれも常識では考えられないほどお粗末のように思いますが、今の案件から比べて見て、この定員はどのくらいまでに増加されたならば、かなり満足だというふうになるものでしょうか、この点について。
  26. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 本局の人員は、私まだ経過を知らなかったんですが、かつて二十六名まではあったのが、だんだん減っておるのだそうでございまして、これは非常に遺憾千万でございますが、しかし実際は第一線で人権擁護の実を上げておる人々こそ大事なんです。この人々に私先般来援してみまするというと、これは実にりっぱな方々です。もうほんとうにりっぱな名誉ある紳士で、しかも全部手弁当で、自費を使って奔走して下さっておる尊い方々だということを拝見して参ったのでございます。千五百円などということはまことに電車賃にも値いしないものでございますが、それでも今日進んでこの重大な仕事に従って下さっておるのでございますが、私どもは、こういう方々に十二分の御旅費を差し上げるということはできないまでも、今少しく厚いお報いをすべきものだと思います。従って年に一回ずつの表彰などによって辛うじてその労に報いておるというようなわけでございます。今後も精一ぱい中央人権擁護局の人員の充実にも努めたい、なお出先における第一線の活動ももっと有効にできますように努力をいたしたいということを考えておる次第でございます。
  27. 赤松常子

    ○赤松常子君 私も非常に人権擁護問題は重要だと思うのでございますが、いつも行政機構改革案が出ますときに、法務省の中ではいつも人権擁護局が整理のやり玉にあがっております例がしばしばでございます。今も伺いますと、二十六人もいらしったのが、その半数に減っているということは、非常に私遺憾だと思うのでございます。ことに私どももそういう行政機構改革のときにこれが抹殺されないようにということから、あとからバック・アップしなければいけないと思うのでございますが、どうぞその点十分お考えいただきたいと思うのですが、私地方に参りましていつも思いますことは、地方民の方の中に人権擁護委員会というものがあるということが非常に不徹底だということ、これがやはりあまり——、お仕事が、そこにありながら——持ち込まない、であるから、何か仕事をしないというような感じを一般に与えるんじゃないかと思うんですが、人権擁護委員会というものがあるということをもっと一般に知らしめる方法というものを、どういうふうにお考えでございましょうか。私どもに相談されて、この町にはこういう人権擁護委員会があるのですから、行ってごらんなさいと言って、初めてそういうものがあるかということに気がつくという場合が多いのでありますが、もっとこれを周知徹底せしめる方法も大事ではないでしょうか。まあそう言えば予算がないということにも帰着するのでございましょうが、その辺をもう少し御説明いただきたいと思います。
  28. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) お説の通りでございます。これは人権擁護思想そのものが非常に貧弱なのでございます。従って、国民が知りません。御承知のように今回成立いたしました売春防止法のごときも、あれは婦人人権擁護法律であることは間違いないのでございますが、その売春婦自身が、すでに自分人権の尊いことを忘れておる、知らない。また業者がこれを平気で、いかにも公益事業でもやっておるようなことを言うて、国家弁償を求めたりするといったようなことまで出てくるのでありますが、こういう根本的な人権擁護局に関する啓蒙宣伝活動というものがまず第一だと思う、日本では……。それにつきましては、講演と映画の会、討論、座談会、人権相談所の開設、ラジオの放送、新聞発表等、ポスターも用いておるようでございますが、相当苦労をいたしてやっておりますが、この費用はほとんど計上せられておらぬ。これは地方の各町村がそれぞれ若干ずつの援助をいたしておる。その援助によって今日まで辛うじてこれが前線においてずっと普及させる役を勤めておるのでございます。この費用などはほとんど国費からは出ておらぬというほどに苦しい思いをいたして今日やっておるので、この点につきましてももっと何か有効適切な方法考えなければならないと思う。せっかくあるこの人権擁護委員会が、ほんとうに国民から知られておらぬというあなたのお考え通りで、私ども遺憾に思います。今後せいぜい努めたいと思います。牧野法相のごときは、法務の仕事人権擁護が中心ではないかというくらいに苦労をして力説いたしておるのであります。
  29. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 松原政務次官のお言葉とも思えないので、これはいただいておくわけにいかないと思うのです。国民人権の貴重なことを知らない、逆言もはなはだしい。国民は、日本の官吏が、また日本政府国民人権を擁護するなんということに誠意がないということであきらめておるんです、長年にわたって。ですから、人権思想の普及宣伝をせられるために、予算を取るために御努力いただくことは感謝にたえませんが、国民人権の尊いことを知らないというお言葉は、少し主権在民の国民に対するお言葉じゃないように思います。私どもも決して人権の尊厳なることを知らないのではありません。しかしながら、過去において日本政府が絶えず人権をじゅうりんし、少しも反省の実がない。また現在においてもそういう状態である。もう国民はあきらめてしまっておる。ですから、先ほどのお言葉はちょうだいしないということだけ申し上げておきます。
  30. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 私はあきらめてほしくないのであります。どうか一つあきらめないで、政府、公務員等に非違があったならば、どこまでもただしていただきたいのであります。私どもみずから自分の今やっておる事柄をいいと思っておるのじゃございません。常に反省しながらやっております。それは抵抗がないところには、つい、いい気になって間違いが生ずるのでございます。どうか堂々と人権侵害の事実があったならば訴えてほしいということを、やはり普及宣伝するのが私どもの義務だと心得ております。また、この人権擁護局がたびたび小さくなって、これが課に縮小せられようとするような事態すらもあったのでございますが、これも羽仁委員などが非常な御努力で過去において取りとめた事実は、私は今に感謝いたしておる。国会の大きな支柱があって今日これはとどまっておるでありまして、数年前にはすでに課に下ろうとしておった事実もある。でありますから、私は世論がやはりこれを支持してくれなくちゃできない。いわゆる為政者の頭が古過ぎて人権を侵害しておるという事実は確かにあります。私どもも認めざるを得ないことを常にこの会で承わっておるが、それは御指摘していただいて、お互いに協力して改めていきたいものだと考えております。そういう点におきまして私どもは、今度の婦人のあの人権擁護を私が引例しましたのは、売春防止法といったようなものが、これはほんとうに婦人の人権を擁護する、人間としての権利を冒涜せられておるものをば助けるための法律であるが、それに対するところの自覚が足らないという事実があるのであります。今回私が九州に参りましたのは、その大会で売春防止法の精神を説いて、皆様方のお仕事がまた一つはっきり新しくふえたから、どうぞ今後ともに御努力を願いたいということを申して参ったのです。民間の方々にその思想が徹底することによって、初めて日本人権は相互の力で守れるものと考えておりますので、御了承を得たいと思います。
  31. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 あきらめるなというのは、大へんありがたいから、あきらめないことにいたします。そこで二つお願いしたいの、ですが……。  一つは、監獄法の改正をいつやりますか。政府みずから刑務所なり拘置所なりで人権をじゅうりんして平気で寝ておる。それではどうもあきらめたくなる。だから、あきらめないようにわれわれ努力いたしますように、これは一刻も早くやって下さることと思うが、しかしながらもう重ねて何度申し上げたかわからないので、自分でもいやになります。一日でもああいう所で人の人権をじゅうりんして平気で俸給をもらっておる法務省の役人のセンスというものは、実際国民から見て涙ぼうだとして下るよりないです。私はほんとうに議員立法でするよりほかないかしらんと思っておる。けれども、政府というものの面目というものもあるだろうと思って、われわれ議員立法で監獄法の改正ということをしなかったのですから、どうかこれは必ず現在の法相並びに政務次官のような得がたい方を得ておるときにやって下さい。松原政務次官並びに牧野法相の御在任中にできなければできないですよ。これはもう断言してはばからない。ですから、ぜひ御在任中にやって下さい。そうでなければ、松原さんなり牧野さんなり人格識見高邁であるといって御尊敬を申し上げておるが何もできなかったということを歴史に私は書きますよ。だから、どうか御在任中に監獄法の改正を実現して下さい。  それから第二は、この人権擁護局の予算はぜひ取って下さい。政府に金がないことがあるものですか。七万五千円の古エンジンを千二百五十万で買っておる。数億の金がむだに防衛庁に使われておる。そうして、一方には人権をじゅうりんしておる。あきらめるなというありがたいお言葉に対して、以上二点申し上げます。
  32. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) おしかりをこうむったり、大いに激励の辞をいただいて、感謝いたしますが、監獄法は、御承知の通りに、牧野法務大臣からはっきりお答え申し上げまして、目下鋭意その成案を得ようと努力いたしておる最中でございまして、少しも遅滞いたしておるものとは考えません。非常な苦労を重ねて目下起草中でございますということを申し上げておきます。  それから刑務所の改善につきましても、これはたびたびお話がございますが、私も羽仁委員の御主張を承わって、実は忙しい中を土曜、日曜とかけまして十数カ所の刑務所を今日見て参っております。その中に私はたくさんな感想を持っておりますが、これはいずれあらためて何かの機会に申し上げたいと思う。講義録などを取って非常に勉強をしておる姿が至る所に見られておる。昔と違って参ったということをしみじみ痛感しますが、過剰拘禁の事実は免れません。そういう意味で、わずかしか取れない刑務所の営繕費を、何とか有効に利用して、過剰拘禁のない状態にまでやろうという努力をいたしておる最中でございます。これまたぜひとも御援助をいただいて、そうして一人たりとも多くの受刑者を出さないようにいたしたい。受刑して苦しめるよりも改過遷善の実をあげるように、いわゆる矯正保護の実をあげるようにいたしたいと思うのでございます。そのために苦労はいたしておりますので、今後ともに御協力をいただきたいということを申し上げてお答えといたします。
  33. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) ありませんか……。ちょっと私からお尋ねしますが、従来の人権侵害事件、まあ内容はいろいろありますが、ことにこの警察官等によって人権が侵害された、こういうふうな事件が相当あるわけですが、そういう問題なんかは擁護局の本部といいますか、その十三人おる本局ですね、その人たちが本気に力を入れて調べるというふうな態度をとらないと、なかなか真相がつかめないと思うのです。で、いろいろなたくさんある事件について、法務局がそういうふうに乗り出すということになると、とてもこれは手が届かぬのじゃないかと実際思うのですが、その辺もう少し、高田さんも先ほどちょっとお聞きになったようだが、大体行きわたっておるという感じなのか、はなはだその行きわたらなくて、あそこでもちょっと食い足りない、ここでもちょっと食い残しだ、そういう状態なのか、その辺を少し詳しく御説明願いたいと思います。
  34. 斎藤巖

    説明員(斎藤巖君) お尋ねの点でございまするが、実際この侵犯事件の調査に当りましては、私どもの方で手がありませんので、非常に困っております。で、警察官の職務執行に関する事件につきましては、法務大臣の訓令でございまして、人権侵犯処理規程というのがございます。その規程の上で公務員の事件を特に重視しまして特別事件といたしてございます。その特別事件に関しましては、中央法務局で取り上げた場合には、法務局長の監督のもとに事件を処理し、必ず本省へ報告する、こういう建前になっておるのでございます。最近公務員に関する事件が非常に多うございまして、とうてい本省だけではまかないきれませんので、今申しました処理規程によりまして、全国の地方法務局で取り扱っております。そのうち重要な事件、特に新聞報道で耳目を聳動ずるような事件、あるいは国会でいろいろ問題として取り上げられた事件ほどにつきまして、ごくわずかだけ本省の方から現地に行って調査するとか、あるいは現地の者を呼んでいろいろ事情を聞いて、その事案を検討するとかいたしておりまして、まあ非常に事件がふえておりますので、今御指摘がありましたように、せっかく申告があって調査しかけましても、十分な処理ができないという事案も相当ございます。これはまことに残念なことと存じております。しかしながら、現在の人員でできるだけのことをいたしたいと考えております。
  35. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その点、で松原政務次官に伺っておきたいのですが、前々繰り返し、たびたび申し上げましたが、この人権擁護局を外局にする必要がある。現在のような状況ではことに地方においては、全く主客転倒というか、おそるおそるお調べになっているようなばかげたことです。警察の署長なりあるいは何なり、人権を盛んにじゅうりんせられる方々に向って、おそるおそる調査人権擁護局の方々がやっているのでは、全て実効が上らない、今の委員長のお尋ねと関連して、この点は御尽力、御努力をたびたびお願いしてあるのですが、実現の可能性があるのでしょうか。あるいは御尽力をお続けいただいておることと確信をいたしますけれども、その点が第一。  それから第二は、やはり警察が人権をじゅうりんするのは、人権じゅうりんして得た書類などが何か役に立つからで、そんなものは役に立たぬという意味で私は法務省が検事に向って、いやしくも警察ないし検察で取調べの過程において特別に人権侵害の非難を受けたような事件は、片端からみずから放棄するというくらいの度胸を持たなければだめだということを申し上げたのですが、そういうような趣旨のことをお示し願えるようなことができ得るでしょうか、どうでしょうか、その二点を。
  36. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 外局にせよという羽仁委員の御意見はかねて承っております。まことにそれは適切な御意見だと信じております。ただし直ちに明年度からこれを実施するかということにつきましては、実は私としてはまだ確信を持ち得ません。こんな貧弱なる予算をもってまたこんなふうな考え方が続いておる間に、今ここだけを抜き出して、ただちに外局にし得るかどうかは、私今日まだ自信を持っておりません。しかし、この点につきましては常に法務大臣とも相談いたしておりますので、まあ、その理想を追うて進みたいと思いますから、いましばらく考究の余地をお与えいただきたい。それは結局ちゅうちょ逡巡するのじゃなくて、外局らしいものを作るのにはそれ相当の裏づけが要るといいことでございます。それからもう一つは、私かねてそう思いますが、こういう人権の擁護というようなものは、どうしても世論の力を待ってやらなければいかぬと思うのですが、世論がうつ然として沸いてくれば、おのずからにして警察官も不法なことはし得なくなる、今回の京都の事件のごときも、やはり私は災いを転じて福としたいと思う。こういう機会に大きな反省を持ちたい。同時に国民がぐっと目をさまして、目をさましてというと羽仁委員からお叱りを受けるかもしれませんが、これは私ども至る所で私の顔を見ると、京都の事件はどうも黒星だねと、さっそくどこへ行っても言われる。まず一番先に言われるほど国民の視聴を集めております。これがやがて世論を高めていって、こういうことが今後起らないようにする一番大きい力だと思う。一方において制度によって非をただすということもしなければなりませんが、機会あるごとに私は日本国民がうつ然たる世論をもって、こういう不法なることを行わないように作っていくことが最も大事だ。そのためにこそ私先刻も宣伝啓蒙等がもっと行われてほしいということを申し上げたわけでございます。お力ぞえを願いたい。  なお今後あやまちがあった場合においては深く反省して、これに対するところのいさぎよき態度をとるかどうかというお尋ねでございますが、私はそういたしたい。今回の処理につきましても牧野法相も断をもって臨むと申しております。ただし私はわずかなことにもびくびくするような態度だけはとってもらいたくない、自信をもって事を扱う。ただし、あやまちがあったらいつでもみずから責任をとるというだけの大丈夫の魂を持って、こういう大事に当る役人を作っておく、検察官その他公務員を作っておきたいと思う。青天白日のごとき態度をもって事に臨む、これが、私は非常に重大だと思いますので、いたずらに揚げ足取りをして小やかましいことを言うて萎縮せしむることは避けなければならぬと思っております。
  37. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 大体の御趣旨はありがたく拝聴したのですが、わずかのことにびくびくしないということはちょっと誤解を……、私は人権に対しては美しい花に触れるような敏感さを持っていただきたい。これはよくおっしゃいます学者とか知識階級とかは、そういうことに神経過敏なんです。しかし人権についての過敏は民主主義最高の美徳だと、こういうふうに思いますので、その点は先ほどのお言葉はそういう意味だというふうに伺いたいと思います。
  38. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) それではほかに何か……。
  39. 一松定吉

