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1956-04-26 第24回国会 参議院 文教委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月二十六日(木曜日)    午前十一時十七分開会   —————————————   委員異動 四月二十五日委員剱木亨弘君、堀木鎌 三君及び松原一彦辞任につき、その 補欠として井村徳二君、田中啓一君 及び雨森常夫君を議長において指名 した。 四月二十六日委員木村守江辞任につ き、その補欠として笹森順造君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     加賀山之雄君    理事            有馬 英二君            吉田 萬次君            湯山  勇君    委員            雨森 常夫君            井村 徳二君            川口爲之助君            笹森 順造君            白井  勇君            田中 啓一君            中川 幸平君            三木與吉郎君            秋山 長造君            安部キミ子君            荒木正三郎君            村尾 重雄君            矢嶋 三義君            竹下 豐次君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    文 部 大 臣 清瀬 一郎君   政府委員    法制局長官   林  修三君    文部省初等中等    教育局長    緒方 信一君   事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○本委員会運営に関する件 ○地方教育行政組織及び運営に関す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○地方教育行政組織及び運営に関す  る法律施行に伴う関係法律整理  に関する法律案内閣提出衆議院  送付)   —————————————
  2. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) これより文教委員会開会いたします。  委員異動について御報告申し上げます。  四月二十五日、堀木鎌三君、剱木亨弘君、松原一彦君が辞任され、田中啓一君、井村徳二君、雨森常夫君が選任されました。また二十六日、木村守江君が辞任され、笹森順造君が選任されました。   —————————————
  3. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 次に、昨日開かれました理事会の経過について御報告いたします。  地方教育行政組織及び運営に関する法律案外一件の審議日程について協議を行なったのでございますが、その結果、お手元にお配りいたしました日程表通り意見が一致いたしました。すなわち、本日はまず内閣総理大臣に対する総括質疑を行い、その後文部大臣に対する総括質疑に入り、これは明日以後継続するわけでありますが、明日は午前十時開会、午前午後、明後日土曜日は午前中のみ委員会を開くことにいたすことになりました。来月四日金曜日は午前午後審議を行うことにいたしました。その後の日程につきましたは、追って理事会協議することといたしました。  以上御報告申し上げました通り取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この日程表によりますと、総理大臣に対する質疑が、十一時半から十二時半まで一時間ということになっております。しかし、これでは私少いように思うんですが、総理に対する総括質問というものは、どういうふうに今後なお時間を取ってするようになっているのか、そういう点今の説明の中にございませんでしたが、とうてい一時間くらいで総理に対する質問は私はできないと思うのです。私の考えではやはり重要法案でもあり、しかもこの国会重要法案といわれるのは、そう数はないわけです。一つ法案に一日ずつ出られても、そう大して日数は取られないわけです。これは私は三日も四日も出てもらいたいという要求はいたしません。ただ、この法案については、一日くらいは総理大臣出席して、われわれの質疑に答えるようにせられるというのが、私は常識から考えて当然であると思います。それを一時間でやってくれということでは、とうていこれは満足な質疑はできないとかように思うのです。そういう点で私は総理大臣に対する質疑は、一日分は取ってもらいたい、こういう考えを持っているわけです。
  5. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) その点委員長からお答えを申し上げます。昨日理事会でも湯山理事並びに秋山委員からそういう御希望がございました。ただ、この総括質問冒頭に、総理にどうしても質疑をする必要があるということで、与党の方にも非常に努力をしてもらいまして、きょうとにかく総理のあいた時間をこの委員会出席を願う、こういうことにいたしたのでございます。それでもちろん総理大臣に対します質問は、きょうできるだけ多くの方に御発言機会を持っていただきたい。もちろんきょうだけより総理は絶対都合が今後一切ないという、これは何も確定した事実はございません。しかしまた一方、私からまだ今後において総理にいつ幾日必ず出てもらいたい、その確答も得ておりませんので、委員長といたしましては、今後のことについてここで確約したという事実を申し上げることはできない。私といたしましては、そのとき湯山理事にも申し上げて、できるだけ多くの方に御発言機会を持っていただいて、質問もできるだけ能率的にタブったりしないで順序よくやっていただいて、そしてその質疑模様を見て、また委員長において総理質問がぜひとも皆さんの御要望通りどうしてもしなければならぬというように考えました場合は、これは理事会に諮りまして、またそういう手段を講じなければならぬ。きょうのこの審議、きょうの総括質疑のこの進行工合を見てまた考えたいということを申し上げて、その御了承のもとにきょう開かれておるわけです。ですから大へん恐縮でございますけれども、相手が内閣総理大臣であります以上は、これは他の委員会、本会議その他重要国務を控えておられますから、これはこの委員会だけで一方的な意思でもって、総理をこの委員会にくぎづけにしておくということは、これはできないことは皆さんもよく御了承通りなんです。しかし、委員長といたしましては、その審議模様を見て、今後のまたことをお諮りいたしたい、こういうふうに考えております。
  6. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ただいまの委員長の御発言の中には、了解できる点もあるわけなんですが、繰り返してお尋ねしないと了解しがたい点もあるわけであります。それは委員長は、国会運営のベテランでございますが、重要法案審議する場合のこの取扱い方というものは、わが参議院においては、おのずからひな形がきまっていると思うのです。それは重要法案審議する場合には、とりあえず内閣最高責任者である総理の御見解を承わるところの総括質問をする。それから担当国務大臣質問に入る。その場合に委員長が仰せられましたように、総理は御多忙であるから、だから質問者持ち時間が何分、質問時間が何分というようにきめて、そうして議事を進めていくのが、予算委員会を初め、重要案件を処理する委員会審議しきたりだと思うのです。と申すことは、総理質疑のある人は自分持ち時間というのが明確でないというと質疑の構成ができません。そういう意味において、今までのしきたりは大体それできたわけですが、本日の先ほど説明を見ますというと、質問する人の質問時間というものもきまらないで、いつ総理がお見えになるかということも不明確だというようなことでは、総理質問をやっては、またほかのことが質疑され、さらにまた総理に帰るというようなことでは、審議上非常に体系が乱れるように、非常に異例な取扱いのように考えるのですが、その点は委員長さんどういうようにお考えになっていらっしゃるのでしょうか承わりたいと思います。ぜひとも私はもうこれは委員長十分御承知と思うのですが、一つの体系づけた形で重要法案であるだけに、進めていっていただきたい、かようにお願いを申し上げるのです。
  7. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) お答えいたします。委員長もその通り考えますが、しかし、委員会開会はなかなかこちらの各委員の御事情もあって、こちらで勝手に委員会開会する日取りをきめるわけにいかない。あるいはこちらの委員会のないときに総理大臣がちょうど手もあいているというような日もございましょうけれども、そうなりますと食い違いができまして、その点明確に、私今までしたとは申し上げませんけれども、なかなかこちらの都合のいい時間にだけ総理を引っぱり出すといっても、これはなかなか私はむずかしいというように考えるのでございます。これは従来の事例から見まして、各委員もおわかりになっていただけることだろうと思うのです。委員長といたしましては、もちろん各委員のお気持考えまして、できるだけ御希望に沿うように時間も取りたいし、総理質問のみならず一般質問の時間等も取りたいと思いますが、一つ委員におかれましても、できるだけ能率的に審議を進めるということに主眼を置かれまして、そうして私のお願いとしては、きょうの御質疑の予定は全部社会党の各委員でございますので、社会党内で一つよくその点をお諮り願って、各人それぞれ、自分は勝手であると考えられるかもしれませんが、党内でできるだけそういう点を御調整願いたいということを理事にもお願い申し上げておったような次第であります。そういうお気持一つお進め願って、あとのことはまた、その後のこととして皆様方にお諮りをし、委員長においても最善を尽したい、かように考えております。
  8. 有馬英二

    有馬英二君 文部大臣も御出席になったことでありますから、総理大臣がお見えになる前に、少しでも質問を始められることの動議を提出いたします。
  9. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今の議事進行はちょっと無理だと思うのですよ。きょう冒頭総理がおいでになって、それから質疑しようということに相なっておってその質疑をどの程度本日やるか、または今後はどういう審議計画のもとに進めていかんとするかという点が議論されておるわけで、せっかくの動議ですが、その議事進行ちょっと無理だと思います。
  10. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) ちょっと委員長から申し上げますが、有馬委員の御発言でございましたが、十一時半には総理大臣必ず出席されるというお約束でございまして、間もなく御出席と思います。従いまして総理大臣がお見えになったら、すぐ総理大臣に対する質疑に入る。かように議事をいたしたいと思います。
  11. 安部キミ子

    安部キミ子君 ただいまの委員長発言で聞きますと、何だか社会党だけがこの重要法案に取り組んで審議をするというふうに聞こえますけれども、私はこのような大事な法案は、おそらく緑風会も、それから自由民主党の皆様方もいろいろ疑義があり、また、おそらく皆様子供教育という大きな問題については関心を持っておられると思いますが、ほかの委員さんの質問はどうなっておるのでございましょうか。
  12. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 安部先生の御解釈だから、私別にそれに異議を差しはさむわけではございませんが、私の申し上げた言葉が足らなかったせいか、社会党だけがこの法案を重要だと思っているというようなことは、これはまことに委員長不徳のいたすところで、そういうことはここに御列席の各委員に対して……。これは一つそういうお言葉はお慎しみ願いたいと思います。
  13. 安部キミ子

    安部キミ子君 それを聞いて安心しました。
  14. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) それでは総理大臣見えになりましたので、地方教育行政組織及び運営に関する法律案地方教育行政組織及び運営に関する法律施行に伴う関係法律整理に関する法律案、以上二件を一括して議題といたします。
  15. 安部キミ子

    安部キミ子君 私総理大臣にお尋ねいたします。きょうからいよいよ本委員会でただいまの新教育法案審議されることになったわけでございますが、さきに、衆議院でこの法案がかかりました際に、衆議院委員会では大臣も御承知のように逐条審議も全然手に触れていない。それから総理大臣総括質問もしていない。にもかかわらず途中から審議を打ち切って本会議にかけてしまって、中間報告という形で報告されたのでございます。その際も、議長の不手際によりましてあのような混乱を起し、中間報告があったあとは、必ず質問がなければならないはずだのに、それもなされないで、その議場でとうとう本案を通過させてしまった。こういうことになりまして、一方社会党は大へん不満を持っておりますし、これは社会党だけではなくて、国民のほとんどが本法案不満意思表示をしております。このことにつきましては、後ほど私ちょっと質問もしたいと思っております。こういうふうな行きがかりの法案、しかも衆議院の過程において私は大へん遺憾だと思うのです。この法案が重大であることは、大臣も十分御承知通りであると思います。ただ私一人が遺憾であると思うだけでなくて、おそらく国民もまた総理大臣も事が教育であるだけに、また総理大臣が御自身から教育に対しては学校も経営しておられるというようなことがありますだけに、これは公立、官立というだけの学校でなくて、私立学校にもひいては影響する法案でありますので、少くとも今度参議院にかかりましたときには、現在これから審議することになりますが、十分審議をし尽して、私ども国民も満足しきった形で本法案を処理してゆきたい、こういうふうに考えておりますが、大臣の御所見はどんなでございましょうか、まずお尋ねいたします。
  16. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 衆議院の当日の手続は、私は規則の上では遺漏はないと思っております。衆議院においては三月の中旬から四月の二十日までもずいぶん長い間慎重に、かつ熱心に御審議いただいたのでありまして、質問も討論もとにかく議長からは発言があるかということを問い合せて、そうして審議したのですから形式の上においては手続は完了していると私は思っているわけです。
  17. 安部キミ子

    安部キミ子君 そうしますと社会党が全員棄権したというこの事実について、好ましいことだと大臣はお考えでございましょうか。
  18. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は好ましいこととは思いません。話し合いができてゆくということが、議院の本質でありまするから、話し合いが安全にできなかったということは残念なことだと思います。
  19. 安部キミ子

    安部キミ子君 ただいま大臣の御発言によりますと、非常に当を得た御返答で、私満足いたしておりますが、それでは参議院におきましては衆議院のような醜態をさらけ出さないで、野党でありますわれわれも、十分満足できるように話し合いをさせていただけるでございましょうか。
  20. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は話し合いによって円満に進行することを望んでおります。
  21. 安部キミ子

    安部キミ子君 そうしますと、私大臣のそのお言葉を信頼いたしますが、先ほども申しましたように、急いでこの法案をあげるということだけに片寄らないで、十分時間をかけて審議をするということを大臣は御承認下さいますですね。
  22. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) もちろんです。
  23. 安部キミ子

