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1956-03-29 第24回国会 参議院 法務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二十九日(木曜日)    午前十一時二十八分開会     ―――――――――――――    委員の異動 本日委員大屋普三君辞任につき、その 補欠として仁田竹一君を議長において 指名した。     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     高田なほ子君    理事      井上 清一君            一松 定吉君            亀田 得治君    委員            西郷吉之助君            仁田 竹一君            赤松 常子君            小林 亦治君            羽仁 五郎君            市川 房枝君   政府委員    警察庁刑事部長 中川 董治君    法務政務次官  松原 一彦君    法務省刑事局長    事務代理    長戸 寛美君    法務省人権擁護    局長      戸田 正直君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務省民事局参    事官      平賀 健太君    文部省調査局宗    務課長     近藤 春文君    最高裁判所長官    代理者    (事務総長)  五鬼上堅磐君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局刑事    局長)     江里口清雄君    警視庁刑事部長 小杉 平一君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件(板付基地勤務者人権擁護に  関する件)(立正交成会問題に関す  る件)(最高裁判所映画製作干渉  に関する件)(山形県における検察  官の不当行為に関する件)     ―――――――――――――
  2. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ただいまより法務委員会を開会いたします。  議事に入ります前に、委員の変更について御報告をいたします。三月二十九日付、大屋晋三さんが辞任せられまして、仁田竹一さんが選任せられましたことを御報告申し上げます。     ―――――――――――――
  3. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) まず、検察及び裁判運営等に関する調査を議題に供します。  四件ございます。板付基地勤務者人権擁護に関する件、立正交成会問題に関する件、最高裁判所映画製作干渉に関する件、山形県における検事の不当行為に関する件、この四つの問題がございますが、まず板付基地勤務者人権擁護に関する件を問題に供します。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  4. 亀田得治

    亀田得治君 一昨日の当委員会におきまして板付基地質疑をいたしたのですが、当日は政府側の方において十分準備がなかったようでありまして、本日は十分検討をしてこられるということでありましたが、まずその検討の結果を最初に御報告を願いたいと考えます。
  5. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 先般亀田委員からのお尋ねの件でございますが、法務省では裁判所の方に判決の結果等問い合わしておりますが、まだ詳しい返事がございません。御承知のようにわが国裁判所お尋ねのような事件について裁判権を持っているものかどうか、前にあった青森の例と今回の例とでは反対の結果も出てきておるそうでございまして、ただいま当局においていろいろ調査をいたしておるところでございます。その経過につきましては政府委員の方から御返答申し上げたいと思いますので御了承願います。
  6. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 実は一昨日御質問がございましたので、早速最高裁判所の方に連絡いたしまして、そういう事件があるのかどうかししいうことを照会いたしましたところ、最高裁判所の方では、山口智外三名の人から米空軍第八戦闘爆撃隊司令官O・H・レーマン大佐外一名、これは本連絡次官リンカーン・C・マッキー大尉というこの両名を相手方といたしまして仮処分命令申請がされたという事件受理報告最高裁判所にきておるが、まだこの事件について裁判があったという報告は受けていないということでございまして、それで最高裁判所の方には至急電報でもって照会していただくようにお願いしておりましたけれども、けさこちらに参りますまでは、まだ最高裁判所の方から返事をいただいておりません。従いまして、もし裁判がすでにあっておるといたしますと、その裁判内容がどういうものであるかは詳しく承知いたしておりません。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 そういうおかしな御返事を聞こうと思って私はきょう出てきたのではないのです。裁判判決があったことはせんだっての委員会で私から申し上げておるのであります。だからあなたの方は公式に最高裁判所を通じなければ実際にそういうものがあったかどうか、その検討をするわけにはいかないという意味でおっしゃっておるかもしれませんが、せんだって御説明申し上げたように、事態ははねはだこれは急ぐ問題なんです、不当な首切りをされて、そうして地元裁判所としては三月二十三日に裁判管轄権の問題も検討して判決があった、この判決理由書にその検討経過といろものは明確に書いてある、検討して、これは日本側裁判権のある事件だとして仮処分判決を出しておるわけです。私はその写しをもちろん地元から取り寄せて持っているわけですが、ほんとう事態を何とか早く救済してやろうという気持があれば、私はその写しによってでも検討ができるであろうと思うのです。見ておらない、だからどうも的確な御返事はできない、これでは二十七日の委員会よりもこれは逆戻りじゃないですか、二十七日は若干桃澤さん自身もこれに対する見解を述べておられた、きょうは全然それはお答えはできないと、そんな無責任なことは私はないと思う。
  8. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 仰せのような御意見でございますけれども、現に私、法務省の方におきましても仮処分申請事件裁判所によって受理されて係属中であるということは承知いたしております。それが今亀田委員お話によれば、大体その裁判がどういうものであるかということも、一応今のお話によってうかがい知ることができるわけでございます。何分これは現在進行中の裁判事件に関することでありますので、法務省としてこの点について、一体日本裁判所にこういうような問題について裁判管轄権があるかどうかということを申し上げますことは、結局は裁判所裁判に対して政府が批判をするということに捻るかと思うのでございます。その点におきまして政府としては答弁を差し控えたいというのが先ほどの政務次官お答えであると私は思うのでございます。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃこういう事態を一体どのように政府としては処理されようとするのですか。せんだっても申し上げたように、駐留軍の方は呼出状も受け取ろうとしない。私ども呼出状はやはり受け取って、見解が違うのであれば違うことを述べたらいいと思う。それをも受け付けない。二回は受け付けたけれども出てこない。あくまでも拒否するのですね。それから判決が二十三日におりまして、昨日福岡地方裁判所の方ではその判決送達をいたしております。で、福岡地裁から、これは返事です。私の方から照会を求めたところ電報返事がきておる。昨日送達をしたと「イタツケハンケッ三ガ ツ二七ヒソウタツセリキチナイジ ムインウケトリコバ ムノデ ソノバ ニサシオクレフクオカチサイ」こういう返事です。それで裁判所判決をして、判決をまで受け取らない。裁判所としてもそのまま引き下れないでしょう、相手がそこにおるのですから。受け取りの判も押さない。しかし引き下ったのでは面目を失うということで、そこへ置いてきた。こういう返事です。これはこういう問題を起しておるのに、それはあまりにものんき過ぎませんかな。そういうことは、これは重大な……、一つ判決の問題じゃない。日本のこれはもう裁判権、主権が問題なんだ。私どもは何も電報打ったりいろんなことをして問い合わすまでもなく、あなたの方自身がもっと事態を明らかにして、電話すればわかるのですから、そんな文書によるいろんな連絡等を待たないで、これは重大な問題という認識があれば、私はそこまでしてほしいと思うのですがね。あなたの主観的な見解等はあるいは私と違うかもしれませんが、内容についての、しかも事態がこういうふうになっておるのに、何かただ照会をして、それがまだ最高裁からきませんのでと、そんなことじゃ私あとの質疑できませんよ。もっと責任者を出して下さい。法務大臣は病気で出られぬというのですが、これは政府最高責任者はもっと真剣に考えなきゃいかぬですよ。こういうものは一つの前例になってくる、みんな。どうお考えですか。裁判所自身がここまで苦労しているのに。
  10. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 御意見に従いますと、福岡地方裁判所といたしましては日本国裁判所本件のような事件については裁判権ありとする考えのようでございます。もし裁判権ありとするという前提に立ちますならば、判決送達ももちろんできるわけでございまして、もし送達を憂くべき者がその受け取りを拒むならば、その場に差し置いてもいいわけでありまして、差置送達としての効力を生ずるわけでございます。裁判所がもし裁判権ありという見解でありますならば送達は、りっぱにそれは有効な送達になると私は考えているのでございます。従いまして政府として――私などから申し上げるのはあるいは越権であるかもしれませんけれども米軍基地の方におきまして、その受け取りをこばんだからといって、政府がどうするという問題ではないであろう、すなわち裁判所民事訴訟法を適用いたしまして法律的に十分解決ができるところでありまして、政府がこの際乗り出してどうするという問題ではないように考えられます。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 この裁判所判決に対して先方が従わないという意思表示でしょうが、受け取りをこばんだということは。それくらいのことはだれだって想像つくでしょう。そうすれば、これは政府としてほっておけない問題でしょう。単なる一裁判所の問題じゃ私ないと思うのです、これは、そういう意味では。相手がそれをこばむ、判決に従わない、その場合に裁判所がどういう執行方法があるのですか。ありますか、基地内のことに対して。そういう裁判所執行方法があるというならお示し下さい。裁判所にまかしておいたらよろしい……
  12. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 訴訟の当事者が裁判書きの謄本の送達受け取りをこばむということは、あにひとり米軍のみならず、国内の一私人の場合にも起ることでありまして、その場合に、一私人裁判書き送達を受け取らぬからといって政府が乗り出す筋合いのものじゃないだろうと思うのであります。事態は全く同じことでございまして、もしその裁判に従いませんねらば、それは一私人の場合でありましたら強制執行ということになりますし、もし裁判所見解に従って、強制執行もできるという見解でありますならば――もっとも本件仮り地位を定める仮処分でありますので、これは一般の場合においても強制執行という強制的な手段は実はないのでありまして、もしこれが仮り地位を定める仮処分ということでなくて、一定額の金銭の支払いを命ずるという判決でございましたならば、強制執行もできるわけでございまして、もし裁判権ありという見地に立てば、裁判所としてはとるべき措置も十分あると思うのでございます。政府が乗り出すという筋合いのものではないと考えられるのであります。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 政務次官見解を聞かして下さい。
  14. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) ただいまの平賀氏の見解通りでございます。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 じゃこういう問題は政府はほうっておくのですね。政府見解として聞いていいですか。
  16. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) ほうっておくわけではございませんが、この問題はすでに日米合同委員会等においても懸案になっているのであります。さきには違った判決も出ております。こういう問題は、単に法務省だけでどうするということもできない複雑な性質の問題だと思うのであります。従って、ただいま照会しておりますところの公式の回答を得ましたならば十二分に研究します。そうして適法の手段をとるべき必要のある限りとることを申し上げております。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 とにかくそういうあやふやなことを言っているからいつもなめられるのです。  もう一つそれじゃお聞きしておきましょう。ことしの三月十四日に板付基地内で盗難事件がありまして、その容疑を日本人井上義一という人がかけられた。こういう事件が起きた。その結果、翌十五日ですか、米軍の方から本人の家にやってきて、家宅捜索の同意を求めた。家宅捜索しようとしたわけですね。まあ簡単にいうとそういう問題なんです。それに対して、そこの地区の警察官が、令状も何もなしでそういうことをやっては困るということで断っている。ところが翌日また来て、結局捜索をしているのです。これは私はもう何らの権限がないと思う、こんなことは。これは日米間で取りかわされた約束なりあるいは法規にも、明らかにこんなことは反しております。しかも結果は、この日本人犯人ではなく、ほんとの犯人はその直後、同月二十六日ですか、三日ほど前ですね、これは米兵であるということがあがってきたというのです。これが出てきたからまだいいものの、出てこなければ皆さんのようなそういう弱いようなことを言っていると、結局は押し切られてしまうんですよ、水かけ論になってしまって。いやしくもあなた、日本裁判所が出した判決、それを相手が拒否しようとしている。それに対して、日本政府が何も関与するとかせんとか、そんなことは私は議論になる問題じゃなかろうと思うのです。それは日米間に裁判権に関していろいろな条約があります。しかし私はああいう条約ほんとうに守られているかどうかは、一つか二つ小さな事件、その事件そのものを見れば、あるいはそれは政府にとってあまりかんばしくない事件があるかもしれない、あるいは喜ばしい事件もあるでしょう、しかしそういうことと離れて、日本裁判権を守るという意味じゃそんなあなた、のんきなことは言えない問題だと思うんですよ。この日本法律を無視していく、こういう態度が、この何ら権限のない捜索、こういうことにもはっきり出ているじゃありませんか。今のこの問題は、一昨日答弁後に私いただいた資料なんです。こういう問題をあなたは、どういうふうにごらんにほるんです。これは政務次官に聞きたい。
  18. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 日本裁判所がこれを判決する権利があると認めて判決をし、それをば執行して、今その最中であります。今ただちに政府が立ち入る筋合いのものではないと平賀参事官が答えた通りと私は信じますが、ただいま新しくお話の件については、私はまだよく存じません。そういう事実がありましたならば、よく聞き合せた上で処理します。
  19. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) ただいまお話の件につきましては、施設外捜索が行われたということでありますれば問題でございますので、さっそく調査いたしまして、適当な措置をとりたい、こういうふうに考えます。
  20. 亀田得治

    亀田得治君 とにかく、こういう日米間の問題は資料を出す方だって厳密にやっているので、そういうことがありましたならばというのじゃなしに、これはほんとうに真剣にやって下さいよ。  それから、大体今度の今裁判になっている事件ですね、その発端というものは昭和三十年十二月二十日と二十一日の両日、これは基地内で思想調査が行われておるのです。これが実は出発点なんです。そういう思想調査的なものに基いて出てきておる処分なんです。その思想調査やり方等も、詳細に私ども報告を受けておるのですが、これははなはだけしからんことなんです。そうして調査をした、最後には帰っても何も言うなよというようなことを言ってですね。一体この駐留軍労働関係法規等については、日本の法令に従って行動するのだとこういうことをはっきり法律上制約していることでしょう。そういう点はどういうふうにお考えですか、法務当局ば。
  21. 平賀健太

    説明員平賀健太君) この駐留軍は、間接雇用労務者はもちろんでありますが、駐留軍の方で直接雇っている日本人労務者、あるいはいわゆるPXなんかで雇っておりますところの労務者、こういうものにつきまして、日本国労働法に服するということは、行政協定に明文のあるところでありまして、もしこ木に対する違反というようなことがございますれば、この裁判方法ができるかどうかは今懸案の問題でございまして、この点は法務省としては答弁の限りではないと思うのであります。そのためには日米間の折衝機関としては合同委員会がございますし、合同委員会でいけなければ外交的な折衝という可能性もありますので、その方面を通じてのアメリカ側の反省を促すようなことは、これは行政協定のもとにおいても十分可能であると考えます。
  22. 亀田得治

    亀田得治君 裁判中々々々というけれども裁判は終って結論を出してしまっておるのです。相手控訴も何もしないのですよ。控訴をしておるのなら裁判中ですよ。相手は無視しておるのですから。初めから鼻であしらっておる。もっと考えて下さい、普通の事件裁判中争っておる、それに対して外部の法務当局がそれがいい悪いということを求めておるのと違う。鼻であしらわれている問題並んです。私はきょうの答弁ば、一昨日にですね、きょうは十分関係機関とも連絡する、そうして出席されると言うから、もっと突っ込んだ答弁もあると思い、従って私も日本裁判権の限界という意味では重要な問題だと思って準備してきました。しかしそういうこの無責任答弁では、私は全然これは納得いきません。並日通事件じゃないのですから、私はあらためてこれは総理大臣なり、もっと政府ほんとう責任者にこの問題を追及したいと思います。そういうことで委員長も御了承を願いたい。これ以上きょうのような顔ぶれの質疑は私は中止します。
  23. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ただいま亀田委員からの御発言もありましたが、委員長としてもまことにごもっともなことだと思うのです。駐留軍に対するわが国民事裁判権の範囲というものは十分規定され、当然裁判権が守られなければならないにもかかわらず、当局の御答弁はまことに誠意を欠くものと認めざるを得ません。従って亀田委員のお申し出のごとく、次期委員会において、必ず責任者が御出席になら木まして、十分に誠意を尽して、わが国裁判権の確立のために、法務当局が毅然たる態度を本委員会を通して示してもらたいと思います。善処していただきたい。
  24. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 思想調査につきましては、もうさき法務大臣もこれはまことに穏やかでない、よろしくないということを申しているはずであります。またこのことにつきましては、すでに外務省からも先方にこのことを申し入れているということを私は承わっておりますが、なお裁判の推移――今回の裁判に対して裁判権ありとして現地の裁判所が行なったことを、裁判所が一体どう取り扱うか、その結果を私どももう少し見たい。が、なおさきには違った判決が行われているということを聞いているのであります。そういうことにつきましては、私ども決してなおざりにしているわけではございません。事、裁判所の問題をば、直ちに一つ一つ法務省当局政府当局がその場で解決するというわけにいかないものがある。すでに外交問題として、いろいろ折衝いたしている大本があるのであります。もし必要がございまするならば、先例等も若干申し上げて、これは非常にむずかしい問題であって、裁判権があるなしということについては、私ども今苦労いたしている、政府としても苦労して折衝している問題であるということだけを御了承願っておきます。なおざりにしている問題ではございません。
  25. 平賀健太

    説明員平賀健太君) ただいま政務次官が仰せられましたように、この裁判管轄権の問題につきましては、さき青森地方裁判所のこれは決定でございますが、あるのでございまして、それは今お話福岡地方裁判所判決とは、全く逆の見解に立った裁判のようでございます。現在裁判所におきましても、第一審の下級裁判所でございますけれども、全く相反する見解をとっているのでございます。  で、政府として、しからばいずれの裁判が正しいかという意見を述べますことは、先ほど政務次官が仰せられましたように避けるべきであると思うのでございますが、福岡地方裁判所におきまして裁判権ありとし、青森地方裁判所においてはなしという相異なった判決が、裁判がされていることは事実でございます。で、裁判所見解も、最終的な見解はやはり裁判所によってきまるものであると思うのですけれども、また一方の福岡地方裁判所裁判、そういう問題の事件につきましては、福岡地方裁判所がいたしました判決に対して、駐留軍基地の方でそれに従わないからといって、政府が軽々しく裁判不服従ということで乗り出すべきではないと、こういうふうに考えるのであります。  なお福岡地方裁所判決はすでに済んだのだから、事件解決しているのであるから、最終的にきまったのであるという御意見でございますが、これは何分仮処分判決でございまして、最終的の判決ではないのであります。本案訴訟というものがなくてはならないのでありまして、御承知通り仮り地位を定める仮処分だけでは、これは執心の方法もない。任意に被申請人の方でそれに従わない限りは、この仮処分命令の実現の手段はないのであります。この本案訴訟が一体どうなるか、要するにこの仮処分申請人といたしましては、この仮処分の目的を達成しようといたしますと、もう一度先ほどの労務係の士官を相手に、たとえば賃金支払い本訴請求を起しまして、それで判決を求めなければ行政執行上問題にもなり得ない問題でございまして、やはりその点におきましては、まだ未解決であると考えてしかるべきものであろうと思うのでございます。
  26. 亀田得治