    一松定吉君 この問題はこの程度にしておいて、これに付帯決議をしたいとかいうような御希望もあるようですから、きょうはこの程度にして、先にお進めを願いたいと思います。
  40. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  41. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) 速記を起して下さい。
  42. 高田なほ子

    高田なほ子君 ただいまこの人権擁護予算増額に関する請願に対する質疑が行われておりました。質疑の過程から私どもはつらつら考えれば、まことに予算が僅少で、とうてい人権擁護の重責を果すに足るものとは考えられません。従いまして当委員会といたしましては、ぜひこの請願採択に当りまして予算を増額して十分にこの使命が果せる裏づけをつけてもらう、このことを付帯決議として御採択願うように委員長においてお取り計らい願いたいと思います。
  43. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  44. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) 速記を起して。  以上二十件の請願は、これを採択し、議院の会議に付し、さらに内閣に送付を要するものと決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。なおこの請願二十件につきましては、参議院規則百七十一条に基く意見書を付して政府に送付いたしたいと思いますが、その意見書の内容は、ただいま高田委員から御発言になった通り趣旨であります。詳細な点は委員長に御一任いただきたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議止し」と呼ぶ者あり〕
  46. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) それではさよう決定いたします。午後一時半から再開いたします。それまで暫時休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      —————・—————    午後二時二十五分開会
  47. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) これより委員会を再開いたします。  午前に引き続き請願議題に供します。大阪拘置所移転関係請願五件の審査を行いたいと存じます。室長から説明をしていただきます。
  48. 西村高兄

    専門員西村高兄君) 大阪拘置所に関します請願を御説明申し上げます。大阪拘置所に関します請願は全体で五件ございまして、三百十六号、これは大阪拘置所都島区内移築反対に関する請願、これは大阪市のこの都島地区にお住いになっている竹村さんの請願でありまして、紹介者は亀田得治先生であります。これは移築反対の請願でございますが、同趣旨請願がほかに二件ございます。それは三百二十八号、これは大阪市都島区、この地区内にお住いの山野さんからの請願で、紹介者は須藤五郎先生、それから同趣旨請願が四百六十号、これはやはり都島区大東町に住んでおられる本田玉子さんほか二万三千五十名の方の移築反対の請願でありまして、紹介者は一松定吉先生、左藤義詮先生亀田得治先生、森下政一先生、加藤正人先生、この五人の先生の御紹介であります。この三件は移築反対の請願でございます。  それからもう一つ一千四十五号というのがございます。一千四十五号と申しますのは大阪拘置所移転にかかる国有財産不当処分反対請願でございまして、これは大阪市都島区にお住まいの伊藤さんの請願で、紹介者は亀田得治先生でございます。それからもう一件、千三百四号というのがございます。これは大阪拘置所茨田横堤移転に関する請願というのでございまして、これは大阪府の守口市にお住まいの船谷さんほか四十三名の請願でございまして、紹介者は一松定吉先生でございます。  その内容についてごく簡略に御説明申し上げますと、ただいまの三件の、三百十六号、三百二十八号、四百六十号の移築反対の請願は、大体の趣旨が教育施設がその付近にあるのでありまして、その教育施設を利用する側、教育の立場に立って見て、ここに移築されることが支障を生ずるというのでございます。それからなお産業的な見方、それから緑地計画がある所のようでございますが、観光施設の点から、それから道路計画があるようでありますが、やはりそういうような点から、ここの移築に反対というのでございます。これにつきましては先ごろ当委員会から宮城先生羽仁先生、赤松先生議員派遣で御調査においでになっておりまして、その際に大阪拘置所移築問題に関する資料というのを作ってお手元に差し上げてございまして、これには大阪拘置所の状況でございますとか、都島地区への移築反対に関する諸事情など一応取りまとめておきましたので、あまりこれはこまかいことくだくだ申し上げることを差し控えることにいたします。そういう反対の陳情が三件でございます。  それからその次の一千四十五号は、現在ございます拘置所北錦町にございます拘置所はこの敷地が一万七百三十九坪でございまして、これが坪約五万円くらいの値打ちがあるもののようでございます。そしてこれが全体の価格といたしましては五億三千六百九十八万六千五百円になるわけでございます。それから今度移築いたしましょうという都島地区、この拘置所の敷地が一万九千百七十六坪でございまして、これが坪当りの値段が約六千円、それでこれの全体の値段は一億一千五百六万三百二十円ということになります。これは近畿財務局の評価でございますが、この両方を交換いたしますと、その間に非常に大きな開きがございますので、これは交換をするなら正当の価格で交換すべきものであって、こういう価格の差があるものを交換するということは利権運動に利用されるおそれがあるんで、そうなればこれは不当処分であるので、これに対する交換は反対である、こういう請願でございます。  それから最後の茨田横堤町への移転はここへのいろいろな立地条件を考えまして適当な条件を備えておるので、ここへ移転してもらいたいという誘致運動でございます。  以上五件その内容を御説明申し上げました。
  49. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) これらの請願に対し法務当局から御意見がおありのようですからお願いいたします。
  50. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 大阪市都島の延原製作所工場用地は、民家からかなり隔たった場所にあり、一般民衆との接触面が比較的少くて、地元への悪影響はほとんど考えられないほか、拘置所建設敷地としての立地条件が、きわめて好適であるものと考えております。請願趣旨は、付近に文教施設が既存するから当所に拘置所を設置すべきでないというにあるようでありますが、左記理由により拘置所の存在が文教施設に悪影響を及ぼすことは少いと考えます。第一、予定敷地から約四百メートル隔たった地域に都島工業高等学校があることは事実でありますが、それは直線距離であって、その間に十条製糸工場があり、これを迂回する距離は約八百メートルとなるのでありますから、直接の心理的影響があるものとは考えられません。他の文教施設は右高等学校よりさらに隔たっております。第二、現在の拘置所付近にもわずか百四十メートルの距離に近接して西天満小学校、同幼稚園があり、また天満敷地付近にも約二百四十メートル隔てて菅北小学校の存在することに比べますれば、都島敷地につきましてはこの事情は前者にまさっていると申されます。しかも現在の拘置所に近接する西天満小学校のごときは、市内でも有数なる名門学校とうたわれておると聞いておるのでございます。第三、全国の矯正施設におきましても近隣に文教施設のある所がきわめて多いが、ことさらに悪影響が問題として取り上げられることはございません。第四、現在矯正施設は旧時代の牢獄のごときものから脱却しつつあるのでございまして、特に本施設は従前のものと全く面目を一新した明るい新様式のものを計画しているのでございまして、学校教育に悪影響を及ぼすような陰惨な施設にはしない方針でございます。以上のごとく、都島敷地に拘置所を建設しても、付近の文教施設にことさら悪影響を及ぼすとは考えられないのでありますが、法務省において過去五カ年余敷地獲得に努力した経過にかんがみますると、この敷地をおきましては他に大阪拘置所建設に適する敷地を得ることは不可能でありまするから、この点を了とせられまして、建設に御協力をいただきたいのでございます。  なお、大阪拘置所用地の不当処分の取消しに関する請願につきましては、大阪拘置所移転改築のための敷地として国有地たる大阪市北区北錦町の敷地一万一千九十二坪二合一勺と、延原観太郎氏所有の同市都島区友淵町、善源寺町所在の旧延原製作所跡の敷地一万九千一百七十六坪七合二勺及び建物延べ二千三百八十六坪四合九勺を交換いたしましたが、これは次の評価額に基いて行われたものでございます。国有地は土地の坪数が一万一千九十二坪二合一勺で、単価は一万三千五百二十八円、価格は一億四千六万四千四百円でございます。延原所有地は土地が一万九千百七十六坪七合二勺で 単価は六千円、その価格は一億一千五百六万三百二十円となっております。これに建物二千三百八十六坪四合九勺を加えまして、この単価が一万八百四十六円でございますから、この価格が二千五百八十八万六千二百二十五円となります。合計いたしまして延原の方が一億四千九十四万六千五百四十五円でございます。この評価は近畿財務局に依頼して行いましたもので、近畿財務局におきましては第一に相続税課税標準価格をとり、第二に土地評価関係精通者として大阪商事店主、住友銀行本店不動産部副長、北税務署直税課資産税係安田銀行大阪支店不動産課長、三菱信託銀行大阪支店長代理等から意見を徴しました。第三、安田信託銀行の鑑定等を参酌し、慎重に各方面の事情を考慮して厳正に評価したものでありまして、右の評価額はきわめて適正なものと認められておるのございます。  かような厳正な評価に基いて本件交換手続を進めているもので、国有財産を不当に廉価に処分した事実はないものであることを御賢察賜わりとうございます。  次に大阪市城東区茨田横堤町に、大阪拘置所移転することに対する請願について御報告申し上げます。茨田地区につきましては、以前この方面の敷地について調査したことがありまするが、さらに今回移転促進の語順ありましたので、再度この敷地について調査検討をいたしましたところ、第一、地質が軟弱で地盤が沈下するおそれがあります。第二、工事施行に当って盛土整地のため莫大な経費と日子とを要します。第三、排水関係におきまして、水面との高さの差が僅少で、排水勾配がとれないため、排水工事がきわめて困難であり、また衛生上の見地から支障があるものと思われます。  以上の理由から適当な敷地とは考えられないのであります。  一方、法務省では拘置所移転候補地として大阪市都島区役所在の旧延原製作所跡の敷地の入手、その手続も進めており、この敷地はあらゆる面から検討しても拘置所設置の敷地としては茨田地区の敷地よりはるかにまさっていると認められまするので、都島地区に拘置所設置の工事を進めたいと考えておる次第でございまするから、御了承をお願い申し上げます。
  51. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) 御質疑のおありの方は御発言願います。
  52. 一松定吉

    一松定吉君 まず第一に伺いますが、法務省の方では、この拘置所というものの建設を、美麗にして文化的のような建築物にすれば、それが地方住民の教育には影響がないというような御意見であるようでありますが、家をどんなにりっぱにし、どんなに文化的の建物にいたしましてもです、これは拘置所であると、つまり刑法の制裁を受ける者がここに留置される所であるということそれ自体が、地方民に対する思想上悪影響を及ぼすということはお考えにならないのですか。どうですか、その辺のところを一つ伺いましょう、家がりっぱに建って文化的の施設があれば、その中に入れる者が世の中の一番の、とにかく悪事を働いたということにおいて刑事上の制裁を憂くべきことが予定されておる者が、今後取調べをされる者が、収監される場所であるということであっても、それは教育上には影響はないのだ、こういう御意見でありますか、どうですか、それをお伺いいたします。
  53. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 拘置所に留置せらるる人々は、御承知の通りに、これは被告ではありまするけれどもが、犯罪者ではございません。従ってこういう人々をば直ちに犯罪者の観念をもって扱いたくないと、私どもはかねて心がけておるものでございますが、しかしそういう被疑者をば拘置する場所が教育上に悪影響はないかということでございまするならば、それは絶対ないとは申されますまい。そういう疑いのある人の集まる場所を教育の場所から遠ざけられるならば、それは私は遠ざけたいと思います。従ってことさらに悪影響を及ぼすような所にはもちろん避けたいと思います。
  54. 一松定吉