    安部キミ子君 ありがとうございました。  それでは第二点についてお尋ねいたしますが、先ほどもちょっと触れましたように、この教育法案は非常に世間反対が強いのでございます。その反対の立場に立って団体というふうなものから、まずお話しをしてみたいと思うのでございますが、まず教育に関しては最も責任者とされている東京大学矢内原総長を初めとして、大学長教育法案反対意思表示を行われたことは大臣も御承知通りでございます。その学校内訳を申しますと、東京学長矢内原先生、それから学習院大学長安倍先生東京学芸大学長木下先生、それから元東京学長南原先生、お茶の水大学長蝋山先生法政大学長大内先生早稲田大学長大浜先生一ツ橋大学教授上原先生、それから慶応大学教授務台先生、こういうふうにこの声明が出ましたことだけでも、国民は相当考えさせられた、こう思うわけでございます。さらに、関西の十三大学長声明、これは京都大学長滝川先生立命館大学長末川先生同志社大学長大塚先生大阪市立大学長恒藤先生関西大学長岩崎先生大阪学芸学長北川先生神戸大学長古林先生大阪大学長正田先生、西京大学長園先生関西学院大学長堀先生大阪府立大学長堀場先生龍谷大学長森川先生、大谷大学長山口先生、こういうふうに関西でも十三の大学長声明が発せられました。さらに、大学教授の六百十七氏の声明も出ております。また、東京教育大学文学部教授会八十六氏の声明も引き続いて出ました。また、千葉大学教育学部教授会声明、また教育関係十四団体声明も出ております。その十四団体内訳を申し上げますと、教育映画製作者連盟教育映画配給者協議会全国学校図書館協議会全国地方教育委員会連絡協議会全国手をつなぐ親の会、全国都道府県教育委員会委員協議会全国へき地教育研究連盟全日本高等学校教職員組合日本映画教育協会日本教職員組合日本幻燈連合会日本子供を守る会、日本青年団協議会日本連合教育会、今度は新聞関係やそのほかのところでも、この問題がけんけんごうごうと論議が戦わされておりまして、もちろん反対意思表明がされたものでございますが、私がここに拾い上げましたものだけでも、ちょっと読んでみたいと思います。「教育制度改革を急ぐな」、これは朝日新聞社が三十一年の一月十二日の社説に書いております。また、「憂慮される教育制度の改廃」、これは朝日新聞が三十一年の二月二十六日の社説に書いております。「教育自由性を危ぶむ」朝日新聞三十一年三月十四日の社説、「教委制度公選を続けよ」毎日新聞三十一年一月十二日の社説、「教育中立性をめぐる論争」毎日新聞三十一年三月二十一日社説、「民主教育を守れ」読売新聞三十一年三月二十一日社説、「教委制度改革は慎重に」大分合同新聞三十一年一月十四日の社説、「教育行政民主化を守れ」河北新聞三十一年一月十八日社説、「教育制度改革は慎重に」河北新聞三十一年一月十八日社説、「文教政策の傾向」河北新聞三十一年三月二十六日社説、「文教政策を誤るな」愛媛新聞三十一年一月二十六日社説、「嵐の前に立つ教委制度岩手新聞三十一年一月二十八日社説、「地教委公選廃止は無意味」秋田魁新聞三十一年二月十日社説、「抹殺される教育方針岩手新聞三十一年三月九日社説、「十学者の教育声明」茨城新聞三十一年三月二十四日社説、「教育委員の権限縮小問題」防長新聞三月五日社説、これは全部調べ上げたというわけではありませんが、まあざっと私が拾い上げましただけでもこのような数に上っております。さらに、意見書陳情書によるものは、日本社会教育学会日本教育学会全国学生連合会都道府県教育長協議会日本放送教育学会放送教育研究会全国連盟日本学校視覚教育連盟日本放送教育協会日本映画教育協会婦人民主クラブ教育懇談会というふうに、私は十分調べたつもりではないのですけれども、私の目の届いただけでも以上のような国民の世論が起っているわけでございます。さらにそのほかに、ただいま四百数十万人の請願が国会に出されようとしている。あるいは一部は国会にすでに出されていると思いますが、この事実を見ましても、この新教育法案に対しては、国民がいかに反対しているか、ほんとう国民が願ってこの教育法案を迎い入いていない、喜んで迎い入れていないということがおわかりになると思いますが、大臣はこういう世間反撃に対してですね、どういうふうにお考えになっておられましょうか。
  24. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 大学学長などの方々が、教育民主主義を守るべきことを述べられております。この点につきましては、私も賛成であります。本法案は、教育民主主義をそこなうものとは私は考えていないのです。あなた方の御質問の中心は、いつでも教育委員任命制公選制とについて御質問がございまして、任命制がこの民主主義を破ったというようなお考えが論拠となって攻撃的質問があるのでありますけれども、私ども教育委員選任方法として、公選制でなければ民主主義に反するというものではなく、住民代表である長が住民代表である議会の同意を得て任命することも、民主主義をそこなうものではないと考えておるのでありまして、これはやはり政府の精神が徹底しないために、民主主義の破壊がこの二法案によって達成できるように誤解されているものと私は考えております。
  25. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) ちょっと安部委員にお諮りいたしますが、できるだけ要約してですね、総理大臣出席時間も限られていることですから、お願いします。
  26. 安部キミ子

    安部キミ子君 ただいま大臣お話しですと、任命制公選制のことだけに、お触れの御答弁でございますが、私はきょうは総理大臣にお出でいただいたことは、日本教育全体のことについてお尋ね申したいと思うのです。なぜ、国民がこのように心配をしているか、この教育法案反対しているかということは、一口に言いますと、また、昔の戦争中のような教育に帰りやしないか、一言で申しますとですよ、こういうふうな日本の運命を決定づける方向に今度の教育法案があるということを、国民がこぞって心配しているのです。このことについては、先ほど大臣は再び戦争は私はきらいだ、私も戦争は飽きている、私を信じて下さいよと私におっしゃいましたね。その通り私はほんとう大臣戦争を好んでおいでるとは思いませんけれども、こういうふうにその教育専門家方々たちが、それは総理大臣教育に対しては大へん御造詣が深いとは思いますけれども、しかしこのような日本最高責任者の、しかも専門家である大学先生たちがこぞって反対しているところに、私はこの法案の大きな問題があるのじゃないか。政治家考えるだけの常識ではやはり足りないのじゃないかこういうふうに考えるわけなんです。そこで重ねて私大事な点をお尋ねしたいのですけれども、やはり政治というものは国民が納得する政治でなければ私はいけないと思う。事を急いで、この法案を通す必要は実はないのじゃないか、中央教育審議会にかけてそうして、そうした専門家方たちにゆっくり、その大臣も御相談になって、日本教育はどういうふうに持っていったら、日本の国がりっぱになるか、子供教育ができるかというふうなことを御相談になるお考えはないでしょうか。私その点大臣ほんとう気持を、そこで紙に書いてもらっておられるのを大臣はお読みになっておられるようですが、それではなくて大臣ほんとうの心の底を言ってもらいたいと思うわけなのでございますが、いかがなものでございましょうか。
  27. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 心の底を申し上げます。教育によって戦争の好きな国民を作るというようなことを絶対に考えておりません。
  28. 安部キミ子

    安部キミ子君 ちょっと、もう一度大臣大臣は何か蓄音機か何かみたいに、同じようなことをおっしゃいますけれども、そういうふうな大臣のような気持でこの法案が作られているならば、このような反撃はないのです。子供を持っている親たちはこのような心配はしないはずなのですね。このように反撃があるというところに、大臣はもうちょっと謙虚な気持になって、なぜこういうふうなことになったのだろうかということを、そうしてまた国民意思はどこにあるのだろうと国民の心の中に入るようなそういう政治をしてもらいたい。国民の心の底をくみ取るような、そうして国民が満足するような政治をしてもらいたいと思うので、こういうふうにお尋ねするのでございますけれどもほんとうのことをおっしゃって下さい。
  29. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ほんとうのことを言っているのです。実際その心から戦争国民を作るような気持は毛頭ありませんし、私は教育の理想とするところは、ほんとう民主主義国家国民として、適格なる国民を作りたいと思っておるのであります。民主主義というのは、とにかく人間の人格の尊厳を尊重するとか、人間の自由を尊重するとかいうことは基本なのでありますから、そういうようなことを、そういう教育をやりたいというので、命令服従教育を作りたいというような考えは毛頭ないのです。
  30. 安部キミ子

    安部キミ子君 それじゃちょっと簡単に。大臣はこの法案が完全無欠ないい法案だというふうに考えておられますか。
  31. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 完全無欠ということは、これはなかなかむずかしいことでしょうが、とにかく民主主義国民を作るのに、一歩進んだ法案だと思っております。
  32. 安部キミ子

    安部キミ子君 そうしましたら大臣どうでしょうかね、大臣はそういうふうな考え方でおられても、国民はこのように多数の人が反対だ、大臣はそういうふうに言っておっても、うそだと言っておるわけですね、正直に言いますと。そこでそういう人たちと一ぺん話し合ってお互いが理解できる程度に話し合いの場を作ると、もっと具体的に言えば、もう一度中央教育審議会にでもかけて答申を求めようというお考えはございませんか。
  33. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) これは国民全体と相談をしてきめるということは事実上不可能ですから、国会でもってきめてもらうより仕方がないと思っております。
  34. 安部キミ子

    安部キミ子君 ところが多数を取っておられる自由民主党さんは、これがいろいろな立場でいいとおっしゃっても国民皆さんはこのような、しかも専門家の立場でこのようにいけないとこういうふうに出ているのですが、どうですかこれは、この事実を一体無視されるのですか、大臣にお尋ねします。
  35. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は国民の意向は無視できないと思います。やはり国民に意見があれば、それらを慎重に考慮に加えて決定すべきものと思います。
  36. 安部キミ子

    安部キミ子君 それじゃ考慮とおっしゃるが、大臣はどういうように考慮なさいますか。
  37. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国会の多数でもってきめていくより仕方はないでしょう、結論は……。
  38. 安部キミ子

    安部キミ子君 国会の多数とおっしゃいましても、その国会の多数が国民には信頼されていないわけなんですよ。(「そんなことはない」「その通り」と呼ぶ者あり)だからこのように(「そんなことはないよ」「おかしいよ」と呼ぶ者あり)いえ、そうです。信頼されていないからこれを……、(「穏やかにしろ」「静かにしろ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  39. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) お静かにどうぞ。
  40. 安部キミ子

    安部キミ子君 私はそう思いますが、大臣はそれで国会のいわば多数決の力によって通す、多数決の力によって通すというお考えなんですか最後まで……。
  41. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はこの法案民主主義を発展させるのに必要なものだと思っておるのであります。通したいと思っております。
  42. 安部キミ子

    安部キミ子君 私は大臣がそういうふうに同じような御答弁じゃ、もう五時間やっても十時間やっても同じだと思いますので、もう少し大臣ほんとうに冷静な立場でほかの方々が書かれた原稿を読んで御答弁なさるような態度でなくて、日本の将来ということを静かに考えてもらって、もう一度今度の機会大臣に御質問したいと思いますので、一応私の質問は打ち切ります。
  43. 秋山長造

    秋山長造君 私は戦後の教育はただいま総理がおっしゃったように個人の価値、あるいは人格の尊厳の確立、こういうことを理想としておると思う。そうしてすべての教育立法にしても、あるいは教育制度にしても、この目的のもとに今日までつちかわれてきていると思いますが、総理の御見解をお伺いします。
  44. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 秋山君の言われる通りに、私は個人の人格の尊厳を尊重するような諸制度が作られていくことは必要だと思います。
  45. 秋山長造

    秋山長造君 戦後教育の方針がこういうことになったことについては、いろいろ私は理由があると思うのですけれども、最大の理由はやはりあの大きな戦争の犠牲とそうしてその戦争に対する深刻な反省に出発している。こう考えるのですが、その点総理の御見解を承わりたい。
  46. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ああいう戦争を始めたとか、ああいう戦争を再びしないとかいうようなことに対して反省すべきことは当然だと思います。
  47. 秋山長造

    秋山長造君 総理大臣は戦後の教育については、私の申し上げることも総理大臣のお気持も全く一致しているように承わるのですけれども、しからばこの戦前の教育について総理大臣はどういう御所見を持っておられるか、あるいはまたどういう反省をしておられるか、この点をお伺いしたい。
  48. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は民主主義というものがどういうものだということを、子供のうちから理解させていく必要があると考えております。
  49. 秋山長造

