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1956-05-18 第24回国会 参議院 法務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月十八日(金曜日)    午前十時三十七分開会   —————————————    委員の異動 本日委員井上清一君辞任につき、その 補欠として最上英子君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     高田なほ子君    理事            一松 定吉君            宮城タマヨ君    委員            菊田 七平君            小柳 牧衞君            島津 忠彦君            西岡 ハル君            最上 英子君            赤松 常子君            藤原 道子君            市川 房枝君   国務大臣    法 務 大 臣 牧野 良三君   政府委員    警察庁刑事部長 中川 董治君    法務政務次官  松原 一彦君    法務省刑事局長    事務代理    長戸 寛美君    厚生政務次官  山下 春江君    厚生省社会局長 安田  巖君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○売春防止法案内閣提出、衆議院送  付)   —————————————
  2. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) これより法務委員会開会いたします。  開会に先立ちまして、委員の一部変更について御報告を申し上げます。五月十八日付井上清一さんが辞任せられまして、最上英子さんが補欠として選任せられました。以上御報告申し上げます。   —————————————
  3. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 売春防止法案を議題に供します。  本案について御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  4. 赤松常子

    赤松常子君 私この法案にちょっと二、三はっきりしておきたい点がございますので、お伺いしたいと思うのでございますが、第十一条の二項でございますね。「売春を行う場所提供することを業とした者は、」云々の箇条でございますけれども、これはアパートなどで、そのアパート全体がそういう業とする人が住んでいるわけでなくて、その一室、あるいは数室がそういうようなことに供せられた場合に、その部屋の人はもちろんこの罰則に当ると思うのですが、そのアパートを持っている人、管理している人、そういう人々が——非常に私ここは微妙だと思うのですが、情を知って貸しているような場合はもちろんこれに当ると思うのですが、そういう点はどう解釈したらよろしいのですか。
  5. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) お尋ねの件につきましては、共謀関係が認められますれば、これの共犯として処理する、かように考えております。
  6. 赤松常子

    赤松常子君 もう一度ちょっとおっしゃって下さい。
  7. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) お尋ねは、アパートを借りております者がそこに女を置きまして、その何人かの女の人に場所提供をすることを業としておるという場合に、アパートの持主、その方の形跡いかんということでございます。その場合におきましては、業とした者は十一条の二項で当然に処理されると思います。それからアパートを持っておる者が、その情を知って、これに何らかの援助をするという形でございますれば、これも幇助犯、これを幇助したものとして処理されると、あるいは共犯関係にありますれば、その共犯として処理される、かように考えております。
  8. 赤松常子

    赤松常子君 で、知らないと言えば、もうそれで済むわけですか。管理者が存ぜぬ、知らぬと言い張れば、それで罪を免れることになるのでしょうか。私、これが大へん盲点になると思うのであります。
  9. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) 情を知らないと申しましても、それが単なる弁解である場合がかなりあろうと思うのです。そういうふうな場合には、客観的にその情を知っておるという状況立証いたしまして、それによって処断する、かように私は考えております。その点は、特に私は諸般状況から当然にその業の事実は立証し得るものと考えております。
  10. 赤松常子

    赤松常子君 聞くところによりますと、業者は今後そういうアパートを経営して、そしてそこに婦女子を呼び込むというような形態にかえるということは、いろんな事実で証明されておるし、そういうふうに家を改築していることはしばしば聞いておるわけでございます。だから、私この法律ができましても、そういうことを知ってアパートを経営していく、その目的のためにアパートを経営していくという人が続出すると思うのであります。で、今あなたのおっしゃるように、これを推定する、そういう規定というものが非常にこれでは足りないと思うのでありますが、その推定規定というものをもう少し詳しく御考慮になっておいででございましょうか、その点を伺いたいのでございます。
  11. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) 大へんけっこうな御意見でございまして、実は私どもこの法案を作りますに当りまして、この条文ばかりでなしに、立証を容易にするために推定規定の問題を考えたのでございますけれども、非常にむずかしくて、この法案には盛ることができなかったわけでございます。今後におきまして、その点もさらに検討したい、かように思っておるわけでございますが、このアパート等に分散せしめる場合には、第十一条の二項でやる場合と、十二条でやる場合とあり得ると考えております。で、私どもは、今後悪質の業者人たちが、女の人を自分の所に拘えて置かないで、アパートその他に分宿せしめまして、それに派出その他の方法によって売春をさせると、こういうことが考えられると思うのであります。そういう点におきまして、十二条の後段に、特に「自己の指定する場所に居住させ、これに売春をさせることを業とした者」と、こういうふうにいたしまして、自分の家でなくても、他のアパート等に分宿居住させて、そしてそこで売春をきせる場合はもとより、その他の所に派出する場合におきましても、この十二条で処理しようと、かように考えておるわけであります。従いまして、この第十二条と十一条の二項とを活用することによって、相当に御心配の点は処断できると、かように存じます。
  12. 赤松常子

    赤松常子君 私が申しまするのは、推定規定がございますね、どの程度作られるものでしょうか、それをお作りになった場合に、それがどういうふうな方法でこれが生きるように運営されるものでしょうか。私非常にこれはむずかしい方法で、なかなか一々そこまで目を見張るということは、事実上むずかしいと思うのですけれども、やはり一定のワクというものは、ぜひ必要だと思うのであります。たとえばそういう業者がその女の人に、聞かれても知らないと言へ、関係ないものだと言い含めておれば、これも手がつけられないということになるのでしょうか。私この推定する一応のワクというものを、どの程度具体的にお考えでございましょうか。もう少しその辺をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  13. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) この「売春をさせることを業とした者」こういうのがございますが、この関係におきましては、お手元に判例要旨集をお配りしてございますが、従来勅令九号の売淫をさせることを内容とする契約の意義、それから児童福祉法三十四条の児童に淫行させる行為意義につきまして、いろいろと判例が出ておりまして、その売春なり売淫をさせるということの認定として、かなりいろいろの広い解釈がなされております。従いまして私どもといたしましては、その判例趣旨にのっとって、この部屋を貸しているとか、あるいは四分六、あるいは半々に分けているとか、そういうふうなこと、そういうことの立証によりまして、この第十二条等の立証は比較的可能である、弁解は一応なさると思いますけれども、私どもはそれまでに、こういう事件をあげますのには相当の日数をかけまして、客察としてはいろいろの証拠を収集してかかるのでありますからして、容観的にそのような証拠はかなり収集し得る、従いまして、これらの業者人たちが一応弁解いたしましても、それを突きくずすのには、さほど困難は感じない、かように思っている次第であります。
  14. 赤松常子

    赤松常子君 どうぞ、これは将来の大きな抜け穴になる大事なところでございまして、いわゆる個人売春がこういう形で、どんどん盛んになっていきますことになるのですから、特にこういう点、どうぞ推定規定をきびしくお作りいただいて、漏れないようにお願いしたいと思います。  それからその次に第十七条でございますが……
  15. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ちょっと赤松さん、これに関連して非常に大事だから聞かして下さい。  昨日やはりこの「情を知って、」ということについて、若干質問があったのですが、そのときの御答弁では、情を知らないという者は除外されるという御答弁、しかしあとで知った場合は、これを認められるような客観的な条件があった場合にのみ、この十一条の処罰規定は適用されるのだ、こういう御答弁があったわけであります。今赤松さんの御質問は、すでにこの法案の通過を見越して、着々準備が進められている。これは情を知ってすでに準備が進められているので、あとに知った場合ではなくて、事前行為であります。これに対しても、やはりこの十一条というものは、相当暫定措置として効果を持たなければならないがどうかというふうに、私は解釈されるし、またそれが非常に大事だと思うので、暫定措置として、事前に情を知って売春準備を行うという者に対する行政的な処分というものはないのかということを、もう一度尋ねておきます。
  16. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) この事前に情を知っておるというふうな場合、この刑罰規定昭和三十三年の四月一日から施行されることになっておりますが、その前に売春を行う場所提供したというふうな者に対しましては、これは条例がその間生きておりますから、御存じのようにその条例によって処理し得る、かように考えておるわけでございます。それでこの「売春を行う場所提供した者」という十一条の一項は、理論的には情を知らない者は入らないのでありますけれども、悪質な者につきましては諸般の客観的な情勢からして、その情を知っておることを明らかにし得る、かように考えております。しかしながらそれでなお足りないという点を考慮いたしまして、一応弁解はしても、女をかなりの人数そこに置きましてやっておるような者については、二項の業態としてこれを処理していこう。さすればそれによってかなり押え得る、かように考えた次第でございます。
  17. 赤松常子

    赤松常子君 十七条につきまして伺いますが、十七条の三項に「婦人相談員は、要保護女子につき、その発見に努め、」ということになっておりますが、これはしばしば問題になっている点であります。「その発見に努め、」ということがこちらから積極的にするということにも限度があって、ほんとうに、何と申しましょうか、その家に踏み込むということもできない。そういう権力も与えられていない。ただ目に触れる所に現われたものだけしかつかまない。この「発見に努め、」ということが非常に私はばく然としているし、だれがどういうふうな力でやり得るのか、その辺をもう少し詳しくお聞きしたいのでございます。
  18. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) これは厚生省の方からお答えになると思いますけれども、この婦人相談員につきまして調査権を与えるかどうかということが連絡協議会等において議せられたことがあるのでございますが、その場合に、それを与えるというとやはり行き過ぎが出てしまうかもしれないというふうな人権擁護局あたりの御意見もありましたので、この際は任意調査任意発見というふうにいたしたわけでございます。しかしならが検察庁におきましては、御存じのように東京地検更正保護相談室というものを作っております。これは高田委員長も先ごろ御視察になったと思うのでございますが、今後におきましては私どもとして本年からでも主要地地検更生保護相談室を増設いたしまして、あるいは三十三年の四月ごろには全国の地検にそういうものを設置いたしまして、それによって検察庁に送られて参ります者で起訴猶予になりました者を、そこに、保護司とそれから東京都その他から来ておられる人、あるいはこういうふうな婦人相談員という者ができました場合には、そういう所に常駐していただきまして、その方にそれぞれ振り当てて保護をお願いするというふうにもいたしたい。従いましてこの婦人相談員が積極的に早期発見に努められるほかに、われわれの検察庁の面からも、この発見と申しますか、保護の方にお引き継ぎするというのをお手伝いをしたい、かように考えておる次第でございます。
  19. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止
  20. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記を起して下さい。
  21. 一松定吉

