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1956-04-06 第24回国会 参議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月六日(金曜日)    午後三時二十三分開会     ―――――――――――――    委員の異動 本日委員藤原道子君辞任につき、その 補欠として亀田得治君を議長において 指名した。     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     高田なほ子君    理事            井上 清一君            亀田 得治君            宮城タマヨ君    委員            西郷吉之助君            赤松 常子君            小林 亦治君            羽仁 五郎君            市川 房枝君   政府委員    警察庁警務部長 荻野 隆司君    調達庁次長   丸山  佶君    外務省欧米局長 千葉  皓君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務省民事局参    事官      平賀 健太君    労働省労政局労    政課長     大野雄二郎君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選刑法等の一部を改正する法律案(高  田なほ子君外六名発議) ○検察及び裁判の運営に関する調査の  件  (神奈川県下における警察官の暴行  事件)  (板付基地勤務者の人権擁護及び裁  判管轄権に関する件)     ―――――――――――――
  2. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) これより法務委員会を開会いたします。  委員変更について御報告を申し上げます。四月六日付委員変更通知がございました。藤原道子さんが辞任せられまして、亀田得治さんが選任せられました。御報告を申し上げます。     ―――――――――――――
  3. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 次に理事補欠互選の件を議題といたします。  亀田得治さんが一時委員を辞任されましたので理事が一名欠員となっておりますので、これよりその補欠互選を行います。互選方法としましては、その指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御異議ないと認めます。それでは理事亀田得治さんを指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) まず刑法等の一部を改正する法律案議題に供します。本案について発議者から提案理由説明をいたします。  それでは私から刑法等の一部を改正する法律案提案理由説明をいたします。  人の生命尊貴なものであります。人の生命は畏敬されねばなりません。この普遍的基本原理の上に自由と平和とへの愛が生まれ、文化が形成されていくものと信じます。  日本国憲法は、すでに恒久の平和を念願し、人間相互関係を支配する崇高な理想を実現するために戦争の放棄を宣言して、範を国際的地位のうちに垂れておりますが、この観念は、当然に国民基本的人権の享有に関する国内の立法の基準としても憲法の中に貫かれているはずであります。  しかしながら憲法第三十一条では、外国立法例に見られるように、死刑はまだこれを廃止する形になってはおりませんが、わが国刑罰に関する法制史を顧みますと、国民精神の伝統は外国法制を受け継いだ場合にも、母法に比べて軽い刑罰規定し、その刑の種類も残虐的な感情から少しでも遠ざかろうとする努力が試みられておりますことはすでに顕著な事実でありまして、また中世において死刑が全く行われなかった三百四十七年間の平和な時代がありました。もっともいろいろの理由で冷厳な刑罰規定した法令の制定を見たこともありましたけれども、すでに平和憲法となった現代において、なお死刑制度を残存させておくことの必要については、ようやくこれを再検討する時期に当面しているものと考えられます。  現在の憲法死刑を否認してはいないように見られますが、別に第三十六条では浅慮な刑罰は絶対に禁ずる旨の規定があり、死刑の本質及びその方法については最岡裁判所の判例に表われたところによっても、人の正命は全地球よりも重い尊さを持つものであり、その残虐性の判断は、時代思潮を背景とすべきものとされ、国家文化が高度に発達して国民感情が容認しなくなれば、憲法第三十一条の解釈はおのずから制限されて、死刑そのもの残虐刑として、その存在が否定されることになるであろうことが示唆されております。すなわち国民の良識は現在その方向に向っていると解せらるべきであります。  刑罰についてその社会防衛上の価値を離れて考えることはできませんが、今日死刑廃止している国は数多くあります。そしてその中には文化の最も高い、また法を最も尊重する国の幾つかが含まれておりますが、その廃止の結果として、殺人罪永続的増加を証明した例はありません。この点から見まして、死刑存在理由ははなはだ稀薄なものと考えられます。  刑罰原理が、なお今日において応報的感情を含んでいることは肯定せざるを得ませんが、それにしても、加害者死刑に処することによって被害者やその遺家族、さらにまた一般社会応報感情を満足させることよりも、その感情をもっと冷静に、かつ、もっと高い立場に置いて、処刑せらるべき者に、むしろ被害者遺家族一般社会とに対してその贖罪的奉仕に長く積極的に専念させることの方が、より意義があるのではありますまいか。  次に考えねばならないことは、裁判人間によって行われる以上、どんなに人智を尽したとしても、万一の誤判を皆無と断定することは不可能でありまして、また東西にその誤判実例をあげることができるのは衆知のことであります。その場合、処刑によって失われた生命は、人間の力で回復することは全く不可能であり、またその遺家族の傷心をいやす逆もほとんど絶望といえます。わが国裁判はきわめて公正なものでありまた裁判官はその選任、研修、職務執行等に最上の留意が払われ、その全能力が尽されているようではありますが、尊貴な人の生命を人みずから与えることができない以上、人の生命を奪うことについては最大の謙虚さが要請されることは、当然といわなければなり決せん。  人の生命は、法以上のものであります。死刑に関連する誤判の問題が、一般裁判誤判の場合と全く異なるところがあるゆえんであります。  刑法は、犯罪に関連する人々のマグナ・カルタであります。ここにも死刑が問題とされなければならないゆえんであります。  死刑があるために犯罪が阻止されるということも、人は刑罰をおそれて罪を犯さないのではなく、罪そのものを悲しみおそれる心が人間にあればこそ、人は罪を犯したくないのである、という根本をくつがえすことは許されません。しかるに死刑があるがために、人は罪をおそれるよりも、刑をおそれるに至っています。  残酷な刑罰は、残酷なる犯罪を導くことがあるのは、また、まことに看過を許されない事実であります。死刑恐怖が罪をおそれるよりも、刑をおそれさせ、犯罪の発覚のみをおそれさせ、目撃者を殺すに至らしめ、死刑があるために殺される人の数がふえている場合が現実にあるのであります。  死刑に関連する新聞ラジオまたテレビなどの報道が、青少年モラルに及ぼすおそるべき影響は、このことのみをもってしても、死刑廃止すべき十分の理由があるとも考えられています。  死刑がその執行に関連して、拘置所刑務所に与える悪影響も無視されることができません。死刑は、裁判官を残酷にし、検察官を残酷にし、警察を残酷にし、刑務所または拘置所を残酷にし、新聞ラジオテレビなどをも残酷にするのであります。  最後に、死刑社会をして、死刑にたよって社会自身を改良し、政治をよくする努力を怠らしめる傾向があるとされていることも、また、全く無視することはできません。死刑廃止は、社会社会自身の改良に全力をあげ、政治をよくすることに全力をあげる決意を表わすものであります。ことに最近の過去における戦争影響によって、戦後今日に至るも人の生命尊重観念がきわめて薄い事実のあることは、わが国現状において、まことに悲しむべきことでありまして、現在特に国家が率先して人間生命の何ものにも越えて尊重する意思を、死刑廃止に表現することが要請されているのであります。  右の見地に立って考えますと、死刑制度はすでに刑事政策上これを存続させる根拠に乏しく、わが国文化現状もこの存続を否定する方向に進んでおり、国民感情もまた十分熟していることが察知されますので、刑は別なきを期する刑事政策理想第一歩を、死刑廃止から始めたいものと思います。これが今回刑法等の一部を改正する法律案発議し、死刑廃止してその文字を成文法上から抹消しようとする理由であります。  改正法律案の内容は、現行の刑法爆発物取締罰則日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法日本国における国際連合軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書実施に伴う刑事特別法日本国における国際連合軍隊地位に関する協定実施に伴う刑事特別法航空法等刑罰法から死刑文字を抹消し、これに関連して刑事訴訟法監獄法少年法刑事補償法裁判所法恩給法警察官職務執行法戸籍法、商法、旅券法等から死刑の文中を抹消して、字句の整理を行い、なお経過的規定等を設けたものであります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに本法案を御可決あらんことをお願い申し上げます。  以上提案を終りますが、羽仁委員から、事の緊急性について特に補足説明がございますので、申し添えます。
  6. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 国会において初めて死刑廃止法案提案されたのでありますが、その日本刑事政策上また日本の歴史の面から考えてみましても、実に重大な意義を持つ本法案が、どうか本委員会において、十分に慎重に審議せられたいということを希望いたしまして、ただいまの提案理由説明に対して多少補足をさしていただきたいと思います。  その第一は、大体現在この死刑廃止立法措置をなすべきであるということの動機についてであります。この最大理由は、最近凶悪犯罪が激増しておるということであります。最近凶悪犯罪が激増している際に死刑廃止するということは時期尚早ではないかという御意見があるようですが、われわれの提案の第一の理由は、その最近凶悪犯罪が激増しているということを放置すべきでなく、それに対する立法者の緊急の義務として死刑廃止提案すべきであるということがわれわれ提案の第一の理由であります。  最近凶悪犯罪が激増しているということの理由は一体どういうところにあるか、私はやはり衆目の見るところ、またあらゆる画から考えてみまして、その原因が最近の戦争にあったということは、おおうことのできない事実であろうと思います。ヨーロッパにおいてもドイツが一九四九年に憲法をもって死刑廃止いたしまして、その九ヵ月後に西ドイツ議会において再びこの死刑を復活させようとする努力がなされましたときに、西ドイツ議会社会民主党の議員のマイヤー・ラウレ夫人が、次のように述べておられます。最近の戦争によって生命尊重するという観念ばかりでなく、死をおそれるという観念までもが破壊されてしまっている、道徳、モラルというものが最低のところまで、戦争の結果、落ちてしまっている、このときに当って、立法者義務は、この破壊された倫理的な価値というものを再び回復さして、そうして最近の過去の野蛮な状態から、将来のヒューマニズムの時代に向って大胆に第一歩を踏み出すことであるというふうに考える、というように述べておられますが、これは全くわれわれと見解が一致する点でありまして、この戦争によって低下したモラルというものを、そのままに放置しておくべきではない。最近の凶悪犯罪の激増について、立法者はまず第一にこの点に注目すべきであると考える。最近凶悪犯罪が激増しているのに、死刑廃止してどうするのだという御議論は、この点において私はどうか十分に再検討をしていただきたい。  なかんずく青年の間に生命尊重する観念が地を払っているのみならず、自分が死ぬということについての恐怖気持さえも浅くなっている。この状態をわれわれは何とかして打破しなければならない。この意味において、本法提案の第一の理由は、現在凶悪犯罪が激増している、これを何とかして阻止しなければならぬ、その阻止する根本的な方向は、人命尊重、そしてこの死刑廃止ということからこなければならない、この意味から申せば、現在死刑廃止は今日きわめて急を要する問題でありまして、現在のように生命尊重観念が低下している状態を一日も存置すべきではない。なかんずく、そういうように生命尊重観念、そのモラルが落ちているときに、死刑を存置していることによって、現実に現われているあり方は、ことに青少年あるいは  一般国民の間に、凶悪犯罪を、罪をおそれるという気持よりも、死刑をおそれる、刑罰をおそれる観念の方が強くなってしまっているということであります。で、ときどき聞きます講論に、たとえば現在死刑を判決せられた方々、そういう方々が、死刑を前にして、すっかりそれを観念せられて、きわめて高い精神状態になっておられる。ところが、そういう方々が何かの関係で減刑せられますというと、その態度ががらりと変ってしまうということを、刑務官、あるいは刑務所関係の方のお話の中にありますが、これも何を現わしているかといえば、まさに刑をおそれているだけであって、罪をおそれてはいないのです。私はこの旧民の間に刑のみをおそれて、罪をおそれないといろ観念が発生していることぐらい、刑事政策上危険なことはないと思うのです。人間はやはり刑をおそれる前に、罪をおそれるのが当然であります。その正常な状態を回復しなければならないと思うのであります。私はその意味で、この本案が幸いにして本委員会の慎重な審議を受け、可決せられた暁には、必ずこの凶悪犯罪の阻止に有効なる効果があるものと確信をしております。  以上が立法論としての特に補足さしていただきたい点でありますが、次に法理論として補足さしていただきたい点が三点ございます。およそあらゆる法律というものは、常に私は次の三つ条件を具備していなければならないものと思っております。その三つ条件と申しますのは、そういう法が必要にして欠くべからざるものであるかどうか、ただいま現実の問題としては死刑というものがなければ、世の中が成り立たないものであるかどうかということが第一点であります。われわれ立法者は、決して必要欠くべからざる以外の法律を作る権限は持っていない。それがなければ社会が成り立たないというものであって初めて法律死刑というものを存置せられることを許されるのでありますが、果してこの死刑というものは、それがなければ社会が成り立たないものであるかどうか、これが第一点。  それから第二点は、いかなる法律であっても、それにおそるべき乱用があるような法的措置を存置することは許されない。死刑というものがおそるべき乱用を伴わないということが断言できるかどうか、この点が第二に十分考えられなければならぬ。  最後に、あらゆる法律は、それによって不当な待遇を受けたと考える人がある場合に、それを救う方法がなければならないわけであります。しかるに、この死刑の場合には、不当に死刑を受けたという人が救われる道があるかどうか。  以上の三点が私は立法上特に厳格に守られなければならない要点であると思います。  しかるにこの第一点、死刑というものはそれがなければ社会が一日も存続し得ないものであるかどうか。実際の各国の統計の示す数字から結論されることから見ましても、現在世界には多くの国において死刑廃止せられております。死刑廃止せられた国々がその結果として、決してその社会なり国家状態が不安に陥っておるのではなくして、かえってそこに社会状態、また国家状態としても、はるかに確実な状態が実現されておることは、統計の示す通りであります。死刑廃止したことによって凶悪犯罪の増加した例は一つもないと言って差しつかえないのであります。ごく短期間に、そうして狭い範囲内では、ただ一つスイス三つばかりの州におきまして、死刑廃止して、後数年間凶悪犯罪が若干増加しておるという実例がございますが、これも長い目で、それ以前の二十五年間、それ以後の二十五年間というものを比較してみますと、やはり長い目で見れば、死刑廃止によって凶悪犯罪が増加しておるのではありません。ただ一つこの部分的な、しかも短期間な事例があるだけでありまして、その他はいずれもこの死刑廃止によって凶悪犯罪が増加しておるという事実はないのであります。これはまさにこの死刑というものが、それがなければ国家社会の秩序が維持できないというものではない。それから次に、それが有効であるかどうかということにつきましても、死刑が有効でない、全然無効だということはもちろん言いがたいことでありますけれども、しかし死刑というものはあまり有効なものではないということは、現在日本におきましても死刑があるにもかかわらず凶悪犯罪が微増しておることが何よりもそれを証明しておる。つまり、死刑というものは、それがなければ社会が存続できないものでもないし、かつまたその死刑によって凶悪犯罪を阻止するのに著しく有効なものでもないのであります。  しかるにこの第二点、死刑にどういう乱用があるかといえば、これはまことにおそるべき乱用があるのでありまして、その最大死刑弊害というのは、やはり人間社会に及ぼす堕落的な影響であります。人間人間を殺すということが社会に与える影響は、人間的な感覚の麻痺という点において最もおそるべきものがあります。従って、具体的にもこの死刑が、先ほどの提案理由説明にも述べられておりますように、この死刑関係する人々に対しておそるべき弊害がある。またその中でもなかんずく、今日のように発煙してきましたマスコミュニケーションを通じまして、あるいは新聞ニュース写真、あるいはラジオテレビなどによって青少年に与える弊害は、実におそるべきものがあるのであります。こういう意味で、この死刑の持っておりますところのおそるべき弊害性質というものは、特に他の場合と異るものがあります。  最後に、この死刑によって不当な処置を受けたと考える人が、あるいはそう判断された場合が、救済できないということが、また最も大きな問題であります。議論をする人の中には、この誤判の問題は死刑に限らないので、裁判一般誤判の問題はあるのであって、誤判ということを問題にするならば、裁判ということを否定しなければならないということを議論される方がありますけれども、しかしながら、人の生命は法によって与えられたものではない、それを法によって奪うという関係から、この死刑誤判一般裁判誤判の場合とは性質を異にしておるものがあるのであります。一般裁判誤判の場合には、完全に救済することはできないにしても、何らか救済する余地があるのでありますが、一旦殺してしまった人の命を取り返すことはできない。しかも、日本では幸いにして裁判槙重に行われておる結果、死刑誤判実例を見ないということを言っておられる方がありますが、これはまことに驚くべき議論でありまして、明治三十年代において刑法改正の際に、当時の内務省監獄局事務官小河滋次郎博士が発表されました著書の中にも、死刑誤判は、その誤判を争うべき本人がすでにこの地上にいない、その理由からも死刑誤判は明らかにされがたい。他の場合であれば、その誤判を明らかにすることによって利益を回復する人が生きているのでありますから、その御本人がさまざまな努力をして、誤判があればこれを明らかにするのだけれども、死刑の場合には、その本人が死んでおるために、その誤判を明らかにしようとする努力がなされない。次に警察検察あるいは裁判所においては、自分たちが間違って誤判をやったという事実を、世間に明らかにすることを好まないのは当然でありまして、従って誤判の事実を隠蔽するということは避けられない。このために日本では死刑誤判というものは明らかにされていないのであるということを、明治三十年代において小河博士が指摘しておられるのであります。ごく最近イギリスで明らかになりました、エヴァンスという人の事件誤判というのも、真犯人警察官の経歴を持っていたために、この真犯人がなかなか発見されがたかったという事情がございますが、私は明治時代からの資料をいろいろ調べてみまして、その中に、明治時代統計の上に現われている事実に、一つはその被害者、すなわち殺されたという人がその犯罪行為以前に死んでいるという場合がございます。それからいま一つは、その被害者、殺されたという人が依然として生きている、そのためにその死刑の判決について再審の申し立てをされている実例がございます。また政治的な関係におきましては、あるいは幸徳秋水先生事件であるとか、その他日本死刑事件において、誤判がないということは決して言えないことであろうと思うのであります。従って、日本裁判が慎重に行われているから、死刑誤判という心配はないという議論は成り立たないものである。いわんや人間のするところの裁判でありますから、日本裁判であっても決して誤判がないということはできないのであります。明治四十年に、刑法改正の際に死刑廃止せられなかったことを嘆いて、看獄協会雑誌典獄方々あるいは教戒師方々が論文を発表されておられる。その中に、長年典獄として死刑囚を手がけた方が、人間が誤まって人の命を一人死刑によって断つならば、百の法律を正しくしてもこれを救うことができないというように指摘しておられますが、全くこの死刑誤判の問題は、今日考えられておる以上に重大に考えられる必要があると考えるのであります。  結論といたしまして、十分にお考えを願いたいと思いますことは、これは牧野博士なども指摘せられておる点でございますけれども、政治家死刑に託して社会をよくし、政治をよくする責任を回避すべきでない、今日なおまだ社会をよくし、政治をよくするという努力の上において、なすべきことが多々ある。それがなされていないために兇悪犯罪が起り、その結果死刑というものが生じておる場合が決して少いとはいえないのであります。この点を牧野博士は指摘しておられるのでありますが、われわれはこの際死刑廃止することによって、悪い政治をやり悪い社会をそのまま存続させておいて、兇悪犯罪が発生すればそれを死刑によって防ごうというような方法でなく、死刑廃止するということによって社会をよくし、政治をよくする決意を現わすべきであると考えるのであります。世界刑事政策あるいは行刑上の最近の進歩を省みてみますと、実に驚くべきものがあります。わが国状態が著しくおくれておることはまことに残念であります。ごく最近アメリカのウィスコンシン州においては、二、三年前から、刑罰というものは犯罪に対して下さるべきものでなくして、その犯罪を犯した人に対して与えられるべきものである。従ってある種の兇悪な犯罪をやったから死刑であるとか無期であるとか、あるいは長期の禁固であるとかいう刑罰を下すべきでなくて、その罪を犯した人をよく研究して、それの人にどういう刑罰が適するかをなすべきだ、そういう新しい方針をウイスコンシン州では実現しておるのであります。これは刑事政策上革命的な新しい考え方だといっても差しつかえないのでありますが、その結果、この二年間にウイスコンシン州では従来そのまま刑務所に送っておりましたおよそ六千人の中の三千人を刑務所へ送らないで、社会の中でその改善の方法をはかっておる。そのためになすべき一番重要なことは、その罪を犯した人が欲する職業を与えることである。人間自分の欲する職業を与えられるならば罪を犯すものではないのであります。そういう意味ウイスコンシン州では、従来のやり方であれば刑務所に送るべき六千人の人の中の三千人は刑務所へ送らないで、その人々に、自分でやりたいと思っておる職業を与えて、それによってみずから改善するという努力をさせて、いわゆる故殺の場合でありましても、その二五%は刑務所に送らない、日本でありますればあるいは死刑あるいは無期というふうに当るような人々を、無期あるいは死刑どころではない、刑務所にも送らないで、社会に置いて、その人の欲する職業につけて、その人がみずから改善する努力を助けておるのであります。こういうように、これはウイスコンシン州の最近の例でございますが、世界の現在の刑事政策は、刻々に進歩をしておる、その際にわれわれは、日本においてはなはだおくれた状態にあるということは許さるべきではないと考えるのであります。特に敗戦後、そうして兇悪犯罪が激増しておる際に、死刑廃止するということが時期尚早であるというようなお考えが現在まだ非常に強いことは残念でありますので、以上の点を特に補足的に申し上げさしていただいた次第であります。
  7. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 別に御発言ありませんか。
  8. 亀田得治

