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1956-03-12 第24回国会 参議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月十二日(月曜日)    午後二時二十八分開会     —————————————    委員の異動 三月二日委員野村吉三郎辞任につき、 その補欠として松野鶴平君を議長にお いて指名した。 三月五日委員井上清一辞任につき、 その補欠として小滝彬君を議長におい て指名した。 三月六日委員亀田得治辞任につき、 その補欠として栗山良夫君を議長にお いて指名した。 三月七日委員小滝彬君及び栗山良夫辞任につき、その補欠として井上清一 君及び亀田得治君を議長において指名 した。 三月八日委員井上清一辞任につき、 その補欠として中川以良君議長にお いて指名した。 三月九日委員亀田得治辞任につき、 その補欠として藤原道子君を議長にお いて指名した。 三月十日委員中川以良君辞任につき、 その補欠として井上清一君を議長にお いて指名した。 本日委員泉山三六君、大谷贇雄君、大 屋晋三君、西郷吉之助君、松野鶴平君 及び藤原道子辞任につき、その補欠 として石井桂君、野本品吉君、中川幸 平君、青柳秀夫君、西川平治君及び 亀田得治君を議長において指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     高田なほ子君    理事            井上 清一君            一松 定吉君            亀田 得治君            宮城タマヨ君    委員            青柳 秀夫君            石井  桂君            西川平治君            中川 幸平君            野本 品吉君            赤松 常子君            小林 亦治君            中山 福藏君            羽仁 五郎君            市川 房枝君   衆議院議員      法務委員長 高橋 禎一君   政府委員     法務政務次官 松原 一彦君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   法制局側    法 制 局 長 奧野 健一君   説明員    法務省民事局参    事官      平賀 健太君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局家庭    局長)    宇田川潤四郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選下級裁判所設立及び管轄区域に関  する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○司法書士法の一部を改正する法律案  (衆議院提出) ○土地家屋調査士法の一部を改正する  法律案衆議院提出) ○家事審判法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) それではただいまより法務委員会を開会いたします。  議事に入ります前に、委員変更について御報告をいたします。三十一年三月二日付野村吉三郎さんが辞任せられまして松野鶴平さんが補欠になりました。三月の五日に井上清一さんが辞任せられまして小滝彬さんが補欠せられました。三月六日亀田得治さんが辞任せられまして、栗山良夫さんが補欠になられました。三月七日小滝彬さんが辞任せられまして、井上清一さんが補欠になられました。同じく三月七日栗山良夫さんが辞任せられまして、亀田得治さんが補欠せられました。三月八日井上清一さんが辞任せられまして、中川以良さんが補欠せられました。三月九日亀田得治さんが辞任せられまして、藤原道子さんが補欠になられました。三月十日中川以良さんが辞任せられまして、井上清一さんが補欠になられました。三月十二日藤原道子さんが辞任されまして、亀田得治さんが補欠になられました。三月十二日泉山三六さん、大谷贇雄さん、大屋晋三さん、西郷吉之助さん、松野鶴平さん、以上五名が辞任せられまして、次の方が補欠になられました。石井桂さん、野本品吉さん、中川幸平さん、青柳秀夫さん、西川平治さん。  以上で委員方々の御紹介を終ります。     —————————————
  3. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 続いて理事補欠互選の件を議題といたします。  本委員会理事でありました井上清一さん、亀田得治さんの御両人が一時委員辞任せられ、理事が二名欠員になっておりますので、その補欠互選を行いたいと存じます。互選の方法としましては、その指名委員長に御一任願うこととして御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 異議ないと認めます。よって委員長理事井上清一さん、亀田得治さんの御両名を指名いたします。     —————————————
  5. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 次に下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案議題に供します。  まず提案理由説明をお願いいたします。
  6. 松原一彦

    政府委員松原一彦君) 下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について、提案理由説明いたします。  この法律案は、最近における市町村廃置分合等に伴い、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律に所要の改正を加えようとするものであります。以下簡単に今回の改正の要点を申し上げます。  第一は簡易裁判所名称変更であります。すなわち、簡易裁判所名称は、その大部分が所在地の市町村名称を冠しております関係上、市町村廃置分合またはその名称変更に伴い、簡易裁判所名称もまたこれを改める必要がありますので、福岡県宇島市が設置され同市の名称豊前市と変更されたことに伴い、八屋簡易裁判所名称豊前簡易裁判所と改める等合計簡易裁判所名称変更しようとするものであります。  第二は簡易裁判所管轄区域変更であります。すなわち、裁判所管轄区域は、行政区画またはこれに準ずベき区域を基準として定められております関係上、市町村廃置分合等に伴い、関係簡易裁判所管轄区域変更を加える必要がありますので、埼玉県北足立郡吹上町の設置に伴い、熊谷簡易裁判所管轄に属する同県北埼玉郡旧下忍村の区域大宮簡易裁判所管轄変更するものを初めといたしまして、合計十四の簡易裁判所管轄区域変更しようとするものであります。  第三は下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律別表整理であります、すなわち、市町村廃置分合名称変更等に伴い、同法の別表第四表及び第五表について当然必要とされる整理を行おうとするものであります。  なお、以上説明いたしました簡易裁判所名称及び管轄区域変更につきましては、いずれも、地元市町村関係官公署弁護士会等意見を十分しんしゃくし、最高裁判所とも協議の上決定したものであります。  以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  7. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 別に御異議がなければ、本案につきましては本日はこの程度にして、次の議題に移りたいと存じます。     —————————————
  8. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) それでは次に司法書士法の一部を改正する法律案及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案、両案を一括して議題に供します。両案について御質疑のおありの方は順次御発言をお願いします。
  9. 小林亦治

    小林亦治君 この両法案とも今日の時世におきましては、これは当然かような立法がされてしかるべきと考えているので賛成なんであります。一日も早く通してあげたいと思うのですが、念のためこれを提案者に二、三の点を伺ってみたいと思います。よろしゅうございますか。
  10. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) どうぞ。
  11. 小林亦治

    小林亦治君 ただいまのところの統計によりますと、司法書士の正式に会員になっているものが全国で約八千三百人、調査士の場合は五千九百人であるのに、実際は司法書士業務を行なっておりながら司法書士会に入っていないものが約四千三百名、調査士の場合は約九千三百名もいるのでありますが、こういう多数の方々がそれぞれの書士会あるいは調査士会があるのに入っておらない、これはどういうためであるか、その原因やなんかについてお調べになっておりますかどうか、まずその点を伺いたいと思います。
  12. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) お尋ねの点につきましても衆議院法務委員会としましてはいろいろ調査もし検討を加えたわけであります。統計に現われておりますように、多数の方が司法書士会なり、あるいは土地家屋調査士会に入会していらっしゃらないのは、やはりこれが現行法では御存じのように任意加入ということになっておりますから、加入しなくてもその業務を遂行していく上に何らの支障がないということと、いま一つは何か一つの会に入って、そうして規則を受けるといったようなことのまあ大切であるということについて十分お考えになったり、あるいは、そういう方向に向っての熱意を十分お持ちにならないということから、こういうふうな結果になっておるものであろう、そういうふうに考えたわけでございます。
  13. 小林亦治

    小林亦治君 そこで会に入ってないこれらの方々が、今度はそれぞれの会またはそれぞれの連合会というものができ上るということになると、いやでもおうでも、これは入らなくちゃならない、そのことについて何かどういう空気でありますか。まあ、端的に申しますると、入りたくないが入らなくちゃならぬという情勢にあるのか、まあ当然これは入るべきであり、そうなったら、それに協力して会あるいは連合会にも尽すという態勢になっているか、あるいはそういう空気から反対運動というものが出ておるならば、どういう理由から反対運動をしておるのか、情勢におくれるので、でたらそれじゃ喜んで入ろうといったような気分であるのか、お調べがあればその点を一応同っておきたいと思います。
  14. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) お尋ねの点につきまして、やはりいろいろ検討いたしましたその結果によりますと、見通しといたしましては、今度法律改正されて司法書士会なり、あるいは土地家屋調査士会及びこれらの連合会というものがそのおのおのの職責を遂行していく上に非常に有益なものである、そうして都合のいいものであるということを十分理解していただいて、喜んでこれに加入していただけるものである、そういうふうに考えております。さらにこの法案を提出いたしまするというと、やはりその点に大いに考えられるところがあったと存じまして、現在の会にも加入される方が非常に多くなって参っておる次第でありますから、本法案が成立いたしますと、こぞってこれに喜んで加入されるものである、そういうふうな見通しをもっておる次第であります。
  15. 小林亦治

    小林亦治君 そこで、憲法では職業選択の自由ということが掲げられておる。かようないわゆる会、あるいは連合会というワクを設けて、それに所属しなければ業務ができない、こういうことになりますと、それは憲法違反じゃないか、職業選択の自由がありながらそういうものに加入しなければやれない。それから従来やっておったもので能力があり経験があり、歴史のある者でも入らなければやはり業務権といいますか、営業権、つまり資格そのものを失う、こういうことになりますと、先ほど申し上げた憲法職業の自由に抵触するじゃないかという疑いもなくはないのであります。この点いかがです。
  16. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) そういう点につきましてもいろいろ考える余地があると存じまして検討いたしたわけでございますが、御承知の通り司法書士につきましても土地家屋調査士にいたしましても、非常に公共性のある仕事でありまするし、従ってその職につく人には法律一定資格を認める、こういうことになっておりますので、そういう人たちがその職責法律精神に従って十分果していくという方向に向って会を設立し、そうしてその会の力によってさらに一そう切磋琢磨して、そうしてみずからの職責を果し、国家の要請にこたえるという、こういう考え方は決して憲法に違反するものでない、こういう見解に立っておるような次第でございます。
  17. 小林亦治

    小林亦治君 御説明を伺って私どもはより安心をしてこの両法案に賛成できる次第ですが、最後に伺いたい点は、司法書士連合会、それから調査士連合会もこれ同様なんですが、会則を制定、あるいは変更改正、こういうものには何ら法務大臣との権限関係が明確になってない、あるいはそれは全然いらないように伺っておるのです。連合会法務大臣との法的関係は一体どういうふうに解釈したらいいのか。  それからもう一つつけ加えまして司法書士の場合は、これは法務局長がすべて監督権をもっておるようです。この点はちょっと足らぬじゃないかという気がするのです。もう少し、地方法務局というものは小さなものでしょう、御存じ通り局長なんかも大して偉い人がなってるんじゃない。そういうポストに全部の会の監督権をまかしていいのかどうか、心配がないかどうか、そういう点を伺っておきたい。
  18. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) その点についてはなお詳細、法務省側の方もいらっしゃいますので説明を補足していただけばけっこうだと思うのでありますが、先ほどもお話のありましたように、まあ憲法精神というものを十分考えつつこの問題を解決して参りますためには、あまり法務大臣権限が強いということは好ましくないと思うのであります。それかといって自由に放任しておくということもその仕事建前からよろしくないと考えますので、その二つの考え方調和点と申しますか、その線を見出して進むべきだ、こういう見解に立っておるわけでありまして、司法書士会、あるいは土地家屋調査士会におきましては、会則を定めます場合に法務大臣認可を必要とするということによってその調和がとれる、そうして御質問の各連合会法務大臣との法的関連ということにつきましては、各司法書士会なり、あるいは土地家屋調査士会のそれとは若干趣きを異にしておりますが、まあ会則認可なり、あるいはその認可をしない旨の処分をするというような場合には、法務大臣司法書士会、あるいは土地家屋調査士会の各連合会意見を聞いてそうしてこれを行うというところに関連をもたしたわけでありまして、かようにいたしますことによって、先ほど来いろいろ御質問のございました御心配の点は解消して参るというふうに考えておるわけでございます。
  19. 小林亦治

    小林亦治君 全国の、司法書士の場合なんですが、数が非常に多いのであります。一万二千七百五十何名で、弁護士の数は約この半分と記憶しております。六千名くらいですか、ただ東京だけがわずかに千三百三名。弁護士の数よりははるかに少い。これと対比して考えてみまするに、この法案の第二条の資格要件なんですが、非常に簡単にできておることとつけ合せて考えてみまして、一体これほどたくさんの数がいるということは、需要に対して多過ぎはしないか、こういうことなんです。それから門戸開放があまり簡単過ぎて今日の国民教育水準によっては大がいの者はこれはやろうと思えばなれる、第二条の資格くらいは。これは第一号はともかく第二号の資格をもっている者はたくさんいるんですから……。こういう点についてやはり国民に対する特別な知識をもって協力する職業なんですから、もっと資格要件を厳格にするということと、数をむやみにふやさないように、何かそういう配慮がありますかどうか。これはむしろ法務当局の方からでも伺えばけっこうだと思います。
  20. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 法務省から平賀参事官も参っておりますから、法務省側の御答弁をお願いいたしましょう。
  21. 平賀健太

    説明員平賀健太君) ただいま御質問のように、従来におきましては資格要件が比較的軽くございました上に、さらに現行法のもとにおきましては地方法務局監督ということが十分に行き届きませんために、どちらかと申しますと野放しと申しますか、そういう傾向がなきにしもあらずであったのでございます。非常に数がふえてしかも監督は十分にできないという傾向にあったのでございます。今回の衆議院におきましては、提案されましたこの法律案によりまするというと、司法書士につきましても土地家屋調査士につきましても、それぞれ資格要件を三年とあったのを五年、あるいは二年とあったのを五生というふうに引き上げてありますとか、さらに司法書士につきましては従来選考ということがはっきり法律の規定には出ていなかったのでありまするが、第四条の改正でもって選考というのをはっきり入れまして、従来は司法書士法の第二条の第一号に該当する人々につきましては選考ということはやらない建前になっておったのでありますが、これもやはり司法書士として適格であるかどうかということを選考するということになっておりますので、従来のような弊害は相当除去できるのではないか、こういうふうに考えます。
  22. 小林亦治