    一松定吉君 赤松さんに関連してちょっと伺いますが、問題はこの「情を知って、」という言葉、これは専門家でない方は、皆これはこういうものがあることによって言いのがれをして罪をのがれるだろうという御疑問があるのはもっともだと思う。なぜにこんな「情を知って、」ということをつけるのですか。一体犯罪刑法原則に従って、罪を犯すの意なき行為はこれは罰せられることはないのです。「情を知って、」と書かなくても「売春を行う場所提供した」と書いておけば、この刑法原則によって、場所提供した、しかしそれは売春を行うということを、情を知らなかったということに当然くるのです。それに一々この「情を知って、」「情を知って、」こう書いて、刑法原則以外にこういうものを書き加えることによって法律家でない方はこれは非常に疑問に思うので、こういうものがあるからして言いのがれできるのじゃないかということになると私は思う。特にこれを刑法原則以上に「情を知って、」という文字をつけ加えなければならぬ理由を一つ説明して下さい。
  22. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) ごもっともでございまして、昨日も申し上げましたように「情を知って、」という文字を入れましてもまた入れなくても、理論的には当然のことでございます。ただこの場所提供なりその他におきまして全然善意でもって女の人に家を貸したところが、その人が途中から売春をそこでするようになったというふうな場合に、この条文におきまして、直ちにそれがその後におきまして場所提供として処罰されるというふうなことは行き過ぎである。そこでただし書きを置きまして、それに対して売春をすることを防止する上に相当の処置をとったときはこの限りでないというふうなものを入れるかというふうな議論もあった次第でございますが、それはまたかえって悪用されるおそれもあるというふうなことから、その規定を削りまして、その間のこちらの趣旨を明らかにするために特に「情を知って、」というふうな文字を入れたわけでございます。決してこれによって悪質なものをのがすというのではなくて、純粋に善意のものを処罰から除外するというふうな趣旨だけで書いた次第でございます。
  23. 一松定吉

    一松定吉君 それならいらぬじゃないですか。刑法原則の三十八条の規定ですね、「罪ヲ犯ス意ナキ行為ハ」罰せぬことはきまっているのですから、「情を知って、」とかいうことを書かなくても「売春を行う場所提供した」ただしこれは「行う場所」ということを知らなければならぬ、すなわち行為がなければならぬということでしょう。それによってきまるのでしょう。それならば「情を知って、」という文字をつけ加えるがために、しろうとの方は、情を、じゃ知らないということになったらどうなるかというような議論が出るのは当然だと私は思う。これがなくても場所提供した、提供した事実があってもそれは売淫をする場所であるということを知っていて提供したということでなければ、この刑法のいわゆる三十八条の規定によって当然罰せられない。それにこういうものを入れてあるからして、私も実は専門家であって、これをわざわざ入れるということは、しろうとの方に知らせるために特にこういう文字をお使いになったんだろうかしらんと思っておったんだが、果せるかな、しろうとの方もみんなこれを疑問にしておいでになる。これはない方がいいのじゃないか。刑法の三十八条の規定からいって当然でしょう、今までこういう実例があまりに多くないでしょうから。
  24. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) ごもっともでございますが、住居侵入罪における「故ナク」というようなのと同じ意味でございまして、これ自体に特に意味はありません。ただ先ほど申し上げましたようなただし書きを特に入れません関係から、特にその点を明らかにするという意味で、同じことではございますが一応入れたということで、決してこれによって抜け穴を特に教えておるという趣旨ではないのでございます。御了承願います。
  25. 一松定吉

    一松定吉君 議論してもつまらぬからもうこれでよろしい。
  26. 赤松常子

    赤松常子君 私大急ぎで一、二ちょっとお聞きしたいのでございますが、十八条の「都道府県は、要保護女子を収容保護するための施設を設置することができる。」ということは、非常に私、今地方財政赤字口実に、設置してもしなくてもいいんだというように、軽くこれが解釈されるおそれを実は懸念する次第です。今の赤線地帯はもうほとんど全国的に散らばっておりまして、都道府県で、これのない都道府県はないのでありますから、こういうふうに赤字財政口実に設置をしないようなおそれはないかと、その点が心配なんでございますが、これはもっと強制的な意味をつけて私はほしいと思う次第でございますが、いかがでございましょうか。
  27. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 長戸さんでなくて厚生省の方に……。安田局長お願いします。
  28. 安田巖

    政府委員安田巖君) お答えいたします。大へんもっともな御質問でございまして、私どももそういうふうな考えを初め持っておったんでございます。今度の法律保護更生一つのねらいといたしておるのでございますから、そういったような施設というものは、これは十分作っておく必要がある。余裕があれば作っておいた方が、いざというときに間違いがないというふうに考えるのでございます。しかし付則で御承知のように一年半ばかりの余裕期間もございますので、一応この法律が公布になりましてからの様子も見まして、婦人相談所は必ず設置いたすのでございますから、そういったような様子を見まして、予算措置一つ重点的にやっていきたい。必ず各府県に画一に作る必要がない場合もあるかもしれません。あるいは東京、大阪という所はたくさん作らなければならぬ、いなかの方でありますと、あるいは一年半の間に大体の見通しがつくということもあるかもしれません。そういうことを考えまして、実は「することができる。」というふうな規定になった次第でございまして、実情がだんだんわかって参りますれば、それに応じまして遺漏のないように予算措置を講じていきたいと考えております。
  29. 赤松常子

    赤松常子君 第十九条でございます。この「(民生委員等協力)」という中に、私一つつけ加えていただきたいことは、労働省の婦人少年局協助員ですね、この方もぜひ私つけ加えた方が万全ではないかと思うのですが、なぜここへ抜けておるのでございましょう。
  30. 安田巖

    政府委員安田巖君) ここにあげましたのは大体民間篤志家の御協力をここに書いたわけでございます。そういう趣旨からいいますと、婦人協助員というのは先生御指摘のように、やはりここに書くべきでございますけれども、一応ここには法律根拠のあるものだけ書きまして、協助員というのは法律根拠がございませんので、法律に書く場合は引用のしようがないという、こういう趣旨でございまして、もちろん実際の運営に当りましては、協助員方々にもいろいろと御協力を願うということは当然だと考えておるのでございます。
  31. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ちょっと赤松さんの質問に関連してお尋ねをいたしますが、婦人相談員の役割をここに第十七条で規定されまして、非常に重いお役目をお持ちになることがわかるし、また非常に大切なお役目だと思います。先ほど長戸さんのお話の中にもあったように、私は東京地検でこの婦人相談員方々が非常によい仕事をしていられるその姿を見てきて、大へん敬意を実は表しておるわけでありますが、ただこういう方々が報いられない中で非常に重い仕事をしておられるわけであります。従いまして、婦人相談員という方々資格それからこれらの方々待遇という問題については、相当に具体的に考慮されてしかるべきものだというふうに考えております。これについて御意見を承わっておきたいと思います。
  32. 安田巖

    政府委員安田巖君) 今仰せの通りでございまして、大へんむずかしい仕事で、しかもこういった非常勤の勤務でお願いいたすのはいかがかと思うのでございますけれども、大体待遇は月九千円くらいでございまして、それから資格でございますが、資格はこれはあまり具体的に書きますと、かえっていい人を得られない場合もございますので、まあこういった方面に熱意のあり、また人格の高潔な人を選んで各府県あるいは市でもって婦人相談員を御委嘱申し上げるというふうなことを実は考えております。
  33. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 重ねてお尋ねをいたしますが、婦人相談員のみならず民生委員あるいは児童委員人権擁護委員、それから保護司等実にこの法律を実際に移すためには、これらの方々協力というものがなければこの法律というものはその精神を失っていくおそれなしとしないわけであります。特にただいまの御説明によると、婦人相談員の報酬は九千円ぐらいであると言われておりますが、今の民間給与から考えて、九千円というこの手当というものは、まことに交通費にもお間に合いにならないような低額であるように考えられる。大体こうした保護施設あるいは更生施設というものは、単に奉仕的な気持でだけそれが完成されるとは考えられないし、またこういう人たちの献身によって、恩恵的な仕事としてこれを考えてはいけないので、どうしても九千円というような低額ではなく、十分な活動ができ、また人材を確保するためにも、こうした崇高な仕事に携わっておる方々を、象牙の塔の中にいるような考え方ではなく、実際に行動して、実際に実績を上げるという場合には、とうていこういう低額ではその目的を達することができないと考えられますので、これらの待遇を今後どういうふうに具体的になされるつもりか、お伺いをしておきたいと思うのです。ただいまの御答弁では大へん私は不満足でありますから。
  34. 安田巖

    政府委員安田巖君) 先ほど申し上げましたように、非常勤職員でございますから、普通の地方公務員のように朝から晩まで勤めるというものではございません。非常勤にすることのよしあしは問題がございましょうけれども非常勤職員とすれば月九千円というのはまあまあ普通のところではないかと……。実は母子相談員というものがございますが、これは七千円くらいでございます。それよりは、いろいろ大蔵省にお願いいたしまして、二千円ばかり多いものにしていただいて、そのほかに月二千円くらいの大体旅費を考えておるわけでございまして、こういろ方々がいろいろお働きになることを非常に期待をしておりますが、今まででも民生委員でありますとかあるいは児童委員でありますとか、その他の方々がお働きになりました場合に、やはり一番困りますのは、何かケースワークをいたしましても、困ったときにそれを持っていく所がないということでございまして、そういう意味で今度は婦人相談所が一応その窓口になりましたので、それがあるということによって、そういう方々もよほど働きよくなるのではないかというふうに考えておる次第でございまして、今後そういったいろいろな御心配の点につきましては、できるだけ改善するように考えて参りたいと思っております。
  35. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 重ねて私は意見を申し上げますが、この婦人相談員というのは、この法律に基くある意味では新らしい一つケースワークだと思うわけです。あなたの御説明では非常勤であるからこれがまあ大体このくらいやむを得ないというふうに受け取れるのですが、常勤・非常勤給与上の差はあるでしょうけれども、実にこれは画期的な法律である、画期的な活動のケースワークとして東京地検で御相談の役割を受け持っておられる方々、これはほとんど常勤と同じような勤務をしておられる、こういう特殊的な、また法律施行に当る門出に当って、相当待遇という問題についても厚生省は腹を作って事の貫徹のために期されなければならないと私は考える。今の御答弁のように非常勤でこれが最高であるような印象を受けるような答弁では、私としては了としかねますが、さらに現在の待遇というものが適切でないということをはっきりやっぱりおっしゃらなければまずいと思いますが、いかがでしょうか。
  36. 山下春江

    政府委員(山下春江君) ただいま高田委員長のお説、私も同感でございます。従来の母子相談員非常勤であるということの実態が、あれでいいとは私思っておりません。将来どうしてもこれは考えねければならないと思っておりますが、それと同様な意味というよりはずっと画期的な、ずっとたくさんの問題を処理しなければならない重要な職務でございますので、非常勤にいたしまして九千円とそのほかに旅費として大体二千円、これでこの大きな事業を処理していただくのに十分な処遇とは考えておりません、のみならず非常勤であることがいいかどうかということに対してはこれは至急に検討いたさなければなりませんと思いますが、とりあえず現在のところ、とにもかくにもこの法律を完全にすみやかに施行いたしまして、この状態を私どもはこの法律を通して検討いたしたいというのでございまして、これをもってこの事業を将来ずっと続けていくという意思は毛頭ございませんので、実態をよく検討いたしまして必ず改善をいたしたいと思っております。
  37. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちょっと連関して伺いますが、今問題になっているこの婦人相談員でございますが、どうして婦人といって婦人だけになさるのでございますか。それは対象が婦人だという意味でございますか。
  38. 安田巖

    政府委員安田巖君) そういう意味でございます。
  39. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ところが実際の保護司の活動なんか見ておりますと、これは婦人が婦人に当るということも必要な場合もございますけれども、そういう意味からいいますというと、今度の相手が婦人でございますから婦人相談員というのは、まことに私いいと思いますが、しかしこの種の相談にのるというだけでなくて、根本の、これは就職の問題が非常に大きい点だと思っております。そういう場合に、私はやはりりっぱな職場を持っておるというような、つまり婦人の職業をこなし得るような人を入れておくということが、ある場合に非常に大きな力になるのじゃないかと思っておりますが、どうしてその職業戦線において弱い女ばかりということをお考えになったのかどうか。
  40. 安田巖