    一松定吉君 本件の、延原のこの土地にごく近く大阪市立の都島工業高等学校、第二高等学校、それから大阪市立高倉中学校、高倉小学校、淀川小学校、桜宮の高等学校、都島小学校その他五カ所に幼稚園があるというようなことはお認めにかりますか。
  55. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 最短距離の都島高等工業学校は、先刻申し上げました通りに四百メートルの所にございます。従ってその他の学校はすべてこれより遠い距離にあるものと思われます。しかし一方に現在の大阪の拘置所のすぐ近くに西天満小学校がございまするが、これは百十メートルの距離にございます。しかしこの学校の距離が近いから立ちのけというような議論にはなっておりません。狭隘であって過剰拘禁になっておるということを見るに忍び得ぬというのが移転の条件であるように私は聞いておるのであります。  なおしかも一松委員からも、かねての御要求は現在の場所をもっと大きく拡張して、そこに建てろということでございますが、そうなりますというと百四十メートルの距離には西天満小学校があるのであります。だから現在のこの都市付近においては、若干の距離に学校のあることは免れ得ません。まあせめて四百メートルくらい隔たって、その間に大きな製糸工場もあることであり、直接目にも触れないことであり、一面川にも面しております。三方には人家は一軒もございません。私どもは都市の中においては比較的悪影響の少い所であると認めておる次第でございます。
  56. 一松定吉

    一松定吉君 私は、今現在の大阪市の若松町の刑務所の付近に天満小学校があるから、そういう所に比ぶれば、都島のこの延原の土地の周囲に学校があるからといって、それは同じようなことではないかということを伺ったのではありません。現在の若松町にある拘置所はもう数十年前からあることなんだ。それはその地方の人はもうよしあしにかかわらず結局これは黙認しておるわけなんだ。ただ問題は移転の必要あるかないかということは、今あなたの言われたように、現在の拘置所の構造では、今年々歳々未決の人のふえておるのを収容するには狭いから、これをどこかに移転しなければならないということが、いわゆる法務省の御意見であるのであって、天満小学校が近所にあるから云々というものではない。こちらの都島では先刻あなたのお認めになったようにこういうような高等学校、中学校、小学校、幼稚園というもの十数学校がある。その距離は非常に遠方であるかしらぬけれども、ともかくこの都島の延原の土地を取り巻いておる周囲にこれのあるということ。それが教育上影響がないとは言えないのではないかということについて、さっきお尋ねしたところが、それはあるよりもない方がいいんだ。それから多少の教育上影響があるだろうということをお認めになったのでこれはまあその程度にとどめておきます。  それからその延原の土地の、今度は拘置所を移転する土地の周囲に錦淵紡績の本部並びに淀川工場、並びに十条製紙都島工場並びに敷島紡績城北工場等が並んで建っておるということはお認めになりますか。
  57. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 認めます。
  58. 一松定吉

    一松定吉君 こういうような大工場に勧めて、日夜ここに出入りをする工場の使用人、工場に働く人々が、その付近に拘置所の設置されることによって、思想上に影響はございませんか。
  59. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 思想上の影響ということはどういうふうに考えたらいいものでしょうか、いやな思いをするということであるならば、それはあると思います。いやな思いをさせたくはございませんから、しかし今日思想という言葉を使いますというと、どうもちょっと私ふに落ちませんが、感情上には私はいやな思いをさせられるだろうと思います。また昔の孟母三遷の教えといったようなことから言えば、私はなるべく民家の付近には拘置所などは置かぬ方がいいと思います。
  60. 一松定吉

    一松定吉君 私の言うのは、思想上影響はないかというのは、今あなたのおっしゃるように、そういうような世の中に害毒を流したとも嫌疑をもって収容される人が数千人もそこに入れられておる、それを朝夕工場に通う人々がまのあたりに見ることによって、自分らのいやな思い、あるいはそれによっていわゆる悪い方に感化されるというようなことはありませんかと、こういうことを聞くんです。
  61. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 絶対にないとは申し上げられますまいと思いますが、私は大都会の付近に拘置所を持つ場合におきましては、若干の影響もありましても、なるべく影響の少い範囲において許していただきたいということを考えるものでございます。
  62. 一松定吉

    一松定吉君 それはまあその程度でよろしゅうございます。   それから、この本件の予定地の中央部に京阪国道、淀川堤防上の道路と連絡するという大阪市の道路の計画はすでに予定されておって、その本道路がすでに九割まで完成をして、しかも本件拘置所の建設地の東端においてこれが停止中のものであるということはお認めになりますか。
  63. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 私からお答えさしていただきます。  現在、ただいま仰せにありました敷地を貫通する道路という点でございまするが、民家の墓地と鎌紡敷地を絡まして延原製作所敷地に到達するというふうに思われるこの道路でございまするが、その民家の墓地の移転ができまして鐘紡敷地の一部を取り込んで実施をする、それができますならば、拘置所内に、つまり予定拘置町内に設定せらるべき通路と連絡することが可能でございまして、実地調査の結果、ごらんのような図面になりまして貫通することになるわけでございます。私どの法務省側としてみますと、民家の墓地と鐘淵紡績さえ了承されることならば、ずっと続いて延原の敷地の中を通ります道路を作りますことは、法務省にとりましても利便するところでございます。
  64. 一松定吉

    一松定吉君 私の言うのは、その道路が設計の予定地であって、現在九割までそこに道路ができておって、拘置所の建設地の東側に突き当って、そこで停止しておる、その道路が。いわゆるその延原のそういう土地に突き当って、これからの先に進むというについては延原の土地を貫通しなければならないという段階にあるということをお認めになりますかと、こう言うのです。
  65. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ただいま仰せでございまするが、延原の敷地に突き当って停止しておるのではございませんので、私の承知しておりますところでは、延原の敷地よりもずっと東側の民家と鐘淵紡績の敷地のところで突き当って停止している状況に聞いております。従いましてそこの部分が了承されて、さらに延原の所まで突き当るという所へ参りますれば、それから先は法務省としても道をつけることにやぶさかでないというふうに先ほどお答え申し上げました。突き当っております所は、延原の敷地の所ではございませんで、民家の墓地と鐘淵紡績の敷地の所で突き当っておる。
  66. 一松定吉

    一松定吉君 それはその程度にしておきまして、次にはこの同じ都島の区内に法務省所管の大阪少年鑑別所というものが設けられておって、しかもその鑑別所は非常に不完全な建物であり、その中に収容せられております少年が常に脱走し、あるいは放火し、あるいは暴行をし、あるいは逃走等の各種の犯罪が頻発しておって、しかも少年鑑別所の責任者においては、ずいぶんそういうような取締りに困っておるという事実、並びにかくのごとき事実があるがために、この都島の住民が非常にこの少年鑑別所のあることに不平、不満を持っておるという事実をお認めになりますか。
  67. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) お答え申し上げます。  ただいま一松委員の仰せの少年鑑別所が都島区内にありますることは事実相違ございません。この鑑別所ができました当時、施設が不十分でございましたために、逃走をいたしました少年たちもあるいは放火をいたしました少年もおったことは事実でございます。しかしながらこの鑑別所も職員のいろいろな努力によりまして次第に逃走事故も減って参りまして、たしか昨年度は、ちょっと数字はあとから調べた上で申し上げますが、昨年は非常に少くなって参っております。その点で、逃走いたしました際に近所の方々に御迷惑をかけることもございまするが、非常にこの点申しわけないと思いまするが、だんだん減って参っておる点を御了承願いたいと思います。
  68. 一松定吉

    一松定吉君 減って参っているかどうかわからないが、ともかくそういうような事実かあるということはお認めになったようですが、そのことについて都島の人々が、かくのごときものをこの都島区内において置かれることは困るから、どこか他に移転して下さいということを当局に要望しておるような事実はございますか。
  69. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 私が先般大阪の現地に参りましたときに、口頭でもそういうことを承わりましたので、私はその鑑別所を見て参りましたが、それはまことに木造のきわめて不完全な設備である上に、鉄条網等をもって囲ってあって、この都市の中に置いておくのにはすこぶる不恰好なものであり、かつ影響の悪いことも承認せざるを得ません。これにつきましては、私どもは十二分に考慮するということをお答え申し上げてございます。
  70. 一松定吉

    一松定吉君 それでは法務省としては、こういうものがこの都島区内にあるということについてはおもしろからないから、これをどこかに移転するというようなお腹づもりがあるということは御承認なすったのですね。  それならば、その次に、この都島区の西の方を流れておるところの淀川沿岸に、大阪の観光地帯の築造計画があって、その一部にはすでにこの都島住民の浄財によって、サクラの木をたくさん植えて、それで淀川の清流と相待って大観光地帯にするという計画が着々進んでおるというようなことは御存じですか。
  71. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 聞いておりません。
  72. 一松定吉

    一松定吉君 聞いておりませんか。そういう事実を聞いておらないとすれば、それはそれでよろしうございます。それは取り調べればわかります。  それから、その次にこの土地の鑑定でありますが、お手元に本年四月十四日付の請願者の代表として山野平一委員長から、この大阪拘置所設置計画の廃止に関する請願事件の書類として、この天満駅の裏にある、すなわち北区北錦町一番地の土地に対するところの価格の鑑定並びに都島区の本件の土地に対する価格の鑑定書というものが提出せられておることはお認めになりますか。
  73. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) さように承わっておりますが、このことにつきましては、竹内経理部長からお答え申し上げます。
  74. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 鑑定書が出ておりますことは承知いたしております。
  75. 一松定吉

    一松定吉君 その鑑定書は、大阪における大阪不動産鑑定協会という、いわゆる大阪高等裁判所、大阪地方裁判所、大阪家庭裁判所、大阪各簡易裁判所から鑑定を命じられ、また行政諸官庁から鑑定の委嘱を受け得るところのいわゆる公的機関の大阪不動産鑑定協会という、一つのこれは法人でありまするか、組合でありまするか、わかりませんが、そういうようないわゆる協会の鑑定人十二名から出されておるということは間違いはないのでございましょうね。
  76. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 仰せの通りでございまするが、少し私どもの方で調査をいたしましたところによりますると、大阪不動産鑑定協会として地方裁判所あるいは行政官庁から鑑定の委嘱を受けた事実はないようでございます。そのメンバーの個々の方が鑑定を委嘱されたことはあり得ると思います。
  77. 一松定吉

    一松定吉君 それは裁判所あるいは諸官庁から個々に鑑定を命ぜられた人々の集まりが、この鑑定書を出したということはお認めになるのですね。
  78. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) その通り認めます。
  79. 一松定吉

    一松定吉君 そういたしますると、これらの鑑定人は十二名、その十二名が一堂に会して、この両方の地所を、不動産を十分に鑑定した。その結果はこの鑑定書に表われておりまするように、いわゆる法務省のお持ちになっておる天満駅裏の土地の価格は平均一坪当りが二万二千円である。これを総坪に乗じてみると、二億三千六百二十七万四千六十円になる。それから今度の移転の予定地である延原の土地はいわゆる一坪の平均価格は五千五百円、これを坪数に乗じますると一億五百四十七万一千九百六十円となる。そうすると、この両者の価格を比較いたしますると、北錦町の価格は延原の価格よりも一億三千八十万二千百円というものが高い値段であるということになっておる事実はお認めになりますか、この鑑定の結果。
  80. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 鑑定協会の鑑定書記載の価格と比較いたしますと、ただいま御指摘の通りでございまするが、鑑定協会の価格そのものにつきましては、私どもはいまだもって適正なる価格だとは考えておらないのでございます。
  81. 一松定吉

    一松定吉君 この鑑定書の価格と、先刻松原政務次官のお読み上げになったところのいわゆる安田信託だとか、あるいは近畿財務局だとかというようなものの鑑定した価格とたいぶ違う。どちらが正しい価格であるかということの断定ができますか。
  82. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 私どもは近畿財務局が評価いたしました価格をもって適正なるものと信じておりまするが、この鑑定協会のそれでは鑑定が間違っているのであるかということにつきましては、これを断定するわけには参らないのでございまして、やはり精通者の見解であるというふうに考えておるのでございます。
  83. 一松定吉

    一松定吉君 そういたしますと、このいわゆる協会の鑑定と今松原政務次官のおあげになった近畿財務局や安田信託の鑑定とはどちらが正確であり、どちらが不当であるということは、法務省としては言明ができない、こういうことに承わってよろしいのですね。
  84. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) さようではございませんでですね、私どもとしましては、近畿財務局の評価を適正なるものと信じておるのでございます。けれども、片っ方の鑑定の結果は一つの精通者の意見というふうに承わっております。
  85. 一松定吉

