運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-04-03 第24回国会 参議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月三日(火曜日)    午前十一時九分開会     —————————————    委員の異動 三月三十日委員仁田竹一君及び亀田得 治君辞任につき、その補欠として大屋 晋三君及び藤原道子君を議長において 指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     高田なほ子君    理事            井上 清一君            一松 定吉君            宮城タマヨ君    委員            岩沢 忠恭君            西郷吉之助君            中川 以良君            赤松 常子君            小林 亦治君            藤原 道子君            中山 福藏君            羽仁 五郎君            市川 房枝君   衆議院議員    法務委員長   高橋 禎一君   政府委員    法務政務次官  松原 一彦君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   参考人            小田みつえ君    朝日新聞社会部    記者      青木 営治君    警視庁刑事部長 小杉 平一君    石神井学園園長 堀  文次君    東北大学教授  木村 亀二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○幼児誘拐等処罰法案中山福藏君発  議)(第二十三回国会継続) ○罹災都市借地借家臨時処理法第二十  五条の二の災害及び同条の規定を適  用する地区を定める法律案衆議院  提出)     —————————————
  2. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  議事に入ります前に、委員の変更について御報告をいたします。三月三十日付亀田得治さん、仁田竹一さんが辞任せられまして補欠として藤原道子さん、大屋晋三さんが御選任になりました。
  3. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) それでは幼児誘拐等処罰法案を議題に供します。本案につきまして参考人から御意見を承わりたいと存じますが、参考人皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は皆様には大へんお忙しいところ、かつ御遠路のところをわざわざ御出席下さいましてまことにありがとうございます。皆様方には前もって事務局の方から文書を差し上げてあるはずでございますが、文書内容等については一応御研究承知のことと存じます。しかし本日おいでを願いましたのは、幼児誘拐等処罰法案という法案がただいまこの委員会で審議されておりまして、参考人方々の御意見法案審議参考に供したい、こういうつもりでございます。もちろん法案に対する法律的な意見なり批判なりを承わることが本来の趣旨でございます。けれども必ずしも皆様方全部に法律専門的な御意見お願いしたいというわけではございません。それは各自の御体験やあるいは御研究に基いて述べていただいてけっこうでございます。たとえば小田さんのような、ひろ子ちゃんがお母様の前から姿を消して以来、御家族を初め地域の多くの方々が御心配をされ、しかもその中心になって世の非情を感じられた、お母さんとしての小田さんの御体験なぞ率直にお話しいただいて、幼児誘拐犯罪をどういうふうに処置していったらいいかというようなことでけっこうでございます。どうぞこの委員会には見える人の顔も少いと存じますが、これは全国民にお訴え下さるのだという気持でどうぞ十分に御自由に御意見をちょうだいしたいと思います。あまり時間もございませんので、大体お一人十五分くらいのところでお願いをしてみたいと思いますが、よろしくお願いいたします。  なお委員方々に申し上げますが、参考人に対する御質疑は参考人の御発言が終ってからあとお願いしたいと存じますので御了承を願います。  それではまずはるばる尻ケ崎からお見えになりました小田みつえさんからお願いいたします。どうぞ小田さん。
  4. 小田みつえ

    参考人小田みつえ君) このたびはいろいろとありがとうございました。私今年四十歳です。ひろ子は一月の二十四日の午前十時前に……。
  5. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 小田さんもっと大きい声でおっしゃって下さい。こっちまでよく聞えませんから。
  6. 小田みつえ

    参考人小田みつえ君) 十時前に家を出て、授業がちょうど二部授業なんで、朝十一時ごろ学校にいくように習慣づけてありますので、十一時に時間割を合してしまって、姉にもう少し時間があるからお姉さん遊んできてもいいかと聞いたらしいんですね。それで姉がもう少し時間があるからあまり遠くへいかないで近くで遊びなさいよと言うたら、うん、その辺で遊ぶわ言うて門へ出たらしいんです。それから姿を消してしまったままで、全然いまだに行方が一つとしてこれという手掛りが得られませんので、どういうふうなことをしているかしらと思いまして、日夜もう明け暮れております次第でございます。それで市長さん初め警察の方、PTA、育英会の方、学校の方、ほんとうにこのたびはあらゆる方面の方に御厄介になりまして、あるいはいろいろと御協力を下さいましたことを私としても何とお言葉に表わしてよろしいやらほんとうに感謝している次第でございます。一日も早く発見されてもらわないと世間の人にも申しわけがないと思っておる次第でございます。こんな席上でお話し申し上げたことがないのでまことに申しわけありません。
  7. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 小田さん、私聞きたいことがありますが、あとでそれは十分お聞きするといたしまして、実は世間から金をくれとか何とかいうことで、大へん苦しまれたということを聞いておったのでございますが、そんなような点にも少し触れて下さいませぬか。
  8. 小田みつえ

    参考人小田みつえ君) 五十万円送れとか、仕事が済んだからひろ子連れて神戸の駅のほらにおるから連れに来い、それから今までの食費として二千円持って来いとか、十万円を持って大阪駅へ連れに来いとか、そういうふうないろいろないたずら半分の脅迫めいたものがずいぶん参りましたんですけれども、まあ最近はそういうようなのはあまり参りませんけれども事件の当時はだいぶ参りましたんです。
  9. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ありがとうございました。  次に朝日新聞社会部記者で親探し運動関係をされております青木営治さんにお願いをいたします。
  10. 青木営治

    参考人青木営治君) 私は朝日新聞青木でございます。朝日でこの問題を取り上げたというその動機から申しますと、去る二月の二十二日の全国の知事会議で、兵庫県の、今申しました小田さんのひろ子ちゃん事件なんかに関係しまして、兵庫県の阪本知事からこの際、子を探す親御さんの何もいますが、親を探す子供も各施設にたくさんいるということを知りまして、知事会議一つそういう話を持ち出してはどらかということが朝日新聞大阪の新聞に出ました。それを東京で見まして、これを東京でもやってはどうかということから、朝日新聞東京大阪それから名古屋小倉、その四社の朝日新聞全部をあげて、こういう運動を全国的にやったらば、こういう親探しする子供の親が早く見つかるんではないか、そういうようなことからこれを朝日新聞全部をあげてやることにきめましたわけです。そうして早速私は二月の二十二日の知事会議に出席されている阪本知事にその意向をただしました。そうしたらば懇談会の席上でそういう話を持ち出してみようということから、それをきっかけに東京では二月の二十五日を皮切りに今日までに十一回子供たち写真を載せました。それは合計一千六十七名にのぼっていますが、その一割は今日までに親たちまでも含めまして見つかっているわけであります。その内訳を申しますと、朝日新聞東京関係で二十三組の二十五人、それから大阪で三十三組の三十五人、小倉関係で十九紀の二十二人、合計七十五組の八十二人、その子供たちが親あるいけ肉親と面会をしています。そのほかに親の居どころとか、兄弟の居どころのわかったものは東京で十一人、大阪で二人、小倉で二人、それから名古屋で一人、合計十六人、これをあわせまして九十八人という数が今日あの運動を始めましてわかりました次第です。  この運動を始めてみました結果から申しますと、非常に最初厚生省なんかでお話承わったときは大体百人に一人あればいいのじゃないかという気持をわれわれ受けました。それでもわれわれとしては、こういう子供たちが、今まで外地の引き揚げということは非常に強く叫ばれてきましたが、私の言いたいことは、内地引き揚げということをこれまで忘れていたのではないか。その内地引き揚げ一つにこの子供たちの何があるのじゃないかというようなことからやり始めたわけでございます。そうしましてその子供たち施設を訪れたところによりましても、子供たちはやはり強くお父さんお母さんを求めているわけであります。そうしてこの子供たちのその声をわれわれはそのまま紙面に現わすということが第一でありまして、中には子供たちでもお父さんお母さんに会いたくないという子供もいますが、そういう子供さんについてはわれわれは取材していません。そうして希望する、お父さんお母さんを求める子供たちだけについて今度の今掲載している子供写真はそういうものを取り上げたのであります。この反響と申しますか、それは毎日私のところに来ます手紙だけでも二、三通は少くともあります。今までに社の方全部合せまして東京だけでも大体二百通ばかり来ていますが、みんなの激励が非常に多いのであります。特に小さい子供さんというか、学校に行っている子供さんの激励が非常に多いのです。そうしてみんなでこれを探して一日も早く明るい社会にしようということがみんなの願っているところであります。  以上をもちまして終ることにいたします。
  11. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ありがとうございました。  次に警視庁刑事部長小杉平一さんにお願いをいたします。
  12. 小杉平一

