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1956-02-23 第24回国会 参議院 文教委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二十三日(木曜日)    午後二時開会   委員異動     ————————————— 二月十六日委員木村守江君及び吉田萬 次君辞任につきその補欠として大谷贇 雄君及び菊田七平君を議長において指 名した。 二月十七日委員大谷贇雄君及び菊田七 平君辞任につき、その補欠として木村 守江言及び吉田萬次君を議長において 指名した。 二月二十一日委員堀末治君及び吉田萬 次君辞任につき、その補欠として小幡 治和君及び大屋晋三君を議長において 指名した。 本日委員大屋晋三君及び小幡治和君辞 任につき、その補欠として吉田萬次君 及び堀末治君を議長において指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     飯島連次郎君    理事            有馬 英二君            川口爲之助君            湯山  勇君    委員            木村 守江君            中川 幸平君            三木與吉郎君            吉田 萬次君            荒木正三郎君            矢嶋 三義君            高橋 道男君            竹下 豊次君   国務大臣    文 部 大 臣 清瀬 一郎君   政府委員    文部政務次官  竹尾  弌君    文部大臣官房会    計課長     天城  勲君    文部省初等中等    教育局長    緒方 信一君    文部省大学学術    局長      稲田 清助君    文部省管理局長 小林 行雄君   事務局側    常任委員会専門    員       工樂 英司君   説明員    文部大臣官房総    務課長     斎藤  正君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○文部省関係提出予定法律案に関する  件 ○派遣委員報告教育文化及び学術に関する調査の  件  (昭和三十一年度文教予算に関する  件)  (高知県繁藤小学校における紀元節  祝典に関する件)     —————————————
  2. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) これより文教委員会を開きます。  まず委員の変更について御報告いたします。二月二十一日堀、吉田委員委員辞任され、その補欠として小幡治和君、大屋晋三君が選任されました。次いで二月二十三日大屋晋三君、小幡治和君が委員辞任され、その補欠として吉田萬次君、堀末治君が選任されました。以上御報告いたします。  この際委員会審議の便宜上、文部省提出予定法案について当局より説明を求めることにいたします。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) それでは当局説明を求めます。
  4. 斎藤正

    説明員斎藤正君) 文部省関係提出法法案につきまして、提出の順序によって御説明申し上げます。  国立学校設置法の一部を改正する法律案並び日本学士院法衆議院全会一致通りまして、去る二十一日参議院に回付されました。  それから就学困難な児童のための教科書用図書給与に対する国の補助に関する法律、これは現在衆議院文教委員会審議中でございます。  それから学校給食法の一部を改正する法律案、これは本日衆議院文教委員会におきまして、提案理由説明を行いました。  義務教育費国庫負担法の一部を改正する法律案、これは本日政府から国会提案される予定でございます。  その次は、万国著作権条約実施に伴う著作権特例に関する法律案、これは一両日中に国会提出される予定でございます。  教育委員会制度改正に関する法律、これはまだ件名が確定しておりませんので、委員会制度に関する法律と申し上げます。並びに教科書法は来月初めに提案する予定で準備を進めております。  なおこの前理事会のときに御説明申し上げました国際競技大会の開催に必要な競技場の建設並びに譲渡に関する法律案は、これは提案をとりやめましたので、御報告申し上げます。この点は仕事をやめたということでございませんで、別途の方法解決がつくであろうという見通しのためでございます。  以上でございます。
  5. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今の説明、ちょっと聞きたいのですが、よろしいですか。
  6. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) はい、どうぞ。
  7. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ただいまの最後説明ですね、別途の方法解決する方途が見つかったので、それで提案をとりやめたと、こういう御説明でしたね。それをもうちょっと説明して下さい。
  8. 斎藤正

    説明員斎藤正君) 国立競技場設置をいたすだけでございますならば、別に法律を用意しなくても、予算措置で建設できるわけでございます。これはそうでなくて、その当時としては、建てて、それらを国以外のものに譲渡するという構想が考えられておりましたので、そういうことになりますれば、特別のこれがための法律を要する、こういうふうに考えておったのでございますもので、直接国立競技場設置しようという考え方が出て参りましたので、その関係から法律を必要としないのじゃないかという考え方がございまして、取りやめたのでございます。
  9. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ということは、譲渡関係はやめたということでございますね。
  10. 斎藤正

    説明員斎藤正君) 競技場そのものを、国が他のものに譲渡をするという関係でなしに、直接立てるという方向で行けるのではないかということになったためでございます。
  11. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) 次に過日行われました委員派遣調査報告を議題といたします。中川君。
  12. 中川幸平