    秋山長造君 つまり戦前の教育においてはそういう点がおろそかになっておったということをおっしゃっておられるわけですか。
  50. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 民主政治というものは、どういう理由で起きたか、歴史的にどういうように発達してきたか、民主主義の先進国ではどういうような慣例が存在しているかというようなことを、子供の時分から、中学の時分から頭の中に入れていく必要があると思っております。
  51. 秋山長造

    秋山長造君 それはちょっと私の御質問していることと的が違うんです。それは、おっしゃることはもう全くその通りなんですけれども日本において、まあ戦後の教育の建前はおっしゃるように大体なってきたと思うんですけれども、しかし、これはさっきも総理大臣もお認めになったように、従来われわれが受けてきた教育というもののやり方が間違っておった、それに対する反省ということから出ているということもお認めになったんですが、で、戦前の教育というものは、そういう点がおろそかになっておったとお考えになるかどうかということを御質問しているんです。
  52. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 戦前におきましては民主主義ではなく、主権が国民にあったわけではないのでありまして、君主政治であった。そうして一身を犠牲にする、こういうことに主点を置いて教育をしてきた。これからは自分自身というものは尊いものだということを教えていく必要があろうと思います。そこが違うと思います。
  53. 秋山長造

    秋山長造君 まあ、大体総理大臣のお考えの一端はわかります。で、義務教育は明治の初年から始まりまして、終戦に至るまでの日本教育、特に義務教育はこれはずうっと一貫して中央政府の強い統制のもとにあったと思うんです。言葉をかえていえば、いわゆる官僚統制に一手に握られてきたと思う。それがあの満洲事変からずうっと支那事変、そうして太平洋戦争というあの過程において日本の軍国主義化の上に大きな力を発揮した。で、言葉をかえていいますならば、この明治以来の、どういいますか、今総理のお言葉のように国家主義といいますか、国家至上主義の教育がやはりあの戦争にまで突入するに至った日本の軍国主義を支える大きな柱になっておった。その冷厳な歴史的な事実に対するお互いの深刻な反省から出発して、戦後の個人の価値とか、人格の尊厳ということと中心にして教育していかなければならぬのだという考え方になった、私はこのように考えているのですが、総理はどうお考えになっておりますか。
  54. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) あなたのおっしゃる通り考え方をしております。
  55. 秋山長造

    秋山長造君 ところが今問題になっているいわゆる教育委員法案にしても、あるいは今衆議院でやっている教科書法案にしても、これを貫いている一つの大きな特色は、戦後個人の価値とか、人格の尊厳というものを大目的にしてやってきた教育の中に、再び国家とか、国とかいうようなもの、さらに卑俗な言葉でいえば、国家統制あるいは官僚統制というようなものが、これはずうっと一貫して頭をもたげてきている、こういう印象が非常に強いんです。これは私が申し上げるばかりではない。先ほど安部委員からも、るる申し上げましたように、今日日本教育、学術、文化、こういうものを現実にになっておられる第一線の学者にしても、あるいは教育家、文化人、あるいは新聞、放送、こういうような側の人たちがこぞってこの点を指摘して、そうし政府の反省を求めておられるんです。この事実をどのようにお考えになりますか。
  56. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自分の人格の尊厳を考えるということが、民主主義の要諦であるというか、根拠ではありますが、この自分の人格の尊厳を尊重するというのは、同時に他人の人格の尊厳を尊重するということも含まれているのであります。これを誤解しまして、自分の人格の尊厳を尊重する民主主義になると、自分が主権者になったというので、自分のためならば何事をしてもいいというような考え方が生じるということは、あまり国家としては喜ばしくないのであって、ほんとう民主主義というものは、お互いに人格を尊重し合うということが必要で、自分のことのみならず、他人のことも考えるということが必要だ、そこにやはり一応の考えを持たなくちゃならないというのが根底だと私は思うのです。そういう意味で国のことも、同士のことも考えろということを忘れてはならないという意味のことは、私は教育する必要はあろうとは思います。
  57. 秋山長造

    秋山長造君 その点も私の質問とちょっと的がはずれておるのです。今おっしゃるようなことは、これは個人の価値と人格の尊厳という戦後の教育の根本方針の中に当然含まれておることなんです。自分の人格を尊重すると同時に他人の人格を尊重しなければならないというようなことは、これはわざわざ大学の総長から教わらんでも、お互いに常識考えてもわかることなんです。で、今私が御質問していることはそういうことではなくして、せっかく、かつての国家至上主義の教育、さらに制度の上に現われては官僚の手に一手に握られておった官僚色の非常に強い中央集権的な教育制度というものが、戦後のこの自由と民主主義を建前にした制度に切りかわっておったのに、今回の、この今問題にしておる法案あるいは教科書法案等を通じて、再び国家統制あるいは中央集権、あるいは官僚統制、こういうきっかけになるような点がずっと一貫して現われてきておる。これが非常に危険じゃないか。現に全国の学者あるいは文化人、教育者すべてがこぞってそういう深刻な心配を、憂慮を表明しておるのです。だからその点について総理大臣は御反省にならないかどうかということをお聞きしておるのです。
  58. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 秋山君の言われる中央集権とか、教育の国家統制とか、あるいは官僚の統制ということは私は望んでおりません。今度の法律もそういうことを目的とはしておらないのであります。
  59. 秋山長造

    秋山長造君 目的としておらないということをおっしゃるけれども、この法案総理大臣はここへおいでになる前に目をお通しになったのですかどうか、その点ちょっとお伺いいたします。
  60. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 閣議で決定いたしますときには目を通さざるを得ません。
  61. 秋山長造

    秋山長造君 じゃよくお読みになっておるわけですね。よくお読みになっておれば、ただいまのような御答弁は出ないのじゃないかと思う。これは総理大臣が何と言われようとも、文部大臣が何と説明をされようとも、これだけ天下の有識者が非常な危険性がある、戦前の国家統制に逆転する危険性があるということを、こぞって指摘をしておるからには、まあ総理大臣も目を通されたといっても、どの程度目を通されたのか、判こをつくといっても、目をあけてはっきりつかれる判こもあるし、目をつぶってつかれる判こもあるわけですからその点の御反省を、これはざっくばらんな気持一つ反省をなさる必要があるのじゃないか、なさるお気持はないかと、これは重ねてお伺いいたします。
  62. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) この法律案は中央政府が権力統制をしようとするものと考えて出したものではないのですが、どういう点がそういうことになるのでしょうか。
  63. 秋山長造

    秋山長造君 その点について詳しくお説明をいたしますと、私の方の時間がなくなってしまうので、この点はたとえば公選制云々の問題でございましたが、公選制に対しても今度任命制に切りかえるわけでしょう、今一方では内政省というものが作られることになっている。今のところは教育関係は内政省へは包含していないけれども、戦前鳩山さんが文部大臣をしておられたころはどうですか、教育の責任は一応は文部省ということになっておりますけれども、しかし実際に地方において教員に号令をかける責任者というものは全部内務官吏、高文を通ってまだ二、三年しかたっていない県庁における課長のなりたてがまず学務課長になって、二十年も三十年も教育のために献身してきた年のいった校長先生に対して、頭から号令をかけておった。そういうやり方はこれはいいとお考えにならぬと思うのです。ところが今度内政省を作って、一方では憲法改正云云ということで知事の公選制を再検討をする、いずれは選任方法は変えて任命制とか何かになさるのでしょう。そうなると結局今そんなことはないとおっしゃるけれども、ゆくゆくはやはり地方の教育行政というものを、また昔と同じように官僚の手にいろいろな面から握られていくということはこれは火を見るより明らかであります。そういう少くともきっかけを今回の任命制が作るものだということを私どもはおそれる。またさらに地方の教育委員会に対する文部大臣の措置要求権というような強力な権限が今度うたわれておる、あるいはまた、府県の教育長も任命は文部大臣の承認のない限りはできない。これはもう口で言えば簡単ですけれどもその含んでおるところの実質的な意義というものは、まことにこれは重大なものです、重大な権限です、問題は。この一点だけでも文部大臣は地方教育というものは自由自在にやれる、そういう点をごらんになったときにお気づきにならなかったかどうかお伺いしたい。
  64. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 中央政府が権力の統制をしようという考え方で、そういう規定を設けたのではございません。
  65. 秋山長造

    秋山長造君 私は鳩山さん個人が今どういうお気持でおられるかということよりも、少くともこれを突破口にしてそして権力支配を、国家統制をやろうとすればできないことはないという一つの糸口になるということをおそれるのです。これは鳩山さんはおやりにならぬとおっしゃればおやりにならぬと承わるよりしようがないけれども、もう少し考え方の変った人たちが出てきてこれを利用してやろうとすれば、これはできないことじゃない。だから制度はやっぱりかりに悪用しようとしても、悪用できないという保障が制度の中になければ、これは民主的な制度とは私は言えないと思うのです。その点いかがですか、総理大臣の率直なお気持でいいですよ。
  66. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は先刻申した通り考え方で、中央政府が権力統制をしようという気分を持って、この法案を出したのではないです。それ以外に申し上げることはできません。
  67. 秋山長造

    秋山長造君 これはもうしつこくは聞きません、時間の関係で。これはやはり鳩山総理のように長年政治家としての生涯を送ってこられていろいろなことを経験されておるんです。だから私の申し上げておることは、これはもう総理御自身の御体験として、御体験から割り出して十分おわかりいただけると思う。これは総理大臣が早い話が、あの昭和七、八年当時文部大臣をしておられたあの当時だって、当時の文部大臣としては日本教育を軍国主義へ持ってゆくというお気持はなかっただろうと思う。しかしそれは鳩山さん個人の心がまえとしての問題にすぎない。やはり当時行われておった日本教育というものは好むと好まざるとにかかわらず、今結果的に見れば、歴史的に見れば、やはり日本のあの太平洋戦争にまで突入したあの非常な誤った軍国主義、超国家主義、こういうものを支えた最大の柱だったということは、最初にもお認めになっておる。その点を私はお尋ねしておるんです。たとえばせんだって私予算委員会でも総理に御質問したんですが、自衛隊がもう二十何万に陸海空を合せればなってきておる、ほとんど満州事変当時の兵力です、頭数だけ。しかも、その中で文民優位の原則がくずれつつある。これを今のうちに何とか慎重に考えておかなければいかんじゃないかと言いますと、今は昔と違って統帥権は独立していない、議院内閣制だ、そういう心配はありませんと簡単におっしゃった。けれどもわれわれは総理大臣がそうおっしゃったからといって、それで安心して引き下るわけにはいかない。いろいろな事実を私どもは聞いたり見たりしておるんです。だから今鳩山さんは日本を軍国主義に持っていくつもりはない、国家主義に返すつもりはない、あるいは文民優位の原則をくずすつもりはない、こういうようにおっしゃっておっても、今のようなやろうとすれば国家統制をやれるような、やり得るような、きっかけを与えるような立法をあちこちでやられてゆきますならば、それが必ずや他日、小さい流れがやがては洋々たる大河を合流してゆきますように、非常に国全体を誤まった方向に、われわれがかつてなめたあの非常に深刻な大きな犠牲の道へ再び引き戻されるようなおそれがあるんじゃないか、こういう立場から私は御質問をしておるわけです。総理の御見解をお伺いしたい。
  68. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は秋山さん少し心配し過ぎていると思うんです。文民優位の原則がくずれたり、日本が再び軍国主義になったりするようなことはこの間の戦争の結果考えられないんです、私は。
  69. 秋山長造

    秋山長造君 その点は心配し過ぎておるんじゃないと思うんです、総理大臣があまり楽観し過ぎているんです。言葉をかえていえば無責任過ぎるんです。あなたが今まいた種をわれわれが刈り取らなくちゃならぬ。早い話が先般あの日本文化放送で十四日ですか、あのいわゆるA級戦犯の言葉という放送があった、総理がお聞きになったかどうか知りません、そういう放送があった、そのときにあの出てきた当時の指導者荒木大将だとか、あるいは橋本欣五郎とかその他の人たちの言葉が放送されたんです、これはもう非常に世論を沸騰させておる放送だった。これらの人たち、あるいはさらにいわゆる戦争責任者というワクに入れられておったような人たちが、今日あちこちで言ったり、なさったりしておることを、じっと静かに見ておりますときに、私個人的にはもちろん同情を惜しむものではございません。これは長い間巣鴨へ入って苦労された、それは個人的には私も同情を惜しむものではございませんけれども、そういう個人的な感情は別問題です。そういう人たちの言ったりされたりしておることをじいっと見ておりまして、これはもう一貫しておることは、あれだけの大戦争国民をあれだけ苦しめた、国民に大きな犠牲をこうむらせたところの大戦争に対して、たった一口の反省の言葉も聞けない。当時の責任者として国民に対するたった一言のおわびの言葉も聞けないのです。それのみか、むしろ逆にいたけだかになって、そうして再び復讐戦争でもやりかねないような大風呂敷を広げておられる、これはもうほとんど例外なしです。そうしてそこに坐っておられる文教の最高責任者も、またそれに全く腹の底から共鳴するような御発言をあちこちでしておられるのです。(「そうそう。」「その通りだ。」「新聞に出ている。」と呼ぶ者あり)そういう無反省な社会風潮に対して、総理大臣はどのようなお感じを持っておられるか。またそういう人たちが大挙して自民党に入党してくるというようなことがありといたしますならば、それが総理大臣として、鳩山総裁として好ましいこととお考えになるかどうか、率直な御感想をお伺いしたい。
  70. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 現在の日本政治体制から考えまして、昔のような国家主義、軍国主義が復活するとは、私はほんとう考えていないのです。また、復活しないようにわれわれは協力して守っていかなくちゃならないと思います。
  71. 秋山長造