    参考人小杉平一君) 幼児誘拐等処罰法案につきまして、参議院におかれまして法務委員会で御審議されておられることに対しまして、深く敬意を表します。  この誘拐事件につきまして、私ども警察の者としまして、警視庁が扱いました実際の実情を申し上げまして御参考に供したいと思うのでございます。  大体最近扱いましたものをまず統計的に上げてみますと、昭和二十九年度におきましてはこの誘拐罪といたしまして二十六件発生をいたしております。検挙いたしました件数が二十三件でございます。昭和三十年度におきましては発生が二十五件に対しまして検挙が二十五件、こういうことになっております。ただいまのは誘拐全般でありますが、このうち未成年のうちの年少者及び幼児誘拐につきましては、昭和二十九年度においては九名、三十年度においては十一名でありまして、二ヵ年度におきまして年少者及び幼児、これが合計二十名誘拐されておるわけであります。この二十名を年令別に見ますと、五才以下の者が四名、六才から八才までが八名、九才から十一才までが八名、こういう内訳になっているのでございます。  で、これを検挙して取調べをいたしまして、その結果どういう動機でもって犯人が、警察で申しますと被疑者がどういう動機をもってこれらの幼い子供誘拐したかという動機別に見ますと、営利目的としたと見られるものが四件、それからわいせつを目的としたと見られるものが十四件、単に単純な誘拐と見られるものが二件と、こういう数字に相なっている次第でございます。  大体この誘拐の態様はただいま申しましたのでございますが、いろいろ実例についてこれから簡単に申したいと思います。  第一は恐喝並びに誘拐の未遂に終ったという事件でありますが、これは昨年の二月二十五日に神田にありますある既製服問屋子供さん、九才になる今川小学校の三年生の児童で男でございますが、このお子さんを川崎におりますある浴場の雇い人の十九才になる者が誘拐をして、これを種にして現金を恐喝しようという意図でもって、これは計画的に、すでに昨年の二月九日に神田の須田町にある第一興信所という私立探偵所に依頼をしまして、この被害者家庭の状況を詳細に調査をして、それから二月二十五日の午後一時ごろ、坊ちゃんが通っている今川小学校に参りまして誘拐しようとしたけれども、先生がおかしいとにらんだために果さなかった。さらにこの坊ちゃんが帰宅してから外出したところを、坊ちゃんにごちそうしてやるから、こう言って誘拐をして、タクシーに乗せて日本橋の三越本店に参りまして、三越の屋上に連れて行って坊ちゃんをおどかして、お父さんお母さん、僕は自動車に乗せられて知らない所に連れてこられておそろしいおじさんにおどろかされています、この手紙を持って行った人に八百万円あげて下さい、警察に行くと僕が殺されますというような両親あて手紙を書かせまして、そうしてこれを持って両親の早川さんのお宅に行って、この手紙お母さんのゆきさんに手渡して、早く八百万円の小切手を書きなさいと恐喝しているところを、百十番によって急報を受けました万世橋警察署員によって現行犯人として逮捕された事件がございます。  第二の例といたしましては、誘拐をしましてからその誘拐をした少年を絞殺した事件でございます。これは昨年の二月二十日亀有の管内で起ったのでありますが、被疑者プレス工、工員で二十才になる男であります。それから被害を受けましたのは職安人夫をしておる方の次男の八才になる末広小学校二年生の男でございます。この方は朝鮮人であります。この被疑者は非常に変質者でありますが、いつもこの被害者家庭内でいろいろごたごたがあったようでありますが、結局この八才の子供を自転車に乗せてやるからということでだまして家から連れ出したわけでありますが、そして映画を見せたりしまして、そうしてその晩に、これは三月二十日の晩に葛飾区新宿町大日本機械工場の便所の中で絞め殺してそうして何食わぬ顔をしておったところが、二日後に犯行が発覚しましてそれを検挙しました。これはまあどういう動機かはっきりいたしませんが、非常に変質者であります、被疑者は。そういう不幸な例もございます。  それから第三の例といたしまして、六才になる女の子誘拐した事件。これは昨年の七月三十日上野公園であったわけですが、これはゴムひもを行商しておる方の長女の六つになる女の子、これがお母さん一緒に行商しておるわけですが、この女の子連れて歩いたならば行商をしても非常に同情が集まるだろう、こういう考え方からバタ屋をしておる五十三才になる男が犯行当日の五日くらい前から被害者親子と知り合いになって、そうして毎日拾った菓子を与えたりして近付いて、そうして犯行の日は近くでアイスクリームを買ってやるというようなことで親子を欺いてそうしてこの六つになる子供をおんぶしてどこかえ連れて行った。七月三十日に連れ出しまして逮捕されたのが八月八日でありますが、その間方々連れ歩いておった。これはまめ生きて帰って来たわけでございますが、そういう例もございます。  時間の関係もございますが、一番まあ大きな世論を巻き起しましたものといたしましては、昨年の七月十五日に大森警察管内発生いたしました大谷正美ちゃん六才の誘拐事件でございます。これは今さら申し上げるまでもないことでございますが、かいつまんで申しますと、トニー・谷こと大谷正太郎さんの長男大谷正美さん六才、入新井第四小学校の一年生の坊ちゃんが、七月十五日の午後一時ころ帰宅の際、小学校の校庭であるおじさんから写真をとってやるから一緒おいでといって誘われてそのまま姿を消した。そこで御両親は午後七時過ぎになっても坊ちゃんが帰宅されないので、驚いて午後八時ころ迷い子の捜索願い大森警察署に出されたわけであります。で、届出を受けまして大森署では直ちに捜索に従事をいたしましたけれども発見するに至らなかった。ところがその翌日十六日に実は大谷さんの所に速達郵便が届けられまして、その発信人は武蔵野市吉祥寺二千三番地原靖夫とい名前で、その内容正美君をしばらく拝借する、悪人の仁義として生命は保障する。数日中に二百万円の身のしろ金と交換条件正美君をお返しする、当局との連絡は貴殿のため不利の結果となるので念のため、今後の連絡を待たれよ、と万年筆で書いた脅迫状があったわけであります。そこで本件は有名人の子供誘拐した上、その親から多額の身のしろ金をとろうという悪質な犯罪であることが明瞭になりましたので、警視庁におきましては直ちに捜査本部を設置いたしまして捜査にかかったわけでございます。で、この捜査を開始いたしましてから、もちろん報道機関等により報道されましたのでありますが、被害者の宅には連日にわたって脅迫電話がかかる。あるいは脅迫状も舞い込んでくる。中には誘拐事件を利用していたずらをする者や、あるいはこれに便乗して金を恐喝しようとする者さえ出て参りまして捜査本部自身も非常にこれに悩まされたわけでございます。で、こういうふうに捜査をいたしておりましたところが、七月二十一日に至りまして午前十一時ごろから午後八時ごろまでの間に五回電話連絡大谷さんのお宅にありまして、それでその電話では自分は原という者だか正美君のことで主人と会いたい、代理人では絶対困る、正美君のランドセルと上ばきぞうり袋をこっちでは持っている、これを二百万円で交換するから渋谷東宝劇場前に来てもらいたい、こういう電話がかかって参りまして極秘裏捜査を進めたのでありますが、この種の犯人逮捕は非常に困難でありますし、また犯人をあまり追い込みまして、そのためにかえって誘拐された幼児に万一の危険があってはということを非常に顧慮いたしまして、捜査方針といたしましてもまず幼児を救い出すこと、これを第一の方針といたしまして、犯人逮捕はむしろあとでもよろしいと、こういう方針で臨みまして、そこでまあやむを得ず刑事をして被害者に仕立てまして東宝劇場前において犯人を待つことにいたしまして、さらに付近に刑事を張り込ませましてやったところが計画が効を奏しまして、犯人渋谷上通り大森薬局の前の路上で午後十時二十分に逮捕したのであります。でその取調べの結果、正美ちゃんが長野県におるということがはっきりいたしましたので、直ちに手配をいたしまして、無事正美君を救出することができたわけであります。  こういうようなふうに幼児誘拐事件というものは、非常に親御さんはもう当然でありますが、社会一般に非常に及ぼす影響が大きいわけでございまして、従いまして警察といたしましても、こういう誘拐事件につきましては相当な力を入れまして、早期にまず幼児を早く親御さんの手元に返すと、こういう方針捜査をいたしておるのでございます。従いまして現在御承知現行法のもとにおきまして、私どもといたしましては、捜査の面におきましては、先ほどの統計でも申しましたように、相当成果を上げる自信を持っておるわけでございまして、ただこういう犯人が少しでもなくなるということを希望しておるわけであります。そのために捜査の部面におきましても相当の力をつぎ込んで早いうちにこれを解決する、もちろんこういう事件発生をいたさないような環境を作るための活動ということは非常に大切なことと思うのでございまして、従いましてそういう意味防犯活動というものを積極的に展開をいたしますと同時に、発生をいたしました場合にはすみやかに事件を解決する、こういう方針で臨んでおるわけでございまして、従いまして、現行法のもとにおきまして、相当成果を上げ得る、こういう自信を持って目下やっておる次第でございます。
  13. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ありがとうございました。  次に都立石神井学園園長堀文次さんにお願いいたします。
  14. 堀文次

    参考人堀文次君) 東京都立養護施設石神井学園園長の堀でございます。  私ども児童福祉に携わっておる者、子供たちの幸福を守る、こういう立場の者といたしまして、特に今回幼児誘拐等の問題につきまして、国会でかかる熱心な御論議が行われますことに対して衷心実は敬意を表する次第でご.さいます。  参考人に実は御召喚を受けたのでございますが、私はこの仕事東京都の養育院仕事に従事いたしまして、ちょうど二十八年になります。主として孤児ないしは貧困な子供を養護して参ったのでございますが、いろいろ虐待の子供なんかを扱っておりますが、こういうふうな誘拐によるというふうな子供を実は扱って参ったことがございませんので、ほとんど参考になることは申し上げられないと思うのでございますが、一都民といたしまして、また特に児童専門に扱っておる者といたしまして、特に去年のトニー・谷さんのお子さん事件でございますね、アメリカ事件では私ども遠い海の外の話だと思って聞いておりましたが、身近に私どものそばであの事件が起ったときに、ほんと.うに私どもは驚くと同時に、非常に社会的に無力な子供を利用しての弱点を突くというふうな意味で、非常な私は、これは何ものよりも憎むべき犯罪だということをその当時痛感したことを覚えております。幸いにあの事件アメリカのような不幸なことにならずにお子さんがお帰りになったのでございますから、私どもしましても、御一緒に喜んだわけでございますか、そういう意味からいたしましても、これか厳罰かもし食いとめられるものでありますならば、何とかしてああいうふうな事件はぜひとも食いとめてもらいたいと、こういうことを願っておるものでございます。ただ私どもは全然その方面には、刑罰法律のことにはしろうとでございまして、またかえってあまり厳罰になると、それがまた社会的の興味を呼んで、あれするというふうなことも起りはせんかというようなことも、一応心配にもなるわけでございますが、いずれにしてもただ何らかの方法によりまして、この幼児が保護されるということを特に衷心からお願いをいたしまして、簡単でございますが終りたいと思います。
  15. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ありがとうございました。  最後に東北大学教授木村亀二さんにお願いいたします。
  16. 木村亀二