    政府委員安田巖君) 私が申し上げましたのは、対象が婦人でございますので婦人相談員という名前をつけたということでございまして、婦人相談員になる資格につきましては女ばかりというふうには考えていないのでございます。と申しますのは、今までもいろいろ保護施設等の実情を聞いてみますというと、なかなかむずかしい問題がございまして、大の男が二、三人も引き取りにくるとか、かけ合いにくるとかいう問題が起りましたり、あるいはいろいろ借金の問題等でよほどしっかりした方でないと片がつかないような場合も多うございますので、やはりそういう点につきまして、現地でいろいろ実情を調べまして、適当な人をというふうなことで、特に女の人に限らないという趣旨でございます。名前はそういうふうに、対象が婦人でございますので婦人相談員ということでございます。
  41. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そうするとこういうふうに解釈してよろしゅうございますか。婦人に対する相談員という意味合いだと。
  42. 安田巖

    政府委員安田巖君) さようでございまして、男がなりますと男の婦人相談員というのがあるわけでございます。
  43. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 少しこれは……、そうまあ説明を聞けばそうかと思いますが、ちょっと見ますというと、婦人相談員というと婦人に対する婦人の相談員といったように受け取りやすいと思いますが、この点いかがですか。
  44. 安田巖

    政府委員安田巖君) 私ども先ほど申しましたようなことを考えて、ここに法律条文を書いた次第でございまして、まあ婦人相談員であるから婦人でなければならぬというふうには実は考えなかったのでございますけれども、そういうふうな御懸念もあるいは起るかと思います。
  45. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちょっとその点はそれだけでおきますが、重ねて、先ほど長戸課長は各府県地検に相談所を設けるというようにもおっしゃったのでございますね。
  46. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) これは、婦人相談所都道府県に設けられる次第でございますが、地方検察庁に、ただいま東京地検にございますような更生保護相談室というのを作りまして、起訴猶予になりました者は隣室に保護司なり、あるいは都その他のところからその関係の係の方に常駐していただきまして、そこでいろいろとその女の方の適する仕事、その他を考えあわせて、そうして寮に送る者は寮に送り、それから職業あっせんをすべき者は職業をあっせんする、こういうふうにしておるわけでございますが、婦人相談所ができますれば、そういう所から、また婦人相談所の方に一応お送りして、それから寮なり何なりにお送りする、こういうふうになって参ろうと思います。
  47. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 わかりました。そこで先ほど婦人相談員に積極的に働いてもらうというようなお言葉がありましたね。これは積極的に働かせるというときに、強制力を持たない婦人相談員というものが非常にこの活動を狭められる点があるかと私は心配いたしますが、その点いかがですか。
  48. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) 確かにそういう点はあるかと思います。ただ先ほども申し上げましたように、連絡協議会等におきまして、またここに一種の臨検的なものがその人たちによって行われては困るじゃないかという御意見もございまして、比較考量して本法案につきましては、任意の措置というような形になっております。
  49. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それから今この東京地検において相談室をお設けになっていろいろ活動していらっしゃるようでございますが、その活動状況についてごく簡単に伺いたいと思います。
  50. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) お手元に配付してございます法務省保護局作成にかかる東京保護観察所における売春婦厚生保護実施状況、というのがございます。これが東京地検更生保護相談室におきまする状況で、この調査いたしました際には五百人という対象になっております。その五百人が現在では八百五十人くらい、現在までに対象といたしております。昨年の十二月一日から現在までに八百五十人のものを扱ったのでございます。この調査の統計は五百人までのものを対象としております。先日も私この相談室へ参りましたのですが、新築前でございますので、非常に手狭まなところでございますが、非常に熱心にやっておられました。現在までにも七、八十名寮の方に送り込んでおるということでございます。その他でも非常に成績はあげているようでございます。
  51. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 重ねて伺います。施設に送られておる者は何人くらいございますか。
  52. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) 四十六人と聞いております。
  53. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そして今東京でその施設は大体足りておりますか、婦人を入れる施設は。
  54. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) 先日参りましたときにこういうことを聞いたのでございますが、施設に入っておる者がそこへ定着するような傾向がある、回転率が少しおそい。そういたしますと、施設に入れるべき者が入れないでおると、こういうふうな心配があるようでございます。現実に入れるべき者が入れなかった実数というのははっきりいたしませんけれども、従いまして今後この法律に基く保護施設というふうなものを考えた場合には、それがアパート化するというふうなことではいけないのであって、相当の回転率によって入るべきものを入れていくという、こういうふうにすることが望ましいという感じを受けた次第でございます。
  55. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 まあ出てもらうのは、いい婦人が出るのはいいのですけれども、まだ出てもらっちゃいけないような婦人がそこを抜け出すというような場合に、婦人相談員が強制力がなかった場合に、みすみすそこを出て行っておりましてもどうすることもできない、そういう場合のことを私は心配しておりますがね、いかがですか。
  56. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) まず第一には、婦人相談所に一時収容施設を付置いたすわけでございますが、この婦人相談所の一時収容施設というものができますと、国元へ帰すにしても、就職あっせんをするにしても、その間そこにいてもらうということができて、現在よりも効果があると、かように考えますが、しかし今宮城委員仰せのように、確かにそういう問題がございますので、私どもとしてはやはりそういう問題につきましては保安処分を考慮すべきである。従って、強制収容というふうな、婦人矯正院というふうなものが今後作られなければならない、かように考えて検討をいたしている次第でございます。   〔委員長退席、理事宮城タマヨ君着席〕
  57. 赤松常子

    赤松常子君 ちょっと安田局長にお尋ねいたします。この婦人相談所都道府県の行政機構の中におけるつながりと申しましょうか、地位と申しましょうか、それはどういうところにお考えでいらっしゃいますか。
  58. 安田巖

    政府委員安田巖君) これは都道府県一つの行政機関になると思います。
  59. 赤松常子

    赤松常子君 たとえば何課とか、どこに属する……、独立してお置きになるのでございましょうか。直接知事の直属になるのでありましょうか。
  60. 安田巖

    政府委員安田巖君) 一つの、昔でいいますと、何といいますか、会と申しますか、結局独立はしておりますけれども、しかし仕事の上ではやはり民生部の所管になりますから、民生部長でありますとか、あるいはこの問題を所管いたしますところの社会課でありますとか厚生課の方でいろいろめんどうを見なければならぬと思います。
  61. 赤松常子

    赤松常子君 私は婦人少年局の下にございます各都道府県の婦人少年室のあり方というものが実は理想だと思うのでございます。どうしても都道府県の行政機構の中に入りますと、その行政長官の意思によりまして、せっかくの法律が死んだり生きたり、積極的にあるいは消極的にひん曲げられる例がたくさんございます。特にこういう婦人の問題で、弱い力しか持っておりませんこういう機関が、婦人だけではないのですけれども、特にこういう婦人関係の問題を取り扱います場合のそういう人々が、やはり中央の機関に直通している——今の婦人少年局が婦人少年室を指導しているというような形の方がやりいい、地方の行政長官の意向に左右されない、そういうふうなことを私考えまして、この婦人相談所というものがせっかくできても、これが中央とのつながりが非常に稀薄であれば、何らこの効力を発しない、有名無実になりはしないかという心配があるから、こういうお尋ねをするわけでございます。
  62. 安田巖

    政府委員安田巖君) 今、赤松先生のお尋ねのようなことは、まあすべての国の行政にあるわけでございまして、この問題につきましても、この前法務省が御中心になっておやりになっておりました売春問題対策協議会におきましては、その点がいろいろ問題になったわけでございます。で、わかりやすく言いますというと、こういったようなものを国の機関にしたのがいいか、地方庁の機関にしたのがいいかということだと思います。そこで、労働省で今お持ちになっておりますところの婦人少年室というのは、これは労働省の出先機関なんでございます。でありますから、県庁の中にかりに建物があったといたしましても、これは全然関係ないのでありまして、労働省の出先機関。ところがこの方はほんとうに中に入って仕事をなさっておる方というのは、二、三人にすぎないわけでございます。そこにこういったような仕事をやらせるか、あるいはまた今お話のように別なものを作るにいたしましても、厚生省が直接所管したらいいというお考えが出てくると思うのです。しかしいろいろ考えてみましたのでありますが、現在、今保護施設にいたしましても、これは地方庁にやらせているわけでございます。現在あります救護施設も、それから将来もやはりそういうものは、地方にまかせないと、国で直接そういったような仕事を全部持つということは、なかなか目が届かないし、実際上やれないのじゃないか、それからそのほかのこれは私どもはこの仕事をいたしますのは、精神的にも経済的にも、いろいろな面でハンディキャップを持った人たちに対する福祉対策だというふうに考えて、この仕事をやっておるわけでございますが、そのほかのそういったような仕事というのは、大体全部県がするようになっております。現在の行政の仕組みが、たとえば生活保護にいたしましても、あるいは精神薄弱にいたしましても、児童の問題にいたしましても、身体障害者の問題にいたしましても、これは全部府県の方にまかせた格好になっております。そういたしますというと、生活保護をやっております福祉事務所の関係から考えましても、あるいはほかの仕事から考えましても、やはりこれは府県にまかした方がいいんじゃないかというのが実はこの結論であったのですが、お話のような点も大へん心配しておりますけれども、これは私どもが今後一つ府県とよく協力いたしまして、そういったことがないように極力努めたいと思います。
  63. 赤松常子

    赤松常子君 私はただいまの御説明、ほんとうにその通りにいけば、私ども心配は要らないわけなのでございますけれども、従来の保護事業においてすら、なかなか予算の面も貧弱でございますし、なかなか目が届かないことでございますが、今度この婦人相談所、非常な、何と申しましょうか、対象の業界が強い勢力をこの地方自治の中に根を張っておるのです。ただ要保護者を救うということすらでき難い現状では、こういう反対勢力が根を張っておるこういう地方の業界、行政機構の中で、私、特にこれは、そこだけにまかしておいていいということだけでは、何か有名無実になり、せっかく、種をまいてもそれが刈り取られる、何ら効力を発生しない、こういう懸念を非常に私は持っておるのでございます。これは今おっしゃるように、保護事業、福祉事業と同様に見ておるという観点からいえば、他のそういう事業が、地方自治体の権限にまかされておると、抵抗することになるでしょうが、私、この点の懸念は非常に持っておるものですから、特にもう一段の決意を促したいのでございます。  もう一つ厚生省の中では何局に婦人相談所のお仕事はお置きになるのですか。
  64. 安田巖