    秋山長造君 相変らず私が御質問しておることに的を合せた御答弁がないのですが、私は今申し上げたような風潮といいますか、この傾向といいますか、これは非常に危険だと、遺憾なことだとこう思うのですが、総理大臣はそうお考えになりませんか。
  72. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はそういうふうな傾向に持っていってはならないと思うし、そういうものはないと確信をしております。
  73. 秋山長造

    秋山長造君 ではそういう人たちがさつき申し上げたような無反省な発言をされることもよくない、また、そういう人たちが言ったりしたりしているような方向には日本を持っていきたくない、こういうお考えですか。
  74. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その通り考えます。
  75. 秋山長造

    秋山長造君 ところがですね、こういう風潮とうらはらのような関係で、いろいろなことが行われておるのです。この間も四月の十三日に宝塚劇場で憲法改正の歌の発表会というものを行われたようです。そのときの話もいろいろ聞いておりますが、その前に前夜察というのが音羽御殿で行われたやに承わる、四月十日に。そのときに鳩山総理大臣があたかも讃美歌でも歌われるような声で憲法改正の歌をお歌いになっておったことを録音放送で私ちょっと小耳にはさんだ。それについてのとやかくの批判は差し控えます。これは総理大臣といえども一私人に返られた場合には、それは浪花節をお歌いになろうとも謡をうなられようとも、それは御勝手です。そんなことまで私は干渉しようとは思いません。しかしながら総理大臣が、中曽根康弘氏の言葉をもってすれば、全く涙に声がつまってあの歌の一番を歌い終ったら二番が続かなかった、戦争に負けてくやしいからなとおっしゃったということを、中曽根康弘氏が宝塚の劇場で発表されておる。ああいう一連の出来事をじっとわれわれが見たり聞いたりしておりますと、もう憲法改正もくそも何もありゃせん、もう九十九条というのはとうの昔にどっかに吹っ飛んじゃっておる。だからとにかく先ほど戦犯の方々の無責任な放言の御感想を求めましたが、総理大臣はそういう傾向は好ましくない、それからそういう人たちの考えておる方向には持っていきたくない、あくまで民主主義の方向に持っていくのだとおっしゃっておる。おっしゃる総理大臣自身があたかも讃美歌のようなつもりで、あの愛国行進曲まがいのような歌を歌っておられるのでありますから、これはわれわれとしても単なる一私人の言行として聞き捨てるわけにはいかないのです。一体憲法改正の問題について、またああいう形において総理大臣日本国憲法に対する感情なり、あるいはお考えなりが国民の前にさらけ出されることについて、それをけっこうなことだとお考えになっておるのかどうか、その点について総理大臣の率直な一つ言葉を承わりたいと思うのです。
  76. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は憲法改正は必要だと考えておりますので、憲法改正の必要性が国民の間に徹底することをこい願っております。
  77. 秋山長造

    秋山長造君 結局、総理大臣はあらゆる機会に憲法改正ということは自分の政策として持っておるけれども、しかし現憲法が現存する限りにおいては九十九条を待つまでもなく、憲法はあくまでも尊重し、そうして擁護していくつもりだということをおっしゃっておるのですが、どうもそういうお言葉と、そうして今涙を流して歌を合唱しておられる御態度とは、どうもこれはわれわれから見ても一致しない、国民から見ても何かちぐはぐなような一致しない感じを持つと思うのであります。だからもう少し憲法改正という問題については、これは政治的信念として持っておられるのはやむを得ませぬ。やむを得ないけれども、この憲法問題を取り扱われる場合には、もう少し一国の総理大臣として慎重なまじめな態度をもってやっていただきたいと思う。その点どうお考えになりますか。
  78. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 現在の憲法を尊重しないわけには参りません。
  79. 秋山長造

    秋山長造君 これは(「飛躍し過ぎるじゃないか。」と呼ぶ者あり)待って下さい、飛躍していません。われわれは従来警察法あるいは自衛隊法、こういうものが国会に提案されるたびに、ただいまの教育法案について御質問しておるような同じような心配をしてきたのです。しかもそういう心配はないないということで強行されてきたのですけれども、結果的に見れば、やはりわれわれの心配の方向に一歩なり二歩なりとにかく進みつつあるという事実を認めないわけにはいかない。しかも今度の国会においても、この法案だけについて議論することはできない。この法案と並行して、あるいは小選挙区法案であるとか、あるいはその他いろいろな党利党略法案は私はこれは問題外です。いろいろな危険な芽ばえをはらんでおるような法案があちこちに出て来ておる。そういうものを総合的に考える場合に、今回のこの教育法案も、単に教育委員会制度をあちこちいじくるということだけではなくて、やはり終戦以来私どもがお互い非常な犠牲を払ってやってきた日本民主主義的な制度、民主主義的なものの考え方、こういうものをまた再びかつてのようなあやまった方向に逆転させつつあるのじゃないか、そういうおそれがあるのじゃないか。もっと率直に言えば、この教育法案どもやはり憲法改正をねらって、そうして教育の、やがてはこれはもうだれはばかるところなく中央集権、官僚統制、国家統制に持っていくんじゃないか、こういう危惧の念を、これは持つなと言われても、これはもうわれわれの経験からして持たざるを得ないのです。私はこういうことは、何とか総理大臣一つざっくばらんに考え直していただきたいと思う。これは全く昭和八年の鳩山さんの京大事件と同じことですよ。形は違うけれども、歴史上に占める意味というものは京大事件と同じことだと私は思う。そういうことを鳩山さんの政治的生涯の最後に再び繰り返されるということは、私は決してやらるべき道じゃないと思う。それについての率直な御感想をお伺いしたい。
  80. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はあなたのおっしゃるような国家主義、軍国主義の復活なんということは考えておりませんから、先刻申した通りで答弁のしようがないと思います。ただ、いまは憲法改正についてのお話がありましたが、教育法案と憲法改正とは関連のないことは言うまでもないことでありまして、憲法改正と関連して教育法案を出したわけではございません。
  81. 秋山長造

    秋山長造君 関連して出したつもりはないとおっしゃっても、歴史的に見た場合、結果的にはこれはもう十分関連した問題なんです。これはもうタケノコがあっちこっちににょきにょきと頭を出しても、地下を掘れば全部がんじがらめにつながっておるのです。これと同じことだと私は思う。で、幾らこの点についてはわれわれがほんとうに腹の底からの心配をぶっつけてみても、総理大臣は簡単にそういうつもりはない、そんな心配はないとおっしゃるのですけれども総理大臣ほんとう日本の今後のことを考えられて、責任を持って、そういう方向へ日本を持っていかないというだけの責任感を持って御答弁になっておるのかどうか。
  82. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) もちろんです。教育関係の諸法案民主主義体制に反するということは絶対に考えておりません。
  83. 秋山長造

    秋山長造君 重ねてお伺いしますが、先ほど安部委員から繰り返しお尋ねのあったように、しかしそれにしても、これだけやはり教育、学術の現実の担当者が非常に心配をし、そうして政府に対して反省を求めておるこの法案について、これをあくまでそれにほおかむりで、そうして原案一本で参議院をも突破しよう、こう言われることは、私は先ほど来の鳩山総理大臣のお言葉から比較対照してみまして、あまりにも矛盾した、やはり無反省な態度じゃないかというように思えて仕方がないのですが、もう少し何か考え直す余地はございませんか。
  84. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は幾度も申します通りに、このたびの教育法案民主主義の体制に反するとは思っていないのであります。
  85. 秋山長造

    秋山長造君 総理大臣はせんだっての内閣委員会文教委員会との連合審査会のときに、臨時教育制度審議会の法案についての審議のときに出席をされまして、そしてわれわれからの質問に答えて、この問題について誤解があるといけないから、学者の人たちあるいは大学総長の人たち、こういう人たちと一つ会って、そして十分意見も聞き、話し合ってみたいというようなことをおっしゃったことを記憶しておるのです。このお言葉は私どもぜひ実行していただきたいということを当時言っておったんですけれども、そういうことをおやりに一回でもなったのかどうか。また、あのときには、私の質問したのに答えられて、自分は新聞もラジオも読みも聞きもしていないから、世論がどのくらい騒いでおるか知らぬというような、全く無責任なことをおっしゃったんです。で、その後は一体この問題についての世論の動向あるいは新聞、雑誌等の論調、こういうものについて目をお通しになったかどうか、耳をおかしになったかどうか、その点もあわせてお伺いしたい。
  86. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 大学の諸先生の意見を聞くことの必要なることは私も現在でも認めております。文部大臣は適当にこれらの人たちと協議をしておることを私は思っております。
  87. 秋山長造

    秋山長造君 これは文部大臣にお尋ねしておるのではないのです。文部大臣先ほど私が申し上げたようなお考えをもってやっておられるのですから、これはまた別な機会に十分文部大臣のお考えを心いくまで聞かしていただきたいと思っておる。で、私が今御質問しておるのは、総理大臣として特に鳩山総理は、これはものの本に書かれるくらい教育的な家庭に育った方なんです。しかもかつては文部大臣として日本の文部行政を現実に担当されたこともおありになる。また、今日におきましても教育の重要性というものは大いにお認めになっておるお言葉を承わっておるのです。だから総理大臣に聞いておるのです。文部大臣のレベルにおいて話し合ってくれと言っておるのではない。総理大臣のレベルにおいて話し合ってくれということを私はお願いしておった。総理大臣もそうしたいと、こうおっしゃっておるのです。総理大臣は今も会って話したいということをおっしゃっておるのですけれども、会いたい、会いたいと言っておられるうちに、これは済んでしまう。あとから会っていただいても何にもならぬのですが、まだ幸いに参議院もきょうから手をかけたばかりですから、今からでもおそくはない。どうか一つそういう機会をお持ちになって、もう一度、国会運営のかけ引きとか何とかいうことを別問題にして、一つその道の専門家、権威の人たちと十分とっくりとお話し合いになるおつもりはないかどうか、お伺いしたい。
  88. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は思ったより忙しい商売でして、(笑声)なかなか人と会う時間があまりないのです。優秀なる文部大臣ですから、この文部大臣が私よりも優秀ですから、それですから文部大臣がいろいろの必要な人と面晤いたしまして、適当なる考えを作ってもらえば、それでけっこうだと考えております。
  89. 秋山長造

    秋山長造君 その点は言葉を返すようでありますけれども、この前の連合審査会のときでも、さっきも総理大臣はそういう人たちに会ってざっくばらんに話したいということをおっしゃった。じゃ、いつ会うのかと言うと、今度は文部大臣にまかしてあると、これはやっぱりこの問題は、この法案の直接の担当者は文部大臣です。これはもう私どもも十分認めております。だからこまかい点は文部大臣にこれからとつくり質問をしてお考えをお伺いしたいと思っているのですけれども、しかし教育の問題はただ担当大臣文部大臣なり文部省にまかせきりにしておいていい問題じゃないのですから、総理大臣自身もそういうお気持だから、一つ総理大臣の手元でこういう問題を、もう少し真剣に取り組んで話し合いなり、あるいは考え直すなりしていただきたいということを言っているのです。そういうお考えはありませんか。
  90. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいまのところお約束はちょっとできかねます。   〔矢嶋三義発言の許可を求む〕
  91. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 総理大臣出席のお約束の時間は過ぎたわけでございますが、質問に入られるわけですか。
  92. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ええ。
  93. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) これはお諮りしなければならないのですが、途中で時間が切れて……、総理大臣は一時までに出席なさらなければならないそうでございまして、その間にやはり多少の時間は要りましょうし、そうなると質問が途中で切れたりしても困ると思います。いかがお考えですか。それでもよろしいのですか。
  94. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は質問通告をしているわけでして、委員長そのおつもりでずっと委員会を……。
  95. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) いや、本日としてはそういうお約束でこちらへ総理大臣出席をしてもらったのですから、それは初めから私、申し上げた。十二時半というふうにはっきりとお約束してあったはずなんです。やはり約束したからには、約束した通り委員会としてもした方がいいと思う。ですからこれで総理大臣は退席してもらおうと思います。そのかわり私はまただいぶ質問も重大問題について残っておりますので、委員長において善処しまして、またあらためて総理大臣の御出席を願わなきゃならぬ場合も考えなくちゃならないと考えております。
  96. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 議事進行について。私は冒頭に申し上げましたように、こういう重要法律案総理への総括質問から始めなければ、これは次の文部大臣質疑を私はできません。従ってきょう総理が御都合質疑を受けられないとすれば、明日総理に御出席願って質疑を受けていただきたい。それでないというと、次の問題の質疑は行えません。
  97. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 委員長から申し上げます。理事会においてはそういう話になっておりません。
  98. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私はそういうふうには了承していないのです。委員質疑権を押えるというのはおかしいですな。
  99. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 質疑権を押えるわけではありません。
  100. 吉田萬次