    小林亦治君 それならばですね、今回のこの法案の第二条第一項第一号なんです、「裁判所事務官裁判所書記官裁判所書記官補法務事務官又は検察事務官」と、こうありますが、弁護士事務員はここに何にも考慮されていないんです。この法曹交流あるいは一元化の点で弁護士もこれは同等に取り扱ってきているのですが、弁護士事務に関する点については何ら考慮が払われていないようでありますが……。
  23. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) その点につきましては当然資格を与えるというふうには考えておりませんですけれども、第二条の二号に、「前号に掲げる者と同等以上の教養及び学力を有する者」、これを選考して認可すると、こういう立場をとっておりますので、法律事務所等においてこの方面の御勉強なさった方はこの二号に当ってこの職につき得る道が開かれておる、こういうふうに御了承願いたいのであります。
  24. 中山福藏

    中山福藏君 関連してちょっと……、ただいまのととろは大へん全国弁護士事務員に大きな影響のある点だと思うのですが、その点をもう少し明確にこの法案に打ち出すというお考えはありませんか。これは大へん影響のある大きな問題だと思います。これはあなたの今御解釈のように簡単になかなかいきませんよ。もう少し明確化するという必要があるのじゃないですか、御意見を承わりたい。
  25. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) 先ほど申し上げたように、弁護士事務所、すなわち法律事務所において実務に当られた方、そういうのを特に裁判所事務官裁判所書記官等と、すなわちこれらの官職にあった人たちと同じように取り扱っておらないわけでありまして、先ほど申し上げた実力のおありの方は第二号に該当するものとしてその選考を得て認可されるということによって十分目的は達成できるのだと、こういうふうに考えておるわけでありまして、従って、特に法律事務所に勤務しておられる方々を特にどう取り扱うかということは法案には表わしておらないわけでございまして、そうしてこれによって十分この法律目的は達し得ると、こういう見解に立っておるわけでありますから御了承願います。
  26. 中山福藏

    中山福藏君 これは考え方が非常に古い官僚主義の私は考え方じゃないかと思うのです。いつでもこの官界の法律事務に携わっておる人に対していわゆる特恵、特別の何ですか、待遇をするというような考え方は、これは一応やはり法案の上にもこういうことは差別を撤廃して明確化するということは必要であろうと思うのです。特別選考の場合はこれは一般人のうちから選考するということでいいんだろうと思いますけれども、そういう点についてはもう少し広くお考えになる必要があるのじゃないでしょうか。
  27. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) この立案者側におきましては決して官僚的な気持を持っていたわけではございません。ただ第二条の一号にいわゆる官職にある人たちを列挙いたしました。そうしてこれに一定の年限在職しておることによって一つ資格を認めますということは、裁判所事務官にしましても、あるいは書記官等にいたしましても、やはり今の制度からいたしますと、一定の試験を経てここに至っておられるわけであります。すなわち、公務員を採用するだけの資格を持っておられる方々がここに入ってこられるわけであります。ところが、法律事務所に勤務される方々にはそういったような資格というものを法律上認めておらないわけでありますから、そこにやはりむしろ差異を設けた方がほんとうのこの教養学力のある方をこの職につかせるということにおいて妥当である、そういうふうに考えたわけでございます。
  28. 中山福藏

    中山福藏君 もう一つその点についてお伺いしたい。なるほど一定資格があるということは私もよく存じておりますが、しかしこれは検事局に勤める人と、民事裁判所に勤める人と、刑事裁判所に勤める書記官なんかの立場考えてみますと、これはその方に専念しておりますというとその方に偏向するのですね、自分知識というものは。ところが弁護士一般法律事務に携わっております者は、刑民双方に通暁していくというこれは特色があるわけです。だからその頭がへんぱになった者資格があって、一般的に通暁している者がうしろに持っていかれるというようなことは、これは考え方が私は平衡を失っていると思いますが、どうですか、この点は。
  29. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) 裁判所事務官、あるいは書記等公職にあられる方は先ほど申し上げたように一定資格を持ってそうしてその事務に従事しておられる。しかしお説のごとくやはり仕事の内容によってはへんぱな方もおありであるということも一応考えられるのでありまして、従いまして現行法を改めて、一応長の選考によって認可をすると、こういうふうにいたしたわけでありまして、すなわちこれらの公職にあった方々が当然司法書士等になられるというのでなくして、やはり一つ選考というものを経るようにしてそこを是正して参りたい。それから弁護士事務所に勤務していらっしゃる方々につきましては、先ほども申し上げましたように、実力がおありの方はこれに準ずる者として第二条の第二号によって十分にその職につき得る機会が与えられるものである、そういうふうに考えておるわけであります。すなわち、公けの担保のある人とそうでない人とをここで区別した、こういうわけでございますから、そのように御了承を願いたいと思います。
  30. 中山福藏

    中山福藏君 ちょっと提案者にお伺いしますが、この司法書士法改正、あるいは土地家屋調査士法改正ということについては、二年あるいは三年という実地の体験を持っていなければいかぬ、それを今度は拡大して五年……両方とも五年だろうと思うのですが、そういうことにしてあるわけです。これは近ごろよくはやりますのでね。既得権を得たというような団体の人々は、できるだけ門戸を狭めて一つ自分なんかの地位を擁護していこうというような傾向を帯びておる社会の情勢にあると私は見ておるのです。そこで本年度の予算をごらん下さいましても、二十五万人も新しく就職させるというような、昨年度に増して三万人というようなものを、吸収力を増しておるというようなことまで書いてある、できるだけ失業者がないように取り計らわなければいかぬという国家の大方針というものと、ある意味においてこういう門戸を狭めるということは、失業者を多数に出すという意味にもなるのじゃないかと思います。そこの調節というものがこういう法律案を作るときには一番大切じゃないかと考えております。私どもはなるほど選挙によって当選さしていただいておる。有権者の方々にはまことにありがたい気持で対しておるのですが、国家本位に働け、国民全体の代表ということからこういう問題も取り上げてやはり厳格にこれは審査していく必要があると私は見ている。それでこの法案を見て、二年の体験を得られた方は、自分がその資格がなかったという自覚の上に立たなければこの改正案というものは出さないわけですね。それで、二年で資格を得られた方は資格があって、これから先は五年たたないと資格が得られないというこの矛盾の点をもう少し明快に御説明を承わりたい。
  31. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) 私どもは、前にその資格を得ておられる方々、すなわち既得権者のみを擁護して、そうしてこれから新しくその道に入ってこようとされる方々門戸を閉ざすと、そういったような意図をもってこの法案考えたわけでは決してないのであります。申し上げるまでもなく、例を司法書士にとりますというと、何と申しましても他人の嘱託を受けて裁判所、検察庁、または法務局もしくは地方法務局に提出する書類を作成されるわけであります。この書類の作成ということは一面において民事、刑事にわたり国民の権利義務に重大な関係を持っておりますので、そしてまた裁判、検察、法務行政の公正迅速の運営にも関連がありますので、その質をできるだけ向上さして、そうしてその職責を十分果していただくようにしていきたい。その程度をどの辺に求めるかということにつきましては、現在の諸般の実情から見ましてこの法案の程度にすることが適当であろう、そういうことを考えまして立案いたしたわけでございます。私は先ほど小林委員から御心配のありましたような点、それに対して法務当局からも御答弁がございましたが、あの趣旨を十分考え、そして実力のある方々には決して門戸を閉ざすものでない、こう考えまするし、それから既得権を持っていらっしゃる方々は、御説のような点につきましてはいろいろとその後実務に習熟していらっしゃいますし、なおこれに対してこの法案考えております司法書士会、あるいは土地家屋調査士会に強制加入ということにし、さらに全国的な連合会をも組織して互いに切磋琢磨して参りますところにこれまで職についていらっしゃる方々は十分その責任が果せるのだ、そういうふうに考えておるような次第でございます。
  32. 中山福藏

    中山福藏君 あなたのおっしゃることはよくわかるのです。そういうふうに説明しなければこの法律改正案はこれは成り立ちませんよ。あなたのように説明しなければ成り立たぬ。しかし一歩退いて冷静に厳格にこれをいろいろと検討してみますると、なぜ二年のものを五年に幅を広げなければならぬかという、その二倍以上の、二倍半という幅の延長はあまりにひどすぎるのじゃないか。二年の人が今まで仕事をして、自分の力というものはなるほどすべての法律事務を処理していくに不足だという自覚の上に立たなければこの改正法律案は出せないわけですね、これは論理から言って。それを二倍半にこれを延長されるということが私はあまりにとっぴな考え方じゃないかという気もするのですが、さればと言ってこれは既得権者方々の権利を剥奪しようなどという乱暴なことは言いませんよ。しかしながらどうもその点合点がいかぬのですね。そういう二倍半にこれを延長するという理由はどこにあるのですか。二年の体験を得た人が今までずっとやってこられた、それを二年を四年にするのならともかくとして、それを五年にするのはどういうわけですか。それはあなたがおっしゃるようにすべて他人の権利義務関係を処理する者はむしろ五年より十年体験せられた方が、私はその方が適切だと思っております。十年の上に二十年の経験をやったらさらにけっこうでしょう。しかしながら二年体験を得られた人が今日まですでに処理して来られた。それをさらに二倍半に延長するということはこれはやはり一つ門戸を締め切るような感じもしますが、私は今までの方々に対してはやはりけっこうその事務というものはやっていけるものだと思う。あなたの今言われるように弁護士連合会に入れとか、司法書士会に入れということは私も弁護士だからよくわかる。よくわかっているが、しかしそれとこれと結びつけての御説明では納得がいかぬ。それでは問題が違うと思う。二年のものを二年半、三年に延長されるというのはどういうわけですか。
  33. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) おっしゃる通りこの年限は三年というのを五年に改める、そんなに大幅に改正をしないで、三年半くらいにし、あるいは四年にし、というようなお考え方もあり得ることと存じますが、私の方で立案いたしました当時の意見といたしましては何といたしましても裁判、検察一般の司法事務というものが複雑化して参っておりますような実情からみまして、そうこの法律がしょっちゅう改正すべきものでない、法律にはやはりある程度安定性を持たせることが必要だというような考え方から今日まで改正のなかった法律をこの際改正するとすれば、案にありますような年限の実務に従事される、こういうことが必要であるという、そういう考え方に立ったわけでございます。
  34. 中山福藏

    中山福藏君 もう質問いたしません。私予算委員会の方へ参りますから、これで一つよろしくお願いいたします。
  35. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 他に御質疑がなければ、両案とも御質疑が終了いたしたもの認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。両案につき御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  37. 一松定吉

    ○一松定吉君 本案に賛成いたします。別に修正すべきところもありません。
  38. 小林亦治

    小林亦治君 私も本案には賛成でありますが、ただ一つ申し上げておきたいことは監督権の問題なんです。かような会あるいは連合会、ある種の業務についてかようなワクを設けまするということになりますると、行政書士、それからあるいはその他の特殊な書士を有するところの職業団体がどんどん会を結成し、連合会を組織し、一つの、まあ強く申し上げますれば特許的なそういったもののグループを作りやすい。作ることはまことにけっこうであり、社会正義の上からも、国表機構の上からもきわめて私は不賛成ではありません、むしろ賛成でありますが、とかくそういった会に対して自治権をまかせるあまり、監督権というものは及ばない。そういうことになりやすい実例をたくさん知っておりますが、監督権を十分にしていただきたい。それから中山委員とはあるいは意見が反対かもしれませんが、失業者を救済するのあまり門戸を開放しすぎても、この種の業務に対しては、これは逆効果である。むしろ私の方は今後より厳選しなければならない。数もすでに弁護士の倍を上回る一万二千というのが全国におるのです。かように私はたくさん要らないと思う。と申しまするのは、これはある地方の実例なんでありますが、自転車に乗って御用聞きをして歩く司法書士があります。それからたのんでも、これはちょっと研究しなければならぬから、預かっておくといったようなことで三日も四日も代書の委託を受けながら、机の中にしまっておいて、簡単なことでも方々聞き回ってようやく官庁の窓口に出すといったようなお粗末な司法書士があるのであります。これは現にあるのであります。そういう点を考えてみまするというと、かようなりっぱな整備法ができるチャンスをねらって門戸をぐっと引き締めて、地位と内容を高むるの考慮がなければならないのであります。そのためには自治権を、会あるいは連合会にまかして自後の監督をよほど厳にしていただかないと、特許権を与えて内容のしまらないものをたくさん作るということの弊に陥りやすいのでありますから、当局は十分この点に御留意下すって、こういう会ができ、連合会ができたら、ますます地位も高まり、信頼も厚くなったというふうに発展させていかなければ、植えっぱなしという弊になりやすいのであります。その点を十分御留意いただくことを条件として両法案に私は賛成したいと思います。
  39. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私は条件付で本案に賛成いたします。  この条件の第一は、日本は法律が多くて繁文縟礼であって、しかもその法律がまことにわかりにくい言葉で書いてある。そのために国民自身が法律的な処理ができない。それではなはだ国際的に恥さらしだと私は思っている。たとえば領事館の例をとっても、おそらくどこの領事館に行っても、領事館の前にこういう別個の代書があるというのは日本だけです。当事者同士で、そしてそれに関係する国家機関ですべての書類が簡単に処理できているということは日本の政治家はもっと反省すべきだと私は思う。しかるに依然として繁文縟礼ではなはだわかりにくい法律を次から次とこしらえている国会なり政府なりはよほど私は反省していただきたいというふうに思う。最近牧野法相、松原次官というようなりっぱな当局者を迎えてこの点についても留意せられておることは感謝にたえませんが、どうか要らない法律をどんどん廃止し、破壊活動防止法であるとか、あるいは何であるとかというような百害あって一利もないような法律はどんどん廃止して、そうして国民自身で法律的な事務を十分処理し得るようにしていただくということが条件の第一です。  それから第二の条件は、日本では法律というものは人を縛るものだという考えが依然として抜けていない。法は国民の人権を守るものでなければならない。ところがそれをいつの間にか忘れたというか反対に逆用して法で人間を縛っている。これもどうか現在のようなその最高当局者にその人を得たときにおいてぜひともそういう方向を百八十度転換して、この法というものは人の人権というものを擁護するために存在するものであって、他の何もののためにも存在するものではない。その点を明らかにしていただきたい。  以上二点を条件といたしまして本案に賛成いたします。
  40. 中山福藏