    亀田得治君 私も提案者の一人といたしまして、この法案審議される当初に当って、若干希望等も含めて申し上げてみたいと思うのです。  それは内容等の点につきましては、委員長並びに羽仁委員から、かいつまんで御説明がありましたから、私はそういう点には触れません。ただ扱い方の問題について若干希望を申し上げたいわけですが、ともかくこの法案日本刑罰体系という上から見たら、非常に画期的な、重要な問題だと思います。私どもの所属しておる社会党においては、そういう立場から数回党内で論議をいたしました。法規対策委員会なり、代議士会なり、あるいは国会対策委員会最後には中央執行委員会、こういうところで議論をしたわけですが、まあ意見の大体の傾向としては、死刑廃止に賛成の意見が相当多いようでありました。しかし問題が非常に重要であり、特に側人の人生観なり、そういうことに関連した点も相当ありますので、結局社会党といたしましては、党議でこの問題を決定するというやり方を避けまして、自由という党議をきめたわけです。これは党としては、どんな小さな法案でありましても、すべて党議できめないと提案者にはなれないわけですが、そういう立場からいきますと、これは一つの大きな例外的な扱いであります。そういうことで私どもはともかく党の了承を得て、提案者の一人に加わったわけでありますが、まあ委員長なり、羽仁委員なり、この問題に熱心な方々から、各党派にも呼びかけたわけですが、結果におきましては、各党派から全部提案者になってもらう、こういうふうなわけにこの法案というものがいかなかったことを、私どもはなはだ残念に思っておりますが、しかしまあ緑風会なり、無所属クラブ、そういう方面からも、社会党と同じような立場で提案者が出られておりますので、私はまあこの際与党の自民党の方だけ、実は今育ったようないきさつで、結局提案者がだれも出れなかった、こういうことになっておるので、まあこの点について、ちょうど井上さんが来ておられますが、今後の審議につきましては、十分一つ御協力してもらいたいと実は考えておるのです。で、私どもの党も、先ほどちょっと説明申し上げたように、いわゆる党議として普通の法案を扱うようにきめていくということであれば、あるいは多数決によって、これはきめることができたかもしれません。しかし、特にそういうやり方を避けたといいますのは、やはりこの法案の特殊な性格、こういう点をまあ皆が了承したからだと思うのです。私はそれだけに、自民党の内部において、この法案に不賛成の方が、おそらくいわゆる多数決でもつてきめるということになれば、その方が多いのじゃないかと、現在ではざっくばらんに思うのですが、まあそうでありましても、われわれとしては、ことさらにこれは今きめるべきじゃない、こういう態度をとってきているわけですが、ちょうどそれとまあ反対のような立場に自民党の内部事情がおそらくなっていると思うのですが、だから、そういうところを一つもう少し悔いといっては誤解も生ずるのですが、もう少しこう自由な立場に立って、この問題が論議できるように、一つ御了承を実は願いたい、こう思っているのです。そういう立場で今後この法案審議については公聴会なり、いろいろやられると思いますが、一つ与党の方の方々の了承も十分得て、ともかく参議院の法務委員会において徹底的に一つ論議をやっていく、こういうことをまあお願いしたいのです。まあその気持だけをこれはおそらく提案者の各位が全部持っておられると思いますので、特に若干私どもの党内でそういういきさらがあってこういう態度になっているものですから、それに関連させて、特に一つ自民党側の諸君の協力をお願いしておきたいと思います。
  9. 井上清一

    ○井上清一君 この問題の審議につきまして、ただいま亀田委員から御発言がありまして、社会党としての党内の事情、また亀田君から本案について提案者となられたいきさつについて御説明があった。われわれの死刑廃止の問題に対する態度につき渋しては、これはもうせんだって申し上げた通りなんです。私が委員会で、なおまた理事会等におきましてもしばしば申し上げておる通りで、実は死刑廃止の問題については、先般私の方でも一応政調の問題ともなりましたし、また国会対策の問題としても、これはとり上げて論議はいたしました。しかし、まあ個人個人ではいろいろ意見を持っておる人があるのです。賛成の意見を持っておる人もあれば、非常に強く反対の意見を持っておる人もある。しかしながら、まあ大多数の持っておる考え方は、これは今突如として……この死刑廃止の問題は非常にこれは重大な問題であります。ことに日本の現行刑法制定以来しばしば死刑の問題については論議されてきた問題です。また日本刑事政策の面からいっても非常に議論のある問題で、先般英国の下院におきまして死刑廃止が決議をされた、しかし英国においては国会の委員会で四年数ヵ月この死刑廃止の問題をめぐって論議をされてきたことは皆さんもよく御承知の通りであります。それで、まあ私どもの態度としては、死刑廃止という問題は、日本刑事政策の上からいって非常に大きな問題だから、これは軽々に結論を出すべき問題じゃないし、十分に一ついろいろな角度から検討しなければならぬ、こういう結論になっておるわけでありまして、従って、本案に対して今直ちに賛成者として党の中から提案者の一人になり、また賛成者の一人になるということはこれはお互いに一つ避けようじゃないか、また私どもとして党議としていろいろきめるには相当の日月を要するものである、まあきわめて慎重な検討を必要とする、せっかく一つ法務委員会でも大いに検討してもらいたい、こういう結論になっておるわけでありまして、今後の審議に当りましては、われわれは死刑廃止の問題について慎重に審議していくということについてはいささかも異議を申し立てるものじゃない、むしろ慎重な審議こそ、こういう問題についてはきわめて望ましいことである、かように考えておるような次第であります。  一応われわれの立場を、亀田委員から御発言がございましたので、一つ申し上げたような次第であります。
  10. 亀田得治