    参考人木村亀二君) 私はこの法案につきまして、大体三つの点から考えなければならんじゃないかと、こういうふうに考えております。  第一は現行刑法略取誘拐罪に対して一種の特別刑法を作ろうという趣旨でございますが、その特別刑法刑罰の点が現行刑法刑罰よりも重くなっておる。この点が一つ。  それから第二は満七歳未満の者に対して特に重い刑を規定した特別法を作るということ、これが第二でございます。  それから第三は身のしろ金その他財産上不法な利益を得ようとしてなした場合には、これが刑法の二百、二十五条、この法案の第一項に当る営利誘拐罪とみなすという規定、この点でございますが、この二つの点がこの法案中心になると、こういうふうに考えております。  まあ一般にこの略取誘拐の罪の刑についてはわが現行法は御承知通り外国立法例と比較いたしますと、非常に軽いことになっております。また昭和十五年に発表になりまして、われわれが改正刑法仮案といっております、刑法草案規定と比較しても軽いことは事実なのであります。その点からいって全体としてもう少し刑を重くしていいのではないかということが問題になるのでありますが、これは外国立法例でも特にアメリカでは死刑規定した規定のあることは御存じ通りでございますし、ドイツの二百三十九条、参考資料には九条と書いてありますが、九条のAがほんとうなんでございますが、これも三年以上の重懲役ということで、比較的重くなっているわけです。ところがこの点についてアメリカでは御存じのリンドバーグの事件がありまして、これを機会にして各州とも非常に重い刑を規定しておりまして、この死刑をやめるかどうかということについて非常に議論があるわけであります。ところがいろいろの統計を見ますと、子供誘拐規定における死刑というものは絶対に置きたいという世論が非常に強い。これはアメリカ式の例の大げさな犯罪が非常に行われるという点を考慮した一種の一般予防的な見地から、そういうふうな意見が出ているのでございますが、ドイツの刑法の二百三十九条Aというのは、これは一九三六年のナチスのヒトラーの立法でございまして、やはりリンドバーグ事件によく似た事件がドイツにもございまして、それがきっかけとなってドイツにも重い刑として法律にでき上ったわけでございますが、このナチス的な立法は、終戦後連合軍の管理委員会でほとんどみな削ってしまったのですが、この二百二十九条のAその他若干残っておりますが、しかしこれもちょっと私などの考えではきわもの的な立法という性質が相当強い。そういうふうな意味外国立法例が刑を重くしておるということは、必ずしも日本の略取誘拐罪規定を重くしなければならないということについての非常に重要な参考に私はならないのじゃないかと、こういうふうに考えております。  それから略取誘拐罪規定は何を保護しておるのかという点について議論がありまして、特に二百二十四条の規定で、被拐取者たる未成年者の自由を保護しておるのだという考え方と、それから監督者または保護者の監督保護の権利を保護しておるのだという考え方があるのでありまして、この監督保護の権利を保護しておるという解釈は、二百二十四条の規定の解釈としては成り立つのですが、こうした立法形式をとっておるのは御存じ通りフランス刑法規定からきておるわけなんです。しかし刑法全体の体系的な地位から見ますと、これはやはり自由に対する保護をなした規定であることは明らかなのであります。ところが、自由と申しましても行動の自由ですが、行動の自由を侵害する行為についての処罰規定は、略取誘拐の罪のほかには二百二十条の逮捕監禁罪、それから二百二十二条の脅迫罪、二百二十三条の強要罪、こういうふうな規定があるのですが、これらの規定を見ますと、二百二十二条の脅迫罪は二年以下の懲役ということになっておりますし、二百二十三条の強要罪は三年以下の懲役、それから二百二十条の逮捕監禁罪は三月以上五年以下の懲役となっておりますので、略取誘拐罪の二百二十四条の規定も三月以上五年以下の懲役ということになっており、大体逮捕監禁罪と同じ方針のもとに規定せられた刑罰だと考えなければならないのであります。そういうふうに自由を侵害する犯罪刑罰の全体から見ますと、どうも略取誘拐罪の特殊の場合だけをこれ以上に重く罰するということは、刑のバランスが少くとも現行法の建前上破れるということが一つ問題になるわけです。それでこの委員会には前に法務省の専門家の委員も出ておりましたが、やはり部分的に特別法によって刑を重くするということにしても、やはり全体の刑法の立場から考えて、あまり刑罰がある特殊の点について不当に重くなっておるというふうなことに対しては、やはり刑法というものは社会の秩序を維持するために非常に公平なものでなければならないというふうな見地から考えなければならない点が残されておるので、特に特別法をもって重くしなければならないという点については、私は賛成いたしかねるのであります。  それから第二の、七才未満の幼児に対する略取誘拐の罪の二百二十四条以下の規定の刑を特に重くするということは、犯罪の成立の方面から見ますと、若干問題があるわけなのです。それは七才未満の者に対する刑が重くなって、七才以上の者に対する刑が軽いのは一体どういうふうな理由なのか、それは七才未満の者については特別に保護しなければならないという事情があるのはあるのでございますが、しかしこれを特別の規定によって、そうした重い刑を規定するということが立法技術的に見ていいかどうかということは、私は問題になると思うのであります。  それからもう一つは、もしこうした特別法を作りまして七才未満の者に対する刑を重くいたしますと、これは刑が加重せられるわけですから、こうした重い犯罪を犯す場合には、その犯罪人が七才未満の者であるという点についての認識がなければならない、犯意がなければならぬ。ところが、その犯意というものについて私はその証明が非常にむずかしくなるのではないかと思う。のみならずもしこうした法律を知って犯罪を犯すというふうな悪質な犯罪人が現われて来ますと、実は自分は七才未満だと思わなかった、八才だと思った、七才以上だと思ったというふうなことになって、結局、重い刑の処罰をしようとする目的が達せられないというふうな結果にもなりかねない。おそらくは弁護人がそちらに付いていたら、きっと自分は七才未満だと思った、知らなかったと言えと言って大いにけしかけるのではないか。そうすると重く罰しようとしてかえって軽い規定の適用というようなことになると、やはりおもしろくない結果になるのではなかろうか。この点を解釈論として懸念しておるわけであります。  それからこの略取誘拐の主体が、たとえば離れておる親が、父親のもとにおる子供、母親のもとにおる子供を母親なり父親が誘拐して連れて来たというような場合には、やはり刑を軽くしなければならない。これは刑の短期が軽いからその点で考慮できるじゃないかということも言えるわけですが、そうした小さい子供に対する場合、それからまたその子供の親、またはその他の親戚がなしたという場合は、いろいろの情状で重く判断したり、軽く判断しなければならないということもあり得るわけですから、立法技術的に見れば特に七才未満の者を取り出して、それに対する刑を重くするというよりも、全体として略取誘拐に関する罪の長期をもう少し重くして、そうしてそれぞれの具体的な事件について適当に裁判所において裁量するというふうな、そういうふうな立法方針であれば、必ずしも私は不賛成ではないという気持でおるわけなのであります。しかしそれは今申しましたように、やはり刑法全体の刑罰体系の改正というふうな場合にやるよりほかないのじゃないだろうか。この点について改正刑法仮案以来、刑法並びに監獄法改正委員会というものは廃止されて、継続しておりませんが、刑法の改正というのは終戦後、昭和二十二年に憲法の民主主義的の精神に基いた民主主義的な政治的な方面の改正があり、その後執行猶予に関する改正が三回ほど行われて、執行猶予の部分だけは非常によくできておりますが、全体としては日本の刑法は今日世界的に見て実に古くさい古色蒼然たるもので、改正しなければならない点がずいぶんあるわけなんです。それについて私はむしろこの法務委員会の方が早く改正しなければならぬというふうな意見をお出しいただいた方が、かえって特別法案によって目的とされておるような意図が十分に達せられる機会が多いのではないかという考えを持っております。  これは少し余談になるかもしれませんが、刑法は実にどこの国に比べても、わが刑法はできた当時は新刑法だというので非常にいいものがありましたし、規定の個々の点についてはいいところもあるのですが、もう明治四十年以来非常に長い間経過して、たとえば保安処分の規定がないとか、あるいは常習累犯者に対する規定がないといったように、実に刑事政策的な点からいって思想が古くなっているわけです。そういうふうな意味刑法改正事業こそ私は緊急な問題だというふうに考えておるわけなのであります。  それから第二項、第三項の身のしろ金その他財産上の不法の利益を供せしめる目的をもって、幼児を略取し誘拐したという場合に、刑法の二百二十五条の営利誘拐罪とみなすという規定でございますけれども、これは営利誘拐罪のその営利目的というのはどういうふうなものかについては、すでに法務省の代表者が説明申し上げているようですが、これについては実は解釈が非常に分れまして、通説と申しますか、比較的多い一方の説では、被拐取者、すなわち被害者を直接に利用してそうして営利をはかる、たとえば売りとばすとか、あるいはまた前借金を取って長期の契約で他人にこれを供させるとかいうふうな場合は、普通考えられておるわけですが、しかしその他非常に広く解釈いたしまして、こうした身のしろ金を取るという目的の場合も、やはり営利目的だという解釈も成り立つわけなのであります。これは今お話に出ましたトニー・谷のむすこさんの事件についての東京地方裁判所の判例の中には、そういう広い解釈をとっておるのであります。ところがこの広い解釈についてもちょっと問題があるのは、こうした身のしろ金その他の財産上不法の利益を得る目的で——目的さえあればいいのですが、——目的略取誘拐をしたという行為は、これは他面から申しますと、恐喝罪の予備になるわけです。二百四十九条の恐喝罪の予備になるわけです。ところが恐喝罪では予備を罰していない。この予備を罰していないのに、これが二百二十五条の中にひそかに予備を罰する規定が入っていたということになるとちょっとおかしい。予備を罰しないのだから、たとえば二百二十五条の営利誘拐罪の中に入るとしても、これは二百四十九条の規定趣旨からして除外されてしかるべきだという議論が立ち得るわけなのであります。その点が学説の分れておる根拠になっておるわけですが、私は二百二十五条の営利目的は広く解釈していいという考えを持っておるわけなんであります。従ってその意味からいたしますと、この第二項の規定は、それに続いて第二項も同じように問題になるわけですが、むしろ解釈にまかしておいた方がいいのじゃないか。こうした事件が頻発するに従って私は解釈も時代の要求に従って動くという点から見て、すでに東京地裁の判例もできておりますから、解釈にまかしておいてよいのではなかろうかという考えを持っておるわけです。  それからもう一つ「身代金その他の財産上不法の利益」となっておりますが、身のしろ金を取るということが普通でございましょうが、身のしろ金は刑法上の言葉で申しますと、財物の中のお金というその一部分ですね。「身代金その他の」というと、身のしろ金以外の財産上の利益で、お金以外の財物をよこせというような場合には、ここに入らないというので、ちょっとこの規定の書き方としては、不備じゃなかろうか。それでありますからむしろこういう規定を設けるのだとすれば、財物またはその他の財産上の利益を取得しようとする目的でというふうにでも書き直せば、少しはっきりいたしますが、今申した通り営利目的の中にこの目的も入るという解釈をとれば、特にこういうような規定を設ける必要はない。そこでこれは今申しましたように、恐喝罪の予備の行為に当るわけですが、もし身のしろ金その他の財物または財産上の利益を得るために恐喝行為、すなわち手紙をやるとか、脅迫状をやるというようなことになれば、そのことだけで脅迫罪の未遂になりますし、それからお金をもらえば恐喝罪になる、殺せば殺人罪になるというので、現行刑法規定で十分私はまかなえる。凶悪なる犯罪について刑を重くしなくても、恐喝罪は十年以下、殺人罪は御存じ通り死刑まで、少くとも今日の現行法ではやり得るというのでありますから、十分まかなえるという考えを持っておるので、この第二項、第三項についても私は特に必要はない。こういうふうに考えますが、どうもはなはだ申しわけないのですが、この特別法案を認めるということは、今日の刑法の運用の上からいっても、また立法技術的に見ても、私はあまり適当ではないのではなかろうかという考えを持っておるのであります。しかしそのことは、むろん被害者たる両親あるいは子供に対するその悪質な行為に対して、決して私は寛大であるという意味ではないので、何とかこれはなくさなければならないという点は、皆さんと同じ意見で、数年前に仙台でやはりこうした事件がございまして、男の子でしたが、殺してしまってから金を出せというので、だいぶ大きな事件がございましたし、昭和十四年でしたか、東京の松坂屋で小学校の先生の奥さんが小さい赤ちゃんを連れて買い物をしておる。そのときにどっかのちゃんとした奥さんが、私が抱いていてやるから買い物しなさいと言うので、それで買い物してこちらに帰ったときには、もうその女がいなかったという事件でありますが、従来非常にひどい行為が日本でもあったわけなんでございまして、その都度に私も感想的な意味でいろいろ書いたことがございますが、こうした.悪質な犯罪をなくするということは、一体刑を重くして、そして処罰する、悪質犯罪を阻止することができるかという点でございますが、犯人というやつは、これは御存じ通りに、少し精神的におかしいやつもあるわけなんです。例のトニー・谷さんの弁護人も心神耗弱論をやっておりますが、どうも少しおかしい。刑法規定を見て、こういうような結果になるといって、犯罪を計画的にやる犯人はないので、大ていの犯人は、つかまらないだろう、大丈夫だろう、こういうような気持でやっている。それで従って、つかまらないと思うのですから、重い刑が課せられるかどうかということは念頭に全然ない、うまく行くだろう、こう考えておる。ここに犯人の警戒心がどっか落ちておる。ところが、刑法規定を見て、こんな重い刑で罰せられるということが、理屈がわかる人だったら、初めから犯罪をなさない。  それでは、犯罪を阻止する方法は、何が最も確実かというと、やはり警察ないし検察の捜査を確実にやって、犯罪を犯せば必ず発覚するという確信を一般民衆に植え付けるということが根本になるのですから、この点、警視庁刑事部長さんも十分に確信のあるお話をなされておりましたが、捜査面を確実にやって、捜査の効果をあげるということこそ、今日私は一番緊急な問題じゃなかろうか、こういうふうに考えております。従ってまた、刑罰を重くしたからといって、犯人が悪質行為に出ないとか、一般予防に効果があるとかいう点では、それほど重要な問題じゃなかろうというふうに考えております。いずれにしましても、全体といたしましては、私は現行刑法の運用によって、十分とは言いませんが、この規定がなくても、この規定目的とするだけの効果をあげ得るという信念を持っております。ただし、刑をもう少し重くしてもいいんじゃないかという考えはございますが、これは、刑法全体の改正を非常に早い機会にやって、その際にさらに考慮してやっても十分間に合うんじゃないかというふうな意見を持っております。  簡単でございますが、私の意見を終ります。
  17. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ありがとうございました。以上で、参考人方々からの御意見を承わったわけでございますが、御質疑がございましたら、御発言をお願いいたします。
  18. 中山福藏