    一松定吉君 あなたの方があなたの方の採用する鑑定が正しいものと思うておるということはわかります。しかしながらその後にこういうような、いわゆる大阪の鑑定に対する権威者十二名がお互いに合同して、十分検討の結果現われたところの鑑定価格は、自分らの信じておる価格と違うからしてこの方が悪いと、信じている価格がいいのだということを、比較して今日断定ができるかと聞くのです。あなた方の方で近畿財務局や安田信託等の鑑定がなるほどこれはいいということを考えたことには、私異存ありませんよ。今日その後においてこういう鑑定が出たときに、いわゆる神様の立場から見て、これはどちらが正しいかということの断定はできませんでしょう。それを承わればいい。
  86. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) なぜ近畿財務局の方の評価を措信して片っ方の方をそれほどに見ないのかという御質問かと思うのでございますが、もとより私どもは土地そのものについてみずからこれを評価するだけの能力を持ち合せあおりませんから、しょせん権威者あるいは精通者の意見を聞くよりほかに道はないのでございまするが、それにいたしましても評価をいたします方法それから評価の基礎となりました理由をお示しいただきませんと、ごもっともと批判もできないわけでございます。で翻りまして、大阪不動産鑑定協会の鑑定書によりますと、右鑑定としまして、現場に臨み当該土地の位置、交通上の便否、地勢、地形地環境、利用価値、利用現況等を精密に調査観察の上、合同審議を行なって、左記の価格を適正妥当と信じ評価した、かようにございまして、評価の方法は合同審議の形式をとったということが第一でございます。  それから第二は、今申しましたようないろいろの理由をあげておりますが、要するにとれらを総合して、一種の勘で鑑定をしたかのごときに見えるのでありまして、この点に私ども批判をします余地がございますので、先般一松委員からこの鑑定書の御提出がありました直後、直ちに調査をいたしたのでございますが、調査といたしましても、現地の管区長から正式にこの鑑定協会に向って、その根拠、理由をお示し願いたいということをお願いしたわけであります。それにつきまして回答をいただいておりますが、その回答によりますと、鑑定の方法としては、今の合議制度——合議審判をやるわけであるが、全員意見が一致した価格を、不動産鑑定協会の名をもって答申するのが通例である、しかも今回の評価につきましても、そのような方法をとったという、方法の点につきましては、そういうお答えがありました。それから鑑定の根拠につきましては、依然として大した理由を示して下さいませんのでございまして、「各土地の経済価値をあらゆる角度から検討するとともに、広く類似の取引価格との権衡を考慮参酌するなど、この種土地の価格判定上必要と思量せらるるすべての事情を総合考験して評価したのであります。」かように理由を示しておるのであります。それでこれだけでも実は判断がしにくうございますので、なお鑑定人に名を列しております佃順造御本人、それから十一名の鑑定人がございますが、そのほか二、三の方に、内々どういうような根拠で評価をなすったのであろうかというような点を、非公式にお尋ねしたわけでございます。それによりますと、佃さん御本人は、大体北錦町の敷地につきましては、現場の土地の価格によるということを建前としまして、この土地を南北に三分して、西寄りの商店街に接する地域については、坪当り五万円ないし六万円、残りの三分の二のうちで、東寄りの地域は、中央の地域よりやや価格が下回るという見方もあったが、結局双方の土地を一括平均して、一坪あたり一万五千円と評価しました、ただし各地域とも道路敷地として二割五分域を見込んだものでありますというようなことを説明しておりますし、それからさらに中西兵二という会員がございますし、勝清一という会員がございますが、その勝鑑定人が、これは大和銀行本店信託部におられる方であります。その方の御意見を徴しますると、まず卸売市場が御承知のようにございますが、この卸売市場は早晩解消されるであろうというような観点に立ちまして、評価は多年の経験の勘によったものである、それから大資本を融資しなければ、この値段はできない、目的のない、無目的に不動産投資をしようとする人が買う値段は、一万二千円くらいである、現在の状況から見て評価すれば、一万二千円くらいとなるであろうが、われわれは期待値段、期待価を見て鑑定をしたというような御意見がありますし、また中西鑑定人の話によりますると、公売すればおそらく一万円くらいのものではなかろうかというよう率意見もありますし、さらに同氏の意見としまして、最初この鑑定は佃さんに依頼があったが、佃さんは、問題となっている土地だとしてきらって、中西さんの方へ話を持ち込んできた。で中西氏もこれはきらって、結局鑑定協会ならば、個人の資格ではないからしてかまわないだろうということで、合同審議ということで、この鑑定と引き受けたというような事情もうかがえるのでございます。そのほか橋本という鑑定人の意見も聞き合せますと、やはり佃氏と同じように、この土地は三つの部分に分けて鑑定をしたが、まあ私は一万五、六千円見当ではないかと思ったが、高い値段を主張する者が多くて、特に現役の者にそういう主張が強かったというような、非公式な意見を述べておられます。要するにこの鑑定の方法が、個人々々に向ってこないで、一つの合議体のような、合同審議というような形をとっておりますので、あるいは全会一致ということにはなっておりますけれども、個々の鑑定人の中には、かなり個人的な意見としましては上下があるのではなかろうかということが推測されるのでございます。  そして今申したような鑑定方法、基礎理由というようなものを、今度は近畿財務局の評価いたしました理由と比較いたしますると、近畿財務局の方におきましては、先ほども請願の御説明の中で政務次官から申し上げましたように、近畿財務局の方ではもっと詳細な理由を説明をいたしております。たとえば価格について申しますならば、まず価格評定の基礎といたしまして、相続税課税標準価格というようなもの、その課税標準価格が毎年調整を受けておりますが、その調整をした価格、それを近隣のものと比べましてずっと書き出しております。そのほかに、精通者の意見としまして、たくさんの人から意見を徴しております。でその精通者の中には、むろん銀行筋の、この不動産を取引しております会社もあるわけでございまして、これらの人たちは現地に臨みまして、実際に当って見ておるのでございます。そういう意見を全部徴しております。ほかに財務局自身の価格評定という見解を、数ページにわたって書き上げております。これらの記述を詳細に検討いたしますると、精通者の意見を全部寄せましても、さらに高い評価を財務局としては出しておるのでございまして、この鑑定協会の評価と、そこに食い違いがございますけれども、鑑定協会の評価は、先ほど申したような理由説明が十分私どもを納得させるに至りませんので、今は一つの精通者の意見というふうに考えておるのでございます。
  87. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  88. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) 速記をつけて。
  89. 一松定吉

    一松定吉君 このあなたの方からここに出しました鑑定協会の十二人の鑑定人に対して書面で回答を求めたその書面によりますと、その「所属会員は定例会議に先だち個々に鑑定物件の現場に臨み当該土地の位置、水陸交通上の便否、地勢、地形、環境、利用価値、利用現況等を精密に調査観察を遂げたる上にて会議に臨み、各自が所信を述べ合いその当否を論議検討して全員の意見が一致したる価格を、大阪不動産鑑定協会の名を以て答申するのが通例であります。今回御問合せを受けまして北区北錦町及都島区友淵町所在土地の評価鑑定についても叙上の方法によって鑑定したものであります。」こういうようにこの鑑定の方法が書かれておる。しかして「鑑定の根拠」として「当協会所属の鑑定人は多年不動産に関する業務に従事し、其間裁判所及行政諸官庁から裁判裁判外の諸般の不動産鑑定評価を受任している関係上、大阪市内及その近郊の土地の価格については何れも精通しているのでありますが、上記二カ所の土地の評価に当っては、各土地の経済価値をあらゆる角度から検討するとともに広く類地の取引価格との権衡を考慮参酌するなどこの種土地の価格判定上必要と思量せらるるすべての事情を総合考覈して評価したのであります。」と書いてある。それならばこれはあなた、あなたの、おっしゃるようなことじゃなくて、十分に信用できる書面ではありませんか、それについてただ二、三の人を内緒に呼んで、そうして聞いたと、そういうようなことが、この共同審査の結果に対する攻撃の資料にはならぬように私は思う。のみならず今あなたの御援用になった近畿財務局の鑑定は、租税公課その他のことについて調べたのである以外に、たくさんの人から意見を徴しているとあなたはおっしゃる、たくさんの人というのはどんな人です。たくさんの人というのは、いわゆるこういう常に鑑定を職業としているたくさんの人であるかどうか、その人の氏名をあげてもらいたい。
  90. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) まず第一に精密なる審査を遂げとか、広く類地の取引価格とか、あらゆる角度からとか、いろいろございますが、その精密はどういうふうに精密であったか、類地はどの類地を比較したかというようなことを具体的に私どもに示していただけませんと、抽象的に申せば皆鑑定をいやしくもする以上は、こういう事情を考慮しなければ鑑定はできぬはずでございまして、鑑定の内容がいいとか悪いとかいうようなことを私どもに判断をさせる材料としましては不十分だというふうに私は先ほど申し上げたのでございます。  それから第二の点のお答えを申し上げますが、精通者の意見としまして、近畿財務局が尋ねております人の名前をあげろということでございますが、まず大成商事の主人、これは不動産業者でございます。それから住友信託銀行本店の不動産部の池田という副長、それから北税務署の直税課資産税係の者、それから安田信託銀行大阪支店不動産課長中村正、それから三菱信託銀行大阪支店長代理長谷川氏、日本勧業銀行大阪支店次長喜谷礼二郎という方、それから勧業不動産株式会社大阪支店長代理田津勝という方等の意見が掲げられております。
  91. 一松定吉

    一松定吉君 あなたのその鑑定協会に交渉したその交渉に対する文書の書面中に書いてあることが具体的になっていないから云々ということは、それは具体的にしようと思えばされた、その上でこれは信用するとかせぬということならわかりますよ。あなたがその鑑定人の鑑定の中のその書面に表われていることが、どういうようなことと比較し、どういう場所とどういうようにしたということがわからないから、直ちにとれが措信するに足りないというような御意見でありますが、それならばそういうようなあなたの信用される程度に審査を進めた上で、これはわれわれ信用するかせぬとかいう意見ならいいけれども、そこまでいかぬでおいて、おれが思うようなことを答弁してくれないから、すぐにこれは信用されぬのだというようなことは少し行き過ぎだと思うのです。しかしこれはあなたと議論になるからもうそれ以上は申しません。要するにこの不動産協会の鑑定書によると、北錦町の土地の価格は二億三千六百二十七万四千六十円と鑑定せられ、それから延原の友淵町の価格は一億五百四十七万一千九百六十円と鑑定せられ、その差額は一億三千八十万二千百円の差額のあるということだけは、この鑑定書に書かれていることはあなたはお認めになりますね。このことがいい悪いじゃありませんよ、これはお認めになりますね。
  92. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 記載の通りでございますから認められると思います。
  93. 一松定吉

    一松定吉君 それではこの程度にとどめておきます。  それからその次の横堤町の移転の土地が、これは地質が軟弱であり、盛り土に費用を要する、それから疏水工事が困難である、衛生上よくないというようなことを松原政務次官は列挙なさいました。そういうような点につきましては、何か鑑定か何かございますか。
  94. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 鑑定はございませんが、可能な限り各方面の意見を徴しまして、調査した結果を持っております。
  95. 一松定吉

    一松定吉君 鑑定がなくて……、たれがどういうことを言ったということを明らかにして下さい。たれがこういうことを言うたか、具体的に。鑑定があれば鑑定によって、今、政務次官の言われたととが、こういうふうに鑑定があるじゃないかというなら、われわれ納得できるのだ。ただ多数の人から意見を聞いたというだけでは、その意見が果して正確な意見かどうかわからない。
  96. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 大阪に矯正施設担当の技官がおりますが、この技官を現地の調査に当らしたのでございまして、もちろん技官みずからボーリングの試掘調査をするというようなことまでやっておりませんので、関係資料を集め、また現地のその方面の応援を得まして調査をした結果でございます。
  97. 一松定吉

    一松定吉君 それじゃわからぬじゃありませんか。今、松原政務次官の列挙したような事柄は、かくかくの事情によってこうなるんだということでなければ、こういうような土地の土質について争いがあるときに、ただそういうある人の意見を聞いたとかいうようなことで直ちにそれをもって、そうしてこの横堤町の有志がここに拘置所を誘致しようということについては、これは地質としても軟弱ではない、なるほど盛り土はしなければならないけれども、それにはたくさんの費用は要らないのだ、水は非常に便利であって疏水のことも工事は決して困難ではない、衛生上といっても、これが何も不向きではない、その付近には家も何もなくてただ広ぼうたる一つの田地であるがゆえに、この場所としては最も適当しておる場所だと、こういうことを、誘致運動の請願をしておる人は言うておるのでしょう。その人の言うことに反対する意見であれば、あなたの方では反対する意見はかくかくのことによって鑑定さしたのだからこの誘致運動をしておる者の言うことは取り上げるに足りないとこなければならない。それをただ調べてみたところがそうだというだけでは、その誘致運動をしておる人の言うことと全く反対の意見なんだからそれだけではどっちがいいか悪いかわからぬじゃありませんか。
  98. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 鑑定をとおっしゃるので鑑定はしておらないということを申し上げたのでございますが、さようにあえて揚言をいたします以上は、全くの根拠のない感想を申し上げておるのではございませんで、簡単に私どもの調査の結果を御報告申し上げたいと思いますが、まず地質、地盤につきましてでございますが、この地質検査をいたしますには試掘検査をいたしますのが本則でございますけれども、急いで調査の結果を国会に申し上げたいというような考え方もありましてそれまではやりませんでしたが、そのかわりこの本敷地より約三千メートルの所に三和銀行の蒲生支店が昭和二十八年九月に竣工しておりますが、この支店の工事の際行いましたボーリングによる地層縦断表というのがございます。これは資料としまして私ども手に入れておりますが、その地層縦断表、それから大阪市付近のボーリングの結果を収録しました大阪付近、地質図表というのがございます。そのほか地質に関する文書等を参考にいたしました。ほかにこの隣接地の椿本チェーン工場の建設当時の地盤の状況等も調査いたしました上にその敷地の地質、地盤を判定いたしたのでございます。その結果によりますると敷地の地質は表土から約二十メートルまでは軟弱な粘土層から成っております。この地帯に高層建築たとえば鉄筋コンクリート作り五階建て、建坪三千坪、延坪一万五千坪といったような工事を施行いたします場合には、少くとも二十メートル以上杭打ちの工事が必要でございます。三和銀行の場合には二十一メートルの杭を使用しておるということでございますが、その後方はペデスタル式と申しまして長さ二十メートル以上の杭を千八百本程度打ち込む必要があるのでありまして、これが所要経費は少くとも七千二百万円を要するというふうに推定されるのでございます。そういうような鑑定からいたしまして、この敷地に建築することについては技術的には不可能ではないと思われまするけれども、これら軟弱な敷地に工事を施行することは避けるべきであるというのが技術者の意見でございます。その他盛り土の調査につきましても、あるいは排水関係調査につきましても流水関係調査等、今申しましたようなふうに調査をいたしておりますが、御必要がありますれば御説明申し上げますが。
  99. 一松定吉

