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参考人(齋藤一郎君) 私ただいま
委員長の方からお話のありました、栃木県立の宇都宮農業高等
学校定時制主事をやっております齋藤一郎であります。なお県に
定時制教育並びに
通信教育の
振興会ができておりまして、その方の
事務を兼ねて仰せつかっております。
ただいまから
定時制教育、ことに私の
学校の定時制は、昼間の農業高等
学校でございまして、
中心校
一つ、分校三つございますので、これを
中心にしまして、地方における昼間の定時制並びに地方における分校の
状態、こういうことにつきまして、常に接触しております場面から幾つかの問題点、あるいは現実に非常によくやっておるというような例をお話し申し上げたいと思います。さらにそれを
中心にしまして、私知っております限りにおいて、各県の情勢などを折り込んで参りたいと思っております。
定時制教育のお話を、各
方面の方といたしますと、どなたもその趣旨につきましては反対の方はございません。で、運営の幅といいますか、そういう面におきましても、全日制に見られないような非常に広い幅がございます。まあ
一つの例でございますが、私の方の県のある
学校では、ことし卒業式に四十八才の方が卒業されました。その方の息子さんもことし同じ
学校の全日制の方で同じ日に卒業証書を握った、息子さんは早稲田大学の方に進学をする、お父さんは群馬大学の短大の方に行きたい、こういうふうな珍しい例がございます。
全国にも幾つかこんなふうな例がありまして、こういう例は定時制でなくては見られないことではないかと、こう考えております。
そこで、本県の栃木県の
状況をできるだけ簡単に申し上げておきたいと思いますが、全日制の
学校が公立で三十一ほどございます。その中で十九校ほどが定時制を持っております。十九のうちさらに九つほどの
学校が分校を持っております。分校の数は二十一という
状況でございます。他の県と違った点は、一般的に申し上げますと、定時制の場合は夜間の
課程が
全国的に多うございますが、私
どもの方では、これは県の
特殊事情かと思うのですが、昼間の
学校の方が多うございます。中間三つについて夜間
一つというくらいの割合でできております。それから
課程別に申し上げますと、農業が大部分でございまして、普通科、商業、工業というものは非常に少うございます。
学校数の変遷でございますが、
昭和二十八年度に最も数が多うございます。その後、あるいは設置町村といいますか、分校の場合はその設置は町村が設置することになっておりますが、町村の意向、あるいは生徒募集難というようなことがからみまして、次第に数が減って参りまして、本年度は
中心校十九の分校二十一と、来年度になりまして
中心校
二つが募集停止になろうとしております。これは
一つは町村合併などに伴う
一つの現象でございますが、同時に地方においては都市部の夜間の定時制は生徒募集については非常に楽といいますか、充実できますが、並びに
僻地の分校などは募集定員を突破するという
状況にありますが、その中間であります農山村の農業高等
学校、あるいは分校はなかなか生徒募集に困難を来たしておると、こういうふうなことがございます。それでそういうふうな生徒募集の問題、あるいは
財政の問題などから統合、廃止といいますか、そういう線が浮び上っております。
そこで、生徒募集難の話に参りますが、どうして生徒募集が困難であるかということになるのですが、
一つは施設設置の面におきまして、ことに分校の場合、二十一ありましても、そのうち現在ようやく十校ほどが独立の
校舎を持てるようになっております。各町村におきましては、これの
校舎の新築に当っては、自分の町村の金を工面してやっている。非常に施設費の点において問題があるわけでございます。それで、しょっちゅう言われますことは、何とか町村が分校を作るときに起債ができないだろうか、これがもう常に町村の悩みの種になっております。生徒の側からいいますと、これは私
どもの中
学校の、よく定時制を理解しておる中
学校長さんの
意見でございますが、定時制は今のわが国情から推すと、ほんとうに理想的な
教育の方法だ、だから大いに生徒をとれと、こういうふうに申しておりますが、しかし、今のあの分校の
状況、これは中
学校に間借りしておる分校でございますが、中