    亀田得治君 そういうへ理屈はやめなさい。仮処分判決がおりているのに未解決とは何ですか。それは仮の段階においては問題は決定しているじゃありませんか。本案訴訟がきまらぬ以上は、最終的にきまらぬことは、こんなことは当りまえなことですよ。しかし本案訴訟解決するまでの仮の段階においてはこうあるべきだ、そのことは決定しているじゃありませんか。そういう理屈にならぬようなことを、何か法律専門家らしく言えば理屈になるような、そんなことはやめなさい。これが個人間で何か意地づくでやっているようなことなら、私は別だというのです。いやしくも国と国との間の問題です。大きく言えば裁判権ですから、その裁判権ということは、日米間で約束している問題なんです。これは政府の問題でしょう。そうなってくれば、それは執行吏を向けてさらに執行するとかせぬとか、そんなことまで行かなければならぬ問題じゃないでしょう。そのことを言っている、そんなわかり切ったような理屈を聞いているのじゃありませんよ。それと、もう一つ青森のことを盛んに言われますけれども青森の問題と板付の問題は形式的には同じような事件であっても、内容が相当違っておるかもしれません。板付の場合はおそらく青森の事案も知っていて、しかし板付の場合は、これはより私的な関係だという点の検討をしながらこの判決をしている。あなたはこの判決を見ておらぬと言うから、私はその青森決定板付判決内容の比較についてまでは問いませんけれども、何もそんな、米軍の諸君のやっている肩を持つようなことを特におっしゃる必要はないじゃないですか。だれが聞いたってあなたのような答弁、そんなもの承服できませんよ。今日はもう質疑は中止すると私は申したのだけれども、あまりそう要らぬことを言うからね、要らぬことですよそんなことは。仮処分本案訴訟関係ぐらいのことはこっちでも知っているし、詭弁ですよ。今日においては結論が出ております。
  27. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ただいま亀田委員の御発言がござい決したように、非常に重要な問題であり、先ほども私から御要請申し上げたように、この問題は次回の委員会において再度十分な資料責任をもって臨まれることを強く要望するものです。特に委員長として申し添えたいことは、仮処分が被申請者の任意によって決定されるということは非常に重大な問題であるのであります。同時にまた行政協定第十五条の四に規定されているわが国の労働者の労働権というものは当然確立しておる問題なんであり、この問題に関連しての裁判の問題でありますから、十分に資料を整えられ、誠意を尽して亀田委員の御満足の行くように、広くは民主主義の基調のもとに満足の行くような答弁が用意されることを要請して、本件のこの項についての質疑を保留しておきましょう。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  28. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記を始めて。  板付基地勤務者人権擁護に関する件については、幾多の質問が保留されてありますから、次回に譲りまして、暫時休憩をしまして午後一時から再開いたします。    午後零時九分休憩      ―――――・―――――    午後一時五十八分開会
  29. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 休憩前に引き続いて委員会を再開いたします。  午前中に続きまして検察及び裁判の通常等に関する調査を議題といたします。  まず、立正交成会問題について調査を行いたいと存じます。  本件について一応当局からその全貌について御説明を願いたいと存じます。
  30. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) 立正交成会の問題でございますが、立正交成会にからむ人権の問題としましては、昭和二十七年の五月ごろに北多摩郡で同会北多摩支部の関係者から入会を勧められたことに関連して自殺者が出たという事件がございまして、弁護士会においても人権問題としてこれ存取り上げておられるのであります。その他同会につきましては同様の風評がございますので、法務省刑事局といたしましても、人権擁護局と緊密な連絡をとりまして、その間に刑法上の脅迫等の刑事事件としての容疑が明かになりました場合には、それに対して厳正な態度をもって処断する、こういう方針でおります。で同会に対する刑事事件といたしましては、目下東京地検におきまして、和田堀第二土地区画整理組合組合長立川榮蔵、同副長大高惣五郎に対する虚偽公文書作成、同行使、背任、都市計画法違反、同副長と申しますか、蛭間雅太郎、同組合評議員三枝仙太郎、立正交成会理事、同組合副長兼会計、長沼総一、立正変成会顧問、同組合副長柴田章に対する各背任、都市計画法の各容疑で鋭意捜査を継続しておるものであります。これらの者に対しましては、一時身柄を拘束したのでございますけれども、事案がきわめて複雑で関係者も多数に上りますので、現在のところ在宅のままその捜査を続行しておるわけでございます。従いましてその内容についてはまだ詳細判明いたさないわけであります。検察当局といたしましては、事案を徹底的に究明して真相を明らかにしたい、こういうふうに思っております。
  31. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 長戸さんのほかに直接所官である文部省の調査局の宗務課長からその全貌を伺いたいと思います。
  32. 近藤春文

    説明員(近藤春文君) 立正交成会につきましては、過般来いろいろ問題がございまして、検察当局の取調べが行われておるのであります。私の所管いたしますのは、宗教法人に関する事務ということが主管の仕事になっておるわけであります。宗教法人法による宗教法人でございますが、これは立正交成会は昭和二十七年の六月に宗教法人といたしまして認証されて今日に至ったところの教団でございます。その立正交成会の法人として認証いたします場合の手続といたしまして――これは宗教法人法によって宗教団体の、定義がございまして、その宗教法人法による宗教団体の定義と申しまするものは、宗教団体が礼拝の施設を有しておって、そうして教義を持ち、儀式行事を行い、並びに信者を教化育成するということを主たる目的とするところの団体であるとこういうことになっております。これらに基きまして、宗教団体としての認証が行われたわけでございます。現在問題として取り上げておりますのは、先ほどお話がございましたように、立正交成会の事務所の周辺にある和田堀整理組合地区の土地の問題ということになるわけでありまして、この問題そのものは、宗教法人そのむのの問題として浮び上ってくる問題とはすぐに考えられないのであります。その土地問題がまあどういうような関連において宗教団体自身の問題とつながってくるかというようなことにつきましては、いろいろ現在取り調べられておるわけでありますので、その結果によってそういうことがあるのかどうかということが究明されるのじゃないか、こういうふうに考えられるわけでございます。
  33. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 同じように戸田人権擁護局長からお伺いいたします。
  34. 戸田正直

    政府委員(戸田正直君) 立正交成会の人権擁護に関する問題が先般来読売新聞等で問題になっておりましたので、私の方としましては、立正変成会入会の強制あるいは布教の方法等について人権侵害の問題があるかどうかというような点について調査をいたしたいと思います。それからなお日本弁護士連合会に、中野仲町の内田英子という者から昭和二十五年九月の十二日に母トラが自殺したということで申告が参っておりますので、この問題につきましても、人権擁護局でも調査をいたしたいと、かように考えております。
  35. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 警視庁刑事部長の小杉さんからお伺いします。
  36. 小杉平一

    説明員(小杉平一君) ただいま問題になっております立正交成会の問題につきましては、警視庁といたしましては、先ほど法務省政府委員から御説明がございました通り、和田堀の第二土地区画整理組合にからむ問題といたしまして、昨年の十二月十四日に同組合員の田所孝男という方外二名より告訴状が出まして、同組合長の立川栄蔵、同組合評議員岩田豊吉、宗教法人立正交成会柴田章、同じく立正交成会理事長沼総一、この四名を被告訴人として署名偽造、印章偽造並びに同行使罪の告訴状が出たことから始まったわけでございます。との告訴に基きまして、警視庁ではこの和田堀第二土地区画整理組合の実状につきまして捜査をいたしました結果、ただいま申しましたこの組合自身の背任行為並びに文書の署名偽造、印章偽造につきまして捜査を行い、現在捜査続行甲でございます。従いまして、本件につきましては、すでに五名の者の強制逮捕をいたしまして、取調べをしてそして目下続行中でございます。今後も続けて参るわけでございます。   〔委員長退席、理事井上清一君   着席〕
  37. 井上清一

    ○理事(井上清一君) 本件に関しまして御質疑のおありの方は御発言を願います。
  38. 高田なほ子

    高田なほ子君 立正交成会の非常に暴虐な様相は、連日過半来読売新聞で報道されております。この新聞は当局者も十分にごらんになり、かつ吟味されておることだろうと思うわけであります。しかし本日立正交成会の全貌について概括的な質問を申し上げましたが、私の十分意に満ちた御答弁がされておりません。もちろんこれは和田堀の土地整理にからむ問題なぞが主になっているようでありますが、しかしそのことだけが主ではなく、宗教法人法に基く宗教団体である立正交成会の認証の責任は当然文部大臣にあり、その所管である近藤さんなぞは、特にこれは責任があるにもかかわらず、はなはだどうも間の抜けたような答弁をされて遺憾に思うわけであります。なお人権擁護局長の戸田さんの御答弁にいたしましても、人員、布教等については捜査をいたしておるところであるというような御答弁、いずれもこれは答弁は落第であります。私はさらに詳しくお伺いをしたいと思う点は、何も新聞が大騒ぎをしておるからというのではなくて、各省の所管庁がそれぞれの責務を果さなければならない、こういう観点に基く質問をしておるわけですから、それを腹に入れて答弁をしてもらいたいのです。先ほど法務省側の長戸さんから二十七年五月の蔵敷事件の問題が発端となって、立正交成会の布教上の問題もまた人権じゅうりん等の問題も明るみに出たのだという、そういう説明でありました。これは、それはそうといたしまして、すでに立正交成会の中で死の予言をされたばかりに、親子心中をしたというこの人権じゅうりんに対して、当時すでに、二十七年、この問題の起ったそのあとです、結論としては法務大臣、文部大臣、警視総監らに対し、今後かかる悲劇を再び起さぬよう、善処を望むとの警告を発しておった、こういうことがはっきりしております。こういうことが事実であるとするならば、二十七年から今日まですでに相当の長年月を費やしておるわけでありますから、単にその土地区画整理の不正問題だけではなくして、当然人権じゅうりんに関する諸問題等についてもいろいろね方面から調べられているのが当然だろうと思う。まして立正交成会の機構、運営あるいは立正交成会の大まかな予算、あるいは現実に立正交成会の布教がどういうふうに行われているのか、こういうような点についても、当然全貌の説明を望む私に対しては御説明があってしかるべきであります。もし私の質問に対してまだ答弁が抜けているという観点であるならば、これに対していずれも当局者から私の質問する趣旨を把握されて答弁をしていただきたい。
  39. 近藤春文

    説明員(近藤春文君) 宗教法人立正交成会の実情と教義その他実体というような点についてただいま御質問があったわけであります、宗教法人立正交成会はその理事長は永沼総一氏であります、宗教法人としての運営をやっておられるわけであります、現在の宗教法人法によりまして、宗教団体の教義の内容、あるいはまた教化育成の具体的方法とかそういうものについて、憲法によりまして宗教の自由の原則によって、この宗教法人法というもので規制をするという点はないわけであります。常に宗教法人法そのもののねらいといたしますのは、宗教団体の運営上これを保全をして行くこういう前提に立っておりますので、この団体のあり方、あるいは内容ということについて、宗教団体法そのもので何ら規制もされない、しておらないわけであります。しかし団体として立正交成会の内容につきまして、私たちの知っております範囲におきましては、これはもと霊友会から脱退をした、そして立正交成会という一派を結成をなされたわけである、その教義の内容と申しますか、これは特に日蓮宗の流れを汲みまして、法華経の教義を持っておられる、それから法華経の内容として立正交成会の掲げておりますものは本体論と申しますか、神の存在というもの、これを本質においてつかまえていく、いわばこの世において現実の人間を導いていく、こういう立教の精神になっておる、こういうふうに伺っております。それからその方法にはいろいろ、たとえば親鸞上人の流れ、あるいはまた易を加味しましたもの、これらを総合されて一つの教義を構成されておられる、そのように伺っております。具体的に全体の信者の数というものは、私どもの知っております範囲では、大体百四万、こういうように報告を受けております。その具体的な方法といたしましては、法座を設けまして、そうしてその法座を中心として、教義の宣布あるいはまた教化育成活動を展開されておる、これが大体立正交成会の具体的な実情であるというように伺っております。その方法論等において、教化育成の方法論というものが妥当かどうかという判定は、これは現在の宗教法人法そのものではできないわけでございます。教化育成をする、それから教義を持っており、それから同時に礼拝の施設がある、こういう前提を置いて、それに基いて宗教法人の認証を行うということでございます。従ってただいま御指摘がありました、たとえば人権じゅうりんとか、そういうような問題が、もしあるといたしますならば、人権擁護委員会、そういうところで明からにその問題を解決していくということでありまして、宗教法人法自体からこれらについて規制をするということは、宗教活動そのものの内容にタッチをする、こういう建前になりますので、法人法といたしましては、法人法の及び得ない現在になっておるわけでございます。なお、ただいまの御質問の点に対して抜けておる点がありましたら、御指摘願って補足いたしたいと思います。
  40. 高田なほ子

    高田なほ子君 戸田さんからお承わりしたいと思います。
  41. 戸田正直

    政府委員(戸田正直君) 卒直に申しまして、宗教というものは非常に私どもむずかしく考えておりまして、なかなか私たちの頭では十分にこの問題を割り切って解釈するということは非常にむずかしいのであります。御承知の、憲法に規定されております信教の自由、これは国家権力から信仰の自由を保障しておるものでございまして、この前の立正交成会の蔵敷事件のときも、これは日本弁護士連合会で調査され、結論を出されたのですが、人権擁護局も、弁護士連合会と非常に緊密な連絡をいたしまして、当時の私の考えでは、これは弁護士会において御処理願うことが適当ではないか、かように私考えておりました。そこでこの調査に当りました人たちも、法務省人権擁護委員会も、従って同じような立場で実は調査をし、また私の方でも関心を持って実は協力いたして参ったのであります。その後結論が出まして、先ほど高田委員からお話のように、法務大臣等にも御要望がございました。そこで私の方では、まだあの当時ですと、いろいろ立正変成会において、深くいろいろなあれを立ち入ることが、果して政府として一体いいかどうか、信教の自由という立場からどうかという疑いを、私率直に申し上げて、実は持っておりました。そこで、これはこうした予言であるとか、迷信的なことに惑わされるというところにまだ民度の低さがあるのじゃないかということで、この問題を何とかしなければならないというふうに私どもでは考えまして、自来、因習の打破ということに重きを置きまして啓蒙活動をいたして参りまして、御承知の、十二月十日の世界人権宣言、この記念集会に、毎年因習の打破ということを特に取り上げて、全国的な啓蒙活動をいたして参りました。昨年も引き続き、ほかの点はテーマに続いて取り上げたのはないのでありますが、この因習の打破ということだけは、さらに昨年の十二月においてもこれを取り上げて啓蒙活動を実はいたして参りました。ところが今回またこうした問題が起きましたので、これはもうただそのまま今までのような考え方では……、少し情勢が変ってきておりますので、先ほど申し上げたように、果して自由を侵害して強制していわゆる信者を集めていやしないかどうか、いわゆる布教のやり方に自由を侵害するような事実がないかどうかということについて十分調査しなければならぬ、かように考えて、この問題を、先ほど申し上げましたように、言葉が足りなかったかもわかりませんが、これらの点について、人権侵害の点だけについて十分調査をしていきたいと、かように考えております。
  42. 高田なほ子

    高田なほ子君 まだ調査をしておらぬというわけですね。
  43. 戸田正直

    政府委員(戸田正直君) 資料等を得まして、それも一つ調査段階でございますが、ただいま資料を集めております。
  44. 高田なほ子

    高田なほ子君 近藤さんの御答弁は、一々まあもっともなような御答弁ですけれども、私はそういう御答弁ではちょっと満足できないんです。この宗教法人法は、もちろん正規な宗教団体を保護する法律であることは、われわれも百も承知の上であります。だからといって、これを野ばなしにして、宗教法人法の及ぶ範囲ではないという、そういうような御答弁は、ちょっと言葉が過ぎると私は思う。なぜなら、認証はこれはやはり一つの権利です。そういう認証する権利を持っている所轄庁が、当然その権利に基いて、その後の問題等についても、やはりこれは見なければならない。そうしてそれが宗教法人法の目的に反するものであると考えら出るときには、ここのカッコの条文に示されるようないろいろな方法をとって、この法の目的、つまり宗教法人法の目的を達成するために役立たせなければならない問題である。これはこの法人法があるから何も言えないのだという、そういうふうな印象を受ける答弁は、私には解しかねます。さらにお尋ねいたしますが、近藤さんは、この立正交成会を一応ごらんになったことがございますか。行かれたことがございますか。
  45. 近藤春文

    説明員(近藤春文君) 私はその法座の実態を見に行ったことがございます。立正交成会に宗務課長といたしまして、各宗派、教団の活動というものを見ておく必要もございますので、法座においてどういうような形式で行われており、またどういうような宗教活動がなされておるかということを視察に参ったことがございます。
  46. 高田なほ子