    一松定吉君 その技術者だれですか、そういうこと言った技術者の氏名、何という人ですか。
  100. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 報告書を出しております技官は大阪矯正管区法務技官片岡勇氏でございます。
  101. 一松定吉

    一松定吉君 その方はだれからそういうような意見を聴取したのですか、その人はわかりませんか。片岡勇さんがこういう材料を集めた、その片岡勇さんにかくのごとき資料を提供した人の住所氏名。
  102. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) それは報告書には書いてございませんのでわかりませんのですが。
  103. 一松定吉

    一松定吉君 それは一つその根拠を確かめるように次回までに調査して提出して下さい。お願いしておきます。なぜ私はそういうことを言うかと申しますと、この場所に誘致するところの地主四十数人の者は、今松原政務次官のあげたようなことと反対の意見を持っておって、それが請願書に書かれておる。だからしてその請願書の意味とあなた方の片岡勇技官の調査したこととが違うなら違うということを明らかにしなければ、この土地か拘置所を移転するに適当であるかどうかということはわからない、それは一つぞひお願いをいたします。  それからこの延原の土地に対して数十筆、数百筆の抵当権を設定し、もしくは債務のためにこれが他に抵当に入っておるとかいうようなこと並びにそれはいまだにその抵当権の抹消はできていないということは、これはお認めになりますか。
  104. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 抵当権の抹消の作業は進行いたしまして、来たる六月二日までには全部完了するというふうに聞いております。
  105. 一松定吉

    一松定吉君 完了したという報告は受けましたか。
  106. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 六月二日までに完了するという報告を昨日電信で受けました。
  107. 一松定吉

    一松定吉君 それはどこからそういう報告を受けたのですか。
  108. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 大阪管区長からの報告でございます。
  109. 一松定吉

    一松定吉君 それは単なる——延原じゃなくて、その延原以外の者がそういう報告をしたのですか。延原が抵当権の債務者なんです。延原以外の者がいつまでなんということは、それは何の根拠に基いてそういう報告ができたのですか。
  110. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これは契約書の中に、移転登記をしますまでに土地の上にあります抵当権はすべて抹消して、全く負担のない、きれいな土地にしてから移転登記をするという約定になっております。従いまして抵当権の抹消といいますか、土地をきれいにする作業が契約後において延原側で進められておったわけでございますが、この土地だけについてかかっておる抵当権ではなくして、いろいろな土地に一括してかかっておる抵当権のようでございまして、抹消に手間取っておったようでございますが、そういう作業も六月二日までには全部完了するというふうになっております。
  111. 一松定吉

    一松定吉君 この土地に対して延原に対する債権者が所有権移転の禁止仮処分をしておるということはお認めですか。
  112. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) それは存じないのでございますが、一松委員のおっしゃるのは、この土地の上にある抵当権の問題ではなくして過般新聞に出ておりました仮処分のことではないかと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  113. 一松定吉

    一松定吉君 私の尋ねるのは土地であろうと何であろうと、とにかくその上に買い主が直ちに権利を行使することができないような支障のある処分行為がなされておるということを耳にしたのですが、そういうことがあるのですかと、こうお尋ねしたのです。
  114. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 先ほど来申し上げました古い抵当権の問題のほかに、去る三月初めに長島某という者からこの土地に対して仮処分の申請が出て、裁判所の決定を得たのでございます。その後本訴の提起があり、次いで幾ばくもなくして仮処分の解消申請が出され、去る四月十二日本訴の取り消しもございまして、ただいまでは新聞に出ておりました仮処分関係の訴訟は全部本訴の取り下げによりまして完了いたしております。
  115. 一松定吉

    一松定吉君 この延原の土地の上にある建物の価格は幾らに評価したのですか。さっき聞き落しましたが、いま一度言って下さい。何棟あってその価格合計幾ら、合計でいいのです。建物の価格、土地の価格と分けて下さい。土地の価格幾ら、建物の価格幾ら……。
  116. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 延原所有の土地は坪数が二万九千百七十六坪七合二勺でございまして、単価が六千円で合計一億一千五百六万三百二十円でございます。建物が建坪が千九百八十二坪八合二勺、延べ坪が二千三百八十六坪四合九勺でございまして、それに対しまして平均単価が一万八百四十六円、その合計が二千五百八十八万六千二百二十五円でございます。
  117. 一松定吉

    一松定吉君 そうすると、この建物はこのままには拘置所の建物に使用、流用はできないと思うのですが、これは結局取りこわして、そうして新たに資材を入れて拘置所に適当する建築をするものであろうと思うのですが、この建物に対する価格というものは、取りこわしてこれを拘置所を建てるときの価格に見積ると、どのくらいのものになるのですか。
  118. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 営繕課長から説明をいたしたいと思います。
  119. 関根達夫

    説明員(関根達夫君) 私よりかわってお答えいたします。この工事をやりますにつきましては囚人、受刑者を相当入れなければならぬのでございます。そのために仮設建築物を作りまして、この工事期間中受刑者を収容せざるを得ないわけでございますが、この仮設建築物の建設につきましてはおおむね単価は二万円程度は必要になるのでございます。ところでこの交換は一万円強に評価しておりますので、仮設建築物に二万円程度の単価をかけて作りますよりは、これを手に入れた方がはるかに安い結論になるのでございます。
  120. 一松定吉

    一松定吉君 建物が利用できるのですか、拘置所に。それを聞くのです。
  121. 関根達夫

    説明員(関根達夫君) 建築途上におきまして受刑者を収容いたす関係上、受刑者の泊り込み所を作らなければなりません。それに付随いたしまして看守の合宿所等を必要とするのでございますが、これは通常新しい資材を投じまして仮設建築物としてやっておる例になっております。今回延原製作所から問題の建物を得ることによりして、この仮設建築物を作らなくても済むという結論になるわけでございます。
  122. 一松定吉

    一松定吉君 そうするとその拘置所を建てるまでの間に、仮設建築物として、これに工事に関係する人を寝泊りさせる、そういうことに必要だと、こういうことですか。——私のお尋ねするのは、この建物は拘置所の建築に流用もしくは利用はできぬものかと、こう尋ねるのだから、それに対して簡単に答えてくれればいい、利用ができるかできぬか。
  123. 関根達夫

    説明員(関根達夫君) 利用できます。
  124. 一松定吉

    一松定吉君 どういうことに利用するのです。
  125. 関根達夫

    説明員(関根達夫君) ただいま申し上げましたように建築途上において必要な泊り込み所、合宿所等に当てますのが主たる第一の目的でございます。それから建物の全部ではございませんが、一部には、将来できます拘置所のために倉庫等に使用できるものもあると存じております。
  126. 一松定吉

    一松定吉君 その取りこわしに従事するとか何とかいう未決囚とか、囚徒というようなものは、自分の刑務所から通勤するというような程度であって、この中に入れる必要はないじゃないですか。あるいは泊り込みとか、宿直というような人は常置する必要があるけれども、この土地を売り払ってりっぱにするために堺の刑務所におる既決囚をここに連れてきて泊らせておいて、不完全な施設の建物に収容して工事に従事させるよりも、朝出て夕方帰ることにし、工事を監督する者だけがその建物内に居住すればいいのじゃないですか。こんな不完全な建物を利用して、これにとどめ置いて工事に従事させるとすれば、幾多の不便不利を感ずることは申すまでもありますまい。延原の建物は非常に朽廃しておって、工事に従事する囚人を収容できる建物ではないのです。しかるにこの建物を利用して囚人を収容するというようなことは、君の良心に恥じるような答弁ではないですかね。
  127. 関根達夫

    説明員(関根達夫君) 現在堺の刑務所から通勤させたらよろしいじゃないかというようなお話でございますが、堺の刑務所は現場から自動車で約一時間近い距離にございまして、そこから……。
  128. 一松定吉

    一松定吉君 それなら今の延原のそういう朽廃した土地に対して囚徒を収監するだけの施設ができますか、囚徒は野放しではいけないのにから……。
  129. 関根達夫

    説明員(関根達夫君) この交換取得いたしました建物は、あの敷地にある建築物の全部ではないのでございます。あの中のれんが造の堅固な建物だけを交換対象にいたしまして、その他の木造の建物は交換の対象に入っていないわけでございます。その堅固な建物を、建築途上におきましては、ただいま申し上げましたような泊り込み所等に当てまして、建築ができました上におきましては刑務所の倉庫等に当てる、そういうことになっております。
  130. 一松定吉

    一松定吉君 それは何ですか、あなたは現場に行って延原の建物を見て、囚徒をこれに収容させることができる建物だということをごらんになったのですか。
  131. 関根達夫

    説明員(関根達夫君) これは私も実地に見ましたし、その他上司も実地を見まして、建築途上の仮設建築物にかわるものとしては適当なものであるというふうに考えたわけでございます。
  132. 一松定吉

    一松定吉君 それからこれは局長にお尋ねします。政務次官からでもけっこうですが、今の現拘置所のある場所を、これを官舎、民家、警察署等を撤廃して、そこに四階建もしくはそれ以上の高層建築を建ててやるというようなことは絶対に不可能なんですか、どうなんですか。
  133. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これはまことに御期待に沿わないで恐縮でございますが、技術的に不可能であるという結論になっております。
  134. 一松定吉

    一松定吉君 それは何か鑑定書か何かあるの。
  135. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) これは鑑定を要する事項ではないように考えております。建築関係の技術者をたくさん擁しておりますので、技術者をして慎重に研究させました結果得た結論でございます。
  136. 一松定吉

    一松定吉君 それからこの延原と契約をしたについて何か内金というようなものをすでに支払いましたか。払ったならば幾ら払いましたか。
  137. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 内金というようなものは支払っておりません。
  138. 一松定吉