    ○吉田萬次君 議事進行に関して。きのうの理事会において、大体これは皆さんの御了承を得たことと存じます従って私は委員長のただいまの御発言は当然だと考えます。どうぞそのように御進捗を願いたいと思います。
  101. 湯山勇

    湯山勇君 今理事会でそういうこときまったような、御了承いただいたように思うというお話しでしたけれども、私どもとしてはこれはあと委員長にもお願いに行ったし、けさも申し上げましたように、これで終ったとか、こういう事態を了承しておるというわけではありませんから、その点は委員長において一つ明確にしておいていただきたいと思います。
  102. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 非常に明確にしてございます。ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  103. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 速記を始めて。
  104. 秋山長造

    秋山長造君 ちょっと資料の提出要求があります。四月十四日の文化放送、マイクの広場、A級戦犯の録音放送のうち、清瀬文相の発言内容、こはを一つ資料にして御提出をお願いしたい。
  105. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 委員長からそれではちょっと申し上げますが、文部省の意向といたしましては、これは文部省の企てでもなく、文部省の催しでもない。従って文部省として責任をもってその資料を出せと言われても文部省としては、これは他人の扱った資料でございますから、責任は持てないと申しております。従いまして、ただいま言われました秋山君の要求されたことは他の責任個所に……、これを調べまして、そうしてこれがこちらとして提出の要求というか、できるかどうかわかりませんけれども、御希望に沿うように向うと折衝してみたいと思います。
  106. 湯山勇