    中山福藏君 まず木村参考人にお伺いしたい。私は、一つの例を引いてお尋ねしたいと思うのですが、実は私は、阪大の人類学教室の解剖室に参りましたところが、人間のからだを魚を料理するがごとく、メスで簡単に十五分くらいで解剖するのです。しかも、その解剖する態度を見ておりますというと、何らのわだかまりもなく、さっさとやってのける。そこに何らの死亡者に対する同情とか何とかという念は起っていない、医者ですから。私は、刑法学者の立場というものは、ある意味においてそういうものじゃないかと思います。私は、木村先生が大学の教授としておいでになりますが、単に刑法仮草案という問題でこの問題というものはまかなえるんじゃないか。あるいは現行刑法の拡張解釈適用によってその不備というものを補われるものじゃないかというふうな理論的な立場は、ちょうど人体に対する解剖者のような立場で、すこぶる冷淡な、冷やかな御批評じゃないかと私は考えております。私どもは生きた人間を取り扱っておる。生きた社会というものに対して、いかなる予防法を講じ、いかなる刑の教育的な目的を達するかということを始終詮議しておるわけなんです。ですから、単に理論だけで、この生きた世の中というものをまかなえるということはできぬのじゃないかという感じをもって、この法律案を提案したわけでございます。幸いにして、最後にもう少し幼児に関する限りは刑を重くしてもいいんじゃないかというおぼしめしでございまして、この点はうなずけるわけですが、御承知通りに、先生の手元にも、御参考専門員の方から回っていると思いますが、スペインとか、あるいはフランス、あるいはことに明確に年を書いております外国の例もあるようですが、七才未満という言葉も使っておるように見えておりますが、こういうふうな特殊の無能力者に対する犯罪行為をやる人間に対しては、相当これを重く処罰するということは、やはりそういう事件を起さないというところにあるのではないかという感じを持つのであります。御承知のように、破防法ができまするときは、非常な攻撃を受けた。そんなものをこしらえて何になるか、今の刑法でたくさんだと言うて攻撃を受けましたが、作ってみたところが、火炎びんが飛ばないようになった、暴力行為というものはほとんどあとを断った。法律を作って、人を処罰するという意味だけでは私はないと思う。いわゆる法律のない社会を作ることが法律目的だ、刑罰のない社会を作るというのが私は刑罰最後の目的だと、こう考えている。従って、重いとか軽いとかいうことじゃなくて、現在ややもすれば、こういう幼児誘拐がひんぴんとして行われておりますような際に、われわれはいかなる法律をもってこれに対処すべきか。現在の刑法があって、しかもなおかつ、今日それが行われるということは、何らかそこに顧みる反省の余地はないかということをつまり考えておるわけでございますが、そういう点について、先生はどういうふうなお考えを持っていらっしゃいますでしょうか。一ぺん御意見を承わっておきたいと思います。
  19. 木村亀二

    参考人木村亀二君) 御返事いたします。法律学費は生きた社会がわからないと御非難を受けましたが、われわれは、やはり生きた社会をどういうふうに明るい社会にしようかということを考えておるわけなのでございますが、しかし愛情というものは、やはり技術というものがありまして、法理というのは、何と申しますか、非常に手のこんだ技術で、しかも、これをうまく運用するかしないか、いい法律を作るか作らないかということによって、イェーリングというドイツの有名な学者が申しました通り、両刃の剣のようなもので、身を切るということもあるわけなのです。身を切らずに、適当に切るべきものを切るというようにことを運ばしめるためには、どうしても単に情熱、愛情、かわいそうだというだけではいけない。そのかわいそうな状態を起さないためには、やはり技術というものが必要です。その技術的な見地から私は申し上げたので、決して愛情がないという、あるいはまた社会に対して盲目だという考えはないわけです。解剖学の先生が人間を切る場合に、これはかわいそうだとか、これはきれいな女だというような気持で切ったら、それこそ私は学問は発達しないのじゃないか。それと同じような要素がわれわれの間にもあるのだろうと思いますが、その点は誤解のないように、一つお願い申し上げたいと思っております。  それからスペインの法律にあるということは、参考資料で拝見いたしましたが、私も存じておりますが、スペインという国は、われわれが参考とするような立法を持った国ではない。私はこういうような意味で、参考にする必要はない。それからフランス刑法も伺いましたが、これもやはり何度も改正いたしております。一八一〇年にナポレオンが作った刑法、こんな古い法律は非常に穴だらけで、これも私は参考にする必要はない。そうするとやはりドイツの刑法なんか、今一番よく発達しております。アメリカの立法というものは実にむらで、アメリカに行ってごらんになったらすぐにわかりますが、アメリカの法は、一方では非常に発達しておる。同時に他方では、実に、何と申しますか、野蛮と申しますか、とにかくニューヨークのまん中に行っても、ちゃんとした人が手鼻をかんでいるという、ああいうふうな文明で、どうもアメリカという所は、どうにもならん、どうにもならないが、一応これは考えてみたわけであります。わが国はやはりいいところはとらなければならんが、たまたまスペインというように、文化的にあまり大した国でないところの立法が七年未満というふうに書いてあるからといって、私は、特にそれを取り入れて、そうした規定を設けなければならぬというほどのものじゃないのじゃなかろうかという考えを持っておるわけであります。これはしかし、価値判断の相違というふうにおとりになるかもしれませんが、そういうような意味で、やはり一番進歩した、われわれの範とすべき現代の文化国家の立法というものを参考にして考えるというのが、私どもが平素考えておるところでございまして、その点も、そういうような意味で、私は特にスペインの立法にまねする必要はないという考えを持っている次第でございます。そういうふうな意味で、どうもその技術の面で、この特別法をこしらえますと、立法技術としてはちょっとまずいのじゃなかろうかと思いますし、また裁判所の運営に非常に困るという点が、私の懸念しておるところなのでございます。ただ全体として、たとえば新憲法の十三条の個人尊重の原則に従いまして、昭和二十二年の改正には、名誉毀損罪の刑を重くしたり、それからまた二百八条の単純暴行の規定について親告罪をはずしたというようなことがありましたが、あの程度の考慮を加えた全面的な改正、特に自由あるいは人格等の保護というような面を、考慮した改正を急いだ方が早道ではないかという考えを持っている次第でございます。
  20. 中山福藏

    中山福藏君 先生と討論しようと思っているのではないのですよ。あなたの御意見をお尋ねしているわけですが、今、そのスペインにたまたま七才という字が出ておったのですが、それは後進国だから参考にする必要はない。これは私もそう思います。だけれども、一応世界のうちで、未成年者ということをもってすべての国が取扱っている七才未満ということは、たまたまこの文字で現わしている、しかも未成年者という言葉の中には七才の者も含まれている。ニューヨーク州の法律しかり、ドイツしかり、フランスしかりだと私は考えている。だから、たまたま七才というのを、スペインの法律に書いてあるからといって攻撃の材料にならぬ。しかも未成年者という者の中に幼児が含まれて、その中にそれに対する処罰の方法まできまっている。この参考書類の中に、刑の適用さるべきところの範囲がきまっているということは、先生御承知通りであります。従ってそういうことは、これは私は赤ん坊からわれわれは大きな教訓を受けることすらあるので、いかなる国でもいいものはいい。かりに野蛮国であっても、このごろ、中共というものは実におくれていて、世界中ばかにしておったが、四、五年して独立して立派な法律を作ったといってずいぶんさわいだ。だから私は、そういうことは単に感情的な問題であって、法律の作成に当りましては、そういうことは何も考える必要はないのじゃないかと思います。ことにトニー・谷の裁判に際しましては、検察庁側は、刑法二百二十五条を適用しなければならぬと言ってさわいでおった。これは八年の求刑をしているようですね。それから正木亮氏、弁護士は二百二十四条でないと、これは適用すべきものじゃないという両立した議論が行われておったようです、この法廷では。この幼児誘拐等処罰法案のねらいどころは、この営利という言葉が非常にあいまいだというわけで、営利目的をもって云々ということにこれをはっきり明確にさせようというだけのことなんで、そこがねらいどころなんです。それで、この間のトニー・谷事件の裁判に当りましても、これは、裁判所側と検察側と、非常に法律の解釈を異にして迷っておって、結局裁判は多分四年ぐらいだったと思いますが、検察庁という法律専門家の寄っておるところでも、八年求刑できるという二百二十五条の適用を当然とらなければならぬと思っておる。ところが、かつて検事であって、今弁護士である正木さんは、それは五年以上の刑に当るものじゃないということを主張しておる。私どもは、そういう不明確なところを明確にするということは、やはり立法作業に携わっておりまする委員としては当然の責務だと、こういうふうに考えておる。だから、先ほど拡張解釈というものは時代とともに移行するんだというおぼしめしでもあったようでございますが、そういうふうな不鮮明なものを移行さしては困るという私は考えを持って、ここを明確にしなければならぬ、営利の点をですね。だから、そういう気持でこれを出しておるわけでございますが、いかがなものでございましょうか、まあ専門家でありまする先生に一つ、もう一ぺんお尋ねして、御意見を承わってみたい。
  21. 木村亀二

    参考人木村亀二君) お答え申し上げます。今のトニー・谷事件の検察側の求刑と、それから正木弁護士の意見が違った。これは私は、弁護士ができるだけ軽い刑を主張するということは、これはもう当然だと、私も弁護士でしたら、あるいはそうやるかもしれないと思うんですが、従って、これは結局これだけの幅がある。二百二十五条を適用すべきか、二百二十四条を適用すべきかという点について幅がある。その幅の範囲内の議論であったのではなかろうか。正木君と私は三十年来の友人ですが、まだ聞いたことはないんですが、こういうふうな意味で幅があったんじゃないか。それから、今の解釈が動くというのはおかしいと、こういうふうにお考えでござ.いますが、これはどうも、刑法のように比較的はっきりしていなければならない法律でも動いておるのですね。たとえば、私調べましたところでは、この刑法の百七十五条のわいせつ物陳列罪というものが、チャタレー事件に関連した規定ですが、あれは大正の終りごろでしたか、昭和の初めの判例ですが、映写機でわいせつ映画を映写したのが、これはわいせつ物陳列罪に当る、陳列というと、何か物の上で見せなければならないのに、向うへ映写して、そうして見せたというだけで、この陳列になるというふうなことを判例上認めておるわけですが、これなんかもやはり変っておるのですね。この法律ができたころには、映画なんてほとんどなかったわけなんです。それからもう一つは、二百二十条の逮捕監禁罪の監禁罪ですが、これも明治四十年ごろには、ほとんど自動車はなかったんですが、その後自動車が非常に多く用いられるようになって、自動車へ乗ってどこまで行け、おろしてくれというのに、おろさずにぐるぐる回った、これは外へ出られなかったんだから、監禁罪だというような判例がございますが、そういうふうな意味で、やっぱり新しい事件とともに、刑法はまあ類推解釈をしてはいけないが、しかしある程度の、その時勢の要求に応ずるだけの、何と言いますか、伸縮性を持っていると思うのです。最近のトニー・谷の判例について議論しておりますように、二百二十五条の営利目的というのは明確でないが、しかしだんだん明確になりつつある。そういうような意味で、もうすでに判例上、下級審の判例であるが、そうした見解が出ておるというところから見ると、私は、特にそうした内容の説明的な規定を設ける必要はないんじゃなかろうかと考えるものでございます。
  22. 中山福藏

    中山福藏君 一つ朝日新聞の方にお尋ねいたしますが、一千何、百件という、親子別々に暮しておるものがあったと言われるのですが、そのうち子供誘拐されたのと、単に行方不明になったというのと、比率はどういうふうになっておりますでしょうか、その点おわかりになりませんでしょうか。
  23. 青木営治

    参考人青木営治君) それは、施設を回りましての何でございますが、児童台帳には、そういう何がはっきりしていません。
  24. 小林亦治

    ○小林亦治君 木村教授に伺うのですが、今御説明の、この3の場合の「身代金その他財産上不法の利益」、これは多分わが判例においては、貞操などいうものは財産上不法の利益の中に入れておるのじゃないかと思うのですが、それを改正仮案には、判例で認めておるいわば婦人の貞操のごときものを「財滝上不法の利益」と、別の項目で規定してあるのか、それから外国の立法ではどういうふうになっておるのか、それを伺いたいと思います。
  25. 木村亀二

    参考人木村亀二君) 貞操は財産上不法の利益に入っているというのは、判例、学説、だれも認めておりません。
  26. 小林亦治

    ○小林亦治君 認めていないのですか。
  27. 木村亀二

    参考人木村亀二君) あれは、わいろの規定と御混同じゃないですか。
  28. 小林亦治

    ○小林亦治君 そうでしたか。そうしますると、やはり今後の立法例の場合いかがでしょうか。現実の金銭、それにかわる財産上の利益に、さらに貞操というようなものを加える必要はないかどうか、そういうような点を伺いたかったのです。
  29. 木村亀二