    政府委員安田巖君) 厚生省の中では、社会局がこれを持ちまして、現在そういった仕事をいたしております生活課の所管事項にいたしたいと思います。  それから前段の点につきましては、私も赤松先生と全く同感でございまして、やはり地方庁にまかしました場合には、知事さんの考え方というものが行政の上に非常に影響があるのでございますからして、確かにそういったような点もいろいろ問題があろうかと思いますが、しかし現在の行政機構からいいまして、また行政の地方と国との配分から申しますというと、まあこういうふうに考えざるを得ないのじゃないかというふうに実は考えております。もちろんそういったような御心配の点もありますし、それから地方財政がだんだんいろいろ窮迫しているというようなことで、たとえば婦人相談員を二分の一ほどの国庫補助じゃなかなか置かないのじゃないかという心配も、実は私どもいたしているわけであります。いろいろ問題がございますが、しかし一つ一生懸命やっていきたいと思いますから、また今後も御鞭撻願いたいと思います。
  65. 市川房枝

    ○市川房枝君 関連質問。今赤松委員から御質問になりましたその婦人相談所の所管の問題でありますが、行政機構からいって、一応厚生省の所管になる、地方のこの保護更生関係の部門が一応これを担当するということも、まあ当然といえるかもしれないと思うのですが、ただ私も赤松委員と同じような心配を実はするわけです。で、この法案は単に婦人の救済保護だけでなく、婦人の人権といいますか、それが目的の主要な部門になっているわけであります。婦人の人権保護という面からいきますというと、これはむしろ法務省の中にもそれこそ人権擁護局があり、それから今お話の出ております婦人少年局の婦人課が、その婦人の地位の向上の問題を取り扱っているわけでありますから、むしろ婦人少年局の地方の少年室なんかが、この問題を扱ってくれれば、法の趣旨にはむしろかなうのじゃないかというようなことを、私も考えたことがあるわけであります。で、これはあまり率直に申し上げていかがかと思いますが、今までこの政府において売春問題がずっと取り上げられてきたその過程を見ますというと、残念ながら厚生省は、私どもから言わせれば、あまり強い関心をお示しにならなかった、むしろ厚生省はいわゆる花柳病予防という観点に立って、むしろ集娼を主張なさる、いや厚生省の所管のいわゆるその保健所の会合では、はっきりとそれを決議なさったような事実もあるわけでありまして、むしろこの赤線、青線の廃止というか、今度の売春防止法案に盛られている趣旨なんかには、どちらかといえばあまり同調してもらえなかったような印象を、少し私ども持っているわけであります。私どもは今度の防止法の制定については、これは間違っておれば大へんけっこうでありますけれども厚生省はあまり熱心ではないということを、ちらっと耳に実はしているわけであります。そうなってきますると、この重要なる身の上相談所その他いわゆる救済についての施設を所管をして下さる厚生省の熱意という問題、将来の問題として実は多少の心配なきを得ないのでありまするが、その点についての厚生省当局としてのお考え一つはっきり伺いたいと思います。
  66. 安田巖

    政府委員安田巖君) 婦人相談所の相談室を母体にいたしまして、大きくしていったらいいじゃないかという御意見もごもっともだと思います。そういう意見がこの前もありましたのであります。ただしかしこの売春婦の更生という仕事はなかなか大へん仕事でありまして、婦人の人権の問題ではございますけれども、そういった一般的な観念的な立場からだけのいろいろな指導ではうまくいかない、あるいはまたそれをただ公共職業安定所の方へ送っただけでもなかなか解決つかぬむずかしい問題でございますので、やはりいろいろそういったその者の生活の実態とつながりのあるいろいろの行政機関、そういったものを現在所管しているところでやりますことが、適当ではなかろうかというのが、今度の結論でございます。  それから厚生省が大へん熱心でないということで、(「その通り」と呼ぶ者あり)実は御心配いただいたわけでありますけれども、決してそういうことはないと思うのでありまして、この防止法につきましても、私、実は非常に熱意を傾けてやったつもりであります。ただ、できるだけこの予算をたくさん取りたいということで、そういったような折衝のために長引いたことはございますけれども、これはもう実はそういったような目的からでございまして、決してそういうことはございません。今後もまたいろいろ御指導願いたいと思います。
  67. 市川房枝

    ○市川房枝君 社会局長から今そういうお話を伺いまして、幾らか、まあ幾らかなにしました。(笑声)行政機構として、私、仕事の内容からまあ厚生省所管になることは一応筋道は立っておるというふうには考えておるのです。たださっき申しました人権擁護といいますか、婦人の人権の方がどうかおろそかになさらないように、もちろんそれだけではこの問題が解決しないことは当然のことでございますが、その点をやはりはっきりと含めて今後の指導にお当りを願いたい。そういう点から、この問題について今お話のように、さしあたって来年度の予算の問題になってきますけれども、その予算を御請求になる、あるいは獲得なさるという場合の厚生省当局の熱意といいますか、そういうものが結局はその問題を解決するんじゃないかと思いますから、私どもも、将来厚生省当局のこの問題をお扱いになるやり方等についても、詳しいことを知らせていただいて、そしてこれがうまくいくように実は願いたいと思っておりますから、重ねてその点をお願いを申し上げておきます。
  68. 安田巖

    政府委員安田巖君) 今の御心配になった点につきましての具体的な対策といたしましては、各府県にこういった問題についての協議会を実は作りたいと思いまして、その予算が若干入っております。そのお話の婦人少年室なり、あるいは人権擁護局関係ともそういった機会に十分御連絡をとり、また御指導も願わなければならぬと考えております。
  69. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) ちょっとそれに連関して私からも一つお伺いいたします。  この各都道府県に相談所をお作りになって、相談に来るというお見込みがありますか。実は先ほど法務省の方の政府委員から御説明ございまして、ことに東京地検あたりでやっていらっしゃることはなかなか効果をあげていらっしゃるようでありますが、これはまあ何といっても強制的にそこへ引っぱられてくるので、まあやむなくそこで事件を処理なさることになるのですけれども、そうでなかったら、私は売春婦でございますが相談に来ましたと言って出てくる者が一体ございましょうかどうでしょうかということを私は思っておりますがね。
  70. 安田巖

    政府委員安田巖君) 今神奈川に婦人相談所がございまして、これは一年に二千件ばかり取り扱っているのでございますが、これは全部がそういった売春関係なりあるいは転落防止ということだけじゃなくて、純粋の意味の婦人問題についての御相談もあるようでございまして、大体二千件ぐらいあるようでございます。  そこで今宮城先生のお話のように、黙ってすわっていたってなかなか来ないだろうというような御懸念もごもっともでございますが、今度は婦人相談所がございますし、それから各福祉事務所なり民生委員なり児童委員という方々が、今まででございますと、自分のところでそういうものを発見しましたら、相談を受けましても処置のしようがないということがあるのです。警察等でそういうケースをつかまえましても、その晩からどこへ持っていっていいか困るという例があるのでございます。そういうものは全部この相談所の方に送りますから、相談所の方では二十五名ばかりでございますけれども、一時収容の施設も持っておりますから、そこに泊めながらいろいろ観察をしながら、そういった相談をやっていくということで、前とはよほど事情が違うのではないか、こういうふうに考えております。現在は各府県におきましてはそういった相談というのは各福祉事務所でやりますし、それから保護施設があります所では実は保護施設、そろいうようなことで相談事業の役割を一面果しております。たとえば大阪の生野学園でありますとか、あるいは朝光寮というのがございますけれども、そこへ行って見ますと五日とか六日ぐらいでやはりどんどん回転をしていくという人がございます。これは今度の案で参りますというと、婦人相談所でやるべき仕事を、その寮でやっておる。そこに一番たくさん持って参りますのは、統計によりますと福祉事務所でありますとか、あるいは警察から持ってくるわけであります。そういう関係で御心配の点も確かにごもっともと思いますけれども、多少今度は事情が変ってきやしないかというふうに考えております。
  71. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) その後神奈川でやっていらっしゃる相談所も売春婦は割合に来ないということを、まあ私の聞いた範囲では、そういう報告がございましたので、実は心配しているのでございますけれども……。
  72. 安田巖

    政府委員安田巖君) 神奈川の方はやはり相当そういったようなものもあるようでございますが、それから送ってきたところもやはり警察だとか社会福祉の機関等から送ってきたものが相当ございますから、これはむしろどうにかしてくれということで送ってきたのでございますから、今御質問のような部類に入るのじゃないかと思っております。自発的に参りました者につきましては最近少しずつふえておりますのは、先ほどちょっと触れましたように、一般的な問題についての相談所がふえておりますから……。
  73. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) それじゃちょっと重ねてでございますが、この婦人相談員という者の仕事は非常に重大なことで、そうして相当知識を要することと思いますが、これの教育機関といいますか研修機関なんかを設けるというようなお考えはございますでしょうか、どうでしょうか。
  74. 安田巖

    政府委員安田巖君) 確かにそういった点も大事かと思いますけれども、実はやはり非常勤方々でございますから、ほかにあるいは職を持っておる方々もあるかもしれません。全国的にそれを集めて今すぐ研修機関を設けるというようなことは考えておりませんが、今後また適当な講習をやるなりあるいは地方別、ブロック別にそういうふうなことをやってみることも必要かと存じております。
  75. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) それででございますね、今までこういった面に経験を持っているという方は、まあ最も適任であると思いますのは保護司の方だと思いますが、これはやっぱりこの仕事をダブらせて保護司を採用するというような、活用といいますか、お考えもございましょうか。
  76. 安田巖

    政府委員安田巖君) そういう点につきましてはまだ具体的に考えておりませんが、保護司の方がなっていただくことも少しも制度の上からは差しつかえないと思っておりますので、できるだけ一ついい人を得たいと思っております。実はなかなかこれがむずかしくて、とる場合に府県で困るのじゃないかと思いますが、来月に入りましたらこの法案ももちろん上るでございましょうから、早々に府県の方を集めまして、十分そういう点について御懇談したいと思っております。
  77. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はちょっと簡単に二、三お伺いしたいのでございますが、今の更生施設等に行って見ますと大へん精薄の子供が多いのでございます。そこでああした更生施設へ行っても効果が上らないのじゃないかというようなお話もちょいちょい聞くのでございますが、相当精薄がいるとすれば、厚生省としては精薄者に対する対策というようなものも何かお考えになっておるかどうか。
  78. 安田巖

    政府委員安田巖君) 現在婦人の保護施設が全国で十七カ所ございまするが、今お話のように体も相当病気でやられておるとか、あるいは精神的にも非常に劣った者であるとかという者も相当入ったわけでございます。そこで施設に参りますというと自然に色分けができまして、そういった精薄とか体の弱いような者がたくさん収容されております施設と、それからもう何といいますか、少しいきのいいといいますか、頭もある元気な連中は早く更生をいたしますけれども、すぐそこから外に出ますというと、やはり四千円なり五千円なりの下宿料を払ってまでは更生ができない、婦人ホームのような色彩を持っておりますので、この両極端の中ごろもございますが、そういったような色彩があるわけでございますので、もし今藤原先生の御指摘のように精薄を収容する施設がありますならば、そういうものは当然その婦人養護施設から出して、そこへ入れた方が適当だろうということもあるわけでございますので、今後一つ保護施設といたしましてそういった施設、私どもの方で教護施設と申しておりますが、それをなるべく府県に勧奨して作って参りたいと思うのでございます。それから今度は一般的にこれは売春ができないものだということでありますというと、今までのようでなくて、相当また更生可能な者がたくさん来るのじゃないかと思いますので、そういった点では従来とは事情が少し変ってきやしないかということも考えておる次第でございます。
  79. 藤原道子

