運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-04-12 第24回国会 参議院 法務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月十二日(木曜日)    午前十一時四分開会     —————————————    委員の異動 本日委員中川以良君辞任につき、その 補欠として深水六郎君を議長において 指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     高田なほ子君    理事            井上 清一君            一松 定吉君            亀田 得治君    委員            西郷吉之助君            中川 以良君            松野 鶴平君            中山 福藏君            市川 房枝君   衆議院議員            猪俣 浩三君   政府委員    法務政務次官  松原 一彦君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務省入国管理    局次長     下牧  武君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○本委員会運営に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○公聴会開会に関する件 ○違憲裁判手続法案衆議院送付、予  備審査) ○裁判所法の一部を改正する法律案  (衆議院送付予備審査) ○外国人登録法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○幼児誘拐等処罰法案中山福藏君発  議)(第二十三回国会継続)     —————————————
  2. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ただいまより法務委員会開会いたします。  まず委員長理事打合会の模様について御報告申し上げます。本日公報に載せました家事審判法の一部改正に関する法律案取扱いについて協議をいたしましたが、諸般の事情から勘案いたしまして、十六日の月曜日、この日に採決をする、こういうことに決定をいたしましたので、よろしくお願いいたします。  第二は、京都地検に起りました起訴取り下げ問題につきましては、かねて亀田委員より御質問が継続されておるわけでありますが、この取扱いについて協議をいたしました結果、ただいま当局の方は鋭意調査中であるので、当局報告を聞いてから参考人を呼んで法務委員会としても慎重これを検討したい、こういうことが決定せられました。そこで当局に対する報告国警並びに刑事局から文書報告をいただきたいということでございました。後刻参考人の招集につきましては、委員会にお諮りを申し上げたいと思います。  なお刑法等の一部改正に関する法律案死刑廃止の問題でありますが、この公聴会開会の期日は五月の七日、八日、こういうふうに一応めどを決定いたしましたので、この公聴会開会承認要求に関しましては、後刻お諮りを申し上げたいと存じます。  なお本日の議事の運営といたしまして、まず衆議院の方から猪俣議員も見えておられますので、さっそくに違憲裁判手続法案及び裁判所法の一部を改正する法律案を一括して議題に供したいと思います。  続いて、幼児誘拐等処罰に関する件、外国人登録法の一部改正、これらの問題を議題に供したい、こういうふうに考えております。以上御報告頭し上げます。     —————————————
  3. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) それではお諮りをいたしますが、京都地検の起訴取り下げ問題に関して参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。京都市における傷害致死事件に関する件の調査のため参考人から意見を聴取してはいかがかと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御異議ないと認めます。参考人の人選及びその他の手続につきましては、委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたします。     —————————————
  6. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 続いて死刑廃止の件に関する公聴会開会の件でありますが、公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りをいたします。刑法等の一部を改正する法律案一般的関心及び目的を有する重要な案件でありますので、関係者及び学識経験者等から意見を聞いて、審査参考に資するため、公聴会を開きたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御異議ないと認めます。公聴会は二日間続けて開きたいと存じますが、日時、問題並びに公述人の数及び選定その他手続等委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御異議ないと認め、刑法等の一部を改正する法律案について公聴会開会承認要求書議長提出することにいたします。     —————————————
  9. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 次に違憲裁判手続法案及び裁判所法の一部を改正する法律案を一括して議題に供します。両案について提案者から提案理由説明お願いいたします。
  10. 猪俣浩三