学校の一部を借りまして、普通の二十坪の教室を
二つに仕切って教室にしております。こういう分校で、あれを見てはほんとうにやりたいけれ
ども、ほんとうに自分の
子供をさてやろうと思ったらば、やっぱり市内の
学校らしい
学校——というのは施設の問題ですが、そういう
学校にやりたくなる。分校にやりたくなくなってしまう。非常に協力はするが、そういう面で
一つ校舎の独立ということを
条件にしてもらいたい、そうすれば、分校のために幾らでもこれという生徒は上げて、村の
教育のために
努力したいと、こう申しております。これに設計の問題でございまして、どうぞこういう点においては御当局においてもぜひ地方の
定時制教育
振興のためには施設費がいただける、こういうことが
一つの大きな
条件になりますので、よろしく御
承知おき願いたいと思っております。
それから次に、それでは施設ができれば生徒が入るかどうかということですが、現実に私
どもで県内で調べました生徒の数ですが、中
学校卒業者が一
年間に約三万五千ございます。そのうちで県外に出たり、あるいは全日制の高等
学校に入ったり、あるいは定時制に入ったりして、つまり村内に残っておる生徒、この県内の総数を調べましたのですが、農林業に従事する者、あるいは仕事も何もしないもので農村に残っている、言いかえれば、昼間の定時制の高等
学校に入れるはずの生徒が約九千人ほどまだぶらぶらしておるわけです。それから就職をしたり、あるいは自家の営業に従事しておるという生徒、このどこの
学校にも行っておらない、こういう者が約八千人ございます。一万七千くらいの数がどこにも行かないでぶらぶらしている、こういうことを本県の数字は物語っております。ですから、こういう生徒がこういう数がありますので、これらの
教育機関のブランクといいましょうか、こういう生徒が、将来こういう
教育を身につけないでぶらぶらしている者が、こういう青少年がたくさんあるということは、村の問題にしましても、あるいは県、国の問題にしても大きな問題じゃないか、こういうものをぜひ定時制に吸収して十分
教育をしていきたい、こういうのがわれわれの念願でございまして、生徒募集もこういう面からやって参りたい。それで実際に入りますのはどうかといいますと、これは栃木県の場合で、ほかの県には必ずしも適用できませんが、中学卒業者のうち約三五%が全日制に入っておりまして、ただの五%だけが定時制に入っております。その数は、県で募集しております一
年間の募集定員は約二千百でございますが、その二千百のうち千八百か千九百くらいの数が入学している。いつも定員全体に対しましては、二、三百の不足がございます。これが中
学校卒業から定時制に入る
状況でございます。そこで同じ県内でも、都市の夜間の方は大体定員を突破しております。それから
僻地にあります分校、これまた定員を十分満しております。先ほど申し上げました通り、その中間の農村地帯にある分校が、あるいは都市に通えるようなところの分校が、ただいま申し上げましたように生徒数が不足、こういうことになるのであります。
で、校分はどうすればいいのかということですが、先ほど施設、設備の不十分からくる募集難ということを申し上げましたが、もう
一つ特に農村地帯に入りますというと、あるいは市内でもそうですが、社会通念というのでしょうか、定時制の
教育のやり方を、これは何といいますか、一段低い
学校教育というような考え方を持つのです。父兄などでも会って話をしますと、定時制じゃごめんだという父兄がございます。しかしながら、全日制の方に無理して入って、途中で経済的な面、あるいはその他の面で脱落する生徒も相当ございますので、一般の
地域社会の人
たちの
定時制教育に対する趣旨の理解といいますか、これがもっと行われなければならない、こう考えております。これらの点は、この社会通念の上からの間違いというものは、父兄ばかりではありませんで、もちろん中
学校を卒業すべき生徒にもそういう面がございます。まことにこれはわれわれ
学校教員の仲間においてもこういう点を反省しなければならない点もやはりあるものと
承知しております。そういう点につきましては、
学校のわれわれ
現場の職員ばかりでなしに、
振興会、そのほかの
方々のお力によりまして、よほど変っては参っております。それから生徒が魅力がないと言いますが、とにかく魅力がないために定時制に入らないのじゃないかという面がありますが、これは分校に対する、あるいは