    高田なほ子君 あなたは宗教法人立正交成会から招待を受けたことがありますか。
  47. 近藤春文

    説明員(近藤春文君) 招待を受けたことはございません。職務上参りましたことはございます。
  48. 高田なほ子

    高田なほ子君 はっきりいたしません。
  49. 近藤春文

    説明員(近藤春文君) 法座その他の実情を見るために参りましたことばございます。
  50. 高田なほ子

    高田なほ子君 巷間伝え聞くところによると、文部省の歴代の宗務課長は、立正交成会からお招きを受けているということも聞いておりますが、職務上あなたはその教義等について御研究になったやに今承わるのですが、私は立正変成会の全貌というものを外からみていて非常に驚いた。二十七年の何月かに発足したといわれるこの立正交成会が、今や堂々たる大殿堂を持ち、あなたはあのガレージをごらんになってきましたか。あの立正交成会の本部のわきにあるガレージには、もう高級車がずらっと入っている。これはまことにすさまじい勢いであります。それから第二修養道場の堂々たるあの三階建のあの威容、本殿の威容、病院、そうして今度新しく作られた立正学園高等学校、あの非常ねモダンな円型の堂々たる三階建の建物、おまけに別棟には蒸しぶろまでついている。こういう近代まれに見るこの威容を、あなたはどういう感想でごらんになってきましたか、率直に感想を聞かして下さい。
  51. 近藤春文

    説明員(近藤春文君) 現在の立正交成会の教勢あるいは実情という点を、今どう考えるかという御質問でございます。これは個々の信仰という問題は、各人の心の問題でありますので、この問題が心を中心とする宗教、特にその中で問題になっているのは、現在ここで取り上げられておりますところの立正交成会がクローズ・アップされておるわけであります。現実的に見まして、私まだ日が浅いものですから、全国的な各教団の実情をつまびらかにいたしませんが、いわゆる新宗教は全般的に最近かなり教勢が伸びておる、あるいはまたかなり多くの信者を持っておるということは言えると思います。これはそれが結局一つの殿堂、建物というものに具体的に現われてくるわけでありますが、これは新しい宗教と申しますか、新宗教というものと、いわゆる既成宗教というものとの現実的な、何と申しますか受け入れ方というものに、苦干の違いと申しますか、新しい宗教はこれはいろいろ全般的に個々に違う点があると思いますけれども、一般的に申しまして現世飛躍というところに大体の中心が置かれている。従ってその点から現在の社会におきまして、いろいろな社会不安、あるいはまた生活からくる諸問題、そういう中においていろいろ人々が何か一つの心のよりどころを求めておる。その求めておるものが新宗教の全般的に共通したものとして流出ていますけれども、現世飛躍的なものと、それによって救われてくるこういうような気持というものがかなりあるのじゃないか。それが現実的にこれらの宗教の信者がふえていく。信者がふえることによって信者の寄進というものが多くなっていく、こういうことが言えるというように私は見ております。従って一方においていろいろ問題が指摘されますのは、ただいま申しましたような点をバックとしての社会情勢というものと、それから何と申しますか、一般の社会人の宗教的な教養、宗教的情操というものとの関連性、との宗教的教養あるいは情操というものが高まってきて、それによって各人々々が自己の最も求めている正しい宗教は何かということを突き詰めていく、自分の問題として考えていく、こういうような、いわば教養的な高揚というものとタイ・アップいたしまして、その中で正しいものが伸びてくる。またより本質的なものが一般の信徒の心のかてとして伸びていく、こういう環境というものが同時に育成されていくということが前提であると思います。多少話が御質問の点から脱線をいたしましたけれども、そういう面と関連をして新しい宗教がかなり伸びているということは、ここ数年の統計を調べてみましてわかるのであります。現在百余万人といわれておりますが、毎年大体二十万近く、あるいは十五万か二十が近くぶえております。ここに数字を持っておりませんけれども、ここ数年来かなり伸びておるということは事実であります。伸びておることが宗教上の、立正交成会そのむのの、信仰によって伸びておるか、また信者の獲得という方法の何かの方法によって行き過ぎがあるかということは、一つの今後御検討される問題と思いますけれども……
  52. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうもあなたの御答弁は、わざとはぐらかしているとしか私は受け取れないのです。少くとも常識のある人間ならば、毎年々々十万、二十万ずつふえて、これは現実的な一つの加護を念願するいわゆる新興宗教なんだからふえるのが当りまえだという、そういうような受け取り方をしておる、よほどあなたは無神経ですよ、失礼ですけれども。もう少しまじめに答えて下さい。私は読売新聞を見て、これは容易ならざることである、こういうふうに考えましたから、非常に短かい時間でしたけれども、あとう限り私も調べてみました。調べてみた結果――人間として私は宗教を否定しません。私もクリスチャンです。決して宗教は否定しません。仏でも新興宗教でもよろしい。信仰がすべての人に持たれることは望ましいのです。けれどもどうですか、あなたは立正変成会の収入をごらんになって、これは容易ならざる財源がどこからつぎ込まれているのだろうということを感じられませんでしたか。昨晩私は立正交成会の夜の姿を見てきました。あの閉ざされた本殿の門の前に、みすぼらしい婦人の姿が幾人かそこに見受けられた、あの小雨の中で。いろいろ調べてみるところによると、食うや食わずで、そうして経済上の不安、それから家族の将来、そういうことを考えておる非常に精神的な不安な状態に乗じて、そうして各支部の組織を通して相当強制的に、理知判断に乏しいこうした哀れな婦人たちがそれにずるずる引きずり込まれていって、あなたはここで行われる教義の説明をもっともらしくされましたが、私はこの席で立正変成会の教義などを聞く必要はいささかもありません。あなたが布教の状態をごらんになったとするならば、あそこに行かれる信者がどういうケースを通って、どこでどれだけの布施を上げて、そうして会費は幾ら取られて、そうしてそのほかどういうものが買わされて、どういうお金が取られているのか。そういう点についても私はお調べになっているだろうと思う。それだけりっぱな御答弁が、まことにもっともらしい御答弁がで透るなら、そういう具体的な事実をおっしゃってからそういうことを言っていただきたい。もっと具体的に答えて下さい。
  53. 近藤春文

    説明員(近藤春文君) 具体的に説明を求められておるわけでございます。現在の立正交成会の信者、これは「交成」という機関紙を買わされろ。
  54. 高田なほ子

    高田なほ子君 それは幾らですか。
  55. 近藤春文

    説明員(近藤春文君) 二十円です。それからそれ以外にたすき、じゅず、それから経典、これらのものを信者は頒布を受ける。その価格は大体全部入れて一千円前後でははいか、こういうふうに考えております。
  56. 高田なほ子

    高田なほ子君 文部省当局としてはなはだ遺憾です。これはそれぞれ価格も違うでしょうから、そう明細なことは言いません。けれどもあなたは一応先ほどの御答弁では、布教の状態も調べてきたようにおっしゃっていられるが、何を調べてきたのですか、まことに、心細い限りです。そんな調べ方では、これは宗教法人を保護し、かっこれを育成するために正常な使命を私は文部省は果していないと思うのです。言うことだけはりっぱでも、こういう問題が起っていたら、少くとも読売新聞の記者にでも聞いてごらんなさい。非常によく調べておる。また行って当局者にあなたはいろいろお尋ねになることもいいでしょう。また信者にそれとなく伺ってみることもいいでしょう。これは決して干渉ではないと思う。あくまでも正常な宗教団体の育成を期するためには、そうした積極的な方法が講じられなければならない。そういう観点から私は申し上げておる。大体今までの文部省というものは何でも口ばっかりで、やることはまるで木によって魚を求むるがごときことを言って、道義の高揚などえらそうなことを言うけれども、何にもそれに対する裏付がない。私は文部省に恨みを持っておるものではないのですけれども、よこしまな教えのために、よこしまの布教の方法のために、百数十万といわ氷る信者の中の、これは八割は女性、しかむこの女性はいずれも生活に苦しんでおられる人たちなんです。そういう人たちから不当な搾取の方法を行なっている疑いが非常に濃厚である。そういう濃厚な中で、どういう方法で搾取されているかということについて何にも調べられていないということは、これは職務怠慢のそしりを免れないと思う。  さらにお尋ねをいたしますが、東京都にはどのくらいの支部があって、どういう方法で布教されておりますか。それをお尋ねします。
  57. 近藤春文

    説明員(近藤春文君) 二十九年の十二月三十一日現在の調べでございますが、法人教会としての本部がもちろんこれは一つありますが、それ以外に支部教会が百四十五、これだけの支部がございます。この百四十五のうちのどれだけが東京都内であるかという数は、現在私持っておりません。大体まあ東京を中心といたしまして関東、それから東北、近畿、中部、これらが立正交成会のおもなる区域であります。こういうように私は考えております。
  58. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは私の知人の告白でありますが、東京の支部組織というのは相当に強固のようであります。一説によれば、すでに八十八支部に及び、この支部長は相当の強権を持っている。その支部長のもとにある、いわゆる副会長、会計係、友部幹部、それらのものを一団とする勧誘方法は相当強引をきわめている様子であります。こういうことについて法務当局、あるいは警視庁、それから文部省でも、その布教の強引な方法について知っていることがあれば述べていただきたい。そういう実例があれば述べていただきたい。
  59. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) 交成会の三十一年度の年間によります号というと、東京都内におきましては高田さんお話しのように、二十三区で支部八十、市部が四、郡部六、島嶼なしという形のようでございます。私どものほうでは先ほど申し上げました和田堀の第二土地整理組合の問題以外に、この人権の問題にからみまして、東京地検におきまして調査を続けておるわけでございます。問題は信教の自由とそ木が外部に表現しました場合の犯罪になるかならぬかというふうな限界点の問題もございますので、慎重を期しておるわけでございますが、現世利益を説く宗教の常かもしれませんが、善因善果、悪因悪果という因念を説くことを教義とするもののようでありまして、たとえば家族に病気が出ました場合に、以前に悪因があるその報いとして病気になったのだ、こういうふうな悪果があるというふうなことを説く。悪因を除くためには参拝をしなければならぬ。あるいは喜捨なり寄進をしなければならぬ。こういうふうに悪因悪果を説きます場合に、それが外部に表現したときに刑法上考えられるものとしましては、強迫とかあるいは詐欺とかというふうなものが考られるわけでございますが、その説いたことがいわゆる害悪の告知になるかならぬかは、具体的なその説き方いかんにかかるというふうに私どもは見ております。従いまして東京地検といたしましては、そういうふうな具体的な実際に即して目下その調査を進めている、こういう実情でございます。
  60. 高田なほ子

    高田なほ子君 二十八日に警視庁は土地の買収、土地区画の問題に対して家宅捜索を行なった模様ですが、そのときにうわさに聞けば相当の山のような証拠書類一件を押収したように聞いております。その証拠書類は土地区画の問題だけではなく、人権じゅうりん、あるいは内部のいわゆる財政問題等に関しての、そうした証拠書類として押収されたものなのか、今それはどういうふうに処理されているのか、そのてんまつをお聞きしたいと思います。
  61. 小杉平一

    説明員(小杉平一君) 押収捜索をいたしまして、これはもちろん令状に基いてしたのでございますが、これは先ほど申し上げましたように、土地区画整理に伴いまして、その間に組合幹部の背任行為あるいはまた土地区画整理法に基きますところの役員の贈収賄、こういうことに関連があると思われる書類を押収したわけでございまして、これに基きまして、従いましてある程度会計の帳簿等も押収をいたしました、それはただいま申しました目的で、ただいま調査を進めているところでございます。
  62. 高田なほ子

    高田なほ子君 蔵敷事件のあとに警視庁は人権じゅうりんの問題についても、相当に善処する旨の答弁が、警告に答えられたように聞いているし、また先般の衆議院の法務委員会でも警視総監が出席せられて、被害者の申請に基いて現在調査中である、こういう御答弁が載っているようです。そうだとしますと、今回押収されたものは、土地売買だけではなくて、今回の一人権じゅうりん、あるいは布教の行き過ぎ等に関する問題についても、今後警視庁はどういう形で乗り出されるのか、その点もう一度答弁をしていただきたいと思います。
  63. 小杉平一

    説明員(小杉平一君) 人権じゅうりんの問題につきましては、個々の、個個と申しますか、布教行為、いわゆる宗教活動そのものにつきまして警視庁といたしまして取し締りをするという考えは持っておりません。ただ個々の布教行為と言いますか、その活動の中におきまして、あるいは詐欺でありますとか、脅迫でありますとか、そういうような行為がはっきり出てくる場合におきましては、これはもとより宗教活動であるはずのものでございますけれども、そのことが刑法その他の法文に照らしまして、十分な証拠もそろいますならば、もちろん慎重に検討をいたしまして善処をするつもりでございます。
  64. 高田なほ子

    高田なほ子君 押し売りなどについては相当警視庁もいろいろパンフレットを出したり、またそれぞれの交番あたりまでもよく注意されて、押し売りの撃退には相当協力して下さっております。これは大へんけっこうなことだと思いますし、そういうふうな押し売りの、あるいはまた新聞のこの購売月間と申しましょうか、新聞屋さんの勧誘月間と申しましょうか、そういうものに対してもすでに取締当局としては何らかの指示をしておられるが、布教上の行き過ぎというようなものについては、これは宗教土の問題ではありましょうけれども、何らの取締りをしておらないのでありまして、また今の御答弁でも、宗教上の問題だから、布教上の行き過ぎについてもあまり取り締らないという答弁があったようですが、大へんこれは微妙な問題ですから、割り切った答えはできまいと思いますけれども、たとえば今度の立正交成会に見られるように、失業だとか病気になったとかいうと、お前は色情のたたりがあるとか、お前は先代に親不孝だからこういう目にあったのだとか、あるいは女の人に対しては、もう三年後にお前は後家になるぞというような、そういう徹底的な脅迫をもって、その後家にならないためには毎日お参りをしなさい、そうしてお参りをしてみればちゃんと布施を上げるようなしかけにできていて、食うや食わずでも百円や二百円なりの布施を毎日々々積んでいかなければならない、そういう雰囲気にされておる、そうしてお前は三年後には後家になるぞというような非常に恐怖感に陥らせられておる、後家にならないためには信仰しなければならない、毎日お参りに行かなければならない、仏壇も買って供えなければならない、これは明らかに刑法上の脅迫罪に該当するものだと私は思う。それに非常によく似ている。心身耗弱につけ込んで自己の利益のために手段を選ばないというやり方は、これはやや脅迫罪に近い行動と思う。こうしたものは明らかに正しい宗教家の行う方法ではない。私も宗教に非常に興味を持っておりますが、こういう人に脅迫観念を与え、お前は後家になるぞ、お前の子供は近いうちに交通事故にあって足が無くなるぞ、そういうようなおどし文句で信仰に引きずり込むというようなことは、これはもうとうてい許し得ないところで、しかもそれが大部分が家庭を持った婦人たちがこれに引っかかっているというこのことを、あなたは行き過ぎだと考えられませんか、率直に一つ感想を漏らしてみて下さい。こういうことは行き過ぎじゃないのかどうですか。
  65. 小杉平一

    説明員(小杉平一君) 私はやはり警視庁としましても個々のただこういう事実があるからこれは行き過ぎであるとかないとか、これはまあ個人々々でいろいろ考え方があると思いますが、私はあくまでも法を厳正に執行する意味におきまして、ただいま申されましたような事実が個々にあり、しかも証拠的に立証され、そうして畏怖心を起させて脅迫する、した、こういう材料がはっきりいたしまするならば、もちろんこれは法に従って警視庁といたしましても捜査をするつもりでございます。
  66. 高田なほ子

    高田なほ子君 文部当局のこれに対する御意見を聞きたいのです。
  67. 近藤春文

    説明員(近藤春文君) これは宗教の立場から考えまして非常にデリケートな問題であろうと思います。信仰というものがやはりある程度の合意において成立する、その合意というものの比重――自発的なものと、それから他からの教化、宣布の力、この比重がいろいろ違うと思いますけれども、全然信仰がない場合にはこれは拒否ができるわけです。拒否ができないということは自由が束縛される、信仰の自由が束縛される。従ってある宗教を信ずる自由もあれば宗教から離脱する自由、これは持っているわけであります。ですからその自由というものが適正に両者において行使されるということが最も望ましい形だと、こういうふうに私は考えます。しかしその心のニュアンスの問題、これはなかなかはっきり割り切れない問題でありまして、どこまでが脅迫という形でくるのか、あるいは束縛するという形できておるけれども本人がそれに対してある程度まで自分の心の、何と申しますか、安心というか、それの支柱としてそれを自分で考えるのかということにかかって参りますので、非常にはっきりした答弁はできませんけれども、その他についてはかなり微妙な問題がある。ただこの方法論、少くとも方法論等につきましては、今のお話のように明らかにこれに対する事実が出てくるということになりますならば、これはその点において問題になると思います。
  68. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうもはっきりしません。出てきますならば、ではなくても出てきている、出てきているのに出てきますならばというのはどういうことなんですか。やはり文部省は、宗教法人法の建前から正しい教義を広めるためにこの法案があるんだから、きますならばじゃなくて出てきているということがあるから私らは質問してるんですから、これに答えて文部省はどうするかぐらいのことは言ってもらいたいのです。どうもあなたのお答えは非常に穏やかというのですか、(「信者なんだ」と呼ぶ者あり、笑声)あなたは信者なんですかね、どうもはっ登りいたしません。具体的にお尋ねします。あなたはそこにある蒸しぶろ、別棟にある蒸しぶろを見てらっしゃいましたか。
  69. 近藤春文

    説明員(近藤春文君) 見ておりません。ただ伝えられますところによりますと、あれは株式会社、大和蒸しぶろ、ちょっと固有名詞ははっきりいたしませんが、株式会社組織になりまして、宗教法人立正交成会とは全然別のものであるということは明らかになっております。
  70. 高田なほ子

    高田なほ子君 それは財政的には別個に分れておるかもしれませんが、明らかにあれは立正交成会の一つのものなんです。一つの連繋のあるものなんです。今まででもあの蒸しぶろを問題にして若干問題が起っていることはあなた知らないでしょう。それはです。なるほど宗教法人法によればこれは医療ということばでき得ない、そのものずばりではできない。医療の相談はしている。その相談に応じて、蒸しぶろに入れられて心臓の悪い人があそこで死んだとか、あるいは結核で弱りはてた人が蒸しぶろで死んだとか、これはまだ何のたれ兵衛というところまでは、著ておりませんけれども、根拠のあることであります。一体宗教法人法に基くこうした具体的に蒸しぶろなどの行き過ぎが事実あったならば、これはどうしますか。一文部省としてどうなさいますか、その点を伺いましょう。
  71. 近藤春文