    衆議院議員猪俣浩三君) ただいま議題となりました裁判所法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  違憲法令処分を阻止し、憲法解釈を統一するため、最高裁判所による違憲法令処分自体審査制度を確立することは、憲法の精神を護持し憲法政治を推進する上にきわめて重大な意義を持つものと信ずるのでございます。  ところで、憲法第九十八条には、「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に違反する法律命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」との定めがあり、第八十一条には、「最高裁判所は、一切の法律命令、規則又は処分憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」との定めがあるにもかかわらず、最高裁判所判決によれば、いかに歴然たる違憲法令違憲処分がなされようとも、具体的争訟事件とならない限り、これを除去し、これを無効ならしめる道はないとされているのでございます。ここにおいてか、現実政治の面にあっては、大多数の憲法学者違憲なりと断定する事態が発生し、次第に既成事実化して行く傾向を生じております。もし、法令処分違憲審査制度を確立することなく、この事態をそのままに放任するときは、やがて憲法そのものさえ破壊せられるに至るであろうということが憂慮されるのでございます。  そういうわけでございますから、現行裁判所法改正し、具体的争訟事件前提としなくても、最高裁判所が、直接、法令処分自体違憲牲審査し得るよう、すなわち、最高裁判所憲法裁判所的機能を持つよう、明確にする必要があると考えられるのでございます。  この機能を果すため、本改正案は、現行裁判所法第三条に新しく第二項を加え、最高裁判所法令処分自体違憲審査権を有することを明らかにし、同時に第七条に規定する最高裁判所裁判権具体的争訟事件に関する裁判権であることを明らかにしようとするものでございます。  これがこの法律案提出理由でございます。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願い申しあげます。  なお引続きまして、ただいま議題となりました違憲裁判手続法案提案理由を御説明申し上げます。  この法律案は、前に御説明申し上げました裁判所法の一部を改正する法律案と一体をなすもので、同改正案において明らかにされた最高裁判所法令または処分違憲性を決定する権限行使するに当っての具体的な裁判手続を臨めたものでございます。  さて、この法律案の概略を御説明申し上げますと、まず第一に、この裁判は、訴訟形式をもって行われることになっております。すなわち、衆議院議員及び参議院議員のそれぞれの定数を合計した数の四分の一以上の員数国会議員原告となり、検事総長被告として最高裁判所訴え提起することによってこの訴訟は開始し、その審理及び裁判最高裁判所の大法廷で行われるものといたしました。  原告国会議員といたしましたのは、この訴訟が本来主権者たる国民の厳粛な信託によって行われる国家機関行為違憲性を糾明しようとするものである以上、これを訴追するのは主権者たる国民を代表し得る資格を有するものでなければならないという観点に立つものであり、その員数衆参両院議員定数の四分の一以上としましたのは、主として濫訴の弊を防止せんとする趣旨でございます。また、被告につきましては、この訴訟が公益のためになされるべきものであると同時に、高度の法律論要求するものである点から、検事総長といたしたわけでございます。  次に、この訴えは、裁判を求めようとする法令の公布または処分のあった日から六化月以内に裁判所に訴状を提出してなさなければならないこととし、もしこの要件を欠くときはその補正を命じ、補正ができないものであるときは、口頭弁論を経ないで却下の判決がなされるものといたしました。提訴期間を限定いたしましたのは、このような憲法上の重大問題はなるべく早く解決すべきであり、かつ、たとい逮憲なものでも、すでに有効なものとして実施されている法令または処分の効果をいつまでも争い得るものとすれば、法律的にも社会的にも由々しい不安と混乱を惹起するおそれがあることを考慮したからでございます。なお、原告の数が多いため訴訟の遂行が不便となることを考慮して、原告代表者制度を設け、原告の行う一切の訴訟行為は、原則として、この代表者によってなされることといたしました。  第二に、有効に係属した事件審理は、口頭弁論中心に行われ、証拠調べの必要があれば裁判所は職権でこれをなし得ることといたしました。しかし、有効に係属した訴訟でも、原告の全員の一致があれば、判決があるまではいつでも訴えの全部または一部を取り下げることができるとともに、各原告はいっでも訴訟から脱退できることとなっております。  さらに、原告が死亡その他の事由、たとえば衆議院解散等により原告たる資格を喪失し、または訴訟から脱退する者があって、原告の数が訴え提起の際に必要とされる員数に満たなくなったときは、訴訟手続は中断するものといたしました。  また訴え変更原則としてこれを認めないことといたしました。これは違憲裁判はなるべくすみやかになされることが望ましく、訴えをむやみに変更して、審理を複雑にし、裁判が遅延することは、この要請に反することになると考えたからでございます。ただ、申し立てにかかる法令を実施するため、またはその委任に基いて制定された法令及び申し立てにかかる法令に基いてされた処分については、右に述べましたようなことが比較的少いと考えられるので、これらについてだけは、申し立て趣旨を拡張して裁判を求めることができることといたしました。  なお、証拠調べにおいて、公務員または公務員であった者が、その職務上の事項について証言または書類の提出を求められたときは、職務上の秘密理由として、これを拒むことができないことといたしました。これは、法令または処分違憲性の判断という憲法上の重大事が、秘密理由として不可能に陥ることを許さない趣旨であり、違憲裁判権威を強調せんとするものでございます。  第三に、違憲裁判判決形式で行われるものといたしました。また裁判所は、原告申し立てにかかる法令または処分限り判決をなすべきものといたしました。これは、違憲裁判は、訴えを待って開始されるという趣旨と同一の理由によるものであり、これによって審判の範囲を明確にしようとしたものでございます。  次に法令または処分について、それらが憲法に適合しないとの裁判があった場合には、その裁判効力は、原則として、将来に向ってのみ及ぶことといたしてございます。  以上、大体において違憲裁判手続の骨子について御説明申し上げましたが、なお最後に、二、三の点について述べますれば、裁判所違憲判決をしたときは、すみやかに官報にその要旨を公告して、国民に周知させると同時に、その裁判書の正本を内閣及び国会にも送付することとし、また裁判の費用は、国庫の負担とする旨を規定し、さらにこの裁判手続き等についての細則は最高裁判所定めるところにまかせてあります。  これをもって本法案提案理由説明を終ります。何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを御願い申し上げます。  以上で提案理由説明を終りましたが、逐条説明は、ここに文書にしたためまして御配付申し上げましたから、これを一つお読みいただければ御了解いただけるのじゃないかと存じまするので、この文書の配付をもって説明にかえさせていただきたいと存じまするが、委員長いかがでございましょうか。
  11. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ただいま提案者から逐条説明については、お手元の文書をもってこれにかえたいという御発言がございましたが、委員皆さんの御了承がいただければさように決定したいと思います。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御了解のようでございますから、さようにいたします。
  13. 猪俣浩三

    衆議院議員猪俣浩三君) ありがとうございました。  なお、ちょっとお願いがございますが、御存じのように、抽象的違憲裁判提起ができるかどうかということは、学界におきましても大きな論争のあるところでありまして、これが憲法及び訴訟法に関しまする純法律的な論題が中心と相なりました。そこで、これは議員提案という異例の姿で行われましたので、私ども衆議院におきましても、参議院におきましても、委員会権威のために十二分な法理論を展開したいと存じておるものでございます。  そこでお願いいたしたいことは、事が法律議論になりまするから、答弁者におきましても十二分な用意をして臨んで、いわゆる記録上正々堂々と論点を明らかにしたいと存じまするので、いかなる点の御質問があるかを、前もって委員長まで、簡単な質問要旨を出していただきまするならば、それを事前に拝見いたしまして、十二分に用意をして御答弁を申し上げて、無責任な答弁は避けたいと思う次第でありますので、衆議院におきましても、さように運営するように御決定願っておりまするので、当参議院におかれましても、さような方法で御審議を願いたい、これは提案者としてのお願いでございます。しかるべくお取り計らいいただきたいと存じます。
  14. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ただいまの提案者からの慎重な御配慮に基く御発言がございましたが、まことに責任ある御処置であることをお察し申し上げまして、この点について皆さんにお諮りをしたいと思いますが、御意見を伺わせていただきたいと思います。  速記をとめて下さい。   〔速記中止
  15. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記をつけて下さい。  中途でございますが、委員変更について御報告をいたします。四月十二日中川以良さんが辞任せられまして、深水六郎さんが選任せられましたことを御報告申し上げます。     —————————————
  16. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 次に外国人登録法の一部を改正する法律案議題に供します。本案について御質疑のおありの方は御発言お願いいたします。
  17. 中山福藏