    亀田得治君 非常にありがとうございました。まあ、大体そういうふうな与党側の方々のお気持ですから、一つこういう考え方で、まだ他にも御意見があろうと思いますが、その意見等もくんで、理事会等でこの審議の進め方について、十分一つ今出たような意見に沿うように日程を組んでもらいたい、これは要望しておきます。
  11. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ただいまの亀田さんからの御要望はもっともな御要望でございますから、理事会において御趣旨に沿うように決定していきたいと存じます。  他に御発言がなければ本件はこの程度にとどめておきます。
  12. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 次に検察及び裁判の運営等に関する調査を議題に供します。  緊急事案として、神奈川県における警官の泰行事件について、当局から一応御説明を願いたいと存じますが、去る二日横浜市戸塚の東海道国道で、警視庁第七方面予備隊第一中隊の警官五十名が花見酒に酔って他の団体観光客二十数名と渡り合って、双方から負傷者十二名を出すという不祥事が起りました。この不祥事に対しまして一斉に各新聞紙が取り上げ、また国民も本問題について非常な注目を払っておるわけであります。当局者は新聞紙上では申しわけない旨の談話を発表し、その後調査も着々進めておられる由でありますが、とかく警官に対する不信の声も強い折柄、事の真相を当局者から十分発表していただきたいと存じます。
  13. 荻野隆司

    政府委員(荻野隆司君) 去る二日の午後四時五分ごろ、紙聞紙等によっても大体は御承知のことと思いますが、警視庁の第七予備隊の第一中隊に属しておりまする警察官の五十四名、大体第一中隊というのは約八十名で編成をされておりますが、その中でこの日のリクリエーションに参加した者は五十四名という報道を受けておりますが、五十四名の者が朝の七時五十分に出発をいたしまして、江の島を経まして、三時二十分に江の島を出発を……、帰り途、帰りの出発をいたし渋して、二日の午後四時五分ごろ、横浜市戸塚区平戸町千五百五十一、通称保土ヶ谷休憩所といっておりますが、関口仁という人の経営にかかる、名前は梅園という休憩所に参りまして、そうして十分間休憩ということに相なりまして、そこで用便を足すことになりまして大体三十名ぐらいの予備隊員である警察官が下車をいたしたのであります。ちょうどそれから約十分前ぐらいに、三和自動車株式会社の従業員の人たち、これは大体運転手の諸君が大部分であったというふうに聞いておりますが、約八十名のうち、三十一名が男子の諸君であったと聞いておりますが、十分前に同じ現場に到着をいたして、同じように休憩中であったわけであります。先ほど申し上げましたように、おりました警察官の何名かがこの梅園という休憩所の裏手にある便所に参りました際に、たまたまそこで用便をされておった三和自動車株式会社の従業員と、警察官の一人とが肩が触れ合ったということで、そこで、まあ相当一もんちゃくが起ったわけでございます。そうして一旦はそれが静止によって静まったのでありますが、しばらくたちましてから相当第二の乱闘といいますか、乱闘のような形になったのでございます。大体それに加わった者は私が承知している範囲におきましては警察官側が十数名、それから三和自動車側が同じように十数名、大体三十名前後ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。しからばどういう状況でそういう第一の争いになり、さらに第二の争い、乱闘になったかという下定につきましては、この要件が起きましたのが、横浜の戸塚署の管轄になっておりますので、目下両当事者及び参考人等につきましていろいろ捜査を続行中でございます。従いまして細かい事実につきましては残念ながらまだはっきりしたことが私どもとしてつかめないまま今日に至っておるのでございます。そういうわけで、まあどちらから問題が起きたということは別といたしまして、とにかくああいう乱闘府件が結果的に起りまして、世間をお騒がせした、ことに両者側から相当数の負傷者が出たということにつきましては、警察としても申しわけないことに思い、遺憾に思っておる、こういうふうなことでございます。大体この点はそういう事情でございますので、一応御報告申し上げます。
  14. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) お尋ねをいたしますが、こまかい事実はつかめないという御答弁でありましたが、また新聞によれば乱闘し合った双方の何名かの者が刑事責任を負わなければならないのだというようなことも出ているわけでありますが、いつごろになるとこういう真相がわかるのでしょうか。
  15. 荻野隆司

    政府委員(荻野隆司君) 先ほど申しましたように、管轄の警察は戸塚署でございますので、大体所轄の戸塚署におきまして事件として今まで調べましたものとして私どもが報告を受けておりますのは、四月二日の当夜には予備隊の警察官十一名、それから三和株式会社側四名、これが当夜の取調べをいたした人たちでございます。さらに引き続いて三日には参考人五名、それから警察官の乗っておりました車の運転手、車掌つまり二名を取り調べております。それから四日には三和株式会社の諸君の乗っておられた車の運転手、車掌二名、それから三和側のその当時の関係者十七名という取調べをいたしております。それから五日には警察官の方六名を呼んで調べているという実情でございます。いずれもまあ端的に申しまして、取調べをいたした者の供述がなかなか御承知のような事情でございますので、必ずしも一致しておらないというので、勢い目撃者等の参考人について慎重に調査をしなければならないというので、目下その調査を続行中でございまして、現在のところでは先ほど申し上げましたように、その事実を、こういうことだというふうにまだ明確に申し上げる段階には至っておらないというのが現状であります。
  16. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) もう一つ伺いますが、双方の負傷者十二名は、今、現状どんなふうになっておりますか。負傷者のことです。
  17. 荻野隆司

    政府委員(荻野隆司君) 負傷者につきましては、現在どうしているかということは、ごくこまかには実は申し上げる資料を持っておりません。ただ当日においてけがした者はいずれも横浜の共済病院に収容をした、そうして手当を受けた、こういうことになっております。もっとも今申し上げました負傷者というものは警察官側の負傷者でございまして、三和自動車株式会社の人たちにつきましては、現場に負傷者として残った者はなかったというふうに報告を受けております。帰られましてから医師の診断を受けて、それぞれ打撲傷を受けたとか、あるいは眼球膜の出血の傷害を受けたとかということで、手当を受けているように聞いております。
  18. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) もう一つ伺いますが、今調査中であるそうですが、共済病院で手当を受けた警察官も、それからその他の病院で手当を受けた人、早く言えば病人であります、けが人です。そのけが人に対して調査をする場合に、支障のあるような調査の仕方はされておらないのでしょうか、その点はどうでしょうか。
  19. 荻野隆司

    政府委員(荻野隆司君) 別にけが人について支障のあるような調査をしているという事実は付いておりません。
  20. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) もうちょっと伺わして下さい。真相がわかりませんから、これ以上お尋ねはいたさないことにいたしますが、私の考え方としては、警官だから酒を飲んでは悪いということは私は言いたくないのです。警官でもこれは人間なんですから、それはお酒を飲むということが悪いとは考えていません。何々だからこうしていけないというふうには言いたくありませんが、ただ、お酒を飲んでいる上だったのだからという、そのことで許されてはならないし、また警官という民衆の秩序を守るべき立場にある方々が、酔っぱらったかげんでこういうことが起ったということに問題があるわけなのですから、決して私の立場としては警官だからという特殊な立場から責めようとは思っておりませんが、事態が非常に大きく、また民衆の警官に対する不信の声もあるところですから、この乱闘の責任をどうも日勤車の人もこうだというふうではなくて、あくまでも警官という責任において公正な調査がされて、一日も早く本委員会にこの真相が発表できるように私は期待いたします。本日は私はこれ以上質問はいたしません。
  21. 赤松常子

    ○赤松常子君 私も新聞の記事を拝見いたしまして実は驚いた者の一人でございます。しかもその警官の方が一人二人というのではなくて、集団的に、今お話を伺いますと十五、六人の人がそういう渦に巻き込まれたといいましょうか、そういう渦中の人になっておられるということに、私は非常に何かこうふだんの訓練に見のがされているものがありはしないか、また警官の、何と申しましょうか、秩序あるいはその内部に、何か私ども察知することのできない空気というものが、ふだんもやもやしていたのではないかという気持も判明されるわけでございます。それは今おっしゃいますように、調査の結果判明することでございましょうが、私ちょっと伺いたいのでございますけれども、そういうリクリエーションにおいでになりますこと、まことにけっこうだと思うのですが、そういうおいでになる場合に何か特別に、注意というか、特別に、いわれておりますように、むしろこの花見時にはそういう混乱が起きやすいときであるから、特に警官としての身分を考えて、御注意というものがあるのでしょうかないのでしょうか、ふだんそういう場合はどういうふうな行動の規定と申しましょうか、それが行われているのでございましょうか、伺いたいと思います。
  22. 荻野隆司

    政府委員(荻野隆司君) リクリエーションについての基本的なお話だったと伺ったのでございますが、あのリクリエーションは予備隊の全員が参加したものでもないし、また第一中隊の全員が参加したものでもないわけでございますけれども、リクリエーション自体としましては、直属上司の許可を得ましてそうして行ったものでございまして、寄り掛り集まって勝手にリクリエーションに出かけたというものでもないわけでございます。従って執務の上から申しましても、全然成規の手続を踏まないでリクリエーションに出かけたと、こういう性質のものでもないのでございます。ただ、お話がございました酒の点でございますけれども、むろん先ほど委員長からお話がございましたように、警官だから酒を一滴も飲まぬというふうには考えないというお話がございましたが、なるほど警官だからといって酒を飲んでいけないということはこれは必ずしも当を得たものではないと思いますが、ただ警察官であります以上は、やはり品位を保つということは、規定があるにいたしましてもないにいたしましても、組織体であるものとしてはこれは当然だと思うのでございます。そういったことにつきまして、出発に際しましては警視総監の意向だということで、十分品位を保つようにということで、注意は与えて出発をいたした事実がございます。ただ、遺憾ながらそれが注意通り行われなくて、ああいう状況を起したということにつきましては、まことに申しわけもないし、残念に思っておるような次第でございます。  なおまた何かその裏にもやもやした空気があったのではないかというお話がございましたが、今日まで別にそういう深いもやもやした空気というのではなくて、まあ花見に行って一ぱい飲んで、いいきげんになって、そうしてその結果がああなったのであったと、端的に申しますればそういう深い問題ではないのではなかろうかというふうに現在のところは考えております。
  23. 赤松常子

    ○赤松常子君 私はその関係の当事者が、一面警官でおありになるし、一面運転手の皆さんであったというところに、ふだん何か取り締る者と取り締られる者という、そういう関係にしょっ中日ごろあるものですから、それがこの酒の上で日ごろのうっぷんというものを晴してやれという一つの気分もそういう立場上醸成されたのではないかという気持もあり、また予備隊の中に何かすっきりしないものがあるので、一つ酒の勢いをかりてそういう気持を発散させてやれという気があったのではないかというふうに、いろいろ想像されるわけなのでございますが、今あなた様のおっしゃることで私は実はこう思っていたのです。有志でですね。まあ気持の合った者だけででも一緒に行かれたんじゃないかと思ったんでございますが、今伺いますと、そうではなくて、やはり公けのというのでしょうか、その費用はやはり予備隊から出たようにも伺えますし、ふだんそういうことが順序に従ってきょうは何名きょうは何名というふうに計画されてのピクニックであったようにも伺えるようでございますが、すると、なおさらそこに個人の集まりといったものと違って、一つの計画されたそういうピクニックであったということでございますので、なお一そうそこに私の懸念するものがひそんでいやしないかと思うのでございますが、その辺はどうでございましょうか。
  24. 荻野隆司