    中川幸平君 このたび飯島委員長と、私と桐生調査員の三名が、去る二月十七日より二十二日まで、兵庫和歌山両県の調査に参りました。  調査事項地方教育委員会運営状況教科書制度大学制度、その他教育文化及び学術に関する事項であります。  これら両県下のうち、神戸市、加古川市、明石市、洲本市及び和歌山市、田辺市、白浜町を視察いたしました。  以上の視察地におきましては、知事市長町長等首長側を初め、県会選出文教委員市会議員県教育委員教育長及び事務局関係者とも面談いたし、さらに視察地におきましては地方教育委員会委員教育長小中高等学校校長代表者教職員大学教授PTA役員青年会長広報関係者出版関係者等が参集いたしまして、親しくこれらの人々の意見を聴取いたしました。  第一に教育委員会制度について申し上げます。両県下におきましては知事及び市町村長は、ほとんど教育委員会とは対立しておらず、むしろ相互に協力して教育振興に努力している実情であり、これら両者には全然対立はないと明言いたしている市長もあり、あるいは市政の方針として教育第一主義を掲げて教育を尊重している市長もあり、あるいはすでに教育長を勤務した経験のある町長もあって、これらの人人は教育委員会に深い理解を示しておりました。ただ、財政上の点で、地方財政再建のために教育費を節減しなければならないが、これも教育委員会とよく協議して、円滑に進めたいと申しておりました。しこうして、新聞その他で伝えられる教育委員会法改正要綱案に対しては、兵庫県知事賛成である、和歌山県知事もあれでけっこうであるとの明快な発言もありました。  次に各地において聴取いたしました意見を総括的に申し上げます。  その一点は、地方教育委員会設置されて以来、ようやく三年の短かい期間であるにもかかわらず、教育上の業績が著しく上っておる実情にかんがみ、現在の制度を維持し、さらに育成をはかられたいとの意見がありました。すなわち具体的な効果としては、学校施設改善修理を初めとし、学校給食実施教材教具整備充実等学校教育の上に顕著なる功績があり、さらに社会教育の面におきましても、公民館が急速に設置せられ、青年学級振興、また青年婦人に対する教育が促進される等、非常な進展をみたので、その業績は著しいとの意見がありました。これらは僻地において格段の進歩を遂げた旨を報告されました。また地方教育委員会設置以来、教育上の種々なる問題について、教育委員及び教育長に身近に相談にいくことができ、しかも、これら問題をさっそく取り上げて解決をはかられる等、地方住民教育委員とは直結して教育振興をはかることができるとの意見もありました。教育もまた地方色を帯びて、地方実情に即応した教育が行われるようになったとのことでありました。また教育自主性を確立できて、一般父兄信頼して教育委員会教育方針に協力できるようになったとの意見もありました。あるいは青年団としても、地方教育委員会と相提携して、地域社会に即応した指導が受けられ、地方教育委員会信頼を受けているとの報告がありました。  次に第二点は、教育委員会委員選任方法は、直接公選制でなければならないとの意見がありました。すなわち教育委員制度においては、国民全体に対して直接に責任を負って行われるべきであり、公正な民意により一般の世論を荷って教育を行うためには、公選制を堅持しなければならないとの意見でありました。公選の結果においては、一般社会の人が教育に非常に深い関心を払い、よき効果を収めているとの意見もありました。婦人側といたしましても、女性女性の立場から教育委員を選出していきたいとのことで、公選制を希望する発言もありました。もし任命制を採用すれば、時の首長によって自己に都合のよい人物を選任することによって教育が左右されて教育中立性は維持しがたい等の意見がありました。あるPTA役員からは、委員のうち半数公選制により、残り半数任命制による委員を選出してはいかがとの意見提出されました。  次に第三点としては、教育委員会原案送付権を保持すべきであるとの意見もありました。現実には原案はすべてあらかじめ市町村長議会と協議して作成され、相互に協力しておるので、法的にこの原案送付権を廃止する必要はないとの意見でありました。  第四点は、地方教育委員会人事権は存置すべきであるとの意見もありました。すなわち人事権地方教育委員会に存置することによって、その地域社会に即応した人事が適正に行われるのであって、かつ教職員を一人々々よく知ってこそ、初めて妥当なる措置が講じられるのである一もしかりに県教育委員会のみに人事権を委ねたと仮定すれば、多数の教職員を十分知り尽すことは至難であり、適正なる人事は期しがたいとの意見がありました。人事異動の停滞は、単に地方教育委員会制度のみに存するのではなく、他の種種なる諸条件によるものであるとの意見もありました。  次に第五点といたしましては、地方財政赤字激増の原因は、必ずしも教育委員会に存するのではないとの意見がありました。地方財政赤字が増加するとともに、あるいは教育費も増額しておる地方もありますが、これは戦時中から放置されていた危険校舎改築等施設費あるいは設備費教材教具整備充実、あるいは社会教育における公民館設置等によるものであって、これこそは教育委員会制度いかんにかかわらず、当然行わるべきものであって、これらはむしろ教育委員会業績の実証を示しておるとの意見もありました。また町村合併条件として学校改築等教育費の一時的増額のやむなき現象も生じておるとのことでありました。また教育委員会費教育費全体の中に占める額も多くはないとのことであります。和歌山県の戸数五百ほどの一村ではありますが、教育委員会経費はせいぜい年額十万円ほどとのことでありました。  次に教育長教育委員互選により任命することにつきましては、教育長専門職であり、特に研修を要する等、特に適任者を得る必要のため、互選によらない方がいいとの意見も多数ありました。なお一市長から、教育委員教育専門家でないから、委員会運営教育長意見により支配されることとなり問題であるという意見が述べられたことを申し添えます。  なお教育委員会制度については、時の政治に左右されず、あくまでも中立性を確保しておきたいとの意見がありました。  以上は広く関係方面意見を聴取いたしました総括的な概要であります。要するに教育委員会制度改正に対しては、教育委員会関係者の多くは、現制度を存置されたいとの意見が多数でありました。事実、加古川市、白浜町等、昭和二十三年の任意設置以来相当の年月を経過してきておる教育委員会においては、市町村長議会相互に理解し協力して一体となり教育上の業績をあげており、また一般住民信頼を得て教育行政を担当しておりました。また公選せられた教育委員も、人格識見において市会議員よりまさると司も決して劣らない人物が揃っておるなどと申しておりました。  なお県教育委員会地方教育委員会との関係におきましても、和歌山県を初め兵庫県においても相協力しており、ことに和歌山県は一致協力しておる現状でありました。  最後に、神戸教育委員会から次の要望がありました。   一、五大市教育委員会職務権限は、都道府県教育委員会と同等とし、都道府県教育委員会五大市教育委員会に対する指導助言援助を行わないものとすること。  二、五大市公立学校教育職員はすべて五大都市公務員とし、その任免、給与、分限、懲戒、服務、その他人事に関する事項は、五大市教育委員会の所管とすること。  三、地方公共団体議会議員は、教育委員を兼ねることができるようにすること。  四、その他は現行法通りとすること、等であります。  次に教科書制度について、兵庫県教育委員会で聴取したことについて申し上げます。  一、検定について。  (1)非常勤審議員をもって組織する審議会意見が十分に尊重されるようにありたい。  (2)調査員氏名公開賛成である。  (3)シリーズもののうち、三分の一以内不合格になったときに限り、再申請を認めることについて考慮する必要がある。  (4)有効期限は、小学校六ヵ年の関係上、六ヵ年が適当と思う。  (5)工業科等特殊科目のような教科書有効期限は、特例とすること。  二、採択について。  (1)採択地域同一県内を数ブロックにすることが望ましい。  (2)同一ブロック内は、同一教科書とすること。そのため採択権は、県教育委員会に置くこと。  (3)採択に関連する不正行為については、厳罰主義でよい。しかし教育公務員教科書の批判もできないというふうにならないよう、限度を明確にすること。  (4) 採択の問題は、県教育委員会が中心になって実施することになるので、持に専門職員を配し、強化をはかること。  三、常設展示会について。  (1)数多く設けて研究するに便ならしむること。  (2)文部省は、一常設展示会場について、設備費増設費について、二十四万円、経常経費として六万円の補助を計上されたい。  (3)講習会研究会において、発行者関係の者を招き、あるいは後援を得て実施する場合は、主催者いかんを問わず、県内において実施されるものは、県教育委員会の許可を得ること。  四、発行供給について。  (1)一発行所一課目一種類発行がよい。  (2)教科書改訂は、三ヵ年に一回以上を行わないこと。その他の年度は同一定価.で改訂部分については、別紙を挿入して補完作用を行う。  (3)災害等の場合を考慮して、相当数の予備を持つ責任発行者に持たせること。  (4)特約所は、一府県一つとしないで、実情に応じて二、三ヵ所設け得ることとする。  (5)特約所には、これが事務を円滑にするために必要な専任職員を置くこと。  (6)取次店選定は、購入する学校選定権を与えること。  (7)特約所取次店のよくない場合には、県教育委員会を通じて取りやめさせることができるようにすること。  (8)定価値下げのため教師用書寄贈等は禁止する。  (9)定価値下げのため、運賃の特別扱いをし、免税とすること。  次に和歌山県教育委員会教科書に関する意見は次のようであります。  一、検定制度について。  現行制度は必ずしも完全とは言えないが、この制度の存続を希望するものである。ただし次の二点の改善をはかられたい。  (1)検定調査員氏名公開する方がよい。  (2)現行検定基準は不備だと考える。すなわち基準はよく研究されているが、実施に伴い改善修正する努力が不足している。  二、現行教科書について。  (1)各教科書とも画一的であって独創性に乏しい。  (2)内容について誤りもかなりある。  (3)内容よりも表紙、口絵等に腐心して商品化の傾向が著しい。  (4)宣伝費を節約して価格を引き下げること。  (5)教科書改善に必要な基礎的資料の提供については国はもっと努力すべきである。  (6)複式の教科書盲ろう教科書民間会社に任せないで国が発行すべきである。  三、採択。  採択現行法通り都道府県立学校については都道府県教育委員会が、市町村立学校については各地方教育委員会が行うべきである。  四、教科書展示について。  教科書展示会場は国が相当経費を計上して常設とするか、あるいは地域的に教科書研究委員会を組織し、これに教科書を一揃い与え教科書研究をもっと行うべきである。  五、供給について。  (1)早期供給は廃止したい。  (2)教科書無償配付のワクを拡げたい。  (3)教科書発行者駐在員は、現状においては廃止すべきである。  六、教科書採択上の不正防止について。  (1)現在行われている不正行為はできるだけすみやかにかつ積極的に処置すること。  (2)採択する教師側道義心を高めること。  (3)教科書研究熱高め教師選択眼を向上すること。  (4)学校教員の編集委員依嘱や教科書関係講師派遣については届出制をとること等であります。  次に、懇談会等においての意見を総括的に申し上げますと、教科書法制定について中央教育審議会文部大臣に対する答申はおおむね妥当であるとの所見が多数でありました。  まず検定について申し上げます。検定制度は堅持すべきであるとの意見が多数で、この制度に反対するものはありませんでした。検定基準についてはさらに厳重にすべきであるとの意見もありました。検定の組織は文部省の外局で行なった方がよろしいとか、検定文部省のみならず県教育委員会においても行わせるよう両者検定権を持たせるべきであるとの意見もありました。検定調査員氏名公開としてそれぞれ立派なる専門の方々を任命すべきであるとの意見もありました。有効期間は三年が至当であり、三年に一回改正を希望するとの意見も多くありました。  次に採択については、各学校毎に個個に採択する方がかよろしいとか、一府県を郡市単位毎にブロックに分ける方がよろしいとか、それぞれの所見が開陳されました。  展示会については、期間が短いので常時研究できるよう期間を現在より延長すべきである。また展示についての経費は公費をもってあてて一年中特約店へ見本の請求があっては迷惑であるとの業者からの意見もありました。  次に発行供給について申し上げます。  教科書種類が多過ぎるので、一科目についての種類を少く制限してほしいとか、教科書改訂は三年ごとに一回が至当であるとの意見がありました。  次に価格について申し上げます。  定価はもっと安くしたいとの希望も多くありました。また教科書父兄負担が多いので、国費をもって学校において購入できるよう考慮されたいとの要望がありました。また紙質、写真版等を考えて、値段はあまり制限せずに教科書として作成されたものにふさわしい価格をつけるべきであるとの意見もありました。  さらにPTA役員の方から、文部省で農山村向き都市向き及び中間的の教科書を三種類ぐらい作成して、採択の資に供するように取りはからってはいかがなどの意見もありました。  次に大常制度について申し上げます。  第一は、兵庫県立短期大学新入学者募集停止の件であります。兵庫県は県立大学として四単科大学と二短期大学とを有しておりますが、財政上から、また教育上及び社会的欲求から、諸種問題が生じておるので、県当局は、これの解決県立大学の今後の合理的なあり方を考えて、次の方策を立てたのであります。  すなわち姫路工業大学兵庫農科大学工業短期大学農業短期大学をそれぞれ統合することであります。ただし姫路工業大学短期大学部生活科は、女子短期大学として存置すること、そして両短期大学の来年度入学生募集停止を行うことに決定いたしております。  第二に、兵庫県では農科大学医科大学国立移管知事より熱心に要望されました。両県立大学国立神戸大学への移管により、完備した総合大学として神戸大学を発展させたいというの、であります。  次に和歌山大学を視察いたしました。大学においてはまず教官研究費について話がありました。