    中山福藏君 この法案に関連いたしまして、一つ法務省の御意見を承わっておきたいと思います。ただいま世間で非常に注目を浴びておりまするところのいわゆる大村収容所収容者を、韓国抑留されておりまする日本漁夫交換するという問題が起っておりますが、大体外務省法務省意見がその点に関してもつれておるように思われ、また対立しておるように感ぜられますが、法務省としては、これから先にあくまでも自己の主張、つまり法律の論拠に基いた主張というものを貫徹するために御努力になるお覚悟でございましょうか。  また、外務省法務省意見の対立はどういう点にあるかということを一つ明確にしておいていただきたいと、かように考えておるわけであります。
  18. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) お尋ね日韓問題の前提をなす大村収容所における韓国人釈放と、釜山にいる日本漁民の解放とを交換条件にするということに対するお尋ねでございますが、これは厳密なる法理的解釈としまするならば、法務省は同等のものではないという所見を持っておるものです。季ラインという国際的に認められないものを引いて、これを越えた者を一方的に韓国の方では処分をしております。そして刑期の満ちた者は当然帰すべきであるにかかわらず帰さない。国際慣行から言うても強制退去せしむべき性質のものであります。それがそのまま抑留せられている。今国内において韓国籍あるいは朝鮮籍を持つと認めらるる人々が四百幾十人、不法入国者以外に今大村に収容せられておりますが、この人々は、国際慣行に従って強制退去を命じたのでありまして、韓国が引き取るべきものと思うのであります。従ってもし釈放を相互一諸にするならば韓国に引き取るというのが筋の立つ釈放の仕方で、国内において釈放しろということに対しては筋が立たないと私は思います。ただし先般も申し上げましたが、一衣帯水の一番近い隣接国で、しかも長い間一つ国籍を持って参った因縁を持っている日韓の間に、正常なる国交が行われておらぬということは、すべての点に非常に不都合でございまして、一日も早く正常なる国交を回復し、すべての問題が円満に行われますことを希望するのでございまして、今回韓国の側から日本外務省に向って国交調整の話を進めようというお申し出があった。その申し出前提として、従来希望しておった点をさらに強く申して参った、そうしてこれから話を始めようというその前提条件として、たびたび外務省の側から聞くのでありますが、その話の糸口を切るために、一応先方要求をも入れて国内釈放を行うことができるかどうかという話を受けているのであります。これは先刻も申し上げましたように釈放する理由が非常に不明でありますので、そっくりそのままのむわけには参りませんけれども、しかし事と場合によりましては、今日までも一部は釈放いたしておるのであります。国内釈放しておる、そういう事実がある。仮放免という法律の条項もございますので、国内において若干期間だけ引受団体等ができて、治安の面においても差しつかえがない、この人々の身柄は引き受けるという引受団体等ができて、それも朝鮮の側からでありますが、預るということの保証がつくならば、これは若干期間引受条件のもとに釈放ということも考えられ得ると考えておるのであります。しかし国交が回復した結果としては、当然国籍の問題はあくまでも従来通り韓国籍の者であるということであり、さらに今後のかような場合における国外強制退去に対しましては、韓国の側で国際慣行通りに引き受けるということをば条件といたして、私どもは今希望を申し述べておる次第でございます。その点においての御相談ならば応ずるということをば、法務省の方では申しておる次第でございます。
  19. 中山福藏

    中山福藏君 これはある方面から承わりまするというと、今日大村収容所抑留と申しますか、留置されておりまする人々はもちろんでありますが、韓国の大部分の人が日韓合併というのは法律上無効のものであるという考え方を持っておるということを聞いております。そういう主張韓国政府みずから法務省の方に申し入れた事実はないのでしょうか。それが一つ。  それから李ラインというものは、これは法律上私は存在し得ないものであるという考え方を持っておるのです。存在し得ないものを前提として、それを乗り越えた者は法律上の犯罪被疑者として先方が捕縛する、そうして裁判をやるということに今なっておるわけです。だから、政府としては、季ラインというものを認めるかどうかということを法的に確定しておかなければ、このあとの第二次的ないわゆる裁判権というものが向うの方にあるかどうかということは、これはすこぶる疑問になってくるわけでございます。で、政府の方ではやはり李ラインというものはあるということにならなければ、留置期間いわゆる刑期を終えるという問題が出てこない。刑期を終えたとして交換ということに話し合いが進んでおるのか。これは李ラインを認める認めないということで結局疑問がそこに生まれてくるわけです。李ラインというものを認めなければ、裁判それ自体がこれはもう間違っておる。裁判をする資格先方にはないということになるわけです。日本刑期を終えたからということになりますれば、これは李ラインというものは法律上、国際法日本が承認したということになってくるわけですね。だから、これは政務次官法律の方をおやりになっておりませんから、管理局の次席の方がお見えになっておりますから、そこはどういうふうに御解釈になっての事件取扱いをなすっていらっしゃるか、それを承わりたいと思います。
  20. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 今最初にお尋ねになりました韓国の側での国籍考え方でございますが、これは昭和二十四年の十月十七日に駐日韓国代表部は総司令部に対しまして在日朝鮮人連合国人として取り扱うべきことを要請し、その理由として、日韓併合条約は本来無効のものであり、朝鮮日本属領下にあった間は、単に朝鮮主権行使が停止されていたにすぎないのであるから、在日朝鮮人韓国政府の樹立と同時に、何らの措置を待たず自動的に本来の国籍を回復したものである旨を表明いたしております。なお、韓国政府は、終戦後百数十万の在日朝鮮人を現に自国民として本国に引き取っております。一九四八年十二月二十日の法律第十六号で韓国が出しておりまする国籍法によりまするというと、その国籍については血統主義を採用し、在日朝鮮人は当然韓国人となっておると申しております。なお、韓国在外国民登録法によりまして、駐日韓国代表部は、在日朝鮮人につきましては現に国民登録を行わしております。その他韓国側では在日朝鮮人につきまして韓国国民であることを前提としなければとり得ないような措置を幾多とっております、たとえば大村釈放問題を外交交渉にすること自体が、自国民に対する臣民保護権行使であるとわれわれは見ておるのでございます。月末におきまして在日朝鮮人国籍につきましてそれが未確定であることを前提とした措置をとったことは一度もなく、あらゆる面におきましてそれはすべて既定のものとして取り扱っております。  なお、朝鮮李ラインを引いた後に行われたる取扱いにつきましては、これは法律上大へんむずかしい問題と思いますので、私どもはこれを認めませんが、今の実情だけを私の今メモにとりましたのをば御報告申しておきますが、ただいま現在で日本漁夫朝鮮抑留せられております者の数は六百九十名、そのうち刑期が満ちたと称して今回送り帰そうという者の数は三百四十名ないし三百五十名だということになっております。  以上、お答え申し上げます。
  21. 下牧武