    参考人木村亀二君) それは、二百二十五条に営利目的、わいせつの目的というのがあるのです。それに入るわけですから、別に問題にはならないはずです。
  30. 小林亦治

    ○小林亦治君 そうでしょうか。たとえば幼児誘拐して金をよこせ、あるいは金にかわる何かをよこせ、母親の貞操を要求する場合なきにしもあらず、これは悪人のやることですから、そういう場合も考えられないでしょうか、いかがでございましょうか。改正仮案の中には、確かに新らしい項目として貞操は加わったように記憶しておりますが、私の誤解でしょうか。
  31. 木村亀二

    参考人木村亀二君) 十分私その点調べておりませんが、どうも刑法学者の常識としてはちょっと考えられませんが、しかし、まあ貞操をよこせということはあり得るかもしれません。しかし貞操をよこした場合、これは恐喝罰の問題といたしますと、財産犯罪でございますから、貞操をだまして承諾をさせても、それはそれだけでは男は罰せられない。これは日本の刑法にそこに穴があるわけですね。そういう点がありますが、十分研究して一おりません。
  32. 赤松常子

    ○赤松常子君 ちょっと朝日の方にお尋ねしたいのでございますが、それは本問題とちょっとずれますのですが、親探しの運動をなすっていることは、私非常に嬉しく思う次第です。これは朝日が中心でなすっておられますが、私、せんだってちょっと地方でいろいろ、各新聞社の意識と申しますか、対立的な立場などで、せっかく朝日新聞がこういうお仕事をなさいますのに、それ以外の新聞社で少しけちをつけるといいますか、そういう投書も載せていたのを見た次第であります。それは、せっかく不幸な小供たちの、自分の身の上を上手に、世間に知られないように、温く保護されていた人々が写真に出ますと、ああ、あの子はみなしごであったのだ、捨て子であったのだというような非難が周囲から起きて、せっかくそういうことが知れなかったのに、あの新聞に出たために知れて、非常に肩身狭く思うというようなことが載せられて、あまりそういう新聞に載せないようにという意見も出ておることを知っているのですが、しかしまあどういうお仕事をするにしても、プラスが大きくございましても、それに付属するマイナスの面も少し出るということは、どういう場合でも予想されるわけですが、そういうことに対して、新聞社として思いやりをどういうふうになすっているのでしょうか。もちろんこれは、施設の人が朝晩してあげなければならないことでしょうが、その辺のお心づかいはどうでございましょうか。
  33. 青木営治

    参考人青木営治君) お答えいたします。私たちが取材に当った最初のなんとしまして、今仰せになったようなことを非常に心配しましたのです。それで、まず取材に当りまして、その施設に伺って、その施設の長である園長なら園長さんにお会いしまして、こういう趣旨でやりたいのだが、お宅でそういう子供さんがありますか、そういうことからまあ伺って、園長さん限りでやる場合のなんとしては、物心のつかない子供さんについては、園長さん限りにおいて、この子供さんは出していただければけっこうですというようなことで、出されました。それから物心のついている方については、私たちとしましては、できるだけその子供さんにお会いしまして、それで、こういうふうにして新聞に出して、君の経歴なんかをこういうふうに出すのだが、それでもお父さんお母さんを探してもらいたいかと、そういうことを聞きまして、それで、それの返事を待ってわれわれはその子供さんの厚真をそこでとって、それから経歴を児童台帳から、いろいろ聞いて写すわけでございます。それで、紙面に載せる場合としまして、まあたとえば捨て子の場合ですと、捨て子という言葉を全部避けましたのです。たとえば一人ぼっちにされたとか、あるいは置き去りにされたとかいうような言葉で、なるべく捨て子という言葉は避けました。そのことを紙面に出しまして、そのあと、私なんかは施設電話をかけまして、その新聞に出た反響を、子供さんの動きなんかを聞きましたのです。そうすると、かえって新聞に出たために喜んでいる子供さんもいらっしゃるわけです。というのは、学校に行って、今おっしゃるような、人に親なしごだとかいうようなことを言われはしないかと思いまして、われわれとしては非常に心配したのですけれども、そういうことは、私今初めて耳にしたようなことでございますが、中にはそういうなにがあったかとも思いますけれども、そういう注意を払ってやっております。  それから、子供さんの中で、特にいやだという子供さんもいますから、そういうなにについては、全然取材しておりません。たとえば、私なんかを捨てたというようなお父さんお母さんには会いたくないというように、物心のついた子供さんははっきり言っております。そういう方については全然取材しておりません。だから、今まで千六十七名載せましたけれども、これは全部の子供さんではありません。もちろん、向うから希望された子供さん、あるいは園長さんの方から出された子供さんだけでございますから、ほんの一部でございます。
  34. 赤松常子

    ○赤松常子君 わかりました。
  35. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ちょっと、今のことに関連して青木さんにお尋ねしたいのですが、大へん朝日新聞がこうした連動を推進して下さったことに対して、私も衷心から敬意を表しているわけですが、いろいろ御運動の結果、解決のついた方もあるし、解決がつかない、まあいわば親の方が出て来ないと、こういうような問題がたくさんあるようですが、お取扱いになってみて、なぜ親の方が知っておりながら申し出てこないのか、そういうような原因について把握していらっしゃれば、この際お尋ねをしたいと思います。
  36. 青木営治

    参考人青木営治君) 今まで、親とか、その肉身の関係がわかりましたのを申しますと、大体私の記憶だけでございますが、これは戦災による孤児といいますか、これと引き揚げと、それから純然たるその後の迷子、それから捨て子、そういうような四つに区分されますが、そのうちの捨て子といった場合のなには、大体において見つかっておりません。それから見つかっても、親の方から名乗り出てきていないようでございます。それは一つは遺棄罪が成り立つんじゃないかと、子供を捨てるお父さんお母さんというか、そういう方はそういうことを承知の上でというわけではないだろうと思いますけれども、出て来たところで逮捕状を執行されるというようなことになると大へんなことになると思いますか、そういうことも考えられているんじゃないかと思います。  また、捨てるには捨てるだけの何か動機があったろうと思いますけれども、今親子対面したとか、あるいは引き取られていった、そういう中には、大体戦災によるものと引き揚げ、それから純然たる迷子といったようなところでございます。そして捨て子の場合は、大体においてありません。
  37. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ありがとうございます。そうすると、遺棄罪というような罪名がかぶされることを恐れて出て来ないというおそれがあるということで、これは大へん参考になる御意見でございまして、ありがとうございました。
  38. 中山福藏

    中山福藏君 警視庁の方、小杉さんに一つお尋ねいたします。いかがですかね、捜査面を確実にやればいいということだったけれども、近ごろだんだん幼児誘拐がふえるというのは、捜査面が何でございますか。十分に行き渡っておってもそういう結果になるという、これは警視庁管内のことしかわからぬだろうと思いますけれども、全国的にもし御存じであれば漏らしていただきたい、かように考えます。
  39. 小杉平一

    参考人小杉平一君) 私、実は全国的のことをよく調べてこなかったのでございますが、警視庁管内のものは先ほど申し上げました通りでございまして、特にふえてきておるというふうには言えないのでございます。もちろん、安定をしておりました戦前のころからみれば、これは数からみれば、少しはふえておると思うのでございますけれども、従いまして、私どもとしましては、そういう誘拐事件を早く捜査面で解決するということが、一番今後発生ことするを防止する唯一の方法、唯一というと大げさでございますが、一つの有力な方法ではないか、もちろん、こういう誘拐発生しました場合に、近ごろは、以前と異なりまして、捜査上から見ましても、割合に捜査の面に機動性が出て参っておるわけでございます。国会の御協力によりまして、それに必要な予算等もちょうだいをいたしまして、割合に機動性が出ておりますために、割合に早くその申告がある、あるいは誘拐されたという事実が早く発見されますれば、これに対応する措置が割合に以前からみるとスピードが加わっておるのでございます。問題は、一体誘拐されたものやら、あるいは家出したものやら、それがわからない場合があるわけなんであります。従いまして、お子さんがいなくなったということになりますと、果して家出、家出といいますか、自発的な意思でうちへ帰って来ないか、あるいは途中で何か不意の事故があって、そうして見えなくなっておるのか、あるいは誘拐されたものであるか、これを見きわめることが一番大切なことなのでございますが、その点が、あとになってみて、どうも誘拐らしい、こういうことになって、スタート自身がおそいという場合には、非常に捜査が困難をし、それだけ困難するわけでございますが、しかしながら、ただいまのところ、そのために検挙の上において、捜査の上において非常に御迷惑をかけておるということは、大体ないつもりでおる、こういう意味を申し上げたわけでございます。
  40. 中山福藏

    中山福藏君 私は、犯罪が起きて、幼児誘拐されて探していただくことに対しては、その労苦に対しては多大の感謝をいたします、国民の一員といたしまして……。ところが私は、誘拐されない社会を作らなければならぬ、こう考えております。ここに御参考に私は申し上げますが、昨年トニー・谷の子供誘拐されて、私の手元にも十五、六件集まっております。六才から四才までの子供が、大阪だけですが、それだけ誘拐されておる。それで刑法というものがありながら、一向それに対して何らの反響がない。そんな法律があるということすらも忘れて、どんどんやられておる。これは昭和三十一年の二月二十三日のできごとなんですが、「白昼・神戸で幼児狙わる」というのがあるのです。神戸葺合区脇ノ浜町三ノ二、相互タクシー運転手佐藤正造さん方の前の道のところで、長女の真知子ちゃんという四つの子が遊んでいたところが、人夫風の男がそれを小脇に引っかかえて逃げるところをつかまった。これは白昼、二月二十三日、先々月なんです。先ほど木村教授が、刑法があればまかなえるとおっしゃったけれども、近ごろは、刑法があっても一向まかなわれておらない。自動車なんか古くなったら色あげをする。青いものを赤く塗ったらそれだけ感じがよくなる。法律のきき目というものも、私はそこに着眼しなければならぬという意見を持っておる。だからあなたにお尋ねするのは、法律をこしらえた方がいいかどうか。幼児という特殊な可憐な子供を擁護するために、法律を色あげをするというような意味合いにおいての特殊な、いわゆる保護の規定をこしらえるということが、犯罪が起きる前に予防する効果があるのじゃないか。あなたが体験者ですから、これを一つ私はお尋ねしておくわけなんです。どういうふうにお考えでしょうか。それに、実際に当面しておられる実際家として、御意見を承わっておきたい。
  41. 小杉平一

    参考人小杉平一君) 私は、先ほどから問題になっておりますトニー谷さんの事件捜査本部長としてやってみまして、いろいろ感想があるわけでございますが、どうも誘拐なんかがありますというと、もちろん社会一般はこれに同情をして、親御さんにも同情する、子供にも同情する、これがまあ非常な同情となって現われて、その結果が、一体捜査をする捜査当局はどうしておるのかということで、非常な激励を受けたわけでありますけれども、しかしながら、その反面におきまして、先ほども触れましたが、非常にそういうものを傍観すると申しますか、あるいはまたこういう事件をおもしろがって、そして被害者をさらに困惑せしめ、あるいはまた捜査当局をさらに混迷せしめる、こういうような一つのヤジウマ気分と申しますか、あるいはまた少し悪質な者は、実際自分が犯人になりすまして、そうしてトニーさんのうちに電話をかけて、そうして奥さんを方々に呼び出す。ところがそこへ行ってみたところが、別に本人も来ていない。こういうような一ついたずらというよりは、むしろ何と言いますか、そういう、人の不幸を種にして、そしてあわよくば金をせしめようといったようなこういう社会の風潮と申しますか、こういう風潮が少しでもなくなり、そうしてこういう不幸な事件に対してみんなが協力して、お互いに自分たちのこととして扱っていくと、こういう気持が出て参りますれば、これは何も、先ほど中山さんがおっしゃいましたように、別に、むしろ刑罰なき社会といいますか、何も刑を重くしなくても、そういう態勢が出て参りますというと、自然に私はこういう事件を未然に防止することもできるのではないか、こういう確信を持っておるのでございます。もとよりある一つ事件、ただいま議題に供されておりますような幼児誘拐というものを大きくお取り上げになるという意味で、刑を特に重くすると、こういうことが、あるいは防犯といいますか、犯罪を起させない上において、どの程度役に立つかということになると思うのでございますが、私は結局ただいま申しましたような態勢が整うことの方が先であって、むしろ刑罰だけを重くするということは、まあこれから出てくる犯罪者の心理にどの程度の影響を与えるかということにつきましては、確信を持ってそれでは犯罪が減りますというふうには、実はそこまで申し上げる自信がないのでございます。従いまして、もちろんいろいろな施策の一環としてやられるということについては、あるいは効果があるかもしれませんけれども、どうもこの刑罰だけを重くするということによって、先ほど申されましたこの種犯罪が減るということは、どうも考えられないような気がいたすのでございます。
  42. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  43. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記を始めて下さい。
  44. 中山福藏