中心校に対する
教員数の割当の関係などから、どうしても
教員の数が不足でございます。もう少しなければ困る。そこで兼任という方法でもって
中心校、分校間の
教員の動かし方をやっております。運営上兼務ということが非常に多うございます。この兼務の問題は、このほかにも
地域給が問題になりまして、
地域給が分校の職員
組織を充実させるためには非常な難問題を起しております。これは私
どもの県ばかりでなしに、他県の話を聞きましても、その問題が分校職員の配置に非常な影響がある、こういうことを承わっておりまして、何とかうまい方法がないものかと実は心配いたしております。この問題によりまして、
中心校ではたとえば一割五分の
地域給がもらえるが、分校に行くとそれがなくなるというようなことで、これに従事する
教員自身の問題として、私
たち教員の配置については非常に苦労する次第でございます。
さらにわれわれが反省します点は、農村地帯に行きますと、ことに女の生徒には四カ年というのは非常に長く感ずるものがあるのでございます。これを従来は前期、後期の
課程、あるいは前期を卒業する者とか、いろいろ工夫したのでございますが、どうも二カ年というのが一番女の子の
希望の年限でございますようで、これをうまく充実させていきませんと、生徒の数が集まらないのではないか。本年度と言いますか、
昭和三十一年度から県内で新たに別科の制度を作りまして、七校ほど別科を新設いたすことになったのでありますが、別科新設ということが非常に生徒募集に好影響を与えておるようであります。現在今まで少かった
学校に別科ができるというのでかなり集中してきた。これらは私
たちが当然
研究してやらねばならぬ問題と、こう思いますが、幾分かずつそういう点も
考慮いたしまして、来年度の新入の生徒は別科制度によりまして相当大幅にふえてくる、こういう見込みがございます。
それから現実にどういう点が
学校の面において足りないか。先ほど施設設備として
校舎の問題を申し上げましたが、現在
中心校は全日制のものをそのまま使う、こういうことで行っておりますので大した問題はございません。もちろん夜間の定時制の場合はまたおのずから別な面がございますが、昼間制の
中心校の場合ですと、全日制の生徒と同じように同じ品物が使える。ただ問題になりますことは教養という点で、全日制の生徒が千人おって定時制が二百人おるという場合に、これを千人の数で割ったところの設備が与えられておる。私
たちが考えるのに、全定延べ人員千二百の数で設備を考えなければならないのじゃないだろうか、そういう考え方から、千人だけの分を与えられて千二百人で使う、こういうようなところにやはり訂正すべき点があるのではないか、こう考えております。
それから分校に行きますと、
教員給だけが県から与えられておりまして、あとは全部その設置者——町村の負担でございますので、思うように
財政酌
措置がなされません。
最初二、三年前までは二十万平均ぐらいの町村
予算でしたが、本年度はそれが五十万平均ぐらいに上っております。なおそのほか熱心な町村におきましては、私
たちの方では粟野分校というのがありますが、ここは非常に熱心な教頭さんがおりまして、これは二千数百万の金を出して本年度独立の
校舎を作った、これは全日制のものに比較しても劣らぬようなりっぱなものであります。しかし遺憾ながらそれから先の
経費を出すのに骨が折れて、建物はりっぱなものができたが、中の設備があと一段というところで困難しております。こういう点につきましても、設備の充実ということにつきましては、やはり大きな力で応援していただかなければならないと思っております。分校の施設設備でどんなものが不足しているかと申しますと、何しろ町村の費用でやっていきますので、実験、実習などの設備が全般的に申しまして不足でございます。それから視覚、聴覚に訴えるところの
教材教具が足りないようでございます。さらに図書の面で、これも分校は
中心校に比較しますと、はなはだ低い
状態にございます。やむを得ず県の移動図書館を利用するとかというような方法をとっておりますが、非常に図書などの面においても別段の充実がはかられなければならないと、こう考えております。
さらに町村におきましては、最近の栃木県は黒字県とこう言われておったのでありますが、しかしながら町村の方に行きますと、相当苦しい