    一松定吉君 契約をしただけだね。
  139. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) さようでございます。
  140. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) ちょっと私から一つだけ聞いておきましょう。  価格の点が非常に問題になっておるわけですが、天満の場所ですね、今までのあれは拘置所には使わないということはいつごろそういう考え方をおきめになったのですか。
  141. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 拘置所に最終的に使わないという考えになりましたのは、都島の候補地がより適地であるということで、この方に引き移ろうという決心をしたときでございました。昨年の九月ごろであったと思います。
  142. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) そうなりますというと、都島がいいとか、いろいろまあ主張されるわけだが、法務省が。天満が絶対にいけないというふうにも聞えないわけなんですね。しかしそれはまあ程度問題だということに常識的になるかもしれないが、ともかくたびたびずっとこう移ってきているわけですね。従ってその説明の仕方がはなはだこう回数が重なるほどしにくくなるわけです。これはやはり重大な事情としてお考え願いたいのだ。もう一点は、価格ということがどれが正しいかというのは、これはなかなかむずかしい問題です。私どもも訴訟等で鑑定をお願いするともやはりたびたび違ったものが出てくるわけですね。従ってこういう交換というようなことをやらぬでも、天満の方は天満で売ったらいい、ほかに。こっちがどうしてもいいというなら適正な値段で買ったらいいじゃないか。おそらくこれは私も常識的に見当をつけておるととは、やはり相当これは交換によって延原がもうかるのだ、そうでなければなかなか売らぬですよ、相手は放さないですよ。だから、ほんとうに適正な値段で取引をやるのだというなら、天満は天満でああいう場所ですからこれはだれでも買手がありますよ、おそらく、その気になれば。そうすれば、別に問題は起らないので、こういう交換というようなことをやるから、しかもそれが客観的な標準が専門家によってつけられるようだが、しかし厳密に言うと、これはなかなかむずかしい。そこに疑惑が出てくるわけでしょう。その点どういうふうにお考えですか。こういう処分、交換というややこしいやり方は、これははなはだ適当じゃないのじゃないかと思うのだがね、そういう点から見てどうお考えでしょうか。
  143. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) まず交換の点でございますが、仰せのように、天満の土地を処分して、都島の土地を新たに予算をつけて買うということも確かに一つ方法でございますが、現に持っております行政財産を普通財産に切りかえまして、そしてこれを交換によってかえ地を得るという道もまた法規上開かれておるのでございます。御承知のように、国有財産法にその根拠法規を持っておるのでございます。こういう場合に、今仰せになったようなわれわれ管理者側の一方的な恣意によって不当に安く交換したりというような問題がややもすれば起りがちだというようなことからして、この交換に当りましては、第三者である大蔵省の同意を要するということになっております。  それで、価格につきまして同意を得ることが必要であるばかりでなく、そういうようなやり方で交換をすることの適否につきましても、大蔵省側の同意を要することが、こういう土地交換の手続上の準則となっておるのでございます。それで本件につきましても、同意を得ますためには、まず価格について大蔵省の納得する価格でなければなりませんし、またこれを交換することの適否につきましても、大蔵省の理解を得なければなりませんので、それぞれ出先機関におきまして近畿財務局に正式な同意を求めておるのでございます。そういう関係から特に評価につきましては、大蔵省の近畿財務局に厳密なる評価をお願いしたのでございまして、私どもとしましてはこの価格が適正であれば、——適正であることが望ましいのでございまして、高くある必要もなければ、安くある必要もないというような関係になっておるのであります。
  144. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) 御説明は一応わかりますが、その価格が適正なものだとすれば、それじゃそれだけの金を法務省なり国なりが出すから、じゃ相手が土地を放すかというと、おそらくその金では相手はうんと言わないのじゃないか。やはり金よりも、天満の土地が手に入るということが大きな魅力なんじゃないか、私はそういろいろな話を聞いて実は見込んでいるのです。その辺に……、あなたの方じゃそういうつもりがないだろうが、結果としてはいろいろな人がそこに入ってくる余地があるわけなんです、これは。それはむろん切り売りとか、その切り方によっても違ってくるでしょうがね。だからそれは意識しないうちに、何かこうそういう結果がいつの間にかできるようなことを法務省がしてやったということになるのは、私、非常に思わしくないと思うのですね。だからそういう点からいうと、この鑑定の価格が適正なら、一体この金で出すからお前売らぬか、こうやればいいので、それができれば一番さっぱりするのです。鑑定々々というけれども、それはごく最近は国有財産なりいろいろな処分の問題が出ていますがね、加賀山さんの家とか。だから鑑定と言うたって、なあに自分の都合のいいように合せているのだろうと、正しいことまでも一応そういうふうに見られる点がちょっとあるわけだ。だからいやしくも法をつかさどっている所管省なんですからね、その辺の扱いは、もうちょっと何か工夫できぬものか、ということを、私はちょっと別な問題として一つ考えていますがね。
  145. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ただいまの御意見につけ加えまして一つだけ申し上げたいと思いますことは、この土地を持ち込まれましたときに、実は第三者の介入ということは、とかくいろいろな投機的にものをあおったり、あるいはいろいろな弊害を考慮いたしまして、できれば直取引で交換をしたいという考えをもちまして、当初そういう交渉をしたのでございましたが、延原氏は当時は直取引はどうしても困るということで、その理由としましては、もう七十歳の老人でございましたが、この年になってまだ金もうけに天満に進出したというふうに大阪の人から見られるのが、いかにも残念だというような趣旨のことを言われまして、直取引には応じられなかったのでございますが、それで中間に天理教の関係者を入れて取引を進めたところが、その話が結局だめになりまして、もう一回直取引という話が出てきた。やっとそこでおみこしを上げて、直取引に応ずるというような実はいきさつになっておったのでございまして、私どもとしては非常に好適地であるというふうに考えたものですから、何としてもむしろ手に入れたいという気持でこの話は進行しておった、そういう経過になっております。
  146. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) ちょっと速記をやめて。   〔速記中止〕
  147. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) それじゃ速記をお願いします。  請願は本日はこの程度で一応審議を中止いたしておきます。     —————————————
  148. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) 次に検察及び裁判運営等に関する件を議題に供します。  最初に板付基地勤務者の人権擁護並びに裁判管轄権に関する件を議題に供します。  これは今井さん初めてなんですが、従来から何回もここで議題になりまして引き続いてきた問題です。従いまして最初に労務部長からでもいいのですが、その後の経過、それがどのように進展しているか、これはもちろん長官の方がおわかりでしたら長官から御説明を願ったらいいんですが、どちらからか……。
  149. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) 板付問題につきましては、当委員会におきまして再三御審議をいただいているのでございますが、調達庁といたしましてもその後県その他と協力いたしまして本問題の解決のために対軍折衝を進めて参ってきたわけでございます。直用労務者につきましては御承知のことと思いますが、その後十八名のうち一名は保安上の容疑なしということになりまして、もとの職場に復帰するようになった次第でございます。  なお調達庁といたしましてはその後諸般の情勢につきまして引き続き対軍折衝を進めている次第でございますが、これらの情報に基きまして、空軍司令部におきまして、この問題につきまして調達庁の意見も参酌いたしまして、最終的な決定をいたすことになるわけでございますが、そのときまで、なおその後におきましてもできるだけ努力いたしまして保安の容偽のない者が保安の容偽に該当するというようなことにならないように、さらに努力をいたしたい、こういうふうに考えております。
  150. 高田なほ子

    高田なほ子君 概略の経過について御説明があったわけですが、しかしそれではあまり抽象的で満足な意を表することができないことをはなはだしく遺憾に思います。特に新長官がこの席にお見えになりますのですが、板付問題は単に板付問題ではなく、全国の駐留軍労働者の当面している問題として、私どもは本問題を非常に実は重要視しておるわけでございます。今経過の御説明がございましたように福岡地方裁判所は三月二十三日付四名の即日解雇処分は労働組合法第七条第一号違反として解雇無効、停止を明示しておるわけでございます。この仮処分は明らかに日本裁判権の範囲内において行われた問題でありますが、その後これらのことについての執行がなされておらないという事実であります。さらに福岡の地裁では五月十日付をもって次のような賃金支払いに対する命令を発しておるわけであります。数字を申し上げて御質問を申し上げたいのですが、山口、それから船越、中尾、小倉、この四名に対しては当事者間の賃金支払い申請を相当と認めて、山口氏に対しては五万八千二百三十四円、船越氏に対しては二万七千百七十一円、中尾氏に対しては二万六千三百十三円、小倉氏に対しては二万六千三百五十二円及び昭和三十一年五月以降判決確定に至るまで毎月月末までに次の金額を支払わなければならないとして、山口氏に対しては一万九千四百八円、船越氏に対しては九千五十七円、中尾氏に対しては八千七百七十一円、小倉氏に対しては八千七百七十四円をそれぞれ支払わなければならないという決定がされておるわけであります。そうしてこの判決は五月の十一日に申請人がはっきりと受理をしておるわけであります。こういう執行の経過は私からくどくど申し上げる必要はないと思うのですが、遺憾ながらこうした判決が執行に至らないで司令官から全然これは拒否されている。その拒否の仕方がまことに穏当を欠くものでありまして、執行吏が春日原のAP本部に臨時パスを出してもらいたい、執行のために臨時パスを出してもらいたい、こういうことを要求しておるのであります。ところが司令官から、事前に、差し押えに果てもそういう者は入れるなという司令がきていて、その執行に参りました者の立ち入りが拒否されておるわけです。従ってやむを得ず労務連絡官のマッケー大尉のところに参りましたところが、通訳を介してマッケー大尉の意向として、公務上の問題であるから今回の事件については一切もうノー・コメントである、お話はできないんだ、こういうようなことで全く物別れになっておる、こういう状態であります。ついては現地裁判所としてはもはや取る手段がない、仮処分もこうした地裁の命令も全然受け入れられない、何ともこれはいたし方がない状態になっている。こういうような実情にあるわけであります。こういう事実に対して、ただいまの御答弁はそれぞれに努力をしておりますというのであります。具体的にどういう努力がされておりますか。こういう真相はおつかみになっておりますのですか。もう少しこの事実に基く調達庁としての見解を承わっておきたいと思います。
  151. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) ただいまお話がございました労務者は、直接雇用の労務者でございまして、直接雇用の労務者につきましては、管轄を云々するのはおかしな話でございますが、調達庁は関与いたしておりません。調達庁が関与いたしておりますのは、先ほど御説明申し上げました十八名の間接雇用の労務者についてのものでございます。私どもといたしまして、これらにつきましては関係各省とも打ち合せいたしまして、ただいま申し上げましたような対軍折衝を続けているわけでございます。
  152. 高田なほ子

    高田なほ子君 直接雇用の問題については、全然調達庁としてはおかまいにならないという方針ですか。
  153. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) 調達庁が所管いたしましております事項は、調達庁が軍に対しまして、供給という言葉になっておりますが、供給いたしまして、軍の使用のために職業の紹介のあっせんをしているこれらの労務者に対しましては、調達庁が法律上の雇用主となっているという関係にあります労務者を扱っているわけでございまして、直接雇用の労務者につきましては、労働条件の決定その他につきまして労務者及びその労働組合と軍当局と直接に話し合いをいたしている、こういうようになっております。
  154. 高田なほ子

    高田なほ子君 それはまことに私に解せないところでございます。日本の労働組合と、アメリカの軍当局が話し合って済むことなら、何も日本政府機関、あるいは日米間に結ばれたそれぞれの協約の履行ということについて、これを調整したり、また日本人の権益を守るための話し合い、そういうような場が全然ないとするならば、一体こういう不当な、私に言わせるならば不当の取扱いを受けた方の処理というものは、だれが一体責任を負うのでしょうか。
  155. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) 私から答弁いたすあれではないかとも思いますが、まあこれは調達庁、平たく申しますと、一般の労使関係におきまする使の方の立場に調達庁はなっておるわけであります。しかし直接雇用の労務者につきましては、軍がその種の仕事で使の役目に当っておる。監督官庁といたしましては労働法規の順守その他につきまして労働省、それから裁判権の問題につきましては——裁判管轄権の問題、あるいは判決の執行等の問題につきましては裁判所、あるいは法務省外交折衝につきましては外務省ということになるものと、そういうふうにわれわれは考えておるわけであります。ただ間接雇用の労務者につきましては、そのほかに調達庁といたしましては、事業主という立場になっております。団体交渉、その他調達庁が当面の事業主の仕事をいたしております。こういうことになっております。
  156. 高田なほ子

    高田なほ子君 具体的にこれらの方方の責任はだれが負われるのですか。こういう問題についての責任の所在はどこにあるのですか。私は調達庁が責任をお持ちになっておると実は解釈しておったわけです。なぜなら、これらの人たちは保安処分によって解雇された。しかしその保安処分も単にアメリカが一方的に保安協定というものを結んでおるわけではない。これは日本の調達庁もアメリカと話し合いをされて、付属協定を結ばれて、そこに保安条項というものが入れられている。それに基く不当な処分である。その不当処分に対する日本の民事権の発動である。こういうことになるならば、当然調達庁はお逃げにならないで、やはりこれに対する相当の責任をもって措置されるべきが私は至当だと思うのですが、いかがでありましょうか。
  157. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) これはもう少し詳しく説明いたしますと——した方がいいと思いますが、実は先ほどまで申し上げましたような理由で、調達庁が関係いたしております労務者につきましては、調達庁で実は賃金を支払っております。支払いました賃金につきましては、軍から償還を受ける。それから労働条件などの決定も、調達庁と労働組合との話し合いできめる。その場合、しかしきめます範囲は、調達庁が雇用主となって軍に対して提供いたしました労務者についてだけに限られる。間接雇用の労務者につきましてはそういうような仕組みになっておりまするし、調達庁の権限も、調達庁設置法に基きまして、そういうふうに限られておるわけであります。間接雇用の労務者は現在米軍、英連邦軍、合せて約十五万人足らずおります。直接雇用の労務者につきましては四万人くらいいると存じておりますが、そういう調達庁設置法の規定等から申しまして、調達庁といたしましては、従来間接雇労務者との処理の問題について取扱いをいたしております。また職務にもなっているのであります。それから保安の問題にはおっしゃる通り、保安上有害の者については軍の方から排除するというような取りきめがなされているわけございますが、さらに二年ほど前に、その実施につきまして、六十九号の協定というものを結びまして、調達庁長官と軍との間で、これらの労務者について、保安上有害であった場合には、どういうふうな手続でもって排除する、あるいは復帰するということをきめるという話し合いができております。それが六十九号の協定でございますが、その協定によりますと今度の事件につきましても、それらの協定によりまして、十八名の者につきましては、とりあえず出勤停止というような措置をとりまして、出勤停止によって、それをさらにいろいろの情報を集めた上、復帰、あるいは解雇の措置をとるという、こういう取りきめになっているわけでございます。しかし直接雇用の労務者につきましては、私どもの方の権限外の事項でございまして、そのことが、直接労働者に即時解雇という形になって現われたのではないかと思いますけれども、それらにつきましては、ただいま労働法規の順守という面、あるいは裁判、あるいは地労委の、労働委員会という手続によって、それらの労働者の保護ということがはかられるようになる。まあ間接雇用の労務者につきましても同様のそういうような段階ももちろんあるわけでございますが、それは調達庁が入っておりまして、そういうふうな取りきめをいたしました関係で、ちょっと直接雇用の労務者の取扱いが、今度の板付事件の問題についても異ったということになっているわけでございます。裁判管轄権の問題、裁判の執行の問題、あるいはこれらの問題がさらに労働委員会ほどにがかった場合の問題、それらの部門々々に応じて労働者保護の手続がとられるようになるのではないかと、こういうふうに私どもは考えております。
  158. 高田なほ子