    政府委員(荻野隆司君) ピクニックにつきましては先ほど申し上げましたように、まあ寄り寄りピクニックに行きたい者だけが集まって行ったというのではなくて、大体まあ順序をきめまして秩序ある行き方で行くというので出発をしておったわけでございます。ただその中に、まあいろいろな事情がございまして参加できない者もあって、全員ではなかったということにはなっておりますが、そういう形で行ったわけでございます。お話のように、まあ今度の一方の当事者でありますのは三和自動車株式会社の、大多数が運転手の諸君であったということで、一般的に考えますと、取り締る警察官と取り締られるまあ交通従業員というふうな関係でございますが、今日まで私が承知いたしております範囲では、取り締る警察官の方から言えば、ふだん思うように取り締りができないということで、腹の中に何かもやもやしたものがあったとか、また従業員諸君から言えば、ふだん警察官にしょっ中取り締られておるから、まあ端的に申しましてこの際だといったような気持は、全然なかったように伺っております。従って、これを個人の場合について考えまして、一人々々の間柄である場合に例を引いて考えますれば、たまたま肩が触れたとか、足を踏んだとか、踏まれたとかということが、相当双方酒の勢いもあってああいう大きなことになったのであろう。従って深い根のある事件とか事案とかというものではないように現在承知をいたしておるものでございます。
  25. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ちょっとこれに関連するのですけれども、今のこの御発言の中で私は非常に疑問に思う点ですが、警官というのはこれは取り締るのが仕事なんでしょうか。運転手の方は取り締られる立場にあるものでしょうか。私は警官というのは民衆の保護が目的であって、民衆の安全を守るために警察官は、取り締るという言葉は当てはまらないかもしれませんが、目的は民衆の安全のためにその職責を尽すのであると、こういうふうに私は考えたい。特にこの際交通取締りなどの場合には、警官が人に見えないような所に隠れていて、突如として飛び出して、威嚇的な方法をもってやっつけている姿をよく見ます。これは民衆のための交通の安全を守る方法としてはきわめて野蛮な――諸外国ではこういう卑怯な方法で運転手をいじめている国というのはそう見受けることはできません。あなたの今の御発言は、取り締る警察官ということをきわめて自然な態度でおっしゃっておるようでありますが、そういう感覚がこういう問題を起すきっかけを作ったのではないかということを、特に今考えさせられておるわけです。あなたの青い方に足りない点があったならおっしゃっていただきたいと思います。
  26. 荻野隆司

    政府委員(荻野隆司君) 今取締りという言葉を使いましたので、多少私の考えておりますことが十分に表現できなかった点があると思うのでございますが、警察官生命、身体の保護というのがお話のように大きな任務になっておることについては、もとよりのことでございます。ただ全然警察執行の業務と直接関連のない人との間でないから、何かその間にもやもやした空気があったのではないかというふうなご質問のように私は承わったものですから、警察官職務としては、むろんやり方については十分暗い陰惨なことがないようにということは、ふだんも十分注意しておりますし、これからも注意いたして参らなければなりませんけれども、取締りという言葉があるいは妥当を欠いたかもしれませんけれども、交通法規の執行という面では、よくございますように、警察官とそれから運転手の諸君の間においては、法規の執行の面を通じて、その形において接触する場面がある、こういうことを申し上げたわけでございまして、法規に基かない執行をやるとか、むやみに取締るとかいうふうな言葉ではないので、もしそういう誤解がございましたとすれば私の言葉の不足でございまして、そういう意味でございますので御了承願いたいと思います。
  27. 赤松常子

    ○赤松常子君 ちょっとそれに関連いたしまして……。新聞で拝見しているだけでございますけれども、最初互いに乱闘があって、そして間に仲裁する人があって、一時少し穏やかになったときに、こちらの警官隊の人が、わしたちは警官だとこういう言葉をおっしゃって初めて身分が相手にわかったらしい、それで急にまた日ごろのそういう、何というのでしょうか、ひどくやられているという立場の方ですから、それっというのでまた引っ返したというふうに新聞には出ているわけなんで、そういうまあふだんのやはりお互いに対立した間柄でよくありがちな仕事の性質上、そういうふうなことが集団的にまたひどく刺激したのではないかという気持を、新聞を読んでおりますうちに感じたのです。そういうことも幾分ありはしないかということも私心配しているのであって、それもふだんやはり今言われたように、つまり週伝手さんの方から甘えは何かこうしょっちゅうやられているという気持が爆発したようにも感じられるのでございまして、そういうことが日ごろスムースに行っておれば防げたことではないかと思うのですが、それを心配しているわけで、ちょっとその辺のことを御質問した次第なんですが……。新聞にそう書いてあったものですから。
  28. 荻野隆司

    政府委員(荻野隆司君) お話のように、用便したすぐあとでごく少数の間で小ぜり合いがあって、そして一たん静まりまして、それから第二回目にそれより大きな、まあ新聞で言う乱闘と、こういうことになったようでございますが、その際に、新聞にありましたかどうか的確な記憶はございませんけれども、おれは警察官だと言ったというような事実については、まだ調査中でございます。第一の小ぜり合いがおさまって第二の乱闘になった原因が何かということは、事の真相の重要な部分でございますので、この点は、あるいは目撃者、あるい証拠その他について十分の究明をいたしてからでないと、その点が的確に申し上げられないような状況でございます。
  29. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今委員長並びに赤松委員からいろいろ御質問の点は、そちらに十分御理解がないのじゃないかと思うので二、三伺いたいのです。本件は重大な事件であるというふうにお考えになるのか、そうでないのかという点が第一ですね、それで、それを伺っておきたいのですが、この責任はどの辺のところまでおとりになるおつもりか。どういうところに責任があるというふうにお考えか。警察庁長官はどういうふうに自分の責任をお考えになっておられるか。その点からまず伺っておきたいと思います。
  30. 荻野隆司

    政府委員(荻野隆司君) 私が先ほどの御質問に対して申し上げましたのは、事件が重大でないという意味ではないので、何かもやもやした空気が背後にあったのではないかというふうな御質問に承わったものですから、そういうもやもやしたものがなかったというふうに自分は考えておるということを申し上げたので、事柄が重大でないということで申し上げたわけではないのであります。私の気持はただそういうもやもやしたものはない、深いそういう背後の原因があったものではないというふうに現在では承知しておるということを申し上げたのでありまして、ただいずれにいたしましても先ほど申し上げましたように双方に相当の負傷者を出したということでございますから、これは十分調査をいたしまして、そしてその調査の結果に基いてこちら側が責任を負うべきものは十分責任を負うというふうな意味においては重大な事柄であると、こういうふうに私は考えておるのでございます。
  31. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 そのとぎの警官は武器は持っていたのですか、いないのですか。服装は平服ですか、官服ですか。
  32. 荻野隆司

    政府委員(荻野隆司君) そのときは全部私服で武器は持っておりません。背広で全員が行った、こういうふうに聞いております。
  33. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これは原則として警察庁では十分認識しておられると思いますが、武器を持った人間と武器を持たない人間とが衝突をして、そして武器を持たない人間が傷をこうむった場合には、その武器を持った人間が責任を負わなければならないという、この原則はお認めになっていることだろうと思うのですが、その点について、これはやはり国際的に確立された原則ですから、武器を持っている人間と持たない人間とが衝突をして、本件の場合は武器を持たないけれども、やはり先ほどから御説明通りに、その警察庁の一定の方針のもとに出発しているのですから警察官であるのですね、私人ではないのでしょう。その人たちはいわゆる全くその服務を離れて市民になっているのですか。それとも警察官たる身分において行動しているのですか、いずれですか。
  34. 荻野隆司

    政府委員(荻野隆司君) この場合は、このレクリェーションは警察官が休暇の手続をとりまして、そしてでかけた、こういうふうに聞いております。従って職務執行中であったかどうかということについては、むしろ消極的に考えなければいけない場合ではないかというふうに考えております。ただ先ほどお話がありましたように、品位を保つとか何とかいうことにつきましては、私人であれば、それじゃ何でもしていいのだということにはならないので、やはり潜在的に警察官としては品位を保つということが当然必要になってくるというので、先ほど酒のお話の出たときも、そういう気持で実は申し上げたようなことでございます。
  35. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 つまり三段になっている場合が考えられるのです。第一は武器を携帯し、そして制服を着て、そして職務執行中である。この場合に国民が障害を受けたという場合の責任、これは最も重大です。それから第二は今お話のように休暇をとって行っているという場合ですね。その場合につまりさっき赤松委員の御質問にあったように、警察官だということを言ったかどうかということですね。言ったとすると、そういうことを肯うのは不当です。つまり職務執行中じゃない、休暇をとっているのだから。わかりやすく言えば市民として行動しているわけですね、リクリエーションとしての……。それから第三は、最後にやはり警察官警察官としての俸給を受け、そういう身分において生活をしている。国民に対してそういった意味義務を負うているのですから、今もお話のような品位を保つというか、国民の公僕であるところの意識というものを私生活においても失うべきではないというその三つの場合について、今度の場合はやはりはっきりさせておいていただきたい。結論として、しかしいずれにしても、警察官国民とが衝突して、国民が傷害を受けたということは、きわめて重大な事件です。この責任はそんな低いレベルで解決できるものじゃないと思うのです。私はもちろん警察庁長官は辞表を出すべきだと、そんなことまで申し上げるわけではありませんが、しかしこれはきわめて重大な事件である。おそらく諸外国にもあまり例を見ないものじゃないか。日本警察の威信を地に落すおそれのある事件ではないかということが第一点です。  第二点に伺っておきたいと思うのですが、その根本的な原因ですね、これは警察官の教育の問題に関係してくると思う。ですから、警察庁長官がよほど慎重に、重大にお考えにならなければならないのじゃないかと思うのです。国民からの税金によって衣食をしておられ、しかも警察官としての権力を付与せられている身分におられる方についての教育は、特段の注意が必要とされるということは、申し上げるまでもないことです。その教育において欠けるところがあったのじゃないか。欠けるところがあったというふうに認めるか、お認めにならないか。もし欠けるところがあったとするならば、どういう点に欠けるところがあったのかという点について、これはきょう今すぐ御返事をいただけなければ、また次の機会にでももう少し説明していただきたい。私どもは何か欠けるところがあったのじゃないか、それがたまたまこの一件において現われたのじゃないかと思う。ですから、これは今委員長なり赤松委員からの御質問の中にもありますように、交通取締りなどにおいてやはり行き過ぎがだいぶ最近あるのじゃないか。それは古い考えでは点数主義ですね、最近ではメリット・システムというようなお言葉をお使いのようですが、いずれにせよ、何か罪を作って、あるいは検挙の数の多いことによって昇進されるとかいうふうな、そういうことともやはり関係があるのではないか。売春なんかの場合にも私は非常にいよいよ問題になってくることだと思うのですが、私どもがヨーロッパを旅行している際に、たとえばパリにも不幸にして街頭に立っておられる女性の方がある。そういう場合に、雨でも降ってくれば、警察官があるいはかさを貸してあげたり、ひさしの下に入れてあげたりして、自分の兄弟姉妹のように扱っております。日本では少しでも国民の方に非行があり、あるいはその疑いがあるというふうな場合でありますと、警察官が非常に手荒な態度をとられる。女性に対しても非常に手荒な態度をおとりになる。私どもの家族なんかでも、女性が夜おそく帰って来たりすると、最近は減ってきたようですが、敗戦直後なんかに、ずいぶん手荒いお取扱いをなさっていることがありました。敗戦画後のことを今さらとがめだていたしませんが、最近警察官が、先ほど委員長からもお話がありましたように、国民自分の兄弟姉妹と思って同情を持っているのか、それとも何か悪いことをしたらふんづかまえてやれ、そうして悪いことをしたらこらしめてもいいんだというふうな古い、応報的な考え方ですね、そういう考えもよほどあるのじゃないか。交通取締りの場合でも、実害がない場合を非常に厳格に、厳格にというより、むしろ残酷に取り扱っている場合が多い。そのために運転手諸君がが、そこで取られた罰金を取り返さなくちゃならぬと思ってますます違反を重ねる。むしろいよいよ危険な違反が起ってくるというような点。それらをひっくるめて、一般警察官の教養の面において欠けるところがあったのではないか。その欠けるところがあったということを、私は責任をここでとれと言っておるのではないのです。欠けるところがあったということの御認識がないことが困ると思うのです。その御認識があって、そうしてそれを是正されるということを、次回にでも一つ十分御説明願いたい。  それから最後に伺いたいのですが、この機会に一つやはり問題にしていただきたいと思いますのは、警察官が拳銃を携帯しているということの必要が依然として今日あるというお考えなのかどうか。欠くべからざる必要があるならば別ですが、欠くべからざる必要がないのに拳銃を携帯しているということは、やはり国民の人権に対する不当なる圧迫です。そういうことが国民として警察官にやはりもやもやしたものを感じさせている。これは新聞の報道でありますが、警官だということを聞いて、なに、ポリ公だ、それじゃかたきを討ってやれというふうに、これは目撃者が投書しておられるようですが、目撃者の投書がどの程度のものか、伝聞証拠をとらえて云々するわけじゃありませんけれども、なに、ポリ公だ、それじゃかたきを討ってやれというふうなことが、これは絶無であるというふうに信じたいのですが、信じがたいのです。それにはやはり日常必要がないのに拳銃などを携帯しておられるということに関連があるのではないか。こういう事件の際に警察国民に対して認識を新たにしてもらい、国民警察というものを信頼し、それを愛するという気持になるためには、やはり拳銃携帯なんかについてもこういう機会に再検討をされる必要があるのじゃないかと思うのですが、それについても次回にでもお答え願いたい。  それからなお付け加えますが、最近映画の中に警察の拷問の場面が出てきます。これに対して警察庁はどういう考えでおるのか。これももちろんその映画に抗議をしろとか何とかいう意味ではない。現在警察に拷問がないということがおっしゃりにくいだろうと思う。またかりにないにしても、映画などにおいて警察に拷問があるということが描写されて、世人がいかにもそういうことがまだあるだろうというように感じているそういう社会心理ですね。事実どの程度に拷問があるかないかということを今伺っているのじゃないですよ。そうじゃなくて、やはり警察は戦前と同じようなものではないにしても、拷問的なものをやっているのじゃないかという感じがあることに対する警察庁の所見を伺いたいのです。そういうことを感じても、そんなことをおれの知ったこっちゃない、やっちゃいませんというようにお答えになるか、それともそういうふうに社会で感じておられることに対して深く反省して、この際あの映画が上映されている機会に、全国の警察に向かって、拷問いわゆる自白の強制というふうなことを絶対やっちゃならぬ、またやった場合には厳重なしかも高いレベルにおいて責任をとらなきゃならぬ。これは低いレベルで責任をとっておるのじゃ根絶できないですよ。やっぱり警察庁長官がやめるというぐらいになれば、全国の警察官は、大へんだ、おれたちがうっかりしたことをやりゃ長官の首が飛ぶのだというぐらいになって、第一線の警察官もおのずから品位を保ち、さっきあなたのお言葉ですが、品位が高まる。そうして親切になり、拷問などはやらなくなる。やった本人をいじめておるのじゃ、やつはあとで救ってもらったのだというような程度になっちまう。やはりかなり高いレベルで責任をとらなきゃならぬ。所長がやめるくらいじゃだめです。やっぱり警察官の一人でも事国民の人権に関するような、従って警察職務の第一義であるつまり人権の尊重という、警察がそれによってもって立っておるような原則にかかわってくるような疑いを受けた場合には、最高のレベルにおいて責任をとるというこの態度がなくちゃ根絶でき、ないというふうに思うのです。  以上、たて続けに申し上げましたが、それらの点についてどうか一つよほど、ある意味において災いを転じて福とするというか、こういう機会に警察が非常によくなっていただくことを希望するので、お答えを願いたいと思います。
  36. 荻野隆司