すなわち教授、助教授、助手に対しては教官研究費が支給できるが、専任講師に対しては支給ができないので、この不合理性を打破し、専任講師にも教官研究費を支給できるようにしたい。  第二に、新制大学旧制大学とは差別があって、まず国立学校施設費を十分考慮していただけるよう願いたい。また図書館の費用もはなはだ少いので、これら施設費図書費予算の中に十分見ていただきたい。  第三に、学生厚生問題として、学生ホール学生食堂など設備を完備し、学生補導の実をあげたい。授業料値上げ実施後はことにその点を考慮していただきたいとのことでした。現状では学生と懇談する茶代さえもないとのことでありました。また学生健康保険も考慮すべきであるとの意見でありました。  学生の就職については、和歌山大学は伝統もあり、あるいは熱心に努力した結果、好成績をあげておるとのことでありました。  新制大学旧制大学に比較して種々不利の点があるが、優秀なる教官を配し、地方文化のセンターとして努力しているので、地方新制大学育成強化方向に努力してほしいとの要望もありました。  なお教官定員少いので、教育上種種不十分の点がある等も指摘されました。  なお県立医科大学も将来は国立移管し、国立大学に統合されるよう、知事大学当局等からも話がありました。  なお大学教育制度について、地方教育委員の中から、またPTAの中から次の点が指摘されました。  第一は、地方大学育成して、優秀な大学として地方の子弟が都市偏重でなくて、地方大学入学を進んでできるようにしていただきたい。現在は地方では優秀な大学を目指してすでに中学より都市へ移住する現状である。  第二は、大学文科系統より科学技術方面を拡充強化してほしい。  第三、教員養成大学は、専攻科目に偏して、一般教養及び教育者としての教養が不足しておる。従って地方教育委員会要望しておる教育者としての適任者少いから、大学教育内容を検討してほしい。  第四、教員養成大学において国語、社会等専攻科目を選ぶ学生は多いが、芸能、ことに音楽、体育の教科を専攻する学生少いから、この点大学で適当に指導してほしい。  第五、現在の教員養成大学教育者を養成する点に不十分ではないだろうか。りっぱな教育者として信頼して採用できるような卒業生を養成するよう大学教育をさらに検討してもらいたい。  第六、教員養成大学の二年コースは、主として女子入学して、これは小学校に採用されるが、四年コースは多くは男子で、卒業後は主として中学校に採用される。よって小学校女子中学校男子教官が多いので、補充の点に困難しておる実情であるから、この制度をさらに検討してもらいたい。  以上が大学教育制度について申し上げました。  なおその他明石市長から、現在明石市立明南高等学校神戸大学教育学部明石分校移管併設することを考えておるから、御考慮をわずらわしたいとの陳情がありました。  以上をもちまして今回視察しました概要を御報告申し上げましたが、以上のほか詳細は別に文書をもって御報告することにいたしたいと存じます。
  13. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) 次に秋田、山形両県を調査されました他の一班の調査報告でありますが、いまだ湯山、有馬両委員の間で報告書について協議が終っておりませんので、この報告はあと回しといたしまして、ただいまの報告に対し質疑のおありの方は御発言を願います。
  14. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 調査視察に出かけることはさまった委員会にあいにく私不在であったわけですが、従って委員長に伺うわけでございますが、その点は先ほどの報告から考えてみるに、おそらく政府提案の形で本国会提案されるであろうという教育委員会改正に関する案件、それから教科書問題に関する案件、これらを予想して事前にそういう法案が出てきた場合の法案審議の資料にいたしたいという角度から視察されたと思うのですが、その伝えられる政府の法案の内容というものもまだ確定したとは承わっておりません。従って委員長としてはいよいよ案件が国会に出てきた場合に、それに基いてさらに事は重大であるだけに調査視察に出かけるとか、あるいは公聴会を開く必要があるとか、そういうような計画見通しをもってこのたびこの視察調査に出られたのかと私は推察しているわけです。ということは、この二つの案件は非常に重大でございますが、内容がきまっていないために、きまっていないときに見た視察調査だけで、あと内容次第ではさらに必要になってくる場合が予想される。その可能性が非常に強いと思うのですが、そういう大体のお見通しのもとに今度調査視察されたものと私は推察申し上げておるのですが、念のために委員長から承わっておきたいと思います。
  15. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) お答えいたします。委員派遣につきましては事前に委員の皆さんに御相談をして行なったわけでありますが、特に理事会では御多忙の中を調査の議題等についても十分議を練って、なかんずく教科書の問題、それから教育委員会制度の問題等を中心にして調査をするのがよかろうということで調査に出たわけであります。なお法案ができておらないから、その進行のいかんによってはさらに調査を必要とするのではないかという御忠告でありましたが、これは予算等の関係もありまして、議員派遣についての昭和三十年度の経費は平常通り運んで参りますと、大体形式的に今回の調査で余裕がないように私は承知しております。  それから参考人等のことにつきましては理事会にも諮って善処したいと思います。
  16. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 具体的に内容を伴ったものが出てきた場合でなければ確定的なことはきめられませんし、その場合でもよろしいわけですが、私は必要が起ってきた場合にはその委員会の要求というものが真に必要性があるということを認められれば予備費というものが二割残しているわけですから、予算がないからそれで必要があるのであるが、それがなし得ないというような委員会としての遠慮は要らないかと思っておりますので、それは具体的に問題が起った場合でいいと思う。そこでそれはその点でそういうことでいいということにいたしましてもう一点伺いたい点は、もしまあ予算関係で今度の視察調査が一応最終的なものだとかりに考えた場合に、今両案件についてはこの提案者である政府の方で最終的に調整段階に入っておるわけでございます。従ってただいまの報告を承わって、私は次のような点についてはこの委員会として確認して委員長からしかるべくそういう意思表示をされたならばいかがかと思うのです。その内容というのは、先ほどから報告を承わっておりまして、たとえば教育委員会というものは相当に成果を上げた、従って現行教育委員会法の立法精神というものは堅持されるべきだという大きな筋が報告書の中にずっと流れている。こういう問題、あるいは公選制を堅持しよう、それから教育長互選はよろしくない、私は非常に印象に残ってメモしたのは、教育委員会関係ではそういうことです。それから教科書関係では工業学校とか農業学校とか、そういう職業課程の学校教科書については特に考慮しよう、あるいは採択区域は県内を数ブロックにするのが適当である、検定制度は堅持してもらいたい、こういう点が特に報告書の中に強調されておったと思うのです。われわれは立法府なんですから、議員立法であろうが政府立法であろうが、国会に、立法府に提案されてきてそれを審議しあるいは修正すればいいわけなんでありますが、ちょうど今これらの法律案件が政府で最終整調の段階に入っているわけですから、事新たまらなくても事前調査視察した結果、こういう結果が出ているから、もし法案を提立するならば、しかるべ善処してもらいたいという意味の委員長から私は意思表示をされておかれれば、将来かりに法案が現実にできた場合に審議するに当って非常に好都合ではないか、かように私は考えておりますが、委員長にこの点を承わりたい。
  17. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) ただいまの御報告は、調査に出た一個班の報告でありますので、その内容については文部大臣はじめ文部御当局もこの場で直接お聞き取りの上でありますから、私からあらためて申し入れをするということはいかがかと思います。なお他の班の御報告等も承わった上にしたいと思います。
  18. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今回の二個班に分かれての調査については私も非常に御苦労であったと感謝しております。しかしただいま矢嶋君からもお話があったように法案が出ていないのですから、法案が出ていない先に審議の参考にするために調査をするということは、私はほとんどが前例がないと思う。しかし、だからといって悪いとは決して言いません。それはまあ慎重を期する上にも慎重を期されて非常に結構であると思う。私も理事からその点連絡を受けておりましたから、その点については何も申し上げませんが、ただ法案が提出された際に、前に調査したのだからもうする必要はないと、そういう意味ではないと私は考えておるのです。その点は委員長も十分お認めであると思うのですが、この点を伺っておきたいと思います。
  19. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) 先ほどお答えいたしましたように、理事会にはかりまして今回の調査をしようといたしましたのは、一つには経費関係、それからもう一つにはおそらく三月以降では国会も法案の審議等に追われて非常に多忙であろうと、時間的にその余裕が困難ではないかと、こういう見通しのために特に今回先立って出たわけであります。
  20. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今私が申し上げた点は、これは法案が出てからいろいろどういうふうに審議していくかということについて協議があると思いますから、その際に申し上げることにして、きょうはこの程度にしておきます。
  21. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先ほどの委員長の私に対する答弁一応了承します。そこでこの点に関する限り委員長のお言葉を受けて大臣に伺っておきますが、それは先ほどからここで発言がなされた通り委員長みずから、大臣はおそばでお聞きになっていられるからあらためて申し上げる必要はなかろうと思いますが、先ほど来報告がなされたわけですが、こういう点は十分立案の参考にされて立案の上国会提出されるものと私は思いますが、大臣の御所見いかがですか。
  22. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 私は少し出席が遅かったのでございまするが、わざわざ現地に出張の上御調査の結果は非常に貴重な資料だと存じます。速記録を拝読いたしまして十分に参考にいたしたいと思います。
  23. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) なお報告の詳細はこれを会議録に掲載することにいたします。
  24. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) 次に昭和三十一年度文教予算を議題といたします。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  25. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは予算に直接関係のない問題でありますが、この間から大臣にお会いいたしまして各県に起っておる定員の削減の問題についてどういう事情になっているのか、事情を調査してこの委員会にも報告してもらいたい、こういうことをお願いしておったのです。で、この問題一つ初めに御説明をいただきたいと思うのです。それからあわせてこれは御調査になっていないかもしれませんが、本年度学芸大学を卒業する学生のうちどの程度就職できるのか、就職できる実情にあるのか、もしわかっておればこれもお答えを願いたい。
  26. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 今荒木さんから、こういう求めがあったのであります。委員会外非公式のことでありまするが、近時各県で教員の定員を縮めるといううわさがある、一体自治庁からそういう指令でもしたのか。また指令の有無にかかわらず、各府または県でそういうことをやっておるか、こういうことを調べて委員会報告しろ、こういう意味でございました。私はもうその翌日すぐにこれは大へんなことだと思いまして、今回の予算は教員は七千五百名ふやすための予算化しているのを、定員を減すというのは私どもの意外とするところでありましたから、自治庁長官に対してそういうことがあるのかと聞きましたところ、それは全くない、実は自分も非公式にそういうことを聞いたから調べさしたところが、自治庁でもそういう意味の通牒をしたことはないのだ、各県においてもそれをやっておるということはいまだ報告に接しておらぬ、こういうことでございました。しかしながら荒木さんより、またその後私に面会を申し込まれて、重ねてあなたから承わりましたから、今度は事務当局から事務当局へそういうことはそれでもないのだろうかという問いをしたのでありまするが、こういうことではなかろうかといったような心当りがある、すなわち、ことしはこの予算赤字解消を非常に熱心にやっておる、そうすると同じような条件の県が二つまたは三つあるとして、その県の教員の数とか給与とか、教員だけじゃなく、ほかの吏員の数と給与についてでこぼこがあるということを比較検討するということは行われ得ることでございます。そういうことでもなかろうかという想像をもちました。もしそれでありましても学校の教員の定数はほかの行政事務と違うのだから、そういうことに便乗して教員数を減すことはどうかやめてくれという意味の申し入れば事務当局より事務当局へいたしております。不公平な結果がないように、ことに教育のことは大切でありまするから、今でさえも全体からいえば教員は足りないのでございまするから、不正の結果が起らないように十分注意さしておるような次第でございます。  それから学芸大学の卒業生のことでございまするが、これは大学局長から……。
  27. 稲田清助

