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説明員(五鬼上堅磐君) ただいまの御
質疑に対して、何か私が干渉したような御
質疑でございますが、私は少しも干渉いたしておりません。ただこの「真昼の暗黒」に関して、私
どもが関与した
経過を御説明申し上げれば、御了解いくことだろうと思います。六月二十九日の東京日日新聞に、正木ひろしの一
裁判官」が現代プロで映画化される旨の記事がありました。次いで七月八日の東京タイムスに、そのシナリオ・ライターは橋本忍という記事があり、七月十四日の時事新報には、監督今井正に
決定したとの記事があり、
裁判所に
関係あるものとして、私
どもはこの新聞記事によって初めてこういう事実を知ったのであります。ところが十月二十二日の北海道新聞には、「
裁判官」の脚本が映倫の審査をパスしたという記事がありました。ついで同新聞の十月二十八日の晩には、この「真昼の暗黒」と改題された旨の記事があったのであります。
最高裁判所の情報課では、新聞によるよりほかに適当なニュースも入らないのでありますからして、この映画化がどうなっているかについては関心を払いつつも、正確のことは、ただ新聞の記事によってのみ知っておった状態であります。ところが十月の二十二日に、現代プロのプロデューサー山田典吾氏が「真昼の暗黒」の脚本を持ちまして、
最高裁判所の情報課長をたずねて参りました。そしてその意向を聞きにきたという
お話でありました。情報課長は、一応脚本を読んでお返ししますと言って、山田氏から脚本を預かって、そう
お答えしたのであります。脚本は、情報課長その他の
関係者によって読まれていましたが、なおその脚本には、映倫の荒田正男氏による審査表が添付されていたので、この審査表もあわせて
関係者によって読まれていたのであります。ところがそのころ、この現代プロでは、「真昼の暗黒」の脚本について、
最高裁判所の完全な了解を得たと言って、広島地方で下準備を進めておるということが、これは正確な情報じゃないのですが、情報課の者の耳に入ったのであります。これは、
最高裁判所としては、別に了解をしたこともなければ何もないので、実は驚いて、これじゃ放ってはおけぬというので、情報課長が右脚本について何らかの
意思表示を山田。プロデューサーにしなければならないと思ったのであります。そこで十一月の十八日に、情報課長は、情報課員を通じて山田プロデューサーに対し、「真昼、の暗黒」について
御返事する旨を連絡したのであります。山田プロデューサーは同日
最高裁判所の方に参りまして、そこで情報課長から、
最高裁判所としては、現に
最高裁判所に係属しておる
事件の映画化ば賛成できない旨を告げ、その理由を述べたのであります。山田プロデュサーはこれに対し、理由は承わるが、当方としては、すでにもう相当の金を支出しておる
関係上、映画化をやめるわけにはいかないので、映画化は進めるが、何分の協力をいただきたいという旨を述べてお帰りになったのであります。情報課長は、このようにして山田氏に対して情報課の
意見を述べたことでもあるし、また映倫に対しても連絡をしておくことが必要であると
考えて、荒田正男氏がこの脚本に対して映倫側として審査
報告を附していたから、十一月の二十二日に映倫を情報課長がたずねまして、荒田正男氏に対して山田プロデューサーとのいきさつを話した上、「真昼の暗黒」の作成については、その映画化をやめてもらう
権限もないし、映画化の企画をはばむことは不可能であるけれ
ども、係属中の
事件を一方のみの立場に立って映画化し、
裁判所の事実認定を非難するようなやり方は、いまだかつて聞いたこともないし、また
法律文化の点からいっても、映画倫理規定の面からいっても、十分に考慮していただきたいということを、情報課長が映倫の荒田氏に申したのであります。ところが同日午後五時ごろ、山田プロデューサーは、今井正監督と一緒に情報課長をたずねてきまして、そうして
裁判所側から見て、脚本の不都合と思われる点を指摘してほしいということであったのでありますが、情報課長は、情報課としては、現に係属中の
事件を映画化しているという点に賛成していないのでありますから、脚本の
内容いかんを問わないのである。特に
裁判所側で脚本に注文をつけて、
内容を変えてもらうということでもすると、これはまたとんだ誤解を生ずるおそれがあるからということを十分に説明いたしたのであります。そこでなお、その脚本に客観性を持たせたいのならば、一審、二審の
判決に掲げてある有罪の証拠を十分に御覧になってはいかがかということも付け加えて話したようであります。なお情報課長は、脚本について個々的な詳しい
意見を聞きたいのなら、検事に頼んで
意見を述べてもらったらどうかということをサゼッションいたしました。と申しますのは、検事ならば、弁護士と反対の立場に立って
事件を見て批判することができないわけではないからということで、情報課長は、たとえばもし検事にお会いになるなら、最高検の平出検事にお会いになったらどうかということを申したそうです。私
どもの
関係しておることは、大体それだけでありまして、いろいろの新聞記事とか何とかに、最高裁が圧迫したとか干渉したとかいうようなことは出ていることは拝見いたしましたが、私
どもの方としては、別に干渉したり圧迫したようなことはございません。