    中山福藏君 私もこれは条件付で今回は賛成いたします。その条件は何かというと、私どもは立憲政治というありがたい制度のもとに生活をいたしておりますが、立憲政治がだんだんと堕落していきますというと、いわゆるこびる政治になる。当選しなければならぬからよかれあしかれ自分の縁故のある人が申出たら賛成するということになってしまっては、もう国家というものは破滅の一途をたどるのみだと私は考えておる。こういう観点からすべての法律改正案に対しては、そういうことから考えまするというと、なるほど今衆議院法務委員長がおっしゃったように、すべての国民の権利の擁護というものは一定のやはり豊富な知識体験とをもって国民の権利関係事務というものを処理していくということから考えまして、相当の経歴と学歴その他社会的の地位を有するということは、これは当然であります。従ってこの法律改正案に対して私が賛成するのはこれが一つの点……。私はこの改正案の趣旨が、最初からこれは行われなければならぬものだと見ていた。最初二年くらいのわずかな体験を持っておる人に一ぺん資格を与えておる。しかるに今日ようやく目ざめて事ここに至ったということは私はこれはけっこうなことだと見ている。昔弁護士は代言人といわれて、これは無資格弁護士資格を与えられていました。こういうことから考えましても、ものにはいわゆる化育生成という点がありますから育っていくということはけっこうなことです。しかしすべての法律あるいは法律案を御提出になる場合においては、あとからどろなわ式の改正案をお出しにならぬように政府としても提案者においてもこういうことを十分一つ勘案せられて将来に対処せられることをひとえに私はお願いして今回はこの法律案に賛成いたします。
  41. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。まず司法書士法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  43. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 全会一致でございます。よって本案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。     —————————————
  44. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 次に土地家屋調査士法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  45. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 全会一致でございます。よって本案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成等につきましては慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 御異議ないと認めます。よってさように決定いたしました。  それから報告書には多数意見者の署名を附することになっておりますから、両案を可とされた方は順次御署名を願います。   多数意見者署名    中山 福藏  西川平治    羽仁 五郎  亀田 得治    市川 房枝  石井  桂    青柳 秀夫  中川 幸平    一松 定吉  野本 品吉    井上 清一  宮城タマヨ    小林 亦治  赤松 常子     —————————————
  47. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) それでは次に家事審判決の一部を改正する法律案議題に供します。  本案について御質疑のおありの方は順次御発言をお願いいたします。
  48. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 法制局長にお出まし願いましてありがとうございますが、この前問題になりました点につきまして、私欠席しておりましたので、重ねてお伺いすることになってはなはだ失礼でございますがお許し願いたいと思っております。それは今度の家事審判法の一部を改正する法律案で第十五条の二、第十五条の三の字句の問題でございますが、両方ともその最後の方に使ってございます言葉に、十五条の二は「義務者に対して、その義務の履行を勧告することができる。」、第十五条の三は「義務者に対し、相当の期限を定めてその義務の履行をなすべきことを命ずることができる。」、この「ことができる」ということの解釈なんでございますが、この前第二十二国会で少年院法の一部改正のときに、少年院から逃走いたしました子供を「連れ戻すことができる。」というこのことでございますが、このときに「連れ戻すことができる」ということは、結局連れ戻さねばならぬというように解釈するのだと御説明をいただいたと思っておりますが、いかがでございましょうか、まずそれを伺いたいと思います。
  49. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) この前申し上げたのはやはり連れ戻すことができるという権能を与えられた規定であって、その規定自体からはそういう権能を与えられたというだけであって、その権能を行使しなければならないかどうかということはまた別個の観点から……たとえば職務の関係から、そういうものについてそういう権限を行使しなければならないというのはまた別の職務の内容等によって決定せらるべきもので、その表現自体の「できる」ということは権能を与えた規定ということで、その権能を行使する義務ありやいなやということはまた別にその事の性質あるいはその職務の内容等によってきまっていくというふうにお答えいたしたのであります。そうしてこの本案の十五条の二には、ただいまお示しのように「履行を勧告することができる。」とあり、十五条の三は「義務の履行をなすべきことを命ずることができる。」と、これは両方ともやはり今までは勧告したり義務の履行を命ずる権限がなかったのを、この法案によってそういう権限を付与する規定というふうに読むべきであろうと思います。ところでそのそういう権限を付与された場合に、その権限を行使する義務ありやいなやということは、直接ここからは出てきませんが、しかし裁判所の職務内容として、たとえば十五条の三にありますように、「義務の履行を怠った者がある場合において、」しかも裁判所が「相当と認めるときは、」「義務の履行をなすべきことを命ずることができる。」とあるので、裁判所調査の結果義務の履行を怠っておるという事実が判明し、それから義務の履行を命ずるのが相当であると裁判所考えてそういうふうに認めたときは、その権限を行使して「義務の履行を命ずることができる。」とありますが、そういう場合に、相当と認めた以上は、そういう命令を出すべきものであるというふうに当然解釈されると考えるわけであります。それで十五条の二の場合についても同様で、履行状況を調査いたしました結果、その義務の履行を勧告をすることを相当と認めた以上は、裁判所はこの権能を行使すべき義務が、裁判所として当然あるものというふうに解釈すべきものと思います。ちょうどこのことはたとえば刑事訴訟法の四百十一条等で、原判決に列挙のような事由があって原判決を破棄しなければ正義に反するというふうに認めたときは、「原判決を破棄することができる。」というふうになっておりますけれども、そういう場合には正義に反すると認めておりながら、「できる。」というので、それだから自由であるとは、そうは見られないのと同じことであろうかと思います。また民法等で「心神喪失ノ常況ニ在ル者ニ付テ」「禁治産ノ宣告ヲ為スコトヲ得」とありますが、そういう場合に「心神喪失ノ常況ニ在ル」と認めた以上は禁治産の宣告をすることを得とあるけれども、これは当然しなければならないというふうに学者も一般に解釈しておりますが、それらの規定と同じように、「得」とあっても「できる」とあっても、場合によって、この職務の内容等によって、あるいは裁判官の当然の職務の内容として、その権限を行使しなければならないと見られる場合があるのと同じことであろうと思います。
  50. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そういたしますと、今の御説明でございますと、「ことができる。」という言葉の解釈は少年院法における「ことができる。」という言葉と同じに解釈するのだという結論でございますね。
  51. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) 権限を与えておるという点においては同じことと考えております。
  52. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 実は少年院法の改正のときにこの「ことができる」ということが、つまり「連れ戻すことができる。」少年院を逃走した子供を遅れ戻すことができるということは、連れ戻さねばならぬというように解釈するというふうにあの当時私は受け取っておりました。だからそのときも例に挙げたと思いますけれども、逃走いたしましてときに連れ戻さない方がいいという場合が少年にある。たまたま逃げて、逃げるということはいけないのだけれども、逃げて帰りました家が大へん家庭の状態がよくなっておって、その子供を受け入れて大へんいい子供になって家で過しておる場合もあろうし、また逃げて結婚したが、その結婚の相手がとんでもない者でなくて、相当な者であって、いい結婚生活をしておるというような場合には、私どもは少年院に連れ戻すよりも現状を維持さした方が少年のためにいい場合があるのだから、時と場合によって連れ戻すことができるというようにこの法文の言葉を解釈して、それこそはこの裁判官の裁量によりましてどうにでもできるというように解釈したいと申しましたときに、たしか、いやこれはどうしても「ねばならぬ」と解釈して、とにかく手錠をはめて子供を逮捕して、しかも判事の令状を突きつけて連れ戻さねばならぬというようにあの時解釈されて、非常に私残念だったのでございますが、またここにその言葉が同じものが出てきました場合に、あの時に私が願っておったような解釈に今度解釈されるということは、私どうしてもふに落ちないのでございます。
  53. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) あの時申し上げましのは、逃げた少年を令状といいますか、同行状があれば連れ戻すことができるというのでありまして、この場合ちょうど警察官が、卑近な例を言いますと、令状があれば犯人を逮捕ができるとありましても、それは警察官としての職務上その場合犯人と認めて、令状もあれば、逮捕しなければならないので、逮捕ができるというその権限を与える、それ自体は権限を与えるのでありますが、今度は警察官の職務としてその場合に令状を持って逮捕して行く場合には、命令関係あるいは職務の当然の内容として逮捕しなければならないので、それはその令状がなければ逮捕ができないという意味で、令状があれば逮捕ができるというそれ自体は権限を与えただけのことでありますが、これを行使すべき警察官の職務上の任務として、そういう場合にやはり逮捕しなければならないということになる、それと同じことであるという趣旨を申し上げたつもりでありまして、この場合も同じことで、調査いたしました結果不履行があり、しかもその不履行について何ら正当な事由がないという場合は、これは履行の勧告をしたり、履行の命令をすることができるとあるけれども、そういう何ら命じて悪いというような特段の理由のない限りは、裁判官あるいは家事審判官として当然履行を命じ、あるいは勧告をしなければならないということになるであろうという意味でございます。
  54. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この少年院法の場合に、判事の令状が出まして、逮捕状が出ました場合には、どうしても逮捕しなければならないということになりますが、その判事の令状を出すか出さないかということは判事の裁量によるので、そのねばならないという令状を出さなければならない、令状を出して逮捕しなければならないというその判事の裁量はどちらでもよいわけなんでございますねこの言葉ですと。その点を一つはっきりさしていただきたい。
  55. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) 法案として、警察官は令状があれば逮捕ができるというだけの条文があったと仮定いたしまして、この条文だけから見ると、警察官は令状があって初めて逮捕できる権限が与えられておるのでありますが、そのもとに、警察官として職務上あるいは上官の命令等によってその権限を行使しなければならない状況が、これは他の関係において義務づけられるものであり、この表われた「できる。」というのは、権限だけの規定で、その権限を行使しなければならない義務は、他の法律なりあるいは職務の内容等によって、あるいは命令等によって義務づけられておる。ちょうど裁判所の場合には、これこれと認めた場合には、原判決を破棄することができるとあっても、つまりこういう事情があって正義に反すると認める場合は破棄できるとあっても、それは裁判官として正義に反すると認めていながら破棄するか破棄しないかは自由であるとは言えないので、こういう事由があって、しかも原判決を破棄しなければ、正義に反すると認めた以上は、「できる。」とあってもしなければならないというふうに当然解釈されるというのと同じだと考えております。
  56. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 しつこい伺い方でございますが、どうも私は法律家でないからよくのみ込めないのでありますが、今の少年院法のときに逮捕状が出たら逮捕しなければならない、警察官はどうでもねばならない。だけれども逮捕状を出すか、出さないかということは判事の権限内じゃございませんか。それを出してもよし、その子供の事情によって出す場合もあるし、研究してみたら出さないでいい場合もある。この言葉を解釈していいかどうかという点を教えていただきたい。
  57. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) ただいま手元に条文がちょっとありませんが、令状を出すかどうかということは、裁判官の権限で、裁判官が出すが相当と思えば出すということになろうかと思います。
  58. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それではやはり裁判官が出すこともできる、出さないこともできるというふうに解釈するのでありますね。
  59. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) 裁判官が連れ戻し状を出せばやらなければならぬけれども、連れ戻し状を出すかどうかは裁判官が出す必要がありと思えば出すし、そうでないと思えば出さないこともあり得ると思います。
  60. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 速記録を十分に調べなければなりませんが、確かにあのときは逃走した者は必ず逮捕しなければならぬのだということが、前提であったというように私は記憶しております。
  61. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) 私はそのとき答えたのは、これは連れ戻し状があれば、連れ戻すことができるという権限を与えたものでありますが、これが令状が出て、それでそれを執行する執行官は、「できる。」という場合もあるけれども、その場合はしなければならないことになるであろうというその関係は、職務内容とかあるいは命令関係とか、そういったことで要するに判事がそういう令状を出せばそれを執行する任にある執行官といいますか警察官は、それをやらなければならない、そういう職務上の義務が出るものと思います。だから文字自体は権限を与えただけのことでありますが、同時にその権限を行使する義務を伴うことは、別の関係で、当然そういう義務を伴ってくることになるであろうということでございます。
  62. 一松定吉