    説明員(近藤春文君) ただいまの御指摘の点は、宗教法人立正交成会あるいはまた宗教団体立正変成会の自体に関連する問題であるとなれば、これは医師法の問題で処置をせられる。従って宗教法人法で明らかに公共の福祉を害するというようなことが出て参ります場合には、他の法令によってこれが処置されるわけであります。ですからたとえば先ほどの刑法でありますとか、あるいは医師法であるとか他の、宗教法人法というものは他の法令によって拘束されることを妨げるものではないということになりまして、その法令によって事実が明らかにせられるということが前提になるわけでございます。
  72. 高田なほ子

    高田なほ子君 宗教法人法の第七十九条は、これは公益事業以外の事業の停止命令という規定になっています。これはまあ読み上げるまでもないことで、所轄庁は、これはやはり文部大臣に責任があるわけですね。宗教法人法が当然行う公益事業以外の事業について、公共の福祉に反すると認められるような場合があったときには、こうした事業を停止させることもまた可能である。ですから今あなたの答弁のようによその法律によって律するということがあるかもしれません。それは当然あり得るでしょう。けれども宗教法人法、そのものによっても、保護と同時にこうした自然の制約を受け得る道が開かれておる、これとの関連をお尋ねするわけですか、同時に八十一条でも解散命令を下すことができるようにこれはなっております。これは諸般の手続きが必要でございますが、あなたのおっしゃるように宗教法人法はもう保護一点張りで、何ら不正なこと、また人権を侵害すること、公共の事業に反するようなことが行われても宗教法人ではどうもできないという、そういう幅の狭い見解であるならば、これは私ら宗教法人法はもう一ぺん考えてみなければならないと。なぜならば今日のように政治の非常に貧困な、再軍備が強行されて民生の安定の予算が少いという場合には、いよいよもってこれは経済不安、精神不安がつのってくるのですから、インチキ宗教や邪教などというものはどんどん出てくる、いわゆる社会的な温床ができておるのにあねたのように宗教法人法というのはもう手にもつけられない、また中を見ることもできない、聞くこともできない。また不正を一応調査してみることもできないといろ、そういうような保護というよりはむしろ邪教温存政策に文部省が協力するようであれば、これは私どもは宗教法人法については相当考えなければなりません。あなたは、宗教法人法の七十九条や八十一条は、こうした布教そのものの正しい目的を達しない場合の一つの制約だと考えることができないのか、その点を尋ねます。
  73. 近藤春文

    説明員(近藤春文君) ただいま御指摘の公益事業その他の事業につきましては、こういうような事業を行うということを明らかにいたしまして認証するわけでございます。で事業の中には宗教法人として行う事業が明らかになっております。それ以外の事業というものがもしあります場合には、さらに宗教法人法の認証を、さらにあらためて認証を受ける、こうなりますので、その上っております事業につきましては、あくまでもこの法人法が御指摘のように正しい、まあ正しいという言葉がどうかわかりませんけれども、正しい宗教団体が健全なる宗教活動を行うことである、こういう前提が宗教法人法の前にあるわけであります。従ってそれが著しく公共の福祉を害するということが明らかに認められということがわかりました場合には、これは裁判所において解散をするということになっておりますけれども、明らかに、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと。」とこういう法律になっておりますために、この解散の事由というものが各方面で十分に検討されませんと、この七十九条、八十一条のこれが適用されないわけでございます。  それからその事業につきましては、その事業が不適正なりと、こういう場合には一年間に限ってこの事業を停止を命ずることができるということになっております。これは御承知のようにこの法律によって行い得ることでございます。
  74. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうもあんまりきついことは言いたくないのですけれども、どうもあなたの答えが何としても私には一から十までみんなふに落ちないことばっかりなんです。  そこでお尋ねいたしますが、今度の立正交成会の問題は、単に一読売が取り上げたというだけでなくて、正しい宗教を正しく運営し、そして民心を惑わせないでいくと、こういうことのためには相当文部省側としても積極的に乗り出さなければならない問題ではないかと私はこう思うのです。それをあなたはこういうことが起った事実がありますればとか、こういうことがありますればというすべてそれは仮定の上に立って、もちろんそれは何もお調べになっておらないのですから、仮定であることはやむを得ないと思いますけれども、現実こう毎日々々新聞が取り上げ、あるいはラジオで取り上げられているというのに、その所管庁である文部省が手をつくねているということについては、私は非常に疑問を持つ。非常な今疑問を持ってきた。この立正交成会の裏には相当に政治家も介在しているように承わっている。その政治家につながる官僚もまたこれに関与していねいとは誰も保証ができない。巷間伝え聞くところによると、立正交成会は相当組織的にやはり宣伝とか、それから後難を排除するということで相当の手くだを講じておられるように聞いております。ある場合にはにせ記者とわかっておってもにせ記者に惜しげもなく一万円ずつの金包みを与えるというそういう実情すらもある。貧困な信者たちの身の安泰をひたすらに願うばっかりに、玉うどんにおしょうゆをかけてかき込んでいって、そしていざお布施をと言えば、玉うどんを買う金の十倍も二十倍ものお布施を出している。そういうお布施の中からそういうぼろい金がどんどん使われているということになる。従ってこのバックには相当のものも動いているでしょう。またこれを育成するためにはいろいろな方法が講じられているでしょう。私もこの二、三の方法については知らないわけではありません。けれどもここで述べる時期ではありませんし、すでに日本弁護士連合会もこの調査のために乗り出し、法務委員会においても徹底的に調査権を発動すると言われておりますから、それ以上は言及いたしませんが、一体文部省はこの問題がこれほどまでになっているのにどういう態度でもってこれに対処していこうとするのか、どういう態度でこの真相を見きわめ、そして正しい宗教の目的達成のために尽そうとするのか、こういう点についてもっとすっきりしたお答えをいただきたいのです、。
  75. 近藤春文

    説明員(近藤春文君) ただいま御指摘のありました点は、現行の宗教法人法そのものにいろいろ問題点があるわけでございます。ただいま御質問ございましたように、この宗教法人法そのものは宗教団体への信頼、いわば正しい教化活動が行われ、またそれによるところの信教の自由というものが確保されて、各人が自分の精神的な中心を持つというところを前提とした法律でございまして、従いまして、現在の、いろいろお話にありましたような点は、この法人法のその中で処理されるべき問題と、法人法の外で処理される問題とあるわけであります。現在の宗教法人法が社会的な情勢、また現在の宗教界の実情という点から見て、このままで適正であるかどうか、また妥当であるかどうかということについてはいろいろ問題があると存じます。で、そういう点から、今回の問題を私どもは十分に各方面の御調査、あるいはまたそれによって出てくるところの各種の事実というものをもとにいたしまして、よりよき宗教団体が伸びていくような形にこの宗教法人法が改正をされることが必要だと、あるいはまたその場合にはどういう点が改正されるべきかという点につきましては、十分に今までも研究を、これからも、やっておりますけれども、この法人法自身の問題としても考えたい。ただしその場合にはあくまでも現在の憲法の下においての法人法でございます。許される範囲で実情に即さない点、あるいはまた法人法の盲点という点をこういうときを契機といたしまして十分に整理し、よりよき宗教団体が伸びていく方法考えていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  76. 高田なほ子

    高田なほ子君 だいぶうまくなって答えていただきました。そうすると、宗教法人法にはやはり盲点があるということを一応あなたも考えておられるようであります。われわれもまた考えております。  最後に伺いますが、ほんとうに何らかの形でこの内部についていつ文部省は調査されるのですか。
  77. 近藤春文

    説明員(近藤春文君) 内部と申しますと、この法人法でなしに立正文成会でございますか。
  78. 高田なほ子

    高田なほ子君 立正交成会の内部の事情を調査されますか。
  79. 近藤春文

    説明員(近藤春文君) 内部の事情と申しますとかなり宗教活動の中に入っていく面が出るわけでございます。で、この宗教法人法では非常にその点では厳密な規定がございます。
  80. 高田なほ子

    高田なほ子君 ようございます。わかりました。宗教法人法ではそればできません。表面立ってはそれはできませんよ。そんなことは知っています。知っていますけれども、なおかっこういう問題が起ったことについては認証を与えている文部省自体が何らかの形でこの真相をつかむ、調べるというとおかしいでしょうが、真相をつかむと言った方が柔らかでしょう、に努力されてこれらの悩める人、迷える人たちのためにやっぱり指導的な役割を果さなければならないと思う。で、ほんとう意味の宗教なら何も文部省がそんな指導をしなくてもいいのですが、これは今日非常に行き過ぎたということを考えられる。またこういう事態が上げられておりますからくどく申し上げません。  最後に、松原政務次官も私と同様に教育面についてともに歩んで来られたりっぱな先輩でありますから、特にこの点から松原さんに伺いたい。松原大臣にお尋ねしたいことは(「大臣じゃないよ、政務次官だよ」と呼ぶ者あり、笑声)大臣じゃなくて、大臣になっていただかなければなりません。あまり大臣がお見えにならないものですから、きょうはひたすらに大臣をお待ち申し上げておりましたものですから。短時日の間に立正交成会が非常に発展して松原先生もお近くにお住いのよしで、これはもう大へん驚いていらっしゃるだろうと私も思うのです。今の教祖の長沼妙佼先生と言われる女王様のような方というのですけれども、この方もこれは巷間伝えられるところによれば、かつて茨城県の境町で銘酒屋の酌婦をしておった。埼玉県の久喜町の在で同じようなずっと酌婦をして、大正十年ごろには十円でもって身請けされたというような方だそうでありますが、(笑声)これはまあ巷間伝えられるところであります。そういう方が一族郎党を率いて僅か短時日の間に年間何億と言われる、これはもう計算することができないけれども、年間伝えられるところによると数億の金を自由に動かすことができる。これはまことに驚くべき勢力ですが、こういう勢力の陰に今言うような無理な強引な布教方法が行われてきたのではないかという疑いは十分だし、松原政務次官も、個人としてもいろいろそういう点についても非常に純正な方であるからお感じになっておられると思います。当問題に対して法務当局としてはどういう態度で臨まれますか、この点についてお尋ねいたしたいと思います。
  81. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 高田委員も御承知のように、信仰の問題は憲法で固く保障されておる。そしてその保障のもとに宗教法人というもめは置きて、その信仰を妨げることはできないことになっておる。厚く保護されておるのが宗教の本質であり、自由主義の国においては信教自由となっておりますので、宗教そのものを取り締るということはできないようにはっておる。ただしその宗教から派生していろいろなそれに名をかりて、この八十一条にもありまする通りに、法令に違反して、著しく公共の福祉を害するということが明らかに認められれば、その他の法律によって、たとえそれが宗教であろうと、いかなるものであろうとも、国家の治安を乱すものとして刑のもとにさばかれることは当然だと思います。しかし一番困る問題は、宗教のいかなるものが正教であり、邪教であるかという判断だと私は思うのであります。実際宗教の正邪というものはどうにもわかりにくい。ただ私どもが常識で考えられますことは、高田さんも御同感と思うのですけれどもが、宗教を説かれる祖師その他の人ば、貧しき者、あるいは心に悩みある者に幸福を与えるのであって、搾取するものじゃないと思う。キリストや釈迦はもちろんのこと、親鸞聖人は一生九十年を紙子を着て過ごされたといわれるくらいに、みずから身を持することきわめて簡素であって、そうして人々の悩みを解くものである。これは私は正しい宗教のあり方であると思う。ところが最近における新興宗教はいずれを問わず貧しき者から金を集める。そして金殿玉楼を築いて、最高級の自動車を乗り回して、大きなダイヤモンドをもって身を飾るというようなことを、先般衆議院でも猪俣議員が指摘されておりましたが、私はそういうことがあるか意いかは知りませんけれども、少くとも私どもの一般の常識をもってすれば、国民の通念としても、信仰に名をかりて多数の悩める人々から金を集め、財物を集めて自分自身の栄耀をするというような事柄は、私は許さるべきものじゃないと思う。いかなる場合においても許さるべきものじゃない。それは単なる刑法上の犯罪ではなくとも、道徳的に許されない。これが従って正しからざる宗教が、宗教の名をかりてかよう宏反道徳的なことを行倣った場合における判断は、国民がすべきものだと思うのです。正しき社会は長い年月にわたってこれを審判し、おのずからにしてかようなものは衰滅していくものだろうと、こう思うのであります。ただ新興宗教その他は、その起った当時には非常に熱烈な信者をもっておりますので、これに圧迫を加えればいわゆる法難と称するものが起って、かえってこれが逆行的に盛んになっていく事実はお互いに毎日見て参っておるところであります。どうか世間一般常識の高い人々は、要するに財物を集めて信仰の名のもとにその教主あるいは宗祖に立つ人々が、豪華な殿堂をこしらえてぜいたくな生活をするものは邪教であると見てよかろうと思うのであります。私の信念はさようでございます。
  82. 高田なほ子

    高田なほ子君 豪華な金殿玉楼・それから豪奢な生活、これはいずれも邪教と見て差しつかえないというこの信念にはまことに敬意を表します。いずれにいたしましても、すでに衆議院あるいは日弁連でも取り上げておる問題でありますが、私ども参議院としても当問題については非常な深い関心とこれが善処を強く望んでおるわけであります。従いまして、まだ十分質問の意も尽しませんが、ここに列席になられました各当局におかれましては、本日の質問の趣意、また質問が多少きびしきにわたりましたが、那辺にあるかということを十分に了承せられ、ほんとう意味の迷わざる宗教そして宗教の自由のために情熱をもって私は戦って下さることを心から期待するわけです。  以上で私の質問を終ります。   〔理事井上清一君退席、委員長   着席〕
  83. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ちょっと速記とめて下さい。   〔午後三時二十七分速記中止〕      ―――――・―――――   〔午後三時四十四分速記開始〕
  84. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 速記を始めて。  続きまして裁判官の映画化、「真昼の暗黒」、これに関する問題を議題に供します。御質問のおありの方は御発言をお願いいたします。
  85. 亀田得治

    亀田得治君 本日は、午後、先刻まで宗教団体に関する質疑がありました。政府側発言を聞いておりますと、憲法に保障された宗教の自由というものがあるのだから、ちょっとやそっとのことがあっても、なかなか手をつけにくい、こういうことを繰り返して言っておられたわけです。明らかに常識を持った人たちが非常に批判をしておる、そういう宗教団体につきましても、それほど慎重な態度に出られるということは、私は、ある意味においてはまた意味があろうかと思うのです。決して今問題になっておる問題を弁護する意味じゃなしに、別な面からみると。しかし、そういう考え方は私一貫してほしいと思うのです。ややもすると、労働組合等の行動に対して、政府の気に食わないことであると、すぐ公共の福祉が出てきて押えられる。これでは私は一貫しないと思う。いやしくも世間で名の通った労働組合なり政党なり、そういうものに対して、公共の福祉といったような問題がややもすると出がちなんです。これは非常に気をつけてほしいと思います。で、ただいまから私、最高裁の事務総長お尋ねする問題も、そういう角度から実は若干質疑をしてみたいと思うのです。それはすでに質問事項が通告してありましたから、ご存じと思いますが、例の「真昼の暗黒」、現代プロダクションで作りました映画ですが、この映画の製作の過程におきまして、最高裁の事務総長がこれに干渉した、こういうことが相当問題になっておるわけです。私、これは一映画の問題ではなく、ちょっと前段で申し上げたような立場から、これは重大な実は問題だと考えておるのです。そこで、いろいろこれは質疑事項がありますが、まず最初に事務総長から、どのような経過でそういう干渉をするようになったか、あるいはまたその干渉の実態、どの程度の干渉をしたか、そういう点についての一通りお話一つ承りたいと思います。
  86. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) ただいまの御質疑に対して、何か私が干渉したような御質疑でございますが、私は少しも干渉いたしておりません。ただこの「真昼の暗黒」に関して、私どもが関与した経過を御説明申し上げれば、御了解いくことだろうと思います。六月二十九日の東京日日新聞に、正木ひろしの一裁判官」が現代プロで映画化される旨の記事がありました。次いで七月八日の東京タイムスに、そのシナリオ・ライターは橋本忍という記事があり、七月十四日の時事新報には、監督今井正に決定したとの記事があり、裁判所関係あるものとして、私どもはこの新聞記事によって初めてこういう事実を知ったのであります。ところが十月二十二日の北海道新聞には、「裁判官」の脚本が映倫の審査をパスしたという記事がありました。ついで同新聞の十月二十八日の晩には、この「真昼の暗黒」と改題された旨の記事があったのであります。最高裁判所の情報課では、新聞によるよりほかに適当なニュースも入らないのでありますからして、この映画化がどうなっているかについては関心を払いつつも、正確のことは、ただ新聞の記事によってのみ知っておった状態であります。ところが十月の二十二日に、現代プロのプロデューサー山田典吾氏が「真昼の暗黒」の脚本を持ちまして、最高裁判所の情報課長をたずねて参りました。そしてその意向を聞きにきたというお話でありました。情報課長は、一応脚本を読んでお返ししますと言って、山田氏から脚本を預かって、そうお答えしたのであります。脚本は、情報課長その他の関係者によって読まれていましたが、なおその脚本には、映倫の荒田正男氏による審査表が添付されていたので、この審査表もあわせて関係者によって読まれていたのであります。ところがそのころ、この現代プロでは、「真昼の暗黒」の脚本について、最高裁判所の完全な了解を得たと言って、広島地方で下準備を進めておるということが、これは正確な情報じゃないのですが、情報課の者の耳に入ったのであります。これは、最高裁判所としては、別に了解をしたこともなければ何もないので、実は驚いて、これじゃ放ってはおけぬというので、情報課長が右脚本について何らかの意思表示を山田。プロデューサーにしなければならないと思ったのであります。そこで十一月の十八日に、情報課長は、情報課員を通じて山田プロデューサーに対し、「真昼、の暗黒」について御返事する旨を連絡したのであります。山田プロデューサーは同日最高裁判所の方に参りまして、そこで情報課長から、最高裁判所としては、現に最高裁判所に係属しておる事件の映画化ば賛成できない旨を告げ、その理由を述べたのであります。山田プロデュサーはこれに対し、理由は承わるが、当方としては、すでにもう相当の金を支出しておる関係上、映画化をやめるわけにはいかないので、映画化は進めるが、何分の協力をいただきたいという旨を述べてお帰りになったのであります。情報課長は、このようにして山田氏に対して情報課の意見を述べたことでもあるし、また映倫に対しても連絡をしておくことが必要であると考えて、荒田正男氏がこの脚本に対して映倫側として審査報告を附していたから、十一月の二十二日に映倫を情報課長がたずねまして、荒田正男氏に対して山田プロデューサーとのいきさつを話した上、「真昼の暗黒」の作成については、その映画化をやめてもらう権限もないし、映画化の企画をはばむことは不可能であるけれども、係属中の事件を一方のみの立場に立って映画化し、裁判所の事実認定を非難するようなやり方は、いまだかつて聞いたこともないし、また法律文化の点からいっても、映画倫理規定の面からいっても、十分に考慮していただきたいということを、情報課長が映倫の荒田氏に申したのであります。ところが同日午後五時ごろ、山田プロデューサーは、今井正監督と一緒に情報課長をたずねてきまして、そうして裁判所側から見て、脚本の不都合と思われる点を指摘してほしいということであったのでありますが、情報課長は、情報課としては、現に係属中の事件を映画化しているという点に賛成していないのでありますから、脚本の内容いかんを問わないのである。特に裁判所側で脚本に注文をつけて、内容を変えてもらうということでもすると、これはまたとんだ誤解を生ずるおそれがあるからということを十分に説明いたしたのであります。そこでなお、その脚本に客観性を持たせたいのならば、一審、二審の判決に掲げてある有罪の証拠を十分に御覧になってはいかがかということも付け加えて話したようであります。なお情報課長は、脚本について個々的な詳しい意見を聞きたいのなら、検事に頼んで意見を述べてもらったらどうかということをサゼッションいたしました。と申しますのは、検事ならば、弁護士と反対の立場に立って事件を見て批判することができないわけではないからということで、情報課長は、たとえばもし検事にお会いになるなら、最高検の平出検事にお会いになったらどうかということを申したそうです。私ども関係しておることは、大体それだけでありまして、いろいろの新聞記事とか何とかに、最高裁が圧迫したとか干渉したとかいうようなことは出ていることは拝見いたしましたが、私どもの方としては、別に干渉したり圧迫したようなことはございません。
  87. 亀田得治

