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荒木正三郎君 私からも二、三の問題につきまして
総理大臣の
見解を伺っておきたいと思います。
第一点は、
鳩山内閣は占領
政策の是正ということを強く主張されております。しかし占領
政策の是正ということに対しまして、私は非常に大きな危惧を持っておるものでございます。
政府が今日とっておられるいろいろの諸
政策を見まするときに、それは
民主主義とは逆行する、
民主主義にブレーキをかける、こういう方向に進んでおるように感じられるのであります。そういう意味におきまして、私は占領
政策の是正ということに対しまして、非常な危惧を持ってわるわけでございますが、特に
教育の問題につきましては、私から申し上げるまでもなく、敗戦後の
日本の
教育は非常な刷新が行われたのでございます。その刷新の
基本になった点は、申すまでもなく
日本の
民主主義を育て上げるという点にあったと思うのであります。そういう
立場に立って
教育のいろいろな
制度が
考えられて、そうして実行せられて参ったのでございます。しかし、
民主主義というのは、私は
日本国民がみずからの努力によってかち得たと言い切ることは困難だと思うのであります。やはり戦争、敗戦という結果によって与えられた部面も少くないと思うのであります。そういう意味から申しまして、今日
日本の現状はすべての
国民が必ずしも
民主主義を身につけて、そうして血となり肉となっているとは
考えられない節もあると思うのです。そういう意味において、今日こそ
政治家といわず、
学者といわず、あらゆる人が
民主主義を育てることにさらにさらに努力すべきであると、かように
考えておるのでございます。このことはおそらく私は
総理大臣も異論を持っておられるとは思わないのでございます。そういう情勢のもとにおいて、
民主主義というものを基盤にしていろいろのこしらえられた
制度、そういう
制度をまだ
民主主義が十分成熟していない今日、
運営の面において若干の遺憾な点がある、あるいは国情に合わないというようなことで、にわかにこの
制度を改変していくということは、私は
民主主義の発展のために非常な障害をもたらしてくるのじゃないかというふうに
考えているのでございます。今日問題になっている地方の
教育行政についても、
相当大きな変革を加えられようと
政府はしておられるわけです。特に、
教育委員会制度は、発足してからまだ日が浅いのであります。この
運営が十分にいっていない面もあるということは、これは私も認めます。しかし、そういうことだけをもって、今日直ちにこの
制度に大きな変革をきたすような改変を行う、こういうことでは、せっ
かくの
民主主義的な訓練を積みつつある現状において、その発展を阻害することおびただしいというふうに
考えるのであります。私は特に
教育問題については、朝令暮改ということは、いかなることがあっても、避けなければならないというふうに
考えておるのであります。
教育委員会制度が作られてから、まだ七年しか経験をしていないのであります。市町村において
教育委員会が設置されてから、まだ三年しか経過をしておらないのであります。しかも、この
教育委員会制度が設けられた趣旨については、
総理大臣も何らの異論を持っておられないと思います。そうすればこういう貴重な
制度にはもう少し時をかして、なお
政府においても、あるいは学界においても、いろいろな方面においてこれが
育成強化をし、足らない点は補っていくというふうな
態度で進んでいくことが、
日本の
民主主義を
建設する上において重要ではないかという私は
見解を持っているのであります。そういう意味において今にわかに
教育制度を占領
政策の是正という名前だけで大きな変改を加える、こういうことにはどうしても賛成をしがたいのでございます。そういう意味でこの
教育行政の問題についても、いましばらくその発展を期待して、そうして見守っていくべき段階ではないかというように私は
考えておりますが、
総理大臣の
見解を伺っておきたいと思います。