    ○一松定吉君 今のに関連して、ちょっと法制局長官の字句の解釈が私はわからぬのです。十五条の二は、「権利者の申出があるときは、」という修正が、あなたの解釈によれば、勧告しなければならぬということも、そうすると「権利者の申出があるときは、」ということを入れて、やっぱり勧告しなければならぬと入れても入れぬでも同じことだね、あなたの解釈は。私どもは十五条の二の、「権利者の申出あるときは、」ということがなかったときには、家庭裁判所は義務の履行を勧告することができる、すなわち勧告するかせぬかは、家庭裁判所の職権に属することであって、必ずしも勧告しなければならぬということにはならぬ。それから、「権利者の申出があるときは、」ということを入れると、権利者の申出があるときには勧告しなければならない。勧告することはできるが、申出がなかったら勧告は何もしないのだ、こういうように、「申出があるときは、」ということが入ると入らぬとによって解釈は違うと、こう私ども考えております。あなたの今の解釈によると、「権利者の申出があるときは、」ということがなくても、勧告しなければならぬということであれば、「権利者の申出があるときは、」ということがあってもなくても、同じ勧告しなければならぬという解釈になるのですが、これはどういうように解釈するのですか。つまり修正案の通りでなく、原案の通りであっても勧告しなければならぬ。修正案の通りでも勧告しなければならぬということなら、同じことです、あってもなくても。それを、「権利者の申出があるときは、」ということを入れたらば解釈がどうなるか。入れなければ解釈はどうなるか、入れてあるときと、入れてないときとの解釈について差異があるのかないのか、そこを明らかにしていただけば宮城さんの質問は疑問が晴れる。
  63. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) それは非常に違うのでありまして、「権利者の申出があるときは、」と入れた結果、申出がなければ、もう初めから勧告することはできないということになっておるのであります。その、「申出があるときは、」という字が入らなければ、職権でもできる、申出があってももちろんできましょうが、職権でできるということであります。「申出があるときは、」「できる。」とあれば、申出がなければ、職権発動としてはできないということが一つと、それから、申出があっても、あった場合には必ず勧告しなければならないかと言えば、やはり調査の結果、義務履行を勧告する必要のない、もうすでに履行がどんどんできておるとか、あるいはたまたま履行ができていなくても、履行しないのに正当な理由が十分あるというようなことがわかれば、申出があっても勧告しないことがあり得る、そのかわり履行状況を調査いたしました結果、義務不履行があり、しかもこれが憂慮すべき何らの正当な理由がない場合は、すなわち履行の勧告をしなければならない。これは裁判所の職務として当然そうあるべきである。その場合はしなければならないというふうになると、こういうふうに考えております。
  64. 一松定吉

    ○一松定吉君 それじゃ同じじゃありませんか。「権利者の申出があるときは、」、「勧告することができる。」ということは、勧告しなければならない。「権利者の申出があるときは、」、勧告しなければならないということに解釈するのだ、こういうのでしょう。「権利者の申出があるときは、」勧告しなければならない。そうすると「権利者の申出があるときは、」というこの文句はなくても、あなたのおっしゃるところでは、勧告しなければならないということならば、申出があろうと、なかろうとにかかわらず同じだということになる。私どもは「権利者の申出があるときは、」勧告しなければならない。しかし「権利者の申出があるときは、」という文字がなかったときには、勧告してもせぬでもいいのだ、いわば任意規定になるのだ、こういうことをすることによって、「申出があるときは、」ということが加わると加わらぬとによってこの解釈が違うのではないか、しかるにあなたのおっしゃるところでは「権利者の申出があるときは、」という語句がなくても家庭裁判所は勧告しなければならぬのだというならば同じことです。その区別があるかないかを聞くのです。
  65. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) 区別があるので、「申出があるときは、」と入れば、申出がなければ何もできないということになる。
  66. 一松定吉

    ○一松定吉君 それならわかります。そういうことならばおかる。「申出があるときは、」しなければならぬが、「申出があるときは、」という文字がなかったときにはせぬでもいいということならわかる、この前あなたのお答えがそうであったが、きょうは違ったから今お尋ねしたのですが、今のおしまいのことでわかりました。
  67. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) もう一度私も関連して奧野さんに尋ねますが、義務の履行を確保するためにここで権限を与えた条文が第十五条の二である。しかしその権限行使の義務についてはこの条文には規定されてない、こういう説明でしょう。だからこの間の参考人のお話では、いなかの調停委員あたりは継続給付になって非常に額が少い、そして非常に権利者が弱い婦人であるために、その調停委員が義務履行者とぐるになって義務履行のことをわざとサボるような傾向のあることがこの間参考人によってはっきりわかったのです。私はこの事態は非常に重大だと思うし、私の多く接する悲劇の大半はそういうところにあると思う。しかるにかかわらず、第十五条の二は権利行使の権限だけが規定されていて、この権限行使の義務が何らここに規定されてないということになったならば、一番ばかをみるのは弱い女性ではないか、特に今あなたがおっしゃったように、申出があったときにだけはこの義務履行の権限が認められて、申出がない場合には権限もなければその権限行使の義務すらもないということになったならば、私は非常に問題じゃないかと思うのです。実情と照らしてみていかがですか。
  68. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) 衆議院で修正になったように、「権利者の申出のあるときは」ということが入った以上は、申出がないのに職権で勧告するということはできない。一応それは第一点としてあります。  それから第二点として、そういう勧告する義務があるかどうかという問題でありますが、これは十五条の二は十五条の三と比べてやや事柄が軽いから詳しくは規定いたしておりませんが、十五条の三と同じように、結局は「給付を目的とする義務の履行を怠った者がある場合において、相当と認めるときは、」「命ずることができる。」という規定の趣旨と全然同じであろうと思いますので、義務の履行状況を調査して、そして義務の履行を怠っておる者があって、勧告をするのが相当と認めるときは、義務の履行の勧告をすることができると書いてあるのと同じように解釈されるのでありまして、その場合においては相当と認めた以上は、同時にそれは義務履行の勧告をしなければならないものであると考えるのでありまして、その意味において家庭裁判所はそういう実情であればその権能をはっきりすべきもので、勧告しなければならないものであるということになろうと考えます。
  69. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 重ねてお尋ねいたします。義務履行の勧告をする権能はここではっきりされたわけでありますが、その権能を行使するかしないかということについては、すべきものであるという考え方だけであって、権能行使の義務がもしはっきり義務として行なわれなかった場合には、どういう方法が講ぜられるか。
  70. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) 権能を与えておりますが、そういうふうに認めた場合に権能を行使するかしないかは全く家庭裁判所の自由自在というのではなくて、やはり第十五条の三にある通り「相当と認めるときは」やはり義務の履行の勧告をしなければならないと当然解釈すべきと考えますが、この場合に、それにもかかわらず家庭裁判所の裁判官が義務の履行の勧告をやらなかった場合にどういうことになるかというと、これに対する不服を申し立てる道というふうなことが規定されておりませんから、これに対する救済方法というものが、この案ではないのではないかと思います。しかしそこは裁判官の良識に信頼して、そういうことがないことを期待するということになろうかと思います。
  71. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 重ねてお尋ねいたします。その裁判官の良識がない場合には、非常に因った事態が起っておるということが、この間の参考人の方から開陳せられた。従って本人の申出がない場合には、裁判官に何らの権限がないという拘束されたものでなくて、本人の申出がない場合でも義務の履行を勧告するという裁判官の権能行使の権限をはっきり明確にしておかなければならないのではないかというふうに私は思う。
  72. 奧野健一

    ○法制局長(奧野健一君) 「権利者の申出があるときは、」「勧告することができる。」というふうに修正されました以上は、申出がないのに進んで裁判所の職権で勧告するということはできないので、もし申出がなくてもそういうことができるというのであれば、さらに前の衆議院の修正を削るか、そうでなければ申出があるとき、または職権をもってというふうなことを入れるかどうかしなければ、そういうことにはなるまいと思います。
  73. 市川房枝

    ○市川房枝君 「することができる。」という問題で先ほど宮城委員からお話がありましたが、私も二十二国会の少年院法の問題のときに法制局長に御質問申し上げたところ、「することができる」という文字には、先ほどからお話に出ておりましたねばならないという意味と、そうでなくて、たとえば改正になります前の国会法の第五十六条に「すべて議員は、議案を発議することができる。」とありまして、このときのお答えでは、これはねばならぬではなくて、それは発議してもしなくてもいい、こういう意味があるのだということを実は伺ったわけです。先ほどからの宮城さんの御質問に対しての局長の御答弁では、私はこの家事審判法改正に掲げられておる第十五条の二あるいは三、四の「できる。」ということは、やはりねばならぬという御解釈のようにさっき伺ったわけであります。まあ法律的の言葉ではその権限を与えられておるのだ、従ってその権限を行使すべきかすべきでないかということは、そのときの内容によるのだという御説明でございましたが、私は一つ伺いたいのは、この問題だけではありませんけれども、そういう言葉のその場合によって意味が違ってくるのだというのだったら、はっきりとその内容に相当するような言葉をなぜ書かれないのか、ねばならぬというときであったらねばならぬというふうにしていただけばそれこそこの間からこの問題で何回も論議し、まだ何だかわかったのかわからないのかよくわからないような点もありますけれども、これもまあ私しろうとでございますから、こういうことを申し上げるのかもしれませんが、法律は一般国民のためのものでありますから、国民にわからない、いや法律の専門家でいらっしゃる一松委員からも先ほどからそういう御質問が出ておりましたが、ましてや一般の国民にはわからない。そうであってはならないのではないか。これは局長に申し上げる言葉でなくて、私はそれについては法務省当局のこの法案を立案なさいました方にそれは伺いたいのですが、いや慣例だからこういうふうにしたのだという御答弁があるかもしれませんけれども、念のためにそれは一つはっきりと伺いたいのですが、この立案者のこの「できる。」ということに対する解釈、この前も御答弁あったようですけれども、あのとき何だか私はっきりやはりしなかったように思いますから明確にそれを伺いたいと思います。
  74. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 第十五条の二の「勧告することができる。」という言葉につきましては、先ほど来法制局長もお述べの通りで、全く同じ考え法務省としても持っておるわけでございまして、要するに勧告をする権限を家庭裁判所に与えたわけでございます。権限を与えたということは、いやしくも裁判所がこういう権限を与えられました以上は、この法律の規定の精神に従って忠実にこれを守るべき義務が当然出てくると思うのであります。で履行を勧告することが相当である、必要であると認めます場合には勧告をしなくてはならぬ、そういうことになると思うのであります。しかしながらすべての場合に勧告をしなくてはならぬかと申しますと、そうでないのでありまして、たとえば債務者の側に非常に気の毒な事情が発生しておる、今これを勧告するのは相当でないと認める場合には勧告をしないこともできるわけでありまして、必ずしゃくし定木に勧告をしなければならぬということにはならぬわけであります。ただ非常にはっきりいたしておりますことは、「勧告することができる。」とあるのだから、してもよければしなくてもよろしい、家庭裁判所の都合次第で自由勝手にしてもいい、しなくてもいい、そういう趣旨では決してないのでございます。それからなお御参考までに申しておきますと、そもそも家庭裁判所というのは、やはり家庭の紛争というものをできるだけ平和的に解決をする、ただ何でもかでも義務を履行させればいいというのじゃなくて、同じ義務を履行させるにしましても、できるだけ平和的にやる。これがやはり家庭裁判所設置の精神であろうと思うのでございます。でありますから、この家事審判法の規定全体が非常に家庭裁判所に裁量権を与えておる。実情に適した措置をとることができますように、非常に家庭裁判所に大きな裁量権を与えておるのでございます。たとえば現行法の第十一条を見ますというと、家庭裁判所に審判の申立がありますと家庭裁判所はいつでもこれを調停に付することができるとあるのであります。付することができるので、これも付してもいい、付せぬでもいいというのでは決してないのであります。できる限り平和的に解決するという精神からいいまして、審判といいましても裁判でありますから、強制的な裁判ではなくて、できることなら調停に付した方が家庭裁判所精神に合うわけであります。調停に付した方が相当だということになれば、家庭裁判所はやはりその規定をもちまして審判事件を調停に付さなければならぬ、こういうことが出てくると思うのであります。それからさらに第十九条を見ますと、一般の民事訴訟が裁判所に起って参ります。たとえば離婚なんかにつきまして民事訴訟が起ってきました場合に、訴訟となりますと原告被告対立しまして、法廷で相手の非行をあばいて、証拠を出して争うということになってくるのであります。これは妥当でない、できる限り平和的に解決するという精神から、やはり調停に付した方がいいわけであります。でありますから、第十九条におきましては、そういう場合には裁判所はその訴訟事件を「調停に付することができる。」とやっぱりなっておるのであります。これも同じ精神でありまして、付してもいい、付さなくてもよろしい、自由勝手にどうでもしてよろしいという精神では決してない。調停に付することが適当と思われる事件でありますならば、裁判所は必ずこれを調停に付さなければならぬのであります。ところがまた一方、何でもかでも、しからば調停に付さなくてはならぬ趣旨かというとそうではないのであります。調停に付するのが適当でない事件もこれはあるわけであります。たとえば現行法によりますと、相手方が精神病である、精神病にかかりまして回復の見込みがないという場合には、離婚の請求ができることになっておるのであります。たとえば妻なら妻が精神病にかかって回復の望みがないというので、夫の方から離婚の請求をしてきたという場合に、これを調停に回しましても、一方は精神病者なのでありまして、話のつけようがないわけであります。こういうのは調停に付すべきじゃない、こういうのはもちろん付さない。その他またいろいろな事情で調停に付するのが適当でない事件もあり得るわけで、そういうのは付さなくてもよろしい。しかしいやしくも調停に付することが相当である事件であるならば、これは必ず調停に付するのが裁判所職責だ、そういう趣旨の規定でございます。その他現行法家事審判法の規定に「できる。」というのがあっちこっちにあるのであります。精神はしかしみな同じであると思うのであります。  で、この法律案を立案いたしました法務省としましても、先ほど法制局長のお述べになったのと同じ考えでありまして、この「勧告することができる。」という規定は、家庭裁判所の裁判官の方で十分にこの運用に注意をされれば、かえってこの勧告しなければならないというような、しゃくし定木な規定なんかよりもこちらの方がずっと効果を上げるんじゃないか、そういう趣旨をもって、この「できる。」という立案をいたした次第でございます。
  75. 市川房枝

