○有馬英二君 第一班の
調査報告をいたします。
派遣委員は湯山
委員と私の二名でありまして、
調査室から生田
調査主事が随行いたしました。
二月十四日から十八日までの五日間、秋田、山形両県の
地方教育委員会制度、
教科書制度、
大学制度の三点を重点として
教育、
文化、
学術に関する
調査を行なって参りましたが、
調査日数が
少いということと、交通の不便によりまして各所とも十分な時間を持つことができなかったことは、はなはだ遺憾でありました。
以下、
調査の要点につきまして項目別に御
報告申し上げ、詳細につきましては文書をもって御
報告いたします。
まず
地方教育委員会制度につきまして、今回の
調査の主要
事項でございますので、でき得る限り多くの方々から
意見を聴取して参りました。
第一に、
教育委員会制度の問題につきまして、
知事、
市長の立場からの
意見を申し上げますと、現在の
教育委員会制度が
教育を守り、
育成している事実、特に
社会教育の面における
地方教育委員会の功績と
効果は認めているが、
教育の現実に対する
財政の貧困、
財政権と
人事権の分離、特定
委員のみの選出等から
県教育委員会は残し、
地方教育委員会は廃止した方がいいという
意見がありましたが、他面また、現在のように規模の小さい町村は
専任教育長を置くことが人的、
財政的にできないということ、教員の
人事交流の面で困難を感ずるということ、従って
設置単位については人口十万以上は問題はないが、それ以下については考慮要するというような
意見がありました。しかし伝えられる
改正案では、
財政の節約ということは問題にならない。また他には、当
地方は
市町村長と
教育委員会との間が、何事も話し合いで行なってまことに円滑にいっており、非常にまあうまくいっているということでありまして、もしこれを廃止するというような線が出ているならば、それは全国
市町村長と
同一の歩調をとらなければならないというような点からであるように感ぜられました。
教員の採用につきましても、
地方教育委員の設立後、県一本であった時より町村の程度に応じた教員を得、特に僻地の多い
地方の町村では満足をしておるということでありました。
なおまたこの地域住民は、
教育について、市町村
議会議員と話し合いをするより
教育委員会委員と話し合うことがより身近な感じがするというような点から、現行法そのままでよいという
意見が多かったようであります。
教育委員関係者からの言では、教員の政治的中立につきましては、
教育委員会があるということによって中立を維持しておる、特に秋田
地方は二十数年前から政界のことをよく知っておるというような年令層の人がかなり多い、従いましてその当時の、
教育が政治によって左右されたような経験を持っておるので、それを一番こわがっているようでありました。
現行制度が五ヵ年にもならぬ現在、功罪について云々され、
改正、廃止ということそれ自体が、すでに
教育が政争の具に供せられていると憂慮する、こういうことで、本問題について市民は非常な関心を持っており、
教育委員会の決定は
全会一致制をとっているため、
人事の交流についても公正な
措置がとられているということでありました。特に
社会教育の面における
教育委員会の成果につきましては
市町村長も認めているが、
社会教育は実生活とのつながりが最も緊密であり、
教育委員会が直接
指導をしておる場合は、実生活に直結しているから、このような成果があがるのである、
PTA連合会長の話では、話し合いによる中道的な
教育、いわゆる
教育の中立を守ってくれる機関を持ってほしい、現
教育委員会制度の悪い点ではなく、いい点をとって
中立性を守ってくれる機関を
育成してほしいというような
意見が述べられました。
また山形
大学の学長からは、学長としてでなしに個人として、山形県の町村が
町村合併によって二百三十町村が六十町村という適正規模の数になった、この問題について
予算の摩擦は起きていない、それから
社会教育の面が特によくなっている。
教育の中立の問題として政治情勢の変化によって
教育が直接的に影響をこうむることはよくない、
公選を
任命制にしたら村民と
教育のつながりがなくなるという意味の
発言がありました。
それから
教育代表者からの
意見でありますが、
地方教育委員会がなくなったら
教育費が少くなり、
PTA会費が多くなるであろう、
学校整備が逐次進んできた現在だから、やはり
現行制度を維持したいというような
意見でありました。
要するに
公選、
任命制については、ほとんどが
公選制を望んでおり、
公選でなければ廃止した方がいいという
意見が多数であったと思います。
なお本
制度の改廃の場合には、その
内容を十分検討し、慎重な
措置をとられるよう各人より
要望がありました。
次に
教科書制度について申し上げますと、
教科書検定制度は基本的に現行方式の
検定制度を維持して
検定調査員については公表をし、ガラス張りの
採択で
検定は厳正明確な態度で行い、その
採択されたものが
検定通過後に
内容について妥当性の論争を引き起すがごとき
一般教育に対する不信を招いたり、教師自身の取扱いに困るというようなことがないようにというような
意見がほとんどでありました。きわめて少数ではありますが、中には