状態でございまして、せっかくの
補助も半分地元負担ということになってきますと、たじたじというような町村が幾つかございます。私
たちもこの
補助を受けまして、設置者当局に話をしまする際にも、向うの係の方も非常に心配してくれているが、私
どもの方でも堂々ともらうのじゃなしに、ひやひやしながらもらうので、うっかりするとお返ししなければならぬのじゃないかという危険性があるのじゃないかというような、非常に情ない
状態でいるのであります。これは
一つ大きな力で地方の分校をお救いいただくようにお願いいたします。
次に、
教職員の問題に入りたいと思いますが、定時制の
教職員の
組織は私
どもの
調査——これは県の
調査も同様でございますが、一口に言いまして、中堅層の
教員が不足しているということに落ち着きます。君は初めて勤めるのだから夜間の方からやってくれとか、あるいは相当老令になってくると、分校の方へ行くと伸びるのじゃないかという考え方があるのです。それで中堅層の人は全日制にいる。こういう傾向がございます。私
たちの考えは、やはり全日制の高等
学校の
経験を幾年か積んだそういう
方々が定時制に回って来てこそ、それが伸びるのであって、定時制の
教育は、職員の側からはこういう方法であってこそ初めて成り立つ、こういうように考えております。そのほかに定時制の
教員は、ことに夜間の先生などの場合には非常にいろいろな問題がございますが、昼間の
定時制教員でありましても、これは全日制に勤めておりますよりは、非常にいろいろな面で過労といいますか、そういうようなものに陥りやすい。全日制の
教員の場合には、私
どもの県では生徒募集に歩きません。私
たちの方では生徒募集に、わらじをはくと言っておりますが、どんどん出て歩きます。はなはだしい場合には家庭訪問までしてやっております。
教育だけは押し売りしてもいいと、みんなに
教育を売りつけてもいいのだと、そして大勢の青年が高等
学校教育を身につけて世の中に出て行く、これが必要だ、こういう考えで
教育だけは押し売りでもいいのだ、どんどんやって来いと、こういうことで家庭訪問までしまして生徒募集をしている。こういう
実情を持っております。
あるいは
地域の産業と密着しております関係上、
地域産業の
指導と申しますか、もちろん農業の改良普及員などおるのですが、
一つの小さな農事試験場の役目を各分校が果しまして、そこへ農家の人
たちが来る、こちらからも
指導に行く、こういうような
方面で全日制の先生から比べますと、昼間の定時制の職員ははるかに勤務の方では過労に陥っておる、こういうように考えております。しかし一生懸命やっているその先生を
中心校の方に、全日制の方に引っぱって来ようかと考えるのですが、やはりその人ちはその人
たちなりに、もう一年置いてもらいたい、これだけの仕事をやりかけている、あと一年やればこの仕事ができ上る、たとえば私の方の分校では、村の果樹の品種の統一ということを三年来計画しておりまして、まさにカキにつきましては、その品種統一が間もなく完成しようとしております。そのほかブドウの栽培とか、桃の栽培、これを全村に普及させようというようなことで、これにかかった職員は本校の方に引っ張り込もうとしましても、もう一年かんべんしてくれ、こういう熱意を持っている。熱意を持っておりますが、私
どもの方から見ますと、それだけやはり過労に陥らしておる。しかも待遇の面におきましては、
地域給やら何やらで非常に迷惑をかけておる。こういうように非常にお気の毒であるが、本人
たちはもうその職に喜んで熱意を入れてやっておる、こういう人がたくさんいる。こういう
意味におきまして、非常に疲れております定時制の
教員を、また何らかの
意味におきまして十分お考えおき願いたいと思っております。
それから定時制の私
たちの昼間の行き方は、大体農繁期には大幅に休める、農閑期にはどっと授業を当てはめて来る、これは授業編成の上において相当全日制と違いまして、一年を通じて同じ時間表でできるものじゃありませんで、非常に困難な点がございます。それから夏休み、冬休みの期間におきましても、農繁期に大幅に休むという関係で、夏休みはある程度返上でございます。生徒の方も返上ですし、私