    ○市川房枝君 やはりそうするとあれですか、「命ずることができる。」というのは、ねばならぬというのとは違いますか。この十五条の三でも、「相当と認めるときは、」という言葉がちゃんと入っているんです。だからそれは相当と認めないときはしなくてもいいことはわかっておりますけれども、ですけれども、しかしねばならぬよりも少しやわらかいといいますか、ただ言葉の響きで、あまりねばならぬというと強過ぎると、それだから家事審判法なんていう法律だから、まあ耳に聞えのいいように「できる。」としたんだというのか、あるいは多少内容が違って、そんなに強制的ではないというのか、今の御説明だとちょっとはっきりその点がわかりかねるんですけれども、どうなんですか。
  76. 平賀健太

    説明員平賀健太君) これを勧告しなければならぬと書きますと、どんな事件でも必ず勧告しなければならぬことになるわけであります。勧告することが適当でない事件もあり得るわけであります。そういうものについても勧告をしなくてはならぬ。勧告しなければならないといたしますと、あまりにしゃくし定木になり過ぎまして、ほんとうに実情に適した運用ができなくなるし、勧告する必要もないのに、とにかく必ず勧告しなくてはならぬということになってくるわけであります。
  77. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そんなことを聞いているんじゃないでしょう。少しどうかしている。よく質問を聞いて答えなさい。講義をやる必要はない。質問に答えればいい。
  78. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 質問の御趣旨をあるいは誤解いたしたかもしれません。
  79. 市川房枝

    ○市川房枝君 私の言い方が悪かったのかもしれませんけれども、さっき御説明を伺っていて、たとえば十五条の三で相当と認めるときは命ずることができるというので、ちゃんとそこにただし書のような条件がくっついているのですね。だからこの、ねばならぬ、としてもそれは相当と認めないときにはしなくともいいのですから、でありますから、それでねばならぬとしてはいけないのかどうか。だからそれを「ことができる。」とした理由、その内容を私伺っているのです、多少違うのか、さっきの御説明ではちょっとその点が私にははっきりわからない。
  80. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 十五条の三の「相当と認めるときは、」があるから、終りの方は命じなければならぬとしてもいいじゃないかという御趣旨でございますか。
  81. 市川房枝

    ○市川房枝君 そうです。
  82. 平賀健太

    説明員平賀健太君) これは先ほど法制局長からも御説明がありましたように、十五条の三も、やはりこれは本来ならば現行法のもとではできないことを裁判所にこういう権限を与えると、そういう趣旨でありまして、相当と認めるときは命ずることができるとあるから、命じてもいい、命じなくともよろしいという趣旨でなくして、やはり権限を付与したという意味から、権限が与えられた以上はその権限を忠実に行使しなければならないということは当然出てくると思いますので、「命ずることができる」とありますけれども、やはり相当である場合には命じなければならないという解釈に当然なってくると思うのです。
  83. 市川房枝

    ○市川房枝君 さっき私は局長のときに申し上げたのでありますが、できるということでも、たとえば前の国会法のときでも議員は発議することはできるとある。これはその発議をしてもしなくともいいわけなんです。けれども今の審判法あるいはこの前の少年院法のできるという場合には、これは権限を与えられてそれをしなければならないのだ、ねばならない、強制的なものだというこの前御説明があった。それから先ほどからの家事審判法もやはり権限が与えられ、裁判所もそれを行わなければならないのだ、そうするとこれはやはり一つの強制的なものだというふうに受け取れるのです。
  84. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 相当と認めるときは命ずることができる、命じなければならないと要するにしてはいけないかということでございますね、御趣旨は。
  85. 市川房枝

    ○市川房枝君 そうなんです。
  86. 平賀健太

    説明員平賀健太君) これはやはり家庭裁判所の裁量権と申しますか、与える趣旨から言いまして、命じなければならないというのは少し窮屈過ぎるのではなかろうかというふうに考えるのでございます。これと同じ趣旨の規定、同じような表現をしておりますのは第二十三条にも第二十四条にも、相当と認めるときは何々することができるというふうに現行法にもあるわけでありまして、どうもこれだけ命じなければならないといたしますと、やはり多少窮屈になり過ぎやしないかというふうに考えるのでございます。
  87. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) ちょっと私も関連して尋ねます。これは平賀参事官に私は尋ねます。いいですか。実情に即して裁量権が与えられるということで今論争になっておるわけなんですが、債務者が精神病のような場合に、あるいは債務者が貧困のような場合には実情に即しての裁量権を認めると、これが平和的に解決しようとする審判法の精神である、こういうことは私もわかります。そうだとするならば、債務者が行方を不明にしてその債務の履行を怠ろうとする故意の悪意の場合があり得る。またはその財産を事前に、これは危いというような場合に適当に処理して、その債務をのがれようとする悪質の場合もあり得る。このことに対して第二十八条はここに「五千円以下の過料」ということをして、かなり拘束をしているやに見受けられますが、実際問題としてこの行方不明になった者、あるいは財産を隠匿した者、そういう者に対する制裁規定がなくて、ただその実情に即した裁量権を認められるということであるならば、いうところのこの権能行使の権限を与えている第十五条の二の精神というものは、私は実際に実現されないのじゃないかという危惧を持つのですが、こういう場合には一体どういうふうにするのですか。何にもここにそういう規定やそういうものを明文化されたものがない。で、これについて説明していただきたい。
  88. 平賀健太

    説明員平賀健太君) ただいまのお尋ねは、債務者が非常に不誠意である場合、逃亡したとかあるいは財産を隠匿するというような場合ですね、そういう場合の措置いかんということであると思うのでございますが、そういう懸念があります場合には、この権利者の方の申立がありますと、十五条の三で義務の履行命令を出すということは可能じゃないかと考えるのでございます。それからなおもちろんこれは強制執行を禁じておるわけじゃございませんので、債務者が財産を隠匿するおそれがあるというふうな場合でありましたら、権利者の方は強制執行をもちろんできるわけでございます。その財産を差し押えまして、強制執行によって権利の満足を受けるという道はもちろん開かれておるわけでございます。
  89. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) それはちょっと質問の趣旨と違いますから。ちょっとそれじゃ速記やめて下さい。   〔速記中止〕
  90. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) じゃ速記始めて下さい。
  91. 一松定吉

    ○一松定吉君 ちょっと法務省の方と高橋委員長にちょっとお答え願いたい。十五条の二の債権者の申出があるときはというものを入れたときにどうなる、入れなければどうなる、そこだけ一つ、それだけです。
  92. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) 十五条の二、すなわち政府原案によりますと、権利者の申出がなければ調査、勧告はできないのであります。それから衆議院で修正いたしましたように「権利者の申出があるときは、」と入れれば、権利者の申し出があるときに限って家庭裁判所調査し、または履行の勧告ができるわけであります。そのできるというのは、先ほど来いろいろありましたが、やはり権能を付与されている者は、正しくこれを行使しなければならない義務があるものである、そういうふうに考えているわけであります。
  93. 一松定吉

    ○一松定吉君 そこで法務省もやはりその通りですか。「権利者の申出があるときは、」という言葉があるとないとによってどう解釈が違うか。今高橋委員長通りであればけっこう。高橋委員長の解釈と違うならば違うということを明らかにすると同時に、債権者の申出があるときはという文字を使わぬで、原案通りにして、働きも何もできないような法案を出す必要がどこにあったかというようなことにまで論及しなければならぬが、そういうところに横道に入るとなかなか頭がこんがらがるから、「権利者の申出があるときは、」と入れた方の解釈はどうなる、入れないときはどうなる、それだけ。それだけでいいのです。ほかに言うからこんがらがっちまう。
  94. 平賀健太

    説明員平賀健太君) この「申出があるときは、」というのが入っておりませんと申出がなくてもできる。それから「申出があるときは、」と入りますと、申出があるときに限ってできる、申出がなければできないということになるのであります。
  95. 市川房枝

    ○市川房枝君 衆議院法務委員長にちょっとお伺いしたいのです。衆議院で修正をなさいました理由のうちの一つとして、先般伺いましたところによりますと、もし政府原案のままであるとそれこそ今、一松委員からの御質問に対するお答えのように、申出なくても全部調査勧告することになる、そうなると非常に弊害が生ずるということをこの前お述べになったかと思いますが、その弊害というのはどういうのか。  それからもう一つはその弊害の件数といいますかと、それからむしろその申し出がなくても調査勧告されることによって恩恵を受ける数との比較といいますか、それを少し伺いたいと思います。
  96. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) 弊害と申しましたのは、これは言葉が少し強過ぎるかもしれませんが、家庭裁判所の本質からみて、すなわち先ほど来お話のありました平和的に家庭紛争事件を解決していこうという精神に反する、そういう趣旨に御了解願いたいと思うのですが、しからばどういうものがあるかといいますと、これはいろいろ考えられるわけでありまして、一例を申しますと、もうすでに家庭裁判所において審判あるいは調停が成立しておる。がしかしそれを調査をしたり勧告をしたりすることによって、実は審判あるいは調停当時の気持あるいはその他の事情が変っておるときに、すなわち平和な家庭を建設していこうという線に進みつつあるようなときに、かえってそれをこわすようなことが私どもとしては相当考えられる、こういう趣旨なんです。その数がどういうふうになるかということについては、これは法律をこれから実施してみなければわからないわけでありまして、私どもの方で頭の中で弊害が起る件数はこのくらいあるであろう、それから利益を受ける者はこのくらいあるであろうということは、数字はわかりませんから数的には検討しておらないわけです。御質問の趣旨から考えまして、利益を受ける者が非常に多ければ少々の弊害があってもいいじゃないかというような、もしお気持でもある方がおありになると私はここでその点について申し上げたいのです。と申しますのは、これは前の委員会でも申し上げたんですが、申し出の方法を実に広くしております、電話でもいい、はがきでもいい、口頭でもいい、そういったような方法をとることによって私は効果は十分あげ得る、こういうふうに思っておるんです。ですから弊害があることは、この法律の運用からみてよろしくないというそういう観点に立っておるんです。申出があるときは調査あるいは履行の勧告をするということによって弱い権利者も十分に保護し得る、こういう考えを持っておるということを特に申し添えておきたいと思います。
  97. 市川房枝