    湯山勇君 速記は要りませんが……。
  107. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) それではちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  108. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 速記始めて。  それではこれで休憩いたします。    午後零時五十三分休憩    ————・————    午後二時十三分開会
  109. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) それでは午前に引き続きまして文教委員会開会いたします。
  110. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 ただいま議題になっておりまする法案、それから教科書法案、いずれも世論の中心になっておりまして、まことに重大な問題であると思うのでありますが、私ども見まするところ賛成論、反対論かなり深刻に論争されております。新聞等で見まするというと、かなり反対の気勢が上っておるようでありますけれども、私などといたしましては、それを必ずしも世論だというふうには思えておりません。原案そのまま賛成でなくても、あるいはその一部分には修正の個所があるらしいというようなふうの考えの人もありましょうが、大体この案は適当であるというふうに思えておる国民も相当に多数あるように伺っておるのであります。ある人は今度の案は民主主義教育の方向に逆行するものであると言ってまっこうから非難を浴びせておりまするが、またこれに対抗いたしまして必ずしもそうとも思えない、この程度のことは決して民主主義教育に沿わないゆえんではないというような支持者も相当にあるように感じております。かようなことを一々私の意見を申しておりましては、あまりに時間を費やしまするし、本日はそういう意見をかれこれ申し上げることはできるだけ遠慮いたしまして、私が大臣のこの問題に関するお考えを承わりたいという点だけを申し上げてお尋ねいたしたいと思っております。できるだけ時間の節約のために簡単にお尋ねいたしますから、簡単にお答えを願いたいと思います。  議題になっておる法案につきましていろいろな問題がある、疑問の点があるわけでありますが、世論でもって一番大きく取り上げられておるのは、現在行われておる教育委員の選挙制度を廃止して、そうして任命による委員をこしらえるという問題であります。これが大きく取り上げられて、それは非民主主義の方向もはなはだしいものであるという非難が盛んに浴びせられておるのでありますが、私は必ずしもそうとは思わない。その議論は少し飛躍し過ぎておる議論であるというふうに考えておるのでありますが、それを深く論ずることは遠慮いたしまして、ただ一、二お尋ねいたしたい点は、この前大臣が提案理由の説明をなさいましたので、私拝聴いたしましたが、その際に選挙を廃止して任命制度にするという問題についてあまり詳しい御説明がなかったようであります。で、その点は非常に大事な問題でありますので、お伺いしたいと思うのでありますが、大臣のお考えでは現行の選挙制に弊害があると思うから、任命制に変えるんだというお考えなのでありましょうか、それとも弊害というものは認めないけれども、首長指名の方がよりよき制度であると思うから改めるのであるというふうにお考えになるのでありましょうか、それとも地方の財政が苦しいから、財政的の見地から主として選挙の制度をやめて任命制にしたいというようにお考えになっておるのでありましょうか、まずお伺いしたいと思うのであります。弊害があるかないかというような問題については、いろいろな問題があると思うのでありますが、たとえば政治的の中立性教育の上において確保するとかいうような点などについて何らか弊害をお認めになっておるのか、あるいは選挙がうまくいっていないから、これじゃ困るとかいうようなふうのことにでもお考えになっておるのか、そういう点につきましてお考えを承わりたいと思います。
  111. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今詳しく条理を尽してお尋ね下さいましたが、その三つのことがやや組み合っておるのでございます。直接選挙によりますると、今日の情勢ではやはり選挙といえば、すぐ政党党派が背景になります。で地方は五人でありまするが、五人の委員が同じ党派から出ることもあり得るんです。少くとも半数三省くらいは同一党派、正しく政党という名乗らぬやはり政治的の団体教育界に現われておりますが、そういうことでははなはだ寒心にたえないと、すなわち教育の中立という見地から心配であるという声が世間に非常に高いのであります。そこでどうすればいいか、今の民主政治でありまするから、民主主義を破らない程度において一つ教育委員会の中立を保つというので、ちょうど人事委員会、公安委員会で採用した方法と同じく、五人のうちで二人だけは同党派に属してもいいが、三人以上を属することはできないという規制のもとに、直接選挙によった町村長が直接選挙によった町村議会の同意を得て選定するということがよかろう、その弊害は一部にすでに現われ……、その弊害と申しまするのは、直接選挙の弊害は一部すでに現われておりまするし、将来二大政党になれば、ますますその弊害が現われる様子でありまするから、今竹下さんの御指摘になった二つのことが組み合いましてこういう案を出したのでございます。財政の方はそう大きな問題じゃありません。選挙の費用ですね、十四億か十五億そのくらいな倹約になるんですが、これは付随的に少くなる、これも今日地方財政赤字の時分ですから、いいこととは思いまするが、それからこの問題に入ってきたのじゃございませんです。
  112. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 この財政の節約ということをかなり強く主張しておられる町村長あたりがたくさんあるのであります。今日の地方財政の窮乏の状態から考えまして、その主張がその当局者からあるということも無理のないことであろうと思いますけれども、私はこの議題になっておる問題は、どうしてもこうした方が日本の現在及び将来の教育のためにいいか悪いかということを考えることが第一義でなくてはならないのであります。財政の面が少々窮屈であるからということでそれを重く取り上げ、第一次的に考えて改正をするとかいうようなことは、もう根本に私考え方が違う、こういうふうに平生考えておりまして、町村長あたりからいろいろ陳情を受けたときも、そのことは端的に私は言っておるわけでありますが、ただいまの大臣の御答弁によりまして安心いたしたような次第であります。  それから私は現在二本建になっておるというようなことのために、現在の町村長あたり、団体の長というものが、教育のことはいかにも自分の仕事以外の問題であるというような誤解をして、従って教育に関する関心を非常に薄くしておりゃしないかということを心配しております。従ってそういうふうの認識があるとすれば、せっかく委員会の方から提案された予算案にいたしましても、まあ人のことだというような気持があるというと、削ってもみたくなるというような心理もまた作用していくのじゃないか。今度任命制になるという点をよくいろいろ考えて、想像してみまするというと、任命制になったら、自分たちの仕事であるということが非常にはっきりしてくる。従って教育に関する関心が深くなってくるというふうのことも考え得られるのじゃないか。議会の議員にしてもそうじゃないかというふうに思う筋もあるのでございますが、そういう点は大臣何かお考えありませんでしょうか。
  113. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 地方の長、わけても町村長の方々は現在でも非常に教育に熱心な人が多いのです。六三制を施行するというので一番私はもう心胆を砕いて奔走したのは、町村長だと思っているのです。ところの事情によって委員会もむろんやっておりまするけれども、現在といえども町村長は必ずしも教育に私は冷淡だという認識は持っておりませんけれども、しかしながら教育行政と、それから一般行政との間の連携調和を密にするというとなおよかろうということを私は考えております。
  114. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 その問題はそのくらいにいたしまして、現在の教育委員会の選挙の状況を承わりたいのですが、地方によっても違うことでありましょうけれども、大体教育委員の選挙の際の投票率というものは、どのくらいになっておりますか。
  115. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 第一回の選挙が二十三年の十月に行われたのでございますが、そのときは五六・五%でございます。第二回二十五年十一月の選挙におきましては五二・八%、第三回の二十七年十月の選挙におきましては六一%、かような投票率でございます。
  116. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 それが平均でしょうが、いいところでどのくらい、ごく悪いところでどのくらいになっておるか、何か調べがありますか。
  117. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 最高、最低は今ここに持っておりませんが、二十七年の、一番最近の選挙におきまする無投票団体数の調べがあるのでございますが、府県におきまして二十六中五、市におきまして三百三中三十五、町村九千六百五十五中四千八百十九、これだけが無投票の団体数でございます。ちょっと今最高、最低の率を持ち合せませんので、調べまして御報告申し上げます。
  118. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 次に移りまして、これはどうせ逐条の審議があるだろうと思っておりますけれども、大事な問題でありますから、きょうお尋ねしたいと思います。第十六条の二項に「都道府に置かれる教育委員会は、文部大臣の承認を得て、教育長を任命する。」と、こういう規定があります。これについても相当に強い反対意見があるようであります。結局反対意見の理由としていろいろありましょうけれども、こういうことにするというと、文部大臣が専横になって、干渉的なあるいは政党のバックを受けて、その利益のためにとかいうようなことまでもからまって、不適当な結果を生ずるというようなことが起る可能性が十分にあるというのが、反対のおもな理由であると思うのであります。私も心配すれば、なるほどそういうことも考えられないことはないと思っておるのでありますが、文部大臣その点はいかがでございましょうか。非常に強い反対のあるということは、もう御存じでありましょうが、何とかこの問題を適当に処置していったらよかろうということは、現在のところお考えございませんでしょうか。
  119. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 承認と申しますのは、一応おきめ願ったことを認めるわけなんです。こちらの方から人を指定するわけでもなく、また持っておいでになったものをしばしば拒否するという考えではございません。(「いつまで大臣をやっているのだ」と呼ぶ者あり)今の国立大学学長とか、あるいは総長も承認して任命いたしておるのです。それがために、しかし東京大学なり、京都大学にわれわれが自治を侵害したということも起っておりませんです。日本の全国の教育の水準を保つといったようなことから、今のような文部省は文部省、府県委員会は府県委員会、町村委員会は町村委員会と、横に三つに切ってしまって何も連絡がないということもいかがだろうか、おきめ願ったらお見せを乞うて、そうしてこれに承認を与えていくといったようなことが相互の連関関係をつけていいのじゃないか、こういう考え方でおるのであります。
  120. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 お考えの点はわかるのでありまするが、これはしかし心配すれば、先ほど私が申しましたように心配が残る問題だと思います。先ほどどなたか、いつまで大臣をあなたはしているつもりかというようなお声も出るようなこともまああるわけでありまして、大臣御自身のお考えは私ほんとうにりっぱにそういうふうにお考えだろうと思っておりますけれども、何らか方法があるものだったならば、もう少し人に安心させるような法律も作り得ないものであろうかと、私今ここでどういう法律かということを具体案を持っているわけでもございませんけれども、何かあまりに世論が相当に強いものですから、大臣の方でお考えがありはしないかと思ってお伺いしているわけなんです。これと似通った問題で五十二条でしたか、五十二条の第一項に「又は著しく適正を欠き、かつ、教育の本来の目的達成を阻害しているものがあると認めるときは、当該地方公共団体の長文は教育委員会に対し、その事務の管理及び執行について違反の是正又は改善のため必要な措置を講ずべきことを求めることができる。」こういう規定もあります。「著しく適正を欠き、かつ、教育の本来の目的達成を阻害しているもの」これは大臣が認めるということになっておりますが、これが実際これをお認めになるときには、相当に問題が混乱していくようなことがあるのじゃないか、こういうことにつきましても、かりに大臣の独断でおやりにならない方が無難であるというならば、一つの諮問機関みたいなものでもお作りになって先ほどからお尋ねしておりまする問題も、その諮問委員会あたりで取り扱うというようなことも一つの方法じゃないか、かように思っておるわけであります。あまりに近ごろ政党の力が強くなりまして、大臣がまじめな考えを持っておられても、政党のうしろの方から押えられて、思う通りいかないという場面も起りがちの近ごろの情勢になっておるように思いますから、できるだけやはり念を入れて方策をとるということも考えていいのじゃないか、こういうふうにも思うのでございますが、いかがなものでしょうか。
  121. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) このことも非常に重要なことでございまして、まあ法令に違反しておれば違法行為ですね、まあ違法行為をそのままにしておくわけにはいかぬ。これは是正しなきゃならぬ。その次のこともこれ二つ続けて読んでいただきたいのです。「著るしく適正を欠き、かつ、」です適正を欠くのみならず、「かつ、教育本来の目的達成を阻害して」、「教育本来の目的」といえば第一に教育基本法です。ですから教育本来の目的達成を阻害するというのは、やはりこれは違法行為なんですね。そういうものがある場合にどうしたらいいだろう、非常にまれなことでありましょう、教育界に違法行為が起ったり、教育基本法を無視して非常な悪い教育をするということはまれなことでございましょうけれども、起ったらどうするかっということを考えまして、この案では同条の第四項に、文部大臣総理大臣協議をしてその是正の道をはかる……、結局最後の責任は国の最高機関である皆様方国会に対して負うわけなんです。そのまあ機構で、今の日本の制度で違法行為をこうことにして是正したらいいのじゃないか、こういう考案でございます。同様の考案は今度地方自治法にも入れておるようなわけでございます。十分御審議を願いたいと思います。
  122. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 この五十二条の違法の場合、それから著しく適正を欠き、かつ教育の本来の目的達成を阻害している場合に云々というこの考え方は、私は非常に賛成なんです。ただしかし、これをお取扱いになる場合には、法令違反の場合に非常にはっきりして問題も混乱しないと思いますけれどもあとの場合は相当に問題が大きい問題で、その解釈が困難な場合がやはり起ってくるんじゃないか、少くとも反対意見が相当に強く主張されるという場合も想像するにかたくないように思うのであります。そのときに独断で大臣が一人でおやりになるということ、それから総理大臣云々というお話がございました、条文がございますが、それよりもむしろやはりほかの方法で緩和される、緩和と申しますか、の意見もお聞きになるということが適当でないか、ことに総理大臣の問題は、私はこれは格好は大へんいい、非常に責任が総理大臣にいくのですからいいのですけれども、これは大てい文部大臣がよかろうとおっしゃれば、総理大臣はその通りになるのが普通の状態でありまして、ここで横やりが入るというようなことはほとんど考えられないことであります。むしろそういうことはおやめになりましても、諮問委員会みたいなものでも、これは大じかけにやる必要もないと思っております、ごく少数の適当な人をお選びになりますれば、そう時間もかからないで御相談ができるのじゃないか、そういうことにでもなりますれば、国民の方でも納得する程度が相当にまた高まっていくのじゃないかという気持がいたすのでございますが、総理大臣の規定が第四項にございますが、これに私今アンダー・ラインを引きまして、これは形式はいいけれども、ほとんど意味をなさないぐらいにしか私は考えておりません。
  123. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) まあ十分に御審議お願いいたします。
  124. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 その点をよく一つ考えを願いたいと思っております。
  125. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっと竹下さん関連してでございますが……。竹下委員文部大臣の間で質疑が行われておるわけですが、私聞いておって、この竹下委員質問が済む前にぜひとも私は聞きのがすことのできない、大臣にぜひ尋ねなくちゃならないという点が耳に入ったのです、それで関連質問をいただいたわけですが、大臣公選ということをどう考えられておりますか。ということは、今あなたは竹下委員質問にも答えられたし、また三月十二日の笹森委員質疑に対しましても、教育委員会の選挙をするというと一党、ある政党は非常に勝利を博して片寄り過ぎるのでそれでやめるというのを、最も大きな理由にあげているわけです。私は三月十二日の速記録を見てがく然としたわけですが、きょうただいま竹下委員質疑に重ねて答えられたようですが、一体住民の一般投票というものはどういうふうにお考えになっておられるか、その点伺いたいと思います。
  126. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) ちょっと十分に御趣意を了解しかねるのでありますが、公選民主主義にかなったことと思っております。しかしながら民主主義の制度は直接公選に限ったのではないので、この案のような法をとりましても、民主主義には反するものじゃないと思っております。
  127. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 竹下委員質疑を続けられたい希望でございますから、私は長く関連質問をいたしませんが、私の伺っていることは、国民が一人々々が意思を表明したもの、それがある甲なる政党、あるいは乙なる政党の支持するものが絶対多数出るからそれじゃいけないということ、これをどう考えられているかということです。ある角度から言うならば、これは国民を蔑視するものですよ。私はこれは重大な発言だと思う。もう一回御答弁願いたい。
  128. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) むろん、この問題はすべて重大であります。一番大事なことは教育であります。わけても具体的に言えば、教育の中立を維持するということなんです。それゆえに元来教育は政党勢力でやるべきものじゃないので、同じ投票に臨むについても、やはり教育に関する投票はそこのわきまえがなければならんのでございますけれども、世の中の実際はかような抽象的な理屈が通らずして、やはり政党勢力のもとにおいて選挙が行われるということはあり得ることでございます。そのときに一党一派に偏しないようにするということがわきまえのあるやり方であろうとかように思っておるのであります。
  129. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は了承できません。憲法の第一章の天皇の第一条にこう書いてある。「天皇は、日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であって、この地位は、」よろしいですか、「主権の存する日本国民の総意に基く。」と書いてある。天皇の項の第一条に書いてある。「日本国民の総意に基く。」ということを書いてある。総意とは何ぞや。国民一人々々の意思の表示、それが最も正しい総意じゃございませんか。ある文教政策を掲げ、国民に訴え、そして主権者である国民一人々々意思表示した。その結果は甲なる政党あるいは乙なる政党を支持したということが、絶対それがいけないということは、どこからくるのですか。これは納得できませんよ。それであれば角度を変えて申し上げるならば、内閣文部大臣あるいは文部政務次官というものは政党人じゃありませんか。こんなものはすぐやめるべきじゃございませんか。あなたの竹下委員に対する答弁と三月十二日の笹森委員に対する答弁はどうしても納得できませんよ。これは主権者たる国民を蔑視するものであり、この問題は重大ですよ。私は主権者の一人一人の自由なる意思に基く表明以外に国民の総意を表わす方はないと思う。それがある政党が文教政策を掲げてそれが実際に支持された、それがいかんという考え方というものは、これは民主主義の根本を否定するものですよ。この問題を私ははっきり解決していただかなければ、次の質疑を続けるわけにいかない。場合によったら法制局の長官を呼んでいただきたい。
  130. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 私は少しあなたと物の見方が違うのです。教育基本法には教育の中立という原則があるのです。すなわち一党一派を支持する教育をしてはならぬということです。そこで教育委員会はこの国会のごとくに教育政策を審議する審議機関じゃございませんけれども、執行機関なんです。教育の実際を執行する機関であって、その中立を保てということは教育基本法にもございますし、またその後できました学校教育中立性を保つための法律も両院を通ってできております。教育行政の中立を保持する必要と、日本政治を政党の代表でこの通りわれわれがここでやるということの間には、少し物の考え方が違うのじゃないか。憲法第一条を御引用になって教育委員会は公選でなければならぬとおっしゃるのは、その間にそれは多少はギャップがありはせぬかと思います。
  131. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう一回、これ以上私は質疑をやりませんが、大臣それは納得できないのです。日本の今の教育というものは国権の最高機関で成立さしたところの大きなワクによって、すなわち教育関係法律という大きなワクがあって、そのワク内において日本の各地域の教育というものが推進されている。そのときに教育委員の選挙があれば、一つの具体的な地域に即応したところの教育政策を主権者に訴えるわけです。そしてその政策が支持されて、そして国権の最高機関できまった大きなワク内における教育を進めていくわけですから、当然これは私は尊重さるべきことだと思う。従ってあなたの御意見というものは全く答弁になりません。もう一言それで申し上げれば、それほど中立で云々というようなことを言われるならば、なぜ教育委員の七人を五人に減らし、必要な場合には三人にしてもよろしい、しかもそのうちの一人は教育長だと、こういうような改正をしたのですか。筋が通らぬじゃございませんか。それはどういうわけですか。五人より七人の方がいいじゃないですか。それをさらに五人にして、必要な場合は三人にすることができる。これはあとでまた質疑するときにやりますが、この三人のうちの一人は教育委員であり、教育長でよろしいというような改正というものは非常に矛盾しやしませんか。一応お答え願って竹下委員質疑に入りましょう。
  132. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 五人がいいか七人がいいか、これは程度の問題であります。これを考えて下さるには、教育委員会は議事機関じゃないということを頭に一つおいていただきたいと思います。執行機関であります。それゆえにあまりたくさん世の中の世俗のように船頭多くして船山に登るということがございます。執行するには、まず五人くらいでけっこうじゃないか、かような考えでございます。
  133. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 矢嶋さん、関連質問承知しておりまして途中でまた打ち切っていただくのは、はなはだお気の毒だと思いますけれども、今の問題はなかなか議論が長く続きそうな気がしますので、一応打ち切っていただきまして、私もそう長くかからないからあとでごゆっくり。
  134. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 どうぞ。私はあすでも伺いますから。
  135. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 それから、私は具体的にお尋ねいたしますが、第十六条の第三項に「市町村又は第二条の市町村の組合におかれる教育委員会は、第六条の規定にかかわらず、当該市町村委員会委員のうちから、都道府県委員会の承認を得て、教育長を任命する。」という規定がございます。これが私はどうもおかしいのじゃないかと思うんですが、一人の人が教育委員であって同時に教育長を兼ねるということになることが予想されておるわけでありますが、教育長は普通の場合において、その関係の議題の準備をし提案者の立場に立つ。提案者という正式の名前がつくかしれませんけれども、そういう説明の役に当らなければならない立場に立つ人であります。そういう提案者として説明しなけりゃならない人が、また委員の資格を持ってその採決に加われるということは、どうもこの定員を定めた趣旨からしても、ちょっとおかしいのじゃないか、これは何をねらってこういう無理な条文をお作りになったのか、私はわからないのでありますが、かりに費用の節約のためということをお考えになったとすれば、これはあまりに小さい費用の節約だと思っております。その不合理な点を補なって足るほどの費用の節約にはならないのでありまして、何かの場合に支障が生ずるのじゃないか。特に小さい町村では三人で委員会が構成されるような場合など考えまするというと、一人は原案の主張者でありまして、委員長ともう一人の委員が二人できめるというようなことになってしまって、そのときには採決には加わるわけですから、どうも妙な状態が起ってくるのじゃないか、少し無理な規定じゃないかというような感じを持っておるのでありますが、こういう立案がされましたその真意はどこにあるのでありましょうか、お伺いしたいと思います。
  136. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) これも重要な問題でありまするので、審議最中にいろいろ考えたことでございます。ある論者はですね、教育委員会はそれ自身が執行機関だから、そのうちの常勤者である教育長はなくてもいいじゃないか、皆教育長になった心得でやるのも一つだ、しかし、県のような大きなところでは、やはり教育長が要るが、小さい町村で一谷にある学校だけだから教育長はなしに皆教育長の心得でやってもいいという論者もあったんだす。しかし、それではこの三人もまた五人もが毎日一カ所に常勤ということもできぬ、そこでこれはたとえですからいろいろ言われると困りますよ、だけれどもよく商事の会社で支配人を置いて重役の命令をきかすところもありますが、しかし常務というものが重役でありながら日常の仕事をする、すなわち支配人を兼ねたようなことをしてやっている。そこで小さい町村の範囲では五人のうちたれか一人が常勤という執行機関でいいじゃないかということでこの案ができているのでございます。今申す通り、その副作用として幾らか教育長だけの月給は倹約になりますけれども、それを当てにしてやったことじゃなくして、世の中のことは簡単な方が簡単明瞭でいいということがおもでございます。(「おかしい」、「不明瞭」と呼ぶ者あり)
  137. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 今の常務取締役のお話は、その意見はほかの人からも聞いたことでありましたけれども、しかし理屈を言ってみると、株式会社あたりでは取締りの何人かの中心になる専務といいますか、常務といいますかがあるわけですが、しかしこれはまだ株主総会というものがあるんです。それで批判ができるんですけれども、この場合それできまっちゃう。だからどうもその例は少し強弁じゃないかという気持がいたしますが、事実そうして三人なり、五人のうちで一番、実際の問題から考えてみるというと、その人の意見が通る機会が非常に多いんじゃないか、こう思うんです。最も力強い発言権を、法律の上じゃ同じでありますけれども、実際はそういうことになっていくのじゃないか。おそらくこの教育長に選ばれる人は、ほんとう教育の、学校の先生を何年やっておったというようなことでもないでしょうけれども、一通り教育専門家と認められるような人が教育長になるのじゃないかと、こう思いますので、ほかの人は引きずられるといっちゃ語弊がありますけれども、大体その人の意見が通る機会が多いんじゃないか。そうするというと、せっかくの委員会のこの協議というものの効果というものが大へん薄らいできはしないか。本人としても非常に苦しい立場に立たされるのじゃないかと想像もされますし、これは一つ大臣の方でお考え直しを願った方がいいのじゃないかとも思うんです。
  138. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 先ほど説明に補充いたしますが、今の教育のことと商事のことで、もともと事柄が違うことだから、けだし違うということをおっしゃるだろうと思って、例は違いますけれどもと言ってお断り申し上げているので、(「もっといい例を」と、呼ぶ者あり)いい例を一つ申し上げます。(「教育委員会株式会社じゃいかん」と呼ぶ者あり)ちょっと待って下さい。今矢嶋さんの御要求で……、人事委員会というのがあるのです。そこに事務局長を置くことになっておりますが、これを委員が兼ねるという制度がございます。これなどはやや似た例です。しかしながら、人事のことと教育のことと違うとおっしゃればこれまた違う。しかしながら、われわれ千思万考の上で、町村で五人といえば相当大きな数です。小さい町村の世帯で、そのうちの君は教育にも熱心だし、おうちの仕事も息子さんがやっている、君一つ教育長を兼ねてくれんかといったようなことできめて教育のことをやられる。必ずしもよそから雇ってきた教育長というものを置き、指導主事を置き、校長を置き、管理機関を三つも四つも重ねるということもどうだろう。県のような大きなところは別ですけれども、これは町村のことですからね。市は大きなところでございますけれども、そういうものの見方なんです。十分御審議お願いいたします。
  139. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 私はね。この教育長というものは、昔の制度で言う学務課長、学務部長とかですね。そういうふうな立場でだいぶん働かなければならない人でありまして、普通の教育に専心した経験もないような人が五人なり、三人なり皆そういう人ばかりで選ばれるとは思えない。どうしても指名ということになりますると、一人だけは少くとも、ある中心になって立案をする人を教育長にして、ほかの人に相談がかかるという実際の状況になっていくのじゃないかしらんと思うのでありまして、そうすると、さっきから申しまするように、どうも決議権までその人に持たせるということは、おかしいじゃないか、逆に言うと委員会の決議権を持っておる人が教育長を兼ねるということは、筋道があまり立たんじゃないか、こういうことを言っておるわけであります。もうこれ以上は今ここでお答えをいただきませんでも、一つさらに御考慮を願いたいと思います。  それから次に、この法案及びもう一つの教科書法案、これが中教審に諮問されなかったとか、諮問されたけれども古いからあまり役に立たないとか、いろいろ非難があるように思うのであります。文部当局の方では中教審の方には諮問してあって、その答えも出て行るのだというようなことを承わったかのような記憶があるのでありまするが、その事情を少し詳しく御説明願いたいと思っております。なお、中教審から一年なり二年なり前出た答申でありましてもかまいませんから、どういう答申がきておるのか、その答申によりましては、一年、二年たった今日でも相当に権威を払わなければならないこともあるのじゃないかしらんとも思いまして、それを一つ
  140. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) この教育委員会のことは、成立の当時からいろいろ異論があったことなんです。そこで中教審にも一時かけたのです。前々任者がおかけになっております。それからまた地方教育制度調査会のときにもかけました。それから教育委員会制度協議会というものがあるのです。教育委員会だけのものです。それからまた、法令審議会というものがあります。で、これらの答申は、すべて出ております。いずれも結論は多少違っておるのでございます。これらを勘案し、この法案を作ったのであります。もっとも、法案を作るに当っては、今日の政治の状況でございまするから、党の政務調査会には十分に調査をさせた、こういう経過でございます。
  141. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 今のお話で、答申を受けておるということでありますが、それがいろいろあるようですけれども、いつの答申であって、で、どんな答申になっておりますか、記録がありますなら、今すぐここでなくてもけっこうでございますから、あとででも謄写版にでも刷ってお渡し願ったらいいと思います。
  142. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ここに配ってある、これを読んでらどうですか。
  143. 湯山勇