    亀田得治君 ただいまの御報告ですと、十月二十二日に山田典吾氏が最高裁に来て、そうして情報課長の矢崎さんにこの映画についての話を持ちこんできた、これが始まりのようにおっしゃったのですが、そうではなく、最高裁の方からすでにその前に、東映の顧問弁護士某氏に、この現代プロと東映との間でとの映画の製作について話を進めているようだが、どうもそれはうまくないと思うので、やめてもらいたいという趣旨の話をあなたの方から東映の顧問弁護士にしておる。ここが始まりじゃないのですか。
  88. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 日時はちょっと記憶しませんが、そういう事実もございました。と申しますのは、一体係属中の裁判事件に対していろいろな批判をする。ことに事実について、あれはもう確かに白なんだというようなことを、一方的な資料をあげて、そうして批判し、これを新聞あるいは雑誌に発表し、あるいは単行本に出されるということは、厳格ね証拠手続に基いて、公開の法廷において裁判をして、そうして判決を下しておる、この裁判に対して、ややともすれば、国民がこういう一方的な宣伝に乗って、裁判に対しての信頼を薄らげられるのではないか、そういうことがあっては大へんじゃないかというようなことは、私ども常々考えておるところであります。ことに、現に係属しておる事件を映画化して、そうしてそれを大衆に見せるというようなことは、これは、私ども寡聞にしてどこの国でもそういうことを聞かないのであります。で、私どもとしては、これに対して相当関心は持っておりました。ところが時たまたま東映の顧問弁護士の柴田君と私は、多分裁判所であったと思いますが会いました。談たまたまこのことに及びましたときに、私の方から、実際現に係属しておる事件、ことに事実に関する問題もあるのにかかわらず、映画や新聞でどんどんこれを一方的に批判されるということは困る。従って東映の方でそういう御計画があるのたら、われわれとしては、事件が済んでからやってもらいたいということを、私個人として柴田君に話をした事実はございます。これはあるいは十月の二十二日であったか、二十二日前であったかあとだったか、ちょっとその点は記憶ございませんが、ところがこの話をすると前後して、やはり国際通信社というのがございまして、これは映画の関係の通信の雑誌らしいが、私のところに尋ねて参りまして、そうして、何か裁判所の方では、「真昼の暗黒」が、映画が上映されるのは困っておるというような話じゃないか、どういうわけで裁判所はそういうことを言うのだという話でありましたから、先ほど卑し述べましたような理由を記者に語ったことはございます。
  89. 亀田得治

    亀田得治君 その東映の顧問弁護士の柴田氏にそういうお話をした日時は、さっきの山田と矢崎情報課長が会ったそれよりも相当前ではありませんか。九月中のことだと私は報告を受けておるのですが、その辺どうでしょう。
  90. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 私の記憶では、国際通信の「映画芸能」という雑誌に、「裁判官」の映画化についてという記事が出る少し前だったと思います。これが十一月の二十一日の日付になっておりますから、その前だと思います。
  91. 亀田得治

    亀田得治君 それから十月二十二日ですね、先ほどお話になった点は。これは最高裁より山田を呼び出したのが真相じゃありませんか、来てくれと。
  92. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) いや、その点は、先方の方から山田氏が見えられて、そうして脚本を持参して情報課長をたずねてきて、初めてそこで脚本を情報課長が見たのであります。
  93. 亀田得治

    亀田得治君 それは、ちっと理屈からいってもおかしいじゃないですか。あなたの方から何にも言わぬのに、先方の方から、ことに言論の自由とか、そういうことをやかましくおっしゃっておる諸君が、先方の方から出頭してくると、こんなことはあり得ないでしょう。出頭して先ほどのようなお話のあったのはあるのですが、それはその次であって、最初に矢崎課長と、そのときは刑事局長も一緒のようだったのですが、山田氏が会ったのは、あなたの方から来てくれと、こういう連絡があったんですよ。
  94. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) これは、多分あの「裁判官」の映画化についてという国際通信が二十一日の日付になっておったけれども、おそらくこの通信はその前日か前々日くらいに業界の方に配られたと思います。そういう関係で、あるいはこういうことをごらんになって、最高裁で映画化について何か言っておるというようなことからだろうと思いますが、私の方から山田プロデュサーに来てくれと言うてやったことはございません。
  95. 亀田得治

    亀田得治君 それは、あなたは連絡しておらぬかもしれませんが、課長なり局長からしているんじゃありませんか、あなたはその日会っていないんだし……。
  96. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 私も、こもらへこの問題の質疑の通告のお知らせを受けておりましたために、その点確かめて参りました。そして、それはそうでないということが、私もその点を多少疑いを持って尋ねましたが、そうでないということがはっきりしました。
  97. 亀田得治

    亀田得治君 それから次に、あなたの方で、裁判中の事件、そういうものについて、これを映画化するのはおもしろくないと、そういう意見を先ほどおっしゃったんですが、そうい意見をお持ちになることは自由ですがね、相手が書物を書いたり映画を作ろうと、そういうことを考えている人に、最高裁の事務総長であるあなたがそういうことをおっしゃることは、私は行き過ぎだと思うのですが、あなたの意見が必ずしもそれは正しくない、そういう意見に対しても反対意見はある。まあそれは正当であるかどうかということは別として、最高裁の事務総長であるあなたがそういうことを製作者におっしゃるのは、はなはだ行き過ぎだと思うのですが、どうでしょう。
  98. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 私どもは、やはり日本の司法制度から考えまして、日本の司法制度が国民の信頼をつないでいくことに関しては、あらゆる点から検討いたさなければならないと思います。かるがゆえに、裁判に対する批判云々はすべていかないとは申しませんが、係属中の、ことにシーリアスな事件においては、やはり裁判手続において当事者が十分証拠を出し、主張をし、そして公開の法廷において証拠を提出して、公正なる裁判を受ける、その途中において、いろんなジャーナリズムとか、あるいはマス・コミュニケというようなものによって、裁判を一方的に批判するということは、私どもとしては、やはり裁判手続の進行上、また司法制度の面から見ましても、これは差し携えてもらいたいということを要望することはしばしばございます。
  99. 亀田得治

    亀田得治君 そういう要望は、本件については事務総長としておやりなったんでしょうか、個人としておやりになったんでしょうか。
  100. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 私は、直接このことに関係いたしましたのは、柴田君に会ったのは、個人として私はお会いしたことのついでにお話を出したのでありますが、むろんこの情報課長の関係は、やはり情報課長としてさような話をされたと思います。
  101. 亀田得治

    亀田得治君 情報課長のおやりになったことは、もちろん事務総長との連絡においておやりになっておるんでしょうから、総合して言いますと、最高裁としてそういう動きをしたと、こういうふうにとっていいでしょうか。
  102. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) むろん最高裁の一ポジションにある課長がそういうことをしたのは、それは最高裁の一職員としてしたと認めてよろしいのであります。
  103. 亀田得治

    亀田得治君 これは私非常に重大な問題だと思いますね、そういうことになると。ともかく先ほどもちょっと申し上げたように、憲法上認められた言論なり表現の自由、それを守るのが私ども最高裁だと思っておるのです。その最高裁がどうもこう、自分に少し虫の好かぬことをやるというようなことから、まあ理由はあなたの方はちょっと違う理由をおっしゃっておるのですが、裁判の公正を守るとか、そういうことをおっしゃっておるのですが、どういう理由にしろ、ともかく相手が書こう、表現しようとしておる。それはおもしろくない。しかもそれが日本の司法機構弄あずかる最南の場所なのです。そういう人がおっしゃれば結果は一体どうなる。結果というのは、たとえばこの映画を作るには、初めは東映との間で契約をして、東映が資金を出してそうして作る、こういう話になっていた。途中で明快が手を引いておるわけです。これは最高裁のそういう意向をくんでやっておる。これは東映のマキノ専務のお話を聞いてもはっきりしている。私は、そういうふうに最高裁というものが発言をされれば、そういうことになりはせんかということぐらいは予想できなかったかと思うのですが、その点どうですか。
  104. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 私どもは、言論の自由を圧迫したり、表現の自由に関与したりするような考えは毛頭ございません。ただ私どもとしては、先ほども申し述べたように、やはり日本の司法制度が健全な発達をするためは、いわゆるなまの事件に対する国民の批判というものは、よほど慎しんでやってもらいたいという気持は持っております。
  105. 亀田得治

    亀田得治君 その問題は非常に重要な点ですから、一番あとに一つ若干御意向を聞きたいし、私も意見を述べたいのですが、その前に、最高裁がそういう注意をお出しになれば、映画製作の過程において資金のかかることですから、何かこう障害が起りはせんだろうか、こういうことはお考えにならなかったかと、その点をお聞きしている。
  106. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 私の方としては、そういう点は別に考えてございません。ただあのような係続中の事件で、大衆に間違った印象を与えるのでは困るという点から、係続中の事件を映画に取扱うようなことはしばらく待ってもらいたい。こういう気持だけです。
  107. 亀田得治

    亀田得治君 お考えにならなかったというのは、私はちょっとふに落ちないのです。あなたの方の主観的な意図を聞いておると、とにかくやめさせたいという意図がはっきり出ている。その意図で東映の顧問弁護士に話をしているわけです。東映としてみれば、仕事はたくさんあるのだから、何も最高裁の人がちょっと苦い顔をするものまで好んで……、こういう気持になるのは当りまえです。あなたの方は事のついでにお話しになったと、こう軽く言っているけれども、やはりその気持でお話ししておるはずです。そうすれば当然これはやめさせるために話しているのですから、予想をしているのが当りまえじゃないのですか。予想しないというのはおかしいと思う。
  108. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 私の方は、結果としてその映画はやはり係続中の事件を取り扱わないようになること  は、それは要望いたしております。
  109. 亀田得治

    亀田得治君 だから従って、東映の顧問弁護士にそういうことをおっしゃったことは、やめてもらいたい、現代プロとの約束をやめてもらいたい、はっきり言えばそういうことになるのじゃないか。
  110. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 私はやめてもらいたいとまでは、よく記憶がありませんが、話したことはないのですが、ああいうことは困ることだということを裁判の面からいろいろ話をし、外国にもそういう例は、われわれは調べたがないということも話しました。
  111. 亀田得治

    亀田得治君 だから、最高裁のえらい人がそれだけのことをおっしゃれば、それは、一般の事業をやっておる人は、これは手を引いてくれと、こういう意味にとるのが当りまえです。しかしまあそこは意味のとりょうですから、あなたのお話しになったことを私ども正当に解釈していくようにすればいいのですから、この程度にしておきます。  そこで裁判中の事件に対して、いろいろ批判が出てくるとどうもおもしろくない。そのおもしろくない理由がいろいろありましたが、私は、全くこれは考えが違うのです。よく裁判の威信を保つとか、そういうことをおっしゃるのですが、裁判の威信は、やはりそんな批判なんかとめたって、これは高まりませんよ。どんどん批判さしたらよろしい。私は裁判の公開ということ自身が批判を求めていることだと思うのです。裁判の過程においてすでに。それをただ広げただけです。だから、そういうちっぽけな考えを持たないで、やはり裁判の威信は、ずっと裁判をしていく手続――なるほど日本裁判官は公平に、しかも能率的にやっていく。あるいは出される判決、これがだれが見ても納得がいく、こういうふうな実質に上って、裁判の信用、威信というものは高まるのでね、そういう批判を禁じてみたって、こんなものは少しも高まりません。逆に、現在の人の気持からいえば、逆効果があるだけでね、そんなことは。もうその点は、裁判中の事件に対する批判、いろいろな考え方が世上に出ておるのです。私はもう絶対に確信している。どんどん批判してもらったらいい。また、その批判によって裁判官の意見が変るものでもありません。裁判官は、法廷に現われた証拠、それによってがっちりやっていけばいい。裁判官を信じておったらいいことでしょう、どんな批判があろうとも。しかし批判の中には、法律専門家が批判するようなことじゃなしに、しかも何かぴんとくる批判もあるわけなんです。そういう批判は、大いに裁判官が自分の自由裁量で採用できるものはしたらいいわけでしょう。ちっとも差しつかえない。それが訴訟法を無視したような採用の仕方ではいけませんが、私は、そういう意味で、なぜ裁判中のものはいかん、裁判が済んだらいい。裁判が済んだ済まんによって、どうしてそんなに一つの線がぱっとできるのですか。こんなことは迷信ですよ。いやしくもお上が審理中のときに、者どもはだまっておれ、こういう考え方です。こんなもの、何も合理的なものではないですよ。最高裁の裁判官の中でも、ざっくばらんにそういうお考えを持っておる方もあるくらいなんです。私は、事務総長のそういう考えが最高裁の裁判官会議といいますか、そういう正規な意思決定をやった結果であるかどうか、こういう点をもう一度、重要な問題ですから、こういうところで発言された以上、これは記録に残りますからね、その点お聞きしたい。
  112. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 私のほうは、今申し上げたことは、別に厳密な意味における司法行政ではございませんから、裁判官会議にかけて発言をしたわけではございまません。しかし私どもとしては、なるほど裁判の批判に対して、それは批判も受けなくちやならない場合があると思います。訴訟が遅延するとか、あるいは非常な訴訟の軌道外のことを裁判所がやるというようなことには、どんどん批判されていいと思います。しかしながら、いやしくも当事者同士、検察官と弁護人と被告との間に、公開の法廷においてお互いに証拠を提出し、一方は黒といい、一方は白だという証拠を提出して、そうして厳格な訴訟手続において裁判官をして判断をせしむるというのは、おそらく現代司法の各国における根幹だろうと思います。これに対して、国民全体が、裁判官及び弁護士または検察官のごとき、十分な裁判に対する知識を持っておれば、これは問題はないと思いますが、やはり国民は、さような専門的知識は持ち合せていないのであります。それを、ただ一方的にのみ証拠をあげて、あるいは批評して、そうして大衆にアッピールするということは、もしその裁判の結果がそのようになった場合には、あれはああ言ったから、ああいう通りに批判したからなったのだ、こう考える者が多数あるだろうし、もしその反対の結果になった場合、その書物とか、あるいは宣伝に乗せられた人々は、裁判所という所は無茶なことをする所だ。ずいぶんひどいというようなことを考えられて、それがおのずから司法の威信に響いてくるということは、これは私どもとしては、どうしても守らなければならない立場にあるものだと、こう考えております。
  113. 亀田得治

    亀田得治君 そういう考え方が私、おかしいと思うのです。第一これは映画でしょう。事務総長はこの映画ごらんになったでしょうか。
  114. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 実は、不幸にしてまだ映画を拝見いたしておりません。
  115. 亀田得治