    政府委員(荻野隆司君) いろいろ幾つかの項目と分けて御質問がございましたが、私の方でもことに教育、教養等につきましては相当具体的に調べまして、そうしてお答えを申し上げる機会を持ちたいと、こういうふうに考えておりますので、拳銃、映画の点その他につきましてもその際にお答えを申し上げるようにいたしたいと思います。
  37. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと議事進行ですが、まだ板付の問題がありますので、これは非常に重大な問題ですが、あらためて警察側の詳細な報告を求めることにして、その際にさらに今問題になっておるような諸点について質疑することにして、本日のところ、次の議題に進んでほしいと思う。
  38. 赤松常子

    ○赤松常子君 ちょっと閉会に先立ちまして一点だけ伺って、また御要望しておきたいことがあるのです。それは、私今度の記事を読みまして、自分が最近経験いたしましたことと思い合わして、先ほどのもやもやという言葉が出たのでございます。その例は、この間から小選挙区制反対の宣伝カーを社会党は出して、非常に街頭で宣伝いたしましたときに、たまたま私そういう非常に憤慨する事例にぶつかったのです。というのは、それは武蔵野の吉祥寺の前で五分間ほど街頭の宣伝をいたしまして、そしてずっと向うの方に行きます途中、ある交番に呼びとめられたのです。それでいきなり本署にきてもらいたいと、こうおっしゃるのです。理由は何なんでしょう、責任者はだれだといいますから責任者は私です、一体何のために本署に行くのですかと交番の方に聞いたのですけれども、とにかく本署へ来てくれ、何のためですか、何の違反なんですか、そこでしばらく押し問答したのですが、らちがあかない。一ぺん電話をかけて下さい、何のために行かなければならぬのですかと言って、そう十分間ぐらい、まあ電話が不通でございまして、やっとかかったのですけれども、とにかく出て来い、こういうわけなんですね。それで私だけ行きましょうとこう言ったのですけれども、いや車もみんな来いというわけなんですね。車には二十人ぐらい婦人隊だけ乗っていたわけなんです。それでどうも私どもも五時までは許可をとっているので、もうそのとき三時半だったのですから、もうしばらくですし、急ぐのですから早く用事を片づけて下さい、悪いところはどこが悪いのか気をつけるから言って下さいと言ったが、とにかく車も来いとおっしゃるのですね。それで押し問答いたしましたけれども、とうとう車にお巡りさんが乗っていらして運転手さんにいきなり許可証を出せとこう言われるのですね。それで私はあなた何でその運転手さんの許可証を理由も言わないのになぜ取られたのですかと幾ら言っても、いやとにかく貸せといってポケットへしまって、おしまいにすぐ本署へ来いと、こうおっしゃるのですね、これはどうもその車はその運転手さんでもないと動かせないものですからしょうがない、それで私も途中まで行って、私は民家から電話を本署にかけようとしたのですけれども、なかなか本署がお話中で出ないのです。かれこれするうちに時間が迫るし、とにかくしょうがない、行きましょうと言って、かれこれ三、四十分ぐらいそこで押し問答したのです。で、行ってみたら何のことはない一方交通の所でなぜ車をとめたか、こういうことだけなんですね。それであなた方はこういうことを知らないかといわれましたから、いえ私のところは一方交通のことはこの管内のことは知らないと言いました。ほんとうは許可を取った所でその管内々々の警察に出頭して、この管内で一方交通はどこであるかということの指示を受けなければいけないのだと言われましたから、いえ私は麹町署で許可を取ったのですけれども、そういう指示を受けておりません、それはまことに不親切ですねと逆にこちらから言ったわけなんですが、とうとう一時間ばかりそこで損しました。そこで私が言ったのはいきなり許可証を出せと言われるそういう態度ですね、煙転手さんにしてみればそれが一番致命的なんですから、それを私が途中で取り上げるというそういうこともずいぶん口では言いますけれども、実力行使で取り上げることもできがたく、運転手さんがしおれ返ってしまいまして、非常にそのときは私は不愉快で、こんなにまでひどいやり方を運転手さんにしていられるのかと私非常に憤慨したのです。それで今度の問題もそれがぴんときたので先ほどの質問になったわけなんですが、これは今この実情を御存じないあなた方にかれこれ育ったってしょうがありませんが、ただ最近そういう実情があったので、そこに何かふだんこの乱闘の原因があるのじゃないかと私はぴんときたのでございますので、今後そういうことのないように、この席上では要望だけを申し上げておきます。
  39. 亀田得治

    亀田得治君 私から議事進行について申し上げてははなはだ恐縮なんですが、ただいま赤松さんからおっしゃった、これはなぜそういうことをされたのか、次回に一つ調べて御答弁願いたいと思います。小さいことのようですけれども、やはりそういうことは、小さいことを放っておくのは非常にいかぬと思いますし、その点要望しておきます。
  40. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ただいまいろいろの御要望がございましたが、本件に関しては一応次の機会に詳しい実情などを承わりたいと思いますが、ただいまの各委員からの御要望の通りに、警察官の責任は重く民衆保護に対する重大な使命を持っておる限りには、われわれ各委員から発言せられましたその精神を了とせられまして、次の機会に、本日の羽仁委員から出された警察官の教養あるいは警察官の武器携帯に対して再検討すべきではないかということ、あるいは拷問の有無に対する社会影響はどうか、それから今の赤松委員からの具体的な実情がどんなふうであったか、こういうふうな諸点について詳細な当局からの御答弁をわずらわしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  41. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 次に板付基地勤務者の人権擁護及び裁判管轄権に関する件について御質疑のおありの方は御発言をお願いいたします。それで申し添えておきますが、外務省からは欧米局長の千葉さんが見えております。調達庁からは次長の丸山さんが見えております。なお法務省参事官平賀さん、労働省からは労政課長の大野さんがそれぞれ見えておられますので、御発言をお願いいたします。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 三月三十日の社会労働委員会で労働大臣を中心にこの問題で御質疑を申し上げたときに、これは主として調達庁側からの発言であったと思うのですが、日米合同委員会等待たないで本件については積極的に米軍側と交渉したい、こういう趣旨の発言があったのですが、一体その後数日たっておりますが、どういうふうな交渉をされ、現在どういうふうになっておるか、われわれとしてはそのときの発言等の模様からいうならば、今日においてはもうすでに片づいておる、こういうふうなくらいに思っておるのですが、まずその点を調達庁側から御説明願いたいと思います。
  43. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 今のお話は調達庁ではなく、あのときは労働省側だと存じております。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 労働省側であろうと調達庁側であろうと問題はそんなに違わないわけですから、労働大臣も言っておるように判決のおりた問題、これと裁判になっておらない問題、これは起りが一つですからね。一つに対する意見が明確になれば、当然それに準じて進めるべきものだ、こういうことを育っておるわけです。あなたも横になってそれはお聞きになっておるわけです。だから三十日の答弁がどこが主体であったか、お二人が座っておったから私は勘違いしたかもしれませんが、そういうことはどうでもよろしい、その後どういうふうな一体日本政府としてはこの問題についての解決の努力をしておるのか、それをお聞きしておきます。
  45. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 私あの労働委員会で申し上げましたのは、たしか合同委員会の経過とそれから特に私どもが直接関係しておりますところの間接労働者の関係でございます。これに関しましては実は昨日の日米合同委員会におきまして、昨年末のいわゆる調査という問題について、合同委員会で向う側から報告を求め、これの督促をいたしたわけであります。これに関しましては向う側から近日中に回答の用意があるから了承されたいということでございまして、それならばそれを急いでもらうとともに、実は会議後に空軍の参謀長、欧米局長とともに懇談いたしまして、その後われわれの意図しますところは、直接には今の板付のこの問題の解決、処理について、それがなお一般的には空軍の労務関係においてとかく円滑を欠く状況にある、これの改善をはかりたい、こういう意図のもとに懇談いたしたのでございます。当日その場では具体的な結論は出ませんでしたけれども、最も軍側で意図いたしているところはセキュリティ、すなわち軍の保安の問題でございます。軍隊という特殊な性格、また特に空軍基地というふうな関係においてその保安上の問題を非常に重要に考えております。従って板付の方の処理に関しましても、空軍側の方では保安の問題として出勤停止の処置をとってあるのであります。従ってこれの処理に関しては保安に関する取りきめに基いて、まず現地における県庁の労務管理事務所というものの調査に基く意見を現地の司令官と調整する、これで片づくならばしごく幸いである、この調節ができない場合には、その事件が空軍の司令官に持ら越される、これに関しては日本政府側も調達庁長官が折衝に当る、こういう段階の取りきめがあるわけでございます。御承知と思いますが、これに関する調査並びに意見の作成に関しましては、現地の県庁労務管理事務所で三月末を目途といたしまして進めて参っております。実はまだ私その報告には接しておりませんが、すでに三月も経過しておることでありますから、現地においては調査の結果もなり、意見の作成もできて、現地司令官との間の折衝段階に今入っておることと存じております。それによって解決しない場合には空軍司令官に上ってくる。その場合には私どもももちろん直接の調査資料というものはやはり現地の調べたものでなければ十分なものを得られまい。そのものの報告もまたあることと存じますので、それに基き、また先ほど申しました合同委員会において軍側が調査したものの報告をこちらによこす、それも重要な参考資料と存じます。そういうものによって空軍司令官と交渉をする、こういう段階になっておるのが間接雇用者に関するものでございます。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 ぼつぼつ聞きますが、この四月五日の合同委員会散会後懇談的に軍側と話合ったといいますのは、それは合同委員会に出席された米軍側の代表の方とですか。その点について……。
  47. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 合同委員会に出席をしておりました空軍の参謀長でございます。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 そのお名前は何というんですか。ちょっと念のために……。
  49. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) ピアス准将。
  50. 亀田得治

    亀田得治君 それからですね、これは先だっての社会労働委員会でも私非常に疑問があると申し上げた点ですが、数ヵ月前に米側で処分をしながら、事実調査に関する米軍側の報告日本側にいまだに渡されない。四月五日の合同委員会においても、もうしばらく待ってくれ、こういうことはもうはなはだ私腑に落ちないんです。つまり先だっても申し上げましたように、出勤停止を米軍がやる以上は、出勤停止をしたときにですね。米軍側としても事実をつかんでいるはずです。それをつかんでおるなら、こんなものすぐ書けるわけでしょう。それをいまだにですね、幾ら催促しても出てこぬ。私はそういうところから想像すると、結局事実も何もない、これはね、ただ米軍の一つの色めがねで普通の労働組合の行為をゆがんで解釈した、それだけのことなんです。だからそんなものはないんですからね。そんなものはいつまでたっても出てきませんよ。合同委員会においてそういう点の追及を一体されているのかどうか。私が交渉の担当者であればそんなことはもう許しませんよ。事実があって処分があっているはずです。そうでしょう。それなら翌日説明を求められたって説明ができるはずです。米軍側が……。そういう点は折衝の際にどういうことになっているのですか。もう少し詳しくおっしゃってもらわぬと了解ができない、どうです。
  51. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 合同委員会で向うに報告を求めておりますのは、結局出勤停止いかんに関することではございませんで、先ほども申し上げました通り、十二月にOSIと申しますか、向うの特別調査機関のごときものが労務者を呼びましていろいろ調査をした、その調査条項が、現地報告によりますというと、非常に行き過ぎの面がある、これは組合活動に対する干渉ではないかというような意味合いのその調査そのことに関する問題でございます。これに関しましては、現地では、現地司令官に対し、中央ではまた司令部の方に対しまして、その点の釈明を求めてきたわけでございます。ばかばかしい進展を見せませんので、結局日米の双方の間の最高機関であるところの合同委員会議題になって参ったわけでございます。これに関しても、お説の通りそんなことはもう数ヵ月前のことであるから当然直ちにでも報告してしかるべきだということについては、われわれもさように考えるので、実は督促をいたしているわけであります。一方出勤停止そのものはそれとは関係ないと軍側の言う主張のもとに、これはあくまで別の保養条項、セキュリティの問題である、自分の方は保安上においてリスクありと考えて出勤停止をやった、これに関しましては保安の関係の取りきめではその通りになっておりますので、そのように取りはからなければいけない。しかしそれの最終処分というものは軍側が一方的にできない、これが特別にあの協定を結びました理由でございますが、ほんとうに保安上のリスクありゃいなや、十分日本側の調査、意見をとり入れて、その上で決定きるべきものである、こういうことで、現地並びに中央と二段階の折衝こういう取りきめでございますが、これに関しましては今のような重大な問題でございますので、当方の現地の機関で――直接には県庁並びに労務管理事務所でございます――これの調査を慎重にやるということのために、大体目標は三月末までかかる、そういうことで、その調査の結果に基く意見の作成、従って現地における折衝という段階が、ちょうど現在に当っておる、このような次第であります。
  52. 亀田得治