    説明員(下牧武君) 中山先生お尋ねの、李ライン侵犯のかどによって抑留されておる日本人漁夫裁判効力があるかどうか、こういう問題でございますが、私どもはもともと李ラインというものは不法のものと見ておりまして、それを侵犯したからと申しまして刑罰に処するということは、国際法的にも許されない不法行為であると考えております。しかしながら、現在韓国が申し入れております日本国民釈放するという線は、向う側の主張としては、刑期を終えた者ということでしぼって参っておる。それをそのまま受け入れるということになりますれば、本来筋の通らないことで、その意味から申しましても、今度の交換ということは筋から申すと、これはどうもむちゃな話だと、かように考えておりますが、さきほど政務次官がお答えされました通り大局的見地からある程度の犠牲は忍んで、ただ将来そういう悪質な刑罰法令違反者は引き取るんだということについて明確な保証をとってもらいたい、こういうふうに希望しておるわけでございます。
  22. 中山福藏

    中山福藏君 これは政務次官の御説明で、これまでの日本在留の被抑留者韓国民であるということを韓国政府みずから連合国連合会ですか、そこで表明しておるのでありまするが、今日日本から船に乗せて抑留者を送り返しますというと、おれの方には被送還者の国籍がないといってずいぶん拒絶して、入国管理局でもお困りになっておるわけであります。それで無国籍者であればこれは交換するということ自体が矛盾撞着してきて、交換するという発言はできないわけですね、自分の国民でなければ。それを送り帰せば、おれの方の国民じゃないといって突っ返して、大村にもう一ぺん送り返してくる。そうして今度は外交談判になりまするというと、交換問題を起しておる、自国民でない者を交換するということそれ自体が、これは実に矛盾撞着しておると私は思う。自国民であればこそ、わしの方の国の国民とお前さんの方の国民とを交換してくれということはできる、しかるに便利のいいときは自分の方の国民だ、便利の悪いときはおれの方には送り返された人間の国籍はないのだ、これはもう全くむちゃくちゃですよ、こういうことは。私はこういうふうな不合理な立場をとっておられまするものをうのみにして、弱い政治的な処置を日本韓国との間に講ずるということは、これは非常な私は国威にも関する問題だと考えておりますが、しかしどうも近ごろの新聞論調なんかの傾向から判断いたしますというと、相当に外務省は、私は弱くなっておるのじゃないかと思うのです。どうも法務省の理屈の方が私は通っておるように考える、それで事がむずかしくなると、これは大局的だとか大乗的に事を判断いたしまして、あつれきの生じないような方法を講じなければならぬと。これは一種の逃げ口上だと私は見ておる、いかに国が弱くても、たとえばセイロン島のコテラワラじゃございませんがジャイェワルデネという人が、サンフランシスコの条約のときに、あの小さい共和国の代表者でありながら、実に堂々たる主張をいたしております。日本のためにもなったこれは主張でありますが、また先だってのバンドン会議におきましても、セイロン島の代表者は実に堂々たる主張をしておる。しかしあとには何もあつれきが生じないのです、大国との間に。だからどうも日韓というものが、あのひょっとしたら先方の持っておる五十万の陸兵というものが日本にやってくるのじゃないかというような恐怖心を持って外交に臨むということは、実にけしからぬ問題だと私は思っておるのです。それで婦女子においてもですよ、私はよく映画でも見るのですが、婦女子が自分の全貌を打ち込んで男子に対するときのあの立場というものは、それはほんとうにいかなる男子といえども指一本さわることのできない権威を持っておると思う、婦女子でも。女の方は肉体は弱いですから暴力的に扱われると何でもないことですけれども、魂の動きというものは人を威圧する力を持っておると思う。日本が今ほとんど無防備であって、実に軍備、防備の点からいっちゃお話にならぬ立場にあるけれども権威を持って、精神力をもって筋を通すというところに私は国の権威一つの光輝を発するものであると考えておるのです。大乗的にとか、国際的にどうの、日韓が衝突すればいけないとかというような小さな問題を考える必要は私はないと思うが、どうですか。きょうは外務大臣、法務大臣はお見えになっておらないのですが、法務次官は相当気骨のある人と私は確信しておるのですが、私は心中しましたように、国籍があるというのなら、これは聞こえるのです。これは交換問題が起ってくるのです、国籍がないという議論には交換問題は起り得ない、これはばかでない限りは、私はそういうことは言えないと思うのです。国籍があってこそその国民を擁護するという法律上の私は政府の責任が出てくると思うのです。国籍がない、送り返すというような立場にある人が、交換問題を持ち出しておるときに、それについていろいろと私は思案投げ首なさる必要はないだろうと、こう考える。そのいわゆる国籍があるなしということを向うの方に、そういう今お読み上げになったところの参考資料を提供して、一体国籍があると思うのか、ないのか、その点から一つ明確にしなさい。それからその確定次第によって交換問題というものが私は生きてくると思うのですが、そういう点はどうですか。私はこれは一応法務省の見解を承わっておきたいのです。   〔委員長退席、理事亀田得治君着席〕
  23. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 実は国籍問題は今日まで何も起ってはおらぬのです。国籍云々で送り返してきておるわけではなくして、しいて言えば戦争以前から居留している韓国人には永久居住権があるといったようなことを言うのであったと私は聞いておるのでございまして、これは今日五十七万七千人の韓国朝鮮籍人々が外国人として日本に登録せられておりますが、このほかの九千五百人はすでに向う側が受け取って、おるのでございます。そうしてざらにその九千五百人のうちでは重い刑に処せられて、国際慣行に従って当然本国に強制送還せらるべき条件のもの四百四十五人を受け取っておるのです。過去において。今日まではスムーズにこれを受け取っておる。しかるに昭和二十七年の五月以後になってこの刑余の人々をば取らなくなって参っておる。それが今日まで根を引いておるのでございまして、密入国者は三十二回まで、今日向うが受け取っております。この刑余の人々は七回までは受け取っておりますが、その後に至ってもつれておるという事実はある。そこで問題は、国籍云々ではなくして、居住権があるといったようなふうに私は聞いておるのでございましてこの点につきましてはまだはっきりしたところがわかっておらぬのでありますから、私ども念のためにこれは国籍問題ではないと確信して、この交渉に当る前提に、そういう点で今後新しい問題を起さないように希望しておる。国籍は不動確定のものである。で当然日韓の間に国交が回復するならば今後は国際慣行通りにすべてのものを行なって引き取るべきものは引き取り、入国を許すものは許す。現に私どもは排斥しておるのじゃないのでございまして、朝鮮人々でも保証人があり、前科もなく独立の生計を営んでおる人は帰化を認めておる。調べてみますると七千人以上は帰化しておる。今日も現に手続きをいたしておる。でありますから、正常なる国際慣行通りに行われる日が一日も早くくることを希望いたしまして、あるいは一部の臨時の措置も、この大きな目的が遂げられるまでならばというのが、まあ今回の糸口を切ろうとする政府の態度であると信じて、私どもは善処をいたしておるつもりでございます。
  24. 中山福藏