    亀田得治君 私は、これは非常に残念だと思うのです。先ほど事務総長が、正規の司法事務のことでもないから裁判官会議にかけたかった。そういうことでも私は、実は非常に遺憾だと思うのです。なるほど法律の上で規定された正規の司法事務ではないかもしれない。しかし、最高裁がこういう問題で何か発言するということになると、その影響するところはきわめて私は大きいと思うのです。有識者の間には、非常に大逆なやはり問題を起します。私は、それだけに、これはもう普通の型通りの司法事務よりも、むしろこういうことこそ裁判官会議にかけて、どうであろうと、ざっくばらんに御相談をなさって、そうして出た結論によって私は行動するのが正しいあり方だと思うのです。  そこでもう一つ、この映画を私は当然ごらんになって、お話をされていると思ったのですが、これだけ物議をあなた自身がまかれて、まだごらんになっておらん。私は、質問する以上は無責任な質問はできません。事は最高裁のことだし、私も、裁判官の地位というものは非常に尊敬しておりますので、しかし、尊敬するだけにまた責任も持ってほしいと思っておる、裁判官には。ちょっとやそっとで動かされるといういうな裁判官であってはならないと私は思っている。だからそれだけに、そういう気持を持っているから、質問するにはもちろん私もその映画を見ました。映画を見ておると、ああ、こんな映画なら、これはもう社会に非常に役立つと思いましたね。あの正木さんの「裁判官」という本は、何も日本のたくさんの人が読んでいるわけではございません。専門家の間では読んでいるでしょうし、またこういう問題が起きて、関心を持っている人は読んでいるでしょうがね。ああいうのが映画になっている場合に、映画として見ているだけですよ。最高裁の現実の事件との関連なんということは考えておりません。私自身もあの映画を見ていて、なるほど自分もいろんな、特に社会的な事件の弁護等にタッチするが、なるほどこれに類したようなことはあると、よく作ってくれたと、こう感じましたよ。現実にそれがどこにあるかということは別なんです。劇ですからね。そういう考え方を持っている警祭官なり検察官がまだたくさんあるのです、実際は。これはまた法務大臣自身が認めているのですよ、はっきりそのことは。私は、そういう気持があるということは、これはみんな日本の人はわかるし、民主化の不徹底な段階において、それを一つの劇として盛り上げてくる。これは当然のことじゃないですか。私もあれを見て本当に最高裁の事件との関連とか、そんなこと少しも考えておりませんでした。見ている間に、非常にそういう意味では、何と言いますか、社会の一つの大きな問題をえぐり出してくれたのだ、こういうふうに感じているのですよ。だからあなたもぜひこれはごらんになっていただけば、若干またお考えも私は必ず変ると思っているんですが、この点ごらんになっておらぬから、ちょっと議論になりませんけれどもね、どうなんですか。名前も全部違うし、映画になっている。映画そのものとして観賞していって、そんなに神経質にお考えにならなければならぬのかね。ちょっとそこ、想像をたくましゅうしてお考え願いたいと思うのですが、どうでしょう。別個ですよ事件と、映画ですから。名前もみんな違う。
  116. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 私どもは、フィクションの映画が出るなり、芝居が演ぜられるというようなことについて、別段関心も持っておりませんし、またどうという考えも持っておりません。しかし、この「真昼の暗黒」は、裁判官というものが映画化されるのだということは、新聞によっても拝見しましたし、また情報課長のところにたずねてきた人たちもそういうお話であった。従って先ほど申しましたような、くどくなりますけれども、申し上げましたようなわれわれの考える理由からして、この映画ば、現実の事件裁判として取り扱っているのだ、それが書籍の場合には、まだ影響するところは少いであろうが、それが映画化となると、非常に影響するところは大きいということで、私どもは心配いたしたのでありまして……。しかし、私はなはだ何で、一応この映画は、案内受けたのですが、たまたま出かけようとしたところが、衆議院の方とかち合ったために、行けなかったのであります。見ようと思えば、なるべく時間をさいて見られると思います。ただいまの御意見もありましたし、私もひまをみて一度拝見はしたい、こうは思っております。
  117. 亀田得治

    亀田得治君 ぜひ、いろいろな前提観念にとらわれんで、ごらん願いたいと思うのです。  そこでこの問題で、あなたの方から検事さんにもお会いになったらと言われまして、映画関係の人が平出検事さんですかにお会いになった。平出検事さんは、話を聞いたあとで、まあそれは、映倫の決定することですからということで、何もおっしゃらなかった。私報告を受けておるのです。私は、実は検事の方がけしからぬと言えば、普通はそうですが、裁判所の方はまあまあ、こうおっしゃるのが普通なんですが、どうも今度は逆になったような気がするのです。検事さんがそういうおうような態度をとっている。私は、映倫というものが現在民間のそういう映画関係の人の自主的な組織としてできているわけですね。自主的な組織として、行き過ぎたものは、幾ら自由といっても、行き過ぎたものは自主的に適当にあんばいしていく、こういう趣旨でこれはできている。私は、こういう組織こそ非常に大事だと思うのです。またこれを信頼しなければ、結局これは法律によると思想統制になるわけですから、この映倫の存在というものを一体最高裁ではどういうふうにごらんになっているのですか。あいつらあかん、こういうお考えでしょうか。
  118. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 決して映倫の存在を無視するような考えはございませんし、映倫に対しても、やはり係属中の事件について映画化される場合については、いろいろ御考慮を願いたい点があるのだということを情報課長が申し出ているくらいです。映倫の存在を無視しているようなことはございません。
  119. 亀田得治

    亀田得治君 もしそういうお気持であれば、そうしてまた、若干私とあなたと、公判中の裁判に対する批判という問題については、意見は違いますが、あなたのような意見を持つといたしましても、映倫の方にこっそりと、しかも、それも個人的な立場で御参考までにお話をしておく、これもちょっとおかしいと反論される方があるかもしれぬが、どうしても何か手を打たなければならぬとしたら、そんな程度ならまだこれはいいわけですね。映倫の存在を認め、またその価値というものをあなたが評価されるなら、またそうすることが正しいわけですよ、映倫自身の扱い方としても。どうしてそういうふうにできなかったものですかね。直接東映の人に聞こえるような、そういうやり方で、そのために問題が非常に大きくなってしまった。はなはだ私はまずかったと思うのです。どうお考えですか。
  120. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 何も私は、声を大にして映倫に申し出たり、あるいは東映の顧問弁護士に申し出たのではございませんが、世間がそういうふうに騒ぎ立てると言ってはぎょうぎょうしいですが、そういうように、多少裁判所が圧迫したんじゃないかとか、干渉したんじゃないかとかというようなことを言出したのです。これは私の方としては、むしろ意外とするところであって、私どもとしては、そういうようなやり方をもってどうしようというような考えはございませんでした。ただ、先ほど申した線から、係争中の裁判に対しては、一つ間違いの倣いようにやっていきたい、また一方的な資料だけで批判されては困る、こういう点は常に強調しております。
  121. 亀田得治

    亀田得治君 まあ私の方は軽くやったんだが、世間の方が何か騒ぎを大きくしたようにおっしゃるのですが、それは権力の座にすわっておると気がつかないのです、そういうことは……。権力者は、まあ軽い気持でおっしゃっても、対外的には非常に大きく響くのですよ、こういう思想的な問題は。私は、その点はなはだやはりうかつと言いますか、軽率であったと思います。  それで最後に、最高裁としてこれはおもしろくないという意思表示を現代プロの人になされた、このことですね。私は、これ、あなたが個人としておやりになったなら別ですが、最高裁としておやりになったということであれば、はっきりと、最高裁の名誉のために、またこういうようなことが前例にならぬために、取り消してもらいたいと思うのです。いかがですか。-
  122. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 先ほどの私のお答えがあるいは徹底しなかったかもしれませんが、最高裁としては、裁判官会議にかけなければ意思表示はできないことになっております。従って、裁判官会議にもかけてもございませんから、最高裁自体の意思表示ということは申せませんが、ただ最高裁の情報課長というポジションにある人がそういうことをやったということを申し上げただけの話であります。
  123. 亀田得治

    亀田得治君 裁判官会議にかけておらぬから、最高裁の意思表示ということにはならないということですが、しかし、事務総長あるいは情報課長の発言でありますから、これはやはり対外的には最高裁ですよ。だから取り消すについては、裁判官会議にはかけておらぬのだから、会議を開く必要はありません。だから実際に、自分の責任において発言をされた事務総長なり課長がお取り消しになれば、それでこれは白紙にかえるわけです。むしろ白紙にかえったって、このために起された非常に大きな損害ですね。こういうことになったら、邦画館にはこれを配給できないのですよ。松竹が配給を受けるという約束だった。それがだめになった。製作でもけちがつく、配給でもけちがつく。だから新宿でも武蔵野館……洋画館だけしか配給で巷ない状態になっているのです。非常な迷惑を受けているのですよ。私は、それだけのあなたにそういう主観的な意図はもちろんあったとは思いませんが、迷惑はかかっているのですから、適当な形でやはり意思表示を私はしてむらいたいと思いますね。意思表示をされなければ、とにかく昭和三十年のいつ幾日に最高裁の人がこういうことをおやりになった、歴史に残るわけですから、私は、はなはだこれはおもしろくないと思うのです。
  124. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 私は、この件に関して私の個人としての発言なり、あるいはまあ世間は事務総長発言ととるかもしれないが、発言をした情報課長のそのことについて、ここに取り消しをすべきことをしたとは考えてはおりません。
  125. 亀田得治

    亀田得治君 それなら、かようなものが今後もできた場合には、また同じようなことをおやりになるということですか……。それならそれでよろしい。私ども重要な問題として考えましよう。
  126. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 今後の問題について、これと同じ措置をとるかとらぬかということは、これはここで申し上げられませんが、私どもの方としては、現に係属中の事件に対する批判に対しては、その批判のあり方についてば十分な関心と注意とを今後も払っていきたいと思います。
  127. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私からも少し伺いたいのですが、五鬼上さん、どうか冷静に聞いていただきたいと思います。  私は、最近のこの裁判所に関する問題については、両方に考えさせられてる点があると思っているのです。私は、裁判官というものは、まあ一種の公務員で、真実を発見するなんという重大ね使命を負われることはとてもで誉ない。法廷に現われた証拠によって、有罪になれば有罪、証拠がなければ無罪、それだけのことをなさる程度の御身分でもあり、また待遇にほかならない。ところが世間の方では、それよりももっとずっと偉いもののように考えて、裁判官が真実を明らかにして下さるというふうに期待をなさっておる。私はしかし、自分自身でも、自分が好きで真実を明らかにしたいと思って、歴史家になったのですが、歴史家になっても真実はなかなかわからない。いわんや、俸給によって生活をしておられる裁判官が真実を明らかにするなんということは、とても期待するのは無理だ。公務員にそんな大きな期待をかけるということはできない。そういう意味では、私は、裁判所は法廷に現われた証拠だけに限定されるという趣旨に徹底されることに私は非常に期待したい。また国民の方も、裁判所に向って、証拠があるのかないのか、証拠があれば有罪。だからかりに衆人の見るところ、その人がかりに犯人であるとしても、証拠がなければ、裁判所は堂々と無罪になさったらよろしい。また、そういう態度裁判所がおとりになれば、国民の方でもだんだんにそれがわかって、係争中の問題などをそうじゃんじゃん取り扱わなくなるということになるのだろうと思う。ところが、最近の裁判所を拝見しておりますと、何だか知らないが、証拠があるのかないのかわからないようなものに、場合によっては死刑の判決をなさったりしているのじゃないかというような印象をお与えになる。そういう印象を与える意思は毛頭ないとおっしゃるでしょう。しかし、お与えになっていることは事実です。そこで、今のような点をよく前提においていただいて、次の点を伺いたい。  それは、第一は、先ほどのお言葉ですが、審理中の事件の映画化、そのほかいわゆるマス・コミュニケーションで取り上げることは好ましくないというふうにお考えになるお考え方ですね。このお考え方をかりに前提として、なぜ今それを国民の方で取り上げるのでしょうか。その原因はどこにあるとお考えでしょうか、それからまず伺いたい。
  128. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) ただいま、羽仁委員のお言葉の中に、証拠なくして有罪の判決をしたというような実例があるとおりしゃいましたが、それは、裁判の事実の見方、法律の解釈の問題もありましょうが、証拠なくして有罪の判決をしたというのは、私どもまだ裁判所の中におって聞いておりません。かりにこれは、まあ世間から見てどうも怪しいというような事件であっても、証拠がなければどんどん裁判所は無罪の判決をしております。私どもはそういうように信じております。  そこで今御質問になりました、なぜ裁判所は近ごろ批判が多くなったかという点でありますが、これは、一面においては、私は、戦後国民がやっぱり裁判所というものに対して相当関心が深まってきた、戦前より。この点は私ども、これはいいことであって、ますます助長発展さしていかなければ、ならぬと思うのであります。しかしそれと同時に、やはり裁判所の内部、裁判所自体においても、十分この国民が関心を持った期待にこたえていくように、私どもとしては行なっていかなければならないというのが、現実の裁判所全体としてもそうでありますが、現実の裁判自体としてもそうこたえていかなくちゃならない、かように私ども考えております。
  129. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 前段の部分は、今、事務総長がそういうふうにお考えになっているかどうかということを伺ったのではなくて、そういう印象を与えておる。まあ過去において、たとえばこれは、明治時代でしょうけれども、幸徳秋水先生の事件であるとか、あるいはその後の事件とか、証拠なくして有無となった裁判が多々ございます。そしてそういうものと現在の裁判とが全く関係がないというふうにおっしゃることもむずかしかろうと思う。また、最近相当の良識者が相当に苦心惨たんして調査研究せられた結果を発表しておられるところなどを見てもね、そういう印象を与えておられるということはお認めになった方がよろしい。そういうおつもりはないでしょうし、また証拠がないのに有罪にしたという覚えはたいと御自分でおっしゃるのはいいですけれども、どうも事務総長も長官も、まあ司法権に向って批評がましいことは差し控えたいのですが、かなりドグマティックなところがおありになるのじゃ拾いか。やはり相当に、私は名を一々あげませんけれども日本の一流の言論機関が長期にわたって、相当の名声のある有識階級が述べておられることなどについて一顧もしないというのは、一種のドグマティックということになるのじゃないか。また過去の日本裁判において、残念ながら司法権の独立なんというものはありはしなかった。そういうもののまだ今日残っている影響というものもお認めになった方がいいので、そうきれいさっぱりと、証拠がないのに、有罪にしたなんということはありはしない、あるなら言ってみろというよりしな態度では、やはりますます、私は、映画化とかマス・コミュニケーションとかが起ってくるのじゃないか。私は、今起っている問題が喜ぶべきことであるか、悲しむべきことであるかということは別として、そういうことが起ってくる原因というものが裁判所の方にもおありになりはせぬかということをまず第一に考えていただけないものでしょうかということを伺っているのです。  それから先ほどから、外国にも例がない、日本にも例がないというふうにたんかをお切りになりますが、最高裁判所事務総長がたんかをお切りになるのは、伺っていて決していい気持はしない。私は、最高裁判所というものは、もう少し品のいいものだと思う。長官が新年の裁判所なんかで、日本の隣の国になって道徳的な批判を加えてみたり、あるいは事務総長法務委員会の席上で、外国にも例がない、日本にも従来例がない、聞いたことがないと言われた。私は、やはりもう少し独断的でなく、最高裁判所らしいディスクリートな、慎しみのある態度をとっていただくことを心からお願いする。別にそういうことを批評するのでもないし、要求するのでもない。やはり最高裁判所らしい……私は、この間も最高裁判所へ伺って申し上げ九のですから、陰口をきいたのではないのですが、どうも最高裁判所は簡易裁判所といってははなはだ失礼だけれども、あまり最高裁判所という感じがしなくなった。これは、やはりそういうふうに感ずる方が悪いでしょう。これは、私も非常に自分がよろしくないと思って、自己批判をしておりますがへどうか一つ、そういう感じを、私ども愚かな者がそういうことを感じませんように、絶えず崇高にして慣しみ深い態度をとっていただきたい。外国に例がないのは、外国の裁判所がそういうふうに慎しみ深い態度をとっておれれるからではないかと私は思います。また日本に過去に例がなかったのは、裁判所が、司法権の独立じゃない、国民に対する抑圧の機関であったから、国民もおそれ入って、うっかりしたことを申し上げようものなら、この次にどんなひどい目にあうかわからないというように思うからです。最近こういうことが起ってきたのは、そういう理由から起きている。そこでこれは、辞を低うしてお願い申し上げるのですが、御反省を願えれば大へんありがたい。  第二に、司法権の独立と表現の自由との関係はどういうふうにお考えになっておられますか。相並ぶものとお考えか、いず木かが高いというふうにお考えか。
  130. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 私ども、実は表現の自由は憲法に定められたことでありまして、これを守っていかなければならないということはしょっちゅう考えておりますが、しかし表現の自由と、それから司法権の独立が、どちらが高いかどうかということになりますと、今ここで、こっちが高いとお答えするだけの資料とまた力もありません。十分研究いたしたいと思いますが、非常に相互比較がむずかしい問題じゃないかと思っております。
  131. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 三権分立というものが、その前提、その基礎となるものが人民主権であるということは、申し上げるまでもないと思いますが、しかし、旧憲法時代には、そういう考え方には立っていなかりた。従って今日なお、まだ司法権の独立というものの前提をなし、それより上に立つものとしての主権在民の趣旨が徹底していないところがあるいはあるのじゃないかというふうに考えられ、また心配されるっこの点は、これもやはり辞を低うしてお願いする次第でありますが、最高裁判所がどうか、三権分立の前提となり、基礎となり、その上に立つものが主権在民であるという趣旨を国民の間に徹底せられ、いわんや、御自身いやしくもそういうような重大な原則というものを軽くお考えになるような態度をおとり下さらぬことをお願いするものなのであります。やはりその主権在民の原則が現実に現われる現われ方そのものが言論の自由であるというふうに、機械的に言うわけにはいかないでし上うが、しかしながら、やはり言論の自由というものは三権分立の前提をなし、その基礎をなすものであるという面も考えていかなければならないのじゃないかというふうに私は思いますので、どうか一つ、いやしくも最高裁判所が言論の自由というものを侵すというような感じを、誤解にもせよ、国民の間に与えら出ることをどうか今後根絶していただきたいというふうにお願いをいたしますが、いかがでしょうか。
  132. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 主権在民の憲法を擁護することについては、これは最高裁判所といえども政府といえども、おそらく最善を尽して守っていかなければならないことと、かように存じております。
  133. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 審理中の事件について批判をするということは好ましくはいという問題につきましても、これは法的根拠はさらにない、また、もしこれに法的根拠を与えようというお考えがあるとすれば、そういう法律をまた作ってほしいというようなお考えでもおありにたるのでしょうか。前に、裁判所侮辱罪法という法律を作ってくれということを御要求になって、私は非常に驚いたことがある。裁判所が自分で侮辱されないような法律を必要とするのかというように、非常に驚いたのですが、ことによると、係争中の事件を取り扱っちゃいかんという法律でも作ってほしいというお考えが現在おありなのですか、どうでしょうか。
  134. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 前に、法廷の秩序維持に関する法律が衆議院法務委員会の提案として提案された際に、羽仁委員の御意見は十分拝聴いたしたのでありますが、当時、直接侮辱と間接侮辱と両方の法案が最初は出ておったのでありますが、結局最後にでき上った法律が法廷の秩序維持に関する法律というもので、いわゆる直接侮辱が制定されたのです。で、これ以上私どもとして進んでどういう立法をお願いしたいとかいうようなことは、今ここで、直ちに間接侮辱の点についても望むとか望まないとかいうことは、ちょっと申し上げかねると思います。
  135. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私は、そういうような法律を御希望にならないような裁判所になっていただきたいというふうに、心からお願いをするということにとどめておきますが、第三に伺いたいのは、この裁判所にかかる前の事件について警察がしばしば発表をなされますが、これに対して裁判所はどういうお考えをお持ちになり、従来どういう措置をおとりになったことがありますか。これを伺っておきたい。
  136. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 刑事局長が参りておりますから刑事局長の方から。
  137. 江里口清雄