    高田なほ子君 そういたしますと、日米合同委員会の分科会の労働者の労務関係の問題では、今申し上げたような間接、または直接雇用の労働者の権益という問題は、どういうふうにお扱いになっているのですか。私がなぜそういうことをお伺いするかというと、こういう問題が現実に起ってきているのに、今の御答弁によると、責任の所在がわからないのです、これはもう直接雇用なんだから、これはもう労働組合と軍が直接交渉で、あとはもう私は知らぬぞという、そういう態度にもとれる。それでは日本の労働者というものが守られないのです。責任の所在がはっきりしなければ、守られないのです。だからどこで一体こういう問題が守られるか。調達庁は一体全くこれにタッチしてもらえないものか。こういう質問なんです。ですからもっと要領よく答えて下さい。長いことは要らないですから。
  159. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) この問題は、まあ直接雇用の労務者の保護という面につきましても、これは日米間に、もちろん問題になっておりまして、日米間にレーバー・サブコミッティというものが持たれております。まあ日本側のその主役になっておりますのは、労働省が主役になっているわけでございますが、具体的な不当労働行為の場合、その他のそれぞれの場合に、そのサブコミッティにおいて日米間の意見の調整をはかるというような仕組みにはなっておりますけれども、一応そういう機関が設けられておるわけでございます。また間接雇用の労務者につきましては、調達庁とそれから米軍との間に意見が整わない場合もあるわけであります。この場合には、最終的には日米合同委員会において両者の意見の調整を行うという仕組みになっております。ですから一般労働保護といたしまして、労働省なりあるいは各種労働委員会あるいは裁判で、これの保護という面が、直接雇用の労務者につきましてもはかられているわけでございますが、その場合、ここにたとえば具体的に今度のような場合におきまして、それでも日米間の意見が整わないということになりますと、一つ外交問題ということにもなりまして、そのレーバー・サブコミッティで具体的な事件として持ち上げられるようになっております。まあ裁判管轄権の問題については、私はよく存じませんけれども、不当労働行為、その他につきましても、今まであるそういうようなことで解決した例もあるというように聞いております。
  160. 高田なほ子

    高田なほ子君 はっきりわかりました。従ってお伺いしたいことは、今までもこの福岡地裁の仮処分の執行については、調達庁の方でも御心配をしておって下さったはずなんです。私どもまたその御心配を実は了としておったわけです。ところが今申し上げたように、五月の十日にそうした裁判所の仮処分に基く執行を行おうとしたことに対して拒否してしまっておる。拒否されますと、今申し上げたこれらの日本の労務者は直接雇用ではありましょうが、事のいかんを問わず非常な不利益な状態に陥ってしまう。従って調達庁としては本問題に対して積極的に解決しようとする意思をお持ちになっているのかどうかということが問題になってくると思います。それは裁判管轄権の問題、あるいは労働条件の保持の問題等、いろいろそれは部門に分れていると思いますけれども、やはり日米間の意見の調整、そうした問題の一番の最高の責任はやはり調達庁が負われていると私どもは了承する。従いまして執行拒否の問題に対しても調達庁は今後ともどういうような方法をとって解決なさるのか。直接調達庁が責任がないというなら、その責任にある労働省なり、またそれらの長官なりをも入れてお骨折り下さるということは私は当然だろうと思う。そういうような方法をお講じになることができないのかということ、いかがですか。
  161. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) これはかなり内密な話でございますが、そういうようないきさつで調達庁は直接雇用の労働者を扱ってないわけです。ですから、軍と話し合いをいたしますときにも、軍の方は直接雇用の労務者については調達庁を相手にしない。調達庁は当事者じゃない。われわれはこの問題というわけじゃありませんが、たとえばほかの何らかの問題で言うと、お前の方の直接関係仕事じゃないじゃないか。筋道から言えば実はその通りなのでございます。空軍におきまして、そういう例が昨年もございましたし、陸軍におきましても同様なことになっております。ただ同じ軍に雇われております者、職場は違いますが相互にそれぞれいろいろ決定がありますれば、同じような取り扱いに軍はなるわけでございます。たとえば年末手当の問題になりますと、間接雇用の労務者が官公吏に準じまして従来一・二五であったのが下五にふえた。それじゃ直接雇用もふやそうというようなことが昨年度年末にあったわけでございますが、まあそういう密接な関係はありますので、調達庁といたしましても、直接雇用の労務者の措置につきましてはいろいろどう触るかということにつきましては、もちろん十分な、重要な関心を持っているわけでございます。関係各省におきましても、この問題につきまして、おもに労働省あるいは外務省が中心となりまして、寄り寄り会議を持って、先ほど申し上げましたレーバー・サブコミッティ等を話し合いの場所といたしまして、直接労働省から軍当局と折衝をいたすというようなふうに、現在まで直接雇用の労務者についての待遇の折衝をやっていると、こういう状況でございます。
  162. 高田なほ子

    高田なほ子君 この板付基地の不当馘首の問題については、どうも調達庁の御熱意がなかなか具体的に示されておらない。示されてこなかった。で、これは私は非公式でありましたが最高責任者のミスター・ピアスに会いまして、この間の事情も詳しく申し上げ、同時に幾多の資料も文書にして出しておきました。これに対して過般ミスター・ピアスからは御返事がありまして、いろいろの資料は確かに拝見いたした、そうして合同委員会の席上で審議する貴重な資料にしたいという意味の御返事があったわけです。そうだとすれば、今おっしゃるように、労働省とか外務省とかいうぐるぐる回りでなくて、やはりこの問題は日米合同委員会の中に持ち込まれていく問題だと考える。従いまして、大へんむずかしい問題で、明確な御返事をここで迫るということは、これは差し控えなければならない点もあるかと思いますが、もう少し熱を持って、一つ本問題の処理のために当っていただきたい。新長官に非常に私はこれを期待をかけるわけでございますが、いかがでございましょうか。
  163. 今井久

    政府委員(今井久君) お答え申し上げます。  板付の問題につきまして先ほど来いろいろ御質疑がございまして、労務部長からお答え申し上げましたような次第で、調達庁の所管いたしまする権限につきましては御説明申し上げたような次第でございます。直接雇用の労務者の関係につきましては、先ほど来申し上げましたように、労務の点につきましては主として労働省の所管になっておる。そうして合同委員会におきまして、労働分科会で日米合同委員会でこれを打ち合せをするという建前になっておるように私ども聞いております。ただいまお話がございましたように非常に大事な問題でございますので、私まだ着任日が浅いのでございまするが、お話の点十分重視しまして、今後所管事務につきまして努力いたしたい、かように考えております。
  164. 高田なほ子

    高田なほ子君 続いて法務省にお尋ねいたします。法務省にお尋ねを申し上げたい点は、先ほど私が御質問申し上げたように、この判決の執行について全く拒否されている、こういう強制執行に対する拒否というものは、私どもはどうも納得がいかないのでありますが、この強制執行を拒否された問題について、どういう法務省は見解を持っておりますか、これをお尋ねしたいと思います。
  165. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 前回の三月でありましたか、地位保全の仮処分が出ました点につきましては、法務省裁判所から判決の写しなどもらいまして一応調査をいたしたのでありますが、その後の経過のことは法務省としては事実関係を全然承知しておりませんので、むしろ最高裁判所の事務当局の方にお尋ね願った方が適当ではないかと考えております。
  166. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうも何もお答えいただけないで非常に残念でありますが、しかし法務当局としても当然こうした日本の民事裁判権が拒否されておる、しかもここで強制執行の問題も全くがえんじられないというこのことに対して、やはり法務省法務省としての見解を私はお持ちになり得るのではないかと思う。なるほど最高裁の見解も必要だと思うけれども、これは当然法務当局としても本問題に対する一応の見解というものは必要でないかというふうに考えられる。いかがでありましょうか。
  167. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 日本国の国内裁判所が正当に持っております裁判権を外国の政府が否認したというととがもしあるとするならば、それは日本政府としても抗議をするその他の外交的手段を通じまして裁判権を認めさせるというそういう措置がとられるものと思いますけれども、一体裁判権の否認があったのかどうか、その点につきましては、法務省としては現在のところ事実関係を承知しておりませんので、何とも申し上げかねます。
  168. 高田なほ子

    高田なほ子君 これはまことにもって異なことを伺うものであります。福岡の地裁の仮処分の問題は当委員会においても再三、再四ここに論議され、またその席には法務当局もおられたはずであります。しかるにその事実がありとするならば、またあるかどうかわからぬというような、こういう御見解をいただいておることは非常に遺憾とするのであります。しかしまだその資料等が御入手になれないというのでありましたならば、さっそく福岡地裁の方にその資料を出してもらって、法務当局の方の明確な見解を次回の委員会までに私は承わっておきたいと思います。いかがですか。
  169. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 法務省としては事実関係を存じておりませんが、ただ先日の朝日新聞でありましたか、新聞紙上に出ておりました限りは、あれがもし事実であるとすれば、新聞紙上に報道されておる限りは、私どもも承知いたしております。あの新聞紙の記事によりますと、ただいま高田委員の仰せられたような、賃金支払いの仮処分の命令を出しまして、その仮処分命令を債務名義にしてマッケイという米軍の士官の俸給債権を差し押えたとか差し押えようとしておるというそういう報道であったように記憶するのでございます。そうなりますというと、その仮処分命令を債務名義にいたしまして、合衆国政府を第三債務者とする債権差し押え命令、債権差し押えという、そういう強制執行ということが問題になっておるのじゃなかろうかと思うのでございます。裁判所の判断でありますので、法務省としてはその具体的の裁判をとやかく言うことはまことに穏当でない、公けの席上におきまして裁判の批判をすることは厳に慎みたいと思うのでございますが、一般的に申しまして、国家というものは外国の国内裁判所の裁判権には服しないというのが国際法の一般原則でございまして、法務省といたしましては、でありますから外国政府を第三債務者とする債権差し押え命令は日本国内裁判所ではできないという方の解釈をとっております。このことだけ申し上げておきます。
  170. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうならば日本裁判権、民事裁判権も通例、慣例上認めないということになるならば、これは私は大へんな問題だと思うのです。今の答弁を承わっておりますと、どうもそんなふうに聞えてならないわけであります。それではいけないから特例を設けて国民の権益を擁護しようとするのがこの民事特別法にあるのではないかと私は思うのです、第一条にもありますように、「国の公務員又は被用者がその職務を行うについて違法に他人に損害を加えた場合の例により国がその損害賠償する責に任ずる。」 わが国の裁判が明らかに賃金支払いの命令を出しており、それは本人の損害を守ろうとする裁判の意思であろうと思う。その裁判はやはり安全保障条約の第三条に基く範囲内における私は民事裁判の行使であるように思うのです。そうだとすると、当然国民が受けたこうした損害に対して相手の国がこれを拒否してがえんじないという場合に、国はこの損害の任に当るということが特別法の中に規定されておるものと考えられるわけであります。私の解釈は間違っているでしょうか。私はそういう場合があるからこそここに特別法が設けられて、国民の権益をあくまで許された範囲内において保護されるという規定があるのだと考えております。この点について見解をただしたいと思います。
  171. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 民事特別法の一条というのは合衆国軍隊の軍人軍属が公務上の不法行為があった場合の救済措置を規定したものでございまして、日本政府がいわば米国政府の肩がわりをいたしまして損害賠償をするという規定でございます。板付の今度の問題で賃金支払いの仮処分命令の問題はいささか事案が異なるのでございまして、私が先ほど申し上げましたのは、要するに外国政府を第三債務者とする債権の差し押え命令というようなものを日本国内裁判所が一般にできるかということを問題にしたのでありまして、それは国際法上はできない。従いまして日本国内裁判所もそういう命令を出すことは一般にはできない。そういうふうに法務省は解釈いたしておるわけでございます。
  172. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、結論として伺いたいことは、これらの地裁の賃金支払いの命令というのはアメリカに対しては全く効果のないものである、こういうふうに解釈するわけですか。
  173. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 福岡の裁判所の見解につきましては、裁判所の裁判につきましては法務省としては意見を申し上げることを差し控えます。
  174. 高田なほ子

    高田なほ子君 いやそうでなくて、福岡地裁のその判決の内容がいいか悪いか、妥当であるかないかということを言っているわけではないのであります。けれども実際問題として福岡地裁は賃金支払いのちゃんと命令を出し、その執行が命令されている。しかるにもかかわらずこれが拒否されたということでありますから、日本裁判権というものは全然無視されている。事実はこうだ。それに対して今の平賀参事官の御答弁によりますと、それは当りまえのことである、アメリカが拒否したってそれは当りまえのことだというふうに私は受けとれるのですが、そういうふうに受けとっていいのですかという質問なんです。
  175. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) そういう趣旨ではございません。法務省としては本件の事件につきまして福岡地方裁判所が管轄権を持っているかどうか、その裁判が適法なものかどうかということについては意見は申し述べないと申し上げておるのでございます。ただ一般的の問題として、外国政府を第三債務者として債権差し押え命令を日本国内裁判所が出せるかどうかということを、一般的な形で申し上げるだけにすぎないのでございます。具体的の裁判については何も申し上げない。こういうふうに申しておるのでございます。
  176. 高田なほ子