    政府委員(稲田清助君) 後段の点は本年度卒業いたします見込みにつきましてはまだ集計いたしておりません。ただ年々御承知の通り募集に際しまして各都道府県教育委員会と相談いたしまして、どのくらい募集したらいいかということは年々御相談の上募集いたしておりまするし、その結果によりましてこのところ毎年二年課程を減じ、四年課程をふやしつつあるような状態でもあり、昨年、一昨年の就職状況が七月くらいまでには特殊の事情のなきものはほとんど九十数パーセント就職しておるような状況でございますので、本年に限って非常に悪いという見込みは持っておりませんけれども、ただいまの御質疑にお答え申し上げるだけの資料をまだまとめてない点を遺憾に存じております。
  28. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ただいまの文部大臣の御答弁、御趣旨は、あるいは文部大臣のお考えは私は了解いたします。しかし実際問題として近畿というような範囲だけでなしに、全国的に定員を削減するというような傾向があることは私どもが聞いている範囲では全国的に起っておる、こういうふうに考えております。もちろんこれは知事最後的な決定ではありません。事務当局が検討しておる段階において相当多数の定員の削減を行う、こういう様子であります。従って最後的なものでありませんから、最終的にどの程度定員が削減されるかということは私にもその資料はありません。けれどもそういう傾向にありますので、これは今も文部大臣事務当局を通じてそういうことのないように指導したい、こういうお話でしたから、この点は十分留意していただいて、今後の御指導についても十分やっていただきたいと思います。ただしかし実情については、これは十分御調査を願いたいと思います。どの府県はどの程度の削減を試みようとしているか、そういう点について文部大臣はまだ十分御存じないように私は今の答弁から受け取ったので、今後とも一つ御調査を正確にしていただいて、どういう実情にあるか、これは十分関心を持っていただきたいということを希望として申し述べておきます。
  29. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 今のお言葉は了承いたしましたが、一つ荒木さんの方でもどの県がどうだといって、特殊のひどい県でもありましたら一つ御指定願いましたら、特にそれに向って調査してみたいと思います。全体としては今言った通りなのです。これは何も誇張の言でも修飾の言でもないので、今の調査し得た限りはそうでございます。
  30. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ただいまのに関連してですが、第二十三臨時国会で通過成立しました地方財政再建促進の臨時措置法、いわゆる再建法ですね、この適用申請を早くするようにと自治庁は弱小県に対して盛んに督促をしております。そういう県の予算編成方針、その状況というものは実にひどいものです。あの法律国会にかかった場合に、文部省と自治庁の関係、それから都道府県知事都道府県教育委員会との関係等が十分審議されたわけですが、実際の法の運用に当っては一方的に教育予算に大きなしわ寄せをして意見をとり上げないという実情があるわけなんですね。従って私は、もう二、三県は再建団体の指定を自治庁に申請をしているわけですが、自治庁の方で督促していますから次々に申請がなされると思います。そういう県は特にひどいわけですが、従って予算編成期に当って再建法の運用の適正を期する立場からいっても、何らか文部省として調査をし、また善処されてしかるべきだと思うのですが、どういう情報を文部省としては今つかんでおられるか。またいかに善処をされる用意があるか、その点について伺いたいと思います。
  31. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 再建適用団体はちょうど今各方面から自治庁へ来ておる最中と思います。私の郷里の県も一昨日かそれをきめて申請したのですが、まだ自治庁へは到達しておらぬのであります。今のところとりまとめた報告を得ておりません。ただ御承知の法律ではあの適用を受けるためにはあらかじめ教育委員会意見も聞くということになっております。これらがもう少しまとまりましたら御報告ができると思います。
  32. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 質問がもう一点あったわけなんですね。それは再建法方の適正なる運用、不当に教育予算等にしわ寄せにならないために文部大臣として私は閣内において特に対自治庁、対大蔵省の立場において善処をされてしかるべきだ、僕はまたそれを要望いたしたのですが、そういう非常に圧力を加えているわけなんですね。正式に文書でなくても口頭等によって非常に圧力を加えている。その結果というものが予算編成の段階になって、先ほど来お話に出ているようなことが出て来つつあるわけなんです。従って私は教育を守るという立場から、文部大臣としては善処をしていただきたいと思いますが、どういう善処をしていただけましょうか、その点の質問に対する答弁が残っておりますが、お伺いいたしたいと思います。
  33. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 今申す通り再建団体がまだ十分に集まっておりませんので、どの県が再建団体だという報告も閣議にもまた閣議外でもまとめた通告は来ておりませんです。通告が来ましたら、それのみならず国家のために最善を尽さなければならぬのは閣僚としての義務でありますから、今の御注意によってよく調べてみたいと思います。
  34. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは角度を変えて伺いますが、それは高等学校もさることですが、今一番重点になっているのは小中学校の定員関係だと思うのです。これは申すまでもなく義務教育ですね。それで義務教育に対する国の義務というものもこれは申し上げるまでもないと思うのであります。従って今の現状からいって私は小中学校教育に支障がないようにするための最低限必要な教育者の員数こいうものは中央、地方を通じて何とか確保さるべき努力がされなければならぬ。その努力が私は足りないと思うのですが、一定基準を確保するのにはどういう基準と、それからそれに対する信念を文部大臣が持っておられるかという一点は私は非常に重要な一点だと思うのです。それをお伺いしたいと思います。
  35. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 私は法律にきめたことを実行するためには最善の努力をいたしたいと思っております。
  36. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 事務当局どうですか。
  37. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 補足して申し上げますが、私どもといたしましては、三十一年度の予算編成に当りましてあくまで三十年度の実績を確保し、さらに三十一年度に増加いたします児童生徒に対応して教員の増加を計算いたしまして、その三十年度の実人員と増加見込み数とを加えまして三十一年度の定員といたしまして予算を計上いたしておるわけでございます。これは国庫負担金の予算について申し上げたわけであります。地方財政計画におきましてもこれと同数のものを計上されているわけでございまして、政府といたしましての予算措置といたしましては、現状プラス増加の人員、こういふうに計算いたしておるわけであります。ただ各県の別について見ました場合に、またいろいろと検討のこともあると思いますけれども、全体として見ました場合に、三十一年度には増員すべきものだと、かように考えております。ただその基準をどこに求めるかということでございますが、これは非常にむずかしい問題でございまして、教育的な観点もとよりございますけれども、現在の地方村政の実情から申しまして財政の実態も勘案しなければならぬと考えるわけでございます。三十一年度の予算の積算の基礎といたしましては、一学級当りこれは増加人員に対してだけでありますが、一学級当り小中学校とも一名ということで予算を組んだ次第でございます。
  38. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう一回伺っておきますが、その最低基準を確保するという基準がですね、浮動、明確になっていないから、中央においても地方においても予算編成に困難をきたした場合には、直ちにそこにしわ寄せがくると思うのです。たとえば、あなたの方の問題としては、昭和三十一年度の義務教育費国庫負担制度実施に伴う予算は当初七百九十億というものが必要だというので、文部省できめて要求したですね。で、その当時の答弁としては、自然増に伴う教員増は一万三千人が必要だということをここで答弁されたわけです、必要だということを。そしてそれが予算の編成の結果としては七千五百人ということになったわけですね。こういうところが私はおかしいと思うんですね。この教育的立場から考えた場合、生徒のふえる数というのはさまっているのだから、それから生徒をどの程度教室に入れられるかという点もきまっているのですからね。だから一万三千人が必要だといった場合に、七千五百人でいいと文部大臣予算閣議で下るということ自体に私は実は納得しかねる問題がある。中央においてそうでしょう、地方に参った、先ほど申し上げましたように、自治庁あるいは大蔵当局の圧力等があれば、その傾向というものは倍加していくわけです。だから私はその点を、一万三千人必要という場合に、なぜ七千五百人に下ったのか、それを予算閣議で文部大臣が了承したのか、その基準というものをどういうふうに考え、どの程度の信念を持っておられるのか、それを私は確立しておく必要があるし、またそれを承わる必要があると思ってお伺いしたわけです。だからまず文部大臣の御答弁をいただいて、それから足らざるところを事務当局で補っていただきましょう。文部大臣どうですか。
  39. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 事務当局から先に。
  40. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 今のお話でございますが、私どもとしまして、結局三十一年度の予算案として計上しました基礎は、先ほど申しましたように、増加学級当り一名、で、これは現在の地方財政実情、あるいは増加学級に対しまする配当の人員といたしましてはこれでまかないがっくであろう、かように考えまして一名という基準をとったわけでございます。全国平均の。全国平均と申しますが、三十年度におきまする実人員に比べまして、今の一名を加えるということでございますから、これを全体平均してみますと丁二ぐらいになりましょうか、現在の実際の平均は、教壇に立つ教員の数は、一学級それくらいの率になると考えております。で、現在の実情としましては、この辺で十分いくのじゃないか、かように考えておる次第でございます。ただいまお話のように、何と申しますか、固定した基準というものをここで定め得ればいいかもしれませんけれども、これはなかなかむずかしい問題でございまして、いろいろな要素を勘案しなければなりませんので、実ば前々から研究はいたしておりますけれども、まだ学校の教員の定員数の基準といったものは、はっきりきめていない、研究は今後していきたいと思っております。
  41. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 念のためにもう一回私伺いますが、文部省の大蔵省に対する一万三千人という増員が必要だというのは山があったのですか、どうですか、伺いましょう。一万三千人必要だということをきめて、それが七千五百人に下ること自体が、だんだんと追い込まれていって、私は教員の定員が確保できない一番大きな原因だと思うのですよ。どういうわけで文部大臣予算閣議で、生徒児童数の自然増について、一万三千人必要だという結論を出しておかれて、それを七千五百人と下ってこられたのか、その点文部大臣から承わりたい。
  42. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 一万三千人あれば非常に十分でありまするけれども、刻下の現状をみて、予算に記載した程度でもいけぬことはないと、かように思うのであります。今局長説明した通りであります。