    中山福藏君 小田さんの子供を取られたあとの心の動きを簡単にお話して参考にさしていただきたいと思うのですが、あなたは、自分は狂える者、気違いになりたいということを新聞に発表しておられますね、あれはあなたがおっしゃったことなんですか。
  45. 小田みつえ

    参考人小田みつえ君) 気も狂わんばかりに事件当時は思いましたのですけれどもほんとうに生死もわからぬような状態なんでして、夜分ももちろんやすまれませんし、食事もいただかれませんし、子供たちにやかましく言われながら……。
  46. 中山福藏

    中山福藏君 おとうさんや兄弟の方もみんなあまりよくおやすみになれぬでしょう。
  47. 小田みつえ

    参考人小田みつえ君) はあ。
  48. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ちょっと小田さんにお尋ねいたしますが、大へん御傷心のところをおそれ入りますけれども警察当局も、地域の方も、みんながひろ子ちゃんが早く探し出せるように協力をしておって下さることはよく承知しておりますけれども、なおお母様の立場として、捜査の上に御不満な点でもあれば、この際、もっとこういうところをこうしてもらいたい、こういうようなお気持があれば、それを遠慮なくおっしゃって下さい。
  49. 小田みつえ

    参考人小田みつえ君) 私は別にそういうことは……、今の皆さんの御協力で満足しておる次第でございます。
  50. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) それではもう一つお尋ねしますが、大へん先ほどのお話の中にもいろいろな妨害、わざわざ乱すような投書がきたり、またそれで警察の方も大へん因ったと、こういうようなことを伺っておりますが、これについてどういうふうにしてもらいたいという御希望があればおっしゃっていただきたい。
  51. 小田みつえ

    参考人小田みつえ君) こういうことのないようにしていただけたら何よりもけっこうでございますのですけれども……。そういう方法でそういうことがないように、今後こういう事件のあったときに、私らと同じようなああいう脅迫めいたいたずらですか、ああいうことのないようにお願いできたらけっこうだと思います。
  52. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) もう一つ小田さんにお尋ねしたいのですけれども、もしひろ子ちゃんが出てこられて、ひろ子ちゃんを連れて行った悪者がかりに出た場合に、五年も十年も、二十年も三十年も牢屋の中に入れて置きたいという、そういう憎しみと申しましょうか、腹いせという気持はよくわかりますけれども、うんと刑罰を重くするという方が何だか胸がすっきりするというようなお気持になられるか、大へんこれは微妙な問題ですけれども、こういうような種類の犯罪に対して、刑罰をうんと重くした方がこういうことが未然に防げるのではないかなというようなお考えでもあれば、またそれと違うお考えでもあれば、その感想をお聞きしたいと思うのです。
  53. 小田みつえ

    参考人小田みつえ君) もう少し罪を重くしていただいた方がよいのではないかしらんと思いますのですけれども……。
  54. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) もう一つお尋ねしますが、重くしたらということは、大体今の法律では一番重いのが十年ということになっておりますが、それより重くしたらばこういう犯罪は出てこないのだなというふうにお考えですか。
  55. 小田みつえ

    参考人小田みつえ君) それは何とも申し上げられませんけれども……。
  56. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ありがとうございます。  それではこれに関連いたしますが、小杉さんにお尋ねしたいのですが、私も木村教授の覆われた捜査の万全を期するということがきわめて重要な問題であるという先ほどの御意見は、大へん傾聴に値する御意見だと思うのです。そうしてまた警視庁自体も非常な自信を持って捜査の万全が期されておるというように御答弁になったと思うのですが、けれどもまだまだこうした種類の問題が満足にその実をあげ得ないということは、今回の小田さんのお嬢さんの問題についても言えるのではないかと思うのですが、万全を期すために現在の機構の中で非常に不利である、これでは不満足である、こういうような点があればこの際意見を述べていただきたいと思うのです。
  57. 小杉平一

    参考人小杉平一君) 先ほど申し上げましたように、これは相当自信を持っておると申しましたけれども、しかしながら、これは必ずしも万全じゃないのでございまして、従いまして、ただいま委員長からお話のございましたように、こういう事件をやります場合に、私どもといたしまして一番頭を悩ますものは、果してどういう動機で一体誘拐が始まったのだろうか、もちろん解決してしまえば何でもないことなんですが、どういう動機で起ったのだろうかということを気にするわけでございます。と申しますのは、それによりまして犯人への到達ということが一つできるわけなのでございまして、従いましてそういうことを考えるときに、果してこれは子供を殺す気だろうか、あるいは子供を何らかのダシに使って次の手を打ってくるのではなかろうか、しかしながら、たとえ子供を殺す気ではなくても、警察犯人を追い込んで参りますというと、ついに追い込まれてしまって、最後にどたんばになって子供を殺すのじゃなかろうか、あるいはまた犯人も最後になっては死んでしまうのではなかろうか、そういうようなことを非常に絶えず心配しながら捜査をするのでございまして、従いまして、ただ普通の殺人事件や強盗事件捜査と違いまして、非常に気を使ってやらなければならない、こういう点が非常にやりにくい点なのでございます。従いまして捜査方法としましても、もちろん機動的な捜査方法もやります反面、場合によりましては、これは極端な言い方でございますが、捜査を打ち切るということもこれはあるいは一つの方便として成り立つくらいな事件内容を持っておるわけでございます。従いまして、そういう面で非常にやりにくい点と申しまするならば、今申しました犯人とのイタチごっこでございますから、そういう面でこちらの捜査をやるやり方、これに非常に難渋するということもございますが、ただ私ども一つ非常な力強さを覚えるのは、こういう事件につきましては大部分の世の中の人の非常な支持というものが背後にある、こういうことが非常な私どもといたしましての励みになると申しますか、これはどんな事件についてもそうでありますけれども、特に幼児誘拐事件につきましては、非常に心配なさっておるのは、その被害者親御さんだけじゃなくて、国民全般が心配して、どうなるだろうか、何とかして犯人をつかまえてくれればいい、あるいは幼児を返してくれればいい、こういう気持、これがわれわれに自然に映るわけでございます。従いまして、そういう映り方が強いか弱いか、こういうことを言って失礼なんでありますが、そういうこといかん、これがやはりわれわれに無言の強い力となって支援をしていただくか、あるいはその強さが弱いかということになると思うのでございます。
  58. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) もう一つそれに関連してお尋ねをしたいわけですが、ひろ子ちゃんの事件の場合も心ない投書が舞い込んで、柳の木の下にひろ子ちゃんがいるとか、十万円よこせとかいうような無情な投書が石炭箱に一ぱいも舞い込んで、お母さん気持を非常に混乱せしめる、こういう無情の涙にかきくれられる場合が非常に多いのですけれども、当局としては捜査線上でこうした妨害事件を発見した場合に、どういうような処理をされておるかということが一つと、もう一つ、民間に対する協力を求める場合に、ラジオその他の方法がとられると思いますが、時には今おっしゃるように、ある程度秘密主義に陥らざるを得ないという欠陥も出てくると思いますが、協力を求める具体的な方法、そういったような方法についてお答えをしていただきたい。
  59. 小杉平一

    参考人小杉平一君) 第一の捜査の途中でもって妨害されますいろいろな行為につきましては、これはもちろん一つの公務執行妨害行為でございますから、そういうものにつきましては別にもちろん捜査をいたしまして、こういう妨害行為を公務執行妨害として、性質によって検挙をして行くこともあり得る、もちろんそういうふうにして妨害を排除して行かなければならない、かように考えております。  それから民間に対する協力の方法でございますが、これは非常に大切なことであると思うのでございまして、もちろんこれもやり方を非常に上手にいたしませんと、やはり犯人の方もまたそれぞれの方法でこの協力態勢をこわしにかかることもあり得ると思うのであります。従いまして、たとえば誘拐されましたお子さん写真をそれぞれ言論機関、報道機関の協力を得まして、そうしてみんなの目でこういうお子さんを見た人はいないかというようなことで探すことも一つの方法でございますし、またそういう方法もとっておりますし、あるいはまたそれぞれ小さなお子さんの場合には、学校あるいはまたその周辺の方々等に対しましてのいろいろな捜査上の御協力を得ましたり、あるいはまたそういうようないろいろな方法で極力、捜査の秘密もございますが、これは捜査の秘密だけを後生大事にしておるようではとうていこういう問題は解決できないのでございまして、そういう面で、今一、二あげましたような方法をとり、まあ今後も大いに活用いたしまして、みんなの力でこれを解決していく、こういうことにさらに努力いたしたいと考えております。
  60. 藤原道子

    藤原道子君 私は小田さんに心からお見舞を申し上げます。私はあの当時ちょうど尼崎へ参りましたときに、お宅のひろ子ちゃんの問題がちょうど起った直後でございまして、瓜生市会議員も非常に御心配されて、婦人会の人たちもともども捜査申し上げるというようなことでおられましたので、一日も早く見つかるようにと念願しておりましたのに、いまだにおわかりにならないお母さんの御心中、心からお察し申し上げます。  そこで私はこの際子供施設に困難なお仕事を長く担当しておいでになる堀先生にお伺いしたいのでございますが、先生の施設の問題とはちょっとそれますけれども、いろいろ社会に不安を振りまき、さらに社会悪を犯す人の中に、相当数、精薄と申しましょうか、そういう人が多いというふうに伺っているわけなのです。ところが、精薄児童施設はございますけれども、成人に達すると、それ以後の精薄の人たちの施設がないわけなんです。これが私たちはいつも非常に悩みの種でございまして、ばかだ、ばかだと社会から迫害されることが一そう反社会的な方向へ持っていくのだから、ぜひこれらの施設がほしいということを私は常々主張し、社会労働の方で努力はいたしておるのでございますが、それがいまだに実現されないのでございます。子供施設を経常され、さらに子供の福祉をお考えいただいている堀先生の立場から、こういう施設があったならば、というようなお考えをお持ちでございましょうか、さらに、子供たちの仕合せのために、こういう精薄の人たちの将来のために、何かお考え等、ございましたら一つお聞かせを願いたいと思うことが一つ、でございます。  それから時間がございませんので、続いて小杉さんにもお伺いしたいのでございますが、社会悪を犯した者を検挙された中に、精薄と申しましょうか、というような者が、どのくらいあるか、また性格異常者というような者が相当数あるのじゃないかと思うのでございますが、そういう者のパーセンテージと申しましょうか、そういう点がおわかりでございましたらお伺いをしたい。  それからもう一つお伺したいのは、人の不幸に陥っているときに、さらにその不幸を増大するような投書であるとか、あるいはまた脅迫電話であるとか、おもしろおかしく扱うような者に、いつも私は非常に心から憎しみを感じるのでございますが、それが尼崎の問題で、警視庁ではよくおわかりにならないと思いますが、今度石炭箱に一ぱいこういうものがきたということを聞いて、それらいたずらをする者については、相当手配をされたと思うのでございますけれども、どの程度見つかったか、そうやったものが、ですね。わかったのか、それからわかった場合には、高田委員長の質問と重複するようでございますが、どういう処置をとられているかという意について、ちょっとお聞かせ願いたい。  それからいま一つは先ほど木村教授のお話もございましたが、わいせつ物陳列罪に映画をとった人もひっかかるということでございますが、今までそういう例があったのでございましょうか。今案は私売春問題の方も一生懸命やっていて、昨日も審議会でこの問題が問題になったのでございますけれども、それがこの条項にひっかかるということを私よく存じなかったものですから、それらのことについてもし御記憶がございましたらお漏らしを願いたい。
  61. 堀文次