    中山福藏君 私は政務次官の御答弁はですね、非常にそれは疑惑を持つので、あなたのおっしゃったことには、私が入国管理局で、ここにまあ次長もおられるようですが、いろいろ話を聞いてみますというと、幾ら送り返しても突き返されるというようなことをしばしば承わっておるのです。それはどういうわけかというと、おれの方には国籍がない。おれの国の方には突き返された人間の国籍がない。だからそんなものは取る必要がない。それで、だから私は天村収容所の韓国人収容者がだんだんふえてくると、こう聞いておるんですがね。しかしただいま政務次官の御答弁では、その点はあたかも韓国人はですね、全部韓国国籍があるというように結論は聞えるのですが、その点をもう一回明確にしておいていただきたい。
  25. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) それは私どもの方には韓国国籍に登録しておる者のみを返しておるのでございまして、登録しておる者の数は朝鮮籍四十三万三千七百九十三名、韓国籍十四万三千八百八十九名、合計五十七万七千六百八十二名というのが現在外国籍として登録せられておるのでございまして、また血統主義によって自動的にすべての朝鮮人は韓国または朝鮮籍であるというように先方でも言っておるのでありますから、その国籍においては少しも疑義のないものと私どもは今日まで聞いておりますが、その引き取らないところの理由国籍不明ということではなくして、私は居住すべき権利があるものを送り返しておるものと心得ておりますが、この点につきましては、私、日なお浅うございますから、ここに次長がおりますので、入管の次長からお答え申し上げることにいたします。
  26. 下牧武

    説明員(下牧武君) ちょっと補足して御説明いたしますと、刑罰法令違反者、戦前から日本に引き続いて居住しておる朝鮮人で、犯罪を狂して強制退去処分になったものを韓国側が引き取らない理由といたしましては、最初はそういった戦前からの在日韓国人は本来日本に居住する権利がある、それで日韓会談、条約によってその処遇がきまるまでは当然日本に居住する権利があるのだ、それを追い返すのはけしからん、こういう言い分で一貫しておったわけでございます。最近に至りまして、この大村釈放問題とそれから日本人漁夫釈放問題が起きましてから、そういう韓国人国籍もまだはっきりしておらんからというようなことを言い出してきているという程度でございます。
  27. 中山福藏