    説明員江里口清雄君) 警察の発表について裁判所で何か別に特に措置をとったことはございません。
  138. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、映画芸術家が裁判関係する場合には措置をおとりになる、しかし警察が、裁判の審理中どころか審理以前です、その事件についてあたかもすでに真犯人であるかのごと誉発表をしばしばしている。それについて何の関心もお持ちにならないということは、私ははなはだ失望にたえないのですが、どういうものでしょうか。
  139. 江里口清雄

    説明員江里口清雄君) 裁判進行中の事件について、裁判所としては事実の存否について批判あるいは意見を発表することは、裁判の独立あるいは公正の上からおもしろくないという意見を持っております。警察の検挙等で検挙されたという事実を警察が発表するということ自体には、その事件が起訴になるかならないかまだわからないことでございますし、その点については別に措置をとろうということも考えておらないのであります。
  140. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 司法権の独立を尊重してこれ以上別に強く申し上げませんが、しかし二つのことを考えていただ巷たいと思う。一つは、人は有罪とされなければ無罪であるという原則は、今日最高裁判所がこれを明らかにする努力をなさる責任のあることだと思うのです。日本にはやはり古くからの習慣で、嫌疑を受けて警察が逮捕するあるいは調査する、そうすると真犯人であるかのように、現に敬称も省いておる。かりに僕が治安維持法でひっかかった場合にも、それまでは大学教授であったかもしれないが、治安維持法の嫌疑を受ければ直ちに、羽仁五郎赤化をはかる、というふうに新聞に書かれる。それはだれが書かせるかというと、警察が書かせる、あるいは検察庁あるいは政府が書かせる。当時裁判所は何もそれについて悩まれなかったようですね。しかし、現在はそういうものでいいかどうかということですね。それでここに私は二つの考え方がある。というのは、ある意味においては審理にかかる前こそ重大です。裁判官に予断を与える。そうして先ほどから審理中の事件をマス・コミニュケーションによって取り上げることはおもしろくないということを事務総長からたびたびおさとしを受けましたが、やはりこれもマス・コミニュケーションによって警察がやっておることです。独立プロなり東映なり何なりという映画会社がマス・コミニュケーションを使ってやっている影響よりも、警察が新聞を使ってやる方がはるかに重大です。だから私はここで二つの点を考えていただきたいと思うのは、やるなら両方おやりなさい、やらないなら両方よす。一方だけやっていれば決して裁判所は公平だという感じを与えませんよ。やはり行政権の味方である。司法権の独立なんということはちゃんちゃらおかしいと言わざるを得ない。映画会社がやればすぐ文句をつける、警察がやればおとなしくしている、これはやはり司法権が独立していない。司法権は国民よりも行政権、警察権の方を信用している。それだから警察が持ってきた自白を任意の自白だなんて言って判決をしばしばなさる。どちらをおとりになるか一つ研究していただきたい。今お答え願えればそれはなおありがたいが、次の機会に向ってもけっこうです。
  141. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) そういう御意見は拝聴いたしますが、ただ、私どもは警察がやっていることにまでどうだこうだということを申し上げているのではなくて、要するに現実に裁判所へ来ている事件に関して、国民に対して裁判所の信頼を失わしめるような、そういうマス・コミニュケーションがあってはならない、こう考えているだけであります。
  142. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 警察に向って裁判所はとやかく言うつもりはないとおつしやるならば、映画会社に向ってもとやかくおっしゃるのはおやめになった方がよろしい。弱い者の方には入ってゆく、強い者の方には入ってゆかない、そういう卑法な態度はよした方がいいと思う。
  143. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 決して言葉を返すわけじゃないのですが、私どもはある一定の範囲で、裁判所に来た事件についてのマス・コミニュケーションは、これはどこでやっても私どもとしては一方的の資料によって世間に誤まった観念が伝えられることについては、それは警察であろうとどこであろうと私は要望いたすつもりでおります。ただ、今おっしゃったのは、警察から裁判所へ来るまでの事件について、裁判所としてはこれは手は出しません、こう申し上げるだけであります。
  144. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 これ以上あなた方と議論してもしようがないから申し上げませんが、その点はよくお考えください。審理中の事件よりも審理前の事件について国民並びに裁判官に予断を与えるような、そういう警察の行為がマス・コミニュケーションを通じて行われているのは日本の非常に悪い弊害です。これはあなたの言葉をまねするわけじゃありませんが、諸外国にその例を見ない、わが国にのみその例を昔から見るのです。これは私はあまりいいことだと思わない。私どもも努力いたしますが、最高裁判所も、もし裁判の独立という点に御関心があるの噂したら、一つ御研究願いたいと思うのです。これは昔のように予審判事制度をお作りになる御了見ならば別ですが、そうでないということになれば、警察でやっている事件はまだ裁判所に来た事件ではない、手は出せない。そちらの方はたいへんリゴラスです。よく守られる。しかし映画会社の方はそうではない。非常に損害を与える、また非常に社会に不安を与えるというようね問題は、これば事実問題ですからディスクリートの態度をおとりになるなら、両方に対してディスクリートの態度をおとりになる。また司法権の独立を守るという意味で、マスコミについていちいち意見を出すのは、なにも裁判所に来てない事件に対して手を出せというのじゃない、警察でやっている事件に対して裁判所が手を出すことはルールに従ってできない。しかし一般に裁判所に来ない事件について警察がなさる発表というものには、日本の古い悪い習慣がかなりまだ今日残っている。それについては裁判所が御関心をお持ちくださるということくらいはお願いできるのじゃないですか。
  145. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) これは裁判所といいますか、私個人のお答えになるかもしれませんが、そういう起訴前の事件について、いろいろな国民にすでに有罪になったような印象を与えるということは、私は日常の新聞を見て、私個人としては実になげかわしいことだと思っております。
  146. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうですが。そういう点をなお一そう御研究くださいまして、ちょうどいわゆる偶然映画会社の顧問弁護士がお見えになったように、偶然警察関係の方とお会いになることもあるでしょうから、そういうときに一つ個人的御意見として述べておいていただきたいと思うのです。  最後に伺いますが、やはり五鬼上さんなり最高裁のお考えになる司法権の独立という点については全く一致するわけですが、ただ、それが理想を実現する過程において、国民の自由の意思によるのか、それとも強制によるのかということは、これは私は二つの大きな分れ道だと思う。現在日本の司法権の独立が実現されていないのです、いろいろな意味で。ですから、それを実現するというのがわれわれの課題である。共通の課題です。そちらの課題でもあるし、われわれの課題でもある。その課題を実現するのに、それが国民の自由な意思に基いて実現されるような方向に私は進むべきものだと思う。そこにいやしくも強制的なものを感じさせるような方向にいってしまったのでは、私はその課題というものは永久に実現できまいというふうに、心配をいたすのです。日本でば慣習によってそういうものができてくるということを待たないで、あるいは法律によって、あるいは強制によってそういうものを作り上げようとする悪い習慣が非常にあります。小選挙区制もそうだろうが、司法権の独立の場合にも、慣習によってそれができてくる。それにはお互いにいろいろな不満もあろうが、しかし同時にお互いに尊重して、司法権の独立の側から言えば言論の自由は必ず尊重する。言論の自由の方から言えば、あくまでも司法権の独立を尊重する。そういう自由の意思に基いてこれはいくべきもので、司法権の独立の方から言論の自由の方へ手を出す、言論の自由の方から司法権の独立の中へ手を突っ込んでいくというような方向にいくことは非常に不幸な行き方だと思うのです。先ほど亀田委員の質問に対するお答えの中にもありましたが、この際率直に、別にわれわれが裁判所に向ってお取り消しを願うという権限もないのですが、どうか一つ今後、ただいま申し上げたように、司法権の独立が自由の意思に基いて実現されるような方向にいっていただきたい。従っていやしくも強制を感じさせるような方向へ持っていくということでなくいっていただきたい。そしてやはり慣習を作っていくという方向でいっていただきたい。あるいは法律を作るとか、あるいはだれか呼んで話をするとかいう方向でなく、相互に自由な意思でもって尊重するように、今回のような事件がまたと起らないように御尽力を願いたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  147. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 司法権の独立のためにいろいろ御意見拝聴いたしまして、まことにけっこうな御意見でございます。私どもも司法部に職を奉じておる一人として、日本の、ことに三権分立のもとにおける司法権の独立については、あらゆる面からその独立の慣習を進めるために努力いたしたいと思います。
  148. 亀田得治

    亀田得治君 最後に一言申し上げておくのですが、まあさっき私取り消してくれと、こう言ったものですから、いささか角が立ったようですが、私ども心配しているのは、やはり今後のことなんです。物事というものは何か初めは小さいことのようですが、だんだんそれがこう大きくなっていくのですね。いろいろな弾圧なりそういう経過というものは常にそういうものです。初めからそんなに大きな弾圧というものばありません。徐々に来る。だからそういう意味で私ども今後のことを非常に心配しておるのであって、あなたのような地位にある人の言動というものは、非常にやはり慎重にお願いしたいと思います。個人的に裁判中の事件についての批判の問題、それについてあなた自身が論文を書かれる。われわれも書くかもしれない。そういうことはお互い自由であっていいわけです。ただ具体的に書物とかあるいは映画製作とか、そういうことが出てきた場合に、そのことができないようになるような結果を来たすことは、ちょっと行き過ぎになるのではないか。またそういうことが逆用される。そういう点を非常に心配しておるのであって、こういう点は十分一つ御了承願うようにしたいと思います。
  149. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) お言葉よく了承いたしました。私どもも先ほど申しましたように、何とかこの裁判所が国民の信頼をつないでいきたい、国民の信頼にこたえていきたい、こういう気持からいろいろねことを措置しておる次第であります。今後もやはり司法権の独立に向ってあらゆる面から検討を進めたいと思います。
  150. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ちょっと速記をやめて下さい。   〔速記中止〕
  151. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) では、速記をつけて下さい。他に御発言もなければ、本件に関しましてはこの程度にいたします。     ―――――――――――――
  152. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 次に、山形県における検察官の不当行為事件に関して御質疑がありましたら御発言を願います。
  153. 亀田得治

    亀田得治君 時間が大へんおそくなりましたが、しかし政府側においても御用意下さっておるはずですので、また詳細なことは次回にいたすかもしれませんが、一応基本的な点だけ御質問をいたしたいと思います。  問題は二つあるのですが、そのうちの一つは、昨年の九月二十三日に山形県の鶴岡市所在の佐藤長治郎、この方が酒税法違反で起訴されました。それから昨年の十月六日にその娘に当る、これは結婚しておりますので姓が違いますが、娘に当る斎藤正子といろのが起訴されました。十月十七日に佐藤長治郎が有罪の判決を受け、十一月十八日に正子の第二回公判が行われる、こういう段取りになって参りました。ところが、ちょうどその二日前の十一月十六日に佐藤長治郎が急に死亡したわけです。で、本日お聞きしたい一点は、この死亡の問題です。私ども調査によりましても、佐藤長治郎が酒税法違反をやっていた、まあ密造ですね、密造というか、法律に違反して酒を取引していたということは事実のようです。ただし分量等については若干自白と違う点があります。ところが斎藤正子の方は、これは全然関係がないのです。それで従ってまた自白もいたしておりません、正子は。供述調書が自白になっておらない。結局父親の佐藤長治郎のしゃべったことだけで起訴したわけなんです。元来この佐藤長治郎というのは若干頭もよくない方なんですが、拘置所におる間に、親戚の小使で阿部という人が拘置所におるのですが、これはともかく検事さんの言う通りにした方が早く出れるぞということで、しゃべらしておるわけですね、検事に迎合して。しかし長治郎がやっておることはいたし方ないのですが、その長治郎のしゃべったことだけを理由にして今度はほかの家に嫁に行っておる正子を逮捕し、そうしてまたこれを起訴したわけです。そのためにこの長治郎が非常に苦しんだわけですね、十一月十八日に第二回公判にたぶんこれは証人に出ることになっておったはずです。急に心臓麻痺で死んでしまった、こういう事件なのです。で私はこれは明らかに農繁期中にこの純朴な百姓を逮捕して、そうして強い調べをして結局その結果と私は思う、その死亡を私見ておるのですが、これはおそらく検察当局においても、正子の事件の証人として出そうとしていた人物ですから前後の事情等をお調べになっておると思うのでありますが、一体どのようにこの死亡というものをごらんになっておるかこれを一つ聞きしたい、これが一つ。  もう一つは、こういう程度の犯罪容疑でいきなり、しかも農繁期中、しかも一人の方は野良仕事をしておる最中のところをいきなり逮捕していく、こういうことははなはだ私は行き過ぎた逮捕だと思うのです。この点ですね、そういう意味でこの検事の行動ははなはだ私おもしろからぬとこう思っております。少し地位のある人ならばおそらく酒の取引をちょっとやった、そういうことでいきなり逮捕されるということは私はなかろうと思う。あるいは検察なり警察の常識としては一般的かもしれませんが、その一般的というのがはなはだ疑問なんですね。しかもその父親がそれを苦にして死亡するまで結果がなってきております。それでこの問題を取り扱ったのは鶴岡の検察庁の三浦副検事、従来副検事については問題があるのですが、その三浦副検事ですが、これは私、通告をしておりましたから、あなたの方でお準備をされておると思いますが、どのようにこの事件をごらんになっておりますか、一応お聞きしたいと思ます。
  154. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) お尋ねの佐藤長治郎の件につきましては、本人は昨年七月十三日酒税法違反の事実で、鶴岡税務署収税官吏から証拠隠滅のおそれがありとして、山形地検鶴岡支部に告発されたわけであります。同支部では三浦副検事が係となりまして、ただいまお話のように同年九月十二日に本人を逮捕し、取り調べをいたしたわけであります。齊藤正子なるものから密造酒玉石余を買い受け、譲り受けたという事実が明らかになりまして同月の二十三日に公判請求し、同人に対しては十月の十日に裁判所から保釈の決定がありまして釈放になっております。その後十月の十七日に本人に対して有罪の判決があった、かように相なっておるわけであります。この税務署からの告発は、普通の場合でございますと、御存じのように通告処分というふうなものを前提としてなされるわけでございますが、国税犯則取締法十三条でございましたかの規定によりまして、証拠隠滅等の事由がありましたときには、その手続きを経ずして直接に告発するというふうな関係にあるわけでございますが、そういうふうな事案は、本来申せばその際に告発の直後にそうした事情にあるならば、直ちに取り調べを開始すべきであったのでありますが、選挙違反等によりましてその間若干の日を経過し、農繁期という本来われわれとしましても農家の方々をこういうようなときに身柄を拘束するということは、必ずしも当を得たものとは思わないのでありますが、その際に取り調べさせざるを得なかったというふうに考えております。そうして検察庁の取り調べが始まりましてから通謀、証拠隠滅のおそれがあるということから本人を逮捕して取り調べたわけでございますが、先ほど申し上げましたように、十月十日に保釈の決定がありまして、その約一ヵ月後の十一月九日に本人は鶴岡市内の医院で初診を受けまして翌日手術をいたしましたが、十日の午後七時に死亡しております。病名は急性膵臓盲るい死というふうなものでございまして、病気としましては急性のものであったわけでございます。九日の午後十二時に診察を受け翌十日に手術をし同日の午後死亡した、こういうことになっております。従いまして保釈後相当の時日を経て急性的にこの死亡というものが招来されたというふうに考えられますので、この身柄拘束とは関連のないものであるというふうに私どもは思っております。
  155. 亀田得治