    ○藤原道子君 私がお伺いしたいのは、従来とは相当変ってくるでございましょうが、売られて、玉抜きというのですか、転々とやられるような女の中には、相当精薄が多いのでございます。でございますから、精薄に対する対策が非常に大切になってくるのじゃないか。さらに暴行事件等が起っておりますのには、相当それは性格異常者または精薄などに多いというふうに聞いておりますので、私社会の秩序を保つ上においても、精薄に対するあたたかい保護施設が必要ではないか。これに対して厚生省のお考えを伺いたい。
  80. 安田巖

    政府委員安田巖君) あとの場合は男の……
  81. 藤原道子

    ○藤原道子君 男も女も含めて。
  82. 安田巖

    政府委員安田巖君) 確かにそういう施設が必要でございまして、現在精薄施設というのは、児童施設としてございます。これは御承知のように十八才、満年令になりますというと行くところがないという状況でございますので、場合によりますとまた精神病院に入れておるような場合もございますので、できるだけおとなのそういういったようか施設を作るように、実は二、三年前から言っておるのであります。これは先ほどちょっと申しました教護施設という名称になるのでございます。今後そういう点に努力して参りたいと思います。
  83. 藤原道子

    ○藤原道子君 先ほどの婦人相談員の問題でございますけれども、これは婦人相談員の性格からいって、この字句を、婦人の相談に応ずる者というふうに解すべきものなのですか。婦人が担当する相談員と解すべきなのですか。私は先ほどの安田さんの御説明を伺っていて、婦人を対象とした相談員であるということになるならば、それは男の人が入ってもいいのでございますが、婦人の相談員であるということになれば、男の人が入るのはおかしいということになるのではないかと思います。従って対象を婦人のために相談にのるというふうな性格のものであるかどうかをここに明確にしていただきたいと思います。
  84. 安田巖

    政府委員安田巖君) 後者でございまして、婦人を対象にいたした仕事をやるということでございます。もっと具体的に言いますというと、男の婦人相談員がある、ちょうどおとなの児童課長があるようなものでございます。(笑声)
  85. 藤原道子

    ○藤原道子君 おかしいけれどもまあそれは……。  そこで私は長戸さんにお伺いいたします。昨日私がお伺いいたしましたが、二十二国会で流産になった場合には、売春の相手方も罰するということになっておりましたが、今回は単純売春をその対象からはずしましたために、相手方を罰するということができなくなった。ところが現実においては相当相手方に罰していただかなければならない例がたくさんございます。昨日、児童を犯した者、これらに対してどうするかをお伺いしましたら、これは刑法の百七十四条以下でびしびしやりますという大臣の御答弁がございました。そのとき従来そういう法を適用して相手方の男子を処罰した例があるかないかという御答弁を伺いたいということをお願いしておきましたが、それはどういうふうに御調査願えたかどうか、さらに松元事件におきまして、これは何といいましたかね、淫行勧誘罪で起訴されたというふうに聞いておりましたが、その後の経過がどうなっておるかということを一つお伺いいたしたいと思います。
  86. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) 実は昨日少し私感違いいたしましてお答えが間違っておったようでございますので訂正をいたします。一般的に児童を淫行の対象とした場合におきまして、現行の刑法におきまして、それが十三才未満でございますれば強制わいせつ罪なりあるいは強姦難で処理し得る。それから十三才以上の場合におきましては、申すまでもないところでございますけれども、婦女に対して暴行、脅迫をもって淫行をすれば強制わいせつなりあるいは強姦で処理する。それがその婦女を抗拒不能の状態まで陥れてやりました場合におきましては、準強制わいせつ、強姦の規定によって処理し得る、かように思う次第でございます。ただいわゆる昨日お話の出ました水揚げというふうな問題になって参りますと、現在の取扱い例といたしましては、児童に淫行させた行為児童福祉法の三十四条の違反におきまして、その淫行させたというのはいわゆる水揚げ名義をもってということで処理しておる事例はたくさんございますけれども、その相手方を処理した事例は報告には参っておりません。それから松元事件の場合におきましては、業者につきまして淫行の常習なき婦女を姦淫せしめたというふうなことで処理いたしておりますが、その相手方となった者はいわゆる贈収賄関係において処理いたしておりますので、この性的犯罪に対する規制として処理はいたしておりません。
  87. 藤原道子

    ○藤原道子君 そこが私非常に問題だと思うのです。皆さんのお考えは心神喪失とかあるいは抗拒不能という問題をどの程度にお考えでございましょうか。児童は、児童福祉法にもございますようにこれはすべて児童の心身ともにすこやかに育成されるように努めなければならない、こういうことになっております。ということになると、児童にはまだ判断力も何もないという考え方だと思います。これを犯した者はやはり……、しかも座敷へ連れて行って、そうして泣き叫ぶ者を犯したりした場合には、やはり法の建前からいっても、こういうものは刑法の条項に私は合致すると思うのです。けれどもそれが見のがされているのですね。ここに問題があるのですけれども、それで、きのう私は失言で羽仁委員からしかられたのですけれども、どうも女を遊びの対象とし、これをもてあそぶことがまだ常識のようになっている。それが悪いことでないという考え方が一般にあるのじゃないかと思うのです。ですから法律では保証されるようになり、相手方を罰するようになっているけれども、これが適用になっていない。そこで私はこの売春処罰法ができても、断固やるとおっしゃるけれども、どの程度おやりになるかということに非常な不安を感ずる、これに対してはどうなのでしょう。
  88. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) 本法におきましては売春をし、またはその相手方となった者は倫理規定として、処罰の対象といたしておりません。従いましてその関係は第五条の関係で、婦女がみずから勧誘等をする場合だけ処理する。しかしながらこれによって私どもはかなりの範囲を処罰し得ると考えております。と申しますのは、売春助長行為、ことに業者その他の者に対する処罰というものをかなりきつくして参りますというと、そうした対象たる婦女はさしずめ表に出てこざるを得ない。あるいは広告等をせざるを得ない。そういうふうなことからいたしまして、この第五条の取締りの範疇に入ってくるわけでありまして、そういたしますれば、御心配売春行為それ自体を罰しませんでも、それは処罰の対象、大体において処罰の対象になり得る、かように考えておるものでございます。しかしながら売春行為それ自体をなす者、自前でもって、自宅でもってやるというふうな者に対しましては、十六条によりまして要保護婦女というふうな関係におきまして保護の対象にしていく、こういうふうなことによってその間も補い得る、かように考えておる次第でございます。   〔理事宮城タマヨ君退席、委員長着席〕 あるいは御質問の趣意とちょっと違ったかもしれません。
  89. 藤原道子

    ○藤原道子君 それでは大臣にお伺いいたします。昨日私がこの問題の御質問を申し上げましたときに、大臣は百七十四条以下でびしびしやる、御安心下さいというようなお話でございました。従来こういう法律がありながらほとんどその処罰の対象になっていない。児童を犯した者も、半暴力的な行為でやった者も、ほとんど法を免れておるのです。従いまして昨日の御答弁通りに、今お聞きの通りの従来の状態でございますので、今後はこの法を十分に活用していただけるのかどうかという点について大臣の御所信を伺いたい。
  90. 牧野良三

    ○国務大臣(牧野良三君) ただいまの点については、私はこの法律の成立によって世の中は画期的な変化を来たすのだと思います。非常な御懸念がございますけれども、第一条と、第三条、そうしてこれに沿うるに第四条というのがございます。かような法律は日本の従来の立法としては珍しい、こういう法律が皆さんの手によって成立するというこの機会に、社会の改良運動を起さなければならない。それには刑法の、わいせつ罪を罰しておる規定のごときは、厳格にこれを適用する。そうして適用することを社会がまた望むようになる。どうも今までは社会そのものが堕落しておりました。それがいけません。今度は私はこの売春防止法案成立とともに、画期的な社会を作る。従ってとの法律ができるということだけではいけません。私は熱心なあなた方とともに、私も驥尾に付して、社会改良運動をやると同時に、社会政策的文化立法というものを国民に普及する。そうしてもう今までとはまるで違った心持ちを国民に起していくということにさせる。それには刑法のわいせつ罪のごときは特に厳重にこれを適用するということにいたしたいと存じております。従ってその場合に大切なものは、この第四条の規定でございます。「この法律の適用にあたっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意」せよ、ここにきて、わっと潮のごとき改良運動をやりたいが、しかしそのために国民の権利を不当に侵害するようなところまではいくなよというところにきております。私はこの立法によって、世の中を一変させることができる、またさせなければならぬと思っております。
  91. 藤原道子

    ○藤原道子君 それでいま一つだめ押しをしたいのでございますが、従来は少女に対する水揚げとか何とかいうようなことがほとんど常識のようになっていて、何らこれらは問題になっていないのです。けれどもそういうことを公然とやっておるということが明らかになった場合には、やはり大臣はこの法を適用していただけましょうか。それによって、二、三の適用をされることによって、多くの人々に反省を与える機会になると思う。今まではやっていても大丈夫だと、なにあんな法律があっても大丈夫だというような気持がまだまだあると思う。ですから私は、男の人に相当こういうみだらなことはいけないのだ、血の通った人間を品物のように売買し、これを、人間性を無視してじゅうりんするということは許されないのだというような感じを持っていただかなければならないと思うのです。そういう点においてさらに重ねて大臣の御所見を伺っておきたい。
  92. 牧野良三

    ○国務大臣(牧野良三君) 全く同感でございます。今まで男というものは女をもてあそぶのを得意にしております。そういう風を一変させなければいけません。全く同感であります。
  93. 藤原道子

    ○藤原道子君 大臣のただいまの御決意を私は信頼したいと思います。そこで、さらに不安になりますことをいま一点お尋ねしておきたいのですが、これは警察庁は来ておるでしょうか。
  94. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 刑事部長の中川さんが来ております。
  95. 藤原道子

    ○藤原道子君 それではお伺いいたしますが、この法律が生きるのも死ぬのも、これは警察庁に相当に責任があると思うのです。ところがその取締りに当り、保護に当るべき警察官が従来業者とのつながりが非常に強かった。これはもう否定できないと思うのです。たとえて言えば、赤線地帯の入口に交番がある。その交番などはほとんど業者によって提供されておる。取締るべき警察のその交番が業者によって提供されるというようなことは、私許すことができないと思う。先日も私は尼崎に参りました。四万六千坪だか七千坪だかの敷地に、今大々的に遊廓を建設しております。そしてその青写真なんかを私見せていただいた。りっぱな交番ができておりました。その交番も遊廓建設の一事業としてなされておる。こういうふうな業者から提供された交番にいるおまわりさんが、果して適正な法の運用ができるかどうか。私はこういうことが警察で常識となって、もしくは見過ごされておるというところに、今日の重大な問題が内蔵されておると思うのです。あるいはまた赤線地帯の署長さんたちの就任とか転任のときには、大々的に業者によって送別会が、あるいは歓迎会が持たれております。そうして転任して行かれる署長に対しては莫大なせんべつが与えられておる。こういうことが果して許されるものかどうか。そういうことがある限りにおいて、私はこの法が死文になるのじゃないかというおそれを持っておりますが、これに対しての一つ考えを伺いたいと思います。
  96. 中川董治