    亀田得治君 それは私の申し上げておるのは、その全部についての米軍側の見解を早く出すべきである、こちらも求めるべきである、そういう意味で申し上げておるのです。十二月にOSIですか、これが思想調査的なことをやった。それももちろん一つです。それは、実際調査をしておるのだから、それがいまだに出てこぬというのは全くおかしいのです。出せないのですよ、格好が悪くて。  それからもう一つは、処分は保安上の関係からきまっているので、それとは関係ないと言うけれども、それはちょっとおかしいので、やはり調査をして、その調査が処分にどれほどつながっておるか、それは私ども先方がやっておることだからこれはわかりませんが、まあ常識からいって、それに関係ありと見るのが、これは普通です。しかし関係がないとしても、処分をしたのだからそれに対する米軍側の説明ですね、これを私あなたの方から求めるのが当然だと思うのです。この点の説明は玄だ現地段階だから調達庁の本庁としては求めてない、こういうふうなことですか。
  53. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 実は保安上の関係に関しまする釈明の問題ですが、お説の通り非常に十分でない、この十分でないということにはわれわれも不満足に感じておるわけであります。ただ、はなはだ遺憾の点は、これが軍の保安に関する事項である、保安に関する限りは保安上差しつかえない範囲においていろいろ説明をするということになっております。従ってこれに対する向う側の保安条項に基く処分に関する点については満足ではない事態もございます。これに対して、われわれの方では逆によく調査をいたしまして、この通りそういうものはございません、保安上のリスクはございませんと、こういう結果が出京すならば、それによって軍側の出勤停止あるいはそれに塞ぐ終局的な解雇というようなものが、不当に行われないように、こちらも積極的に働きかける、かような状況になっております。
  54. 亀田得治

    亀田得治君 そのこちらから働きかける点とか、それから福岡の知事なんかやっている問題はちょっとあとで聞きますが、私はその前に保安上に差しつかえない程度に説明さるべきだ、米軍が。保安上に差しつかえない程度に、そういうふうにあなたがおっしゃるわけですから、その説明を私は求めているのだと思うのです。その程度の説明はそれは求めてないのですか。
  55. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 求めております。
  56. 亀田得治

    亀田得治君 いるのでしょう。そこで米軍側はどういうふうにお答えになっているのですか。
  57. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 米軍側では、あの保安条項には、御承知だと思いますが三項目ございますが、そのうちのCの該当であるという、そのことによってであるから、とりあえず出勤停止をする、これの最終のあれはなお調査の上決定する、こういう状況でございます。
  58. 亀田得治

    亀田得治君 そういうCの該当であるという説明はいつごろあったのですか。
  59. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) もちろん出勤停止の要請の時期でございます。
  60. 亀田得治

    亀田得治君 出動停止の要請の時期とは、出勤停止の処分を受けた直後ということですか。こっちからその処分撤回について交渉したときということですか。日付にしていつごろですか。
  61. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 一月の出勤停止の時期だと思います。
  62. 亀田得治

    亀田得治君 それで丸山さん自身としてはその説明は納得されているのですか、承知しておらぬのですか、どっちですか。
  63. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 従ってこの説明に対して納付できるかできないか、これに対しましてこちら側が十分に調査する、調査の上納得すべきかしないかとの意見ができる、これに対しまして現地の県庁、管理事務所、これの調査予定が四月の末を目標にしてできるであろうということでございます。われわれもその調査の結果を実は待っているのであります。
  64. 亀田得治

    亀田得治君 C項というのは何か団体の関係じゃなかったですか。団体の関係であれば、私はそういうことは処分をする方が積極的に立証すべきことだと思います。そんなことを立証したって保安上何ら有害ではないですよ。あちらが一方的に処分をして、何かそれに該当しないならばお前の方で反証をあげてこい、どうもこんなように聞きとれるのですが、私はこれは普通の対等の証拠のあげ方の原則に反すると思うのですね、そんなことは。どうでしょう、保安上有害じゃないでしょう、米軍がそんなことを説明したって。
  65. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 実はお説の通りその点が双方常に問題になっている点でございます。われわれといたしましては十分な説明を求めるべく努力をいたしているのでございます。実情においてはお説の通り十分満足な状況ではございません。
  66. 亀田得治

    亀田得治君 お聞きしていると、結局十二日のあの思想調査の問題、またそれに引き続く一日の出勤停止の問題、これはもう米軍側が説明できるようなことはないのですよ、おそらく。そこでこの板付の地元の方ではとにかくあちらが証拠をあげないから仕方がないからこちらの方で積極的な反証を準備しようということで、努力をされて、その大体の結論が出て、福岡の県知事としてもこのケースは全くの白だ、こういう確信を得て、四月二日の日に現地の司令官に交渉しているはずなんです。そのことはあなたの方にまだ御連絡ありませんか。
  67. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 先ほど申しました通りまだ正式な報告に接しておりません。
  68. 亀田得治

    亀田得治君 そういう連絡も悪いものですかね。ともかく非常な問題になっておる案件だし、あなたの先ほどのお話を聞いていても大体三月末をめどにして地元がいろいろ証拠を集めておる、こうおっしゃっておるのですからね。それが四月二日に交渉しているわけなんです、実際。現地の司令官は結局自分の一存ではいかないので、東京の空軍司令官ですか、そちらの方の御意見を聞いているとか何とかそういうふうな意味のことをおっしゃっているらしいのです。私はこういう問題ですから四月二日からすでに三、四日過ぎているわけですが、あなたの方に全然そういう連絡がないというのはおかしいし、それから五日、昨日ですね、日米合同委員会もあったわけですからね。そんな報告は実際に全然ないのでしょうか。
  69. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 私、あるいはきょう書面が参っておるかもしれません。情報としてはその事情は存じております。私ども問い合せまして詳しいその書面のあれを待っているるわけでございます。
  70. 亀田得治

    亀田得治君 それは詳しいのは別として、情報としては存じておるということでも私はいいと思うのです。非常にこちら側に証拠が薄弱な問題であれば、それは情報程度で動くのはちょっと軽卒ということになりますがね。米軍側に幾ら説明を求めても説明ができない案件なんです。しかも知事もそういうふうな態度をとっていることは、大体あなたの方はご存じだと思うのですね、そうならば、大体そういう情報を得ておるのであれば、これは私はやはりもっと合同委員会かなりそういう機会もあったのですから、米軍側にもっと追及し、突っ込んでいくべきものだと思うのですがどうでしょうか。われわれは出勤停止されている方の立場からしたら、全く一日でも早くと待っているのですよ。
  71. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 私もそのように考えましたので、書面による正式報告には接しませんでしたが、昨日は先方の参謀長に、これは必ず私どもの手元に書類が来れば、あなたと、つまり空軍の司令官と、うちの調達庁長官とのあれになりますから、それについて今からあらかじめよく考えておいてくれ、こういう意味できのうは話し合いをしたつもりでございます。
  72. 亀田得治

    亀田得治君 それでは一つそれはきょうあすのうちにもっと公式なものが手に入ると思いますから、強力にこれはやってもらいたい。それと結局本来は米軍側が立証しなければならぬことなんだが、結局こっちが反証をあげていく、こういう格好になるわけですね。その反証が明確になれば、当然これは復職すべきですね。この点ははっきりお答えできるでしょう。
  73. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 軍側が当方との意見調整ができまして、当方の意見に同意するならばその通りになるわけでございます。しかしながら保安上の解雇に関しまして最終的に日本側と米側の意見が調節できないということになればどうなるかというと、これが常に問題になる点でございますが、米軍側の権限によって最終決定ができることになっております。
  74. 亀田得治

    亀田得治君 それはおかしい、何か問題があって処分したわけでしょう。その問題がなかったということがはっきりしてきたということなら、これは当然復職さすべきじゃないですか。今のお話を聞くと、何かそういうふうになっても若干そこにまだ問題が残るようにおっしゃるのですが、そういうこと、で一体日本政府というものは引き下っていいんでしょうか、筋が通らぬじゃないですか第一ね。相手が承諾するせんは別ですよ。反証があがっているのに、こちら自身の意見としては、反証があがれば、それはもう当然復職だという考えを日本政府が持つのは当りまえじゃないですか。それで相手が応じなければ相手が悪いんだ、それはね。それがあなた日本とアメリカの関係がどういう条約関係になっておろうが、そんなことはあなた別問題ですよ、その点もっとはっきりして下さい。あなた自身がはっきりして交渉してくれなければ困る。
  75. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) その通りでございます。われわれとしてこれが白であるという十分な確証を持っているときには、向う側にも白であるということを納得さすべきであると存じます。それで向うも当然白ということを考えるならば、これは今までの出勤停止というものは誤まりである、復職すべきである、こういう結論になるべきものであります。
  76. 亀田得治

    亀田得治君 結局まあそうすると証拠の問題として白であるかどうか、その点がもうポイントですね、そういうふうに承わっていいですね。白であってもなおかつ意地づくでやられるとか、そういうことは絶対承服できない。もう一ぺんこれは大事なところだから……。
  77. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) そこが実は非常に大事な問題なのでございます。正直に申し上げまして最終権限は向うが待っております。最終決定権を……。
  78. 亀田得治

    亀田得治君 幾ら向うが持っているといっても、理由なしに人の首は切れませんよ。
  79. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) そこで従前から白か黒か云々で、これで双方の間の折衝問題としてこれは最もむずかしい問題の一つであるのが実情でございます。もちろんわれわれも先生のお気持と同様な気持を持ってこれに当るつもりでおるので、あります。
  80. 亀田得治

    亀田得治君 まあ経過並びに現状は大体わかりましたがね。その一番大事な点になりますと、私若干その態度ははなはだ弱い、こう感ずるわけです。これは一つもっと強く政府として動いてもらいたいと思う。で、万一の場合ということをおもんぱかってそういうふうにおっしゃっておるのかもしれませんが、大体いつごろまでにこの解決ができるのですか、見通しとして。
  81. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) ちょっといつごろまでという明確な日取りは申し上げかねますが、できるだけ早くしなければならぬことはもちろんでありますが、ただ拙速と申しますか、その解決がこちら側の満足いかないような解決になっては大問題でございます。   〔「それはそうですよ」と呼ぶ者あり〕
  82. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) そういう意味合いにおいてできるだけすみやかにはいたすつもりでありますが、どのくらいのなにをもってという限定的な日取りは申し上げかねます。
  83. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことになるから、私はこの間からも言っているように政府の最高責任者がもっとこういう問題について閣議の一意思をまとめて、そうして強力に米軍側に当るようにすべきだ、こういうことを申し上げているのです。一事が万事でね、だんだん前例ができて、やはり少しずつ日本の司法権なり主権が侵されてくる結果に私は必ずなると思う。まあこれ以上あなたと問答を続けても仕方がないから、十分一つこれは一日も早く解決するようにやってほしい。  それからこれも最近の話ですが、外務、労働、法務、調達と、この四つの官庁の間で板付のこの裁判管轄権ですね、首切りをされた人についての。それに関しての合同会議を持たれたと、こういうふうに聞いているのですが、そういう事実はあったのでしょうか。とすればその結論はいかようになったか承わりたい。
  84. 千葉皓

    政府委員(千葉皓君) お答え申し上げます、最近その囲者が集まって裁判管轄権の問題について協議したということはございません。
  85. 亀田得治

    亀田得治君 この三月二十三日に板付の四名の首切りについては日本の側に裁判権がありとして福岡地方裁判所が仮処分決定の判決をしたわけなんです。そのことが一体正当かどうか、私はそういうことを議論するのはおかしいと思うのですけれども、裁判所が具体的な事件で判決を出せば、それを批判するのはむしろ行政権の関与なんです。だからおかしいのですが、何か政府側の方が判決があるのに判決がないときのような議論をして、そして管轄権があるかないかというようなことをおっしゃっておるから、私はおそらく何かそういう協議がされるのではないかと思っていたのですが、それではそういう協議をされぬところをみれば、その点はどういうふうにお考えになっておるのかね。これは法務省の方も来ておられるからお聞きしたい。この前のような議論のままでは済まないはずですね。どちらでもいいです、外務省でも法務省でも。
  86. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 法務省の見解は前回ここで政務次官並びに私から申し上げた通りでございます。
  87. 亀田得治