  43. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 局長そうですが。
  44. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) これは予算要求の過程におきましては、いろいろ折衝もございましたけれども、ただいま私が申し上げましたように、増加学級当り一名を確保するということで予算を組みまして今御審議を願っておる次第であります。
  45. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 最後に、この点については大臣に要望しておいて、この点に関する賀陽は打ち切りますがね、大臣、建築工事を一年予算が足りないから繰り延べるとか何とかというのと違いますよ。生徒児童は生きたもので、ふえる人員というものはきまつているのですからね、それを教育するに当って、その教職員給与が高いとか低いとかはともかく、何人要るという要る数というものはそんなに私は動くべきはずのものでない、それが一万三千人という数字を出しておいて、それが一万二千とか一千とかというならば幾らか話はわかりますよ、それが七千五百人、約半数に下るということは私はどうしても納得できない。そういう線を了承して、大臣は閣議を下ってくることについては、もう少し私はがんばっていただきたい、努力していただきたいという気持で一ぱいです。この点要望して、この問題に関する質疑を一応これで打ち切ります。
  46. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 僕はちょっと関連して文部省の御意見伺っておきたいと思うのですが、最近の傾向として、一学級当りの子供の数がうんとふえてきております。私の考えでは、教育相当大きな支障があるところまできているのじゃないかというふうにみているのです。たとえば、あるところでは一学級の平均児童数を五十七名というふうに抑えているところがあります。これは平均ですから、若干上下はあると思います。一学級五十七名というふうな児童数では、私はほとんど満足な教育というのはできがたいのじゃないかというふうにみているのですがね、そういう点文部省としても、ある程度指導をして、そういう非常に大ぜいの子供を一学級に収容する、そういうことのないように、文部省としても指導すべきじゃないかと思うのですがね、こういう点、文部大臣からでなくてもよろしい、これは事務当局からでもよろしいから、率直に一つ文部省意見を聞かしてもらいたいのですがね、最近だんだんだんだんふえてきておる。ことしは五十七人というような平均児童数のところが相当出てきております。
  47. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) ただいま御指摘のように、学級当りの児童数がふえることは、これは教育上好ましいことでないことは当然でございます。私どもとしましても、そのことは十分指導いたしたいと思いますが、ただ、ただいまおっしゃいましたような、私どもの調査によりますと、平均はそこまでいっていないのじゃないとか、国の予算、国庫負担金の予算地方財政計画の予算の算定の基礎としましても、五十七人という数字は取っておりません。小学校につきまして、一般県におきましては四十三人、それから中学校におきましては四十六・二という数字、これは全国平均でございます。そこで。最高のところは相当。今おっしゃいましたように五十人、六十人くらいまでなっているところもあるかもしれませんが、全体の平均はまだそんなにいっていないと思います。従来、十分それはふえますことは好ましいことではございません。ただいま申しましたように、国庫負担金としましては児童教の増加に対しましてそれだけ増員をするように考えまして、先ほどお答えしましたように、増加学級一人当りの教員を確保しようというのが三十一年度の国の予算であります。
  48. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私もさつき申したように、全国平均の問題を言っているのではありません。しかし、特定の、ある学校は五十七人とか、五十八人と、そういう数字ではないのです。一例をあげますと、大阪市の、これは相当広い範囲のものです。大阪市全体で一学級五十七人と、こういう定員を決定しております。校長に通知をしておるわけです。ですから、こういうところの、私はほかの都市にもあるのじゃないかと見ておるのですがね、全部調査しておりませんが。しかし、大阪市全体を通じて一学級五十七人といえば、これは大へんひどい数字だと思うのですがね。そういう点について、文部省としては何らかの指導をするとか、あるいは何らかの考慮をするとか、そういう点がないかということを聞いておるわけなんですよ。それは財政難の時ですから、若干ふえてくるということは一面、ある面やむを得ない面もあると思うのですがね。私は限度を越しておると思うのですよ。
  49. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 先ほどお答え申し上げましたように、国庫負担金を組みます場合の一学級あたりの取り方、かようなものは地方にも示しておるわけでございまして、これからもっといろいろ指導していきたいと思います。  それから今例にお引きになりました大阪におきましては、これは三十年の十月十四日の調査でございますけれども、小学校におきましては四十八名、中学校は五十二名が平均でございまして、最高限は五十七名ということでございます。
  50. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 今の荒木さんの御意見等に関連して、だいぶ私から抽象的、申し上げますが、例外にもせよ、そんな大きな学級のあることは望ましいことではございませんので、できるならば、やはり少いほどいいのでございます。文部省もそれを希望しておるのでございまするが、御承知の通り、わが国は戦争に負けまして、最近までは国民は家屋もなく、また食物さえも不自由しておったのでありますから、それににわかに戦前よりもまだ大きな学校計画ができておるのでありまして、いまだノーマルな状態に達してはおりませんけれども、自然わが国力も逐次回復しておりますから、き年ならずして教育状態もよくならんことを心から希望しております。今おっしゃるようなことは、例外にもせよ、あちらこちらあることは遺憾に思っております。
  51. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 大防府でございます。
  52. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 府……、私は大阪市と言ったんですが、私はこの間聞いてきたんですがね。これではやれぬという話を聞いてきて、それで言っておるわけなんですがね。
  53. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 局長、あなたのところで予算を組む場合に、大蔵省と数字を突き合せていくわけですが、大体、あなた把握されていると思うのだけども、ちょっと荒木君に対する答弁を聞いてみると、不十分な点があるのじゃないかと思う。それは結局、予算から教員の定員と地勢の関係からも、私申し上げなくても、あなた頭に入っておるわけだが、小学校は合併できないわけだから、地域によって二十五人のクラスもあれば三十人のクラスも出てくるわけなんですよ。その結果、大阪市に限られず、ちょっとまとまった都市は、大がい一クラス五十八人から、熊本県は六十人、六十人までは一クラスに入れるのです。だから一つ具体的に市内のある学級を取りますと、一年が八学級あるとすれば、一学級から七学級までは皆六十人入れている。そうして一番終りのクラスが端数になるから五十人とか、どうかすれば五十二、三人とかいうようになっいてますが、市内のちょっとまとまった小学校の一クラスというのは皆五十七、八から六十入れているのですよ。これは全体のワクが小さいからそうなってくるわけなのですね。だからあなたがさつき申した小学校平均四十三とか中学校四十六とかいう数ですね、その数に欠陥があるわけですね。それと一方は一クラスの人員は最高何人以上収容したのじゃ教育はできないという教育的な見地からの一つの基準をもって押えなければ、小学校の一年生あたり五十五人以上も収容したら、どんな優秀な先生だって指導できないですよ。そういうところにきているわけですね。そこでさっきの大臣の発言ですが、ごもっともだと思うのです。大臣はいつも、その言葉は非常に私はごもっともと思うのだが、そういうお気持で予算閣議あたりに出られたのでは、私は教育予算はもう退却ばっかりで予算は取れないと思うのです。たしかにあなたのお気持はわかりますけれども、今の教育現状というものを把握されて、やはりこれを維持、向上していくという立場からは、必ずしも私は河野農相の態度というものを全面的に支持するものじゃないのですが、少しああいう態度でなければ、相手が相手ですから、私は今の文部大臣のようなお気持ではなかなか予算が取れない。それが一万三千人から七千五百人に押えられた一番大きな原因になっているのじゃないかと思いますので、これは答弁要りませんが、申し上げておきます。
  54. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 結局、私の質問に対して、はっきりした答弁がないわけですが、事務当局からも、事実五十七人というふうな数字が出ているわけですね、こういう場合に、何らか指導をする考えはないものか、こういうことを聞いているわけです。
  55. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 文部省としまして、具体的に、学級あたり何人の児童でなければ収容できない、最高限はここまでだ、こういう権限はないと思います。しかし先ほども申し上げましたように、予算を組む基準等を、これは全国平均を大体とっておりますけれども、それらによってやってもらうように事実上内面的に指導助言をしていくということは必要であろうと考えます。これは会議等を常にやりますので、そういうときにそういう目的を果していきたい、かように思っております。
  56. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 こういう問題になると、文部省の権限が非常に狭まっいくるのですが、教育二法のときには、指導助言の権限はあるということでダンビラを振って前の大達文部大臣は非常に強い発言をされた。事こういう問題になってくると、文部省はあまり関係がないとはおっしゃいませんがちょっと公式に発言することもむずかしい、こういうお話なんです。私どもはちょっと納得しがたいのです。内面的でも何でもいいですよ。もし実際上そういう多数の、教育できないような多数の生徒を収容しなければならん、こういう事情が多くなってくれば、何らか法的な措置をとってでもやはりこれは何とかしなければならん問題じゃないかと私は思うんですがね。
  57. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 教員の定数基準、従ってそれに関連いたしまして学級当りの児童数、こういうものにつきましてただいま私どもも研究いたしておりますけれども、これを法律で定めるかどうかはこれは問題だと存じますけれども、何らかそういうものを一つ定めたいという努力は続けているわけでございまして、一つそれは十分研究させていただきたいと存じます。  なお御参考に申し上げますが、最近五年間の一学級当りの児童数の変遷でございますけれども、二十六年以来三十年度までの一学級当りの、全国平均でございますが、これを申し上げますと、小学校におきましては二十六年四十四、二十七年四十三・一、二十八年四十二・九、二十九年四十三・五、三十年は四十三・八と、大体こう多少の−でこぼこはございますけれども、四十二、三、四と、こういうところを上下いたしております。中学校も大体同様ですが、少し多くなっております。
  58. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) ちょっとお諮りをいたします。ここで先ほど申し上げました秋田、山形両県を調査されました第一班の調査報告を有馬委員からしていただきたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) それではお願いいたします。
  60. 有馬英二