    ○市川房枝君 この間実際にその家事調停などをやっておいでになりまする調停委員あるいは調査官の方を、この委員会で参考人としておいでいただいて御意見を伺ったのであります。そういう方々の御意見は、簡単だ、もう電話でもいい、はがきでもいいから本人の権利者の申し出ありたるときはと入れても別に大した問題はないんだ、こういうふうに委員長は今お話がございましたけれども、実際の権利者のそういう弱い人たちに接しておる人たちは、それはまあ非常に困難な場合が相当ある。それができない人たちが相当あるのだ。だから特に申出というのでなくて、政府原案のようにしてほしいという希望が相当ございましたし、まあ私ども自身実際のケースを相当聞いてみますると、やっぱりそういうことが言えるのでありますけれども、やはり委員長は、それはもうその方がいいというようにお考えでいらっしゃいますか。
  98. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) 家庭事件取扱いの経験者の方々が、いわゆる家庭事件の権利者というものは、はがき一本あるいは電話一本で申し出ることはとても弱いからできないであろう、そういうふうに私はごらんになることもそれはもっともの点があると思うのです。衆議院法務委員会におきましても、もちろんそういう家庭事件を取り扱った経験者もありまするし、あるいはその他参考人の方々から意見を徴したわけですが、何と申しましても、すでに家庭裁判所において、調停なりあるいは審判の当事者の一方から申し出があって、そして折衝が行われてその結論を得て、そしてこの法律を実施いたしますと、その審判なり調停の間においては権利者になられる方々に特に、弱い立場方々であればあるだけ懇切丁寧に、これを履行しないような場合には、電話でもあるいははがきでも口頭でもいいから、一つ調査なり履行の勧告等について申出なさいよとよくお話しておくことによって、十分その目的が達成できるであろう、こういう見通しをもったわけなんです。そして、いくら弱い立場にあられるといっても、第十五条の三によりますと、履行命令を求めるときには申出よりははるかに形式のととのった印紙まで張った申立ということを要求しておるわけなんです。この二つの条文を考え合せてみますときに、また将来日本の国民全体が自分の権利を守っていこうという気持を助長する意味からも、やはりこの「申出があるときは」ということを入れた方がいいであろう、そういう考えになったわけであります。
  99. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 関連して委員長に伺いたいのですが、今のお答えの中の弊害ですが、その弊害の中にこういうことをお考えあるのかどうか伺いたい。それは、これは審判がきまって履行する場合に、政府原案のようであると申し出がなくても調査をしたりいろいろすることになるわけですが、そういうふうにしておくと、かえって初めから審判に応じない、裁判でやろうじゃないかというように、家庭裁判所法の精神がそこなわれるのじゃないかというふうにおっしゃるのですか、そういう意味ですか。またそういうようなおそれがあるのでしょうか。それが一点。  それからもう一つは、やはり政府原案のいま一つの欠点として非難されておるのは、権利の行使というのは権利の当事者が自分で戦う意思をもち、努力をしなければならないので、寝てても政府がいろいろにやってくれるというような考え方は、やはりパターナリズムというか民主的な考えでない。だから政府が、女の方が弱いから言えないから、それならやってやろうという考えは民主的でない、パターナリズムのやはり親心の行き過ぎだと思う。やはり女の方は自分でいろいろな抵抗があっても、申し出をされるというように努力をする、その努力によらなければ権利というものは守れるものじゃない、そういう考えがおありになるか。すなわち質問の要点は、第一は、政府原案のようであると、家庭裁判所というものは開店休業になってしまって、みな裁判に持っていってしまうということになるのか。それから政府原案のようであると、政府は何でも世話をやいて、国民は寝ててもいいと思うじゃないか、そういうふうなお考えがあるのかないのか。もしあるとするならばそういう証拠をおあげになることができるか、その二点を伺いたいと思う。
  100. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) 今お尋ねの第一点、すなわち政府原案のようにしておけば、調停あるいは審判、すなわち家庭裁判所の事件としないで、普通の民事訴訟裁判の方に事件が逃げていくであろう、その方に依存されるようになるであろうというようなことは、実は考えなかったわけです。すなわち、訴訟事件がふえるとかふえないとか、あるいは家庭事件がふえるふえない、あるいはそれが成功する成功しない、そういうふうなことは考えなかった、こういうことを申し上げておきます。  それから第二にお尋ねになりました点は、これもそう簡単に割り切ってお答えすることはできない。いろいろの条件を考えまして、そして将来やはりそういうふうに訓練されていくことも必要であろうという程度には考えましたけれども、やはり権利の上に眠る者はほっておいて、権利のある者がその保護を受けようとすれば、このくらいのことは当然ではないかといったようなきびしい考えを持っておったものではないということを申し上げておきます。それではどうしてそう言うかということになりますと、これは前の委員会でも申し上げましたように、まずこの家庭審判なりあるいは調停ができ上りまして、それをすべて調査なり勧告をするということにしますと、履行期が来た事件についてはいつも調査を始めなければならないのです。履行期が来たか来ないかをまず調べなければならない。これが実に煩雑なことで、おそらく人員をふやさないで現在の陣容ではなかなかむずかしいのじゃないか、予算措置ということを考えないではおそらくできないことじゃないかと、こういう判断に立っておるわけです。そうして履行期が来たか来ないかを調査して、そうしてそれをもちろん正当の事由のないのに不必要のものをやるというのじゃありませんけれども、必要かどうかということを相当調べないとわからないわけですから、その間に相当経費とか時間、労力の点でもかかるわけなんです。だからいわゆる訴訟経済というような立場から考えても、益無な金を使わないようにして一つやっていこう。  それからいま一つは、先ほど申し上げた当事者の意思を無視して、意思いかんにかかわらず家庭裁判所が職権で調査、勧告をするということは、かえってものをこわすようなことになる危険があるということをも考え、そして先ほどお尋ねにありましたような点をふんわりとそれに加えて、それらを総合してこういうふうにやることによって、私は今の段階においてはいろいろ調停の場合、あるいは審判の場合に、誠意をもってこういう道があるのだということをお教え下さるならば、十分その権利は保護できる、犠牲をなくして権利の保護には十全を期し得ると、そういう見解に立ったということを御了承願います。
  101. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今の第一点については、今までお考えはなかったそうですが、お考え下すってそれについてはお答えを次回にいただきたいと思います。つまり、政府原案のようであると、家庭裁判所の利用がなされなくなる、民事裁判の方にみな逃げていってしまうのじゃないかという点ですね、その点は今までお考えがなかったそうですが。
  102. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) それは各委員方々がそれらの点も考えられたかどうか、そこはわかりませんが、委員会における公けの書類には載っておらぬと思います。しかしこれは事将来に関する問題であって、委員会における審議の段階においては、こういうふうにすれば訴訟がどのように逃げるか逃げないかということは、数の上ではこれは説明のつく問題でないことは御承知の通りだと思います。ただ各自の頭の中で判断をするという問題であると思いますが、この修正案に賛成された個々の委員方々がその点をどう判断されたかということは、これは不明であるということを申し添えておきます。
  103. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 提案者としてしかし今の点はお考えになっておるはずではないかと思うのですがね。数の上で必ずしも立証しなくても、そういう場合があり得るとお考えか、あり得ないとお考えか。
  104. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) それは絶対にないということは私は言えないと思います。人によれば、あるいは事件によればそういうこともあり得るのではないかと思いますが、しかしその問題は、先ほど来申し上げましたように、衆議院においてこれだけの修正をいたしました場合には、各委員はいろいろお考えになったでありましょうけれども、他に説明申し上げたような理由で修正を加えたものである。新しく調査してここでなおお答えをこれ以上申し上げるという必要はなかろうと思いますから、御了承願います。
  105. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 法務委員長に伺います。衆議院の方で修正されました、その権利者の申出があるときだけ、つまり勧告をすることができるというようなことになると、非常に権利者からいいますとこれ重大なのでございますが、それはまあはがきでもよい、電話でもよい、口頭でもよい、何でもよいというような、それはどういう形式でも簡単にできるというと、今まで泣き寝入りした者が起きてくるというように考えられますけれども、実際問題としたらどうなるのでございますか。電話で言ったことを聞きました者が、たまたまその廊下を通っていた者が聞いたというようなことも起るのではないかというような、これは簡単でよいというが、簡単でそのままになっていたら、権利者はまた泣き寝入りということになりやしませんか、この点はどういうふうにお考えになってこういうことになったのでございますか。
  106. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) 私はこの衆議院修正案によって権利者が泣き寝入りをされるようなことはないという確信の上に実は立っておるのです。泣き寝入りはされないというのです。というのは、おおむね家庭事件というものは、審判なり調停になります場合には、特別な例外はありますけれども大部分は申出をするのでしょう。権利者が裁判所に対して審判なりあるいは調停の申立をされるわけですね。そうでないものもありますけれども、まあ多くはそうだと思うのです。自分が申出をしてそうしてその結果を得た。結果を得たらもし履行しなかったら、そのとき電話なりはがきなりあるいは口頭等で、あれはああいうことになったけれども履行しないのですが、一つ調査なり勧告なりをして下さいというくらいのことを言われることは、それはできないことはないとこう思うのです。そうして審判、調停のときに、もし履行をしなかったら申出なさいよということを、これはよく言っていただくのですよ。
  107. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そこはよくわかっておりますけれども、その申出るときに、簡単はいいですけれども、電話で言って、そうしてそれを受け取る者はどうだとか、あるいは必ず調査官に通じるとかいうような、受け取る方では確かなものをもって、その受け取った者がまた受け取ったよという、あなたの電話を受取ったから確かですというようなことを、権利者の方に何か通知でもなさるというような意味合いでしょうか。
  108. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) たとえば調査、あるいは勧告の電話がかかりますね。ここはこれから家庭裁判所の運営に関する問題ですが、それはもうあなたの方から電話がかかりましたがどういうことですかと言って、調査官が行ってそうしてよく事情を聞いて、やるだけのことをやらなかったら、家庭裁判所はほんとうの職責を果すゆえんではないと思います。おそらくやられるであろう、やらなければならん、こう思っておる。それからはがきが来たときに、ちゃんとはがきがありますし、この廊下で会ってもいいですよ、あの裁判所の廊下で会ったときに、こういうことがあるのですがと言ったら、それは廊下の立話でも何でですから、応接間なら応接間へ来て、どういうことですかというふうに聞いておけばいいと思います。
  109. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その点はわかりますが、簡単に書類でも作って、それに記入するということが、私は大した手数ではないと思う。それでただここで簡単だから大丈夫だよ、電話でいいよなんていうと、ちょっと、ああそんなことならいいわというようなことを考えると、とんでもない結果が起ることが万一でもあったら、私は権利者に対してすまんと思います。その点が研究されてこういう修正がされたかどうかということが伺いたい。
  110. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) もちろんそういうことは、いろいろ頭に浮ぶ問題については検討を加えたわけです。そういうことがそう大きい負担でなくして、裁判所が親切にそれを導いていけばできないことはない。もうすでに申立までやって、審判なりあるいは調停をされた方なんですから、そうしてその間において十分激励もし、鞭撻もし、指導もしていくべきなんですから、やるのですから、だからもし履行しないということになったら申出なさいよ、方法は簡単なこういうことでもいいですよと言われるならば、私はこれは権利の上に泣寝入りをされるというような人はない、こういうことをかたく信じておるわけです。
  111. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 お話はよくわかりました。それではもう一つ重ねて伺います。あなたの方の修正案をお出しになるについて、調査官の活動というものを十分にお調べになったのですか、どうですか。
  112. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) 参考人として調査官の人は呼びませんでした。しかしながら政府の説明なりあるいは参考人の方々の御意見をお聞きして、その点についても各委員調査官に関する判断というものはできておるものであると存じております。
  113. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 調査官がしております事前調査、それから事後調査ですね、それではそういうことは十分におわかりになっておりますね。事前調査、事後調査、結局それは調査官活動でございますけれども
  114. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) たとえば第十五条の二の問題について、それに関連して一つお尋ねを願いたいと思うのでありますが、今おっしゃったようなことにつきましては、この法案関連してどういう趣旨であるか、ちょっとわかりかねます。
  115. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 たとえば今の電話が来たときに、それでは電話しただけであったけれども調査官が行ってどういう事情であるかということで調べると、こうおっしゃって下さったので、それでしたらそれだけ今日の調査官が実に至れり尽せりにやっておりますが、そこにもってきて何を苦しんでこのワクをおかけになったかということがふしぎなんです。どうせ電話が来ましても調査官は行くのです。そしてこのワクをかけられますとね、権利者の申出があったものだけが勧告されるということになると、これは大問題だと私は思います。聞けば聞くほどこれは大へんなことだと思います。
  116. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) ちょっと御質問の趣旨がわからないのですが、これは十五条の二という条文に関連して申しますと、家庭裁判所では今まではがきなり電話なり等によって申出があったものについては、法律がなくても調査をされ、あるいは履行の勧告をしておられるという説明でありました。そして相当の効果を上げておるということも申されたわけです。それを法律的な根拠を与えることによって、なおその活動を活発にし効果を大きくしていこう、こういう御趣旨のように説明があったわけです。ですからこれを法文化することによって、今まで調査官がやっておられることについて、何らの支障があるはずがないわけであります。それからこの法律を新しく改正されることによって、今までよりはさらに一そうこの精神に従って、家庭裁判所の使命を十分果すようにいろいろ配慮して活動を十分にされるべきである、こういうふうに考えておるわけであります。
  117. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 今までこの調査官が事前、あるいは事後アフター・ケアですね、それを十分にやっておりますが、残念ながら履行確保の法律がないために、今日までに非常に権利者に対して不足な点があったので、どうしてもこの履行確保の法律を作らなくちゃならぬという意味合において、私はこれはできたと思います。だけれども調査官というものはほんとうにもう親身になって今までやってきているのです。だからそれをこのワクをかけられましたら、せっかく今まで事前事後の手当をしておったものが、申し出たものだけに限られてしなきゃならないということになったら、私はこれは家庭審判の精神にもとると思います。その家庭審判の精神によって調査官がどれだけの活動をしているのです。私はほんとうに失礼なことを申させていただくなら、衆議院調査官のあの声を聞いていただきたかった。そうしたらこういうワクをおかけにならなかったのじゃないかということが大へん残念に思います。
  118. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) まあ今まで、もしもお話のような、裁判所調査官が、当事者の意思如何にかかわらず、すなわち何らの申出もないのに調査官が勝手に家庭審判について調査をしたり、勧告をしたりしておったということになれば、それはいくらか範囲はせばまりますでしょうが、これは提案者側としては、家庭裁判所最高裁判所の家庭局長等の説明によっても、そういうことはいささかも出ておらないのです。今まで申出によって、そうして調査なり履行の勧告等をやって相当の効果を上げておったが、それを法律的な根拠を与えさすことによって、さらに強力にその面を進めていこうというために立法したものだという御趣旨であるけれども、それは相当である、そういうふうに考えたわけであります。
  119. 井上清一

    井上清一君 じゃこの点について宇田川局長一つ説明を伺いたいと思います。
  120. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 今の問題について、この家事審判法の一部改正が必要になったゆえんのものは、先ほど高橋委員長の言われた通り、かような法規がないために、事実上やっておりますが、しかし法規がないために、一部の裁判所では、これは法規がないことをやることはよくないというようなことなどありまして、やや消極的で、従ってかよわい権利者の保護に欠くるところがあったというのが実情でございます。そこでかような法規ができますと、今後はさような弱者が泣き寝入りするというようなことは非常に少くなるのではないかと思うのでございます。そこで今まで権利者の申出がないのに調査、勧告した例があるかどうかというような問題でございますが、その点につきましては私どもの現場からの報告では、大体権利者からの苦情、まあ一つの申出というと多少語弊がありますが、債務者が払ってくれないで困っておるというような、そういう苦情あるいは泣き言というようなことが契機になって、調査活動あるいは勧告が行われるというのが実情でございます。けれどもこのたびの法案ではそういうようなことを加味して、権利者の意思というものをこの条文に盛らなかったゆえんのものは、中には、権利者が申出をするということとか、あるいは苦情を申し込んでも家庭裁判所は何にも取り合ってくれないのだというように思う者も相当ある。そういう場合には職権でも不履行の状態を調査することができるようにしておいてほしい。またそういうことが家庭裁判所の性格、理想に合うのだ、家庭裁判所は審判、調停をやりっぱなしでなく、審判、調停の結果についても責任をもって常に見守るのだということから、権利者の申立、申出とか、その他そういう権利者側の意思をここに表わさないで、かような条文ができたのでございます。
  121. 井上清一