    中山福藏君 これはもう一つお伺いしておきますが、韓国との間のいわゆる国民交換、問題は外交的に今だんだん進めておられますが、北鮮とは全然そういうことについての何か交渉は今までございませんですか、それをちょっとお伺いしておきます。
  28. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 実は大村におりますこの収容者の中に、現に北鮮に帰りたいというものは八十八人でございます。この人々は今千何百人おるうちの一部でございまして、よくその相互の間に北鮮系、南鮮系の争いも起りますので、刑に収容してありますが、この人々は北鮮に帰りたい、何とかして帰してくれということをしきりに言っております。私どもの方は本来あそこでとめておくべき性質のものじゃない、一日も早くその国に帰したいし、また台湾籍の洪進山を中国に送り返した実例もありますので、これは本人の希望する北でも南でも日本政府としては直ちに送り返す意思を持っておりますが、道があかないのです。どうして送り返すべきか、送り返す道がない、これはまあ伝え聞くところによると、船を仕立てて送り出せば、それは李承晩政府の方では爆撃するといったようなことを言っておる、どこまでほんとうだかうそだかわかりませんが、向うは乱暴でございまして、日本の漁船に発砲するのであります。そういう乱暴をいたしておるものでございまするからして、船を出して送り返す道もない、また北鮮の方とは日本政府との間に何ら話をつける道がついておりません。赤十字のみがここに介在いたして辛うじて先般北からの帰還者を引き取るために参りましたが、これも道がなく、香港から遠回りをして参ったようなわけでございます。今でも国内におる朝鮮人で北鮮に帰りたいという者が多数おります。私どもは何とかして帰してやりたいと思う。現に十三日のあすはそのうちの何人かがここに陳情にやってくるというようなことが伝わっておりますが、送り返したいのでありますがどうにも道がない。一日も早くこの方面にも送り返されるようにいたしたいものだと希望いたしております。
  29. 中山福藏

    中山福藏君 私非常に憂えますることは、今度外務省意見法務省意見が妥協といいますか話し合いがついて、結局漁夫大村収容所における被抑留者との交換が行われたといたしまする場合に、刑期満了という札つきの人ばかり交換されたら、これはやはり李ラインの承認という問題が影の形に添うごとくやはり一つの認定を伴うものであると私は思う。だからそういうあとに尾を引かないような御処置をお願いしたいと思うと同時に、大村収容所抑留されておりまする人のうちには相当重罪犯人が多いんじゃないか、いわゆる悪質抑留者が多いんじゃないかと、こう見ているんですが、それを野放しに日本内地で釈放してしまって、あとの責任はなるほど韓国人々の団体とか、いろんなそういう団体の代表者保証人ということになるでしょうが、しかしその保証だけで私ども国民というものは安心していいものかどうかということは、非常にこれは疑問だと思う。それで、大体御承知の通りに、今、朝鮮人に対する扶助料というものは二十四億万円、それが税金で私どもにかかっているんです。この二十四億万円の金がわれわれの税金によってまかなわれておるということにつきましては、相当の私は考慮を払わなければならぬ点であると思う。もしそういう悪質犯罪者が釈放されて、やはり要保護者という立場で私どもはこれにまでも扶助料を出すということになれば、ますます私どもの税金というものは高くなるということになる。だからその悪いことをしないという保証を監視付か何かで、そういうことに団体でも責任を持ってくれれば、これは法律上の根拠のあるなしは別として、国民は非常に安心するわけなんですがね、そういう点についてはお取り調べになっておりますでしょうか、どうでしょうか、一つその点。
  30. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) ごもっともな御心配でございますが、その釈放といいましても私どものは条件付でございまして、話を進める上におけるところの糸口を切ろうというだけの条件付でございますから、そこで十分そのあとのことを考慮しなければなりませんが、国内におけるあとの治安の、直接の責任は警察の方でございますので、これは警察の方から意見が出ております。その意見は、小出しにして、そうして保護団体を作って二カ月ぐらいの間そこで十二分に監視もし責任を負ってもらう、食費もつけて出して手当もする、それでなければ皆もう小づかい銭もなく、その日から生活の困る人々でありますから、そういうふうな条件もつけて治安の維持をはかろうということを警察の側が申しておる、その意見が出ております。この意見法務省の側と一致いたしておりますので、そういう条件のもとにというのでございます。  なお、今お話がありましたが、念のためにここで……。今朝私は日本の刑務所における受刑者を調べてみたのでありますが、ただいま日本の刑務所では、二月末の調べでありますが、六万八千四百五十人の受刑者がおります。そのうちに朝鮮籍の者が四千五百九十七人、総数八千万の国民に対しまして日本籍の者は一万分の八ぐらいでございますが、朝鮮籍人々は一千分の八、十倍だけ多いようでございます。六万八千人の受刑中の人々のうちで、朝鮮籍の人が四千五百、まあ四千六百人という事実から申しましても、この人々が確かな生産的生業を持っておらぬ、ここに非常に大きい悩みがある。決して私どもは厄介がるわけではございませんが、長い間同じ国民として暮してきた者でありますから厄介がるわけではありませんけれども、またすぐに送り返そうとは思っておりませんが、せめて国際慣行によって送り返される分だけは徐々に引き取ってもらいたいという謙譲な態度をもって今臨んでおるということを申し上げておきます。
  31. 亀田得治

    理事亀田得治君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕   〔理事亀田得治君退席、理事井上清一君着席〕
  32. 井上清一

    理事(井上清一君) 速記を始めて下さい。
  33. 井上清一

    理事(井上清一君) 次に、幼児誘拐等処罰法案議題に供します。本案について御質疑のおありの方は御発言お願いいたします。
  34. 亀田得治

    亀田得治君 この法案によりますと、幼児の定義として七才に満たない者、こういうように線が引かれておるわけです。七才、これは何か特別な理由等でもあったのかどうか、この点をまずちょっと御説明を願いたい。
  35. 中山福藏