たちの方でも夏休み返上である。このことは冬休みにも適用されますし、春の休みにも適用されます。土曜日などはまず大体半日という行き方はございません。一週間に低学年は五日くらい、一、二年は五日くらい出ますし、三年が四日、四年は二日、平均しますとそんなようになっております。土曜日だから半日だということで行きますと、その線がくずれて参りますので、月曜から土曜まで、全く朝から夕方までの授業でありまして、夏休み、冬休みの取扱いな
どもそういう特殊な行き方をやっております。
次に生徒の
状況でございますが、入学の際に一次募集と二次募集とございますが、一次募集で入って来る数は全体の四分の三くらいであります。二次募集が四分の一くらいであります。二次募集というのは、第一次には全日制、定時制一緒に試験をしますので、その全日制から落ちたというような
意味の者が入って来ると、こういうふうにある程度解釈できます。これは中
学校の先生方の進学
指導の面で、先ほどの社会通念の
意味から、全日制の
学校に生徒を送り込めたのがその先生の手柄であるというような考え方が、まだ相当ございます。この点は最近よほど是正されておりますが、そういうような
意味を持っておりますので、従って定時制の場合の学力というものは、上の方は非常にようございます。下の方に行くと、非常に落ちているのがある。例を上げますと、東大に入ったからいいんだというようなことは言いませんけれ
ども、地方におきましては、夜間の
学校から昨年、本年度の四月ですか、東大へ合格している。全日制から入れないのに定時制から入っている。こういうような面がございまして、学力差は相当ありますが、本当の
意味の定時制の生徒はどんどん伸びて行く。しかも大ぜいの生徒
たちが勉強したがっているということは、これは事実でございます。
それから家庭の環境から言いますと、両親、それから父親、母親、とにかく両方ないか、あるいは一方ないか、これが合計で二〇%くらいございます。ちょっとこまかな数字は、必要とあればお示しいたしますが、親のない生徒がとにかく二〇%くらいおるということは現実の問題でございます。ことに父親のない生徒はかなり多うございまして、言いかえますと、父親がないための経済面の問題から、あるいは両親がないための経済面の問題から定時制に入るんだと、こういう生徒でございます。こういうのが定時制の生徒の家庭の
状況でございます。これらの生徒は、家庭環境、あるいは村うちで青年
たちとつき合いをしたりしておりますので、どうしても特別
教育活動という面において、私
たちはこの恵まれない生徒の情操
教育方面をぜひ
向上してやりたいと、こう考えております。
次に地方の産業との関係でございますが、先ほど
一つの例として、村内のカキの品種の統一というようなことを申し上げましたが、あるいは蔬菜栽培、私の方の分校の
一つは、日光利根川温泉に近いところにございますので、そちらの方に供給する野菜類を作っておりますので、これらについて
学校が直接
指導をしていくというようなことをやっております。ただいまのところは、村の特殊生産物であるラッキョウの栽培について分校がこの実験をやったり、あるいは麦のアカタマバエ、麦の非常な害虫ですが、これの駆除方について分校が率先して
取り上げて、なおそれに成功している。これによって村に非常に貢献している、こういうような
実情がございます。分校は、大体
地域の
文化、あるいは産業の先端と言いましょうか、そういう役割を果しております。またそういう役割を
要望されております。
なお定時制農業関係の
学校の特色は、全日制の場合ですと、多くは長男が入りますが、定時制の場合には必ずしも長男でございませんで、やはり半分が長男、半分が二、三男、こういう形をとっております。農業
学校でありながらそういう形、従って定時制の場合には二、三男
教育という問題が浮び上っております。農業
学校であっても二、三男
教育が浮び上ってくる。これはそのまま就職問題ということにつないで考えてもいいんじゃないかと思います。このための
一つの例を上げますと、農
学校でありながら、県の工芸
指導所と連絡をして、そこに生徒をひまなときに送ってやって、そこで竹材工とか、木工とか、各種の技術を身につけさせている。そうして家具商や何かそういうところに送り出してやる、こういうふうな方法をとっております。これも私
たちから言えば、実は私
たち直接の仕事じゃないんだが、そうしてやらねば、これらの生徒の問題が