    井上清一君 先ほど来いろいろ御意見があったわけでございますが、ただいまの御説明によりますと、従来の調査官活動というものは、やはり何らかの形において権利者の申出に基いて調査活動をやっておる。それで将来家庭裁判所というものはもっと積極的に活動をやらなければならぬ。またそのために弱い人の保護に欠くるところがあってはいけない。それで今度の法律改正して、もっと徹底的に将来やり得る道を開いたらどうだというような意味合いから、この第十五条二の条文を御提出になったのだと思います。先ほど調査官が非常に広範な活動を、事前活動また事後活動をやっておるような宮城委員の御意見がございましたけれども、今の宇田川さんのお話によりますと、いわゆる何らかの形で権利者の申出があったものについてこれまでもやってきておるということが、大体私はっきりしておるのじゃないかと思うのですが、その点どうでしょうか。
  122. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 今までは権利者の泣き言、苦情、申出というようなものがあった場合が多いように聞いておりますけれども、しかしそれでは家庭裁判所の理想にもとる、それでは多少弱い権利者の保護に欠くるところがあるというような意味も含めまして、かような改正をお願いするというようなことであります。
  123. 井上清一

    井上清一君 ちょっと伺いますが、全国的に調査官の数とそれから調査官の活動経費なんというものはどんなふうになっておるのですか。その点一つ伺いたい。
  124. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 全国の家庭裁判所の調在官の定員は、調査官が七百四十七名、調査官補が三百七十二名でございます。もっともこのうちの約三分の二くらいは少年審判事件の方の仕事を主としてしておりますのです。従いまして、約三百数十人の者が家事事件の調査、あるいはかような事後処理の問題に携わっておるわけであります。
  125. 市川房枝

    ○市川房枝君 衆議院で修正案が可決されましたときの速記録を拝見しますと、修正の理由として、「あまりにも飛躍するように考えられまするので、」という言葉が入っております。これは委員長は、修正の理由をさっき私お伺いしましたように、弊害があるからというお言葉で、この委員会で伺ったのですが、今申しましたように、速記録ではあまりにも飛躍し過ぎるという言葉が使ってあるのでございます。それはどういう意味なんでございましょうか。
  126. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) これは速記録全文をごらん願って御判断をいただきたい点でありますが、そこのところは、これはまあ御存じのように、全員が相談して原稿を作って演説をしたという演説ではないのです。その委員が代表して演説なさったわけでありますから、それが法務委員会全体の確定的な意見だということを申し上げていいかどうか、その点は一つ御判断にまかせたいと思うのでありますが、民事訴訟の大原則からいたしますと、裁判官は裁判をする、そうして別に執行機関がそれを執行するのだという原則がある。ところが家庭裁判所はそんな方法ではとても使命を果されないから、そこで審判なり調停が成立したときには、どこまでも裁判所がめんどうをみてゆくという、そういうことにしなければならない。しばしばお話になったアフター・ケアということについて十分努力しなければならぬ。こういうことでこの法律改正される案が出たわけであるが、やはりいろいろ学者の意見等を徴しますと、先ほど申し上げた民事訴訟に関する大原則をいわば破る例外的な特殊なものですから、そこでそれらを十分加味してゆくと、まあ家庭裁判所といえども、権利者が申出もしないのに、その意思いかんをたださないのに、すべての事件について例外なく調査をしたり履行を勧告するというところまでゆくということは、どうも少し行き過ぎではないかというふうな意見から、そういう言葉が使われたものであると判断をいたしておるわけであります。
  127. 市川房枝

    ○市川房枝君 ここにはさっき委員長がこの参議院の法務委員会でおっしゃいました弊害ということは、一つ理由の中には出てないのです。むしろ今お話のような裁判の制度といいますか、そういう理論的な立場の判断ということになっているわけですね。そうするとこの家庭裁判所というものの特殊性というのは、あまりお認めにならないということに解釈していいわけですか。
  128. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) そういうふうに解釈されては困ります。(笑声)と申しますのは、家庭裁判所の本質、使命ということを考えればこそ、政府もこの改正案を出されており、私どももこれを慎重審議してそれが通過するように努力をいたしたわけでありまして、そして、その使命を果すのに今のいろいろの実情から考えて、一部、第十五条の二を御存じのように修正をすることが、いろいろの点から考えてよりいいであろうという結論に到達したわけでありまして、さよう御了承を願います。
  129. 市川房枝

    ○市川房枝君 もう一つ伺いたいのですが、これは先ほどの宮城委員の御質問関連をしてくるのでありますが、今までこの法律がなくても、家庭裁判所調査官あるいは調停委員の方の活動によって、そして実際はその調査、勧告をやっていたわけです。まあ、そのやっていたのは、しかし宇田川局長の御答弁の中で、本人の大体申出によってやったんだ、こういうことなんですが、私どもも直接調停委員なり調査官の方から伺えば、あまりかわいそうなので実は本人の申出がなくても勧告をしたような場合も相当あるように実は聞いておるのです。そして、その勧告の結果、配布いただきました調査資料を拝見しますると、勧告したものが履行しているといいますか、履行の率と、それから不履行の率、件数の比較が出ておりますけれども、勧告したのが非常にまあ履行した件数が多くなっておるわけなんです。しかしまあこれは法的な裏づけなしにやっているわけなんです。それで非常にやっておる人たちは気をつかって、ないしょでといいますか、表向きにならぬようにして、それこそ勤務時間外にずいぶんな努力を払ってやっていて下さったわけなんですが、それの法の裏づけがほしいというのが今度の法律なんでしょうけれども、しかし今度の衆議院の修正によって、その「権利者の申出があるときは、」というふうにはっきり入りますと、今度は申出のない人は調査、勧告するわけにはいかない。もちろん、それはないしょでといいますか、それは前のように本人の申出がなくても、調査官なり調停委員の個人的な、ということで、それはやり得る場合が一体あり得るかどうか。いや前は法律がなかったのだから、けれども、今度ははっきりと申出た場合は、ということになるから、今度すればそれは裁判所としてしなくても個人としてやっても、やはり多少それが公けな性格を帯びて来れば、何といいますか、違法行為といいますか、前よりもそうすると活動が制限されてできなくなってくる、こういうことが言えるのじゃないか。いっそむしろそんなことから言えば、こんな法律がない方がむしろいいんだというようなことも極言すれば言えるのじゃないかと思うのですが、その点についての委員長の御意見を伺いたいと思います。
  130. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) 今までどういうふうにやっておったかということは、政府側、最高裁判所側からの御意見があってほぼおわかりの通りに、何らかの形で権利者が履行を促進してもらいたいという気持が現われたときにやっておるのですね。
  131. 市川房枝

    ○市川房枝君 そうでないのもあるのです。
  132. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) それは衆議院委員会においては明らかに政府の方から説明を聞きませんでした。だからこの法律を作ることによって今までより悪くなるというようなことは私ども考えておらないのです。  それからお考え願いたいと思いますことは、ただ調査官の個人的感情によって個々に選択をして、この事件だけについてはこうしよう、ああしようという、全般から見れば、まあ、いわば不公平なやり方ということは一体法律制度としてどういうものかということも私ども考えたわけです。というのは、しなければならぬということになってしまうと、まあ一件残らずやらないと、これは不公平になるわけです。一部の人は保護される、一部の人は保護されない。こういうことになるわけですから、ただ思いつきでもって、申し出もないのに、権利者の意思が那辺にあるかということが明瞭でないのにやるということは、私どもそれこそいろいろの面において弊害が生まれてくるのではないか、そういうふうに考えられるわけです。ですからまあここのところはよく一つどもの方の修正の気持もお考え願いたいと思うのですが、無益なる公的、私的の犠牲を払わないで、何らのそこに弊害的な支障というものを起さないで、家庭裁判所の本質に従って、もっとも公正妥当に権利者を擁護していこうという、それにはこの案が正しい、こういう結論になったということであります。
  133. 市川房枝

    ○市川房枝君 まあ今の高橋委員長意見に対しては議論になりまするから省きまして、私の申し上げましたことについて最高裁の家庭局長の御意見を伺いたいと思います。
  134. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その前にちょっと私から高橋さんにまだ、この間、調査官に二人ここへ参考人としておいでいただいて聞きました。調査官活動について聞きましたときですね、私の受けたあれでは、個人的の感情によって、ある者にはこうし、ある者にはこうしないというような不公平ということよりも、むしろ調査官が全力をあげて家裁の責任と家裁の本質的なものによって大活動していらっしゃったことを私伺っておりまして、それでこういうワクをかけたら、あの活動が縛られはしないかということを心配したのです。それで先ほど申しましたように、一つ調査官を衆議院でお呼び下さって、あの活動ぶりをお聞き下さいましたら、もうワクをかけなければ、ことごとくの事件を調査し勧告するという意味合いではなくて、実際泣き寝入りを、という言葉は大へん耳ざわりになりますけれども、ほんとうに今まで泣き寝入りしていた人たちに対して、今度は権限を持ってこれを起し上げるという、私はこの法律は非常に大事な法律だというように考えているのです。そこで調査官活動を一部分制限をされるような結果にならないかということを私は恐れているのでございます。
  135. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) 先ほど私申し上げたのは、今までの調査官の方々が個人感情によって思いつきの事件を取り上げられたという趣旨でないことをまず御了解願っておきます。私ども法律を制定する場合、やはり将来そういう面も考えなければならぬという意味であります。  それから確かに宮城委員のお気持もわかるのですけれども、すなわち、今までとにかく申出があってもなくても、調査あるいは履行の勧告をしておった。それにもかかわらず今度は申出ということになったのでは、調査官の活動を制限することになる。もしその前提がそういうふうなことであれば、それはそうも言えるのでありますが、私ども委員会審議の間において認識しましたところでは、今までの調査官活動というものは、何らかの形においてやはり調査なり、あるいは履行の勧告なりをしてもらいたいという気持が現われたものについてやっておったのだ、そういうふうに考えておる。お話のごとく、もし今までそういう申出、何らの意思表示をしないのに、調査官の方で気がついてやっていらっしゃったというような問題がかりにあったとしても、この法律を制定して制限するのでなくして、今まではこういう制度はなかったのだけれども、もし履行しないようなときには、こういう法律ができているのだからと、これはもう審判あるいは調停の過程においてお知らせ下さるということになれば、これは私はもう申出ということによって今までよりははるかに調査官の活動がしやすくもなるし、範囲も広くなる。今まで調査官活動によって保護されていらっしゃった方々の数より、その効果よりはさらに大きくなるものであるということを信じておるわけであります。
  136. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 承わっておきます。
  137. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) それでは高橋委員長に対してはもうよろしゅうございますか。
  138. 赤松常子

    ○赤松常子君 ちょっと一つ……、衆議院の最後の採決の日の改正に対する趣旨の説明は、ほんとうに法律論に終始いたしているわけでございました。それでその後いろいろまあ私ども衆議院に参りまして、法務委員の方にお聞きいたしますと、その弊害の点をつけ加えて、その点をおもにおっしゃるように、何か変って来ておる次第です。それで私非常にこの改正案に対しての修正案の趣旨というものが、その当時なされたのと、その後私どもがいろいろ申し出ました時期のズレでございますね、ずいぶん御説明が変っていると思うのでございますが、もう一度、単なる法律論に終始していらっしゃる意思というものが変らないのかどうか、もう少しその辺のことを詳しくお知らせ下さいませ。というのは、今申しますように、その後私ども説明を聞くと、だいぶマイナス……、反対者側から被害者があるからという御説明に重点を置いておっしゃっておりますのですが、そういう時期的にだいぶ説明が違っております点をもう一度明瞭におっしゃって下さいませ。
  139. 高橋禎一

    衆議院議員高橋禎一君) 採決のときの討論の実情等については先ほど申し上げたところで御了承願いたいと思います。  それからあの討論で修正に関する理由を全部これはあげられていないと思います。しかしながら、あの簡単な言葉でもって法務委員会が可決するに至ったのは、これはもう政府関係者なり、あるいは参考人の方々なりの意見を徴し、委員の間でいろいろ懇談もいたしまして、そうして私が当委員会においてこれまで御説明申し上げましたような事情がいろいろと論議検討をされまして、そうして修正するということになったわけでありまして、あの簡単な修正理由でも、たちどころに全議員がうなづけるというところまで問題の解決について機が熟しておったものである、こういうふうにお考え願いたいのであります。  それからここで申し上げることも御質問に答えるわけでありまして、一度に一切残らず改正理由を申し上げるということはなかなかむずかしいものでありまして、まあ一つ法務委員会の会議録全部、及び私が当委員会において御説明申し上げたところ全部を一つ十分味わっていただいて、私どもがどういう考えで修正をしたかということを御了承願いたいと思うのであります。
  140. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) よろしゅうございますか、赤松さん……。宇田川さん、市川さんの御質問にお答え下さい。
  141. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 衆議院法務委員会におきましては、私先ほど高橋委員長の申されたように、多くの場合当事者の泣きごと、苦情あるいは申し出というものがあった際に、この調査あるいは勧告ということが、多くの場合裁判官もしくは調査官において行われたと申し上げました。ところがこの前の参議院の法務委員会における調査官諸君の御発言によりますと、その点につきまして、必ずしも申出がない場合でもある。申出がない場合でも調査もしくは勧告することがあるということでございますが、私思いますのに、家庭裁判所を通じて債務者から債権者に金を渡す場合がある、そういう場合にその期日に債務者が金を持ってこないというような場合、そういう場合に、たまたま債権者がこなくても債務者に催告してその履行を確保するということが望ましい、こういうようなこともございますから、ああいうようにぜひとも職権でも調査勧告することができるように、言いかえますと、申出がなくとも調査、勧告できるようにしてほしい、こう申しておったんだろうと思います。私衆議院の方で、申出あるときというような修正に、まあいろいろの事情で同意しましたが、初めは権利者の申立というような修正意見でありましたが、これでは困るので、申出ということにし、印紙の貼用をなくするということで妥協はいたしたのでございますが、しかしながら、あとでいろいろそういうようなことをしますと非常に残念なことだと思っております。調査官諸君からもだいぶその点について攻撃されておる点もございます。家庭裁判所裁判官から申立もございますが、しかしながら、私といたしましては今までの履行勧告の制度は全然ないのに、家庭裁判所でもってこういうふうな調査勧告などをして、それで効果を上げておった実情から申しまして、やむなく申出があった場合に限っても今よりかましじゃないかというふうに考えて承諾、いわゆる妥協したという実情でございますが、しかし市川委員の言うように、そういうような法規を作りますと、かえってこれからは職権で全然できなくなる、そういうおそれもあるということもまたもっともと考える次第であります。
  142. 市川房枝