    中山福藏君 これは特に七才ということをここで明示しておきましたのは、刑法第二百二十四条並びに二百二十五条にいわゆる未成年者誘拐に関するところのいろいろな規定がありますけれども、近ごろ特に、この全然意思能力を欠いておるというような幼児に対するところの誘拐が非常にふえましたので、まあ一応世間の注目を引くということにねらいをつけ、並びにその七才に満たない子供を特に擁護した方がいいんじゃないかというようなことを考えまして、こういうように年令を表示しておいたのでございますが、亀田委員御承知の通り、トニー谷の子供の誘拐事件が起りまして以来、大阪府並びに兵庫県下におきましても十数名という者が誘拐されたのであります。ことに法務省などの御意見では、七才という年令を表示するということはあまり必要はないのではないかという意見もあったのでありますけれども、ただいま申し上げましたような、現に誘拐されて、それを手段としてのいわゆる営利目的の行為が相当に増加しつつありますので、その年令から調べまするというと、大体七才以下の人が多い。だからこういうことにかんがみましても、やはりこの七才という年令を、ここに一応ポイントを明らかにしておく方がいいんじゃないかというようなことを考えまして、七才という年令をここに表わしたわけであります。
  36. 亀田得治

    亀田得治君 まあ未成年者の中でも特に意思能力のない人、こういう点をねらっておられるわけだと思うのですが、そういたしますと、もう少しこの年令を高めるということの方が実際に合うのじゃないか、まあもしこの法案を成立させるとする場合にですね、そう思うのです。で、その十数回の例、私一々こまかくは知らないわけですが、それはどうなんでしょうか、ほとんど七才以下だとか、そういう何か実際の統計に基いて七才でいいということにしたわけでしょうか。
  37. 中山福藏

    中山福藏君 ごもっともなお尋ねであると思いますが、今ここに一、二の例を御参考に申し上げさせていただきたいと思うのですが、たとえばこれは本年二月の二十日の午前十時半ごろの西宮市の今津久寿川町無職安冨光枝さんという人の幹男さんという子供が五つでやはり誘拐されております。それから三十年の十一月の二十六日に女中が幼女を誘拐した事件がございます。これは大阪市浪速区河原町二の千四百七十五、喫茶店オランダの経営者山田哲男という人の次女の年子ちゃんという人が一年八カ月でこれは誘拐されたのです。それから本年の二月の十四日に、これは亀田さんも御承知の尼崎市瓜生の誘拐事件でありますが、小田光枝さんの四女の広子ちゃん、これは六つであります。これがやはり誘拐されておるのであります。それから本年の二月の十四日にもう一人おるわけでありますが、これはただいま亀田委員の仰せられました七才以上の年令に当るものでありますから、年令の引き上げという問題がここで起きてくると思いますが、これは神戸市の兵庫区の荒田町五十六の二、松岡勇さんという人の長男、ヒサブと読みますが、久しいという字と生まれるという字、久生と言いますが、これが十才で誘拐された。それから二月の二十一日に尼崎市の北大物町工員の山本朝次郎さんという人の三男が、やはりこれは六才でありますが、弘ちゃんという子供が誘拐されておるわけであります。こういうふうでありますると同時に、御承知の通りに大阪府の八尾市で五、六カ月の赤ちゃんがふろに行って、ふろ場で誘拐された事件があって、これは石川県で約一年後に発見されております。せんだってこれは大阪で裁判が済んだわけでありますが、誘拐者は懲役四年、これは一つでした。そういうようなあんばいで、大体の誘拐される年令から申しますると、十才というのは、ただいま申し上げたように一人、まだほかにもありますけれども、大体今五つ、六つの問題を取り上げましたが、大体のところは六才以下の子供が多いようです。そういうふうな事柄を、これはごく近いところの例でありますが、それ以前のことはまたよく取り調べて報告をしてもいいわけですが、まあ手近かなところを一つ参考にしていただきたいと思います。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 その点ですね、もし何か適当な統計等でもあれば一つ参考に拝見したいと思います。これは希望しておきます。  それからもう一点は、今までこの刑法の二百二十四条以下の略取誘拐の罪ですね、ここできめておる法定刑の一番重いものをもって処罰したというような事例がどの程度あるのかどうか、つまり私のお聞きしたいのは、この法定刑ではどうも軽過ぎるということで、しかしいたしかたないからもうここにきめられておる最高の刑で処罰するというふうにやられたものがどの程度あるのか、そういう点の統計等を、これはちょっとむずかしいかもしれませんが、その辺のところですね、若干、わかっている程度にお聞きしたいと思います。
  39. 中山福藏

    中山福藏君 これはトニー・谷の問題がここに判決が皆様方のお手元に参考として提供されておるわけでありますが、それによりますと、第一審はトニー・谷の場合は検事の求刑は八年、ところが裁判所判決は四年ということになっております。それから大阪の方の八尾の場合における赤ん坊の誘拐事件は、やはり判決は四年であったと覚えているわけです。それで二百二十四条によりますると、これは農高五年でしたかね、二百二十五条が十年以下だと思うのです。それで営利誘拐ということで二百二十五条の大体、適用をやっておるようであります。せんだってトニー・谷の裁判の折には正木亮弁護士がこの弁護の任に当られているわけでありますが、検事の求刑八年に対して弁護士の方では二百二十四条をたてにとって、これは営利誘拐じゃない、未成年者の単なる誘拐というようなふうに弁護をなすったと思うのです。それでせんだって木村東北大学教授が参考人としてお見えになりまして、この幼児に対する刑は、ほかの点はあまり賛成できないが、少し経過ぎるのじゃないかという点だけは私ども意見と同調していただいたように思っております。それでまあこの前、住友の子供さんの誘拐事件が神奈川でありましたか、横浜かどこかであったと覚えておりますが、この場合のものは控訴はなかったのですが、今はっきり覚えておりませんが、あとでまた取り調べまして御報告したいと思いますが、まあ日本においては、現在においては大体それくらいのものじゃないかと思うのです。それからもう一つここに判決があります。東京都京橋区新佃島西町二丁目十五番地というのですが、樋口芳男という人に対する判決があります。「右の者に対する営利誘拐恐喝並びに逃走被告事件について当裁判所は検事柳川澄関与の上審理をした結果次の通り判決する。」という判決がありまして、これは被告人を懲役十年に処しております。これは内容はいろいろ併合されておりまするから、御存じかとも考えられまするけれども、この場合には懲役十年ということに主文が表われておるようでございます。そういうふうな例、これは私は内容はまだ読んでおりませんから詳しく申し上げかねますが、これは営利誘拐になっております。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 トニー・谷の場合には、裁判所は結局営利誘拐でないということで二百二十四条を適用したのですか。
  41. 中山福藏