    参考人堀文次君) 成人の精薄施設が不十分なために社会不安の一つになっている、こういう藤原先生のお話でございますが、これは私実は同感でございまして、精薄の成人は、まあ、ある意味で、そう積極的に社会不安をかもすということは割合に少いとは思いますけれども、しかし大部分精神薄弱と性格異常がまざっております。これはそういうことは十分私納得のいく事柄で、お伺いいたしまして実は思い当る節もあるのでございます。  で、これは実は児童福祉法では満二十才まで延長して施設に置くことができるのですが、それ以後施設で扱えない。そこで余裕のあるところでは、東京都の養育院なんかは、千葉県の長浦に精薄の施設と、それからいわゆる生活保護法のおとなの施設へそのまま移行していって、そして開墾なんかをやりまして、いわゆる、ある意味のまあ飼い殺しというふうな制度をとっております。これが今考えられます一番まあ最後までめんどうが見られる施設でございます。一番社会不安を私は除くのに必要なものだと思っております。従って、見晴福祉法におきましても、これはあらゆる機会にその拡張を望みまして、厚生省におきましては、特にもう児竜福祉法だけでなしに、児童だけでなしに、いわゆる精神薄弱者法というものを作って、そういうふうなコロニー的な施設を作ろうという運動が今盛んに提唱されております。これが実現されますれば、その意味からの社会不安は大へん解消されるのではなかろうか。なお性格異常者でございますね、これにりきましても、これは精神病院とそれから精薄の施設とは、ちょうど行ったり来たりしているのでございますが、これにつきましても、精神病院と、それからコロニーと、うまく運用されますれば、この二つのものにつきましては、相当私は解決がつくのじゃないかということを考えております。
  62. 小杉平一

    参考人小杉平一君) 第一点の性格異常者の数でございますが、ただいま正確な数字を持っておりませんので、はっきりしたことは申し上げかねるのでございますが、やはり犯人を検挙したりしますと、どうもこれは性格的に破綻をきたしているのではなかろうかと認められるものがままあるのでございまして、これは直ちにそれぞれ専門の医者なり鑑定施設の方に回しまして、そこで鑑定をしていただくことにしておりますが、やはり、こういう者がある程度おります。それが決して減ることはないような状態でございます。  それから第二の、人の不幸な場合に、かえってそういう場合の不幸を増大せしめるような行為でございますが、これはもう情けないと言いますか、残念なことでございますが、まあ現実にあるわけなんでございます。で、トニー・谷のときの事件でもそうでございましたが、相当の投書が参ります。私どもの方でももちろん投書でございますから、中にははっきりとした住所氏名を書いてあるのもございますし、匿名のもあるわけでございますが、しかしながらそういう投書に対しては、たとえ真偽のほどはわからないにしても、何らかの捜査の端緒になるものがあるいはあるかもしれないということで、卑近な言葉で申しますと、だまされるのを覚悟で、やはり一つ一つ当ってみます。たとえばいついつどこの橋のたもとに来てくれというような投書があれば、実際行ってみますし、あのときも相当刑事を出しまして、そういう所に行かせましたけれども、もちろんほとんど投書をした人と思われる相手の者が現われて来ませんでした。中には現われて来たのがございまして、実際その金を渡して、そしてつかまえた例もあるのでございますが、まあとにかくそういう投書に対しましては、やはり頭から全部うそだというふうにきめてかかることもできませんので、一つ一つ当りまして、その投書の真偽をきめていく、こういうことでやっておるわけでございまして、もちろんそういう場合に捜査を妨害するような行為をしておるところにぶつかりますというと、これは検挙もいたしますし、また暴行をふるって参りました場合には、暴力行為のそれぞれのことで検挙をいたしておるわけでございます。  それから第三の点につきましては、ちょっと私今までの例を記憶しておりませんでございます。
  63. 中山福藏

    中山福藏君 小杉さんに一つお伺いしますが、一般に自分の立場に対しては人間というものは相当うぬぼれを持つものですね。先だってある大新聞の論説をごらんになったと思いますが、ダイナマイト爆発事件というものがあったのに関連しての論説を掲げてある。その犯人がわからぬというのは、犯人が利口になったのが一つは原因だ。それから刑事訴訟法の欠陥がある、この二つのためにいかに努力しても警視庁というものは犯人があがらぬということを論説に書いておった。それでそういうばかげた話があるかというひやかし半分の、いわゆる警視庁をひやかし半分のこれは論説なんですよ。私は先ほどから聞いておりますというと、幼児誘拐その他の案件についても捜査は万全であるというような御気分のようですが、あのダイナマイトの投下事件というのは今もってわからぬ、犯人が。それでもって捜査は万全だということは言えないと私は考える。従ってその現われ出たものがいわゆる大新聞の論説であると、私はこう見ておる。ほかにも一、二件例をあげてありました。私はそういうふうな捜査の不完全な、不完璧な場合においては、これはやはり法律というたてをもってきて、犯罪の起らない前に未然にこれを防止するということは何よりも必要だと思う。あなたは今の程度でこの犯罪者に対する捜査に十分落度はないという警視庁のお考えをもって今日お臨み下すって、そうしてこの参考人としての御意見なんですか、私は最後にそれを一つ念を押しておきたい、あなたに。
  64. 小杉平一

    参考人小杉平一君) 大へんお叱りを受けたわけでございますが、私先ほど申しましたのは、警視庁捜査態勢全般につきまして万全であるというようなことは申しておらないのでございます。少くともこの誘拐事件につきまして最近の事例を申し上げまして、誘拐事件につきましては相当の経験も積みましたし、ほかの犯罪に比較しまして相当自信があるということを申し上げたのでございます。従いましてそのほかの事件につきましては、ただいま御指摘がございましたように、私ども事件がたくさんできまして、これに対する十分な解決ができておらないことを常に反省をいたし、社会におわびをしつつ、みずからを励ましておるのでございます。御指摘のございましたダイナマイトの事件等につきましても、これは全力をあげてかかっておるのでございますが、発生いたしましてから相当日もたちつつございますが、未だ解決しておらないのを非常に私は遺憾に思い、またそれだけに苦慮をいたしておる次第でございまして、警視庁捜査態勢が非常に万全であるといってうぬぼれておるわけでは決してございませんので、その点は御了承を得たいと思うのでございます。
  65. 中山福藏

    中山福藏君 私は全般に対するところの捜査方法ですね、それがまだ未熟だ、こういう意見を持っておる。従って御承知通りこの幼児誘拐についてもトニー・谷の事件が起って以来ひんぴんとしてこれが惹起されておる。ことに加速度にこれはふえつつあるのです。これは要するに警察というものをないがしろにしておる一つの現象だと私は見ておる。それをしもなおかつ捜査方面においては幼児誘拐の点に関して十分な手段、方法、考慮というものが払われておるということは、全国的に言えないのじゃないか。大体警視庁というものは全国の警察をリードする立場にある。だから警視庁の私は手落ちというのは、公国的に波及しておると、こう考えておるのです。幼児誘拐というものは近ごろ特に芽を出した新しい病原だと見ておる。新しい病原に対して、インフルエンザの種類が違うように、やはり異った薬というものをこれに抵抗せしむるために飲ませなければならぬということになると思う。だから私はその特殊な犯罪ですね、特色を帯びたところの犯罪に対しては、それに対するところのいわゆる新しい手を打つということが何より必要じゃないか。その証拠には幼児誘拐はふえているのですね。非常にふえておる、加速度的に、一般犯罪と比較しまして。これは確かに一つの特徴を持っておる。私はこの社会の病原体に対して、今までの法律というものはあまり効果をなさないということは、この増加するという一つの事実で証明してあまりあるものと考えておる。この新しいウィールスというんですか、病原体というんですか、これに対する処方箋というものを日本の法律の上に打ち立てるということは私は必要だと思う。だからこれが一つの予防対策であります。予防注射をしなければならぬ。その予防注射これは、犯罪者の起きないようないわゆる策をめぐらすということが第一必要だと思う。こういうことからお考えになって、やはり私はこの一つの成文法というものをこしらえる必要があると思うのですが、これは最後にあなたのお考えを伺っておきます。それでもなお法律は要らぬというおぼしめしですか。
  66. 小杉平一

    参考人小杉平一君) 私はこの法律は要らぬということは申しておらないのでございますが、もちろん犯罪を防止する上におきまして刑法という法律がある、あるいはそのほかのそれぞれの法律があることによって社会の規律というものが立ち、従って犯罪がそれだけ防遏されておるということは十分認めるのでございます。ただ、先ほど申しましたように、この幼児誘拐事件等につきましてはもちろんこの法律だけを、法律と申しますか、刑罰だけを重くすることによっては解決できないということを申し上げたのでございまして、従いましてそのためのいろいろな条件を先ほど申し上げた次第でございます。従いまして私は刑罰だけを上げることによって誘拐事件が非常に、まあなくなるということはいかがなものでございましょうか、こういうことを申し上げたのでございまして、いろいろな施策と相待ってやることは一つの方法であることには間違いないと思います。
  67. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 他に御質疑がなければこれをもって終りたいと存じますが、参考人の皆さん方に二言お礼を申し上げます。  大へん長時間にわたりまして貴重な御体験に基く御意見を拝聴さしていただきまして、まことにありがとうございました。参考人の各位にも十分御了解いただけたかと存じますが、本委員会といたしましては、こうした不幸な事件が何とぞして未然に防がれ、また現に起っているこれらの問題も早急に解決されることを衷心から希望し、特にはるばる尼崎からお出ましになられました小田さんのお嬢さん等が一日も早く親御さんの手にお戻になられることを心からお祈りいたしまして、今後この御意見をもとにして私どもはお互いに知恵を出し合って善処していきたいということを付け加えまして、お礼の言葉にかえたいと存じます。まことにありがとうございました。  委員会は三時に再開いたすことにいたしまして、その間休憩をいたします。    午後一時三十二分休憩      —————・—————    午後三時三十九分開会
  68. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 休憩前に引き続き委員会を再開いたします。  罹災都市借地借家臨時処理法第二十五条の二の災害及び同条の規定を適用する地区を定める法律案を議題に供します。まず提案理由の説明をお願いいたします。
  69. 高橋禎一