    政府委員(中川董治君) 藤原先生の御注意つつしんで拝聴いたしましたが、私ども警察といたしましては、すべての法律がそうでございますが、ことに今般政府から提出されました売春法案の実施に当りましては、先ほど法務大臣からもお話がございましたように、第四条の趣旨につきましては十分注意いたしまして、この各規定に定める犯罪の捜査につきましては、周密な内偵を行いまして、証拠に基きまして厳正にこれを摘発して参る、こういう点は徹底して参りたい、こういうふうに思っておるのであります。いろいろ関係警察職員のうちで、藤原さんから御注意のありましたような事案等につきましては、よくそういう者があって誤解を生まないように、ことにわれわれこの問題と別に、寄付金問題等につきましても厳重な措置をいたしまして、寄付金等によりまして警察をスポイルされるのを防止する、こういう点につきましても、この法案とは直接に関係を持たないで進めたのでございますが、こういうことを徹底して参りまして、この法律及びこういう犯罪捜査を厳正に行なっていくことを確保いたしたい、こういうことに十分努力して参りたいと思うのであります。
  97. 藤原道子

    ○藤原道子君 ほんとうに相当の熱意と決意を持っていただかなければ、私は業界との腐れ縁は断ち切れないと思うのです。その点については一つ十分御配慮が願いたい。私はそういう莫大なせんべつをもらったとか何とかいう人の名前を出せと言えば出してもいいくらいに思いますけれども、そこまでは私も差し控えますが、将来そういうことのないようにしていただきたい。ことに業界との深いつながりが、青線地帯へ行って見ますと、元警察の署長であったとか、相当の警察の上級幹部が青線地帯で淫売業を営んでおるのです。事ここに至っては何をか言わんやです。どうぞそういうことの将来ございませんように、強く御注意申し上げておきます。と同時に、今後もかりに公然と業者から提供された交番なんというものが存在することのございませんように、一つ念を押しまして、さらに最後の御決意を伺っておきます。
  98. 中川董治

    政府委員(中川董治君) この売春防止法案に定める犯罪の取締りにつきましては、厳正にやるように、十分万般の準備を整えまして過誤なきを期したい、こういうことを重ねて申し上げておきます。  なお関係警察職員等において、ことに金銭上の問題、あるいは寄付金にからんでいろいろ少くとも誤解を受けるようなこと、また誤解を受けやすいことをやる、こういうことにつきましては、私どもといたしましても十分注意し、そういうことのないように努めたいと思いますので、これは売春防止法案が提案される以前であったのでございますが、寄付金問題というのは警察費の不足等も原因の一つになったという沿革もあるのでございまして、そういう慣行等が地方にあったことは事実でございますが、そういうことによる弊害は相当考えねばならぬ、ことに地方財政を圧迫する、こういう点もありますので、そういう寄付金問題につきましては、この法案提案以前から十分注意して、そういうことのないような措置を講じつつあるのでございまして、その徹底を期して参りたい、こう思うのでございます。
  99. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は全部の警察官というのではございません。まじめな警察官も、一部にそういう者があれば、やっぱり士気を喪失するのです。だから苦労する人がばかをみている、そして、法をまげている者がいばっている、どうだというような態度が見えるのでございますから、どうぞそういうことのございませんようにお願いいたします。
  100. 市川房枝

    ○市川房枝君 法務大臣にまずお伺いをしたいのですが、私は今度の売春防止法の内容で不満な点もいろいろあるのですけれども、一番不満といいますか、心配なのは、施行期日が、ことに第二章の刑事処分というものが、二カ年間の猶予期間があるということであります。これはその転廃業に対するには、それだけの期日が要るということは一応わかるのですけれども、しかし、二年という期間が必要なのかどうか、いや、二年たったら必ず一体これが励行できるのかどうか、むしろ二年というふうになることが、その二年の期限の少し前になったら、またこれを延期するというきっかけになるのではないかということの心配を実はするわけなのでありますが、一体この二年ではっきり実施ができるというふうにお考えになっている根拠といいますか、それと、それから必ずこれをまた延期をしたりしないと——もっとも、そのとき牧野法務大臣がやはり現職においでになるかどうかという点もありましょうし、あるいはまた現内閣がそれまで続いているかどうかという問題もありますけれども、少くとも現在の閣僚として、ことにこの法案を直接御提出になった責任者としての法務大臣のその点についての御意見をまずお伺いいたしたいと思います。
  101. 牧野良三

    ○国務大臣(牧野良三君) その点は本法案の問題点の一つであります。ただここで市川さんお考えをいただきたいことは、繰り返し述べるように、日本の国にこんな社会政策的な文化立法のできたことは、今度が初めてなのであります。これを意義あらしめるには、やはり相当の用意が要るのであります。それはやはり私は社会運動だと思うのです。私は御熱心なあなた方をはじめ一緒になって、社会運動をどうしても始めなければいかぬ、それには私は腹案を持たないでもない、御相談をしたい、そのためには一つの期間を要する。そうして倫理規定というものを、今まで誤まった考えに浸っていた業者を初め、国民に徹底せしむるには、やはりここに刑罰だけで押えただけでは目的を達しませんで、法律が有名無実になります。これが第一。  もう一つはちょっと私には言いにくいのだが、なかなか刑が重いのです。これだけ重い刑を今まで見のがされていた仕事に課するのだから、かすにやはり適当な時期をもってせざれば苛酷になるというようなことばかりではない、徹底を期することができない、それまでにはやはり法務省、厚生省、警察庁初め衆参両議院の有志その他地方の人々と一緒になって、これが普及徹底を期することに努めなければならぬ。幸いに総合雑誌も婦人雑誌もこの方面に留意をして、この方面の仕事を改める人々を奨励的に紹介するようになってきた、この傾向は今後著しくなろうと思います。私は赤線、青線の現地へ行きましても、そのことをよく言って聞かせているのです。でありますから、どうか皆さんとともに、この期間において十分な実行の効果をあらしめるようにスタートしたい。と同時に、これをまた運動その他で延ばすというようなことは、国民が承知いたしません。どんな内閣ができましょうとも……。私はここで断言できます。将来いかなる法務大臣にその任についていただくとしても、さようなことは断じてないということを私はここで断言することができる。それほどに私は社会のこの法案支持の力が強いと見ておるのであります。
  102. 市川房枝

    ○市川房枝君 一応法務大臣の御決心のほど、御覚悟のほどを伺いまして、そういうことであればいいと思うのですが、ただ私は、ほんとうは赤線なり青線なりは、この売春防止法ができなくても、今まである法律、現行法でも実はやめさせることができたはずなんです。現在の赤線、青線というのはこれは違法でありまして、それを今日までそのまま存在を許してきた、いや、前よりもだんだんそれが繁昌してくるような傾向になってきたということは、やはり政府当局にこれを励行するはっきりした意思がなかった、いや、直接の取締当局である警察庁が、先ほど藤原委員のおっしゃいましたように業者とのなれ合いといいますか、特殊な関係を持って、むしろ取り締るのでなくて、これを保護するような側に回ってきたというところに問題があるのじゃないか。実は、御承知の通りに、この法案が成立する前、東京都下の調布の特飲街が自発的にやめたことが新聞でずいぶん出ておりましたが、あのやめた理由といいますか、きっかけになったことを現地について直接調べてみますると、結局は所轄の警察署長がそのいわゆる特飲街が犯しておる現行法の違反をつまり摘発した。これじゃかなわぬ。こんなにきびしくやられるのじゃ、これはどうも続けていかれないというので、自発的にやめた。ところが半分くらい残っておりまして、それがどうするかということが問題になったのですが、そのときに、あとの半分も、もう一ぺん警察が手を入れてくれればすぐみんなやめてしまうのだということで、警察当局に対する運動もだいぶありまして、これはまあそういう立場からかどうかわかりませんけれども、その後さらに調布の警察が残っておりまする特飲街に対して手を入れた。その結果、その残っておりますものも全部やめた。こういう具体的な事例があるわけでありまするが、そういう工合に、現行法でも適用すればこれはやめさせ得るのです。まあ一年どころじゃない、二年という期日を設けたということが、さっき大臣のおっしゃるような立場から、一応それももっともだと言えるのですけれども、これは、きのうの委員会でやはり藤原委員からお話が出ておりましたが、二年間というこの猶予期間があるということは、二年間は公然とこれをやってもいいんだ、いやその場合には国家補償がとれるかもしれない、この際やめちゃ損なんだ。むしろもっと拡張して、やめるときにたくさん補償を取る方が得なんだというように、逆にむしろここのところへきて盛んになってくるような傾向があるのだというような御意見がありましたが、私もそういうふうに聞いております。そうするとなると、ちょっと逆に——現実の問題としては逆になるわけなんですが、そういう点も大臣の方で御承知いただいて、そうしてさらに、この業者に対するといいますか、これを励行するということについての固い決意を持っていただきませんと、私は、この二年間の猶予期間というものが逆にむしろ使われることになるのではないかということを実は心配するわけなんですが、その点いかがでございましょうか。もう一ぺんお考えを伺いたい。
  103. 牧野良三

    ○国務大臣(牧野良三君) すべて御同感であります。従って、心構えが大切でありますが、従来は、法律があってもむしろあれを奨励してきました。それが戦後における日本の悪い風潮です。だれ一人これを阻止するという人がない。ところが、この法律を作るようになったこの気風というか、国民的世論というものは、これとは逆な方面に向った。非常に私は変ってきたと思うのであります。従って、これが成立しまして、もう直ちにこれが実行され、刑罰は二年ののちであるといえども、営業というものは持続することができないということになれば、利害にさとい人たちです、あの人たちは。必ずや私は違った方向へ脱兎のごとき勢いを見せやせぬかと思う。ただそれが悪知恵で違った方へいかれることを非常に懸念いたしますから、これはお互いの力でもって十分に警戒するということに努めなければならないと思います。
  104. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちょっとそれに関連して、期日の問題ですが、牧野大臣にお伺いしたいのでございますが、この今度の法案は、大体におきまして売春対策審議会の答申によっていると私ども心得ております。この保護更正に関します規定よりも、刑事処分に関します施行期日をおくらせたということは、私はこれは大へん妙味があって、そのことは非常に適切な処置だと思っております。思っておりますけれども、あの売春対策審議会におきましては、私どもが施行期日につきまして非常に慎重に審議いたしました結果、あの一月一日ということを答申したわけなのでございますが、ほかの点につきまして、ほとんど法案全体について、この審議会の答申によっていらっしゃる中に、施行期日だけが、つまり刑事処分に対する施行期日だけが三カ月おくらしてあるというこの規定が、私ははなはだ不満でもございますし、納得ができない。といいますことは、政府の説明によりますと、会計年度に合せれば非常に都合がいいということでございます。それを突っ込んで伺ってみますというと、私にはその理由が十分に納得できないのであります。答申案の通りに、一月一日から施行されても大した差しつかえはないと思っておりますところへもってきて、現にきょうあたりも、きのうあたりも、もう全国の業者から大変な陳情と申しますか、恐喝と申しますか、えらい通信が来ております。もうおとといあたりは、一日に千枚以上の葉書が私の机の上に重ねられているのでありますが、それを見ますと、業者が転廃業をするにつきましては、国家が補償すべきだ、政府が補償すべきだという点、それからもう一つは、施行期日は五年先ということを、これはもう期せずしてみんな一致しております。これの一体出どころがどこだろうかということを私は突いてみたいと思っているくらいでありますが、そこで私は、そういうことは別に問題にして取り上げることは考えてもおりませんけれども、そういったような、つまり一日でも延ばせばいいというその気持がでございますね。たとえ三日にしても、政府が延ばしたというところに今後非常な問題を残すのじゃないかと心配しておりますので、牧野大臣、どうか私の納得がいくように説明していただきたいと思うのであります。
  105. 牧野良三