    ○有馬英二君 第一班の調査報告をいたします。  派遣委員は湯山委員と私の二名でありまして、調査室から生田調査主事が随行いたしました。  二月十四日から十八日までの五日間、秋田、山形両県の地方教育委員会制度教科書制度大学制度の三点を重点として教育文化学術に関する調査を行なって参りましたが、調査日数が少いということと、交通の不便によりまして各所とも十分な時間を持つことができなかったことは、はなはだ遺憾でありました。  以下、調査の要点につきまして項目別に御報告申し上げ、詳細につきましては文書をもって御報告いたします。  まず地方教育委員会制度につきまして、今回の調査の主要事項でございますので、でき得る限り多くの方々から意見を聴取して参りました。  第一に、教育委員会制度の問題につきまして、知事市長の立場からの意見を申し上げますと、現在の教育委員会制度教育を守り、育成している事実、特に社会教育の面における地方教育委員会の功績と効果は認めているが、教育の現実に対する財政の貧困、財政権と人事権の分離、特定委員のみの選出等から県教育委員会は残し、地方教育委員会は廃止した方がいいという意見がありましたが、他面また、現在のように規模の小さい町村は専任教育長を置くことが人的、財政的にできないということ、教員の人事交流の面で困難を感ずるということ、従って設置単位については人口十万以上は問題はないが、それ以下については考慮要するというような意見がありました。しかし伝えられる改正案では、財政の節約ということは問題にならない。また他には、当地方市町村長教育委員会との間が、何事も話し合いで行なってまことに円滑にいっており、非常にまあうまくいっているということでありまして、もしこれを廃止するというような線が出ているならば、それは全国市町村長同一の歩調をとらなければならないというような点からであるように感ぜられました。  教員の採用につきましても、地方教育委員の設立後、県一本であった時より町村の程度に応じた教員を得、特に僻地の多い地方の町村では満足をしておるということでありました。  なおまたこの地域住民は、教育について、市町村議会議員と話し合いをするより教育委員会委員と話し合うことがより身近な感じがするというような点から、現行法そのままでよいという意見が多かったようであります。教育委員関係者からの言では、教員の政治的中立につきましては、教育委員会があるということによって中立を維持しておる、特に秋田地方は二十数年前から政界のことをよく知っておるというような年令層の人がかなり多い、従いましてその当時の、教育が政治によって左右されたような経験を持っておるので、それを一番こわがっているようでありました。現行制度が五ヵ年にもならぬ現在、功罪について云々され、改正、廃止ということそれ自体が、すでに教育が政争の具に供せられていると憂慮する、こういうことで、本問題について市民は非常な関心を持っており、教育委員会の決定は全会一致制をとっているため、人事の交流についても公正な措置がとられているということでありました。特に社会教育の面における教育委員会の成果につきましては市町村長も認めているが、社会教育は実生活とのつながりが最も緊密であり、教育委員会が直接指導をしておる場合は、実生活に直結しているから、このような成果があがるのである、PTA連合会長の話では、話し合いによる中道的な教育、いわゆる教育の中立を守ってくれる機関を持ってほしい、現教育委員会制度の悪い点ではなく、いい点をとって中立性を守ってくれる機関を育成してほしいというような意見が述べられました。  また山形大学の学長からは、学長としてでなしに個人として、山形県の町村が町村合併によって二百三十町村が六十町村という適正規模の数になった、この問題について予算の摩擦は起きていない、それから社会教育の面が特によくなっている。教育の中立の問題として政治情勢の変化によって教育が直接的に影響をこうむることはよくない、公選任命制にしたら村民と教育のつながりがなくなるという意味の発言がありました。  それから教育代表者からの意見でありますが、地方教育委員会がなくなったら教育費が少くなり、PTA会費が多くなるであろう、学校整備が逐次進んできた現在だから、やはり現行制度を維持したいというような意見でありました。  要するに公選任命制については、ほとんどが公選制を望んでおり、公選でなければ廃止した方がいいという意見が多数であったと思います。  なお本制度の改廃の場合には、その内容を十分検討し、慎重な措置をとられるよう各人より要望がありました。  次に教科書制度について申し上げますと、教科書検定制度は基本的に現行方式の検定制度を維持して検定調査員については公表をし、ガラス張りの採択検定は厳正明確な態度で行い、その採択されたものが検定通過後に内容について妥当性の論争を引き起すがごとき一般教育に対する不信を招いたり、教師自身の取扱いに困るというようなことがないようにというような意見がほとんどでありました。きわめて少数ではありますが、中には市会議員都市、農村、漁村、僻地等に分けた国定教科書が必要であるというような意見もありました。これはきわめて少数であります。  展示会期間方法については、期間の延長と適正な運営を行い、教科書会社の宣伝、駐在員の配置等を禁止し、選定する教科書も数種にして、採択者の思惑と不正惹起を防止する。また採択地域については郡、市単位という線が多いとの意見でありました。  現在の教科書価格については高価であり、彩色、装幀等が余分なものがあったりして需要数からしても今少しく安価にできるし、価格の高い点は義務教育機会均等を阻害する一原因にもなっているので、価格を下げ、国としても免税、運送費の減額、教科書の様式等に力を入れて安価になるように努力をして、新入児童並びに生活困窮者、準要保護者に対する教科書無償配付はぜひ行なって、できれば義務教育教科書は無償にしてほしいという意見がありました。  山形県の場合は八ブロックに分け、地教委と学校長との話し合いできめているが、学校長も英語、社会等の各ブロックおのおのの研究会を持ってその人たちの推薦により決定している現状で、ほとんど郡、市単位を実施しておるとのことであります。  なお本問題について秋田県の教科用図書の供給会社よりも実情を聴取しましたが、その内容は文書の報告に譲りたいと思います。  次に大学問題でありますが、山形大学は本部及び文理学部、教育学部を山形市におき、米沢市に工学部、鶴岡市に農学部と各学部が四つの地方に分散して、特に農学部は本部より他の学部に連絡を行うには一泊しなければならぬというような、いわゆるタコの足大学と称せられるような総合大学であります。従って本大学の卒業式も四回行なっておるというような現況であります。一般教養につきましても昨年までは各学部ごとに行なっておるのでありますが、本年度から一年だけ山形で行なって、残りの一年はそれぞれの学部で行うというようなことであり決す。教授の融通、旅費、特に設備の活用の面では全学部が利用する、たとえば電子顕微鏡というようなものが農学部に一台ある、分光分析器が工学部に一台あるというようなことでこれを全学部が利用するには非常な不便を感じているようであります。従いまして大学運営、統轄等非常に不自由を感じており、近く教育学部と文理学部を同一地域に併合しまして、工学部を早々のうちに山形市に移転する計画を立てておるとのことでありました。そしてこれが完了も非常に期待しておりました。  山形大学学生数は二千九百人、その七三%が県内、二三%が東北地方、四%がその他の府県であります。この配分は地方大学の特色と存在理由を表わしておるということを話されました。  それから教官研究費の問題でありますが、各学部の配分状況は二十九年度決算から見まするというと二千二十八万千三百円でありますが、各学部配当は千九百七十万円程度で、実際の教官研究費はずっと少くなって六百五十九万余円であります。従いましてこれをパーセンテージにいたしますと三二・五%になります。各学部ごとに調べて見まするというと、文理学部が三七%、教育学部が三四%、工学部が二九%、農学部が三六%というような割合になっております。  次に大学側よりの要望を申し上げますと、本大学には昭和二十八年度より音楽科に特別教科教員養成課程が設置されておりますが、教科定数が少く学年進行を見てもらえない、すなわち学年進行に伴って教官の配置がない、昨年は教官を三人増すためにその費用がなくて、他の用人その他を減らすというようなことで補った。本年は全然増すことができず困っておるということでありました。本問題は他の同様のセンターを置いておる大学にも共通で悩んでおることと思うから、文部当局にぜひ考慮していただきたいということでありました。  また教官の質の問題で、教授、助教授の定員数が少いので、いい人は学位を取ればさっさとよそに移動してしまう。なお地域給の関係もあり、中央との人事交流ができないし、非常に障害となっておるということであります。附属小学校中学校人事交流についても恩給法の関係でそれができないで困っておる。ぜひとも法の改正を望むということでありました。教員養成部門の音楽、家庭、図画、工作、保健は非実験であるので予算少い、今少し見てもらえたらというような希望が述べられました。  その他の問題といたしましては、各地におきまして町村合併により中小学校の適正配置、教育効果並びに経費の節減のため学校統合問題が起っておるが、町村としてはこれが建設費に多額の費用を要するので、国において統合促進のため強力な補助ができるように法の制定をしていただきたいというような熱心な陳情がございました。いずれこれらは文書により詳細御報告いたします。  また酒田市では重要文化財の売買について本間美術館長より、法により有償の譲り渡しについては予定価格を表示し国に売り渡しの申し出をしなければならぬが、国の予算が僅少のため買い上げがなされないということが重要文化財の価格の引き上げ、ひいては海外流出の源になっておるというようなことから、これらの措置を考慮してもらいたいというような陳情がございました。  以上をもちまして終りといたします。
  61. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) なお詳細はこれを会議録に掲載することといたします。ただいまの報告に対し質疑のおありの方は御発言を願います。
  62. 湯山勇