    ○市川房枝君 宇田川局長のおそれもあるということ、今最後に、かえって今までよりもやりにくくなるおそれがあるというお答えだったのですが、それはどうなんですか、おそれがある点をもう少しはっきり……。この法律衆議院で修正案が通ってもある程度……、そうはちょっとおっしゃりにくいですかね。
  143. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 私先般来申し上げましたように、法務省提案が正しいということは今でも確信しております。理論的にもまた運用の面においてもさようなことが最もよいということを確信しております。今申しましたおそれがあると申しましたのは、何分、家庭裁判所裁判所でございますので、裁判官のうちには法規にないことは絶対にやるべきでないというようなことをきつく主張して、今まで履行勧告を全然させないところもあったというような裁判所もございますので、さような裁判所におきまして、修正案が通れば、市川委員の言うように、調査勧告させないというようなことに相なる場合もあると思うのですけれども、法規の全然ないのに、今までも調査勧告をしておったのだから、申出のあった場合はできるというようなことになれば、まあ申出がない場合でも、従前もやっておったのだから、それじゃやるというような裁判所もあるかもわかりません。その点ははっきりいたしませんので、おそれがあるという言葉を使ったわけでございます。
  144. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 宇田川局長に伺いますが、さっきお言葉の中に、今までやっぱり権利者の申立があった場合には大てい調査官も動いておったと、こういうふうにおっしゃったのですね。だから今後衆議院が修正した通りのことを今まで実際はやっておったのだと、こういうふうにおっしゃったように伺ったのでございますが、もしそれでしたら、なぜ衆議院の修正した通りに政府原案としてこれが出てこなかったのでしょう。今までやっていたんだったら、今までやった通りということに、どうして違ったことをなさったのでしょう。
  145. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) これは先ほど説明申し上げたのでございますが、今まではやっておったけれども、今までも多くの場合は債権者の申出がある場合にやっておったと、これは原則でございますし、今後この履行勧告の制度を発展させることは家庭裁判所の理想、性格にマッチすると思いましたので、そういう権利者の申出という言葉を入れずに、幅広に家庭裁判所の裁判官の権限にゆだねて、そうして履行勧告を期するために、かような法案をまあ法務省の方から提出していただいたわけでございます。
  146. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私はこれは家事審判法による家庭審判というものの本質の上に立ちまして、あの裁判官以下調査官が今までとっていらっしゃる責任において、この間調査官のお言葉は聞きましたときに、実に私は日本の家庭審判というのはよくできていると思って実は感服したのです、日ごろもわかっておりますけれども……。だけども衆議院がかけたこのワクでもいいということになると、私は一体政府がそれでよしということになったら、根本からこれは家庭審判の精神がくずれはしませんか。血も涙もないというような、それほどでもございませんけれども、今まで実に愛情を持って取り扱われたケースはどういうことになりましょうか。しかも私は今までも大体こういうふうでやってきたというなら、何も私ども苦労することはないのです。この通りでいいんです。衆議院のかけたワクのままでやればということなんです。その点どうでしょう。私は根本がくずれやしないかということを心配するのです。
  147. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 私は先般来申し上げておりますように、政府原案が正しいということを確信しております。と申しますのは、宮城委員のおっしゃるように、家庭裁判所の性格にマッチしていると、従って衆議院の修正というものは間違っておると、私は今でも確信しておりますし、さようなことをこの法務委員会でも申し上げたのでございます。
  148. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そうすると、これは間違っておるとお考えになることはおかしいですね、さっきからの説明を聞きますと……。実際はこの通り衆議院がワクをかけた申出のあったときだけに活動しているのだから、大体この通りにやっておったというなら、こうなったってちっとも悪くないという観点にお立ちになるはずじゃありませんか。さっきの御説明は私そういうふうに伺ったのです。
  149. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 現在の調査勧告活動というものが私どもベターだと思っておりません。かりに現在の調査勧告というのが、すべて権利者の申出のもとに行われておったといたしましても、今後はどうあるかということは別でございます。そこで私ども家庭裁判所の性格を、理想を発揮するのには、申出のない場合でもなすべきだという確信がございましたので、政府の原案は正しいと今も申し上げておりますし、また政府もそういうふうな観点からこの法案を国会に提出されたと思っております。
  150. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 もう一つだけ伺います。そうすると、まあこの家庭裁判所のこの精神云々という根本問題はのけておきましても、実際の運用としたら、この衆議院の修正案通りをもし参議院が応じましても、実際の運営には大した関係ないという結論を立ててよろしゅうございますか。つまりこの権利者に、つまり権利者といっても大ていの場合は弱い女性で、そうしてその女性は大体子供をかかえておる。子供に生活権を与えなきゃならぬ、その弱い子供をかかえておる女が多うございますが、そういうものに対して、この修正案通りでお困りにならないかどうかという点でございます。
  151. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) この問題につきましては、その後私もいろいろ現場の裁判官あるいは調査官とも話し合いました結果、やはり修正案では運用も困るという結論を私ども得ております。と申しますのは、まだ行われておりません十五条の四の寄託制度が発足いたしますと、ここへ毎月何千円かの月賦の支払いがこの寄託制度を利用して行われるわけでございますが、その際不履行があった場合に、権利者の申出がなければ調査勧告もできないというようなことになりますと、この寄託制度というもののうまみがなくなるのじゃないかというようなことも出て参りまして、まあこれらの問題につきまして、私衆議院法務委員会のときには、そうきつく研究もいたしておりませんし、あまり衆議院法務委員会では御説明申し上げなかったことを今非常に遺憾に思っているのが私の心境でございます。
  152. 赤松常子

    ○赤松常子君 時間もございませんから、一、二簡単に局長お尋ねしたいのでございますが、先ほどちょっと私、高橋委員長に申したのでございますが、私どもだんだんお尋ねしてみますと、申し出ないと却って問題を荒立てるようなケースもあるとおっしゃっております。そういうケースは全体のどのくらいに当るのでしょうか。たとえば自分の子供が別れた夫のもとにいる、そうして強制執行や何かかかると、やはり子供にかわいそうだからという場合もあって申出によりという言葉を入れたという説明衆議院の法務委員の方にしばしば聞くわけです。そういうケースは全体のどのくらいに当るのでしょうか。
  153. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 今の赤松委員の御発言、申出がないのに強制執行するというような問題はこの問題とはちょっと違うのだと思うのでございます。この十五条の二は、申出があった場合に債務の履行状況を調査して勧告するという問題で、私は衆議院法務委員会考えるようなことはないと思うのでございます。従いまして、どのくらいの数があるかというようなことにつきまして、この法案の立案途上にもそういうような問題については考えておりませんし、それから統計どもとっておりませんので、その数がどのくらいになるかということは私ここでお答えできないわけでございます。
  154. 赤松常子

    ○赤松常子君 私はそこの点非常に大へんだと思うのでございますよ。というのは、この申出でによりということをなぜお入れになったかということを聞きました場合に、今申しましたように、申し出ないと全部の事件に対して調査勧告を行われ、その執行までもやられるということになるのだと、かえって全部やられたときに、非常に今申しましたように、子供を預けた場合に強制執行などされると工合が悪い場合もあるから申出によりという言葉を入れたという御説明なんです。私その点が、非常にそういうケースがいかにも多いように説明なさるものですから、それは局長ではありません、衆議院の法務委員の方がおっしゃるものですから、そういうケースが一体どのくらいあるものかということを伺い、それでわざわざこれを入れることは、そういう人の場合があるから入れたということの御説明なのでありまして、そのケースを伺いたいのであります。そういうケースが少ければ何もこれを入れる必要がないと私思うので、プラス、マイナス、どちらがプラスになるか、マイナスになるかということの判断をしたいので伺ったわけであります。
  155. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) その法務委員会の方がさようなことをおっしゃったとすれば、十五条の二の問題として、権利者の申立がないのに強制執行をするというようなことをおっしゃったとすれば、それはおっしゃったことが間違いか、ひょっとすると赤松委員のお聞き違いじゃないかと思うのでございますが、この権利者の申し出、十五条の二はもっぱら調査勧告の問題にかかっておるのでありまして、強制執行の問題にかかっておりません。従いまして、強制執行する場合に、申出もないのに強制執行するということになればこれは大問題でございますので、私どもといたしましても、もちろん権利者の申立とか、そういうようなものを入れなければならないと思いますけれども、これはただ調査勧告でございますので、この問題はちょっと違うのじゃないかと思います。なお、権利者の申出があるときに、あらゆる仮債務について調査勧告しなければいけないということはないと私は思うのでございます。これは不履行のような非常に危まれるような事件につきましては、家庭裁判所は責任をもって処理する場合が多いと思います。それから先ほど申したように、家庭裁判所で金の受け渡しをする場合に、持ってこないというような場合には、それで持ってこないということはわかるのでございますから勧告もすると思います。従いまして、十五条の二が働く場合はございますけれども、全事件について調査勧告を一々問い合せたり何かしてしなくちゃならないものだと、私は十五条の一は考えておりません。けれども家庭裁判所といたしましては、裁判官なり、あるいは調停委員会が審判したり、あるいは調停した結果について非常に履行があやぶまれる事件がございます。それについて債権者が非常に気の毒だという場合が起るのじゃないかとおそれる場合があります。そういう場合には、債権者の申出がなくても履行状況を調査するということが、裁判所にそういう権限があってもいいのじゃないか、そういう場合に、権利者の申出がないから調査ができないと言って手をこまねいているのはいけないのじゃないかというようなことで、私どもは申出というものは運用についてはよりベターだというふうに考えております。
  156. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) 赤松委員に申し上げますが、先ほどその点について高橋衆議院法務委員長は次のように件数について述べられております。審判または調停後、いろいろ事情が変る場合があり得る、こういう事情が変った場合に勧告をして、結果として悪結果が生する場合があり得るが、数的に検討はしておりません、こういう御答弁があったわけです。念のため申し添えておきます。
  157. 赤松常子

    ○赤松常子君 もう結論に急ぎたいと思いますが、要は私どもまだ納得のいかない点がございます。今の局長の御説明によりますと、私中座しておりまして、その点御議論があったかと思うのですが、この前の法務委員会のときに、一松委員から調査勧告することができるという、その字句についていろいろ御質問があって、先ほどもたしかあったと思うのでございます。そうすると、局長のお答えでは、調査できるということは、しない場合もあるのではないかという一松委員の御質問に対し、局長は、いえ、そういうことはございませんというお答えでございます。そうすると、今の御答弁によりますと、やはり全部にわたって調査勧告するということはなさらないような御答弁でございまして、私この前伺ったのは私の聞き間違いでございましょうか、どうでしょうか。非常に反対の印象を受けるわけですが、それをまたこの次までの機会に十分お話合いたいと思っております。そこで今私、高橋委員長がそういうケースの調査がないとおっしゃったことは、私この法案改正をする場合に非常に大事なポイントでございますので、そういうケースを一度調査して御提出願いたいと思います。
  158. 高田なほ子

    委員長高田なほ子君) では、どうぞ宇田川家庭局長の方でもし御調査ができますれば、そうしたデータをおそろえいただけばけっこうだと思いますから、御希望に添うようにはかっていただきたいと思います。  どうも長時間大へん御熱心にありがとうございました。  最後に、ちょっとお知らせをいたしますが、本日、本件について陳情書が各委員のお手許にも参っておると思いますが、陳情書の文面は   去る二月十七日、衆議院において家事審判決の一部を改正する法律案中第十五条の二を修正の上可決されましたが、私どもは婦人の立場からこの修正に強く反対するものであります。   もしこの修正案がそのまま成立しましたならば、義務の履行状況、調査勧告の申出が事実上困難である現状では、権利者にとってこの修正はかえって不利益であります。ことに権利者の大部分が婦人であることを思いますとき、依然として泣き寝入りとなる婦人があとを断たぬことを恐れるものであります。   このゆえに、先般修正された「権利者の申出があるときは、」を削除し、政府原案通りに可決されますよう要望するものであります。   昭和三十一年三月十日    主婦連合会会長 奥 むめお       大学婦人 山崎  文       協会会長     社団法人日本 林   塩     看護協会会長    日本キリスト君 植村  環    女子青年会会長      日本婦人平 上代 たの      和協会会長     日本婦人有権 松生 徳子     者同盟副会長  こうした六婦人団体を代表せられまして陳情書が参っておりますので、御審議の節にも、十分陳情書の趣意を体せられますことを希望申し上げるようなわけであります。  本日はこの程度で散会いたします。     午後五時四十二分散会      —————・—————