    湯山勇君 先ほど言った中で二つのことしかほんとうのことを言っていない。あとみんな間違っている。
  144. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今局長が朗読いたしますから。
  145. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 中央教育審議会教育委員会制度に対しまする答申でございますが、二十八年七月二十五日付で出ております。これの大要を朗読いたします。
  146. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 それ長いのですか、長くなかったら全部読んでもらった方が、都合のいいことばかり読んでもらっちゃ……。
  147. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 朗読いたします。   教育委員会は、その設置以来、日がきわめて浅く、その実績の良否については相当論議の余地がある。   しかし、この制度は、終戦後の教育の民主的改革の顕著な一要項であり、その意図するところがひたすら教育中立性と自主性とを樹立するにあるという趣旨を尊重し、できるだけその長所を発揮せしめるよう努めたい。  1 性格   教育委員会の性格は、現行法どおりとする。都道府県および五大市以外の市町村教育委員会については多少の疑念なしとしないが、現行法による性格を直ちに改変する積極的根拠は認められない。  2 設置単位   現行法どおりとする。ただし、町村については、次のような点について検討する必要がある。  (1) 設置義務の緩和——規模、財政力等の現状にかんがみるとき、弱小町村にまで設置義務を負わせることは無理と考える。  (2) 上記の場合における町村教育委員会の設置、廃止については、地方自治体の選択に任せることも一策である。  (3) 教育委員会不設置の町村の措置——諮問機関のようなものを置くこと。  3 委員選任方法   教育委員の選任は、現行法どおり公選とする。ただし、選挙の方法については次のような点について検討を要する。  (1) 都道府県等の大地域においては、選挙区を設定すること。  (2) 教職員の立候補については、離職後一定期間の経過を必要とすること。  (3) 教員の身分、市町村の義務教育学校の教員の身分は、給与、福利、厚生、配置等の関係をも考慮し、都道府県の公務員とすることが望ましい。
  148. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 全面的に否定しているな、これは。
  149. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 資料要求。今の答申されたものについてはですね、刷りものにして、全委員に配付してもらいたい。委員長の方でそういうふうに取り計らっていただきたい。
  150. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 承知いたしました。
  151. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) この教育委員会制度に対します各種委員会の意見等につきましては、衆議院の御審議の際に、資料要求がございまして、その際に当委員会にも御配付申し上げたはずでございますけれども、さらにまた御要求でございますので、同じものでございますけれども、お配りいたします。
  152. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 その問題はそれで打ち切りまして、もう一つお尋ねいたします。この三十三条の第二項、「前項の場合において、教育委員会は、学校における教科書以外の教材の使用について、あらかじめ、教育委員会に届け出させ、又は教育委員会の承認を受けさせることとする定を設けるものとする。」つまり、学校における教科書以外の教材の使用についての届け出と承認の問題でありますが、ラジオ放送だとか、映画だとか、新聞など、そういう時々刻々に放送されたり発行されたりするそういうものが、教材に使用される場合に、教育委員会に一々届け出させたりあるいは委員会の承認を受けさせるということになると、大へんめんどうだ。これを何とか便宜な方法で、こういうめんどうなことにならないようにできないものだろうかというような陳情を実は受けたのであります。  なるほど聞いてみますると、少しめんどう過ぎるきらいがあるんじゃないかと思いますが、これはどの点まで文部省ではお考えになっておるのでありましょうか。あるいは実際の運営の上で、そんなめんどうなことは一々やるのじゃないのだと、それは通達をするんだとか何とかとこういうようなお考えもあるんだろうかと思いますが、条文に現われたところで見ると、少し窮屈過ぎるんじゃないかという気持がいたしますが、その点をお伺いいたします。
  153. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) これはこういうことなんです。第二項の初めに「前項の場合において、」と書いてあるのです。三十三条の一項に、初め二行は省略しますが、「教育機関の管理運営の基本的事項について、必要な教育委員会規則」というので、そのことが基本的なものであることと、それから必要な規則というので、地方でそれを必要と認めなければ、それはオミットしていいのです。それでただいまではこれをせい、あれをせいといったようなことを、こちらから言う考えは今持っておりませんけれども、地方の自治にまかして、必要なりとお認めになったものについて届け出ろという規則をこさえておかれる方がいいと、こう考えております。これが教材などからいろいろ問題が起きたのです、この数年来……。それでこういうものができておるわけなんです。
  154. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 私これは第二項を見ましたときに、「承認を受けさせることとする定を設けるものとする。」ということになっております。少し窮屈過ぎる感じがしたのでお伺いしたのであります。そういうめんどうなことを一々させるつもりじゃないという大臣の御答弁でありますので、それをどういうふうにして無理のいかないように実行に移していくかということは、次に起ってくる問題だと思いますから、この点は十分お考えおき願います。一応この程度で大体私の質問はきょうはこれで終えたいと思っております。このほかにこの法案を見まするというと、私立学校の問題などにも関連することでありまして、今これを取り上げますというと、相当にまた問題が広がって参ると思っておりますので、この際はその問題のお尋ねはいたしませんで、私の質問は一応これで打ち切りたいと思います。
  155. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 特に関連事項だけただしますが、先ほどから私の答弁にも、竹下委員の答弁にも教育委員会は執行機関であると、かように申されていますが、これは失言じゃございませんか、よろしうございますか。
  156. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) はい。
  157. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 教育委員会は執行機関であるというのは必要にして十分な表現でございますか。
  158. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) はい。
  159. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 研究して答弁して下さい。
  160. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 地方自治法にあるところの規定はそのままにしてあります。
  161. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 局長それでよろしいか。
  162. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 地方自治法百八十条の四項をごらんいただきたいと思いますが、「執行機関として法律の定めるところにより普通地方公共団体に置かなければならない委員会は、左の通りである。」ということで、一、教育委員会二、選挙管理委員会三、人事委員会又は人事委員会を置かない普通地方公共団体にあっては公平委員会、そのあと三項もございますが、以下は省略いたします。地方自治法百八十条の四によりましても、明らかに執行機関であります。
  163. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その条文に関する限りは、あなたの見解は正しいのです。その教育委員会の性格を、必要条件はきめてありますが、十分条件を示しておりません。教育委員会というのは教育行政に関する議決機関であり、かつ執行機関である、そこに教育委員会のいまだかつてない特殊性があったわけです。現在の教育委員会は執行機関だと考え考え方は大きな間違いです。それは自治法に執行機関と書いてあるから、それは教育委員会は執行機関であるという表現において必要でしょう、しかし十分でない。教育機関は教育行政に関する決議機関である、この解釈は絶対に間違いないと思いますが、どうですか、もう一ぺん御答弁願いたい。
  164. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) ただいま仰せの議決機関であるという意味は、おそらく合議制の執行機関である、こういう御趣意だろうと思います。地方公共団体の議決機関としては議会があるだけであります。地方公共団体の執行機関としては長がある。そのほか合議制の行政委員会といたしましてただいま述べましたような執行機関が別にあるわけでございます。
  165. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これはもう少し時間をかして下さい。決定でなくて、われわれは実質面から論じなくちゃならぬ。教育委員会の立法精神の一つの大きな眼目は一般行政と教育行政の分離にある。それがいけないというので、あなたは今度の教育委員会の抜本的な改正というか、現行法を廃止して新たな法律を組み立てたわけであります。従って教育行政に関する限りは、教育委員会の立法精神からいって今日執行機関であり、議決機関である。先ほどから私と竹下委員の問答の間にあるのは、教育の問題についてずっと論じている。執行々々と言っているが、執行じゃない。教育に関する限りはこれは明らかに議決機関だ、これを否定されますか、局長。
  166. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 繰り返し申し上げますけれども、これは教育委員会といえども地方公共団体の機関でございます。執行機関でございます。その地方公共団体意思の決定の議決をいたしますのは、これは議会でございます。従いまして従来におきましても教育に関する予算につきましては議会が最後に議決をいたしまして、この予算がその地方公共団体の予算としてきまるのであります。あくまで教育委員会はこれは合議制でございます。従いまして教育委員が個々に行動するわけではございませんけれども教育委員会は合議をいたしまして、その議決の結果が教育委員会の意思としてきまります。しかし、これは明らかに性格といたしましては教育を執行する機関であります。
  167. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう少しやりましょう。では、地方公共団体の議会である県議会は、教育方針、内容について議決する権限がございますか。
  168. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) それは地方公共団体の議会の議決いたします事項は、これは法律でもきまっております。
  169. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そこです、私の言ったのは。
  170. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) それは教育に関しましての権限は、これはまた教育委員会法の方できまっておりまするし、その教育委員会法のきめます教育委員会の職務権限に属します事項につきましては、これは教育委員会が執行いたすわけであります。これをきめます場合に、これは合議制でございますから、これは議決をしてきめるということは仰せの通りでございますけれども、しかしこれはたとえばほかのことを申しますと、執行機関であります知事の権限に属します事項を、自分の独自性の機関でございますから、きめてこれを執行するというのと変りございません。
  171. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 知事は教育内容並びに教育方針について議決する権限を持っているのですか。
  172. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) これはおのおの執行機関の権限として法律できまっておりますから、教育委員会は教育委員会の方に属します権限につきましてこれを管理執行いたします。知事は知事の権限におきまするものを管理執行するわけであります。
  173. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 局長はいつも頭がさえているが、きょうは珍しく牽強付会なことを言われている。教育の内容とか方針とか、教育行政に関する限りは、現行教育委員会は最高の機関ですよ。方針をきめる最高の機関です。そういう住民にかわって意思決定する機関だ、と同時に執行機関だ。ここに教育委員会の特殊性があった。これをしっかり頭に入れておいて、現行の教育委員会を研究してもらわなければならぬので、私はあえて言ったのですが、あなたが三百代言をやっていると時間がかかるから、このくらいにしておきます。  そこで関連質問だけ、さっき竹下委員は適切な質疑をされたと思うのです。それでこれに関連して伺いますが、そのときに大臣は、何か審議会からいろいろ意見とか答申があってと言われましたが、法的根拠をもって大臣が最も尊重しなければならないその審議会は何という審議会でございますか。
  174. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) これはどれも同じであります。教育審議会が、どの審議会が上の下のといったようなことは私から言うべきものじゃないんで、いやしくも諮問した以上は、どちらも尊重しなければなりません。
  175. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 さっき法令審議会とか何とかいろいろ言われておりましたが、それみな同じですか。繰り返して聞きますが、あなたが今四つ、五つ言ったのは、あなたの立場、文部大臣の立場から考えた場合にみな同じウエイトを持っているんですか。私は法的根拠を言っているんですよ。法的根拠から考えて、わが国の文部大臣として最も尊重しなければならないその答申を出すところの審議会の名前は何というですと聞いておる。お答え願います。
  176. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) この中には特別の設置法によったものがございます。それからまた文部省設置法のうちに掲げたものもございまするし、あるいは任意設置のものもございます。出所はいかがでありましても、いやしくも諮問をして答申を得た以上は、同等に尊敬しなければ、なりませんので、この審議会の諮問は軽いの、これは重いのということは政府として軽重をつけるべきものではないと思っております。問題は諮問の内容によることです。
  177. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 かつては文教懇話会とか法的根拠を持たないものもあれば、あるいは政令諮問委員会みたいに国家行政組織法に基いたものもありました。あるいは文部省設置法の中にある中央教育審議会というようなものもいろいろあります。しかし、われわれの国会政府から提案をして、そうしてわれわれの審議を要求したところの中央教育審議会というものは、日本が独立後において日本教育の向う方向を諮問する最高の諮問機関である。かように提案理由に述べ、そうして大臣もその中央教育審議会の設置法案審議する場合に、大臣が最もその答申を尊重しなければならない審議会だと、かように答弁されているんですよ。従って私はあなたのお口からは、中央教育審議会は第一等にあなたとしては関心を持たなくちゃならぬことは、これは私常識だと思うのですが、いかがですか。ことさらに中央教育審議会をあなた無視しようとかかっているんですね。今臨時教育制度審議会設置法案というのを内閣委員会にかけておりますが、そしておいて今度また成立した後に、この私的な審議会いろいろ全くいずれも尊敬しなくちゃならぬとかいうことでごまかそうとなさるんですか。今のあなたの立場としては、中央教育審議会の意向というものを最も傾聴しなければならない立場じゃございませんか、もう一回答弁いただいて伺いましょう。
  178. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) たとえば地方行政調査委員会は、(「そんなものない」と呼ぶ者あり)地方行政調査委員会設置法という法律でできているものでございます。また、地方制度調査会は、地方制度調査会設置法といって法律でできておるものでございまして、いずれも重要な委員会でございます。また調査会でございます。中央教育審議会もまた根拠を文部省設置法におきまして合法的に成立したりっぱな審議会でございます。これはみんなひとしく政府が諮問したる以上は、その答申は尊重するのでございます。しかしながら、どれが優先、どれが劣弱といったようなことを初めからつけてかかって答申を読むということはよろしくありません、同等に尊敬すべきものであります。
  179. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 まああなたのそれは私一応聞きますけれども、耳によく入らないんです。ということは、あなたの文部省設置法でわれわれにかような提案をして成立したる中央教育審議会大臣みずから諮問して、そうして出てきたものを他の総理府とかどことかで、たくさんな内容の中の答申の中に、ちょっと教育の入ったのと全く同様だ、なんだということは、それは言葉の上では言えるでしょうけれども、これは常識からいって私は納得できません。そこであなたは中央教育審議会のこれは尊重しなければならぬというのですが、そこで先ほど出たからこれは二、三伺います。どうですか。「教育委員会の性格は、現行法どおりとする。」とありますね。「現行法による性格を直ちに改変する積極的根拠は認められない。」とありますね。今議題になっている法案は、性格は現行法通りでしょうか、あるいは性格はかなり改変されているでしょうか、どうでしょうか。どうお考えになっておられますか。
  180. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 大体において現行法通りでございます。
  181. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点については私はまた他日ただします、私はきょうは関連で立っているのですから、どういう点で現行法通りと違うかという点……。
  182. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 今あなたがお問いになった、これが合議制ではあるけれども執行機関で、その権限たるや今回の法律では二十三条でありまするが、現行の委員会の権限を踏襲いたしております。それゆえに原則としては同じことで、ただあなたのおっしゃるのは直接選挙かあるいは任命によるか……。
  183. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そうじゃない、そうじゃない。
  184. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) この点はだいぶ違っております。そのほかのことは大体現行の性格を維持しておるつもりであります。
  185. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣、これは一国の国家百年の根拠をつちかう教育に関する根本的な問題ですが、お互いに、私も冷静になりますが、ほんとうに真剣に勉強して議論しようじゃございませんか。今のあなたの答弁というものは僕は心外の至りですがね。私はきょうは関連質問だから、突っ込んで言いませんがね。公選制だけじゃございませんよ。今まで都道府県知事というのは教育行政の不適格者としてわれわれは関与することができなかったといってわれわれはずっと演説をぶっているのですよ。そういう人が今度は教育行政に関与することになるのですよ。それから市町村教育委員会と都道府県教育委員会というものが対等の立場にあったんですよ。今度はこれが指揮命令権限を持ってきたんですよ。それから文部大臣は、文部省の設置法の第五条によって、技術的な助言と指導の権限を持っておったのですよ。今度は教育長までの承認権を持つのですよ。そこであなたの解釈と不一致の場合は是正の措置を命ずることができる……。
  186. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 矢嶋君、一つ関連質問の範囲を出ているようです。あなた自体の御質問を続けていただきたい。
  187. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点は他日やります、非常に遺憾でありますが……。それから委員選任方法教育委員の選任は、現行法通り公選とする。ただし、選挙については教員はすぐ立候補してはならぬとかなんとかありますが、現行法通り公選するというバック・ボーンが入っておりますが、これは大きな改変でございますまいか、いかがです。
  188. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) その点は、その申請は御採用申し上げませんでした。他の方の考慮によってただいま提案のようにいたしたのであります。
  189. 湯山勇