    高田なほ子君 私の質問の仕方が下手なんで、あなたのお答えと私の気持がこうぴったり合わないのではないかと思います。私は専門家ではありませんからもう少し丁寧に答弁して下さい。そこでお尋ねをしたいのですが、決して私は福岡地裁のこの命令が妥当であるか妥当でないかというようなことを法務省にお尋ねするほど私も抜けておりません。そういうことを聞いているのではなくて、御存じのようにこの日本裁判権の範囲というものは、安保条約の第三条に基く行政協定の第十八条、ここでもって民事裁判権の範囲がきめられておるわけであります。従ってその範囲内における裁判権というものは当然尊重しなければならないものだと私は解釈するけれども、実際問題として範囲内におけるわが国の裁判権が認められないということになったならば、まことにこれは日本国民にとって不幸なことでありますから、こういう契約に基く請求についてそれらの裁判権、これが認められるように法務省としても私は見解を発表し、また合同委員会においても、こうした問題に対して具体的な措置のできるような見解を明らかにしてもらいたい、こういうことを申し上げておるわけであります。いかがでありましょう。
  177. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 一般国際法並びに行政協定によって認められております日本裁判権、これは合衆国政府においてもこれを承認すべきことは当然でございまして、もしそれを否認するという事態があれば、それは合同委員会を通ずるなり、その他適当な方法でもって、この裁判権を承認させるべきこと、これは高田委員仰せの通りでございます。
  178. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうであるとすれば、そういう御見解であるとするならば、福岡地裁のこの判決というものを尊重されて、法務省としては当然アメリカ当局に、直接には交渉ということはできないかもしれませんけれども、当然その中間機関に申し入れられて、具体的な解決をするというのが私は当然あなたの責務であるように考えられますが、そうはお考えになりませんか。
  179. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 問題は福岡地方裁判所に裁判権ありやいなやということがやはり前提に相なるのでありまして、その点が問題であろうと思うのでございます。
  180. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) ちょっと私から聞きますが、この問題は社労委員会なりほかの委員会でもたびたび質問されておるのであります。で、まあ理屈はどうでもいいですからね、ともかく同胞の中で大したこともない問題で首を切られて困っておる人がおるわけなんです現実に。だから問題はこれを片づければいいわけなんですで、私は法務省も労働省も調達庁の関係外務省もみんな合同委員会にはおのおの人が出ておられると思います。で、合同委員会にかかる紛争案件、社労の委員会で聞いたときにはそんなには多くもないようですね、だからそうすればその合同委員会に出ておられる方々は、大体どういう問題が起きておるかポストが違っていても知っているはずなんです。それを私は、何とかどこかからだれかががんばって、ともかく片づけていくということができない、そういうことが非常に残念だと思います。もう六カ月もたつのですからね、みんなが力を合せてなおかつそれがやれないということなら、これは内閣の閣議にかけるなり、何とか解決する道をもっと講じなくちゃいけない。問題はそういうところなんです。こまかい理屈なんかどうでもいいんだ、そういう点も実はどうするのか、この国会もう終るわけですから聞いておるわけです。だからそれはそういう面からいったら、むしろ調達庁長官の方が職場としては一番接触しておるわけです。直接雇用と間接雇用の関係で、直接はそれは仕事がないだろうと言われましても、一番やはり接触が深いわけです。だからそこの決意なり……、私どもはもう現在の段階じゃ片づいておらなくちゃならぬ、面接雇用も間接雇用もひっくるめて、いかぬならいかぬと最終的にその見解を……、日本政府責任をとるならとる、——そうでもない。こういうことははなはだ日米間の正常関係を私は害すると思うのです。そこなんです問題は。今井さんどうですか、私はやはりあなたが一番近いと思うのだが権限の問題は別として、それを除いてもどうかあなたの見解を出して下さい。
  181. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 法務省の所管ではございますけれども、ただいま委員長の仰せられたことは法務省としても同様に考えておるとろでございまして、法律論で解決するというのじゃ広くて、これは相手のあるお話でございますので、もっと実際的な解決方法を講ずる、そういう措置をとるべきものと思うのでございます。先ほど高田委員も非常に御不満をお述べになりましたように、こういう法律論をかりにアメリカ側と戦わせましても、これは水かけ論になるおそれが多分にある。そういうことではなしに、米軍といえどもこれは直接雇用の労働者であろうと、あるいは間接雇用の労働者であろうとを問わず、日本の労働法規に服するというととは行政協定で明記してあることであるのでございますので、その違反のあった場合に、裁判所に持っていけるかどうか、これは裁判管轄権の問題で非常にむずかしい問題に相なるわけでございますが、少くとも米軍も日本国の労働法規を尊重し、これに服するということは、行政協定に明確に規定してあるのでありますから、もしその違反を疑われる事実があるならば、これは合同委員会その他の経路を通じまして実際的に解決すべきものじゃないか。それが一番の現実に即した妥当な解決方法であると法務省でも考えておる次第であります。ただいま委員長の仰せの通りだと思うのでございます。
  182. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) 促進してもらわなければならぬ。今井さんどうですか。
  183. 今井久

    政府委員(今井久君) ただいま委員長からお話のございました点につきましては、従来の経過を聞いてみますと、この問題が発生しまして以来、直接雇用のことにつきましては労働省が中心になって打ち合せをしまして、折衝をいろいろ重ねておるようであります。しかしお話のありました通り非常に時日が延びまして、外から見ました場合には、非常にぐずぐずしておるような感があるように伺っております。それらの点につきましても十分私ども関係当局ともさらに打ち合せいたしまして、これらの点が一日もすみやかに解決するように、私どももまた力を合せていきたい、こういうように考えております。
  184. 高田なほ子

    高田なほ子君 私は平賀参事官に、何も法律論であなたとここで争おうなんて気はいささかも持っておりませんが、先ほどからはなはだしく冷たい御返答で非常に私も不満に堪えないものがあるのです。私が牧野法務大臣を心から尊敬しておるのは、法務関係の方は非常に冷たい、理屈ばかり言っていらっしゃるので冷たくなっておりますけれども、牧野法務大臣はその中にいつでも血を通した御答弁をされるわけです。私は専門家でありませんから、そうそうたる平賀参事官とここで法理論を論じようというほどばかげた考え方は持っておりません。ただ板付基地の労務者がたびたび不当な米軍の弾圧の中で苦しんでおる。その弾圧を何とか法的に保護をしてもらうために、許された裁判所の中で権益を守ろうとしておる、その権益さえも守り得ないということになったならばこれは大へん申しわけのないことである、こういうような気持から、私は先ほどからいろいろなことを、こういうものを研究しながら御質問申し上げておる。問題は解決をしていただけばいいのであります。そうしてもう一つ私は福岡地裁のせっかくのこうした判決なり仮処分なりというものが全然無視されておるということについて非常な義憤を覚えるわけでございます。日本人として義憤を覚える。しかも相手が力のない労務者であるならばなおさらに義憤を覚える。こういう立場に立ってあなたに私は一生懸命質問をしておったのですが、満足な御答弁が得られませんでした。けれども最後に亀田委員長から御発言がありまして、御努力を下さるやの御返答があったので、少しは安心したのです。けれども決してほんとうに安心したのではありません。私はまた次の委員会に今度はぜひ牧野法務大臣にお出ましを願っていろいろと血の通った御答弁を聞いて安心をしたいと思う。きょうもはるばる福岡からこの事件のために心配をして傍聴においでになっておる。どうか少くとも法務の重任に当られる方は、われわれはただいいからかげんにこういうものを持ってきてここで質問しておるのではありません、やはり切なる長い間の苦しみが早く解決できるようにというそういう熱意のもとにここに質問を繰り返し、そして貴重な時間を使っているわけでありますから、どうぞ一つ特に法務当局の御答弁は、もう少し御親切に、血の通った返事をしていただきたいということを私は強く要望するわけであります。  続いてフィンカム基地に起っている立川基地のやはり不当首切りの問題についてどなたから御答弁いただけるか存じませんが、当面にある方の御答弁をわずらわしたいと思います。これは調達庁の方にこの立川基地の首切り問題というのは何か資料が来ておりましょうか、どうでしょうか。
  185. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) まだ来ておりません。
  186. 高田なほ子

    高田なほ子君 実はこれはやはり駐留軍の労働者の方々から資料を先ほどちょうだいいたしまして、ちょうど板付基地と同じような問題が起っていることを承知をしたわけであります。私も前々から板付のことについて心配をしていましたのに、またこういう問題が起って参りましたので、少しお尋ねをして疑問のある点をただしていきたいと思います。  これは立川の基地でやはり保安処分ということで二名の者が全く理由がわからないままに首切りをされておるわけでありますけれども、これはやはり機密保持上やむを得ない場合は、これは当然首切りの該当理由になるでありましょうけれども、ただ何にも言わないで、組合の仕事をしておったから首を切られたということでは、これは切られた方も納得がいかないと思う。そういうことのために日本アメリカの間では日本の労働者の保護は国内法規に基くという一札が明記されておるわけでありますから、当然こういう不当な首切りを阻止してもらわなければならないわけです。特にこれはいつでしょうか、昭和二十八年の八月八日でしょうか、こういう不当な首切りを防ぐために付属協定六十九号の中で調達庁長官の意見が考慮されることが第五条のa項で明記してあるようであります。やはり最終決定を行うのはアメリカ側が行うのではなくて、調達庁長官の意見が考慮されるということが特に明記されてあるわけであります。従いましてこの立川基地の不当な首切りの問題について、まだいろいろな御資料がお手元にありませんようでありましたなら、早急に資料を入手せられて、これがよい方向に向けられるように実は努力をしてもらいたい、こういうように考えておるのでございます。これは今すぐに起った問題ではありませんで、昭和二十九年の四月以降今日まで二十二名もほとんど、特殊な事情であった三名を除いては、何にも理由がないほんとうにそのままでほうり出されて、あとはどうにもならない、こういうような状態に置かれておりますので、これについて慎重な考慮を払っていただきたいということが一つであります。それについて一つお答えだけ願っておきましょうか。
  187. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) 立川の問題につきましては、正式には調達庁の方にまだ書類も参っておりません。事件は御指摘の六十九号の保安解雇の問題だと思います。これにつきましてはお話がございましたように、調達庁の長官の意見を考慮して最終的に軍が該当容疑があるなしをきめるというふうになっております。調達庁といたしましても、東京都からこの問題が回って参りました際に、都と十分打ち合せをいたしまして、善処するようにいたしたいと思っております。
  188. 高田なほ子

    高田なほ子君 保安解雇の面についても、今私が申し上げたように特に調達庁長官の意見を尊重する一項が入っているわけでありますから、ぜひ調達庁は立川基地の現在の問題の素材を入手せられまして、いち早く善処して不安を除いてやっていただきたいということを強く私は要望いたします。長官にこれはぜひお願いをいたしたいと思います。  それからもう一つ。これはやはり板付基地にあった問題であります。これは昭和三十一年の三月十五日の午前零時二十五分、警備員の井上義一、砥上政人の両名がパトロール・ジープで板付基地春日原地区を巡回中のところ、基地内の映画館内の円交換所のドアがあいていたので、一人の者がジープよりおりて、続いて井上という者もおりて中を調べてみたが、ドアがあいていただけで異常を発見することができなかった、この二人の者は受持地区の巡回を終って、詰所に帰った、ところが午前一時四十五分ごろ同地区の前の担当者にドアがあいていた旨話しましたところが、米軍のある者がこの者を連行して、お前は何か盗んだんだろうということで自白を追って午前五時ごろまでも調べられた。本人はこれを知らないと言ってとうとう拒否を続けたのだけれども、どうしてもお前が盗んだんだろうということになって、非常なひどい取調べを受けたようであります。とうとう武装のAPがこの者の家を捜査したいということを申し出て、おまわりさんに同意を求めたそうでありまして、おまわりさんはこれを拒否した。ところが無謀にもこの家を調べたが結局盗品は出なかったという事件があったのであります。これは詳しくはこの資料をあげますけれども、こんなふうに私どもが想像も及ばないような労働者の弾圧が行われているわけなんです。  これはほんの一つを取り出した例にしか過ぎませんが、私の手元にはもう何十、何百というようなたくさんの実に気の毒な事例がきているわけなんです。この一つ一つ一つ一つ解決してくれと申し上げても、それは無理だろうと思いますけれども、どうか一つこういう小さな問題を小さい問題にしないで、やはり取りまとめて相当に強い意見としてアメリカ側の方にもお話し合いを進めて、どうかこの日本人の労務者がいろいろな協定とか、あるいはいろいろなお約束とか、そういうものに基いた保護が完全に行れるように、十分にがんばってもらいたいということを、私は強く念願するわけであります。ピアスさんにもこの板付基地の、不法家宅捜査事件など申し上げましたけれども、非常に上の方は驚いちゃっているんですね、そんなことがあったかと言って目をまるくしておられる。下の万は何にも知らない。知らないがゆえに迷惑をこうむっているのは日本人の私は労務者だと思うのです。どうぞ立川と、それから板付基地の不法家宅捜査事件、これらを中心にして、もう少し積極的に日米合同委員会の方にもお話し合いを一つ願いたい、このことをお願いしておきます。御返事を長官にわずらわしたいと思います。
  189. 今井久

    政府委員(今井久君) お答え申し上げます。ただいま具体的な事例をあげていろいろお話がございました。今のお話十分拝聴しまして今後努力いたしたいと思います。
  190. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) ちょっと今井さんに……。今の高田委員のおっしゃった板付基地の不法家宅捜査の問題ですな。これは私労働大臣に二回今まで質問しているのです。そのたびに十分調べて善処します、一回は労働大臣じゃなしにほかの人だったかもしれないのです。大臣ともう一回、とにかく管轄があっちだこっちだ言いますからね。二回やっているのだ。結局これは米軍が真犯人として出てきたから一そう不当性がはっきりしてきているのです。ですからこういうのはやはりびしゃっと、明らかに間違いの場合には頭を下げさせなければ、これはなめられてはだめすよ。そういう意味であなた今度新しく就任されたのだから、就任早々いいことを一つやって下あい、お願いしておきます。
  191. 赤松常子

    ○赤松常子君 私平賀参事官にちょっとお尋ねしたいと思って目をつぶっている間に御退場なすったのですけれども、どなたか法務省の方……。
  192. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) もうお帰りのようです。
  193. 赤松常子

    ○赤松常子君 大へん残念でございました。それでは次回に譲ることにいたします。
  194. 亀田得治

    委員長代理(亀田得治君) それじゃ本日の質疑はこの程度にして、委員会はこれで散会いたします。    午後五時十二分散会      —————・—————