市会議員で
都市、農村、漁村、僻地等に分けた国定
教科書が必要であるというような
意見もありました。これはきわめて少数であります。
展示会の
期間、
方法については、
期間の延長と適正な
運営を行い、
教科書会社の宣伝、
駐在員の配置等を禁止し、
選定する
教科書も数種にして、
採択者の思惑と不正惹起を防止する。また
採択地域については郡、市単位という線が多いとの
意見でありました。
現在の
教科書の
価格については高価であり、彩色、装幀等が余分なものがあったりして需要数からしても今少しく安価にできるし、
価格の高い点は義務
教育機会均等を阻害する一原因にもなっているので、
価格を下げ、国としても免税、運送費の減額、
教科書の様式等に力を入れて安価になるように努力をして、新入児童並びに生活困窮者、準要保護者に対する
教科書の
無償配付はぜひ行なって、できれば義務
教育の
教科書は無償にしてほしいという
意見がありました。
山形県の場合は八
ブロックに分け、地教委と
学校長との話し合いできめているが、
学校長も英語、
社会等の各
ブロックおのおのの
研究会を持ってその人たちの推薦により決定している
現状で、ほとんど郡、市単位を
実施しておるとのことであります。
なお本問題について秋田県の教科用図書の
供給会社よりも
実情を聴取しましたが、その
内容は文書の
報告に譲りたいと思います。
次に
大学問題でありますが、山形
大学は本部及び文理学部、
教育学部を山形市におき、米沢市に工学部、鶴岡市に農学部と各学部が四つの
地方に分散して、特に農学部は本部より他の学部に連絡を行うには一泊しなければならぬというような、いわゆるタコの足
大学と称せられるような総合
大学であります。従って本
大学の卒業式も四回行なっておるというような現況であります。
一般教養につきましても昨年までは各学部ごとに行なっておるのでありますが、本年度から一年だけ山形で行なって、残りの一年はそれぞれの学部で行うというようなことであり決す。
教授の融通、旅費、特に
設備の活用の面では全学部が利用する、たとえば電子顕微鏡というようなものが農学部に一台ある、分光分析器が工学部に一台あるというようなことでこれを全学部が利用するには非常な不便を感じているようであります。従いまして
大学の
運営、統轄等非常に不自由を感じており、近く
教育学部と文理学部を
同一地域に併合しまして、工学部を早々のうちに山形市に移転する計画を立てておるとのことでありました。そしてこれが完了も非常に期待しておりました。
山形
大学の
学生数は二千九百人、その七三%が
県内、二三%が東北
地方、四%がその他の
府県であります。この配分は
地方大学の特色と存在理由を表わしておるということを話されました。
それから
教官研究費の問題でありますが、各学部の配分状況は二十九年度決算から見まするというと二千二十八万千三百円でありますが、各学部配当は千九百七十万円程度で、実際の
教官研究費はずっと少くなって六百五十九万余円であります。従いましてこれをパーセンテージにいたしますと三二・五%になります。各学部ごとに調べて見まするというと、文理学部が三七%、
教育学部が三四%、工学部が二九%、農学部が三六%というような割合になっております。
次に
大学側よりの
要望を申し上げますと、本
大学には
昭和二十八年度より音楽科に特別教科
教員養成課程が
設置されておりますが、教科定数が少く学年進行を見てもらえない、すなわち学年進行に伴って
教官の配置がない、昨年は
教官を三人増すためにその費用がなくて、他の用人その他を減らすというようなことで補った。本年は全然増すことができず困っておるということでありました。本問題は他の同様のセンターを置いておる
大学にも共通で悩んでおることと思うから、文部
当局にぜひ考慮していただきたいということでありました。
また
教官の質の問題で、
教授、助
教授の定員数が
少いので、いい人は学位を取ればさっさとよそに移動してしまう。なお地域給の
関係もあり、中央との
人事交流ができないし、非常に障害となっておるということであります。附属
小学校、
中学校の
人事交流についても恩給法の
関係でそれができないで困っておる。ぜひとも法の
改正を望むということでありました。
教員養成部門の音楽、家庭、図画、工作、保健は非実験であるので
予算が
少い、今少し見てもらえたらというような希望が述べられました。
その他の問題といたしましては、各地におきまして
町村合併により中
小学校の適正配置、
教育効果並びに
経費の節減のため
学校統合問題が起っておるが、町村としてはこれが建設費に多額の費用を要するので、国において統合促進のため強力な
補助ができるように法の制定をしていただきたいというような熱心な陳情がございました。いずれこれらは文書により詳細御
報告いたします。
また酒田市では重要
文化財の売買について本間美術館長より、法により有償の譲り渡しについては
予定価格を表示し国に売り渡しの申し出をしなければならぬが、国の
予算が僅少のため買い上げがなされないということが重要
文化財の
価格の引き上げ、ひいては海外流出の源になっておるというようなことから、これらの
措置を考慮してもらいたいというような陳情がございました。
以上をもちまして終りといたします。