    ○湯山勇君 これは報告者じゃなくて、大学局長にお尋ねいたしたいのでありますが、今の東北の音楽講座であるとか、その他の特殊な講座のようなものが東北の学校には全部設けられてあるそうですが、これについて一名の定員配置がなくて、最初の一名か何名かは配置替によって操作され、学年進級についての教員配置が一人もないというので、これは共通の問題だと思うのですが、何とかならないものでしょうか。
  63. 稲田清助

    政府委員(稲田清助君) 東北地区におきましては、御承知のように岩手に芸能、福島の体育、それからただいまの御承知の山形に音楽があります。今御審議いただいております予算においても、岩手においては本年度増員しております。全部が全部、毎年々々増員するということには参りませんので、ぐるぐる回しにいたしております。福島については、一昨年やった。それから御指摘の山形においては最初の年度は相当入れたつもりであります。今年は休んでおりますけれども、御事情はよくわかっておりますが、これは全国に相当数が多いので年次的に配慮いたしております。今後とも充実を期したいと思っております。
  64. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ただいまの報告に対する質疑が別になかったならば、時間もかかったので間もなく閉会すると思いますから、その前に私は一言緊急に大臣にぜひ伺っておきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  65. 飯島連次郎

  66. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 非常に影響性が大きい問題でございますから、念のために大臣の真意を私は承わりておきたいと思います。最近大臣の御発言にはいろいろと私は重要な発言があったと思います。従って伺いたい点がたくさんありますから、そのうちのごく影響性の大きい緊急な問題について一言だけ伺っておくのですが、それは昨日私はニュースで承わったわけですが、例の高知県の小学校で紀元節の式典を挙行したという点については、私は文部省としては適当な注意と指導をなされるのであろうと当時私は予想しておったのですが、昨晩のニュースで聞く範囲内によりますというと、小学校で昔通りのこの紀元節の式典をあげることは差しつかえない、それでけっこうだと、かように答弁されたということが昨日全国にわたって報道されているわけです。私はここで二月十一日の紀元節の式典をあげるのがよろしいとかあるいは適当でないとかいう、そういうことを議論しようというのではございません。公立の学校ではそういう祝祭日というものは法律できめられております。文部省教育委員会に対して指導と助言の義務と権限を持っておられるわけです。そういう点総合的に考えた場合に、私は昨日耳に入ったような答弁を文部大臣がされたとするならば、きわめてこれは私は影響性が大きい重大な問題だと考えますので、念のため大臣に私は真意というものを承わっておきたいと思います。
  67. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 本年の二月十一日に高知県長岡郡大豊村のうちの繁藤小学校、この学校は小さい学校で、児童数が百三十五名、教員が七名、学級数が六ということでございます。校長は溝渕忠広という人でありまして、本年の二月十一日に紀元節の式典のようなことを行なったという報道がございましたから、文部省ではさっそくその取調べをいたしました。衆議院でも報告いたしましたから、こちらも機会があれば申し上げてみたいと思っておったところでございます。  当時やりましたことは、二月十一日の午前十時全校の児童のほかに、村民有志も参列いたしたのでございます。そうして校長は開式の言葉を述べ、かの昭和二十一年の一月一日に人間天皇の御詔書というものがございます。自分は現人神じゃない、人間だ。国民との間は信頼と敬愛で結ばれるのだという有名な詔書でございます。それを読みまして、そこで校長が訓話をいたしております。その訓話の内容は、人間が生れたときには、やはり誕生日を祝うごとく、国が生れた日に相当することについては祝いをしていいのだという趣きの訓話をいたしまして、そのときに来賓が祝辞を述べ、次に紀元節の歌「雲にそびゆる高千穂」という歌を歌いまして、その次に学校の校歌、学校の歌があるとみえまして、校歌を斉唱して閉会の言葉を述べ、当日は土曜日に相当いたしましたから、かれこれでお昼になったとみえまして、子供には帰ることを許した趣きであります。県教育委員会の言うのには、この学校は昨年増改築をいたしまして、本年はちょうど終戦十年になるからして、一つこの際に建国の事由をよく知らせ、子供たちに愛国心を涵養するのがいいというので当日やったという報告を得ておるということでございました。それからこの式をするためには、村の教育委員会に対して二月初めに教育長に口答で式典をやりたいと申し出でて、その許可を得ておるということであります。教育長の許しが出て、職員全体の会議で話した上でやったのだ。二月六日には村内全体に案内状を出しておる趣きであります。こういうことを探知し得たのであります。そこで衆議院委員会では、それを違法とは思わぬかという意味の野原委員その他よりたびたびのお問いでございました。で、私はそれに対しては、当日これだけの行事といいまするか、事を祭日、祝日として取り扱ったのではなくして、臨時にこういうことをすることは、村教育委員会の了解を得てやるならば、ちょうど臨時の運動会などやるのと同じような扱いで、法律上これは違法とは言えない。ただしかし課業をやらないでそれだけで帰ってしまったことは行き過ぎでいかぬ。ただしかし高知県の教育委員会もこれは行き過ぎだと言っておるのでありまするから、教育委員会においてしかるべき措置をとるので、文部省よりして当該校長に向い、または教育委員会に向って特別の指導なり、助言をするに及ばなかったと、かように答えておるのであります。それに牽連して衆議院では文部大臣は二月十一日はほんとうに日本の建国の日と思うか、紀元節を祝うことはいいと思うかといったような派生的のまた抽象的の御質問がたくさんありましたから、その質問に対しては私は私の信念に従ってお答えしておる、こういうことでございます。
  68. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これは多く議論し、お伺いする必要はないと思う。ただ明快に私は御答弁願っておけばよろしいのですが、それは、文部大臣としてはただいま報告になったような形で二月十一日を選んで、かような祝日としての一日を一同とともに過した、こういう行事、これは適当と考えられますか、適当でないとお考えになられますか、これは答弁次第では、もう少し伺います。
  69. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 今も申しました通り、当日これだけをやって、あとで授業をしなかったということは私は行き過ぎと思っております。しかしながら日本人として日本建国の日を追想して子供にその意義を解明したということについてはとがむべきものではない、こう思っております。
  70. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大へんおかしいです。あなたはおかしいです。これは、あなた、さっきから運動会を臨時にやるのと同じように云々と言いますが、こんなこととは問題が違うのです。問題は二月十一日という日があるいは学界においていろいろ議論があることは御承知の通り、今私は申し上げません。それはどちらがいいということを申し上げているのではない。二月十一日という日を選んだということと、祝い日としての行事をやったということは間違いない。昔もこういうときには村内へ案内を出して有志が集まって一緒にやられたものです。その昔の形のままで、しかも二月十一日を選んでやっているわけなんです。これは運動会を臨時にやったようなこととは問題が違うのです。午後授業をしないで帰したとか帰さないとかいうこととは問題が違うと思います。これは祝祭日が法律できまっていることでありますし、こういう形で式典を開くことを教育長が許可した、その事自体が私は適正を欠くものがあると思う。常識ある人だったら私は問答無用の部類に属するものだと思います。それを一国の文部大臣が午後授業をすればよかったが、やらなかっただけがいかぬで、あれでいいだろうと思うというような発言です。これは先生方だけの会合で何かやられたのと違います。公立学校法律に基いてやる、しかも義務教育の児童を相手に学校の行事としてやっただけに私は重大な問題だと思いますが、もう一回一つ御答弁願いたい。
  71. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 私から委員の方々に御質問申し上げては本来悪いのでございまするけれども、しかしあなたは、日本の建国を祝うということは悪いことだというお考えでしょうか。
  72. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は普通ならばあなたの質問に別に答えなければならぬ義務はないわけなんだが、しかし私は先ほどから申し上げておるように、この建国の日を祝うのがいいとか悪いとか、そんなことは別だと言っているのです。二月十一日は建国日であるとか建国日でないとか、そういうことを私は議論にしていないということを冒頭に申し上げて、事公立学校が、義務教育の児童、しかもこれは法律に基いて教育されている。そうして学校がその一日を、いかなる状況で児童とともに一日を過ごすかということも、条例内規によってちゃんときまっている。祝祭日というものは法律できまっている、これだけの条件がそろっているときに、今御報告になったようなこういう一日が学校で持たれるということは、私は適正であると思われるか思われぬかということを伺っている。問題をしぼって一つお答え願います。
  73. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 前提が違えば話は幾らやっても平行線になりまするが、私自身はこの由緒ある日本の国がちょうど二千六百十六年の二月十一日であったということは、それは証明されてはおりませんけれども、大多数の国民はやはりこの国は大和の橿原の宮で建国されたということはみんな信じておるのであります。それでこの建国の日をあなた方一部のいわゆる進歩的識者はそうおっしゃいますけれども、大多数の日本人は、日本の建国を祝うことを欲しておるのでございます。私自身も当日旗を出した。それで学校だけがそれをやって悪いということはございません。当日は祝日としてやったのじゃないのです。生徒は授業を受くるために登校しておるのです。ただしかしながら、当日の授業をすればよかったのを、授業を省いてこれだけやったということは行き過ぎでございまするけれども、しかし百三十の子供に日本は昔こういう日に、大和の橿原の宮で即位式をあげられて、これが日本の建国だということを教えることは、歴史教育の第一歩でございます。  私は今回の学制の改革についても、あまりにもこの今の学校が日本歴史を教えなかったということを実に慨嘆いたしておるのでございまするから、行き過ぎは行き過ぎでありますけれども、このことは日本の校長としては罪悪を犯したつもりと私は考えておりません。しかし行き過ぎでございます。行き過ぎのあることは高知県の教育委員会も気がついて、行き過ぎだと私どもに返事しておるのでありますから、この上事を荒立たしてかれこれするということは、私は欲しないのでございます。
  74. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は、大臣よくお聞きいただきたいのですが、私はその小学校の校長とかあるいは教育委員会をどういうということにピントを合せて伺っているのじゃない。私は一国の文部大臣の、清瀬文部大臣としての発言を重視して伺っているのです。しかもその内容は今二千六百年云々というようなことにピントを合せて伺っているのじゃないのです。もしそうなれば法律でそうきめて、そうして祝祭日としてやればいいわけなのです。確かにこの行事というものは、これは祝祭日として扱われているわけです。それが適当であったか、それとも行き過ぎであり、好ましくなかったかという点についての料部大臣の見解を伺っていますと、教育委員会の方は、やや行き過ぎであったという結論を出されたというのですが、文部大臣としては、二月十一日は建国日であるからそれを祝うのは一つも差しつかえない、こういう意見だということを答弁されているから、文部大臣としてのあなたの発言としてそれは納得できないということを私は伺っているわけで、二月十一日自体がどうだこうだということを言っているわけではないのです。非常に重大だと思うし、この問題は。
  75. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 関連して、これは矢嶋さんもおっしゃっているように、文部大臣の個人の見解を私どもが伺う必要はないと思っているのです。それは文部大臣個人として紀元節を復活したいというお考えを持っておられる。それは持っておられるということは事実であっても、もし紀元節を復活した方がよろしい、こういうことであれば法改正をして国会提案をして、そうして議決を経れば、それは小学校中学校で国の祝祭日として行事を行う、こういうことになると思うのです。しかしそういう手続を経ていない今日の段階において、清瀬文部大臣の個人の見解を私は伺っても仕方がないと思うのです。少くとも公立の学校においては祝祭日の行事を行う、これは実質的には祝祭日の行事を行なっているのです。それを悪くないのだ、自分個人の見解と混同しておっしゃられるということになると、今後私は秩序は立たないと思う。一つの例をあげます。かりに私なら私が天長節を復活しようという考えを持っておるとします、そういう考えを持っていませんけれど。それはこれに賛成する人もやっぱり日本人の中にはあるかもしれません。そうするときようは天皇の生まれた日なんだ、一つお祝いしようじゃないか、学校で行事をやる何ら規定がないのに、そういうことをやられていても、個人が賛成ならそれはよかろう、私はこういう意味と同じになると思う。同様な意味が私どもはメーデーは労働者の祭典としてこれは国の祭典として取り上げてもらいたいと考えている。しかし法律にはきまっていない。しかし自分がそう思っているからそれはよかろう、学校でやってもいいじゃないか、子供も参加させたらどうか、こういうことになっていろいろの問題が私は起ってくると思う、紀元節だけでなしに。そうすると秩序というものは、私は乱れてくると思います。単なる文部大臣個人の見解でそういうことは悪くないのだ、こういうことを文部大臣の立場にある方がおっしゃる、しかも公的な学校においてそういう行事が行われておることを是認されるということになれば、今後私は秩序は立たないと思う。どういうふうにお考えになりますか。どんどんやってもよろしいか、その他の類似の祭典を。これは今の文部大臣の見解からいけば許容しなければなりませんよ。されますか。
  76. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) すでに矢嶋君に対するお答えの中に含んでおることでございまするが、重大なことでありまするから重ねて申し上げます。私は日本の建国を祝うことそれ自身はいいことだと思っております。しかしな.がらこれを祝うがために学校を休んでやったということは行き過ぎだと思っております。
  77. 湯山勇

    ○湯山勇君 大臣の御答弁は焦点がはずれております。今お尋ねしておるのはそういうことをお尋ねしておるのではなくて、両委員がお尋ねしているのはこういう事態が各所で起ってくると思う。それもやはり大臣はお認めになるかどうかということを尋ねておるのであります。私は、じゃそういう問題を離れて、角度を変えてお尋ねしますが、今大臣の管轄にある国立学校が学長が判断に困って一つ東京大学は建国祭をやる、大臣認めてくれるかというときには、大臣はそれはよろしい、やれというふうにお指図なさいますか。
  78. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 当日学業を休んでそればかりをやることは私は許しません。しかしながら通常の学業をやるのほかに該当の日にこれは日本書紀にもある通り辛酉の春慶辰の昨日を神武天皇御即位の日として、われわれまたわれわれの先輩がそれを信じて祝った日だ。日本も独立したからしてこの日を一つ祝おうということで祝いの集まりをすることは私は禁じる考えはありません。ただそれをやるがために学業をゆるがせにするということは友対いたします。
  79. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣どうもおかしいと思う。たとえば大学でも小学校でもそうですが、具体的に考えるとすれば、朝九時なら九時生徒は登校するんです。それはちゃんと何曜日というのは時間割がきまっておる。行事はきまっておる。午前中今のをやれば、予定通りの学業のできぬのはきまっているじゃないですか。だからあなたが言われるようなことは、夜とか何とか学校の行事として、正式な学校の行事としてでなくて、一部有志がされるようならけっこうだと、こういうような私は気持であなた言われているんじゃないかと思うんだけれども、この高知の場合は一つのケースになっておるわけですが、たとえば授業をしたとしても午前中のスケジュールというものはこわれるわけですからね、だからこのケースに関する限り好ましくなかった、適当でなかったという大臣はお気持でおられるんだろうと思うのですが、そうなんでしょうね。
  80. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 私はこの高知県の事件は学業に差しつかえを生じておるように見えまするから行き過ぎと思っております。しかしながら大学であろうがあるいは義務教育であろうが、学業を妨げぬ範囲において二月十一日にわが国建国の日を追想して、あるいは訓話をなし、あるいは歌を歌うというふうなことは、これは私は決して止めべきものじゃないと思っております。
  81. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 念のために伺いますが、それは学校の公式行事としてやられるという条件がついているんですね、大臣の答弁は。それとも学校の公式行事でなくてですか、どうなんですか。
  82. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 今の学習課程にはありませんから、あなたが公式行事とおっしゃるのはどの意味かわかりませんけれども、学業を妨げない範囲において、橿原の宮における御即位を回想して祝意を表し歌を歌い訓話をなすというようなことは妨げない、こういうことであります。
  83. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私もう二点尋ねますが、湯山君の質問に対して許可を与えるというお話でした。そうするとある文部大臣は許可を与えるし、ある文部大臣は許可を与えないという事実が生れてくると思うんですがね、そういうことでいいのかどうかが一つ。それから高知県の問題について尋ねます。この紀元節の歌を歌ったということですが、あの中には、「なびき伏しけん大御代を」というふうな言葉もあったと思うんです。私は主権在民の憲法からいって、あの紀元節の歌をそのままでは、今日憲法の精神に反するんじゃないかと思うんですがね、ああいう歌を行事の際に歌うということになれば、平素かなり私は授業の時間において教えていると思うんですよ、ああいう歌を教えて差しつかえないというお考えを持っておられるか、聞きたいと思うんです。
  84. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 物事は歴史の段階について考えなければなりません。現行憲法ができましてから主権は在民でございます。しかしながら神武天皇御即位のときの日本は、主権は天皇にあったのでございます。当時なびき伏したに相違ないのです。昔のことを言っているのです。今の子供に、お前たちが裕仁天皇になびき伏せいというのでなくて、神武天皇の即位の時には日本の大和朝廷なびき伏したと、これは昔のことを言っているのです。これは差しつかえないと思います。
  85. 湯山勇