    ○国務大臣(牧野良三君) その点は手をあげます。(笑声)これは政府委員から御説明いたします。
  106. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) 対策審議会におきまして、御承知のように、おおむね昭和三十三年一月一日から実施するものとするというふうに御決定になったわけでございますが、私どもも、この法律は本来は直ちに実施をしまして、一挙にその目的を達することが望ましいと、こう考えたわけでございますが、それを二段にいたしまして、保護更生を先に、刑事処分の実施をあとに、こういうふうに考えた。ところが、この保護更生の措置を講じまするにも、施設、人員配置その他の問題で、相当準備を必要とするところから、その関係昭和三十二年の四月一日からといたしたわけであります。従いまして、その保護更生の措置というものが十分の効果を発揮するというには、やはり一年というぐらいは要ると、それと同時に、会計年度のことと合せまして、昭和三十三年四月一日、こういうふうにいたした次第でございます。私どもとして、悪質なものはもちろん三十三年四月一日から、先ほど中川刑事部長も言われましたように、徹底的にこれを処分するつもりでございますが、同時に、この保護更生ということが十分に行われますならば、理想的には、三十三年四月一日からは刑責に触れる者なしということをわれわれとしては期待する。従いまして、保護更生の措置の効果を発揮するというにはやはり一年ぐらいがいい。たまたま会計年度とも合う、こういうようなことからいたしたので、他意はない次第でございます。
  107. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それでは続けて伺いますけれども、三カ月延ばすということによって保護更生の面が完備されるというように、一体政府は考えていらっしゃるのでございますか。むしろ私を納得させようとするなら、三ケ月の間に警察陣の整備、警察陣の整備はこの間にならできるというような説明なら、私納得できると思いますけれども、その間に保護更生の面について完備するということは、私はどうしても納得できない、その点なら……。
  108. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) 私どもの方といたしましても、また警察といたしましても、三十二年、三十三年ともに、この検察、警察に要する費用、あるいは少年院の拡充等に要する矯正の費用、また保護関係保護に要する費用というものをそれぞれ完備いたすつもりでおります。
  109. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 むしろ私は、警察陣、検察陣のその陣容の中に専門課を作ってもらわなければ、これはできぬことだろうかと思っております。そしてその研修等に必要な支出だということになれば納得できますのですが、一体そういう点はどういうことになっておりますか。
  110. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) 検察の面から申しますと、現在でも、東京地検などには風紀係というようなものを置きまして、それが専従的にこの仕事をやっておりますが、本法の施行によりまして、各地にやはりそういうふうな専門の係というものを作らざるを得ないと考えております。それから、なお、先ほども申し上げましたように、本年度におきまして、主要地に、東京地検と同様に、更生保護相談室を設置する。また三十二年、三十三年におきまして、これを全国的に配置するようにしていきたい、かように考えます。また宮城委員の仰せになりました指導あるいは実情調査という点からいたしまして、会同費あるいは調査出張旅費、そういうふうなものも考慮いたしておる次第でございます。
  111. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 牧野大臣に御迷惑でございますが、一つ重ねて、先ほど来からもう大体伺っておりますけれども、重ねてどうか……。今、私が長戸政府委員に伺ったような点につきまして、日にちを要するというのでございましたら、これはやむを得ないことでございますが、その他のことでは絶対に、もっと言ってみますというと、外部からの圧力が加わりまして、何となしに延ばすようなことの絶対にないということのもう一ぺん御決意を言っていただきませんと、私ども、この期日を延ばされるということについて、非常に私、不満、不平を持っておりますのでございますから、お答えを願います。
  112. 藤原道子

    ○藤原道子君 関連して。私も宮城さんの今の御質問の点に非常に不安を持っております。長戸さんが幾ら陳弁これ努めましても、私ども最初は三カ月、それが六カ月、そして一年まで譲歩して、さらに審議会において、やむを得ず私たちは涙をのんで、一月一日をぎりぎりの線で審議会満場一致で決定したわけです。大臣がずいぶん御苦労なさって下さったことは、私は漏れ伺っております。ところが、そこにいろいろの勢力があったということを伺うにつけても、ここで三カ月譲歩したことが、またがんばればまた延びるのだというようなことを相手に与えることが私はこわいのでございます。でございますから、今度修正等ということになれば、いろいろ問題も起きますので、これは涙をのんで私たちこれを了承することといたしました。ぜひ、宮城さんが言われた通りに、この二年は、幾ら圧力がかかろうと、政府は断行するという決意を伺っておかなければ、私は納得がいかないのでございます。
  113. 牧野良三

    ○国務大臣(牧野良三君) 深く御質疑の点も了承いたします。私のみならず、法務の事務次官以下当局は、深い決心を持っております。御信頼下すって私は決して心配ないと存じます。のみならず、実は一月一日ということは、検察陣を拡充するのに、どうしても途中で予算をもらうことができない、何といったって国会はむずかしい。であるから、これを充実するには年度一ぱいでなければ、人員の配置その他すべてのことができないというので、一月一日ではものにならぬというところに事務上やむを得ないことを御了承下さいまして、かかる点に決してかかわり下さいませんように、どうかこの法案を一日もすみやかに成立されることに御尽力いただきたいと思います。
  114. 赤松常子

    赤松常子君 先ほどから、文部大臣のおいでをしきりにお願いを申しておるのでありますが、今どういう交渉になっておりますか。
  115. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 委員長はしきりに催促するのでありますが、文部大臣は、衆参両院の文教委員会を往復しておられて、なかなか御出席がむずかしい。そこで文部次官を今お探し申し上げて、来られることを連絡しておりますが、まだ行先を明確にキャッチしておりません。また社会教育局長の内藤さんに政府委員として御出席願うのが、大臣以外には適当かと考えてお手配申し上げておりましたところ、病気のゆえをもって、きょうは出席されることができない、こういうわけで、私も非常に苦慮いたしております。いましばらくお待ち願いたいと思います。
  116. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 今、牧野大臣から、予算年度に合せなければならないわけをはっきりおっしゃって下さいましたので、私が最も心配いたしておりましたこの施行期日の延期されたということにつきましては、ほんとうによくわかりまして、これで安心いたしました。こういう意味合いにおいて、もう心配はなくなりました。それで、大臣はもう病院から国会にお通いになっていらっしゃるような状態でいらっしゃいますのに、こう長くおでましを願っておりますことは、大へんども心苦しいところでありますが、どうかおさわりなければいいがと念じております。実は第二国会に、売春処罰法案が政府提案として提出されまして以来今日まで、この二十四国会に至りますまで、法務大臣は九人おかわりになっております。そうしてこの方の売春対策問題につきましては、どの大臣も、口では協力する、努力するとおっしゃって今日までおいでになったのでございますが、長い間私ども法務委員といたしましても、実にその大臣の言葉を信じて、苦労してこの立法の早く制定されることについて念じておりましたのです。私のような者でも、特に、三年前に私の選挙がございましたときなど、事実数千万円の金をお前にやるぞ、だからこの運動をやめてくれといって、私ども引っぱられました。そでがほころびたものを、それを記念にとっておりますが、あるいはまた、命を三つぐらい用意しておけなんという恐喝をされたこともございますほど、実にこの売春対策の問題につきましては山坂がございました。その間におきまして、九名の法務大臣は、まあ今日から言ってみますというと、非常にになまぬるい考え方で当っていらっしゃったということに結論はなりますのでございますが、そのときに、今度牧野大臣が、いかにこの売春防止法案につきまして非常な熱意を持って協力して下さいましたか、このことは、この四月三十日に、この法案の提案についての持ち回り閣議を、もうだめになっておりましたのを法務大臣が督励して、そして今月を越すことはできないといって、非常な努力をして下さいましたということをあとで伺いまして、私ども実に喜びましたほど、今度のこの法案提出につきまして熱意をお持ち下さいましたことは、これはもう私ども婦人だけでなく、良識あるいは良心を持つ日本国民のひとしく喜んでおるところだと思って、非常な感謝を持っております。私は、もうこれ以上はこの法案につきまして質疑をしようと思っておりませんので、最後に法務大臣に、努力の結果でございましたことをお礼を申し上げまして、私の質疑を打ち切らせていただきます。
  117. 牧野良三

    ○国務大臣(牧野良三君) 私の努力ではございません。まったく時勢でございます。これまでに皆さんが時代を導いて下さったことは感謝にたえません。むしろ法務当局として、法務省の者一同を代表しまして、お礼を申し上げます。
  118. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記をとめて。   〔速記中止
  119. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記を起して下さい。
  120. 市川房枝

    ○市川房枝君 警察当局にちょっと簡単に伺いたいのですが、先ほど大臣に御質問しましたとき申し上げましたように、この実施されるまでの間、むしろ赤線、青線は今までよりも盛んになろうとしているということが言われておるのですが、そういうものに対して警察当局の取締りの方針は一体どんなふうか、それをはっきり伺いたい。
  121. 中川董治

    政府委員(中川董治君) 御趣意によりまして、簡単にお答えを申し上げます。この売春防止法案の刑事処分に関する規定は、昭和三十三年四月一日から施行になるのでございますが、三十二年四月一日からは保護更生に関する部分の規定が施行になる。そうすると新法に基く取締りは昭和三十三年四月一日からでありますが、現行法による取締りということがございます。現行法につきましては、先ほども市川委員からいろいろと御指摘がございましたように、なかなか沿革上の理由等もございまして、御指摘のようにはかばかしくいっていないことは事実でございます。ところがそのはかばかしくいっていない原因の一つに、保護更生に関する措置等が進行しにくいので、とかくはかばかしくいかなかったことも原因の一つであろうと思います。ところが、保護更生に関する部分は、刑事処分に関する規定に先立って施行されることでもございますので、保護更生に関する規定の施行に関連をもちまして、現行法を逐次強化して参って、昭和三十三年四月一日に新法が全面施行されるについて、言葉をずさんに申しますと、地ならし的に逐次施行を円滑にするという作業を工夫して参りたい。こういった点は、保護更生に関する部分の規定の施行とか、各種の行政施策と相関連いたしますので、現行法の運用につきましては、売春対策審議会等の御意見も十分拝聴いたしまして、新法の施行は、たびたび御指摘の通り、三十三年四月一日でございますが、現行法の運用については、保護更生に関する規定の施行、その他行政処分の施行の状況と関連をもちまして、売春対策審議会の答申を十分尊重いたしまして、円滑な施行をはかりたい、逐次強化するということが相当ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  122. 市川房枝

    ○市川房枝君 昨年の九月から、売春に対しての取締りはある程度強化なさいましたが、その強化はずっと続けておいでになるのですか。ここのところで少し手をおゆるめになるのですか。そこのところはどうですか。
  123. 中川董治