    亀田得治君 もう一ぺん言って下さい。
  88. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 要するにああいう事件につきまして日本裁判所裁判権がありやいなやということに帰着するのだろうと思うのであります。前回も申し上げましたように、裁判所裁判が二つ出ておりまして、しかも相異なる結論になっておるわけであります。この際法務省としては意見を申し上げたくないということを前回政務次官から申し上げたのでありまして、その通りでございます。
  89. 亀田得治

    亀田得治君 法務省の方はその後判決を取り寄せて、もうすでに検討されておると思うのですが、それはごらんになって検討しましたか。
  90. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 三月二十三日に判決があったということを最高裁判所を通じて聞きましたし、判決の写しも裁判所から送ってもらいまして検討いたしました。
  91. 亀田得治

    亀田得治君 それでおかしいのですね。私はそういう態度をおとりになるのであれば、これは私裁判所にそういう具体的な事件についての判断はまかしてある、こういう考え方だととれるわけなんです。そういうふうにとっていいわけですか。あなたの今おっしゃったことは。
  92. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) もちろんさようであります。
  93. 亀田得治

    亀田得治君 そうならばですね。国としての板付事件に対する裁判管轄権あるいは首切りが当不当、そういうことについての意思決定はもうなされておるわけなんです。そうなれば三権分立ですから、だからその判決を無視した行動というものは、これは日本政府というものはとり得ないのですよ。先だっての質疑はですね、相反するおそれのある判決が二つ出ておる、ああいうやつのものを引かれて……、こうおっしゃったのですが、そんなことは理由にならない、よく考えてもらいたい。普通の窃盗事件あるいは民事事件にしたって、裁判所によってこれはちっと結果はおかしいじゃないかと思われるような判決が二つ出る場合があります。しかしこれが確定すればこれはやはりその問題についてのこの国家意思の決定として、これはちゃんと有効だし、それを無視することはできないのです。最高裁でそれが統一されるというふうな順序にならない以上は。だからそういうわけですから、私はむしろきょうの平賀さんのそういう答弁なら、その態度の方が私は正しいと思うのです。判決に対する態度としては。だからそこで政府側だ、今度は。米軍と折衝しなければならぬ立場にある労働省なりあるいは調達庁が、――直接の関係でなくなるかもしれんが、外務省なんかもどうもこれははっきりしないんですけれどもね、外務省も関係があるのでしょう。そういうところはその判決に基いて強力に米軍側と交渉する、こうなるべきですね、そうでしょう。
  94. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) とにかく板付の事件に関しまして福岡地方裁判所の判決が出ましたのに、政府としてはこの具体的事件に関する裁判としてこれは尊重すべきものであるということはもちろんだと思います。しかしながら従ってこれを無視することはあり得ないことは当然でありますが、判決があったからといって、政府が何かしなくちゃならぬということには当然ならないだろうと私は考えるのでございます。
  95. 亀田得治

    亀田得治君 それはおかしいですよ。米軍に日本人が雇われていて、それが首切りをされておる。労働大臣はですね、当然これを守るのが当然ですとこう言っているのですよ。委員会で。だからそれは法律問題でないかもしれぬがね、その点になると。しかし日本政府の当局者は判然その考えで米軍に交渉すべきですよ。私はその点この間接雇用の場合と少しも変らぬし、むしろ判決によって事態が明らかにされておるんですから、より一そう強い立場で折衝すべきだと思う。そうでなければせっかく判決をした福岡の判事の立場というものはこれは一体どうなるんですかね。そういうことを丸山さんなり千葉さんの方はどういうお考えですか。間接雇用についても先ほどのような努力をされておる。いわんやれっきとした裁判所がぴしゃっと一つ意思表示を味覚に出しておる。当然こっちの方はより一そう熱意をもってこの首切りが撤回されるように米軍に折衝されるのが私は当然だと思う。そうでないという何か納得がいく理由があるのならお示し下さい。ないことはないでしょう。お二人で答えて下さい。丸山さんと千葉さん。
  96. 千葉皓

    政府委員(千葉皓君) 外務省といたしましてはやはり裁判管轄権の問題については二つの異なる裁判所の見解が現われておりますので、これについて所見を述べることを控えたいと思います。当面の問題について現実的な解決ができれば私はそれは最も望ましいところであると考えるのでありまして、労働省とも連絡しまして、そのように話を進めていくつもりであります。
  97. 亀田得治

    亀田得治君 丸山さんはどういう考えなんですか。
  98. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 私、実は裁判管轄権の問題に関しまして適当な所管の者でもございませんので、はっきりした回答を申し上げることのできないのは残念でございます。  私ども間接雇用の場合を考えてみますというと、間接雇用の場合は、一応調達庁というものが雇用主という立場にあり、従って当然裁判の判決等がございますれば、雇用主たる調達庁はこれに従わなければならぬのは当然でございます。ただ実際問題としてこれが損害賠償その他の金銭のようなものでございますれば、それに従った履行もできることになりますが、復職という問題になりますというと、これが実際上、向うは使わない、復職という裁判が出る、これがどういうことになるのか。私も法律的の見解の十分なところは存じませんが、あるいはその場合に調達庁が置かれた場合には、履行不能の損害賠償というような責任までも持つべきものかどうか、これは若干、私見ですが、ひそかに考えておるわけです。一方今の直接雇用の問題でも、なお主体が直接に軍であるということで、あるいはおそらく国際法上の軍隊地位、治外法権的な地位の問題とひっからんでおるのだと存じますが、この辺は私からははっきりした御答弁ができないことをお許し願いたいと思います。
  99. 亀田得治

    亀田得治君 お二人の方の考えを聞いたのですが、非常にポイントがはずれている気がするのです。米軍側がどういう態度に出てくるか、これはあちらのことであってそんなことはどうでもいいのですよ。どうでもいいというわけではないのですが、事は米軍側のことじゃない、こちらの意思表示ははっきりしたものでなければいかぬじゃないかといっている。こっちが復職を要求して、相手がどうしても入れない、力づくでも入れないということになれば、それはなるほど復職にならぬかもしれない。その場合には損害賠償云々というふうに肯われるのですが、そんなことは米軍の言うことなので、あれは実際何でもなかったのだ、やりそこなって、どうも格好が悪く、復職させられないから、別の形でやってくれ、あるいはそんなことを言うかもしれない。しかしそれは米軍の言うことなので、こちらとして裁判所によって正式の意思決定をしておるのだから、行政権は当然その立場で交渉すべきであろうと言っておるのです。これは労働大臣も大体そのことは承認されておるのだけれども、ただ皆さんが実際上の事務的の折衝といいますか、そういうことに当られるお方と思うから、念のために聞いておるのです。そんなことは当り前じゃないですか。理論的に裁判管轄権がどこにあるかという問題を今ここで聞いておるのではないのですよ。たとい間違っておっても裁判というものがきまれば、それは国家としてのその面における意思決定なのですから、私は間違った裁判とは思っていないのですが、疑義があっても国家の意志決定というものができておるのだから、それは米軍がそれに対してけちをつけるなら別ですが、何もこちらから疑ってかかるということは、みずからを自演するものじゃないかと言っておるので、その点は一つ私どもの気持を了承してもらって、もっと強く当ってもらいたいと思います。やってくれますか、どうです。
  100. 千葉皓

    政府委員(千葉皓君) お答え申し上げます。先ほど申し上げましたように今労働省でせっかく事案の現実的の解決についていろいろ努力しておりますので、私の方もそれに御援助いたしたいと考えております。
  101. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) それと関連して質問いたしますが、労働省の方の考え方を聞きたいのですが、軍の直接雇用労働者の保安解雇がしばしば行われておりますが、これは何らの協定、手続がないままに即時解雇ということでやっておるようですが、これの救済のための適切な方策というものはないのですか。いかがですか。労政課長の大野さんにお尋ねいたします。
  102. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) 直ちに労働者を解雇することは、労働基準法第二十条に従っておる限り合法でございまして、米軍であるといっても、その点について特に特別の措置をとるということは法律上なかなかむずかしいのではないかと思います。
  103. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) もう一点お聞きいたします。労働省の大野さんにお聞きいたしますが、これは協定の第三条に基いて軍は管理権を持っております。その管理権と、協定の第十二条の五項、それから第十五条の四項ではっきりと日本の労働者は日本の法で守られておる。またその法を来車は順守しなければならないという規定があるのであります。その管理権と日本の労働者の基本権をどう守るかということを調整するためには、相当の私は日本の国内の一致した私は協力態勢がなければ、その調整はできないように考えられますが、これについてどういうふうに考えておられますか。
  104. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) この基地管理権の問題と、十二条、十五条との問題は、これは労働省としてはちょっとお答え申し上げにくい専門外のことでありまして、われわれの気持といたしましては、十二条、十五条のそれぞれの規定は十二分に守られるようなところに持っていきたいと思いますが、法律的に私はお答えを申し上げる力を持っておりません。
  105. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) もう一点、大野さんにお尋ねいたします。そういたしますと、協定の第十二条五明、それから第十五条の四項に規定されておる日本の労働者の権利は守られなければならないということは、はっきりと行政協定を取りきめた際の日本の国の意思でもあり、またそれを順守すべき義務をアメリカは負っておるというふうに私は州新できるわけでありますが、労働省がお答えになれないとすれば、欧米局長の千葉さんにこの点をお尋ねしたい。
  106. 千葉皓