    中山福藏君 いや、二百二十五条を適用しているようです。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、結局二百二十五条、検察官の意見通り法律解釈はやりながら、刑そのものは引き下げたわけですね。そこにやはり私は若干こういう場合に問題があるのじゃないかと思うのです。ああいう場合に、営利誘拐ということが判例等で明確になっておるのであれば、十年でいけるわけですね。しかし実際に裁判所が適用する場合に、四、五年程度しか考えないということであれば、特に刑法の罰条の上の方を引き上げないと、どうしても社会上困るというふうなところまできておるかどうか、これは若干問題があるのじゃないかと思うのです。今最後にお読みになった、それが十年、その一番高いところをいっているようですが、その辺のところですね、何かもう少し資料等がありますと、私ども確信持てるのですが、どんなものでしょうか。
  43. 中山福藏

    中山福藏君 これは営利誘拐の主たる方法というものが法律上明確になっておりませんので、その営利の目的といううちに誘拐というものが含むのだということを明確にするのがねらいです。誘拐というものは営利の目的ということになるのかどうかという点が非常に刑法では不明確なんですね。それで手段方法についての制限というものは法律に、刑法一にあらわれてないからというので、裁判所は二百二十五条を適用したと言っているようです。その点を明確にして、誘拐もその手段方法の一つに入るのだということに、これを明確にするというのが大体のこの立法の根本理由なんでございますが、ただ営利の目的ということ、手段方法というものは明記してないから、やはり誘拐というものも営利の目的でやったということになるのだ、こういう断定を下しての判決のように見えます。その点を明確にしたいというのが大体のねらいですね。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、この法案の二項と三項ですね、これで私は足りるのじゃないか、二項三項があれば、非常に営利の概念というものが明確になりますからね。一項によって、ことさらに刑の上の方を引き上げていく、まあ元来刑法の各条文の罰条は、やはりおのおの均衡をとった考え方で総合的にきめておると思うのですね。どこか一ついじると、そうすると今度はほかのやつはこれが軽いのじゃないか。これが標準になります。そうすると、だんだん上っていく、そう急には上らぬだろうけれども、やはりそういうことになることも考えられるので、ああいうふうな誘拐、これはやはり営利誘拐になるのだという点だけを明確にすれば、どうも目的を達するような感じを濃くするのですね。その点どうでしょうかね。
  45. 中山福藏

    中山福藏君 これはただいま仰せられたような点も実は相当私ども考えてみたんです。ところが、どうもこれを一般刑法の改正、いわゆる刑法改正の仮案と申しますか、それが大体起草されてから十七年もたってなお今日に至って刑法が改正されていない、まことに遅々たる状態を惹起しておりますことにかんがみまして、やはりこれは特例法というような一つの立場でこういう法律は作りた方がいいんじゃないか、たとえば暴力行為の場合におきましても、一本立に法律がなって現われておるように思うのです。そういうようなあんばいで、古い自動車でももう黒塗りの自動車に始終乗っておりますと、あえてそれを一ぺんに赤に塗りかえるというと自他ともに一つの関心を引くというようなあんばいで、近ごろトニー・谷の事件以来非常に多数の、何と申しますか、そういうことに一つのスリルを感じるのだと思いますが、誘拐者が非常にふえたのです。この間亀田委員お越しであったときだと思うのですが、あの小田という尼崎のお母さんが出て来まして、ほとんど石炭箱一ぱいくらい脅迫状とかひやかし半分の手紙がやってきて、そしてまるで人の子供が、誘拐されたことを鼻の先で笑っているというようなことになりつつあるということを、あのお母さんが非常に嘆いておられました。それで、これは尼崎の一件は、尼崎全体の婦人会が総決起して、昼夜兼行で大阪の駅なんかにプラカードを立てまして探したけれどもわからない。しかるに一方においてはひやかし半分の手紙、脅迫の文書、二百万円持ってこいとか、十万円持ってこいというような手紙がどんどんくる。まるで人の子供の災難というものをおもちゃにしてもてあそぶというような感じで、世間の一部にそういうことが起りつつあるということは非常に私は寒心にたえないものじゃないかと思いまして、特に現在そういうふうなおもしろ半分の誘拐事件が起りつつありまするときには、この刑法のすべての改正が行われるのを待つことはできないのじゃないかというような感じを持ったものですから、皆さん一つ御同調を得たいというようなあんばいでこの法律案提出したわけであります。どうか一つ御了解願いたいと思います。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 お気持はよくわかりましたが、ただやはり社会的ないろんな全般の環境なり事情がよくなりませんと、なかなかそういう事件も少くならぬだろうと思います。刑だけを上げても、あるいはそれも一つかもしれませんが、それだけでは解決つかないと思うのです。  それからもう一点は、最低刑も少しずつ上っているんですね。これまでは別に上げる必要はないんじゃないか。これはやはり裁判所の量刑の範囲を残しておいてもいいように思うのですが、それもどうしても上げなければならぬというような根拠ですね。
  47. 中山福藏

    中山福藏君 その辺一つよろしくお考えを願いたいと思います。
  48. 井上清一

    理事(井上清一君) では、ほかに質疑もないようでありますから、本日は委員会をこれで散会いたしたいと思います。    午後零時三十五分散会