    湯山勇君 議事進行について。大臣に注意していただきたいと思うのです。委員長もお聞きの通り大臣の答弁は教育委員会法が変ったんじゃないかというのに対しては、あんまり変っておりません。今度はその問題に入ってくるとその点は採用しないとか、委員長お聞きになっておっても、大臣の答弁には何ら誠意が感じられない。こういうところをこう書いたのだからこうだというような説得がなければ審議はできない。大臣もっとまじめにしてもらいたい。われわれ一生懸命やっておるのですよ、何だそれは。
  190. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 私の答えは問いと関連してお聞きを願いたいです。性格が変っておるかとおっしゃるから性格は変っておらぬ。なお押して変っておるじゃないかとおっしゃるから、選挙方法をとらなかったことですかというと、そうじゃないのだとこういって手を振っておっしゃる。性格というならば、よろしいか、法律上性格というならば、合議制だけれども執行機関だ、これは大きな性格です。それからその任務です。学校に関することを原則としてこれは教育委員会が扱うことは同じことなんです。今度は、町村長はこの教育に関する契約をするということができました、財産取得ということができました、それははずれましたけれども、ほかの一般の学校教育、社会教育等を扱うことは同じことなんです。それゆえにひとりこの法律のみならず、ほかの法律教育委員会がこれをする、これをするということは、ちっとも訂正しないで、学校教育法も社会教育法も図書館法も、すべてこれは同じようにいけたのです。これを性格を変えたら百くらい法律を変えなければならぬ。性格は同じことなんです。お問いは性格いかんというからして同じだ、選挙制度どうかというと、それは変えました、議事の進行のために簡単には答えましたけれども終始一貫なんです。(笑声)(「違うよ」と呼ぶ者あり)
  191. 湯山勇

    湯山勇君 もう少し誠意をもって、まじめに答えてもらいたい。今のだって何ですか、それは一体。
  192. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ともかく何か時間がたてば、それですむくらいに思っている。もう少し真剣に誠意をもって答えていただかなければ、こういう法律案審議ができませんよ。委員長が注意していただきたい。委員長、私もまじめに質問しているつもりです。
  193. 加賀山之雄

    委員長加賀山之雄君) 大臣の答弁に欠けるところがあれば、委員長から御注意いたします。どうぞ質疑をお続け下さい。
  194. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 関連質問、今のもう一点残っておる。さっき竹下委員に、ここのところの答弁で、町村が小さいから、五人の委員はなかなか見つからぬから、三人くらいでいいのじゃないか、それからまた事務局を持って教育長、指導主事、そういうのも大へんだ。だから簡素化して三人の教育委員のうちの一人を教育長にというようなことを言われておりますが、ほんとう教育委員会法の立法精神を生かすとなれば、そういうことがこういう小さな町村に設けられること自体、設置規模ですかね、そこに問題があるのを、それを考えないでやるところに非常に無理が出てきて、竹下委員が指摘したように、教育委員教育長が兼ねるというような、おそらくこれを法成立後運用したならば、いろいろと支障をきたすでございましょうが、そういう事態が起ってくるのじゃないでしょうか。設置規模というものは相当に問題があるのじゃございませんか。そういう点はどうお考えになっておりますか。
  195. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 矢嶋君御承知通り、その問題になるのは主として地方教育委員会、府県はもう一つしか仕方ありません。地方教育委員会で、まあ町村組合という考えもございまするが、今町村合併最中で、合併した町村は、だいぶん大きいのでありますけれども、まだ済まぬものに非常に小さいものがありまするから、それが五名で多過ぎるとその町村で考えるならば、三人にもできるというゆとりをとったのであります。大体の今合併が完成しますれば、五人ぐらいに統一する方がいい、こういうふうに考えております。   〔委員長退席、理事吉田萬次君着席〕
  196. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 関連質問終ります。
  197. 吉田萬次

    理事(吉田萬次君) もう関連質問ありませんか。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  198. 吉田萬次

    理事(吉田萬次君) では速記を始めて下さい。  本日はこの程度をもって散会いたします。   午後三時四十四分散会