    政府委員(千葉皓君) お答え申し上げます。米軍は行政協定の十二条、十五条の談当規定によりまして労務に関する日本のあれに従う義務があるわけであります。
  107. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) そういたしますと、管理権と日本の労働者の基本権を守るということが衝突するということはあり得ないのですが、労働省のただいまのお答えはまるでふぬけのようなお答えで、大へんあなたのただいまのお答えと基本的に違うようですが、いかがですか、もう一ぺん両者の見解を聞かせてもらいたい。非常にここが重要な点です。
  108. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) 十二条、十五条に規定してある労働者の権利についての考え方は千葉欧米局長の言われましたところと私どもと何ら異なっておらぬと私は解釈いたしております。ただ三条と十二条の、法理論的の優劣につきましては私専門家でありませんからお答えできないわけであります。
  109. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) もう一ぺん大野さんにお聞きいたします。法理諭的の優劣関係というのはどういうことなのですか。日米行政協定というのはアメリカと一本が双方の利害得失を勘案して、双方対等の立場において取りきめられたのが行政協定であります。従ってどっちが優劣するというのではなくて、この場合、当然日本側は日本側の立場に立って労働者の権利が、管理権と対等の立場において私は守らるべきものだと解釈するのですが、優劣というのはどういう意味を指しておりますか。
  110. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) むろん十二条と十五条に規定しておりますところは米軍は守らねばならないと存じます。三条の規定の監理権の発動も、十二条、十五条と抵触しないように発動されるのは、これは協定全般からいって当然のことではないかと私は考えております。しかしながらこれは主観の相違が両国の場合に存するときに、片側は十二条違反である、片側はいや違反ではないと言って、第三条ですかの基地管理権に基いて自分たちはこういうことをするのだと言い、両者の主張が対立した場合に、これを法理論的にどちらが優先するものであるかという問題が起きてくるのではないかと思います。かような問題に対しては、私専門じやないのでお答えできない、こういうふうに申し上げたわけであります。
  111. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) そこで、今度解雇された方は食堂に勤めておる方であり、何ら軍の軍規というものと抵触する立場にない方である。このことは、先ほど来調達庁の次長さんが玄だ現地から何も報告を受けておらぬからということでありましたけれども、軍規というものに抵触しないと見られる方が即日解雇になっておるわけですが、保安処分に当らないという場合には、これは労働省側としても、この解雇された者に対しては、やはり国内の労働法を適用するようにがんばるのが私は至当だと思うのですが、これはいかがですか。
  112. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) その通りでございます。
  113. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) そうだとしたならば、さらにお尋ねいたしますが、こういう問題は今初めて起った問題ではありません。労働省は、しばしばこうした紛争の処理機関を作って、軍直関係の事案はこの場で解決するようにしたい、また軍側の方もこれはオーケーという返事がきておるということでありますが、そうした紛争処理の機関がどんなふうにして作られておるのか、内容はどんなものなのか、そういう点について具体的に説明していただきたい。
  114. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) 少しく長くなりますが、簡単に御説明いたしましょうか。大体の構成を申し上げましようか。
  115. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) これは具体的に聞きたいです。
  116. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) さようですか。軍と組合側とからなる機関を各県に設置いたしまして、そこで五人の、これはこちらの原案でございますが、五人よりなる委員会を作り、そこで解雇あるいは賃金争議その他労働問題について相互に審議して勧告を出す、米軍側及び日本側はその勧告を尊重していく、こういう構想のものであります。
  117. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) さらにお尋ねをいたしますが、軍と組合側の五人委員会の比率はどういうふうになっておりますか。
  118. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) これはむろん米側がまだ回想しておる段階ではございませんが、私どもの方では二対二、中立一、こういうふうに考えております。
  119. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) それでは、この紛争処理機関というものは、どのベースにもこれから作る予想ですか、作られておるのですか、どういうふうになっておるのですか。
  120. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) ただいま申し上げましたように、これはまだ折衝中のことでございまして、米軍の方は日本側の提案に同意しているわけではございません。各ベース、ベースに作るということは、これは技術的にはきわめて困難な問題であると存じますので、大体私どもの方としては、県単位に作るのが実際的ではないかと考えております。
  121. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) それでは、先ほど亀田委員の質問の中で、どうしても私疑問にたえないことがありますので、少しくどいようですが、もう一度丸山さんから誤答弁を願いたいのです。聞くところによりますと、三月三十一日現在ですね、県側の方ではすでに調査が終了しておる、そうして全員が保安に該当しないという結果が出てくるのだ、こういうことを私は聞いておりますが、こういうような正式な書面はきておらぬと言いますが、情報と言いましても、どういう情報が今入っておるのでしょうか。私が今言う情報が入っているのですか、いかがなものですか、お伺いいたします。
  122. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 一昨日でございましたか、その前の口でございましたか、私自身が直接に実は組合の幹部の方々からそのような意味合いのことを承わりました。しかし県からの正式な報告を待ちたい、そのことで先方で早く調査の結果並びに現地軍との折衝模様等を報告してくれることを期待いたしております。
  123. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) そうすると、こういう問題は非常に私どもとしては重大に思っているわけですが、大へんに時間的に私は疑問があるのです。三十一日に県側の方では保安に該当しないということ、そういう結果が出ておるにもかかわらず、本日になっても正式な回答が出てこないということについては、非常に私は時間的に緊急問題であるにかかわらず、真剣になっておられないように思うのですけれども、これは私の言いすぎでしょうか。もし言いすぎでないとするならば、私は次のことを尋ねたいのです。先ほどあなたの御発言の中で非常にに重要な発言があった。つまり、県側の方では、全員は保安処分に該当しない、これは、白だ、こういう結論が出ておるわけです。そうすると、調達庁は、県側の報告をそのまま受けて白であるという断定を下す権限をお待ちになっているだろうと思いますが、それはどうなんでしょうか。
  124. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 調査の実際問題といたしましては、現地において県がやられる、これが一番重要な資料だと考えます。従って、県からのそういう、正式なものを待ちまして、それを基礎にいたしまして、なお先ほど私が合同委員会の問題の調査の話を待ち出しました、それらのこと、また中央においてもいろいろ調べられることがありますれば、そういうものを総合いたしまして、調達庁としてやはり県の報告と同様のものを出してみたらどうかと思っております。
  125. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 大へんに疑問に思います。私ども委員会は、この問題を重視して、委員会として視察に参り、研究に参って来たわけであります。このときに、それほど重大にお感じになるなら、調達庁の方はわれわれとともにどうしておいでにならなかったのでしょうか、それが一つ。もう一つ、県側の調査では足りないから中央でも調査するのだと、言っておりますが、これは、私は形式としてはそういうことが言い得るかもしれませんけれども、やはり地元の県側の調査というものが主体にならなければならないと考えられますけれども、この二点についてお答え下さい。
  126. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 実ははなはだ申しわけないのですが、法務委員会で調査に参られたときの実情は、私はただいまのところよく存じませんので、その点は申し上げかねますが、第二点はお説の通りだと思います。何と申しましても現地における調査のものが実際的に主体になるものだと思っております。
  127. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) そこでお尋ねをいたしますが、現地はすでに白ということを出しておる。ただいまの御発言によると、日本の政府側はこれを白と出しておると言っても差しつかえないと思うのです。その次に、あなたの御答弁をかりれば、たとえ日本側が白と言っても、アメリカが黒と言った場合には、最終的には軍の主張が通って、結論としては黒ということになるという御発言がありましたが、これは私の聞き違いでしょうか、お尋ねしたい。
  128. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) その点でございますが、少し急いで結論的なことを申し上げましたので、そういうことになると思いますが、この問題が日米双方最終的に意見が一致できないという場合にどうなるか、この点、そのときに現行の取りきめでは向う側に決定権がある、こういうことを申し上げたわけであります。
  129. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) それで、これは意見になるのですが、これは大へんおかしいと思うのですが、まあしかしおかしいとか、おかしくないということは、その後の結論だと思いますが、そこでさらにお尋ねをしたいことは、うわさに聞けば、日米合同委員会の分科会に労務の問題に関しても、たびたび問題を持ち込まれても、うやむやになって、その行方がわからなくなってしまう。合同委員会に持ち込むということは、これはお墓の中に打ち込むと同じ結論になる、こういうふうなことが言われておりますが、この板付の問題も、あなたは先ほどから合同委員会、合同委員会と言っておられますが、これもまた墓場の中に持ち込んで、日本側の白という結論をうやむやに消してしまうというおそれがなきにしもあらずという心配を持つのでありますが、ここは調達庁がふん張りどころではないかと思う。実に長時間にわたる県側の苦労というものは並々ならないものであります。私は直接福岡に参りましたが、並々ならない御苦労をして、非常に細密な調査をされて、はっきり白という結論を出されておった、それをまた合同委員会に持ち込んで、この白という結論をうやむやにするとするなら、これは日本国民に調達庁も不信を買うでありましょう。日本の政府自体が不信を買うでありましょう。合同委員会に持ち込むということは、結論としてどういうことをするために打ち込むのでしょうか。またこの事件を具体的にどういうふうに処理しようとするのですか。この点について明確にお答えをいただきたい。
  130. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 今の出勤停止に関する件は、そのものを合同委員会で解決しようというつもりはございません。これは保安条項の取りきめに基きまして、調達庁長官と空軍司令官との間で最終的な話し合いをつけよう、こういうことでございます。
  131. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) おととい非公式でございますが、私はピアス准将に会って参りました。この問題について懇談をして参りました、ピアスさんは、これはなかなか大きい中央の問題である、従って合同委員会でお話し合いをしたいというような意向を洩らされておりました。先ほどの御答弁によりますと、あなたも昨日ピアス准将にお会いになったそうでありますが、今の御答弁のような、合同委員会には待ち込まないで、調達庁が責任をもって解決の処理に当るということをお話し合いしていらっしゃるのでしょうか、その点についてお話し願います。
  132. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 昨日ピアス准将との話し合いの中では、私は合同委員会へ打ち込んで解決するとは申しておりません。向うもその点について言っておりません。おそらくそれは今の六十九号という取りきめにありますれば、そういう性質のものではないというふうに双方で理解しておると考えます。ただ合同委員会という話が出よしたのは、先ほどから申しました通り、OSIでございますか、これの調査自体が待ち込まれておる。これは向うは切り離した問題として考えておる。しかしながら事実としては相当重要な関連があるのであろう、重要資料になる、こういう意味合いにおいて、そこに合同委員会関係が出てくる。
  133. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと議事進行で……。ともかくこれは早く解決すればいいのです。解決しなければならぬ事案だということははっきりしているのです。大体合同委員会に持ち込む問題にしたって、私は細かい規定等は知りませんけれども、何もそんなに厳格なものじゃ私はなかろうと思うのですよ。関連事項において困った問題があればそれをどんどん話し合っていく、そんな運用ができないような規定とは私は思わんのですがね。大体合同委員会で二つか三つしかないのです、案件が、この間聞いてみると。そんな忙しいわけでもないのですし、それから今委員長がピアスさんに会ったところによると、これは合同委員会で話しましょうと言った点もあるらしいし、とにかくそんな厳秘なものじゃないのです。とにかく何でも、合同委員会でも直接の交渉でもいい、とにかく早く片をつければいいのです。そういう観点であらゆる努力をしてもらわなければならぬし、それから委員長一つお願いしておくのだが、とにかくこの問題が解決がつくまでは、法務委員会としては委員会のあるたびに一つ政府の責任者を呼んで下さい。
  134. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 承知いたしました。
  135. 亀田得治

    亀田得治君 きょうのところは大分細かい点についての考え方の整理ができました。結局そういう方針に基いて日本政府がほんとうに腰を据えて交渉するかどうか、こういうふうなところにきておると思いますから、一つやはり何かその関係がはなはだややこしいのですが、事務当局も一緒に来てもらってもいいのですが、来てもらう責任者ですね、この点一つ検討されて呼んでもらいたい、こう思います。
  136. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 承知いたしました。
  137. 亀田得治

    亀田得治君 きょうは要望して一応今日のところは時間もありませんので、私の質問を終ります。
  138. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 外務省の方に伺ったらいいのか、調達庁の方に伺ったらいいのか、さっきの最終決定の権限はこっちになくて向う側にあるというのは、どういう法的根拠に基いておっしゃるのでしょうか。
  139. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) それはただいまのあれと思いますが、労務提供の契約がございます。現行の労務提供の基本契約というものが米国側と日本側の間に結ばれておるわけです。それの今保安条項のやつを付属にいたしたのであります。実はあれもつい二年ほど前にようやくあれをつけ加えたのです。もとのものはなお一そうこちら側の不利と申しますか、向う側が一方的に処置できるごとき規定であります。それはよろしくない、どうしてもそこに調節するところのものを作る必要がある、こういうことで今のようなものを作ったのでございます。しかしながらもともとそういう基本契約でございますので、そのような結果になるのが現状でございます。従って御承知かと思いますが、新しい契約においてこの辺を直そうという問題が起きておるわけであります。まあこれらに基きまして新契約がこちらの希望通りのような工合にできまして、今のようなものを契約いたしますと、その点において、その地方々の点においてずいぶん改善になる点が出てくる、かような意味合いで実は労働省、外務省とも協力して新契約に努力する、こういう今の現状であります。
  140. 亀田得治

    亀田得治君 私はさっきからそんなことはない、ないと言っておるのだが、今確かめたらそんなばかなことはないのだ。それは保安上の問題です。ところがこれは保安上であるかないかがこの点問題の要点になって、米軍の説明がつかないのです。それで仕方なくこっちから反対にそんなことはありませんという証明、これはまたむずかしい証明、ないということの証明なのですからね。そんなばかげた証明をやっておる、実際には。だから保安上の問題には、どうも疑わしい場合には、どちらが優先権を持つという基本契約、これは私も見ております。ここを勘違いされないようにして、相手はやはりそういう方向にもっていこうとするからね。その点はあなたの方で強力に突っ込んでいかなければ困りますよ。そうでしょうが。保安上のことならあなたの言う通りでしょうよ。保安上でないから問題になっておる。あたしたちがあなたの地位だったら、もうこんなケースはめったに起きてこぬから、これは大いに突っ込むべき事件だと思って、勇躍して交渉に行きますよ。いつも頭を抑えられているから、こんなところでちっとやらなければだめですよ。どういうわけなんです。
  141. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 御説の通り、これがこちら側の今の調査の結果と、意見としてもそうであるならば、これを向う側にのませるという努力をもちろんいたすつもりでおります。
  142. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今のお答えで大体あれだと思いますけれども、要するに問題は、米軍が日本にいるということ、その目的というものに直接関係している範囲内では、その米軍の判断というものが有効でしょう。その目的に直接関係のある範囲内では……。だから今のように、保安に関係があるならばということでしょう。だから保安に関係がないということになれば、それは米軍の意見と日本側の意見とが矛盾するわけであることにはならないであろうと思います。私は二つの点を特に御尽力願いたいと思うのですが、一つは、占領時代の習慣というものが残っておれば、それはやはり打破しなければならない。そうでないと、占領の継続ということになり、それは侵略だということになる。というのは、平和条約及び安保条約の審議の際に、当時の法務総裁の大橋君から私お答えいただいております。ですから、侵略行為を許していいということは、これは決して日本国民に対しての忠誠の問題からいっても、またわれわれとしても、そういうことは許すわけにはいかないと思うのです。  それからもう一つは、日本の昔の軍の関係で、何でも軍事上の問題だということになると、無理が通ったということで、やはり幾分そういう悪い伝統は残っているのかも知れません。これもどうか現在の政府において絶えず打破されて、何でも軍の関係に持っていって、それで無理を押すというようなことは、絶対に許しちゃならぬ、これは日本国憲法の許さないところであります。だからその点も一つぜひ御努力賜わりたいと思います。かつまたその点でどうしてもうまくいかないということがあれば、今お話のように面接はその雇用契約関係の法規の改善ということですが、さらにさかのぼって行政協定なり、あるいは安保条約なりの問題があるならば、それをはっきり指摘されて、それで立法上あるいは外交交渉上是正しなければならない点は明らかにされてほしいと思う。どうもこれは今の質疑応答を伺っておりまして受ける感じだと、理屈はあっても無理が通っちゃうのだ、理屈が通らない、無理が通っているというような感じは双方に有害ですし、日米安全保障条約の精神あるいは原則にも一致しないことであろう、そういう無理を押し通しているような外国軍隊日本にいてもらうということは、日本にとっても、またその軍隊の本国にとっても、少しも利益なことではないので、今申し上げたような点で、直接に今御説明がありましたように、改善すべき点もあるでしょう、さらにさかのぼって改善すべき点があるならば、そういう点をはっきりするように今後御尽力願いたいと思います。
  143. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 御意見よく了承いたしました。
  144. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 千葉さんの方のお答えは……
  145. 千葉皓

    政府委員(千葉皓君) ただいまのお話ごもっともだと存じます。
  146. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 他に御発言がなければ、隅田さんの御提案があった通り、さらに次回に保留いたしまして、本日はこれをもって委員会を終了いたします。    午後六時十五分散会