    亀田得治君 こういう農繁期中に逮捕された点については若干必ずしも適当でないかもしれぬというような御意向もありましたが、しかし捜査の必要上逮捕したこういうことです。しかしこれは私もっとそういう点はよく検討してもらいたいと思うのです。もう一つは死亡が身柄の勾留と関係がない、こういうふうにおっしゃるのですが、私はもう直接の関係があるとは断定いたしませんが、関係ないというような断定もこれはちっと即断すぎるのではないか。ともかくこういう事件が起きるまではそんな、もうあの人は長くないかもしれぬというように考えられた人では全然ないのであって、何といったってこれはともかく普通のお百姓さんがばっと通捕される、有罪判決を受ける、また自分のかわいい娘が起訴される、しかもその娘からその酒はとってきたのではない、これば娘が頑強にそう言っている、初めから。その娘まで裁判になっている。これはあなた関係がないということは全然言えませんよ。これはやはり十分、人権擁護局長も来ておられますが、こういう点の調査はなかなかむずかしいですけれども、しかし常識的に見た場合には、あの三浦副検事が殺したのだ、これはみんなそう言っておりますよ、あの辺では。そういう意味で現地からの報告というものは、やや自分に都合のよいように一応来るのですが、課題として一応検討願いたいと思う。  もう一つはそういうことがありましたので、昨年の十二月三日に日本農民組合の山形県連合会の第八回大会が開催された。その際に鶴岡検察庁の三浦副検事並びにその上役である渡辺検事、この罷免要求の決議をしたわけです。ともかく自分たちの仲間の農民を実際上殺したんだということで罷免要求の決議をした。そこで山形県連の書記候補である高橋和夫、それから組合員の粕谷茂太郎、この二人の人がポスターを三百枚作ってその辺に張りめぐらしたわけです。そのポスターには「人権無視する悪代官渡辺検事、三浦副検事を罷免せよ、不当な圧迫を受けないために、」こういうポスターを作って、これは三百枚、そんなによけいでは倣いが張ったわけです。ところが鶴岡検察庁はこれが名誉棄損だ、その疑いありということで日農の山形県連の事務所を強制捜査する、そして前記の二名をいきなり逮捕したわけですね。これは私もうはなはだもってけしからぬ事件だと思うのです。こういうことは大体ポスターを作るのですからね、ポスターを作るのですからあの人はちっと悪い人だからやめてもらおうなんて、そんなポスター作つたってポスターになりませんよ。この辺のどこのポスター見たってその程度の表現というのはどこにでもあることで、こんなことが名誉棄損になるのであれば、毎日私ども国会で名誉棄損で訴えられるかもしれぬですよ。昨日の羽仁さんでしたか、鳩山さんをネロにたとえておっしゃった。これは形容詞でね。こういうことがわからぬような非常識な検察庁では困るんですよ。しかもその日農の県連の大会で決議をして、そこの常任書記が張っておるんです。それがほんとうに名誉棄損になるとしたって、犯人はわかってるんじゃないですか。その紙には責任者も書いてあるだろうし、大会で決議してやってるんだろうし、そんなものをいきなり逮捕なんというととはもってのほかなんですよ。だから私は特に、これがあんまり格好が悪くなって起訴をしとらぬらしいです。早く起訴してくれと言うてこっちは頼みにいってる。これが逮捕で透るような事件であるかどうか、早く起訴してくれと言ってるんだが、起訴せぬらしい。そこで私ね、この二人の検事というものは、これはともかくこういう国家の権力をあずけるのは適当じゃないと思う、こんなばかなことをやるのは。このことの報告はあなたの方に来ておるかどうか、来ておるとしたらこういう点はどういうふうにお考えになっておるのか、まずお伺いしたい。
  156. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) お話の件につきましては、ただいまもお話がございましたように、昨年十二月十五日、鶴岡市内の電柱等七十五ヵ所に「人権無視する悪代官渡辺検事、三浦副検事を罷免せよ、不当な圧迫を受けないために、」とガリ版印刷の半紙大のビラが約百十九枚貼付、掲示された。で、鶴岡支部検事渡辺才源、副検事三浦長次に対して公然事実を摘示してその名誉を棄損したものである。この犯人と申しますか、やった人は日農事務所の粕谷某という人で、そのビラは日農の山形県連の事務所において作成されたということが認められましたので、裁判所から同人の逮捕状それから事務所の捜索差押令状を得まして同日執行したわけでございます。で、事務所に参りました際に粕谷がおり、右差押を執行中、日農事務員の佐藤清、これが同事務員高橋和夫なるものがビラを印刷したと、こういうふうに申しましたので高橋と粕谷を鶴岡署に出頭させまして取り調べたところ、いずれも事実を認めたわけです。粕谷を逮捕し、高橋を緊急逮捕し、その高橋につきましては同じ日に正式に逮捕令状の発付をみたわけです。その後取調べの結果直橋義雄というのが印刷及び貼付に共犯関係があるというようなことが明らかになりましたので、同人を取り調べたのでありますが、これは逮捕をせずに粕谷と高橋和夫も翌十八日には身柄を勾留せずに釈放したとこういう事案でございます。本件につきましてはその後鶴岡支部で取調べをいたしたわけでございますが、山形地検より仙台高検に対してその処分について請訓中であり、いまだその処理をしていないという状況にございます。
  157. 亀田得治

    亀田得治君 そこで私はあなたの方の御見解を聞いておるのです。その報告は私の聞いておるのと若干違いがありますが、大体同じですが。そこで事実を認めて、そして県連の常任書記等をしている人がそれを張ったと、悪いと思っていないのですから。だからこんな人を一体何で逮捕するのか。刑事訴訟法の逮捕の条件はただ事実があれば逮捕できるというのではないですよ。事実はあってもしかし逮捕しなければならないという必要性がなければだめです。いわんや事実を認め、そしてどこかへ逃げていくというわけではない。れっきとした日農県連の書記です。それを何でこの人を逮捕する。まず名誉棄損するということ自身がおかしいのですが、どうお考えですか、あなたの方で。
  158. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) おそらくはその場合に検事といたしましては関連する者か数名あるという場合には、その場所において一応認めたといたしましても、その共犯関係等について十分捜査をする必要があるということで一応逮捕したというふうに考えております。その後において本人たちの言うことは非常に明らかであるということで、勾留せずに釈放したとこういうふうに解しておるのであります。
  159. 亀田得治

    亀田得治君 だからそういうことが非常識なんです。日農の県連の大会で決定して、そしてその決定に基いてこれは断然書記としてはやらなければはらないことです、決定があれば。だから都合によっては上林代議士県連会長として来てもらって事情を聞いてもいいし記録に載っている。だから私はこういうことは全く私は、逮捕の問題にしては非常にやかましいのですが、こんなことはもう常識だと思うのですがね、こんなことで逮捕するのはいかんと思う。とういう検事だから最初に申し上げた農民を殺してしまうようなそういう苦しみをやはり与えるわけです。だからこれはよく実態を、ただあちらからの報告だけでは止しに実態をお調べ願って、私はこれはもうビラに書いてある通りに不適当な悪代官だと思うのですよ。だからそういう点を徹底的にお調べになって、悪い者は悪いとされることによってやはり検察庁というものの信用も高まってゆくと私は思う。だからこういう点を一つ、今日は私は注文しておきます。時間もありませんからいずれの機会にその後の模様をお聞きしたいと私思います。
  160. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 関連して。これは前に同じ山形地検の鶴岡支部で知事選挙のときに関連して、小学校の先生が一年生と三年生と三年生と、まず小さな子供に向って濃茶違反をなすったという疑いでもってやはりこの鶴間地検が活動された、それでその証拠がないというので、七つ八つの子供を証人尋問なすって、子供は泣き出してしまったという事件を私は聞いて非常に驚いた。これは問題は選挙法なんですけれども、やはり教育二法が関係していることですね。つまり教育を通じての選挙違反というふうな政治活動というふうな考え方が、選挙法の方に加わってきて、それで問題は選挙法だけれども、それで七つ八つの子供を証人喚問、これは違法じゃない、そのときはどなただったか、花村さんが法務大臣で、子供を呼ぶのは違法じゃない、選挙違反は罪万死に値するとおっしゃるから、選挙違反と言ったって花輪をやったとか、ごちそうしたとかそういう問題じゃない、その教室で、あしたは知事の選挙がある、こういう二人の方がおられるという説明をまあしたに過ぎない、おそらくはこの七つ八つの子供がうちへ帰って、先生がそう言ったから、お父さん、お母さん、うち中の人を集め、家族会議を開いて、あしたはこの人に投票せよなんという力はないですよ、子供が。先生だって七つ八つの子供に目的のはっきりした選挙違反行為をやるはずがないのです。これは非常識だ。しかもそれを法廷に呼んで泣き出させる、ところが花村さんははなはだあいまいであったので、当時文部次官をしておられた寺本さんに意見を聞いたら、そういうことははなはだ好ましくない、教育の神聖を害する、七つ八つの子供をして、恩師に対して場合によっては不利な証言をしなければならない、あるいは恩師に対する自分の情愛に立てば、偽証をしなければならない、恩師に対する自分の真情に立つか、それとも偽証するか、おとなでさえ判断に苦しむような立場に七つ八つの子供を立たせることは、どうかやめていただきたいというふうに、文部次官が政府を代表されて答弁された。私はこれは法務省の方でもお聞きになって、その鶴岡支部が検察の威信を高め、また国民の信頼を得られるように適当な善処をせられたことだというふうに大へん御信用を申し上げていたんですが、今亀田委員の聞くところを伺うとその後ます表す検察の威信を地に落し、国民の信頼を破壊しているというように判断せざるを得ない。私はこれは識見の高い政務次官も聞いていて下さいますので、必ず善処せられることと信じますが、この際政務次官に一言伺っておきたいのは、今のような検察官や警察官の職権乱用の規定ですね、それが故意または過失によら倣い場合には、職権乱用にはらないという現在のあり方は、はなはだ私は手抜かりだと思うのです。法務当局の最高のレベルにおいては、必ずや御研究下すっておることと思いますが、いかがでございましょうか。
  161. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 御同感でございます。私も実はこの調書を見まして、これは二年生と三年生であります。よほど小さい子供であります。その小さい子供を証人に検察官の方の側からも呼んでおりますが、しかしまた弁護人の側でも十七名の子どもを証人に呼んでいるのです。(「それは検察官が先に呼んだからしようがない」と呼ぶ者あり)両方が十九名と十七入を呼んで、二年生、三年生の小さい子が来た、そして問題は候補者である誰に投票するように父母に話せとこう言われたということのようでありますが、この記述によりますというと「尋問は、わかり易く、温和な言葉遣いでなされ、児童は殆どおびえた風を見せなかった。質問に対しては、はきはきと答えるものと、首を上下左右にふり態度により答えるものもあった。証人のうち女生徒一人が『うちへ帰えってお父さんやお母さんに話したら、お父さんらはどう言いましたか。』との問に対し、『子供が選挙のことを話すものではない。』と叱られたと言って涙を流した者が一名いた。」とこういうことでございまして、検察当局としてもこの児童、ことに小学校の二年生、三年生の者を証人として喚問することは、法律上かりに許されるとしても私はおもしろくないし、書証について異議の申し立てがあったからやむなくこの処置をしたと、こうありますが、寺本君の言う通りに、私はまことに遺憾なことだと思うのです。今後どうかこういう不祥なことがないようにいたしたいが、同時に学校の先生方も、二年生、三年生の子供たちにそういうことを言うて示唆して、そうしてうちに帰って言えというて、子供を泣かせるようなことをする先生に対して、私は少からざる遺憾を感ずる。先生方もこの態度を改めなければいかん、そうして子供を泣かせて裁判所まで引っぱって行って、これは温海から鶴岡の支部ですから相当あるのてすが、そういうことをする先生方も近ごろよほど行き過ぎほんです。こういうことについては深く先生方に反省を求めたい、子供を愛する者はそういう態度をとっちゃいかんと思う、御了解を願いたい。
  162. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いやいや伺っているのはそういう点を伺っているのじゃない。法務政務次官として、その検察官や警察官が、故意または過失によらない場合の職権の乱用というものは放っておいでになるつもりかどうか、それを伺っているのです。
  163. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 決して放っているわけじゃございませんけれども、しかしこれは合法的であることは間違いない。これは違法とは思われない。ただし行き過ぎであるとは思います。従って法務大臣もたびたび、これは私来てから数次訓辞をしまして、厳に行き過ぎを戒めております。極力罪を作るのじゃない、極力行き過ぎがあってはならない、検事は信頼せられて、からだから後光のさすような存在であれとだいぶ言っておりますので、今後は極力こういうことのないように努めたいと思います。
  164. 亀田得治

    亀田得治君 今問題になっている事件の担当検事は、先ほど申し上げた渡辺検事ですね。ですから私はこの点もう少し突っ込んで御調査していただいて、やはり不適当なら不適当なだけのやはり処置をしてもらいたい。で聞くところによると、この二人の検事さんも、ちょっとこうやましい、心にやはり恥じるのてすかね、何か公式の会合にはしばらく顔を見せなかった、このくらい言われているのです。だからそれではこれはもうだめですよ、そういうことでは。人権局長の御意見もお聞きして、これで終りたいと思います。
  165. 戸田正直

    政府委員(戸田正直君) ただいまの問題は初めてお聞きいたしましたので、十分これらについて調査いたしたいと思います。
  166. 長戸寛美

    政府委員長戸寛美君) 私どもも、事件の捜査に当りましては任意捜査が原則てあることはもちろんでありますから、できるだけ身柄拘束ということは、戒慎するというふうにすべきものと考えているわけであります。この事件に一番最初お話のありました佐藤長治郎の件につきましては、これは亀田委員調査になられたことと思うのでございますが、その妻女の米代という人も最初の呼び出しのと巷に出ているわけでありますが、一才の子供を連れて出て来ている。それに対して一応逮捕状は出たのでございますけれど、も、その執行は取りやめている、こういうようなことがあります。これはむしろ当然でございますけれども、私としては警察官が相当の配慮をした証左てあるというふうに考えたいわけであります。なおその場合五才と二才と一才の子供を連れて来ている、そういう場合は、待たせる場所その他適当の配慮をしたかどうかということを私どもとしては関心を持っておるわけでございます。本省といたしましては、検察官が、いやしくも検察官である以上捜査は捜査として徹底してやるべきでありますけれども、身柄の拘束に行き過ぎることのないように、また取調ぺ方について行き過ぎがない、とにかく一般の常識に合った良識のある捜査なり取調べをするようにということを大臣もしばしば言われ、われわれとしても注意をしておるわけでございまして、この点は一般的な問題として御了承を願いたい、こういうふうに思うわけでございます。
  167. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ただいま本件に関しまして松原政務次官より検察官の職権の乱用は厳に慎しむべきことを強調されました。また亀田委員よりは渡辺検事、三浦検車に対しては善処されるよう御要望がございました。政府においても善処されますことを強く委員長といたしましても希望いたします。
  168. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 検察官も大いに自省しますが、学校の先生の行き過ぎも大いに一つここでは問題になったということもどうぞ御記録になっていただ氏。たい。
  169. 高田なほ子

    委員輝(高田なほ子君) 委員長に対する御要望がございましたが、法務委員長として、これは文部委員会の方の問題でございますから、御意見は御意見としてお聞きいたすことにいたします。
  170. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その点については申し上げないつもりでしたが、次官が重ねておっしゃるからやむなく一言申し上げざるを得なくなってしまったのですが、教育に識見の高い次官としてのお言葉とも思えない節もあるので、私の誤解であろうと思います。やはり法は、実害がある、そして証拠のあるものについて発動せらるべきなんです。ところが教育二法というように、教育というのは言論ですから証拠がないのです。事実そのために子供を呼ば低ければならないようになる。私はこのいわゆる教育二法、今の二法じゃない前の二法案のときにも法務委員会でも申し上げたのですが、つまり言論によって先生が子供に向って何かやる、子供に金をやるとか、呼んで一ぱい飲ましたとかあるいは何とか世間のうわさに言うような、花輪をパチンコ屋へ贈るとか、そういうことを先生がなさるとか、それは実害があり証拠もあるから子供を呼ばなくたってできる。けれども先生が口でおっしゃることは、昔教育刺語を幾らしょっちゅう教えたって子供は一つも実行しやしない。先生が教えることをその通り子供は実行するわけじゃない。五円くれたとか、百円くれたとか、花輪をもらったとかいうことならばそれはあるかもしれません。そこには多少の違いがあると私は思うのです。証拠のないところに法の取締りをやろうとすると、今のような小さい子供を呼ばなければならなくなると思う。私は同時に、政務次官政務次官としてではなく、教育者として教育者に向って期待をされると、その御期待に対しては全く同感ですけれども、これはやはり先生方が御自重下さるということであって、それに直ちに検察の手を加えるということによって教育が高くねるか低くなるか。かえって先生方は非常におそれてしまって、それで先生方は非常に、何というか憶病になってしまう、政治については何も言わない方がいい、選挙があるなんというと、また選挙違反をやったのではないかと疑われるというようになって、先生が非常に憶病になられるということの弊害も考えなければなりませんから、私は教育者がみずから自重するということに対しては非常な期待を寄せるのですが、同時に検察の方で、無理やりに証拠がないのに小さ血子供まで呼ばなければならないということをなさると、私は、当時の質疑応答で、法務当局においては十分御反省があって、鶴岡支部における検察の威信は高まり、国民の信頼も高まっていることというふうに実は過大に御信用申し上げておったのです。本日の亀田委員の御質疑を伺って、どうもそうではないのではないかと思うので、これは慎重に一つ御配慮願いたいと思います。
  171. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) どうもよけいなことを申し上げてはなはだ恐縮でございます。おわびを申し上げます。ただ私は検事等をお責めなさることが非常に強いと……それは私ども反省しますからお受けします。同時にこの問題が子供を法廷に呼んだということに対して、文部次官も非常に遺憾の意を表しておりますが、私も遺憾の意を表するのですけれども、そういう事件の起らないように、一つ学校の先生方にも気をつけていただきたいということを、私は特にさっき記録になるように申しておいたのでございまして、決して羽仁委員のおっしゃるように、私どもが無反省で、罪を人にかけようというわけでもございませんし、他意のないことだけはどうぞ御了承願っておきますが、この記録を見まして、私は亀田委員に私どもの記録が間違っておるかどうか一つ、さっき亀田委員から心臓麻痺で死んだという御陳述があったと思うのです。こちらの方では急性弊臓るい死と書いてありますが、そして急性のものであって、同日午後十二時医師の診察を受け翌十日手術をしておる、手術して死んだのでありますから、心臓麻郷というのは手術の結果の心臓麻痺である。(亀田得治君「しろうとの表現かもしれませんね、私の方のは」と述ぶ)手術をしておるのであって、器質的、機能的ではない器質的な病気であって、一ヵ月後にこれが起って入院をして、手術をした結果死んでおるということで、事実の認識の相違があるのかもしれませんが、念のために申し上げておきます。
  172. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 他に御発言もなければ本日はこれをもって散会いたします。    午後五時四十八分散会