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一松定吉君
売春禁止ということについて、これはもうほとんど国論が統一しておって、反対を唱えるものはないでありましょうが、ただ問題はいわゆる単純
売春というものをどういうようにすればいいかというようなことが、これは非常なまあ多くの人の間で研究しなければならぬ問題だと思うのでありますが、ただ表に現われたことだけの取締りをして、それがために性道徳が改善されるだとか、あるいはそれで婦人の地位が向上するだとかいうようなことは、とうてい及びもつかない
議論であるのでありまして、問題は、婦人の節操ということに重きを置いて、いわゆる日本の婦人は他の国の婦人にもまさるとも劣らないような、実にりっぱな節操の持主であるのだというようなことが昔はよく言われておったのですが、近来の婦人の態度というようなものを私
ども見て、実にどうも憤慨にたえない。外人と白昼公然腕を組んで大道を闊歩するというような、これ見よがしの態度というようなことが、ひいてもって婦人の徳性を他の面から見たときに、実にひんしゅくするようなことが非常に多い。こういうようなことは、つまり教育の力をもってこれを是正し、国民が全般的にこういうところを是正して、真にやまとなでしこであるというようなふうな面に持っていかなければならぬと私は思うておるのでありますが、幸いにこの
売春法の、とにかく表に出ておることだけでも禁止することのできましたのは、これは非常に一段の進歩であって、私
ども喜んでおるのであります。ただ、これから先は、各婦人の議員諸君から指摘せられておりまするように、どうかして、内緒でいろいろなことをこそこそやっておるようなことがやはり防止されなければ、ほんとうの婦人の徳性を涵養するということには達成しないのでありまするから、そういう点を
一つ、将来とも一そう世間の婦人の人々も
考えなければならぬし、われわれ政治家としても、ことにこういう点に
考えを及ぼして、どうしてこういうような醜行を是正すべきかということに重大な関心をもってこれが方策を立てなければならぬと
考えております。
ただしかしながら、問題は性の問題でありまするから、これを徹底的に取り締って、手も足も出ないというようなことになりますると、いわゆる暴漢が淑女を犯し、妻子を冒涜するというようなことがあることは、これはまたいけないことでありまするから、こういう問題もよほど注意しなければならぬと思います。
これにつきましては、いわゆるこの
法案に織り込まれておりますような
保護更生の問題について、十分に
一つ政府当局におきましても想を練りまして、
目的を達成するように、十分な方策を立てられんことを特に私
どもは要求しておきます。
これと同時に、常に私が言うておりますることは、
業者といえ
ども同じく人間であり、何もこれが醜行であるということを
自分が好んでやる人はないのでありまして、一時集娼というものを散らばさしてしまって、もうこういうものはほんとうに是正されようとしているときに、いわゆるアメリカの軍人がやってきて、何らかの
方法においてわれわれの性を満たすようなことをしてもらわなければならぬというようなことを、いわゆる公然の秘密として要求する結果、今までもうあきらめておった
仕事にまた手を染めなければならぬということになったやさきに、これを全部禁止してしまって、あしたから生活に困るというようなことは、これはよくありません。いかにそのやり方が悪いことをやっており、人から忌みきらわれておった業務に従事しておった者であるとしても、やはり日本人である以上は、われわれはそういう人の将来の生活の点についても
考えなければなりませんから、幸いに猶予期間というものが約二年間置かれましたから、その間において、大いに
一つ自分からやはり
考えて、どういう方向に向って転業して、
自分らの正しい生活に進むべきものということを
業者自身が
考えなければならぬことはもちろんでありまするが、政府といたしましても、また政治家といたしましても、これらのことを知らぬ顔しているというわけには参りませんから、やはり合法的に、しかもかれらの将来に向って幸福に恵まれるような
方法においてこれを指導、誘掖するということは、この
売春を禁じて、婦女の更生を考慮し、その施策を練るというのと同じように、やはり注意しなければならぬことだろうと思いまするから、こういう点におきましても、政府当局においても、十分に
一つ御研究の上、この実施がすみやかになって、そうして二年の猶予期間内に完全にこれらの人も転業できて、再びこういう方面に足を踏み込むことのできないようにするということは、これは政治家として
考えなければならぬことだろうと思います。
幸いにこれが満場一致の態勢をもって通過するであろうと思いまするから、私
どもは双手をあげて賛成をし、今までこの点について非常に御心労相なりました特に婦人諸君に対しては敬意を表して、私の
意見を終ります。