解決しないというので、
教員が付き添って
指導所に行く、こういうことで、二、三男
対策も行わなければならない、こういうことになって参ります。
これは
予算の面ですが、特に分校におきましては、県からの
補助も多少ございまするが、やっと本年度十万もらったものが、来年はまた五万に、分校平均五万と、ひっこんでしまう。分校の生徒が納める授業料がそのまま県から分校に返されるということを望んで、分校
補助の面を運動しておりますが、県
財政の
状況からまた再び五万円しかもらえないというような
状況に戻っております。非常にこれは残念なことですが、現在の
状況やむを得ないと一応は観念しておりますが、県当局あるいは国当局などの絶大なる御援助を仰ぎたいと思っております。何しろ町村から分校に出す金も年々相当上ってきておりますので、将来分校の運営上、その分校の
予算の問題ということは相当大きな問題じゃないかと、こう考えております。
最後に、ただいまは問題になることばかり申し上げたのですが、中にはもちろん全部そういう定時制
学校の
中心校、分校、夜間いずれも含んでおりますが、県内におきまして、ずいぶん定時制をよく理解してくれておる
方々がございます。実例としては幾つか名前をあげてもけっこうだと思いますが、宇都宮の市長さんはかつて東京で夜学に入られて苦学をされた方で、非常に理解がございまして、率先されて宇都宮市内三校の定時制の
学校のために、定時制の生徒のために後援会を作っていただきまして、宇都宮
定時制教育
振興会という名前ですが、昨年は二十九万の金を市費から出して下さいました。本年度は四十万の金を市費から出して下さる。これによって宇都宮市内の定時制のあるいは趣旨の普及、あるいは生徒の厚生に大いに役立ててくれと、みずから激励されております。それから先ほどちょっと申し上げた粟野町の分校は、粟野町長さんが、これまたみずから非常に若いころ苦労をされて、望む
教育も受けられなかったという
立場にある方ですが、非常に定時制に理解がありまして、みずから二千数百万の金を苦心してりっぱな粟野分校を作った。しかもみずから自分の町の中
学校に出かけて行って、中
学校の先生とひざをまじえて、ぜひこの分校を育ててもらいたい、これがこの町の
教育の
中心地であるから、
文化の
中心である、産業の
中心である、こういうことを頼んでおります。そのおかげで、かつて生徒数も少かった粟野分校も非常な数で堂々と発展の途中にございます。あるいは中
学校の校長さんなどでもよく理解されておる方は、中
学校の中に併設されておっても、この分校の位置を非常に重くみてくれております。そうしてみずから分校長と、だれも分校長という資格を与えたのじゃなくて、自分みずから分校長だと名乗っております。定時制の先生方もそこに行くと、今、分校長さんがみえますからと、分校長ってだれだと思ったところが、そこの中
学校の校長さん、それでこの分校はこういうふうにして発展させる、この村の青年は全部ここに入れて全
村教育をやるのだ、こういうような意気込みを示しております。そういう分校も幾つかございます。こういうふうな理解ある協力者、後援者を得ることも非常に大切だと思います。そういうところは隆々
振興していく下地は十分に持っておることが見られるようでございます。こういうような面で後援者の力というものを私
たち十分信じておりますので、どうぞ
一つ精神的な上からも、あるいは物質的な面からも大いに後援をお願いしたいと思います。ただ私
たちは後援だけを求めて、それでやっていこう、こういうのじゃなくて、われわれの力でできる
範囲はどこまでも
解決していく、こういう考え方を持っております。ただ人にすがって
定時制教育を発展させよう、こういうようなさもしい感情ではございませんので、われわれの力の限りはやる。しかしながら現在の
状況においてはわれわれの力の及ばない面がたくさんある。こういう点はどうぞ
各位のお力添えによりまして、一日も早くこの
定時制教育が全日制のように安定したといいますか、固定した
教育に入って、そうして、これが今望んでおります勤労青少年を一人も漏れなく
教育をして、国家あるいは社会の発展に寄与できるようになりたい。こういうことを念願しております。大へん失礼いたしました。
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