    政府委員(中川董治君) 市川さんからかねて御指摘もございましたように、現行法の取締りが比較的円滑を欠いておる、こういう点は事実でございまして、それは沿革上の理由と、保護更生に関する措置の不徹底という点が理由でございますけれども、逐次これを強化するということは私ども当然考えておりまして、昨年来これに努力しておるのであります。努力はもちろん続けて参ります。努力を続けて参りますが、特殊の行政施策等とも相関連いたしまして、そういう部面との連絡を緊密にしながら現行法を運用して参りたい。そうして新法が企図する、四月一日からこの新法に基いて厳正にいたしたい、このように考えておる次第でございます。
  124. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 他に御質疑はございませんか。
  125. 西岡ハル

    ○西岡ハル君 社会局長にちょっとお伺い申し上げたいのでございますが、婦人保護費の要求が、三十一年度に十四億要求されたのが、ただの六千五百万円となっております。先日本会議で、横山議員の質問に大臣からのお答えがございましたが、三十一年度、二年度で七億ぐらいの予算を組むのだ、こういうお話でございます。私は、婦人保護費との関連性がございまして、母子福祉貸付金でございますか、これが三十年度も四億の予算が消化されていない。どうして消化されなかったかということは、地方財政が非常に赤字であるから、地方の負担が三分の二でございますので、これが負担できかねて、結局返上された。借り手がなくて返上されたのではなくて、借り手があっても、地方の負担ができなくて返上されたという現状でございますので、私は、どうしてもこの際に婦人保護、これは売春婦の中にも相当子供さんをかかえた方がいらっしゃいます。それを保護する意味におきまして、私は、地方の財政を援助する意味におきまして、国が三分の二を補助していただくことができれば、これが私の大なる希望でございます。これにつきまして、局長の御意見を伺いたいと思います。
  126. 安田巖

    政府委員安田巖君) 母子福祉貸付金は三分の二の府県の負担というものを、もう少し負担率を下げろというふうに拝聴いたしたのでありますが、お話のように、せっかく国で予算をとりましても、府県の財政負担の関係で、それが予算として実現しないというようなことをはなはだ残念なことだと思います。私、主管局長ではございませんけれども、そういう点につきまして、帰りましてよく御趣旨の点お伝えいたしておきたいと思います。
  127. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 他に御質疑ございませんか。——なければ、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のおありの方は、それぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。
  128. 赤松常子

    赤松常子君 私は、日本社会党を代表いたしまして、本法案に賛成を申すものでございます。思えば、ほんとうにここにたどりつくまでは、長い長い道であった次第でございます。とにもかくにも長い間日本の女性がほんとうに奴隷的に扱われていたという、そういう前世紀的な姿を一応ここに払拭しようということになったことは、私ども婦人の立場からも、また日本の社会の文化的な向上の尺度を高める面からも、非常に私はうれしいことと思うのでございます。日本の文化史上及び日本の婦人の解放史上及び日本が国際的にやっと文化国家の仲間入りをしたというような点を考えて、この法律のできましたときのおそきをむしろ嘆くものでございます。  しかしながら、この法律にはまだまだ、われわれの理想から比較いたしますと、盲点がたくさんあることは、いろいろ皆様も御承知のことと思う次第でございますが、われわれの理想からいえば、やっと二〇%ぐらいしかその理想が満たされていない。非常にまだまだ不備な法律でございますけれども、今後私どもは、皆様方と御協力申し上げて、その不備の点を十分完備し、もって理想に近ずくように努力をして参りたいと思う次第でございます。ほんとうにここにたどりつきますまで、法務当局また婦人会の皆様、また各党各派の方々の御協力によりまして、われわれの念願がやや達せられたということは、ほんとうに歴史的な日であると、感慨無量でございます。なお一そう完全なものにすることを皆様方と固くお約束申し上げて、私は賛成をいたす次第であります。
  129. 一松定吉

    一松定吉君 売春禁止ということについて、これはもうほとんど国論が統一しておって、反対を唱えるものはないでありましょうが、ただ問題はいわゆる単純売春というものをどういうようにすればいいかというようなことが、これは非常なまあ多くの人の間で研究しなければならぬ問題だと思うのでありますが、ただ表に現われたことだけの取締りをして、それがために性道徳が改善されるだとか、あるいはそれで婦人の地位が向上するだとかいうようなことは、とうてい及びもつかない議論であるのでありまして、問題は、婦人の節操ということに重きを置いて、いわゆる日本の婦人は他の国の婦人にもまさるとも劣らないような、実にりっぱな節操の持主であるのだというようなことが昔はよく言われておったのですが、近来の婦人の態度というようなものを私ども見て、実にどうも憤慨にたえない。外人と白昼公然腕を組んで大道を闊歩するというような、これ見よがしの態度というようなことが、ひいてもって婦人の徳性を他の面から見たときに、実にひんしゅくするようなことが非常に多い。こういうようなことは、つまり教育の力をもってこれを是正し、国民が全般的にこういうところを是正して、真にやまとなでしこであるというようなふうな面に持っていかなければならぬと私は思うておるのでありますが、幸いにこの売春法の、とにかく表に出ておることだけでも禁止することのできましたのは、これは非常に一段の進歩であって、私ども喜んでおるのであります。ただ、これから先は、各婦人の議員諸君から指摘せられておりまするように、どうかして、内緒でいろいろなことをこそこそやっておるようなことがやはり防止されなければ、ほんとうの婦人の徳性を涵養するということには達成しないのでありまするから、そういう点を一つ、将来とも一そう世間の婦人の人々も考えなければならぬし、われわれ政治家としても、ことにこういう点に考えを及ぼして、どうしてこういうような醜行を是正すべきかということに重大な関心をもってこれが方策を立てなければならぬと考えております。  ただしかしながら、問題は性の問題でありまするから、これを徹底的に取り締って、手も足も出ないというようなことになりますると、いわゆる暴漢が淑女を犯し、妻子を冒涜するというようなことがあることは、これはまたいけないことでありまするから、こういう問題もよほど注意しなければならぬと思います。  これにつきましては、いわゆるこの法案に織り込まれておりますような保護更生の問題について、十分に一つ政府当局におきましても想を練りまして、目的を達成するように、十分な方策を立てられんことを特に私どもは要求しておきます。  これと同時に、常に私が言うておりますることは、業者といえども同じく人間であり、何もこれが醜行であるということを自分が好んでやる人はないのでありまして、一時集娼というものを散らばさしてしまって、もうこういうものはほんとうに是正されようとしているときに、いわゆるアメリカの軍人がやってきて、何らかの方法においてわれわれの性を満たすようなことをしてもらわなければならぬというようなことを、いわゆる公然の秘密として要求する結果、今までもうあきらめておった仕事にまた手を染めなければならぬということになったやさきに、これを全部禁止してしまって、あしたから生活に困るというようなことは、これはよくありません。いかにそのやり方が悪いことをやっており、人から忌みきらわれておった業務に従事しておった者であるとしても、やはり日本人である以上は、われわれはそういう人の将来の生活の点についても考えなければなりませんから、幸いに猶予期間というものが約二年間置かれましたから、その間において、大いに一つ自分からやはり考えて、どういう方向に向って転業して、自分らの正しい生活に進むべきものということを業者自身が考えなければならぬことはもちろんでありまするが、政府といたしましても、また政治家といたしましても、これらのことを知らぬ顔しているというわけには参りませんから、やはり合法的に、しかもかれらの将来に向って幸福に恵まれるような方法においてこれを指導、誘掖するということは、この売春を禁じて、婦女の更生を考慮し、その施策を練るというのと同じように、やはり注意しなければならぬことだろうと思いまするから、こういう点におきましても、政府当局においても、十分に一つ御研究の上、この実施がすみやかになって、そうして二年の猶予期間内に完全にこれらの人も転業できて、再びこういう方面に足を踏み込むことのできないようにするということは、これは政治家として考えなければならぬことだろうと思います。  幸いにこれが満場一致の態勢をもって通過するであろうと思いまするから、私どもは双手をあげて賛成をし、今までこの点について非常に御心労相なりました特に婦人諸君に対しては敬意を表して、私の意見を終ります。
  130. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私は、緑風会を代表いたしまして、この本法案に対しまして、一日も早く成立することを念願するのでございますが、この法案自体につきましては、これは売春対策審議会でもって、非常に短い間でございましたが、審議を重ねて、答申いたしました。おおむねそれがもとになっておりますように察しられますが、まだまだ法案自体につきましては、これで十分だと思っておりません。もっと願いはたくさんございますが、ただこれは、この法案の前段におきまして、しっかり両性に対しましての倫理規定が明らかにされておりますということは、大へん喜ばしいことでもございますが、しかし、こういうことを言わなければならない今の日本の国情に対しましては、非常に恥を知るものでございます。ただ、この業者あるいは売春婦の婦人たちに対しまして恥を知れということは、余りにも私ども無責任なような気もいたしまして、この際特に日本の教育の面において、日本人全体にもっと恥を知らせなければならない。ことに性道徳につきましては、女性だけにその純潔あるいは貞操ということを要求するのでなくて、明らかに女性と同等に男性にも恥を知る、あるいは純潔を守るということをもっと高調していただかねければならないだろう。つまり教育の問題が一つございます。  それからいま一つは、これは、かくのごとく世界一といわれます売春婦がこんなに規定の陰に隠れてかせがなければならない、しかも子供をかかえております母親たちが、どうしてもこれ以外に生きる道がないというほど、今日の国民の生活状態、せっぱ詰まった生活状態を考えますというと、いかに今日の政治の貧困を語っておることでございましょうか。この意味合いにおきまして、私どもまた、非常に真剣な態度をもって反省しなければならない点がたくさんございますと思っておりますが、特に政府におきましては、国民生活の安定につきまして、もっともっと力を入れていただきたいというようにこいねがう意味でございます。  まあ教育の問題、生活の問題などいろいろございまして、ただ単に売春業者売春婦を縛るということが目的でございませんことは、この法案の内容にもよく現われておりますが、しかし、今後一段丸々と段を重ねまして、この法律は手を入れて、そうして近い日に私どもも、また婦人たちも満足して、この法律のもとに従い得るという、その日の早く参りますことを願い、それはまた、一方かかって売春対策審議会がこれからまたその審議を続行いたしまして、その点について責任をもってやることだろうと思っております。  そこで、いろいろな願いがございますので、私はここに付帯決議を提出したいと思っております。私の提出します付帯決議を読ませていただきます。  以上でございます。
  131. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 他に御意見ございませんか……。御意見がなければ、討論を終局いたします。  これより採決を行います。売春防止法案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  132. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたします。  次に、討論中に述べられました宮城さん提出の付帯決議案を議題といたします。  宮城さん提出の付帯決議案を本委員会の決議とすることに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  133. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 全会一致と認めます。よって宮城さん提出の付帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成その他事後の手続につきましては、慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  134. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御異議ないと認めます。よってさように決定いたします。  それから、報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は、順次御署名をお願いいたします。    多数意見者署名     赤松 常子  市川 房枝     一松 定吉  島津 忠彦     西岡 ハル  小柳 牧衞     菊田 七平  最上 英子     藤原 道子  宮城タマヨ
  135. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 本日はこれをもって散会いたします。    午後一時九分散会