    衆議院議員(高橋禎一君) ただいま議題となりました罹災都市借地借家臨時処理法第二十五条の二の災害及び同条の規定を適用する地区を定める法律案の提案理由を御説明申し上げます。  御承知のように、昭和二十一年九月十五日より施行の罹災都市借地借家臨時処理法は、あるいは罹災建物の旧借り主に優先的に借地権を取得させ、あるいは逆に、罹災地の借地権で今後存続させる意思がないと認めらるるものを消滅させるなどの道を開き、借地借家関係を調整して、罹災都市の急速な復興をはかることを目的として制定されたのでありますが、その後、昭和二十二年法律第一〇六号をもって同法の改正が行われ、戦災の場合のみならず、別に法律で指定した火災、震災、風水害その他の災害の場合にも同法の規定を適用して、かかる災害地の復興の促進に資することをはかったのであります。  これにより、既往の大火災に本法を適用して、それぞれ所期の効果をあげております。  昭和三十一年三月二十日午後十一時ごろ、秋田県能代市畠町に発生いたしました火災は、折りからの北北東十五メートルの強風にあおられ、たちまち、火勢は西方に拡大し、木造コバ葺家屋の密集地帯を総なめにし、延焼七時間、二十一日午前六時ごろ同市の最西端に至り、ようやく鎮火いたしました。  この焼失戸数約千五一日月、罹災人員約六千名、焼失面積九万五千坪、被害見積額は二十億円に達し、焼失家屋の借家率は一六%、焼失地域の借地率は三六%と相なっております。  同市は、昭和二十四年二月にも、焼失家屋千七百戸に及ぶ大火災に見舞われておるのでありまして、たび重なる災害をこうむられました能代市民各位に対し、深く御同情申し上ぐる次第であります  さて、かかる災害に対する国の措置といたしましては、災害救助、免税等の方途もありますが、必ずや借地借家の権利関係が問題となり、今後の住宅建設についての混乱、紛争が予想されますので、地元の市及び県当局も、本法の適用を強く要望いたしておるわけであります。  衆議院法務委員会におきましては、これら住宅を失った罹災者を保護し、かつ、同市の円満、急速な復興再建の一助とするため、罹災都市借地借家臨時処理法第二十五条の二を早急に発動し、同法を、同市の今次災害にも適用する必要あるものと認め、ここに本法案を提出した次第であります。  何とぞ慎重御審議の上すみやかに本案を可決あらんことをお願いいたします。
  70. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 本案について御質疑のおありの方は御発言願います。
  71. 一松定吉

    ○一松定吉君 私はこの法案に対して別に反対とかいうような態度ではございませんが、どうも近ごろ非常に火災が多い。しかも大火災である。そうしてその火災の原因等は警察、検察庁等において調べますけれども、いつもその原因がわからずしてそのままあやふやにせられることが非常に多い。こういう点につきましてはよほどこれは国民として関心を持ちまして、一体こういうような火災などいうようなものはどういうところから起るのかという、その原因をほんとうに真剣に確かめ、そうしてある程度の原因を防止するような方法をとることが最も必要であるので、それができなくて、ただこういうことがたび重なり、たび重なるたびごとにこういうような法律を適用してやるということは、罹災者のためにはぜひ必要であることは議論はありませんが、国家の損害の上から考えると、まことに寒心にたえないことなんだから、この点につきまして一体この火災の原因がわかっておるのでしょうか。その点を一つ伺ってみたい。
  72. 高橋禎一

    衆議院議員(高橋禎一君) 火災の原因につきましては、衆議院法務委員会において本法案を審議いたしている間におきましては、まだ明瞭になっておらなかったわけでございます。
  73. 一松定吉

    ○一松定吉君 この法案を審議するについて、火災の原因がわかるか、わからぬかというようなことは重大な問題ではないことは私も承知しておりますがね、こういう機会にやはりこの原因を明らかにして、将来再びかくのごときことをなからしめるようにするということも、この法案を通過させる上に大いに心得べきことだと私は思う。そういう点については、一つこれは衆議院法務委員長高橋さんが、それは今までにわからなかったということであれば、この原因は、やはりこういう法案を通過させるに当りまして、一応捜査官等を喚問してなりその意を明らかにするということが、将来こういう法案を審議する上において、われわれ議員の最も注意すべきことではなかろうかと思う。私はその意味において火災の原因を調べた人を一応喚問して、その点を明らかにする必要があろうかと思うのであります。他の皆さんの御了解を得れば、そういう方針をとるように委員長にお取りはからいをお願いしたい。
  74. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ただいま一松さんからの御発言がございましたが、われわれとしてもまたこの御意見は傾聴すべき御意見であろうかと存じます。従って次回理事会においてこうした問題を取り上げて研究したいと思いますが、委員の皆さん方の御了解を得ればこの方法をとりたいと思いますが、御異議ございませんか。お諮りいたします。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御異議ないとお認めでございます。従って次回の理事会にただいまの御提案に対して善処方を御協議申し上げますが、よろしくお願いいたします。
  76. 中山福藏

    中山福藏君 私は実際近ごろ不思議に考えているんです。あまりに大きな火事が多いものですからね。どうしても私は、ある種の想像というかね、非常に想像をたくましゅうしますね、火事の多いのに……。どうか一つ次の理事会においては十分にその点を検討するということについて御相談願いたい、こう考える。
  77. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 承知いたしました。
  78. 高橋禎一

    衆議院議員(高橋禎一君) ただいま一松委員から御質問のありましたと同種の発言が衆議院法務委員会においてもございまして、この火災の原因というものを一般的に追究し、火災防止について十分注意し、努力すべきであるということで、法務当局からもそのように十分に善処する、こういうような発言がございました。従いまして、衆議院法務委員会においても、先ほど当委員会でいろいろこれを調査して参りたいという御趣旨と同じような考えを持っているということを特に申し添えておきます。それから先ほどの、能代市の火災の原因について正式に質疑応答はございませんでしたが、この提出された書類を見ますと、警察庁ではこの火災の原因はしちりんの残り火の不始末であるように考えられる、こういうふうな趣旨でございまして、その点をなお申し添えておきます。
  79. 一松定吉

    ○一松定吉君 よくそういうことはわかりましたが、そういうあいまいな、しちりんの残り火の不始末であろうと思われるというような、どうもあいまいであって、もっと明確に突きとめなければならぬと私は思う。そういうことについては、捜査当局は、そうするとそれは過失犯というような起訴でもしましたか。あなたおわかりにならないですか。
  80. 高橋禎一

    衆議院議員(高橋禎一君) 何しろまだ火災が起りまして間もないときに実は非常に急いで立案をいたしましたので、それが放火であるか、過失犯であるか、あるいは全然犯罪を構成しない他の原因であるかというようなところまで明確になっておらないわけでありますから、御了承願いたいと思います。
  81. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうだろうと私も思う。そこで私が提案した意義はそこにあるのですが、結局こういうようなことが放火であるかあるいは失火であるかというようなことについて、しかもそれは計画的にやったのか、あるいはそうじやなくやったのかというような点を明らかにしなければならぬが、それを調べるのには捜査官の手腕による、これは。ほんとうにそういうような実に敏捷な、捜査に熟練しておるような人が調べればそんなものはあがるのです。それをあまり手腕のないような者がやると、何ら原因を突きとめることができなくなって、あやふやになってしまう、それを私は心配する。でございますから、その調べた人をここに呼んで、そういう点について十分追及し、将来こういう点については取調べの方法等に万遺漏なきよう、大いに研さんを積むような方針に持っていかせるということを、私は常に念願しているのですから、特にそのことを委員長においては頭に入れておいていただきまして、この委員会に呼びましたら、お互いに力を入れてそういう点を明らかにして、将来こういうことのないようにしたい、こういうような資料に供したいと思って今私が提案をいたしておるので、幸い一人の反対もなく、御採用下さったことは非常に喜ばしいのでありますが、これは捜査に当った警察官、これを指揮した検察官、そういうものを一つ呼んで、一つ大いに調べる方法をわれわれが探求する必要があろうと思う。高橋委員長は検事としてそういう手腕、力量があるが、そういう点についても一そう力を入れて明らかにして、再びこういうことのないようにしなければいかぬ。あまり近ごろ多過ぎる。
  82. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私はただいまの一松委員のお説に反対するのじゃないのですが、本法案に関連して調査をなさいます際にお願いしたいことは、ただいまのような点もあろうかと思うのですが、他面日本の家屋建築の構造とか都市計画という方の問題もありはしないかと思いますので、その方面専門家の御意見も伺っていただきたいというようにお願いをする次第であります。外国の場合はロンドンにせよ何にせよ、大火があったのに顧みて、政府が都市計画、住宅建築においてりっぱな実をあげられているというようなことも聞いておりますので、日本においても必ずや政府もそういう点でお考え下さることだろうと思いますので、その点もつけ加えてお願いしたいと思います。
  83. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 傾聴すべき御意見でありますので、これもまた善処さしていただきたいと存じます。
  84. 中山福藏

    中山福藏君 私も昭和十七年に火事にあった経験を持っておりますから、一つこの次にお取調べ、御検討なさるときに参考にしていただきたい。それは電話線と普通線と並行しておりますと、それが近いと必ず発火するというのですね。私のところはことにその電線を鉄のパイプに入れてあったのです。その鉄管が電気の力でもって溶けて、あめみたいに流れているのですね。警察にその鉄管を持って行ってこの通りあめみたいに流れておりますと言うても、なかなか建築屋とぐるになって、権利を剥奪されるというので、その鉄管を警察において返してくれぬのですよ。これはもう昭和十七年の古い話ですが、そうしておいて原因不明ということでとうとう警察が握りつぶしてしまった。この電気屋というものは非常に注意をしないと、どんなりっぱなものを作っても電気屋が粗末な工事をしておったらだめなんです。警察がただ目をつけるのは保険に入っているかどうかということだけ一番先に目をつけるんです。それはもう悪い癖なんです。ほかのところはたな上げにして、お前保険に入っているかと、すぐこうくる。私のところは二日前に切れておりましたからその疑いは晴れたわけですが、実にけしからん。警察は工事屋とぐるになっている。こういう点を一つ十分気をつけてお取調べお願いいたします。
  85. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) いろいろ御意見が出ましたが、理事会の決定に従い、各方面の総合した意見をまとめまして善処したいと存じます。  他に御質疑もございませんか。——なければ質疑は終了したものと認めまして、これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  86. 一松定吉

    ○一松定吉君 これは公聴会をしないで採決するのですか。
  87. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  88. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記をつけて下さい。  別に御発言もないようでございますから討論は終局したものと認めましてこれより採決に入ります。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  89. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 全会一致でございます。よって本案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成等につきましては、慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御異議ないと認めます。よってさように決定いたしました。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は順次御署名をお願いいたします。   多数意見者署名     宮城タマヨ  赤松 常子     羽仁 五郎  藤原 道子     市川 房枝  岩沢 忠恭     西郷吉之助  一松 定吉     中山 福藏  小林 亦治     中川 以良  井上 清一
  91. 一松定吉

    ○一松定吉君 私、今の御決定に異議も何もありませんが、ただ先刻私が発案いたしましたことについては、能代市だけでは私はよくない。この表を見ますというと、宮崎の延岡が二回ある、それから福井が二回ある、それから鹿児島の名瀬が二回ある、それで、これらの四ヵ所のうちで原因の明らかになったものはよろしいのでございますが、原因の明らかにならぬものでそのままになったものは、今の能代市と同じように、その関係者を呼んでやはり調べていただくということがよろしいと思います。原因の明らかになったものはよい。ならぬものだけ、今の延岡、福井とそれと鹿児島の名瀬、これだけ。これは二度続いて火災があり、その原因が放火とか何とかと明確になったものはいいのですが、原因不明だというようなものでそのままになっておるものは、呼んで追究することがいいと思いますが、そのお計らいを願いたい。
  92. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ただいまの御提案に対して御意見がございますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御異議ないと認めます。よって御提案のように善処さしていただきたいと存じます。
  94. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 委員長の報告の際には、私どもが先ほど一松委員を初めとして述べました点、特に政府がいわゆる防衛などにばかり予算を使って、都市建設に十分の力を注がないために、次々と大火が起る危険が非常に多い。その点については政府は十分に考えて、国民がたちまち火が起れば一つの都市が延焼してしまう、そうして路頭に迷うということを平気でいるこの政治的センスの低さを、十分委員長報告の中で政府に向って反省を促していただきたい。
  95. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 報告に対しての御要求がございましたので善処いたします。
  96. 藤原道子

    藤原道子君 私のさっきの問題もお入れ願いたいと思います。
  97. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 承知いたしました。  本日はこれをもって委員会を散会いたします。    午後四時八分散会