    ○湯山勇君 違います。大臣、おしまいまであの歌御存じですか、あの歌のおしまいにそういう事実と同時にそういうようにありたい、「なびき伏しけん大御代を仰ぐ今日こそ楽しけれ」、今そういうふうに歌っているのがあの歌なんで、そうすると、その歌の趣旨というものは、大臣が言われるようにその当時そうだったということではありません。
  86. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 大和朝延当時二千六百年、なびき伏したそれが建国の日で、本日はそれに当るのだから楽しい日だ、今なびき伏せいということはどこにも書いてないのですよ。建国の日になびき伏したのですよ。それはあなたも学校でお教えになってよく御承知のことだと思うのですが、それはそうなんです。あなたは、今の天皇になびき伏せいとはだれも言っておりません。しかし神武天皇は、お名前のごとく武をもってこられた方で、九州から瀬戸内海を通って、大和に入ってなびき伏された。それで日本ができた。どこの国の初めでも原始時代は戦争ばかりです。戦争ばかりの時に今のような民主主義の国は急にできやしません。それで第一番には武をもってどこの国でも統一しとるのです。イギリスのような国でもルルマン。ザ・コンクェスト、その時代の建国を歌うたのでございまして、あなた方のような進歩主義者の方は別にいたしまして、日本国民大多数はその当時の建国を喜んでおるのです。私が紀元節を禁じたと言ったら、その反動は大ですよ、それは。
  87. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 あの歌の内容は、これは主権在民と矛盾すると思うのです。それを歌って差しつかえないということは、私は大臣どうかしているのじゃないかと、失礼な言葉ですけれども、私はそう思うのですがね。どうですか、この点は。今日でなくていいですよ。よくこの歌を研究していただいて、この主権在民の憲法、しかも清瀬文部大臣が今の憲法を変えたいとはおっしゃっておりますが、主権在民まで変えようとはおっしゃっておりませんね。これはいかに憲法改正論者といえども、あの歌は適当でないと私は思うのですがね、それを無理に、かまわぬのだと、あの歌でいいんだと、こういうふうにおっしゃると、どうも私は変な気がするのですがね。
  88. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 私に対する直接のお問いでもないように今のお言葉は拝聴いたしました。しかしこれから歴史教育をしなければなりませんが、すべての歴史を平面的にやってしまってはいかぬのです。楠木正成が忠義した。その時は主権は天皇にあった。天皇に忠をすることはいいことですけれども、今の主権は国民にありますから国民に向かって忠をしなければならない。歴史の段階ということを考えて、いちずに憲法を改正した今の時だけのことをおっしゃるのであったら、ほとんど歴史は成り立ちません。歴史はその時の背景に向かって説くのが当り前であります。今のように建武の頃に日本の主権が人民にあったのだったら、楠木正成はむだなことをしていたのです。しかしその時は主権が天皇にあったから、国に忠義を尽す。われわれの兄弟は大東亜戦争の時も主権は天皇にあったから、天皇陛下萬歳と言って死んだのです。これもその時としてはもっともであったのです。ただしかし、今憲法は変って主権が国民にあるから、これからのもし自衛隊が外国の侵略を受けて日本を防ぐというのじゃったら、国民のためにおれは死ぬぞと言って死んでもらわなければならぬ。しかしながら自分の身を犠牲に供したということ、これは同じことであります。  神武天皇大和朝廷御造成の時は、肇国の初めにおいては、主権は確かに朝廷にあったのでございます。そのことを言うことは、決して恥しくも何ともない。人類の歴史です。どこの国でもそうなっております。フランスのような自由主義国でも昔は君主国です。ルイ十三世の時にはルイのために戦った人もあるのです。イギリスでもノルマンザ・コンクエスト、ウィリアム王がいた時は主権在君です。だから君のために忠を尽した。その時のことを背景として歴史は説かなければならない。それを今民主国になったからといってこれは昔の忠義をした人は皆むだ死だ、こんな歴史の教え方をするのは間違っております。その時の背景を説かなければならない。
  89. 湯山勇

    ○湯山勇君 大臣は非常に偏見を持ってものを言っておられるようです。私どもは歴史というものを大臣のようには把握しておりません。大東亜戦争の時に天皇陛下萬歳と言って死んで行った人を、あれはだめだとか、むだだとか言っているのじゃないのです。そういう人のそういう過程が今日の日本の民主主義を生んでいる。楠木正行というものがあの時死んだのはむだ死にじゃありません。今日の日本のこの民主憲法を生み、民主国家を生む基礎になっておる。そういう把握をしておるのにかかわらず、大臣はあたかもわれわれが逆のように、ああ楠木正行はむだ死にだ、天皇陛下萬歳と言って死んで行った者は、あれはなっていないというように考えているというような偏見から、どうも今の大臣は非常に興奮して御説明になったようです。決してそうではありません。従って大臣が紀元節についておっしゃいましたように、その当時そうであったという事実をだれも否定してはいない。またそういうことを校長さんが説明しようが、あるいは親が子供に説明しようが。そういうことをとやかく言っておるのではなくて、こういう歌を一体小学校の一年から五年、六年までの子供に、相当むずかしい内容です、歌の内容も。そうしてまた大臣が言われるように、われわれが言うように、子供たちには把握できません、この内容は。小学校六年ですから、最高で……。それに向ってなびき伏した大御代が楽しかったり、あるいはこの恵みの波に浴みし代が恋しいと、こういう歌を歌わすことは、現在の主権在民の教育をしている学校においてはふさわしくないのではないかということを言っておるので、大臣がさっきいわれたようなことは、全くわれわれの申しておることとは逆なことですから、その点は十分一つお考え直しを願いたいと存じます。
  90. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 一々お言葉に対し、また言葉を返して、はなはだ失礼でございまするけれども、今あなたはかえってあなたの方の立場を御弁明のようなところがございましたが、同じことなんですよ。学校はものを教えるところでありまするから、日本の国が大和朝廷以来王朝まで主権は天子にあったのだということを教えること、また幕府時代においては主権は名義上京都の天皇にあったけれども、実際は幕府がやっておったのだ。明治時代になって明治憲法ができ、今日また戦後民主憲法ができた、このくらいなことは学校で教え得ることであります。今まで教えておらなかったことが悪いのですよ。(湯山勇君「教えていますよ」と述ぶ)それを教えておれば、大和朝廷の時に主権が朝廷にあったということは、あなたすでに子供は知っておるじゃありませんか。知らなかっても当時訓話しております。それであなた、大和朝廷ができた当時には、神武天皇は武の力をもってともかく……。今の諸君は民主々々と言いますけれども、部落と部落の間で朝から晩までけんかばかりしておる。社会学の研究でも、どこの国でも初めはもうがちゃがちゃの戦争ばかりです。それを武をもって統一されたということは一つの功績であります。大和朝廷の功績でございます。そのことを称えるということはちっとも差しつかえない。  顧みて今日のような民主政治をやっておらぬというので、神武天皇の功績をデロゲート、すなわち少くするということはできません、あのときはあれでよかった、ヘーゲルの言う通り存在するものは価値あり、すべて歴史の段階においてその存在はみな価値があるんです。それを何もかも一緒にして、主権在民じゃなかったからして大和朝廷は悪い、奈良朝廷は悪いというようなことは……、ある本で私は奈良の大仏の説明を見たが、この大仏の陰には大きな犠牲者があるといっていかにも悪いことをしたように書いてありましたが、そうじやないと思う。(「そんなことだれも言っていない」と呼ぶ者あり)大和朝廷のときは主権が天皇にあった、それを……。
  91. 湯山勇

    ○湯山勇君 歴史的事実をお伺いしているのじゃないのです。
  92. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) ちょっと待って下さい。それを今から私は歴史を教えなければならぬが、やっぱり、主権が君主にあった時分にはあったと教え、またその時分には民主政治なんという行い方はありはしません。あれでよかったのです。また徳川幕府も後に悪くは言われますけれども、京都に代って三百年の大平を来たした、あれもそれは圧迫とはいうものの……当時の農民は虐げられましたけれども、ともかくも三百年大平の間に日本は進歩しておるのです。これは幕政が必ずしも悪いのじゃございません。歴史はその時のことを考えて言わなければならぬ。それが民主政治をうとうておらぬからして紀元節の歌は悪いのだということは、あまりも一本調子な、失礼だが物のわからぬ方だと思う。
  93. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は……。
  94. 有馬英二

    ○有馬英二君 議事進行について。
  95. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今発言中ですから……。  あの歌の中に私はやはり主権在君を謳歌している、これが中心だと私は思っているのですが、歌の文句から考えて主権在君を仰いでおる。そういうことを今の子供に教えるのですよ、あれは。昔神武天皇という方がおられて、日本の国を治められたのだ、そういう歴史的事実を教えるのじゃないのですよ。あの歌は主権在君の昔を謳歌している、それが内容ですよ。それを今日歌うことは主権在民の憲法下よろしくない、こういう意味ですよ。何も昔の歴史事実を否定したり何かしているのじゃないのですよ。そこでお尋ねいたしますが、あの歌は主権在君を謳歌していると私は考えますが、文部大臣どう考えておられますか。
  96. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 私はあの歌は政治組織のよしあし、すなわち政治理論を言うたものじゃなくして、神武天皇が大和朝廷を作り、橿原の宮で即位された肇国をことほぐ歌と、かように思っております。
  97. 有馬英二

    ○有馬英二君 議事進行。  どうでしょうか。本日はこの程度で閉会をされたらいかがです。     —————————————
  98. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) この際お諮りをいたします。  臨時教育制度審議会設置法案が内閣委員会に付託されたことについて各委員から御意見がありました。その結果委員長において調査して、でき得れば付託替の要求を行なってほしいということであり、議案の付託替は議長に申し入れを行い、議長が議院運営委員会に諮って付託替を行うことになります。議長に対する申し入れにつきましては、これを委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) 御異議がなければさよう決定いたします。  本日はこれで散会いたします。    午後四時三十六分散会      —————・—————